喪黒福造「いじめに遭っているあなたの人生を変えてみましょうか?」 女子高生「本当にそんなことが……」
ただの『せぇるすまん』じゃございません。私の取り扱う品物はココロ、人間のココロでございます。
この世は、老いも若きも男も女も、ココロのさみしい人ばかり。
そんな皆さんのココロのスキマをお埋めいたします。
いいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます。
さて、今日のお客様は……。
相川真由 高校1年生
【いじめの連鎖】
ホーッホッホッホ……。」
テロップ「201X年4月、東京都立未来が丘高校」
昼間の街。道路には車が盛んに行き交っている。
横断歩道付近。未来が丘高校の制服を着たツインテールに眼鏡の女子生徒が、他校の制服を着た3人の女子に迫られている。
テロップ「山田須美香、伊藤桜、田川弥生」「相川真由(15) 未来が丘高校に入学」
山田「オラオラ、早く渡れよ!!」
伊藤「そうだそうだ!!」
真由「え、でも……。そんな……」
田川「グズグズすんなって!!」
3人の女子たちに嫌がらせを受ける相川真由の姿を、喪黒福造が見つける。
喪黒「いい加減、よしたらどうです。1人の人間を、3人がかりで寄ってたかっていじめるのは」
山田「いじめじゃないよこれは!」
伊藤「あたしたち遊んでたんだよ!」
田川「そうだよねー、真由」
真由「う、うん……」
山田「はあ!?証拠もないのに何を……」
喪黒「証拠ならありますよ」
喪黒はズボンのポケットからスマホを取り出す。喪黒がスマホを操作すると3人の女子と真由の会話が聞こえる。
スマホから聞こえる音声。
山田「あの車がたくさん走ってる車道へさ、赤信号のまま横断歩道を渡るんだよ!!」
伊藤「渡るのはもちろん真由!!あんたが今日、あたしたちと再会した罰ゲームってことで!!」
真由「そ……そんな……」
田川「うまいこといけば助かるし、下手すりゃ死ぬ!!でも、あんた弱いからねぇ…。弱い奴が死ぬのありふれてるし!!」
山田、伊藤、田川「キャハハハ!!」
喪黒にスマホの録音音声を聞かされ、3人の女子は顔色が変わる。
喪黒「その言葉を言いたいのは私の方ですよ」
「今ここにいる山田須美香さん、伊藤桜さん、田川弥生さんは、中学のころに相川真由さんをいじめていました」
「そうでしょう?」
田川「こいつ、なんで私たちの名前知ってんだよ……!!」
喪黒「山田さんのお父様は表向きは会社社長ですが、裏の顔は暴力団組長だそうですねぇ……」
山田「うわ、個人情報ダダ漏れじゃん……!!」
伊藤「おい、おっさん!!あたしたちの親にチクって、金でもせびろうってのかよ!!」
喪黒「いえいえ、そんなつもりはありません。私が言いたいのは、もう相川さんをいじめるなってことです」
「あなたちが今度相川さんに会っても、いじめをやらなければ何も起きませんよ」「いじめをやらなければの話ですが……ね」
喪黒は3人の女子に右手の人差し指を向ける。
喪黒「ドーーーーーーーーーーーン!!!」
3人「キャアアアアアアアアア!!!」
真由「あ、あれ……!?3人の姿は……」
喪黒「ああ、あの3人ですか」
喪黒が反対側の歩道の方を指差す。街路樹の上の枝に3人の女子が引っ掛かっている。
山田「え!?ここはどこ!?」
伊藤「あたしたち今まで何を……!?」
田川「助けてー!!」
通行人たちは、街路樹に乗っかっている3人の女子を奇異な目で見つめている。
一緒に歩道を歩く真由と喪黒。
真由「あの、さっきは助けていただいてありがとうございます……」
喪黒「なぁに、例には及びませんよ。ところで私は、こういう者でして……」
喪黒が差し出した名刺には、「ココロのスキマ…お埋めします 喪黒福造」と書かれている。
喪黒「私はセールスマンです。お客様の心にポッカリ空いたスキマをお埋めするのがお仕事です」
真由「心のスキマを埋めるセールスマン……」
喪黒「あなたの心にも大きなスキマが空いているようですねぇ」
BAR「魔の巣」。喪黒と真由が席に腰掛けている。
真由の席に、オレンジジュースが運ばれてくる。真由から話を聞く喪黒。
真由「喪黒さんのおっしゃる通りですよ。私は中学時代に激しいいじめに遭っていました」
喪黒「なるほど。中学のころはいろいろ大変な思いをしたようですなぁ。相川さん」
「でももうご安心ください。次にあの3人からいじめに遭う心配はもうありませんよ」
真由「本当に大丈夫ですか?」
喪黒「まあ……。もし仮に、今度あの3人があなたをいじめようとしたなら何かが起きますけどね……」
真由(ビクッ……)
喪黒の笑みを見て、思わず驚いた表情をする真由。
喪黒「いやぁ、私はセールスマンですよ。もっとも、普通のセールスマンとは違っていますがね……」
真由「確か、心のスキマを埋めるセールスマンでしたよね……」
喪黒「その通りです。何だったら、いじめに遭っているあなたの人生を変えてみましょうか?」
真由「本当にそんなことが……」
喪黒「できます。そのために、あなたにいいものをあげましょう」
喪黒は鞄から何かを取り出す。机の上に置かれたのは黒っぽい拳銃だ。
真由「まさか……!!これ……!!」
喪黒「そう、本物の拳銃ですよ。これがあなたへのプレゼントです」
真由「そんなものを持っていいんですか!?」
喪黒「あなただからこそ、この銃を持つ権利があるのです。なぜなら……」
「武器を持つことで、心にある種の構えができます」
「どんな害敵にも自分で立ち向かうんだ、自分の身は自分で守るんだ、という気概が」
「こういった目に見える形での武器を持つことに限りません。心に目に見えない形での武器を持つのです」
「そうすることで、何があっても、戦って乗り越えていこうという生き方へと人間が変化していきます」
「まさしく相川さんが持つのには、うってつけの宝ですよ」
真由「で、でも……」 喪黒「持ってみなさい」 喪黒は、真由に拳銃を渡す。
真由「なんだか、気分が落ち着いてきた……」 真由の目つきが変わりだす。
喪黒「ホーッホッホッホ、銃の効果が表われてきたようですなぁ」
真由「今の私なら、何か腹が据わった気持ちになって、どんなことでもやれそう……」
喪黒「この銃は、人間の人格を変える効果があるのです」
「何だったら、いっそのことイメージチェンジもしたらどうです?例えば、髪形を変えてみたりとか……」
真由「髪形を変える……。そうか、その手があったか……。喪黒さんのおかげで、私、本当に変われそう……」
喪黒「そうです、その調子!!」
帰宅した真由。
真由は鏡に向かうと、ツインテールの髪をほどく。そして、ハサミで髪を切っていく。
翌日。帰り道にスーパーの薬売り場へ寄る真由。真由はコンタクトレンズを手にする。
帰宅後に鏡に向かい眼鏡をはずす真由。彼女はコンタクトレンズをする。
女子生徒たち「あ、相川さんイメチェンしたんだー!」「よく似合ってるじゃん!」「性格も前より明るくなったよねー」
女子生徒たちと談笑する相川真由。
BAR「魔の巣」。 喪黒と真由が席に腰掛けている。
喪黒「真由さん、イメージチェンジには成功したようですなぁ」
真由「はい。私のキャラも、学校での生活も、中学のころとは全く正反対になりました」
喪黒「あの拳銃のおかげでしょう?」
真由「そうとしか言いようがないですよね。あれを持つと、なぜか心が落ち着くんですよ」
「何というか、善悪を超えた何かの力が湧いてきて、身体や心、魂までも乗っ取るというか……」
喪黒「でも、その『力』をコントロールするのはあなた自身ですよ」
「悪いことのために『力』を使えば、最後はあなたの身を滅ぼすことになりますからね」
真由「さすがに、悪いことをする気にはならないですけどね」
喪黒「だといいのですがねぇ。あの拳銃は、持った人間の人格を変える効果があります。いい方へも悪い方へも」
「約束してください。悪の道へ進むために、あの拳銃の効果を利用してはいけません」
真由「分かりました」
真由「あ!!」
山田「こんなところで真由に会うとは思わなかったよ」
伊藤「何なら、ちょっとあたしたちに着いてきて貰おうじゃん」
田川「言っとくけど、あんたに断る権利はないよ」
その時、建設中のビルの鉄骨が3人めがけて落ちてくる。3人の女子は鉄骨の下敷きとなったまま血を流している。
通行人たち「大変だー!!」「女子高生たちが鉄骨の下敷きになったぞー!!」「早く救急車を呼べー!!」
真由は、鉄骨の下敷きとなった3人を見つめたまま立ちつくす。真由の表情はみるみる不安げになっていく。
喪黒「まあ……。もし仮に、今度あの3人があなたをいじめようとしたなら何かが起きますけどね……」
場面が戻る。青ざめた表情の真由。
真由は、勉強机の下の大きな引き出しを開け、新聞紙にくるまれた何かを見つめる。
新聞紙を開くと、そこには喪黒から貰った拳銃が入っている。
真由は両腕で拳銃を胸に抱く。不安げな真由の表情が、徐々に落ち着いたものになっていく。
真由(この拳銃は私のお守り……。これを持つとなぜか気分が安らぐし、どんなことでもやれるような気がする……)
(いいことだけでなく、悪いことも……)
夏休みが明け、2学期が始まる未来が丘高校。1年C組、真由のクラス。
担任「転校生を紹介します」
担任の隣には、パーマ頭で眼鏡をかけた女子生徒が立っている。
女子生徒「犬丸ゆかりです」
犬丸ゆかりは、相川真由の隣の席に座る。
ゆかり「よろしく」
テロップ「林優希絵(16)、有働朱里(16)」
優希絵「あの犬丸ゆかりって子、何か暗そうな奴だよねぇ」
朱里「しかもトロいし、明らかにコミュ障じゃん」
真由「あいつが隣の席にいるだけで、マジウザいんだけどさぁー」
その後、真由、優希絵、朱里による犬丸ゆかりへのいじめが始まる。
体育の時間を控えた更衣室内。ゆかり「ないっ!!私の体操服、どこ行ったの!?」
ゆかりを見て冷たく笑う真由、優希絵、朱里。
昼食の時間。一人ぼっちで弁当を食べるゆかり。
真由「あんたいいもの食べてるねぇ」 真由はゆかりの弁当を取り上げる。
ゆかり「返して!!」 真由「こんなもの!!」
真由は、ゆかりの弁当の中身を窓から外へ捨てる。教室内で優希絵と朱里が爆笑する。
1年C組、真由のクラス。ゆかりの机には、マジックで「死ね」と落書きされている。
スマホを見るゆかり。スマホのアプリには、彼女に向けて様々な悪口が並んでいる。
「あんたに生きる値打ちなんてあるの?」「早く死ねばいいのに」「やることなすことキモイんだよ」
放課後。真由、優希絵、朱里により、校庭の裏に呼び出されたゆかり。
真由「あたしたちの言いつけ通り、金を持ってきたんだろうね」
ゆかり「う、うん……」
財布を3人に渡すゆかり。
真由「この金はあたしたちが思い切り使い切ってやるよ!!アハハハハ!!」
真由は、勉強机から拳銃を取り出し右手に持つ。真由はやがて、座った目つきの表情になる。
そして、あの日。校舎の屋上にいる真由、優希絵、朱里、ゆかり。
屋上の端まで3人に追い詰められたゆかり。真由、優希絵、朱里「お・ち・ろ!!お・ち・ろ!!お・ち・ろ!!」
真由はゆかり両手で強くを押す。ゆかりはコンクリの塀を乗り越え、そのまま落ちていく。
ドシン!!ゆかりの身体が地面に強く叩きつけられる音が響く。周囲から悲鳴が上がる。
ゆかりは地面に横たわり、頭から血を流している。校舎の外で倒れているゆかりを見る屋上の3人。
優希絵「うわあ……どうしよう」
朱里「とんでもないことになっちゃった……」
真由「バレなきゃいいんだよ、こんなの!!バレなければ事故で済むから!!」
喪黒「久しぶりですね。相川真由さん」
真由「も、喪黒さん!!」
喪黒「相川さん。あなたは約束を破りましたね」
真由「な、何のことです!?」
喪黒「私は言ったはずです!悪の道へ進むために、あの拳銃の効果を利用してはいけない……と!」
「確か最近、相川さんは同級生の犬丸ゆかりさんをいじめていましたね。そして家に帰った後、あなたは……」
「いじめを行うことへの罪悪感や不安を打ち消すために、あの拳銃の効果にすがりました。そうですよね!?」
真由「あああ……」
喪黒「それらのことが積もり積もった結果、あなたは学校の屋上から犬丸さんを突き落とすにまで至りました……」
真由「許してください!!喪黒さん!!」
喪黒「いいえ、駄目です!あなたにはそれ相応の罰を受けて貰いましょう!!」
喪黒は真由に右手の人差し指を向ける。
喪黒「ドーーーーーーーーーーーン!!!」
真由「キャアアアアアアアアアアア!!!」
真由「うわああああああ」 真由は震えながら、机の引き出しを開け例の拳銃を取り出す。
真由「これさえあれば……。これさえあれば私は……」「明日は、この拳銃を鞄に入れて登校するんだ!!」
翌日。1年C組、真由のクラス。
生徒たち「まさか、犬丸さんが本当に屋上から飛び降りるなんて!!」「もしもあいつが死んだらどうするんだ!!」
真由「気にするなって!!こんな弱い奴の命くらい何さ!!」
教室に担任が入る。担任は複雑そうな表情をしている。
担任「犬丸さんの意識が戻りました……。彼女の命が助かって本当に何よりです……。ですが……」
「目を覚ました犬丸さんはこう言っていたそうです。『私は相川真由さんに屋上から突き落とされた』と……」
教室内がどよめく。驚愕し、切迫した表情になる真由。担任「そろそろ、警察関係者が到着するはずです」
動揺し、汗だくとなった真由。彼女は鞄を開け、中から例の拳銃を取り出す。
真由「わ、私は……!!私には……!!これさえあれば……!!」
生徒たち「うわああああ!!!」「おい、あいつ銃を持ってるぞ!!」「キャアアアア!!!」
真由は拳銃を持ったまま教室を飛び出す。担任「おい、どこへ行く!!!」
真由「私は悪くないんだああああああ!!!」
刑事たち「おおっ!!なんだこいつは!!」
真由が刑事たちに向けて銃の引き金を引いたその時。
銃は轟音をあげて暴発し、火花を上げる。真由は頭と両手を失った状態で倒れ、周りには血だまりと銃の破片が散乱する。
未来が丘高校の建物の前にいる喪黒。彼は事件の一部始終を目にしている。
喪黒「人間を動かしているのは心です。だから人間は、どのような方向であっても人格を変えていくことが可能な生き物なのです」
「もちろん、いい方へ人格を変えることができるか、悪い方へ人格を変えることができるかはその人の生き方次第と言えましょう」
「しかしながら、人間の心の中は混沌としているため、良心の感情よりも悪意の感情が勝ることの方が多いものです」
「その結果、私たちが暮らしているこの世界は、かくも悪意が渦巻き、いじめがはびこる病んだ社会となったのかもしれません」
校舎から立ち去り、歩き出す喪黒。
喪黒「いじめの辛さを味わったことのある相川真由さん。だからこそ、あなたはいじめの加害者になる道を選ぶべきではなかったのに……」
「オーホッホッホッホッホッホッホ……」
―完―
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喪黒福造「いじめに遭っているあなたの人生を変えてみましょうか?」 女子高生「本当にそんなことが……」
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喪黒福造「いじめに遭っているあなたの人生を変えてみましょうか?」 女子高生「本当にそんなことが……」
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コメント一覧 (11)
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- 2018年07月03日 13:41
- 3行でまとめて
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- 2018年07月03日 14:46
- 自業
自
得
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- 2018年07月03日 16:10
- 台本と同じだろと思ってたが
脚本調ってしっかりしてると意外と読みにくいな
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- 2018年07月03日 19:37
- 喪黒メンバーや
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- 2018年07月03日 20:28
- ※1
いじめは辛いことと被害者は感じている。
にも関わらず、別人に行うことがある。
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- 2018年07月03日 20:38
- まあこれとはちょっと違うが、虐められっ子の中には自分以外が虐められてると面白がってる奴もいるっぽいし。あとは「なんであいつじゃなくて俺が虐められなきゃならないんだ」て奴とか
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- 2018年07月03日 21:10
- 面白かった!けど最初の苛めっ子達が木に引っかかってたり、鉄骨の下敷きになる辺りは、
もっと本当の意味での因果応報的な流れで、酷い目にあう方が良かったかなー
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- 2018年07月03日 22:30
- いじめられた奴が人をいじめるとは思えねぇ
というか思いたくない
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- 2018年07月04日 12:45
- ※8
意外と多いよ
というか今の団塊の世代とかがまさにそれ、「俺がやってきたんだからお前らもやれ」的なね
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- 2018年07月05日 08:56
- 団塊はいじめられたという被害妄想をしていじめているだけだぞ
「俺がやってきたんだから(やってきてない)お前らもやれ」だからな
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- 2018年08月28日 02:20
- 元々いじめられていて自分も他人に対して危害を加えるのは例の事件の竹井聖寿みたいだな。