【ぼく勉】 文乃 「わたしのお誕生日会?」

593:以下、名無しが深夜にお送りします 2019/02/17(日) 21:13:11 ID:NSO23Erk

………………文乃の誕生日 唯我家

成幸 「と、いうわけで……」

成幸 「水希の下着は、間違えて古橋に渡しちゃったんだ……」

成幸 「すまん……」

花枝 「まぁ、間違えちゃったものは仕方ないわね。ブラジャーはまた買ってくるとして……」

花枝 「あんた、さすがに余所様の娘さんに下着をプレゼントするのはドジじゃ済まないわよ」

成幸 「わ、わかってるよ。よく確認しなかった俺が悪かったよ」

成幸 「水希もごめんな。ブラジャー、なくて困らなかったか?」

水希 「………………」

成幸 「水希……?」

水希 「……お兄ちゃん、もしかして、古橋さんはそのブラジャーを、着けたのかな?」

成幸 「へ……?」 ギクッ 「な、なんでそんなこと聞くんだ……?」

水希 「……答えて?」 ニコッ

成幸 「あ、ああ……。えっと、その……今日、着けてきてくれた、みたいだけど……///」

水希 「……へぇ」



594:以下、名無しが深夜にお送りします 2019/02/17(日) 21:14:15 ID:NSO23Erk

花枝 「……あら、あらあらあら」 ニンマリ

花枝 (普通、同級生の男の子からブラジャーなんてもらったら、怖がるか気持ち悪がるかだと思うけど……)

花枝 (これはひょっとしてひょっとすると、文ちゃん、成幸のこと、憎からず思ってくれてたり……?)

クスッ

花枝 (なんて、あんな可愛い子がうちの冴えない長男を好きになるわけないかー)

水希 (……うん。古橋さんは、お兄ちゃんがプレゼントした下着を、身につけたんだね)

水希 (それだけじゃない。わたしの誕生日のとき、お兄ちゃんを家に招き入れて、ふたりで仲良くカレーを作ったり……)

水希 (……まぁ、それはわたしのためでもあるから感謝してるけど。カレー美味しかったし)

水希 (それはともかくとして……)

水希 「……敵だね」 ボソッ

成幸 「……!?」 ビクッ (敵って!? 敵ってなんだ妹よ!)

水希 「……ねぇ、お兄ちゃん」

成幸 「お、おう!? なんだ、水希?」

水希 「古橋さんにはお兄ちゃんもお世話になってるだろうし、わたしも誕生日にカレーを作ってもらったりしたし……」

水希 「週末、うちに招いて誕生日パーティでも開いてあげたらどうかな?」



595:以下、名無しが深夜にお送りします 2019/02/17(日) 21:15:05 ID:NSO23Erk

成幸 「へ……? あ、ああ……。誕生日パーティ……?」

花枝 「あら、いいじゃない! 葉月と和樹もしょっちゅう遊んでもらってるし、日頃の感謝も込めて家族でお祝いしてあげましょう」

花枝 「良いこと言うわね~、水希」

水希 「……うん。まぁね」 ギラリ

成幸 (……水希が何を考えてるのか分からなくて怖いが、)


―――――― 『星が綺麗な夜だとついつい 死んじゃったお母さんの星 探しちゃうんだよね』

―――――― 『今日はお父さんが家にいるから…… あんまり帰りたくなくて』


成幸 (古橋、お母さんは亡くなってるそうだし、お父さんとはあまり良い関係ではないようだから、)

成幸 (きっと、誕生会なんか開いてもらってないんだろうな……)

成幸 「……うん。俺もすごく良い考えだと思う。明日、古橋を誘ってみるよ」

水希 「うん! 古橋さんが来られるなら、わたし、日頃の感謝も込めて、ごちそう作っちゃうよ」

水希 (……そう。日頃の色々な恨み辛みを込めて、ね) ニヤリ



596:以下、名無しが深夜にお送りします 2019/02/17(日) 21:16:15 ID:NSO23Erk

………………翌日 一ノ瀬学園 いつもの場所

成幸 「……ってことで、もし予定がなければ、週末うちに来ないか?」

文乃 「そっか。妹さんがそんなことを……」

ドキドキドキドキ……

文乃 (まぁ、正直、あの成幸くんのこと大好きな妹さんが、わたしのことを想ってくれてるとは思えないけど……)

文乃 (……いけないいけない。せっかくの妹さんの厚意を疑うなんて、人間として最低だよね)

文乃 (誕生日会、かぁ……)

文乃 (……何年ぶりかな。正直、すごく、嬉しい。けど……)

ジーーーッ

成幸 「……? どうした、古橋?」

文乃 「わたし、本当にお邪魔しても良いのかな。ご迷惑じゃない?」

成幸 「迷惑なもんかよ。母さんも葉月も和樹も楽しみにしてるぞ」

成幸 「あと、水希も、カレーのお返しだーって、気合い入れてごちそう作るつもりだぞ」

成幸 「お前さえ良ければ、ぜひ来てくれよ」



597:以下、名無しが深夜にお送りします 2019/02/17(日) 21:17:19 ID:NSO23Erk

文乃 「そ、そっか……。えへへ、嬉しいな」

文乃 「じゃあ、週末、お言葉に甘えて、お邪魔させてもらうね」

成幸 「よしっ。じゃあ、母さんと水希に伝えておくな」

文乃 「うん! ありがとね。とっても楽しみだよ」

文乃 (……ん、そういえば、水希ちゃんといえば……)


―――― 『いや……それはさすがに…… ご査収いただければ……』


文乃 (あのブラジャー、結局わたしがもらってしまったけど……)

文乃 (きっと水希ちゃん困ってるよね)

文乃 「………………」

文乃 「……ねえ、成幸くん」

成幸 「ん? なんだ?」

文乃 「週末、お家に伺う前に、少し買い物に付き合ってもらってもいいかな?」

成幸 「へ……?」



598:以下、名無しが深夜にお送りします 2019/02/17(日) 21:18:29 ID:NSO23Erk

………………週末

成幸 「………………」 ダラダラダラ

文乃 「何してるの、成幸くん。ほら、早く行くよ?」

成幸 「……いや、えっと、その、古橋さん?」

文乃 「なにかな、成幸くん?」

成幸 「ここ、ランジェリーショップだよな!?」

文乃 「そうだけど?」

成幸 「そうだけど、って……」

文乃 「だって、仕方ないでしょ。成幸くんが間違えてわたしにブラを渡したせいで、妹さんいま困ってるんじゃない?」

文乃 「だから、ブラを一枚もらってしまったことは確かだから、妹さんに一枚プレゼントしようかなって思ったの」

成幸 「うっ……いや、それはありがたいというか、俺が迷惑かけてごめんなんだけど……」

成幸 「だからって、俺が一緒に来る必要あるか?」

文乃 「へー」 ジトーッ 「きみは、きみのミスを棚に上げて責任全部をわたしに押しつけるつもりかな?」

成幸 「わ、わかった! 俺が悪かったよ。付き合うから、その目はやめてくれ……」

文乃 「わかればよろしい。では、レッツゴーだよ、成幸くん」



599:以下、名無しが深夜にお送りします 2019/02/17(日) 21:19:45 ID:NSO23Erk

成幸 「わかったよ、文乃姉ちゃん……」

文乃 (……っていうのは建前で、水希ちゃんにブラを渡すとき、変な反発が予想されるから、)


―――― 水希 『お兄ちゃんに近づくメスネコからの施しなんか受けません!!』 フシャーッ


文乃 (成幸くんが選んだってことを言えば、きっと素直に受け取ってくれるだろうから、連れてきたんだけど)

成幸 「うぅ……」 カァアアアア……

文乃 (……反応が予想以上にかわいい)

ニヤリ

文乃 (ついついいじめたくなっちゃうなぁ……なんてね)

店長 「ん……? あ、ナリユキくんじゃなーい! おっひさー!」

成幸 「あっ、店長さん。どうも、ご無沙汰してます……」

店長 「またお店手伝ってよー。きみがいると若い女の子のブラの売り上げが上がるんだよね~」

成幸 「あっ、いや、その……」

文乃 「………………」 ジトッ 「……へー。何人の若い女の子にブラを売りつけたのな、きみは」

成幸 「ご、誤解だ、古橋! その蔑むような目をやめてくれ!」



600:以下、名無しが深夜にお送りします 2019/02/17(日) 21:20:28 ID:NSO23Erk

店長 「ん? んん?? んんん???」 パァアアアアアア……!!!

店長 「まさか、ナリユキくん、その子はきみの……彼女さん?」

文乃 「へっ……!?」

成幸 「へぇ!? い、いやいや、違いますよ!」

店長 「またまた~、照れなくてもいいのに~」 ニヤニヤ 「花枝さんにはナイショにしといてあげるから、ゲロっちゃいなよ」

成幸 「だから違いますってば! ただの同級生ですよ!」

店長 「へー。つまりきみは、ただの同級生とふたりでランジェリーショップに来たってこと? 勇者だね」

成幸 「いや、そうじゃなくて……いや、そういうことになっちゃいますけど、それには深いわけが……」

店長 「ま、いいや。ナリユキくんの彼女の下着選びってんなら私も気合い入れなくちゃね」

文乃 「い、いえ、ですから……――」

店長 「ふーん、ほーん、なるほどー……」 ジーーーーーッ

店長 「……えっと、そうね。彼女さんは、このAカップのゾーンを見てもらったらいいかなー」

文乃 「今日はわたしのブラを選びに来たわけじゃないんです!」



601:以下、名無しが深夜にお送りします 2019/02/17(日) 21:21:17 ID:NSO23Erk

………………

文乃 (まったくもう、悪い店長さんじゃないんだろうけど、一言多いよ) プンスカプン

成幸 (古橋、怒ってるかな。怒ってるよな……)

文乃 「……ほら、成幸くん。早くブラを選んじゃおう」

成幸 「えっ……? お、俺が選ぶのか?」

文乃 「その方が間違いなく妹さんが喜ぶだろうからね」

成幸 「そんなこと言われてもな……」

成幸 (……っていうか、たとえばここで、俺が水希のブラを選ぶとして、)

成幸 (たとえば、ああいう子どもっぽいのを選んだら……)


―――― 文乃 『へー。きみは妹さんにいつまでも子どもでい続けて欲しいって幻想を抱いてるんだね。ああおかしい』


成幸 (なんてことを言われそうだし、ちょっと過激なのを選んだとしたら……)


―――― 文乃 『へー。きみは妹さんにもそうやって下劣なお胸への劣情を抱いているんだね。ああ怖い』


成幸 (どっちにしろハズレじゃないかそれ!?)



602:以下、名無しが深夜にお送りします 2019/02/17(日) 21:22:17 ID:NSO23Erk

文乃 「どうしたの? そんなに悩むようなこと?」

成幸 「へっ!? あ、いや……」


―――― 文乃 『妹さんのブラ選びにどれだけ真剣になってるの? 怖いんだけど……』


成幸 (ま、まずい。このまま考え込んでても死が待ってる……)

成幸 (どうあがいたって死が待ってるならさくっと選んで終わりにしてしまおう)

成幸 (着ぐるみで接客したとき、うるかが買って行ったようなデザインの……)

成幸 「……とりあえず無難に、こういうのでいいんじゃないかな」

文乃 「ふんふん。白地に少しレースの入った、普通のだね。ふーん……」

成幸 (ど、どうなんだ、その反応は……) ドキドキドキ……

文乃 (へー。そっか……) ドキドキ (成幸くんは、こういうデザインが好きなんだ。ふーん……)

ハッ

文乃 (べ、べつに、だからどうだってわけじゃないけど……)

文乃 「ん、じゃあ、この前のブラと同じサイズ、買って来るね。外で待ってて」



603:以下、名無しが深夜にお送りします 2019/02/17(日) 21:22:52 ID:NSO23Erk

成幸 「あ、ああ……わかった……」 (セーフ……なのかな? いや、それより……)

成幸 「古橋。あの下着は俺が間違えてお前に渡しちゃったやつだから、俺が買ってくるよ」

文乃 「へ?」

成幸 「お前にお金を出させるのはやっぱり忍びないというか……悪いのは俺だし」

文乃 「ふふ、おかしな成幸くん。じゃあ、これ持ってレジ行ける?」

成幸 「い、いや、それはちょっと……」

文乃 「じゃあ、ダメだね。そもそも、これはわたしの自己満足みたいなものだから」

文乃 (……まぁ、自己満足というよりは自己防衛というべきだけど)

文乃 「ブラ買うお金があるならさ、参考書でも買いなよ。お金のことは気にしなくていいから」

成幸 「……わかった。すまん」

文乃 「謝らないでいいってば」 ハァ 「じゃ、わたし買ってくるから、ちょっと待っててね」 トトト……

成幸 「……はぁ」 (なんか、古橋に悪いことしちゃったな……)



604:以下、名無しが深夜にお送りします 2019/02/17(日) 21:24:15 ID:NSO23Erk

店長 「……ナリユキくんナリユキくん」 コソッ

成幸 「? 店長さん?」

店長 「いや、さっき、彼女さんのご機嫌を損ねちゃったみたいだから、申し訳なくってさ」

ガサッ

店長 「これ、私からのプレゼント。後で彼女さんに渡しといてよ」

成幸 「古橋に……? でも、この紙袋の中身って……」

店長 「もち、この店のブラ! 安心して! さっきナリユキくんが選んだブラと同じデザインのサイズ違いだから!」

店長 「サイズももちろんぴったしだよ! 私は服の上から見ただけで大抵のお客さんのトップとアンダーが分かるからね!」

成幸 (何をどう安心しろと言うんだ!?)

成幸 「いや、でも……――」

客 「――あの、すみません。ちょっとサイズを測ってもらいたいんですけど……」

店長 「あ、はーい! 今いきまーす!」

店長 「ってことで、彼女さんにそれプレゼントしてご機嫌取っといてね!」

店長 「今後ともうちの店をごひいきに! ってことで、またね、ナリユキくん!」

成幸 「あ、ちょっと! 店長さん!?」



605:以下、名無しが深夜にお送りします 2019/02/17(日) 21:25:30 ID:NSO23Erk

成幸 (行ってしまった……)

ゴソッ

成幸 (これ、どうしよう……って、古橋に渡すしかないよなぁ……)

成幸 (でも、これ……俺が選んだブラの、サイズ違いなんだよな……)

カァアアアア……

成幸 (無難なのを選んだだけとはいえ、俺が選んだブラを、古橋に……――)

文乃 「――お待たせ、成幸くん。買ってきたよー、って」

文乃 「どうしたの? 顔真っ赤だよ?」

成幸 「へ!? いや、な、なんでもない!」 コソッ

文乃 「? そう?」

成幸 「さ、そろそろ俺の家に行こうぜ。母さんたちも待ってると思うし!」

文乃 「それもそうだね。じゃあ、行こうか」



606:以下、名無しが深夜にお送りします 2019/02/17(日) 21:26:32 ID:NSO23Erk

成幸 (……思わず隠して誤魔化してしまったが)

成幸 (まぁ、今渡す必要もないだろう。後でゆっくりしっかり、店長さんからのお詫びだと説明して渡せばいいんだ)

文乃 「あ、そうだ。おうちにお邪魔するのに手ぶらってわけにもいかないよね」

文乃 「何かお菓子でも買ってから行かないと」

成幸 (……俺が選んだデザイン云々とか、そういうのはわざわざ説明しなくてもいいよな、うん)

文乃 「? 成幸くん? 聞いてる?」 ズイッ

成幸 「!? ふ、古橋、どうかしたか?」

文乃 「………………」 ジーーーッ 「なんか怪しいなぁ。何か隠し事してない?」

成幸 「ないない! 何もないぞ!」

文乃 「……ふーん。ま、いいけどさ」

文乃 「じゃあ手土産を買いに行こ。そしたら成幸くんの家に行こうね」

成幸 「お、おう。わかった」 (はぁ。さすがに、古橋は鋭いな……)



607:以下、名無しが深夜にお送りします 2019/02/17(日) 21:27:08 ID:NSO23Erk

………………唯我家

文乃 「………………」 ドキドキドキ (ふぅ。今さらだけど、すごく緊張してきたよ……)

文乃 (お誕生会なんて、お母さんが亡くなってから一度もやってもらってないし、)

文乃 (本当に今さらな話だけど、提案されたこととはいえ、)

文乃 (やっぱり友達の家でお誕生会を開いてもらうなんて、厚かましかったかな……)

成幸 「どうした、古橋? 入るぞ?」

文乃 「あ、うん……」 (……さて、とりあえず、水希ちゃんが怒ってないといいなぁ)

ガラッ――

 『――――文ねーちゃん! お誕生日おめでとーっ!!』

パンパン!!!

文乃 「わっ……葉月ちゃんと和樹くん」

葉月 「いらっしゃい、文姉ちゃん!」

和樹 「ほらほら、上がってー! ごちそうがまってるぞ!」

ギュッ

文乃 「わっ……わわわ……」



608:以下、名無しが深夜にお送りします 2019/02/17(日) 21:27:49 ID:NSO23Erk

文乃 「わっ……」

キラキラキラ……

文乃 (す、すごい……!! すごいごちそうが並んでるよ!!)

水希 「……どうも、古橋さん」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

水希 「お誕生日、おめでとうございます。ようこそおいでくださいました」

花枝 「お誕生日おめでとう、文ちゃん。今日はゆっくりしていってね」

文乃 「あっ、水希ちゃんと成幸くんのお母さん。本日はお招きいただいてありがとうございます」

花枝 「そんなかしこまらなくていいわよ。自分の家だと思って、楽しんでいってね」

花枝 「……じゃあ、文ちゃんと成幸もついたことだし、みんな席について、改めて……」

「文ちゃん」 「古橋さん」 「「文姉ちゃん」」 「古橋」 『お誕生日おめでとーーっ!!』

パチパチパチ……

文乃 「あっ……ありがとう、ございます……」

文乃 (ど、どうしよう……。こんな風にお祝いされると、予想以上に……)

文乃 (嬉しくて、感極まりそう……)



609:以下、名無しが深夜にお送りします 2019/02/17(日) 21:28:31 ID:NSO23Erk

文乃 (それにしても……)

文乃 「すごいごちそうだね。全部水希ちゃんが作ったの?」

水希 「ええ、まぁ。わたしにかかればざっとこんなものってところでしょうか」

水希 (ふふ。これで、わたしのお兄ちゃんに色目を使うことの愚かさを少しは思い知ったかしら)

水希 (お兄ちゃんはわたしの美味しいお料理を食べて舌が肥えてるんだから……)

花枝 (またくだらないこと考えてるわね、水希ったら……) ハァ

文乃 「………………」

文乃 (うっ……嬉しい……)

文乃 (わたしのために、こんなに豪華なお料理を作ってくれるなんて……)

ガシッ

水希 「へ? な、なんでわたしの手を握るんですか……?」

文乃 「水希ちゃん、ありがとう! わたし、いますごく感激してるんだよ!」

文乃 「こんな美味しそうなごちそうをたくさん作ってくれたんだね。本当に……」

グスッ

水希 「!?」



610:以下、名無しが深夜にお送りします 2019/02/17(日) 21:29:12 ID:NSO23Erk

文乃 「……あっ、ご、ごめんね。えへへ、嬉しいのに、なんか……」

水希 「そ、そんな、泣くほどのお料理じゃないですよ」 アセアセ

水希 「ローストビーフは特売の牛肉だし、チキンだって安い手羽元をそれっぽく料理しただけだし……」

水希 「そもそもこれは、夏のわたしの誕生日のときに作ってくれたカレーの、」

水希 「(あてつけのつもりの) お返しですから、気にする必要なんてないですよ」

文乃 「ご、ごめんね。でも、お誕生会なんて久しぶりで、すごく嬉しくて……」

文乃 「そのうえ、こんな素敵な、手作りのごちそうまで用意してもらって……」

ニコッ

文乃 「本当にありがとう、水希ちゃん」

文乃 (ああ、わたし、本当に恥ずかしいや。水希ちゃんはわたしのためにこんなにがんばってくれたのに……)

文乃 (わたしはそんな水希ちゃんの厚意を疑うようなことを……うぅ……本当に最低だな、わたし……)

水希 (ど、どうしよう。どちらかといえば負の気持ちで料理をしたのに……こんなに喜ばれると……)

水希 (さすがに良心が痛むわ……)

花枝 「……さ、いただきましょう。お料理が冷めちゃうわ」



611:以下、名無しが深夜にお送りします 2019/02/17(日) 21:29:57 ID:NSO23Erk

葉月&和樹 「「いただきまーす!」」

文乃 「あっ……い、いただきます」

ハムッ

文乃「……!?」 パァアアアアアア……!!! 文乃「美味しいぃいいい~~~~~!!!」

ヒョイッパクッヒョイッパクッヒョイッパクッ

文乃「どれもこれもすっごく美味しいよ、水希ちゃん!!」 ムシャムシャムシャムシャムシャムシャ

水希 「っ……で、ですから、そんなに言うほどの料理じゃないんですって……」

花枝 「ふふ」 (水希も嬉しそうだわ。なんだかんだ、文ちゃんのこと好きなのね)

成幸「ああ、やっぱり水希の料理はピカイチだな。こんなに料理上手な妹がいて俺は幸せ者だよ」

水希 「えへへ……。まったくもう、お兄ちゃんったら……」

文乃 (はぁ~、本当に美味しいなぁ。ほんと、成幸くんが羨ましいよ)

葉月「チキンおいしー!」 和樹 「こんなにたくさん肉が食えるなんて久しぶりだな!」

文乃 (それに、何より、こうやって家族みんなで幸せそうなのが……)

ズキッ

文乃 (……本当に、うらやましい)



612:以下、名無しが深夜にお送りします 2019/02/17(日) 21:30:37 ID:NSO23Erk

………………

水希 「ふー……」

水希 (洗い物も終わったし、後片付けはこれくらいかな……)

水希 (晩ご飯は残り物だけで良さそうだし、ご飯を炊いてお味噌汁を作るだけでいいかな)

水希 「………………」


―――― 『どれもこれもすっごく美味しいよ、水希ちゃん!!』


水希 (……やだな。古橋さん、あんなに喜んでくれたのに、わたし……)

水希 (……嫌な妹だな)

水希 「はぁ……――」

 「――あっ、ねえ、水希ちゃん」

水希 「へ!? ふ、古橋さん……?」

文乃「ごめんね、水希ちゃん。後片付けまで全部やってもらっちゃって……」

水希 「それは、べつに……古橋さんはお客さんですから、気にしないでください」

水希 「葉月と和樹と遊んでくれてるだけで大助かりですから」



613:以下、名無しが深夜にお送りします 2019/02/17(日) 21:31:09 ID:NSO23Erk

水希 「ところで、どうかしましたか?」

文乃「あ、うん。えっとね、ちょっと、水希ちゃんに渡したいものがあって……」

ガサッ

文乃「これなんだけど……」

水希 「? 何です?」

文乃「ほら、この前、成幸くんが間違えて水希ちゃんのブラをわたしにプレゼントしちゃったじゃない?」

水希 「……ええ」

文乃「それで、結果的にわたしが水希ちゃんのブラを一枚もらったことになっちゃうから、困るかな、って思って、」

文乃「それはそのお詫びの品というか……早い話が、ブラだよ」

水希 「へ……?」

水希 「間違えたのはお兄ちゃんなんだから、そんなの、古橋さんが気にすることじゃないのに……」

文乃「まぁ、それはそうかもしれないけど……今日はわざわざわたしの誕生日会も開いてくれたし、」

文乃「そのお礼の意味もあるから、受け取ってくれると嬉しいな」

水希 「あっ……わ、わかりました。ありがとうございます」

文乃「うん!」



614:以下、名無しが深夜にお送りします 2019/02/17(日) 21:31:52 ID:NSO23Erk

水希 「………………」

水希 (……わたし、本当に恥ずかしいや)

水希 (古橋さんは、わたしのことまで考えてくれているのに、わたしは……)

水希 (いつも、自分とお兄ちゃんのことばかり。古橋さんに嫉妬して、嫌な妹だ……)

水希 (前から分かってたけど、古橋さんってすごく良い人だ……)

水希 (お兄ちゃんのことも何とも思ってないみたいだし、この人には、気を許してもいいかな……)

水希 「……中、見てもいいですか?」

文乃「もちろん、どうぞ」 (ああ、そうだ、言っておかないといけないよね)


文乃「ちなみに、そのブラを選んだのはわたしじゃなくて、成幸くんだからね」 ニコッ


水希 「……え?」

文乃「ん?」

水希 「お兄ちゃんが? ブラを? 選んだ?」

水希 「……それってつまり、お兄ちゃんと、ランジェリーショップに一緒に行ったってことですか?」

文乃「……!?」



615:以下、名無しが深夜にお送りします 2019/02/17(日) 21:32:26 ID:NSO23Erk

文乃 (し、ししし……)

文乃 (しまったぁあああああああああああああああ!!)

水希 「………………」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

文乃 (そりゃそうだよ! そりゃそうなるよ!)

水希 「古橋さん?」

文乃「は、はい!」

水希「……どういうことなのか、説明、してほしいなぁ?」

文乃「えっと、それは、その……その方が、水希ちゃんが喜んでくれるかな、って思って……」

水希 「………………」

クスッ

水希 「……ま、そんなところですよね」

文乃「へ……?」

水希 「えへへ。お兄ちゃんが選んでくれたブラかぁ……」

水希 「最高の贈り物ですよ、古橋さん。ありがとうございます」

文乃 (よ、よかった……。地雷を踏み抜いたかと思ったよ……)



616:以下、名無しが深夜にお送りします 2019/02/17(日) 21:32:58 ID:NSO23Erk

水希 (……まぁ、正直、お兄ちゃんとふたりでランジェリーショップに行ったっていうのはちょっとムカつくけど)

水希 (古橋さんに他意はないだろうし、わたしのためにしてくれたって言うのも本当だろうし)

水希 (何より、お兄ちゃんに選ばせるあたり、分かってるというか……あ、鼻血出そう)

文乃 (……とりあえず、正解だったみたいでよかったよ)

文乃 (今後も成幸くんの家で勉強することもあるだろうから、唯我家の皆さんとは仲良くしないとだからね)

成幸 「……ん、いたいた。古橋」

文乃 「? 成幸くん?」

成幸 「忘れる前に渡しちゃうな。これ」 ガサッ

文乃 「へ……? これ、プレゼント? いや、でも、もうボールペンもらったよ?」

成幸 「いやいや、俺からじゃないよ。今日失礼なことを言っちゃったからって、店長さんからのお詫びの品」

成幸 「渡してくれって頼まれたんだ」

文乃 (えっ……? それって、つまりこの紙袋の中身は……)

水希 「………………」

水希 「……お兄ちゃん、ソレ」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!! 「この紙袋と、同じだね?」

成幸 「へ? あ、いや、まぁ……中身、下着だからな」



617:以下、名無しが深夜にお送りします 2019/02/17(日) 21:33:42 ID:NSO23Erk

水希 「……ふーん。へー。ほー」

水希 「つまりお兄ちゃんは、また古橋さんに下着をプレゼントするんだ……」

成幸 「い、いやいや! これは俺のプレゼントってわけじゃ……」

成幸 「たしかに俺が選んだブラと同じデザインのサイズ違いって言ってたけど……」

文乃 (きみはなんでそんな余計なことを言うのかな!?)

成幸 「……じゃなくて! とにかくこれは、俺からじゃなくて店長さんからだから!」

文乃 「……う、うん。じゃあ、ありがたくもらっておくね」

文乃 (これ……)


―――― 『……とりあえず無難に、こういうのでいいんじゃないかな』


文乃 (なっ……成幸くんが選んだ、ブラなんだよね……しかも、わたしのサイズにぴったりの……)

文乃 「っ……」 (だ、だめ……どんなに我慢しても、顔赤くなるし、口元も緩んじゃうよ……)

水希 「………………」 (……うん。やっぱり。間違いない)

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

水希 (この人は、敵……!!!)



618:以下、名無しが深夜にお送りします 2019/02/17(日) 21:34:12 ID:NSO23Erk

………………その夜 古橋家

文乃 「………………」 ドキドキドキドキ……

文乃 (……成幸くんが選んだデザインのブラ)

文乃 (これ、つけてもいいのかな……。い、いいよね?)

スッ……

文乃 (あ、サイズ本当にぴったりだ)

文乃 (似合ってる、かな……?)

文乃 (……この姿のわたしを見たら、成幸くんは……)

文乃 「……喜んで、くれるかな」

ハッ

文乃 (な、なんてはしたないことを考えてるの、わたし……///)

文乃 (りっちゃん、うるかちゃん、違うからね!!)

文乃 (……違うけど、せっかくもらったものだし、明日、つけてっちゃおうかな……)

文乃 (えへへ……///)

おわり



619:以下、名無しが深夜にお送りします 2019/02/17(日) 21:36:43 ID:NSO23Erk

………………幕間1 『秘密の花園について[x]は如何程に秘密を吐露したか』

うるか 「今日の体育はA組と合同かー! 負けないかんねー!」

文乃 「あはは。うるかちゃん元気だねー」

うるか 「……んう? あれぇ、文乃っち、そんなブラ持ってたっけ?」

文乃 「へ!? あ、いや……あ、新しく買ったやつだよ?」

文乃 (人の下着とかよく覚えてるなぁ……。危ない危ない。油断できないね……)

うるか 「なんかあたしのと似てるね。えへへ、なんかおそろいみたいでドキドキするねっ」

文乃 「はは……」 (うるかちゃんってときどきすごいこと言うよなぁ……)

うるか 「このブラ、ランジェリーショップの店員さんに選んでもらったんだよね~」

うるか 「着ぐるみの新人さんだったんだけど、もうお仕事には慣れたかなー」

文乃 (着ぐるみの新人っぽい店員……)

文乃 (……ああ、なるほど) ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!! (うるかちゃんの下着も選んだ、と……)

うるか 「文乃っち……?」

文乃 (成幸くん、今度、ぶつ)



620:以下、名無しが深夜にお送りします 2019/02/17(日) 21:37:39 ID:NSO23Erk

………………幕間2 『鼻血』

水希 「………………」 ドクドクドクドク……

花枝 「………………」

花枝 (洗面台の鏡の前でブラジャーを身につけ鼻血を流し倒れる娘……)

花枝 (どこで育て方を間違えたのかしら……)

葉月 「和樹、いつもの」

和樹 「あいさ」 スッ

おわり



元スレ
【ぼく勉】成幸 「キスと呼べない何か」
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         コメント一覧 (6)

          • 1. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2019年02月17日 23:49
          • 本当にこんな話ありそうで楽しい
          • 2. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2019年02月18日 02:21
          • 最高
            いつもありがとうございます作者さん
          • 3. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2019年02月18日 04:27
          • すこでしこ
          • 4. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2019年02月18日 18:04
          • 控えめに言って最高だった
          • 5. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2019年02月18日 23:31
          • とても良い!文乃かわいい

            しかし、本編でも思ったけどなぜブラだけなんだろうか
            普通上下セットでは……
          • 6. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2019年02月19日 18:35
          • 米5
            意外とそうでもないんだよなぁ

        はじめに

        コメント、はてブなどなど
        ありがとうございます(`・ω・´)

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