【艦これ】駆逐戦隊!ショキカンジャー!!改【前半】
吹雪「吹雪レッド!」
叢雲「叢雲ブラック!」
漣「漣ピンク!」
電「電イエ口ー!」
五月雨「五月雨ブルー!」
吹雪「五人そろって!」
五人「駆逐戦隊!ショキカンジャー!!」
バァァァァァァァァァァァァァァン!!!
駆逐戦隊!ショキカンジャー!!【前半】
駆逐戦隊!ショキカンジャー!!【後半】
をリメイクしようと思って建てたスレです
当時私がほとんど戦隊を知らなかったことや、話を行き当たりばったりで考えていたことを思い返し、書き直したくなった次第です。
話の大筋は変わりませんが、設定や会話の内容が割と変わります。特に最後の方は変わると思います。
前の方がよかった、という方もでてくるかもしれませんが……まあ、勘弁してください。
そんなこんなで自己満足で書いていくSSですが、それでもいいという方、どうぞよろしくお願いします。
(リメイク前を知らなくても大丈夫なので、新しく見に来てくれた方も是非読んでみてください。)
吹雪「はぁ……」
叢雲「何それ?」
漣「だーかーら、戦隊モノだよ!戦隊モノ!」
漣「面白そうじゃん!?」
電「せ、戦隊モノ、ですか?」
五月雨「私たちで戦隊って言ったら、別のになっちゃうんじゃ……」
漣「あー……まあ、それはそれ、これはこれということで……」
吹雪「第七駆逐隊でやればよかったんじゃないの?」
漣「うーん、それも考えたんだけどねぇ……」
漣「やっぱり戦隊って言ったら、五人いたほうが良いと思いまして!」
叢雲「四人構成の戦隊だっているんじゃないの?よく知らないけど」
漣「いやあ、いるけどさぁ……最終的に五人になるし」
漣「んで、漣と関わりのある五人って言ったらこうかなーと」
電「そういえば、この五人はこの鎮守府に初めて配備されたメンバーなのです」
五月雨「だから『ショキカンジャー』なの?」
漣「イエス!」
五月雨「具体的には、何をするの?」
漣「うっ!!え、えーと……」
叢雲「……考えずに発案したの?」
漣「さ、サーセン……」
叢雲「はぁ……あんたの計画性のなさには呆れるわ」
漣「うぅ……何も言えねぇ……」
吹雪「そ、そもそも私たち、やるって言ってないけど」
漣「わかってる!わかってるけど待って!もう少し話を聞いてよ!」
吹雪「うーん、でも……」
漣「このダイスオーのカードあげるから!」スッ
吹雪「いや、要らないよ……」
五月雨「ま、まあ、いいんじゃない?すごくやりたいみたいだし、もう少し聞いてあげようよ」
電「今日はみんなお休みですし、せっかくだから聞くのもいいと思うのです」
叢雲「暇つぶしにはなりそうだし、私も聞いてあげるわ」
吹雪「……そうだね。漣ちゃん、もう少し聞くよ」
漣「うぅ……みんなの優しさが五臓六腑に染み渡るぜ……」
電「あの、いいですか?」
漣「はい、電ちゃん!」ビシッ
電「戦隊モノ、ということは、敵となる悪の組織がいると思うのですが……」
叢雲「確かに、敵がいないとお話にならないわね」
五月雨「私たちの敵って言ったら……深海棲艦?」
吹雪「でもそれいつもとやってること変わらないよ?」
漣「うーん、いきなり難しい問題が来ましたねぇ」
電「どうするのです?」
漣「深海棲艦と戦うときに、戦隊風に戦う、というのもアリですが……」
漣「確実に怒られてしまうのでそれはナシの方向で」
叢雲「そりゃそうね」
五人「う~ん……」
吹雪「敵って言ってもねぇ……」
電「思いつかないのです……」
叢雲「やっぱりこの話やめない?」
漣「ちょ、ちょっと待ってくださいよー?もうちょっと考えてよ?」
漣「何かないの!?具体的な敵じゃなくてもいいから何か言ってよ!何かヒントになるかもしれないし!」
漣「最近あった変わったこととか、昨日の晩御飯とかでいいからさー!」
吹雪「昨日はカレーだったねぇ」
電「おいしかったのです」
漣「本当に言うんじゃねーッ!頭脳が間抜けか!?テメーら!!」
叢雲「どっちなのよ……」
漣「ん!何何!?五月雨ちゃん!」グイグイ
五月雨「うわっ!?え、えっと、大したことじゃないんだけど……」
五月雨「最近、鎮守府で変わったことが起きてるらしいよ」
吹雪「変わったこと?」
五月雨「うん。夕張さんと明石さんの工具がなくなったり、屋根裏や床下から変な音が聞こえたり」
五月雨「時々地響きが聞こえたり、資材が急になくなったりするって……」
叢雲「最後のは大型艦建造しすぎてるからじゃないの?」
五月雨「そうかもしれないけど、とにかくそういうことが最近頻繁に起こるらしいよ」
電「そういえば、電もこの間変なものを見たのです」
五月雨「どんな?」
電「港に、小さな黒い物体が浮かんでたのです。もう一度見たら消えてたので、見間違いと思ったのですが……」
叢雲「潜る練習してたまるゆじゃなくて?」
電「まるゆさんは白いから違うと思うのです……」
電「それに……小さいといっても、大人の人くらいの大きさでした」
五月雨「提督には報告したの?」
電「はい。一応報告して、軽く調べてもらいましたが……特に変わったものはなかったそうなのです」
吹雪「うーん……どう思う?漣ちゃん」
漣「間違いねぇ、奴の仕業だ」
叢雲「誰よ、それ」
漣「乾巧ってやつの……」
叢雲「ぶっ飛ばすわよ」
五月雨「でも、戦隊モノの敵とは関係ないよね……」
漣「いや!きっとこれは裏で悪の組織が関係しているに違いない!」
吹雪「そうなの?」
漣「漣の中のゴーストがそう囁いている!」
叢雲「半分やけくそでしょ、あんた」
漣「開眼!オレ!!」キリッ
吹雪「え、そっちのゴースト?」
漣「えー、では、ショキカンジャーの目的として、『敵につながるかもしれない異常現象の解明』が提示されました」
電「それは戦隊というか……」
五月雨「探偵っぽいよね……」
漣「いいのいいの!細けぇこたぁ気にすんな!」
漣「ちょ、置いとかないで」
叢雲「そうね。電が見た黒いのとか、もしかしたら深海棲艦が関わってるかもしれないし」
五月雨「じゃあ、今から調べてみる?」
電「そうするのです」
漣「あのー、ちょっと…えー、ちょっと待ってー…」
吹雪「どうしたの漣ちゃん?来ないの?」
漣「……あー!もう!わかったよ!戦隊の話はあとにするよ!」
吹雪「とりあえず電ちゃんの言ってた黒い物体を探しに来たけど……」
叢雲「特に何もないわね」
電「たしか、このあたりだったのですが……」
電「本当に見間違いだったかもしれないですし、そうじゃなかったとしても、今日も現れるとは限らないですから…」
五月雨「まあ、念のためもう少し調べてみようよ。他にすることもないし」
漣「戦隊の話はー?」
叢雲「もう少し内容を考えてから話しなさい」
漣「ぶー」
五月雨「そうだね、じゃあ…」
電「!!み、みんな!あれなのです!!」
四人「!!」バッ
黒いの「……」プカプカ
電が指さした先には、謎の黒い物体が浮かんでいた!
叢雲「ただの漂流物……ではなさそうね」
電「間違いないのです……この前見たのと同じなのです!!」
漣「どうする?吹雪ちゃん」
吹雪「様子を見よう……みんな、目を離しちゃだめだよ」
五人「……」
黒いの「……」スッ
叢雲「……!?消えた!?」
吹雪「っていうか……沈んだ?」
五月雨「不自然だね、あんな風に急に沈むなんて」
電「もしかして、前に見た時もこうやって見失って……」
黒いの「……」スッ
漣「ありゃ?」
さっきとは違う、少し離れた場所に黒い物体が浮かんできた
五月雨「あれ、また浮かんできた?」
叢雲「でも別の場所……何、移動してるの?」
黒いの「……」スッ
吹雪「あ、また沈んだ」
黒いの「……」スッ
電「また別の場所で浮かんできたのです」
漣「つーことは何?生き物?」
電「なのでしょうか……」
叢雲「生き物だとしたら何なの、あれ?」
吹雪「さあ……」
漣「……とりあえず、追う?」
五月雨「だね」
電「ずっと海辺に沿って追ってきましたが……」
電「鎮守府の敷地の端っこまで来ちゃったのです」
叢雲「本当何なのアレ……」
五月雨「どこまで行く気だろうね」
吹雪「うーん、さすがに敷地外まで追うのはまずいかなあ?」
叢雲「このままだと森に入っちゃうわよ」
漣「へーきへーき。このまま五人でバックレようぜ!」
五月雨「えぇ……」
バシャッ
吹雪「ん?」
叢雲「…なんか、アレこっちに近づいてきてない?」
電「ほ、本当なのです……こっちに来てるのです」
バシャッ バシャッ
漣「……今更だけど、やばいもんだったらどうする?」
五月雨「や、やばいもんって?」
漣「……ゴジラとか?」
叢雲「んなわけないでしょ」
吹雪「……みんな。念のため、離れておいて……」
吹雪(……謎の黒い生き物……)
吹雪(一体何なの……?)
ザパァッ
五人「!!」
五人「……!?」
イ級?「イーッシッシ……」
駆逐イ級の被り物?をした、全身黒タイツの男が現れた!
五人「……」
イ級?「まったく、ここまで来るのも一苦労だイー。疲れるイー」
吹雪「……何あの不審者」
電「と、とっても怖いのです」
イ級?「さて、今日の残りの仕事を……ん?」
イ級?「!!か、艦娘だイー!見つかったイー!!」
五月雨「き、気づかれちゃった!どうしよう?」
叢雲「落ち着きなさい。とりあえず、艤装はあるんだから、いざとなればそれで・・・…」
漣「え、それ死ぬのでは?」
叢雲「正当防衛よ。問題ないわ」
漣「あれがもしイ級のコスプレしたご主人様だったら?」
叢雲「全く問題ないわね。不審者であることには変わりないもの」
漣「Oh…」
電「こ、こっちに来たのです!」
吹雪「えーい、仕方ない!みんな、撃ち方用意!!」
ジャキンッ!
吹雪「撃ち方始めぇー!!」
ドォォォォォォォォォン! ドォォォォォォォォォン! ドォォォォォォォォォン!
漣「やったか!?」
叢雲「ちょ、なんで自分からフラグ立てていくのよ」
漣「だいじょーぶだって、深海棲艦でも駆逐艦くらいだったら、今の攻撃を喰らったらただじゃ……」
シュゥゥゥゥゥゥゥ……
イ級?「イーッシッシ……そんなものかイー?」
イ級?は、攻撃を喰らったにもかかわらず、何事もなかったかのように立っている!
叢雲「んな……!」
漣「さ、漣のせいじゃないよね?ね?」
ジャキンッ!
ドォォォォォォォォォン! ドォォォォォォォォォン!
イ級?「イーッシッシ、無駄だイー。お前たちの攻撃はこのイーには通らんイー」
電「そ、そんな…!」
吹雪(攻撃が全く効いてない……?確かに当たってるはずなのに……!)
吹雪「……ん?」
イ級?「……」プルプル
吹雪「あ、効いてないわけじゃないんだ」
叢雲「やせ我慢してるだけだわ」
漣「脚めっちゃ震えてるし」
イ級?「……イー……」
五月雨「っ!!でも、やっぱりあんまり効いてない!またこっちに向かって来るよ!」
叢雲「ええい、だったらもう一発……」ジャキンッ
イ級?「イーッ!!」ダダダッ
吹雪「!!だ、駄目だよ叢雲ちゃん!距離が近すぎる!こっちも危ないよ!」
叢雲「……っ!だったらどうすんのよ!」
吹雪「ここは一旦逃げよう!鎮守府に戻って誰か呼んで……」
イ級?「イーッ!!」
電「ふ、吹雪さん!危ないのです!!」
吹雪「!!」
ドゴォッ
吹雪「ぐあっ……!」
イ級?「貴様らは艤装が使えなければ、ただの小娘と同じだイー」
吹雪「ぐっ……」ヨロッ
吹雪(確かにそうだ……このままじゃまずい……!)
イ級?「このまま死んでもらうイー!」ブォンッ
吹雪「!!」
叢雲「吹雪!」
五月雨「吹雪ちゃん!」
電「吹雪さん!」
ブオッ
吹雪(!ダメ、当た……)
漣「漣キィーック!!!」
ドゴォォォォォォォォォォォォォッ!!!
イ級?「イーーーーーーーーーーーーッ!!??」ドザァッ
四人「!?」
吹雪「漣ちゃん!?あ、ありがとう……」
漣「気を付けて、まだ来るよ!」
イ級?「イテテ……こ、この小娘が……!」スクッ
吹雪(どういうこと……?艤装での砲撃より、さっきの漣ちゃんの蹴りの方が効いてた……)
吹雪(よ、よくわからないけど、普通の打撃の方が効くってこと?とりあえず、漣ちゃんに倣って、私も……!)
吹雪「えーい!!」ブンッ
ドゴォッ!
吹雪のパンチがイ級?の顔面?に当たった!
吹雪「よし、これで…!」
イ級?「…」
吹雪「…あれ?」
吹雪「うわっ!」シュバッ
イ級?「こんなもん効くわけないイー!調子乗ってんじゃないイー!!」
吹雪「えぇ!?な、何で!?」
漣「あー、違うよ吹雪ちゃん」
吹雪「え?」
漣「技名叫ばないと」
吹雪「わ、技名?」
漣「そう。漣もさっき叫んだじゃん。『漣キック』って」
吹雪「え?ちょ……え?」
吹雪「いやいや……そんなこと言われても」
イ級?「イーッ!!」ダダダッ
吹雪「って、漣ちゃん、危ない!」
漣「ほぁ?」
イ級?「さっきはよくもやってくれたイー!お前から殺してやる、イーッ!!」ブンッ
吹雪(わ、技名って何?よくわからないけど……)
吹雪(でも、このままじゃ漣ちゃんが……!)
吹雪「えーい、ままよ!」ザッ
ドゴォォォォォォォォォォォォォッ!!!
イ級?「イーーーーーッ!!!」ドガァッ
吹雪「あ、効いた」
漣「ね?言った通りっしょ?」
叢雲「え?私もやるの?」
漣「ほらほらなんでもいいからー」
叢雲「……えーい、仕方ないわね!」ダダッ
イ級?「イ……イ?」ムクッ
叢雲「叢雲アッパー!!」
ドガァァァァァン!!
イ級?「イーーーーッ!!」ボコォッ
叢雲のえぐりこむようなアッパー!素人なら一発でノックダウンだ!
漣「はいはい、次、五月雨ちゃーん!」
五月雨「え!?えっと、えーっと……」ダダッ
イ級?「ぐふぅ……た、助けて……」ビクビク
五月雨「さみだ…うわぁっ!?」ツルッ
五月雨「さ、五月雨……スマッシュ!!」バキィッ
イ級?「イッーーーー!!??」
五月雨はイ級?の手前で転び、そのまま一回転して踵落としを喰らわせた!
漣「じゃあ、ラスト!電ちゃーん」
電「は、はわわ!え、えーと……」ダダッ
イ級?「ひぃっ!許してください!今ので腕と足が折れました!再起不能です!動けませーん!」
叢雲「嘘でしょ」
イ級?「まあね」
電「い、電……ダイナマイト!」ビュンッ
イ級?「えっ」
電のお得意技(衝突)が決まった……
ドゴォォォォォォォォォォォォォ……
──────
───
電「うぅ……痛いのです」ヒリヒリ
叢雲「強力だけど、危険な技ね……」
イ級?「イ……」ビクビク
吹雪「で、どうしよう?この人」
五月雨「とりあえず、工廠にでも拘束してもらって、提督に報告しようか」
吹雪「そうだね」
吹雪「え?いや、私たちはただの…」
漣「のんのん、吹雪ちゃん。そこはアレですよ、ア・レ」
吹雪「アレ?」
漣「ほら、最初に説明した奴」
吹雪「あー……あれ?え?今やるの?」
漣「うん。本当は戦う前にやる奴だけど、まあ……今回はいいでしょ」
叢雲「え、本当にやるの?」
漣「いーじゃんいーじゃん!!やってよー!!ねーみんなー!!」ジタバタ
五月雨「そ、そこまで言うなら……」
電「少し恥ずかしいですが、電はいいのです」
叢雲「……仕方ないわね、付き合ってあげるわ」
吹雪「……わかったよ、今回勝てたのは、漣ちゃんのおかげだもんね」
漣「よーし、じゃーいきましょー!」
吹雪「吹雪レッド!」
叢雲「叢雲ブラック!」
漣「漣ピンク!」
電「電イエ口ー!」
五月雨「五月雨ブルー!」
吹雪「五人そろって!」
五人「駆逐戦隊!ショキカンジャー!!」
バァァァァァァァァァァァァァァン!!!
イ級?「イッ、イッーーーーーー!!?」
ドカァァァァァァァァァァン!!!
漣「あ、爆発した」
吹雪「え、何で!?」
電「えっと……あの……」
叢雲「……」
五月雨「……どうしよう、これ」
吹雪「……とりあえず、司令官に報告しに行こうか」
提督「なるほど。大体わかった……」
提督「お手柄だったな、五人とも」
吹雪「え、こんな話信じてくれるんですか?」
提督「お前たちが五人そろってそんなよくわからない嘘つくわけないだろ」
叢雲「そりゃそうね……」
漣(うひょっ!!これってもしかしてご主人様騙し放題!?)
提督「……漣だけならやりそうだがな」
漣「えぇ!?」
提督「イ級の頭の謎の男、その男への攻撃方法が、技名を叫んでの物理攻撃……」
電「そういえば、どうして漣さんは気づいたのです?」
漣「うん?」
五月雨「最初に攻撃したのって、漣ちゃんだよね」
漣「あー、あれはね……正直思い付きなんだけど……」
漣「ほら、ずっと戦隊モノの話してたじゃん?んで……」
漣「……あの不審者、戦闘員にしか見えなくてさ……」
四人(……確かに)
叢雲「技名を叫んで攻撃するのが、戦隊モノと関係あると?」
漣「まあ、それはヒーローもの全般に言えるね。ライダーとか」
漣「さすがに攻撃するごとに技名叫ぶ人はいないけどさ」
漣「で、まあ考えたことがあるんですが……」
提督「何だ?」
漣「……何で爆発したかよくわからないけど、もしかしたら……」
漣「戦隊モノ……ていうか、ヒーローもののノリで戦ったら、倒せる相手ってことなんじゃ……」
一同「……」
吹雪「……まあ、そうなるよね」
叢雲「否定できないわ……」
提督「……」
提督「……その男は、何度も来ているようなことを言っていたんだよな?」
五月雨「はい。『今回もうまく乗りこめた』って……」
電「あと、何かここでやっているようなことを言っていたのです」
提督「なるほど……」
提督「……完全に、仮説なんだが……」
提督「その男の出現と、最近鎮守府で起きている異常現象……なにか関わりがあるかもしれん」
五人「!!」
提督「吹雪、叢雲、漣、電、五月雨」
提督「お前たちにはしばらく、普通の艦娘としての任務から外れてもらう」
吹雪「え!?」
提督「その代わり、特別な任務を与える」
提督「その男の仲間の正体、異常現象の原因を探り、必要があれば撃滅せよ。いいな?」
五人「……!」
五人「……はいっ!」ビシッ
提督「よし、こちらからもできるだけサポートはする。頑張ってくれ」
──────
───
「あら、こっちの動きがバレちゃったのね」
「……できるだけ見つからないようにするよう言っていたんですがね」
「まあ仕方ないわ。いつかはそうなると思ってたし」
「それに、まだこちらのやっていることが全部バレたわけじゃないわ」
「今まで通りやるよう、他の子たちにも伝えておいて」
「はい、了解いたしました」
「……フフフ」
「『ショキカンジャー』、ねぇ……」
──────
───
吹雪「まさかこんなことになるなんて……」
漣「ヨッシャー!!戦隊結成キタコレ!!」
叢雲「こいつの思い通りになってしまったわね……」
五月雨「まあ、いいんじゃないかな。私は楽しそうだと思うよ」
電「電も、なんだか楽しくなってきたのです」
漣「お、二人も戦隊の良さに気が付いた?」
叢雲「……ま、こうなったからには、最後まで付き合うわよ」
吹雪「よし、みんな、頑張ろう!」
漣「吹雪ちゃん、お願いします」
吹雪「え!?何で私!?漣ちゃんじゃないの!?」
漣「だってほら、レッドだし。漣はピンクだし」
吹雪「わけわかんないよー!」
叢雲「いいんじゃない?リーダー」
電「よろしくなのです、リーダー」
五月雨「頑張って、リーダー!」
吹雪「みんなまでー!うう……」
吹雪「わかったよー!やるよ、リーダー!」
漣「おお、それでこそ吹雪ちゃーん!」
吹雪「駆逐戦隊、ショキカンジャー!頑張るぞー!!」
五人「おー!!」
第一話「結成!ショキカンジャー!!」 艦
リーダーのレッド、吹雪です!
まさかこんなことになるなんて……でも、司令官から任せられた任務、全うして見せます!
それにしても、戦隊かぁ……必要なものがたくさんあるよね
拠点に武器、戦闘服……どうする気なのかな?漣ちゃん
え?考えてない!?ちょっとー!しっかりしてよー!
次回、第二話「変身したい!」
次回もまた、見てくださいね、司令官!
吹雪「えー、それでは…」
吹雪「第二回、ショキカンジャー会議を始めます」
ワーワー ドンドン パフパフ
吹雪「……漣ちゃん、それやめようか」
漣「おっと失敬」
叢雲「で、何を話し合うの?」
吹雪「うん。とりあえず、今後どうするか、具体的なことを決めようと思って」
電「具体的なこと……ですか」
五月雨「戦隊に必要な物をそろえるとか?」
吹雪「そうそう、そういうの」
吹雪「で、何が必要かっていうので……何か案はない?」
五月雨「戦隊って言ったら……基地があるよね」
電「そうなのです。拠点が必要なのです」
吹雪「ああ、それに関しては、司令官が用意してくれたよ」
五月雨「え、本当!?」
電「はわわ……何だかすごそうな予感なのです」
叢雲「どこにあるのよ、それ」
吹雪「ここだよ」
四人「えっ」
吹雪「ここ」
漣「……えーっと、ここっていうのは……」
吹雪「うん。この六畳の、ちゃぶ台、座布団、ホワイトボード備え付きの部屋」
四人「…」
五月雨「うん、鎮守府内じゃ使えるところも限られるし」
漣「あ~、なんか変なコンピュータがいっぱい並んでたりする近未来的なの想像してたんだけどな~」
電「でも急なことですし、そんな大きな拠点である必要もないでしょうから、ここで十分なのです」
吹雪「そういうことだね。用意してくれるだけありがたいからね」
漣「ロマンがないよロマンがー!!」ジタバタ
五月雨「でもこういうののほうが落ち着くんじゃないかな」
叢雲「そうね。漣はもうちょっと落ち着きなさい」
漣「うぅ……」
漣「ま、いっか。最近はこういうのも多いし」ケロッ
四人(いいのかよ……)
吹雪「じゃあ次は……」
五月雨「あ、ちょっといい?」
吹雪「どうしたの?五月雨ちゃん」
五月雨「昨日の敵との戦いについて考えたことがあるんだ」
叢雲「戦い?戦隊らしいことをすればいいんでしょ?」
五月雨「そう。戦隊のノリで戦えば倒せるっていうのが、昨日の結論」
五月雨「それで、昨日は技名を叫びながら攻撃したよね」
漣「しましたねぇ」
五月雨「でも、昨日は敵が一人だったからよかったけど、敵が大勢だったら……」
電「……いちいちそんなことしてたら隙だらけなのです」
五月雨「で、さらに考えたことがあります」
漣「ほほう」
五月雨「『戦隊らしさ』、これが戦いのキーになるんだけど……」
漣「はい!はい!」
五月雨「ん?どうしたの?」
漣「その『戦隊らしさ』を『戦隊パワー』と名付けることを提案します!」
電「え?せ、戦隊パワー?」
叢雲「心底どうでもいいけど……」
五月雨「あはは……わかったよ」
吹雪「昨日の私たち?」
叢雲「普通に艤装つけてただけね」
五月雨「そう。どう考えても戦隊、もといヒーローじゃないよね」
五月雨「艤装で戦ってた時の私たちの戦隊パワーは0」
五月雨「でも、技名を叫んで戦ったことで戦隊パワーが生まれた」
五月雨「つまり、普通の格好じゃ、そのくらいしないと戦隊パワーは生まれないってことだと思う」
電「ということは、つまり……」
吹雪「戦隊らしい格好だったら、常に戦隊パワーが生まれて、技名をいちいち叫ばなくてもいいんじゃないかってことだね」
叢雲「でも、正直まだ戦隊らしさ……」
漣「戦隊パワー」
叢雲「……戦隊パワーが本当にかかわってるかわからないのよね」
五月雨「うん。問題はそこなんだよね」
電「でも、他に手がかりもないですし……」
吹雪「次に敵と遭遇した時、いろいろ試してみようよ。いざとなったら昨日みたいに戦えばいいし」
叢雲「そうね。他にどうしようもないし」
漣「ということは五月雨ちゃん。あれですか?」
五月雨「ん?」
漣「『変身したい』ってことですか?」
五月雨「…まあ、そういうこと、かな?」
漣「ヨッシャー!燃えてキター!」ボォォォォ
五月雨「え!?ええ!?」
電「確かに、今の話の流れからするとそうなりますが……」
叢雲「テンション上がりすぎなのよ、漣」
漣「おっと失敬失敬」
漣「いやー、漣も変身がしたかったんですよー」
漣「変身しなくても戦える戦隊はいるけど、全く変身しない戦隊なんていないからね!」
漣「さすが五月雨ちゃん!よくわかっていらっしゃる!」
五月雨「あ、あはは……」
吹雪「それにしても、変身か……」
電「本当に変身しなくても、スーツは必要ですよね」
叢雲「じゃあ誰かに頼んで……」
漣「あ、そこで漣から提案です」
吹雪「何?」
漣「戦隊モノの、博士ポジの人を提案したいと思います!」
吹雪「は、博士?」
漣「協力者として、博士ポジの人が出たりするんですよ」
叢雲「はぁ……」
漣「無難なとこで、夕張さんと明石さんかなーと」
叢雲「まあ、その二人くらいしか思いつかないわね」
吹雪「じゃあ、その変身の話を持って、二人に頼みに行こうか」
電「引き受けてくれるでしょうか……」
漣「大丈夫っしょ。特に夕張さんは五月雨ちゃんが頼めば一発!」
五月雨「え!?何で私!?」
吹雪「あー、夕張さん五月雨ちゃんに甘いもんねぇ」
叢雲「明石さんも電がいれば大丈夫でしょ」
電「な、なんで電なのです!?」
叢雲「あんたに頼まれたら断りづらいのよ……」
三人(確かに……)
電「?」
夕張「何!?」キラキラ
明石「戦隊ですって!?」キラキラ
夕張「それで変身アイテムがほしい!?」
明石「ほうほう!!」
夕張・明石「よーし!お姉さんたちに、まっかせなさーい!!」グッ
五人「……」
吹雪「まあ、思った以上にスムーズに話が通ってよかったね」
電「あ、あの、本当に変身しなくても、スーツだけでもいいので……」
夕張「えー!?やだやだー!」
明石「つーくーりーたーいー!!」
叢雲「子供か」
明石「急に敵が来たときとかどうするのー?」
叢雲「まあ、そうねぇ……」
五月雨「ほ、本当にできるんですか?変身アイテムなんて……」
明石「当たり前よ!私たちを誰だと思ってるの?」
漣「おー、頼もしい限りですな」
夕張「じゃあ二、三日後くらいでいい?」
吹雪「はい。では、お願いします」
吹雪「うーん、そうだねぇ……何もしないでいるのもどうかと思うし」
叢雲「だったら、鎮守府の異常現象を調べてみましょう」
漣「おー、そんなものもありましたなぁ」
五月雨「ていうか、最初の目的それだったよね」
吹雪「えーっと確か……」
・工具がなくなる
・屋根裏や床下から変な音
・地響きが聞こえる
・資材がなくなる(提督のせい?)
漣「……ん?工具がなくなる……?」
五人「……」
工廠のほうからの声「ぎにゃーーーーーーーーー!!!」
五人「!!」
吹雪「どうしたんですか!?二人とも!!」ダダッ
夕張「もうだめだ、おしまいだぁ……!」
明石「こんな、こんなこと……!残酷すぎる……!」
叢雲「……工具がなくなったの?」
夕張「うん……」グスン
明石「これじゃ、変身アイテムが作れないよぅ……」
電「それは困ったのです」
夕張「今回が最後の予備だったんだよね……」
明石「うん。ここに……」
叢雲「……ちゃんと工具箱とかにしまって、鍵かけた?」
夕張・明石「」ギクッ
五人「……」
夕張「わ、わかってはいるんだけど……最近盗まれること多いし」
明石「作業してると、ついしまうのが面倒になっちゃって……」
漣「うわぁ……これは言い逃れできないですね」
夕張・明石「うう、申し訳ない……」
夕張「ついさっきよ。あなたたちが来る、ほんの数分前」
吹雪「じゃあ、犯人はそう遠くまで行っていないはずです。探してみます!」
明石「うう、ありがとう……」
電「次からはちゃんと工具は管理するのです」
夕張・明石「本当に申し訳ない……」
漣「いやー、何だかRPGみたいになってまいりましたなー」
叢雲「あー、何か面倒くさいお使いクエストね」
五月雨「でもどうするの?」
電「遠くに行ってないとは言っても、犯人が誰かわからないのです……」
叢雲「え?昨日のアレみたいなやつじゃないの?」
漣「いやいや、あんなのいたら目立つっしょ」
叢雲「そういえばそうね……確かに、鎮守府内には現れないか……」
吹雪「そうだね。見るからに不審者がいたら騒ぎになるもん」
吹雪「……つまり、『その辺にいても怪しくない人』が犯人ってことだと思う」
五月雨「……それって」
吹雪「うん……」
吹雪「艦娘の中に、犯人がいる」
吹雪「司令官が犯人だったら、わざわざ私たちにこのことを調査しろ、なんて言わないと思うよ」
五月雨「……でも誰が、どうしてそんなことを?」
叢雲「……盗むくらいだから、まともな理由じゃないでしょうね」
吹雪「考えても仕方ないよ。とりあえず……」
???「おや、皆さんどうかしたんですか?」
吹雪「あれ、青葉さん」
青葉「どもー!恐縮です!青葉ですー!」
青葉「いやー、古鷹さんから逃げてきまして……とりあえずこの工廠裏に」
五月雨「また何かやったんですか……」
電「あの、このあたりで、怪しい人を見ませんでしたか?」
青葉「怪しい人、ですか?」
吹雪「はい。挙動不審だったり、何か運んでたり……」
青葉「……何かを運んでそうな人なら見ましたよ」
吹雪「!?だ、誰ですか!?」
青葉「白雪ちゃんが鞄を持ってました」
叢雲「白雪が……?」
青葉「その白雪ちゃんも、最近鞄を持ってるのをよく見るので、別段怪しいと思ってませんでしたが。鞄もあまり大きくないですし」
吹雪「最近、ですか……」
古鷹「あー、いたいた!青葉ー!!」ダダッ
青葉「げっ!見つかりました!では皆さん、これでー!」シュバッ
漣「……行っちゃいましたな」
電「吹雪さん……」
吹雪「……探してみよう、白雪ちゃんを」
吹雪「そんなの持ってるの見たことないよね」
漣「でも最近持ってるのを見るって言ってたよ?」
電「誰も気づかないなんて……おかしいのです」
五月雨「……いや、おかしくないと思う」
吹雪「え?」
五月雨「さっきの工廠裏……人があんまり来ないって言ってたよね」
叢雲「そういえばそうね」
五月雨「隠密行動するなら、人通りが少ないところを通るのは当たり前だよね」
漣「なるほど。つまり、白雪ちゃんは鞄を持ってるときは、人通りが少ないところを通る、と」
電「では、人通りが少ないところをたどって行けば……!」
叢雲「……まだ、白雪が犯人って決まったわけじゃないのよ」
五月雨「……ごめんね」
叢雲「……いえ、そういうつもりじゃなかったの、ごめんなさい」
吹雪「……急ごう、みんな」
──────
───
漣「く~みつからね~!!」
叢雲「どこに行ったのよ、あの子……!」
電「つ、疲れたのです……」
五月雨「このままじゃ……」
吹雪「!みんな、あれ!」
四人「!!」
白雪「……」
白雪は、人がほとんど通らない道を隠れるようにして歩いている
吹雪「……鞄を、持ってる」
叢雲「こんなところで……何やってるのかしら」
電「隠れて様子を見るのです」
白雪は途中で立ち止まり、鞄を道のわきに置いた
白雪「……」スタスタ
五月雨「……行った?」
漣「行ったね」
吹雪「……鞄、見てみようか」
バッ
五人「……!」
鞄の中には、いくつかの工具が入っていた
叢雲「……吹雪」
吹雪「……とりあえず、持って帰ろう」
漣「あー、待って待って」
吹雪「?」
漣「中身だけ持って帰って」
電「え?鞄は置いていくのです?」
漣「うん。で、中に石を詰めて置く」ヒョイヒョイ
漣「よーし、これでオッケー!」
四人「……?」
夕張「ヒャッハー!新鮮な工具だー!」
明石「ありがとう、みんな!」
吹雪「いえ……」
叢雲「……」
電「あの、では、よろしくお願いします」
夕張「うん!任せといて!」
吹雪「……」
叢雲「……吹雪」
叢雲「何か理由があるはずよ」
吹雪「……そうだよね」
叢雲「信じるのよ、白雪を」
吹雪「……ありがとう、叢雲ちゃん」
五月雨「鎮守府のはずれ……昨日のあの黒い人と戦ったあたりまで行ってたよね」
漣「ふふっ、それは明日探りましょう」
四人「……?」
漣「あ、吹雪ちゃん、白雪ちゃんと同じ部屋だったよね?」
吹雪「?うん、そうだけど」
漣「悪いけど、部屋に戻ったら見張っといてくれない?」
漣「今日はもう大丈夫だとは思うけど……」
吹雪「……いいよ、わかった」
吹雪「ただいま……」ガチャッ
白雪「あっ、吹雪ちゃん。お帰りなさい」
吹雪「……」
白雪「?」
吹雪「白雪ちゃん、今日何してた?」
白雪「……」
吹雪「……?」
白雪「……今日は、ずっと訓練してたよ」
吹雪「……そっか、お疲れさま」
吹雪(……どうして、そんな嘘を)
吹雪(人に言えない理由ってこと……だよね)
五人は朝から、昨日白雪が鞄を置いた地点で張っていた
漣「お~予想通り、鞄がありますな」
叢雲「そら昨日、白雪が置きっぱなしにしたからじゃないの?」
漣「のんのん、甘いですな~叢雲ちゃん」
漣「鞄をよく見てください」
叢雲「……?」
漣「え~まだわかんないの?」
叢雲「うるさいわね……」
電「……あっなるほどなのです」
五月雨「そういうことだったんだ」
叢雲「え?二人ともわかったの?」
吹雪「あ、私もわかった」
叢雲「え!?」
漣「叢雲ちゅわ~ん……ちょっといけてないんじゃな~い?」
叢雲「あーもう、うっさいわね!」
叢雲「えーと、石を入れて……」
叢雲「!!」
漣「気づいたようですね~」
漣「そう、石を入れた分のふくらみがなくなってるんですよ!」
漣「んで、白雪ちゃんは昨日吹雪ちゃんが見張ってたでしょ?」
吹雪「うん。夜中にも出て行かなかったよ」
漣「つまり、白雪ちゃん以外の誰かがあの鞄の中身を取り出したってことなんだよ」
叢雲「なるほど……」
吹雪「ということは……」
吹雪「誰かが、白雪ちゃんと工具のやり取りをしてる……?」
白雪「……」スッ
白雪は鞄を手に取って去って行った
漣「さー、尾行しますよー!」
叢雲「あんた、楽しんでるでしょ」
漣「もち!」グッ
叢雲「……」
白雪「……」ピタッ
吹雪「止まった?」
電「入らないのでしょうか……?」
叢雲「そりゃあ入れないわよ……」
五月雨「え?何で?」
叢雲「だって……」
夕張「うおー!!燃えてキター!!」トンテンカン
明石「明石ックストーム!!」トンテンカン
五人「……」
叢雲「……昨日から、こんな感じらしいから」
五月雨「やり取りの相手を見つけるためだね?」
漣「その通りデス。何でもいいから、鞄に入れてくれればいいんだけどね……」
五人「う~ん……」
漣「……奥の手を使うか」
吹雪「え?」
漣「電ちゃん、五月雨ちゃん、二人に頼んできて」
五月雨「え!?」
叢雲「もう、それしかないかもね……」
吹雪「二人を生贄に捧げるしか……」
電「ど、どういうことなのです!?」
漣「ほーら、行った行ったー」
五月雨「うう……」
電「どうしてこんなことに……」
五月雨「あのー……」
夕張「ん!?あ、五月雨ちゃん!?」トンテンカン
電「あの、その……」
明石「電ちゃんも来たの!?ごめん、後にして!!」トンテンカン
五月雨「……どうしよう、電ちゃん」
電「ここは思い切っていうしかないのです」
五月雨「それしかないか……」
五月雨「あの!!二人とも!!」
電「工具を!!貸してほしいのです!!」
夕張・明石「」ピタッ
明石「私たちから、この楽しみを奪おうっていうの……?」ゴゴゴ
五月雨「うう……怒ってる……」
電「あ、あの……その……」
夕張「いくら二人の頼みでも、それはちょっと……」
明石「ごめんなさいね……」
五月雨「こ、このままじゃ……」
電「こうなったら……」
五月雨「か、貸してくれないなら、もう夕張さんと口きいてあげません!!」
夕張「グハッ!!」
電「もう第六駆逐隊のみんなで明石さんにマッサージもしてあげないのです!!」
明石「なんですって……」グハッ
五月雨「あ、効いた」
電「意外といけたのです」
明石「くっ……これが、運命……」
五月雨「あ、ありがとうございます!」
電「すぐ返すのです!!」ダダッ
夕張「……」
明石「……」
夕張「……マッサージ、してもらってるの?」
明石「……結構効くのよ」
吹雪「ど、どうしたの?二人とも」
電「なんだか、とっても申し訳ないことをした気がするのです……」
叢雲「そ、そう」
漣「んで、工具はどうしたんです?」
五月雨「ああ、これだよ」
漣「おー、乙乙。さて、どうしましょうかねぇ……」
叢雲「……その辺に置いてみる?」
吹雪「いや、そんなうまくいくわけ……」
白雪「……」スッ
白雪は置いてあった工具を拾い上げ、鞄に入れた
五人「……」
吹雪「うまくいった……」
漣「さ、さあ、尾行再開だー!」
白雪「……」スッ
電「昨日と同じで、そのまま置いて帰ったのです」
吹雪「ここまでは他に怪しい人とか見なかったね……」
漣「んじゃ、昨日と同じく、中身を出して石を詰めて……」ヒョイヒョイ
漣「ほいじゃ、電ちゃんと五月雨ちゃんは二人に返してきてー」
五月雨「うん、わかった」
漣「我々はここを見張っておきます」
電「じゃあ、お願いしますね」
叢雲「そんなにすぐには来ないんじゃない?」
漣「そんなこと言ってるとすぐに……」
ザッ
三人「!!」
吹雪(来た……?)
叢雲(一体……)
漣(誰が……)
イ級?「……」
イ級?「イー」
三人(お前かーーー!!!)
叢雲「わ、わからないけど、別の奴じゃないの!?」ヒソヒソ
イ級?「……」キョロキョロ
漣「な、なんかキョロキョロしてる……」ヒソヒソ
吹雪「二人とも、しっかり隠れて」ヒソヒソ
イ級?「うーん……クウボ様が、バレた可能性があるから気を付けろって言ってたけど……」
イ級?「見たところ大丈夫だイー。きっと昨日の石も何かの間違いだイー」ザッ
三人「……」
漣「……追う?」
吹雪「いや……行った先で仲間が大勢いたら危険だよ。三人しかいないし、まだ変身できないし……」
叢雲「とにかく、これであいつらと関係していることがわかったわね」
漣「……でも、一番の問題は」
吹雪「……どうして、白雪ちゃんが?」
叢雲「……とにかく、戻りましょう」
吹雪「……」
白雪「?どうかしたの?吹雪ちゃん。難しい顔して……」
吹雪「いや……」
吹雪(……聞いたほうが良いのかな……)
吹雪(……でも……)
吹雪「……白雪ちゃん、何か私に、隠してることない?」
白雪「……」
白雪「……ッ」ポロポロ
吹雪「え!?ど、どうしたの!?」
白雪「急に……泣いたりして……」
吹雪「……」
ギュッ
白雪「……!」
吹雪「……大丈夫、大丈夫だから……」
白雪「……吹雪ちゃん……」グスッ
白雪「うん……ありがとう」
吹雪「……言いたくないなら、言わなくてもいいよ」
白雪「いいえ……言うわ」
白雪「吹雪ちゃん……実は私……」
白雪「最近……昼間、意識がなくなるの……」
吹雪「!!」
白雪「ある時、ふっと意識がなくなって……気が付いたら、時間が経ってて……」
白雪「その間、記憶がないの……」
吹雪「……」
白雪「どうして、こんなことになってるのか……わかんないよ……」
吹雪「……」
吹雪「……大丈夫だよ、白雪ちゃん」
白雪「吹雪ちゃん……?」
吹雪「私が……絶対、助けるから……」
吹雪「……安心して」
白雪「……うん」
白雪「ありがとう……」
吹雪「……」
吹雪「……ということらしいよ」
叢雲「なるほど……あいつらに、何かされたのかしら?」
五月雨「そうだったら、許せないことだよ」
漣「白雪ちゃんは利用されていた、ということか……」カシャッ
電「なんでブラインドから外覗いてるのです?」
漣「刑事ドラマっぽいかと」
吹雪「それにしても、変身アイテムは今どうなってるんだろ?」
電「工廠に行ってみるのです」
吹雪「こんにちはー」
夕張「あ、みんな!できたよ、変身アイテムが!」
明石「じゃーん!」
五人「おおっ」
夕張「腕輪型にしてみましたー」
漣「ふむ、無難なところですな」
明石「これが、私たちの血と汗と涙と欲望と希望をコンクリートミキサーにかけてぶちまけた変身アイテム!」
明石「その名も……『ショキブレス』!!」
夕張「うん。戦闘用の強化スーツが瞬時に装着されます」
電「そのスーツってどこから来るのです?」
明石「その変身アイテム内に圧縮、収納されてて、そこから……」
漣「デンジマンかな?」
夕張「変身機能の他に、通信機能とかもつけたよ」
五月雨「通信?どうやって使うんですか?」
夕張「ここを押すと……」カチッ
ピピピピッ
吹雪「うわっ!?」
夕張「こうやって呼び出し音が鳴るから、そのボタンを押すと通信できるよ。もちろん、メンバー全員と通話可能ね」
叢雲「……呼び出し音大きすぎない?」
明石「え、そう?」
吹雪「びっくりしましたよ……」
明石「ああ、うん。見た目が戦隊っぽければいいって話だったけど」
明石「ただの服だけだと不安だったから、スーツも特殊なものにしたよ」
夕張「その名も『ショキスーツ』!みんなの体にそれぞれフィットするようにできてるよ」
夕張「これを身にまとうことで、身体能力を何倍にもアップできるわ」
夕張「当然防御面も完璧。熱に強いし、普通の銃弾や刃物くらいじゃ傷一つつかないよ」
漣「いつも衣服が弾け飛んでる我々からすれば、画期的なスーツですな」
電「そ、そんなすごい物作れたのです?」
明石「謎技術に突っ込みを入れるのは無粋よ、電ちゃん」
吹雪「これ、普段の出撃でも使えないんですか?」
夕張「それが、どうも艤装との相性が悪いみたいなんだよね……艤装を扱うには、普段の格好が一番ってことね」
叢雲「そういうものなのね……」
漣「ヨッシャー!キタコレ!」
夕張「やり方はとっても簡単!ショキブレスを左腕に装着して、このレバーを引くだけ!」
夕張「そしてその時に、『抜錨』って言ってね!」
吹雪「え、言わないとダメですか?」
夕張「ダメです」
吹雪「えぇ……」
夕張「ほーら、やったやった!私たちも変身見てみたいんだから!」
吹雪「わ、わかりましたよ……それじゃあ」
ドカァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!
一同「!!?」
叢雲「砲撃音……ではなさそうね」
電「あまり大きくなかったですが……確かにしたのです!」
五月雨「ど、どこから!?」
漣「どうせ工廠じゃね?」
明石「いや、工廠ここだから!それに私たち、そんなに危険なもの作ってないから!」
叢雲「今の音の感じだと、結構距離あるわね。鎮守府のはずれの方じゃない?」
吹雪「……鎮守府のはずれ……」
五人「……!!」
五月雨「夕張さん、明石さん!すみません、ちょっと私たち行ってきます!」
夕張「え、ちょっと!?」
明石「まだ変身シーン見てないのにー!」
吹雪「はぁ……はぁ……」
叢雲「……この辺よね、この間、あの黒いのと戦ったの」
電「はい。そして、白雪さんが鞄を置いていったのも……」
五月雨「!誰かいるよ!」
空母棲姫?「もう、あんたたち!失敗しないでって言ったでしょーが!」
イ級?「すみませんイー……」
ロ級?「頑張ったんですがロー」
ハ級?「どうにもなりませんでしたハー」
二級?「まあ、仕方ないですニー」
叢雲「……!あの黒いのがいるわね」
吹雪「予想通り……しかも、仲間もいるみたいだね」
電「……あの人、空母棲姫に似てるのです」
漣「この間のイ級に加えて、ロ級、ハ級、二級がいるし……」
空母棲姫?「あっ」
五人「あっ」
空母棲姫?「ほら、見つかったじゃないのー!」ポカポカ
ハ級?「いてて!やめてくださいハー」
叢雲「何こいつら……」
電「ここで何してたのです?」
空母棲姫?「ぐぅっ!え、えーと……」
空母棲姫?「あ、そう!お花見よお花見!桜を見てたのよ!」
五月雨「もう夏ですよ」
空母棲姫?「え、あ……ほ、本当は海水浴に来てたの!泳ごうと思って!」
吹雪「そんな怪しい恰好で、わざわざ鎮守府まで来て?」
空母棲姫?「ぐぬぬ……」
電「工廠の工具を盗んでたのはあなたたちなのです?」
空母棲姫?「っ!!も、もしかして一昨日から妨害してたのは……」
漣「その通りだァ……」ニヤリ
空母棲姫?「くっ……よくも邪魔してくれたわね!」
五月雨「どうしてこんなことを!?あなたたちは、何者なんですか!?」
空母棲姫?「ふん、答える必要はないわ!とにかく、気付かれたからには消えてもらうしかないわね!」ザッ
五人「!!」
イ級?「イー……クウボ様。ここは我々にお任せくださいイー」ザッ
ロ級?「そうですロー。こんな小娘たち、我々だけで十分ですロー」
クウボ「そう……じゃあ、イー、ロー、ハー、二―。任せたわよ」
吹雪「……やっぱり、戦うしかないみたいだね」
叢雲「ええ!」チャキッ
漣「ほいっ!」チャキッ
電「はいっ!」チャキッ
五月雨「うん!」チャキッ
五人は、それぞれショキブレスを左手に装着した!
カチッ
シュィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン……
五人の体に、スーツが装着されていく!
バァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!
クウボ「!?な、何!?」
吹雪「ほ、本当に変身した……」
五月雨「なんだか体も軽いし……これが、スーツの力……」
漣「ヨッシャー!このまま名乗りいくよー!!」
吹雪「吹雪レッド!」
叢雲「叢雲ブラック!」
漣「漣ピンク!」
電「電イエ口ー!」
五月雨「五月雨ブルー!」
吹雪「五人そろって!」
五人「駆逐戦隊!ショキカンジャー!!」
バァァァァァァァァァァァァァァン!!!
叢雲「あれ、何で知ってるの?」
イー「先日お前らに殺された、イーの仲間が持って行った通信機器から記録されていたんだイー!」
漣「あいつ死ぬ前にそんなことしてたのか……」
電「気付かなかったのです」
クウボ「なるほど……私たちについて、いくらか知っているわけね」
クウボ「いいわ……お前たち!やっておしまい!」
「イー!」「ロー!」「ハー!」「ニー!」シュババッ
五月雨「来た!」
吹雪「よし……!みんな、行くよ!」
吹雪「ていっ!」ドゴォ!
イー「イーーーーーーーーッ!!」ズザァッ
吹雪「よし、通った!」
五月雨「仮説は合ってたみたいだね!」
五月雨「よっと!」ドカッ!
ロー「ローーーッ!!」
叢雲「あーもう!うっとうしいわね!」
ガシッ
ハー「ハ?」
叢雲「大人しく…」
ブンッ!
叢雲はハ級?を背負い投げした!
叢雲「しなさああああああい!!」
ズドォォォォォォォンッ!
ハー「ハーーーーーーーーッ!!」
電「はわわ……」
ニー「お前から殺してやるニー!!」ダッ
漣「あー、やめといたほうがいいよ」
ニー「え?」
漣「隙あり!」ドカッ
ニー「ニーーーーッ!!?」ドザァッ
漣「はい、電ちゃんトドメよろしく」
電「はわわ……えっと……」ダダッ
ニー「ニ……?」ムクッ
電「ご、ごめんなさい、なのです!」ドゴォ
ニー「ニッーーーーーーーーー!!??」
いつものが決まった
叢雲「あなたは普通に戦うことを覚えたほうが良いわ」
クウボ「くっ……戦闘員が全滅とは……」
吹雪「残るはあなただけです!覚悟しなさい!」ダッ
クウボ「っ!!こうなったら……!」パチン
吹雪「はぁっ!」バッ
シュバッ
吹雪「!?」
???「……」
ガシィッ
何者かが吹雪の腕をつかんだ!
吹雪「……!?」
クウボ「ふぅ……ここまで呼んでおいてよかったわ……」
吹雪「ど、どうして……?」
吹雪「どうして……白雪ちゃんが……?」
白雪「……」グググ
吹雪「グハッ!」
叢雲「吹雪!」
吹雪「く……私は大丈夫……」
吹雪「でも……」
白雪「……」
白雪「……」ブンッ
吹雪「くっ」シュバッ
クウボ「ヲホホ!やっぱり私が操ってる方が、戦闘員より役に立つわ!」
吹雪「なっ……!あなたが操ってるの!?」
クウボ「そうよ。私は人を操る能力を持っているの」
叢雲「それで白雪を利用して……!」
白雪「……」ドゴォ!
吹雪「ぐ……!」
電「吹雪さん!」
吹雪「あの人を倒して……!」
五月雨「わかった!」ダダッ
漣「漣の本気を見せてやるぅ!!」ダダッ
クウボ「ふふ……そう簡単にいくかしら?」
叢雲「なんですって?」
イーたち「イッー!!」ワラワラ
五月雨「援軍!?そんな……さっきより多い!」
クウボ「ヲーッホッホッホ!こんなこともあろうかと、さっき呼んでおいたのよ!」
漣「ありゃりゃ……まいったなぁ……」
イーたち「イーッ!!」ワラワラ
五月雨「ちょっと!……やー!」ドゴッ
叢雲「くそっ……これじゃ、奴に……」バキッ
電「近づけない……のです……!」ドンッ
イーたち「イーッ!!」ワラワラ
白雪は吹雪の首をつかんだ
吹雪「ぐっ……!」ギリギリ
吹雪(いつもの白雪ちゃんとは全然違う……!かなり力が強い……)
吹雪(どうにかして抵抗しないと!)グッ
白雪「……」
吹雪「……っ」
吹雪「うう……」
クウボ「どうやらあなたは、その子を傷つけられないようね」
クウボ「その甘さが命取りよ。そのまま死になさい……!」
白雪「……」ギリギリ
吹雪「ぐ……うう……」
吹雪「白雪……ちゃ……ん……」
白雪『どうして、こんなことになってるのか……わかんないよ……』
吹雪(ああ、そうか……)
吹雪(白雪ちゃんは……ずっと、この人に操られて……)
吹雪(ずっと……苦しんできたんだ……)
白雪『吹雪ちゃん……?』
吹雪『私が……絶対、助けるから……』
吹雪『安心して……』
白雪『……うん』
白雪『ありがとう……』
吹雪「……!」
吹雪(そうだ……白雪ちゃんは、今も苦しんでるんだ……)
吹雪(……だったら、私が……)
吹雪(私が……白雪ちゃんを……)
吹雪(助けるんだ……!)
白雪「……」ギリギリ
吹雪「大丈夫……だよ……」
吹雪「私が……」
吹雪「助ける……から……!!」
白雪「……」
白雪(……ふ、ぶ、き……ちゃん……?)
吹雪「!!」
白雪の首元に、赤く光る何かを見つけた!
吹雪(……!もしかして…!)ガッ
白雪「……!」
吹雪「えいっ!」グイッ
吹雪は、白雪の首元にあった物をつかみ取り、そのまま引き抜いた!
クウボ「何!?」
白雪「……っ」フッ
吹雪「白雪ちゃん!」サッ
吹雪「……よかった、気を失ってるだけだ……」
白雪の首元についていたのは、敵艦載機そっくりな、小さな石であった!
吹雪「なるほど、これを白雪ちゃんにつけることで操っていたんだね……」バキッ!
クウボ「ま、まさか気が付くなんて……」
吹雪「確かに小さくて見えづらかったけど……残念でしたね」
吹雪「これで、白雪ちゃんは操れないでしょう?」
クウボ「戦闘員!何してるの!せんと……あれ?」
イーたち「イー……」ピクピク
クウボが気が付かないうちに、戦闘員は全滅していた
叢雲「これで残るはあんただけよ」
五月雨「覚悟してください!」
クウボ「そ、そんな……」
クウボ「!!」
吹雪「吹雪パァァァァンチ!!」
ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!
クウボ「ぐあああああああああ!!!」
クウボ「くっ……この……」フラッ
イー「イー……クウボ様……」
クウボ「……分が悪いわね……」
クウボ「撤退よ!ここは引くわ!」
イーたち「イー!!」ワラワラ
叢雲「あっ!逃げる気!?」
五人「!!」
クウボ「……覚えてらっしゃい!」
シュンッ
電「あっ!消えたのです!?」
五月雨「瞬間移動……?そんなこともできるなんて」
叢雲「もうわけわからないわね……」
漣「戦闘員は海の方に逃げていったけど……どうする?追う?」
吹雪「いや……やめておこう」
吹雪「正直、こっちもギリギリだし……」
明石「変身シーンも戦闘シーンも見れなかったー……」
夕張「せっかくいいカメラ持って来たのにー」
吹雪「あ、二人とも。これ、すっごく役に立ちました!」
五月雨「本当にありがとうございます!」
夕張「え?そう?」
明石「まあ、役だったんならよかったよ。大切にしてね」
吹雪「うん……」
──────────
──────
───
白雪「っ!!」バッ
白雪(ここは……部屋?)
吹雪「あ、起きた?白雪ちゃん」
白雪「吹雪……ちゃん……」
吹雪「うん。急に倒れちゃったんだ」
吹雪「明石さんに診てもらったけど、問題ないって」
吹雪「これから意識がなくなることもないと思うよ」
白雪「そう……」
白雪(でも……何だか……ぼんやりと……)
吹雪「じゃあ、私は行くね?ゆっくり休んでね」ガチャッ
白雪「ふ、吹雪ちゃん!」
吹雪「……」ピタッ
白雪「わかるよ……吹雪ちゃんが、助けてくれたんだって……」
吹雪「……」
吹雪「違うよ……」
白雪「違わないよ!吹雪ちゃん、助けてくれるって言ってたから……」
白雪「それに、私……ぼんやりと覚えてるよ」
白雪「私が苦しんでるとき、誰かが……『ヒーロー』が、助けてくれたって……」
白雪「記憶はないけど……」
白雪「……心で覚えてるよ」
白雪「……だから」
白雪「ありがとう、吹雪ちゃん」
吹雪「……」
吹雪「どういたしまして、白雪ちゃん」
バタン
白雪「……もう……」
吹雪(私は、もっと強くなりたい……)
吹雪(艦娘としても……『ヒーロー』としても……!)
吹雪(大切な人を守るために……!)
吹雪「よーし!」
吹雪「ショキカンジャー、レッドの吹雪!頑張るぞー!」
第二話「変身したい!」 艦
切り込み隊長のブラック、叢雲よ
何か、切り込み隊長に任命されたらしいわ……まあ漣が勝手に言ってるだけだけど
いよいよ敵の幹部まで出てきたわ。十分に準備しないと危険ね
変身できるようになって戦闘服はできたけど、まだ不十分だわ
何か、もっと戦闘に役立つような……
何?電。え?これ?これは……いや、違うわよ
次回、第二話「武器がほしい!」
次回も見ないと、酸素魚雷を食らわせるわよ!
~ショキブレスと抜錨~
漣「はい、ちゅーわけでですね。始まりました、『ショキカンジャーって?ああ!』のコーナー」
吹雪「……え、なにこれ」
漣「ショキカンジャーの装備、戦力とかについていろいろ説明するコーナーです」
五月雨「ああ、デカレンジャーみたいなの?」
漣「そうそう、そんな感じ」
叢雲「誰に説明するのよ」
漣「世の中」
漣「はい、今回説明するのはこちら!」デデン
漣「『ショキブレス』です!」
叢雲「まあ、それしかないわよね」
吹雪「明石さんと夕張さんが作ってくれた、変身アイテムだね」
漣「うん。これについて詳しく解説していきましょう」
電「あと、先端上部にアンカー型のパーツが付いているのです」
吹雪「装着は簡単。ベルトを左手の手首につけるだけだね」チャキッ
吹雪「ちなみに変身後も装着は解除されずに、そのままつけてるよ」
叢雲「……これ、変身後にブレス壊れたらどうするの?」
漣「一生変身したままなんじゃね?」
吹雪「いやいや……そもそも壊れないで欲しいんだけど」
漣「ブレスの外側にある、五色のボタンを押すことで通信できます」
五月雨「通信したい相手の色のボタンを押すと、呼び出し音が鳴るよ」カチッ
ピピピピッ
電「はわわっ!?」
五月雨「あ……ごめん、電ちゃん」
吹雪「やっぱり呼び出し音大きいよね……」
叢雲「呼び出し音が鳴ると、通信してきた相手の色のボタンが点滅するわ」
電「て、点滅してるボタンを押すと、通信が開始されるのです……。もう一度ボタンを押すと、通信は終了するのです」
電「……あれ?自分の色を押すとどうなるのです?」
漣「自分と会話できます」
吹雪「えぇ……」
漣「もう一人の僕……!」
五月雨「……本当は、明石さんや夕張さんと通信できるらしいよ」
叢雲「何かトラブルがあったときに使うといいわね」
叢雲「まず、ブレスの内側……つまり、右手側にあるボタンを押すわ」カチッ
叢雲「そうすると、レバーが引き出されるの」
電「あとは左腕を下に向けて、『抜錨!』と言って、右手でレバーを引くのです」
五月雨「そうするとブレスのアンカー型パーツが上がって、変身が始まるよ」
漣「……なんか、動きがキュウレンジャーと被ってんね」
叢雲「そういやあんたの口癖も被ってるわね」
漣「ち、違うんじゃ……!向こうが、向こうがパクったんじゃ……!」
吹雪「えぇ……」
電「夕張さんたちが言っていたように、身体能力が向上させ、防御力にも優れたスーツなのです」
吹雪「私たちの体にフィットするようにデザインされていて、動きやすいようになっているよ」
漣「ただ、こういうものには必ず代償があるのですよ……」ククク
叢雲「え、あるの?」
漣「使いすぎると……ジョーカーアンデッドになって」
叢雲「……」ポカッ
漣「痛ぁっ!?」
叢雲「あら、そうだったの?」
五月雨「確かにこの前戦った時、結構疲れたよね……」
吹雪「まあ艤装つけた時と同じくらいらしいから、あんまり気にしなくていいと思うけど」
電「無理に長時間使わないようにしないといけないのです」
漣「あ、あとダメージを受けすぎると変身が解除されるらしいよ」
叢雲「へぇ。どうして?」
漣「ある程度精神を集中させてないと、変身が持たないんだって」
漣「んで、ダメージを受けすぎると体力も精神も消耗しちゃって、意識も集中できなくなることがあるから、そうなっちゃうんだってさ」
吹雪「どうしたの?」
五月雨「変身するとき、『抜錨!』って言うよね?」
叢雲「そうだけど……それがどうかしたの」
五月雨「言わずに変身しようとするとどうなるの?」
電「え?普通に変身できるのでは?」
漣「よし、やってみるか」カチッ
吹雪「うわ、行動速い」
五月雨「えぇ?」
叢雲「まあいいけれど……」
カチャカチャ カチッ
電「準備できたのです」
吹雪「じゃあ、やってみようか……」
吹雪「掛け声なしでの、変身!」
シュィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン……
吹雪「……ん?」
五月雨「あ、あれ!?これって、まさか……!」
叢雲「と、止めて!止めてよ!」
漣「無理無理!外れないし!」グイグイ
電「は、はわわ……」
バァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!
夕張「ごめーんみんな!一個言い忘れたことがあった!」
夕張「変身するときに、『抜錨』って言わないと……」
夕張「スーツが装着されるどころか……逆に服が……脱げ……」
五人「……」スッポンポーン
夕張「……あっ」
夕張「……」
夕張「……着替え、持ってくるわね」バタン
五人「……」
この機能は改善され、掛け声なしでも普通に変身できるようになった
しかし、五人は心に軽いトラウマが残され、変身する際には必ず掛け声を言うようになった……
艦
ショキカンジャー本拠地にて
吹雪「はい、それでは、第三回ショキカンジャー会議を始めます」
パンパカパーン
吹雪「漣ちゃん。それ愛宕さんに怒られるからやめて」
漣「ちぇー」
電「それで、今日は何を話し合うのです?」
吹雪「前回、私たちの仮説が正しいことが実証されました」
五月雨「戦隊らしく戦えばいいっていうのだね」
吹雪「しかし、敵も幹部みたいな人が現れて、油断はできなくなりました」
吹雪「これから先、もっと戦いは厳しくなるでしょう」
吹雪「そこで、さらなる戦力増強をしたいと思います」
叢雲「さらなる戦力、ねぇ……」
叢雲「アレって?」
漣「ああ!」
叢雲「そういうのいいから」
漣「ほら、あの槍みたいなやつ」
叢雲「ああ、アレ?今日は部屋に置いてきたわよ」
叢雲「いつもってわけじゃないわよ。こういう日もあるわ」
電「そういえばアレって、何に使うのです?」
叢雲「……え?」
五月雨「艦隊戦じゃ使わないよね」
叢雲「あ、あれは、その……」
叢雲「え、ええと、あー……」
漣「……もしかして、ただキャラ付けのためだけに持ってるとか?」
叢雲「ち、違うわよ!ただ、最初に支給された装備の中に入ってて……」
叢雲「……なんか、気に入ってるから、持ってるだけで……」
叢雲「別に……意味なんか、ないわよ……」
四人「……」
五月雨「だ、大丈夫だよ!あれ、かっこいいから!」
電「天龍さんたちも同じようなの持ってるから大丈夫なのです!」
漣「完全に無意味だけどね」
吹雪「こらぁ!漣ちゃん!」
漣「おっと、ごめんごめん。大丈夫、結構いけてるよ!」
叢雲「……みじめだわ……」
吹雪「ん?」
電「戦力増強のために、武器を作るのはどうでしょう?」
五月雨「武器かぁ……確かにあったほうが良いよね」
漣「武器は実際大事。古事記にもそう書いてある」
吹雪「武器か……そうだね、考えてみよう」
叢雲「はぁ……」
漣「先生ー、まだ叢雲ちゃんがブルーです。ブラックのくせに」
叢雲「丸くなって死にたい……」
吹雪「む、叢雲ちゃん!気をしっかり持って!」
吹雪「武器って言っても色々あるよね」
五月雨「剣、槍、弓……どう使うかで戦い方も変わってくるよ」
電「みなさん、何か使いたい武器はあるのですか?」
叢雲「いや、別に……」
吹雪「思いつかないなぁ……」
五月雨「漣ちゃんはある?」
漣「いやー、漣にもないなー」
漣「こういうのはイメージが大事だからね。個人の願望だけじゃ決められんのよ」
吹雪「なるほど、イメージか……」
漣「そもそも、大体の戦隊では『共通武器』と『個人武器』があるじゃん?」
五月雨「『共通武器』と『個人武器』?」
漣「そそ。『共通武器』はメンバー全員が扱う武器。『個人武器』はメンバーごとに種類や性能が違う武器のこと」
漣「まあ、基本的に個人武器の方が共通武器よりも強力な武器だね」
漣「いやあ、どっちか一方でもいいと思うけどね。要はどうすれば一番戦いやすいかが大事だから」
叢雲「ふーん……」
吹雪「うーん、どっちもあったほうが良い気もするけど……」
五月雨「でもいくつも武器があっても、ちゃんと使いこなせるかな?」
電「確かに、艤装みたいにうまくいくかわからないのです」
吹雪「それもそうだね……どうしようか」
漣「ほほう」
叢雲「共通武器だけだと戦いも単調になって敵に対応されやすいでしょうし、その武器が効かなかったときに困るわ」
叢雲「個人武器なら、少なくとも五種類の武器ができるはずよ。ある程度の敵に対応できるはずだわ」
電「なるほど……」
漣「個人武器なら個性も出るしな!」
五月雨「……それ、大事なの?」
漣「何をおっしゃる!個性は大事、古事記にもそう書いてある!」
吹雪「よし、じゃあ個人武器で考えよう」
叢雲「ああ、そういえばそうだったわね」
五月雨「うーん……とりあえず何か案を出してみようか」
五月雨「一人ずつ、メンバーのそれぞれの武器の案を考えてみようよ」
吹雪「そうだね。やってみようか」
漣「さっきも言ったとおり、イメージが大事だよ!あと個性!」
叢雲「はいはい……」
吹雪「じゃあ、みんな考えた?」
電「はいなのです」
漣「じゃあ吹雪ちゃんから出してー」
吹雪「私?これだよ」
吹雪の案
吹雪 剣
叢雲 槍
漣 弓
電 ハンマー
五月雨 銃
四人「……」
吹雪「えっ、何その反応」
漣「THE☆普通って感じ?」
吹雪「えー!?ひどい!」
五月雨「いや、無難でいいとは思うんだけど……」
電「というか、何で電はハンマーなのです!?」
吹雪「いや、なんとなく黄色ってパワー系のイメージがあるから……」
漣「電ちゃん、カレー好き?」
電「す、好きですけど……」
漣「じゃあそういうこった」
電「どういうことなのです!?」
叢雲「私のはこれね」
叢雲の案
吹雪 ハンドガン
叢雲 ショットガン
漣 アサルトライフル
電 バズーカ
五月雨 スナイパーライフル
漣「バイオじゃねーか!!」
叢雲「いいじゃない強くて」
吹雪「殺伐とした戦場になりそうなんだけど……」
叢雲「勝てばいいのよ、勝てば」
漣「こんな戦隊ヒーローはいやだ」
電「また電が重そうな武器なのです……」
叢雲「やっぱり黄色はパワー系の……」
五月雨「やっぱりそうなるんだ……」
漣「ほいさっさー!」
漣の案
吹雪 槍
叢雲 バックラー(しかも時間操作できる!)
漣 弓
電 銃(マスケット銃)
五月雨 剣
吹雪「ちょっと!漣ちゃんも私のと大差ないじゃない!」
電「この時間操作できるって何なのですか……?」
漣「時間止めたり、巻き戻したり……」
吹雪「めちゃくちゃだよそれ!どういうことなの!?」
吹雪「え?」
叢雲「こいつ真面目に考える気0よ」
電「?どういうことなのです?」
五月雨「これってあれだよね……魔法少女だよね」
漣「おや、二人とも知ってたの?」
叢雲「知らなかったらどうするつもりだったのよ……」
電「はいなのです」
電の案
吹雪 スコップ
叢雲 チェーン
漣 鍬
電 スリングショット
五月雨 バット
五月雨「なにこれ革命軍!?」
漣「ちょ、電ちゃん……」
電「?剣とかは危ないので、身近にあるものを武器にしたのですが……」
叢雲「ある意味では一番危険よ、これ」
吹雪「スコップを持ったヒーローは想像できないなぁ……」
漣「ショベルバケットはあったけどね」
五月雨「私のはこれだよ」
五月雨の案
吹雪 メリケンサック
叢雲 ガントレット
漣 トンファー
電 ダガー
五月雨 鉤爪
吹雪「何でそんな超近接武器ばっかりなの!?」
五月雨「いや、なんとなく強そうだったから……」
漣「これはアレですか?漣はトンファーキックすればいいんですか?」
電「トンファーの意味がないのです……」
叢雲「ていうかメリケンサックって……」
五月雨「え、何?」
叢雲「……いや、何でもないわ」
五人「……」
漣「思った以上にひどいことになりましたな」
電「みんな案が個性的なのです……」
叢雲「一名を除いてね」チラッ
吹雪「いや、普通っていうけど、結局私のが一番まともじゃん!」
五月雨「いいと思うんだけどなー、メリケンサック……」
吹雪「何でそここだわるの!?」
漣「仕方ない。吹雪ちゃんの案をベースに考えていきまっしょい」
五月雨「それがよさそうだね」
漣「ザ・キング・オブ・普通ですな」
吹雪「い、いいじゃん!武器って言ったら剣だよ!」
漣「いやあ、悪いとは言ってないよ。レッドっつったら剣だよ」
五月雨「剣っていっても色々あるよ。片手剣、両手剣、刀……」
叢雲「もっというと、グラディウスやフランベルジェ、クレイモアとか……」
電「レイピアやサーベル、ファルシオンなどもあるのです」
吹雪「そこまで考えてないよ!何かみんな武器に詳しくない!?」
漣「いやー、これまだ序の口ですよ」
電「ジャマダハルとかどうなのです?」
吹雪「いいよもう!普通のロングソードで!」
吹雪「あ、これは根拠があるんだよ。ほら、さっきの話の……」
叢雲「……」ズーン
漣「おっと、ここで傷を抉りに来たー!」
電「酷いのです!」
五月雨「なんてタイミング……!」
吹雪「え!?ちょ、ちょっと待って!話を聞いて!」
吹雪「さっきの話のあの武器!あれを利用できるんじゃないかと思って!」
吹雪「あれをベースに武器を作れば、あれにも意味ができるよ!」
叢雲「……意味が……できる……?」
五月雨「そうだよ!きっと、もっとかっこよくなるよ!」
漣「強そう」
叢雲「……」
叢雲「そ、そこまで言うなら……いいわよ」
漣「ちょろい」ニヤリ
吹雪「こらぁ!漣ちゃん!」
漣「弓であることに異議はないよ~。漣もそうしたし」
叢雲「いや、あんたのは違うでしょ……」
五月雨「弓って言ってもどんなの?和弓?洋弓?クロスボウ?」
漣「まあ洋弓かクロスボウがいいと思うけど」
漣「あっちにちなんで、洋弓かな?」
五月雨「いつまで引っ張るの、それ…」
漣「もう絶望する必要なんて、ない!」キリッ
叢雲「ぶっ飛ばすわよ」
電「しょ、正直うまく扱える自信ないのです……」
漣「確かに黄色と言ったらパワー系だよね」
叢雲「……そういえば、電も武器持ってるじゃない」
四人「え?」
叢雲「ほら、艤装にぶら下がってる……」
五月雨「……もしかして、錨のこと?」
電「あ、あれは違うのです!」
叢雲「そう?雷がそんな感じで持ってるから、てっきり……」
吹雪「あー、確かにそんな感じするねぇ」
漣「あれが振り回せるんならハンマーもいけるんじゃないんですかね」
電「いや、どうでしょう……」
電「さ、五月雨さんまで……」
五月雨「だってほら、雷属性といったらハンマーだよ」
電「?どういうことなのです?」
叢雲「もしかしてミョルニルのこと?」
吹雪「ミョルニル?」
漣「伝説上のハンマーさ」
吹雪「へぇ……伝説って?」
漣「ああ!」
吹雪「えぇ……」
吹雪「へー、そうなんだ」
電「そ、そもそも電は雷属性じゃないのです!」
叢雲「いいじゃない別に。何か問題あるの?」
電「も、問題はないのですが……」
漣「大丈夫大丈夫。意外といけるって」
電「……まあ、そんなに重くないなら……いいのです」
五月雨「銃かぁ……」
吹雪「え、銃いや?」
五月雨「嫌ってわけじゃないんだけど……いつも似たようなもの使ってるから」
電「そういえば、いつもの艤装と変わらないのです」
五月雨「せっかくだから、別の物使いたいかなぁ」
叢雲「そうねぇ……じゃあ、考え直しましょうか」
電「えっと、他の意見は……」
『スナイパーライフル』『剣』『バット』『鉤爪』
叢雲「……鉤爪使いたいの?」
五月雨「いや、そういうわけじゃなくて……」
漣「ベアクローのほうがよくない?」
五月雨「どっちも似たようなものだよ……」
電「武器としては十分だと思うのです」
叢雲「じゃあ候補その1ね」
叢雲「で、スナイパーライフル……」
漣「却下」
吹雪「結局それ銃だよ……」
電「では、バットは……」
五月雨「バットはちょっと……勘弁かなぁ」
吹雪「剣に切り替えられるとかないと……」
漣「なら釘バットに」
叢雲「もっとヤバくなるでしょーが」
電「でも、剣だと吹雪さんとかぶっちゃうのです」
叢雲「そうねぇ……それなら、鉤爪にする?」
五月雨「そうだね、私はどっちでも……」
漣「ちょっと待ったァーーー!!!」
叢雲「うるさいわよ」ポカッ
漣「あいたぁ!?」
漣「いや……ぶっちゃけて言いましょう」
漣「鉤爪は五月雨ちゃんのイメージに合わない!」
五月雨「そ、そう?」
叢雲「他のメンバーは合ってるの?」
漣「合ってる!多分!!」
電「えぇ……」
漣「うむ!その通りだ!」
漣「そこで漣は、刀を提案する!」
吹雪「刀?どうして?」
漣「五月雨ちゃんの名前が刀の名前っぽいから!」
五月雨「えぇ……」
電「五月雨江って刀はあるのです」
漣「ほらほら!」
叢雲「いや、ほらほらじゃなくて」
漣「吹雪ちゃんは西洋のロングソード。五月雨ちゃんは東洋の刀」
漣「色彩は赤と青。この対比……アリじゃね?」
叢雲「なにがアリなのよ」
電「うーん、どうなのです?五月雨さん」
五月雨「刀かぁ……」
五月雨「……うん、使ってみたいかも」
吹雪「そう?じゃあ、これで決まりだね」
電「では早速、明石さんたちに作ってもらうのです」
夕張「来たか……!武器を作る時が……!」
明石「前回から……待っていた……この時を……!」
五人(相変わらずテンション高いなぁ……)
吹雪「じゃ、じゃあ、お願いしていいですか?」
夕張「もちろんよ。あ、ショキブレスも渡してくれる?ちょっと使うから」
五月雨「え?はい、わかりました」スッ
夕張「あと、叢雲ちゃんは、武器も借りておくわね」
叢雲「ええ、わかったわ」
明石「じゃあ三日くらい待ってね」
電「では、よろしくお願いします」
漣「いやぁ、大丈夫でしょう。こういう時には襲ってこないのがお約束ですから」
叢雲「そんなこと言ってきたらどうするのよ……」
漣「その時はその時ですよ~」
吹雪「さて、じゃあ三日間どうしようか」
電「前回と同じく、異常現象を調べてみるといいのです」
五月雨「えーと、確か……」
・屋根裏や床下から変な音
・地響きが聞こえる
・資材がなくなる(提督のせい?)
叢雲「どれから調べてみる?」
電「一番調べやすそうなのは、屋根裏や床下からの音なのです」
吹雪「そうだね、じゃあ……」
「う……うぅ……」
五人「!!?」
五月雨「あっちの方からうめき声が……!」
吹雪「とりあえず、行ってみよう!」
ダダッ
五人「!?」
赤城「うぅ……」
五人が行った先で、赤城が倒れていた!
叢雲「どうしたの!?一体!」
赤城「う……み、皆さん……」
電「どうしたのです!?苦しいのです!?」
赤城「ボ……ボ……」
五月雨「ボ?」
赤城「ボーキが……ほしいです……」ガクッ
五人「……」
漣「……とりあえず、空母寮に運ぼうか」
加賀「ごめんなさいね……赤城さんが」
吹雪「い、いいえ、大丈夫です」
電「ボーキサイトが、足りないのですか?」
加賀「そうなんです……」
加賀「最近、資材が急になくなったりするのは知ってる?」
叢雲「え、あれは司令官が大型艦建造してるからじゃ?」
加賀「それがどうも違うみたいなの……」
加賀「提督が言うには、最近は全く大型艦建造はしてないそうです」
漣「ほほう。それなのに資材は減る、と」
加賀「詳しいことは提督に聞くといいわ。それじゃあ」
吹雪「は、はい」
漣「何とも不思議ですな~」
電「どうやら、これから解決した方がよさそうなのです」
五月雨「でも、何でなくなるんだろう……」
叢雲「ボーキに関しては、空母の誰かが食べてるとか?」
五月雨「誰かって?」
叢雲「……誰でしょうね」
電「とにかく、司令官に聞いてみるのです」
吹雪「失礼します」ガチャッ
提督「おっ、お前たちか。どうした?」
電「あの、司令官さんに聞きたいことが……」
提督「ん?何だ?」
叢雲「最近、資材がなくなってることについて聞きたいのだけど」
提督「ああ、そのことか……」
提督「確かに、最近著しく資材が減っている」
提督「遠征を繰り返しても減っていくくらいだ」
五月雨「それは深刻ですね」
提督「おかげで満足に出撃もできん……困ったものだ」
提督「普通に倉庫に入れてたら急になくなる。荒らされた形跡はほとんどない」
提督「資材だけがすっと消えるわけだ」
吹雪「倉庫の警備を強化したりは?」
提督「もちろんした。しかし、少し目を離すとアウトだ。すぐに消えてしまう」
提督「いつなくなるかわからないんだ。ずっと気を張ってるわけにもいかんしな」
叢雲「なるほどねぇ……」
提督「今、深海棲艦に攻められたら、満足に迎撃もできないだろう。早急に解決したいのだが……」
吹雪「私たちが調査してみます」
提督「ありがとう。よろしく頼む……」
叢雲「資材が急に消える……普通じゃ考えられないわね」
漣「やっぱあの人たちの仕業なんかね?」
五月雨「とりあえず、問題の倉庫に行こうよ」
吹雪「そうだね。行ってみよう」
倉庫
ギィッ
???「誰だ!!」
五人「うわぁ!?」
長門「……なんだ、お前たちか」
叢雲「な、長門さんか……びっくりした」
長門「ああ、そうだ。出撃もないのでな。このように資材を見張っている」
長門「その様子だと、あの話を聞いたようだな」
漣「実際、どうなんですか?」
長門「……正直なところ、どうしようもない……」
長門「私以外にも何人かで見張っているが、やはり限界がある……」
長門「目を離したすきに消えてしまうんだ……燃料ならドラム缶ごと消えてしまう」
長門「そうはいっても、ひどくなったのはここ数日の出来事だ。それ以前は少しずつ減ってただけだからな」
長門「だがしかし、現状は深刻だ……」
長門「提督は皆に配慮して黙っているが、いずれ全員に知られるだろうな……どうにかせねば」
吹雪「……あの、少しお手伝いさせていただいてもいいですか?」
長門「ん?別にかまわんぞ。むしろお願いしたいくらいだ」
長門「では、あっちの方を見張っててくれ」
叢雲「またあの連中の仕業なのかしら?」
電「そうだと思うのです」
吹雪「とりあえず、実際に見張ってみよう」
五月雨「うん。何かわかるかもしれない」
数分後
叢雲「……」
電「何も起きないのです……」
吹雪「目を離しても変化はなし……か」
漣「そりゃそんな都合よくなくなったりしないよ」
五月雨「ま、まだ始めて数分だし、もうちょっと待とうよ」
吹雪「す……す……」
吹雪「スベスベマンジュウガニ……」
叢雲「に……ニシキヘビ」
漣「び……び……」
漣「……」
電「はい、負けなのです」
漣「くぅ~……『び』のつく動物って何だよ……」
電「ビーバーがあるのです」
漣「あー、そっかー!」
五月雨「……」
五月雨(なんか、みんな集中力が切れてる……)
五月雨(ダメダメ!私だけでもしっかりしないと……!)
電「では次の問題なのです。フィンランドの首都は?」
五月雨「オスロ!」
電「ぶぶー。正解はヘルシンキなのです。オスロはノルウェーなのです」
五月雨「あー、そうだった!」
漣「じゃあ罰ゲームで、語尾に『にゃん』をつけて自己紹介してください」
五月雨「い、いやだよ~」
吹雪「ほらほら五月雨ちゃん」
叢雲「罰ゲームなんだから」
五月雨「うう……」
五月雨「し、白露型六番艦……五月雨です……にゃん」
四人「ヒュー!」
長門(何をやっとるんだあいつらは……)
気が付くと、近くのドラム缶が一つ消えていた!
叢雲「!ちょ、ちょっとみんな!ドラム缶が消えてる!」
四人「!」
電「ぜ、全然気が付かなかったのです」
吹雪「だ、誰か何か見た!?」
五月雨「いや、何も見えなかったにゃん!」
漣「あ、五月雨ちゃん、もういいよそれ」
叢雲「なるほど……こんなふうに消えるのね」
五人(……でも)
五人(正直、油断してたしなぁ……)
吹雪「……今度は集中しておこう」
漣「……」
漣「……」コクリコクリ
叢雲「寝るな」バシッ
漣「あいたっ」
吹雪「……まあ、そんなすぐには来ないよね」
五月雨「結構待ったけどなぁ……」
電「まだ三十分しかたってないのです」
叢雲「やっぱり、ずっと見張ってるのは大変……」
ザッ
五人「!!」
五人は音のした方を見たが、何もなかった
漣「全員聞いたよね……」
五月雨「うん、聞こえた……」
電「誰か、いるのでしょうか……?」
叢雲「でも何も……」
叢雲「……!」
また近くのドラム缶が消えていた!
叢雲「まただ……!またやられたわ……!」
漣「こりゃあ予想以上にやばいですな……」
電「あ、長門さん」
五月雨「あの、見張ってるとき、何か音が聞こえたりはしませんか?」
長門「音?」
長門「……やはり、するのか……?」
五人「え?」
長門「実は、たまに聞こえるんだ……足音のようなものが……」
長門「しかし、気を張りすぎて幻聴が聞こえているのだと思ってな……」
長門「音のする方へ行き、いろいろと調べてみたりしたが、やはり何もない……だから気のせいだと……」
長門「だが、他の者たちもそう言うし、お前たちも……なら」
叢雲「誰か、倉庫に入ってきている……?」
長門「そうかもしれない」
長門「不可解?そうだな……」
長門「……そういえば、偶然かもしれんが……消える資材は、いつもすぐには手の届かないところにある」
吹雪「手の届かないところ?」
電「そういえば、さっき消えたドラム缶も、他の資材に囲まれていたのです」
長門「ああ。だから尚更不思議なんだ」
長門「何故、簡単に持ち運べるところではないのか、と……」
叢雲「まさか、本当に消えてるとか……?」
漣「いいえ、そんなオカルトありえません」キリッ
長門「消えてるにしても、その理由がわからないことは変わらない。どうにかしなければならないことも、な」
長門「いや、実はな……夜はなぜか資材が消えないんだ」
吹雪「え?意外……」
長門「そうだろう。消え始めたころは、夜もある程度警戒していたのだが……」
長門「私たちの疲労もたまってきてな。ある日、夜は思い切って休んでしまったんだ」
長門「しかし翌日見てみると、昨日のままだ。資材は全く減っていなかった」
電「では、今はお昼の間だけ監視しているのです?」
長門「ああ。もっとも、その監視もほとんど意味がないがな……」
長門「そうだな……正直、我々も限界なんだ」
長門「警備は戦艦や重巡で回しているのだが、全員疲労がたまっている」
長門「できれば、かかわりたくないんだ……」
漣「まあ、夜の間に消えないんだったら来ないでしょうな~」
吹雪「……わかりました。いろいろ聞かせてくれて、ありがとうございました」
長門「何、礼には及ばんさ」
長門「お前たちの話は聞いている。頑張ってくれ」
五人「はいっ!」
電「そうするのです」
叢雲「……うわっ!」コケッ
漣「え、何やってんの?叢雲ちゃん。何もないところで転んで」
漣「ドジっ子は五月雨ちゃん一人で十分だよ?」
五月雨「ちょ、ちょっと!漣ちゃん!」
叢雲「悪かったわね……」スクッ
叢雲(……何だったのかしら?今の……)
五月雨「さて、どうしようか?」
吹雪「とりあえず、本拠地に戻って会議を……」
夕張「あー、いたいた!叢雲ちゃーん!」ダダッ
電「夕張さん?」
叢雲「どうしたの?」
夕張「はぁ……はぁ……実は……」
夕張「ごめん!叢雲ちゃんの武器、失くしちゃった!」
五人「え!?」
夕張「実は、さっきのあなたたちが工廠から出た後のことで……」
夕張『うーん、この槍……どう改造してやろうかしら』←槍を手に持ってる
明石『あ、夕張ちゃん。鋼材が足りないから、倉庫で取ってきてくれない?』
夕張『はーい、わかりました』←槍を持ったまま
倉庫
長門『ん?夕張か……なんだそれは?』
夕張『え?……あら、持って来ちゃった』←槍持って来た
夕張『実はかくかくしかじかで……』
長門『なるほど……わかった。持っていけ』
夕張『よいしょっと……あ、槍どうしよう。両手ふさがっちゃった……』
夕張『まいっか。あとで取りに来よーっと』
夕張『さて、槍を……』
夕張『……』
夕張『……槍が、ない……?』
夕張『えー!?嘘!何で!?』
夕張「私が出てから帰ってくるまで、誰も出入りしてないらしいし……」
漣「うわぁ……」
吹雪「何で持って来ちゃったんですか……」
夕張「し、仕方ないじゃない!手に持ったままでいると、持っていること自体忘れて行動しちゃうってあるでしょ!?」
五月雨「ああ、消しゴム探してたら手に持ってた、みたいな」
夕張「そうそう、そんな感じ!」
電「流石に槍は気づくと思うのです……」
叢雲「……」
叢雲「……別にいいわよ。あれは、別に意味のないものだから……」
電「む、叢雲さん、まだ気にしてたのですか?」
叢雲「い、いやそうじゃなくて……」
夕張「本当にごめんね!代わりと言っては何だけど、いい装備作るから!」
叢雲「気にしなくていいわ。武器、お願いね」
夕張「ありがとう!じゃあ、作業に戻るね!」ダダッ
叢雲「……」
吹雪「……」
吹雪「さて、どうしようか……」
漣「うちらにできることはあるのかな~?」
電「前回のようにはいかないのです……」
叢雲「今日みたく、監視に参加してもあんまり意味ないでしょうし……」
五月雨「……じゃあ、夜に行くのはどう?」
吹雪「夜に?」
五月雨「うん。夜にだけ資材が消えないなんて、やっぱりおかしいよ」
五月雨「こっそり夜に行って、覗いてみよう」
叢雲「確かにそうね……やってみる価値はあるわ」
電「じゃあ、決まりなのです」
漣「漣の~怖い話~」ピカッ
叢雲「懐中電灯で遊ぶのやめなさい」
漣「その1……夜に出歩いていると、『夜戦……夜戦……』という謎の声が……」
電「それって……」
五月雨「川内さん、だよね……」
吹雪「確かにいつもそんな声がす……」
「夜戦ー!夜戦ー!」
五人「……」
吹雪「……行こうか」
叢雲「何がよ」
吹雪「あの、武器のこと……」
叢雲「いいって言ってるでしょ」
吹雪「あれ、大切なものなんでしょ?」
叢雲「……何でそう思うのよ」
吹雪「だって、いつも大事そうに持ち歩いてるじゃない」
叢雲「……」
吹雪「それに、昼間のあれ……嘘だよね」
叢雲「あれって、どれよ」
吹雪「あの武器が支給されてたってことと、意味なんてないってこと……かな」
叢雲「……なんでわかったのよ」
吹雪「私たちが着任した本当に初めのころは、持ってなかったよね」
吹雪「でもその少しあとから、持つようになった……」
吹雪「支給されてたんなら、最初から持ってるよね」
吹雪「そして、持つようになったのには、何か理由がある、と思ったわけだよ」
叢雲「……すごいわね、あんた」
吹雪「お姉ちゃんだからね」フンス
叢雲「あ?」
吹雪「ごめんなさい何でもないです」
吹雪「何で?」
叢雲「それは……」
叢雲「……ものすごーく、かっこ悪い理由だからよ」
吹雪「……そっか」
吹雪「じゃあ、この話は終わり。そろそろ倉庫につくよ」
叢雲「そうね……」
漣「さて、開けてみますかな……」スッ
五月雨「待って、漣ちゃん」
漣「え?何?」ピタッ
五月雨「……何か、聞こえる」
「イーッシッシ!今日も大量に奪えるイー!」
五人「……」
電「これって……」
叢雲「間違いなく、あいつらね……」
吹雪「やっぱりか……」
「やっぱりセンスイ様の『姿を消す能力』は最強だハー!」
漣「姿を消す能力……?」
叢雲「……なんか、謎が解けそうね」
「それにしても、やっぱり周りに別の資材があると奪いにくいニー!動かしにくいニー!」
「仕方ないだロー。資材がただ『見えなくなってる』だけなのに気づかれたらおしまいだロー」
五人「……!」
五月雨「見えなくなってるだけ……?」
電「どういうことなのです……?」
「見えなくなってる資材だけさっさと奪うハー!」
「わかってる二ー!でも、見えてる資材も奪ってしまっていいんじゃないかニー?」
「バカ。そんなことしたら、またあいつら夜の警備始めちまうイー。そうしたら奪える量も減っちまうイー」
吹雪「なんとなく、わかってきたね……」
叢雲「とりあえず、あいつらぶちのめせばいいのかしら?」スクッ
五月雨「ダメだよ!今はショキブレスも持ってないし、また援軍が来たら大変なことになるよ!」
漣「ここは前と違って鎮守府のど真ん中だしね」
叢雲「くっ……」
「大丈夫だロー。さっさと帰るロー」
吹雪「!これ、出口に来ちゃうんじゃない!?」
電「ま、まずいのです!今見つかったら……!」
シーン
叢雲「……来ないわね」
吹雪「あれ?」
五月雨「音もしなくなったよ」
漣「どこから帰ったんでしょうな?」
五人「……」
吹雪「……とりあえず、帰ろうか」
吹雪「とりあえず、あの話を聞いた限りでの、この事件の考察をまとめてみたけど…」
何故資材が減るのか?
・昼間のうちは資材が見えなくなっているだけ。センスイ?の能力らしい
・夜になると戦闘員たちが見えなくなった資材を運び出す
何故このような手段を?
・夜に必要以上に奪ってしまうと、警備を強化されてしまうため、昼に見えなくした分しか奪わない
・夜に警備されると、十分に奪えない(今回のようにのびのびと奪えない?)
・普通では手の届かない範囲しか資材を見えなくしない(すぐに手が届くとバレる)
何故昼に資材を見えなくする必要があるのか?夜に奪うだけではだめなのか?
・夜を中心に警備されてしまうから。昼は普通に人の目があるためどのみち奪えない
・精神攻撃も兼ねていると思われる。疲弊させることに目的が?(夜の警備をさせないため?)
叢雲「この間の空母棲姫みたいなやつの、『操る能力』と同じね」
電「資材が消える原因はわかったのです。でも……」
漣「奴らは、どこに消えたんでしょうな?」
吹雪「それなんだけど……普通の出入り口とは違う、あの人たちが使ってる出入り口が倉庫のどこかにあるんじゃないかな」
吹雪「そこに資材を運んで行って、そこから帰る……」
電「でも、それどこにあるのです?」
叢雲「資材を運べるほど大きい出入り口なら、すぐわかると思うけど」
五月雨「それも、見えない能力のせいじゃないかな……?」
漣「?どういうこと?」
五月雨「出入り口も資材と同じように、私たちには見えなくしてるんじゃ……」
吹雪「なるほど、それなら」
叢雲「どちらにしろ、普通の出入り口じゃないでしょうね」
叢雲「警備しても無駄、ということがわかったから、長門さんたちには警備を中断してもらいましょう」
電「確かに、かなりお疲れだったのです」
吹雪「待って。それだと、こちらの考えが気づかれるかもしれない」
叢雲「?どういうことよ」
吹雪「私たちがこのトリックに気が付いたことは、相手に知られちゃいけない」
吹雪「知られると、相手に警戒されて、尻尾がつかみにくくなる」
吹雪「資材が消えた先や、謎の出入り口がどこにあるかわからなくなっちゃうかも……」
叢雲「じゃあ、あのまま警備させろっていうの!?」ガタッ
叢雲「私たちのショキブレスが戻ってくるまで、あと三日あるのよ!?それまで……!」
吹雪「私だって、無理はさせたくないよ……」
吹雪「でも……」
五月雨「吹雪ちゃんの言う通りだよ」
五月雨「油断させておいて、一気に畳みかけるのが一番だと思う」
五月雨「……本当に、長門さんたちには申し訳ないとは思うけど……」
叢雲「……そうね。その通りだわ」
漣「珍しく熱いですな、叢雲ちゃん」
叢雲「……別に」
吹雪「……」
吹雪「とにかく、今日はもう遅いし、みんな寝よう」
電「そうするのです」
叢雲「……」
叢雲(なんでかしらね……)
明石「ついにできました!みんなの武器!」
夕張「さ、どうぞどうぞ」ササッ
吹雪「あれ?これ、前と同じショキブレスですよね」
電「武器はどうしたのです?」
明石「まあ、とりあえず変身してください」
五月雨「は、はい」
カチッ
シュィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン……
五人の体に、スーツが装着されていく!
バァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!
明石「キター!!」
夕張「変身だーー!!」
叢雲「テンション高っ!」
明石「ああ、ごめんなさい。通信ボタンの横に、もう一個ボタンが付いてるでしょ?」
吹雪「あ、ホントだ」
明石「押してみて」
漣「こう?」カチッ
ヒュボッ
漣「へぁっ!?」
吹雪「きゅ、急に出てきた……!」
叢雲「前回も思ったけど、この謎技術どうなってるのよ……」
夕張「ふふふ、ヒーローモノの技術に突っ込むのは無粋ですよー」
夕張「オーダー通り、吹雪ちゃんが剣、叢雲ちゃんが槍、漣ちゃんが弓、電ちゃんがハンマー、五月雨ちゃんが刀だよ」
明石「私たちの血と汗と涙と欲望と希望をコンクリートミキサーにかけてぶちまけた武器だよ!」
五月雨「お、思った以上に立派な武器ですね……」
明石「やっぱり気合入れて作らないとね!」
夕張「手に持ってる武器は、普通に使ってる分にはただの武器なんだけど……」
夕張「ギミック……特殊な機能を二つほど備えています」
漣「ほほう、二つも!」
明石「共通武器がない分、そのくらいあってもいいかなって」
夕張「念じると何かできます」
吹雪「何かって何ですか!?」
夕張「何かっていうのは、それぞれの属性のアレよアレ」
電「属性って何なのです!?」
夕張「属性は属性よ。考えるな、感じろ。OK?」
漣「OK!」ズドン
叢雲「やめなさい」
吹雪「は、はい」
吹雪「……」
ボォッ!
吹雪の剣が炎をまとった!
吹雪「うわぁ!?」
明石「ははは。すごいでしょ」
叢雲「なにこれ、魔法?」
夕張「いいえ、科学の力です」
漣「かがくのちからってすげー!」
五月雨「へぇ……すごいです」
夕張「吹雪ちゃんの属性は炎。叢雲ちゃんは大地。漣ちゃんは風。電ちゃんは雷。五月雨ちゃんは水となっています」
漣「叢雲ちゃんがグリーンだったらマジレンジャーだったんだけどなー」
叢雲「色決めたのあんたでしょうが」
夕張「ちなみにこれを使うと、ショキスーツと同じように、ちょっと体力を奪われちゃうから気を付けてね」
吹雪「ちょ、先に言ってくださいよ!」
夕張「あはは、ごめんごめん」
明石「ああ、うん。その前に……」
明石「その武器、船のパーツがモチーフになってるんだよね」
五月雨「え、そうなんですか?」
夕張「うん。叢雲ちゃんの槍がそんな感じだったから、それを参考にね」
叢雲「へぇ……それぞれ何がモチーフなの?」
夕張「それは……この武器名一覧を見ればわかる!」ドドン
吹雪 『ブリッジソード』
叢雲 『マストランス』
漣 『デッキアロー』
電 『アンカーハンマー』
五月雨『キールブレード』
吹雪「え、これ武器名ですか?」
夕張「そーよ」
電「意外と安直なのです」
漣「いやあ、武器名って言うのはこのくらいわかりやすいのが良いんだよ」
夕張「そうそう、そういうこと」
明石「それで、もう一つの機能って言うのは、そのモチーフっぽい力が使えるようになるんだよ」
吹雪「え、何ですかそれ!?」
夕張「だから考えるな、感じろ」
電「全然わからないのです……」
叢雲「外せるのねこれ……」ガチャッ
明石「んで、槍の柄の部分につけてみて」
叢雲「こう?」ガチャン
明石「その状態だと、そのもう一つの機能が使えるってわけ」
叢雲「へぇ。それで、具体的にはなんなの?」
明石「それは君の目で確かめるんだ!」
叢雲「……は?」
明石「いやー、説明が面倒で……」
叢雲「……あんたで試してみましょうか?」チャキッ
明石「ひぃっ!?ま、待って!落ち着いて!これあげるから!」ペラッ
叢雲「ん?何よこれ」
叢雲「……説明書?」
明石「うん、五人分全部それにまとめてあるから……」
明石「でも口で説明しただけじゃわかりづらいでしょ?かといって実践されると危ないし……」
吹雪「さっき私に炎出させたのはいいんですか……」
明石「でもそれなら図入りでわかりやすい!バッチリ!」グッ
漣「じゃあ最初から全部これでよかったのでは?」
夕張「それじゃつまらないじゃない!」ブーブー
明石「そーよそーよ!」ブーブー
叢雲「何その意味不明なわがまま……」
明石「ただまあ……まだ武器が使いこなせてないうちはあんまり使わないほうが良いかな?」
明石「叢雲ちゃんの武器にやろうとしてたみたいに、元々ある武器をベースにして作ると、そのまましまわれずに残っちゃうわけ」
明石「だから、いちいち持ち運んでないといけないわけで……そういった点ではよかったかも」
叢雲「そうね……別に、気にしてないったら」
吹雪「……」
吹雪「……とにかく、ありがとうございました!大事に使います!」
夕張「うん、後で感想聞かせてね!」
夕張「ん?何?」
夕張「ああ、それくらいならすぐできるわ」
電「本当ですか?」
明石「多分あれとあれを組み合わせれば……ちょっと待ってね」
吹雪「よし、これで……!」
叢雲「あそこに乗りこめるわね……!」
ギィッ
吹雪「あのー、みなさーん」
長門「ん?どうした?」
五月雨「提督がお呼びなので出てきてくださーい」
長門「提督が?いや、しかし……」
漣「倉庫のことなら大丈夫でーす。しばらく出てもらいますがー」
長門「うーん、まあ、仕方ない……」
吹雪「はい、じゃあここで待っててくださいね」
長門「ん?提督に呼ばれたんじゃないのか?」
電「ごめんなさい、嘘なのです」
長門「……?」
叢雲「さーて、ぶちのめしてやるわ……」
「センスイ様、これはチャンスだと思いますイー」
「あら、いたの?」
「しばらく戻ってこないって言ってたし、昼間ならその辺の少し奪っても大丈夫ですロー」
「ふむ……まあ、いいでしょう。一応、あなたたちも見えなくしてあげるわ」
「ありがとうございますハー」
「じゃあ早速……」
バンッ!!
「!!」
「動くんじゃないニー!バレちまうニー!」ヒソヒソ
「!しかもあいつら……!」ヒソヒソ
「ショキカンジャーだロー!しかもなんかおっかないの持ってるロー!」ヒソヒソ
「だ、大丈夫だハー。俺たちは見えてないんだハー」ヒソヒソ
「そ、そうだイー。このまま身を潜めていれば……」ヒソヒソ
叢雲「……」ピタッ
(……?どうしてここで立ち止ま)
叢雲「そこかぁーーー!!!」
グサァッ!!
イー「イーーーーーーーーーーーー!!!」
ハー(なんで場所がわかったハー!?見えてないはずじゃ……)
吹雪「そこぉ!!」ズバァッ!
ハー「ハーーーーーーー!!」
ニー(ふ、二人もやられたニー!偶然じゃないニー!)
電「命中……させちゃいます!」ブンッ!
ニー「二ーーーーーーーーーーー!!」
ロー(に、逃げ……)
五月雨「やー!!」ズバァッ!
ロー「ローーーーーーーー!!」
センスイ(何者なの!?奴らは!)
漣「お、あそこかー」ギリギリ
バシュンッ!!
センスイ「ヒィッ!?」シュバッ
漣「ちっ、外したか」
センスイ(こ、このままじゃまずい!撤退よ、撤退!)ダダッ
叢雲「ん、そこが出入り口ね」
吹雪「やっぱり効いたね、このサーモグラフィーゴーグル」
五月雨「見えなくなってるだけだからね」
漣「かがくのちからってすげー」
電「じゃあ、ここから降りればいいのです?」
吹雪「そうみたいだね。降りてみよう」
五人「……!」
五人が階段を下りた先には、倉庫以上の広さの地下空間が広がっていた!
叢雲「なんて広さ……」
五月雨「いつのまにこんな……」
漣「資材もちゃんとあるね~」
吹雪「これで資材がどこにあるかはわかったね」
電「じゃあ、あの人を早く追うのです!」
五月雨「でもどこに……」
漣「あ、あっちに抜け道があるよ」
吹雪「ここは……?」
電「どこなのです……?」
叢雲「まだ鎮守府が見えるから、そう遠くはないわね」
漣「例の採石場にちょっと似てんなー、ここ」
五月雨「あ、見て!」
センスイがさっきとは別の戦闘員を引き連れて逃げていた!
イー「だ、大丈夫ですかイー?」
センスイ「つ、疲れた……これだから行きたくなかったのよ……」
ロー「でもセンスイ様じゃないと透明にはできないですしロー」
ニー「それに例の件に関しても……」
センスイ「そ、そうはいっても……」
吹雪「待ちなさい!」
センスイ「!!」
イー「あ、あいつら追ってきたイー!」
ハー「グヌヌ……さっき別の個体を殺されてしまったハー……!」
センスイ「な、何者なの!?お前たちは!」
吹雪「お、来たよ。名乗れる時が」
漣「よっしゃ、キタコレ!」
吹雪「吹雪レッド!」
叢雲「叢雲ブラック!」
漣「漣ピンク!」
電「電イエ口ー!」
五月雨「五月雨ブルー!」
吹雪「五人そろって!」
五人「駆逐戦隊!ショキカンジャー!!」
バァァァァァァァァァァァァァァン!!!
センスイ「クウボから話は聞いているわ……」
漣「倉庫の資材を奪っていった悪行……許せる!」
叢雲「許してどうするのよ」
漣「あ、間違えた。許せん!」
五月雨「ここで倒させてもらいます!」
センスイ「仕方ない……イー!ロー!ハー!ニー!やっておしまい!」
「イー!」「ロー!」「ハー!」「ニー!」
吹雪「よし……みんな、いくよ!」チャキッ
吹雪「えいっ!」ズバッ!
イー「グェッ」ドサッ
吹雪「え、何かリアル」
叢雲「喰らえ!!」グサッ!
ロー「うぐぁっ!!」ドサッ
叢雲「何でさっきまでと叫び声違うのよ」
ハー「よくもこいつらを……許せる!」ブンッ
五月雨「あなたもですか……たー!!」ドカッ!
ハー「ぐはぁっ!?な、なんのこれしき……」
五月雨「あ、峰打ちだった」
漣「はーい、五月雨ちゃんどいてー」ギリギリ
バシュンッ!
ハー「ば……ばかな……」ガクッ
電「あ、あの……」
ニー「く、来るな……!お前の武器が一番凶悪だニー!」
電「で、でも……」
ニー「前も油断してやられたニー……今度は油断しないニー!」ジリッ
電「ご、ごめんなさい!」ブンッ
ニー「え?意外とリーチ長……」
グチャッ
ニー「……」
電「は、はわわ……」
吹雪「見た感じ、そこまで傷深くないよね!?」
イー「……まあね」ピクピク
ロー「こ、今回はリアルを追及してみましたロー……」ピクピク
ハー「曲がりなりにも、ハーたちは戦闘員……ちょっとやそっとじゃ死なないハー……」ピクピク
漣「マジかよ」
ニー「……」
漣「あれ?一人死んでね?」
ニー「……せ、セーフ……」ガクッ
叢雲「アウトよ」
長門「吹雪の言ったとおり、しばらくしてから来てみたが……何だこれは!?」
陸奥「こんなところに隠してあったのね……」
明石「夕張ちゃん、早くしないと戦闘見逃しちゃうよ!」ダダッ
夕張「ちょっと待ってよー!足は遅いんだからー!」
長門「……何をやってるんだあいつらは」
陸奥「さあ?」
夕張「うぅ……ん?」
夕張「これって……」スッ
明石「ちょっとー!!夕張ちゃーん!?」
夕張「は、はーい!」
叢雲「残るはあんただけね。大人しくなさい」
センスイ「ぐぅ……!」
イーたち「イー!!!!」ワラワラ
遠くから、大量のイーたちが走ってきた!
五月雨「うわぁ、また来た!」
電「この間よりも多いのです!」
センスイ「私の能力で、ステルス攻撃よ!」バッ
イーたち「イーーー!!」シュンッ
叢雲「!!消えた……!」
吹雪「大丈夫!このゴーグルで……!」スチャッ
イーたち「イーーーーーーーーー!!」ダダダ
吹雪「そこっ!!」ズバッ
イーA「イー!!?」ドサッ
漣「一気に攻めろー!!」バシュバシュッ!
イーB「イーーー!!」ドサッ
叢雲「ふんっ!」ズブッ
五月雨「ヤァー!!」ズバッ
電「えーい!」ドゴォ
イーたち「イーーーーーーーーーー!!??」
ドゴォォォォォォォォォォォォン!!!
センスイ「だったら……!」パチン
イーたち「イー!!」ババッ
イーたちは五人のゴーグルを奪おうとし始めた!
吹雪「うわ!?」
叢雲「ご、ゴーグルが……!この……!」
五月雨「と、取らないでー!」グググ
イーたち「イーーーーーー!!!」バッ
吹雪「ッ!しまっ……」
イーたち「イーーーーー!!」バキッ!
五人はゴーグルを奪われて、壊されてしまった!
電「た、大変なのです……!」
漣「ありゃー、大ピンチ?」
イーC「イーーー!!」ドカァッ!
吹雪「ぐぁっ……!」
ボォォォォッ!!
吹雪の剣が炎をまとった!
吹雪「はぁっ!」ブォンッ
イーD「イー!?アチー!!」メラメラ
吹雪「まだまだ!」ブォンッ
イーE「イー!?」ドサッ!
イーF「そ、そんなの反則だイー!!」
叢雲「……」
叢雲は武器に意識を集中させた
シーン
が、何も起こらなかった
叢雲「え!?何でよ!」
叢雲「吹雪みたいになんか出るんじゃないの!?」
叢雲「な、なんか何も起こらないんだけど!」
漣「んー?マジグリーンっぽく地面に武器たたきつけりゃいいんじゃね」
叢雲「え、そういうもんなの?」
漣「そういうもんなの」
イーたち「イー!!!」ワラワラ
叢雲「はああああああああ!!!」ブォンッ
叢雲が地面に槍を突き刺すと、地面に衝撃波が走った!!
ドゴォォォォォォォォォォォォォッ!!!
イーたち「イーーーーーーーッ!!??」
ドガァァァァァァァァァァン!!!
叢雲「地属性って何かと思ったけど、なるほど……こういう感じなのね」
電「えーーーいっ!!」ドゴォォォォッ!
五月雨「たぁーーーっ!!」ズバァァッ!
イーG「み、見えてないはずなのにかなりやばいイー……」
センスイ「うろたえるな!お前らのほうが有利なのに変わりない!隙を見てその武器を奪うのよ!」
イーたち「了解ですイー!!」ババッ
吹雪「はぁっ!!」ズババッ!!
イーたち「イーーーーー!!?」メラメラ
叢雲「いかないわよっ!!」ドゴォ!
イー「イッーーーーー!!??」ドサッ
五月雨「くっ……でも」ズバッ!
電「キリがないのです……!」ドゴォ!
漣「しつこーい!!」シュババッ!
センスイ「ふふふ……いいわよ、そのまま追い詰めなさい……!」
明石『ただまあ……まだ武器が使いこなせてないうちはあんまり使わないほうが良いかな?』
叢雲「……」
叢雲「……でも、やるしかないわ……!」カチャッ
叢雲は、ショキブレスのアンカーパーツを槍の柄の部分に取り付けた!
ブォンッ ブォンッ
叢雲は槍を頭上で回転させている!
イーH「な、なんだイー!?」
シュィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン
回転させていくうちに、叢雲の槍が光を帯び始めた!
センスイ「あれは……何のつもり……!?」
叢雲(このエネルギーがたまった状態で、さっきと同じことをすれば……!)
ブォンッ ブォンッ
叢雲「はあああああああああああああああ!!!!」
ブォンッ!!
叢雲は槍を地面に突き刺した!!
叢雲「……!?」
しかし、さっきと同じような衝撃波は発生しなかった……
センスイ「……ふん、何かと思えば」
イーI「イー!!」ドゴォッ!
叢雲「ぐあっ!?」
吹雪「叢雲ちゃん!!」
イーJ「よそ見してる場合じゃないイー!!」バッ
イーたち「イーーーーーーーーッ!!」ババッ
吹雪「あっ!」
五月雨「うわぁ!?」
電「そんな!?」
漣「ま、まずいねこれは……」
全員、武器を奪われてしまった!!
イーたち「イーーー!!」ドンッ!
電「くぅっ!?」
叢雲「ぐっ……!」
そのまま全員、地面に押さえつけられてしまった
センスイ「さーて、どうしてくれようかしら……」
センスイ「このまま殺してもいいけど……何か利用価値あるかしら?」
センスイ「私たち?私たちは、秘密結社『ディープマリン』」
センスイ「あなたたち艦娘を壊滅させようと目論む団体よ」
五月雨「ディープマリン……!?」
漣「やっぱり、深海棲艦と関係が……!?」
センスイ「ふふ、どうかしらね」
センスイ「あなたたちの処分については『あの方』に任せるとしましょう」
叢雲「ぐ……」グググ
叢雲は槍に手を伸ばそうとした
センスイ「あら、まだやる気なの?どうせ奪い返せないのに……」
叢雲「まだよ……まだ、アレがうまくできれば……」
センスイ「ふーん……さっきのをまたやろうとしてるわけ?どうしてできなかったのかもわからないくせに?」
叢雲「何ですって……!?」
センスイ「どうやらまだその武器……上手く使いこなせてないみたいね」
叢雲「ぐっ……」
センスイ「そうね、見せしめに……あんた、それ壊しなさい」
イーI「了解ですイー」グググ
バキィッ
叢雲「……!」
センスイ「ホホホ。いい気味ね」
叢雲「あんたたち……!」ギリッ
「待ちなさい!」
全員「!!?」
夕張「叢雲ちゃん、受け取って!」ビュンッ!
グサッ!
イーK「イーーーーッ!!?」ジタバタ
夕張が投げたものが、叢雲を抑えていたイーに刺さった!
イーK「ぐふぁっ!?」ゴロゴロ
叢雲「!……これ……」
夕張が投げたのは、夕張がなくした叢雲の武器だった
夕張「消えてた資材と一緒にあったの!」
夕張「ピンチみたいだから、使って!」
叢雲「……」
叢雲「ありがとう……」グッ
──────
───
五人が鎮守府に着任したてのころ
提督『どうして一人で出撃したりしたんだ!』
叢雲『……悪かったわね』ボロッ
叢雲『解体するならどーぞ。好きにしなさい』
提督『……するわけないだろう』
叢雲『だったら、放っておいてよ』
提督『叢雲、俺は……!』
提督『俺は心配したんだぞ……!勝手に出撃して……沈んだらと思って……!』
叢雲『……』
叢雲『……あんたには関係ないでしょ』
提督『あるに決まってるだろ』
提督『お前らはみんな、俺の大事な部下だ……』
提督『そんな奴が、沈む寸前だったんだからな……』
叢雲『……』
叢雲『……訓練だけじゃ、足りないのよ』
提督『……何?』
叢雲『私はまだ弱い……それはわかってる』
叢雲『だから、もっと強くなりたかったの』
提督『……』
提督『……それで沈んだら、意味がないだろうが……!』
叢雲『……』
提督『叢雲。お前は一人じゃない。仲間がいるじゃないか』
提督『吹雪も、漣も、電も、五月雨も……俺もだ』
提督『だから、もっと仲間を……』
叢雲『……だから、強くなりたかったのよ……!』
叢雲『仲間を守れるくらい、強く……!』
提督『そのために仲間を悲しませてどうする!!』
叢雲『……っ!』
叢雲『心……?』
提督『ああ、心だ』
提督『強い心を持てば、たとえ、力がなくても……』
提督『大切な仲間を、守ることができる』
提督『その心の強さが……本当の強さだ』
叢雲『でも、そんなの……』
提督『……』
叢雲『……?何よ、これ……』
提督『俺が以前、ある人からもらったものだ。マストをもとにした、槍のようなものらしい』
提督『その時に、今俺がお前に言ったことを言われた……』
叢雲『……』
提督『これを握りしめていると……不思議と、強くなれる』
叢雲『強く……?』
提督『そして、仲間を守ることができる……』
叢雲『……』
提督『信じるか信じないかはお前次第だ。だが、持っていてほしい』
提督『いつか、俺の言ったことがわかる日が来る……』
提督『そして……』
提督『……いつか、本当の強さを手にすることができるだろう』
──────────
──────
───
叢雲「……」
叢雲「……司令官」
叢雲「……今、わかったわ!!」グッ
グサッ!
イーI「イーーーーーー!!??」
叢雲「次ぃ!!」ドガッ!
イーJ「イーーーーーーッ!!」
センスイ「な、何!?」
センスイ「さっきまでと、動きが全然違う……」
イーL「な、何でイーたちの位置がわかるイー!?」
叢雲「あんたたち武器持ってるでしょーが!」グサッ!
イーL「あ、そうか」ゲフゥ
ザッ
叢雲「!!そこかぁ!!」ズブッ!
イーM「イーーーーーーっ!!?」
イーM(な、なんで……!)
イーM(まさか、足音で……!)
吹雪「す、すごい……」
漣「う~ん、流石切り込み隊長」
センスイ「そ、そんなバカな……」
夕張「いいわよー!叢雲ちゃん!予備のサーモグラフィーで確認したけど、敵はいないよ!
明石「持ってきてよかったねー」
センスイ「し、仕方ない……こうなったら私が……!」スッ
シュンッ
センスイの姿が消えた!
センスイ「それはどうかしら!?」
ガッ!
吹雪「え!?」
センスイ「そして……!」スッ
シュンッ
吹雪の姿も消えた!
漣「な、吹雪ちゃんが!」
五月雨「まさか、吹雪ちゃんを連れて……!」
電「大変なのです!」
センスイ「私に攻撃したら、お前の仲間に当たるかもしれないからね!」
五月雨「そんな……!」
吹雪「叢雲ちゃん!私に構わず!」
叢雲「くっ……」
センスイ「ホーッホッホ!このままこの子は人質にさせてもらうわ!」ダダッ
叢雲「……」
叢雲「……なんてね」
ポチッ
ピピピピッ
吹雪のショキブレスから通信音が鳴りだした!
センスイ「このまま……」
ピピピピッ
センスイ「……」
ピピピピッ
センスイ「……」
ピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピ
センスイ(うるせえええええええええええ!!)
センスイ(多分、あの腕輪から鳴ってるから、この子の腕輪をどうにかすれば……)
センスイ(……)
センスイ(しまったああああああ!!これ私にも見えねええええええ!!)
センスイ(これ本当に見えなくするから、私にも見えないのよね……)
センスイ(仕方ない、一旦この子への能力を消して……)パチン
センスイ(ええと……持ちづらいわね、一旦地面において、と)
センスイ「よし、止まった!これであとは……」
『よし、止まった!これであとは……』
センスイ「え?」
叢雲「はああああああああああああ!!!」ダダッ
センスイが気が付くと、叢雲が目の前まで来ていた!
センスイ(しまった!!まだこの子を透明にしてな……)
叢雲「吹っ飛びなさああああああああああい!!!」
ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!
センスイ「ちっくしょおおおおおおおお!!覚えてなさあああああああああい!!」ヒューン
キラーン
吹雪「……多分、飛んで行った……よね?」
叢雲「バカで助かったわ」
叢雲「いいのよ。礼には及ばないわ」
漣「おーい、二人ともー!」ダダッ
電「無事なのですー!?」
五月雨「叢雲ちゃん、かっこよかったよー!!」
叢雲「よかった……全員無事みたいね」
叢雲「本当によかった……私……」
吹雪「……叢雲ちゃん?」
叢雲「……いいえ、何でもないわ」
明石「武器は……今回はあんまり役に立たなかったかな?」
五月雨「いえ、私たちが使いこなせてないみたいですし」
明石「そうだね……こればっかりは頑張ってというしか」
夕張「でも、叢雲ちゃんのそれは大活躍だったね!」
夕張「見つかってよかったよ本当に!」
叢雲「そうね……本当、よかったわ」
叢雲「……あとで、元に戻せる?」
夕張「え?そりゃあできるけど」
叢雲「そう……なら、この戦いが終わるまではお願いするわ」
明石「そっか。あ、あと、さっき話した通り、ずっと持ち歩くことになるけどいいかな?」
叢雲「ええ、構わないわ」
叢雲「むしろ、そっちの方がいいかもしれないから……」
夕張「あら、そう?」
叢雲「……」
──────
───
執務室
提督「よう。お手柄だったそうじゃないか」
叢雲「ええ、おかげさまでね」
提督「いいや、お前の強さのおかげさ」
叢雲「……そうね」
提督「……ようやく、わかったみたいだな」
叢雲「……」
叢雲「……一つ聞いてもいいかしら?」
提督「何だ?」
叢雲「どうして……これ、私に渡してくれたの?」
叢雲「他の誰かじゃなくて……」
提督「お前ら五人は、仲間を守りたいという気持ちは皆強かった」
提督「それこそ優劣はつけられないくらい……」
提督「だが、『強くなりたい』と、一番強く願っていたのは、お前だったからな」
提督「だからお前に、『強さ』を与えた」
叢雲「……なんだかわかったような、わからなかったような……」
提督「はは。正直なところ、俺にもよーわからん」
叢雲「はぁ?なによそれ」
提督「まあ気にするな。それより、今日も活動するんじゃないのか?」
叢雲「ああ、そうね。じゃあ、失礼するわ」
提督「ああ」
叢雲「何?」
提督「……強くなったな」
叢雲「……」
バタン
叢雲(単純な力じゃない、本当の強さを手にして……!)
グッ
叢雲「……よし!」
叢雲「ショキカンジャー、ブラックの叢雲!行くわよ!」
第三話「武器がほしい!」 艦
ヨッシャー!とうとう漣の出番キタコレ!
おっと失敬失敬……
ピンクと言えばお色気担当!実はショキカンジャーのお色気担当は漣なのですよ!
え、全然合わない?んなバカな!
それにしても、戦隊と言えば物語の中盤あたりで人数が増えるのも定番ですね~
でもさすがにこのショキカンジャーにはもう……え?もう一人いる?マジで?
次回、第四話「六人目の戦士!?」
ライディングデュエル、アクセラレーション!
~ショキカンジャーの武器~
漣「さあ今回も始まりました、『ショキカンジャーって?ああ!』のコーナー」
吹雪「またやるんだこれ……」
漣「当然っしょ?毎回やるよこれは!」
叢雲「前回みたいなことにはなりなくないわね……」
電「えっと、今回説明するのは……」
五月雨「新しく手に入った武器、かな?」
漣「その通り。今回はそれについて解説していくよ」
叢雲「モチーフはブリッジ、艦橋ね」
電「剣の柄の部分が艦橋みたいなデザインなのです」
漣「持ちにくそう」
吹雪「いや、そんなゴツゴツしてないから……」
五月雨「……なんか、扶桑さんの艦橋に似てない?」
吹雪「モデルはそうかもね……」
電「言わずと知れた、叢雲さんのマスト型の槍なのです」
五月雨「折られた方の槍も、参考にしてたらしいね」
吹雪「ショキブレスの武器ボタンを押すと、全体が特殊合金で覆われるよ」
叢雲「より丈夫に、より鋭くなるってわけね」
漣「一部では剣かもって言われてるらしいけど」
叢雲「え、そうなの?」
五月雨「弓なのにアローなの?」
漣「いやあ、特撮ではこうなんですよ……」
電「デッキ、つまり甲板がモチーフなのです」
吹雪「特に飛行甲板かな?それっぽい模様が入ってるよ」
漣「形状はプテラアローに似てるよ。矢は普通の弓も撃てるけど、光線状の矢も使えるから撃ち放題」
叢雲「相変わらず謎技術ね……」
叢雲「モチーフは錨ね。錨の話は出たけど、まさか採用されるとはね……」
吹雪「頭の部分に、錨型のマークが彫られてるよ」
電「思ったより軽くて安心したのです」
漣「どれどれ……ふんっ!?」ズシン
五月雨「……夕張さんが言ってたけど、電ちゃんだけが軽く感じるようになってるらしいよ」
吹雪「それって本当はかなり重いんじゃ……」
電「キール……竜骨がモチーフの刀なのです」
吹雪「刀身の側面に、木造の船の竜骨みたいに横向きの筋が何本も入ってるよ」
叢雲「これって鞘とかないの?」
五月雨「え、ないけど……」
漣「……持った状態で近寄らないでね」
五月雨「え!?どうして!?」
叢雲「吹雪が炎、私が大地、漣が風、電が雷、五月雨が水ね」
五月雨「私たちは武器に意識を集中させることで、それぞれの属性の物を操ることができるよ」
電「基本的には、武器にまとわせたり、前方に放ったりするのですが……」
漣「叢雲ちゃんだけ仲間はずれ」プププ
叢雲「……まあ、確かに土やら石やらをまとってもしょうがないわよね」
叢雲「私は地面に槍を刺すことで衝撃波を走らせたり、周囲の石を巻き上げたりできるわ」
吹雪「まだ、一度も使ったことないんだよね……」
漣「叢雲ちゃんも不発だったし」プププ
叢雲「……」ギリギリ
漣「ぐええええええ!!ギブギブ!!」バンバン
電「ま、まあ、どんなものかは説明書を読んだので知ってるのです」
漣「ぐっ……まあ、今回の説明は叢雲ちゃんだけで」
叢雲「え?なんでよ」
漣「大人の事情ってやつですよ」
吹雪「振り回したり、回転させたりするのが条件じゃないんだ」
叢雲「そう。でも実質そんな感じのことをしないとうまくたまらないでしょうね」
漣「土属性のくせに風でエネルギーためるって」プププ
叢雲「……」ポカッ
漣「あいたぁ!?」
五月雨「エネルギーが十分にたまったら、槍が光を帯びるよ」
電「そしたら地面に突き刺して衝撃波を走らせてもいいですし、敵に直接攻撃してもいいのです」
吹雪「鍛錬あるのみ、だね」
五月雨「うん。しっかり使いこなせるようにならないと」
電「頑張るのです!」
漣「いやー、失敗した時の焦ってる叢雲ちゃんの顔、かわいかったなー」プププ
叢雲「……」
カチッ
シュィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン
漣「……ん?」
漣「あの、叢雲さん……なぜ今、抜錨を?」
叢雲「……」カチャッ
漣「そしてなぜ、アンカーパーツをマストランスに付けたの?」
漣「え、ええと……」
叢雲「じゃあ……今の私、どんな顔してると思う?」
漣「あ……ええ……」
漣「ものすごく……怒ってらっしゃる顔だと……」
叢雲「へえ、よくわかってるじゃない」
漣「え!?いや、いいです!結構です!」
叢雲「ほら、早く外行くわよ。室内じゃ危ないもの」グイグイ
漣「やめて!助けて!お願いします!許して!」
漣「さ、三人とも助けてよ!」
吹雪「いやあ、そんなこと言われても……」
五月雨「私たちにはどうしようも……」
電「諦めるのです」
漣「そ、そんな……」
叢雲「ショキスーツがあれば、死ぬことはないはずだから」
漣「う、うわああああああああああああああああああああ!!!!」
艦
鎮守府のとある一角
吹雪「……」
五月雨「……」
二人は変身し、武器を構えて対峙していた
電「二人とも、準備はよろしいのです?」
吹雪「うん」
五月雨「いいよ」
電「では……」スッ
電「始め!!」
ジャキンッ!!
ガキンッ
五月雨「…!」
吹雪が振り下ろした剣を、五月雨は刀で防いだ!
吹雪「まだまだぁ!!」ガキンガキンッ
五月雨「ッ…!」ガキンガキンッ
吹雪の攻撃を、五月雨は防ぎ続けている!
ガキンッ!
五月雨「…!」グググ…
ザパァッ!
吹雪「!?」バシィッ!
五月雨は刀に水をまとわせ、防いでいた吹雪の剣を弾き飛ばした!
五月雨「やぁー!!」ガキンッ!
吹雪「く…!」グググ
ザバァァァァ!!
吹雪「!!」
五月雨の刀から水があふれだし、吹雪の顔を覆い、視界を奪った!
五月雨「たぁー!!」ブンッ
吹雪「!!」
ボォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!
五月雨「!!」サッ
吹雪は剣から炎を放射して、五月雨に回避させ、距離をとった!
五月雨「……」ジリッ
吹雪「……!」
吹雪「……」グッ
二人「はぁっ!!」バッ!
ボォォォォォォォ!!!! ザバァァァァァァァ!!!!
二人は互いに武器から炎と水を放出した!炎と水がぶつかり合う!
吹雪「うおおおおおお!!!」ダッ
五月雨「はあああああああああ!!!」ダッ
バシュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!!!!!
吹雪「……」ピタッ
五月雨「……」ピタッ
炎と水がおさまったころ、二人は互いに接近し、武器を突き立てていた……
吹雪「いやー、流石だね、五月雨ちゃん」
五月雨「吹雪ちゃんこそ。すごい攻撃だったよ」
電「二人とも、武器の扱いが上手になったのです。訓練の賜物なのです」
吹雪「そうだね。前よりは上手く扱えるようになったかな」
五月雨「でもまだまだだよ。もっと強くならないと……」
電「じゃあ、次は電ともお手合わせお願いするのです」ズシン
二人「……」
電「?どうしたのです?」
吹雪「……二人がかりでいい?」
電「え!?」
五月雨「下手したら殺されかねないし……」
電「ええ!?」
吹雪「そうかもしれないけど、破壊力がすごいんだよ……」
五月雨「そのハンマー、結構大きいし……」
吹雪「当たったらひとたまりもないよ」
電「と、とにかく、電ももっと強くなりたいのです!お願いするのです!」ブンブン
吹雪「わかったから振り回すのやめて!」
イナズマノホンキヲミルノデス
ウワッ アブナイ コロサレルッ
夕張「って、あんな感じで訓練してるんですよー」
提督「ふむ……」
提督「ちゃんと頑張ってるみたいだな」
明石「はい。工廠と倉庫の問題も解決してくれましたし」
提督「まああいつらならしっかりやってくれると思ってたがな」
提督「……それで、どうだ?」
明石「先日、それらしきものの観測に成功しました」
提督「マジかよ…………」
夕張「私たちの科学力をもってすればこの程度!」
明石「あの子たちが変身したり、武器を扱ったりすると大きくなるエネルギーがありまして」
明石「もちろんそれは、スーツや武器が持つエネルギーとは別です」
提督「『戦隊パワー』は確かに存在するってことか……」
夕張「……それに、不可解な点もあります」
提督「不可解な点?」
明石「『戦隊パワー』は、あの子たちだけが持つものではありませんでした」
明石「私たちや他の何人かの艦娘にも、同様のエネルギーが観測されました」
明石「……しかし、それはあの子たちに比べると、ずっと低いものです」
提督「……つまり、あいつらの『戦隊パワー』がかなり大きいってことか?」
夕張「そういうことになりますね」
夕張「それがわからないから、不可解な点なんですよ」
明石「まあまだデータも少ないですし、他の人にも協力してもらいますよ」
提督「……そうだ、あいつはどうだったんだ?データもう取ったのか?」
明石「あいつ?……」
明石「……あ、忘れてました……」
提督「……おい」
夕張「ご、ごめんなさい……」
明石「じゃ、じゃあこの後ででも」
夕張「今日は彼女、特に出撃とかありませんでしたよね?」
提督「ないけど……この後はやめておけ」
提督「……あいつらと、話をするはずだからな」
吹雪「つ、疲れた……」クタッ
五月雨「やりすぎちゃったかも……」クテッ
電「い、今敵が来たら勝てないかもしれないのです……」ヘナヘナ
吹雪「とりあえず、訓練はここまでにして、本拠地に戻ろう」
五月雨「そうだね……あれ?」
五月雨「そういえば、叢雲ちゃんと漣ちゃんは?」
電「本拠地で特殊訓練するって言ってたのです」
吹雪「え?何だろう……」
五月雨「今戻ったら、何してるか見れるかな」
電「じゃあ、帰るのです」
叢雲「……」
漣「……」
本拠地に戻ると、二人はちゃぶ台を挟んで真剣な表情をしていた
それを吹雪たち三人は、扉からこっそり見ていた
電「はわわ……すごい剣幕なのです」
五月雨「も、もしかして喧嘩?訓練は?」
吹雪「……ん?あれって……」
叢雲「……行くわよ、漣」
漣「どうぞ……どこからでもかかって来い!」
叢雲「私のターン!ドロー!」シュッ
三人「!!?」
叢雲「ジャンク・シンクロンの召喚に成功したとき、墓地からレベル2以下のモンスターを特殊召喚できる!」
叢雲「蘇れ、スピード・ウォリアー!」バッ
叢雲「さらに、チューナーモンスターがフィールドにいるとき」
叢雲「墓地のボルト・ヘッジホッグを特殊召喚できる!」バッ
叢雲「レベル2のソニック・ウォリアーに、レベル3のジャンク・シンクロンをチューニング!」
叢雲「集いし星が、新たな力を呼び起こす!光さす道となれ!」
叢雲「シンクロ召喚!いでよ、ジャンク・ウォリアー!」バッ
漣「ここで、ジャンク・ウォリアーだと!?」
漣「はい、ここで『デモンズ・チェーン』を発動します」ペラッ
叢雲「えっ」
漣「ジャンク・ウォリアーさんは効果を無効にされ、攻撃できません」
漣「よって攻撃力2300のままです」
叢雲「……」
叢雲「……ターンエンド……」
漣「はい、漣のターン、ドロー」シュッ
漣「レッド・デーモンズ・ドラゴンでボルト・ヘッジホッグを攻撃!」
漣「アブソリュート・パワー・フォース!」
叢雲「う、うわあああああああああ!!」900→0
漣「そりゃあ、勝つためにはアニメ再現ばかりはできませんからなぁ」
漣「展開するのに、伏せカードを除去してないのが悪い」
漣「あと、再現のためにボルヘジを攻撃表示にしておくのもいけませんな」
叢雲「くっ……もう一回よ!今度はクェーサー出してやるんだから!」
漣「はいはい」
吹雪「……何やってんの?」
叢雲「!!み、みんな……!これは……」
五月雨「まさか、一時間以上……」
電「遊戯王で遊んでたのです?」
漣「い、いやこれは、頭のトレーニングを……」
叢雲「そ、そうよ!遊戯王は結構頭を使うのよ!?」
三人「……」ジトッ
漣「そんな目で見ないでぇ……」
叢雲「くぅ……!」
電「?どうしたのです?」
吹雪「司令官に呼ばれてたんだった。みんなも来て」
五月雨「うん、わかった」
叢雲「……」
漣「……」
吹雪「はーい、二人も来てねー」グイッ
叢雲「……」ズルズル
漣「……」ズルズル
吹雪「失礼します」ガチャッ
提督「ん、来たか」
五月雨「何の御用でしょうか?」
提督「……お前らが闘ってる敵……『秘密結社ディープマリン』と名乗ったんだよな?」
電「はい、そうですが……」
提督「……その名前を知っている者がいた」
五人「!!」
提督「大井だ」
漣「……はい?」
提督「大井がそのことについて知ってるそうだ」
五人「……!?」
提督「な、何だその顔は」
叢雲「いや、だって……」
提督「まあ、正直俺も意外だった。情報通の青葉なら知ってるかもしれん、くらいに思っていたが」
提督「まさか大井がなぁ……」
吹雪「でも、どうして大井さんが……」
提督「詳しいことは本人に聞くといい。今日は出撃の予定は入ってないから鎮守府にいるだろう」
五月雨「はい、わかりました……」
電「意外なのです」
漣「世の中何があるかわからないね……」
吹雪「とにかく、大井さんを探して、話を聞いてみよう。敵の正体がわかるかも……」
五月雨「……あれ?あそこ歩いてるの……大井さんじゃない?」
大井「……」スタスタ
漣「おお、なんと都合のいい……」
電「早速話を聞いてみるのです」
大井「……あら?あなたたち……どうしたの?」
吹雪「今日は、北上さんは一緒じゃないんですか?」
大井「そうなのよ……今日は北上さんだけ出撃で……」
大井「はぁ……提督め……」ゴゴゴ
電「は、はわわ……」
五月雨「あ、あの、それで、聞きたいことがあるんですが」
大井「……はっ、いけないいけない……」
大井「な、何かしら?」
叢雲「……『秘密結社ディープマリン』について、聞きたいのだけど……」
大井「……!!」
電「はい……」
大井「……いいわ。話してあげる」
大井「結構長くなると思うけど、いいかしら」
吹雪「あ、だったら立ち話もなんですから、座れる場所に行きましょう」
ショキカンジャー本拠地
大井「ここ、あなたたちが使ってたのね」
五月雨「ええ、そうです」
大井「……どうして遊戯王が出ているの?」
漣「あ、しまった」
叢雲「片付けてなかったわ……」
吹雪「どうぞ、お座りください」
大井「ええ……」スッ
大井「……それで、何から話そうかしら」
叢雲「まず……あいつらは何者なの?」
大井「奴らは、『秘密結社ディープマリン』……艦娘の壊滅を目論む集団、と名乗ってるわね」
電「前も、そんなこと言ってたのです」
大井「艦娘を壊滅させようとしている理由はわからないけど、あらゆる手段を尽くして襲ってくるわ」
大井「でも、そのやり口は慎重なのか大胆なのかよくわからないわね」
五人(確かに……)
大井「ただ、わかっているのは……」
大井「……奴らには、いわゆる『ヒーロー』を模した攻撃が有効……ということよ」
五月雨「ヒーロー……ですか?」
叢雲「戦隊ヒーローじゃなくて?」
大井「それも含めて、よ」
漣「ということは、アメコミヒーローやライダーでもいいと?」
大井「恐らくね」
漣「プリキュアや美少女戦士でも?」
大井「……多分……」
吹雪「漣ちゃん、そこまで」
大井「そこまではわかっていないわ……そこが一番の謎なのだけど」
大井「艤装による砲撃とかも、効かないわけじゃない。ただ、戦闘員の足止めくらいにしかならないみたいだけどね」
大井「あと、もう一つ」
大井「その『ヒーロー』を模した攻撃は……誰でもできるわけではないようなの」
叢雲「え?」
大井「以前、ある鎮守府に奴らが現れた時……何人かの艦娘で応戦したわ」
大井「でも、うまく攻撃が通ったのはほんの一握り……その他はやむなく逃走することになったわ」
大井「あなたたちは、どうやらその攻撃が通る者の中に入れたようね」
電「もしダメだったら、全員最初の時点でやられてたのです」
吹雪「でも、どうして少人数しか攻撃が通らないんでしょうか?」
吹雪「そしてなぜ、私たちが……?」
大井「さっきも言ったけど、奴らに関してはわからないことがほとんど」
大井「わかってるのは、『ヒーロー』を模した攻撃が効くこと」
大井「そしてそれは、誰もができるわけじゃないってことだけよ」
五人「……!」
大井「あなたたちなら、実際に見たからわかるでしょう」
大井「奴らは深海棲艦とよく似た外見をしているわ」
五月雨「戦闘員のイーたちは駆逐艦に似てるし……」
吹雪「似てるっていうか、頭がそうなってるだけだけどね」
漣「最初に戦った……クウボ?さんだっけ」
電「あの人は空母棲姫によく似てたのです」
叢雲「この間戦ったセンスイは、潜水棲姫に似てたわね」
大井「……」
大井「ただ、私たちの壊滅という目的は一致しているみたいね」
大井「……私が奴らについて知っていることは、これだけよ」
大井「ごめんなさい、あまり役に立てなくて……」
吹雪「い、いえ!いいんです!十分です!ありがとうございます!」
叢雲(なんか、大井さんじゃないみたい……)
大井「……何かしら?」
五月雨「何故・・・あなたはそんなに知っているんですか?」
大井「……」
大井「それは……」
五月雨「言いたくないことなら、いいんです……ごめんなさい」
大井「いいえ、そうじゃないの」
大井「……少し、思い出したくないことがあったから……」
五月雨「……」
大井「私は、以前……」
大井「奴ら……ディープマリンと戦ったことがあるの」
五人「!?」
大井「あれは……一年前のことね」
大井「私がこの鎮守府に着任する前、別の鎮守府にいたときの話よ」
大井「今、この鎮守府で起きているみたいに……ある時から、異常現象が起きだしたの」
大井「流石に困ったわ……資材や工具が消えたりするんだもの」
大井「今起きているのとは、手口が違うみたいだけどね」
大井「何とかしようと、その原因を調査していったら……」
吹雪「……ディープマリンが、関わっていたわけですね」
大井「……ええ」
大井「なにせ、艤装での攻撃がほとんど効かないんだもの」
叢雲「なら、どうやって奴らの特性に気が付いたの?」
大井「仲間の一人に、そういう戦隊モノとかがすごく好きな子がいたの」
大井「それで、『敵が戦闘員に見えたから技を叫びながら攻撃してみた』って言ってたわね」
五人「……」
大井「な、何よその表情は」
吹雪「……何か」
五月雨「すごい既視感……」
漣「テヘペロッ」
大井「その子がいろいろ試してみてね……さっきのことがわかったの」
叢雲「『ヒーロー』を模した攻撃しか通らない……ってこと?」
大井「そうよ」
大井「それで、その場は何とかなったんだけど、奴らは何度も現れた」
大井「どうにかしようとして、大人数で攻撃を仕掛けたりしたんだけど……」
吹雪「もしかして、さっき言ってた、ある鎮守府っていうのは……」
大井「ええ。私が以前いた鎮守府よ」
大井「そして奴らに対抗すべく……私を含んだ、五人の攻撃が通る子が、討伐隊に選抜されたの」
電「そうだったのですか……」
大井「それで、私たちはあなたたちと同じように『戦隊』として戦ったの」
大井「最初は馬鹿らしいと思ったわ。子供がする遊びみたいなことをして戦うなんて……」
大井「でも、それどころじゃなかった。奴らは、容赦なく私たちを襲ってきた」
大井「馬鹿らしくても、戦うしかなかったのよ」
大井「戦ってるうちに、そんなのどうでもよくなってきたし」
漣「なるほど、毒されたわけですな」
叢雲「やかましいわよ」バシッ
大井「うーん……そうねぇ……」
大井「あの鎮守府にいた工作艦が言うには、何か特別なエネルギーが発生しやすいんじゃないかって」
叢雲「特別なエネルギー?」
大井「ええ。ディープマリンに対抗できるエネルギーがあって、それが発生しやすいのがあなたたちや私たちってこと」
大井「詳しいことは結局わからなかったけどね」
漣「なるほど、ダイノガッツみたいなもんか」
電「その戦いの結末、なのです……」
大井「……」
大井「……戦っていくうちに、私たちは少しずつ奴らを追い詰めていった」
大井「あと少し……奴らを壊滅できると思った時に……」
大井「……あいつが、現れた」
吹雪「あいつ、とは……?」
大井「幹部の一人……とんでもない隠し玉よ」
大井「やられそうになった時……私は、ギリギリのところで奴から逃げてきたの」
叢雲「……他の四人は?」
大井「……」
大井「殺されたわ」
五人「!!」
大井「……私たちだって、決して弱くはなかったわ。戦いの中で、強くなっていたはず」
大井「でも、奴の力は圧倒的だった。ほとんど、何もできなかったの……」
漣「……」
大井「……あの時の事は、今でも忘れられないわ」
大井「何もできずに、仲間が殺されていく……」
大井「沈んでいくのとは違う、別の恐ろしさを持ったものだったわ……」
大井「……私は、すぐにそのことを報告して、危険を知らせたわ」
大井「とんでもない奴がいる。このままでは皆殺しにされてしまう、と」
大井「でも……それから、ピタリと奴らの動きがなくなったの」
叢雲「動きがなくなった……?」
大井「ええ。それ以来、鎮守府で異常現象も起きなくなったし、奴らが襲ってくることもなくなったわ」
大井「確かに、ずいぶんダメージを与えていたから、奴らは撤退したのかと思ったの」
大井「あわよくば、消えてしまったんじゃないかって思っていた」
大井「……でも、今回……また奴らが現れた」
大井「私の仲間を、無残にも殺した、奴らが……!」ギリッ
漣「……」
大井「調査は行っているそうよ。でも、何もわかっていないみたい」
大井「わかってないことが多いし、無用な混乱を避けるために情報の公開もしていないみたいね」
大井「あれから、他の鎮守府でも何も起きていないし、私が以前いた鎮守府でも何も起きてないんじゃないかしら?」
電「あれ?大井さん、どうしてそこに残らなかったのです?」
叢雲「確かに。攻撃が通る人が限られているなら、何かあった時のために残っておいた方がよかったんじゃないかしら」
大井「そうね。だからしばらく残っていたんだけど……」
大井「奴らの動きがなくなってしばらくしてから、ここに来たわ」
吹雪「それはなぜ……?」
大井「……仲間が殺されている中、のこのこ逃げてきた者としては、居づらかったのよ」
五人「……」
大井「一応、去る時に提督に、何かあったら呼ぶよう言っておいたわ」
大井「呼ばれないってことは、何もないってことなんでしょうね」
大井「……私の話は、これで終わりよ」
大井「……何かしら」
吹雪「私たちとともに、戦ってくれませんか」
大井「……」
吹雪「話を聞いていて、わかりました。私たちだけでは限界があります」
吹雪「どうか、力を貸してください」
大井「……」
大井「……ごめんなさい」
五人「……!」
叢雲「そうよ!強敵なら、人数が多い方が……!」
大井「……」
大井「……理由は言えないけど、とにかく私は戦えないの」
大井「私は、もう……」
吹雪「で、でも……!」
大井「……」
五月雨「……吹雪ちゃん。もうやめよう」
吹雪「五月雨ちゃん……?」
五月雨「無理強いは良くないよ。何か理由があるんなら、言っても仕方ないよ」
吹雪「……そう、だね……」
大井「……ごめんなさいね」
吹雪「いえ、いいんです……」
叢雲「そうね……本人が無理だっていうなら無理強いはできないわ」
叢雲「ショキカンジャーはこの五人で頑張りましょう」
大井「……ショキカンジャー、か……」
大井「偶然かしらね……私が以前やってた戦隊も、ショキカンジャーという名前だったわ」
五人「え!?」
吹雪「漣ちゃん、どういうこと!?」
漣「い、いや、漣はただの思い付きで……」
漣「この鎮守府に最初に着任したのがこの五人だったから……」
大井「私たち五人も、あの鎮守府に初めて着任した五人だったの」
五月雨「……偶然、なんでしょうか?」
大井「……ここまでくると、違うかもしれないわね」
吹雪「はい……いろいろ聞かせてくれて、ありがとうございました」
大井「……覚えておきなさい」
大井「あなたたちは、あなたたちが思っている以上に」
大井「死と隣り合わせだってことを……」
ガチャッ バタン
漣「……」
電「でも、敵が危険だということはよくわかったのです」
五月雨「もっと強くならないといけない……頑張らないと」
吹雪「とりあえず、訓練の続きでもしようか」
電「そうするのです」
叢雲「よし、私も行くわ」
五月雨「……遊戯王はしないよ?」
叢雲「わ、わかってるわよ!」
叢雲「どうやら、遊んでる場合じゃなさそうだからね……」
吹雪「……漣ちゃん?」
漣「……ハッ……な、何?」
電「どうしたのです?さっきからあまりしゃべらないのです」
漣「い、いや、何でもないよ」
五月雨「漣ちゃんもする?訓練」
漣「あー……」
漣「……漣はいいや」
漣「いや、その……」
吹雪「どうかしたの?顔色も悪いし……」
五月雨「もしかして、体調がよくないの?」
漣「……実は、そうで……」
叢雲「……なら、仕方ないわね。早く良くなるのよ」
漣「……ごめん」
電「気にしなくていいのです。では、行ってくるのです」
吹雪「ゆっくり休んでて」
バタン
漣「……」
吹雪「はい、それでは、第四回ショキカンジャー会議を始めます」
五月雨「え?夜に?」
吹雪「まあたまにはいいかなーと」
叢雲「で、何について話すのよ」
吹雪「うん。一つ提案があって」
吹雪「この間、センスイと戦った時の事なんだけど」
吹雪「敵は、あの抜け道を通って倉庫まで来てたってことだよね?」
電「そうだと思うのです」
吹雪「ということは、そこをたどって行ったら……」
叢雲「何かわかるかもしれない、ということね」
吹雪「うん。それで、明日にでも調査に行こうと思うんでけど、どうかな?」
五月雨「うーん……でも、危険じゃない?」
電「下手したら、敵陣に飛び込むようなものなのです」
吹雪「そこなんだよね、問題は……」
吹雪「行くとしたらそうだね。どうしようか?」
五月雨「確かに、何かわかるかもしれないし……行ってみようか」
電「たまにはこちらから攻め込むのもいいと思うのです」
吹雪「漣ちゃんはどう?」
漣「……」
吹雪「漣ちゃん?」
漣「いや、そうじゃなくて……」
漣「……うん、そうだね。行ってみようか」
電「大丈夫なのです?」
五月雨「無理はしなくていいんだよ」
漣「いやいや、大丈夫大丈夫。明日にはもう完全回復してると思うし」
吹雪「そう?ならいいけど」
吹雪「じゃあ、今日はここまで。また明日ね」
漣「……」
漣(……うん。きっと、大丈夫……)
五人は、以前センスイと戦った所まで来ていた
叢雲「それにしても、鎮守府の近くにこんなところがあったのね」
電「普段は外に出ないから、知らなかったのです」
五月雨「この道、どこにつながってるんだろう?」
漣「まあ、十分に警戒していこうよ」
吹雪「そうだね。みんな、気を引き締めていこう」
ガサッ
五人「!!」
叢雲「もしかして、敵……?」チャキッ
漣「……!」
五月雨「吹雪ちゃん、どうする……?」
吹雪「……みんな、抜錨の準備を」
五人「……」
ガサガサッ
叢雲「……何か、来る……!」
シュバッ
五人「!!」
猫「にゃーん」
五人「ズコー!」ドテッ
五月雨「なんてベタな展開……」
漣「思わず昭和のリアクションをとってしまいましたな」
叢雲「ふぅ……全く、驚かせないでよね」
吹雪「何にしても、ただの猫で良かった」
『……ただの猫かと、思った?』
五人「!?」
五月雨「どこから……!?」
『ここよ、ここ』
叢雲「……?」
漣「……もしかして」
電「この、猫さんから……?」
猫『そうよ。ショキカンジャーの皆さん』
吹雪「……!まさか、ディープマリン!?」
叢雲「まさか、こいつ自身が……!?」
猫『よーく、見てごらん』
五月雨「……あれ?この猫の首輪に……」
漣「小型のスピーカーらしきものが……?」
猫『そう。この猫自体はただの猫』
猫『この声はそのスピーカーから出ているだけよ』
猫「にゃーん」
叢雲「ふーん……」
猫『フフフ……察しはついているんじゃないかしら?』
電「……やっぱり、ディープマリンの方ですか……?」
猫『フフ、そうよ。私はディープマリンの幹部の一人よ』
吹雪「……何のつもりですか」
猫『ちょっとしたお遊びよ。お遊び』
猫『あなたたちがここまで来たから、ちょーっとからかいたくなっただけ』
漣「……」
猫『フフフ……さーてね』
猫『私を見つけ出せたら、教えてあげる』
「さて、私はいったいどこでしょう?」
五人「!!」
五人の後ろに、何者かが立っていた!
ズガァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!
吹雪「みんな!無事!?」
電「けほっ……なんとか」
叢雲「すんでのところで避けられたわ」
???「改めて初めまして、ショキカンジャーの皆さん」
コウワン「私は、ディープマリン幹部のコウワン。以後、お見知りおきを」
叢雲「ふん、いけ好かない奴ね」
電「今度は、港湾棲姫にそっくりなのです」
吹雪「やっぱり、深海棲艦と関係が……?」
コウワン「クウボやセンスイがボロボロで帰ってきたから、何かと思ったら……」
コウワン「なるほど、あなたたちがねぇ……」
五月雨「……戦闘員は呼ばないんですか?」
コウワン「フフフ、私はクウボやセンスイとは違うの」
コウワン「私一人で、十分な戦闘力を誇るわ」
叢雲「随分な自信ね」
コウワン「実際に戦ってみたらわかるわ。ほら、早く準備なさい」
漣「やるしか、ないか……」
五人「抜錨!!」
カチッ
シュィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン……
五人の体に、スーツが装着されていく!
バァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!
吹雪「吹雪レッド!」
叢雲「叢雲ブラック!」
漣「漣ピンク!」
電「電イエ口ー!」
五月雨「五月雨ブルー!」
吹雪「五人そろって!」
五人「駆逐戦隊!ショキカンジャー!!」
バァァァァァァァァァァァァァァン!!!
叢雲「はぁっ!」ブンッ
コウワン「ふんっ!」ブンッ
ガキンッ!
叢雲(……!弾かれた!)
吹雪「えいっ!」ブンッ
ガキンッ!
吹雪「くっ……まだまだぁ!」
ガキンガキンガキンッ!
吹雪(どうやら、武器は……あの大きな腕)
吹雪(鋭くて、長い爪で防御を……)
ブンッ
吹雪「!!」
ズガァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!
吹雪「はぁ……はぁ……危なかった」
コウワン「あら、残念。避けられちゃった」
吹雪(防御力だけでなく、破壊力も高い……)
吹雪(これは純粋に……強い!)
ガキンッ
コウワン「フフフ、何度やっても……」グググ
ザパァッ!
コウワン「!!」ドガッ
五月雨の刀から出た水によって、コウワンの腕は弾かれた!
五月雨(これで、攻撃の隙が……!)
コウワン「甘い!」ブンッ
五月雨「!!」シュバッ
ズガァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!!
コウワン「なかなか面白い技を使うのね……」
コウワン「でもまだまだね。これだけじゃ私を倒すには……」
シュバババッ!!
コウワン「!!」バッ
飛んできた矢を、コウワンは腕でガードした!
漣「……っ」
電「えーい!!」ブンッ
コウワン「!?」ガッ
ググググッ
コウワン(なっ……いつの間に……!)グググ
コウワン(……そうか!今の矢は囮!注意をそらして、この子に攻撃させるため……)
コウワン(しかもこの攻撃……重い!)
電「まだ終わりじゃないのです!」グググ
バチバチバチバチィッ !!!
コウワン「ぐっ……!!」
コウワン(電流……!このままじゃ、押し負ける……!)
叢雲「させるかっ!!」ドガッ
叢雲が、コウワンの片手を攻撃した!
コウワン「ぐあっ!?」
コウワン「くっ……この!」ブンッ
叢雲「はぁっ!」ガキンッ
コウワン(くっ……片手で抑えてる分、動きが……)
コウワン(……!しまった、両手が、ふさがれている……!?)
吹雪・五月雨「はああああああ!!」ブンッ
コウワン「!!」
ズガァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!!
吹雪と五月雨の一斉攻撃が決まった!
吹雪「やった!」
五月雨「これで、何とか……」
漣「……?」
漣「!みんな、気を付けて!」
叢雲「え?」
漣「奴が……いない!」
四人「!!?」
土煙が晴れると、そこにコウワンの姿はなかった
電「攻撃する瞬間までは、確かにいたのです!」
「フフフ……予想以上ね」
五人「!!」
コウワン「こんな早くに、私の奥の手を見せることになるとは思わなかったわ」
コウワンはさっきと全く別の、少し離れた位置に立っていた
五月雨「奥の手って、一体……!?」
コウワン「そうねぇ……あなたたちの強さに敬意を表して、教えてあげるわ」
コウワン「おっと、攻撃はしないことね。変身中や説明中に攻撃をすることは禁じられているわ」
吹雪「そうなの?」
漣「そうだよ」
コウワン「どちらにしろ、攻撃は当てられないでしょうけどね」クスクス
叢雲「……」
電「姿……?」
吹雪「……腕の大きさが、大きくなくて、普通になっている……?」
コウワン「そのとおりよ。これが私の能力。二つのモード自由にを切り替えることができる」
コウワン「さっきまでの腕が大きかった状態は、言うなれば、攻撃力と防御力が強化される状態」
コウワン「そして今の、腕が大きくない状態は、素早く動ける状態、ということよ」
コウワン「今の状態だと、かなりの速さで動ける……目にも止まらない速さ、とでもいうのかしら」
漣「くそー……どっかのフランス人みたいなことを……」
電「そうなのです。少しでもあなたをとらえることができれば……」
コウワン「……その通りよ。素早さを得る代わりに、防御手段や攻撃手段は失う……」
コウワン「攻撃や防御ができる腕を手に入れれば、動きが遅くなる……」
コウワン「これが、私の能力の弱点かしらね」
吹雪「だったら、そこを叩けば……」
コウワン「でも、私を倒すのは無理ね」
吹雪「いいえ……私たちはあなたを倒します」チャキッ
コウワン「……なら、やってみる?」
シュンッ
吹雪「!!?」
コウワンは一瞬で吹雪に近づいた!
吹雪(でも、ここで攻撃すれば……!)
ググググ
吹雪「!!」
コウワンの腕の大きさが元に戻っている!
吹雪(まずい!このままだと攻撃され……)
ズガァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!!
吹雪「ぐぁぁぁぁっ!」ズザザザ!
叢雲「吹雪!」
吹雪「ぐ……だ、大丈夫……かすっただけ」
吹雪(駄目だ……こっちが対応するよりも早く攻撃をしてくる!)
電「えいっ!」ブンッ
電が背後からハンマーを振り下ろした!
シュンッ
電「うわぁ!?」スカッ
コウワン「フフフ……無駄よ、無駄無駄」
コウワン「あなたたちの攻撃は、もう当たらないわ」
コウワン「そして、このまま近づいて……」シュンッ
電「!!」
コウワン「こうやって、攻撃をする!」ブンッ
電「……っ!」
シュバババッ!!
コウワン「!!?」ドガッ
飛んできた矢によって、コウワンの腕が弾かれた!
コウワン(ぐっ……さっきのと威力が違う……!)
コウワン(……あれは……風……?)
漣(風をまとわせたから、スピードも威力も上がってる……これなら、いける!)
叢雲「はぁっ!」ブンッ
コウワン「!!」シュンッ
叢雲「くそっ……逃げられたか」
コウワン(……遠距離攻撃な分、その子の武器は厄介ね)
コウワン(避けたり防御したりするには不利だわ)
漣「もう一発……!」ギリギリ
コウワン(……だったら)
ドガァッ! モクモク……
漣「!土煙が……!」
漣「目くらまし……?でも、どうしてわざわざ……?」
土煙が晴れると、またしてもコウワンはいなくなっていた
吹雪「消えた……!?」キョロキョロ
電「ど、どこに……!?」
五月雨「……もしかして、逃げた……?」
叢雲「まさか。いくらなんでも……」
五人「……」
吹雪「本当に逃げたのかな……」
電「だったら、今日はもう帰ったほうが良いのです」
吹雪「そうだね。じゃあ……」
漣「うわぁぁ!?」
四人「!!」
気が付くと、漣はコウワンにつかまれ、巨大な腕で締め付けられていた!
漣「ぐ……ど、どうして……!」
コウワン「すこーし、隠れていただけよ……あなたたちが油断するまでね」
コウワン「簡単に引っかかってくれて、感謝するわ」
コウワン「あなたは武器が遠距離武器で、少し位置が離れていたから、狙いやすかったわね」
漣「ぐ……あ……」
コウワン「さて、このまま握りつぶして……」グググ
コウワン「……殺してあげるわ」
漣「……!」
叢雲『……他の四人は?』
大井『……』
大井『殺されたわ』
大井『……覚えておきなさい』
大井『あなたたちは、あなたたちが思っている以上に』
大井『死と隣り合わせだってことを……』
漣「う、うわあああああああああ!!」
コウワン「!!」
ガキンッ!
コウワンは漣を握っていない方の腕で防御した!
吹雪「漣ちゃんを……離せぇ!!」グググ
コウワン「くっ……もう来たのね」
五月雨「吹雪ちゃん!」
吹雪「!」バッ
五月雨「やぁー!」ザパァァ!
五月雨は水を放出し、コウワンの体のみを濡らした!
五月雨「よーし、電ちゃん!」
電「はいなのです!」ブンッ
コウワン「!!」
ガッ
電「そしてこれを!」
バチバチバチバチィッ!!!!!
コウワン「ぐあああああっ!」
コウワンに電流が流れる!たまらず、コウワンは漣から手を離した!
叢雲「漣!大丈夫!?」ガッ
漣「……」
叢雲「くっ……」
吹雪「よーし、撤退!てったーい!」
ダダダダッ
コウワン「……」
コウワン「……フフフ、今日の所は逃がしてあげるわ」
コウワン「でも……」
コウワン「……次は、ないわよ?」
吹雪「……明石さん。漣ちゃん、大丈夫ですか?」
明石「入渠させたし、傷はもうないわ」
明石「……ただ」
叢雲「ただ?」
明石「……かなり、精神がやられてるみたいね」
五月雨「精神が……ですか?」
明石「会ってもらえばわかるわ。こっちよ」
電「……漣さん。大丈夫なのです?」
漣「……うん。ごめん……みんな、ありがとう……」
吹雪「……どうしたの?」
漣「……」
五月雨「まだ、どこか悪いところが……」
漣「違うよ。もう体のほうは大丈夫……だけど」
漣「……ごめん。みんな……漣は……」
漣「もう、戦えない……」
四人「!!?」
叢雲「あんたが言い出したことなんでしょ!?」
漣「……ごめん」
叢雲「謝ってほしいわけじゃない!理由を言いなさい!」
漣「……」
叢雲「このっ……!」
五月雨「叢雲ちゃん、落ち着いて!」
叢雲「くっ……」
漣「……」
漣「……怖くなったんだよ」
吹雪「え……?」
漣「……死ぬのが」
電「死ぬのが……ですか?」
漣「……大井さんが言ってたよね」
漣「自分たちが思っている以上に、死と隣り合わせだって」
漣「今日だって、みんなが助けてくれなかったら、死んでたかもしれない……」
漣「だから……」
叢雲「いつ沈むかわからない、戦争をしてきたんだもの!」
叢雲「それを今更……!」
漣「……」
吹雪「……そっか」
吹雪「わかった。漣ちゃん……」
吹雪「あとは私たちに任せて」
叢雲「ちょっと!吹雪!」
吹雪「……五月雨ちゃん。電ちゃん」
五月雨「はーい」ガッ
電「了解なのです」ガッ
叢雲「え!?ちょっ……離しなさいよ!こらー!」ズルズル
吹雪「いいよ。……仕方ないよ」
漣「……本当にごめん」
吹雪「いいって。じゃあ、私も行くね」
吹雪「……漣ちゃん」
漣「……」
吹雪「もしも……もしもだけど」
吹雪「また……一緒に戦ってくれるんなら」
吹雪「いつでも……待ってるから」
漣「……」
ガチャッ バタン
漣「……っ」
叢雲「あー、もう!漣の奴、どうしちゃったのよ!」
電「まあまあ。落ち着くのです」
五月雨「でも、困ったよね」
吹雪「あんな状態だと、普通の艦娘としても戦えないよ……」
電「司令官も、困っていたのです」
叢雲「……どうして、今更」
吹雪「うーん、どうしよう……」
五月雨「五人でもギリギリなのに、人数が減っちゃったら……」
叢雲「まあ、負けるでしょうね」
叢雲「またコウワンみたいなやつに会ったら」
叢雲「あー、もう!漣の奴、どうしちゃったのよ!」
電「まあまあ。落ち着くのです」
五月雨「でも、困ったよね」
吹雪「あんな状態だと、普通の艦娘としても戦えないよ……」
電「司令官も、困っていたのです」
叢雲「……どうして、今更」
吹雪「うーん、どうしよう……」
五月雨「五人でもギリギリなのに、人数が減っちゃったら……」
叢雲「まあ、負けるでしょうね」
叢雲「またコウワンみたいなやつに会ったら」
吹雪「ん?」
五月雨「どうぞー」
バンッ!
曙「叢雲ぉ!あんた、漣に何したのよ!?」
叢雲「は!?な、何で私!?」
曙「このメンバーの中で一番何かしそうなのがあんただからよ!」
叢雲「はぁ!?勘違いも甚だしいわね!」
潮「あ、曙ちゃん落ち着いて……」
電「叢雲さんも落ち着くのです!」
曙「嘘つけ!青葉さんがそう言ってたわよ!」
曙「あんたたちが漣を工廠に連れて行って、それから漣が落ち込んでるって!」
曙「きっとカツアゲされたって言ってたわよ!」
電「青葉さん……」
叢雲「そ、それは誤解よ!あんた何でそんなのほいほい信じるのよ!あんたバカじゃないの!?」
曙「何だとぉ!?」
叢雲・曙「ガルルル……!」
潮「曙ちゃん、ちょっと……!」グイグイ
電「は、はわわ……」
ガチャッ
朧「あー、もう曙ったら……」
五月雨「あ、朧ちゃん。どうしたの?」
朧「ごめんごめん。曙が青葉さんから変なこと吹き込まれて、ここに突撃しに来ちゃった」
吹雪「青葉さん……」
五月雨「……朧ちゃんたちは、漣ちゃんと会ったの?」
朧「うん……」
朧「ついさっき会ったんだけど、落ち込んでたっていうか……怯えてたね、あれは」
朧「で、そのあと青葉さんに会って、曙が走り出して、潮が止めに行って……今に至る」
吹雪「な、なるほど……」
朧「それで、詳しいことは知らないんだけど……何があったの?」
吹雪「うん、実は……」
──────
───
朧「……なるほど」
朧「昨日の夜から様子がおかしかったのはそれか……」
吹雪「え?昨日?」
五月雨「確かに、昨日は体調が悪いって言ってたよね」
朧「うん。そう聞いてたんだけど、やっぱり様子がおかしかったから……」
吹雪「でも、どうして今になって、怖がるようになったのかな」
五月雨「普段の漣ちゃんからは、想像できないよね」
朧「それは、漣は普段はそういうところを絶対に人に見せようとしないから」
朧「普段は明るく振る舞ってるけど、それは不安や恐怖を忘れようとするため」
朧「耐えられないくらいの不安や恐怖があっても、一人で抱え込もうとするんだ」
吹雪「そうだったんだ……」
朧「沈むことへの恐怖なんかも、本当はすごく強い」
朧「最近はそんなそぶりは見せないけど……以前、綾波姉さんに何かを相談してたりするのは見たなぁ」
五月雨「じゃあ、何で今まではこんなことがなかったの?」
五月雨「漣ちゃんだって、大破したことくらいあるよね?」
朧「うーん……漣じゃないから、本当のことはわからないけど」
朧「多分……そうやって振る舞っているうちに、本当に不安や恐怖を忘れてしまったんじゃないかな」
吹雪「忘れてしまった……?」
朧「うん。この鎮守府で沈んだ艦は今のところいないし、漣自身も今まで何とかなってきたから」
朧「自分が沈むはずがない、死ぬはずがない……って、無意識のうちに思うようになったんだと思う」
朧「だから、今まではこんなに恐怖を感じることはなかった」
朧「そこに追い打ちをかけるように、自分の命への危機が来て……」
朧「そうして、今まで忘れていたものを思い出してしまった……」
朧「本当は、ずっとため込んでたんだと思う。そういった不安や恐怖を」
朧「それが、爆発しちゃったんじゃないかな」
五月雨「……」
朧「朧がわかることはこれぐらいだよ」
吹雪「うん……ありがとう」
吹雪「そうだ!叢雲ちゃんと喧嘩してて……」
曙「覚悟はいい?叢雲……」
叢雲「いいわよ、来なさい」
曙「私のターン!」シュッ
吹雪・五月雨(またか……)
叢雲「ふふ、私の勝ちね」
曙「もう一回よ!私のブルーアイズが負けるはずがないわ!」
叢雲「融合もまともにできないようじゃ、無理なんじゃないかしら?」
曙「何だとぉ!?」
曙「もう一回よ!次はマスタールール4やるわ!」
叢雲「うっ!それは……」
朧「はいはい、そこまで。帰ろうねー」ズルズル
曙「あ!?ちょっと、離しなさいよ、朧!」
潮「ご、ごめんね、みんな……!お邪魔しました!」
吹雪「ああ、うん……」
バタン
三人「……」ジトッ
叢雲「な、何よその目は」
五月雨「ところで叢雲ちゃん、電ちゃん。さっきの話、聞いてた?」
叢雲「え?」
電「はい。電は対戦を見ながら聞いてたのです」
吹雪「そっか。じゃあいいね」
叢雲「……何の話?」
五月雨「……叢雲ちゃんは、漣ちゃんより遊戯王のほうが大切なんだね」
叢雲「ちょ、ちょっと!?五月雨!?」
吹雪「失望したよ……」
電「なのです」
叢雲「ええ!?」
叢雲「た、対戦しながら聞けるわけないでしょ!ちゃんと話してよ!」
──────
───
叢雲「なるほど……そういうことね」
吹雪「これ、私たちでどうにかできる問題だと思う?」
五月雨「正直、漣ちゃん本人がどうにかしないと無理だよね」
電「やっぱり、何もできないのでしょうか……」
叢雲「……」
吹雪「叢雲ちゃん?どうしたの?」
叢雲「……ん?いや、何でもないわ」
電「……もしかして、デッキ構築について考えてたのです?」
五月雨「うわぁ……」
叢雲「え!?ち、違うわよ!」
吹雪「まあ、今日はもう解散しよう。これからどうするかは、また明日考えよう」
五月雨「そうだね」
叢雲「……」
ガチャッ
漣「……」
漣「……はぁ……」
「……こんな時間に、何やってるのかしら?」
漣「!?」
漣「……叢雲ちゃん」
叢雲「はろー」
漣「……とうとうバレちゃいましたか」
叢雲「知らなかったわ。あんた、いつも異常なくらいに明るいから」
漣「まあ、そんなもんだよ……」
叢雲「ふーん……」
叢雲「昼間は、その……ごめんなさい。怒鳴ったりして」
漣「……ううん、漣が悪いから……」
漣「急に、こんなことになったりして……」
漣「……ごめんね」
叢雲「……」
漣「でも、それに目を向けたくなくて、ずっとごまかしてたんだ」
漣「そうしないと……きっと、耐えられなかったから」
叢雲「……」
漣「……そうやって、ずっと目を背けてきたから」
漣「こんなことに、なっちゃったのかな」
叢雲「……」
漣「……ねえ、叢雲ちゃん」
漣「どうしたら……死ぬのが、怖くなくなるのかな」
叢雲「……」
漣「?」
叢雲「死ぬのが怖くない奴なんて、居ないのよ」
漣「……!」
叢雲「誰だって、死ぬのは怖い。沈むのは怖い」
叢雲「みんな、その恐怖と戦っているの」
叢雲「私だって、吹雪だって、電だって、五月雨だって……」
叢雲「みんな、心のどこかで恐怖を感じながら、戦っているのよ」
漣「……だったら」
漣「恐怖を感じながら……どうして、戦えるの……?」
叢雲「どうして、か……」
叢雲「……」
叢雲「……もっと、恐ろしいことがあるからよ」
漣「……え?」
叢雲「私から言えることはこれだけよ。今日はもう寝なさい」
漣「……うん」
叢雲「じゃあね」
バタン
漣「……」
吹雪「はー……さて、今日も訓練しようか」
叢雲「そうね……でも、普通のやり方だと飽きてきたわね」
五月雨「え?じゃあ、どうするの?」
叢雲「……チェーンデスマッチ形式でやるとか」
電「なんか物騒なのです」
吹雪「……今日も、漣ちゃん来ないね」
五月雨「仕方ないよ……簡単にどうにかなる問題じゃないし」
叢雲「早く復活してくれるといいんだけど、そうもいかないしね……」
電「うーん……とっても心配なのです」
叢雲「そうね。気長に待ちましょう」
電「じゃあ、そろそろ行くのです?」
五月雨「そうだね。じゃあ……」
「にゃーん」
四人「……!」
吹雪「猫……?いつの間に……」
電「そこの窓から入ってきたのです?」
叢雲「そのようね。少し空いてるし」
吹雪「え?」
叢雲「……本当ね。この間、コウワンと会った時の猫だわ」
電「ここまで、どうやって来たのでしょうか……?」
『普通に運んだだけよ』
四人「!」
叢雲「本当だわ、スピーカーもついてる」
猫『フフフ、また驚かせちゃった?ごめんなさいね』
電「それで・・・何の用なのです?」
猫『ちょっとあなたたちに、お願いがあるのよ』
五月雨「お願い?」
猫『この間戦ったところまで来て、私と戦いなさい』
猫『応じない場合は、私がそちらまで行くわ』
吹雪「!そんなことしたら……」
猫『そう。鎮守府はただじゃすまないでしょうね』
猫『それじゃあ、待ってるわ』プツッ
五月雨「吹雪ちゃん……」
吹雪「うん……行こう」
叢雲「四人で勝てるかしら……」
電「それでも、やるしかないのです」
漣「……」
漣は、部屋の前まで来ていた
コウワン「フフフ、来たわね」
吹雪「……どうして、呼び出したりしたんですか?」
コウワン「特に意味はないわ……ただ、あなたたちと戦うのが面白い……それだけよ」
叢雲「……ふん」
コウワン「……あら?あのピンクの子は?」
叢雲「……あいつが来るまでもないってことよ」
コウワン「フフフ、そう……」
コウワン「この間、やりすぎちゃったかしら?残念ね」
五月雨「覚悟してください……!」
コウワン「あら、怖い怖い」
コウワン「それじゃあ、早速……始めましょう?」
吹雪「みんな、行くよ!」
四人「抜錨!」
漣「……」
朧「……どうしたの、漣」
漣「……いや、何でもないよ」
朧「嘘ついてもだめだよ。漣、すぐ顔に出るから」
漣「……」
朧「……言いたくないなら、いいけどさ」
朧「ん?」
漣「……どうしたらいいと思う?」
朧「何が?」
漣「悩んでて、何も行動できない時……どうしたらいいと思う?」
朧「……」
朧「……そうだね……」
朧「詳しくはわからないから、はっきりとは言えないけど……」
朧「漣にとって、何が大切なのか……考えてみなよ」
漣「何が、大切か……?」
朧「うん。そうすれば、自ずと答えは見えてくるはず……多分」
漣「……」
叢雲『……もっと、恐ろしいことがあるからよ』
漣「……!」
漣「ありがとう、朧!ちょっと出てくる!」ダダッ
朧「はーい、いってらっしゃーい」
朧「……まったく、世話が焼けるなぁ」
漣「もう少しで……あそこに……」
漣「……みんな!」バッ
漣「……!」
吹雪「ぐ……」
叢雲「ダメだ、隙が突けない……」
電「このままだと……」
五月雨「でも、まだ……!」
コウワン「フフフ、そんなものなの?」
漣が到着したころには、全員疲弊しきっていた……
四人「……!」
吹雪「さ、漣ちゃん……!」
漣「み、みんな……!」
叢雲「来たのね……!」
電「でも……状況が悪いのです……」
五月雨「どうすれば……」
コウワン「来たはいいけど、大ピンチね」
コウワン「あなた以外は全員疲弊しきっている……つまり、実質一人で戦うということよ」
漣「……っ!」ジリッ
叢雲「……漣!逃げなさい!」
漣「!?」
叢雲「こいつの言う通り、ほとんど一人で戦うことになるわ!」
叢雲「それに……あんた、まだ……!」
漣「!!」
漣「で、でも……」
叢雲「そんな状態で戦っても、殺されるだけよ!だから、あんただけでも……!」
漣「……」
漣「……!」
ダダッ
吹雪「……やっぱり、ダメだったか……」
電「仕方ないのです……」
五月雨「この四人で、どうにかするしか……!」
コウワン「あらあら、結局逃げちゃうのね」
コウワン「仕方ない……もう少し、楽しませてね?」
漣「はぁ……はぁ……」
漣「……いた!」
漣「大井さん!」ダダッ
大井「……?あなた……どうしたの?」
大井「……ただ事じゃないようね」
漣「……ディープマリンの、幹部が……!」
大井「!!」
漣「今、みんな戦ってて、ピンチなんです!」
漣「漣だけじゃ、どうしようもなくて……!だから……!」
大井「……ごめんなさい」
漣「!」
大井「悪いけど……」クルッ
漣「……ッ!」
漣「怖いんですか!?」
大井「……!」ピタッ
漣「死ぬのが怖いから、戦えないんですか……!?」
大井「……」
漣「普段の艦隊戦とは違う戦いへの、恐怖を覚えてしまった……」
漣「……漣も、さっきまでそうでした」
漣「漣は、もう、艦隊戦もできなくなるんじゃないかというくらい、怖かったです……」
漣「でも、さっき……気が付いたんです」
漣「死ぬのは、確かに怖い……だけど」
漣「仲間を失うのは、もっと怖い……!」
大井「……!」
漣「漣は、大切な仲間を守りたいんです!」
漣「だから……!」
大井「……」
大井『嫌よ!あなたたちを置いて、逃げるなんて……』
『あなただけでも生き残って……!このままじゃ、全滅しちゃう……!』
大井『でも……』
『誰かが、このことを伝えないといけない!それができるのは、あなただけなの!』
『鎮守府のみんなを、守れるのは……!』
大井『……!』
『ぐ、ああああああああああああ!!!』
グシャッ
大井『!!』
大井『……ッ!!』ダダッ
スタスタ
漣「大井さん……!」
大井「……」
漣「……くっ!」ダダッ
コウワン「そろそろ限界かしら?」
叢雲「ま、まだよ……まだ、負けてない……」
コウワン「だったら、そこから動いて見せたらどう?」
叢雲「……くそぉ……!」
電「も、もう……ダメなのですか……?」
五月雨「あきらめちゃダメ……!まだ……何かできるはず……!」
コウワン「そんな状態で言ってもねぇ……無理があるわよ」
吹雪「……ぐっ……」
叢雲「吹雪……!」
コウワン「まずはあなたから、あの世へ送ってあげる……」グググ
吹雪「ぐあああああああ!!」
シュバババッ!!
コウワン「!!」バッ
コウワンは、飛んで来た矢をガードし、思わず手を離した!
五月雨「吹雪ちゃん!大丈夫!?」
吹雪「だ、大丈夫……」
電「い、今のは……」
コウワン「……命知らずとは、まさにこのことね」
漣「みんなから離れろ!漣が相手だ!」
吹雪「漣ちゃん……!」
叢雲「馬鹿!どうして戻ってきたの!」
漣「……死ぬのは、怖い……怖いけど……」
漣「みんなが死んでいくのを、黙って見ているなんてできない!」
コウワン「わかった・・・それじゃあ」
コウワン「あなたから殺してあげるわ!」シュンッ
漣「!!」バシュッ
コウワン「ほらほら、どうしたの?当たってないわよ」シュンッ
漣「くぅ……!」バシュバシュッ
コウワン「他に近接攻撃されているときに、あなたの矢が来るのは厄介だけど……」シュンッ
コウワン「あなただけなら、問題ないわね」
漣「このぉ!」バシュッ
コウワン「そうだわ。サービスしてあげる」
コウワン「あと十発……あなたが矢を撃つまで、攻撃はしないであげる」
コウワン「精々頑張って当てることね」
漣「馬鹿にして……!」バシュッ
コウワン「ほーら、あと九発よ」
漣「くっ……」
漣(やっぱり、漣だけじゃだめだ……)
コウワン「フフフ、死にに来たようなものね」
漣(どうしたら……?)
漣「……!」ギリギリ
漣(こうなったら、一か八かアレを……!)
漣(でもスキがなさすぎる……外したら、もう……)
漣「……っ」
「そんな挑発に乗って、どうするのかしら?」
漣「!?」
ドカァァァァァァァァァァァァァァァン!!!
吹雪「な、何今の爆発!?」
叢雲「!あ、あれって……」
漣「あなたは……!」
ホワイト「私はホワイト……正義の味方よ」
電「……あれって」
五月雨「大井さん……だよね」
叢雲「一応メットで、顔はわからないけど……」
ホワイト「何のことかしら?」
ホワイト「私は、ただの通りすがりの正義の味方よ」
ホワイト「それより、奴を倒すことが優先よ」
ホワイト「仲間を……守るんでしょ?」
漣「……はい!」
ホワイト「……あなたね?悪の組織の幹部は」
コウワン「そうよ……あなた、どこかで見たことあるわね」
ホワイト「……」
コウワン「まあいいわ……あなたも後で殺してあげるわ」
ホワイト「それは遠慮しておくわ」バシュッ!
コウワン「……?一体何を」
ドカァァァァァァァァァァァァァァァン!!!
コウワン「!!?」
吹雪「ば、爆弾!?」
五月雨「あれが、大井さんの武器……?」
ホワイト「まだまだ!」バシュッ
コウワン「!」シュンッ
ドカァァァァァァァァァァァァァァァン!!!
コウワン「ぐあぁ!!」ズザッ
叢雲「……!そうか、奴はあくまでも高速移動しているだけ!」
電「攻撃範囲の大きい爆弾は、有効なのです!」
漣「あ、はい!」バシュッ!
ドガァッ!!
コウワン「ぐっ!!」
コウワン(まずい……爆弾にやられたせいで、隙ができてしまう)
コウワン(しかし……)
バシュッ!
コウワン「!!」シュンッ
ドカァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!
コウワン「ぐっ……!」
漣(!!近づいてきた!)
コウワン「この距離なら、近すぎて爆弾は放てまい!」
コウワン「ここからさらに近づいて攻撃を……」
ホワイト「あー、ちょっと目をつむってて」
漣「え?」
バシュッ!
コウワン「ん?何を……」
ピカァァァァァァァァァァァ!!
コウワン「うわっ!?な、何、これは!?目が……!」
漣「はい!」バシュッ!
コウワン「うあああああああ!!」ビュンッ ドザザザ!
ホワイト「よーし、何とか距離が取れたわね」
漣(よし、風をうまく使えば吹っ飛ばすこともできる……これで何とか)
漣(それにしても、大井さん、すごい……戦いなれている)
コウワン「ぐぅ……何なの、その爆弾は!?」ヨロッ
ホワイト「これは、私の武器『トーピードーボム』。複数の種類を持つ爆弾よ」
ホワイト「それ、『パワーボム』!!」バシュッ!
ドカァァァァァァァァァァァァァァァン!!!
コウワン「……ッ!くっ……!」
ピカァァァァァァァァァァァ!!
コウワン「しまった!また目が……!」
バシュンッ!
コウワン「!?ぐああっ……!」ドンッ
ホワイト「よーし、攻撃するタイミングもわかってきたみたいね」
漣「えへへ、おかげさまで」
コウワン「前に襲った鎮守府にいた……!」
ホワイト「……あの時よりは強いみたいだけど、あなた一人じゃ私……」
ホワイト「……いえ、私たちにはかなわないわ」
コウワン「ぐっ……!」
叢雲「んなっ!」ガッ
吹雪「叢雲ちゃん!」
コウワン「フフフ、どう!?私を攻撃したら、この子に当たるかもしれないわよ!」
五月雨「またこんな手を……!」
電「卑怯なのです!」
コウワン「フフ、何とでも言うがいいわ!」
ホワイト「フラッシュボムもいい加減効かないでしょうし、どうしたら……」
漣「……あとは、どんな爆弾があるんですか?」
ホワイト「……敵をその場から動かなくさせる爆弾があるわ」
漣「では、それをお願いします」
ホワイト「……わかったわ」
ホワイト「『フリーズボム』!」バシュッ
コウワン「フフフ、今更何をしようと……」
ビチャッ!
コウワン「!?な、何これは……!」グググ
コウワン「う、動けない!まさか……とりもち!?」
漣「はい、ありがとうございます」ギリギリ
ホワイト「……外したら、あの子が危ないわよ?」
漣「大丈夫です」
漣「……守ってみせます」
ホワイト「……」
バシュンッ
ドガァァァァッ!!!
コウワン「!?ば、馬鹿な……!」
漣は、叢雲に当たらないギリギリの所を射抜いた!
コウワン「ぐあああああああ!!な、何故だ!なぜ……!」グサグサッ
叢雲「漣……!」
コウワン「く……とりもちなら、地面を破壊すればいい!そうすれば動けるようになって、もう当たらないわ!」
コウワン「えーい、あなた、邪魔よ!」ポイッ
叢雲「うわっ!?」ドザッ
電「だ、大丈夫なのです!?」
叢雲「いたた……だ、大丈夫よ」
叢雲「それにしても、あいつ……」
五月雨「うん、フラグだよね……」
ズガァァァァァァァァァァァァァァァン!!!
コウワン「よし、これで動け……」
ビュンッ
コウワン(!矢が、もう飛んできている……!?)
コウワン(は、早くモードを切り替えて……)シュルルル
コウワン(……!や、矢が飛んできているどころか……!?)
漣が放った何本もの矢が、コウワンを取り囲んでいた!
コウワン「何いいいいいいいい!?」
コウワンを取り囲んでいた矢たちが、一斉に襲い掛かった!!
ドゴォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!
コウワン「う、うわあああああああああああああああああ!!!!」
矢にまとわりついていた風が、そのままコウワンを吹っ飛ばす!
バビュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!!
コウワン「お、覚えてなさああああああああああい!!」ヒューン
キラーン……
漣「汚ねえ花火だ……」
ホワイト「大井?誰かしら」
ホワイト「私はホワイト。通りすがりの正義のみか……」
漣「えいっ」スポッ
大井「……」
五人「……」
大井「ちょっと!何でとるのよ!こういうのはとっちゃいけないでしょ!」
漣「うひー、すみません」
大井「……別に。ちょっと癪だっただけよ」
大井「自分が逃げたままでいるのがね」
漣「……」
叢雲「何はともあれ、助かったわ」
電「本当に、ありがとうございました」
大井「……そうね」
大井「戦わない理由はもうないけど、あなたたちとは別行動で奴らについて調査しようと思うの」
大井「その方が小回りがきくし、それに……」
漣「それに?」
大井「……私にとって、『ショキカンジャー』は、一つだけだから」
吹雪「……そうですか」
五人「?」
大井「……『駆逐戦隊』って言ってるじゃない」
五人「……」
五人(……そうだった!)
大井「とにかく、あなたたちの戦隊には入らないけど……」
大井「一応味方だから、困ったときは……助けてあげるわ」
吹雪「……ありがとうございます!」
大井「北上さんとの用事があるなら、そっちを優先するけど」
五人(ですよねー)
漣「……本当に、ありがとうございました」
大井「……今回の奴より、もっと手強い奴がいる」
大井「それを忘れないでおくことね」
ザッザッ
漣「……」
漣「……みんな、ごめんね」
五月雨「いいよいいよ。気にしないで」
叢雲「それにしても……漣、ありがとう」
漣「いえいえ、礼には及びませんな」
電「叢雲さんだけをよけて矢を撃つなんて……どうやったのです?あれ」
漣「何かよくわからんけどできた」
叢雲「えぇ……」
漣「ありがとう、叢雲ちゃん」
叢雲「……そう。まあ、いいのよ、別に」
吹雪「え?何かあったの?」
漣「あー、何かね、この前……」
叢雲「オラァ!」ドゴォ
漣「へぁっ!?」
漣「ちょ……何するのさー?」
叢雲「何かいやだったから……」
漣「……」
四人「……?」
漣「……なんでもない!帰るぞ!」ダダッ
叢雲「はぁ?ちょ、待ちなさいよ!」
漣(よかった……ちゃんと、皆を守ることができた)
──────
───
漣「はぁ……弓を空母の方々に教えてもらえることになったけど……」
漣「やっぱしんどいわー……萎え~……」
大井「あら、ずいぶんお疲れね」
漣「あ、大井さん」
大井「そんなことでは、すぐに負けちゃうわよ」
漣「はーい、わかってまーす……」
漣「はい?」
大井「あなた……すごいわね」
漣「え!?な、なんですか急に!?」
漣「漣はおだてても木に登りませんよ!」
大井「何言ってるのよ……」
漣「はい、そうです」
大井「……私なら、一人で戻るなんて、怖くてできなかった」
大井「私だって、以前、それはできたはずなのに……」
大井「仲間を助けたかったはずなのに、勇気が足りなかった」
漣「……」
大井「でもあなたは、それをやってのけた」
大井「あなたには、それを成し遂げるだけの勇気があったのよ」
漣「……そうですか」
漣「ただ……仲間を守りたかった……助けたかった」
漣「それしか考えてなかったから……」
大井「でも、そこから動くことができた」
大井「あなたは、死ぬことが怖かったはずなのに、助けに行った」
大井「その、『仲間を守りたい』という思いから行動するための力……」
大井「それが、勇気よ」
漣「……」
大井「勇気は、とても強力な力となるわ」
大井「でも、簡単に手に入るものではない……でも、あなたはそれを手に入れた」
大井「だから、すごいって言ったのよ」
漣「そう、ですか……」
漣「あうっ!」バシッ
大井「勇気と無謀は違うのよ!」
大井「今回はどうにかなったけど、正直、私がいなかったら負けてたわ!」
大井「勝算のある戦いをしなさい!」
漣「は、はい……」ヒリヒリ
大井「勇気だけあっても仕方ない、だから……」
大井「……強くなりなさい」
漣「……!」
大井「その勇気、無駄にしないためにも……」
大井「強くなることね」
漣「……はい!」
大井「じゃ、私はこれで」スタスタ
漣「……ありがとうございました!」
漣(仲間を守るため、勇気を持って戦うため!)
漣「よーし!」
漣「ショキカンジャー、ピンク、漣!いっくぞー!」
第四話「六人目の戦士!?」 艦
ショキカンジャーのマスコットの電なのです
ま、マスコットって何なのです!?戦隊関係ないのです!え、あるのです?
大井さんは戦隊に入ってくれませんでしたが、敵は容赦なく襲ってくるのです
特に、今回みたいに幹部さんが強いときは……
え?戦隊モノの定番がまだ残ってる?それって何なのです!?
次回、第五話「合体技がほしい!」
次回も、電の本気を見るのです!
~大井ホワイトの装備~
漣「はい、今回も始まりました、『ショキカンジャーって?ああ!』のコーナー」
叢雲「早くも三回目ね……」
漣「今回はスペシャルゲストをお呼びしました!早速ご紹介しましょう!」
漣「大井ホワイトこと、大井さんです!」
大井「……なにこれ?」
吹雪「……なんか、ごめんなさい大井さん」
漣「まあそういうことです」
大井「そう言われてもねぇ……」
電「だ、ダメなのです?」
大井「いや、ダメってわけじゃないけれど、急に言われても……」
吹雪「そりゃそうですよね……」
叢雲「とりあえず漣、場を持たせるためにあんたの必殺技の解説しなさい」
漣「ああ、あれ?はいはーい」
吹雪「軌道をコントロールできるってこと?」
漣「まあそうだね。半分黄色で半分青みたいな感じ?」
叢雲「は?」
電「それって複数操れるのです?」
漣「うん。今回コウワンさん相手にやったように、複数の矢を操ることができます」
漣「んで、複数の矢で相手を取り囲んで、一気にブスリ……ってできるわけ」
五月雨「なるほどね」
大井「……まあ、いいわ」
大井「まず、私の変身アイテムはこれ。ショキフォンよ」パカッ
五月雨「携帯電話型ですか?」
大井「ええ。これで変身や通信ができるわ」
叢雲「……真ん中に大きく『出撃』って書かれたボタンがある……」
大井「これを押すと変身が始まるのよ」
大井「こんな風にね」シュンッ
電「この間の戦いで使っていた武器なのです」
吹雪「名前は……トーピードーボム、でしたっけ?」
大井「ええ。魚雷発射管型の装備ね。腕に取り付けることができるわ」
大井「そこから、魚雷型の爆弾を射出することで攻撃するわ」
大井「ええ。まず通常の爆発を起こす『パワーボム』」
大井「閃光弾のように、光を放って敵の目をくらます『フラッシュボム』」
大井「とりもちを発射して、相手の動きを封じる『フリーズボム』」
大井「以上の三種類を使い分けて戦うわ」
五月雨「どちらかといえば、サポート向けの武器ですね」
大井「ええ。以前の戦いでも主に仲間のサポートをしていたわ」
大井「え?……そういえば、考えたことなかったわね」
大井「爆弾が切れたことは……今までなかったと思うわ」
吹雪「……どうなってるんですか?」
漣「漣の矢みたく、エネルギーを射出してるとか?」
電「でももっと物質的な感じがするのです」
五月雨「……じゃあ、どこから補充されてるの?」
六人「……」
五月雨「……なんか、触れちゃいけない部分な気がする……」
大井「……まあ、あれよ」
大井「特撮では、『それどこから出したの?』っていうの多いでしょ」
大井「そういうアレだと思えば……」
叢雲「いや、何の解決にもなってないから……」
とりあえず、気にしないことにした六人だった
艦
ショキカンジャー本拠地
吹雪「はい、それでは第五回ショキカンジャー会議を始めます」
ピロピロピロピロピロピロピロピロ ゴーウィーゴーウィ
吹雪「……」
漣「あ、すみませぇん……」
電「今日は何を話し合うのです?」
吹雪「漣ちゃんが提案があるって言ってたけど……」
漣「あー、はいはい。ございますよ」
漣「なので、さらなる強化をしたいと考えていたのですが……」
漣「ここは戦隊モノらしく、合体技をしたいと思いまして」
電「合体技、ですか」
漣「定番の一つだよ。トドメに使うやつ」
五月雨「具体的にどんなの?」
漣「それを今から話し合いたいと思いまして」
叢雲「どんなのがあるの?」
漣「いろいろなパターンがあるけど、大体こんな感じ」
1.爆弾をパスしあって敵にぶち込む
2.エネルギーの塊をぶち込む
3.連携、一斉攻撃をぶち込む
4.必殺バズーカをぶち込む
漣「他にもあるけど、とりあえずこれ」
漣「ゴレンジャーが元祖なんだけどさ」
漣「爆弾、もしくはボールをパスしあって、最後に誰かが敵に向かって蹴り込んで爆発させる技です」
叢雲「ああ、何か見たことあるわそれ。パロディで」
漣「なかなか面白い技だと思いますヨ」
五月雨「……でも、なんでパスしあうの?」
漣「えっ」
電「一人が爆弾を投げ込めばいいのでは?」
漣「え、えっと、それはメンバー全員のパワーを集めてですね……」
叢雲「なーんか曖昧ね……」
吹雪「とりあえず、次考えようか」
漣「これは、全員が光の塊みたいなのになって相手に攻撃、という技です」
吹雪「何それ怖い」
漣「ダイナマンのスーパーダイナマイトがこんな感じかな」
電「そ、それ大丈夫なのですか?」
漣「正直わかんない。多分明石さんたちに頼めばうまいことできるだろうけど……」
叢雲「でも調整に時間かかりそうね」
漣「まあ謎技術がどこまで通用するか、というのが問題ですな」
五月雨「それよりは他のを考えたほうが良いんじゃない?」
漣「そうだね。とりあえず保留」
五月雨「この間やらなかった?」
漣「いやー、それとは違うんだよ」
漣「もっとこう……凄まじいコンビネーションとアグレッシブな攻撃で……」
吹雪「よくわからないよ……」
漣「例を挙げると、ハリケンの影の舞とか」
叢雲「ふーん……なかなか練習が必要そうね」
漣「そうだね。さっきのボールとかこれは練習要るかも」
吹雪「そして、必殺バズーカ……」
五月雨「これは何となくわかる気がする」
電「全員でバズーカを撃つんですよね?」
漣「そうそう。武器を組み合わせるか、別で用意するかは考えないといけないけど」
叢雲「これは別に問題ないんじゃない?」
吹雪「そうだね。強そうだし、いいと思うよ」
電「……叢雲さんの案だと、電はこれを撃つことになってたのです」
叢雲「わ、悪かったわよ……」
漣「よし、じゃあ候補、と」
電「戦隊と言えばこれのイメージが強いので、これでいいと思うのです」
漣「バズーカはロマンだしな!」
五月雨「じゃあバズーカの方向で……とりあえず、夕張さんと明石さんに相談しに行こうか」
叢雲「そうね……でも必殺バズーカなんて簡単にできるのかしら?」
漣「これまでの謎技術をお忘れで?」
叢雲「……そうね」
夕張「待ってたぜェ!この瞬間をよォ!!」
明石「必殺バズーカ……ククク、腕が鳴るわ!」
五人「……」
吹雪「えっと……できるんですか?」
夕張「ふふふ、私たちを誰だと思ってるの?」
叢雲「変人」
明石「グハァッ!」
漣「おーっと!ここで叢雲選手の強烈な一撃が決まったぁー!」
明石「ひ、否定できない……」
叢雲「しなさいよ」
夕張「もちろんよ。じゃあ、それ用に改造するからみんなのショキブレス貸してー」
電「はいなのです」スッ
夕張「今回も三日くらいかかると思うから。期待して待っててねー」
漣「はーい、お願いしまーす」
五月雨「大丈夫だとは思うけど、なんか、ちょっと不安……」
漣「まあ大丈夫っしょ。それより、これからどうしようか?」
電「また、異常現象を調査しますか?」
叢雲「そうね、まだ半分くらいしか解決できてないし」
電「えっと……確か」
・工具がなくなる(解決!)
・屋根裏や床下から変な音
・地響きが聞こえる
・資材がなくなる(解決!)
吹雪「……誰が入る?」
五人「……」
叢雲「わ、私は嫌よ!服が汚れるわ!」
五月雨「私も、虫とかいたら嫌だし……」
電「電も、虫さんや鼠さんはちょっと……苦手なのです」
漣「よし、ここは吹雪ちゃんが行くしかない!」ポンッ
吹雪「ええ!?何で私が!私だって嫌だよ!」
漣「漣も嫌だよ。変なのがいたら嫌だし」
五月雨「どうする?」
吹雪「どうするって……」
電「じゃんけんで決めますか?」
漣「ああ……限定じゃんけんで……!」
吹雪「何で!?」
ノソノソ
吹雪(……結局じゃんけんで負けちゃった……)ノソノソ
吹雪(思ったよりは汚れてないけど、立てないから動きづらい……)
吹雪(早く調査終わらせたいなぁ……)
吹雪(……音がしたらいいんだけどな)
吹雪(音の調査に来たんだもん。あの音がすれば……)
吹雪(確か、羽音みたいな……)
ブゥゥゥゥゥゥン
吹雪(!!)
吹雪(……生き物かもしれない。音を立てず、ゆっくり近づいて……)
ブゥゥゥゥゥゥン
吹雪(……このあたりかな?)
吹雪(……!)
音のする方を見ると、深海棲艦の艦載機そっくりな物体が浮かんでいた!
吹雪(大きさは小さい……手のひらサイズかな)
吹雪(も、もう少し近くで……)
ギシッ
艦載機?「!!」ピューン
吹雪「ああっ!?」
吹雪「……行っちゃった」
吹雪「……とりあえず、戻ろうかな」
吹雪「それが……かくかくしかじかで」
叢雲「深海棲艦の艦載機、ねぇ……」
電「今までのことから考えると、やっぱりディープマリンがかかわっているのでしょうか……」
五月雨「その可能性は大きいね。いろいろなものが深海棲艦にそっくりだから」
漣「どうする?床下も調べる?」
吹雪「うーん……いや、やめておこう」
五月雨「どうして?」
吹雪「多分、床下にも同じものがあると思うんだよね」
吹雪「私に見つかったことで警戒してるかもしれない。尻尾をつかむなら、やっぱり……」
叢雲「油断したところを一気に、でしょ?」
吹雪「うん、そのほうが良いと思って……」
電「確かにその通りなのです。ショキブレスが戻ってくるまで待ったほうが良いのです」
五月雨「そうだね……じゃあ、調査はひとまずここまでにしようか」
漣「じゃあ戻って大富豪でもしようか」
叢雲「ダメよ。あれローカルルールで差が激しいから」
電「え、そういう問題なのです?」
五月雨「こんにちはー」
夕張「おー、みんな。できてるよー」
吹雪「本当ですか?」
明石「はい、これ。返すね」スッ
電「どんな感じになったのです?」
夕張「実際に出して説明するから、外に行こうか」
夕張「それぞれの武器のどこかに、ボタンがあるでしょ?」
漣「あ、本当だ」
夕張「それを押して、順番に空中に放り投げれば出来上がるわ」
叢雲「え!?どういう原理で!?」
明石「あまり深く考えたらだめよ」
夕張「じゃあ実際にやってみようか。スイッチ押してー」
カチッ
電「い、電からですよね?」
夕張「そうそう。やっちゃってー」
電「え、えいっ!」ヒュンッ
漣「とうっ」ヒュンッ
叢雲「それっ」ヒュンッ
五月雨「たぁっ」ヒュンッ
吹雪「えいっ」ヒュンッ
ピキィィィィィン ガッシィィィィィン!!!
五人が投げた武器が空中で合体し、バズーカとなった!
夕張「……はい、完成!これがショキカンジャーの必殺バズーカ、『デストロイキャノン』よ!」
五月雨「え!?何がどうなって!?」
明石「あまり深く考えたらだめよ」
夕張「じゃあ、撃ち方を説明するから、海上に出ようか」
夕張「うん。いい感じいい感じ」
明石「あとは、実戦で撃つだけだね」
五人「……」
夕張「ん?どうしたの、みんな?」
吹雪「……すごく、疲れました……」
明石「え?」
夕張「……あ!そうだった!」
夕張「これ、発射するごとに体力がゴリゴリ奪われるんだった!」
叢雲「は、早く言いなさいよ……」
夕張「まあ、これだけ使えるようになったから大丈夫。問題ないよ」
電「そ、そうですか……」
明石「じゃあ私たちは戻るから。お疲れー」ザァァァ
五人「……」
吹雪「……とりあえず、戻ろうか」
五月雨「そうだね……」
漣「体力の限界……千代の富士……」
叢雲「何言ってるのよあんた」
吹雪「これはもう今日は無理そうだね……」
電「調査は、明日にするのです……」
五月雨「それがいいよ……」
漣「じゃあ今日は人生ゲームでもしましょうか」
吹雪「あ、じゃあ私銀行やるね」
叢雲「ふふっ、今日もぶっちぎりでゴールしてやるわ!」
電「早くゴールしても負けるときは負けるのです」
五月雨「実際叢雲ちゃんこの間負けてたし」
叢雲「う、うるさいわね!職業がずっとフリーターだったのがいけないのよ!」
電「……?」
電(……あの音なのです)
漣「次、電ちゃんの番だよー」
電「あ、はいなのです」
電(……忘れ物しちゃったのです)
電(夜風が気持ちいいので、散歩にちょうど良かったかもしれません)
電(確か、このあたりに持ってきて……)
ブゥゥゥゥゥゥン……
電「……!」
電(この音は……)
ブゥゥゥゥゥゥン……
電「!!」
電(敵艦載機が飛んでる……?いや、あれがもしかして、吹雪さんが言ってた……)
ブゥゥゥゥゥゥン
電「……飛んで行っちゃったのです」
電「一体、誰が、何の目的であんなものを……?」
吹雪「このあたり?電ちゃんが昨日見たっていうのは」
電「はい。ここなのです」
五月雨「どっちの方に飛んで行ったの?」
電「あっちの方なのです」
漣「あれ?あっちの方って……」
吹雪「うん……前、コウワンやセンスイと戦った場所の方向……」
叢雲「これで、ディープマリンが関わっている可能性が高くなったわね」
五月雨「どうする?行ってみる?」
漣「いやあ、その艦載機っぽいのをまた見つけて、追うのがいいんじゃないかな」
電「でも、結構速かったので見失うかもしれません」
五人「う~ん」
吹雪「専門家?」
五月雨「空母の誰かに頼んで、偵察してもらおう」
叢雲「なるほど。艦載機には艦載機を、ってことね」
五月雨「うん。名付けて『タクシー!前の車を追ってくれ!作戦』」
漣「え、何それ」
吹雪「何そのよくわからない作戦名」
叢雲「やっぱり五月雨はちょっとずれてるわ……」
電「ボケたのです?」
五月雨「ち、違うよ!ほら、早く誰かに頼みに行こう!」
赤城「なるほど。いいですよ」
電「あ、ありがとうございます!」
赤城「ボーキのお礼もあるので!」
叢雲「……そういえば、そんなこともあったわね」
五月雨「それではお願いします」
漣「タクシー!前の車を追ってくれ!」
五月雨「……」
漣「あ、ごめんなさい許してください」
吹雪「そういえばそうですね……」
叢雲「屋根裏に飛ばすことは?」
赤城「暗いので無理でしょうね……」
電「だったら、飛び出してくるのを待つしかないのでしょうか?」
赤城「いえ……それは難しいと思いますよ」
五月雨「どうしてですか?」
赤城「そのようなものが昼間に飛び立っていたとすれば、今までに誰かが見ているはずです」
赤城「しかし、そのような報告はありません」
電「はい、そうなのです」
赤城「ということは、昼には屋根裏や床下に潜伏し、夜に飛び立っている可能性が高いです」
叢雲「なるほど……」
赤城「そして、夜には私の艦載機も飛ばせません」
漣「うーん、困りましたな」
吹雪「ん?」
電「赤城さん。艦載機に何か乗せることはできますか?」
赤城「……はい。あまり重くないものなら」
電「偵察機に軽いライトを取り付ければ、暗くても大丈夫なのではないでしょうか?」
叢雲「え、そんなのありなの」
赤城「……そうですね、それならできると思います」
漣「大丈夫なんですか?」
赤城「今回は艦隊戦ではないので、何かを乗せてスピードを落としても問題ないはずです。追うくらいのスピードは出ると思いますし」
赤城「屋根裏や床下なら少しライトで照らすだけで十分なはずなので、いいと思いますよ」
赤城「はい。ところで、屋根裏と床下どちらに飛ばしましょう?」
五月雨「そうですね……確認が取れてる屋根裏に飛ばしてもらう?」
吹雪「いや、床下の状況も確認がてら、床下に飛ばしてもらおうよ」
叢雲「そうね……一応床下のほうもちゃんと確認しておきたいものね」
赤城「じゃあ、床下に飛ばしますね。少し待っててください」
赤城「では、お願いしますね」
妖精「……」ビシッ
ブゥゥゥゥゥゥン
赤城「……うまく床下に入れましたね」
漣「どうです?何かありました?」
赤城「いえ……まだ、何も発見はないです……」
赤城「……?これは……」
叢雲「どうしたの?」
赤城「穴……穴がありますね」
漣「穴?」
赤城「はい。少し大きいですね……床下の、更に下……地面へとつながっている穴です」
五月雨「地面、ですか……」
赤城「自然にできた穴とは思えませんね。不自然です」
吹雪「うーん、少なくとも見てはいないよ。でも、私も屋根裏全部を見たわけじゃないから……」
赤城「私たちが追っているものと関係があるなら、屋根裏にもあるかもしれませんね」
赤城「どうしましょう?入ってみましょうか?」
叢雲「でも、肝心な奴らがまだ見つかってないんでしょう?」
漣「そこってそいつらの出入り口なんじゃね?だったらその辺で待ってたらそのうち来るんじゃないかな」
赤城「わかりました。少し、張ってみますね」
赤城「なるほど、敵艦載機にそっくり……あ!」
漣「どうしたんですか?」
赤城「気づかれました!穴に入って逃げました!」
叢雲「すぐに追って!」
赤城「大丈夫です、もう追ってます!」
吹雪「……ライト点けてたから気づかれたんだよね?」
五月雨「しーっ」
赤城「予想通りの方角です。速いですが、何とか追えてます」
赤城「このまま……あれ?」
電「どうしたのです?」
赤城「高度を落として……地面の方に降りていきましたね。森の中に……」
赤城「……誰か、いる……?」
五月雨「もしかして、ディープマリン?」
吹雪「その可能性は高いね……」
電「直接行ってみるのです」
漣「赤城さん。場所、わかりますか?」
赤城「待っててください。艦載機を戻して、そのまま案内します」
五人は、戻ってきた艦載機に案内され、謎の人物がいる森へと向かっていた
吹雪「この間、コウワンと戦った場所の近くだね」
叢雲「やっぱり、このあたりに何かあるのかしら」
艦載機「……」ピタッ
五月雨「……どうやら、この近くにいるみたいだね」
叢雲「じゃあここまでね」
電「ありがとうなのです」
ブゥゥゥゥゥゥン……
電「……近くで、あの音がするのです」
吹雪「!あそこ……誰かいるね」
北方棲姫?「……」
電「……今度は、北方棲姫そっくりな人がいるのです」
漣(ちっちゃい……)
叢雲「戦闘員は周りにいないけど……」
五月雨「敵艦載機っぽいのがいっぱい飛んでるね」
ブゥゥゥゥゥゥン……
叢雲「まあ、あいつもディープマリンでしょ。とりあえず奇襲よ奇襲」
五月雨「乱暴だなぁ……」
電「では、変身を……」
北方棲姫?「……誰だ」
五人「!!」
五月雨「ど、どうしよう?」
叢雲「どうするって……」
吹雪「うーん……仕方ない、出ていこう」
ガサガサッ
北方棲姫?「……何だ、お前ら」
漣「いやあ、ちょっとお花を摘みにお散歩をしていたら……」
北方棲姫?「嘘つけ」
北方棲姫?「……なんだっていいだろう」
北方棲姫?「用がないならさっさとカエレ。わかったか」
五月雨「……用なら、あるよ」
叢雲「あんた、ディープマリンでしょ?」
北方棲姫?「!?」
吹雪「何か悪いことをしてるなら……私たちは、それを止めないといけないからね」
北方棲姫?「……力ずくで、帰ってもらう」スクッ
電「っ!戦う気なのです……!」
漣「はー、結局こうなるのね……」
五月雨「まあ仕方ないよ」
吹雪「よし……みんな、いくよ!」
カチッ
シュィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン…………
五人の体に、スーツが装着されていく!
バァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!
吹雪「吹雪レッド!」
叢雲「叢雲ブラック!」
漣「漣ピンク!」
電「電イエ口ー!」
五月雨「五月雨ブルー!」
吹雪「五人そろって!」
五人「駆逐戦隊!ショキカンジャー!!」
バァァァァァァァァァァァァァァン!!!
北方棲姫?「前に、お姉ちゃんをいじめたやつら……!」
五月雨「え、お姉ちゃん?」
電「コウワンさんの妹さんなのです?」
北方棲姫?「よくもお姉ちゃんを……!」
北方棲姫?「許さん!カエレ!」
叢雲「だから、帰んないって言ってるでしょ!」
ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!!
敵艦載機のようなものが、一斉に襲い掛かってきた!
漣「うわ、なんか来た!」
吹雪「いくよ!みんな!」
叢雲「くそっ!すばしっこ……」
ドカッ!
敵艦載機?がぶつかってきた!
叢雲「いたぁっ!?」
叢雲「このっ!」ブンッ
シュンッ!
叢雲「くっ……当たらない!」
吹雪「的が小さいし、動きも速いから……」ブンッ
五月雨「このままじゃ攻撃できないよ!」ブンッ
電「くぅっ……!」
吹雪「電ちゃん!」
ドカッ!
吹雪「痛っ!?」
電「ふ、吹雪さん!」
電「皆さん、自分の身をとにかく守るのです!」
北方棲姫?「フッフッフ……手も足も出ないだろう」
北方棲姫?「このままボコボコにしてやる!」
吹雪「くっ……このぉ!」
ボォォォォォォォォォォォォォ!!!
吹雪は敵艦載機?に向かって、剣から炎を放出した!
敵艦載機?「ギャアアアアアアアア!!!」
吹雪「え、これ声出るの!?」
漣「断末魔みたいだね」
叢雲「何かいやね……」
北方棲姫?「グヌヌ……よくもこいつらを!」
吹雪「と、とにかく効いたみたい……」
吹雪「みんな!普通に武器を振り回しただけじゃだめだよ!特殊能力を使って……!」
五月雨「わかった!」
ザパァァァァァァァァァァァァァァ!!!
敵艦載機?「ヒーッ!ヤメテー!」
五月雨「……なんか、やだね」
叢雲「何でかしらね」
漣「あー、もうあったま来た!」カチャッ
漣は、アンカーパーツをデッキアローに取り付けた!
漣「くらえ、ファイナルベント!」シュバババババッ!!
大量の矢をコントロールし、次々と敵艦載機?に命中させていく!
バシュバシュバシュバシュゥッ!!!
敵艦載機?「ギャアアアアアアアア!!!」
漣「見たか、この圧倒的な力を!カラテにカラテをかけて100倍だ!わかるか?この算数が。エエッ?」
北方棲姫?「奥の手だ、お前ら!集まって来い!」
敵艦載機?たち「ラジャー!」ワラワラ
敵艦載機?たちが北方棲姫?の周りに集まってきた!
電「な、何をする気なのです!?」
叢雲「なんか、ヤバい感じね……」
北方棲姫?「フッフッフ、お姉ちゃんとこいつらをいじめたことを、後悔させてやる!」
北方棲姫?「お前ら!準備を……」
ポタ ポタ……
吹雪「……ん?」
ザァァァァァァァァァァァァァァァ
五月雨「……雨?」
吹雪「急に降ってきたね……」
北方棲姫?「雨が何だ!そんなの関係な……」
ザァァァァァァァァァァァァァァ
ピカッ! ゴロゴロゴロ……
北方棲姫?「……っ!」
叢雲「雷まで・・・」
電「これは、早めにどうにかした方がよさそうなのです」
ピカッ! ゴロゴロゴロ……
漣「うわっ、今の結構近かったなぁ」
五月雨「……あれ?何か様子が……」
北方棲姫?「……か……」
吹雪「か?」
北方棲姫?「カミナリ怖いいいいいいいいい!!」ピューン
敵艦載機?たち「アッ、マッテー!」ピューン
五人「……」
漣「どっか行っちゃったし、もう帰る?」
吹雪「うーん……」
電「一応、探してみませんか?」
五月雨「そうだね。ここまで来たんだし……」
吹雪「よし。別れて探してみよう」
吹雪「見つかったらすぐに通信を入れてね」
四人「了解」
電「えーっと、どこに行ったのでしょうか……」キョロキョロ
電「……」
電「あの子、今までの幹部さんと少し違ったのです」
電「……どうして、そう思ったんでしょうか……?」
ピカッ! ゴロゴロゴロ……
電「!!」ビクッ
電「はわわ、ビックリしたので……」
「ヒィッ!!」
電「!」
電(……洞窟があるのです)
北方棲姫?「うう、カミナリ怖い……」ブルブル
電(……中にいるのです)
電(雷が怖くて、避難している、といったところでしょうか)
電(そういえば、周りにいた艦載機さんたちもいないのです)
電(途中ではぐれたのでしょうか……?)
電(そうだ、通信を……)
北方棲姫?「……」ブルブル
電「……」
北方棲姫?「!!」
電「あ、安心するのです!襲う気はないのです!」
北方棲姫?「う、嘘つけ!本当は周りに仲間がいるんだろう!袋叩きにするんだろう!」
電「違うのです!そんなことしないのです!」
北方棲姫?「まあどっちでもいい!外に出て、お前をボコボコに……」
ピカッ! ゴロゴロゴロ……
北方棲姫?「ヒィッ!」ビクッ
北方棲姫?「で、でも……」
電「大丈夫なのです。安心していいのです」
北方棲姫?「……」
電「……となり、座っていいですか?」
北方棲姫?「……好きにしろ」
電「では、失礼しますね」スッ
ホッポ「……ホッポ」
電「ホッポちゃんですか。私は電なのです」
ホッポ「イナズマ……カミナリ!?」ザザッ
電「ち、違うのです!電は怖くないのです!」
ホッポ「カミナリ、怖い……」ブルブル
電(……どうしましょう)
ホッポ「……途中ではぐれた」
電「そうですか……」
電「あの方たちのお名前は?」
ホッポ「……私は、キーって呼んでる」
電(艦載機の機からとってるんでしょうか……)
ホッポ「……何故、私を襲わない?」
電「え?」
ホッポ「キーたちの力を借りて、ああして戦える」
ホッポ「今、キーたちはいない……私を襲うなら今のうちだろ?」
電「……そうですね」
電「でも、電はあなたと戦いたくないのです」
ホッポ「……え?」
電「できることなら、戦いたくはないのです……」
ホッポ「……」
ホッポ「ん、キーたち。来てくれたか」
キーB「アッ、テメエ!ボスニナニカシテネエダロウナ!」
電「え!?いや、その……」
キーC「イマカラボコボコニシテ……」
ホッポ「おい、やめろ」
キーC「!!ス、スミマセン」
ホッポ「……雨も上がったな」
電「!」
ホッポ「今日の所は、見逃してやる」
ホッポ「今日はもうカエレ」
電「は、はい……」
ホッポ「じゃあな」
ザッ ザッ
電「……」
吹雪「ふぅ……見つからなかったね」
叢雲「まあ、恐らくあのあたりにいるから、また今度行きましょう」
漣「くぅ、あのタコヤキども……許せる!」
五月雨「許してどうするの」
電「……」
吹雪「電ちゃん?」
電「……え!?な、なんですか!?」
叢雲「どうしたのよ。様子がおかしいわよ」
電「い、いえ、何でもないのです」
漣「どうしたの?足の小指箪笥の角にぶつけた?」
電「ぶつけてないのです……」
五月雨「とにかく、次に行く前に対策を練っておこうよ」
吹雪「そうだね。あの奥の手も気になるし……」
叢雲「何とか隙を作ってバズーカを撃ちこめば勝てるんじゃないかしら」
漣「とりあえず今日は終わりにしよーよ」
吹雪「うん。じゃあ、また明日ね」
電「……」
電は一人で、昨日ホッポと戦った場所へ来ていた
電「えっと……確かこのあたりだったのです」
ブゥゥゥゥゥゥン……
電「……!」
昨日と同じように、ホッポはキーたちと一緒にいた
キーA「……アッ!オマエキノウノ!」
キーB「テメエナニシニキタ!」
電「え、えっと、その……」
ホッポ「……やめろ、お前ら」
ホッポ「……お前ら全員、どっか行ってろ」
キーC「ソ、ソンナ!ボス!」
ホッポ「いいから、行ってこい」
キーC「……ワカリマシタ」
ブゥゥゥゥゥゥン……
電「……えっと、その……」
電「……なんとなく、来てみたのです」
ホッポ「はぁ?」
電「い、いや、その!何というか……」
ホッポ「……」
ホッポ「……戦いに来たのか?」
電「い、いいえ!違うのです!」
ホッポ「……そうか」
ホッポ「まあいい。座れ」
電「はい……」スッ
電「え?」
ホッポ「お前、私のことを敵だってわかってるだろ?」
電「それはそうですけど……」
ホッポ「なのに、こうして有利な状況にあるにもかかわらず、襲ってこない」
ホッポ「敵を倒そうとしない。だから変わってるって言ったんだ」
電「ははは、そうかもしれないのです」
ホッポ「……」
ホッポ「ん、いつもいるわけじゃない」
電「そうなのですか?」
ホッポ「ここには、仕事で来る」
電「仕事、ですか」
ホッポ「お前ら……キーを追ってここに来たんだろ?」
電「!」
ホッポ「その時も仕事中だった」
ホッポ「……キーを追ってきたなら、仕事が何か、わかるだろ?」
ホッポ「……どういうことだ」
電「あなたの仕事がキーさんたちを鎮守府へ飛ばすこと……というのはわかります」
電「しかし、その目的がわかりません」
ホッポ「そうだろう。昨日も聞いてきたからな」
電「……目的は、何ですか?」
ホッポ「教えるわけないだろ」
電「はは、そうですよね」
ホッポ「キーたちは、あまり遠くまで飛べないんだ」
電「そうなのですか?」
ホッポ「私からあまり離れられない。遠くに行くと力が弱くなる」
ホッポ「その代わり、近いとすごい力になる」
ホッポ「ここは力と距離を考えると、ちょうどいい場所なんだ」
電「へぇ……そうだったのですね」
電「え?」
ホッポ「次は、お前たちのことについて教えろ」
電「……」
ホッポ「人に聞いておいて、自分は答えない気か?」
電「……いいえ、そうではありません」
電「電も、重要なことは教えられませんが、ある程度お答えするのです」
ホッポ「……」
電「……?どうしたのです?」
ホッポ「……やっぱり変わってるな」
電「え?」
ホッポ「いや、何でもない」
電「あれは電たちの武器の特殊能力なのです」
電「それぞれの属性があって、それを武器にまとわせたり、放出したりできます」
ホッポ「ふーん、お前は何なんだ?」
電「雷なのです」
ホッポ「!!??」
電「だ、大丈夫ですよ!襲いませんから!」
電「ホッポちゃんは、雷が苦手なのですね」
ホッポ「……笑いたかったら笑え」
電「笑いませんよ。誰だって、苦手なものはあるのです」
ホッポ「そ、そうか……?」
電「はい。電だって茄子が苦手なのです」
ホッポ「……そうか」
ホッポ「好きなもの?そうだな……」
ホッポ「……アップルパイが好きだ」
電「へぇ、アップルパイですか」
電「アップルパイはとっても美味しいのです」
ホッポ「できたても美味しいが、冷めても美味しい」
ホッポ「アップルパイは奥が深い食べ物だ」
電「ははは、そうですか」
ホッポ「友達?いや……違う」
ホッポ「どっちかというと……部下」
電「部下、ですか」
ホッポ「うん。私の命令をよく聞く、部下」
ホッポ「一緒にいると楽しいけど、友達ではないと思う」
ホッポ「……私に友達は……いない」
電「……」
ホッポ「え……?」
電「電とホッポちゃんは、今からお友達なのです」
ホッポ「……お前、本気か……?」
電「はい、電はいつだって本気なのです」
ホッポ「私たちは敵同士……昨日と同じように、戦わなければならないんだぞ?」
電「わかってます……でも」
電「電は、あなたとお友達になりたいのです」
ホッポ「……」
ホッポ「……」
ホッポ「……そこまで、言うなら……」
電「!ありがとうなのです!」
ホッポ「じゃ、じゃあ今日はもうカエレ!」
電「はい、お邪魔しました」
ホッポ「……明日も、ここにいる」
電「……わかりました、また来るのです」
鎮守府 ショキカンジャー本拠地前
電(結構長居しちゃいましたね)
電(あまり長い間いないと、怒られちゃうのです)
ガチャッ
電「すみません、遅くな……」
四人「……」ギロッ
電「!!」
吹雪「電ちゃん……」
五月雨「一体、どこに行ってたの……?」
電「え、えっと……」
叢雲「……あんたがいなかったせいで……」
電(い、電はもしかして……)
電(取り返しのつかないことを……!?)
漣「山手線ゲーム飽きちゃったじゃーん!!」
電「……」
電「……はい?」
叢雲「もういいお題が見つからなくてね」
五月雨「別のゲームを模索してたところだよ」
漣「もー、罰ゲームもやりつくしちゃったよー!」
電「そ、そうなんですか、すみません……」
吹雪「まあいいよ。ほら、座って座って」
電「はい……」スッ
電(お、怒られるかと思いました……びっくりしたのです)
吹雪「さーて、じゃあ話してもらおうか」
電「え?」
吹雪「……さっきまで、何をしてたのか……」
電「……!」
叢雲「今日、どこかへ向かっているあんたを漣が目撃してね」
叢雲「方角的に、昨日言ったところへ向かってるみたいだったから」
漣「情報を売ってしまいましたぁ……」
電「……そう、ですか」
吹雪「……それで、どうしたの?」
──────
───
叢雲「ふーん、なるほどね」
電「すみません、敵に情報を渡してしまって……」
五月雨「いや、全然大したことじゃないよ」
吹雪「そうだよ。ていうか、もう見せてるから関係ないし」
漣「でも、友達になるなんてねぇ」
叢雲「そうね。もしかしたら、重要な情報を聞き出せるかもしれないわ」
吹雪「うん、そうだね」
電「……?」
吹雪「……戦わなくて済むかもしれないってことだよ」
電「……!」
五月雨「私たちだって、できれば戦いたくないよ」
漣「それは電ちゃんも一緒でしょ?」
電「……はい」
叢雲「無用な戦いは、したくないからね」
電「?」
吹雪「それがうまくいくかどうか……電ちゃんにかかってるの」
電「……!」
吹雪「……頑張ってね」
電「……はい、わかりました」
五月雨「え、ルール知らない」
叢雲「やってるうちに何となくわかるわ」
吹雪「ていうか、何でこんなにボードゲームがあるの?」
電「……」
漣「?電ちゃん、どうしたの?」
電「……ふふ、何でもないのです」
電(……みんな、わかってくれてたのです)
電(きっと、あの子とも仲良くなれるはずです)
電(……戦いたく、ありませんからね)
ガサガサッ
ホッポ「ん、来たか」
電「来たのです」
キーA「オ、キヤガッタナコノヤロウ」
電「は、はわわ……」
キーB「キノウハワルカッタナ。ホラ、ガムクウカ?」スッ
電「あ、ありがとうございます……」
ホッポ「昨日、お前のことを話したら、わかってくれたみたいだ」
電「そうなのですか。それは良かったのです」
ホッポ「……今日は、こいつらも一緒でいいか?」
電「もちろんです。多い方が楽しいのです」
電「そうですね……おしゃべりしたり、一緒に遊んだりするのです」
キーC「イツモオレラトシテルコトトカワンナイッスネ」
ホッポ「うるさい!」ドカッ
キーC「イタイッ!」
電「ははは……」
電「いつもキーさんたちと遊んでるのですか?」
ホッポ「……まあ、そうかな」
キーD「イツモシリトリトカシテルゼ!」
電「なるほど・・・では、カルタを持ってきたので、それでもしましょうか」ゴソゴソ
ホッポ「カルタ……?」
電「知りませんか?ルールはですね……」
電「『前門のタイガー、後門のバッファロー』……」
キーE「アッ、コレダ!」パシッ
ホッポ「ぐっ、しまった!」
電「次行くのです。『急いだヒキャクがカロウシした』……」
キーF「メノマエニアルゼ!」パシッ
ホッポ「くっ……!」
電(……漣さんから借りたカルタなのですが、何かおかしいのです)
ホッポ「ふう、なんとか勝てたぞ……」
キーE「チクショウ、ボスニマケルナンテ……」
電「お見事なのです」
ホッポ「ん?そうだ」
ホッポ「一緒に遊んでくれたり、料理を作ってくれたりする……いいお姉ちゃんだ」
ホッポ「最近は忙しくてあまり構ってくれないけど……」
電「そうなのですか……」
ホッポ「お前には、姉妹はいるのか?」
電「いますよ。お姉さんが三人いるのです」
ホッポ「三人!そんなにか!」
電「もっと姉妹が多い人もいますよ。19人姉妹とか」
ホッポ「ええ!?」
ホッポ「それは大変だな……」
電「よく部屋割りでもめてるのを見るのです」
電「そうですね……一番上の暁ちゃんは、大人のレディを目指してるけど、子供っぽいとよくからかわれますね」
電「二番目の響ちゃんは、いつもクールで……時々変わった行動をしますね。鍋をかぶったりとか」
電「三番目の雷ちゃんは、しっかり者で面倒見がいいけど、人を甘やかしすぎちゃうお姉さんです」
ホッポ「……個性が強いな」
電「はは、そうですね」
電「……でも、みんな、思いやりがあって、優しくて……」
電「頼りになる……いいお姉ちゃんたちなのです」
ホッポ「……そうか」
電「いいえ、居ませんよ」
電「あの四人は、みんな大事なお友達です」
電「ホッポちゃんと同じ、お友達です」
ホッポ「……友達、か……」
ホッポ「……私には、周りそうなるような存在がいなかった」
電「そうなのですか?」
ホッポ「キーたちは部下、クウボやセンスイたちは……友達というよりは、仕事仲間という感じだから」
ホッポ「それぐらいしか、居ないから……」
電「……」
電「?」
ホッポ「……友達というのも、悪くないかもな」
電「……!」
ホッポ「……ん、今日はそろそろカエレ」
電「……はい、また、明日」
ホッポ「……うん」
ホッポ「くっ……これが、ババ抜き……!」
キー「ハッハー!ドウシタンデス?ボス!マダズイブンカードモッテルジャナイデスカー!」
電(……どうやってカード持ってるんでしょうか)
ホッポ「ダマレ!私が本気を出せば、このくらい……!」
ホッポ「ババ抜きでは勝てなかったよ……」
キー「コレガソクオチッテヤツカ……」
電「運が悪かっただけなのです……次は違うゲームをするのです」
キー「ハッハー!ドウシタンデス?ボス!マダズイブンカードモッテルジャナイデスカー!」
電(……デジャヴ)
ホッポ「ダマレ!私が本気を出せば、このくらい……!」
キー「……」
ホッポ「……なんか、ごめん」
電「ドロー4の4連発は仕方ないのです……」
電「仕事?この間言っていたものですか?」
ホッポ「そうだ。まあ正直、他のメンバーの仕事と比べると、重要ではない……のかな?」
電「そうなのです?」
ホッポ「多分な。詳しいことは知らないが……」
電「……」
ホッポ「よし、次は何のゲームだ?」
電「はい。次はですね……」
電「こんにちは、なのです」
ホッポ「ん、来たか。とりあえず座れ」
キーG「ボス!コイツ、ナニカモッテマスゼ!」
キーA「バクダンジャネェダロウナ!」
電「ち、違うのです!そんなもの持ってないのです!」
ホッポ「落ち着けお前ら」
電「今日は、おやつがあるのです」
ホッポ「おやつ?」
電「はい、アップルパイなのです」スッ
ホッポ「!?アップルパイ……だと……!」
ホッポ「……お前が作ったのか?」
電「はい……頑張ったのです」
ホッポ「……」モグモグ
ホッポ「……うまい」
電「よかったのです!キーさんたちもよかったら……」
キーC「ヒャッハー!イタダクゼー!」
キーE「ウマソウナアポパイダー!」
電「はいはい、落ち着いて食べるのです」
ホッポ「……ありがとう」
電「いえいえ、どういたしまして」
電「ははは……実は、結構失敗しちゃったのです」
電「その中で、出来がよかったものを……」
ホッポ「……」
ホッポ「どうして、私なんかのためにここまでする?」
電「お友達だから、です」
ホッポ「……そうか」
電「こんにち……あれ?」
キーA「ヨウ」
電「あれ?ホッポちゃんはいないのですか?キーさんもお一人だけ……」
キーA「イマ、ボスハスコシデカケテル。オレハルスバンダ」
電「出かけてる?それって、お仕事ですか?」
キーA「イヤ、チガウゼ」
キーA「ソノシゴトッテイウノハ、ボスハココカラウゴクヒツヨウハナイカラナ」
キーA「ン?ソウダゾ」
電「何やってるのです?」
キーA「アー……ソウダナ」
キーA「カンタンニイウト……トウチョウ」
電「トウチョウ……盗聴ですか?」
キーA「ウン。オマエラノカンタイノジョウキョウトカヲヌスミギキシテ、シラセル」
電「でも、あなたたちディープマリンがそれを知ってもどうしようも……」
キーA「ウン、ソウナンダケド、ソレヲマタドコカニシラセテルミタイナンダ」
電「どこかに……知らせる?」
キーA「ドコカハシランガナ」
電「……そうですか」
電「!!」
ホッポ「ん、来てたのか」
電「え、ええ」
電「どこに行ってたのです?」
ホッポ「ん、ちょっとな……」
ホッポ「……イナズマ」
電「はい?」
ホッポ「……これやる」スッ
ホッポ「……その辺で拾った石で作った、ペンダント」
ホッポ「昨日のアップルパイの……お返しだ」
電「はわわ……すごく、綺麗な石なのです……」
電「……いいのですか?」
ホッポ「……いらないんなら、いい」
電「いいえ……」
電「ありがとうございます」ニコッ
ホッポ「……こんなものしかやれなくて、ごめん」
電「いいえ。とても……とっても、うれしいのです」
ホッポ「……そうか」
ホッポ「それなら……よかった」
吹雪「じゃあ、ずいぶん仲良くなったんだね」
電「はい!」
五月雨「本当にきれいな石だね……」
漣「これは宝石と騙れば高く売れるかも……」
叢雲「やめなさい」バシッ
漣「いったぁ……冗談だよう!」
電「このまま、戦わないで済むといいのですが……」
吹雪「……だと、いいんだけどね」
漣「本当、びっくりだね」
電「艦隊情報なんて、一体誰に渡しているのでしょうか……」
叢雲「わからない?」
電「え?」
吹雪「私たちの情報を得て、得をするのは限られてるよね」
電「……まさか」
叢雲「そう……深海棲艦の可能性が高いわ」
漣「ここまで来て全く関係がなかったら拍子抜けだけどね」
電「……」
吹雪「とにかく、目的がわかっただけでも一歩前進。もっと情報を集めないと」
電「そうですね……頑張ります」
ホッポ「……なあ、イナズマ」
電「はい?」
ホッポ「お前、どうして戦ってるんだ?」
電「え……?」
ホッポ「艦娘としてでも、ショキカンジャーとしてでも……どうしてだ?」
電「……」
電「……どうして、でしょうか」
ホッポ「……」
電「きっと……多くの人が、考えていることでしょう」
電「でも……ずっと考えても、わかりません」
電「何のために、どうして、戦っているのか……」
ホッポ「……」
電「ただ……」
ホッポ「……?」
電「……助けたい」
ホッポ「……」
電「戦う理由が、それだけのような気もしますし、それだけじゃない気もします」
電「ただ……それだけは、強く願っています」
ホッポ「……」
ホッポ「……そうか」
電「はい?」
ホッポ「私と戦え」
電「!?」
電「な、何を言ってるのです!?」
ホッポ「今、確信した。私たちは戦わないといけない」
ホッポ「……何故そう思ったかはわからん」
ホッポ「でも、そう強く思うんだ」
ホッポ「私は……お前と戦わないといけないんだ」
ホッポ「私たちが敵同士である以上、いつかは戦わなければならなかったはずだ」
電「……っ」
ホッポ「……明日、他の四人を連れてここへ来い。そこで決着をつけよう」
ホッポ「それで……全て終わりだ」
電「……」
電「せっかく……お友達になれたのに……」
ホッポ「……」
吹雪「……そっか」
電「……すみません」
叢雲「仕方ないわよ。世の中そんなに甘くないってことね」
漣「うん。電ちゃんはよくやったよくやった」ヨーシヨシヨシ
五月雨「そうそう。頑張ったよ」
電「……」
吹雪「じゃあ、明日行くとして……」
吹雪「電ちゃん、どうする?」
電「……?どうする、とは……?」
吹雪「……つらいなら、来なくてもいいんだよ」
電「……!」
叢雲「無理はしないほうが良いわ。今回はパスするのも手よ」
漣「戦闘は気にしないで。漣たちががんばるから!」
電「……」
吹雪「……どうする?」
電「……少し……考えさせてください」
電(どうして……)
電(……どうして、こんなことに……?)
電(電はただ……)
電(……)
「電?」
電「!」
電「……司令官さん」
提督「……どうかしたのか?」
提督「なるほど……」
電「どうしたら、いいのでしょうか……?」
提督「ふむ……」
提督「……その前に、一つ聞きたい」
電「はい……?」
提督「お前は、何を助けたいんだ?」
電「それは……」
提督「もちろん味方を助けたいんだろうが……」
提督「お前の場合、敵も、じゃないか?」
電「……!」
提督「『なるべくなら、戦いたくはない』」
提督「『戦争には勝ちたいけど、命は助けたい』って」
提督「お前は、敵も味方も……全てを助けたいんだろう?」
電「……」
提督「そう思うからお前は……戦わないためにも、そのホッポと友達になろうと思った」
提督「……違うか?」
電「……」
提督「……そのうえで、だ」
提督「電。お前は……戦いたいのか?」
電「……」
電「……電は」
電「電は……戦いたく、ないです」
電「せっかくできた、大切なお友達を……傷つけたくないのです」
提督「だったら、吹雪たちが言う通り、お前はこの戦いをパスするか?」
提督「そんな状態で戦っても……つらいだけだろうしな」
電「でもそれだと……!」
電「……それだと、何も……助けられないのです」
提督「……」
電「戦いから逃げたら、敵どころか、味方も助けられないって……」
提督「でも戦いたくない、か……」
電「……だから、迷っているのです」
提督「だよな……」
提督「……優しいな、お前は」
電「え……?」
提督「いや……」
電「……」
提督「しっかり向き合うんだ。戦うことと……そして、お前の友達と」
電「……はい」
提督「……一つ、言っておこう」
提督「戦うことでしか、わからないこともあるんだ」
電「そう……なのですか?」
提督「ああ。だから……戦いの中で、それをつかんで来い。いいな」
電「……はい」
五人はホッポのもとへと向かっていた
吹雪「……電ちゃん、本当に大丈夫?」
電「……はい、大丈夫なのです」
叢雲「無理はしないでね」
五月雨「……そろそろだね」
漣「うん……このあたりにいるはず」
ホッポ「……来たか」
電「……」
ホッポ「イナズマから聞いているだろう。私と戦え」
吹雪「……わかった」
吹雪「みんな、行くよ!」
五人「抜錨!!」
キーたち「ヒャッハーー!!」
吹雪「はぁっ!」ボォォォォォォォォ!!
五月雨「やぁーっ!」ザパァァァァァァァァ!!
吹雪と五月雨は、炎と水を放出した!
キーたち「グワーーーッ!!」
ホッポ「ひるむな!掛かれー!!」
キーたち「ラジャー!!」
吹雪「うわ、そのまま突っ込んできた!?」
五月雨「いたたっ!あ、あんまり効いてない!?」
吹雪「い、いや!多少は効いてるはず!もう一回行くよ!」
漣「待った!ここは漣に任せろ!」カチャッ
漣はアンカーパーツをデッキアローに取り付けた!
漣「くらえ、ファイナルベ……」
キーA「サセルカー!!」ドガッ
漣「いたぁっ!?」
キーたち「オー!!」ヒュンヒュンッ
ドガッ ドゴッ
漣「アイエエエ……矢が撃てないよぉ……」
ホッポ「いいぞ!そのままそいつを……!」
叢雲「漣一人に集中しすぎじゃないかしら?」
ホッポ「!!」
ドガァッ!!
ホッポ「ぐぁ……!」
叢雲「そら、もう一発!」ブンッ
ホッポ「くっ!」シュバッ
ホッポ「くそ、奴に集中しすぎたか……」
ホッポ「……お前ら!奥の手だ!集まってこい!」
キーたち「ラジャー!!」ワラワラ
キーたちがホッポの方へ集まっていく!
ドガッ
漣「いてぇっ!」
キーD「フン、ザマアミヤガレ!」ピューン
漣「ま、待てコラー!」
叢雲「何のつもりかわからないけど、その前にあんたを倒せば……!」ブンッ
ガキィン!
集まってきたキーたちに、叢雲の攻撃は防がれた!
叢雲「……!」
キー「オー!」ワラワラ
ホッポ「エネルギー充填開始!」
シュゥゥゥゥゥゥゥ……
五月雨「な、なんかまずいよ!」
電「……電が行くのです!」ダダッ
吹雪「!ダメ!ここは下がって、回避を……」
ホッポ「エネルギー充填完了!発射準備!」
ヒュォォォォォォォ……
ホッポ「発射!!」
ビィィィィィィィィィィィィィィッ!!!!
集まったキーたちから、すさまじい威力のビームが発射された!
電「!?」
ドォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!!
ホッポ「……」
電「はぁ……はぁ……」
電(ぎ、ギリギリ避けられたのです……)
ホッポ「第二撃!用意!」
シュゥゥゥゥゥゥゥ……
電「!今のうちに!」ダダッ
ブンッ
ホッポ「させるか!」
ガキィン!
電「!?」
集まったキーたちが、ガードとなって電の攻撃を防いだ!
ホッポ「どうしたイナズマ!?この程度ではこのガードはやぶれないぞ!」
電「くっ……」グググ
ホッポ「まだ迷っているのか!?」
電「!!」
ホッポ「戦うことに迷いがあるのか!」
電「……」
ホッポ「お前はその程度か……」
ホッポ「そんな者が、助けたいだのなんだの……」
ホッポ「笑わせてくれる!」
ガキィンッ!
電「!!」
ホッポ「終わりだ!発射準備!」
電「!!」
電(この、ままだと……)
ホッポ「発……」
叢雲「ええい!」ブンッ
ホッポ「!!」
ガキィンッ!
ホッポ「くっ!」ガキガキガキィン!
ホッポ(しまった!エネルギーが……!充填しなおさないと……)
吹雪「ほら、こっちこっち!」ブンッ
ホッポ「くっ!」ガキンッ!
吹雪「五月雨ちゃん!電ちゃんを今のうちに!」
五月雨「わかった!電ちゃん!」スッ
電「……」
五月雨「電ちゃん……?」
電「……」
電(電は……ホッポちゃんと、戦いたくないのに……)
『私たちが敵同士である以上、いつかは戦わなければならなかったはずだ』
電(敵同士、だから……)
電(……やっぱり、そうなのかもしれません)
電(これまでと同じように……戦いを避けて通ることなんて、できないのかも……)
電(……でも)
ドガッ!
叢雲「ぐあっ!」
吹雪「うっ……まだまだ!!」
電「……!」
『戦うことに迷いがあるのか!』
『そんな者が、助けたいだのなんだの……笑わせてくれる!』
電(そうだ……ここで迷ってたら……)
電(本当に……なにも助けられないのです……)
電(……敵は、助けることができないかもしれないけど……)
電(味方を……大切な、仲間を守ることができるなら……!)
電「……戦います!!」
叢雲「くっ……」フラッ
ホッポ「今だ!発射準備!」
叢雲「!!」
吹雪「叢雲ちゃん!」
ホッポ「発……」
電「えーーーーいっ!!!」ブンッ
ホッポ「!!」
ガキィン!!
電「まだいくのです!!」ブンッブンッ
ホッポ「ぐ……!」ガキンガキン!
ホッポ(さっきまでと違う……!これは……)
電「えーいっ!!」ブォンッ
ホッポ「!!そこだ!」ビュンッ
ドゴォ!!
電「……っ!」
電「そうは……させないのです!!」カチャッ
電はアンカーパーツをハンマーに取り付けた!
ホッポ「っ!何をする気だ……!」
電「やぁっ!」ブンッ
ホッポ「無駄だ!!」
ガキィン!!
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……
ホッポ「……?」
キーE「ボ、ボス……」
キーF「カラダガ……オモイ……!」
ホッポ「なっ……!?」
ズシィィィィィィィィィィィン!!
キーたちの周りの重力が急激に強くなり、ガードが崩れた!
電「……」
バチバチバチバチィッ!!
ホッポ「……イナズマ!」
電「ええええいっ!!」
ブォンッ
ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!!
ホッポ「ぐあああああああああああああああああ!!!!!」
電「みんな!今こそアレを撃つ時なのです!」
漣「よっしゃ、キタコレ!」
吹雪「よし、準備を!」
電「アンカーハンマー!」ヒュンッ
漣「デッキチェリー!」ヒュンッ
叢雲「マストランス!」ヒュンッ
五月雨「キールブレード!」ヒュンッ
吹雪「ブリッジソード!」ヒュンッ
ピキィィィィィン ガッシィィィィィン!!!
五人が投げた武器が空中で合体し、バズーカとなった!
五人「デストロイキャノン!」
キーたち「ダイジョウブデス……イマナラ、ガードクライデキマス!」
電「それくらいで防げると思わないでください!」
漣「目標捕捉!」
電「照準よし!」
叢雲「充填完了!」
五月雨「発射準備完了!」
吹雪「ってえええええええええええええええええええ!!!!!!」
ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!
キーたち「ダメデス……タエキレマセン!」
ホッポ「こ、これまで……か……」
ドカァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!
ホッポ・キーたち「うわあああああああああ!!」ヒューン
キラーン
叢雲「今回もなかなか手強かったわね」
電「……」
五月雨「……電ちゃん?」
電「……いえ、何でもないのです」
吹雪「……帰ろうか」
──────
───
執務室
提督「……そうか」
電「……」
電「……司令官さん。電は、このままではいけないのでしょうか」
提督「何?」
電「でも、戦いは避けられない……敵も味方も両方助けることなんてできないって、わかったのです」
電「だから……」
電「……こんな考えは、捨ててしまったほうがいいのでしょうか?」
提督「……」
提督「それらを無視し、自分たちを守るために戦う……」
提督「それが戦い……それが戦争」
提督「……確かに、ただ戦うだけなら、そんな考えはいらないのかもしれない」
電「……」
提督「だがな……」
提督「そんな中にも、お前みたいなやつは必要なんだ」
電「え……」
提督「お前みたいなのがいないと、みんなただの殺戮マシーンになっちまう」
提督「やっていることは矛盾しているかもしれないけど……少しでも、敵も助けたいという気持ちがある」
提督「そういうやつが、人間の心をもたらしてくれる」
提督「みんな戦いの中で忘れちまうんだ。そういう優しさを」
提督「でも、お前みたいに……ずっとその優しさを忘れない奴がいると、思い出せるんだ」
提督「だからみんな、人間らしくあれる」
提督「……その優しさを、捨てる必要なんてない」
提督「お前は、お前のままでいてくれ」
電「……」
電「いつか……敵も味方も、助けることができる日が来るのでしょうか……?」
提督「わからない……が」
提督「これだけは言える」
提督「……やるしかないんだ」
電「……」
提督「それが、お前の信じる道なら……それを突き進むんだ」
電「……」
提督「大丈夫だ。お前には仲間がいる」
提督「その仲間と、優しさとともに、敵も、味方も……救っていくんだ」
電「……」
提督「険しい道だ……頑張れよ」
電「……」
電「……はい!」
電(敵も味方も……全てを助けられるように!)
電「よーし!」
電「ショキカンジャー、イエ口ーの電!頑張るのです!」
第五話「合体技がほしい!」 艦
こんにちは!ショキカンジャーサブリーダーの五月雨です!
えへへ、実は私がサブリーダーなんですよ!知ってました?
色々情報は集まってきましたが……結局ディープマリンって何者なの?わからずじまい……
そういえば、戦隊モノの定番はまだ残ってますね。とてつもなく、大きいのが……
次回、第六話「ロボットがほしい!」
次回も、一生懸命、頑張ります!
【艦これ】駆逐戦隊!ショキカンジャー!!改 その2