女・友「ぶくぶくぶくぶくぶくぶく」
女「…………」カチカチ
友「…………」ペラ
女「…………」カチカチ カチ
友「…………」ペラ
女「…………」カシュッ ゴクゴク
友「…………」
女「ふー…………」コン カチカチ
友「女ちゃんのど渇いた」
女「んー? 持ってきてたじゃん」
友「飲み切った」
女「はっや。え? 来て20分で飲み干した?」
友「うん。だから女ちゃんのちょーだい」
女「馬鹿なの? 買ってきなよ」
女「うん、買ってきなよ」
友「でさ、女ちゃんが飲んでるじゃん、サイダー」
女「うん、買ってきなって」
友「ちょーだい?」
女「早く買ってこいよ」
友「やだそんなパシリみたいな脅し文句」
女「寧ろ私の方がカツアゲ食らってんだよなあ」
友「ほら持ってんだろぉ、出せよぉ」
女「私は行儀よく育てられたつもりだから実際にはやらないけど、120円投げつけたいわ」
女「ねえ作業に戻っていい?」
友「聞くくらいはしてくれてもいーじゃんっ!」
女「「邪魔しないから、マンガ読んでるだけだから」って一回甘やかしたんだよ私は」
友「もーいっかい、もーいっかい」
女「軒先貸して母屋取りに来たらもうヤンキーじゃなくて地上げ屋だよ」
友「でね、小学校の理科の授業でね」
女「母屋強奪しにきた……」
友「炭酸水は二酸化炭素が溶け込んでるから、水にストローで息を吹き込んでぶくぶくし続ければ炭酸水になるっていうのをやったんだ」
女「なったの?」
友「一時間くらいやってちょっとピリッとした気がした」
女「それは口の中がバカになって舌が痺れてただけだろうね」
女「ホントに始めたよ……」
友「ぶくぶくぶく…………ぷはぁー。ぶくぶくぶくぶくぶく…………」
女「まあ静かになってくれるんだったらそれでいいけどさ…………」カチカチ
友「ぶくぶくぶくぶく…………」
女「…………」カチカチ
友「ぶくぶくぶくぶく…………ぷはぁー。ぶくぶくぶくぶく…………」
女「…………」カチ カチカチ
友「ぶくぶくぶくぶく…………」
女「…………」カチ
友「ぶくぶくぶくぶく…………ぷはぁー」
女「ねえ」
友「ぶく?」
女「それ一時間やって舌がピリついただけなんだよね」
友「ぶく」
女「少なくともそれ以上は後ろでぶくぶく鳴ってんのうるせえな…………」
女「ストローから口離して喋ってよ何言ってんのか全然分かんないよ」
友「これは強く吹かないと駄目なんだよ。音は鳴っちゃうんだよ」
女「それ以前に単純に一時間も持たないでしょ。へばってる未来が見えるよ」
友「成長したわたしなら肺が大きくなった分だけ肺活量も増えて効率的になってるんだなあこれが」
女「なってたらいいね」
友「なってたらどうする?」
女「どうもしないよ。って言うかそれやりながら漫画読まないでよね」
友「聖徳太子かっ!」
女「意味分からん」
女「…………」カチカチ カチ
友「ぶくぶくぶくぶく…………ぷはぁー。ぶくぶくぶくぶく…………」
女「…………」カチ
友「ぶくぶくぶくぶく…………」
女「…………むー、駄目だぁ……」カチカチカチ
友「ぶくぶくぶくぶく…………ぷはぁー」
女「…………」カチカチ
友「ぶくぶくぶく…………」
女「…………」カチ カチカチ
友「ぶくぶっくぶくぶくぶっくふんふふふん」
女「本を売るならブックオフじゃないよ」
友「飽きそう」
女「やめちゃえ」
女「まだ始めて20分しか経ってないんだけど。あんた20分刻みで行動するの好きね」
友「わたしのお口は機械じゃないんだけど」
女「機械はサボったりしないんだよなあ。別にいいけどさ、ほっとくと所謂気が抜ける状態になるんじゃないの?」
友「いいよもうできる気しないし」
女「その諦めを行動する前にしてほしかったな」
友「女ちゃんも休憩しよ? なんか上手く行ってないみたいだし」
女「いやいいよ私は。キリ悪いし……」
友「私は女ちゃんがキリの良いとこまで行くのと私が炭酸水を作り上げるのとでどっちが先か競っても良いんだよ?」
女「新手の脅しがサイコ過ぎるんだけど。もー、くっそー……」ガッ
ガチャン バシャァ……
女「あ」
友「あ」
女「やっば拭くもの拭くもの……!」ドタドタ
友「私の努力の液体があああーーー!」
ドタドタ……
友「私の努力ッ…………!」
ドタドタ……
女「わあわあ広がる……!」ダンダン
友「私の努力の液体ぃ…………!」
女「その言い回しさっきから何!?」ダンダンダン
友「いいもん、結局諦めてたからいいもん……」
女「いや、まあ、私としても静かになってくれるなら越した事は無いけど、罪悪感が凄くて……」
友「そのまま沈んじゃえ……」
女「こわっ」
女「って言うか、作業に集中したいのに部屋に上がりこまれて炭酸水製造始められて部屋にぶちまけられて、私被害者なのに何で謝ってんだろ」
友「ごめんね……」
女「そこで謝られると怒りの行き先も無くなって私は宙ぶらりんになっちゃうんだけど」
女「ご所望の炭酸飲料買ってきたら機嫌治るかな?」
友「カルピスソーダかファンタグレープ……」
女「無かったら三ツ矢サイダーで良い?」
友「うん」
友「ぶくぶくぶくぶく」
女「なんでやねん」
友「ぶくぶくぶくぶくぶくぶく」
女「だからストローから口を離せ」
友「おかえりー。あった?」
女「あったけどさ、カルピスソーダ。なんで再開してんの」
友「不屈の闘志は大事だから」
女「それをここで発揮する必要性」
友「あ、ポッキー買ってるー」
女「食べていいよ」
友「今炭酸水作ってるから後でいーや」
女「優先順位さあ」
友「ぷはぁー! 生き返るねェ!」
女「出たなおっさん」
友「おっさんじゃないってばー。まだそれ引っ張るの?」
女「半分一気してそれはおっさん以外の何物でもないと思うよ」
友「うら若き乙女になんてことをー」
女「人力炭酸水製造は乙女のする事ではないと思う。よしんばおっさんでないとしても」
友「探求心に歳と性別は関係ないから」
女「都合の良い事ばかり言うのは子供っぽいわ」
友「あー、でもホントに生き返った。よっしゃもうちょっとがんばろ」
女「…………うん、まあ、頑張れ」
女「…………」ポリポリ
友「ぶくぶくぶくぶく…………ぷはぁー。ぶくぶくぶくぶく…………」
女「…………」ポリポリ
友「ぶくぶくぶくぶく…………」
女「…………んー……」ノビー
友「ぶくぶくぶくぶく…………」
女「…………」ゴキゴキ コキ
友「ぶくぶくぶくぶく…………ぷはぁー。疲れた」
女「お疲れ」
友「こーたい」
女「は?」
友「バトンタッチ」
女「そんなリレーに組み込まれた覚えはないんだけど」
友「わたしのストロー使えば良かったのに」
女「ヤだよ汚い。ぶくぶくぶくぶく…………」
友「大丈夫だよちゃんと歯ぁ磨いてるから。ちょっと涎まみれなだけで」
女「だからヤなんだよ。ぶくぶくぶくぶく…………」
友「ポッキーもらっていい?」
女「ぶくぶくぶくぶく…………」
友「わたし、ポッキーよりトッポの方が好きなんだよね」ポリポリ
女「じゃあ食うな」
友「嫌いなわけじゃないから安心して!」
女「食べながらぼやくなって話だよ何も心配してないよ」
友「…………」ペラ
女「ぶくぶくぶくぶく…………」
友「…………」ペラ
女「ぶくぶくぶく……はぁー。ぶくぶくぶくぶく…………」
友「…………」ペラ
女「ぶくぶくぶくぶく…………」
友「…………」ペラ
女「…………」
友「ん? あ、女ちゃんサボっちゃだめだよっ」
女「私からすりゃあんたが今絶賛サボってんだよ」
女「あー、これホントに口疲れる……」
友「ぶくぶく? ぶくぶくぶくぶく…………」
女「ぶくぶくぶくぶく…………」
友「…………」ペラ
女「ぶくぶくぶくぶく…………」
友「ぶくぶくぶくぶく…………」
女「…………」カチカチ
友「ぶくぶくぶくぶく…………ぷはぁー。ぶくぶくぶくぶく…………」
女「ぶくぶくぶくぶく………」
友「次の巻借りるね?」
女「んー。ぶくぶくぶくぶく…………」
女「んー?」
友「わたし閃いた」
女「何を?」
友「二人で一緒にやればもっと短い時間で終わるんだよ」
女「何が?」
友「それ」
女「…………いや、二人でやっても一緒のタイミングで休憩取るから結果同じか寧ろマイナスでしょ」
友「次に休憩取ったらもうやめるから大丈夫だよ」
女「閃いたのは止める言い訳か」
女・友「ぶくぶくぶくぶく」
……………………
…………
……
友「で、できた…………」
女「いや、100%できてない。完成を見計らったんじゃなくて諦めただけだから……」
友「でもほら見て、若干気泡が見える」
女「そりゃあんだけ息吹き込めばね。気泡は別に淡水でも発生するけど」
友「頼む、舌痺れろ……」ゴク
女「舌が痺れてたら気のせいになっちゃうでしょ」
友「…………」
女「どーよ」
友「…………まあ、ほんのり甘いよね」
女「うわもうクソみたいなオチじゃん」
友「あと女ちゃんの涎の味がする」
女「まじホント最悪」
友「私の口が駄目なだけかもしれないから女ちゃんも確かめてみて?」
女「飲めるわけないでしょその報告の後でさあ」
女「貴重な休日と作業時間を費やして私は何をしていたんだ…………」
友「小学校の頃の授業なんて大概ものの役にも立たないんだよ」
女「それを参考にして奇行に及んだ分際でよく言うよ」
友「あーあ、いけると思ったんだけどなあ」
女「いやでも炭酸水の理論はあってるはずだから、実際の所、何が悪かったんだぁ……?」カタカタカタ
友「出たぁ?」
女「…………ん、これか?」
※要約:人力じゃ無理。
女「出来ねぇんじゃねえかよ!」
友「ねえこれどうしよう」
女「捨てちゃえもう!」
友「でも勿体ない……」
女「捨てろ!」
終
一応前の
女「くしゃみのあと」
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