TOP

国王「さあ勇者よ!いざ旅立t「で、伝令!魔王が攻めてきました!!」完結編【後半】

関連記事:国王「さあ勇者よ!いざ旅立t「で、伝令!魔王が攻めてきました!!」完結編【前半】





国王「さあ勇者よ!いざ旅立t「で、伝令!魔王が攻めてきました!!」完結編【後半】






289: ◆EonfQcY3VgIs 2018/04/21(土) 09:07:06.27 ID:hkG69/nJ0


氷姫「ひとつだけ言っておくわ。………この雪は、あたしの魔法の影響で降ったわけじゃない。だから、きっと」

氷姫「どこぞの信用ならない神様が降らせたんじゃない?」

氷姫「…別に、あたしの知ったこっちゃないけどさ」クル…


『………め…』


氷姫「…え?」


『…進め………四天王…』

『…私の………見れなかったものを…』

『………見てくれ………』


氷姫「………」

氷姫「分かったわ」

氷姫「そこで、眺めてなさい」


氷姫(………進もう)ザッ




『――システムパターンAをクリアしました』





290: ◆EonfQcY3VgIs 2018/04/21(土) 09:14:45.45 ID:hkG69/nJ0



雷帝「………側近は、先代勇者一行によって、人間の地で蘇生された」

雷帝「そしてその時から、魔法使いとして生き始めた…」

雷帝「そういうことなのですね」

先代「…ああ」

先代「あいつが生き延びたことは、人間に…いや、世界に新しい可能性をもたらした」

先代「"女神の加護を持たぬ者が、魔王を倒した"」

先代「その事実が引き金となって、あらゆる研究と成果が引き起こされることとなる…」

先代「が、この先のことを語るのは私の役目ではないようだ」

雷帝「…先代様」

先代「お前に与えられた深手は、まもなく私の命の灯火を消し去る。…やってくれたな、雷帝よ」

先代「だが、それでいい。お前が繰り出した技の数々こそが、本当のお前の力だ。そいつを強く信じろ」

先代「所詮、私のこれは偽りの生だ。失われた過去の存在は、潔く去るとしよう」

雷帝「………」




291: ◆EonfQcY3VgIs 2018/04/21(土) 09:17:22.75 ID:hkG69/nJ0


先代「なあ、雷帝」

雷帝「…なんでしょうか」

先代「あの子は………この世界に何をもたらすのだろうか」

先代「…魔王なのであれば、それは闇と混沌であるべきよな」

先代「魔法使いにこのまま魂を奪われれば、今までに類を見ない覇者としての魔王に、君臨し得るかもしれない」

先代「けれどあの娘は、きっともっと違う答えを求めている」

先代「魔王としては愚かなことを…しかしとても尊いものを、あの子は求めている」

先代「私は………やはり親バカなのかな」

先代「それが誇らしいのだ」

雷帝「…!」

先代「雷帝」

先代「あの子のことを、頼んだ」ピシッ…

ボロッ…!

雷帝「先代様っ!」

雷帝「………」


『システムパターンBをクリアしました』


雷帝「――………行こう」

雷帝(軋む身体を引き摺ってでも。そうでないと、歩みが止まる)

雷帝(この奇怪な通路の先には………)

雷帝(この上、一体何が待つ?)







292: ◆EonfQcY3VgIs 2018/04/21(土) 09:19:06.99 ID:hkG69/nJ0






〈魔王の心の魔王城〉



魔王「はあっ、はあっ…!」

魔王「…た………助けて…誰か」

魔王「誰か………!」

魔王(――ああ。私はなんて弱いんだろう)

魔王(爺を失って、炎獣を失って。仇を討つことも真実に歩み寄ることもせずに、ただ逃げるばかり)

魔王(頭で分かっていても、心がまるで病にでも侵されたかのように絶望に沈んでいる)

魔王「恐い…恐いよぉ!」

魔王(…全てを覚悟して進んできたはずだった)

魔王(なのに………)



『ならば力を欲すればよい』

『お前には無尽蔵の破壊をもたらす権利がある』

『敵から全てを奪い去れ。さすれば恐怖とも絶望とも無縁』


魔王「…あなたは…っ」


ズォオオ…

魔人『さあ、我が手をとれ』




293: ◆EonfQcY3VgIs 2018/04/21(土) 09:20:50.41 ID:hkG69/nJ0


魔王(魔人)

魔王(ずっと側にいた存在。ずっと私をおびやかし続けていた者)

魔王「………けれど、絶対的な力を持っている。同化してしまえば、認めてしまえば、もう恐いものなどない…」

魔王(駄目だ!! 明け渡しては駄目!!)

魔王(魔人とひとつになっては、暴虐の化身になってしまう…そうなっては、いけない!)

魔王「…いや。私は、人間にとっては既に殺戮の象徴でしかない。私は既に殺しすぎている」

魔王(それは………)

魔王「そればかりか、炎獣達をいい様に使った。仲間に秘密を打ち明けないまま、利用したんだ」

魔王(………っ!)

魔王「そんな私が、何を今さら潔癖ぶる必要があるの?」

魔王「魔王らしくなる。ただそれだけのこと」

魔王(………………)




294: ◆EonfQcY3VgIs 2018/04/21(土) 09:23:23.59 ID:hkG69/nJ0


魔王(それは)

魔王(ただ私が楽になろうとしているだけの言葉だ)

魔王(私は最初から高潔でもなんでもない。薄汚く、この手は血に染まっている)

魔王(そんなことは分かっている)

魔王(それでも為さなければならないことがあった。だから、これまでだって進んできた)

魔王「………」

魔王(投げ出しては駄目。醜いものだって、抱えて生きていくの)

魔王(私はひとつの生命に過ぎないのだから)

魔王「………ああ、そうだ」

魔王「私はまだ」

魔王「悩むことが出来る」


魔人『………なんだと?』


魔王「――私は、あなたと共には行けないわ。魔人」


魔人『貴様………この期に及んで』


魔王「私は私の意志で歩む。………あなたは必要ない」


魔人『………』



《あははは》

《お困りのようですね。魔人》

魔法使い《お手伝いを、しましょうか?》




295: ◆EonfQcY3VgIs 2018/04/21(土) 16:07:06.24 ID:hkG69/nJ0


魔人『………』

魔王「…魔法使い…!」


魔法使い《困った人ですねぇ、ほんとに。自力で立ち直ってしまったんですか? 魔王》

魔法使い《並大抵の精神力じゃあないですよ。まあ、しかしそれでこそ》

魔法使い《貴女という魔王が魅力的なんですが、ね》

魔王「…あなたが」

魔王「あなたが殺したのよ、炎獣も。爺も」


魔王(…いけない。感情が剥き出しになる。心を晒してはつけこまれるっ…)

魔王(でも、どうにも制御ができない…! 途方もない怒りが、込み上げてくる…っ!)


魔王「よくも…」

魔王「よくも、炎獣を」ゴォ…

魔法使い《…》

魔王「幻を見せて、今度は私から何を奪うつもりなの――!」

魔法使い《…珍しいですねぇ、魔王。あなたがそんなに怒りを露にするなんて。まあ、あなたが怒るのは至極最もだとは思いますが》

魔法使い《ですがね、検討違いのことがひとつあるので、それだけお教えしておきましょうかね》




296: ◆EonfQcY3VgIs 2018/04/21(土) 16:14:08.20 ID:hkG69/nJ0


魔王「………なんですって?」

魔法使い《あなたに見せていたのは、単にあなたの精神を攻撃するために用意した幻というわけではありません》

魔法使い《もし違う選択肢があったら未来はどうなっていたのか…そんな可能性の世界を見て頂いていたわけです》

魔王「…可能性の世界?」

魔法使い《そういうシミュレーションは、数え切れないほど繰り返して来たんですよ。選択肢の変更と、"その世界線が辿り着く未来"の研究を、ね》

魔法使い《もしも、勇者一行が集って魔王討伐に出ていたら? 仲違いを起こすことなく、勇者の元で団結して立ち上がっていたら?》

魔法使い《その結果はね、魔王。先ほどご覧頂いた通りです。四天王は各個撃破され、貴女は惨めに追い詰められるのです》

魔法使い《こんな選択と結果があったのかと思うと、なんて現実は脆いんだろうかと…そんな風には思いませんか?》

魔王「…」

魔法使い《どうです? 別の世界線を視覚化してみるって面白いでしょう?》

魔王「…空想の世界に過ぎないわ。そんなもの」

魔法使い《おや、聞き捨てなりませんね》

魔法使い《単なる絵空事などではありませんよ。全てのことは、本当に現実になり得た事象なのです》

魔法使い《どうやら貴女は、現実の自分に大層自信がおありのようですが…でも、考えてみたことはありますか?》

魔法使い《"今の貴女は、本当に本当なのか"》

魔王《…何を…》

魔法使い《ふふ。断言しますが、別次元を覗き見ることも未来を垣間見ることも、技術があれば可能になることです》

魔法使い《テクノロジーってやつですよ。見つかってしまえばそれまでのこと。それは勇者や魔王なんてあやふやな存在よりずっと確かなものです》

魔法使い《僕達は時間すら飛び越えた世界を眺めることが出来ました》

魔法使い《それだけのアドバンテージを持って僕達は》


魔法使い《この物語を紡いできたのですよ》





297: ◆EonfQcY3VgIs 2018/04/21(土) 16:15:36.48 ID:hkG69/nJ0







〈下層研究ホール〉


雷帝(………私がここに来る時、ここは下層研究ホールだと音声が告げていた)

雷帝(氷姫はどうやら別の地に飛ばされたようだが…なんだ? この施設に詰め込まれた技術の数々は)

雷帝(人造人間の生成。異空間移動の科学的成功。そして)

雷帝(――時空間転移ゲートの設立)

雷帝(………)


「信じがたい技術の数々だろう? この研究施設は未知の領域だ」

「俺も最初は信じられなかったさ」


雷帝「っ! 誰だ!?」


「けれど本当だった。奴らは人間を造り、奇跡を起こし、未来を知る事さえ出来た」

「この技術があれば、魔王など容易く倒すことが出来る…。そうすれば、人々の安寧の時代が始まる」

「…なあ。俺がそんな風に夢を見てしまったのも」


兄「仕方のないことだとは思わないか?」


雷帝「お前は…!」チャキ…!


兄「久しぶりだ雷帝。殺された時ぶり、というやつだな。弟も世話になったみたいじゃないか」

兄「俺が次の門番ってわけさ」

兄「――でもやりあう前に、少しだけ奴らのことを覗いてみようって気はないか?」




298: ◆EonfQcY3VgIs 2018/04/21(土) 16:17:10.91 ID:hkG69/nJ0


雷帝「奴ら………」

雷帝「それは、魔法使いのことか…!?」

兄「…魔法使いと教皇。連中は志を同じくする研究者だったのさ」

兄「世界の法則を司る女神と邪神の神秘。そいつへ挑戦する、同志ってやつだ」

兄「勇者ではなく側近が先代を倒したことで、神々の加護が絶対ではないということを証明された。奴らが拠り所とするのはその事実だけで充分だった」

兄「雲を掴むような話だったが、道標は存在した。………古代王朝の遺した遺物や文章だ」

雷帝「――…この機械城のごとき文明が」

雷帝「本当に実在したと言うのか?」

兄「どうやらそうらしい。奴らの研究は恐ろしい速度で進んだ。そいつに拍車をかけたのは、人造人間〇一七号の完成だ」

兄「"魔女"と呼ばれたその存在は、あらゆる成果を研究施設にもたらした」

兄「やがて犠牲を払いながら、魔法使いと教皇はついに女神を創りあげる方法へと辿り着き」

兄「誕生した女神は時間すら飛び越えるようになる」




299: ◆EonfQcY3VgIs 2018/04/21(土) 16:18:42.04 ID:hkG69/nJ0


ザザ…ザ…

教皇『み………見ろ。石板に文字が刻まれ出したぞ』

魔法使い『…ええ。どうやら、これが未来に行った女神の啓示のようですね』


雷帝「! 魔法使いと、教皇!?」

兄「あれは、記録された映像記録さ。かつての奴らの姿というわけだ」

兄「どうやら、奴らのつくった女神が初めて時を越え、啓示をもたらした時のもののようだな」


教皇『こ、これが我々の未来…!?』

魔法使い『ふむ。女神が時を越えて見た未来ですから、恐らく間違いはないでしょうね』

教皇『魔王の凶暴化。勇者の敗北。人類の敗走…。そして』

魔法使い『あはは。僕らは、死ぬそうですよ』

教皇『…っ!』

魔法使い『魔王と四天王に為す術なく蹂躙される未来。…さて、どうしたものですかね』





兄「…そう。奴らが未来を知ったこの時に、この物語は動き始めたのさ」




300: ◆EonfQcY3VgIs 2018/04/21(土) 16:19:51.61 ID:hkG69/nJ0


兄「奴らは、魔王を打倒する未来を描くために手を打ち始め、つくられた女神はそのために動き始める」

兄「幼い魔王に恐るべき魔人の影響が見られ始めると、魔法使いは魔界に飛び、冥王に接触」

兄「冥王の力で魔王が邪神の加護をコントロールする状況を作るよう依頼」

兄「四天王の面子を揃えるため、虚無と海王を使って魔界紛争を起こす。魔王と現四天王の結びつきがここで固まる」

兄「さらに人間界で六人の勇者一行を収集し、それぞれの道を示唆、暗示。これで役者は全て名を連ねることになる」

兄「後は俺を使って教会中心の軍を起こせば、魔王勇者大戦の火蓋が切って落とされるってわけさ」

雷帝「………っ」

雷帝「私達の戦いは、こうして作られた…?」

雷帝「………全ての戦いが…奴らの手の上の出来事だったというのか」

兄「前代未聞の強力な邪神の加護を持つ魔王を倒すために、奴らの女神が叩き出した緻密なスケジュールが、この物語さ」

兄「…これで歴史は本来の姿から大きく舵を切り」

兄「お前や俺が体験した、この膨大なシナリオを歩むこととなる」






301: ◆EonfQcY3VgIs 2018/04/21(土) 22:36:19.48 ID:hkG69/nJ0


〈展望台〉


氷姫「…ようやく頂上か」

氷姫(機械城の楼閣をひたすらに登ってきたけど…門番とやらはここにいるの?)

氷姫(………死人さえ生き返った。もう、何が起こってもおかしくない)

氷姫(魔法使いが甦らせたこの城。不気味なほどに得体が知れないわ)


竜騎士『止まれ! 魔王四天王っ!』


氷姫「!?」

氷姫(コイツ…っ、今、何処から出てきた!?)


踊り子『四天王の生き残りめ…! アタシ達が相手よ!』

竜騎士『行くぞ、踊り子!!』

踊り子『うんっ!』

踊り子『アタシ達は………負けないっ!!』


氷姫「ちっ、敵か…!!」ザッ…!

氷姫(…にしても、何この違和感は!? こいつらは、そこにいるようで気配が全くしない…)


『よかろう、来るがいい光の勢力よ!』

虚無『我が闇の呪いをもって葬ってくれる!! ――魔王四天王の力、思い知るがよい!!』


氷姫「!?」

氷姫(きょ………虚無…!?)



魔女「構えずともよい。氷姫よ」

魔女「これは、視覚化された疑似体験に過ぎん」

魔女「彼らは勝手に戦いを始める。現実とは関係のないところでな」




302: ◆EonfQcY3VgIs 2018/04/21(土) 22:40:58.23 ID:hkG69/nJ0


氷姫「あんたは…っ」

氷姫「…そう。あんたが次の門番ってわけ?」

魔女「そういうことだの。流石に慣れてきたか? しかしまあ、一応名乗っておくとしよう」

魔女「妾は、魔女。教皇領の地下で造られ、お前の究極氷魔法に打ち負かされた翼の団の一員だった、魔導士じゃ」

氷姫「へえ…。良かったわ、女勇者並のバケモノが出てこなくて」

魔女「ほっほっ。言ってくれるの。まあ、妾やあの男にしか語れぬことがあるからこその、人選なのじゃろうな」

氷姫「…あんたにしか、語れないこと?」

魔女「氷姫よ。先の戦いを見てみよ。虚無に対し、竜騎士と踊り子が戦いを始めた」

魔女「向こう側を見てみよ。別の戦いが始まっておる」

氷姫「………!?」



召喚士『大丈夫ですか!?』

侍『うぬ…っ! 油断しましたな…!』

侍『しかし………次は食らわんぞ、四天王!!』


風神『なんやぁ、面倒なやつがおるのう』

風神『ニンゲンが二匹か。まとめて切り裂いちゃる…!!』




303: ◆EonfQcY3VgIs 2018/04/21(土) 22:41:39.63 ID:hkG69/nJ0


召喚士『風神の鎌鼬が来ます…っ』

侍『拙者が奴を止めまする! 召喚士殿はその隙に詠唱を!』

召喚士『…っ。分かりました!』




氷姫「な………なんなのよ、これ」

氷姫「誰よ、こいつら…!?」

魔女「これは、本来迎えるはずじゃった人間と魔族の決戦の様子じゃよ」

魔女「魔法使いや教皇の手が加わることがなければ、もともと物語が辿るはずじゃった結末」

魔女「真の勇者一行と、真の四天王の戦いじゃ」

魔女「これが正史なのじゃよ」


氷姫「これが…………正史…!?」

氷姫「真の…って………な…なによそれ」

氷姫「こいつらが本物だって、言いたいわけ!?」

魔女「…信じられんか? まあ、そうじゃろうな」

氷姫(そんなバカなことが…っ! ………でも、何? この奇妙な説得力)

氷姫(仮に………仮によ。こいつの言っていることが仮に本当だとしたら…あたしたちは)

氷姫(あたしたちが倒してきた勇者一行は………――)


魔女「そう」

魔女「本来の歴史では、全く別の勇者一行と、全く別の四天王による戦いが描かれるはずじゃった」

魔女「今の世界の役者は、加護を受けた魔王と勇者以外、みーんな、偽物じゃ 」




304: ◆EonfQcY3VgIs 2018/04/21(土) 22:42:40.35 ID:hkG69/nJ0


魔女「ああ、この世界線のお前達の魔王ならあそこにおるぞ」

魔女「もはや、原型を留めておらんがな」

氷姫「………なっ………」

氷姫「あれが、魔王、なの………?」



魔王『………………』

 ズォオォオォオォオォ…!


巫女『な…なんて禍々しい気でしょうか』

勇者『………』ギュッ

巫女『…勇者』

勇者『大丈夫だよ、巫女』

勇者『女神様がついてる。俺を信じて!』

巫女『…はいっ』

勇者『必ず、勝とう…!』

巫女『………行きましょう!』



氷姫(………駄目だ…。今のあたしには、分かる)

氷姫(この勇者達は、あの魔王に勝てない)




305: ◆EonfQcY3VgIs 2018/04/21(土) 22:43:44.52 ID:hkG69/nJ0


魔女「魔王は、邪神の加護を正面から喰らって、もはや世界を滅ぼす衝動に支配されておる」

魔女「まあお前達の美しい姫君のままよりは、あちらの方が魔王然としておるがな」


虚無『ふん………勇者一行。こんなものか』

竜騎士『がホッ…』

踊り子『りゅ…竜騎士…っ』

竜騎士『踊り、子…逃げろ…………』

虚無『我がそんなことを許すと思うか?』

…ボキッ

竜騎士『あブ・』

踊り子『ひっ…竜騎…!!』

虚無『貴様もだ………潰れろ』


グシャ



魔女「創り出された女神は、この未来を見たのだな」

魔女「そしてその女神の啓示を受けた教皇は、この悲惨な未来を迎える人類を救いたいと思い、動き出した」

魔女「だが…奴もまたいつの間にか道を外して、結局はお前達に葬られることになった」





306: ◆EonfQcY3VgIs 2018/04/21(土) 22:44:42.74 ID:hkG69/nJ0


魔女「では、何故物語を支配していた教皇が敗れ去ったのか?」

魔女「その原因は、教皇と魔法使いの思惑のズレにある」


召喚士『うっ…、うっ』

召喚士『召喚が、召喚が出来ない…っ』

召喚士『どうして、なんで』

召喚士『このままじゃ、このままじゃ』

風神『もう、お前さんには霊力は残っとらんからの。全力でやっても倒せなかったんじゃあ、しゃあないやろ』

ザクッ

侍『あガッ』

ドサッ…

風神『ほい、一人目。次はお前の番やの』

召喚士『あっ…、あっ――』

スパッ ――ボト…



魔女「…魔法使いの動機はなんだと思う?」

魔女「この人類を救いたい…魔王をどうしても倒したい…そういうものか?」

魔女「違うの。奴はただ」

魔女「――天上の神々の意思に逆らいたかったのじゃ」




307: ◆EonfQcY3VgIs 2018/04/21(土) 22:45:35.67 ID:hkG69/nJ0


勇者『…巫女』

勇者『巫女』

勇者『返事をしてくれ』

巫女『』

勇者『まだ、生きているんだろ?』

勇者『そうなんだろ?』

勇者『もう目が見えないし、血の臭いしかしないけれど』

勇者『君の声が聞ければ、まだ戦える』

勇者『だから…』

勇者『なあ、巫女』

勇者『巫女…』

巫女『』

勇者『………』


魔王『………………』

 ズォオォオォオォオォ



勇者『………まだ』

勇者『まだ、たたかわなきゃ』

勇者『――おれは、ゆうしゃ』

勇者『たたかうことをやめてはならない』

勇者『だから』

勇者『たたかう』

勇者『さいごまで』ヨロ…



魔王『………………』


魔王『  我が腕の中で息絶えるがよい  』






308: ◆EonfQcY3VgIs 2018/04/21(土) 22:46:44.58 ID:hkG69/nJ0



魔女「勇者と魔王の戦いが終結するたびに、こうした絶望は常に敗北した種族に約束されていた」

魔女「人間にも魔族にも平等にな。………しかし、こんなことに果たして意味があるのか?」

魔女「言うなればこのおぞましい悪夢の全ては、神々の選択ひとつで両種族にふりかかるのだ」

魔女「勇者に女神の加護が強くもたらされるか。魔王に邪神の加護がより強くもたらされるか」

魔女「その違いだけで、敗北した種族はこれほどの地獄を味わうことになる」


氷姫「な、何を言ってんのよ………あんたは…っ」

氷姫「意味…ですって? 魔王勇者大戦の?」

氷姫(この大戦の…………意味? そんなもの………――)


――氷姫「そんなものはひとつもない………そういうオチだったりしてね」


氷姫「…っ!」 ゾ ッ








魔女「――そう、意味などないのじゃ」



魔女「聖と邪の二つの種族はあれど、そもそも"悪"は存在しない」



魔女「神々の壮大な遊戯盤の上で、いたずらに死を振り撒くだけ………魔王勇者大戦は、ただそれだけのものなのじゃよ」




309: ◆EonfQcY3VgIs 2018/04/21(土) 22:47:43.52 ID:hkG69/nJ0



魔女「だから魔法使いは」

魔女「この戦いの根本を操る神々への挑戦を始めた」

魔女「この世界を縛り付け続ける天上の神々の法則を打ち破る………――それが魔法使いの戦いじゃった」


魔女「魔王の圧倒的勝利を収めて終わるという、神々の台本。…それを変えるべく動いていたという点では、教皇と魔法使いの目的は一致していたのじゃ」






魔女「ただ魔法使いは………魔王を倒すだけではなく」


魔女「神々の作った不条理なゲームから、人々の手に歴史を取り戻そうとしておったのじゃ」








310: ◆EonfQcY3VgIs 2018/04/21(土) 23:04:25.68 ID:hkG69/nJ0


魔女「いずれ魔法使いには教皇が邪魔な存在となってゆき…魔王を使って処分することになる」

魔女「こちらで選ばれた偽の勇者一行の決死の猛攻に時間を与えられた魔法使いは………ついに、"鍵"を完成させることに成功したのじゃが…」

――ヒュオッ!

魔女「!」

魔女(何かが頬を掠めた…。氷の矢か)

魔女「…なんじゃ。最後まで話を聞いていかんのか」


氷姫「…」

氷姫(今さら、迷うな)

氷姫(この胸糞悪い見世物も、こいつのご託も、あたしにとっては重要じゃない)

氷姫(魔王を助ける。炎獣の仇を討つ)

氷姫(あたしがすべきことは、それだけ――)

パキパキパキィ…! ミシミシ…!!


魔女「………まあ、迷っていてはこの戦いは切り抜けられぬ。それもひとつの正しい選択であろうな」

魔女「しかしの」


氷姫「冴え渡る氷の風よ、敵を切り裂け!!」

――ヒュッ

パキィンッ!!

氷姫(!? 魔法が跳ね返って来――)

スパッ!

氷姫「ぐあッ!」ガクッ…


魔女「"鍵"によって妾が得た力は計り知れん。先の四天王と勇者一行ほどの差が既に生まれておる」

魔女「お前の魔法を弾き返すことすら造作もない。もう、お前に妾は倒せぬのだ」




311: ◆EonfQcY3VgIs 2018/04/21(土) 23:05:09.21 ID:hkG69/nJ0


氷姫「全てを断罪せし氷塊よ、降り注げッ!!」

ゴオォオォオ!!


魔女「…無駄じゃ」


パキィンッ!! ――ドゴォン!!

氷姫「うぐあぁあっ!!」

氷姫(くッ、そっ!! 全ての魔法が反射される!!)


魔女「…理解せよ。そして諦めるがいい」

魔女「お前達の戦いはここまでなのじゃ」

氷姫「――生命の果ての地の死神よ!!」

氷姫「その鎌をもて、敵を打ち砕けッ!!」


――ギュオオオオオオオオ!!


魔女(………自力で、"死神の大鎌"すら詠唱するか。こやつにはもはや邪神の加護は無いというに、大したものじゃ)

魔女(諦めろ、と言うにはあまりに多くのものを乗り越えてきたのじゃな)

魔女(絶望の果ての、覚悟すらその瞳には見えておる)

魔女(せめて)


魔女(せめて、安らかに眠るがいい)






312: ◆EonfQcY3VgIs 2018/04/21(土) 23:08:45.19 ID:hkG69/nJ0



〈魔王の心の魔王城〉


魔法使い《――神々を相手取り、歴史を奪い返す》

魔法使い《それは長い、長い時間を要する戦いでした。本当に、気の遠くなるほど…》

魔法使い《けれど、この十数年は実に美しいひと時になりました。魔王勇者大戦に意味などない…その気づきに至るまでの無為な時間に比べれば、ね》

魔法使い《土足で僕の生を弄んできた存在…神々に、ようやくこの手を伸ばすことができたのだから》

魔法使い《今まで生きてきて僕の血肉になったもの全てを、研究に注ぎ込んだ。そうしてようやく、それらは実を結ぶ》

魔法使い《僕は"鍵"を手にした》

魔法使い《"鍵"は扉を開く。僕らを見下ろす神々が鎮座する、その地への扉を》

魔法使い《その未知の空間へ、僕を誘う》


魔法使い《…気に食わないんですよ。僕はね》

魔法使い《神だなんて胡散臭い代物を気取って、宿命だなんだと焚き付けて人をいいように操るようなことをして》

魔法使い《そういう奴がね、嫌いなんでなんですよ、ただ単に》

魔法使い《だから………神々の思惑を裏切ってやろうと》

魔法使い《そう、思ったんです》





魔王「………あ」

魔王「あなたがしようとしていたことは」

魔王「………私達のしていたことは」





魔王「――私達の戦いに何の意味もなかった…?」






313: ◆EonfQcY3VgIs 2018/04/21(土) 23:09:31.32 ID:hkG69/nJ0


魔王(勇者と魔王の戦いの意味を…)

魔王(私は答えられない)

魔王(その問いに辿り着くことさえ、私には膨大な時間がかかった)


魔法使い《これだけ多くの命を死に追いやってきた魔王勇者大戦の意味が、この期に及んでもあるというのなら》

魔法使い《証明してみて下さいよ》


魔王「………っ!!」


魔法使い《さあ、魔王!》

魔法使い《…出来ないのでしょう、あなたには!》

魔法使い《あなたは不用意に死をばら蒔いたに過ぎない! そしてそれを認めた空虚な思いこそ》

魔法使い《賢者が、その胸に抱いていた感情なのですよ…!》


魔王(私は…………!)

魔王(私は――)

魔王「っ!」ギュッ

魔王(絶望に明け渡しては駄目だ………!)

魔王(今こそ………今こそ、考えなくては!!)



魔人『考える意味などない。意思など必要ではない』

魔人『魔王に必要なのは、滅びの力と死の螺旋だ』


魔人『 受 け 入 れ ろ 』ズォオ…


魔王(…っ、魔人が、怒りのエネルギーを増長させる…! 自分のコントロールが上手く利かない…!!)




314: ◆EonfQcY3VgIs 2018/04/21(土) 23:10:11.09 ID:hkG69/nJ0


魔王(目の前の敵を倒せ。人間を倒せ。勇者を倒せ………。何かがそう、急き立てる)

魔王(………どす黒い怒りが、喉からせり出ていく)

魔王「………あなたに」

魔王「あなたに何の権利があって、そんな言葉を紡げるの…魔法使い!!」

魔王「――あなたのしていることだって結局、人々を操って戦乱に導くことに他ならないでしょう…!」

魔王「多過ぎる犠牲を払ったこの戦いの果てに、解決があるというの!?」

魔法使い《…》

魔法使い《ははは! なるほど、そうですね》

魔法使い《確かに、僕は神に逆らうと言いながら、やってることは一緒です。企みをめぐらせて思うように人々を操った》

魔法使い《魔王。あなた達の絆も、研鑽も、勝利も………全ては僕の計算の内だったわけですから》

魔王「………っ」

魔法使い《炎獣も木竜も》

魔法使い《最初から死んでもらうつもりでしたよ。だから僕が殺したんです》

魔王(――!!)

魔王「一体………っ!!」


魔王「こんなことが、どんな結末をもたらすっていうのっ!!」

ゴォ…!





315: ◆EonfQcY3VgIs 2018/04/21(土) 23:13:17.35 ID:hkG69/nJ0



魔人『………そうだ。もっと力を求めろ』

魔人『――我とひとつになれ』


魔王(計り知れない怒りが、身を焦がす………!!)

魔王(駄目だ………っ! 今こそ、考えなければ)

魔王(答えを探さなきゃならないのに――)


魔法使い《こうしている間にも、残りの四天王は死の定めを辿っていますよ》

魔法使い《最後の二人の門番には、絶大な力を与えてますしねぇ》

魔法使い《おや、噂をすれば。氷姫が、今にも止めを刺されんとされていますね――》



魔王「魔法、使いィッ!!」ゴォオォオォオ…!!



魔法使い《…ははは!》

魔法使い《凄いですねぇ。途方もない力が生み出されていきますよ! 邪神の加護ってものは、恐ろしいですよねぇ》

魔法使い《思い知るでしょう、自分がどれだけおぞましい怨嗟の乱流の内にいたか》

魔法使い《そんな中を、"なぜ勇者と戦うのか"という疑問に一度は辿り着いた精神力は、見上げたものですよ》

魔法使い《けれど、それも過去の話になろうとしてますねぇ。なんという明確な殺意でしょうか》

魔法使い《正史のあなたに近づいていますよ、魔王…》




魔王「ううううううううう」






316: ◆EonfQcY3VgIs 2018/04/21(土) 23:14:12.33 ID:hkG69/nJ0




魔人『さあ――』


魔人『――明け渡せ』



魔王「うううううううううううううううううう」


魔王(駄目だ…!! 怒りに飲み込まれる!!)







魔王「うああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」






















炎獣「魔王」




317: ◆EonfQcY3VgIs 2018/04/21(土) 23:18:40.20 ID:hkG69/nJ0


炎獣「駄目だ、魔王」

炎獣「呑み込まれるな」







魔法使い《――!!》

魔人『貴様は………』







魔王「………………炎」


魔王「獣………?」







炎獣「よっく見ろ、魔王」

炎獣「そいつはお前がずっと遠ざけてきたはずの力だろ」

炎獣「喰われちゃ、駄目だ」





318: ◆EonfQcY3VgIs 2018/04/21(土) 23:19:07.40 ID:hkG69/nJ0


魔王「………っ」

魔王「――炎獣だ」

魔王「炎獣」

魔王「炎獣が、いる」

炎獣「…魔王」

魔王「炎獣………っ、炎獣っ!」




炎獣「わりィ、魔王…」

炎獣「約束したのに…ちょっと、そばを離れちまったな」




319: ◆EonfQcY3VgIs 2018/04/21(土) 23:22:03.68 ID:hkG69/nJ0


魔王「炎獣…っ!!」

魔王「…っえ?」ス…

魔王(炎獣の身体を、腕がすり抜けた…)

炎獣「…やっぱ触れ合えねぇか」

魔王「これ…っ」

炎獣「すまねぇ。魔王。俺は今、心だけの存在だ」

炎獣「魂だけ…霊みたいなもんだ。やっぱりさ俺は一度きっちり」

炎獣「死んだんだ。あの時」

魔王「…っ!!」

炎獣「でも、こうして会いに来れた。きっと魔法使いが、死と生の境目を曖昧にしたせいだ」

炎獣「こんな形でごめんな、魔王。でも、もう少し」

炎獣「これでもう少しだけ、戦える」

魔王「…炎、獣…?」





320: ◆EonfQcY3VgIs 2018/04/21(土) 23:22:36.83 ID:hkG69/nJ0




魔法使い《………》

魔法使い《…あと少しのところで》

魔法使い《正気を取り戻してしまいましたか。そうですか》

魔法使い《炎獣…。思念体になってまで》

魔法使い《魔人の驚異から魔王を救いますか》

魔法使い《………》

魔法使い《ですが、どうするつもりですか? その、魔人を》



魔人『―― 貴 様 ァ !!』 ォオ…!!

魔人『幾度邪魔をすれば気が済むッ!!』

魔人『その女から離れろッ!!』

魔人『身体を加護に明け渡せェッ!!』


ミシミシミシッ…!!



炎獣「…よぉ、久しぶりだな。相変わらずすげえ力だ」

炎獣「俺がやり合ってた時よりも数段圧力が増してやがる」

炎獣「…魔王。よく、聞いてくれ」


魔王(………せっかく、また会えたのに)

魔王(炎獣…。どうして)



魔王(どうしてそんなに、悲しそうな顔を、しているの)





321: ◆EonfQcY3VgIs 2018/04/21(土) 23:23:36.15 ID:hkG69/nJ0



炎獣「俺は死んだけど…こうしてまたお前に会うことができた」

炎獣「けどな………俺は結局、生き返ったりは出来ない」



魔王「――っ!!」


炎獣「それでも、お前の役に立てることがひとつだけある…」

炎獣「俺だって悔しいけどよ。こうするしか、もう魔法使いに勝てねえ」


炎獣「なあ、魔王」




炎獣「俺が俺じゃなくなっても、友達でいてくれるか?」









334: ◆EonfQcY3VgIs 2018/05/12(土) 08:38:54.30 ID:fcV9fmiV0






雷帝「ぜッ!!」ギュンッ

ズバァン!!

雷帝「はッ!!」ビュッ

ザンッ!!

雷帝「ふッ!!」ギュバッ!

――ヒュドッ!!


雷帝「………はあっ、はあっ」

雷帝(何故だ………。何故っ)

雷帝(一太刀も浴びせられない…っ!?)


兄「流石の剣捌きだ、雷帝。あの先代を倒して来ただけあって、凄まじいものだ」

兄「よくぞ生身でその域に辿り着いた。同じ生命として誇らしくすらある」

兄「――でも、俺は倒せない」

兄「魔法使いが創った"鍵"は、神々の加護にすら届く反則級の代物だ。その恩恵にあずかった今の俺には」

兄「これだけの力がある」ブンッ


 ド キ ャ ッ ! !


雷帝「!!」




335: ◆EonfQcY3VgIs 2018/05/12(土) 08:42:14.17 ID:fcV9fmiV0


雷帝(………ひと振りで、背後の壁が粉砕された)

雷帝(あんなものを………一度でも受けたら、身体が千切れ飛ぶ………!!)

兄「魔法使いがどういうつもりでいるのか…俺には推し量れんが」

兄「お前が勝てそうにないってことは、確かだな」

雷帝「………雷の嵐よ」ォオ…

バリバリッ…! バリッ!!

兄「! 魔法か」

兄(雷鳴の閃光を連続発生させて、隙を突こうという魂胆だな)

兄「…面白い。足掻いてみせてくれ」

兄「魔法使いの絶対的力の前に…お前がどこまでやれるのかを」



雷帝「っ」バッ!!

兄(後ろか!)ヒュ――

 ド バ バ ァ ン … ! !





336: ◆EonfQcY3VgIs 2018/05/12(土) 08:43:16.25 ID:fcV9fmiV0


雷帝(避けきったつもりだった…っ! が、腹を掠めている!)

雷帝(なんて強大な斬撃だ………奇襲に失敗すれば、待つのは死――)

雷帝(いや。恐怖を想像するな。歩幅が縮む。より死を近づける)

ビリッ…! バリバリッ!!

雷帝(乱発する電撃に隠れろ。敵の死角に入り込め)

雷帝(一刀の元に斬り捨てられなくば、次の一刀を見舞え)


雷帝「」ギュンッ!

兄(次は頭上からか!)ブオ


 ― ― …




兄『本当に、女神の加護に似たものを。いやそれ以上のものを…作ることが出来るのだな』

魔法使い『ええ』


雷帝(!!)




337: ◆EonfQcY3VgIs 2018/05/12(土) 08:44:09.34 ID:fcV9fmiV0


雷帝(なんだ、この声は!?)


魔法使い『あなたの弟さんは、勇者一行に選ばれたそうですね。なんでも女神が実際に姿を現したのだとか』

魔法使い『でも、"勇者"なんて魔王に勝利できるかも分からない曖昧なものに頼るよりは』

魔法使い『この技術を駆使して、人の確実な勝利を約束することが、最良とは思えませんか?』

兄『…』

魔法使い『あなたが、軍部の頂点に立つことが出来れば、それは可能ですよ』

魔法使い『簡単なことです。国王や弟さんを裏切り、教会を利用すればいいんですよ』




兄「…気にするな。ただのエコーさ」

兄「全てを裏切りたった一人で事を為そうとした男の、憐れな記憶の断片だよ」

雷帝(これは…こいつの過去か)

兄「お前が電撃など垂れ流して暴れるものだから、施設の機械が誤作動を起こしたのだろう」

兄「全く…人の傷をほじくり返してくれる」



魔法使い『…あなたは頭の良い人だ。心のどこかで思っていたんじゃないですか?』

魔法使い『勇者に頼ることでしか平穏を維持できない、人々の愚かさを』

魔法使い『気づいてしまったのでしょう。それはもう、引き返せないことなのではないですか?』

魔法使い『"あなたにしか出来ないこと"を為すのです』

魔法使い『――弟さんではなく、あなたがね』




338: ◆EonfQcY3VgIs 2018/05/12(土) 08:45:02.44 ID:fcV9fmiV0


兄「…戦士」

兄「俺はずっとお前が羨ましかった。…ひたむきさと、それゆえの強さが」

兄「俺よりも遥かに優れた剣を使うようになった頃から、俺は増してゆくその思いを胸のうちに抑え込むようになった」

兄「…女勇者様は、そんな俺の心の内を見透かしておられたんだろうな」

兄「まあ、俺の小さな足掻きの生など」

兄「貴様らの前で露と消えていくわけだが」クル

雷帝(!! いかん)

雷帝(完全に読まれ――)


兄「残念だったな」ヒュン




  ズ  ド  ッ  …





雷帝「かふッ…!!」

………ドタ




339: ◆EonfQcY3VgIs 2018/05/12(土) 15:09:13.77 ID:fcV9fmiV0



雷帝「………はッ…」

雷帝「…かッ………」

ドロ…


兄「…半身吹っ飛ばしたと思ったんだが」

兄「片耳から肩にかけて落としただけか」


雷帝「ぜッ………」

雷帝「ひゅッ………」グラ…

ボトボト…ッ

兄「おいおい、動かない方がいいんじゃないか? 命を縮めるぞ」


雷帝「はッ………」

雷帝「ふうッ………」

ズルズル…

兄「…地を這いつくばっても尚」

兄「剣を取るのか…」



雷帝「………それが」ハッ…ハッ…

雷帝「私の権利だ」




340: ◆EonfQcY3VgIs 2018/05/12(土) 15:12:35.05 ID:fcV9fmiV0


兄「ふっ、ははは…!」

兄「…そうか。やはりな」

兄「お前は、どこかあいつに似ているんだ。俺の弟にな。あいつ、お前ほど頭が回るクチじゃあないんだが」

兄「でも…なんだろうな。もののふの誇りそのもののような奴だった」

兄「…今のお前は、あいつにだぶるよ」


雷帝「………」チャキ…


兄(刀を鞘に収めた。が、その瞳は何者にも屈する様子はない)

兄(…不気味だな。何を考えている?)


雷帝「………」


兄「…気づいているか? 雷帝」

兄「今までのお前達とは立場が逆転してしまっている。力を示して他を圧倒していたお前が」

兄「すっかり挑戦者のようだ」




341: ◆EonfQcY3VgIs 2018/05/12(土) 15:13:33.92 ID:fcV9fmiV0


兄「今までの物語のあらましを考えれば…お前はその必死の健闘も虚しく敗北するというのがスジだろう」

雷帝「………」

兄「それでも、俺に勝ってみせるかい?」

兄(いいな…そんな展開を見てみたいというのも、本音だ。………けれど)

兄「悲しいかな、俺は手を抜くことは出来ない」

兄「…お前の生の、最後の最後のところの力を見せてくれ」

兄「お前がこの世界に生まれてきた意味を」


兄「教えてくれ」チャキ…





雷帝「………」







雷帝「――"居合い"」

――戦士「兄上!」





兄「!!」





342: ◆EonfQcY3VgIs 2018/05/12(土) 15:14:24.96 ID:fcV9fmiV0



雷帝(痛む)


雷帝(片腕を失った身体が悲鳴を上げて、神経がのたうちまわる)


雷帝(でも、この感覚がある。この感覚は、私のものだ)


雷帝(私はまだ生きている)


雷帝(翁を………炎獣を、失った痛み)


雷帝(魔王様を守れなかった無念)


雷帝(そのうずきが、私を生かす)


雷帝(私はまだ生きている)




雷帝(誰に操られるでもなく私だけの生を)





雷帝(生きたい)







雷帝(もう)








343: ◆EonfQcY3VgIs 2018/05/12(土) 15:15:14.56 ID:fcV9fmiV0






雷帝(失いたくない)







   ゴ   ッ








344: ◆EonfQcY3VgIs 2018/05/12(土) 15:16:00.65 ID:fcV9fmiV0




兄(最後の最後、そのひと振りが)

兄(今までの全てを超越したのか)

兄(それが、お前の強さか)

兄(その強さに対して、俺は…)


兄(………お前のことなんか思い出したせいだぜ。剣が、鈍ったのは)

兄(また負けちまったよ、畜生)






兄(まったく。こんな役回りばかりか)









『システムパターンCをクリアしました』











345: ◆EonfQcY3VgIs 2018/05/12(土) 19:57:18.87 ID:fcV9fmiV0




魔女「…どうやらあの男も逝ったか」

魔女「………」

魔女「それで、おぬしは」


魔女「その身体で、まだ立つつもりなのか?」


パキ… パキキ………

氷姫「…ひゅう、ひゅう」

氷姫(くそ)

氷姫(網膜まで凍って、何も見えない)

氷姫(腕も凍りついて、地面に張りついてしまってる)

氷姫「ひゅう…ひゅう…」ガチガチ…

氷姫(………氷の女王であるあたしが、寒いだなんて、お笑い草ね)

氷姫(究極氷魔法に、失敗した時以来かしら)


魔女「氷魔法の使いすぎじゃ。お前自身が氷漬けになるぞ」

氷姫「………それも」ヒュウ…ヒュウ…

氷姫「悪かぁないかも、ね…。あたしの、死に方としちゃ、最上ってもんよ…」




346: ◆EonfQcY3VgIs 2018/05/12(土) 19:59:01.66 ID:fcV9fmiV0


魔女「…死ぬまで戦いを止めないつもりか」

氷姫「おあいにく、さま…。あたしって、最高に、往生際が、悪くってね」

氷姫「あたしが、勝つまで、付き合って、もらうわよ」ヒュウ…ヒュウ…

魔女「呆れた女じゃ。…命を自ら投げ出すか」

氷姫「………あたしは」

氷姫「あたしの、最も大切なものを、守れなかった」

氷姫「魔王を、炎獣を…」

氷姫「だから、いつ死んだっていいじゃないの」

魔女「…そう言うわりにおぬしは」

魔女「おぬしの魔力は…まだ妾を倒そうと殺気立っておるぞ」

氷姫「…は」

氷姫「はは…」ォオォオォ…




347: ◆EonfQcY3VgIs 2018/05/12(土) 20:00:10.44 ID:fcV9fmiV0


氷姫「不思議よね。ほんと…」

氷姫「いつ死んだっていい、だなんて思うと………余計に足が踏ん張っ、て」

氷姫「前を向かせるのよ…」 バチッ…

バチバチッ… バチバチバチバチッ!

魔女「なんじゃ、それは」

魔女「詠唱でもなんでもない…気迫で魔力を生み出しているのか」


氷姫(こいつに放つ、何度目か分からない全力…)

氷姫(さっきの魔法より、僅かでも上回っているかもしれない)

氷姫(今度こそ、倒せるかも知れない)

氷姫(それに全てを賭ける)


氷姫(身体が重い。何も見えない)

氷姫(気管に冷気が突き刺さって、血が溢れ出しそうだ)

氷姫(それでも)

氷姫(この腕が上がれば)



氷姫(魔法を、撃てる)





348: ◆EonfQcY3VgIs 2018/05/12(土) 20:01:20.36 ID:fcV9fmiV0



氷姫(雷帝、ごめん)


氷姫(こいつを倒しても、あたし)


氷姫(こいつの魔法を防げない)


氷姫(それでも)




氷姫(――地獄に、引き摺り込んでやる)









氷姫「………腕…ッ」







氷姫「上がれぇぇぇぇぇぇえええええええええエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッ!!」

   ――バキバキバキッ








   ド   ン   ッ













魔女(のう…魔法使い)

魔女(お前は分かっているんだろう)

魔女(邪神の加護を失って尚、こうして肉体と精神の限界に挑むこやつらは)

魔女(もはや、かつてのお前そのものじゃ)

魔女(絶対的な神秘に己の身ひとつで挑んでいたお前と)

魔女(お前は、こやつらをその身の限界を越えさせるために………妾達を遣わせたのか?)




349: ◆EonfQcY3VgIs 2018/05/12(土) 20:02:32.97 ID:fcV9fmiV0


魔女(滅茶苦茶な魔法じゃ)

魔女(しかし、今までのどんな魔法より鋭利じゃ)

魔女(同士討ちか。いや、よくぞここまで持ち込んだ)

魔女(尊敬に値する。四天王)

魔女(だから、これは妾の敬意じゃ)

魔女(お前はもう少し)


魔女(生きるがいい――)




ヒュ…








氷姫(!!)


氷姫(敵の魔法が、逸れた――)







『システムパターンDをクリアしました』







 ド カ ァ ア ア ン ッ … ! !







350: ◆EonfQcY3VgIs 2018/05/12(土) 20:04:08.68 ID:fcV9fmiV0



氷姫「………」


氷姫(………勝っ、た)

氷姫(あたし……勝ったの…かな)

氷姫(ほんとに、これは)


氷姫("勝ち"なのかな)


氷姫「………」

氷姫「は、はは…」

氷姫「何も見えないんじゃ…それも分かんないや」

氷姫「………」




351: ◆EonfQcY3VgIs 2018/05/12(土) 20:05:20.17 ID:fcV9fmiV0


ズル… ズル…

氷姫(………ああ、体が重い)

氷姫(半分体が凍ってるんだから、そりゃ当たり前か)

氷姫(もう、止まってしまいたい。まともに思考がまとまらない)

氷姫(あたしは進んでいるの? 止まっているの? それさえ分からない)

氷姫(ここは、どこ…)






くノ一「………雷帝は先に行った」

くノ一「門は開いている」

氷姫(…あっそ)

くノ一「魔王をどうしたかは分からないが…魔法使いは、そこで待ち受けているだろう」

くノ一「あなたも………その体で行くのか?」


氷姫「………」


氷姫「………」ズル…ズル







352: ◆EonfQcY3VgIs 2018/05/12(土) 23:06:48.77 ID:fcV9fmiV0


氷姫「………目が見えないってのは、存外不便なもんね」

氷姫「あんたがそこにいるのか…分からないわよ」

氷姫「ねえ、雷帝」

氷姫「そこにいるの?」


雷帝(………この冷気)ピクッ

雷帝(来たのか、氷姫)

雷帝(…はは。せっかくの再会だと言うのに、お前の言葉を聞く耳は削がれ、喉は潰れて何も伝えられない)

氷姫「この魔力の波動…あんたなのね」

氷姫「いるんなら、返事くらいしなさいよね。ったく」

雷帝(何を言っている…? ………お前、目が…凍っているのか)

雷帝(――お前も決死で戦い抜いてきたのだな)

氷姫「ねえ、雷帝」

氷姫「あんたには、言わなきゃ気がすまないことがあるの」




353: ◆EonfQcY3VgIs 2018/05/12(土) 23:07:41.80 ID:fcV9fmiV0


氷姫「あんたは、あたしを強いって言った」

氷姫「でもね」

氷姫「あんたには、あたし、そんな風に言って欲しくない」

雷帝(何を言っているんだ。氷姫、私には分からん)

雷帝(お前がそっち側に立っていたら、私はお前に触れることすら出来ないのだ)

雷帝(片腕を失ってしまってな)

氷姫「あんたとあたしは、一緒なのよ」

氷姫「沢山の気持ちが、一緒だったの」

雷帝(もはや一歩も歩くことはままならん)

雷帝(最後に一刀を振るうのでやっと)

雷帝(しかし不思議だな。お前と一緒だということが)

雷帝(このろくに動かん身体に、力をたぎらせる)

氷姫「だから、最後に背中を任せるのがあんたで、良かったと思ってる」

氷姫「ねえ、これだけは伝えたかったのよ。あたし」





354: ◆EonfQcY3VgIs 2018/05/12(土) 23:08:27.90 ID:fcV9fmiV0


雷帝(なあ、氷姫。私の剣は、お前の魔法は、届くだろうか。魔王様の元に)

氷姫「あたし、魔王を恨んでなんかいないわよ。あいつの為に戦えることが、誇りなの」

氷姫「それは今も変わらない。きっと最後まで」

雷帝(仇討ちだなんて、愚かだろうか?)

氷姫「いいじゃない、カッコ悪くたって。それでもあたし達はここまで来たのよ」

雷帝(…そうか。そうだな。私は最後まで私の剣を振るうのみだ)

氷姫「あたしだって、意地があるわ。氷の女王のね」

雷帝(今さら逃げ出しようもないのだ)

氷姫「それがあたし達の覚悟よ」

雷帝(倒れるときは、前のめりに、だな)

氷姫「最後の一歩だったとしても、踏み出すのよ」


氷姫 雷帝 「さあ」 (さあ)


氷姫 雷帝 「(受けとれ)」





――魔法使い!!








魔法使い「………いいでしょう」

魔法使い「あなた達の辿り着いたものを、見せて貰いましょう」





355: ◆EonfQcY3VgIs 2018/05/12(土) 23:09:26.17 ID:fcV9fmiV0








氷姫 雷帝 「「 」」 ギュ







  ド  ッ  ッ  !  !


 










魔法使い(鍵の恩恵を受けた門番をも倒した一撃)

魔法使い(氷姫と雷帝のそれが、うねり絡み合って迫る)


魔法使い(懐かしい重みだ)


魔法使い(自分の限界に挑み続けた魔界での日々を思い出す)

魔法使い(知識の壁を越えんとしていた人間界での時間も)

魔法使い(…肉が裂け、血が凍てついていく)

魔法使い(それすら愛しく感じられる)


魔法使い(やっと、僕のことを分かってくれる者達に出会えた)

魔法使い(武闘家さん。…あなた以来のことですよ)




356: ◆EonfQcY3VgIs 2018/05/12(土) 23:10:19.18 ID:fcV9fmiV0


魔法使い(攻撃によって細胞が死に、死んだそばから息を吹き返してゆく)

魔法使い(氷姫と雷帝が僕を殺しきる前に、"鍵"が僕を生き返らせてしまう)

魔法使い(これが"鍵"の領分。約束された力)

魔法使い(どんなに頑張ってみても乗り越えられない壁というのはあるようです)

魔法使い(それを知っているから、僕もこんなことをしているわけですけどね)


魔法使い(惜しかったですね。氷姫。雷帝)



魔法使い(健闘をたたえましょう。ですから)







魔法使い(どうか穏やかな最後を)













魔法使い「波動よ」   ボッ

















357: ◆EonfQcY3VgIs 2018/05/12(土) 23:11:23.97 ID:fcV9fmiV0







魔法使い「………………驚いた」

魔法使い「まだ意識がありますか」

雷帝「――…」

魔法使い「もはや手足も失っているというのに…」

魔法使い「炎獣も大したものでしたが、雷帝。あなたも大概ですね」

魔法使い「氷姫は、流石に参ってしまったようですよ。まだ彼女も息はありますが………あれでは長く持たないでしょう」

雷帝「――…」

魔法使い「おっと、すみません。苦しいですよね」


魔法使い「今、楽にして差し上げます」ス…


雷帝「――…」


魔法使い「………」

魔法使い「最後まで、闘志剥き出しのもののふの目をなさりますか」


魔法使い「ご立派ですよ」










魔法使い「さようなら」




358: ◆EonfQcY3VgIs 2018/05/12(土) 23:12:11.75 ID:fcV9fmiV0







「―― ガ ア ア ア ア ア ア ア ア ア ッ ! ! 」







魔法使い「!」ピタ

魔法使い(今のは…?)

魔法使い「外から、ですか」






「 グ オ オ オ オ オ オ ォ オ ォ オ ォ オ ッ ! ! 」






魔法使い「………」

魔法使い「へえ。そうですか」

魔法使い「そういう道を選びましたか」


魔法使い「――魔王」







359: ◆EonfQcY3VgIs 2018/05/12(土) 23:13:02.78 ID:fcV9fmiV0



魔王「魔法使い」

魔王「雷帝から、離れなさい」





360: ◆EonfQcY3VgIs 2018/05/12(土) 23:14:05.22 ID:fcV9fmiV0



魔法使い「絶望の縁から舞い戻りましたか。魔王」

魔法使い「荒れ狂う邪神の加護を…魔人をどうするのかと思いましたが」



炎獣「 ゴ ォ ア ア ア ア ア ア ! ! 」



魔法使い「――なるほど。炎獣の亡骸に封印しましたね」

魔法使い「…炎獣の強固な肉体は肥大化し、原型を留めていませんが、封印に堪え忍んだようだ」

魔法使い「そしてその暴走は、辛うじて押さえられている」

魔法使い「制御を可能にしたのは、あの炎獣の思念体のせいか、はたまた………器に何かの思い出でも残っていたのでしょうかねぇ」

魔法使い「魔王………あなたに対する、思い出が」



魔王「もう一度だけ言うわ」

魔王「雷帝から、離れて」ゴォ…




361: ◆EonfQcY3VgIs 2018/05/12(土) 23:14:55.51 ID:fcV9fmiV0


魔法使い「…いいでしょう。もほや彼を殺すことに意義などありませんから」

魔法使い「それで、その凶悪なしもべを使って僕を倒そうと言うわけですか?」


魔王「あなたが引き起こしたこの大戦は」

魔王「あまりに多くのものを奪いすぎたわ」

魔王「………もう、終わらせる」


魔法使い「ですが、魔王。あなたは今や理解している」

魔法使い「今さら勇者のもとを目指して何になるというのです?」

魔法使い「この戦いは確かに僕の意思によって動いてきましたが………そうでなくても神々によっていずれ導かれていたことでしょう」

魔法使い「魔王勇者大戦。この茶番を終わらせるという道をとるならば」

魔法使い「僕と共に神と戦う、という道もあるのではないですか?」


魔王「………」




362: ◆EonfQcY3VgIs 2018/05/12(土) 23:16:09.92 ID:fcV9fmiV0


魔王「あなたは全てを明らかにしなかった」

魔王「最初から、自分の力だけで全てを操ってきた。沢山のものを裏切り、死に追いやった」


魔王「………そして今でさえ」

魔王「あなたは、己のうちだけに秘めているものがある」


魔法使い「………」


魔王「どうして、こんなやり方しか出来なかったの?」

魔王「どうして、犠牲が必要だったの?」

魔王「――あなたは、それに答えるつもりはない」


魔法使い「………参りましたね」

魔法使い「お見通しですか」




363: ◆EonfQcY3VgIs 2018/05/12(土) 23:17:09.75 ID:fcV9fmiV0


魔王「私は神々のものでも、あなたのものでもない」

魔王「もう只の玩具ではない」


魔王「私は魔王」

魔王「最果ての大陸、魔界の王者」

魔王「沢山の想いと魂の上にここに立つ」


魔王「最後は」



魔王「自分の足で歩く」


 ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ … !




魔法使い「!」

魔法使い(………魔力が奪われている。いや、魔力だけではない。これは)

魔法使い(僕の生命力自体を吸収しつつある。これは…)

魔法使い「ふむ」

魔法使い「このままでは、僕の記憶や想いみたいなものまで、炎獣に吸いとられてしまいますね」

魔法使い「そして魔王。あなたは炎獣を通して僕の精神を垣間見る」

魔法使い「僕の真実を読み取って、自分の目で確かめ、自らの決断でのみ進むと。そのために僕の秘密を奪ってしまおうと…」

魔法使い「そういうわけですね」




364: ◆EonfQcY3VgIs 2018/05/12(土) 23:18:08.37 ID:fcV9fmiV0


魔法使い「えげつないことをするじゃあありませんか。炎獣をそんな風にしたり、人の想いを掠め取ろうとしたり」

魔法使い「かつての聖女のようなあなたからは、想像もつかない」


魔王「言ったでしょう」

魔王「私は………――魔王よ」


魔法使い「ははは。そうですか」

魔法使い「天晴れです。大した信念だ」


魔法使い「ですが、僕もここまで来て止められません」

魔法使い「それに…僕の記憶を土足で踏み荒らされるようなマネは、ご遠慮願いたいですからね」

魔法使い「力づくで、奪ってごらんなさい。………魔王なら、ね」


魔法使い(炎獣。邪神の化身よ)

魔法使い("鍵"の解放による一撃を、受けなさい) ォ オ …






 ズ ド ン ッ ! !









365: ◆EonfQcY3VgIs 2018/05/12(土) 23:19:06.17 ID:fcV9fmiV0






炎獣「 ガ ア ア ッ ! 」


――バチンッ!!!!






魔法使い(全力の一撃を、叩き落とされた…!?)

魔法使い(…本当に恐ろしいものですね。今や炎獣は邪神の加護の化身)

魔法使い(神の力そのもの、というわけですか
)



魔王「炎獣…平気?」ス…

炎獣「 グルルル… 」

魔王「うん。一緒にいこう」



魔法使い「!」ゾクッ

魔法使い(――来る)












  ド  ッ  !  !










366: ◆EonfQcY3VgIs 2018/05/12(土) 23:20:01.94 ID:fcV9fmiV0



魔法使い(危うく全身吹っ飛ばされるとこでした)

魔法使い(半身で済んだのは幸いですね)

魔法使い(…すぐに"鍵"が身体を修復する。が)

魔法使い(幾分かは存在を奪われてしまった)


魔法使い(――返して下さい)






  ド  ギ  ュ  ッ  ! !







炎獣「 グ ォ オ ォ オ ォ オ ォ オ ! ! 」


魔王「炎獣っ!」





367: ◆EonfQcY3VgIs 2018/05/12(土) 23:23:20.00 ID:fcV9fmiV0


炎獣「 グ ル ル ル ル 」

魔王「炎獣…っ、大丈夫?」

炎獣「 … ガ ア ッ ! 」




魔法使い(………腹に空けた穴が塞がってゆく)

魔法使い(そちらも、すぐ修復ですか)


魔法使い(面白い。修復が間に合わなくなるまで攻撃を撃ち続けた方の勝ちというわけだ)


魔法使い(最後に立っているのはどちらか。決着になることはそれだけ)

魔法使い(………ようやく。ようやくだ)



魔法使い(ついに、神の力と対決するのだ………僕は)




368: ◆EonfQcY3VgIs 2018/05/12(土) 23:24:22.95 ID:fcV9fmiV0


魔法使い(僕が培ってきた全てが、神の力を越え得るか)



魔法使い(それとも………ふふ!)



魔法使い(さあ!!)




魔法使い(最後の審判が下るときだ!!)














魔法使い(今こそ答えを見せろ――!!)ォオォオ…!





炎獣「 が あ ぁ あ ぁ あ ぁ ッ ! ! 」ギュオォオ…!












375: ◆EonfQcY3VgIs 2018/06/09(土) 08:13:54.40 ID:m5D6diRcO










神父(――この世の終わりとは、こんな眺めなのだろう)

神父(天に向かって幾筋もの光が飛び散った時、私はそう思った)


神父(光は、空を突き破るように虚空を飛び、そして破裂した)

神父(途端に天空は紅蓮色に染まり、朱く我々の姿を照らした)

神父(爆風が遥か上空から我々を叩きつけ、少し遅れてから耳をつんざくような轟音が襲ってきた)


神父(理解の及ばぬほどの激しい衝動がぶつかり合っていたのだと知ったのは、もっとずっと後になってからで)

神父(その時、人々は誰一人例外なく、為す術もないまま身を縮めるしかなかったのだ)

神父(私は城下町で見つけた赤毛達を庇うようになったまま、何とかもう一度空を見た)

神父(王城は、すでに奇怪な姿へ形を変えて中へ浮かび上がり、原形を留めていなかった。光はそこから四散し、爆発を繰り返していた)

神父(神話の世界を眺めているようだと、思った。そしてあの光の欠片がひとつでも落ちてくれば、王国は消し飛ぶのだ)

神父(そういう予感があった)


神父(だからいよいよその瞬間を迎えようという時に)

神父(身を呈して城下町を守った小さな影が、魔王自身だったなどということを)


神父(その時の私たちは、気づくはずもなかった――)






376: ◆EonfQcY3VgIs 2018/06/09(土) 08:21:31.44 ID:m5D6diRcO



魔王「――うあああああああッ!!」




魔法使い(魔王………っ! 貴女という人は!!)

魔法使い(人間の王国を、その身を呈して守ろうというのですか!?)

魔法使い(今の貴女では、命を落としかねない暴挙だ!!)

魔法使い(人間の国を守って死んで、それでもいいというのですかっ!!)


魔王「これは…っ、もう………!!」

魔王「人と魔の戦いではない!!」


魔王「世界を操る存在と、そこに生きる生命の戦いだ………!!」


魔王「滅びるべき命なんて、最初からなかった…っ!!」

魔王「私は…っ、それを見抜けずに多くを殺めた…!!」


魔王「私は、もうこれ以上」



魔王「生命の生きる権利を奪わない!!」




魔法使い「ふっ!」

魔法使い「くくく!! いいでしょう!!」

魔法使い「面白い皮肉じゃありませんか!!」


魔法使い「守ってご覧なさい!!」


魔法使い「"魔王"たるあなたが!!」


魔法使い「世界をっ!!」






377: ◆EonfQcY3VgIs 2018/06/09(土) 14:14:47.76 ID:tpR/STzE0



魔法使い(ああ)

魔法使い(今や神の化身となった炎獣の相手は流石に…)

魔法使い(僕の存在が流れ出してゆく。それを塞き止める余裕はありませんね)

魔法使い(僕の過去の記憶)


魔法使い(この数百年の想いが、こぼれ落ちる………)









――
――――
――――――




378: ◆EonfQcY3VgIs 2018/06/09(土) 14:15:37.47 ID:tpR/STzE0




側近『はあ、はあ………』

側近『誰か、生きている者はいませんか!』

側近『誰か…っ!』

側近『………いないのか』

側近『生き延びたのは、僕だけなのか』

側近『………勇者一行も、四天王も、魔王様も』

側近『みんな、死んだ』






379: ◆EonfQcY3VgIs 2018/06/09(土) 14:16:49.95 ID:tpR/STzE0




側近『前回の魔王と勇者は同士討ちになりました』

側近『人間側も次の勇者が出るまで、しばらくは攻勢に出てくることはないでしょうが』

側近『我らはその長寿にかまけて、これ以上魔王の座を巡る戦いに没頭していては、魔界は疲弊するばかりです』

側近『新たな魔王が必要なのです。それは、邪神の加護を持つあなたに他なりません』

側近『………ですから』

側近『その手に持つ鍬を捨てて、さっさと軍をまとめて下さい』


先代『ふーむ。気乗りせんなあ』







380: ◆EonfQcY3VgIs 2018/06/09(土) 14:18:04.02 ID:tpR/STzE0





側近『魔王就任おめでとうございます』

先代『やれやれ。魔界っていうのはどうしてこう血の気が多いのばかりなのだか』

先代『…いらん犠牲を払いすぎた』

側近『あなたが王の座に就くことが一番の平和への道ですよ』

先代『しかし、こうなれば今度は人間との戦いが始まるわけだろう。勇者との、戦いが』

側近『そうなりますね』

先代『なあ、側近。本当に戦わねばならんのか…?』

側近『………何を、今さら』

側近『迷う必要など、ありませんよ』






381: ◆EonfQcY3VgIs 2018/06/09(土) 14:22:05.97 ID:tpR/STzE0




冥王『おや、お前様は』

側近『…冥王』ハァ

側近『魔王様の戴冠式はとっくに済みました。あなたの用はもうこの魔王城にはないはずですが』

冥王『おほほ。なんとまあ、ツレないこと。あたくしにそんな態度をとる魔族は、魔界中探してもお前様くらいのものですのよ』

側近『悠久ともいえる時を生きる者同士と言えど、馴れ合うつもりはありませんよ』

冥王『相変わらずのコミュ障野郎で、困っちまふわね。それにしても、お前様』

冥王『新しい魔王に随分と手を焼いてるご様子じゃありませんの。珍しいものが見れて、あたくし可笑しくてしょうがないわ』

側近『…あの人は、今までの魔王にないくらいマイペースでしてね。戦意ってやつが薄すぎるんですよ。魔族のくせに』

冥王『………あたくしにしてみれば』

冥王『それだけの力と知識を持っていながら、未熟者に付いて回り続けるお前様の方が、魔族らしからぬズボラ者に見えるけれどね』

側近『………早く冥界に帰ってくださいよ。うるさいですねぇ』

冥王『はいはい』オホホ






382: ◆EonfQcY3VgIs 2018/06/09(土) 14:24:59.33 ID:tpR/STzE0




側近『…魔王と勇者の戦い。その全ての戦績はほぼ五分と五分』

側近『それは僕が今まで経験した戦いの全ても同様だ。敗れた種族は搾取され、文明が衰退する。やがて窮地を救う英雄が現れる…その繰り返し』

側近『"本当に戦わねばならんのか?"ですか』

側近『僕だって本当はその問いに幾度も辿り着いていた。けれど人と魔は相容れない………勇者と魔王がいる限り』

側近『――それでは勇者と魔王は、人間と魔族の争いを引き起こすために存在しているのか?』

側近『英雄などではなく…歴史を繰り返すための道具』

側近『………道具…一体誰の? それは――』


側近『天から加護を与え続ける、神々の、だ』


側近『…』

側近『もしかすると、次は人間の敗北なのかもしれない。人間は近年純粋な敗北とは縁がなく、その人口を増やし続けている』

側近『どちらにせよ、今度の大戦において魔王様が優位なのだとすれば………あの魔王様なら、戦争以外の道を模索できるかもしれない』

側近『それに何より、今回はあの魔王様が』

側近『死なずに済む』






383: ◆EonfQcY3VgIs 2018/06/09(土) 14:28:53.54 ID:tpR/STzE0




側近『…まさか。確かなのですか?』

冥王『どうやら、そのようでしてよ』

冥王『邪神の加護が、王からその娘に移り変わり始めちまってますわね。あたくしもこんな事は始めて経験しますのよ』

冥王『赤子の身で親の加護を吸い出すなんて…末恐ろしい魔族も居たものですわね』

冥王『邪神というのも、どういうつもりでいるのだか』

側近『………』

冥王『…せっかくお前様がいれこんでいる魔王ですけれど、あののんびり屋さん、娘に加護を奪われてこのままでは弱る一方』

冥王『あれじゃあ今話題の女勇者には勝てやしないでせう』

側近『………』






384: ◆EonfQcY3VgIs 2018/06/09(土) 14:30:06.28 ID:tpR/STzE0




側近『――お嬢様を殺しましょう』



雷帝『側近様…正気ですか!?』

鳳凰『血迷ったのかえ? 側近』

側近『…いいえ。僕は至って正常ですよ。異常なのはこの事態です。あってはならないことなんです』

先代『………』

雷帝『だからと言って、そんな!』

玄武『んだ。話が飛躍しすぎだべ、側近』

側近『そんな事はありません。このまま魔王様の邪神の加護が弱まれば、確実に勇者一行に敗北します』

木竜『じゃから、殺せと言うのか? まだ赤ん坊の、その子を』

側近『はい』

側近『魔王様、僕はもう一度ここに進言します』

先代『………』

側近『あなたのお嬢様は、今の内に、殺してしまうべきです』




385: ◆EonfQcY3VgIs 2018/06/09(土) 14:33:07.79 ID:tpR/STzE0


側近《魔王様…分かって下さい》

側近《あなたは今までの暴君としての魔王ではない。勇者との争いではない道を探し出せるお方だ》

側近《あなたは、死んではダメだ。神々の思い通りになることはない》

側近《今回のように先回りして気づけたことは、神の意思に逆らうチャンスだ。だから………!》

先代『………』


先代『ならん』

先代『この子を殺すことなど、許せるはずがない』


側近《…!!》

先代《すまん…許せ。側近》

先代《どんな理由があっても、娘を手にかけることは出来ない》

側近《………なぜ。なぜです》

側近《このチャンスを逃したら…またこの後数百年か、更に永い時をか、神々に支配されたままなのですよ!》

側近《その大戦の中で、沢山の生命が散る…っ! 死の循環をさまよい続けなければならないっ!》

側近《また大いなる意思の下に飼い慣らされ、呪われた放浪をすることになる――!》

先代《………》


先代《すまん》


側近《…っ!!》




386: ◆EonfQcY3VgIs 2018/06/09(土) 14:33:49.10 ID:tpR/STzE0


側近《………》

側近《――もういい》

側近《ならば、僕自身で手を下すまでだ。………どんなことをしてでも、神々の思い通りにはさせない》

側近《この機を逃してはならない。その為なら僕は――僕らしさだって捨ててみせる》

側近《あなたが捨てきれないものを、僕は捨てます。魔王様》

側近《そう。だから》

側近《魔王様。あなたを倒すことになったとしても………僕はやり遂げる》

側近《邪神の加護を………僕自身の手で正面から越えてみせる。神々の筋書きを裏切る》

側近《もう………無意味な戦いの連鎖には》


側近『ウンザリだ』

側近『守る価値もない。ならばいっそ』

側近『僕の手で、壊してしまえばいい』


木竜『…やる、と言うのじゃな』ザッ

雷帝『翁…!』

木竜『構えよ、雷帝。この男は、今この時を持って…我らの敵じゃ』ギロ

雷帝『…っ!』ジャキ…!

玄武『ちィ…!』ザッ

鳳凰『四天王全員を相手にして、勝ち目があると思うのかえ? 側近よ…!』


側近『ふっ。くっくっくっ…!』

側近『いいでしょう。今こそ試される時だ』

側近『この数百年、僕の生きた証を』



側近『その身に、刻むがいい――!!』






387: ◆EonfQcY3VgIs 2018/06/09(土) 14:37:37.76 ID:tpR/STzE0




『…ここは?』

賢者『…目が覚めたかい?』

賢者『どうやら蘇生には成功したようだ。身体は動くかな?』

『僕は…』

賢者『君は、どうやら魔王に反旗を翻した魔族だ。そして信じられないことに、邪神の加護を持つ魔王の撃破に成功したようだ』

『………そうですか』

『僕は、勝ったんですね。神々のシナリオを…逸脱せしめた』

賢者『神々のシナリオ…。興味深い話だ』

賢者『是非とも君には詳しい話を伺いたいと思っている。自分の名は、賢者。ここは人間の王国だ』

賢者『自分は君に、新たな可能性を感じている。今までの、勇者と魔王に依存した世界から抜け出すための可能性を』

賢者『自分達の研究に協力してはくれないだろうか。その為の場所はすでに用意出来ている』

賢者『人間界で生きるのだ…側近という名を捨てて』

賢者『今日からは魔法使い、と名乗るといいだろう』



『………魔法使い、ですか。そうですね』

魔法使い『分かりやすくて、いいですね…』






388: ◆EonfQcY3VgIs 2018/06/09(土) 19:44:09.59 ID:tpR/STzE0




教皇『き…危険はないのか?』

賢者『彼は我々の研究に興味を示してくれている。自分の見立ててでは、同じ価値観の中にいるという印象だよ』

賢者『それに何より…永い時を生きた経験を持っている。そして膨大な魔法の知識』

賢者『自分達の研究…"古代文明と女神について"の答えが、得られるかもしれない』

教皇『…』


魔法使い『………古代都市の、文明…。人間界には、こんなものが残されているんですか』

魔法使い『資料をもっと下さい。これは魔界にはなかった、世紀の発見だ』

賢者『もちろんさ。しかし、キリのいい所で君が魔界で得た知識も披露してくれよ』

魔法使い『ええ、ええ。もちろん。とは言え、僕の得たものは"勇者魔王大戦の枠組みの中のもの"でしかありませんが…』

教皇『…!』

賢者『どうだい? 彼の熱意は本物だろう?』

教皇『う、うむ』

教皇『そうか…。ならば私とて、女神の子ということをこの一時忘れよう』

教皇『研究の成果のために、全てを捧げよう』





389: ◆EonfQcY3VgIs 2018/06/09(土) 19:44:55.04 ID:tpR/STzE0




賢者『――魔法使いは、勇者ではないにも関わらず魔王を倒した。これは、女神の加護をいち生命が凌駕したという動かぬ事実だ』

教皇『ここでひとつの仮説を立てよう。女神の加護を、生命は越えられる。そうであるなら、女神の加護を造り出すことすら出来るのではないか』

魔法使い『生命の神秘への挑戦。現存の細胞を使わない新しい生命の誕生』

賢者『不可能じゃない。古代文明において、それは本当に実現していたはずだ』

教皇『下地は既に完成している。長い長い年月をかけてな。ついに、それを目覚めさせる仕上げの時というわけだ』



賢者『人造人間………ついに完成だ』

教皇『………これは、成功なのか?』

魔法使い『ええ。…これは今までにない魔力値をもった個体ですね』

賢者『彼女が目覚めることが出来れば、この研究の脳となってくれるだろう』

賢者『個体番号〇一七号。…通称"魔女"』


魔女『………』ムクリ…






390: ◆EonfQcY3VgIs 2018/06/09(土) 19:45:53.70 ID:tpR/STzE0




教皇『…本当に、いいのか』

賢者『うん。自分は構わないよ』

賢者『今は、自分達の研究の最も大事な時期だ。ここで少しの遅れも取りたくはない』

賢者『魔女の完成に次いで、ついに"女神"を造り出せるんだ、自分達の手で。これさえ出来れば、自分達は今までにない成果を上げられるようになる』

賢者『それこそ、女神の加護と同等のものを…!』

教皇『………とは言え』

教皇『お前自身が、生け贄にならねばならないなどと。そんな実験…』

魔法使い『…すみません。先生と手を尽くしたのですが、この方法にしか辿り着けませんでした』

賢者『…"生け贄"』

賢者『魔女と魔法使いの力を持って辿り着いた結論だ。この、古代文明の錬金術とも言える技』

賢者『そのためには、純粋な人間が生け贄に必要なんだ。………覚悟は決まっているさ』

賢者『どの道、自分はこの研究のために全てを捨て去るつもりでいた。それは教皇、君や魔法使いも同じだろ?』

教皇『くっ…しかし!』

賢者『もう、自分の能力では研究に成果をもたらせない。その役目は魔女や魔法使い、それに生み出される人造人間達が担う』

賢者『教皇。君には引き続き彼らの後援者であり続けて欲しい。………そうなると』

賢者『責任者のひとりとして、僕が果たせる仕事は、最早こんなことくらいだ』

魔法使い『………』




391: ◆EonfQcY3VgIs 2018/06/09(土) 19:46:36.19 ID:tpR/STzE0


賢者『誇りをもって、死ねるよ。君たちと、世界の神秘に挑戦し続けた証として』

賢者『教皇。魔法使い。君達と志を同じく出来たこと、本当に嬉しい』

賢者『自分は完成された"女神"の中で生き続ける、ということも考えられる。そうなれば、自分は時空すら越える存在になれるってことさ』

賢者『はは。楽しみじゃないか』

魔法使い『…賢者さん。しかし、あなたのご友人や妹さんは…』

賢者『言うな、魔法使い』

賢者『もういいんだ。踏ん切りはとうの昔につけた。それに』

賢者『"神々"についてのあの仮説が正しいんだとしたら――』

賢者『自分は、その存在にこそ近づいてやりたいと思うんだ』

魔法使い『そうですか…』

教皇『………つくづくお前は、憐れみ深い男だ』

賢者『さあ、名残惜しいがここまでにしよう』

賢者『やってくれ』






392: ◆EonfQcY3VgIs 2018/06/09(土) 19:47:22.03 ID:tpR/STzE0




教皇『み………見ろ。石板に文字が刻まれ出したぞ』

魔法使い『…ええ。どうやら、これが未来に行った"女神"の啓示のようですね』

教皇『こ、これが我々の未来…!?』

魔法使い『ふむ。"女神"が時を越えて見た未来ですから、恐らく間違いはないでしょうね』

教皇『魔王の凶暴化。勇者の敗北。人類の敗走…。そして』

魔法使い『あはは。僕らは、死ぬそうですよ』

教皇『…っ!』

魔法使い『魔王と四天王に為す術なく蹂躙される未来。…さて、どうしたものですかね』

教皇『………ふっ』

教皇『くくく…。ははははは!』

魔法使い『教皇…?』

教皇『なあ、魔法使い。我々は未来を知り得ることに成功したのだ…!』

教皇『死の運命など、どうとでも出来る。たった今、我々はそれほどの多大な力を手に入れた!』

教皇『未来を知れば、世を支配することすら造作もないっ!』

魔法使い『………』

教皇『我々は、神々と肩を並べたのだよ! この力を持ってすれば――』

魔法使い『教皇』

教皇『っ…!?』

魔法使い『あくまで我々の目的は勇者魔王大戦の仕組みを…天上の意思を裏切ることです』

教皇『…分かっている』

教皇『分かっているとも。それくらいのことは…』

魔法使い『…』






393: ◆EonfQcY3VgIs 2018/06/09(土) 19:48:30.27 ID:tpR/STzE0




教皇『――女神の力によって幾度かの未来線の変更を実行。研究は急激に加速している』

魔法使い『神々の創造する未来"勇者一行の敗北"を逃れるため、魔王討伐に成功した世界の構築を試みましたが、これは難解を極めることです』

魔法使い『今回邪神の加護を受け継いだ姫君は、類を見ないほど強大な加護の片鱗を見せています』

教皇『撃破できるかどうかギリギリの線だな。だが、不可能ではない』

魔法使い『…多くの犠牲を払うことになります』

教皇『構うものか。どうせ戦に死人は付き物だ。それより魔女の研究を急がせろ』

教皇『"鍵"の完成がもしも間に合えば、さらに新しい未来が見えてくる。魔王撃破に留まらず、世界そのものを変えるような成果になる』

魔法使い『それは、そうですが』

教皇『博愛主義の現国王も邪魔でしかないな。命までは取らずとも、どこかでご退場願おう』

教皇『そうだ。より軽便な手を思いついたぞ。魔女達の開発した奇跡の力の一旦を私自身が扱えるようになればよい』

教皇『そうと決まれば僧正達を使って明日からでも実験だ』

魔法使い『………』

教皇『魔法使い。武器商会の女社長への警戒は怠るな。あの女、どうも目敏い。あくまで魔導砲レベルのもので満足させておくのだ』

魔法使い『…分かっています』






394: ◆EonfQcY3VgIs 2018/06/09(土) 19:52:51.40 ID:tpR/STzE0


魔女『女神の時間超越は安定してきた』

魔女『おぬしらにもたらされる啓示も、"魔王敗北の未来"のために正確な指示が下るはずじゃ』

魔法使い『…流石ですね、先生。本当にあなたは初の成功例にして最高傑作かもしれませんよ』

魔女『お世辞はいい。ふざけた名で呼ぶのも止めんか』

魔法使い『僕にとっては、あなたは既に研究の先を行く先生ですよ。もはや教わることの方が多い』

魔女『ふん、口の減らぬ奴よ。それより本当なのじゃろうな?』

魔法使い『…ええ。先生の目指すように、研究は人類の未来のために、必ずや役立てます』

魔女『…そうか』

魔女『おかしいか。人形の分際で心を持ち、仕事に意味ややりがいを求めている妾が』

魔法使い『…いえ、おかしいなんてことは』

魔女『人造人間でもな…喜びなくては生きていられぬようなのじゃ』

魔女『これは、致命的な欠陥かもしれぬな?』

魔法使い『…』

魔法使い『あなたは…もしかすれば、僕より豊かな心を持っているのかもしれませんね』

魔女『これが豊かと言うことなのか…悲しみや、苦しみも多く感じ取ってしまう』

魔女『いっそ壊れていた方が、生きやすかったかもしれぬ』

魔法使い『…っ』

魔女『それでもな。今は人の幸福のために研究をしているということと、それに』

魔女『後から生まれてくる後輩共の先生役をしておることが、心の支えになっておる』

魔法使い『先生役が、ですか…?』

魔女『うむ』ニコ

魔女『人に教える…何かを残す、というのは』

魔女『――思いの外いいもんじゃぞ』






395: ◆EonfQcY3VgIs 2018/06/09(土) 19:53:40.40 ID:tpR/STzE0



魔法使い『………………』





396: ◆EonfQcY3VgIs 2018/06/09(土) 19:57:16.30 ID:tpR/STzE0




魔女『…見つけたぞ、魔法使い!』

魔法使い『おや、どうしましたか』

魔女『惚けるな…っ! どういうことじゃ!?』

魔女『あの技術を、戦争に利用するなど…っ!!』

魔法使い『簡単なことですよ。これは人類の未来のためです』

魔法使い『魔王なんて生き物がいては、人に明るい将来などない…そう思いませんか?』

魔女『戯れるでない! お前は言っておったではないかっ! 魔王を倒すこととは違う未来は、切り拓けるはずじゃと!!』

魔法使い『………これが啓示なんです。分かってください』

魔女『ば、馬鹿な…!! そんなことが………』

魔女『お、おい!! 何処へ行く!?』

魔法使い『…人里へ。たまには城下町へ行ってみようかと思いまして』

魔法使い『ねえ、先生。あなたは言ってましたよね』

魔法使い『先生役も悪くないって。教えたり、何かを残すのも、悪くないって』

魔女『それがなんだと言うんじゃ…!!』

魔法使い『僕も、やってみようかなって、思いましてね。先生役…』

魔女『ふざけるな!!』

魔法使い『あはは』

魔法使い『これがね、大真面目なんですよね』

魔女『ま、待て………!!』

魔女『待たんかっ!』






397: ◆EonfQcY3VgIs 2018/06/09(土) 19:58:20.41 ID:tpR/STzE0




三つ編『先生!』

坊主『先生ってば!』

『は、はい?』

金髪『もう、何ボーッとしてんだよ。先生』

赤毛『先生! 先生もこっちに来て、ボール遊びしようよ!』

『えっ…ぼ、先生がですか?』

『先生は先生なので、遊びなどをするつもりはありませんが』

金髪『固いこと言いっこなしだぜ、先生!』

坊主『早く早くぅ!!』

『お、押さないでくださいよ…』

三つ編『いっくよー! あっ…!?』スポーン

『ぶっ!?』バシーン!

坊主『うおーっ、顔面にクリーンヒット!』

金髪『やるなぁ、三つ編!』

三つ編『ごごごご、ごめんなさいっ、先生!』

赤毛『あははははは!』

『…は』


魔法使い『はははは…』









――――――
――――
――




398: ◆EonfQcY3VgIs 2018/06/09(土) 21:39:41.23 ID:tpR/STzE0





魔法使い「ぜぇ、はあ…っ」


炎獣「 ヒュウ ヒュウ … 」


魔法使い(消耗が激しい)

魔法使い(だがそれは相手も同じだ。回復の速度が落ちてきている)

魔法使い(お互い底をついてきたということですか)


魔法使い「それにしても、口惜しいですね。これだけ僕の感情が、垂れ流しにされてしまうと」

魔法使い「…まるで、丸裸にされた気分ですよ」





魔王「………魔法使い」

魔王「あなたは、本当に………」


魔王「本当に、赤毛ちゃんたちの先生になるつもりで…」



魔法使い「………ふ、はは」

魔法使い「可笑しいなら、笑ってくださいよ」




399: ◆EonfQcY3VgIs 2018/06/09(土) 21:40:40.02 ID:tpR/STzE0


魔王「あなたは………」

魔王「あなたは、どうして――」


魔法使い「分かりませんか? そうでしょう…!」

魔法使い「誰が、貴女などに私の思いを推し量らせるものですか!!」

魔法使い「貴女の思い通りになんて、させませんよ、魔王!!」


魔法使い「お前などに!!」

―― ゴ ゥ ッ ! !


魔王(!! 私を狙って来――)

炎獣「 グ ォ オ ウ ッ ! 」 ――パァンッ!


魔法使い「………ちっ。生意気にも守って見せるつもりですか…!」

魔法使い「邪神の加護の化身に成り下がった哀れな獣の分際で…ッ!」


炎獣「―― ガ ァ ウ ッ ! 」


魔法使い「げほっ…!」ビチャビチャ

魔法使い「はあっ、はあっ」

魔法使い「気に食わないん、ですよねぇ」

魔法使い「自分だけ、望みを叶えてゆく、貴女が、ね…」

魔王「………魔法使い」

魔法使い「誰が、お前などに」

魔法使い「僕の心の深淵を、覗かせてなるものか」

魔法使い「誰が………ッ!!」




400: ◆EonfQcY3VgIs 2018/06/09(土) 21:41:31.17 ID:tpR/STzE0


炎獣「 グ ォ オ ォ オ ォ オ ! 」


魔法使い「………黙れ」

魔法使い「黙れ、けだもの…!」

魔法使い「…あらゆる英傑が、己を犠牲に歩んできた、この物語で…っ」

魔法使い「魔王…お前だけが、周囲を蝕みながら悠々と歩み続け…!」

魔法使い「そして僕の想いの全てまで、かどわかしてみせようというのなら!」


魔法使い「僕はそれに持てる全てを持って抗おう!!」


魔法使い「お前にはもう、僕を奪い取ることは出来ない!!」




魔法使い「…お前に出来ることは後ひとつ…っ!」



魔法使い「僕を、殺すことだけだ――!」








401: ◆EonfQcY3VgIs 2018/06/09(土) 21:42:39.95 ID:tpR/STzE0




炎獣「 ガ ァ ッ ! 」 ギュン!

――ドシッ

魔法使い「ぐッ!!」


魔法使い(腹を突き抜けた)

魔法使い(守りを固めてもこれだ。ですが)

魔法使い(その腕、貰いますよ――)


魔法使い「切り裂け…っ!!」 ヒュ

ズバンッ!!

炎獣「 ア ガ ァ ッ ! ? 」








魔法使い『…ねぇ、武闘家さん』

武闘家『なんじゃ、ひょろひょろ』


魔法使い(僕の記憶を………っ、尚も奪おうというのか!!)




402: ◆EonfQcY3VgIs 2018/06/09(土) 21:43:30.23 ID:tpR/STzE0


魔法使い『あなたは、どうして強くなるんです?』

魔法使い『肉体の限界を手に入れて………その更に先を見ようだなんて』

魔法使い『そんなことに、何の意味があるんです?』

武闘家『なんじゃあ? センチメンタルにでもなっとるのか?』

武闘家『あんまりワシを失望させるようなことを言うなよ』

魔法使い『いいじゃないですか、たまには』

魔法使い『僕、最近何のためにやってるのかなぁ、とか思っちゃうんですよね』

武闘家『そんなもん、ひとつしかないじゃろうが』

魔法使い『え?』

武闘家『………楽しいから、じゃ』ニィ





魔王(炎獣が、渾身の力で魔法使いを削り取る)

魔王(こぼれ落ちる想いの欠片が、断片的なものになってきた)

魔王(もう少し…もう少しで、彼の本心に辿り着けるのに…!)



炎獣「 ゴ ァ ア ッ ! 」

魔法使い「――ぐっ!!」

炎獣「 ガ ア ッ ! ! 」

魔法使い「ぜぇえッ!!」



魔法使い『商人さん。本当にいいんですか?』

商人『何?』

魔法使い『あなたが、悪者扱いされるようなやり方ばかりじゃないですか』

魔法使い『人は誰だって誉められたい生き物ですよ。こんなやり方で、本当に………』




403: ◆EonfQcY3VgIs 2018/06/09(土) 21:44:21.79 ID:tpR/STzE0


商人『ふははははは! 何を言い出すかと思えば!』

商人『私を挑発しているのか? それとも頭を打ったか』

魔法使い『いえ、純粋な疑問なんですが』

商人『悪も正義もない。あるのは"私"だけだ』

商人『私が信ずるからこの道をゆく。そこに微塵の疑いもない』

商人『そもそも魔法使い。貴様の腹の内は読めんが………』

商人『貴様も、同じ穴の狢だろう?』

魔法使い『………そう。そう、でしたね』





魔法使い「はあッ…はあッ…!」

魔法使い「ここまで、きて、肉弾戦だなん、て…」

魔法使い「僕は、これでも、魔法使いって、名乗ってるんですが」

炎獣「 ガ ア ア ア ア ア ! ! 」

魔法使い「やれやれ、聞いちゃ、くれません、よね!」


ズッ

――ドォンッ!!



軍師『御苦労様でした。では約束の物は確かに。…このことは盟主様へは、内密にお願いします』

魔法使い『ええ、盗賊さんには黙っておきますよ。そもそも彼が僕の顔を覚えているか怪しいところですしね。…しかし』

魔法使い『再三お話ししましたが、その宝珠はあなたの死を引き金に爆発します。本当に宜しいんですね?』

軍師『構いません。これからの戦い、もしかすれば私の能力の及ばぬ事態に陥ることがあるかもしれませんから』

軍師『自爆だろうがなんだろうが、奥の手というやつは必要です』

魔法使い『…まったく、大した覚悟ですね。そんなにあの翼の団が大事ですか』

軍師『ええ。私の生命よりも、信念よりも』

軍師『あの場所が大事です』





404: ◆EonfQcY3VgIs 2018/06/09(土) 21:45:14.30 ID:tpR/STzE0


魔法使い(言わせて貰えば)

魔法使い(僕の生命力は"鍵"を使うたびに削り取られ続けてきた)

魔法使い(木竜を殺した時。教皇相手に策を弄した時。最初に炎獣を倒した時。雷帝と氷姫を相手にした時)

魔法使い(少しずつ僕を蝕んできたこの"鍵"の力に耐えうるだけの余力は)

魔法使い(もう僕にはとっくに残されてはいない)



魔法使い「はあっ、はあっ、はあっ、はあっ、はあっ…!」

炎獣「 グ ォ オ ァ ア ァ !」



魔法使い(出来ることならば)

魔法使い(この"鍵"で扉を開き、神々を名乗る者のそのご尊顔を、この目で拝んでやりたかったが)

魔法使い(どうやら)

魔法使い(それも叶いそうにないか)






405: ◆EonfQcY3VgIs 2018/06/09(土) 21:46:08.41 ID:tpR/STzE0


炎獣「 ゴ ァ ア ァ ア ァ ア ッ ! ! 」

――――ドスンッ!!


魔法使い「うガっ………」ヨロ…





魔法使い(ああ、これは不味い)

魔法使い(いよいよもって回復が間に合わない)

魔法使い("鍵"の反動を、精神力だけで堪え忍んできたのも、もはやここまで)

魔法使い(対して炎獣の方はまだ余力が見える)

魔法使い(今度こそ)

魔法使い(今度こそ終わるのか)

魔法使い(僕の生が)



兄『俺が魔王を討つ。必ずだ』

魔法使い『ご武運を』

兄『………貴様らには俺でさえ計り知れんものがある』

兄『俺が例え…その駒のひとつにしか過ぎなかったのだとしても』

魔法使い『!』

兄『必ず意味のあるものにしてくれ…』

魔法使い『………』

魔法使い『分かりました』




406: ◆EonfQcY3VgIs 2018/06/09(土) 21:49:24.03 ID:tpR/STzE0


赤毛『…先生。行かせて、下さい』ペコ…

魔法使い『っ………どうして、どうしてそこまでして…』

神父『先生。生徒は、あんたの所有物じゃない。自分で決めたことだ。…そうなんだろう?』

赤毛『はい。パパやママを、守りたいんです』

魔法使い『………』

赤毛『あたしには、それが出来るかもしれないから、他の人にはそれが出来ないから』

赤毛『だから、あたしが行くんです』



魔法使い『………………』






魔王(彼の心の中心に近づいてきた)


魔王(より生々しい感情が伝わってくる…!)


魔王(――もう少し)


魔王(もう少しで、魔法使いの狙いが………!!)
















魔法使い「転移ッ!!」

――ギュウン!







407: ◆EonfQcY3VgIs 2018/06/09(土) 21:50:11.27 ID:tpR/STzE0



魔王「消えたっ!?」


魔王(まさか、まだ転移を使うだけの力を残していたなんてっ!)


魔王「一体どこに――」








魔法使い「魔王」





魔王「!!」ゾクッ


魔王(真後ろッ!?)







  ザ ク ッ







408: ◆EonfQcY3VgIs 2018/06/09(土) 21:53:38.52 ID:tpR/STzE0



魔王「――………」


魔法使い「………は」

魔法使い「はは」


ズブッ…


魔法使い「やり、ましたね」グラッ…

魔法使い「魔王…」


魔王「あ…」


魔王「あなたは」


魔王「もはやほんのひと欠片しか、力を残していなかった」


魔王「そしてそのひと欠片を」


魔王「私の背後に回り込むためだけに、使った」


魔王「――私に」





409: ◆EonfQcY3VgIs 2018/06/09(土) 21:54:20.05 ID:tpR/STzE0



魔王「私自身に、とどめを刺させるために………!!」





410: ◆EonfQcY3VgIs 2018/06/09(土) 21:55:13.24 ID:tpR/STzE0



魔法使い「グハっ、げほッ」ドバッ

ビチャビチャ…

魔法使い「…ふ」

魔法使い「ふふふ」


魔法使い「あははははははははは!!」


魔法使い「魔王!! あなたは、これ以上、僕の記憶を奪うこと、は、出来ない!!」


魔法使い「僕は、死ぬ!! この何百年の想い、に、終わりを告げ、る!!」


魔法使い「これ以上、生命を奪わないと、宣った、あなたの!!」


魔法使い「あなた自身の、手を汚し、そして!!」


魔法使い「その、下僕たる邪神の加護は、最後の一手を打てず、に!!」


魔法使い「僕の死を、見送ることとなる!!」


魔法使い「最後の記憶は、僕だけのもののままだ!!」


魔法使い「この、最後の、瞬間まで!!」


フラ…

…フラフラ




411: ◆EonfQcY3VgIs 2018/06/09(土) 21:58:45.41 ID:tpR/STzE0



魔王(覚束なく機械城の庭をさまよい)

魔王(何も見えていないような目)

魔王(あなたは、もう――)



魔法使い「あははは、は、ははは!!」


魔法使い「全てのことが、懐かしくすら、ある!!」


魔法使い「僕の全生涯、を、煮詰めたこの数年の研究、が、花開い、た!!」


魔法使い「魔王!!」


魔法使い「その血染めの、姿で、最後の地へ足を、踏み入れるといい!!」


魔法使い「それこそ、魔王らしい!!」


魔法使い「魔王を魂とした、この、物語を、終わらせるの、です!!」



魔王「………っ!」

魔王「魔法使い。あなたは、もしかして…」

魔王「最初からこうするつもりで――………」




魔法使い「ははははははははははッ!!」


魔法使い「予言、しましょうッ………魔王!!」



魔法使い「――この物語の終わりは、あなたの、死だ!!」





412: ◆EonfQcY3VgIs 2018/06/09(土) 21:59:43.11 ID:tpR/STzE0


魔法使い「もう、あなたが死ぬことでしか!!」


魔法使い「この可笑しな惨劇、は、終わりようも、ないのだ!!」



魔法使い「魔王!! あなたは!!」







魔法使い「戦いの終わる最後の瞬間に、命を落とすだろう!!」










魔法使い「あはははは――!!」







魔法使い「 あ は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は は ! ! ! ! 」




ヨロ…





魔王「ま、魔法使い…!」


魔王(そっちは機械城のへりっ!)


魔王「待って…!!」







413: ◆EonfQcY3VgIs 2018/06/09(土) 22:00:31.48 ID:tpR/STzE0




魔法使い「さらば、世界」



魔法使い「僕の夢見たもの」




魔法使い「どうか、素敵な朝を――」







414: ◆EonfQcY3VgIs 2018/06/09(土) 22:03:52.01 ID:tpR/STzE0





魔王「魔法使いっ!!」











ヒュォオ…



























415: ◆EonfQcY3VgIs 2018/06/09(土) 22:04:47.04 ID:tpR/STzE0














冥王「………側近」


魔法使い「………………」


冥王「何を驚いているのでせう。このあたくしが…お前様の死に際なんていう面白い見世物を、見逃すと思ったのかしら?」


魔法使い「………………」


冥王「安心なさいな。こんな人間の国までえっちらこっちら来たのは、単なる野次馬根性」

冥王「ただの見物ですのよ。………お前様が成し遂げようとしたことと、あたくしのお弟子さんが選んだことを見届けてみよう、なんて洒落てみただけここと」

冥王「歴史の生き証人ってやつは必要だと、そうは思いませんこと?」


魔法使い「………………」


冥王「あらあらまあまあ、お前様、本当に死んじまうのね」

冥王「もう既に"鍵"はお前様から離れ、新たな主を求めて何処へやら。まったく、尻の軽い乙女のような代物ですわね」

冥王「あの絶対的な力が、この辺りの馬の骨の手に渡っちまうなんてこんな結末、本当によろしいんですの?」


魔法使い「………………」


冥王「…ふふ」

冥王「最後まで不気味に笑うんですのね。お前様らしいこと」

冥王「"鍵"を手にする幸運の持ち主は何処へやら…」

冥王「それはそうと、お前様の生はここで幕引きですわ。大悪党の最期って、思いの外あっさりしたものですのね」


冥王「最後くらい安らかに眠りなさいな」


冥王「おのが魔の血に挑み続けた、愚かな魂」




冥王「我が友。側近よ………――」









416: ◆EonfQcY3VgIs 2018/06/09(土) 22:05:20.66 ID:tpR/STzE0









魔王「………」

魔王「この高さでは助かりようもない」

魔王「そもそも最後の言葉を紡いだあの時間………彼は生きているとはいえない状態だった」


魔王「――魔法使いは死んだ」


魔王「もう彼の代わりになる者は居ない」


魔王「………」

魔王(ではお前はどうするつもりだ?)

魔王「っ…」ゾッ

魔王(勇者のもとを目指す必要はなくなった)

魔王(神々を打倒せんとした魔法使いはお前が殺した)

魔王(――もう道標となるものはひとつもない)

魔王(お前は、なにを選ぼうと言うのだ?)





417: ◆EonfQcY3VgIs 2018/06/09(土) 22:08:54.66 ID:tpR/STzE0



炎獣「 ヒュゥ ヒュゥ … 」


魔王「! 炎獣…っ!」

魔王(それはもう炎獣などではない。邪神の加護の化身)

魔王「…ううん、違う。まだ、炎獣の温もりを残している」

魔王「立てる? 炎獣」

炎獣「 グ ォ オ … 」ヨロ…

魔王「………行こう。炎獣」

魔王(――どこへ?)

魔王「………私達が進んできたところはひとつだけ」



魔王「前へ」

魔王「ただ前へ進む」







少年「そっか。行くんだね、魔王」




418: ◆EonfQcY3VgIs 2018/06/09(土) 22:09:49.90 ID:tpR/STzE0


魔王「!?」

少年「最後は僕が案内するよ」

魔王「い、いつの間に…」

少年「機械城は、炎獣と魔法使いの戦いでボロボロになってしまったけど、最後の部屋は守られていたみたい」

少年「一緒に行こうか。勇者がその務めを言い渡された場所」

少年「あらゆる勇者物語が生まれてきた場所」


少年「謁見の間へ」


魔王「………あなたは」

少年「ほら、あそこの大きな門の前に立って」

魔王「…」

炎獣「 グ ル ル … 」

魔王「…彼に従ってみましょう」

炎獣「 ウ ゥ … 」





419: ◆EonfQcY3VgIs 2018/06/09(土) 22:13:32.53 ID:tpR/STzE0


門『認証、確認』

門『3名の人間と認められました。中へどうぞ』


魔王「!? …人間? 私達が?」

少年「あはは。混乱するのも無理はないよね。君は魔王だし、炎獣なんかとても人間って風体じゃない」

少年「とにかく招かれた訳だし、入ってみようよ」

魔王「………」

魔王「謁見の、間。王城の中心部。かつて私達が目指していた場所」

魔王(ここに勇者が………)

魔王(勇者に会って、それでどうしようというのだ。無益に戦うのか…?)

魔王(その戦いに意味はないとしても、勇者は宿命のもとに剣を取るのかもしれない)

魔王(そもそも人間の彼に、私は許されはしないだろう)

炎獣「 グ ォ オ … 」

魔王「…炎獣」

魔王「ありがとう、平気だよ」


魔王「………行こう」





420: ◆EonfQcY3VgIs 2018/06/09(土) 22:14:19.03 ID:tpR/STzE0


機械城

謁見の間





少年「ようこそ、魔王」

少年「ここが、君達の旅の終着点だ」





421: ◆EonfQcY3VgIs 2018/06/09(土) 22:15:11.82 ID:tpR/STzE0


魔王「………」

魔王「誰もいないわ」

少年「うーん、そうだね。本来王国の王城だった場所を魔法使いが歪ませて機械城にしたわけだけど」

少年「城内にいた人間がどうなってしまったかは誰にも分からない」

少年「国王も、妃も、無事だといいんだけど」

魔王「でも、あなたは私たちの前に現れたわ」

魔王「ここ…謁見の間は私達が目指した旅の終着点だとあなたは言った」

少年「………」

魔王「そしてそこにいるのはあなたと私達だけ」

魔王「役者がこれで全てだと言うのなら、私はひとつの答えにしか行き当たらない」



魔王「教えて」




魔王「――あなたが、勇者なの?」






428: ◆EonfQcY3VgIs 2018/08/04(土) 12:33:57.24 ID:+njJv4Yc0



少年「あはは」

少年「僕が勇者、か。そう思ってしまうのも無理はない」

少年「ここ、謁見の間で待っていたのは僕なんだからね」

少年「でもね、魔王。君はもう知っているはずだよね」

魔王「………」

少年「圧倒的な力を持つ宿敵。それが人智の及ばぬ大いなる力を示して迫り来る」

少年「味方は次々に倒れて、勝ち目なんてこれっぽっちもないのに、戦えと急き立てられ、拒むことは許されない」

少年「その恐怖。残酷さ」

魔王「…ええ」

魔王「魔法使いの幻術の中だったけれど…私は逃げ惑う他なかったわ」

少年「そうでしょう。だから」

少年「だから、誰も彼を責める資格なんてないと思うんだ」


少年「ねえ、魔王」

少年「僕は勇者じゃない。勇者はここに居ない」





少年「――逃げたんだよ、勇者は」





少年「迫る君の恐怖に負けて。使命をなげうってね」





429: ◆EonfQcY3VgIs 2018/08/04(土) 12:34:56.12 ID:+njJv4Yc0



魔王「逃げ、た?」

魔王「………勇者が、逃げた?」

少年「うん。誰にも知られぬうちに王城を抜け出した」

少年「君達が城下町に辿り着いた頃には、もぬけの殻だったそうだよ」

魔王「………」

少年「彼が何を思い、何を考えていたのか、僕らは想像することしか出来ない」

少年「望んだわけでもなく勇者なんて祭り上げられ、絶望的な戦いに放り込まれる運命の人間…なんてさ」

少年「どんな気持ちだったんだろうね?」

少年「少し前の君達であれば、勇者を探しだして抹殺しようとしたかもね。…君はそれを望まなくても、雷帝あたりは危険の芽を摘むため事に当たっただろう」

少年「ふむ。そんな物語の展開もまた、面白いのかもしれない」

魔王「………」

少年「酷い肩透かしって顔だね。まあまがりなりにも勇者討伐を目指してきた君にとっては、ショックが大きかったかな」

魔王「………勇者でないなら、あなたは」



魔王「一体、何?」




430: ◆EonfQcY3VgIs 2018/08/04(土) 12:35:51.69 ID:+njJv4Yc0



炎獣「 グ ル ル … ! 」



少年「おっと、もう臨戦態勢かい?」

少年「へえ、そう。流石というかなんというか」

少年「僕を敵と認めたのは、魔王としての勘ってやつかい? それとも論理的推測?」

少年「もう、魔法使いから情報は引き出せないものね。そうして己を信じ剣を取る他ないんだよね」

魔王「…あなたが何者かによっては、私は剣を取らずに済む」

少年「強気だね! そうかそうか」

少年「けれどまあ、僕が自分で名乗るよりもより信憑性の高いやり方をしよう」

魔王「なんですって?」

少年「君達の前に立ち塞がってきた人間の研究機関。この戦乱を巻き起こした者達。――教皇と、魔法使い」

少年「彼らを、君と四天王は討ち果たした。でもね」

少年「もう一人重要な存在を忘れてないかな?」




少年「………出ておいでよ。女神」



魔王「!!」





431: ◆EonfQcY3VgIs 2018/08/04(土) 12:36:46.22 ID:+njJv4Yc0


――フワァ…


女神『………魔王』

女神『ようこそ謁見の間へ』




魔王「女、神…!」

魔王(――いや違う。これは"女神と名付けられたもの"であって、本当の女神ではない)

魔王(教皇と魔法使いが造り出した偽りの女神)

魔王(彼らの思い通りの物語になるよう啓示を与えてきた存在…!)



女神『数えきれぬ戦いを乗り越え、よくぞ辿り着きました』

女神『よくぞ、人類を絶望に陥れ、英雄達を討ち果たし、文化に破壊をもたらしました』



女神『…勇者など倒さずとも、あなたは既にその役目を果たしたのです』





433: ◆EonfQcY3VgIs 2018/08/04(土) 17:20:38.93 ID:+njJv4Yc0


魔王「役目を果たした…? 私が? ………馬鹿な」

魔王「あなたは、神々の意思を裏切るために創られた偽りの生命だ」

魔王「私の撃破。もしくは魔法使いがしたように、私を操り神を殺そうという魂胆だったはず」

魔王「私がここにこうして立っていることは、あなたの描いた道筋から大きく外れている」

魔王「それは、虚勢? それとも偽りの存在にも関わらず、神々の代弁者を気取ろうとでも言うつもり?」


女神『…魔王。あなたは我々の目的をよく理解していますね』

女神『ただし検討違いがあります』


女神『あなたは今以て、私の望み通りの魔王であり続けており』


女神『魔法使い個人の敷いたレールの上を歩み』


女神『かつ、天上の神々の与えた役目さえ果たしているのです』


魔王「…私が未だに、私ではないものの思惑通り動いていると」

魔王「そう言うの?」

女神『…哀れな魔王。全てを自分で選んでいるつもりでいたのですね』




434: ◆EonfQcY3VgIs 2018/08/04(土) 17:21:25.50 ID:+njJv4Yc0


女神『この物語の始まりはいつであったのでしょう』

女神『あなたたち魔王四天王が、港町に攻め入ったあの時?』

女神『それとも、魔法使いが先代魔王を己の身ひとつで討ち果たした時?』

魔王「………その、どちらでもないと?」

女神『――自分の立っている所をご覧なさい。その機械城を。…古代王朝の叡智の結晶を』

女神『これだけの力を持ってすれば、世界の全ては人々の手にあった。全てを知り、全てを能うた………それが、かつての古代王朝』

女神『生命を技術により産み出し、死した種を甦らせ』

女神『気の遠くなるほどの距離を翔び、時空を越え』

女神『山を野に変えてしまうほどの兵器があった』

女神『まさに神のごとき所業。教皇と魔法使いが私を創ったように、テクノロジーの進歩は天神すら産み出しました』


女神『――全ての始まりは、その古代王朝の滅びに遡ります』

魔王「………」

女神『魔王。あなたに何故この万能の王朝が滅びたか、それが分かりますか』




435: ◆EonfQcY3VgIs 2018/08/04(土) 17:22:16.52 ID:+njJv4Yc0


魔王「………神のようであったとしても」

魔王「所詮は血の通う生命よ。間違いはおこる」

女神『その通り…古代王朝は、その高い技術ゆえに狂いだすことになります』

女神『生と死に関する倫理観が次第に失われた。ビジネスとしての命の奪い合いや、交換が行われた』

女神『繰り返される時空間転移に、無数に生まれた平行世界。膨張した世界は破滅を迎えようとした』

女神『終末は、あっけなく訪れた。星は、宇宙は、消滅の危機に瀕した』

女神『森羅万象の崩壊。ありとあらゆる事象の終わり』

女神『………けれど"鍵"を握った古代人がいた』

女神『それが限りない終わりの中で、たったひとつの始まりとなった』

魔王「………」




436: ◆EonfQcY3VgIs 2018/08/04(土) 17:23:08.29 ID:+njJv4Yc0


女神『そう。古代にも"鍵"は創られていたのです。そしてかつての"鍵"は魔法使いが創ったそれよりもさらに偉大なものだった』

女神『古代における"鍵"。それはあらゆるものを超越する可能性の塊』

女神『滅びの世界を、新たに受胎させることすら許すもの』

女神『"鍵"によって、世界は生まれ変わった。小さな小さな世界だったけれど、そこには確かに生命が息づいた』

女神『無数の闇の中に、一筋の光明となったその世界では、あるひとつのシステムが組まれた』

女神『勢力を二分し、互いに互いの文明を破壊しあい、ある一定以上の力を持つことが出来ぬように』

女神『それは、滅亡の歴史を踏まえた苦肉の策』

女神『生命の発展の果ては、自壊でしかない。自壊を防ぐために、そもそもの発展をある一定の範囲に縛り付け続ける』

女神『古代人はその小さな世界を管理する者となり、神からの啓示という形をとってその世界の維持をあるプログラムに託した』



女神『敵対勢力に破壊をもたらすプログラムは…それぞれ』




437: ◆EonfQcY3VgIs 2018/08/04(土) 17:23:47.38 ID:+njJv4Yc0


女神『魔王と、勇者』

女神『そう名付けられた』





魔王「――!!」




438: ◆EonfQcY3VgIs 2018/08/04(土) 20:46:09.51 ID:+njJv4Yc0


女神『もう理解できましたか? 魔王』

女神『この魔王と勇者に依存した世界の、必要性が』

女神『勇者が勝利すれば魔族は絶滅の危機に瀕した。魔王が勝利すれば、人類は搾取され絶望の淵へ立たされた』

女神『そうすることによってこの小さな世界は、守られ続けてきたのです』

女神『進化という、生命の業から』

魔王「………」

少年「…魔王」

少年「君達の生は………人と魔は、最初からお互いの生命を奪い合うために生まれたんだ」

少年「どうやらそれは、間違えようのない真実だ」

少年「君の探し求めていたもの。魔王勇者大戦の答え。生命の在り方」

少年「その結論が、これなんだよ」





439: ◆EonfQcY3VgIs 2018/08/04(土) 20:46:45.60 ID:+njJv4Yc0


魔王「………これが………意味?」

魔王「これだけの死を生み出し続けた、長い戦乱の理由………?」

魔王「私達の生の………――」

女神『ええ。あなたは、だから今この時点で人類に大きな傷を与え、管理者の領域にその手を伸ばす魔法使いらを撃沈せしめた』

女神『勇者は逃げ出しその打倒の機会は失われてしまいましたが、此度の力のない勇者のことなど些細なこと』

女神『あなたはすでに、立派に魔王としての役目を果たしたのですよ』














魔王「――――ふざけるな!」





440: ◆EonfQcY3VgIs 2018/08/04(土) 20:47:21.80 ID:+njJv4Yc0



魔王「このおびただしい数の死は………決して癒えぬ傷の連鎖は」

魔王「そんな身勝手のために積み上げられてきたの!?」


魔王「そんなものに、一体どれだけの意味があるっ!!」

魔王「何が神々だ! 女神も邪神も存在などしていない!!」

魔王「神を気取る古代の呪いに…世界は永遠に翻弄され続ける運命だと…!」

魔王「魔王も勇者も、無益な争いの呼び水として産み出され続けるというの…!!」


女神『勇者と魔王には常に使命が与えられ、歴代伝説の英傑達はその使命を全うしてきました』

女神『"対となる種族の衰退をもたらすこと"。…行き過ぎた文明の誕生の阻止』


魔王「それはただの災厄だっ!!」

魔王「生命の生きる権利を奪っていい理由にはならない!!」




441: ◆EonfQcY3VgIs 2018/08/04(土) 20:48:20.15 ID:+njJv4Yc0


女神『なぜ、そう言えるのです?』

女神『生命の発展の先には、滅びしかないのですよ。それは歴史が証明しているのです』


魔王「生命には、ただそこに在るだけで無限の可能性を秘めている!」

魔王「私達は、ただ死ぬために生きているわけではない!」

魔王「生けるものが、戦乱のない豊かな暮らしを営もうというのを、奪っていい理由なんてひとつとしてない!!」

魔王「あなたのいう管理とは、傲慢な支配だ!」

魔王「喜びを奪い、悲しみを生むためだけに勇者と魔王があるなら………そんなもの消え去ってしまえ!!」



女神『………それは、魔法使いの言葉と同じものです』

女神『彼も今のあなたと同じ思いから、魔王勇者大戦の仕組みを壊そうと立ち上がりました』

女神『だから彼は、そのシステムの根幹となる女神と邪神の加護を――』

女神『システム管理者である"神"を、あなたを使って倒そうとした』

女神『あなたは結局、彼の思い通りになるのですか?』





442: ◆EonfQcY3VgIs 2018/08/04(土) 20:49:24.47 ID:+njJv4Yc0



魔王「私は………っ!!」


魔王「私達は、多くの戦いの果てにここに至った!!」

魔王「最後の真実に、私の意思で足を踏み入れたっ!!」


魔王「私達の生命の起源が………古代の終わりに開かれた小さな世界なのだとしても…!!」

魔王「最初の理由が、争うのための生だったとしても…!!」


魔王「私達は…その生を精一杯生きた!!」


魔王「愛の喜びを知って、それ故の悲しみに耐えて、もがき苦しみながら」


魔王「――私達は、確かに生きている!!」


魔王「その命の輝きは、どんなものよりも尊い………!! 死するその瞬間まで、どうしようもなく目映い光を放つ!!」


魔王「私はその光を、この戦いで幾度も目に焼きつけてきた!!」


魔王「――多くの英雄達との戦いで、それは私の胸に刻まれ続けてきた!!」





443: ◆EonfQcY3VgIs 2018/08/04(土) 20:50:23.43 ID:+njJv4Yc0



魔王「この世界には、正義も悪も、聖も邪もない!!」

魔王「ただ生ける生命がそこにあるだけだっ!!」

魔王「それを独善的な価値観で、殺戮の渦に陥れるのなら――」





魔王「私達に、神はいらない!!!」








444: ◆EonfQcY3VgIs 2018/08/04(土) 20:51:17.97 ID:+njJv4Yc0



炎獣「 ―― グ ォ オ ォ オ ン ! ! 」


魔王「いこう………炎獣!」

魔王「最後の戦いに――!!」



女神『やはりこうなるのですね…』


女神『神を倒そうというその意思………確かに聞き届けました』

女神『けれど魔王、辿り着けますか。管理者の元へ。本当の女神であり、邪神であるその存在の元へ』

女神『そこへゆくには、大いなる力が必要です。その扉は、"鍵"によってのみ開かれます』

女神『地上で創られた"鍵"は、魔法使いが持っていましたが………彼の死と共に何処へと去りました』

女神『誰の手に渡ったのか。その強運の持ち主が偶然この場に現れるのを待つしか』

女神『あなたに方法はありません――』














国王「それならここにあるぜ」




445: ◆EonfQcY3VgIs 2018/08/04(土) 20:52:09.61 ID:+njJv4Yc0


魔王「!」

少年「君は………」

女神『――国王!』



国王「ったく」

国王「城は滅茶苦茶…国はぼろぼろ」


国王「この勘定をどこにつけたろーかと、流石の余も検討がつかなかったが」

国王「そういうことなら、話は早い」


国王「怪しげな宗教を余の国にばら蒔いた、神様直々にあがなってもらうとしよう」


魔王「………あ、あなたは」


国王「おう、魔王。噂通りなかなかの美人だな」


「――陛下」

女王「お戯れはそこまでに」

国王「わ、分かってるっちゅーの」




446: ◆EonfQcY3VgIs 2018/08/04(土) 20:53:38.60 ID:+njJv4Yc0


少年「国王、女王………」

少年「機械城の出現と共に行方を眩ませていたと思えば………あなた達は」

少年「――この時を、待ち構えていたのかい?」


国王「余を誰だと思っとんのじゃ、たわけ」

国王「そこの美人が魔界の王者なら、余は人間のトップだぞ」


国王「教皇にしてやられて、そのまま退場っていうんじゃ………お粗末が過ぎるだろうよ」ニヤ


少年「…君が、次の"鍵"の持ち主に?」


女王「まさか。この人の運の値は歴代国王最低ランク」

女王「"鍵"などという、霊験あらたかなものに選ばれるはずもありません」

国王「お、おい。ちょっとは格好をつけさせろよ」

女王「いいから、早く彼を。"鍵"の持ち主をここへ」

国王「へいへい」




447: ◆EonfQcY3VgIs 2018/08/04(土) 20:54:48.38 ID:+njJv4Yc0


国王「"鍵"………この世の理すら歪ませる反則級の代物。それを手にするほどの幸運の持ち主は誰だと思う?」

国王「それは、ある意味運だけでここまでやってきたような者ではないか?」

国王「ある所では怠け者と呼ばれる類いですらあるかもしれん」


国王「余のこれは賭けだった。けれどどうやらこの推測は正しかった」


国王「それ、こっちに来い。――出番じゃ」

























「ひ、ひい………」


「な、なんだよここは………」








遊び人「………どうして俺が、こんな目にっ!」





448: ◆EonfQcY3VgIs 2018/08/04(土) 20:56:04.48 ID:+njJv4Yc0




【遊び人】






449: ◆EonfQcY3VgIs 2018/08/04(土) 22:04:30.95 ID:+njJv4Yc0



遊び人(うまく、逃げおおせたはずだった…っ! どこをどう間違ったってんだ…!)

遊び人(こいつらは俺を捕らえに来た…エラソーな格好してやがると思ったら、国王だとか名乗りやがる)

遊び人(イカれてやがるのかと思ったが、こんな所まで連れてくるってことは、本物ってことか!?)

遊び人(城下町に逃げ込んだのが不味かったのか…!? 港町から戦場になった平野を越えられたまではツイてたはずだ…っ)

遊び人(港町が氷づけになったの時には肝を冷やしたっ、だがそれからもうまく逃れてきたんだ…!)

遊び人(そもそもあの時、港町であの女に………)



――商人「お前、うちのカジノに入り浸っていた遊び人だな?」

――遊び人「うへっ!?」

――商人「大事な顧客の顔は覚えるさ。これでも商人の端くれだからねぇ」

――遊び人「こ、こりゃあ光栄な事で…」

――商人「しかし、お前は客というだけでは留まらなかった人物でもある」

――遊び人(な…なななな何で、あのことが、バレて)

――商人「知らないとでも思ったのかい? まあ、その小さな脳ミソじゃそこまで考えも回らんだろうなぁ」

――商人「貴様は今まで、我々の監視下で生かされていたに過ぎないのだ。そして、今日この日でさえそれは変わらない」

――商人「その事を、よく肝に命じておけ」



遊び人(………あの時、商人に殺されずに逃げのびた時から)


遊び人(――こうなる運命だったってのか………!?)





450: ◆EonfQcY3VgIs 2018/08/04(土) 22:05:34.56 ID:+njJv4Yc0



炎獣「 グ オ ゥ ! ! 」



遊び人「ひ、ひぃぃっ!」

遊び人(じょ、冗談じゃねえぞっ…! なんだあのバケモンは!!)

遊び人(畜生っ、見るからにやべえ奴らばかりだ…っ!)


女神『そのような非力な人間に………本当に鍵が宿ったというのですか』

少年「鍵とは、そういうものだよ。女神。僕はそれをよく知ってる」

魔王「………」ツカツカツカ

遊び人(ひっ! なんだ、こっちに来…)

魔王「あなたが鍵の持ち主なら」

魔王「お願い。鍵を開けて。………神々を名乗る者の元へ、私を導いて」

遊び人「…な、な」

遊び人「何を言ってやがるんだ…っ!?」




451: ◆EonfQcY3VgIs 2018/08/04(土) 22:07:23.96 ID:+njJv4Yc0


国王「魔王」

魔王「…はい」

国王「余も、この争いを終わらせたいと望むものの一人だ」

国王「だがここから先、古代人に対抗出来るのはおそらく、そなたとその力の化身だけだ」

魔王「………炎獣は」

魔王「私の友達です」

国王「む。…すまん。口が悪いのは王座についても治らなくてな」

魔王「いえ。あなた方の思い、受け止めました」

魔王「勇者と魔王の戦いを…その根元を断つ。そして」

国王「ああ」


魔王 国王「――そこから、新しい世界を探す」

魔王「人間と魔族がお互いを支えあう国を」

国王「争いを必要としない世の中を」


魔王「………もっと早くに」

魔王「あなたと話をしたかった」

国王「…本当にな。えらく遠回りをしたようだ」

国王「気の遠くなるような、遠回りを、な」




452: ◆EonfQcY3VgIs 2018/08/04(土) 22:08:27.45 ID:+njJv4Yc0


遊び人(おい。おいおいおいおい)

遊び人(ふざけんなよ。俺に一体、こんなしかめっ面だらけの連中の中で、何をどうしろって…)

国王「遊び人よ」

遊び人「っ」ビクッ

国王「………その手に持ったダイスを振るえ。お前がするのはそれだけでいい」

遊び人「あ、あんだとぉ…!?」

国王「鍵はお前の手にあるのだ。扉を開くのは、きっかけさえあればいいはずだ。後は坂道を転げ落ちるように、事は動き出す」

国王「何のことはない。いつものように、掌に握った三つの賽を投げろ」

魔王「お願い」


遊び人「………っ」




453: ◆EonfQcY3VgIs 2018/08/04(土) 22:09:16.42 ID:+njJv4Yc0


遊び人「へ、へへ…」

遊び人「もう、知らねぇや…っ、何がどうなろうと、俺の知ったことかっ!」

遊び人「振ればいいんだろ、振れば!!」


女神『………させません』ォオ…!

少年「女神」ス

女神『! しかし…』

少年「いいんだ。これもまた、面白いじゃないか」

少年「僕はこのシナリオを、最後まで楽しむことにするよ」

女神『………』



遊び人(どうとでも、なりやがれぇ!)






遊び人「うおらっ…!!」 バッ














コロン コロン………








454: ◆EonfQcY3VgIs 2018/08/04(土) 22:10:20.69 ID:+njJv4Yc0




遊び人(………い)




遊び人(1が、三つ…!)



































――カチッ













455: ◆EonfQcY3VgIs 2018/08/04(土) 22:11:02.11 ID:+njJv4Yc0












456: ◆EonfQcY3VgIs 2018/08/04(土) 22:11:47.48 ID:+njJv4Yc0









魔王「!!」



炎獣「ッ!!」




遊び人(な)



遊び人(なんだ、こりゃあ………)



遊び人(あたりが、ま、真っ白になっちまった)







457: ◆EonfQcY3VgIs 2018/08/04(土) 22:12:39.57 ID:+njJv4Yc0



魔王「………これが、扉を潜るということ」

魔王「どうやらそれを許されたのは、加護の名残をもつ者………私と、炎獣」

魔王「それに鍵を持つ彼だけ」

遊び人「い、いい、一体何がどうなって………」

魔王「神々…いや、それを名乗る古代人の居場所にきた。この白い無の世界こそが管理者たる者の居所なんだ」

魔王「そして私達と一緒にこの場に立っているということは――」


魔王「あなたが………その古代人だったのね?」









少年「はは」

少年「そういうことだよ」




458: ◆EonfQcY3VgIs 2018/08/04(土) 22:18:04.99 ID:+njJv4Yc0


少年「"鍵"」

少年「あれはそれ自体が気紛れな代物で、ひとたび持ち主が手放すようなことがあれば、誰の手に渡るか分からないんだよ」

少年「古代王朝の終わりに創られた"鍵"もやはりそうだった」

少年「本来の"鍵"の持ち主は醜い争いの憂き目にあって命を落とした…。その後誰の手に"鍵"が渡るか、世界は緊張に包まれた」

少年「狂ってしまった世の中を正そうと希望を持ち続ける人徳者もいたな。彼の手に"鍵"が渡れば、古代王朝にも先があったのかもしれない」

少年「選民思想のもと、ノアの方舟のようなものを作ってある一定の人々を生き残らせようとした人もいた」

少年「いずれの手に渡っていたとしても、こんな小さな、魔王と勇者の世界は創らなかっただろうね」


少年「でも、"鍵"は僕の手に渡った」

少年「僕が幸運だった。理由はそれだけだ」




459: ◆EonfQcY3VgIs 2018/08/04(土) 22:18:49.56 ID:+njJv4Yc0


少年「僕はね。ウンザリしていた」

少年「先の見えない争いの世界も。何もかも科学の力で証明された夢のない世の中にも」


少年「――僕は永遠に、ファンタジーを見ていたいと思ったんだ」

少年「だから世界をリセットして、勇者と魔王の冒険譚だけがある、閉じた場所を作った」


少年「友情と愛と、危険に満ちた戦いがあって」

少年「ひとかけらの希望を胸に、剣と魔法のワクワクするような戦いが繰り返される」


少年「科学の力なんて持ち出す不粋な輩は永劫現れない。そこまで進化する必要がない」

少年「ある時は勇者が勝って、ある時は魔王が勝つ。その綱引きが行われるたび、胸を踊らせる夢物語が紡がれる」


少年「どうだい? 飽きないだろ?」

少年「だから僕はこうして、今まで邪神の役と女神の役をこなし、魔王と勇者をつくりながら――」

少年「この美しい世界を………悠久とも言える時間眺め続けてきたんだよ」


少年「たった一人でね」






460: ◆EonfQcY3VgIs 2018/08/04(土) 22:19:47.55 ID:+njJv4Yc0


遊び人(おい…なんだってんだ?)

遊び人(こいつらは何の話をしている…!?)


魔王「………………」



少年「怖い顔をしないでよ、魔王。君の物語も僕はずうっと見ていたさ」

少年「今回のお話は本当に刺激的だった!」

少年「本来は魔王城で鎮座しているはずの魔王が、自ら人間の王国へ攻めてくるんだ…! 凄いよねっ」

少年「本来、一人一人撃破されるはずの四天王が、一致団結して勇者一行を各個撃破するんだ!」

少年「倒される勇者一行にも、様々な想いが胸にあって、美しかった…!」

少年「僕が一番気に入ったのは赤髪の少女が僧侶となってしまったお話だなあ………」



魔王「………あなたは」

魔王「子供でいられたその一瞬に"鍵"を身に宿らせて」

魔王「――そのまま時を止めてしまったのね」




461: ◆EonfQcY3VgIs 2018/08/04(土) 22:20:38.86 ID:+njJv4Yc0


魔王「絶対的な力に溺れて、玩具のように生命の希望を生んでは壊し」

魔王「そうしていつの間にか」


魔王「そんな風に、狂気に満ちた醜い存在になってしまった」


少年「…酷いな。傷つくよ」

少年「僕は何も間違ってない。このまま勇者と魔王に世界が依存し続ければ、みんな本当の地獄を見ることはないんだよ」

少年「あの、幻想を欠片も抱けないような、おぞましい終焉をね」

少年「そして希望と絶望が流転する今の世の在り方こそが、永遠のロマンであり…健全な状態なのさ」



遊び人「お、おい」

遊び人「おいおいおいおいおい」

遊び人「ちょ、ちょっと待てよ、おいっ。黙って聞いてりゃよ、好き勝手に言いやがって」




462: ◆EonfQcY3VgIs 2018/08/04(土) 22:21:23.11 ID:+njJv4Yc0


遊び人「それじゃあ、なにか? こ…この気の遠くなるほど馬鹿げたドンパチは全部、てめぇのでっちあげた台本だったってのかよ!?」


少年「…僕はあくまで結末を見越したきっかけを与えるだけさ。動き出した魔王と勇者がどんな道程を経るかは、分からない」

少年「白紙のページにドラマが描かれてゆく様を見るのが、僕の楽しみだからね」

少年「僕の作った世界を、僕が選んだ英雄たちが駆け巡る………ふふ!」

少年「でも、それを邪魔しようって奴らもいた」

少年「魔法使いはこの摂理を壊し、あまつさえ僕を倒そうとしてたみたいだけど、残念だったよね。…それに今回はもっと重要なこともあった」

少年「あの"女神"は、魔王勇者大戦の筋書きを書いてくれたんだ…! それは熱中してしまうような面白さで…はは!」

少年「誰かが意図してドラマチックな魔王勇者大戦を作ってくれるなんてさ! 刺激的な体験だったなぁ!」


遊び人「………じょ…っ」

遊び人「冗談じゃねぇぞおい…!」




463: ◆EonfQcY3VgIs 2018/08/04(土) 22:22:20.83 ID:+njJv4Yc0


遊び人「ガキの戯言にどいつもこいつも振り回されてたってかぁ!? どっ、どうりでおかしいと思ったんだよ、魔王だの勇者だの………」

遊び人「俺の生きてきたしみったれた街角じゃあ、そ、そんなもんはクソの役にも立たない絵空事だったからなぁ!」

遊び人「おっ、俺に言わせりゃあな…! てめぇのおままごとなんか、ちゃんちゃら可笑しい三文芝居――」

少年「ねえ、遊び人」

遊び人「!」ビクッ

少年「大声でわめきたてるのは、認めて欲しいから?」

遊び人「………な、何を…」

少年「君にだって勇者に憧れた子供時代はあった」

少年「英雄のきらめきの虜になっていた瞬間が確かにあった…けれど」

少年「君は知ってしまった。自分はその器ではない。誰からも選ばれない。能力も心の強さもない」


少年「"自分は惨めな端役でしかない"。そう認めるしかなかった。そうでしょ?」


遊び人「………っ」




464: ◆EonfQcY3VgIs 2018/08/04(土) 22:23:09.98 ID:+njJv4Yc0


少年「でも、今君が一歩前に出たのは、どうして? そう。もしかしたら認めてもらえるかもって思ってしまったんだよね?」

少年「この大詰めに居合わせて、その他大勢に甘んじるためにひた隠しにしていた感情が顔を出した」

少年「………君、諦め切れていないんだよね?」

少年「どんなに大人の顔をしてみせたってさ、遊び人。君の心の奥にまだ燻っているんだ」

少年「あは! ………残酷なまでの、勇者への憧れが…!」


遊び人「や、やめろ…」


少年「君は運命のイタズラでここに居合わせただけ! もうここで君にできることなんてひとつもないんだよ!」

少年「でもそれでいい。思い出してごらん」

少年「本来は通行人みたいな役どころだったろう? 元々、勇者なんてものには届きようがないんだ」

少年「それが、本当の君なんだ。だから、何もできなくていいんだよ」

少年「何もできない君で、いいんだよ…」クスクス



遊び人「だ…っ」

遊び人「だまれっ!!」


――バリバリッ!


遊び人「ひっ!?」




465: ◆EonfQcY3VgIs 2018/08/04(土) 22:24:51.56 ID:+njJv4Yc0


少年「おやおや。逃げ出してしまいたい気持ちになるのも分かるけど、あんまり興奮すると危険だよ?」

少年「気をつけてね。ここは現世から遥かな距離を持つところ。僕が神として管理を行ってきた席なんだから」

少年「俗にいう天国みたいな場所とも言い表せる。死した亡者の魂も君のすぐ側にいる」

少年「そういう場所だよ」


遊び人「ふ、ふ、ふざけんじゃねぇっ…!」

遊び人「お、俺には関わるつもりなんてこれっぽっちもねぇ! 俺を巻き込むな…っ!」

遊び人「世界だの、生命がどうだの、知ったこっちゃあねぇんだよ!」

少年「ふふふ。今度は必死で知らんぷりかい?」

少年「うん。でも君はそれでいい。それでいい…」

遊び人「俺は、俺は………」

遊び人「俺はただ逃げのびて………酒にさえありつければそれで………!」

――バリッ

遊び人「うひぃっ!?」


商人『たく、使えない男だね。これくらいで悲鳴を上げるんじゃないよ』




466: ◆EonfQcY3VgIs 2018/08/04(土) 22:25:31.79 ID:+njJv4Yc0


遊び人「しょ、商人…っ!?」

遊び人「………? だ、誰もいない。今の声は一体どこから聞こえてきやがった………」

――バリバリッ

魔王「!?」

魔王(頭のなかに映像が浮かんでくる…っ!)

魔王(どこかの…平野…?)

魔王(数人の男女がそこに………これは…っ!)


商人『フラフラ動くな、軟弱者』

盗賊『無茶言うんじゃねーよ、アネゴ!』

盗賊『新型の鉄砲の試し撃ちに、なんで俺が的を持っていなきゃならねーんだよ!』

戦士『盗賊。貴様少し静かにしろ。こちらは食事中なんだぞ』

盗賊『っざっけんな猪野郎! じゃあテメェが的になってみやがれコルァ!』

商人『ショット』パンッ!!

盗賊『うひょおおおっ!!』

武闘家『はっはっはっ。なかなか面白い見せモンだのぉ』





467: ◆EonfQcY3VgIs 2018/08/04(土) 22:26:06.62 ID:+njJv4Yc0


魔王「………今のは」

少年「ふふ。君達が倒してきた勇者一行だよ」

少年「彼らがもし、力を合わせることに成功したら………想像すると、ちょっとドキドキしないかい?」

少年「それが、あれさ。あの変わり者だらけの英雄達が、足並みを揃えて魔王城を目指すところだ」

魔王「…」

少年「あはは。彼らが同じ食卓を囲んでいるなんて、なんだか可笑しいよね」

少年「魔法使い達には採用されなかった未来だ。けれどそんなことが現実に起こりうれば何かが変えられたもかもしれない………今でもそんなことを夢見る哀れな魂がいるんだよ」

少年「死してなお、彼女はその呪縛のごとき夢から逃れられずにいる。………おいで」



僧侶《………ああ》

僧侶《もし、世界が優しかったなら………》

僧侶《…私は…………私がこんなに、苦しまずに済んだのよ》

僧侶《………どうして………どうして…》





468: ◆EonfQcY3VgIs 2018/08/04(土) 22:27:02.14 ID:+njJv4Yc0


魔王「………彼女は…」

少年「元々、今回の勇者一行だったひとだよ。君に相対する前に死ぬことになってしまったけどね」

少年「死した生命は、死後の国に迎えられることなどなく、この"無の空間"で果てのない放浪を味わう。聖女と呼ばれた彼女であっても例外ではない」

少年「…死は、楽になんてなれない」

少年「極楽浄土みたいなものは存在しない。許される余地も、転生なんて都合のいいものもない」

少年「ただ、この場所………限りない無を漠然と漂うだけ。それが"死"の正体さ」

少年「僧侶も生前は高潔で気高い女性だった。でもね、死という事実の前では生きている間に得たものなんかこれっぽっちも役に立たない」

少年「死は、あらゆる生命のメッキを剥がす――」

少年「見果てぬ無の空間。そいつを前にした時、あらゆる魂は等しく絶望するのさ」

少年「ねえ、魔王。あそこを見てごらん」

魔王「………っ」




木竜《………助けて》

木竜《助けてくれんか………》






469: ◆EonfQcY3VgIs 2018/08/04(土) 22:28:11.90 ID:+njJv4Yc0


魔王「………」ギリッ

少年「どんなに穏やかに死を迎えた者だって」

少年「いざここにやってきたら………誰一人、この孤独には耐えようがないんだよ」




木竜《………誰か、楽にしてくれ………》

木竜《………こんなに苦しいのならば》


木竜《――儂は、この世に生まれ落ちるべきではなかった》











魔王(爺)




470: ◆EonfQcY3VgIs 2018/08/04(土) 22:28:52.23 ID:+njJv4Yc0


少年「死別した相手に安らかであって欲しいっていうのは、生者の勝手な願望でしかない」

少年「君達のために死んだ木竜は、未来永劫こうして苦しみ続ける運命だ」

魔王「………」

少年「――震えてるね?」

魔王「っ…」

少年「魔王四天王…ここまで辿り着いた君達の力は称賛に値する。けど」

少年「その英傑を包み込んできた木竜でさえ、よるべなく慈悲のない無の前に、苦しむことしか出来ない」

少年「…君の足はすくんでいる。君にとって大切な存在である木竜が、見たこともない悲痛さで屈服しているのを目の当たりにしたからだね」

魔王「…」

少年「命すら投げ出して僕を討つつもりでいたんだろう?」

少年「仮にも神を名乗る僕を相手取って、生きて帰るつもりは最早なかった…その生涯を終わらせてしまうことすら厭わないつもりでいた」


少年「しかし、君は知ってしまった」

少年「死は終わりではなく、救いのない永遠の始まりだと」


少年「ねえ、魔王」

少年「僕を倒そうとすれば君はただでは済まない。例え成功したとしても、引き換えに君は死ぬだろう」

少年「その時君の身に降りかかるのは、想像を絶する事象だ」

少年「希望が最初からない無限の世界。そこに君は飛び込めるの?」


少年「命を、投げ捨てられるかい?」




471: ◆EonfQcY3VgIs 2018/08/04(土) 22:30:04.35 ID:+njJv4Yc0



魔王「………」


魔王「私は――」

魔王「私は、それでもあなたを倒す」



少年「ふふ。揺るがない決意というやつ?」

少年「そんなことはないよね。ここでは心は隠せないよ」

少年「君………怯えきってるじゃない」


魔王「………」




472: ◆EonfQcY3VgIs 2018/08/04(土) 22:31:06.18 ID:+njJv4Yc0


魔王「ええ」

魔王「ここにきて、私」

魔王「恐怖にすくんでる。それに、迷ってる」

魔王「あまりも矮小な生命よ…私は。情けないし………とても愚か」

魔王「………」


魔王「それでもね」


魔王「言葉では説明できないものが、私を前に向かせるの」




魔王「――私は、あなたを倒すわ」






少年「………」




473: ◆EonfQcY3VgIs 2018/08/04(土) 22:32:00.37 ID:+njJv4Yc0


少年「へえ。これは驚いた。どうやら本気だね」

少年「心にこわばりが見られない。静かだけど、かといって折れてしまったわけでもなく…」

少年「それは使命感とか自らの希求の念とか………そういう思考の外の感覚…」

少年「今までの歩みの全て――…純度の高い魂の発露。そういうものが、ぎりぎりの所で君の意思を形作っている。そして…」

少年「………長らくこの世界の命の物語を眺めてきたつもりだったんだけどね。なんだろう、この違和感は」

少年「君はこの世の果てを目にしたはずなのに、その感情は、まるで」

少年「そう、言ってしまえば………まるで今日の畑仕事をこなしにかかる農夫のような」

少年「魔法もなく…特別でもなく…ある意味退屈な…」

少年「………その感情は、なんだ?」


魔王「不思議なことなんてひとつもない」

魔王「私のこれは、きっと誰にでもある気持ちだから。…為さなきゃならないことを為そうとする気持ち」

魔王「心踊る冒険も、幻想的な世界も、命懸けの闘いも、関係なく」


魔王「ありふれた勇気よ」


少年「………」




474: ◆EonfQcY3VgIs 2018/08/04(土) 22:37:15.53 ID:+njJv4Yc0


少年「へえ。これは驚いた。どうやら本気だね」

少年「心にこわばりが見られない。静かだけど、かといって折れてしまったわけでもなく…」

少年「それは使命感とか自らの希求の念とか………そういう思考の外の感覚…」

少年「今までの歩みの全て――…純度の高い魂の発露。そういうものが、ぎりぎりの所で君の意思を形作っている。そして…」

少年「………長らくこの世界の命の物語を眺めてきたつもりだったんだけどね。なんだろう、この違和感は」

少年「君はこの世の果てを目にしたはずなのに、その感情は、まるで」

少年「そう、言ってしまえば………まるで今日の畑仕事をこなしにかかる農夫のような」

少年「魔法もなく…特別でもなく…ある意味退屈な…」

少年「………その感情は、なんだ?」


魔王「不思議なことなんてひとつもない」

魔王「私のこれは、きっと誰にでもある気持ちだから。…為さなきゃならないことを為そうとする気持ち」

魔王「心踊る冒険も、幻想的な世界も、命懸けの闘いも、関係なく」


魔王「ありふれた勇気よ」


少年「………」




475: ◆EonfQcY3VgIs 2018/08/04(土) 22:38:16.39 ID:+njJv4Yc0


少年「ふっ…ふふふ」

少年「本当に君は、楽しませてくれるなあ…!」

少年「"ありふれた勇気"? はは! そんなものが、本当に僕を倒せると思うのかい!?」

少年「絶対的な管理者である神を相手にして、そんなものが通用するか…試してみるがいいよ!」

少年「いずれにせよ、僕の見たことのない展開さ…わくわくするね!」


少年「君がそれを否定したとても、君の冒険は例えようもなくとびっきりだった!」


少年「そのクライマックスが、ついに紐解かれる!!」


少年「ああ………こんな興奮は久しぶりだ!!」


少年「僕は今、見たこともないステージを体験してる!!」



少年「おいでよ!! 魔王! 決戦の時だ!!」




少年「君は僕に創られた世界の中で終わるのか!?」




少年「それとも定めを打ち破り、神を倒すのか!?」





少年「今こそ見せてくれ!!!」






少年「――君の辿り着く、結末を!!!」









476: ◆EonfQcY3VgIs 2018/08/04(土) 22:39:12.96 ID:+njJv4Yc0



魔王(絶対的な存在だ)


魔王(直感がそう告げる。例え相手が子供のような見かけであったとしても)

魔王(敵うはずのない相手だと知らしめるような分厚い壁を、感じる)

魔王(この世界の制作者………。根本的な存在の差を魂で感じる)


魔王(それでも私は)


魔王「やらなくては」




炎獣『魔王』

炎獣『魔弓を使え。――俺が、その矢になる』




477: ◆EonfQcY3VgIs 2018/08/04(土) 22:40:30.00 ID:+njJv4Yc0


炎獣『奴がお前に与えた強大な邪神の加護………その化身である俺が、刃となってもろとも奴にぶち当たる』

炎獣『そうすれば、可能性はある。奴自身から生み出た力なら…奴を傷つけられるかもしれない』

魔王「………っ」

炎獣『これしか方法はねぇ。多分な。それに』

炎獣『神を倒せても、その力の化身になっちまった今の俺が残れば後の世では脅威になっちまう』

炎獣『どのみち俺の体は』

炎獣『ここで消えるのが一番良い』




478: ◆EonfQcY3VgIs 2018/08/04(土) 22:41:30.45 ID:+njJv4Yc0


炎獣『………長いこと続いてきた魔人との因縁も、これでようやく終わりだな』

炎獣『俺の旅も、これで終わり』


炎獣『でもさ。――こうして別れを告げられただけマシな最期だよな』


炎獣『………』

炎獣『無になるってのは』

炎獣『どんな気分なんだろうな?』

炎獣『あの爺さんが参っちまうくらいだし…俺にも到底耐えられそうにないや』

炎獣『きっと、情けなく泣きわめくのかもしれねぇな………』

炎獣『はは。なあ魔王。頼むからさ』

炎獣『死んだ後の俺の姿は見ないでくれよな』

炎獣『ちょっとくらい、格好つけたいんだよ。頼むよ』

炎獣『…』

炎獣『魔弓で俺を放つ…。そんな大技、こんな不安定な場所で使ったら一体どうなっちまうのか…』

炎獣『もしかしたらとんでもないことになって、お前だって無事じゃ済まないかもしれない』

炎獣『でもさ。何とか生き延びれるよ、お前は』

炎獣『なんとなくそんな気がする』




479: ◆EonfQcY3VgIs 2018/08/04(土) 22:42:25.35 ID:+njJv4Yc0


炎獣『そうなったら、お前を一人で残すようなことになっちまうな』

炎獣『俺には、お前を………もう守ることが出来なくなる』

炎獣『ごめんな。守るって言ったのに』

炎獣『でもさ』

炎獣『お前はもう、大丈夫だよ』

炎獣『俺がいなくても』

炎獣『きっと』

炎獣『…』

炎獣『ぐだぐだ言ってても仕方ないよな』

炎獣『終わりにしよう、もう』

炎獣『…』




炎獣『…』




炎獣『あ、あはは! なんかさー、俺さ!』


炎獣『畜生、格好つけて終わろうと思ったのにさ!』


炎獣『はは!』













炎獣『――………き』


炎獣『消えるのが、怖いみたいだ…っ』






480: ◆EonfQcY3VgIs 2018/08/04(土) 22:43:24.93 ID:+njJv4Yc0


炎獣『…あれだけ沢山殺したくせに………っ』

炎獣『何度も何度も死にかけてきたってのに…!』

炎獣『いざ、本当のおしまいを前にしたら、俺………!』


炎獣『はは…マジかよ………』

炎獣『い、いまさら』


炎獣『消えてなくなるのが………怖い………』





炎獣『怖い』







481: ◆EonfQcY3VgIs 2018/08/04(土) 22:44:10.00 ID:+njJv4Yc0


炎獣『俺が殺した連中も、きっと…嫌、だったろうな』

炎獣『怖かった、ろうな』

炎獣『そして、今も、ここで苦しん、で』

炎獣『俺を、恨んでるんだろうなぁ』


炎獣『――生きてぇよ…っ!』

炎獣『一人になりたく、ねぇよ!』

炎獣『本当は俺、まだ、生きて…!!』

炎獣『………お前と一緒に――』




炎獣『………』






炎獣『なあ』


炎獣『魔王』



炎獣『ちょっとでいい。ほんの少しでいいんだ』

炎獣『俺に』





炎獣『………………勇気を、くれ』









482: ◆EonfQcY3VgIs 2018/08/04(土) 22:45:03.40 ID:+njJv4Yc0




魔王「――炎獣っ!!!」

ギュウッ…!





483: ◆EonfQcY3VgIs 2018/08/04(土) 22:45:55.57 ID:+njJv4Yc0



炎獣『…っ』


魔王「炎獣、炎獣、炎獣!!!」

魔王「ううううう…っ!」


魔王「炎獣ぅっ!!!」







炎獣『………』



炎獣『あたたかい』



炎獣『燃えさかる、俺の身体よりも』



炎獣『魔王の、涙が――…』






炎獣『………………』





炎獣『ありがとう』



炎獣『魔王』






484: ◆EonfQcY3VgIs 2018/08/04(土) 22:46:42.86 ID:+njJv4Yc0



炎獣『勇気が沸いた、気がするぜ』


炎獣『はは』


炎獣『………』


炎獣『そいじゃ、いっちょ』


炎獣『行くとするか』





485: ◆EonfQcY3VgIs 2018/08/04(土) 22:47:22.92 ID:+njJv4Yc0









【勇者】











496: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 09:03:44.87 ID:ma21ZHtA0



遊び人(………魔族の女が、ゆっくりと構える)

遊び人(泣きじゃくるような顔のまま、まるで弓を引き絞るような動作で、腕を引く)

遊び人(とんでもない衝動が、あいつらの回りに集まり始める…。恐ろしいほどの力が弾け飛ぶ予感だけを、感じることができる)

遊び人(………俺はこんなところで、何をやってんだ…?)

遊び人(つまりは、なんだ。こんなもん、神話の世界の出来事だろうが)

遊び人(どう考えたって場違いだ。全部夢だって言われた方がまだ、現実的だ)

遊び人(………)

遊び人(そうだ…そうだよな)

遊び人(俺には関係のないことだ。俺はただひたすら、夢が醒めるのを待っていれば、そうすればきっと)

遊び人(あのロクでもなくて、クソみたいにつまらない現実に戻れるはずだ)

遊び人(きっとそうなんだ)


遊び人(ああ………いよいよ矢が放たれる)

遊び人(でも………俺には………)

遊び人(なんら関係のないことだ)






魔王「これが」



魔王「私の最後の」





497: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 09:12:07.77 ID:ma21ZHtA0







魔王「――魔弓だッ!!」




炎獣「 グ ォ オ ォ オ ォ オ ォ オ ォ オ ォ オ ォ オ ! ! ! 」






     ピ  シ  ッ  …






498: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 09:13:14.08 ID:ma21ZHtA0


遊び人(っ!?)

遊び人(な、なんだ!? 体が動かねぇ!!)

遊び人(化け物が矢のように放たれたその爆発的な反動で)

遊び人(時間が止まったようになっちまって…)



遊び人(………な)

遊び人(何かが)

遊び人(来る――!!)



















魔k王「…帝「魔…間ypもな雷










帝「海人間7uの王の炎uo獣「大し俺9.たち敵戦力gの大部666分氷姫「いよp0uい6よ…ってワ炎il獣「でも、そ王国9o軍の本体をru壊…。だその....甲.前だ」ぉしっの4ジ木竜「やってiお持yちま


















すかii竜「hdjfほdほっから氷姫「無理すうとt言う儂kらおるとい兵士「qし、王「…今は何兵士陛、ちらの状…。町のら、急の報のこと」「町…いう、器商会か」上げてみよ」はっ」゚サ?い、倉モンは部せ!い!おい、こっちねぇ!めェらしがれ!!」…」員「社。大配完てやす」人「ああ、ご苦「る」 うのじゃ…そうねd」「姫う少魔王「…魔王「無理をこれしビュオ獣「おっ!gえ2た帝t「…fさ「そうったもんじ」「そろそyp0ろていて獣「ドンと来――み王「こうとう人魔王「fあ…と少して…!城 謁国…!?3 それ者「…!」゙ワザワ 獣「港て伝「はっ!王fが…鹿な…! 勇うgことだ…っ」?しく申せd」?令「はっ!令「8我らわずました…!王「な、…!?令「新うやら、魔ですら…!」伝の後直ましまnじく…刻…!!にっ!ガタ」?う…嘘だ…港港町うこの王城お、? って…の半分最送ら滅…町以降を類の戦は…!!」「そん…そん王「……でば子供のきー!れが、港町氷姫「随雷帝「今まっきたもなり明をじてまが…こまで王「え…)?炎獣「え事? 魔王」王「ん、かせてく」魔王…」私たちはまでh類をすめに必ってきた「の作能力特高私鋭による点突肝」氷「かってるわよ。したちで、すhe3d





499: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 09:14:39.35 ID:ma21ZHtA0



遊び人「ッ!!?」


遊び人(がっ?! な、なんだ………!!)

遊び人(頭に………っ、流れ込んでくる………!!)




獣「勇者を倒さtyえすれ間側y6魔倒すて8て、伏せる4をいっよなi!」雷帝はま神6ti得て…。″いう組q織成化のにる、す」魔王「う。のうり。ま、族軍の方は、今、べてちにねれる人」員「王はどうやkラゴンってiちらtyjましていちらうtyいっか、詳ない。…王国y8士連解析待全れたからなh」」「「「へうなっ員「倉のありっ岸に並べりhjやす砲yuの扱中員こにつ00ぎんでがyた瞬砲弾雨をせkられまぜ?




遊び人(頭が、破裂する………!!)

遊び人( わけの分からない言葉の洪水…っ! 圧倒的な密度の、何か…!!)

遊び人(これ、は…っ、まさか魔王の………!?)

遊び人(――………魔王と炎獣の…)



王「で01ののtを6の化水高驚かされuiけた…生活を実現出」魔王「は、の化を収す必があわ」炎獣…??」うですjかに。争に勝文p0化に術を魔族の職m65人7i層がにられれ…」姫「魔界はますypますてわn?」魔王「うんだiらにもそつもでしの」炎獣「まり…どっbbばよ?氷姫アンぇ…――――――――――――――――――――――――――――俺には難しいことは分からねえけどさ、でも、魔王!!

――炎獣《俺、きっとお前の理想の世界を実現してみせるからな!》

――炎獣《その為に、一番に突っ込んでいくのは俺だっ! 絶体!》


――炎獣《約束する!》


――魔王《……ふふ。ありがとう、炎獣》





500: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 09:16:15.05 ID:ma21ZHtA0

遊び人(い、今、僅かに聞き取れた)

遊び人(こいつらの声が…。やっぱり、そうだ…!)

遊び人(こいつらの感情が溢れかえって…っ、この空間を伝播してきやがるんだ…!!)

遊び人(あまりにも濃密なエネルギーの暴走に………まるで時間が止まってしまったかのようになっちまって)

遊び人(思い出が、押し寄せる――!)





炎獣^:6さjくそれでj戦?」魔王「、ご帝おyuい、氷!?―――――――――炎獣、珍しいね。そんな顔。         

獣「…゙ュッ?獣「i邪れhるら8oい―――――――――…何だかさ、変な気分なんだ。どうしたらいいか、分かんないんだよ。




501: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 09:17:56.38 ID:ma21ZHtA0


――炎獣《………なあ、魔王。俺は、どうしたらいいと思う? 俺、悩むの苦手だ》

――魔王《身体動かしてみる、とか?》

――炎獣《お! それいいかもな!》

――魔王《あ、でも。あまり遠くにいかないでね?》

――炎獣《…ああ、うん。…俺の戦いを…しなくちゃ、だもんな》




遊び人(なんだよ、これ)

遊び人(なんだってんだよ…!)

遊び人(魔王と炎獣の絆………。多くの葛藤を乗り越えてきた思いの濁流)

遊び人(やめてくれよ…! 俺に、そんなもんを見せつけないでくれ)

遊び人(俺には関係ないんだ…)

遊び人(手の届かない世界の話なんだ…そうだ)

遊び人(俺には関係ない…っ)




――炎獣《魔王もさ。魔王も不安なのにさ。俺たちを勇気づけてくれて》

――炎獣《ありがとな》

――魔王《っ…》

――炎獣《必ず勝とうな!》

――魔王《………うん。そうだね。一緒に、勝とう!》




502: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 09:19:00.65 ID:ma21ZHtA0


遊び人(やめてくれって言ってるじゃねえか…っ!)

遊び人(どうあっても、俺の頭のなかに入ってくるつもりかよ!?)

遊び人(俺にどうしろってんだ…放っておいてくれよっ)

遊び人(過酷な運命を切り開いてきた英雄がいるってんなら、そっちで話をつけてくれ!)

遊び人(もう、俺に………見せつけないでくれ)




――炎獣《さあ、行こうぜ。悲しくても、進まなきゃ》

――魔王《炎獣…。…うん! 行きましょう!》




遊び人(炎獣があのガキに近づくにつれて想いの圧が増してきやがる…っ!)

遊び人(こんなもん見せられて、どうしたらいいんだよ!?)

遊び人(分からないんだよ…っ、俺はとっくに諦めちまったんだっ!)

遊び人(俺はそんな風には出来ねぇんだ!! やろうと思ったって出来なかったんだよ!!)

遊び人(負け犬だって居ていいだろうっ!! 俺に求めるなッ!!)





――炎獣《魔王。俺と友達でいてくれて………ありがとう》

――魔王《私をずっと守ってくれて》

――魔王《ありがとう、炎獣》





503: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 09:20:05.34 ID:ma21ZHtA0



遊び人(怖い…っ)

遊び人(分かってるんだ………俺はこんなところにいるような役どころの人間じゃねぇ…)

遊び人(結局、何もかも誰かの支配の下だったってことだろう。俺はそこで燻り続けて、最後に死ぬ…)

遊び人(その支配を打ち砕くなんて大それたこと、恐ろしくてできやしない。飼い慣らされながら、惨めに生きていて、それでもいいんだ)

遊び人(俺は、俺は…っ、ただの遊び人なんだ! どこにでもいるクソ下らない人生の敗北者なんだよ!)

遊び人(放っておいてくれよ………!!)



――炎獣《俺、きっと守るからっ!》

――炎獣《魔王のこと、守るから………!!》

――魔王《炎獣…! 炎獣っ! 死なないで、お願い…っ!》




504: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 09:25:19.77 ID:ma21ZHtA0


遊び人(ああ)

遊び人(炎獣と、神が、ぶつかる)

遊び人(途方もない感情が弾ける――)






――魔王《ね、ちょうちょつかまえるあそび、しよっ!》

――炎獣《ちょうちょ?》

――魔王《うん! あ、ほら、とんできた!》

――炎獣《…つかまえ王「こ、いでi…




万がo0一と、わ風jうてましととき54ま王(こ魔王わい!)?(だか、!!)―…』?王()?――ッ







鬼「ッ!y6?ん!?は――」ス!!mw「」王(…、に?が、てる風p1「ッ…ぁ、はぁ」ェ…」?゙ォオォ…魔『……(、イツのは!?ったいらん)(…か、れも王の品ケな! こ加護の正っ魔人『…イそのの尋3b常やい。てもい刀打ちるルやないば、)?とく、ラけて"分!」ュゥウ…





507: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 09:32:29.22 ID:ma21ZHtA0



遊び人(やめろ!! もう入ってくるな!!)



「いは、自分を1が来る」ろ」魔人『…』「あ、や、物…!」んか…!?」?人』ス――ュッ鬼「んならそ決めさもうでいなrボッ………(…? な、動か))?(か………半身がれ…シャ人『…』…』ル…魔王「ひっ王(ここっ…!!』(あ……ゅうに、むく…)」ドッ魔人』゙ワ…「めに!!バッ?炎獣るなっ!!゙カッ!!『


遊び人(やめろっ!! やめろッ!!)


もい!)…』ズ…?獣(だ、。る――)?雷帝「""…!!」バァッ!!人『』」木「ォオォオッカッゥン…――…』ッ…帝」炎獣「、はあ…魔……タ…や、った、木竜「…様中、か?ええ」「が…神の加がをvした。…儂、い」雷帝「質をがそtにす護。の器らい、っ言れが」「の小な、の6gをめypていと??「、ううことう。なな…、ななる9はもあまppいて「る種、うす。どはに、意をて」……。すが、うくを」む。し、お。よのう」炎獣「」?竜「むん?んじゃ、ってる」…翁。は反。でさえのはきう。んをのくど」雷8帝凰供何かい。…」「…ふうむ「て、うやららっ、竜「なしおる」…

遊び人(やめろぉおぉおッ!!)

力gの大部分氷姫「い 』「あ、や、物…!」んか…!?」?人』ス――ュッ鬼「んならそ決めさもうでいなrボッ… !y6?ん!?は――」ス!!mw「」王(…、に?が、てる風p1「ッ…ぁ、はぁ」ェ…」?゙ォオォ…魔『……(、イツのは!?ったいらん)(…か、れも王の品ケな! こ加護の正っ魔人『…イそのの尋3b常やい。てもい刀打ちるルやないば、)?とく、ラけて"分!」ュゥウ ……(…? な、動か))?(か………半身がれ…シャ人『…』…』ル…魔王「ひっ王(ここっ…!!』(あ……ゅうに、むく…)」ドッ魔人』゙ワ…「めに! よいよ…ってワ炎獣「でも、そ王国軍の本体をru壊…。だその甲前だ」ぉしっのジ木竜「やってお持ちますか竜「hdjfほdほっから氷姫「無理すうとt言う儂kらおるとい兵士「qし、王「…今は何兵士陛、ちらの状…。町のら、急の報のこと」「町…いう、器商会か」上げてみよ」はっ」゚サ?い、倉モンは部せ!い!おい、こっちねぇ!めェらしがれ!!」…」員「社か。大配完てやす」人「ああ、ご苦「る」うの



508: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 09:33:52.83 ID:ma21ZHtA0

」雷帝「質をがそにす護。の器らい、っ言れが」「の小な、のをめていと??「、ううことう。なな…、ななるはもあまいて「る種、うす。どはに、意をて」……。すが、うくを」む。し、お。よのう」炎獣「」?竜「むん?んじゃ、ってる」…「炎タタ「! ぬしじゃ 「                  」 そjくそれでj戦?」魔王「、治竜「う6j帝「!?…あれス…?姫「もyu……ん雷!」魔王かった…倒のね竜「全無をしおヒュィイ炎獣「…獣「がko0で倒し「何?」「――






遊び人(――え?)







「         」





遊び人(………お)


遊び人(お前は)




































 ――――ゴ――――ゥ――ン――――ッ――!!!――――
















509: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 09:35:27.94 ID:ma21ZHtA0





















魔王(………)




魔王(終わった)









510: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 09:37:10.43 ID:ma21ZHtA0




魔王(出し尽くした)



魔王(私の全てを)



魔王(全てを引き替えに、私は)



魔王(ーーあの子供を倒した)



魔王(そうして私は今度こそ失ったんだ)








魔王(炎獣を)







511: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 09:38:49.48 ID:ma21ZHtA0




魔王(隣には、誰もいないし)


魔王(私の体はもう動かない)


魔王(――私の旅は終わった)


魔王(もうこれ以上、どこに行きようもない)


魔王(そうして私は、何を得たのだろう?)


魔王(分からない。………けれど確かなことは)


魔王(神は死んだ。もう勇者も魔王も生まれない)


魔王(こんな苦しみを味わう者は、もう現れない)


魔王(だからこれでいい。どこへ行く必要もない)



魔王(ただゆっくり)



魔王(ここで朽ちてゆこう)



魔王(………炎、獣)






512: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 09:49:23.76 ID:ma21ZHtA0




魔王(私も………そっちに、行く…)



魔王(………よ…)











魔王「」




































少年「はは。まだ死ぬには早いよ、魔王」




513: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 09:50:25.23 ID:ma21ZHtA0


少年「いやあ、危なかった」

少年「思いのほかダメージを受けてしまったなぁ…まさか、君達がここまでやるとは…」


少年「ふっ、くくく。ねえ」

少年「本当にさ、僕は信じられないんだよ…」


少年「まさかただのいち生命が、この世界の管理者である僕を、ここまで追い詰めるなんて…!」

少年「こんなスリリングな戦いが、描かれることになるなんて………っ!」


少年「魔王には今回人類へ大きなダメージを与えてもらうために、今までにないほど強大な加護を授けていた…それがそのまま我が身に返ってきたことで思わぬ被害を…」

少年「いや! そんな無粋なことはどうでもいい! それよりも炎獣の決死の覚悟! そして溢れだす美しい想い出たちっ!」

少年「ああ…っ、本当に胸を打たれたよ! 言葉に出来ないくらいっ!」


少年「…そうして魔王。君自身も最早空っぽになるほど自らを犠牲にして魔弓を放った――」

少年「けれど僕は倒れなかった。この身に一握りの力を残してこうして立っている」

少年「惜しかった…! あと一歩で君達は成し遂げられず………そして全ての努力は水泡に帰す」


少年「そう。――心地の良いバッドエンドだ」




514: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 15:27:53.29 ID:ma21ZHtA0


少年「魔王…そして四天王」

少年「それに魔法使いの思惑。国王の策。………管理者である僕を倒そうという謀の全ては、敗北したんだよ」


少年「ふふ。上質な悲劇って、なんて甘美なんだろう………うっとりしてしまうよ」

少年「ああ…たまらないなぁ。いつだって僕の作り上げた魔王と勇者は情感豊かな物語を紡いでくれる」

少年「僕の美しい友人であり、想い人であり、ママのような理解者さ」

少年「今回のお話も心に染み入るね…。………でも、これだけの幕引きを見てしまった今」


少年「――更に情熱的なストーリーを見てみたくなってしまうよね…?」


少年「…ふふふ!僕に良いアイディアがあるんだ………!」

少年「僕の身に残る力を、全てまとめて君に与えよう、魔王!」

少年「今や脱け殻同然の君には、抗う力はない。…今度は純粋な殺戮兵器になってしまうだろう」

少年「そうなった君は、あの荒廃した世界に現世の地獄を形作ることとなる…!」

少年「ああ、わくわくしてきた! 君は恐ろしい残忍さで破壊の限りを尽くし、そして人々にこう呼ばれるんだ」


少年「"大魔王"、ってね!」


少年「ふふふっ! 誰一人として君に立ち向かえる力の持ち主などいないのだ! きっと夢のような混沌に陥るだろう!」

少年「世界は暗黒の時代を迎えることになる………ふふふ。けれど安心して」

少年「また僕の力がこの身に戻ったら、今度は大きな力を宿した黄金の勇者を作り上げてあげるから」

少年「そうして、希望を切り開く夢の冒険が、再び始まるのさ」




515: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 15:29:22.25 ID:ma21ZHtA0


少年「ただ、君に力の全てを与えてしまったら、次に勇者を作れるのはいつになってしまうかな…君達の感覚で言えば百年近く後になるかも」

少年「大魔王たる君を見ていれば退屈しなさそうだけど、出来れば今の君にももう少し楽しませて欲しいなぁ………」

少年「………いや、どうやらここから君の逆転はなさそうだね。少しばかり、寂しいよ」

少年「人々の祈りが君に届いて奇跡の復活、とかさ。最後の最後の想いの力で再起、とかさ。そんな展開もちょっと見てみたかったかもね」

少年「…でも、まあ」

少年「これで終わりだね」


少年「…魔王。楽しませてくれて、ありがとう」

少年「さあ、改めて君に邪神の加護を与えよう」

少年「大丈夫。圧倒的な力に任せていれば、君に約束されるのはただ至福の感覚のみだ」


少年「僕に残されたこの力の全てを吸いとって、絶大な力に身をゆだね――」

少年「人の世の地獄の物語を紡ぐ、偉大なる存在に――」




少年「大魔王になるがいい!!」







516: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 15:30:08.03 ID:ma21ZHtA0




――ォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォォオォオォオォォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオ…!!!




少年「…ふふ。そうだ」

少年「空っぽで、感情さえ抱けない君はもはや受け入れるしかない」

少年「逆らうことも許されない全ての生命は、畏怖を持って君に従うだろうね」

少年「…ああ、でも彼女がいたな。そう、冥王」

少年「けれどさしもの冥王も、この力には敵わないだろうね。…ふふ。いよいよ自分に死期が迫ったら、果たして彼女はどんな思いを胸に戦うのかな…っ?」

少年「楽しみだなぁ…! 冥王すら敵わない崇高なる大魔王………!」

少年「ふふふ! 君はこの後百年、世にも恐ろしい修羅の物語を刻むんだ!」

少年「さあ………新たなストーリーの幕開けだ!!」



















魔王(――――――)




517: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 15:31:17.64 ID:ma21ZHtA0


少年「…ん?」

少年「なんだ…? 魔王に…」



魔王(――――――)



少年「感情の、揺らぎ?」

少年「いや。まさかそんなはずないよね」

少年「あの魔弓と引き替えに、魔王は全てを失ったんだから」



魔王(――――たい)



少年「!?」



魔王(――――――苦しい――)


魔王(――痛い――――)






518: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 15:32:03.29 ID:ma21ZHtA0


少年「なんだ、これ」

少年「感情が………芽生えている…?」


魔王(――――やめて――)


魔王(もう――――戦え――ない――――のに――)



少年「…苦痛?」

少年「痛みのようなものが、魔王の自我を呼び覚ましている」

少年「そんな…まさか。何故………!?」

少年「一体、誰がこんなことを………」



魔王(――や――めて――――)

魔王(――――もう――休ませ――――て)



『ふざけんじゃねぇ』

『てめぇみたいな悪人を、楽にさせてたまるか』

『俺はお前が憎い』

『俺の全てを奪ったお前が』

『俺の愛しい仲間も、愛しい女も、全て全て…!』


『お前が殺したんだ!!』





519: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 15:32:53.10 ID:ma21ZHtA0


魔王(――あ――ああ――)


魔王(あなたは――――)



『覚えてくれていなくて結構だ。どうせ俺は、お前が蹴散らした虫けらに過ぎねぇんだからな!』

『くそ! くそ! くそ!』

『何が勇者一行だ!! 俺はまんまと操られて、お前に全てを奪われた!!』


盗賊『呪ってやるぞ、魔王――!!』




520: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 17:41:36.91 ID:ma21ZHtA0


盗賊『お前のせいだ!!』

盗賊『お前が攻めてきたせいでみんな死んだ!!』

盗賊『剣士も、エルフも、斧使いも、騎士も、魔女も、狩人も、吸血鬼も!!』

盗賊『軍師も………っ!!』

盗賊『お前の…お前のせいで!!』


魔王(――――痛い――)

魔王(――苦し――――い)



少年「これは………っ、死者の念…!?」

少年「この無の世界に蠢く亡者の意識が…」

少年「魔王に向かって集まり始めている、のか…!」


魔王(――焼けるようだ)

魔王(助けて――)



戦士『…助けて?』


戦士『助けて、だと? お前が?』

戦士『あれだけ殺しておいて、自分だけ楽になりたいと?』

戦士『笑わせるな。もっと苦しめ』

戦士『死よりも激しい辛苦こそ、お前に相応しい………魔王』




521: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 17:42:45.60 ID:ma21ZHtA0


戦士『ふふ…滑稽だ。死んでしまえば生者を恨むことしか出来ない』

戦士『しかしそれが許されるのならば、甘んじよう』

戦士『何より目の前に仇がいるのだ』

戦士『――苦しめ』

魔王(………く、首が)

戦士『苦しめ!』

魔王「や、め………かふッ!!」

戦士『苦しめ!!』




少年「………憎悪」

少年「この物語の犠牲者の魂が…自らを葬った根源を嗅ぎ付け」

少年「その怨嗟が、魔王に感覚を呼び起こしている…!」

少年(死後の気の狂うような静寂を漂う者にとって………死にかけの仇など、格好の餌食だ)



武闘家『おぬしはまだそんな所にいるのか?』

武闘家『悠々と生者を気取って?』

武闘家『…許せぬ』



武闘家『許せぬ許せぬ許せぬ許せぬ許せぬ許せぬ許せぬ許せぬ許せぬ』




522: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 17:43:31.92 ID:ma21ZHtA0


魔王「うぐっ…!! あっ、ぐぁっ!!」


商人『魔王!! 貴様が!!』

商人『貴様が全てを奪ったッ!!』

商人『今こそその代償を払えッ!!』



少年(ゆ、勇者一行………!)

少年(無惨に散った彼らの途方もない怨嗟が吹き出してくる――)


少年(いや、それだけじゃない!)




女勇者『お前さえいなければ…!!!』




523: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 17:44:30.69 ID:ma21ZHtA0



教皇『苦しめ!!!』


軍師『憎い…!!! あなたが、憎い!!!』


虚無『苦痛を味わえ!!!』


兄『もがき懺悔しろ!!!』


『お前のせいで………』

『お前のせいで………!!』




魔王「うガっ、ゴッ」

魔王「や、メテ」

魔王「おっ、ネガ、いッ………」





524: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 17:45:32.08 ID:ma21ZHtA0


少年(物語を動かした人物だけじゃない…名もなき兵士から…犠牲になった町民に魔族まで)

少年(この大戦のために死した数えきれない魂が怒号を上げている)

少年(それらがもたらす無数の苦痛は、魔王に意識を取り戻し――)

少年(膨れ上がった呪力は、僕の支配を拒む………!!)



魔王「ぐぁあッ…!!」



魔法使い『――本当は僕がそこに立っているはずだった』

魔法使い『何故僕ではなく、お前がそこにいる?』

魔法使い『…死の苦しみよりもずっと狂気に満ちた悪意を、お前に』


魔法使い『苦しめ』



魔法使い『苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ』



魔王「うぎッ、がっ!!」

魔王「た、たすっ」

魔王「助け――」


先代『………お前………ば………』


魔王「!!」

魔王(お、お父さ)






先代『お前さえ生まれなければ』





525: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 17:46:27.12 ID:ma21ZHtA0



魔王「そ」

魔王「んな」




魔王「あああ」



魔王「あああああああああああああああああああああああああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアああああああああああああああああああっ!!!」





魔王「あ――――――」













木竜『あなたの』









炎獣『お前の』











526: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 17:47:12.17 ID:ma21ZHtA0









炎獣『お前のせいだ』
















魔王「――――――――――――」







   バ  チ  ッ !!






527: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 17:48:08.93 ID:ma21ZHtA0





少年「っ!!」


少年(は………弾かれた………っ!)




シュゥウウウウ………




魔王「………」 ユラ…





少年「………ま、魔王」


少年「一体………何が、どうなったんだ」


少年「僕の干渉は及んでいない。それなのに君は」


少年「――君は、立っている………!!」



魔王「………」





528: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 17:49:19.01 ID:ma21ZHtA0



少年「その原動力は僕の与えた力では、ない………」

少年「僕の力を、押し退けた上で君は…――君は甦ってみせた」

少年「それを可能にしたのは、生者の祈りでも、希望の力でもなく…」



魔王「………ふふ」



少年「!」


魔王「どうして?」

魔王「どうして私は生きてるの?」





529: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 17:50:03.07 ID:ma21ZHtA0


魔王「私は…沢山の人々を死に追いやった」

魔王「…戦場の片隅で事切れた兵士の一人に至るまで」

魔王「その呪いは今、私に返ってきた」

魔王「ああ。きっとこうなって然るべきだったのかもしれない」


少年「ま、魔王………」


魔王「苦痛が疼く。それは片時も私から離れることはない」

魔王「これは永遠の呪い。私に与えられた罰」

魔王「分かっていた。私がどんなことを成し遂げようと、多くを殺めた罪人に他ならないということ」


魔王「――けれど、目の当たりにしたくはなかった」

魔王「お父様にも、爺にも………炎獣にも」


魔王「死の世界の苦痛を前にしたその時には、もう」



魔王「私は………許されるはずがないんだ」





530: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 17:50:55.63 ID:ma21ZHtA0


魔王「私さえ、いなければ」

魔王「彼らは今も生きていたはずだった」

魔王「………炎獣も」

魔王「ねえ」


少年「!」


魔王「私が愛していたはずの命の怨恨が、血となって巡っているかのように、私を責め立てるの」

魔王「ずっと、ずっと、ずっと………絶え間なく」


少年「………」


魔王「あのまま、あなたの力で自我を消し去ってしまった方が、ずっと楽だった…」

魔王「………今の私にあるのは、身を切るような痛み」

魔王「心臓が鼓動するたびに身体を内から食い破ろうとする、怨念」

魔王「ねえ、どうして?」




魔王「どうしてあのまま私を支配してくれなかったの?」







少年「ふっ、ふふふ」


少年「あはははははははははははははは!!」




531: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 17:51:45.47 ID:ma21ZHtA0



少年「これは、凄い!! 君は素晴らしいよ、魔王!!」


少年「君は絶体絶命のピンチを切り抜けた…! それを可能にしたのは死した者の恨み!」


少年「魔王を名乗る者に相応しい復活だ!! 僕の力に明け渡すこともなく、君は生き延びることに成功したんだ!」


少年「けれど、呪いによって得た生に、君はもはや喜びを感じられない…!」


少年「多くの者の憎しみを一身に受けて………大切だった仲間にすら恨みを向けられて」




少年「――君の気高さは、失われてしまった…!!」





魔王「お願い」

魔王「もう私を殺して」




532: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 17:52:55.04 ID:ma21ZHtA0


少年「くくくくく…!」

少年「君の"意思"は、最後の最後のところで君を支えていた光だった!!」

少年「君を君たらしめていた大事なものを、失ってしまったんだ…!!」


魔王「………」


少年「ああ…! なんたる美しい絶望だろう」

少年「ふふふ…。魔王。傷心の君をさらに突き放してしまうようだけどね」

少年「君を殺そうにも、僕にはもうそんな力は残っていないんだよ?」

魔王「…どう、して?」

少年「残った力の全てを君に授けるつもりだったからねぇ。それが弾き飛ばされてしまって、僕には何の力も残っていない」

少年「力の復活までには時間を要する。力を失ってしまったのだから、それまでは僕も取るに足らない非力な子供と一緒さ」

魔王「そんな………」

少年「悲しいよね。辛いよね。ごめんね?」

少年「でも、逆に考えてごらん? 僕は今なんの力もないただの子供なんだよ?」


少年「今なら、首を絞めてでも僕を殺してしまえるんだよ」

少年「君がここに来た望みは、そういうことだったはずだろう?」


魔王「………」

魔王「私には」

魔王「もう、どうすることも出来ない」

魔王「何かを為そうなんて気持ちは」

魔王「欠片も沸いてこない…」





533: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 17:54:12.74 ID:ma21ZHtA0


少年「あはっ!」

少年「あははははははははははは!! 魔王! 僕を倒そうとやって来た君には、絶好のチャンスなのに!!」

少年「当の君は、ただ生きているのでやっと!!」

少年「――僕らは生きているのに、互いに命を奪い合うだけの力がないんだよ…!!」

魔王「………」

少年「こんな形のゲームオーバーが今までにあっただろうか!!」

少年「引き分けを迎え、お互いに手を出せないまま茫然としているしかない結末…!」

少年「ふふふ! 僕ひとりでは到底思い付かなかったシナリオだ…!」

少年「賢者………本当にありがとう。君のお陰で今までにない展開を楽しむことが出来た」

少年「興奮が、収まらないよ…!」

魔王「………」

少年「魔王が港町より人間の王国に攻め入った、今回の魔王勇者大戦」


少年「その結末は………」




534: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 17:55:08.32 ID:ma21ZHtA0




少年「――"静寂"だったんだ」




少年「魔王………君はこの物語の主役だった」

少年「仲間と協力し、押し寄せる強敵と困難を退け、世界の謎に挑みかかった」

少年「けれど、最後に僕と引き分けた」

少年「この世の管理者たる僕のことは、やはり倒すことなど出来なかった」

少年「君は所詮、作られた物語の登場人物に過ぎなかった。つまりはそういうことさ」

少年「これで、幕引きだ」



魔王「………………」





535: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 20:44:50.43 ID:ma21ZHtAo


少年「…ふふ! これは次の魔王勇者大戦も楽しみだなぁ」

少年「今回の悲劇ほどのお話にはならないかもね。でも、この戦いを越えてまた新たな英雄が生まれると思うと…ふふふ」

少年「そう、次だ。この余韻に浸るのも良いけど、もう僕は次の準備へ取り掛からないと」

少年「今回は、これ以上展開のしようもないからね…」


魔王「………」

少年「…表情のない人形のようだね。魔王。つまらないや」

少年「そんな顔をしていたって、誰も君を殺してはくれないんだよ、もう。あっちに行ってよ」

少年「僕は次のお話を考えるのに忙しいんだ。ふふ」


少年「…」




536: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 20:58:44.15 ID:ma21ZHtA0


少年「僕が力を取り戻して次の魔王勇者大戦を始めるまでには長い時間がかかる。それまでに次のお話を…」

少年「………」

少年「うん。時間はいっぱいあるんだ。いくらでも考えられる」

少年「…そう。いっぱい………」

魔王「………」

少年「いや、少しの間の出来事だ。力を取り戻すまでなんて。永い時を過ごしてきた僕にはあっという間だよ」

少年「そう。少しの間………」

少年「………いや、でも」

少年「あれ?」



少年「………」





537: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 20:59:41.20 ID:ma21ZHtA0


少年「そうだ…! ね、ねえ魔王!」

少年「君、僕の話し相手になってよ。一緒に物語を考えようじゃないか!」

少年「どうせすることもないんだし、さ。いいだろう? 魔王」

魔王「………もう」

魔王「私を殺して」

少年「………」

少年「…ちぇ」

少年「なんだい。話し相手にもなってくれないのか…」

少年「…どうやって時間を潰そうか」

少年「今まで、いつだって僕の作った英雄達の物語が側にいてくれた」

少年「勇者と魔王を巡る夢の冒険が…僕を楽しませてくれた」

魔王「………」

少年「でも次のお話を始めるまで………」


少年「――あと、百年もかかる」




538: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 21:00:22.26 ID:ma21ZHtA0


少年「………」

少年「…百年…」

少年「………百年も」


少年「………………」


少年「………ど」



少年「どうしたらいいんだ?」





539: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 21:01:13.55 ID:ma21ZHtA0




少年「今の僕は完全に力を失ってしまって、例え小さな勇者でさえ作ることは出来ない」

少年「こんなことは………こんなことは、今までになかった」


少年「ここは無の空間。元々なんにもない場所なんだ。だから」

少年「こ…困ったな。物語があったからこそ、僕は時間を忘れて没頭していられたのに」

少年「こんな空白、し、知らない………」


少年「――…空白?」

少年「空白が、百年も続く………?」



少年「は、はは。想像しただけで………」

少年「ど、どうしたらいいんだ…? も、物語がないなんて、僕は…」

少年「そもそも僕は………この無の空間で」

少年「無の空間に、たった一人で…」

少年「………あれ」

少年「あれ。…あ、あれ?」

少年「どうしよう」




少年「物語を失った僕は」

少年「生きているといえるのか?」




540: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 21:02:00.17 ID:ma21ZHtA0


少年「あれっ。あれっ?」

少年「どうしよう、どうしようどうしよう」


少年「ど、どうしたらいい?」


少年「ねえ」


少年「ねえ、ねえ!」


少年「ねえってば!!」




魔王「………」


魔王「私には」



魔王「どうすることも出来ない…」






少年「――!!」




541: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 21:02:38.90 ID:ma21ZHtA0


少年「は、ははは…!」

少年「そん、な…あまりに酷いじゃないか」

少年「そうだ………これはあまりに酷すぎるよ」

少年「…おい」

少年「おいっ!」

少年「ふざけるなよ!!」

少年「君がっ、君が僕の力を拒んだりするからっ!!」

少年「こんなこと、ありえないはずだったんだ……!! 亡者の思念を引き寄せて、僕の力を寄せ付けないなんて…っ」

少年「僕は、この世界の制作者であり管理者だぞっ…!! それを、それを――」



魔王「………」

魔王「あなたは、狡猾で老獪なようで」



魔王「その実」


魔王「本当にただの子供でしかないのね」






少年「…ッ!!」




542: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 21:03:25.15 ID:ma21ZHtA0


少年「黙れッ! 黙れよッ!」

少年「お前がこんなところまで攻めてきたから、こんなことになったんだろ!?」

少年「お前がいなければ、こんなことにはならなかったんだっ、魔王っ!!」

少年「なんとかしなきゃいけないんだよ!! そうじゃなきゃ、く、空白が来るんだっ!!」

少年「君なら何とか出来るはずだろっ!?」

少年「………そ、そうだ。そうだよ」

少年「き、君はあれだけの困難を乗り越えてきたんだ。多くのことを、成し遂げたじゃないか」

少年「僕は見ていた。君は主人公なんだよ、この物語のさ…。だ、だから」

少年「僕のことだって助けてくれてもいいだろっ…!?」

少年「ねえっ!!」

少年「おいっ!! なんとかいえよッ!!」


魔王「………」



少年「こんなのって」

少年「こんなのってないよ!!」




543: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 21:04:18.54 ID:ma21ZHtA0


少年「あ、あんまりだ!!」

少年「も、物語が、ないなんて」

少年「あまりにもひどすぎるよ!!」

少年「ああ………ああ!!」

少年「く、空白がやってくる!! 物語のないっ、空白が!!」

少年「そんなの、耐えられないんだよう、僕には!!」

少年「だからお話がいるんだ!!」

少年「ずっと、それがあったから僕は………っ」

少年「なのにっ、なのに!!」

少年「こ、こんなこと!!」

少年「物語がなくなっちゃったら、僕っ!」


少年「ひっ…一人きりなんだよぉっ!!」




544: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 21:05:01.05 ID:ma21ZHtA0


少年「だ、誰か!!」

少年「誰か、お願いだ!!」

少年「ママ!!」

少年「ママ!! どこ!?」

少年「たっ………助けて!!」

少年「お願いだ!!」

少年「僕に…っ」

少年「お話を………っ。ねぇ!」


少年「聞いているんだろう!? 賢者…っ!!」


少年「――………まさか」




少年「まさか、こうなることまで全て分かってて僕を………っ」




















遊び人「………おい」




545: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 21:05:52.18 ID:ma21ZHtA0


少年「ああ」

少年「ああっ、そうだ…」

少年「君がっ、君がいたじゃないか!! 遊び人!!」

少年「ねえ、お話を、お話を聞かせてよ!!」

少年「君なら面白可笑しい話をたくさん知ってるはずだ!! そうでしょう!?」

少年「何でもいいっ、話して聞かせてよ!!」

少年「例えば、例えばさ!!」

少年「そう、そうだなぁっ、えっと」

少年「ああそうだ…! 全ての冒険を終わらせた勇者が、その後どうなったのか、とかさ!!」

少年「ぼ、僕知らないんだよ! ひとつお話が終わったら次のお話作りに取りかかっちゃっていたからさ!!」

少年「ねえっ、君ならそういう」

少年「そういうさ、面白い話を知ってるはずだよね!?」

少年「ねえ、ねえ、ねえ」

少年「ねえってば!!」


遊び人「………」ス…


少年「………え?」

少年「何? それ………?」




546: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 21:06:43.47 ID:ma21ZHtA0


少年「君、そんなもの持っていたっけ?」

少年「ふふ、はは。おかしいね。君がそんなものを持っているなんて」

少年「だって君は、何も出来ない遊び人なのにさ。不釣り合いだね、なんかさ」

少年「でも、どこかで見たことある形だな」

少年「ああ、そうだ! それは"どうのつるぎ"じゃないか!」

少年「その剣は確か、勇s




547: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 21:07:31.31 ID:ma21ZHtA0



ズブッ…




548: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 21:08:13.80 ID:ma21ZHtA0


少年「………?」

少年「………は………ふ」

少年「あ………ああ…」

少年「こ…これは………ど」

少年「どういう………こと…?」

少年「なん…で、君………が…こん………なこと………?」

少年「君、に…は………大それ…た………事………なん…て」

少年「こ…れっ…………ぽっちも…………」


少年「…………あ…………あ…………」


少年「痛い…!!」

少年「痛い痛い痛い痛い痛い!!」




549: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 21:08:55.95 ID:ma21ZHtA0


少年「痛いっ!!」

少年「痛いィっ!!」

少年「痛いよぉッ!!」

少年「いたいいたいいたいッ!!」

少年「た、助けてッママ!!」

少年「いたいいたいいたいいたいいたいいたいィッ!!」




550: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 21:09:36.20 ID:ma21ZHtA0


少年「あ"あ"あ"ッ!! くそっ!!」

少年「なん"っ、でッ!!」

少年「痛いよォッ!!!」

少年「あは!!!」

少年「あはははははははははははははは!!!」




551: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 21:10:20.20 ID:ma21ZHtA0


少年「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」




少年「アハハはははっははッははハハハははハハハははハははははハハはっはははハハハはハハハハハハハハハハハハは!!!!」








少年「はは………ッ」




少年「………か、ふ………」




552: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 21:11:06.85 ID:ma21ZHtA0



少年「………け」


少年「………賢、者………」


少年「賢…者………。ね、え………賢…」


少年「………助け…て…よ………」



少年「………さ」


少年「さむ………い………」




553: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 21:12:29.91 ID:ma21ZHtA0



少年「………か………は………」


少年「………い………たい………」


少年「………さむ………い………」





少年「………死に…たく………」


少年「………………ない」



少年「…ま…だ………僕の………作っ、た………世…界………で」


少年「………僕…の………ため………だ…け………の」



少年「………物………語………を」




554: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 21:13:11.91 ID:ma21ZHtA0



少年「………………死………にたく」



少年「………ない………………」





少年「………?」



少年「………なん、だ………」


少年「………ぼ…く………は………」








少年「――ちゃん…と………………」



少年「………………生きて………た………………」







少年「………………のか………………」





555: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 21:14:00.78 ID:ma21ZHtA0



遊び人「………物語ってのぁよ」




遊び人「最後までどうなるか分からねぇから、面白ぇんだろうが」





少年「………………」





遊び人「思いがけず端役に殺される気分は、どうだ?」



遊び人「神様よぉ」






少年「………ぼ」



少年「く………」



少年「………生…き………」



少年「………………て………………」



少年「………………………………た」





遊び人「………知るか」



遊び人「てめぇの…」



遊び人「てめぇのおままごとはよ………」





遊び人「俺に言わせりゃあ」



556: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 21:15:05.21 ID:ma21ZHtA0



遊び人「とんだ、三文芝居だったよ」


 ブン…











――ドスッ





557: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 21:16:00.93 ID:ma21ZHtA0





少年「ぐヒゅ」



少年「ゴ」




















少年「」











558: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 21:16:57.83 ID:ma21ZHtA0



魔王「………………」



魔王「………死…んだ」



魔王「神であったものが…」



魔王「憐れな古代人の少年が…」






少年「」







遊び人「………」





559: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 21:17:48.54 ID:ma21ZHtA0



魔王「――今度こそ終わった」

魔王「あまりに突然に。けれど絶対的に」

魔王「終わったんだ。これで」

魔王「全てが、終わった」

魔王「まさか………あなたが」


魔王「あなたが終わらせることになるなんて…」



遊び人「………」



魔王「………」

魔王「どうして?」

魔王「ふふ………ただの気まぐれ?」



遊び人「………こいつを」

遊び人「この剣を、俺に届けた奴がいた」




560: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 21:18:42.93 ID:ma21ZHtA0



魔王「…どうの、つるぎ」

魔王「とてもありふれた剣。旅立つ新米の冒険者が手にするような」

魔王「それを…誰かがあなたに、届けた?」



遊び人「そいつは多分」

遊び人「なけなしの勇気を振り絞ってここに来たんだ」




561: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 21:20:00.36 ID:ma21ZHtA0


遊び人「お前の魔弓で次元が揺らいだ時に」

遊び人「その小さな隙間を縫ってここに来た」

遊び人「…それが奴の精一杯だったんだ」


魔王「あの瞬間に、ここに、来た?」

魔王「そんなことが出来る人が…? だって扉を潜る資格があるのは――」


遊び人「あいつの"勇気"を見たら」

遊び人「俺にもやらなきゃならないことがある気がした」

遊び人「ただ、それだけのことだ」

遊び人「あれが誰だったかなんて………知ったことじゃねぇ」


魔王「………」




562: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 21:20:54.55 ID:ma21ZHtA0



魔王「………そうか」

魔王「ずっと、いたんだ」

魔王「ずっと、あの謁見の間にいたんだ」


魔王「この物語が始まった、あの瞬間からずっと」

魔王「私達が、勇者一行を倒して王国に近づく間も」

魔王「たった一人で、恐怖に震えながら」



魔王「それでも、逃げ出したわけじゃなかったんだ」





563: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 21:21:54.43 ID:ma21ZHtA0



魔王「ずっとずっと、隠れ続けていた」


魔王「そして最後の最後、あの一瞬」


魔王「小さな、ありったけの"勇気"を抱き締めて」



魔王「私達に………その剣を届けてくれた」








魔王「ありがとう………………勇気ある者」





564: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 21:22:36.89 ID:ma21ZHtA0



魔王「勇者」





565: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 21:36:11.89 ID:ma21ZHtA0




遊び人「………奴はもういない」

遊び人「この無の空間は、もう穴だらけだ。そこら中が元の世界に繋がって………じきに崩れ去る」

遊び人「神は、死んだんだからな」


魔王「………そうね」


遊び人「俺も、帰るんだ」

遊び人「あの、クソみたいな街角に」


魔王「ねえ」

魔王「ひとつお願いがあるの」


遊び人「…」














魔王「…………――私も、殺して」




566: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 21:37:05.68 ID:ma21ZHtA0



遊び人「………」


魔王「………」


遊び人「………なんでだよ」


遊び人「全部終わったじゃねえか。終わったってのになんで」


遊び人「なんであんたが死のうとするんだよ」





魔王「ふふ」


魔王「もう私には………物語がどんな結末を迎えたって関係がないの」





567: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 21:38:00.17 ID:ma21ZHtA0



魔王「死した人々の呪いは、私からあらゆるものを取り去ってしまった」


魔王「………私の価値あるものは全て失われてしまった」


魔王「思い出もどす黒く塗りつぶされて、希望は生まれた途端に拒絶され続ける」


魔王「言葉を発しているのだって辛いの。でもね、死に辿り着けるなら」


魔王「そのためだったら、笑うことだってできる」ニコ



魔王「ね………お願い」





魔王「私を、殺して」












遊び人「………」





遊び人「断る」




568: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 21:38:55.91 ID:ma21ZHtA0



遊び人「こんなことは最初で最後だ」

遊び人「俺の人生で、こんな大袈裟なことは金輪際ごめんだ」


遊び人「今日のことは、忘れる」

遊び人「もう夢はおしまいだ。再び見ることはねぇ」

遊び人「俺は、あのクソッタレな毎日に戻るんだ」

遊び人「だからもう二度と………」


遊び人「俺に関わるな」





遊び人「――あばよ」








569: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 21:39:49.91 ID:ma21ZHtA0




魔王「………………」



魔王「…?」




魔王「ああ…そうか」


魔王「これ以上、戦いはない」


魔王「魔王勇者大戦は終わった」





570: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 21:40:29.59 ID:ma21ZHtA0



魔王「――私は、生き残ったのか」





571: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 21:41:29.22 ID:ma21ZHtA0



魔王「生きなきゃいけないんだ」


魔王「………生きる」




魔王「私はまだ、この身体を」

魔王「呪われた血の走る身体を引き摺って」

魔王「生きなきゃいけない」


魔王「………」




572: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 21:42:28.51 ID:ma21ZHtA0


魔王「ねぇ…」


少年「」


魔王「あなたは私が物語の主人公であると言った」

魔王「………でも、例えそうであったとして」

魔王「私みたいに愚かな主人公に、何の意味があるのかな?」


魔王「幾つもの大きな過ちを犯し、大切な仲間さえ守れず」

魔王「ふふ…最後の敵を、この手で倒すことすら出来ず」

魔王「魔族も人間も、数えきれない命を奪った私は」




魔王「少しでも価値のある、主人公だったのかな………」




573: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 21:43:18.74 ID:ma21ZHtA0


魔王「………英雄たる強い想いの人々は、この戦いには沢山いた」

魔王「なぜ、私が…」

魔王「私だけが、こんな風に生き延びているのか」

魔王「………分からない」

魔王(分からない)


魔王(………)


魔王(ねえ、私は)


魔王(主役だから、生き延びたのだろうか)







魔王(そんな生に)





574: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 21:44:04.47 ID:ma21ZHtA0



魔王(なんの意味があるんだろう)





フワ …






575: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 21:45:01.35 ID:ma21ZHtA0


魔王「…あの世界の風だ」

魔王「私は、戻るのか」



魔王「――少しだけ、実感が沸いてきた」

魔王「………私が、永遠に許されることのない罰と共に生き延びてしまったこと」



魔王「――ようやく、意識が際立ってきた」

魔王「同時に身体中を這いまわる痛みもより鮮明になってくる」



魔王「――にわかに、気力も戻ってきた」

魔王「今なら自ら断つことが出来る気がする」














魔王「私自身の、命を」





576: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 21:46:19.41 ID:ma21ZHtA0



カラン…



魔王「! これは…」

魔王「………どうのつるぎ」

魔王「…そう。置いていってくれたのね」

魔王「ふふ…。せめてもの情け? …私が自分で終わらせられるように」



魔王「…」チャキ…



魔王「この刃を喉元に突き刺せば」

魔王「全てから、解放される。身体中の激痛からも、泥のように心から溢れる悲しみからも」



魔王「価値のない役目からも」





577: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 21:47:07.32 ID:ma21ZHtA0


魔王(本当にいいの?)


魔王「………迷う必要なんて、ないわ」


魔王「私は、多くの人にとって死神でしかなかったのだから」

魔王「父上にとっても………爺にとっても」


魔王「炎獣にとっても」


魔王「………………」



魔王「勇者の剣で、魔王が死ぬ」

魔王「…ふふ。結局、とてもありきたりな結末を辿るのね」




578: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 21:48:05.95 ID:ma21ZHtA0


魔王(――そうか)

魔王(こういうことだったんだ)




――魔法使い「予言、しましょうッ………魔王!!」

――魔法使い「――この物語の終わりは、あなたの、死だ!!」



魔王(あなたは、この瞬間のことを、言っていたのね)


魔王(あなたたちは、全部知っていたんだ)




579: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 21:48:53.54 ID:ma21ZHtA0


魔王(ふふ)




魔王(沢山の戦いがあった)



魔王(沢山の死があった)



魔王(その数だけ、物語があった)



魔王(でも)



魔王(なんだかあっという間だったなぁ………)




580: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 21:49:47.70 ID:ma21ZHtA0



魔王(そして最後に………魔王の物語が、幕を閉じるんだ)



魔王(………………なんだか)



魔王(意識が、ぶつ切りになってきた)




581: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 21:51:01.52 ID:ma21ZHtA0


魔王(いけない)



魔王(意識を手放してしまう前に)



魔王(せめて自分で、決着をつけよう)




582: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 21:51:43.95 ID:ma21ZHtA0


魔王(はやく)



魔王(急いで)



魔王(ああ、手が震える)




583: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 21:52:28.14 ID:ma21ZHtA0


魔王(………勇者)



魔王(あなたの勇気を、私にも)



魔王(終わらせるための、勇気を)




584: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 21:53:10.50 ID:ma21ZHtA0


魔王「………」チャキ………



魔王(そうだ)



魔王(それでいい)




585: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 21:53:52.62 ID:ma21ZHtA0


魔王(さよなら)



魔王(世界)




586: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 22:00:17.64 ID:ma21ZHtA0


魔王「…これで」



魔王「本当に」




587: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 22:00:59.51 ID:ma21ZHtA0





魔王「――全て、おしまい」

















































588: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 22:01:41.82 ID:ma21ZHtA0




















































「それから」




589: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 22:02:46.21 ID:ma21ZHtA0


「どうやら世界は、新しく生まれ変わったようでした」



「というのも、私達はその大きな確変の瞬間を目にすることはなかったのです」



「同じ日が昇り、同じ風が吹き、今までと同じ空の下で、私達に分かることといえば」



「"魔王と勇者を失った"、という事実だけでした」



「そして、二度と現れることはないのです」



「数え切れないほどの生命の死が、黄金の鎖のように長く長く続いた物語の果てに、私達はもう」



「自分の人生を自分で生きていくしかないのです」



「この先の世界に――」




590: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 22:03:41.12 ID:ma21ZHtA0


「…私達を導く英雄は、いないのだから」



女性「はい、おしまい」


子供「…うーん。難しいよぉ」

女性「そうかもねぇ。アンタにゃまだ早かったか」

女性「ま、今日の演劇を見れば、もっと分かるわよ、きっと」

子供「じゃあ、はやくえんげき、いきたい!」

女性「ハイハイ、夕方には始まるから焦らないの」

女性「ったく、この堪え性のなさは誰に似たんだか」

青年「おい。ちょっと出てくる」

子供「父ちゃん!」

女性「………祭典の時間まで、まだまだあるけど?」

青年「いやあ、ちょっと落ち着かなくてさ。子供の面倒頼むよ!」

女性「あ、ちょっと!」

女性「…ったく、親子揃って」




591: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/24(土) 22:04:27.40 ID:ma21ZHtA0





【    】







596: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/25(日) 18:19:23.38 ID:h4w+AuR50


飲み屋


青年「こんちは、やってる?」

親爺「おいおい、気の早ぇ野郎だな。開店時間はまだ先だぞ」

青年「いいだろ、ケチケチすんなって…痛っ!」ゴンッ

親爺「がはは! まーた頭ぶつけてやがる!」

青年「狭い店だよ、ホント…」

親爺「バカ抜かせ、お前がでかいんだよ」

青年「そうかぁ?」

親爺「図体ばっか大きくなりやがって。少しは偉大な親父殿みたいな武勲を上げてみたらどうなんだ?」

青年「まーたその話かよぉ」

親爺「お前の父親はな、それはそれはものすっごい剣の使い手だったんだ。俺がこーんなちっちゃな頃に見た建国祭でなぁ…」

青年「もうその話はいいっつーの。いいからビール!」

親爺「…ったくこのボンクラ、昼も回らない内から酒ときたもんだ」

青年「いいじゃんかよ! 今日くらいはさぁ!」

親爺「お前、嫁さんはどうしたんだ?」

青年「ちょっと息子の面倒見てもらってるよ」

親爺「…それでお前さんだけ出てきたのか?」

青年「うん」

親爺「………呆れた奴だ。雷が落ちても俺は知らねぇからな。ほらよ」ゴト

青年「おっ、待ってました!」




597: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/25(日) 18:20:38.91 ID:h4w+AuR50


青年「では、この日の平和を祝って、カンパイ!」

親爺「お前みたいな穀潰しと違って、俺は仕事があるんだよ」

青年「ご、穀潰しはないだろぉ?」

親爺「俺の若い頃はなぁ、昼から飲むなんて贅沢は出来なかったもんだぜ」

青年「でもさぁ、親爺さんだって昔は町で有名な悪ガキだったって聞いたけど?」

親爺「…」

青年「…本当だったんだ?」

親爺「うるせぇ! そんなもん、本当にガキだった頃の話だ! …大人になりたいだけの、クソガキだった」

青年「ま、せっかくイイ商売してた家を継がずに、こんなチンケな店始めちゃうくらいだからなぁ」

親爺「チンケたぁなんだ! 失敬な野郎だ。こっちのが性に合ってるんだよ」グビッ

青年「って結局飲むの!?」

親爺「やっかましい。この店じゃ俺が法だ。文句言いたきゃ他に行け!」

青年「相変わらず無茶苦茶言うよ、ホント…」




598: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/25(日) 18:21:32.15 ID:h4w+AuR50


親爺「しっかしお前と顔を付き合わせて飲むってのも飽き飽きだ」

青年「悪かったね、代わり映えのしない顔で」

親爺「あーあシケてるぜ! 見目麗しい美女かなんかが現れて、お酌してくれんもんかなぁ」

青年「そんな無茶な…」

ガラ…

黒騎士「こんな時分から何を騒いでいるのだ?」

親爺「…うわっ」

青年「び、美女は美女でも、すげぇ堅物が来た…」

黒騎士「うん? なんだその顔は」

青年「な、なんでもないよ…久しぶりだな」

黒騎士「久しぶり、と言っても半年も経っていないがな」

青年「そういやぁそうか」




599: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/25(日) 18:22:37.78 ID:h4w+AuR50


黒騎士「マスター、ワインを」

親爺「あんたも飲むのかよ」

黒騎士「いいではないか。今日くらいは」

親爺「…」

青年「お前さ、その甲冑重くないわけ? 仮にも年頃の女の子がこんな町中でそんなもん着けてさ…」

黒騎士「別に大したことはない。それにこのご時世とはいえ、魔族の中でも顔の知られた私が変装もなしに出歩くわけにはいかないだろう」

青年「ま、そりゃそうだけど」

親爺「お前さんは、こんな所で酒なんか飲んでていいのかよ?」

黒騎士「全てはつつがなく進んでいる。万にひとつも大事はない」

親爺「大した自信だよ、全く」

黒騎士「………あいつは来てないのか?」

青年「来てないな。流石に忙しいんじゃないの?」

黒騎士「…まあいい。お前にだけでも話しておきたいことがある」

青年「はーあ。やっぱりお堅い話じゃんかよ」

青年「で、なんだよ話って。まさか"魔王"が現れたとか、そんな話じゃあないだろうな」

黒騎士「………魔王は」

黒騎士「魔王は、もういないだろう?」


黒騎士「私たちの世界に魔王が現れることは、二度とない」




600: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/25(日) 18:23:34.60 ID:h4w+AuR50


青年「…そう、だな。魔王は…」

青年「俺たちが魔王って呼ぶ人は、たった一人きりだもんな」

黒騎士「ああ」

青年「俺たちのこの世界を………魔王勇者大戦のくびきから解き放った英雄」

青年「真実を探求し、管理者を追い詰めた魔族であり…最後の魔王となった女性」

黒騎士「そして全ての罪を背負い、"どうのつるぎ"で自ら命を絶った伝説の魔族………」

黒騎士「魔王」

黒騎士「彼女は今の世界の礎を作った立役者。偉大な女性だ」

青年「…もし生きてるなら、会ってみたかったけどな」

黒騎士「残念ながらそれは叶わない。………彼女は死んだんだ」

黒騎士「魔王勇者大戦の最後の最後に」

青年「…そうだな」

黒騎士「私が話そうと思っていたのは、もっと別のこと」

黒騎士「宝典についてだ」




601: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/25(日) 18:24:39.18 ID:h4w+AuR50


青年「宝典。宝典ね」

青年「今朝も嫁が息子に読み聞かせてたっけな」

黒騎士「最後の魔王勇者大戦のすべてを書き記した書物…宝典」

黒騎士「著者不明ながら今や世界に知らぬものはいないほどの偉大な歴史書だが。やはり、あれを書き記したのは」

黒騎士「あれだけのことを知り、残すことことができるのは………」

黒騎士「魔界の大魔術師、冥王だけだ」

青年「ふうん。やっぱ冥王か」

黒騎士「ああ。こちらの手の者で宝典の原本を研究し、痕跡を辿ってきたが今回どうやら間違いないという結果が出た」

黒騎士「彼女の行方は、依然として知れぬまま。その住処である冥界と共に姿を消して久しい」

黒騎士「冥王は、全ての見届け人というわけだが………現時点では接触は難しいだろうな」

青年「へえ。難しいか」

黒騎士「………」




602: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/25(日) 18:25:33.67 ID:h4w+AuR50


黒騎士「お前、何か話したいことがあるな?」

青年「な、なんだよ急に。今は宝典の話だろ?」

黒騎士「上の空のくせに何を言う。ぼうっとして。そういう時のお前は大体なにかの情報を掴んでいて、しかもそれが」

黒騎士「あまり喜ばしくない情報、というケースが多い」

青年「…ちぇ。お見通しかよ」

黒騎士「話してくれ。悪い報せならなおのことだ」

青年「別に、そんな大袈裟なもんじゃないよ。俺のは、想像の域を出ない話だからな」

青年「でも、もしかしたらあの最後の魔王勇者大戦の意味をひとつ示してくれるものかもしれなくて」

青年「そいつが………俺にはちょっとやりきれないっていうか、さ。それだけのことだよ」

黒騎士「…」

青年「ある、一人の男の話なんだ」




603: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/25(日) 18:26:43.46 ID:h4w+AuR50


青年「男には妹がいた」

青年「二人だけで生きてきた兄妹は、それは仲が良かったんだそうだ」

青年「妹は病弱で、苦労することだらけだったけど、男はそれを献身的に支えて、ひっそりと生きていた」

青年「そんな男に、ある転換期が訪れる。………友人が、勇者に選ばれたのさ」

青年「男は魔法の知識に強く、友人に共に旅について来てくれと頼まれた」

青年「男は悩んだ。が、もし友人と共に魔王討伐が成功すれば、王国から莫大な報酬を得られる。………妹にもっと良い暮らしをさせてやれる」

青年「男はそう思って、話を受けた。病弱な妹を残して、男は友人らと旅に出た」

青年「結果として、彼らは魔王を討伐した英雄として、歓喜の王国に迎えられることになる。多くのことは、報われるはずだった」

青年「けれど、運命は残酷だったんだ。………男の妹は、男が旅に出ているその間に」

青年「あまりの孤独から、心まで病んでしまっていた」




604: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/25(日) 18:27:41.28 ID:h4w+AuR50


黒騎士「…」

青年「妹は、帰ってきた男をもはや兄と認識することは出来なかった。ただひたに夢の世界を生き、幻想の中の兄を待ち続け」

青年「男を拒絶した」

青年「妹は、"自分が生きているのか死んでいるのかも分からない"状態だったそうだ」

青年「男は絶望した。だがその絶望と相反して、世間は男の活躍を称賛し、そうしてやがて男は」

青年「賢者、と呼ばれるようになっていた」

黒騎士「…賢者!?」

黒騎士「それでは、今の話は…」

青年「そう。女勇者との魔王討伐の間に、賢者の身に起こった出来事さ」

青年「それから、賢者は人が変わったようになってしまった。妹を誰にも会わせようとせず、かといって自らも妹のことを受け止めることが出来ずに」

青年「賢者は、研究に没頭していくようになる。そしてその狂気とも言える熱量の研究の中で、賢者は古代王朝に気づいた」

青年「そしてその延長線上に、世界の管理者たる"少年"が存在していることさえ推察するに至った」




605: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/25(日) 20:49:04.61 ID:h4w+AuR50


黒騎士「賢者は、管理者の正体が"少年"であると知っていたというのか?」

青年「どうやら、そうみたいだ」

青年「やがて賢者は、新しい同志…教皇と魔法使いを得て」

青年「奴らと共に実験を繰り返し、その果てに自ら生け贄になる道を選んだ」

青年「女勇者や魔法使いが語ったように、賢者は女神をつくる時に犠牲になったはずだった」

青年「そこで賢者の生は、終わりを告げるはずだった…」

黒騎士「はずだった?」

青年「ああ。賢者は――」

??「賢者は、今もって生きておるのよ」

黒騎士「!」

青年「…よお。まさか顔を出してくれるとは思わなかったよ」

青年「王子殿下」



王子「ほほ。苦しゅうない」




606: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/25(日) 20:50:04.05 ID:h4w+AuR50


王子「おい店主。シャンパンを」

親爺「ねぇよ、んなもん」

王子「…相変わらずしょぼくれた店だな」

親爺「ほっとけ」

王子「はーあ。天下の王子に向かってその口の利き方。切腹さすぞおい、店主」

親爺「やかましい。しもじもの店に来たんだ、それなりの酒とサービスで満足しろい!」ドン

王子「もっと特別扱いしろよ! 余は王子だぞ!?」

青年「ま、まあまあ。大声で名乗るのは止めろって。仮にもお忍びで来てるんだからさ」

王子「心配せずとも人払いは済んでいるわ。表に人を立たせている」

青年「とは言え、こっちの肝が冷えるわけよ」

黒騎士「そんなことより続きを話せ、王子。賢者が生きてるとは、どういうことだ?」

王子「ああ、うむ。今話すっつーの。ったく、せっかちな女だのう」




607: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/25(日) 20:51:08.14 ID:h4w+AuR50


王子「賢者が生け贄になったのは、女神の完成の時だった。…教皇や魔法使いの都合のよい魔王勇者大戦を描くための女神だ」

黒騎士「そうだ、例の女神の…」

王子「ああ。あの実験は恐ろしいものであったようだの」

王子「賢者の肉体は生け贄にされ死んだが、その精神は、女神の中にコピーされておったのだ」

王子「賢者の思念は女神として生き始め」

王子「あの魔王勇者大戦の間ずっと、暗躍を続けていた…」

黒騎士「…女神の正体が賢者の精神だった、ということか!?」

王子「最近の王国の研究で分かったことだ。すぐにお前たちに知らせようかと思ったが、どうせ今日鉢合わせるだろうと思ってな」

黒騎士「…………にわかには信じられんが」

青年「でも、やっぱりそういうことなんだ。きっとさ」




608: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/25(日) 20:52:40.12 ID:h4w+AuR50


青年「賢者、教皇、魔法使い」

青年「最初は同志として研究に取り組んでいた3人だが、道の半ばからそれぞれが別の方向を向いていて」

青年「女神となった賢者は、独自の意思を持って行動していた」

黒騎士「…独自の意思」

青年「さっき言ったように、賢者は"少年"に気づいていた」

青年「賢者にとって"少年"は、特別に親しみ深い存在だったのさ」

黒騎士「親しみ深い、だって?」

青年「ああ。古代王朝に取り残され、一人遊びのような幻想の中に生きる姿…」

黒騎士「! まさか…………」



青年「そう」

青年「――賢者は、"少年"の存在を妹に重ねていた」




609: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/25(日) 20:53:31.76 ID:h4w+AuR50


青年「賢者が妹にしてやれることはそう多くなかった。………だから賢者は、贖罪の相手に"少年"を選んだ」

青年「"少年"を喜ばせるような物語を書き、あの最後の魔王勇者大戦のなかで現実にしていった」

青年「勇者一行が順に自らを犠牲にしてゆくその物語は"少年"の心を惹き付け………最後には"少年"自身を一人の登場人物にすることさえ許した」

青年「賢者はたぶん、"少年"に伝えたかったんだ」

青年「その果てに"少年"の命が尽きることになったとしても」


青年「生きている実感を伝えたかった」


青年「妹に与えてやれないことの代わりを、"少年"に与えたかった」

青年「それが賢者の選んだことだったんだよ」




610: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/25(日) 20:54:12.41 ID:h4w+AuR50


黒騎士「馬鹿な…。あれだけ多くの死を撒き散らした大戦が、そんなことのために…」

王子「賢者という男の、精一杯の憐れみだったのだろうな」

王子「ままならぬ人生を生きた者の、せめてもの………」



青年「…だからこれは全部」

青年「全部のことが、賢者が"少年"の眠りのために紡いだ」



青年「――寝しなの英雄物語だったんだ」




611: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/25(日) 20:55:26.69 ID:h4w+AuR50


黒騎士「………あまりにも大仰だ」

王子「しかし、その賢者の心がなければ、"少年"を倒すことには至らなかったのだろう」

青年「…魔法使いは、賢者のその想いを知っていたのかな」

黒騎士「さあな。魔法使いは最後まで誰にも本心を打ち明けなかったし、魔王がその胸の内を知ろうとしても拒んだ」

黒騎士「そのせいで、最後のところの事実は闇の中さ。ただ、魔法使いは物語の終わりに魔王が命を落とすことを預言していた。それを考えると」

黒騎士「魔法使いは、賢者があの結末を描いていることを知っていたのだろう」

黒騎士「賢者の心を知った上でそれを利用し、道連れとなったのかもしれない」

黒騎士「つまり」



王子「あの魔王勇者大戦は、最後の瞬間………魔王の死まで、賢者と魔法使いの思惑通りだった、ということか」




612: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/25(日) 20:56:12.19 ID:h4w+AuR50


青年「そういうことに、なるのかもな」

黒騎士「彼らの計略は神である"少年"すらひとつの駒とした。………そら恐ろしい」

王子「…しかし釈然とせんものだ。まるで英雄たちは、劇の客席を沸かせるためだけに戦ったかのようにも思える」

王子「あれだけの戦いが、まるでおとぎ話を描いた者の意のままだったようだ」

青年「………確かに、やりきれないよな」

青年「でも、ひとつ言えることは」

青年「"少年"が消えて、魔王も勇者もいなくなったこの世界に、もう賢者の意思が介入することはないってことさ」

青年「賢者や魔法使いの志は、魔王勇者大戦が終わると同時に幕を閉じたんだ」


青年「………もう、俺たちの時代だ」






613: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/25(日) 20:57:00.57 ID:h4w+AuR50


王子「…まあ、そういうことになるのかの」

王子「商人、武闘家、盗賊、戦士、僧侶、魔法使い、遊び人、勇者」

王子「宝典では戦った勇者一行の名が順に物語の題目になっているが」

王子「今回の題目には、我々一人一人の名前が刻まれるということだ」

王子「命が尽きる時まで、己の手綱は己で握り、物語を紡ぐのだから」

青年「それはそれで、俺たち一人一人の責任は重大だよなぁ」

黒騎士「そうだな」

黒騎士「しかし、そんな世界であればあの大戦のごとき悲劇は起こらないさ」

黒騎士「そして、この三人が顔をつきあわせる機会も減る。そうではないか?」

青年「それはそれで、なーんか寂しいよなぁ~」

黒騎士「そうか?」

王子「淡白な女だのう、お前」







「――ごめんください!」

ハーピィ「黒騎士様、いますか?」




614: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/25(日) 20:57:57.88 ID:h4w+AuR50


黒騎士「おや、ハーピィ殿か」

ハーピィ「ああ、やっぱりここに居たんですね、良かった! 黒騎士様、こちらの準備は完了しました!」

ハーピィ「親御様も、お二人共おいでになってますよ!」

黒騎士「承知した。わざわざあなたにこんな使い番のようなお役目をさせてしまうとは、面目ない」

ハーピィ「や、やめてくださいよぉ。私は今はもう一介の魔族なんですからぁ! 元々パシりは得意でしたし!」

黒騎士「いや、しかしだな…」

親爺「おいおい、それを言うなら俺にももっと敬意ってもんを払ってもいいんじゃないのかぁ?」

青年「親爺さんはもう酒場の店主が板につきすぎて…当時あの魔王と一緒に戦った人ってイメージがないんだよなぁ」

親爺「お前、どこまでも失礼な奴だな。まぁ俺は別に、それでいいんだけどよ」

王子「しかし、もうこんな時間か。そろそろ祭典の開始に備えねばならんな」




615: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/25(日) 20:58:41.38 ID:h4w+AuR50


ハーピィ「あ、そういえば! さっき表を奥さんが鬼の形相で歩いてましたよ!」

青年「げっ! ま、マズイ…帰らないと!」

黒騎士「ふっ。お前は相変わらずだな」

青年「ま、まあ、各々立場もあることだし、俺らはここで解散だな」

黒騎士「そういうことになるな。再び我らが集結せざるを得ないような面倒事が起きないことが祈るばかりだが」

親爺「よう、黒騎士。約束通り、後でそっちに行くからな。よろしく頼むぜ」

黒騎士「ああ、歓迎するよ。母上も楽しみにしていると思う。席は用意しておくさ」

王子「では、最後にいつもの誓いを立てるとするか」

青年「おう」

黒騎士「そうしよう」




616: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/25(日) 20:59:20.63 ID:h4w+AuR50


王子「"神を失った世が、輝きを失わぬため"」

黒騎士「"悲痛な争いの時代に、再び舞い戻ることを防ぐため"」

青年「"魔王と勇者に代わり、意志と勇気をもって世界に尽くさん"」


王子「"最後の王家の血を継ぐものとして"」

黒騎士「"最後の魔王四天王の血を継ぐものとして"」

青年「"最後の勇者一行の血を継ぐものとして"」



「――"平和よ、とこしえなれ"」










617: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/25(日) 21:00:13.02 ID:h4w+AuR50




ハーピィ「もうちょっとで着きますからね!」バサッ…

黒騎士「ああ。世話をかけるな、ハーピィ殿」

ハーピィ「いいんですよ。………でも、なんだか安心しました」

黒騎士「安心?」

ハーピィ「はい。こうやって、あの時戦った人たちのご子息やご息女が動いてくれている所を、目の当たりに出来たから」

ハーピィ「真実の探求と…世界がまた間違ってしまわないように…いつも三人で会っていらっしゃるんですよね?」

黒騎士「…ああ。だが、まだまだ分からないことだらけで、しばらく気の休まる日は来そうにない」

黒騎士「忽然と消えた冥界と冥王のことも分からないままだし………それに」

黒騎士「…いや、なんでもない」

ハーピィ「黒騎士様…」




618: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/25(日) 21:01:11.75 ID:h4w+AuR50


黒騎士「………"少年"の打倒から魔王の死まで」

黒騎士「本当に全てが魔法使いや賢者の手の内なのであったというのなら」

黒騎士「あの魔王勇者大戦を駆け巡った人々にとって、あまりに救いようのない話だ」

黒騎士「彼らは管理者を倒すためとはいえ、犠牲になるために生きていた…一人も残らずだ」

黒騎士「あの、魔王も。…それに生き残った父上と母上でさえ………」

ハーピィ「………」

黒騎士「私はただ、遊び人が残した言葉のように………物語は最後まで分からないもので」

黒騎士「魔王は、それに賭けて戦い、実現したのだと、信じたいだけなのかもしれない」

ハーピィ「黒騎士様…」

黒騎士「いや。しかし、私がこんなことを考えていれば、父上と母上に余計な心労をかけてしまう」

黒騎士「それに、全てを見届けた冥王が宝典に"魔王は死んだ"と記したのだ」

黒騎士「魔王は、もうこの世界には存在しない…」

黒騎士「…ハーピィ殿。私の独り言だと思って、今の話は忘れてくれ」

ハーピィ「は、はい。分かりました」

ハーピィ「さあ、着きましたよ。この扉の奥で、お二人がお待ちです」

黒騎士「ありがとう、ハーピィ殿」

ハーピィ「いいえ。では、私はこれで!」

黒騎士「ああ」


黒騎士「…」




619: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/25(日) 21:02:07.37 ID:h4w+AuR50


コンコン…

黒騎士「父上、母上。黒騎士が参りました。失礼します」



「あんたは相変わらずあつっ苦しいわね」

「晴れの席なんだから、堅いのはなしよ」


氷姫「親子なんだから」



黒騎士「…はい。母上」


氷姫「ね、あんたもそう思うでしょ?」



『ああ』

雷帝『久しぶりだな』





620: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/25(日) 21:24:13.31 ID:h4w+AuR50



黒騎士『父上も、お変わりなく』


雷帝『ああ。相変わらず声は戻らんし、耳も聞こえないまま』

雷帝『失った腕も生えてきてはくれんようだ。まったく、不便な体になった』

氷姫「文句垂れても元の体に戻るんなら、あたしもあんたに不平をぶつけていればまた目が見えるようになるのかしらね?」

雷帝『…わ、悪かった。そう怒るな』

氷姫「あーあ! 魔法が使えなくなって不自由だわ! おまけに半身は思うように動かないし!」

雷帝『悪かったと言ってるだろう!』


黒騎士「…ふふ」




621: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/25(日) 21:25:02.52 ID:h4w+AuR50


黒騎士「席の準備を他の者に任せるような形になり、申し訳ありません」

氷姫「気にしなくていいわよ。皆はよくしてくれてるし、あんたはあんたで例の集まりに行っていたんでしょ?」

黒騎士「はい。賢者について、話をしてきたのですが――」

氷姫「ああ、あとあと! 堅いのはナシって言ったでしょうが」

黒騎士「は、はい。そうでした」

雷帝『緊急を要するものでもないのだろう?』

黒騎士「ええ。まだ予想の域を出ない話もありますし…」

雷帝『ならば、ひとまずこちらに来て、お前も飲め。いいワインを手に入れたのだ』

黒騎士「それはそれは! 父上と飲めるなんて、光栄です!」

氷姫「ほどほどにしときなさいよ。あんた弱いんだから」

雷帝『うるさいな。今日くらいいいだろう』




622: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/25(日) 21:25:55.14 ID:h4w+AuR50


黒騎士「ああっ、私がやります!」

雷帝『ふふっ、いいのだ。片腕だって酒は開けられるし、娘に注いでやることも出来る』トクトク…

黒騎士「…ありがとう、ございます」

雷帝『………真面目なお前のことだ。日頃から我々の失ったものの代わりにならなければ、などと考えているんだろうが』

黒騎士「えっ!?」ギクッ

雷帝『お前は何の代わりになる必要もない。逆に言えば、私たちにとって、お前の代わりになるようなものなどないのだ』

黒騎士「…」

氷姫「…世界を変えた、最後の魔王四天王。そんな風に今の世間はあたしたちを持ち上げるけど」

氷姫「だからって、娘であるあんたが全部背負わなくったっていいのよ」

氷姫「あんたのやりたいようにやればいい」

黒騎士「――はい」




623: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/25(日) 21:26:39.37 ID:h4w+AuR50


氷姫「あたしたちだって、助け合ってなんとかかんとか戦ってたんだから、さ」

雷帝『背中を預けた結果かは知らんが、お互いあべこべのものを失する形となったわけだがな』

氷姫「まあしょうがないわね。戦いが終わった時、あたしたちは生きてるのが不思議なくらいだったし」

雷帝『本当に、タダでは死なん女だ』

氷姫「あんたも人のこと言えないでしょーが」

黒騎士「………壮絶な、戦いだったのですね」

氷姫「ま、とは言え意識もなくってワケ分からないうちに、全て終ってたわけだからねぇ」

雷帝『体を癒すためにこんこんと眠り続けて、目覚めた時に経緯を聞かされ、戦いの結末を知った』

雷帝『ひどい体たらくさ』

黒騎士「し、しかし…っ、父上と母上が戦い抜かれたからこそ、今の世があるのです!」

氷姫「ふふ。ありがと。あんたは出来た娘だわ。…そうよね。今の世界で、あたしは生きてる」

氷姫「身体はいまいち言うことを聞かないし、魔法の力を失ったあたしに出来ることは、あの頃の半分もなくなった」

氷姫「それでも、どうやらあたしたちはこれまでやってこれたし、あんたもいる」

黒騎士「…はい」

雷帝『これは私たちにとっては………充分すぎるほど、上出来だ』

雷帝『魔族と人間の死が、お互いを食い合う円環の時代は終わったのだ』

雷帝『これからは、命を繋ぐ時代だ』


雷帝『我々にお前という存在ができたように………傷を抱えながら、命は進み続ける』




624: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/25(日) 21:27:27.12 ID:h4w+AuR50


氷姫「そういうことよ。だから、あんたもね?」

黒騎士「…? なんでしょうか?」

氷姫「いつまでもあの3バカでつるんでないで、婿の一人や二人、捕まえて来なさいよ」

黒騎士「なっ…!?」

氷姫「ねえ、ちょっと! 誰かいい感じのオトコぐらいいるんでしょ? 母さんに話してごらんよ!」

黒騎士「いっ、いえ! 私にはまだっ、やや、やるべきことがあります故…!」

雷帝『まともに相手をするな。氷姫の思うつぼだぞ』

黒騎士「ち、父上! お助けを!」

雷帝『いや、まあ、しかし』

雷帝『気になると言えば気になるな。誰か候補はいるのか?』

黒騎士「ぇあっ!?」

氷姫「教えなさいよぉ!」

雷帝『酒も入ったことだし、話してみてはどうだ。ん?』

黒騎士「けっ、結託しないで下さいっ!」




625: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/25(日) 21:28:06.02 ID:h4w+AuR50


黒騎士「はっ! 客人の迎えの時間が!」

黒騎士「父上、母上! 少しの間席を外しますぅ!!」ピュー

氷姫「あっ、逃げやがった」

雷帝『あの顔、想い人はいるのだろうな』

氷姫「いるわね」

雷帝『………』

氷姫「何しょげてんのよ」

雷帝『しょげてなどおらん!』




626: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/25(日) 21:28:49.98 ID:h4w+AuR50


ヒュー ドンドン!


氷姫「あ、もう祭典が始まる」

雷帝『なんだ、まだこちらは揃ってないというのに』

氷姫「まあ、宝典劇まではまだ時間もあるわ」

雷帝『…そうだな』

氷姫「ふふ。今年の宝典劇、あんたの役は火炎山の龍剣士がやるらしいわよ。ちょっと男前すぎるわね」

雷帝『…お前は、毎年私の配役が決まる度に冷やかしてくるのを止めろ』

氷姫「だって、おかしいんだもん」クスクス…

雷帝『………しかし』

雷帝『こうして、酒を片手にあの戦いを振り返ることがあろうなんて、思いもしなかったな』

氷姫「まあね」




627: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/25(日) 21:29:36.50 ID:h4w+AuR50


氷姫「あんたなんか、"魔王様が逝かれたのならば、私もお側に!"とかなんとか騒いで大変だったもんね」

雷帝『むぐっ…』

氷姫「はは。まあ気持ちは分かるけどさ」

雷帝『…』

氷姫「――………ジーさんも炎獣も死んじゃって」

氷姫「みーんな、いなくなっちゃってさ」

雷帝『…』

氷姫「………ふがいないったら、ありゃしなかったよね」

雷帝『実際』

雷帝『お前が隣に居てくれなければ、私はおめおめと生き延びた己を許すことは出来なかったろう』

雷帝『今でも許すことが出来ているかは分からんが』

氷姫「…うん」

氷姫「………身体も、心も、ボロボロになってさ………」

氷姫「………ほんと、よくここまで生きてきたよね」

雷帝『ああ…』

氷姫「――でもね」




628: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/25(日) 21:30:27.39 ID:h4w+AuR50


氷姫「でも、多分………あたしはいまだに受け入れられずにいるんだ」

氷姫「魔王が――」



氷姫「――魔王が、自ら命を投げ捨ててしまったこと」




雷帝『………』




629: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/25(日) 21:31:10.62 ID:h4w+AuR50


雷帝『魔王様』

雷帝『………私だって、受け入れられるものか』

雷帝『あの魔王様が、自ら命を絶たれるなんて』

雷帝『死よりも過酷な呪いの最中にあったとしても、あの方が生きていなくては…っ!』

雷帝『そうでなくては…っ、………そうでなくては!』

氷姫「………うん。そうね」

氷姫「あたしたちを残して死んじゃうなんて…あんまりだよね」



氷姫「バカだよ…魔王は」




630: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/25(日) 21:31:52.10 ID:h4w+AuR50


氷姫「魔王」

氷姫「あたしさ、全部終わったら、あんたに謝ろうと思ってたんだよ」

氷姫「昔、冥界の修行の時にさ、あんたに酷いこと言っちゃったからさ」

氷姫「覚えてないだろうけど、それでもさ、あたし…」

氷姫「…」

氷姫「あたし、あの頃は炎獣が好きでさ」

氷姫「炎獣はあんたのことが好きで…雷帝だって、あんたのことが好きだった」

氷姫「妬いたな、ほんと」

氷姫「でもさ…」




氷姫「………もう、そんな事もひとつも、あんたに伝えられないじゃんか」


氷姫「死んじゃったらさ…」




631: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/25(日) 21:32:44.45 ID:h4w+AuR50


雷帝『――魔王様…っ』

雷帝『あなたは私のたちの魂だった…!』

雷帝『あなたが笑うから!』

雷帝『だから、私たちはあの過酷な戦いでお互いを信じあっていられた…!』

雷帝『………どうして、どうして逝かれてしまったのですか………』

雷帝『あなたがどんなに己に価値が見出せなくなっても』

雷帝『あなたに生きていて欲しいと願う者は沢山いた…っ!』

雷帝『あなたが生きているだけで………』


雷帝『あの戦いで失われた沢山のことが報われたのに――!』




632: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/25(日) 21:33:30.45 ID:h4w+AuR50


氷姫「………ね」

氷姫「あたしたちが子供を育てて、あんなに大きくなったって知ったら、魔王、どんな顔したかな?」

雷帝『………』

雷帝『すごく、すごく驚いて…それから、優しく笑われるだろう』

雷帝『良かったね、と喜んでくれる』

氷姫「そうね…きっとそうよね」


氷姫「………ねえ、魔王。こんな事考えてばっかだよ、あたしたち」

氷姫「あんたがいたから、あたしは生きてる」

氷姫「あんたのおかげで、あたしの手には希望が残ってる」


氷姫「なのにさ」




氷姫「――その後の世界に、あんたが居ないなんて………あんまりだよ」




633: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/25(日) 21:34:24.70 ID:h4w+AuR50



雷帝『きっと』

雷帝『きっとまたどこかで会えるはずだ』

雷帝『………盲信だと言われても、私はそう信じる』

氷姫「………………うん」

雷帝『魔王様………』

雷帝『あなたが居なくなったあの日から――』

雷帝『もう、今日で二〇年になるのです』

雷帝『沢山のことが変わり………』

雷帝『………沢山のことが新しく始まりました』





バタンッ!

黒騎士「父上、母上!」

黒騎士「お客さまをお連れしました!」



氷姫「ふふ………ようやく来たってわけ?」




634: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/25(日) 21:35:17.28 ID:h4w+AuR50


親爺「よ、よう。魔族の姉ちゃん」

氷姫「姉ちゃん、ってアンタねぇ」

氷姫「今や見た目はアンタのがオッサンでしょうが」

親爺「まあ、そうだけどよぉ」

氷姫「はーあ。あの時はあんなに可愛らしい坊やだったのに」

親爺「うるせぇ! 人間は歳食うのが早いんだよ! …ったく、目が見えないんじゃねぇのかよ」

氷姫「見えなくたって分かるわよ」フフン

雷帝『彼女は、こちらに寝かせよう。背負ってくるのは骨が折れたろう?』

親爺「ああ、すまねぇ。頼むよ」

親爺「ほら、赤毛。着いたぜ…」


赤毛「………………」スヤ…





635: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/25(日) 21:36:09.82 ID:h4w+AuR50


雷帝『後の二人はどうしたのだ?』

親爺「ええっと、もうすぐ来るはずなんだが」

氷姫「早くしないと、宝典劇が始まっちゃうわよ?」

親爺「おかしいなぁ………」

「おーい! 金髪ぅ!」

親爺「お! きたきた。おーいっ、こっちだ! 坊主! 三つ編!」


《世界改変の日から、今日でちょうど二〇年っ!》

《輝かしい記念の日となるこの祭典に、相応しい劇をご用意いたしましたっ!!》


氷姫「ちょっと、ほんとに劇始まるってば!」

黒騎士「お客人は、こちらに席を用意したので…」

親爺「ほら、早く早く!」


雷帝『………ふふ』

雷帝『全く騒がしい限りだ』

雷帝『だがまあ………』



雷帝『――こういうのも悪くはない』



雷帝『今は、そう思える』




636: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/25(日) 21:37:27.88 ID:h4w+AuR50


《伝説に綴られた、最後の魔王勇者大戦…!》

《その記憶を風化させぬよう、宝典劇が始まり今日でそちらも二〇年!》

《記念すべき式典は、復興を遂げたこの始まりの地、港町で行われます!》

《それではいよいよ始まります!》


《物語は、後に英雄と謳われる魔王と四天王が、港町に迫るその時から幕を開けます!》


《それは皮肉にも、当時の賢王が勇者に旅立ちを命じるその瞬間でした!》


《魔王来襲の報せを手に、伝令は王城の謁見の間に駆け込むのです………!》





親爺「おおっ…、いよいよか…!」

氷姫「………今年もこの子は、眠ったままか」

親爺「ん? …ああ」

赤毛「………………」

親爺「あの時…俺たちを助けてくれた日から………赤毛はずーっと眠りについてる」

親爺「俺としては慣れっこだけどな。………でも」




637: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/25(日) 21:38:25.52 ID:h4w+AuR50


親爺「なあ、赤毛」

親爺「そろそろ目覚めてもいいんじゃあないか」

親爺「俺たち、約束通り、あれからずっとこうして待ってるんだぜ………」


赤毛「………………」
















赤毛(…あれ?)




638: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/25(日) 21:39:06.99 ID:h4w+AuR50


赤毛(懐かしい声がする)


赤毛(それにこの匂い)


赤毛(潮風の、優しい香りがする………)



キラ…



赤毛(光だ)


赤毛(――ああ。大きな町が見える)



「………。…」

「…っ。………」



赤毛(何か………聞こえる)

赤毛(あたし………………)




639: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/25(日) 21:39:56.36 ID:h4w+AuR50


赤毛(………あれは、劇?)



赤毛(王様みたいな格好の人が、舞台の上で何かを言っている………――)





国王「…よくぞ参った。勇者よ」

国王「女神の加護を、真の強さをもつそなたならば、きっと魔王を討てるはずだ」

国王「世界の重みをその肩にかけることを許せ」

国王「勇者よ! 遊撃隊として勇者一行を組織し、魔王を撃破するのだ!」?




赤毛(お祭りみたいに………みんなが劇に夢中になって)

赤毛(それとは別に、あたしを除き込む驚いた顔)

赤毛(そう。この人はきっと――)







親爺「っ!!」

親爺「………赤…毛………っ!!」





640: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/25(日) 21:44:08.72 ID:h4w+AuR50



氷姫(――ああ、そうだ)


氷姫(どんなに世界が変わったように思えたって)


氷姫(喜びは必ずどこかにあるはずだから)




氷姫(――希望は)


氷姫(あたしたちの胸の内に、あるはずだから………)





641: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/25(日) 21:44:50.83 ID:h4w+AuR50



氷姫(全ての運命が決められた戦いは)



氷姫(もう終わったんだ)



氷姫(あたしたちには明日を生きる権利がある)






氷姫(生きている限り、物語は続くし)

















氷姫(物語は、最後の最後までどうなるか分からないはずだから――――)






642: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/25(日) 21:45:53.73 ID:h4w+AuR50
















国王「さあ勇者よ! いざ旅立ち――」




「で、伝令! 魔王が攻めてきました!!」



































643: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/25(日) 21:46:45.34 ID:h4w+AuR50



















世界のどこか



??「よっ、ほっ」

??「よいしょ…!」

??「………ふー、こんなところかな」




644: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/25(日) 21:47:39.16 ID:h4w+AuR50


??「今年はずいぶんいっぱい育ったなぁ」

??「ちょっと、植えすぎたかな?」

??「残らず収穫できるか分かんないや…」

??「冬を越える分の備蓄はもう充分だから、あとは………あ」

フワ…

??「気持ちのいい風………」

??「………ふふ」

??「風を気持ちいいって思えるようになったんだ………私」

??「………」

??「また、始めれられるかな?」

??「希望のある、生を………受け入れられるかな?」

??「ねぇ、どうかな。炎獣…」

??「………」

??「………うん、そうだよね」

??「きっと始められるよね」

??「あの日にもう、魔王は世界から消えたんだ」

??「もう、魔王と勇者のお話はおしまい」



??「今の私は、きっともう、魔王ではない私」





645: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/25(日) 21:48:41.14 ID:h4w+AuR50


??「だから始めよう」

??「私の、新しい物語を!」

??「そうして、会いに行こう!」




「――そう、今、ここから!」







646: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/25(日) 21:49:20.02 ID:h4w+AuR50







【もう魔王ではない彼女】









647: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/25(日) 21:50:00.64 ID:h4w+AuR50











FIN




648: ◆EonfQcY3VgIs 2018/11/25(日) 21:50:57.85 ID:h4w+AuR50



























これだけの質量の登場人物と物語を書けて、とても楽しかったです
次は勇者と女神のコメディもの書きたいなぁ





元スレ
国王「さあ勇者よ!いざ旅立t「で、伝令!魔王が攻めてきました!!」完結編

元スレ
国王「さあ勇者よ!いざ旅立t「で、伝令!魔王が攻めてきました!!」完結編
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1507333115/
このエントリーをはてなブックマークに追加
Clip to Evernote

        • 月間ランキング
        • はてぶ新着
        • アクセスランキング

        SSをツイートする

        SSをはてブする

         コメント一覧 (56)

          • 1. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年11月26日 20:31
          • 当然読むわけないよこんな量
            小出しに10ページずつなら少し考えた
          • 2. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年11月26日 20:41
          • 最初のまとめを半分ほど読んだ辺りでリタイア。
            何かグッダグダした群像劇は駄目だわ。
          • 3. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年11月26日 20:45
          • ゴブリンの群れが辺境の農場を襲う話の前に水の都をやるのは悪手だと思う
          • 4. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年11月26日 21:25
          • マイナーだからってドラゴンボールのアックマン出すのはいかんでしょ
          • 5. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年11月26日 21:45
          • まさかあそこでアバン先生が復活するとはなあ。泣いたわ。
          • 6. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年11月26日 22:16
          • クソ長いわ‼(笑)
          • 7. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年11月26日 22:17
          • ドラゴンの紋章が頭から手の甲に移るところで心が震えた
          • 8. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年11月26日 22:27
          • 中学生が書いた小説みたいな感じかな
            途中まで読んだけど無駄に登場人物多い
          • 9. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年11月26日 22:31
          • 長編はどんなに面白くてもエレ速管理人のまとめ方じゃ読まれないよ
            もうちょっと考えてまとめてあげて
            都度まとめるようにしないと読む側の負担にしかならないからまともな評価なんてこない
          • 10. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年11月26日 22:48
          • ※9
            面白い作品はまとめて上がってて長くなってても読者の負担になるわけがないんですが…
          • 11. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年11月26日 22:57
          • 面白い
            群像劇っぽいけど次次死んでいくから整理されていくし、死ぬことのドラマをよく描いていて好きだ
            そして戦士の話から「おっ…!?」てなる
            腰を据えて読むことをオススメする
          • 12. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年11月26日 23:10
          • ※10
            なんでもいいけど例えば2時間の映画で三部作6時間のものがあったとするよ
            6時間まとめてぶっ続けで読んだら疲れるという感想だってでてくる
            飽きるとか長いから読みすらしないという感想もでやすくなる
            普段10分とかで読み終える短いSSばかり読んでる人にいきなり長編つきつけたって読む訳ないでしょ
          • 13. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年11月26日 23:14
          • またつまらぬものをwwwwww
          • 14. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年11月27日 00:11
          • 長編作品の最終決戦だけ抜き取ったような作品だった
            いきなり出てきたそれっぽい奴らがばたばた死んで行ったところで感情移入なんかできねーよ…
          • 15. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年11月27日 00:20
          • ※12
            読むことを強制されてるみたいに言うなよ
            長くて退屈だと思えば読むのをやめればいいだけだろ

            ※14
            わかる
            登場人物は多いけど味が薄いから残らない
          • 16. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年11月27日 00:58
          • 4つある一つ目の35って数字見て心折れた
          • 17. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年11月27日 01:01
          • ※12
            頭おかしいのかな?

            これはちゃんと区切って投稿されてるんだが?

            それで最後まで読まれないならつまらないだけ
          • 18. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年11月27日 01:48
          • ※17
            頭おかしいのはお前だよ
            こういうのを区切ってるとは言わない
          • 19. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年11月27日 01:49
          • ※17
            blogのページ制限でこういうまとめ方になってるだけだ
            区切られてるわけじゃない
          • 20. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年11月27日 02:20
          • ※18
            ※19
            これはぶっ通しで読まなきゃいけないもんじゃないぞ基地外ども
          • 21. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年11月27日 04:12
          • まあまあ
            お前らそんなどうでもいいことで煽りあうなよ
            どっちにしても最後まで読む価値もないクッソ寒い作品なんだから
            正直面白くないけどこれだけ長く書いたってことだけはすごいし評価するわ
            SSにすらなってない短いアホみたいな作品よりマシかな
          • 22. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年11月27日 04:48
          • 飛ばし飛ばしに読んだけど、うっすいカルピスのようなSSでした。なろう系でやれ
          • 23. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年11月27日 06:39
          • 10Pくらい読んでみたけど、そこでリタイアだった。バトル描写控えめで良かったと思うけどな

            ただ、正直タイトルで十分オチがついてるので、そのインパクトは誉めたい。
          • 24. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年11月27日 07:49
          • 現地にある魔王と勇者SSの雑談スレでは「長編書きたいからモブキャラ増やす」「」
          • 25. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年11月27日 07:51
          • ↑みたいな意見が普通に出てるからな。
            この作品もその流れに沿ったもんだと思うわ。
          • 26. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年11月27日 08:18
          • 面白いって擁護じゃなくて、エレ速が長くまとめるのが悪いとかいう謎擁護は草
          • 27. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年11月27日 10:34
          • なげえよ馬鹿じゃねえの
          • 28. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年11月27日 10:56
          • 元スレ見ると、完結して「乙」ってレスつくのが翌日になってからで、
            しかもこれだけ長期間書き続けてこれしか本スレで感想レスつかないとか、
            もう完全にお察し状態。

            小出しに出せば〜とか誰がほざいてんだ?
            これ書いた本人か?
          • 29. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年11月27日 14:42
          • 一気に読まんとどんどん下の方次のページへと流れてくじゃん
            そうなると米も感想でもないこんなくだらん話ばっかりになるじゃん
            ぶつ切り止めろやって米多いけど何とかの四天王みたいなまとめ方されてる方がオレはいいわ
          • 30. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年11月27日 14:59
          • ※29
            あれはちゃんとスレタイ分けてるからであって…
            シリーズモノと一個のまとまった作品一緒にしちゃいかんでしょ。

            つまらないのに無駄に長いから、最後まで読まれないだけだよ。
          • 31. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年11月27日 15:40
          • 1 仲間が裏切った時はヒヤヒヤしたけど、やっぱり最後に助けてきてくれるところがよかったわ!
          • 32. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年11月27日 16:27
          • 何とかの四天王は全部一つのスレで完結してるぞ
            勝手にまとめるほうが細切れでまとめただけだ
          • 33. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年11月27日 17:10
          • どっちも面白くはないよね
          • 34. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年11月27日 19:10
          • 何とかの四天王とかってのは、「剣の乙女」って書かれてるのあるから読んでみたけどただのゴミだったゾ

            小分けにしてもまるごとでもつまらんもんはつまらんよ
          • 35. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年11月27日 20:42
          • 4 たしかに急な展開や途中にダレるところはあるけども、読み応えがあって面白かったです。コメディも読んでみたい。
          • 36. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年11月27日 22:56
          • 4 いきなり佳境から始まるし、各勢力が成長しきった状況でぶつかるから感情移入はしにくい。だれる箇所も多いけど面白いと思う
            話の展開自体は「ひねった勇者もの」としてたまに見かける方式だけど、要所要所で予想を裏切られたわ
            モブっぽいネームドの再登場(再使用)も色々と考えたんだろうな…と伝わってくるし、二年近く書く根性も凄い
          • 37. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年11月27日 23:06
          • 何とかの四天王が面白い面白くないじゃなくてさ
            細かくまとめてくれた方が読みやすいしコメントもしやすいって話な
          • 38. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年11月28日 01:02
          • まあ最初のまとめの途中でリタイヤした俺に言わせれば
            一気にまとめようが細かくまとめようがつまらなかったら読まないだけだから関係ないわ
            本人も気付いてないだけでこんな量読むわけないって言ってる奴もちょっと読んで面白かったら最後まで読むって
          • 39. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年11月28日 02:19
          • ランキング一位じゃん良かったな
          • 40. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年11月28日 02:22
          • 結構面白かったよ
          • 41. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年11月28日 11:19
          • めっちゃ懐かしいと思って見てたが、これ最近まで続いてたんだな
            完結まで見れて良かった良かった
          • 42. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年11月28日 13:17
          • 一気に飛ばしてコメ欄まで到達
            なんか読む気無くした
          • 43. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年11月28日 17:21
          • 結局ちゃんと書こうとすると昔の小説っぽいものになってくんだな
            これで無常観のままで終わってたらまんま昭和のSFだな
          • 44. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年11月29日 01:37
          • 長ぇ、眠い…でも結構おもしろかったぞ。
          • 45. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年11月29日 02:05
          • 面白かったわ。
            ストーリー的にはmother3感がしたけど、影響されたんかな?
          • 46. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年11月29日 12:27
          • 頑張ってたから読もうと思ってまずコメ欄確認
            つまらない作品なのか
          • 47. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年11月29日 20:32
          • 1 ※14と同じ感想を持った
            「読者からすれば何の愛着もないキャラが、何の伏線もなく力を発揮して死んでいく」という形式のネタSSなのかと思ってた
            ↓のコピペみたいな、真面目にやればやるほどシュールなギャグになるタイプの作品
            A「これが私の本気です」
            B「私はその倍強いです」
            A「実は実力を隠してました」
            B「私もまだ本気ではありません」
            A「体に反動が来ますが飛躍的にパワーアップする術を使わせていただきます」
            B「ならば私も拘束具を外します」
            A「秘められた力が覚醒しました」
          • 48. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年11月29日 21:14
          • 無駄なセリフ多すぎるんだよ
          • 49. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年11月30日 13:08
          • 頑張って読んだ。

            よくこんな物語考えれるなって、読んで良かった。
          • 50. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年11月30日 16:50
          • 3 ロードス島戦記っぽいストーリーだなと思いました。
          • 51. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年11月30日 17:03
          • 長くっても読ませる作品はあるけど、残念ながらこの作品は長さが苦行にしか感じられなかった

            全体量の半分程度で挫折したので、自分としては全部読んでない作品をどうこう言いたくはない

            ただ、これから読む人は、きっと全部読めば、※5の「アバン先生が復活する泣ける展開」とか、※7の「ドラゴンの紋章が頭から手の甲に移るところで心が震えた 」などのアツい展開とかが待っているはずなので、最後まで読んでみることをお勧めする
          • 52. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年11月30日 19:05
          • 普通に面白かった。けど、気になる点も多い。

            女勇者は何故死にかけの四天王を全員見逃したのかとか、扉に人間認定されたのは結局何だったのかとか、雷帝と氷姫は○○が死んだと知ったとき鍵の力で甦らせようと考えなかったのかとか、結局鍵を手にいれたアイツはどうしたのかとか、なんでお前生きてんだよとか。

            こういう力作にはあんまり会えないから色々書いたけれど、キャラや世界観は好きでした。また長編を書くのなら、納得できるハッピーエンドを書いて欲しいな。
          • 53. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年11月30日 23:38
          • まあ、狙いはわかるんだよ
            最後のどんでん返しのカタルシスを強めるために、魔王と四天王と勇者一行6人の群像劇をそれぞれしっかり描写しつつ本筋を少しずつ明かしながら進めていったと
            メインの人物その辺までにしといたらよかったのに、盗賊の一味とか赤毛4人集とか女勇者一味とか、いろいろ増やしすぎてしかもそれぞれ描写しすぎてなによりそれぞれのエピソードがあんまりグッと来ないからイマイチ乗りきれなかった
            布石(伏線ではない)置きすぎてとっちらかってる印象
            あとラストの、死者の怨みごとで魔王が復活するとこ、炎獣とか木竜までそこに出すのはどうなんだよ
            少年の発狂も意味わからん、勇者と魔王がいなくても世界崩壊してるわけじゃないんだからその営み見てりゃ暇潰しくらいにはなるだろ
          • 54. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年12月04日 01:46
          • クッソ長かったけどまあまあ面白かった。
          • 55. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年12月11日 06:47
          • 最高でした ほのぼのした続きが見たいですお願いします一生のお願いです
          • 56. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年12月23日 00:17
          • 長いけど面白いと思う。
            かわいい魔王ちゃんのその後は気になる

        はじめに

        コメント、はてブなどなど
        ありがとうございます(`・ω・´)

        カテゴリ別アーカイブ
        月別アーカイブ
        記事検索
        スポンサードリンク
        画像・動画
        • 【ミリマス】中谷育と、ワケあり女性P
        • 【ミリマス】中谷育と、ワケあり女性P
        • 【ミリマス】中谷育と、ワケあり女性P
        • 【ミリマス】中谷育と、ワケあり女性P
        • 【ミリマス】中谷育と、ワケあり女性P
        • 【ミリマス】中谷育と、ワケあり女性P
        • 【ミリマス】中谷育と、ワケあり女性P
        • 【ミリマス】中谷育と、ワケあり女性P
        • 【ミリマス】中谷育と、ワケあり女性P
        • 【ミリマス】中谷育と、ワケあり女性P
        • 【ミリマス】中谷育と、ワケあり女性P
        • 【ミリマス】中谷育と、ワケあり女性P
        • 【ミリマス】中谷育と、ワケあり女性P
        • 【ミリマス】中谷育と、ワケあり女性P
        • 【ミリマス】中谷育と、ワケあり女性P
        • 【ミリマス】中谷育と、ワケあり女性P
        • 【ミリマス】中谷育と、ワケあり女性P
        • 【ミリマス】中谷育と、ワケあり女性P
        新着コメント
        最新記事
        LINE読者登録QRコード
        LINE読者登録QRコード
        スポンサードリンク

        • ライブドアブログ
        © 2011 エレファント速報:SSまとめブログ. Customize by yoshihira Powered by ライブドアブログ