【艦これ】艦天って略すとカロリー低い食材みたい 第三章【天華百剣】
提督「触ってねえよテキサスクローバーホールド極めんぞ」
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武蔵がチャリで来た
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加賀「乳首相撲です」
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【艦これ】ウ○コマン あるいは(提督がもたらす予期せぬ奇跡)
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時雨「流れ星に願い事」
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【艦これ】居酒屋たくちゃん~提督のクソ長い夜~
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磯風「蒸発した……?」
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【艦これ】加古ちゃん空を飛ぶ、めっちゃ長く飛ぶ、すごい
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鈴谷「うわ不思議の国こわい、キモい」
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【艦これ】ヒトミとイヨの恰好がスケベなので
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川д川 ウホウホ!!鎮守府に颯爽と登場した貞子ゴリラ、トランスフォームウホ!!
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【艦これ】ウキウキ!!首相の鎮守府訪問!!のようです
http://elephant.2chblog.jp/archives/52215283.html
【艦これ】時雨「静岡グレーゾーン連盟」
http://elephant.2chblog.jp/archives/52220413.html
エンド・オブ・オオアライのようです ※連載中のコラボ作品(◆vVnRDWXUNzh3作)
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川д川 ウホウホ!!鎮守府に颯爽と登場した貞子ゴリラ、トランスフォームウホ!!←発端
http://elephant.2chblog.jp/archives/52198542.html
【艦これ】艦天って略すとカロリー低い食材みたい 第一章【天華百剣】←前前前作
http://elephant.2chblog.jp/archives/52222085.html
【艦これ】艦天って略すとカロリー低い食材みたい 第二章【天華百剣】←前前作
http://elephant.2chblog.jp/archives/52228676.html
『艦天って略すとカロリー低い食材みたい』 幕間 ←箸休め
http://elephant.2chblog.jp/archives/52230477.html
関連作品
【天華百剣】御華見衆の参羽鴉【ブーン系】
http://elephant.2chblog.jp/archives/52219378.html
長 曾 祢 虎 徹 影 打 い つ 実 装 な ん ? ? ? ? ?
もうしばらく石を溜める日々が続きそうです
・提督の表記は『( T)』になっています。マスク超人です
・提督はドウェイン・ジョンソン並みのマッスルです
・ブーン系(AA)要素あります
・魔法の髪は?
・ない
・魔法の手は?
・ない
・動物とお喋りは?
・しない
・毒は?
・えっ?(ドン引き)
・誘拐や監禁は?
・あるわけないでしょ!!警察呼ぼうか……?(小声)
・背が高くてつよーい男性に幸せにして貰ったってみんなに思われてる?
・そう!!でもそれがなんなの?
_人人人人人人人人人人人人人人人人_
> 本物のプリンセスよ!!!!! <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄
<ハハハハッハー♪
・シュガーラッシュ オンライン 12月21日公開(ノルマ)
ある日の陸上戦では、眼前でル級に醜悪な笑顔と共に砲を向けられた事があったし
ある日の晩は夜のエンジン熱暴走鈴谷に顔面陥没するんじゃねえかってくらい殴られた
艦娘が登場する以前、人が主兵力として深海棲艦を相手していた頃なんて数え切れねえくらい遭遇した
だが、生まれながらの悪運と日々の鍛錬のお陰か。その悉くを跳ね除けてきた自負がある
『囮』に向かって勝ちを確信したル級はそのすぐ後ろに迫っていた天龍に首を撥ねられ
鈴谷は持ち前のプロレス技術で間接逆方向に曲げて大人しくさせた(悪いことしたなぁって思う)
世と人の為に命を散らしたかつての戦友達の墓標に名を連ねるのも、恐らく当分先だろう
(;T)「……」
だが、これはどうだ?
「ああああああ……怨ォオオオオオオオオオ……」
燃え広がる街で、娘の友人が悪堕ち一歩手前
そして腕の中には息絶え絶えな美少女剣士
単純な暴力だけでは解決しきれない『絶望』に直面するのは慣れちゃいない
炎によって乾き、薄くなった空気を吸い込み
(;T)「Fuck……」
ごくありふれた悪態を吐いたところで、気はちっとも休まらなかった―――
艦これ × 天華百剣
『艦天って略すとカロリー低い食材みたい』 第三章
『女の友情と筋肉』
.
最後に見た彼女の姿は、凡そ半日前ほどだろうか。朝早くから『若旦那』と共に調査へ出向いていた
艶やかな桜柄の振袖と、赤みの強い髪をツーサイドアップに纏め
特徴的な金の髪飾りを着けていた。若が言うには『茎を模した髪飾り』らしい。ようわからん
しかし今や、その風貌は徐々に――それこそ、『錆びつく』かのように変わり始めている
膝から腿に掛けて細かな皹が奔り、乾いた垢のようにボロリと肌が崩れ始め
明朗快活な性格を表したような明るい髪色は、毛先から消し炭のように白く染まっていく
烏の仮面越しから見える白く濁った眼は、右と左で別々の方向を世話しなく観察していた
『錆憑』
彼女と相対し、瀕死の状態……所謂『刃こぼれ』まで追い込まれた小夜左文字が放った言葉は
ここに来て二日目のソボロ助廣先生の授業で既に耳にしていた
『負の感情に囚われた巫剣が陥る暴走状態』を指すらしい
主な原因は、長い間手入れをされなかっただの、凶禍に惹かれただの、禍魂を身に取り込んでしまっただの……
まぁ俺はアホなんでよくわからなかったが、城和泉が錆憑になった理由は明白だ
(*゚ー゚)
椎名美琴。彼女の主に何か良からぬことが起きてしまった
こちとらSAN値ごっそり持ってかれるような陸軍大尉のミステリーハウスから逃れた所だってのに、エグい展開が続く
(;T)「クナイの予備は……」
時雨「打ち止め、だよ。そこに落ちてるのを拾う他無いね」
牽制の為に投擲した時雨のクナイは、城和泉の斜め後方数メートルに落ちている
ご機嫌な事に俺達は現在『丸腰』の状態で彼女と対峙しているのだ。詰んでね?
「ああああ……あああ……あるじあるじあるじあるじあああああ……」
城和泉は動かない。落としたコンタクトレンズでも探すかのように、地面を凝視している
ちょいと作戦を考える時間はありそうだ。それに、あれだけ派手に『火柱』を立ち上げたのだ。めいじ館の巫剣が来るのも時間の問題だろう
(;T)「足腰も立たねえ状態で何が出来るってんだ。俺らに任せとけ」
小夜左文字「それは貴方達だって……!!」
問答してる余裕はない。小夜のクソ長いマフラーを拝借し、やや強引に背負う
力なく抵抗をしたが、離れないように小夜と俺の身体をマフラーでしっかりと縛った所で、観念したかのように脱力した
( T)「ちょっと息苦しいだろうが、我慢してくれ。後、出来る限りしっかり掴まってろ。今は支えとく両の手が惜しい」
小夜左文字「くっ……この事は絶対、復讐帳に書くから……!!」
( T)「おーおー書け書け。無事に帰れたらな」
華奢で、軽い身体だ。艦娘にしろ巫剣にしろ常々恐れ入る
そんな身体のどこにバケモノを相手する力が備わってんだってな
時雨「作戦は?」
( T)「……」
目線を素早く流し、状況の確認をする。幸いな事に、この辺りの住人はとっとと逃げ太郎してくれたらしい
家屋は燃え始めているが、広い通りなので近づきさえしなければ焼け死ぬってこたぁ無いだろう
だが少し息苦しい。熱と煙が呼吸を阻害している。時雨は自前のハンカチを盗賊のように口元に巻いていた
( T)「……ひたっすら、時間を稼ぐ」
時雨「それしか無いよね……」
勝算があるとすれば、やはり援軍の到着しかない。俺達は『禍憑』を殺すことは出来るが、『錆憑』の治し方を知らない
小夜左文字も言っていた通り、『巫剣にしか祓えない』のならば、『餅は餅屋』だ。専門家を待つのが最善だろう
それまで俺達は、城和泉をこの場で食い止め、被害の拡大を防がねばならない
( T)「男は度胸、なんでも試してみるのさ」
「あ……ああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」
おっと、時間切れか。もうちょい稼げると嬉しかったんだが
( T)「お嬢さん方、覚悟はいいか?」
時雨「よくなくてもやるしかないじゃないか」
小夜左文字「不毛な質問ね……」
( T)「頼もしいこって……おっと!!」
足下が『チリ』と爆ぜ、俺と時雨は咄嗟に地面を蹴った
すぐさま立ち上る火柱。高熱と光に顔を顰める。ボーっと突っ立てりゃ人間BBQいっちょ上がりだった
「あァァァァ!!!!!!」
( T)「ッ!!」
最初の狙いは俺らか。手負いを抱えてる身から攻撃するとはわかってらっしゃる
火柱によって分断された時雨は此方に見向きもせずクナイの方向へ駆けだしていた。良い判断だ
構えもクソも無く、片手で袈裟に振り下ろされた刀をバックステップで躱す
小夜左文字「まd」
小夜の短い忠告よりも速く、地面を打った切っ先から『爆炎』が舞い上がる
反射的に両腕を交差させ、防御の姿勢を取るがこれは大火傷……
(;T)「……?」
する筈の不意打ちだったが、身体に感じる熱は炎天下のアスファルトに裸足を押し当てたかのような些細な物だった
ガードの隙間から前を見ると、そこには『半透明の赤い壁』が俺を炎から守ってくれている
小夜左文字「っ……世話の焼ける……!!」
俺の肩越しから片手を伸ばす小夜を見て察しがついた
(;T)「お前の巫魂能力か!!」
城和泉が炎を扱うように、巫剣は『巫魂』による超常の力を駆使する
小夜の場合、『防御壁』になるのだろう。今風の言い方をすれば『バリア』か
小夜左文字「さっさと離れて……!!」
(;T)「悪い、助かっ……」
一歩下がる、と見せかけて
(#T)「ったオラァ!!!!!!!!」
小夜左文字「バッ……!?」
防御壁ごと城和泉に向かってタックルをぶちかます
身長195cm、体重0.1tオーバーの大男が、160㎝あるかないかの少女を吹っ飛ばす様は褒められたものではないだろうが
こちとら絶賛命の危険中なのだ。四の五の言ってはいられない
防御壁は耐久値を超えたのか、薄氷のように砕け散り、光の粒子となって消えていった
「あああ……あああああああああ!!!!!」
筋肉を愛し筋肉に愛された男である俺のタックルなので、幾ら暴走状態であろうと骨身にはしっかり響いたらしい
地面を二度ほど転がり、素早く立ち直してはいるが『脚』に来ている。そこに
時雨「割と強めキック!!」
側面から誰の影響か知らんがクソダサい技名と共に放たれた時雨の蹴りが脇腹に刺さる
「ゴボッ!?」
今度は真横へと勢い良く転がった城和泉は、暖簾が燃え落ちる飲食店の引き戸に衝突した
時雨「弱いよ、城和泉!!!!!」
しっかりクナイを確保した時雨は、蹲り咳き込む城和泉に向かい吼える
時雨「いつもの調子はどうしたのさ!?僕に揶揄われては真っ赤になって追いかけてくる、あの時の威勢は!?」
時雨「錆憑かなんだか知らないけど、駄々起こして喚き散らしてるキミなんて相手してもこっちはちぃっとも楽しくないんだよ!!」
「……ハァ、し、g」
城和泉が、ここで初めて『時雨』を見た気がした。時雨は一歩近づき、畳みかけるように次の言葉で斬りつける
時雨「さっさと遊び甲斐のある真面目でお節介で怒りっぽい城和泉に戻って、僕を懲らしめてみなよ!!」
鬼気迫る、と言った具合か。他者に対してあれだけ熱っぽい時雨も珍しい
性格拗らせたバカの熱い友情パワーに不覚にも涙腺がちょいと緩み始める。やだ、歳とるとこれだから……
だが、『言葉』だけで解決するなら背中にいる小夜左文字はここまで追い込まれてはいない
(#T)「ボサッとすんな時雨ェ!!!!!」
時雨「!!」
俺の声で漸く『足下』に気が付いた時雨は真横へと跳躍
瞬間、またもや火柱が打ち上がった
時雨「あっつ、あつ!!クソッ!!少年漫画の真似事なんてするもんじゃないよ!!」
( T)「人生の教科書やぞ!!!!!!」
時雨「そういう話してるんじゃなくて!!!!!」
スカートの裾が掠めたのだろう。パタパタと叩き手早く鎮火をさせる
あいつの呼びかけの効果は、俺も僅かな期待をしていたが、トントン拍子でいかないのが人生の常だ
「あるじ……あるじあるじあるじあるじ縺ゅk縺倥≠繧九§縺ゅk縺倥≠繧九§!!!!!!!!!!!!」
困難が悪化していくのもまた然り
腿の一部、その下から肉の代わりに『赤錆』が覗く。全く分かりやすい危篤状態だよクソッタレ
( T)「……」
しかし、一度かち合って分かったこともある。城和泉は既にまともに戦える状態ではない
被害の規模や攻撃の派手さで見落としていたが、俺らが到着するまで『小夜左文字』と戦っていたのだ
結果を見れば小夜が押し切られる形ではあったが、無傷で済むとは考えづらい
それに、城和泉が『錆憑』に到るまでの空白の時間に『何事も無かった』とも思えない
主である若を喪失するまでに、接敵したと考えるのが筋だろう
つまり『連戦』を重ねた上で、城和泉は俺達を相手にしている
それでも尚、身体が動くのは禍魂による暴走状態故か。時間を稼ぐと言ったが、逆に危ういかもしれない
( T)「小夜、城和泉の猶予は?」
小夜左文字「このままだと、五分も持たない……」
いつも冷静沈着な小夜の声にも焦燥が籠る
「蛹?∩蜑イ繧……!!!!」
名状しがたい唸り声を上げ、城和泉の周りに炎が渦巻く
デカいのをぶっ放つつもりだろう。時雨は投擲の構えを取った
時雨「どうする?」
単調だが、重たく言い放たれた一言だ。時雨の頭には『いざ』という時が過ぎっているのだろう
そんな事態は当然避けたいが、時間と共に現実味は増すばかりだ。援軍の到着まで耐え切れないのならばいっそ……
小夜左文字「錆の侵攻は止められないけど、少なからず遅らせる事が出来る筈……」
有効
( T)「あの分かりやすい仮面を引き剥がせば?」
小夜左文字「わからない……けど、禍魂によって生成された物なら、あるいは……」
歯切れが悪い。だが可能性はある
( T)「さっきの壁はまだ作れるか?」
小夜左文字「三……いえ、二枚が限界ね……」
有効。後は俺の根性次第だ
( T)「時雨、チャンスは一度だ。『よく狙え』」
時雨「……いいねぇそのセリフ。ゾクゾクするよ」
風邪でもお召しになったのか知らんが寒気を感じたらしい時雨はクナイの刃を摘まみ持つ
青葉や夕立と違い能力値こそ平均だが、こいつは努力と『投擲の才能』で我が鎮守府の三位まで上り詰めたのだ
どっかの戦車道流派の言葉を借りるなら、『投げれば必中』と言ったところか
『溜め』は完了したらしい。燃える建物の火が城和泉の頭上でひと固まりとなり、大炎が重たい鎌首をもたげた
時雨はステップを踏み回避の予備動作に入る。俺は出来る限り身を低くし、突進の姿勢を取った
小夜左文字「ご注文は?」
( T)「二枚重ねろ」
小夜左文字「はぁ……これで死んだら、末代まで呪うから……」
( T)「そうか。多分俺で末代だから短くて済むぞ」
「辯?∴蟆ス縺阪m!!!!!!!」
なんてアホな会話をしてる間に、炎は大口を開けて俺達を飲み込こまんとうねり迫って来た
間髪入れず前方に先ほどより色の濃い壁が立ちはだかる。どこまで保つわからん。時間との勝負だ
(#T)「オッ……ラァ!!!!!」
小夜の『盾』を両手で押し、炎の中を全力で駆ける
壁は先ほど受けた熱したアスファルト程度の熱さではなく、明確に俺の掌を焼き始めている
小夜左文字「早くっ……!!」
背中の小夜が苦悶の声を上げたが、応えられそうにない。それどころか息継ぎ一つもできやしねえ
随分と『重たい』炎だ。さながら、ビニール傘で暴風雨に逆らって進むかのような圧力。だが
(#T)「ッ……!!!!!」
『筋肉』の方が強い(真理)
視界を埋めつくしていた大炎を強引に通り抜ける。同時に、壁が崩れ落ちた
「!?!?!??!??」
(#T)「城和泉ィィィ!!!!!!!」
丸焦げを想像していたのだろう。城和泉は分かりやすくたじろいた
しかし咄嗟に刀を振り上げ反撃に移っている。読み通りだ
(#T)「ふんぬ!!!!!」
言うまでも無いが、『次』を想定している者とそうでない者ではワンテンポの差が生じる
俺は当然、前者であった。振り下ろされる前に城和泉の手首を掴み
(#T)「左だァ!!」
柄頭が左を向くように、捻った
『スコン』
「縺弱<縺!!??」
気持ちの良い音と共に、城和泉の右手から刀がすっぽ抜ける
柄頭の真芯を見事に打ち抜いた『クナイ』が、頭上でクルクルと舞った
『大炎の突破』『予期せぬ方向からの武装解除』。城和泉が面食らうには十分なアクションだ
右手で首を掴み、一気に持ち上げる。火傷の痛みはこの際無視だ
(#T)「オッッッラァ!!!!!!」
慣性によりフワリと浮いた城和泉の身体を、今度は重力に乗せて地面へと叩きつけた
ご存知、『喉輪落とし』ことチョークスラムだ。女の子にこんなこと絶対すんなよ?
「?カ?橸セ趣スッ」
背中を強烈に打ち付けた城和泉は、湿った音と共に空気の塊を吐き出す
常人ならこれで一発KOだが、少女のナリでもやはり超人、耐久度が違う。意識はまだあった
「縺阪&縺セ!!!!!」
それどころか抵抗までしてきやがる。右腕に深々と爪を立ててきやがった
しかし放すわけにはいかない。叩きつけてダメなら今度は締め落とす他無い
(#T)「これ剥がすぞ小夜!!大丈夫かな!?なんか顔面剥がれたりしない!?」
小夜左文字「今更グダグダと心配しても無駄!!やるなら早く!!」
珍しく大声を張り上げられる。耳が五月蠅かった
しかし小夜の言う事も御尤もだ。俺に錆憑は治せない。だが、禍憑を、『禍魂』を潰すことは出来る
この仮面がその一部だと言うのなら、少なくとも『切除』の役割は果たせる。毒に犯された部位の肉を切り取るのと同じだ
(#T)「南無三!!」
神も仏も信じちゃいな……そう言えば最近マッスルの神を名乗る髪の無い神は見た気はするが
今ばかりはそういう類の存在に後を押して貰いたかった。そんな想いから出た掛け声と共に
「!?」
城和泉の顔面に張り付く悪趣味な仮面を左手で鷲掴みにした
瞬間、無数の黒い『蚯蚓』の形状をした禍魂が腕を這い登る
咄嗟に仮面から手を放そうとしたが、済んでのところで思いとどまった
これが『抵抗』であるならば、仮面の破壊は有効である証拠。『寄生』であるならば、城和泉に巣食う禍魂を引き受けられる
(#T)「来いオラァ!!」
「縺後≠縺ゅ≠縺ゅ≠!!!!!!」
手ごたえはある。仮面はメキメキ音を立て、徐々に凹んでいく
比例して蚯蚓も更に激しくのたうち回り、腕から肩、首を登っていった
(#T)「こん畜生が……さっさt」
そして頭に到達した瞬間、『バチッ』と目の前で火花が散った
( T)「」
テレビのチャンネルを切り替えたかのように、目の前の景色が移り変わる
.
「そして万が一、御華見衆と俺らが『衝突』なんて事故が起こった場合、行動に対する弁明をしてくれる人物が必要だ。聡明なお前なら、上手く取りまとめてくれるだろうよ」
厨房から俺の声が聞こえてくる。視界は自分の意思とは関係なくゆっくりと前に進み、そこを覗き込んだ
小夜左文字「……危ない橋よ。それは承知?」
( T)「わざわざ異世界まで来て、今更危険の一つ二つでたじろぐ俺らじゃねえよ」
小夜と会話をする『俺の姿』。自分を客観的に見るのなんて初めてだ
周りには時雨や夕立、天龍に秋雲が揃っている。独断で陸軍と接触する旨を伝えた時の出来事だ
小夜左文字「責任は一切負いかねるわ」
( T)「当たり前だ。むしろ、堂々と被害者ヅラして同情を誘え」
客観的。つまり俺ではない『第三者』からの視点。合点がいき始める
『ハリー・ポッター』でも似たような魔法があった。『憂いの篩』だ
記憶を保存し、追体験が出来る道具だ。作中でも重要な役割を担っている
小夜左文字「……めいじ館を、追い出されるかも」
( T)「そん時は……寂しいが、少し早いお別れだな」
つまり誰かが俺たちの会話を盗み聞いていた。そして―――
「……」
「……ッ」
『行動』を、起こした
.
腹部の衝撃で、視界が再び元に戻る。頼りのない浮遊感と先ほどまで掴んでいた筈の城和泉の『姿勢』を見るに
(;T)「ッ……!!」
『蹴り飛ばされた』らしい
(;T)「くッ……ソが!!」
背中の小夜を押しつぶすわけにはいかない。片手で地面を叩き、なんとか肩から落ちる
すぐさま立ち上がろうとしたが、身体が思うように動かない。禍魂の影響か、拒否反応を示すかのように痙攣している
小夜左文字「立ち上がって、早く!!」
(;T)「そう……してえけどっ……!!」
力は徐々に戻りつつあるものの、立ち上がるまで少し時間が欲しい
だが、それを待ってくれるかどうかは別問題だ
「あ、あああ……あr、あ、ああ!!!!」
完全破壊を狙ったが、仮面は若干の亀裂と凹みしか入らなかったらしい
それでもさっきよりはマシだ。少なくとも、声を『声』として認識できている
時雨「城いz」
「ああッ!!」
時雨がカバーに入ろうとしたが、取り囲むような炎の檻が立ち上り妨害をした
邪魔を入れずに始末する腹積もりか。刀も既に拾ってやがる
(;T)「万事休すか……ッ!!」
小夜だけでも逃がさなければ!!動け筋肉!!頑張れ!!やれば出来る子!!
「あrじ……kaえ……sE……」
(;T)「……」
『あるじかえせ』か。この暴走も一重に『若』の為
全く、幸せ者じゃねえか。若も城和泉も
(#T)「ッ……がァッ!!!!」
それを引き裂く原因を作ったのは、間違いなく俺だ。なら、何としても責任を取らねばならない
己の不甲斐なさへの怒りに、筋肉は応えた。『ボトリ』と身体から蚯蚓が落ち、狂い悶えた後に蒸発する
よし、立てる。ぎこちないが、身体も動く。充分だ
小夜左文字「貴方……」
(#T)「悪ぃな小夜……必ず帰してやるから、もうちょっとだけ付き合ってくれ」
刀相手に此方は丸腰。上等だ、筋肉にとって拳は最強の武器
構えを取り、たどたどしい足取りで近づく城和泉を―――
小夜左文字「お断りね……」
( T)「えっ、なんでそんな酷いこと言うの?」
艦娘と言い巫剣と言い、どうして格好をつけさせてくれないのか
小夜左文字「必要が無い、からよ……」
そう言って指さしたのは、『空』であった
炎の檻を突き破る、紫色の流星群が
「ぐギっ!?」
城和泉の振袖やスカートへと的確に突き刺さり、地面へと縫い付ける
よく見るとそれは黒い鳥の『羽根』であった。水銀燈かよ
小夜左文字「『時間稼ぎ』だけは、成功したみたい……」
小夜は安心したのかぐでりと身体を預ける。続けて頭上から黒き人影
ショートの銀髪に、エルフのように尖った耳。着物の帯に刀の柄を巻き付けた女の横顔は
(;T)「ビ……ビスマルク顔……!!」
ウチにいる腐女子拗らせたドイツ戦艦と、イラストレーター一緒とかなんかそういう感じだった
「ハァッ!!」
落下と同時に帯がうねり、縦に一閃。城和泉は防ぐ間もなく、俺があんだけ力入れても壊れなかった仮面が
「あ……」
両断され、軽い音を立てて地に落ちた
「……聞きたいことは山ほどあるが、一先ず自己紹介かの」
この声には聞き覚えがある。直接会ったことはないが、『カラス』を通じやりとりをした
小烏丸「妾は小烏丸。騒ぎを聞きつけ『みやこ屋』から馳せ参じた次第じゃ」
御華見衆伝令役、小烏丸であった
https://tenkahyakken.jp/character/?page=1
「各員、被害状況の確認!!及び消火活動に当たれ!!」
『みやこ屋』指揮官と思わしき女性と、その配下らしき者たちが慌ただしく駆ける足音
「提督!!死んだ!?」
時雨の声。第一声が『死んだ?』はねえだろ
小烏丸「フッ!!」
刀を横に鋭く薙ぐと、炎の檻が瞬く間に鎮火する
小烏丸「急げ阿音!!手遅れになるぞ!!」
∬;´_ゝ`)「はいはいっと……あら、初めまして」
(;T)「あ、はい、どうも」
みやこ屋の支部長で、女将の娘と聞いていたが……その面影が殆どない。巨躯じゃないし刃牙に出てきそうな顔もしてない
ウェーブの掛かった栗色の髪と、細く垂れ気味の目をした一見温和そうな普通の女性だ
腰に刀を差していなければ、買い物帰りの若妻にしか見えない
∬;´_ゝ`)「あっちゃー、心金一歩手前……こりゃじっくり手入れしないと治せそうに無いわ」
小烏丸「泣き言なんぞ聞いちゃおらぬぞ」
∬;´_ゝ`)「もー、わかってるってば。厳しいなぁ我が愛刀は」
ぼやきつつも、手早く応急処置に入る。手元がぼんやりと光り、城和泉の身体の按摩を始めた
小烏丸「さて……幸か不幸か、丁度よい所におったもんじゃの?異世界からの来訪者よ」
労いの言葉の一つくらいかけて貰いたかったが
代わりに飛んできたのは疑惑と叢雲並みの眼光だった。なんで余所行ってまであいつの影に怯えなきゃならないのだろうか
小烏丸「それに、小夜左文字まで引き連れておるとは。随分と仲良くなったのぉ?」
小夜左文字「!! お、降ろして……!!」
( T)「でもお前身体」
小夜左文字「城和泉ほどじゃない。いいから早く!!」
このままだと復讐帳が俺に関する予約で埋まってしまいそうだ
マフラーを解いて小夜をゆっくりと降ろす。瞬間、ガクリと崩れ落ちた身体を
時雨「よっと」
以外にも優しさを見せた時雨が支えた。明日はウ○コ降ってくるぞオイ
時雨「じゃあ放すね。はい」
小夜左文字「はっ、ぐぅ……!!」
とか思ってたらやっぱりバカはバカだった。支えを失った小夜はその場で尻餅を突く
小夜左文字「こっ、この……三つ編みクソ野郎……!!」
時雨「だって余計って言ったじゃないか」
小夜左文字「お前の首を折る……!!書いた……私は……復讐帳に……書いた……!!」
案外元気そうだな。さて
( T)「白状しなきゃならねえことがある」
小烏丸「ほぉ……?」
小烏丸の刀が揺らぐ。言葉を間違えれば俺の頭が筋肉とサヨナラバイバイしちまうだろう
小烏丸「……詳細は?」
( T)「陸軍との接触。この作戦の打ち合わせをウチの連中とそこにいる小夜としていたのを、城和泉がたまたま耳にしちまったんだろう」
( T)「結果、二人は先行して行動を起こし……御覧の通りの有様だ」
小烏丸「……得られたものはあったのじゃろうな?」
( T)「陸軍は完全に黒。主導は疑惑通り茂名大尉。奴らの目的は俺たちの世界の敵、『深海凄艦』を……」
一呼吸置いた。ここで信用を得ないと、俺たちも御華見衆も完全に『詰む』
( T)「特異型禍要柱を使いこの世界に呼び寄せ、使役する事だ」
小烏丸「深海凄艦……海より顕現し人に仇なす、艦の力を宿した怪物か……」
『厄介だ』と言いたげに、親指の爪を噛む小烏丸
禍憑だけでも手一杯なのだろう。俺が逆の立場でも頭を抱える深刻な事態だ
何せ奴らはデカくて硬い上に高火力の兵器を搭載している。いくら巫剣が超常の力を持つ剣の達人と言えども、『土俵』から違うのだ
小烏丸「して、『それ』を証明できる者は?」
俺の発言に対して、『御華見衆』側の証人はいるか?と聞かれれば
( T)「……」
首を横に振らざるを得ない。唯一の協力者の小夜は現場を目にしてはいないのだ
小烏丸「なれば、我々はお主らの発言を鵜呑みにするワケにはいかぬ」
( T)「だよな……」
だったら、今こそ『保険』の出番じゃねえか
小夜左文字「……はぁ、小烏丸」
小烏丸「なんじゃ小夜左文字。そもそもお主がきちんと手綱を引いていればこのような事態には……」
小夜左文字「『彼は禍魂の侵略を受け、それを退けた』」
小烏丸「!!」
嫌疑で鋭く細められた目が、カッと見開かれる。どうやら、クリティカルらしい
小烏丸「ま、誠か……?」
小夜左文字「それを一番近くで見たのは、私だもの……」
小夜は確かに、陸軍への情報を確かに出来る人物では無いが、城和泉暴走時に俺達が取った行動の『正当性』は主張できる
俺が茂名大尉に協力したのならば、敵対勢力となった御華見衆、ないし巫剣を『助ける』意味など無いし
わざわざ話が通じる、それも連中にとって有力な情報を持つであろう俺を、禍魂で城和泉のように暴走させる理由も無いからだ
小烏丸「……お主はどう考えておるのじゃ?」
半信半疑。もう一押し欲しい。せめて七割信三割疑くらいまで押し込みたい
ここからは小夜の交渉手腕次第だった
小夜左文字「……別に」
時雨「エリカさまいたいたたたたたたたたたた!!!!!」
( T)「今は黙ってろバカ」ギチギチギチギチ
小夜左文字「こんな面白集団に謀なんて高度な真似、出来ないと思うけど……?」
普通に泣きそうだった
案外あっさり小烏丸の険が取れる。この感じだと……
( T)「最初からそれほど疑っては無かったのか?」
小烏丸「勘違いするでないぞ。お主の迂闊な行動を許したワケではない。『悪い人間ではない』と評価した流石の母の顔を立てただけじゃ」
(;T)「面目ねえ……」
時雨「つまり、巡り巡って全て僕のお陰って事だよね。提督、早く平伏して?」
( T)「スノーマンの物まねしまーーーーーーーーすwwwwwwwここは寒いなぁwwwwwwwwwwww」
時雨「ひ!!!!れ!!!!!ふ!!!!せ!!!!!」ギチギチギチギチ
(;T)そ「オッフやめろ乳首は敏感なんだそんなキツく抓いたたたたたたた!!!!!」
∬´_ゝ`)「話に聞いていた通り賑やかなご一行ねぇ」
小烏丸「やれやれ、怒る気も失せるな……ともかく、一度『みやこ屋』の方n」
「全員、そこを動くな!!!!!!」
『だん』と響く銃声と連なる軍靴の音。険しい面構えと軍帽を揃え、『陸軍兵士』が戦列を整える
ここまで被害が広がれば、そりゃ軍も動くだろう。だが、俺にはそれが『待ってました』と言わんばかりの迎撃に見えた
ああ、なるほど。これで合点がいった。何故、茂名大尉は俺達をみすみす逃すような真似をしたのか
それは既に『陸軍が大義名分を以て御華見衆を糾弾する準備が整っていた』からだ
禍魂に囚われていたとは言え、この被害は巫剣である城和泉が齎したものであり
その事について第三者である俺達が『陸軍』の陰謀を主張しても信用性が無い。何がどうあれ実行犯は『城和泉』なのだから
( T)「小烏丸、阿音さん。怪我人連れて連中を煙に巻く事は出来るか?」
∬;´_ゝ`)「へ?そ、そりゃ、人間相手ならいくらでも……」
小烏丸「何を企んでおる?」
( T)「ここは俺が受け持つ。どの道、若を助け出さなきゃならねえんだ。アンタらは城和泉と小夜の治療と……出来たら、助っ人も派遣してくれたら助かる」
時雨「酷いなぁ提督。僕だけじゃ不十分だって言うの?」
( T)「お前も逃げるんだ」
時雨「は?」
阿音さんが連れてきた『みやこ屋』の巫剣やその組員は、一発触発に備えつつも静かに指示を待つ
その間にも陸軍は一発必中の距離をじりじりと詰めてくる。説得の時間は短い
時雨「……提督は僕に、城和泉と同じ目に遭えって言うの?」
( T)「テメーは今まで俺の何を見てきたんだよ」
時雨「……」
やや渋ったが、結局
時雨「高い塔で待ってなよ、『お姫様』」
( T)「白馬で駆け付けて来るのを期待しとくぜ、『王子様』」
我が『愛犬』は、珍しく言う事を聞いた
∬;´_ゝ`)「……総員退却!!」
小烏丸「ハァッ!!」
指示と同時に、小烏丸が燻る煙と砂埃を巻き上げる
それに乗じ、阿音さんは城和泉を、時雨は小夜を抱え上げて走り去る
小夜左文字「ッ……を」
( T)「なんて?」
去り際に小夜がなんか言ったが、連発する銃声と弾丸による風切り音にかき消された
(;T)そ「うおっ……!!」
遠慮なしに撃ってきやがったか。旧時代のライフル如きでこの無敵の筋肉を貫けるとは微塵たりとも
それこそいきなりキングダムが打ち切りになるくらい思っちゃいないが、流石に乳首か頭に当たると辛い
視界が悪くとも下手な鉄砲数撃ちゃ当たると言う。頭を抱え蹲り、出来る限り当たる面積を最小にして波紋防御……
(;T)「んっ?」
『キュン、キュン』と前面から弾ける音がする。俺の目の前で弾丸がひとりでに弾け、火花を散らしている
目を凝らして辛うじて見ることができたのは、今にも消え入りそうな『薄い壁』だった
(;T)「あいつ……」
余力を残していたのか、それとも振り絞ったのか、小夜は置き土産を残していた
全く、女の子におんぶにだっこで恥ずかしいったらねえ。この礼はここから先の働きと山盛りの甘味で返してやる
「ご報告します!!『めいじ館』並びに『みやこ屋』の包囲、完了致しました!!」
「奴らを一人も外に出すな!!やむを得ん場合は迫撃砲の使用も許可する!!」
仕事がお早いこって。迫撃砲如きで足止めできるんなら、禍憑は今頃そこら中に繁殖してるだろうよ
( T)「ハァ……」
「対象を一名確認!!」
煙も晴れ、ぽつねんと残された俺の事もようやく視認できたようで
丸腰の一般人相手に過剰なほどの人数と銃口が、俺を取り囲んだ
( T)「よう、アホ面並べてカツアゲか?悪いが懐が寒くてね。この人数じゃ一杯奢るのが関の山だ」
「両手を頭の後ろで組んで伏せろ!!」
( T)「はいはい……ウ○コ漏らせバーカ」
大人しく命令に従う。丸腰でもこの人数なら俺一人でも皆殺しに出来るが、それでは意味がない
一人の軍人が俺の後ろに回り込み、ヒヤリと冷たい手錠を嵌めた。筋肉があるので普通に千切れるが、それでは意味がない
( T)「俺の新鮮な身体目当てかよ。初めてなの……優しくしてぇん……」ハァン
「気持ち悪いな……黙らせろ!!」
( T)「ジョークじゃん……ガッ!?」
銃床でガツンと後頭部を殴られ、気絶した『フリ』をする
筋肉があるのでこの程度なら五千兆回殴られても気を失わない自信があるが、それでは意味がない
「よし、連れていけ。大尉殿がお待ちだ」
後でこいつら絶対殺すという固い決意を胸に、俺は一人奴らの本拠地へと連れていかれるのであった―――
―――
―
俺たちの時代じゃ、同盟国の軍用基地の移設反対とやらでプロ市民の皆様が大いなるご活躍(皮肉)をされているが
明治だと普通に陸軍駐屯地がその辺におっ建っているらしい。その内部にお邪魔してます。ここなんか臭い。便所コウロギとか好きそうな環境
なんかリラックスできそうにない硬い椅子に座らされ、両手足は革のベルトで固定された
ハイター博士に拉致されてムカデ人間にされそうになることを常日頃から想定しているのでこの程度なら普通に千切れるが、それでは意味がない
( T)そ「うおっ、眩しッ!!」
顔に被せられていた麻袋が取り除かれ、強烈な光に目を眩ませる。絶対陸軍殺そうと思った
「灯りを落とせ。客人がお困りだ」
「はっ!!」
『おせーよもっと早くやれよボケ殺すぞ命乞いしても殺す』と言いそうになったのを咄嗟に堪える
何度か瞬きを繰り返して視界を慣らす。狭苦しい部屋に、机一つを隔てて
( ´∀`)「お早い再会ですね」
渦中の陸軍大尉がふんぞり返って座っていた
( T)「くたばってなかったのか。てっきり俺はナオルヨくんの爆発で肉片になったもんかと」
( ´∀`)「いやいや、驚きましたよ。あの小さな手投げ弾であれほどの威力を見せるとは。未来とはかくも驚愕に満ちていますね」
( T)「はーーーーーー……クッソどうでもいいわ。おい、そこの殴ったら秒で死にそうなクソザコ軍人共」
部屋の隅で待機していた数人の軍人が一斉に顔を顰める
事実を言ったまでなのに何を怒ってるのだろうか?乳酸菌取ってないのだろうか?
( ´∀`)「くれてやりなさい」
その内の一人が滅茶苦茶不服そうに胸ポケットからタバコの箱を取り出す
差し出された吸い口を咥えると、マッチを擦り差し出してくる。その最中も人の顔を不快なものでも見るような目を向けてきた
タバコの礼として半殺しで済ませてやろうと思ったけどやっぱり殺そうと胸に誓った
( T)「フゥー……で、善良な一般市民拘束してこれから何を始めようってんだ?」
このタバコクッソ不味い。しかも煙が目に染みる。かっこつけて要求なんてしなきゃよかった
( ´∀`)「手荒なもてなしをお許しください。何せ、貴方は『巫剣』が起こした未曾有の大火事の現場に偶然居合わせためいじ館関係者ですので」
( T)「ほぉーーーーーーーーーーーーーーーー???????????偶然、ねぇ~~~~~~~~~~??????」
( ´∀`)「処分は免れないことでしょう。死者こそ居ないものの、家屋、家財焼失による被害総額は計り知れません」
( T)「へぇーーーーーーーーーーーーー?????所で、手下のボンクラ共は城和泉の身柄を確保出来たんですかねーーーーーーー?????」
( ´∀`)「……果報は寝て待て、ですよ」
クソ憎たらしい微笑みが、若干だが歪んだ。煽りは通用するらしい
( ´∀`)「本題に戻りましょう。このままでは貴方はめいじ館関係者として最良でも禁固刑、最悪の場合死刑に処されます」
( T)「灰皿あるか?」
( ´∀`)「ですが本来、我々の手違いで呼び込んでしまった貴方を裁くのは心苦しい……」
( T)「床でいいや。ペッ」
( ´∀`)「そこで、一度は断られた話ではありますが……此方の手引きでお帰り頂けませんか?」
( T)「喉が渇いたんだけどここは客に対してお茶の一つも出さへんのか?」
(;´∀`)「……」
眠いのかなんか知らんが眉間を指で押さえた。眠いなら帰って家で寝ればいいのに
( T)「ちゃんと具体的な指示出せよお前と部下は長年連れ添った夫婦オゴッ!?」
背後から顎を両手で掴まれ、強制的に上を向かされる。こいつは首を反対方向に捻って殺そう
しかしこの力、常人のものではない。首の筋肉と骨がミシリと軋む
(;T)「カッ……スーパーソルジャー計画にでも、携わって……!!」
俺の顔を覗き込む、坊主頭の厳つい男。その目は『白く濁っていた』
錆憑になりかけた城和泉のそれよりも、更に深く、濃く
(;T)「てめぇ……!!」
ここに来て二日目。禍憑が人質を取って立てこもったあの日
菊さんはこう言った。『禍魂の厄介な所は、憑りつきさえすれば人も物も禍憑に変える』と
( ´∀`)「禍魂とは実に便利なモノでしてね。我が精鋭達もご覧の通り強靭に育ちました」
今度は別の兵士が、俺の口に『漏斗』を突っ込んだ
( ´∀`)「殺すことを躊躇わず持久力に優れ、死を恐れない無敵の兵士。貴方も指揮官……『提督』という立場ならわかるでしょう?」
盆に乗せられ運ばれてきたのは、ガラスの水差しになみなみと入った『赤黒い液体』
その中で、城和泉の身体から這い上がって来たのと同じ、あの『蚯蚓』がのたうち回っている
( ´∀`)「戦争に置いて、『使い勝手の良い駒』ほど便利なものはないと」
( ´∀`)「歴史は間違いなく変わりますよ。来るべき露西亜との戦争は、我が帝国の完膚なきまでの勝利に終わるでしょう」
(;T)そ「ゴッ、ゴボッガァ、ゴホォ!!!」
『ふざけんな』と悪態をつく間もなく、粘性のある液体が口の中に注がれた
舌に突き刺さる強烈な甘みが、食道を焼き、胃に落とし込まれていく
( ´∀`)「でもまぁ、ちょうど良い『素体』と、『人質』としても使えそうですので、有効に活用させてもらいますよ」
(;T)「ゴッ、ゴッ……」
体内へダイレクトに流し込まれたシロップタイプの『桜禍糖』は、真っ先に抵抗する力を素早く奪った
続けて湧き上がる浮遊感と多幸感。拷問と代わり無い行為の真っ最中にも関わらず、心地よい眠気すら襲ってくる
( ´∀`)「どうですか、桜禍糖の効果は?貴方の望む幸せな夢を見せる魔法の砂糖ですよ?」
(;T)「……」
( ´∀`)「ただ……覚めた頃には地獄の苦しみを味わう諸刃の剣ですがね。それまで、良い夢を」
人は苦痛よりも、快楽に耐えることが出来ないと聞く。正に今がそんな状況だった
全身の力が、己の意思と関係なく抜けていく。漏斗が抜き取られたが、口に残る甘みを吐き出すことすら出来ない
春の陽気に誘われて、うたた寝に身を任すような心地よさの中で
( T)「」
俺は、幸せな夢とやらへと堕ちて行った―――
.
.
.
.
……いや
(#T)「話とちゃうやんけーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」ガバッ!!
(;゚д゚ )そ「!?」
(#T)「なん……やねん今の夢ェ!!!!!!ガリガリのクソブサイクがチ○コほっぽり出して走り回った後にチ○コ千切れて飛んでっ……ハァァァァァ!!!!??????」
(#T)「え!!!!!!?????あれが俺の望む幸せな夢なの!!!!???どうなってんの俺の深層心理!?バグってんの!?俺が知らないだけで脳筋ってそういう作用あんの!?へぇーーーーーー!!!!!知らんかったーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」
(#T)「ンンンンンンンーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!アホかーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!」ウソダドンドコドーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!!!!!!
(;゚д゚ )「お、おい……」
(#T)・'.。゜「おろろろろげっぼぼぼぼぼおおおごぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!」ビチャビチャビチャビチャビチャビチャ!!!!!!!!!
(;゚д゚ )そ「うわっ!?」
( T)そ「はっ」
(;゚д゚ )「……」ポカーン
( T)「……」
(;゚д゚ )「……」
( T) グチョ……
( T)「ふ……拭くもんありまゲロッポ」デロォ
(;゚д゚ )「て、手ぬぐいで良ければ……ああ、もう返さなくても、いい……」
これならもう脱いだ方がいいやってなったので結局脱いだ。露わになる俺のバスト。間違いなくサービスシーンだった
足下に広がったゲロは血と見間違えんばかりの赤黒さ。その中で蚯蚓がピチピチと蠢き、そして蒸発していく
口の中は相変わらず甘ったるく、その上ゲロの臭いまで残っているもんだから控えめに言っても最悪だった
( T)「どうも。返すよ」
(;゚д゚ )「いいと言っているだろう!!」
( T)「遠慮すんなって。ほれ」
そんな臭いものを拭いた手拭いを、男の顔元目がけて放り投げる
(;゚д゚ )そ「汚っ……」
払いのけようとした右手首を掴み、捻りながら背中に回る
(;゚д゚ )そ「な……ぐはっ!?」
身体ごと壁に押し込み、受け身を取ろうとした左手首も掴んで拘束した
( T)「美味しい『お茶』の後にルーム・サービスとは恐れ入るな。ええ、三浦中尉殿?」
(;゚д゚ )「何を……ぐぅッ!!」
極まった右腕を軽く上げてやると、くぐもった悲鳴が漏れる
( T)「右腕が惜しけりゃ余計なお喋りはやめろ……この通り寝起きが最悪なもんで苛立ってんだこっちは……」
(;-д゚ )「……」
( T)「自己紹介は必要か?じゃあこれだけは言っておく、『めいじ館の者だ』。お宅らの商売敵のな」
(;-д゚ )「欲しいのは……謝罪か……?先日は部下が失礼をした……」
( T)「オーッホホ、ジョークのセンスは一流だが、察しは悪いようだな。まぁ、機会があれば夕立と菊さんに直接言えや」
燭台の短い蝋燭に灯った火が揺らいだ。窓は無いが、鉄扉の覗き窓から僅かな隙間風が吹き込んでいるのだろう
さて問題は堅牢な造りで肌寒く湿った上にゲロの臭い爽やかなこの牢屋で、何故陸軍将校も一緒に放り込まれているのか?
(;-д゚ )「……あのクソ野郎と内通を謀ったらしいな」
( T)「上官をクソ野郎呼ばわりか。こんな形で無けりゃ俺達結構良い友人になれたかもな?」
(;-д゚ )「ハハ、そうかも知れないな……『考えることは』私も同じだ」
( T)「……めいじ館と内通を?」
(;-д゚ )「ああ、流石支部長殿とは知らぬ仲ではない……互いに連携して着々と茂名糾弾の準備を進めていたが……詰めが甘かった……」
( T)「……」
だとすると表立って動いていた若と城和泉はブラフだったワケだ。この男の話を『信じるのならば』
( T)「そんで、それを証明できる者は?」
(;-д゚ )「彼女のみだ……御華見衆側で誰を動かしていたのかは、俺も知らん……」
( T)「……」
ここまで似た境遇だと、他人事とは思えなくなってくるな
確かに証明は出来ないだろうが、こいつの顔には『青痣』がついている
もちろん俺がつけたものじゃない。俺ならこの程度じゃ済まさない
身バレして拘束、拷問をされ投獄……辺りが妥当だろう。ただ――――
( T)「若の居場所はわかるか?」
(;゚д゚ )「椎名くんか?」
( T)「ああ。行方知らずだが殺されたとは思えない」
事実、あいつに『お熱』らしい巫剣に茂名大尉がいた館で出会ったのだ
めいじ館の失脚と若の身柄。目的は違えど達成方法の道筋は似通っている
( T)「案内は?」
(;゚д゚ )「出来る、が……困難な道のりと思え」
( T)「おだやかな道とイバラの道の二通りの道があるとすればイバラの道を選べとアタル兄さんに言われたのでね」
(;゚д゚ )「そ、そうか……良い兄を持ったのだな……」
( T)「……ハァ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!」
(;゚д゚ )そ「なんだ!?何か気に障ったのか!?」
ネタの通じない時代はやりにくいと感じた俺は、拘束を解くことにした
幾らか『疑惑』は残っているが、折角の協力者をここでふいにするのも惜しい
(;゚д゚ )「きょ、兄弟仲が良くないのか?」
( T)「もうその話はええわボケ」
錯乱してるのかそもそも天然なのかわからんが、滑ったギャグの解説をしつこく求められているようで地味にイラつく
(;゚д゚ )「す、すまない……しかし、案内を買って出たのは良いが、そもそもここから出られる保証は……」
( T)「筋肉が何のためにあるのか知らないのか?」
(;゚д゚ )「壊す気……い、いや、そうか……桜禍糖で頭を……」
( T)「可笑しくない。常時まとも」
俺の場合だと『筋肉』で全ての説明が片付くが、軍人とは言え一般の枠を出ていないクソザコ筋肉の三浦はそうもいかない
( T)「アンタはどうなんだ?」
( ゚д゚ )「……」
( T)「……?」
( ゚д゚ )「……」
( T)「もしもし?もしもーし?」
(;゚д゚ )「きょ、兄弟仲が良くないのか?」
( T)「いやその話もう終わった」
あ、ダメそうだわ。お脳やられてるわこれ
( T)「桜禍糖を投与されたのかって話」
(;゚д゚ )「あ、ああ……私も無理やりな……もっとも、すぐに吐き出したが」
( T)「……俺は頭可笑しくなった中毒者を見たことが無いが、どれもそんな感じになるんか?」
(;゚д゚ )「様々だな……重篤者は発狂で死ぬこともあるし、軽度であるならば……記憶障害や幻覚、幻聴が多い」
( T)「ふむ……依存性は禍魂由来の効果か?」
(;゚д゚ )「みたいだな……そこまで『濃い』桜禍糖を流し込まれて会話出来ているのが信じがたい。だがやはり脳は……」
( T)「お前さっきからちょくちょく失礼だな」
つまり連中は禍魂を握りつぶせる俺の中に禍魂を注ぎ込んだって事か
魚を陸に揚げるどころか熱した鉄板の上に落としたようなもんだな
( ゚д゚ )「まともなら『鉄扉を破る』なんて発想は出てこないさ……残念ながら我々は、この狭く冷たく臭い牢で、発狂するのを待つばかり……」
そう言って三浦は壁を背にズルズルと座り込んだ。こいつ遠回しに俺が吐いたのを責めやがった
今ここでマッチョの神髄見せてやろうかとも思ったが、騒ぎを起こすのも考え物だ
第一の目的は『若の救出』であり、陸軍の殲滅はその次だ。暴れまわるのは身柄を確保してからでないと
( T)「所で、俺がここに放り込まれてからどれくらい経つ?」
( ゚д゚ )「蝋燭の減り具合から言って、二、三時間ほどだな」
茂名と遭遇したのが零時回った頃。駐屯地に運び込まれたのがそこから一時間とすると、今は夜明け前か
香取も言っていたな。『夜明け前って一番暗い』と。しかも唐突に呟くもんだから結構ゾッとした。俺死ぬんちゃうかと
『忍び込む』には、絶好の時間ってワケだ
片隅に置かれたベンチと見間違えんばかりの小さなベッドに身を預ける
汚い毛布が敷かれているだけの固いそれは、お世辞にも『寝心地が良い』とは言えなかった
( ゚д゚ )「見張りが来るのを期待しているか?残念ながら開くのは覗き窓と、食事を差し入れる為の戸だけだ。子供一人通り抜けられはしない」
( T)「そうかよ……こちとら生きた非常識と暮らしてるもんで、まともな思考ってのが麻痺しちまってな」
( ゚д゚ )「そうか……」
( T)「……」
( ゚д゚ )「……」
( T)「……」
( ゚д゚ )「……」
( T)「……」
なんか空気重い
( T)「……」
居づらい
( ゚д゚ )「……」
( T)「またトリップしてんぞ三浦中尉」
(;゚д゚ )そ「はっ!?な、呼んだか?」
( T)「アンタのスパイ行為はどれほど成果を挙げたかって話だ」
(;゚д゚ )「あ、ああ、情報の共有か……いいだろう。ここまで来れば一蓮托生だ」
どうにもリラックス出来なかったので、起き上がって中尉に向き直る
頭の靄がまだ取れないのか、親指の関節で額をゴツゴツと叩いていた
(;゚д゚ )「悪いが、質問をしてくれたら助かる。今は話を上手く纏められる自信がない」
( T)「ふむ、そっちの方がやり易いな。じゃあ一つ目。『特異型禍要柱の情報は誰から与えられたか』?」
(;゚д゚ )「『北谷菜切』、という巫剣だ。我々陸軍も、御華見衆から要注意人物として知らされていた人物……いや、刀か」
( T)「売り文句は『巫剣を凌駕する未知の戦力の提供』か?」
(;゚д゚ )「だろうな……加えて、禍魂を使った実験の研究成果も提出したらしい」
( T)「詳細は?」
(;゚д゚ )「動物、植物、物、人……ありとあらゆる『被験者』を使った禍憑の生成。これを更に改良させ、特異型から現れた対象の操作を論理的に可能とした物だ」
( T)「それには大量の禍魂を……?」
(;゚д゚ )「当然、『必要とする』。対象が大きければ、それだけの量が必要となる」
( T)「それを集めるために陸軍は桜禍糖を……?」
(;-д- )「ああ、流通させてしまった。過去に桜禍糖が流通した際に、陸軍も捜査協力をしたからな……目の届かぬ所で製造法を入手し、極秘に管理していたのだろう」
情報提供をした北谷菜切の目的は『若』と見て間違いないだろう。いや、それにしても男一人捕まえる為にだけにドエライもんを用意したな。やっぱり女って怖ぇ
( T)「だが手違いは起こった。それが俺達だな?」
( ゚д゚ )「そうだ。巫剣と同じく禍憑を祓える存在……彼女達をなんと呼んでいる?」
( T)「メスガキ」
( ゚д゚ )「そうか。メスガキの……」
( T)「いやそのまま話進めんなよ困っちゃうだろうが。艦娘だ艦娘」
( ゚д゚ )「メスガキが脅威として現れてしまった。元々保守的だった茂名の事だ。出来れば穏便に帰って貰いたかったのだろう」
ヤク中と初めてお喋りするけどこんな会話し辛い連中なのかよ迂闊にジョークも言えねーじゃねーか
( T)「保守的にしては思い切った決断だけどな。俺なら信じられねえよ。どこの馬の骨ともわからんクソアマの与太話なんざ」
( ゚д゚ )「誰しも欲はある」
( T)「ああ……どっちにしろ、桜禍糖の利益は見込めていたのか」
目先の餌に飛びつく薄汚さってのは、人間の性か
どの時代、どの世界でもその辺りは共通らしい。世界平和なんて訪れないワケだよ全く
( T)「そんで、茂名は欲の行く先を私腹から権力へと鞍替えした……ロシア、アメリカを手中に収める為に圧倒的兵力の増強を企み始めた」
( ゚д゚ )「その通りだ。未知の戦力は元より、茂名は兵卒に桜禍糖を与え、忠実かつ冷酷な傀儡を作り上げた。あれはもう人ではない……」
( T)「……」
( ゚д゚ )「!!」
( T)「どうした?」
( ゚д゚ )「シッ……聞こえるか?足音だ」
耳をすませば(名作)、石畳を叩く複数の足音。幻聴の類ではなさそうだ
( ゚д゚ )「正確にはわからん。幻聴の可能性も否定できないからな」
( T)「確実に言えることは?」
( ゚д゚ )「一日二回、食事と灯りを差し入れるのと……その時の人数は、恐らく一人」
( T)「……おいおい、意外と早く訪れたぞ」
( ゚д゚ )「は?」
( T)「『扉が独りでに開く』タイミングがな」
(;゚д゚ )「はっ……?」
(;゚д゚ )「そんな事、言ったか……?」
( T)「もう黙っててくんないかなぁ?」
俺が連れ去られて数時間、時雨がめいじ館に戻ってアホなりに事情を説明して助っ人を寄越すには十分な時間だ
むしろ遅いくらいだと思う。もっとサッサと来いよこちとらお姫様だぞしかも今おっぱい全開だぞR-18タグ付いちゃうぞ
( T)「雪だるまつくーろー」ドンドンドンドンドン!!!!!!!!!
(;゚д゚ )「居場所の知らせ方が雑な上になん……なんだその歌!?」
( T)「世界一有名なネズミがいる会社のアニメーションだ。因みに二番目に有名なネズミは日本原産だぞ」
これならウチの連中にも伝わるし、もしも陸軍ならただラリってるだけと思うだろう
もしかしたらウチの連中にもラリってると思われるかもしれない
<あs……ラリってる……
<ほ……ぜtt……ラリってる……
ほらな!!!!!!!!!!!!!!!!!『ラリってる』だけめっちゃハッキリ聞こえたもんな!!!!!!!!!!!!!!!!!!
(;゚д゚ )「し……忍び込んだのか?」
( T)「いやもしかしたら全員ぶっ殺したかもしれない」
(;゚д゚ )「本気で言ってるんじゃないよな?」
( T)「少なくとも今来た内の一人はやりかねない」
<提督さんご無事ですか!!!!!?????
( T)「えっ」
(;゚д゚ )「声が大きい!!」
そしてもう一人、意外な人物の声が上がる
<提督さん救出部隊に抜擢された抜丸、参上しました!!!!!!!!ええい!!!!!!!
扉<ゴッダァン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
( T)そ ビクッ
(;゚д゚ )そ ビクッ
えっ何?何したの?どうしたの?俺は本当にラリってないの?
<痛……痛いです……
<無理だっつったろ。めいじ館の壁とは違うんだぜ?
( T)「抜丸お前もしかして体当たりで扉ぶち抜こうとした?」
いやわかるんだよ。抜丸はいつも一生懸命でやる気に溢れるいい子だって
でもなんでこのタイミングでその子連れてきたんだよ。騒々しいとかそういうレベルじゃねえぞ
『カチャリ』と鍵が解かれ
秋雲「ラリ……天龍ちゃんやっぱラリってたわ!!手遅れ……クッサ!!」バァン!!
顔を覗かせた秋雲はすぐさま扉を閉め、鍵を掛けた
( T)「秋雲、オイ、秋雲オイコラ」
<いやもうダメだわこれ!!なんか今チラッとみたけど臭い密室で男二人、しかも提督半裸だったからこれ確実にキメセク案件だわ!!全ッ然捗らないヤツ!!
<なんだよ俺達お邪魔じゃねーか。帰るかもう
( T)「お前らふざけんなよ開けろコラ今すぐ半殺しにしてやる」
<わ……わたくし、何かご無礼を……?
( T)「いや違うんだよお前は何も悪くないんだよ来てくれてありがとうな抜丸とりあえずここ開けて?頼むから」
秋雲「しゃーないなー。これだからホモは……」ガチャ
今度は容赦なく秋雲の胸倉と頭を掴み
(#T)「これが俺の吐いたヤクたっぷりのゲロだ顔洗えオルルルァン!!!!!!!!!」
秋雲「オギャーーーーーーーーーーーーーガチ汚ぶtクッサオゥエッ!!!!!!!!!助けて天龍ちゃん抜丸ちゃん!!!!!!!!!」
制裁を与えた。抵抗すんなオラお前もヤク中にしてやる
天龍「やべえ逃げるぞ抜丸」ダッ!!
抜丸「脱出ですね!!了解です!!」ダッ!!
(#T)「逃げんなオルルルァン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
―――
―
秋雲「冗談じゃん……ほら、アレじゃん……提督元気かなーテストじゃん……余所の鎮守府だってやってんじゃん……」
( T)「聞いたことねえよ」
兎にも角にも、俺達は臭い部屋から出ることが出来た。普通に扉ぶっ壊して出ればよかったって思う
しかし、普段のノリで大騒ぎしたにも関わらず、陸軍兵士は確認に来ない。本当に扉ぶっ壊してサッサと出ればよかった
天龍「探し出すのに苦労したぜ……その辺の陸軍ぶっ殺した後に変装して忍び込んで時々恫喝しては情報を得てぶっ殺して見張りぶっ殺して……」
( T)「お前のその邪悪極まりない顔面に苦労の色一切見えないけどな????」
追剥(特技)でも行ったのだろう。天龍と秋雲は兵卒の軍服に身を包んでいる
天龍は近接艤装である自前の刀、秋雲は陽炎型共通近接装備であるナイフを得物として吊り下げていた
対して抜丸は忍装束だった。何の冗談なんだろう
抜丸「隠密任務の際に着用するこの装束と小道具が役に立ちました!!ふんす!!」フンス
( T)「そう……今そこの怖いお姉さんが三回くらい『ぶっ殺して』って言ったのはめいじ館的に大丈夫なの?」
抜丸「残念ながら出会った陸軍さん達は禍魂に犯されていて、既に……」
禍憑化してたってワケか。抜丸のハツラツとした表情が一変して暗く落ち込む
秋雲「スニーキングミッションってのも楽しくてグッドだったけどねー」
天龍「お次は殲滅戦だろ?俺はこういうのを求めて同行したんだよ」
それに比べてウチのわんぱく共はホンマ……
( T)「あっ」
( ゚д゚ )「……」
( T)「中尉」
(;゚д゚ )そ「はっ!?な、なんだ!?誰だ貴様ら!!」
天龍「頭大丈夫かこいつ?」
( T)「ううん、駄目」
(;゚д゚ )「めいじ館の……そう、そうか……流石殿が……」
抜丸はビッと敬礼を行い、それを見た三浦中尉は安堵からか溜息を吐いた
これで一応、女将と三浦の繋がりが証明できたことになる
抜丸「お二人とも、歩けますか?お怪我の程は……?」
( T)「ちょっと火傷したのと、後は擦り傷だな。俺は大したことねえ」
(;゚д゚ )「私は多少手ひどく痛めつけられたが……行動自体は支障なく行える。ただ、桜禍糖の副作用で諸君らに迷惑を掛けると思う」
抜丸「そ……そうですか……桜禍糖を……提督さんは?」
( T)「全部吐いた(し筋肉がある)から平気」
抜丸「吐い……?」
天龍「よし抜丸、頭で考えるな。とりあえず納得しとけ。『これはそういう生き物なんだ』ってな」
( T)「助かる」
天龍「口を開くなゲロ臭ぇ」
シンプルかつ的確に心を抉る暴言が飛んできたが、今は黙ってもいられない
天龍「城和泉並びに小夜はみやこ屋にて保護。現在治療中。二人とも大分ギリギリだったみてえだが、大事には到らないんだとよ」
( T)「何よりだ。バカは?」
秋雲「隠し通路からめいじ館に帰って来たんだけど、急ぎすぎて陸軍の包囲網力業でぶち抜こうとしてらしいよー」
(;T)「……まぁ帰れてなかったらお前ら今頃ここにはいねえだろうしな」
秋雲「うーん、十中八九めいじ館前が血に染まってただろうねぇ」
天龍「俺はそれでも良かったがな」
抜丸「良くありません!!明日から茶房が営業出来なくなってしまいます!!」
( T)「で、この子は?」
天龍「女将と陸軍内協力者とのパイプ役ってとこだな。抜けてるとこは兎も角、身軽さと脚力はめいじ館一だっつーし、女将直々の任命だ」
抜丸「うう……抜丸、抜けてません……」
( T)「この後のプランは?」
抜丸「あ、はい。お母さんが言うに、『合流後は内部事情をある程度理解しているであろう二人の指示に従え』と!!」
三浦の顔を見る。トリップはしてないようだ。神妙な顔つきが更に険しいものに変わっていく
投げやりだが、うむ、うん、任せて貰えるのはありがたい。若の救出にせよ、『信用』という点にせよ
( T)「つまり現状、九人の戦力と……対し、陸軍兵は?」
(;゚д゚ )「在中戦力は一個中隊あたりだが……禍魂による強化を換算すれば実戦力は数倍に跳ね上がるぞ」
( T)「あー……中隊一つにつき二百人ほどで……まぁ少なく見積もっても強化で二倍?でも四百人規模?単純な戦力差五十倍近く?」
天龍「待てよ、強化って所謂『禍憑化』だろ?」
(;゚д゚ )「まぁ……そうだが……」
天龍「さっき何人かぶった斬ったが、大したこと無かったぜ?」
( ゚д゚ )「は?」
( T)「お前の見解は?」
天龍「人の形した奴だけなら、攻略は大したことねえよ」
(;゚д゚ )「待て待て、二百人だぞ!?強化を抜きにしても約二十二倍差だ!!つまり、一人頭二十二人を相手に……」
天龍「そんだけかよ。夕立いらねーんじゃねーの?」
秋雲「もー、サクッと殺ってサクっと帰ろうよー。眠いんだよねーこっちは」
(;゚д゚ )「あ……な……?」
常識で物を語る三浦は金魚のように口をパクつかせる
まぁ実際、『ここにきて初めて相対した禍憑』レベルの相手なら一人二十二体程度、ウチなら大したことは無い
夕立と待機してるめいじ館のメンバーもそれは同じだろう。菊さんはあの時、三十越えの敵を前に『大した数じゃない』と言ったのだから
だが、天龍が言った通り、それは『人の形をした奴』に限る
茂名との会話の中で、『数は少ない』『ヒト型はいない』辺りは推理出来た
当然、通常の非ヒト型の深海棲艦なんざ俺でも殺せる程度のザコだ。だがそこに『禍魂』を加えたらどうなるか?
人間ですらある程度の強化を施せる上に、奴らは『性質』が似ている
通常ならば『+』で終わるはずの計算が、『×』になる可能性も無くはないのだ
( T)「時雨の艤装は?」
天龍「持ち出すのにちょいと手間取りそうでな。下手に包囲網を刺激すりゃ民間に被害が及ぶかもしれねーっつって、慎重になってる」
( T)「だろうな……」
唯でさえ城和泉の暴走で、民間人の緊張と不安は膨らんでいるはずだ
そこに超兵器搭載したバカが陸軍と立ち回りながら走り回れば、混乱は免れない
御華見衆は、禍憑から人々を『守る』組織なのだ。『殲滅』が優先の俺らとは違い、活動に対する被害を最小限に留めなければならない
( T)「しゃあねえ。最近は自分でなんとかするお姫様も増えてんだ。いっちょ王子様抜きで悪い魔女ぶっ殺すか」
秋雲「アンタお姫様から一番遠い生き物じゃん」
( T)「は?????ディズニープリンセスと並んでも違和感ねーだろーが」
秋雲「ヴィランズと並んでも浮く」
抜丸「あの!!すみません皆さん!!」
( T)「ん?何?」
抜丸「禍憑、発生しています!!」
( T)「えっ?」
「ヴォォォ……」
( T)そ「えっ、やだ……静かにスッって出てきたから全然わからんかった……」
今は抜丸が扉を抑えなんとか押し留めているが、隙間からいくつもの汚い腕がねじ込まれている。いや数多い多い多い
(#T)「だらぁ!!!!!!」
抜丸「わっ!?」
扉を思いっきり蹴って無理矢理閉める。ねじ込まれた腕は切断され、ボタボタと地面に落ちた
すかさず秋雲が鍵を掛けて閉じ込める。中からはうめき声と、鉄扉を強烈に叩く打撃音が響いた
( T)「鍵はどこで?」
秋雲「この秋雲様にかかりゃスリなんてベイビー・サブミッションよぉ。他にも色々あるわよぉ?」
ポケットからあふれ出す鍵、鍵、鍵、財布、金品、よくわからん彫刻
被害総額数億円を叩き出した鎮守府きっての大犯罪者はいまだ健在だった
結果的には助かったが帰ったら不知火ともう一度指導する必要があると強く思った
抜丸「も、もうわたくし達が潜入したのがバレたのでしょうか!?抜かりなく行動していたと言うのに、何故!?」
( T)「いやここでドンドカドンドンやってたらそら気づくわ」
(;゚д゚ )「一網打尽にする為に誘い込まれてしまったのではないのか……?」
抜丸「ぬ……抜かりましたーーーーーーー!!!!!」
( T)「キミさっきから声デカいな」
天龍「そうと決まればとっとと大暴れと行こうぜ」
(;゚д゚ )そ「椎名君の安否は!?」
天龍「男なんだから手前でなんとかするだろ……」
(;゚д゚ )「一つ確認させてくれ。貴様の連れはこんなのばっかか?」
( T)「まだマシ」
(;゚д゚ )そ「上がいるのか!?」
(;゚д゚ )「あ、ああ……彼女の目的は椎名君だからな。一緒にいると見て間違いないだろう」
( T)「なるほど……天龍、秋雲。ここからは別行動だ」
天龍「ほぉ?んで、ご命令は?」
( T)「いつもと同じだ」
( T)「全員殺せ」
俺にとっちゃ見慣れた光景だが、二人の顔が獲物を前にした肉食獣のように歪む
それを見た三浦は抗議の声を失い、抜丸は息を飲んだ
殺す事こそ本懐であり喜びである奴らは、身震いの代わりに
天龍「了解」
秋雲「こっからが本番ってね」
天龍は刀を、秋雲はナイフを抜いた
( T)「惚けてるところ悪いが、二人は俺と来い。混乱に乗じて若を取り戻す」
抜丸「りょ……了解しました!!」
(;゚д゚ )「わかった……」
北谷菜切がいるのならば、若は脅迫材料として『使えない』
手間と時間を掛けた計画の末に手に入れた彼をみすみす殺すような真似はしないだろうし
死体が欲しいというのなら、もっと手っ取り早い方法を取るだろう
そうでなくても相棒かつ護衛の城和泉の元から離れた時点でアウトだ
つまり生死に関わらず、騒ぎを起こしても『問題はない』。敵のヘイトが此方へと苛烈に向かうだけだ
秋雲「ん、これ鍵ね。どこのかはそっちのおっちゃんに聞いて」
秋雲は鍵束を手渡すと、先に歩き始めていた天龍と共に螺旋階段を昇って行った
( ゚д゚ )「ああ、地下の懲罰房だ。我々も早く出よう。なだれ込まれると脱出出来なくなるぞ」
( T)「せやな。なんか扉も壊れ始めてるしな」
鉄扉の留め具が転がり落ち、コツっと靴に当たって止まる
さながら、モンスターパニックのワンシーンだな。正直言って高揚が収まらん
抜丸「殿はわたくしが!!」
( T)「頼もしいな抜丸は!!」
抜丸「ふんす!!」フンス
ならば俺は先陣を切るとしよう。階段に足を掛けると
階上から、『コーン、コーン』と何かが跳ねながら落ちる音が響いた
( T)「……あっ」
六角形の金属製の筒。その底面には火の着いた短い紐
現代の『それ』とは形状が違うが、見れば子供でもどんな性質を持っているか理解できるだろう
(;T)そ「あーーーーーーーーーーーーーーーー走れ風のようにブルズアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーイ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
『爆弾』だっtいやんなこと言ってる場合じゃないヤバい筋肉がある俺はともかく抜丸とヤク中は生き埋めになって死ぬ
咄嗟に抜丸を脇に抱え階段を駆け登る。爆弾は足元を通り抜け、懲罰房の前へと転がっていった
(;T)「急いでらぁバッキャロウこの野郎ーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!」
階段を駆け上がった先にある鉄格子を蹴り開けた瞬間、地下から爆風と爆音が背中を殴りつけた
暴走した城和泉が放ったものとは違い、炎こそ立ち上らなかったが、堅牢な造りである筈の地下を破壊するだけの威力はあったようで
抜丸「は、はわわ……」
粉塵を存分に舞い上がらせ、瓦礫で埋め尽くしてしまった
(;T)「わぁー……」
地下で発生してた禍憑も生き埋めにしたので結果オーライだが、反応がもう少し遅れていればと思うとゾッとする
茂名が仕掛けた罠だろうか。桜禍糖飲ませたりオッサンと二人で狭い部屋に監禁したり爆弾仕掛けたり何やねんあいつホンマ
(;゚д゚ )「ぼんやりするな早く移動するぞ!!」
( T)「おまいう」
(;゚д゚ )「なんだって!?」
( T)「なんでもねえよ。で、どこ行くんだ?」
(;゚д゚ )「二階の司令室だ!!そこに椎名君も北谷菜切もいる筈だ!!」
周囲からは怒号と悲鳴、慌ただしく駆ける足音に纏まりのない銃声、そして――――
「俺の名はァ!!!!天龍ゥゥゥ!!!!フフ、ヒヒヒャハハハハハハァァ!!!!!恐ぇか!!!!!恐ぇかあああああああああ!!!!??????」
今のは聞かなかったことにしよう。本当に恐いから放っておこう
抜丸「い、今の、本当に天龍さんですか……?あの、別の、こう……」
(;T)「あああああるあるあるある程度暴れたら元の割とママママママシな天龍に戻るから、だいだだいだ大丈夫……」
抜丸「声が震えてるじゃないですかぁ!!!!!」
(;T)「それよりもう降ろしてもいいか?」
抜丸「抜けた腰が戻るまで申し訳ありませんがもう少し!!!!」
(;T)「キミ、俺らの救出に来たんだよな?」
( ゚д゚ )「……」ピタッ
(;T)そ「うおおお急に立ち止まんなオッサン早く行けオイ!!」
(;゚д゚ )そ「ハッ!?」
人選ミスったかもしれない
(;T)「チィッ!!」
曲がり角から現れた複数の兵士。手には単発式のライフル銃が握られている
(;゚д゚ )「こっちだ!!」
(;T)そ「おっとォ!?」
三浦に手を引かれ、雪崩れ込むように部屋の中へと逃げ込む
コンマ数秒の間も無く、放たれた弾丸が空気を斬り裂いた
(;゚д゚ )「クソッ!!既に作戦が破綻しているではないか!!」
(;T)「んなこと言われたってさぁ!!」
扉を閉め、その辺の棚を乱暴に倒して塞ぐ
廊下から兵士が蹴破ろうとしているのか、さながら丸太ブチ当てたかのように強烈な衝撃と音が響いた
(;T)「窓は!?」
(;゚д゚ )「ここは鉄格子がはめ込まれて……伏せろォ!!」
反射的に身を伏せた瞬間、頭上を通り過ぎる弾丸の雨
外からも狙われてるとかウッソだろお前
抜丸「ふ、袋小路じゃないですか!!」
( T)「抜丸ジャンプでなんとかならんか?」
抜丸「わたくしが抜けるのは木製の壁までですよ!?」
残念ながらここの壁は赤煉瓦製だった
三浦は装填の隙をつき、部屋の中にあった机を倒し簡易的な遮蔽物を作る
その間も扉はメキメキと軋み、隙間が出来上がり始めていた
(;゚д゚ )「前門の虎、後門の狼か……」
( T)「所でここなんの部屋?なんで既に死体転がってんの?」
(;゚д゚ )「来客用の応接間だが……死体だと?あっ、た、確かに……それにしても、惨い……」
壁際にもたれ掛かる刺し傷まみれの兵士の死体。誰がやったのかは察しが付くが、経緯まではわからん
抜丸「潜入の際、ここで……じ、尋問を……」
( T)「ごめんな当たり障りのない言葉選ばせて」
どうやらここで拷問祭りが開催されたらしい。天龍(ポスト桓騎)らしい無残な死体だ。夕立が見たら確実に泣く
しかし装備品は割と綺麗な状態で残されている。先ほどぶっ放されたライフルに弾薬盒、それとサーベルか
丸腰の三浦にとっちゃいい置き土産だが、俺の趣味じゃない。もちろん素手だけでも最強だが、弾丸を防ぐ盾のようなもの……
( T)「……」
暖炉の上、西洋の騎士が使うような円盾と二対の剣が飾られている
あるやんけ。盾あるやんけ。なんやこれ九死に一生レベルの運なんとちゃうんか。やだなぁこれでガチャ運とか減ったら
( T)「三浦中尉、あの盾は?」
(;゚д゚ )「茂名が買い付けた舶来品だ」
( T)「使えるか?」
(;゚д゚ )「頑丈に出来ているとは思うが、禍憑に耐えられるかどうかまではわからんぞ」
( T)「筋肉があるから大丈夫」
(;゚д゚ )「根拠は!?」
( T)「うるせえ。よっこらマッスル!!!!!!」
机の脚を掴んで持ち上げる。再び放たれた弾丸で木片が散った
まずは壁際の死体まで移動する。倒した棚がズルズルと押し出され始めていた
(;゚д゚ )「回収したぞ!!」
( T)「オーケー次だ!!援護頼む!!」
(;゚д゚ )「了解だ!!」
ボルトを引き次発装填、机から銃口を覗かせ一発放つ
ガラスが砕け、被弾したであろう兵士が短い悲鳴を上げた
( T)「抜丸持ってろ」
抜丸「えっ、待っ……重いです!!!!!!!!!!!!!!」
机の盾を抜丸に任せ、身を乗り出して暖炉へと走る
三浦が再び発砲し、外の兵士がまた一人倒れた。良い腕をしてる。でも衣笠か五十鈴なら一発で三人倒す
だが連中もやられっぱなしではない。暗闇からマズルフラッシュが光る
(;T)そ「痛ッ!!!???」
運良く……いや、悪くか?その内の一発が右腕を掠めた。痛い、泣きそう、血も出てる、こちとらお姫様やぞ
しかし無茶が功を奏し
(#T)「確保ォ!!!!!!」
第二の目的である盾も入手した。頼りがいのある重さだ
その証拠に、外からの弾丸を悉く跳ね除けている。やはり盾は円形。レオニダス先生はいつも正しい
抜丸「大丈夫ですか提督さん!?」
(#T)「俺はお姫様なのに!!!!!!」
抜丸「さっきから何のお話なんでしょうか!!!???」
ジャック・ニコルソンの怪演が光る『シャイニング』よろしく、扉の割れ目から兵士の血走った眼がギョロリと覗く
ここは専門家に任せた方が良いだろう。不意打ちなら、奴らのクソザコ銃弾も明後日の方向へ走る筈だ
( T)「抜丸、いけるか?」
抜丸「もちろんです!!この窮地、抜け出してみせましょう!!」
『ついに見せ場か』と目を輝かせた抜丸は
抜丸「でぇええええええええええい!!!!!」ダッ!!
あろうことか渡した机を持ち上げながら扉に突っ込んでいった。あれ結構重いのに
抜丸「うあっ!?」ガッ!!
こけた
抜丸「ああっ!?」
すっぽ抜けた(結構デカい)机が、棚と扉を粉砕し
「ぐがぁ!?」
なんか外で纏まってた兵士ごと吹き飛ばした
( T)「……」
( ゚д゚ )「……」
抜丸「ぬ……抜丸大成功!!やりました!!」
( T)「中尉殿、笑い所だ」
( ゚д゚ )「早く出よう」
多分女将は抜丸のこういうとこ見越して潜入部隊に選んだんだ。きっとそうだ。そうに違いない。お前もそう思うだろ?ハム太郎
抜丸を先頭に、中尉、そして盾であり殿の俺が続けて部屋を出る
廊下では飛来する机によってまとめて始末した兵士がボウリングのピンのように倒れ込んでいるが
「うう……ウガ……アアアアアアアアアア!!!!!」
おっと、そういや禍憑化していたんだったな。『化けの皮』が剥がれ始めている
肌が破れ、光沢のある黒い下地がむき出しになる。額からは一本角が生え、爪は鋭く尖る
どうやら、立てこもり事件の際、番屋で見た禍憑と同じ種類らしい。言わば、『鬼』だ
抜丸「抜刀!!」
刀を(ようやく)抜いた抜丸は、手早く正面の二体の首を刎ねる
脇から足首を掴もうとしていた鬼の手を蹴り払い、頭を両断した
(;゚д゚ )「抜丸君!!」
抜丸「承知しております!!」
顔面の皮が半分剥がれた兵士がサーベルを抜き突きを放つ
抜丸「抜かせません!!」
その峰を叩き払うと、切っ先を兵の胸に深く突き刺し、肋骨ごと真横に斬り裂いた
「グッ……ガァ……」
俺が飲まされた桜禍糖と大差ないどす黒い血が噴出し、崩れ落ちる
幸いにも俺の傷口から流れるそれはまだ真っ赤だった。幸いにもじゃない痛い
「お許し、を……大尉、殿……」
( T)「……?」
あれ、こいつ今、どうして――――
抜丸「いえ、わたくしなどまだまだ!!提督さん、腕の止血を行いますので少々お待ちを!!」
( T)「あ、ああ……」
予断は許されないが、廊下にいた禍憑はあっと言う間に片付いた
窓の外から発砲した兵士も移動したのだろう。部屋の中は打って変わって静かなもんだ
ただ、割と遠くの方から出ちゃいけないレベルの悲鳴が聞こえる
もしかしたら生きたまま木の枝にぶっ刺して人肉ツリーとか作ってるのかもしれない。あいつはそれくらいやる
(;゚д゚ )「増援が来る前に急ぐぞ。次はその程度じゃ済まないかもしれない」
( T)「そうだな。抜丸、簡単にでいいぞ」
抜丸「そうはいきません!!この抜丸、仕事に手を抜く性分ではありませんので!!」
( T)「えらいな抜丸は!!」
抜丸「ふんす!!」フンス
とは言ったものの、抜丸の応急処置は手早く、それでいて丁寧に行われる
手際の良さを見た三浦もそれ以上何も言わず、ライフルに弾を込めた
抜丸「完了です!!」
( T)「ありがと……よ?」
腕に巻かれた包帯を確認すると、そこには一枚の紙切れが挟まれている
弾込めを終えた三浦は周囲を警戒し、気づいていない。視線を抜丸に戻すと
抜丸「……」
無言の圧力を掛けるかのように此方をジッと見返した
( ゚д゚ )「ああ」
抜丸「かしこまりました!!」
紙を抜き取り手の中に隠し持つ。抜丸、三浦を先に行かせ、盾の影の中でこっそりと確認した
( T)「……」
小さな文字でたった三行。しかしこの極秘情報で、俺の中で渦巻いていた疑惑が確信へと近づいた
紙を地面へと捨てる。蒸発し始めている禍憑の黒い血に浸され、文字を飲み込んだ
( T)「……」
死体のホルスターに収まっている二十六年式拳銃を抜き取り、背中側のベルトに差し込む
相変わらず外からは『タタン、タタン』とテンポの良い発砲音が聞こえるが、女の悲鳴は一つも上がってこない
本職が本職だ。銃弾なんかよりもデカいブツをしょっちゅうぶち込まれてるんだから
表現的にアウトか。セクハラに該当するなこれ。ともかく、この拳銃も禍憑に対して大した役割は果たせないだろう
だがちょっとした積み重ねが、大きな成果につながる場合もある。人生は筋トレと同じだ。むしろ筋トレが人生だ
( T)「筋トレって素敵やん……」
抜丸「はい?」
( ゚д゚ )「……」
抜丸「……あれ……あの、中尉殿?」
(;゚д゚ )「ハッ!?て、敵襲か!?」
さて、ヤバい場面で彼がトリップする前に若とご対面といこうか
―――
―
道中、幸いにも兵士とは出くわさなかった。死体なら幾つか見かけたが、三回目くらいで抜丸が余りのエグさに嘔吐いた
どうやったら刃物で胸からチェストバスター出てきたみたいな殺し方出来るのか教えて欲しいし、俺は教えた覚えがない
司令室前には護衛が何人かいるだろうと思っていたが、それもいない。静かなもんだった
( T)「ノックは必要か?」
( ゚д゚ )「いいや、蹴破れ」
( T)「クールだな、名案だ。ども!!婦人有権者同盟でーす!!!!!!」ドガァ!!!!!!!!!!!!
不躾ながら司令室の扉を蹴り壊して開ける。翻訳版デッドプール『デッド・プレジデント』は大好評発売中だ(ノルマ達成)
( ´∀`)「……」
すぐさま盾を構えたが、発砲の類はない。茂名は窓の外を眺め、スコッチか何かを舐めるかのように嗜んでいる
傍らには兵士が四名。いずれも直立不動の姿勢を取っている。銃器の携行は無し。軍用サーベルの代わりに日本刀を差していた
そして部屋の最奥では―――――
(* ― )「」
人形のように表情を失くし椅子にもたれ掛かる若と、彼の膝に愛おしそうに寄り添っていた
北谷菜切「……」
北谷菜切の姿
北谷菜切「嗚呼……嫌になりますね。彼方の世界の方々は礼儀も知らない山猿ばかりなのでしょうか?」
( T)「男を薬漬けにして手に入れた気になってる雌豚よりマシだ」
機嫌の悪さを隠そうともしない低い声色に、鋭い目線だ
時雨とじゃれ合ってた時はもう少し余裕があるように見えたが、こちらが本性か
北谷菜切「は?これで追い詰めたとでも?笑えますね。抜けているのは性格だけじゃなくて頭のネジもでしょうか?」
抜丸「ぐ、ぐぬぬ!!!!相変わらず口の減らないお方です!!!!」
( T)「恋愛脳は頭の中も愉快で羨ましいな……」
北谷菜切「お達者なのは口だけのようですね『提督』さん?ご自慢の駄犬に見捨てられた心境は如何でしょうか?」
( T)「拾い食い癖が抜けなくてなぁ。『錆びた鉄くず』を口にする前にケツ蹴飛ばして家に帰らせたのさ」
北谷菜切「まぁ酷い。飼い主と同じで粗相が絶えないみたいですね」
( T)「手のかかる子ほど可愛いもんさ。お前の飼い主候補さんは可哀想だなぁ~?無駄吠えする狂k……雌豚に、頼んでもねえのに連れ去られちまうたぁな」
(T )「なぁ抜丸、お前もそう思うだろ?」
抜丸「えっ、え、あの……提督さん、あまり刺激しない方が……」
(;゚д゚ )「お、お前……何故そこまで無駄に煽れるんだ……?」
( T)「は?楽しいお喋りだろ?なぁ北谷菜k……」
北谷菜切「……」
めっちゃ怒ってる。こちとら口から悪魔よりえげつない暴言吐くクソアマの相手を毎日しとるんじゃバーーーーーーーーーーーーカおととい来やがれ
( T)「あっれえ~~~~~~~~~~~~???????どうしたのかなぁ~~~~~~~??????おじちゃんに言い負かされて泣いちゃいそうなんですかぁ~~~~~~~???????」
( T)「もしかして泣けば許されるとでも思ってたりするか?言っとくが泣いても笑ってもぶっ殺すからな。散々コケにしやがってメスガキが」
北谷菜切「フ、フフフ……最初からその気なら、そう言えば良いんですよ……」
北谷菜切は立ち上がると、腰の鞘から針のように細身で鋭い短刀を抜く
緊張した面持ちの抜丸が前に出ようとしたが、肩を掴んで引き止めた
抜丸「ど、どうしてですか!?」
( T)「いや、何、単純にやり方がクソムカつくから顔面陥没するまで殴りたいだけだ」
抜丸「動機が自分勝手かつ乱暴過ぎませんか!!!???」
北谷菜切「威勢が大変宜しいようで。切り刻んで、あの駄犬の餌にしてあげます……」
( ´∀`)「待ってください」
俺も彼女も、その一声で足を止めた。真摯な声色だ。横顔を伺うと、唇の端から液体が零れて軍服の襟を汚していた
スコッチの琥珀ではなく、インクの様な黒。それを親指で拭うと、グラスを執務机の上に置いた
( ´∀`)「一つ、お伺いしたい」
( T)「これ以上語ることなんてねえだろ。お前は俺にヤクを注ぎ込んで傀儡にしようとしたが失敗した。後は単純に殺しあうだけだ」
( ´∀`)「あなた方の底力を見誤った私の失態です。それでも、聞かずにはいられない」
( ´∀`)「『国家』という巨大な組織を幸せにする為、少数の礎を犠牲にするのは『悪』でしょうか?」
( T)「は……?」
思わず素っ頓狂な声を漏らしてしまう。開いた口が塞がらなかった
この期に及んで、こんなクソくだらない質問をするのか
( ´∀`)「例え、その礎に覚悟と自己犠牲を以て望んだとしても?」
( T)「俺から言わせりゃただの自殺願望持ちの変態集団だな」
( ´∀`)「崇高な使命を抱きバケモノに身を堕とした彼らを、無差別に殺戮したあなた方は……!!」
( T)「どんな答えを求めてんだよお前。一握りの良心が痛まないのかとでも?」
抜丸が殺した兵士が最後にこぼした言葉の違和感の正体が分かった
奴らは茂名の計画によって強制的に禍憑になったのではなく、茂名の志に強く共感して成り果てたのだ
軍事洗脳と言うか、旧時代特有の同調圧力と言うか……ともかく、体育会系の好きそうな『武士道』やら『大和魂』とやらによる計画だったのだろう
( T)「国家の幸せ?大衆の幸せは人それぞれだろうが。テメーらが勝手に死んで全員が全員、めでたく生きていけるワケねえだろ」
( T)「覚悟と自己犠牲?それが、俺らやめいじ館や若を貶めていい理由になるとでも?」
( T)「無差別に殺戮?テメーらから始めた喧嘩に、今更そんないちゃもんつける気か?」
( ´∀`)「……」
認識を改めなければならない。奴は、自分の欲望に忠実なクソ野郎ではなく
ある種のナルシズムに溺れた、とびきり面倒なクソ野郎だと
( T)「ごちゃごちゃと綺麗ごと並べてんじゃねえ。殺るか、殺られるかだ。俺とお前は一生相容れないし、理解もし合えない」
( T)「話は以上か?いい加減、俺も暴れたいんだが?」
( ´∀`)「……わかり、ました」
控えていた兵士が一斉に柄に手を掛ける。戦闘準備は万端らしい
( T)「辞世の句はそれでいいのか?壊滅的なセンスだな」
( ´∀`)「行けッ!!」
号令と共に四人の兵士が抜刀
北谷菜切「アハハッ!!」
足を止めていた北谷菜切も大きく踏み出した
(#T)「流石に五人は無理だ抜丸助けて!!」
抜丸「は、え、ええええええ!!!????」
盾を構え、先頭の北谷にシールドバッシュを放つ
北谷菜切「フッ!!」
それを天井スレスレまで跳躍して躱され、身を翻し刀を振られる
(#T)「ってえッ!?」
回避行動は取ったが、肩の肉を掠めてしまった。流石の切れ味だ、俺の筋肉をもってしても刀傷は避けられなかった
抜丸「させません!!!!」
着地と同時に床を蹴り、俺の背中を襲おうとした北谷を抜丸が止める。甲高い金属の音が部屋の中で反響した
「!!」
「!!」
彼女の相手は抜丸に任せ、俺はそのまま前方の兵士に向かう
前列二人は突きの構え。後列は左右に分かれ挟み撃ちを狙っている
(#T)「どおっ……!!」
盾を手放す
(#T)「りゃッ!!!!!!」
足裏で蹴飛ばし、正面の二人にぶち当てた
盾の縁を刃が削り、火花を散らす。衝撃を殺しきれず、二人は背後にあった執務机に腰を打ち付けた
俺の両端に迫った残り二人は見向きもせず、互いをそのまま反転させたかのように胴を狙った横薙ぎを払った
(#T)「あぶねッ!!!!」
足を前後に広げ開脚し、身も前屈させて躱す。股関節ゆるゆるで助かった
髪が生えていたなら芝刈りのように剃られていただろうが、今や焼野原をマスクで隠してるので問題なかった。ないことは無いが
(#T)「よっこらせぇ!!!!!!」
体を倒して左側の兵士の片足……踝を蹴り払う。マッチョなので骨までしっかりと砕けた
「貴様ァ!!」
仲間が倒れたのを見て、右側の兵が激高。上段から兜割を放つ
これは避けられない。だったら……
(;T)「うおおガードベント!!!!!!!」
さっき拾った拳銃を抜き、銃身で受け止めた
「く、く……!!!」
そのままつば競り合いのように刀を押し込んでくるが、そりゃ悪手だ
(#T)「殺す気あんのかオラァ!!!!」
股間を右足で蹴り、巴投げの要領で持ち上げ、飛ばす
足首を抑える兵士を乗り越え、頭から窓に衝突し、階下へと落ちていった。これで一人
「ハァッ!!」
「どりゃあッ!!」
盾で突き出した兵士二人が攻撃態勢に入っている。立ち上がっている時間はない
狙いは首、そして腹。一撃で死ぬ攻撃個所は避けなければ
幸いにも俺が握っているモノは射程に長けていた。首を狙う兵の顔に向けてトリガーを引く
「ガッ!?」
「ぐあッ!?」
一人は銃弾、もう一人は……
抜丸「あ、当たrぐぅッ!?」
北谷との戦闘の隙を突いて抜丸が投げた『手裏剣』で、大きく仰け反った
しかし代償は大きい。北谷の刀が脇腹を掠めた
(;T)「抜ま……畜生が!!」
続けて連撃しようとした北谷に向けて発砲する
北谷菜切「チッ!!」
巫剣にも銃弾は脅威らしく、一先ずは距離を取った
(#T)「てめッ……!!」
抜丸「ご……ご心配なく!!抜丸、任務続行可能です!!」
抜丸の声で頭に上りかけた血が停滞する。冷静さを欠くのは後回しだ
素早く立ち上がり、落ちてる盾の縁を踏んで跳ねさせ、取っ手を掴んだ
抜丸「提督さんは若旦那様を!!」
北谷菜切「させませんよ!!」
抜丸が再び北谷の抑え込みを始めるが、悠長にしてはいられない
傷は浅くないだろう。若を確保して外で暴れてる連中と早く合流しなければ
先ずは足首を砕いた兵士の頭に回し蹴り
「ヒュボッ……!!」
口から間抜けな声と、頭蓋と脊髄がぶっ砕ける音と感触が広がる
首が『くの字』に折れ曲がった兵士はビクビクと痙攣し始める。これで二人
「グア……」
「ゴォォォ……」
銃弾と手裏剣を受けた残り二人は、それが切っ掛けになったのか、禍憑の側面を出し始めていた
顔面に負ったはずの傷口からは血が流れていない。そういやそもそも巫剣しか倒せない連中だった
(#T)「フゥー……」
拳銃を仕舞い、盾を握った左腕を前に構えを取る
ちまちま相手してる暇はない。カウンターで、一撃必殺を狙う
「ガァアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」
禍憑化の欠点は、思考力の欠如か。力任せの振り落としだ
しかしその分『パワー』はある。真正面から受けるのは得策ではない
(#T)「シッ!!」
正面ではなく、『斜め』に受ける。衝撃を受け流すとともに、刀が盾を滑り下りるように防ぐ
そのまま左腕を広げ、刀を逸らしていくと共に、視界と攻撃可能範囲を確保。右拳を握って―――
(#T)「ドラァッ!!!!」
眉間を殴り砕いた。眼窩に圧迫された両目がぶちゅりと潰れ、飛び散った生温かな液体が顔を汚した
拳は放さずに軌道を変え、執務机に叩きつける。後頭部を重厚な木製のそれと一緒に破壊した。三人目
刀では決定打にならないと気付いたのか。それとも盾が邪魔だったのか
残った一人は盾を両手で掴み、引き剥がそうとする。然しものマッスルを誇る俺の左腕も、軋みを上げた
だが拮抗などしなくてもいい。盾が欲しいのなら『くれてやればいい』
(#T)「ほらよっ!!」
勢い良く引いたタイミングで手放す。抵抗が無くなった為すっぽ抜けた兵士は、後方へと体勢を崩した
それを蹴り飛ばし、完全に倒れこませる。すかさず跳躍し――――
(#T)「く、た……」
(#T)「ばれッ!!!!!」
持っている盾越しに踏み潰した。折れた肋骨が肉と皮膚を突き破り、衣服に血が広がる
文字通り潰れた蛙となった兵士だが、息はまだあった。トドメの一撃を
(#T)「じゃあな!!」
足裏で顔面にお見舞いし、完全に沈黙させる。これで四人
(;T)そ「わ……カッ!?」
すかさず若を回収しようとしたが、横からの強烈なタックルにより足が宙に浮き
(;T)そ「痛みが凄い!!!!」
窓ガラスを突き破って上半身が外に投げ出される。首筋に伸びようとした手を咄嗟に掴んだ
(#´∀`)「く、くく……!!」
(;T)「っ……大物気取ってた割に、結構なタフネスじゃねえか……!!」
俺を階下に突き出そうとする茂名大尉の力は、今まで戦ってきた禍憑を凌ぐモノだった
『戦わない』とは思ってはいなかったが、ここまで強力だったとは予想外だ
(#T)「そんじゃあついでに地獄まで着いて行ってやれや……!!」
(#´∀`)そ「うぐっ……ううううううううううううう!!!!!!」
呻き声と共に、口からボタボタと黒い液体が落ち、俺の顔を汚す
細く垂れていた目が信じられないほど見開かれ、首は見えない縄で引きずり回されているかのように蠢き、頭を揺らした
唇が剥がれ、歯茎と牙が剥き出しになる。鼻が落ち、鼻孔が露わになった
(#゚益゚)「ヴぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!」
悪魔と呼ぶには十分な、醜男が俺を見下した
(;T)「うっわ、見るに堪えねえ……覆面をお勧めするぜ。俺の一押しだ」
(#゚益゚)「コレはワタシの罪!!!!!隠シ立テなどセヌ!!!!!!!」
(;T)「ご立派だな俺には無理だ……マスクがねえと小さいガキが怯えるからなァ……!!??」
窓の縁に残ったガラス片が背中に突き刺さり、更に押し込まれていく
力だけでなく、体重も増えていやがる。押し返すには……体勢が悪い!!!!
抜丸「提督さん!!」
北谷菜切「あらあら、私が手を下すまでも無く終わりそうですねえ……ッ!!」
抜丸「ああッ!?」
くそ、抜丸も手一杯だ。何か手は無いか、手は……
身体が仰け反っていき、目線が茂名から外へと向いていく
見えたのは、銃を向ける兵士でも、殺戮を繰り広げている天龍や秋雲でもない
夕立「提督さん!!!!!!」
夕立を始めとする突入部隊の姿だった
(;T)「ゆう……!!」
他のメンバーは菊さん、紅葉、蛍ちゃん。皆一様に此方を見上げている
ここは二階、普通に昇ってくる時間はまぁ無い。幸いにも、身軽な夕立と力自慢の紅葉狩兼光が揃っている
(;T)「……」
菊一文字則宗「!! 紅葉さん、夕立さんをあそこに!!」
察しが良い彼女が居て助かった
菊一文字則宗「投げ込んでください!!」
夕立「菊ちゃん!?」
紅葉狩兼光「りょーかいッ!!」
夕立の了承もそこそこに、紅葉はヒョイと持ち上げ、振りかぶり
( ゚益゚)「ア……?」
(;T)「へへ……来るぜ、『おっかないの』が」
紅葉狩兼光「せーのォッ!!」
夕立「も、紅葉ちゃん待っ……」
紅葉狩兼光「どーんとねッ!!!!!!」
そして投げた
夕立「ぽおおおおおおおおおおおおおおおお!!!????」
顔中から色んな汁を垂れ流しながら飛来する夕立。山刀二丁、お面と装備は全部揃ってる
(;T)「夕立、『変身』!!!!」
長年、反復によって染み込ませた『言葉のシグナル』は、状況を選ばず夕立を行動に移させる
『空を飛ぶ』恐怖に染まった頭ではなく、身体の反射によって、彼女は腰に付けた『熊さんのお面』を顔に被せた
確か、夕立お気に入りのアニメの……ポコだったかボコだったか忘れたが、なんか毎回ボコボコにされる可哀想な熊のお面だ。筋肉が足りてないと思った
ピタリと悲鳴を止めた夕立が、窓を破り室内に転がり込む。そして――――
夕立「ガ……ガギゴガガガギッガガガガゴゴギガァァァァァ!!!!!!!!!!!」
特有の叫び声と共に、茂名の背に襲い掛かった
夕立「ガッガッガッガッ!!!!!!!」
(;゚益゚)そ「グがァ!!???」
脳天へ二発、三発と連続した肘撃ち。茂名も堪らず俺に圧し掛かるのを諦め、肩に乗る夕立を引き剥がしに掛かる
(#T)「オラッ!!」
(;゚益゚)「グゥッ!!」
顔面に拳を一発お見舞いし、腹筋を起こして体勢を立て直す。夕立の攻撃も相まって、大きく後ろへと退いた
(#T)「そこで待ってろ!!若を回収して退散する!!」
菊一文字則宗「了解です!!」
下で待機する菊さん達に手早く指示を済ませ、クソッタレを押し潰した盾を拾い上げ……
抜丸「うあっ……」
北谷菜切「終わりです……!!」
(;T)そ「あああああああああ抜丸ーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」
そのまま抜丸に覆いかぶさり刀を振り上げる北谷菜切へとフリスビーのように投げつけた
同時に駆け出す。この程度の攻撃、防ぐのは目に見えてる
驚くべきことに、抜丸を刺そうとした『短刀』で盾を弾き飛ばす。なかなかの強度だ
だが、こいつはどうかなお嬢ちゃん
(#T)「クソアマがァ!!!!!」
北谷菜切「ッ!?」
トニー・ジャー直伝(映画めっちゃ観た)の飛び膝蹴り。両腕で防がれたが、0.1トン越えの飛来する肉体を押し返せは出来まい
北谷菜切「ガホッ!?」
そのまま壁に叩きつけ、背中と後頭部を強打した
ついでに宙を舞った盾を回収する。我ながら惚れ惚れする手際と『脚際』だ
(#T)「もう一発ゥ!!!!」
尻もちを着いた彼女は実に良い位置に頭がある。そのまま右膝で蹴り砕こうとしたが
北谷菜切「アァッ!!!!」
そこまでの贅沢を許してはくれなかった。振られた短刀は軸となっている左脚を斬り裂く
(#T)そ「痛っ……てえな!!」
トドメを刺す好機だが、ここで執着するともう一つの好機を逃す
蹴りは防がれたが、身体へのダメージはある筈だ。暫く立てまい
北谷菜切「フゥー、フゥー……!!」
(#T)「返事は……おっと」
グラスかそれとも酒瓶か。暴れる茂名が机にぶつかり、何かが割れた
グズグズしてる余裕はない。『逃げ出す好機』に全力を注がねば
( T)「トンズラするぞ抜丸。さっきは助かった、命の恩人だな」
抜丸「いえ、ですが……これ以上お役に立てそうにありません……」
( T)「十分だ。女将の見立ては間違ってなかったな。夕立!!」
抜丸を抱え上げ、じゃじゃ馬に呼びかける
(#゚益゚)「フンッ!!」
夕立「ゴガァ!!!!!!!!!」
ちょうど今、背中から引きはがされて床に叩きつけられている所だった。やるなぁ大尉
( T)「遊んでる暇はねえぞ!!夕立、『牙』!!」
夕立「ギガガガガガ!!!!」
ダメージを感じさせない機敏な動きで立ち直ると、夕立専用の装備、二対の山刀……『マチェット』を抜く
暴れん坊が集う我が鎮守府に置いて、彼女はこれで『二位』の座に着いた
思考及び言語能力、意思疎通、そして可愛げを犠牲にして得られる筋力制限の解除、超反応、凶暴性
消費体力の関係上、『五分』しか持たない限定的な『狂化』だ
前の鎮守府で産まれ出たストレス障害であり、ウチに来る理由ともなったこの力を『使いこなしたい』という彼女の意思を尊重し
俺や青葉や叢雲、天龍達とお互いに血みどろになりながら練り上げてきた。元々、『夕立』という艦娘は血の気が多いが
(#゚益゚)「シュアッ!!!!」
夕立「ガガガガガガガァ!!!!!!!!」
ウチの夕立を超える夕立は、後にも先にも絶対に現れないと断言してやろう
夕立「ゴガガァ!!!!!」
茂名の中段突きを両膝で地面を滑りながら掻い潜り、小柄さを活かして股下を通り抜ける
すれ違いざまに、逆手に握ったマチェットで大腿部を斬りつけた
(#゚益゚)そ「ッ!?」
内股から夥しい黒色の出血。膝は着かず、背後に回った夕立を迎え撃つために裏拳を放つ
夕立「ガガァ!!!!」
(#゚益゚)「ギャア!!!!!」
鼻先スレスレでそれを避けた夕立は、右の手首、内膝、腋を斬り裂き
夕立「ゴアッ!!!!!」
(;゚益゚)そ「ゴボッ……!!!!」
首の側面にマチェットの切っ先を突き刺し、喉の半分を掻っ捌いた
(;゚益 )「ご、ボボボボ……」
本来ならば口や鼻から吐き出される肺の空気が、血の泡を作り出しながら切り口から噴き出す
傷口を両手で抑えるが、既に致死量の出血だ。助かりはしまい。『人間ならば』
夕立「ゴアッゴアッ!!!!!!!」
人の原型が無くなるまで叩こうとした夕立を手元へと呼び寄せる。マチェットに滴る黒い液体を振り払い、鞘に納めた
( T)「抜丸連れて降りるんだ。殺すなよ?味方だぞ?」
夕立「ギィギギギッギッギギギギ……」
抜丸「さ、先ほどから艦娘さん達の豹変が怖いんですが……」
( T)「噛みつきゃしねえよ多分。掴まってろよ」
抜丸「あの今多分ってああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
手渡した抜丸を乱雑に抱きしめると、夕立は窓から外へ飛び出す
俺も早く後に続こう。随分と待たせてしまったからな
(* ー )「」
( T)「帰るぞ、若。城和泉や女将が待ってる」
拘束は無く、文字通り椅子に乗せられてるだけの状態。右肩に担ぎ上げても、身じろぎ一つ起こさなかった
呼吸も脈もあるが、意識が無い。執務室での戦闘音や断末魔を聞いても起きない辺り、相当深い場所にいるらしい
(;T)「痛つつ……」
右腕の銃傷、左肩と左脚の刀傷。窓ガラスによる首筋と背中の裂傷。結構ダメージ大きいな(承太郎)
飛び降りた時に着地しっかりしねえと。若にケガさせるわけにはいかねえ
北谷菜切「お……兄……様……」
( T)「あ?」
寝言ぶっこいた北谷菜切が立ち上がっているが、生まれたての小鹿のように脚がガクついている
今の状態で襲い掛かられても簡単に迎え撃てるだろう。努力は認めるがこのマッストレイツォ容赦せん
北谷菜切「こ……これで、勝ったとお思いですか……?」
( T)「大勝利だ。若を取り戻して黒幕はこの通り。残った兵士もウチの連中が皆殺しにする」
北谷菜切「フ、フフ……あ、あ、浅はかなんですよ……」
( T)「……」
北谷菜切「ぜ、ぜ、絶対に……逃がしはしません……奥の手は、まだ、残っていますから……」
北谷菜切「フ、フフ……アハハ、あははははははははははははは!!!!!」
( T)「高笑いする奴始めて見たわ。きっしょ」
北谷菜切「」
( T)「死ねよ」
北谷菜切「」
( T)「痛い子ってよく言われるだろお前。大喜利系ハッシュタグで(暗黒微笑)とか付けちゃうタイプだわ」
北谷菜切「フッ、フッ……」
うわ、キレた叢雲より酷い顔し始めた。ジョセフとアヴドゥルが機転利かして列車から逃れた時のマライヤみたいな顔してる
『このビチグソ共が』とか見苦しく喚かれる前に退散しよう。おお、くわばらくわばら
「アアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!クソ野郎ォォォオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!」
ヒステリックな金切り声を背に、数時間ぶりに外へと飛び出した。これだから女ってのは恐い。煽り耐性ゼロかよ
それはそうとさっき『マライヤ』って言っちゃったけど正しくは『マライア』だったわ。お詫びと訂正を致します
(;T)「っととォ!!リングに激痛走り炎の戦士を照らす!!!!」ダンッ!!
スーパーヒーロー着地……は体への負担がめっちゃデカいので、普通に両足で着地
前へ崩れ落ちそうになったのを踏み込みで立て直すが、落下の衝撃で左脚からまた血が噴き出した
菊一文字則宗「ご無事ですか!?」
(;T)「この通りだ。絶好調とは言い難いが、まぁなんとか生きてる」
紅葉狩兼光「血みどろじゃないか!!」
(;T)「鎮守府の名前にもなってるしな……名は体を表すって……」
クラリと目まいがして、恥ずかしながら片膝をついてしまう
タフさには自信があったが、如何せん血を流しすぎてしまった
(;T)「そんな暇はねえ。紅葉、抜丸と若連れて安全な所まで走れるか?」
紅葉狩兼光「お安い御用だよ!!」
(;T)「じゃあ頼む。俺はクソ野郎共を皆殺しにしてくる」
紅葉狩兼光「無理だって!!なんかもう体中紅葉おろしみたいになってるよ!?」
(;T)「そこまで酷ないやろ……」
抜丸「わたくしからも具申いたします。提督さんはお戻りになられた方が……」
(;T)「部下が戦ってんだ。大将が退いt」
その時、宿舎の一つであろう建物が砲撃の音と共に『弾け飛んだ』
それは外からではなく、『内』から。砲弾と思わしき物体が頭上を通り抜けていく
菊一文字則宗「ッ……そう簡単に、帰してはくれなさそうですね……」
(;T)「ああ……」
北谷菜切が言った『奥の手』とやらには、大体の予想が着く。この世界へ『時雨』という手違いと共に現れた『深海棲艦』だ
奴らは海だけではなく陸上も攻めてくる厚かましいクソザコナメクジだ。ただしその動きは愚鈍で、近づいて矛で頭叩き割る程度なら簡単に行える
そう、『愚鈍』の筈なんだ。脚は短く頭と胴が太く長い。クジラやイルカと同じく、地上で活発に動き回れるような姿をしていない
四本の脚は細く長く伸び、後ろ足は地を素早く駆けるために発達し
寸胴の様だった胴体はしなやかな流線形を描いている。本来ならば必要のない鞭のような尻尾がしなり、建物の残骸を砕いた
クジラのように丸かった頭も小さく纏まったが、口の中から覗く艦砲の大きさは本家のそれと変わりない
例えるならチーターやジャガーのように、『狩り』をする肉食獣。そのサイズを『駆逐イ級』程度まで増大し、皮膚の代わりに装甲を着けた姿
抜丸「あ、あ、あれが、深海棲艦……?」
(;T)「そうだ、と言いたいが……俺の世界でも見たことがねえ」
確かに深海棲艦なのだろう。付け加えるなら『新型』の
しかし、奴らの進化過程に『陸戦』を想定したモノは今だ見つかっていない
しいて言うなら『ヒト型』だが、俺やアクションスターを除いて『霊長類最弱』の種類をわざわざ選んでいるのだ
獣に近い姿、それも陸上で迅速な移動能力を身に着けた艦種はいない
純粋な進化ツリーには無かった『獣化』への道。恐らく、禍憑化によって最も効率的な姿を取るに到ったのだろう
全く、生きていくのが嫌になっちまうね。嫌な予感だけはきっちりと命中する。やはり『×』の計算だった
獣の動きに艦の火力と防御力か。やべえどうしようどうやって対処しよう。助けて叢雲、筋肉泣きそう
「縺後o縺後$縺√♀??°繧抵ス!!!!!!!!!!!!!」
オマケに名状しがたい叫び声と来た。身体も痛いのに頭も耳も痛い
菊一文字則宗「……どうやって倒しましょうか?」
(;T)「……に、逃げる?」
蛍丸国俊「さっきと言ってる事が違いますよ……?」
紅葉狩兼光「僕はどうすればいいのさ!?」
抜丸「わ、わたくしは置いていって構いません!!若旦那様を連れて離脱を!!」
夕立「ガ」
やいのやいの言うんじゃねえよこっちだって初体験なんだぞ
夕立「ガゴガガガガ!!!!」
マチェットを抜きつつ全力疾走。いつもなら謎のバケモノにビビり倒す臆病な彼女も仮面を被ればこの通り
姿形が違っても、深海棲艦には変わりない。駆逐艦なら俺でもぶっ殺せるんだ。夕立に掛かれば数秒もせず輪切りのソルベ一丁上がりだ
「縺?縺翫?縺√%縺オ縺√%縺医↓縺!!!!!!!」
獣は向かってくる夕立に向けて砲塔の角度を調節し、胸を膨らませた
この射線はマズい。俺らがいる位置を通る
(;T)「散開しろォ!!」
胸がシュッと萎むと同時に、『艦砲』が火を噴いた
飛び出すように散らばった俺達のすぐそばを砲弾が横切り、地面を抉る
菊一文字則宗「夕立さんは!?」
(;T)「無用の心配だよ!!」
砲弾を掻い潜ったであろう夕立は既に獣棲艦の喉元まで迫っている
マチェットを抜き胸を十字に斬りつけるが、意に介す様子はなかった
「縺翫k繧九k繧九≠縺√s!!!!!!」
夕立「ガゴォ!!!!」
獣は自分の尻尾を追う犬のようにぐるりと巨体を回し、腰で殴りつける
夕立はその身体に手を付き跳躍し、回避したが
夕立「!?」
尻尾が足に巻き付き、グンと引かれ
夕立「ガァッ……!!」
地面へと叩きつけられた
(;T)「待て菊さん!!出るんじゃ……!!」
激昂し駆け出した菊さんを止めようとしたその時、足首がねじ切れそうなほどの力で『掴まれた』
足元の『黒い染み』から、初日に出会ったのと同種の『禍憑』が、徐々に姿を現していた
(;T)「クソッ……そういや神出鬼没だったな!!」
蛍丸国俊「せっ!!」
蛍ちゃんが自前の大太刀で地面から半分浮き出てきた頭を勝ち割ると、半ば千切るかのように握撃から逃れることが出来たが
紅葉狩兼光「わっ、わわっ!!」
続々と溢れ出る禍憑の大群が、俺と蛍ちゃん達を分断する障壁となって立ちはだかった
陸軍禍憑に、通常禍憑、それにハイブリッド棲艦。どうやらここからが本領発揮らしい
(;T)「チッ!!」
後ろに構っている暇はない。菊さんを追おうと前に直った瞬間―――
(;T)「あ……?」
獣棲艦の砲塔が、明確に俺を狙っていることに気が付いた
時すでに遅し。雑魚に気を取られている間に発射準備は完了していたのだろう
砲火と共に弾丸が放たれる。避ける暇はない。そもそも、避ければ若のいる場所にも被害が出る
よしんば禍憑の障壁に当たったとしても、砕けた残骸が散弾となって広くばらまかれる可能性すらある
(#T)「アアァッ!!!!!」
結論、駆逐艦級の砲撃を『鉄で出来ただけの盾』と自慢の筋肉で防ぐしか考えつかなかった
斬撃を防いだ時と同じように、斜めに衝撃を受け流しt
(#T)そ「―――――ッ!!!!!!!!」
衝撃、轟音、そして激痛。盾を構えていた左腕が弾け、引きちぎれそうな程に『揺れる』
振動は肉から骨、内臓。そして脳にいたるまで響き渡り、視界の暗転と共に意識が飛んでは戻り、激しい吐き気を催した
踏ん張っていた筈の足は宙に浮き、跳ね飛ばされた身体は禍憑の大群をクッションにし―――
(;T)「が、ごぉッ!?」
勢いよくホップする。重力が長時間の飛行を許さず地面に叩きつけられ
二、三度と無様に転がると、どこかの壁にしたたかに打ち付け
(;T)「ッ~~~~~~~~~~~~~!!!!!」
ようやく、止まった
(;T)・'.。゜「ゴプッ……」
腹の底から血の塊が昇り、鉄の臭みと共に口から飛び出る
左腕は辛うじて繋がっているが、折れた肘の骨が皮膚を突き破って『見えている』
盾は吹き飛んだのだろう。唯一残った取っ手が手の内から転がり落ちた
身体中が痛い上に視界も覚束ない。これ以上の状況把握ができなかった
生きているだけでも御の字と言いたいが、敵はいまだ健在だ。何の解決にもなっていない
ああやべえ、立てねえわ。ここまで追い詰められたのもいつ以来だ?海自やってた頃くらいか?
よく顔面デッドプールだの言われるが、ヒーリングファクター搭載してねーんだぞ俺は
いやアレただの悪口か?腕と一緒で心折れるわガハハ!!!!!!!!!
:(;T):「ゲオッ、ハァー……フゥー……」
寒い。誰だ空調キツくした奴。そんでなんか、力、抜けて……
(#゚益゚)「……」
あれ?いつの間に茂名の野郎……復活して……目の前に……
お出迎えだろうか……死出の旅の道連れがこんな野郎とは……
(#゚益゚)「……」
:(;T):「……」
いやなんか拳振り上げてんな……トドメってワケかい……
身体の調子が全快ならこんな野郎……一捻りだってのに……
:(;T):「……」
命乞い待ちか?いやに動きがゆっくりに見える……
冗談じゃねえ……こちとら『媚びる』ってのが大嫌いだってのに……
:(;T):「……」
力を振り絞り、右腕を上げ、中指を突き立ててやる
意味はわからないだろうな……ついでにもう一つ
:(;T):「く……た……ば、れ……!!」
捨て台詞ってのを付け加えてやるか
:(;T):「へ、へへ……」
限界はすぐに訪れた。腕と共に瞼も落ちる
後は終わりを待つばかり。死にたかねえが、こればっかりはてめえじゃ決められない
ああ、帰ってキングダムの最新号読みたかったな……ジョジョも新刊そろそろ出そうだしな……キン肉マンだって新シリーズ始まって運命の王子達再集合で……
辺獄のシュヴェスタも最終巻出るって聞いたし、ごちうさも最新刊出るまで生きたかったなぁ……
アベンジャーズ インフィニティ・ウォーもデップ2も観たかったし、トム・シックス最新作『オナニア・クラブ』も新情報心待ちにしてたのに……
:(;T):「……」
いやまだかよ意外と心残り少なくてショック受けちゃうだろ早くしろよ
つーかなんか逆に元気出てきたわ。具体的に言うと痛みが引いて寒気が無くなって力漲ってくる感じ
死んだ?つまり幽霊状態なの?死んだら人はどこへ向かうの?宇宙の起源はなんなの?生命はどこから生まれたの?
(;T)「……?」
「起きろ」
(;T)そ「痛っ!!!???」
信じられないことに視界良好、呼吸正常、痛みも引き、ズダズダだった左腕も拳が握れるほどに回復している
天龍「この状況でお寝坊か?いい気なもんだな」
(;T)「天龍……?」
俺の脇腹を蹴った張本人は、此方に見向きもせず茂名に刀を向けていた
その足元には、青い雫が残る小瓶が転がっている
(;T)「高速修復剤か……?」
天龍「念のために持ってきてて助かったぜ。仙豆も真っ青な効き目だな」
(;T)「いやなんで俺に効くん……?」
天龍「知るかよ。つーか鎮守府でも何回か使ってるぞ。死にかけた時にな」
(;T)「嘘やん……?」
恐らくこれはナオルヨ君から抜き取った高速修復剤だろう。忘れられがちだが、アレ実は高速修復剤用の水筒みたいなモン
これを死にかけの俺が服用して、見事回復したらしい。誰だか知らんが鞄に入れといてくれてありがとうと言いたい
いやそれよかこれ艦娘用の薬……いや確かに一回興味本位で舐めたことはある(クソマズい)けども、生身の人間には劇薬に近い代物って聞いたんだが
(;T)「き……筋肉?」
天龍「筋肉ご都合主義もここまでくりゃ病気だな。試すか?ロボトミー手術」
(;T)「死ぬやん……ん?」
(#゚益゚)「フウウウウウウウウウウウ……」
俺が死にかけてる間に刹那の攻防があったのだろう。茂名の右腕が切断されている
切り離された右腕は、地面でのたうち回っていた。死霊のはらわたかよ
( T)「……」
獣棲艦はいまだ健在。尻尾に捕らわれた夕立も、当たり所が悪かったのかぐったりと動いていない
菊さんが立ち回っているが、厚い装甲に手間取っているようだ
蛍ちゃん達は禍憑の包囲網をまだ抜け出せていない。紅葉に到っては抜丸と若を抱えたまま凌いでいる
( T)「頼む……ところで、秋雲どうした?」
天龍「任せてきた。まぁ、死ぬこたねえだろ」
( T)「ええ……」
<助けて天龍ちゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!!!!!!!
( T)「ええ……?」
天龍「そんじゃ、ごゆっくり」
それを見過ごし、野郎は俺に一歩近づいた
( T)「……『未来とは、かくも驚愕に満ちている』だったか。残念だな、未来がまた俺を救った」
(#゚益゚)「……いエ」
斬られた右腕が、ナメック星人特有の能力のようにズルリと粘液を伴って生えてくる
やはりボスは一味違う。夕立に受けた致命傷もこうして治したのだろう。ズルじゃん
(#゚益゚)「例エ傷が治ろウト、再び殺してしまエば関係ナイ」
( T)「そうだな。ぶっちゃけもうあんな反則技、二度と使えねえよ」
膝に手を置き、ゆっくりと立ち上がる。骨折も治ってるとか何なんキモいわあの液体
( T)「ところで、暢気に立ち上がるのを待ってたのは何故だ?武士道に反するとでも?」
(#゚益゚)「まサカ。全力ノ貴様ヲ殺しテ……」
(#゚益゚)「私ノ行イが間違ッてイナイ事を、勝利を以テ証明スル」
.
( T)「ハ……」
( T)「ハハハハハ!!!!いいねえ!!そうだよ!!それが戦争だ!!俺たちが愛してやまない、正当化された暴力だ!!!!!」
金、宗教、平和、領地、労働力、資源。戦争は時に様々な要求と主義主張を絡めて発生する
そして勝てば、『正義』という称号を他者に向けて堂々と見せびらかすことが出来る
『勝利』という、どんな薬物よりも強烈な快感をもたらす脳内麻薬と共に
( T)「交渉なんて野暮だ!!!!思いやりなどめんどくせえ!!!!俺たちゃ結局、『こいつ』で物事決めるのが一番だと知っている!!」
『こいつ』こと、拳を構える。何事もガチが一番だ。ステイサムも言っていた
( T)「俺も!!!!!御華見衆も!!!!!!諸外国も全部ぶっ殺してテメーのした事の『正当性』を証明してみせろやァ!!!!!」
(#゚益゚)「オ……」
(#T)「行くぞオラァアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!」
(#゚益゚)「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!」
.
一拍の溜めを置いて、左拳で奴の右わき腹を殴りつけた
(#゚益゚)そ「グッ……!!」
(#T)「ッ!?」
痛みに呻いたが、奴の右手は俺の左腕を掴んで引き
(#゚益゚)「オォ!!!」
(#T)・'.。゜「ガボァ!!!!」
腹に強烈な膝蹴りを放つ。俺はそれを右腕で抱え込み、押し倒す
左腕を強引に引き抜き、素早く足首を掴み、股の間に自分の脚を差し込んだ
茂名の右膝に軸足である俺の左脚が当たるこの姿勢。皆さんご存知テリーマンのフェイバリット
(#T)「スピニング・トゥ・ホールドーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」
(#゚益゚)そ「ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」
回転は一度でいい。これはプロレスショーではないのだ
渾身の力で極めた関節技で、茂名の膝と足首をてこの原理で粉砕する
(;T)そ「ぶッ!?」
体勢を正面に戻した瞬間、顔面に『掌底』をぶちかまされたかのような衝撃
身体はのけぞり茂名の身体から手を放してしまう。じんとした鼻の痛みによって涙で滲んだ視界が捉えたのは
(#゚益゚)「フゥゥウウウウ!!!」
関節からグーンと伸びた茂名の左足だ。ズームパンチならぬズームキックを喰らわされたらしい
螺旋状にねじ巻いた右膝、右足首と同じく、ボキボキと強引に元に戻っていく。回復能力持ちはこれだから。自分を大切にしろ
(#T)「ッシャア!!」
上半身を起こしたタイミングに合わせて顔面に向けたローキック。俺の蹴りは金属バッドすらへし折る
これに対し茂名が起こした行動は、『防御』ではなく
(#゚益゚)・'.。゜「がぼおごごごごおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」
(;T)そ「ッ!?」
口から吐き出した大量の黒い吐瀉物による迎撃だった
予想外の不意打ち。思わず腕で顔を覆い目を背けてしまう
(;T)「きったね!!!!」
身体に纏わりつく感触は『液体』ではなく、重い湿気の様に不快な気体だ。一度触った覚えがある
『禍魂』だ。奴は体内に溜め込んでいたそれを目くらましに使ったのだ
(;T)「つッ……!!」
手のひらサイズなら握りつぶせるが、身体を覆うほどの質量は流石に無理だ
風の有無に関わらず、長く停滞している。重力が倍になったかのように俺の動きを阻害した
その上、幾分か吸い込んでしまったらしい。完全な支配とまではいかないが、動きと思考が鈍る
(#゚益゚)「ガァア!!!!」
(;T)そ「ゴゥッホ!?」
文字通りの『暗雲』に手こずっている最中、茂名のタックルをまともに受けてしまう
踏ん張ろうとした足が絡み、今度は俺がマウントを取られる形になってしまった
すかさず顔面に振り落とされる、組まれた両手による『ハンマー』
(#T)そ「あぐぁッ!!!!」
右腕で防ぐが、筋肉の鎧を通り越して骨身が嫌な音を立てる。骨折とは行かなくとも、皹は入ったか
両拳は再び振り上げられている。もう一撃喰らえば今度こそバキ折れる
(#T)「このクソがァ!!!」
腰を跳ねさせ、上に乗る茂名のバランスを崩す
(#゚益゚)そ「ッ!?」
『振り落とされまい』と、両手を解き右手で地面を着いた
その肘を掴んで折り曲げ、軍服の襟首を掴み
(#T)「セァア!!!!」
横に押し倒すと同時に体を右肩から起こした
(#゚益゚)「ぐヌっ……!!」
身体の密着に執着せず、茂名は押された勢いを活かして転がる
右腕のダメージと禍魂の影響から、襟を手放してしまう。舌打ち一つして、素早く立ち上がった
(#T)「フゥー……」
(#゚益゚)「ハァー……」
仕切り直しである
先に仕掛けたのは奴だ。左胸……『心臓』の位置への右ストレート
威力は折り紙付きだ。まともに受ければ胸骨が砕けて心臓を貫くだろう
(#T)「ッ!!」
身体をやや捻って躱し、空ぶった右腕を左脇で挟んでロック。襟首をもう一度掴んで引き寄せ
(#T)「オラッ!!」
(#゚益 )そ「ゴッ……!!」
顔面に頭突き。怯んだ隙にロックした右腕に俺の左腕を絡ませ
肘の内が上に向くように捻り、関節の動きとは逆の方向に力を込めた
(#゚益゚)そ「がァああああああァァあああああああああ!!!!!!!」
『脱臼』も考えたが、奴は一度、関節を外して放つ『ズームキック』を使った。外せるなら、嵌め込めると考えるのが筋だ
やはり骨折による破壊の方が有効と見た。現に、耳が痛くなるほどの悲鳴を上げている
(#゚益゚)「オのレぇえええええええ!!!!」
苦し紛れに左拳を放つが、腰が入っていない。この程度なら――――
(#T)「甘ぇんだよ!!」
払いのけると同時に、自らの右腕を巻き込み
(#T)「ッラァァ!!!!!」
同じように肘を破壊する。しゃがれた断末魔が空気を揺らした
おっと、また禍魂を吐き出そうってか。同じ手を二度も喰らう俺じゃねえぞ
口から飛び出す寸前まで待つ。出てくると分かっていれば、これほどありがたい隙は無い
(#゚益゚)・'.。゜「ゴボゴボボボボボオオオオオオオオオオオオ!!!!!!」
そら来た。両腕を放し、しゃがんで回避。出終わるのを待たず――――
(#T)「オラァッ!!!!」
右アッパーカット。黒い息は強制的に閉ざされた顎に寄って断絶する
フラリと数歩下がった茂名に間を与えず
(#T)「シュアッ!!!!」
ハイキックを側頭部に放つ。首こそ折れなかったが、真横にふらめいた茂名は膝を着いた
耐久度はあれど、蓄積されたダメージまで回復とはいかないようだ。大分足に来てるな
このまま二度と立ち上がれなくしてやる。バケモノに身を堕として尚、『人に勝てなかった』という最大限の屈辱を与えながらな
(#T)「終わりじゃああああああああああああああああああああああああああああい!!!!!!!!!!」
駆け、踏み込み、右膝を打ち上げ、跳ぶ
(; 益 )・'.。゜「ガッ……!!!!」
顎下にヒットした膝蹴り。顎の砕ける感触。そして頸椎が外れグンと首が伸びる
ロケットのように飛び上がった身体。両肘を揃え、脳天に向けて振り落とす
(#T)「もいっぱああああああああああああああああああああああああああつッッッ!!!!!!!!!!」
下からの蹴り上げに、上からの肘撃ち落とし。頭蓋は割れ、黒い血液が噴射した
顎関節は砕け、顔面は押し潰したチーズバーガーのようにへしゃげた
(#T)「ハァァァァーーーーーッ……!!!!」
俺の着地に対し、茂名の身体は糸の切れた操り人形のように崩れ落ちる
拳を向け、少しの時間待つ。ビクビクと痙攣するばかりで、起き上がる様子はない
(#T) 「ガチが一番」
筋肉最強伝説にまた新しい一ページが刻まれた瞬間であった
最初の一発で口の中を切ったのだろう。血混じりの唾を吐きかける
流石にここまで頭をグチャグチャにすれば復活はしねえだろう。しないよな?しないでくれ頼む
「縺ゅ♀縺翫♀縺翫♀縺翫♀縺翫♀縺翫♀縺翫♀繧!!!!!!!」
一人加わって多少手こずるようになったのか。獣棲艦は足回りでウロチョロする天龍と菊さんの相手に夢中で砲撃はまだない
得物も無い丸腰の俺が加勢しても大した戦力にはならないだろう。なら、蛍ちゃん達の周りをウロチョロするゴミクズ共を相手した方がマシか
待てよ?もしかして無限湧きか?禍憑の大群が減るどころか増えて……
( T)「ッ!?」
遠くから聞こえる機銃の銃声の合間に『タタッ』と小動物の足音が混じる。フォウ君か?いやゲーム脳乙
野良猫か野良犬か、はたまた別の動物か?そんなワケがねえ。人間なんかよりも危険に敏感な野生動物が、銃声や砲火が響く戦場に近づく筈がねえ
(;T)「……」
その正体は、天龍が斬り落とした『茂名の右手』だった。死霊のはらわたかよ。アッシュはリターンズでもまた普通にやらかしたぞ
蜘蛛のように指を立たせ、カタカタと這う様は蜘蛛を連想させた。そして切り口である根元には、茂名が吐いた『禍魂』が吸い込まれている
(;T)「マジかよ……」
してやられた。奴は目くらましではなく、『解放』の為に禍魂を吐き出していたのだ
その証拠に、俺が今し方潰したばかりの死骸からもモクモクと噴き出している
(;T)「きっしょ!!!!!」
踵を返し這いまわる掌を蹴りつけるが、ピョンと跳ねて避けられてしまう
その間も禍魂は集まり色濃くなっていき、『人の形』を成し始めた
『気体』は『液体』へ、そして『固体』へと凝固していく
中肉中背はどこへやら。身体のサイズは膨らみ、二メートル近い俺ですら見上げなければならないほど大きくなる
巨木の幹が如く太い脚が地を鳴らす。股にイチモツは無く、卵のようにツルリとしていた
両腕には鋭いエッジが生え、それに負けじと杭のような爪が伸びる
顔の禍々しさは肉の器に入っていた頃と変わらないが、頭髪の代わりに『兜』が顔を守っている
太く短い二本の角が生え終わると、そこには
以`゚益゚以「URRRRRRRRRRR……」
(;T)「あーあーあーあー……」
より凶悪な禍憑が、目の前に立ちふさがっていた
(;T)「あー……」
おいおい勘弁してくれ。こちとらボキャ貧だぞ
(;T)「男前になったな。きっとモテるぞ?メス猪限定でな」
ほらあんまりイケてない。メス猪が股開くわけねえだろ
以`゚益゚以「結構」
差して面白くもなかったのだろう。淡白な返答を皮切りに茂名『だったもの』の爪先が地面を抉る
『メリ』と捲りあがった土塊が、幾つもの礫となって襲い掛かって来た
(;T)そ「ハルクかよッ……!!」
距離が近く回避がままならない。いくら土と言えども固まれば『重し』だ
飛礫は当たっては砕け、身体を浮かし仰向けに倒れ込ませやがった
舞い上がる砂埃。そして運悪く喉に当たった一発が息を詰まらせる
それどころか目に入って痛い。ポル砂嵐かよ
以#`゚益゚以「ゴァァアア!!!!」
(;T)そ「うおっっぶねえ!!!!!!!!!」
胸の上に迫った足裏を両手で抑え込めたのは、不幸中の幸いだろう
以`゚益゚以「呆気ナイモノデスネ、提督殿」
:(;T):「ぐっ……口調戻ってんぞ今更お利口さんしても説得力がっ……!!」
ひと際力を込められ、肘が耐え切れず曲がってしまう。汚ぇ足裏が胸を圧迫し始めた
:(;T):「気が早ぇぜせっかちさんが……俺はまだ生きてる……若もっ……城和泉も……そこで戦ってる連中も……」
:(;T):「てめえらはまだ誰一人殺しちゃいねえぜ……」
以`゚益゚以「……時間ノ問題ダ」
:(;T):「ハハ、時間の、問題?ハハ……ハハハ、ハハハハハハ!!!!」
以`゚益゚以「何ガ可笑シイ……?」
例えば
やんちゃ坊主に刀のオモチャを与えればどうなるか?
不良に刃物を与えればどうなるか?
チンピラに銃を与えればどうなるか?
軍人に超能力を与えればどうなるか?
力は安酒と同じだ。抑止の精神が無い奴に与えれば『悪酔い』する
その酔いは後先を予測する力を奪い、素面なら気づくはずの機微な変化を見逃す
:(;T):「耳を、澄ませてみる事だな……Mr.オーガ……お宅の精鋭たちは『連装機銃』なんて代物……持ち歩いているかね……?」
以;`゚益゚以そ「!!」
:(;T):「ガハハ!!時間の、問題!!全くその通りだ!!お前は悠長にも『時間を掛け過ぎた』!!!!!」
遠くから聞こえていた『機銃の銃声』は近づいてくる。兵士たちの断続的な悲鳴を引っ提げて
続けて、砲撃音が赤煉瓦の建物に穴をぶち開けた。獣棲艦からではない
そこにいた誰もが、敵も味方も一時停止をし、未確認の新規参戦者の方を向いた
正体を知っているのは、戦場でその音を『聞きなれている』俺達くらいだろう
それはこの世界で唯一、深海棲艦に対して大打撃を与えることが出来る奴だ
.
スクリューの代わりに『車輪』を回し、高速で駆けてくる姿
肩口から伸びた二つの砲塔。風に揺れる三つ編みと犬の垂れ耳のような跳ねっ毛、黒を基調としたセーラー服
脇には途中で拾ったであろう秋雲を抱え、両腰には彼女専用近接武器である『クナイ』のホルダーポーチ
透き通ったマリンブルーの瞳が、俺を踏みつけるバケモノを射殺さんばかりに睨めつけている
時雨「強めキックゥウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!!!!!!!」
出力四万二千馬力を誇る俺の『愛犬』が、誰の影響か知らんがクソダサい技名と共に茂名に飛び蹴りを放った
以;`゚益 以そ・'.。゜「ッッッッッ!!!!!!??????」
野郎の身長の半分にも満たない少女に蹴り飛ばされる様は見ていて爽快だ。いつもは俺がその立場だからな
地面を削りながら着地した『時雨』は、いつもの不敵な笑みと右手を差し出した
時雨「お待たせ、お姫様」
( T)「っはぁ……早かったな。王子様」
艤装を着けた王子様は、シチュエーションも相まってなかなか様になっていた
時雨「皮肉かい?助け甲斐が無いね」
( T)「我儘はお姫様の必須要素だ。黙って飲み込め」
手を握り返すと、力強く起こされる。ふと、抱えられたままの秋雲と目が合った
秋雲「再会して早々イチャイチャすんのやめて?」
( T)「落とせ」
時雨「はい」パッ
秋雲「ぎゃふん!!」グシャッ
時雨「八宵の奴がやっぱり無断で改造しててさぁ。スクリュー用の動力をタイヤの方に回して陸でも高速走行できるようにしたんだって」
( T)「走り心地は?」
時雨「最悪だったよ。さーって、お荷物も減った事だし」
秋雲「酷くない……天龍ちゃん抜きでめっちゃ頑張ったのよあたし……?」
背中の艤装が半分に割れ、アームに繋がれた砲塔が時雨の手元に伸びる
折り畳み式のグリップが起き上がり、さながら『トンファー』のように逆手に握った
改修を重ねた12.7cm連装砲A型が『時雨型』専用のギミックによって臨戦態勢に入った
時雨「どれから殺……あ、やばい伏せて」
夜にも関わらず頭上に大きな影が過ぎって、すぐ傍に『着地』する
軽やかな動きだが、マタタビ酔いした猫のように無様に肩口から落ち、砂と瓦礫を舞い上げた
「縺斐m縺ゅ♀縺翫♀縺翫♀縺翫♀縺翫♀縺翫♀縺翫♀縺翫↓繧?≠縺ゅ≠縺ゅ≠縺!!!!!!!!」
野生の勘か。それとも深海棲艦の持つ艦娘への危機意識か
標的を此方へと変えた獣棲艦が、威嚇の咆哮を上げた
時雨「うわぁ……ゾイド化の波が深海棲艦まで来てるとはね……」
( T)「近くで見上げるとやっぱデケェなこいつ」
秋雲「いや夕立ちゃん捕まってんじゃん!!!!何してたのよ天龍ちゃん!!!!!」
<るせーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!
夕立は捕縛されたままだ。時間にして三分と言ったところか。目立つ外傷が無いのは
菊一文字則宗「提督さん!!」
彼女の奮闘が功を奏したからだろう
( T)「汗ヤバい」
共闘していた筈の天龍を置いてけぼりに、俺達の場所まで即座に駆け付けた菊さんは滝のような汗を流している
砂埃による服の汚れが目立ったが、傷は見当たらない。だが、刀を持つ腕は小刻みに震えていた
『恐れ』ではない。恐らく、『疲労』によるものだろう
数多い巫剣の中でも『神速』とまで称されている彼女だが、その代償は持久力だ
最初の『主』である影響を強く受けているのだろう。かしゅーなら『吐血』だが、彼女の場合『虚弱』になる
身体の負荷が積もる前に高速で手数を叩き込み速攻で勝負を決める短期決戦タイプ
故に、デカくて硬い新種の禍憑及び『深海棲艦』との相性は最悪と言える
時雨「疲れてるならすっこんでなよ。僕がいるなら他は用無しだし」
( T)「言い方」
菊一文字則宗「お、お断りですね……僕が向こうの世界にっハァッ、飛ばされて……ハァー、ハァー……」
ガクガクと震える身体をそれとなく支えようとしたが、厳しい目線と手で払いのけられる
菊一文字則宗「神出鬼没も同然……見ず知らずの怪しい僕にっ、夕立さんは、つきっきりで、優しくしてくれた……向こうで出来た……大事な、友達なんです……」
菊一文字則宗「誰が止めようと……身体が砕け散ろうと……僕は絶対に退きません……夕立さんの為なら僕は……」
刀を持ち上げ刃を水平に保ち、顔の側面で構えた。『霞の構え』だ
菊一文字則宗「この一時だけ、修羅となる!!」
放たれる気迫に、無意識の内に自分の足が若干後ずさる
これが剣士の生の迫力とやらか。伊達に激動の幕末を戦い抜いた巫剣じゃあない
時雨「……ふん、好きにしなよ」
バカなりの気遣いもこれじゃあ形無しだ。それに、同じく異世界に放り込まれた身としては、こいつも思う所があるのだろう
獣棲艦は新たに現れた時雨を警戒し、唸り声を上げて威嚇する。蹴飛ばされた茂名も、瓦礫を押しのけながら復帰し始めていた
( T)「そこまで言うなら倒せる算段はあるんだろうな?」
菊一文字則宗「誰に口を利いているんですか提督さん」
(;T)「ひえっ……ごめんなさい……」
秋雲「弱い(確信)」
時雨「強いの?」
( T)「ガールからスパイス・ガールになった感じ」
時雨「そう……一味……違うんだね……」
夕立の一撃を耐えただけでなく、捕縛まで行い
それで尚、菊さんや天龍と立ち回っているのだ。普通の深海棲艦と比べて禍魂による大幅な強化が施されていると見た
あいつらばっかりズルいんじゃないか?俺らだって巫魂とかなんかで強化されて然るべきなんじゃないか?殺すぞ?お?
奴さんも立ち直ったか。やれやれ、今夜は骨が折れる。実際折れた
時雨「さぁ、指示してよお姫様」
( T)「オホホ。良くってよ」
秋雲「さっきから何の遊びなんよ……?」
それを差し引いても実に熱いシチュエーションだ。いっちょ喝を入れ直すか
( T)「さぁさぁ正念場だ気合い入れろお嬢さん方!!!!!全ッ員……」
(#T)「殺せェッ!!!!!!」
.
時雨「喰らえ!!!!」
号令と共にその場から『消えた』菊さん。時雨の右砲塔から獣棲艦に向けて放たれた榴弾……あっやべえ榴弾だ
驚くことに先に『着弾』したのは、獣の前足に鋭い三連突きを放った菊さんだった
菊一文字則宗「フッ!!」
「縺後≠縺ゅ>繧翫>縺?>繧翫>縺?>縺?>縺!!!!!!!!」
榴弾が胴に炸裂し、火薬の発破によって飛び散った破片が固い装甲に『皹』を入れる
その破片は一撃……いや、『三撃』与えた菊さんの方向にも向かったが、またもや目にも止まらぬ速度で回避する
時雨「おっと」
(;T)「『おっと』じゃねえもっと気ぃ使って撃てや!!!!!!!」
時雨「そんなこと言ったってさぁ。先に飛び出したのはあっちじゃんか」
秋雲「いや言い合い後にして来てる来てるデカいの来てる!!!!」
以#`゚益゚以「ゴガアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」
迫りくる2Pカラーハルクみてーな巨躯の茂名大尉。強力な火力を持つ時雨を最優先と睨んだらしい
時雨「一瞬時間稼いで。砲仕舞うから」
秋雲「えー、もー!!一瞬だからね!!」
火力はあるが、周囲への影響もデカいと踏んだであろう時雨は、出したばかりの砲塔を手放し、収納する
(#T)「マッスル~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!クソ本気キック!!!!!!!!!!!!」
秋雲「技名ダッ……サ!!!!!!!!」
一握りで時雨の頭三つは握り潰せそうな掌を、俺の本気後ろ回し蹴り ~めっちゃかっこいい技名を添えて~ で払い
小柄さを活かした秋雲が掻い潜り、逆手に持ったナイフで右の脇腹を数回刺す
秋雲「ヒエッ!!」
羽虫を払う程度の動きも、あのデカさなら当たれば致命傷だ。秋雲は頭上スレスレに迫った腕を辛うじて回避した
時雨「おまたs……あぶなーーーーーーーーーーい上から襲ってくるーーーーーーーーーー!!!!」
「縺?j縺?>縺?>縺?>縺?>縺?>!!!!!!!!」
間髪入れず名状しがたき鳴き声を上げながら、上空から推定数トン越えの獣の前足が迫る
(;T)そ「この身軽さは反則だらっしゃあああああああああああああああ!!!!」
秋雲「ぎゃあああああああああああああああす!!!!!」
地面が板チョコのようにバキ割れ、土埃が舞う。幸いにも回避が間に合った俺と秋雲は煎餅にならなかった
そんな中、浮き上がった土埃を斬り裂く横風が鋭く吹く
以#`゚益゚以そ「ギッ!?」
「繧ー繝後Φ!!!!!????」
その場にいた二体の禍憑に『三撃』ずつ。修羅と化した菊さんの攻撃は続く
(;T)「えっ、お前マジ……」
軽快な足取りで駆け寄る時雨は、俺の前で大きく跳躍し
(;T)そ「いや重っ……!!!!!!!!!!」
こともあろうに『艤装』を身に着けたまま俺の肩に足を掛けた。常人なら潰れて死ぬ
(#T)「っっっっっめえええええええええええええええええええええええんだよアホがーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」
しかし大変遺憾な事に既に常人レベルの筋肉じゃない俺ならクソガキ駆逐艦の踏み台にはなれる
筋肉激おこパワー上乗せで高く舞い上がった時雨の手には、砲塔に代わり『クナイ』を握っていた
時雨「目玉も硬いかどうか……試させてよ!!!!」
獣棲艦の顔に飛び掛かり、青白い眼にクナイを突き立てる
「縺?$縺?>縺?>縺?≧縺?≧!!!???」
時雨「アハハッ!!」
目玉は並みの強度だったらしい。深海棲艦特有の青い蛍光色に禍魂由来であろう黒い墨が混ざった血が飛び散る
ブンブンと頭を振って時雨を払おうとするが、更に深くクナイを突き刺し、耐える
時雨「酔う酔う酔う酔う!!!!!」
見てて面白かった
( T)そ「うおっ!!お、オッケー!?何?斬り……ええ!?」
傍らに一瞬だけ現れた菊さんは、短く告げるとまた掻き消える
見逃せないレベルの発汗と、それに見合わぬ青白い顔色だったが、引き留める暇も無い
以#`゚益゚以「余所見トハ舐メラレタモノダナッ!!」
(#T)「うるせえ今テメーの相手してる暇ねーんだ秋雲と遊んでろタマナシ野郎!!!!!!」
秋雲「ちょっとォ!?みんな秋雲さんに任せすぎじゃない!?」
(#T)「索敵も砲撃も雷撃もお任せって言ってんだろちょっとは有言実行しろやアホ雲ォ!!!!!!!!」
秋雲「それ青葉ちゃんのセリフゥ!!!!!!!!」
茂名の大振り右パンチを掻い潜る。巨大化の代償はデカかったな(上手い)
すれ違いざまに治りきっていない脇腹の刺し傷に一発肘を入れる。よく見りゃ菊さんの刺突も加わって酷い有様だ
秋雲「はいはい鬼さんこちら!!!!早く戻ってよほんと!!!!」
痛みの断末魔か、それとも怒りの咆哮か。背中と鼓膜にビリビリと響く
茂名を抜き去り俺の目標は獣棲艦へ。今だ時雨を振り解こうとジタバタともがく
(;T)「夕立をっつっても……!!」
地団太を踏む動きに合わせて、尻尾に巻かれたの夕立も揺れる
マチェットは握ったままだ。あれなら直に復活するだろうが、建物や地面にもう一度衝突してしまえば艦娘と言えど無事では済まない
回収を急がねばならないのは重々承知だが、こんな巨大ロデオにどう飛び乗れと……
(;T)「ん?」
ふと、獣棲艦の動きに違和感を覚えた。左の前脚と後ろ脚の動きがぎこちない
硬い装甲に覆われた脚に、大きな『切れ込み』が刻まれている。少量だが、血も流れ出ていた
そう言えば、時雨の出現によって此方側へと跳んできたこいつは、ネコ科の動物の姿らしからぬ無様な着地を晒していた。これが原因か
菊一文字則宗「ハァア゙ッ!!」
最早苦痛による喘ぎ声と遜色ない掛け声と共に、切れ込みに『火花』が散る
なるほど、『雨垂れ石を穿つ』ってやつか。彼女は最初から『左側』しか攻撃していないのだ
獣棲艦の脅威は『火力』『防御力』、そして『機動力』。その内一つを奪おうって算段か
( T)「そうと分かればッ……!!」
立ち位置は獣棲艦の左側、下半身付近。尻尾の長さを目測で確かめ、大よその落下位置を予測する
この近さ。奴にとっては格好の獲物だろうが、顔に纏わりつくクソガキに手間取ってそれどころじゃないようだ
( T)「いいぞッ!!やれェッ!!」
ひと際輝きを放つ火花が、連続して二つ。同時に、耐久値を超えた鉄の壊れる耳障りな音
(;T)「やっ……!!」
「諢壼セ。邱堤キ堤キ堤キ!!!!!??????」
切れ込みとは『逆方向』からの斬撃。伐採の基本だ。『倒れ込ませたい方向に切れ込みを入れてから、逆方向から斧を叩き込む』
彼女の目論見、そして俺の予想通りに、獣棲艦の二つの左脚は、支える巨体の重さに耐えきれず折れ曲がっていく
(;T)「そん、で……」
尻尾に巻かれた夕立も、倒れる胴に引っ張られ落ちてくる。俺の仕事はここからだ
(;T)「マッスル~~~~~~~~~~~~!!!!!んんんんんキャッチおおおおおおおおおっしゃあああああああああい!!!!!!!!!!!」
破壊力と同じく包容力にも優れた筋肉で夕立を受け止め、尻、腰、背中の順に地面へと落としクッション代わりとなる。凄く痛い
素早く首筋に触り脈を確認。正常に動いている。呼吸も出来ている。面も奇跡的に壊れてなかった。さすが明石製だなんともないぜ
(;T)そ「そんで次ぃ……!?」
身体を駆け巡った悪寒に、思わず声が上擦る。この感覚は銘治に来て何度も味わった。『禍魂』だ
夕立に巻き付く尾から、じわじわと漏れ出ている。たった一撃で昏倒したのはこれが原因か!!
(;T)「ふざけんなよ年端もいかねえ小娘にキモいもん流し込みやがって!!」
尾がキュウと夕立を締め上げ始めたのを見て、咄嗟に鷲掴みにする
弾力と滑りけのある太いワイヤーのようなそれは、俺の握力を以てしても握り潰すのは難しい
(;T)「……クソ!!」
獣棲艦から攻撃を受けた様子は見えなかった。それでも、菊さんの衣服はボロボロになっている
小夜と同じく、『刃こぼれ』の状態だ。獣棲艦の装甲を削る度に、刀身にもダメージが入ったのだろう
それでも尚、彼女は膝を着く様子が無い。荒い呼吸と血を含む咳を抑える事も無く、小刻みに震える脚を前に進める
(;T)「っ……」
息が詰まった。彼女はまだ『修羅』なのだ。夕立を解放するまで、例え両脚を?がれようが、刀が折れようが前に進む
そんな菊さんを前に『来るな』の一声を、『充分だ』の労いを言える筈が無い。言葉を失うとは、正にこの事か
ではどうするか?ご自慢の筋肉は通用せず、頼みの綱は瀕死一歩手前
抵抗する?勿論。だが解決には到らない。諦める?論外だ。お精子からやりなおせ
なら答えは一つ
(#T)「時雨ェッ!!!!!」
頼りになる『愛犬』にご登場願うのみだ
時雨「はいよっと!!!!!」
獣棲艦の身体を跳び越え、砂埃と青白い血で身を染めた時雨が尾をまたぎ着地する
時雨「失礼するよ……んぎぎぎぎぎ!!!」
尾を両手で掴み、歯を食いしばり持ち上げる。背中の艤装が燃料を燃やし煙を上げた
娘と言えど艦娘。駆逐艦と言えど艦の馬力。尾は少しずつ浮き上がり始める
尾から伝う禍魂が時雨の手に纏わりつくが、接着した瞬間に蒸発する
ソボロ先生も言っていたな。『艦娘と巫剣は似たような存在』と。禍魂を祓う力があるのだろう
「そのまま抑えてろ時雨ェェェェエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!!!!!!!!!!」
おっと、頼りになるのがもう一人
天龍「オオオオオオオオオオオオオオッッッッッラァアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」
禍憑の大群を切り刻んで来たであろう天龍が、ご自慢の得物を力強く叩きつけた
幾千もの深海棲艦をぶった斬って来た『艦娘の刀』は、ハイブリッド種の獣棲艦の尾も
「逞帷李逞帷李逞帷李逞帷李!!!!!!!!!!!!!」
例外なく一刀の下に切断した
天龍「大方ぶっ殺した!!蛍、菊さん保護しろ!!」
蛍丸国俊「はい!!」
菊一文字則宗「ゼハァー……夕立、さ……」
深く息を吐いた菊さんは、天龍達の登場で緊張の糸が切れたのか
駆け寄った蛍ちゃんに受け止められる形で気を失った
時雨「キモいキモいキモいキモい!!早く立ってほら!!」
切断した尾を解いた時雨は手に纏わりついた禍魂の感触が余程気持ち悪かったのか、スカートのすそで執拗に拭いた
時雨「秋雲ヤバそうだから僕行くね!!あと任せるから!!」
( T)「気ぃつけろよ!!」
時雨「僕を誰だと思ってんのさ!!」
ホルダーポーチから新たにクナイを抜き取り、息つく間もなく茂名の相手をしに駆ける
天龍「サッサと離れろ!!まだ死んじゃいねえぞ!!」
天龍の言う通り、獣棲艦からワンダウンを奪っただけだ。菊さん必死の攻撃も、『脚を痛めつけた』だけに過ぎない
倒しはしたが完全な切断とはいかなかったようで、よろめきながら立ち上がっている
三浦中尉も言っていたが、デカい対象にはそれだけの禍魂を必要とする。駆逐イ級なら相当な量を注ぎ込まれたのだろう
それは巫剣一人じゃ祓いきれる量ではないらしい。だが、奴の半分は『深海棲艦』だ
( T)「遊んでやれ天龍!!」
天龍「おうよ!!」
連中の駆除は俺らの生業。殺せぬ道理はない
胸が膨らむ。『砲撃』の予備動作だ。だが生憎、『距離が近い』
砲弾がどこから発射されるのかわかっていれば、幾らでも対処が出来る。そう、例えば
天龍「おっと!!打ち止めだ!!」
懐に潜り込み、開いた下顎を斬り上げ、閉じさせてしまえば
「!!!????!?!???」
行き場を失った砲弾は口の中で炸裂するって算段だ
天龍「ハハッ!!恐くて声も……うおッ!?」
グシャグシャのジャンクになった顔面から重油のように液状化した禍魂が溢れ出る
強い粘性を持つそれは、慣性の法則を無視した動き……例えるなら、『上から鋭利な刃物で斬りかかるように』天龍を襲う
天龍「気持ちッ悪いし、往生際も悪ぃ!!」
咄嗟に刀で振り払い、大きく下がる。禍魂は地面へと飛び散ると、『禍憑』として形を作り始めた
狐のようなシルエットに、両前脚には『鎌』を携えている。身体からは陽炎のように邪気を放っていた
大きさこそ一メートル足らずと小柄だが、数が多い。顔面から零れる度に増えていく
天龍「護衛艦隊ご到着ってか。楽しませてくれるじゃねえか!!」
天龍(変態)は嬉々として斬りかかっていくが、そう長い時間楽しめないだろう
禍魂は護衛を生み出しているだけじゃない。破損した砲塔部の修復も始めている
アメーバが餌を捕食するかのように損壊部分を禍魂が包み込むと、動画を逆再生したかのように直っていく
夕立「ガ……ア……」
速攻で片を着けねばならない。その為に必要なのは、戦力の増強
腕の中の夕立は、尾から解き放たれた影響か既に目を覚ましている
すぐに暴れださないのは、『指示』を下していないからだ。言わば、『スリープ』の状態にある
( T)「夕立。大好きな菊ちゃんが、命削ってお前を救った。今度がお前が、その友情に応えてやれ」
夕立「ゴッ……ゴガガガ……」
彼女の身体が熱くなっていく。気を失っても掴んだままだった山刀が、血を欲さんと揺らいだ
( T)「『ゴー』!!!!」
夕立「ガゴゴゴゴゴガッゴオガアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!」
俺の身体を射出台代わりに飛び出す。余りの力強さに倒れこみそうになったのを、踏ん張って堪えた
夕立「ゲガガガゴゲガァァァ!!!!!!」
『鎌鼬』風の禍憑数体を切断、勢い余って宙に消し飛ぶ。目もくれずに『本体』へと突貫
跳躍し、顔面を両刀で殴るように斬りつけた。修復中の禍魂が飛び散り、獣凄艦の身体が大きく揺らぐ
着地と同時に地面を蹴り、今度は菊さんが削った右前足をぶっ叩く
「縺弱□繧後≠縺オ縺√↓縺!!!!!」
耳障りな破壊音と悲鳴が響く。元々折れる寸前だった前脚は、今度こそ耐久値を越えて断裂した
支えを一つ失った獣棲艦はガクリと体勢を崩す
夕立「ガッ!!」
山刀を逆手に握り返し、振り返りもせず背後に迫った鎌鼬を二体突き刺す
血飛沫のように吹き上がる禍魂を背に、今度は時雨の砲撃によって出来た装甲の皹に
夕立「ゴガガガガガガガガガガ!!!!」
山刀を刺し込んで大きく『抉る』。硬い装甲が瘡蓋の如く剥がれていった
紅葉狩兼光「よしきた!!おっちゃん、よろしく!!」
( T)「えっ?」
天龍は纏わりつく禍憑を鬱陶しそうに斬り払い、紅葉を呼んだ
何をよろしくすればいいのだろうかと考える間もなく
抜丸「あああああああああ!!!!???」
(* ー )「」
紅葉がいた方向から飛来する二人
(;T)そ「うおお無茶すんなお前ェ!!!!」
抜丸「うぶっ!?」
俺が類稀なる肉体の持ち主でなければ押し潰されて終わりだろうが、そんなヘマもなく受け止める
抱えてた二人の代わりに自前の刀を抜いた紅葉は、猫っぽい姿に恥じぬ高さの跳躍をする
紅葉狩兼光「紅葉狩ッ!!!!」
天龍「くたばりなァッ!!!!!」
上空から獣棲艦の頭への斬り落としと、地上からの斬り上げ。即席コンビの挟撃は
「縺?繧九≠縺ゅ§繧?>縺!!!????」
強烈な火花を散らし、既に半壊状態であった頭を完全にカチ割った
紅葉狩兼光「よし!!どう……うわっと!?」
それでも尚、獣棲艦の息の根は止まらなかった。犬が身に付いた水滴を払うかのような身震いを見せる
追撃をかまそうとした二人も、一度間合いを取らねばならなかった
鋼鉄の巨体が行えば、触れただけでも只じゃ済まないだろう。夕立は―――
山刀を突き刺したまま、粘り強くしがみ付く。身体が縦に横にと大きく揺さぶられても尚、獲物に食らいつく狂犬は牙を放そうとしない
それに、負担は夕立だけではない。彼女と言う『振り子』を付けた山刀は、遠心力とテコの原理で次々と装甲を剥がしていった
「豁サ縺ャ豁サ縺ャ豁サ縺ャ豁サ縺ュ豁サ縺ュ……!!!???」
目に見えて弱っている。畳みかけるなら今だ
( T)「天龍、紅葉!!動き止めろ!!」
天龍「簡単に言ってくれるじゃねえかボケ!!」
紅葉狩兼光「任せてよ!!もう一発、ぶちかますよ天龍!!」
犬の身震い、今じゃ『柴ドリル』とも呼ばれているそれは、激しく動く身体に釣られ脚も多少ガクつく
つまり重量があれど、通常時より『不安定』になると言える。加え、今の奴は足下の損傷がデカい
天龍「せー……」
紅葉狩兼光「のォッ!!」
左前脚の両側から、タイミングを合わせた横薙ぎを脛に放つ。菊さんとはまた別の、豪快な太刀筋だ
掬い上げるように振り抜き、前脚を後方へと浮き上がらせる。両前脚の支えを失った獣棲艦は、前のめりに倒れ込んだ
内側から斬りつけた天龍は、潰される前に股の間を潜り抜けた
天龍「決めろ夕立!!」
夕立「ゴガガガガガァァァァ!!!!」
天龍達の働きと呼びかけに、咆哮で応える。産み出された鎌鼬が、『母体』の危機に標的を一つに絞った
夕立は周囲から自らに向けられた殺意を一切の反応を見せず、突き刺した山刀の柄を
夕立「ガッ!!!!」
肘で叩き更に深くへと沈みこませていく
一撃
「髦ソ……!?」
ビクリと獣棲艦の身体が跳ねる
二撃
紅葉狩兼光「夕立ちゃ……!!」
禍憑の鎌が空気を裂いて夕立に迫る
三撃
夕立「ガァァアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!!!!」
ひと際大きく振り上げ、落とされた肘が、山刀の柄を完全に埋め込み
鎌鼬の集団が、夕立の姿を『飲み込んだ』
.
心臓が跳ね、息が止まった。これで殺せなければ夕立は引き裂かれてしまうだろう
鼓動一つすら長く感じる僅かな時間の後、変化が訪れる
「豁サ……」
獣棲艦の弱弱しい鳴き声を皮切りに、夕立を包む禍憑の集団が霧散していく
黒い繭が解けていくような現象の中から、深海棲艦の青白い血で染まった『金髪』が浮かび上がる
夕立「……」
ズルズルと獣棲艦の身体から滑り下りた夕立は
夕立「ゴ……ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!」
朝日で明るみ始めた空に、勝鬨を上げた
彼女は見事、勝利を以てして菊さんの『友情』に応えたのだ
(;T)「夕立、『解除』!!」
しかし喜ぶのは後だ。早めに『狂化』を止めないと、夕立は心臓ぶっ壊れるまで動き続ける
『変身』と同じく脊髄反射で熊さんのお面を外した途端、体力の限界からか膝から崩れ落ちる
夕立「ハァー、ハァー……!!」
(;T)「天龍、周辺の警戒!!紅葉、悪いが夕立背負ってくれ!!暫く動けねえ!!」
紅葉狩兼光「りょーかい!!」
紅葉と共に夕立に駆け寄り、状態の確認をする。身体に幾つかの切り傷が見受けられたが、どれも浅い
ギリギリ間に合ったらしい。流れる冷や汗を拭いたかったが、今は両手が塞がっていた
(;T)「ちゃんと生きてるよ。よくやった」
夕立「良かった、けど……い、痛いよぉ……」グスグス
いつもの夕立に元通りだ。泣きべそをかき始める
急激な豹変を見て呆気に取られたのか。それとも頭可笑しくなったのか。抜丸がなんか弱弱しく笑った
天龍「おい」
( T)「なんだこの野郎。警戒はどうした」
天龍「警戒もクソもねえよ。見ろ」
天龍が刀で差す先では
以;メ益゚以「ガハッ……グゥ……」
時雨「……」
ワンサイド・ゲームが終わろうとしていた
時雨「クソザコナメクジにしては、頑張った方だよ」
時雨も無傷とは言えない。切れた頬の傷口から垂れる血を拭う
秋雲に到っては出番が無かったのか、座って休憩してる。呑気かよ
しかしそれ以上に、茂名の状態は酷かった。顔面の半分は切り刻まれ、胴は機銃によって風穴だらけだ
アレでまだ息があるのには驚きだが、回復に使う余力すら既に無いように見えた
抜丸「凄い……」
( T)「せやろ」
後はトドメを待つばかりか。最後に何を吠えるか、聞きに行くのも一興だろう
以;メ益゚以「っ……」
時雨「僕の無双っぷり見てた?」
( T)「見てないけど?」
時雨「なんで?????」
( T)「いや……向こうの相手してたから……」
以;メ益゚以・'.。゜「ガボッ!!ゴボ……」
喀血のように禍魂を吐く。今度こそダメージに依るものだったらしく、地面に出来た黒だまりは蒸発を始めていた
以;メ益゚以「ココマデ、トハ……」
時雨「ねぇねぇどんな気持ち?手違いで呼び寄せた最ッ高に可愛い女の子にぶっ殺されるのってどんな気持ち?ご褒美?」
( T)「ねぇねぇどんな気持ち?こんなアホにぶっ殺されるのってどんな気持ち?」
時雨「死ね」
( T)「お姫様に向かって死ねとはなんだお前」
天龍「ほんとお前ら二人揃うとふざけてばっかだな」
時雨はクナイをクルクルと弄んだ後、上に投げてホルダーポーチの蓋を開ける
空中で回転しながら落下したクナイは、寸分違わず内へと収納された
ポーチの蓋を親指で弾いて閉めると、片側だけ展開した砲塔を代わりに握った
時雨「しぃの誘拐に城和泉の暴走、桜禍糖の流通に、部隊の私物化。僕の私物を連れ去った上に、世界一可愛い僕の顔に傷までつけた」
( T)「誰がお前の私物だ」
時雨「執行猶予無しで余裕の死刑だね。最後に言い残すことは?」
こいつ絶対言い終わる前に殺るよ
言い終わる前に、砲塔が火を噴く。榴弾が爆散し、茂名の上半身が吹き飛んだ
辛うじて残った下半身もバタンと呆気なく倒れ、徐々に融解していく
やるかなって思ったら本当にやりやがった。情け容赦無さ過ぎて笑う
抜丸「キュウ」
そんで砲撃音で抜丸が伸びた。わかるけど、すげーうるさいけど
時雨「はぁー、お腹空いたし、帰ろうか」
秋雲「さんせー」
( T)「『さんせー』じゃねえよ。まだなんも解決してねえだろうが」
時雨「そうだっけ?」
( T)「お前、あの洋館で茂名の話聞いてた?」
時雨「オッサン同士の会話なんて覚えとく必要あるの?」
( T)「はいアホ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!!!!!!」
時雨「クソ提tあだっ!?」
天龍のゲンコツが時雨の頭に落ちる。余程痛かったのか、時雨は頭を抑えながら呻いた
天龍「秋雲見たか。こいつらの会話はこうやって終わらせろ」
秋雲「それマジで限られた人と艦しか出来ないから。そんで、まだ何かあんの?」
まだ何かもクソもない。俺達は『共犯者』をぶっ殺しただけで、肝心の目的を完遂してはいないのだから
夕立「ぽい……」
秋雲「だからそれはもう倒したじゃん」
( T)「確かに倒した。『時雨』と同じタイミングで呼び込まれた深海棲艦はな」
天龍「って事は……」
ここまで言えば、この場にいる全員が察するだろう。時雨がここに来て約一か月後、今度は俺達が銘治に現れた
天龍「俺達と同じタイミングで呼び込まれた深海棲艦がまだ残ってるってか?」
( T)「そう考えるのが筋だろうよ。世界を相手取るには駆逐艦一匹じゃ物足りねえだろ?」
秋雲「でも、ウチらは貞子ちゃんの霊力的な何かでここに来たわけじゃん?時雨ちゃんの時とは条件違わなくない?」
天龍「いや、同じだろ。そもそも、時雨も呪い的な何かで送り込まれちまったんだろ?それが意図的かどうかの違いだけだ」
紅葉狩兼光「大分ふんわりした感じで来たんだねキミたち」
( T)「いつもの事だ。つまり、菊さんと俺除く三艦分に該当する深海棲艦が追加で呼び込まれている可能性はある」
両世界間の今のバランスは、マッスル鎮守府側マイナス5、銘治側プラス5とかなんかそういう感じかもしれないふええむずかしいはなしわかんないよぉ
( T)「思わず幼女になっちまうかのようなややこしい話だがな……」
天龍「幼女の要素どこにあんだよ」
秋雲「じゃあ、少なくとも残り三体は深海棲艦がどっかにいるってこと~?」
( T)「恐らくはな。それに……」
「おい、無事か!?」
おっと、おいでなすった
(;゚д゚ )「砲撃音が聞こえたが、其方の仕業か!?」
何処かに潜んでいたであろう『首謀者』が
蛍丸国俊「えっと……」
(#T)「そこで止まれ三浦中尉ィッ!!!!!」
三浦、そして彼と一番近い蛍ちゃんの身体が怒号によって跳ねる
(;゚д゚ )「な……どうしたと言うんだ?」
( T)「今までどこで何してやがった?」
(;゚д゚ )「私では足手まといになると思い、他の援護に当たっていた……それについて怒っているのか?」
( T)「違ぇよ。もっと根本的な話だ」
( T)「この事件、お前が主導だろ」
(;゚д゚ )「は……何を根拠に?我々は協力者だろう!!」
( T)「協力?ああ、まぁ、行動は共にしてたが、俺は一度たりともお前を信用しちゃいねえ」
(;゚д゚ )「それは私が陸軍と言う立場だからか?」
( T)「いーや、ちゃんと理由はあるぜ。そもそも、地下牢で出会った時から会話の違和感と矛盾があった」
だから俺は『観察』と、会話の中に幾つかの『仕掛け』を施した
奴は気を抜いていたのか、そもそもアホだったのか、まんまと引っかかりやがった
( T)「一つ一つ説明してやろうか?最初の違和感はお前の手首だ」
(;゚д゚ )「手首?」
( T)「今はもうヤバめの薬で治ってるが俺は両手首に『擦り傷』があった。陸軍に連れ去られて、拘束された時に出来たもんだろうな」
時雨「拘束具何製だったの?」
( T)「革だけど?」
時雨「なんで引き千切って皆殺しにしなかったの?やる気あるの?」
( T)「ごめんちょっと静かにしてて?」
( T)「だが、俺がお前を壁に押し当てた時、『手首』は綺麗なもんだったよ。つまり、『拘束』の痕は残ってなかった」
( T)「可笑しいよな?裏切りがバレた奴を縛り付けもせず、フリーハンドのまま制裁を加えるなんてよ?」
(;゚д゚ )「……憶測で物を語るのは賢い行いとは言えんぞ」
( T)「最後まで聞けや。これと関連してもう一つ違和感が生じる。お前が飲まされたっつー『桜禍糖』だ」
( T)「危険性をわかっているなら、当然抵抗はする。いくら茂名の頭が悪かろうが、それくらい察するだろうよ」
( T)「なら当然、確実に注ぎ込むためには俺と同じく椅子にでも縛り付ける必要がある。まぁ、飲まされてる間は気絶してたとでも言い訳は出来るがな」
所がどっこい、目の前のアホはその逃げ道すらもテメーで潰した
( T)「だがお前はこうも言った。桜禍糖を飲まされた時、『すぐに吐き出した』と。意識のねえ人間には出来ねえ芸当だよなぁ?」
(;゚д゚ )「だが実際、私の身体はあの毒によって犯されている。それは貴様も見た通りだ」
( T)「そんなもん幾らでも演技出来んだろうが。証明にはなりゃしねえよ。ついでに言うと、『すぐに吐き出した』ってのも怪しい証言だぜ?」
(;゚д゚ )「何が……?」
( T)「俺が飲まされた時は、一気に身体の力が抜けた。抵抗する余力も残されないほどにな」
( T)「テメーも同じ物を飲まされたかどうかは知らんが、裏切り者に薄めた毒を注ぎ込むとは思えねえし、ますます疑惑は深まった」
(;゚д゚ )「……」
お喋りは得意ではないらしい。いいだろう、続けさせてもらう
( T)「次。これはキモい洋館で茂名と会話してからずーっと残ってた謎なんだがな、奴は俺達の帰還を引き換えにこれから起こることに対して一切の手出しをするなと要求した」
( T)「当初、俺達は時雨……『艦娘』の兵力と未来の情報を引き換えにそれを引き出す筈だった。だが、奴はほぼノーリターンで特異型禍要柱を差し出すと言った」
紅葉狩兼光「時雨を売るつもりだったの!?酷いよ!!」
( T)「しねえよそういう体で陸軍を白か黒かハッキリさせようって作戦だったんだよ」
時雨「酷いよねー、僕をあんなやらしい場所に連れて行ってさぁー」
( T)「お前ちょっと黙れ」
( T)「そこで俺は思った。もしかしたら情報は『必要ない』のではなく、既に『ある』んじゃないかってな」
(;゚д゚ )「……それと、私に何の関係が?」
( T)「あるんだな、これが。俺との会話を覚えているかどうかは知らんが、一度こう言ったんだ」
( T)「『ロシア、アメリカを手中に収める為に圧倒的兵力の増強を企み始めた』」
( T)「お前はそれにこう返したよなぁ?『その通りだ』と」
(;゚д゚ )「……ああ」
( T)「間違っちゃいねえ、間違っちゃいねえよ。だがな、アメ公共とかち合うのはもっと先の話だ」
( T)「それに、茂名は『来るべきロシアとの戦争』とは言ったが、アメリカの事は一言も話しちゃいねえ。なのにお前は俺の問いかけに対してすんなりと『その通りだ』と答えた」
(;゚д゚ )「早かれ遅かれの話に過ぎない。どちらにせよ、茂名の標的は世界へと向いていたはずだ!!」
( T)「かもな。だが、ここに到るまでのお前の隙や違和感を鑑みれば、疑問視して当然の反応だと思うぜ?」
時雨「バカなりに考えて喋ってたんだね。普段からそうならいいのに」
( T)「ああ、お前と違って頭賢いからな」
天龍「一々バカの言う事に反応すんな」
めいじ館からの助っ人も、目の前の男に対して警戒を強める
一番近くにいた蛍ちゃんは、菊さんを抱えたままゆっくりと下がり
逆に俺らの傍にいる紅葉は尻尾の毛を僅かに逆立てて一歩前に出る
紅葉狩兼光「考えるまでも無いよ!!そうだよね、蛍!!」
蛍丸国俊「紅葉さんの言う通りです。城和泉さんや若旦那さんを助けて下さった方々が、嘘を吐くとは思えません」
全く、これまでの苦労が吹き飛ぶね。身体張った甲斐があるってもんだ
(;゚д゚ )「っ……それでも私は……!!」
( T)「わかったもういい。そこまで食い下がるのなら、最後に一つだけ決定的な情報を伝えてやる」
(;゚д゚ )「なんだ……?」
( T)「西暦1885年9月13日から、同年11月25日」
(;゚д゚ )そ「ッ!!!!???」
おっと、青ざめたか。心当たりはあるようだな
( T)「前回の特異型禍要柱による異世界人召喚期間だ。富士見支部……みやこ屋周辺で起こった事件らしいな」
( T)「そして今回、そのクソ柱によって時雨と菊さんが互いの世界間で入れ替わった。『入れ替わり』、女将はそこが引っかかった」
( T)「御華見衆本部、そしてみやこ屋に『前回の特異型発生時に捜索願を出された奴はいるか』と調査依頼を出したらしい」
(;゚д゚ )「……」
( T)「そしたら、一人だけその期間に該当する行方不明者がいたそうじゃないか。なぁ?」
( T)「異世界旅行は楽しかったか?三浦中尉殿」
(;゚д゚ )「……」
.
菊さんが今回発生した特異型で俺ら側に送られてきたのなら、前回も同じような現象は起こったのではないかという仮説からの調査結果
その被害者が、まさかめいじ館と内通していた陸軍将校だったとは思っても居なかっただろう
前回の特異型発生時に、別世界側の人間と三浦が『入れ替わった』としたなら、未来の情報源の説明もつく
もしもそれが『俺達の世界』であるならば、艦娘や深海棲艦の情報すらも手に入るだろう
当然、これも推測に過ぎないが、だとしても行方不明期間の一致はあからさまに怪しい。少なくとも、捕縛及び尋問の対象にはなる
( T)「まだ『違う』と言い張るのなら、同行と留置のご協力を願いたいもんだがね?疑惑が晴れた時には、既に何もかも終わってるだろうが」
( T)「それとも……化けの皮を剥がしてみるか?こっちはまだまだ遊び足りねえ奴が残ってんでな」
( д )「……」
下手な言い逃れが尽きたのか、三浦は言葉を失くしガクリと項垂れた
余裕のある天龍と紅葉に目くばせをし、身柄の確保を命じる
だが茂名であの暴れ振りだったのだ。何か隠していないワケが無い
( T)「……」
『大人しい』。二人が駆け足で近づいて行っても、逃げる素振りすら見せない
諦めたか?それとも、俺の推理が間違っていた?いや、怪しい事に代わり無い。間違いだとしても容疑者は一人減るんだ
( д )「……」
( д )「『迂闊』だな」
(;T)そ「ッ!!」
右脇、抱えている若から『悪寒』が腕を伝わり身体を昇る。咄嗟に逆側の抜丸を投げ飛ばした
『しまった』。若も『桜禍糖』を流し込まれていたのなら
(* Д )「オオオオオオオオオオ……!!」
体内に『禍魂』を宿してるって事になるじゃねえか!!
乱暴に振られた左肘が、下腹部にめり込む。細腕から放たれたとは思えない威力に、身体が苦痛で前のめりになった
しかも悪い事に右腕は茂名に殴られ皹が入っていた。これも力づくで解かれる
(* Д )「ゴァァァァ!!!!」
時雨「こいつっ……!!」
(;T)「やめろッ!!!!!」
時雨「なぁ!?」
抑え込もうとした時雨を止め、俺の首元に伸びた若の手を掴んで抑える
やはり人の力じゃない。このままだと、若の身体が先に潰れちまう
(;T)「奴が操作しているなら……生死の剥奪権すら手の中にある可能性がある!!」
(;T)「若はまだ『人質』だ!!迂闊に手を出せば、どうなるかわからん!!」
(* Д )「ゴ……ガ……!!」
( ゚д゚ )「見た目より聡明だな。驚いたよ」
まんまと俺から『禍魂退治の専門家』を引き剥がした三浦の表情に、先ほどまでの焦りはない
『バレた所で問題ない』とでも言いたげな、余裕すら感じる
天龍「てめぇ……」
( ゚д゚ )「おっと、私を刺激しない方が良い。彼の言う通り、私の指先一つ傷つけば、椎名くんの中にある禍魂は何をしでかすかわからんぞ」
紅葉狩兼光「ひ、卑怯者……!!」
( ゚д゚ )「用意周到と言ってもらいたいものだがね。ああ、安心したまえ。椎名くんをどうこうするつもりはない」
確かに、奴の協力者には未だ姿を見せない『北谷菜切』がいる。若に何かあれば、矛先は三浦にも向かうはずだ
なら、目的は一体何か?考えるまでも無い。追い詰められた悪党が取る道は片手で数えられるほどしかない
(;T)「『時間稼ぎ』か……!!」
( ゚д゚ )「その通り」
紅葉狩兼光「ッ……」
蛍丸国俊「……」
比較的傷の浅い二人が目を合わせ、下がろうとするが
( ゚д゚ )「『まだだ』。話は終わってない」
三浦は許さなかった
抜丸「て、提督さん……」
(;T)「大丈夫だ、まだいける」
と、不安げな表情を向ける抜丸に強がりを言ったが、正直な話、禍魂と右腕の皹で限界が近かった
( ゚д゚ )「艦娘とやらの練度、装備の火力、そして率いる隊長自身の強さ。見事だった」
(;T)「そりゃどうも……賞賛はいいから結論だけ話せ」
( ゚д゚ )「これは失敬。では本題を」
( ゚д゚ )「『海で会おう』。無事で済んだらな」
(;T)「無事……!?」
それだけ言い残し、三浦は背を向けた。言葉の意味は、すぐに理解した
(* Γ )「ゴプ……」
頬を蛙のように膨らませ、唇の端から黒い液体を垂らせる若
『またゲロか』。呆れと共にそう思った瞬間には
(* Д )・'.。゜「ゴボボボボボゴゴボボボ!!!!!」
噴水のように勢いよく、顔面に禍魂が吹きかけられた
「「提督!!」」
時雨と秋雲の声がするが、応えられない。スライムのように粘り気のある禍魂が、気道や食道を塞いでいた
体内に入って直ぐにわかった。今度は『ガチ』で俺を獲りに来たと
(;T)「……!!」
掴む腕越しに、若の身体の力が抜けていくのを感じて放す。その手を広げて、『近づくな』とボディランゲージで伝えた
気分はシンビオートに犯されるエディ・ブロックか。異世界に来てヴェノム化とか、弥生が聞いたらどんな顔するかな?
(;T)「……」
クソ、意識が遠のいてきやがった。これはもう任せるしかない
『無事で済んだらな』と言ったなあの野郎。その言葉、覚えてろ
(;T)「」
絶対にテメーの元まで辿り着いて、顔面陥没するまでぶん殴ってy――――
「繝槭ャ繧ケ繝ォ繝槭ャ繧ケ繝ォ繝槭ャ繧ケ繝ォ!!!!!!!!!」
ようやく喉から発せられた声は、散々聞いた獣棲艦と全く同じ、おぞましい叫びだった
.
第四章へ続く
次回で銘治時代編最終章になります
「艦隊これくしょん」カテゴリのおすすめ
「ランダム」カテゴリのおすすめ
コメント一覧 (33)
-
- 2018年09月27日 16:10
- 艦天だけどカロリーたけーなー
このカロリーで次まで待つか
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- 2018年09月27日 17:13
- そういやマッスル鎮守府新作無いな過去作見返そうかなと思ってたところにこれかよ(歓喜)
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- 2018年09月27日 17:46
- ナオルヨ!君の高速修復剤って人体には強すぎる(艦娘専門店へようこそより)はずなのに何でこの筋肉は平然としてるんですかね……
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- 2018年09月27日 18:28
- ※4
どうやら君は筋肉が足りないようだなぁ…?
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- 2018年09月27日 18:58
- マッスルにもダメージが通ることがあるのがわかって少しほっとする。
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- 2018年09月27日 19:27
- 獣型って最近のゾイドとバイオゾイドの中間みたいなデザインしてそう。しかしこいつら、俺達が地獄だ言い出してもおかしくなさそうだな。
※4
プロレスラー並みな上に雑魚級とはいえ深海凄艦殴り殺せる筋力と体力あるし、筋力で強引に納得させられるだろ。筋肉だし。
それに知らん間に何回か使ってるらしいし、死なない程度の量見極められてたり耐性も付いてるんじゃね?
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- 2018年09月28日 02:03
- 三章はアクション巨編だったな!熱いね!
オークラ先生、普通に強かったんやな。
最終章はよ!はよ!!
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- 2018年09月28日 03:52
- ふふ怖さんがマジで怖いのか(困惑)
いいぞ、もっとやれ
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- 2018年09月28日 06:16
- ※5 ※7
ギャグ描写とか筋肉じゃなくてガチで何かの伏線かも知れないからこのシリーズは油断できない。
コラボ先でオマール海老がトンデモ伏線に化けた例もあるし。
しかしこの人こんな熱い作品書ける人だったんだね。でも考えてみたらお間抜けやってるように見せかけて乳首相撲とか幽霊プロレスとかオマール海老とかアクション描写はかなりしっかりしてたな。
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- 2018年09月28日 07:01
- マッスル提督艦娘説
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- 2018年09月28日 07:17
- マッスルが昔海軍になんやかんやされたの、男にも艦娘の能力を身に付けさせる実験だったとかテンゼン
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- 2018年09月28日 13:00
- ハイブリット深海棲艦やばいね。駆逐艦クラスですら
マッ鎮の上位陣と良い勝負なんて絶望しかねーわ。
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- 2018年09月28日 13:18
- 米10
この人はラブコメもできるぞ
気になる人は「('A`)マーケティング・レンタルコミックスのようです」で検索だ!!
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- 2018年09月28日 14:26
- ※10 ※12
思い当たるとしたら例の火傷の原因のナニカサレタ時だよなぁ。この世界じゃ艦娘登場前は普通に歩兵が戦ってたらしいから実力は素の実力でも納得しちまいそうだが。
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- 2018年09月28日 16:40
- 銘治時代編は終わっても別の章が始まりそうな盛り上がり方してる!
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- 2018年09月28日 20:01
- 待ってたぜ兄弟!!
相変わらずイカした筋肉してるな!
色々今後が楽しみな展開だが、最終章は『神威の断頭台』か『マッスルスパーク』を決めて欲しいぞ!!
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- 2018年09月28日 20:27
- ※15
リンク張ってある現行(エンド・オブry)ではギコ兄貴がマッスルと共同でヘ級ぶっ殺してるしなぁ……比較的弱い方と思われるロマネスクでも部下付ならイ級とかぐらいなら倒せるくさいし
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- 2018年09月28日 21:33
- 待ってたぞ!オイオイオイ!次号胸熱過ぎだろオイ!
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- 2018年09月28日 23:08
- ※18
コラボ先の世界観でいうなら人型の深海棲艦だろうと近接なら普通のナイフが刺さるからな
毎日360kgのデッドリフトとトレーニングをこなすマッスルなら拳1つで深海棲艦を沈めてもおかしな話じゃないな
ムルマンスクでは獲物も使ってたし非人型の通常種じゃ相手にならないだろ
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- 2018年09月29日 04:25
- いやー最近面白そうなのなくて気い抜いてたら乗り遅れた。
修復剤や最後の部分見ると、マッスル提督の深海化がフラグとして建った様にも見える。
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- 2018年09月29日 06:39
- fry away…
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- 2018年09月29日 07:22
- 年内に完結させてくれ!筋肉使ってええから!
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- 2018年09月29日 19:25
- 小烏丸って男子だったのね。ちょっとビックリ。
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- 2018年09月29日 19:30
- と思ったら別世界の小烏丸ダッタ
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- 2018年09月30日 10:35
- 面白いんだけどスパンが長くてなぁ・・・毎回最初から読み返しよ!
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- 2018年09月30日 14:31
- すごい濃かった(意味深)
次回も大期待でごわす
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- 2018年10月02日 03:05
- ※12
マッスル提督が改造されて艦娘の能力を入手…
つまりマッスル提督は男の娘だった…?
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- 2018年10月05日 03:13
- 普通なら不安しかない終わり方だが筋肉ならどうにでもするだろうという謎の安心感
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- 2018年10月11日 11:51
- 相変わらず筋肉への絶対的信頼感に溢れた米欄である
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- 2018年10月18日 12:12
- 待ってたぜ…この瞬間をよォ…!
相変わらずの熱量と筋肉に夏に舞い戻った気分だぜ!
最終章も待ってるぜ!
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- 2018年11月02日 13:26
- 良い雨が降る場所にての続きは一体いつなんだ…
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- 2018年12月27日 01:23
- このシリーズここまで一気に読んだわ
なんか天華百剣てのにも俄然興味がわいてきた
今回はアクション多くてメッチャ熱かった!
最終章はよ!!