男「大御所芸能人にドッキリかましたら死んじゃった」
- 2019年01月15日 08:40
- SS、神話・民話・不思議な話
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大御所「……」スタスタ
男(よし……大御所さんが歩いてきた)
男(あとはこの紙でできた壁から叫びながら飛び出して、驚かせる)
男(驚いたところで、『ドッキリ大成功!』と叫ぶ!)
男(メチャクチャ怒られるだろうけど、それはそれでテレビ的にはおいしい……)
男(俺自ら局に持ち込んだこの企画、絶対成功させる!)
ベリベリィッ!
男「わーっ!!!」
大御所「!?」
大御所「うわぁーっ!?」
大御所「……う」
ドサッ…
男「……え?」
大御所「……」
男「ちょ、ちょっとしっかりして下さい! 大御所さん!」ユサユサ
大御所「……」
男「俺は……そんなつもりじゃ……」
ザワザワ… ドヨドヨ…
男「誰か、救急車呼んでくれぇっ!!!」
大御所「……ん」
大御所「ここは……どこだ……? 俺はTV局にいたはずなのに……」
鬼「ここはあの世だ」
大御所「は? あの世!?」
大御所「俺は死んだのか!? な、なんで!?」
大御所「病気か? それとも誰かに殺されたとか?」
鬼「ドッキリで死んだのだ」
大御所「ドッキリで!?」
大御所「……!」
鬼「売れないお笑い芸人が、お前を驚かせるドッキリを企画・実行し、お前は死んでしまったのだ」
鬼「まあ、こいつは社会的には終わりだろう。少しはお前の気も晴れるんじゃないか?」
大御所「……ちょ、ちょっと待ってくれ!」
大御所「俺はまだ死ぬわけにはいかないんだ! 何とか生き返らせてくれ!」
鬼「なにをいっている。そんなことできるわけないだろう」
鬼「お前が全財産払おうが無理なものは無理だ!」
大御所「しかし、このまま死ぬわけにはいかないんだ! 地獄の沙汰も金次第っていうだろ!?」
鬼「しつこいぞ! 金棒で殴り倒すぞ!」
大御所「殴ってくれていい! だから……」
鬼「だったら望み通りに……!」
「……待て」
大御所「!」
鬼「この声は!」
大御所「あ、あんたが……」
閻魔大王「本来ならば、死者が生き返るなどできぬ相談だが……」
閻魔大王「調べたところ、どうやらお前の死は、予定よりずっと早いものであったようだ」
閻魔大王「お前はあのドッキリで驚きすぎて、予定より早く死んでしまったようだな」
大御所「……だったら、生き返らせてくれるのか!?」
閻魔大王「そういうわけにもいかん。予定より早かろうが、死は死。そう簡単に覆すことはできん」
閻魔大王「だが、チャンスをやろう」
大御所「……チャンス?」
大御所「試練……」
閻魔大王「もし、その試練をクリアできたなら、お前を生き返らせてやろう」
閻魔大王「やるか?」
大御所「や、やる! やらせてくれ!」
大御所「……ちなみにどんな試練なんだ?」
閻魔大王「これからお前には、あの入り口に入ってもらう」
大御所(光り輝く洞窟のようなものがある……)
閻魔大王「だが、もしその先で、お前が“試練をクリアした”といえる行動を取ることができれば」
閻魔大王「お前は生き返ることができるだろう……」
大御所「……」
閻魔大王「では、ゆくがよい」
大御所「チャンスをくれてありがとう、閻魔様」
ザッ…
…………
……
大御所「ここは……」
ワイワイ… ガヤガヤ…
大御所(どこかの繁華街?)
大御所(俺がよく遊び歩いてるあの繁華街だ! うん、間違いない!)
大御所(だけど、どこか様子が違う……)
大御所(あのキャバクラ、とっくに潰れたはずなのに客引きがいる……)
大御所(というか、全体的に通行人のファッションが古い気がする……)
大御所(スマホをいじってる奴なんて一人もいないし……)
大御所「……」
大御所(そうか、分かった! これは過去だ! 過去の世界なんだ!)
大御所「おい、そこの若いの」
通行人「へ?」
大御所「今日は何年の何曜日だ?」
通行人「はぁ?」
大御所「いいから答えろ!」
通行人「ひっ! ××年の金曜日だけど……」
大御所「ありがとう」
大御所(この時代の金曜日なら、きっと“奴”はこの辺をふらふらしてるはずだ!)
芸能人「ウ~イ、もう一軒行くぞ! もう一軒!」
取り巻き「飲みすぎじゃないっすか~?」
芸能人「いいんだよ、もう一軒! 今度はもっと綺麗なお姉ちゃんがいるようなとこ行くぞ!」
取り巻き「しょうがない人だなぁ……」
芸能人「……ん?」
女「……あんた」
女「あ、あの……」
芸能人「?」
女「私、あんたとの子が……できちゃったみたい……」
芸能人「な……!」
女「だから……」
芸能人「ふざけんな! 俺はてめえなんか知らねえよぉ!」
女「そんな……少しの間とはいえ、付き合った仲じゃないの……」
芸能人「知らねえっていってんだろ!」
女「いいえ……どっちも望まない!」
女「だけど、せめてたまに会いに来てほしいの……。私じゃなく、これから生まれるこの子に……」
芸能人「ふざけんな! 俺はてめえなんか知らねえし、ガキなんかもっと知らねえ!」
芸能人「消えろ!」
取り巻き「い、いいんですか?」
芸能人「いいんだよ! 売れっ子にゃ、ああいうのが現れるもんさ!」
芸能人「よくあんだろ? 宝くじに当たったとたん、知らん奴が電話かけてくるみてえなことがさ!」
芸能人「行くぞ!」スタスタ
女「うっ、うっ……」
大御所「お嬢さん」
女「はい?」
女(なに、この人? ものすごい貫録だけど……)
大御所「あの男のことは、この俺に任せてくれ」
大御所「そのお腹の子の親にさせるところまでは無理かもしれないが――」
大御所「何らかの責任は取らせてみせる」
大御所「だから……待っててくれ!」
女「あなたはいったい?」
大御所「大御所芸能人さ」スタスタ
女(大御所? あんな人、見たことないけど……)
女(でも誰かに似てたような……)
芸能人「ウ~イ……楽しかったぁ……」
大御所「おい、若いの。いい具合に酔っ払ってるな」
芸能人「あん? 誰だジジイ?」
大御所「俺か? 俺は……大御所芸能人だよ」
芸能人「ンだとォ……? 俺はタレントだが、てめえなんか知らねえぞ!」
大御所「お前が知ってるかなどどうでもいい。とにかく話がある」
芸能人(こいつ、只者じゃねえ……凄まじい“大御所オーラ”を発してやがる!)
大御所「男なら、ちゃんと責任を取るんだ」
芸能人「ふざけんな!」
芸能人「売れっ子タレントである俺が、あんな女と結婚だなんてありえないっしょ!」
大御所「結婚まではしなくていい。どうせろくな親にはなれん。だが、金ぐらい払え!」
大御所「月収何千万と稼いでやがるんだから!」
芸能人「やだね! 俺の金はみんな俺のモンだ!」
大御所「後悔するぞ……」
芸能人「するわけねえだろ」
大御所「いいや……一ヶ月後にはお前に参ったさせてみせるさ」
マネージャー「……?」
大御所「おお、さすがにまだ若いな」
マネージャー「どちら様で?」
大御所「名乗る必要はない」
大御所「君は売れっ子若手芸能人のマネージャーだろう?」
マネージャー「そうですけど……」
大御所「よし、奴のこれからの仕事を全てキャンセルしてくれ」
マネージャー「は?」
大御所「やるのだ」
マネージャー「う……!?」
大御所「やらねば……お前はただでは済まんぞ」ギロッ
マネージャー「う、ぐぅ……」
マネージャー(なんという……大御所オーラ! まるで芸能界のドンといった風な貫録を感じる!)
マネージャー(こいつ、いったい何者なんだ!?)
大御所「さぁ、やるのだ!」
マネージャー「わ、分かりました! キャンセルさせていただきます!」
大御所「やぁ、やはり君もまだ若いな」
若社長「え、誰です?」
大御所「まあ、大御所芸能人とだけいっておこう」
若社長(こんな奴知らないけど……)
大御所「さっそく頼みがある。ある芸能人を……干してくれ」
若社長「へ?」
大御所「できる、できないじゃない。やるんだ」
大御所「あのバカは、一度それぐらいせねば目を覚ますことはできん!」ギロッ
若社長「う……」
若社長(なんて大御所オーラだ……! とても逆らえん!)
若社長「分かりました! やります! 彼を全ての番組から降ろします!」
大御所「うむ、頼んだぞ」
芸能人「瞬く間に仕事がなくなり、このひと月で無職同然になっちまった……」
芸能人「どうしてこんなことに……」
大御所「よう」
芸能人「お前は!? あの時のジジイ!?」
芸能人「急に仕事がなくなったのは……まさかてめえの仕業か!」
大御所「その通りだ。俺が方々に手を回して、お前を干してやった」
芸能人「なんでこんなこと……!」
芸能人「くっ……」
大御所「彼女のところに行き、せめて養育費くらいは払うと宣言しろ」
大御所「でねえと、一生干されたまんまにしてやるぞ」
芸能人「分かったよ……」
芸能人「ちゃんとあの女と話をつけてくる」スタスタ
大御所「……」
大御所(これでよし。後はちゃんと約束を守ってくれるといいが……)
大御所「……ん?」
「合格だ」
大御所(この声は……閻魔様?)
「約束通り、お前を生き返らせてやろう」
大御所「うっ、うわああああああああっ……!」
<TV局スタジオ>
大御所「……う、ん」
スタッフ「あ、意識が戻ったぞ!」
男「よかった……!」
大御所(あっ、そうか俺は――)
大御所「ジャジャーン! ドッキリだったのさ!」バッ
スタッフ「え!?」
男「え!?」
スタッフ「ビックリしましたよ!」
スタッフ「まさか……これは逆ドッキリだったんですか!?」
大御所「ああ、死んだふりをしてたんだ」
男「だけど、どう見ても呼吸してなかったし、心臓も……」
大御所「ドッキリなんだから、それぐらいやらないと意味ないだろう? アッハッハ!」
スタッフ「へえ、大御所さんともなると、やることが違いますなぁ」
男「すごい……完全に騙された……」
男「はい?」
大御所「今度、一緒に飲みでも行こうじゃないか」
男「は、はいっ! よろしくお願いしますっ!」
スタッフ「大御所さんに気に入られたみたいで、よかったなぁ」
男「ええ、とても嬉しいです!」
男「? ええ、元気でやってます」
大御所「そうか……お父さんは?」
男「父は……いないんです。だけど、養育費だけは払ってくれてたようで……」
男「おかげで大学まで出られましたし、今となっては感謝しています」
大御所「……そうか」
大御所(どうやらあいつ、ちゃんと約束を守ったようだな……)
男「いいんですか!?」
大御所「もちろんさ、逆ドッキリをしたお詫びに奢らせてくれ」
大御所(この彼に“君の実の父親は俺だよ”という特大のドッキリをすることになるのは)
大御所(そう遠くない未来のことになりそうだ)
おわり
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コメント一覧 (17)
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- 2019年01月15日 10:00
- いいんじゃないかな
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- 2019年01月15日 10:32
- 養育費も払わず会いもしなかった息子がよく分かったな、これが親子の愛か(あるとは限らないw)
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- 2019年01月15日 11:12
- 大御所が梅沢富雄で再生された
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- 2019年01月15日 11:14
- つまんね
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- 2019年01月15日 11:50
- 藤岡弘で再生されたわ
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- 2019年01月15日 12:47
- 世にも奇妙な?
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- 2019年01月15日 13:56
- ええっと、売れないお笑い芸人の父親と大御所芸能人は同一人物で、大御所芸能人は過去の世界に行って、過去の自分に忠告したってことで良いんですか?
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- 2019年01月15日 16:06
- 「大御所オーラ」www
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- 2019年01月15日 16:33
- つか、こいつ自身は妊娠した女を捨てて、養育費も払ってないんだよな。なんかズルくね?
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- 2019年01月15日 20:04
- >>9
だから悔やんでたんだろ
愚かで取り返しのつかないとこまで来ちゃった男にはこんな手でしか償えない
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- 2019年01月15日 17:35
- 結末だけ思いついた・やりたいが先行しすぎて内容適当すぎるのが残念
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- 2019年01月15日 19:44
- 俺はわりと好き
大御所が男を見て俺はまだ死ぬわけにはいかないんだって言ったのは
男を息子と知ってて社会的に終わらせるようなことにはしたくなかったからなんだな
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- 2019年01月15日 20:34
- 泣けた
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- 2019年01月15日 22:00
- お母さんは元気かね?って聞いてることから、もともとは貧乏のせいで死んでたんだろ
まあ個人的にはお互い真実を知らないほうが良かった気もするが、そしたら「ずっと悔やんでた」が薄っぺらくなるからな
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- 2019年01月16日 00:19
- おもしろかった
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- 2019年01月16日 02:00
- 落語を聞いた気分になったw
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- 2019年01月21日 00:21
- 過去の自分を干したのになんで現代でも大御所のままなんだ