モバP「僕は魔法使い」卯月「私がシンデレラ?」
Pとキュートな女の子たちシリーズ
モバP「未来のお嫁さん?」響子「はい!」
モバP「懐かしのお隣さん」美穂「お、お兄さん!?」
誤字修正版
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『うんうん、“普通”に明るくてかわいいし、勉強もできる、何より一緒にいて楽しいしね!』
友達。
『あ、でも運動は少し苦手か?でも、運動音痴ってわけじゃないしなぁ』
学校の先生。
『迷惑も掛けなさそうだし、“普通”そうで羨ましいわ』
親戚。
もちろん、それが悪い意味ではないことは相手の話し方、表情から分かっていました。
ただ、大多数から手間の掛からない子、真面目な子だと思われていたということです。
初めはそこまで気にしていなかったのですが、小学校に入った辺りから気にしだすようになりました。
卯月父「今日、会社の同僚にライブのチケットを3枚貰ったんだ。良かったら今度の休日、家族で観に行かないか?」
卯月母「まあ、誰のライブかしら」
卯月父「ええっと、確かアイドルの――だったかな。僕は芸能界には疎いから、あまり詳しく知らないんだが…なかなか人気なアイドルらしいぞ?」
卯月母「――ですって!?人気過ぎて、ライブチケットが一瞬で売り切れることで有名なあの――!?よくチケットを譲って貰えたわね」
卯月母「私、是非行ってみたいわ♪」
卯月父「そうか…卯月はどうだい?」
うづき「アイドルのライブ…」
うづき「わたしも…行ってみたいな」
卯月父「よし、決まりだな」
こうして、私は家族と一緒にアイドルのライブを観に行くことになりました。
会場の席に着き、ライブ開始を待つだけとなった僅かな時間、私達家族は今か今かと待ち詫びていました。
卯月母「まだかしらまだかしら、早く始まらないかしら」そわそわそわそわ
卯月父「ママ、もう少し落ち着いたらどうだい」
卯月父「ま、まさかママがここまでアイドル好きだったとは…」
うづき「……」どきどき
卯月母「あっ、そろそろ始まるわよ!」
そして、アイドルがステージに現れた途端、会場全体に大きな歓声が鳴り響きました。
ワーワー ワーワー ワーワー
卯月父「凄い歓声だな…まさかここまでとは」
卯月母「キャーーーー!!――ちゃあああん、頑張れーーーー!」
そして曲の前奏が流れ始め、会場が更に沸き立つ
アイドル「~~~♪~~~~~!!」
うづき「わぁ~!」
アイドルが歌うたびに、会場にいるすべての人達の心が一つになっていきました。
鮮やかに会場を彩るサイリウム、ステージを照らす数多のスポットライト。
この世のものとは思えないほど眩しく、輝いた世界が私の目の前に広がっていました。
その時の感動は今でも忘れられません。
それからというもの、私はアイドルに対し、強い憧れを持つようになりました。
友達A「ねえねえ聞いて!私の知り合いの話なんだけどね…」
友達B「なになに、どしたの」
卯月「?」
卯月「! アイドルになったの!?」
友達A「うんっ!ずっと夢だったらしくて、すっごく喜んでいたんだ~ 私まで嬉しくなっちゃって」
友達B「はえ~すごいなあ」
話を聞くと、アイドルを目指す人たちが集う養成所というものがあり、Aちゃんの知り合いはそこに通っていたそうです。
私は今まで、アイドルというものは事務所の人にスカウトされて初めてなるものだと思っていたので、Aちゃんの話には驚きを覚えました。
卯月「養成所…かあ」
卯月「アイドルを目指す者たちが集う場所…本当にあるんだ…」
家に帰宅してから、PCを起動して調べてみると、確かにアイドル養成所というものがありました。
養成所の公式サイトには、実際にデビューを果たした人たちの写真が掲載されており、そこには、よくテレビで見かけるアイドルの顔もありました。
遠い世界の話だと思っていたんです。でも、身近な所で夢を叶えた人がいるという話を聞き、自分の中で、アイドルになりたいという気持ちが大きくなっていきました。
しばらくの間、考えた後、私は両親に養成所に通いたいという話を打ち明けました。
パパは少し渋っていましたが、ママの援護射撃もあり、遂には折れ、私は無事、養成所に通うことを認めてもらうことができたのです。
候補生たち「「「「1、2、3、ハイっ!」」」」
卯月「1、2、3、は、はいっ」よろっ
先生「卯月さん!テンポがズレてますよっ!しっかり合わせて!!」
卯月「は、はい!すみませんっ!!」
先生「今の所、もう一度するわよ」
候補生D「ファイトだよ、卯月ちゃん」
候補生E「落ち着いてやれば大丈夫大丈夫」
候補生F「ほらほら、深呼吸、深呼吸」
卯月「ありがとう、みんな」ハァハァ
運動神経が特別優れていたわけでもない私にとって、それらは大変なものでした。
それでも、頑張ることができたのは、同じ境遇の仲間たちがたくさんいて、みんなで励まし合っていたからだと思います。
卯月(卯月、頑張りっ、ますっ!!)ハァハァ
その間、ひとり、またひとりと同じレッスンを受けてきた仲間が養成所を去っていきました。
受験に集中しなければならないから、他にもやりたいことが見つかったから、自分の上達を感じることができなくなったから、などとその理由も様々で、とうとうの残ったのは私とCちゃんだけになりました。
Cちゃんは、最も養成所に通っていた期間が長く、また、人一倍アイドルに憧れていた子でした。
レッスンが上手くいかず、落ち込んでいる仲間がいると、誰よりも励ましていました。
私自身、何度助けられたか分かりません。そんなCちゃんのことを、私はとても尊敬していました。
何人の仲間が養成所を去ろうとも、Cちゃんだけは絶対にアイドルを諦めない、そう信じていたのです。
ところが…
C「……そうね」
その日、先日受けたオーディションの結果を受け取っていた時のことでした。
卯月「で、でも、大丈夫だよ!また頑張れば、きっと次は…!」
卯月「え…?」
C「次っていつなのよ!!!」ダンッ
卯月「!?」ビクッ
C「たくさん、たくさんレッスンした!!どんなに辛くても、いつかはアイドルになれるって思っていたから…信じていたからっ!!オーディションもいっぱい受けた…でも全部駄目だったじゃないっ!!!!」
今まで貯め込んできた苦しみや悲しみが遂に爆発したのです。
言葉のひとつひとつに痛々しいほどの想いが込められていました。
C「アタシはねっ!卯月が養成所に来るずっと前から頑張っていたのよっ!!お父さんやお母さんにも無理を言ってね!!!なのに…なのに…!!結局、何もかも無駄だったじゃない!!オーディションの通知を受けるたびに、期待が裏切られるんだよっ!!!こんなの…もう耐えられないっ」
C「所詮、私みたいな“普通”の人間には、アイドルなんて無理だったのよっ!!!!!」
卯月「あっ…」
Cちゃんの言葉は全て、私自身にも当てはまることだったのです。
卯月「あ、え…」
C「…とにかく、アタシ、もう、辞めるから。いままでありがと、さよなら」
そう言って、Cちゃんは去っていきました。私ひとりを残して…
卯月「わ、私は…」
それでも…私は……
Cちゃんが養成所を去り、私が養成所に入った当時からの仲間は誰ひとりいなくなりました。
それでも、私は養成所に通うのを辞めませんでした。
レッスンをこなしつつ、オーディションを受け続けました。
どうしても、アイドルを諦めきれなかったのです。
卯月(たとえ、ひとりになったとしても……私は諦めたくない…!卯月、頑張りますっ!)
先生「卯月さんっ!613プロダクションへの所属が決まりましたよ!」
卯月「本当ですかっ!?」
先生「はいっ!遂にやりましたね!!」
卯月「~~~っ、やりましたー!!!」
先生「おめでとう!卯月さん」
先生「卯月さんは努力家で、なにより“笑顔”がとても素敵な子ですからね。きっと613プロでも上手くやっていけますよ」
卯月「先生…」
先生「613プロに行っても、慢心せず、努力を怠らずに頑張るのよ」
卯月「はいっ、今まで本当にありがとうございました!」
卯月「島村卯月っ、613プロでも頑張りますっ!!」
念願のアイドル事務所への所属、本当に嬉しかったのです。これから、私のアイドル人生が始まるんだと信じて疑いませんでした。
「し、島村卯月ですっ、今日から613プロダクションでお世話になります!精一杯頑張りますので、どうかよろしくお願いしますっ」
613プロ所属初日、事務所でこれからお世話になる担当プロデューサーに挨拶をしていました。
卯月「最初は何をするんですかっ?宣材写真の撮影?それとも、衣装合わせですか?」
613P「んー、じゃあ自己レッスンでもしててくれる?今ちょっと手が離せないんだ」カタカタ
613Pは私の顔をチラッと一瞥すると、またデスクワークに戻ってしまいました。
まずは自分ひとりの力でどこまでできるのかを見定める、ということでしょうか?
養成所での経験のおかげで基礎のレッスンはバッチリです!
レッスン場に着くと、そこでは613プロ所属の先輩アイドルのみなさんがレッスンをしているところでした。
「は?あんた誰?アタシたち、今レッスン中なんだけど」
卯月「今日から613プロダクションに所属となった島村卯月ですっ、これからよろしくお願いします!」
「しらな~い、つーかどうでもいい」ポチポチ
「あー、だるい」ダラーン
「ふ~ん、まあいいや、え~と、島村さんだっけ?悪いけど今相手してあげられないから、まあ、私達の邪魔しない程度に、レッスンしているといいよ」
卯月「は、はい…」
「ホラホラ、さっさと続きやるよ、じゃないと613Pがうるさいよ~」
「え~」
「ハア~」
何だか、あまり歓迎されていない…というより興味がない感じでしょうか。
でも、それはきっと私が所属したばかりの新人だからでしょう!
一生懸命頑張れば、きっと認めてもらえます!
卯月「よ~し、卯月、頑張りますっ」タッタッタ
「…」
「…うざ」
「チッ」
時々、トレーナーの方が来られて、簡単な指示を出してはいくのですが、養成所の先生のように手取り足取り教えてくれることはありませんでした。
卯月(あれから数週間、自己レッスンばかりですけど、本当にこのままでいいんでしょうか…?)
卯月「明日、613Pさんに相談してみよう…」
卯月「あ、あの!レッスン以外に何かすることってないんでしょうか!?」
次の日、私は613Pさんに直接尋ねていました。
613P「あー、今日もレッスンじゃダメかい?」
卯月「で、でも、ここ数週間ずっと自己レッスンだけで…」
卯月「掃除…ですか?」
613P「最近、掃除してないから汚くてね~新人でもそれくらいはできるよね?」
卯月「わ、わかりました。頑張りますっ」
613P「ハイ、ヨロシク」
卯月(せっかく頼まれた仕事なんです…頑張らないと…!)
「…」
お仕事といっても、街中でのチラシ配りだったり、着ぐるみを着た顔出しなしのイベント参加などばかりで、歌を披露する機会は殆どありませんでした。
辛い毎日でしたが、いつか必ずチャンスが訪れると信じ、頑張り続けました。
そして、ある日、自己レッスンをするためにレッスン場へ向かっていた時のこと…
『最近のあの子、ウザくない?』
『ホントにねー!』
『あの子のせいで、アタシたちの仕事も減るし、もう散々』
卯月「」ピクッ
『初めて会った時から気に食わなかったんだよね~なにが、頑張りますっ だよ、ウザすぎ』
卯月「!」
『ちょっと可愛いからって調子乗りすぎ、どうせ数合わせで採用されただけなのにね~』
『おまけに、613Pに媚びてまで仕事貰おうとしているし、アタシには無理だわ』
『ひょっしたら、もう体まで売ってたりして~アイツ、ああいう真面目そうな子が好きそうだしさ!』
『ギャハハハハ』
卯月「……………」
自分への容赦ない悪意を持った言葉を聞き、堪えられなくなった私はその場を離れました。
初めて、レッスンを休んだ日でした。
613プロには味方なんていない、それでも、養成所の言葉を胸に諦めませんでした。
卯月(こんなことで、落ち込んでなんかいられない…先生や私を応援してくれたみんなの為にも…卯月、頑張り、ます…!)
そして遂にアイドルとしてのチャンスが訪れたのです。
卯月「ライブバトル…ですか!?」
ライブバトル、それはアイドル同士が曲を披露し合い、勝敗を決めるといったものです。
非常に人気のあるイベントなので、注目度も高く、出場するアイドルにとっては大きな一歩となるでしょう。
それに参加するかを聞かれたのでした。
卯月「はいっ、是非参加させてください!」
期日は1週間後、それまで、今まで以上にレッスンの時間を取りました。
家に帰ってからも、振り付けや発声法の振り返りを忘れませんでした。
そして、ライブバトル当日…
『白熱のライブバトルっっ!勝者は765プロダクション所属、田中琴葉さんです!!!』
「プロデューサー!私…私っ、やりましたっ!!」
「ああっ!よくやったな!!最高のライブだったよ。琴葉の今までの頑張りが実を結んだ結果さ!」
「そんな…この結果が出せたのは、プロデューサーのおかげです!」
「いやいや琴葉が・・・」
「いえいえプロデューサーが・・・」
卯月「………」
対戦相手の子は自分の担当プロデューサーと共に勝利を喜びあっていました。
お互いを強く信頼し合っているのが表情からもわかります。
卯月「…いいなあ」
卯月(私にも、あんな人が居れば、もっと上手くできたのでしょうか…)
卯月「……帰ろう」
卯月「ただいま戻りました…」
613P「ああ、やっと戻って来たか。勝敗は?」
卯月「す、すみません…負けてしまいました」
613P「ふ~ん、そ、まあ別に期待してなかったし別にいいや、次は頑張りなよ」
卯月「……はい」
「くすくす」
「あいつ、負けてやんの」
「だせぇ~」
卯月「………」
こんな…はずじゃ…
一つのライブが終わるたびに、厳しい現実に押し潰されそうになるのを必死で耐えてきました。
そして、613Pに呼び出されたある日のことです…
613P「次のライブの結果は俺も見に行かせてもらうよ」
卯月「613Pさんが…ですか…?」
613P「うん、上が直接現場を見てこいってうるさくってさ~こっちはやることがたくさんあるっていうのに」ブツブツ
卯月「……」
613P「まあ、よろしく頼むよ」
卯月「は、はい」
613P「あっ、そうそう。言い忘れていたけど」
卯月「はい?」
P「響子には、次のライブバトルに参加してもらおうと思いますっ」ドーン!
事務所で美穂ちゃんや夕美ちゃん、美波さんと一緒にお茶を飲んでいた時、突然、プロデューサーさんがやってきて、そう告げてきました。
P「むむっ、ライブバトルを知らないとな?」
響子「す、すみません」
P「それはいけませんね~、それじゃあ…はいっ、小日向君!ライブバトルとは何か、簡単に説明してくださいっ」ビシッ
美穂「え、ええっ!わ、わかりました!P先生っ」
P「はいっ、小日向君!よくできました」なでなで
美穂「は、はいっ。えへへ//」
響子「むー」
美波「あっ!知ってます!確か、二人とも765プロダクション所属のアイドルですよね?」
P「ああ、765プロASは13人全てがランクSだからなあ。しかも、それら全員を一人のプロデューサーがトップアイドルまで導いたって話だ。最近は新しいプロジェクトも始めているみたいだし、まさに化け物レベルの事務所だな」
響子「す、凄いですね…」
同僚P「それは聞き捨てならないな、一番は俺の担当達だぜ?」シュババババ
夕美「プロデューサーさん!?」
P「うわっ、いきなりなんだよ!」
夕美「ふふっ、花の妖精だって///」
美波「全く、調子いいんですからっ、プロデューサーさんったら」にへら~
P「いやいやこっちこそ・・・」
ギャーギャー ワーワー
美穂「か、かわいい…?あ、あう…///」プシュー
響子「も、もうっ!プロデューサーさんったら…!ずっと傍にいて欲しいだなんて、私、15歳だからまだ結婚できませんよぉ///で、でも、プロデューサーさんがどうしてもっていうのなら…私…?」ドキン ドキン
ちひろ「…………………………」(#^ω^)ピキピキ
社長「ん?何だか騒がしいようだが、なにかあったのかね?ちひろk、ヒエッ…」
P「さあ、やってきましたライブバトル会場!響子、やる気の貯蔵は十分か?」
響子「はいっ、やる気満タンですよ~。早くステージに立ちたいですっ」
P「響子も随分と場慣れしたなぁ。初めのライブの時はあんなにそわそわしてたのに」
響子「ふふっ、こう見えて、肝っ玉お姉ちゃんですからっ。それに…プロデューサーさんがいつも傍で見守ってくれるから、安心してステージに立てるんですよ♪」
響子「もうっ、何を言っているんですかっ、まだライブは始まってすらいませんよっ!それに、妹じゃありませんー!」
響子「妹じゃ、お嫁さんになれないじゃないですかぁ…」ボソッ
P「ははは、ごめんこめん。響子の目標は“みんなのお姉ちゃんアイドル!”だもんな」
響子「そ、そうですよ!あははっ、あはははっ!」アセアセ
響子「き、聞こえていたんですかっ!?」カアァ
P「?そりゃこんな近くにいれば聞こえるだろ」キョトン
響子「ううっ…プロデューサーさんの鈍感…」
P「?? まあ、何はともあれ、控室に行こうか。ライブ開始まではまだ時間あるけど、相手側のプロデューサーにも挨拶しておきたいしさ」
トントン ガチャ
P「失礼します」
響子「失礼しますっ」
??「!!…あっ、対戦相手の方でしたか…」ガタッ
P「おはようございます。346プロダクション所属プロデューサーのPです」
卯月「あ、はいっ、613プロダクション所属の島村卯月です。こちらこそよろしくお願いしますねっ」
P「あれ、島村さん一人かい?そちら側のプロデューサーにも挨拶をしておこうと思っていたんだけど」
P「え、でも、もうすぐライブが始まるぞ?」
卯月「613Pさんは…あの…忙しいひとですから、ライブが終わるころには来ると思います…よ?あははっ」
P「そうなのか…」
P(何だか様子がおかしいぞ…?緊張しているのかな?)
ガチャ パタン
響子「何だか、お邪魔しちゃいましたかね…?」
P「いや…きっと緊張していたんだと思うよ」
P(新人アイドルのライブバトルなのに、プロデューサーが来ていない?そんなことってあるのか?それに、何だろうこの違和感…まるで何かに追い詰められているみたいだったな、あの子…)
後ろ髪が引かれる思いではあったが、まずは目先のライブだ。しっかり響子を応援しないとな。
響子「~~~♪」
P「さすが響子、安定しているな」
ライブバトル本番、二人のアイドルがよく見える舞台袖からライブを観ていた。
ミニライブなどで歌った経験もあるからだろう、響子は特に目立ったミスもなく、初ライブの時以上の実力が出せていた。
それに比べ、島村さんの方は基本の動きはできているが、所々で動きがぎこちなくなっていた。
しかし、楽しそうに歌いながら、観客側へ届けるその笑顔はとても魅力的だった。
P(島村さんはまだ動きに固い部分があるが、あの笑顔は本物だ…きっといいアイドルになるぞ…!)
両者ともに曲を披露し終わり、観客と審査員、その両方から投票が行われる。結果は…
卯月「!」
響子「やったー!ピカピカですね!」
P「ああっ!よくやったな、響子!」
P「そうだな、より一層アイドルとして成長したんじゃないか?」
響子「ホントですかっ!もしそうなら嬉しいなぁ」ニコニコ
卯月「…っ」ダッ
P(ん?)
P「あ、ああ」
P「…」
P(放ってはおけないよな…それに引っかかる所もあるし…)
響子「へ?何かあったんですか?」
P「いや…まだ613プロさんに挨拶していないからね。少し行ってくるよ」
響子「挨拶ですか?なら私も…」
P「いや、僕一人で大丈夫だよ。それじゃ、よろしくっ」タッタッタ
響子「あ、ちょっと待っ…… プロデューサーさん…?」
島村さんが走り去っていった方向へ行くと、彼女とそのプロデューサーらしき男性が会話しているのが見えた。
P「あの~すいまs」
613P「やっぱり君はアイドル失格だよ、島村さん」
P「…!?」
卯月「……」
卯月「ごめん…なさい…」
613P「まったく…こんなライブを観に来させられた身にもなってよ。オレ、君みたいな売れないアイドルと違って忙しいんだから」
卯月「……っ…」
613P「ん?誰?部外者は首を突っ込まないで欲しいんだけど」
卯月「Pさん…?」
P「僕は、346プロダクション所属プロデューサーのPです」
613P「346プロダクション?ああ、島村さんの対戦相手の…これはどうも、え~と、オレは613プロ所属の…」
P「そんなことはどうだっていんです!何ですか、先ほどの会話は!頑張ったアイドルに掛ける言葉じゃありませんよ!!」
P「なっ」
613P「そっちの事務所の事情は知らないっすけど、ウチの事務所、売れないゴミは要らない方針なんすよ」
P「ゴミ…だって…?アンタ、アイドルを何だと思っているんだ!!!」
613P「何って…お金稼ぎのための商品っすよね」
P「」
この男の口から発せられる言葉の全てが僕の理解を超えていた。
僕とこの男ではそれだけ価値観が違いすぎる。
あまりの怒りに頭がどうにかなりそうだった。
613P「って、うわっ、もうこんな時間!?早く戻らないと」ダッ
P「おいっ!島村さんをここに置きざりにしていくつもりかっ!!」
613P「はあ?置き去りもなにも、ソイツはもう613プロのアイドルじゃない。無関係っすよ~」タッタッタ
そういって613Pはそそくさと去っていった。
P「島村さん…大丈夫か?」
卯月「……は、はい…」
P「とりあえず、近くの休憩場まで行こうか。顔色がよくないよ」
卯月「すいません、お気遣いいただいて…」
P「そんなこと気にしなくていいから、さっ」
P「はい、カフェオレで良かったかな」
卯月「あ、ありがとうございます」
P「どういたしまして」
時間がかかりそうだったので響子には先に事務所に戻っているようにと連絡を入れておいた。
少し不満そうだったけど、今の島村さんを放っておく訳にはいかない。
温かい飲み物を飲んで、落ち着いたのか、顔色が少しずつ良くなっていった島村さん。
話を聞くと、彼女は今までのことを話してくれた。
幼い頃からアイドルに憧れていたこと、養成所の存在を知り、家族や友達の応援を受けて通い始めたこと、同期が次々と去っていく中、諦めずに努力し続けた結果、事務所に所属できたこと、事務所で辛いことや悲しいことがあってもアイドルとして輝く夢を諦めきれなかったこと。
ずっと夢に向かって頑張り続けてきた少女の姿がそこにはあった。
P「なっ、どうして、そんな…!」
卯月「アイドルに憧れて、何年も夢を見続けることができた。だから、もう十分かなって思うんです」
P「そんなわけあるかっ!!今まで…今までずっと頑張ってきたんだろ!?努力し続けてきたんだろうっ!?だったら、そんな簡単にあきらめちゃ駄目だ!!」
P「え?」
卯月「あなたに何がわかるんですかっ!!!」
P「!?」
みんないなくなって、やっとの思いで入ることができた事務所でもたくさん辛い思いをして、
それでも、きっと…きっと!憧れのアイドルになれるからって、精一杯努力したのに…頑張ってきたのに、
結局は見放されて…私は何度、自分の理想に裏切られればいいんですかっ!!!」ポロポロ
受ける痛みや苦しみに耐え続けながら。積もり積もったそれらが今、爆発したのだろう。
彼女の言葉には、数年間の憤りや嘆きの感情が込められていた。
P「――」
身を裂かれるような辛い思いをしてきたのだろう、焦がれるような夢を抱き続けてきたのだろう。
それらは決して悪いものではない。辛い思いは再び立ち上がる時のバネにしていけばいい、夢は明日への希望になる。
でも、ソレだけは…認められない。
ソレを認めてしまえば、彼女自身の過去を、夢を、否定してしまうことになる。
プロデューサーとして、“夢を育てる者”として、そんなことは認められない……!
卯月「…えっ…?」
P「過去の努力や頑張り、そのすべてが無意味だった、自分には“何もない”だなんて…そんなことは絶対に認めないっ!認めてやるもんかっ!!!」
卯月「! で、でも、私にいいところなんて…一つもないっ、今日のライブバトルだって負けちゃったじゃないですかっ!!」
卯月「なら…!」
P「でもっ!!それは、君自身に“何もない”ことの証明にはならない!!!」
卯月「ど、どうしてそこまで言い切れるんですかっ」
卯月「…えっ……?」
P「歌やダンスの基本はできていたけど、所々動きが固くなっている部分も確かにあったさ。でも、それ以上に、みんなを喜ばせたい、楽しんで歌いたいという思いが伝わってきた。そして、なにより、君の表情が忘れられない」
卯月「表…情…?」
卯月「!」
『卯月さんは努力家で、なにより“笑顔”がとても素敵な子ですからね』
卯月「…笑顔」
卯月「わ、私は…」
P「…島村さん、これを…」スッ
卯月「これ…は」
P「島村卯月さん、あなたを我が346プロダクションにスカウトします」
卯月「!」
卯月「で、でも、私、普通の女の子ですよ…?これといった取り柄もない普通の…」
P「違う。君にしかない、君にしか出せない魅力が絶対にある。ありのままの君がいいんだ」
卯月「たくさん…迷惑をかけてしまうかもしれません…」
P「女の子に頼られることに悪い気はしないさ」
卯月「本当に…私なんかでいいんです…か…?」
P「なんかじゃない、君じゃないと駄目なんだ」
P「僕が、君を舞踏会へと連れていく。ドレスや馬車も用意する。もし、道に迷ってしまったら、躓きそうになったのなら、僕が手を引こう。だから、この手を取ってくれ!」
そうだ、プロデューサーっていうのは魔法使いみたいなものなんだ。
“普通”の女の子(シンデレラ)を王子様(ファン)のもとへ連れていく。
それが役目なんだ。
P「うん…」
卯月「もっと…もっと、歌い続け、たいです…!」
P「うん…!」
卯月「ステージの、上で、輝きたいんです…!」
P「絶対にできるさ!僕と島村さん、二人一緒なら!」
P「おわっ、ちょ、ちょっと島村さん!?こんな所で抱き着くのは不味いよ!」ギョッ
卯月「ち゛か゛い゛ま゛す゛―!!う゛つ゛き゛て゛す゛―!!!」ウエーン
P「あわわわわ、こんなところ誰かに見られたりでもしたら…!」オロオロ
響子「挨拶にしては時間が掛かり過ぎだな~と思って探しにきたんですが……別の女の子を泣かせて抱き合っているって、どういうことですか……」ハイライトオフ
P「ち、ちがっ、これには深い訳があってだな…」
響子「言い訳無用ですっ!プロデューサーさんっ!!浮気するなんて、私、絶対に許しませんからああああああ」ウワーン
P「ま、待ってくれ!せめて話だけでも…響子!きょうこおおおおおお」
卯月は346プロ所属のアイドルとして活動を続けることになった。
事務所のみんなも卯月を歓迎していた。もちろん響子との誤解もすぐに解けた。
だが、そのお詫びとして、休日、一緒に出掛けることになるのだが…それはまた別の話だ。
そして、卯月が事務所の一員になって月日が流れ…
卯月「……」
P「おーい、こんなところで何ぼーっとしてるんだ~?響子と美穂はもうスタンバイしてるぞー?」
卯月「あっ、プロデューサーさん」
P「何か不安なことでもあるのか?良かったら話聴くけど」
P「なるほど…今じゃすっかり3人とも人気アイドルだからなぁ」
卯月「はい…アイドルとして、大きなステージの上に立つことは、私にとって、ずっと憧れでしたから。悲しいことや辛いこともたくさんあったけど…諦めなくて本当によかったって…今はそう思うんです」
P「…そっか…」
P「…ああ、覚えているよ」
卯月「私…本当に嬉しかったんです。私がいいって…ありのままの私がいいって言ってくれたことが」
P「…」
卯月「…あははっ!ご、ごめんなさいっ、ライブ直前だっていうのに、何だか湿っぽい感じになってしまいましたねっ!ダメだなぁ、私っ!」
P「…僕は卯月が、いままでどんな思いでアイドルを目指してきたか、想像することしかできない。でも、これからは違う。僕やユニットの仲間達がいる、もちろん事務所のみんなだっているんだ。だから、卯月はもうひとりじゃない…一緒に登っていけるんだ。だから…」
卯月「プロデューサーさん…?」
卯月「!」
「早く早くー!」
P「ほらっ、二人が呼んでるよ」
卯月「はーい!今行くー!…プロデューサーさん、行ってきますね」
P「うん、頑張っておいで」
卯月「はいっ!」ダッ
だが、物語はまだ始まったばかりだ。
これからも、色々な出来事が彼女を待ち受けているだろう。
でも、きっと乗り越えられる。なぜなら、彼女はもうひとりじゃないからだ。
終わり
ここまで読んでくれた皆さん、ありがとうございました!
もし見かけた時は、よろしくお願いします!
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コメント一覧 (19)
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- 捨てたアイドルが別の会社に移ったらスターアイドルになった時613プロはどういう顔してるんだろう
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- 2018年09月15日 17:47
- ノーマルタイプ
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- 2018年09月15日 17:48
- 憎いよぉ…
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- 2018年09月15日 17:56
- テンプレくずPすぎて面白くなかった
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- 2018年09月15日 18:35
- 清楚で天然。
性順派の三女か。
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- 2018年09月15日 18:47
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そりゃドクズなんだからワシが育てたって起源主張&たかりよ
でもまあ大手の346所属シンデレラガールにケチつけたら即潰されるけどな
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遊戯王ゼアルの最終決戦でドン・サウザンドに吸収されそうになって「死にたくねぇよ!」って言ってる時のベクターみたいな顔
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- 2018年09月15日 20:20
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- 2018年09月15日 20:54
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何で勇次郎が出て来るんだよwwって思ったら、そっか。豆タンクのママもオーガだったな。
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- 2018年09月15日 20:55
- 卯月は尻が全然普通じゃないよ、むちむちプリンだ安心しろ
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- 2018年09月15日 21:16
- 613ってなんぞ?無意味?
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- 2018年09月15日 21:41
- Pのセリフが臭すぎて……
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- 2018年09月15日 21:57
- P.C.SのSS良いぞー。三人揃ったあとのSSも書いてけれんかな。
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- 2018年09月16日 01:17
- 清楚で天然……一体何本ゆかりなんだ……?(フルートを片手に)
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- 2018年09月16日 02:56
- 卯月が憧れたのは舞か春香か…。
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- 2018年09月16日 21:01
- ※17
765は余裕で現役みたいで、ライブは幼少期に見たっぽいし舞さんでしょ
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- 2018年09月16日 22:12
- ふーん、同じユニットでプロデューサーを取り合うと活動によくないよ
プロデューサーは別の人が付き合うのが3人ユニット全員公平だよね
例えば渋谷凛ちゃんあたりが付き合えばいいと思う