前の人「座席倒していいですか?」男「どうぞー」前の人「じゃあ遠慮なく」男「ちょっ、倒しすぎ!」
- 2018年07月29日 04:10
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男(ふぅー、やっと出張終わった……)
前の人「すみません」
男「はい?」
前の人「座席倒してもいいですか?」
男(ホントはちょっと嫌だけど……)
男「どうぞー」
前の人「じゃあ遠慮なく」
男「?」
グググググ…
男「ちょっ、倒しすぎじゃないですか?」
グググググググ…
男「ちょっ、あのっ!」メキメキ…
グググググググググ…
男「倒しすぎ……ッ! 背もたれが俺の体を……!」メキメキメキ…
男「押し潰され……」メキボキベキゴキ…
ググググググググググ…
男「ぐげあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
ブチュッ
前の人「すみません」
DQN「あ?」
前の人「座席倒してもいいですか?」
DQN「は? ざけんな、倒したらぶっ飛ばすぞ」
前の人「じゃあ遠慮なく」
DQN「は?」
DQN「おい!」
グググググ…
DQN「なに倒してんだよ! ハナシ聞いてたのかよ!」
グググググググ…
DQN「ちょっ、バカ、倒しすぎ――」メキメキ…
ググググググググググ…
DQN「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
ブチュッ
前の人「すみません」
オタク「はい?」
前の人「座席倒してもいいですか?」
オタク(返事するのも面倒だ……とっととどいちゃおう)スッ
前の人「じゃあ遠慮なく」グググ…
オタク「わっ!?」
オタク「か、体がっ! 席に押し潰されて……!」メキメキ…
グググググググ…
オタク「なにすんだよ! 痛いじゃないかぁ!」メキゴキ…
ググググググググググ…
オタク「たしゅけてぇぇぇぇぇっ!!!」
ブチュッ
警部「このところ、新幹線にて座席を後ろに倒して、後ろの客を押し潰す事件が多発している」
警部「しかし、メーカーによると、座席は後ろの人を押し潰せるような仕組みにはなってないし」
警部「そんなパワーもないという」
刑事「……」
警部「このため、一連の事件は人間ではない怪物の仕業じゃないか、という噂も立ち始め」
警部「人々は犯人を“前の人”と呼び、恐れるようになった」
警部「そう、かつての口裂け女のようにな」
刑事「都市伝説化しつつある、ということですか」
警部「我々警察としては、なんとしてもこの“前の人”を捕えねばならん!」
オーッ!!!
刑事(“前の人”……俺の好きな新幹線を血で染めるなんて許せない!)
刑事(必ず俺の手で捕えてみせる!)
刑事「怪しい乗客を見ませんでしたか?」
乗客「いや……見てないなぁ」
刑事「なにか目撃したことは……?」
車掌「残念ながら……」
刑事(これだけ聞き込みをしても、まったく手がかり無しか)
刑事(“前の人”……手強い犯人だ……)
刑事(今度久しぶりに妹のところにでも行こうか……)スッ
前の人「すみません」
刑事「!?」
刑事「……!」
刑事(出た……“前の人”!)
刑事(どうぞと答えるのはもちろん、断っても、席を立っても押し潰されてしまうらしい)
刑事(ようするに、話しかけられた時点でアウト……!)
刑事(――ならば!)
前の人「ぐっ!?」
刑事(後ろから発砲し、肩を撃ち抜いてやった!)
刑事(これでもう、激痛で席を倒すことはできないはず……!)
刑事(いきなり発砲するなんて処罰は免れないが、これしか方法はなかった!)
前の人「クックック……」
刑事「な……!?」
前の人「だが、ピストルじゃ私を倒すことはできない」
刑事「なんだと……!?」
前の人「あんたの正義感と判断力に敬意を表して、冥土の土産に一つ教えてやろう」
前の人「私を倒すには座席を押し返すしかない……」
刑事「!」
前の人「じゃあ遠慮なく」
グググ…
刑事(座席がものすごいスピードで倒れてきた!)
刑事「ぐあああああっ……!」メキメキメキ…
ググググググググググ…
刑事(無理だ……! 俺の力じゃとても押し返せない……!)
刑事(せめてっ、せめてっ! このメールをっ……!)ボキボキッ
前の人「楽しかったよ、刑事さん」
ブチュッ
女「ふんっ!」ググッ
マッチョ「お~、すごいね。女性にしては大したもんだ」
女「女性にしては、じゃダメなんです」
女「男にも……いいえ、怪物にも勝てるぐらいにならないと!」
マッチョ「怪物……?」
女「あ、いえ……」
マッチョ「君の熱心さは素晴らしいものがあるが、筋トレは無茶すればいいってもんじゃない」
マッチョ「俺は君のトレーナーだ。悩みがあるなら、なんでも話してくれないか」
女「……はい」
女「実は私の兄は刑事をやっていて……捜査中“前の人”に殺されたんです」
マッチョ「“前の人”……!」
マッチョ(新幹線で座席を使って連続殺人を起こしているという怪人……!)
≪まえのひとたおすにはおしかえすしかない≫
マッチョ「“前の人”倒すには押し返すしかない……」
女「“前の人”は座席を後ろに倒すことで、後ろの乗客を押し潰すわけですが」
女「奴を倒すにはその席を押し返すしか方法はないみたいなんです」
マッチョ「なるほど、だから筋トレに励んでいたわけか」
女「一応、警察には……ですが、あまり相手にはされませんでした」
女「だけど好都合です。兄の仇は、私の手で討ちたかったので……」
マッチョ「そうか……」
マッチョ「しかし、女性の君がいくらトレーニングしても“前の人”に打ち勝つのは不可能だろう」
女「じゃあどうしろっていうんです!」
マッチョ「……“前の人”の相手は俺に任せてくれないか?」
マッチョ「半年も君のトレーニングに付き合ったんだ。無関係とはいえないだろう」
女「でも……!」
マッチョ「君じゃ無駄死にするだけだ」
女「……!」
マッチョ「大丈夫、俺のパワーは君も知ってるだろう?」ムキッ
マッチョ「“前の人”なんか、座席ごと捻り潰してみせるさ」
女「……分かりました。お願いしますっ!」
マッチョ「それじゃ、二人で“前の人”が出てくるまで、新幹線に乗ろう」
女「“前の人”のせいで、ほとんど乗客がいませんね……」
マッチョ「君のお兄さんのことを抜きにしても、許せない奴だよ。“前の人”は」
女「ええ……」
女「ですが“前の人”は神出鬼没、いつどこに現れるか、法則性さえ分かってません」
マッチョ「まあ、気ままな新幹線の旅を楽しもうじゃないか」
女「鉄道が好きな、立派な刑事でした……」
女「将来はテレビドラマに出てくるような名刑事になるのが夢だって……」
マッチョ「そうか……」
女「マッチョさんは夢ってあるんですか?」
マッチョ「俺の夢は……店を出すことなんだ。トレーナーをやってるのはその資金作りに過ぎない」
女「お店を?」
マッチョ「そう……ささやかでいいから店を出したい」
マッチョ「俺……この戦いが終わったら、店を出すつもりだ」
マッチョ「もし、よかったら店を手伝ってくれないか?」
マッチョ「俺はトレーニングに打ち込む君の姿を見て、すっかり惚れ込んでしまったんだ」
女「マッチョさん……」
前の人「すみません」
女「……!」
マッチョ「……!」
女(まさか、こんなタイミングで……! こいつが兄さんの仇!)
前の人「返事がないのなら、遠慮なく」グググ…
マッチョ「うおおおおっ! 負けるかぁっ!」ガシッ
ググッ…
前の人「ほう?」
マッチョ「ぐっ……!」グググ…
前の人「だが、いくら鍛えても人は人、しょせん私にはかなわない」グググ…
マッチョ「ぐああっ……!」メキメキ…
マッチョ(信じられん! 大会で優勝したこともあるこの俺がパワーで押されるなんて!)メキメキ…
女「マッチョさんっ!」
前の人「楽しみだな……」グググ…
マッチョ「ぐううっ……!」ビキッ
マッチョ(ぐおおっ、腕の骨にヒビが……!)
女「私も手伝うっ!」
マッチョ「ダメだッ! 君も押し潰されてしまうッ!」
前の人「そろそろフィニッシュかな……」
マッチョ「ぐあぁっ……」
女「マッチョさん、頑張って!」
女「私と一緒に……お店を出すんでしょ!?」
マッチョ「……!」
マッチョ(そ、そうだ……俺は店を出す! 彼女と一緒に!)
マッチョ「うおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!」グググッ
前の人「な、なんだと!? なぜ、まだこれほどの力が……!」
前の人「小心者で座席を後ろに倒すことができず、溜まった鬱憤で人を超えることができた私が」
前の人「貴様如きに負けるものかぁっ!」
マッチョ「お前、元は人間だったってわけか……」
マッチョ「だが、鬱憤晴らしなんかじゃ、土壇場で力は湧いてこないだろう!」
マッチョ「肉の力を、愛の力をナメるなよぉっ!!!」グググッ
前の人「うおっ!?」
前の人「バカな!? 押し返すなんて――」メキメキ…
マッチョ「今まで押し潰された人の分まで、彼女の兄の分まで――俺がお前を座席で挟んでやる!」
マッチョ「トドメだぁぁぁぁぁっ!!!」ググッ
前の人「や、やめろ! 座席に折りたたまれるっ!」
前の人「ぐぎゃああぁぁぁぁぁっ!!!」ボキベキバキメキ…
ブチュッ
女(座席に挟み潰されて……“前の人”が……消えた……)
マッチョ「ハァ、ハァ、ハァ……」
女「マッチョさん、大丈夫!?」
マッチョ「ああ、なんとか……君と店を開きたい一心で、押し返すことができたよ」
女「よかった……」グスッ
マッチョ「兄さんの仇を……取れたな」
女「……ありがとう、マッチョさん」
マッチョ「軽食を食べさせる店ってとこかな」
マッチョ「おかげで“前の人”との戦いはいいウォーミングアップになったよ」
マッチョ「ウォーミングアップというには、だいぶハードだったけどね」
女「?」
女(どういうことだろ?)
…………
……
マッチョ「いらっしゃいませ~!」
女「いらっしゃいませ!」
客「うまそうな匂いがしたから寄ってみたよ!」
マッチョ「ありがとうございます!」
客「この店で一番売れてるメニューはいったいなんだい?」
女「主人のパワーでたっぷりのお肉をパンで挟んだサンドイッチが、大人気となっております!」
おわり
元スレ
前の人「座席倒していいですか?」男「どうぞー」前の人「じゃあ遠慮なく」男「ちょっ、倒しすぎ!」
http://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1532795735/
前の人「座席倒していいですか?」男「どうぞー」前の人「じゃあ遠慮なく」男「ちょっ、倒しすぎ!」
http://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1532795735/
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コメント一覧 (16)
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- 2018年07月29日 04:20
- ん?「前の人」の肉を使ったサンドイッチが人気メニューなのか?
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- 2018年07月29日 04:32
- 『前の人の肉』はとっくの昔に『気まぐれサラダ』に使いまして…おや、女勇者が来たようだ(懐かしい)。
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- 2018年07月29日 06:22
- ブチュ
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- 2018年07月29日 07:10
- トムとジェリーにでてきそうな、何十段重ねのサンドイッチを、店主のパワーで圧縮したサンドイッチを想像した
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- 2018年07月29日 09:17
- マッチョさんが今度は後ろの人として怪人になるのかとおもった
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- 2018年07月29日 10:50
- ジャッキとか持ち込めばいいのでは?
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- 2018年07月29日 11:10
- 座席を回転させて向かい合うと小心者に戻る
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- 2018年07月29日 12:24
- 左足で前の座席の回転レバーを踏んで、座席を回転させればオーケー
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- 2018年07月29日 12:56
- 倒す時っていちいち断らなきゃいかんのか
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- 2018年07月29日 12:59
- 圧縮すればカロリーはゼロ
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- 2018年07月29日 13:58
- 勝手に倒してしまって殴られる位なら、元から倒れない方がいい。または倒れたままで座るときに起こす方向で。
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- 2018年07月29日 15:04
- 頭を撃ち抜けば勝てるでは?
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- 2018年07月29日 18:48
- どんな相手か分かってるなら通路に逃げろよw
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- 2018年07月30日 04:15
- サンドイッチを提供するお店を出すというオチのためにこんな話思い付くとか割と天才だと思う
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- 2018年07月30日 23:57
- 普通に面白かった
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- 2018年08月02日 14:06
- 能力のマニアックさがなんかジョジョを思い出す
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