【モバマス】クジャクヤままゆ
最初はさほど熱心にやっていたわけではなく、ただモバマスが流行っていたからやっていただけだった。
それがやみつきになって、そのためにほかのことをも給料も何もかも投げ出してしまったので、みんなが何度もPにそれをやめさせねばならないと考えたほどだった。
せめてアイドルが不自由しないようにと最低限の家具を自作し、衣食住に困らないようにしてPは潰れかけたボール紙にアイドル達をしまった
しかし他の連中は、アイドル達が住む専用の女子寮や、ライブを開催できるミニステージや、その他贅沢な品々を持っていたので、Pは自分の粗末な道具を自慢するわけにはいかなくなってしまった
専用の衣装を着せてそのアイドルがなついてくれた時、誇らしい気持ちになって、それをせめて自分のアシスタントには見せてやりたくなった
この女性は癒されボイスとさりげなくいいスタイルの完璧な守銭奴で、Pたちの間でも人一倍恐れられていた
彼女は、わずかばかりのアイドルしか入手していなかったが、それはレア度の高いことと、ゆきとどいた世話のために宝石のようにすばらしいアイドルになっていた
ともかく彼女はあらゆる点でPより上にいて、Pはねたみと感嘆の思いで彼女を見ていた
彼女はそれを専門家みたいに鑑定し、それが最上級レアリティであることを認めてくれ、確実に入手するには75000ジュエルはするだろうと判定してくれた
そのSSRアイドルが、ポテンシャルの振り方が悪いとか、きちんとしたケアをしてもらっていないから髪が傷み始めているとか言い、さらにさらにもう1つのもっともな欠陥を発見した。
このアイドルは専用衣装の装飾が1つ欠けていたのだ
それからもう、彼女にはPはアイドルを見せなくなってしまった。
その頃、あのちひろがクジャクヤままゆを「まゆのまゆ」から羽化させたという噂が広まった。
このニュースは、今のPが例えばPの友人の一人がデレステの宝くじで1等を当てたとか、限定SSRアイドルの二人を両方納税で入手したとかいうニュースを聞くよりもはるかに刺激的なことだった。
クジャクヤままゆは、Pの仲間のうちでまだ誰も入手していなかった。Pは古いスマホの画像検索でそのアイドルを知っていたに過ぎなかった。
たびたびPはGoogleに頼ってあのアイドルを眺めたものだった。
ある仲間がPにこんな話をしてくれた。
「この紅のアイドルを、ナンパや柄の悪い男が攻撃しようとすると、このアイドルは身に付けていたリボンを使って、美しい躍りを舞う。そのダンスがとてもきれいな、美しい様子に見えるので悪い奴はこのアイドルをそのままにして行ってしまう」と。
食後、家を出るとすぐにPは事務所に走っていった。そこにちひろは、Pがとても羨ましく思っていた自分だけの小部屋を持っていたのだ。
Pは途中誰にも出会わなかった。ドアをノックすると返事がなかった。ちひろは留守だったのだ。
ドアノブを回してみると、入り口が開いていることがわかった。
そしてすぐにちひろがアイドル達を住まわせている2つの大きな女子寮を眺めた。どちらにも見つからなかった。
やがて、クジャクヤままゆは衣装合わせなどでまだ別の場所に住まわせているのかもしれないと思い付いた。
はたしてそこにいた。アイドル用のミニ布団に包まれてクジャクヤままゆはすやすやと寝ていた。
眠っていても充分にわかる整った顔立ちや、撫で心地のよさそうなふわふわの、光沢を放つ髪などを。
ただ、よりによって専用衣装を着た全身を見ることは叶わなかった。掛け布団に覆われていたからだ。
胸をドキドキさせながら、Pは見てみたいという誘惑に負け、掛け布団をめくった。
画像で見たよりもはるかに美しく、素晴らしかった。
見ているうちにこのすばらしいアイドルをどうしても入手したいという抵抗しがたい欲望を感じて、Pは生まれて初めて盗みを犯してしまった。
Pはそっとクジャクヤままゆを手に乗せた。クジャクヤままゆは突然の見知らぬ男にもニコリと微笑んでくれた。
Pは手のひらをくぼめてそれを持ち、部屋から出た。そのときは途方もない満足感以外は何も感じなかった。
その瞬間、Pの良心が目覚めた。Pは突然知った。盗みを犯してしまったことを。自分が卑劣な奴だったことを。
同時に発覚するのではないかというまったく恐ろしい不安に襲われて、Pは本能的に、クジャクヤままゆを包むように持っていた右手を上着のポケットに突っ込んだ。
「ひゃんっ」というクジャクヤままゆの声を聞きながら、Pは自責の念と恥辱との冷たい感情を抱いて、下から上がってきた他のプロデューサーとこわごわすれ違った。
そして胸をドキドキさせながら額に汗をかき、途方にくれて、自分自身にあきれ返りつつ玄関に立ち尽くしていた。
もとにもどしてできるだけ何事も起こらなかったようにしておかなければならない、ということがすぐにわかった。
それでPは、誰かに出会いはしないか、見つかって早苗さんにシメられはしないかとひどく恐れたけれど、すぐに引き返し、階段を上がって、1分後にはふたたびちひろの部屋の中に立っていた。
Pはポケットから手を引き出して、クジャクヤままゆを机の上に置いた。そして、あらためてそれに目をやるよりも早く、大変なことをしでかしてしまったことを知って、泣き出しそうになった
リボンが千切れ、衣装が所々破れ、ほつれてなんだかイケナイことになっていた。そしてちぎれたリボンを用心深くポケットから出して見ると、それはボロボロになっていて、もうどんな修理も考えられなかった。
Pは「ふぇえん」というクジャクヤままゆの泣き声を聞いた。肌を隠しつつ予備のリボンを巻く彼女を見た。
彼女に償えるならPはどれほどのモバコインも、スタージュエルも喜んで投げ出していただろう。
やがてPはすべてを桃華に打ち明ける勇気を起こした。
桃華はびっくりして、悲しんだけれど、この告白がすでにあらゆる罰を堪え忍ぶことよりもPにとって辛いことだったと感じてくれているようだった
桃華はきっぱりと言った。
「そしてそのことを自分でちひろさんに言わなければなりません。それがPちゃまができるただ1つのことです。ちひろさんに、Pちゃまが持っているもののなかから償いとしてなんでも探してもらうように申し出るのですわ。そして、許してくれるようちひろさんにお願いしなければなりません」
これが他の仲間たちの場合であったなら、あのアシスタントの場合よりPにはずっと気が楽だったろう。
Pはもう行く前からちひろがPの言うことをわかってくれないし、おそらくとてつもない額の課金をさせられるだろうと、はっきり感じていた。
ほとんど夜になっても、行く決心がつかないでいた
「今日のうちでなければいけません。さあ行きなさい!」
それでPは出掛けていき、ちひろがいるかどうか確認した。
ちひろは出てくるとすぐに、「誰かがクジャクヤままゆを傷つけてしまった」「悪い奴がやったのか、あるいは心無いアンチがやったのかわからない」と言った。
Pは、そのアイドルを見せてくれるように頼んだ。Pたちは上に上がった。
ちひろは部屋の電気をつけた。Pは机の上に、破れてしまった衣装があるのを見た。
ちひろがそれをなんとか元通りに修理しようと努力したことがわかった。けれどもそれは直らなかった。リボンもちぎれたままであった。
するとちひろはたけり狂ってPを怒鳴りつけるかわりに、ヒューと歯笛を吹いて、Pをしばらくの間じっと見つめ、それからこう言った
けれど、ちひろはこう言った。
「ありがとうございます。あなたのアイドル達はすべて知っていますよ。それにあなたがアイドル達をどんなふうに扱うか今日またよく見せてもらいましたしね」
でもせっかくですから今言った課金はしてくださいね、と言われた瞬間、Pはもう少しでちひろの喉元目掛けて飛びかかりそうになった。
もうどうしようもなかった。Pは悪党であったし、悪党であり続けた。
そしてちひろは冷ややかに、軽蔑に満ちた黄緑の衣を纏って、ガチャ率そのもののようにPちゃま前に立っていた。
ちひろは罵りさえしなかった。ただただPを見つめて、軽蔑していた。
Pは立ち去った。
桃華が根掘り葉掘り聞き出そうとしたりせず、Pを抱きしめて、そっとしておいてくれたことが嬉しかった。
もう遅い時間で、Pは床につかなければならなかった。
けれどその前に、Pはこっそりと食堂に入って大きな茶色いボール紙の箱を取ってきてベッドの上に置き、暗がりでふたを開けた。
それからPは次から次へとアイドルを取り出して、手のひらでぎゅうと抱きしめた。
モバとデレが混じってたり色々強引ですまん。ぶっちゃけクジャクヤままゆって言いたかっただけです。
読んでくれた人ありがとう
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コメント一覧 (14)
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- 2018年04月07日 04:36
- ちゃっかり母親役に桃華を当てててダメだった
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- 2018年04月07日 04:54
- 草
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- 2018年04月07日 04:56
- ちひろは大悪魔。はっきりわかんだね。
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- 2018年04月07日 07:01
- エーミールなつかしすぎる
へいぜんと桃華ママに相談しててワラタ
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- 2018年04月07日 07:05
- ちゃっかり母親ポジがちゃまなの草
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- 2018年04月07日 08:13
- 優秀なアシスタントで非の打ちどころが無いチッヒめ~
今度はテメーがアイドルとしてコレクションになる番なんだよ!
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- 2018年04月07日 08:30
- ※1
残念だけど、Pは最近入手したわた渋谷凛ちゃんの魅力に夢中なんだ
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- 2018年04月07日 09:32
- やっぱり何とも言えない話だよな
ちひろは正しく、モバPが悪いことは誰が見ても明らかなのに、嫌味ったらしいというかなんというか...後味が悪いよね
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- 2018年04月07日 13:22
- ちゃまいるのにまゆを盗むとか……このくずめが!!
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- 2018年04月07日 13:37
- 最後の抱きしめたってのはどういう解釈?
①原作通り握りつぶした
②大事にしよう的な意味でモバマス仕様に変更した
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- 2018年04月07日 13:50
- ※9
この話は主人公の主観でしかなく、無意識に相手をsageてたから嫌味ったらしく見えるだけって説もあるゾ
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- 2018年04月07日 14:54
- ええい! ちゃまの息子は私だというのに!
P、その場所を変われ! ちゃまは私のママだ!
(ネオ・ジオングをフロンタルから借りてくる音葉)
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- 2018年04月08日 13:26
- ママ、、、?桃華が、、、?
うわっ
明日またこの場所に来てください
本当のまゆをお見せしますよ……うふっ