男「切り株にウサギがぶつかるのを待ってたらウサギがどんどんぶつかってきて困る」
- 2019年01月03日 06:10
- SS、神話・民話・不思議な話
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男「いや、全然ダメだったよ。魚なんかかかりゃしない!」
男「あーあ、ただ待ってるだけでご飯にありつける方法、何かないかなぁ」スタスタ
男「ってあるわけねーか」スタスタ
男「ん?」
ウサギA「……」ピョンピョン
ガンッ!
バタッ…
男(切り株にウサギが激突して死んだ……)
男「やったぜ! ウサギが手に入った!」
男(いや、待て待て。もしかしたら、また今みたいなことが起こるかも……)
男(もうちょっと待ってみるか)
ウサギB「……」ピョンピョン
ゴッ!
ドサッ…
男「よっしゃあ! まただ! 今日はツイてる!」
男(もうちょっと待ってみるか? いや、いくらなんでも――)
ウサギC「……」ピョンピョン
ゴキッ!
ボトッ…
男「またかよ!?」
男(また来た! あいつも切り株めがけて走ってやがる!)
ウサギD「……」ピョンピョン
男「おーい、危ねえぞ! ぶつかるぞ!」
ドゴッ!
ボテッ…
男「これで四回目……! 一体なにが起こってるんだ!?」
男「またウサギだ!」
男「こいつら何がしたいんだ!? 集団自殺でもしてるのか!?」
ウサギ「と、止まらない……!」ピョンピョン
男「え!?」
ウサギ「きゃああああっ! ぶつかるぅ!」ピョーンッ
ドゴッ!
ウサギ「……!」
ウサギ「あなたが……体を張って止めて下さったのですか。ありがとうございます」
男「あ、いや……」
男(つい咄嗟にウサギを助けてしまった……)
男(一回や二回ならいいけど、さすがにこう何度も続くと不気味だしな。放っておけなかった)
男「とりあえず、これ以上ウサギは来ないようだな」
男「これはなんなんだ? お前らウサギは何がしたいんだ?」
ウサギ「それが……私にも分からないのです」
男「今日だけじゃないのか!」
ウサギ「今日は私たちが調査に向かったのですが、あの切り株に近づいたとたん……」
男「まるで自殺でもするようにぶつかっていってしまったわけか」
ウサギ「はい……」
男「あの切り株、何かあるな……」
男「と、その前にこのぶつかった仲間たちを埋葬してやろう」
ウサギ「ありがとうございます!」
男(あーあ、晩飯にするはずが……何やってんだろ俺)
ウサギ「いかがです?」
男「切り株自体におかしいところはないなぁ……」
ウサギ「そうですか……」
男「ちょっと掘ってみるか」
ウサギ「え、掘る?」
男「うん、この下にウサギを引き寄せる何かが埋まってるのかもしれないし」
男「……」ザクッ
ウサギ「……どうでしょうか?」
男「お?」カチン
男「なんか……骨が出てきたぞ」
ウサギ「骨?」
男「ああ……小さい動物の骨だ」
ウサギ「まさか、ウサギの?」
男「いや、ウサギじゃないな……なんだろ? どこかで見たことはあるんだが……」
男「!」
ウサギ「!」
“俺の眠りを妨げる奴は誰だぁ……?”
“俺の怨念を邪魔しようとする奴は誰だぁ……?”
“てめえらか……ぶっ殺してやる!”
ボコボコッ
男「骨が勝手に動き出した……!」
ウサギ「ひいいいい……!」
メキメキ… メキメキ…
男「これは……この骨格は……!」
男「――タヌキ!」
男「そうか、分かったぞ! お前はカチカチ山のタヌキか!」
骨ダヌキ「その通りだぁ!!!」
骨ダヌキ「死んだ俺の体は流され、地上に漂着し、土に埋もれた」
骨ダヌキ「やがて、俺が埋まった地点に木が生え、伐採され切り株となった」
骨ダヌキ「俺は地中から怨念の力でこの切り株に強烈な吸引力を与え」
骨ダヌキ「次々とウサギを激突させてったというわけだ! 復讐のためにな!」
男「……で、俺が掘り返しちまった、と」
骨ダヌキ「そうだ! せっかくの楽しい復讐を邪魔しやがって……」
男「復讐って、お前を殺したウサギと今を生きてるウサギは全然無関係だろ!」
骨ダヌキ「無関係? いーや、違うね!」
骨ダヌキ「ウサギという時点でそれは罪! ウサギを絶滅させるまで俺の復讐は終わらねえ!」
男「このクズ野郎が……!」
骨ダヌキ「お前らはすぐに藻屑になるんだよ!」
骨ダヌキ「俺の手によってなァ!」ズズズ…
ザバァァァァァァッ!!!
男「み、水……!?」
ウサギ「ものすごい量の水を生み出したわ!」
骨ダヌキ「溺れ死に、ずっと水ん中を漂ってたせいか、怨念パワーを全開にした俺は」
骨ダヌキ「水を自在に操ることができる!」
骨ダヌキ「二匹まとめて溺れ死ねぇぇぇっ!!!」
ドバァァァァァッ!!!
骨ダヌキ「この津波のような激流に飲まれたら、ひとたまりも――」
骨ダヌキ「――な!?」
男「しっかりつかまってろよ!」バシャバシャ
ウサギ「はいっ!」
バシャバシャ… バシャバシャ…
骨ダヌキ(こいつ……この激流を泳いでやがる!)
タヌキの奴は手当てしてくれた婆さんを殺して肉団子にしてお爺さんに食わせたんすけど
自分達の子供のように可愛がられたウサギは復讐の鬼になって当然だわ
骨ダヌキ「信じられねえ……魚か、てめえ!?」
男「腕はイマイチとはいえ、これでも釣り人だからな。泳ぎは達者なんだよ」
骨ダヌキ「……!」
男「さすがにもう、あんな大量の水を繰り出す力は残ってないよな? 俺の勝ちだ!」
骨ダヌキ「そういや、この近くには海があったよな?」
男「? ……それがどうした?」
骨ダヌキ「ここらへんの地面……よく濡れて泥になってやがるな」
男「なんだ? なんの話をしてるんだ!?」
骨ダヌキ「こういうことさァ!!!」
男「!?」
ウサギ「きゃっ!」
ギュウッ…
男(泥が……俺たちを包み込んで……。泥団子のように……!)
骨ダヌキ「へへへへへ……これでもう動けねえ!」
骨ダヌキ「あとは泥団子になったお前らを海に放り込めば、お前らは海底に沈む!」
骨ダヌキ「俺が味わったあの地獄を、てめえらも体験するがいいぜ!」
骨ダヌキ「あばよ!」ポイッ
バシャーンッ!
ウサギ(沈む……沈んでいく……!)ゴボゴボッ
ウサギ(だけど、海に入ったおかげで、固められてた泥が柔らかくなってる!)
ウサギ(これならあなたなら逃げられます! あなただけでも……!)
男(心配するな)
ウサギ(え?)
男(俺のご先祖様は、もっともっと深い海の底から生還した人なんだ)
ウサギ(表情が変わった――)
男(久々に……本気出すか!)
骨ダヌキ「そうだ、せっかくこうして掘り起こしてもらえたんだ……」
骨ダヌキ「もうあんな切り株なんぞに頼らず、俺の手で直接ウサギを殺しまくってやるぜ!」
骨ダヌキ「で、いつだったかのババアみてえに汁にして食ってやる!」
骨ダヌキ「ギャハハハハハハハハハハハッ!!!」
ゴボゴボゴボ…
骨ダヌキ「――は?」
ゴボゴボゴボゴボゴボ…
ザバァァァァッ!!!
男「ふうっ……泳ぎ切れた」
ウサギ「すごいです……」
骨ダヌキ「な……!? なにィィィィィ!?」
骨ダヌキ「なんなんだお前……いったい何者だァ!?」
男「教えてやろう」
男「俺の名は浦島五郎……浦島太郎を初代とすると五代目ってとこかな」
ウサギ「あなたは子孫だったなんて……!」
男「そして――」
男「初代は玉手箱を開けてしまい老人になってしまったが、おかげで身に付き、代々伝わる能力がある」
骨ダヌキ「能力……!?」
男「それがこの――“玉手煙”だ!」
男「ふぅーっ!」モクモクモクモクモク…
骨ダヌキ「な、なんだこの煙は!?」モワモワモワモワ…
骨ダヌキ「ひいいっ! 俺の体が……朽ちていく!」ボロ…ボロ…
男「その煙には浴びた者を老化させる力がある。たとえ怨霊だろうと老化させる」
骨ダヌキ「うわぁぁぁぁぁっ!」ボロボロ…
男「あまりに強力で凶悪だから、一族の掟でめったなことでは使用を禁じられているが――」
男「今回は使わせてもらった」
骨ダヌキ「ひえぇぇぇぇっ! た、助けてくれぇぇ……!」ボロボロボロ…
男「成仏しろ……古狸」
骨ダヌキ「おお……おおおお……!」グズグズグズ…
ブスブスブスブス…
ウサギ「このお礼は必ず……」
男「いや、気にしないでくれ」
男「俺だってこんな異常事態じゃなきゃ、労せずしてウサギを手に入れられたって喜んでただろうから」
男「それじゃ」スタスタ
男「はぁ……今日の晩飯どうしよ」ガクッ
…………
男「あーあ、今日もほとんど魚が釣れなかったなー」
男(おっ、これはあの切り株だ。そういやタヌキは退治したが、これはそのままだったな)
男(また動物がぶつからないかなー、なんて期待して待ってみたりして……)
男「……」
男「……」
男(んなことあるわけないか)
美女「あのう……」
男「はい?」
男(誰だこの人?)
男「ええ、そうですが」
美女「よかった! ここに来ればまた会えると思っていました! 恩返しに来ました!」
男「? 俺に、あなたのような美人の知り合いはいませんよ?」
美女「あっ、そうですよね。名乗らないといけませんね」
美女「私はウサギです。あの時、あなたに助けていただいたウサギです!」
男「ああ、あの時の……!」
美女「あなたに恩返ししたいと強く願ったら、神様に人間にして頂くことができたのです」
男(“鶴の恩返し”ならぬ“兎の恩返し”というわけか)
男「へえ~、これだけ美人だってことは、ウサギとしても相当美人だったんだろうな」
美女「やだ……もうっ! 浦島さんったら!」
美女「だから、これからはあなたのご飯は私が用意いたしますね!」
男「そりゃありがたい!」
男(どうやら俺は、この切り株で待ってたおかげでご飯にありつくことができたようだ)
おわり
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コメント一覧 (41)
-
- 2019年01月03日 07:07
- いいじゃない
-
- 2019年01月03日 07:44
- ホルト ゲルツ マイクローン
-
- 2019年01月03日 08:26
-
最後は無理やり女とくっつく
非モテが書くSSの特徴でワンパターン
-
- 2019年01月03日 09:20
- >>3
いや、昔話の定番でしょ
-
- 2019年01月03日 11:01
- >>3
BOY MEETS GIRLを完全否定とは、古今東西の物書きをまるごと下に見れる文豪なんやね※3は
-
- 2019年01月03日 09:45
- ※4
昔話に限らず大半のオリSSの男と女は相思相愛になるのがほとんど
SSまでなろうとかマジ勘弁
-
- 2019年01月03日 10:08
- 芥子ちゃん「反省するどころか逆恨みたぁ、いい度胸だなぁぁァァァァァァァァァァ!!」
-
- 2019年01月05日 12:36
- >>6
BGM「邦子のテーマ」
-
- 2019年01月03日 11:17
- 正月からいい話見れたw
まさか名前が伏線だったとは!!!
-
- 2019年01月03日 12:02
-
桃とか金とかも出なかったのだけが不満
-
- 2019年01月03日 12:09
- ※7
そうじゃなくてとりあえずくっつけときゃ満足なSSばっかなんだよ
なんでウサギの話で男女がくっついて終わるん?ワケわからんわ
-
- 2019年01月03日 12:52
- >>10
いや、昔話を色々混ぜてんだからツルの恩返しがあってもよくね?
男女がひっつくつっても結婚して幸せになりましたちゃんちゃんとか書いてない以上相思相愛でもねぇしそれこそ妄想じゃないの?
-
- 2019年01月03日 12:59
- >>10
きっしょ
-
- 2019年01月03日 13:00
- >>10
よく読め、起に対応した結は飯にありつけてめでたしめでたしだぞ
実はあなたが恋愛脳?
-
- 2019年01月03日 12:49
- ※10
自然の存在が女の姿で恩返しに行く話なんて
鶴の恩返しはじめ世界中に存在しとるぞ……
当然結婚する話もな
-
- 2019年01月03日 13:02
- むしろ古今東西あらゆる作品でも定番の流れにも関わらず
過剰反応する辺り劣等感らしきモノがにじみ出てる
-
- 2019年01月03日 13:27
- 爆釣れで満足でしたー(笑)
↓後釣り宣言乙↓
-
- 2019年01月03日 13:28
- 一羽
これってうさぎに対して使う場合の正式な読み方ってイチウなんだってね
ワとして使うのは陸を走る鳥類だけで、それと区別する目的らしい
鳥類でないものの代表がウサギだから漢字の卯から読み方とってウなんだと
嘘だけど
-
- 2019年01月03日 13:29
- 顔真っ赤で草w
-
- 2019年01月03日 13:33
- 面白かったよ
-
- 2019年01月03日 13:38
- 定番の終わらせ方をするだけで叩かれるエレファント民の鑑(特大ブーメラン)
-
- 2019年01月03日 13:54
- うう 兎は超多産 毎日毎日で衰弱死の未来しか
-
- 2019年01月03日 14:03
- 定番は構わないけど、生々しいやりとりのせいでシメが締まらない
「終わり」じゃなくて「続く」な感じ
-
- 2019年01月03日 16:03
- オチが弱いというのはあるな
何か気の効いたダジャレでも絡めておけばいいぞ
-
- 2019年01月03日 16:32
- ※10は一度叩くスイッチが入っちゃったものは叩かずにはいられない、自分を律することのできない人格障害者ちゃんなのだ
あんまり虐めてやるな 本人はその性分のせいで周りに瞬間沸騰機だとか影で笑われてるのだ
-
- 2019年01月03日 16:33
- SSにマジになっちゃってどうするの
-
- 2019年01月03日 16:45
- 序盤で助けて道中を共にした兎が実は女で最後仲間になる。つまりこれはゴブリンスレイヤー9巻
-
- 2019年01月03日 22:06
- カチカチ山って子供には内容がエグすぎて改変食らった昔話じゃなかったっけ?
-
- 2019年01月03日 23:53
- >>27
というか最近は昔話はかなり改変されてるとは聞いた。そのせいでなんか変な話になってるのも多いとかなんとか
-
- 2019年01月03日 22:51
- 月光条例、執行!
-
- 2019年01月04日 05:48
- 子供向けと子供騙しの区別ついてない奴らがアカンねん
-
- 2019年01月04日 08:47
- 昔話の改変って実際どうなんだろうね
子供たちをグループ分けしてそれぞれに別のバージョンを読ませて経過を観察、なんてやるわけにもいかんし、結論の出ない問題なんかな
-
- 2019年01月04日 19:14
- >>31
割と真面目に「俺が嫌いだから改編しよう・発禁にしよう」つーのはあると思う
チビクロサンボとか
-
- 2019年01月06日 22:58
- >>35
チビクロサンボは「サンボ(黒人の蔑称、または黒人とインディオのハーフを指す言葉)が人種差別だ」とか言われて発禁されたんだけど、本当は原作は人種差別と無関係なものだったんだよ。
本来はインドの少年サンボが主人公(「サンボ」はチベットの辺りだと一般的な名前らしい)なのに、アメリカで海賊版が発行されたときにアフリカ系アメリカ人の少年に変更されて、さらに人種差別的な改変を加えまくったらしい。日本のチビクロサンボもこの海賊版を翻訳したもの。
これが世界中に広まって、後に「人種差別を助長する」として発禁になった訳だけど、以上の経緯から原作は人種差別思想とは無関係で、後のアメリカ人の都合で人種差別的なものに改変されて、さらに後に人種差別反対のために発禁されたわけだから哀れだよな。
-
- 2019年10月10日 00:03
- >>39
コマンド・サンボも差別用語なの?
-
- 2019年01月04日 10:23
- 晩飯が、と嘆いたところで焚き火にウサギが飛び込み晩飯になるエンドを予想してたから綺麗に終わってよかった
-
- 2019年01月04日 11:05
- ※32
あーそういう昔話もあるよねぇ
-
- 2019年01月04日 15:18
- ※5
お前の中では男女が愛し合う物語は全てなろうなんだろうな草
-
- 2019年01月05日 13:46
-
※欄にイキリト
内容は予想しなかった展開で良かったです
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- 2019年01月05日 15:08
-
東洋西洋にかかわらず昔話は残酷なストーリーが多いよね。今と昔だと死生観や価値観が違うから改変は良いとも悪いとも言い難いな。
-
- 2019年01月24日 16:34
-
すこすこ
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