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隊長「魔王討伐?」【その2】

関連記事:隊長「魔王討伐?」【その1】





隊長「魔王討伐?」【その2】






289: ◆O.FqorSBYM 2018/12/01(土) 23:12:20.09 ID:651egkh80


~~~~


大の大人達が、砂浜で大の字で倒れている。

旅の疲れ、なれない海中、そして陽気なお天道さま。

勝てるわけがなかった、彼らは睡魔という敵に呪われる。


隊長「はぁ...いい日差しだ」


女賢者「正直...動きたくないですね」


帽子「...夕方までこうしてないかい?」


女賢者「...さっさと済ませて賢者の塔のやわらかぁ~い布団で寝るか、今のままか...」


隊長「...前者だな」


帽子「同感だ」


女賢者「...立てません」


帽子「同感だ」


隊長「ほら、立て」


帽子「やめろ! 無理やり立たせるな!」


女賢者「きゃぷてんさんの鬼...」


隊長「俺は一刻も早く布団で寝たいんだ...」


~~~~



290: ◆O.FqorSBYM 2018/12/01(土) 23:13:45.09 ID:651egkh80


~~~~


女賢者「買いものは済みましたね...帰りますか」


帽子「お、重い...」


隊長「お前、俺をみてもそれを言えるか?」


帽子「...」


女賢者「さぁ、さっさと帰りましょう」


先日の買い物袋はどこかに置いてけぼりにしてしまったようだ。

つまりは全てを買い直した、そんな大荷物を持たされるのは彼らであった。

ようやく賢者の塔に帰ることが許される、その帰路で帽子がつぶやいた。


帽子「そういえば今日で5日目だよね」


女賢者「そうですね...予定通りならあと2日以内で修行が終わると思います」


隊長「...早いもんだな」


帽子「そうだね...それにしても、ここから荒野地帯を抜けるのは大変そうだね」


女賢者「...弱音を吐かないでください、実感しちゃうじゃないですか」


帽子「と、いうか海中だとろくに食べた気しないからもうペコペコだよ...」


隊長「昼食を済ませてから出発すればよかったな」


帽子「いや...それは一昨日と同じハメになるよ」


女賢者「失礼ですね」



291: ◆O.FqorSBYM 2018/12/01(土) 23:14:36.56 ID:651egkh80


帽子「...この距離、魔法で何とかならないかい?」


女賢者「大賢者様なら、転地魔法を使えるんですが...あいにくですね」


帽子「その魔法はどんなものなんだい?」


女賢者「そうですね、転移魔法の長距離版ですね...転移魔法自体がとても高等な魔法なのですが...」


女賢者「転地魔法は、例えるなら...賢者の塔から塀の都まで一瞬で到着させることのできる魔法です」


帽子「...すごいな」


女賢者「ただし、とても長い詠唱が必要ですけどね」


帽子「ふぅん...私も使ってみたいね、魔法」


帰路の雑談は魔法の話題で会話が弾んでいた。

そんな中、女賢者はそれに関連するある思いを告げる。

それは先程の帽子に関する出来事、海底都市の激戦を沈めた白きあの光。


女賢者「それなんですが...」


帽子「ん?」


女賢者「海底王国でその剣が光輝きましたよね?」


隊長「...やはりソレの仕業だったか」


女賢者「あの光...どことなく魔法に似ていましたね」


帽子「...そうなのかいッ!?」


女賢者「魔剣の研究は進んでいないので確証はできないですけどね」


女賢者「思えば、その剣からは微妙に魔力を感じることが...」


帽子「そうか...ついに魔法剣士にでもなってしまったか!」


女賢者「いえ、だから魔法かどうかは────」


帽子「──なんだか気分が高揚してきたよ!」キラキラ


隊長「...はしゃいでるな、あの荷物をもって」


女賢者「...案外、子どもっぽいですよね」


隊長「...だな」


~~~~



292: ◆O.FqorSBYM 2018/12/01(土) 23:15:09.00 ID:651egkh80


~~~~


帽子「やっと賢者の塔がみえたね」


隊長「...流石に疲れたな」


女賢者「...」


女賢者「...急ぎましょう」


帽子「どうしたんだい?」


荒野地帯、その地平線の先には目的地の塔が見える。

到着は間もなくだが、この遺跡の入り組んだ道のりが彼らの足を阻む。

やっと休息を取ることができると表情を緩めたそんな時だった、ただ1人だけは違っていた。

なぜ急ぐ必要があるのか、それはすぐに分かる。


???「お前が、噂の奴か...」


隊長「──!」スチャッ


その只ならぬ雰囲気に思わず、彼は荷物を捨ててまで武器を構えた。

そこにいたのは至って普通の見た目をした人物が1人。

人間か魔物かはわからないが、その姿だけを見ればやや逞しい男と表現できるだろう。


女賢者「...どちら様で? 魔王軍ではなさそうですが...」


帽子「...」


魔闘士「...俺の名前は魔闘士」


魔闘士「そこの人間...」



293: ◆O.FqorSBYM 2018/12/01(土) 23:15:34.91 ID:651egkh80











「手合わせ願おうか...」












294: ◆O.FqorSBYM 2018/12/01(土) 23:16:46.65 ID:651egkh80


隊長「──ッ!?」


──ピリピリピリッ...

空気が張り裂けそうな程の威圧感が発せられる。

その男の名は魔闘士、すでに臨戦状態であった。

一体彼は何者なのか、そしてなにが目的なのか。


帽子「やれやれ、また戦闘か...」


魔闘士「...俺はそいつにだけ用がある、他は邪魔だ失せろ」


隊長「...どうやら俺が目当てのようだな」


女賢者「1対1をお望みのようですが...そうはいきませんよ?」


魔闘士「...手は打ってある」


帽子「...なんだと?」


魔闘士「俺の連れが1人、この塔にいる」


魔闘士「...早く行かないと、大賢者が死ぬぞ」


女賢者「な...ッ!?」


隊長「──俺に構うなッ! 行けッッ!!!!」


帽子「しかしっ!」


隊長「相手の条件を飲むんだッ!」


魔闘士「早くいけ、邪魔だ...」


女賢者「...すみません、きゃぷてんさんっ!」ダッ


帽子「くッ...死ぬなよッッ!!!」ダッ


魔闘士の要望通り、1on1に持ち込まれてしまった。

彼には例の入れ墨が見当たらない、どうやら本当に魔王軍ではない模様であった。

ならばなぜ、この隊長という男を狙うのか。



295: ◆O.FqorSBYM 2018/12/01(土) 23:17:44.95 ID:651egkh80


隊長「...」


魔闘士「...こないのか?」


隊長「────ッ!?」ピクッ


相手の様子を見てから、動くつもりであった。

しかしそれは出来なかった、それはなぜか。

気がついたときには、眼前に魔闘士が迫っていたからであった。


魔闘士「...遅い」スッ


隊長「──グアァァッ...!?」


──ドガッァァッッッ!!

強烈な一撃、不意打ちでもないというのに真正面から受けてしまう。

その蹴りは凄まじく、人間にしては大柄な彼を吹き飛ばした。

だがそれだけなら話はわかる、隊長が驚いたのはその跳躍距離であった。


隊長「ゲホッ...ゲホッ...ふざけてる...どんな蹴りならここまで吹き飛ぶんだ...」


隊長(まずい...今のでアサルトライフルがどこかに...)


魔闘士「さぁ立て」


隊長「──ッ!」スチャッ


魔闘士「...!」


──ダンッ ダンッ

隊長は牽制程度にハンドガンを仕方なく放つ。

だが魔闘士は動かずにいた、その必要がないと瞬時に理解したために。

そして彼は何かを掴んだ。


隊長「────ッ!?」


魔闘士「...フッ、確かに大した威力だな」


魔闘士「だが、俺には見えるぞ」パッ


──からんからん...

彼が手を開くとそこには。

地面に落としたのは弾丸であった、金で出来た偽物だが差し支えない威力を誇るというのに。

それをわざとらしく地面に捨て落とす、その光景に思わず隊長は息を呑む。


隊長「...まるでHollywood movieだな」


~~~~



296: ◆O.FqorSBYM 2018/12/01(土) 23:18:25.47 ID:651egkh80


~~~~


帽子「くそッ! 次から次と闘いばかりだなっ!」


女賢者「おしゃべりは後です! それよりも早く...!」


多忙が重なる、だが今回のソレは今までの比ではない。

嫌な予感が彼らの原動力となり、遺跡を駆け抜ける。

そして到着した賢者の塔、その1階には奴がいた。


???「俺様を探してるのかァ?」


帽子「──ッ!」


女賢者「...魔闘士とやらのお連れですか?」


魔剣士「そうだァ...俺様の名前は魔剣士、待ってたぜェ?」


口調に特徴のあるこの男、まるでゴロツキのような喋り方をしている。

名は魔剣士、背中にはその名に相応しい妙な感じのする大剣を背負っている。

この男も、魔闘士と同様にかなりの手練なのかもしれない。


帽子「くっ...!」スッ


魔剣士「おォ...お前も剣士か、しかもその剣...魔剣だなァ?」


魔剣士「奇遇だな、俺様も魔剣だぜェ?」スッ


女賢者「な...なんて魔力の量なんですか...その剣...っ!」


女賢者(帽子さんの魔剣...ユニコーンの比にならないっ!?)


魔剣士「...俺様は、お喋りより闘いのほうが好きなんだ」



297: ◆O.FqorSBYM 2018/12/01(土) 23:19:40.07 ID:651egkh80











「いくぜェ?」












298: ◆O.FqorSBYM 2018/12/01(土) 23:20:20.81 ID:651egkh80


帽子「──うっ...!?」


──ピリピリピリッ...

剣を構えただけだというのに、すでに冷や汗が止まらない。

やはりこの男、魔闘士と同等の実力者であることが伺える。


女賢者「────帽子さん前ですっ!」


帽子「──えっ...」


魔剣士「...おせぇよ」


魔剣士「──斬り上げェェッッッ!!!」ブンッ


―――ザシュッッッッッ!!!!!!

あんなに大きなエモノを持っているというのに。

その速度は、何も荷物を持たないでいる帽子の全力疾走よりも遥かに速い。

決して目で負えない速度ではない、だがその予想外な疾走が帽子の意識を鈍くさせていた。



帽子「──なっ...」


──バキィィィッ...

疾走からの剣撃、帽子は腰から肩にかけて斬り上げられた。

そのはずだった、本来なら胴体が離れていてもおかしくない威力。

だが聞こえる音は肉が離れる音ではなく、何かが割れる音であった。


帽子「...グッ!?」


女賢者(あれは防御魔法...そうかあの瓶をまだ持っていたんですね)


帽子(今ので壊れたっぽいなぁ...)


魔剣士「...結構ずるいことするんだなァ」


魔剣士「ブチ殺されても文句いうなよ?」


帽子「...悪かったね、もう油断しないよ」


~~~~



299: ◆O.FqorSBYM 2018/12/01(土) 23:21:08.71 ID:651egkh80


~~~~


隊長「はぁッ...はぁッ...!」


魔闘士「...どこへ隠れた」


隊長(...!)ピクッ


ザッ...ザッ...ザッ...

足音が聞こえる、彼は遺跡の遮蔽物で身を隠している。

乱れる呼吸を一瞬にして整え、来るべき時を待つ。


隊長(...)


隊長(......)


隊長(.........)


魔闘士「...隠れても無駄だぞ」


隊長「────ッ!」スチャッ


隊長への牽制、その発言が決め手であった。

その声の聞こえ方から察するに、すぐ近くに違いない。

隊長が物陰から奇襲を行った。


魔闘士「──そこかッ!?」


隊長「────デヤッッッッ!!!!!」


──バキィィィィィィッッ!!!!!!

魔闘士の顔面に拳が決め込まれた。

普通の人間が喰らえば顔面崩壊もあり得るその威力。

だが彼は人間ではない、魔物であった。


隊長「なッ...!?」


魔闘士「...いい拳だ、人間にしてはな」


隊長「──ッ!」スチャッ


──ダンダンッ!

効果が得られないとわかれば、すぐさまに対応を変化させる。

先程は無力化されてしまったが、この距離ならいけるかもしれない。

隊長は急いでサイドアームのハンドガンを抜き、撃ちこんだ。



300: ◆O.FqorSBYM 2018/12/01(土) 23:22:08.31 ID:651egkh80


魔闘士「あたらんぞ」スッ


隊長(...避けただとッ!? この距離でかッ!?)


隊長「...クッ!」スッ


魔闘士「刃物か...それも無意味だ」ガッ


隊長「──なッ!?」グググ


今度はナイフを取り出すが、不発に終わってしまう。

彼の腕が魔闘士によって簡単に抑えられてしまった。

その腕力は、筋骨隆々であるこの隊長の力を寄せ付けなかった。


隊長(全く動かせないッッ!!!)グググ


魔闘士「...復讐者を倒したと聞いて期待をしていたが...興ざめだ...」スッ


―――ドガアアアァァァァァァァァァアンンッッッ!!!!!!

おそらく利き腕ではない左腕から繰り出した。

その拳力は凄まじく、先程蹴飛ばされたときよりも身体が吹っ飛ばされてしまう。

吹き飛ばされ着地した、その余波により遺跡の一部が瓦礫へと変貌する。


隊長(だ、だめだ...強すぎる...)


隊長(一旦、隠れなければ...)ズルズル


魔闘士「チィ...また隠れたか...」


~~~~


~~~~


魔剣士「...あっけねェな」


帽子「はぁッ...はぁッ...!」


女賢者「っ...っ...!」


魔剣士は別に特別なことはしていない。

ただ、剣を振り回していただけ。

だがそれだけで、帽子と女賢者の息を上がらせていた。


魔剣士「...そんなんで良く、魔王軍に喧嘩を売ったなァ」


帽子「...私にはやることがあるんでね」


魔剣士「...何が目的かしらねェけど、このままじゃここで死ぬぞ?」


帽子「...死ぬわけには...行かないんだッ!」




301: ◆O.FqorSBYM 2018/12/01(土) 23:23:18.98 ID:651egkh80


女賢者「けほっ..."衝魔法"」


──ゴォォォォォォォ...!

空気中に現れたのは、衝撃を纏う魔法。

だがそんなモノ、魔剣士の前では唯の的に過ぎなかった。


魔剣士「...おらよォッ!」ブンッ


――――スパッ...!

剣から放たれた気のようなモノが、彼女の魔法を真っ二つにする。

その光景が彼らの絶望感を強くする。


女賢者「う...そ...」


帽子「魔法を...斬っただと...?」


魔剣士「"竜"の魔剣を甘く見すぎだァ...お嬢ちゃん」


女賢者「────っ!?」


──ぞくっ...!

魔剣士が彼女に向かって睨みつけた。

魔法を使ったわけではない、ただ本当に睨んだだけ。

それがキッカケであった、彼女を支える精神力が斬られてしまった。


女賢者「うっ────」フラッ


帽子「女賢者さんっ...!?」


魔剣士「気絶したか、まァ仕方ねェよな...しっかし、お前の魔剣」


帽子「...っ!」ビクッ


魔剣士「全然活かせてねェな...死ぬ前に教えてやるよ」


帽子「...なんだと?」


魔剣士「俺の教え方はひどいぜ? 魔剣を活かすまえにやっぱ死んじまうかもなァ!」ダッ


帽子「──速いっ!?」


魔剣士「オラッ! 前方だァ! 剣構えろオォォォ!!!」


帽子「──クソッ!! 舐めやがってッ!!!」スッ


──キィンッ カンッ ギィィィィンッ!!!!

大きな動物ですら斬り伏せれそうな大剣、それに対峙するのは刺突用の細い剣。

とても不安定な鍔迫り合いが発生する、絶対的に後者が不利だというのに耐えれている。

これが魔剣同士の争いというモノであった。



302: ◆O.FqorSBYM 2018/12/01(土) 23:24:12.22 ID:651egkh80


魔剣士「オラオラオラオラァァ!! 魔剣ってのはなァッ!」


魔剣士「もっと豪快に使うんだよォッ! ちょっとやそっとのことでは折れねェからなァッ!」


帽子「──くそッ! お喋りは嫌いなんじゃないのかッ!」


──キィンッ! ガチャァッ!!! ガギィーンッ!!!

激しい剣撃同士が牙を向き合う。

だがそれを可能にしているのは、彼側の配慮であった。


魔剣士「お喋りできる程に手ェ抜いてんだァ! 退屈なんだよォッ!!!」


帽子(くっ! 私が交えられる程度まで手を抜いてるのかっ!)


魔剣士「──おらよォッッッ!!!!!!」ブンッ


帽子「しまっ────!」


――――ガギイィィィィィィィンッ!!!!

この男、口調とは違いかなり曲者である。

力加減を調節する、その細かな動作が可能にしたのは弾き落とし。

帽子の魔剣は吹き飛ばされてしまった。


魔剣士「...ホラ、拾いに行けよ」


帽子「...どこまでも下でに見やがって」スッ


魔剣士「よォし...行くぞォッ!!!!」


帽子「...その油断、後悔させてやるからなッ!」


~~~~



303: ◆O.FqorSBYM 2018/12/01(土) 23:25:26.65 ID:651egkh80


~~~~


隊長「くっ...くっ...」ズルズル


隊長(くそっ...勝てる策がみつからん...!)


瓦礫の中を匍匐前進で進んでいく。

こうすることで身を隠し、一時的にこの場を凌ぐ。

それしか行えない、今の隊長に魔闘士を倒せる手段などない。


魔闘士「...どこだ」


隊長(まずい...魔闘士がすぐ近くにいる...)


ザッ...ザッ...ザッ...ザッ...

息を潜め、時が流れるのを待つ。

すると聞こえたのは足音、それが徐々に離れていく。

危機はさった、そんな隊長は息苦しい瓦礫の中である物を発見する。


隊長(アサルトライフル...!)


隊長(拾いに行きたいが...それだとここから出なければならない...)


隊長(...身を隠せる場所は見当たらない、奴が完全に離れたら向かうか)


ザッ...ザッ...ザッ...

耳をすませば、まだ魔闘士の気配を感じることができる。

遺跡の残骸を隠れ蓑にするしかないこの現状。

この世界に来て一番のピンチ、一体どうすればいいのかを彼は考え尽くす。


隊長(どうするッ...どうやってあの怪物を倒す...ッ)


隊長(氷竜、暗躍者、追跡者、捕縛者、復讐者、クラーケン...)


隊長(今まで倒した奴らは総じて銃器の威力に驚いていた...)


隊長(だが、今回の魔闘士は格が違う...銃弾が当たる気がしない...)


隊長(...魔闘士の動き、全く目が追いつかん...それに銃弾を素手でつかみやがる...)


隊長(...どうやら遠ざかったようだな、今がチャンスだ...とりあえずアサルトライフルを拾おう)


隊長が瓦礫から身を出し、アサルトライフルを拾おうとした瞬間。

なぜこの男がここに立っている、足音は完全に遠くに向かったはずなのに。


魔闘士「...やはり、ここにいたか」



304: ◆O.FqorSBYM 2018/12/01(土) 23:26:21.71 ID:651egkh80


隊長「──Jesus...」


魔闘士「残念だったな」


隊長「...遠ざかってると思っていたが」


魔闘士「悪いな...生憎、足は速いのでな」


隊長(ふざけるな...秒速100mとかそんな次元の話になるぞ...ッ!?)


魔闘士「興ざめだ」


隊長「──!」ビクッ


隊長がついに、恐怖心を魔闘士に植え付けられてしまった。

そして隊長は首を捕まれ、身体を持ち上げられてしまう。

その苦しみは、復讐者の時とは比べ物にならない。


魔闘士「フンッ、期待しなければよかったな」


隊長「ガハァッッ...ク、クソォッ...!」グググ


魔闘士「死にぞこないが────」


魔闘士「────」


魔闘士の声が聞こえなくなった。

それは己が死にかけているからであった。

魔闘士の首絞め、彼を仕留められるのはもう時間の問題であった。


隊長(くそ...この世界にはこんな奴らがいるのか...)


隊長「I'm not...ready to die────」


視界が真っ暗になる、どうやら本当に終えてしまっていた。

異世界へと訪れた隊長の冒険はここまで。

彼は魔闘士という男に息の根を止められてしまったのであった。


~~~~



305: ◆O.FqorSBYM 2018/12/01(土) 23:27:32.35 ID:651egkh80


~~~~


???「□□□□、□□□」


???「目を覚ませ」


???「瞳を開けなさい」


──ぱちりっ

謎の声が聞こえる、その指示通りに視界を開くとそこには。

なぜなのか、たった今命を落としたばかりだというのに。

それどころではない、彼は遺跡とは全く別の場所へと佇んでいた。


隊長「...What's」


???「初めまして、異世界の者よ」


隊長「...Who are you?」


???「記憶が混乱しているようだ」


隊長「What are you talking about?」


???「少し、記憶を正してあげよう」ポワン


体長「────ッ!?」ピクッ


(「え、えぇっと...私は少女です...」)


(「私の名前は...魔女よ」)


(「私の名前はそうだな...帽子だ」)


隊長「...あぁ」


(「いたたた...誰か助けてぇ~」)


(「どこまでもついていきましゅ!」)


隊長「思い出した...」


???「君は、この世界でCAPTAINと名乗っていた」


隊長「...そうだ」



306: ◆O.FqorSBYM 2018/12/01(土) 23:28:31.34 ID:651egkh80


???「君の行動は、とても素晴らしい」


隊長「...お前は誰だ?」


???「私は神、いえ...神に最も近い存在と言おうか」


隊長「...GOD?」


???「君は今、魔物に殺されかけている...だがまだ死んでいない」


隊長「...」


???「だから、君の奮闘に免じて...1度だけ機会をあげよう」


隊長「...どういうことだ?」


──ぽわぁっ...

優しい明かりが隊長の身体を包み込む。

それだけではない、なにか別の光も入り込んだような。


???「君に1つだけ、魔法を貸してやろう」


???「...神業を受け取るんだ」


隊長「ま、まってくれ...」


隊長「なぜ俺はこの世界にいるんだ...?」


???「...君に幸あれ」


隊長「頼む...教えてくれ...っ!」


???「□□□、□□□□□□」


~~~~



307: ◆O.FqorSBYM 2018/12/01(土) 23:30:13.36 ID:651egkh80


~~~~


隊長「──ガハッ...!」


魔闘士「...驚いたな、まだ息があったか」


死亡したと思われていた、気がついた時には首絞めから開放されていた。

地面にボロ布のように投げ捨てられたこの身体、だがそれは今までのモノとは違う。

なぜだろうか、隊長のここ数日分に渡る戦闘による疲れがとれているような気がする。


魔闘士「トドメを刺してやる...」ダッ


魔闘士が一瞬で間合いに入ってきた。

先程までの隊長ならここでまた蹴り飛ばされていただろう。


隊長「──Eat thisッッ!!」


魔闘士「────グッ!?!?」


──ドスッッ!!

あまりにも鈍い音が鳴り響いた。

隊長は魔闘士にかなり重そうなボディブローを炸裂させた。


魔闘士「...なッ!?」


隊長「──Oneッッ!!」


──ドスッ...!

透かさず隊長は追撃を始める。

再びのボディーブロー、鈍い音が2発目。


隊長「──Twoッッ!」


魔闘士「────ゲハァッ...!?」


──バキィィッ...!

そして軽めのストレート、それは魔闘士の胸元に決まる。

魔物とて身体の構造は人間、そう踏み込んだ隊長は急所であろう左胸を殴る。

そこにあってほしいのは心臓、彼の思惑は的中し、魔闘士は悶た。


隊長「────HAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!」


──バギィィィィッッッッッッッ!!!!

そして最後に放ったのは、渾身の一撃。

フィニッシュブロー、強烈な拳が魔闘士の顔面にぶち当たる。

先程は余裕の表情で受けていたその顔を、思い切り吹き飛ばす。


魔闘士「──グゥゥゥウウウッ...!?」ドサッ


隊長「...ふぅ」



308: ◆O.FqorSBYM 2018/12/01(土) 23:31:47.88 ID:651egkh80


魔闘士「グッ...人間程度が、調子に乗るなよ」ムクッ


魔闘士「...どうやら先程まで本調子じゃなかったようだな?」


隊長「...」


魔闘士「...面白い」


魔闘士「この魔闘士の業...その眼で確認するがいい────」スッ


──ガシィッッッ!!

気づいたら取っ組み合いをしていた。

お互いの両腕からミシミシと音がなる、とてつもない圧力同士がぶつかりあう。


隊長「────グッ...!」グググ


魔闘士「ほう...これを反応するか...」グググ


隊長「...魔法か?」


魔闘士「残念ながら魔法は得意じゃない...俺はただ、ひたすら早く動いているだけだ」


隊長「...ふざけているな」


魔闘士「悪いが、しゃべる余裕は貴様にないぞ」スッ


隊長「しまっ────」


────ガクンッ!

魔闘士は足をさばいて隊長を転ばせてきた。

取っ組み合いをしている最中だというのに、とても軽やかな足業であった。


隊長「──グッ!?!?」ドサッ


魔闘士「────喰らえッ!」スッ


そして腹部めがけてかかと落としを仕掛けてきた。

これを喰らえば、胴体に深い傷を追うことになるだろう。

なんとか力を振り絞り、横に向けて転がることで回避する。


隊長「──あぶないなッ!」スチャッ


隊長「――――ッ!?」


隊長(な、なんだ...この感覚は...)


──ダンッ ダダンッ!!

回避後はすぐに立膝の状態に、そしてハンドガンを構えた。

その時、妙な感覚が隊長の身体を包み込む、だがそれを気にしている場合ではない。

違和感を覚えながらも彼は発砲する、そして魔闘士はそれを受け止めようとする。

彼の銃弾は再び魔闘士の手のひらに吸い込まれた。



309: ◆O.FqorSBYM 2018/12/01(土) 23:32:34.56 ID:651egkh80


魔闘士「それは効かぬと────」バッ


──□□□...

弾丸を掴み取ったその手の内から、この音が聞こえた。

それは彼に鳥肌を立たせる、なぜ人間がこの代物を得ているのか。

そしてなぜ自分は、こんなにも激痛を味合うハメになったのか。


魔闘士「────グゥゥゥウウウウウウッッ!? これはッ!?」


隊長(なんだがわからんが、チャンスだ!)ダッ


魔闘士「...しまっ────」


隊長「────ハッッ!!」


──グサ□□□...ッッ!!!

隊長は首をめがけた、そして魔闘士に刺すことができた。

魔闘士は反応が遅れた、が腕を盾にすることで首を守った。

しかしそこにも、あの白い音が付着する。


魔闘士「──ッ!? ...これもかッ!?」


隊長「なんだこれは...?」


魔闘士「グッ、これは...光...なぜ...ッ!?」


先程まで通用しなかった隊長の攻撃、今はなぜだか効果的であった、先程とは何が違うのか。

隊長の頭の中で浮かび上がるのは、先程の神業とかいう代物。

あれは現実だったのか夢だったのかはわからない、だが己の身に何かが授けられたのは確かであった。


魔闘士「────1分だ」


隊長「...?」


魔闘士「悪いが、残された時間は1分だ」



310: ◆O.FqorSBYM 2018/12/01(土) 23:33:07.49 ID:651egkh80











「その1分で貴様にもう一度地べたで寝てもらう...」












311: ◆O.FqorSBYM 2018/12/01(土) 23:34:17.72 ID:651egkh80


隊長「――ッ...!?」


その言葉の威圧感、それは脅しではない。

彼はついに本気をみせた、己に危害を産ませるこの男に。


魔闘士「...遅いぞ」シュンッ


隊長「──わかっているッ!」


──バシッ!

気づけば魔闘士は隊長の背後に回っていた。

それに気づいた彼は背面左エルボーを繰り出すが、手のひらで受け止められてしまった。

だがそれだけではない、彼は同時に右手も背面に向けてハンドガンを構えていた。


隊長「──ッ!」スチャ


魔闘士「小細工を...ッ!」スッ


──ダン□□ッ!

ギリギリのところで回避されたが、耳に銃弾のかすり傷を当たることができた。

これは完全に不意打ち、白き音が混じっていなくとも魔闘士に傷つけることができるだろう。


魔闘士「──くッ!?」


隊長「────ハァッッ!!」ドガッ


避ける動作を予測して、隊長は魔闘士に蹴りをいれる。

それは魔闘士の鳩尾に入る、回避行動に気を取られ防御策を取ることができずにいた。


魔闘士「──ゲホッ...!?」


隊長「────ッ!」スチャッ


──ダン□ッ ダン□ッ ダダン□ッ!

軽快な発砲音、それはすべて魔闘士を捉えていた。

鈍い痛みが彼の動きを制限する、銃弾キャッチや回避もすることができない。


魔闘士「──グッ...ッ...!?」


隊長(全弾命中...)


隊長「見えても避けれなければ意味がないぞッ!」


魔闘士「黙れっ...!」ヒュン


──ドゴッォォォッッ!!!!

彼は銃痕の激痛をこらえながらも、隊長の懐に入り込んだ。

そして浴びせるのは信じられない威力の掌打。

防弾チョッキ越しでも感じるその衝撃が、彼の身体を遠くまで吹き飛ばした。


隊長「──ゲハァッ...!?」ドサッ



312: ◆O.FqorSBYM 2018/12/01(土) 23:35:57.99 ID:651egkh80


隊長「ぐッ...」スチャッ


──ダン□ッ ダン□ッ!

吹き飛ばされたその場所は、衝撃の影響で土煙がこみ上げる。

それが隊長の身を隠してくれた、その中から発砲を行う。


魔闘士「...危ないな」スッ


隊長「...今の感じ、避けられたか」


隊長(...腕ほど足は発達してないってことだな)


距離がなければ避けることが出来ない、距離がなくても弾を掴むことができる。

魔闘士の情報が徐々にあけてゆく、それ故に対処方も徐々にわかってゆく。

完全に隊長のペースが戻ってきている。


隊長(なら...)


隊長(────今だ!)ダッ


魔闘士「──そこかっ!」


魔闘士(──刃物ッ!)


土煙から突如飛び出してきた隊長、その右腕にあるナイフを彼は目視してしまった。

どうやら隊長は魔闘士の胸めがけ、右手でナイフを刺そうとしているようだった。

そう認識してしまった、左手に忍ばせたハンドガンを見逃してしまう程に。


隊長(かかった...!)


──ダン□ッ ダン□ッ!

刃物を蹴りで弾き落とそうと身構えていたら、突如身体に激痛が走る。

如何に武の達人だとしても、初めて見るその武器の性能を完全に把握することができない。

この反則地味た攻撃速度、そして隠密性、それを予測することは極めて難しい。


魔闘士「──貴様ぁ...ッ!?」


隊長の思惑通り、蹴りを入れようとした足に全弾命中させる。

それを耐えきれる者などいない、思わず膝をついてしまった。

その圧倒的な隙を逃す訳にはいかない。


隊長「────AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAッッ!!」


──バキィッッッッッ!!!!!!!

強烈なアッパー、それが魔闘士の身体を吹き飛ばすのは簡単だった。

身体が宙に浮いたと思えば、そのまま倒れ込んでしまう。

このまま犯人確保をすることは難しくないだろう。


隊長「──ッ!」ササッ


隊長(よし、マウントポディションを取ったぞ────)



313: ◆O.FqorSBYM 2018/12/01(土) 23:36:38.66 ID:651egkh80


魔闘士「──どこを見ている...」


倒れ込んだ魔闘士にのしかかり、眉間にハンドガンを構えようとした。

マウントポディション、それが成功していたのなら勝利は目の前であった。

しかしこの男は素早すぎた、気づけば横に手刀の構えをして立ち尽くしていた。


魔闘士「動くな」スッ


隊長「...早すぎるぞ」ピタッ


魔闘士「...詰みだな」


隊長「...」


隊長(この手刀が、本物の刀のように俺の首をはねることは簡単だろうな...)


魔闘士「...死ね」


隊長「──ッ!」


2度目の敗北、今度は完全な調子だと言うのにも関わらず。

殺される、その現実が彼の目を泳よがせる。

その目線の先には腕時計、針がある事実を知らせてくれていた。


魔闘士「...と、いいたいところだが」


魔闘士「時間が過ぎた...また、殺しに来てやろう」


隊長「...」


魔闘士「...名は?」


隊長「...Captainだ」


魔闘士「...そうか、覚えておこう」


魔闘士「──さらばだ...」


魔闘士は影を残すほど素早く移動し、どこかへ消えてしまった。

その時、隊長の身体にも異変が起こる。

常時微かに聞こえていた、白き音が止む。


隊長「...帽子たちと合流せねば」


~~~~



314: ◆O.FqorSBYM 2018/12/01(土) 23:37:41.29 ID:651egkh80


~~~~


魔剣士「...へっ、口ほどにもねェな」


帽子「ぐっ...そぉ...っ!」


魔剣士「これじゃ、その魔剣も可哀想だぜ」


帽子は扱かれていた、魔剣士による剣術の授業に。

だがそれは暴力の限りであった、魔物である彼に追いつけるわけがない。

息が上がる、身体は痛い、もう彼は動けない。


帽子「私は...平和のために...闘わねばならない...っ!」


魔剣士「...頭のなかお花畑かよ」


魔剣士「それができれば、魔王もやってらァ」


帽子「うるさいッ...はぁッ...はぁッ...魔王の政策は平和を求める魔物にも辛いだろうに...!」


魔剣士「...まァ、俺様には関係ねェな、魔王直属の部下でもなんでもねェし」


帽子「ゲホゲホッ...じゃあ君は...なんでここにいるんだい...?」


魔剣士「...さァな、探しものついでに魔闘士に連れられてな」


帽子「はぁッ...くっ...はぁッ...」


魔剣士「...たく、魔王の気が違ってから禄な事になってねェな」


帽子「ッ...?」


魔剣士「...初めて会った時の魔王は、良い奴だったんだがなァ」


帽子「どういう...ことだ...?」


魔剣士「さぁな、クソ爺の痴呆でも始まったんじゃねェの?」


魔剣士「...お喋りはもういい」


帽子「くッ...!」


魔剣士「...その魔剣、寄越せばお前らを見逃してやるよ」


魔剣士「まァ、魔闘士を相手にしてる奴の命は、俺様には保証できねェけどな」


帽子「...ふざけるな」


魔剣士「...あっそ、じゃあ死体漁りでもしてその魔剣を助けてやるか...」



315: ◆O.FqorSBYM 2018/12/01(土) 23:38:11.87 ID:651egkh80











「じゃあ...死ねッッ!!!!」












316: ◆O.FqorSBYM 2018/12/01(土) 23:39:09.91 ID:651egkh80


帽子「私はッ...民のために...薄幸の魔物のためにッ...」


────□□□□ッッ...!

光が帽子を包み込む、その発光源は彼の右腕。

ユニコーンの魔剣だ、それは身体だけではなく、言語も白くする。


帽子「□...まだ...□□ッ...死□わけには...」


魔剣士(──この光...まさかッ!?)


魔剣士「へェ...良い線いってるなァ...その魔剣、差詰めユニコーンの代物だろ?」


魔剣士「──みせて...みろやああああアァァァァァァァァッッッッ!!!!!!」


帽子「────いかないんだあああ□□□□□□□□□□□□□□□ッッッッッ!!!!!!」


―――――――ッッッ!!

音にならない鍔迫り合い。

衝撃と衝撃がぶつかり合う音、その余波で賢者の塔の壁が悲鳴を上げている。


帽子「□□□□□□ッッッッ!!!!!!」


魔剣士「へェ...お前キテるぜェッッ!!!!」


帽子「□□□ッッ!!!!」


魔剣士「小細工なしだァ!!! お前を殺してやるよォォォッッッッ!!!!!」


帽子「□□ッッッ!!!!!」


―――ッッ!!!! ッッッッッ!!!! ――ッッ!!!

激しい轟音、それは意識を失っていた者を起こすのには申し分なかった。

この世のものとは思えない光景に、女賢者は戸惑いを隠せなかった。


女賢者「な、なにが起こってるんですか...」


女賢者(目は覚めましたけど...と、とても参加できない...激しすぎる...)



317: ◆O.FqorSBYM 2018/12/01(土) 23:39:54.51 ID:651egkh80


魔剣士「オラオラオラオラァッッ!!! どうしたァッッ!?」


帽子「□□□□□□□□□□□ッッッッッ!!!!」


女賢者「た、建物がボロボロに...」


女賢者(剣気だけで...魔法のマの字もないのに、この規模の戦いができるのですか...!?)


帽子「□□ッッッ!!!!」


魔剣士「はっはァッ! わりィけど、もう時間がねぇみたいだァッ!」


帽子「...□□ッッ!!!」


魔剣士「これが最後の一撃だァ...てめぇも繰り出してみろォ! できんだろッ!!!」


時間がない、それは本来の意味ではない。

魔剣士は帽子の限界を予期していた、あの戦い方じゃ持たないことを。

だからこそ誘った、本気が出せるうちに全力をぶつけてもらう為に。


女賢者「──まずい! "防御魔法"っっ!!!」


帽子「□□□□□ッッッッッ!!!!!!」


魔剣士「喰らいな..."竜"の一撃をなァッッッ!!!!」


―――――――――――――――――ッッッッッ!!!!!!!!!!!!!

お互いの魔剣から発せられるのは、剣の気。

魔法ではない何かが、飛ぶ斬撃が耳を貫く重音を鳴り響かせた。


~~~~



318: ◆O.FqorSBYM 2018/12/01(土) 23:40:50.95 ID:651egkh80


~~~~


隊長「...塔の1階部分が消し飛んでいる...ッ!?」


隊長(帽子達は大丈夫かッッ!?)ダッ


隊長「──帽子ッッ!! 女賢者ッッ!!!」


消し飛ばされた賢者の塔の一部。

激戦が伺える、彼らの安否を確認する為に彼は走り出した。

するとそこにたのは、3人であった。


女賢者「──きゃぷてんさんっ!?」


隊長「──お前はッ...!?」スチャッ


魔剣士「...あァ? 魔闘士はどうした?」


隊長「...撃退してやった」


魔剣士「...へェ...やるじゃねぇか」


隊長「...帽子から離れろ、今すぐにだ」


帽子「ぐっ...あっ...」


魔剣士「へーへー、わかったよ...これ以上なにもしねェッて」


帽子「ま...て...」


魔剣士「...はんッ、"馬"が"竜"に勝てると思うなよ」


魔剣士「じゃあな────」


魔剣士は颯爽と、どこかへ消えてしまった。

それを追うものはいない、今必要なのは応急処置。

倒れ込んだ帽子に治癒魔法を施す彼女が情報を共有してきた。



319: ◆O.FqorSBYM 2018/12/01(土) 23:41:44.87 ID:651egkh80


女賢者「な、何者だったんでしょうか...魔王軍でもなさそうですし」


隊長「さぁな...それより帽子は大丈夫か」


帽子「あぁ...だが、もう何もやる気はおきないよ...立てやしない」


女賢者「わ、私も...」ヘタッ


隊長「...ほら、おぶされ」


女賢者「へっ、きゃぷてんさんは大丈夫なんですか?」


隊長「お前らよりは大丈夫だ、早くしろ」


女賢者「は、はい...」


隊長「よっと...おい帽子、手をとれ」


帽子「あぁ...ありがとう」


女賢者「私と武器をおぶさり、帽子さんの肩をもつなんて...どんな体力してるんですか?」


隊長「さぁな、俺ももう限界が近い、さっさと布団に入って寝よう」


帽子「と、いうか...ホコリ立ってない2階ならどこでも寝れそうだよ...」


女賢者「私も...恥ずかしながら」


隊長「そうか...じゃあ、そこで我慢してくれ...」バタン


女賢者「──びっくりした...でも...私も...」スヤァ


帽子「正直...どうでもいい...寝たい...おやすみ...」スヤァ


やはり、彼も限界であった。

2階にたどり着くやいなや、倒れるようにゆっくりと意識を失った。

そして彼らもそれに続く、隊長たちの激動の1週間は終わった。


~~~~



320: ◆O.FqorSBYM 2018/12/01(土) 23:42:19.46 ID:651egkh80


~~~~


大賢者「なぁ~に倒れておるんじゃ...」


隊長「...ん?」パチ


大賢者「おはよう」


隊長「...大賢者か」


大賢者「女賢者も、帽子も死んでるように寝ているのう」


隊長「いろいろあったからな...」


大賢者「ふむ、まぁその話はあとで聞こう」


大賢者「修行はおわったぞ、丁度1週間でな」


隊長(...海底王国をでたときは5日、つまり2日間ここで寝てたわけか)


隊長(...記憶が正しければ、この世界にきてから2週間目か)


隊長「...魔女たちは?」


大賢者「お主らと同じで、どこかで死んだように寝てるわい」


隊長「...とりあえず、一旦集まるか」


大賢者「そうじゃのう...ほれ、女賢者」


女賢者「うぅん...ふぇ...ん?」


女賢者「...だ、大賢者様!」


大賢者「ふむ、大分打ち解けたようじゃのう」


女賢者「す、すみません! 顔洗ってきます!」ピュー


大賢者「...歳相応の女賢者を見るのは初めてじゃ、いいことじゃのう」


隊長「いくつなんだ?」


大賢者「ふむ、引き取って8年...当時は13歳じゃったかから21歳かのう」


隊長「...若いな」


大賢者「...手を出すなよ?」


隊長「...ボケが始まったか?」


大賢者「ほっほっほっ! 帽子を起こしてやるのじゃ」



321: ◆O.FqorSBYM 2018/12/01(土) 23:43:13.97 ID:651egkh80


隊長「...帽子、起きろ」


帽子「────」


大賢者「...死んでいるんじゃないかのう」


隊長「...帽子、スライムたちに会えるぞ」


帽子「────ッ」ガバッ


帽子「おはよう」


大賢者「うむ、おはよう」


隊長(...現金なやつ)


隊長「...あーそうだ、マガジンに弾を込めないと」


~~~~


~~~~


女賢者「おはようございます」


帽子「おはよう」


隊長「...まる2日は寝てたぞ」


女賢者「...どおりでお腹の虫が」


帽子「どうしようもない程、お腹減ったね」


女賢者「私は食事の準備をしてきます」


女賢者「...この1週間の事はそこで語りましょう」


隊長「...だな、気になることは山ほどある」


女賢者「...そろそろですかね、ではお二人で水入らずで」スタスタ


帽子「...変に気を使ってくれたね」


隊長「まだ21歳らしいぞ、若いのにしっかりとしている」


帽子「私の1つ下か」


隊長(...こいつもこいつで若いな)


―――ガチャッ!

すると突然、扉は開けられた。

わずか一週間だというのにもかかわらず、懐かしく思えてしまう。

心なしか顔つきが変わった、それでいていつもどおりの彼女たちがそこにいた。



322: ◆O.FqorSBYM 2018/12/01(土) 23:43:59.88 ID:651egkh80


魔女「はぁ~...疲れた」


スライム「まだねむいよ...」


ウルフ「ふぁ~あ...! この匂いは...ご主人っ!」


隊長「おう、久しぶりだな」


ウルフ「♪」スリスリ


スライム「...帽子さんっ!」


帽子「やぁ、見違えたね」


スライム「あなたも? なにか顔つきが変わった?」


帽子「...いや、決心がついただけだよ」


スライム「??」


魔女「...きゃぷてん、久しぶりね」


隊長「...あぁ、どうだったんだ?」


魔女「ふふっ、それは実戦までお楽しみに!」


隊長「...頼りにしてる」


帽子「さて、女賢者さんが食事の準備をしてくれてるし、行こうか」


ウルフ「ご飯っ!」


魔女「...やっとまともなモノを食べれるのね」


隊長「...何を食べてたんだ?」


魔女「...魔法薬を固形化したモノ」


隊長「...ものすごくまずそうだな」


魔女「ものすごくまずいのよ...」


~~~~



323: ◆O.FqorSBYM 2018/12/01(土) 23:44:59.62 ID:651egkh80


~~~~


大賢者「ほっほっほっ、ではまずこちらから話そう」


大賢者「皆は食べながら聞くといい」


食卓を大人数で囲む、皆もの凄い勢いで食らう。

各々空腹の事情があった、食べることに集中せざる得ない。

そんな彼らに大賢者は図らう、彼1人だけが会話を続けてく。


大賢者「まず、ウルフについてじゃ」


隊長「...」モグモグ


大賢者「ウルフには、魔力を体術に活かすモノを教えた」


帽子「と、いうと?」モグモグ


大賢者「魔力で身体を強化したのだ、格闘術はずば抜けているぞ」


隊長「ほう」モグ


ウルフ「わふっ」モグモグ


大賢者「スライムには、補助魔法とスライム固有の能力を強化した」


帽子「ふむ..."水化"とか言うやつかい?」モグ


大賢者「そうじゃ、今のスライムに炎属性や水属性は無意味じゃのう」


大賢者「水化、それは身体を水と同化させることで様々な恩恵を受けれるのじゃ」


スライム「えっへん!」ゴクゴク


大賢者「じゃが、スライム族は自身の属性関係なく風属性に弱いのじゃ、それを気をつけろい」


大賢者「まぁ、恐らく一番成長したのはスライムじゃな、楽しみにしておれ」


スライム「...えっ!? そうなのっ!?」


魔女「う~ん...私もそう思うなぁ」モグモグ


帽子「すごいな、スライム...」モグ



324: ◆O.FqorSBYM 2018/12/01(土) 23:45:54.02 ID:651egkh80


大賢者「最後に魔女、彼女は本来の修行に近い強化をした」


大賢者「彼女の属性である、風属性と補助魔法を強化...この3人で一番魔法が使える者は魔女になったのう」


魔女「ふふん!」モグモグ


大賢者「それに、錬金術も習得したから...お主のその武器も思う存分に使えるじゃろう」


隊長「なんだと...それは助かる」モグ


大賢者「特に雷魔法に注目じゃな、期待しておれ」


魔女「だってさ!」モグ


隊長「あぁ、頼りにしている」モグモグ


彼女らの修行の成果、それはかなりのモノであった。

場の雰囲気はかなり明るいもの、だがどうしてもそれを変えなければならない。

食事を一旦やめ、帽子は真剣な声色で話を振った。


帽子「...では、こちらで起きたことを話そう」


女賢者「...そうですね」


大賢者「...何が起きたんじゃ?」


帽子は、この1週間に起きたすべて語った。

それはあまりにも、沢山の出来事であった。


大賢者「...なるほどな」


魔女「そんなことがあったのね...」


スライム「...」


ウルフ「くぅーん...」



325: ◆O.FqorSBYM 2018/12/01(土) 23:46:48.97 ID:651egkh80


大賢者「...分かる範囲で順に答えよう」


大賢者「まずその剣はその通り、"魔剣"じゃの」


帽子「魔剣かぁ...」


大賢者「残念じゃが、魔剣については強力な剣ということしかわからんのう...」


帽子「...なるほど」


大賢者「...では次に、復讐者が使った"属性付与"という魔法...単純なおかつ、強力な魔法じゃのう」


帽子「どういう魔法なんだい?」


大賢者「簡単にいえば、武器や物に属性をつけることじゃ」


大賢者「剣に炎の属性付与をすれば...その剣に炎が帯びる、そういうことじゃ」


魔女「私も、覚えたわよそれ...とても覚えるのに時間がかかったわ...」


女賢者「え...凄いですね、私には無理だったのに...尊敬します」モグモグモグモグ


魔女「ありがと、きっとあんたもそのうち習得できるわよ」


大賢者「まぁ、魔法を維持させればそれに近いこともできるが、それだと魔力の消費量が凄まじくなる」


大賢者「一方で属性付与なら、一度かけてしまえば数時間はそのままじゃ」


大賢者「魔法で一番魔力を消費させられるのは維持することなんじゃ、だからこそ属性付与の手軽さは強力なのじゃ」


帽子「...なるほど」


大賢者「そして...あくまで仮説じゃが、その魔剣には"光属性"の魔力を感じる」


女賢者「光属性...通りで感じたこともない魔力なわけです」


大賢者「海底王国や、その魔剣士のときに帯びたのは光属性のなにかじゃ」


帽子「...そんな大層な武器なのかこれ」


大賢者「うむ、大事にするがよい...そうすれば自身も強くなる」


スライム「...難しくなってきた」



326: ◆O.FqorSBYM 2018/12/01(土) 23:48:17.53 ID:651egkh80


大賢者「次で最後じゃ..."魔闘士"と"魔剣士"については宛がある」


帽子「...いったい何者なんだい?」


大賢者「あれは魔王軍ではなく、魔王の息子"魔王子"の付き人達じゃ」


帽子「魔王子...?」


大賢者「じゃが、魔王子は数年前に行方不明になったと噂されておる」


帽子「...もしかして彼らはその魔王子を探しているのか」


大賢者「うむ...そして、もしかしたら魔王子は交友的かもしれんぞ」


帽子「え、なんだって...?」


大賢者「魔王子が失踪した直前に...父の政策が気に入らず、歯向かったと噂もたっている」


大賢者「可能性の話じゃが、魔王子と利害の一致ということで味方にできるかもしれん」


帽子「...魔王の息子となれば、色々と心強いな」


大賢者「...魔王城に向かいつつ、魔王子も探してみればどうじゃ?」


大賢者「そしたら、魔王子に平和的交渉を...とにかく可能性が増えるってことじゃな」


帽子「...そうだね! 探したほうが良さそうだ!」


隊長「それなら、あいつらより先に魔王子を見つけなければな」


帽子「そうだね...魔王子がどんな考えをしているのか置いておいて、彼らがいては交渉する暇もない」


隊長「...どうやら、次の目的が決まったようだな」


ウルフ「がんばるっ!」


スライム「魔王の息子...怖かったらどうしよう...」


魔女「どっちにしろついていくだけよ」


帽子「準備ができ次第、出発だ!」


大賢者「ふむ、では出発時にまた尋ねれおくれ」


女賢者(...ごちそうさまでした)


魔女(どうでもいいけど、この子すごい食べてたわね...)


隊長「魔女、これも複製できるか?」


魔女「できるけど...ってこれは?」


隊長「これは手榴弾だ、爆弾だな」


~~~~



327: ◆O.FqorSBYM 2018/12/01(土) 23:49:09.98 ID:651egkh80


~~~~


大賢者「それにしても、海底の戦争を止めるなんてな」


帽子「あれはさすがに骨が折れたよ」


スライム「なんかすごいことしてたんだね」


隊長「...準備できたぞ」


魔女「おまたせ」


魔女に手榴弾を複製してもらった。

だがその間に帽子は1つ案を持ち出してきた。

それは冒険のしおり、これから先の目的地についてだ。


帽子「キャプテン」


隊長「どうした」


帽子「一度、塀の都に寄ってもいいかい?」


帽子「民になにもいわずに出て行って、心配をかけてると思うんだ」


帽子「...一度、旅を宣言してこないとって思ってね」


隊長「...たしかに、そうとも言えるな」


魔女「それなら、そこで旅の支度をするっていうのはどう?」


帽子「それはいいね、そうしよう」


隊長「それじゃ、きた道を戻るとするか...」


大賢者「まてまて、そこで出番のようじゃな」


女賢者「転地魔法の出番ですね」


隊長(例の魔法か...)


隊長「...では、頼む」


帽子「...大賢者様、本当にありがとうございました」


大賢者「いいんじゃ、いいんじゃ」


大賢者「皆がいなければ、死んでいたし...女賢者も成長しなかったじゃろう」


女賢者「...帽子さん、きゃぷてんさん...どうかご健闘を」



328: ◆O.FqorSBYM 2018/12/01(土) 23:49:52.95 ID:651egkh80


大賢者「...復讐者の言葉が本当なら、まだ時間があるようじゃな」


大賢者「魔界に突入するための準備をしっかりするんじゃぞ...」


帽子「えぇ、問題は魔界の戦闘がどれほどのものか...」


大賢者「大丈夫じゃ、魔剣士や魔闘士より強い者はそういないはずじゃ...」


大賢者「それに打ち勝ったのなら、きっと魔界でも勝てる...」


大賢者「...話が長くなってしまった、では気をつけるのじゃぞ」


隊長「あぁ...また会おう」


帽子「さらば...」


魔女「...この恩は忘れないわ」


スライム「がんばってくるよ!」


ウルフ「バイバイ!!」


大賢者「..."転地魔法"」


隊長たちが光にまみれる。

光が消えると隊長たちも消えていた。

魔法が彼らを遠くまで運んでくれた。


大賢者「...頼んだぞ」


女賢者「ご達者で...」


大賢者「ところで、1階を修理せねばじゃのう...」


女賢者「げぇ...」


~~~~



329: ◆O.FqorSBYM 2018/12/01(土) 23:50:35.01 ID:651egkh80


~~~~


隊長「ここは...」


気がつくと、彼らは草原に足を踏み入れていた。

見覚えがあるここは、草原地帯。

大賢者の魔法が、確かに彼らを運んでくれた。


帽子「すぐそこに塀の都があるね」


スライム「わたしたちはどうしよう...」


隊長「...お前たちはここで待機しててくれ」


帽子「悪いね...ここは魔物への偏見があるんだ」


ウルフ「わんっ!」


魔女「はいはい、早く戻ってきてよね」


隊長「あぁ...なにか欲しい物はあるか?」


ウルフ「おかしっ!」


スライム「お水っ!」


魔女「うーん...あっ、錬金術に火種と紙がいるの」


隊長「そうなのか」


魔女「一応今もある程度あるけど...予備も買っておいて!」


帽子「うん、わかったよ」


隊長「...ではいってくる」


~~~~



330: ◆O.FqorSBYM 2018/12/01(土) 23:51:28.09 ID:651egkh80


~~~~


門番1「止まれ」


門番2「...この前の奴じゃないか」


相変わらず、門番の2人は隊長を呼び止める。

だがそこにはもう1人いる、その彼は帽子を脱いだのであった。


隊長「...」


帽子「いや、私だ...通してくれないか?」


門番1「──お、王子様!?」


門番2「いままでどちらに...まさか、そいつに連れさらわれていたのですか!?」


帽子「違うよ、彼は私を護衛してくれていたのさ」


門番2「し、失礼いたしました...」


帽子「いや、勝手にいなくなった私に非がある...」


帽子「悪いが、通らせてもらうよ」


門番1「はっ! どうぞお通りください!」


隊長「...本当に王子だな」


帽子「いや、今は帽子だよ」


~~~~



331: ◆O.FqorSBYM 2018/12/01(土) 23:52:41.84 ID:651egkh80


~~~~

帽子「──な、なんだこれは...!?」


人混みは前回きた時と同じだが、明らかに様子がおかしい。

街には、魔物に対しての掲示物が散乱されていた。


隊長「こんなに魔物は恨まれているのか...?」


帽子「...魔物死すべし、騎士団が魔物駆除作戦決行、根絶やしにしろ...なんて物騒なことを書いているんだ」


隊長(何だこの街...なにか違和感...雰囲気を感じる...)


隊長(そうだ...これは神と名乗る者の────)ピクッ


隊長「──帽子をかぶれ!」


帽子「──ッ!」サッ


町民1「貴様ら、よそ者だな...これを読めッッ!!」グイッ


帽子「これは...聖書?」


この世界にも宗教は存在する。

しかしこの宗教の教え、昔から魔物を悪く扱うモノであった。

それがこの都の魔物嫌いを助長させてしまったのか。


隊長「まさか...これを読んでか...?」


帽子「い、いや...聖書自体は昔から読まれていたさ...この都にもある程度は浸透していた」


帽子「確かに、魔物を悪く書かれていたけど...ここまで煽られるようなはずでは...」


帽子「これではまるで...」ピクッ


そこで、ある張り紙が目に入る。

その内容はこの都の王の謁見を伝えるものであった。

なぜ今になって昔から読まれていた聖書に煽られてしまったのか、答えはこの国の者に聞くしかない。


帽子「...」


隊長「いくぞ...」


帽子「あ、あぁ!」


~~~~



332: ◆O.FqorSBYM 2018/12/01(土) 23:53:50.96 ID:651egkh80


~~~~


帽子「間に合った...」


隊長「あぁ...どうなっているんだ...?」


広間にたどり着いた、そこは人だかりでとても進む事はできない。

そして中心の櫓に存在するのは当然彼の父であった。

これを王と呼ばずになんと呼ぶのか、彼はついに発言を行う。


王「妻は...私の優しい妻は...庭にケガをしている魔物を見つけて...癒してあげていた...」


王「当時の私は魔物に嫌悪感をもっていなかった...とても微笑ましいとおもっていた...」


王「なのに...魔物は恩を仇で返した...!」


王「私の妻は...憎きことに、魔物に殺された...」


王「...赦されることではいッ!!」


町民1「そうだそうだ!」


町民2「魔物を根絶やしにしろッッッ!!」


町民3「殺せッッッッ!!! 魔物を殺せッッッ!!!!」


王の言葉に煽られて、町民たちは興奮してゆく。

父の言っていることは事実ではないかもしれない、帽子はそれに怒りを感じ始めていた。

なぜ決めつける、謀殺したのは魔物ではないかもしれないというのに。


帽子「ど、どうなってるんだ...ッ!?」


隊長「落ち着け...」


王「...そして、私の最愛の息子...」


王「それも行方不明に...きっと魔物の仕業であろう...」


町民4「なんだって!?」


町民5「やっぱり、魔物は信じられん...」


帽子「待て、私はここに────」ダッ


隊長「──ッ!」ガバッ


あらぬ発言に、帽子が声を上げようとした。

それを隊長が抑える、ここで動いてはいけない。


帽子「ど、どうして止めるんだッ!?」


隊長「今注目をされたら、何が起こるかわからん...ともかく抑えろ...」



333: ◆O.FqorSBYM 2018/12/01(土) 23:54:42.13 ID:651egkh80


王「そして私は...神から啓示を頂いた...魔物を根絶やしにしろと...」


王「私は決断した...城の兵士たちで騎士団を作成し、魔物を駆逐することを...」


王「彼らたちなら草原地帯一辺を駆逐してくれているだろう...その神の力を得た装備を持つ彼らなら」


帽子「...ッ!」


隊長「...」


隊長(まるで悪質なCult...読み手の曲解だ)


帽子「く、狂っている...こんなもの...まるで神の狂信者だ...」


隊長「...」


さすがの隊長も、冷静いられなくなりそうだった。

しかし、王の一言でふたりとも青ざめてしまう。

それはなぜなのか、騎士団と呼ばれる者たちが影響していた。


王「──そして今日! 騎士団が帰ってくる!」


町民6「おおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


町民7「祭だ! 祭りを開け!!!」


町民8「穢れた魔物が少しでもいなくなったのね!」


帽子「キャ、キャプテン...?」


隊長「ッ...!?」


帽子の顔が真っ青になる、隊長も硬直してしまう。

騎士団は草原地帯の魔物を駆逐した、ならば彼らはどこにいるのか。

彼らはどこからこの都へ帰還するのか、それは魔女らがいる草原地帯である。


帽子「──も、戻るぞ!!!」


隊長「──あ、あぁ!」


彼らはきた道を戻ろうとする、だが時はすでに遅かった。

後ろを振り返れば、そこには甲冑を着た者たちが行進をしていた。

そして、先頭のリーダーと思わしき人物が王に向けて発言する。


王「おぉ! 騎士団よ、よくぞ戻ってきた」


騎士団長「はっ、募る話はありますがまずはこちらを御覧ください...」


隊長「──なっ...」


帽子「あああああ...」



334: ◆O.FqorSBYM 2018/12/01(土) 23:57:13.73 ID:651egkh80


騎士団長「今日、ここに帰還する際に...愚かにも都付近に居座っていた魔物を捕らえました」


指示通りに動いてる騎士団の中から、囚われている者が3名。

その顔は知りたくないほど知っていた、似合わない鎖でつながった首輪をしていた。

一体なぜ、賢者の修行を終えた彼女たちがこうも簡単に囚われているのか。


町民9「お、おい...魔物を連れてきて大丈夫なのか...?」


騎士団長「ご安心を...神のご加護を頂いている...魔物など怖くはない」グイッ


スライム「いたいっ...」


魔女「放しなさいよ!」


ウルフ「がるるるるるる...」


魔女、スライム、ウルフは囚われの身に。

首輪を繋がれそれを引っ張られているその姿など見たくもなかった。

なぜ彼女たちは魔法を使わないのか、なぜか光り輝いている槍を突きつけられているからなのか。


帽子「──キャプテン! はやくなんとかしなければッッッ!!」


騎士団1「黙ってこっちにこい!!」グイッ


魔女「きゃっ────」


──ドサぁっ...

乙女の悲痛な叫び、婦女暴行が彼の逆鱗に触れる。

だがまだ彼は動けない、その現実味のない光景が足を縛る。


隊長「は...?」


帽子「──キャプテンッッッ!!!」


ウルフ「──はなせっっ!! はなせって言ってるだろおおおおぉぉっっ!!」


彼よりも早く動いたのは、同じく囚われている狼。

魔女が虐げられたことをきっかけに、ウルフの感情が爆発する。

だが抵抗虚しい、首輪が彼女を犬にしてしまう。


騎士団2「うるさい犬だ...」グイッ


ウルフ「ひっ────」


帽子「──キャプテンッッッ! おいッッ!」


──バキィッ!

ウルフのお腹はそんな音をたて殴られた、隊長のモノに比べれば生ぬるすぎるそのパンチ。

それが彼女の目元に涙を溢れさせる、その光景が嫌という程視認できてしまった。


ウルフ「ぁ...ぅ...」



335: ◆O.FqorSBYM 2018/12/01(土) 23:58:14.91 ID:651egkh80











「た...たすけて...ごしゅじん...」












336: ◆O.FqorSBYM 2018/12/01(土) 23:59:44.03 ID:651egkh80


その声は誰にも回りにいるギャラリーたちには聞こえなかっただろう。

だが消えゆくような声は、隊長にはしっかりと聞こえていた。

感情が爆発する、ようやく彼も硬直の仮面を剥ぎ取ることができた。


隊長「────ッ」


隊長「...ウルフゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥウウウウウウウウウウウウウウウッッッッッ!!!!!」


声を荒げながら野次馬を押しのけて、見世物と化している場所に特攻する。

街人たちがざわめく、そしてその場から離れようとして視界が晴れてゆく。


町民10「な、なんだ!?」


町民11「きゃぁあああっ」


魔女「...キャプテンっ!?」


スライム「帽子さんも...っ」


ウルフ「ご...ごしゅじん...」


騎士団長「...魔物の肩を持つ者か? 捕まえろ」


隊長の目の前に数十人の騎士団が現れた。

だがそれが何だというのか、彼は隊長である。

これまで様々な障害を押しのけてきた、あまつさえは人殺しのプロでもある。


隊長「────帽子ッ!!!」


帽子「わかってるッッ!!!」


隊長「──いけッッ!!」


帽子「あぁッ!!」ダッ


──ガキィィィイッィィンッッッ!!!

隊長は甲冑越しにストレートを決め込む。

拳に鈍い痛みが走るが、今はそれどころではなかった。


騎士団1「うわあああぁっっ!?」


騎士団2「なんで馬鹿力だ...こいつも魔物か!?」


騎士団3「お前ら、剣を抜け!!」


隊長が一人で騎士団を陽動し、帽子を魔女たちを助けにいった。

人間業とは思えないその暴れっぷりに騎士団は慌てふためく。



337: ◆O.FqorSBYM 2018/12/02(日) 00:00:58.11 ID:t/n958LI0


騎士団長「王よ、こちらに避難を...」


王「あ、あぁ...」


騎士団長は帽子を察知し、王を避難させる。

その間に帽子が彼女たちに接触した。


帽子「──大丈夫かッ!?」


スライム「帽子さんっ...ごめんなさい...」


帽子「話は後だッ!」


魔女「首輪を外して! まともに動けないわっ!」


ウルフ「そ...そいつが...っ!」


騎士団4「...鍵は渡さんぞ!!」


帽子「クソッッッッ!!!!!」スッ


──キィンッ! カチャッ!

騎士団と帽子の剣劇が始まる、だがその優劣は明らかだった。

この程度の騎士なら簡単に勝てるだろう、そのはずだった。


帽子「────逃げるなッッ!!」


騎士団4「時間稼ぎをすれば、お前の仲間などすぐに...」


帽子(このままじゃ時間がッッッ...!!)


時間を稼がれてしまえば、状況は不利になる。

光を放つ槍がコチラに向いている、そして徐々に距離を詰めてきている。

槍兵がこの剣劇に参加されては、どう考えても帽子が負けてしまう。


隊長「──帽子ッッ!!」


帽子「────ッ!?」


隊長「待ってろッ...!」


──ガッッッ!

騎士の剣をアサルトライフルで防御する。

彼のその眼差しは、すでに騎士団に向けていなかった。


騎士団1「──オラァッッ!!!」ドカッ


──ガチャンッ...!

だがよそ見は禁物、いくら帽子の様子が気になるからといえ。

騎士団の1人が彼のアサルトライフルを蹴飛ばした。


騎士団1「死ね!!!!!!」



338: ◆O.FqorSBYM 2018/12/02(日) 00:02:12.27 ID:t/n958LI0


隊長「──ッ!」スチャ


─ダンッ!

彼にはもう1つ武器がある、むしろこちらのほうが恐ろしい。

手のひらサイズのその武器、その視認性の悪さと威力が相まる。

騎士団の持つ剣がハンドガンの射撃により弾かれる。


騎士団1「ぐっ...剣が吹っ飛んだだと...」


隊長「──どけッッ!」ドカッ


騎士団1「うああっっ!?」


騎士団2「なんて力だッ!?」


隊長は騎士たちに捨て身のタックルを浴びせる。

すると見世物広場と化している方向への視界が開く。

そのまま彼は僅かな隙間へ飛び込んだ、そして構えたのは。


隊長「────ッ!」スチャ


──ダンッ ダンッ ダンッ!

帽子にはその光景がスローモーションで見えていた。

ありえない、あの小さな武器から発射される鉄のようなモノがこちらに。

その軌道にはブレがない、とてつもない精度を誇っていた。


帽子「なッ...!?」


騎士団4「──うわっっ!?!?」


──チャリンっ カラカラカラ...

本当に僅かな隙間からあの音速で鉄を飛ばす武器を構えてた。

1秒も経っていない、その時間で照準を合わせていた。

それは奴の篭手を捉えていた、篭手ごと弾き飛ばされた鍵が帽子の足元に転がる。


帽子「──みんなッ!」ガチャガチャ


ウルフ「げほっげほっ...」


魔女「いたた...」


スライム「うぅ...ありがとう」


帽子は一番ぐったりしているウルフを背負う。

槍兵は愚か、騎士団の多数は状況を悪く思ったのか。

少し距離を置き始めていた、逃げるなら今しかない。



339: ◆O.FqorSBYM 2018/12/02(日) 00:02:52.83 ID:t/n958LI0


帽子「...逃げるぞッ!」


スライム「う、うん...っ!」


魔女「──わかったわっ!」


2人ともすぐに走りだそうとした。

その時であった、肝心の人物が合流していない。

飛び込みからの射撃を行えば、その身体は無防備になる故に。


騎士団5「いいかげんにしろ!!!! この化け物め!!!!」ガシッ


隊長「くッ...!?」


騎士団6「全員でのしかかれ!」


魔女「──きゃぷてんがっ!!」


帽子「────そんなッ!?」


隊長は完全に拘束された。

帽子たちは立ち止まり、彼を助けようとする。

すると彼は吠える、その自己犠牲が帽子を惑わす。


隊長「俺に構うなッッッッ!!!!!!!!!!!」


騎士団7「そいつらも逃がすな!!!!!」


騎士団8「処刑しろッ...!!」


帽子「──くッ...行くぞッッッ!!」


魔女「待ってよっ!!! あいつが死んでもいいのっ!?」


騎士団長「逃しはせんぞ...」


気づくと進路には騎士団長が立ちふさがっていた。

時間をかけている暇はない、逃げるか、立ち止まるかの2つ。

その2つの選択肢が帽子を悩まさせる。


帽子「くッ...」


魔女「帽子っ! どうすればいいのっ!?」


隊長「──いけえええええええええッッッッ!!」


騎士団長「貴様ら...覚悟しろ」


スライム「帽子さんっっ!!!」


帽子が選択を迫られ軽く混乱する中、耳元で声が聞こえた。

忘れてはいけない、仲間の大切さを思い出させる一言。



340: ◆O.FqorSBYM 2018/12/02(日) 00:03:20.12 ID:t/n958LI0











「ごしゅじんを...たすけてあげて...」












341: ◆O.FqorSBYM 2018/12/02(日) 00:04:11.66 ID:t/n958LI0


帽子(──あぁ、彼はいつもすぐに決断してくれていたな...)


帽子(キャプテン...君はすごい...)


帽子「──殺すなッ、いけッ!!」


魔女「──"雷魔法"」


──バチバチバチッ...!

稲妻が彼を拘束している騎士たちにぶちあたる。

その雷は仲間を助けたいだけである、威力は絶大でいても殺傷力はなかった。


騎士団6「うわああああ!?!?」


騎士団7「魔法だ!! 魔物の仕業だ!!」


騎士団8「皆の者! 槍を...槍兵はどこに行ったッ!?」


帽子「スライムッッ! ウルフをッッ!!」ポイッ


スライム「──ウルフちゃんっ!」ダキッ


なかば強引にウルフをスライムに向けて投げる。

彼も助太刀しなければならない、あの大切な異世界の男を。

だから、目の前の障害を斬り伏せなければならない。


騎士団長「どこの馬の骨かしらぬが...王に恥をかかせた罰だ」


帽子「馬の骨にめちゃくちゃにされてるのは誰だろうねッッ!!!」


──ガギィィィィィィインッ...!

大男と華奢な男の鍔迫り合いが始まる。

体格では圧倒的に帽子が不利だが、なぜか帽子が圧倒していた。

それは、ユニコーンの魔剣が彼に力を与えているからであった。


騎士団長「ちぃぃ...貴様ら...」


帽子「悪いけど、とっとと逃げさせてもらうよ!」


騎士団長「...」


騎士団1「反逆者を殺せッッ!!!」


騎士団2「逃すなッッ!!!! 処刑だッッ!!」


隊長「──魔女ッッ!」


魔女「あんた達...ただじゃ置かないんだから...!」


──バチバチバチ...

魔女の周りに電気のオーラが纏う。

感情が彼女の魔法を強くする、電撃が人を殺すことなど容易。



342: ◆O.FqorSBYM 2018/12/02(日) 00:05:16.40 ID:t/n958LI0


隊長「...殺すなッッ!!!」


魔女「わかってるっっっ!!!!!!!!!!」


──バチィンッッッ!

その言葉と裏腹に、雷魔法が最高の威力に達した音が聞こえる。

それには訳があった、なぜ魔女たちが捕まっていたのかが理由であった。


魔女「こいつら! 魔法を無力化してくるのよっ!!」


隊長「...何ッ!?」


魔女「そうじゃなきゃ、簡単に捕まらないわよっっ!!!」


騎士団9「恐れるな! 我々には神のご加護がある!!」


騎士団10「囲め!!! 逃すなッッ!! 槍兵の到着を待てッ!」


スライム「魔女ちゃん!」


魔女(本当は私がウルフに治癒魔法をしたいけど...そんな余裕ないっ!)


魔女「スライム! 私たちが壁になるからウルフを癒やしてあげてっっ!」


スライム「うん!」


隊長「スライムも治癒魔法を使えるのか!」


魔女「そういうのは後! それより前ッ!!」


騎士団10「貴様の罪は重いぞっっ!!!」


隊長「──デヤッッッッ!!!!」


──ガキィィィィィィンッ!!!!

鉄を殴る音が響き渡る。

彼の手はもう血だらけ、アドレナリンが痛みを緩和させていた。


騎士団10「こ、こいつ...鎧越しにこの威力...!」ガクン


隊長「くっ...拳が痛むな...」


スライム「..."治癒魔法"」ポッ


ウルフ「あ...ありがとっ!」


魔女のものと比べると、少し頼りない光がスライムから現れる。

それでもウルフを癒やすのには十分であった。

気力を取り戻した狼は立ち上がった。



343: ◆O.FqorSBYM 2018/12/02(日) 00:06:48.47 ID:t/n958LI0


騎士団9「突撃しろっっっ!! 何を恐れているっっ!!!」


騎士団11「あの人間、化け物みてぇだっっ!!!」


隊長(...魔法は無力化してくる奴がいるみたいだな、ならば頼れるのは物理的な攻撃だけだ)


隊長「...俺とウルフで突破するぞ! 魔法はだめだッッッ!!」


隊長「ウルフ! 殺さない程度に力を発揮しろッッッ!!」


ウルフ「わかっった!!」


スライム「帽子さんはっ!?」


隊長「あっちだッッ!!! いくぞッ!」


ウルフ「――──ハッ!」


──ダダダダダダダダダダダダダダダッッッッ!!!!!

その蹴りからは、魔剣士が使った剣気のような質量のある何かが飛び出していた。

それが何十回にも及ぶ連続蹴りから発せられる、威力と殲滅力はこの場にいる者の中で一番。

ウルフは立ちふさがった騎士団のすべてを退けた。


隊長「...あとで褒めてやる!」


ウルフ「やった!!」


魔女「行くわよっ!!」


~~~~


~~~~


帽子「──よっと」


──ギィンッ カンッ!! ガギィィンッ!!!

細い一撃が、騎士団長の剣を押しのける。

魔剣士と戦い、圧倒的な経験を積んだ彼に勝てる人間などそうそういない。


騎士団長「貴様...やるな...」


帽子「それはどうも────」


──ガギィィィィイィィィィィイィィィンッッ!!!

完全に冷静さを取り戻した彼。

そんな帽子に騎士団長は剣を弾き落とされてしまう。

勝敗はついた、神のご加護とは何だったのか。


騎士団長「くっ...剣が...」


帽子「剣術に神のご加護は効かなかったみたいだね────」



344: ◆O.FqorSBYM 2018/12/02(日) 00:07:55.98 ID:t/n958LI0


騎士団12「──一斉にやるぞッッ!!!」スッ


騎士団13「者共! かかれぇぇええええいっっっ!!!」


帽子「──ッ!?」


──ザクッ ザクッ! ザクッ!!

帽子は突如として囲んできた騎士団に刺突される。

油断したわけではない、彼だもなかなかの手練であった。

だがその剣撃は不発に終わる、彼らが斬ったのは帽子ではなく水であった。


帽子「...!」ゴボボ


騎士団12「な、なんだ!?、水!?」


スライム「帽子さんっ! 大丈夫っ!?」


帽子(そうか、これはスライムの中か...!)ゴボボ


少し大きくなったスライムが帽子を体内に取り込む。

水に剣を刺してもなにも起きない。


隊長「出来したッッ! ウルフッ!!」


ウルフ「あたたたたたたたたたたっっ!!」


──ダダダダダダダダダダダダッッッ!!!

今度は拳の百烈拳が繰り出される。

当然、そこからは拳気と比喩できるモノが発射される。

それが騎士団を屠るのは簡単であった。


帽子「...ふっ、そういえば初めて全員で闘うね!」


隊長「あぁ!」


魔女「そういえばそうね」


スライム「ふっふっふ...私に物理攻撃は無意味だよ!」


ウルフ「ガルルるるるるるるるるっっ!!」


隊長「...このまま前方を強行突破だッ!!!」


魔女「それなら時間を稼いで! 私に策があるわよっ!」


スライム「あれをやるのね!」


ウルフ「ご主人! 魔女ちゃんを守ってね!!」


隊長「まかせろッッ!!!」



345: ◆O.FqorSBYM 2018/12/02(日) 00:09:13.15 ID:t/n958LI0


騎士団14「覚悟ッッ!!!」ブンッ


帽子「おっとっとっ! そうはいかないよ!」


魔女を護るべき、仲間の4人がそれぞれ抵抗する。

隊長はハンドガンや体術で、ウルフは卓越した格闘技で。

帽子は剣術で、そしてスライムは己の身を盾にすることで騎士団の攻撃を無力化させる。


魔女「ブツブツ...」バチバチ


魔女「ブツブツ...」バチバチバチ


魔女「ブツブツ...」バチバチバチバチ


――――――バチィンッッッッッッ!!!!!!

そして、彼女は充電し終えた。

今まで聞いたことのないその雷の音は凄まじかった。


魔女「いくわよっっっ!!!!!」


隊長「―――ッ!」


魔女「これでも無効化できるかしらっ! "雷魔法"ッッ!!!!!!」


――――――――――――――!

聞こえない、何も聞こえなかった。

その尖すぎる雷は、すべてを飲み込む。


騎士団14「よけろおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」


魔女から超巨大な、とてつもない威力の雷球がとび出す。

雷球が通った場所には何も残らなかった、これが賢者の修行を終えた者に許される魔法。

人が巻き込まれた形跡は無し、絶妙な軌道であった。


魔女「...どうだっ!」


隊長(Comicbooksでこんな技を見たことあるぞ...)


帽子「...このまま城の外へッ!!」


そんな様子を影から見張る者が。

先程剣を弾かれてしまった、この国の兵の長。


騎士団長「...」


騎士団1「団長、死者は今のところ出ていません、どういたしますか!」


騎士団長「...アレをもってこい...1人でも捕まえてみせる」


~~~~



346: ◆O.FqorSBYM 2018/12/02(日) 00:10:34.49 ID:t/n958LI0


~~~~


帽子「もう少しで外だ...ってッ!?」


魔女「──あいつらっ!!」


精鋭1「精鋭部隊の名にかけて、貴様らを捉える!!」


精鋭2「この光り輝く槍を受けてみろッ!」


スライム「あいつら!! 魔法を無効化する奴らだっっ!!!」


精鋭3「この槍の前では魔法は使えんぞ...魔物共め...っ!」


隊長「あいつらか...ッ!」


魔女「...だめ、魔法が使えないっっ!!!」


帽子「クソッ!!」


精鋭4「隙ありっっ!!!!」ブンッ


魔女「きゃっ!!!」


帽子「しまったッ!!!」


隊長「まずいっ! 分断されたッッ!!!」


隊長と帽子、魔女とウルフとスライムに分断されてしまった。

それよりもスライムたちの様子がおかしい、どうやらあの槍が封じているのは魔法だけではなさそうだった。

だがそれを伝えている暇などない、隊長にも襲いかかる者が続く。


隊長「──ッ!」


精鋭1「行かせはしないぞ...っ!」


隊長(...殺すことができるのなら、簡単なのだが)


隊長(流石に鎧相手に銃殺は厳しい...やはり頼れるのは体術か)


隊長「──ウルフッッ!!! 俺たちが行くまでスライムと魔女を守ってくれっっ!!」


ウルフ「うんっっ!!!!」


スライム「ごめんね、ウルフちゃん...」


魔女「あいつら...本当に厄介ね」


精鋭2「魔物め...殺してやる...」



347: ◆O.FqorSBYM 2018/12/02(日) 00:11:29.73 ID:t/n958LI0


スライム(──そうだ!)


スライム「ウルフちゃん! 魔女ちゃん! おねがい!」


魔女「──えっ!?」


魔女(スライムの身体の一部がどこかに伸びている...?)


スライム(どこだ...どこだ...っ!)


ウルフ「あたたたたたたたたっっっ!!!」


──ダダダダダダダダダダダダッ!!!!

ウルフの拳気が精鋭たちを近寄らせない。

だがそれはいつまで持つのか、獣だとしてもその体力は有限である。


精鋭3「これは魔法ではない! 神のご加護は無意味だっ!!」


精鋭4「チィィ、近寄れん...!」


精鋭5「攻撃の合間を狙えッッ!!!」


精鋭6「獣とはいえいずれは体力が尽きるであろうっ!!」


魔女「くっ...ウルフが止まるまでにスライムの策がきまれば...!」


ウルフ「はぁっはぁっ...」


──ダダダダダダダダダダダダッッッッ!!!!

心なしか速度が落ちた、鍛え上げられたといってもまだその身体には慣れていない。

彼女は力を得てからまだ1週間も経っていない、体力のペース配分など熟知できるはずがなかった。


スライム(──これだ!!)


ウルフ「も、もうダメ...っ!」フラッ


魔女(キャプテン達も足止めされてる...もうだめっ...!)


スライム(えぇっと、確か...!)


(ウルフ「これ、どうやってつかうの?」)


(隊長「こうやって、ねらいをつけるんだ」)


(ウルフ「こう?」)


(隊長「そうだ、で、そのひきがねをひけばおわりだ」)


精鋭3「──かかれぇっっ!!!!」


──バババババババババッッッ!!!!

強烈な発砲音、だがその狙いは甘く本来の威力は発揮されなかった。

しかし、その狙いの甘さが人を殺さずに済むものであった。



348: ◆O.FqorSBYM 2018/12/02(日) 00:12:55.95 ID:t/n958LI0


精鋭3「うわあああっっっ!?!?」


魔女(この音...きゃぷてんの武器の音?)


スライム「うひゃぁ~...すごい重たいし反動がきつい...」


魔女「──それを持ってこようとしてたのね!」


スライム「なんとかみつけたよ...身体の一部を伸ばして...」


ウルフ「スライムちゃん、ありがとう!」


精鋭1「くそっ...」


隊長「どうやら分断作戦も失敗のようだな」


──ガギィィィィンンッ!!!

分断していた精鋭たち、その武装が徐々に解除される。

帽子の剣術や、隊長の蹴りなどにより弾き落とされた、この場には大量の剣が落ちてる。


帽子「キミの剣もどこかへ行ってしまったよ」


精鋭1「畜生...っ!」


隊長「...よし! このまま門から出るんだッッ!!!!」


スライム「な、なんとかなりそうだねっっ!」


魔女「早く行くよっっ!!!」


ウルフ「わんっ!」


すると、士気を挙げるためかある人物が大声を挙げる。

それは唯一無二の存在、彼の大切な肉親である。

だが今は、父親を見るその目はとても冷ややかであった。


王「反逆者共を捕まえるんだっっっ!!!」


帽子「――父さんっ...!」ピタッ


隊長「帽子――ッ!? 足を止めるなッ!」



349: ◆O.FqorSBYM 2018/12/02(日) 00:14:15.85 ID:t/n958LI0











帽子「――――っ!?」












350: ◆O.FqorSBYM 2018/12/02(日) 00:16:11.46 ID:t/n958LI0


──グサァッッッ...!

その時、彼の胸を貫いたのは。

赤黒く染まるその弓、一体誰から放たれたのか。


騎士団長「...私の弓技からは決して逃れることは出来んぞ」


騎士団1「おおおおおおおおおおおおおおおっっっ!」


精鋭3「ついに一人を殺したぞっっ!!!」


王「この勢いに続けぇっっっっ!!!」


帽子「―――っ」


──バタンッ...!

彼はそのまま、力を失い倒れる。

もう起き上がれない、身体が冷たくなる感覚が迫る。


スライム「──いやあああああああああああああああああああああああああああああっっっ」


スライム「いやだああああああぁぁぁぁぁぁっ、帽子さんっっっ」


魔女「う、嘘...でしょ...?」


ウルフ「──っっ!?」


隊長「...帽子? 帽子ぃ...?」


帽子「あ...く...」


隊長「──帽子ッッ! しっかりしろッッ!!!」


隊長(まずいッッ!! 完全に胸を貫いているッッ!!!)


隊長は応急的に手で止血をする。

手が紅に染まる、だがそれは胸から出る一方。

止まらなかった、どうしても止めることはできなかった。


隊長「血が止まらないッ! 止めてくれ...ッ!」


帽子「キャプ...テン...」


隊長「喋るなッ...! 喋らないでくれ...命に関わる...ッ!」


スライム「"治癒魔法"っっ!! "治癒魔法"っっっ!!!!」


覚えたてのその魔法、しかし発動しない。

憎たらしいほどに輝くあの槍がそれを許してくれない。


精鋭2「無駄だ! 魔法はこの槍の前では使えんぞ!」


騎士団5「今だ! かかれっ!!!!」



351: ◆O.FqorSBYM 2018/12/02(日) 00:20:21.55 ID:t/n958LI0


ウルフ「―――ッッッ!」


──ダダダダダダダダダダダダダダダダダッッッッ!!!!

その威力は今までのとは桁が違う。

彼女の心理の奥底には、理性があった。

だが今は違う、この拳気は人を殺せてしまうかもしれない。


騎士団5「ぐあああああああああああああッッッ!?」


精鋭2「よ、鎧が砕けた...今までの威力じゃないぞッッ!!!」


ウルフ「フッー...! フッー...! 近寄るな...ッッ!!!」ギロッ


精鋭2「ひっ...」


スライム「"治癒魔法"っっっ!!!」


魔女「スライムっっ! 落ち着いてっっ!!!」


スライム「いやだっ! "治癒魔法"っっ...お願いっっ!」


隊長「帽子ッッ! 死ぬなッッ!!!」


帽子「み...んな...わ...たし...の...夢...まかせ...たよ...」


隊長「任せるなッッ!!! 夢を実現させるのはお前だッッ!!!」


スライム「死なないでっっ!!! 帽子さんっっ!!!」


帽子「くやしい...ま...だ...やりた...いこと...あるの...に...」


魔女「嘘でしょ...お願い...夢なら覚めて...っ!」


隊長「お前はここで死ぬような奴ではないッ...弱音を吐くなッッ!!」


帽子「...魔女...さん...あなたの...ま...ほう...にはお世話に...なった...よ」


魔女「やめて...っ」


帽子「ウルフ...キミ...の...勇敢さ...そして...癒やしは...素晴らしかっ...た」


ウルフ「ひ...ぐっ...」


帽子「スライム...私は...キミに...恋を...してた...」


スライム「わたしもよ......置いて行かないで...」


帽子「キャプテン...君は...最高の仲間だ...よ...」


隊長「...」


帽子が隊長の手を強く握る。

紅きその手が、帽子の美しい手を染め上げる。

その手はあの時の、復讐者のような。



352: ◆O.FqorSBYM 2018/12/02(日) 00:21:34.57 ID:t/n958LI0


帽子「頼む...どうか...平和を...勝ち取ってくれ...っ!」


帽子「憎しみなどない...世界にしてくれ...」


隊長「...あぁ、任せろ」


帽子「...あり...がとう...友よ」


強く握られていた手は次第に弱々しくなっていく。

命が尽きるその時は、あまりにも呆気なかった。

帽子が息絶える、それと同時に帽子が外れて綺麗だった顔を見せてくれた。


帽子「――――」


隊長「...」


スライム「やだ...やだやだ...もういや...」


魔女「こんなのってないよ...」


ウルフ「...」ポロポロ


町民1「お、おい...あれって...」


騎士団6「王子じゃないかっっっ!?」


騎士団長「なっ────」


王「────なんだとっ...!!!!」


次第に王子の死が都を駆け巡る。

だがそれが何だというのか、失った者は二度と戻ることはない。

彼らは立ち尽くすことしか許されない、王子の遺体を連れ去ろうとする彼らを止めることすらできなかった。


隊長「...いくぞ」グイッ


隊長(軽い...こんな身体で今までの死闘を繰り広げていたのか)


魔女「...うん」


スライム「いや...いやだよ...」


ウルフ「スライムちゃん...いこっ...?」


先程まで死に物狂いで隊長たちを追いかけてきた。

だが、今になってはもう誰も跡を追おうとするものは誰もいなかった。

そこに残ったのは、夕焼けの紅と彼の紅であった。


~~~~



355: ◆O.FqorSBYM 2018/12/02(日) 21:43:59.74 ID:t/n958LI0


~~~~


隊長「...」


魔女「スライム...」


スライム「ひっぐ...ぐすっ...」


ウルフ「スライムちゃん...」


夕焼けに染まりながら歩き出す。

頭を強く殴られたような感覚が続く、これは本当に現実なのか。

そんな時、隊長とスライムはあることを思い出した。


隊長(ここ、確か...)


(帽子「綺麗だな...墓はここに立てたいね」)


隊長「...ここに墓を建てよう」


スライム「...ここって帽子さんが言ってた場所だよね...ぐすっ」


隊長「...冗談が現実がなるなんてな」


隊長「...ウルフ、手伝ってくれ」


ウルフ「...うんっ」


隊長とウルフは自分の手が泥だらけになるのを厭わずに、穴を掘り始める。

やがてその穴は、人が入れるほどの大きさへと変わる。

土葬、それは彼の世界でも行われる弔いである。


隊長「...このくらいでいい」


ウルフ「...」


隊長「...埋めるまえに、声をかけてやれスライム」


スライム「うん...」


隊長「...俺たちはすこし距離をとるぞ」


魔女「わかった...」


ウルフ「...」


スライムのプライバシーに配慮して、聞こえないように距離をとる。

そんな心配りができる程に彼は冷静であった。

仕事柄、仲間が命を失うことは慣れている、嫌な慣れであった。



356: ◆O.FqorSBYM 2018/12/02(日) 21:44:59.38 ID:t/n958LI0


隊長「...」


ウルフ「...」


魔女「...そもそも、私たちが捕まらなければ...」


ウルフ「ひっぐ...」


隊長「捕まったのは魔法を封じられて、ウルフは魔女たちを人質にとられた...ってところか」


魔女「...そうよ」


隊長「...」


隊長「...殺したのはお前たちではなく、あの民たちだ」


魔女「...そう、そう言ってくれるだけで助かるわ」


ウルフ「帽子...」


スライム「...もういいよ、ありがと」スッ


隊長「...わかった、埋めてくる」


隊長「...」


帽子「────」


隊長「......帽子」


帽子「────」


隊長「...Rest in peace」


~~~~



357: ◆O.FqorSBYM 2018/12/02(日) 21:46:10.68 ID:t/n958LI0


~~~~


隊長「...埋めてきたぞ」


魔女「...それは?」


隊長「...あいつの形見だ、この冒険で役に立てよう」


亡き帽子が愛用していた、このレイピアのような剣。

そこには彼の意思、それはユニコーンをも懐かせるモノ。


魔女「...そうね、それなら帽子も喜ぶわね」


隊長「あぁ...さて、進むか」


魔女「...そうね」


スライム「...ごめんなさい、わたしはいけないよ」


スライム「わたしはここで...帽子さんといる...」


隊長「...そうか...そうだな、スライムは帽子に着いてやってくれ」


ウルフ「...あたしも、スライムちゃんといる...ごめんなさいご主人...」


ウルフ「せっかく強くなったのに...やくにたてなくてごめんなさい...」


隊長「いや、いいんだ...お前たちは十分助けになった...だからそんな悲しいことを言わないでくれ」


隊長「...2人とも、気をつけろよ」


ウルフ「うん...」


スライム「これ...忘れてるよ」


隊長「...拾っといてくれたのか、ありがとう」


スライムが拾ってくれた、彼の主要武器。

手渡されたアサルトライフルを握るその腕は、とても力強かった。


隊長「...魔女、行くぞ」


魔女「...またね、ウルフ、スライム」



358: ◆O.FqorSBYM 2018/12/02(日) 21:47:00.25 ID:t/n958LI0


スライム「...まって!」


隊長「...どうした?」


スライム「...これ、あなたの分」スッ


隊長「...これは?」


スライム「帽子さんに売っちゃったから...持ってないんでしょ?」


スライム「きゃぷてんさんも...とっても大事な友だちだから」


隊長「...あぁ」


隊長は少し力みながら、手渡されたものを握る。

手のひらサイズのボールみたいなものをしまいながら先を進みはじめる。

こうして、隊長はスライム、ウルフ、そして帽子と別れを告げた。


~~~~


~~~~


隊長「...」


魔女「...」


隊長「...魔王はどこにいるんだ?」


魔女「...魔界の中心にある魔王城ね」


魔女「人間界の端っこにある、魔界に通ずる大橋を渡れば魔界に行けるのよ」


魔女「そこへ行くには...このまま山を登って麓の村から"暗黒街"に向かう直線距離が近いわ」


魔女「山を遠回りすることもできるけど、面倒くさいでしょ?」


隊長「...そうだな」


隊長「麓の村か...久しぶりだな」


隊長(少女は元気にしているだろうか...)


魔女「今日は山にある大賢者の別荘に泊まろうよ」


隊長「...あぁそうだな」


~~~~



359: ◆O.FqorSBYM 2018/12/02(日) 21:48:05.92 ID:t/n958LI0


~~~~


魔女「ふぅ...久々ね...ここ」


隊長「お前と出会ったのはここだったな」


魔女「...そうね、それより早く入りましょう?」


隊長「ここの景色は綺麗だったが...今日は天候が悪いみたいで見えないな」


魔女「そもそも、夜だしね」


隊長「...」


魔女「...私...隣の部屋で寝てるわね」


隊長「...あぁ、おやすみ」


本当なら話したかった、だがそんなことはできない。

隊長は1人、書斎の椅子に腰掛けて休息を取ろうとする。

溶け切っていない氷の影響でやや肌寒い、そして張り詰める静寂が彼を狂わせる。


隊長「...帽子」


隊長「...」


隊長「...」


隊長「...」


隊長「...」


旅で誤魔化していたが、感情がじわじわと押し寄せてくる。

1人というものは、これ程にも残酷な孤独なのか。

耳をすませば、聞きたくない彼女の声が聞こえてしまう。



360: ◆O.FqorSBYM 2018/12/02(日) 21:48:31.10 ID:t/n958LI0











「ひっぐ...ぐす...えぐっ...」












361: ◆O.FqorSBYM 2018/12/02(日) 21:49:17.82 ID:t/n958LI0


隊長「────...ッ」


隊長「ッ、Fuckッ...!」


隊長「俺は死と隣合わせの仕事をしている...っだから慣れてるのに...っ!」


隊長「グッ...ウゥッ...!」


隊長「帽子ぃ...ッ!」


~~~~


~~~~


魔女「おはよう!」


隊長「...元気だな」


魔女「いつまでも、悲しい顔してたら、あいつだって喜ばないわ」


隊長「...」


隊長には帽子の存在が大きすぎた。

この異世界での、かけがえのない親友であった。


隊長「...そうだな」


魔女「それじゃ、麓に向かおっか」


魔女「ちゃんと、この山を凍らせてたのは氷竜ですって弁解してよね!」


隊長「...あぁ、いくか」


隊長(...今日も景色はみえないか)


魔女「うわっ...霧に覆われてるわね...」


隊長「あれなら、下山したときには晴れてるだろう」


魔女「そうね...じゃあ行きましょうか」


隊長「あぁ...」


~~~~



362: ◆O.FqorSBYM 2018/12/02(日) 21:50:28.25 ID:t/n958LI0


~~~~


隊長「────嘘...だろ...?」


あまりの出来事に隊長は絶句する。

麓の村、その惨劇を目の当たりにしてしまう。

どうして、一体何が起きたのか、彼の情報処理能力は著しく劣り始める。


魔女「なにこれ...村がないじゃない...っ!?」


魔女「こ、これって...ば、爆発跡...?」


隊長「...」


―――ガサガサッ...

その時、物音が鳴り響いた。

あまりの光景に固まることしかできない彼がようやくハッとする。


隊長「──少女かッ!?」ダッ


魔女「まってっ!」


隊長「少女ッッ!? どこだッッッ!!!」


魔女「...落ち着きなさい、もう誰も居ないみたいよ」


隊長「そんなはずはないッ! ここには俺の恩人がいるんだッッッ!!!」


魔女「きゃぷてん...」


隊長「少女ッ! 少女母ッ! いるのなら返事をしてくれッッ!!!」


魔女「...落ち着いてっっ!」


隊長「...FUCKッッ...どうしてこんなことにッ...!?」


魔女「──うっ...!」


冷静になってみると、ひどい臭いが放たれていた。

それは人間だった物が腐り始めた、とても嫌な臭いであった。

隊長は瓦礫に埋まってる人を見つける、それは見慣れていた人であった。


隊長「──少女母ッ!?」


少女母「────」


隊長「大丈夫かッッッ!? いま助けるぞッッッ!!」グイッ


―――ボロンッッ...

瓦礫の下敷き担っている彼女の腕を引っ張った。

するとそのような音を立ててしまった、何かが抜ける。



363: ◆O.FqorSBYM 2018/12/02(日) 21:51:35.81 ID:t/n958LI0


隊長「―――ッ」


魔女「―――う゛っ...」


あまりの出来事に魔女が催してしまった。

口を抑えることで、なんとか吐き出さずに済んだ。


魔女「げっほっ...げほっ...ひどいっ...」


隊長「...」


???「──いやはや、側近様の命令でまた訪れてみたら...まだ人間がいたか」


魔女「──誰ッッ!?」


偵察者「無礼だぞ小娘、この偵察者に質問など愚かだ」


突如現れたその男の名は、偵察者。

腕には例の入れ墨、どう考えても魔王軍であった。

その口ぶりから察した、魔女は彼に追求を始める。


魔女「...あんたがやったの...これを?」


隊長「...」


偵察者「あぁ、そうさ」


偵察者「私がここの村の人間の1人を洗脳し、勇者が訪れたら自爆魔法を唱えるように仕掛けていたのさ」


魔女「ひどいっ...許せないっ...!」


偵察者「許さなくて結構、貴様らも同じく洗脳して有効活用してやる」


偵察者「まぁ安心しろ、自爆魔法を使っても奇跡的に周りの人間は助かるかもな」


魔女「...どういうことよっ!」


偵察者「クハハ、面白い話をしてやろう」


偵察者「ここで洗脳したものは自爆魔法でこの村を消し去ったが」


偵察者「なんと、そいつの娘は奇跡的に助かったのだ...貴様らも同じ機会が訪れたら奇跡を祈るんだな」


隊長「...」ピクッ


娘という単語、それに反応してしまった。

魔王軍が現れたというのにも関わらず、ずっと硬直していた彼が動く。



364: ◆O.FqorSBYM 2018/12/02(日) 21:52:40.42 ID:t/n958LI0


隊長「...おい」


偵察者「なんだ?」


隊長「洗脳したのは誰だ」


偵察者「名前など知るか、金髪の村人だ」


隊長「―――─ッ!」


偵察者「...お喋りは終わりだ、貴様らはここで私に捕まってもらう」


偵察者「..."拘束魔法"」


―――――......

先制の魔法、その詠唱速度はかなり早い。

この惨劇を前に軽く平常心を失っている魔女には反応できない代物であった。

だがおかしい、彼の魔法は発動しなかったのだった。


魔女「...あれっ?」


偵察者「なっ!? なぜ魔法が使えぬッ!?」


魔女も偵察者も理解が出来ない、その一方輝かしい光が現れる。

原因はこれしかない、帽子の魔剣が光り輝く。


隊長「...□□」


偵察者「なっ...!」


偵察者「その光...! 光魔法かッ!?」


隊長「...お前」



365: ◆O.FqorSBYM 2018/12/02(日) 21:53:20.23 ID:t/n958LI0











「楽に死ねると思うなよ...」












366: ◆O.FqorSBYM 2018/12/02(日) 21:54:29.69 ID:t/n958LI0


魔女「ひっ...」


──ダン□ッ!

殺意と共に放たれた、白き音を伴う銃弾。

偵察者の右足にハンドガンを発砲する、当然偵察者は跪いてしまう。


偵察者「──ぐぅぅぅぅうぅ!?!?」ドサッ


偵察者(なに...!? 私の身体は側近様によって強化されているはずっ!?)


隊長「...どこをみてる」


偵察者「──速いッ!?」


──バギィィィィィィィィィィイイイイイッッ!!!!!

強烈なストレートが決まり、偵察者の身体が吹き飛ばされる。

魔闘士程とはいかないが、人間がこの跳躍距離を出せるのか。

とてもない怒りが彼に力を与える。


偵察者「はぁっ...ぐぅ...なにが起こった...?」


偵察者「はぁっ...はぁっ...た、立てん...それに...」


隊長「...」スッ


隊長が魔剣を抜く、その魔剣は光り輝かくモノだった。

しかし徐々にその光は鈍く、色が濃く変貌する。

その光景が、偵察者を震え上がらせた。


隊長「...■」


偵察者「な、なんだ...!? この魔力、光と闇...両方感じるぞ...!?」


隊長「...■■」


偵察者(まずいっ...にげなければ...)ズルズル


──グサ■■ッッッッッッ!!!!!!

逃げようとする偵察者の足に魔剣が突き刺さる。

クラーケンを足止めしたこの索、同じく偵察者も餌食になる。

剣は黒い音を交えて、彼を苦しめる。


偵察者「があああああああああああああああああああッッ!?!?」


偵察者(くそッ...地面にまで刺さって動けん...ッ!)


隊長「You can't run away...」


偵察者「ま、まて! ...た、助けてくれッ...!」



367: ◆O.FqorSBYM 2018/12/02(日) 21:55:39.44 ID:t/n958LI0


隊長「...」


偵察者「悪かった...ッ! 望みはなんだッ!? できることなら叶えてやるッ!」


隊長「...」


偵察者「頼むっ...まだ死にたくないんだっ...」


隊長「...DIE」


偵察者「...へっ?」


──ぐしゃああぁぁぁっっっ...!

隊長は思い切り、踏み込んだ。

この憎たらしい男の腕を。


偵察者「ぐああああああああああああああ腕がああああああああああッッ!!!」


隊長「...」


偵察者「やめてくれえええ...踏まないでくれ...ッ」


──ぐしゃあぁっっっ...!

何度も、何度も彼は踏み込む。

やがて奴の腕はひしゃげてしまう。


偵察者「ぎゃあああああああああああああぁぁぁぁぁあ!!!!!!」


隊長「DIE DIE DIE DIE...」


──ぐしゃっ ぐしゃあっっ めきゃっっっ...

腕に踏み心地を感じなくなると、次は足。

偵察者という男を心が晴れるまで踏み潰す。


偵察者「た、たすけてええええええええええええぇぇぇ...」


隊長「DIEッ! DIEッ! DIEッ! DIEッ! DIEッ! DIEッ!」


──ぐしゃっ ぐしゃっ ぐしゃあああっっっ ぐちゃっ

もう、彼に踏める場所などない。

だが隊長は止まらない、憎しみが晴れるまで永遠に。


偵察者「あああぁぁぁぁぁぁ......」


隊長「DIEッ! DIEッ! DIEッ! DIEッ! DIEッ! DIEッ!」


隊長「────MAST DIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIEッッッ!!!」


──ぐちゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁあぁっっっ!!!!!!

────ぐちゃっ! ぐちゃっっ!!

この世界にきて最も残酷な殺し方だった、だが踏みつける音は一向に終わらなかった。

気づくともう黄昏時であった、深緑のマフラーが首元の寒さを忘れさせていた。



368: ◆O.FqorSBYM 2018/12/02(日) 21:56:53.15 ID:t/n958LI0


偵察者「────」


隊長「...■■」


隊長「...」スッ


偵察者だったモノから魔剣を引き抜き、鞘に収める。

すると彼を包んでいた、黒い音は消え失せた。


隊長「...」


魔女「ひっぐ...ひぐっ...」


ぽろぽろっ...そんな音が聞こえるぐらい涙を流していた。

彼の変わりように、泣くしかなかった。


隊長「...どうしてこんなことに」


魔女「しらないよぉ...もうやだよぉ...こわいよぉ」


隊長「...」


(復讐者「貴様の瞳...復讐に襲われるだろう...」)


隊長「...もう、着いて来るな」


隊長「俺は...またこんなことをしてしまうだろう...」


魔女「いやだぁ...1人にしないでよ...」


隊長「...いまからでも、村に帰るんだ」


魔女「ひっぐ...ひっぐ...」


隊長「...ほら、水だ...これを飲んだら行け」スッ


隊長が水筒を取り出し渡そうとする。

それが限界であった、我を忘れ朝から夕方まで踏みつけを行えばそうなる。

隊長の体力は限界であった、足元はふらつく。


隊長「――ッ...」グラッ


魔女「──きゃぷてんっ!」


~~~~



369: ◆O.FqorSBYM 2018/12/02(日) 21:58:30.02 ID:t/n958LI0


~~~~


隊長「...ここは?」


帽子「...」


隊長「──帽子ッッ!?」


少女「...」


隊長「少女もッッ! 大丈夫だったか!」


隊長「どうした...? ふたりとも無言だぞ?」


少女「...■■■」


少女の口から、聞き取れない言語が発せられる。

その黒い音は、隊長に鳥肌を立たさせる。


隊長「しょ、少女...?」


隊長「背筋が...なにが起きた...?」


帽子「■■■■」


──ゾクゾクゾクッッッ...

背筋が凍りつく、その音はとても不快であった。

大切な彼らであるはずなのに、隊長は距離を取ろうとする。

すると、何者かに足を掴まれた。


隊長「あ、足が...ッ!?」


少女母「──どお゛じで...どお゛じでだずげでぐれ゛な゛い゛ん゛でずがぁああああああああ」


隊長「────は、離せッッッ!!!!」


隊長「やめろッッ!!! 近寄るなッッッ!!!」


────■■■■■■■■■■■■■

黒が隊長の身体に触りこむ。

まるで売女に撫でられたかのような不快感。

吐き気まで催すそれは、隊長を狂わせる。


隊長「触るなッッッ...!」


隊長「誰かッ...誰か助けてくれェッッッ!!!!」


隊長「Help...me...ッ」


???「...大丈夫、大丈夫だから」ギュッ


~~~~



370: ◆O.FqorSBYM 2018/12/02(日) 21:59:44.73 ID:t/n958LI0


~~~~


隊長「―――ハッ...」


魔女「私が...いるから...」


隊長「はぁッ...夢...ッ!?」


魔女「起きた...? すごいうなされてたわよ...大丈夫?」


隊長「はぁっ...はぁっ...」


魔女「まだ震えてるわ...」


―――ぎゅっ...

暖かい、乙女という者はこれほどに心安らぐものなのか。

悪夢にうなされていた彼を癒やすのには魔法などいらない。


魔女「...寒くない? 恐くない?」


隊長「...魔女」


魔女「1人じゃ...全部抱え込んじゃうでしょ...?」


魔女「私は...ずっと一緒にいるわよ...」


隊長「ま、じょ...」


魔女「大丈夫だからね...?」


隊長「...暖かい」


魔女「...でしょ?」


隊長「...もう、深夜か」


魔女「そうよ...冷えて凍死するのはいやだから、こうしてましょ?」


隊長「...凍死はいやだからな」


魔女「...ふふっ」


~~~~



371: ◆O.FqorSBYM 2018/12/02(日) 22:00:47.96 ID:t/n958LI0


~~~~


隊長「...!」パチッ


隊長「...朝か」


隊長「...」


魔女「すぅ...くぅ...」スピー


隊長「...魔女、起きろ」


魔女「ん...! ...ふわぁ~あ...おはようぅ」


隊長「いい日差しだな...」


魔女「そうね...ちょっといろいろ済ましてくるわね」


隊長「あぁ...」


隊長「...」


起きたそこには、魔女が肌を重ねてくれていた。

暖かい、人の温もりが彼の狂気を祓ってくれていた。

彼女がいなければ、隊長はどのような男に変貌していたのだろうか。


~~~~


~~~~


隊長「それで、どこに向かうんだ?」


魔女「このまま暗黒街に向かうわ」


隊長「暗黒街?」


魔女「魔界に最も近い都のことよ、治安は最悪よ最悪」


隊長「なるほどな...」


魔女「そういえば、魔王子はどうするのよ」


魔王に歯向かい、それから消息不明になってしまったという噂。

大賢者が言うには利害の一致でともに行動してくれるかもしれない。

そんな彼のことをどうするか、隊長は一先ずの考えを提案した。


隊長「...暗黒街で手がかりがあれば探そう、ひとまずな」


魔女「わかったわ、とりあえず向かいましょうか」


隊長「あぁ、行くか」


~~~~



372: ◆O.FqorSBYM 2018/12/02(日) 22:01:55.74 ID:t/n958LI0


~~~~


魔女「綺麗な紅葉ね、ここ」


隊長「...俺がこの世界にきた時、俺はここで倒れてた」


魔女「えっ! そうなの?」


隊長「あぁ...もしかしたら、なにか手がかりがあるかもしれん...少し探索してみよう」


魔女「えぇ」


隊長「...」


(少女「え、えぇっと...私は少女です...」)


ここは少女が彼を助けてくれた場所、だからこそ思い返した。

そんな彼女の父親は、偵察者の卑劣な策により無惨なことに。

だが偵察者の話が本当なら、消息は不明だが奇跡的に助かっているとのこと。


隊長(...奴の話によると、少女はまだ生きている)


隊長(どうか、無事でいてくれ...ッ!)


隊長「...」


──スタスタッ...ガッッ!

そんな腸煮えくり返りそうなことを冷静に考えていると。

なにかに足が引っかかった、紅葉の落ち葉だらけ故に足元のでっぱりに気が付かなかった。


隊長「──おわっ!?」フラッ


魔女「な、なに? 大丈夫?」


隊長「躓いただけだ...」


隊長(...)ジー


隊長「ん...! これはッ!?」


──ガサガサガサッ...

なんとなく、何に引っかかったのか気になった。

躓いた箇所をよく凝視してみる、落ち葉によって全貌が見えないが、その見覚えのあるシルエット。



373: ◆O.FqorSBYM 2018/12/02(日) 22:03:32.69 ID:t/n958LI0


魔女「なにかあったの?」


隊長「これは...なぜここに...ッ!?」


魔女「それって、あんたがいつも使ってる武器に似てるわね」


隊長「あぁ...これは俺の世界にある武器だ...なぜここに...?」


隊長(...どこか、見覚えがあるな)


隊長(...)


隊長(...)


隊長(...ッ!)ピクッ


(犯人3「う、うごk」)


(隊長「遅いッッッ!!!!」ドガッ)


隊長(──あの時、犯人から蹴っ飛ばした時の奴かッ!)


そこにあったのは、頼れる新たな武器。

どういう因果かはわからないが、隊長と共にこの世界に訪れていたようだ。

この武器の名はショットガン、アサルトライフルにはできない芸当をしてくれる心強い銃器。


隊長「これは...戦力になるぞ」


魔女「異世界の武器ってことは、すごい威力なんでしょうね」


隊長「俺の世界の中でも、こいつは特に威力が高いぞ」


魔女「へぇ...」


隊長「...7発内蔵、6発付属ってところか」


隊長「これも、弾を複製できるか?」


魔女「むしろ、そっちのほうが単純そうで楽だわ」


隊長「では早速頼む」


魔女「はいはい、ちょっとまっててね」ガサゴソ


ショットガンに付属しているシェルラックから、1発の実包を魔女に手渡した。

すると彼女は衣服にある小さな収納から物を取り出し、錬金術の準備を行う。

理科の実験に使いそうな容器やらマッチ、紙や針など、どれも手軽なものであった。



374: ◆O.FqorSBYM 2018/12/02(日) 22:05:20.23 ID:t/n958LI0


魔女「うーん...炎魔法を覚えられなかったのが悔しい」ボッ


隊長「これに何を入れるんだ?」


魔女「ここに紙と私の血を入れるのよ」


隊長「血か...痛くないのか?」


魔女「もう修行で慣れちゃったわよ...っ」チクッ


魔女「それで、錬金術用の詠唱をするの...これは大賢者様しかしらないみたいよ」


隊長「ほう...紙が金に変わるのか」


魔女「そうよ、ブツブツブツ...」ポワッ


魔女「...無事、完成ね」


隊長「もう金になったのか」


魔女「慣れってやつね...それじゃ、弾を貸して」


隊長「おう」スッ


魔女「..."複製魔法"っ!」


容器に入ったドロドロの金が、形を変え始める。

その現実味のない光景、やはり魔法というものは凄い。

まるで手品師のトリックを見るような、そんな純粋な気持ちで彼は見ていた。


隊長「おぉ...」


魔女「あとはこれの繰り返しね...何個つくるの?」


隊長「とりあえず6の倍数個で頼む」


魔女「じゃあ18個ね..."複製魔法"」


隊長「助かるぞ...魔女」


魔女「どうってことないわよ」


隊長(この弾は、いままでレーションに入れていた部分に入れておこう...)


隊長(レーションには悪いが...水筒と同じ場所に...ちょっと窮屈だがしかたない)



375: ◆O.FqorSBYM 2018/12/02(日) 22:08:27.26 ID:t/n958LI0


魔女「それにしても...両手に今までの大きい方の武器を持って、背中に今の武器...重くないの?」


隊長「...慣れってやつだな」


魔女「ひぇーおそろしい、おそろしい」


隊長(...両方の銃器にベルトがついてるとはいえ、両方背負った時は持ち替えが大変だな)


魔女「ついでに、他のやつも作ろうか?」


隊長「ならハンドガンとアサルトライフルのも頼む」


魔女「まかせなさいっ!」


~~~~


~~~~


??1「ぐっ...どうしてこんなところに...」


暗闇、それも牢屋のようなところで細い声が響く。

そこに下衆が話しかける、この男は隊長も遭遇したことのある者。

最も鎖に繋がれている彼女も見たことがあるだろう。


??2「残念だったねぇ...女騎士?」


女騎士「──魔法使いっ! お前っっ!!!」


魔法使い「なんだい、僕のお陰で君はこうして生きてるんじゃないか」


女騎士「ふざけるなっっ!!! お前は私たちを裏切ったんだぞっっ!!」


魔法使い「うるさいなぁ...また、ひどいことされたいの?」


女騎士「──っっ...!!!」ビクッ


魔法使い「怯えちゃって...馬鹿力なのに女っぽさは残ってるんだな」スッ


女騎士「────近寄るなっ!!」


魔法使い「ふふふ...」


女騎士「ひっ...いやっ...」


魔法使い「綺麗な耳飾りだね、女勇者がくれたんだっけ...でももう二度と会えないよ?」


魔法使い「お前はここで...僕の奴隷になるんだ...楽しみにしててごらん」


いやらしく耳元でささやく彼は魔法使い、勇者一向の裏切り者。

そして彼女は女騎士、不幸にも囚われてしまった逞しき者。

女を捨て武の道に心を貫いたというのに、彼女はすでに折られてしまっていた。


~~~~



376: ◆O.FqorSBYM 2018/12/02(日) 22:09:29.70 ID:t/n958LI0


~~~~


隊長「ここが...暗黒街...」


魔女「そうよ、あんまり人と目を合さない方がいいわよ」


隊長「...」


隊長(...スラム街か)


見渡すと、そこいらに浮浪者が寝そべっている。

その者達は醜く、そしてどこかでみたような顔つきをしている。

バツが悪い顔をして、魔女が耳打ちをする。


魔女「ここの街には、快楽作用のある薬が流通してるみたいなのよ」ボソッ


隊長(...ドラッグか)


隊長「...どの世界も一緒だな」


魔女「え...?」


隊長「...進もう、絡まれたら面倒だ」


魔女「そうね、いきましょ」


隊長「ところで、どこで情報収集をするか」


魔女「うーん...こんな街だけど、中心部は富裕層がいて安全だからそこにしましょう」


隊長「...おう」


~~~~


~~~~


隊長「...やたらと暗いな、この街は」


中心部、そこは先程のスラム街とは打って変わって綺羅びやか。

とは言い切れず、いたる建物が黒く、暗黒に満ちていた。


魔女「あ、あそこに掲示板があるわよ」


隊長「...どれどれ」


魔女「う~ん...どれもどうでもいい情報ばかりね」


―――ポタッ...

肌に感じる水気、ふと見上げてみるとそこには濃い雨雲が。

これは一雨どころか、局地的豪雨が予想できる降り方であった。


隊長「...ん?」



377: ◆O.FqorSBYM 2018/12/02(日) 22:10:38.98 ID:t/n958LI0


魔女「最悪...雨ね...」


隊長「しかたない...あの建物の軒先に避難しよう」


指示通り彼らは雨宿りを開始する。

強い振り方の雨、地面に打ち付ける音がやけに心地良い。

その様子を沈黙しながら、ただ見つめているだけであった。


隊長「...」


魔女「...」


隊長「...どうするか」


魔女「さすがに、風邪を引くのはいやね」


隊長「でも...この降り方はすぐ止みそうだな」


魔女「分かるの?」


隊長「あぁ...」


魔女「...そういえば、あんたは元の世界でなにをやってるの?」


隊長「うん? そうだな...」


隊長「犯罪者...罪を犯したものを捕まえている」


魔女「...へぇ、偉いことしてるわね」


隊長「聞こえはいいかもな...だが、仕方なく捕まえきれずに殺してしまう時がある」


魔女「...そう」


隊長「...」


魔女「...子どもとかいるの?」


隊長「...いると思うか?」


魔女「...思うわよ、甲斐性があるしね」


隊長「...子どもも妻もいない、ずっと独身だ」


魔女「へぇ...」


隊長「...」



378: ◆O.FqorSBYM 2018/12/02(日) 22:12:11.20 ID:t/n958LI0


魔女「...私は、雨は嫌いだけど、雨の音は好きよ」


隊長「...わからんでもない」


魔女「この雨音に紛れて、なにか大胆に行動したくなるのよね」


隊長「...」


魔女「...まぁ、いまは止んでくれるのを待ってるんだけどね」


隊長「そうだな...! クシュッ!」


魔女「ぷっ...可愛いくしゃみね」


隊長「うるせぇ...」


魔女「はぁ~もうつかれちゃった...地べたに座っちゃお...」ペタッ


隊長「...」


魔女「...魔王をどうにかしたら、どうするのあんたは」


隊長「...大賢者が言うには、魔王が元の世界に戻れる魔法を使えるらしいからな」


隊長「...魔王を倒して、帽子の願いを果たし...そしたら帰るってところだな」


魔女「...なら新しい魔王は、帽子の代わりに魔王子に任せればいいんじゃない?」


隊長「魔王子が信用できる奴ならの話だがな...」


隊長「魔王子が信頼できなければ、このまま二人で進み...魔王を倒すだけだ」


魔女「...新しい魔王はどうするのよ?」


隊長「...」ジー


魔女「...私は嫌だからねっ!」


隊長「はぁ...こうなれば今の魔王に無理やり要求を飲むまで説得だな」


魔女「...拷問?」


隊長「場合によってはあり得る」


魔女「魔王に拷問する人間なんて前代未聞よ...」



379: ◆O.FqorSBYM 2018/12/02(日) 22:14:11.35 ID:t/n958LI0


隊長「そうなりたくなければ魔王子に祈っとけ、そもそも出会えるかわからんがな」


魔女「はいはい、あー神様、どうかうまくことを進めて下さい」


隊長(神...か)


(「神業を受け取るんだ」)


(「これは魔法ではない! 神のご加護は無意味だっ!!」)


隊長が出会った神を名乗る者、それは彼に神業とやらの力を与えた。

だが別の神なのだろうか、それは塀の都の民たちを狂わせた。

同じ神でもここまで違うのか、だが隊長はある1つの共通点を見出していた。


隊長(俺のあの神業とやらと...あの光る槍の力はどこか似ていたような...)


隊長(魔法の無力化...俺もあの時、魔闘士の魔法を無力化してたのか?)


(魔闘士「残念ながら、魔法は得意じゃない...」)


隊長(いや...そうではないのかもしれない...)


隊長(そしてこのユニコーンの魔剣...これも神業に似ている...)


(大賢者「...あくまで仮説じゃが、その魔剣には光属性の魔力を感じる」)


隊長(ユニコーンの魔剣=神業なら...俺に宿っているのは光属性のなにかなのだろうか)


隊長(...だめだ、魔法に関してはからっきしだ)


隊長「...魔女、光属性ってどんなものなんだ?」


魔女「ふわぁ~あ、ごめん知らないわよ」


魔女「光属性と闇属性は参考資料が少なすぎて大賢者様ですら詳しくわからないのよ」


隊長「...まぁそのうちわかるか」


魔女「なによ」


隊長「なんでもない...ん?」


──ポタッ...ポタッ...

彼が深く考え事をしている間に、彼女が眠気と抗っている間に。

薄暗い暗黒街に太陽の明かりが刺した、雨は過ぎ去ったようだった。


魔女「止んだわね」


隊長「ひとまず、ここで魔王子を探そう」


魔女「まぁ、暗黒街にすらいない可能性のほうが大きいけどね...」


~~~~



380: ◆O.FqorSBYM 2018/12/02(日) 22:15:25.76 ID:t/n958LI0


~~~~


??1「あァ...だりィな...やっと雨があがったか」


??2「フン...うるさい奴だ...」


??1「あァ? なんだ魔闘士ィ...やんのか?」


そこにいたのは、例の2人組であった。

1人はとてつもなく奇妙な大剣を背負い、ゴロツキのような喋り方。

もう1人は只ならぬ雰囲気を醸し出している、見間違えるはずがない。


魔闘士「...竜の魔剣士と名高いお前も、案外餓鬼だな」


魔剣士「うっせーな...ってか本当にここに魔王子いんのかァ?」


魔闘士「魔王と戦った後、最後に目撃があったのはここ..."暗黒街"だ」


魔剣士「...さっさと魔王子見つけて、魔王ぶっ飛ばしにいこうぜ?」


魔剣士「あのクソ爺、痴呆始まってかしらねェけど...やる事無茶苦茶でやる気でねェぜ」


魔闘士「知るか、俺はただ魔王子に着いていくだけだ」


魔剣士「へいへい、信頼の厚い部下なこったァ...」


──ポタッ...ポタッ...

先程降ったばかりだというのに、太陽も覗き込んでいるというのに。

お天気雨、再び大地に恵みが降り立つ予兆。


魔闘士「また...雨か、面倒だな」


魔剣士「冷えるのは勘弁だ、酒屋にいこうぜ?」


魔闘士「...仕方ないな」


魔剣士「あァ...でも、このまま魔王子がいなければ人間界ともおさらばか...人間の造った酒はうまかったなァ」


魔闘士「フン、どうでもいいな」


魔剣士「お前なァ...魔王子大好きっ子かよ...」


魔闘士「そういうお前は、酒大好きっ子だな」


魔剣士「あァ? やんのかァ?」


魔闘士「...ひとまず、雨を避けるぞ」


魔剣士「あァ」


~~~~



381: ◆O.FqorSBYM 2018/12/02(日) 22:16:24.96 ID:t/n958LI0


~~~~


隊長「...」


魔女「...まともな人間いないわね」


隊長「魔王子のことを聞いても、薬か酒の話になるな...」


魔女「はぁ...どうしよ」


──ポタッ...ポタッ...

先程降ったばかりだというのに、太陽も覗き込んでいるというのに。

お天気雨、再び大地に恵みが降り立つ予兆。

それは当然彼らにも襲いかかった。


隊長「またか...最悪だな」


魔女「また雨...! そうだっ!」


魔女「酒屋なら雨宿りになるし、話が通じるんじゃないの?」


隊長「...そうだな、話ができない奴だと店として成り立たないからな」


魔女「そうと決まれば、行きましょう?」


隊長「...本題は酒じゃなくて、情報だからな?」


魔女「わ、わかってるわよっ!」


~~~~


~~~~


──からんからんっ

雰囲気が暗いこの街にしては、軽快な音であった。

人の入りは少ないが、ここは歴としたお店。

やや寡黙な酒屋の主人がそこにいた。


酒屋「...いらっしゃい」


隊長「すまない、聞きたいことが」


酒屋「...聞きたいことは、注文をしてからにしろ」


魔女「じゃあ、私は葡萄酒にしようかしら」


酒屋「...あんたは?」


隊長「...水だ」


酒屋「湿気てんな...」


魔女「湿気てるわね...」



382: ◆O.FqorSBYM 2018/12/02(日) 22:17:22.14 ID:t/n958LI0


隊長「...」


酒屋「...座って待ってろ」


魔女「ほら、いきましょ?」


隊長「はぁっ...」


──からんからんっ

隊長と魔女が椅子に座ると新たなお客様が。

なぜその顔ぶれがここで見れてしまうのか。

先に店内にいた彼らはその光景に驚いてしまう。


酒屋「...いらっしゃい」


魔剣士「適当に2杯たの────」ピクッ


魔闘士「────ッ!」ギロッ


隊長「──なッ...!?」


魔女「ど、どうしたの?」


魔闘士「なぜ貴様がここに...」


魔剣士「へェ...面白れェ偶然だな」


魔女「...ねぇ、誰なの?」


隊長「魔闘士と魔剣士だ...ッ!」


魔女「──こいつらがっ...!?」


魔剣士「おいおい...戦いに来たわけじゃねェからな?」


魔闘士「...お前に構っている暇などない」


隊長「...ッ!」


魔女「ど、どうするの?」


酒屋「なんだ、お前たち仲間か」


隊長「違う...」


酒屋「仲間なら、奥の4人席に座ってくれ...そこは騒がれると邪魔だ」


~~~~



383: ◆O.FqorSBYM 2018/12/02(日) 22:18:13.98 ID:t/n958LI0


~~~~


魔剣士「で...なんで素直に4人で座ってんだァ?」


魔闘士「知るか」


隊長「...」


魔女「...ここの葡萄酒おいしいわね」


魔剣士「呑気な嬢ちゃんだなァ...こっちは数日前、命かけた戦いをしてた相手なんだぜ...?」


魔女「わ、私は闘ってないし...」


魔剣士「肝座ってるんだが、座ってないんだか...」


魔闘士「...」


隊長「...」


魔剣士「さっさと酒飲んで行こうぜェ? 魔闘士よォ」


隊長「...ちょっとまて」


魔剣士「あァ?」


隊長「お前たちは魔王子を探してるんだよな?」


魔剣士「...そォだ」


隊長「...お前らがここにいるってことは、ここのどこかに魔王子がいるってことだな?」


魔剣士「...」


魔闘士「...貴様」


魔剣士「わりィがよ...返答次第で殺すぞ」



384: ◆O.FqorSBYM 2018/12/02(日) 22:18:41.40 ID:t/n958LI0











「魔王子に何の用だァ...?」












385: ◆O.FqorSBYM 2018/12/02(日) 22:20:29.45 ID:t/n958LI0


魔女「ひっ...!」


──ピリピリピリッ...!

初めて目の当たりにする、圧倒的な実力者の怒気。

思わず魔女は声を上げてしまうが、隊長は臆せずに会話を進める。


魔剣士「...早く答えろ」


隊長「...俺たちは魔王子を仲間にし、魔王を倒す」


魔剣士「...はァ?」


隊長「そして最後に魔王に無理やり、平和的交渉をうなずかせこの世界を平和にすることだ」


隊長「魔王が頷かない場合は無理やり辞退させ、新しい魔王を魔王子に就任してもらい平和的交渉をうなずいてもらう」


魔剣士「...本気か?」


隊長「...本気だ」


魔闘士「...もう少し、賢いと思っていたが...とんだ馬鹿だな」


隊長「悪いが、託されたんでな」


魔剣士「託されたァ...?」


魔剣士「...そういえばそのユニコーンの魔剣、なんでお前がもってんだァ?」


魔剣士「アイツはどうした、あの帽子被った奴」


魔女「...」


隊長「...」


答えることはできない、まだその現実を完全に受け入れていないからであった。

だがその様子をみて察することのできない者なのいない。

口を開かない彼らの代わりに、魔剣士が事実をつきつける。


魔闘士「...死んだか」


隊長「────あぁ」


魔剣士「なるほどねェ...ま、ユニコーンが懐く位だ、そんなこと託すわけだなァ」


魔剣士「...だが、それは無理だなァ」


隊長「...」


魔闘士「確かに、恐らくだが魔王子は魔王を討とうするだろう...利害の一致でも狙ったか、だが」


魔剣士「...お前らじゃ足手まといだ、いらねェんだよ」


魔闘士「さらに、魔王子は平和などに興味はないだろう」



386: ◆O.FqorSBYM 2018/12/02(日) 22:22:01.75 ID:t/n958LI0


隊長「...」


魔剣士「まっ、お前らは指くわえてみてろってなァ」


隊長「...ダメだ、帽子が無念だ」


隊長「せめて、魔王子に会わせろ」


魔剣士「...誰に向かって口聞いてんだ...あァ...?」


魔闘士「人間程度が、調子に乗るなよ...!」


隊長「魔王子が平和を勝ち取るのであれは身を引こう」


隊長「...そうでない場合は」


魔剣士「...ヤるつもりっていうのかァ?」


隊長「...」


魔剣士「ふざけるなよ...人間の甘っちょろい考えが通じてると思うなァ?」


魔剣士「平和ァ? ふざけるな...てめェの言う平和ってのは魔物を迫害することじゃねェか...」


隊長「...帽子の思想はそんなモノではない」


魔剣士「知るかァ...興味ねェな────」ピクッ


興味などない、それは嘘であった。

1つの要素が帽子という男の正体を証明していた。

あのユニコーンが魔剣となり、その男に従えているという事実が魔剣士に興味を沸かせていた。


魔剣士「...」


隊長「帽子の言う平和とは、人間だけの一方的な平和ではない」


隊長「...人間と魔物の共存だ」


魔剣士「...ケッ、あまェ...砂糖よりあめェよ」


隊長「アイツは根っからの甘い奴だ」


隊長「だが、それで海底都市の戦争を止めた」



387: ◆O.FqorSBYM 2018/12/02(日) 22:23:39.41 ID:t/n958LI0


魔剣士「...海底都市だァ?」


隊長「帽子の思想...ただの脳天気野郎と同じにしてもらっては困る」


魔剣士「...海底都市の真偽はともかく、ユニコーンのことを見るとそうみてェだけどよォ...」


魔剣士「...チィ! うまく反論できねェなァ!!! 畜生がァ!!!」


反論ができない、この馬鹿正直な人間に与える言葉が見つからない。

だがそんな中魔闘士が口を開いた、それは意外な言葉であった。

一度拳を交えた関係性だからだろうか、なぜ彼は隊長に施すのか。


魔闘士「...いいだろう」


隊長「──ッ!」


魔闘士「会うだけなら、許してやる」


魔闘士「だがそれ以上のことは魔王子、本人に祈れ」


魔女「うへぇ...うまくいったわねぇ」


隊長「そうでなくては、帽子が困る」


魔剣士「たくよォ...馬鹿みてェな反論されるとこっちは何も言い返せねェぜ...」


魔闘士「だが...1つ問題がある」


隊長「...なんだ?」


魔闘士「この暗黒街の地下に隠された遺跡がある、その奥に魔王子はいるだろう」


隊長「...どうしてわかる」


魔闘士「...ここが、魔王子が最後に目撃された場所だからだ」


魔闘士「それに、魔王の部下の配置にもある」


隊長「配置...?」


魔闘士「...魔王はそこに"異端者"を配置している」


隊長「...」


魔闘士「俺が無理やり口を割らせた魔王軍の奴によると、そうらしい」


魔闘士「アイツは俺たちでも厄介だ...近づけさせないようにしてるとしか思えない」


魔剣士「異端者なァ...あのアホは半端無くだりィな...」



388: ◆O.FqorSBYM 2018/12/02(日) 22:24:58.90 ID:t/n958LI0


魔闘士「...そして恐らく、魔王によって魔王子は封印されているだろう」


隊長「...異端者を倒し、その封印を解けば完了か」


魔闘士「...まぁそういうことだ、遺跡も恐らく罠だらけだろう」


隊長「では、早速いくか」


魔闘士「...最初の問題は遺跡を探す所だな」


隊長「...魔王の配置は知っているのに、遺跡の場所はわからんのか」


魔闘士「...」


魔剣士「しょーがねェよ、魔闘士は案外抜けてる所あるからよォ」


魔闘士「黙れ」


魔剣士「おーこわ」


魔女「...ってことは、また情報収集...?」


隊長「...そういうことになるな」


~~~~


~~~~


魔剣士「じゃ、月が真上になったらまたこの酒場に集合だ」


魔闘士「...」


隊長「あぁ...頼んだぞ」


魔剣士「へいへい...なんでこんな事なっちまっただァ?」


魔闘士「...我々がユニコーンについて熟知していたからだな」


魔剣士「あァ...アイツに懐かれたことなんざ、ここ500年生きてるけど一度もねェな」


魔闘士「...それを説得に持って来られたら、こちらは反論できん」


魔剣士「...めんどくせェ」


わりと俗世めいたことを語りながら、夕焼けに消えていった。

一時的に、魔王子と対面するところまでは協力体制することになった。

これほど心強い者たちはいない、そんな彼らを見送ると隊長たちも動き出した。


隊長「さて、こちらも探すか」


魔女「...不審な箇所を町の人に聞けばいいのかしら」


隊長「そうだな」


~~~~



389: ◆O.FqorSBYM 2018/12/02(日) 22:25:37.77 ID:t/n958LI0


~~~~


隊長「...収穫なしか」


魔女「まともなやつを見つけても、特に答えがなしってのが応えるわね...」


隊長「はぁ...あいつらに小言を言われそうだ」


魔女「こうなったらこの街の地図から怪しいと思った場所にいきましょ」


隊長「...とりあえず、地図が張ってある掲示板のところにいくか」


魔女「そうね...」


~~~~


~~~~


魔女「...特に地図をみても解決しなかったわね」


隊長「...手詰まりか」


魔女「はぁ...人訪ねしかないようね」


隊長「途方も無いな」


魔女「うーん...あ、丁度いいところに人が...あの~っ!」


そこに人が通りかかる、その様子には至って健常。

薬物中毒ではなさそうだ、これなら会話が可能だろう。

だが彼は、1つだけ違和感を覚えていた。


???「...なんですか?」


隊長(...こいつ、どこかで見たような)


魔女「ここらへんで、なにか怪しい場所を探してるんですが...遺跡の入り口とか」


隊長(魔女の質問も...なんか間抜けだな)


???「...知らないね」


隊長(──...?)ピクッ


魔女「そ、そうですか...では」


???「僕は急いでるんだ、じゃあね」



390: ◆O.FqorSBYM 2018/12/02(日) 22:26:40.48 ID:t/n958LI0


隊長「...まて」


???「...なんだ?」


隊長「散歩でもしてるのか?」


???「...そうだ」


隊長「この冷える夜、それに散歩にしてはすごい汗だな」


???「...」


魔女「ちょ、ちょっと...なに言ってるのよ」


隊長「...」


隊長には確証がなかった、が長年犯罪者の口を割らせている。

質問を答えた時の表情、経験、勘を頼りにし強引に話を進める。

証拠もないのに始めたこの尋問、隊長の世界では許されないだろう。


???「...た、たまたま汗をかいてるだけだ...そういう体質なんでな」


???「何度も言わせるな、僕は急いで家に戻りたい」


隊長「...あぁ、悪かったな」


そういうと、尋ねた者は早足で去っていった。

そんな彼から目線を逸らさずに、去っていった方向を注視する。


魔女「どうしたのよ...」


隊長「...尾行するぞ」


魔女「...へっ?」


隊長「...あいつはお前の質問に対して嘘をついている気がする」


魔女「そうなの...?」


隊長「...正直、なにも進まない人尋ねよりはマシだ」


魔女「まぁね...どうしようもないし尾行しましょ」



391: ◆O.FqorSBYM 2018/12/02(日) 22:27:17.58 ID:t/n958LI0


魔女「...そういえば、あの人から強い魔力を感じたわね」


隊長「そうなのか?」


魔女「うん、女賢者さんぐらいのね...それがこの街にいるって考えると、ちょっと怪しかったかもね」


魔女「多くの人は、この暗黒街に好感を持ってないから...家なんてここに持ちたくないし」


魔女「あれだけ強い魔力をもってるなら、暗黒街からいつでも引っ越すことも簡単だろうしね」


隊長「そうか...遺跡でないにしろ、なにか手がかりがあることを祈ろう」


~~~~


~~~~


魔闘士「...」


魔剣士「手がかりねェな」


魔闘士「...1つだけ、遺跡には関係ないが情報を手に入れた」


魔剣士「あァ?」


魔闘士「...勇者一行の"魔法使い"がこの街にいるらしい」


魔剣士「勇者ァ? なんでだ?」


魔闘士「ここは魔界に行くには通らざるえない場所ではあるが...」


魔剣士「盗人、ヤク中、ゴロツキがうようよだ、長いこと滞在したくねェな」


魔闘士「...情報によると、1週間はいる計算になる」


魔剣士「...くせェな」


魔闘士「...魔法使いを探すぞ」


魔剣士「あァ」


~~~~



392: ◆O.FqorSBYM 2018/12/02(日) 22:28:13.16 ID:t/n958LI0


~~~~


隊長「...」


魔女「...」


???「...」


隊長「あそこが家か...」


魔女「えらく、郊外なのね」


隊長「...普通の民家のようだな」


──ガチャッ...バタンッ!

先程の男を尾行する、すると彼は家に到着したようだった。

家の外観には特に不審なところはない、だからといって家の中に踏むこむ訳にはいかない。

己の猜疑心は過敏すぎたようだ、どうやら慧眼は鈍ったのかもしれない。


隊長(...どうやら、見当違いか...疑ってすまなかったな)


隊長「魔女、引き上げ...」


魔女「うぇ~...」


隊長「...どうした?」


魔女「な、なんかすごい...気分がおかしくなる臭いがする...」


隊長「...? 俺には感じないぞ」


魔女「気持ち悪い...」


隊長「...」


魔女はほんのり、頬を紅潮させている。

まるでアルコールを摂取したかのように表情が軽くとろけている。

そんな女の顔をされ、隊長はたじろぐしかなかった。


隊長「だ、大丈夫か?」


魔女「ちょっと...大丈夫じゃないかも...うぇ────」


――あぐぅっ!!!!

その時だった、先程の男の家からそれは聞こえた。

口をふさがれてるような女の人の叫び声、魔女ではない。



393: ◆O.FqorSBYM 2018/12/02(日) 22:31:07.36 ID:t/n958LI0


隊長「──今、建物の中からッ!?」


魔女「う...い、いってみよう...」


隊長「...お前はここで待ってろ、すこし離れて休め」


魔女「げぇ...そ、そうする...ごめんね...」


隊長「...」


──ガチャッ...バタンッ!

彼は一般市民に家に突入した、これは許されることではない。

特殊部隊である彼が無許可でソレをするならば、不祥事トップニュースの仲間入りだろう。


~~~~


~~~~


隊長(...暗いな)


――パリンッ!

隊長はアサルトライフルを構えながら、今まで出番のなかったライトを照らす。

建物が少しだけ、灯りに満たされる。すると内装がみえる。


隊長(何かを踏んでしまったか...)


隊長「これは...」


建物の中、注射器が大量に転がっていた。

隊長も見たことが有る光景、麻薬中毒者の家に似ている。


隊長(...女の叫び声...少なくとも被害者がいるのか)


隊長(遺跡の手がかりでないにしろ...進んでみる価値はあったな)


隊長「...」


隊長(血なまぐさいな...)


―――ぐぅぅぅぅっっっ!!!

そして消えたのは、唸り声。

それは下から聞こえる、どうやら地下室があるみたいだ。


隊長(唸り声...下からか...階段を探そう)


??1「ははは! いい声だねぇ女騎士ぃ!!!!」


??2「もっ...もお...やめへぇ...」


隊長(...性犯罪者で、麻薬中毒か...そんな奴は俺の世界にゴミのようにいたな)



394: ◆O.FqorSBYM 2018/12/02(日) 22:32:15.10 ID:t/n958LI0


隊長(階段か...そろそろライトを消すか)


階段を下っていく、そしてライトを消して暗闇に身を隠す。

目はもう慣れており少しぐらいなら周りが見えていた。

女の悲鳴が響き渡る、どうやらあの男は性犯罪者であることは間違いないようだった。


隊長「...」


隊長(...扉の向こうにいるな)


??2「あっ...あひっ...やだぁっ...」


??1「早く、僕に素直になりなよ」


??2「くっ...わっ、わたしはぁ...屈しないっ...!」


??1「とかいいつつ、すっかり僕のを気に入ってるじゃないか」


??2「それはっ...薬を使ってるからだろっ...!」


??1「...本当にそう?」


??2「こっ...いつぅ...裏切り者...めっ...!」


??2「おまえが裏切ったからっ...女勇者は魔王軍にっ...!」


??1「知らないね、僕は君とこうしてたかったんだよ」


??2「...くずがっ!」


隊長「...Scum■■」スッ


―――ドガァァァァッッッッ!!!!

怒りがこみ上げる、隊長がドアを蹴破った。

そしてユニコーンの魔剣が一瞬だけ黒く光っていた。


??1「──なっ!?」


隊長「────Fuck off...」スチャ


──ババッッッ

容赦のない射撃、それは男の足に被弾する。

当然その痛みに耐えられるわけもなく、彼は跪いた。


??1「──がああああああああああ足があああああああああっっ!!!」



395: ◆O.FqorSBYM 2018/12/02(日) 22:33:14.33 ID:t/n958LI0


隊長「―――ッッ!!!」スッ


──バキィィッッ...!

先ほどの尋ね人が軽く吹っ飛ぶ、強烈なアッパーであった。

そして隊長は直ぐにマウントポディションを取り、拘束する。


隊長「...動くな」スチャ


??1「ッ...!? お前はさっきの...ッ!?」


??1「くそっ!! 足がっ...!」


隊長「...お前が存在しているだけで、吐き気がする」


??1「な、なんだとっ!!」


隊長「...Die」


―――バッ

そして彼はその軽すぎる引き金を引いた。

脳天に直撃、耐えられるわけがなかった。


??1「――──」ガクン


隊長「...」


??2「...殺したのか?」


隊長にしてはらしくない行動であった。

どうやら拘束魔法を受けていたようだ、それが解けて女が裸で近寄ってきた。


隊長「...不味かったか?」


??2「...いいや、そんな屑、死んで当然だ」


隊長「...お前は?」


女騎士「...女騎士だ、そいつは魔法使い...裏切り者だ」


魔法使い「―――─」


女騎士「...お前は?」


隊長「...Captainだ」


女騎士「きゃぷてんか...助かったぞ」


隊長「礼は後だ、その格好を何とかしてくれ、目も合わせられん」


彼女の名前は女騎士、そしてこの卑劣漢は魔法使いと言うらしい。

薄暗い部屋のなか、女らしく適度に肉々しい桃色の身体がうっすら見えている。



396: ◆O.FqorSBYM 2018/12/02(日) 22:34:12.01 ID:t/n958LI0


女騎士「あっ...す、すまない...」


隊長「...この落ちている布を使え」


女騎士「あぁ...」


隊長「...一度、外にでるぞ」


~~~~


~~~~


隊長「...!」ガチャッ


扉を開け、外の空気を感じ取る。

するとそこには彼ら2人が魔女の様子を眺めながら待っていた。


魔剣士「あァ、待ってたぜ」


隊長「魔剣士、魔闘士もか」


魔闘士「...どうやら、一足遅かったようだな」


魔剣士「やるねェ」


魔女「あぁ...やっと楽になった」


女騎士「...うん?」


魔闘士「...誰だ?」


魔剣士「誰だよ?」


魔女「ほぼ裸じゃない...」


隊長「...魔法使いとやらに拘束され、暴行を受けていたみたいだ」


魔剣士「なるほどなァ...って、お前勇者一行の女騎士じゃねェか?」


女騎士「──なぜ知っている!」


魔剣士「至る所の都の新聞で写真が記載されてんだ、分かるに決まってんだろ...」


魔闘士「...魔法使いはどうした?」


隊長「...やむなく殺した」


魔女「...!」


魔闘士「...まぁいい、この建物を調べよう」



397: ◆O.FqorSBYM 2018/12/02(日) 22:35:02.07 ID:t/n958LI0


魔剣士「ところで、女勇者はどこだよォ...なんでお前らだけがここに居るんだァ?」


女騎士「...話せば長くなる」


魔剣士「...要点だけ言ってみろ」


女騎士「...ここの近くで魔法使いに裏切られ、女勇者は魔王軍に連れて行かれた」


女騎士「そして私は...魔法使いに...」


魔剣士「...なるほどなァ、結構面倒くせェ事態だな」


魔女「ね、ねぇ...大丈夫なの?」


女騎士「あぁ...大丈夫だ...女の自分はとうに捨てた...」


女騎士「捨てた...はずだったのに...っ...っ!」


隊長「...魔女、女騎士とここで休んでいてくれ」


魔女「うん...もう大丈夫だからね?」


女騎士「っ...あ、あぁ...っ!」


隊長「俺たちは建物の散策に入る」


魔闘士「...誰に指示をしている?」


魔剣士「いいんじゃね? こいつ、お前より指示がうまいぜェ?」


魔闘士「...」


~~~~



398: ◆O.FqorSBYM 2018/12/02(日) 22:35:37.77 ID:t/n958LI0


~~~~


魔剣士「...くせェ」


隊長「...なにも感じないぞ」


魔闘士「...これは淫魔の雄の血か」


魔剣士「あァ...雌にだけ効果絶大のヤツか」


魔闘士「俺たちにはただ臭いだけだな」


隊長「そうなのか...」


魔闘士「...この死骸が魔法使いか」


隊長「...おい、この服の中にこれが」


魔剣士「手紙ィ?」


隊長「...」


魔闘士「...なるほど」


隊長「どうやら、ここが当たりだったようだな」


魔闘士「魔王の側近からの手紙か...」


魔剣士「なになに...貴様に遺跡の番人を任せるゥ?」


魔闘士「...女勇者を裏切ったわけではなく、最初から魔王側だったようだな」


隊長「...徹底的にここを調べよう」


魔闘士「そんなことはわかっている...」


魔剣士「それより一旦でようぜ? 長いこと居ると臭くてたまんねェわ」


隊長「...これは」


~~~~



399: ◆O.FqorSBYM 2018/12/02(日) 22:38:46.79 ID:t/n958LI0


~~~~


魔女「あなた、何歳?」


女騎士「...20だ」


魔女「本当? 私も20よ!」


女騎士「そうなのか...」


魔女「...」


女騎士「...」


魔女(か、会話が続かない...そりゃ元気ないならそうなるわよね...)


女騎士「...なぁ、あのきゃぷてんとか言う男」


魔女「...なに?」


女騎士「凍った山を1人で制圧したそうだな」


魔女「知ってるの?」


女騎士「...麓の村で聞いた」


魔女「...今、その話をあいつにしないほうがいいわよ」


女騎士「...すまない、私たちが訪れたから」


魔女「...やったのは魔王軍よ、あんたたちのせいじゃない」


女騎士「...ありがとう」


魔女「...」


――ガチャッ...

扉を開けると、充満する嫌な匂いが微かに香る。

よく見ると扉だけではなく窓も全開、どうやら換気をすることにした様だった。


魔剣士「あァ...新鮮な空気だ」


魔闘士「雄淫魔の血は、人間の雄には何も感じないと聞いたが...本当だったな」


隊長「ふぅ...」


魔女「...おかえり」


隊長「あぁ...おい、女騎士」


女騎士「なんだ?」



400: ◆O.FqorSBYM 2018/12/02(日) 22:41:29.72 ID:t/n958LI0


隊長「これ、お前のだろ」


──ガシャンッ!

隊長が持ってきた鎧と巨大なランスを地面に置く。

鎧は男モノにしては細すぎる、そして胸部は膨らんでいる。

どう考えても女騎士の装備であることは間違いない。


女騎士「私の装備...あったのか!」


隊長「それを着れば、人目を注目させないだろう...裸よりはな」


女騎士「...助かる」


魔女「なにか、手がかりあったの?」


隊長「あぁ...ここに遺跡の入り口があるのは間違いないようだ」


魔女「...運がいいわね」


隊長「自分でもびっくりするぐらいな...」


魔剣士「で、今からもう潜入するのか?」


隊長「...悪いが、人間の俺はそろそろ眠気が限界だ」


魔剣士「大丈夫だ、魔物もそこは同じ...眠ィ」


隊長「なら、今日はここで夜を越そう」


魔剣士「そんじゃ、俺様はさっさと寝るぜェ」


魔闘士「...なぜ、俺の指示には文句をいうくせに、あの人間の指示には従順なんだ?」


魔剣士「あァ...? アイツのほうが上に立つ者としての威厳が似合ってるからだ」


魔剣士「お前の指示は、なんか偉そうなだけなんだよ」


魔闘士「...貴様」


隊長(...こいつら、案外面白いな)



401: ◆O.FqorSBYM 2018/12/02(日) 22:42:41.59 ID:t/n958LI0


魔剣士「そもそも、別に個人的に憎しみ合ってるわけじゃねェしな...」


魔剣士「アイツらと戦ったのも、お前が興味あるとかいって暗黒街よりも先に向かったからだろ?」


魔闘士「...」


魔剣士「それに俺様も巻き込みやがって...楽しかったからいいものをよォ...」


魔剣士「まっ、コレ以上はお前が可哀想だし、寝るわ」


魔闘士「...」


魔女(...もうすでに可哀想なんだけど)


女騎士「着替えたぞ」


隊長「あぁ、今日はここで野宿をする」


女騎士「そうか...ところできゃぷてん」


隊長「...何だ?」


女騎士「お前の旅、魔女から聞いた」


隊長「...」


女騎士「魔王軍に攫われた、女勇者...まだ生きてるかもしれない」


女騎士「そもそも、私の旅も魔王を討つため...」


女騎士「...私も、お前の旅に付いて行ってもいいか?」


魔女「ちょっ...」


隊長「...好きにしろ」


女騎士「よろしく頼む!」


魔女「...」ゲシッ


隊長「な、なんで蹴るんだ...?」


魔女「し~らないっ! よろしくね! 女騎士!」


女騎士「女同士、仲良くしてくれ! 魔女!」


~~~~



403: ◆O.FqorSBYM 2018/12/03(月) 22:04:03.91 ID:lsIBK8rn0


~~~~


魔剣士「だァァ、ねみィ...」


魔闘士「もう朝だ、さっさと行くぞ」


隊長「...」


魔女「ふわぁ~あ...」


女騎士「朝だというのに、暗黒街は薄暗いな...」


──ガチャッ...

朝の気だるい雰囲気は、人間も魔物も一緒であった。

そんな中彼らは扉を開け、この民家へと突入する。


魔女「建物の中はもっと暗いわね...」


隊長「...魔女、コレを使え」スッ


魔女「な、なにこれ...すごい灯りね」


魔闘士「...あの武器といい、珍妙なものを持っているな」


隊長「話せば長くなる...」


女騎士「凄いな、照らした先がとても明るい」


彼が魔女に手渡したのは、軍用のライトであった。

だがそれが珍しくて仕方ない、それは当然この世界に存在しないからであった。

太陽光充電式の軍用ライトがこの真っ暗な建物内を照らす。


魔女「これなら、大丈夫ね」


魔剣士「カァ...グゥ...」コックリ


魔闘士「おい、さっさと起きろ」バキッ


魔剣士「──ってェ!! なにしやがるゥッ!?」



404: ◆O.FqorSBYM 2018/12/03(月) 22:05:35.41 ID:lsIBK8rn0


魔女「...微かに臭い」


魔闘士「淫魔の血は濃いからな...これでも大分薄くなったほうだ」


魔女「うげぇ...」


女騎士「私は身体に注射されていたから、もう臭いなど感じないな...」


魔女「...大変だったのね」


女騎士「過ぎたことを悩んでていても仕方ない」


隊長(...逞しいな)


魔闘士「勇者一向に選ばれただけはあるな」


魔剣士「つーかァ...どこにも入り口はねェな」


魔闘士「フン...」


隊長「...」


魔女「魔法で隠してるとか?」


魔闘士「...その気配はない」


女騎士「隠し部屋もないみたいだぞ」


──ふわふわっ...

そんなときであった、この逞しい女性に異変が起きた。

暗くて見にくかったが女騎士の長い髪が揺れた、室内だというのに。


魔剣士「...風?」


隊長「...どうやら隠し通路が見つかったな」


魔闘士「...なるほどな」


魔剣士「...あァ、そういうことか」


魔女「...」スッ


魔女が自分の手袋を脱がし、指をなめてかざしてみる。

すると感じ取れたのは、空気が移動している様子であった。


魔女「...こっちの方から風が来てるわね」


魔剣士「なるほどなァ...じゃあ、俺様の出番か」スッ



405: ◆O.FqorSBYM 2018/12/03(月) 22:06:50.95 ID:lsIBK8rn0


隊長「なにをする気だ?」


魔剣士「まァみとけってなァ...」ブンッ


―――ドガァッッッッ!!!!

魔剣士が剣を振りかざすと、何かが飛び出した。

その何かが地下室の壁を崩した、その様子を見て女騎士はつぶやいた。


女騎士「...剣気か」


隊長「剣気...?」


魔女「飛ぶ斬撃みたいなものね...ウルフも、これに似たようなのを使ってたでしょ?」


隊長「...なるほどな」


魔剣士「単純に剣から衝撃を飛ばすだけだァ、慣れれば簡単だぜェ?」


女騎士「...ここまで細かく使えるとは、かなりの腕だな」


そんな魔剣士のおかげで、壁が秘密を打ち明けてくれた。

剣気が崩したそこにはどこかへとつながる暗闇の道が存在していた。


隊長「...道はあったようだな」


魔闘士「手間をかけやがって...」


隊長「...魔女、引き続き灯りを頼む」


魔女「えぇ...それにしても、暗いわね」


女騎士「...私は最後尾にて、殿を守ろう」


隊長「あぁ...助かる」


魔剣士「そんじゃ、俺様が先行するかァ」


暗い道、それは下りの階段になっている。

足元を取られないように皆が進んでいると空気感が変わる。

風の流れが強くなる、なにか大きな空間があるようだった。


魔剣士「...この先は広いみたいだな」


魔闘士「...ここまで暗いと敵わんな」


魔女「真っ暗ね...」


広い空間であろう場所に魔女が適当にライトを灯してみる。

そこには、大量の骸骨が野ざらしにされていた。


魔女「うわ...死体みたいね...」



406: ◆O.FqorSBYM 2018/12/03(月) 22:08:03.32 ID:lsIBK8rn0


隊長「...財宝目当ての者とかか?」


魔剣士「この遺跡に、そんな噂聞いたことねェな」


女騎士「どうする...このまま暗いと動きにくいぞ」


魔女「ちょっと試したことないけど...私に考えがあるわ」


隊長「...頼むぞ」


魔女「..."雷魔法"」


──バチバチバチッ...

魔女が放つ雷は、形状を保ちながら地下天上の中心あたりにとどまる。

雷というとても強い光源が、この広間の視界を開かせる。


魔女「ふっ...うっ...だ、大丈夫そう?」


魔闘士「...ほう、魔法をそのまま保つか」


魔剣士「器用なことできんなァ、俺様にはできねェ」


隊長(魔女の魔法が、人工太陽代わりになってるのか)


魔闘士「まぶしいな...だが、これでこの広い空間がはっきりわかったな」


女騎士「...これが、遺跡という奴か」


魔剣士「正式名称は、"黒の遺跡"だァ」


魔女「なんでこんなに黒いの?」


魔剣士「...遥か昔に、大量の魔物がここで殺されたらしいなァ」


魔剣士「その血が黒くなって、この遺跡に呪いを残したって魔界では伝えられているぜェ?」


隊長「...とにかく行くぞ」


魔闘士「──いや、まて」


──ガラガラガラッ...!

魔闘士が呼び止めると、奴らは動き出した。

それは遺跡の罠なのか、それとも心霊現象なのか。

魔女が先程照らした亡骸たちが動きだした。


女騎士「骸骨が動いたっ!?」


魔女「..."スケルトン"?」


魔闘士「いや...あれは...」


動く骸骨なら、スケルトンという魔物が妥当だろう。

だがそれは違う、動き出している骸骨の周りに存在する黒い光がそれを否定する。



407: ◆O.FqorSBYM 2018/12/03(月) 22:09:20.60 ID:lsIBK8rn0


魔剣士「..."死霊"か」


魔女「し、死霊って...そいつが骸骨に取り付いたってわけ...?」


女騎士「...死霊とは何だ?」


魔闘士「...亡骸に寄生する、超上級で希少な魔物だ」


魔闘士「触れられたら魂を持っていかれると言われている、即死攻撃をしてくる厄介者だ」


魔剣士「魔王の野郎...結構本気じゃねェか」


隊長「...どうしたらいい?」


魔闘士「とにかく、近寄らせるな...遠距離攻撃で骸骨を破壊すれば────」


隊長「──なら話は早いな」スチャ


──ババッ!

果たして、人を簡単に貫くことができるこの銃器に敵うだろうか。

死霊が取り憑いた亡骸はあっという間に砕け散る、そして宿主を失えばどうなるか。


死霊1「...ッ」


──ガラガラッ...

ただ、音を立てて崩れ去るだけであった。

寄生生物は宿主がいなければ生命活動などできない。


女騎士「速いな...!」


隊長「...俺が死霊をなんとかする」


魔闘士「...意気込むのはいいが」


死霊2「...」


死霊3「...」


死霊4「...」


魔闘士「...どうやら、順番待ちしているみたいだぞ」


魔剣士「気をつけろ、ここには寄生先になる屍が多いみたいだぜェ?」


隊長「...魔女ッ! 灯りを何としても保っておいてくれ!」


魔女「わかったわ! 私も隙をみて攻撃するわよっ!」



408: ◆O.FqorSBYM 2018/12/03(月) 22:10:27.94 ID:lsIBK8rn0


魔剣士「俺様も加勢するぜ...あんまり飛距離ねェけど...なァッッ!!」ブンッ


死霊2「────...ッ」


―――ドガァッッ!!!! ガラガラッ...!

射程の長い剣気を飛ばし、死霊を蹴散らす。

剣士が苦手とする近距離以外を、剣気で補う。

それがどれだけ優れたことなのか、残り2人はただ傍観するしかなかった。


魔闘士「...俺は役立ちそうにないな」


女騎士「...私はせめて、周りを注視しておこう」


──バババババッッッ!!!!

──ブンッッッ! ドガァッッッ!!!

──バチバチバチッッッ!!!!

三者三様の遠距離攻撃の音が響き渡る。

近距離を主軸にする2人は、前線の彼らの視野を補助するしかなかった。


女騎士「──前方に扉があるぞ!」


隊長「...このまま進むぞッ!」


魔剣士「たくゥ...きりねェなァ...!」


隊長「もう少しで扉だッッ!!! 保てッッ!!!」


魔剣士「わかってらァ!!!」


触れれば即死、その緊張感が彼らを焦らせる。

だが司令塔が冷静であるならば、焦燥感が足を引っ張ることはない。

隊長の的確な指示が幸いし、接触を許さないまま扉に到着することができた。


魔女「着いたっ!」


隊長「...入れッ!」


魔剣士「なんとかなったなァ...」


──ガチャッ...!

扉には鍵はかかっておらず、容易に進行が可能であった。

前線を歩いていた隊長と魔女と魔剣士が先に、魔闘士と女騎士が続こうとすると。


魔闘士「────ッ!?」


―――ガシャアアァァァァァァァァンッッ!!!

爆音と共に、激しい砂埃が舞い上がる。

まるで上からなにかが降ってきたような、そうとしか思えない騒音であった。



409: ◆O.FqorSBYM 2018/12/03(月) 22:11:53.22 ID:lsIBK8rn0


隊長「...ゲホッ...ゲホッ...何が起こったッ!?」


魔剣士「おいおい...厄介なことになってるじゃねェか...」


魔闘士「くそッ...これが罠だったか...」


女騎士「...鉄格子か、私たちは広間に閉じ込められたようだな」


魔女「──後ろっっ!!!」


女騎士「...死霊が迫ってきてるっ!」


魔闘士「チィッ...どいてろッッ!!!」


魔闘士が力づくで鉄格子を壊そうとする。

隊長をも吹っ飛ばすことのできる彼の剛力ならこのような鉄格子など朝飯前であろう。

しかしそれは叶わなかった、この障害物にはある属性が込められていた。


魔闘士「──これはッ...!?」


隊長「...どうしたッ!?」


魔闘士「この鉄格子...光属性が宿っているぞ...ッ!?」


魔剣士「...チィッ!!! 糞がッッ!!!!」


隊長「壊せないのかッ!?」


魔闘士「...行けッ!」


魔剣士「畜生...ッ!! 説明は後だ、行くぞッ!」


魔闘士「...魔剣士、頼んだぞ」


魔剣士「あァ、なんとか耐えててくれェ...魔王子連れてすぐ戻るからよォ」


魔闘士「...」


隊長(なにがどうあれ、この鉄格子は壊せないらしいな...)


隊長「...ならせめて、これを受け取れッ!!!」スッ


魔闘士「これは...」


隊長「使い方、その身をもって知ってるだろッ!?」


隊長「15発まで撃てるッ! 撃てなくなったらその棒を入れ替えろッッ!!!」


魔闘士「...」



410: ◆O.FqorSBYM 2018/12/03(月) 22:13:20.60 ID:lsIBK8rn0


魔剣士「...早く行くぞッッ!!!」


隊長「――わかってるッッ!!!」


魔女「...女騎士! ごめんっ!」


隊長たちは無理やり魔剣士に引っ張られ、奥に進んでいった。

彼は鉄格子の隙間からハンドガンとそのマガジン6本全部を渡した。

遠距離攻撃ができない魔闘士の為に、敵であったこの男にすんなりと手渡す。


魔闘士「...さて、どこまで耐えられるか、この無限にある屍共に」


女騎士「さぁな...だが、私の槍もそう甘くないぞ」


魔闘士「触れるだけで即死だ、気をつけろ」


女騎士「...そうだな」


魔闘士「さぁ、この珍妙な武器...使わせてもらうぞ」


~~~~


~~~~


魔剣士「...」


鉄格子の先は、またも下りの階段であった。

早足でそこを駆け抜ける魔剣士、それに追いつくのがやっと。

何を思ってか彼はずっと無言であった、しかし隊長は疑問を魔剣士にぶつけた。


隊長「...なぜ壊せなかった、魔闘士なら蹴飛ばせていたんじゃないのか?」


魔剣士「...光属性は人間界であんま知られてねェのか?」


魔女「...そうよ」


魔剣士「...なら教えてやる」


魔剣士「光属性の前では、どんなものも無力化する」


魔剣士「質が低ければ魔法だけ、高ければどんなものでも無力化する」


魔剣士「さらに質が極めて高ければ、相手の気を保つことを無力化させる...気絶させるってことだァ」


魔剣士「そんでもってェ...あの鉄格子からは、それなりの質の光属性を感じた」


魔女「...どうして、それが鉄格子に」


魔剣士「..."魔法の欠片"か..."属性付与"だな、あとはわかんだろ?」


魔法の欠片、それは女賢者が教えてくれた。

少しの間魔法を維持しててくれる鉱石、そして属性付与とは。

それは大賢者が教えてくれた、物に属性を与える単純でいて強力な魔法。



411: ◆O.FqorSBYM 2018/12/03(月) 22:14:51.18 ID:lsIBK8rn0


隊長「...なるほどな」


魔剣士「言っておくが...見捨てたわけじゃねェからな」


魔剣士「だが、魔闘士は近接格闘しかできねェ...死霊と相性は最悪だ」


魔剣士「...」


隊長「...どうしたら助けられる」


魔剣士「...魔王子なら、あの光ごとき簡単に打ち砕くだろうなァ」


隊長「...では、急ぐぞ」


魔剣士「もう急いでんだろうがァ...ま、お前の渡した武器で時間稼ぎができれば上等だァ」


魔剣士「もしくはあの無限にある屍共を殲滅できたら話は簡単だがよ」


魔剣士「とにかく、この先に居るであろう魔王子と合流したら、すぐにあそこに戻るぞォ」


魔女「...私は魔法を途切れさせないようにしないとね」


魔剣士「...そうだなァ、暗闇じゃなおさらだ...頼んだぜ?」


魔女「うん...」


魔女はまだ魔法を持続させていた。

これが一番の生命線、真っ暗の中では何もすることができない。

雷魔法の光源が尽きないように魔女は精神を集中させる。


隊長「...先ほどから、蝋燭が灯っているな」


魔剣士「...誰かいるってのは確かだなァ」


魔女「また広間みたい...って、あれはっ!?」


そこには女か男かわからない容姿をしたものがいた。

肌は雪のように白く、黒い服を着て、目が血のように赤い。


???「おやおや? こんにちわ」


魔剣士「あァ、いるよなァ...そりゃ...面倒くせェ奴がよ」


隊長「...こいつが異端者か」


異端者「ボクの名前を知っているんだぁ?」


隊長「動くな...」スチャッ


隊長(背中に...あれはサムライソードか...?)


その者の名は異端者、その名に相応しく掴みどころがない。

奴の背中には鍔のない刀が鞘に収められていた。

なんとも言えないその存在感に、魔女はやや恐れを感じていた。



412: ◆O.FqorSBYM 2018/12/03(月) 22:16:12.01 ID:lsIBK8rn0


魔女「こいつ...なにか...怖い...」


魔剣士「...嬢ちゃん、お前は下がって魔法をきらさねェように待機してなァ...」


隊長「...こいつはどんな奴なんだ?」


魔剣士「...すぐにわかる」


異端者「──あはっ!!」ダッ


魔剣士「────ッ!!!」スッ


――グサッッッ!!!!

異端者が魔剣士に跳びかかった、だが魔剣士は素早く反応した。

彼は大剣を構えることで、接近してきた異端者を串刺しにしたのであった。


隊長「...!」


魔剣士「おいおい...お前みてェな奴を抱きたくないんだがなァ...」


異端者「やだなぁ、痛いじゃないか」


――シュッッ!!!!

異端者が串刺しになりながら背負っている鞘から刀を刺そうとしてきた。

なぜ生きている、それがこの者が面倒くさいと称される理由であった。


魔剣士「オラ!! 離れなァッッ!!!」ブンッ


異端者「おっとっと...」ヨロ


魔剣士は大剣を振り回し、異端者を吹き飛ばした。

すると、みるみる異端者の身体の傷がふさがっていく。


異端者「ふふふ...」


隊長「...不死身か、なんでもありだな」


魔剣士「それに、あの刀には毒が塗ってあるんだァ」


魔剣士「即死はしないが、しばらく動けねェヤツがなァ...」


異端者「動けない者をいじめるのが好きなんだよね、ボク」


魔剣士「実力ねェくせに、面倒だこいつゥ...!」



413: ◆O.FqorSBYM 2018/12/03(月) 22:17:36.75 ID:lsIBK8rn0


魔女「──ねぇ、奥に扉があるわよっ!」


魔剣士「...無視してもいいなァ、あいつ」


異端者「...悪いけど、鍵が必要だよあの扉」


隊長「...鍵はどこだ?」


異端者「...食べちゃった!」


魔剣士「...そりゃ、美味しかっただろう...なァッッッ!!!」スッ


──ブンッッッッッ!!!!!!!!

剣気が放たれる、それは鈍くとも鋭くもある。

当たれば確実に致命傷を与えることができる。

問題は上記の通り、当たればの話だが。


異端者「──"転移魔法"」シュン


異端者「その速度の剣気、当たる気がしないね」


魔剣士「だァァァァァ...糞がッ...空振りだァ!」


異端者「このまま、外に逃げてもいいんだけ時間かければ扉ごと壊させちゃうしね」


異端者「まぁ、ボクがいる間は時間なんてかけさせないけど」


魔剣士「...ほんと、面倒くせェなお前」


異端者「さぁ、ボクと遊ぼうか!」


隊長「...付き合ってやるしかないようだな」


魔剣士「あァ...」


魔女(この不死身、どうやって倒せばいいの...っ?)


~~~~



414: ◆O.FqorSBYM 2018/12/03(月) 22:18:53.38 ID:lsIBK8rn0


~~~~


魔闘士「―───ッ!」スチャ


──ダンッ ダンッ!

慣れていない、よって精度はお粗末なモノである。

だがこの銃という武器は、当たりさえすれば大きな損傷を与えることができる。


死霊7「────っ...!」


──ガラガラガラッ...

死霊の一匹、宿りを失いそのまま果てていく。

魔闘士は順調に身に迫る危険を処理している様だった。


女騎士「──はあああああああぁぁぁぁぁっっっっ!!!」ブンッ


―――ガギィンッッッ!!!!

一方彼女は、大きな槍を振り回していた。

その鈍器の様な攻撃に、亡骸は砕け散るしかなかった。


死霊8「────っ...!」ガラガラッ


女騎士「くそっ...キリがないな...」


魔闘士「...これでも良い方だろう、俺に至ってはこの武器でしか攻撃できん」


女騎士「その武器...魔力を感じないのに、女勇者の剣に匹敵しそうな威力だな────」


魔闘士「──後ろだッッ!!!」スチャ


死霊9「...」


気づけば、彼女の後ろには新手の死霊が接近していた。

魔闘士はそれを察知したはいいが、慣れぬ銃器故に引き金を引けずにいた。

このままだと接触してしまう、だがそれは杞憂に終わった。


女騎士「────ふんっ!」


―――だぁんっっっ!!!

ランスを棒高跳びのように利用し、大きく跳ねることで避けることができた。

その大胆な動き、女性ならではの身体の靭やかさだが、魔闘士が驚いたのはそこではなかった。


魔闘士(あの鎧姿でこの身のこなし...ッ!)



415: ◆O.FqorSBYM 2018/12/03(月) 22:19:47.22 ID:lsIBK8rn0


女騎士「..."衝魔法"っ!」


──ズシィッ...!

空中の女騎士から、少し心もとない魔法が繰り出される。

だが、そんな威力でも骨を砕くには十分であった。


死霊9「────っ...!」ガラガラッ


女騎士「──っ...!」ダン


女騎士(さすがに...着地は膝にくるな...)


魔闘士「...仮にも、勇者の仲間か」


女騎士「残念ながら、魔法はあんまり得意ではないけど────」


──ダンッ!

すると突然、魔闘士は彼女に向かって発砲した。

もう少しで女騎士に被弾していた、ずれていたら彼女の長い髪の毛が巻き込まれていただろう。

だが今巻き込まれたのは、再び背後に現れた新手であった。


女騎士「──っ!」


死霊10「────っ...!」ガラガラッ


女騎士(...また背後を取られていたか)


魔闘士「もう少し、視野を広くするんだな」


女騎士「あぁ...助かるぞ」


魔闘士「...」


魔闘士(奴から受け取ったこの武器...この棒の換えが残り4本か)


魔闘士(...頼む、持ってくれ...この武器も...この灯りも)


~~~~



416: ◆O.FqorSBYM 2018/12/03(月) 22:21:11.29 ID:lsIBK8rn0


~~~~


──ババババババババッッッ!!!

広間に響く、銃火器の激しい音。

だがそれを受ける者の声は、とても緊張味のないモノであった。


異端者「いたいいたいっ!」


隊長「...効果なしかッ!?」


魔剣士「ならこれはどうだァ!!!」スッ


異端者「──ぁはっ!!」


――ギィィィィィィィインッッッ!!!!

耳につんざくその音は、刃物通しの接触音。

魔剣士の大きな剣が、異端者の刀と鍔迫り合う。


魔剣士「...その細せェ刀で俺様の剣をよく受けれんなァッ!」


異端者「凄いでしょ?」


魔剣士(汗一つかいてねェな...これだから不死身は)


隊長「──援護するッ!」スチャ


──バババババババッッッッ!!!!!

その弾幕は、すべて奴の身体に被弾する。

しかしその効果は今ひとつ、異端者は嘲笑を含みながらこう言った。


異端者「意味ないよ?」


魔剣士「──どこ見てんだァッッッ!?!?」


―――─ザシュッッッッッ!!!!!

剣同士の取っ組み合いから、魔剣士は強烈な斬り上げを炸裂させる。

隊長が与えてくれた援護とはこれであった。

彼の銃撃に気を取られた異端者は、胴体を真っ二つにされる。


異端者「──...!」


魔剣士「下半身と上半身が離れちまったぜェ?」


異端者「...へぇ~」


魔剣士「これでも意味ねェか...ッ!」


隊長「──フッ!!」ダッ


──ドガァァァァァァ...!!

隊長は直ぐ様に突撃し、奴の下半身を思い切り蹴飛ばした。

それでもなお異端者は話しかけてくる。



417: ◆O.FqorSBYM 2018/12/03(月) 22:22:28.44 ID:lsIBK8rn0


異端者「ボクの下半身を蹴っ飛ばさないでよ!」


魔剣士「...チッ! 気味のわりィ奴だぜ本当に」


異端者「"転移魔法"」シュンッ


──ゴリゴリゴリッ...グチャッ...!

蹴飛ばされ倒れ込んだ下半身のもとへと転移する。

そして異端者は下半身を無理やり上半身と繋ぐ、繋いだだけであった。


隊長「...あれも治るか、どうする?」


魔剣士「さァな...俺様は昔っからアイツにだけは関わらないようにしてんだァ」


隊長「...魔女、大丈夫か?」


魔女「へ、平気よ...はぁっ...はぁっ...」


魔女から汗が滝のように流れる。

魔女の魔法が途切れてしまえばどうなってしまうか。

魔闘士たちのいる場所は真っ暗になり、死霊に屠られるであろう。


魔剣士「...頼む、少しでもいい...魔法を持続させてくれ」


魔女「ごめん...この闘いに参加できなさそう...」


隊長「...心配するな、お前はそっちを集中していてくれ」


魔女「うんっ...少し来た道を戻って待機してるわねっ...」


異端者「...もういいかい?」


隊長「...」カチャッ


魔女が安全圏へと対比した、その間にアサルトライフルのマガジンをリロードした。

それが終わると背負っていた武器と持ち替える、ついに新たな武器の出番であった。

どんな状況でも頼れるのはこのショットガンという武器である。


隊長(...映画の話だと、化け物相手にはコレって相場は決まっているな)


魔剣士「...武器を持ち替えたか」


隊長「あぁ...前方を全体的に攻撃するものだ、俺の前に立つな」


魔剣士「あァ...わかったよ」


魔剣士(...あの時は持ってなかったやつだな...どんな武器か気になるなァ)



418: ◆O.FqorSBYM 2018/12/03(月) 22:24:05.74 ID:lsIBK8rn0


異端者「..."転移魔法"」シュン


異端者が隊長の目の前に姿を表す。

そのまま斬りかかられてしまえば、おしまいだ。


魔剣士「──あぶねェッッ!!」


隊長「――──ッ!」スチャ


──ダァァァーーンッッッッ!!!!

しかし、異端者は間違えてしまった。

この武器を前にして、立ち尽くすなど愚の骨頂。


異端者「へっ...?」ドサッ


──ジャコンッッッッ!!!

激しい銃声、その後に続く独特なポンプ音。

異端者の胴体がひき肉状になる、それと同時に思い切り吹き飛ばされる。

これがショットガンという武器、決して人に向けてはいけない。


異端者「...ちょっと痛いかも」


魔剣士「へェ...お前の武器、どこで手に入るんだァ?」


隊長「それは後で教えてやる...それより、落とし物だぞ」スッ


異端者「...へぇ、落としちゃったみたいだね」


魔剣士「...なるほどなァ、そのひき肉になった腹から落としたわけか」


異端者「やるねぇ、人間の分際で...本気になろうかなぁ」


──ピリピリピリッッッ...!

腹に受けた散弾、それが胃に穴を開け鍵を落としてしまう。

それがキッカケとなり、異端者はついに本気を見せつける。


魔剣士「気をつけろ、俺様は今までアイツの本気をみたことがねェ」


隊長「...どんなことをしてくるか、楽しみだな」


魔剣士「お前、結構面白れェじゃん...死ぬなよ?」


異端者「...悪いけど、ふたりとも死んでもらうからね?」


隊長「...行くぞっ!」


魔剣士「あァッッ!!!」


―――ドゴォッッッッッ!!!!!

魔剣士と少しばかり、関係性が進んだ。

そんな明るい場面であったが、その鈍い音が現実を知らしめる。

その衝撃は隊長の腹部へと向かわれた。



419: ◆O.FqorSBYM 2018/12/03(月) 22:25:09.38 ID:lsIBK8rn0


隊長「――ッ...!?」


異端者「...ふぅ、遠くまで吹き飛ばせなかったか」


魔剣士「なァッ...!?」


魔剣士(見えなかった...どうなってやがる...ッ!)


隊長「――ゲホッ...ゲホッ...」


隊長(これはッ...)


気づけば異端者は、隊長の懐に入り込んでいた。

そして繰り出したのは掌打、その光景は見たことがある。

一体なぜこの者が、彼の力を真似できているのか。


異端者「...どうだい? ボクの拳は────」


隊長(──魔闘士の力に似ている...ッ!)


魔剣士(──まるで魔闘士みてェじゃねェか...ッ!)


異端者「────ふふふ、魔闘士みたいだろ?」


魔剣士「てめェ...」


異端者「――ハッッ!!!!」


──ガギィィィィィンッッッ!!!

異端者は蹴りを繰り出した、それを受けるのは魔剣士。

大剣と足が鍔迫り合う、だというのに聞こえるのはこの音であった。


異端者「防御が精一杯みたいだね?」グググ


魔剣士「チィィッ...ッ...ッ...!」グググ


異端者「ほらほらっっ!!!」


魔剣士「...クソッ!」


異端者「刀もどうかなぁ?」スッ


魔剣士(まじィ...このままじゃ防御しきれねェ...)


防御が突破され少しでも斬られたら、毒が身体にまわり動けなくなる。

奴の攻撃だけは受けてはいけない、だが魔闘士のような力がそれを許してくれない。

大剣と対峙するのは異端者の足、よって奴の両手は手持ち無沙汰である、つまりは刀など簡単に扱える。


魔剣士(だからといって、この馬鹿力...そう簡単に逃してくれねェな...)



420: ◆O.FqorSBYM 2018/12/03(月) 22:26:55.23 ID:lsIBK8rn0


異端者「ほらほらほらほら!」


──ダァァァァァァァァンッッッッ!!!

そんな時、痛みをこらえながらも再び発砲した。

その何かが炸裂するような銃声が、異端者を怯ませた。


異端者「いたっ...!」


隊長「...」ジャコンッ


魔剣士「────でかしたァッ!」ダッ


異端者「あーあ、逃げられちゃった...次は邪魔しないでね」


隊長「...それはできない」


隊長(鍵を手に入れたからといって...ここはスルーできないな)


魔剣士「はァッ...はァッ...!」


魔剣士「この俺様が消耗されるとはなァ...」


隊長「...おい、どうする」


魔剣士「不死身の上、なぜか魔闘士の力を持ってやがる...やべェな」


異端者「...ボクを倒すことは、無理だね」シュン


隊長「──ッ!」ピクッ


魔剣士「────しまったッ!?」


彼の目の前に現れる、せっかく距離を置いたというのに。

その転移魔法の詠唱は、魔剣士ともあろう男ですら気づけなかった。


隊長「――魔剣士ッ!!」


──ドガァッ...!

その音は、優しく足で彼を護る音。

隊長が魔剣士を蹴飛ばし、身を挺してかばう。


魔剣士「なッ────」ドサッ


異端者「なぜなら────」


――――シュッッッッ!!!!

背中の刀を抜刀する、その速度は達人並。

だがこの極限状態が隊長の感覚を高めていた。


隊長「―――ッ!」ガバッ


魔剣士(屈んだッ...!? あの抜刀速度が人間に見えるのかッ!?)



421: ◆O.FqorSBYM 2018/12/03(月) 22:28:44.85 ID:lsIBK8rn0


異端者「────あと1人だから」


しかし、異端者は瞬時に刀の持ち方を変える。

この早業は同じ剣士である、魔剣士にしか見えなかった。


魔剣士(──抜刀からの斬り下げ...ッッ!?)


魔剣士「──あぶねェッッッ!!!」


――――サクッ...

その刃は、わずかに彼の二の腕を掠めた。

それが致命傷であった、すぐさまに感じる身体の痺れ。


隊長「しまっ────」ガクッ


隊長(力が入らない...ッ!?)


異端者「...腕、少しかすり傷ができちゃったね」


隊長「ッ...!」


異端者「死んで」スッ


―――ガキィィンッッッ...!

刃物がエモノを捉える音、そのはずだった。

その音は余りにも高い、人を切り裂くときには鳴らない音だ。

では一体なにか、それは刃物が刃物をぶった斬る音であった。


異端者「...刀が切れた」


魔剣士「悪いがよォ...いい加減キレちまったぜェ?」


魔剣士「竜の逆鱗にいつまでも────』


魔剣士『────触ってるんじゃねェよ...ッ!』


魔剣士の声が、なにか動物の唸り声のようなモノと重なる。

それだけではない、彼の持つ魔剣が、彼自身と一体化を始めていた。

そこから発せられる殺気は、その対象ではない隊長すらを震え上がらせる。


隊長「──ッ!?」ゾクッ


隊長(な、なんだこの威圧感...まるで激怒している動物みたいだ...)



422: ◆O.FqorSBYM 2018/12/03(月) 22:29:46.21 ID:lsIBK8rn0


異端者「...へぇ」


魔剣士『おい、きゃぷてん...這いずってでも下がってろォ』


隊長「...ッ!」ピクッ


隊長(匍匐前進ならギリギリできるか...とにかく今は魔剣士に任せよう)ズルズル


異端者「初めて見るよ、魔剣の本当の力を」


魔剣士『...気安く話しかけんなァ、今ブチキレてるんだァ...俺様も...』


魔剣士『...この"竜"もなァァァッッッッ!!!!』


魔剣士『──"属性付与"..."爆"ゥゥゥッッッッ!!!!』


一体化している魔剣が、魔力に満ち溢れる。

その魔力には爆が込められている、微かに聞こえるのは何かが破裂する音。


魔剣士『行くぞォォォッッッ!!!!!』


魔剣士『この剣気の弾幕...避けられるかァァァッッ!?』スッ


―――――――――ッッッ!!!!

音も鳴らない素早さで空を斬る、斬って斬って斬りまくる。

このメチャクチャな剣気に、さらに魔法が加わる。


異端者「──なっっ!?!?」


──バゴンッッ!! 

その繰り出される剣気達は、着弾したと同時に爆発を繰り返す。

──バゴンッッ!! バゴンッッッ!!! バゴンッッッ!!!

──バゴンッッ!! バゴンッッッ!!! バゴンッッッ!!!

──バゴンッッ!! バゴンッッッ!!! バゴンッッッ!!!

──バゴンッッ!! バゴンッッッ!!! バゴンッッッ!!!

──バゴンッッ!! バゴンッッッ!!! バゴンッッッ!!!



423: ◆O.FqorSBYM 2018/12/03(月) 22:30:45.87 ID:lsIBK8rn0


魔剣士『まだまだ終わらせねェぞッッッッ!!!!』


――――――ッッッッ!!!!

──バゴンッッ!! バゴンッッッ!!! バゴンッッッ!!!

──バゴンッッ!! バゴンッッッ!!! バゴンッッッ!!!

──バゴンッッ!! バゴンッッッ!!! バゴンッッッ!!!

──バゴンッッ!! バゴンッッッ!!! バゴンッッッ!!!

──バゴンッッ!! バゴンッッッ!!! バゴンッッッ!!!

──バゴンッッ!! バゴンッッッ!!! バゴンッッッ!!!

──バゴンッッ!! バゴンッッッ!!! バゴンッッッ!!!

──バゴンッッ!! バゴンッッッ!!! バゴンッッッ!!!

──バゴンッッ!! バゴンッッッ!!! バゴンッッッ!!!

──バゴンッッ!! バゴンッッッ!!! バゴンッッッ!!!


隊長(おいおい...遺跡が崩れるぞ...!)


安置に身をおいた隊長が、その威力に文字通り頭を抱える。

爆発が数百回繰り返されると、魔剣士はようやく剣を振るうのをやめた。


魔剣士『ハッ、どうだ参ったかァ?』


隊長(...あれほどのことをしておいて、まだ余裕そうな表情か)


魔女「な...なにが起きたの...?」


隊長「...!」


隊長(説明してやりたいが、口が動かせん...)


魔女「...毒を受けたのね、"治癒魔法"」ポワッ


隊長「──助かる...というより、毒も治せるのか」


魔女「傷以外を治癒させるには、結構鍛錬が必要なのよ...」


隊長「...そういえば、大丈夫か?」


魔女「大丈夫とは言い切れないけど...なんとか安定してるわ」


隊長「そうか...って、あれはッ!?」


魔女との会話をしている内に、爆破によって生まれた煙が晴れ始めていた。

そこには人の形をした者などいなかった、あるのはただ1つの肉塊。

頭部だけとなった異端者が、無残にも転がっていた。


異端者「はぁっ...はぁっ...!」



424: ◆O.FqorSBYM 2018/12/03(月) 22:31:46.65 ID:lsIBK8rn0


魔剣士『流石不死身、頭だけでも生きてるかァ』


異端者「ふふふ...死ねないんでね...」


魔剣士『お前が死なねェ理由なんか知らねェが、いい加減勘弁してくれよ...』


異端者「君の魔力が尽きるのが先か、ボクが諦めるのが先か...」


魔剣士『...こうなってる俺様だと、あと3日は続くぞ』


異端者「すごいね...魔剣の本当の力...ボクも魔剣欲しいなぁ」


異端者の身体が頭に集まり始めている。

肉塊になっても、不死身の身体は健在であった。

このままでは肉体は再生するだろう、そんな彼に隊長はプレゼントを送る。


隊長「──そんなに欲しいなら、くれてやる」スッ


―――グサッッッッ!!!!

異端者の頭に何かが刺さった。

それは亡き親友の形見、奇妙な柄の入った細い剣。

光につつまれた魔剣、それはユニコーンの魔剣。


異端者「へっ...?」


魔剣士『...あーあァ、終わったな』


異端者「どういうこと...ッ!?」ピクッ


異端者「これは、光属性...だとッ!?」


隊長「...魔剣士、光属性はどんなものでも無力化させるんだったな?」


魔剣士『あァ、そうだ...ユニコーンとなれば、そりゃ偉い高品質なモノだ」


魔剣士「どんな魔物も普通の"人間"程度にしか活動できないだろうなァ」


魔剣士は勝利を確信し、魔剣と一体化していた姿を元通りにし始める。

そして、異端者に集まろうとしていた肉片の動きが止まる。

勝利はもうすぐそこであった。


異端者「あっ...あっ────」


隊長「..."人間"は首だけでは生きれない」


異端者「―――─」


魔剣士「...ふゥ、やっと終わったなァ」


魔女「...お、終わったの?」


隊長「あぁ...俺たちの勝ちだ、もうこっちに来ていいぞ」



425: ◆O.FqorSBYM 2018/12/03(月) 22:33:40.26 ID:lsIBK8rn0


魔剣士「しっかし、魔剣の力を発揮させると...さすがに疲れるなァ」


隊長「あの姿は...?」


魔剣士「...魔剣っつーのは、常に魔力に満ち溢れてるモノだァ」


魔剣士「その魔力を、自分の魔力と一体化することであんな感じになるぜェ」


魔剣士「...まァ、自分が魔剣そのものになるってことだァ」


隊長「...このユニコーンの魔剣でもできるのか?」


魔剣士「...今すぐは無理だな」


魔剣士「これができる条件は、時間だけだ」


魔剣士「いきなり知らねぇ雌に告白しても断られるだろォ?」


魔剣士「何回も自分を魅せることで雌とうまくいくのと同じでよォ」


魔剣士「魔剣と自分の魔力を馴染ませなきゃいけねェんだ」


魔剣士「...まぁ、運が悪くても数十年単位は必要だがなァ」


隊長「...意外と、面倒な女だな」


魔剣士「ハッ、そうだなァ...」


魔女「も、もう少しまともな例えはなかったの...?」


魔剣士「知るかァ、てめェで考えろ」


隊長「...進むぞ」


魔剣士「...あァ、ゆっくりしてる暇はねェな」


隊長「...」スッ


──グチャァッ...

隊長が魔剣を異端者から引っこ抜く。

めちゃくちゃ気持ち悪い光景であったが、帽子の形見を置いていくわけにはいかない。



426: ◆O.FqorSBYM 2018/12/03(月) 22:35:22.42 ID:lsIBK8rn0


魔剣士「おい、行くぞ」


魔女「まって..."治癒魔法"」ポワァッ


隊長「あぁ...助かるぞ、魔女」


魔剣士「へェ...あの雷魔法まだ続いてるんだろ?」


魔女「え? そうよ?」


魔剣士「それなのに普通に、治癒魔法使いやがって...やるなァ」


魔女「これでも、大賢者様に修行してもらったのよ」


魔剣士「あァ、そうなのかァ」


――ガチャッッッ!

腹から出てきた、やけにぬめぬめした鍵で扉を開ける。

手応えあり、どうやら偽物とかではなかった。


隊長(もうこの鍵はいらないな)ポイッ


魔剣士「扉もあいたみたいだし、行くぞォ」


魔女「早く、女騎士たちと合流しないとね...」


扉を開けると、すぐそこに魔力で満ち溢れた何かがあった。

その色はとでも黒く、触れることを思わず躊躇ってしまうほどの迫力があった。


隊長「...これが封印か?」


魔剣士「結界魔法だなァ...魔王によるヤツだから結構面倒だなァ...」


魔女「ど、どうするの...?」


魔剣士「どうするか迷っていたが、いいもん持ってるじゃねェか」


隊長「...ユニコーンの魔剣か」


魔剣士「そうだァ、その質の光なら...一部分を一瞬だけでも結界を崩せるはずだ」


隊長「...やってみよう」


魔剣士「穴があいたら、全員一斉に入るぞ」


隊長「...」


──スッ...!

隊長が魔剣をかざしてみる。

するとすぐに反応を示した、当然こちらもすぐに動かなければならない。


魔剣士「────入るぞォッッ!!!」


~~~~



428: ◆O.FqorSBYM 2018/12/04(火) 22:18:37.93 ID:VawOxBnY0


~~~~


隊長「...どうやら、うまくいったようだな」


──■■■■...

あたりから聞こえるのは黒い音。

そして異様な感覚が身に迫る、ここは魔王の結界の中。

だがそれだけではない、魔王以外のなにかが魔女に緊張感を与える。


魔女「な、なにこの魔力の量...っ!?」


魔剣士「なるほどなァ...これは魔王子の剣気の影響だなァ」


隊長「...俺にも感じるぞ、殺気みたいなモノが...大丈夫かこれは?」


魔剣士「大丈夫だ、魔王の結界を破ろうとしてるだけだァ...俺様たちに向けられたモノじゃねェ...」


魔女「はぁっ...はぁっ...!」


隊長「...」スゥー


すると突然始まった過呼吸。

なにか、膨大な力を持つものが近寄ってくる。

隊長は深く呼吸をして、来るべき者に備え始めた。


魔女「うぅ...はぁっ...」


魔剣士「大丈夫だァ、落ち着け嬢ちゃん」


隊長「魔女、深呼吸をしろ...」


魔女「そっ...そうねっ...」スゥー


──どくんっ......どくんっ......

何かが近寄ってくる度に、魔女の鼓動が早くなる。


魔剣士「...来たなァ」


──どくんっ...どくん...どくんっ...どくんっ...

それは止まることができない、身体が悲鳴をあげている。

まさかその男の顔を見ただけで、ここまで苦しみを味わうとは思わなかった。

ついに目の前に現れたのは、魔界を統べる王の息子。


魔剣士「...よォ、魔王子ィ...久しぶりだなァ」



429: ◆O.FqorSBYM 2018/12/04(火) 22:21:43.15 ID:VawOxBnY0


魔王子「────...」


隊長「...」


魔剣士「...この人間は...知り合いだァ...なんでも、話したいことがあるってよォ」


魔王子「...」


魔剣士「...おら、言っちまいな」


隊長「...助かる、魔剣士」


隊長「俺はCaptainと名乗っている...魔王子に頼みがある」


魔王子「...」


隊長「...俺の仲間になって、一緒に魔王を倒そう」


魔王子「...なぜだ?」


隊長「...俺の友は死んだ、魔物と人間が平和に共存できる世界を手に入れるという...夢なかばにだ」


隊長「俺はその世界を託された...魔王に平和を叩きつけるために」


隊長「...魔王に話を飲ませる状況にするには、お前の力が必要だ...ッ!」


魔王子「...力なき者に、貸す力などない」


隊長「...だったら、お前を納得させるまでだ」


魔王子「...ほう」


―――─ブワッッッ...!

いままで殺気をぶつけられて恐怖をしたことはあった。

魔闘士、魔剣士、さらには自分自身が放ったこともあった。

だが、今の殺気はそれらの次元ではなかった。


隊長「────ッッ!?」


――ガリィッッ!!!!

隊長の口から血がでる、彼が思い切り舌を噛んだのであった。

そうでもしてなければ、この男は気絶を余儀なくされていただろう。


魔剣士「お、おい...魔王子ィ...」


魔王子「俺を仲間にしたければ...実力を見せてみろ」


魔王子「魔剣士を魅了したお前が、どこまでできるか?」スッ


魔王子が取り出したのは、鞘に入れられた剣であった。

独特な形などしていない、無駄な装飾などない。

ただの剣であった、だがそれが恐ろしい程の気迫を醸し出す。



430: ◆O.FqorSBYM 2018/12/04(火) 22:23:15.67 ID:VawOxBnY0


隊長「──魔女ッ...援護を頼むッッ!!」スチャ


魔女「う、うんっ!!」


魔王子「...」


魔剣士「お、おいッッ!! 待てッッ!!!」


魔剣士「相手は人間だぞッ!? 簡単に死ぬに決まってるだろォッッ!?」


魔王子「──貴様はどちらに付く」


魔剣士「──ッッ...!!」


魔剣士は葛藤する、普通なら人間などを味方にしない。

だが己の好奇心には抗えない、未知なる武器を所持し、あの魔闘士を撃退したこの男。

そして信頼する仲間でもない分際で、先程の異端者戦で自分が庇われたことを唐突に思い出してしまう。


魔剣士「...クソッ!!」


隊長「...魔剣士、これは俺の問題だ...離れていてくれ」


魔剣士「...!」ピクッ


魔剣士(ふざけるな...あんな表情しやがって...ッッ!!!)


魔剣士は隊長の指先を見てしまう。

アサルトライフルを構え、トリガーにかけている指を。


魔剣士(...震えてるじゃねェか)


魔剣士(...人間の分際でよォ...魔王子に勝てるわけねェのに...)


隊長の姿は、無謀にも見える。

その無謀さが、自分に重ね合わさる。

無謀にも魔王子に挑み、完膚なきまでに叩きのめされた過去を。


魔剣士(...ハッ、気でも触れたか?)


魔王子「...ほう」


隊長「──魔剣士ッッ!?」


魔剣士「悪ィがよォ...コイツらは俺様の"友"だァ...』



431: ◆O.FqorSBYM 2018/12/04(火) 22:23:47.85 ID:VawOxBnY0











『死なせはしねェ...』












432: ◆O.FqorSBYM 2018/12/04(火) 22:26:10.37 ID:VawOxBnY0


魔王子「...面白い」


隊長「おいッッ! お前ッッ!?」


魔剣士『なァに、気にするなァ...気が向いてるだけだァ』


隊長「ッ...!」


魔剣士『魔王子の脳筋に一泡吹かせてやれェ...嬢ちゃん、治癒魔法だけを集中してくれ』


魔女「...わかったわ」


魔剣士『俺様が魔王子を抑える...きゃぷてんはその魔剣で魔王子を斬れッッ!!!』


魔王子「...竜が魔王に楯突くのはよくある話だ」


魔王子「だが、勝つのは魔王と相場が決まっている...」


魔王子「..."属性付与"、"闇"」スッ


──ブン■■■■ッッッ―――――――!!!!!

彼の身体が黒に包まれる、それと同時に剣気を放つ。

魔王子の基本戦術、それは抜刀居合。

その射程は遥か彼方まで届くであろう。


隊長「──なッ...!?」


魔剣士『────ハアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッ!!!!!』ブンッ


――――ドガァァッッッッッ!!!!

彼が魔王子からの攻撃を防いでいた。

魔剣との一体化、それで得れるのは攻撃性能だけではない。

魔剣士の放った分厚い剣気が、黒色の剣気を薙ぎ払った。


隊長「──何が起きたッッ!?」


魔剣士『剣気だァ! 属性を付与して剣を振っただけだァッッ!! あれがすべてを無力化する"光属性"と対なす────』


魔剣士『──すべてを破壊する"闇属性"だァッッ!!!!』


隊長「...次元が違いすぎるぞ」


魔剣士『諦めんのかァッッ!?』


隊長「...諦めてたまるかッ! 魔女ッッ!!!」


魔女「"治癒魔法"」ポワッ


魔剣士『助かるぜェッ...きゃぷてんッ! その魔剣が鍵だァッッッ!!!!』


魔剣士『流石の俺様も、魔王子の攻撃を何度も受け流すことはできねェッ! 短期決戦に持ち込めェッ!』



433: ◆O.FqorSBYM 2018/12/04(火) 22:27:27.49 ID:VawOxBnY0


隊長「あぁッッ!」スッ


取り出したのは、彼の形見。

そこから溢れるのは光、刀身が輝く。

それは魔王子の闇を萎えさせる、とても心強いモノであった。


魔王子「...光属性か」


隊長(帽子...ユニコーン...力を貸してくれ...ッ!)


魔王子「...」シュン


すると彼は突然目の前に現れた。

魔闘士と同じく、魔法を使わずに死ぬほど早く動いただけ。

まるでわざわざ、その光を確かめに来たかのような動きであった。


隊長「──ッ!?」


魔王子「死ね」


――ギィィィィイィィンッッッッ!!!

闇と光が鍔迫り合う、その優劣は僅差であった。

白が闇を萎えさえ、闇が白を喰らう。


隊長「クッ...!」グググ


魔王子「...この質の光属性は、差し詰めユニコーンの魔剣といったところか」グググ


魔剣士『どこ見てんだよォ...?』スッ


一瞬にして間合いに詰め寄った魔剣士。

一体化したその魔剣が魔王子に牙をむこうとした。

だがそれは命取りであった、やはりこの男は魔剣士よりも格が上。


魔王子「────邪魔だ」


――スパ■■ッッッッ...!

────ボロンッッッッッ...

隊長と魔王子の鍔迫り合いに魔剣士が乱入したかと思えば、何かが落ちた。


魔剣士『────は?』



434: ◆O.FqorSBYM 2018/12/04(火) 22:30:07.41 ID:VawOxBnY0


隊長「...魔剣士ッ!?」


魔剣士『なっ...」


魔剣士(腕が...ッ!?)


魔剣士「──がああああああああああああああああああああああああああッッッッ!!!!」


彼は右腕を切り落とされた、その右腕とは魔剣を一体化させている重点部分。

そんな重要な部位が無くなれば、当然その力も失うことになる。

そして彼から流れ出るのは、竜の紅き体液。


隊長「──クソッッッ!!!!」ゲシッ


隊長「魔女ッッッ!!! 頼んだぞッッッ!!!」


魔女「わ、わかったわよっ!」


魔剣士「ぐ...ッ!!!」ダッ


隊長は足元に転がっている魔剣と一体化している腕を魔女の方に蹴飛ばす。

そしてそれを追うように、魔剣士が魔女の元に向かった。


魔女「"治癒魔法"っっっ!!! "治癒魔法"っっ!!!」ポワッ


魔剣士「ガァッッ...クソッタレェ...ッ!」ピクッ


魔女「動かないでっっ!! 変な風に腕がくっつくわよっ!?」


魔剣士「悪ィ...」


魔王子「...」サッ


隊長「──ッ!?」グッ


隊長が尻目に、魔剣士の様子を伺う。

すると突然手応えを失った、それが意味するのは1つ。

魔王子が鍔迫り合いをやめたのであった。


魔王子「...俺にかかれば、貴様など簡単にああできる」


魔王子「もう少し...俺を楽しませてみろ」


隊長「...あぁ、後悔するなよ」


身体の底から力がみなぎる。

その力とは、以前に魔闘士を苦しめた白き輝き。

魔法かどうかもわからない、神業と称される不思議な力。


魔王子「────ほう」


隊長(...これは、魔闘士の時のか)



435: ◆O.FqorSBYM 2018/12/04(火) 22:32:11.87 ID:VawOxBnY0


隊長「...生憎だが剣は得意じゃない、こちらで行くぞ」スチャ


魔王子「好きにしろ────」


──ダァァァァァァァン□□ッッッッ!!!!

好きにさせた矢先、炸裂音と白き音が響き渡る。

その聞いたことのない音色、そして攻撃方法に彼は思わず対処できずにいた。


魔王子「──うッッッ...!?」


隊長「――ッ...!」ジャコンッ


隊長「─―――AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAッッッ!!!!!」スッ


──バキィィ...ッッ!!!

威力のあるショットガンでようやく怯んだ。

その隙を逃す訳にはいかない、彼は全力で振りかぶり拳を彼の顔面にぶち当てた。

魔王子の身体は軽く吹き飛ぶが、そのまま受け身を取られ直ぐ様に立ち上がった。


隊長「はぁッ...はぁッ...」


魔王子「なるほど..."光の属性付与"か...それも武器ではなく、俺と同じで自分の身体にかけているな?」


魔剣士「...アイツ、そんなもん使えるのかァ?」


魔女「し、知らなかったわ...」


そして口に溜まった血を吐き捨てながら彼は分析した。

どうやら隊長の神業は、光の属性付与であることが判明した。

思わぬ人物がなぜ高等魔法を扱えているのか、彼側の者たちも思わず驚いていた。


隊長「...悪いが、よくわかっていない」


魔王子「そうか...では、それを活かしてみろ」


隊長「────ッ!」ピクッ


魔王子「最強と言われた4代目魔王の力が眠るこの魔剣...直に味わえ...ッッ!!!』


隊長「これは...魔剣士の...ッッ!?」


魔剣士「──キャプテンッッッ!!! 前を見ろォッッッッ!!!」


──ミシミシミシミシッッッッッ!!!!!!!

判断が遅れていれば、彼の餌食になっていただろう。

身体に帯びた光、それは手に持っている銃器をも包み込む。

闇属性を帯びた剣と、光属性を帯びたショットガンの銃身がぶつかり合う。


隊長「──グゥゥゥゥゥゥゥッッッ!?」



436: ◆O.FqorSBYM 2018/12/04(火) 22:33:50.39 ID:VawOxBnY0


魔王子『...』


──ダァァァァァァン□□ッッッッッ!!!

そこにいたのは、魔剣と一体化した驚異的な存在。

彼は無言のままであった、だがそれがどれほど恐ろしいモノか。

先程怯ませる事のできたこの銃撃に、全くの無反応であった。


隊長「なっ...!?」ジャコンッ


魔王子『...』


隊長「ならッ...!!」


──ダァァァァン□ッッッ!!! ジャコンッッッ!! ダァァァァァン□□□ッッッ!!!

今度はポンプアクション動作を派生した、2連撃ちを炸裂させる。

だが数が多ければいいという話ではない、思い出すべきは属性の相性である。

白き銃弾は、すべて闇に飲み込まれている。


隊長「──嘘だろッ...!?」ジャコンッ


魔王子『...効かないな』


隊長(...すべてを無力化する光と、すべてを破壊する闇...確か────)


大賢者の別荘にあった本を思い返す。

その優劣は、質の差で変わる。


魔剣士「きゃぷてんッッ! 今の魔王子はお前の光属性を凌駕しているッ!!」


魔剣士「魔王子の闇属性の質は、お前の光属性より上だァッッ!!!」


隊長(...そうだろうと思ったところだ)


魔王子『──...ッ!』スッ


──ブン■■■ッッッッッ―――――!!! ブン■■■■ッッッ――――!!!

力強い2連続の抜刀、そしてそこから放たれる剣の風と闇の音。

それを防御するべく彼が取り出したのはこの魔剣。

だがこれを持ってしても魔王子の闇には敵うことはなかった。


隊長「──ッ...!」スッ


──ガギィィィィィィィィンッッッッ...!

それは弾かれた音、あまりの衝撃に彼の手は支えることができなかった。

ユニコーンの魔剣が弾かれた、そして神業という名の属性付与も通用しない。


隊長「まずいな...ッ!」


魔女「魔剣が吹き飛ばされた...っ!」


魔剣士「...クソッ!」



437: ◆O.FqorSBYM 2018/12/04(火) 22:37:51.95 ID:VawOxBnY0


魔王子『...』スッ


隊長「...!」スチャ


──ダァァァァァァァァンッッッ!!! ジャコンッッ!!!

────カチッ...カチッ...

無謀な抵抗、それは彼に追い打ちをかけた。

リロードをする余裕などない、引き金が鳴らした音は弾切れの合図であった。


隊長「...弾切れか」


魔王子「終わりか...ならば死ね」


──ブン■■ッッッッ―――――!!

――――ドガァァァッッッッッッッ!!!!!!!

その剣気はまたたく間に、闇によって破壊される。

だがそのおかげで、隊長はその餌食にならずに済んだ。

そこには完全復活した彼が、人間の男を庇う竜が立ち尽くす。


魔剣士『...よォ...さっきは良くもやってくれたなァ...!』


隊長「ま、魔剣士...ッ! 治ったのかッ!?」


魔女「な、なんとか間に合った...っ!」


魔王子『..."竜"が"魔王"に勝てると思うなよ』


魔剣士『あァ...?』


魔剣士『..."属性付与"ォッッ!!!! "爆"ゥッッ!!!!』


魔剣士『きゃぷてェんッッッ!!! 退避してろォッッ!!!』


隊長「すまないッッッ!!!!」ダッ


魔女「きゃぷてんっ!」


隊長「大丈夫だッッ!!」カチャカチャ


隊長(今のうちにリロードしとかないと...ッ!)



438: ◆O.FqorSBYM 2018/12/04(火) 22:39:09.49 ID:VawOxBnY0


魔剣士『オラァッッッッッ!!!!!』


魔王子『...』


──バゴンッッ!! バゴンッッッ!!! バゴンッッッ!!!

────ブン■■■ッッッ―――――!! ブン■■ッッッ―――――!!!

魔剣士の爆発と、魔王子の闇が相殺しあっている。

だが明らかに優劣がついている、軍配は黒の白星であった。

そして剣気のぶつけ合いが終わると、2人は接近し鍔迫り合う。


魔王子『...無駄だ』グググ


魔王子『下位属性の炎属性に...上位属性の闇属性を相手に勝ち目などない』


魔剣士『...あァ!? 舐めんなァァッッ!!!』グググ


魔王子『..."翼"をもがれた竜になにができる』


魔剣士『てめェの言う翼ってのはァ...過去の俺様だァ』


魔剣士『いつまでも...過去に縋ってるようじゃァ"餓鬼"のまんまだぜェ?』


魔王子『...殺してやろう■■■』


魔剣士『ケッ...青二才がァ...』


――――ッッッッッ!! ――――ッッッ!!!!

両者ともに、音が捉えきれないほどの剣撃を交わしている。

目で追えるギリギリの速度、超越した剣術同士の戦いがコレであった。


魔女「...とても助太刀できそうにないわね」


隊長「あぁ...だが、あの闇をどうにかしなければ」


魔女「...」


この状況、魔女にはどうすることできない。

申し訳程度にできるのは、隊長や魔剣士の治癒ぐらいであった。

再び闘いに赴こうとする隊長を注視することしかやれることなどなかった。


魔女「...あんたの装備、血だらけね」


隊長「今は血が流れているわけでない、汚れただけだ」


魔女「...っ!」ピクッ


魔女「────まって、いいこと思いついたっ!!」


~~~~



441: ◆O.FqorSBYM 2018/12/05(水) 23:31:42.17 ID:R/wC1pHs0


~~~~


女騎士「はぁっ...はぁっ...な、なんとかなったな...」


魔闘士「...流石に骨が折れたな」


女騎士と魔闘士は死霊を殲滅していた。

骨が折れた、それは文字通りの意味であった。

この遺跡に蔓延った大量の亡骸は、無残にもすべて砕け散っていた。


魔闘士(この換えの棒も1本分余ったな...)


女騎士「ところで、ここで待機するのか?」


魔闘士「...鉄格子が光属性を帯びている、進むのは無理だ」


女騎士「だな...」


魔闘士「...しかし、未だに雷魔法を維持するなんてな」


女騎士「あぁ、魔法は持続が一番魔力を消費するからな...魔女は凄いな」


魔闘士「...どうやら凄いのは、俺たちの運も同様みたいだな」


女騎士「どうした?」


魔闘士「先程の発言は撤回させてもらおう...」スッ


―――ドガァッッッッ!!!!

魔闘士が鉄格子を蹴飛ばす。

なぜなのか、光属性はすべてを無力化させるというのに。

理由は極めて単純、魔女の持続性能を見習って欲しいモノだった。


魔闘士「たった今、光が消え失せたようだな...効力切れか?」


女騎士「...できればもっと早く、効力が切れて欲しかったな」


魔闘士「逆を言えば死霊に追われる心配はない、とでも言っておこうか...さて、魔剣士たちと合流だ」


女騎士「まぁ...このまま待機するのは退屈だしな」


魔闘士「...どうやら奥に行けば蝋燭が立っているらしいな」


魔剣士たちが先に進んだこの道。

そこには僅かな光源が並べられており、歩行が可能であった。

下り階段の道を降りていくと、激戦区跡地に到着する。



442: ◆O.FqorSBYM 2018/12/05(水) 23:33:39.70 ID:R/wC1pHs0


女騎士「広間のようだな」


魔闘士「そのようだな...とてつもない爆発後だ...魔剣士の仕業か」


女騎士「それよりも...生首が転がっているぞ」


魔闘士「あれは...異端者ッ!?」


魔闘士「...おかしい、奴は不死身のはず」


女騎士「どう見ても死んでいるぞ...どちらにしろ動き気配はなさそうだが」


魔闘士「...まぁ、死んでいるならそれでいい...それよりも向こうの扉だ」


女騎士「...あそこから嫌というほどの魔力を感じるぞ、これが魔王のモノか?」


魔闘士「そうだ、急ぐぞ」


???「────急がなくてよろしいですよ」


魔闘士「...誰だ?」


女騎士「どこから声がした...?」スッ


その時だった、どこからか声が聞こえた。

思わず彼らは足を止めてしまう、新手に備えて女騎士は槍を構えた。

だがその声色など熟知している彼は、この厄介者に頭を抱えていた。


???「...下です」


魔闘士「...やはり生きていたか、異端者ッ!」


女騎士「不死身もここまで生き抜くか...まさか生首に話しかけられるとは思わなかったぞ...」


異端者「...」


魔闘士「...邪魔をする気か? 異端者よ」


異端者「私は...異端者ではありません」


魔闘士「...なんだと? なにを抜かしている」



443: ◆O.FqorSBYM 2018/12/05(水) 23:35:57.08 ID:R/wC1pHs0


異端者「私は"天使"なのです...行き過ぎた折檻により...堕天を命じられた...」


女騎士「天使...?」


異端者「...私は堕天により記憶をなくし、狂人のような性格になりました」


異端者「身体は人間に弄くられ...あなたのような穢れた馬鹿力を得たのです」


異端者「堕天した私は殺されたようですが、そのかわり天使としての私の記憶を完全に取り戻しました」


魔闘士「...随分とつまらん奴になったな、冗談の質が落ちたのでは?」


異端者「──私がなぜ不死身なのか、教えて差し上げましょう...」


異端者に白い身体が現れる、そして背中には翼。

天使の翼は純白、そして優しそうな柔らかな作りだった。

しかしその優しさが逆に異物感を高める、そして仕上げにはあの白い言語。


異端者「さぁ、この世界に存在する全ての生物に私の恨みを...□□□□□」


女騎士「これは...光属性...っ!?」


魔闘士「...なるほど、あの鉄格子は...異端者、お前の仕業だな?」


異端者「..."結界魔法"」


異端者の周りに結界が張られる。

空間が隔絶される、それはこの異端者の魔法により。

もう逃げ場などない、この魔法から脱出する方法など限られている。


魔闘士「...仮に本当に天使だとしても...随分と攻撃的な奴だな」


女騎士「どうする...っ!?」


魔闘士「無論、天使であろうと神であろうと...邪魔者は消すまでだ」


異端者「私の前では全ての武力は無力なのです...」


魔闘士「...ならば、この魔闘士の剛力、受けてみろ」


女騎士「...光属性と相まみえるのは、初めてだな」


異端者「あなたは、人間だというのに魔物に肩を貸すのですね」


女騎士「...私には、お前が胡散臭く見える」


異端者「...あなたには救済ではなく、裁きが必要のようですね」


──メキメキメキメキメキッッッッ...

その音は結界内部の地面が崩れ去る音。

そんな中、異端者だけは翼を使い宙に舞う。



444: ◆O.FqorSBYM 2018/12/05(水) 23:38:35.78 ID:R/wC1pHs0


異端者「──□□□□□□□□□□□...」


魔闘士「チィッ..."風魔法"ッ!!!」


──ふわっ...!

風が魔闘士と女賢者を優しく包み、宙に浮く。

機敏に動くことのできる彼の体術とは裏腹に、この魔法はとても穏やかなモノであった。


女騎士「──助かるぞっっ!!!」


魔闘士「魔力は膨大にあるが魔法は得意ではない...あの女の雷魔法のような長時間は無理だ」


女騎士「さっさと、倒すしかないな...っ!」


異端者「...□□□□□□□」


女騎士「くっ..."属性付与"っ! "衝"っっっ!!!」


女騎士「私には剣気は放てないが...これならっっ!!!」


──ブンッッッ!!! ブンッッッ!!!!

ランスを宙に向かって刺すことで、衝撃を生む。

それは例え剣気を扱えなくても、騎士である彼女の苦手分野である遠距離対応力を補ってくれる。


異端者「..."光魔法"」


――──□□□っ...

異端者に向けられた衝撃が光に包まれる。

あの激しい衝撃は、白き音と共に消え去ってしまった。


女騎士「ダメかっっ!!!」


魔闘士「...ある程度、質の高い光属性の持ち主のようだな」シュン


風のように早く異端者に近寄る。

それは浮遊していても同じことであった。

彼の得意な超高速移動、そして繰り出されるのは。


魔闘士「―――ッッ!!!」


――バキィィィッッッ...!!!

その拳は、異端者の腹部に直撃するはずだった。

だが彼に感じた手応えは、存在しなかった。


女騎士「やったかっ!?」



445: ◆O.FqorSBYM 2018/12/05(水) 23:40:24.32 ID:R/wC1pHs0


魔闘士「...いや」


異端者「無駄です、私に魔法及び暴力は通じません...□□□」


魔闘士「クッ...一度退かせてもらうか...」シュンッ


女騎士「ど、どうするっ!?」


魔闘士「...光魔法を使わせるな...魔法の合間を狙えッ...!」


異端者「さぁ、審判を下しましょう」


異端者「...光の矢を、受けなさい」


──ぽわぁっ...ぽわぁっ...ぽわぁっ...

優しげな音、だがそれとは裏腹に尋常ではない量の矢が創造される。

なにもないところから何かを創り出したのであった、やはりこの者は本当に天使なのだろうか。


魔闘士「...光の属性付与よりはマシか」


女騎士「そんなことできるのは勇者ぐらいだろうっ!?」


魔闘士「...実は身近にいるぞ」


女騎士「今はそれより、どうするか決めろっっ!!!」


魔闘士「────避けろッッッ!!!」


──ヒュンッ ヒュンッ ヒュンッ...

止まることない、その矢が空気を切り裂く音。

地獄のような光景であった、それを作り出しているのは自称天使。

だが2人は抵抗する、卓越した回避術、魔闘士だけではなく女騎士も見事に避けきった。


異端者「審判を受け入れなさい、その罪は重いのです」


女騎士「はぁっ...またあの矢が放たれたら避けきれる自信はないぞっ...!」


魔闘士(...すでにコイツは消耗されたか、いや...今のを避けれるだけ十分か...人間にしてはな)



446: ◆O.FqorSBYM 2018/12/05(水) 23:41:59.29 ID:R/wC1pHs0


魔闘士「チィィ...」


異端者「なにもすることはないのです、ただ審判を受け入れればいいのです」


魔闘士「調子に乗るな...その苛々させる言葉使いをやめろ」


異端者「...そのような言葉も、重罪なのです」


魔闘士「その苛つく翼、へし折ってやろう...」


魔闘士(...光魔法の恐ろしいところは、自分の攻撃の威力は一切影響しないところだ)


魔闘士(いかに強力な防御魔法を纏っていても、光を帯びた矢で撃たれれば簡単に身体を貫かれる)


魔闘士(...いやまて、今までに"奴"に倒された者は強力な肉体を持っていたはずだ)


魔闘士(恐らく、"この武器"を使ったんだろう...この光属性のような武器を...)


魔闘士(魔王軍の強靭な身体を貫く、この武器を...ッ!)


魔闘士(普通の武器なら光魔法に通じはしない...だが、この未知の武器に賭けるッ!)ギュッ


異端者「さぁ、光に貫かれる準備はできましたか?」


魔闘士「...1分だ」


異端者「...はい?」



447: ◆O.FqorSBYM 2018/12/05(水) 23:42:25.94 ID:R/wC1pHs0











「1分でお前を片付ける...ッ!」












448: ◆O.FqorSBYM 2018/12/05(水) 23:43:33.99 ID:R/wC1pHs0


異端者「...魔物に夢を見る権利はありません」


魔闘士「目標は大きくすると叶いやすいのだ...」


女騎士「お、おいっ...」


魔闘士「お前はそこで指を咥えて待っていろ...その身体じゃ持たんだろう」


女騎士「...!」


女騎士(くっ...もう限界だって気づいてたのか...っ!)


魔闘士(...この武器に15発、替えの棒が1本で合計30発)


魔闘士(力を貸りるぞ...!)スチャ


異端者「さぁ、滅しなさ────」


――ダンッ!

彼が握りしめていたのは、あの男から手渡された未曾有の武器。

それは今までの強敵を仕留めてきた、驚異的な一撃。

人間も魔物も関係ない、はたまた天使であっても。


異端者「──うっ...っ!?」


女騎士「...効いた?」


魔闘士「...フッ、速いだろう...この俺ですら避けるのは厳しいモノだ」


異端者「────な、なんですかこれはっ...!?」


魔闘士「ご自慢の光魔法も通じないようだな」


異端者「し、知らない...こんな攻撃...っ...痛いっ!?」


魔闘士「その様子だと、いままで痛みを感じたことが少ないようだな」


魔闘士「...これから1分、どこから放たれるかわからない未曾有の攻撃に襲われるのだ」



449: ◆O.FqorSBYM 2018/12/05(水) 23:44:14.19 ID:R/wC1pHs0











「覚悟しろよ...羽蟲...ッ!!」












450: ◆O.FqorSBYM 2018/12/05(水) 23:45:30.60 ID:R/wC1pHs0


~~~~


~~~~


魔剣士『ゲホッ...グッ...ハッ...』


魔王子『...もう、終わりか?』


魔剣士(やべェ...もうもたねェ...)フラッ


魔剣士『...クソッタレ...ッ!」


魔王子『一体化も解けたようだな...』


激戦区、魔王子戦。

その相手をしていたのは魔剣士であった。

だが彼はもう限界、立つことすら不可能な状態に叩き込まれた。


魔王子『...死ね』


魔剣士(畜生...ッ!)


魔王子『──!』ピクッ


――バチィンッッッ!!!!

────スパン■■ッッッ!!!!!!

何かが魔王子を貫こうとした。

だがその稲妻は、瞬時に両断されてしまった。


魔女「...悪いけど、私がいるのを忘れないでね」


魔剣士「──やめろォ! お前じゃ死ぬぞォッッ!!!」


魔王子『...威力は認めるが、雷魔法如きでは止められんぞ』


魔女「...威力は認めたことを後悔するのね」


魔女「―――"雷魔法"っ...!」


――――バチィンッッッッッッ!!!!!!

魔女の周りに纏わっている雷が轟く。

塀の都で見せてくれた、巨大な雷球が魔王子に襲いかかる。


魔王子『──...ッ!』スッ


――スパ■■■ッッ...!

しかし、それは呆気なく対処された。

魔王子の抜刀が、そして付与された闇が魔女の雷を破壊する。


魔剣士(ダメだ...雷魔法如きじゃ、魔王子に斬られて終わりだァ...)




451: ◆O.FqorSBYM 2018/12/05(水) 23:46:56.28 ID:R/wC1pHs0


魔王子『その短い詠唱でこの威力は褒めてやろう...だが────』ピクッ


魔女「────まだまだっっっ!!! 終わらないわよっっ!!!」


魔剣士「な、なんだァ...?」


魔王子『...2連撃目だと?』


――――バチィィィンッッッッッッ!!

――――スパッッッッッ...!

続くのは同じ音、だが微かに変化が訪れていた。


魔女「────まだよっっ!」


魔王子『3連撃...ッ!?』


――――バチバチィッッッッッッ!!!!

――――――――――スパッッッ!!!!

1つの詠唱から、ここまでの威力を誇る雷魔法が3つも放たれた。

だが驚くのはそこではない、攻撃頻度こそが魔女の猛攻の真骨頂である。


魔剣士(──魔王子の抜刀の感覚が遅くなってきているッッ!?)


魔女「────はああああああああああっっっっ!!!」


魔王子『まだ続くか...』


――――バチバチバチィッッッ!!

――――――――――――――――スパッッッ!!!!

抜刀居合、それが彼の得意戦術、だからこその弱点であった。

抜刀が終わるたびに納刀しなければいけない、このルーティンが崩れればどうなるか。

プロのアスリートですら、己のルーティンが崩れると調子も崩れてしまう、それは魔王子も同じであった。


魔王子『いい加減にしろ...』


魔女「くっ...! 5連撃ぃぃっ...!」


――――バチバチバチバチィィィッッ!!!

―――――――――――スパッッッ...!!

しかし、そのような小賢しい策では倒すことができない。

彼は深呼吸をもせずに、自らの調子を整えたのであった。


魔王子『...所詮、威力だけで単調だな』


魔剣士(クソッ...ここに来て落ち着いて対処しやがってェ...)


魔女「はぁっ...はぁっ...」


魔王子『その威力、1回の詠唱だけであれだけの魔法をよく放ったな』




452: ◆O.FqorSBYM 2018/12/05(水) 23:48:06.65 ID:R/wC1pHs0


魔女「...ま、まだよ...っ!」


魔王子『...死ね』スッ


魔女「っ...」


魔王子『──ッ!』ピクッ


──ババババババババババ□□ッッッッ!!!!!

光を帯びた弾幕が放たれる。

魔女の首をはねようとした魔王子がソレに襲われる。

だが虚しくも効果は得られず、相も変わらず光は闇に飲まれたままであった。


隊長「...ッ!」


魔王子『遠くから狙っても無駄だ、俺の闇属性の前では...■■■』


闇が、彼の攻撃に備え一部に纏まった。

その見た目は分厚い盾、万が一を起こさないための防御策であった。



453: ◆O.FqorSBYM 2018/12/05(水) 23:48:50.21 ID:R/wC1pHs0











「────"属性付与"、"雷"っ!」












454: ◆O.FqorSBYM 2018/12/05(水) 23:50:19.46 ID:R/wC1pHs0


魔王子『なッ...!?』


──バチバチッ...!

その雷は、彼から聞こえた。

魔王子の身体の一部に、雷が付与された。

それがどのような意味を持っているのか。


魔女「はぁっ...やっと有効範囲でよそ見してくれたわね...」


魔女「その魔法の初めては、きゃぷてんにあげる予定だったのに...ありがたく思いなさいよ」


魔王子『...先ほどまでの雷魔法は陽動か』


その顔色には、少しばかり焦りが込められた。

属性付与、それはどちらかといえば強化の意味を含む魔法である。

なのになぜ彼は焦るのか、それは魔王子の闇が問題であった。


魔女「...水と泥が混ざれば、水の質は下がるのと同じ」


隊長「...果たして、下位属性の雷属性という不純物を帯びてもなお」


魔剣士「その圧倒的な質の闇属性を維持できんのかァ...? ってかァ?」


上位属性と言われる光と闇、その優劣は質の差で決まる。

今彼らが持つ手段の中には光というモノが存在する、ならば決め手はこれしかない。

闇の質を下げれば攻撃がまともに通用するはず、血で防具を汚した隊長を見て彼女はそれを思いついたのであった。


魔王子『...』


魔剣士「...どうやら、対処できねェみてェだな」


魔剣士「もう、一体化する元気はねェが...初めて俺様の攻撃がまともに通りそうな状況だァ」


魔剣士「楽しませてもらうぜェ? 魔王子ィ...ッ!」


隊長「反撃開始だ...ッ!」


魔王子『...面白い、久々に痛みと共に闘おう』


魔女「わ、わるいけど...私はもう...無理よ...っ!」


隊長「あぁ、下がって休んでいてくれ...ッ!」


魔剣士「きゃぷてェん...援護頼んだぜェ?」


隊長「...OKッッ!!」スチャ


──バババババババ□□□ッッッ!!!

先程までは、ただ闇に喰われるだけであったこの光。

だが今は違う、明らかにソレは彼を苦しめていた。



455: ◆O.FqorSBYM 2018/12/05(水) 23:53:47.71 ID:R/wC1pHs0


魔王子『これが...これが本来の威力か、面白い■■■■■■』


魔剣士「──魔王子の奴、ブチ切れたなァッッ!!」


魔剣士「いくら攻撃が通るようになったからってェ! 油断するなァッッ!!!」スッ


──ブン■■ッッッッ――――――!!!

────ガギィィィィィィンッッッッッ!!!!

その余波は計り知れない、再び剣士たちは己の魔剣をぶつけ合う。


魔剣士「──腕が吹っ飛びそうだァッッ!!!」グググ


隊長「耐えてくれッッッ!!!」


──ババババババババ□□□ッッッッ!!!!!

白き弾幕が魔王子を貫く、がこれでもまだ倒れない。

あと一歩、あと一押しがなければ、この魔王の息子を倒せることができない。


魔王子『ッッ...! ■■■■■■■ッッッ!!!』グググ


魔剣士「光属性をォ...撃ちこみまくれェッッッ!!!」グググ


魔剣士が盾となり、隊長がその後方から銃を撃ちまくる。

彼がいなければ隊長は既に死んでいる、様々なめぐり合わせが今の状況を作っている。


魔王子『■■■■■■■■ッッッッッ!!!』


──バババババババババババババババッッッッッ!!!!

―───カチッ カチッ...!

アサルトライフルの弾が切れる、すると即座に彼は武器を入れ替えた。

ショットガンでもない、ハンドガンでもない、ナイフでもない、これがトドメの一撃。


魔王子『■■■■■■■■■■■■■■■■ッッ!!』


魔剣士「──向こうも俺様も、限界がちけェぞォォォォッッッッ!!!!」


隊長「────とどめだ!」スッ


魔剣士「――――ッ!」


魔王子『――――■ッ!』


────からんからんっっ...!

隊長が魔王子の足元に手榴弾を投げた。

もちろん、その見た目はとても輝かしい光に包まれていた。


魔王子「────」


―――パキッ...!

そして最後に聞こえたのは、この音であった。


~~~~



458: ◆O.FqorSBYM 2018/12/06(木) 22:05:54.98 ID:EqxmTkEp0


~~~~


魔闘士「...口ほどにもなかったな」


異端者「痛いっ...痛いっ...」


魔闘士「...もう、光魔法を唱えることもできないか」


異端者「やめて...くださいっ...」


魔闘士「雑魚の分際で時間をかけさせやがって...」


女騎士「...もうそのへんにしてやれ」


羽はもがれた、そして身体中に銃痕が残る。

流れ出る紅き血がこの白き天使を染め上げていた。

そんな様子を見かねて、女騎士はつい同情を施してしまう。


魔闘士「...おい、結界魔法を解除しろ」


異端者「ひっ...」


魔闘士の威圧に押され、簡単に魔法を解除してしまう。

すると崩れた地面は元に戻り、全て無かったことのようになった。

それを見届けると、彼は手刀を異端者の首に構える。


魔闘士「...では失せてろ」スッ


異端者「た、助け──」


――ザシュッ...! ゴロンッ...

不死身の身体は、再び首をはねられる。

もう二度とこの者は立ち上がることはできない。

植え付けられた痛みと恐怖心が、この者の心を完全に殺したからであった。


魔闘士「...不死身と言えど、心が壊れれば動けなくなってしまうようだな」


女騎士「...野蛮だな」


魔闘士「フン、所詮魔物と人間だ...相容れぬ」


女騎士「...」


魔闘士「...行くぞ」


女騎士「あぁ」


―――ガチャッ

扉を開けようとした、開けようとしただけである。

なのにこの扉は独りでに動き始めた、自動で開いてくれる代物ではない。



459: ◆O.FqorSBYM 2018/12/06(木) 22:07:25.61 ID:EqxmTkEp0


魔女「へっ...?」


女騎士「魔女っ!?」


魔闘士「これは...?」


隊長「──魔闘士ッ! 無事だったのか...!」


魔剣士「よォ...どうしてここにいんだァ...?」


魔闘士「それより、先にそっちを説明してくれ...」


隊長「...見ての通りだ」


魔王子「────」


そこにいたのは、脂汗をかいている魔女。

ぐったりとしている魔剣士、そして最後に。

まさかの人物が、この隊長という男におぶさっている。


魔剣士「へッ...俺様たちで魔王子を倒しちまっただけだァ」


魔闘士「...なんだと」


隊長「話したいのは山々だが...ここは埃っぽいし、激しい戦闘があった...地盤が崩れたら面倒だ」


女騎士「そうだな、出るか」


魔剣士「あァ...きゃぷてん、悪ィがそのまま魔王子を運んでくれェ...今の俺様には無理だァ」


隊長「あぁ」


魔闘士「...おい」


隊長「...どうした?」


魔闘士「借りていた物だ、全て返すぞ」スッ


借りていた物、それは彼の武器であった。

数発残ったハンドガンと空のマガジン全てを渡される。


隊長「あぁ、確かに受け取った」



460: ◆O.FqorSBYM 2018/12/06(木) 22:08:41.14 ID:EqxmTkEp0


魔闘士「...その武器、思いの外役に立った」


隊長「...そうか、それはよかった」


女騎士「思いの外って...お前の攻撃ほとんどそれだったぞ」


魔闘士「黙れ...」


魔女「ぷっ...」


魔闘士「...おい、雷魔法による灯りの恩はあるが...笑い者にするとならば話は違うぞ」


魔女「...はいは~い」


魔剣士「おォ、魔闘士が俺様以外からもいじられてらァ...」


隊長「...平和だな」


魔剣士「案外、お前の言う通りになるかもな」


隊長「...帽子に見せてやりたいな」


魔剣士「フッ...」


隊長「...お喋りは後だ、さっさと出るぞ」


魔剣士「あァ、さってと...」スッ


魔剣士がよろけながらも、転がっている何かを拾い上げた。

それは冒涜的な気配を漂わせる、邪悪な魔剣。


魔剣士(...魔王子の剣にヒビが入ってやがる)


魔剣士(歴代最強の魔王をここまで追いやるなんてな...)


魔剣士(いくら、本来の力をあの戦術で弱めたと言っても...)


魔剣士(...こりゃ、しばらく魔王子の奴はコレを使えねェな)


~~~~



461: ◆O.FqorSBYM 2018/12/06(木) 22:09:46.08 ID:EqxmTkEp0


~~~~


──からんからんっ

軽快な音が鳴り響く。

どうやら大勢の客が入った模様。


酒屋「...昨日の客か、何にする」


隊長「...水だ」


魔剣士「あと適当に酒と濡らした布をくれェ」


酒屋「...大人数なら、奥の大きな机に行ってくれ」


魔剣士「悪ィ、個室とかねェか?」


酒屋「...怪我人がいるようだし、特別に貸してやる」


魔剣士「ありがとよォ」


魔闘士「...こっちだな」


──ガチャッ...

快く個室に入ることができた。

そして隊長は背負っていた魔王子をゆっくり降ろす。

語ることは多すぎる、だがまずは休息の一呼吸を味わった。


魔王子「────」


隊長「ふぅ...」


魔剣士「おう、ご苦労ゥ」


女騎士「代わりにきゃぷてんの武器を持っていたが...こんなに重いのか」ガチャガチャ


魔女「ほら、飲み物もらってきたわよ」



462: ◆O.FqorSBYM 2018/12/06(木) 22:12:32.45 ID:EqxmTkEp0


魔闘士「...さて魔剣士よ、いろいろ説明して貰おうか」


魔剣士「そうだなァ...事の流れはこうだァ」


魔剣士「鉄格子で二手に別れたあと、異端者に遭遇ゥ」


魔剣士「不死身に手を焼いたが、身体がバラバラになった時にこのユニコーンの魔剣をぶっ刺したァ」


魔闘士「...不死身を無力化したのか、光属性というモノは恐ろしいな」


魔剣士「その後、魔王の結界をコレで一瞬こじ開けたァ」


魔剣士「そんで、魔王子ときゃぷてんが交渉...その結果は勝った方の言うことを聞くみたいな感じだったなァ」


魔剣士「俺様は気が向いたから、きゃぷてんの方に着いたァ」


魔剣士「...まァ、なぜかきゃぷてんが光の属性付与を使用してるわ」


魔剣士「嬢ちゃんに陽動させて、魔王子の闇属性の質をさげ...そのままゴリ押しって感じだったァ...」


魔剣士「それで、魔王子が今も気を失ってる状況までになったなァ」


魔闘士「...なるほどな」


女騎士「...ちょっとまってくれ」


納得した者は果たしているのだろうか。

誰1人として状況を飲み込めずにいた、それは当人でさえ。

なぜ光という強力な魔法を手にしているのか、彼に尋ねるしかなかった。


魔女「そうね...1つどうしても気になる点があるわ」


魔女「きゃぷてん、あんたから魔力を一切感じないのに...どうして魔法...それも光の属性付与を使えるの?」


女騎士「属性付与ですら高等の魔法なのに...さらに超希少な光属性だなんてな」


隊長「...俺も良くわからん...使えるようになったのは魔闘士と戦った時が初めてだ」


魔闘士「...あの時が初めてだったのか」


隊長「あぁ...あの時、俺は死にかけた」


隊長「もしかしたら、俺の幻視かもしれんが...その時に神を自称する奴に出会ったんだ」


隊長「...その神に、この属性付与とやらを受け取ったみたいなんだ...」


正直話についていけない、少なくとも魔女と魔剣士はそうだった。

しかし彼ら2人は、ギリギリ話を繋げることができた。

それはあの人物に出会ったから。


魔闘士「神か...本来なら話にならんが、1つだけ信じるに値する出来事があった」



463: ◆O.FqorSBYM 2018/12/06(木) 22:14:44.76 ID:EqxmTkEp0


女騎士「...次はこっちの話をしよう」


女騎士「鉄格子で閉じ込められた後、私たちはなんとか死霊を殲滅した」


女騎士「丁度殲滅し終わった時に、鉄格子にかかっていた光が解けたんだ」


女騎士「それで、進んでみると首だけの異端者がいてな」


魔剣士「...そうだろうなァ」


魔闘士「だが、奴は生きていた」


魔剣士「...本当かよ」


魔闘士「あぁ...だが、性格は正反対だったな」


魔闘士「奴は、天使を自称していた...それも光魔法を使っていた」


魔剣士「...神も天使も、空想上の存在ではなく...本当に実在していたことになるのかァ?」


魔闘士「神がいれば、その使いである天使がいても可笑しくはない...その逆でも言える」


魔闘士「少なくとも天使が実在した...ならばその主である神がいても不思議ではない」


魔女「ってことは...きゃぷてんは本当に神に出会ったことになるのね」


隊長「...話が大きくなってきたな」


女騎士「おとぎ話などでは良く耳にするが...実在してたなんてな」


魔剣士「...で、その天使はどうなったんだァ?」


魔闘士「比較的高い質の光魔法を放っていた、俺や女騎士の攻撃など通用しなかったが...」


魔闘士「...不思議なことに、あの武器だけは通じた」


魔闘士「後は、簡単だ...あの武器で詠唱できなくなるほど痛めつけ、心を殺して動けなくさせた」


魔闘士「そして、お前たちに合流したって所だな...」


皆の視線が集まる、それは当然であった。

神に出会った、そして未曾有の武器、さらにその武器は光すらを貫く。

この男の正体が一切見えない、だからこそこの場にいる者たちに問い詰められた。


魔剣士「光の属性付与...光魔法すら貫くその武器、きゃぷてん...お前は────」


女騎士「──何者なんだ...?」



464: ◆O.FqorSBYM 2018/12/06(木) 22:16:38.84 ID:EqxmTkEp0


魔女「えぇっと...言っていいの?」


隊長「...俺は異世界から来た人間だ」


女騎士「...っ!?」


魔剣士「はァ?」


魔闘士「...随分と軽く告白するものだな」


隊長「...詳しく話せば長くなるが、気づいたらこの世界にいたんだ」


隊長「そして、元の世界に戻るために情報集めとして旅をしてきた...」


隊長「その途中、後に親友になる帽子たちに出会い...今に至るわけだ」


魔剣士「...天使、神、異世界人...俺様は夢でもみてんのかァ?」


魔闘士「...光属性はすべてを無力化する...だが、それはこの世界での話」


魔闘士「異世界の武器、全くもって未知だからこそ光魔法を貫通したのか...?」


隊長「...そうかもしれない」


魔剣士「...なんかよォ、もう疲れちまったぜェ」


魔闘士「同感だ、今日はいろいろありすぎる」


魔剣士「人間界は魔界に比べると魔力が薄すぎる...基本的に全力はだせねェし...」


隊長「...あれで全力じゃなかったのか?」


魔剣士「あァ、魔界の空気には大量の魔力が含まれているんだぜェ?」


魔剣士「空気が薄いと派手な運動できねェだろ、それと同じだァ」


魔剣士「逆をいえば、魔界にいる魔物は今まで出会った奴らより強いかもなァ」


魔女「こ、これから魔界に向かうの不安になってきた...」


魔闘士「...もう1ついえば、魔物は戦闘の質が格段に上昇するだろう」


魔女「...ちょっと安心したかも」


隊長「俺は安心できないぞ...」


女騎士「私もだ...」


魔剣士「女騎士はしらねェが、きゃぷてんも一応属性付与の質上がるんじゃねェか?」


隊長「...問題は常には使えないみたいだ」


魔剣士「はァ? そうなのかァ?」



465: ◆O.FqorSBYM 2018/12/06(木) 22:18:12.76 ID:EqxmTkEp0


隊長「なんだ...こう、昂った時にしか使えないみたいだ」


魔剣士「...そもそもだがよォ、魔力がねェのがおかしいしなァ」


魔女「...思いを込めれば込めるほど、魔法の質はあがるのは知ってるけど」


魔剣士「思いを込めれば込めるほど、魔力が満ちるってのは聞いたことねェな」


隊長「...そもそも、魔力はどうやって回復したりするんだ?」


魔女「肉体的に疲れれば体力が減るのと同じで、精神的に疲れれば魔力も減ってくるわ」


魔剣士「まァ、寝れば治るってなァ」


隊長「...自分のことだが、この身に何が起きているのか不安で仕方なくなってきたぞ」


魔闘士「なに、簡単なことだ」


隊長「...わかるのか?」


魔闘士「神と名乗るだけあって、そのぐらいの融通は聞くんじゃないか?」


魔剣士「...有り得なくはねェがよォ」


魔女「理にかなってないのが、もどかしいわね...」


魔闘士「知るか、神にでも聞け」


女騎士「...ところで、今日も野宿か?」


魔女「...正直、もう眠い」


魔剣士「あァ、適当に宿でも行くかァ?」


魔闘士「...で、誰が宿代とこの飲み代を払うか」


魔女「...手持ちない」


魔剣士「悪ィが、人間の通貨はもってねェ」


魔闘士「俺は先ほどの遺跡で落としてしまったようだ」


女騎士「...身ぐるみなんて剥がされてたから金などない」


沈黙が訪れる、だがみんなが同時に思っていたことはある。

異世界人がこの世界の通貨なんて持っているわけがない。

そのはずだった。


隊長「俺は金貨4枚、銀貨3枚と銅貨6枚しかないぞ」


~~~~



466: ◆O.FqorSBYM 2018/12/06(木) 22:20:51.14 ID:EqxmTkEp0


~~~~


魔剣士「全然起きねェなァ、魔王子」


魔闘士「本来の闇を介さずに光を帯びた攻撃を食らったんだ、仕方ないだろう」


隊長「...ふぅ」


暗黒街の一番まともそうな宿に泊まる、それはこの男のおかげ。

隣の部屋には女騎士と魔女がいる、わざわざ2部屋も借りれたのはこの男のおかげ。

そんな奇跡にも近い芸当を成し遂げた彼は装備を外していく。


魔剣士「...すげェ筋肉だな」


魔闘士「魔力がなくても、あの威力に納得だな」


隊長「...お前たちは威力から考えると細すぎるな」


魔剣士「まァ、魔物だしよ」


隊長「...そういえば、質問が1つある」


魔剣士「あァ?」


隊長「お前や女騎士は武器に帯びさせるようだが...」


隊長「俺と魔王子は属性付与を身体に帯びさせていただろ? なにか差はあるのか?」


魔剣士「いや、ねェな...むしろ身体に帯びさせるほうがいい」


隊長「そうなのか?」


魔剣士「下位属性と上位属性の差ってやつだな...」


魔剣士「上位属性ってのは、基本的に自分に害がでないんだ」


魔剣士「光属性を纏ったら無力化の影響で動けなくなっちまう、それじゃ光属性の存在意義がねェだろ?」


隊長「...そうだな、それだったら俺もなんらかしらが無力化されてるはずだな」


魔剣士「つまり身体に纏わせれば攻撃と防御、両方を備えられるってことだァ」


魔剣士「一方、下位属性はそうはいかねェ」


魔剣士「風魔法ならともかく爆魔法なんてもってのほか、自分でも爆風は食らっちまう」


魔剣士「ましては、爆発を自分の身体に帯びさせたくねェわ..」



467: ◆O.FqorSBYM 2018/12/06(木) 22:23:48.74 ID:EqxmTkEp0


魔剣士「そんで今回の戦術、闇属性が己に害を与えることができない...って穴と、不意をついたものだったなァ」


魔剣士「闇が雷と混ざっちまっても闇は闇だ、雷だけ破壊するという都合のいい害ができるわけねェ」


魔剣士「まァ、魔王子も予測してればアレをする前に、闇が雷を破壊してたかもなァ...予測できるわけねェけど」


隊長「なるほどな...」


魔闘士「そのような戦術...誰も試したことないだろうな」


魔剣士「闇属性といい光属性といい、希少すぎてそういった実験もできねェし前例もねェ」


隊長「...思いついた魔女に感謝だな」


魔闘士「それで...これから先、どうするつもりだ?」


隊長「...魔王子にはこのまま着いてきてもらうぞ」


魔闘士「...」


魔剣士「仕方ねェだろ、現に魔王子負けたしィ」


魔闘士「フン、この人間の手助けしといてその言い草か」


魔剣士「魔王子も見つかった今、俺様は単純に魔王子に着いてくだけだぜェ?」


隊長「...着いてきてくれるのかッ!?」


魔剣士「...逆に着いていかねェと魔王子がブチ切れるだろ」


魔闘士「魔王子は魔剣士と人間に負けたんだ、負かした張本人たちの1人がいなければおかしい話だ」


魔剣士「つーことで、俺様と魔闘士は魔王子に...つまりきゃぷてんに着いてくぜ?」


隊長「本当かッ!?」


魔闘士「...俺は魔王子に着くだけだ、勘違いするなよ」


隊長「あぁ! とても助かるぞッ!」


魔剣士「異世界人がどこまでやれるか、面白いことになってきたなァ」


魔闘士「...ところで、魔界の地理は知っているのか?」


隊長「正直、全くわからない...そもそも人間界と魔界の違いすらわかっていない」


魔闘士「だろうな...まだ体力があるようなら夜通しで教えてやろう」


魔剣士(魔王子に着くって言ってる割には、乗り気だな)


隊長「あぁ、頼む」



468: ◆O.FqorSBYM 2018/12/06(木) 22:25:50.70 ID:EqxmTkEp0


魔闘士「いいか? まずこの暗黒街から魔界はすぐだ」


魔闘士「このまま北上すれば、四半日で魔界に通づる巨大橋にたどり着く」


隊長「...なにか障害はあったりするのか?」


魔闘士「いや、特にそういった地形や建造物はないはずだ」


魔闘士「問題は橋だ、そこに番人の"黒騎士"がいるはずだ」


隊長「...黒騎士か」


魔闘士「奴は知性もあるが、魔物以外には容赦はしない」


隊長「橋の下を渡るのはどうだ?」


魔闘士「だめだ、橋の下の海は深く...大量の魔物がいるだろう」


隊長「...強行突破か」


魔闘士「それしかないが、それをしたら魔界の態勢は厳しくなるだろう」


隊長「強行突破後は、時間の勝負か」


魔闘士「あぁ、だが橋から魔王城までは...少なく見積もっても1週間はかかるぞ」


隊長「...1週間ではまずいな」


魔闘士「お前ほどの切れ者には理解できるはずだ」


暗躍者を倒してから、わずか数日にも満たない。

その情報の速さこそが、追跡者や復讐者と対峙した原因であった。


隊長「1週間もあれば、場所の特定から大量の魔物を送ることができるだろうな」


魔闘士「その通りだ、どんな戦闘も数の暴力には不利だ...時間との勝負だ」


隊長「...最短距離ではなく、隠れながら遠回りするしかないな」


魔闘士「俺もそう考えたが、今は違うのだ」


隊長「...?」


魔闘士「今は"列車"というものが作られている」


隊長「列車だと...ッ!?」



469: ◆O.FqorSBYM 2018/12/06(木) 22:28:29.04 ID:EqxmTkEp0


魔闘士「...知っているのか?」


隊長「あ、あぁ...俺の世界に数多く存在するぞ」


魔闘士「そうなのか...俺は魔王軍の発明家が開発とした思っていた」


隊長「...俺の世界の物が蔓延りだしてるのか?」


魔闘士「いや、今のところ大きく話題になってるのは列車のみだ」


隊長「で...列車を乗っ取るのか」


魔闘士「そうだ、これで大幅の短縮ができ、4日で魔王城に到着できる」


隊長「橋から乗れるのか?」


魔闘士「残念ながら開発途中だ、丁度...橋から魔王城の中間から乗れるはずだ」


隊長「...それでも十分だな」


魔闘士「常に高速で動いてる、特定は出来てもすぐに大量の兵を送ることはできん」


隊長「...地図とか持っていないか?」


魔闘士「悪いが手持ちにないな...だが、記憶から写してやろう」


隊長「助かるぞ、魔闘士」


魔闘士「勘違いするな...魔王子を倒したお前が簡単に死なれては、魔王子の名が廃るからだ」


魔剣士「グゥ...ガァ...」スピー


魔闘士「...このトカゲのように寝たらどうだ?」


隊長「いや...できるだけ早く地理の把握や戦略を考えたい...出来上がるまで起きているぞ」


隊長「だが...少し、風呂に浴びてくる」


魔闘士「さっさと行って来い、そのころには出来上がってるだろう」


隊長「あぁ、頼んだ」


~~~~



470: ◆O.FqorSBYM 2018/12/06(木) 22:29:45.96 ID:EqxmTkEp0


~~~~


隊長(ここにも大浴場があるとはな...)


隊長は大浴場に向かう。

その途中で楽しそうな会話をする者たちが近づいてきた。


魔女「あれ、まだ起きてたの?」


隊長「魔女と女騎士か」


女騎士「あれだけの戦闘があったんだ、休んだらどうだ?」


隊長「いや、魔闘士と戦略を練っているところだ...寝るわけにはいかん」


魔女「へっ、魔闘士?」


隊長「あぁ、どうやら魔闘士と魔剣士はこの旅に着いてきてくれるみたいだ」


魔女「嘘っ! 凄いじゃない!」


女騎士「彼らは強力だ、心強いな」


隊長「あぁ、とりあえず風呂に入って...軽く気分転換しようと思ってな」


女騎士「むっ、奇遇だな...私たちも入るところだ」


隊長「そうなのか...」


隊長(...まさか混浴じゃないだろうな)


過去の苦い思い出が湧き返る。

若干、冷や汗をたらりとかいてしまう程に。


魔女「混浴はあるけど、残念ながらちゃんと女湯に入るわよ」


隊長「...そ、そうか...よかった」


魔女「...うん?」



471: ◆O.FqorSBYM 2018/12/06(木) 22:30:39.41 ID:EqxmTkEp0


女騎士「...それにしても、逞しい身体だな」


女騎士「いつもは独特の鎧で隠れていたが...凄いな」


魔女「見なさい、腕の太さが私の4倍はあるわよ」


隊長「仕事柄こうなってしまったな...」


女騎士「しかし、それだけ筋肉があると背中に手が届かなそうだな」


隊長「あ、あぁ...確かにそんな時があるな」


女騎士「...よかったら、背中を流してやろうか?」


隊長「は?」


魔女「ちょっ...えっ!?」


女騎士「なにか変なことをいったか?」


隊長「いや...俺は男だぞ...?」


女騎士「大丈夫だ、よく後輩の男騎士共と風呂に入っていた」


隊長(どう考えても大丈夫じゃないだろ...)


魔女「ちょ、ちょっと...何言ってるのよ...」


女騎士「大丈夫だ、女の私はもう居ない」


隊長(俺から見れば、お前は十分女だ...)


女騎士「さぁ、風呂にいくぞ」グイッ


女騎士の怪力が、筋肉集合体である隊長を引っ張る。

その先は希望と絶望、光と闇の混浴の暖簾であった。


隊長「ま、まてまてまてまてまてッッ!!!」


女騎士「その筋肉、参考にさせてもらうぞ」


魔女「か、勘弁してあげて...」


~~~~



472: ◆O.FqorSBYM 2018/12/06(木) 22:32:51.43 ID:EqxmTkEp0


~~~~


隊長「...ふぅ」


魔闘士「フン...随分と早かったな」カキカキ


隊長「あぁ...」


魔闘士「もう少しで完成する、待ってろ」カキカキ


魔剣士「くかァー...」スピー


隊長(...暇だな、弾でも込めるか)


──コンコンッ!

部屋の扉から音がなる、どうやら来客の様子であった。

対応を行ったのは、この無愛想な男であった。


魔闘士「...入れ」


魔女「お邪魔するわ...それで、さっき頼まれたの持ってきたわよ」


隊長「早かったな...丁度訪ねようとしたところだ」


魔闘士「...それは?」


魔女「この武器に必要な物よ」


隊長「いうなれば、この武器に対する魔力みたいなものだ」


彼女が持ってきてくれたこの荷物、そこには大量の弾薬や実包が複製されていた。

やはり好奇心というモノは強い、地図を書く手が止まってしまう程に。


魔闘士「ほう...これが発射されてたわけか」


隊長「あぁそうだ...では、早速使わせてもらうぞ」


魔女「はいはい、私はもう寝るわね...ふわぁ~あ...」


隊長「あぁ、ゆっくり休め」


魔女「あ、そうそう女騎士がね」


隊長「...なんだ?」ビクッ


魔女「...今度、稽古をつけてくれってさ」


隊長「...おう」


魔女「...そ、そんな怯えないであげて」


隊長「だ、大丈夫だ...大丈夫なはず...」


魔闘士「...?」



473: ◆O.FqorSBYM 2018/12/06(木) 22:34:30.62 ID:EqxmTkEp0


魔女「魔闘士も休みなね~、おやすみっ!」


──ガチャンッ

そんな就寝の挨拶も返さずに、彼は地図を書き進める。

そうして書きなぐった渾身のソレは、ついに完成する。


魔闘士「...出来たぞ」


隊長「なるほど...こういった地理になっているのか」


魔闘士「列車に乗れば、湖に密林...そして魔王城下町を通過できる」


隊長「だが...列車までに2つほどの障害があるみたいだな」


魔闘士「あぁ、橋を抜けたらまずに村が存在する...」


魔闘士「あそこは低能魔物共が住み着いている、大規模乱戦は不可避だ」


隊長「地形的にも遠回りはできなさそうだな...」


魔闘士「まぁ、魔王子や俺がいる今では余裕だろう...問題は次だ」


隊長「...山岳地帯か?」


魔闘士「あぁ、一応遠回りはできるが...列車に向かうとしたら大幅な遅れとなる」


隊長「厄介な地理だな...」


魔闘士「山岳地帯には野生の魔物が居る...話し合いなど到底無理だ」


隊長「それぞれ、どんな魔物がいるか一例を出してくれ」スッ


魔闘士「図鑑か...丁度いいな」


魔闘士「まず、村では亜人系...例えるならば、魔女を下劣にしたような感じだ」


魔闘士「魔法や、ずる賢い罠ぐらいに注意することだ」


隊長「...なるほどな」


魔闘士「山岳地帯には、獣系だ...どれも上級の者達だ」


魔闘士「注意すべきは"リザード"だ、奴は強靭な上に賢い...」


隊長(...いよいよ、ファンタジーの有名どころが増えてきたな)


魔闘士「そしてなりより...稀に"ドラゴン"も出現することだ」


隊長「それは...氷竜みたいな奴か?」


魔闘士「...そういえば、氷竜を倒したのだったな」


魔闘士「あいつは確かに強いが、すこし知性に欠ける...」


魔闘士「本場の竜はもっと知的だ...」



474: ◆O.FqorSBYM 2018/12/06(木) 22:36:06.71 ID:EqxmTkEp0


隊長「どちらにしろ...遭遇しないことを祈るか」


魔闘士「地形的にも、物量的にも不利だが...1つだけ喜ぶ点がある」


隊長「なんだ?」


魔闘士「あそこには魔王軍の傘下はいない...完全に野生動物と同じ扱いだ」


隊長「なるほどな...拉致や人為的な罠はなく、単純に戦闘だけみたいだな」


魔闘士「そうだ、だが戦闘になればキツイものになるだろう」


隊長「...ここまでは、多く見積もれば3日程度か?」


魔闘士「たぶんな...そこから列車にのれば1日で魔王城に着く...はずだ」


隊長「...魔界にも都があるところ、戦争を望まない者も多いみたいだな」


魔闘士「...そうだな、奥地などにある町の民たちは争いを好まない」


隊長「そこは人間界と同じだな」


魔闘士「よく勘違いされるが、魔物が全員好戦的というわけではない」


魔闘士「魔王城への最短距離を直進してもらえば、城下町を除く町や都などに戦火は降りないはずだ」


隊長「...魔王城を配置した場所...考えてあるな」


魔闘士「...そういう解釈もできる」


隊長「しかし...今でこそ列車ができているが、この直進距離だけでも大々的な旅だな」


魔闘士「それだけで、物語にするなら十分な経験になるな」


隊長「...」


魔闘士「...こんなもんだろう、一応この手書き図は渡しておくぞ」ガサゴソ


隊長「あぁ...」


魔闘士「...俺は、もう寝るぞ」


隊長「...ゆっくり休んでてくれ」


魔闘士「フン...お前もな、明日は人間界と魔界の違いを魔剣士にでも教えてもらえ...」


隊長「...そうだな、ありがとう」


隊長(今日で...2週間と4日目が終わる...)


~~~~



476: ◆O.FqorSBYM 2018/12/08(土) 22:42:35.64 ID:lisVL3ov0


~~~~


隊長「ここは...ッ!?」


どこかで見た光景、隊長という男はそこにいた。

それはあの時の悪夢で見たはずだった。


隊長「...」


──ぞわぞわぞわっ...

悪寒が止まらない、それでいて大量の汗が垂れる。

生きた心地がしない、口内が異常に乾燥し始めている。


隊長「また...夢なのか...?」


隊長「たのむ...早く目を覚ましてくれ...」


体感温度は温暖であるのにもかかわらず、鳥肌が止まらない。

意地でも動こうとしない、というより底知れぬ恐怖から動けない。


隊長「...?」


―─――■■■...

すると、どこかしらから黒いなにかが鈍く輝く。

聞いたこともない擬音、それが黒と共に隊長を刺激した。


隊長「────...ッ!?」


隊長「こ、こっちに...迫って...ッ!?」


隊長「逃げなければ...ッッ!!」


冷静に判断をするのは彼の役割でもある。

だが、この時の判断は恐怖心からの判断だった。


隊長「はぁっ...はぁっ!!!」


──ぞくぞくぞくぞくっっ...!!

後ろを振り向かなくてもわかる。

着実に黒いなにかが迫ってきている。


隊長「はぁっ...はぁっ...た、たすけてくれッッ!!!!」



477: ◆O.FqorSBYM 2018/12/08(土) 22:43:58.14 ID:lisVL3ov0


隊長「...あ、あれはッッ!?」ピクッ


助けてくれ、その命乞いは意外にも届くことになる。

少し離れた場所には、親友からの形見が突き刺さっていた。

もしかしたら、あの光でこの黒を無力化にできるかもしれない。


隊長「────ッ...うおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!!」ダッ


──ぞくぞくぞくっっっ...!!

半ば諦めかけていた走行から、本気の走行に切り替わる。

迫りくる悪寒は、先程よりも強くなる。


隊長「もう少しだッッッ!!」


隊長(あと少しッッ!!!)


隊長(あと少しッッッ!!!)


隊長(あと...少しッッッッ!!!)


―――ガシッッ!!!

あと少し、迷いのない走行が可能にした。

掴んだのはあの輝かしいユニコーンの魔剣。

これがあれば、これさえあればどうにかなる。


隊長「...取った────」


―――─■■■...

おかしい、それは力強く握られた右手から聞こえた擬音であった。

身体のなかに、未曾有の何かが入り込む感覚がする。


隊長「――――ッッ!!!」


???「────大丈夫かァッ!?」


~~~~



478: ◆O.FqorSBYM 2018/12/08(土) 22:45:14.57 ID:lisVL3ov0


~~~~


隊長「――ハッ...!?」ガバッ


脂汗が止まらない、その様子を見かねたある男が声を掛ける。

それは先日まで味方ではなかった、魔物の男。

魔剣士は心配そうに隊長を見守っていた。


隊長「はぁッ...な、な...」


魔剣士「...大丈夫かァ?」


隊長「ここは...宿...?」


魔剣士「そうだァ、しっかりしろォ」


魔闘士「...お前ほどの男でも、悪夢に魘されるモノなのだな」


魔剣士「まァ...言ってもコイツも人間だしなァ」


隊長「...夢、だったのか」


隊長(...にしては、やけに頭にハッキリと焼き付いている)


軽く頭痛がする、だがすぐに頭を切り替えなければならない。

なぜなら、そこに立っていた人物がいるからだ。

魔王子、魔王の息子が目を覚ましていた。


魔王子「...」


隊長「魔王子...」


魔剣士「あァ、さっき目を覚ました」


魔闘士「それでお前を起こそうとしたら、さっきの出来事だ」


隊長「...そうだったのか」



479: ◆O.FqorSBYM 2018/12/08(土) 22:46:21.04 ID:lisVL3ov0


魔剣士「まァ、あとは任せた」


隊長「...は?」


魔闘士「俺様たちは朝飯を確保してくる」


魔剣士「それに、俺様は魔王子と談笑する仲でもねェしな」


魔闘士「ではさらばだ、30分ぐらいで戻る予定だ」


魔剣士「金、借りるぜェ」ヒョイ


隊長「.........あぁ」


──ガチャッ...バタンッ!!

いろいろ突っ込みどころがあったが、隊長はそれを受け入れた。

魔剣士達は暗黒街の商店街へと旅だった。


魔王子「...」


隊長「...」


隊長(人のことは言えんが...無口だな)


魔王子「...おい」


隊長「...なんだ?」


魔王子「幾ら神の名を借りた力を得たとしても、人間に敗れるとは...」


魔王子「...俺もまだ、力が足りぬか」


隊長「...」


魔王子「...実力は見せてもらった、ここで破れば、この名が廃る...」


魔王子「...貴様の旅に、同行しよう」


隊長「...あぁ、お前の力に期待しているぞ」


魔王子「...だが、1つ問題がある」


隊長「...なんだ?」


魔王子「...この剣にヒビが入ってしまった」


魔王子「このままでは到底使い物にならん...」


魔王子「...よって、しばらく実力は発揮できん」


隊長「な、なんだって...」


魔王子「...」



480: ◆O.FqorSBYM 2018/12/08(土) 22:47:50.63 ID:lisVL3ov0


隊長「...これは使えないか?」スッ


魔王子「...何?」


彼が魔王子に差し出したのは、細すぎる剣。

これは親友の大事な大事な物、決して軽々しく扱ってはならない。

だが、だからこそ隊長は魔王子に渡そうとした。


隊長「...それは、俺の親友の形見だ」


魔王子「...この世を、魔物と人間を共存させると申す者だったか」


隊長「あぁ、そうだ...」


隊長「俺とお前の目的は違うと思うが...間接的にお前がこの世界を救うことにもなるんだ」


隊長「魔物の王子がそれを使って、世界を救ったのなら帽子も喜ぶだろう」


先日の勝負に勝ったことで、この魔王子という男は隊長に力を貸すことを約束した。

つまりは一緒に魔王を倒すことになる、その際にこの魔剣を扱ってくれるというのなら。

彼の目的はどうであれ、結果として魔王子が平和を導く一因なるだろう。


魔王子「...俺が魔王を討つ理由を教えてやろう」


隊長「...あぁ、教えてくれ」


魔王子「少し前の魔王...親父は人格者であり、強大な力を持つ者であった」


魔王子「俺は尊敬をしていた...その強大な力で傲慢にならず威厳のある対応をしていた」


魔王子「...しかし、近年になり親父は変わった...望みもしない人間界への侵略を企てるようになった」


魔王子「その影響で魔界は劣悪の政治環境になり...徴兵された野蛮なクズ共が魔王城の城下町に蔓延り、民が脅かされるように...」


魔王子「侵略されるであろう人間界のことなどは知ったことない...だが肝心なのは俺の中にある崇高な魔王の像が崩れたことだ」


魔王子「今の親父...魔王など尊敬に値しないクズだ」


魔王子「俺は落ちぶれていく魔王をこれ以上見たくはない...そして寂れていく民を眺めたくない...」


魔王子「ならば親父を殺し...俺が新たな魔王になり、魔界を救ってみせる」



481: ◆O.FqorSBYM 2018/12/08(土) 22:48:33.85 ID:lisVL3ov0











「そのためなら...俺に反逆する同胞を躊躇なく殺してでも、叶えてみせる...」












482: ◆O.FqorSBYM 2018/12/08(土) 22:50:39.90 ID:lisVL3ov0


魔王子「...笑うか? 人間よ...俺の行動は愚かか?」


隊長「...さぁな、少なくとも俺は笑えんな」


隊長「俺は目的の為なら、簡単に人を殺せてしまう...だから、お前のことを笑うことはできない」


隊長「...だが、これだけは言える」


隊長「...お前の行動は、俺の親友の行動と似てる...ってな」


隊長「先程はこの魔剣を一時的に貸すつもりだったが...お前に託すことにする」


魔王子「...」


隊長「...」


魔王子「...ユニコーンが心を開いている、だからこそその理念は純粋」


魔王子「その帽子とやらの行動を誇りに思う...」


隊長「...そうか」


魔王子「...確かに受け取った」スッ


隊長から渡された、この光の剣。

魔王子はその鞘を抜いて、刀身の輝きを目に焼き付けた


魔王子「...昨日より、光属性の質が上がっているな」


隊長「...そうなのか?」


魔王子「皮肉だな、闇の王子が光を纏う剣を扱うなどとは」


隊長「...フッ」


~~~~


~~~~


魔女「...」


魔王子「...」


女騎士「...」


隊長「...」


魔闘士「...」


魔剣士「...いやァ、悪かった」


問い詰められるのはこの男。

そして鼻につく、朝からは嗅ぎたくないこの酔いの匂い。

彼の買ってきた買い物袋、そこに入っていたモノとは。



483: ◆O.FqorSBYM 2018/12/08(土) 22:53:48.01 ID:lisVL3ov0


魔女「...朝ごはんを買いにいったのよね?」


隊長「...俺の金でな」


魔剣士「いやァ...竜ってのは...酒豪なんだァ...」


魔闘士「貴様は竜人だろう...厳密な竜ではない...」


女騎士「...悪いが、かなり空腹なんだ」


魔王子「...」


隊長「...今日の朝食は酒か」


魔闘士「ふた手に別れたのが失策だったが...俺の買った物だけじゃ全員の腹を満たすのは難しいな」


魔剣士「...まッ、パァ~ッと行こうぜェ?」


女騎士「...はぁぁああ」


魔闘士「人間も魔物も、食べ物の恨みはでかいぞ...?」


魔女「うぅ...足りないかも...」


隊長「...そういえば」ゴソゴソ


隊長は若干潰れたレーションを取り出した。

ウルフに1つ食べられてしまった、緊急用の携帯食料。


女騎士「...それは?」


隊長「俺の世界の携帯食料だ、緊急用だからかなり空腹が満たされるはずだ」


魔闘士「お前という奴は...頼りになるな」


女騎士「...5つあるな」


魔闘士「魔剣士は酒だけでいいみたいだ」


魔剣士「は、反論できねェ...」


隊長「ほら、受け取れ」スッ


魔王子「...頂こう」


女騎士「甘いな...」モグモグ


魔女「...おいしいっ!!」


隊長「ウルフも喜んで食べてたな」


魔闘士「甘いものは、疲れが取れるから嫌いではない...」


~~~~



484: ◆O.FqorSBYM 2018/12/08(土) 22:55:32.95 ID:lisVL3ov0


~~~~


隊長「では...出発するぞ」


魔闘士「このまま四半日には、橋に到着予定だ」


女騎士「さて、久々の旅だ、腕がなるな」


魔王子「...」


魔女「...ねぇ、あんた」


旅が始まる、そんな中で魔女は彼に近寄った。

その表情はどこか険しいモノであった、それはなぜか。

太陽の光が反射する、その豪華であり奇妙な装飾のついた剣の鞘が煌めく。


魔王子「...何だ?」


魔女「...その剣、大事に使ってよね」


魔王子「...承知だ」


女騎士「それにしても...まさか、魔物を仲間にして魔王城を目指すとはな」


魔闘士「不満か?」


魔剣士「俺様たちは魔王子についってってるだけだけどなァ」


女騎士「...私はそもそも、魔物を敵としているが...目の敵にしてるわけではない」


魔闘士「所詮、戦争相手というだけだな」


魔剣士「まァ、仮に人間界で内戦が起きていたら...お前だって人間を殺すだろォ」


女騎士「あぁ、騎士や軍人とはそんなものだ」


隊長「...」


魔女「魔王子の連れが、現勇者の仲間と談笑してるだなんて...こんなことってある?」


隊長「...随分、賑やかになったな」


魔女「人間と魔物が仲良く...しているのかしら、これ? まぁ、帽子に見せてやりたいわね」


隊長「あぁ、この旅...なにがなんでもやり遂げてやる」


6人が歩む、人間と魔物が共に肩を並べて。

決して心の底から信頼しあっているわけではない。

だがこのような軽い関係性であるからこそ、彼らは気兼ねなく居れている。


魔剣士「...そういえばよォ、きゃぷてんは異世界の人間なんだよなァ?」


隊長「あぁ、そうだが...」



485: ◆O.FqorSBYM 2018/12/08(土) 22:56:52.68 ID:lisVL3ov0


魔剣士「...どうやって元の世界に戻るつもりだァ?」


隊長「あぁ...それはだな────」


彼が魔王に挑む理由、それは2つ存在している。

1つはもちろん帽子の為、もう1つは己の為である。

魔王は世界を跨ぐ魔法を扱えるかもしれない、それを彼に伝えた。


魔剣士「...へェ、面白いなァ」


隊長「...そうか?」


魔剣士「いや、面白れェよ...つまりそれって...魔王を殺す前にその魔法を使わせるつもりなんだろォ?」


隊長「そうなるな...そうでないと俺は帰れん...」


魔剣士「...なんだァ? 拷問でもするつもりかァ?」


隊長「...状況に応じてくれない場合は、強硬手段に入るしかない」


魔剣士「...人間が魔王相手にそこまで強気になっている奴なんて、初めて見たわァ...」


魔剣士「つーかよォ、その魔法を使わせる前に魔王を殺しちまったらどうするんだァ?」


隊長「...」


己がどれほどのことを口にしているのか。

わかっているつもりではある、だがこの矛盾に近い発言が魔剣士のツボであった。

決して嘲笑されているわけではない、単純に魔剣士はニヤけていた。


隊長「...やめてくれ、深く考えさせるな」


魔剣士「悪ィな...まァ、帰れなかったら俺様の酒の席に付き合ってくれよなァ?」


隊長「...嫌味か?」


魔剣士「まァ、とりあえず魔王に会ってから考えよォぜ? 案外すんなり家に返してくれるかもなァ...」


隊長「...」


絶対そのようなことはない、魔剣士のニヤけ具合を見ればわかる。

嫌がらせのような突きつけが隊長を沈黙させていた、だが険悪な雰囲気ではない。

そんな中彼は1つ思い出す、昨晩魔闘士に言われたことだ。



486: ◆O.FqorSBYM 2018/12/08(土) 22:58:14.36 ID:lisVL3ov0


隊長「...そういえば、人間界と魔界の違いってなんだ?」


魔剣士「...そんなことも知らねェで魔王と戦おうとしてんのかァ?」プルプル


隊長「笑いすぎだ、魔剣士」


魔剣士「悪ィ悪ィ...まァ、話は簡単で...この世界は大まかに2つの大陸があってだなァ」


魔剣士「その大陸を統治しているのが、人間か魔物かの違いでしかねェよ」


隊長「...意外と単純だったな」


魔剣士「まァ、その違いも曖昧でよォ...人間界に住んでいる魔物も居るしよォ」


隊長「...なるほどな」


魔剣士「人間界も魔界もかなり広いぜェ? 暗黒街や賢者の塔があるココらへんは人間界の辺境だからなァ」


魔剣士「...帰れなかったら、どっちの大陸に住むつもりなんだァ?」


隊長「...また嫌味か」


~~~~


~~~~


隊長「...ついたな」


人間界の大地はここで終わり、彼らは橋に足を踏み込んだ。

雄大な海原に建造されたこの端は、あまりにも大きく、長い。

先の方角、そこには別の大陸の大地が微かに見えていた。


女騎士「...ついに魔界に突入か」


魔闘士「そのようだな、魔力が微かに溢れてくる」


魔女「ほ、本当だ...これが魔界の空気ってやつ?」


魔剣士「いんや、厳密に言うと違ェな」


魔女「えっ...魔界の空気って魔力が含まれてるって言ってなかった?」


魔剣士「それは本当だァ...だが、この魔力は空気じゃなくて...アレだなァ」スッ


魔剣士は大橋から身を乗り出し、指をどこかに向けた。

その場所は、魔界の海の波が創りだした崖であった。



487: ◆O.FqorSBYM 2018/12/08(土) 22:59:42.48 ID:lisVL3ov0


女騎士「...なるほど、ここで採取ができるのか」


隊長「あれは...鉱石か?」


魔闘士「そうだ、あれが魔法の欠片だ」


魔女「あぁ...これがその」


魔剣士「あの鉱石が魔法を維持させるのは、鉱石自体に魔力が灯っているからだァ」


魔剣士「嬢ちゃんが感じてる魔力は魔界の空気じゃなくてェ、この魔法の欠片ってことだなァ」


魔女「なるほど...」


隊長(...正直俺にはなにも感じない)


女騎士「...正直私にはなにも感じないぞ」


魔剣士「...そこはあれだなァ、先天的か後天的かの違いだろうなァ」


魔剣士「結局、先天的に魔力を持った魔物には魔力が必須...空気と同じィ」


魔剣士「空気を感じ取れるのと一緒で、俺様ら魔物は魔力を感じ取れるってところかァ?」


隊長「...魔剣士、前々から思っていたが」


魔剣士「あァん?」


魔女「あんたって、意外に博識というか...教鞭に向いているわね」


魔剣士「...どういう意味だそれはよォ」


魔闘士「言葉遣いはゴロツキそのものだが、そこは認めてるところだ」


魔剣士「...相方が脳筋な訳だァ、必然と頭が回るようになるわなァ」


魔闘士「...死にたいようだな?」


女騎士「...ふっ」


魔女「...」ジー


隊長「...魔女、どうした?」


魔女「ちょっと...あの鉱石掘ってくるわね」


そういうと返事も聞かずに道を戻り、崖の上に露出していた鉱石を削岩し始めた。

持ち前の雷魔法を駆使して必要な分だけ採取する、とても乙女の行動ではなかった。


隊長「...行動が早いな」


魔剣士「魔法主体の嬢ちゃんなら、確かに応用できそうだがなァ」



488: ◆O.FqorSBYM 2018/12/08(土) 23:01:41.50 ID:lisVL3ov0


女騎士「しかし...ここを超えればついに魔界か」


魔闘士「よもや、人間と共にここを渡るとはな」


隊長「...その前に、黒騎士を倒さないとな」


魔王子「...黒騎士か」


魔剣士「魔界の門番を任されるだけあって、アイツの剣技は凄まじいぞ」


隊長「大きな被害がでなければいいが...とにかくここを渡るしかないな」


この先の障害に立ち向かわなければならない。

魔剣士が一目を置いている黒騎士を、超えられるだろうか。

少し頭を悩ませていると、魔女が削岩を終え戻ってきた。


魔女「おまたせ、それじゃ出発かしら」


隊長「あぁ、じゃあ向かうぞ」スチャッ


アサルトライフルの安全装置を外し構える。

ここからは人間界とは違う、様々な困難に対応できるように早くも警戒を始める。


隊長(さて...どうなることか)


魔剣士は背負っている魔剣の柄を握りながら、女騎士も同じく背負っているランスを。

魔闘士は歩きながら軽く準備運動をし身体を暖めていた。

隊長は辺りを見渡しながら、魔女はそれをサポートするような見渡し方であった。

そして魔王子は、ただ前を見ていた、前を見つめていた。


隊長「...遠いな」


魔闘士「いい忘れていたが...数十分はかかるぞ」


隊長「まぁ...それは地図を見たらわかった」


魔女「えぇ...」


警戒をしながら、軽く雑談をする。

そんな中、魔剣士があることに気づいた。



489: ◆O.FqorSBYM 2018/12/08(土) 23:03:03.24 ID:lisVL3ov0


魔剣士「...妙だなァ」


女騎士「なにがだ?」


魔闘士「俺も思ったが...この辺りでも雑魚の一匹程度は現れると思っていたが...」


魔剣士「あァ、この近辺に雑魚の気配はねェ」


隊長「警備が手薄すぎるってところか...確かに、怪しいな」


魔闘士「もう少し歩けば中間に着く、そこに黒騎士もいるだろう」


魔剣士「とにかく、進むしかねェな」


魔女「罠じゃなければ...いいけれど」


隊長「...あぁ」


~~~~


~~~~


魔剣士「...どうなっていやがる」


魔王子「...」


隊長「これは...」


橋の中間に到着する、そこは激しい戦闘の跡が残っていた。

その傷は新しいものではなく、過去の数々の修羅場によって作られたものであった。

傷によって橋が朽ちてもおかしくはない、だが朽ちてはいない。

その様から威厳さが感じ取れた、だがその主はここにはいなかった。


魔闘士「見当たらんな、黒騎士が」


隊長「...策略かなにかか?」


魔闘士「その可能性はある...が、奴がここにいないのは初めてだな」


女騎士「...油断でも狙っているのか?」


魔剣士「それ以前に、既にこっちの情報が魔王に伝わっんのかァ...?」


隊長「...それはありえない、ここ数日つけられてる気配はなかった...はずだ」


隊長(あくまでも、人間の俺がわかる範囲でだが...)


魔闘士「それには同感だ、仮に密偵がいたとしても情報が早過ぎる」



490: ◆O.FqorSBYM 2018/12/08(土) 23:05:29.89 ID:lisVL3ov0


魔女「もしかして、異端者がヤラれたり...結界魔法が破られたのに気づいたとか?」


魔闘士「魔力の感知することで生死を確認をできるが、人間界は流石に遠すぎるはずだ...恐らく定時連絡が要だ」


魔闘士「だが、異端者はそのような規則正しい行動が取れる者ではない...つまり定時連絡の有無は関係ないはず」


魔闘士「それに結界魔法は完全には破いていない...さすがの魔王も気づかないだろう」


魔女「じゃあ、たまたま...黒騎士がいなかったってこと?」


魔闘士「...そうなるな」


女騎士「そうなるなら...進むしかないな」


魔剣士「...チィッ、裏をかかれてるみてェでムカツクぜ」


隊長「考えても俺たちにはわからない、行くぞ」


魔剣士「あァ...」


隊長(戦闘が減っただけ、ありがたいと思っておくか...)


~~~~


~~~~


魔剣士「────あァ?」


結局、魔界へ通ずる大橋での戦闘はゼロだった。

順調に魔界へ侵攻するが、またもやイレギュラーが発生する。

橋を抜けた先、ここは魔界にある村の1つ。


魔女「誰も...いないの? 村なのに?」


魔闘士「そんなはずは...ここには野蛮な魔物どもが蔓延っているはずだが」


女騎士「現にもぬけの殻だぞ...」


魔王子「チッ...」


魔剣士「やっぱり、情報が漏れんのかァ...?」


魔闘士「策略にしても、ここで村人共との大規模戦闘は定石のはずだ」


魔剣士「...じゃあ、俺様たちを馬鹿にしてるとしか思えねェな」


女騎士「魔王とて、そこまで拍子抜けなことをするとは思えないぞ」


女騎士「戦闘をさせることでこちらの消耗を図る、それをしないとなると愚かの一言だ」


魔闘士「...同感だ、これは策略ではない、偶然の出来事だと思いたい」



491: ◆O.FqorSBYM 2018/12/08(土) 23:08:01.03 ID:lisVL3ov0


魔女「...ねぇ、あんたはどう思う...ってあれ?」


女騎士「いないな...どこへ行ったんだ?」


魔物の男たちが頭を悩ませていると、彼は消えていた。

それに気づいた女たちは辺りを見渡してみる。

すると民家と思しき建物の中から隊長の声が響く。


隊長「────ちょっと来てくれ」


魔剣士「...あァん?」


魔女「──これってっ!?」


その声にしたがって、皆が建物の中へ移動する。

そこには亜人系の魔物が数人横たわっていた。

そのうなだれかたには、一瞬命を感じさせない様に見えた。


魔剣士「いや...まだ息はあるなァ」


隊長「あぁ...だが、辺りの民家はみんなこうなっていたぞ」


魔闘士「...この村の住人だろうな、どうなっているのやら」


女騎士「意識は...ないみたいだ、これでは尋ねることもできないな」


隊長「...これは病気によるものか?」


魔剣士「いやァ...この症状は聞いたことねェなァ...」


魔闘士「発熱もなし、咳もなし...病気ではなさそうだ」


魔女「気味が悪いわね...」


隊長「...まるで進むことに誘導されているみたいだな」


魔闘士「全くだ...だが、進むしかないだろう」


魔剣士「まァ、消耗もなしに早い段階で列車に乗れるって考えもあるぜェ?」


隊長「...このまま山岳地帯に向かうか、ここで一夜を過ごすか」


魔闘士「そうだな...早朝に出れば早めに山岳地帯を抜けられるかもしれんな」


魔剣士「安全なここでたっぷり休むか、危険な山で休みを入れながら進むか...決まったなァ」


隊長「...今日はここで過ごすぞ」


魔闘士「本来なら黒騎士とここでの戦闘で一日潰れる予定だったが、丁度いいな」


隊長「...一応、警戒は怠らないでくれ」


~~~~



492: ◆O.FqorSBYM 2018/12/08(土) 23:09:39.16 ID:lisVL3ov0


~~~~


女騎士「この民家、誰もいないみたいだし鍵もかけれるようだぞ」


隊長「ここを今日の宿にするか...」


魔女「流石にここじゃ、まとまって寝たほうがいいわよね」


隊長「あ、あぁ...そうだな...」


魔女(寝顔とか寝相とか...気をつけないと)


女騎士「さて、この重苦しい鎧を脱ぐか」ゴソゴソ


隊長「...」ビクッ


魔女(...未だに、苦い思い出のようね)


魔剣士「おォーい、酒が大量にあったぜェ?」


魔闘士「...お前の頭は酒しかないのか?」


魔剣士「大丈夫だァ、飯も見つけたぞ」


隊長「...お前はPartyが似合うな」


魔剣士「ぱーてィ? なんだそりゃァ」


隊長「俺の世界で言う...宴のことだな」


魔剣士「あァ宴か、酒も飲めるし好きだぜェ?」


魔闘士「それは宴が好きではなく、酒が好きなだけだろう...」


隊長「...いつもこんな感じなのか、魔王子?」


魔王子「...2人の漫才は昔から記憶にある」


魔闘士「漫才ではない...」


魔女「あ、あはは...」


魔女(今のは魔王子なりの冗談なのかしら...恐くて追求ができないわね...)


隊長「...俺はこの民家の周りに罠を作っておこう」


隊長「魔女、縄になりそうなものを探してくれないか?」


魔女「えぇ、わかったわ」


~~~~



493: ◆O.FqorSBYM 2018/12/08(土) 23:10:56.24 ID:lisVL3ov0


~~~~


魔女「この家の人の武器なのか、鎖鎌があったわ...これでも大丈夫?」


隊長「...糸は持っているか?」


魔女「えぇっと...ごめんなさい、服のほつれ糸しか用意できないわ...」


隊長「それでも大丈夫だ」ゴソゴソ


魔女が探している間に地面にいくつか刺していた短い木の棒に鎖鎌をくくる。

そして手榴弾を取り出し、安全ピンとほつれ糸を器用に結び始めた。


魔女「それって...爆弾よね?」


隊長「あぁ、これで罠を作る」


魔女「どんな感じに?」


隊長「そうだな...手榴弾、爆弾はこの線を抜くことで起爆するんだが」


隊長「それをこの鎖鎌に...まぁ見てもらったほうが早いな」


手際よくこなしたものは、すでに完成していた。

そこにはとても原始的な罠が造られていた。


魔女「...あぁ~、それで足を引っ掛けて起爆させるってわけね」


隊長「まぁ...威力には期待はしてないが、なにせ大きな音が出る」


魔女「奇襲に気づけるってことね...」


隊長「あぁ、これである程度は気兼ねなく休める...といいが」


魔女「まっ、酒飲んでる奴よりかは役に立ちそうね、この罠」


その罠は夕暮れ時の現在でも、すでに見難い。

夜になればその実力は発揮されるだろう。

最も、実力は今発揮されることになってしまうが。


魔剣士「──よォ、お前らも飲...おわァッ!!!!」グラッ


──ガチャッ!!

魔剣士が鎖鎌に引っかかると同時に、何かが抜ける音がした。

その様子を見た魔女は思わず青ざめた。


魔女「────っ!」


隊長「──SHITッッ!!!!」ドカッ


素早い判断で、半ば強引に蹴飛ばす。

民家もこの村人もいない場所へ手榴弾は飛んでいった。

そして遠くから聞こえた爆発音。



494: ◆O.FqorSBYM 2018/12/08(土) 23:14:55.12 ID:lisVL3ov0


隊長「──ふぅ...」


魔女「結構吹っ飛んだわね...って、それよりも!」


魔剣士「あァん...どういうことだ...?」


状況がいまいちつかめていない魔剣士。

まもなく、空いたドアから魔闘士と女騎士が慌てて飛び出してきた。


女騎士「──敵襲かっ!?」


隊長「いや...魔剣士が俺の作った罠に引っかかっただけだ」


魔闘士「...」ピキピキ


魔剣士「...はァん、なるほどなァ」


女騎士「いや...なるほどなって...」


魔剣士「即席でこんな罠つくれるなんてなァ...やっぱお前はやるなァ」


魔女「...もう出来上がってるの?」


魔闘士「...魔界の酒は強い...あとは任せたぞ」スタスタ


隊長「...魔剣士、お前はしばらく禁酒だ」


魔剣士「...へッ?」


──パリーンッ ガシャンッ! パキパキッ!

その言葉が聞こえたのか、民家から瓶が割れる音が響いた。

これは先に家に入っていった彼の仕業、隊長と魔闘士の意見は合致した。


魔剣士「...えェェッ!?」


魔女「あー、アホらしい...またほつれ糸作んなきゃいけないじゃない」


隊長「...すまんが、手榴弾も作ってくれ」


魔女「...はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」


女騎士「魔女...手伝おうか?」


魔女「ありがとう、でも私にしかできないことなの」


魔剣士「俺様の...酒がァ...」ガーン


隊長「こんなんで大丈夫なのか...?」


頭を抱えため息をついてしまう、本日は戦闘をすべて回避して終わる。

魔界にきて1日、異世界にきて2週間と5日。


~~~~



495: ◆O.FqorSBYM 2018/12/08(土) 23:15:59.19 ID:lisVL3ov0


~~~~


隊長「...ん」


──カチャカチャ...

耳元で細かい音が響く、まだ日は鋭く差していない。

薄明かりの中で室内を見渡す、するとそこには彼女が。


魔女「あっ、ごめん...起こしちゃった?」


隊長「あぁ...だが、気にするな...本来なら徹夜して奇襲に備えるはずだったが...」


魔女「休めるときは休むべきよ、今日は珍しく熟睡してたみたいだけど...♪」


隊長「...? 朝から上機嫌だな」


魔女「あ、あら...そうかしら...」


隊長「それで...なにをしてたんだ?」


魔女「えぇっと、ちょっとした武器を作ってたのよ」


段々と目が覚めてきた、魔女の周りにはいろいろと物が並べられていた。

この民家にあった小さな空の瓶と、太い針みたいな形状に加工した魔法の欠片。

そして、新たに魔女は小瓶を取り出した。


隊長「それは...魔法薬か?」


魔女「そうよ、大賢者様の餞別よ」


隊長「そうなのか」


魔女「あっ、その欠片に触らないでね、まだ雷魔法を宿らせてるから」


隊長「...あぁ、察しがついたぞ」


魔女「あら...お楽しみにならなかったかしら」


女騎士「...私には察しがつかないな」


魔女「──わっ! 起きてたの!?」ビクッ


女騎士「あぁ、武器を作る云々から目を覚ました」


魔女「そ、そうなの...よかった」ホッ


女騎士「なにがだ? ところで早くその武器を教えてくれ」


隊長「あぁ...火炎瓶みたいな物だろう?」



496: ◆O.FqorSBYM 2018/12/08(土) 23:17:23.53 ID:lisVL3ov0


魔女「あちゃー...大当たり、それの雷版ってところね」


少し残念そうに、テキパキと作業をこなしていく。

小さな空の瓶に少量の魔法薬を流し込み、コルクの蓋をしめる。

それと同時に、すこしばかり光を帯びていた欠片が無反応になった。

それを見計らって、先ほどの瓶の蓋に欠片を原始的に突き刺した。


魔女「よし、完成ね」


隊長「それを投げつけ、割れた瓶から魔法薬が漏れ...それを欠片に反応させるわけか」


女騎士「その魔法薬...随分と魔力を含んでいるから威力が高そうだ」


魔女「これなら詠唱をしなくても使えるし、不意はつけそうね」


魔女「ちょっと、外で試してくるわね」


隊長「あぁ、気をつけろよ」


そう言って、寝癖も治さずに魔女は外へ飛び出した。

扉の開閉音が響いたが、男の魔物3人はまだ目を覚まさなかった。


隊長「魔法か...」


女騎士「興味でもわいたのか?」


隊長「...女騎士はどうやって魔法を使えるようになったんだ?」


女騎士「私は騎士の鍛錬で学んだぞ」


隊長「すまん、言い方が悪かった...どうやって魔力を得たんだ?」


女騎士「あぁ...そういうことか」


隊長「魔物は先天的に、そうでないものは後天的に魔力を得ると聞いたんだが」


女騎士「そうなんだが...実は、わからないんだ」


隊長「...どういうことだ?」


女騎士「私も周りの者も、気づいたら魔力が使えるようになっていた」


女騎士「後天的に魔力を得る者は、突如という場合が絶対らしい」


隊長「...ますます、魔法というのはわからんな」



497: ◆O.FqorSBYM 2018/12/08(土) 23:19:05.53 ID:lisVL3ov0


女騎士「まぁ...きゃぷてんも気づいたら使えるようになるかもな」


女騎士「って、すでに属性付与は使えるのか...謎だな」


隊長「朝から難しいことは考えるべきではない────」


────バチバチバチバチバチッッッッ!!!

外から聞こえた、雷の激しい音。

まだ薄暗いとはいえ空には雲1つありはしない。

これは魔女による新たな装備の実験、それはどうやら成功のようだった。


女騎士「...原始的だが、威力は絶大みたいだな」


隊長「あぁ...それより、今のでみんな起きたな」


~~~~


~~~~


魔剣士「ふァ~あ...ねっみいなァ」


魔闘士「だらしない奴だ、それでも誇り高き魔物か?」


女騎士「いや...魔闘士、寝癖がひどいぞ...」


隊長「...さて、そろそろ出発するか」


魔女「その前に、身体を拭いてからでいいかしら...」


女騎士「...あぁ、同感だ、私はよく汗を流すから今のうちに拭いておきたい」


隊長「俺も便乗するか...先に拭いててくれ、俺たちは外で待っている」


魔剣士「...女ってのは面倒くせェな」


魔闘士「汗など放っておけばいいだろう」


魔女「はいはい、面倒くさくて悪かったわね」


隊長「いや、身体に付着した悪性のBacteriaなどがいる場合がある、こういうのは重要だぞ」


魔闘士「...ばくてりあ?」


隊長「...すまん、細菌だ」


女騎士「...さいきん?」


隊長「...少し違うが...微生物、ならわかるか?」


魔女「びせいぶつ...」


隊長「...本気で言っているのか?」


~~~~



498: ◆O.FqorSBYM 2018/12/08(土) 23:21:49.19 ID:lisVL3ov0


~~~~


隊長「...さて、準備は終わったな?」


魔剣士「あァ」


魔闘士「そんなものとっくに済んでいる」


魔王子「...」


魔女「...ここからが本番ってわけね」


女騎士「どんな敵が現れるか...少し楽しみだな」


隊長「...」


まだ日の光は淡く気温も低い。

寝起き特有の頭痛、そして早朝の雰囲気が隊長の気を引き締めた。


隊長「...行くぞ」


魔女「えぇ!」


魔闘士「まずは...このまま直進だな、それで山岳地帯へたどり着くはずだ」


~~~~


~~~~


隊長「──ここがか...」


目のあたりにする光景に思わず言葉を漏らす。

連峰の頂点には濃い雲がかかり、その全貌を見ることはできなかった。

広大な魔界の自然が産んだ、山岳に少しおののいてしまう。


魔女「でっか...あの凍ってた山より遥かに大きいわね」


魔闘士「フン、人間界の山などと比べてもらっては困る」


隊長「...急勾配が見当たらないだけ、マシか」


魔剣士「まァ、登山には向いてるかもなァ...やる奴はいねェけど」


魔闘士「登山だけならな、問題は野生の魔物がいることだ」


隊長「...本当に1日で越えられるのか?」


魔闘士「安心しろ、この山がでかいだけだ」


魔闘士「残りの連峰は比較的小さいうえに、獣道だがある程度通路が確保されている」


隊長「そうか...なら、早速登るぞ」


~~~~



499: ◆O.FqorSBYM 2018/12/08(土) 23:23:53.21 ID:lisVL3ov0


~~~~


魔女「ふぅ...やっと6合目ってところかしら?」


魔闘士「そのようだな、そろそろ雑魚が出てきてもおかしくはないぞ」


魔剣士「なにも仕掛けられてなければ、だなァ」


魔女「でも、登ること自体は楽ね、不思議と」


魔剣士「...それは、あれを見てから言いなァ」スッ


多少の汗はかくものの、楽な表情で話す魔女。

それに反応した魔剣士は、後続の者たちを指差した。


女騎士「ふぅっ...私も鍛錬不足と言ったところか...」ダラダラ


隊長「俺はまだ大丈夫だが...どうしてそこまでスラスラと登れる...?」


隊長は少しだけ苦しそうな表情をしながら質問した。

女騎士はかなり汗をかいていた、体質にしてもかなり消耗されてると見える。


魔闘士「これは人間と魔物の差というものだ」


女騎士「はぁっ...魔界の空気って奴か...」ダラダラ


魔剣士「こればかりはどうしようもねェなァ...少し休むかァ?」


隊長「...すまないがそろそろ休憩を入れさせて貰う」


女騎士「正直...腹が減ったぞ」グゥ


魔剣士「そうだなァ...ちょっとまってなァ」スタスタ


隊長「どこに行くつもりだ?」


魔剣士「昼飯を確保だァ...ここらへんなら肉が歩いてるに違ェねェ」


そう言うと魔剣士はどこかへ歩き出した。

残されたものは待機するしかない。


隊長「...魔闘士、現在は順調なのか?」


魔闘士「そうだな、少し遅れているといったところか」


魔闘士「もうじき、雲や霧が掛かった部分に差し掛かる...」


魔闘士「そこでの奇襲に気をつけることだな」


隊長「そうか...今のうちに少しでも休んだほうがいいみたいだな」



500: ◆O.FqorSBYM 2018/12/08(土) 23:25:14.16 ID:lisVL3ov0


魔女「...ここ、ドラゴンが出るんでしょ?」


魔闘士「そうだが...遭遇は稀だ」


隊長「...戦闘は極力避けたいな」


魔闘士「この山は標高が高めで、基本的には魔物は寄り付かん...戦闘は次の連峰からが濃厚だな」


隊長「...休みを入れられるのはここで最後か」


魔闘士「そうなるな、ここは徹夜で乗り切るか、交代で睡眠をとるかをしないと無理だ」


隊長「昨日、十分に睡眠が取れただけでもマシか...」


隊長(まずいな...登山だけで消耗させられている...足を引っ張らなければいいが...)


単純な山登りでさえ、じわじわと体力を奪われている状況に頭を抱えるしかなかった。

そのアクションは極々小さいものであったが、彼女は見逃さなかった。


魔女「らしくないわよ、いつもの調子はどうしたの?」


隊長「...魔女」


魔女「まだ登山しているだけ、大丈夫よ」


魔闘士「...励ますつもりなどないが、人間にとってここが鬼門だ」


魔闘士「この山を越えれば、戦闘はあるが地形で体力を奪われることは少なくなるはずだ」


魔闘士「...簡単にくたばってもらっては困るぞ」


隊長「...あぁ、そうだな...少し、らしくなかった」


魔女「そうよ、いつも通りに冷静にね♪」


隊長(落ち着け...我を少しでも忘れるな...)スゥ


珍しくも、焦燥感に惑わされる。

らしくもない自分を抑えるために深呼吸をして抵抗を試みる。


魔剣士「──おォい、食い物とってきたぞ」


隊長「あぁ、助か──」


丁度いい気晴らしになるだろうと思っていた。

食事をすることで癒やしを得ようとしたが、その前に生まれたものがあった。

それは疑問、魔剣士の持ってきた食料に猜疑心が生まれる。


隊長「...食べれるのか、それ...?」



501: ◆O.FqorSBYM 2018/12/08(土) 23:26:12.75 ID:lisVL3ov0


魔女「げぇ...なんなの...?」


魔剣士「魔界の大蛇だなァ、毒はねェ」


女騎士「...」グゥ


魔闘士「...腹に物を入れておかなければ、なおさら体力は奪われるぞ」


隊長「あぁ...一理あるが...まぁ、俺が捌こう」スッ


魔女「...いつものあんたね...はぁ」


女騎士「...でかすぎるぞ」


魔剣士「腹は満たされるだろうがァ」


魔女「...はぁ、昨日たべたあのあま~い奴が恋しいわね」


隊長「魔女、火を起こしてくれ」


魔女「はいはい」


~~~~


~~~~


魔剣士「食った食ったァ」


魔女「...意外とおいしかったわね」


女騎士「空腹は最高の調味料といったところか...」


隊長「...」


食事を終え、早くも脳内で指示を練る。

天候の悪化からか、すでに眼前に見えているものがあった。


隊長「...これから、雲がかかっている地帯に突入する」


隊長「奇襲の可能性もある、陣形を成して備えようと思う」


魔闘士「...妥当だな」


魔剣士「そうだなァ...まとまるより、警戒の範囲を広げたほうがいいなァ」


女騎士「異議なしだ」


魔王子「...」



502: ◆O.FqorSBYM 2018/12/08(土) 23:27:21.30 ID:lisVL3ov0


隊長「なら、前方と後方である程度の距離を取るぞ」


隊長「前方に魔剣士、魔闘士、女騎士」


隊長「後方に俺、魔女、魔王子でどうだ?」


魔剣士「...攻撃範囲的に考えるとそうなるわなァ」


隊長「俺や魔女が遠距離で支援をする、魔王子は緊急事態に備えて素早く行動できるようにしていてくれ」


魔王子「...承知した」


隊長「...前方は任せたぞ」


魔剣士「あァ、背中は頼んだぜェ?」ケタケタ


軽く笑いながら、隊長に信頼を託す。

本当に信頼しているのかは不明だが、冗談を言う仲にはなっている。

そして前方の部隊が雲へ突入するのを見計らって、隊長も行動を開始する。


隊長「...だいぶ雲が濃いな」


魔女「そうね、これより離れたら女騎士たちが見えなくなるわね」


隊長「あぁ...おい、魔剣士ッ!」


魔剣士「わーってるよォ、これ以上離れねェように努力するゥ」


隊長「...どうやら、耳もいいみたいだな」


魔王子「...」


前方の者たちに靄がかかり見辛くなっている中、着々と進んでゆく。

会話も声を張れば可能、分断される心配はなかった。

しばらく歩いていると、前方部隊がある気配に気がついた。


魔剣士「...」ピタッ


女騎士「どうし...」ピクッ


魔闘士「...ついに現れたか」


魔剣士「...いやがるなァ、おォいきゃぷてんッ!!」


隊長「──敵か?」


魔剣士「あァ...姿はまだ見えねェが気配がするぞ」


魔闘士「...まだ仕掛けてこないようだ、こちらを伺っているかもしれん」



503: ◆O.FqorSBYM 2018/12/08(土) 23:28:29.26 ID:lisVL3ov0


魔剣士「このまま進むぞ、気をつけ────」


──バババババババババババッッッ!!!

返事をしたのは、アサルトライフルの銃声だ。

警戒の範囲を広げたが、敵の警戒範囲のほうが一枚上手であった。


魔剣士「...分断されたなァ」


女騎士「助けに行くぞっ!」


魔闘士「待て、それよりも攻撃に備えろ」


女騎士「──クソっ」


魔闘士「...リザードか?」


魔剣士「多分なァ...こっちもくるぞ、数も増えてやがる」スッ


各々武器を握りしめたり等、攻撃に備える。

そして、霧の中からついに敵が姿を現す。


魔剣士「ハッ、見え見えなんだよ...ッ!?」ピクッ


──ガギィィィィィィィンッッ!!!

敵は奇襲に失敗して、剣で防御されてしまった。

しかし、魔剣士はその姿に驚きを隠せなかった。


魔剣士「────誰だてめェッッ!?」グググ


??1「アアアアアアアアアアアア......」グググ


魔剣士「──チッ、離れやがれェッ!」ブンッ


すぐさまに魔物を吹き飛ばすことで距離を保った。

冷静さを欠いたが静かに分析をする、魔界に精通している者だからこそ困惑をしてしまう。

彼らはこの魔物を見たことがないのであった。


魔剣士「あれは...リザードなのかァ?」


魔闘士「いや、リザードに近かったが...突然変異か?」


女騎士「分析は後にしてくれ...来るぞっっ!!!」



504: ◆O.FqorSBYM 2018/12/08(土) 23:30:42.07 ID:lisVL3ov0


??2「アアアアアアアアアアアアアア......」ガバッ


女騎士「──効かんぞっっっ!!!」ブンッ


──ドガァァァァァァッッッ!!!!!

女騎士は両手で、騎兵用の槍であるランスを巧みに扱う。

相手の跳びかかりに反応して、柄の部分を鈍器のように扱い敵を叩き落とした。


??2「アアアアアアアアアアア......」ムクッ


女騎士「怯みはするが、復帰が早いな...」


魔剣士「...邪魔だァッッ!!!」ブンッ


??3「アアアアアアア......」スッ


魔剣士「チィッ...避けられたか、視界の悪いの中でよく素早く動けるなァ」


魔闘士「まずい...どんどん沸いてきているな」


~~~~


~~~~


魔女「くっ..."雷魔法"っっ!!」バチバチ


──ビリィッッッ!!!

魔力の消費を抑えながらも、威力のある先鋭された雷が魔物を覆った。

だがその様子はとても静かなモノであった。


??4「アアアアアアアアアア...」ビリビリ


魔女「無反応...効いてるのかがわからないわねっ!」


魔王子「下がっていろ...」スッ


────ブンッッッ!!!

凄まじい威力の抜刀居合が敵を本当に沈黙させた。

その切れ味は魔物を2つに分けていた。


??4「────」ドサッ


隊長「2人とも、大丈夫かッ!?」


魔女「...だめ、どうやら一撃で倒せる威力じゃないと足止めにもならないみたい」


隊長「みたいだな...奴ら、何が何でも特攻を仕掛けてくるぞ」


魔王子「...あのような魔物、見たことはない」


隊長「新種かなにかか...いや、それよりも...」


魔女「話している間にも、どんどん集まってきているわよっ!」



505: ◆O.FqorSBYM 2018/12/08(土) 23:32:37.08 ID:lisVL3ov0


??5「アアアアアアアアアアア......」ゾロゾロ


??6「アアアアアアアアア...」ゾロゾロ


隊長「...少なくとも数十匹はいるな」


魔王子「...ゆけ、貴様らでは足止めもできん...魔剣士たちと合流をしろ」


隊長「...すまない、必ず追いついてくれ」


魔王子「俺を誰だと思っている...」


隊長「...魔女ッ! 魔剣士たちと合流をして雲を抜けるぞッ!」


魔女「わかったわっ!」


~~~~


~~~~


魔剣士「やべェかもなァ...」


??7「アアアアアアアアアアアアア......」ゾロゾロ


魔闘士「せめて視界が良ければ、細かな動作が読めるんだがな...」


女騎士「...今は視界の範囲に現れているが、囲まれてしまってはな」


??8「アアアアアアアアアアア......」


魔剣士「反撃はできても、復帰や新手が早いこったァ...」


魔闘士「...どうやら、ある程度本気で挑むしかないな」


魔剣士「あァ...地形が崩れる危険性もあるが...仕方ねェな」


女騎士「...私も、一枚噛もう」


魔剣士「はッ...人間がこの俺様についてこれるかってんだァ」


女騎士「これでも女勇者の一行だ、舐めてもらっては困るぞ」


魔闘士「この山が無くならなければいいが...」


──ピリピリピリピリッッ...

3人がそれぞれの威圧感を醸し出す。

恐らく、今後の戦闘に向けて力をセーブしていた様子であった。

その努力が無駄に終わった苛立ちが、この未知の魔物に向けられた。



506: ◆O.FqorSBYM 2018/12/08(土) 23:35:58.17 ID:lisVL3ov0


??9「アアアアアアアアア...」ピクッ


魔女「────"風魔法"っ!」


──ヒュンっっっ!!!

殺気を向けられてか、魔物が一瞬見せた隙に強い風が切り裂いた。

その風は雲と数匹の魔物を吹き飛ばし、僅かな間だが道ができた。

そして道の先には、日の光と山の地肌の光景が差し込んでいた。


魔剣士「──デカしたァッッッ!!!!」ダッ


隊長「走れッッッ!!! すぐそこまでいけば視界が晴れているぞッッ!!!」


魔闘士「──ッッ!」シュッ


女騎士「あぁっ!!!」ダッ


隊長と魔女が与えた僅かな時間を、彼らは有効活用する。

こういった機会を逃さないのが彼らの強さであった。

魔王子を除く全員が無駄な力を使わずに、雲からの脱出に成功する。


魔剣士「魔王子はどうしたァッ!?」


隊長「足止めをしてくれている、必ず追いつくはずだ」


??10「アアアアアアアアアア......」ゾロゾロ


魔女「...来たわねっ!」


魔闘士「...身体つきだけはリザードそのものだな」


魔剣士「あァ、あちこちに縫合や手術痕がなければなァ」


女騎士「人工的に創られたというのか...気味が悪いな」


魔闘士「新種かと思ったが、どうやら違うようだな」


魔剣士「さァて、手こずらしてくれた分を返さねェとなァ」スッ


隊長「...くるぞ」スチャッ


奴らがぞろぞろと集まりだした。

雲の中とは違い、相手の全体を目視できる。

攻撃を仕掛けてくると予測して各々が反撃できるように構える。


??10「...」ピタッ


隊長「...?」


魔女「攻撃...してこない?」


魔剣士「────後ろだァッッッ!!!」



507: ◆O.FqorSBYM 2018/12/08(土) 23:37:12.63 ID:lisVL3ov0


???「────ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!」


──バサァッッッ!!

大きな怒声、羽音と共に咆哮が劈く。

その轟音は耳を貫き、人間2人と魔物の娘の行動を封じる。


魔女「──きゃっっ!」ビリビリ


女騎士「──なんて音だっっ...!?」ビリビリ


隊長「────ッ!?」ビリビリ


隊長(この感じ...まさか!?)


魔闘士「この忙しい時にドラゴンと来たか...」


魔剣士「こいつも見たことねェ種類だなァ」


隊長たちが耳を塞ぐので手一杯な中、魔剣士と魔闘士は再び首を傾げた。

対峙しているドラゴンの様な者もまた手術痕だらけであった。


???「フッー...フッー...」


魔剣士「...苦しそうだなァ、言葉も喋れねェか」


魔闘士「大方、身体を弄くられた影響といったところか...?」


魔剣士「まァ...楽にしてやるのがせめてもの助けってヤツだァ」


隊長「クッ...頭が割れそうだ...」


魔剣士「きゃぷてんッ、そっちは任せるぞォッ!」


隊長「...あぁ! 任せろッ!!」


再びふた手に別れる、魔剣士と魔闘士が竜を相手にする。

軽くふらつくが、隊長たちはリザードもどきの相手をしなければならない。

ドラゴン、それは隊長の元の世界ですら有名なモンスター、苦戦は必須だろう。



508: ◆O.FqorSBYM 2018/12/08(土) 23:40:57.72 ID:lisVL3ov0


隊長「魔女、女騎士...奴らをここに通すなよッッ!!」


隊長「魔王子が合流するまで持ちこたえろッッ!!」


魔女「うっ...当然よっっ!!」


女騎士「...承知したっ!」


今も身体に硬直が残る中、2人の女は奮い立たせる。

そしてついに魔界での闘いが始まる、そのはずであった。

彼女らの身体に強烈な違和感が生まれる、それはすぐに彼にも伝わった。


魔女「────ぁ...ぅ...」フラッ


隊長「────魔女?」


女騎士「うっ...ぐっ...なんだ...っ!?」


────ガクッッ!!!

魔女が倒れこみ、女騎士は槍を杖代わりにしてようやく立っている。

そして背後から轟音が響いた、その音とともに彼が隊長の視界に飛び込んできた。

なぜこの男が、かなりの手練であるはずの彼が意識を失っているのか。


魔剣士「────」


隊長「────魔剣士?」


魔闘士「光魔法だッ!!! このドラゴンは極めて────」


その注意は虚しく、次第に隊長の意識は激しい痛みとともに消え失せていった。

隊長は異世界にきて初めて大敗を喫する、数々の激戦を乗り越えてきたというのに。

彼が最後の見えたのは、こちらに向かってくる竜の尻尾であった。


~~~~



隊長「魔王討伐?」【その3】
元スレ
隊長「魔王討伐?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1542544023/
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