探偵「犯人はこの中にいるはずだから全員ブチのめすッッッ!!!」
- 2018年10月18日 00:10
- SS、神話・民話・不思議な話
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探偵「……死んでますね」
警部「ああ……死んでいる」
探偵「被害者である大富豪は、全身を殴打され、さらにあちこちの急所を刃物で刺されています」
警部「死因はロープのようなもので首を絞められたことによる窒息死、といったところか」
探偵「ふふっ、面白そうな事件じゃないですか。俺の知的好奇心がうずきますよ」
警部「相変わらず不謹慎だな、君は。だが、頼もしくもある」
警部「しかし、この事件はどうやら不可能犯罪と呼ぶべきシロモノだ」
探偵「なぜです?」
警部「なぜなら、我々が開けるまでこの部屋の扉のカギは閉まっていた」
警部「さらに、ここは100階建ての高層ビルの最上階――出るにはあの窓から飛び降りるしかない」
警部「しかも、このビルにはベランダのようなスペースは存在しない」
警部「つまりこれは、密室殺人だったというわけだ!」
探偵「……」
探偵「果たしてそうでしょうか」
警部「なにっ!?」
警部「バカな! さっきもいったがここは100階だぞ! 飛び降りたら死ぬだけだ!」
探偵「なら……実際にやってみましょうよ」
警部「面白いッ!」
探偵「とうっ!」バッ
警部「でやっ!」バッ
ヒュゥゥゥゥゥ…
通行人「ええ……いきなり空から降ってきたんです。探偵っぽい人と警部っぽい人が……」
通行人「グチャッというかベチャッというか、スゴイ音がしましたよ」
通行人「え? 二人はそのまま死んだのかですって?」
通行人「いえ、それが……立ち上がったんですわ。何事もなかったかのように平然と……」
探偵「……というワケです」
警部「うむ、この部屋は密室ではなかったと証明された。さすが名探偵だ」
探偵「警部、被害者の死亡推定時刻、ビル内にいた人たちを集めて下さい」
警部「分かった! すぐに集めよう!」
メイド「ご主人様が殺されただなんて……!」
弁護士「この事件の犯人だけは……弁護したくないですね」
医者「なんという残酷な殺し方だ……!」
警部「それぞれ被害者の世話係、顧問弁護士、主治医をされていたそうだ」
探偵「三人とも被害者と近しい間柄だったというわけですね」
探偵「つまり、チャンスはいくらでもあったということ……」
探偵「まだなんとも……捜査してみないと……」
探偵「三名に動機のようなものはありましたか?」
警部「いや、いずれも被害者との関係は良好で、そのようなものはなかった」
探偵「そうですか……」
探偵(分からん……何か手がかりはないだろうか……?)
被害者「う……」ピクッ
警部「む!?」
探偵「え!?」
被害者「ふふふ、どうにか蘇生できたわい……」
被害者「今こそ、ダイイングメッセージで……犯人の名を……」ググッ…
警部「おおっ、よかった! これで事件は解決だ!」
探偵「……」
ドギャッ!!!
被害者「ぐふうっ!」
被害者「……」ガクッ
警部「探偵君! せっかく被害者が生き返ったのに、なぜトドメを……!?」
探偵「決まってるでしょう?」
探偵「“殺人未遂事件”より“殺人事件”を解決した方が、大きな手柄となりますからね」
警部「なるほど、さすが名探偵!」
探偵「絞り込む必要はありません」
警部「どういうことだね?」
探偵「手がかりがない以上、方法は一つしかありません」
警部「その方法とは!?」
探偵「犯人はこの中にいるはずだから全員ブチのめすッッッ!!!」
警部「さすが名探偵!」
弁護士「え!?」
探偵「容疑者には死あるのみ……」
探偵「探偵七つ奥義“探偵の指(ディテクティブ・フィンガー)”!!!」
ドスッ!
弁護士「ぐはっ……!」
警部「やったッ! 弁護士の胸に、探偵君の指が深々と刺さったァ!」
警部「彼はあの指で、何千人もの容疑者を再起不能にしてきたのだァッ!」
弁護士「……フッ」
探偵「な!? 効いてない!?」
弁護士「こんなこともあろうかと、胸ポケットに六法全書を入れておいた」スッ…
探偵「さすがの俺の指も、六法全書は貫けなかったか……ッ!」
弁護士「さらにィ……六法全書は強力な武器となるッ! 喰らえッ!」ブオンッ
ゴシャッ!
探偵「ぐ、ぶう……!」
ガッ! ゴッ! バキッ!
弁護士「しょせん探偵の知能などこの程度! 弁護士の頭脳には敵わんッ!」
弁護士「このまま殴り殺してくれるわァッ! 正当防衛ってヤツよォ!」
探偵「だったら……こちらも頭を使うしかないッ!」
探偵「探偵七つ奥義“探偵の頭(ディテクティブ・ヘッド)”!!!」
弁護士「ぬ!?」
グシャァッ!!!
弁護士「ぐ、ぴゃぁ……」ドサッ…
警部「探偵君の頭突きを受けた顔面が、完全に陥没している……ッ」
探偵「さまざまな難事件を解決してきたこの頭に……砕けぬものはない」
警部「さすが名探偵だ……」
探偵「殺人の罪は死でしか償えぬ……すぐさま霊安室に送ってやろう」
医者「私を弁護士風情と一緒にしない方がいいぞぉ~」
医者「なにしろ、医者にとって生と死は日常茶飯事、呼吸をするように命を奪うことができる」
医者「メスで切り裂いてあげよう!」ギラッ
警部「は、始まる……ッ! 探偵と医者の戦いが……ッッ!」ゴクッ
医者「シャッ! シェアッ! シャアッ!」
シュバッ! ザシッ! ザシュッ!
探偵「ぐっ……!」
医者「さすがの君もこのメスの前には手も足も出ないようだねェ~」
医者「さぁ~て、頸動脈をいただいちゃおうか!」
ザクッ!
警部「た、探偵くうううんッ!!!」
医者(刺さってない……!?)
探偵「探偵七つ奥義“探偵の首(ディテクティブ・ネック)”」
探偵「難事件に悩まされ、首を傾げ続けた俺の首は、常人の数十倍の頑強さを誇る!」
探偵「メス如きで切り裂くことは不可能ッ!」
医者「なんだとォ……!?」
探偵「探偵七つ奥義“探偵の肘(ディテクティブ・エルボー)”!!!」
グワシャッ!!!
医者「ぐぼぉぉぉっ……!」
メイド「冥土に送って差し上げますわ」
探偵「冥土に行くのは……お前だッ! 容疑者めッ!」
シュガガガッ! ガッ! ドガッ!
探偵「……ぬう!?」ヨロッ
探偵(つ、強い……)
警部「探偵君を体術で圧倒するだと!?」
メイド「知らなかったのなら教えてあげましょう」
メイド「あらゆる家事をこなすメイドの身体能力は、一流の格闘家をも凌駕するのよッ!」
探偵&警部「!!!」
ズガァッ!!!
メイド「キャッチ♪」シュゥゥゥ…
警部「あの噴火のようなアッパーを……片手で……ッ!」
探偵(計算外だ! たかがメイドがここまでの戦闘力を持つなんて!)
探偵(なんとか、なんとか弱点を見つけ出さなくては!)
メイド「おあいにく様! 私に弱点はありませんことよッ!」
探偵「いいや、見つけてみせるッ!」
探偵(名探偵の眼力は、どんな敵の弱点だって――)
探偵(ない!? この女、弱点がない!?)
メイド「絶望を味わって頂けましたでしょうか?」
メイド「絶望したところで、冥土に送ってあげますわァ!」
探偵「ええいッ!」
グシャアッ!!!
メイド「……まさか、頭突きするように目を私にぶつけて……くる、なんて……」ドサッ…
探偵「ふぅ……目を鍛えてなければ危なかった……」
警部「素晴らしい! 君のおかげで事件は解決だ!」
探偵「……まだ終わっちゃいませんよ、警部」
警部「どういうことだね?」
探偵「警部、まだあなたが残っている。あなたを始末しなければ、事件は解決しません」
警部「……!」
警部「しょせん刑事と探偵は相いれない存在……水と油というわけか」
警部「面白いッ! いずれ君とはこうなる運命だと思っていたッ!」バサァッ
探偵(警部があの重さ10トンのコートを脱いだ! いきなり本気か!)
ガツンッ!
探偵「ぐうっ……!」ブシュッ…
警部「フ……捜査一課の石頭といわれる私に、そんな攻撃は通用せんよ」
探偵「ならば、探偵七つ奥義“探偵の蹴り(ディテクティブ・キック)”!!!」
ズガァッ!
探偵「ぐあっ……!」メキッ…
警部「典型的足で稼ぐタイプの刑事である私の下半身には、いかなる技も通用しない!」
探偵(さすが警部……! 正攻法では倒せない! だったらあれしかないッ!)
警部「なにっ!? 探偵七つ奥義に八つ目があったとはッ!」
探偵「警部、カツ丼です」サッ
警部「オオッ、いつも取調室で食べておる大好物だよ。いただきます!」モグモグッ
警部「うっ!?」ギュルルルルル…
探偵「さよなら、警部……」
探偵「今食べたカツ丼のカツは……一年間常温で放置していたものです」
警部「む、無念……」ドサッ…
探偵(終わった……。哀しい事件だった……)
探偵「!?」
探偵「お前、まだ生きていたのか! しぶとい奴め! 今度こそ息の根を――」
被害者「まだ……事件は解決していない……」
探偵「なんだって!?」
被害者「私を殺した真犯人は……彼らではないのだッ!」
探偵「そ、そんなバカな……ッ!」
探偵「ならば、真犯人はどこにいるというのです!?」
被害者「先程から、ずっとあそこにいるッ!!!」
探偵「天井に……忍者!?」
探偵「さっきから上でずっと『ガサ…』『ゴソ…』と音がしていたのはお前だったのか!」
探偵「しかも、忍者ならば監視カメラの目をくぐり抜けるぐらい容易いだろう……」
忍者「その通り、今までのやり取りはずっと見ていた」スタッ
忍者「そこで生き返った被害者を殺したのは、この拙者よォ!」
被害者「私はこいつに殴られ刺され、窒息死させられたのだ……!」
探偵「なんということだ……!」
探偵(俺は今まで無実の人達を葬り去っていたというのか……ッ!)
探偵(おのれ、忍者ァァァ……!!!)メラメラ…
医者「後は……頼んだよ……」
メイド「私たちの分まで、あの忍者を……!」
警部「君なら勝てる……!」
探偵(みんな……! 忍者のせいでみんなは……!)
探偵「忍者、お前だけは許さん! みんなの痛みをお前にも味わわせてくれる!」
忍者「フフフ、来るがいい!」
忍者「毒の煙玉!」ポイッ
ボムッ!!!
探偵「ん!?」
モワモワモワ…
忍者「その毒は青酸カリの一兆倍の猛毒だ! 少しでも吸えば一瞬であの世行きよ!」
探偵「ぐっ、ゲホゲホッ! しまった……吸いまくってしまった!」
探偵「探偵七つ奥義“探偵の脳(ディテクティブ・ブレイン)”!!!」
忍者「む!?」
探偵「……」キュピーン
探偵「脳を操作し、猛毒を毒と認識しなければ死ぬことはない……」
忍者「そんなことが可能なのか……!」
警部「さすが名探偵!」
被害者「行けーッ! 私の仇を取ってくれッ!」
忍者「なんだと……!?」
探偵「こうなれば、殺られる前に殺る!」グッ…
探偵「探偵七つ奥義“探偵の拳(ディテクティブ・パンチ)”!!!」
ドゴォォォォォンッ!!!
忍者「ぐばっはぁぁぁぁぁ……っ!!!」ドザァッ
警部「やったぁ!」
忍者「ぐうっ……!」
被害者「ざまあみろ!」
弁護士「大人しく法の裁きを受けることです」
医者「牢獄で命の尊さを学び、反省するがいい!」
メイド「ご主人様……あなたの恨みは晴らされましたわ」
警部「また助けられたよ……。君がいなければ事件は迷宮入りしていただろう」
探偵「事件を解決するのは探偵の使命ですから」
メイド「待って! 犯人逮捕祝賀パーティーに参加して下さいませ!」
被害者「そうだよ! 急いで行くこともないだろう」
探偵「……そうもいきません」
探偵「こうしてる間にも、新たな事件が俺を呼んでいるのでね」
― 完 ―
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コメント一覧 (11)
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- 2018年10月18日 00:21
- 探偵が犯人な件
-
- 2018年10月18日 00:26
- 医者は毒を治してやれよ
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- 2018年10月18日 00:34
- ガサゴソが気になって読み返したじゃないか
流石は名探偵といった所か
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- 2018年10月18日 01:43
- 僕はすきだなこういうの
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- 2018年10月18日 04:25
- 推理(物理)
それにしても、さすが忍者汚いなさすが忍者汚い
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- 2018年10月18日 11:21
- 強い医者と聞くと幽遊白書の神谷を思い出す
あれは素手だったけど
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- 2018年10月18日 12:31
- 最後雑ない?w
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- 2018年10月18日 13:02
- 中国人(東洋の神秘)を出してはいけない(戒め)
この勢いだけの感じ、嫌いじゃないわ!
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- 2018年10月18日 18:33
- 殆ど死んだ様で死んでないし
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- 2018年10月19日 10:11
- ※9
死んだのに死んでない……ん?
※8
もう一度読み返して、楽しみましょ!
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- 2018年10月19日 18:51
- 忍者が出てコロす、実質ニンジャスレイヤー