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【艦これ】 続 外地鎮守府管理番号88【後半】

関連記事:【艦これ】 続 外地鎮守府管理番号88【前半】





【艦これ】 続 外地鎮守府管理番号88【後半】






339:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/03(火) 00:02:58.74 ID:HSNWcwmZ0



第十二話 天国への扉 後編




340:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/03(火) 00:04:16.18 ID:HSNWcwmZ0


強襲揚陸艦艦橋

提督「それにしても艦番88とは…。」

大佐「どうされました?」

提督「あぁ、いえ、この艦の艦番なんですがね。

   私が普段指揮を執る鎮守府の管理番号と同じでしてね。」

提督「なんの因果かと思いましてね。」

大佐「あぁ、それでコールサインが88なのですね。」

提督「えぇ。こういうのは普段どおりの方がいい。」ニッコリ



提督と大佐がにこやかに談笑している所に開演のブザーが鳴る。



「ワイルドギース01から入電!

 敵の偵察機がエリア3 -A―01からこっちに来てるかも!」(無線)

提督「こちら88コントロール。伯爵、聞こえているか?」(無線)

グラ「こちら伯爵。加減は?」(無線)

提督「1~2機は帰してやってくれ。

   こっちの居場所を知ってもらわない事には始らない。」(無線)

グラ「こちら伯爵了解した。」(無線)

大佐「こちらの位置をわざとにばらすのですか?」

提督「えぇ、そうですよ。あくまでメインステージは此方ですから。」

提督「踊るならこちらで踊ってもらわないと色々と折角の舞台演出が無駄になりますからね。」

提督「スポットライトの舞台装置に大道具。全て重要ですよ。」




341:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/03(火) 00:06:00.56 ID:HSNWcwmZ0


強襲揚陸艦から救援予定鎮守府方向20海里地点 水深70m



ゴポリ

伊58「海底に岩だらけでち。」



提督から渡されたドラム缶を面倒くさそうに海底にアンカーで固定しながらゴーヤが言葉を紡ぐ。



伊8「米軍の海底データが役立ちますね。」

伊13「その…、海水がねっとりとしてて……。温度も……。」

伊58「提督はなかなか潜水艦ってのを良く理解しているでち。」

伊58「米軍のデーターが無いとこんな大胆な作戦は考えられないでち。」

伊8「私達が一番槍……、ですね。」

伊58「敵さんの探信儀に聴音機じゃここに潜むゴーヤ達は見つけられないでち。」

伊8「先駆けからの大物食い、ですね。」

伊13「ですが…、そのタイミングが。」

伊58「その通りでち。でち達からも敵の音は拾いにくくなるでち。」

伊58「だけど、敵は大艦隊でち。

   拾う為の努力をせずとも大音量が聞こえるはず。」

伊8「提督が言っていました。

   敵は提督へのカンツォーネを謳いながら来るだろうから煩いだろうって。」

伊13「……、あの、敵はセイレーンか何かなのでしょうか……。」

伊58「魅了されたら海に引き摺り込まれるという意味ではそうかもしれないでち。」

伊8「後は急速浮上後の目標の推進音を間違えないようにしないと。」

伊13「…提督は間違えても周辺護衛を仕留めれれば御の字って言っていましたが。」

伊58「大物食いは刑期大幅短縮、それに提督の話を信じるなら。」

伊8「大物食いに成功すれば解放されます。」



海上での戦闘というのは陸の平原戦と似ているが

海中という不可視の要素が加わるのが厄介である。

何故なら、海中に潜む潜水艦というのは

時として局面を引っくり返すワイルドカードに成り得るからだ。

適切な位置とタイミング。

テーブルに並べられたコミュニティカードに自分の手札。

当たり前だがカジノでの勝負と同じようにお互いの手札は見えず伏せられたまま。

戦場というテーブルに敵、味方、加えて地理的要因という場札。

そして、手札には自軍の戦力。賭けるチップは自軍部下達の命。

提督と深海棲艦のポーカー勝負は既に始っている。




342:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/03(火) 00:07:28.14 ID:HSNWcwmZ0



強襲揚陸艦内



提督「初手からチェックなんぞしていちゃ心理戦に持ち込む以前の話ですぜ。」

大佐「だからと言って初手からベットして行きますか。」

提督「ホールデムは相手をいかにフォール。下りさせるかの勝負ですぜ。」

提督「特にプレイヤーが2人なら下りさせれば勝ちだ。」

大佐「ですが初手、

   まだゲームが開始されたばかりだとコールやレイズをしてくるのでは?」

提督「それが狙いですよ。大佐。」

大佐「賭け金を吊り上げさせるだけ吊り上げますか。」

提督「ラストターンまで待つ気はないですがね。」

提督「今回は私も頭に来てましてね。

   フォールの声を聞くつもりはないんですよ。」

大佐「既に役が出来ているという事ですか?」



ここで提督はさぁてねと意味ありげに手をひらひら。



提督「敵についてですが今回は姫の上の格。鬼級が出張ってきている。」

大佐「あぁ、先程のお互いの自己紹介でそう言っていましたね。」

提督「深海棲艦の指揮官個体は艦種での違いは無く同格だそうですよ。」

大佐「指揮系統が複雑そうですね。」

提督「と思いきや鬼号個体が指揮を執ればそれに従う。

   鬼同士では指揮系統の順位があると海軍の研究が出ています。」

大佐「敵の総指揮官は戦艦水鬼でしたですか?」

提督「えぇ、今回の敵の総指揮官は戦艦水鬼です。なかなか厄介な手合いですよ。」

大佐「油断ならぬ相手、という事ですか。」

提督「えぇ、救援を呼ぶ艦娘が出られないように包囲網を適切に構築しているようです。」

提督「島風が這い出てこられたのも島風だからと言って過言じゃないでしょう。」

大佐「随分と強個体だったようですね。」

提督「えぇ、死なせるには惜しすぎる艦娘でしたよ……。」



艦橋内にある各種モニターに映る光の明滅を見ながら提督がぽつり。



提督「時に大佐は博打の必勝法を御存知ですかな?」

大佐「はて?」

提督「賭けない事ですよ。」

大佐「違いない。」

提督「まぁ、相手が目の前に居なくてよかったですよ。」

大佐「?」

提督「私はポーカーフェイスってのが苦手でして。顔に出やすいんですよ。」ニタァ

大佐「成程、良い笑顔ですね。」





343:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/03(火) 00:09:40.03 ID:HSNWcwmZ0



敵にも居るはずの潜水艦。

しかし、提督はこれが自分達救援部隊への迎撃に向ってこないと計算していた。

そして、仮に向ってきても脅威足りえないと。



コーン


          シャッシャッシャ


     コーン


シャッシャッシャ
         コーン



空鬼「敵の潜水艦は居ないようね。」

駆逐「えぇ。外周に配置したナ級の報告では探信儀に敵の反応は無いわ。」

空鬼「敵救援艦隊は随分大きな的を備えている様ね。」



グラーフがトニー賞俳優顔負けの迫真の演技で逃した偵察機からの情報で

深海迎撃艦隊は提督達のいる方向へと進路を向けていた。

ソナーには2種類あるのは皆さんも御存知だと思うが探信儀と聴音機。

この2種類の違いについては今更説明する必要性はないと思う。

潜水艦の探知については探信儀の方が性能が高いのだが

自軍に潜水艦が随伴している場合は現代艦で構成される機動艦隊は控える事が多い。

では、何故深海棲艦は探信儀を気兼ねなく使っているのか?

単純明快、自軍の潜水艦が随伴していないからである。

艦隊行動をする上で潜水艦の随伴というのは良くあるのだが。

潜水艦の基本の戦い方は待ち伏せ。

現代では機関や形状等が進化した事により潜行したまま艦隊についていけるが

第二次世界大戦時は浮上航行した上で会敵予想海域に潜むというのが専らの戦い方なのだ。

であるからこそ、既に防御線を構築している状態から潜水艦を引き抜き

艦隊に随伴させるというのは少々戦い方として無駄がある事になる。





344:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/03(火) 00:11:16.61 ID:HSNWcwmZ0



駆逐「敵の包囲網に使っている艦を回すわけには行かない……。」

空鬼「ここが難しいところよね迎撃側になる此方は速力重視になってしまうから

   速力に不足がある潜水艦は艦隊行動について来れない。」



現代艦艇の潜水艦と比べればその速力は浮上航行時でも当然遅く更に。



空鬼「敵潜水艦が待ち伏せて襲撃をかけて来ると予想される中で

   爆雷対処を行った場合に味方の潜水艦を巻き込む恐れが有るのよねぇ。」

空鬼「音を立てずに海中に潜んでいると見つけにくいのよね。」

駆逐「無闇にソ級達を沈めると潜水棲姫に怒られる…。」

空鬼「今回の作戦にあの娘の軍勢借りてるから無駄に沈めると後が煩いのよね…。」



現代兵器であればキャビテーションノイズ等で艦事の区別は付くのだが……。



空鬼「敵味方の潜水艦入り乱れての混戦になると却って困るのよね。」

空鬼「浮上航行の潜水艦なんて鈍亀もいい所だし。」

駆逐「浮上航行している潜水艦は敵にとっていい的でしかない。」

駆逐「私達の爆雷は潜水艦を[ピーーー]。敵も味方も無い…。」

空鬼「であるならば対潜に力を入れて探信儀で

   広範囲に捜索をかけて敵を先に見つける事に重点を置いた方がいいわ。」

空鬼「陣形の外周を探信儀持ちで固めて広範囲の捜索。

   発見した場合は同じく駆逐、軽巡で処理。これが一番現実的かつ合理的よね。」

駆逐「そう…ね…。」



深海側が採っている陣形は空母機動艦隊、米軍が海上航行をする際にとる輪形陣である。

単純にかつざっくりと陣容を説明するなら

外周の的がやられても内側の空母等の重要艦を沈めさせないという陣形である。

だけに。





345:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/03(火) 00:12:31.12 ID:HSNWcwmZ0



伊58「内側に完全に入り込まれると対処がしにくくなるでち。」ニタリ



提督から事前に話された敵がとってくるであろう陣形。

それは輪形陣の一陣形、

アイロン型の陣形で内側に深海側にとって重要艦を固めて来るであろう事。

そして、提督から艦内で改めて聞かされた

今まで色々な鎮守府が撮り貯めてきた深海棲艦達の各艦種、姫、鬼級達の推進音。

それを思い出し。



伊58「海のスナイパー。潜水艦の真骨頂を見せ付けてやるでち。」ニタリ



ゴポリ



伊8(そろそろです……。)



10……9……8……7……6……



5………4………3………2………………1



0 !



一秒が一時間にも感じられる程の張り詰めた雰囲気の中、

頭上を通り過ぎていく敵艦隊の推進音は

音が拾いにくい所にいるはずのゴーヤ達の所にもしっかりと届いていた。



伊58「今でち!」



70mの海底から一気に急速浮上。目標とする敵の後ろを取る。

その完璧なタイミングを推し量り、潜水艦達は急速浮上をかけた!



駆逐「潜水艦の浮上音!?」



敵輪形陣中央に浮上。





346:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/03(火) 00:13:21.23 ID:HSNWcwmZ0



伊58「海の中からこんにちは~!」ザバン!



シャコーン

冷たい立体反響音が当たりに響く。その正体は魚雷発射管が開く音。



伊58「そして、[ピーーー]ぇ!!」



敵の真後ろ、提督達のいる方向へ向けて航行中のため急に後ろを振り向く事など出来るわけも無く。



シャ ――――――――― !



ズドン!



ゴーヤ達3人の放った魚雷が一斉に扇形に広がり輪形陣の中心にいた深海棲艦達に命中!

そして上がる命中の水柱。



伊8「全弾、命中確認、ですね!」

伊13「敵被害確認、カメラでの撮影完了!」

伊58「長居は無用でち!急速潜行で海域から離脱でち!」



その存在を検知出来なかった場所からの敵。

ゴーヤ達の奇襲は完璧なまでに決まり、成功した。






347:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/03(火) 00:15:25.92 ID:HSNWcwmZ0


空鬼「駆逐ちゃん。」

駆逐「何?」

空鬼「あなたに指揮権を移譲するわ。機関をやられたわ…。」

空鬼「艦載機の発着艦は出来るけど後方からやられた所為で

   このまま敵本隊にぶつかればいい的にしかならないわ。」

空鬼「自力航行不可能よ……。」

駆逐「離脱するのね……。」

空鬼「えぇ、後は宜しくね……。」


ゴーヤ達の魚雷は艦隊の中心部に居た空母水鬼に見事命中。

他にも多数の重巡達に大破や中破といったダメージを与える事に成功していた。


駆逐「ナ級達。敵潜水艦を沈めて頂戴。」


艦隊外周の駆逐艦達に冷静に見える様でありながらも腹立たしい表情で指示を出すが。


駆逐「敵の反応が無い?」

駆逐「馬鹿な!敵にそんな高速潜水艦等居るはずがない!」


だが、返ってくる言葉は不明(ロスト)の返答。


駆逐「忌々しい!」


駆逐棲姫が毒づく言葉を吐き周囲への爆雷攻撃を命じる。

ゴーヤ達を探知出来ている訳では無い。

だが、潜水艦の脅威を放っておくわけにはいかない為周囲全体に爆雷を大量に撒く。

そして。


駆逐「敵艦からの浮翌遊物を確認。」


撃沈したと思しき大量の油と敵艦娘特有の制服を確認。

ナ級からの報告に溜飲を下げる駆逐棲姫。

進軍速度を落とし被害の確認。

空母水鬼が大破撤退したものの空母全体でみれば被害は軽微。

そして、重巡や軽巡、戦艦といった者達にも撃沈が出てはいるがこれもそれ程数が減った訳では無い。

まして、奇襲という手を食らって敵と一合も刃を交えず退くという事など。


駆逐「選択肢としてない!」


事前の偵察機からの情報では艦隊の数、そして空母艦載機数で圧倒できる。


駆逐「地獄を見せてやる!」


激昂し普段あまり表に出さない感情を顕わにし。


駆逐「絶対[ピーーー]!」


怒りのままに進軍速度を早めたのだった。





348:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/03(火) 00:16:42.34 ID:HSNWcwmZ0


強襲揚陸艦内艦橋


不知火「司令、ゴーヤさん達から入電です。」

提督「読み上げてくれ。」

不知火「トラ!トラ!トラ!我、奇襲に成功せり! です。」



不知火の読み上げる電文に苦笑する士官二人。



提督「大佐、これは申訳ありませんな。」

大佐「いえいえ。お気になさらず。」



そして、不知火から敵に与えた被害を聞き満足そうに頷く提督。



大佐「あまり敵に与えた被害が大きくは無いようですが。」

提督「とんでもない。連中は値千金の仕事をしてくれてますぜ?」



提督の言葉に疑問を持ったのか腑に落ちなさそうな顔をする大佐。



提督「大佐、指揮官を一人、

   それも空母水鬼を行動不能に出来たというのはこっちの防衛戦は勝ったも同然です。」

提督「空母水鬼とその他の指揮官では艦載機の管制が雲泥の差。」

提督「制空争いに余裕がかなり出来ることになるんですよ。」

提督「敵の数が勝っていたとしても質で此方は拮抗に持ってはいけますがね。」

提督「あくまで拮抗。勝つための決定打が足りない。」

提督「その決定打を今、潜水艦の娘達が敵に与えたって事ですぜ?」

大佐「それなりに策は用意されているかと思っていたのですが?」

提督「えぇ、おっしゃるように勝つための策は用意していましたがね。」

提督「使う必要性が無いなら使わない方がいい。

   私の所はそちらほど台所事情がよくないのでね。」





349:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/03(火) 00:18:29.89 ID:HSNWcwmZ0



大佐「それにしてもそちらの潜水艦の娘達は実に大胆な手法を取られましたね。」

提督「もともと其方がこの辺りを縄張りにしていた御かげで

   蓄積されていた海底データが役に立ちましたよ。」

大佐「やはり温度躍層に、ですか?」

提督「手品のタネを明かすならそうですね。

   曳航式ソナーなんて敵は持っていませんしな。」

提督「攻めてきた側の連中が周辺海域の詳細海底データーを持っているとは思えませんし。」

提督「知っているなら対策もとっていたでしょうや。」

大佐「成程。なかなか面白い事を考え付かれますね。」

提督「簡単に真似出来ると思ってはいただきたくないですね。」ニィッ

提督「今回海中に潜んでいた連中は何百、何千と深海連中を沈めてきた歴戦ですからな。」

提督「御存知とは思いますがうちの特性上沈めた艦種によって報酬は大きく変わる。」

提督「だからこそ、狙う前に敵の機関の推進音を一瞬で聞き分け、

   より報酬がでかくなる対象を狙う。」

提督「急速浮上から奇襲、そして急速潜行、戦域離脱。

   普段から死線をギリギリでさまよっているうちの連中だからこそ出来る芸当ですぜ?」

提督「まちがっても余所の錬度でやっちゃ駄目ですな。

   急速浮上後に目標を見つけられずに沈められるのが関の山ですからな。」

大佐「精鋭揃いなのですね。」

提督「えぇ、精鋭も精鋭。気を抜くと自分の首に大鎌が押し当てられますので。」

提督「最初に敵に与えたこの攻撃で敵の先手は取った形になります。」

大佐「切り札を最初に切ったと?」

提督「えぇ、切り札なんてもんは温存しといて

   切るタイミングを失うよりさっさと切ってしまった方がいいんですよ。」

大佐「成程、どこかの国の戦艦がそんな最期でしたな。」

提督「……、皮肉がすぎますな。」ハハッ



始めの電文に対しての軽い応酬。





350:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/03(火) 00:20:01.45 ID:HSNWcwmZ0



大佐「これは失礼しました。ですが、今後の展開も楽しみですね。」

提督「楽しむ余裕があるというのは重要ですよ。」

提督「余裕があるうちは頭も動いている証拠ですからね。」

提督「さてと、不知火。」

不知火「はい。」

提督「この艦の周りに配置についている連中に連絡だ。」

提督「幕は上がったとな。」

不知火「了解です。」

提督「さてと、大佐にはプロデューサとしての私の腕前を見ていただきますか。」

大佐「地方公演なしにいきなりのブロードウェー。素晴らしい大作なのでしょうな。」

大佐からの皮肉に、にこやかな笑顔を返し。

提督「勿論ですよ。まぁ、I dreamed a dream になる訳にはいきませんので。」

大佐「レ・ミゼラブルですか。」

提督「御名答。」



艦橋内で提督からの指示を

強襲揚陸艦外周辺海域に展開する各艦娘と連絡を伝え全員が意気軒昂なのを確認。



提督「さぁ、舞台は整った。」



後は敵をいかに潰すか。手札の役は既に敵にとって致命傷。

敵の積み上げたチップを全て残らず奪い取る。



秋津洲「ワイルドギース02から88コントロールへ!」(無線)

秋津洲「敵艦載機編隊がエリア2-A―03より襲来!」(無線)

提督「了解!全員褌締めて掛かってくれ!

   前哨戦だがここから先は全て息を切らさぬクライマックスの連続だ!」



提督の呼び掛けに全ての無線は応とかえってくる。



提督「気を抜くと尻の毛全て毟られるぞ。」



提督の台詞に笑う無線の返事多数。



提督「さぁて、いつも通り。行こうか。」



ぽんと手を一つ叩き、艦橋内の各種モニターを見つめ

どう敵を料理しようかと提督は不敵な笑みを浮かべるのだった。




357:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/09(月) 00:10:14.40 ID:NNCuyt2G0


おまけ話  ガングートは底辺から脱出したい




358:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/09(月) 00:12:27.25 ID:NNCuyt2G0


ガングート着任初日

その日、不知火は提督からのお使いで艦隊司令部に行っており

既に帰途に付いていたものの帰ってくるまでにはまだ時間が掛かるはずだった。



ポンポンポン



いつもの様に軽快なエンジン音を立て艀に接岸するボートが一艘。



提督「お疲れー。今回の荷物は外交問題だって?」

水兵「ははは。私からはあまり詳しくは。」

提督「うちに厄介ごとの丸投げ止めて欲しいもんだよ。まったく。」



そしていつもの通りにお互いの認識票を端末に翳して受領手続き。

その後、水兵が去った後に荷物の拘束を解いていた所に不知火が帰ってきた。



不知火「司令!不知火、帰投しました!」



みえない尻尾がぶんぶんと。

振り切れそうな勢いで振れているなぁと提督はぼんやり。



提督「うん。お疲れ。予定より早いようだが。」

不知火「途中で船を降り艤装で全力航行してきました。」



頭を撫でろと差し出しくる不知火の頭を撫でていると罵声が飛んできた。



「貴様!駆逐艦の相手などせずにさっさと外せ!この馬鹿者が!」



猿轡を先に外し、足の拘束を外そうとしていた提督に偉そうな口を利く艦娘。

ブチッ



不知火「2割殺しで許してやる。」



たった一言。余分は不要。

メキャァ



提督「あっ。」



提督は後に時雨に語った、艦娘って戦艦でもあんなに吹っ飛ぶもんなんだなぁと。



時雨「あれで2割なんだ……。」



とは時雨の返答。




359:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/09(月) 00:15:08.69 ID:NNCuyt2G0


そして、1週間程、意識が三途の向こう側へ行きかけた後。

栄養を取る為に彼女が食堂を利用した時の事だった。

昼食をとりに提督が食堂へ顔を出せば揉めている声がする。


ガン「なんだと!?ボルシチが出せないだと!?」

「いや、予め言ってくれれば用意はするけど。」

「普段からメニューにないのを急に作れって言われても無理だよ。」

提督「まぁまぁ、落ち着いて。」



提督がなだめようと間に入るが……。



ガン「何が落ち着けだと!?貴様!銃……「露助、司令官を敬え。」



一閃、綺麗な兎飛びアッパーが決まる。

ボゴォ゛



提督「あっ。」



提督は雪風に語る。天井に人が突き刺さるって事があるんだねぇと。



雪風「装甲は腐っても戦艦ですから。」



とは雪風の言葉。



360:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/09(月) 00:18:46.94 ID:NNCuyt2G0



そして、三途の渡し守から追い返されてから三日後。



秋津洲「今日は二式大艇ちゃんの整備日和かも!」

提督「二式大艇ってこう、なんか愛嬌あるデザインだよなぁ。」



執務室が禁煙にされてしまっている為、煙草を吸いに埠頭まで来ていた提督が秋津洲に語りかける。



秋津洲「さっすが提督!よく分かってるかも!」

秋津洲「でも煙草に火をつけたまま近づくのは危険だから駄目かも!」



ジュッ

咥えた煙草を奪われ火を消される。



ガン「頼もう!」

秋津洲「はーい、いらっしゃいませかもー!」

ガン「すまないが燃料と弾薬を売ってくれ。支払いはこれで。」

つ ルーブル

秋津洲「げぇぇ。まじもんの紙屑かもぉ!」(1ルーブル≒1.78円)

ガン「なにぃ!?貴様!我が祖国を愚弄するか!?」

秋津洲「ここでの使用可能通貨はドルかも。」

ガン「その様な物等ない!」

提督「ルーブルは流石に両替を受けてないな。」

秋津洲「お金が無いならお帰りはあちらかも!」指差し

ガン「金は無いが武器はある。」チャキッ

秋津洲「きゃぁ――、強盗かも ――(笑)。提督を守らないとかも――(笑)。」


役得とばかりに提督に抱きつき、えいっと可愛らしくパンチを一つ。


ドゴ!



提督「あっ。」



秋津洲の右ストレートが炸裂。

二式大艇は自重だけで約18t、爆装等込で最大重量約35t。

それを片手で担ぎ上げる秋津洲のパンチが決まったのだ。

提督は後に長門に語る。反跳爆撃で飛んでいく爆弾の様に水を切りながら飛んでいったと。



長門「学ばない奴だな。」



とは長門の言葉。





361:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/09(月) 00:19:52.32 ID:NNCuyt2G0



そして。



明石「金を稼ぐ前から修理代ばかり嵩ませて、

   払うあてが無いなら艤装ばらしてあんたの部品を担保にして貰おうか?」

明石「人体ってのは綺麗にばらせば300万にはなるんだ。腎臓の一つでも売ってみるかい?」



鬼より怖い明石に睨まれ。

艦娘が入れる生命保険等ある訳も無く。



ガン「身の程を弁えず申訳ありませんでした ――――――― !」



提督に地面で額を摺りきらんばかりの勢いで土下座をかまし。



ガン「助けてください~。」



全力で泣きを入れた。



提督「あー、まぁ、うん。気をつけろよ。」

不知火「2度は無い気をつけるんだな。」ヌイ!

ガン ヒィィ!



提督が明石に上手く取り計らい、ガングートは内臓を売る事無く着任する事が出来たのである。

マイナスからのスタートなのは言うまでも無い。




362:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/09(月) 00:23:24.97 ID:NNCuyt2G0

以上超短編
お読みいただきありがとうございました、最近板自体が管理人さん不在の所為かスレ建て荒しなどの放置が目立ちますね…
そろそろ移住を考えた方がいいのやらやら……
では、ここまでお読みいただきありがとうございました
乙レス、感想レス、いつもありがとうございます!励みとして続きを書くエネルギーに変換しています!
では!また次回の更新でお会いいたしましょう!



371:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/30(月) 00:07:01.24 ID:4HB+eitj0


グラ「Falke(隼)02は01と協力して3―B―01だ。」



自己管制下にある最新鋭機Ta152艦載型の編隊を敵の襲来している空域へ差し向ける。

ポン!



グラ「と、お次はAdler(鷲)01と02、3-A―01だな。」



ポン!ポン!



グラ「正面と右翼からの浸透か。」

グラ「まずはお手並み拝見と言ったところか?」



高高度作戦機が豪とエンジンの唸りを、

咆哮をあげ提督が乗る強襲揚陸艦へ襲撃を掛けてくる敵機を落とす。



グラ「高高度における機体性能は私の機材の方が上の様だな。」



ポ―ン!



グラ「と、このエリアはサラトガだったな。」



ポ―ン!



グラ「ふむ。Conder(コンドル)を援護に回そう。」



先程からグラーフの目に映っているのは周辺戦闘空域に飛来している敵機編隊数。

グラーフはウェラブル端末の透過式グラスの表面に表示される

敵飛来方向等から自艦載機部隊に戦闘指示を出している。

そのグラスはポーンポーンと軽快に音を立てては戦況を随時更新。



グラ「外周のピケットが食われないようにしないとだが…。」

グラ「フム、初月達が動いたか。電探持ちがやられるときつくなるからな。」

グラ「Conder(コンドル)02、03はそのまま上空で二式大艇の護衛を続けてくれ。」

グラ「敵増援が来れば護衛機は追加しよう。艦隊の目だ。くれぐれも落とされないでくれ。」



グラーフは一体何をしているのか?





372:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/30(月) 00:09:22.95 ID:4HB+eitj0



強襲揚陸艦 艦橋



不知火「大艇からのデーターだと、敵艦隊はこちらの方角です。」



不知火が二式大艇に積まれた機上電探からの情報を

提督が机代わりにしているタブレットを大きくしたような大型モニターに

データとして表示させながら説明する。



提督「そろそろグラーフだけでの管制は厳しくなってくるだろうな。」

提督「俺が管制の指示を出そう。」

大佐「航空管制の経験がおありですか?」

提督「うちの国は人材がつねに不足していましてね。なんでも出来ないと提督は務まらんのですよ。」

提督「もっとも、なんでも出来た所為で辺境の指揮官なんてものをやっていますがね。」





373:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/30(月) 00:10:02.71 ID:4HB+eitj0


大型モニターに数字と襲来方向の矢印、

そして、敵機を表す光点が徐々に増え始めるのを見て提督が頭にレシーバーを嵌める。



提督「うち所属の空母艦娘ども、敵の数が借金取り並だ。」

提督「ここからは俺が管制をする。

   指示は各々がつけてるウェラブルグラスに迎撃に向わせる空域と編隊名が出るからその指示に従ってくれ。」

提督「後、米国からのお客様、サラトガ嬢は未通女(おとめ)なんでな。」

提督「悪い虫が付かないように守ってやってくれ。以上だ。」



提督からのいつもの軽口付きの指示。

どうやらいつも通りやれているようだ。いつも通り、普段の様に頭が動いているなら。



グラ「Admiralの勝ちだな。」



にしても。



グラ「カバー範囲が広いものよな。」



だが。



グラ「私になら出来るというAdmiralからの信頼。それに応えぬ訳にはいくまいよ。」



上官への尊崇。それ以外もあるが。口には決して出せない秘めた思い。



グラ「火事と喧嘩は江戸の華だったか。」



なれば鉄火場こそ己の魅せ場。

纏う火の粉を紅に変え、硝煙の香りを上等のフレグランスへ。

堅牢な城門を壊し城を陥落させるようにあの朴念仁を堕とそうではないか。



グラ「独逸撫子もいいもんだとあの男に言わせねばならんのでな!」

グラ「必勝と行かせてもらうか!」




374:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/30(月) 00:11:20.09 ID:4HB+eitj0



高度1万メートル

高高度作戦機の縄張りであり空気は薄く、

大馬力エンジンが支配する絶対空域。

馬力の無いエンジンを積んだ飛行機では辿り着けても

敵に追いすがる事など出来ない性能こそが神として君臨する空域。

その高度をグラーフの管制下にあるTa152の各編隊は悠々と飛行していた。



大隊長「編隊長から各機へ。ターキーショットと思って手を抜くなよ。」

大隊長「グラーフ嬢が想い人にいい所を見せようとしているようだ。」

副長「それは気合いれて掛からないといけないですね。」

隊員A「でも、告白するんですかね?」

隊員B「いつも寸前で止まってますからねぇ。」

大隊長「相手は昔の女に捕らわれているらしい。」

副長「男としては憧れますが。」

隊員A「好きになった女にとっては迷惑極まりないですね。」

大隊長「なればこそ我らが戦果をあげていい女として認めて貰えるように頑張らねばな!」

一同「「「 Ja!」」」



軽口を叩く妖精一同。

そして、グラーフの指示に従い眼下に見える敵機編隊へ襲いかかりる。

ドイツ空軍、ルフトバッフェの基本戦術2機1小隊を2つにして4機で1編成のケッテとよばれる編成単位。

ドイツ空軍が採用の後、実戦に投入しその有用性に目をつけた英国空軍も取り入れ4本指、

フォースフィンガーという名称でこの編成方法は知られている。

彼らは定石通りに高空から一気に眼下の敵編隊へ襲い掛かった!





375:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/30(月) 00:13:19.53 ID:4HB+eitj0



ドドドドドド!

機銃の音が空間へ響き渡り深海棲艦の機体を撃墜!



隊長「Falke(隼)大隊長01より各小隊長へ!被害報告をされたし!」



突入してのそのままの勢いで急降下をしている状況で余裕の被害確認。

Falke隊からの急襲を散開させることによりなんとか逃れた深海棲艦の艦載機は急降下で追撃!



「02小隊被害なし。」

「03小隊同じく被害なし。」

「01了解。Adler(鷲)編隊!準備は!?」

「こちらAdler大隊長01。いつでもどうぞ。」



各編隊からの報告に満足したように頷くと

急降下していた状態から一気に操縦桿を引き機首を上方へ向ける。



大隊長「馬力のある機体が逃げる時は下じゃなく上が定石だからな。」



攻撃を仕掛けた編隊が急に機首を上に上げたのに合わせ急降下で追撃していた敵機も追いすがる!



大隊長「まったく、japanの言葉でダボハゼだったか?」

大隊長「ちったぁ罠を疑えってな。」

大隊長「Falke大隊長01よりAdlerへ。お客さんをお連れした!盛大に歓迎してやってくれ!」



ドドドドドドドン!



Adler大隊長01「Willkommen(いらっしゃい)コーヒーは如何かな?」



上空へと逃れるFalke隊を追いかけてきた敵機は次の瞬間全機撃墜される!



大隊長「待ち伏せお疲れ。」

Adler大隊長01「どういたしまして。敵は余裕が無い様だ、コーヒーの誘いを断られたよ。」

大隊長「紅茶好きだったんだろ。」

Adler大隊長01「成程、それは粗相したな。」



何のことはない。

急降下突撃した部隊が敵の生き残り編隊を急上昇で吊り上げ

高空で待機していた別の編隊へ上がってきたところを叩かせる。

上昇力に明確な差があるからこそ出来る戦術であり。

二式大艇からの電探情報、提督からの敵機位置情報、

各編隊との無線機でのやり取りがばっちりと嵌ればこその戦術である。





376:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/30(月) 00:15:11.24 ID:4HB+eitj0



大隊長「釣り野伏せだったか?」

副長「japanでの名称ですか?」

大隊長「あぁ、瑞鳳嬢の旗下連中から聞いたんだが

   japanの戦闘民族が得意とした戦法なんだそうだ。」

副長「我らゲルマン民族の様に勇猛果敢な民族もいたもんですな。」

大隊長「そうだな。Falke大隊長から大隊全機へ!

    最初の突撃で担当空域内に侵入している敵は3割しか落せていない!敵が多すぎるな!」



大隊長の言葉に笑いが漏れる楽しい職場。



大隊長「ここから先は各個撃破となる!各小隊の奮闘期待する!以上!散開!」

Adler編隊長「同じくAdler隊も散開!各個撃破だ!以上!」



高空からの奇襲は一度限りの先手必勝。それを使えば後は一撃離脱の回数を重ね敵を落すしかない。

こうして狼達は野に放たれた。

ギュオォォォォォオオオォン!

機体性能を十分に活かし再度の急降下突撃。



大隊長「逃すか!」



一気に敵を3機程屠った後、僚機を従え他の敵機が飛ぶ高度で水平飛行へ!

そして機体性能を活かし速度を上げ敵の背後を取り敵機を更に撃墜!



大隊長「これが生身の人間なら体に掛かるGが激しいんだろうなぁ。」

副長「妖精に転生してその辺りの負荷があまり感じなくなりましたからねぇ。」

大隊長「先の大戦時でもそうだが、ますます人間を辞めた感があるな。」

副長「元々人間でしたっけ?」

大隊長「そういわれるとそうだな。」



ドドドドドド!

鼻先僅か10m。敵機が艶やかな華を咲かせ、ばらばらに散っていった。



副長「撃墜のコツは。」ニカッ

大隊長「自分の機体を当てる心算で近づけ。」ニヤリ



Ta152量産型の20mm機関砲、2機分、合計6門が火を噴けば並大抵の装甲では耐える事など出来やしない。





377:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/30(月) 00:16:57.34 ID:4HB+eitj0



ダダダダダダ!

大隊長「早漏だねぇ。」

副長「そういえば、深海棲艦の艦載機は男が乗ってるんですかね?」

大隊長「女なのか?あれ?」

副長「そもそも操縦士が乗っているのかどうか?」

大隊長「……、機械に落とされるのは癪だな。」



水平飛行を続ける二人の機体に敵が仲間の敵とばかりに攻撃を仕掛けてくる!

が!その銃撃はあまりにも遠すぎる為か当たらない!

なにより数多の修羅場を潜った末に妖精に転生している二人は

殺気を感じた時点で機体を次の行動へ移すべくタイミングを計っていたのだ。

二機の機体のエンジンが更に唸りを上げ速度がどんどん上昇。



大隊長「重力なんてもんを感じなくてよかったよ。」

大隊長「感じてたら奥歯の一本は覚悟しねぇとならなかったかもしれないからな。」



ふわり。

それは一瞬の出来事である。

機首を上げ機体を右方向へ捻りこみながら縦方向へ180度のループ。

ループをしながら機体を捻るためループ終了後の機体は水平に。



戦技 インメルマンターンの炸裂である!



敵の上方へ進行方向を逆にする形でターンする為、隊長達の機体の下を敵機がすり抜ける!

その結果、互いの速度差で距離が一気に離れていく!



大隊長「お疲れさん。」



水平飛行へ移行後少しばかりの距離を飛んだ後、2機は再度、下方向へのループを行った!

インメルマンターンの逆バージョン。



戦技 スプリットS である!



両方の技は共に少しの操縦ミスで機体の失速を招く高難度空中格闘戦技であり

それを間髪入れずに行うのは耐Gスーツを着ていたとしても

その体はもとより機体そのものに掛かる重力は凄まじいものとなる。

エアショーで機体が地面とフレンチキスをやらかして

大事故になる事が多いのもだいたいどちらかの戦技の失敗だったりする。





378:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/30(月) 00:19:07.13 ID:4HB+eitj0


副長「まぁ、敵の技量はうちの飛行隊だとワンデイですな。」


ピタリと追撃してきた敵機の後ろに付け2機の銃撃により敵機小隊は撃墜された。


大隊長「まったく、インメルマンの後にスプリットなんぞやってたら普通死ぬわ。」

大隊長「体への重力のかかり方が死ねる。」

副長「敵との距離が離れていましたからねぇ。」

副長「ビタ付けしている状態だったらそのままループだけでよかったんですけどね。」

隊長「敵がどん亀なのが悪い。」

副長「そーですそーです。」

大隊長「さぁて、敵の残りをいただきますか。」

大隊長 副長「「我らがグラーフ嬢の為に!」」



そして、2機は再度、敵編隊へと襲い掛かかっていくのだった。



グラーフ「 /// 。」



穴があったら入りたいとはまさに今のグラーフの為にある言葉だろう。

各妖精隊に指示を出す為に無線を繋ぎっぱなしのグラーフには

先ほどからのやり取りは全て筒抜けだった。



初月「やぁ、伯爵。そんなに赤面してどうしたんだい?」

グラ「あぁ、初月か。初月が来たという事は。」

初月「うん。そろそろ敵が抜けてくるだろうからって提督からの指示だ。」



現実的な話上空で空戦を行っている戦闘機だけで敵の攻撃機全てを落せる訳がない。



提督「時に大佐。この船の喫水線防御なんですが。」

大佐「強度としては大戦時の大和級準拠ですよ。」

提督「流石に色々と資料を残されている国は違いますな。」

大佐「大和級の固さは我が国にとって悪夢でしたからね。」

大佐「深海棲艦達の使う魚雷が大戦時の物と同じという情報を信用するなら

   単純に喫水線下の防御を固めるのが対策として至極簡単です。」

大佐「おかげで基準排水量がかなり増える事になってしまいましたがね。」

提督「さてと、接触と磁気、どちらの信管か。」

大佐「接触だと思いますよ。」

提督「ですかね。」



誘導装置が魚雷に搭載されたのは先の大戦も終戦間近、今までの深海棲艦達からの攻撃データーからの判断でも。



提督「敵の魚雷は接触式信菅とみて動きますか。」



そして、針路変更の指示を出す。




379:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/30(月) 00:20:56.88 ID:4HB+eitj0



提督「面舵20度」

大佐「艦の進行方向を変えますか。」

提督「魚雷からの回避行動といえばジグザグ航行が一般的ではあります。」

提督「ですが、うちの防空艦連中の腕を信用するならばこの程度の針路変更で問題ないですよ。」



強襲揚陸艦が針路を変える少し前。

初月率いる対空兵装を満載した防空駆逐艦隊は提督の指示に従い

上空の防空網を抜けてくる敵機を探す為空を睨んでいた。



初月「そこだぁ!!」



初月の長10cm砲、対空機銃が豪快な音を立て上空の網を抜けてきた敵艦攻隊を撃ち落とす。

ドドドドンドンドンドン!      

キンキンキンキン!



ボフォースからの薬莢が海中へ綺麗な放物線を描きながら消え

傾き始めた西日を受けきらきらと戦場に不釣合いな美しさを描き出し海中へ消えていく。



初月「ここは通さない!」



初月達防空艦達の対空砲火を浴び敵機が次々と火達磨になり消えていく。

だが、艦攻の役割は魚雷を投下し敵艦へぶつける事がその主目的である。

撃墜されたとしても魚雷を落せれば勝ちなのだ。

初月の対空砲火を浴びた敵機が、当たれば儲け、鼬のなんとやらとばかりに魚雷を投下した。



グラ「初月!魚雷が!」

初月「くそぅ!この方向はまずい!」



雷跡が提督達が乗る強襲揚陸艦へと走る。

が!



提督「当たらんよ。」



敵機から放たれた魚雷は強襲揚陸艦の左舷艦首先を駆け抜けていく。



提督「面舵30度。」



淡々と操舵指示を出す提督。




380:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/30(月) 00:22:36.62 ID:4HB+eitj0



大佐「魚雷が来る事も予想されていた……、

   というより射線を制限しているという方が正しそうですね。」

提督「あぁ、やはり分かりますか。」

大佐「自分の部下を完全に信用しているから出来る芸当とは思いますがそこまで部下に命を預けれますか。」

提督「流石に配られた手札で勝負せにゃならんですからね。

   いかさま無しの一発勝負となれば手前の手札をいかに有効活用するかですよ。」

大佐「成程。」



そして、机代わりのモニターに広がる数字を見て。



提督「敵の数がこちらの3.5倍は居るようですからね。打ち漏らしも出て当然と考えないといけませんよ。」

大佐「という事はこの艦が被雷、被弾することもあると言われる。」

提督「出来れば無いと願いたいですがね。まぁ、そこの所は神に祈りましょうや。」

大佐「神に祈るですか。」



これまでの用意周到振りを考えれば似つかわしくない言葉。



提督「たまには神様に仕事をしてもらわないと、

   いざという時に仕事の仕方を忘れていたじゃこちらが困りますからね。」

大佐「ははは。」




381:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/30(月) 00:25:11.77 ID:4HB+eitj0



再び海上



グラ「流石Admiral 魚雷が抜けることも考えて予め回避行動をとっていたか。」



そう、提督は上空の防空網にわざとに穴を開けていた。

全ては敵の攻撃機がそこの穴から攻撃を仕掛けてくる様に仕組む為に。

それは城にわざとに攻めやすい弱点を設けることで

敵の攻撃をそこへ集中させ守りやすくする篭城戦の基本戦術のようである。

だが。



初月「まるで僕が失敗をするのを見越していたようで癪にさわるな。」イラッ



決してそうではないのだが。



初月「これより全ての敵機は通さない!」

初月「全防空担当駆逐艦に編隊長初月の名において命ずる!」

初月「これより我ら修羅になる!敵機は一機残らず血祭りだ!」





382:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/30(月) 00:25:53.49 ID:4HB+eitj0



提督が艦を動かしたのは万一に備えての事であり決して初月達の能力を侮ったからではない。

しかし、この行動は初月のプライドを著しく傷つけた。

更に避けていなければ被雷していたという事実もその初月のプライドを傷つけるのに拍車をかけ、

より闘志を燃え上がらせる燃料となる。

だけに。



初月「そ こ だ ぁぁぁぁあぁあぁぁ !!!!!!」



ワルツを踊るように滑らかに駆け抜け機銃弾の薬莢、長10cm砲から上がる砲煙。

そして秋月型特有の白を基調とした制服は日が傾き橙色に染まる海上へ彩を添えた。



グラ「ほう、なかなかこれは。」



美しいものだなと声がでかかるが戦場という美と程遠い世界に居るものが

語るべきではないなと思い続く言葉を噤むグラーフ。

ポーン!



グラ「流石に数を頼みとする深海連中だけある。」



身に着けるウェラブルグラスには敵の編隊がまだまだ相当数いる事が表示されている。



グラ「とっ、2―D―02からのお客さんか……、これは瑞鳳のエリアだな。」



格闘王瑞鳳。



グラ「相手が哀れと言うかなんというか。」



狂気王瑞鳳。



グラ「Admiralが艦後方に位置する所に配置しているのはそういう事なのだろうな。」



瑞鳳の配置場所は米軍からの借り物でありゲストのサラトガの近く。



グラ「味方であれば心強いのではあるのだがいかんともなぁ。」






383:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/30(月) 00:27:36.32 ID:4HB+eitj0



瑞鳳常識無知也。



瑞鳳「んふふふん。」ヌチヌチヌチ



その少女はポールダンスを踊るストリッパーの様に体をくねらせ全身から歓喜の声を上げていた。



瑞鳳「あっ、駄目、溢れてきちゃう。」



戦場に長く身を置く事で常識感覚が欠如して戦闘狂になる兵士というのはよく居る。



瑞鳳「あっ、んっ、あっ。」



戦闘狂であれば御する事は容易い。

しかし本当に危険なのは狂っていながらも冷静さを併せ持つ相手。

88所属の瑞鳳はネームド制度が終った後に艦娘になった為二つ名持ちではない。

彼女は敵を殺すことに快楽を求め、

性的要求を満たす為に敵をさながら蟻を潰すかのごとく嬲り殺すことが好きだった。

その残虐性に一緒に出撃していた艦娘がPTSDを発症する事も珍しくなく、

敵を時間を掛け嬲り殺す事を最大の快感とし、

それを止めようとした味方艦娘を殺しかけた事が原因で此処に流されてきた。

そして、提督はそれを受け入れた、曰く。



「敵を確実に殺すんなら何も言わんよ。結果を出し続ける限りはお前の味方だ。」



今まで瑞鳳を狂っているとした鎮守府の無能達と違い彼は結果を出せばどうでもいいと、

瑞鳳に道端へ転がる石を見るような無関心とも言える冷たい視線をくれるだけだった。

それが瑞鳳にどういう印象を与えたのかは不明なのだが。





384:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/30(月) 00:28:51.66 ID:4HB+eitj0



瑞鳳「んっ、あっ、提督ぅ~。」ビクビクッ



絶頂を向え暫しの余韻の後、改めて自己担当空域に迫る敵の数を確認する瑞鳳。



瑞鳳「んっ、さて、私の場所を守るためにも頑張らなきゃ。」ホウッ



お漏らしをした様に濡れた袴。

愛液が滴る指を振りその雫を飛ばした後、

彼女は意識を既に上空へ展開済みの自己艦載機群へと向ける。



瑞鳳「さぁてと……、徹底的に嬲り殺そうかぁ。」ニタリ



グロロロロロ

零戦のエンジン音が甲高くなり増速を始める。

敵機が進入してきている高度はやや低め。

高度にして6000m。

瑞鳳が使う、否、帝国海軍が様々な悲しい事情も含めて

終戦時まで主力として使用した零戦シリーズが得意とする高度である。

じゅるり。

待ちきれない。そして、来た。

敵機を見つけ、瑞鳳は今か今かと待ちわびる自己艦載機編隊に迎撃の指示を下した。




385:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/30(月) 00:30:47.59 ID:4HB+eitj0




「全機突撃じゃぁ  ―――――――― !!!」

「おはんら深海の蛸どは鬼ころ飯じゃぁ !!!」

「ちぇすとぉぉぉぉぉ ――――――― !!!」

「命(たま)置いてけやぁ ――――― !!!」



機体に色とりどりのペイントアート。

戦闘機の塗装は空に溶け込むもの、

あるいは海上の色に溶け込むものを使用するのが主なのだが。

その零戦の一団は機体全体に派手派手しく極彩色の塗装がされていた。

それら機体に乗る妖精達は使用者の瑞鳳が頭一つ跳び抜けて狂気を持っている影響もあってか狂気の塊。

しかし。

その空戦格闘技術はまぎれもない本物。



「貴様(きさん)しんどけやぁ ―――― !」



槍合わせの形になる正面からの突撃!

方向桿を操作し操縦桿を逆方向へ入れ機体を横滑りさせる!



「奪ったどぉ ――――― !」



横滑りしながら正面敵機を撃墜!

正面突撃を全力ですれ違った零戦の後ろをまた別の敵機が取った!

速度は悲しいかな零戦の方が遅くエンジン馬力も深海棲艦の最新鋭機と比べれば非力。

だが、瑞鳳航空隊の狂人妖精達には誰一人としてそれを不利とするものは居ない!

後ろを取られた瑞鳳隊の零戦が敵機から逃れるべく上昇を始めるがその後ろを敵機が猛追!

そして、上昇を続ける零戦は暫くすると急に失速し機体が左右に振れ始めた!

これは決して操縦を誤ったものではない、狙って行っている操縦である。

そう!零戦の運動性能だからこそ可能とされる戦技!



木の葉落とし である!



木の枝から葉っぱが地面へ落ちるように左右に大きく揺れながら動く為

その名が付けられた空戦機動戦技である!

失速した零戦を追い越した敵機の背後に付き直す零戦!



「ちぇすとおぉぉぉ ―――――――― !」



気合一声、敵機撃墜!

零戦の性能で垂直上昇時の失速は零戦の機体性能では起こり得ないともされるが

彼らはそれを無理やり、そう、道理を力で捻じ伏せる事で可能にしていた。




386:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/30(月) 00:32:00.32 ID:4HB+eitj0



「そこんお前(はん)!命置いてけやぁ ―――――― !」



視界の端に見えた敵機へ急降下をかけ撃墜。

敵機が撃墜され搭載燃料や弾薬に火がつき方々であがる艶やかな華。



「ここが戦場(いくさば)、命捨てがまるは今ぞ!」



狂人戦闘機集団。

搭乗員妖精は使用者である空母艦娘が撃沈されない限りは熟練度が落ちこそすれ同じ存在として黄泉還る。

だからこそ。



「はぁっはっはっは!共に黄泉路を逝きたもっそ!」



ぼうぼうと別の敵からの銃撃により機体から火の手があがる零戦。

建て直しが出来ないと判断するや手近の敵機へと突っ込み戦果を積みあげ、逝った。

彼らの思想はいたって単純明快。



「瑞鳳の姫御さえ残れば俺達が勝ちじゃぁ!」



そう、軽空母艦娘瑞鳳さえ残れば勝ち、大将さえ生き残れば勝ちなのだ。

であるからこそ、戦闘不能となれば敵機へ突っ込む事になんら躊躇いはない。






387:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/30(月) 00:33:32.40 ID:4HB+eitj0



深海空母機動艦隊



ヲ級F「あっ頭が狂ってやがる!」



気配、殺気や狂気に色があり目に見えるとしたらきっと丹とか真紅とか鈍錆とかだろう。

瑞鳳の艦戦部隊がとる狂人の戦い方は相手取る深海棲艦達を震撼させた。

まともな相手なら、武人として相手とれるなら戦う事も誉れになるだろうが。



ヲ級F「ひぃっ!笑いながら突っ込んで来る!」



自己管制下の艦載機に意識を乗せていれば特攻をかけてくる瑞鳳隊妖精の顔も見え、

その搭乗員妖精はひとり残らず狂喜の笑顔。

死ぬ事を喜びとする狂人のそれ。

自分の命を路傍の石程度にしか考えていない狂気のそれ。



ヲ級F「来るな来るな来るなぁ!!」



一機一機を細かく操縦している深海棲艦は艦載機から受ける情報は艦娘より多い。

その為、瑞鳳の艦戦隊から伝わってくる狂気は空母深海棲艦を恐慌へ駆り立てた。



「ん?ぼかっと動きが鈍なった?」(急に動きが鈍くなった?)



耐え切れなくなったヲ級が自己艦載機との意識の接続を切ったのだ。

先ほどまでの精細を欠けば精鋭狂人達の相手ではなく結果、

瑞鳳の受け持つエリアに侵入した敵艦載機は一機残らず撃墜された。



瑞鳳「ねーねー、グラたーん。瑞鳳の応援いりゅ?」エヘヘ

グラ「申し出はありがたいがそろそろ完全に日も落ちる。敵も一旦引き上げるだろう。」

グラ「となれば私達の艦載機も一旦収容する必要があるかと思う。」

瑞鳳「あっ、うん!そうだね!そうだよね!じゃぁ、夜間ハラスメントいきゅぅ?」

グラ「あぁ、エスコートさせていただこうか。」

瑞鳳「グラたんのそういう優しい所好きぃ~!」



無線での可愛らしい(?)やり取り。




388:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/30(月) 00:34:42.43 ID:4HB+eitj0



強襲揚陸艦 艦橋内作戦司令室



提督「秋津洲。二式大艇は全部降ろしてくれ。」

秋津洲「いいの?」

提督「夜間警戒を考えれば欲しいところだが替えが効かない。」

提督「夜間の敵が見えない状況で落とされるほうが痛い。」

提督「夜間の警戒は外周のピケット連中とグラーフの夜間機に任せる。」

提督「明日に備え休んでくれ。」

秋津洲「了解かも!」



インカムを通してやり取りをする提督。



提督「不知火。ちょっと眠気覚ましに顔を洗ってくる。

   その間に被害状況を纏めておいてくれ。」

不知火「了解です。」




389:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/30(月) 00:35:45.95 ID:4HB+eitj0



艦内 士官用 個室



びちゃびちゃと吐瀉物を吐く音が室内に響く。



提督「なかなか。きついなぁ……。」フィ

「ねー。」

提督「なに勝手に入ってきてるんだ?」

「そろそろご飯の時間だからリクエストをと思ったっぴょーん。」

提督「何か見たか?」

「げーげー吐いてる汚いおっさんを見た。」

提督「見てたか。」

「うん。」

提督「他の連中には黙っていろよ?」

「指揮官が体調崩してるなんて吹聴して回るほど野暮じゃないよ。」

提督「…………、ちげぇよ。プレッシャーに弱いだけさ……。」

「プレッシャー?」

提督「あぁ、毎度の事だが鎮守府総勢を動かすとなるとな。敵もやはり強力だからな。」

提督「被害0なんて事はまず無理だ。」

「そんなものかなぁ?」

提督「誰も死なずに勝つなんてのは物語の中だけだ。」

提督「昨日まで一緒に飯食ってた間柄の奴が今日死ぬとかがざらだ。」

「繊細なのねぇ。」

提督「毎度毎度、胃がきりきりと痛むのさ。」

提督「俺の指示が一つ間違えば全員死ぬなんてのが有り得る。」

提督「傲岸不遜で通して行きたいがな。やはり不安なのさ……。」

「じゃぁ、夕飯は胃に優しいもの作ってあげるぴょん!」

提督「あぁ、頼む。」



吐いた物を洗い流し、口元を含め綺麗に顔を洗い、改めて気合を一つ。

そして、提督は艦橋へ再び戻ってきた。





392:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/30(月) 00:41:21.40 ID:4HB+eitj0


艦橋内 作戦司令室


提督「前半戦は終了だ。こっから先はブラフをいかに効かせるか勝負だ。」

提督「配られた手札は変えれねぇ。不知火。被害報告を頼む。」



気合を入れるかのような独り言を一つした後、不知火からの報告を受ける。



不知火「撃沈ですが外周ピケット担当艦の駆逐艦娘が4名。

防空担当艦に2名。空母艦載機艦戦隊の損耗が搭載機数の5割です。」

提督「グラーフ達以外が結構落とされた感じか。」



精鋭揃いといえど規格外はほんの一握り。



提督「存外、被害が少なく済んでいるな。」

大佐「流石ですね。」

提督「えぇ、ここまで少ないのは後の作戦も有利に運べますからね。」



「General!」



大佐と会話をしている所に指揮官としてのジェネラル呼びで提督を呼び出す声がする。

提督「指揮官の少将提督だ。サラトガか?どうした?緊急事態か?」



所属はあくまで米軍。

その為指揮権を一時的に借り受けている形の為階級での呼び出しをしてくるとしたら

サラトガかアイオワのどちらかだろう。

そして、タイミングがグラーフ達へ夜間ハラスメントを指示しようかとしてのタイミングだった為

サラトガかと推測したのだが、それは間違いではなかったようである。



「サラの子も参加させていただいて良いでしょうか?」

提督「?」

提督「夜間攻撃機を所持しているなら是非お願いしたいが……?」



F6F-5Nといった機材は米軍から日本海軍へも供与されている。

わざわざ使用許可を取るような物ではないはずと頭で考えれば目の前の大佐がやっちまったの表情。

ははぁ、成程。



提督「大佐、新鋭機をお持ちですか。」


しかも夜間攻撃へ移ろうかというタイミングでの申し出。となれば夜間攻撃機で間違いない。


大佐「すみませんね、隠す心算ではなかったのですが。」


新鋭機ともなれば同盟相手でも出来れば秘匿しておきたい物だ。

この狸め、と思いながらどんな新鋭機が出てくるのやらとはやる気持ちを押さえ訊ねる。



393:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/30(月) 00:42:47.50 ID:4HB+eitj0



提督「サラトガは一体何を持ってきているのですかね?」

大佐「F7Fですよ。」



こいつぁ驚いたと提督が驚いた顔をして見せればしてやったりの大佐。

双発艦上戦闘機、それも夜間用とくれば3Nのレーダー強化型に違いない。

しかし、指揮権を借り受けているとは言え

秘匿しておきたい新鋭機をわざわざ自分に使用許可を求めてくる辺り……。

どうやら大佐も苦労してそうだと、なんとはなしに同情を禁じえない。



提督「うちにも是非、融通していただきたいものですな。」



明石のルートに出回ってないという事は完全に試作も試作。少数生産も良いとこの物。

何とは無しに明石の悔しがる顔が思い浮かぶ様である。




大佐「それは……、少将次第でしょうか?」



含むような言い方に言外の意図を悟る。



提督「休憩がてら甲板に出ますか。夜間攻撃はあくまで嫌がらせですからね。」

提督「グラーフ。」



レシーバーのスイッチを入れグラーフを呼び出す。





394:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/30(月) 00:43:55.02 ID:4HB+eitj0



グラ「Admiral、何か用かな?」

提督「夜間攻撃の指揮はお前に任せる。編隊の数が少ないから任せても大丈夫だろ?」

グラ「承知した。」

提督「頼む。」



提督から頼むといわれグラーフは瑞鳳隊の援護の為、自己艦戦隊の夜間攻撃機を上げる。



グラ「Adler隊は上空援護、Falke隊が下りてUhu(鷲ミミズク)隊があがってからだ。」



Uhu隊、その愛称を部隊名にそのままに艦載型へ無理やり改造した部隊。

He219改艦上型 双発夜間攻撃機であり機上レーダーを積んだ夜の愛し子。



グラ「さてと瑞鳳の方はどうであろうか?」

瑞鳳「大丈夫、彗星艦爆隊は準備万端なんだから!」



頭がおかしい狂人集団の中でも一際いっちゃってる搭乗員妖精が乗る艦爆隊。

彼らは夜間攻撃隊でありながら急降下爆撃もやるいかれ。



瑞鳳「がんがん殺っちゃうんだから!」

サラ「Hi ! Generalから許可をいただきました!サラの子も護衛しますね!」



といってもその武装は胴下パイロンに魚雷を一発抱える艦攻仕様でこちらも同じく殺る気まんまん。

血の気の多い姫達だとやれやれ感のグラーフ。

期せずしてここに独、日、米の夜間攻撃隊が揃い踏みとなった。




395:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/30(月) 00:45:29.28 ID:4HB+eitj0



強襲揚陸艦 甲板



提督「煙草を吸ってもいいですかね?」



相手からの承諾を得て手持ちの紙巻に火を点ける。

ふいと一息。



「それで 「まずはお話したいことが。」」



二人同時に話始め。どうぞどうぞと譲りあった後、提督から話が始った。



提督「米軍は私達からの応援要請がなくても自分達だけで出撃される心算だったんではないですかね?」



無言の肯定。



提督「うちの不知火がそちらに救援への援助打診をした後が早すぎたのが気になりましてな。」

提督「あらかじめ準備済みだったという気がしてならんのですよ。」

提督「それが悪いとか言うつもりは一切ありませんし

   寧ろ大助かりな現状をみれば何ゆえにそれを備えていたのかを伺えないですかね?」



暫しの間が空き。



大佐「成程、ペンタゴンの分析通りのお方のようですね。」



CIAではなくペンタゴンね。と心の中でごちる提督。



大佐「我々は現在救援に向っている拠点が敵に襲撃を受けていた事は事前に把握していました。」

大佐「ですが、そこはそちらの海軍の拠点であり我が国が同盟国であったとしても。」

提督「勝手に救援を派遣するのは侵略行為と他の国にとられかねないでしょうね。」



そう、仮に同盟相手が攻撃を受けていたとしても救援の要請が無い限り

勝手に動けばそれは内政干渉であり侵略行為の烙印を押されかねない。



大佐「我が国が攻撃を察知した時点でそちらの上層部、軍、政府双方へ

   外交ルート等を用いて救援の必要性を説いていたのですよ。」



はて?ならば何故軍令部が把握していなかった?

単純な疑問が思い浮かぶがそれの答えは提督が口に出す前に大佐が答えてくれる。




396:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/30(月) 00:46:44.52 ID:4HB+eitj0



大佐「我が国は少将提督の国の上層部に強い懸念を抱いています。」



成程、つまりはそういう事か。



提督「情報を止めた連中が居ると。それも思いもかけないような上の方に。」

提督「それでは、独自に私が救援に出ると言う話を持ちかけたのは渡りに船だったという事ですか。」

大佐「その通りです。因みに我々の方でも救援に向う上で日米合同の形を取りたかったですからね。

   その上で少将提督の鎮守府に出撃していただきたかったと言うのはあります。」

大佐「そして、今後を見据えて我が国の利益を守る為にも少将提督には協力者であって戴きたい。」



本題が来たかと思う提督。

そして、成程なと得心。

言葉の端々に大佐が同じ軍人でもエスタブリッシュの出身臭い教養を感じては居た。

米軍人としての出世コースの一つである潜水艦乗りとしての知識、

かと思えばミュージカル等の文化教養も備えている。

加えて自分より随分と若そうでありながら中将の補佐として観戦武官も勤め上げる。




397:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/30(月) 00:49:42.12 ID:4HB+eitj0



提督「質問ばかりでなんですが大佐はTIMEの表紙を飾られるおつもりですか?」

大佐「今ではなく4年後に。」

提督「州知事?上院議員?どちらの道を進まれるおつもりですか?」

大佐「はははは。少将提督は実に聡いお方だ。」

大佐「今後とも、どうぞ良しなに。」



質問への答えをはぐらかすように握手を求める手。だが、答えは既に出ている。





399:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/30(月) 00:51:52.17 ID:4HB+eitj0



提督「えぇ、今後とも宜しく。

それで今後も仲良くする為に教えていただきたいのですが

この船の乗員は海兵隊の者が多いようですが拠点救出後は制圧作戦でもするつもりなのですかね?」

大佐「必要とあらば。体つきで分かられましたか。」



同じ軍人でも特殊部隊員と一般機関員とではやはり色々違い、ろくでもねぇと思うが。



提督「何ゆえにかの理由をお教えいただけないですか?

まさか星を1つ増やす目的ではないでしょう?」

大佐「この救援作戦は南太平洋での潮目を変えるのは間違いないでしょう。」

大佐「南太平洋一の大国との航路が復活すれば資源や食料、その他色々の輸出入が活発化します。」

提督「パワーバランス、軍事ではなく経済の方での問題ですか。」

大佐「えぇ、我が国がこれからも優位を保ち続ける為に。」



えげつない。敵からの監禁が味方からの監視付監禁に変わるだけか。

とはいえ解放した後の海上航路の護衛を向こうが引き受けてくれると言うのなら利用しない手は無いだろう。

日本に余分を裂くだけの国力は無い。



提督「我が国の担当をきちんと同席させてケーキの配分にありつけさせていただけるんでしょうか?」

大佐「もちろんですよ。」

提督「公文書館に残る形でお願いしたいもんですね。」



口約束では困る。



大佐「決定権のある上に上申しておきましょう。」


ここまで準備出きる権限を与えら得ている人物の上。

恐らくはアメリカという国を一人称で語れる人物。

大佐の後ろ盾を垣間見たようで少し背筋に冷たいものを感じる。



大佐「余計な詮索はおよしくださいな。お互いの為にも。」



そういい残し大佐は艦内へと帰って行った。

深く、ちりちりと煙草が一気に燃え尽きるまで肺に煙を送り深く深く吐き出す。

そして、兎型の携帯灰皿で火を消す。



提督「予想以上にこっちの尻に火が付いている状況か。」

提督「ろくでもねぇ。」



吐き捨てるように呟くと提督もまた艦内へと戻っていった。





400:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/30(月) 00:59:58.55 ID:4HB+eitj0

レス数を抑える為に1レスに詰め込もうとすると改行のしすぎって怒られますのん……
今回の更新はこれにて終了です、当初の予定が大幅に狂っています、ごめんなさい、まだ結構続きそうです
計画性の無さが露呈していますが宜しければ今後もお付き合いいただけると幸いです。



次回嘘予告他

どこかの鎮守府

大淀「提督が死んでいる!」

明石「……、頭を鈍器で殴られたようですね。」

明石「これは…、南瓜?」

大淀「まさか!?」

涼月「てっ提督がわるいんですよ…。」

涼月「南瓜はもう飽きたって言われた提督が……。」

88鎮守府

提督「上官を撲殺。」

不知火「ですが対空に関しての戦績はなかなかのようです。」

提督「何が原因なんだ?」

不知火「痴情のもつれと書いてありますが。」

提督「困ったもんだ、まったく。」

こうしてまた問題児が一人地獄へ着任した。


Q1 グラーフの艦載機は最新鋭なのに何故瑞鳳の機体は零戦なんですか?

A  敵に体当たりして壊す事が多いのでその度に買い換えていたらお高くなる為コスパ優先だからです

Q2 サラトガの機体はどうしてF7Fなの?もっといい機体あるじゃん!

A 双発機のロマン優先です。
  またF8Fの夜間攻撃機もありますが調べている上で武装がロケット弾等になっていた為採用を見送りました


感想、応援レスいつもありがとうございます!いつも楽しみにしています!よかったら気軽にレス下さい!(レス乞食)
以上で本当に更新終了です、ではまた次回の更新でお会いしましょう!



414:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/08/12(日) 23:57:54.04 ID:G/dalB0W0



強襲揚陸艦付近 海上



グラ「夜間攻撃に出ている部隊が敵と接触するまで少し時間があるか。」

グラ「サラトガに瑞鳳、よかったら珈琲はどうかな?」



無線での珈琲ブレイクのお誘いに二人がグラーフの元に集まる。



瑞鳳「流石グラたん。珈琲美味しいね!」

サラ「うぅ~ん。実にperfectな味です。」



夜間攻撃隊を出しているのは3人だけであり

その管制を行う者が一箇所に固まるのは良くないのだが。



瑞鳳「南の海でも夜は少し冷えるね。」

グラ「ならば私のマントを貸そう。」

瑞鳳「やだ、グラたん。天然スケコマシなんだから…… /// 」

瑞鳳「そういう所愛してるぅ~ /// 」ダキツキ



ポーン!



グラ「あぁ、ありがとう。さてと、とりあえず、

   此方の部隊が敵に届け物をするより先にお客さんがお越しのようだ。」

サラ「確かに、電探に機影が幾つか反応しているようですね。」



ウェラブルグラスに新たに表示される敵編隊襲来の報。

先遣隊と接触することなくどうやら上手くすれ違ったようである。

抱きついてきた瑞鳳を体から剥がしながらサラトガのほうに向き直る。



グラ「こちらに夜間攻撃機があるなら当然相手にもあると考えて当然であるな。」

サラ「でしたらサラにお任せいただけますか?」



ふわりとスカートの裾をたくし上げる。




415:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/08/13(月) 00:01:21.03 ID:tMhG3Ubb0



サラ「サラはお茶会を邪魔する不埒な深海棲艦を許しましょう。」



あら大胆と瑞鳳が感想を漏らす間に

スカートのドラムマガジンをトミーガンに模した射出装置に嵌める。



グラ(ほう、心が広いのだな。)



思ったよりまともなのかなとグラーフが感想を抱いて直ぐ後。



サラ「だが!このトミーガンが許すかなぁ!?」



憤怒の相をしたサラトガがサブマシンガンをぶっぱなし始める。



グラ  ブフォー 

瑞鳳  ブハー



サブマシンガン特有の弾のばら撒きが始まり強烈な音が

けたたましく空間に響き渡り艦載機が顕現し夜空へと消えていった。



サラトガ「ふぅ~、快感 /// 」



一仕事やりとげた。そんな晴れやかな顔を見せるサラトガ。

夜の闇にF6F-5Nが舞い上がり溶け込み消えていく。

暫くすれば仕事をきちんとこなしているのか方々で火の手が上がるのが見える。



グラ「ふむ、私の部隊とスコア勝負をしようというのか。面白い。」

グラ「見せてもらおうか。合衆国の夜間攻撃機の性能とやらを!」



どうやら艦隊の上空警戒として先に上がっていたグラーフの夜間戦闘機と

サラトガの夜間戦闘機の搭乗員同士無線での会話で撃墜数勝負をする事が決まった様である。

しかして30分もすれば勝敗が決まる。



サラ「Oh My God …… 」

グラ ンフ― (ドヤッ)




416:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/08/13(月) 00:01:46.76 ID:tMhG3Ubb0



このドイツ人!新人への容赦なし!



グラ「さてと、勝負であったからな。」



ずいと差し出すのは手袋を嵌めた両手。



サラ「これを差し上げたのは内緒にしてくださいね。」

グラ「勿論だ。」ンフー



勝負に勝ったグラーフはサラトガから夜間戦闘機F6F-5Nをカツアゲ、

ではなく善意で1機、コレクション目的で受取っていた。




417:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/08/13(月) 00:05:58.72 ID:tMhG3Ubb0



グラーフ達が迎撃に当たっていたその頃、

提督は艦内でせわしなく作業をしている明石を見つけ色々打ち合わせを小声で行っていた。



明石「流石アメリカ級ですね。

   艦内に手術室やらまぁ、まぁ、色々充実してますよ。」

提督「ワスプ級の拡大発展型だからな。その辺も数は増えているだろうさ。」

明石「キッチンがちょっとしょぼいと感想も聞きましたけどね。」

提督「あいつは料理……、そうだな料理が生きがいだからな。」

明石「たまに料理に違う意味も混じってきますがそれは置いておきましょう。」

明石「ところで提督はどういった御用ですか?」

提督「分かっているんだろ?俺はこいつの簡易ドックのシステムが欲しい。」

提督「データとして持って帰れそうか?」

明石「流石に提督は悪ですねぇ。御参考にどう使うか教えていただけます?」

提督「コンテナモジュール化できないかなと思っているんだ。」

明石「ははぁ、成程。」



提督の考えはこうだ。簡易入渠施設を海上輸送に使用される

12フィートコンテナに納まるように改造、

ひとつのユニットとして独立させるという物である。

コンテナという規格の中に押し込めることで簡単に運搬、展開が出来るようになる。

こうする事で貨物タンカーや鉄道貨物、あるいはトラックに載せて海上、陸上。

場合によっては貨物輸送機からの現地への投下。

すばやく艦娘を展開する為に必要不可欠な修理施設を設置可能になるという考えなのだ。



提督「コンテナでモジュール化しておけば

   貨物タンカーが移動鎮守府として使えなくもないだろ?」ニヤリ

明石「提督の考えはどちらかというと見た目の偽装に重きが置かれているようですがね。」ニヤ

提督「お前には敵わねぇな。」

明石「付き合いが長いですからね。」

提督「じゃぁ、まぁ、そういう訳だ。頼むよ、あぁ、それから飯について何か聞かれたら

   あいつには艦橋に持ってきてくれと伝えておいてくれ。」

提督「あとな、他にもぶっこ抜いてるデータ、ばれない様にしとけよ?」

明石「勿論ですとも。」



去り行き際に小声で注意する提督に同じく小声で返す明石。

悪巧みは計画的かつ内密にという奴なのである。





418:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/08/13(月) 00:09:02.64 ID:tMhG3Ubb0

艦内をぐるりと色々見て回って後。

提督は艦橋にある作戦司令室へと帰って来た。



提督「いやぁ、休憩ついでに物見遊山とばかりに
   
   艦内を散歩してきたのでお待たせしました。」

大佐「いえいえ。私のほうは先に夕餉をいただいていますよ。」

大佐「実に腕前のいいコックをお持ちですね。」

提督「料理の質は士気に直結しますからね。」

不知火「司令。グラーフさんから此方に襲撃をかけてきていた

    敵夜間攻撃隊の迎撃を完了したとの報告が来ています。」

提督「敵に追加を出す余裕は無いだろうが一応第二陣、第三陣の可能性もあるから

   気を引き締めて引き続き警戒に当たるよう指示を出してくれ。」

提督「防空担当連中はどうだ?」

不知火「現時点での追加の撃沈は出ていません。

    また、長門さんを始めとする別働隊には出撃をしていただきました。」

不知火「他にも再度の補給が必要だった娘達には補給をすませ

    夜間のうちに交代で休憩に入らせています。」

提督「敵の機動部隊との接触は?」

不知火「現在の速度のままですと明朝、夜明けと同時くらいです。」

提督「払暁戦か。」



日の出、日の入りの時間というのは敵味方双方の判別がしにくくなる為本来は避けるのが定石。

当然ながら提督達所属の艦娘や使用艦載機に敵味方判別装置を積んではいるものの

空母艦載機は発着艦はしにくくなったり艦娘は視認性が落ちるなど積極的に仕掛けるべき時間帯ではないのだ。



提督「グラーフ達の夜間攻撃隊がどれくらい嫌がらせを出来るかが重要そうだな。」

大佐「夜間ハラスメントですか。」

提督「その重要性についてはお国でしたらお心辺りがあるのでは?」



ベトナム戦争時、ベトナム兵狙撃手による連日の夜間襲撃に業を煮やした米軍が

山一つを大量の軽機関砲に対空砲で禿げ山にしたのは軍事界隈では有名なお話。



大佐「眠らさせてもらえないというのは判断能力が落ちますから。」



苦笑しながら返事を返す大佐。



大佐「私どものサラトガも仕事をしてくれるでしょう。」

大佐「それに期待する事にしましょう。」

提督「ですな。」

提督「で、敵の機動部隊を叩いた後の話なのですが、敵の物資集積所。」

提督「デポを叩く方を優先します。」

大佐「敵の糧道を断つのは戦争を行う上での初歩ですしね。」





419:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/08/13(月) 00:11:20.23 ID:tMhG3Ubb0



再び強襲揚陸艦付近 海上



グラ「さてと、そろそろか……。」



機上レーダーが敵の艦隊郡を捉え巡航高度から

一気に敵艦隊に向け高度を下げ始める夜間攻撃隊。



グラ「サラトガ、一番槍は譲ろう。盛大に花火をあげてくれ。」



3人の夜間攻撃隊は艦攻、艦爆、艦戦の役割分担。

蝿叩きがグラーフの仕事ならば。



サラ「Okey-dokey  まずは、定石どおり外周から、ですね!」



野戦攻城、蟻の一穴。

艦隊布陣を城に見立てるのであれば

城の本丸に陣取る大将とその護衛を引き吊りださねばならず。

城に籠もられていては倒せない。

その為にも外堀、石垣に相当する外側を突き崩し。

野戦に持ち込まないといけないのだ。



グラ「敵に祈る神が居るとすれば祈る時間が来たようだな。」



敵艦隊上空に展開する夜間警戒機を叩き落しながらグラーフがポツリ。



サラ「No、深海棲艦達の神は留守です!」

グラ「?」

瑞鳳「?」

サラ「休暇を取ってベガスに行っていますから。」フフン

得意げにドヤ顔をするサラトガ。

グラ「成程、それは痛快だな!」

瑞鳳「うふふ。瑞鳳艦爆隊、がんばっちゃうんだから!」



グラーフ達の夜間攻撃は徹底して外側のみに集中して行われた。

陣形内側にまで浸透攻撃をする必要性は零だから。

嫌がらせ、ハラスメントは敵の神経を逆撫でする事に意味がある。





420:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/08/13(月) 00:17:07.85 ID:tMhG3Ubb0



深海機動艦隊



駆逐「くそう!陣形外側の駆逐ばかり!」

駆逐「いや、駆逐だけを狙って?」

駆逐「そんな!いや、これは明らかに駆逐のみを狙っている!」



駆逐艦という艦種は一番使い捨てになりやすいが実の所、

一番数が居ないと駄目な艦種でもある。

数が多いが故に多少の損害も甘く見られがちだが……。

補充が利きにくい状態での損害は致命傷となり易い。



駆逐「敵の攻撃は一方向に集中されている…。」



輪形陣内の空母達で夜間攻撃可能な者達に迎撃に向わせるも。



駆逐「逃げられた!?」



蝶のように舞い、蜂のように刺す。

その嫌がらせはヒットアンドアウェーの徹底。



瑞鳳「盆の迎えに、ちょいと早いが、迎え火一つ、点けましょう~♪」



軽い鼻歌、それこそ近所のコンビニへ買い物にでも行くような気楽さで指示を出す瑞鳳。

この瑞鳳が敵にとって最悪なのは

サラトガ隊の魚雷が当り火が灯れば損害無視の艦爆隊を突っ込ませる事。



駆逐「外周のナ級達が……!」



そして。



駆逐「うっ、眩しい!」



嫌がらせとばかりに落とされる照明弾。

夜の暗さに慣れてきている所に照明弾の強烈な光は目に刺さり、

同じくついでで音響爆弾も落としていく周到さ。



駆逐「味方同士での砲撃は止めろ!」



どんどんと響く音をすわ敵からの砲撃かと

勘違いした愚か者が音のするほうへと砲撃を開始する始末。



421:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/08/13(月) 00:17:35.31 ID:tMhG3Ubb0



駆逐「おのれ!おのれぇ!!」



波状攻撃での嫌がらせは自分達への物理的被害は少ないが。



駆逐「艦隊全艦は敵の再度の夜間襲撃に備えろ!」



残存艦全てに指示を飛ばし緊張を持って夜間警戒に当らせる駆逐棲姫。

夜間攻撃に対して予め備えており警戒はさせるものの交代で休憩をさせる事の出来た提督達と

艦隊全艦で休憩を入れる事無く敵からの再襲撃に備えた深海棲艦達。

その差が出るのはもう、間もなくである。



422:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/08/13(月) 00:19:12.76 ID:tMhG3Ubb0



提督達が駆逐棲姫達の機動艦隊へ向け針路を取っていた丁度その頃。

また幾つかの部隊が海上を夜陰に紛れ移動をしていた。



時雨「ねぇ長門。」

長門「どうした?」

時雨「ゴーヤ達の報告を考慮して

   敵の機動艦隊指揮官は何人くらい残っているかな?」

長門「そうさな提督達が向っている機動艦隊については少なくとも1名。」

長門「多く見積もっても2名ほどだろうさ。」

川内「そんなものなの?意外に少ないんだね。」

長門「あぁ、敵の攻撃パターンからいって

   あまり機動艦隊に置ける艦載機の扱いになれていない節がみてとれたからな。」

長門「敵が指揮艦へ攻撃を仕掛ける際の攻撃が3方向からだった。」

長門「外周配置のレーダピケット艦……、本来のレーダーピケット戦術とは違うんだがな。」

長門「まぁ、とりあえずでの問題ではない、電探での早期警戒艦と思ってくれ。」

長門「艦隊の頭脳をやるつもりなら処理負担を増大させ

   処理落ちさせるのが教本通りでの攻め方になる。」

時雨「そうなんだ。」

長門「あぁ、戦術的な話をするのであれば艦隊の目を潰すのが最優先だ。」

摩耶「確かに敵の偵察機やら電探持ちを落すのは重要だもんな!」




423:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/08/13(月) 00:21:10.44 ID:tMhG3Ubb0



長門「それを考慮すれば敵がとるべき攻撃は一方向に飽和攻撃をしかけ

   一点突破を目指すやり方が正解だったんだ。」

時雨「でも、それを取らなかったんだね。」

瑞鶴「だから機動艦隊の指揮に慣れていないものが指揮官であると判断できたわけね。」

長門「そういうことだ。」

瑞鶴「じゃぁさ、なんで最大で2名なの?」

長門「それはこの周辺海域の状況からの話から説明しないといけないな。」

川内「結構面倒そうだね。」

長門「まぁ、聞いてくれ。

   今回敵が割ける指揮官クラスの人員としては前線から後方支援まで考えても最大10名ほどだ。」

長門「これ以上を割くと他の戦線の支障が出るギリギリだな。」

長門「その中で前線に遅滞なく物資を送る補給線の構築を考えると

   最低で2名以上は集積地の拠点守備に回さなければならない事、

   前線での攻撃と攻撃地点以外の各鎮守府への牽制に必要な人数を考えていけばだ。」

長門「機動艦隊にまわせる指揮官クラスは2名から3名。

   その内の1人についてはゴーヤ達が仕留めている為、

   最大2名と結論づける事が可能という訳だ。」



424:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/08/13(月) 00:22:57.84 ID:tMhG3Ubb0



時雨「流石だね。」

時雨「それで、今、僕らが向っているのは?」

長門「大小幾つかあるなかで

   敵にとってやられると痛いであろう集積所だ。」

摩耶「でもまぁ、本当にあるのかねぇ。」

長門「この周辺の海域図と以前から掴んでいる敵泊地に拠点。」

長門「それらから割り出した凡そこの辺りにあるだろうでの位置だからな。」

長門「我々の部隊かウォースパイト達の部隊のどちらかが壊滅させればいいさ。」

摩耶「まっ、私としちゃ出番があればそれでいいけどさ。」

瑞鶴「島風の死を無駄にしないためにも派手に暴れてやろうじゃない!」

長門「提督曰く、敵の退き口を潰す為の布陣だそうだ。」

時雨「相変わらず提督の考えはえぐいや。」

川内「まぁ、敗軍の将っていうのは必ず討ち取るべきだからね。」

時雨「そうだね。」

川内「負けた相手を逃がせば相手は臥薪嘗胆の思いで復讐に帰ってくる。」

川内「それも前回の負けを己の糧として一回り強くなって帰ってくる。」

摩耶「あぁ、そうだね。そいつだけはいただけない。」

瑞鶴「負けは人を強くするもんね。負けを知らない奴はここぞという時が弱い。」

瑞鶴「ぎりぎりの戦いをする上でそういう心が弱い娘とは組みたくないわ。」

長門「同感だ。まぁ、ここに居る者達には心配はないと思うがな。」

長門「我らを送り出した提督はなんと言ったって人生の負け組みだからな。」

時雨「それは本当かい?」

長門「あぁ、勿論だ。でなければ88鎮守府の提督なんかやっていないだろうさ。」

川内「じゃぁ、敗北の味を知っている提督が指揮を執る私達が勝つというの当然かー。」

摩耶「まっ、そうだろうさ。」



ここで一同大笑い。



長門「天国の扉は開いた。」

長門「後は我々が階段を上らせてやるだけだ。」

瑞鶴「ふふふ。良いわね。それ実にいいわ!」

長門「全員、気を引き締めて掛かるぞ!」



応とその場に居た者達が全員が応じる。

この戦いにおける天王山の訪れはもう間もなくである。





425:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/08/13(月) 00:29:07.01 ID:tMhG3Ubb0

本日の更新はここまで
次回から話のタイトルが変わります、といっても単なる続きに繋がるだけですが…
後編が長く無計画に続いちゃっているので仕切りなおすべくタイトルだけ変更
次回から天国の階段編へとつながります、尚、雪風はウォースパイト、北上、ポーラ組みと行動しております
乙レス、感想レス、いつもありがとうございます、色々勉強になるレスも頂く事があり感謝です
空中格闘戦の部分が空回っていたとのレス、申訳ありませんでした
量を減らすべきだったかと頂いたレスを見直して反省です
関係ないですが、点滴を受けている間の時間って何も出来ないで暇ですね
皆様、体調にお気をつけください、以下、もう少しだけ瑞鳳を採用するか隼鷹を採用するかで迷っていた際に書いた
隼鷹の艦載機発艦シーンのみを投稿させていただきます、ここまでお読み頂きありがとうございました



426:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/08/13(月) 00:34:51.11 ID:tMhG3Ubb0


酒瓶に口をつけ、くぴりと一口。

肺活量を活かし全開噴射。

あたりに酒精の香りが漂う中。

軽空母隼鷹はばさりと音を立て一巻の巻物を豪快かつ手荒に広げた。



隼鷹「剛気詔(ごうきみことのり)!」

隼鷹「黄泉の国の国主、洗鼻神、建速須佐之男命の名において召還す!」

隼鷹「黄泉より英霊、今、舞い戻り我が兵となり敵をニライカナイへ案内(あない)せよ!」

隼鷹「一二三四五六七八九十、布留部 由良由良止 布留部、布留部 由良由良止 布留部」

隼鷹「勅命! 英霊召還 急急如律令!」



死者蘇生の詔。

酒で場を簡易的に清め召還術式の発動。

陰陽師型軽空母の発艦儀式。

ぽうと巻物に挟まれていた人型に切られた式神が光り始める。

詔をあげる必要性から少し発艦に時間は掛かるが。

読み終えてしまえば一度に全機発艦が可能となる。



隼鷹「全機! 発艦!」



轟と一度に全機が上がる様は正しく圧巻。



隼鷹「何度やってもこの瞬間はたまんないねぇ。ヒャッハァー!」



彼女もまた、88鎮守府の特色ある一人なのである。



※途中の言上は布瑠の言(ふるのこと)をそのまま使用しています
 読みとしては ひと ふた み よ いつ む なな や ここの たり、ふるべ ゆらゆらと ふるべ
 中二漫画で巫女さんが割とよく使う詔でお馴染みでしょうか?

格好いい隼鷹さんを演出したかった形になります、以上ボツネタでした。



431:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/08/27(月) 23:37:08.94 ID:5tYPiHSO0



おまけ日常編  とある料理長のお品書き




「うし、夜間の人達への引継ぎ分の仕込みも終了。」

「さぁてと、今日は露助リクエストの食材を買いに市場へいきますかねぇ。」



パンと糊の利いたエプロンを叩き、着替えを終えると明石達の工廠へ。



明石「あっ、こんにちは。今からですか?」

「うん、司令に許可貰ってるからね。市場に買出し。」

秋津洲「預かっていた包丁の研ぎなおしも終わってるかも!」

「自分で研いでいてもやっぱり何回かに一回は研ぎなおしにださないと切れ味が落ちるからね。」

「見せてもらっても?」

秋津洲が店の奥からいかにも業務用といった包丁を数本抱えてやってくる。

秋津洲「切れ味はこんなだよ!」



ぷつりと自分の銀髪を一本抜いた後、ふっと風に乗せる秋津洲。

その髪は風にのり包丁の刃先に当った髪は抵抗なくさっくりと二つに切れた。



「いい仕上がりだね。」

明石「この包丁で斬られた人は斬られた事に気付かない事を保障しますよ。」



その切れ味、名刀級。



「市場で持ち歩くわけには行かないからね。買出しからの帰りに受取るよ。」

秋津洲「よろしくかも!」



そして、分かれた後、拠点から少し離れた所にある巨大な市場のある島へ。




432:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/08/27(月) 23:39:24.73 ID:5tYPiHSO0


雪風「護衛、いります?」

「まー、司令官が付けとけって言うからさ。」



脱走を危惧という訳ではなく行方不明を危惧してである。

脱走は無い訳では無いが脱走は確定と同時に高額賞金首へ変貌。

それもあり、艦娘によっては作戦中にわざと隙を見せ

懲役組みの脱走を誘発する者もいたりとなかなか闇が深い。

そして、行方不明というのも作戦中に脱走ではない原因で消える事もあるという事なのだ。



「まー、艦娘やめているとはいえ私ってば、か弱い乙女だからさ。」

雪風「よくいいますよ。」



見た目こそ少し成長した中学生くらいの少女とその妹らしき雪風。

ただ、危険度は歩く核弾頭。



「雪風はこういうのどうなの?」



雑多とした市場ならではの衣類のまとめ売りダンボール箱の中からぴらりと見せる女性物下着。



雪風 ブフォォォーッ



なんだ、その反応、乙女か。



雪風「ゆっ、ゆきかぜにはまだ、早いと思います……。」



顔を真っ赤にし手で顔を覆いちらちらとこっちを見る雪風。

ちくせう、萌え死にさせる気か。



「でも、司令官ってこういうの好きそうだよね。なんかむっつり系なエ口?」

店主A「それなら箱1つで10ドルだよ?」



超安値。



雪風「10……、10ドルですか……。」ムムッ



鎮守府の定期便で足りない物を買いに来ることもあれば。

休暇中の艦娘が複数人数で相互監視のもと、市場に訪れる事もある。

あるいは、作戦が終わっての帰りに市場の露店で一杯と割と自由でもある。

ついでに言えば周辺海域の治安維持も88鎮守府が担っているといった

様々な事情も有り市場の人達とは大体が顔見知りでもある。

その為か気さくに声をかけられることも多い。





433:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/08/27(月) 23:40:03.36 ID:5tYPiHSO0


「結構安いのね。」



セクシーランジェリーの部類になるのだが予想外の安さ。

10ドルという言葉を呪文のようにぶつぶつと繰り返す雪風。



「これは童貞殺し。」



いわゆるタンキニという奴が箱から覗いていたので引っ張り出し雪風の眼前にちらり。



雪風 ブフォ ――― ッ



なるほど、戦場の鬼神と言われる雪風にも弱点はあるようだ。

少し意地悪をしてみたくなるのも性という奴である。



「こんなのどうよ?」

雪風「あっ、それは天津風さんが着用しているのを見たことあります。」



Vストリングなのだが、まじか、あの痴女。



雪風「随分前に所属していた所での話ですが。

   上官であるしれぇが強要していたんですよ。」

「あぁ……。」

雪風「当時の雪風に今ほどの力があれば事故死して貰っていたんでしょうけれどね。」



ちょっと嫌なことを思い出させてしまったらしい。




434:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/08/27(月) 23:41:14.92 ID:5tYPiHSO0


店主B「おーい、料理長。いい加減うちの店に来てくれよ。」

「ん?おう!おっちゃん。ごめんよ!忘れていた!」



少しばかり重くなっていた空気を読まずに声をかけてきた精肉店の店主へと向き直る。



店主B「和牛を輸入するのは大変だった。」

「その分の金は払っているでしょ?」

店主B「いただく物はいただいているからね。」

重そうに店主Bが肩から下ろしたのは。

雪風「今日のメイン食材ですか?」

「そ、露助からのリクエストに使う食材。」

「司令官に正規の手続き踏んで申請してきてたからまぁ、応じてあげようかって所。」

「故郷の味が食べたいってね。」

雪風「故郷ですか。」

「木の股とかから生まれたのでなければ誰しも故郷と呼べる場所くらいはあるさ。」

「いい思い出にしても悪い思い出にしてもね。」

雪風「そう、ですね。」



少し思う所があるのか小さく首肯する雪風。



「そのダンボールの衣類は私が雪風に買ってあげるよ。高いもんでもないしさ。」

雪風「えっ!?いいんですか!?」



なんだこの喜びようは小動物か。



「後は、頼んでいた香辛料を受取って帰るよ。」

雪風「はい!」



大き目のダンボール箱にブロック肉が入ったクーラーBox。うん、なかなか量がかさばる。



店主A「台車を貸してあげよう。ちょっと待ってて。」

「ありがとうね!」

店主A「台車は次回にでも返してくれればいいから。」



そういい店主Aは何処かへと去っていった。

大きな荷物を抱え店主Aの帰りを待つ二人。




435:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/08/27(月) 23:42:19.59 ID:5tYPiHSO0



「ちょっと道の横に避けていようか。」

雪風「そうですね。」



通りの邪魔にならないように荷物を避けていた時に事件は起きる。



チンピラ「あいたたたぁ!」



雪風がどけたダンボールにわざとらしくぶつかり大げさに痛がるチンピラ。

そして、そこに台車を持って戻ってくる店主A。



チンピラ「これは治療費と慰謝料をもらわねーとなぁ。ガキ共よぉ。」

チンピラ「両方あわせて1000ドルで我慢してやるわ。」

店主A「オイオイオイ。」

店主B「死んだわあいつ。」





436:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/08/27(月) 23:43:21.27 ID:5tYPiHSO0



1分後



雪風「1000ドル分の治療費ですともう少し骨を折らないと駄目でしょうか?」

「うーん、両手両足折ったから後もう少しとなると肋骨かなぁ?」

チンピラ「たったすけ」

「1000ドル渡したでしょ?だったら金の分だけいい声あげなよ。」

「1000ドル分だけの美声聞かせてくれるつもりだったから声かけたんでしょ?」

「じゃ、後は肋骨ね。」



笑顔で拳を振り上げた丁度その時だった。



顔役「姉さんたちうちの馬鹿がすみません!」



血相を変えて市場の顔役がやって来た。そして、その勢いのまま土下座。



雪風「土下座なんて知っているんですね。」

「まぁ、知っている知っていないはどうでもいいけどそんな価値の無い土下座されてもね。」

「顔役ならさー、治安を良くするべく動くべきなんじゃない?」

顔役「返す言葉もございません。」

「いやさぁ、1000ドルって大金よ?」

「それをさー。」



艤装の力を使わなくても強い艦娘は強い。

そして、自分達以外にも被害が起きている可能性もある訳で

ねちねちと嫌味を言い続ける。

その結果。




437:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/08/27(月) 23:45:22.38 ID:5tYPiHSO0


「ただいまー。」

明石「あっ、お帰りなさい。楽しめました?」

「それがさー、聞いてよー。」



女子会のノリで市場での出来事を話す二人。



「侘び代わりに私達が買った商品代金返してくれたのはいいんだけどさー。」

「あの露助がね、

 みんなから離れて買い物していた時にかつあげされてたのが発端みたいでさー。」

秋津洲「情けない艦娘かも。」

「本当だよ。かつあげされたのが恥ずかしいからって黙っていたせいでこの始末よ。」

明石「申告してくれていたら対処出来ていたわけですしね。」

「そーそー、それで、そのチンピラが味を占めたのか今回の馬鹿に及んだって訳。」

雪風「まったくもって艦娘の恥さらしです。」

「そんな訳で雪風と話して楽しいブートキャンプに御招待と思ってね。」

明石「いいですねぇ。」

明石「丁度色々新製品を試してみたかったんですよ。」

「いいねぇ。」

「私はコマンドサンボとかカポイエラとかの格闘技中心に三途の川を渡って貰おうかなって。」

雪風「雪風はスパルタンに仲間全員に声をかけてサバイバル形式で行こうかと。」

秋津洲「ちょっと同情しちゃうかも。」ウヘァ

明石「最近は大規模作戦も来ないから皆さん暇してますしね。」

「そういう台詞はフラグじゃない?」

明石「まぁ、鎮守府総員が出撃とかなると私の場合は潤うんで。」

明石「ありがたいですかね?」

「商売人だねぇ。」

明石「死んだ人間、艦娘の魂以外なら。」

明石「金さえ払っていただければ「クレムリンだろうと引っ張ってくる。」

雪風「だったですね。」


明石の決め台詞に雪風が被せる。


「だったらちょいと頼まれない~?」ウヒヒヒヒ

明石「楽しくて利益の出る事でしたら。」ニヒヒヒ



後日、ガングートが色々な意味で死んだ事を話の結びとして語らせていただく事とする。



ガン「いやぁ~ ――――――――― !」

 ボガーン!    

                                              ヒュ ――――――― ン!

時雨「戦艦ってあんなに飛んでいくものなんだね。」

長門「なんだ?鎮守府ホームランダービの開催か?」

スパ「いいですねー。」




438:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/08/27(月) 23:46:45.59 ID:5tYPiHSO0



第十三話 天国への階段





439:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/08/27(月) 23:48:29.59 ID:5tYPiHSO0


駆逐「こんなの聞いていた話と違う!」


この作戦における総旗艦戦艦水姫から迎撃の任務を受けた時の説明は。


「簡単な迎撃任務よ?」



自分と空母水鬼に与えられた空母、戦艦、重巡等。

それらの戦力は機動艦隊としてそこらの敵鎮守府を1つ2つは余裕で叩き潰せる。

なんなら敵の大規模拠点を落しにいくことさえ出来る程の過剰戦力。



駆逐「おかしい!」



自分の置かれている状況を考えれば絶叫せずには居られない。

最初の敵との接触で空母水姫が撤退。それはまぁ、どうでもいい。

問題はその後だ。



駆逐「勝てるはずなんだ!」



敵の空母達が搭載している艦載機を凡そ半分は落とした。

敵の駆逐艦だって何隻か沈めた。

にも、関わらず。

自分達が連れてきている空母達の艦載機の数は全体で4割も落とされている。

空母の数で言えば自分達の方が当然多いため

母数が大きくなる自分達の方が同じ4割でも敵の半数より多く落とされている。

しかし、見方を変えれば6割という未だ、いや、敵を圧倒できる筈の戦力があるのだ。



駆逐「なのに、なんで夜間攻撃なんて仕掛けてくる!?」



夜間攻撃は戦果が得にくい物であり

自軍の残機が少ないのであれば控えるべき物。

敵の被害を考えれば夜間攻撃機があったとしても

夜間哨戒を自艦隊周辺に上げるくらいがせいぜい。

自分が敵の立場であれば仕掛けるなんて思考の外である。






440:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/08/27(月) 23:53:18.63 ID:5tYPiHSO0


駆逐「あり得ない!」



敵の夜間攻撃隊はそれでいて自軍のナ級達や

同士討ちをした愚か者共の所為もあり一定の戦果をあげ悠々と帰還。

此処に来て思い知る自軍との錬度の差。

そして、脳裏によぎるのは認めたくない二文字。



駆逐「私が負ける!?」

駆逐「この私が!?」



深海棲艦において敗北というのは単純に負けるだけでは済まない。

武威を示す事こそがその存在理由とする者達が多い中で、

更に言えばその最上種たる姫級。

となれば敗北は頂点からの転落を意味する。

此処に来てその矜持が彼女の判断を狂わせた。



駆逐「敵の機動艦隊を直接叩く!」

普段の自己評価が高い者程陥る罠。

駆逐「敵の旗艦、そう、指揮官の人間が乗る船を沈めて殺せば私の勝利!」

駆逐「私の勝利だ!」

駆逐「私達の被害もあるけれど敵の被害は私達以上。」

駆逐「であれば敵は全力での殴り合いでは絶対に勝てないはず!」



そして、自分がこうであるから相手もこうであるだろうという単純な思考の帰結。

この思考が彼女に此処での敗北を齎し、結果、海の藻屑へと還らせる事へとなった。




441:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/08/27(月) 23:55:31.36 ID:5tYPiHSO0



強襲揚陸艦 艦橋内 作戦指揮所



提督達は定時連絡による位置確認で更新されていく

分遣隊の海図の光点を見つめながら会話をしていた。

その内容は、もうまもなく訪れる払暁戦に備えての会話である。



提督「相手の心理、行動を推し量る際に

   自分ならどうするかという風に考えるのは誰しもがやる事です。」

大佐「確かに。」

提督「私も自分ならどう動かしどう弱点を突くかと考えますからね。」

提督「自分がこう考えるなら相手もこう考えている。

   それならば相手はこう出るはずとの自分の行動原理が下地になる思考。」

大佐「それでその思考における問題とは一体?」

提督「そうですね。思考については誰もがやりがちですし、実際にやる事です。」

提督「私が問題とするのは正常性バイアスですね。」

提督「自分は大丈夫。自分ならこの状況を切り抜けられる。」

提督「相手がこう出るのは間違いないから自分は切り抜けられるという考え。」

提督「ある程度までならポジティブシンキングとも言えなくは無いですがね。」

大佐「過ぎれば損切のラインを見誤るという事ですね。」

提督「その通りです。」

提督「ここは人によって賛否が出るところでしょうがね。」

提督「軍隊という組織である以上、

   結果とは勝利であり勝利という結果を残せない将は無能の烙印が押される。」

大佐「確かに。」

提督「その上で無能の誹りを恐れずに敗北を受け入れられるかどうか。」

提督「それが本当の名将の条件になってくるでしょう。」

提督「常勝無敗などというのは幻想ですよ。」

大佐「…………。」

提督「百の兵を失いつつも千の兵を残し雪辱を果たすべく備えるのと、

   全ての兵を失い雪辱を果たす事すら敵わない。」

提督「どちらの将が愚将とされるかは明白でしょう?」

大佐「負けを知っていれば敵への対処方も考えられますしね。」

提督「そうです。賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ。」

提督「命があれば学べる機会がある。その機会があるだけ儲け物です。」

大佐「引き際は大事ですね。」

提督「えぇ、つねに自分の中で引き際を決めて掛かる事は大事ですよ。」



珍しく苦々しく、そして重苦しそうに提督は言葉を紡ぎ会話を終えた。




442:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/08/27(月) 23:56:34.73 ID:5tYPiHSO0



そして、数時間の後。

お互いの艦隊が近付きその先鋒を早期警戒の二式大艇が電探に捕らえる。

早期警戒機の役目をさせている二式大艇からの索敵情報。

つづいて敵を補足した艦隊外周に配置している電探担当駆逐艦隊からの電探情報。

それらを強襲揚陸艦のデータ処理能力を活かし

敵艦隊から飛来する敵機の高度、方向、数を正確に分析処理。

そして、艦隊の全員へ一斉に伝達。



グラ「Achtung!!」



すでに警戒用の艦戦は上がっている。

グラーフが母国語で傾注、あるいは敵発見の言を大声で吐いた。



グラ「全機発艦!Vorwärts!!」



この号令は空母機動部隊の旗艦として所属空母達への一斉攻撃の命。

それは実にあっけない幕切れだった。

この結果を演劇などに例えれば手抜きとも消化不良とも尻切れ蜻蛉。

あるいは打ち切り漫画。

そういった誹りを受けてしかるべき位に間の抜けた最後。

その最後を決めたのは空母艦隊決戦にはあるまじき戦艦の一撃だった。




443:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/08/27(月) 23:57:32.29 ID:5tYPiHSO0



グラ「アイオワ、諸元入力を頼めるか?」



グラーフから無線を通して手持ち無沙汰気味に対空射撃をしているアイオワへの依頼。



アイ「What?」

グラ「外周駆逐艦からの電探情報、二式大艇からの敵艦隊位置情報。」

グラ「それに迎撃に上がっている私の艦載機。」

グラ「それら情報を総合した上で敵の旗艦位置情報を伝える。」

アイ「いいのかしら?」



戦艦が主砲をぶっぱなす。

ともなれば弾道はもちろん標的周囲に展開する飛行機は敵、味方区別無く消滅である。



グラ「巻き込まれる味方機なぞおらんよ。」



何を言っているのかと木で鼻をくくる返答。

つまりはその程度の艦載機しか扱えない空母艦娘等居ないという意思表明でもあり。

お前のところはその程度なのかという嘲笑も含めた冷たい態度の返答。




444:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/08/27(月) 23:59:17.95 ID:5tYPiHSO0



アイ「Hey!Holy Shit!That’s great !」

アイ「Ok!Come on !」



戦艦としての仕事が出来る事に喜びと興奮を隠せないアイオワ。

また、自分達を見くびるような態度への反発も入り挑発気味な返答。



グラ「頼んだ。」クスリ



自尊心の高い米軍海兵であればそうなる事を計算ずくでのグラーフの先の態度。

扱いやすくもあり素直であるとの事に少し好ましさを感じる。

強襲揚陸艦で情報が統合され位置が確定。

そして、先ほどからグラーフの艦載機がへばりつき位置を常に追いかけ続けている敵の旗艦。

最新鋭の戦艦に搭載されている演算装置にデータが送られ入力処理が完了。

ガコガコと音を立て主砲が向きを変え見えない位置の水平線の向こう側。



アイ「Lock on !」



敵艦隊の一番後ろに居る敵を葬るべく主砲が火を噴いた。



アイ「Yeeeeeeeeeeeya!」

アイ「Yippee yi yea , Mother Fuker!」

瑞鳳「うわぁ――。」



スラングに瑞鳳がややドン引きするが、その火力 is Powerな砲煙と。



グラ「空気振動の凄まじさは流石だな。」



ビリビリと空間を揺らす振動に巻き込まれ落ちてゆく敵機。




445:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/08/28(火) 00:01:14.75 ID:Glxp+2M40


アイ「Fire! Fire! Fire!」



深海側 艦隊最後尾



駆逐「なんで?どうして?」

駆逐「どうしてこうなるの?」



自軍の自慢の艦載機は敵機に落とされ

敵の駆逐艦娘達が先陣を切って雷撃戦を仕掛けてくる始末。

艦隊の前列は今、愁嘆場となっている。



駆逐「逃げなきゃ!」



此処に来てようやく生存本能が矜持を上回るが。



グラ「とき既に「遅しよ!」



艦載機達でマークし動きを完全に補足しているグラーフの一言。

そして瑞鳳はグラーフの言葉に被せどや顔。

当たり前に敵へ聴こえるはずはないのだが、二人ともしてやったり、と、いい笑顔。




446:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/08/28(火) 00:02:37.81 ID:Glxp+2M40



アイ「Well done !」



初弾は駆逐棲姫の鼻先に着弾。



駆逐「ひっ!」

アイ「Go to Hell !」



アイオワ型戦艦の主砲弾が南方特有の豪雨の様に降り注ぐ。

その様は正に悪夢。



駆逐「いやぁ!まだ!まだ死にたくない!」



懇願むなしくその狙いは正確に。全弾が命中した。



アイ「Good Game! Well played!」



アイオワが相手の健闘を讃える頃には駆逐棲姫はその活動を停止していた。



グラ「残心であったか?」

瑞鳳「擬態を警戒!瑞鳳艦爆隊の皆!殺っちゃって!」



殺り残しの無い様にしっかりと止めを刺す両名。



サラ「Oh …… ミンチより酷いです。」



惨状の確認をして漏らす言葉は心からの本音。

そして、駆逐棲姫は完全に活動を停止した。

また、時を同じくして別々の海域では此方もクライマックスへ向け動き始めていた。




447:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/08/28(火) 00:05:45.44 ID:Glxp+2M40



旗艦雪風 第一分遣隊



雪風「艦隊の空母の皆さんは全機発艦をお願いします!」



通常の鎮守府であれば戦艦や空母、

或いは重巡といった者が旗艦を任されるわけだが。



雪風「旗艦雪風から全員へ連絡です!」

雪風「まもなく敵の哨戒網に引っかかると思われます!」

雪風「敵からの猛攻が予想されますが敵の後方基地を破壊できれば

私達救援部隊の戦略的勝利がより達成しやすくなります!」

雪風「総員、気を引き締めて掛かってください!」



そこは通常という常識の外の連中。

旗艦を勤めるのは最も修羅場を潜った者になるのが自然な成り行きでもある。



「雪風さ~ん?」



個人通信回線で旗艦の雪風を呼び出す声がする。



雪風「雪風です!ポーラさん、何用でしょうか!?」



雪風が自身が見落とした何かがあったのかもしれないと思いつつ返答。



ポーラ「あの~。あのですね?」

ポーラ「もしも~、もしもですね?

敵の旗艦が重巡棲姫だった時はポーラに譲っていただけませんか?」

ポーラ「戦果はお譲りしますから沈めるのだけはポーラに殺らせてもらえませんかね?」

雪風「そこに拘る理由があるんですね?」



場数を踏んでいる雪風ならではの勘で何かを察する。

恐らくそれは瑞鶴が88鎮守府に流れてきたのと同じ理由。




448:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/08/28(火) 00:07:43.35 ID:Glxp+2M40


ポーラ「 Si 」



返答に満足気に首肯をすると無線を艦隊全員へ飛ばす。



雪風「総員傾注!」

雪風「敵旗艦が重巡棲姫の場合、空母のエアカバー以外は一切の手出し無用!」

雪風「旗艦雪風の名においてポーラさんへの邪魔立ていっさいを禁じます!」



艦隊全員へポーラがその首級を挙げることへの妨害行為等を禁じる旨を宣告。



雪風「舞台は整えます。重巡棲姫が敵旗艦の場合は存分に。」

ポーラ「Signorina Yukikaze Grazie di cuore!」



そして、先に接触した空母艦娘の哨戒機からの報告。



雪風「ポーラさん!敵旗艦は重巡棲姫だそうです!」

雪風「後、角が一本、折れているとかだそうですよ?」



旗艦として情報を受取りそれをポーラへと伝達。

敵旗艦は珍しく身体的特徴があるようだ。




ぞる。




幾度となく死線の向うとこっちを行き来してきた雪風ですら久しぶりに感じる殺気。

今まで様々な種類の姫、鬼級達と対峙してきたがその中でも特級。

歴戦の姫、鬼級、片手の指で納まる程にしか体験した事のない殺気。

それは思わず振り返らずには居られないほどの殺気。

そこには恍惚とも憎悪とも、歓喜に震える、あるいは激情の怒りに震える。

雪風をして異様と言いたくなる艦娘が居た。




449:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/08/28(火) 00:10:21.13 ID:Glxp+2M40



「尻尾を引きちぎって。」


「右腕を引き抜いて。」


「左腕を食いちぎって。」


「右足を吹き飛ばして。」


「左足をぶっ潰して。」


「腹に主砲をぶっこんで。」


「内蔵を掻き出して、引っ張り出して。」


「内側からミンチにして。」


「頭を最後に踏み潰す。」


「足りない、足りない。」


「こんなんじゃ、全然足りない。」


「十遍でも、百篇でも、千篇、万遍。苦しませて。」


「あぁ、日本語で万死に値するだったかしら?」


「そう、姉さまはもっと苦しんで死んでいったはず。」


「姉さま以上に苦しませてやらなきゃ。」



そして。



「 み   つ   け   た  。」





450:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/08/28(火) 00:12:01.42 ID:Glxp+2M40



恋焦がれ、相手の事しか見えなくなる。

つねに相手の事を考え続けいつしか相手の感情と同化する。

しかして、それは恋愛感情ではなく。

純然たる、純度100%の。




憎しみ。





「北上~。」

北上「あいよ―。」

ポーラ「背中、宜しく。」

北上「あいあい。」

ポーラ「彼女には命を持って支払いをしていただかないといけませんねぇ。」

北上「マフィアか。」

ポーラ「シチリアでは女はショットガンより危険ですよぉ~。」

ポーラ「ポーラは幸せです。北上という得がたい友人を得る事が出来ましたから。」

ポーラ「どんなに強い者でも友人は必要ですからね~。」

北上「よせやい。照れるぜぃ。」ニシシ



重巡と雷巡コンビ。

今、重巡棲姫を倒す為に両名が並び立つ。




457:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/08/30(木) 00:25:12.35 ID:IyCYBxLK0




「独り……。」



空母艦娘、雲龍の出撃はいつも独り。



「そう、敵発見、ね。」



偵察機からの報告にぽつり呟く。

そして、背中に背負っていた錫杖を取り出し前方へ勢いよく振る。

侃。

金属の環の音が冷たく響き渡る。

そして、その錫杖に吊り下げられた一幅の掛け軸がざぁっと音を立て開く。



「東嶽大帝が臣、冥吏雲龍が命ずる。」



艤装から桐製のお札入れを取り出す。

ぶつぶつと小声で何かを呟くと

御札入れがふわりと空中に浮かび灯りが灯った。




458:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/08/30(木) 00:26:10.54 ID:IyCYBxLK0


ジャラン

「起来!」



ぶわり。

箱の蓋が開き、中から人型が周囲に溢れ術式が展開。

そして。

キキキキキ



「猴鬼。連れて来た?」



提灯を持った猿の姿をした鬼がトコトコと雲龍の周囲に這い出てくる。



「お連れしましたよー。」



こくりと小さく頷く。



「命!」

「東嶽大帝の旗下に集う者達よ!」

「仮初の宿に今、その魂を宿せ!」



普段の淡々とした口調からはまったく想像がつかないほどにはきはきと命令を下す雲龍。

そして。

人型に切られた紙に書かれた文字が光り始める。





459:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/08/30(木) 00:27:02.70 ID:IyCYBxLK0


武征王  大戦艦 長門

飛虎大将軍 空母 赤城

鉄騎大将軍 空母 加賀

狼威将軍  重巡 足柄

安国将軍  重巡 妙高

人型に書かれた称号と名前が光り、その名前に書かれた艦娘が受肉し。

顕現していく。

征蕃校尉 陽炎型駆逐 陽炎

征蕃校尉 陽炎型駆逐 黒潮

同じく次々と駆逐艦の名が紙の表面に浮かび上がり受肉。

顕現。



「皆さん。先日の戦場ぶりです。」

「本日もまた、お力をお借りします。」



生気のまったく無い空ろな目をした艦娘達。

そして、雲龍が突撃の命を下すといっせいに敵へと向っていった。

雲龍が使うのは道教の禁術。

死屍術であり、嘗て轡を並べて戦った仲間であり。



「鎮守府の皆さん。お力お借りします。」



嘗て同じ鎮守府に所属していた仲間達である。

総勢、200余名。

矢尽き、刀折れ、死して尚、深海棲艦達を相手に現世に彷徨い。

護国安寧の為に戦う。

帝国幽霊艦隊。

Imperial Ghost Fleet

それを呼び出し、使役した艦娘であり、師匠龍驤から受け継がれた道術。

道士、雲龍

海軍史においてその存在が不確かな者とされ、記録にすら残されなかった独りの艦娘である。



466:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/19(金) 01:09:52.96 ID:5ji6/SRC0


かーごめかーごーめ

かーごのなーかーのとーりーは

いーつ いーつ でーやーる

よあけのばーんに

つーるとかーめがすーべったー

うしろのしょうめんだぁーれー

加羅加羅加羅



手に持った摩尼車に内側からの灯りが灯る。

加羅加羅加羅

加羅加羅

加羅

摩尼車の表面に刻まれた孔雀明王陀羅尼の真言が空間に浮かび逝く。




467:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/19(金) 01:10:35.02 ID:5ji6/SRC0


「今宵も良き月夜ですなぁ。」

白粉により不自然なまでに白く染め上げられた顔に紅一つ。

そう彼女が呟いたと同時に昼夜が反転。

覇!

右手を前に出し頂点から右下、左上へと手を素早く動かす。

「黄泉と顕世の道、今繋がったであります。」

彼女が手で空間に描いたのは星型の図形。

ドーマンセーマンともセーマンドーマンとも呼ばれる魔除の図形。

「術者である自分が巻き込まれる訳にはいかないでありますからなぁ。」

ぞるり。

ぞん、ぞるり。

彼女が立っている足元の海面から黒い飛翔物体が形を成し現れた。

それは三本足の烏でありあきつ丸の肩に止り一声。

「有耶ァァ!」

八咫烏が無耶と鳴けば。大平を。

有耶と鳴けば。

鬼が出る。




468:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/19(金) 01:11:42.64 ID:5ji6/SRC0


「有耶ァァ!」

彼女の立っている海面のみを残し周囲の海面が一気に泡立ち始めた。

ぼこり。

あたり一面に焦げた肉の饐えた香りや、

腐った肉の酸い香りが立ち込め、それは正しく地獄の瘴気。

ぼこ。

べちゃり。

「臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前!」

手に持った摩尼車を艤装に置き両手で手早く印を結び。

「千曳の闇、黄泉より今、舞戻れ皇軍の戦士達!」

印を結び終えた片手を海面に。

梵!

軽い爆発音と共に生え繁る白骨達の腕。

梵!梵!梵!

萬!

僅かに数瞬。

術者の周囲には嘗ての陸軍兵装を着込んだ骸兵士達が群を成す。

白骨化しているものもあれば生前の形もとどめた者もいたりと種々様々。

その数。

「参千の英霊達。皇国に仇なす不届きもの達の成敗をお願いするものであります。」

餓嗣。

髑髏の首が下に頷く様に触れたかと思えば。

数にして三個大隊、時として連隊とも数えられるほどの髑髏兵達が

一斉に敵へ向って突撃をしてゆく。

地の底から響く亡者達の雄叫びが周囲の空間に木霊する。



469:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/19(金) 01:12:36.97 ID:5ji6/SRC0


阿亜唖唖啞吾あああああああああ!


「壮観でありますなぁ。」


重機関銃を始めとする各種機関銃や終戦間際の試作無反動砲。

それらを周囲の敵へ向け進軍していく。

ある者は食らいつき敵をその胃袋へと納めて行く。

ごしゃごしゃばりばり。

がいん、ごきん。

ごくん。

その咀嚼音は敵の悲鳴さえも飲み込んでゆく。

くけぇ ――――。

判刻後、周辺に動くものは術者のあきつ丸を除いて生者は残っていなかった。


「無耶ァァ ―――― !」

「無耶ァァ ―――― !」

「皆様、お疲れ様であります。」


ぱしり。

柏手を一つ。

ぐらりと空間が揺れたと思うと敵を屠り

その場に立ち尽くしていた英霊達が一瞬にして崩れ落ちた。




470:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/19(金) 01:13:13.89 ID:5ji6/SRC0


「無耶ァァ ――――― !」

「鬼がいなくなれば無耶と鳴く。」

「有耶無耶。有耶無耶。」

「なにもかもが不確かであります。」

「塵は塵に。灰は灰に。」

「万物は流転。海軍さんの尻拭いは応えるでありますなぁ。」



戦場火消し請負人。

陸軍技術本部第九研究所、通称登戸研究所。

防疫や偽札製作、怪力光線の研究を行っていた研究所。

その第五課の所属、記録上も第四課までしか存在しないとされる。

しかし、オカルト、陰陽道、真言密教、神道等の研究を行い敵を呪詛、呪殺。

それを目的とした秘匿組織があったと噂されている。

陸軍艦娘 あきつ丸。

彼女はこの第五課が実験的に世へ送り出した艦娘である。



476:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/21(日) 00:20:57.20 ID:Ba0DEi5B0


ポーラが思い起こすは自分に優しかった姉。



ザラ「ほら、ポーラ。リボンが曲がってるわよ?」

ポーラ「戦えばどうせまがるです~。」

ザラ「もう、そういう事は言わないの。

普段からの身だしなみは大切よ?」



二人は血の繋がった姉妹だった。

艦娘は適正のある人間が選ばれ、なるもの。

となればその血縁者ともなると自然姉妹で適正があるという事も珍しくなく。

二人もまた適正有りとされ艦娘へなった。

それも、イタリア海軍の重巡艦娘ザラ、

そしてその妹ポーラとして選ばれた。

世話焼きな姉は軍へ入った後も

つねに自分の事を気にかける少し妹離れの出来ない困ったさん。

ポーラという艦娘は酒好きが多いようだが自分はそこまで好きではなかった。

どちらかといえば嗜む程度。

だが、あの事件以降は少し、そう、少し飲む量は増えた。




477:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/21(日) 00:21:52.08 ID:Ba0DEi5B0



数年前 地中海上 某所



ザラ「ポーラ!貴方は逃げて頂戴!」

ザラ「これは負け戦よ!」

ザラ「でも!戦訓を後に生かすためにも誰かがその負けた事実を。」

ザラ「どうして負けたかを伝えなければいけないわ!」

ザラ「貴方にとても辛いお願いをしているのは分かっているわ。」

ザラ「でも、貴方にしかお願い出来ないの!」



姉から託され全力で振り返らずそれこそ恥という物を知らないほどに逃げた。

そして、上層部は必死の思いで持ち帰った負けの報告を仕方なしの一言で片付けた。

また、ポーラへの処罰は当たり前かのように無かった。



ポーラ「仕方ない?」

ポーラ「冗談じゃない。」

ポーラ「まるで、負けることを初っから分かっていたみたいじゃないですか。」

ポーラ「時間稼ぎの捨て駒?」

ポーラ「 Vaffanculo !」(糞食らえ)



雌伏しその後もイタリア海軍に在籍を続け姉の仇の情報を集め続けた。

自分の足りない実力の所為で姉のあの最後を迎えてしまったという思いがあった為。

最後に見た姉の姿と姉の砲撃により折れた相手の角。

相手が修復していたらそれは消えてしまう手掛かり。しかし幸にして。

相手はそれを修復していなかった。

そして、その出現情報を追い続けるうちに敵は追いかけられない範囲の外へ出た。




478:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/21(日) 00:22:37.74 ID:Ba0DEi5B0



ポーラ「だから、ポーラはここに来たんですよ。」



外地鎮守府管理番号88。

この鎮守府は任務、仕事の形態で通常の軍管区の括りに捕らわれない。

それは国ごとの受け持ちの外にあり、過去については問わず語らずの傭兵稼業。

その作戦行動海域は受けた任務、仕事によって世界の何処へでも形式上は出撃可能。



ポーラ「まさか、ここで 相見える事が叶うとは。まさに姉様の導き。」



艤装の主機が大きく咆哮を上げ速度を上げ始める。





479:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/21(日) 00:24:28.51 ID:Ba0DEi5B0


深海側拠点



重巡「敵の艦隊が迫って来ているか。」



頭上を通過していった敵偵察機、

自軍の哨戒網に引っかかった敵艦隊の情報。



重巡「ここの重要性を考えれば来ない方が変ではあるな。」

重巡「出番か。」

重巡「楽しめるといいねぇ。最後の最後まで足掻いてくれる。」

重巡「先日の島風、さらにその前の重巡。仲間の為に自分の命を差し出す。」

重巡「そんな気合の入った虫けらがくると……、実にいい。」



その性格。

サディストである。



雪風「皆さん!敵艦隊と接触します!」

雪風「乱戦になるかと思いますが各員の奮闘期待します!」



艦隊が敵艦隊と接触、方々で砲撃の歓声が上がり始める。



雪風「ウォースパイトさん!」

スパ「Yes Ma'am !」

雪風「敵の大将はポーラさん達に任せるので雪風達は雑魚退治です。」

雪風「加えて敵の揚陸済みの物資の破壊。設営済みの地上拠点の破壊が主な仕事です。」



雪風からの指示にこくこくと頷き確認をするウォースパイト。



雪風「それと。」

雪風「イタリア語だと思うのですが先程からポーラさんが歌われているこの歌なにかわかります?」

それはポーラが上機嫌で歌っている歌。

スパ「あぁ、この歌ですか。」

スパ「有名なオペラ、椿姫の曲で乾杯の歌っていう歌ですよ。」

雪風「乾杯ですか。」

スパ「えぇ。」

雪風「勝って祝杯をあげるつもりなのでしょうね。いい事です。」



乾杯の歌は娼婦のヒロインを好きになった主人公がめぐり合えた事に感謝して歌うといった場面で歌い上げる歌。

その場面としてはとても情熱的かつ実に盛り上がる歌であり椿姫の中で一番有名な場面とも言える。

スパ(でも、最後はヒロイン死んじゃうんですよねぇ。)

流石にどちらが死ぬかがわからない現状でそれを口にすべきではないだろう。

戦場では結果を口に出す、それが時として言霊として戦う兵を縛るからである。



480:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/21(日) 00:26:54.18 ID:Ba0DEi5B0



雪風「ウォースパイトさん!面舵一杯です!」



雪風の指示に慌てて反応し面舵を取れば。



スパ「あっぶな!」



避けた眼前を敵砲弾がすり抜け後方の海面に着弾。



雪風「敵の大将首が来ますよ……。」



砲煙の向うから現れるのは敵の指揮官とその随伴達。



重巡「チッ。勘のいい奴だ。」



そして、眼前からの敵指揮官艦隊に対峙するのは。



ポーラ「敵を取り違えてんじゃねぇ、mommone(マザコン野郎)。」



後方から主機を全開でぶん回しやって来たポーラ。

雪風とウォースパイトの間を抜き重巡棲姫に向け砲撃を試みるポーラ。

その砲撃を体を横にしてかわす重巡棲姫。



重巡「なんだ、随分いきった小娘がいんじゃねーか。」

重巡「遊んでもらいたいってのかい。」



ニタニタと笑顔を向け尻尾の砲塔を向ける重巡棲姫。



ポーラ「遊ぶ?testa di cazzo!(このち○こ頭)」

ポーラ「歯は磨いたか?聖書の一節はきちんと諳んじれるか?」

ポーラ「これから先はお前が死ぬその寸前まで5秒おきに手前が命乞いをするショーだ。」

ポーラ「トイレには行って来い。今ならまだ待ってやる。」



普段の何処か抜けたような喋り方と打って変わって一言一言が殺意を持った喋り。



重巡「いいねぇ。いい感じに頭が切れてやがる。」

重巡「It’s Shoutime !」



重巡棲姫が大声をあげると一気に距離をとり始める両名。

お互いに同じ重巡であればお互いの砲の性能や魚雷性能も凡そ予想がつく。




481:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/21(日) 00:28:15.10 ID:Ba0DEi5B0



雪風「おっと、随伴のお友達は雪風達がお相手です。」



重巡棲姫の随伴艦たちを遮る雪風とウォースパイト。



重巡「この距離ならお互いに必中かぁ!?」



ドンドン!



ポーラ「はん、表六玉。当るわけが無い。」



上半身を右へ逸らし重巡棲姫の砲弾を交す。

いずれは当る事が望める挟叉というより

どちらが当てるかを先に挑むロシアンルーレット。



ポーラ「さぁ!避けろ、避けろ!手前の命を賭けてあがけ!」



重巡棲姫の周囲をぐるぐると円を描くように動くポーラ。

それに呼応するように重巡棲姫も

円軌道を取りながら互いに砲弾を交していく。

スン



雪風「!」

雪風「ウォースパイトさん、二人から距離を取りますよ!」



スン



スパ「これは?」



雪風が砲煙に混じる火薬の香り以外に油。

それも艦娘が艤装に使用している燃料の香りに気付いた。



スパ「周囲ではまだ誰も沈んでないですよね?」

雪風「だからですよ!火に飲まれたくないなら距離をとって下さい!」



雪風がポーラと重巡棲姫との決闘している周辺から

離脱するようウォースパイトに指示を出したと同時だった。

ゴォウ

海上に流出していた燃料に火がつき炎上。




482:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/21(日) 00:30:11.20 ID:Ba0DEi5B0



ポーラ「邪魔が入っちゃ困りますからねぇ?」

重巡「お前、自分の艤装から燃料を撒いて火をつけたのか!?」



その言葉に返事を返す事無くニタリと微笑みを返す。



ポーラ「さぁ、楽しもうか。」



笑顔で砲撃が再開される。

間断なく周囲に響き渡る砲声。



重巡「?!」



そして、重巡棲姫は気付いた。



重巡「ちぃ!燃料の炎の所為で陽炎が出来やがる!」



強力な火炎により出来る空気の密度混ざり合い、

そこに昼間であるがために光が当ると屈折して見える自然現象。



ポーラ「昔ですね。

少しの間、コンビを組んだ事のある駆逐の娘に教えてもらったライフハックですよ~。」

重巡「照準がずれる!」



お互いが視認出来る距離での砲撃戦。

当然ながら目視での照準付けのため

陽炎によりその距離感を狂わされればその命中精度も落ちる。



重巡「敵も同じはずなのに!!」



しかしポーラからの砲撃は確実に当り始めている。





483:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/21(日) 00:30:49.44 ID:Ba0DEi5B0


ポーラ「あんたがこっちの挑発に、踊りのステージに上がった次点で敗北は確定なんだ。」

ポーラ「この火炎の舞台は私のフィールドだ。ボレロといこうじゃないか。」



ドンドン



重巡「ちぃっ!」



しかし、姫級の装甲は伊達ではない。

装甲へ与えるダメージは少ない。



重巡「それなりに痛いだけだぁねぇ。」

重巡「それに照準がずれるのも慣れてきた。

今度は此方からの攻撃と洒落込ませて貰おうか。」

ポーラ「その程度は予想してる。かかって来いよ。」



不敵に笑い手で挑発。

炎上する海上でポーラと重巡棲姫達の砲撃戦が続く。




484:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/21(日) 00:32:50.80 ID:Ba0DEi5B0


そして、その周囲。


雪風「慈悲を請え。今日の雪風は優しいです。」

雪風「苦しませずにあなた方をあの世へ送ることを保障しましょう。」



重巡棲姫の随伴として来ていた

ル級や雷巡チ級達と雪風、ウォースパイトが対峙していた。

ドン!

問答無用とばかりに雪風達へと砲撃を開始するル級達。



雪風「ウォースパイトさん。」

スパ「はい!」

雪風「背中任せます。期待に応えて下さいよ?」ニヤリ



前衛を雪風、後衛をウォースパイト。

また別の戦いも始っていた。

そして、重巡棲姫は砲撃の照準をつけることに慣れてきた頃合でまた別の疑問にぶち当たっていた。



重巡(あたらねぇ。回避性能が段違いに上じゃねーか…。)

重巡(こっちの魚雷も綺麗に回避しやがる。)



ポーラは重巡棲姫の砲雷撃を全て華麗にかわしていた。

それは氷上を踊るスケーターの如く。



重巡(回避能力は知っているイタリア重巡と違う。)



重巡棲姫の本来の受け持ちは地中海方面部隊。

そこで普段相手取っているイタリア海軍の重巡艦娘と比べても格段に反応がいい。



重巡(なぜだ?まるで排水量そのものが違うような……。)

重巡(!)



重巡棲姫はポーラが先程から自分の砲撃を超回避し続ける事が可能である理由を把握した。

それは自身の攻撃を予測してかわしているというのは大前提であるがそれ以外にもう一つ。

艤装から燃料を捨て、自身の、艦そのものの重さを軽くした事により

機関の速度上昇等の恩恵を受けやすくしたのだ。

それはさながらカーレースやバイクレースの優勝常連チームが

あえて燃料を補給する回数を押さえギリギリにする事により

タンク内燃料の重量すら速度増加の敵とするかのように。

今、ポーラは燃料を限界まで捨て去った事により

カタログスペック以上の速度と回避性能を手に入れたのである。




485:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/21(日) 00:34:53.72 ID:Ba0DEi5B0


重巡「そして、捨てた燃料は攪乱に使うか。」

重巡「見た目以上に頭が働いているじゃねぇか。」



血が滾る、好敵手、たり。太平洋にはなかなか歯応えのある敵が居る。

そう考え、にやついていたときだった。

砲弾ではない何かが頭上に飛んでくる。

砲弾のような速度ではなく人の手で投げたようなもの。

それはゆっくりと放物線を描き飛んできた。



重巡「とっ。」



音速に近いスピードの砲弾は敵が撃つ前に砲撃を予測して避けるのが当然なのだが。



重巡「なんだこりゃ?」



いかにも投擲といった形で飛んできたそれはスピードがあるとはいえ充分視認可能な速度。

そして、真横に落ちる。



ポーラ「チッ。」



ドンドン



重巡「なんだこりゃ?」



砲撃の音声に混じり飛んでくる酒瓶。

対空機銃弾で割ってみれば内容物が周囲に霧状になり広がる。

一部は飛散し重巡棲姫の体に降り注いだ。

スン

自分の体に掛かった液体の香りを嗅ぎ、その正体を確認。



重巡「ワインか。勿体無い事をしやがる。」

ポーラ「私の故郷に世界最大の詐欺集団の総本山がありましてね?」

ポーラ「連中の元締めである神曰く、ワインは自分の血であるとかで。」

ポーラ「神の血を浴びれば負の塊である

あんた達も浄化出来るんじゃないかと思いましてー。」ゲラゲラ



ワインを頭から被った敵の姿が笑いの壷に入ったか笑うポーラ。



重巡「……?謎理論だな。」

ポーラ「お前をあの世に送ってやるという意味ですよー。」


なおも砲撃の間にワインの投擲は続く。




486:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/21(日) 00:36:15.72 ID:Ba0DEi5B0


野球で速い球ばかりに慣れていたバッターが

急に遅い球を投げられた所為でバッティングを崩し討ち取られる事がある。

ポーラの投擲はそんな影響をじょじょに重巡棲姫へもたらし始めていた。

敵の砲撃をかわすには敵が自分の位置の先読みをして

砲撃してくるさらにその先を読まないといけない。

ポーラのワイン瓶の投擲はその先読みした着弾点のちょっと手前、

或いはちょっと先、つまり砲撃が当らないように避けた地点に落ちてくる。

しかもタイミングを効果的にずらしながら。



重巡「うっとうしい!」



機銃で対処せざるを得ない事が何度か。

しかし、中身は所詮、ワインである。

次第にその中身を被る事に抵抗はなくなる。



重巡(私をワインまみれにしたいだけとはいえ。どれだけの量を持っているんだ!?)



すでに10に近い瓶を投擲され。その間も続く砲撃をかわし続け。

いくつも機銃で撃ち落し少なくない量のワインを体に被っている重巡棲姫。

ポーラからの間断ない攻撃を交し、応撃する事に全神経を集中。

ワインは料理のフランベに使えるほどアルコール度数は高くない。

その為体に掛かったところで火が付くことはない。

その為重巡棲姫はワインが体に掛かっても大して気には留めてることはなくなっていた。

せいぜいが酒臭くなるな程度。

であればこそ。ポーラの罠に嵌ったのは仕方のない事といえよう。




487:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/21(日) 00:38:28.27 ID:Ba0DEi5B0


ボン

幾本にも渡り打ち抜いてきたワイン瓶。

重巡棲姫は迂闊にもそれを打ち抜いてしまった。

幾度となく中身が無害なワインであれば飛んできたそれを疑う事無く、

今回もまた中身はワインと思ってしまったのも無理はない。

しかし、この一本。

そう、この一本はスペシャル。特別製だった。

ビチャァ

打ち抜いたそれの内容物は周囲に広がり、一部は重巡棲姫の表面に掛かった。



重巡「ヴェアアァアァァァァァァァァァアアアァァ!!!!」

重巡「あぁぁぁ!!痛い!痛い!焼ける!ぁぁあぁぁぁぁ!!!」



ポーラが投げたそれはアルコールに限界まで

カプサイシンの結晶を溶かした物の瓶詰め。

その液体が体に掛かれば激痛という言葉表現では生温い痛みが曝露箇所を襲う。

そして、アルコールである。可燃性の液体なればこそ周囲の火が燃え移った。



重巡「あぁぁぁああぁぁぁぁ!!!!」



その炎は視界を奪い、顔周辺の酸素を奪う。

呼吸でもしようものなら炎は口から喉へ通り気管を焼く。



ポーラ「その酒は奢りだ。味わって飲みやがれ。」

ポーラ「末期の酒にはちょいと刺激がありすぎたかもしれないがな。」



重巡棲姫の視界を奪い激痛を与える。

痛みと炎は全ての思考を止めさせ行動する事を不能とする。

そして、動きを止めたその一瞬。

そう、その一瞬をポーラは狙っていたのだ!




488:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/21(日) 00:39:46.92 ID:Ba0DEi5B0


シャー!



重巡「!?」



ポーラの実艦であるザラ級重巡洋艦は本来魚雷発射装置はついていない。

日本にイタリアから来ているザラ級の彼女達が

魚雷を搭載可能なのは日本で改造をされたからという裏事情があったりする。

普段の相手がある意味での純正イタリア艦相手であった事。

この一瞬のその時までポーラがまったく魚雷を使ってこなかった事。

そして、それらを気取らさせないように

砲撃やワイン瓶投擲を繰り返し意識を一切向けさせなかった事。

また、海面に燃料を撒き火をつけることにより海中、炎の下を通る雷跡を見難くした事。

詰め将棋のように一つ一つを組み立て、最後の王手。

その全てが繋がり。攻撃が決まった。

ドン!

派手にあがる水柱は命中を確信させる祝砲。




489:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/21(日) 00:40:49.22 ID:Ba0DEi5B0



ポーラ「Che gioia !」

ポーラ「死にましたかねぇ?」



うきうきとした様子でポーラが重巡棲姫の生死を確かめる為近付く。



ポーラ「と、止めはしっかりとは基本でしたね。」



そして、念入りにとばかりに近付く前に魚雷をもう1発。



ポーラ「これで……。」



ドン!



ポーラ「終わりです。」



そして、戦果を確認の為、警戒しながら近付く。



ポーラ「……。死んでいますかね?」



腰をかがめ、波間に漂う重巡棲姫の顔を覗き込み生死の確認。

その瞬間だった。

ポーラの首を掴み重巡棲姫が海面に再び立ったのだ!




490:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/21(日) 00:42:21.13 ID:Ba0DEi5B0


重巡「やってくれたなぁ!!!!!」



その表情には先ほどまでの余裕は一切無い。



重巡「ここまで。」

重巡「ここまで追い込まれたのは生まれて初めてだよ!」



憤怒と恍惚、両方が入り混じったどちらとも取れない表情の重巡棲姫。

それに対してポーラの表情は絶望。

無理も無い先ほどまでの確定的な勝ちからの逆転負け。



重巡「あんたはよくやったよ。あれだけの仕込みをして最後の最後まで。」

重巡「切り札をとっておいた。これはなかなか出来る事じゃない。」

重巡「実際、私の装甲でもぎりぎりだったよ。

   もう少しダメージを食らっていたら終わっていた。」

ポーラ「でも、勝てなきゃ意味がないです~。」



首に手を回され宙に体を持ち上げられる。

その足はすでに海面に立ってはいない。



重巡「まぁ、確かにその通りだね。」

重巡「にしても、今のあんた、実にいい表情をしているよ。」



重巡棲姫の手に籠めた力がぎりぎりとポーラの首を絞めていく。



ポーラ「そ…う…ですか…?ちょっと首が…しまりすぎな。そんな気がしますがねぇ…。」

重巡「私はねぇ。愉悦に浸っていた相手の顔が絶望に染まる瞬間の顔が大好きでねぇ。」

重巡「今のあんたの表情。実に。」

重巡「実に最高だよ。」



重巡棲姫の艤装の砲塔。

尻尾のような砲塔が一斉にポーラの顔へ向く。



重巡「この距離じゃぁ、あんたらの防壁も役をなさないだろ?」

ポーラ「あぁ……、確かに…、少しばかり厳しいですかねぇ。」



艦娘の防御はその艤装が展開する障壁と衣服の反応装甲の2種。

しかし、至近距離からの重巡、

それも姫級の砲撃ともなれば流石に戦艦であろうとただではすまない。

ましてや、ポーラは重巡である。




491:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/21(日) 00:43:48.05 ID:Ba0DEi5B0


重巡「まぁ、あんたは頑張ったよ。面白かった。退屈しのぎにはなったさ。」

重巡「太平洋には骨のある、根性座った奴らが多いねぇ。」

ポーラ「んん…、褒められるのは悪い気がしませんねぇ…。」

重巡「……、その艤装の煙突に書いてあるクロバーリーフに唐辛子の意匠。」

重巡「昔に見たことあるな。」

ポーラ「やっと思い出したかこのスカポンタン。」

重巡「ははぁ。成程ねぁ、姉妹の仇討ちか。実に、実に殊勝な心がけじゃないか。」

重巡「ただ、その願いも叶わずここで妹もまた私の手にかかると。」

重巡「実に喜劇じゃないか!」



笑いながら語る重巡棲姫。



ポーラ「あー……、あんたに伝えたい重要な事があるのだけど?」

重巡「あん?」

ポーラ「いいですか?一度しか言わないのでそのボロ耳よーくかっぽじって聞きやがれ。」



自分の首にかかる重巡棲姫の手を両手でやや引き離し話しやすくした状態で会話を続ける。



ポーラ「まず、一点。今のポーラは海面に立っていません。」

重巡「?」

ポーラ「次にもう一点。ポーラは現状一発も。そう、一発も被弾していません。」

重巡「お前、何言っているんだ?」

ポーラ「そして、最後に一番重要な事。」

ポーラ「絶望とは幸せの絶頂から叩き落される時が最も大きくなる。」

重巡「何いってんだお前?」

ポーラ「今、そう、正に今だ。」



ポーラがそう言い終えた。まさにそのタイミングだった。

炎が壁として立ちはだかりその姿を捉えることの出来ない向こう側。

ポーラと重巡棲姫の戦闘はそれぞれが望んだこともあり邪魔が入らない状態。

であった、いや、故意にポーラがそう思わせていた為に思考の完全に外からの。




492:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/21(日) 00:44:36.64 ID:Ba0DEi5B0






北上「片舷20門、全40門。」











北上「93式酸素魚雷!やっちゃってぇ ―――――!」








493:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/21(日) 00:47:32.09 ID:Ba0DEi5B0


その速力45kt

弾頭重量は艦艇用の増量型の三型のため780kg

その無機質な死神達の群が一斉に海面を走り重巡棲姫に襲い掛かる。

死神達は接触式信菅であり触れたものの首を切り落とす。

始まりは一本の命中。それによる爆発が周囲の魚雷の誘爆を起こし一気に爆発。

爆発による衝撃波、爆風、炎熱。それらは周囲で戦闘していた雪風達の元にも届き。

ポーラの艤装から撒かれた油についていた炎さえも消し飛ばす程の物であった。



北上「ポーちゃんは生きてるかなぁ?」



重雷装巡洋艦の魚雷一斉射。

その量は姫、水鬼級達を屠るに余りある量である。



ポーラ「かろうじて~……。」

北上「あら――。セクスゥィー。」



艤装の全防御能力集中での防壁に制服による反応装甲、

それら全てで爆発の衝撃を和らげてなお。



ポーラ「あと少しで轟沈でしたよぉ~。」

ポーラ「でも、北上ならポーラの意を汲んで

    容赦なく撃ってくれると信じてましたよ~。」

北上「相方が覚悟を決めたんだ。」

北上「それならその覚悟に応えるのが相棒ってもんでしょ?」

ポーラ「流石の北上です~。」

北上「よせやい。照れるぜぃ。」



そうなのだ、ポーラは万一に備え、そう、自身が仕留めそこなった時。

その最悪の事態まで想定して備えていたのだ。

重巡棲姫と最悪刺し違えるまでを考え、最後は北上の暴力的物量の魚雷による飽和攻撃。

自分が囮となり相手の動きを止めさせ注意を引く。

足が止まった艦への魚雷は目を瞑っていたとしても当る。



ポーラ「流石に機関が死んでますね。浮いているのが不思議です~。」

北上「ポーちゃんってこうみるとグラマラスだね。」



制服が形をなしていないためその服下から覗くサイズのよい胸を眺めながら北上が語る。



ポーラ「おっぱい揉んでみます~?」ユサユサ

雪風「それもいいですが、敵旗艦の死亡確認です。」



ル級達を鎧袖一触とばかりに一掃し爆心地のポーラの元へ現れた雪風が気を引き締める一言。



494:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/21(日) 00:48:49.92 ID:Ba0DEi5B0



雪風「大願成就、おめでとうございます。」

雪風「ですが、敵の死体を確認するまでは気を引き締めてでお願いします。」



旗艦としての一言。



北上「だねー。さぁて、敵さんは何処へ吹き飛びましたかねぇ。」



ポーラがもといた位置からかなり吹き飛ばされていた事を考えれば

重巡棲姫もかなり吹き飛ばされていておかしくは無い。



スパ「雪姉さん。あれ?重巡棲姫の体?じゃないですかね?」



周囲の戦闘もあらかた片付き既に残敵掃討に移っている状態の中で

波間に漂う重巡棲姫らしきものをウォースパイトが発見。



ポーラ「おぉ。いい形になっているじゃないですか~。」


その視線の先には胸から下がなくなり腕も右しか残っていない。

どうにか人と判別できるだけの状態の重巡棲姫が文字通り波間を漂っていた。




495:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/21(日) 00:49:58.73 ID:Ba0DEi5B0



ポーラ「美人になりましたねぇ~。」

北上「随分過激なダイエットに成功したもんだ。」



そして、ポーラがそれの髪を掴み引き上げた。



ポーラ「ざまぁないねぇ。今の気分はどうだい?」

ポーラ「もっとも生きて口が利けるかどうか知りゃぁしないが。」

ポーラ「姉さまの仇も無事討ち取れました。」

重巡「……、さすがあいつの妹と言ったところか。」

ポーラ「まだ喋れますか。今、楽にしてやりますよ。」

重巡「まぁ、まてよ…、こんな状況じゃなにも出来ねぇ。最後の話くらい聞けよ。」



重巡棲姫がポーラに吊り下げられ、



重巡「お前の姉は…。煙突にクロバーリーフと太陽のモチーフをペイントしていなかったか?」

ポーラ「えぇ。それが何か?」



いぶかしみ、眉根を潜める。

自分の艤装のファンネルマークに見覚えがあれば

姉のファンネルマークに覚えがあってもおかしくはない。

瞬時にその考えにいたるのだが重巡棲姫の質問には言外の含みがあった。




496:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/21(日) 00:50:52.17 ID:Ba0DEi5B0


重巡「お前の姉なぁ?生きてるよ。」

ポーラ「!」

重巡「地中海でな?深海棲艦の地中海方面軍第二艦隊旗艦やってる。」

重巡「まぁ、ここで私が死ぬから格上げで地中海方面軍の総旗艦だ。」

重巡「めでたいよなぁ~?」



ニタリと笑った後に大音声での笑い声があたりに響く。



ポーラ「そんな、姉様が生きていて。」



知りたくなかった事実。その事実がポーラの反応を遅らさせた。



重巡「さようならは…、なんて言うんだったかな?」

重巡「あぁ、そうだった。Addio だったな。」

重巡「これで最期だ。Addio !」

雪風「ポーラさん!離れてください!」



重巡棲姫が自身の最期の力を集中させての道連れの自爆。

その瞬間、周囲を爆炎と爆音が空間を支配した。




504:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/02(金) 00:21:23.49 ID:voPzULVm0


悲痛な叫び声が響く。

今まで彼女と同行した者がいたとすれば

恐らく初めてと言えるかもしれない叫び声。



雪風「あぅぅぅ!」



とっさで重巡棲姫とポーラの間に割って入った雪風が

その体に全ての衝撃を受け吹き飛ぶ。

いかに改装を重ね装甲を増しているとは言えその装甲はあくまで駆逐艦。

ポーラを守った事により雪風はあっさりと大破した。


雪風「……、涼しくなってしまいました。」イテテ

ポーラ「雪風!?」

雪風「雪風はいいワインを所望します。」ニマァ



大破ながらにまだ余裕の有り気な雪風。



ポーラ「……、Si、戻ったらバローロの当たり年を開けましょう!」



明るく応じるポーラを確認し。



雪風「第一分遣隊総員傾注!」



一匹の獣として敵拠点を屠りつつあった部隊の全員に聴こえるように連絡。



雪風「旗艦雪風大破の為、旗艦権限を戦艦ウォースパイトへ移譲します!」

スパ「うぇぇぇ!?」

雪風「ウォースパイトさん、あとは任せましたよ。」

雪風「雪風は後方へ下がります。」

北上「やー、これは責任重大だねぇ。まぁ、私は二人を曳航して下がるからー。」

北上「がんばってね。」ニヤニヤ



そして、ウォースパイトへの個人無線へ雪風が一言。



雪風「島風さんの無念晴らしてきて下さい。」

雪風「雪風は一旦後方へ下がります。」

スパ「えっ、でも雪姉さん!?自分でいいんですか?!」

雪風「雛が巣立って鷲になるのを見せて下さいな。」

雪風「しれぇから説明を受けた作戦、Operation Woodpecker (きつつき作戦) 」

雪風「成功に導いてくださいよ?」



プレッシャーとも期待の一言ともとれる言葉をつげ雪風達は海域を離脱した。



505:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/02(金) 00:22:43.82 ID:voPzULVm0


強襲揚陸艦内



不知火「司令。雪風からの連絡で大破の為後方へ下がるとの事です。」

不知火「旗艦はウォースパイトさんへ引き継ぐと。」

提督「珍しいな。雪風が大破するとは。」

不知火「此方に向け同じく大破されたポーラさんと向って来ています。」

提督「ポーラも大破か。」

不知火「はい。大破については2名だけだそうです。」

提督「第一分遣隊の状況は?」

不知火「敵拠点の破壊、旗艦の排除に成功、ウォースパイトさんの指示の元、

    第二分遣隊との集合地点めざし艦隊の再編成を行っています。」

不知火「また、残敵追討についてはリスク考慮の上で不要判断をウォースパイトさんが下しています。」

提督「うん。及第点だ。状況完了までの時間は?」

不知火「完了まで後2時間程を予定と報告がありました。」

提督「そうか。長門達の方の状況も確認してくれ。タイミングが大事だからな。」



さも当然、想定内といわんばかりに淡々と確認作業を行う提督。

そして、それに従う不知火。

艦橋内の海図を再度見つめなおし、ふんと鼻をならした所に大佐が話しかけてきた。




506:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/02(金) 00:29:41.89 ID:voPzULVm0


大佐「少将、その?」

提督「どうなさいました?」



その顔は大丈夫なの?とでも言いたげ。



大佐「そちらの鎮守府に所属の雪風といいますと

    Queen of Heartsだったと思うのですが?」

提督「ハートの女王ですか。随分なコードネームが割り振られているもんですな。」

大佐「そちらの登録名は死神や生還者だったと思うのですが。」

提督「えぇ、それなら間違いなくそうですが。」



それがどうした?



大佐「そちらの鎮守府において相当な戦力と認識しているのですが。」

提督「英雄を頼みとして作戦立てをする程おろかじゃないですよ。」

提督「戦力としてみた時に一人ひとりの能力が高いという事は実に重要ではありますが。」

大佐「英雄頼みになるような戦場は既に劣勢であるという基本ですね。」

提督「おっしゃる通りです。

   一人の英雄が戦況を左右するような事というのは正直いいとは言いがたいですね。」

提督「戦争というのはいかに標準規格の兵士と物資を

   いかに効率よく消費と配置で勝つかが重要ですので。」

大佐「確かに英雄は所謂『 規格外 』になってしまいますね。」

提督「私が率いている連中が一般鎮守府の理の外にある事は自覚しています。」

提督「ですが、それを頼みとしての作戦の立案は後に繋がらない。」

大佐「少将はその後の事もお考えと。」

提督「そうです。我々は此処に常駐する軍ではないですからね。」

提督「今いる連中で後の対処も出来るように見本を見せないといけないわけです。」

提督「持てる力全てで相手を叩き潰しますが、

   一般兵レベルでも倒せるというやり方を覚えてもらわにゃならんのです。」ハァ



言外に出さぬ現上層部、そして味方である正規軍連中への不満。

まさしく自分の部下達を独楽鼠の如く北へ南へと

動かざるを得ない状況を溜息と共に吐き出したのだった。

そして、それは同盟軍であり本来の太平洋の盟主である米国。

目の前の相手への不満でもある。

だけに大佐が述べた質問はある種のカウンターパンチであり不意打ちだった。




507:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/02(金) 00:31:58.34 ID:voPzULVm0


大佐「時に話は変わりますが、

   そちらに英国王室の血を引かれる方がいらっしゃいませんか?」

提督「!?」

大佐「そのお方は次期国王陛下としても家柄、血筋、序列が申し分ない。」

大佐「実に次期国王として相応しいと思いませんか?」



少しばかりの沈黙。



提督「……。」

提督「その様な高貴な出自の艦娘がいるかどうかは分かりかねます。」



正しく後頭部をハンマーで殴られた衝撃。

普段の提督であれば質問の意図を考える為に思考を巡らせられたであろう。

だが、内容がまったくの不意打ちだっただけに

考えるのが一瞬遅れ動揺したのが顔に出てしまった。



大佐「初めに御紹介いただいたように表情を隠せない方のようだ。」

大佐「 『 艦娘 』とは私は一言も言ってはいませんよ?」

提督「!!」



動揺したが故の失言。



大佐「我が国は大西洋戦線における現英国政府を見捨てる選択をとろうとしています。」



あっさりと質問をした理由を述べ、人懐っこくニコニコとした顔で提督の顔を覗きこむ大佐。




508:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/02(金) 00:33:37.84 ID:voPzULVm0


提督「……、その、どうしてそのような?」



鏡があれば映る顔は引き攣った顔なのは間違いないだろう。



大佐「お教えしたいのはやまやまですが宜しいのですか?」

提督「…………。」



先ほどから我が国を強調する大佐。これはつまり個人で国を代表できる人物。

米国大統領が関わっている、それもアフリカや中南米の後進国の国家転覆等ではなく。

先進国、それも国連での五大常任理事国の一国を紐付きにしようという謀略。

その話しを聞くのは正しくパンドラの箱を開けるが如しであり底に希望は残らない。

だが、提督は既に、そう、うっかりと決定がされた理由を尋ねてしまった。

これは見ようによっては協力はしないが容認はすると言っている様なものである。

さらに提督の失態が有るとすれば

初めに英国王室関係者、王族がいる事を強く否定しなかった事。

そればかりかうっかりと艦娘にそれがいると言ってしまった事。

これは以前に明石との会話でも漏らしたように何某かの切り札になるかもしれないと、

面倒ではあるが使い方によっては強力な毒にも薬にもなる代物と判断していたという背景がある。

その所為で大佐に匿っているという情報を与え、

その出自を把握している事を自白したも同然なのである。

そして、続いた衝撃の計画。

初めに鍵を握っている人物が自分の手元にいる事を仄めかしてしまった為にその計画を阻止すればどうなるか。

そして、阻止できない事を提督程の人物ともなれば理解が出来ない訳ではない。

ゆえに、積極的に協力は出来ないとなれば消極的に何もしないという選択肢しか残らないのだ。

つまりは沈黙と黙認、ということである。それを理解し、大佐が言葉を続ける。





509:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/02(金) 00:35:45.02 ID:voPzULVm0


大佐「考えられているほどに最悪の事態ではありません。」

大佐「我が国はあくまで現英国政府が

   信用の置ける友好的政府へ交代していただきたいだけですよ。」



それは、つまり、現政府は信用に値しないという事。それも政権交代を考えるほどに。

でも、どうやって?



大佐「現女王陛下は高齢で公務を全て代理の方が行われている状況です。」

大佐「新国王の即位は英国民が望んでいる状態でもあります。」



話が見えてきた。国王が変われば国璽も変わる。

英国政府の公文書に押される印は殆どが当代国王の戴冠する姿を表した国璽である。

つまりは現女王から印を預かる大法官を含めて英国政府の一部、

或いは全部が勝手に印を押し国家を正しく我が物としている。

大法官の任務は庶民院からの議員が選ばれなくはないが

慣習として貴族の有力者が選ばれ、そして大臣としての権能は法務に関わる。

地味ではあるがその役割は意外と大きく、なにより英国を体現する貴族社会の有力者のみがなりえる仕事。



大佐「新国王への忠誠を盾に英国貴族達を割る予定です。」



それは今までの国璽が変わるという事実をつきつけ

敵か味方かの踏み絵を貴族たちへ迫るという事でも有る。

議会と貴族社会に睨みの利く要職が変わる。

それはそのコミュニティに所属する者からすれば正しく青天の霹靂であろう。



大佐「これから先の話は世界の趨勢にも関わりますので

   少将にも覚悟いただきたいのと、一つ条件を飲んでいただきたい。

   我が国からの駐在武官をそちらの鎮守府で引き受けていただけないでしょうか。」



それは同盟国全ての政治について話が大きくなっているという意味。

旧き友人から託されたバスクリン缶の中身に、先の保険の引受人の一覧。

時雨やウォースパイトが88鎮守府に流れ着いた理由。

一見関係ないように見える、一つ一つの点と点がつながり線になる。




510:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/02(金) 00:38:18.65 ID:voPzULVm0



現英国政府は深海棲艦と何某かの

それも同盟国に対し隠すほどの密約を結んでいるという事。

大方、カリブに浮かぶバージン諸島がそれらの裏取引の舞台になったのであろう。

考えてみれば当然とも言える。

日本のように自国で艦娘を独自開発という事無く、まして、島国。

大陸諸国であるドイツ、フランス、イタリアといった国と比べ

海上封鎖ともなれば圧倒的な不利が出る。

加えて多くの海外領、それらの安全の保証は盟主であるイギリス本国の責任でもあるのだ。

深海棲艦達と取引せざるを得ないだけの事情はある。だがしかし。

世界はそれをどう判断するであろうか?

ましてや現状として世界の海で船の航行の安全が保たれていない状況において。

英国が島国であり自国周辺に欧州棲姫や水姫といった強個体がいるにも関わらず国を保てている。

ドイツ、フランスが軍港等の軍事的重要拠点を奪われ、

イタリアが地中海の制海権を完全に掌握していない状況から見ればどうであるか?

日本からの救援部隊が幾度か送り込まれたのが敵深海棲姫達を容易に撃退出来たのも実は出来レース。

疑われない為の猿芝居。更に言えば戦後の事まで考えた二枚舌外交。

英国は深海達と手を組み人類側を裏切っている可能性まで有り得ると言う事である。

そして、考えたくは無いが最初に艦娘を作り出した日本もまた島国なのである……。

自国の利益を最大限にするのが外交ではあるが

世界のリーダーを自負するアメリカからすれば英国のそれは容認できるわけがない。

また、似た地理的状況の日本に疑念の目が向くのも納得のいく理由では有る。




511:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/02(金) 00:39:51.57 ID:voPzULVm0



提督「……、条件ですが、駐在武官の派遣という事でしたら

   駆逐艦娘をお願いします。」

提督「この一線は越えられませんな。」



提督が黙ること数分。考えられる限りの可能性を考え出した結論。



大佐「この一件はお分かりかと思いますが貴国政府にも無関係ではないです。」



そう、今回の一件、現在、救援に向っている所が

襲撃を受けているという情報が故意に握りつぶされた。

恐らく、遅れていたという表現に置き換わるのだろうが。

それを自分が察知し撃退したとなれば。



大佐「そちらの国内の敵対勢力。そうですね。

   そちらに少将提督は皮手袋を投げつけたようなものでしょうか?」



ニコニコと満面の笑みを浮かべる大佐。

救援を遅らせることが予め密約として成り立っていたのであれば

それを壊した提督は当然の如く敵となる。

提督の階級が責任と仕事を増やし動きを鈍くする事を

狙ったかの様に作戦前に上がった事を考えると敵は自ずと見えてくる。

それは間違いなく軍上層部。人事を自在に出来る立ち位置に居る。

そして、時雨をここに叩き込んだ相手に繋がっているだろう。




512:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/02(金) 00:41:34.28 ID:voPzULVm0



大佐「駐在武官で駆逐艦ならば受け入れていただけるという事でしたら……。」

大佐「そうですね。サミュエル・B・ロバーツを派遣いたしましょう。」

大佐「駆逐艦でなければ少将提督も安心出来ないでしょう?」



想定内、いや予めその答えを予定していたと言わんばかりに艦娘名を挙げる大佐。

戦艦や空母といった艦娘の派遣はすなわち派遣先を

武力制圧する可能性も見据えているという意思が見えなくも無い選択。

また、逆の見方、提督と敵対する相手からみれば

米軍から戦力の支援を受ける事が容易であるという誤ったメッセージを送ることになる。

敵がはっきりとしていない状態で緊張をより深めるのは賢いとは言いがたい。

それらを抑えつつでのギリギリの妥協点が駆逐艦なのである。

さらに言えばそれらを配慮する必要が有るという事は

米国側も日本国内の敵をはっきりと特定しきれていないということでもある。



大佐「財閥系の企業、軍上層部。我が国の諜報機関の全力で調べても解明は難しいですな。」

大佐「何せ人種そのものが違いますから。」



欧米の顔つきとアジア人の顔つき。当たり前といえば当たり前。

直接動けば人種の違いは枷となる。



大佐「我が国は戦後もリーダーであり続けることを自認しています。」

大佐「少将の協力、感謝いたします。」

この一言に含まれる意味。

それは日本が戦後に艦娘を利用しての海洋権益の拡大は元より、

現在の提督にとっての不明な敵が英国とも繋がっている可能性、いや繋がっているという事。

そして、米国は決してそれを許さないという強い決意表明であり

敵対勢力は容赦なく制裁するという事。





513:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/02(金) 00:43:12.62 ID:voPzULVm0



大佐「太平洋の盟主は今後も中国などでは無く我が国です。」



中国をわざわざ挟むという事は国内の敵は中国とも通じているという明示。



提督「……。軍人の私が政治に嘴を挟むわけにはいきませんので……。」

提督「とりあえずは目の前に集中しましょうか。」



自分の手には余る話し。関わりたくないというのが本音。

そして、それは望むと望まざると今後に関わってくるといううんざりするほどの現実。



提督(目の前の深海連中を叩きつぶすだけの方がどんなに楽か。)



目の前でニコニコと笑う相手の顔が

これほど憎らしく見える事はこれからもまずはないだろう。

頭を切り替え、やるべき事。再び海図に目を落す提督だった。

時を遡り雪風達が重巡棲姫達と事を始める頃と同じ時。

長門達もまた敵の部隊と事を構えようとしていた。




514:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/02(金) 00:44:43.43 ID:voPzULVm0



深海陣営 後方集積所守備隊 泊地

戦艦棲姫は一人、思考を巡らせる。



戦艦「……、あの指揮官が出てきていたら負けねぇ。」



脳裏によぎるは北方水姫が鮮やかに負け、沈んだ先の一戦。



戦艦「それに、あの時の、あの場所に居た戦艦の艦娘達。」



そして、自身の目の前で行われた鮮やか退き口。



戦艦「英雄に頼らなければいけない戦場は駄目だけれど

   英雄というのは時として全ての事象を引っくり返すトリックスター。」

戦艦「世の理を無視する事の出来る者。」

戦艦「この泊地の位置は本隊への補給拠点、

   そして、周辺敵鎮守府への睨みを効かす意味でも重要な場所。」

戦艦「巧妙に隠してはあるけれど。

   それを理解できる相手、そして、こちらを先に排除する事を目的としてくる相手ならば。」



本隊の後ろを取るつもりであるという意思は明確。

さらには重巡棲姫が守る泊地へまで敵が部隊をまわしている可能性は充分にある。

そしてその二つを襲撃、壊滅された場合は。本隊の退路が絶たれる事になる。




515:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/02(金) 00:46:21.97 ID:voPzULVm0


戦艦「敵が優秀だと、相手が打つ手を予想しやすいからいいことだけれど。」



最悪の結果になる事はいただけない。いや。そこまで出来る相手ならば。



戦艦(部下の兵の質も当然良いでしょうね。)

戦艦(敵が羨ましい。)



将として上に立つ者であれば

配られた手札で戦わねばならないのは兵家の常だが。

無いものねだりをしたくなるのも性である。



戦艦「タ級ちゃん、頼まれごとをお願いできるかしら?」



迎撃に出たはずの駆逐棲姫が既に水底に沈んだ事は把握済み。

敵が愚かしい事を願うは無策の極み。



タ級「戦艦棲姫様。用事と言うのは一体?」

戦艦「駆逐古姫様に意見具申を。」

タ級「駆逐古姫様にですか。」



姫級は艦種の違いはあれど対等。

これは基本原則ではあるが何事にも例外という物はある。

名前に古(いにしえ)とわざわざつけられる様に

その個体は極初期から確認されていた。

艦娘システムがある程度制度化し同盟国と国際コードネームで

情報の共有を行っていく中で割り振られた名前が古姫。

それは姫達の中でも古(いにしえ)とあえてつけられる古参兵である。

駆逐艦というその艦種も先駆けを誉れとする艦種という事も考えれば、

生き残り、そこに存在する事の意味は自ずと分かるというものである。

なればこそ姫級であれば敬意を払わないものはおらず、

水鬼級指揮官も参謀職として重用したりしている。

そして、この戦場の深海側総旗艦である戦艦水姫もまた、

彼女を参謀として用いていた。




516:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/02(金) 00:49:09.78 ID:voPzULVm0


戦艦「私達のいるこの泊地、もしくは重巡棲姫が守っている泊地。

   どちらかが落ちるような場合があれば即時撤退をと、駆逐古姫様に伝えて頂戴。」

タ級「無線での連絡ではなくですか。」

戦艦「今は無線封鎖中よ。それに戦う前から撤退の話しを無線でしてみなさい。」



誰が聞いているか分からないのに、いらぬ動揺を招くでしょと察しの悪い自身の部下を叱責。



戦艦「あの方ならば私からの言葉を聞いてくださるわ。」



既に損切の期限は過ぎている。戦艦棲姫は確実に理解していた。

そして、自分たちの将である戦艦水鬼に思いを馳せる。優秀ゆえに負け知らず。

百戦百勝、全戦全勝、常勝無敗。

で、あるが故に。部下からの意見を聞き入れたがらない一面もある。



戦艦(今回の負け戦を負けと認めるまでには時間が掛かるでしょうね。)



タ級が駆逐古姫へのメッセージを持ち泊地を出て行くのを見送る戦艦棲姫。



戦艦「今度の戦で戦艦水鬼様は一回り大きく、より強き将へなられるはず。」

戦艦「将は大敗をして真の名将になる。」

戦艦(なればこそ。命惜しむ訳にはいかないわね。)



駆逐棲姫への意見具申が仮に通ったとしても

いままで掛けた損害をそうやすやすと損切出来るとも思えず。

ましてや敵の拠点は後一歩で陥落寸前まで来ている。



戦艦(ゴール目前での撤退なんて考えないわよね。)



総旗艦ではなくあくまで艦隊の一員であるがため

思考に余裕があるからこそ見えてくる現状。

総旗艦であれば恐らくは自身も損切のラインを見誤っているであろう事。

駆逐古姫へ意見具申した撤退を考えるラインも実は遅いのではないかと少し思っている事。



517:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/02(金) 00:54:55.21 ID:voPzULVm0


戦艦「全てに時遅し。」

戦艦「なれど…、なれど退くは恥。死して時を稼ぐもまた配下の将の勤め。」



惜しむらくは。



戦艦「深海棲艦としての今後の行く末を見届けられない事かしらね。」



戦艦水鬼がこの方面の指揮官として移動をしてきて共に巡った戦場の思いに浸る。

今まで上官が無能であったが故に放置されてきた敵の突出部への侵攻作戦。

先任へ幾度かその重要性について意見具申をしたことはあったが無視されてきたもの。

ゆえに戦艦棲姫も放置を決め込んだ突出部。

新しい総旗艦は幾度かの戦役を過ごした後、自身の才能でその重要性に気付き

敵拠点の奪取を計画、立案、実行。

それは戦略的勝利に今一歩のところまで迫ってはいた。

戦艦棲姫に己の命を掛けてもよいと思わせるほどの才能の片鱗。



戦艦(敵の指揮官が有能であったという事ね。)

戦艦(あの世があるならば。)

戦艦(敵の指揮官が死んだ後にでもあの世で教えを請いたいものね。)



戦艦棲姫は指揮官として優秀な将である為、

現状、自分の命が助からない事を悟っている。

敵の偵察機などは来ていないが間違いなくまもなく接触するはず。

願わくばその命、燃え尽きるまで、立ったままで死ぬることを願い。

彼女は配下の深海棲艦へ即時戦闘態勢を取る事を命じたのだった。




523:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/05(月) 00:13:02.78 ID:VuM8kfT60


鹿児島県 海軍 岩川基地



大淀「提督、救援要請です。」

提督「救援依頼を受理した。」

提督「至急、救援を送る。」

大淀「相手先へは?」

提督「30分程我慢してくれと連絡を。」



太平洋某所



陽炎「後、30分我慢しろですって!?」

陽炎「30分も持つわけが無いわ!」

陽炎「だいたいこの近くの鎮守府から救援に来るっていったって30分でなんて無理でしょう!!」

叢雲「……。」

叢雲「救援を30分で届けるっていったのね?」

陽炎「えぇ、そうだけど。」

叢雲「もしかして『 明王 』が来るのじゃないかしら?」

陽炎「明王ってあの特殊作戦群の?」



524:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/05(月) 00:14:00.41 ID:VuM8kfT60




キィィィィィ



機長「高度維持。」

副機長「了解。」

機長「これより1分後、荷物を投下する。」

副機長「了解。」

機長「こちらB1輸送隊、近隣の友軍へ連絡。まもなく部隊の輸送が完了する。」



ガポン



「こちら不動隊。降下準備良し。」

機長「了解。爆弾庫の扉を開ける。Good luck!」



バシュッ



陽炎「ウィングスーツが6人!?」

叢雲「来た!戦場の死神!軍神!」



シュー!



バッ!



ドン!



叢雲「空中からの砲撃が敵に命中したわ!」



「ガァァァ!」



叢雲「艤装にペイントされている部隊マークは不動明王!間違いないわ!」

叢雲「あれは、四菱重工製 重火力強化型外部追加艤装 紅朱雀 試製甲型!」

叢雲「他の戦場で一度だけ見たこと有るわ!」

叢雲「あれは戦場の伝説!不動明王隊よ!」




525:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/05(月) 00:14:57.25 ID:VuM8kfT60


超音速の爆撃機をただ前線に兵士を送るためのタクシー代わりに利用。

音速の世界には深海棲艦の持つ艦載機がどんなに優秀であろうと。

追いつける者などいやしない。

海軍岩川基地は海に面していない代わりに特殊部隊が配属されたいた。

特殊機動降下猟兵、不動明王隊。

深海棲艦を圧倒的戦力で打ちのめす姿が仏敵を容赦なく討ち滅ぼす

その姿に似ていたことからいつしか戦場の伝説と呼ばれるようになった。

彼らは先行試製追加艤装を使用し危機的状況に陥った部隊の救援活動を行っていた。

また、超音速爆撃機を利用した強襲作戦も行い戦果をあげていた。

その追加艤装を用いた艦娘は駆逐艦娘でも戦艦の火力を優に超える。



「岩川海軍基地所属 特殊作戦群 不動明王隊所属 夕雲型 19番艦 」



「 清霜!救援に推参! 」



彼女達が通った後には敵の骸が転がっていたという。

この物語は一人の駆逐艦娘が軍神へと至るまでの物語である。




531:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/14(水) 00:45:18.58 ID:N7yw9PNn0


戦艦「敵偵察機に逃げられたのね。」

戦艦「そう、随分と愉快な敵みたいね。」



哨戒に出ていた部隊からの報告に微笑む。

敵の偵察機は戦艦棲姫達のいる泊地を確認後、全力でこちらの迎撃機を振り切り離脱。

離脱時に平文で『 我ニ追イツク敵機ナシ 』と挑発して消えていった。



戦艦「来るのね。」



偵察機が敵泊地を発見し強襲。

各所で戦端が開かれそこかしこに砲煙があがり火蓋は切られた。




532:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/14(水) 00:46:25.21 ID:N7yw9PNn0


長門「………。」

時雨「どうしたの?」

長門「瑞鶴!」

瑞鶴「何?」

長門「すまないが旗艦を任せてもいいか?」

瑞鶴「ずっとはやらないわよ?」

長門「何、直ぐに済ませるさ。」

長門「時雨。川内と二人で瑞鶴の護衛を頼む。」

時雨「任されたよ。長門はどうするの?」

長門「一仕事だ。」

時雨「そっか。」

時雨「……。Good Luck!」b サムズアップ

長門「あぁ、行って来る。」フッ



そこかしこで戦闘が行われる中、

長門は一人、一番激しく戦闘が行われている所へ向った。



533:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/14(水) 00:48:02.45 ID:N7yw9PNn0



深海泊地 守備隊本隊



戦艦「この首、あなた達雑兵にくれてやるほど安くはないわよ!」ドンドン!

戦艦「さぁ!どうしたの艦娘というのはその程度のものなの!?」



その激戦区では戦艦棲姫が部下を従えず一人で複数の艦娘達を相手していた。

普通に考えれば1対複数となれば多勢に無勢で負ける。

だが、これはあくまで一般論。

相手との力量差が明らかに大きければ大きいほど

複数で戦うほうが不利になる。



戦艦「それを狙っていたのは分かっていたわよ?」



巨大な人型艤装を軽々と移動させ自身の正面に居た艦娘を

背後から他の艦娘が自分へ向けて撃った魚雷で仕留める。

戦艦棲姫は自分を狙った軽巡艦娘の魚雷を自分の艤装を影にして射線を見せず

その背後からの攻撃をさらに利用して正面に相手どっていた重巡艦娘に当てたのだ。

そう、1対複数での戦いは敵が老練であればあるほどこちらの攻撃が味方への攻撃として利用される。

そして、乱戦ともなれば空母艦載機による爆撃も味方への誤爆もある為、ほぼ不可能。



戦艦「あら、足を止めちゃ駄目でしょう?」



陣形を整え一丸となって戦おうと

態勢を立て直し始めた艦娘達の集団に戦艦棲姫は一気に突っ込んだ。



戦艦「他愛の無い物ねぇ。」



陣形の中に突っ込まれると味方同士の距離が近い為

魚雷等の射線が制限されてしまう。

そして、近接距離での砲撃戦になると当然。




534:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/14(水) 00:49:35.28 ID:N7yw9PNn0


戦艦「私の勝ちよ?」



立て直しつつあった陣形の中に突っ込まれ

中から切り崩された結果、艦娘部隊は全員死亡した。



戦艦「思った程、強くない相手だったかしら?」



闇夜を切り取ったかの様な

漆黒のロングドレスに付いた敵の肉片を手で軽く払う。



戦艦(駆逐古姫様への進言は杞憂だったかしら?)



上空を睨み、敵攻撃機への牽制の対空射撃をしつつ

益体もない事を考えていた時だった。



戦艦「!」ゾクッ

戦艦「この感覚は……。」

戦艦「恐怖!?」



背中に一筋ながれる冷や汗。

敵の姿は見えていない、それでも感じる威圧感。

姫級としていくつもの戦場を渡り歩いてきたが。

とうの昔に忘れたはずの感覚。であるにもかかわらず。



戦艦「再び恐怖を感じる事があるなんて。」



その身に感じるは高揚感。

ドン!

敵の砲弾は自身の目前に着弾した。



戦艦「挨拶代わりというわけね。」



面白い、間違いなく、あの時のあの戦艦が来たのだ。




535:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/14(水) 00:52:02.23 ID:N7yw9PNn0


ザリザリザリ



戦艦「あなたが砲撃をしたのかしら?」



無線での呼び出しがあり、それに応答する。

恐らくは総旗艦と会話をした際に使われた無線と同じ周波数。



長門「そうだ。」



やはりか。



戦艦「何のようかしら?降伏勧告かしら?」

戦艦「悪いけれどキャッチセールスなら間に合っているわよ?」

長門「ふん。なかなか冗談の出来る相手のようだ。」

長門「お前か?」

戦艦「そうよ。」

戦艦「貴方が?」

戦艦「そうだ。」



なれば。



戦艦 長門「「言葉は不要!!」」



オレンジの砲火に大量の砲煙、砲撃の轟音が周囲に響き渡る。



戦艦(反応の速さは流石ね)



戦艦棲姫の人型艤装についた砲塔が回転し終わる前に舵を切り回避。



長門「私を仕留める心算なら目で追っているようでは無理だぞ?」

戦艦「厄介な相手ねぇ。」ニヤリ

長門(あれだけの巨体を細やかに動かすか。)



高火力、高出力、大きい事はいいことだを地でいく艤装でありながら

長門の攻撃を目で確認した後で回避をする。



長門「戦い難い相手だなぁ。」ニィッ



空母艦載機による攻撃が艦艇に対して有効ともなれば航空主兵論が台頭するは当たり前。

そんな中での戦艦ともいえば時として時代遅れとも揶揄される。

一人の艦娘と一人の深海棲艦。

戦艦という同じ艦種の二人は今、その生まれ持っての役割を大いに楽しんでいた。



536:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/14(水) 00:53:18.94 ID:N7yw9PNn0


砲撃して離脱。艦砲射撃の基本、同航戦を避け、ジグザグ航行。



長門「その程度の基本を守った所で。」

戦艦「倒せるような相手ではない事は分かっているわよ?」



ガコガコガコ

長門の艤装の第一砲塔、第二砲塔がクロスショットを狙い仰角を修正。



戦艦(第三砲塔はあえて外すわけね)



第一、第二砲塔は散布界を重ねる様に砲撃。

そして、戦艦棲姫の進路を制限する為に第三砲塔は回避行動の先へと砲撃。

戦艦棲姫はその意図を読んでか長門の狙う方向以外へと回避。



長門(流石に見え透いた罠にはかからんか。)



何度かの反航戦の後、先に仕掛けたのは戦艦棲姫だった。




537:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/14(水) 00:55:15.23 ID:N7yw9PNn0


巨大な人型艤装の腕が海面に向って打ち込まれる。

どどん!

その深海の姫級の全力で打ち込まれた海面からは巨大な水柱があがる!

そして!海水の壁が出来、長門と戦艦棲姫の間の視界を塞いだ!



長門「目くらましか!」



直前の戦艦棲姫の位置、そして自分の位置。

それから敵が砲撃を仕掛けてくるであろうポイントを即座に判断し、

それに備え防御態勢をとる。

しかし、次の瞬間に長門を襲ったのは砲弾では無かった!



長門「これは!」



水壁を突きぬけ飛んできたのは砲弾でも戦艦棲姫でもなく。

視界に飛び込んできたのは先ほどまで周囲で戦艦棲姫と戦っていた仲間達の骸だった。

長門だからこそ、戦闘中もそれが視認出来る程の余裕があった訳だが。

その余裕が長門に一瞬の躊躇をさせた。

ドン!

戦艦棲姫の砲撃音が響き長門の位置へ全弾着弾。



戦艦「水柱を抜けて威力が多少は落ちているでしょうけど。」

戦艦「当れば只ではすまないでしょう?」ニマァ



その笑顔は命中を確信してのものであり。



戦艦「あなたの仲間の死体を目くらましに使ったことを卑怯だなんて。」

戦艦「まさか言うようなタマじゃないわよね。」



水柱が納まるのを待ちつつ、戦艦棲姫は備える。

なぜなら自身の砲撃を一、二発受けた程度では沈む訳がない事を確信しているから。



戦艦「まだ、終わりじゃないでしょ?」



戦艦棲姫は戦闘態勢のまま、正面を睨みつけた。



542:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/30(金) 00:21:17.63 ID:of9urzBn0


ドン!

砲声に構え人型艤装の左腕が守るように戦艦棲姫の前に被さる。

戦艦(やはり生きていたわね。)ニヤリ

顔が緩むのが自分でも分かる。

そして、その一瞬を突かれた。

シャーッ!



戦艦「ばかな!」



そう、それは敵が自分と同じ戦艦であれば本来は使えないはずの兵装。



長門「なに、私は人から艦娘になったのでな。」

長門「最初の、艦娘としての初等訓練で駆逐艦種の訓練も受けていたに過ぎんよ。」

長門「ほんのお遊び程度だがな。」



長門が放った魚雷は周囲で兵装をつけたまま死んだ艦娘の魚雷である。

戦艦棲姫の水柱を目隠しにしての攻撃を長門も利用し

周囲に漂っていた駆逐艦娘の魚雷発射装置を利用したのだ。

そして、その魚雷は見事に戦艦棲姫に命中した。




543:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/30(金) 00:22:38.37 ID:of9urzBn0



戦艦「やるじゃない。」



被雷直前に人型艤装の右手が海面に刺さり

魚雷が重要機関へと当るのを防いだ事もあり。

戦艦棲姫には見た目にさほどダメージは入っていないようである。

だが、後方の人型艤装の右手は指が吹き飛び

ダメージを与える事に成功しているのは間違いない。



長門「お前さんほどではないさ。」



水柱による視界の制限、味方艦娘の死体を利用しての不意打ち。

長門はこれに対応する為に一時的に姿勢制御システムを手動でダウン。

これにより砲撃の反動の衝撃が長門の体へ直接伝わる事になる。

砲撃の反動を緊急回避に使用した形である。

しかし、体への負担はどれだけの物か。



戦艦「大丈夫かしら?」

長門「心配してもらうほどではないさ。」

長門「それよりお前の方こそ大丈夫なのか?」

戦艦「それこそそっくりそのまま返すわ?」



お互いの状況をじっくりと眺め、互いのダメージを推し量る二人。



戦艦「ふっふっふっふ。」

長門「くっくっくっく。」



二人はお互いの状況を確認して笑い出した。

そして、ひとしきり大声で笑った後。どちらからともなく。




544:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/30(金) 00:23:43.62 ID:of9urzBn0



戦艦「名前を聞いてもいいかしら?」

長門「名前?」

戦艦「えぇ、戦艦長門ではなく。

   そうね、貴方ほどの将なら二つ名の一つや二つあるんでしょ?」

長門 フン

長門「名乗る程の名ではないが……。」

長門「そうだな。火車曳兎が一番古い名か。」



長門の言葉に驚くような顔をする戦艦棲姫。



戦艦「あなたが……、そう。

   あなた、私達の間で名の知れた賞金首(アイドル)よ?」

長門「そうか。それならサインに握手でもしてやろうか?」

戦艦「冗談。」

長門「それで、随分と我々人間側の事情に明るいようだが?」

戦艦「今こうして貴方と会話をしている。お互いの言葉を理解出来ている。」

戦艦「あなた達が私達を研究しているように。

   私達もあなた達の事を研究していない道理が無いわよね?」



言われてみればそれは至極最も。

つまりは占領した地域に残った鎮守府施設などから

可能な限りの機密情報などを拾い上げこちらを研究しているという事であり。

場合によっては人間側と何某かのやり取りを行っているという事。

人類側は決して一枚岩では無いと言う事である。




545:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/30(金) 00:25:26.31 ID:of9urzBn0


長門「で、私だけ名乗るというのは不公平なのではないかな?」

戦艦「あぁ、これは失礼したわね。」

戦艦「そうね。私の名前ね。」

戦艦「私達の間での呼び名はあなた達の言葉では発音できないわね…。」



そして、思い出したかの様に言葉を繋ぐ。



戦艦「あなた達が私につけた名前は……、そうね。

   確か。グレモリーだったかしら?」

長門「………。貴様が。貴様がグレモリーか。」



瞬間、空気が震えた。



戦艦「えぇ、そうよ。お互いに、面白い縁だとは思わない?」

長門「成程、ソロモン……、アイアンボトムサウンド以来という事か…。」



お互いに因縁浅からずという奴である。

そして、将として、名乗りを挙げれば

その戦い方は自ずと決まる。



戦艦「小細工無しなんてどうかしら?」

長門「部隊を率いる指揮官のする戦い方ではないな。」

戦艦「あら?いやだったかしら?」

長門「いや?久しく一騎打ちなどしていなかったのでな。」



三次元での戦いを仕掛けることの出来る空母艦載機が主兵力となる戦場へ移行する中で、

戦艦である彼女達がその活躍をする機会と言うのは実際には少なくなってきている。

その活躍の場といえば艦隊の主力となる空母の護衛であったり、

味方が敵艦隊の航空戦力を屠った後での殲滅、止めの一撃。

更に言えば連合艦隊の旗艦として、

指揮艦として全体の流れを見て指示を出すという責任ある立場になれば

一騎打ちは元より最前線で戦うなどという機会はまずない。

だけに二人にとってのそれは一軍を率いる将ではなく一戦士としての決闘。




546:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/30(金) 00:26:41.66 ID:of9urzBn0


戦艦「戦いの合図は任せても?」

長門「随分と信用して貰ったもんだ。」

戦艦「こういう時の戦い方の相場はあれでしょ?

   あなた達の映画でみたわ?」

長門「西部劇か?」ニヤリ

戦艦「そうねぇ。

   『 賢い者程、最後まで銃を手に取らない 』だったかしら?」ニヤリ

長門「それであれば、銃を、いや、初めから砲で語り合う我らはなんであろうなぁ?」ニタリ

戦艦「そうねぇ、少なくとも賢者ではないわよね。」ニタリ

長門 フフン



そして、上着のポケットの中から一枚のコインを取り出す長門。



長門「クオーターか……。」(25¢硬貨)

長門「こいつでどうだ?」

戦艦「実に雰囲気がらしくていいじゃない。」



そして、長門が手に乗せたコインを指で上空に弾いた。

チィ ――――――― ン

コインが上空へと飛び上がった瞬間から

長門の艤装が黒煙を大量に吐き出す。

そして、戦艦棲姫の人型艤装もまたその瞬間に備え

大きく振動を始め口から大きく息を吐いた。

一秒が一分にも、一時間にも、あるいは一日。

スローモーションでコインが上空から二人の間に落ち。

チャプン

海に沈んだ。




547:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/30(金) 00:28:08.62 ID:of9urzBn0



その瞬間からの全ての支配者は砲声と砲煙だった。

仰俯角、共に零でお互いに回避が出来ても

間に合わない距離からの砲撃が開始された。

砲煙は周囲に黒々と広がり視界を封じる。

お互いに回避行動をとりつつ砲撃を続ける、

相手の姿は煙の中で見えないはずだが。



長門(回避行動での動きで空気が動けば。)

戦艦(煙も動く。その始まりに相手はいる!)



砲撃を行えばその衝撃で煙は晴れるがまたその砲撃で発生した砲煙で周囲が煙る。

間断なく激しい砲声が続き周囲を黒々と染め上げ時折なかで火花が明滅。



戦艦(砲撃の最適距離の確保を!)



戦艦棲姫は砲撃の為に距離をとる。

お互いの息遣いが聞こえそうな距離での砲撃戦は

被害が甚大になりやすく通常選択するべきではない選択肢。

そして、戦艦棲姫は小細工なしとはいったが彼女自身の目的は時間稼ぎ。

自分が長門をこの場に引き止めていれば

それだけ本隊の逃げる時間を稼げると算盤を弾く。

そして、敵の長門にしても自分と戦った後がある。

だから被害が大きくなるのは避ける筈。

指揮官として戦艦棲姫は冷静判断し距離をとった後、

砲弾の雨で長門を倒す選択をした。



548:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/30(金) 00:29:38.54 ID:of9urzBn0



長門「最後まで将であるか。」

煙の中から眼前に突きつけられたのは長門の第一主砲塔。

そう、長門は被害無視で戦艦棲姫が後退したのに対し、

真逆で前に!前に出たのだ!

ガオン!



戦艦(チィイイィィィ!)



盛大な舌打ちをし人型艤装の手で砲身を殴りつけ砲撃を逸らす。

ズァッ!



戦艦(蹴り!?)



その蹴り自体に自分を撃沈できるだけの威力は無い。

しかし、戦艦の艦娘の全力が乗った蹴りである。

当たれば無事である訳がない。

眼前に迫る長門の蹴りをギリギリで見切り交す。



戦艦「次はどこから!?」



それは驚喜。自分の予想を超えてくる敵がいた事に対して。



戦艦「そっちかぁ!」



空気が動く、ちりちりと肌が焼ける気配。

砲塔の回転が間に合わない。

長門が人型艤装の脇を蹴りを交された勢いを利用してすり抜ける!



長門「背後をとったぁ!」



腰を低く落とし戦艦棲姫の背後をとった長門が砲撃の構えに入る!

ドォン!

長門の砲撃と同時に人型艤装の左手が長門の横っ腹に直撃した。

横へ大きく吹き飛ぶ長門、

だが、その視界には敵の艤装の右腕が彼方へ吹き飛ぶのを捉ええていた!




549:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/30(金) 00:30:54.57 ID:of9urzBn0



長門「こいつは効くなぁ。」



長門は掬い上げるように殴られた為に

艤装左側、第三砲塔と副砲が破損。



戦艦「やられたわね。」



片や戦艦棲姫は艤装の右腕を犠牲に重要機関が砲撃されるのを防いだ。



戦艦(全ての砲撃を防ぎ損ねたわね。)

戦艦(艤装の背骨をやられたみたい…。神経伝達が上手く行かないわね…。)

長門(第三砲塔と副砲であれば火力は落ちるが致命傷ではない。)

長門(こちらより向うの方が受けたダメージは大きいようだな。)ニヤリ



ぐいと口から垂れる血を拭い。



長門「死ぬ前のお祈りは済ませたか?」

戦艦「月並みな台詞ねぇ。気の利いた台詞を考えなさいな。」

長門「お前さんを倒した後にでもゆっくり考えるさ!」

戦艦「簡単には逝かないわよ!」



再びの砲撃戦。長門の主砲弾は戦艦棲姫の艤装砲塔を直撃した。



戦艦「主砲が死んでも、まだ!まだやられないわ!」

戦艦(敵の右側の砲塔の動きにだけ集中すれば弾道を読める!)

戦艦(少しでも!少しでも時間を!)

長門(敵の艤装の損傷は予想以上!ここは一気呵成に!)



時間を稼ぐ為の守りへ入る戦艦棲姫、そして、一気に畳み掛ける長門!




550:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/30(金) 00:32:43.11 ID:of9urzBn0



戦艦「あなたは、あなたは何の為に戦っているの!?」



長門の砲撃の直撃を交しながら長門へと問いかける。



長門「そうだな。貴様に私の話しを少ししてやろう。」

長門「私には守るべき故郷といえるものはない。」

戦艦「国を守っているのではなくて!?」ブン!



人型艤装の残った左腕が長門へと振り下ろされる。

そして、頭の上でそれを両手で受け止める長門。



長門「ぐぅ!なぁ、戦艦棲姫よ…。

   指揮官として幾つもの海戦を戦えばいつの間にか感情。」

長門「そうだな。

   部下をいつしかただの駒としてしか見なくなっていてな。」

それは戦場を俯瞰的に考える事が多くなれば成程、

そして立場が上になればなるほど。

そうあれかしとして求められる視点。



戦艦「それがどうしたというの?普通じゃない!」



勝つためには犠牲が必要。当たり前の話。



長門「あぁ、お前にとっては普通なんだろうな。」

長門「嘗ての私にとってもそれは普通だった…。」



艤装のフルパワーで耐えるが戦艦棲姫の艤装の力の方が勝るのか

徐々に海中へと押し込まれ始め少しずつ体が沈んでいく。



戦艦「それなら!ここで納得して沈みなさい!」

長門「私はな…、とある事が切欠で変わることが出来たのでな……。」



ガコガコガコ



戦艦「はん!変わったからといって何になるというの!?」

戦艦「結局はここで血みどろの戦いに明け暮れているだけじゃない!」



戦艦棲姫本人がなかなか沈まない長門に痺れを切らし長門の首を直接絞め始めた!



551:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/30(金) 00:34:14.83 ID:of9urzBn0


長門「確かにな。結局は戦いに明け暮れるだけの毎日だ。」

長門「だがな。

   ここで、今の鎮守府に移動して得た物がたった一つだけある…。」

戦艦「一体なにって言うの!!」

長門「絆だ。」ニヤリ

戦艦「なんですって!?」



なおも長門の首を絞める手に力が入り続け、

長門を押さえつける腕にも力が込められる。



長門「戦場を生き抜いて、

   仲間と今日も生き残ったとお互いに馬鹿を言う。」

長門「息の根が止まるその時まで一戦士として生き。」

長門「そして、戦場で互いの為に命を張る。」

長門「例え最後に燃え尽き、灰になったとしてもだ……。」

長門「仲間との絆ってのはそんなもんだ……。」

戦艦「取るに足らないわ!」



ドゴォン!



長門の艤装右側、第一砲塔、第二砲塔が火を噴いた。

避けようのない必中距離からの砲撃は戦艦棲姫の体を貫通。

これが致命傷となり二人の戦いを終わらせる幕引きとなった。



戦艦「絆…、絆ね…。」

戦艦「そんなものを持っていると……、重くて疲れるわね……。」グラリ



死す時は前のめり。

戦艦棲姫は前向きに倒れ、その体が海中に没した。




552:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/30(金) 00:35:17.22 ID:of9urzBn0



分遣隊本隊



時雨「瑞鶴、長門は大丈夫かな?」

瑞鶴「大丈夫よ。長門だもの。」

時雨「………。」

瑞鶴「私はね。長門を知っているから。」

時雨「そっか。」



二人がなかなか帰ってこない長門について会話をしていた時、無線が入る。



長門「瑞鶴。」

瑞鶴「分かってるわ。

   護衛を出してあげるから後方へ下がりなさい。」

長門「すまない。」

瑞鶴「いいわよ。そうなるだろうと分かってたわ。」

瑞鶴「それより。満足した?」

長門「あぁ。」

瑞鶴「そう、じゃぁ、後は任せなさい。」

長門「頼む。」



戦艦棲姫との戦いを終えた長門はその損傷が激しい為、戦線を離脱した。




553:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/30(金) 00:37:07.88 ID:of9urzBn0



川内「大まかに敵拠点の破壊終了といったところかね。」

瑞鶴「そう、分かったわ。ありがとう。」

川内「なんというか、試合に勝って勝負に負けたといったところかねぇ。」

瑞鶴「そうね。

   敵の目的が本隊撤退の為の時間稼ぎだとすれば目標達成でしょうね。」

瑞鶴「よく分かったわね。」

川内「敵の動きが拠点から出て迎撃というより遅滞防衛、

   早い話が死守をする形だった。」

瑞鶴「『 かわうち 』は時に鋭いわね。」

川内「どーも。」

川内「で、時間の遅れと今後の行動はどうする?『 旗艦 』様。」

瑞鶴「どうもしないわ。いつも通りよ。」

川内「了解。」



そして、とんと拳を付き合い交す二人。



川内「時雨。これからきつくなるよ。」

時雨「分かってるさ。」



そして、こちらも同じく拳を交し気合一声。



川内「さて、散歩いきますか。」

時雨「気楽に言うね。」

川内「こういうのはいつも通りが大事なの。」

時雨「了解。」



時雨と川内は残敵掃討へと向ったのであった。




561:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/06(木) 00:05:14.50 ID:g2Ml+n1F0


救援部隊本隊 強襲揚陸艦艦内指揮管制室



提督「長門は修理の為に帰還か。」

不知火「はい、その様に連絡が入りました。」

提督「長門が戦線離脱か。」



正しく予想外。

いつだってこちらの想定通りには事が運ばないと心の中で一人ごちる。



提督「……、遅れはどのくらいだ?」

不知火「凡そ1時間程の遅れが出ていますが想定の範囲内だと思われます。」



主力である雪風、北上、ポーラに長門。

88鎮守府の看板役者が戦線を離脱。

彼女達の実力は88以外の鎮守府であればどこででも即で一軍。

それも主力中の主力をやれる実力の持ち主である。

並みの鎮守府であれば作戦続行を諦めるほどの物である。

であるにも関わらず、想定の範囲内と言うかと。

不知火の見解に頼もしさを感じると共に、

自軍がいかに規格外かを改めて実感。

そして。




562:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/06(木) 00:06:22.06 ID:g2Ml+n1F0


不知火「現在、ウォースパイトさんが旗艦を勤められる第一分遣隊と

    瑞鶴さんが旗艦を勤める第二分遣隊との合流、部隊の再編成は後30分程で完了との連絡。

    総旗艦は瑞鶴さんでよろしいですか?」

提督「あぁ、その様に進めてくれ。」



そして、少しだけ黙考。



提督「細工は終わったな。」

大佐「いよいよですか。」

提督「えぇ、グランドフィナーレ。最終幕の開幕です。」

提督「不知火。無線の全回線オープンだ。」

不知火「了解です。」

提督「周辺全鎮守府へ通信!」

提督「進軍命令!Operation Woodpecker (きつつき作戦)発動!」



提督の指示に従い強襲揚陸艦から海域にある全鎮守府へ

進軍命令の符丁が打電される。





563:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/06(木) 00:07:45.11 ID:g2Ml+n1F0




『 真鐡(まがね)の城達よ!皇国(みくに)の四方を守るべし! 』



『 汝らの弾撃つ響きは雷(いかづち)なり! 』



念をいれ、複数回の打電が行われる。



564:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/06(木) 00:09:26.84 ID:g2Ml+n1F0



大佐「勇ましい符丁ですね。」

提督「うちの連中が全力で後顧の憂いを断つべく

   敵の後方拠点をつぶしましたのでこの周辺の臆病者(チキン)連中に

   仕事をしてもらわにゃならんという訳です。」

大佐「臆病者(鶏)が突撃兵(きつつき)ですか。」フフッ



きつつきが連続して木を叩く音は時として銃声の様に形容される事を意識して

突撃小銃を持ち敵を掃討する突撃兵ときつつきを掛ける大佐。

また、余談ではあるが、きつつきの一種ウッドスパイトに掛けて

敵の船に穴を開けるとして戦艦ウォースパイトの艦船紋章に一時期使用されていた事もある。





565:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/06(木) 00:11:24.34 ID:g2Ml+n1F0



提督「私が今回の一件を知る事になった島風なんですが。」

大佐「はぁ。」

提督「この周辺鎮守府全てに立ち寄り救援を求めていた

   その航行記録はきっちり艤装に残っていたんですよ。」

提督「そしてですね。私の鎮守府での島風との会話は全て録音済みなんです。」

大佐「成程……。」

大佐「更迭、収監、懲役のお買い得3点セットを選ぶか救援の。

   救国の英雄になるかの簡単な二択を選ばせたという事ですか。」

提督「えぇ。とはいえ選択肢のない選択にはなります。」

大佐「一般的に前者を選ぶ人間はいませんかね。」フフッ

提督「おっしゃる通りです。」

提督「私が事前に本土の主管に問い合わせて

   救援を断った連中がどうなるかというのを教えたやりましたからね。」

提督「私が連中の説得に使ったのは

   お買い得3点セットの書類を先に作っておいたくらいですかね。」

提督「ここへ救援に向かっている間に幾人か

   周辺鎮守府へ連絡に向かわせていましてね。」

提督「もちろんきっちりと公式に記録に残る形で、です。」

大佐「不測の事態で連絡が来ていなかったとの言い訳を封じられますか。」

提督「椅子磨きに長けている連中は磨くのに長けておりますからな。

   よく滑りを良くするワックスを持っています。」

大佐「成程、口の滑りはいいでしょうなぁ。」

提督「ワックスの製造業者をお聞きしたいと囁くように部下には申し伝えてもいます。」

大佐「随分と人が悪い方だ。」



つまりは無能でありながらその地位にいるというのは口八丁、話術に長けるという事。

言い逃れをされては敵わないという奴である。

そして、そのワックスとは人と人の関係をよくする麗しきかな潤滑剤(賄賂)でもある。

小人なんとやら本土から離れた鎮守府ともなれば不正が横行するのもままあるわけで。

提督がその交友関係にある旧き友人にそれとなく連絡をとっていたというのは言うまでも無い。




566:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/06(木) 00:13:41.07 ID:g2Ml+n1F0



もっともその友人曰く。



「肥え太らせた後に出荷するつもりだったけどまぁ、どうぞ。」



と、軍人としての才ではなく商人としての才能は評価していたようである。

最も事態を説明した後、早く言えと慌てて証拠を送ってきたり

何処で情報が止められていたのか調べておくと言ってきたりとなかなかな友人でもある。

それらの合わせ技ともなれば麻雀ではないが数え役満で収監後、銃殺。

なんて結果になってもおかしくは無いわけである。



提督「願わくば尻に火が付いたアホ指揮官が部下を浪費しない事ですかね。」

大佐「消費ではなく浪費は困りますね。」

提督「おっしゃる通りです。」

大佐「しかしてこの作戦ですが……、Battle of Kawanaka?」

提督「よくご存知で。

   正しくは何度かあった川中島の戦いで特に有名な第四次の戦いで用いられた戦法です。」



武田の名軍師。

山本勘助がきつつきが木の表皮を叩き虫を中から叩き出し

その食べる姿から構想を得たと言われる作戦である。

この作戦自体は敵の上杉に見破られ成功はしなかったのだが

その作戦内容としては単純かつ有効な作戦である。





567:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/06(木) 00:15:58.21 ID:g2Ml+n1F0



基本的な流れとしては鉄床戦術そのものであり敵の背後を急襲。

そして正面に布陣した本隊とで挟み撃ちで叩くという物である。

しかし、違いも勿論有り通常の鉄床作戦は

前線で歩兵部隊が囮となりひきつけている間に敵後方を襲撃するのに対し。

今回のきつつき作戦は敵後方を急襲させ

敢えて作っている逃げ道へ敵を誘導するというやり方である。

当然ながらその逃げ道には本隊による待ち伏せつきな訳である。

総旗艦として無線機能の充実、経験の申し分ない瑞鶴がこれに当るのは当然といえる。



提督「周辺鎮守府の全力で当たらせれば後方急襲部隊の数は。」

提督「そうですね、数だけは我々が減らしたぶん敵を上回るでしょう。」

大佐「そして逃げ道に殺到したところを叩くわけですな。」

提督「航空戦力については艦載機の扱いに長けている連中を此方に残していますからね。」

提督「本音を言えば瑞鶴についてもこちらにまわしておきたかったくらいです。」



三次元機動可能な航空機による攻撃というのは直線軌道で飛んでくる大砲の弾より厄介な物である。



大佐「なかなかに見ものなようですね。」

提督「最後の仕上げですからね。画竜点睛とならぬよう締めてかかりましょう。」




568:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/06(木) 00:17:48.47 ID:g2Ml+n1F0



分遣隊集合地点

部隊を分け敵後方拠点を叩いていた部隊が合流する。

その集合地点に時雨の姿はない。



スパ「総旗艦に敬礼!」ガッ

瑞鶴「あー、そういうの良いから。」

スパ「礼を欠くと雪姉さんに後で怒られちゃう……。」

瑞鶴「よく教育が行き届いている事ね。」

瑞鶴「雪風は、確かに異質だけどねぇ。」

スパ「やっぱりそうなんですか?」

瑞鶴「あの娘が本気だすと電探でないと存在を追えないわよ?」

瑞鶴「存在が完全に周囲と同化しちゃうから。」

瑞鶴「居る、しかし、存在はしない。

   矛盾を含んでるけどそう表現するしかないもの。」

川内「だねー。だてにうちの駆逐No1じゃないよ。」

川内「提督がどこから拾ってきたか割りと謎だけどね。」

川内「瑞鶴。周辺鎮守府連中の木っ端どうする?」

瑞鶴「私達との艦隊行動は練度が段違いに低いから望めない。

   個別に戦闘目標を設定してつぶして貰ったほうがいいでしょうね。」

川内「了解。」

瑞鶴「ウォースパイト、私と、あなたが積んでる通信機の出力が大きいから

   そっちでも語りかけて貰えるかしら?」

瑞鶴「複数チャンネルで聞こえて居ませんでしたってのは勘弁願いたいからね。」

スパ「了解です!」ビシッ

瑞鶴「この作戦の肝は全軍の動きを合わせないといけない事なのよね。」

瑞鶴「たたき出す方向を間違えるとこっちが面倒な事になる。」

スパ「瑞鶴さん!各部隊への指示命令は何と打電しましょうか?」



川内との打ち合わせ中に88鎮守府以外の艦娘達へ何と指示を出すかとウォースパイトが訊ねてくる。



瑞鶴「………そうね。」

瑞鶴「あなたの国の有名な提督が言った名言でいいんじゃない?」

スパ「おぉ。あの名言ですか。」

瑞鶴「個別の標的を指示するよりいいでしょう。

   最優先事項だけはっきりさせて頂戴。」

瑞鶴「何をすべきかの作戦の概要はきっちりと理解しているでしょうからね。」



こうしてウォースパイトから各鎮守府の艦娘へ指示が出された。

その内容は。




569:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/06(木) 00:18:40.28 ID:g2Ml+n1F0




『 我が国は各員がその義務を果たすことを期待す! 』






570:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/06(木) 00:20:50.45 ID:g2Ml+n1F0


すこしだけ変えられた名言ではあったが。

簡潔なその電文は勇ましい文言ではないからこその

飾り気のない言葉が参加している艦娘達を奮いたたせた。

島風が周辺に助けを求めて回っていたことを

中央に報告していなかったとしても現場。

その現場に居た艦娘達が目撃をしていない訳がなく、

また人の口に戸は立てられないもの。

ともなれば今回の救出作戦を待ち望んでいた者の方が多いのは当然でもある。

88メンバー達と比べ練度低かれど、その意気軒昂也。

窮地に陥った仲間を救出せんと鬨の声をあげる。



瑞鶴「いいじゃない。」

川内「だね。時雨は別働?」

瑞鶴「えぇ。時雨クラスになれば考えて動いてもらった方が楽よ。」

瑞鶴「何人か下つけて自由にさせてるわ。」

川内「まー、将来の指揮官だよねー。」

瑞鶴「なんでうちに流れて来たのやら。」

川内「じゃ、ま。仕事をしますか。」

瑞鶴「あんたはいいの?」

川内「そうだねー。いつもの面子と以外だとね……。」

川内「一人の方が気楽かな?」

川内「まぁ、瑞鶴のお守りをしますかね?」

瑞鶴「へーへー。それでは背中宜しくお願いしますだよぉ。」

川内「任された。」

瑞鶴「よろしく。」


訳知り合った頂上同士のコンビ。

猟犬は野に放たれ、狩りは始まった。




579:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/13(木) 00:24:46.26 ID:FWWFZVbA0


瑞鶴達88鎮守府救援部隊分遣隊の合流2時間前



敵 深海側包囲軍 駆逐古姫隊



古姫「連絡…、遅かったわね…。」



タ級からの伝言を苦悶の表情で受ける駆逐古姫。



タ級「………。」

古姫「みなさい。あれを。」



駆逐古姫が指差す方角、水平線の向こう側からは黒々とした煙が上がるのが見えた。



タ級「あの方角は!」

古姫「えぇ、貴方の主である戦艦棲姫が

守将として守備に付いていた後方拠点のある方角。」



その煙の量をみれば拠点が陥落した事は察しが付く。



古姫「戦艦棲姫は覚悟を決めていたのでしょうね……。」

タ級「………。」

古姫「仇討ちや後追いはやめなさい。」

古姫「戦艦棲姫が貴方を此方に遣した意味を考えなさい。」

タ級「意味ですか?」



はるか遠くの煙を睨み付ける表情をしていたタ級へ嗜めるように言う駆逐古姫。



古姫「あの娘が撤退の進言に貴方を遣したという事は

貴方にしか出来ない役割が此方であるという事よ。」



タ級は戦艦である。そして、その装甲は厚い。

何かに思い至ったかはっとする表情を見せるタ級。




580:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/13(木) 00:28:13.04 ID:FWWFZVbA0



古姫「そういう事よ。

戦艦棲姫は貴方に戦艦水鬼様を逃がす際の殿を託したのよ。」



戦艦棲姫の覚悟とその託された想い、

それを知ったタ級はがっくりと項垂れる。

重巡棲姫との連絡も付かなくなっている。

これから導き出される敵の行動は……。

駆逐古姫は考える。考える為の時間は少ない。

自身の経験、そして、敵が設定しているであろう勝利目標。

自分達の現状を考えれば撤退しか道はないのだが

どうすれば安全に総旗艦の戦艦水鬼を逃がす事ができるか。

敵の目的は何であろうか?

至上命題なのはこの地に残る味方戦力の救出なのは間違いない。

では、こちらの殲滅についてはどうであろうか?

その答えを導く鍵は敵が先に後方拠点をつぶしに掛かったという点。



古姫「一般的な鉄床戦術を取るのであれば

   本隊となる部隊で前線を押さえる陽動を図るはず。」



そう、一般的な鉄床戦術は装甲に勝る兵科で前線の敵をひきつけ

機動力に勝る兵科で敵の後ろを奇襲し前後で挟み撃ちを行う包囲殲滅戦。



古姫「挟み撃ちをするのであれば

   先に行動を起こすのは後方拠点の襲撃ではないはず。」



正しく行うなら、先に本隊を叩き、本隊側に後方拠点から援軍を送らせるなどをして

後方への注意が逸れた時に機動力を持った精鋭で突き後方を陥落させるのが定石。

だが、敵は順番が違う。



古姫「理由は?そうせざるを得ない理由があるという事?」



一般的?そう、一般的ではない。

一般的な鉄床作戦は前方で釘点けにする本隊と

後方襲撃の部隊とは連携が密に出来ないと無理なのだ。

それは作戦の決行において双方の部隊の練度が同程度

或いは後方側担当が精鋭である事が望ましい。




581:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/13(木) 00:30:01.64 ID:FWWFZVbA0



古姫「なるほど。」



一つの推論。いや、それこそが理由であり結論だろう。



古姫「後方部隊は数が多いけれど存外錬度の低い兵の方が多い?」

古姫「連携に不安要素がある。」



敵に囲まれ後方を、

退路を絶たれ逃げ道を指定されている中での一筋の光明。



古姫「艦隊参謀長駆逐古姫麾下の全軍へ告ぐ!」

古姫「我が部隊は敵拠点攻略を停止!別命あるまで待機!」



自分の指揮権下にある部隊へ敵攻略の手を止め待機命令を下す 。

これは臆病風に吹かれてのものではなく。

総旗艦からの撤退命令が出れば即応させる為の物であり

その後の目的については。



古姫(突破口を切り開く為の捨て駒に……。)

古姫(麾下の皆。すまない……。)



ここからは時間との戦い。

敵が後方拠点を潰したのであれば現在包囲している敵

目の前の敵救援対象が呼応して反攻してくる可能性もある。

その事態は避けたい。



古姫「戦艦水姫様の下へ行かないと!」



自分の麾下部隊へ撤退の為の方角と指示を飛ばし

撤退時は先頭を切れるような状態にして駆逐古姫は本陣へと急いだのだった。




582:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/13(木) 00:31:40.39 ID:FWWFZVbA0



深海敵地攻略部隊 本隊 戦艦水鬼部隊 本陣



戦水「状況は分かったわ。」

戦水「正面の敵拠点攻略は諦めましょう。」

空鬼「私が最初に負傷し敵本隊の迎撃に失敗したばかりに…。

   申訳ありません。」

戦水「あなたに問題はなかったわ。あれについては敵を褒めるべきかしらね。」

空姫「正面を攻略し我々が拠点とするのはいかがでしょうか?」

戦水「愚作。それこそ無能の極みよ。

   これだけの相手に篭城戦を戦える自信は私は無いわね。

   それよりも敵の包囲網が完成する前に

   撤退をすべきと言う駆逐古姫の進言が正しいわ。」

戦水「今なら損害は多いけれど全滅は避けられる段階。

   全軍に撤退命令を出して頂戴。」

古姫「進言を受け入れてくださりありがとうございます。」



予想以上にあっさりと進言を受け入れ撤退の決意をする戦艦水鬼。

状況が不利と判断すれば撤退する事に迷いが無い辺りは

他の水鬼級と比べ秀でているであろう。

だけにもっと早く、そう、空母水鬼が負傷し戻ってきた時点で撤退を決めていれば。

駆逐棲姫達の部隊は元より重巡棲姫、

そしてなにより戦艦棲姫を失わずに済んだであろう。




583:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/13(木) 00:33:01.46 ID:FWWFZVbA0



戦鬼「嘆いても時は戻らないわ。

   古姫、どの方向へ逃げるのが最適解と思うのかしら?」

古姫「はい。私が考えるにこの方角に敵の包囲網の穴があると思われます。」



そして、駆逐古姫の指揮下で深海の撤退戦が、提督の指揮下で艦娘の追撃戦が始まった。



強襲揚陸艦 艦橋 指揮司令室



提督「大佐。始まりましたよ。」



司令室内のモニターに明滅する光を見ながら提督が語りかける。



大佐「見事に前方へ叩きだす事に成功したようですね。」



それは敵が見事に策に嵌ったとの証の明滅。



不知火「司令。こちらを。」

提督「減った戦闘機、艦攻、艦爆も到着予定か。」



不知火が渡してきたメモ紙に目を通す。



大佐「あぁ、初めの戦闘で減った機材の補充ですか……。」



強襲揚陸艦には艦娘用の艦載機の予備は

それ程積んできては居なかったはずだがと思う大佐。

最初の防衛戦時に当てはあると言っていたそれが着くのであろう。

だが、この光点の数は……。まさか?!




584:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/13(木) 00:34:53.88 ID:FWWFZVbA0


提督「お気づきになられましたか。」ニヤリ

大佐「確かに船で輸送するより直接飛ばした方が早いですね。」



船で運ぶより飛行機を飛ばしたほうが運搬という点では早いのは当たり前。

ただ、人でやろうと思えばパイロットの疲労問題や

人員の都合などでとてもではないがやれたものではない。

更に言えば長距離、長時間飛行した後にさぁ、戦え、根性だ。

となればいかな熟練パイロットであろうと最高の結果を出す事は困難だろう。

だが、艦娘の使う艦載機のパイロットは疲労しらずの妖精さん達である。

妖精達の疲労は使用者の艦娘に移るとの話でもあるが……。

その頃の海上では栄養補給にいそしむ姿があった。



グラ「疲労回復の為に甘味を採るか。」ゴソゴソ

瑞鳳「あっ、そろそろ?」

グラ「あぁ、瑞鳳も食べるといい。」

瑞鳳「じゃぁ、お茶にすりゅ――?」

グラ「いただこうか。」



そう、艦娘には疲労回復専用の戦闘糧食。甘味間宮羊羹がある。





585:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/13(木) 00:36:55.44 ID:FWWFZVbA0


大佐「成程。成程。実に合理的だ。」

大佐「ですが。航続距離については?

   空中給油機など無いはずでは?」

提督「それについてはそちらの同盟国の

   フォークランド時の対応を参考にさせていただいています。」

大佐「Operation Black Buck ?」(ブラックバック作戦?)

提督「その通りです。爆撃機と戦闘機や艦爆といった違いはありますが

   無理やり航続距離を伸ばすやり方は参考にさせてもらっています。」

大佐「成程。敵の尻を蹴りだせばこちらに向ってくる敵の方角は

   分かりきってますから早期警戒機の幾つかを誘導に回せるという事ですか。」

提督「我々の鎮守府からこの海域までのあいだに補給艦と護衛隊をつけた空母を配置。」

提督「燃料を補給後離陸。それの繰り返しで艦載機を飛ばし続けている形です。」

大佐「なるほど補給艦をリレーで回すことで

   空母艦娘とその護衛艦隊へ燃料、弾薬を切らさない形ですね。」

大佐「空母へは燃料だけの補給で良い訳ですから

   補給艦娘に積む燃料も弾薬を減らして多く積めますね。」

大佐「艦載機については収容可能数以上であったとしても救出先に地面はありますしね。」

提督「そうです。仮に我々の空母娘達で収容出来なくても

   周囲に島が幾つもありますからね。そこへ降ろせばいいわけです。」

提督「奇策で理屈は分かっても普通はやらないという奴です。」

大佐「かの国はそれをやりますからね。」

提督「かの国の柔軟な発想は当り外れありますが様々な戦訓を与えてくれます。」



提督の言葉に頷く大佐。




586:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/13(木) 00:38:16.14 ID:FWWFZVbA0



「You have control 」(無線)

グラ「I have control 」モチモチ(無線)



グラーフが艦載機の管制を中継した艦娘から無線を通し受け継ぐ。



グラ「零52型が中心か。」

グラ「フム。さてと、艤装を無理やり拡張しているからな。」

グラ「どれだけ余分に動かせるかといった所か。」

瑞鳳「リミッター外す感じ?」

グラ「うむ。

   艤装の寿命を縮めるから好ましくはないが贅沢も言ってられまい。」

グラ「我々が始めて、我々が終わらせる。」

グラ「ともなれば主人公は我々であろう?」

瑞鳳「やだ、グラたん口説いてる?」

グラ「Shall we dance ?」ニヤリ

瑞鳳「きゃぁ ――――― ///」




587:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/13(木) 00:39:20.22 ID:FWWFZVbA0



秋津洲「ワイルドギース01より管制へ!」

不知火「こちら88コントロール。どうされました?」

秋津洲「敵艦隊発見!艦影のライブラリへの照会よろしくかも!」

不知火「確認しました。照合します……。」



二式大艇から送られてきたデータの照合。



不知火「照合完了、艦影、空母水鬼です!」



にわかに色めき立つ司令室内。



提督「敵の将官か。優先して狩ってくれ。」



提督の指示が排除への優先順位を告げる。



グラ「艦載機の数で押せるのであれば我らが有利!」

瑞鳳「艦攻隊に艦爆隊のみんな!やっちゃぇ!」



正面、提督達本隊の空母艦娘が管制する艦載機部隊が一斉に哀れな獲物。

空母水鬼へと襲いかかる!





588:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/13(木) 00:43:02.11 ID:FWWFZVbA0


空鬼(来たわね!これでいい!これで!)



空母水鬼の随伴は対空に定評のあるツ級ではなく駆逐ナ級。

もっともナ級自体が最新鋭である為それもなかなかの対空ではあるのだが。



グラ「ふむ。なにやら覚悟を決めた様子だな。」

瑞鳳「負けを悟った感じ ――― ?」

空鬼「そういうことよ!さぁ!かかって来なさい!」



覚悟を決めた空母水鬼。

最後の足掻きと自身の艦載機を全て出しグラーフ達の部隊に抗う。

だが、最初の接触時と違いその戦闘機や艦爆、艦攻の数は決定的に違う。

空母水鬼の随伴は徐々に数を減らし、その直援機もついには零となる。

飛行機達の攻撃が集中すれば制空の取られた状況では為すすべなどある訳が無く。

空母水鬼は集中攻撃を浴び、大破炎上、そして轟沈へ。



グラ「なかなか頑張った。いい、戦争だった。」フム



お互い顔の見える距離ではない。

グラーフははるか遠くの距離で炎上、

ゆっくりと沈降して轟沈してゆく相手へ最大限の賛辞を贈った。



空鬼「これで、これでいい。」

空鬼「私は役割を果たした………。」

空鬼「戦艦水鬼様……。後は。後は、宜しくお願いいたします……。」



そして、空母水鬼は役割を果たし、

満足した顔で水底へと逝った。






595:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/20(木) 00:33:42.88 ID:O5Yg9HcV0

提督達救援対象鎮守府



その鎮守府の指揮は提督が嘆いたように少佐が執っていた。

階級としてそれは余りにも低く提督として新米と言えた。

しかし、彼は踏ん張り救援が来るまで耐えきった。



少佐「敵が。敵が撤退していく?!」



目の前の包囲網が解かれ、敵が撤退していくのが見える。



少佐「ここは敵の追撃を!」



今まで篭城戦を戦ってきていた全員に命令を下す少佐提督。



「島風の仇!」

「仲間の恨みを!」



目の前で惨殺された島風、

そして、幾度にも及ぶ攻撃で散っていった仲間達の仇を討つ。

その強い意志が極限まで追い詰められ疲労しているはずの彼女達に力を与えた!



ウォォォォォォオオオ!





596:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/20(木) 00:34:51.56 ID:O5Yg9HcV0



古姫「包囲していた敵が追ってきたわね…。」



予想の範疇。

既に深海勢は撤退戦に切り替えて部隊を素早く退いている。



タ級「空母水鬼様撃沈の報!」

戦鬼「空母水鬼が撃沈?!」



彼女程の豪の者であれば

包囲網を抜けられると思っていたのにも関わらず轟沈したと?

包囲網の穴と思われる所へ斬り込みを掛けていた自分の部下、

指揮官級がやられた事は戦艦水鬼に更なる衝撃を与えた。



古姫「戦艦水鬼様!立ち止まられてはいけません!」

古姫「空母水鬼様が何の為に沈んだと思っているのです!」

戦水「駆逐古姫……。ここを攻めたのは間違いだったのかしら?」

戦水「戦艦棲姫を始めとした優秀な部下を失ってまで獲るべき場所だったのかしら?」



自身の部下が次々と為すすべなくやられていく戦況というのは

今まで負けなしできていた戦艦水鬼には実に耐えられない物の様であった。





597:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/20(木) 00:36:15.40 ID:O5Yg9HcV0


空姫「戦艦水鬼様?」

戦鬼「敵は強いわねぇ、私達、皆、死ぬのかしら……。」

戦鬼「ねぇ、どうせ皆死ぬのなら敵の旗艦を潰して…「この痴れ者!」パァン!



自暴自棄になりかけた戦艦水鬼に駆逐古姫の張り手が決まる。



古姫「貴方という方は何を考えているんですか!!」



戦艦水鬼の発言に怒り心頭に発した駆逐古姫が戦艦水鬼の服の襟首を掴む。



古姫「戦艦棲姫や空母水鬼様が何故に死んだと思っているのです!?」

古姫「皆、貴方に次の、深海棲艦の未来を託し、

   生き延びて欲しいが為に死んでいったのですよ!?」

古姫「この世界の支配者の器たる才を貴方に視たからこそ

   彼女達は命を賭して貴方が逃げる為の時間を稼ぎ敵を防いだんです!」

古姫「ここで貴方が折れてどうするんですか!」

古姫「死んでいった者達にすまないと思うなら

   生きて敵を滅ぼす為に再起を誓うべきではありませんか!」



激昂し、その怒りのままに戦艦水鬼を叱り飛ばす駆逐古姫。

そして、戦艦水鬼のドレスの襟首を掴む手は怒りに震えていた。



戦鬼「手を……。手を服からどけてもらえるかしら。」

古姫「これは…、無礼いたしました…。」

戦鬼「いえ、私が愚かだったわ。」



その顔からは迷いが消えた。



戦鬼「私は全力で逃げるわ!」

戦鬼「駆逐古姫!空母棲姫!二人とも殿は頼んだわ!」



そして、戦艦水鬼は護衛を連れ全力で海域を離脱していった。





598:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/20(木) 00:37:41.07 ID:O5Yg9HcV0



古姫「ふ ―――― …。

   戦艦水鬼様が全力で逃げるなら追いつけないでしょうや。」

空姫「流石に戦艦水鬼様ほどの方になると逃げっぷりもさまになるわねぇ。」

古姫「あれくらい豪快に逃げてもらわないと困るわ?」

空姫「そうね。戦艦水鬼様には逃げて深海棲艦の戦力を立て直していただかないと。」

空姫「それにしても、始めに敵の本隊の力量を見誤っていなければ

   犠牲は少なかったかもしれないと思うのだけれど。」

古姫「やめときましょう。戦の『たら』『れば』なんて言い出したらきりがない。」

古姫「今回は敵がたまたま一枚上手だっただけよ。」

古姫「私達はここで私達がなすべきことをしましょう。」

空姫「えぇ。そうしましょう。」

空姫「エンドロールが流れ始めたからといってまだ完全に終わった訳ではないですもの。」



二人の姫が敵へ向き直り咆哮を挙げた。




599:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/20(木) 00:40:48.40 ID:O5Yg9HcV0



強襲揚陸艦内 艦橋司令室

不知火「秋津洲さんから入電です!」

提督「どうした?」

不知火「撤退中敵旗艦艦隊と思しき艦隊を発見するも

    敵艦隊の攻勢激しく警戒機の護衛が落とされたので

    撤収するとの事です。」

提督「敵さんも必死こいて逃げているようだな。」

提督「位置は?」

不知火「此方です。」



机代わりにしている大型モニターにタップして敵を表示させていく不知火。



大佐「ははぁ。これは敵に天晴れな才を持った者が居たようですね。」

提督「確かに。これは上手い事こちらの隙間を突いて来ています。」



駆逐古姫が戦艦水鬼を逃がす為に戦闘を行っている場所は

丁度、提督達88鎮守府組み本隊と周辺鎮守府連中の合わせ目だった。

三角形をイメージしていただけるだろうか。

包囲網が三角形で構成された場合、一辺を瑞鶴達遊撃隊、

もう一辺が周辺鎮守府部隊。

そして、底辺が提督達本隊。

ただ弱いところを突くというのであれば周辺鎮守府部隊を潰せばいいのだろう。

だが、思い出していただきたい。

深海棲艦達が攻め立てた場所の特徴を。

そう、この場所は敵、深海棲艦の陣地へと食い込む形に突出した場所である。

だけに周辺鎮守府で構成された部隊の方向を突き抜ければ

そこは深海棲艦達にとって敵である艦娘側勢力下なのだ。

寡兵でもって敵の支配地域を追撃を交しながら逃げるというはとても困難である。

たまたま上手くいった狂人集団達が歴史にその名を残してはいるが普通は行わないもの。

失敗した者の方が多いのは当たり前でそれが語られる事が無いのは歴史が雄弁に物語る。

で、あればという事で駆逐古姫が目をつけたのが包囲網端である。

中心部分からの面の構成ははどうしても端の部分の展開が遅れる。

駆逐古姫はそれを巧みに見抜き一番脱出できる可能性がある方向を目指していた。




600:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/20(木) 00:42:03.15 ID:O5Yg9HcV0



提督(……、救援の目的は達したと言えなくは無いか。)

提督(敵の指揮官をどうみるか……。)



後顧の憂いを断つのは基本なれど。



提督(手札が足りない。大役は狙うべきではないか。)

提督(現状で目的は達して後はボーナスを狙うかどうか。)

提督(ポーカーにしてもなんにしても賭け事ってのは引き際が肝心だ。)

提督(伏せ札で一枚とっておきがあるとは言え、

   今時点で幕を下ろすのもありか。)

提督(周辺鎮守府連中には期待できんしな……。)



88鎮守府の主力に負傷者が出ている現状で最優先の目的は達成済み。

となれば逃げる敵は追うべきではないか?

死に物狂いで逃げる敵と言うのは時として予想以上の力を発揮する事がままある。

その必死の力に盆を返されてはたまらない。

提督がそう考えた時だった。




601:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/20(木) 00:44:02.54 ID:O5Yg9HcV0



不知火「司令。瑞鶴さんから無線通信が入っています。」

提督「繋いでくれ。」

瑞鶴「提督。空母棲姫が頑張っているって?」(無線)

提督「あぁ。」(無線)

瑞鶴「私がやるわ。」(無線)

提督「そうか。頼んだ。」(無線)



そして、瑞鶴からの無線通信を終えたくらいに

また一人の艦娘からの通信が入る。



不知火「司令。時雨さんからも通信が入っています。」

時雨「提督。」(無線)

提督「瑞鶴の護衛ではなく移動していたんだな?」(無線)

時雨「うん。察しが良くて助かるよ。僕も行くよ。」(無線)

提督「頼んだ。」(無線)



瑞鶴からの許可を得て、

手勢を連れ遊撃隊として行動していた時雨は

予め包囲網の穴となりそうな場所を予測して動いていた。



提督(敵の殲滅……、いけるか?)

提督(総大将を逃がす為に敵は必死になるだろうが。)

提督(瑞鶴に時雨…。自分で考え動く事が出来る、

   更に有効打を打てる兵というのは実に得難い。)

提督(指揮官として将として。次代を担える存在だ。)

提督(追撃戦は大事だが。二人を失う愚は避けないといけないな…。)





602:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/20(木) 00:47:34.02 ID:O5Yg9HcV0

88鎮守府敵後方襲撃部隊


瑞鶴「川内!私の体の護衛頼まれてくれない?!」

川内「……。全力でいくの?」

瑞鶴「敵の艦隊を追っかけるのに

   私が向っていちゃ間に合わないしね。」

瑞鶴「今飛んでるのを直接向わせるしかないでしょ。」

川内「そっか。」

瑞鶴「魂降ろし(フルダイブ)をやるわ。」

川内「了解。お姫様の体には指一本触れさせないよう頑張るよ。」

瑞鶴「宜しく。」



そして瑞鶴は意識を集中させ両手を顔前で合掌した。

嘗て、深海棲艦への対抗策として艦娘が出始めた頃の事。

まだ二つ名持ち(ネームド)制度が始まる前の事。

比類なき強さを誇った、

その種類の艦娘として艤装の製造番号が初期の艦娘が居た。

一人は呑波の赤鬼と呼ばれもう一人は呑舟の青鬼と呼ばれた。

呑波、呑舟、どちらも意味は同じで舟を喰らう程の大魚。

二人はその名の通りに多くの舟、深海棲艦を喰らい沈めた。

そしていつしか、二人を合わせて呑波呑舟、大喰らいの一航戦と呼ぶようになる。

その強さ比肩する者なし、時として国士無双と賞されるほどだった。

強すぎた艦娘。

強すぎた為に敵深海棲艦に徹底的に狙われ

最優先排除対象とされ最期は水底へと消えていった。

その半ば伝説として語られる二人が得意とした、

いや二人だけが使えた特殊な艦載機操縦方法がある。

それは艦載機に自己の意識を載せるやり方『 魂降し 』と呼ばれ、

それは艦載機の搭乗員妖精と自己を完全に同化する手法だった。

同化した艦載機達は一個の群体として動き敵を屠っていった。

ある程度の指示を与えた後は搭乗員妖精に任せる通常の操縦方法と違い

艦載機全てを操り自己の視界とするするその操縦方法は

艦載機妖精同士の連携が不要となり最強を誇った。

しかし、それを行う艦娘への負担は計り知れないほど大きく、

結局、この二人以外行えた者は居ないとされる。



瑞鶴「加賀さんみたいに降ろした後にお握り摘むような余裕は無いけどね。」



パンと改めて一拍。


瑞鶴「88鎮守府筆頭空母、瑞鶴!相手仕る!戦技!魂降し!」


その瞬間、瑞鶴が繰る艦載機達の纏う気配が変わった。




603:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/20(木) 00:49:49.64 ID:O5Yg9HcV0



殿軍部隊 空母棲姫



空姫「敵の攻撃隊は温いわねぇ!」



撤退する深海棲艦軍の殿軍を駆逐古姫と

空母棲姫は自己の手勢と共に勤めていた。



古姫「予想通り後方を襲撃した連中と比べて練度が低いわね。」



機関全速で撤退する中で追撃を仕掛けてくる敵の艦載機攻撃隊は動きが鈍重。

そして、艦娘による砲撃も雷撃も命中精度は低かった。



古姫「回避しやすい単調な攻撃というのは助かる。」



ひょいひょいと敵の攻撃を交し追撃部隊にお返しとばかりに砲雷撃。



古姫(これなら私と空母棲姫も脱出できるかもしれない。)



そんな淡い夢を見たときだった。

戦う二人の間を一陣の風が吹き抜けた。





604:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/20(木) 00:51:16.67 ID:O5Yg9HcV0


空姫「駆逐古姫様……。」



急に敬称をつけて駆逐古姫を呼ぶ空母棲姫。

一体どうしたというのか。



古姫「どうしたの?」

空姫「重要機関をやられました。」



そんなばかな。たった今のその一瞬で?

そんな動きの取れる敵機は対空戦闘が始まった先程からまったく見ていない。



空姫「胴体シンボルに加賀梅鉢。尾翼マークに二羽飛び鶴。」

空姫「私の真横を一瞬ですが見せ付けるように飛んでいった部隊がいました…。」

空姫「青鬼の弟子でしょうや……。」

古姫「あの!あの青鬼に弟子がいたの!?」



駆逐古姫程の古参となれば敵の強兵の名を知っているのは当然であり

その名は驚愕を伴いつつ古い記憶を呼び起こした。



空姫「過去の因果が追いついたと言うところでしょうか。」

空姫「あれの弟子がここにいる以上は足止め出来るのは私だけでしょう。」

空姫「操る艦載機全てが落とされるまであがき時間を稼ぎます。」

空姫「戦艦水鬼様をどうぞ。よろしくお願いいたします。」



畏まり深々と頭を垂れる空母棲姫。



空姫「お行きください。」



そして駆逐古姫を見送ると空母棲姫は改めて追撃部隊の方へ向きなおる。





605:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/20(木) 00:52:53.39 ID:O5Yg9HcV0



空姫「殿軍としての務め。しっかりと果たしてみせましょう。」

瑞鶴「いいじゃない。その覚悟。受取った。」



瑞鶴の意思が乗った艦載機、いや、瑞鶴そのものと言って過言ではないだろう航空隊が

覚悟を決めた空母棲姫へ襲い掛かる。



空姫「動きが捉えきれない!」



敵の攻撃隊を一言で形容するなら俊足俊英。

一機が魚雷を落せばその機体とまったく同じ高度、位置につけた二番機がそれに続く。

前衛の機体を盾に後続が全て突撃。突撃タイミングはコンマ以下秒のずれもない、

そして迎撃機が敵の死角位置から後ろを取れば迎撃機の死角に敵が居る。

背中に目がついているのかはたまたその敵機は本当にそこに居たのか或いは未来予知?

いいように翻弄され空母棲姫はあっという間にダメージを重ねていく。



空姫「私が相手をするには力不足だったようね……。」

空姫「……、青鬼の弟子という事であればこんな戦場では

   仮に旗艦を勤めているのであったとしても役不足なのでしょうけれど。」

空姫「自分の命を奪っていく相手の顔くらいは拝みたかったわね。」



既に艦攻からの魚雷の命中弾が数発。

そして、艦爆からの直撃弾も食らっている。

錬度の低い敵攻撃隊に上手く紛れて攻撃してくる精鋭。

その姿、気配を見ることは最期まで敵わなかった。



空姫「ここまでですか……。」

空姫「これほどの強さを誇る艦娘がまだ隠れていたとは……。」

空姫「我々の完敗ですね……。」

空姫「駆逐古姫様……。

   後は、どうぞ、どうぞ…よろしくお願いいたします。」



606:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/20(木) 00:54:05.63 ID:O5Yg9HcV0


瑞鶴「ふん。なかなか頑張ったじゃない。」

瑞鶴「でもね。ひとつだけ訂正して逝きなさい。」

瑞鶴「私に技を教えてくれたあの人はこんなもんじゃないわよ。

   正しく鎧袖一触だったわ?」

瑞鶴「私はあの伝説の足元にも及ばないんだから。」

瑞鶴「私はあの伝説と比べて自分がそれに並べるなんて思っちゃいないわ。」

瑞鶴「あんたがここで負けたのは、

   たまたまあんたが私より弱かっただけよ……。」



意識を載せた艦載機達の視界に

空母棲姫が炎上、轟沈する様を捉え瑞鶴は意識を体へと戻した。




607:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/20(木) 00:55:49.25 ID:O5Yg9HcV0



瑞鶴「……、川内?」

川内「お帰り。」

瑞鶴「迷惑掛けたわね。」

川内「いえいえ。戻ってきたなら何より。」



敵の必死の猛攻は意識がなくなり

棒立ち状態だった瑞鶴を格好の的としていたようである。

瑞鶴が自分の体に戻ってきた時、

体の護衛を頼んでいた川内はかなり消耗しているようだった。



瑞鶴「あの人達みたいに意識を飛ばしていても

   自分の体を動かすなんて芸当は無理ね。」

瑞鶴「まだまだ修行が足りない事を痛感したわ。」

川内「んー、まぁ、瑞鶴は瑞鶴でいいんじゃない?」

川内「まっ、確かに明確な目標があったほうが

   やりやすいってのはあるかもだけどね。」

川内「で、首尾は?」

瑞鶴「上々よ。」

川内「じゃま、後は時雨にまかせますか。」

瑞鶴「そうね。さすがに疲れたわ。」

瑞鶴「ウォースパイト?」(無線)



瑞鶴が無線でウォースパイトを呼び出す。



スパ「お呼びですか?」(無線)

瑞鶴「疲れたから旗艦よろしく。

   副官として補助はしてあげるから頑張んなさい。」(無線)

スパ「えぇ!?」(無線)



そして、二の句を告げさせず無線を切る。



川内「いいの?」

瑞鶴「そろそろ一人立ちさせるべきでしょ?」

瑞鶴「這えば立て、立てば歩めの親心よ。」

川内「スパルタだねぇ。」

瑞鶴「雪風が過保護なのよ。」



そう川内に返し瑞鶴はゆっくりと自己の艦載機を再度発艦させた。





614:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/29(土) 00:25:05.97 ID:KSP3WUqy0


深海棲艦達の撤退は三々五々、

四分五裂といったいかにもな敗残軍の撤退ではなく。

駆逐古姫が逃げるべき方向を示し、

その他の姫級たちが死ぬ最後まで指揮を執っていたことも有り只の敗残兵とは違った。



提督「負けているにも関わらず統制が執れている敵というのは厄介ですね。」

大佐「えぇ、平時の練度と敵の統率力の高さを窺い知れます。」



ここで多くの敵指揮官を倒せた事は後々有利に働くと二人は考える。



提督「時雨はそろそろか。」



先の無線時に聞いた座標から秋津洲が連絡してきた敵旗艦艦隊の座標とを見比べ、

手元の時計を見て呟く。

本隊の艦載機部隊は提督の指示の元、

撤退しつつある敵旗艦艦隊以外の敵を先に始末していっている。



大佐「丁寧な仕事ですね。」

提督「今、敵主力に向っている部下が任せろと言ったんです。」

提督「上がやれることはその言を信用して

   周りの邪魔が入らないようにすることですよ。」

大佐「部下を育てる為に裁量を与え見守るという事ですか。」

提督「最悪仕留めきれずともこの戦域における絶対的勝利は我々のものです。」

提督「我々の強さを知れば復讐を誓うにしても相応の期間を置くでしょう。」

提督「現状、時間は我々にも必要です。」



提督の言葉には大佐から示唆された色々な面倒事を片付ける為の時間が居るという事であり。



大佐「銃後の面倒事、政治の方は厄介ですからね。」

大佐のこの一言は根が恐ろしく深い事をしめしている。




615:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/29(土) 00:27:09.10 ID:KSP3WUqy0


深海棲艦 殿軍 駆逐古姫隊



古姫(電探に敵機影が映り始めたわね。)



空母棲姫を残し自軍の直参を連れ

戦艦水姫の殿軍を勤める駆逐古姫の部隊にも

グラーフや瑞鳳の艦載機達が迫ってきていた。

しかし。



ツ級「ツァ!」



駆逐古姫直参部隊ともなれば、深海を支える精鋭なのだ。



グラ「ふむ。さすがに普段使わない52型だと操作に難ありか。」

瑞鳳「へぇー、あそこまで海面スレスレに飛んでる艦攻隊を落せるかぁ。」



艦攻隊が海面スレスレを低く飛ぶのは対空機銃の俯角には限界値があるため。

機銃を下向きにした範囲内で狙えなくなる範囲の内側にまで入り込めば

雷撃はやり放題になる。

だが、敵の殿軍の精鋭達はそれをさせてくれない。



グラ「雷撃のコースに乗る前に落とされると抱えた魚雷が無駄になるな。」

瑞鳳「うん。余り意味の無い物になっちゃう。」



追撃隊の艦載機達が落とされ始めた時にグラーフ達の無線に連絡が入った。



時雨「ようやく敵殿軍に追いついたよ。」(無線)

グラ「時雨か。」(無線)

時雨「道中の抵抗もなかなか厳しくてね。」

瑞鳳「直接やる?」(無線)

時雨「うん。僕がやる。任せて貰えるかな?」(無線)

グラ「上空は任せて貰えるか?」(無線)

時雨「お願いするよ。」(無線)

瑞鳳「それじゃぁ、周辺のお掃除はこっちがするね!」(無線)

時雨「うん。お願いする。」(無線)





616:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/29(土) 00:28:11.64 ID:KSP3WUqy0



古姫(ここに来て、まだ強兵の手札を切れるか……。)

古姫(敵の…、敵の救援部隊の層のなんと厚いことよ…。)



迫ってきた時雨の纏う雰囲気は歴戦の古参兵のそれ。



古姫(なれど、救援部隊の中核のみが頭抜けて質が高いだけのようね。)

古姫(全体の軍の質であれば我ら深海側の方が上なのは揺るがない。)

古姫(それだけ相手は全体的に追い詰められてきている。)

古姫(なればこそ、今回は相手が一枚上手だった。)

古姫「それにつきるわね。」

時雨「?」

古姫「こちらの独り言よ。」

古姫「今、この場に立つということは

   あなたもそれなりに名のある艦娘と思うのだけれど。」

古姫「名乗る名があるのなら聞いてもいいかしら?」



古姫が連れていた直参の深海棲艦達は

時雨が瑞鶴に任された部下達が相手取り

グラーフ、瑞鳳の攻撃隊がそれを援護する。



617:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/29(土) 00:29:37.91 ID:KSP3WUqy0


時雨「名乗れる程の名は無いけれど。」

時雨「そうだね。

   僕は外地鎮守府管理番号88所属。」

時雨「白露型二番艦、時雨だよ。」

古姫「此方の求めに応じてくれて感謝するわ。」

古姫「流石にこの首、

   知らない相手にくれてやるには惜しいかと思っていたのよ。」

時雨「それで、君は?」

古姫「深海南方方面軍戦艦水鬼艦隊が参謀長駆逐古姫。」



名乗りを終え、武者両名の戦が始まった。

先の先、先の後、後の先。

剣道でよく言われる試合運びの為の対峙法であるが

武芸者同士での戦い方の心得の一つ。

相手の動きを先読みしそれに対して先に動く。

また、相手が仕掛けてきた際に出来た隙に対してカウンターを返す。

先に長門と戦艦棲姫が演じた演武の様に戦うが。

その駆逐艦たる二人の動きは正しく自由自在。

砲が擬装に固定され砲の動きが制限される戦艦達と比べ

駆逐艦である二人の砲は携行式。

そこには仰角、俯角という艦艇に固定される砲の概念はない。

更には。




618:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/29(土) 00:31:42.59 ID:KSP3WUqy0


時雨「流石にいい所に魚雷を撃ってくる。」



ひらりとかわし避けきれない魚雷を砲撃。



古姫「軽くかわしてくれるものねぇ。」



時雨がお返しとばかりに

返してくる魚雷を避けた先の砲撃を交しつつ返す駆逐古姫。

ただ、戦艦同士の戦いと違い。

こちらは駆逐艦である。

一撃一撃はお互いに致命傷になる確実なダメージとなる。

駆逐古姫の方に装甲の分があるとは言え

流石にそれに頼った戦いは出来ないだろう。

お互いに死への一撃を軽くいなす戦い。



時雨「そろそろ観念してその首、渡しておくれよ。」

古姫「今はまだあげられないわねぇ。」



魚雷を放った後にその後ろで加速して突っ込んで来る時雨。

これは駆逐古姫が魚雷を避けきると確信しているからこそ出来る芸当。



古姫「自身の放った攻撃を

   一撃も無駄にしないその心意気は素敵だと思うわよ?」

古姫「でも、魚雷が私に当っていたら貴方、爆発に巻き込まれていたわよ?」


ほいと時雨の放った牽制の蹴りを

海老ぞりで交しつつ言葉をかける駆逐古姫。



時雨「あれに当ってくれるような君なら

   僕が此処で戦っていなくて済むんだけどね。」



蹴り抜けた足の勢いを活かし

駆逐古姫の後ろを取ろうとした時雨に駆逐古姫が砲身の先を向けてくる。

それを体を捻らせ砲撃で逸らし言葉を返す時雨。



古姫「本当に困った相手がいたものね。」

時雨「どうも。」



この期に及んでというのが正しいのかは別として。

相手を褒めるに困った相手というのは適切なのかどうか、

そしてそれに謙遜ともとれる無気力な返事。

弛緩した雰囲気が漂うが周囲は敵味方入り乱れ命のやり取りが行われている愁嘆場。



619:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/29(土) 00:33:52.28 ID:KSP3WUqy0


古姫「貴方が敵でなければ

   野点の一つでもと誘いたいところなのだけれどね。」



幾度にも及ぶ砲雷撃。

それを交わし続ける二人に少しづつの変化が出始めていた。

方や明石によりつねに最新の技術を投下され進化し続けている兵装。

そして、その体力は無尽蔵ともいえる若さからくる。

対峙する駆逐古姫は、その名の示すように時雨と比べれば年をとっている。

更に、艤装そのものが持つ性能は決して悪い物ではないのだが。

事、ここに至っては総合力で時雨に分があるのである。

更に元々の戦況も今は時雨に味方する。

時間が経てば経つほどにこの海域に敵が、

艦娘が集まってくるのは明らかである。

時雨の三つに編んだお下げが回避行動にあわせくるりと揺れる。



古姫(美しいものよな。)



だが、見惚れていては自分の首に当てられた死神の鎌が振り下ろされる事になる。



時雨「なかなかに時間を稼いでくれるね。」

古姫「あら、流石に見抜かれていたわね。」

時雨「消極的な戦い方をされているとね。」

時雨「ここに僕の仲間が集中すれば

   君が逃がそうとしている総旗艦を追う者は少なくなるからね。」

時雨「かといって君の相手が単騎で出来るのは僕くらいだろうしね。」

時雨「乱戦で戦う方が得意なタイプと見るよ。」

古姫(本当に困った相手だ。)



その双眸はこちらを良く観察しこちらが得意とする戦いへ持ち込ませないように

周囲の部下へ戦闘の参加を禁じ、自分たちを無視し本来の追撃を行わせている。



古姫(こちらの手をきっちりと封じてくる。)


会話を楽しんでいるように語っているが実際は

自分を引きとめ戦艦水鬼へ追撃隊を殺到させているのだろう。

お互いにお互いを引きとめておきたいという意味では利害が一致しているとも言えるが。



620:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/29(土) 00:35:07.03 ID:KSP3WUqy0


古姫「貴方だけしか止められないのであればそれは意味無き事。」

時雨「なんだ、こっちの意図も読まれてたか。」

古姫(涼しい顔で。子憎たらしい。)



しかし、その内心は晴れやか。

死出の旅路によき敵に合間見えた事、その喜びが大きい。



古姫「今、再び、一武人として戦える。」

古姫「時雨。あなたに感謝を。」

古姫(といっても体がもう気持ちに追いついて来ないわね。)

古姫(歳はとりたくないものね。)

時雨「……。」

時雨「改めて。僕は外地鎮守府管理番号88所属。白露型二番艦時雨。」

時雨「相手をさせて貰うよ。」

古姫「深海南方方面軍戦艦水姫参謀長 駆逐古姫。」

古姫(あぁ、成程。)

古姫(此方が一息入れるだけの。その一息で調子を戻せと。)



時雨が改めて自分の名乗りをあげ、敢えて作った間の意図を見抜き。




621:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/29(土) 00:36:41.60 ID:KSP3WUqy0


古姫(尚も全力を出せと目の前の将は言うか。)

古姫「貴方は貴方の指揮官に老人を敬えと教わらなかったのかしら?」

時雨「労わらなければいけないほどの歳なのかい?」



ここに来て、駆逐古姫はようやっと時雨の意図を理解し

その行為に敬意を払いたいという、いや払うべき行為と気付いた。

時雨は自分に全力を出し切らせ、そして武人として死なせる。

最大限の名誉を与え死なせる心算なのである。

殿軍の将といえば追撃され命を落とす事が多いのが常。

更には名の知らぬ者に狩られその死体は切り刻まれ辱めを受ける事が多い。

時雨が味方から信頼されて部下を良く使っているのを見れば分かる。

時雨自身、それなりの位置にいる者なのだろう。

実力で他のものに自分の命令を聞かせるだけの力がある。

その者が自ら自分を倒し、

誰とも知らぬ者に首を獲らせ不名誉な死に方はさせぬとの意思表示。

名誉ある死を与えると言っているのだ。

戦い、銃口を、魚雷を突きつけ合わせた僅かな時間で時雨の人となりは理解出来た。





622:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/29(土) 00:38:21.36 ID:KSP3WUqy0


古姫(………。

   戦艦水姫様が電探の感知範囲から消えて大分たつ。)



一呼吸入れさせて貰ったものの時雨の動きに自分の老いた体は再び遅れ始めている。



古姫(………、どうやらここまでですか。)

古姫(いえ、よく持ったといえますか。)



反応速度の遅れから時雨の放った魚雷が駆逐古姫に命中した。



古姫「時雨。貴方の勝ちよ。」

時雨「君はまだ動ける。」

古姫「流石に老体にこれ以上は無理よ。」

古姫「そして、時雨、ごめんなさいね。

   この体。貴方達の研究材料にくれてやる訳にはいかないわ。」



時雨程の人物がそれをするとは思わないが。



古姫「代わりにこれを討ち取った証拠にしなさい。」



シュルリと髪を解き纏めていた、りぼんを時雨に投げる。



時雨「とっとっと。」



時雨が手を出して拾おうと目を一瞬だけ離した隙だった。




623:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/29(土) 00:40:38.12 ID:KSP3WUqy0

ズドン!



時雨「!」



駆逐古姫は自分の主砲を自分に向け発砲。

そして、自沈した。



時雨「なんて覚悟だ。」



自らの腹部を吹き飛ばした後、

艤装に残っていた砲弾を砲身内でわざとに爆発。

誘爆がおきて駆逐古姫が沈み消えるまではあっと言う間だった。



古姫(これで、これでいい……。)

古姫(戦艦水姫様に足りなかったもの。敗北の経験。)

古姫(それが、やっと、やっと足りた……。)

古姫(電探の範囲から消えて大分たつ。

   無事逃げおおせたでしょう。)

古姫(この敗北の経験は戦艦水鬼様を真の名将にしてくれるでしょう。)

古姫(皆さん、やりおおせました。)

古姫(先に逝った戦艦棲姫や空母棲姫。空母棲鬼様にこれで顔向け出来る。)

古姫(笑って出迎えてくれるでしょうね…。)



海底へ向け沈み行く体、薄れ行く意識の中で駆逐古姫は考える。

その表情は笑顔。



古姫(後は……、今しばらく、今しばらくの時間を。)



目の前で駆逐古姫が沈んでいくのを見届け

時雨はようやく自身の電探を起動させた。

時雨は余裕をある風を装っていたが

電探を切りそれで生じた処理能力の余分を艤装の他の動作処理に回していたのだ。

いや、回さざるを得なかった。

実際はそこまでしなければならないほどに駆逐古姫は手強かった。

そして、電探の範囲内には敵の部隊と言えるものが残っていない事に勝利を確信。

そしてまた敵の大将はまんまと逃げおおせた事を把握した。




624:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/29(土) 00:41:56.83 ID:KSP3WUqy0


瑞鶴「とまれ勝利は勝利よ。」(無線)



測ったように。いや。

ブィィィィィン---



瑞鶴「見てたわよ。彩雲を通して。」(無線)

時雨「やれやれ。壁に耳あり空には彩雲ありか。」(無線)

瑞鶴「お疲れ。」(無線)

時雨「うん。ありがとう。」(無線)

川内「今回はお守りだったぁ ―――― 。」(無線)

瑞鶴「あんたは縁の下の力持ちやったんだから誇りなさい。」(無線)

川内「えぇ ―――――― 。」(無線)



時雨と瑞鶴の無線に活躍の場が無かった川内が割り込む。

実際には瑞鶴の護衛として充分以上の働きをしていたのだけれど。



瑞鶴「は ―――― 。あんたには私の報奨金あげるから。」(無線)



それで満足しなさいと恐らく言葉が続いたのであろうが。



川内「わ ――――― い。」(無線)



無邪気な歓声でそれはかき消された。



632:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/01/01(火) 01:08:56.44 ID:ihf9M2Jd0


深海勢力と人類側勢力の境界付近



チャプ

時刻は夕暮れを迎え日は水平線の向うへと消えようとしていた。



伊58「敵艦影、いまだ発見せず。」

伊8「目視範囲内には敵は居ないよ。」

伊13「同じくこちらも見つけられません。」

伊58「もうすぐ日が暮れるでち。」



夜は潜水艦にとって一番襲撃を掛けやすくなる時間帯。

だが、今、待ち伏せをしている場所は敵と自勢力の境目。

彼女達に指示を出した提督は敵を沈められなくてもいいと言った。

それは初めの会敵後に魚雷と燃料の補給の為に一旦戻った時の事だった。



提督「この方角に逃げてくるだろうぐらいしか分からん。」

提督「海は広いからな。」

伊58「適当でち。」

提督「柔軟性を持った対応といってくれ。」ハハ

提督「まっ、それはさておきだ。」

提督「この作戦を終了すればお前さん達は晴れて自由の身だが国内には戻せない。」



58達の過去を考えれば当然。




633:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/01/01(火) 01:10:45.89 ID:ihf9M2Jd0


提督「でだ、再就職先に米軍の新設潜水艦艦隊の教導の席を用意した。」

提督「収監中の伊14については既にアラスカ経由でアメリカに入ってる。」



こいつを見てくれと提督がノートPCを取り出す。



「あっ!姉貴-!」



通話アプリに姿が写るのは伊14。



伊13「イヨちゃん!?」



暫しの会話の後、伊14がアメリカに間違いなく居る事を確認。



伊58「どんな手品でち?」

提督「例のウォースパイトが頑張った作戦があるだろ?」

提督「あの後に色々米軍と仲良くしておいたんでな。」

提督「お前さん達は今回の仕事が終わったら

   こっちの方向へ向かってくれ。」

提督「米軍の収容部隊が来ている。

   表向きには観戦、情報収集という形だ。」

提督「相手先はこの時間には引き上げるから絶対に遅れるなよ?

   遅刻は無しだ。」

提督「いいな。この船には戻るな。」



そういうと三人に小冊子を渡し始める。



提督「本物の偽物だ。

   米国に着いたらグリーンカードに切り替えるから直ぐに不要になるが

   とりあえずの身分証明に必要だからな。渡しておく。」



そして続いて渡すのはプラスチック製のカード。



提督「洗濯機を回して綺麗にした奴を入れてある

   バンカメのキャッシュカードだ。」

提督「暗証番号はここでの個人認識番号の下4桁だ。向うに着いたら直ぐ変えとけよ。」



最後に3人へと腕時計を取り出す提督。



634:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/01/01(火) 01:12:46.39 ID:ihf9M2Jd0


伊8「これは…、パネライ、ですか?」

提督「流石、博識だな。」

提督「餞別だ。金に困ったら売るといい。」



一人ひとりの腕に巻く姿を見た後に一言。



提督「二度と帰ってくるな。せっかく生きて出られるんだからな。」

提督「新天地で頑張れよ。」



ポンと伊58の肩を叩き提督は司令室へと踵を帰す。



伊13「あっ、あの!」

提督「なんだ?」

伊13「ありがとうございます!」



司令室に戻りかけた体を再度三人の方に向け、

思い出したように敬礼。

そして、伊13の言葉に笑みを返し提督は艦橋へと帰っていった。




635:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/01/01(火) 01:13:44.99 ID:ihf9M2Jd0



伊58「最後の大立ち回り。」

伊8「なんとか成功させたいですね。」



だが、自分たちを収容する予定の艦隊との合流時間は迫っている。



伊58「………、時間でち。」



提督が示した敵の退却経路。

移動を考えればその範囲内に留まれる時間はもう無い。



伊13「敵艦隊発見!」



待ち伏せである為に電探で

自己の位置を逆探される様な電波を出すわけには行かない中。

そして、夕暮れを迎え夜の帳が下り、

目視での敵艦影が発見しにくくなるギリギリ。

伊13が敵旗艦艦隊を見つけた。




636:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/01/01(火) 01:15:14.10 ID:ihf9M2Jd0


伊58「敵艦確認!」

伊58「魚雷発射後全力離脱!」

伊58達が発射した魚雷は敵へ向って一気に殺到した!

ネ級「右舷30度!距離300!敵魚雷!」



魚雷の針路は図ったようにまっすぐと戦艦水鬼への衝突コース。

命中かと思われたタイミングだった!

ズドン!



タ級「どうにか、お役目果たせたようです。」

戦鬼「タ級!?」

タ級「戦艦棲姫様に胸を張って会いに行けます。」

タ級「後ろを振り返らずこのままお逃げ下さい。」

タ級「敵の艦影が見当たらない以上は潜水艦からの攻撃。」

タ級「立ち止まれば敵の思う壺です。」

戦鬼「タ級、ごめんなさい。」



その謝罪は曳航せず、置いていかざるを得ない事への物であり。



タ級「覚悟の上です。いえ、最後の奉公が出来てよかったです。」



タ級が戦艦水鬼を庇って被弾したのは伊58達にも見えていた。




637:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/01/01(火) 01:16:19.19 ID:ihf9M2Jd0


伊8「もう夜になるからもっと近付かないと視認出来ないよ!」

伊13「聴音襲撃だと敵艦隊の隊列が密だから聞き分けが困難です!」

伊8「どうする!?」

伊58「………。」

伊58「撤収でち。」

伊8「!?」

伊13「ここまで来てですか!?」

伊58「ゴーヤ達をアメリカへ送り出す為に

   提督は危ない橋を渡っているのは間違いない。」

伊58「わざわざ腕時計を餞別に贈って来た意味を考えろ。」

伊58「時間だ。」



敵艦隊の艦種までは判別出来ないほどに既に周囲は暗闇の中。

そして、敵勢力圏は直ぐそこ。

いや、既に内側に入っていておかしくない。

提督がなぜそこまでをしたのかを考えれば。

伊58が強い口調で撤退を言うのは当然ともいえる。




638:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/01/01(火) 01:17:57.83 ID:ihf9M2Jd0


伊58「もう一度言う。撤退。」

伊8「……、了解。」

伊13「了解しました……。」



提督が仕掛けた最後の罠はタ級の献身的犠牲により不発に終わった。

そして、明けて翌日、残敵の掃討終了、

当該海域での戦闘終結宣言がなされこの海域での戦闘は終了した。



一ヶ月後  88鎮守府 荷揚げ用埠頭


長門「こんな所にいたのか。」

提督「色々な処理がある程度落ち着いたんでな。」

提督「さぼりだ。」

長門「そうか。それでよかったのか?」

提督「よかったのか、というのは?」

長門「例の不正を行っていた鎮守府の提督連中は処分保留だそうだが?」

提督「首をほいほい挿げ替えられるほど人間が残ってないのさ。」

提督「お前が提督になるのを受けてくれていれば話は違ったんだがな。」


先の作戦時に島風が救援を求めて立ち寄った鎮守府の提督達は

救援を断った事、他にも色々とあった不正への処分は保留されていた。




639:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/01/01(火) 01:19:28.89 ID:ihf9M2Jd0


提督「だいぶ前の作戦のときに首を飛ばしすぎた。」

提督「これ以上飛ばすとなり手が居ないだとさ。」

長門「私はやらんよ。」

提督「艦娘でベテランの連中を

   提督へってのは前から少しずつは進められているんだがなぁ。」

提督「要件を満たせる奴がほとんどいない。」

長門「だから私はやらんよ。」

提督「分かってるよ。二度も繰り返すな。」

長門「大事な事だからな。」

提督「処分保留にして

   手綱を握っておいたほうがいいだろうと考えたらしい。」

長門「大丈夫なのか?」

提督「一応あの辺りの人事異動はやったそうだ。」

提督「例の救援にいった所な?

   あそこの提督は後ろに下げて不正をやらかしてた連中で

   一番階級の高かったやつらから近い順に最前線。」

長門「ははぁ。死にたくなければ頑張れよと。」

提督「あぁ、例の頑張った少佐は昇進して周辺に睨みを利かせる事が出来る位置に移動だ。」

長門「なるほどなぁ。」



640:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/01/01(火) 01:20:50.42 ID:ihf9M2Jd0


長門「ところで、教導の昔の部下だった娘から

   今回の救援作戦が艦娘養成学校の教科書に掲載されたと聞いたのだが?」

提督「月並みだがな。人の寿命は二つあるって奴だ。」

長門「肉体の、命が尽きたときと人の記憶から忘れ去られた時の二つだったな。」

提督「そうだ。島風が生きた記憶を。生き抜いてなした事を。」

提督「島風の自己犠牲の精神を真似ろとは言わないが、その高潔さを知って欲しい。」

提督「そして、皆の記憶の中に残れば、残っている間は島風も死んでいないだろ?」

長門「……、そうだな。島風は皆の心の中で行き続けるだろうな。」

提督「あぁ。」



そして少しの間があって長門がまた提督に話しかける。




641:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/01/01(火) 01:24:54.10 ID:ihf9M2Jd0


長門「グラーフやポーラが本国へ帰ると聞いたのだが。」

提督「今回俺たちは目立ち過ぎた。」

提督「グラーフに関しては

   それを面白く思わない連中が手を回してうちの弱体化を狙ったんだろ。」

提督「ポーラはもともと志願だ。契約が終われば帰るだろうさ。」

長門「他にも人員が抜けるようだが?」

提督「出る杭は打たれるのが世の慣わしだろ?」

長門「打たれるどころか引っこ抜かれそうな勢いだな。」

提督「今回は目立ち過ぎた。それだけだ。」

提督「日陰者は日陰者らしくしとけという事さ。」

長門「これから厳しくなるな。」

長門「我々は守れただけだからな。」

提督「それが理解出来ているお前はさっさと艦娘やめて提督になってくれよ。」

長門「だからならぬと言っているだろうが。」

提督「あー…、そうだったな、すまん。」

長門「………。」



そして、また、しばしの沈黙。



提督「………。なぁ、長門。」

長門「なんだ?」

提督「島風は死ななきゃいけなかったのかな?」

長門「止められたのに止めなかった事を悔いているのか?」

提督「お前は察しがいいな。」

長門「付き合いは長いからな。だが、それは、たら、ればだろう?」

提督「……、そうだな。議論するだけ意味の無い事だったな。」



そして、また間が空き提督が口を開く。



642:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/01/01(火) 01:27:35.47 ID:ihf9M2Jd0


提督「長門。煙草を吸ってもいいか?」

長門「……、あぁ、いいぞ。」



そして、一本取り出し。火をつける提督。



長門「……、鬼の目にも涙か?」

提督「ちげえよ。煙草の煙がな……。」

提督「煙草の煙が、目に染みただけさ……。」



人生の最後が幸せに迎えられたかどうか。

それを決められるのは本人だけだろう。

或る者は裏切られ、また或る者は金を稼ぐ為。

或る者は復讐を胸に誓い、或る者は世話になった者への忠誠を誓う。

ここは外地鎮守府管理番号88。

様々な艦娘達の人生が交差し、また離れていく場所でもある。

ここへ送られてくるのは人生が終わりの一方通行ではなく交差点である。

彼女達の活躍は仲間の心に、記憶に残る。

それだけで充分だろと彼女らは今日も出撃する。






続外地鎮守府管理番号88 完



643:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/01/01(火) 01:31:47.63 ID:ihf9M2Jd0

以上一年近く長々と続きました第二部完でございます
お付き合いいただき本当にありがとうございました、途中でネタやおまけなど色々脱線ありましたが…
最後までお付き合いいただき本当にありがとうございました
お読みいただいている皆様の乙レス、感想レスにやる気をいただきながらの作成でした
本当にありがとうございました、依頼を出しに行き、このスレは終了とさせていただきます
スレがあまっているのでボツネタの投下等に使うかもしれませんがその際は生暖かい目で見てやっていただけると幸いです
ではでは、本当にお付き合いいただきありがとうございました!



元スレ
【艦これ】 続 外地鎮守府管理番号88
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1520346267/
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         コメント一覧 (7)

          • 1. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2019年01月01日 13:00
          • 途中にあるオマケはまとめ無い方がよかったんでないかね?
            オマケ自体は面白かったのだけど
          • 2. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2019年01月01日 14:05
          • 乙、前回書いた不満が結構改善されたのは素直に好評価だね
            ただおまけというか外伝は別にまとめたほうが良かったかと
          • 3. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2019年01月03日 12:03
          • 5 おお、新作ですか。エリア88好きには堪らない作品で、この世界観も好きです。願わくば、続編を期待しております
          • 4. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2019年01月03日 16:14
          • 前作の時から何かが引っ掛かってたけど、ようやくわかった、この鎮守府マッ鎮に似てるんだ。シリアス寄りで提督がまともなだけで。
            あの筋肉が邪魔してなかなかつながらなかったな!
          • 5. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2019年01月03日 16:47
          • この人、変態提督も書いてたんだな···
            この海のどこかで変提がFooooooo!!!!!してる可能性があるのかと思うと胸が熱くなるな
          • 6. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2019年01月04日 03:44
          • おまけは分けた方が良かったのでは?
            等のコメも有りますが…
            ここの管理人がそんな事するわけ無いと思うわ
            作者が「間違えました。訂正します。>>○○は無しで」
            とか書いてても、削除もせずに
            それも纏めに載せちゃう様な管理人ですからw
          • 7. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2019年01月05日 17:42
          • エリ8だけではなく、唐突な鳥居強右衛門w

        はじめに

        コメント、はてブなどなど
        ありがとうございます(`・ω・´)

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