剣と魔法と運送業【後半】

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剣と魔法と運送業【後半】






552: ◆DTukN/b1n. 2018/05/05(土) 20:40:07.05 ID:cA8E9uQa0

-1週間後 水の街 墓地の島-


サァァァァァ…


同僚「…。」

修道女「…。」




553: ◆o/5nn0YDew 2018/05/05(土) 20:40:56.49 ID:cA8E9uQa0

同僚「悪いな、辛気臭い用事に付き合わせちまって」テクテク

修道女「辛気臭くなんてないです。死者に祈りを捧げるのも私の大事な務めですから」ニコッ

同僚「しかし、墓地っていうからもっと荒涼とした場所を想像してたけどww」

修道女「あーTV版エヴ◯ンゲ◯オンに出てくるみたいな奴ですか?」

同僚「例えが古いwwまぁそういう事だけどwww」




554: ◆o/5nn0YDew 2018/05/05(土) 20:41:27.82 ID:cA8E9uQa0

修道女「ここはお花でいっぱいですねー!死者を想う気持ちが伝わってきます」

同僚「…こうして埋葬してやれただけ、違うだろうな」

修道女「お墓参りが出来るって大切な事です。気持ちに区切りをつける事ができますから」

同僚「前を向いて生きていく為にな」

修道女「そうです。だからこそ、勇者の落涙…そこに居合わせた人達は…」

同僚「…。」ギリッ




555: ◆o/5nn0YDew 2018/05/05(土) 20:42:06.63 ID:cA8E9uQa0

-物流協会事務局 局長室-


女「陸軍との合同任務ですか?」

事務局長「そうだ。巨石による防御機構が作動しない今、新たな守りを固める事は急務だ」

事務局高官「というか実は、前々からこういった案は出ていたんだよ」

先輩「あぁ、噂で聞いた事はあるな」

高官「物流協会(うち)の前身だった旧陸軍から組織された騎士団…無くなっちゃいましたけど」

高官「あそこが煩くてねー、"我々を差し置いて云々"って」

女「そうだったんですか…」

高官「ま、正直目の上のタンコブだったってわけ」

先輩「違いないな」クスッ

局長「ごほん!まぁ…否定はしないが」ニヤッ





556: ◆o/5nn0YDew 2018/05/05(土) 20:42:38.25 ID:cA8E9uQa0

局長「そういう訳で、陸軍と共同で国内各地、ひいては国外へも派兵を進める」

女「積荷は陸軍、降ろし地は世界各地…」

高官「あ、あと例のマッピングシステムですけど」

高官「あれ、継続案件だからね」ニコッ

女「えっ!アレって神の雷の為だったんじゃ…」

局長「話の出発点はそうなんだろうが、それも使い方次第だ」

局長「今後、いつ巨石の力が使えるようになるとも限らん」

局長「やがて来るその時の為に、備えだけはしておいてくれ」




557: ◆o/5nn0YDew 2018/05/05(土) 20:43:14.63 ID:cA8E9uQa0

高官「先輩くんには、物流協会(うち)と陸軍の橋渡し役をお願いしようと思っています」

局長「陸軍出身の君ならまさに適任だ、力を貸してくれ」

先輩「分かりました」

高官「女くんは引き続きマッピングシステムのプロジェクトリーダーと、派兵任務のサポートにもついてもらう」

局長「忙しくなると思うが、よろしく頼むよ」

女「承知しました」




558: ◆o/5nn0YDew 2018/05/05(土) 20:44:03.95 ID:cA8E9uQa0

-物流倉庫 事務所-


男「車種上げですか?」

配車係「男さんもだいぶ運転に慣れてきましたからね、ここらで挑戦してみましょう」

魔法石(ナビ)『車種上げって事は、先輩はんの乗っとぉような大型カーゴに乗るって事?』

配車係「そうです。今乗ってる4tカーゴが全長約8.5m…」ペラッ

配車係「大型になると全長約12mになります」




559: ◆o/5nn0YDew 2018/05/05(土) 20:45:22.16 ID:cA8E9uQa0

配車係「始めは近場の仕事からお願いしますので、チャレンジしてみてくれますか?」

男「分かりました、やってみます」

魔法石(ナビ)『よぉ言うた!ウチも一緒に頑張るで!』ビシッ

配車係「それじゃ早速練習してみます?ちょうど先輩さんのカーゴが空いてますから」

男「いいですか?じゃ行きます」

魔法石(ナビ)『おらーやったんでー!』オラオラオラ

ガチャ バタン




560: ◆o/5nn0YDew 2018/05/05(土) 20:46:16.84 ID:cA8E9uQa0

-西の街 陸軍本部-


大佐「本日付けでこの任務の担当となった、物流協会所属の先輩君だ」

大佐「全員、敬礼!」

ザッ…ビシッ!

先輩「…。」ビシッ




561: ◆o/5nn0YDew 2018/05/05(土) 20:46:55.48 ID:cA8E9uQa0

-大佐 執務室-


先輩「お久しぶりです」ビシッ

大佐「おかえり…と言っておこうか」

先輩「…考えないわけではないんですけどね」ハハッ

大佐「君が当時腹に据えかねた陸軍と騎士団の対立…」

大佐「今となっては懐かしい話だな」

先輩「騎士団自体が無くなってしまいましたからね」

大佐「国家…ひいては世界の命運の前に、組織間の諍いなど愚の骨頂だからな」ハハッ




562: ◆o/5nn0YDew 2018/05/05(土) 20:49:31.12 ID:cA8E9uQa0

大佐「今回の作戦…基本的には防御を固めることが目的であるが」

大佐「いつまでも防戦一方ではジリ貧だ」

先輩「いずれはこちらから仕掛けるべきだ…という事ですか」

大佐「そうだ。巨石による防御機構が働かなくなった一方、伝説の勇者殿が帰還された」

大佐「これは私の個人的な意見だが…仕掛けるなら今が好機だ」




563: ◆o/5nn0YDew 2018/05/05(土) 20:52:15.41 ID:cA8E9uQa0

-物流倉庫 駐車場-


男「近くで見るとやっぱりデカいな」

魔法石(ナビ)『長さもやけど車高も全然ちゃうな』

配車係「とりあえず乗ってみましょうか、僕助手席座るんで」ガチャ バタンッ

キュルキュル…ブォン!

ゴゥンゴゥン…




564: ◆o/5nn0YDew 2018/05/05(土) 20:55:46.43 ID:cA8E9uQa0

男「目線の高さが全然違う…」キョロキョロ

ナビ『同僚ちゃんのカーゴを見下ろせるもんな!』

男「でもミラーが湾曲してるから意外と後ろまで見えるもんなんだなー」ノゾキ

配車係「それではちょっとその辺走ってみましょうか」

男「了解です、練習だからマニュアルモードで行きます」ガチャ

ナビ『男ちゃん気ぃつけてな!』

ブォン!ブロロロ…




565: ◆o/5nn0YDew 2018/05/05(土) 20:56:48.80 ID:cA8E9uQa0

-王都 街道-


ブロロロ…

男「…。」ドキドキ

ナビ『男ちゃんめっちゃ緊張しとぉな』

配車係「最初はみんなそうですよ」フフッ

男「でも、運転してみると視点が高い分思ってたより快適だ」

配車係「車体が大きくなる分、路面からのショックも分散しますしね」

ナビ『確かに、ジャイロの針があんま振れんなぁ』チラッ




566: ◆o/5nn0YDew 2018/05/05(土) 20:57:49.17 ID:cA8E9uQa0

配車係「次の交差点を左折しましょう」

男「了解です」カチッカチッ

配車係「この街道は2車線なので、リアのオーバーハングに注意しつつ…」

ナビ『お、右車線の車途切れたで』

配車係「左後ろの内輪差による巻き込みも気にして下さい」

男「よし…」クルクル

グォォォ…




567: ◆o/5nn0YDew 2018/05/05(土) 20:58:28.78 ID:cA8E9uQa0

-物流倉庫 駐車場-


ブロロロ…

男「無事に帰って来れたな」フゥ

配車係「では最後に駐車の練習です」

ナビ『バックモニターおん!』ピッ

ピピーッ ピピーッ

配車係「後輪の通る位置をよく見て感覚を掴んで下さい」

男「了解です…よっ、ほっ」クイッ クイッ

ブロロロ…キキッ

プシューーッ




568: ◆o/5nn0YDew 2018/05/05(土) 20:58:56.87 ID:cA8E9uQa0

男「き、緊張した…」グッタリ

ナビ『男ちゃんお疲れさま!』

配車係「問題ないですね」ニコッ

男「ご、合格ですか?」

配車係「はい。今日言った注意点を忘れないようにして下さい」

ナビ『いよっしゃー!男ちゃんやったな!!』ピョンピョンッ




569: ◆o/5nn0YDew 2018/05/05(土) 20:59:48.91 ID:cA8E9uQa0

-夜 王都酒場街-


ワイワイ…ガヤガヤ…


<乾杯!カチンッ…


同僚「大型デビューおめっとさんwww」

男「ふふっありがと」ニコッ

同僚「しかしスゲェなwwあんなデカいの運転出来る気がしないwww」グビ

男「乗ってみると意外とって感じだぞ?4tカーゴと車幅は一緒だし」ゴクゴク

同僚「陸軍との共同任務が始まるからな、一回の輸送量を増やしたいんだろうよww」

男「なんだかな…」




570: ◆o/5nn0YDew 2018/05/05(土) 21:00:31.28 ID:cA8E9uQa0

同僚「まぁ、分かるよ」

男「こうして一般市民として生きてても、戦争に関わって行かざるを得ないんだな」

同僚「まぁお前の場合は勇者さんと渡り合う剣の腕前だからwww」

同僚「果たして一般市民枠に入れていいものかどうかwww」ケラケラ

男「入れておいてくれよ…渡り合えたのは魔法剣っていう奥の手使ったからだし」ハハッ

同僚「それなwwwご都合主義もいいとこだwww」




571: ◆o/5nn0YDew 2018/05/05(土) 21:01:52.18 ID:cA8E9uQa0

同僚「何かさ、こえーよな」

男「あぁ」

同僚「巨石の間での騒動からまだ一週間ちょっとだぞ?」

男「その間で、物流協会(うち)と共同での陸軍派遣が議決されて…」

同僚「王国内じゃもう実際に派兵が始まってるしよ」

男「世の中がどんどん戦争へ向かって行ってるよな」

同僚「どうなっちまうんだろうな」グビ

男「…。」




572: ◆o/5nn0YDew 2018/05/05(土) 21:03:29.12 ID:cA8E9uQa0

-鍛治職人の里 広場-


ガヤガヤ…

親父「というわけで勇者だ」

勇者「簡単な紹介だなー!」ワハハ

若者「伝説の勇者に対して何とぞんざいな扱い…さすが親父さん」

親父「まぁ今更説明する必要はないだろう!かつて俺と共に魔王と戦った伝説の漢だ!」

親父「この度20年ぶりに帰還したわけだが、住む所がない!」

親父「とりあえず俺の家で一緒に暮らす事にしたから、みんなよろしくな!」


<よろしくお願いしまーす!

<すげー!本物の勇者様だ!!




573: ◆o/5nn0YDew 2018/05/05(土) 21:04:02.29 ID:cA8E9uQa0

-親父の家-


グツグツ…ジュワァァ…

親父「おいそっちの鍋コイツでかき混ぜてくれ」スッ

勇者「おう!」クルクル

勇者「ソテー、そろそろいいか?」

親父「だな、皿出してくれ!戸棚の上から2番目だ」ユサユサ ジュワァァ

勇者「了解!」コトッ




574: ◆o/5nn0YDew 2018/05/05(土) 21:04:53.72 ID:cA8E9uQa0

ズラズラッ

勇者「上手いもんだな!野郎の一人暮らしとは思えん!」

親父「今は一人だが子供に食べさせてたんだぞ?栄養バランスとか考えてよー」コトッ

勇者「そうだったな、そりゃ上手になるか!あ、俺注ぐよ」

親父「お、悪ぃな」

トクトク…




575: ◆o/5nn0YDew 2018/05/05(土) 21:05:33.78 ID:cA8E9uQa0

勇者「やっぱ白身魚には白ワインだな」

親父「エールでも悪くないが食事と一緒はちと重いよな」

親父「それじゃ引越し祝いっつー事で」スッ

勇者「今日からよろしくな!」スッ


<乾杯!




576: ◆o/5nn0YDew 2018/05/05(土) 21:06:55.91 ID:cA8E9uQa0

親父「明日からどうすんだ?」モグモグ

勇者「修行はもちろんだけど、鍛治仕事を手伝わせてもらえたらと思ってる」パクパク

親父「鍛治仕事を?もちろん構わないが、どうしたんだ?」ゴクッ

勇者「男くんに教わったんだ、大義の前で小さきものを蔑ろにしてはいけないって」

勇者「俺が剣を振れるのは、鍛治職人が剣を仕立ててくれてるからだろ?」

勇者「そういう人の仕事をちゃんと知っておきたいんだ!」ニカッ




583: ◆o/5nn0YDew 2018/05/06(日) 19:52:18.46 ID:kK1iURQq0

-王立図書館 閲覧室-


シィィィン…

修道女「…。」ペラッ

修道女「やはり何処にもありませんね」パタンッ

女「えぇ…」ペラッ




584: ◆o/5nn0YDew 2018/05/06(日) 19:53:24.36 ID:kK1iURQq0

-王立図書館 中庭-


女「どれだけ調べても公式な記録には残っていないわね」

女「勇者の落涙も、巨石についても」

修道女「…私ずっと疑問だったんですけど」

女「何かしら?」

修道女「勇者の落涙で消失した空間…まぁ土地ですよね」

修道女「一体どこへ行ったんでしょう?」




585: ◆o/5nn0YDew 2018/05/06(日) 19:53:56.54 ID:kK1iURQq0

女「便宜上"消失"という言葉を使っているけれど」

女「実際には物体ってそう簡単に消え失せたりしないの」

女「水は沸騰すると気体になるけれど、消えて無くなったわけじゃないわ」

修道女「なるほどー」




586: ◆o/5nn0YDew 2018/05/06(日) 19:54:42.39 ID:kK1iURQq0

-物流協会事務局 女の執務室-


修道女「じゃあ勇者の落涙にあった土地も、何処かへ移動したって事ですか?」

女「私はそう考えているわ」ゴソゴソ

女「これを読んでそう確信したの」スッ

[禁書指定 カバでも出来る位相転移]ドンッ

修道女「こ、これって禁書じゃないですか!」アセッ

女「大昔の魔法文献よ、位相転移魔法で亜空間と行き来をする方法が書かれているの」

修道女「じ、じゃあその位相転移魔法で土地が丸ごと亜空間へ行っちゃったという事ですか??」

女「恐らくね」




587: ◆o/5nn0YDew 2018/05/06(日) 19:55:16.45 ID:kK1iURQq0

修道女「なるほどー」ペラペラッ

女「私はもう読んだから、良かったら持って行っても構わないわ」

修道女「ホントですか!?」パタンッ

女「今後の参考に、他にも何冊か見繕ってあげるわね」ゴソゴソ

修道女「ありがとうございます!!」




588: ◆o/5nn0YDew 2018/05/06(日) 19:55:54.75 ID:kK1iURQq0

修道女「あ、でも」

女「何かしら?」

修道女「さすがにカバには無理じゃないですか?」

女「突っ込んだら負けよ」




589: ◆o/5nn0YDew 2018/05/06(日) 19:57:40.32 ID:kK1iURQq0

-西の街 陸軍本部脇 工事現場-


カンカンッ… ガガガッ…


<オーライ!オーライ!はいオッケー!

<クレーン下げろ!ゆっくりなー!


局長「工事の進捗状況は?」ペラッ

現場監督「ほぼ予定通りです、2週間後には移設出来るかと」

局長「了解。建屋が完成次第、例の巨石をこっちに持って来るぞ」

現場監督「承知しました」

先輩「なるほど、王宮の地下に置いてたんじゃ使い勝手が悪いですからね」

局長「ここからなら陸軍の装備品が効率よく転移出来るからな」




590: ◆o/5nn0YDew 2018/05/06(日) 19:58:13.38 ID:kK1iURQq0

先輩「あれ、でも巨石の力って普通の詠唱士じゃ制御出来ないって」

局長「今の段階ではな」

先輩「…まさかまた男を巨石の中へ放り込もうとか思ってませんよね?」ジロッ

局長「するわけないだろバカ!」ハハッ

先輩「良かった…」ホッ

局長「まぁ、色々考えているのさ」




591: ◆o/5nn0YDew 2018/05/06(日) 20:01:36.31 ID:kK1iURQq0

-深夜 物流協会事務局 女の執務室-


カリカリ…バサッ

女「通常業務に加えて陸軍との共同任務…」カリカリ

女「更にマッピングシステムの進捗報告やら今後の進行予定組み…」カリカリ

女「とても手が足りないわ…」ハァ

女「大体これじゃライフワークである魔法研究が出来ないじゃない!」

女「どうにかして人手を確保しなくちゃならないわね」




592: ◆o/5nn0YDew 2018/05/06(日) 20:02:33.53 ID:kK1iURQq0

-物流倉庫 事務所-


男「女がナビを?」

同僚「ついにドライバーデビューかwww」

女「ふふっ違うわよ」

女「今抱えてる案件が多過ぎて私一人じゃとてもこなし切れないの」

同僚「それでナビに手伝わせようってかwwwずりーなぁwww」

男「でもナビって物理的な仕事は出来ないぞ?魔法石に宿った心なんだから」

女「問題ないわ、私の仕事は事務方だからナビシステムとは相性がいいはずだもの」




593: ◆o/5nn0YDew 2018/05/06(日) 20:03:33.01 ID:kK1iURQq0

同僚「お前は覚えてねぇかも知れないけどさwww」テクテク

男「?」

同僚「ナビシステムのインストールの時って記憶の混濁が起こるのよwww」

男「あぁ話には聞いたよ、自分の時の事は全然覚えてないけど」

同僚「アレw客観的に見てると面白いぞwww」ケラケラ

男「そうなのか?」

同僚「女ちゃんのインストールん時見に行ってみようぜwww」




594: ◆o/5nn0YDew 2018/05/06(日) 20:04:14.25 ID:kK1iURQq0

-王立アカデミー 研究室-


ブゥゥン…ブゥゥン…

女「」zzzz

男「お、寝てる」コソッ

同僚「もうすぐ始まるぞwww」コソッ

先輩「どれどれ」コソッ

男「先輩!?」ビクッ

同僚「俺が誘ったwww一応筋としてwww」

先輩「ほーあの光ってるのが女のナビシステムになる魔法石か」ノゾキ

魔法石「」パァァァァ

同僚「そうっすww」

先輩「自分がナビシステム使ってないもんだから興味津々だ」




595: ◆o/5nn0YDew 2018/05/06(日) 20:05:20.43 ID:kK1iURQq0

先輩「そもそもさ、ナビシステムって使う奴の心を写し取ったモンなんだろ?」

男「そうですよ」

先輩「それにしちゃ全然性格違くないか?例えば男とナビちゃんにしたって」

ガチャ

研究員「ナビシステムは、基本的に使用者とは違う性別で設定されます」

研究員「同性だとどうしても性格構造が似てきますので、生理的な嫌悪感を覚える事が多いからです」

同僚「自分のそっくりさんって実際居たらキモいよなww」

研究員「ですが、それ以外の部分は使用者の人格情報から引っ張ってきてるんですよ」

先輩「ん?じゃあ一見正反対の性格に見えても…」

研究員「実は使用者の心の一面が誇張されて表われている場合が殆どなんですよ」

男「なるほどー」

同僚「ホントかよwww」

研究員「っていうか、そんな所にいないで中へどうぞ」キィ




596: ◆o/5nn0YDew 2018/05/06(日) 20:05:52.15 ID:kK1iURQq0

研究員「男さん、再リンクの時以来ですね」

男「その節はお世話になりました」ペコッ

同僚「あったな、過去との再会w」

男「あぁ、あれがあったから今の俺達があるんだ」

研究員「お役に立てて何よりです」ニコッ

研究員「さて、記憶の混濁は使用者の記憶情報を一からトレースする際に」

研究員「使用者自身も幼少期からの記憶を反芻する事が原因と考えられています」

先輩「自分の記憶を一からおさらいするみたいな感じか」

研究員「その通りです」




597: ◆o/5nn0YDew 2018/05/06(日) 20:06:22.05 ID:kK1iURQq0

研究室職員「それではインストールを始めます」カタカタ

パァァァァ…グワングワン…

女「…うっ」

魔法石「」パァァァァ

先輩「さぁ、記憶の反芻とはいかなるものか」

同僚「普段あんだけキリッとしてっからなぁwww楽しみwww」

男「なんだか俺が緊張してきた…」ドキドキ

パァァァァ…フッ




598: ◆o/5nn0YDew 2018/05/06(日) 20:06:51.80 ID:kK1iURQq0

ピピッピピッ

研究室職員「インストール完了です」

先輩「案外あっさりだな」

同僚「尺とかありますからねww」

研究室職員「魔法石の方は情報の定着まで12時間~24時間ほど掛かりますが」

女「…ん」ムニャ

研究室職員「使用者は程なく…女さん、おはようございます」

女「ん…んむ…」




599: ◆o/5nn0YDew 2018/05/06(日) 20:08:49.49 ID:kK1iURQq0

先輩「女、目が覚めたか?」

女「…。」キョロキョロ

女「ここどこー?」キョトン

女「おっちゃんだれー??」ミアゲ

男「」

先輩「」

同僚「こwれwはwww」




600: ◆o/5nn0YDew 2018/05/06(日) 20:10:02.28 ID:kK1iURQq0

研究員「ここは病院ですよ。女さんはお腹が痛くて診察に来たんです」

女「そうなん?ぜんぜんおぼえてへんわー」カシゲ

先輩「さすが研究員さん…慣れてる」

研究員「お薬で眠っていたのですが、ほら男さんがお見舞いに来てますよ」

女「あ!おとこちゃんやー!」ニパァ

女「おいでーな!ウチとあそぼーや!」キャッキャ

男「お、女…?」




601: ◆o/5nn0YDew 2018/05/06(日) 20:10:41.03 ID:kK1iURQq0

同僚「ほら行ってやれww」グイッ

男「お…っと」ヨロケ

女「おとこちゃんつかまえたー♪」ダキッ

男「うおっ」

女「えへへー♪」ギューッ

先輩「っ!…ま、まぁ姉弟だからな」

同僚「先輩ww顔に出てますよwww」

先輩「むっ…ってかナビちゃんと口調がまんま一緒だな」

同僚「アイツwwwまさかのシスコンかよwww」ゲラゲラ




602: ◆o/5nn0YDew 2018/05/06(日) 20:11:16.80 ID:kK1iURQq0

女「ふぁ…」クラッ

男「お、おい女どうした?!」

研究員「大丈夫です。次の記憶を反芻しているだけなので」

女「…っ!!!」ビクッ

女「お、おとこくん!??」ガシッ

女「ごめんなぁ…ウチ…ウチ…!!」ポロポロ

先輩「火災の時の記憶か」

男「…大丈夫だよ、ほら俺は無事だから」ニッコリ

女「ホンマに!?やけどとかしてへん!??」

男「あぁ、心配してくれてありがとな」サスサス

女「よかった…よかったよぉぉ」ビエーン




603: ◆o/5nn0YDew 2018/05/06(日) 20:12:20.34 ID:kK1iURQq0

女「ほぇ…」クラッ

先輩「次はどんな記憶だ?」

女「…ん?男くん?」パチクリ

女「どないし…ど、どうしたの?くっついちゃって」ニコッ

男「里で暮らしてる頃か」

女「ウチ…私は別にかまへ…かまわないけど」

同僚「頑張って訛り直したんだww」

先輩「…ってかお前らいつまでくっついてんだよ」ジロッ




604: ◆o/5nn0YDew 2018/05/06(日) 20:13:55.31 ID:kK1iURQq0

-夜 女の執務室-

女「死にたい…」ズーン

男「いや、なかなか可愛らしかったよ?」

同僚「いやー普段とのギャップが凄くてwww」ケラケラ

女「男くんに見られたのは別にいいのよ…家族なんだから」

女「何で同僚くんや彼まで来るのよ…」ハァ

同僚「これは是非とも色んな人に話したいwww吹聴したいwww世に広めたいwww」

同僚「スレでも建てるかww"ちょっと女を幼児退行させてみた"っつってwww」

女「…!」ギロリッ

[焔よ 闇夜を喰らう紅き怒りよ]パァァァァ

男「おい!やめろ!」アワワ

同僚「事務局がwww焼失するwww」





605: ◆o/5nn0YDew 2018/05/06(日) 20:14:57.81 ID:kK1iURQq0

-翌日 王立アカデミー 研究室-


ブゥゥン…ブゥゥン…

研究員「女さんのナビシステム、仕上がってますよ」

女「ありがとうございます」

男「ついに出来たか」

先輩「果たしてどんなナビが生まれるのか…」

同僚「この流れだとなんとなく想像つくけどwww」ゾロゾロ

女「あなた達、仕事行きなさいよ!」クワッ




606: ◆o/5nn0YDew 2018/05/06(日) 20:15:34.83 ID:kK1iURQq0

研究員「早速立ち上げますね」カタカタ

ピピッ …ブゥゥン

女ナビ『…ん』パチ

女「…おはようナビくん」

女ナビ『おはよ、おねーさん』ニコッ

同僚「ショタきたーwwww」

男「癖毛の美少年だ」

先輩「なんだかコイツ、ちっちゃい頃の男に似てないか?」

女「気のせいよ気のせい」




607: ◆o/5nn0YDew 2018/05/06(日) 20:16:13.25 ID:kK1iURQq0

同僚「ってか男の子なのに女ナビってややこしいわwww」

男「確かに」

先輩「もうショタナビでいいんじゃないか?」

女「ちょっと勝手に決めないでよ!」

ショタナビ『ぼくは何でもいいよ?』

女「あーもう!」




608: ◆o/5nn0YDew 2018/05/06(日) 20:17:02.23 ID:kK1iURQq0

-女の執務室-


女「やっと3人共運行に出たわ」ハァ

女「さて…改めて宜しくお願いね、ナビくん」ニコッ

ショタナビ『うん!よろしくねおねーさん!』ニコッ

ショタナビ『さっそくお仕事する?ぼくは何をすればいい?』

女「それじゃあデータの編纂をお願いするわね、これがここ3ヶ月の運行データなんだけど…」カチカチ

ショタナビ『カーゴ毎の燃費目標達成率をリスト化するんだね、おっけー!』ニコッ

女「凄い…一を聞いて十を知るとはこの事ね」ゴクリ




609: ◆o/5nn0YDew 2018/05/06(日) 20:18:39.03 ID:kK1iURQq0

-王都 市街地-


ブロロロ…

同僚「よう相棒www久しぶりじゃねーかwww」

同僚ナビ『よく言いますわ!昨日は同僚さんがいなくて大変でしたのよ!?』プンスカ

同僚「主に助手が、だろwww」ケラケラ

同僚ナビ『助手さん"も"ですわ!』




610: ◆o/5nn0YDew 2018/05/06(日) 20:19:21.87 ID:kK1iURQq0

同僚ナビ『それで、女さんのナビはどのような方なのでして?』

同僚「あーやっぱ気になるww?」

同僚ナビ『そりゃあ、これから肩を並べて仕事をするわけですからね』

同僚「だよなwww」

同僚「まぁ性格はまだ分からんけど、とりあえずビジュアルはwww」

同僚ナビ『えぇ』

同僚「癖毛のショタっ子だwww」

同僚ナビ『ショタっ子?』




611: ◆o/5nn0YDew 2018/05/06(日) 20:20:10.32 ID:kK1iURQq0

同僚ナビ『次で最後の配達ですわね』

同僚「今日も順調じゅんちょーwwやっぱり俺達こそ最強のコンビなんじゃねww?」

同僚ナビ『光栄ですわ』フフッ

同僚「そういやお前とナビちゃんって仲良しだけど全然タイプ違うよなwww」

同僚ナビ『そうですわねー、不思議と馬が合うんですの』




612: ◆o/5nn0YDew 2018/05/06(日) 20:20:38.22 ID:kK1iURQq0

同僚ナビ『というか、その図式って』

同僚「あんww?」

同僚ナビ『そのまま同僚さんと男さんにも当てはまるのでは?』

同僚「おーそういえばwww」

同僚ナビ『一見合わなさそうに見えても、話してみれば意外と…』

同僚ナビ『なんて、実は良くある事なのかも知れませんわね』クスッ




613: ◆o/5nn0YDew 2018/05/06(日) 20:21:12.97 ID:kK1iURQq0

同僚「そうは言いつつww割と第一印象で決めちゃうタイプかもアタシwww」

同僚ナビ『そうなんですの?では男さんとも最初から?』

同僚「だなwwwだってあの朴訥としてんのに突っ込みどころ満載なカンジwww」ケラケラ

同僚「仲良くなるしかねーだろwww」ワハハ

同僚ナビ『突っ込みどころ満載なのはお互い様というか、同僚さんの場合は突っ込んだら負けというか…』




614: ◆o/5nn0YDew 2018/05/06(日) 20:23:23.03 ID:kK1iURQq0

-翌日 王都 北へ向かう街道-


ブロロロ…

男「同僚の第一印象?」

ナビ『昨夜どーちゃんとそんな話になってん』

ナビ『ちなみにー?同僚ちゃんの抱いた男ちゃんの第一印象は…えっと』ポチ

ドロロロロロロロロ…ダンッ

ナビ『"朴訥としとぉのに突っ込みどころ満載な感じ"らしいで!』ワーワーパチパチ




615: ◆o/5nn0YDew 2018/05/06(日) 20:23:52.32 ID:kK1iURQq0

男「なんのボタンだ今の…」

男「って言うか、そんな風に思ってたんだなアイツ」クスッ

ナビ『で?男ちゃんは?』

男「同僚の第一印象か?うーん…」

男「"あんなに人に気を遣ってて疲れないのかな?"って感じかな」

ナビ『あーそれな』ウンウン




616: ◆o/5nn0YDew 2018/05/06(日) 20:24:23.73 ID:kK1iURQq0

-深夜 物流倉庫 事務所-


ナビ『やってー!』

同僚ナビ『彼独特の気遣いを一目で見抜くとはさすがですわね』

ナビ『気遣い(遣えているとは言ってない)みたいなトコあるしな』ケラケラ

同僚ナビ『ありますわね』クスクス




617: ◆o/5nn0YDew 2018/05/06(日) 20:28:43.33 ID:kK1iURQq0

ナビ『女さんがナビを?』

同僚「そうらしいですわ、既に立ち上げまで済んでいるそうで」

ナビ『そーなんやー!ウチらの仲間が増えるんやなぁ♪』

同僚ナビ『お会いするのが楽しみですわね』

ナビ『なー!』ウキウキ




623: ◆o/5nn0YDew 2018/05/07(月) 20:03:02.16 ID:5wGco0KU0

-西の街 陸軍本部-


ゴゥンゴゥン…

先輩「賢者を見た?」

兵士「まぁ噂で聞いただけなんすけどね!」

先輩「お前ホント噂話好きだよなー」シュボッ スゥ

兵士「だからここ禁煙…」

先輩「ほれ」スッ

兵士「あ、いつもすんません」シュボッ スゥ




624: ◆o/5nn0YDew 2018/05/07(月) 20:03:37.70 ID:5wGco0KU0

兵士「いや!だから!」

先輩「賢者…かつての側近の話だろ?行方不明の」スパァ

兵士「そうなんです!何でも北西地方に展開した陸軍の部隊が見たとかで」

先輩「北西地方…?」

兵士「その辺りの集落の一つに、最近引っ越してきた怪しい人物がいるって話で」




625: ◆o/5nn0YDew 2018/05/07(月) 20:04:49.79 ID:5wGco0KU0

兵士「でもってその謎の人物は、人目を避けて何かの研究を行なっている…」

兵士「らしいです!噂ですけど!」

先輩「北西地方に現れた謎の人物ねぇ」

兵士「あー!絶対信じてないでしょ!」

先輩「んな事ないさ、むしろ…」

兵士「へ?むしろ?」

先輩「…。」スパァ




626: ◆o/5nn0YDew 2018/05/07(月) 20:06:42.38 ID:5wGco0KU0

-王立修道院 修道女の部屋-


修道女「女さんが貸してくれた魔法文献…すごく興味深い」ペラペラッ

修道女「特に転移関連の詠唱は思わず試してみたくなりますねぇ」フムフム

修道女「…。」ウズウズ

修道女「…ち、ちょっとだけ」ガタッ

修道女「だ、誰も見てないですよね?」キョロキョロ

ガチャ

修道女「廊下もオッケー!」ノゾキ

パタンッ

修道女「そ、それじゃほんとにほんのちょっとだけ」スッ

修道女「えーと?転移対象とその転移先を視界に入れて、と」 パタンッ

[禁書指定 それいけ!転移ちゃん]




627: ◆o/5nn0YDew 2018/05/07(月) 20:07:46.94 ID:5wGco0KU0

修道女「それではこの万年筆を転移させてみましょう」スッ

[時の狭間を駆け巡る意思よ]パァァァァ

[汝 手を取り 誘い給え]パァァァァ

ヒュン…パッ

ヒュン…パッ ヒュン…パッ ヒュン…パッ

ヒュン…コトッ

修道女「出来たぁ…」ワナワナ

修道女「掌の上からチェストの上、引き出しの中、クローゼットの奥、絨毯の下…」

修道女「一度に複数箇所への転移詠唱が出来るようになりました!」




628: ◆o/5nn0YDew 2018/05/07(月) 20:08:23.11 ID:5wGco0KU0

-女の執務室-


女「すごいじゃない!一回の詠唱で高速の瞬間移動を繰り返すのね!」

修道女「あくまで視界に入る範囲だけみたいですけど」テレテレ

ショタナビ『おねーさん、この人だぁれ??』

女「修道女さんよ。魔法詠唱のエキスパートで、私の友人なの」

修道女「あ!この子が噂の女さんのナビくんですかー!」




629: ◆o/5nn0YDew 2018/05/07(月) 20:10:48.13 ID:5wGco0KU0

修道女「はじめまして!修道女です」ニコッ

ショタナビ『はじめしてー!よろしくね』ニコッ

修道女「か、可愛いぃぃ…」キュン

女「可愛いだけじゃなくて優秀なのよ」フフッ

修道女「あれ?でもこの子の顔…どこかで見かけたような…」

女「気のせいよ気のせい」




630: ◆o/5nn0YDew 2018/05/07(月) 20:12:09.55 ID:5wGco0KU0

-物流協会事務局 大会議室-


同僚「再調査ww?」

修道女「勇者の落涙をですか?」

女「えぇ、そうよ」

女「以前、修道女さんと話している中で思いついたの」

修道女「あ、位相転移の話ですか?」

同僚「なんだそりゃwww」

女「位相転移っていうのはね」

かくかくしかじか




631: ◆o/5nn0YDew 2018/05/07(月) 20:13:18.58 ID:5wGco0KU0

女「という訳なの」

修道女「勇者の落涙から消失した土地が、そのまま何処かへ移動してるんじゃないかって仮説ですね」

同僚「ずいぶんとスケールのデカい話だなwwwでもそんなん調べてどうすんのww?」

女「位相転移がどのように起こったのか、それを調べる事で」

女「今後の物流協会の仕事にも大きく役立てられると思うの」




632: ◆o/5nn0YDew 2018/05/07(月) 20:13:59.79 ID:5wGco0KU0

同僚「なんだかなーww」ジトッ

修道女「ホントですかー?」ジトッ

女「な、何よ二人して」

同僚「またいつもの知りたがり病なんじゃねーのーwww?」ジトッ

修道女「女さんの事は尊敬してますけど、そういう所はありますよね」ジトッ

女「…まさかこんなに息ピッタリに反論されるとは思わなかったわ」




633: ◆o/5nn0YDew 2018/05/07(月) 20:14:35.06 ID:5wGco0KU0

同僚「あ、じゃあさwww」

女「何かしら?」

修道女「女さんも一緒に行きましょうよ!」

女「私も一緒に?」キョトン




634: ◆o/5nn0YDew 2018/05/07(月) 20:15:34.49 ID:5wGco0KU0

女「構わないけれど、お邪魔じゃないかしら?」

同僚「またそういう流れに持ってこうとするwww」

修道女「私は全然オッケーですよ!むしろ軽く誘っちゃってますけど…」

女「仕事の心配なら平気よ、ナビくんがいてくれるから大分楽なの」

同僚「じゃー決まりだなwww」

修道女「マッピングチーム総出ですね!」ワクワク




635: ◆o/5nn0YDew 2018/05/07(月) 20:17:06.32 ID:5wGco0KU0

-隣国 街道-


ブロロロ…

男「舗装の荒いこの辺の道でも快適だな」

ナビ『なー!大型カーゴはちゃうな』ニコニコ

男「今日は久し振りに絹織物を積みに行くぞ」

ナビ『ホンマに久しぶりやんなぁーこの運行♪』

ナビ『…それはえぇねんけど』チラッ

男「ん?…あぁ」チラッ




636: ◆o/5nn0YDew 2018/05/07(月) 20:17:43.47 ID:5wGco0KU0

ズラズラッ… ゴゥンゴゥン…


ナビ『ここにもおるね、陸軍』

男「物流協会(うち)との共同任務はもう隣国まで進んでるのか」

ナビ『軍備の移送やら補給物資の運搬やら…』

男「今や俺達の仕事の大部分が軍関連になっちまった」

ナビ『なんか、怖いな…』




637: ◆o/5nn0YDew 2018/05/07(月) 20:18:21.67 ID:5wGco0KU0

ナビ『ってか勇者さんが戻ってきはってから、展開めっちゃ早ない?』

男「勇者さんの帰還を、防御から攻撃に転じる好機と見てるらしいな」

男「今やどっちを見ても戦争一色だ」

ナビ『どうなってまうねやろな』

男「…。」

ナビ『(どうすんねやろ…男ちゃん)』




638: ◆o/5nn0YDew 2018/05/07(月) 20:20:53.80 ID:5wGco0KU0

-王宮 王国議会-


大佐「国内への陸軍展開はほぼ完了しました」

大佐「物流協会の大型シップを使い、隣国の港周辺への派兵も完了しています」

議長「分かりました」コクッ

議長「陸軍派兵については隣国からさらに東、太陽の国辺りまでは滞りなく進むでしょう」

議長「問題はその向こうです」

大佐「荒野の国ですか」

議長「現状、荒野の国は我が軍の入国を拒否しています」

議長「その背景には何か、デリケートな問題が隠されていそうなのですが…」

議長「使節団の予定はどうなっていますか?」




639: ◆o/5nn0YDew 2018/05/07(月) 20:21:43.03 ID:5wGco0KU0

議員「報告します」スクッ

議員「現在、荒野の国へ向かう使節団が出立の準備を進めています」

議員「しかし問題の本質となる部分が不明瞭な為、交渉は難航しそうです」

議長「芳しくないですね」ウーム




640: ◆o/5nn0YDew 2018/05/07(月) 20:24:34.42 ID:5wGco0KU0

-鍛治職人の里 広場-


勇者「っはぁ!」ブンッ

親父「おらぁっ!」ヒュンッ

ブンッ キィンキィン!ブンッ ヒュンッ


若者「二人ともすげぇ剣速…太刀筋が見えない」アゼン

若者「俺の打った剣じゃとても耐え切れないだろうな…」




641: ◆o/5nn0YDew 2018/05/07(月) 20:25:17.64 ID:5wGco0KU0

-鍛治場-


カンカンッ…カン カンッ

親父「お前と剣を打つ日が来るとはな!」ニカッ

勇者「振るうのはともかく作るのは初体験だ、よろしく頼む!」

親父「そしたら今ちょうど作りかけのがあるから、それで練習すっか!」




642: ◆o/5nn0YDew 2018/05/07(月) 20:25:58.41 ID:5wGco0KU0

ゴォォォォ…

親父「コイツが刀身だ」ソーッ カタ

勇者「すげー!熱で真っ赤だ!」

親父「既に大まかに剣の形になってるが、コイツで叩いて…」カンカンッ

親父「少しずつ形を造っていくんだ」カンカンッ

勇者「おぉ、面白そうだ!」

親父「鉄が冷えてきたら暖め直して、また叩いての繰り返しだ」

親父「やってみるか?」

勇者「あぁ!やらせてくれ!」

カンッ!カンッカンッ!




643: ◆o/5nn0YDew 2018/05/07(月) 20:30:34.14 ID:5wGco0KU0

親父「なぁ」ドッコイショ

勇者「んー?」カンッ

親父「あいつどこ行ったんだろな」スッ シュボッ

勇者「…賢者か」

親父「やり方はともかくよ」スパァ

親父「魔王討伐っていう根っこの部分は一緒なんだよな、俺達も賢者も」

勇者「…。」カンッ

親父「お前さ、やっぱ許せねぇか?」グシグシ

勇者「んー…分かんない」ヘラッ

親父「…そうか」




644: ◆o/5nn0YDew 2018/05/07(月) 20:31:07.85 ID:5wGco0KU0

勇者「でもさ」カンッ

親父「ん?」

勇者「あいつもあいつなりに考えてる事があるんじゃないかな?」

親父「あいつなりの方法で魔王を、って事か?」

勇者「俺、思うんだ」

勇者「同じ場所を目指してるのなら」

勇者「俺達の道はまた交わるんじゃないかなって」ニコッ

親父「お前…」

カンッ!カンッカンッ!




645: ◆o/5nn0YDew 2018/05/07(月) 20:33:21.24 ID:5wGco0KU0

-隣国 絹織物倉庫-


倉庫職員「積み込み完了です」

ナビ『積み込み票印字中ー♪』ジジジ ペリッ

男「それではお預かりしますね」

倉庫職員「お願いしまーす」ニコッ

ナビ『職員さんまたなー♪』フリフリ




646: ◆o/5nn0YDew 2018/05/07(月) 20:35:57.14 ID:5wGco0KU0

-隣国 街道-


ブロロロ…

男「今日は魔力ケチってないだろうな」クスクス

ナビ『よ、よぉ覚えとぉなそんなん』アセッ

ナビ『だいじょーぶ!帰りの分もバッチリ残ってんで♪』ピース

男「了解。それなら安心だ…ん?」


ガヤガヤ…


ナビ『路肩に人だかり…なんや喧嘩かいな?』

男「片方は地元の人達っぽいな…もう片方は」

ナビ『王国陸軍やんか!』

キキッ プシューッ

男「ちょっと見てくる!」ガチャ

ダダッ




647: ◆o/5nn0YDew 2018/05/07(月) 20:36:32.45 ID:5wGco0KU0

ガヤガヤ…

農民「うちの畑を接収するなんて聞いてないぞ!」

兵士「接収ではない!一時的に借りるだけだ!」

農民「どっちにしたって聞いてないもんは聞いてないぞ!」

兵士「分かってくれ、世界の平和の為なんだ!」

農民「畑が無くなったらどうやって生活してけってんだ!」

農民「そーだそーだ!世界平和の前に明日の生活がままならねぇや!」

男「ど、どうしたんですか?」




648: ◆o/5nn0YDew 2018/05/07(月) 20:37:49.11 ID:5wGco0KU0

兵士「物流協会か、我々の宿営地を作るのにここらの畑を貸してもらおうと思っているのだが…」

農民「ふざけんじゃねーや!だいたいこんな田舎にテント張って何しようってんだ!」

兵士「だから我々はこの辺りを魔族から守る為にだな…」

農民「んなモン知るか!俺達は日々の暮らしで精一杯なんだよ!」

農民「そーだそーだ!戦争ごっこならてめぇの土地でやりやがれ!」

兵士「何だと貴様!黙って聞いていれば!!」

農民「うるせー!おいみんな!やっちまえ!!」

男「皆さん落ち着いて!落ち着いて!」

ガヤガヤ…




649: ◆o/5nn0YDew 2018/05/07(月) 20:38:32.44 ID:5wGco0KU0

-15分後-


ゴゥンゴゥン…

男「…。」ガチャ バタン

ナビ『男ちゃんおかえり!何があったん??』

男「俺達は一体何をやってるんだろうな…」ハァ

ナビ『…話してぇな。どしたん?』チョコン




650: ◆o/5nn0YDew 2018/05/07(月) 20:39:34.89 ID:5wGco0KU0

ブロロロ…

ナビ『陸軍と地元の人の衝突かぁ…』

男「どっちの言い分も分かるんだけどな…」

ナビ『大義の為に小さきものを…って、やってる事変わってへんやん!』プンスカ

男「確かに陸軍のやり方は良くない。いきなり行って畑貸せだなんて」フゥ

ナビ『せやせや!アホかっちゅうねん!』

男「…だけど地元の人にだって良くない部分はあると思うんだ」

ナビ『え?例えば?』

男「端的に言っちゃうと、自分の身の回りの事しか見えてないんだよ」

男「見えてないし、見ようともしてない」




651: ◆o/5nn0YDew 2018/05/07(月) 20:41:02.13 ID:5wGco0KU0

ナビ『男ちゃん…怒っとぉ?』

男「勇者さんが人生を捧げて戦ってきたのも」

男「その戦いを支援する為の軍の派遣も」

男「軍の派遣活動を手助けする俺達物流協会の仕事も」

男「全て、普通に暮らす人達の為だ」

ナビ『せやな』ウンウン

男「なのに、当の自分達は何も差し出さず、協力もせず」

男「それどころか、誰かが必死になって頑張ってる現実を知ろうともせず!」

男「与えられた餌に文句を付ける事しかしない…」ギリッ

ナビ『男ちゃん、それは言い過ぎやで?』

男「」 ガンッ!!

ナビ『…。』

男「…ごめん。分かってはいるんだ」フルフル

ナビ『…。』ジッ




652: ◆o/5nn0YDew 2018/05/07(月) 20:44:28.78 ID:5wGco0KU0

-荒野の国 勇者の落涙-


バシュゥゥ…!!

女「よっと」ストッ

修道女「ほっ」ストッ

同僚「とうっwww」ズコッ

ポロッ コロンコロン

修道女「同僚さん大丈夫ですか!?」

魔法石(同僚ナビ)『ちょっと!気を付けて下さいまし!』

修道女「あれ?どーちゃんも一緒だったんですか??」

魔法石(同僚ナビ)『あら修道女さん、ごきげんよう』ニコッ

魔法石(同僚ナビ)『それで、一体ここはどこですの?ウトウトしている間に妙な場所へ来たものですねー』

同僚「よう相棒www事務所に仕舞ってくるの忘れてたぜwww」




653: ◆o/5nn0YDew 2018/05/07(月) 20:45:00.16 ID:5wGco0KU0

修道女「いいですよ、私がどーちゃん持ってますから」

同僚「あれどったの珍しいwww」

修道女「また落としたら危ないですからね…ほいっ」スポンッ

魔法石(同僚ナビ)『むぐっ!?何ですのこの包み込まれるような柔らかさは!』

同僚「お前ら何かっつーとそこに入れるよなwww」

女「備品を勝手に持ち出して…逮捕されても知らないわよ?」

同僚「余罪はないから大丈夫っすww」

女「うるっさいわね」

ザッザッザッ…




654: ◆o/5nn0YDew 2018/05/07(月) 20:46:40.00 ID:5wGco0KU0

オォォォォォオォォォ…

同僚「また来ちまったな」

修道女「淵から覗き込むだけでも分かります…本当に空間がない…」ゾクッ

女「えぇ…ここで位相転移が起こったと見て間違いなさそうね」ノゾキ

同僚「おい女ちゃんwwあんま乗り出すと危ねぇぞwww」

修道女「そ、そうですよ!もし空間が消失してるところに落下でもしたら…」

修道女「ん?どうなるんでしょう?」

女「さぁ、どうなるのかしらね」ニヤッ

同僚「…おい女ちゃん」ジトッ

修道女「何か企んでますね?」ジトッ

女「ほんと息ピッタリなんだから」クスッ

女「さて…こうして見ていても、ここで何が起こったのかさっぱり分からないわ」

修道女「そうですねー、実際に見たら何か分かると思ったんですが」

女「…だから行くの、知りたいから」ピョンッ

修道女「っお!女さん!!」ガシッ クラッ

同僚「っおい!!バカ!!」ガシッ

コケッ

女「…っく!」

修道女「い、いやぁぁぁぁ」

同僚「のわぁぁぁぁ」

同僚ナビ『なななな何ですのぉぉぉ』

ヒューーーーーーン…




663: ◆o/5nn0YDew 2018/05/09(水) 18:31:04.11 ID:hL49BO6h0

-王都 北へ向かう街道-


ブロロロ…

男「…。」

ナビ「…。」

男「(隣国での一件以降、なんとなくナビと気まずい)」

ナビ『(あん時の男ちゃん、珍しく本気で怒ってたなぁ)』

男「な、なぁナビ」

ナビ『な、なにー?』

男「…。」

ナビ『…。』

男「….その、まだ怒ってるのか?」

ナビ『へ?怒っとぉのは男ちゃんの方やろ?』

男「俺が?…あぁ、あの隣国の人達には正直思うところがあるけど」

ナビ『それは分かったんやけどな』

男「な、何だ?」

ナビ『うぅん。ただ、怒っとぉ時の男ちゃんめっちゃ怖かったんよ』

男「うっ…すまない」シュン




664: ◆o/5nn0YDew 2018/05/09(水) 18:31:43.84 ID:hL49BO6h0

ナビ『まぁそんな顔もウチやから見せてくれるんかな、と思ったら…ね』フゥ

男「それはあると思う、少なくとも親父やなんかには絶対話せないよ」

ナビ『おとさんかぁ…おとさんやったらあん時何て言うたやろな』

男「どうだろう…何も言わないんじゃないかな」

ナビ『どゆこと?』

男「背中で語る…結果で示すしかないってさ」

ナビ『誰かに後ろ指さされても、やるべき事をやるだけやーって?』

男「多分な」

ナビ『なるほどなぁ、おとさんっぽいかも』

男「あぁ、親父はそういう人だ」




665: ◆o/5nn0YDew 2018/05/09(水) 18:32:47.10 ID:hL49BO6h0

-北の山脈 麓 材木倉庫-


キキッ プシューッ

ナビ『とーちゃく♪』

男「こんにちはー物流協会でーす!」ガチャ

先輩「お、男か」テクテク

男「あれ?先輩!」

ナビ『ホンマや!先輩はんやっほー♪』

先輩「ナビちゃんやっほー♪」ニカッ

先輩「今日は何だ?」

男「補給物資の下ろしと、帰り荷で材木を積んでいきます」

先輩「そうか、補給物資はガンガンに積んでるのか?」

男「そうなんですよ、しかもバラ積みで…」ゲンナリ

先輩「大型乗ると手積みの仕事ってホント萎えるよなー」ワハハ

男「萎えますね…積むだけで1時間以上かかりましたもん」フゥ

先輩「まぁ仕方ないさ、よし!人集めてくるからちょっと待ってろ」スタスタ




666: ◆o/5nn0YDew 2018/05/09(水) 18:33:54.29 ID:hL49BO6h0

男「陸軍の兵士がいっぱい来た」

先輩「みんな悪いな、だがみんなの為に積んできた補給物資だ」

先輩「一緒に下ろしてやってくれ」

兵士「了解っす!ドライバーさんもよろしくお願いするっす!」

男「もちろんです!ナビ頼む!」

ナビ『はぃなぁ♪ウイングおーぷん!』ポチ ウィーン


<それじゃ3人、荷台上がれ!

<持つぞ!せーのっ!

<台車でどんどん運べ!


-20分後-


男「終わった…」グッタリ

兵士「ドライバーさん!ありがとうございましたっす!」ビシッ!

男「い、いえ!こちらこそ!っす!」ビシッ

ナビ『男ちゃん口調が移っとぉ』クスッ

先輩「ほいお疲れさん、水分補給しとけ」スッ

男「ありがとうございます!」ゴキュゴキュ

男「っぷは!…あれ、先輩は今日は?」

先輩「俺は運行じゃないんだ、陸軍との共同任務の件でな」

男「そうだったんですね」ゴクゴク

先輩「それと、ちょっと小耳に挟んだ噂の真偽を確かめにな」ニヤッ

ナビ『うわさー??』




667: ◆o/5nn0YDew 2018/05/09(水) 18:36:13.72 ID:hL49BO6h0

-??? 暗い坂道-


バシュゥゥ…!!

同僚「にぎゃっ」ドタッ

女「きゃっ」ドサッ

女「…っく、どうやら死んではいないようね」イタタ

同僚「…お、女ちゃ…重…」ピクピク

女「っ!あらごめんなさい」サッ



同僚「のし掛かられるのも悪くないなwww」ツヤツヤ

女「ホントにもう…さて」

同僚「ここはどこかしらーwww」キョロキョロ

女「目の前に荒れた登り坂が続いているわね」

同僚「っていうか、暗くてそれ以外なんも見えねぇなwww」

女「修道女さんはどこへ行ったのかしら」キョロキョロ

同僚「うちの相棒もなwwwどっか別んトコにいんのかww?」

女「位相転移が起こったとすれば、どこに飛ばされたのかは分からないわね」

同僚「マジかwwまぁとりあえず進んでみるかwww」

女「そうね…あ、ちょっと待って」シャガミ

同僚「どしたんwww」

女「この土質…荒野の国のものと似ているわね」サラサラ

同僚「…ホントだ」

同僚「女ちゃんの読みが正しかったかwww」

女「進んでみましょう」ダッ




668: ◆o/5nn0YDew 2018/05/09(水) 18:39:05.52 ID:hL49BO6h0

-??? 白い砂浜-


バシュゥゥ…!!

修道女「ふぇっ」ドシャッ

修道女「…っ痛」ヒリヒリ

魔法石(同僚ナビ)『むぐー!もがー!』

修道女「あらら、ごめんなさい!」スポンッ

魔法石(同僚ナビ)『ふぅ苦しかった…ん?何ですの??』パァァァァ

パシュッ

同僚ナビ「…勝手に顕現しましたわ」パチクリ

修道女「ホントだ、カーゴと接続もしてないのに」

同僚ナビ「まぁこの方が動き安くていいのですけれど」ピョンッ

同僚ナビ「ちょっと肩に座らせて頂きますわね」チョコン

修道女「ふふっどうぞ…って、ん?」

ピトッ ツンツン

同僚ナビ「ちょっと何ですのくすぐったいですわ…って、あれ?」

修道女「触れる…実体がある!」




669: ◆o/5nn0YDew 2018/05/09(水) 18:39:40.00 ID:hL49BO6h0

同僚ナビ「一体何なんですのこの場所は?」

修道女「分かりません…見えるのは青い海と真っ白な砂浜と」キョロキョロ

同僚ナビ「ん?あの林を抜けた奥に建物が見えますわ」ピョンッ

修道女「ホントですか?」

同僚ナビ「えぇ、あれは確かに建物…お城のようにも見えますわね」

修道女「ここでこうしていても仕方ないですし、とりあえず向かってみましょうか」




670: ◆o/5nn0YDew 2018/05/09(水) 18:40:54.31 ID:hL49BO6h0

-??? 赤土の断崖-


同僚「登り切ったかwww」ハァハァ

女「歩きで行けるのはここまでみたいね…目の前には切り立った崖」ペタペタ

同僚「暗くて見えないけど、これかなり上まで続いてそうだぞww?」ミアゲ

女「困ったわね」ウーム

女「一応聞くけど、同僚くん登れそう?」

同僚「無理っしょwww俺バ◯ログ様じゃねぇしwww」



ザッ

「ここで何をしている?」

女「!」ビクッ

同僚「!!」クルッ

ザッザッ…

ローブの老紳士「何をしている、と聞いている」ザッ

女「…あなたは?」ジッ

ローブの老紳士「質問に質問で返すのはあまり賢いとは言えないな」

ローブの老紳士「まぁいい。私はこの場所の管理をしている者だ」

ローブの老紳士「そういう立場から改めて問う、ここで何をしている?」

女「くっ…同僚くん、どうする?」ヒソヒソ

同僚「…ここが位相転移でぶっ飛ばされた勇者の落涙だった場所なら」ヒソヒソ

女「見たところ、その可能性が高いと思うけど」ヒソヒソ

同僚「…なら考えがあるぜ」ヒソヒソ




671: ◆o/5nn0YDew 2018/05/09(水) 18:41:31.40 ID:hL49BO6h0

同僚「はいはーいwww」キョシュ

ローブの老紳士「何だ」

同僚「俺達、荒野の国から飛んで来ましてwww」テモミ

ローブの老紳士「大陸中央部、遊牧民の暮らす国か」

ローブの老紳士「それで、ここへ何をしに来たのだ?」

同僚「…墓参りに来たんです」




672: ◆o/5nn0YDew 2018/05/09(水) 18:46:46.55 ID:hL49BO6h0

-??? 明るい林-


ザッザッ

修道女「木漏れ日が気持ちいいですね…ん」ノビーッ

同僚ナビ「そもそもここ、とても暖かくありませんこと?」

修道女「そうなんですよ、勇者の落涙と比べると体感で20度以上違う気がします」

同僚ナビ「さっきのお話からすると、私達は勇者の落涙から」

同僚ナビ「どこか別の場所へ飛ばされてしまったという事なのかしら?」

修道女「恐らく…そして、あの場所から位相転移で飛ばされたのだとしたら」

修道女「ここがどこなのか、もはや見当も付きません」


パタパタ…

「ここは妖精の国よ、妖精使いさん」




673: ◆o/5nn0YDew 2018/05/09(水) 18:48:06.79 ID:hL49BO6h0

妖精「こんにちは」パタパタ

修道女「!?な、ナビ…?」ビクッ

同僚ナビ「いいえ…少なくとも私達のような魔法石を用いたナビではなさそうですわ」

妖精「ナビ?魔法石?」キョトン

妖精「私は城のエルフ様に仕える妖精よ、あなたも妖精使いさんなのでしょ?」パタパタ

修道女「ど、どういう事でしょう」ヒソヒソ

同僚ナビ「よく分かりませんけど…何となく彼だったらどうするかと考えると」ヒソヒソ

修道女「…話を合わせるでしょうね」ヒソヒソ

修道女「は、はい!そうなんです」ニコッ

同僚ナビ「はじめまして、妖精さん」ニコッ

妖精「はじめまして!綺麗な黒髪ね、触ってもいい?」サワサワ

同僚ナビ「もう触ってるじゃないですか…別にいいですけれど」




674: ◆o/5nn0YDew 2018/05/09(水) 18:48:50.70 ID:hL49BO6h0

妖精「お城へ行くのね?それならこの林を抜ければすぐよ」パタパタ

修道女「わ、分かりました!ご親切にありがとうございます」ペコッ

青い妖精「とんでもない!何か困ったらいつでも聞いてね」

同僚ナビ「ふふっありがとう、それではまた」フリフリ




675: ◆o/5nn0YDew 2018/05/09(水) 18:51:13.19 ID:hL49BO6h0

-北の山脈 麓 材木倉庫-


男「側近…賢者さんが北西地方に?」

先輩「根も葉もない噂話だが、何となく引っ掛かるんだよ」

ナビ『確かに…北西地方ってとこが気になるなぁ』

男「あぁ、俺達の故郷…20年前に焼失した小さな村」

先輩「俺もそこが気になってな。賢者さんが何を考えているのかは分からんが」

先輩「ちょっと確かめに行こうと思ってな」ニカッ




676: ◆o/5nn0YDew 2018/05/09(水) 18:51:53.45 ID:hL49BO6h0

男「気になったら即行動…なんだかそういうとこ、女と似てますね」クスクス

ナビ『っていうか、似てきたんとちゃう??』クスクス

先輩「むっ…何だよお前ら」

先輩「…でもまぁ、悪い気はしないな」フッ

男「女の方も最近ちょっと変わってきたんですよ?」フフッ

ナビ『なー!前より開けっぴろげになったっちゅーか!』

先輩「!?」

ナビ『…いや性格がやで?』ジトッ

先輩「分かってるよ!…む、じゃあそれって」

男「たぶん先輩の影響だと思います」

ナビ『仲良しやなーこのこのぉ♪』

先輩「お前らに言われたくないさ!」ワハハ




677: ◆o/5nn0YDew 2018/05/09(水) 18:54:05.83 ID:hL49BO6h0

-??? 赤土の大岩-


ザッザッ…

ローブの老紳士「…。」

女「えっくし」クシュン

同僚「女ちゃん見かけによらずオッサンみたいなクシャミすんのねwww」ケラケラ

女「うるさいわねー」ジトッ

ザッザッ…

ローブの老紳士「ここだ」ザッ

亡骸「」

女「…。」

同僚「…。」

ローブの老紳士「これは一部だ。転移の衝撃でバラバラになったものもあった」

ローブの老紳士「ここには形を留めていたものが集めてある」

ローブの老紳士「我々には埋葬の習慣がない。死者は無に帰するという考え方があるからだ」

ローブの老紳士「お前たちがお前たちのやり方で弔いたいならば、それを止める事はしない」




678: ◆o/5nn0YDew 2018/05/09(水) 18:54:52.43 ID:hL49BO6h0

女「見事に白骨化してるわね…ただ、衣服は少し残ってるわ」スッ

同僚「あの辺りの民族衣装だろうな、この独特の模様」ツマミ

ローブの老紳士「それらをどうする?持ち帰るのであれば簡単な箱位は用意出来るが」

女「是非お願いします」ペコッ

同僚「助かります」ペコッ

ローブの老紳士「構わん。少し待っていてくれ」

ザッザッ…


同僚「…これが理由なんだよ」ナデ

女「王国と荒野の国を隔てている心の障壁…」

同僚「それは同胞…家族を失った痛み、悲しみ、失意」

女「人の心を動かすのは人の心でしかないのね」

同僚「良くも悪くもな」フゥ




679: ◆o/5nn0YDew 2018/05/09(水) 18:56:19.30 ID:hL49BO6h0

-??? 白亜の城-


修道女「こ、こんにちはー」オズオズ

同僚ナビ「人の気配がありませんわね」

ギィィ…

同僚ナビ「…っぷ、くふふ」クスクス

修道女「っ!?いきなり何笑ってるんですか!??」ビクッ

同僚ナビ「すみません、思い出し笑いですわ…」ククッ

同僚ナビ「あなたと初めてお会いした時とシチュエーションがそっくりだったものですから」クスッ

修道女「も、もう忘れて下さいよぉぉ」シクシク




680: ◆o/5nn0YDew 2018/05/09(水) 18:56:54.13 ID:hL49BO6h0

修道女「あ、誰かいますよ」

同僚ナビ「すみません、ちょっと宜しいかしら?」

エルフ1「あら、お客さん?」ニコッ

エルフ2「ホントに!珍しいわねー人間のお客さんなんて」ニコニコ

修道女「あ、あの、すみません勝手に入って来ちゃって」ヘコヘコ

同僚ナビ「尖った耳に透けるような白い肌…お伽話に出てくるエルフそのものですわ」

エルフ1「気にする事ないわ。お客さんはいつだって歓迎するんだから」

エルフ2「しかも人間の妖精使いさんだなんて珍しい!」

修道女「あ、あの私達、実はこの地に迷い込んでしまってですね」かくかくしかじか




681: ◆o/5nn0YDew 2018/05/09(水) 18:57:45.76 ID:hL49BO6h0

エルフ1「それは大変だったわねー」ウンウン

エルフ2「でも安心して!女王様ならきっと何とかしてくれるわ」ニコッ

修道女「じ、女王様ですか」

同僚ナビ「このお城の城主様といったところかしら」

エルフ1「そういう事!私達から話をしておいてあげるわね」

エルフ2「広間で待っていてくれるかしら?食事でもお持ちするわね」

修道女「そそそんな悪いですよ!」グーギュルル…

同僚ナビ「…お腹は正直なようですわね」

修道女「///」

エルフ1「ふふっ可愛い人間さんね」クスッ

エルフ2「ホントに!」クスクス




682: ◆o/5nn0YDew 2018/05/09(水) 18:59:13.37 ID:hL49BO6h0

-白亜の城 広間-


修道女「ひ、広い…」ポツーン

同僚ナビ「50人は座れそうなテーブルに私達だけですからね」チョコン

修道女「で、でも優しそうなエルフさん達でしたね!」

同僚ナビ「…それはどうでしょう?」

修道女「へ?」

同僚ナビ「何となくいけ好かないんですの、彼女達…」ギリッ

修道女「そ、それはもしかして、彼女達のおっp同僚ナビ「」ギロリッ

修道女「で、でも少しずつ分かってきましたね」

修道女「ここは恐らく同僚さんの言ってた南の果て、伝説のエルフの島です!」

同僚ナビ「実在したんですのね…」

修道女「偶然とは言え、この場所に辿り着けるとは…!」ワナワナ

同僚ナビ「エルフと言えば魔法のエキスパート、詠唱士としては興味深いですわね」フフッ




683: ◆o/5nn0YDew 2018/05/09(水) 18:59:47.40 ID:hL49BO6h0

<お客人!お待たせしました!


ズラズラッ

修道女「す、凄いご馳走が…!!!」

同僚ナビ「あの私、今実体があるんですの」ウズウズ

修道女「あ!もしかしたら食べられるかも知れないですね!!」

修道女「ちょっと待って下さいね!」キコキコ

修道女「はい!あーん!」ニコッ

同僚ナビ「あ、あーん」パクッ

同僚ナビ「…。」モグモグ

同僚ナビ「!!!!」




684: ◆o/5nn0YDew 2018/05/09(水) 19:00:22.43 ID:hL49BO6h0

修道女「ど、どうですか??」

同僚ナビ「し、知らなかった…」ワナワナ

同僚ナビ「口の中を駆け抜ける"香り"」

同僚ナビ「滑らかな"舌触り"」

同僚ナビ「そして豊かな"味わい"…」

同僚ナビ「食事というものがこんなに素晴らしいものだったなんて…!」ウルウル

修道女「よ、良かったです…」ウルウル

同僚ナビ「さ!そうと分かればどんどん頂きましょう!!」クワッ

修道女「ですね!私もいただきまーす!!」




685: ◆o/5nn0YDew 2018/05/09(水) 19:01:05.40 ID:hL49BO6h0

修道女「いやー美味しかったです!」マンプクー

同僚ナビ「初めての食事…堪能させて頂きましたわ」ツヤツヤ

修道女「ふわぁ…お腹いっぱいになったらなんだか眠く…」

同僚ナビ「話には聞いてましたが…ホントなのですね…ふわぁ」

修道女「ん…なんだか…変…で」zzzz

同僚ナビ「意識が…ぅ…」zzzz




690: ◆o/5nn0YDew 2018/05/10(木) 19:36:32.21 ID:H/U81EIU0

ザッザッ…ガラガラ…

同僚「わりぃっすねw台車まで貸してもらっちゃってwww」ガラガラ

ローブの老紳士「20年前、この大岩が出現した時」

ローブの老紳士「世は大きな戦いの最中であった」

ローブの老紳士「お前達がやって来たという荒野の国…そこに埋まっていた魔法石が、その力を暴発させ」

ローブの老紳士「辺り一帯の土地を丸ごと、この場所に転移させたのだ」

女「それまでこの場所には何があったんですか?被害を受けた方とか」

同僚「そうだな、いきなりこんな大岩が降ってきたら」ガラガラ

ローブの老紳士「案ずるな、ここには何も無い」フルフル

同僚「何もない?」




691: ◆o/5nn0YDew 2018/05/10(木) 19:37:15.60 ID:H/U81EIU0

-??? 暗い坂道


ザッザッ…ガラガラ…

ローブの老紳士「見ろ」

女「坂道を下りきった先は…崖?」

同僚「だな…暗くてよく見えねーけど」

ローブの老紳士「見えぬのではない、存在しないのだ」パァァァァ

同僚「んなっ!?体が…!」フワッ

女「これは…飛行魔法!?」フワッ


スススーッ…


ローブの老紳士「見えるか」フワフワ

女「暗闇の中に大岩がポツンと…浮いてる??」フワフワ

同僚「なんだこりゃ…何なんだここは??」ポカーン

ローブの老紳士「ここは亜空間。お前達の住む場所とは理が異なる」

ローブの老紳士「土地は空間の中に点在し、魔法によって行き来をする」

ローブの老紳士「通常、お前達がここに入ってくる事はない」

ローブの老紳士「必要がないからだ」





692: ◆o/5nn0YDew 2018/05/10(木) 19:38:01.23 ID:H/U81EIU0

同僚「俺達には用事があったんです」フワフワ

ローブの老紳士「理解出来る」コク

ローブの老紳士「我々には無い習慣だが、お前達が亡骸を埋葬する事は知識として知っている」

ローブの老紳士「それで、用事は済んだのか?聞きたい事があるなら聞くがいい」

女「亜空間…飛行魔法…点在する土地…そして」ブツブツ

同僚「女ちゃん、どした?」

女「…あ、あの」ガタガタ

ローブの老紳士「何だ?」

女「暗闇に点在する土地…うんと遠くに見える、一際大きなあの場所」ユビサシ

女「あそこに見える建造物は…?」ガタガタ

同僚「女ちゃん?震えて…?」

ローブの老紳士「あの場所は我らが頂」

スッ スルスル…

老ガーゴイル「我々魔族を統べる者、魔王様の城だ」




693: ◆o/5nn0YDew 2018/05/10(木) 19:39:30.08 ID:H/U81EIU0

-白亜の城 応接間-


修道女「っ!!」パチ

同僚ナビ「っ!!」パチ

修道女「あれ…私達…眠って…?」グシグシ

同僚ナビ「…初めての事とは言え、あそこまで強烈な眠気に襲われるものなのでしょうか?」

修道女「いえ、さすがにあそこまでは」フルフル

同僚ナビ「となると、何かを盛られたという可能性が高いですわね」

ガチャ

「お目覚めになりましたか?」




694: ◆o/5nn0YDew 2018/05/10(木) 19:40:55.41 ID:H/U81EIU0

女王「おはようございます」ニコッ

修道女「あ、おはようございますー」ペコッ

同僚ナビ「この度は素敵なおもてなしを賜り恐縮ですわ」キッ

女王「…私達の身を守る為、眠っている間に所持品を改めさせていただきました」

女王「島のみんなを守る為なの、気を悪くなさらないで頂戴」

同僚ナビ「分かりましたわ、では私達が危険な存在ではないとご理解頂けまして?」

女王「えぇ勿論、無礼をお詫びします」ペコッ

修道女「そ、そんな!分かって頂けたなら!」アワアワ

女王「…。」ジーッ

修道女「な、何でしょう」ドキドキ

女王「…あの子達の言った通りね」ジーッ

修道女「へ??」ドキドキ

女王「あなた、人間の匂いに混じって…私達と同じ匂いがするわ」

修道女「…そ、それって」




695: ◆o/5nn0YDew 2018/05/10(木) 19:42:25.59 ID:H/U81EIU0

かくかくしかじか

修道女「私の出生についてはこんな所ですねー」

同僚ナビ「そうだったんですの…では修道院のシスター長さんが」

修道女「はい!血は繋がっていませんけど、私のお母さんです」ニコッ

女王「…。」

修道女「あ、あの、それが何か…?」

女王「…。」

女王「…20年前の戦乱の最中、私達の同胞の一人が人間の男性と恋に落ちました」

女王「当時はまだこの島も人間の世界との行き来がありましたからね」

女王「彼女は男性と共に島を去り、子を成しました」

修道女「…。」




696: ◆o/5nn0YDew 2018/05/10(木) 19:42:56.00 ID:H/U81EIU0

同僚ナビ「その後はどうなったんですの?」

女王「元々彼女は体が弱く、加えて人間の世界の空気が合わなかったのでしょう」フルフル

女王「娘を出産した直後、亡くなったと聞いています」

修道女「そ、そんな…!」

女王「その後時を置かず、行商人をしていた男性も行方が分からなくなりました」

女王「戦乱の世です、珍しい事ではありませんでした」

女王「取り残された筈の娘がどうなったのかは、誰も知りません」




697: ◆o/5nn0YDew 2018/05/10(木) 19:43:32.83 ID:H/U81EIU0

修道女「そ、それじゃ…私が…??」ポカーン

女王「…そちらの妖精さん、私達が使役する妖精とは違いますね?」

同僚ナビ「私は精霊ナビと言って、魔法石に人間の心を写し取った存在なのですわ」

同僚ナビ「今は何故か実体化して、食事まで出来ましたけれど」

女王「成る程」コク

女王「それは恐らくこの島に満ちている魔力と、修道女さんの魔力が共鳴した結果でしょう」

女王「あなたの中に流れる、エルフの血がそれを成したのでしょう」




698: ◆o/5nn0YDew 2018/05/10(木) 19:45:08.68 ID:H/U81EIU0

修道女「私の中の…エルフの血…」

同僚ナビ「突然何の話をなさるのかと思えば…」

同僚ナビ「いきなりそのような話を聞かされて、彼女の気持ちをお考えでして!?」キッ

女王「驚かせてしまってごめんなさい」ペコッ

修道女「だ、大丈夫です…」フルフル

女王「ただ、分かって頂きたいの」

女王「もう二度と会う事はないと思っていた…私達の血を分けた仲間」ジワッ

女王「私は嬉しいのです…あなたが生きていてくれた事が」ポロポロ

修道女「…。」

同僚ナビ「…。」

女王「神よ…」ポロポロ




699: ◆o/5nn0YDew 2018/05/10(木) 19:47:00.81 ID:H/U81EIU0

-北西地方 小さな集落-


ブロロロ…キキッ

先輩「小型カーゴも運転ラクでいいな」ガチャ

先輩「さて…噂の真偽や如何に」ザッザッ

先輩「すんませーん!」

老人「む?なんや物流協会か」

先輩「はい!ちょっと届け物で、最近この辺りに越して来た男性いますよね?」

老人「あぁ、あの偏屈な野郎な」フンッ

老人「そっちの林の近くにある家やな」

先輩「林の近くですね?ありがとうございます!」

老人「ん?でもあんた荷物らしいモンを持ってるようには見えへn先輩「そーだ!教えてくれたお礼に!」サッ

先輩「東の港名産!帆立の燻製です、スコッチと合うんですよー」ニコッ

老人「おぉこりゃ美味そうやな!なんや悪いなぁ」ニコニコ

先輩「いえいえ!ほんのお礼ですから」

先輩「それでは!」ソソクサ




700: ◆o/5nn0YDew 2018/05/10(木) 19:47:52.89 ID:H/U81EIU0

-林の近く 小さな家-


先輩「いかにもって感じだな」

先輩「こんにちはー!物流協会でーす」コンコンッ

ギィィ

「何だ?荷物など届く覚えは…」

ガシッ

先輩「…お元気そうで何よりです、賢者殿」グイッ

賢者「っ!お前は巨石の間にいた…!」

先輩「俺はただのドライバーですよ」

先輩「もちろんあなたを逮捕する権限なんて有りませんからご安心を」ニコッ

賢者「…何の用だ?」ギロリッ

先輩「教えて下さい、あなたが何をしようとしているのかを」




701: ◆o/5nn0YDew 2018/05/10(木) 19:48:39.83 ID:H/U81EIU0

-小さな家 ダイニング-


賢者「ウィッタードでいいか?」コポポ

先輩「まさか賢者殿にお茶を淹れて頂けるとは」

賢者「自分の置かれた状況くらい理解している、お前を追い返したところでデメリットしかない」コトッ

先輩「頂戴します」ズズッ

賢者「…。」ズズッ

先輩「…ふぅ。それで、ここでは何の研究をなさってるんですか?」

賢者「私の使命はただ一つ、魔王を討つ事だ」

先輩「…その為に、人の血で手を染める事になってもですか?」ギロッ

賢者「…神の雷と同じ威力、同じ規模の攻撃を人力のみで賄おうと思ったら」

賢者「陸軍など全員突っ込んでもまるで足りないのだ」フンッ

先輩「だからってあんたは勇者さんや男を…!」

賢者「…。」ズズッ

賢者「そして陸軍を全員投入するという事は、その全員の命を危険に晒すことだ」

賢者「遠隔攻撃である神の雷とは違い、戦う者全てを死なせる事になるやも知れん」

賢者「お前達の言っている事は、所詮甘っちょろい正義感や上っ面の理想論でしかないのだ」

先輩「そ、それは….!」ギリッ




702: ◆o/5nn0YDew 2018/05/10(木) 19:49:19.12 ID:H/U81EIU0

賢者「質問に答えよう」

賢者「現状、巨石の力は沈黙したままだ」

賢者「勇者という強い心を持った、いわば"核"が欠落しているからだ」

賢者「私は新たな"核"を生み出す為にこの地で研究を続けている」

先輩「核…それは人の心という事か?」

賢者「それに限りなく近いものだよ、お前もよく知っているだろう」

先輩「まさか…ナビシステムか!?」

賢者「左様。それこそがナビシステム開発の当初の目的だったのだ」

賢者「人の心を写し取り、魔法石に封じ込める…」

賢者「勇者が巨石に取り込まれたのとは逆のプロセスだな」

先輩「じゃあ、あの巨石をそのままナビシステムとして使うって事か」

賢者「あぁ。だが、簡単な事ではない」

賢者「20年前のあの日、この地に落ちた涙の欠片…」

賢者「そういった、心を増強する何かが必要なのだ」

先輩「心を増強する何か…」




703: ◆o/5nn0YDew 2018/05/10(木) 19:52:39.25 ID:H/U81EIU0

-亜空間 赤土の大岩付近-


同僚「いぃっ!!?ま、魔族!?」ゾクッ

女「やっぱりね…」ビクビク

老ガーゴイル「それが分かったとて、さて何とする?」

同僚「何とするって…ここでやるしかねぇのか?」

女「無理よ…今私達はあの魔族の飛行魔法で宙ぶらりんなのよ」フワフワ

同僚「確かにこの状態じゃ戦うっつってもな」フワフワ

女「そういう事。喧嘩にすらならないわ」

老ガーゴイル「考える事の出来る人間は嫌いではない」

老ガーゴイル「お前達はお前達の用事を済ませる為にここへ来た」

老ガーゴイル「そしてその用事は、無事に済ませた」

同僚「それに関しちゃ感謝してるぜ」

女「ど、同僚くん…」

老ガーゴイル「ここには我々の家があり、同胞があり」

老ガーゴイル「秩序があり、生活がある」

同僚「なんだ、人間と変わんねぇじゃねーか」

老ガーゴイル「そうだ。そして、お前達が我々に対して剣を抜くつもりがないのならば」

老ガーゴイル「私はこのまま、お前達を荒野の国へ送り届けよう」




704: ◆o/5nn0YDew 2018/05/10(木) 19:53:29.06 ID:H/U81EIU0

女「っく…ど、同僚くん、どうする?」ヒソヒソ

同僚「どうしようもなくねww喧嘩にならねぇって言ったの女ちゃんじゃんww」ヒソヒソ

女「そりゃそうだけど」ヒソヒソ

同僚「分かったよオッサン」クルッ

同僚「俺と彼女はここでアンタに剣を抜かない、それは約束する」

老ガーゴイル「そうか」

同僚「だけど他の人間は分かんないぜ?アンタらをぶっ飛ばしたくて仕方ない奴がいっぱいいるんだ」

老ガーゴイル「どうしても戦争がしたいというのならば相手になろう」ギロリッ

女「っ!」ビクッ

老ガーゴイル「だが、わざわざ同胞の亡骸を拾いに来たお前達を蹂躙するような趣味はない」

パァァァァ

老ガーゴイル「帰ってよく話せ。意味のある選択とは何か、と」



バヒューーーーーン




705: ◆o/5nn0YDew 2018/05/10(木) 20:02:26.97 ID:H/U81EIU0

女王「取り乱してしまってごめんなさい」ペコッ

修道女「い、いえいえ!」アセ

女王「人間の男性との間に生まれたとは言え、あなたが私達の同胞である事に変わりはありません」

女王「同胞…いえ、家族ですね」

修道女「か、家族…」

女王「私達はあなたを家族として迎える準備があります」

女王「あなたがもし望むのであれば、この島で一緒に暮らしましょう」

修道女「え、えぇっ!!?」

女王「勿論今すぐここで決めろ、とは言いません」

女王「ゆっくり考えて決めて下さい、私達はいつでも歓迎します」ニコッ




706: ◆o/5nn0YDew 2018/05/10(木) 20:03:39.33 ID:H/U81EIU0

-白い砂浜-


ザッザッ…

女王「私達がこの島を結界により封じ込めたのは」

女王「人間と魔族との戦が激しさを増してきた頃です」

女王「私達エルフは魔法詠唱に長けていますが…主に回復や祝福、蘇生といった類に限られます」

女王「攻撃の手段を持たぬ私達は、ただその身を潜めるしか生き延びる術がなかったのです」

修道女「…。」

同僚ナビ「…。」


ザッ


女王「ここでお送りします」

修道女「…色々と、お世話になりました」ペコッ

同僚ナビ「…。」ペコッ

女王「最後にこれを渡しておきます」スッ

修道女「これは…ペンダント?」

女王「この島は通常の方法では行き来が出来ません」

女王「このペンダントを身につけて、転移魔法を詠唱すれば外からまた訪れる事が出来ます」




707: ◆o/5nn0YDew 2018/05/10(木) 20:04:16.53 ID:H/U81EIU0

修道女「あ、ありがとうございます」ギュッ

女王「シスター長さん…あなたのお母様によろしくお伝え下さい」

修道女「…はい」コク

女王「ではお二人共お気を付けて、またお会い出来る事を望んでいます」ニコッ


パァァァァ…

バヒューーーーーン




708: ◆o/5nn0YDew 2018/05/10(木) 20:06:51.09 ID:H/U81EIU0

-夜 王都郊外 煉瓦橋-


リンゴーン リーンゴーン…

男「」シュボッ スゥ

スパァ…

男「…ふぅ」

テクテク

同僚「どったのwこんな所で黄昏ちまってよwww」ニカッ

男「そんなんじゃないよ」フフッ

男「ここから見る時計塔が好きなんだ」

同僚「王国の象徴だかんなーw今日もビシっとキマってるぜwww」

男「…吸うか?」スッ

同僚「珍しいじゃんかwwじゃ付き合いましょーww」シュボッ スゥ

スパァ…モクモク

同僚「…えほっw」ゴホゴホ

男「おい大丈夫か?無理して吸わなくても」

同僚「いーんだよww同じ味吸ってたらよwww」

男「?」

同僚「同じ気持ちになれるかも知れないじゃんか」ニカッ

男「…ありがと」フッ




709: ◆o/5nn0YDew 2018/05/10(木) 20:07:43.57 ID:H/U81EIU0

男「色々あったみたいだな」

同僚「お互いになーww」

同僚「うちの相棒に聞いたぜ?ナビちゃんの前でガチギレしたらしいじゃんww」

男「…なんか虚しくなっちゃってさ」ハァ

同僚「難しいよな、みんなどうしたって自分の事で精一杯になっちまうもんさ」

男「多分さ、ほんのちょっとした事なんだよ」

男「みんながほんの少しずつ優しくなれれば、世界はきっと…」

同僚「お前のそういうとこ、嫌いじゃないぜ」フフッ

同僚「なぁw煉瓦橋も時計塔も俺達王国民の誇りだけどよwww」

男「…もう一個あるってか?」クスッ

同僚「そのとーりwww」ビシッ

男・同僚「修道院特製エールと揚げたてのフィッシュフライ!!」

男「ハハッ!オッケー行くか!」ニコッ

同僚「そうこなくちゃよwww」ワハハ




710: ◆o/5nn0YDew 2018/05/10(木) 20:08:30.41 ID:H/U81EIU0

王都 酒場街


ワイワイ…ガヤガヤ…

同僚「俺さ、協会には報告してねぇんだけどww」グビ

男「?」ゴクゴク

同僚「勇者の落涙からぶっ飛んでった場所で、魔族に会ったんだww」

男「ま、魔族!?大丈夫だったのか??」

同僚「なんかすげー聡明な奴でよww説教?されちまったwww」ケラケラ

男「説教?魔族に??」ポカーン

同僚「んで、なんか色々分かんなくなっちまったんだ」フゥ

同僚「俺アホだからさwww難しい事は分かんないのよwww」

男「よく言うよ」クスッ

同僚「いや、マジでさ」




711: ◆o/5nn0YDew 2018/05/10(木) 20:08:59.88 ID:H/U81EIU0

同僚「お前、想像した事あるか?」

男「何を?」モグモグ

同僚「魔族にも心があるかも知れないって」

男「…お前の会った魔族ってどんな奴だったんだ?」

同僚「同胞の亡骸を拾いに来たお前らをわざわざぶっ殺す趣味はねーってよw」

男「そ、それって」

同僚「んで、最後に言ったワケw」

同僚「"意味のある選択とは何か、よく考えろ"ってな」

男「衝撃だな…」

同僚「だろーww?俺もうワケ分かんなくなっちゃってよwww」

男「うぅむ…」

同僚「なぁ、俺達のやろうとしてる事って正しいのか?」

男「…。」




712: ◆o/5nn0YDew 2018/05/10(木) 20:12:13.09 ID:H/U81EIU0

-物流協会事務局 女の執務室-


カリカリ…

女「ナビくんがいてくれて本当に助かるわ」

ショタナビ『ほめられちゃった!へへー』ニコニコ

女「それにしてもあの魔族…」ペラッ

[禁書指定 全員集合!魔族大図鑑]

女「あの姿形から見て、ガーゴイルね」パラパラッ

女「"…ガーゴイルは人間並みの高い知能を持ち、魔法詠唱に長けているぞ!"」

女「"戦闘能力も高く、剣の一振りで岩をも砕く力を持っているぞ!"」

女「…やり合わなくて正解だったわね」ゾクッ

女「でも、人間並みの高い知能って事は」

女「あの時の話は、ともすれば私達を欺く為の嘘だったのかも…?」

女「いえ、だったらもっと手っ取り早くやられていたでしょうね」フルフル

女「何故私達に遺骨を拾わせて何もせずに送り返したの?」

女「あの魔族の話が本当だとしたら」

女「私達のやろうとしている事って…」




713: ◆o/5nn0YDew 2018/05/10(木) 20:12:50.52 ID:H/U81EIU0

女「魔王についても書かれているわね」パラパラッ

女「しかしこんな文献誰が書いたのかしら…?」

女「"魔法はその存在全てが謎に包まれているぞ!"」

女「"太古の昔からの記憶を引き継ぎ、その聡明さは人間を遥かに凌ぐぞ!"」

女「"強烈な広域魔法を連続して使ってくるから要注意だ!"」

女「"この先は君自身の目で確かめてくれ!"…って」

女「最後まで教えなさいよ!」

ショタナビ『おねーさん怒ってる?』




717: ◆o/5nn0YDew 2018/05/11(金) 19:15:40.20 ID:o9PPczQNO

-1週間後 王国議会-


議長「荒野の国から書簡が?」

局長「はい、物流協会の事務局宛てに」ペラッ

国王「…。」

局長「読み上げますか?」

議長「頼む」

局長「では…」コホン

"過去は変えられない、だが"

"貴君らは筋を通してくれた"

"彼の地を訪れ、我が同胞を連れ帰ってくれた事"

"誠に痛み入る"

"西の王国より打診された陸軍派遣について"

"世界の平和という大義の元に"

"これを承認しよう"

"これ以上、無益な骸を重ねる事のなきよう"

"くれぐれもお願いされたし"

"荒野の国 首領"

局長「以上です」

議長「どういう事だ…」ポカーン

国王「…。」




718: ◆o/5nn0YDew 2018/05/11(金) 19:16:29.06 ID:o9PPczQNO

大佐「詳しい事は分からないが、ともかくこれで荒野の国への派兵が叶うわけだな」

局長「そういう事ですね」

議長「分かりました、それでは早速使節団を派遣して具体的な話し合いをしましょう」

国王「議長」スクッ

議長「はい、陛下」

国王「私も同行する」

議長「へ、陛下ご自身がですか!?」

大佐「荒野の国までは長旅です、魔族との衝突などの危険も考えられます」

国王「陸軍の護衛では不十分だと?」

大佐「い、いえ!決してそのような事は」

国王「向こうが心を開いたのならば、こちらもそれなりの態度を示さねばならん」

国王「これは王国の長である私の責任だ」

議長「わ、分かりました」

大佐「それでは陛下のご同行を加味した上で、日程の調整などを相談しよう」

局長「承知しました、こちらも手配を進めます」

国王「…。」




719: ◆o/5nn0YDew 2018/05/11(金) 19:19:28.73 ID:o9PPczQNO

-王都 市街地-


ブロロロ…

同僚「…。」ガチャ

同僚ナビ『やけに静かですわね、拾い食いでもしてお腹壊したんですの?』

同僚「お前は俺をどういう目で見てんのよwww」

同僚ナビ『冗談ですわ』クスッ

同僚「…なぁ相棒」

同僚ナビ『何ですの?』

同僚「修道女の奴、何があったんだ?」

同僚「勇者の落涙で再会した時、ずっと塞ぎ込んでやがったが」

同僚「お前達がぶっ飛んでった先で何があったんだ?」




720: ◆o/5nn0YDew 2018/05/11(金) 19:20:06.59 ID:o9PPczQNO

同僚ナビ『何かがあった、私に言えるのはここまでですわ』フゥ

同僚「それほぼ何も言ってなくねwww」

同僚ナビ『個人的なお話なので、ご本人にお聞きになって下さいませ』フイッ

同僚「…分かった」

同僚ナビ『あ、次の届け先また不在でしたわ』

同僚「もー自分で時間指定しといて不在とか何なのww忍びの者なのwww?」

ガチャ ブロロロ…




721: ◆o/5nn0YDew 2018/05/11(金) 19:21:33.13 ID:o9PPczQNO

-物流倉庫 事務所-


男「荒野の国への運行ですか?」

ナビ『マジか』

先輩「ついに決まったか」

配車係「えぇ。一週間後に出発です」

配車係「まずシップで隣国へ渡り、向こうで展開している陸軍と合流して」

配車係「あとはひたすら東へ向かいます」

ナビ『ひゃー長旅やん!』

配車係「途中、何箇所か展開している陸軍の宿営地で補給を受けられますので」

先輩「それなら問題ないか」

男「…。」ギリッ




722: ◆o/5nn0YDew 2018/05/11(金) 19:22:08.07 ID:o9PPczQNO

配車係「それと、今回の運行では国王陛下も同行します」

ナビ『こ、国王はん!?』

配車係「荒野の国との関係上、代理の者に行かせるわけにはいかないと」

配車係「陛下直々のご意向です」

先輩「陛下を乗せて行くのか、責任重大だな」

配車係「とりあえず、来週までは通常の運行も緩めに組みますので」

配車係「体調管理等、しっかり準備しておいて下さい」




723: ◆o/5nn0YDew 2018/05/11(金) 19:23:23.28 ID:o9PPczQNO

-夜 王都酒場街-

[BAR REQUIEM]


カランッ

女「荒野の国への派兵が決まったようね」ゴク

先輩「あぁ、一週間後に出発だ」

女「…しばらく会えなくなるわね」

先輩「珍しいじゃないか、君がそんな台詞を吐くなんて」フフッ

女「あら、ご不満?」

先輩「大歓迎だとも」

女「…不安なのよ、何だか」

女「私達がやろうとしている事は、果たして本当に正しいのかしら?」

先輩「…どういう意味だ?」

女「…。」



724: ◆o/5nn0YDew 2018/05/11(金) 19:25:28.04 ID:o9PPczQNO

-鍛治職人の里 広場-


親父「そうか、荒野の国への派兵が決まったか」

男「俺と先輩で行ってくるよ」

親父「気ぃ付けて行ってこいよ」ポンッ

男「うん…」

親父「…何だ、まだ腹が決まってねぇって顔してるな」ジーッ

男「なぁ親父、あのさ」

親父「んー?」シュボッ スゥ

男「…魔王って、どんな奴なんだ?」

親父「魔王か…」スパァ

親父「実は俺もよく分かんねぇんだ」

男「そうなのか?だって20年前に魔王討伐目前まで行ったんだろ?」

親父「強いて言うなら…ありゃ本当の魔物だ」




725: ◆o/5nn0YDew 2018/05/11(金) 19:26:07.34 ID:o9PPczQNO

男「どういう意味だ?」

親父「姿は見えず、声も聞こえず」

親父「ただそこに在るだけで感じる、圧倒的な殺気…」

親父「空気が震える程のな」

男「そ、そんなのを相手に戦ってたのか…」ゾクッ

親父「勇者や賢者と旅する中で、強い奴には死ぬ程遭遇したが」

親父「あそこまでの恐怖を感じた事はなかったな」

男「…。」

親父「前にも言ったがな」シュボッ スゥ

男「とにかく生き残れ、だろ?」

親父「そういうこった」スパァ

親父「必ず生きて帰ってこい、いいな?」

男「あぁ、約束する」




726: ◆o/5nn0YDew 2018/05/11(金) 19:27:01.59 ID:o9PPczQNO

-鍛治職人の里 入り口-


ゴゥンゴゥン…

ナビ『おとさん、はじめまして』ペコッ

親父「お前さんがナビちゃんか!はじめまして!」

親父「可愛らしい女の子じゃないか!」ワハハ

ナビ『ど、どーもです』カチコチ

男「なんだよお前緊張してるのか?」クスッ

ナビ『そ、そらするやろ!男ちゃんのおとさんやで!!』

親父「懐かしいなぁその北西訛り…女の小さい頃を思い出すぜ」ニコニコ

ナビ『え、ウチとちっちゃい頃の女さんって似てるん??』

親父「容姿は違うがな、よくしゃべる所とかはそっくりだ」ウンウン

ナビ『なんか複雑やな…』ジト

男「え?俺??」




727: ◆o/5nn0YDew 2018/05/11(金) 19:27:57.91 ID:o9PPczQNO

親父「あとその"おとさん"ってのがまた…」ウルッ

男「な、なんだよ親父!急に泣くなよ!」アセッ

親父「泣いてねーよ!俺にとっちゃ大事な思い出なのさ」ニカッ

ナビ『ウチの中の記憶にあるおとさんの様子と全然変わらへん…ホンマに年とったん?』

親父「なんだよ勇者とおんなじ事をナビちゃんまで言うのかよ!褒めてねーからそれ!」ワハハ

男「まぁともかく、こいつが俺の相方なんだ」

ナビ『ふふっ。相方ってなんかえぇなぁ♪』

男「運行でもそうだし、今は魔法剣として一緒に戦う事も出来るからな」

ナビ『魔法剣なー!さすがおとさん♪あんなんよぉ思いついたわ』ウンウン




728: ◆o/5nn0YDew 2018/05/11(金) 19:29:20.23 ID:o9PPczQNO

親父「魔法剣?なんだそりゃ」キョトン

男「いやいや、親父がくれた剣に魔法石を嵌める為の穴があるじゃないか」

親父「穴?あー柄のトコの穴か!」

ナビ『そーそー!ウチがぴったりハマんねん!』

親父「ありゃな、指を入れる穴だ」

男「へ?」

親父「俺の手癖というか、あそこに指を入れると手首のスナップで剣が振れるんだよ」クイックイッ

男「そうなの!?」ガビーン

ナビ『なんやそれ…』ズコーン

親父「なるほどな、そこに魔法石を仕込むわけか!よく思いついたな!」ワハハ

男「俺はその為の穴だとてっきり…」

親父「だって俺魔法使わねぇもん」アッサリ

ナビ『ほんなら、たまたまやったん??』

親父「玉(魔法石)だけにな」キリッ

男「そんな…」アゼン

ナビ『おとさん、そんなんいらんねん…』ボーゼン

親父「まぁ偶然とは言え、今後のお前の武器になり得るんじゃねぇか?」ニカッ

男「魔王の話を聞いたら尚更戦いたくなくなったけどな…」ゲンナリ




729: ◆o/5nn0YDew 2018/05/11(金) 19:31:39.57 ID:o9PPczQNO

-夜 王都郊外 煉瓦橋-


リンゴーン リーンゴーン…

同僚「どうしたのよww勇者の落涙以降元気ないじゃんかwww」

修道女「へへ、そうですかね…」

同僚「そんなに分かりやすく元気なくなる人そういないぞwww」

修道女「…。」ウツムキ

同僚「…何かあったのか?」ポンポン

修道女「…っく、う…」ウルウル

修道女「うぅ…同僚さぁん…!」ポロポロ

同僚「おいおい何だよどうしたんだよ」アセッ

修道女「わたし…わたし…」ポロポロ

ヒシッ

同僚「…っ」ギュッ ポンポン




730: ◆o/5nn0YDew 2018/05/11(金) 19:32:13.64 ID:o9PPczQNO

[BAR REQUIEM]


カランッ…

同僚「そうか、お前の出生がな」

修道女「私、いきなりそんな話をされてもう何が何だか…」フルフル

同僚「そりゃ困るわなwwwだってお前にとっての家族はよwww」

修道女「修道院の皆さんと…シスター長さんです」コクッ

同僚「だったらもう答えは出てるじゃねぇか」

修道女「そうなんですけどねー」ベター

同僚「カウンターに突っ伏すんじゃないわよ行儀悪いwww」




731: ◆o/5nn0YDew 2018/05/11(金) 19:32:49.26 ID:o9PPczQNO

修道女「あの方…泣いてたんです」

同僚「?」

修道女「私が産まれてきて、生きてたって事が嬉しいって…泣いてくれたんです」ウルッ

同僚「…そっか」

修道女「今更家族になる事は難しいんですけど…何かしてあげたいんですよね」

同僚「何かって…肩揉みとかか?」

修道女「そこ草生やさないんですか」クスッ

同僚「冗談のつもりじゃなかったもんwww」




732: ◆o/5nn0YDew 2018/05/11(金) 19:35:30.72 ID:o9PPczQNO

-王立図書館-



男「長旅に備えて多めに借りておくか」テクテク

魔法石(ナビ)『すんげー!本がいっぱいやぁ!』ウキウキ

男「まぁ図書館だからな」フフッ

魔法石(ナビ)『タイトルを見てるだけでも面白いなぁ♪』

男「あれとこれと…あ、それも読んでみたかった奴だ」

魔法石(ナビ)『あ!男ちゃんあれは?』

男「ほう、たまにはこういうジャンルも挑戦してみるか」スッ

テクテク




733: ◆o/5nn0YDew 2018/05/11(金) 19:37:03.60 ID:o9PPczQNO

-深夜 物流倉庫 事務所-


カタカタ…

配車係「明日の配車組みはこんなもんか…んーっ」ノビーッ

ナビ『どーちゃん久しぶりやんな!』ハイタッチ

同僚ナビ『ふふっ。そういえばそうですわね』ハイタッチ

ナビ『あんなー?今日男ちゃんと図書館に行ってんかぁ』

同僚ナビ『男さんも読書家でしたわね、全く同僚さんにも見習って欲しいですわ』クスッ

ナビ『でなー?なんや面白そうなタイトルの本があってん!』




734: ◆o/5nn0YDew 2018/05/11(金) 19:37:40.86 ID:o9PPczQNO

ガチャ

女「お疲れ様です」

配車係「あ、お疲れ様でーす」

ナビ『女さんや!やっほー♪』

女「はいはい、やっほー♪」ニコッ

ショタナビ『ふわぁ…おねーさん僕もう眠いかも』ムニャ

同僚ナビ『!!!』

ナビ『あ!その子が噂の!』

女「そういえば紹介してなかったわね、私のナビくんよ」コトッ

[魔法石ノ充填ヲ開始シマス…]パァァ




735: ◆o/5nn0YDew 2018/05/11(金) 19:39:20.79 ID:o9PPczQNO

ナビ『ウチが男ちゃんのナビやで!よろしゅうね♪』ニコッ

同僚ナビ『なんと…可愛らしい…』ハァハァ

ショタナビ『こんにちは!あれ、こんばんは、か!間違えちゃった』テヘ

同僚ナビ『くっはぁ!!』ズキュゥゥン

ナビ『なぁなぁ女さん?』

女「何かしら?」

ナビ『今日男ちゃんと図書館行ってな?面白そうな本を借りてきてん!』

女「あぁこれかしら?もう机の上に出しっぱなしにして」スッ

ナビ『それヤバない?おんなじ名前の人が24人もおったらワケ分からんくなるやん!』ケラケラ

女「ふふっ、そうじゃないのよ」

女「これは解離性障害、いわゆる多重人格の人の話なの」

ナビ『たじゅーじんかく?』




736: ◆o/5nn0YDew 2018/05/11(金) 19:40:14.35 ID:o9PPczQNO

女「一人の人間の中に、何人もの別々の心が生まれてしまうのよ」

ナビ『ぶっ飛んだ設定やんなー』

女「信じられないかも知れないけれど、この本はノンフィクションなの」

ナビ『マジで!?こわっ!』

同僚ナビ『さぁ坊や…お姉さんと遊びましょう…』ワキワキ

ショタナビ『おねーさんこのひと怖い』

ナビ『ありゃ、変なスイッチ入ってもた』




737: ◆o/5nn0YDew 2018/05/11(金) 19:41:16.41 ID:o9PPczQNO

ナビ『ほんで?その人はどうなるん?』

女「統合と言って、バラバラになっていた人格達が一つになるの」

ナビ『ほぇーそうなんや…あ!』

ナビ『読む前に結末聞いてもた…』ガーン

女「あら、ごめんなさい」クスッ

ナビ『(でも…心が一つに、か)』

ナビ『(なんかえぇなぁ♪)』




742: ◆o/5nn0YDew 2018/05/12(土) 19:38:31.68 ID:NCC/SEvG0

-一週間後 王宮前-


ゴゥンゴゥン…

男「ついにこの日が来たか」

ナビ『長旅やんなぁ』

先輩「長時間運転する時はこまめな休憩が必須だ」

先輩「法令では4時間ごとに30分と定められているが、多いに越した事はない」

国王「男くん、久しいな」

男「お久しぶりです、あの時は偉そうな口をききまして…」ペコッ

国王「構わんよ。君の言葉によって、大事な事に気付かされたのだ」

先輩「陛下、カーゴでの移動は身体に堪えます」

先輩「何かあればご無理をなさらず、いつでも仰って下さい」

国王「ありがとう。では宜しく頼むよ」

先輩「それでは出発します。男、ナビちゃん」

男「はい!」

ナビ『はぃなぁ!』

バタンッ

ブォン!ブロロロ…




743: ◆o/5nn0YDew 2018/05/12(土) 19:39:17.76 ID:NCC/SEvG0

-港湾倉庫-


キキッ…プシューッ

先輩「ここからシップに乗り込みます」

国王「これがシップか…迫力があるな」

先輩「ご覧になるのは初めてですか?」

国王「報告で知ってはいたがな、執務に追われて来れずじまいだった」



男「空荷で乗るのは初めてだな」

ナビ『向こうで陸軍の人らと合流やもんな、こっちで積んでけばえぇのに』

男「空荷の方が燃費がいいだろ?長距離だから少しでも充填回数を減らしたいのさ」

ナビ『なるほどなー』フムフム




744: ◆o/5nn0YDew 2018/05/12(土) 19:39:58.57 ID:NCC/SEvG0

-シップ甲板-


乗組員「総員!国王陛下に敬礼!」

ビシッ!

国王「いつも任務ご苦労。視察にも来られず不義理だった」

先輩「隣国まで約8時間の航行です、少しお休みになりますか?」

国王「いや、シップの運用について乗組員達の話を聞かせてもらうよ」

先輩「承知しました」

ナビ『昼間の海もえぇなー!あ、カモメが飛んでるで!』キャッキャ

男「お前はマイペースだな」アキレ

国王「ナビシステム…魔法石に宿りし人の心か」




745: ◆o/5nn0YDew 2018/05/12(土) 19:40:37.60 ID:NCC/SEvG0

-シップ内 カーゴ運転席-


男「…。」ペラッ

ナビ『…。』チョコン

ナビ『(難しい専門用語ばっかやな…)』ムム

男「….難しい専門用語が多いな」フゥ

ナビ『今おんなじ事考えとったわ』クスッ

ナビ『例えばこれなにー?』

男「解離性健忘か、平たく言うと酷い物忘れの事のようだな」フムフム

ナビ『なんや一時期の男ちゃんみたいやな』クスクス

男「酷いな、俺は至って健康だぞ?」

ナビ『冗談やてー。続き読も?』

男「あぁ、そうだな」




746: ◆o/5nn0YDew 2018/05/12(土) 19:41:47.00 ID:NCC/SEvG0

-夜 女の執務室-


同僚「男と先輩、行っちまったか」

女「えぇ、今頃隣国から山間を抜けてる頃かしらね」

同僚「…女ちゃん、この後ちょっといいか?」

女「別に構わないけど?」




747: ◆o/5nn0YDew 2018/05/12(土) 19:42:19.63 ID:NCC/SEvG0

-王都 酒場街-


[BAR REQUIEM]


カランッ…

同僚「何かさ、気になるんだ」

女「私達が出会った魔族についてね」

同僚「ぶっちゃけ女ちゃん、どう思う?」

女「分からないわ」フルフル

女「私なりに調べてみたんだけど、あの魔族は人間に匹敵する知性を持っているみたいなの」

同僚「じゃー嘘やハッタリじゃねぇって事だよな?あいつの言ってた事」グイッ

女「…なんだか自信なくなって来ちゃったわ」ハァ

女「私達のやろうとしている事って、本当に正しいのかしら…」カラカラ

同僚「…俺達が良かれと思ってした事でさ」

女「遺骨を持ち帰った事?」

同僚「それで戦争の駒を一つ進めちまったんじゃねぇか?って気がしててさ」

女「遺骨を持ち帰った事で荒野の国への派兵が認められ」

女「魔族に対する攻撃の準備が、また一つ進んだんですものね」

同僚「でもよ?遺された人達の事を考えたら放ったらかしになんて出来なかったんだ」

女「私も同じよ。その件で自分を責める必要はないわ」

同僚「どうなっちまうんだろうなー」ギシッ

女「…。」グイッ




748: ◆o/5nn0YDew 2018/05/12(土) 19:44:07.53 ID:NCC/SEvG0

-隣国 街道沿い 陸軍キャンプ地-


ザッザッ…

男「先輩お疲れ様です」

ナビ『あれ、国王はんはー?』

先輩「先にお休みになったよ、慣れない移動で疲れたんだろ」シャガミ

先輩「おーあったけぇ、やっぱりキャンプって言ったら焚き火だな」

パチ…パチ

先輩「…夜は冷えるな」ブルッ

男「そうかと思って、こんなのあるんですけど」スッ

先輩「お!気が効くじゃないか」ニカッ

ナビ『まーたお酒かいな!』

男「まぁ固い事言うなって」キュポ

先輩「そーそー、こういう時は体の中から暖めたほうがいいんだ」トクトク


<乾杯!





749: ◆o/5nn0YDew 2018/05/12(土) 19:44:57.14 ID:NCC/SEvG0

ナビ『』zzzz

男「…始まっちゃいましたね、荒野の国への派兵」ナデナデ

先輩「また一つ、駒が進んだな」グイッ

男「魔族の本拠地があると言われる北の果て、極寒の大地…」

先輩「荒野の国から北上していけば半日もかからない」

男「…。」

先輩「陛下の前で啖呵切ったんだろ?勇者さんのサポートをするって」

男「今も物流協会の一員としてサポートを…っていうんじゃダメですよね」

先輩「そういう意味で言ったんじゃないだろ」バシッ

男「いたた…はい、そうです」シュン

先輩「まぁ悩むのは分かる、だけど"その時"は着実に迫ってきてるんだ」

男「分かってます」

先輩「お前の剣技なら勇者さんの足手まといになる事はない、そこは自信持て」

男「ですかね」ヘラッ

先輩「…悩んでるのはそこじゃないんだろうな」

男「…。」グイッ




750: ◆o/5nn0YDew 2018/05/12(土) 19:45:35.29 ID:NCC/SEvG0

男「魔族…魔王…」

男「それらがどんな存在なのか分からないですけど」

先輩「…。」コク

男「それでも魔族と呼ばれる存在と…そのコミュニティを統べる存在がいて」

男「それで彼らの生活が上手く回っているのならば」

男「今、俺達がやろうとしてる事って…」

先輩「お前、それ俺に言うか?」アキレ

男「あのっ!気を悪くされたならすみません!」アセッ

先輩「冗談だよ。俺とお前の間に勘繰りなんぞ必要ない」クスッ




751: ◆o/5nn0YDew 2018/05/12(土) 19:46:18.81 ID:NCC/SEvG0

先輩「お前の考えも理解出来るよ」フゥ

先輩「話せば分かる奴を相手に、わざわざ軍事力で圧倒しようってのは」

男「…侵略、ですよね」ギリッ

先輩「なるほど。お前はこの戦争そのものの根幹に疑問を抱いているわけだな」

男「そうみたいですね…」

先輩「これは俺個人の考えだが」

男「?」

先輩「本当に守りたいものの為なら、俺は誰かを殺す事さえ厭わない」

男「…それは極論ですよ」

先輩「まぁな。だがな、俺達の両手の長さは限られてる」ノビーッ

先輩「ほらな、目一杯伸ばしてもこんなモンだ」ニカッ

男「…。」

先輩「だから、必然的に抱き締められるものの数も限られてくるんだ」

先輩「分かるか?」

男「…。」グイッ

男「分かるけど…納得は出来ないです」ギリッ




752: ◆o/5nn0YDew 2018/05/12(土) 19:46:58.36 ID:NCC/SEvG0

-翌朝-


ゴゥンゴゥン…

先輩「それでは出発します」

国王「うむ。陸軍兵士諸君、引き続き任務に当たってくれたまえ」

兵士「はっ!」

兵士「総員!国王陛下に敬礼!」

ビシッ!

ブォン!ブロロロ…




753: ◆o/5nn0YDew 2018/05/12(土) 19:47:42.81 ID:NCC/SEvG0

ナビ『山道が続くなぁ』

男「ここら辺を抜ければ、嫌って程真っ平らな道を延々走る事になるさ」ニコッ

ナビ『そっか…なぁ男ちゃん?』

男「んー?」

ナビ『やっとぉ事は戦争のお手伝いやけどさ』

男「…うん」

ナビ『ウチは男ちゃんとこうやってコンビ組んでるの、嬉しいねん』

男「ナビ…」

ナビ『戦争やもん、危ない事もあるかも知れんけどな?』

男「…その時は俺が守るよ」

ナビ『ちゃうやろ?一緒に戦うねんて!』ニシシッ

男「そうだったな」フフッ

ナビ『戦争はなくなって欲しいけど…』

ナビ『男ちゃんとはこうやっていつまでも一緒におりたいな♪』ニカッ

男「あぁ、俺もだ」ニコッ

ブロロロ…




754: ◆o/5nn0YDew 2018/05/12(土) 19:49:23.94 ID:NCC/SEvG0

-深夜 西の国 陸軍本部-


ザッザッ…

兵士1「交代だ」

兵士2「お、もうそんな時間か」

兵士2「となると陛下はもうすぐ荒野の国に着くんだな」

兵士1「夜明けごろにはってとこだろうな、ちょうどお前がハニーの夢でも見てる頃さ!」

兵士2「ハニー時々チリペッパーのあいつの夢か!そいつはスイートだな!」

兵士1・2「HAHAHA!!」


ザッ…


[闇よ 月よ 全ての星々よ]

[夜の帳に舞い降りたる汝の名において]

[この者達にひと時の安らかなる眠りを与え給え]

パァァァ…

兵士1「ん?な、なん…」バタッ

兵士2「急に眠気…が」バタッ


ザッザッ…


兵士1・2「」zzzz




755: ◆o/5nn0YDew 2018/05/12(土) 19:50:02.58 ID:NCC/SEvG0

-陸軍本部 巨石の間(仮設)-


警備用魔法石「」パァァ

スッ

警備用魔法石「」フッ…


[数多の心の一欠片 全てを統べる暗黒なる意志]

[夢と現の狭間に在りし 老獪なる汝の名において]

[我等が小さき魂を]

[誓いの縁(えにし)で結び給え ]

パァァァ…グワンッ!!




756: ◆o/5nn0YDew 2018/05/12(土) 19:50:34.29 ID:NCC/SEvG0

-北の果て 極寒の大地-


ビュオォォォォ…ヒュゥゥゥゥ…




…カッ




ドカァァァァァン!!!!!!




757: ◆o/5nn0YDew 2018/05/12(土) 19:51:21.89 ID:NCC/SEvG0

-荒野の国 国境付近 キャンプ地-


男「」zzzz

ナビ『男ちゃん…えへへぇ』zzzz

グラ…グラグラッ…

男「…ん」パチ

男「地震か?…いや」ムクッ

タッタッタッ ガンガン!

先輩「男!起きたか!」ガチャ

男「…あの揺れ方は前に経験があります」ムンズ

ナビ『ほぇ…男ちゃ…ふぎゃっ!』チリンッ



タッタッタッ…



先輩「な、何だ、ありゃ…」ゴクリ

男「き、北の空が…」

ナビ『燃えとぉ…』ゾクッ




758: ◆o/5nn0YDew 2018/05/12(土) 19:52:12.03 ID:NCC/SEvG0

-早朝 荒野の国との国境-


ゴゥンゴゥン…

先輩「これが、荒野の国の首領殿から頂戴した書簡です」スッ

警備兵「…確かに。その紋章がここを通過するのは実に20年ぶりの事ですな」

国王「…。」

警備兵「お通ししろ、カーゴ2台だ」クルッ

ブォン!ブロロロ…




759: ◆o/5nn0YDew 2018/05/12(土) 19:52:58.95 ID:NCC/SEvG0

男「何だったんだろう、昨夜の…」

ナビ『北の空が真っ赤に燃えとった…真夜中やのにまるで夕焼けみたいに』ブルッ

ナビ『協会とは連絡つかんの?』

男「王国からこれだけ離れてるとな」フルフル

男「陸軍の宿営地を何ヶ所か中継して連絡を取るから時間がかかるんだ」

ナビ『そう考えると転移魔法ってチートなんやなぁ』

男「これだけの物量と人数を転移させようと思ったら、それこそ巨石の力をフルパワーで使わなきゃ無理だろうな」

ピピッ

男「先輩、どうしました?」

先輩『緊急事態だ!』

男「き、緊急事態!?」

先輩『…巨石が作動した』

男「何ですって!!?」




760: ◆o/5nn0YDew 2018/05/12(土) 19:54:36.89 ID:NCC/SEvG0

-4時間前-

-西の街 陸軍本部 司令室-


ピピーッ!ピピーッ!


大佐「こんな朝っぱらから何事だ!!」バタンッ

兵士「ほ、報告します!」ビシッ

兵士「例の巨石から、突如高い魔力反応が!!」

大佐「何だと!?くそっ!!」

大佐「物流協会の局長へ連絡しろ!大至急だ!!」

大佐「私は巨石の間へ向かう!!」ダダッ

兵士「了解!」ビシッ




761: ◆o/5nn0YDew 2018/05/12(土) 19:55:15.33 ID:NCC/SEvG0

-巨石の間(仮設)-


大佐「何がどうなって…っ!?」バタンッ

大佐「な、なんだこれは…」ゾクッ


オォォォォォオォォォ…


大佐「この禍々しい殺気…妖しい煌めき…」

大佐「これが巨石の力なのか…」ゴクリ

警備兵「た、大佐!」

大佐「状況を説明しろ!」

警備兵「巨石からの魔力反応は依然上昇を続けています!」

警備兵「このままの状態で魔力の暴発が生じた場合…この場所は…!」

大佐「っく…とんでもないモノを押し付けられたもんだな」ギリッ

大佐「総員退避!!巨石から出来るだけ離れろ!!」

[総員退避!繰り返す、総員退避!]ファンファンファン




762: ◆o/5nn0YDew 2018/05/12(土) 19:55:47.69 ID:NCC/SEvG0

-物流協会事務局 局長室-


局長「一体何がどうなってるんだ!!」ダンッ

研究員「魔法石の性質から考えて、スタンドアローンで作動する事はあり得ません」

女「動く筈のないものが動いた…」

研究員「考えられる可能性は一つだけです」

局長「…誰かが作動させた、という事か」ギリッ

女「でも、そんな事出来るのって…もしかして勇者さんが?」

局長「可能性はゼロでもないが、勇者殿の性格を考えるとしっくり来ないな」

女「そうですね…正面から正々堂々と、という方ですから」コク

局長「…まさか」ハッ

カチャ

局長「私だ!大佐に再度連絡を取ってくれ!」

局長「大至急、北西地方の集落を当たってくれるよう頼むんだ!!」

女「勇者さん以外に巨石を作動させる事の出来る人って…まさか」

局長「あぁ、勇者殿でなければ彼しかいない」

局長「…賢者殿だ」



カッ…



ドカァァァァァン!!!!




763: ◆o/5nn0YDew 2018/05/12(土) 19:57:31.14 ID:NCC/SEvG0

-荒野の国 街道-


男「そ、それじゃ昨夜の赤い光は…!」

先輩『巨石の間と、隣接する陸軍本部を吹き飛ばして魔法攻撃をぶっ放ったらしい』

ナビ『な、なんやて!!?』

男「そ、それじゃ陸軍の人達は!!?」

先輩『大佐がすんでの所で避難させてくれた。爆風に巻き込まれて軽傷者が多数出ているみたいだがな』

先輩『死者は出なかったが、陸軍本部とその周りはめちゃくちゃだ』

男「で、でもなんで今頃になって…」

ナビ『せやな…勇者さん出てきてもぉてるのに』

先輩『俺に心当たりがある』

男「ホントですか!?」

先輩『というか、勇者さん以外に巨石を作動させられそうな人間なんて一人しかいないだろ』

男「まさか…賢者さんが!?」

先輩『恐らくな』

先輩『とにかく俺達はこのまま進むぞ、荒野の国の中心部に入れば少しは状況が掴めるだろう』

男「ここからあと4時間ってところですね、了解です!」カチャ

ナビ『なになに??何が起こってるん??』アワアワ

男「分からない、今はとにかく進むしか…ん?おいあれ何だ?」

ピピーッ ピピーッ

[9時ノ方向ヨリ高速移動体ガ接近中。距離1000、800、600…]

ナビ『な、なんやコレ!めちゃくちゃ速いで!!』

ゴォォッ…バサッ バサッ…

[距離300、200…]

男「あれは…!!」

ナビ『どどどドラゴン!!?』


グォォォォ!!




764: ◆o/5nn0YDew 2018/05/12(土) 19:59:04.93 ID:NCC/SEvG0

-物流協会事務局 局長室-


グラグラ…グラ…

局長「…っく、二人とも怪我はないか?」フラ

女「はい、何とか」ヨロケ

研究員「大丈夫です…」フラフラ

局長「しかし今の爆発音…」

研究員「巨石の力が暴発したと見て間違いありません」

ガチャ バタンッ

修道女「お、女さん!」ハァハァ

女「修道女さん!来てくれたのね!」

修道女「外を見て下さい!」

局長「っ!」窓ガララッ

女「北東の空に赤い光が…朝日にはまだ早いわね」

局長「あっちの方角は…北の果て、極寒の大地」

研究員「魔族の本拠地があるとされる地域ですね」

女「それじゃ賢者さんは魔族の本拠地に直接攻撃を…?」

局長「極寒の大地は荒野の国から程近い…賢者殿、なんていうタイミングで」ギリッ

修道女「な、何かとんでもない事が起こるんじゃないでしょうか…」

女「あるいは今の攻撃で何かが始まるか、ね」

女「修道女さん」キッ

修道女「は、はいです!」




765: ◆o/5nn0YDew 2018/05/12(土) 20:00:49.94 ID:NCC/SEvG0

-荒野の国 街道-


ゴゥンゴゥン…

男「ナビ!行くぞ!」チャキ

ナビ『はぃな!』ポンッ

ガチャ バタンッ


国王「こ、これがドラゴン…!」ゾクッ

先輩「陛下は車内にいて下さい!」ガチャ バタンッ



ドラゴン「…。」グルル

男「で、でかい…」ゴクリ

魔法石(ナビ)『これが…ドラゴン』ゾクッ

先輩「男!大丈夫か!?」ダダッ

ドラゴン「…人の子よ」

ドラゴン「爺の警告を聞いた筈だ」

男「爺って…あの同僚が会ったっていう…?」

ドラゴン「しかし警告は無視され、お前達は我等に刃を向けた」

ドラゴン「あまつさえ、我等ドラゴン族の根城たる極寒の大地へな」




766: ◆o/5nn0YDew 2018/05/12(土) 20:01:26.00 ID:NCC/SEvG0

先輩「警告?なんの事だ!」

ドラゴン「もはや猶予はない、賽は投げられたのだ」

ドラゴン「他でもないお前達自身の手によってな」

ドラゴン「覚悟はよいな?」グルル

先輩「男!来るぞ!」チャキッ

男「た、戦うしかないのか…」

先輩「もう迷ってる暇はないぞ!やらなきゃやられるだけだ!!」

魔法石(ナビ)『せやで男ちゃん!ここを切り抜けな先はないんや!!』

男「くっ…こうするしかないのかよ!」チャキッ

男「ナビ!!」カチャリ

魔法石(ナビ)『はぃな!!』スポッ

ブゥンッッ!パァァァ…

ドラゴン「人の子よ、我が同胞が受けた痛み」

ドラゴン「ここで償ってもらおう!」グォォォォ!!

先輩「おらぁぁぁ!!」ダダッ

男「いくぞ!ナビ!!」ダダッ

魔法剣(ナビ)『やったんでぇぇ!!』パァァァ




767: ◆o/5nn0YDew 2018/05/12(土) 20:02:23.57 ID:NCC/SEvG0

-早朝 北西地方 小さな家-


兵士1「ここか!!」バタンッ

兵士2「な、なんだこりゃ!魔法陣!?」ピョンッ

兵士1「禁呪の類か…む?見慣れぬ書物が」スッ

[DSM-5]

兵士2「おい!賢者殿がいたぞ!」


キィ…キィ…


兵士1「賢者殿!呑気に揺り椅子で寛いでる場合じゃ…!」ガシッ ユサユサ

兵士2「け、賢者殿!?」

賢者「ぅぅ…ぁぁ…」ポカーン




768: ◆o/5nn0YDew 2018/05/12(土) 20:03:24.53 ID:NCC/SEvG0

-物流協会事務局 局長室-


局長「見つかったか!それで…何だと」

局長「…分かりました、とにかく診療所へお連れして下さい」カチャ

女「賢者さんは!?」

局長「…話せる状態じゃないらしい」フルフル

女「どういう事ですか?」

局長「詳しくは分からないが、何を問いかけても反応がないらしい」

局長「一応生きてはいるが、心ここにあらずといった様子みたいだ」

修道女「心が…?」

局長「研究員さん、考えられる事は?」

研究員「恐らく、巨石に心を飲まれたのかと」

女「心を?じゃ、勇者さんと同じ…」

研究員「いいえ」フルフル

研究員「勇者殿の場合は、彼が人一倍強い善なる心を持っている事もありますが」

研究員「肉体ごと…つまり心と体がセットで取り込まれたので」

局長「…自我を保つのに却って好条件だったわけか」

研究員「恐らく、賢者殿は巨石に自らの心を…つまり巨石をそのままナビシステムとして用いようとしたのかと」




769: ◆o/5nn0YDew 2018/05/12(土) 20:04:02.00 ID:NCC/SEvG0

女「心だけをインストールしようとした結果、巨石の力に耐え切れず心を持っていかれた…」

修道女「で、でもそんな事が可能なんですか?」

研究員「理論上不可能ではありません」

研究員「しかし、巨石の力に対抗しうる心の強さが必要になります」

局長「賢者殿の家の中で、恐らく禁呪の類と思われる魔法陣が張られていたそうだ」

局長「そしてDSM-5という謎の書物…」

研究員「禁呪を使って心の増強を図ったという事ですか」

女「しかし失敗した…なんて事なの」フルフル


ブロロロ…キキッ

<プップー


女「来たみたいね」

局長「修道女さん、お願いします」ペコッ

局長「女くんも、気をつけてな」

修道女「はいです!」ダダッ

女「行ってきます!!」ダダッ




770: ◆o/5nn0YDew 2018/05/12(土) 20:05:11.89 ID:NCC/SEvG0

-王都郊外 煉瓦橋-


ブロロロ…キキッ

修道女「この辺なら大丈夫でしょう」

同僚「夜中の爆発音…一体何が起こってるんだ?」

同僚ナビ『あの揺れ方、覚えがありますわ…』ブルッ

女「その通りよ、巨石が再び動き出したの」

同僚「何だと!?」

修道女「今は説明してる時間が惜しいです!ここから男さん達の所へ転移します!」

同僚「転移って、荒野の国までカーゴごとか!?」

同僚ナビ『…例のペンダントですわね』

修道女「はい、エルフの強い魔力が込められたこのペンダントと」チャリン

修道女「ナビちゃんの一番の理解者であるどーちゃんと」

修道女「同じく男さんの親友である同僚さんの力を借りれば…!」

同僚ナビ『承知しましたわ!』

修道女「どーちゃん、ナビちゃんの事を強く意識して下さい!」

修道女「同僚さんは男さんの事を!」パァァァ

女「頼んだわよ!」パァァァ




771: ◆o/5nn0YDew 2018/05/12(土) 20:05:43.08 ID:NCC/SEvG0

同僚「お、おう!」ムムム

同僚ナビ『ナビさん…長い金髪、深緑色の瞳…』

同僚ナビ『細くて白い指先、よく通る声…』

同僚ナビ『真っ直ぐで純粋、汚れを知らない心…』

修道女「いきます!」キッ

[風の息吹よ 大地の鼓動よ]パァァァァ…

[数多の空を駆け巡りし 勇壮なる汝の名において]

[無限に翔ける翼の力で 我らを導き給え]

修道女「転移します!!」クワッ


バヒュゥゥゥン…!!




772: ◆o/5nn0YDew 2018/05/12(土) 20:06:34.25 ID:NCC/SEvG0

-荒野の国 街道-


グォォォォ!!

男「うおっ!」バシュッ

先輩「おらぁぁ!!」ブンッ ザシュッ!!

ドラゴン「痒いわ、人の子よ」ヒュンッ

先輩「な、尻尾で…ぐわぁ!」バシッッ

男「先輩!くそっこのぉぉ!!」チャキッ

ダダッ…ピョンッ

男「ぬぉぉぉ!!」

魔法剣(ナビ)『おりゃぁぁ!!』パァァァ…

ザシュッ!!

ドラゴン「くっ!なかなかやるじゃないか!」グルル

ドラゴン「ならばこれならどうだ…」コォォォ

魔法剣(ナビ)『男ちゃん!なんか来るで!!』

ドラゴン「」ゴワァァァ!!

男「炎を!?くっ…!!」ダダッ

先輩「懐がお留守だぞ!!」ザシュ!

ドラゴン「っ!小賢しいわ!!」

兵士「総員展開!!陛下の乗ったカーゴを守れ!!」ダダダッ



バシュゥゥ…!!


ドラゴン「!」

先輩「ど、同僚のカーゴ!?」

男「みんな!!」




773: ◆o/5nn0YDew 2018/05/12(土) 20:13:23.37 ID:NCC/SEvG0

-王立診療所 賢者の病室-


勇者「け、賢者!!」バッ

親父「…バカ野郎」ギリッ

賢者「」zzzz

医師「現状、賢者殿は薬で眠っています」

医師「しかし、薬が切れても意識が戻る事はないでしょう」

研究員「巨石の力に心酔し、ついに心までも食われてしまった…」

勇者「賢者!賢者!!あぁ…」ポロポロ

親父「…泣いてる暇はねぇぞ」グイッ

局長「巨石から放たれた魔法攻撃が極寒の大地へ向かったなら」

局長「魔族からの報復があるかも知れません」

局長「…ある、と考えた方がいいでしょう」ギリッ




774: ◆o/5nn0YDew 2018/05/12(土) 20:14:16.75 ID:NCC/SEvG0

親父「男の所へは女達が向かった」

親父「向こうで何が起こってるかは分からんが、今はあいつらを信じるしかねぇ」

局長「勇者殿」

勇者「…はい」スクッ

局長「王国の守りの要である陸軍本部が使い物にならない以上」

局長「今、この王国を魔族から守れるのは勇者殿と剣士殿だけです」

局長「陛下に代わってお願いします、どうか…この国を」フカブカ

研究員「…。」フカブカ

勇者「…任せて下さい」コクッ

勇者「人々を守る!それが勇者たる俺の使命です!!!」キリッ

親父「歳は食っちまったが、俺も手ぇ貸すぜ!!!」クワッ




775: ◆o/5nn0YDew 2018/05/12(土) 20:15:02.67 ID:NCC/SEvG0

-荒野の国 街道-


女「二人とも大丈夫!?」バッ

修道女「こ、これが本物のドラゴン…」

同僚「すごく…大きいです…」ゴクリ

同僚ナビ『ふざけてる場合じゃありませんわ!』

ドラゴン「援軍か」フンッ

男「みんな来てくれたのか!」

先輩「全員集合ってか」ニヤッ

ドラゴン「そんなに戦いたいのであれば相手になろうぞ」

バサッ…バサッ…

ドラゴン「我"等"でな」

男「おいおいまさか…」

魔法剣(ナビ)『そっちも援軍かいな!!?』ヒェッ

グルル…ゴガァ…




776: ◆o/5nn0YDew 2018/05/12(土) 20:15:36.45 ID:NCC/SEvG0

先輩「頭数を合わせてくれるとは律儀なドラゴン野郎だな」ハァ

女「余裕かましてるけど勝算はあるの?」

先輩「俺には勝利の女神がついてるからな」ニコッ

女「ホントにもう…」クスッ

男「同僚!修道女さん!」

同僚「来ちゃったww」

修道女「お二人共ご無事ですか!?」

同僚ナビ『絶対に凌がなければなりませんわよ、何しろ先輩さんのカーゴには…』チラッ

男「国王陛下が乗っているからな」ギリッ




777: ◆o/5nn0YDew 2018/05/12(土) 20:16:06.95 ID:NCC/SEvG0

修道女「どーちゃん!力を貸して下さい!」ギュッ

魔法石(同僚ナビ)『えぇ、喜んで!』

修道女「攻撃役のお二人に、私の新しい転移魔法を付与します!」パァァァ

修道女「いきます!高速転移!!」

男「なんだこれ…体が軽い!」

修道女「視界に入る範囲なら連続で高速転移が出来ます!」

先輩「こいつは凄い…よし、いけるぞ!」チャキッ

ヒュンッ ヒュンッ…




778: ◆o/5nn0YDew 2018/05/12(土) 20:16:47.08 ID:NCC/SEvG0

女「さ、同僚くん行くわよ」バタンッ

同僚「最近多いなこのコンビwww」ガチャン!

ブォン!ブロロロ…

同僚「しかし上空でグルグル旋回しちゃってwww」ミアゲ

同僚「まるでエ○ァ量産機だなww」

女「今時、旧劇場版見てる人の方が少ないわよ…そんな事より!」

女「陛下の乗ったカーゴを守るように走り回りつつ…」

同僚「女ちゃんの攻撃魔法で撹乱かwww」

女「それも進化バージョンでね」

同僚「その本なんぞwww?」

女「いくわよ!」パタンッ

[禁書指定 絶対殲滅!爆撃☆どかん]




779: ◆o/5nn0YDew 2018/05/12(土) 20:17:35.34 ID:NCC/SEvG0

男「おらぁぁぁ!!」ブンッ!

魔法剣(ナビ)『なぁらぁぁぁ!!』パァァァ

ドラゴン「ふんっ!!」ビシュッ

先輩「当たらないぞ、デカブツ!」ヒュンッ ヒュンッ

修道女「…!」パァァァ

同僚「急旋回からの急旋回そして急加速wwwたーのすぃーwww」ギュオン!ブロロロ…!!

女「喰らいなさい!」パァァァ


ズギャァァン!! ドカァァン!!


兵士「な、なんだこいつら」アゼン

兵士「物流協会って運送屋じゃないのかよ…」




780: ◆o/5nn0YDew 2018/05/12(土) 20:18:22.55 ID:NCC/SEvG0

男「はぁ…はぁ…」チャキッ

ドラゴン「やるではないか、人の子よ」ボロッ

先輩「お褒めにあずかりどうも」チャキッ

修道女「み、皆さんお怪我はありませんか!?」

女「えぇ大丈夫よ」

同僚「ようやく大人しくなったか量産機どもwww」

ドラゴン「王国の紋章、そしてその連携…」

ドラゴン「成る程。貴様達が新たなる勇者一行というわけか」グルル

男「へ?」

魔法剣(ナビ)『なんでやねん!』ビシッ

先輩「いやいや、俺達は運送屋で」

女「そうよ勇者だなんて」

同僚「ラブアンドピースがモットーですwww」

同僚ナビ『否定はしませんが鼻につきまくりますわね』ジトッ

修道女「し、シスターもいまーす!」




781: ◆o/5nn0YDew 2018/05/12(土) 20:19:11.68 ID:NCC/SEvG0

ドラゴン「新たなる勇者一行の実力、しかと見届けた!」グォォ!

ドラゴン「されば案内しよう、我ら魔なるものの始祖…」

ドラゴン「魔王様の御許へな」バサァッ!


バサァッ グルグル…


同僚「まーた始まったよ量産機コーナーwww」

女「魔王の所へ連れていくって行ってたけれど…」

先輩「向こうから案内してくれるなんて都合が良いじゃないか」ニヤッ

修道女「ま、まさかあの極寒の大地へ!?」

男「…。」ギリッ

魔法剣(ナビ)『男ちゃん、どしたん?』

男「…本当にこのまま戦い続けていいのか?」

魔法剣(ナビ)『男ちゃん…』

男「…。」フルフル

ドラゴン「見るがいい、この世界の理を」


パァァァ…


バヒュゥゥゥン…!!!




785: ◆o/5nn0YDew 2018/05/13(日) 10:32:11.27 ID:t4oQpaDo0

-王都郊外 煉瓦橋-


カンカンッ!カンカンッ!

親父「逃げられる奴は今すぐ王宮へ逃げろ!」

親父「残ってる陸軍兵士は俺に続け!」

親父「腹が決まった奴だけな」ギロリッ

兵士1「お、俺は行くぞ!」チャキッ

兵士2「王国陸軍の誇りにかけて!剣士殿に遅れは取らん!」チャキッ


ヒュルルル…ズシィィン!!!


親父「っ!おいでなすったか!」チャキッ

ベリアル「…剣士か」フンッ

兵士1「で、でけぇ…」ガタガタ

兵士2「なんだよコイツ…」ブルブル

親父「おいビビってんじゃねぇ!!」クワッ

ベリアル「相手に不足はねぇな」ニヤッ

親父「お互いにな。それじゃ…」

親父「煉瓦橋の死闘と参りますか!」




786: ◆o/5nn0YDew 2018/05/13(日) 10:32:51.43 ID:t4oQpaDo0

-西の街 陸軍本部跡-


大佐「ゆ、勇者殿!」ダダッ

勇者「ここにも魔族の報復があるかも知れません」

勇者「手を貸してもらえますか?」

大佐「勿論!人々を守るという使命は我々陸軍も勇者殿と同じ!」

大佐「総員!戦闘配置!勇者殿を援護するんだ!!」


バサッ…バサッ …ズシンッ


デーモン「…現れたな、勇者」ギロリッ

勇者「人々の為!世界の平和の為!」チャキッ

勇者「俺は戦う!!」クワッ




787: ◆o/5nn0YDew 2018/05/13(日) 10:33:48.88 ID:t4oQpaDo0

-荒野の国 街道-


兵士1「あいつら全員消えちまった」ポカーン

兵士2「と、とにかく俺達は荒野の国の中心部へ向かうぞ!」ガチャ バタンッ

兵士1「えぇと、エンジンをかけて」キュルル…ブォン!

兵士1「クラッチを踏んで、ん?ギアどうやって入れるんだ?」スコスコ プシュン

兵士2「おいエンストしちまったぞ!何やってんだよ!」

国王「…貸してみろ」キュルル…ブォン!

国王「このタイプのカーゴはマニュアルモードに切り替えねばクラッチ操作は受け付けん」ピッ

国王「男くんはナビシステムを使ったオートモードで運転しているからな」ガチャン!

兵士1「お、おぉ」ナルホド

国王「先輩くんはマニュアルオンリーだから、今の操作は必要ない」

国王「こっちのカーゴは私が運転する、操作について質問はあるか?」

兵士1「だ、大丈夫であります!」ビシッ

兵士2「凄い…陛下もカーゴを運転出来るなんて」

国王「私は一国の王だ」キリッ

国王「では向こうのカーゴは頼むぞ、私が先行するから続くのだ」

兵士1・2「り、了解!」ダダッ

ブォン!ブロロロ…




788: ◆o/5nn0YDew 2018/05/13(日) 10:34:58.90 ID:t4oQpaDo0

-亜空間 小さな土地-


バシュゥゥ…!!

男「な、なんだここは」キョロキョロ

女「どうやら再び来てしまったようね」

同僚「ただいましたくなかったなーww」

先輩「なんだこりゃ!?地面が宙に浮いてるぞ!!」

修道女「魔族の本拠地って極寒の大地じゃないんですか!?」


『人の子よ』


男「っ!!」ビクッ

魔法剣(ナビ)『なんやこの声…頭の中に直接…?』

同僚ナビ『それに何ですの?このヒリつくような気配…』ゾクッ


『愚かなる人の子よ』


同僚「初対面で失礼しちゃうわねwwアホだって自覚はあるけどもwww」

先輩「この声が魔王なのか!?どこにいやがる!!」


『お前達は何故戦う?』


先輩「決まってるだろ!お前達魔族を倒して平和を勝ち取る為だ!」

男「…違う」フルフル

修道女「お、男さん?」


『奪う事 殺す事』

『それがお前達の言う平和か?』


女「今回、戦いの口火を切ったのは賢者さん…」

修道女「まさか、魔族はただ単に自衛を…?」


『戦いを望むのならば相手になろう』

『我の元へ来るがよい』


パァァァ…




789: ◆o/5nn0YDew 2018/05/13(日) 10:35:50.05 ID:t4oQpaDo0

-亜空間 魔王城-


オォォォォォオォォォ…

男「…ここが」ストッ

同僚「城というよりでっけぇ箱だなwww横○アリーナ位ありそうwww」

女「しかし不思議な場所ね、あれだけ詠唱して消耗した筈の魔力が」

修道女「そうなんです、完全に回復しています」

先輩「さて、どこから入るか」ペタペタ

女「入り口らしいものはないわね」ペタペタ

修道女「お、お二人とも気を付けて下さい!」

同僚「ホント似てきたよなこのカップルwww」

男「…。」ギリッ

魔法剣(ナビ)『男ちゃん?』

男「さっきの声…そして同僚が会ったという魔族の話」

男「やっぱりおかしい…この戦いは!」


『考える事の出来る者は幸いである』

『それが人の子の持つ、最も尊い力だ』


パァァァ ゴゴゴゴ…

先輩「壁が…開いていく」

女「中に入れって事ね」




790: ◆o/5nn0YDew 2018/05/13(日) 10:36:47.42 ID:t4oQpaDo0

-魔王城内部-


オォォォォォオォォォ…

先輩「な、何だこりゃ…」ゴクリ

男「巨石なんか比較にならない…」

修道女「なんて巨大な魔法石…!!」

同僚ナビ『ひ、ひぃっ…!』ガクガク

同僚「お、おいこれが魔王の正体だってのか!?」


『人の子よ』

『疑問を抱いた事はなかったか?』


女「疑問…?」


『魔族、魔力、そして魔法』

『全ての魔なる力は同じ始祖を持つ』

『汝らは、魔なる力を以って同じく魔なる存在たる我々と対峙してきたのだ』


先輩「そ、そんな…!」


『我が名は魔王』

『全ての魔なる者の母にして頂』




791: ◆o/5nn0YDew 2018/05/13(日) 10:37:42.08 ID:t4oQpaDo0

修道女「じ、じゃあ私達の魔法は元を正せば全て魔王の力…!?」

同僚「魔王というから魔族の親玉だと思ってたが…これじゃ殆ど神様じゃねぇか」

女「そんな…勝てない…勝てる筈がない…」フルフル

先輩「し、しかしここまで来て引き返すわけには!」チャキッ

男「…先輩」グイッ

先輩「…。」

男「俺が行きます」ズイッ

スポンッ カランカランッ…

魔法石(ナビ)『お、男ちゃん?』チリンッ

女「ちょっと男くん!?何言ってるの??」

先輩「剣を捨ててどうやって戦うってんだ!?」

男「…戦いません」フルフル

先輩「戦わない!?」

男「ナビ、付いて来てくれるか?」

魔法石(ナビ)『…当たり前やろ』フフッ

修道女「お、男さん!!」

同僚「…おい」

男「…。」

同僚「絶対戻ってこいよ」

男「あぁ、約束する」ニコッ


パァァァ…




792: ◆o/5nn0YDew 2018/05/13(日) 10:38:28.37 ID:t4oQpaDo0

パァァァ…

先輩「男とナビちゃんが…」

女「魔王の中へ吸い込まれていく…」

同僚「男ぉー!!ナビちゃーん!!」

修道女「あぁ…私は」フルフル

修道女「誰に祈ればいいの…?」




793: ◆o/5nn0YDew 2018/05/13(日) 10:39:09.08 ID:t4oQpaDo0

-魔王内部-


男「…ん」パチ

ナビ「…ここは?」パチ

『ここは我が胎内』

『全ての魔なる者の生まれ出ずる場所』

男「魔王…あなたは」

男「全部知っていたんですね?」

『我は悠久なる時を越え、全てを見てきた』

『汝ら人の子が、自らを傷つけ合いながらその血で綴った歴史の全てを』

男「人の歴史…魔族とだけじゃない、同じ人間同士での争い」ギリッ

『奪い、奪われ』

『殺し、殺され』

『その血塗られた歴史を連綿と紡いできた汝らに』

『平和を説かれるなど片腹痛いのだ』

男「…何も言い返せませんね」フゥ

男「それなら人間を滅ぼしますか?俺達はいなくなった方がいいと思いますか?」

ナビ「お、男ちゃん!何言うてんの!?」アセッ

『汝らがどう生きるのか、それは汝ら自身で考える事だ』

『考える事、それが汝ら人の子の希望にして』

『責任なのだ』

男「俺は…」




794: ◆o/5nn0YDew 2018/05/13(日) 10:40:04.63 ID:t4oQpaDo0

男「俺はただの運送屋です」

男「ただ荷物を積んで、運んで、下ろして」

男「その先にあるものを考えようとしなかった」

男「…里が燃え上がった、あの日までは」

ナビ「せや!里の襲撃は何やったん?魔王はんがやったんとちゃうん!?」

『汝らが手にした魔法石と、その中に取り込まれし善なる魂』

『その暴発の理由は明白、汝らには過ぎた力だったのだ』

男「…あの日から、ずっと考えてきた」

男「俺達は一体何と戦うべきなのかって」

ナビ「男ちゃん…」




795: ◆o/5nn0YDew 2018/05/13(日) 10:40:59.11 ID:t4oQpaDo0

男「俺には家族がいて、仲間もいる」

男「守りたい人がいて、守りたい場所がある」

男「その為に剣を抜かなきゃならないなら仕方ない」

男「でも魔王、あなたは…」

男「あなたは俺達が戦うべき敵じゃない」

『されば何とする?人の子よ』

『自らの事しか顧みぬ人の子の間にあって、その思いを貫けるのか?』

男「そ、それは…」

『汝のその欠けた心が砕けて折れてしまわぬと誓えるのか?』

『その弱き心で、本当に誓えるのか?』

ナビ「欠けた心…弱き心…」

男「時間はかかるかも知れません!でもいつか必ず!」

『ぬるいな』

パァァァ…

男「…っく!な、なんだこれは…!!」

ナビ「お、男ちゃん!?」

『汝に我が見てきた歴史を見せよう』

『人の子の、その血塗られた愚かな歴史を』

『これらを見ても尚、同じ事が言えるのか?』

パァァァ…




796: ◆o/5nn0YDew 2018/05/13(日) 10:42:06.11 ID:t4oQpaDo0

パァァァ…


<子供は!子供だけはっ!!

<いやぁぁ!!お母さん!!


男「っ!!や、やめろぉぉ!!」


<死にたくない…いやだぁぁ!!

<殺せ、死にたくないならな…


男「やめろ…やめてくれっっ!!」


<ガス室へ送れ、全員だ

<母は祖国、父は同士将軍です!


男「こ、こんな子供まで…」ポロポロ




797: ◆o/5nn0YDew 2018/05/13(日) 10:43:02.03 ID:t4oQpaDo0

『醜悪にして愚か』

『凄惨にして非情』

『目を背けるな』

『これが汝ら、人の子の歴史だ』




798: ◆o/5nn0YDew 2018/05/13(日) 10:44:09.86 ID:t4oQpaDo0

パァァァ…フッ

男「うぅ…こんなのって…」ポロポロ

ナビ「男ちゃん!!!」ユサユサ

男「うぅ…あぁ…」ポロポロ

『心が折れたか』

『汝の誓いなどそんなものか』

ナビ「か、考えるんや…!男ちゃんにしてあげられる事を!!」

ナビ「欠けた心…弱き心…」

ナビ「…そうか」ハッ

ナビ「男ちゃん…一人にはしぃひんで!!」 スッ

ナビ「」パァァァ




799: ◆o/5nn0YDew 2018/05/13(日) 10:45:37.45 ID:t4oQpaDo0

-男の精神世界-


ヒュゥゥ…

ナビ「…ん」パチ

ナビ「久しぶりやな、男ちゃんの心の中」

ナビ「男ちゃんの匂い…好きな匂い」フフッ

ナビ「でも、今は冷たい風が吹いとぉ」ブルッ

ナビ「…悲しみに潰されそうになってるんやな」

ナビ「今行くで!男ちゃん!!」ダダッ




800: ◆o/5nn0YDew 2018/05/13(日) 10:46:29.64 ID:t4oQpaDo0

ナビ「男ちゃん!!」

男「…。」ポロポロ

ナビ「…もう大丈夫やで」ニコッ

ギュッ

ナビ「悲しかったなぁ?苦しかったんやなぁ?」ナデナデ

男「俺…俺…」ポロポロ

ナビ「一人で苦しまんでえぇよ、ウチと半分こしよ?」ナデナデ

クイッ

男「ナビ…ん…」チュッ

ナビ「男ちゃ…っ」チュッ チュ…

パァァァ…




801: ◆o/5nn0YDew 2018/05/13(日) 10:47:25.87 ID:t4oQpaDo0

-男ちゃん?巨石の中で言った事覚えとぉ?-

-巨石の中で?

-ウチと一つになろ?って-

-あぁ、覚えてるよ-

-あれが答えやったんよ-

-答え?-

-男ちゃんの欠けてしまった心-

-何故かウチの中に置き去りにされてもた記憶-

-男ちゃんの物忘れも-

-運転中に意識を失ったんも-

-全部理由があったんよ-

-理由?-

-それはね…ウチ-




802: ◆o/5nn0YDew 2018/05/13(日) 10:48:30.00 ID:t4oQpaDo0

-ナビが理由?-

-そう、魔法石に男ちゃんの心を写し取る時-

-ウチという人格が生まれた…生まれてもた-

-だってナビシステムってそういうものじゃないか-

-ウチらの場合ちゃうねん、ウチはな?-

-男ちゃんの心の欠片、解離した人格-

-あの本に出てきた…-

-せやからな?一つにならなアカンねん-

-そしたら男ちゃん、乗り越えられるよ-

-この悲しみを、失意を-




803: ◆o/5nn0YDew 2018/05/13(日) 10:50:03.24 ID:t4oQpaDo0

-ウチな?男ちゃんから色んなモンいーっぱいもらってんかぁ-

-俺から?-

-せやでー。沢山の思い出や、色んな人との出会い-

-何より、胸いっぱいの慈しみ-

-ぜーんぶ男ちゃんがくれたモンや-

-ナビお前、何言って…-

-あったかい…男ちゃんの気持ち-

-ちゃんと返すからな?-

-心が一つになったら、男ちゃんはもう大丈夫-

-慈しみに満ちたその心が強さを兼ね備えられたら、もう最強や!-

-そんな…ナビ…お前-

-なんてったってウチらは最強のコンビやかんな♪-

-でも多分、一つになったらこうやってお話する事はで、出来ひんくなるから-

-おい!ナビ!何言って…!-

-さ、最後に…うぅ…!い、言わせて…な?-

-お、男ちゃん?いっぱいいっぱいありがとうな-



『愛してんで』



パァァァ…




804: ◆o/5nn0YDew 2018/05/13(日) 10:51:38.06 ID:t4oQpaDo0

-魔王内部-


男「っ!!!」ビクッ

男「な、ナビ!!」バッ

魔法石「」チリンッ

男「そんな…お前…!!」ポロポロ

男「…っく!…うっ…!!」ポロポロ

『欠けた心が一つになったか』

『されば再び聞こう、汝の答えを』

男「…っく!!!」ギリリッ

男「…。」グシグシ

男「…魔王、あなたは考える事こそが人間の最も尊い力だと言った」

男「だがな、人間にはもう一つ、大きな力があるんだ」

『大きな力?』

男「それは慈しみ…人を愛する心だ」

『愛…だと』




805: ◆o/5nn0YDew 2018/05/13(日) 10:52:14.71 ID:t4oQpaDo0

男「俺達は確かに愚かかも知れない」

男「過ちを繰り返して来たかも知れない」

男「…過去を変える事は出来ない」

男「だけど、未来を変える事は出来る」

男「誰かを愛する気持ちさえあれば、みんながほんの少しずつ優しくなれれば」

男「俺達は戦いを捨てて生きられるんだ!!」

『誓えるのか?我が前で』

男「あぁ、誓うよ」

男「時間は掛かっても、必ず成し遂げてみせる」

男「俺の相方と約束したんだ」ニコッ

『心に強さと慈しみが満ちたか』

『…汝の誓い、しかと聞いた』

『違えるでないぞ』


パァァァ…




806: ◆o/5nn0YDew 2018/05/13(日) 10:53:17.70 ID:t4oQpaDo0

-魔王城内部-


パァァァ…

男「」フワッ

ヒュルルル…ストンッ

同僚「お、男!!」ダダッ

先輩「お前…無茶しやがって!!」ヒシッ

男「…。」

修道女「で、でもご無事なようで何よりです」ウルウル

女「そうね…それで、どうなったの?」

男「…終わったよ」コクッ

先輩「終わった?戦いがって事か?」

同僚ナビ『あの…お、男さん…??』

修道女「どーちゃん、どうしましたか?」

同僚ナビ『ナビさんの気配が…ナビさんはどうなさったんですか!?』

魔法石「」チリンッ

女「え…ナビちゃん??」




807: ◆o/5nn0YDew 2018/05/13(日) 10:54:37.38 ID:t4oQpaDo0

『人の子らよ』

『その者の、愛で…慈しみで世界を変えるという誓い』

『しかと聞いたぞ』

『誓いを違える事の無きよう』

『忘れるな』

『我は見ている』


同僚ナビ『男さん!答えて下さいまし!!』

修道女「い、一体何があったんですか!?」

男「…っく…あぁ…」ポロポロ

男「あぁぁ…ナビぃぃ…!!」ポロポロ

男「うわぁぁぁ…!!」ポロポロ




808: ◆o/5nn0YDew 2018/05/13(日) 10:55:22.75 ID:t4oQpaDo0

-王都郊外 煉瓦橋-


キィン!ガキィィン!

親父「やるじゃねぇかよ…!」ギリギリッ

ベリアル「お前もな!…む」スッ

親父「のわっ!急に退くなよ!」ヨロッ

ベリアル「…剣士、貴様の息子が事を成したようだ」シマイ

親父「男が…?」

ベリアル「ここは退く。だが戦いたくなったらいつでも儂を呼べ」

ベリアル「老いて枯れる前にな」ニヤッ

親父「てめぇ!どういう意味だ!!」

ビュン!バサッ バサッ…

兵士1「い、行っちまった」

兵士2「勝ったのか!?」

親父「分からん…なんとも歯切れの悪い感じだが」シマイ

親父「王都は守れたみたいだな」フゥ




809: ◆o/5nn0YDew 2018/05/13(日) 10:56:23.50 ID:t4oQpaDo0

-西の街 陸軍本部-


デーモン「む?」ピタッ

勇者「な、なんだ急に!」

デーモン「…成る程、新たなる勇者が事を収めたそうだ」

勇者「新たなる勇者…男くん達か!」

デーモン「誓いを違えるなと、魔王様からの伝言だ」

勇者「ま、魔王と誓い!?」

デーモン「さらばだ」ヒュンッ

大佐「な、何がどうなってるんだ…?」ポカーン

勇者「分かりません…しかし最悪の事態は免れたみたいです」シマイ

勇者「剣士の息子達によって、ね」ニコッ




810: ◆o/5nn0YDew 2018/05/13(日) 10:59:25.23 ID:t4oQpaDo0

-3ヶ月後 物流倉庫 事務所-


先輩「ホントに行っちまうんだな」

男「魔王と約束しちゃいましたから」

女「賢者さんの抜けた穴…陛下の側近のポストを、まさか男くんが務めるとはね」

男「あ、でも所属はあくまで物流協会だからな?国の仕事はあくまで補佐で…」

配車係「本業の運送屋の傍ら、アルバイトで国の仕事って事ですか??」

女「普通逆でしょ」クスッ

男「そこは譲れないよ、俺はあくまで一般市民なんだ」

先輩「事の顛末を聞いた陛下からの直々のご指名だからな」

男「一般市民だからこそ分かること、感じる事…」

男「そういう事を国政にフィードバックして欲しいって仰ってました」

男「あ、それと荒野の国へ遺骨を届けた二人の事も気にしてたけど?」

男「王国議会はいつでも歓迎するってさ」クスッ

女「私はそんなガラじゃないわ、同僚くんなんか尚更でしょ」クスクス

男「…正直、どんな事が出来るのか分からないけど」チリンッ

男「こいつと一緒に頑張ります」ニコッ




811: ◆o/5nn0YDew 2018/05/13(日) 11:02:33.02 ID:t4oQpaDo0

-王都郊外 煉瓦橋-


リンゴーン リーンゴーン…

修道女「行っちゃいましたね男さん」テクテク

同僚「まぁ所属はあくまで物流協会なんだしよwwwなんも変わらんべwww」

修道女「女さんと同僚さんにもそういうお話があったと聞きましたけど…」

同僚「例の遺骨の件でな」

同僚「有難い話だが、国の仕事ってガラじゃねぇよ俺はwww」ケラケラ

修道女「意外と向いてるかも知れませんよ?」

同僚「マジでwww」

修道女「同僚さんの咄嗟の判断や機転は、まさに策士って感じじゃないですか」フフッ

同僚「それ褒められてんのかwww?」ケラケラ




812: ◆o/5nn0YDew 2018/05/13(日) 11:04:02.99 ID:t4oQpaDo0

テクテク

同僚「さて、ちゃんと答えてなかったけども」

修道女「?」

同僚「ってか気付いてすらいなかったけども」

修道女「??」

同僚「…月が綺麗だな」ニコッ

修道女「!」

修道女「…まだ昼間ですよ?」クスッ

同僚「うるっせーな」ニカッ




813: ◆o/5nn0YDew 2018/05/13(日) 11:04:58.92 ID:t4oQpaDo0

-物流協会事務局 局長室-


局長「巨石の魔力が消えた?」

研究員「はい、前回のように沈黙しているのではなく」

研究員「魔力反応が完全に消滅しました」

研究員「今やただの巨大な石ころです」

局長「一体何が…む!それじゃ賢者殿は!?」




814: ◆o/5nn0YDew 2018/05/13(日) 11:06:32.71 ID:t4oQpaDo0

-王立診療所 賢者の病室-


賢者「」zzzz

勇者「…。」ウツラウツラ

親父「花の替えを持ってきたぞ」ガチャ

勇者「…ん、おぉガーベラか」ノビーッ

親父「花言葉も加味して、な」

勇者「気が利いてるな」ニコッ

賢者「」zzzz

親父「…しかしいつまで寝てやがるんだか」ハァ

勇者「まぁのんびり待とうよ…ん?」

賢者「…っ、ここは」パチ

勇者・親父「!!!」




815: ◆o/5nn0YDew 2018/05/13(日) 11:10:17.87 ID:t4oQpaDo0

-西の街 陸軍本部跡-


カンッカンッ ガガガガッ…

兵士1「しかし見事に木っ端微塵だ」

兵士2「兵舎から何からな」

兵士1「でもま!何とかなるだろ!」

兵士2「あぁ!だって俺達生きてるんだからな」




816: ◆o/5nn0YDew 2018/05/13(日) 11:13:18.88 ID:t4oQpaDo0

『人の子よ』

『汝らが巨石と呼びし魔法石』

『やはり汝らには過ぎた力故』

『その魔力、貰い受けよう』




817: ◆o/5nn0YDew 2018/05/13(日) 11:13:55.89 ID:t4oQpaDo0

男「そろそろ昼時か…あ、ここのパブランチ美味しいんだっけ」テクテク



タッタッタッ




818: ◆o/5nn0YDew 2018/05/13(日) 11:14:44.07 ID:t4oQpaDo0

『その代わり』

『この先の道で汝の心が折れぬよう』

『巨石の魔力を以って』

『器を授けよう』




819: ◆o/5nn0YDew 2018/05/13(日) 11:15:22.70 ID:t4oQpaDo0

男「あーでもあっちのカフェもいいな、それとも…」



タッタッタッ…



「男ちゃん!!」




820: ◆o/5nn0YDew 2018/05/13(日) 11:16:01.84 ID:t4oQpaDo0

男「ん?」クルッ

少女「お、男ちゃん!!」ハァハァ

男「え…お、お前…」パクパク

少女「男ちゃーん!!」ガバッ

男「お前…まさか、本当にナビなのか…!!?」ギュッ

少女「当たり前やろ!この顔を見忘れたんか!?」プンスカ

男「だ、だってお前あの時!」

少女「男ちゃ…会いたかった…」グスッ

少女「会いたかったよぉぉ…!」ウルウル

男「あ!ちょ!タイム!!」

少女「な、なんやねん!」アセッ




821: ◆o/5nn0YDew 2018/05/13(日) 11:16:41.63 ID:t4oQpaDo0

男「…一人で全部決めちまいやがって」グスッ

男「勝手にいなくなっちまいやがって!」ウルウル

男「大事なこと!俺はまだ何も言えてないのに!!」クワッ

少女「ぅ…ごめん…」シュン

男「…いいよ」クスッ

少女「男ちゃん…ウチな?ウチな??」

男「最後は俺に言わせてくれよ」

男「…おかえりなさい」ニコッ




822: ◆o/5nn0YDew 2018/05/13(日) 11:17:57.58 ID:t4oQpaDo0





男「愛してるよ」






823: ◆o/5nn0YDew 2018/05/13(日) 11:23:39.30 ID:t4oQpaDo0

「剣と魔法と運送業」これにて完結となります
読んで頂いた方、ありがとうございました
レス下さった方、励みになりました
スレ少し残りましたので質問等ありましたらお答えします



元スレ
剣と魔法と運送業
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1524705171/
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         コメント一覧 (10)

          • 1. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年05月13日 20:14
          • 同じギャグは「3度まで」やで
          • 2. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年05月14日 13:58
          • よくこんなに気持ち悪い文章を長々と書き続けられるな、凄いわ
          • 3. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年05月14日 16:21
          • 30歳にして人生=経験無から卒業、三次元女子といちゃこら中のワイがお前らにいい方法教えてやる。
            コレ↓ならどんな根暗野郎でも女ゲットできる。後は飯代があればOK。
            goo.gl/KVKbfz
          • 4. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年05月15日 11:02
          • 5 すごく面白かったです!
            テキトーな感想書いてる人いるけど
            俺はすごく好きだ!お疲れ様です
          • 5. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年05月16日 17:15
          • こういうのでいいんだよ、こういうので
          • 6. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年05月16日 23:02
          • ギリッとかクスッとか減らして読み手に想像させる書き方の方がいいんじゃないかと思いまし(粉みかん)」
          • 7. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年05月17日 10:32
          • 5 コメントの少なさと内容は必ずしも関係しない
          • 8. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年05月18日 01:05
          • 糞ssの特徴
            「」のあとにやたらと擬音つける
            あ、くそつまらなかったです
          • 9. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年05月20日 13:09
          • ※6
            SSだから。それ小説だから。
          • 10. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年05月21日 15:24
          • ※2と8は何がそんなに気に入らないんだろうな
            それともエレ速名物の読まず荒らし?
            でも荒らしっていつも☆1付けてくから違うか

        はじめに

        コメント、はてブなどなど
        ありがとうございます(`・ω・´)

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