ガール「あたしパーティは嫌い」
あたしは赤ん坊の頃から何度も何度もパーティに出席してるらしいの、あたしは覚えてないけどパパがそういってた。
だからこそ嫌いなのかもしれないし、そうじゃないのかもしれない。
子供が少なくて大人ばっかりで楽しそうにしゃべってるのがうらやましいから嫌いなのかもしれない。かなり近い気がする。
会場では知らないおじさんおばさんにお行儀よく挨拶をずーっとしていなければいけないからかもしれない。
とにかくあたしはパーティが嫌い。
多分二人とも笑ってるふりだ。
みんなそうだ、どうしてみんな本当は楽しくないのに楽しいふりして集まるんだろう。
どうしてあの知らないおばさんの隣にいるあたしよりも小さい男の子はあたしよりもうまく楽しいふりをして笑っていられるんだろう。
ここにいると自分だけがどこか取り残されているような気持ちになる。
あたしは誰にも気付かれないようにそっと外への扉に向かう。
廊下には誰もいない。よく分からない絵の描いた壺とさっきまで言葉だったもやもやする音しかない。
落ち着いたら戻ろう。人のにおいのあんまりついてない空気をいっぱい吸って歩きだした。
その時女の子二人とすれ違った。手を繋いでいた。
さっきまで廊下の先には誰もいなかったのに不思議だな。
なんでとか色々頭のなかごちゃごちゃになったけどまずは呼び止めなきゃと思った。
「ねえ!」
扉はもう閉まりかけていた。急いでドアのもつところをとってパーティの中に戻っていった。
ママがいない。ほんの少し前までドアの近くでおしゃべりしていたのに
ママが立っていた場所ではちょび髭の小さいおじさんが真剣に太ったおばさんに何かをしゃべってる。
それにドアマンの人もさっきと違うさっきは髪の毛がべったりしてなかった。
人だけじゃなくてテーブルの置場所とか料理とかが微妙に違うと思う。
部屋を間違えた?そんなわけないあたしは出たばっかりの部屋に戻っただけだもの
なんだかわからないけど、寂しくなって、怖くなって、喉が乾く、鼻の奥が痛い、泣きそうになっていると
「ねえねえ」
「ねえ気づいた?わたしたちスゴく似ていない?」
「うん...」
「でね!わたしさっきすごいものを見たの、ねえねえ何か聞きたい?」
馴れ馴れしいし話に脈絡がないけど話していると何故だか嫌な気持ちがなくなってきて涙が目の奥の奥に引いていくのを感じた。
「なに?」
「実はわたしたちと似た子がもう二人いるの!しかも服まで似ているのよすごくない?」
「そんなわけないのよ、だってその二人組あなたが入ってくるのと入れ替わりでここを出ていったんだもの、同じ顔の子が4人も集まるなんてすごいでしょう!」
あたしはなんとなく話がわかってきた。
「ねえその二人組追いかけてみない?」
「いいね!一緒にお話ししてみたいし行こ行こ」
その子はあたしの手を引いて会場の外に出た。紙のぺったりした男は無言でドアを開けた。
ホテルのその階を二人で見回った。あたしの考えている通り二人組は見つからなかった。
「子供だけで帰れないだろうし入れ違いでパーティに戻ったのかも」
「それもそうね、お腹すいちゃったし帰ろうか」
会場まで戻っていく途中、あたしはあたしにすれ違った。わたしの手を引く彼女は気がついたが、あたしは彼女を押し込むように元のパーティに戻った。
清潔そうなお兄さんは驚いたように一瞬ビクッとしたがすぐにニコリと笑ってみせた。
ママは知らないおばさんと楽しそうに笑っている。よかったと大きくため息をつくと
「ねえねえ」
声のする方を向くとあたしのおばあちゃんが本物だと思わせてくれるような微笑みを浮かべ、あたしの目線にあわせてしゃがんでいた。
「パーティ退屈?」
「ううん、ええっと」
何から話していいかわからなかったし、そもそも話してはいけないような気がした。
「おばあちゃんもあなたくらいの頃はパーティ嫌いだったな」
「おばあちゃんも?」
「うん、でもねえ一回すっごいことがあってからパーティが楽しみでしかたなくなったの聞きたい?」
おわり
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