ヘビ「ゆで卵うんめぇ~~~~~!!!」カエル「いい酒だ……」ナメクジ「塩は最高だね!」
<三匹の巣穴>
ヘビ「お~い、卵拾ってきたぞ! 一緒に食おうぜ!」ニョロニョロ
カエル「卵……? いらん、酒があればいい」グビッ
ヘビ「酒って……どこで手に入れたんだよ?」
カエル「木の実を発酵させて自分で作った」
ヘビ「器用な奴め……どこの猿だよ。んじゃ、ナメクジは?」
ナメクジ「ボクもいらない。塩なめてるから!」ペロペロ…
ヘビ「いやいやいや、ナメクジが塩なめたらヤバイだろ」
ナメクジ「やばくないよ。このとろけるようなしょっぱさ、たまらないよ!」ドロドロ…
ヘビ「とろけるってか、実際溶けてるけどね」
ナメクジ「ああ……この感覚クセになるぅ……」ビクッビクッ
ヘビ「……ったく、お前らカエルとナメクジのくせに、変わりすぎなんだよ!」
ヘビ「木の枝こすり合わせて、火をおこして……」ボッ…
ヘビ「水を沸かして……卵をゆでて……」
グツグツ…
ヘビ「できたっ! ゆで卵! いただきまぁ~す!」バクンッ
ヘビ「ゆで卵うんめぇ~~~~~!!!」
ナメクジ「ヘビのくせにゆで卵って……自分だってよっぽど変わってるじゃないか」
カエル「まったくだ」
ヘビ「おいナメクジ、ちょっと塩分けてくれ! ふりかけるから!」
カエル「いい酒だ……」
ナメクジ「塩は最高だね!」
ヘビ「ところでよ、あっちにある丘でウサギとカメがかけっこやるらしいんだけど」
ヘビ「見に行かねえか?」
カエル「私はいい」
ナメクジ「ボクもいいや。かけっこって興味ないし」
ヘビ「え~……行こうぜぇ~……」
カエル「一匹で行け」
ナメクジ「行ってらっしゃい」
ヘビ「…………」
カエル&ナメクジ「!?」ギョッ
ヘビ「それでもいいのかよ!?」
カエル「わ、分かった……付き合おう」
ナメクジ「あれやられると、食欲なくなるからね……」
ヘビ「よしよし」チロチロ
ザワザワ… ガヤガヤ…
トカゲ「おっ、三すくみ。お前らもかけっこ見に来たのか」
ヘビ「まぁな~、こいつらがどうしても見たいっていうから」
ナメクジ「よくいうよ……」
トカゲ「ケケケ、相変わらず仲悪いなァ、お前ら。で、どっちが勝つと思う?」
ヘビ「そりゃもちろんウサギだろ!」
カエル「私はカメだな」
ナメクジ「ボクは引き分けだと思う!」
トカゲ「……見事にバラバラだな。さすが三すくみ」
トカゲ(なんでこんなバラバラな奴らが一緒に暮らして、つるんでるんだか……)
キジ「実況は“鳴かずば撃たれまい”でお馴染みのキジがお送りいたしま~す!」ケーンッ
ウサギ「うおっしゃあっ! ダッシュだぜぇっ!」ダダダッ
カメ「さてのんびり行こうかな」ノロノロ…
ヘビ「いっけーっ! ぶっちぎれーっ!」シャーッ
カエル「…………」
ナメクジ「どっちも頑張れ~」
ウサギ「うおっしゃぁぁぁぁぁ!!!」ドドドドドッ
ヘビ「頼むぞ~っ! 俺はお前に蓄えてたメシ全部賭けてんだ!」
カエル「…………」
ナメクジ「賭けなんかやってたんだ……」
ウサギ「ぐあああああっ!」ドンガラガッシャーンッ
キジ「ああっ!? ウサギ、最後の最後で切り株につまずいてクラァァッシュ!!!」
キジ「これはもう……かけっこ続行は不可能でしょう!」
キジ「カメの勝利が確定してしまったぁぁぁぁぁ!」
ヘビ「あ……ああああっ……!!!」グニャァ~…
カエル「さて、帰るか」クルッ
ヘビ「…………」カチーン
ナメクジ「あーらら、ヘビったらすっかり石化しちゃってるよ」
カエル「カメに賭けていた餌は十倍になって返ってきそうだ」
ナメクジ「君も賭けてたんだ……ぬかりないね」
ウサギ「ぐうう……っ! いでぇよぉ……!」
カメ「だ、大丈夫かね?」
「ひどいケガだ!」 「尖った石で切ったんだな……」 「血を止めないと死ぬぞ!」
トカゲ「なんか、ヤバイことになってやがる……」
ヘビ「…………」ハッ
ナメクジ「あ、戻った」
ヘビ「どうやらヘビーなことになっちまったな!」
カエル「このまま帰るわけにはいかんようだ」
ナメクジ「ケガをナメたら危ないからね!」
ウサギ「う……?」
ヘビ「足に巻きついて止血!」シュルルッ
ギュッ
ウサギ「うおっ!」
カエル「さらに私の体から分泌したこの油を……」ギトギト…
ナメクジ「ボクが傷口をはって塗りつける!」ヌリヌリ…
ウサギ「はうっ! ギンモヂイイッ!」
キジ「こ、こりゃすごい!」
キジ「ヘビ、カエル、ナメクジの三匹が、あっという間にウサギの傷を手当てしたぁっ!」
カメ「よかったよかった、かけっこ相手としてホッとしたよ」
ヘビ「なぁにいいってことよ! ……全財産はパーになっちまったけど」チロチロ
カエル「元々無一文みたいなもんだろう」
ナメクジ「そうそう! ゼロがゼロになっただけ!」
ヘビ「ンだとォ!」シャーッ
トカゲ「普段はバラバラだが、いざという時のチームワークはすごいな……」
トカゲ「三すくみ、恐るべし……!」
~おわり~
<池>
ヘビ「あぢぃ~!」ジャブジャブ
カエル「こういう日は水浴びするに限るな」ジャブジャブ
ナメクジ「二匹ともだらしないなぁ。このくらいの暑さでへばって」
ヘビ「なんでお前、この中で一番暑さに弱そうなのにそんな強いんだよ!」
ナメクジ「そりゃもちろん、普段からきちんと塩分を摂取してるからさ!」キリッ
ヘビ「……どういうことなの」
カエル「ナメクジ仲間が聞いたら呆れ返るに違いない」
ヘビ「まぁな。水浴びでもしなきゃやってられねえよ」
トカゲ「しっかし、今も言い争ってたけど、相変わらず仲悪いな~」
トカゲ「ほら、ドジョウとドングリを少しは見習えよ」
ドングリ「ではお背中で転がります!」ギュルルルルッ
ドジョウ「あああ~~~~~~っ!!!」
ドングリ「転がってます! 転がってます!」ギュルルルルルッ
ドジョウ「い、いい! すごくいいよ! 坊ちゃん!」
ヘビ「えええ……」
カエル「仲がいいというか、なんというか」
ナメクジ「ド変態プレイを楽しんでるようにしか見えないよね……」
ヘビ「ん~、なんでだっけ?」
カエル「ずいぶん昔のことだからな……思い返すのも一苦労だ」
ナメクジ「二匹とも覚えてないの!? 記憶力悪いなぁ」
ヘビ「どんなんだったっけ?」
ナメクジ「ほら、最初は草むらでヘビとカエルが睨み合ってたんだよ」
………………
…………
……
<草むら>
ヘビ「シャーッ!」チロチロ
カエル「…………」シーン
ヘビ「今からお前は俺に食われるんだ……諦めるこったな」
カエル「…………」
ヘビ「“蛇に睨まれた蛙”ってのはまさにこのことだなァ!」
カエル「……帰っていいか?」
ヘビ「えっ、いやいやいや、ダメだって!」
ヘビ「お? ずいぶん往生際がいいじゃんか。長い物には巻かれろっていうしなァ!」
カエル「ただし……」
ヘビ「?」
カエル「実は私は≪ヤドクガエル≫というカエルでな」
ヘビ「なんだそりゃ?」
カエル「私の体は自然界有数の猛毒に覆われている」
ヘビ「え!?」
カエル「もし、私を食えば……間違いなくお前も死ぬだろうな」
カエル「自殺願望があるのなら、私を食うといい」
ヘビ「…………ッ!」
ヘビ(あれ? ひょっとして“蛙に睨まれた蛇”状態になっちゃってる?)
ヘビ「!」
カエル「……ん」
ナメクジ「ケンカはやめて、仲良くしよう!」
ヘビ「うるせえ、引っ込んでろ!」
ヘビ「いっとくが、俺はお前なんか一飲みにできるんだぞ!」シャーッ
ナメクジ「ううっ……」
ヘビ「まぁ、貝もねえ奴を食っても食いがいがねえから見逃してやるけどな!」チロチロ
ナメクジ「あ”?」
ヘビ「え?」
ヘビ「な、なんだよ」
ナメクジ「どうせボクは貝がないよ……カタツムリじゃないよ……」
ナメクジ「だけど、だけど……ッ!」ビキメキッ…
ナメクジ「ナメてんじゃねえぞおおおおおおおおッ!!!!!」
ヘビ「ひいっ!?」
ナメクジ「サマーソルトキック!!!」グルンッ
バキィッ!
ヘビ「げぼぉっ!」
ナメクジ「いっつも塩なめてるから、ボクはそこらのナメクジとは一味違うぞ!」
ヘビ「うぅ……塩だからサマーソルト……? いや、サマーソルトは宙返りって意味――」
ドカバキグシャッ!
ヘビ「ぐぎゃあぁぁぁぁぁっ!!!」
ナメクジ「ごめん……ボク、怒るとついああなっちゃって……」
カエル「ふぅ……二匹とも」
ヘビ「な、なんだよ……」
カエル「一杯どうだ? 生き返るぞ」ゲロッ
ナメクジ「お酒!? 飲む飲む!」
ヘビ「……もらおっかな」
ナメクジ「うん、おいしい! 塩とよく合うよ!」
カエル「井戸でじっくり熟成させた極上の一品だ」グビッ
ヘビ「よぉ~し、ここらで俺の脱皮芸を披露してやるか!」ベロンッ
ナメクジ「いいぞーっ!」
カエル「……ふっ」
………………
…………
……
ヘビ「あ~、そうそう!」
カエル「懐かしい思い出だ……」
トカゲ「……っていうかさぁ」
ヘビ「どした?」
トカゲ「今の話聞いてると、お前らって三すくみというより――」
トカゲ「ヘビが最弱なんじゃねえか? カエルにもナメクジにも負けちゃってるじゃん」
ヘビ「…………!」
ヘビ「バッ……バッカ! ちげーよ! 違うんだって!」
ヘビ「ほら、あれだよ。あくまで手加減……手足ないけどとにかく手加減してたの!」
ヘビ「人間どものアニメで猫とネズミが仲良くケンカするって物語があるけど」
ヘビ「あれも実は猫が手加減してるって説もあるし、そういうアレなんだよアレ! 八百長的な!」
ヘビ「俺が本気出したらカエルもナメクジも一飲みだから! 丸飲みだから! がぶ飲みだから!」
ヘビ「だからほら……とにかく、ほら、分かるでしょ!? 俺のいいたいこと分かるよね!?」
トカゲ「めっちゃ早口なんだけど」
ヘビ「全然早口じゃないから! いつもこんぐらいのスピードで喋ってるから! シャーッ!」
カエル「…………」
ナメクジ「…………」
カエル「我々二匹は、ヘビに生かされてるようなものだ。本当に感謝してる」
ナメクジ「そうそう! ありがとう!」
ヘビ「お、お前たち……!」ジーン…
ヘビ「俺に手があったら、握手したいところだ……」
カエル「そんなヘビだから、きっと巣穴まで我々を背中に乗せて運んでくれるんだろうな」
ナメクジ「優しいなぁ~」
ヘビ「そうそう! 俺、優しいから!」
ナメクジ「しゅっぱーつ!」
カエル(ふぅ……おかげで自分で歩かずに済む)
ニョロニョロニョロニョロ…
トカゲ「……ま、ああいう三すくみもアリかもな」
~おわり~
<川>
ヘビ「……え、俺たちが生徒に授業を?」
メダカ先生「はい、あなたたち三すくみはこの辺ではすっかり有名ですから」スイスイ
メダカ先生「ぜひお願いできたらと思いまして……」
ナメクジ「いいじゃない、やろうよ!」
カエル「たまにはこういう経験もよかろう」
メダカ先生「ありがとうございます!」
ヘビ「よぉ~し、俺らの凄さをたっぷり教育してやるか!」
メダカ先生「今日は、皆さんのために三すくみの方々が来てらっしゃいます!」
メダカ先生「お三方の授業をしっかり聞いて下さいね!」
「はーいっ!!!」
ヘビ「川で泳ぐガキどもにヘビーな授業をしてやるぜ!」シャーッ
カエル「つまらない授業で生徒達が帰るような事態は避けねばな」ゲロッ
ナメクジ「ナメられないようにしなきゃ……!」ヌメヌメ
ヘビ「え~、皆さんこんにちは!」チロチロッ
ヘビ「今日は皆さんに、俺が好きな言葉を教えましょう」
ヘビ「それは『長いものには巻かれろ』です!」
ヘビ「まあ、この自然界、どうしても勝てない相手ってのはいるわけで……」
ヘビ「ようするに勝てないと思ったら、とっとと尻尾を巻いた方が……」
子メダカたち「…………」シラーッ
ナメクジ「全然ダメ!」
ヘビ「え、なんでよ!?」
カエル「子供にあんな夢のないこと吹き込んでどうする。完全に白けていたぞ」
ナメクジ「そうだよ! これから川でめいっぱい活躍しようっていう子供達に……」
ヘビ「だってぇ、世の中ってヘビーだし……」
カエル「他人になにかを教えられるほど、実のある人生を歩んではいないが」
カエル「こうして教壇に立ったからには、君たちに何かしら残して帰ることにしたい」
カエル「今日はみんなに歌を歌いたいと思う」
子メダカA「カエルの歌だ!」
子メダカB「ゲロゲロクワックワッてやつ?」
子メダカC「楽しみ~!」
パチパチパチ…
カエル「帰るとこなど俺にはないのさ~♪」
カエル「いばらの道を突き進む~♪」
カエル「ゲロ吐き、桑の実を食べ、生きろ~♪」
子メダカたち「…………」ゴクッ
ヘビ「なにこの歌……つか、無駄に美声だし」
ナメクジ「一応、ゲロとクワ要素はあるね……」
ナメクジ「子供に授業するってことがどういうことか、全然分かってない!」
ヘビ「いうじゃねえか。なら、どういうことか教えてくれよ」
ナメクジ「そりゃもちろん、本当に大切なことを教えるってことさ!」
ナメクジ「幼少期に刷り込まれた知識ってのは、大人になっても残るからね!」
ヘビ「まあ、正論っぽくはあるな……」
カエル「お手並み拝見といこうじゃないか」
ナメクジ「任せてくれよ!」
ナメクジ「いいか、みんな!」
ナメクジ「カタツムリは敵だ! カタツムリは悪だ! カタツムリは害だッ!」
ナメクジ「カタツムリはこの世から一匹残らず駆除すべきなんだッ!!!」
ナメクジ「メダカ諸君、もしカタツムリを見かけたら……」
子メダカたち「…………」ゾクッ
ヘビ「完全に私情で授業してるじゃねえか! 目ぇ血走ってるし!」
カエル「露骨すぎるプロパガンダだな……」
ヘビ「お前らの授業おかしいんだよ! もっと真面目にやれよ!」
カエル「それは私のセリフだ。お前たちの授業はまるで子供達のためにならん」
ナメクジ「ふん、ボクの授業が一番いいに決まってるじゃんか!」
ヘビ「やるか!?」シャーッ
カエル「望むところだ」ゲロッ
ナメクジ「二匹とも蹴ってやる!」ヌメヌメ
ドタンバタンッ! ドタンバタンッ!
「サマーソルトキック!」 「シャーッ!」 「倍にして返してやる……!」
ヘビ「……もう、やめよっか」ボロッ…
カエル「ああ、これ以上は我々の恥になる」ボロッ…
ナメクジ「もう十分恥かいたような気もするけどね……」ボロッ…
子メダカA「……すごいや!」
子メダカB「さっすが三すくみ!」
子メダカC「ぼくたちも見習わなきゃいけないね!」
ヘビ&カエル&ナメクジ「……へ?」
メダカ先生(やっぱり三すくみを呼んで正解だった……いい“授業”になった)
~おわり~
<ヘビ会>
ワイワイ… ガヤガヤ…
マムシ「こないだ、オレ様の毒牙で獲物を仕留めてやったぜェ!」
ハブ「ワシもマングースを泣かせてやったぞ!」
コブラ「俺はゾウを仕留めてやった……」
マムシ「すっげぇ~! さっすがコブラ!」
ハハハハ… ワイワイ…
ヘビ「…………」
ナメクジ「ねえねえ」ヌメ…
ヘビ「ん?」
ナメクジ「どうだったの、ヘビ会。色んなヘビが集まって、おしゃべりしたんでしょ?」
ヘビ「ああ……あれか」
ヘビ「やっぱり……毒が欲しいって思ったよ」
ナメクジ「毒?」
ヘビ「だけど、俺は無毒だから……肩身が狭くてな」
ナメクジ「毒のないヘビなんてただの紐みたいなもんだしね」
ヘビ「いいすぎだろ。全国百万の無毒ヘビの皆さんに謝れ」
ナメクジ「ごめん、つい」
ヘビ「あ~あ、毒が欲しいなぁ~……そうすりゃもっと簡単に餌にありつけるのに……」
カエル「だったら毒を摂取してみるのはどうだ?」
ヘビ「毒を……摂取?」
カエル「生物の中には食物と一緒に毒を摂取して、毒化する者も多いんだ」
ヘビ「へぇ~、そうなんだ」
カエル「だから、お前も毒を摂取すれば、毒蛇になれるかもしれん」
ヘビ「なるほど!」
カエル「今ここに、知り合いのヤドクガエルからもらった毒がある」
ナメクジ「なんでそんなもの持ってるの……」
カエル「試しに飲んでみるか?」
ヘビ「……飲む!」
ナメクジ「し、しっかり!」
カエル「やはりこうなったか……解毒剤を飲ませてやらんとな。どこにしまったか……」ガサゴソ
ナメクジ「はやくはやく! 死んじゃうよ!」
ヘビ「あ……今なら最高の脱皮ができそう……」スゥ…
ナメクジ「わーっ! 体からなにかが飛び出してる!」
カエル「お、見つけた」
カエル「すまんすまん。しかし、やはり毒を摂取して毒を得るというのは危険すぎるな」
ナメクジ「毒をナメちゃいけないね」
ヘビ「ホントだよ! 毒蛇目指して毒で死ぬなんてギャグにもならねえ!」
ヘビ「あーあ……だけど毒蛇って憧れるよなぁ……」
ナメクジ「そうだ、だったら“毒舌”の方向性にしたらどうだろ?」
ヘビ「毒舌?」
ナメクジ「ようするに、相手の悪口をいったりするんだよ」
ナメクジ「それで怒らせたところをバクッてやれば、立派な毒じゃない!」
ヘビ「それなら危険はなさそうだな。さっそく毒舌を身につける特訓だ!」
ヘビ「やい、カエル!」
カエル「なんだ」
ヘビ「お前なんかド根性ガエルみたいに潰されちゃえよ!」
カエル「根性のないお前にいわれたくない」
ヘビ「はぁう!?」
ナメクジ「はい、KO~」カンカンカーン
ヘビ「やい、ナメクジ!」
ナメクジ「なんだよ」
ヘビ「お前、ヌメヌメしてて気持ち悪いんだよ! やーい、やーい!」
ナメクジ「毒がないくせに偉そうに」
ヘビ「あぐぐ……」
カエル「ギブアップ?」
ヘビ「ま、まだだ! まだ終わってねえぞ!」
ヘビ「お前なんか貝ないじゃねえか!」
ナメクジ「あ!?」
ナメクジ「サマーソルトキック!」グルンッ
ボゴォッ!
ヘビ「ちょっ……毒舌勝負なのに、蹴るのダメ……」ガクッ
カエル「物理的にKOされたか……」カンカンカーン
ヘビ「どうせ俺なんて……」チロチロ…
トカゲ「お? ケケケ、ヘビの奴落ち込んでやがるな」
スズメ「どうしたんだチュン?」
ウサギ「まーた三すくみで喧嘩でもやらかしたか?」
ワイワイ…
「ほら、メシやるよ!」 「元気出せよー」 「卵やるから、茹でて食えよ!」
ヘビ「みんな……ありがとう!」ジーン…
ナメクジ「ヘビって食物連鎖で上位のくせに、妙にみんなから世話されるとこがあるよね~」
ナメクジ「心配になるというか、放っておけないというか……」
カエル「あの“気の毒さ”は、あいつの立派な武器だな」
~おわり~
<草むら>
エスカルゴ「ボンジュ~ル!」
キャーキャーッ! エスカルゴサーン! ステキーッ!
ヘビ「なんだあいつ? 妙にオシャレなカタツムリだな」
カエル「エスカルゴといって、フランスから来日したカタツムリらしい」
ヘビ「フランスぅ~? ご苦労なこって」
カエル「ちなみに“エスカルゴ”というのはフランス語で“カタツムリ”を意味するそうだ」
ヘビ「へぇ~。さて、ナメクジは……」チラッ
ナメクジ「なぁ~にがエスカルゴだよ! みんなあんなのチヤホヤしてバカじゃねーの!?」
ナメクジ「フランスなんてドイツに占領されてたくせによ……!」
ヘビ「うわぁ……」
カエル「カタツムリ憎しでフランスまで憎くなっているな」
ヘビ「ナメクジの機嫌が悪いと、いつ蹴りが飛んでくるか分からねえから怖いんだよな」
カエル「たしかにな。ずっとイライラされてると、こっちも困る」
カエル「エスカルゴといざこざを起こして、国際問題になってもまずい」
ヘビ「なんとかカタコンを解消させられないかなぁ……」
カエル「といっても、『貝がなくてもいいじゃん』などと言おうものなら即サマーソルトだぞ」
ヘビ「貝か……」
ヘビ「だったら貝をプレゼントしてやるってのはどうだ?」
カエル「ふむ、いいアイディアかもしれんな」
※“カタツムリ・コンプレックス”の略
ニョロニョロ… ピョンピョン…
ヘビ「そういや、お前と二匹きりで旅するなんて初めてだな」
カエル「そうだな」
ヘビ「しりとりでもやる?」
カエル「いいぞ」
ヘビ「じゃあ、スイカ!」
カエル「カエル」
ヘビ「ル……ルンバ!」
カエル「バール」
ヘビ「ル、ルーマニア!」
カエル「アイドル」
ヘビ「る攻めやめてくんない!?」
カエル「戦略だ」
ザザーン…
ヘビ「着いた! 海は広いし、大きいな~」シャーッ
カエル「井の中の蛙大海を知らず、だな」ゲロッ
カエル「初めて海を見た時は、心を打ちのめされたものだ……」
ヘビ「ふうん、お前でもそんなことあるのか」
カエル「そりゃあるさ」
ヘビ「そういや、お前の出身って――」
カエル「さ、貝を探そう。急がねば日が暮れてしまう」ピョンピョン
ヘビ「お、おう」ニョロニョロ
ヘビ(ちぇっ、はぐらかされちまった)
カエル「ああ、大きさもちょうどいい。これを持ち帰るとナメクジも喜ぶだろう」
ヘビ「よっしゃ、じゃあ――」
ヤドカリ「待てや」カサカサ
ヘビ「なんだお前?」
ヤドカリ「ここらの貝は全部オレのもんやでぇ~」
ヤドカリ「持ってくなら、なんか価値のあるもん置いてってもらおか!」
ヘビ「がめつい野郎だな……」
カエル「いさかいを起こしてもしょうがない。素直になにか渡そう」
ヤドカリ「お、細長いのとちごうて、ケロちゃんはよう分かっとるやんけ。さ、ゼニ出しや」
ヘビ(細長いの……)
カエル(ケロちゃん……)
ヘビ「脱皮した皮やるよ。いい財布になるぜ」ベロンッ
カエル「私は油をやろう。少々の傷なら治せる」ギトギト…
ヤドカリ「ほう……」
ヤドカリ「ま、ええやろ。出血大サービスや! 貝持ってってええで!」
ヘビ「よっしゃ!」
カエル「これでナメクジのカタコンを治せればいいがな」
ヤドカリ「おおきに!」
ヘビ「おーいナメクジ!」
ナメクジ「……なんだよ?」
ヘビ「今日は俺たちからプレゼントがあるんだ」
カエル「受け取ってくれ」
ナメクジ「プレゼント? 悪いけど、今ボクはなにも受け取りたくない気分なんだけど」
ヘビ「まあ、いいからいいから」
カエル「これだ」
ジャン!
ナメクジ「!!!」
ナメクジ「これは……巻貝!?」
カエル「きっとみんな、カタツムリになったお前に振り返ると思うぞ」
ナメクジ「二匹とも、ボクのためにわざわざ……?」ジーン…
ナメクジ「あ、ありがとう! とても嬉しいよ!」
ヘビ「なぁに、いいってことよ」チロチロ
カエル「存分に貝を背負ってくれ」ゲロッ
ナメクジ「そうさせてもらうよ!」
巻貝「…………」モゾッ
ヘビ「え!?」
カエル「!?」
ナメクジ「わっ!?」
サザエ「あら、眠ってる間に変なとこ来ちゃったわ。やぁ~ねぇ~」
サザエ「あんたたちが連れてきたの? もうこんなイタズラしないの!」
サザエ「じゃーねー!」モゾモゾ…
ヘビ「中身入ってたのか……」
カエル「気づかなかった……」
ナメクジ「もしも人だったら国民的アニメの主人公になりそうな貝だったね……」
ヘビ「きっと今ごろ……」
ヤドカリ『あのドシロートども、見事にだまされおったわ! まったくボロイ商売やでぇ!』
ヘビ「とかなんとか笑ってるに違いねえ! 今度見かけたら食ってやる!」
カエル「そう怒るな。よく確かめなかった我々も悪いんだ」
カエル「すまんな、ナメクジ……」
ナメクジ「…………」
ヘビ「え?」
ナメクジ「二匹がボクのために貝を持ってきてくれた……そのことが嬉しいよ」
ナメクジ「ボクもカタツムリに対する劣等感をなくすようにするよ。なるべくね」
カエル「ナメクジ……」
ナメクジ「それにさ、ボクが貝背負っちゃったら、三すくみじゃなくなっちゃうじゃない!」
カエル「ふっ……それもそうだな」
ヘビ「貝がないのに甲斐甲斐しいこといいやがって……」
ナメクジ「あ!?」
ヘビ「ひいっ! 早くカタコン治してくれぇ!」
~おわり~
ヘビ「もうすぐ巣穴だな」ニョロニョロ
ナメクジ「今日はいい塩をゲットできたなぁ」ペロペロ
ヘビ「体溶けてんぞ」
ナメクジ「ボクが溶けるってことはいい塩ってことさ」ドロドロ…
ナメクジ「ああ~たまらん!」ビクッビクッ
ヘビ「絶対いつか塩で溶け切っちゃうよ、お前……」
ヘビ「……ん?」
ナメクジ「どうしたの?」
ヘビ「俺らの巣穴に、ものすごい数のカエルがいるんだよ」
ナメクジ「あ、ホントだ! 何があったのかな?」
カエル兵A「若殿様!」
カエル兵B「こんなところにおられたとは!」
カエル兵C「捜しましたぞ!」
カエル「みんな……」
ヘビ「うおっ……!? みんな、カエルにひざまずいてる! どうなってんだ!?」
ナメクジ「カエルって、あんなに偉い立場だったんだ……」
ヘビ「どうりで妙に堅苦しい喋り方するわけだ……」
ヘビ「油出すし、てっきりガマガエルかと」
ナメクジ「殿って呼ばれてるからって、トノサマガエルとは限らないよ」
ナメクジ「ヤドクガエルを名乗ったこともあったし、雨乞いしてたこともあったような」
ヘビ「結局あいつ、何ガエルなんだ?」
ナメクジ「うーん、謎は深まるばかりだね……」
妹ガエル「お兄様……」
カエル「父上、妹……」
ヘビ「うわ、でかっ! なんだありゃ!? 勝てる気がしねえ……」
ナメクジ「ヘビがいう台詞じゃないよね」
父ガエル「なのに、後継者であるお前は『井の中の蛙で終わりたくない』『羽ばたきたい』といい」
父ガエル「井戸を飛び出した……」
カエル「…………」
父ガエル「だが、大言を吐いたわりに、今のお前はどうだ?」
父ガエル「聞いているぞ。ヘビやナメクジなどという連中とつるみ、無為な日々を過ごしておると」
父ガエル「そんなことで“羽ばたいた”といえるのか!?」ゲコッ
ヘビ「あいつ、故郷を飛び出してきてたのか……!」
ナメクジ「そういえば、そんな感じの歌を歌ってたこともあったね……」
父ガエル「やはりお前は井戸で暮らすべきだ」
父ガエル「ヘビやナメクジなどと暮らしていても、なにも返ってくるものはない!」
父ガエル「カエルは羽ばたきたいなどという高望みをせず、狭い井戸で暮らすのが一番幸せなのだ!」
カエル「一つだけいわせてくれ、父上」
父ガエル「なんだ?」
ヘビ「帰っちまうのかなぁ……」
ナメクジ「いくらカエルでも、あの迫力に逆らえないよ……」
ヘビ「だよなぁ? それに帰ったら井戸の王子様だぜ? 絶対そっちのがいいもん」
ナメクジ「うん……」
父ガエル「!」
カエル「あの二匹は……ヘビとナメクジのくせに、ゆで卵や塩が好きな変わり者だが」
カエル「それゆえ私もあの二匹には何度も驚かされた」
カエル「世界は広い、こういう奴らもいる、と思い知らされた」
カエル「私はあの二匹との三すくみを無為な生活とはこれっぽっちも思っていない」
カエル「ヘビとナメクジのおかげで、今私は羽ばたけているのだ!」ゲロゲロッ
ヘビ&ナメクジ「カエル……!」ジーン…
妹ガエル「お父様……」
父ガエル「だが、納得したわけではない」
父ガエル「やはりお前が“羽ばたけてない”と判断したら、今度という今度は――」
父ガエル「強制的にお前を井戸に連れて帰る」ギロッ
カエル「……ああ」
父ガエル「行くぞ!」
ゲロゲロゲロゲロゲロ… クワックワックワッ…
ヘビ「…………」
ナメクジ「…………」
<三匹の巣穴>
ヘビ「ただいま~」
ナメクジ「ただいま!」
カエル「遅かったな」
ヘビ「い、いやぁ~、今日も平和だったなぁ」
ナメクジ「う、うん! そうだね!」
カエル「? ……何かあったのか?」
ヘビ「いやいやいや、なんにも!」
ナメクジ「な~んにもないよ! ねえ、ヘビ?」
ヘビ(くっ、俺たちの方が動揺してどうすんだ!)
ナメクジ「ちょっとやってみない?」
カエル「新しい技? なんだか唐突な話だな」
ヘビ「そ、そうかな?」
ナメクジ「世の中って、何事も唐突なもんだよ!」
カエル「……まぁ、かまわないが」
ヘビ「ここじゃなんだから、外に出ようぜ!」ニョロニョロ
カエル「こうか」プクーッ
ナメクジ「で、ボクが粘液をいっぱい出して、カエルの上に乗る!」ネチャ…
ヘビ「んでもって、俺がナメクジを接着剤にしてさらに上にくっついて――」ベトッ
ヘビ「尻尾をプロペラみてえにブン回す!」ブンブンブンブンブン
すると――
フワッ…
カエル「おお……飛んだ!」
ナメクジ「やったぁ!」
ヘビ「うまくいったな!」ブンブンブンブンブン
ナメクジ「いけいけぇ!」
カエル「私たちは飛んでいるのか……」
ヘビ「あっ、でも、ダメだ! ……もう疲れた!」ブンブンブン…
ナメクジ「ちょっ! この根性無し!」
ヘビ「うわぁぁぁぁぁっ!」
ナメクジ「あぁぁぁぁぁっ!」
カエル「…………ッ!」
ヒュルルルルルル…
――ドスンッ!
ナメクジ「だ、大失敗だね……」
ヘビ「カエルが膨らんで浮力を得て、ナメクジでくっついて、俺がプロペラになる……」
ヘビ「いいアイディアだと思ったけど、やっぱり鳥みたいに羽ばたくのは難しいなぁ……」
カエル「!」ハッ
カエル「そうか、お前たち……さっきの私と父上たちとのやり取りを聞いていたな?」
ヘビ「あ、いや……」アセアセ
ナメクジ「それは……」アセアセ
カエル「別にかまわんさ」
カエル「あんな大勢のカエルが押しかけていたら、何が起こってるのか立ち聞きするのは当然だ」
カエル「謝らなければならんのは、こっちだ。すまなかった」ゲロッ
ヘビ「あ、いや……」
ナメクジ「でさ……やっぱり帰っちゃうの?」
カエル「…………」
カエル「いずれは帰らねばならんだろうが、私はまだ世界の広さを学びたい」
カエル「それに井戸社会も変わらねばならない時が来ているからな」
ナメクジ「世界の広さを学んで、井戸社会に新しい風を吹かせたいんだね」
ヘビ「お前のいう羽ばたきってのは、そういう意味だったのか!」
カエル「まぁな。しかし――」
カエル「今お前たちとやった“羽ばたき”……楽しかったよ。またやろう」ゲロゲロッ
ヘビ「おう!」
ナメクジ「今度はもっと高いところまで!」
~おわり~
<三匹の巣穴>
ヘビ「……ん?」
ナメクジ「ウサギがボロボロになって走ってるよ!」
ウサギ「はぁ、はぁ、はぁ……」ドサッ…
ヘビ「おい、どうした!?」
ナメクジ「何があったの!?」
カエル「喋らせない方がいい。とにかく、巣穴に運び込んで手当てしよう」
ヘビ「カメが!? 誰にだよ!?」
ウサギ「人間だ……。あいつ、結構珍しい種類のカメらしくて……それで……」
ヘビ「人間だとぉ!?」
ナメクジ「ここに入り込んでくる人間なんて、今までめったにいなかったのに……」
ウサギ「情けないが、俺は逃げるので精一杯だった……ちくしょう!」
カエル「カメのことは我々が何とかする。今はとにかく休むことだ」
カエル「それにしても、人間とは……周辺の動物や虫たちにも危害を加えているかもしれんな」
ヘビ「みんなのとこを回ってみるか!」
ヘビ「……なんだとォ!? ドジョウが捕まった!?」
ドングリ「うん……」
ドングリ「ぼくも一生懸命転がっていったんだけど、人間にあっさり蹴散らされて……」シクシク
カエル「ドジョウも人間からすれば珍しい生き物と聞くからな……狙われたんだろう」
ナメクジ「ひどいことするなぁ……!」
ヘビ「こりゃあ、他のところもやべえかもな……」
子メダカA「先生がさらわれちゃったの!」
子メダカB「こんなでかいメダカ珍しいって!」
子メダカC「うぇ~ん!」
<草むら>
ヘビ「エスカルゴも捕まったみたいだな……!」
カエル「貝までターゲットとは……」
ナメクジ「不思議だよ……。あんなに憎かったのに、今は助けたくて仕方ない!」
カエル「…………」
ヘビ「どうした?」
カエル「もしかすると、私の故郷である井戸も……」
ヘビ「行ってみようぜ!」
ヒュゥゥゥゥゥ…
カエル「…………ッ!」
ヘビ「これはひでえ……!」
ナメクジ「メチャクチャに荒らされてる……!」
カエル「おい、しっかりしろ!」
カエル兵A「あっ、若殿様……来て下さったのですか……」
カエル「何があった!?」
カエル兵A「人間が、井戸を襲って、父君と妹君を……」
カエル兵A「我々も飛びかかったのですが歯が立たず……も、申し訳ありません……!」
カエル「いや、よく戦ってくれた。今はみんなで体を休めてくれ」
カエル兵A「は、はい……!」グスッ…
カエル「ここの手つかずの自然に目をつけた人間が」
カエル「人里では見ないような虫や動物を手当たり次第に捕まえているようだな」
ヘビ「くそっ、絶対助け出してやる!」
ナメクジ「だけど、人間がどこにいるかすら分からないよ……」
カエル「もしも、もう人里に引き返したとすると、追いつくのは絶望的だな……」
ヘビ「ちっ!」
トカゲ「はぁ、はぁ、はぁ」カサカサカサ
「おっ、トカゲだ! 踏み潰してやれ!」
ドカッ! ドカッ! ドカッ!
グシャッ!
トカゲ「ぐっ!?」ブチッ
トカゲ(なんとか……逃げ切らなきゃ!)カサカサカサカサカサ
「あーあ、逃がしちまった」
トカゲ「あっ、三すくみ……!」
ヘビ「トカゲ!? お前、尻尾切れてんじゃねえか! まさか――」
トカゲ「ああ、人間に襲われた……! どうにか逃げ切ってきたがな……」
ナメクジ「よかった……」
カエル「尻尾は大丈夫なのか?」
トカゲ「体力は使うけど、再生できるからな」
トカゲ「いかにもワルって感じの人間だったよ……。逃げるので精一杯だった……」
ヘビ「心配すんな……人間は俺らがブッ倒してやる!」
ナメクジ「それに、みんなを助け出さないとね!」
カエル「ならば、なんとしても人間の居場所を特定せねば」
カエル「トカゲから話を聞いて、人間がどこにいるか推理するしかあるまい」
トカゲ「いや、それなら大丈夫だ」
ヘビ「え?」
トカゲ「ケケケ……あっちにある俺の尻尾のところに行けば……」
ナメクジ「切れた尻尾が方向を指し示してる……!」
カエル「あの方角に人間は去って行ったということだな」
ヘビ「トカゲ……ナイス“尻尾切り”だぜ。絶対に無駄にはしねえ!」
ヘビ「よぉ~し、さらわれた連中を助けに行くぞ!」
ナメクジ「うん!」
カエル「うむ」
……
子分「いやぁ~、さっきは惜しかった!」
子分「トカゲをペシャンコに踏み潰そうと思ったのに、逃げられちまった!」
子分「しっかし、いっぱい捕まえることができましたねえ!」
大男「おうよ。ボスによれば、こいつらを売りさばけばだいぶ金になるそうだ」
子分「ド田舎でムシケラどもを捕まえるだけで金になるなんて、いい商売っすね!」
ボス「……今、俺たちのような連中は暴対法の強化などで危機に瀕している」
ボス「色んな金儲けの方法を考えていかなきゃならねえ」
ボス「学者だのマニアだのペットショップだの、珍しい生物を欲しがってる奴はいくらでもいる」
ボス「時にはこんな虫取りの真似ごとみてえなこともしなくちゃな」
ボス「しばらくはここを拠点に、荒稼ぎしていくぞ」
子分「ムシケラどもを取り尽くしたらどうするんで?」
ボス「そしたら……この土地を強引にブン取って、また商売を始めればいい」
子分「さすがボス、もう先の先のことまで考えてらっしゃる!」
大男「この人はこうやって組でものし上がってきたからなぁ!」
父ガエル「ワシとしたことが、あんな連中に捕まるとは……不覚ッ!」ゲコッ
妹ガエル(お兄様……)
エスカルゴ「……オスクール(助けて)!」
カメ「このままどこかに売られてしまうのか……。またウサギとかけっこしたかった……」
キジ「鳴いてしまったがために、捕まってしまった哀れなキジでございますッ!」
「ヘビーに悪い連中だぜ!」
「お前たち……このまま帰る、というわけにはいかんぞ」
「虫や動物をナメるなよ!」
子分「わっ!?」
大男「なんだ!?」
ボス「…………」
子分「今の声……どっからだ!? どこだ!?」
大男「まさか、同業者か!?」
ガサッ…
ヘビ「俺たちか? 俺たちはな……」
ヘビ&カエル&ナメクジ「三すくみだよ!!!」
大男「たった三匹でオレたちに挑もうってかァ!?」
子分「どうします、ボス!?」
ボス「金にはなりそうだが、あの三匹、生かしておくとろくなことがなさそうだ」
ボス「……踏み潰してやれ」
子分「へい!」
子分「なぁ~にが三すくみだ、ビビらせやがってぇ!」ダッ
ヘビ「……来やがったぞ!」
カエル「手はず通りに」
ナメクジ「うん!」
子分「うおっ!?」ガクンッ
カエル「私が顔に飛びつく」ピョーンッ
子分「わぶっ!」
ナメクジ「……トドメだ!」ヌメヌメッ
ナメクジ「サマーソルトキック!!!」
ドゴォッ!
子分「ぶげぁぁっ!?」
ドサッ…
ヘビ(うおっ、でけえ!)
大男「いっとくが、オレはさっきみたいなチンケな攻撃じゃやられねえぜぇ!?」
大男「まとめて蹴散らしてやる!」ブオンッ
ズガァンッ!
ヘビ「うげっ!」
カエル「ぐっ!」
ナメクジ「うわぁぁぁっ!」
カエル「まともに戦ったら、こちらの攻撃は届かんな」
ナメクジ「だったらさ……」ゴニョゴニョ…
大男「オレはケンカじゃ負けたことがねぇんだ!」
大男「このでかい石で、まとめて潰してやるよォ!」グオッ
フワッ…
大男「え!?」
大男(三匹が空を飛んだ……!?)
ナメクジ「うん!」ネチャッ
カエル「ヤツの頭めがけて落ちるぞ」プクーッ
ヘビ「この攻撃は……ちょいとヘビーだぜ!」
ヒュルルルルルル…
大男「ゲッ、落ちてきた! ――う、うわわぁっ!」
――ドスンッ!!!
ボス「なるほど、三すくみらしからぬ……いや、三すくみだけあって大したチームワークだ」
ボス「ムシケラを少々侮ってたようだ」
ボス「だが、さすがにこれには敵うまい?」チャッ
ナメクジ「な、なにあれ?」
カエル「拳銃だ! 弾丸を発射する人間の武器で、あれを受けたらひとたまりもないぞ!」
カエル「さっきみたいに飛んでも、撃ち落とされてしまうだろう……」
ヘビ「だったら、俺がトグロ巻いてウロコではじき返してやらぁ!」グルグルッ
ボス「無駄だ……弾丸を弾けるわけがない」
カエル「――ならば!」
ナメクジ「――だったら!」
ヌルッ
シュゥゥゥゥゥ…
ボス「――な!?」
ヘビ「こ、こわっ……なんつう武器だよ……」ギトヌメ…
カエル「だが、ヘビの体に私の油とナメクジの粘液を塗りたくったおかげで」
カエル「銃弾はうまくウロコを滑っていったようだな」
ナメクジ「これなら何発撃たれてもへっちゃらだね!」
ヘビ「いやいやいや、今の絶対ただのラッキーだって! もう一発来たらヤバイ!」
ボス「ちっ、今度こそ撃ち殺してやる!」
カエル「ゲコッ、ゲコッ、クワッ、クワッ~♪」
ボス「なにいきなり歌い出してやがる! しかも、結構いい声じゃねえか!」
ヘビ「シャーッ!」グワッ
ボス「クソヘビがァ!」
パァンッ!
ボス「……やったか!」
ヘビ「今当たったのは、脱皮した俺の皮だよぉ~ん」ニョロニョロ
ボス「……ちぃ!」スチャッ
ナメクジ「塩まいてやる!」パサッ
ボス「ぐわっ!? ぺっ、ぺっ、ぺっ! しょっぺえ!」
ボス「この……ムシケラどもがぁッ!」
カエル「ゲロッ、ゲロッ、ゲロッ~♪ クワッ、クワッ、クワッ~♪」
ヘビ「シャーッ!」バッ
ボス「おっとォ!」バキッ
ヘビ「ぐわっ!」ドサッ
ナメクジ「もういっぺん塩!」パサッ
ボス「もう喰らわねぇよ!」サッ
……
ヘビ「くぅ……ここまでかよ」ハァハァ…
ナメクジ「塩投げ切っちゃったよ……」ハァハァ…
ボス「手こずらせやがって……三匹まとめてあの世に送ってやるよ!」
ボス「は?」
ヘビ「へへへ……」
ナメクジ「アハハ……」
カエル「聞こえないか、この音が」
ドドドドド…
ボス「なにこれ? なんの音だ?」
カエル「お前たちが我々にやったことが……そっくり“返る”音だ」
ナメクジ「もちろん、人間には分からないようカエル語でね!」
ボス「……へ」
カエル「さぁ、この一帯の動物や虫たちの怒りを思い知るがいい!」
ドドドドドドドドドド…
ガサガサガサガサガサ…
ボス「うおっ!?」
ボス「ちょ、ちょっと待って……」
ボス「やめろ! やめてくれ!」
ボス「うわあああああああああああああっ……!!!」
ああぁぁぁぁぁ……!
ヘビ「やったな! いやぁ~、ヘビーな戦いだったぜ!」
ナメクジ「うん! ボクらみたいな小さな生き物をナメてかかるからだよ!」
カエル「あれだけの目にあったのだ……もうあの人間たちの野心が蘇ることもあるまい」
ワイワイ… ガヤガヤ…
カメ「君たちのおかげで、またかけっこが出来そうだ……」
ドジョウ「坊ちゃんのもとに戻れるなんて夢のようだ……どうもありがとう!」
メダカ先生「このことはぜひ子供達に話したいと思います!」
キジ「たとえ撃たれても、君たち三匹は決して屈しなかったね!」
ナメクジ「あ……エスカルゴ」
エスカルゴ「このたびハ、本当にありがとうございましタ!」
エスカルゴ「よかったラ、今度フランスに遊びに来ませんカ?」
ナメクジ「うん、機会があったらぜひ……一度パリに行ってみたかったし……」
ヘビ「ナメクジの奴、さっそく国際交流してやがる!」
カエル「これで少しはカタコンを克服できればいいがな」
カエル「父上! ご無事だったんですね!」ゲロッ
父ガエル「うむ、よくあの悪しき人間達を追い払ってくれた」
カエル「今回のことで……私はやはり井戸を離れるべきではないと思いました」
カエル「近いうちに帰りたいと――」
父ガエル「いや、帰るな! 帰ってくるな!」ゲコッ
カエル「え?」
父ガエル「お前とあのヘビとナメクジの戦いぶり……見事だった」
父ガエル「カエルが空を飛ぶところなど、はじめて見させてもらったぞ。ハッハッハ!」
カエル「父上……」
父ガエル「お前は井戸のことなど気にせず、もっと羽ばたいてみせろ!」
妹ガエル「そうですよ、お兄様!」
妹ガエル「お兄様は、もっともっと世界の広さを知るべきです!」ケロッ
カエル「二匹とも……ありがとう」
ヘビ「カエルの奴も、急いで帰る必要はなくなったみてえだな」
ナメクジ「三すくみはひとまず安泰だね!」
………………
…………
……
<三匹の巣穴>
ヘビ「ふん、お前らとは意見が合わねえな!」シャーッ
カエル「私の意見を採用しないお前たちが悪い」ゲロッ
ナメクジ「素直にボクのいうこと聞けばいいのにさ!」ヌメヌメ
トカゲ「ケケケ、お前たち相変わらず仲悪いな。声が外まで響いてるぜ」
トカゲ「せっかくここら一帯の英雄になれたってのに、ちっとも進歩がねえ!」
トカゲ「で、なんで喧嘩してるんだ?」
ヘビ「たまにはみんな一緒のもん食おうって決めたんだけど、全然まとまらねえんだよ!」
カエル「困ったものだ……」
ナメクジ「だーかーらー、塩にしようっていってるのに!」
ギャーギャーッ! ワーワーッ!
トカゲ(アホらし……)カサカサ
カエル「ああ、それぞれ好きなものを飲み食いしよう」
ナメクジ「だってボクたち三すくみだもんね!」
バクンッ グビッ ペロペロ…
ヘビ「ゆで卵うんめぇ~~~~~!!!」
カエル「いい酒だ……」
ナメクジ「塩は最高だね!」
~おわり~
ありがとうございました!
元スレ
ヘビ「ゆで卵うんめぇ~~~~~!!!」カエル「いい酒だ……」ナメクジ「塩は最高だね!」
https://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1533731429/
ヘビ「ゆで卵うんめぇ~~~~~!!!」カエル「いい酒だ……」ナメクジ「塩は最高だね!」
https://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1533731429/
「SS」カテゴリのおすすめ
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コメント一覧 (12)
-
- 2018年08月09日 04:43
- 絵本に書いとけ
-
- 2018年08月09日 06:18
- 3~4スレで興味なくなった。
時間損した気分
-
- 2018年08月09日 07:55
- みんな心が荒んでるなあ・・・
呼んでて童心に返った気分でしたわ(。・ω・。)ほっこり
-
- 2018年08月09日 08:12
- ※2
1スレだけじゃ飽き足らず続編まで探してて草
こういう感じのSS?は好きよ
-
- 2018年08月09日 09:04
- 意外といい話で草
-
- 2018年08月09日 11:32
- 面白かった。
-
- 2018年08月09日 12:53
- これ好きだな
-
- 2018年08月09日 13:55
- いいね
-
- 2018年08月09日 16:28
- >ナメクジ「ボクが傷口をはって塗りつける!」ヌリヌリ…
お前の体ヤバい寄生虫だらけだからよせって…
-
- 2018年08月10日 09:05
- 何故書いたw
作者ピュアかよ
-
- 2018年08月10日 14:06
- いつものトリオの人だな
-
- 2018年08月11日 13:17
- 割といい話で塩