乳牛「てめえみてーな田舎モンは家に帰ってミルクでも飲んでやがれ!!!」モオォォォォォ
- 2018年11月15日 00:10
- SS、神話・民話・不思議な話
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キィィ…
マスター「いらっしゃい」
マスター「ご注文は?」
男「こういうところ来るのは初めてなんで……なにかオススメをもらえるかな?」
モオォォォォォ…
男「!」
乳牛「ギャハハハッ、笑わせてくれるぜ! 酒場にも来たことねえのかよ!?」
乳牛「てめえみてーな田舎モンは、家に帰ってミルクでも飲んでやがれ!!!」モオォォォォォ
男「…………」
乳牛「えっ?」
男「あなたの……ミルクをね」
乳牛「な、なによ! 近づいたら蹴るわよぉ!」モオォォォォォ
男「つかまえた」ギュッ
乳牛「しまっ……!」
乳牛「はううっ!?」ビクビクッ
チョロロロロ…
ザワッ…
客A「う、うまいッ!」
客B「ちょっと搾っただけであんなに……。あいつ、搾乳し慣れてやがるぜ!」
客C「いったい何者なんだ!?」
ドヨドヨ…
男「いただきます」ゴクッ
男「ぷはっ」
男「うまい……しかし」
乳牛「!」
男「あなたのミルクからは……“怒り”と“悲しみ”の味がする」
男「どちらかというと、悲しみ成分の方が上かな……」
男「もしや、あなたはついさっき悲しみと怒りを味わったばかりなのでは?」
乳牛「どうしてそれを!?」
男「僕は乳を飲むと、出した者の感情を把握することができるんだ」
乳牛「あぐぐ……実は……」
乳牛「ええ、荷馬車に乗った商人にさらわれてしまったの」
乳牛「すぐ追いかけたけど見失っちゃって……だからこんなところでヤケ酒飲んでたのよ」
乳牛「きっと坊やは売られて、誰かに食べられてしまうのよッ!」モオォォォォォ
男「いや、諦めるのはまだ早い」
乳牛「えっ」
男「ここらで子牛を売買するような場所といえば、南の市場だろう……」
男「急げばまだ間に合うッ!」
男「さあ、僕を乗せて走るんだ! 道案内は僕がやるッ!」
乳牛「分かったわ! 燃えてきたわァ!」モオォォォォォ
男「いや、“燃える”という言葉にはあまりいい思い出がなくてね。クールにいこう」
乳牛「ええ、冷たい牛乳のようにクールにね!」
ワァァ… ヒューヒュー
マスター「フッ……今度来た時は酒飲んでって下さいよ」
ガタゴトガタゴト…
商人「ぐへへへ……この子牛を売れば、大儲けできるぜぇ……」
子牛「ドナドナドーナ~……ドーナ~……」
子牛「子牛を乗せてぇ~……」
商人「やかましいッ! いつまでも辛気臭い歌、歌ってんじゃねーぞ!」
子牛「ドナドナドーナ~……ドーナ~……」
子牛「荷馬車が揺れる~」
商人「ドナドナドナドナうるせーんだよ!」
商人「このまま売られて、切られて、焼かれて、食われちまうんだよッ!」
子牛(お、お母さん……)グスッ
商人「気の毒だが……諦めるこったな。こっちだって必死なんだ」
モオォォォォォ…
商人「ん?」
乳牛「待ちなさい!」モオォォォォォ
ドドドドド…
商人「なんだ!? 後ろから乳牛が走ってきやがる! 人間も乗ってる!」
子牛「あれは……お母さんだ!」
商人「なんだとぉ!?」
商人「くっ……! もっとスピード出しておけばよかった……!」
子牛「お母さぁぁぁぁぁん!!!」
男「さあ、観念しろ! 子牛を返すんだ!」
商人「ふん……誰が返すか! こっちだって必死なんだからよォ!」バッ
男(馬に乗った!)
馬「ヒヒィインッ!」パカラッパカラッ
商人「こいつらに蹴りを喰らわせてやれッ!」
馬「ヒィンッ!」ブオッ
ドカァッ!
男「ぐああっ!」
乳牛「きゃあっ!」モォッ
商人「なぜだか分かるか?」
商人「馬は牛より強いからよッ!」
男「ぐっ……!」
商人「トドメだッ!」ドカラッドカラッ
乳牛「また来るわ! どうしましょ!?」モォッ
男「クールになるんだ……。一つだけ手がある……馬の下に潜り込んでくれ!」
乳牛「分かったわ!」ドドドッ
商人「馬の腹を攻撃する気か!? 無駄なことを――」
男「いいや、そうじゃない……」
馬「おほっ!?」ビクビクッ
チョロロロロ…
男(僕は乳を飲めば、出した者のウィークポイントも分かる)グビグビグビ…
男「この馬の弱点は――」
馬「はうっ!?」
馬「ヒヒィィィィィィン! ヒヒヒィィィィィィィィンッ!!!」ジタバタ
商人「うわああああああああ!!!」ドサッ
商人「ぐっ……落馬しちまった……」
男「東洋には“馬の耳に念仏は通用しない”という諺があるそうだが……吐息は通用したようだな」
乳牛「あたしたちの勝ちね!」
乳牛「坊や!」
子牛「お母さぁぁぁん!!!」タタタッ
商人(まずい、このままじゃ……! あの子牛は絶対ゲットしねえと……!)
「何をやっている」
商人「ハッ!」ビクッ
料理人「南の市場でステーキ用子牛の到着を首を長くして待っていたが……このザマはなんだ?」
商人「す、すみません! もう少しお待ち頂ければ――」
料理人「もういい、お前はこの鉄板で焼いてやる」ガシッ
ジュゥゥゥゥゥ…
商人「あぎゃああぁぁぁぁぁっ!!!」
馬「ご主人様ぁぁぁぁぁっ!!!」ヒヒィィィィィン
商人「ぐぎゃあああああああ!!!」ジュゥゥゥゥゥ…
男「やめろ!」
料理人「ん?」
料理人「お前の顔……どこかで見たことあるような……」
男「一年ぶりだな……」
料理人「一年ぶり?」
男「ああ、お前に牧場を焼き払われた酪農家だ!」
乳牛「あなた、酪農家だったの!? まったく分からなかったわ!」
馬「それに、牧場を焼かれたってのはどういうわけなんだ!?」
料理人「私はステーキハウスを経営していてね」
料理人「ある日、こいつの牧場を見学させてもらってたんだが」
料理人「牧場を眺めてるうち、この牧場全部を焼いたらどんなステーキができるか、と思って」
料理人「ついやっちまったのさ! 結局ステーキはできず、焼け野原ができただけだったよ!」
馬「ムチャクチャだ……」
乳牛「なんて奴なの!?」モオォォォォォ
男「お前に無惨に焼かれた牛たちの仇は取る……行くぞッ!」ダッ
男「でやぁぁぁぁぁっ!!!」
料理人「ふん、遅いな」
バキィッ!
男「ぐぶっ!」
料理人「どうだ? 鉄板で殴られた気分は? 結構効くだろう?」
料理人「さて……お次はその体を鉄板で焼いてやろう!」グイッ
男「うぐあああああああ!!!」ジュアァァァァァ…
男「ぐあああっ……!」
料理人「今のお前はまさにそれだな!」グイッ
男「あぐあぁぁぁ……っ!」
料理人「そのまま私に頭を下げながら焼け死んでいけッ!」
男(熱い……僕は、ここまでなのか……!)
乳牛「ええ、分かってるわ……あたしたちの恩人をこのまま見捨てるものですか!」モオォォォォォ
乳牛「ミルクビーム!」ブシュウウウウウ…
料理人「ミルクだとォ!? 鉄板冷やそうってんだろうが、ンなもん焼け石に水だッ!」
ジュワァァァ…
料理人「ほらな、あっという間に蒸発していきやがる!」
乳牛「いいえ……今のは鉄板を冷やそうとしたんじゃないわ」
料理人「なにッ!?」
料理人「あっ!?」
男「とても……おいしかったよ。濃厚でそれでいて後味スッキリ……理想的なミルクだ!」スッ
料理人「な、コイツ……焼かれたはずなのに、火傷まで完治して……!」
商人「そうか、牛乳はカルシウムやビタミンB2をはじめ、栄養が豊富だ!」
商人「牛乳を飲めば、火傷を回復するぐらいわけないということかッ!」
男「うおおおおおおおおおおおおっ!!!」ダッ
料理人「ちいっ! 鉄板ガード!」サッ
ガキィンッ!
男「ぐ……!」メキッ…
料理人「バカめ、鉄板を素手で砕けるわけないだろう! このまま拳を焼いてやるゥ!」
ミシミシ… パキパキ…
料理人「ゲッ!?」
料理人「や、やめ……」
男「お前は料理人なんかじゃない……ただの放火魔だッ!!!」グオオオオオッ
料理人「うわ――」バキィィィン
ドゴォンッ!!!
料理人「げぶばぁぁぁぁぁっ!!!」
男(しかし、俺にはもう待っている牛はいない……。全てあいつに燃やされてしまった……)
乳牛「あの……」モオォォォォォ
男「ん?」
乳牛「この子にはまだ……父親が必要だと思うの」
子牛「うんうん」
乳牛「だから……あたしたち夫婦になって、もう一度牧場を経営しない?」
男「僕なんかでいいのかい?」
乳牛「うん、あなたとなら……幸せな牧場(かてい)を築けると思うから……」
子牛「よろしくね、お父さん!」
男「ああ、よろしく!」
馬「牧場には乗馬コーナーもあった方がいいだろ?」
商人「宣伝や販売なら、俺に任せてくれ!」
商人「子牛をさらった罪滅ぼしをしたいからな……」
乳牛「あらやだ、ゴージャスな牧場になりそうだわ!」
男「みんな、ありがとう……!」
男「…………」ゴクッ
男「うん、“喜び”と“希望”に満ちた、最高のミルクだ……!」
男(このミルクとみんなの力があれば、間違いなく昔以上の牧場になる!)
男「よーし、みんなで最高の牧場を作ろう!」
モオォォォォォ ヒヒィィィィン
― 完 ―
元スレ
乳牛「てめえみてーな田舎モンは家に帰ってミルクでも飲んでやがれ!!!」モオォォォォォ
http://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1542199228/
乳牛「てめえみてーな田舎モンは家に帰ってミルクでも飲んでやがれ!!!」モオォォォォォ
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おじちゃ~ん、せめて馬のサイズになってから言ってよぉ~。
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- ※5
お前からはストレスの味しか感じないぜ……休めよジュルルル