一ノ瀬志希「猫の事務所」
これの続きです。
猫『ニャー!』
??『ふふっ。あなたはいつも元気ですね』
猫『ニャニャ……』
??『私ほどじゃないって言いますけど、私はいつか死んじゃいますから』
猫『ニャ?』
??『魔女なんて呼ばれても私はただの人です。ちょっと不思議な事が出来るだけのただの人なんですよ』
??『命を創る事は出来ません』
猫『ニャー?』
??『……そうですね。移し替えるくらいなら出来るかも知れませんね』
??『じゃあこれも教えておきますね♪』
??『きっといつか必要になりますよ』
P「ん……?」
志希「あ、おっはよー。キミがお昼寝なんて珍しいね」
P「あぁ、確かに珍しいね。夢まで見てしまったよ」
志希「ほほーう? ケット・シーでも夢見るんだ」
P「いや、僕も初めてだ」
P「とても懐かしい夢だったよ」
志希「ふーん」
P「おや、どんな夢だったか聞いてくれないのかい?」
志希「志希ちゃんの興味は3分しか保ちませーん♪ にゃははー!」
P「ははっ、そうだったね」
志希「でも、キミが勝手に話すなら止めはしないよー」
P「ふむ。じゃあお言葉に甘えようかな」
志希「主? キミにも飼い主居たんだ?」
P「そりゃね。僕だって元々は普通の猫だよ」
志希「キミの口から普通なんて言葉が出るなんてちょっとビックリかも」
P「かもしれないね。僕も普通じゃなくなって長いし」
P「でも、それは志希もだろう?」
志希「にゃっはっはー。まぁキミ程ではないけどね♪」
P「君はいくつ目だったっけ?」
志希「あたしはもう九つ目だよ。だから、これが最期」
P「……そうか。寂しくなるね」
志希「仕方ない仕方ない♪ あたしはじゅーぶん楽しかったし、この世界の事好きだったよ」
志希「キミのおかげで猫のままじゃ知れなかった事もたくさん知れたしね♪」
P「僕は大したことはしていないよ。それも全て志希の力だよ」
志希「にゃははー。照れちゃうなー」
P「そうだね。志希の薬学に対する知識は主にも勝る気がするよ」
志希「んー? ってことはー、キミのご主人さまは大したことないのかにゃ?」
P「……あの人は、よく自分の事をただの人だと言っていたからね。少し不思議な事が出来るだけとも」
P「まぁ、僕が主の知識を充分に理解できていれば主の凄さを志希にも伝えられたのだろうね」
P「主の知識を志希に充分に伝えられなかったのが悔やまれるよ」
志希「まぁ専門分野じゃない限りは中々難しいよねー」
志希「キミの魔法やら薬草の知識も、あたしにはカガクで解き明かせそうだなって思うもん」
P「ほう。そうなのかい。じゃあ次のケット・シーは志希かな?」
志希「にゃっはっは。ムリムリ。化学的な視点でしか物事を捉えられないあたしには魔法を引き継ぐなんて出来ないよ」
P「そうか。それは残念だね……」
志希「ま、仕方ないよね~。長い猫の一生でも、知るには時間が足りなさすぎるよ」
志希「すべてを知るのは諦めるしかないよね」
P「主も……」
志希「んー?」
志希「ほほう。どうやらキミのご主人さまもあたしと同じ研究者タイプだったようだね」
P「かもしれないね。猫だった僕には全くと言って良いほど理解出来なかったけど」
P「志希。君には悔いはないのかい?」
志希「んー。ない!」
志希「あー、でもなー。みくちゃんの側に居られなくなるのはちょっと残念カモ」
志希「あ、そーだ!」
P「うん? どうしたんだい?」
志希「キミの魔法であたしの命を延ばしてよ」
P「すまないが、僕には無理だ」
志希「……ちぇー」
P「命を創る事は主でも出来なかったからね」
P「きっと、命を創るのは神にだけ許されているのだろう」
志希「ふーむ。そっか。あーあ、ざーんねん」
P「すまないね、志希」
志希「にゃっはっは。まぁ気にしない気にしない」
志希「ところでキミの主ってどんな人だったの? 大悪魔とかだったりして!」
P「はは……。確かにお金にがめついとこはあったけど、悪魔なんてとんでもない。僕にとってはただ一人の主であり、神様だったよ」
P「……神様に言われなければ普通の猫を辞めたりはしないさ」
P「主との約束さえなければ、ね」
猫の事務所
のあ「……」
銀猫「ニャー?」
のあ「えぇ、もうすぐよ」
P「のあとアナスタシアがそわそわしているなんて珍しいね」
のあ「……そわそわなんてしていない」
P「そうかい? その割に落ち着かないようだけど」
のあ「これは……アナスタシアとじゃれているだけ」
銀猫「ニャー! ニャー!」
P「アナスタシアが随分と抗議しているけども」
のあ「……今の私は人。猫の言葉はわからないわ」
銀猫「フシャー!」
P「おやおや」
のあ「……そうだったかしら」
銀猫「ニャー……」
のあ「……わざとらしくなんてないわ」
銀猫「ニャア」
みく「のあチャン! のあチャン! 見て見て! すっごい美人さんな黒猫チャンのきょうだいにゃ!」
P「いらっしゃい、みくちゃん」
みく「あ、プロデューサーさん。こんにちは! お邪魔します!」
P「遠慮なくくつろいでくれ。みくちゃんは大事なお客様だからね」
黒猫「にゃふん」
みく「ありがとうございます!」
みく「のあチャン! ほら! この子達! すっごく美人さんにゃ!」
黒猫「……にゃっ!」
ペロ「にゃにゃーん! にゃにゃ!」
黒猫「……にゃん」
みく「えっ、なんでのあチャン猫チャンに叩かれたの?」
P「ふふっ。どうやらそちらのお嬢さんは自分で自己紹介をしたいそうだよ」
みく「え? どっちの子?」
P「そっちの少し青みがかった黒い毛並みのお嬢さんだね」
のあ「……ペロ。あなたのお姉さんは少し乱暴じゃないかしら」
ペロ「にゃにゃ……」
みく「まぁまぁのあチャン。こっちの子も悪気があったわけじゃないと思うし許してあげよ?」
のあ「みくが言うなら許すわ。感謝して頂戴、ゆ――」
黒猫「にゃんっ」
P「のあ。そちらのお嬢さんは二度も名前を言われそうになって大変ご立腹のようだ」
のあ「悪かったわ……」
みく「えっと、こっちの子がペロチャンでいいの?」
ペロ「にゃっ!」
黒猫「……にゃにゃん」
みく「……」
黒猫「……」
P「ふむ」
のあ「猫の言葉、わかるの?」
みく「あははー……。昔はわかったから大丈夫かなって思ったんだけどなぁ……」
銀猫「……ニャン」
みく「慰めてくれるの? ありがとー。君もすっごい美人さんだね。雪みたいに綺麗な毛並みだね」
黒猫「……にゃっ!」
みく「うん? どうしたの?」
黒猫「にゃにゃん……」
みく「うーん?」
銀猫「ニャー……。ニャニャン。ニャ」
黒猫「…………にゃ」
みく「あれっ、どこ行っちゃうの? おーい、二人ともー!」
のあ「みく。そっとしてあげて欲しいわ」
P「ごめんね。みくちゃん。あの二人はみくちゃんに言葉が通じなかったのがショックだったらしい」
みく「あの、プロデューサーさん」
P「うん?」
みく「二人に『分かってあげられなくてごめんね』って伝えてください」
P「……うん。みくちゃんに代わって僕がちゃんと伝えておくよ」
みく「ありがとにゃ!」
のあ「ところでみく、何か用があったのではないの?」
みく「え? ううん。こっち来たから寄っただけだよ」
みく「あ、もしかしてこれからお仕事だったりした……? お邪魔だった……?」
のあ「そんなことはないわ」
みく「そっかー。良かったにゃ!」
みく「ところでのあチャン」
のあ「なにかしら」
のあ「……」
P「僕に助けを求められても困るよ、のあ」
みく「? 参考にしたいから教えてほしいんだけど、駄目?」
のあ「……ごめんなさい、みく」
のあ「私はお仕事したことないの」
みく「あー、そうなんだ。まだ売り出し中とか?」
のあ「売り出し……?」
みく「うん?」
のあ「……」
みく「のあチャン?」
のあ「……わからないわ」
みく「えっ!? 事務所に入ってプロデューサーさんも居るのに? どういうアイドルになるとかってないの?」
のあ「……彼に聞いて頂戴」
P「えっ。そこで僕に振らないで欲しいんだけどなぁ……」
P「僕だって仕事なんてしたことないからよくわからないし」
みく「えっ!? プロデューサーさんなのに!? 嘘でしょ!?」
みく「普段のって?」
のあ「……ご飯を食べて、お昼寝をして、散歩をして、みくを眺めに行く」
みく「……はい?」
P「あとは何だろう。たまに集会をしたりはするね」
のあ「そうね、忘れていたわ」
みく「えっと、他には?」
P「虫を取ったりもするかな?」
のあ「えぇ、それもやるわね」
みく「……? いったいどーいうことにゃ」
P「普段ののあはこんな感じだよ」
みく「えっと……。じゃあ! じゃあプロデューサーさんは普段どんな事してるの?」
P「僕かい? そうだね。僕はこの事務所の周りを歩いてみたり、顔見知りとしゃべったり、志希の実験を見ていたりだね。あとはのあと変わらないよ」
P「あぁ、でも僕はあまりお昼寝はしないかな」
みく「えぇ……? のあチャンって本当にアイドルなの……?」
みく「うおわぁっ!? し、志希チャン!?」
志希「あはは、ごめんごめん。驚かせちゃった♪」
志希「みくちゃん、ごめんね。ちょーっとプロデューサーを借りていいかな?」
みく「? ウン! いーよ!」
志希「ありがとねん♪」
志希「と言うわけで、王サマ。ちょっとこっちに」
P「わかったよ」
みく「『王サマ』?」
のあ「気にしても仕方がないわ。志希は気紛れだもの」
みく「そうなんだー」
みく「うーん、志希チャンって本当に猫チャンみたいだね」
別室
P「僕になんの用かな。雪美、アナスタシア」
銀猫「ニャー……」
黒猫「……にゃにゃ、……にゃんにゃ」
志希「らしいよ」
P「……どうして『人』になりたいなんて思ったのかな」
銀猫「ニャン、ニャニャンニャン」
黒猫「……にゃん」
P「なるほど。確かに、今のみくちゃんと仲良くなるには人になる方が手っ取り早いけども」
P「君たちにはまだ無理だ」
黒猫「……にゃんにゃ?」
P「何故って言われても。雪美はまだ一つ目。アナスタシアもまだ二つ目だろう?」
P「人になるには最低でも五つ目でないと」
P「志希だって人になれるようになったのは五つ目だったろう?」
志希「うん、まーねー」
銀猫「ニャンニャニャー!」
黒猫「……にゃん……」
P「確かにのあは三つ目だけども……。のあは自然に人になれるようになったわけじゃないよ」
P「あの時はのあにどうしてもと頼まれたから渋々許可を出したけど、そうほいほいと許可は出せないよ」
P「ましてやまだ一つ目と二つ目の君達には特に。どんな影響があるかわからない」
P「そうだろう、志希?」
志希「んー。まぁ、王サマの言う事には一理あるよねー」
銀猫「ニャー!」
志希「そんな抗議されてもなぁー……」
志希「そもそもあたしの『人になるクスリ』はまだ完全なものじゃないし。王サマの魔法もかけてもらってなんとかってとこだし」
黒猫「……にゃにゃ。にゃにゃにゃっ……?」
P「……のあだってまだ三つ目だったせいで、流暢に人間の言葉をしゃべれないだろう?」
P「人間の言葉は難しいんだ。聞く事は簡単でも、流暢にしゃべれるようになるには猫である僕らには長い時間がかかる。器用な猫でも四つ目くらいだろう。普通の猫なら五つ目だ」
P「五つ目の命まで長い時間をかけて人の言葉を理解して、使いこなせるようにならなければ、人になってもすぐに人間社会から排除されてしまう」
P「僕は同族にそんな悲しい目に遭ってほしくないんだ」
銀猫「……」
黒猫「……」
志希「まー、王サマの気持ちもわかってあげてよ。ね? これあげるから」
P「っ……! 志希!? それはいったいっ!?」
志希「え? にゃはは。『人になるクスリ』だよん♪」
P「アナスタシア! 雪美! やめるんだ! 飲むんじゃない……。遅かったか……」
アーニャ「……Это человек?」
志希「あ、そっか。アーニャちゃんってロシアの方だっけ」
雪美「…………うん」
P「言わんこっちゃない……」
P「アナスタシア」
アーニャ「Что это?」
P「日本語はどの程度しゃべれる?」
アーニャ「……えっと……。ンー。ワタシの……」
アーニャ「私、の。名前は、えっと。アナスタシア。アーニャと呼んで、ください」
志希「ギリギリみくちゃんと話せるかなってくらいかにゃー?」
雪美「……大丈夫。……みくと……お話……する」
志希「雪美ちゃんは……単語ならってカンジだね」
P「……はぁ」
P「アナスタシア、雪美。僕の魔法では時間を戻す事は出来ない。だから、君達を猫に戻す事は容易ではない。わかるね?」
アーニャ「ダー」
雪美「……うん」
P「だからもう猫に戻れとは言わないよ。でも、人間になったからには人間の言葉を練習してもらう。毎日のお昼寝の時間にでも」
P「最低限、のあくらいにはしゃべれるようにならなければ、怪しまれてしまう。僕らは人間に見つかってはいけない。その事をよく理解するように」
アーニャ「わかり、ました。王様」
雪美「……私も」
志希「人間の言葉は難しいよ~。のあちゃんもお勉強中は何度逃げ出したかわからないしね~」
志希「ん?」
P「アナスタシアと雪美の面倒は君が見るんだ。僕は止めたけど、君が勝手にやった事だよ。君には罰をとして二人に人間の言葉を教えるんだ」
志希「うげっ……。面倒そうだな~……」
P「もし、嫌だと言うなら」
志希「嫌だと言うなら?」
P「君の研究室の机はぐちゃぐちゃにひっくり返されるだろうね」
志希「……にゃはは~。それはちょーっと勘弁してほしいかなー」
P「と言うわけだ。アナスタシア、雪美。志希から人間の言葉をちゃんと教わるように。いいね?」
アーニャ「ダー。あー……はい」
雪美「……頑張る。……王様……ありがとう」
P「……とりあえずもう今日は仕方がないからみくちゃんと遊んでおいで。君達の望みはそれだろう?」
アーニャ「Большое спасибо!」
雪美「……ありがとう」
志希「ため息はよくないらしーよ、王サマ」
P「誰のせいだと思っているのかな?」
志希「にゃはは~。あたしかー」
みく『ぎにゃー!? なに!? なんなの!? なんで裸の女の子が出てくるにゃー!』
アーニャ『ミク! アナスタシア、です! アーニャ、と呼んでください!』
雪美『私……雪美……。みく……覚えて……。……雪美』
みく『服! 名前は分かったから! 服! 早く! のあチャン! 服!』
のあ『……えっと』
P「あぁ。そうだった。人間は服を着るんだって教えるの忘れていたね」
志希「あ、そっか。あの娘達まだ人間の文化もよく知らないんだね」
志希「……やっちゃった?」
P「やっちゃったね」
志希「にゃは~♪」
志希「調達してくるまでとりあえずあたしの白衣でも貸してくるね♪」
P「頼んだよ、志希」
P「……まったく。これがプロデューサーとやらの仕事なのかな?」
P「王よりも大変そうな仕事だね……」
End
ロシア語はGoogle翻訳に頼りました。文明の利器に感謝を。
猫に九生あり、なんて言いますね。猫は魔女の使い魔だったりしますし、昔から神秘的な存在だったのでしょう。
気紛れで、自由で。そんなところに人間は惹かれるのかも知れません。
そのうちもう一本くらい書いて終わりにするつもりなので、見かけたら生暖かく見守ってやってください。
では、お読み頂ければ幸いです。
「シンデレラガールズ」カテゴリのおすすめ
「ランダム」カテゴリのおすすめ
コメント一覧 (13)
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- 2018年08月13日 01:17
- 人外モノが流行ってるから雑に書いてみました感
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- 2018年08月13日 01:53
- 次で終わるの?
残念
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- 2018年08月13日 03:26
- やっぱり王道ねこアイドルはみくにゃんなんだよにゃぁ
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- 2018年08月13日 03:33
- 設定練り込まれてて今回も面白かった
次回最後かもしれんのは悲しいが楽しみに待ってる
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- 2018年08月13日 03:54
- 次あるのはかなり嬉しい
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- 2018年08月13日 05:59
- 志希にゃんもう9つ目なのか…
どこの神様か存じませんが、志希にゃんに祝福を!何でもしますから(ガチャガチャ)
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- 2018年08月13日 06:39
- この世界での千秋が気になる
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- 2018年08月13日 06:47
- 元祖猫系アイドルのあにゃんと雪美のアイデンティティをクライシスしたのは許されざるよ
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- 2018年08月13日 07:05
- 猫の国編が終わっても犬の国編、兎の国編、まゆの国編とかが描けるな。
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- 2018年08月13日 07:41
- 響子ちゃんが書いた猫の国編もあるぞ!
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- 2018年08月13日 08:22
- ※10 申し訳ないが邪神召喚の儀式はNG。
志希にゃんで9つ目なら王は…
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- 2018年08月13日 16:16
- ネコアイドルにのあ・アーニャ・雪美選んだのはうまい仕掛け
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- 2018年08月13日 17:09
- 最近は100万回生きた猫もいるって話やないですかぁ! せめて全9話くらいは!?
・・あ、ところで最後のシーンの画像はよ。はよ。