男「俺は未解決事件が大好き! だから……」
男(だから、自分で立ち上げた未解決事件を扱うサイトで、独自の推理や見解を披露するのが趣味だ)
男(アクセス数はまずまず。備えつけの掲示板も盛り上がってる)
男(未解決事件についてああでもないこうでもない、と語り合うのが好きな人は意外と多いんだろう)
男(そして、時にはこういうメールが届くこともある)
『サイトに掲載されている事件のデータや推理、大変感心しました』
『ぜひ一度、オフ会のような形でお会いすることはできませんか』
男(こういう申し出、俺はもちろん大歓迎である)
男(いいですよ、っと……)カタカタッターンッ
男(さて、しっかり準備して行かないとな!)
男「やぁ、どうも! はじめまして!」
黒眼鏡「はじめまして!」
青年「はじめまして……」
女「はじめまして」
黒眼鏡「今日は男さんのお話をたっぷり聞かせて下さい」
男「俺なんかの話でよければ、いくらでも話しますよ」
黒眼鏡「そうなんですよ!」
黒眼鏡「俺たちもネット上で知り合った、同好の士というやつです」
女「そうそう!」
青年「……うん」
男「なるほどぉ~、同じような趣味を持つ方々と会えて光栄です!」
黒眼鏡「俺はグラタンにしようかな」
男「じゃあ、俺はハンバーグステーキで」
女「私はパスタ!」
青年「僕はドリンクバーだけでいいです……」
女「相変わらずねえ。ただでさえガリガリなのに、ますます痩せちゃうわよ」
青年「ほっといてくれよ……」
青年「……」
黒眼鏡「腹も膨れたし、さっそく始めましょう」
男「分かりました」
男「皆さんの方から、この事件の推理を聞きたいってリクエストはありますか?」
女「ん~……じゃあまず≪○×沼殺人事件≫について詳しく聞きたいな!」
男「ああ、あの事件ですか。分かりました」
男「後頭部を殴られた一人の男性が沼に浮かんだ状態で発見され」
男「犯人は未だ見つかっていません」
黒眼鏡「ふむ」
男「その乱暴な手口から、犯人は大柄な男性像が想像され」
男「被害者と犬猿の仲だった職場の同僚が容疑者扱いされたこともありましたが」
男「結局、犯人逮捕には至ってません。物証にも乏しく、このままいけばまず迷宮入りでしょう」
青年「……」
黒眼鏡「ほう、どうして?」
男「なぜなら、○×沼からすぐ近くのところには、海があります」
男「死体を遺棄するなら、どう考えてもそちらの方がいいに決まってる」
男「ではなぜそうしなかったのか……それは犯人は力の弱い女性だったから」
男「被害者の女性関係をもう一度洗い直せば、もしかしたら真犯人が浮かび上がるかもしれません」
黒眼鏡「なるほど……みんな最初から犯人は男だと決めつけてましたもんね」
青年「じゃあ≪△□市スーパー強盗殺人事件≫を頼むよ……」
男「分かりました」
男「この事件は△□市の小さなスーパーで、店員さんが刃物で刺されて殺されたという事件です」
男「監視カメラには太った男が映っており、警察が作った情報呼びかけポスターでも」
男「太った男の似顔絵が掲載されています」
女「うん、なにしろ太ってるって分かりやすい特徴があるんだもんね」
黒眼鏡「逆?」
男「監視カメラに映ってる犯人の太り方、画像が粗いから分かりにくいですが、どこか不自然なんです」
男「だからこの肥満は、犯人のカモフラージュではないかと考えてます」
黒眼鏡「とすると、犯人は――」
男「ええ、犯人は痩せてる人物の可能性が高い」
男「それに、店員さんをメッタ刺しにした手口から、とても臆病な犯人だと思います」
男「いつ自分が犯人がバレるかとビクビクして、今はさらに痩せちゃってるんじゃないですか」
男「……それこそ病的なまでに」
黒眼鏡「≪×△町連続放火事件≫についてはどう推理します?」
男「この犯人は手がかりらしい手がかりを残さず、何件もの放火をした非常に狡猾な人物です」
男「ですが、五件目でのゴミ捨て場放火以降、非常に犯行が雑になっているのです」
男「火の付け方や、ガソリンのばら撒き方に工夫が見られなくなっている」
男「ちなみにゴミ捨て場の放火では、捨てられてたスプレー缶のせいで爆発騒ぎが起こっています」
男「とすると、犯人はもしかすると……」
青年「……もしかすると?」
女「……あっ」
青年「五件目を境に、犯行が雑になったというのはそういうことか……」
男「その通り」
男「現場周辺に住んでいる、もしくは住んでいた、目に怪我をしている人物をあたれば」
男「案外真相にたどり着けるかも……」
男「!」
女「さすが、ご自身で未解決事件専門サイトを立ち上げるだけのことはあるわ!」
青年「……すごいです」
男「いやぁ、どうも……」ポリポリ
黒眼鏡「それで、ここからが今日の集まりの本題なんですけど――」
女「男さんの推理をもとに!」
青年「やりましょう……」
男「そりゃ願ってもない! 俺なんかの拙い推理を本気で頼ってくれるなんて嬉しいなぁ!」
黒眼鏡「またまたご謙遜を」
男「ですが、どうやって? 警察に俺たちの話を持ち込んだりするんですか?」
黒眼鏡「いやいや、警察に手柄を奪われたらつまらないですからね」
黒眼鏡「俺の車でそれぞれの現場を回って、捜査しましょう!」
男「……」
男「あのー、ずいぶんと人気のないところまで来ましたね」
男「周りが山だらけになってきたんですけど……」
黒眼鏡「……」
青年「……」
女「……」
男「えーと、どこまで行くんです?」
黒眼鏡「ここらでいいだろう……。みんな、降りてくれ」
キキッ
黒眼鏡「男さん」
男「はい?」
黒眼鏡「あんたの推理は正解だよ。三つともな」
男「え、どういうことです?」
黒眼鏡「こういうことだ」サッ
男「サングラスの下に……傷が……!」
女「≪○×沼殺人事件≫の犯人は私よ。被害者とは密かに付き合ってたの」
男「な、なんだって……!?」
男「どうして、未解決事件の犯人がこうも勢ぞろいしてるんだ……?」
黒眼鏡「俺たちは未解決事件の犯人同士、ネットの片隅で懺悔めいたことをしてたところ、偶然知り合った」
黒眼鏡「いつ自分が犯人だとバレるかビクビクする者同士、すぐ気が合ったよ」
黒眼鏡「そんな時、俺たちはあんたのサイトを発見したんだ」
黒眼鏡「このままじゃ、あんたか、あるいはあんたのサイトを見た奴らが俺たちにたどり着きかねない」
青年「僕たちはあなたが危険だと判断した……」
女「だからメールであなたを呼び出したのよ」
男「ってことは、お前らまさか!」
男「俺を呼び出したのは、同じ趣味を持った仲間だからじゃなく――」
黒眼鏡「ああ、あんたにこの世からいなくなってもらうためだ」
黒眼鏡「ここでやれば死体も発見されないだろう……悪いが死んでもらう」
パンッ パンッ パンッ
黒眼鏡「がっ!?」
青年「ぐわっ!?」
女「きゃっ!」
ドサササッ…
男「お、放火魔はまだ生きてたか」
黒眼鏡「ぐ、ぐふっ……。な、なんで……銃なんか……」
男「そりゃあ、お前らがこうくることも想定してたからな。これくらいの武装は当然だろ?」
男「結構多いんだよ。俺のサイトを煙たがって、俺を消そうとする真犯人って」
男「俺は今まで、そういう奴を何人も返り討ちにしてきたよ」
黒眼鏡「な、なぜ、こんなことを……。正義感からか……?」
男「正義感? あいにくそんなもん持ち合わせちゃいねーよ」
男「俺は未解決事件が好きだからだよ」サッ
パンッ
男「三つの事件が解決することは絶対になくなった」
男「なんたって犯人が死んじまったんだからな……真相は永遠に闇の中、だ」
男「さぁて、こいつらの死体を埋めたら、とっとと帰るか」
男(俺は未解決事件が大好き!)
男(だから、未解決事件の犯人をあぶり出して殺害して、絶対解決されないようにするのが趣味だ)
― 終 ―
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「ランダム」カテゴリのおすすめ
コメント一覧 (11)
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- 2018年08月16日 22:43
- すぐオチがわかった
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- 2018年08月16日 23:19
- まぁオチはね…
でもコンセプトは面白いから肉付けして設定練ればいい話ができそうで小説として読みたいと感じた
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- 2018年08月17日 01:44
- 三人が真犯人なんやろなとは分かったけどその後の展開は面白いと思ったよ
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- 2018年08月17日 10:18
- ええやんけ
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- 2018年08月17日 15:16
- これで一本読み切り書けるよ
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- 2018年08月17日 16:58
- ええやん好きやで〜
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- 2018年08月17日 17:31
- 男は正当防衛になるの?
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- 2018年08月17日 20:16
- >>7
そもそも死体が見つからなければ殺したことにもならないので問題なし
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- 2018年08月17日 21:40
- 好き
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- 2018年08月18日 04:07
- 本人まで未解決事件になる訳だ
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- 2018年08月19日 11:03
- お願いします続き出してくださいお願いします続き出してくださいお願いします続き出してくださいお願いします続き出してくださいお願いします続き出してくださいお願いします続き出してくださいお願いします続き出してくださいお願いします続き出してくださいお願いします続き出してくださいお願いします続き出してくださいお願いします続き出してくださいお願いします続き出してくださいお願いします続き出してくださいお願いします続き出してくださいお願いします続き出してくださいお願いします続き出してくださいお願いします続き出してくださいお願いします続き出してくださいお願いします続き出してくださいお願いします続き出してくださいお願いします続き出してくださいお願いします続き出してくださいお願いします続き出してくださいお願いします続き出してくださいお願いします続き出してください