女店員「お済みのお皿、お下げいたします」男「帰れってことか?」
- 2018年12月30日 07:10
- SS、神話・民話・不思議な話
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男(ふぅー、食った食った)
男(あとはコーヒーをチビチビ飲みながら、ちょいと時間潰すか……)
女店員「お済みのお皿、お下げいたします」
男「……」
男「あのさ……」
女店員「?」
男「そりゃ帰れってことか?」
男「早く片付けたい事情も分かるけどさ、露骨にやられると気分悪いよね」
女店員「そうではありません、お客様」
男「なに?」
女店員「皿を下げるという行為は、もっとお客様にゆっくりして欲しいというメッセージなのです」
男「ど、どういうことだよ」
さすがに「えっ…」ってなった
ついでにコーヒー頼むかて思ったけどいつまでも来ないから帰った
女店員「うかつに肘をつくこともできませんし、ゆっくりしにくいでしょう?」
女店員「だから片付けていたのですが……誤解を招いてしまったのなら申し訳ありません」
男「あ、いや……こちらこそ。すいませんでした」
男「じゃあ、存分にゆっくりさせてもらいます」
女店員「ごゆっくりどうぞ」
男(そろそろ帰るか……)
男「店員さん、お会計お願いします」
女店員「……」
男「店員さん?」
女店員「もっとゆっくりなさったらよろしいではありませんか」
男「いや、だけど……もうコーヒーも空だし……」
男「!」ドキッ…
男「え、そうだったんだ! 料理から接客まで全部やるなんて大変だな!」
女店員「ですから、一人では寂しいのです。もっとゆっくりして頂きたいのです」
女店員「だから……ね?」
男「……」ゴクリ
男「わ、分かったよ! もうちょっとゆっくりしていこうかなー!」
女店員「ありがとうございます!」
男「結局、閉店まで居座っちゃったよ! すんませんね!」
男「じゃあ、そろそろ帰らせて……」
女店員「待って……」ガシッ
男「!」
女店員「レストランは閉店ですが、夜のレストランはここからですよ?」
男「……!」
女店員「ご注文は?」
男「それを口でいうのは野暮だろう?」
女店員「それもそうですね……」
男「一晩中たっぷりオーダーしてやるぜ!」
女店員「ドリンクバーだけというのはナシですよ?」
男「……」
女店員「……」
男「よかったよ」
女店員「私もです」
男「じゃあ、そろそろ帰――」
女店員「行かないで!」ガシッ
女店員「……」ギュッ
男「また、すぐここに来ると思うし……」
女店員「お願い……」
女店員「もっとゆっくりしていって……」
男「わ、分かった! 分かったよ!」
男「昨日に引き続きご馳走になっちゃって……」
男「だけど、そろそろマジで帰るよ。実はあまり持ち合わせがなくてさ」
男「このままじゃ無銭飲食になっちゃう」
女店員「かまいませんよ」
男「いや、タダ飯食らいはこっちとしても……」
女店員「でしたら、皿洗いでもして下さい。それなら良心も咎めないでしょう?」
男「じゃあ……そうさせてもらうよ」
男「……」ジャブジャブジャブ…
女店員「なかなかの手際です」
女店員「これならいくらでもご飯を食べて下さってかまいませんよ」
男「あ、ああ……」
ジャブジャブ… ジャブジャブ…
男(あー、結局……今日も閉店までいちゃったよ……)
男「今度こそ本当に帰らせて――」
女店員「待って……!」ガシッ
男「あのね、俺にも自分の生活が……」
女店員「帰らないで……!」
男「わ、分かった……分かったよ……」
三日目……
四日目……
五日目……
男(気が付いたら、一週間も経過していた)
女店員「すぅ……すぅ……」
男(ぐっすり寝てるな……)
男(よぉし、今のうちにとっとと出ていこう)
男(顔を合わすと、どうしても帰りづらくなっちゃうからな)コソコソ…
男(出口は……こっちだったっけ)コソコソ…
ドカァッ!
男「!?」
ビィィィィン…
男「ほ、包丁……?」
女店員「帰らないで……」
男「ひっ!」
女店員「帰られたら私、あなたに何をするか……」
男「あわわ……」
女店員「ごゆっくり、どうぞ……」
男「わ、分かった! 分かりましたぁ!」
男「……」ジャブジャブ…
男(出口は一つじゃないんだ……)
男(たとえば、あのキッチンの小さな窓から出れば!)ガラッ
女店員「あら、窓なんか開けてどうしました?」ヌウッ
男「うわっ!?」
女店員「どうしました?」
男「あ、いや……換気をしようと思ってね……ハハ」
女店員「でしたら換気扇をつけて下さい」
男「そうするよ、ハハハ……」
男(窓がダメなら地面だ!)ザクッザクッ
男(床ひっぺがして、地中から外に――)ザクッザクッ
女店員「土なんか掘ってどうしました?」
男「うわあああああ! 土の中から出てきたぁぁぁぁぁ!」
女店員「ごゆっくりどうぞ」
男「う、うん」
男(こうなったら警察だ!)
プルルルルル…
男「あ、もしもし警察ですか!」
男「あの、俺、あるレストランに軟禁されてるんです! 出ようとすると命の危険もあって……」
男「た、助けて下さい! お願いします!」
男「えぇっと、住所はですね……」
警官A「いやぁ、ここの料理はおいしいですねえ!」
警官B「まったくだ! こんなおいしい料理を作る人が軟禁なんてするはずがない!」
女店員「この人がお騒がせしまして……」
男「ハ、ハハハ……」
警官A「ごちそうさまでしたー」
警官B「おいしかったです!」
女店員「またいらして下さい」
男「ハハハ……ハハハハハ……」
男「……ああ」
男「……」ジャブジャブ…
ジャブジャブ… ジャブジャブ…
男(俺はもう……諦めた……)
子供「じゃあ、学校に行ってきまーす!」タタタッ
女店員「行ってらっしゃい」
男「俺が学校まで付き添っていこうか?」
女店員「いいのよ、あなたはここにいてくれれば」ガシッ
男「だよね」
父「うちの息子をもらってくれてありがとう」
母「この子ったら、あなたにご迷惑をかけてるんじゃない?」
女店員「いいえ、いつも皿洗いを手伝ってくれてるんですよ。ねえ?」
男「ああ、なんだったら俺の腕前見せようか?」
男(だけど、俺は未だにレストランから一歩も外に出られていない)
男(でないと……)
男(あなたも一生帰れなくなり、皿洗いするはめになるかもしれないから……)
― 終 ―
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コメント一覧 (12)
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- 2018年12月30日 09:26
- ※1
そんなことを言う奴なら帰ってほしいに決まってるよな
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- 2018年12月30日 09:42
- >皿洗いだけで一生養ってもらえるなら喜んでするわ
店から一歩も出られないとかいう、とびっきりの糞条件付きなんだよなぁ
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- 2018年12月30日 11:27
- ねー、お兄ちゃんたちはどうして監禁されてないのにお部屋から出ないの?
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- 2019年01月02日 18:52
- >>4
ディスプレイの中の女たちから監禁されているんだよ
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- 2018年12月30日 11:43
- 世にも奇妙でありそうだけどそうでもない
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- 2018年12月30日 16:13
- 別に皿片付けられるだけでそんなこと思わんが…長居するなら店員呼んで飲み物とか追加で頼むし
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- 2018年12月30日 16:50
- タイトルから漂う男のアスペ感
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- 2018年12月30日 19:13
- うらやま
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- 2018年12月31日 08:00
- 警察が無能すぎワロタ
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- 2018年12月31日 14:59
- ss関係ないけど、ちょっと腹減ってきたな。たまには外食でもするか
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- 2019年01月06日 21:47
- 子供が、まだ食ってる途中でしょうがっ!
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なんか凄くムカつく態度してんな、この客