タクシー運転手「お客さん、どちらまで?」客「あの世」
- 2018年10月11日 21:40
- SS、神話・民話・不思議な話
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ブロロロロ… キキッ
ガチャッ
運転手「どうぞ」
客「……」スッ
運転手「お客さん、どちらまで?」
客「あの世」
運転手「私、今日が勤務初日でして、そういうジョークにどう対応していいか分からなくて……」
客「……」
客「悪かった、適当に走ってくれ」
運転手「適当にって……」
客「もちろん、メーターが動いただけの金は払う」
運転手「……分かりました」
ブロロロロ…
運転手「もしかして自殺でもするつもりですか?」
客「まあ……そんなとこだ」
客「近い将来、俺は死ぬことになるだろう」
運転手「……」
客「……」
客「……変わってしまった」
運転手「え?」
客「自分の人生が変わりまくってしまった」
客「その変化に俺は耐えられない……ってところか」
客「……」
運転手「私も色んなもんが変わっちまいまして、職まで変わって、今やタクシー運転手なんて身ですが」
運転手「こうやって生きてます」
運転手「生きてれば、きっといいことありますって」
客「そうとも思えんがな」
客「いないよ」
運転手「え」
客「父も母も死んでしまった」
運転手「そうですかい……」
客「……」
運転手「……」
客「恋人か……婚約者がいた」
運転手「ほう!」
客「だけど死んだ」
運転手「そうですかい……」
客「……」
運転手「……」
客「あれは婚約者との結婚式の日だった」
客「結婚式が始まる寸前、大爆発に巻き込まれてね。その時、両親も死んだ」
運転手「爆発……」
客「特に俺を突き飛ばして助けてくれた婚約者は、肉片すら残らなかったんだ」
運転手「……」
客「まだ捕まってない。恨まれる覚えもなかったし、おそらく愉快犯だろう」
運転手「手がかりはないんですか?」
客「あるけど……誰にも話しちゃいない」
客「あの事件に関しちゃ、あまり口に出したくなくってね」
運転手「そうですか……」
客「ああ、あの結婚式場に届けられた美しい宝石が……まさか、あんなことになるとは……」
運転手「爆弾だったとはねえ……」
客「……」
運転手「ほう! おめでとうございます!」
運転手「あなたの幸せを潰したのは、いったいどこのどいつです?」
客「あんただよ」
運転手「へ?」
客「じゃあ聞くが、なんであんた、宝石を爆弾だと思ったんだ?」
客「そもそもなんでいきなり“犯人は?”なんて聞いてきたんだ?」
運転手「!」
客「俺は爆発に巻き込まれて、としか話してないのに……どうして?」
運転手「いや、それは……話の流れから、なんとなくですよ!」
客「苦しい弁明だな。なんとなく、で宝石を爆弾だという奴はいないだろう」
客「つまり、あんたはあの事件のことを知ってたんだ!」
運転手「ぐっ!」
客「それがこの会社のものだった」
客「だから俺は、この会社のタクシーを見るたび乗り込み、運転手と会話し――」
運転手「“現場にいる人間じゃなきゃ分からないこと”を漏らす奴が出るのを待ち続けたってことか……!」
客「そういうことだ」
客「そして……やっとあんたという犯人を見つけた」
客「これで心おきなく死ねる……」
運転手「な、なにをするつもりだ!?」
運転手「それは……爆弾!?」
客「ああ、俺お手製の爆弾だ。この爆弾で……俺と一緒に死ね」
運転手「ま、待てっ!」
客「これでやっと……俺も彼女のもとに逝ける……」
運転手「違うんだ! 私は犯人じゃない!」
客「ウソつけぇ! さぁ、このスイッチを押せば……!」
運転手「あ~~~~もう! 仕方ない!」
客「!?」
運転手「しょうがないわね……顔も声も変わっちゃったから、分からない?」
客「君は……君はまさか!?」
運転手「そう……お久しぶりね」
運転手「私はあなたの婚約者だった女よ」
客「……!」
運転手「だったらなんでもいいから質問してみて……」
客「初デートの場所は?」
運転手「○×公園……あなたがソフトクリーム買ってくれたけど、猛暑だったからすぐ溶けちゃったわね」
客(間違いない! 彼女だ!)
運転手「私はあの爆発で、顔はズタズタになり、ノドは潰れてしまった……」
運転手「だからもう、あなたに相応しくない女になってしまったと思ったの」
運転手「それで、私は肉片も残さないで死んでしまったことにしたの……」
運転手「そして、手術で顔も声も別人のようにして、生きてきたの……」
客「どんなに変わろうと、君は君だよ……!」
運転手「……ありがとう」
運転手「だけど、あなたのもとを去ったのはもう一つ理由があるの」
客「それは、いったいどんな?」
運転手「もちろん、見つけ出したら殺してやろうと思ってた」
客「そうだったのか……それで?」
運転手「見つけたわ」
運転手「私たちの結婚式をメチャクチャにした悪魔は……タクシー会社の社長だったわ」
客「それで君は、社長に復讐するため、タクシー運転手に……」
運転手「ええ、そういうことよ。そして、今日がまさに勤務初日ってわけ」
客「俺たちには爆弾(こいつ)がある!」
運転手「ふふっ、それも面白いかも!」
客「結婚式でやれなかった共同作業を今こそやってやろう!」
運転手「そうね!」
ブロロロロ…
運転手「終わったわね……」
客「ああ、終わった」
運転手「これからどうする?」
客「せっかくタクシー乗ってるし、教会にでも行こうか! 二人きりの結婚式だ!」
運転手「嬉しい!」
END
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コメント一覧 (13)
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- 2018年10月11日 22:23
- えーっと…
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- 2018年10月11日 22:28
- もっと話しが欲しかった
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- 2018年10月11日 22:30
- えーっと…
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- 2018年10月11日 23:03
- もうちょっと頑張ってくれよ…途中までは結構良かったのに
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- 2018年10月12日 00:04
- 私だ
お前だったのか
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- 2018年10月12日 02:15
- いつもの無理やり話が世界規模になってなんやかんや家族皆でハッピーエンドになる話を書いてる人にしてはお粗末すぎる
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- 2018年10月12日 08:32
- 飽きるなよww
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- 2018年10月12日 09:39
- 騙されたな
全く気付かなかったぞ
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- 2018年10月12日 12:05
- こうして二人はまだ見ぬ未来に希望をたくしーたのであった
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- 2019年01月05日 07:21
- >>9
【審議中】
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- 2018年10月12日 17:59
- ネタはよかった
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- 2018年10月12日 21:17
- なんかおしいなぁ…。
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- 2018年10月13日 07:37
- 暇を持て余した神々の遊び