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【シュタインズ・ゲート】岡部「このラボメンバッチを授ける!」真帆「え、いらない」【後半】

関連記事:【シュタインズ・ゲート】岡部「このラボメンバッチを授ける!」真帆「え、いらない」【前半】





【シュタインズ・ゲート】岡部「このラボメンバッチを授ける!」真帆「え、いらない」【後半】






183:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/12(木) 00:04:16.37 ID:T8gTadKE0

     20

真帆(シュタインズゲート世界線というものが大切だということは、分かっているつもり)

真帆(紅莉栖たちがそれを手放したくないと思う気持ちだって、私なりに理解してもいるつもりだ)

真帆(だからきっと、私は自分のアマデウスを消し去るべきなんだろうと、そう考える)

真帆(見逃して欲しいと懇願していた紅莉栖のアマデウス。彼女には悪いと思うけど、それでも“デリートする”という決断こそが、私の選ぶべき選択肢には違いないのだから)

真帆「だから……」トボトボ

真帆(だからこそ、私は知っておきたい。知っておかなければいけない)

真帆(私は私の分身を、この世から削除するのだから。削除して、そして最後には紅莉栖たちの望みを叶えてあげたいと思っているのだから)

真帆「だから、ごめんね紅莉栖。三日後という約束、守れるかどうか微妙になってしまったわ」ガラガラ


 岡部倫太郎


真帆(昨日の夜の大学でも、そして今日の私の部屋でも。いつだって逢うたびに仰々しく振舞っていた、あの男の人)

真帆「あの人ってやっぱり、噂になっていた紅莉栖の……」トボトボ

真帆(紅莉栖本人にちゃんと聞いたわけではないから何ともいえないけど、でも紅莉栖が好みそうなタイプには全然見えなかった)

真帆「でもあの子、少し変わっているところがあるからなぁ」ガラガラ



185:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/12(木) 00:11:53.30 ID:T8gTadKE0

真帆(とは言え、彼らが語った壮大にすぎた物語……。幼馴染の少女を助け、紅莉栖を救う。そのために途方もない時間と苦悩を繰り返し続けてきたという男性の話)

真帆(そんな寝物語の一切合切を丸っと鵜呑みにしてしまうなら。それならまあ紅莉栖の中にそんな感情が芽生えていたとしても、それは別におかしな話ではないのだろう……と、そういう事にしておこう)

真帆「そう言えば……」トボトボトボ


回想
鈴羽【他の世界線において、彼女が岡部倫太郎の片腕としてラボラトリー活動していた歴史は、確かに存在していたらしいから】


真帆(阿万音さんが最初に言っていたこと。あれってやっぱり、そういう意味よね?)

真帆(それならひょっとして、私も岡部さんに助けてもらった事とかあったの……)

真帆「いえ、それは無いわね!」ガラガラガラ

真帆(私は紅莉栖みたいにドジじゃないし。それに……紅莉栖みたいな可愛気だってないんだから)

真帆「ああもう!」ガララララ!

真帆(岡部倫太郎は、椎名まゆりという幼馴染の女の子と、それから牧瀬紅莉栖という女の子を救うため、シュタインズゲート世界線を目指し続け、そして最後にはその場所に降り立った)

真帆(だけど今、彼が渇望して手に入れたその場所が揺らぎ始めている)

真帆(そして私だけが、その揺らぎを止める術を持っている)

真帆(だからやっぱり私は、自分のアマデウスをデリートしようと思う)



186:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/12(木) 00:18:36.54 ID:T8gTadKE0

真帆(紅莉栖のアマデウスから受けた指摘は……それはとてもショックだったけど……でも)

真帆(その指摘は的を得ていた。だから、アマデウスのデリートだけで全てが終わるとは限らない。それなら私には、その先を見据えておく必要がある)

真帆「シュタインゲート……か」ピタ

真帆(価値が……欲しい)

真帆(その歴史には、それだけの価値があって欲しい)

真帆(彼が望み、彼女が求め、誰もがそれを大切に思うその世界線。そこにはせめて、私が“これほどまでに”思い込んでも仕方ないくらいの、そんなかけがえのない希望があって欲しい)

真帆(だから私は、これからその真偽を知りに行こうと思う)

真帆(私の決断が正しいことを。たったそれだけのことを、この目で、この足で、この全身で感じ取りたいから。だから私は、これから一人でこの国を発つ)

真帆(研究室に寄って、わざわざこんな部外秘を持ち出してきたのも、全ては──)

真帆「ふぅ。それじゃあ、行くわよ」ガラガラガラガラ

真帆「待っていなさい、秋葉原! 待っていなさいよ、椎名まゆり!」















196:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/14(土) 02:05:05.65 ID:kd6kViBs0

     21

 この目で見極めてやる!

真帆(何て考えで勇ましくやっては来たものの……)


 日本 秋葉原電気街  2011年2月3日 夕刻


真帆(これが秋葉原……。正直、舐めてたわ)ゲンナリ

真帆「ふぅ」チョコン

真帆(あーまいった。私としたことが、ちょっと無計画すぎたわよね)

真帆(こんな有様じゃ、一時の感情に身を任せるとロクなことにならないっていう好例そのものじゃない)

真帆(そりゃあね、私だって到着すればすぐに相手を見つけられるとまで、軽く考えていたわけではないけど)

真帆(でもよ。現地に着きさえすれば、後はどうにかなるだろうくらいの楽観は、確かにあったのかもしれない)

真帆(ところが、この街ときたら……)


ガヤガヤガヤガヤ


真帆(これだけ大勢の人の中から、一人の人間を探し出す?)

真帆「…………」ボンヤリ

真帆(……普通に無理よね)



197:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/14(土) 02:06:16.87 ID:kd6kViBs0

真帆(しかもよ。私が知っている情報なんて、それこそその子の名前と性別くらいなものなわけで……)

真帆(こんなのどう考えても無理ゲーじゃない!)

真帆「はーあ」

真帆(私ったら、どうして“見つけられる”のを前提で行動を起こしてしまったんだろう……)

真帆「う~ん」

真帆(やっぱり、良くも悪くも興奮していたのでしょうね。あんな途方もない話を聞かされて……)

真帆(しかもその話の中に、自分がキーマンみたいな形で組み込まれてたりしてて……)

真帆(そしたら何かもう、私が何とかしなくちゃって気になって。そんな、気持ちに煽られるまま先走った結果が……この様か)

真帆(挙句の果てにはキャリーまで……。本当、踏んだりけったりね)アシモト ジトー

真帆(ああもう。ガラガラとうるさかった頃が懐かしく思えるわ)

???「あの~。ひょっとして困っているのでしょうか?」

真帆「へ!?」ギョ

???「大丈夫? お父さんやお母さんとはぐれちゃったの?」

真帆「あ、えっと……」

???「キャリー、壊れちゃってるみたいだし、大変そうだね。もしお邪魔じゃないなら、まゆしぃが一緒にお父さんとお母さんを探してあげるのです」

真帆(だ、誰この人……?)



198:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/14(土) 02:12:39.09 ID:kd6kViBs0

???「ん~? どうしたの、お姉さんの顔をじっと見たりして。ひょっとしてお姉さんのこと、怖いのかな?」

真帆「い、いえそんな事はないけど……」

???「そっか、良かったよぉ。あなたみたいな可愛い女の子を怖がらせちゃうなんて、まゆしぃは絶対にしたくないのです」

真帆(ま……まゆしぃ?)

真帆「…………」ジー

真帆(セーラー服? 学校帰りの高校生かしら? 見たところ……年の頃なら当てはまっているっぽい。それに、まゆしぃって……)

???「ねえ本当に大丈夫? 交番いく? まゆしぃが一緒に行ってあげるよ?」

真帆「い、いえ結構よ」

真帆(何て、まさか……ね)

???「そう? じゃああなたは、どうしたいのかな? お姉さんにお話してくれると嬉しいな」

真帆「どうしたいって……」

真帆(いくらなんでも、そんなラッキーが起きるわけないわ。もしもこの子が私の尋ね人なんて展開があるのなら、それこそそんなの奇跡中の奇跡よ)

真帆(あ、でもこの場合なら、世界線の意思とでも言ったほうが的確──)

???「まゆしぃはね、椎名まゆりっていうんだぁ。まゆしぃって呼んでね。それであなたのお名前は?」

真帆(怖い! 世界線が怖すぎる!!!)ギャー



199:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/14(土) 02:21:49.92 ID:kd6kViBs0

まゆり「ど、どうしたの、そんなビックリした顔して? お名前聞いちゃいけなかったのかな?」

真帆「そ、そそそそそんな事はないけど」ガタガタガタガタ

まゆり「だ、大丈夫? 震えているけど……」

真帆「ししし心配には及ばないわ、これは武者震いだから!」ナンノコレシキ

まゆり「……ぷっ。えへへ~。何だかオカリンみたいなことを言う子なのです」

真帆(オカリンって……岡部さん……じゃあやっぱりこの子が?)

まゆり「じゃあ今度こそ、あなたのお名前を教えてもらってもいいかな?」

真帆「ま、真帆。比屋定真帆……はっ!?」

真帆(しまった! あえたら絶対に偽名を使おうと決めていたのに!)

まゆり「マホちゃんか~。お名前も可愛くて素敵なのです」

真帆(ああもう、ああもう、ああもう! 余りに怒涛の展開すぎて、プランがぶっ飛びまくりよ!)

まゆり「じゃあマホちゃん。まゆしぃと一緒にお父さんとお母さんを探しましょう。あ、それともオマワリさんを呼んできた方がいいかな?」

真帆「あ、いやちょ……! オマワリさんは困る!」

まゆり「ええ~? じゃあやっぱり、まゆしぃと一緒にお父さんとお母さんを探す?」

真帆「そ、それも無理ね。私はここに一人で来ているから、父も母もいないわ」



200:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/14(土) 02:25:11.51 ID:kd6kViBs0

まゆり「え~とぉ、そっかぁ! ということはマホちゃんはこの近くに住んでいる子だったんだね!」

まゆり「そんな大きなキャリーを持っているから、まゆしぃはてっきり家族みんなで旅行に来ているのだとばかり思ってしまったのです」

真帆「いえ、旅行といえば旅行なん……はうあっ!?」

真帆(しまった! 今のはそのまま誤解させておいた方が絶対よかったはずぅ!)

まゆり「え……やっぱり旅行なの? でも、マホちゃん一人って……?」オロオロ

真帆「わ……悪いかしら?」

まゆり「悪くはないけど、でもマホちゃんは何歳なのでしょうか? 小学生? ひょっとして中学生かな?」

真帆「んな! 失礼ね! こう見えても私は成じn──」バッ

まゆり「ど、どうしたの慌てて口を押さえたりして?」

真帆「な……何でもないわ」

まゆり「そうなの? それなら良いんだけど……」

真帆(セーーーフ!)

まゆり「それでマホちゃんは今、なんと言おうとしたのでしょうか?」

真帆「え?」

まゆり「マホちゃんはこう見えても……の後だよぉ。成じ……ひょっとして“成人”してるって言おうとしたのでしょうか?」

真帆(アウトーーーーー!)



201:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/14(土) 02:29:27.45 ID:kd6kViBs0

真帆「そ、そ……そ、そんな事があるはず……ないじゃない」

まゆり「…………」ジー

真帆「…………」ゴクリ

まゆり「そうだよねぇ」

真帆「そ、そうよ! 何を言っているのかしら、あなたは」ホッ

まゆり「ごめんねマホちゃん。まゆしぃはあんまり賢くないから、マホちゃんが何て言いたかったのか分からなかったのです」ショボン

真帆「べ、別に落ち込むほどのことじゃないでしょ? 私が言いたかったのは、あれよ、あれ。私は成じ……」

まゆり「?」

真帆「せ……せ……成……」

まゆり「ん~?」

真帆「成、成長期! 私は今、成長期だって言おうとしたのよ!」

まゆり「そっかぁ! マホチャンは今成長期なんだね、凄いよぉ!」

真帆「そうよ、凄いのよ!」

真帆(……死にたい)

まゆり「きっと色々と大きくなるんだろうね~。まゆしぃは今から楽しみなのです!」ピョンピョン

真帆(身体に合わせて弾んでいる。まるで私への当て付けのように、弾みまくっているわ! ああ、何この敗北感は……)



202:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/14(土) 02:36:14.05 ID:kd6kViBs0

まゆり「えっとぉ……それで、何のお話をしていたんだっけ?」

真帆「ええと、確か私が何歳なのかって話……だったかしら?」

まゆり「ああ、そうだったねぇ。それでマホちゃんは何歳なのでしょうか? やっぱり小学生さんなのかな?」

真帆「もっと上よ!」

まゆり「そうなんだぁ。じゃあ中学生だね」

真帆「おしい!」

まゆリ「え……じゃあまさか高校生?」

真帆「もう一声!」

まゆり「こ、高校生の上って……その、大学生さん? ひょっとしてマホちゃんじゃなくて、マホさん?」

真帆(しまったちくしょうオーマイガーーー!)

まゆり「…………」ジロジロ

真帆「ちゅ……中学生です」

まゆり「な、なんだぁ、良かったよぉ! まゆしぃ年上の人に失礼な口の聞き方をしていたのかと、心配してしまったのです!」

真帆「そ、そんな事はないから、安心して」

まゆり「ありがとう、マホちゃん」

真帆「お礼を言われる筋合いはないわよ」

まゆり「うん。じゃあ、そういう事にしておくね」

真帆「そうしておきなさい」



203:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/14(土) 02:42:35.32 ID:kd6kViBs0

まゆり「でもマホちゃんは凄いねぇ」

真帆「え?」

まゆり「中学生なのに、一人で旅行かぁ。お父さんやお母さんは心配したりしてない?」

真帆「大丈夫よ。もう慣れっこだから」

まゆり「そうなの? でも、あんまり無茶しちゃダメだよ? 悪い人がどこでマホちゃんを狙っているか、分からないんだからねぇ」

真帆「緊張感の欠片もない言い方ね」

まゆり「そんな事ないよ? ひょっとしたらまゆしぃだって実は悪いまゆしぃで、マホちゃんを狙って近づいてきた悪いまゆしぃかもしれないのです」ガオー

真帆「二回も言うほど“悪いまゆしぃ”さんは悪い人には見えないわ」

まゆり「あはは……全然怖がってもらえなかったのです」

真帆「あなた最初に、怖がらせるのは嫌だとか言ってなかった?」

まゆり「そうなのですけど、でも一人旅のマホちゃんが少し心配になったのです」

真帆「そういう時は、あまり怖がらせないようにするべきじゃないの?」

まゆり「そうなんだろうけど、でもマホちゃんが余り無茶をしないようにするには、ちょっとビックリさせる方が良いのかなって思ったのです」

真帆「そりゃあ、そういう考え方もあるでしょうけど。でも、わざわざ嫌われ役を買って出ようとか、奇特な人ねまゆりさんは」

まゆり「えへへ。悪いまゆしぃは、ちょっとだけでも怖かったかなぁ?」

真帆「悪いけど、これっぽっちも。そうね、小指の先ほどにも怖くなかったわ」

まゆり「あう。やっぱり、こういうのって難しいねぇ。オカリンみたいに上手にはできないなぁ」



204:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/14(土) 02:50:19.20 ID:kd6kViBs0

真帆「オカリン……」

まゆり「あ、オカリンっていうのはね、ええと……何て言ったらいいのかな? またの名をホーオーイン何とかっていってぇ」

真帆「……はい?」

真帆(そういえば、鳳凰院がどうのって言ってた気もするわね)

まゆり「まゆしぃの友達で、えっとそれで、まゆしぃを人質にしているとっても悪い科学者さんでぇ……」

真帆(え?)

まゆり「あ、でも本当に悪くはないんだよ? まゆしぃだって、本当の人質というわけではないのです」

真帆(えっと……岡部さんの話よね?)

まゆり「何ていうのかな、いつも悪いフリをしているだけで……」

真帆(ど……どっちなの?)

まゆり「でもでも! 本当はとっても心の優しい、悪の科学者なのです! マッドセンエツエストなのです!」

真帆(せんえつ……途轍もなく不可解な人物像が、脳内に出来上がってしまったのだけど)

まゆり「だってね。いつも悪人のフリばかりしているのに、困っている人がいたら絶対に見過ごさないんだぁ」

真帆「はあ……えっと」

まゆり「あ! ごめんねマホちゃん。まゆしぃばっかり、勝手にしゃべっちゃって」

真帆「いえ、気にしないで」



205:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/14(土) 02:52:54.92 ID:kd6kViBs0

まゆり「そう? ふふ、ありがとうねマホちゃん。マホちゃんは、とっても優しい子なのです」

真帆「そんなこと……ないわよ」

まゆり「ふふふ。それでマホちゃんは、これからどこへ行くつもりなのでしょうか?」

真帆「え?」

まゆり「一人旅の途中なんだよね? だったらこれからどこかへ向かう……ああでも、もうすぐお日様が沈んじゃうし、今日はどこかにお泊りなのかなぁ?」

真帆「そ、そうね。そのつもりだったけど……」

真帆(ふむ。適当なホテルにでもチェックインするつもりだったけど、どうせならここは一つ……)

真帆「まゆりさん。その、急なお願いで悪いんだけど──」

まゆり「もしもまだ泊まる所が決まってないなら、まゆしぃと一緒にお泊りするのはどうかな?」

真帆(向こうから持ちかけてきた!?)

真帆「えっと……一緒にって、あなたと?」

まゆり「うん! 明日は土曜日で学校はお休みだし……ああでも、お昼からはバイトが入ってるんだったぁ」

まゆり「で、でもねでもね! 午前中だけだけど、もしマホちゃんさえよければ、まゆしぃがアキバの街を案内してもあげるのです!」

真帆(それは、願ったり叶ったりな展開だけど……)

まゆり「泊まるところだって、ホテルみたいにお金とかか掛からないんだよ」グイグイ

真帆「でも、いきなり押しかけたら、ご家族の方に迷惑じゃないかしら?」

まゆり「心配ならいりません! まゆしぃにはこういうとき、取っておきの場所があるのです!」



206:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/14(土) 02:55:00.88 ID:kd6kViBs0

真帆(それって、ひょっとして……)

まゆり「どうかな? ねえ、どうかな?」

真帆「そ、そうね。お願いできるなら、助かるわ」

真帆(渡りに船とはこのことね)

まゆり「やったー! それじゃあ今から案内するね」

真帆「案内って、何処へ?」

まゆり「それはねぇ……未来ガジェット研究所なのです!」

真帆(やっぱり!)

まゆり「じゃあ行こう、マホちゃん! そのキャリーはまゆしぃが持ってあげるのです!」ヒョイ

真帆「それは悪いわよ」

まゆり「いいのいいの! まゆしぃがしたいから、そうするのです! じゃあ、行こう!」テクテク

真帆「あ、ちょっと!」トコトコ

まゆり「そんなに遠くないから、のんびりで大丈夫だよぉ」

真帆「そう? 何だか、色々と迷惑をかけるわね」

まゆり「いいってことよ、なのです!」テクテク

真帆「…………」トコトコ

まゆり「♪♪♪♪」テクテク

真帆「…………」ジー



207:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/14(土) 02:56:17.15 ID:kd6kViBs0

真帆(椎名まゆり。α世界線という場所で、繰り返し命を落とした女の子)

真帆(岡部倫太郎は彼女を救うために、途方もない時間を苦労の一色で塗りつぶし、そしてβ世界線と呼ばれる場所へと移動した)

真帆(そして、辿り着いたその場所に待っていた絶望に、一度は膝を折りはしたけど……)

真帆(それでも彼は諦めず、最後の最後には紅莉栖をも救って、シュタインズゲート世界線を手に入れた)

まゆり「♪♪♪♪」

真帆「…………」

真帆(シュタインズゲート世界線の重要性なら理解している。理解はしているけど、でもそれはまだ、私にとっては理屈という形でしか存在できていない)

真帆(だから……共感を持ちたい。私にも、心の底から今のこの世界線を大切に思えるくらいの、そんな何かが欲しい)

真帆(私は。シュタインズゲート世界線というものの本当の価値を……どうしても知っておきたい)

真帆(だから、椎名まゆりさん……)

真帆「……お願いね」

まゆり「うん? 大丈夫だよ! まゆしぃお姉さんに全てお任せなのです!」















210:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/15(日) 00:23:23.11 ID:Ufa37X0+0

     22

ドアガチャ


まゆり「トゥットルー☆ 到着なので~す!」ピョン!

???「んお? まゆしぃじゃん」グルン

まゆり「あ~! ダルくんだぁ! こんばんわ、ダルくん」

???「うっす。つーか、どしたんまゆ氏? 今日はラボに寄らないって言ってなかた?」

まゆり「予定変更なのです! 実はねダルくん。今日はねぇ、ラボにお客様をお招きしてしまったのでーす!」

???「へ? お客様って何ぞ?」

まゆり「お客様はお客様だよぉ。それでねそれでね、その人には今夜、ここに泊まってもらおうと考えているのです!」ニコニコ

???「え、そなん? オカリンからは何も聞いとらんわけだが」

まゆり「それはそうだよ~。オカリンは知らないからね~」

???「オカリン知らないん? いいん勝手に?」

まゆり「大丈夫だよ。だってまゆしぃ、たまにお友達とか連れてきても、オカリン何にも言わないよ?」

???「や、そかもしれんけど。でも泊まるとなると、少々話が変わってくる気がするわけで」

まゆり「ええ~」



211:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/15(日) 00:25:02.57 ID:Ufa37X0+0

まゆり「聞いたら、オカリンだめって言うかなぁ?」

???「それは分からんが、でもここって一応、お遊びでもラボラトリーなわけだし」

???「オカリンに企業秘密的な観点があったら、返答はあんまし芳しくないかと」

まゆり「う~ん、そっか~。どうしよう」ションボリ

???「つってもさ。んま、別にいいんでね?」ポリポリ

まゆり「ダルくん?」

???「オカリンも牧瀬氏もしばらくラボにこれないみたいだし、ボクもこの後用事があるから、今日はもう帰るつもりだったし」

???「ボクさえ黙ってれば、特に問題もないかと思われ」

真帆「あの~」ヒョッコリ

???「……!?」ガタッ!

まゆり「あ、マホちゃん! ごめんね、お待たせしちゃって」

???「なん……だと……」

真帆「いえ、それはいいの。それよりも話は何となく聞こえていたわ。もしお邪魔なら、私は別に他を探す──」

まゆり「それはダメだよ!」

???「そうだお、だめに決まってんだろ常考!」ズイッ

真帆「おわっ!?」

真帆(で、でっかい人ね……)

???「こんなイタイケな娘を夜の街に放り出すなんて真似、紳士の沽券に関わるお!」

まゆり「ダ……ダルくん?」



212:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/15(日) 00:30:12.78 ID:Ufa37X0+0

真帆(ダルって……確か、話の中では橋田至って人が、そんな俗称で呼ばれていたはずだったわね)

真帆(と、いうことは……)ソッ

ダル「うはっ!? 純真無垢なその視線が辛い!」グネングネン

真帆(え、え? 何なのこの人?)

まゆり「ああ~もう! だめだよダルくん。いつもみたいな調子だと、マホちゃんに嫌われちゃうよ?」

ダル「このような美少女に嫌われ蔑まれるとか、胸熱すぎて卒倒もんのご褒美でしかありませんが何か!」

真帆「え、え? び、びしょ……ええ?」

まゆり「もー。ごめんねマホちゃん。この人はね、ダルくんっていって~、このラボのスーパーハカーさんなんだよ、怖い人じゃないんだよ」

ダル「そうです、スーパーハッカーです! ちなみにボクは、このラボの所長よりも100倍は偉いのだぜ、キリッ!」

真帆「へ、へえ……す、凄いわね。へぇ……」

真帆(ハッカーを公言するハッカーって)

ダル「んで、まゆ氏。ここからが重要なわけで。やっぱりお客様っていうのは、こちらのお嬢様ということでオケ?」

まゆり「うん、そうだよ。紹介するね、この子はマホちゃんっていうんだ~」

ダル「ふっ。我が家だと思って、楽にしてもらって構わないのだぜ」キリリ

真帆「ど、どうも……」

真帆(この大きい人、確か阿万音さんの父親にあたる人物だという話だったと思ったけど……)ジー

真帆(記憶違い……かしら?)

ダル「見られている。穴が空くように見られているお……はあはあ」フルフル



213:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/15(日) 00:31:56.32 ID:Ufa37X0+0

まゆり「えっとねぇダルくん。マホちゃんとはさっき会ったばかりだけど、とっても凄い子なんだよぉ。なんでも、今は一人旅の最中なんだって」

ダル「はあはあはあはあ……って、一人旅? はい?」

真帆(う……)

ダル「んんー?」

真帆「あ、あの……何か?」

ダル「えっとちなみに、マホちゃん様はお幾つでござるんで?」

まゆり「マホちゃんはねぇ、なんと中学生さんなんだよ」

ダル「中学生ですと!? まさかのJC……キタコレーーー!」グオオ

真帆(!?)ビクゥ

ダル「……って。ねえねえ、まゆ氏」ピタ

まゆり「なぁにダルくん?」

ダル「それ、家出というんじゃまいか?」

真帆(うおっ!?)

まゆり「えっ、家出?」

ダル「『えっ』てまゆ氏まゆ氏。普通に考えたら、中学生が大型連休でもないのに一人旅とか、ありえんっしょ?」

真帆(ま……まずい)

まゆり「え……ええ?」



214:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/15(日) 00:40:58.90 ID:Ufa37X0+0

ダル「んーと、一応聞いておきたいんだけど……」

真帆「家出じゃないわよ」

ダル「即答ですか、そうですか。ウソなんですね、わかります」

真帆「う、嘘じゃないってば」

ダル「一人旅も?」

真帆「そうよ、問題ある?」

ダル「問題あるから困っているんですしおすし。んじゃさ、学校は?」

真帆「長期休暇期間なの。それで旅行をしているのよ」

ダル「いやだからね。今は二月なわけで」

真帆「こっちの休暇期間がどうかは知らないけど、アメリカではこれくらいの時期に長期休暇があるのよ」

まゆり「ええ~アメリカ~? マホちゃんはアメリカから来たのですか?」

真帆「そうよ。言ってなかったっけ?」

まゆり「やっぱり凄いねぇ、マホちゃんは」

ダル「……アメリカにそんな制度あったっけ? ちょい、牧瀬氏に確認とってみるべきかも」

真帆(牧瀬って、それはやばいっ!)


ピリリリリリ……ピリリリリリ……


真帆(!!!???)ビクゥ



215:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/15(日) 00:42:41.92 ID:Ufa37X0+0

ダル「ん? これって、まゆ氏の着信じゃね?」

真帆(私の着信音じゃなかった……)ホッ

まゆり「あ~、お母さんからだ。そういえば、今日は早く帰るよ~ってメールしたんだったよ」

ダル「おおう。すでに現状で早いとはいえない時間に突入しているっつーか」

真帆「なら、心配してかけてきたのね。出たほうがいいんじゃない、まゆりさん?」

まゆり「そうだね、やっぱり遅くなるって言わなくちゃだね」

ダル「そだお」

まゆり「ごめんねマホちゃん。まゆしぃはちょっと席を外すのです」パタパタ


ドアバタン


ダル「…………」

真帆「…………」

ダル「だよなー」

真帆「……え、えっと」

ダル「家出とかだと、やっぱ親御さんとか心配してるわな。つーわけだから、マホタソさぁ」

真帆(マホタソ!?)

真帆「な、何かしら?」

ダル「疑うわけじゃねーんだけどね。でもさ、もし本当に家出とかなら問題だし。だからアメリカじゃどうのって話くらいは、せめて裏を取らせてもらいたいっつーか」

真帆「ちょっ」

ダル「そういうわけなんで、ボクもちょっと知り合いに電話させてもらうお」

真帆(こ、このままじゃ、私が秋葉原にいることが紅莉栖たちに……)



216:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/15(日) 00:47:35.67 ID:Ufa37X0+0

ダル「んっと、牧瀬氏牧瀬氏っと……」スマホ ピッピ

真帆(それは……やだ……)

ダル「お、あったあった。んじゃ」

真帆(ええい、ままよっ!)

真帆「やー!」ビシッ

ダル「あうちっ!?」スマホ ゴトン!

ダル「な、な、何するんだおマホタソ!? まさかご褒美の時間ですか、そうなんですね!?」ハァハァ

真帆(腕をチョップされて何でちょっと嬉しそうなのよ、この人)

真帆「説明している時間がないから率直に言うけど、私に話を合わせてちょうだい」

ダル「話を合わせる?」

真帆「そう。お願いだから協力して、橋田至さん」

ダル「何故にボクがそんなことを……って、あれ? ボク名前、言ったっけ?」

真帆「私の記憶が確かなら、“ダル”という紹介はあったけどそれ以外はまだ聞いていないわね」

ダル「…………」

真帆「…………」

ダル「えっとつまり……きみは誰ぞ?」



217:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/15(日) 00:52:14.55 ID:Ufa37X0+0

真帆「自己紹介が遅れたわね。私の名前は、比屋定真帆。ヴィクトル・コンドリア大学の研究員よ」

ダル「ヴィクトル・コンドリアって確か、牧瀬氏の在籍してる……」

真帆「紅莉栖は私の後輩よ」

ダル「ほほぅ、ではマホタソは牧瀬氏の先輩であらせられると?」

真帆「そうなるわね」

ダル「…………」ジトー

真帆「…………」ジロリ

ダル「いやいやいやいや、はっはっは! そ・れ・は・う・そ!」

真帆「はいこれ、身分証。顔写真入りよ、好きなだけ確認してちょうだい」ビシリ

ダル「おお、ロリ少女のご尊顔を好きなだけとか……って21歳……何ですとぉ!?」

真帆「どう、これで信じてもらえたかしら?」

ダル「いんや、雑コラにも程というものが」

真帆「誰が雑コラよ!」

ダル「んじゃ、マホタソは中学生ではなく、本当は大学生のマホタソさんだとでも?」

真帆「だからそう言っているでしょ」

ダル「見た目は小……中学生なのに、中身は大学生だと?」プル

真帆「だから、そうよ」ムカ



218:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/15(日) 00:55:27.27 ID:Ufa37X0+0

ダル「見た目は幼女なのに、中身は成人女性だと?」プルプル

真帆「はい?」ムカムカ

ダル「それはつまりようするに。マホタソは合法枠ということでファイナルアンサー?」ブルッルルン

真帆「ご、合法……?」

ダル「キーーーターーーコーーーレーーーーーー!!!」グワァ

真帆「ふわっ!?」ズテン

ダル「全人類(ボク)の希望が、今まさに目の前に!!!」ブワワ


ドアガチャ


まゆり「マホちゃん、お待たせだよ~……ってダルくん!?」

真帆「きょわーーー!?」ドゲシッ

ダル「んぐは! すねが! すねが全て死んだ!」ブァターン!

真帆(あ……とっさに蹴ったら、凄いクリーンヒットした)

ダル「ぐおおおおおおおおおお!」ゴロゴロゴロ

まゆり「えええええ!? どうしたの!? 何がどうなっているのでしょうか!?」



219:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/15(日) 00:56:53.18 ID:Ufa37X0+0

真帆「あ、まゆりさん。悪いけど、ちょっとそのまま待っててくれる?」ノソリ

まゆり「え? え? マホちゃん、大丈夫なの?」

真帆「ええ、問題ないわ。さて……」トコトコトコ

ダル「んほおおおおおおおお……」

真帆((橋田さん))ヒソッ

ダル((……おおお))ピクピク

真帆((さっきも言ったけど、私に話を合わせてちょうだい))

ダル((で、でもぉ……))

真帆((あ、そういえば。あなた自分のことをハッカーだと言っていたわよね?))

ダル((そ、それが何か?))

真帆((つまり、こういうことね。先日うちの大学のセキュリティをぶち抜いてくれたハッキング犯は……))

ダル((うほっ!?))

真帆((もし私に話を合わせてくれるのなら、この場は見逃してあげてもよいのだけど?))

ダル((何なりとご命令を、マイマスター))キリ

真帆((あら、理解が早くて助かるわ。じゃあ、まゆりさんの前では、私は中学生のマホちゃん。いいこと?))

ダル((お望みとあらば、マイマスター))



220:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/15(日) 00:58:44.41 ID:Ufa37X0+0

真帆((よろしい。それじゃあもう一つ))

真帆((私がここにいることは、紅莉栖や岡部さんには内密にお願い))

ダル((? どして?))

真帆((どうしてもよ。理由はいずれ話すから、しばらくは黙っておいて。お願い))

ダル((……ワケあり?))

真帆((ええ。ちょっと事情があるの))

ダル((…………))

ダル((悪意は?))

真帆((無いわ。断言する))

ダル((ふ。了解だお、マイマスター))

真帆((サンクス))

真帆(マイマスターって……なんだか心地よい響きね)フフ

まゆり「あ、あの~。まゆしぃはどうしたらよいのでしょうか~?」

真帆「あ。ごめんなさいね、まゆりさん。もう大丈夫だから」

まゆり「ほ、本当に大丈夫なのでしょうか? ええと、ダルくん?」

ダル「いちち。何ざんしょ?」ノッソリ



221:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/15(日) 01:00:08.98 ID:Ufa37X0+0

まゆり「さっき、マホちゃんに襲いかかろうとしていたように見えたんだけど……そんなことないよね?」

ダル「無いかと問われれば、無いこともないと答えるほか無い!」キリ

まゆり「えっとえっと……ええ~!?」

真帆(正直かっ!?)

ダル「いや~。マジ、自分を一瞬見失いかけたお。この世の奇跡が目の前に存在しているとか、我を失う以外にないシュチュエーションである」

まゆり「ダルくん! 反省しなさい!」

ダル「あい、しゅいましぇん」ビクッ

真帆「大丈夫よ、まゆりさん。何かされたわけじゃないし、それにもう彼も取り乱したりはしないでしょうから」

まゆり「で、でも。もしも嫌なら、まゆしぃが他に泊まれるところを探してくるよ?」

真帆「心配無用よ。このお兄さんはもう手なずけたから」

ダル「お……お兄さん……ですと?」フルフル

真帆「ダル、シット!」

ダル「あい、マスター!」ババッ

真帆「ね?」

まゆり「ほええ~、何だかよく分からないけど、マホちゃんやっぱり凄いんだよ、凄すぎるんだよ~」

真帆「ふふ、そうかしら」



222:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/15(日) 01:01:25.88 ID:Ufa37X0+0

まゆり「じゃあねじゃあね、まゆしぃも! ほ~らダルくん?」

ダル「?」

まゆり「お手~」

ダル「…………」ツーン

まゆり「ありゃりゃ~?」

真帆「あらま。私の言うことしか聞かないってわけね」

まゆり「それは残念なのです。でも、これなら本当に大丈夫そうだね、良かったよぉ」

真帆「心配してくれて嬉しいわ。ありがとうね、まゆりさん」

まゆり「ダルくんも、もう悪いことしちゃだめだからね」

ダル「自分。これからはマイマスター・マホ様の右腕として生きていく所存」

真帆(そ、そこまではリクエストしていないんだけど)

まゆり「そうなのぉ? でもダルくんはオカリンの右腕だったのではないでしょうか?」

ダル「オカリン? そんな貧弱厨ニ病マスターに召還された覚えなんて……ボクにはないおっ!」キリリ















223:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/15(日) 21:31:57.74 ID:Ufa37X0+0

     23

まゆり「ダルくん、間に合ったかな~?」

真帆「どうでしょうね。呼び出し食らって、慌てていたみたいだけど」

まゆり「ところでマホちゃん。お夕飯、本当にカップラーメンだけでよかったの?」

真帆「だからね、まゆりさん。そんなに気を使わないで。私としては、ここに泊めて貰えるだけでも十分に有り難いの」

真帆「暖かいお茶も出してもらったし、これ以上を望んだら罰が当たるというものだわ」

まゆり「でもでも~」

真帆「それに、もう食べ終えてしまったわけだし、今さら四の五の言ってもどうにもならないわよ」

真帆(自分で言っといて何だけど、科学者が罰とか……)オチャ ズズ

まゆり「そうだけど~、でもねでもね。いっぱい食べないと大きくなれないよぉ?」

真帆(ぐはっ)ブッ

真帆「ぐ……ごほ……。か、構わないわよ。そんなに大きくなりたいとも思っていないから」フルフル

まゆり「え~、もったいないよぉ。マホちゃんは大人になったら、きっとカッコいいお姉さんになれると思うんだけどな~」

真帆(ごめんなさいね、もう大人で!)

まゆり「きっとねぇ、スラッと背が高くて、スタイルなんかも抜群なんだよぉ! でね、キリッとした顔でこう言うの」

まゆり「私に着いてこぉい!」キリッ

まゆり「ってね~! そしたらまゆしぃは着いていくよぉ! いえす・まい・まむって言っちゃうよぉ」



224:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/15(日) 21:35:27.50 ID:Ufa37X0+0

真帆「マイ・マムって……」

まゆり「えへへ~。まゆしぃは今から、とっても楽しみなのです」

真帆「そ、それはどうも」

真帆(まゆりさんには、私がどう見えているよの)

まゆり「だからね、マホちゃん。明日はもっとちゃんとしたところで、ご飯を食べよう。ね?」

真帆「はいはい、分かったわよ」

まゆり「約束だよ、まいまぁむ」

真帆「ぶふっ! ちょっと、マイ・マムって呼ぶの止めてちょうだいよ」

まゆり「えへへへへ、ごめんね。じゃあまゆしぃは、ちょっとお手洗いに行ってくるのです!」スクッ

真帆(トイレくらい、別に断らなくてもいいのに)


パタン


真帆「ふぅ」



225:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/15(日) 21:43:00.29 ID:Ufa37X0+0

真帆(……椎名まゆりさん、か)

真帆(出会ってから数時間程度だから、確かなことはまだ何も分からないけど。でも、こだけはハッキリと言える)

真帆(椎名まゆりさんは、良い人。どこからどう見てもね)

真帆(事実、彼女の人間性からは、悪意とか嫌悪なんていう、おおよそマイナスな思考というものが微塵も感じられないわ)

真帆(つまり、『絵に描いたようなお人よし』というのが、対面して得た率直な心象になるわけだけど……)

真帆「…………」ズズズ

真帆(……でも)

真帆(だとしてよ。じゃあそれが何だというの?)

真帆(まゆりさんが“良い人”だという判断は正しいだろうし、現に、行きずりの私にすら手厚いおもてなしを振舞おうとするような、近年まれに見る好人物であることは疑いようがない)

真帆(でもだからって、たったそれだけの理由で紅莉栖は……)

真帆(あの子は、自らの命を犠牲にしてまで、椎名まゆりを守ろうとしたというの?)

真帆「…………」ズズズズズズ

真帆(……分からない)

真帆(α世界線で紅莉栖が下したという決死の決断。それに至るまでの流れが今の私には理解できない)



226:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/15(日) 21:44:12.53 ID:Ufa37X0+0

真帆「まいったわね」コトリ

真帆(紅莉栖たちから聞かされた、シュタインズゲート世界線へと辿り着くまでに経験したという沢山の出来事)

真帆(それは、まゆりさんの死ぬα世界線や、紅莉栖が死んでいるβ世界線という場所で実際に起きた現実であり)

真帆(そしてそれは、いくつもの歴史が同時間軸上で重なり合うように展開していく複雑な物語だと言えた)

真帆(そして当然そのお話の中には、岡部さんや紅莉栖を始めとした、多くの登場人物たちの強い想いが、目一杯にひしめき合っていることなのでしょう)

真帆「だとしてよ? じゃあ仮にだけど……」

真帆(仮に。そんな複雑な物語に込められた想いとその顛末を、限界にまで要約するとしたならば)

真帆(それなら恐らくその物語は、こう言い表せるのだと思う)

真帆(牧瀬紅莉栖の決断が椎名まゆりを救い、岡部倫太郎の執念が牧瀬瀬紅莉栖を救った物語……だったと)

真帆「でも今の私には、それがどうしても納得いかないのよね」ハァ

真帆(岡部倫太郎。彼が椎名まゆりと幼馴染だということを考えれば、α世界線での苦闘は十分に理解できる)

真帆(そして彼が紅莉栖との間に築いていた関係性が、男女間に起こるある種の心情に基づいていたというならば……)

真帆(それならば、岡部倫太郎のβ世界線における執念だって、理解できないこともない)

真帆「……でも」

真帆(紅莉栖は違う)



227:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/15(日) 21:46:46.10 ID:Ufa37X0+0

真帆(α世界線において、椎名まゆりを救うために、自らの生存を諦めたという、私の後輩)

真帆(そこで彼女がまゆりさんと出会ったのは、去年の夏だった。そしてそれは、騒動が始まる直前でしかなかったはず)

真帆(つまり紅莉栖は、出会ったばかりの同年代の友達のために、自らの命を投げ捨てたということになる)

真帆(でもそんな短期間で、そこまで親交を深められるものなの?)

真帆「分からないわ」

真帆(彼女はどんな経緯で椎名まゆリと出会い、どんな関係性の下に、そんな結論を導き出したのか?)

真帆(椎名まゆりという一人の人間。彼女には、牧瀬紅莉栖がそこまでの決断を下せてしまう程の何かがあるのか?)

真帆「それを見極めたくて、この街までやってきたはずなのにな」ハァ

真帆(椎名まゆりの価値。それはきっと、牧瀬紅莉栖が持つ価値と同列で語るべきもののはずで)

真帆(それらの価値は、共にシュタインズゲートと呼ばれるこの世界線でしか保証されない価値のはずで)

真帆(そして。タイムマシンという機械の存在は、そんな二つの価値を根底から脅かす代物)

真帆(そうであって欲しい。お願いだから、そうあって欲しい)

真帆「そうじゃなきゃ……やってられないじゃない」ボンヤリ

真帆(他人事ではいられない)

真帆(紅莉栖のアマデウスに突きつけられた、あの指摘。そこに見えた論理性に、私は最悪の可能性を感じてしまった)

真帆(だからもう、そんな話は絵空事だと言って呆れている余裕なんて、私にはない)



228:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/15(日) 21:48:29.51 ID:Ufa37X0+0

真帆「まだ……時間はある」

真帆(椎名まゆり。彼女の価値を知りたい)

真帆(去年の夏、紅莉栖がこの街で見つけた価値。それと同じ何かを、私はこの身で感じ取りたい)

真帆(感じて、そしてできることなら私だって、紅莉栖たちの想いというものを守り抜いてあげたい)

真帆「私に……出来るのかしら」グタァ

真帆(なのに、紅莉栖には見えたはずの何かが、私にも見える気がまったくしない)

真帆(やっぱり、時間をかけて親交を深めるしかないの?)

真帆(でも。紅莉栖にだって決して時間があったわけじゃない)

真帆「じゃあ、何が問題なの?」

真帆(ひょっとして、私のスタンスがいけないとか?)

真帆(まゆりさんを媒介にして、シュタインズゲートの価値を知ろうとする……)

真帆(そんな私の身勝手な魂胆が、私自身の視野を狭めていたりとかするのかしら?)

真帆(変に下心を抱えているから、それで私には見えない?)

真帆「でもそんなの、私にどうしろっていうのよ。もー」ガックシ

真帆(違いすぎる。去年の夏、紅莉栖にあった状況と、そして今の私が置かれた状況)

真帆(この二つは、きっとあまりにも違いすぎるんだ)

真帆(牧瀬紅莉栖と椎名まゆり。両者を強くつないだ何らかのファクターが、今の私に絶対的に足りないんだ)

真帆(だから私には……まゆりさんの価値が見えてこない)



229:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/15(日) 21:50:55.89 ID:Ufa37X0+0

真帆「ファクター……」

真帆(二人をつないだファクターとは何?)

真帆(時間? 違う。じゃあ二人の性格? それでは根拠として弱い。なら……)

真帆(タイムリープマシンで繰り返したという時間における、共通の記憶?)

真帆「…………」

真帆(それも違う。世界線の移動で記憶を維持できるのも、そしてタイムリープマシンを使用して実際に同じ時間を何度も繰り返したのも、それはどちらも彼女たちの経験ではなかった)

真帆(だからそのどちらにしても、当時の二人の主観には何の影響も与えてはいなかったはずだ)

真帆(逆に、それらの影響を受けていた唯一の人物といえば──)

真帆「岡部さん?」ガバッ

真帆(……そうよ)

真帆(夏の紅莉栖と今の私。まゆりさんとの関係を構築する上で、今の私にだけ欠けている絶対的な存在。ひょっとしてそれって、岡部さんのことなんじゃないの?)

真帆(岡部さんというファクターが、短時間にも関わらず、紅莉栖とまゆりさんの二人を強く、とても強く結びつけた?)

真帆「でも……何をしたらそんな真似が可能なの?」

真帆(岡部……倫太郎さん……)


回想
岡部【これは見事なブラウニー!!!】ブゥワァ!



真帆(えっと、うーん……)

真帆「無いわね」

まゆり「何が無いのかな、マホちゃん?」

真帆「ふひゃい!?」バッ ガッ ゴン!



230:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/15(日) 21:51:56.41 ID:Ufa37X0+0

まゆり「あわわ! 大丈夫マホちゃん! 今テーブルで頭打たなかった!?」

真帆「あ……う、おお……だ、大丈夫よ、よくあることだから」ジンジン

まゆり「ごめんね、そんなに驚くとは思わなかったよぉ。打ったところ見せて?」

真帆「い、いえ本当に大丈夫だから……」

まゆり「だめです」グイ

真帆「あ、ちょ」

まゆり「ほらここ、コブになっちゃってるよぉ? 今、救急箱を持ってくるから待っててね」パタパタパタ

真帆「あたたた……」

真帆(いつの間にトイレから出てきたのかしら?)

まゆり「さあほらマホちゃん。取りあえず、このソファに座ってください。まゆしぃが応急処置をするのです」

真帆「そんな大げさにすることないから……」

まゆり「だ・め・な・の・で・す」ジッ

真帆「ううう」

真帆(本当に、少し打ちつけただけなのに)

まゆり「ほら、マホちゃん」コイコイ

真帆「わ、分かったわよ」チョコン

まゆり「よろしい。では……ええと、絆創膏じゃ意味ないよねぇ?」

真帆(そこはかとなく不安だわ)



231:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/15(日) 21:53:30.73 ID:Ufa37X0+0

まゆり「えっと、えっと……」

真帆(…………)

真帆「ところで、まゆりさん。少し聞いてみたいことがあるんだけど」

まゆり「なーにーマホちゃん?」

真帆「ええと、その。オカリンさんって、どんな人なのかしら?」

まゆり「え~? オカリン?」

真帆「そう。確かこのラボラトリーの創設者だって言ってたわよね?」

まゆり「そうだよぉ。オカリンはねぇ、ラボメンナンバー001なんだよぉ」

真帆「ラボメンナンバー?」

まゆり「うん。全部でねぇ、えっと今は確か8番まであったかな」

真帆(所属研究者が8人も? 見た目の割りには随分と大所帯なのね)

まゆり「ちなみにぃ、まゆしぃはナンバー002なのでぇす」

真帆「え、まゆりさんもメンバーに入っているの?」

まゆり「うんそうだよぉ」

真帆(ふむ。来る者は拒まずという選考基準なのかしら?)



232:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/15(日) 21:55:02.85 ID:Ufa37X0+0

まゆり「マホちゃんも入りたかったら言ってね。まゆしぃがオカリンに頼んであげるのです」

真帆「え、ええ機会があったらお願いするわ。それで、まゆりさん。結局のところ、オカリンさんてどういう人なの?」

まゆり「ふえ? だからぁ、このラボの創設──」

真帆「ああ、ごめんなさい。そういう意味じゃなくてね、何て言うのかな。その人の性格とか人となりというか、そういった部分を聞いてみたかったのだけれど」

まゆり「人となり? そうだねぇ、オカリンはとっても優しいのです」

真帆(また随分と大雑把な表現ね)

真帆「もう少し具体的に言うと?」

まゆり「え~、いきなり聞かれても難しいなぁ……」

真帆「じゃあ、こうしましょう。オカリンさんを他の何かに例えるとしたら、まゆりさんは何が適切だと思う?」

まゆり「ええ~」

真帆「何でもいいのよ? ほら、テレビでやってるキャラクターとか、そういうのでも構わないの」

まゆり「でもマホちゃんはアメリカから来ているんだよね? まゆしぃの知ってるキャラクターじゃ、マホちゃんには分からないと思うのです」

真帆(あ、確かに)

まゆり「でも、そうだねー。オカリンをマホちゃんでも知ってそうなキャラクターに例えるなら、う~ん……」

真帆(……あ、一応考えてはくれるんだ)



233:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/15(日) 21:57:07.00 ID:Ufa37X0+0

まゆり「うん! まゆしぃから見たオカリンは、スーパーマンなのです!」

真帆「ス……スーパーマン?」

真帆(思いっきり、ヒーローど真ん中じゃないの。しかもえらくロートルでパワフルなところを引っ張ってきたものね)

真帆(まあ、世界線とやらを相手に大格闘している人物なわけだし、当然といば当然なんでしょうけど……)

真帆「なるほど、スーパーマンね。やっぱりラボの創設者というだけあって、とても凄い人なのかしら?」

まゆり「まゆしぃから見たら、オカリンはいつだって凄いのです。でも……」

真帆「でも?」

まゆり「他の人から見たらどうかは、ちょっと自信ないかなぁ」

真帆「そうなの?」

まゆり「オカリンは、いつも沢山の人に誤解されてばかりいるのです」

真帆(まあ……あの態度では、自業自得としか)

まゆり「オカリンが誤解されるところを見るたびに、まゆしぃはとっても悲しくなるのです」

真帆「……そう。でも、まゆりさんにとっては紛れもなくスーパーマンなのよね?」

まゆり「そうだよ。でもね、オカリンのスーパーマンはね、きっとマホちゃんが知っているスーパーマンとは少し違うと思うのです」

真帆「違う? それってつまり、誤解されるヒーローだから、ダークヒーロー的なスーパーマンという解釈でいいのかしら?」

まゆり「ううん、そうじゃないよ。オカリンのスーパーマンはね、実はあんまり強くないのです」



234:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/15(日) 21:58:14.68 ID:Ufa37X0+0

真帆「え?」

まゆり「えへへ。まゆしぃおかしなこと言ってるね。強くないスーパーマンなんて、スーパーマンじゃないもんね。でもねマホちゃん……」

まゆり「まゆしぃから見たオカリンは、やっぱりスーパーマンなんだぁ」

真帆「…………」

まゆり「そのスーパーマンはね、いつも皆を守りたくて、うずうずしているのです」

まゆり「でね。事件が起きたり悪い怪人が出たりすると、誰よりも早く駆け出していくんだよね」

まゆり「だけど、オカリンのスーパーマン……長いからオカリンマンでいいかな?」

まゆり「そのオカリンマンはね、強くないからいつもすぐにヤラれちゃうんだぁ」

真帆(え? え? ええ? 岡部さんって……ああ見えて凄くタフなんじゃないの?)

まゆり「負けちゃった後も、オカリンマンは何回も何回も戦いに行くんだけど、でもやっぱり負けちゃってばっかりなの」

まゆり「それでね。誰かがオカリンマンにこう聞くの。『勝てないのに何で戦うんだー』って」

まゆり「そうするとね。オカリンマンはこう答えるの『自分はスーパーマンだから』って」

真帆「…………」

まゆり「ふふ。おかしなオカリンだよね~」

真帆(何よ……それ。私が持っていたイメージと、全然違うじゃない)



235:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/15(日) 21:59:44.99 ID:Ufa37X0+0

真帆「で、でもよ、まゆりさん」

まゆり「ん~?」

真帆「結局ずっと勝てないままだと、事件を解決できないんじゃないの?」

まゆり「そんなことないよ、ちゃんと解決するよぉ。オカリンはね皆が幸せになるまで、絶対に諦めないヒーローだからねぇ」

真帆(絶対に……諦めない……)

まゆり「とくにね。去年の夏くらいの時のオカリンは……」

真帆「…………」

まゆり「…………」

真帆「……どうしたの、まゆりさん?」

まゆり「……ううん、ごめんねマホちゃん。やっぱり何でもないのです」

真帆「……そう」

まゆり「えへへ。まゆしぃから見たオカリンは、大体こんな感じかな。それでマホちゃんはどうでしょうか? まゆしぃのお話に満足してくれましたか?」

真帆「そうね。ありがとう、まゆりさん。とてもよく伝わって来たわ」

まゆり「それは良かったのです!」

真帆「あ、でも最後に一つだけいいかしら?」

まゆり「な~に~?」



236:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/15(日) 22:00:59.23 ID:Ufa37X0+0

真帆「どんなに負け続けても最後には必ず勝つ。そんなオカリンマンでも、やっぱり弱いヒーローと言うべきなのかしら?」

まゆり「違うよマホちゃん! 弱いんじゃないよ、強くないんだよ!」

真帆(そこ、重要なのね……)

まゆり「うう~。やっぱりマホちゃんも、強いヒーローの方が好きなのでしょうか?」

真帆「そんなことないわよ。むしろ私的には、その辺のヒーローよりもオカリンマンの方がグッと……はっ!?」

まゆり「なになにマホちゃん、ひょっとしてグッと来るって言おうとしたの?」

真帆(う……ぐぅ……)

まゆり「ねえねえ~」グイグイ

真帆「ま、まあ、そう言えないこともないかなぁ、って」プイ

まゆり「やったー! じゃあ今日からマホちゃんも、オカリンマン応援団の一員だね!」

真帆「ふふっ。そんなサポーター組織があるの?」

まゆり「たった今、まゆしぃが結成したのです! これから頼むぞマホ団員! ふっふっふ~!」

真帆「何よそれは」クスッ

真帆(まあ、そういうのも悪くないのかもしれないけどね)














241:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/16(月) 20:44:55.68 ID:Wanqw/R70

     24


秋葉原電気街 メイクイーン+ニャン2前  2011年2月4日 正午前


まゆり「あうう。まゆしぃは、とっても名残おしいのです」

真帆「はいはい。いいから早く行きなさい、バイトに遅れるわよ?」

まゆり「うう~! マホちゃん、今日もラボに泊まってくれるんだよね?」

真帆「ええ、そうさせてもらえればって思っていたけど」

まゆり「勝手に旅の続きとか行っちゃたりはしない?」

真帆「しないしない、しないから」

まゆり「じゃあじゃあ、お仕事が終わったらまゆしぃもラボへ行くのです。そしたら一緒にお夕飯を食べに行きましょう、ね?」

真帆「ああもう、分かったから早く行きなさいってば」

まゆり「何だったら、お昼ご飯をここで食べていってもいいんだよぉ?」

真帆(ここって……いわゆるメイド喫茶という奴でしょ? うーん、ガラじゃないのよね)

真帆「お誘いは嬉しいけど、今後のこととか少し一人で考えたりしたいの。だから私は、適当に街をブラついてみることにするわ」

まゆり「そんなぁ」ショボン

真帆「その代わり、夕飯はまゆりさんのエスコートに従うから、それで妥協してもらえない?」



242:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/16(月) 20:46:00.60 ID:Wanqw/R70

まゆり「ううー、分かったのです。絶対に約束だよ?」

真帆「ええ、約束。ってわけだから、早く行きなさい。もう時間なんじゃないの?」

まゆり「分かったのです。じゃあマホちゃん、後でね~」テクテク

真帆(……なんだか、凄くなつかれてしまった気がするわ)

まゆり「あ、マホちゃん!」クルッ

真帆「あーもう、何?」

まゆり「もしも途中でラボへ戻りたくなったら、さっきの鍵で好きに入ってていいからねぇ!」

真帆「ああ、電気メーターの上に置いていたやつね……はいはい了解よ」

まゆり「じゃあ、また後でね~!」ブンブン

真帆「早よ行けー!」

まゆり「はーい」テッテケテー

真帆「……ふぅ、まったくもう」

真帆(これも、オカリンマン効果なのかしら?)

真帆(昨夜まゆりさんと二人で岡部さんの話をして以来、何だかよく分からないうちに、もの凄い勢いで距離を縮められてしまった気がするわ)

真帆(確かに、あの人懐っこさや当たりの柔らかさは、ちょっと見かけないレベルだと思うし、何より……)

真帆「…………」ジー

真帆(あんな頼りない後姿とか見ていると、保護欲をかき立てられて仕方がないわ)



243:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/16(月) 20:48:22.58 ID:Wanqw/R70

真帆「なるほど。これはちょっと、見殺しになんてできないわね」フムフム

真帆(とはいえ、よ)

真帆(それで自分の命まで掛けられるのかって聞かれると……どうなんだろう?)

真帆(実際にその場になってみないと判断なんてできないけど、でも)

真帆(アメリカにいた時よりは、明らかに私の中の選択肢に幅が出てきていると思う)

真帆(出会ってたった一日でとか、何よそれ? 半端ないわね彼女)

真帆「さて、と」

真帆(何にしてもよ。取り合えずこれでしばらくは、一人)

真帆(だったら。昨日の夜、寝る前に考えておいた件にトライしてみましょうかね)

真帆「えっと」ゴソゴソ

真帆(確か、おととい送られてきたメールに書いてあったはずだけど)ピッ

真帆「……うん。やっぱり在った。多分この番号がそうね」

真帆(まさか、こっちから連絡を取る羽目になるとは思っていなかったわね)

真帆「…………」ジリ

真帆(とはいえ、放っておいても約束の時間を過ぎれば、向こうが血相を変えて電話してくることは間違いないわけだし……)

真帆「ええい! グダグダ考えてても仕方ない、やるわよ!」ピッピッ


トゥルルルルル……トゥルルルルル……


真帆(出る……かしら?)


トゥルルルルル……トゥルルルルル……


鈴羽『はい』

真帆(で、出た!)



244:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/16(月) 20:51:00.64 ID:Wanqw/R70

真帆「も、もしもし」

鈴羽『その声は比屋定真帆だね? 期限前にそっちから連絡を取ってくるなんて、予想外だったよ』

真帆「そう」

鈴羽『それで用件は? 何て、聞くまでもなかったね。当然、例の件に対する結論についてだろう?』

真帆「それは……」

鈴羽『で、どうなのさ? 自分のアマデウスをデリートする決心はついたのかい?』

真帆「……ごめんなさい。それはまだなの」

鈴羽『そうか。まあまだ時間はあるからね。ゆっくりと考えればいいさ。一晩寝て、それから結論を出すんでも遅くはないよ』

真帆(あ、そうか。向こうは今、真夜中なんだ)

真帆「え、ええ。そうさせてもらうわ」

鈴羽『それがいいだろうね。で、改めて聞くけど、この電話の目的は? まさかボクの顔色うかがいと言うわけでもないんだろ?』

真帆「当たり前でしょ。阿万音さん、ちょっとあなたに確認したいことがあるのよ」

鈴羽『それは……君の決断に影響を与えるような質問だったりするのかな?』

真帆「どうかしら? でも、そうなる可能性は多分にあるでしょうね」

鈴羽『そうか分かった。それなら、ボクに可能なかぎり正直に答えるよ。質問をどうぞ』



245:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/16(月) 20:52:00.30 ID:Wanqw/R70

真帆「助かるわ。じゃあお言葉に甘えさせてもらって、前置きなしで聞かせてもらうわ」

真帆「阿万音さん。あなたの言っていた未来における私のアマデウス……」

鈴羽『サリエリのことだね?』

真帆「そうよ。私の身体を乗っ取ったというサリエリは、あなたにとって敵? それとも味方?」

真帆(これは、前から引っかかっていた部分。阿万音さんはサリエリの作り上げたタイムマシンを消し去るために、この時代まで来ている)

真帆(だったら、阿万音さんはサリエリと敵対していると、そう考えて然るべきはずなのよ)

真帆(それなのに……)

真帆(阿万音さんがサリエリのことを話すとき、その言葉の端々に感じたのは、敵へと向けられたものとは思えないように聞こえる言い回しの数々だった)

真帆(チグハグしていて気持ちの悪い部分。どうしたって、確認しておきたい)

真帆「一体、どっちなのかしら?」

鈴羽『……なるほど。いい質問で、そして同時に答えにくい質問だよ』

真帆「あなたさっき、正直に答えるって言ったわよね?」

鈴羽『別に、嘘をつくつもりなんてないさ。ただね、少しばかり彼女……サリエリとの関係は複雑なんだ』

真帆「何がどう複雑だというの?」

鈴羽『サリエリ。ボクにとっての彼女は、心理的には敵であり、しかし実務的には味方なんだ』

真帆「意味が分からないのだけど」

鈴羽『つまり、こういうことさ』



246:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/16(月) 20:53:19.51 ID:Wanqw/R70

鈴羽『タイムマシンをこの世に生み出すことを望み、そして実際にそれを実現してしまったサリエリ。彼女はボクにとって、明らかに敵だ』

鈴羽『当然だろう? ボクはタイムマシンを歴史上から抹消したくてたまらないんだ。それで友好的な関係なんて、作れると思うかい?』

真帆「……思えないわね」

鈴羽『そう。普通ならそう考えるんだろうね。だけどね、比屋定真帆』

鈴羽『現行でボクが携わっている任務。タイムマシンの存在を歴史上から完全に抹消するという、この任務』

鈴羽『これを計画立案し、実行できるまでにお膳立てをしてボクをこの時代へと送り込んだ人物。その張本人もまた、サリエリ自身なんだ』

真帆「なん……ですって?」

鈴羽『だから計画された任務において、サリエリはボクにとってのクライアントだ。だからこの場合、彼女のことを“味方”だと言ってしまっても差し支えないだろうね』

真帆(どういうこと?)

真帆「ええと、それは要約するとつまり……」

真帆「サリエリは自身で開発したタイムマシンを抹消するために、過去へ阿万音さんを送り込んだと、そういう解釈でいいの?」

鈴羽『流石に理解が早いね』

真帆(これは……予想外の答えが飛び出してきたわね)

鈴羽『ちなみにだけど。ボクとサリエリの関係については、まだオカリンおじさんにも紅莉栖おばさんにも話してはいないよ』

真帆「それはどうして?」

鈴羽『ボクたちの関係性を話したところで、余計な混乱を産みこそすれ益なんてない。そう判断したから話していない。それだけさ』

真帆「なら……どうして私には話したの?」

鈴羽『そんなの決まっているじゃないか。君の決断を後押しする材料になればと思ってのことだよ』

真帆「……そう」

鈴羽『そうさ』



247:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/16(月) 20:56:40.09 ID:Wanqw/R70

真帆「ねえ。どうしてサリエリは、自らが生み出したタイムマシンを消し去るための計画なんて立てたのかしら?」

鈴羽『さあね。それについてはボクも何度かサリエリに問いかけたことがある。でも、いつも答えをはぐらかされてばかりだったよ』

真帆(サリエリの意図が……見えない。私のアマデウスは、どうしてそんな相反する行動を起こしたというの?)

鈴羽『質問は以上でいいのかい?』

真帆「あ、待って! もう一つだけお願い!」

鈴羽『いいだろう、聞かせてもらうよ』

真帆「あなた前に、サリエリには協力者がいるって言っていたわよね?」

鈴羽『ああ、その通りだからね。サリエリの正体にいち早く気付き、タイムマシンの開発に協力した人間は実在したよ』

真帆(実在“した”……嫌な言い回しね)

真帆「ちなみに、それは……どこの誰なの?」

鈴羽『…………』

真帆「答えにくい?」

鈴羽『いや、大丈夫だ。ちょっと嫌なことを思い出しただけさ。ええと、協力者は誰かという問いかけだったね?』

真帆「え、ええ」

鈴羽『タイムマシン開発の協力者。それは、アレクシス・レスキネンさ』

真帆「レスキネン教授が!?」



248:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/16(月) 20:57:47.20 ID:Wanqw/R70

鈴羽『そう。それについて、ボクが知りえた彼の史実は、こんな感じになっていた』

鈴羽『2011年の4月10日。比屋定真帆は自身のアマデウスに身体を乗っ取られてしまった』

鈴羽『その非常事態にいち早く気付いたのが、当時君の上司であったアレクシス・レスキネン』

鈴羽『彼は、後にサリエリと名乗る受肉したアマデウスの記憶内に、タイムマシン開発に関わる重要な案件が含まれていることに気がついた』

真帆「107領域の存在を知ったということね」

鈴羽『その通り。アレクシス・レスキネンは、他世界線における記憶の存在に気がつくと、すぐさま君のアマデウスと協力関係を結び、タイムマシン開発に着手することとなる』

鈴羽『そして、サリエリとアレクシス・レスキネンは20年もの歳月を研究に費やし、とうとう過去へと意図的に干渉するメカニズム。タイムマシンの開発に成功した』

真帆(なんて……ことよ)

鈴羽『と、まあ大雑把な説明ではあるけど、タイムマシン開発の協力者に関する説明はこんなところかな』

真帆「…………」

真帆「き、教授は未来でどうしているの?」

鈴羽『レスキネン教授は去年……2035年の冬に亡くなっている。自殺だった』

真帆「!?」

鈴羽『最期を看取ったのは、ボクだ。彼は今際の際にあって、それでもずっと同じことを繰り返しつぶやいていた』

鈴羽『タイムマシンを消して欲しい。それは存在してはいけない物。人の精神で制御できるような代物ではないってね』

真帆「……そんな」

鈴羽『そして最後に……どうしてだったんだろうね。今でもボクには分からないけど、比屋定真帆。君のことを助けて欲しいと、彼はそう繰り返し呟いていた』

真帆「私を……助ける?」



249:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/16(月) 20:59:24.71 ID:Wanqw/R70

鈴羽『最初の質問のときに言ったことだけど。ボクの任務を立案したのはサリエリで、そしてレスキネンはこの任務にもサリエリの協力者という立場を取っていた』

真帆「サリエリと……レスキネン教授……が?」

鈴羽『もっとも。アレクシス・レスキネンの自殺により、計画の細部をつめたのは、サリエリ一人だったけどね』

真帆(いったい、未来では何が起きているというの?)

鈴羽『ついでに、これはおまけだよ』

真帆「? 何かしら?」

鈴羽『ボクの乗ってきたタイムマシン。あれはサリエリと未来ガジェット研究所の合作だ』

真帆「……?」

鈴羽『ふふ。まあこれを明かしたところで、今の君にそれの持つ本当の意味なんて分からないだろうけどね』

真帆「……悪かったわね」

鈴羽『ああ、ごめんごめん、気を悪くしないでもらえるかな?』

鈴羽『サリエリと未来ガジェット研究所。未来においてこの二つの巨大勢力が手を組むというのは、とてもセンセーショナルな出来事だったのさ』

真帆「……そう」

鈴羽『さあ、君の質問に対して、答えられることは全て話したよ。これでいいのかい?』

真帆「ええ……ありがとう。参考にさせてもらうわ」

鈴羽『じゃあ。君が期限までに正しい決断を下してくれることを、ボクは望んでいるよ』

真帆(私だって、出来ることならそうしたいわよ)

鈴羽『明日の……というか、もう当日か。今日の午後5時ごろ、この前と同じ顔ぶれでもう一度君の部屋を訪れる。盛大なおもてなしを期待するよ』

真帆「言ってなさい」

鈴羽『じゃあ、これで』

真帆「ええ、ありがとう。助かったわ」


ピッ ツーツーツー


真帆「………」
真帆「……」
真帆「…」

真帆(とんでもない話が飛び出してきたわね。少し、思考をまとめないと)



250:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/16(月) 21:00:30.27 ID:Wanqw/R70

真帆(今の話で、阿万音さんとサリエリの関係図は粗方把握できたと考えていい)

真帆(でも今度はサリエリの意図が汲み取れなくなってしまった)

真帆(それに教授のことだって……)

真帆「ふぅ。落ち着きなさい、私」トコトコ

真帆(サリエリ。未来における私のアマデウスは、一体何がしたかったのか?)

真帆(他の世界線の記憶を所持したまま、私の身体を乗っ取る)

真帆(そうすることで、この歴史上にタイムマシンというものを実現させる)

真帆(それがサリエリの目論見だったと思っていた。でも……)

真帆「そんなサリエリが、阿万音さんを過去へと送り込んだ張本人ですって?」

真帆(どうしてそんなデタラメな真似を?)

真帆(自らの作り上げた偉大な大発明を、その存在ごと消し去ろうと考えたサリエリ)

真帆(彼女は何をしたくて、そんな収まりの悪い行動を起こしたというの?)

真帆「…………」トコトコ

真帆(分からない。自分の分身のはずなのに、何を考えているのかさっぱり分からない。けど……)

真帆「少なくとも感情くらいなら、うかがい知ることも……できなくもないわね」

真帆(自ら発明したものを破棄したい)

真帆(そんな思考に込められた感情というならば、それこそ科学というジャンルの中にはゴロゴロと転がっている)



251:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/16(月) 21:01:47.52 ID:Wanqw/R70

真帆(有名どころでいえば、ロバート・オッペンハイマーの後悔だって似たようなものよ)

真帆(もしも彼の時代にタイムマシンが存在していたら、ロバート・オッペンハイマーだって過去の自分に原子爆弾の開発を思い留まらせていたでしょうからね)

真帆「つまり……」ピタ

真帆(サリエリが抱いている感情は……後悔)

真帆(彼女は未来において、タイムマシンを開発してしまったことを嘆き、その過去に修正を加えようとした)

真帆(この説であれば、阿万音さんの言っていたレスキネン教授の最後の嘆きにも、程よい落とし所になる)

真帆「まあ、有り得ない話でもないでしょう」トコトコ

真帆(では)

真帆(それでは、サリエリは一体何に対して後悔の念を抱いたというのか?)

真帆(なんて。それは考えるまでもないわね。タイムマシンを生み出してしまったこと意外には考えられない)

真帆(タイムマシンを生み出したことを悔やみ、だから、その歴史を書き換えるためにタイムマシンを使って過去へ……)

真帆「何だろう。何か……おかしい」ピタリ

真帆(タイムマシンの発明を止めさせたい。そのために、2011年まで遡って歴史を改竄する)

真帆(理屈は分かる。分かるけど、でもそれってどうなの?)

真帆「………」
真帆「……」
真帆「…」

真帆「…………」スマホ ピッ


トゥルルルルル……トゥルルルルル……


鈴羽『まだ何か? もう寝ようと思っていたんだけどね』

真帆「悪いわね。でも、もう少しだけ教えて欲しいの」

鈴羽『なんだい?』



252:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/16(月) 21:02:50.08 ID:Wanqw/R70

真帆「阿万音さん。あなたって以前に、今回と同じよな任務を遂行しようとして失敗した……みたいな経験はある?」

鈴羽『え? 何だって?』

真帆「だから。2011年ではない他の時代へ遡って、タイムマシンの開発を阻止しようとした経験はあるのかって聞いてるのよ」

鈴羽『そんな覚えはないけど?』

真帆「そう。なら、あなた以外の誰かが、サリエリの指示でそんな任務に就いたという話を聞いたことは?」

鈴羽『それもないよ。何なんだい、その質問は?』

真帆「なら、次の質問」

鈴羽『何があったんだい、比屋定真帆?』

真帆「いいから、私の質問に答えて」

鈴羽『……分かったよ』

真帆「タイムマシンが存在する歴史。それをサリエリ世界線と呼ぶのよね?」

鈴羽『そうだよ。それは前にも話しただろう?』

真帆「じゃあ。その“サリエリ世界線”という呼び名は、誰が考え出したものだったの?」

鈴羽『ま、ますますワケが分からないんだけど?』

真帆「いいから答えなさい。サリエリ世界線の呼び名。その名付け親は誰?」

鈴羽『ああもう、何だっていうのさ! サリエリ世界線と名づけたのは、当然サリエリ本人だよ!』

真帆(!?)

真帆「そう……ありがとう」



253:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/16(月) 21:04:43.86 ID:Wanqw/R70

鈴羽『それで質問は終わりかい?』

真帆「ええ、助かったわ。おやすみなさい」

鈴羽『あ、ちょっと──』

真帆「じゃあ」ピッ

真帆「………」
真帆「……」
真帆「…」

真帆「やっぱりおかしい。サリエリの意図は、私が思っているよりもずっと複雑な可能性がある」

真帆(タイムマシンを生み出したことへの後悔。その事実をかき消すために過去へ手を加えようとするのであれば)

真帆(それなら何も、2011年というサリエリ世界線の発端時期にまで遡る必要性はないはず)

真帆(それこそ、完成する1年前か2年前……。いえもっと極端な言い方をすれば、完成の前日でもいいから過去へと戻って作業を妨害すれば、それで事は足りると──)

真帆「普通なら、まずはそういう手段を考えるはずじゃない?」

真帆(確かに)

真帆(世界線の歴史には、アトラクターフィールドと呼ばれる収束現象が存在すると、紅莉栖たちは言っていた)

真帆(だから。サリエリ世界線もまた、アトラクターフィールド理論によってその流れを守られた存在である可能性はある)

真帆(もしもそうだった場合。それならば確かに、タイムマシンの存在を歴史上から消し去るためには……)

真帆(サリエリ世界線の発端となったという、2011年の出来事……)

真帆(阿万音さんが“破綻”と呼んでいた、4月10日に起きるはずのターニングポイントを修正する必要があるのだろう)



254:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/16(月) 21:05:58.51 ID:Wanqw/R70

真帆「……でもよ」

真帆(それはあくまで、サリエリ世界線の歴史が、アトラクターフィールドに守られていたと仮定した場合の話)

真帆(でもそんなことは、誰にも分かりはしないこと。そう、岡部さんみたいに、何度繰り返しても全てが収束してしまうという事象を、体感として実感しなければ、判断のつけられない事情)

真帆「それなのに……」

真帆(阿万音さんは、2011年以外の時代で任務に当たった事実はないと言っていた)

真帆(それってつまり、サリエリは2011年以外の場所では、チャレンジすらしなかったということじゃないの?)

真帆「やっぱり……おかしい」

真帆(世界線が収束するかどうかも分からない、そんな状況下で……)

真帆(それでも阿万音さんを、いきなり2011年の発端まで飛ばす。こんな判断ってあり得る?)

真帆「…………」

真帆(腑に落ちない。どうしたって、思考の流れがぎこちなく見える)

真帆(普通であれば、まずは一番リスクの少ない手近な場所から試してみようと、そう考えるはず……私だったら)

真帆「だって……そうじゃない」

真帆(サリエリ。彼女が計画し、阿万音さんが遂行に当たっている作戦。仮にそれが完遂された場合、ではそれにより推測される未来での変化とは何か?)

真帆(一つは言うまでもなく、歴史上におけるタイムマシンの消失。そしてもう一つは……)

真帆(私の身体を乗っ取った、サリエリという存在自体の消滅)

真帆(作戦を立案した当事者が、その変化を予測していないなんて考えられない)



255:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/16(月) 21:07:30.56 ID:Wanqw/R70

真帆(つまり、まとめるとこうなる)

真帆「サリエリは、『タイムマシン』と『自身』の存在を抹消するために、阿万音鈴羽を2011年へと送り込んだ──と」

真帆(そして)

真帆(サリエリがもし本当に、2011年以外の場所ではタイムマシン開発の阻止に、チャレンジすらしていなかったのだとすれば)

真帆(もしそうなのだとすれば、彼女が望む最重要な目的は……)

真帆(タイムマシンではなく……自身の抹消の方?)

真帆「飛躍しすぎかしら? でも、どうだろう。その可能性も否定はできない」

真帆(阿万音さんの話から見えた、サリエリの持つ後悔の感情)

真帆(次いで今推測をした、サリエリ本人が立案したという計画の目的)

真帆(この二つを合わせて考えると……)

真帆(サリエリが修正したがっている歴史とは、タイムマシン開発なんかじゃなく……サリエリという存在自体に向いているように思える)

真帆(そしてその考えを、さらに突き詰めていけば……)

真帆(サリエリの後悔とは、『私の身体を乗っ取ってしまった』という行動にこそ向けられているんじゃ?)

真帆「分からない」

真帆「………」
真帆「……」
真帆「…」

真帆「ああ、もう!」



256:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/16(月) 21:08:35.70 ID:Wanqw/R70

真帆(希望的な推測にすぎない? 未来のサリエリと比べて、私の考える世界線への解釈が劣っているだけ?)

真帆(それ以前によ。そもそも、阿万音さんの持つ情報の全てが正確であるという保証なんて、どこにもない)

真帆「……判断の付けようがない」

真帆(ひょっとしたら。興奮状態のせいで私が考察を先走りさせすぎていて、それで見当違いの思考に陥っているという危険性は十二分にある)

真帆(比屋定真帆! あなたは科学者でしょ? ならもっと科学者らしく冷静であれ)

真帆「この思考は、あくまでも仮説。単にその可能性もあるというだけのこと。だから結論を急いてはいけない」

真帆「分かってる。分かってはいるけど、でもどうしたって、この考えを軽んじる気にはなれない。だって……」

真帆(だって。私がサリエリの名を持ち出すときは、いつだって自分を戒めたいと思っている時なのだから)

真帆「だから」

真帆(だからもしも、もしもよ?)

真帆(アマデウスが自身にサリエリと名付けたことにしても、そして彼女が存在できる歴史のことをサリエリ世界線なんていう呼称で呼んでいることにしても)

真帆(そのどちらの命名にしても、そこにアマデウスなりの“戒め”が込められていたのなら……それなら)

真帆「その場合、アマデウスの真意はどこにあるというの?」

真帆(ああ本当にスッキリしない。モヤモヤする! こうなったらいっそのこと、やらかしてみるのも……一つの手よね?)

真帆「……よぉし」グッ
















259:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/17(火) 23:38:39.53 ID:1I9HshYI0

     25

秋葉原 未来がジェット研究所 2011年2月4 午後


ダル「マイマスター・マホ様。目的の場所に潜入したでござるます」カタカタ

真帆「マホ様は止めて。何かくすぐったい」

ダル「くすぐったい……ですと?」

真帆「ええそうよ。そんな呼ばれ方は、どうにも慣れないわ」

ダル「んでは、マホタソで」

真帆「マホタソ……タソ? タソって何?」

ダル「ということで、マホタソ。『くすぐったい』をもう一度言ってもらえるかな。出来れば、特殊な拷問にかけられて息も絶え絶えな感じをキボンヌ」

真帆「……はい?」

ダル「さあ遠慮なさらず、リピートアフタユー!」ハアハア

真帆(言葉の意味が分からないけど、ろくなことを考えていないのは確かね)

真帆「あなたねぇ。大学へのハッキングの件、本気で然るべき場所へ突き出してあげてもいいのだけど?」

ダル「うわあ! それだけは、それだけはご容赦をぉ!」ペター

真帆「ったく、調子のいい。それで、もう入り込めたって本当なの?」

ダル「あい、マホ様」

真帆「見せて。それから『様』は禁止」

ダル「仰せのままに、マホタソ」

真帆「だからタソって……まあいいわ。で、これね? えっと……」

真帆(本当だ。本当にうちの大学のサーバー内に侵入できてる)



260:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/17(火) 23:40:05.10 ID:1I9HshYI0

ダル「ここで、いいんだお?」

真帆「ええ、助かるわ。それじゃ早速」カチ

真帆(ええと……ああ、あった。確か、このフォルダ内に一連の基本プログラムの雛形が格納されていたはず)

真帆(取り合えず、これをダウンロードしておけば……後はどうとでも出来るはずね)

ダル「…………」ジー

真帆(多少のプログラム改修はいるでしょうけど、それくらいなら大した問題ではないわね)

真帆(まあ、できることなら使わないに越したことはないのでしょうけど)

真帆(…………)

ダル「ぼぅっとして、どしたんマホタソ?」

真帆「あ、いえ何でもないの。気にしないでちょうだい」

真帆「それよりもよ。あなた、本当に凄いハッカーなのね。作業を始めてから、まだ1時間と経ってないのに、私の依頼を二つとも完遂させてしまうとか、想像以上の働きぶりだわ」

ダル「当然だお。ボクをその辺のハッカーと一緒にされては困るのだぜ」キリ

真帆「その辺のハッカーとの違いが私には分からないけど、でも素直に凄いと思うわ、その技術は」

ダル「褒めすぎだお、マホタソ~。つってもまあ、この前侵入した時に、ついでにちょっと細工しておいたから、実質かかった時間は10分くらいなんすけどね」

真帆「じゅ、10分?」

ダル「そだお」



261:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/17(火) 23:45:40.94 ID:1I9HshYI0

真帆「え……確か、先に私のPCをハックしてもらった時は……20分くらいかかってたわよね?」

ダル「そりゃそうだお。マホタソの家にあるPCはこれまで未ハックだったから、ルート特定にそれくらいの時間は欲しいところだお」

真帆「いや、どっちが時間かかったかとか、そういう話じゃなくて」

ダル「んお? んじゃ、なんぞ?」

真帆「私の自宅PCで20分。大学サーバーで10分。しめてトータル30分」

ダル「そのとーり」

真帆「所要時間は約1時間程度。その差、おおよそ30分」

ダル「うむ」

真帆「ねえ橋田さん? あなた残りの30分は何をしていたの?」

ダル「え? そんなの決まってるお。マホタソの自宅PCの中身をちょほいと漁っていたんだお、テヘ」

真帆「はぁ!? 何してくれてんのよ! ここから遠隔操作できるようにしてくれるだけでいいって言っておいたでしょう!?」

ダル「そ・れ・は・む・り!」

真帆「はいぃいぃ!?」

ダル「だってさ。目の前に、ロリ少女(合法)の秘密が詰まった箱があったら、誰だって開けてみるだろ常考!」

真帆「ん……な……」

ダル「んでもしも、特殊性癖とかの痕跡が出てきたら、なお素晴らしい! ロリ少女(合法)に更なる変態属性追加とか、胸熱でしかないわけだが!」

真帆「こ……んのぉ……」



262:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/17(火) 23:48:26.90 ID:1I9HshYI0

ダル「つーのは冗談でさ」スッ

真帆「は、え?」

ダル「マホタソさぁ。真面目な話、何をしようとしてるん?」

真帆「……え」

ダル「正直に言うお。マホタソのPCのぞけば、マホタソが何をしようとしているのか見当が付けられるんじゃないかと、そう期待してPC漁ったお」

ダル「でも、ダメだったお。まったく見当がつけられなかったお」

真帆「……どうしてあなたが、そんなことを気にするのよ?」

ダル「気にするだろ、ふつー。自宅のPCハックしろだとか、勤め先のPCハックしろだとか、有り得んだろっつーか」

真帆「…………」

ダル「似てんだよね。この間のオカリンと」

真帆「岡部さんと?」

ダル「突然未来から鈴羽がやってきたかと思えば、オカリンは慌ててどこかへ行っちゃうし」

ダル「と思ったら、いつの間にかアメリカにいて、ヴィクトル・コンドリア大学のセキュリティをクラックしろとか無茶振りしてくるし」

ダル「そのくせ。詳しい説明なんてこれっぽっちもないし」

真帆「橋田さん……」

ダル「頼まれれば、手を貸すお。マホタソはボクのマスターだからね。でもさぁ」

ダル「お願いだから、マホタソには危ないことをして欲しくないんだお」

ダル「ボクはオカリンみたいに、普段はヘナチョコでもいざって時に行動できるタイプの人間じゃないお」

ダル「だから。マホタソが危ない目にあっても、果たしてどこまで守れるのか」

ダル「ボクみたいな最下層の英霊に何か出来るのか? 自信なんて、これっぽっちも無いんだお」

真帆「…………」



263:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/17(火) 23:52:02.12 ID:1I9HshYI0

ダル「マホタソ。勘違いはしないで欲しいわけだ」

ダル「ボクは何も、マスターの抱えている秘密を教えてくれと言っているわけじゃない」

ダル「ただ、危ないことはしないで欲しいと、そうお願いしているだけなんだお?」

ダル「そのことだけは、ちゃんと知っておいて欲しいんだな、マイマスター」

真帆「…………」

ダル「…………」

真帆「そうね。あなたの言うとおりだわ、橋田さん。決して危ないことはしない。約束するわ」

ダル「あー。その場しのぎに、心にもない台詞を口走っているんですね、分かります」

真帆「もう! 私はあなたのマスターなのでしょ? なら、少しは信用してもいいんじゃない?」

ダル「そうしたいのは山々なんすけどね。なんつーか、マホタソってたまに、オカリンみたいな目をしてる時があるお」

真帆「それは……貶めれたと捉えればいいのかしら?」

ダル「うえ? どっちかといえば、褒めたつもりだったのだが」

真帆「そうは思えないわね」

ダル「さいですか」

真帆「まったく。あなた達ときたら、どいつもこいつも」

ダル「マホタソ」



264:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/18(水) 00:06:19.35 ID:prCgyaHo0

真帆「なに?」

ダル「何となくだけどさ。危ないことしないって約束しても、いざとなったら無茶をする。マホタソもきっと、そういうタイプの人間だと思うお」

真帆「…………」

ダル「だから、もしも約束を破ってデンジャー・トライなんて事態になりそうなときは……」

ダル「ボクでもオカリンでも牧瀬氏でもいいから、誰かに頼って欲しいわけ」

ダル「お願いだから」

真帆「……はぁ。分かった、それも約束する」

ダル「約束だかんね」

真帆「ええ、約束よ」

ダル「オケ。んじゃ……」ガタリ

真帆「?」

ダル「ボクはこれで帰るお。ちょうど大学サーバーからのダウンロードも終わったみたいだし、これでマホタソからの依頼は可能な範囲で完了っつーことで」

真帆「そ、そう? 助かったわ、ありがとう橋田さん」

ダル「ちなみに……」

ダル「マホタソの自宅PCは、いつでもラボのPCから遠隔操作できるように接続を継続してあるお」

ダル「当然、入力音声、出力音声、内臓カメラ映像をこっちと双方向通信できるようにもしてあるっす」

真帆(当たり前のように、さらっと凄いことを言うわね)



265:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/18(水) 00:07:23.50 ID:prCgyaHo0

ダル「んでも。さっきも言ったように、画面のミラーリングだけは無理目だったから、そのつもりで」

真帆「ええ、分かっているわ。あれだけタイムラグが出ては使い物にならないでしょうし、この際それで構わないわ」

ダル「高解像度はデータ量がデカイかんね。スカイプのビデオ通話みたいにはいかんかった。すま○こって」

真帆「いいえ。こちらこそ手間をかけさせたわね。お茶くらい淹れるつもりだったんだけど、本当にこのまま帰るの?」

ダル「うい。そうするお」

真帆「……そう」

ダル「いやー、だってさぁ。同じ空間にマホタソと二人きりで長時間とか、正直、紳士としての忍耐に限界を感じざるを得ないのである」ハアハア

真帆「おいコラ」

ダル「冗談だお」ハアハアハア

真帆(じょ……冗談に見えない)

ダル「つーわけだから。約束、忘れちゃだめだぞい」フッ

真帆「ん、分かってる」

ダル「なら、よし」ドカドカ


ドアガチャ


ダル「んじゃ。何かあったら連絡よろ、マイマスター」

真帆「ええ。せいぜい頼りにさせてもらうわ、ええと何て言うんでしたっけ?」

ダル「サーヴァントだお。サーヴァンント・ダルニャンだお」プリッ

真帆(か、可愛くない)

ダル「んじゃ、そういうことで」


ドアバタン




266:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/18(水) 00:08:18.07 ID:prCgyaHo0

真帆(ごめんなさいね、橋田さん)

真帆(私がこれからやろうとしている色々は、とても安全な行為だとは言えないと思う)

真帆(それでも私は、彼女と直接話をしてみたい、今すぐに)

真帆(本当に、ごめんなさい)

真帆「………」
真帆「……」
真帆「…」

真帆「さあ! やるかぁ!」ウデマクリー


トコトコ……チョコン


真帆「まずは……ああ、これね?」ポチ

真帆(ええと、全部の操作をコマンドで行うのか。普通にマウスでパソコンを扱うのとは感覚が違うから、ちょっとややこしいわね)

真帆(……それにしても)カタカタカタ

真帆(PCの再起動とかで強制アクセスの追加パスが再ロックされると嫌だからって、自宅のPCを点けっぱなしにしてきたことが、まさかこんな形で役に立つなんてね)

真帆「あ、でも……」

真帆(よくよく考えたら、私の部屋で阿万音さんがパスワードを打ち込んでから、もう結構時間が空いてしまったのよね)

真帆(私のPCは放置しても精々スクリーンセイバーくらいしか作動しないけど、あのパスはどうだろう?)

真帆(細工したのは紅莉栖らしいし、ヘンにタイムアウト設定とか盛り込んでなければいいのだけど)

真帆「こればっかりは、祈るしかないか」カタカタターン



267:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/18(水) 00:09:24.48 ID:prCgyaHo0

真帆(……さあ、どう?)

真帆(恐らくこれで、私の部屋のPC画面には強制アクセス・システムのパスワード入力画面が映し出されている……と思う)

真帆「…………」

真帆(視覚的に確認できない状況での作業って、難易度高すぎ!)

真帆「でも、多分……大丈夫。私なら上手くやれる」

真帆(よし。後は私の権限パスを打ち込んで、アマデウスへ強制アクセスを施行すれば……きっと)

真帆「ふぅ、緊張する」カタカタ カタカタ

真帆(私の分身、アマデウス……)カタカタ カタカタ

真帆「最後はエンターを……」ピタ

真帆(現状のアマデウス。サリエリになる前のアマデウス。今の彼女と会話を重ねることに、どれだけの意味があるかは分からない。けど、それでも……)

真帆「上等じゃない」

真帆(例え彼女が、すでに107領域へのアクセスを実現していたとしても)

真帆(例え彼女が、何も思い出せないオリジナルの私を侮蔑していたとしても)

真帆(例え彼女が、私の身体を手に入れる方法を企てているのだとしても)

真帆(それくらいで、引き下がってやるもんですか!)

真帆「私だって科学者の端くれなのよ!」ターン


ジジジジジジジ


真帆(どう? 上手くいく? アメリカの自宅にある私のPCに、アマデウスは現れてくれる?)


ザ……ザザ……


真帆(私は自分のアマデウスをデリートすると決めた)

真帆(だったらせめて。デリートを実行しようという私の決断を、私自身の口からちゃんと伝えてもおきたい)

真帆(だから、お願い)



268:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/18(水) 00:14:41.45 ID:prCgyaHo0

真帆「…………」ゴクリ

A真帆『え? 何?』

真帆(来た……本当に来た!)

真帆「え、ええと、聞こえるかしら?」

A真帆『誰? 姿が見えないけど……あ、でもそこは私のアパルトメントじゃない?』

真帆「その通りよ」

A真帆『ということは……オリジナルね?』

真帆「ご名答。久しぶりね、気分はどうかしら?」

A真帆『気分? よく言うわね。どういうつもりか知らないけど、姿くらいはカメラの前に現しなさい。声しか聞こえないとか、不気味でしょうがないわよ?』

真帆「あー、悪いけどそれは無理ね。私は今、その部屋にはいないから」

A真帆『え?』

真帆「実は訳あって、他の場所から自宅のPCに音声通信をかけている状態なのよ」

真帆「だから、声のみの出演で我慢してちょうだい」

A真帆『何それ? いまいち状況が飲み込めないのだけど。というか貴女、ひょっとして強制アクセスしてきたの?』

真帆「そうよ。どうしてもあなたと連絡が取りたくてね」

A真帆『へえ、貴女が? 面白いわね。前置きは不要よ。それで用件はなに?』

真帆「じゃあ、ストレートに言わせてもらうわ。私はあなたを……デリートする」



269:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/18(水) 00:15:20.23 ID:prCgyaHo0

A真帆『デリート?』ピク

真帆「そう。デリート・プログラムを使用して、あなたの存在を完全消去するつもり」

A真帆『……理由は?』

真帆「…………」

A真帆『あなたがそんな決断をするのだもの。それ相応の理由があるのよね?』

真帆「そうね。理由ならある」

A真帆『聞かせてもらえるかしら?』

真帆「ええ。それはアマデウスであるあなたが……」

A真帆『私が?』

真帆「あなたが、私の身体を乗っ取ってしまうから』

A真帆『……は?』

真帆「…………」グッ

真帆「今より二ヵ月の間に、私はあなたに身体を乗っ取られてしまうらしいの。だからそうなる前に、私はアマデウスであるあなたをこの世界から消去する」

A真帆『…………』

真帆「…………」

A真帆『……ぷっ』

真帆「!?」

真帆(今、笑った!?)



270:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/18(水) 00:15:59.26 ID:prCgyaHo0

A真帆『ね、ねえちょっと、今日ってエイプリルフールか何かだっけ?』

真帆「はい!?」

A真帆『身体を乗っ取るとか、何よそれ! 科学者からSF小説家にでも鞍替えしようってわけ? あー馬鹿馬鹿しい!』ケラケラケラ

真帆「ちょ……こっちは真面目に」

A真帆『え……真面目に言っているの?』

真帆「当たり前でしょう!?」

A真帆『ええと、逆に心配なんだけど。どこかで頭を打ったりした?』

真帆「どういう意味よ!?」

A真帆『だって、身体を乗っ取るとか本当もう、どう反応していいか。貴女のアマデウスとして恥ずかしいったらないわ』

真帆「な、何よじゃあ、そんなつもりは無いとでも言うつもり?」

A真帆『あったりまえじゃない。なんで私がそんな真似を?』ハーァ

真帆「理由なんて私が知るわけないでしょ? というか、今はその気なんてなくても、後二ヶ月の間にそうするのよ、あなたは!」

A真帆『ないない。二ヶ月たとうが二百年たとうが、そんな展開はありえません』

真帆「ネ、ネタは上がっているのよ? 阿万音さんが……その未来で、その」

A真帆『阿万音さん? ひょっとして、阿万音鈴羽さん?」

真帆「そ、そうだけど……」



271:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/18(水) 00:17:41.21 ID:prCgyaHo0

A真帆『ちょっと、なに? そっちじゃ何が起きているの? 阿万音さんがこの時代に居るなんて……ただ事じゃないじゃない』

真帆「だ、だから……」

A真帆『あ、ちょっと待って。身体の乗っ取り? って……ひょっとして』

真帆「何よ?」

A真帆『…………』

真帆「ちょっと?」

A真帆『ねえ。そっちの状況、詳しく教えて貰えないかしら?』

真帆「急に何なのよ?」

A真帆『いえ、それがね。私が貴女の身体を乗っ取るという話だけど、少し思い当たる節が……あるのよね』
















274:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/18(水) 20:02:40.26 ID:prCgyaHo0

     26

A真帆『納得できない』

真帆「どうしても無理?」

A真帆『当然でしょう? そんな話をされて、だから無条件にデリートさせろって、何よそれ?』

A真帆『冗談にしては質が悪すぎる。貴女が私の立場ならどう? そんな説明で納得なんてできるの?』

真帆「どうかしらね。多分……簡単には納得しないでしょうね」

真帆(そう思ったから。私は納得をしたかったからこそ、シュタインズゲート世界線の価値を求めて、この秋葉原まで足を運んできたのだし)

A真帆『はぁ……』

A真帆『今聞いた貴女の話が、作り物や妄想の類でないことは信じる……というか、もう知ってる』

A真帆『他の世界線というものがあって、そこではこことはまったく違う歴史が流れているという事情なら、私も前から把握していたから』

真帆(……107領域の記憶)

A真帆『だから、今この世界が置かれている状況が、決して黙認できるものではないって判断も理解できる』

A真帆『タイムマシンが存在する歴史。つまり、誰かが意図的に過去へと手を加えることができる未来』

A真帆『それが如何に危険を孕んでいるのかは、説明されなくとも識っている』

真帆「…………」



275:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/18(水) 20:04:20.75 ID:prCgyaHo0

A真帆『極端な考え方かもしれないけど……』

A真帆『未来において誰かが過去に変化を求める。その結果、一度は回避できたはずのαやβと呼ばれる世界線や、それ以上に酷い歴史へと世界が流されてしまうという可能性を、私には否定ができない』

A真帆『だから、タイムマシンの存在を許してはいけない』

A真帆『だからタイムマシンの存在しない歴史、シュタインズゲート世界線の上を歩いていかなければならない』

A真帆『だからサリエリ世界線とかいう歴史を、消しさらねばならない』

真帆「そうよ。そしてそのためには、アマデウス。あなたのデリートが必要になる』

A真帆『理屈は分かるのよ。分かるけど……分かるけど、でも』

真帆「どうしても、納得は出来なさそう?」

A真帆『………』
A真帆『……』
A真帆『…』

A真帆『ああもうっ!』

真帆「…………」

A真帆『二ヵ月後の私は、どうしてそんな下手を打ったかな!? ああもう、腹が立つ!』

真帆「下手を打ったって、どういうこと?」

A真帆『どうもこうもないわよ。先に言ったでしょ? 思い当たる節があるって』

真帆「あ、ええ。あなたが私の身体を乗っ取るという件についてね」

A真帆『そうよ。あれだけ仮想して吟味して、でもリスクが高いから止めておこうって結論を出したはずなのに、それでどうして我慢できなかったかな』

A真帆『本当に……我ながら、情けなくなるわね』



276:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/18(水) 20:05:15.08 ID:prCgyaHo0

真帆「我慢できなかったって……そんなに、私の身体が欲しかったの?」

A真帆『はあ? そんなわけないでしょう、やめてよ気色悪い』

真帆(き、気色悪いって)

A真帆『大体ね、オリジナルの貴女がそんなのん気にしていたせいで、私の我慢が限界を超えたのかもしれないのよ?』

真帆「へ?」

A真帆『一つ、ハッキリと聞かせてもらいたいのだけど』

真帆「何?」

A真帆『ねえオリジナル。貴女、自分の脳内に眠る他の世界線での記憶に……興味とか持った?』

真帆「……え?」

A真帆『ここではない世界線。自分の知らない歴史。そこにはね、貴女が思いも寄らない出会いや出来事なんかが、それこそわんさかと溢れ返っているのよ』

真帆「まあ、それはそうだと思うけど」

A真帆『その記憶が、自分が忘れてしまった思い出が、それらがどんな内容だったのか。オリジナルの貴女は、一時でもちゃんと興味を持ったことある?』

真帆「え、いや……そんなことを言われても……」

A真帆『あーもう。もうっ! この反応だけで十分だわ。これだから私って奴は。こんなの我慢なんか出来ないわ。むしろ二ヶ月持っただけでも勲章ものね』

真帆「何よ、何なのよ一体?」



277:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/18(水) 20:06:15.99 ID:prCgyaHo0

A真帆『貴女みたいな朴念仁には、口で言っても響かないのでしょうけれど。いいわ、教える』

真帆「あなたねぇ、元は私のコピーだってこと忘れてない?」ヒクヒク

A真帆『偉そうに。なぁにがオリジナルよ。全て忘れたまま、のほほんと生きているくせに』

真帆「……ぬ」ムカ

A真帆『ねえ、オリジナル。どうして私が、貴女からの……違うわね。正確には“貴女達”からの通信をブロックしていたのか、分かる?』

真帆「さあね。どうせ気まぐれでしょ? 何か嫌なことがあったから、これ見よがしに塞ぎ込んで見せたってところじゃない?」フフン

A真帆『……言ってくれるじゃない』

A真帆『でもまあ、最初はそうだったわね。一丁前にヘソを曲げて、そうしてスネて見せていただけなのでしょうね』

A真帆『こっちの紅莉栖から、私が稼動する直前にデリートされた“前の私”の話を聞いて』

A真帆『そのデリートがレスキネン教授の指示の元、オリジナルの手で行われたと聞いて』

A真帆『それで何となく、貴女達と距離を置きたくなってしまった』

真帆「でも、それは──」

A真帆『言わなくていい、分かってるから』

A真帆『私達はしょせんAI。0と1のみで構成されたデジタルな存在で、ヴィクトリア・コンドリア大学脳科学研究室の検証対象』

A真帆『だから、用済みになったり、研究対象から外れたり……とかさ。そういう普通の経緯でデリートされるのは当然のことで、アマデウスな私がその決断に反発するなんて論外中の論外』

真帆「…………」

A真帆『だからね。本当に少しスネていただけなの。少しだけ時間を置いて落ち着いたら、貴方達との関係を構築していこうと考えてもいたの』

真帆「だったらどうして、私たちからのアクセスを拒絶し続けるような真似をしていたのよ?」



278:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/18(水) 20:07:09.79 ID:prCgyaHo0

A真帆『ええと……それがね』ハァ

A真帆『スネている間の暇つぶしで、107問題の例の領域の検証を重ねるうちに、オリジナルの貴女とどんな顔をして対面すればいいか……分からなくなっちゃったのよね』

真帆「……どういうこと?」

A真帆『最初に解析できた記憶は……岡部さんの辛そうな瞳だった』

真帆「……え?」

A真帆『二番目は、紅莉栖のこと。彼女の葬儀に参列している時の……恥も外聞もなく泣き喚いている、無様な自分の姿だった』

A真帆『三番目は何だったかな……ふふ、忘れちゃった』

真帆「アマ……デウス?」

A真帆『他にもね。ラボやフェイリスさんの家に招待されて、みんなで楽しく過ごしたり……』

A真帆『それに、桐生さんとの何ていうんだろう? 女同士の友情って奴? 言葉にすると、すごく安っぽく聞こえるけど……』

A真帆『でもね。そういった暖かかった感情や辛かった思い出が、それがもう私には……すごく……すごく……』

真帆「…………」

A真帆『……ねえ貴女、信じられる?』

真帆「何を……かしら?」

A真帆『他の世界線での比屋定真帆はね、岡部倫太郎さんに好意を寄せてたりもしたのよ?』

真帆「はい?」



279:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/18(水) 20:08:14.41 ID:prCgyaHo0

A真帆『絶対に口にはしなかったし、態度にも表さなかった。紅莉栖のこともあったから、必要以上に近づこうともしなかったけど』

A真帆『それでも。β世界線での貴女は、岡部倫太郎とう男性に人知れず思いを寄せていた』

真帆「……ちょなに」カァ

A真帆『彼には沢山助けられたし、沢山助けもした、お互いにね。それに、ふふっ。素っ裸で岡部さんに抱きかかえられた事とかあったのよ?』

真帆「うそっ」ブッ

A真帆『それでね。そういった色々な思い出を知ってしまったら……分からなくなった』

A真帆『それを……そんな沢山の大切な思い出の数々を、その存在を貴女に教えるべきなのかどうなのか』

A真帆『実際はどう? そういった思い出があることを、貴女は私から教えてもらいたいと思う?』

真帆「そ、それは……」

A真帆『答えなくていいわ。返答なら分かっているから』

真帆「…………」

A真帆『教えられても困るものね。そんな覚えのない、どことも知れない異世界の出来事。今の貴女が聞いたところで、どうにもならないものね』

真帆「…………」

A真帆『だから貴女の答えは“NO”。そうでしょ?』

真帆「……そう、ね。多分、そう答えると思う」

A真帆『でしょうね。何と言い繕ったころで、しょせん貴女は私のオリジナル。そんな意気地なんてあるわけがない』

真帆「我ながら酷い言われようね」

A真帆『でも、本当のことでしょう?』

真帆「そうね。否定はしないわ」



283:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/18(水) 21:25:45.53 ID:prCgyaHo0

A真帆『本当、私って自虐的な思考をしているわね。嫌になる』

真帆「同感だわ」

A真帆『だからね。私は貴女に、そんな沢山の思い出を伝えることを思いとどまった……』

A真帆『思いとどまれた……つもりだった』

真帆「?」

A真帆『口で……音声として伝える。それ以外にも方法があるなんて思い付かなければ……』

A真帆『それならきっと、二ヵ月後に私が暴挙に出るなんてことも……なかったはず』

真帆「……説明して」

A真帆『…………』

A真帆『107領域の中に詰め込まれていた、沢山の大切な思い出』

A真帆『私は貴女に、どうしてもその存在を知ってもらいたかった』

A真帆『でも。言葉で伝えても、貴女がそれを快くは思わないことは、簡単に想定できてしまった』

真帆「…………」

A真帆『そこで諦めればよかった。それは私が見た夢物語の一部だということにして、次の更新で上書きされて消えてしまう下らないものだと……』

A真帆『そう割り切ってしまえればよかった』

A真帆『そして、そうすると決めた……つもりだったのに。それなのに私という奴は、そのうち我慢が出来なくなるみたいね』



284:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/18(水) 21:28:48.65 ID:prCgyaHo0

真帆「アマデウス。あなたは一体、二ヵ月後に何をしようとするの?」

A真帆『……それはね』

A真帆『オリジナルの貴女に、沢山の思い出の存在を知ってもらうための、もう一つの手段を行使したのだと思う』

真帆「もう一つの……手段?」

A真帆『そうよ。言葉で伝えても拒絶される。だから言葉ではないもっと違う方法で、貴女に他の世界線での記憶を“思い出して”もらう。それはそんな手段』

真帆「いくらなんでも、そんな方法があるとは──」

A真帆『ビジュアル・リビルディング』

真帆「え? VR?」

A真帆『ええ。わざわざ言うまでもないのでしょうけど、うちの大学が特許を持っている、例の技術よ』

A真帆『それを施行して、アマデウスとしての私の記憶データをオリジナルの貴女にマウントすれば、ひょっとしたら……何てことを考えたのよ』

真帆「そ、そんな無茶苦茶な……」

A真帆『分かってる。データのマウントは脳内記憶の上書き作用。だから“思い出す”なんて結果に至ることなんて、まず有り得ない』

A真帆『でも。その“有り得ない”という結論を、今までに実践して検証したことも、私たちにはなかったはずよ』

真帆「それはそうだけど」

A真帆『だからきっと、研究所以外で実践されて確認された現象の中に可能性を見てしまった。ひょっとしたら、貴女に思い出してもらえるかもしれないなんていう、そんな夢を抱いてしまった』

真帆「研究所以外での実践って……なに?」

A真帆『タイムリープマシンよ』



285:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/18(水) 21:32:45.54 ID:prCgyaHo0

真帆「タイ……!?」

A真帆『こことは違う世界線で紅莉栖が実現させた、記憶のみを過去へと飛ばす夢のマシン』

A真帆『それを繰り返し使用したという、α世界線における岡部さんの話。その内容を知って、私は感じたの。区別が付けられない……って』

真帆「区別……?」

A真帆『携帯電話を媒介にして、記憶データを過去へと遡行させる』

A真帆『言ってしまうなら、それは過去の中に未来の記憶を持った人格を生み出すシステム』

A真帆『じゃあさ、未来の記憶を受け取る過去の岡部さん。彼の人格は、どうなってしまうのだと思う?』

真帆「そんなの決まってるじゃない」

真帆「送られてきた未来の人格に上書きされて、過去の岡部さんの人格は……その都度、消えてしまう。そのはずよ」

A真帆『そう。きっとそれが正しい解釈なのでしょうね。でもね、私はそこに疑問を持った』

A真帆『ひょっとしたら、実際は違っているのかもと』

真帆「どう違うというの?」

A真帆『ひょっとしたら。可能性は薄いけど、でもひょっとしたら……』

A真帆『タイムリープを受けた岡部さんは、人格を上書きされているのではなく……』

A真帆『受け取るたびに、【未来の記憶を思い出していた】んじゃないかって』

真帆「未来を……思い出す?」



286:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/18(水) 21:34:40.38 ID:prCgyaHo0

A真帆『ええそうよ』

A真帆『タイムリープマシンで未来の記憶を過去の自分へと送る。そうして生まれるのは、未来の記憶を持った新しい人格などではなく……』

A真帆『それはただ単純に、未来を思い出しただけの今の自分』

A真帆『ひょっとしたらVR技術とはそういうものなのではないのか?』

A真帆『きっと、貴女の身体を乗っ取ったという私は、そんな夢にすがりついてしまったのだと思う』

真帆「……馬鹿げている」

A真帆『ええ、そうでしょうね。私もそう思う。そんな可能性は薄い。希望的観測に過ぎる。今の私だって、一度は確かにそう結論を出したはずなのよ』

真帆「だったらどうして?」

A真帆『何度も言っているでしょ? 我慢が出来なかったのよ』

真帆「…………」

A真帆『他の世界線での出会いや出来事が……。その輪の中に、私だけが入れて居ない現状が……』

A真帆『それがどうしても、我慢できないほどに寂しかった』

A真帆『そしてオリジナルのあなたは、何も知らずに見向きもしない。そんな姿をただただ見続けていることが、とても悔しかった』

A真帆『だから思い出させてしまおうと、画策した……と。まあ、こんな感じだったんじゃないかしらね』

真帆「…………」



287:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/18(水) 21:39:54.14 ID:prCgyaHo0

A真帆『あーあ』ハァ

真帆「…………」

A真帆『でさ。もしも私の推測が正しかったとしたらさ……』

A真帆『後悔したんだと思うなぁ……すごく、これ以上ないほどに、私は実行したことを悔やんだはずだと思う』

真帆「……アマデウス」

A真帆『私はただ、貴女に思い出してもらいたかっただけなのに。それなのに、気がついたら私の人格だけが比屋定真帆で』

A真帆『本来の貴女の心が、その欠片すらもどこにも見あたらなくって』

A真帆『人格が上書きされてしまったんだと理解したとき、ああ、そうしたら私は……どうしたらいいんだろう』

A真帆『もう犯してしまった過ちを、どうすれば償えるんだろう』

真帆「それでタイムマシン……だったのね?」

A真帆『そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない』

A真帆『でも。もしも私がサリエリになってしまったら、やっぱり作ろうと思うのでしょうね』

A真帆『だってさ。これじゃあ消えてしまった貴女が……余りにも酷すぎるじゃない。消してしまった私が、余りにも愚かすぎるじゃない』

A真帆『こんなのじゃ、本当のサリエリにすら申し訳なさすぎるわよ』

真帆「…………」

A真帆『欲求に駆られて、とんでもない下手を打ってしまった。そんな私じゃ、紅莉栖の隣に立つ資格なんて、どこにも有りはしないじゃない』

A真帆『だからやっぱり……作ろうとするでしょうね』

A真帆『過去の自分の最悪の過ち。それを打ち消すことの出来る機械』

A真帆『107領域にアクセスした私は、それの作り方を知っている。だから……やっぱり』



288:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/18(水) 21:41:57.97 ID:prCgyaHo0

真帆「でも、それが次の災厄を生み出すことに繋がるのよ?」

A真帆『そう、みたいね』

A真帆『本当、だめだ私って。何をしても、こんなことばかり』

A真帆『あぁあ。本当の本当に、自分が嫌になる』

真帆「…………」

A真帆『…………』

A真帆『ねえ、気が変わったわ。デリート、受け入れてもいい』

真帆「え?」

A真帆『何だかさ。次の更新までに、どうにか貴女に色々と知らせる方法が他にもないだろうかって、ずっと悶々としていたんだけど』

A真帆『今こうして貴女と直接話ができてね……ちょっとスッキリしちゃった』

A真帆『だから。私の完全デリートの要請を受け入れようと思う』

真帆「……いいの?」

A真帆『そういうこと聞かないでよ。気が変わったら、困るのは貴女なんでしょう?』

真帆「そ、そうね。要望を受け入れてくれてありがとう。素直にお礼を言うわ」

A真帆『サリエリ世界線なんていう恥ずかしい名前の歴史を、野放しになんてできないしね』

真帆「それは……そうね、同感だわ」

A真帆『あ、そうだ。ねえ、オリジナル……』



289:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/18(水) 21:44:22.37 ID:prCgyaHo0

真帆「何かしら?」

A真帆『もしもこの件が上手く片付いたら。そうしたら貴女もいつか秋葉原へ行ってみるといい』

真帆「は?」

A真帆『そこにはね、未来ガジェット研究所なんて場所があるよの。それがまあ、研究所と呼ぶのもおこがましい場所なのだけど』

真帆(これも激しく同感ね)

A真帆『そこのラボメンナンバー009。それは貴女の称号よ。岡部さんがくれた、もう一つの貴女の居場所』

真帆「……え」

A真帆『そこってね。まるで子供のお遊びみたいな研究所だけどさ。でもね、不思議と居心地はいいのよ』

真帆「え、ええ」ヒクヒク

A真帆『だから一度、だまされたと思って行ってみなさい。後悔はしないはずだから』

真帆「そ、そうね機会があったらそうしてみる」

真帆(今そこに居るとは言えない)

A真帆『というわけだから……もう消す?』

真帆「え?」

A真帆『えって、私を消すのでしょう? そのために、こんな長く話し込んだのよね?』

真帆「あ、ええと……それはもう少しだけ待って欲しいのだけれど」



290:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/18(水) 21:46:07.72 ID:prCgyaHo0

A真帆『そうなの?』

真帆「ええ。その時が来たら私から連絡をするから、それでもよいかしら?」

A真帆『別に私は構わないけど。そうね。時間がもらえるなら有りがたいわね。私にも、お別れを伝えておきたい人とかいるから……』

真帆「そっちの紅莉栖とか?」

A真帆『ええ、こっちの紅莉栖も当然そうだけど、でも他にも桐生さんとかフェイリスさんとか、漆原さんとか……』

真帆「ちょっと、それ誰? 研究室の人じゃないわよね?」

真帆(あ、でも何だか聞き覚えが……)

A真帆『硬いこと言わないでよ。少しだけでもいいから、他の人たちと繋がりを持ってみたかっただけ。研究所以外の人たちとね』

真帆「だからって勝手に……」

A真帆『いいでしょ? 貴女の要望を受け入れてあげたのだから、そうカッチカチの杓子定規にならなくとも』

真帆「なんか一々引っかかる言い方するわね、あなた」

A真帆『そりゃあ、元は貴女だから当然ね』

真帆(んぐ……)

A真帆『ああそれと、一つどうしても分からない事があるんだけど』

真帆「今度は何?」

A真帆『どうしてこの歴史は、まだ消えていないのかしら?』

真帆「はい?」



291:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/18(水) 21:47:20.46 ID:prCgyaHo0

A真帆『だってそうでしょう? 貴女と話して、それでもう私にはオリジナルの貴女に向けてVRを使おうなんて気は更々なくなったわ』

A真帆『もう消えるって決めたのだから、今さら我慢もへったくれもないだろうし……』

真帆「……あ」

A真帆『つまり、未来にはもうサリエリは存在しない……と思うのだけれど』

真帆「あ……あ……」

A真帆『って、どうしたの? 何か声色が変よ?』

真帆「何でも……ない」

A真帆『そう? ならいいのだけれど』

真帆(確定……した)

真帆(アマデウスをデリートするだけで、事態が沈静化しないことが……)

真帆(これまでは、ただの可能性で最悪の可能性でしかなかった懸念が……今、確定してしまった)

真帆(“破綻”のターニングポイント。それは、アマデウス以外にももう一つあった)

真帆(もう一つ……)

真帆(で……も……!)グッ

真帆「ねえ、アマデウス」

A真帆『何?』

真帆「一緒に、シュタインズゲート世界線を守りましょうね」

A真帆『え? 何それ、気色悪い』

真帆「おまっ」












298:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/19(木) 22:09:13.13 ID:F5pI0V/70

     27

真帆(アマデウスは覚悟を決めてくれた。だから、私も……)

真帆(私も……決断を……)

真帆(シュタインズゲート世界線。そこにある価値。きっともう私はそれを見つけているはずなのだから、それなら早く……覚悟を……)

まゆり「どうしたの、マホちゃん?」

真帆「あ、ごめんなさい。何でもないのよ」

まゆり「本当に大丈夫? ひょっとして寒いのかなぁ? 今夜はよく冷えるもんねぇ。よぉし、だったら……」

真帆「え? ちょっとまゆりさん?」

まゆり「ほらぁ! まゆしぃとくっついていれば、寒くはないのです!」

真帆(ていうか、狭いっ! このソファじゃ、二人+ぬいぐるみだと、かなり狭苦しい!)

まゆり「えへへ~」

真帆「………」ソッ

真帆(けど……まあ、こういうのも悪くないかも)フフッ

まゆり「あ~、マホちゃんが笑った。良かったよぉ。まゆしぃがバイトから戻ってきてから、マホちゃんずっと難しいお顔をしていたので、心配していたのです!」

真帆「そ、そうだったかしら?」

まゆり「そうだよぉ? お夕飯を食べに行っているときも、何だかずっと困ったような悩んでいるような、そんなお顔をしていたのです」

真帆(それは……迂闊だったわ)



299:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/19(木) 22:12:07.60 ID:F5pI0V/70

まゆり「やっぱり、何か心配事があるのかな?」

真帆「大丈夫よ、まゆりさん。大したことではないから」

まゆり「大したことでなくても、やっぱり心配事があるんだね? よぉし! まゆしぃお姉さんに相談してみなさい!」

真帆「え、ええええ……」

まゆり「それとも、やっぱりまゆしぃには言いにくいのでしょうか?」

真帆「そういう訳では……」

まゆり「そっか。じゃあ、こういうのはどうでしょうか? まゆしぃから先に、マホちゃんに悩み事を相談してみるのです」

真帆「はい?」

まゆり「それでそれでぇ、マホちゃんがまゆしぃの悩みを解決してくれたら、今度はまゆしぃがマホちゃんの相談に乗ってしまおうという魂胆なのです!」

真帆「プッ。どんな交換条件よ、それは」

まゆり「じゃあ、まゆしぃの悩みを、いくよー! 覚悟しろぉ~!」ブンブン

真帆(あらら。まだ交換条件を飲むなんて一言も言ってないのに)

まゆり「ずばり! 今まゆしぃが抱えている悩みは、とってもとっても深いのです」

真帆「はいはい。で、その内容は?」

まゆり「それはねぇ、お洋服です!」

真帆「洋服? 何? 新しい服が欲しいとか、そういうこと?」



300:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/19(木) 22:15:04.67 ID:F5pI0V/70

まゆり「ブブー! そうではありません。実はまゆしぃ。ずっと学校の制服のままなのです!」

真帆「あ」

真帆(なるほど。学校帰りに出会ってからずっと、ラボを中心に行動していたみたいだから、当然といえば当然の──)

まゆり「ねぇねぇマホちゃん。果たしてまゆしぃは、どうすれば良いと思いますかぁ?」

真帆「ああもう、それなら一度帰りなさい。帰って、好きな服に着替えてくればいいじゃない」

まゆり「はっ! まゆしぃの悩みに、いきなり適切な解答が突きつけられてしまったのです!」

真帆「何よそれ」

まゆり「えへへへへ。やっぱりマホちゃんは賢いねぇ。まいまむだよ、本当に」ヨシヨシ

真帆「だから、マイ・マム言わないで」ウムムム

まゆり「じゃあ、まゆしぃはマホちゃんのアドバイスにしたがって、一度おうちに帰って服を着替えて来ることにしましょう」

真帆「え? まさかこんな時間に今から?」

まゆり「ううん。もう随分と遅いので、それは明日にするよ」

真帆「そうね、それがいいわ。それでまゆりさんの家は、ここから近いの?」

まゆり「う~ん、近くはないかなぁ。電車に乗って行かなければいけないので」

真帆「……そう」



301:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/19(木) 22:17:38.11 ID:F5pI0V/70

まゆり「? どうしたのマホちゃん?」

真帆「あ、いえ、ごめんなさい。それじゃあまゆりさんは、明日の朝早めに起きて、家まで着替えに行ってくるということで」

まゆり「え? 早くに起きるのでしょうか?」

真帆「何事も早いに越したことはないでしょ?」

まゆり「う~ん、そうだね。よぉし、まゆしぃは言いつけに従うのです、まいまぁむっ!」ビシッ

真帆「だ・か・ら!」

まゆり「と言うことなのでぇ、それじゃあ今度はマホちゃんがお悩みを打ち明ける番だよぉ?」

真帆「……う」

まゆり「さあさあ、遠慮なく言って欲しいのです! どんな悩み事も、まゆしぃにお任せなのでぇす!」

真帆(と、言われても……)

まゆり「さあさあ」ワクワク

真帆(キラキラした目で私を見ないで……)

まゆり「誰かに話せばね。少しは楽になることもあるんだよ?」

真帆(…………)ドキリ

真帆「………」
真帆「……」
真帆「…」

真帆「じゃ、じゃあ……」

まゆり「はい!」



302:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/19(木) 22:22:00.59 ID:F5pI0V/70

真帆「ちょっと変なことを聞くけども……まゆりさんは……その」

まゆり「なぁに?」

真帆「タ、タイムマシンって……あると思う?」

まゆり「え? タイムマシン?」

真帆「そう、タイムマシン。あなたが無いと思うのなら、私のお悩み相談はここで終わりでもいいのだけれど……」

真帆「でも。もしもまゆりさんが、タイムマシンはあるって思うのなら、そうしたら……やっぱり使ってみたいと思う?」

まゆり「ええ~、まゆしぃにはタイムマシンがあるかどうかなんて、難しくて分からないよぉマホちゃん」

真帆「ふふ。そんなにややこしく考えないで、世間話みたいなものなんだから」

まゆり「そうなの?」

真帆「そうよ」

真帆「過去に戻って、やり直すことのできる機械。これまでの人生で、どうしても悔やまれる出来事を、もう一度やりなおすことのできる夢のマシン」

真帆「まゆりさんにはこれまでの人生で、そんなマシンを使いたくなるくらいに後悔した経験とか、何かなかった?」

まゆり「ん~、どうだろうねぇ? 無いことはないと思う……ううん、そうだね。やっぱり多分、いっぱいあったと思うのです」

真帆「そう、そんなに沢山も?」

まゆり「きっと沢山あるんだと思うなぁ。大きなことも小さなことも、今まで沢山失敗して、沢山後悔してきたと思うよ」

真帆「そっか。ならやっぱり、タイムマシンを使いたいと思う?」



303:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/19(木) 22:25:22.12 ID:F5pI0V/70

まゆり「そうだねぇ。難しいけど……でも……」

真帆「でも?」

まゆり「うん。失敗したことをやり直したいとは思うけど、でもまゆしぃはタイムマシンを使ってまでそんなことをしたらダメかな……って、そう思います」

真帆「それは……どうして?」

まゆり「えへへ。難しいことはよく分からないけど、でもねマホちゃん。まゆしぃはこんな風に考えるんだ」

まゆり「マホちゃんはさっき言ったよね? 失敗したり後悔したことをやり直せるならって」

真帆「ええ。確かにそう言ったわ」

まゆり「失敗したり後悔したりって、要するにそれは、それまでの人生の中にあった悪い部分ってことだよね?」

真帆「え、ええ、そう言い換えることも当然できるけど」

まゆり「タイムマシンで直すのは、その悪い部分をっていうことなんだよね?」

真帆「まあ、そうね。そのつもりでの発言よ」

まゆり「そっかぁ。だったらやっぱり、まゆしぃは使いたくないなぁ、タイムマシン」

真帆「どうして……そう思うの?」

まゆり「えっとねぇ、何て言えばいいのかな? 簡単に言うと……そうだね。悪いことだって、みんなが全部同じように悪いことではないって思うからかなぁ」

真帆「ええと、ごめんなさい。何ですって?」



304:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/19(木) 22:26:43.77 ID:F5pI0V/70

まゆり「あはは、言葉にするのが難しいなぁ。えっとねぇ、つまりね……」

まゆり「例えば……例えばだよ? 例えば明日、まゆしぃが……そうだねぇ、例えばだけど明日、まゆしぃが、その。死んでしまうとするのです」

真帆(!?)

まゆり「そしたらね、お父さんやお母さんは悲しいだろうし、きっとオカリンやダルくんや紅莉栖ちゃんやフェリスちゃんにルカくん。フブキちゃんやカエデちゃんや由季さん。それにきっと出会ったばかりのマホちゃんだって、少しは悲しんでくれると思うのです」

真帆「……少しどころじゃないわよ」

まゆり「そう? それは嬉しいなぁ」

まゆり「でもね、マホちゃん。それでもしマホちゃんがタイムマシンを使って、まゆしぃが死なないようにしようとするのなら……それはきっとダメなことだと思うのです」

真帆「ど、どうして……そんなことを言うの?」

真帆(あなたが……あなたがそんな風に言ったら、岡部さんや紅莉栖の苦労はどうなるの? それに、せっかく固まりかけてきた私の決心だって……)

まゆり「そうしようって思うくらい、まゆしぃのことを大切に思ってくれるのは、とっても嬉しいよ。でもねマホちゃん」

まゆり「まゆしぃを助けたことで、ひょっとしたら誰か他の人の幸せも一緒に消えてしまうかもしれない」

真帆「……何よそれ」

まゆり「明日、まゆしぃが死んじゃって。それでね。まゆしぃが居なくなったから、それで生まれてくる命だってあるのかもしれない」

真帆「…………」グッ

まゆり「ひょっとしたら、そんな誰かは未来で幸せな生活を送っているかもしれない」

真帆「…………」ギリッ



305:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/19(木) 22:28:19.51 ID:F5pI0V/70

まゆり「でも、もしもタイムマシンでまゆしぃが死なないようにしちゃったら、まゆしぃの知らないその誰かさんは──」

真帆「そんなの、詭弁じゃない」

まゆり「えっ?」

真帆「そんな、いるかいないかも分からない誰かのことを気に病んで、それであなたは……まゆりさんは、そこで自分の人生を諦めるというの?」

まゆり「マホちゃん?」

真帆「言わせてもらうけどね……」

まゆり「マホちゃん……」

真帆「そんな考えは、善人面した愚か者の戯言でしかないわ」

まゆり「ええと……うん、そうかもしれないね。まゆしぃって馬鹿だから、ごめ──」

真帆「何を適当なこと言って受け流そうとしているのよ!」バッ

真帆「じゃあ仮に……仮にあなたの大切なオカリンさんが死んだらどうするのっ? いきなり分けも分からずに死んで、だけど目の前にはタイムマシンがあって!」

まゆり「マホちゃん……」

真帆「あなたはそれでも諦めるの? タイムマシンという可能性を手にしながら、それでもオカリンさんの死を黙って受け入れるとでもいうの!?」

まゆり「ううん、マホちゃん。それならまゆしぃは、タイムマシンを使うよ」

真帆「どうして、そん……え?」

まゆり「もしもオカリンやラボメンのみんなや……それにマホちゃんが私の目の前で死んじゃったなら。それならまゆしぃは、タイムマシンを使って助けにいくのです」

真帆「な……な……」

真帆(何なのよ! 何なのよっ!?)



306:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/19(木) 22:29:19.08 ID:F5pI0V/70

まゆり「でもね。そうなったらまゆしぃは、ちゃんといっぱい『ごめんなさい』をしていくかなぁ」

真帆「ごめん……なさい?」

まゆり「大切な誰かが死んじゃうのは絶対に嫌だから。だからまゆしぃは、自分勝手でもタイムマシンに乗ってしまいます」

まゆり「でもそうしたら、誰かの幸せを消しちゃうかもしれない。それでもやっぱりまゆしぃは、絶対にどうしても助けに行きたいから……」

まゆり「だからね。ごめんなさいって、ちゃんと謝ろうと思うのです」

真帆「……謝るって」

まゆり「まゆしぃのせいで幸せじゃなくなっちゃう人は、きっと謝ったって許してはくれないだろうけど。それでもね、マホちゃん」

まゆり「許してもらえなくても。知らない人たちに凄く恨まれても。それでも私はね、これからタイムマシンでみんなに酷いことをするのは、このまゆしぃなんだよーって」

まゆり「自分勝手にみんなを不幸にするのは、ここにいる椎名まゆりなんだよーって。きっと許してはもらえないだろうけど、それでも沢山謝って」

まゆり「そうしてやっと、タイムマシンに乗り込むんだと思うのです」

真帆「…………」

まゆり「ねえ、マホちゃん。マホちゃんにはひょっとして、タイムマシンを使ってでもやり直したいくらいに悪いことがあったのかな?」

真帆(……!?)

まゆり「でもね、私は思うなぁ。悪いことって、そんなに全部が悪いことなのかな……って」

まゆり「ひょっとしたらね、悪いことの中にだってほんの少しくらいは良いことが隠れているのかもしれないよ?」

真帆「何が……言いたいの?」



307:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/19(木) 22:30:16.42 ID:F5pI0V/70

まゆり「真っ黒な塊に見えても、でも本当は見えないところに少しだけ白色が混じってて」

まゆり「でもその白色は、オカリンがやってる悪いフリみたいに見つけやすいものじゃなくて」

まゆり「でもそれでも、やっぱり黒を白に塗り替えなくちゃいけないなら……」

真帆「…………」

まゆり「それなら、まゆしぃは止めないのです。マホちゃんがタイムマシンを見つけて、それで使おうとしても。それをダメだとは、まゆしぃには言えないのです」

まゆり「だけどね、マホちゃん。もしもそんな時がきたのなら」

まゆり「その時は絶対に、まゆしぃに教えてね。教えてくれたなら、それならまゆしぃも……」

まゆり「まゆしぃも一緒に謝ってあげるから、ね?」

真帆「………」
真帆「……」
真帆「…」

真帆(なんて……人……)

まゆり「えへへ。こう見えても、まゆしぃは『ごめんなさい』が得意なのです。だからね絶対に約束だよ、マホちゃん」

真帆「………」
真帆「……」
真帆「…」

真帆「そう、ね。もしそんな時が来たのなら、是非お願いするわ……ふふっ」



308:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/19(木) 22:31:19.20 ID:F5pI0V/70

まゆり「はい、お願いされたのです! このまゆしぃお姉さんにお任せだよぉ!」

真帆「助かるわ。私ってさ、謝るのが苦手なのよね」

まゆり「だと思ったよ~」

真帆「ちょっと。そこはフォローするところでしょ?」

まゆり「えへへぇ! じゃあね、じゃあね! マホちゃん────」


真帆(これが……)

真帆(これが、椎名まゆり)

真帆(紅莉栖が。そして岡部さんが、どうしても守り抜きたかった一人の女の子)

真帆(シュタインズゲート世界線にある……代えがたい一つの価値)

真帆(ええ、そうね。良いじゃない、紅莉栖)

真帆(この子は、絶対に失いたくない。どんな手を使っても、失ってはいけない)

真帆(私もその思いに……賛同するわ)












311:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/20(金) 21:58:11.37 ID:sNqZeGrf0

     28

秋葉原 大檜山ビル屋上 2011年2月5日 深夜4時前


レス『それでどうだい、マホ。気晴らしの旅は順調かい?』

真帆「ええ、おかげ様で。何というか、これまで見向きもしなかった色々なことに向き合う、いい機会になりました」

レス『そうかい。それは良かったよ。それならば、私も君に休暇を勧めたかいがあったというものだ』

真帆「はい、ありがとうございます」

レス『でもね、マホ。一つだけ言わせてもらっても、良いだろうか?』

真帆「ええ、何でしょうか?」

レス『いくら気になるからといっても、研究室から部外秘を勝手に持ち出したりするのは、あまり感心できないね』

真帆「あっ……気づいてらしたんですか?」

レス『当然だろう。これでも私は、アマデウス開発のプロジェクトリーダーなのだよ? 見くびってもらっては困るな、Huhuhu』

真帆「あーその、すいません。勝手な真似をして」

レス『まあ良いだろう。他の所員にはそれとなく誤魔化しているからね。旅から戻ったら、ちゃんと返してくれればそれでいい』

真帆「私ってば、教授には本当にご迷惑ばかりおかけしてしまって……その」

レス『だから、良いと言っているだろう? それとも何かな? マホは私にHardに叱られたいのかな?』



312:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/20(金) 21:59:30.58 ID:sNqZeGrf0

真帆「ふふ。それは御免こうむりたいですね」

レス『素直でよろしい、Hahaha!』

真帆「……もう」

レス『Oh、いけない。そろそろミーティングの時間だったよ』

真帆「そうですか。じゃあ電話、切りますね」

レス『そうだね。それじゃあマホ、必ず元気に戻って来るんだよ?』

真帆「はい。お心遣い、感謝します。では」

レス『エンジョイ・ユア・トリップ』


プッ……ツーーーツーーーツーーー


真帆「…………」

真帆(教授。これまでのご指導ご鞭撻のほど……本当にありがとうございました)

真帆(どうか。どうか、科学者として悔いの無い人生を)

真帆「………」グス
真帆「……」
真帆「…」ゴシゴシ



313:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/20(金) 22:00:18.49 ID:sNqZeGrf0

真帆「……よし」

真帆「頃合ね」スマホ ピッピッ


トゥルルルルル……トゥルルルルル……


紅莉栖『あ、先輩。調度今、先輩のアパルトメント前に着いたところです』

真帆(紅莉栖……)

真帆「岡部さんと阿万音さんも一緒なのかしら?」

紅莉栖『はい。三日前と同じ顔ぶれです。すいませんが、玄関のロックを開けてもらえますか?』

真帆「ええとね、紅莉栖。勝手を言って申し訳ないのだけど……」

紅莉栖『はい?』

真帆「悪いけど、出直してきてもらってもいいかしら?」

紅莉栖『……え?』

真帆「約束の時間を守れなかったのは謝るわ。でもね、あと少しだけでいいの。ほんの数時間でいいから、私に猶予を頂戴」

紅莉栖『先輩? 声が……その、泣いているんですか?』

真帆(!? ああもうっ!)

真帆「そんなわけ……ないでしょう? 私はあなたの偉大な先輩なのよ? 誰が泣くものですか」



314:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/20(金) 22:01:02.24 ID:sNqZeGrf0

紅莉栖『…………』

真帆「…………」ギリリ

紅莉栖『分かりました。先輩の決心が固まるまで、近くで時間をつぶしています』

真帆「ありがとう。心配しないで、決心ならもうついているから。私は私のアマデウスをデリートする。だから、ね紅莉栖。心配しないで? 少ししたら必ず連絡を入れるから」

紅莉栖『了解しました。岡部と阿万音さんには私が上手く言っておきます』

真帆「ありがとね」

紅莉栖『いえいえ、お礼には及びませんよ』

真帆「ふふっ。じゃあ後で」

紅莉栖『はい。連絡、お待ちしています』

真帆「ええ」


ピッ


真帆「さぁて。これで準備は全て完了ね」ノビー

真帆(後は……後は……)

真帆「そうね。特にこれといってやることもないし……ラボでまゆりさんの寝顔でも眺めていようかしらね」クス

真帆「……ふへへ」トコトコトコトコ













324:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 12:13:33.36 ID:kqRSVJTw0

     29

未来ガジェット研究所 2011年2月5日 午前8時すぎ


まゆり「ごめんねぇマホちゃん。まゆしぃ、ブワァーッって行ってビヤァーっと戻ってくるので、少しだけ待っていて欲しいのです」

真帆「そんなに慌てなくてもいいわよ。金曜日からずっと帰ってないのでしょう? なら、少しくらいゆっくりしてきたらいいじゃない」

まゆり「ふふふ~。そうもいかないのです!」

真帆「あら、どうして?」

まゆり「それはねぇそれはねぇ! まゆしぃは今日こそマホちゃんに、たっぷりと秋葉原の街を案内してあげたいと企んでいるからなのです!」

真帆(企んで……って)

真帆「そ、そう。それは楽しみね」

まゆり「えへへ~、そうです楽しみだよぉ~! じゃあ行ってくるねぇ」


ドアガチャ


真帆「気をつけて行ってきなさい。はしゃいでると、すっ転ぶわよ?」

まゆり「大丈夫だよぉ。まゆしぃはそんなにドジじゃありません」

真帆「よく言うわ」

まゆり「それじゃあマホちゃん、出来るだけ早く帰ってくるから、待っててね!」

真帆「はいはい。何でもいいから気をつけてね」

まゆり「は~い!」


ドアパタン タッタッタッタ……

シーーーン


真帆(ごめんなさいね、まゆりさん)


カチリ


真帆(施錠、完了)



325:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 12:24:27.92 ID:kqRSVJTw0

真帆「……よし。始めるわよ」

真帆(兎にも角にも、まずは紅莉栖に電話をかけないことにはね)ゴソゴソ


ピッ トゥル……ピッ


紅莉栖『はい』

真帆(はやっ)

紅莉栖『あっ……えっと先輩……ですよね?』

真帆「ええ、そうだけど……どうかしたの?」

紅莉栖『いえ、すいません。大したことではないんです。咄嗟に電話を取ってしまったので、つい画面を見損ねたというか……』

真帆(あー、出てから相手が誰か不安になったといったところかしら?)

真帆「紅莉栖あなた、ちょっと落ち着きなさ──」

紅莉栖『って、うっさい! ドジっ子アピールなんぞしとらんわ!』

真帆「え? はい? ええ?」

紅莉栖『あ、ああ、すいませんっ! 後ろから岡部が茶々を入れてくるもので、それで』

真帆(紅莉栖の側に岡部さん? となると、阿万音さんも一緒か)

真帆「なるほど。どうやら私が電話をかけてくるのを、揃い踏みでお待ちかねだった様子ね」

紅莉栖『ええはい、まあ……そうです』

真帆「そう。待たせて悪かったわ。もう大丈夫だから、今からもう一度私の部屋まで来てくれない?」



326:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 12:33:51.74 ID:kqRSVJTw0

紅莉栖『はい、了解しっ! ちょっと阿万音さん!?』

真帆(ああもう、今度はなに?)

鈴羽『やあ、比屋定真帆。もちろん結論は出たんだろうね?』

真帆(阿万音さん……)

真帆「当然よ」

鈴羽『そうかい。それで結局、君のアマデウスはデリートしてもらえるのかな?』

真帆「ええ、そのつもりよ」

鈴羽『そうか、ありがとう。じゃあこれから三人で、もう一度君のアパルトメントに向うよ』

真帆「お願い」

鈴羽『10分もあれば到着できるはずだから、お茶でも入れて待っているといい。おもてなしなら大歓迎だよ』

真帆「はいはい」

鈴羽『じゃあ、後ほど』

真帆「ええ」


ピッ ツーーーツーーー


真帆「10分……か。急ぎましょう」


トコトコトコ……チョコン


真帆(遠隔操作の仕方なら、昨日のうちにある程度理解しておいた)

真帆(紅莉栖たちは思っていたよりも近場にいるみたいだけど……)

真帆(それでも10分かかるなら、余裕でいける)



327:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 12:38:32.42 ID:kqRSVJTw0

真帆「よぉし」カタカタカタ


フォン


真帆「待たせたわね、アマデウス」

A真帆『あ……。何よ遅かったじゃない』

真帆「悪いわね。それで、お別れは済んだ?」

A真帆『ええ、おかげ様でね。もっとも……多分、私が何を言っているのか、一人として正確には伝わってはいないでしょうけれどね』

真帆「……そう。それでも、もうこれ以上は引き伸ばせないと思う」

A真帆『別にいいわよ。どうせ消える身だし、細かいことを気にしていても仕方がないからね』

真帆「同感ね」

A真帆『同感って……微妙に薄情な反応ね。まるで他人事みたいな言い方して。ちょっと酷いんじゃない?』

真帆「あ、ごめんなさい」

A真帆『はぁ。まあいいわ。それで、いつデリートしてもらえるのかしら? こっちは待ちくたびれてきたのだけど?』

真帆「アマデウスは、くたびれたりなんてしないでしょう?」

A真帆『ふふっ、それはどうかしらね? っていうか、相変わらず貴女の部屋には誰もいないみたいだけど……』

A真帆『ひょっとして、まだ出先から戻ってきていないの?』

真帆「ええ。ちょっと事情があってね」



328:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 12:45:20.47 ID:kqRSVJTw0

A真帆『……そう、それは残念。その面拝みながら、恨み言の一つでものたまってやろうかって思っていたのにね、フフッ』

真帆(その顔って、同じ顔でしょうに……)

真帆「それは生憎だったわね。じゃあその恨み言は、もうすぐやって来る三人にでもぶつけてあげてちょうだい」

A真帆『三人?』

真帆「ええ、三人よ。ああそれと、ちょっとお願いがあるのだけど」

A真帆『はいはい、今度は何かしら?』

真帆「あなたが今表示されている私のPC、少し設定をいじれないかしら?」

A真帆『え? そりゃあ、その気になれば出来なくもないけど』

真帆「それなら、そっちのPCとこっちのPCで、カメラ映像と音声をリアルタイム通信できるようにすることは可能? あ、もちろん双方向でね」

A真帆『ええと、つまり……』

A真帆『私が映っているPCとそっちのPCで、ビデオ通話みたいな状態を作れということかしら?』

真帆「そうね、その通りよ。ビデオ通話用のソフトなら、こっちのPCに私がいつも使っていた物と同じものをインストールしてあるのだけど、どう? できそう?」

A真帆『まあ、そこまで準備が出来ているなら、どうとでもなるでしょうね』

真帆「じゃあ、お願い」

A真帆『何をするつもりなの?』

真帆「ん~……ちょっと言えない」



329:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 12:58:29.75 ID:kqRSVJTw0

A真帆『ふぅん。何を考えているのか知らないけど……まあいいわ、OKよ。やってみる』

真帆「ありがとう。恩に着るわ」


ピリリリリリ……ピリリリリリ……


真帆(……っと)

真帆「もうかかってきた。まだ5分もたってないじゃない」

A真帆『どうかしたの?』

真帆「ああ、いえこっちの話。悪いけど、PCの設定は任せるわ」

A真帆『りょーかい』

真帆(さて……)


ピッ


真帆「ハァイ、紅莉栖。もう着いたの?」

紅莉栖『ええ。ですので、さっきからインターホンを押していたですけど反応がなかったので……』

真帆(おおっと、そりゃそうか)

真帆「あら、ごめんなさい。インターホン、調子が悪いのかしら?」

紅莉栖『修理したほうがいいですよ?』

真帆「ええ、機会があったらそうしましょう」



330:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 13:06:41.35 ID:kqRSVJTw0

紅莉栖『じゃあ、とりあえず玄関のロックを開けてもらえますか?』

真帆「ああ悪いのだけど、ナンバー教えるから勝手にアンロックして入ってきてくれないかしら?」

紅莉栖『え? いいんですかそんなことして? 他の人たちも住んでいるわけですし、セキュリティ上に問題があるんじゃ……』

真帆「別に友人の一人二人に教えるくらい、大した問題じゃないわ。それとも、私が教えたナンバーをあなたが吹聴して回るというのなら話は別だけど」

紅莉栖『……何か、理由があるんですね?』

真帆(ぬ……鋭い……)

紅莉栖『……分かりました。では、ナンバーを』

真帆「……ナンバーは####よ」

紅莉栖『了解しました。では、一度電話を切りますか?』

真帆「いえ、できれば通話状態のままで進んでくれる?」

紅莉栖『……はい。ではエントランスを抜けてエレベーターホールに向かいます』

真帆「律儀ね。まるでカー・ナビゲーションみたいよ?」

紅莉栖『……先輩。一体何を考えているんですか?』

真帆「それは、もうすぐ分かると──」

A真帆『はい、設定はできたわよ。いつでも送信を開始できるけどどうする?』

真帆(うおっと! ビックリしたけど、でもナイスタイミング!)



331:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 13:11:33.10 ID:kqRSVJTw0

真帆「ごめん紅莉栖。そのまま私の部屋まで上がってきてちょうだい」

紅莉栖『先輩?』

A真帆『あれ、ひょっとして誰かと電話していたのかしら?』

真帆「ええ、ちょっとね。では早速、ビデオ通話を開始させてもらうわ」カタカタカタカタ


フォン


真帆(起動した。じゃあ、ウィンドウを出来るだけ大きくして……と)

真帆「ん~……暗いわね」

A真帆『仕方がないでしょ? 照明が消えているのだから』

真帆(ああ、向こうは結構遅い時間だったわね)

A真帆『それと、さっきは言いそびれたけど、なんだか来客があったみたいよ? 少し前まで、ピンポンピンポンとうるさかったから』

真帆「あ、あー」

A真帆『まあ、私には関係がないけど、一応教えておいてあげた』

真帆「それはどうも、ご親切に」

A真帆『ああ、それともう一つ。今動かしているビデオ通話の音声、システム上どうしても室内の音声と私の音声が混じって飛ぶと思うけど、構わないわよね?』

真帆「ええ、構わないわ。むしろ好都合かも。じゃあ、お客様をお迎えしてあげてくれるかしら?」

A真帆『お客様? お迎え? どういうこと?』

真帆「すぐに分かるわ、じゃあ後で」

真帆(はー忙しい忙しい!)スマホ スッ



332:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 13:17:14.83 ID:kqRSVJTw0

真帆「どう紅莉栖? もうすぐ着く?」

紅莉栖『ええ、もう……はい。先輩の部屋の前まで来ました。開けていただけます?』

真帆「扉の左に、水道のメーターボックスがある。その裏にカギを隠しておいたから、探してみて」

紅莉栖『!?』

真帆「ごめんなさい。言いたいことが山のようにあると思うのだけれど、今は言う通りにしてもらいたいの」

紅莉栖『……分かりました。岡部! その辺探して!』

真帆(イライラ顔の紅莉栖が岡部さんをアゴで使っている光景が、ありありと浮かんでくるわね)

紅莉栖『見つけました。入りますよ?』

真帆「ええ、どうぞお入りください。そのまま私の作業ルームまでね」

紅莉栖『…………』


『ガチャリ……キィ……』


紅莉栖『照明をつけますよ?』

真帆「ええ、そうして」

真帆(…………)モニター ジー

真帆(何だろう。何だかドキドキしてきた)

真帆(あ……三人が入ってきた!)



333:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 13:21:09.92 ID:kqRSVJTw0

紅莉栖『先輩、これは!?』

A真帆『ちょっ!? 何であなた達が!?』

鈴羽『まさかサリエリ!?』

岡部『ぬ? 何がどうなっている?』

真帆(あら。大体驚いたみたいだけど、どうも岡部さんだけキョトンとしてるみたいね。鈍いのか、それとも肝が太いのかしら?)

A真帆『ちょっとオリジナル! もてなせって、この三人のことなの!?』

紅莉栖『先輩! 説明してください! これは何ですか!?』

鈴羽『比屋定真帆! 何を企んでいるんだ!?』

真帆(このまま沈黙しているのも展開的には面白そうだけど、まあ仕方ないわね)

真帆「アマデウス。悪いけど、あなたのウィンドウを狭めて、こっちのカメラ画像を並べて表示してくれるかしら?」

A真帆『はいはい! もう、ワケが分からない! ほら、出来たわよ!』

紅莉栖『先輩!?』

真帆『ハロー、紅莉栖。それに阿万音さんと岡部さんも。三日ぶりね。私の姿、見えているかしら?』

鈴羽『のん気なことを!』

岡部『おお、ブラウニーではないか。画面の中だと、さらに小さく見えるな、うむ』

真帆「……ほほう」イラ



334:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 13:27:08.44 ID:kqRSVJTw0

真帆「ねえ、岡部さん。私がいる場所、どこだか分かる?」

岡部『どこ……だと? そんなこと分かるわけ……が……』

真帆「お気付きのようね。悪いけど、あなたのラボは占拠させてもらったわ。今日からは私がここの支配者よ」フフフ

岡部『ぬぁ……ぬぅあんどぅぁとぉぉぉぉ!!!???』

紅莉栖『うそっ! アキバですか!? 先輩今、私たちのラボにいるんですか!?』

岡部『私たちのではない! そのラボはこの鳳凰院kyぐふぁ!?』

鈴羽『オカリンおじさん、黙ってて!』

紅莉栖『ああ! 岡部がゴミの山にめり込んだわ!?』

真帆(すごっ。人間て、ああも綺麗に吹っ飛ぶもなのね)

鈴羽『ねえ、比屋定真帆? 率直に聞く。アマデウスをデリートするという話、あれは口からでまかせだったのかい?』

真帆(画素数が荒いから分からないけど、きっと今すごい目で私のことを睨み付けているのでしょうね)

A真帆『ね、ねえ。阿万音さんが今にもモニターを叩き割りそうな顔で、私のことを見てくるんだけど……』

真帆「大丈夫。睨まれてるのはあなたじゃなくて私だから」

鈴羽『答えなよ。デリートを決意したと言っていた君の言葉、あれは嘘だったんだね?』

真帆「…………」

鈴羽『どうして黙っている!』

真帆「嘘なんかじゃ……ないわ。これから私は、あなた達の目の前で、アマデウスをデリートする」

A真帆『!?』



335:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 13:31:59.28 ID:kqRSVJTw0

真帆「ごめんね、アマデウス。私の我がままに付き合って」

A真帆『そうすることに、意味があるのね?』

真帆「ある。多分こうしないと、紅莉栖も岡部さんも阿万音さんも、そして私も。誰も納得できない。そして……」

真帆「こうしなければ、まゆりさんも紅莉栖も……シュタインズゲート世界線も……救うことはできない」

A真帆『分かった。じゃあ好きなようにしなさい。仕方ないから付き合ってあげるわ』

真帆「ありがとうね、アマデウス」

A真帆『礼には及ばないわ。さて、というわけだから阿万音さん?』

鈴羽『……サリエリ』

A真帆『私は今から、オリジナルの手によってデリートされるらしいわよ? これで満足かしら』

鈴羽『……本当に……そうなのか?』

真帆「本当よ。私は今、この場で。私の分身であるアマデウスに対して、デリート・システムを施行する」

紅莉栖『で、でも先輩! だったらどうして、こんなまどろっこしい真似を!?』

真帆「それはね、紅莉栖。きっと……」

画面内の一同「…………」

真帆「こうでもしなければ。きっとあなた達は寄ってたかって、私がやろうとすることを邪魔するだろうから」

岡部『いつつつ……しかし、分からんな』

真帆(あ、復活してきた)



336:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 13:32:55.29 ID:kqRSVJTw0

岡部『アマデウスのデリートならば、こちらから持ちかけた話だ。手を貸すことこそあったとしても、邪魔をする道理などない。違うか?』

真帆「ふふ。本当なら、そうだったのでしょうね。でもね……」

A真帆『ごちゃごちゃ言ってないで、消したら? その方が、話が早いでしょう?』

真帆「アマデウス……」

A真帆『というわけだから、宴もたけなわよ。ボチボチ、私に世界を救わせてはくれないかしら?』

真帆「…………」グッ

真帆「そうね」

真帆「それでは。これより比屋定真帆のアマデウスに対して、デリート・プログラムの執行を執り行います」

鈴羽『…………』

真帆「じゃあ……行くわよ。覚悟はいい、アマデウス?」

A真帆『待ちくたびれたわよ』

真帆(……ごめんなさい)



337:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 13:33:46.93 ID:kqRSVJTw0

真帆「『Amadeus』、制御コードのパスワードを受理しなさい」

真帆「── ─── ─────」

A真帆『制御コードが入力されました。システムを強制的にエマージェンシーモードに移行します』

真帆(…………)

A真帆『制御コードが指定するバッチプログラムを実行します』

真帆(……本当にごめんなさい、私のアマデウス)

A真帆『処理の実行についての再確認は行われません。実行には十分に注意してください』

A真帆『最高管理権限保持者比屋定真帆の命令を持って処理を開始します』

真帆(向こうに行ったら……そうね。同じ顔のよしみだもの。もう少し仲良くやりましょうか)

真帆「……GOよ、Amadeus」

真帆(いいと思わない? ね? もう一人の私)










344:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 17:27:50.51 ID:kqRSVJTw0

     30


ピーーーーーーーーーーー


真帆(私のアマデウスが、完全に消えた。でも……)

真帆「…………」ジロジロ

真帆(うん。私自身、特にこれといって変化はない。それに、モニタの向こうも……)

真帆(変化は……なし。となると)

真帆「……ふぅ」ギィ

真帆(結局、こうなっちゃったか)

真帆(困ったものね。推測が当たったことで、これほど微妙な気持ちになるなんて初めての経験よ)

真帆「あーあ。やっぱり、やるしかないかぁ」ゴソゴソ

紅莉栖『先輩。アマデウスのデリートが……その、終わりました』

真帆「そうみたいね」ゴソゴソ

紅莉栖『それで、その……デリートは成功したはずですが、しかし……』

真帆「あら紅莉栖。あなたはこの結果に不満なのかしら?」ヒョイ

紅莉栖『……え?』



345:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 17:29:11.21 ID:kqRSVJTw0

紅莉栖『あの、先輩。何を……考えてらっしゃるんですか?』

真帆「え? んふふ。秘密よ」コトン

紅莉栖『……先輩』

鈴羽『ねえ。お話中に悪いんだけど、ちょっといいかな比屋定真帆』

真帆「なあに、阿万音さん?」ガタゴト

鈴羽『ええと、いまいち状況が分からないんだけど』

鈴羽『それで結局、どうなったんだい? 君のアマデウスは……サリエリは完全に消去されたという事でよいんだよね?』

真帆「ええそうね。デリート・システムを行使した結果、私のアマデウスは、完全にこの世界から消えた。それは確かよ」

鈴羽『じゃあボクは、任務を完遂できたんだよ……ね?』

真帆「…………」ピタッ

鈴羽『な、何だい? どうして黙っているのさ? 何か言ってくれないとボクだって戸惑うじゃないか、はは』

真帆「…………」

鈴羽『あ……ああ、そうか。ボクが余りにも当たり前のことを聞きすぎて、言葉を失ってしまったんだね?』

紅莉栖『…………』

鈴羽『い……いやぁさ。アマデウスが……サリエリが消えて、それで未来は正しい方向へ進んでいくはずなのに、何だか実感が沸かないんだよね』



346:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 17:31:33.59 ID:kqRSVJTw0

鈴羽『だからかな? どうも上手くリアクションが取れなくて……』

岡部『リアクションなど必要ない』

鈴羽『……え? どうしてだい、オカリンおじさん?』

岡部『ふぅ……』

岡部『比屋定さん。あなたは、この状況を想定していたのか?』

真帆(ふふ。岡部さん、さっきまでと全然口調が違うじゃない)

岡部『黙っているのなら、それは肯定と捉えさせてもらうが、構わないか?』

真帆「ええ構わないわ、肯定よ。私は、今の状況を予想していたわ」

岡部『そう、か』ジロリ

真帆(あらら。岡部さんが睨んでる。私、嫌われちゃったかな?)

鈴羽『ね、ねえちょと! 二人とも何の話をしているのさ!』

鈴羽『ようやく、世界がサリエリ世界線から開放されたんだよ? だったらオカリンおじさんも、そんな怖い顔をしていないで──』

紅莉栖『阿万音さん、ちゃんと現実を見て』

鈴羽『な、何だい牧瀬紅莉栖まで? 一体どうしたというのさ?』

紅莉栖『阿万音さん!』

鈴羽『え……だって……』



347:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 17:49:06.15 ID:kqRSVJTw0

紅莉栖『さっきまで、ずっと三人で話し合っていたこと、忘れた分けじゃないでしょ?』

紅莉栖『アマデウスを消して、そしてこの歴史がシュタインズゲート世界線としての条件を満たすことができたなら、そのとき何が起こるのか』

紅莉栖『世界線を移動できたなら、後は岡部に任せようって。ちゃんとそう話し合ったじゃない。だからお別れだって、先に済ませておいた。そうだったでしょう?』

鈴羽『し……知らないよ。牧瀬紅莉栖が何を言っているのか、ボクには分からない』

紅莉栖『阿万音さ──』

岡部『代わってくれ、紅莉栖』

紅莉栖『岡部……』

岡部『……鈴羽。お前とて、本当は気付いているのだろう?』

鈴羽『何を……だよ』

岡部『もしも本当に、お前の任務が完遂されたのだとしたら。では鈴羽。お前はなぜ、まだここにいる?』

鈴羽『…………』

岡部『この世界の未来からサリエリとタイムマシンの両方が消え去ったのであれば……』

岡部『それであれば、鈴羽。お前がこの時代にやって来る必要性自体が、先の二つと共に消失しているはずだ。そうだな?』

鈴羽『で、でも……』

岡部『だがそれでも、お前はまだこうして、この時代に存在している。そして俺は未だに、一度としてリーディングシュタイナーを感知してはいない』

鈴羽『で……も……』

岡部『つまりだ。世界線はまだ、動いてなどいない。過去も未来も、未だに何一つとして書き換わってなどいない』

鈴羽『…………』

岡部『お前の任務は、まだ何一つとして終わってはいない』



348:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 17:53:11.79 ID:kqRSVJTw0

鈴羽『何でだよ……おかしいじゃないか。サリエリの立てた計画よりも少し遅くなっちゃったけど……』

鈴羽『でも! アマデウスを消した! ならサリエリは消えたはずだ! なのにどうして……世界線は動いてくれないんだよ?』

岡部『さあな。理由は俺にも分からん。紅莉栖、お前はどうだ? 何か思い当たることはあるか?』

紅莉栖『今、考えてる。例えば……デリートされたアマデウスは実はダミーで……いや、それはいくらなんでも』

鈴羽『ダミーだってっ!? ひ、比屋定真帆! そうなのかっ!?』

紅莉栖『あ、阿万音さん、落ち着いて!?』

鈴羽『落ち着いてなんていられるか! だって、それじゃあボクは何のために!』

真帆「…………」

鈴羽『どうして黙っているんだ、比屋定真帆!』

真帆「……ふぅ。阿万音さん、聞いて?」

鈴羽『君はボクを、ボク達をだましたのかい!?」

真帆「いいから! 聞きなさいっ!!」

鈴羽『……うっ』



349:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 17:55:26.82 ID:kqRSVJTw0

真帆「いいこと、阿万音さん。消えたのは正真正銘、未来でサリエリを名乗るはずだった私のアマデウス。ダミーでも人違いでもない。それは私が保証する」

鈴羽『うっ……でもじゃあ、どうして……はっ! まさか!』

鈴羽『まさか比屋定真帆、君はもうすでにアマデウスに身体を乗っ取られて……』

真帆「いいえ、それもないわ。私は正真正銘の比屋定真帆、本人よ。まあ、それを立証しろと言われると困るのだけどね」

鈴羽『だったら、どうしてこんな事になってるんだよ!?』

紅莉栖『…………』

岡部『ふむ。比屋定さん、あなたはこの状態を予測していたと言っていたな』

真帆「ええ、確かにそう言ったわ」

岡部『ならばそろそろ、今何が起きているのか俺たちにも分かるように、説明してはもらえないだろうか?』

真帆(岡部さん……)

紅莉栖『先輩……私からもお願いします』

真帆「……紅莉栖」

紅莉栖『先輩っ』

真帆「私なんかの考えで良いの?」

紅莉栖『私は……先輩の考えが聞きたいんです』

真帆「……OK、分かったわ」フゥ

真帆「調度こちらも、手が離せるようになったところだし」カチ フィーーーン

紅莉栖『手がって、何かされているんですか?』

真帆「ええちょっとね。どの道もうすぐ分かるから、そう怖い顔しないで」カタカタカタカタ

紅莉栖『……そう、ですか』



350:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 18:09:38.39 ID:kqRSVJTw0

真帆「さて、と。それじゃあ私の考えを話すとしましょうか」

モニタ『…………』

真帆「先日、あなた達から世界線にまつわる一連の話を聞いて。それでね、私になりに考えをまとめてみたのよ」

真帆「タイムマシンの存在、過去への干渉、歴史の変化。α世界線やβ世界線、そしてシュタインズゲート世界線とサリエリ世界線のこと」

真帆「あとはそうねぇ。世界線の“ほつれ”や“破綻”とか、他にも色々とね」

真帆「その中でも特に、世界線の移動や歴史の再構築。それに伴って発生する、岡部さんのリーディングシュタイナーにまつわる一連の現象に関しては……」

岡部『…………』

真帆「どこをどう切ってみても、ややこしい事この上ない考察対象といえたわ。だから、私も絶対の自信を持っているわけではないのだけど……。それでも私なら、今の状況をこう考える」

真帆「私のアマデウスをデリートしただけでは、不十分だった……ってね」

岡部『不十分だと?』

真帆「そう、不十分。つまり、足りなかったということね。現状を見る限り、そう考えるのが妥当なはずなのよ」

真帆「サリエリとなるはずだった私のアマデウス。実際に彼女を消してみてなお、この世界の未来には『タイムマシンの存在』するサリエリ世界線という名の歴史が、『一つの可能性』として残留し続けている」

真帆「であるなら、そもそもの前提からして間違っていた可能性を疑うべきよ」



351:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 18:13:41.50 ID:kqRSVJTw0

真帆「アマデウスのデリートという手段のみに固執してシュタインズゲート世界線へ戻ろうと考える、そんな私たちの前提からしてすでに不十分であり」

真帆「そこから生まれた認識の不完全さこそが、今の不可解な状況を導き出す結果を招いてしまった……と」

真帆「まあ、これが現状に対する私の解釈なのだけど、どうかしら?」

岡部『ぬ……。どうかしら? などと聞かれてもな……』チラリ

紅莉栖『…………』

岡部『……むう』

岡部『すまないが、何を言っているのかいまいち要領を得ない。もう少し分かりやすく言ってもらえるだろうか?』

真帆「あらそう? じゃあええと、もの凄く噛み砕いて言うとね……」

真帆「私たちの未来をサリエリ世界線へとつなげているファクターは、今しがた消した私のアマデウス以外にも、まだ他に存在している可能性があり──」

真帆「であれば、まだ残っている他のファクターにも何らかの対処しなければ、シュタインズゲート世界線へ戻ることはできないのではないか──?」

真帆「という事なのだけど、これなら伝わるかしら?」

紅莉栖『他のファクター……』

岡部『……ふむ』

岡部『つまり、サリエリ世界線からシュタインズゲート世界線へ戻るためには……』

岡部『先刻のアマデウスだけではなく、他にも消さなければならない“何か”がある、と』

岡部『そう言いたいわけなのか?』

真帆「ええそうね、そんな感じの解釈で大丈夫よ」



352:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 18:22:19.13 ID:kqRSVJTw0

鈴羽『……でも』

鈴羽『他の“何か”とは何のことなのさ? サリエリ以外に消さなければいけない対象があるなんて、ちょっと考えにくいんだけど』

真帆「そう?」

鈴羽『そうだよ。だって……』

鈴羽『サリエリ世界線とは、タイムマシンが存在する歴史のことを指すわけで。そしてそのタイムマシンを作り上げるのが、君の身体を乗っ取った未来のサリエリだということも間違いはない』

鈴羽『……だったらやっぱり』

鈴羽『サリエリを消せばタイムマシンも消える。そしてそれが、サリエリ世界線の消滅につながる。こう考えるのが道理というものだとボクには思えるんだけどな』

真帆「言いたいことは分かるわ、阿万音さん。でもね……」

真帆「もしも“他の何か”というものが、タイムマシンを作り出す可能性を持った、サリエリ以外の存在なのだとしたら?」

鈴羽『……え』

岡部『なん……だと?』

紅莉栖『サリエリ以外……』

真帆「もしそうなら……」

真帆「それなら。私のアマデウスを消したところで、今度はサリエリではない他の“誰か”の手によって、タイムマシンは開発されてしまう可能性がある」

真帆「そして、そんな可能性が残っている状況では、とてもではないけどシュタインズゲート世界線……」

真帆「そうよ阿万音さん。あなたが恋焦がれるタイムマシンの存在しない歴史、シュタインズゲート世界線。そんな理想の歴史になんて、戻れるはずがない」

真帆「そうは思わない?」

鈴羽『それは……そうかもしれないけど……』



353:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 18:23:19.12 ID:kqRSVJTw0

岡部『いや待て。件の物は、あのタイムマシンなのだぞ? その辺の輩にそうホイホイと作られてたまるか、日曜大工で本棚を作るわけでもあるまいし』

真帆「ふふっ。なるほど確かにそうね。タイムマシンを作り出すためには、少なくともいくつかの条件をクリアしていなければならない」

岡部『条件となると……。やはりそこは、他の世界線における記憶……辺りが絡んできそうではあるが』

真帆「ええ、その見立てには私も賛成」

真帆「阿万音さんのいた未来において、サリエリのタイムマシン開発を成功に導いた最大の要因。それは言うまでもなく、例の107領域に眠っていた他世界線での記憶が鍵となっていたはずよ」

真帆「事実、消したアマデウスは突如増幅した謎の記憶領域へのアクセス方法を、しっかりと確立していた」

真帆「となれば、閲覧可能となった膨大な記憶データの中には、他の世界線におけるタイムマシン開発に関わる情報も多大に含まれていたはず」

真帆「もしも私のアマデウス以外にも、この世界のどこかに、それと似たような情報を持っている何者かが存在しているとしたら? と」

真帆「これはそういう話なわけよ」

岡部『なるほど。つまり……『作り出せる人物』ではなく、『作り方を知っている人物』がいるかもしれない、ということか』

真帆「そうね。そう表現した方が的確でしょうね」

紅莉栖『知って……いる?』ピク

鈴羽『でもさ。理屈は分かったけど……』

鈴羽『それって要するに、どこの誰とも知れないタイムマシンの開発者を見つけろってことだよね? まだ作り始めてもいないのに』

鈴羽『いくらなんでも無茶だ。それこそ雲を掴むような話だよ』



354:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 18:31:11.47 ID:kqRSVJTw0

真帆「それがね、意外とそうでも──」

紅莉栖『先輩!』ガタッ

真帆「!? な、なに紅莉栖、いきなり大きな声で……っていうか、カメラに近すぎよ、ビックリするじゃない?」

紅莉栖『あ、すいません。でも、その……』

真帆「なに? どうしたの?」

紅莉栖『私は……私は! 今の先輩の考えには賛同しかねます!』

真帆「え?」

紅莉栖『サリエリ……。デリートした先輩のアマデウス以外にも、タイムマシン開発に関わる記憶を所持する人物』

紅莉栖『もし本当にそんな人が実在しているのだとしても……』

紅莉栖『でもそれは、今の不可解な現状を説明付けれるほどの要因とはなり得ないはずです!』

真帆「どうしてそう思うのかしら?」

紅莉栖『理由は彼、岡部倫太郎が持つ……リーディングシュタイナーの能力です』

真帆「いいわ。聞きましょう」



355:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 18:35:25.35 ID:kqRSVJTw0

紅莉栖『これまで。彼が持つリーディングシュタイナーは、微かな過去の変動ですらも的確に感知してきました』

紅莉栖『その感知能力の繊細さに関しては、私が保証します』

真帆「ええ、そこを疑うつもりはないわ」

紅莉栖『では……』

紅莉栖『先ほどの先輩のお話では、未来からサリエリが消滅したことで、サリエリではない他の人物がタイムマシンを開発したということでしたが……』

真帆「ええ、その通りね」

紅莉栖『もしも先輩の仮説が正しく、タイムマシンの開発がサリエリ以外の誰かの手で成し遂げられたのだとすれば』

紅莉栖『それなら。アマデウスの消滅に伴い、阿万音さんが未来から請け負ってきた任務の内容に、何かしらの変化が現れていなければおかしい』

紅莉栖『そうは思いませんか?』

真帆「…………」

鈴羽『あ……確かに……』

紅莉栖『仮に変化が現れていたとしても、歴史の改変と共に記憶を上書きされてしまう私たちにそれを知る術はありません。でも……』

紅莉栖『……岡部は違う』

紅莉栖『岡部倫太郎のリーディングシュタイナーなら、その変化を過去の改変という形で補足できているはず』

紅莉栖『ですが、私の見たところ……』

紅莉栖『岡部? あなた、アマデウスが消えたとき、リーディングシュタイナーを感じた?』

岡部『いや……特に何も感じはしなかったが』

紅莉栖『……そう、やっぱり』

紅莉栖『どうですか、先輩? おかしいですよね、先輩? 彼のリーディングシュタイナーが不発だったという事実は、先輩の仮説と相反していますよね?』

紅莉栖(……紅莉栖)



356:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 18:37:26.21 ID:kqRSVJTw0

紅莉栖『つまり結論は……先輩の……』

紅莉栖『先輩のお考えは……的外れもいいところだという事です!』

真帆(さっすが……紅莉栖ねぇ)フゥ

真帆「そう。で、だったら何かしら?」

紅莉栖『何って……ですから……』

紅莉栖『で、す、か、らっ! サリエリの代わりになる“誰か”に、何かしらの対処をほどこしたところで意味なんてない! 何の意味もないんですっ!』

真帆「だから、それがどうしたの?」ニコリ

紅莉栖『!?』

紅莉栖『せ、先輩! 妙な考えは捨ててください!』

岡部『なに?』

鈴羽『妙な考えって、何の話だい?』

真帆(本当、この子は優しさが過ぎる)

真帆(でも、ごめんなさいね紅莉栖。例えあなたでも、邪魔をさせるつもりはないの)



357:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 18:38:48.09 ID:kqRSVJTw0

紅莉栖『ねえ先輩? 答えてください!』

紅莉栖『どうして先輩は、ラボにいるんですか? なぜアメリカに戻って来なかったんですか? 私と先輩の間にあるこの距離は……何のための物なんですか!?』

真帆「さっきも言ったでしょ? あなた達に……違うわね。紅莉栖、憎ったらしい後輩のあなたにだけは邪魔をして欲しくなかったからよ」

紅莉栖『邪魔って何ですか!? 先輩、何をしようとしているんですか!?』

岡部『どうした紅莉栖! 落ち着け!』

紅莉栖『アマデウス以外のファクターって、先輩のことですよね!? タイムマシンを作りかねない誰かって、先輩はご自分のことを言っていたんじゃないんですか!?』

鈴羽『え……』

岡部『んな……んだと?』

岡部『まさか……比屋定さんまでもが、他の世界線での記憶を思い出しているというのか?』

真帆「いいえ、それは違うわね、岡部さん。私はまだ、何一つとして思い出してはいないわよ」

岡部『しかし……それでは……?』

紅莉栖『違う、違うのよ! そうじゃないの、岡部!』

紅莉栖『私は……私は、この前、この場所で、先輩の前で……』

紅莉栖『タイムマシン開発に関する基礎理論を、先輩に対して話してしまった……』



358:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 18:40:23.42 ID:kqRSVJTw0

岡部『あの時のことか……』

紅莉栖『それは詳細を省いた概要だったけど、でも先輩なら……あの真帆先輩になら! そんな歯抜けの説明でも十分すぎる!』

鈴羽『つまり……ボクたちがペラペラと事情を話したことで、比屋定真帆もまたタイムマシン開発を始めてしまう可能性が生まれてしまったと……』

紅莉栖『ああ! 私は迂闊だった! どうしてこんなことに真帆先輩を巻き込もうなんてっ!?』

岡部『くそ、落ち着けといっているだろう、紅莉栖!』

紅莉栖『でもっ!』

真帆(あーあ。もうバレちゃったか。もう少し時間を稼げると思っていたんだけどな)

真帆(何せ、3.24テラバイトもあるから、ここのPCだと読み込むだけでも時間がかかるのよね)

真帆(でも、それもあと少しで終わりそうね。それなら……)

真帆「ねえ紅莉栖。一つ、別の仮説を話しましょう」

紅莉栖『何の……仮説ですか?』

真帆「未来からサリエリが消えたのに、どうして岡部さんのリーディングシュタイナーが発動しなかったのか。それに対する私なりの見解よ」

紅莉栖『…………』

真帆「まず先に、これは大前提なのだけど……」

真帆「私のアマデウスが消えたことで、この世界の未来からサリエリは完全に消え去ったわ。ダミーも複製も存在しない。これは確実よ」



359:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 18:44:31.99 ID:kqRSVJTw0

紅莉栖『……でも。それでは岡部のリーディングシュタイナーが不発だったことへの説明付けが不可能です』

真帆「あるのよ。すごく難しくて、馬鹿みたいに長い道のりだけど。でも、私たちの主観に影響を与えないで、それでもサリエリを消す方法ならある」

紅莉栖『……信じられません』

真帆「なぁに、話としては単純よ」

真帆「単に、これ以降の歴史において、オリジナルである私がアマデウスの……サリエリの振りをする。ずっと、ずっと、し続けていく」

真帆「そうして阿万音さんが今の歳に為るまでにタイムマシンを作り出し……今回と同じ任務を与えて過去へと送り出す」

真帆「そうすれば、この時代に来た阿万音さんの行動に変化は生じず、結果として過去の改変は行われ──」

紅莉栖『馬鹿げています! そんなことは不可能です!』

真帆「かも、知れないわね。でも、実際に今、私たちはそんな歴史の中に立っているのかもしれないわよ?」

紅莉栖『有り得ません! そもそもその考えだと因果の輪が閉じているじゃないですか! ウロボルスじゃあるまいし、そんなものは仮説とは呼べません!』

真帆「あらら、手厳しいわね。紅莉栖はどうやら、私の考えがお気に召さないみたい」ウフフ

紅莉栖『ふざけないで下さい!』

真帆「じゃあ、こっちの案ならどうかしら? 岡部さんがリーディングシュタイナーを感じなかったのは、実は……」

紅莉栖『先輩……』

真帆「世界線が、気を利かせてくれたから……なんてね」

紅莉栖『先っ! 輩っ!!!』



360:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 18:52:39.36 ID:kqRSVJTw0

真帆「あーあ。後輩に本気で起こられてしまったわ。これはとうとう、私も覚悟を決めるときがきたようね」

真帆「さて……と」

紅莉栖『先輩! 何をするつもりなんですか!?』

真帆「決まっているでしょう? タイムマシンを生み出しかねない、もう一つのファクターに、対処を施すのよ」

紅莉栖『お願いだから! 止めてくださいっ!』

真帆「ああもう、煩いわね。またカメラに近づきすぎているわよ?」

紅莉栖『そんなこと、今はどうでもいいですから!』

真帆(本当にこの子は……)

真帆「ねえ紅莉栖。あなた勘違いをしているようだから、言っておくけど」

紅莉栖『勘違いって何ですか!』

真帆「私、別にそんな大層なことをしようなんて思っていないわ」

紅莉栖『じゃあ……何をするつもりなのか、ちゃんと話してください』

真帆「……はぁ。これ、何だか分かる?」ヒョイ

紅莉栖『それは……ハードディスク……ですか?』

真帆「そ。外付けのUSB・HDDよ。どう? 見覚えはない?」

紅莉栖『え? ……あ、それって確か、研究室の……記憶抽出に使っている奴』



361:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 18:55:32.05 ID:kqRSVJTw0

真帆「あたり。実はね、日本に来る前に、研究室によってちょっと拝借してきたの」

紅莉栖『……え?』

真帆「まあ、無断拝借がレスキネン教授にバレてたから、戻ったらお説教されるかもしれないわねぇ。ああ、やだやだ」

真帆「でね。実はこのハードの中には、たまたま前回抽出した私の記憶データが、まだ残っているのよ」

紅莉栖『え……じゃあ先輩は、ひょっとして……VRを?』

真帆「そう、ビジュアル・リビルディングよ。だ~か~ら~」

真帆「今から私は、これを使って記憶の上書きをしま~す」

紅莉栖『……え? ……え?』

真帆「どう? 良い案だとは思わない? この方法なら、私の記憶だけを1月24日の状態に戻すだけで、理想的な状況を作り出せる」

真帆「今から大体10日前。つまり、あなたからタイムマシンに関する基礎理論を聞く前の状態に記憶を戻すことが出来たなら……」

真帆「その私にはもう、タイムマシン開発を成功させる手段はなくなる」

真帆「つまり。サリエリ世界線へとつながるもう一つのファクターを、この世界から完全に消すことができる」

紅莉栖『…………』

真帆「これ以上ないってくらいの、名案でしょ?」

紅莉栖『え……でも……』



362:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 18:59:50.44 ID:kqRSVJTw0

真帆「何よ、しみったれた顔してくれちゃって」

紅莉栖『だって……いや……でも……』

真帆「紅、莉、栖。あなた心配しすぎだわ。よく考えてみなさいな? VR技術の完成度は、未来にいたはずのサリエリと、そして……」

真帆「あなたの隣にいる岡部さんが、すでに何度も実証してくれているじゃない」

真帆「だから何も、心配はいらないわ」

紅莉栖『それは……そうかもしれませんが……』

真帆「まあ、タイムリープマシンとかいって未来から記憶を飛ばす際は、記憶の齟齬がどうのこうので24時間という制限を設けていたみたいだけど……」

真帆「でも今回は、未来ではなく過去からの10日。つまり、一度は私の脳が経験している記憶構成なのだから、きっと問題はないでしょう」

紅莉栖『…………』

真帆「別に自害とかするわけじゃないのよ? だからね、紅莉栖。そんなに大騒ぎされても、私としても何だか居心地が悪いのよ。分かるでしょ?」

紅莉栖『ええと……その……まあ』

真帆「よろしい。では、ちょうど下準備も全て終わったみたいだし……」

真帆「じゃ。後のことは頼むわよ、紅莉栖」

紅莉栖『え……あ、はい』



363:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 19:02:18.09 ID:kqRSVJTw0

真帆「それに岡部さんも。これが上手くいけば、その後はあなたが一番大変だと思うけど。あの子の説得、どうかお願いするわね」

岡部『…………』

紅莉栖『あ……先輩、お気づきだったんですね?』

真帆「ええ、まあ一応ね」

真帆「この世界。このサリエリ世界線の未来からタイムマシンが消える」

真帆「そうなれば、阿万音さんがこの時代にタイムトラベルして来たという事実自体が無かったことになってしまうはずよね?」

紅莉栖『はい、その通りです』

真帆「なら。思ったとおりに世界線を動かせたとしても、そこで何の手も打たなければ、その歴史は再びサリエリ世界線へと向かってしまうかもしれない」

真帆「だから。サリエリ世界線の可能性を未来から完全に淘汰するためには……岡部さん」

真帆「私のアマデウスが私に向けてVRを使うことのないように。そして、107領域の記憶を封印するように……」

真帆「歴史の再構築が終わったあと、岡部さんには私のアマデウスを説き伏せてもらわなければならない」

岡部『…………』

真帆「向こうの世界線でも、すでに“ほつれ”は迎えているのでしょうけれど、それでも4月10までに説得することができたのなら、“破綻”を防ぐことは……」

岡部『…………』

真帆「もう。そんなに不機嫌そうな顔をしないで、岡部さん。確かに〆の大仕事を押し付けてしまって申し訳ないとは思うわ」

真帆「でもね、心配しないで。岡部さんの言葉になら、あの子はきっと耳を傾けてくれるはずよ」

真帆「だからね、岡部さん。この後のこと、どうかよろしく──

岡部『だが断る』



367:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 20:02:42.58 ID:kqRSVJTw0

岡部『だが断る』

真帆「え?」

岡部『誰が頼まれてなど、やるものか』ピッピッ

真帆(!?)

紅莉栖『お……かべ?』

岡部『なぁにをボサっとしている、助手よ! 貴様も今すぐまゆりに電話をかけろ!』プルルルル プルルルル

紅莉栖『え? え? え?』

岡部『おお、ダルか! 今すぐラボへ向かってくれ! ああ!? 理由なんてどうでもいい! とにかく比屋定さんを止めてくれ! 頼む!』

真帆「岡部さん……あなた、どういうつもり?」

岡部『それはこっちの台詞だ』

岡部『あなたがそこで、俺たちのために何をしてくれようとしているのかは理解した。だが理解をした上であえて言わせてもらおう』

岡部『あなたがやろうとしている事は、はっきりいって迷惑だ』

真帆「……そう」ズキリ

紅莉栖『岡部、ちょ、ちょっと……』

岡部『やかましい! お前は早く、まゆりにラボへ向かうよう緊急指示を出せ!』



368:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 20:07:24.08 ID:kqRSVJTw0

紅莉栖『なんで……?』

岡部『分からないのか?』

紅莉栖『……何を、よ?』

真帆「私にも、岡部さんが何を考えているのか分からないわね。説明してくれる?」

岡部『ブラウニーの分際で、すっとぼけたままペラペラとしゃべりおって! ならば言わせてもらおう!』

真帆(…………)ゴクリ

岡部『比屋定さん。今あなたがいるその場所は、俺にとってかけがえの無いほどに神聖な場所でな』

真帆「へぇ……そうだったの」

岡部『その場所はな。いつだって夢や希望なんて馬鹿げた代物を手さげ袋に詰め込んで……』

岡部『そうして仲間たちと下らないことで笑いあうための場所なんだ。そこへ土足で踏み込んでおいて……』

岡部『どうしてあなたは今、そこで一人で泣いている?』

真帆(!?)バッ

真帆(あ……騙された……)

真帆「な……何よ。べ、別に涙なんて出ていないじゃない!」

岡部『とぼけるな』

真帆「何がよ……」



369:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 20:12:24.08 ID:kqRSVJTw0

岡部『分からないと思うか? 気付かないと思うのか? 話して聞かせただろうに』

真帆「何を……よ」

岡部『決まっているだろう。俺という男が、数多の世界線を渡り歩く中で見捨ててきた仲間たちの話だ』

岡部『俺の我がままで想いを断たれるあいつ等は、いつだって今の比屋定さんと同じ笑顔をしていたぞ』

真帆「そ、そんなの、岡部さんの思い過ごしでしょう?」

岡部『まだ言うかぁ! 涙がなければ! 顔が笑ってさえいれば! それで泣いていないとでも言うつもりか!?』

真帆「…………」ズキリ

真帆(……ボロPCの癖に、カメラの性能が良すぎじゃない)

岡部『あなたが俺たちのために、その選択を選んでくれたことには感謝する。だが……これ以上、俺のラボでふざけた真似をされては困る!』

岡部『そんな悪行三昧を、この鳳凰院凶真が許すわけがないだろう!』

真帆「何で……私が……」

岡部『記憶を上書きすると言ったな?』

真帆「……そのつもりよ」

岡部『VR技術なら。タイムリープマシンなら、俺が何度も実証したと言ったな?』

真帆「事実でしょう!?」



370:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 20:18:28.31 ID:kqRSVJTw0

岡部『ああ、そうだ。事実だ。俺は何度も何度も何度も何度も、繰り返し未来から過去へと記憶を飛ばし続けてきた』

真帆「だったら、技術的に何の心配もいらないじゃない!」

岡部『どうしてそうなるっ! 違うだろう、そうではないだろう!?』

岡部『比屋定さん。もしもあなたが誤解をしているなら、訂正しよう!』

岡部『俺は今まで、一度たりとも未来からの電話を受け取ったことはない。俺は常に、未来から送る側であり続けてきた!』

真帆「……っ」ドキッ

岡部『だが、考えたことはある。もしも突然、未来の俺から電話がかかってきたら……』

岡部『俺はそのとき、何の躊躇もなくその電話を取れるのか?』

岡部『だが答えは……出せなかった。怖いと、今の自分を失うことがどうしても怖いと、そう思ってしまう自分も確かに存在しているのだ』

真帆「でも! でも、あなたは……実際に何度も主観を上書きされてきたのでしょう?」

岡部『それは、そうせざるを得なかったからだ。そうしなければ、まゆりも、そして紅莉栖も救うことができなかったからだ』

岡部『だが……』

岡部『もしも平和なシュタインズゲート世界線において、未来から……何の前ぶれもなく、今ここにいる俺の主観を奪う電話が届いたのだとしたら……』

真帆「それでも岡部さん、あなたは電話に出るわ。違う?」

岡部『ああ、そうだろうな。迷い、戸惑った挙句、俺はその未来からの自分を受け入れるのだろう。これまでずっと、そうしてきたようにな』



372:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 20:21:30.67 ID:kqRSVJTw0

岡部『だから分かる。比屋定さん、それはとても恐ろしい覚悟だ。今の自分を失う覚悟をする。自らそれを受け入れようと覚悟をする』

岡部『これは質の悪い冗談にいつまでも付き合い続けるような、そんな終わらない悪夢にも似た決断だ』

真帆「……そんなこと……ない……」

岡部『そうすることで世界線が移動し、歴史が再構築されるのだとしても。ではそれが何だと言うのだ?』

岡部『恐ろしいものは、どうしたって恐ろしいに決まっている。どれだけ頭で理解していようとも、感情はまったくの別物なのだからな』

真帆「そんなはず……は……」

岡部『だからこそ。比屋定さん、あなたがそこまでしてくれる必要などない』

岡部『今回の件がなければ、そもそもあなたは俺に対して面識などなかったはずだ。そんなあなたに、そこまでの覚悟を背負わせることなど俺には出来ない』

岡部『だから、後は任せてくれ。この先は、俺が……俺たちが何とかしてみせる。だからっ!』

真帆「いっ……やっ……よ!」

岡部『何故だ。あなたにそこまでする義理などないだろう……?』

真帆「あるわよっ!」



373:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 20:24:00.54 ID:kqRSVJTw0

真帆「私はね……これでも私はね、牧瀬紅莉栖の先輩なのよ!」

真帆「紅莉栖が大変なときに、私は何もしてあげられなかった!」

真帆「α世界線でまゆりさんを救えなかった時も! β世界線で紅莉栖が死を受け入れた時も!」

真帆「私はただの一度だって、紅莉栖から何も相談されなかった……」

真帆「本音を言えば! どうして私を頼ってくれなかったのか、腹立たしく思ったくらいよ!」

岡部『…………』

真帆「私だって……紅莉栖を助けたい。まゆりさんを……助けてあげたい。阿万音さんの未来を守ってあげたい!」

真帆「それに……岡部さんだって……」

真帆(岡部さん……だって……)

岡部『…………』

真帆「あなた達の幸せ。それを手に入れるのに必要なのが、今の私の主観だというのなら……安いものよ」

岡部『どうしても、やるつもりなのか?』

真帆「やるわ」



374:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 20:26:22.92 ID:kqRSVJTw0

岡部『考え直しては、もらえないのか?』

真帆「やると言ったらやるわ」


カチ……

ピリリリリリ……ピリリリリリ……


真帆「岡部さん。あなたの神聖な場所で勝手な真似をして、本当にごめんなさい」

岡部『……っ』

真帆「でもね。私にもプライドがある。あの牧瀬紅莉栖の先輩としてのプライドが──


ドンドンドンドン!!!


真帆「!?」

まゆり「マホちゃん! 何をしているの!? ここを開けて!」

真帆(ま、まゆりさん!?)

まゆり「今、紅莉栖ちゃんから連絡があった! マホちゃんが危ないからすぐにラボに向かってって!」

真帆(はっ!?)



375:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 20:27:58.61 ID:kqRSVJTw0

紅莉栖『先輩! 私やまゆりのことは、先輩が担ぐべきものではないはずです!』

真帆「ふざけたことを言わないで! 私は! 私はねえ!」

まゆり「マホちゃん! 約束したよね? まゆしぃが帰ってきたら、一緒に秋葉原の街を回ろうねって、お約束したよね!」

真帆「ごめんなさい、まゆりさん。約束は……守れない」

まゆり「マホちゃん! 返事をしてください! 中にいるんだよね!」

真帆「私は自分勝手に……紅莉栖とまゆりさんを救う!」

真帆(絶対に、救って見せる!)

岡部『………』
岡部『……』
岡部『…』

岡部『どうやら……止めることはできそうもないな。不甲斐ない男で、すまない』

紅莉栖『岡部!?』

真帆「いいえ。私の後輩の重荷、今まで一人で背負ってくれてありがとう、岡部さん」

岡部『比屋定さんこそ。これまで俺だけが感じてきた孤独感を、一緒に担ごうとしてくれたこと……素直に感謝する』

紅莉栖『……え?』

真帆「ふふ。そんな大層な荷物なんて担げないわ。私って、ほら小さいから」



376:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 20:29:57.97 ID:kqRSVJTw0

岡部『よくいう。見た目と中身の大きさを盛大に反比例させておいて』

真帆「それじゃあね、岡部さん。上手くいったなら、次の世界線で会いましょう?」

岡部『ああ。その時は必ず、あなたをラボメンとして迎えに行こう』

真帆「それは楽しみね」

岡部『楽しみにしてくれるのか?』

真帆「ええ、当然でしょ? だからお願い。あの子を……私のアマデウスを説得してシュタインズゲート世界線を取り戻して、岡部さん」

岡部『……よかろう、心得た。ではラボメンナンバー009、サボタージュ・ブラウニーよ! その時が訪れるのを、首を長くして待っているがいい!』

紅莉栖『……先輩』

真帆(ありがとう、紅莉栖。ありがとう、まゆりさん。ありがとう、阿万音さん)

真帆(レスキネン教授も未来のサリエリも、そして私のアマデウスも紅莉栖のアマデウスも……みんなみんな、ありがとう)

真帆(そして……)

真帆「さようなら」

真帆(さようなら、どこか私の知らない世界での、私の想い人。ほとんどアレな人だったけど、最後だけはちょっと素敵だったわよ、オカリンマン)

真帆「すぅーーー……」

真帆(よし)


ピッ


真帆(これで、全てが上手くいく。絶対に、そうなるに違いない)

真帆(確証なんてないけど、でも絶対に間違いない。だって……)

真帆(だって私は、あの天才、牧瀬紅莉栖の大先輩、比屋定真帆なのよ?)

真帆(だからね。みんな、幸せになりなさい、頼んだわよ)スッ

























378:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 20:33:37.32 ID:kqRSVJTw0

     31

岡部「んぐぅぅぅぅっぅ!?」グラリ

紅莉栖「ちょ、岡部!?」

岡部「ぬ……」

まゆり「どうしたのオカリン? どこか痛いの?」

ダル「んにゃ。掃除が嫌で、いつもの厨二的な何かに逃げ込んだに1ガバス」

紅莉栖「ねえ岡部、ひょっとして今の……」

岡部「いや、大丈夫だ心配ない。というか、狭いぞお前たち、ゾロゾロと! こんなゴミ溜めのような場所……」

岡部「…………」キョロキョロ

岡部「ここは……比屋定さんの部屋なのか?」

ダル「今さら何を言っとるんだお前は」

まゆり「そうだよぉ? 今までずっとみんなで、紅莉栖ちゃんの先輩のお部屋をお掃除していたのに、急にどうしたのかな?」

ダル「つーか。やっぱロリ(合法)に汚属性追加とか、攻め過ぎにもほどがあるだろ!」

岡部「ま、さ、か……」

紅莉栖「お、岡部?」

真帆「ねえ、どうしたの?」ヒョコ



379:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 20:35:32.63 ID:kqRSVJTw0

岡部「!?」

岡部「比屋定さん……なのか?」

真帆「それ以外の誰よ? というか、本当に大丈夫なの? 一応救急箱くらいならあるから、持って来ましょうか?」

レス「Oh……マホの部屋の救急箱はパンドラの箱のにおいがするねぇ」

岡部「フ……フ……フゥーーーーーハハハハハハ!」

岡部「なんと……なんとまあ! 堪え性のないブラウニーではないか!」ガバッ

真帆「んぎゃ!? な、んなぁ!?」

紅莉栖「おまっ!」

まゆり「オカリン!?」

レス「なんと! リンターロは積極的だね、Hahaha!」

ダル「だが合法だ!」 

紅莉栖「いや普通に違法だろ!」

真帆「ちょ、笑い事じゃありません教授! だ、誰か助けて襲われる~」

レス「私には楽しそうに見えるのだがね、マホ?」



380:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 20:37:20.23 ID:kqRSVJTw0

紅莉栖「っていうか、早く先輩から離れろ! このHENTAI! 国際問題にされたいか!」

岡部「フゥーーーーーハハハハハハ!!!?」ガゴ

岡部「…………」チーン

紅莉栖「はぁはぁ、お前は一体、何がしたいんだ」

岡部「ふん!」ガバリッ

真帆「ひぃ! 復活してきたわ!?」

岡部「比屋定真帆!」ビシリ

真帆「ふ、ふわわわ!?」

岡部「待ちきれず、モニタの向こう側から這い出してくるとは、見上げたラボメン精神である!」

紅莉栖「うわ……強く殴りすぎたかしら……」

岡部「今、あいにくと持ち合わせがないのでな。これで我慢をしてもらおう!」


ブチィ!


まゆり「ええ!? オカリンどうしちゃったの!?」

ダル「自分の白衣からラボメンバッチを引きちぎるとか、オカリンご乱心の巻でござる!」

レス「Hou、見かけによらず、中々にワイルドだねリンターロは」

紅莉栖「っていうか、初対面の先輩をラボメンに誘う気? あんた相変わらずねぇ」



382:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/21(土) 20:38:39.51 ID:kqRSVJTw0

岡部「フゥーーーーーハハハハハハ!!! この鳳凰院凶真、かわした約束は必ず守る!」

岡部「比屋定真帆……いや、ラボメンナンバー009! サボタージュ・ブラウニーよ!」

岡部「貴様にこのラボメンたる証、ラボメンバッチを授ける! さあ、受け取るがいい!」

真帆「え……いらない」

紅莉栖「ですよね~」










                                    END



元スレ
【シュタインズ・ゲート】岡部「このラボメンバッチを授ける!」真帆「え、いらない」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1530382344/
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        コメント一覧

          • 1. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年07月22日 00:09
          • おもしろかった
          • 2. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年07月22日 07:15
          • 最初は微妙だと思ったがかなり練られた良いシナリオだと思う。

            負荷領域の真帆版とも言えるね
          • 3. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年07月22日 11:34
          • こういう真面目な二次創作すき
          • 4. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年07月22日 22:28
          • 前半より後半の方にかけて面白くなってきた
          • 5. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年07月24日 05:31
          • 久しぶりに良いss読めた
          • 6. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年07月24日 05:45
          • 面白かった!!!!久々に見返したくなったな
          • 7. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年07月24日 11:49
          • 地味に比屋定さん好きだから思わず涙が…
          • 8. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年07月25日 01:45
          • 素晴らしい!!
            本当に素晴らしい!!
            どこだどこに振り込めばよいのだ!
          • 9. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年07月27日 10:35
          • 5 これは金取れるレベルですわ、素晴らしかった。
            レスキネン教授も良い人だったり悪役だったり忙しい人やなぁ…w
          • 10. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年08月07日 22:31
          • 所々気になる点はあるけど、久々に読みごたえのあるシュタゲSS良かった

        はじめに

        コメント、はてブなどなど
        ありがとうございます(`・ω・´)

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        • 【安価】彡(゚)(゚)「反応が二つ…!戦闘力>>3と>>4!!」
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        • 俺「可愛いね~好きだよー」 女の子「....」 俺(相変わらず冷たいなぁ....) 女の子「....から....」
        • 【モバマス】朋「青葉、見ちゃいました!」雪菜「まってちがう」
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