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バードウェイ「ようこそ、『明け色の陽射し』へ」 ~断章のアルカナ~【その4】

バードウェイ「ようこそ、『明け色の陽射し』へ」 ~断章のアルカナ~【その3】
534:田中(ドワーフ) ◆7fp32j77iU 2013/11/04(月) 13:06:22.00 ID:8FRAZ2Bs0

――次回予告


――洛陽。今ではない、いつか

占い師「――もし、そこの方」

華淋「――悪くはないわね」

秋蘭「はい、先日起きた暴動も収まり、最近は大分安定しております」

占い師「――もし、そこの金髪ツインテの方」

華淋「結構な事じゃない。でも、それだけじゃないんでしょう?」

春蘭「はっ!確かに一帯の治安は改善したのですが、その、住民が別の所へ」

華淋「あぁ。難民街が貧民街へ移ってしまったのね?……全く、ここの町守は何をしているのかしら」

秋蘭「それは仕方がありますまい。黄巾党の奴らが近くの村を襲っておりますれば」

華淋「比較的守りの堅いここへ集まる、か。ま、当然でしょうね」

占い師「――もし、そこの学生時代に同性から告白されてトラウマになっている方」

華淋「中の人は関係ないでしょうが!春蘭、この者の首を刎ねなさい!」

春蘭「はっ!」

秋蘭「よさないか姉者!華淋様も時代考証的なものを、はい」

華淋「さっきから何よ、死相でも出ているって言うのかしら、この私に?」

華淋「なんだったらこの場であなたの寿命を占わせてあげてもいいのよ?」

占い師「……私はまだ死にませぬ。彼の『天の御使い』様に言葉をお返しするまでは、とても」

華淋「そう。だったら今この場であなたの首を刎ねたら、詐欺師って事になるわよね」

占い師「運命とは人の力で変えられるもので御座いますれば、それもまた致し方ないことで御座いましょう」

華淋「ふぅん、度胸はあるようね。いいわ、言うだけ言ってみなさいな」

占い師「『世界が乱れ、大陸が血によって赤く染まる時、人の英雄が現われ――』」

華淋「『その者、白きオオカミを伴い、この世界を平和と導く――』よね?そんなの子供だって聞いた事があるでしょうね」

占い師「『その者、赤きオオカミを駆り、世界を導く』」

華淋「色が違うわね、それが?」

占い師「……曹操様。その者があなたの覇道に大きく関わると見えております」

華淋「……」



535:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/04(月) 13:08:30.86 ID:8FRAZ2Bs0

春蘭「こいつ出任せを言っております華淋様!即刻首を刎ねましょう!」

華淋「止めなさい春蘭――秋蘭」

秋蘭「はっ!……少ないが、これを」

占い師「これは、かたじけない……」

華淋「悪くなかったわ。ではね」

占い師「……ご武運を」

秋蘭「華淋様、宜しいのですか?あんな詐欺師など斬って捨てれば良かったのです」

春蘭「姉者。姉者の目は節穴か」

春蘭「なんだと秋蘭!?」

華淋「私は占い師の前で一度も名乗らなかったわね。あなた達も真名で呼んでいたでしょう?」

秋蘭「勿論、他のどこかで見知っていただけかもしれない。しかし逆に言えばあの占い師はそれだけ情報量が多いという事だ」

秋蘭「情報屋として優れている者に、縁を作っていても悪くはあるまい?」

春蘭「もっと簡潔に!」

秋蘭「あの占い師はある意味、『ホンモノ』だと言う事だ」

春蘭「最初からはっきりそう言えばいいだろう!」

秋蘭「……姉者」

華淋「分かってる。分かってるから、ね?――おや、人だかりね」

秋蘭「芸人でも来ているのでしょうか?で、あればいいのですが」

華淋「そうね。少しは気分も紛れるでしょうから。ね、春蘭――春蘭?」

秋蘭「……華淋様、あそこに」

春蘭「ええいっ!どけどけっ!見えんではないかっ!」

華淋「……いや、まぁ、うん」

秋蘭「姉者の不始末は……」

華淋「アレでいいとしましょう。微笑ましい、と一応は」

秋蘭「……はっ」



536:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/04(月) 13:11:58.55 ID:8FRAZ2Bs0

――広場

男「『さぁさぁお立ち会いお立ち会い!』」

男「『我が輩こそは予言者からこの世界を救うと託された英雄!その名もHAMADURAである!』」

男「『占い師の予言である通り!『白き獣を連れた天の御遣い』とは我が輩の事だっ!』」

春蘭「華淋様華淋様っ!凄いですよ、こいつ天の御遣いですって!」

秋蘭「姉者!そんなに大声を出すな!」

華淋「……まぁ、いいのかしらね?」

男「『そんな我が輩が今日は皆様に良いモノをお見せしよう!なんとっ!我が輩の友である白いオオカミをだっ!』」

男「『遠からんものは音に聞け!近くの者は寄って見よ!これがあのオオカミだっ!』」

犬「わんっ」

一同「……」

男「お、オオカミだっ!」

犬「わふー」

一同「……」

男「え、無言っ!?つーかノーアクションって酷くないっ!?」

男「いやそうじゃなくって!見せ物見せたんだからお金払いなさいよ!すっごいモノ見せたじゃん!?」

男「外見はちょっとアレかもしれないけどさ!ウチのポチは俺以外には誰も懐かない、マッドドッグと呼ばれたんだからねっ!」

春蘭「よーしよしよしよしよしっ」 モフモフモフモフッ

ポチ(犬)「くぅーん」

男「ポッツィィィィィィィィィイッ!?お前何やってんのぉぉぉっ!?」



537:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/04(月) 13:13:35.30 ID:8FRAZ2Bs0

華淋「はい、散りなさい。県令の命令である」

華淋「てか、どう見てもその子、ただの犬じゃない。見た事ない種類みたいだけど」

男「こ、こう見えて凄いんですからねっ!ほらぁぁっ!?」

春蘭「そーか、来るか?お前も?私と一緒に華淋様にお仕えしよう?なっ!」

ポチ「わんっ!」

男「やだポチが浮気してるっ!?」

秋蘭「姉者も軽々しく生き物を拾うな」

男「拾ってないよ!?ポッツィはウチの子だもんっ!」

秋蘭「姉者が全力で抱きしめると、直ぐ死んでしまうだろう?」

男「逃げてっ!?ポチさん逃げてぇぇぇぇぇっ!?」

華淋「――で、御遣いさん?あなたはこんな所で何をやっているのかしら?」

華淋「大道芸で稼ぐくらいだったら、さっさとこの世界を救って欲しいのだけど?」

男「い、いやお金なくてさ」

華淋「だったら働きなさいな。世界を救う実力があれば、食うに困る筈はないわよね」

男「だってさ、その――」

兵士「――曹操様にご報告が!」

華淋「何か」

兵士「黄巾党の大軍がこの町の近くに集結しております!その数、千!」

華淋「そう!隊を三つに分けて秋蘭は西、春蘭は東に。私は南の守りを固めるわ!すぐに兵を展開しなさい!」

兵士「はっ!」

男「ちょ、ちょっとアンタ」

華淋「ん、あぁまだ居たの?さっさと逃げなさいと、ここも戦場になるわよ」

男「そうじゃない!そうじゃなくって!アンタ今、町の周りを固めるって言ってたよな?」

華淋「それが?」



538:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/04(月) 13:15:35.29 ID:8FRAZ2Bs0

男「それが、じゃない!町の北側には難民キャンプとスラムがあるだろう!?どうしてあっちには兵を置かないんだ!?」

華淋「きゃ?すらむ?」

男「兵士を固めれば、手薄な所を狙ってくるんじゃねぇのか?」

秋蘭「控えろ。今は貴様に関わっている時間すら惜しい」

秋蘭「向こうは千、こちらは四百。それで分からなければ話をするだけ無駄だ――華淋様」

男「けどよっ!納得出来ねぇよ!あいつらは元々この町の住人じゃないのかっ!」

男「アンタ、偉い人なんだろっ!?だったら助けてくれたって――」

華淋「――黙れ、俗物が」 ガッ

男「ぐっ!?」

華淋「今、こうしている間に、お前と無駄なお喋りをしている間だって、向こうが攻めてきているかもしれない。それは理解出来るか?」

華淋「たった一人の口だけの男のせいで何十、何百の人間が死ぬ」

男「そりゃ……!」

華淋「次に人間、誰だって万能ではないし、全能でもないのよ。両手で拾える量は決まってる」

華淋「今、私たちに出来る事は町の一番大切な所――商業地と住宅地を守る事だ」

華淋「それらが破壊されてしまえば、復興なんてとても出来たものじゃない。だから」

男「大して役に立たない所を切り捨てる、のかっ!?」

華淋「……そして最後に!私が、この私がそんな下らない方法を好きこのんで使っていると思うのか!?」

男「っ!」

華淋「助けたいに決まってる!誰だってそうだ!助けられるんだったら、そうしている!」

華淋「でも、力が足りなければどうしようもない!それが、この世界の現実だ!」

華淋「それでも――今のでも納得出来ないって言うんなら、あなたが助けなさいな」

男「俺が……?」

華淋「世界を救うのでしょう、天の御遣い。だったらさっさと救いなさいよ」

華淋「たかだか千ぐらいの盗賊なんて撃ち払えるでしょう、ねぇ?」

男「……」

兵士「曹操様!馬をお持ちしました!」

華淋「ご苦労!――それじゃ、楽しみしているわね、御遣い様?」



539:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/04(月) 13:17:27.80 ID:8FRAZ2Bs0

――馬上

秋蘭「良かったのですか?」

華淋「いいのよ。これだけ脅しておけば、あのバカも分かるでしょう」

華淋「……ま、分かった所でどうしようもないんだけど」

秋蘭「ですが」

華淋「ねぇ秋蘭、賭けをしない?」

華淋「あのバカが貧民街を助けに行くかどうか」

秋蘭「恐れながら賭けにならないかと」

華淋「あら?やってみないと分からないじゃない?先に選ばせてあげるから」

秋蘭「では――『行かない』で」

華淋「そう。だったら私は『行く』ね」

秋蘭「本気ですか?」

華淋「確かに一人じゃノコノコ殺されに行くようなもんたわ。でも、少し頭を使えばどうにかなるかもしれない」

華淋「あのバカが『俺は天の御遣いだ!』とか上手い事言って、住人の戦意を引き出せれば」

華淋「私たちが応援に向かうまでは持ちこたえる、かも」

秋蘭「あそには無頼の輩が多い。ですが、その性質故に易々と人を信用はしないかと」

華淋「そう?ならばそれだけの男だったのでしょう」

華淋「けれどもしあの男がどうにか収めたのであれば――そうね」

華淋「軍の一つでも任せてみるのも悪くないわね」

秋蘭「華淋様……おい、姉者からも華淋様をお止めしてくれ」

秋蘭「そもそもこういう時は姉者が真っ先に止める――姉者?どうした?」

華淋「春蘭?」

春蘭「……あのぅ、華淋様?」

華淋「何?」

春蘭「あの犬っころ、虎や熊の子供ではないですよね?」

秋蘭「姉者……」

春蘭「ち、違うぞ!?私にだって犬とそれ以外の見分けぐらいつく!」

秋蘭「具体的には?」

春蘭「モフモフしているのが犬で、モフモフッとしているのが虎だ!」

秋蘭「……華淋様、姉の不始末は私が」

華淋「いいのよ、これで――で、あれが、犬じゃないって言うのはどうして?」



540:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/04(月) 13:18:43.81 ID:8FRAZ2Bs0

春蘭「はい。つい私は犬っころを全力で抱きしめてしまったのですが」

秋蘭「待て待て。姉者が本気でやったら、大の大人でも真っ二つだろう?」

春蘭「そうなんだ!私もしまった!って思ったんだが」

春蘭「あの犬は全然平気そうだった。しかも、私が抱きしめてるのに、するって抜け出してあの男を追いかけていったんだ!」

華淋「……秋蘭。参考までに聞くけど、もし虎や熊の子だったとしても」

秋蘭「当然、結果は犬と大差ないでしょうな」

華淋「――春蘭、秋蘭!命令である!」

春蘭・秋蘭「はっ!」

華淋「私は今から貧民街に向かう!他の三方はお前だけで持ち堪えろ!」

春蘭「はっ!御意に!」

秋蘭「ですが華淋様!まさかお一人で向かわれるのですかっ!?」

華淋「大丈夫よ、危なくなったら逃げるから――ではっ」

秋蘭「華淋様っ!?せめて兵士を何人かは――」

春蘭「寄せ秋蘭」

秋蘭「姉者!何故止めるっ!?」

春蘭「華淋様が『大丈夫』と仰ったんだ」

秋蘭「姉者。だが」

春蘭「よく分からないが、全員ぶっ飛ばしてから華淋様をお助けすればいいんだろう?」

春蘭「なぁに難しい話じゃないさ」

秋蘭「……ふっ、姉者は姉者だな」

春蘭「ちょっと待て秋蘭!珍しく私は良い事を言ったのだぞ!もうちょっと褒めてくれたって――」

……ズゥゥゥゥンッ……

秋蘭「地震――違うな。北から?」

春蘭「考えている暇はない。私たちはすべき事をするだけだ!」

秋蘭「おうっ!」



541:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/04(月) 13:20:05.22 ID:8FRAZ2Bs0

――町の北方 貧民街

華淋「……」

華淋(住人は殆ど逃げ出した、か。まぁ当然よね)

華淋(わざわざ残る物好きも居ないだろうし、そもそもこの町と縁深い訳でもない)

華淋(ならば逃げ出して当然。それが普通でしょうね)

華淋(でもだとすれば――)

華淋「あれは、何よ……!?」

 遠方には黄巾党の群れ。千の内、半分程がここへ集結したように見える。
 党というよりも賊と言った方が相応しい彼ら。
 本来であれば、兵士が集結する前に、町へ雪崩れ込み、略奪して去るのを得意している。

 正規兵とは比べられぬぐらいに練度も低い、統率もあってないようなものだ。
 しかしその士気が高いのは獣程度の道徳しか持たぬ、彼らのサガでもある。

 だと、いうのに。

 本来彼が殺到してくる筈が、一定の距離を保ったまま近づいてこない。
 それは、何故か。

華淋「赤い……獣」

 例えるのであれば巨大な『筺(はこ)』。
 文車を人よりも、いやちょっとした家程まで大きくしたような、異形。

 その色は血よりも赤く、陽光を反射して鈍く輝く。
 筺からは一本の角が生え、黄巾党を指し――。

 ヒュゥッ――――ズドゥゥンッ!!!

華淋「っ!?」



542:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/04(月) 13:21:27.01 ID:8FRAZ2Bs0

 天が割れたのか、と錯覚する程の豪音。
 数秒の間隔を置いて、黄巾党が集中している辺りが爆発した。

華淋「あれは――」

 ヒュゥッ、ズゥゥンッ!ヒュゥっ、ズゥンンッ!

 赤い筺の角の先から火を噴く度、何かが飛ばされ、黄巾党を巻き込んで爆発する。

 もしもこれが正規の軍隊であれば、得体の知れない兵器相手に尻込みをし、一時的にでも撤退をかける。
 よく分からない相手に対し、対策を練るのは不名誉ではない。むしろ無為に兵を死なせる方が恥である。

 けれど烏合の衆、しかも略奪に特化した賊の集団。ごろつきやチンピラと大差ない連中は違った。

黄巾党『だあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!』

 鬨の声を上げ、仲間――と呼ぶのは相応しくないだろうが――の屍を踏み越え、赤い筺ですら奪い盗ろうと殺到していく。

ポチ「わふっ!」

 茶色の閃光。
 筺に気を取られ、殆どの者は気づかなかったであろう。いや、気づいたとしても気には止めなかった。
 ただか犬一匹。武装した人間達の前では驚異とはならない。ならない筈であった。

黄巾党「う、ひゃ――」

 ポチが男達の間を疾風る度、目に見えない音速の翼が切り刻み、唸りを上げる。
 音よりも速いその攻撃に、為す術もなく命は狩り取られていく。

黄巾党「ま、まだだ!アレさえ手に入っちまえば、どうにか――」

 獣によりも獣らしく執念に駆られた男達。その末路はどうなったのか。
 もしも誰かが死者の声を代弁出来たのであれば、こう答えただろう。

『もっと速く、死んでいれば良かったのに』

 ギュルギュルギュルギュルギュル……

 筺が――戦車が動く。別の世界では赤い死に神と呼ばれた名機が。
 彼の敵を討ったハンターに忠誠を誓った悪魔が。



543:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/04(月) 13:22:30.15 ID:8FRAZ2Bs0

黄巾党「……な、なんだぁ……?」

 不気味な苦闘音が響き、首を傾げる。
 いざとなれば逃げられる。その勘違いから来る余裕でもあった。

 だが、もう遅い。

 ギュルルルルルルッ!

 戦車は唸りを上げ――その、その鋼鉄の体を惜しげもなく、黄巾党へ突っ込ませる!
 数十トンの塊が全てを巻き込み、破砕し、ミンチへ変える。

 虐殺の時間は然程かからなかった。


――数分後

 戦車が動く者全てを薙ぎ倒し、蹂躙すると。その塊はゆっくりと町へ近づいていく。
 あまりの出来事に圧倒され、思考能力の殆どを奪われてはいたが――。

 ――それでも『王』はその矜持を忘れてはいなかった。

華淋「止まりなさい!それ以上町へ近づくな!」

 仲間もなく、兵もなく。それでも己に与えられた役割を守るため、たった一人で戦車の前へ立ちはだかる。

華淋(……やれやれ。まぁこれも運命なのかしらね)

 鋼鉄製らしい以外、何も知れない相手に対し、言葉が通じるとは思えなかったが。

 しかし、彼女の直ぐ前まで来ると――戦車はピタリと歩みを止める。

華淋「……何?」

 かこん、と意外に間抜けな音を立てて、筺の上部から頭を覗かせたのは。

男「おー、大丈夫?平気だった?」

華淋「あなた……さっきの!?」



544:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/04(月) 13:24:01.97 ID:8FRAZ2Bs0

男「一応レーダーに映ってたからさ、流れ弾とかは行かないようにしたけど」

 世界が乱れ、大陸が血によって赤く染まる時、人の英雄が現われる。
 それは天の世界より遣わされた救世主――ではない。決して“この”世界を救うために訪れた存在ではない。

華淋「――私は」

男「あん?」

 だが彼の者は紛れもなく救世主である。
 遠き所の、いつか、どこかの国を悪しき物から、そして正しき物から、人を救った存在。

華淋「私は曹孟徳。洛陽の県令をしている者よ。あなたは?」

 彼の者は赤きオオカミを駆り、この世界をも再び導かん。

男「あー、俺は浜面。浜面仕上」

浜面(男)「帰り道を探してる……迷子みたいなもんかな?」

 超ハードルート(現実→メタルマックスⅡ→現在)を辿った浜面仕上の、ある外史の物語が始まる――。


――次回予告 -終-



545:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/04(月) 13:24:50.46 ID:8FRAZ2Bs0

no title



588:田中(ドワーフ) ◆7fp32j77iU 2013/11/12(火) 09:19:53.95 ID:F04++kkk0



――どこにでもあるようなありふれた昼の風景、そんな話




589:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/12(火) 09:21:05.77 ID:F04++kkk0

フレイア「おっはっろーーーーっ!こっちこっちっ!」

沈麻「だから目立つからやめろっての!ただでさえ肩身が狭いんだから」

絶愛「超キュートな異母姉妹に挟まれて悩むんですね、超わかります」

沈麻「ウルセェっつってんだろ。あと上目遣いで首傾げるのやめなさい、卑怯だから」

フレイア「上二人はどったの?結局来てないみたいだけど」

上条「姉さんは生徒会、妃后は保健室だって」

フレイア「あー、当利は外面良いもんねー」

絶愛「妃后は体調悪いんですか?朝、超元気だったような気が?」

沈麻「そーだよ。サボりだよ。つーか俺よりも体育の成績いいんだもんな」

フレイア「理后ママが体弱いから、妃后もっとかつい思っちゃう訳だけど」

絶愛「なんだかんだで理后母さんも、昼間のカブトムシみたいに気がついたら超移動してますもんね」

沈麻「虫に例えない。お前口悪いぞ?」

澪子(みおこ)「でっすよねーっ!絶愛ちゃんはあたしを見習った方がいいぞー?」

絶愛「超お断りだ。わたしは毒舌キャラで超売っているので悪しからず」

澪子「キャラて!いやいやっせめて身内にぐらい優しくしてほしい、っていうかね?そう思いません、沈麻兄さん」

沈麻「……いやいやいやいやっ!?お前誰だよっ!?つーか何で新キャラ出てんの!?」

澪子「へ?やっだなぁもう朝ご飯一緒に作ったじゃないですかっ」



590:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/12(火) 09:22:20.44 ID:F04++kkk0

澪子「そん時に『絶愛ちゃんとご飯食べに行きますから』って聞きましたもん」

沈麻「……俺?俺がおかしいのか?」

ラウィニア「――あまり深く考えても無駄だぞ。馬鹿は馬鹿だから馬鹿って呼ばれるんだ、この馬鹿」

沈麻「一台詞で四回も馬鹿って言いやがったなこの幼女!……待て待て。つーかなんか、これ。罵倒に聞き覚えがあるって言うか」

ヴォイニッチ「もー、しずまはご飯持ってくるの遅いんだよ!お腹ペコペコになっちゃったかも!」

シャルドネ「いやあんた、さっき私の研究室に来てお菓子全部平らげてったよなぁ?」

沈麻「大学生にまで若返ってるっ!?」

シャルドネ「やかましいな、誰がババアだコラ。マイナス10ぐらい許してやれよ」

絶愛「長編書く前に『誰得?』って上司から超言われてました」

フレイア「うんまぁ結局、『筺と旧い魔術結社の生き残る道』ってテーマで必要だったって訳」

ラウィニア「ん……どうした沈麻?本当に調子でも悪いようだな」

澪子「兄さん、どうしちゃったんです?――って、あ、わかりました!」

澪子「優弧ちゃんの襲撃でも受けたんでしょ、ねっ?」

沈麻「誰だよそいつ――はっ!?」

優弧(ゆうこ)「もーお兄ちゃんってば、授業終わったら居なくなっちゃうんだもん。探したんだからねっ」



591:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/12(火) 09:24:41.08 ID:F04++kkk0

シャルドネ「おーおー、今日もフルスロットルだなぁ。何人ヤってきた?」

優弧「二桁以上は面倒だから数えてないかも?」

沈麻「待てや!お前ヤるって何だ、ヤるって!?」

優弧「お兄ちゃんのクツに画鋲を入れようとした人とぉ、ラヴレターを送ろうとしてた人達だけかな?」

優弧「うん、うんっ!とっても悲しいけどぉ、こんな時『上条』なら女の子にもグーパンチするんだよね……ッ!」

沈麻「病んでやがるなこいつ!ってか円周母さん更正したんじゃなかったのか!?」

優弧「あはぁっ。やっだな、更正したからこそ誰も殺してないんじゃん?」

ラウィニア「いいからさっさと食うぞ。貴様も今更騒ぎすぎだよ、レアと殆ど変わらないじゃないか」

絶愛「それも超どうかと思いますが。まぁ時間がないのは超同意です」

フレイア「それじゃ澪子そっちのシート持ってー」

澪子「りょーかいでーすっ!」

ヴォイニッチ「手伝うんだよっ」

沈麻「……あぁ、下が芝生でチクチクするわ、人の目線がチクチクして痛いぜ……」

シャルドネ「まぁ気にするだけ無駄だろ。境遇が変わるって訳でもないだろうし」

沈麻「変わってる!その境遇が変わってるんだよ!朝まで俺の姉妹は4人しか居なかった筈だもの!?」

沈麻「なんで急に5人増えてんだっ!?どっから引っ張ってきた、つーかクソ親父は色々と間違ってるだろ!」

優弧「まぁまぁ仕方がないんじゃないかな?ある意味責任は取ってるみたいだし?」

澪子「責任の取り方が極端というか、だったら最初からするんじゃねぇよ、って見方も強いですけど、はい」

沈麻「……あぁ殺してぇ。親父のその幻想ぶっ殺してぇなオイ!」

澪子「だがしかしあたしがその幻想を半[ピーーー]!」 シャキーン



592:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/12(火) 09:25:54.90 ID:F04++kkk0

沈麻「え、なにどういう能力なの?半分だけ殺すってどういう事?」

澪子「『半幻想殺し(ハーフ・ブレイカー)』――能力だけが殺せて中二病は治りませんっ!」

沈麻「能力打ち消して言動は痛々しいままだったら最悪じゃねぇか!?逃げて、一方通行さん逃げてーっ!?」

ヴォイニッチ「もー、しずまもゴヂャゴチャ言ってないでいただきます、するんだよ!じゃないと食べられないし!」

沈麻「えっとインデックス――じゃなかった、ヴォイニッチさんの能力は……?」

ヴォイニッチ「わたし?わたしは『偽書目録(ヴォイニッチ・インデックス)』だけど」

ラウィニア「『禁書目録』が『十字教では禁忌とされた知識』であるならば、『偽書目録』は『偽書としなければならなかった知識』だ」

シャルドネ「ヤバくて禁書指定すら憚られた禁断の知識を、『偽物』とラベル貼って封印したって話よ」

ラウィニア「死海文書オリジンに聖ユダの黙示録、果てはヒエ口ニムス・ボスの『悦楽の園・クロウリー解釈書』もあるって話だし」

シャルドネ「興味あるけど、発狂するリスクを冒してまではちょっと、だよなぁ」

優弧「黒いマリア様も載ってるの?」

ヴォイニッチ「それはねぇ、元々『アフリカから現れる無貌の神』をモチーフにした――」

沈麻「止めようぜ、飯食う前には?食ってからも俺の居ない所でコズミックホラーの話を続けてくれ」

絶愛「――おべんと並べましたけど、超何やってるんですか?」

沈麻「……家族の会話かな……?あ、結局人数分あるじゃねぇか。作った憶えないのに」

フレイア「まーまー、結局難しい事は食べてから考える訳」

沈麻「そうだな、親父には後で説教構す必要が出来たけどな!」

澪子「だがしかしそれが後々後悔する事になるとは、上条沈麻はまだ知らなかった……!」

沈麻「おい、ふつーふつー言っときながら一番冒険しやがってる人の娘。お前も涙子母さんも無茶しすぎだろ!」



593:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/12(火) 09:28:21.76 ID:F04++kkk0

ラウィニア「ある意味『女版上条』だしな。まぁ母親と違って、私、優弧、絶愛、レアにヴォイニッチの誰かと一緒だから問題はない」

沈麻「なんだその『遊び人・魔法使い・忍者・戦士・盗賊・賢者』って強パーティ」

優弧「そういえば澪子ちゃんが仲良しなのは、誰だっけ?」

澪子「そりゃもうっ初夏しか――」

沈麻「おいよせ!これ以上色々と面倒な話を持ち出すな!?」

ラウィニア「ネタだと良いよなぁ。噂では全員行くつもりだとか」

シャルドネ「おい、沈麻。そろそろメシ食わせねぇと猛獣に噛まれんぞ」

沈麻「猛獣?」

ヴォイニッチ「ぐるるるるるるるっ……っ!」

沈麻「よっし食べようか!俺が食われる前に速やかに早く!」

沈麻「それじゃ、まぁ――いただきます!」

絶愛・フレメア・澪子・ヴォイニッチ・ラウィニア・シャルドネ・優弧「いただきます」


――どこにでもあるようなありふれた昼の風景、そんな話 -終-



603:田中(ドワーフ) ◆7fp32j77iU 2013/11/19(火) 12:36:07.51 ID:v0DqSa9x0



――断章のアルカナ・アフター




604:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/19(火) 12:36:45.50 ID:v0DqSa9x0

――職員室

シェリー「スチューデントキーパー?」

黄泉川「そそ。所謂『落第防止』って奴じゃんよ」

シェリー「所謂の意味が分からねぇけど、つまり何だ?つーかご大層なルビって逆に読みにくくないか?」

シェリー「『風紀委員(ジャッジメント)』ってどう意訳しようが、あぁはならねぇだろ」

黄泉川「んー……まぁ、色々あって学校に来なくなる生徒が居るじゃん?そいつらにカツ入れて引っ張ってくる係」

小萌「あの、黄泉川先生?それはちょっと違うのですよー?っていうか強引すぎて問題になってたじゃないですか」

黄泉川「あー、繊細なの苦手じゃんね。どーしてもこればっかりは」

小萌「クロムウェル先生も気にしないで下さいね?黄泉川先生は講師の方に押しつけようってハラなんですから!」

シェリー「学校に来れない、ってのはイジメか何かか?」

小萌「だけでは、ないのですよ。基本的に学園都市は親御さんの元を離れたお子さん達をお預かりしているんですけど」

小萌「途中から無気力になって『あーめんどー』って、来なくなる生徒がたまーに出るのですよ」

シェリー「そいつぁやっぱり『能力』のせいなのかしら、ね」

黄泉川「あー、ありそうじゃんね。こっちに来る前はなんかすっごい能力かも!ってワクテカしてるんじゃんが」

黄泉川「いざこっちに来てみれば大した事無い能力でガッカリ、しかも伸び悩むって感じじゃん」

クロムウェル「……ふーん」

黄泉川「ってなワケでどうじゃん?助けると思って、ね?」

クロムウェル「あー……まぁ、少しぐらいなら?」



605:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/19(火) 12:38:41.47 ID:v0DqSa9x0

――とあるアパート 部屋の前

ピーンポーン……

シェリー「……」

ピポピポピーンポーン……

シェリー「……」

シェリー(居ないのか、それとも居留守か)

シェリー(前のデータじゃ『中で腐ってた』ってぇ話もあるみたいだし、生死確認は必須、と)

シェリー(管理人室は無人……ドアも普通のアナログな鍵穴か)

シェリー キョロキョロ

シェリー「――安寧の地を捨て光り求めよ」

シェリー「――汝に約束されし場所は道程の道半ばにして折れん」

カチッ

シェリー(……まぁ、鉄はちっと重いが、安物ピッキングするぐらいは問題無ぇよな)

ガチャッ

女生徒「」

シェリー「おー、居るんじゃねぇか。居留守使ってんじゃねぇわよ」

女生徒「だ、誰よっ!?つーか外人っ!?なんでっ!?」

シェリー「私からすりゃテメェも外人だかな。あー、なんだっけ?スチューデント何とか?」

女生徒「様子を見に来てくれた、先生……ですか?」

シェリー「おー、そんな感じそんな感じ。別に盗みに入って来たって訳でもねぇし」



606:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/19(火) 12:40:09.81 ID:v0DqSa9x0

女生徒「いやでも、カギ閉めて……ました、よね?」

シェリー「さぁ?何回か回してたら開いちまったし、立て付けでも悪いんじゃねーのか?」

女生徒「取り替えた方が良いのかな……?」

シェリー「それよっかアンタ。学校出てこいよ。つーか何やってんだ今?」

シェリー「見た感じ栄養失調でぶっ倒れたり、シャレになんねぇトコに首突っ込んだって話でも無いんだろ?」

女生徒「だ、ダメダメっ!わたしが居ないと世界が滅ぶんだから!」

シェリー「……あぁ?」

女生徒「見て下さいよっ!ほらっ!」

女生徒「ラグナロックでは悪い神様がですね一杯居るんですよ!」

女生徒「だからわたしがテンプルナイトになって、教皇様を助ける的な!」

シェリー「……碌な連中じゃなかった、つーかヴェントは結構被害出してたハズだけどな」

女生徒「わたしが戦わないと世界が終わっちゃうんだから!」

シェリー「心配すんな。ネットゲームは運営側が死なない限り世界は終わらねぇから」

シェリー「むしろテメェらが栄養になってる分だけ、逆に寿命は延びてくんだよ」

シェリー「つか何か?お前ゲームにはまって学校に出て来ねぇのか?」

女生徒「た、端的に言えば?」

シェリー「……いや、いいけどよ。学校だけが全部って訳でもねぇし」

シェリー「つーかもっと別になんか打ち込むモンとかある――あぁ」

女生徒「あ、ちょっと勝手に見ないで下さい!?」

シェリー「……へぇ、絵、描くんだ?マンガか?」

女生徒「イラスト。このゲームのキャラだけど」

シェリー「ふーん……あ、うどん?」

女生徒「触手!?それは見ちゃだめ!」

シェリー「触手……イカの足っぽく見えるんだけど」

女生徒「だ、だから触手だし!」

シェリー「いやいや、イカタコの脚って触腕。正確にはイソギンチャクの口の周りに着いてんのが、触手」

女生徒「そう、なの?先生も触手好きなの?」



607:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/19(火) 12:41:23.25 ID:v0DqSa9x0

シェリー「意味が分からねぇわよ。つーか塗り何使ってんの?」

女生徒「Gimpって言って分かる?」

シェリー「あー、パソコンな。絵、得意なのか?」

女生徒「見れば分かんじゃん」

シェリー「もうちょい完成させた奴が見たい。一応美術の非常勤講師なのよ」

女生徒「へー、そんな感じだけど」 カチカチ

シェリー「ホームページ……あぁ、はいはい。これな」

女生徒「……ど、どう?」

シェリー「構図が甘い、遠近感がなってない、配色がダサい」

女生徒「全否定っ!?」

シェリー「絵としちゃ落書きレベル……おい、どーした?なんで凹んでんのよ」

女生徒「あんたが今オトしたんですよねぇっ!?普通こういうのはほめる所じゃないの!?」

シェリー「いや言えっつったでしょうが。ド下手くそを絶賛したって何にもならないし」

女生徒「いやいやっ、ここはやっぱり『実は絵の才能があった!』的な話になるんじゃないっ!?」

シェリー「……あー……そうだなぁ、まぁ私がアンタの絵の評価をするんだったら、8ってトコか」

女生徒「……どうせ100点満点で、とかでしょ」

シェリー「いや10点満点でだよ。技法その他はデタラメ、塗りも陰影つけないままソフトでやっちまってるし、まぁ素人だな」

女生徒「……やっぱり」

シェリー「でもまぁなんつーか『描きたい』ってのは分かる。下手くそだけど、上手い下手とか関係なしに、『楽しい』って感じがする」

女生徒「それは……うん。けど」

シェリー「何?」

女生徒「現実逃避、みたいな感じで描いた奴だから。あんまり良くないと思う」

シェリー「いいんだよ別に。描く動機なんてのはどうだって」

シェリー「本人が楽しんでやってれば、それでいいと思うぜ」

女生徒「……あの、先生」



608:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/19(火) 12:43:28.61 ID:v0DqSa9x0

女生徒「絵、もっと上手くなりたいんだけど、どうすればいいかな?」

女生徒「やっぱり美大とか、専門学校行かないとダメなの?」

シェリー「そうなぁ。それも選択肢なのは間違いない。えっとピカソって知ってるよな?」

女生徒「ゲルニカとか描いた人」

シェリー「そうそう。そいつはきちんとした技法をちゃんと持ってて、その上であぁいう絵を描いたんだよ」

女生徒「つまり?」

シェリー「タレントが下っ手クソな自己満足映画撮るだろ?それが何で『浮いてる』かって分かるか?」

女生徒「基本を、押さえてない、から?」

シェリー「勿論、中にはそういうのを全部すっ飛ばすのも居る。そいつらは『天才』って呼ばれるけどな」

シェリー「だけど、普通の連中はそういう下地があった上で、後世にまで名を残すような絵を描けるんだよ」

女生徒「んー……」

シェリー「アンタの人生だ。何をどうしろっつっても、責任は取れねぇけどな」

シェリー「絵が上手くなりたいんだったら、自己流で勉強するのもアリだと思うぜ?」

女生徒「絵は……好きなんだけど。実はね」

女生徒「ゲームも作ってみたいな、って」

シェリー「ゲームなぁ。ゲームかぁ。うーん」

女生徒「そういうのやってて、『わたしならこういう風にしたいな!』って」

シェリー「あー、絵やら設定は書きたいけど、プログラム組めないってのか?」

女生徒「うん。DirectX使える中級言語まではどうにか憶えたんだけど、どうしても速度がさ」

シェリー「素人にも分かるように頼む」

女生徒「簡単な言語は憶えやすいんだけど、どうしてもその分処理が複雑になっちゃって」

シェリー「人間には使いやすいが、パソコンは使いにくい?」

女生徒「か、かな?よく分からないけど」

シェリー「んー……あぁ、そういや一人居たなぁ。アンタと同じでちょい休学してた奴」



609:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/19(火) 12:45:14.90 ID:v0DqSa9x0

女生徒「どうしたの、って聞くのはダメ?」

シェリー「まぁ病気か?二ヶ月間の記憶丸々無くなっちまってるし」

女生徒「なにそのラノベの主人公っぽい展開」

シェリー「まぁ色んな術式あるからなぁ。一応テレパス系犯罪で収めようとしているみたいだけど」

シェリー「で、そいつ確かそっち系に詳しかったっけ」

女生徒「……あ、会うの?」

シェリー「メールでいいだろ。別に会わなきゃどうこうって訳でもないだろうし」

女生徒「同級生にすらあんま喋った事無いのに!」

シェリー「あー……黄泉川の方から言っとくから、な?流石に用件がどうとか、ダメ元でいいから伝えとけ」

シェリー「何かしたいんだったら、行動起こしとけ。出来る出来ないって問題じゃなく」

シェリー「んで、学校来る気になったら、来い。今は転校して、アンタみたいな落ちこぼれ集めて開いてるトコだってある」

女生徒「落ちこぼれって」

シェリー「絵に興味があるのだっていいし、ゲームが好きならそっちに取り組むのもいい」

シェリー「けど『基本』の所が抜け落ちていれば、碌な形にならない。どう歪んでいるのかってのに気づけない」

女生徒「ピカソが、そうだったみたいに?」

シェリー「常識から踏み込むには常識を知ってないダメなのよ。指針、みたいなものかな?」

シェリー「何かに感動するような感性を持っていないと、相手に共感されるものは作れない、って――あぁダメだ。面倒臭ぇ」

女生徒「先生?」

シェリー「今度展覧会でも行ってこい。実物見ないでどうこう言ったって意味はないでしょ」

女生徒「えー……オンラインアーカイブでいいじゃん」

シェリー「……まぁ、好きにしろ。そろそろ時間だし」



610:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/19(火) 12:46:32.87 ID:v0DqSa9x0

女生徒「も、もうちょっとお話ししたいのに」

シェリー「だったら学校来いよ。さっきも言ったけど、保健室登校が嫌なら転校してそっちに入るって方法もあるんだし」

シェリー「私と喋るよりは同世代の子らと話した方が建設的でしょうが――あ」

女生徒「あ、ってなに?あって?」

シェリー「知り合いに高校生が居るんだけど……いややっぱダメだわ」

シェリー「多分、満員電車で痴漢と間違って、ツンツン頭の高校生を突き出して、待ち合わせした喫茶店で待っていたら能力者の強盗が入ってきて」

シェリー「人質に取られて大ピンチになってる最中、そのツンツン頭が出てきて右ストレートで黙らせてフラグ立つから」

女生徒「……先生?先生ってラノベ結構好きなの?なんか気が合いそうなんだけど」

シェリー「あぁイギリスのちっこいシスターが『日本の勉強になりますからぁっ!』って」

女生徒「騙されてると思うよ、うん。根拠はないけど」

シェリー「いやだって能力とか学園都市とか、ジャパンは予想以上にラノベそのままだったわ」

女生徒「なんか反論しにくいですけど。それだったら外国に魔法学園もあるんですか?」

シェリー「ねぇわよ。ホグワーツみたいな面白可笑しい所は。多分」

シェリー(でも『新たなる光』みたいな連中がいる以上、どっかで教えてるのも確かなんだよなぁ)

シェリー(霊装は北欧系……あー、北アイルランドか?でもあっちってローマ正教の飛び地みたいなもんだし)

シェリー(……麦食い野郎――に、しちゃ愛国心が動機ってのが、また何とも)

シェリー「(……ま、サークル気分で学んでるのは否定出来ねぇよなぁ)」 ボソッ

女生徒「はい?」

シェリー「いや別になんでも。それじゃそろそろお暇するわ。つーか茶の一杯ぐらい出せ。あと学校来い」

女生徒「あーまぁ、うんうん。ラグナロクを助けたら!きっと!」

シェリー「おいテメェは人の話聞いてたのかコラ?」



611:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/19(火) 12:48:06.39 ID:v0DqSa9x0

――上条のアパート

シェリー「――ってナコトがあったんだけど」

バードウェイ「おい、ニュアンス気をつけろ。不安定になるから」

円周「『あーそりゃ問題だよなぁ。色んな事情があるのは分かるけどさ』」

バードウェイ「何で『他者再生』使ってるんだ?本人今直ぐそこにいるだろ」

シェリー「まぁソイツは何とかなりそうだけどな。イジメも無かった――らしい、って話だし。環境さえどうにかなれば」

シェリー「けどなぁ問題は次に行く奴なんだよ」

円周「『そうなのか?』」

シェリー「黄泉川に言わせれば面倒臭さじゃワースト5に入るんだとよ」

円周「『大変だな、シェリー』」

シェリー「だよなぁ。だから悪いんだけど、カミえもんちょっと着いてきてくれないかな?」

円周「『俺!?いや、まぁいいけどさぁ――その代わり』」 チラッ

円周「『俺がその幻想をぶっ殺す!』」

シェリー「やだ、超『幻想殺し』……」(※棒読み)

上条「……何やってんの?お前ら人が台所で鍋からアク掬ってるのに、何小芝居しているの?」

上条「てか今の寸劇ってもしかして俺?カミえもんって俺の事?」

バードウェイ「くっ!?やるな学園都市!こまで正確に『上条』をトレース出来るとは!」

上条「してないよね?今明らかに労働の対価として肉体的な何かを要求してたもんね?」

上条「ってか『幻想殺し』に性的なニュアンスはないと何回言えば分かってくれるの?」

円周「『おっと童貞が意外にガッツいてないと思ったら大間違いだぜ!』」

上条「一括りにするのはやめよ、な?個人差っつーか、個体差みたいなのもあるだろうし」

シェリー「つーワケで明日宜しく。お、鍋――スキヤキか」

上条「いやだからテーブルの上、片付けて欲しいっていうか。円周は運ぶの手伝って欲しいみたいな」

円周「はーいっ」

上条「そんな事よりもだね。まず俺の扱いの悪さについてのミーティングを」

バードウェイ「卵……むぅ」



612:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/19(火) 12:49:12.02 ID:v0DqSa9x0

シェリー「生卵はまだ苦手?」

円周「日本人全員好きって訳じゃないから、別に入れなくたって良いんだよっ」

バードウェイ「苦手、という事ではないんだが、どうしたものか」

上条「あー、んじゃ少し火を通そうか?濃いめの出し汁で卵スープみたいにすりゃ」

バードウェイ「すまないな。迷惑をかける」

上条「良いって別に」

バードウェイ「これも部下の躾が行き届いている私の功績だな、うん」

上条「良くないからね?お前外見がちょっと可愛いからって調子に乗んなよ?」

バードウェイ「――ま、こんなもんだ」

シェリー「悪ぃな」

円周「……お兄ちゃんが心配だよねー、ここまで来ると」

バードウェイ「と言うかどう面倒なんだ?まさか命の危険があるんじゃないだろ?」

シェリー「おーおー、そんなにお兄ちゃんが大好きかブラコン」

バードウェイ「取り敢えず外へ行こうか、レディ?豚には豚の泣き方を仕込んでやらないとな」

シェリー「うふ、うふふふふふふうふっ!良いわね、それ。すっごく、すぅっごぉぉぉぉぉぉくっ楽しそう!」

上条「どうしてお前らは直ぐ戦争に持ち込むの!?俺が席を離れた瞬間に殺し合いって!」

円周「一発かませばおとなしくなると思うよ?」

上条「よーし円周さんはご飯食べたら説教だっ!」

円周「……何を教え込まれちゃうの?わたしの無垢な肢体に、当麻お兄ちゃんは何をしようとするの、ねっ?」

上条「誰かっ!?ボケばっかりで突っ込みが足りないっ!?」

バードウェイ「ゴタゴタしてないで食べるぞ」

シェリー「全く食事前に何やってんのよ」

上条「頼むから全員で俺イジる流れはやめないか?ストレスが溜まる一方なんだけど」

円周「『いやー結局さぁ、あたしみたいなボケ&天然担当がいないとダメだって訳だし?』」

上条「今、平行世界から受信しやがったの?つーかそっちの俺は上手くやってるの?」

上条「出来れば誰か好きな人と恋人になって、穏やかな余生を過ごしたい所だけども!」

円周「『いや、うん。退屈はね?してないって思う訳。退屈は』」

上条「……まぁいいや。とにかく、メシは暴れないで食おう?メシの時間だけは」

上条「んじゃまぁ」

全員「いたたぎます」



631:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/26(火) 11:08:13.23 ID:V/3l3D3R0

――数日後 あるマンション

シェリー「――はい、と言う訳で『落第防止』で来たクロムウェルよ。先に伝えてあるわね」

シェリー「えーっと、書類書類……なんだこれ、名前と顔と履歴が真っ黒。つーか何で枠線しか残ってねぇんだよ」

シェリー「あぁ名前んトコに何か走り書き――『アクセラレータ』?」

一方通行「……おい」

シェリー「アクセラレー太?レー太くんな。ジャパンでもぶっ飛んだ名前使ってんだなぁ」

シェリー「まぁでもこっちは二千年前からミシェルとかガブリエルとか、大天使の名前を子供につけてんだけど」

一方通行「……おい、つってンだろ」

シェリー「それじゃ黄泉川アクセラレー太くん、話を聞こうじゃない」

一方通行「その前に聞かせろ黒ババア。お前なにやってンの?人ンち乗り込んで来て、どォいう了見だァ?」

シェリー「いやだから、『学校来ないバカの様子見てこい』ってぇ話でしょうが」

一方通行「百歩譲って企画の意図はわかンだよ。黄泉川がなンか騒いでたからなァ」

一方通行「けどよォ。無理だろ、つーか無理だし」

シェリー「なんでよ?」

打ち止め「え、何々なんか面白そうな企画をやってる!ミサカも混ぜて混ぜて!ミサカはミサカはお願いしてみたり!」

番外個体「ウ、ウチの子はそんな子じゃないんです!ただちょっと中二病をこじらせちゃっただげで、ホントはとっても優しい子なんです!」

番外個体「ほらっ!妹もこう言ってますし!」

打ち止め「え、これ読むの?んーっとねぇ――『この間、夜中にミサカの部屋にレー太お兄ちゃんが――』」

一方通行「なァ?ぐだぐだになンのは目に見えてたよなァ?」 ビリビリ

打ち止め「あーっ!?まだ読んでないのにってミサカはミサカは――!」



632:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/26(火) 11:10:01.35 ID:V/3l3D3R0

シェリー「中々個性的なご家族をお持ちで。えっとお母さん?と妹さん?」

一方通行「分かってンだろ?分かって言ってンだよなァ?あァ?」

シェリー「さぁ?別に興味ないし、性格悪ぃガキと性根の腐ってるガキの話は殆ど忘れたけど」

一方通行「『木原』と魔術マフィアって、それ両方の暗部把握してンじゃねェか」

シェリー「――で、だ。このままだと話が無駄に長くなるのでゲストを呼んであんのよ」

一方通行「はァ?」

上条「おー久しぶり。『木原』ん時は手伝ってくれてありがとな」

一方通行「おゥ?……いや別に野郎の墓穴掘っただけだから」

上条「ウイルスの方はどうなったんだ?」

一方通行「ンあァ。全消ししたみてェだな。サーバん中のデータにアクセスしてくる奴も、ここ二週間出てねェし」

一方通行「元データも気がついたら容量減ってるし。つーかデータを人に見立てて魔術なンざどう考えても――」

一方通行「――じゃ、ねェよ。どォしてこいつが」

上条「いや俺も着いてこい、って言われて来ただけで何が何だか」

一方通行「だからそォいう主体性の無ェのが、って人の事ァ――」

打ち止め「あ、前はごちそうさまでしたのだ、ってミサカはミサカはお礼を言ってみる!」

上条「んー、あぁ別に。ウチの子も一方通行のお世話になってたみたいだし、いいって」

上条「それよか体調は……問題なさそうだな」

番外個体「……」 ソローリッ

一方通行「……ってしてる間に、何お前逃げようとしてンの?挨拶も出来ないンですかァ?」

番外個体「ちょっ!?ダメだって!あの人はこのミサカの存在意義の否定になりそうなのっ!」

シェリー「つー感じで今からちょっと進路相談するから、ガキの面倒頼むわね」



633:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/26(火) 11:11:39.56 ID:V/3l3D3R0

上条「分かったけど。どうして俺?」

シェリー「家でもやってんじゃねぇか」

上条「得意って訳じゃないけど、つーか俺の胃壁がガリガリ削られてんだけど――まぁ、うん。んじゃ遊ぼうか」

番外個体「ムリムリムリムリっ!溶けちゃうからっ!アイデンティティ的なものが!」

シェリー「大丈夫だ。イマジンでも歌えば何とかなる」

一方通行「たった四人ですら仲良く出来なかった連中の歌だぞ?説得力皆無じゃねェか」

一方通行「つーかあれ平和な所では歌えンのに、独裁国家じゃ逮捕されるってェどンな皮肉だよ」

シェリー「世界のどっかで民族浄化されて死ぬ奴に体張るよか、西側で反戦謳ってメシの種にしようって奴でしょうね」

上条「お前ら色々とマズいからな?自重しろ」

上条「えっと……おっきいミサカも、ほれ、行くぞ?」

番外個体「い、行かないし!そんなに、ミサカに優しくすんじゃねぇっ!」

打ち止め「って言って割には素直に着いてきたり、ってミサカはミサカは――」

パタン

一方通行「なンなンだろォなァ、あれ。ちったァ腐った性根治してくれると助かるンだが」

シェリー「あー、ウチにも一人ツンデレが居るけどよぉ。デレるまで待ってゃりいいんじゃねぇか」

一方通行「お前がその単語知ってる理由を聞きてェ所だが――で?」

シェリー「あぁ?……あぁ、レー太くんか」

一方通行「知ってンだろ。つーか初対面じゃねェだろ、自己紹介はしてねェけどよ」

シェリー「黄泉川から聞いてないの?」

一方通行「……いやァ聞いてっけどさァ。なンでお前が来たンだってェ話だ」

シェリー「そりゃ他の連中じゃ危なっかしくて触れないんでしょう?つーか学校来いよ」

一方通行「俺以外誰も居ねェ教室で、ディスプレイ眺めンのは飽きたンだよ」

シェリー「嫌なら転校するとか」

一方通行「……あのよォ、お前がどんだけ俺を知ってンだっつーの」

シェリー「危なっかしくて外には出られない?」

一方通行「こっちが騒ぎゃァ向こうも釣られるってェ話だ。ましてや、俺がどっかで友達作って青春ごっこしたとしても」

一方通行「連中が放っておく訳がねェし。そもそも最初っから『仕込む』可能性だってあらァな」

シェリー「おいおいやっぱ親御さんの言う通りか。どんだけ中二病こじらせちまってんだ、テメェはよ」



634:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/26(火) 11:13:16.56 ID:V/3l3D3R0

一方通行「あァ?知り合い連れてきて調子に乗ってンじゃねェぞ、クソババア」

一方通行「お前にゃ『殺してやらないでやった』ってェのでかい貸しがあンだからな」

シェリー「学園都市の『闇』ってのは、まぁ私も詳しくは知らない。ガキどもから軽く聞いただけで、面倒になったしなぁ」

一方通行「聞けよ、聞いとけよ。仕事じゃねェのか」

シェリー「けどもまぁ逆に。こっちは魔術サイドの闇は見て来た――つもりでは、ある」

シェリー「最近グレムリン相手に自信は品薄ぎみなんだけど」

シェリー「その経験から言わせて貰うと――アンタの、お前の、テメェが対峙してきた『闇』ってのは、大人しくしてりゃ黙りする程度の相手か?」

一方通行「……」

シェリー「『こっち側』の心身ともに彼岸へ行っちまった連中に、一歩も引かない、引けない集団は『その程度』な筈が無ぇわよね」

シェリー「今、こうやってバカ話をしている間にだって――つーか、先月複合能力者?だかとやり合ったって聞いたけどな」

一方通行「……まァた部外者が好きに勝手にほざきやがるがよ。なァ?先生よォ」

一方通行「だったら俺はどうすりゃいいンだよ!?何をどうすれば、どうなるってェ――」

シェリー「知らねぇよ。それこそ部外者に聞いたって答えなんか出てくる訳ねぇだろうが」

一方通行「お前なめてンだよなァ?ぶち殺されてェのか?」

シェリー「いや、だから考えりゃいいだろ。黄泉川も言ってたけどよ、アンチスキルに入るとか、どっかの大学で研究職になるとか」

シェリー「テメェが学園都市の『兵隊』じゃなくなって、『外』の連中に認知されちまえばいいんじゃねぇのか?」

一方通行「そりゃまァ、言うのは簡単だがよォ」

シェリー「あー……なんつーかなぁ、面倒臭ぇから踏み込みたぁねぇんだけど、アンタがどうこうしてやりたいってのは、今のガキどもだろ?」

一方通行「そォ見えンのか?はっ、だとすりゃ相当お前の目は腐ってンだなァ」

シェリー「いやロシアに行ったバカから聞いた。『助けてやって欲しい』って超泣いて殴りかかってきた、って」

一方通行「あいつともケリつける必要があるよなァ……つかあれ、『殴りかかった』程度にしか思われてねェのかよ」

シェリー「あのバカはまぁ……諦めろ」

シェリー「いやいや、そうじゃなくてよ。だから、つまり、要するに」

シェリー「ちったぁ環境変えてみればいいんじゃないかしら、って事」

一方通行「環境なァ。さっきから言ってるように――」

シェリー「てか思ったんだけど、アンタの能力開発される前はぼっちだったでしょ?」

一方通行「話が飛びすぎやしねェか。関係無ェだろ、何一っつ」

シェリー「あぁいや私もそうだったんだよ、今もまぁ似たようなもんだけども」

一方通行「……」

シェリー「色々あって親友の一人もどうにか作ってみたけど、その子はさっさと殺されちまうし。どーしたもんかなぁ、っては思ってた」

シェリー「半年ぐらい前には学園都市をぶっ潰そうって、テロかましてみたりもした……まぁ、何が変わるって訳でもなかったわね」



635:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/26(火) 11:14:39.87 ID:V/3l3D3R0

シェリー「で、聞くんだけど、アンタは何がしたいの?何をすれば良いと思う?」

シェリー「持ってる『信念』のために、どう動けばいいって?」

一方通行「俺ァ」

シェリー「確かに今、『人質を取られてる』状況かも知れない。それがどんななのかは分からないけどね」

シェリー「でも逆に『人質を取らなければいけない程に危険視されてる』って、裏返しでもあるわよね」

一方通行「そいつァ……あァまァ、そォ、言えるかも知れねェか」

シェリー「取り敢えず――元・ぼっちの先輩から言わせて貰えるんだったら、仲間を増やせ。世間を広く知れ」

一方通行「今更学校通えって?笑う前に吐き気がすンだけど」

シェリー「人質云々に関しちゃ、もう無理だろ?つーかダメじゃねぇのか」

シェリー「今のガキどもや黄泉川に芳川、守るのは結構だが。アレだ――」

シェリー「――ずっと一日中見張ってるって?」

一方通行「フザケンな!何が分かるってェンだよクソバハア!」

シェリー「だから、何も分からねぇっつってんだよ白モヤシ。私一人ぶっ飛ばしたって、現実は変わらねぇわよ」

シェリー「具体的な方法は知らないし、あくまでも案の一つだけども、アンタが大勢の人間に認められれば手を出しにくくなるんじゃねぇのか?」

シェリー「そうすりゃ相対的に周囲の人間も危険度も下がるってもんだし」

一方通行「はァ?出来る訳がねェだろうが!俺はなァ!」

シェリー「だから知らねぇっつっんだろ白モヤシ。テメェがどこで何しやがって来たのかは興味も無ぇわよ」

シェリー「どんだけ人をぶち殺して来たのか、それともクソみてぇな科学に荷担してきたのか、それは知らない」

一方通行「……」

シェリー「けどなぁ、黄泉川みてぇな女やさっきみたいなクソガキどもをだ。後生大事に抱え込みましょうって人間が」

シェリー「道に転がってるクソみてぇな人間の訳がねぇんだよ」

一方通行「……うぜェな、ババア」

シェリー「つー訳で学校来いよ。ぼっち教室じゃなくって、もう少しまともなの用意出来るって話だし」

一方通行「世界を広げる、かァ……俺が」

シェリー「学生生活ナメんなよ?便所メシが日本の伝統だけだと思ったら大間違いだ」

シェリー「結構イジメで死ぬ奴だって居るんだからな」

一方通行「……実感こもってンなァ」



636:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/26(火) 11:16:30.74 ID:V/3l3D3R0

シェリー「『フツーの生活』が全部正しいって話じゃねぇが、まぁ」

シェリー「知っておくのも悪かねぇわよね。そりゃあ」

一方通行「……学校には行ってやってもいい。けどな」

シェリー「分かってる。そこいら辺は黄泉川が何とかしてくれる――多分」

一方通行「最後の最後で人任せってどォなンだよ」

シェリー「……前、悪かったな」

一方通行「あァ?急にどォした」

シェリー「デパートん時の話よ。アレは碌に確認もしなかった私が悪かったわ」

一方通行「気持ち悪ィな……まァ、なンだ」

一方通行「『体晶』撃ち込まれてキレキレだったってェのもあるし、お前だけが悪いってェ訳じゃねェ」

一方通行「そもそも、で言えばどっかのバカが仕組んだんじゃなかったのかよ」

シェリー「そういう事じゃねぇんだ。テメェはまだガキなんだよ」

一方通行「……謝ってンのかケンカ売ってンのか、出来ればもォちっとシンプルに言ってくれませンかねェ、あァ?」

シェリー「ジャパニーズの歳はよく分からねぇが、どう高く見てもハイスクールだよなぁ。下手すりゃそれ未満か」

シェリー「そんな歳の人間相手に、殺すとか殺されるとか――」

シェリー「――割り切るとか割り切らねぇとか、そんな選択を突きつけていい訳がないわ」

一方通行「なンか勘違いしてるみてェだがよォ」

シェリー「全面的にアンタを肯定するつもりはねぇし、私が誰かさんの立場だったら殺すまで殺してるとは思う」

シェリー「だからこれは綺麗事よ。第三者が見た感じでの感想」

シェリー「まだ心も体も不安定なガキ一人に大量虐殺させて、他の連中誰一人責任すら有耶無耶にしてるってぇのは」

シェリー「明らかに間違っている。それは、断言出来るわ」

一方通行「……お優しいこったなァ」

シェリー「当然。どんだけガキだろうと、テメェがもっと上手く立ち回りゃ良かったってぇ前提もあるけど」

シェリー「そんな判断すら出来ないガキ騙したクソッタレども、一番腹切って死ぬ必要があるのは学園都市の連中じゃない」

一方通行「けどよォ?そいつァお前の理屈だなァ?」

一方通行「俺が楽しんでやってンだって可能性も――」

シェリー「何気取ってるのか、中二病発症してんのかは知らねぇんだが」

シェリー「偽悪ぶるのもいい加減にしろよ白モヤシ。大体だ」

シェリー「テメェにそんな考えがあればとっくにやってんじゃねぇのかよ」

シェリー「計画が凍結されようが、退院したその日にどっかのバカのマンション潰してリベンジしてだ」

シェリー「学園都市『最強』だったんだろ?何でしなかったのよ」

一方通行「……」

シェリー「周囲にチヤホヤされて煽てれられてがんじがらめにされて、って感じか。まぁどっちも似たようなモンなのかも知れないけど」

シェリー「『最強』って割には随分パシリさせられてたじゃねぇか、なぁ?」

一方通行「――黙れ」

シェリー「あー、20年前にな。イギリス清教と学園都市で一つのプロジェクトが勧められたのよ」



637:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/26(火) 11:18:45.08 ID:V/3l3D3R0

シェリー「『能力者に魔術は使えるか』って」

一方通行「そりゃァ……」

シェリー「エリスって能力者が選ばれて私は魔術を教えた……まぁ?」

シェリー「気弱でぼっちだった私に出来た、最初で最後――じゃねぇのか、えっと……初めての友達だったから、嬉しくてね」

シェリー「毎日毎日魔術を教えるのが楽しくてしょうがなかった。それが正しいと思い込んでいた」

一方通行「……お前も、か?」

シェリー「後はま、いざ魔術発動して全身から血を吹いたエリス、でもってそこに実験反対派の魔術師が乗り込んできて」

シェリー「――あの子は!私を助けるために――」 ギリッ

一方通行「……ガキなのに」

シェリー「……今考えてみればおかしな話だよなぁ。当時の私はティーン行ってなかったんだぞ?」

シェリー「一応先祖がシヴァの女王の末裔を名乗っちゃいるが、どうしてそんな未熟な魔術師に魔術を教わる必要がある?」

一方通行「その被験者ってェのもどォかしてねェか?普通は『事故』が起きてもいいように――」

一方通行「――良くはねェが、耐久性の高くて体力のある大人を選ぶだろ」

シェリー「で、だ。後輩さんよぉ。エリスをぶっ殺したのは『誰』だ?」

一方通行「反対派のクソどもだろ。考えるまでもねェよ」

シェリー「そうよね、それはきっとそうだわ」

シェリー「でもそれだけじゃない。追い詰めたのは私よ」

一方通行「そいつァ筋違い、じゃねェか。そン時にお前が居なかったろうと、その計画自体は進められてただろォし」

一方通行「『入館○○番目のお客様』みてェに、その場に立ってのたのがたまたまお前ってだけだ」

シェリー「意外と優しいのな。あっちで遊んでるバカの言う通りか」

一方通行「誰か幻想殺してくれねェかな……」

シェリー「ってかテメェも同じだよな。『その場にたまたま立ってた』ってぇのはよ」

一方通行「だから俺も無罪です、ってかァ?そいつァ有り難ェ」

シェリー「とは言ってない。私もテメェも、罪を被る必要はあるだろ」

シェリー「幾らガキだったっつっても、拒否出来る権利ぐらいはあったんだからな」



638:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/26(火) 11:20:19.56 ID:V/3l3D3R0

一方通行「訳分からねェな。何が言いてェンだよ?」

シェリー「なんだろうなぁ?お前の境遇を弁護したいって気分もあるけど、だからってぶん殴りてぇ気もすんだよなぁ」

シェリー「だってお前よぉ、『自分の大切なモン守るためだったら、なんだって犠牲にする』って割り切ったろ?」

一方通行「デパートの事かァ?ありゃ別に俺だけだって」

シェリー「こないだ学園都市にテロしに来たっつったよなぁ?」

一方通行「テロリスト無罪放免って、お前はどんだけVIPなんだよ」

シェリー「そん時に関係無い人間巻き込んでぶっ殺そうとしたら、クソ忌々しいツンツン頭の東洋人にぶっ飛ばされたんだけど」

一方通行「復讐、復讐なァ?」

シェリー「難しいよなぁ。死人は何やったって否定すらしてくれねぇし」

シェリー「つーかあの子が好きだった学園都市を潰したとしても、それで大笑いするような感じでもねぇし」

シェリー「なーんか、なぁ?違うんだよなぁ」

一方通行「……俺の場合は、俺が死ねば喝采してくれるってェ奴も多いだろうが」

一方通行「逆に『闘争へ逃げンな』って言われた事もある」

シェリー「結局、そこら辺もテメェらで考えなさいって事なんだろうけど。ただ」

シェリー「『テメェがガキでどうしようも出来なかった後悔』を抱えてる先輩、って立場から言わせて貰うとだ」

シェリー「その、大切な人や大切だったもの『だけ』を守る、ってのはなんか違う気がするな」

一方通行「何が言いてェンだ」

シェリー「エリスの墓守をすりゃ、それは多分喜んでくれるとは思う。けど」

シェリー「墓標の前にエリスを殺した奴とか、騎士派連中の首並べたって、笑っちゃくれねぇなって」

シェリー「それよりか残された私が笑ってる方が、エリスも笑ってくれるような気がするんだよ」

一方通行「それはお前の方の理屈じゃねェの?どォやったって加害者と被害者の理屈ってェのは違うだろォよ」

シェリー「いやテメェもだよ。守りたい人間、後生大事に抱えるのは良い。けどさ」

シェリー「そいつら守るためにだって、そいつらが悲しむような方法で守ったって喜んでくれるか?」

シェリー「ガキ一人瞬殺して『割り切る』のが、本当に喜んでくれんのかよ」



639:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/26(火) 11:21:42.57 ID:V/3l3D3R0

一方通行「あの、ガキもだ」

シェリー「あぁ」

一方通行「『その場にたまたま立ってた』ってェ奴だったンだよなァ。仕込みでもなく」

シェリー「そうだな。まだなんかクソガキが隠してるみたいだけど、害は無いみたいよ」

一方通行「……面倒臭ェな。フツーに生きるってェのはよ」

一方通行「『守る』ってェンだったら、そういう所も考えンのかよ。まァ言いたい事ァ分かったが」

シェリー「でもやるだけの価値はある――って、私に言われるまでも無いかしら」

一方通行「ウルセェよ。お前も黄泉川も、どォしてババアは年取ると説教臭くなるンだ」

シェリー「そりゃお前年寄りだからだよ。目の前にバカなガキが居たとして、説教かますのは義務みてぇなもんだろ」

一方通行「まァ……言いたい事は分かったわ。学校も条件次第だよなァ」

シェリー「そっちは黄泉川が用意するって話だけど、信じない理由は無いでしょうが」

一方通行「……クソ忌々しい事だがなァ」

シェリー「素直になれよツンデレ」

一方通行「デレねェよ」



640:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/26(火) 11:23:38.66 ID:V/3l3D3R0

――路上

シェリー「いやー、疲れた……慣れねぇ事はするもんじゃないわね」

上条「意外にきちんとやってんだな」

シェリー「イギリスじゃ美術の講師もやってたけどね、一応」

上条「変人で通ってた?」

シェリー「……否定出来ねぇけど、もう少し気を遣え」

上条「孤独なロンリーウルフ?」

シェリー「そもそもオオカミは群れで暮らす生き物だろ。大抵はそうだろ」

上条「誰が言い出したんだろうな。一匹狼的な話は」

シェリー「あのガキもやっかいな性格してやがる。野生のオオカミに餌付けした方が楽じゃねぇのか」

上条「一方通行は境遇だと思うけどな。それこそ周りに誰も味方が居ない状況で」

上条「近寄ってくるのはスキルアウトと『木原』的な研究者。それじゃ歪んじまうのも仕方がないって」

シェリー「それじゃぶっ殺された一万人は『仕方がなかった』で済ませんのか?」

上条「それは」

シェリー「死んだ奴ぁ何も言わないし何も望まない。『もしも生きていれば』とかって言うのは簡単よ?」

シェリー「でもそいつぁガキの『他者再生』と同じよ。本物に限りなく近いニセモンなんだよ」

シェリー「なまじっか死人を知っているだけに、身近な人間には醜悪にすら映るんだろ」

シェリー「アレだよ。有名人の蝋人形みたいなの?似ているだけに気持ちが悪いって奴」

上条「『不気味の谷』だっけか。人間に似せれば似せる程気持ち悪い、的な話」

シェリー「……どうだろうなぁ。木原円周に関しちゃ、加害者であり被害者ってぇ感じで誤魔化したが」

シェリー「『人によく似た何か』って不自然さを感じないでもない……あぁ、そりゃ白いのにも言えるが」

上条「んー……俺はあんまり難しい事は分からないけども」



641:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/26(火) 11:25:07.41 ID:V/3l3D3R0

上条「人だろうが、人でなかろうが、意識のやりとりが出来て他人を大事に出来るんだったら、それはどっちでもいいんじゃねぇかって」

上条「あいつは経験が足りないだけで――」

シェリー「意地悪な事を聞くけど、じゃ『意志を伝えられない、他人を大事にしない』って奴は人じゃねぇのか?」

シェリー「広い世界、ましてやテメェが首突っ込んでる所には、そんなバケモノが珍しくない」

シェリー「『信念』って鎧を着た、他人だけじゃなく自分も顧みないような連中がな」

上条「そん時は取り敢えずぶん殴るよ」

シェリー「……おい」

上条「話せば分かる、なんて綺麗事が通じないのぐらいは理解したさ」

上条「イギリス清教にローマ正教、神の右席に学園都市。どいつもこいつも好き勝手しやがるけど」

上条「――でも結局、話をしなきゃ絶対に分かり合えないんだよ」

シェリー「理解するには、か?」

上条「俺達だってそうだったろうが」

シェリー「そうだな。あの白いのにもそんな救いがあれば良いんだけど」

シェリー「……でもアイツは、どれだけ足掻こうが、誰かみたいに成り行きで世界を救ったとしても――」

シェリー「――死んだ連中が笑って許してくれる日は、絶対に、来ない」

シェリー「テメェがテメェ自身を許せる日が来るまでは、心の中の死人は笑っちゃくれねぇんだよ」

シェリー「……多分、誰よりもそんな日が来ると思ってないのは……」



642:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/26(火) 11:28:13.15 ID:V/3l3D3R0

上条「なぁシェリー。さっきから気になってたんだけど」

シェリー「べ、べつにあいつのことはなんともおもっちゃいないんだからねー」(棒読み)

上条「よっしお前にそのネタを仕込んだ奴を教えろ!イギリス行ってぶっ飛ばしてくるから!」

シェリー「ちびっ子じゃなく円周だな。にゅーくりあ?文庫がどうだかって」

上条「……萌えが広がるのは別に良いけどさ、結果的に日本の評判を貶めてないかな?」

シェリー「流石に私も殺す殺さないって奴相手、とまではイカれちゃいない」

上条「じゃ、ねぇよ。エリスの事とかさ。一方通行とダブらせてるって話じゃ」

シェリー「だから気ぃ遣えっつてんだろガキが」

上条「それをしないからガキだって言われるんだろ」

シェリー「どうかしらね、そこんトコは自分でも分からないけど」

シェリー「……でもまぁ、白いの見てるとモヤモヤとっするのは確かだわ」

シェリー「――主にぶん殴りたくて、だけど」

上条「人んちの事情だから。そこはそれ――って、スーパー寄ってかないと」

シェリー「荷物持ちに付き合――悪い、携帯が」 ピッ

上条「いいって。それじゃまた後で」

シェリー「あぁ――『もしもし』?」

ステイル『――すまないね。何か楽しそうだったみたいなのに』

シェリー「『男女関係に友情があったっていいじゃねぇか。つーか覗き見とは……まぁ、ぴったりか』」

ステイル『……まるで僕が好きこのんでしているみたいに聞こえるんだけど?』

シェリー「『今、どこに居るんだ?』」

ステイル『その店の裏の駐車場。別に来なくても構わないけど』

シェリー「『わざわざ学園都市まで来たんだ。湿気た面の一つでも拝ませていきなさいな』」



643:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/26(火) 11:30:25.25 ID:V/3l3D3R0

――スーパーの駐車場

ステイル「ちょっと近くまで来たもんだから、ついでに寄ってみた――って言っても信用しないんだろう?」

シェリー「『人払い』まで張ってか?どんだけシャイなんだっつーの」

シェリー「っていうか最近分かってきたんだけど、お前や露出――神裂の格好って悪目立ちしまくるよなぁ?」

シェリー「それで『必要悪の教会』とかってナメてんのか。あぁ?」

ステイル「今、神裂を露出狂って言おうとしなかった?あと僕を一緒にして欲しくないんだけど」

ステイル「少し見ない間に小洒落た格好になったと思ったら、服装についてのダメ出しから入るのかい」

シェリー「いやいや、私もまともな格好じゃないけど、実働の連中があんだけエ口い格好で人目を引きつけるのって、どうなの?」

ステイル「そこは天草式に問題があるんじゃないかな――って、そんな話をしに来たんじゃない」

シェリー「天草式が都市迷彩みたいな服着てるから、ありゃ個人の趣味だと思うんだけどなぁ」

ステイル「元を戻さないでくれるかな。神裂のアレは聖人だから仕方がないんだよ、きっと」

シェリー「『超人だから』で全部済ませるキン肉マ○と同じじゃねぇか」

ステイル「――さて、本題に入るんだけど。君、そろそろ帰って来ないの?」

シェリー「まぁ、そうだよなぁ」

ステイル「『笛吹男』の『宵闇の出口』を潰したり、学園都市の有力な研究者をフォーマットしたりと、活躍は評価されると思うけど」

ステイル「ってかあの女狐は最初から分かっていた気もするけどもだ」

ステイル「こっちにはそれ以外の仕事が山積みになってる、みたいな感じだね。どうにもアイドルを巡って色々と焦臭い事態になりそうだよ」

シェリー「オルソラとちっこいシスターが騒いでそうだな」

ステイル「シスター・オルソラが仕事にかかりっきりだと、女子寮のご飯が不味くなる」

ステイル「ご飯が不味くなるとシスター達の士気がガタ落ちになる。ほら、これで『必要悪の教会』の戦力は大幅ダウンだよ」

シェリー「メシで弱る魔術結社ってどうなんだよ。ってかケータリング業者に頼めばいいじゃねぇか。誰か雇うとか」

ステイル「一応公務員だからね。経費で落とせる範囲とそうじゃない所があるんじゃないの?」

ステイル「出身地も育ちもバラバラ、性格は天然からドSまで揃った奴らの面倒なんて好きこのんでしないって」

シェリー「……それはテメェの性癖的な問題じゃ……?」

ステイル「別に僕はどうだっていいんだけどね。君がどこで先生ゴッコしようとしても」

シェリー「若作りババアは何て?」

ステイル「特に何も。と言うか僕がここに来た意味を察して欲しい所ではあるけど」

シェリー「さもないと始末するぞ、って」

ステイル「どうだろう。そんな暇があればいいけど」

シェリー「マジ話なのかよ。アイドル云々ってのは」

ステイル「今度は『どっかで眠るヌメヌメタコ野郎』……あ、イカだっけ?の、相手をするとかしないとか」

ステイル「邪教集団相手にお腹いっぱいってのは、本当だね」

シェリー「……そう」



644:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/26(火) 11:32:07.29 ID:V/3l3D3R0

ステイル「だからなるべく君は早く決めて欲しい……ま、これは僕の意見だけど」

ステイル「こっちに残るのだっていいだろう。たかだか君程度の凡庸な魔術師一人、僕達が抹殺してやる義理もないさ」

ステイル「それにどっかの東洋人を突いたら蛇が出そうだしね。それも内外から」

ステイル「ただし、決めるのであれば早々に頼む。後釜を探さなきゃいけないだろうし、来もしない援軍を頼りにするのはバカげている」

シェリー「いいのか?ババアの代わりにそんな事言っちまって」

ステイル「僕みたいな不真面目な人間を寄越す時点で、展開は読めているんだろうさ」

ステイル「もしも本腰入れて連れ戻すんだったら、シスター・オルソラ辺りを事件に巻きこんで、『帰って来ざるを得ない状況』を作る」

ステイル「それをしないって時点で、君には選択肢が用意されてるのさ――おっと」 ピッ

シェリー「忙しいってりは本当みたいね」

ステイル「いやこれはあのバカが買い物を終わってこっちへ来てる、って合図だよ」

シェリー「幾ら『人払い』した所でガイジン二人は目立つよなぁ。特にバカデカいヤツが」

ステイル「そうかもね。ハイファッションのモデル服着てるのと一緒にいれば、ね」

シェリー「ってか隠れて伝える必要は無ぇんじゃねぇのか、そもそも。禁書目録も帰省中だし、ふつーに顔出しゃいいじゃねぇか」

ステイル「……言っておくけど、君が今寝起きしている相手は、僕たちが問答無用で攻撃しろって言われてる相手だからね?」

シェリー「そうは見えねぇよなぁ」

ステイル「……それは見解の違いだよ――じゃ」

シェリー「あぁ」

……

上条「――あれ、今誰か居なかった?」

シェリー「居ないわよ?ニコチン中毒のバーコード入りヤサグレ赤神父なんて、どこにも」



645:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/26(火) 11:33:17.47 ID:V/3l3D3R0

上条「なんだ来てたんだステイル。こないだもメシ誘ったのに帰っちまったんだよなぁ」

シェリー「買い物は終わったの?」

上条「あぁ。今晩はオムライスです」

シェリー「バードウェイのには旗立ててやれ。多分喜ぶぞ」

上条「寄せ!攻撃されるのは俺しか居ないんだぞ!?」

シェリー「この間『葛湯』をねだってんの見て暫くしてから、『アレ?』って。違和感があんま仕事してねぇんだけど」

上条「その内ジャパニーズマフィアの真似するんじゃ、って不安で不安で」

シェリー「ヤクザねぇ。振り袖には興味あんだけどな」

上条「お、アパレルもイケるんだ?」

シェリー「昔々『振り袖大火』ってのがあってだな」

上条「うん、君らは魔術から離れる事も考えようね?」

シェリー「仕事柄仕方がねぇんだっつの。あんま日本の魔術師とは戦り合わねぇけども」

上条「わざわざイギリスやヨーロッパまで出向いてドンパチはしないよなぁ」

シェリー「大戦中は凄かったって話だぜ?」

上条「マジで?」

シェリー「兵部大佐がだな。サイキッカー舞台を率いて――」

上条「それマンガじゃね?絶対可憐なヤツ」

シェリー「あれ、結局教え子に手を出す話よね?」

上条「あれは、うん。皆本さん、もうちょっとこう、一線引こうっていうかね?」

上条「個人的にはン十年付き合った相手どうこうってのは、ちょっと引くよね」

シェリー「『獣欲業を征す』だっけ?」

上条「『柔よく剛を制す』な?俺はお前が何を言ってるのかは知らないけども!」



646:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/26(火) 11:36:14.36 ID:V/3l3D3R0

――路地裏

ステイル「……」

ステイル(……ふむ。意外と普通にやってるのか)

ステイル(こっちに残るって可能性も無くはない……まぁいいか)

ステイル(研究職一人引退した所でシスター・オルソラが居ればまぁ、何とか)

ステイル(もっとそちら側を専門とする魔術師の育成も計るべきと。『最大教主』に進言するか)

少女「――おやぁ、そこにいるのはステ……イル君ではないのか?」

ステイル「――あぁクソッタレ。また面倒臭い相手に」

少女「幼女のストーキングに飽きたから、今度はエチオピアンかね。まぁ良い事だ」

ステイル「確かに原義ではエチオピアにそういう意味があったけど、今そう言うのは少しばかり問題があると思うよ。というか」

ステイル「『明け色』のボスがどうしてこちらへ?」

バードウェイ(少女)「ん、いや深い意味はないよ?ちょっと近くまで来たついでみたいなものか」

ステイル「つまり、こっちの動向は完全に把握しやがってる、と」

バードウェイ「なんだい。そう嫌そうな顔をするんじゃない」

バードウェイ「まるで私が嫌われてるんじゃないかと錯覚するじゃないか、なぁ?」

ステイル「あきらかにそっちはロウサイドじゃないと思うんだけどね。愛想を振りまく義理もない」

ステイル「ってか、レーザーポインタで狙うのは止めて貰えないかな。気分が悪い」

バードウェイ「あぁ失敬。どうにもウチのは気が短くてね。あぁこれ忘れ物」 ポイッ

ステイル「駐車場に設置したカード……」

バードウェイ「ダメじゃないか。掃除するバイトの子がビックリするだろう?」

ステイル「わざわざご丁寧にどうも。次からは気をつけるようにするよ」

ステイル「では僕はここで失礼したんだけど、まだ何か用があるのかな?」

バードウェイ「少し話がある。付き合いたまえ」

ステイル「拒否する、と言ったら?」



647:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/26(火) 11:37:19.13 ID:V/3l3D3R0

バードウェイ「……なぁ、ステイル。ステイル……なんだっけ?」

ステイル「格好つけいたんだったら憶えなよ」

バードウェイ「君は一つ勘違いをしている。私は、私達は決して正義の味方ではないよ」

バードウェイ「君たちが『必要悪』を名乗るのであれば、私達はそれ以上の『悪』であると」

バードウェイ「君たちが手段を選ばない以上に、私はよりエゲつない手を使うって事だけど」

ステイル「……へぇ?やるのかい?ここで?」

ステイル「――冗談も程々にした方がいい!」 ゴウッ

ステイル「そんなつまない脅しが僕に効くと思うな!」

バードウェイ「なら『ここに痴漢が居る』って大声で叫ぶ」

ステイル「おい!?」

バードウェイ「そして逮捕されて顔写真入りで記事になったのを、英訳して世界発信してやろう」

ステイル「それは洒落になってないぞ!?というかやり方が陰湿すぎるだろう!」

バードウェイ「――さて、この後少しだけお時間を貰いたい所だが、どうだろう?」

ステイル「……あぁクソ!あのバカと食事した方が何倍もマシだった」

バードウェイ「まぁそう言うな。本場のメイド喫茶の神髄を見せてやろう」

ステイル「メイドの本場はイギリスだよね?こっちのはまがい物だと思うんだけど」

バードウェイ「『青い目のサムライ』的なヤツだな」

ステイル「前にも思ったんだけど、サムライ過剰評価するのはサムライにも迷惑がかからないかな?」



648:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/26(火) 11:38:56.62 ID:V/3l3D3R0

――夕食

バードウェイ「で、どうだったんだ?上手く行ったのか?」

シェリー「テメェは私の母親かっての……あぁ、オルソラにもよく言ってたっけか」

円周「こらっ!パパにそんな口きいちゃダメだよっ!」

番外個体「そーだそーだっ!」

バードウェイ「埋めるぞ貴様ら。誰が父親だ」

シェリー「いやぁキャラ的に

上条「あーほら、ケンカしないの。おかわり上げないんだからな?」

円周「ごねんねー、ママー」

番外個体「ママ、ミサカはそのおっきいのがいいなって」

上条「あーもうどれだって一緒です!ママ贔屓なんてしませんから!」

シェリー「意外に違和感がねぇよな」

バードウェイ「いい主夫になりそうだが……ま、その様子だと問題は無かったみたいだな」

シェリー「あるなしで言えば、あるんじゃねぇのか、っていうか、あのよぉ」

シェリー「どうしてテメェがここに居んだよ?」

番外個体「……どのミサカの事を言っているのかなー?」

バードウェイ「明らかに発育しすぎのお前だ、お前。えっと」

番外個体「わたしっ今日からこの家の子になるっ!」

シェリー「さっき思いっきり嫌がってたじゃねぇか。この短時間にどうやって調教しやがった?」

上条「してねぇよ!?ただ三人でゲームしてただけじゃんか!」

円周「あー、膝の上に女の子乗せてエ口×―みたいな感じ?」

上条「円周さんは完全にエ×ゲ脳ですよね?しかるべき所で看て貰え、なっ?」

番外個体「だってあの家じゃっ!ミサカは、ミサカはずっとずっと虐げられて……っ!」

番外個体「あんな生活もうイヤだっ!」

上条「ミサワ……」

番外個体「その呼び方はやめてくれない?イメージが悪過ぎるんだけど」

円周「清々しいぐらいに涙の痕が皆無なんだけど」

バードウェイ「で、本音は?」

番外個体「MNWに生中継したら、他のミサカからの嫉妬が超気持ちいい」

上条「『あー、もしもし?――うん、こっちに居る』」

上条「『性格悪いの――それそれ』」



649:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/26(火) 11:40:57.05 ID:V/3l3D3R0

番外個体「帰るから!ご飯だけ食べさせて!もう炊飯器メシはいい加減飽きたんだって!」

シェリー「炊飯器で飯炊くのは普通じゃねぇのかよ」

バードウェイ「ほら、学園都市だし?万能炊飯器的な何か得体の知れない技術がだな」

円周「都合が悪くなると科学に丸投げもどうだろ?珍しい名字は沖縄と福島出身にしとけ、みたいなのはね、うん」

上条「でっかいミサカさん、親御さんから『いい子にしてないと噛み殺す』って伝言が」

円周「よっツンデレっ!」

番外個体「いやぁ、それ程でも?」

上条「そこでデレる意味が分からないけど、とにかく大人しくしとけ」

番外個体「えっとそれは『やっちゃえ!』って前振り?『押すなよ、絶対押すなよ!絶対だからな!』的な」

上条「日常会話をそこまで裏読みする意味が分からない!?一方通行どんだけハードな日常送ってやがんだ!」

シェリー「はいはい。人様んちにまで首突っ込まない。さっさと食おうぜ」

番外個体「いったたぎまーすっ!」

円周「あ、ミサワお姉ちゃんフライングはダメだよっ」

バードウェイ「暴れるなガキども。埃が立つ」

上条「お前らいい加減にしないとそげぶするよ?」

番外個体「ミサカ、今夜は帰りたくないの……」

上条「床でいいなら別に?あぁ親御さんの了解もあれば」

番外個体「……チッ。同棲生活が長すぎて耐性がついてやがるぜ」

円周「お兄ちゃん枯れてるもんねー。上っ面だけは」

シェリー「あぁダメだ、帰れよ」

番外個体「おおっと!意外な所から反撃キターーーーっ!何々?独占欲?」

シェリー「じゃねぇわよ。授業があんだからな」

番外個体「えー、それあの人じゃんか。このミサカ関係ないしぃ?」

シェリー「何言ってんだ。アンタも来るに決まってんでしょうが」

番外個体「――え」



650:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/11/26(火) 11:42:26.75 ID:V/3l3D3R0

バードウェイ「……ところで、新入り」

上条「はいはい?」

バードウェイ「私のオムライスの上に鎮座ましましている、イングランド国旗のようなものは何かね?」

上条「そ、それはですねっ!外人さんには珍しいかなって配慮が」

上条「ボスってば派手っぽいの好きそうですし、少しでも綺麗に見えるようにねっ!他意は無いですけど、他意は!」

バードウェイ「ほう、それはすまないね。疑った事を謝罪しよう」

上条「い、いやいやっ!そんな別に頭を下げるほどのもんじゃ」

バードウェイ「てっきり私は『テメーにはお子様ランチがぴったりだ』的な、悪意だと思ったんだが」

上条「シェリーつっあん!?ほら言ったじゃんか!ダメだって!?」

バードウェイ「あとこの旗はユニオン・フラッグじゃないぞ!どうして竜の上に女が乗ってるんだ!?」

円周「ルイ○ちゃんだねぇ。何年か前にネタで新しい国旗のデザイン募集した時、暇人のおじちゃん達が送って問題に」

上条「碌な事しませんねっ!俺達はっ!」

シェリー「てかウェールズの赤い竜はイングランドに併合済みだったら、敢えて省いてあったんだけどなぁ」

円周「ハルケギニアに喚ばれた先生にも見えるよう、今からでもして欲しいけど」

シェリー「いや故人は喜ぶだろうけど、ネタで国旗変えられる身にもなってくれよ」

バードウェイ「ご飯を食べたら人間イスだ」

上条「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

番外個体「な、なんだろ?ミサカすっごく興味ある単語が出てきたような?」

円周「あ、じゃあじゃあミサワお姉ちゃんも一緒に乗ろうか?」

番外個体「なんかあなたとはすっげー仲良くなりそうな予感がする。主に悪意」

円周「心外だなぁ。わたしは悪意なんてこれっぽっちも無いよ?だって『木原』だもん」

バードウェイ「悪意のない悪意ってのが一番タチが悪いと思うがね」

上条「止めろ!これ以上Sを増殖させるな!」

シェリー「『俺の家族がこんなにドSな訳がない』?」

上条「だーかーらっ!粛々とそっちの知識を教え込むんじゃねえぇぇぇぇっ!」



660:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/03(火) 08:19:27.23 ID:GaRocPRo0

――数日後 空き教室

シェリー「――って訳で授業を始めたいと思います」

打ち止め「わーいっ!ミサカはミサカははしゃいでみたり!」

一方通行「あのォ、ババア?」

シェリー「せめてクロムウェルって言え。何だよ?」

一方通行「面子おかしかねェか?」

シェリー「いや私の担当こんだけだから、つーか逃げやがったなデカいのは」

一方通行「そりゃ逃げるわ。つーか今からでも逃げ出してェよ」

シェリー「工山にモブ子も来てるか」

モブ子「モブ子って誰!?」

シェリー「悪ぃ。触手女だっけか?」

モブ子「宜しくねっ!モブ子です!」

工山「あの、先生?」

シェリー「何?」

工山「『落第防止』のカリキュラムの一環ってのは聞いたんですけど、具体的に何をするんでしょうか?」

シェリー「まぁレクリエーションみたいなもんかしらね。本格的に学校出る前にワンクッション置いとけ、みたいな」

シェリー「難しい事ぁしねぇから心配は要らねぇわよ」

工山「は、はぁ」

シェリー「それじゃまず教壇まで画用紙と画材を取りに来い。全員だ」

一方通行「油絵にパステル……クレヨンなンて今の時代に残ってンだなァ」

シェリー「私の持ってきた奴だから、ちとボロいが実用品よ」

打ち止め「んーとねぇ、ミサカはミサカは油絵の具を」

一方通行「ガキが背伸びすンな。クーピーで充分だろォが」

シェリー「テメェが決めんじゃねぇ、殺すぞ?」

一方通行「あァン?」

モブ子「ちょ、先生!」

工山「なんで二人とも好戦的なんだろう……?」

シェリー「良いんだよ別に。好きに描けば」

シェリー「つーかメールで『汚れてもいい格好』って告知してあんだろうが」

一方通行「いやァ。そォじゃなくてな?被害に遭うのが基本俺なンですがァ、って事だよ」

シェリー「ガキのお遊びに腹立てんなよ、っていうか多分そのガキはお前の反応が楽しくてやってんじゃねぇの?」

打ち止め「な、何を言ってるのかこのミサカは全然分からないにゃあ、ってミサカはミサカはとぼけてみたり!」

モブ子「なにこの萌える生き物。どこで買ったの?ハンズ?」

一方通行「約8兆円だけど、割に合ってるとァ思えねェな」

……



661:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/03(火) 08:21:20.42 ID:GaRocPRo0

シェリー「全員画材は取った、よな?それじゃ今日の課題」 カリカリ

『全員の似顔絵を描いてみよう』

シェリー「はい、始め」

一方通行「待て待て、どォいう事だよ」

シェリー「使い方が分からない――あぁまぁちっこいのが優先か」

モブ子「はいっ」

シェリー「トイレはだな」

モブ子「違います!全員って、どういう全員?」

シェリー「要はテメェ以外の全員分だよ。別に発表会に出す訳じゃねぇし、好きにやれ」

モブ子「はぁ……?」

工山「そんなのでいいんですか?」

シェリー「ぶっちゃけ大体そうなんだけど、『セオリー』ってのはある」

シェリー「例えばどっから書き始めるとか、輪郭をまず仕上げるとか、『上手く』描く方法だな」

シェリー「私が教えてる所にはそう言う連中が来るんだが――大抵、まず壁にぶち当たるんだよ」

シェリー「なんつーか、自分よりも上手い連中だな」

一方通行「当たり前じゃねェか」

シェリー「って思うだろ?街一番の才能だって奴も、国一番には適わないんだな」

シェリー「大抵そう言う奴は途中で投げ出して、別の方向ヘ進んじまう。いやまぁそれはそれで良いとは思うんだけど」

シェリー「けど、その前に思い出して欲しいんだよ」

シェリー「『上手く描く』んじゃない。『楽しんで描く』事をだ」

打ち止め「どう違うのかな、ってミサカはミサカは質問してみますっ!」

シェリー「そうなぁ。『芯のある奴と無い奴』ってぇのが分かりやすいか」

シェリー「どんだけ下手クソだろうと、『楽しんで描く』奴と『上手く描く』奴じゃ強度が違う」

シェリー「目の前の技術ばかりに目が行って、『上手く描く』奴は心が折れやすいんだ」

モブ子「適当に生きてた方が楽しい、って話?」

シェリー「そりゃな?現実的な話、絵だけで食ってる奴なんざほんの一部だ」

シェリー「ましてや成功してる奴なんてのは、新星を見つけるぐらいの確率――の、上にデカい問題も持ち上がってきてる」

シェリー「こっちでも権威主義と派閥主義か強くなりすぎちまって、展覧会の直前に裏金がどう、って騒いでんだろ?」



662:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/03(火) 08:22:50.98 ID:GaRocPRo0

シェリー「だからまぁ今現在成功してる奴だって、正直絵の才能だけで食ってるとは言いづらいのが現状」

シェリー「興味がある奴ぁ『Boogie Woogie(邦題;ギャラリー)』って映画でも見ろ。イギリス人特有のエゲつないブラックユーモア満載だから」

シェリー「なんだかんだ偉そうに言ってる私だって、結局副業で食いつないでるようなもんだし」

シェリー「で、まぁ街一番だった絵描き少年は、大抵上の学校で一度は挫折するんだよ。国一番に負けてな」

シェリー「そんなに連中を立ち直らせるには、『絵を描くのが楽しかった』のを思い出させてやりゃいいんだよ」

一方通行「……意味が分からねェよ。何が言いてェンだ」

シェリー「まぁ、なんだ。私はあんた達のアレコレ、知ってるけどもだ」

シェリー「もっと好き勝手に生きりゃいいんじゃねぇのか、って思うんだよ」

シェリー「誰に迷惑描けたって良いし、そりゃかけないのが理想的ではあるけど」

一方通行「訳わかンねェ……」

シェリー「結局、物の価値を最終的に決めるのはテメェ自身なんだよ」

シェリー「芸術家の中には精神病んでそのまま彼岸に逝っちまう奴、結構居るけどよ。果たして連中が幸せだったと思うか?」

シェリー「どれだけ名声を得たとしても、後世に名前が語り継がれても」

モブ子「……」

工山「……」

シェリー「たまーに思うんだよなぁ。ゴッホは自殺した――あぁ他殺説もあるけど――が、人生は楽しかったのかよ、って」

シェリー「もしも彼が凡庸な絵描きで、絵だけなんてとても食っていけなくてだ」

シェリー「どっかの工員として細々とやってるウチに、付き合ってた女にガキが出来て渋々結婚してだ」

シェリー「たまの休みの日にはガキどもの絵を見てやったりして、無名の画家のまま終わる。そんな『可能性』が」

シェリー「ゴッホになりたい人間はごまんと居るだろうし、中には本気でなろうとしている連中も少なくない。だがな」

シェリー「ゴッホはそいつらみたいに、普通の生活がしたかったんじゃねぇか、っても思うわ」

一方通行「……」

シェリー「だからあんた達も正直好きなように生きればいいと思う。他人に迷惑かけるのも好きにやっちまえ」

シェリー「苦しかったら逃げたっていいんだよ。助けて欲しいんだったら助けを求めればいい」

シェリー「……少なくとも、世界にはあんた達の味方をしてやれる『大人』が居るから」

一方通行「……有り難くて涙が出そォ――あだっ!?」

シェリー「生意気言うなクソガキ」

一方通行「ンだとクソババア!」

シェリー「……話が逸れた。だから別に下手クソでも良いんだよ、誰からも笑われたって自分が楽しければ」

シェリー「自分が納得して、楽しく描いていればそれだけで」

シェリー「それでも我慢出来ない。もっと上手く描きたい、認めて欲しいってなら勉強しろ」

シェリー「先人がクソみたいな時間かけて培った技法が、幾らでも、ね」

……



663:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/03(火) 08:25:28.77 ID:GaRocPRo0

一方通行 カキカキ

工山 カキカキ

モブ子 カキカキ

打ち止め「むー」

シェリー「どした?」

打ち止め「貝殻の粉が欲しいな、ってミサカはミサカはねだってみたり?」

シェリー「フェルメールの真似はやめろ。つーかアンタん中では白いのがこんなにキラキラしてんのかよ」

一方通行「うるせェクソババア。今度こそぶち殺すぞ――って、あァ、工山だっけか」

工山「えっと、前乗り込んできた人、だよね?」

一方通行「あァ。あン時言い忘れたンだが、お前今でもハッキングしてンだよなァ?」

工山「し、してないしっ!?言いがかりは――」

一方通行「いやそォじゃねェ。前に調べた時、お前ンのツールの中に、ウイルス仕込まれてンぞ?」

工山「え、どれがっ!?」

一方通行「確か、あー……外部からOSリブートさせっちまうヤツか」

一方通行「あれ使うと風紀委員に連絡入るみてェだわ」

工山「ま、待ってくれよ!あれは僕が作ったんだよ!?」

一方通行「どっかのサイト踏んだ時にでもウイルス感染したンじゃね?元データと構造体比較してみれば?」

一方通行「……まァ信用しねェのもいいだろうがなァ」

工山「そうなの……?ちょっと待って」 ピッ

一方通行「お前いつも持ち歩いてンの?」

工山「――嘘だろ」

一方通行「言った通りじゃねェか」

モブ子「あのー、ちょっと良いかな?」



664:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/03(火) 08:26:53.44 ID:GaRocPRo0

一方通行「あァ?」

モブ子「二人ともパソコンとか得意なの?結構、詳しい?」

一方通行「こいつはなァ。俺は人並みだ」

モブ子「教えて欲しいんだけど、ゲームってどう作るの?」

一方通行「聞けよ話――おい」

工山「ジャンルによる、かな?ポリゴンとか多用するようなヤツは、DirectXは絶対に必要だし?」

工山「3Dやるんだったら、LightWaveみたいな安いのから慣れるのもアリだと思う」

工山「逆に簡単なヤツなのはフリーソフトでも充分に出来る、けど」

モブ子「……言わなくちゃ、ダメ?」

一方通行「好きにすれば?」

工山「まぁ言ってくれた方が、相談には乗りやすい」

モブ子「……ゅ」

一方通行「あァ?はっきり言えよ!」

モブ子「しょ、触手……」

一方通行「……」

工山「……」

モブ子「ちょっと!?言えって言ったのそっちじゃんか!」

一方通行「……いやァ、うン。悪ィ」

工山「普通さ。こういう場合、アドベンチャーとかシューティングとか、ジャンルの話であって」

一方通行「どォ考えても18禁でェすありがとうございました」

モブ子「違っ!?違わないけど、そういうんじゃないの!」

工山「えっと……改めて聞くけど、RPG?」

一方通行「いやエ口ゲーじゃねェのか?それ以外に触手さン活躍する機会ねェだろ」

モブ子「メインじゃないし!違うから!」

シェリー「おらガキどもお喋りも結構だが、手も動かせ。今日中に終わらねぇぞ」

一方通行「そいつのはどォなンだ――おい」

モブ子「うそ……凄っ!」

打ち止め「どーだ見たかっって、ミサカはミサカは誇らしげに胸を張ってみるのだ!」

一方通行「……お前、チートしてンじゃねェの?あれだろ、他の連中のスキル借りてるだけだよなァ?」

シェリー「いーんだよ。何描こうが。つーかお前らも手を動かせ」



665:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/03(火) 08:28:18.50 ID:GaRocPRo0

――数時間後

キーンコーンカーンコーン……

シェリー「……んー、意外に全員悪かねぇな。実は下手でしたーって笑いもんにするつもりだったのに」

一方通行「特定の人間を見ながら弄ンじゃねェ。教師失格だろが」

モブ子「先生、やっぱ上手い」

シェリー「一応な。時間裂いてる分だけ、素人より上手くて当然」

モブ子「わたしも、時間をかければ上手くなれる?」

シェリー「なんだってそうよ。かけなければ、無理」

モブ子「……そっか。そう、だよね」

シェリー「それじゃ一人一人、自分の似顔絵は回収したら帰っていいわよ」

一方通行「聞いてねェぞ!?」

シェリー「言ったら手ぇ抜くだろうがよ。つーか絵の一枚二枚でぎゃーぎゃー言うな。テメェは画伯かコラ?」

一方通行「……ちっ」

打ち止め「ごめんなさいねー、うちの子は反抗期ってミサカは――って、頭ぐりぐりはいやーーっ!?」

一方通行「お前も反省しねェよなァ、あァ?」

シェリー「――ってな訳で、私の授業は以上で終りよ。次からは黄泉川――先生が、カリキュラムを作ってくれるわ」

シェリー「……ま、思ってたのより大した事ぁ無かったろ?それだけの話よ」

シェリー「私から言える事は――そうだな、そうか」

シェリー「せっかく生きてるんだから、人生楽しめばいいんじゃねぇのか?」

シェリー「色々面倒臭いけど、それだって何年かすりゃ折り合いつけて生きていけるから」

シェリー「無駄に深刻ぶるよりか、前向いて背を伸ばすより――」

シェリー「――テメェの歩幅で歩けよ、それだけだ」



666:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/03(火) 08:30:48.11 ID:GaRocPRo0

――夜 上条のアパート

上条「――そっか。上手くやったんだな」

シェリー「それを言うにはまだ早いかしらね。白いのはひねくれてっから」

シェリー「ただまぁ普通の子達とフツーに喋れたみたいだし、そんなに心配はしてないけど」

バードウェイ「ある程度は不可抗力だと思うがね――それで?」

上条「それで、って?一方通行がまだなんか?」

バードウェイ「そうじゃない――まさかお前、何も言わずに行くつもりじゃないだろうな?」

シェリー「……テメェが台無しにしてくれやがったけどな、たった今」

バードウェイ「してやってもいいがね。出来れば自分の口で言うんだ」

シェリー「クソ忌々しい……あー、なんだ、その、上条当麻」

上条「は、はい?」

シェリー「今までお世話になりました。ありがとう」

上条「いえいえそんなご丁寧に、ってなんかお別れの挨拶みたいだな?」

シェリー「……」

上条「改めて言われると照れるって言うか、うん」

バードウェイ「空気読め」

円周「お兄ちゃん、分かってるでしょ?実は」

上条「……まぁ、幾ら俺だって。うん」

シェリー「急な話――でもないけど、これは。最初から決まっていた事なんだが、私は」

シェリー「明日、12時の便でイギリスに帰るわ」



667:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/03(火) 08:33:24.54 ID:GaRocPRo0

――翌日 学園都市大23区(空港) 11時

シェリー「……」

上条「……よっ」

シェリー「やっぱ来たか。つーか授業はどうした?単位足りないんだろ」

シェリー「小萌と黄泉川に説教喰らえ、帰ったらな」

上条「残念。送り出してくれたのが小萌先生、車で送ってくれたのが黄泉川先生だよ」

シェリー「教師も生徒もどっかおかしいんだよ。この街は」

上条「いやまぁ?俺達にとってはそれが『普通』だし?」

上条「そんな所、一個ぐらいあったっていいじゃねぇか、って思うけど」

シェリー「そんなにボコボコあったらたまったもんじゃねぇわよ、ってホラ」

上条「うん?ハンカチ?」

シェリー「泣くなよ。みっともない」

上条「泣いてねぇし!?これはねアレですよ!心の汗みたいな感じで!」

シェリー「良いんだよ、別に」 ギュッ

上条「ちょ、シェリー!?」

シェリー「……こんくらいさせてくれよ。私達――」

シェリー「友達、なんだろ?」

上条「そりゃ……うん」

シェリー「今っからイギリス帰るんだ。ババアのワガママには付き合ってくれたっていいじゃねぇかよ」

上条「……それ、なんか、卑怯だよ」

シェリー「良いんだよ。お前らガキは黙って言う事聞いてれば」

上条「けど、シェリー?」

シェリー「おう?」

上条「俺は、年寄りだなんて思った事ないからな?年上のおねーさんぐらいで」

シェリー「……ん、まぁ知ってた」

上条「知ってたって」

シェリー「夜中のバスタブって意外と響くんだよなぁ、これが」

上条「待って下さいっ!?それって」

シェリー「クソガキは多分知らない。バカな方のガキは……あー……?」

上条「いやいやっ!違うって誤解だって!」

シェリー「……つーか、なんで私ら抱きあってんの?恋人って訳じゃねぇんだし」

上条「そっからか?そっからまず突っ込み直さないとダメなのか?」



668:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/03(火) 08:35:03.76 ID:GaRocPRo0

シェリー「……まぁ、なんだ。色々とあったけど、有り難う」

上条「シェリー」

シェリー「……だからそんな顔すんじゃねぇよ。行きづらくなんだろうが」

上条「ごめん……なぁ、やっぱりさぁ。どうしても帰らなきゃダメなのか?」

上条「『必要悪の教会』の仕事が忙しいから?オルソラ達が待っているからか?」

シェリー「あー……まぁ、それもある。でも、それだけって事もないかしらね」

シェリー「私は『大人』なんだ。だからすべきことを、する。それだけの話」

シェリー「こっちに残ってダラダラ過ごすのは、確かに魅力的よ?」

シェリー「ガキ三人とバカやって暮らすのは楽しいでしょうね。けど」

シェリー「私には果たすべき役割があって、帰るべき所がある」

上条「……そっか。ごめん」

シェリー「ガキはワガママ言うモンだよ。じゃねぇと大人の立場ってもんが危うくなる」

シェリー「心配すんな。何か困った事があっても、気が向いたら助けに来てやるから」

上条「確定じゃないのな?」

シェリー「そういうのが、『友達』なんだろ?きっと」



669:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/03(火) 08:36:38.18 ID:GaRocPRo0

上条「……そう、だな。俺も」

シェリー「あん?」

上条「シェリーが困ってたら、助けに行くよ」

シェリー「丁度良かった。美大のアシスタントがだな」

上条「俺が出来る範囲でなっ!」

シェリー「使えねぇなぁ――と、そろそろ」

上条「あぁ」

シェリー「――の、前に忘れもんだ」 チュッ

上条「」

シェリー「――ちゅ、んん」

シェリー「と、これで良しと」

上条「友達同士でキスしないって!」

シェリー「お、悪い悪い。忘れてた」

上条「言ってる事がさっきと違うし!」

シェリー「いいじゃねぇか選別代わりにくれたって」

上条「……お前これ、逆パターンだったら大問題だからな?」

シェリー「い、いやだった……?」

上条「だからそれ禁止っ!つーへかお前最近自分のギャップ萌え使うのに躊躇しなくなったよね!?」

シェリー「クソガキから色々と教わってるからな。いやー、女って怖いんだなぁ」

上条「円周さんには後で俺が言っておくから。かなりキツめに」

シェリー「それじゃ、また」

上条「……うん。またな」



670:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/03(火) 08:38:17.73 ID:GaRocPRo0

――数日後 イギリス 『必要悪の教会』女子寮

シェリー「……あー……」

オルソラ「おはようございますなのですよ、シェリーさん」

シェリー「おー……」

オルソラ「今日は良いお天気でお布団でも干そうかと」

シェリー「……んー」

オルソラ「ホームシック、で御座いますか?」

シェリー「家、ここだから。どこへ帰るんだっつーの」

オルソラ「そう言えば最近、ダチュラさんが『下着がなくなった』と」

シェリー「ルチアじゃねぇのか?ダチュラは花だろ」

シェリー「ってかシスターでミニスカガーターベルトって、そっちの店じゃねぇか」

オルソラ「ですから、お布団を干すので早く起きて頂ければ」

シェリー「……寝ぼけてんのは私か?それともお前か?」

オルソラ「あら?シェリーさんがベッドにいらっしゃいません」

シェリー「オーケー分かった。お前だったわね、朝からボケてるのは。朝だけじゃねぇけどな」

オルソラ「また徹夜をされたのですか?」

シェリー「……仕事じゃねぇわよ。ウェイトリーの兄弟は『彼らの存在を正式に肯定する事は現時点で難しい』って結論出たじゃねぇか」

オルソラ「ではどうして?」

シェリー「あー……プライベートだよ」

オルソラ「上条さんの事で御座いますねっ!」

シェリー「プライベートだっつってんだろ!」

オルソラ「違うので御座いましょうか?」

シェリー「合ってっけどよぉ、そういうのじゃねぇんだよ」

オルソラ「そういうのは、どういう」

シェリー「あー、なんだ。メールでも出そうって気になったんだよ」

シェリー「けどいざ書こう、って考えたら、な?分かるよな?」

オルソラ「あ、お布団干しちゃいますね?」

シェリー「おいババア?お前どっかおかしいよなぁ?」

オルソラ「それで手紙の文面はなんて?」

シェリー「たまーに思うんだけど、お前楽しんでねぇか?なぁ?」

シェリー「暗号解読のプロってんだから、頭は良くなきゃ出来ねぇだろうし。計算か?計算なのか?」

シェリー「……ん、まぁ、『元気でやってる』ってだけ」

オルソラ「そうでしょうか?シェリーさんは帰ってきてから元気がないように見えるのですが」

シェリー「気にしすぎだろ。私はそんなに脆くはねぇぞ」

オルソラ「それで朝食なんですが」

シェリー「……突っ込んだら負けのような気がしてきたわ。つーか今日、アンタ当番だっけか?」

オルソラ「いいえ。違うので御座いますよ」

シェリー「に、しては良い臭いだけど。あ、神裂か?」

オルソラ「ではお先に失礼しますのですね」

シェリー「オイ!お前やっぱ計算じゃねぇのか、なあぁっ!?」



671:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/03(火) 08:40:34.80 ID:GaRocPRo0

――食堂

アンジェレネ「――こ、これはっ」

アンジェレネ「まずはサラダ!普通はご飯に彩りを添えるだけの脇役にしか過ぎません!」

アンジェレネ「ですがっ!何と言う事でしょう!これはサラダの概念を覆すものではありませんかっ!」

アンジェレネ「ビネガーとラディッシュ、そして綺麗に切り分けられボイルされたエビの彩りが鮮やか!」

アンジェレネ「そしてその隣にあるスープっ!一見普段と変わりはないようにも見えますが、だがしかぁしっ!」

アンジェレネ「ほのかに自己主張するこの香り――これは、ボニトではありませんかっ!」

アンジェレネ「その色は琥珀色に輝き、具材の一つ一つが透き通って見えます!」

アンジェレネ「これが――東洋の、ミソ・スープっ!!!」

ルチア「……あの、シスター・アンジェレネ?」

アンジェレネ「けれど場を支配する圧倒的な存在感!まさに王者の風格が漂うのは、メインディッシュ!」

ルチア「料理の鉄人ごっこしている所、悪いんですが」

アンジェレネ「黄色い丘の上に咲いた赤い赤いチューリップ!そう!まるでオランダの田舎町を彷彿とさせるこのフォルム!」

ルチア「オムライスですよね?普通の?」

アンジェレネ「その流れ、風を切り裂く流線形!それはまさに魔弾タスラムの如し!!!」

アンジェレネ「あぁ神はわたしを試され――いひゃいいひゃいいひゃいですよぉぉっ!?」

アンジェレネ「シスター・ルチアあぁぁっ!?」

ルチア「流石にいと高きあのお方を引き合いに出すのは、ダメです。反省しなさい」

アンジェレネ「で、でもでもぉっ!ルーグは別カウントでしたし、いいんじゃないですかぁっ!」

ルチア「いけません!邪教の神の名前をみだりに呼んでは!」

上条「いやぁ別にいいんじゃね?食事中に騒がれるよっか、マシだろ?」



672:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/03(火) 08:42:11.28 ID:GaRocPRo0

ルチア「ダメに決まっています!神は私達に質素倹約を説かれました!ですから、私達はあくまでも『頂く』という事を前提にですね!」

上条「まぁまぁそんな怒らなくたっていいじゃん?珍しいメシでテンション上がってんだから。な?そうだよな?」

アンジェレネ「そ、そうですよぉぉっ!ジョークだったのにぃ」

上条「って本人も言ってんだし。メシぐらい気楽に食おうぜ?」

ルチア「ダメに決まっています!大体私達は粗食が基本なのに、そんなに贅沢なものはっ!」

上条「……えっと、確かシスター・ルチアだっけ?」

ルチア「気安く私の名前を呼ばないでください!この異教徒が!」

上条「俺は神様の事は分からないし、信仰がどうのってのはもっと分からない」

上条「けどな。どこだって、どんな世界だって同じルールってのはあると思うんだ」

ルチア「……はい?」

上条「俺達がメシを食えるのは、メシになってくれる植物や動物達のお陰だろ?違うか?」

ルチア「私達は……それがあの方から授けられたものだ、と」

上条「それだって同じじゃねぇか。授けられたにしろ、俺達が食べるものに感謝するのは当然だろ?違うか?」

上条「神様から頂いたとしても、少なくともその直前まではどっかで生きてたんだからな」

ルチア「……何、ですか」

上条「だから俺達には残さず食べなくちゃ、って思うんだよ。俺達の血と肉なってくれる、そんな連中に感謝しながら」

上条「で、そのついでに美味く食べようってのは罪じゃないんじゃないか?」

ルチア「ですが!私達には信仰倹約をですね」

上条「いや別に贅沢してる訳じゃないし、これ全部キッチンにあった食材だぜ?」

ルチア「う、嘘です!だってこのスープはどこから持ってきたのですか!?」

上条「神裂じゃないか?良い感じの鰹節あったから、使わせて貰ったけど」

ルチア「そ、そうですか」

上条「……なぁ、シスターさん」

ルチア「はい?」



673:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/03(火) 08:44:04.58 ID:GaRocPRo0

上条「確かに俺達は誰かを犠牲にして生きてる。それは絶対だな」

上条「でも俺達が奪っておいてだ」

上条「『あぁマズい。あぁ美味しくない』って食べるのが、正しいと思うか?」

ルチア「……それは、失礼ですね」

上条「それに麦だって米だって、俺達が育てて品種改良して、毎年毎年すっごい量を育ててるよな?」

上条「それって共生だと思うんだよ」

ルチア「私達が刈り取っているのにですか?それは傲慢が過ぎるかと」

上条「いやいやそうじゃない。植物ってのは『どんだけ子孫を残せるか』って話だろ?生存競争、だっけ?」

上条「つまり俺達がパンや米を食べてる内は絶対に絶滅しない」

上条「それどころか大事に大事に育てて、新しくて強い品種を作って貰えるんだ」

上条「それを俺は『共生』していると思うけど」

ルチア「……」

上条「どう、かな?ダメ?」

ルチア「それは……きっと傲慢な考えなのでしょうね。私は認める事は出来ません」

上条「……そか」

ルチア「です、けど。それが、品種改良をする事で、飢えずに済む人が増えれば」

ルチア「いと高きあのお方を信じる機会も増えるのでしょうね、きっと」

上条「……どうも、シスター」

ルチア「違います!そうじゃない!」

上条「しすたー?」

ルチア「私にはルチアという名前があります!きちんと名前で呼びなさい、いいですねっ!?」

アンジェレネ「シスター・ルチアがデレたーっ!あざといっ!」

ルチア「誰もデレていませんっ!これが素ですっ!」

アンジェレネ「デレ、デレたじゃないですかぁっ!?いま、今今今今っ!」

ルチア「――残念ですが、シスター・アンジェレネにはお仕置きが必要ですか。残念ですが!」

アンジェレネ「ちょ、ちょっと待って下さいよぉぉっ!?わたしのオムライスをどこへ移そうって――あーっ!?」

上条「……つーかお前らが一番うるさい――ん?」 トンッ

アニェーゼ「……パパぁ……?」

上条「お前また寝ぼけて。ホラ、良い子だから顔洗ってこい、な?」

アニェーゼ「やぁ。パパとっ、いっしょがいーい……」

上条「しょうがねーな。ほら、来い」

アニェーゼ「だっこ、だっこがいぃ」

上条「あぁも面倒臭――」

シェリー「――ってオイ?」

上条「はい?あ、おはよー」

シェリー「どんだけだ?つーかお前何やっての?何この数分で全員にフラグ立ててんだコラ?」



674:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/03(火) 08:46:55.15 ID:GaRocPRo0

上条「フラグって。いやだからお前ラノベの読み過ぎじゃねぇの?」

シェリー「質問に答えろよ。何してんだお前?」

上条「ん?いやだから、『困った時は助けに行く』的な約束したじゃんか」

シェリー「いやいやっ!?確かに困ってる、困ってるけどそりゃお前の扱いにだよ!?」

シェリー「イギリスまであっさり来れる訳がねぇだろ!」

上条「円周がね、どっからか時速7000キロオーバーの音速飛行機のチケットを調達してきてな?」

シェリー「あのガキ何しくさってんのよ!?どう考えても危ない橋渡ってんだろうが!」

円周「――ひっどいなぁ、フツーだよ、フツー?『木原』なら当然の事をしたまでだって」

シェリー「アンタも来て――じゃ、クソガキもか!?」

バードウェイ「そのクソガキに憶えはないけれど、せめて『有り難う御座います、偉大なるバードウェイ様』ぐらいは言えんのか」

シェリー「テメェら何しやがった!?」

バードウェイ「ん、いや大した事は別に?」

円周「ただちょっと『木原数多』をお片付けした見返りが欲しい、って頼んだだけだよー?」

上条「何か色々と条件はついたけど、月一ペースならどうにかしてくれるんだと」

バードウェイ「……ま、『途中勝手に通過してくる国』へ対しての示威行為がメインだと思うがね」

円周「どーせまたイランで下手掴ませられるんだから、面倒だよねぇ」

シェリー「そんな――バカじゃねぇのか?」

シェリー「そんな、そんだけのために」

シェリー「んな、下らねぇ事のためだけに、そりゃ」

上条「ウルセェな。いいからさっさと座れ」

シェリー「……けど」

上条「友達とメシ食いに来て何が悪いっつーんだよ?」

上条「たまたま近くまで来たからついでに寄った、それ以上でもねぇし以下でもねぇから」

シェリー「……お前ら、ホンットに狂ってやがる」



675:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/03(火) 08:49:07.93 ID:GaRocPRo0

上条「いーんだって、俺は『ガキ』だから」

上条「好き勝手やって、大人に迷惑かけるのが仕事みたいなもんだし?」

シェリー「……あぁ、そうかよ。ま、いいんじゃねぇの?……ははっ」

シェリー「お前らがガキだって言うんなら、私は『大人』だ。当然義務ってもんがある」

シェリー「メシ食ったら全員説教だ、クソガキども。覚悟しとけ」

円周「あ、ごめんねっ?その前にロンドン塔行きたいんだけど」

バードウェイ「今日は観光スケジュールが一杯でね。その案件は後日改めて検討しようじゃないか」

シェリー「……ホントにまぁ、見事なまでにガキばっか」

オルソラ「そういえば」

シェリー「あぁ?お前もなんかあんのかよ?」

オルソラ「シェリーさんはどんな手紙を書こうとされていたのでしょうか?」

シェリー「ばっ、お前っ!?」

バードウェイ「予定変更。アーチスト気取りのぼっち女のお部屋訪問と行こうか」

円周「ダメだよ、ねっ?人の嫌がる事をしちゃ、めっ!だよ」

バードウェイ「こんな時、『木原数多』ならどうするんだっけ?」

円周「『テメェが引きつけとけ、俺が鑑識並みの精度で探索してやんよ』」

シェリー「……よし、殺す!」

上条「だーかーらっ!お前ら殺し合いはメシ食ってからにしなさいっ!埃が立つからっ!」

シェリー「……ったくお前らは、なぁ?」

シェリー「こんなに友達が面倒臭いなんて聞いてねぇぞ――なぁ、エリス?」


――断章のアルカナ・アフター 『シェリー編』 -終-



699:田中(ドワーフ) ◆7fp32j77iU 2013/12/10(火) 10:46:15.33 ID:CmSbw0G30



――断章のアルカナ・アフター 『円周編』




700:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/10(火) 10:47:42.71 ID:CmSbw0G30

――メイド喫茶

円周「いらっしゃいませーっ!何名様ですかー、え?お一人なの?ぼっちなんだー、へー?」

円周「友達は居ない?じょあしょうがいなよねっ、うん」

円周「たばこは吸わないよね?分煙とか面倒だし、他の人にこれ以上迷惑かけるのは良くないしねっ」

円周「ではお席へどーぞっ、ご主人様っ」

鞠亜「……完璧だな、これは!見事としか言いようがない!」

鞠亜「まるでドSメイドになるために生まれてきた人材だ!」

上条「おい、そこのメイド先輩。間違ってるからな?どう考えても今の接客はツイッター拡散されて炎上されるに決まってるからな?」

上条「ってかどんだけ暴言吐いてんだよ!?あれどう考えたってダメじゃんか!?」

鞠亜「いや、だがしかしホラ」

上条「うん?」

海原「あ、すいませんメイドさん?もうちょっと、出来れば人格を根底から否定する形でお願いします」

円周「へーき?結構キツいけど?」

海原「大丈夫!慣れてますから!」

円周「このブタご主人様、毎日毎日わたしに会いに来てくれてありがとっ!今日も一杯お金を落としてってねっ!」

海原「もっとエゲつない感じで!」

円周「生きてて楽しいの、ねぇ?一人で寂しくメイド喫茶へ来たって、孤独なのは変わりないんだよ?」

円周「『ご主人様』とかって言われてるけど、内心じゃ『ブタ野郎』がデフォだからね?

鞠亜「――と、言う感じで概ね好評みたいだが」

上条「……誰かあいつらの幻想殺してくれねぇかなぁ……」

鞠亜「世の中には強い信念を持つ者が居て、それはきっと暴力にすら膝を折らないんだよ、先輩」

上条「何ちょっと良い事言ったみたいな顔してんの?信念じゃねぇからな?アイツのアレは性癖だからね?」

鞠亜「あぁ!格下の相手に先輩とつけなければいけない屈辱感!また経験値が捗るな!」

上条「雲川さんもどっかおかしいよね?今度雲川先輩に会ったら相談しとくけど」

上条「あと『はかどる』ってそんなに使うかな?今の用法も合ってない気がするんだけど」



701:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/10(火) 10:49:01.91 ID:CmSbw0G30

鞠亜「まぁ色々と心配はあったものの、ここまで馴染んだんだ。奇矯ではあるが……まぁ、この学園都市ではクラスに一人程度のレベルだ」

上条「スゲぇな学園都市。懐深いにも程があるだろ」

上条「――っとオムライス出来上がり。12番テーブルへヨロシクっ」

鞠亜「了解した――っというかまぁ」

上条「なに?」

鞠亜「君も馴染んでいるけどね。充分」

上条「いやあぁぁぁぁぁぁぁっ!?気がついたらクラスで変人扱いされてんのはそーゆーワケかああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

海原「おや、そこにいるのはキョ○君でないですか!奇遇ですねぇ」

上条「最近姿見ない人持ち出すの止めて?つーか俺だったら映画作る時、監督の顔面殴って絶交する」

円周「オーダー入りまーすっ!6番のご主人様、えっと……あ、ごめんねっ?面倒だから自分で言って貰えないかな?」

円周「なんかもう、ご主人様のために時間を割くのが無駄だよねっ、って感じだから」

上条「謝って!6番テーブルのお客様に謝ってきなさい!」

海原「麻婆カレーライス一つとアステカ風コーヒーをお願いします」

上条「お前プライドはないの?『笛吹男』をバックスタブした時の格好良さは俺の錯覚だったの?」

客A「あ、僕も注文いいですかー?」

客B「ブヒも注文したいブビ」

上条「ってかお前ら本当に並ぶなよっ!?ウェイター居るのにお客様がキッチンに注文するってどういう事っ!?」



702:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/10(火) 10:50:48.24 ID:CmSbw0G30

鞠亜「あとブヒのお客様は一人称だけでなく語尾もブヒなのかね。どちらかへ絞った方がキャラ的に良いと思うが」

上条「その突っ込みもおかしいしな!現実で使う奴ぁ居ないから!」

鞠亜「知り合いの弟のメル友の友人が、マジカルハロウィ○の全国ランカーらしいんだが。メーカーからイベントの招待券が届くレベルの」

上条「そのメル友ってあれだよな?可愛いけど残念な子の弟さんのメル友なんだよね?」

鞠亜「彼がこの間新台を撃ちに行ったら、『フロス○たん、フロ○トたんブヒィィ』ってネタ抜きで聞こえてきたらしい」

上条「……最近のパチ○コは精鋭化しすぎてないかな?確かに規制が厳しくなってんだろうけど」

上条「一般のお客さんを引かせる……いやでもパチ○コは客層が特殊だからなぁ」

鞠亜「『あれ?どこにキモオタいやがる』と思って耳を澄ましてみれば――」

鞠亜「『ブヒィ、ノワー○たんもブヒのお嫁さんにしたいブヒィ』……おや?思っていたよりも近く。それもすぐ側で聞こえる」

鞠亜「『でもやっぱり本妻はアリスたんブヒィ』……辺りを見てもそれっぽいのは誰も居ない。しかし幻聴じゃない!確かに聞こえるんだ!」

上条「そこまで熱演する必要あるの?つーか文章力の無駄遣いだよね、これ?」

鞠亜「彼がふと顔を上げた瞬間、台に映った自身の顔を見た時、全てを悟る!」

鞠亜「――実は、ブヒブヒ言っていたのは自分だったんだよ!と、いうオチがだね。ちなみに実話だ」

上条「都市伝説みたいなオチにすんな!つーか語り部の最初の不自然な背景説明で何となく展開は読めてたし!」

海原「天空のシンフォニ○が台になって、一体誰がやるんでしょうね?あ、OPの『光を求めて』は名曲だと思いますけど」

上条「あぁ面倒臭いっ!?ボケが多すぎて突っ込みも料理も間に合わないよっ!」



703:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/10(火) 10:52:39.83 ID:CmSbw0G30

円周「『よーっし!それじゃそういう時にはご一緒にっ!』」

上条「おいお前今度はどこの平行世界から受信しやがった!?」

円周・客「『うーいはっるーーっ!愛してーるぞーーーーっ!!!』」

上条「だから違う!?ってかそんなデータどこに残ってた!?」

鞠亜「ユングによれば、人は無意識の所で繋がっているそうだ」

上条「お前はお前で急に何言いだしやがった?」

鞠亜「集合的無意識という海の中に『個』という島が人類の数だけ浮かんでいて、私達の意識は普段その孤島で生活している」

鞠亜「常に孤独であるよう宿命づけられているが、根幹は繋がっており個々の発想自体はそう大差ない」

鞠亜「どの島もそれを支えているのは分厚い岩盤であり、大地の奥深くで繋がっている、と」

鞠亜「遠く離れた北欧のトール神と日本の建御雷。どちらも共に雷神であり、武神でもあり、時として農耕神としての一面も持つ」

鞠亜「ギリシャ神話の冥界下り、オルフェウスが死んだ恋人を蘇らせる――黄泉帰らせる下りは、日本のイギナギ・イザナミ神にも共通する」

鞠亜「これはただの偶然ではなく、かといって両者に交流があった事実はない」

鞠亜「従ってユングは『人類はある種の「原型(アーキタイプ)」を持っており、そこから知識が流れ出る』と考察したんだ」

鞠亜「さっき言った孤島の例えであれば、煮立った鍋の中に浮き出る泡は、どれもこれも同じって事だね」

鞠亜「……尤も、最近じゃ人類を守るために不気味な泡も沸き立つようだけれど」

上条「……つまり?」

鞠亜「さっきからカレー鍋が噴きこぼれそうになっているよ?」

上条「面倒臭っ!もっと早く言え+ヤングの話持ち出した意味が分からねぇっ!?」

鞠亜「ユングだね。一応君は高校生だし、若い部類には入るけれど」

円周「あれ?当麻お兄ちゃんカンピオー○に出てなかった?」

鞠亜「それは仕方がない。人間は集合的無意識で繋がっているのだから、ある程度似通ってしまうのも当然さ」

上条「オイバカ止めろ!最近のラノベの主人公がどれもこれもテンプレ過ぎるとか業界批判するんじゃねぇよ!」

上条「作家さんは最初に企画書を作って出版社に提出しなきゃならないんだから、結局編集が無難だと思ったキャラしか通らないんだし!」

円周「あれもなぁ、ツンデレみたいにいい加減使い回しが過ぎると思うんだけどねー」

鞠亜「悪貨は良貨をなんとやら。まぁ私達には関係のない話だな」

上条「い・い・か・らっ!仕事をしやがれクソメイドとも!!!」



704:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/10(火) 10:54:03.73 ID:CmSbw0G30

――帰り道 夜

円周「いやー、疲れたねぇ、お兄ちゃん」

上条「……お前は働いてないよね、そんなに?割とお客様を使役しているように見えたけど」

上条「俺は延々料理作ってたけど、いいのか?あんなんでギャラ貰って?」

円周「本人達も楽しんでたみたいだし良いんじゃないかな?」

上条「未来に生きてるよねっ!」

円周「ってロリコ○の人達だから、むしろ喜んでやってるんじゃ?」

上条「違うと思うよ?きっと、こう、あれだ!もっと純粋な気持ちでだな」

円周「連絡先、何人から貰っちゃったけど」

上条「貸しなさい?俺とマークで然るべき対応くとっから、ね?」

円周「若さが売れる時にしか、出来ない事ってあるよねぇ。どうやっても」

上条「だからお前女性を敵に回すようなだな。色んな人にケンカを売ろうってのは、控えよう?」

円周「あぁお兄ちゃんってミスコン廃止するのが正しいと思う人?それさーぁ、どう考えてもフェアじゃないんだよ」

円周「『女性を人扱いしていない』とか、『品評会なんて人権無視だ』とか、言うけど」

円周「でもそれってさ、結局『ミスコンをしたい女性』の意見を無視してるよね、って事なんだけどなぁ」

上条「あー……目立ちたい、的な?」

円周「お化粧とかする派?」

上条「しないけどな!男だ!」

円周「男の子でもするよ?モデルさんとか俳優さんとか、外見を売りにしている人は」

上条「それはそうかもしんないけど」

円周「ミスコンに出たい――まぁぶっちゃけ美人の人だって、外見にアグラをかいてるって訳じゃないんだよねぇ、これがさ」

円周「例えば日舞や洋舞、『どんな所作をすれば綺麗に見えるのか』って稽古は積んでいるだろうし、お洋服にだって気を遣うよね?」

円周「どんな美人さんだってダサダサな服着てたら、逆にキツいから」

上条「それが努力、なのか?」

円周「お肌のお手入れだってそうだし、お化粧しない人には分からないだろうけど、すっっっっっごくお肌に悪いんだ」



705:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/10(火) 10:56:58.43 ID:CmSbw0G30

円周「『お肌の曲がり角』って聞いた事無い?三十路前ぐらいには『限界』になっちゃうアレ」

円周「けどしないと綺麗にならないから、する子はみんなするし」

円周「頭の良い子は勉強をして良い点を取れば褒められるし、かけっこの早い子が陸上部で一番になるのも良い事だけど」

円周「外見を綺麗さで計るのはダメ、ってのは納得出来ないよねぇ?」

上条「……んー?」

円周「まぁそう言うのは大体ブサイクな同性の妬みなんだけどねっ!」

上条「ただ今の発言はあくまでも木原さんちの円周さんの発言であり、私上条当麻は一切関係ありません!絶対だからな!」

円周「所謂先進国病の一つに『出生率の低下』があるよねぇ。あれってば実は『女性の社会進出』が問題なんじゃないかって説もあったり?」

上条「良い事じゃねぇの?男女の差無く働けるんだったら」

円周「まぁ確かに?仕事の何割かは可能だよ、それは絶対にね?」

円周「でも例えば一流のシェフとか、料理人には男性しか居ないんだ、分かる?理由?」

上条「男性社会だから、って事?」

円周「女の子は体温や体調が一定してないんだよ。だから『同じ味を出せない』って言われている。あくまでも通説だけど」

円周「他にも……そうだねぇ、ハイファッションの世界、モードは知ってる?」

上条「あー、ごめん。全然知らないっぽい」

円周「半裸の格好でキャットウォーク歩き回る見せ物ってあるじゃん、あれ」

上条「もうちょっと言葉選ぼうな?円周さんワザと言ってるよね?」

円周「いやぁここら辺はシェリーお姉ちゃんが詳しいんだけど、あれはあれでねぇ、うん」

円周「色々な疑惑とか、年相応のアレコレとか……まぁあるみたいだけど、まぁまぁ本題は別かな」

円周「出展するデザイナーの多くは男の人だよね。少なくとも分類上は」

上条「遠回しに『ゲイばっか』とか言わないでね?」

円周「そして子供は女性にしか産めない。そりゃ仕事を持って、自分だけで生活が完結しちゃえば結婚しなくていいよねっ」

上条「……何となく分かった、か?女性が社会に受け入れられるから、わざわざ結婚する必要がない、みたいな」

円周「まぁそれを理由に『結婚出来ない自分は普通だよ!』って思い込んでいる人も居るだろうけど」

上条「君さっきから全周囲にケンカ売ってるからね?」



706:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/10(火) 10:58:48.68 ID:CmSbw0G30

円周「――で、最初の話に戻るけど、容姿だってある意味『才能』なんだから、個人が誇ってもいいんじゃね、的な」

上条「買ったり売ったりするのは論外だけど、まぁ出る本人が納得してれば良い、かな?」

円周「わたし的には専業主婦もいいかな、って――もうっ!お兄ちゃんったら言わせたがりなんだからっ!」

上条「結局それ言いたかっただけじゃねぇのか、なぁ?」

円周「ロ×だって今しか出来ないんだから、稼いだ方が得じゃないかなぁ?」

上条「稼ぎ方に寄るだろ。なんだっけ?子供が水着着てるのとか見ると、引くよ。マジで」

円周「あれはあれで枕を売ったり、朝まで演技指導受けたり大変な世界みたいだけどねぇ」

上条「お前もアレだろ?もうちょっと抑えないと『愛の戦士』を自称するオプションが装備されるんだからな?」

上条「世の中には子供――ぽいのじゃないダメー、的なのが結構居るんだから。主にアキハバラ」

円周「正当防衛って殺して良いんだっけ?」

上条「お前は俺が守るから!お前は絶対に手を出すな、分かったか!?」

円周「やだ、お兄ちゃんプロポーズ……?」

上条「緊迫感はそうかも知れないし、そこだけ抜き出せばそれっぽいけどなっ!」

上条「けど決してこの胸のドキドキはそんないいもんじゃないですよねっ!」



707:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/10(火) 10:59:36.28 ID:CmSbw0G30

円周「両手両足へし折ってぇ、爪を一本一本剥がしてぇ」

円周「辛いけど、うんっ、とってもとっても辛いけど!」

円周「歯を引き抜いてから、傷口にシャープペン入れてぐちゅぐちゅさせたいなぁ」

上条「……たまーに思うんだけど、お前どこまで本気なの?」

円周「試してみれば分かると思うよ?」

上条「よぉっし!今日は一杯働いたからご飯が美味しいですよねっ!」

円周「わーいっ!」

上条「イギリス組二人が腹を空かせた肉食獣状態だから、早く帰ろうかっ!」

円周「シェリーお姉ちゃんがはぐれライオン、わたしが虎。レヴィちゃんは……んー?」

円周「オオカミ、っていうかジェヴォーダンの獣かな?」

上条「シェリー、オスのライオンは怠惰だし、分かる気がしないでもない」

上条「バードウェイの頭が良くて群れで狩りをするオオカミ……ノーコメントでお願いします」

円周「がおーっ、がおがおっ!食っべちゃうぞー」

上条「よせよせっじゃれるなよ」

円周「性的な意味でねっ!」

上条「よーっし!どっちが早く帰れるか競争だぁっ!」 ダッ

円周「待ってよぉ、お兄ちゃーんっ!」



708:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/10(火) 11:00:50.88 ID:CmSbw0G30

――自宅

バードウェイ「遅いぞ馬鹿者が!」

上条「お帰りの代わりに罵声が来やがった!?」

円周「やったねお兄ちゃん!ご褒美だよ!」

上条「どうしてお前らは俺をド変態にしようとするの?仕様的な感じ?」

シェリー「からかって反応するのが悪いんだよ。無視しちまえ、無視」

上条「いやでも無視したらしたで、魔術とか肋骨の隙間を狙って抜き手とかがですね?」

バードウェイ「御託はいい。それよりも誠意を見せろ」

上条「……たまには自分で作ろうって姿勢はないのか、おい居候ども」

シェリー「イギリス料理で良いんだったら、するけど」

バードウェイ「おい貴様、その前置きは要らないだろ」

円周「あ、ごめんねー。今作っちゃうから、待ってて?」

上条「シェリーが作ってくれ」

円周「『イギリスの家庭料理を初めて口にした時の感想?そうだな、ホームステイ先で最初に頂いた際、こう思ったよ』」

円周「『自分はもしかしてこの人達の、大切な家族を殺めてしまったのではないか?』」

円周「――って前、留学していた知り合いの弟さんのメル友が言ってたよ、うん」

上条「どんだけだ?イギリス料理奥が深いなっ」

シェリー「いやぁ間違っちゃ居ないけどなぁ?一般的な料理が『煮る・焼く・蒸す』に対して」

シェリー「ウチは『煮る・煮る・煮る』って言われてるぐらいだし?」

バードウェイ「前にも言ったが清教徒革命の影響が強いとされている。侮辱はそこまでにして貰おうか」

上条「いや別にネタにした訳じゃなく、っていうかイギリスの人達は好きで食ってんだろ?」



709:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/10(火) 11:02:09.02 ID:CmSbw0G30

上条「日本の納豆が海外で歓迎されないように、って確かスウェーデンでもシュールストレミングとか言うドギツい発酵食品あったっけ?」

バードウェイ「……まぁ、そうなんだがな。あとスウェーデンだからといって、必ずしもアレを食べる訳じゃないからな?必要に迫られてだ」

バードウェイ「あれはニシンを海水と共に樽詰めし発酵させる。要は冬の間の保存食なのだよ」

シェリー「緯度が高い所、特に極限じゃ生活が限られるわよね。イギリスもまぁ、それっぽい気がするな」

上条「燃料も食料も限られれば、当然豊かな食文化は育たないかー」

バードウェイ「そりこそお国柄もあると思うがね」

円周「――おまたせー、ご飯ですよ」

上条「あぁ悪い、ってかもう出来たのか」

円周「クラムチャウダーとマスの酒粕漬けを焼いただけだから。お野菜は煮込む前に電子レンジでちょいちょいっと」

上条「マス?サケの粕漬けじゃないのか?」

円周「マスはサケ科、っていうかサケとマスって境界が曖昧なんだよね」

上条「どういう事?」

円周「マスは英語でトラウト、サケはサーモンって言うんだけど、キングサーモンは日本語だとマスノスケって呼ぶし?」

バードウェイ「あー、アレだ。淡水種のをマス、海水種のをサケって呼んでいるんだよ。確か」

上条「あ、なんだ。違うじゃんか」

バードウェイ「けどマスノスケはサケと同じように小さい頃は海で育ち、成長すると川を遡って産卵するんだ」

円周「他のマス種でも同様の様式が見られたりするしねぇ」

上条「……はい?」

円周「うんまぁ?芝エビの偽造と同じで、『トラウトサーモン』って書かれているサケは、わたし達が『マス』って呼んでいるものだと思ってくれれば」

バードウェイ「結局、自分達が何を食っているのか分からなければ気にならない、ってヤツだからな」

バードウェイ「五つ星だろうが、高級食材であろうが、マズいメシはマズいって事だよ」

バードウェイ「ま、お前の食事は充分に美味いから気にするな」

円周「よっ、ツンデレ!」

バードウェイ「表へ出ろこのロリポップ女。小さければ何やったって許されると思うなよ?」

シェリー「お前らメシ食ってからにしろ。私も腹減ってんだから」

上条「シェリーさんもちゃんと止めてあげて!?この子達は本当に殺し合うんだから!」



716:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/17(火) 12:14:56.84 ID:ZnmQgC8S0

――放課後 学校

円周「おっにぃっちゃーんっ!」

青ピ「カミやん、妹さん来とるでー?」

円周「いぇいっ!」

上条「……いやあの、妹を持った憶えは無いって言うか」

吹寄「大丈夫?メイド服を無理矢理着せられたりしてないわよね?」

円周「あ、これはお店の制服だからねっ。店長さんが宣伝してこいって――あ、パンプどーぞ?」

姫神「『上条家の家庭の味を再現してみました』……?誰得?」

円周「いやいや意外と好評だよ?懐かしいご家庭の味がするんだって」

青ピ「クレ○おばさん並に仕事を選びませんなぁ」

上条「そりゃお金貰っている以上全力でするだろ。メシに関してはオーナーさんが賄いを気に入ってくれたんだし」

姫神「賄いご飯?従食って言うんだっけ」

上条「雲川さん――メイドの先輩に食べさせたら、推薦してくれたんだよな」

青ピ「また新しいフラグ立てるなんてっ!……って雲川?くーもぉーかぁーわー?」

上条「近い近い、顔近いって」

青ピ「まさかっ――G(ドス)先輩がメイド服着とるんかいなっ!?」

円周「鞠亜ちゃんは妹さんだねぇ。カップはまぁ……平均的、かな?」

上条「……良かった……!お前にも少しだけ思いやりが芽生えたんだな……!」

吹寄「……号泣するほど?前はどんだけ?」

青ピ「よっしゃ!それじゃ今日は全員で行こか!」

円周「あ、ごめんねー?今日は臨時休業なんだ」

上条「じゃあなんでメイド服で来たっ!?俺の人生に波風立てて楽しいか、なぁぁっ!?」

円周「すっっっっっごくっ楽しいよねっ!!!」

青ピ「なんの曇りもない爽やかな秋晴れのような笑顔やっ……!」

姫神「……これが!『自分だけの現実』!」

吹寄「いや、人徳だと思う」

上条「吹寄さん、それはつまり俺に徳が無いって……あぁごめん。どうして視界がにじむんだろう。おかしいな、あははっ!」



717:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/17(火) 12:16:13.57 ID:ZnmQgC8S0

円周「お兄ちゃんが弱っている姿を見るとゾクゾクするなぁ――じゃなくって」

円周「どうせこれ聞いたらお店に行くんだから、迎えに来たって訳さっ!」

上条「これって、どれだよ?」

円周「出たんだって、ストーカーさんが」



718:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/17(火) 12:17:23.17 ID:ZnmQgC8S0

――放課後 メイド喫茶(※臨時休業中)

鞠亜「あぁやっぱり来たか、先輩――もとい。お帰りなさいませ、ご主人様」

上条「いやそりゃ来るだろ、つーか完全に読まれてた感がするんだけど」

円周「お兄ちゃんの性格はテンプレ的だからねぇ。もうちょっと外連味があってもいいと思うけど」

円周「薄い本みたいに『誰これ?』的な積極性をだねぇ」

上条「いやだから個人の妄想な?神様は確実に関係してない――よね?性格上、どっかのサークルにSS書いてそうな気もするけど」

上条「まぁ何にせよ放課後はやる事もなかったし、一応顔出してはみたんだけど

海原「ストーカー……ですか。嘘から出たナントカと言いますし、誤解から始まる関係もあるのではないかと愚考致しますが」

上条「そりゃまぁ無い事はないかも?まず接点がなければ絶対に始まらないだろうし」

海原「あぁっ!届けこの想い!『鏡の義足』の名にかけて!」

円周「それ確か人身御供を好む、ジャガーの神様だった気がするけど」

円周「余談だけど、『悪魔く○』に出てきたヨナルデパズトー○もテスカトリポカの化身の一つだからねっ!」

上条「あぁ他は何となく分かるんだけど、当時『誰?』って感じで見てた」

鞠亜「とはいえ、最初からストーカーしている時点で、可能性はマイナスに入ってると思うがね」

上条「……ちょっといいかな?俺、凄い事に気づいちゃったんだけど」

円周「なぁに?まだお茶も用意してないんだけど、座ったらどうかな?」

鞠亜「そうだぞ先輩。君はまだストーカーの詳しい話すら聞いてないじゃないか」

鞠亜「まさか姉でもあるまいし、『犯人分かっちゃったんだが、言っていい?ねぇ言って良いかな?』とは言わないだろう?」

上条「荒んでるよなー、雲川家。二人で金田○でも見てた時の話じゃねぇか」

海原「今、お茶を用意致しますから。あ、コーヒーの方がいいでしょうか」

上条「――違う!そうじゃない!俺が言いたいのはだ!」

上条「この中に――犯人が居る……ッ!!!」

円周「え?」

鞠亜「何を言っているんだい、急に」

海原「……へぇ、それは面白そうですね。是非とも聞かせて貰いましょうか!」

上条「いやあの『金○一の犯人候補っぽいリアクション』して貰ってる所悪いんだけど、お前だよな――海原?」



719:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/17(火) 12:18:13.77 ID:ZnmQgC8S0

上条「っていうかストーカーって聞いた時から、犯人お前だって確信してたもの」

海原「――自分が?どうして?」

上条「っていうかさっきから気になってたんだけど、何でお前当然のように関係者として混ざってんの?」

海原「……成程。確かに盲点だったかも知れません」

海原「喫茶店に入り浸るちょいハンサムな好青年!状況証拠と言うかミステリ的にはよくある犯人像だと言えます!」

海原「だが上条さん!残念ですがあなたの推論は成り立たないのですよ!」

上条「つまり?」

海原「御坂さん以外をこの自分がストーカーする筈が無いじゃないですかあぁっ!!!」

上条「言い切らないで?なんつーか、確かに俺の予想は外れてたかも知れないけど、別件でアウトって事だよね?」

鞠亜「まぁ私達も最初は怪しいと踏んだんだけどね。まぁ、その」

円周「ぶっちゃけ『常盤台の娘さんストーカーしている以上、こっちまで手を伸ばせない』って事で納得したんだよっ!」

上条「そっかー、君らそれで納得しちゃったのかー」

海原「自分を甘く見ないで頂きたい!」

上条「お前もう帰れば?お前がハジければハジける程、オリジナル光貴君に迷惑かかるんだからね?」

鞠亜「待ってくれ先輩。ここは蛇の道は蛇、ストーカーにはストーカーの意見が有効だろう」

上条「一理あるけど……あるか?ないよね?そんなに有効じゃないよね?」

上条「変態って人種で括られているけど、その実態は様々じゃないかな?」

円周「まぁまぁ取り敢えず情報引き出してから、突き出せばいいんじゃないかなぁ?」

海原「ご心配なく!魔術で証拠は残していません!」

上条「軽々しく魔術言うな!……関係者しかいないから良いけどさ」



720:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/17(火) 12:19:13.27 ID:ZnmQgC8S0

上条「――んで、真面目な話、何か事件でもあったのか?店長さんもいないようだけど」

鞠亜「店長はアンチスキルへ相談だな。周囲の警邏回数を増やして貰うよう、交渉に行くんだとか」

上条「そりゃまた素早い対応で、しかも常識的だな」

鞠亜「未成年の子を預かってる以上、下手は打てないそうだよ。今日だって臨時休業にしたし」

円周「まぁ……正直、事件っていう程、大した何かがあった訳でもないんだよねぇ、これが」

上条「大した事がないのは良いんだけど、そもそもどういう話なんだ?誰かが家に帰るまでつけ回されたとか?」

鞠亜「三日前の18時半頃、遅番で来た子達が店の前にいる人影を見つける――お茶をどうぞ」

上条「海原じゃねぇの?……ありがとう、つーか話しながらよく出来るな」

円周「『俺に毎日入れてくれないか?向日葵のチャペルでメイド服のまま式を挙げよう!』」

上条「遊んでんじゃありませんっ!真面目な話してるんですからねっ!」

鞠亜「というか幾ら何でも結婚式ぐらいはウェディングドレスを着たいのだけど」

上条「お前もお前で突っ込む所がオカシイよね?」

海原「では間を取ってお色直しで着る、という事にしましょうか」

上条「ドヤ顔で言うけど、大したアイディアでもないからね?てかご来場の皆さんドン引きだよ」

円周「それじゃわたしがメイド服で、鞠亜ちゃんが白無垢だねっ!」

上条「しないよ?どうしてお前に一緒に嫁いでくる気満々なの?どっちともしないからね?」

海原「憎しみで人が殺せれば……ッ!」 ギリギリ

上条「俺が望んだ世界じゃねぇし!?何か一回終わったのに無理矢理強いられている気がするんだけどなっ!」

鞠亜「見事な6連続突っ込みだな。流石は先輩」

上条「帰っていいかな?残念な子の相方やってた頃も喉枯らしてたけど、突っ込み一人の世界もこれはこれで大変なんだよ!」

円周「『まーさーにーっ!』」

上条「どうしたの?今度はどんな危険なペルソナをアクティブにしたの?」

円周「『(ここでボケてくださいっ――はいどうぞっ!)』」

上条「すぐそうやって無茶振りする所が特にねっ!君もこっちまで出張ってくんな!」

円周「『いやぁクリスマスSSで出れると思ったんですけどねー』」



721:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/17(火) 12:20:08.29 ID:ZnmQgC8S0

鞠亜「お茶一杯でここまでアホ話を盛り上げられるのは、ある意味特筆に値するな」

上条「……あー、お茶美味しい……」 ズズズッ

円周「あ、お兄ちゃん現実逃避してる」

鞠亜「ではそのまま聞きたまえ、えっと――どこまで話したっけ」

海原「三日前まで、というかほぼ何も話していません」

鞠亜「その日、遅番の子が出勤する際、店の前に立っている人を見たんだ」

上条「たまたま、とか。知り合いと待ち合わせとかじゃねぇの?」

上条「店ん中、人多すぎてどうしようか迷ってたとか?」

円周「って話をバックヤードでしたら『あーうんうん!わたしも見た見たっ』って目撃証言が多数あったんだよねー」

鞠亜「彼女たちの話を総合するに、大体一週間ぐらい前からその人影は居たようだ」

上条「具体的な人相は?どんな男?ヤバめ?」

円周「暗いし、別に注意して見てたって訳じゃないからねぇ。『あぁそういえば居たかも?』って感じで」

鞠亜「昨日、君たちが帰る時はどうだったかね?尾行されたりとか?」

上条「いや、俺達はされてないよ。もしなんかあったら円周が襲いかかってるから」

円周「ぶいっ!」

鞠亜「その信頼の仕方もどうかと思うが……まぁ君はちょっとした魔獣並の野生を持っているしな」

海原「いいですよねっ!ケモノっ娘!」

上条「お前は黙ってろ。つーかイントラの辞書に『ケモノっ娘』って単語登録してんじゃねぇよ」

鞠亜「私もその話を聞いたのは昨日、君たちが帰ってから他の子が騒いでいるのを、ね」

鞠亜「それが……大体19時頃か?その時に確認してはみたが、特にそれっぽい人物は居なかった」

上条「……うむ。昨日の今日でこの対応か。随分素早いんだなぁ」

鞠亜「昨日の内から私が助言していたからね。当然だよ」

上条「そっかー、偉いんだなー雲川さん」 ナデナデ

鞠亜「き、気軽にフラグを立てるのは止めてくれないかなっ!?」

円周「駅前のドワーフさんみたいにフラグ乱造するよねぇ」

上条「駅前にあるハウスは違うよ?色々とマダオ的な人が集まってるから、近づくなよ?」

海原「あー、殺してー、あいつの幻想ブッスリ殺りてー」

上条「お前お前でヤサぐれてどうすんだよ。キャラ戻せ戻せ」

カランコロンッ

鞠亜「――ん?お客様?」

円周「あ、入り口鍵閉めるの忘れちゃってた――はーいっ、ごめんなさいねー、ご主人様―」 タタッ



722:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/17(火) 12:20:57.45 ID:ZnmQgC8S0

上条「人気があるってのは有り難いけどなー」

鞠亜「――それで、だ。授業中の私の所へオーナー――店長から相談があり、取り敢えず今までの指示をしたと」

円周「無難すぎて退屈かも?もっとアクティブに攻めた方が楽しいと思うんだけどなーぁ」

上条「具体的には――っていいっ!何かオチは読めるからっ!」

海原「今のお客様はブヒ山君ですかね?」

上条「あいつ名前にもブヒ入ってたんだっ!?個性強すぎじゃねぇかな!」

円周「どこかの巫女さんが羨まがりそう――って別の人、てんちょーが不在なのでお店を開けられません、って」

鞠亜「店長だけに任せるのも無責任だと思ったので、ここは私が華麗に解決して見せようという訳さ」

上条「あー、だからこの『なんかあっても、取り敢えず自分の身は守れる』面子なのな」

鞠亜「ふっ!ストーカー如きサッパリと退治して見せようじゃないかっ!」

円周「鞠亜ちゃんも時々暴走するよね。結構な頻度で」

海原「天才の割に本音がダダ漏れなのは、割と致命的な気もしますけど」

上条「ともあれ主旨は分かった。店の子が狙われてるんだったら大変だよな」

海原「ですね!人を陰から追い回すなんて卑怯な行為を見過ごす訳にはいきません!」

上条「おーい円周!鏡持ってきて海原に見せてやってくれ!」

海原「自分は……あぁほら、日本にも夜道で現れる妖怪があるではないですか?足音だけ聞こえるが無害なの。そんなものだと思って頂ければ」

上条「それは妖怪べとべとさんだけど、お前は幼怪ペドペドさんだからな?有害だよな?」

鞠亜「仲が良いのは結構だが、そういう訳で手伝って貰えないかね」

上条「そりゃ当然。でも手伝うって他の娘たちの送り迎えしろって話?」

鞠亜「いや、それでは埒が明かない。こちらから打って出よう」

円周「あー、この展開は、うん」

鞠亜「誰がこの店一番の人気メイドか白黒つけようじゃないかっ!!!」

上条「主旨違っ!?」



730:田中(ドワーフ) ◆7fp32j77iU 2013/12/24(火) 14:12:50.05 ID:9Tk76dMe0

>>729
いやぁ、『帰らず村』は『座敷わらし』とネタ被ったから、出来ればなかった事にしたいだけです



731:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/24(火) 14:14:37.26 ID:9Tk76dMe0

――18時 メイドカフェ(※臨時休業中)

鞠亜「作戦は至ってシンプルだよ。まずストーカーが現れる。これは確実だろう」

上条「そう、か?店の子達が『それっぽいのを見た』ってだけで確定情報じゃねぇだろ」

上条「最悪『勘違いでしたー』、って可能性もあるだろうし?」

海原「とはいえ、ですよ。何か間違いがあってからでは遅いですし、今回の対応を以て十全とすればいいかと」

上条「なんつーかな。今までのやり方はそれで良いと思うんだけど」

上条「アンチスキルの警邏依頼やら、他の子達を休みにしたのはまぁ、妥当だわな」

鞠亜「と、いう流れで私が!この店の指名率ナンバーである私が!スッパリ囮になって華麗に解決しようじゃないか!」

上条「って宣ってる頭の良いバカを見るに、不安で不安でしょうがないんだが」

鞠亜「また私のプライドか傷つけられた!経験値が稼げるなっ!」

円周「鞠亜ちゃんテンション振り切ってるよねぇ。わたしが言うのも何なんだけど」

鞠亜「そもそも勘違いをしているようだが、この中で単純な白兵戦であれば私が一番強いんだよ」

上条「マジでか?」

円周「わたしは一敗してるからねぇ。確かにそこらの社会不適合社と一対一で殴り合ったら、まず負けないと思うよ」

海原「それはつまり多人数であれば話は別だ、と?」

円周「ボクサーや格闘家でも、ナイフ持った相手には負けるし、多人数じゃ余計に捌ききれなくなるから。ブタご主人様は?」

海原「自分は以前、ケンカで上条さんに負けていますから」

上条「あれお前、勝つつもり無かったじゃねぇかよ」

海原「さぁ、どうでしたっけ?」

上条「で、俺よりも強い円周に勝ってる雲川さんが一番、か?じゃんけんみたいな相性じゃねぇの?」



732:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/24(火) 14:16:37.26 ID:9Tk76dMe0

鞠亜「先輩の心配も理解はしているよ」

上条「そうか、だったらもっと自制してくれよ。主に、今」

鞠亜「私のような可憐で繊細な、時として手折りたくなるような美少女相手に劣情を催すのも致し方か無い事だ」

上条「そんな心配はしてねぇし、別件出すな。ってか話が完全に俺の性癖になってる」

円周「あと、お兄ちゃんの好みは年上巨乳かソフト百合だから、鞠亜ちゃんはほぼ射程距離外だねぇ」

上条「お前はお前で俺の黒征先生を汚すな!そんな目で見てたんじゃないよ!純粋な目でだよ!」

海原「あぁショタでも有名ですもんね」

上条「高校生でそっち行ったら終りだろうが。いや、否定するつもりはないけど」

円周「あれは否定するべきだよ?受け入れたらバカじゃんか」

上条「お前また問題発言を」

円周「だって『小数の例外』のために一々法律を変えていたら、最終的に『個人の欲求』にまでレベル落とさなくちゃならないから」

上条「はい?」

鞠亜「同性婚の次は一夫多妻が待ってるのさ『同性婚よりも更に少ない一夫多妻を認められないのは差別だ!』って言うに決まってる」

海原「おかしいですよねぇ。多数決前提の民主国家で、極々例外の少数派のために民法が改正される。それで益を受けるのは文字通り少数なのに」

鞠亜「一枚目の舌は『一票の格差』を憂い、二枚目の舌で『少数派の権利の優遇』を説く。何枚舌があるのか興味深い所ではあるが」

円周「あ、でもお兄ちゃん的には一夫多妻は望む所だもんねっ!」

上条「お前いい加減にしないとぶん殴るよ?」

円周「鞠亜ちゃんと一緒に末永くご奉仕します、ご主人様っ」

鞠亜「勝手に私をメンバーに入れないで貰おうかっ!ってか最近風評被害が多いんだけれど!」

円周「好きでもない男に初めてを捧げるなんて、はぐれメタ○倒すよりもレベルアップするよ?」

鞠亜「……」

上条「考えるなそこ。俺はどっちもお断りだからな」

円周「わたしと鞠亜ちゃんが絡んで、お兄ちゃんは見る係で?」

上条「……」

海原「真面目に悩まないで下さい。ってか上条さんが百合厨だとは……まぁ言われると、思い当たる点も?」

上条「無い無い!俺は至って健康的な一般人だ!」

円周「その一般人のカテゴリ、他に誰が入っているかは興味あるよねぇ」

海原「上条さんが一般人なのはご自身が保障されるとしても、それが正常かどうかはとてもとても」



733:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/24(火) 14:17:59.27 ID:9Tk76dMe0

鞠亜「まぁともかくだ、ちょっと行ってくるよ。そんなに心配なら君たちも音からついてくればいいさ」

海原「任せて下さい!こんな事もあろうかと店の周囲半径10kmの地図は頭に叩き込んでありますから!」

海原「ターゲットがどこを通ったらどの道を使えば先回りできるか、既にシミュレーションは完璧です!」

上条「お前それ絶対に違うよな?ストーカー側の発想なんだよなぁ?正直に言ってみ、なぁ?」

円周「内外に敵がいて不安だよねぇ、うんうんっ」

上条「……つーかさ雲川さん。君が強いってのも分かったし、先輩の妹さんだし、そこら辺考えても信用出来るけど」

鞠亜「だったらいいじゃないか。姉の信用する私を信用したまえよ」

上条「でも君は若い女の子なんだからな?あんまり無茶して欲しくないし、少しでもヤバそうだと思ったら直ぐに逃げるんだぞ?」

鞠亜「姉に叱られる?」

上条「そんな事はどうだっていいんだよ!同僚心配するなんざ当たり前だろうが!」

円周「あーぁ、やっちゃったかー」

海原「実質何日でしたか?」

円周「バイト始めて10日ぐらい。バゲージからすると一ヶ月かなー」

上条「――だから、さ?」

鞠亜「ん、んんっ!まぁまぁ、うんっ!分かったような、まぁ大丈夫だよ」

上条「その無駄な自信を止めろっつーのに」

鞠亜「……そうじゃない、そうじゃないさ」

上条「じゃなんだって」

鞠亜「危なくなったら、先輩が守ってくれるんだろう?なら、私は心配なんかしなくっていいって話さ」

海原「タイプ的にはバードウェイさん型ツンデレ、でしょうかねぇ」

円周「と、思うよ。レヴィちゃんもなんだかんだで尽くしそうなタイプだし」

海原「意外と独立志向の女性って、家族や身内への依存心が高いんですよねー、これが」

円周「そういうの好きなんでしょ、ギャップ萌え的なの?」

海原「相手に寄ります、としかお答えできかねます――と、まとまったようですよ」



734:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/24(火) 14:18:52.85 ID:9Tk76dMe0

鞠亜「――で、では、作戦のおさらいをしようか!」

円周「よっこのベッドヤクザ!」

海原「流石先輩、その調子でグレムリン全員デレさせて下さいよー」

上条「意味が分からねぇよ!あと海原、そのキャラ誰だ?」

海原「世の中には人知れず消えていくモブキャラが星の数ほど、えぇ」

鞠亜「取り敢えずこのノートパソコンを見てくれ」

上条「ライブ映像……あ、店の前の電柱――」

海原「――の、陰に居ますね。少年……?」

円周「アングルからして、これ街頭カメラじゃないの?」

鞠亜「こんな事もあろうかと、昼間の内にハッキングしていた!頑張った!」

上条「胸を張るな!お前も御坂も犯罪行為だって理解しろ!」

円周「『無い胸を張ったって余計惨めになるだけだぜ?』」

鞠亜「ぶっ殺すぞ先輩」

上条「明らかに俺じゃないでしょーが!?声も口調も何一つエミュレートしてなかったよねぇ!」

海原「もっと解像度を上げられませんかね。これでは暗くて人相が分からない」

鞠亜「出来なくはないが、すると『風紀委員』が駆けつける」

円周「あー……ずさんなツールで良くまぁやったねぇ」

鞠亜「時間がなかったし、本職でも無いからやっつけだな」

上条「んじゃ、こいつ今捕まえれば良いんじゃねぇの?見た感じ――カメラ振って、近くに共犯っぽいのもいないみたいだし」

円周「さんせーいっ!顔のツラ剥がそうっ、ねっ?」

海原「自分が言うのも何ですけど、妹さんの教育には注意された方が、はい」

上条「覚えか無いんだよっ!?俺確か一人っ子の筈なのに自称ボスや同居人が増えてだね!」



735:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/24(火) 14:20:06.95 ID:9Tk76dMe0

円周「後をつけるのはお兄ちゃんとご主人様で行ってね?わたしはお店から指示出すから」

上条「納得はしてないけど、分かったよ」

海原「今日もまた流されっぱなしですよねぇ」

上条「受け身をとらなきゃ骨折すると思うんだよ。最近そう思うようにね、うん」

鞠亜「辺り一帯のカメラの操作――は、言うまでもないか。じゃ、ちょっと行ってくる」

上条「ネタ抜きで気をつけろよ?相手は見えてる奴以外にもいるかも知れないからな?」

鞠亜「その時は、よろしく『お兄ちゃん』」 カランコロンッ

上条「五人目の妹が……」

海原「――お静かに。気を引き締めて行きましょう」

上条「あぁ――って店の前」

人影? ササッ

円周「おー、ちゃんと隠れたねぇ。結構素早いかも」

海原「……うん?」

上条「どうした?」

海原「あぁいえ気のせいですね。それより雲川さんが見切れてしまいます」

円周「も一つアプリ立ち上げてっと、分割画面でいいかな」

上条「それじゃ、奴が動いたら俺達も」

海原「ですね。あ、仕掛ける時は自分が合図しますから、逃げ道を絶つまで自制して下さいね?」

上条「了解!」

円周「……」

海原「……」

上条・円周・海原「……」

海原「……なんか、アレですね」

上条「……だよな。アレだよな」

円周「っていうかさ、もしかしてこれ、アレなんじゃないかな?」

上条「あー……やっぱり?」



736:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/24(火) 14:21:31.26 ID:9Tk76dMe0

海原「いや、でももう少し見てみましょう」

円周「んー、もう無理だと思うけど。距離的にも厳しいだろ」

上条「っていうかあの服で商店街歩ける雲川さんのメンタル半端ねぇな!」

海原「明らかに指さして笑ってる小学生と、『見ちゃいけません』ってしてるお母さんもいらっしゃいますし」

円周「まぁ『どこのお風呂屋さんから逃げて来たの?』って格好だし――って、もう良いんじゃないかな?」

上条「そう、だよな。もうそろそろ、頃合いだよな」

海原「ですね、はい」

円周「うん、うんっ!」

上条・円周・海原「……」

上条「連絡、誰が入れるって決めてたっけ?」

海原「いやぁしていませんよ。盲点でしたね、いやはや」

円周「あ、だったらお兄ちゃんが良いんじゃないかな?年長者だし?」

上条「俺かっ!?俺に汚れ役任せるのっ!?」

海原「自分はホラ、女性に優しいキャラですので、ちょっと、はい」

上条「お前もこう言う時に限ってそれはねぇだろ!つーか円周は?お前がナビするって約我だったんじゃ?」

PiPiPi、PiPiPi……

上条「あれ、俺の携帯?」

円周「鞠亜ちゃんに登録しておいたからっ」

上条「お前また余計な事をしやがったなぁっ!?」

PiPiPi、PiPiPi……

海原「それより鳴っていますよ?取った方が良いのではないですか?」

上条「お前も他人事だと思って!いいかっお前ら忘れないからなっ!?」 ピッ

上条「『もしもし?』」



737:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/24(火) 14:23:38.10 ID:9Tk76dMe0

鞠亜『先輩!先輩なのか!?』

上条「『あーうん、オレオレ。上条ですけど』」

鞠亜『聞いてくれ先輩!これはもしかしたら、私達大変な相手を敵に回したかも知れないんだ!』

上条「『そ、そうなの?へー、大変だなー』」

鞠亜『何を言ってるんだ!相手は相当な使い手だぞ!』

鞠亜『どうやったのかは知らないけど、気配の一つも感じられない!これは相手が相当場数を積んでいる証左だよ!』

上条「『あー、うん。それは感じないよね。そりゃあね』

鞠亜『すまないが姉へ連絡して欲しい!私の手だけでは――』

上条「『――雲川さん!』」

鞠亜『どうした?すまないが、緊急――』

上条「『待ってくれ!俺の話を聞くんだ!』」

鞠亜『それは――今、私を追っている相手よりも大切な事なんだろうか?』

鞠亜『場合によっては私が危険に――』

上条「『いいから聞くんだ雲川鞠亜!』

鞠亜『――!』

上条「『……大声を出して済まない。けど、それだけ大事な話なんだよ!』」

上条「『今言わなきゃいけないし!そしてお前は絶対に聞く義務があるんだ!』」

鞠亜『先輩……』

上条「『……どう、落ち着いた?雲川さん?』」

鞠亜『……鞠亜』

上条「『うん?』」

鞠亜『私の名前だよ。知らなかったかい?』

上条「『……いや、知ってたけど――鞠亜、それじゃ、言うな?』」

鞠亜『……あぁ!遠慮せず言ってくれ1私はなんだって受け止めてみせる……!』

鞠亜『それがどんなクソッタレな現実だったとしてもだ!』

上条「『あの、な。実は――』

上条「『――居ないんだよ』」

鞠亜『いない?誰がだ?』



738:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/24(火) 14:24:58.39 ID:9Tk76dMe0

上条「『だから、その、犯人っぽい人?……うん』」

上条「『今も店の前で様子を見てる、っていうかね』」

鞠亜『……はい?』

上条「『ぶっちゃけると。ストーカー、最初っからお前に興味なかったみたい』」

鞠亜『』

上条「『うん、だからね、その気配がないってのも、相手がどうって事じゃなくてだな』」

鞠亜『……』

上条「『覚悟を聞けるのは良い事だから、うんっ!だからテキトーに戻ってきて?な?』

プツッ、ツーッ、ツーッ、ツーッ……

円周「あ、切れた」

上条「……いいのかなぁ、これで」

海原「明らかに盛り上げすぎた方にも問題があると思いますけど、これはこれで経験値も上がるでしょう」

円周「しっかし盲点だったよねぇ。わたしも鞠亜ちゃん目当てだと思ったけど、よくよく考えたらあんなアイタタタなメイドさんは嫌だよねぇ」

海原「それに関しては否定も肯定もしません。ま、他の方の可能性もあって当然なんですよね」

上条「なんつーか、雲川さんが自信満々だったから、『そ、そうかな?』って流しちまってたしなぁ」

海原「それでは妹さんの線は無いのですか?」

円周「わたし目当てなら昨日のウチに着いてきてるんじゃ?一回もそれっぽい気配はなかったけどなぁ」

上条「普通従業員は裏口から出入りするのに、俺らはお客様が通る表口から通ってるから」

海原「なら当然ストーカーは見ている筈であり、見過ごされた可能性は低いと。ふむ」

円周「……うーん?何か引っかかる」

上条「ま、まぁまぁ取り敢えずは雲川さんだよ。今どうしてる?」



739:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/24(火) 14:26:48.37 ID:9Tk76dMe0

円周「えっと……カメラには自販機に黙々と蹴りを入れる姿が映ってるけど、どうしよっか?」

上条「何やってんだアイツ!?ちょっと俺回収してくるわ!」

円周「いってらー」

海原「お気をつけて」

カランコロン

円周「……むー?なんか引っかかるんだよねぇ」

海原「と、言いますと?」

円周「だってさ、普通従業員の子って裏口から出入りするよねぇ、普通は」

海原「えぇ、そうらしいですね。流石に場所までは存じませんが」

円周「えっと、店の北東側、お店の玄関とは反対側だね」

円周「もしストーカーさんがお店の子狙いだったら、普通はそっちに張り込むんじゃないかな、って」

海原「監視のしやすさではないでしょうか?リスクを考えて、と」

円周「だってほら、『お店の前だと全員監視出来ない』んだよ。別にお店の前を通らなくても、裏道からちょっと曲がれば入れるし」

海原「目当ての子がお店を通過するパターンと考えるのが順当。ですが、確かにスッキリしませんね」

円周「だよねぇ?第一さ、今日は臨時休業じゃん?」

円周「なのに一体『誰』を待って――」

円周「……」

海原「妹さん?」

円周「『……あぁ難しいこっちゃねぇだろ。つーか何?俺、銀○扱いなのかよクソッタレ。きっちり成仏させてくれっつーのに、ったく』



740:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/24(火) 14:28:28.74 ID:9Tk76dMe0

海原「……どちら様で?」

円周「『あぁ気にすんな。人格変えて別視点から推理ってぇだけの話だよ――ふーん?』」

円周「『キーワードは“店の正面を通り”、“店の玄関から出入りする”人物だってのは間違いない』」

円周「『ついでに“雲川鞠生以外、現在店に残っていた”人物。って簡単じゃねぇか』」

円周「『野郎の出没する時間は18時前後……あぁそうだなぁ、丁度だよ』」

円周「『丁度お前と「幻想殺し」が帰る時間とピッタリだよなぁ、あん?』」

海原「それじゃもしかして――!」

円周「『テメェは雲川に指示を出して商店街の方から走らせろ。俺達はこっちから走る』」

円周「『なんの事ぁねぇ、奴の狙いはメイドなんかじゃなく――』」

円周「『――上条当麻だって話だよ』」



741:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/24(火) 14:30:50.38 ID:9Tk76dMe0

――18時20分

上条「……」

上条(暗いなー、もうすぐ冬至だしクリスマスも――)

上条(まぁバードウェイ達と過ごすんだろうけど、なんかモニョる。高校生がこれでいいんかい、と)

上条(退屈はしないからいいっちゃいいんだけど、うん。まぁ退屈はね、退屈だけはね)

上条(連中のケンカに巻き込まれて命の危険を感じる……あ、でも不幸と幸運の量って釣り合うって言うじゃない?)

上条(なけなしのお金で買った年末ジャンボ、きっと当たってくれるよ!今年も散々だったし!)

タッタッタッタッ……

上条(うん?後ろから誰が走って来――)

PiPiPi……

上条「『海原光貴』……登録した憶えねーけど、『もしもし?』」

海原『そこから離れて下さい!奴の狙いはあなたです!』

上条「『……はい?お前何言って――』」

人影「……」

上条「『――オーケー、理解した、つーか無理っぽいわ』」

上条「『カメラで見えねぇかな?丁度今、俺の目の前に居るよ』」

海原『では今二人が向かっていますから!時間稼ぎだけでも!』

上条「『……いや、それはしない』」

海原『上条さん?』

上条「『人を追い回すなんて野郎!俺が腐った幻想ぶっ殺すからだよ!』」 ピッ



742:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/24(火) 14:32:19.67 ID:9Tk76dMe0

人影「……上条、当麻で合っているか?」

上条「テメェはっ誰だっ!?いったい何の用で俺をつけ回すんだよ!」

人影「……分からないか?そうか、お前はそうなんだろうな」

人影「わたしから奪っていったモノの大切さを!貴様が理解する訳がない!」

上条「奪った、だって」

人影「……いや、それはもう言うまい。過ぎた事だ、終わった事だ。だからわたしはお前を責めたりはしない」 スチャッ

上条「って言う割には、ナイフなんか取り出して穏やかじゃねぇなぁ、おい?」

人影「焦りもするさ。お前にわたしの心情など、わたしがどれだけ急いでいるか、わかる筈がないだろうとも!」

円周「お兄ちゃんっ、離れて!」

鞠亜「先輩!そこを退くんだ!」

上条「お前達は離れていろ!こいつは俺に用があるんだ!」

人影「拒否権はない。断れば、死あるのみだ!」

上条「そこまで……お前は、俺に一体何をさせたいんだよ!?何が目的だ!?」

円周「(鞠亜ちゃん陽動ヨロシクっ)」

鞠亜「(了解。しくじるなよ)」

円周「うん、うん……ッ!そうだよねっ、こんな時、『木原加群』ならきっとこうするんだよね……ッ!」

人影「それは――」

人影「――それは料理を教えて貰うに決まっている!」

上条「……うん?」

円周「……むぅ?」

鞠亜「……何?」



743:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/24(火) 14:33:39.14 ID:9Tk76dMe0

人影「……」

上条「……すいません、あの、良く聞き取れなかったので、もっかいお願い出来ますか?」

上条「出来れば単語を日本語以外でも表わしてくれると助かるんですが」

人影「料理だ!クッキング!理解が遅いな!?」

上条「いや知ってるよ?俺だって単語の意味ぐらいはね」

上条「つーかお前バカじゃねーのか!?たかだか料理一つ勉強するため、張り込みとかしやがったのかよ!?」

上条「料理教える教えないで人にナイフなんて普通は向けねぇだろうが!?」

人影「そうだが?」

上条「あ、ごめんな?本当のバカなんだな、疑って悪かったよ真性だもの、お前のバカは」

円周「んー……?」

鞠亜「いやいやっ!意味が分からない!」

海原「――ケガはありませんか、かみじょ――」

上条「……いや、ないけどさ。海原からも言ってやっ――海原?」

海原「ショチトル……」

ショチトル(人影)「ちっ……嫌なタイミングで現れたものだな」

上条「お前ら知り合いなのかっ!?」

鞠亜「なんか頭イタイが……取り敢えず全員、場所を移そう。路上で話すような話でもないだろうからな」



744:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/24(火) 14:35:44.06 ID:9Tk76dMe0

――19時 メイド喫茶

円周「――つまり、簡単にまとめると」

鞠亜「君の村で兄と慕う人物が学園都市で音信不通になったと。それで君が追いかけて来た」

上条「で、『何で帰って来ないのか?』と聞いたら『中学生大好き』と」

海原「言ってませんよね?そんな明確には言っていませんけどね?」

上条「海原、正座」

海原「……はい」

円周「でも最近じゃちょっと落ち着いて来たと思ったら、なんかメイド喫茶に入り浸っちゃった」

鞠亜「そこで君はこう考えたんだ――『ここは確か食事を提供する店、街頭で配ってたチラシには「上条家の味」と書かれている』」

鞠亜「『……そうか!兄はきっと家庭の味に飢えているんだ!』」

鞠亜「『でもきっと料理方法は店の命、教えてはくれない……なら味を作るコックを脅迫すれば!』と、だね」

上条「あー、だから俺を捕まえてどうこうって事ね、はいはい。ってかホントに頭イタイよな」

海原「あの、上条さん?妹の事はあまり悪く言わないで頂けますか」

上条「お前だよ?今、俺達が問題にしているのは、主にお前の素行だからね?」

海原「いやでも自分はホラ、『笛吹男』でも尽力しましたし、そこら辺を評価して頂ければな、と」

上条「してるよ?だからここで『メイドさんはぁはぁ』の意味を、俺らが詳しく説明していないんだからな」

上条「やったら確実にお前は刺されるから。あと、正座を崩すな」

海原「……はい、すいません」



746:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/24(火) 14:37:08.28 ID:9Tk76dMe0

ショチトル「……謝るつもりはない!」

円周「あ、いいんだよ?ショチトルちゃんは被害者なんだし、悪くないって」

鞠亜「レシピもまぁ、教えるのは教えるんだが――それで、根本的な問題は解決しないんだよなぁ、これがまた」

上条「どうしたもんかな、うーん?」

円周「血は繋がってないとは言え、家族の間の事だからねぇ?出来れば話しあって貰うのが一番だけど」

鞠亜「その内、誤解から私や店の子が刺されそうでもあるし」

上条「また逆に御坂が狙われる可能性もある、か」

海原「大丈夫!その時は自分が守りますから!」

上条「テメーは黙ってろ、な?それが問題だっつってんだろ」

上条「これ以上御坂にオプション増やしてどうすんだよ。今までは一応善意――まぁ、本人達は善意だろうけど、今度は殺る気満々だし」

鞠亜「困った問題だね。殴り飛ばして済むんだったら、そっちの方が簡単だった」

円周「えっと、ねぇショチトルちゃん?あなたもお兄ちゃんが大好きなんだよね?」

ショチトル「ち、違うっ!誰があんな奴の事なんか!」

円周「んー、そのお顔も本物じゃないよねぇ。汗のかき方が微妙だし、表情筋の動きが少し遅れる」

円周「整形、もしくは何か特殊な繊維質で出来た表皮を顔につけてる、どう?」

ショチトル「……貴様、何者だ……?」

上条「一応科学者、なんだっけ?」

鞠亜「論文も木原数多と共同名義で出しているな」



747:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/24(火) 14:38:48.66 ID:9Tk76dMe0

円周「だから隠しても無駄だし?あぁうん、否定するのは勝手だと思うけど、でもそれだといつまで経っても進展はしないからね?」

円周「……人ってさ、どんな結末が待っているとしても、それは前に進まなくちゃダメなんだよ。それは、分かる?」

ショチトル「……」

円周「良い機会じゃないかなぁ。多分今ここでも逃げ出していたら、次もズルズル同じ事になると思うよ」

上条「円周……」

鞠亜「成長しているんだな、君の妹さんも」

上条「先輩の気分が分かった?」

鞠亜「姉は……どうだろう?あぁみえて面倒臭がりだから」

ショチトル「……分かったよ、降参だ、私はそこの男を、慕っている、と思う」

海原「……ショチトル、あなたは」

上条「正座」

海原「……はい」

円周「――うん、よく勇気出して言ってくれたね。それじゃ――『処刑の時間だぜ』」

上条「おぅ?」

鞠亜「これは……『木原数多』か?」

円周「『話は聞かせて貰ったが、アレだろ?なんか今までもそれっぽい告白はしたんだよな?遠回しに言ってみたりとか』」

円周「『んで、その都度「妹だから」とか「家族だから」とか、言われてやんわりと断られてきたってぇ話だろ?なぁ?』」

ショチトル「そう、だが。よく分かったな」

円周「『あーうん、結論から言えばお前は充分にコイツの女として認識されてっから、心配すんな』」

海原「待って下さい!何を言ってるんですか!?」

円周「『いやいや、だって考えてみろよ。お前もし、スッゲー不細工な女から告白されたら、なんつーんだよ?』」

円周「『「あれ?生物学にはゴリラ・ゴリラ・ゴリラ?空○先生、○知じゃないですか?」的な超ブサイクがストーカーしてたら』」

円周「『そん時は「全く脈はありませんし、迷惑だからもう付きまとわないで下さい」って言うだろ?なぁ?』」

上条「あの……円周さん?なんか、こう、『感情を取り戻して、絆の大切さを熱く語る』ってコンセプトじゃないんですかね?」



748:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/24(火) 14:40:30.85 ID:9Tk76dMe0

上条「なんつーか、ぶっちゃけるにも程があるって言うか、嫌な予感しかしないんだけど」

鞠亜「予想していたのよりずっとハードなんだが」

円周「『嫌いな奴とか、もう一生関わり合いになりたくない奴にはなんだって言えるんだよ。それをしなかったってのは、この男が未練タラッタラの証拠だ』」

円周「『つーかな、多分お前の押しも弱かったんじゃねぇの?全裸で迫るぐらいは普通するぜ?』」

上条「しないよっ!?……しないよなぁ?」

鞠亜「その件については後から事務所を通して報告させて頂こうか」

ショチトル「……そうか、確かにあの時も!」

海原「だって家族ですよ!?そりゃ血の繋がりはありませんけど、一緒に育ってきた間柄なんですからね!」

円周「『血の繋がりが無ぇんだったら、そりゃただの幼馴染みじゃねぇか。何言ってんだよ、バカじゃねぇの』」

円周「『家族だからってのは、そいつぁテメェがこのガキを意識してるって裏返しなんだよ』」

海原「いえ、そりゃ好きですけどね?」

ショチトル「エツァリ……!」

海原「ですから家族として、って言っているじゃないですか!」

上条「海原、正座」

海原「……はい」



749:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/24(火) 14:42:18.73 ID:9Tk76dMe0

円周「『んー……あぁ成程成程、そいつぁお前「刷り込み」だなぁ。所謂「術式を使わない魔術」って奴だよ』」

海原「魔術……いや『原典』を持つ自分に、早々下手な魔術がかかっていたとしても、それは物の役に立ちませんが」

円周「『そうじゃなくってプラセボ効果の方だ。偽薬って聞いた事ぁねぇか?』」

ショチトル「薬だって言い聞かせて飲ませれば、ある程度効果が現れる、だったか」

円周「『察するにテメェらの集落だか共同体だかは、ガキはガキ同士集めて育てる。家庭よりかコミュ全体で教育する、ってぇ感じだろ。違うか?』」

海原「そうですけど、よく分かりましたね」

円周「『閉鎖的な結社には良くある話でな。あぁ文化人類学の話に飛ぶが、そういう集団じゃ年の近い連中を「兄弟」として育てるんだわ』」

円周「『そうして「共同体内の婚姻をタブーして刷り込み、血が濃くなるのを防ぐ」って寸法だわな』」

円周「『知りたい奴ぁ、フレーザーの『金枝篇』読んどけ……いやエリアーデの『世界宗教史』だっけかな?』」

ショチトル「言われてみれば……長老達は、そうだ!そうだったんだよエツァリ!」

海原「……」

円周「『って事でどうだ?そろそろ覚悟決めた方が良いんじゃねぇのか、「エツァリお兄ちゃん」よぉ?』」

円周「『つーかさぁ、そもそもの動機――なんだっけ?たまたま来た場所で現地の女に一目惚れするって有り得なくないか?』」

上条「……いやそれ言ったら、うん。神様のパワープレイも程々にしないと」

鞠亜「イングランドはクリケットの発祥地なのに、何故かラクロスを得意とする魔術師とかな」

円周「『そいつも実の所、「妹を振り切るための方便」にしか見えねぇがね、俺には』」

海原「……あなたに、自分の何が分かるって言うんですか!」

海原「自分の信念が曲がる事はありませんから。何を言っても無駄です!」

円周「『え、マジで?良いの?本当に?絶対だな?』」

海原「えぇはい、時間の無駄だと思いますがね」



750:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/24(火) 14:43:38.19 ID:9Tk76dMe0

円周「『だったらこっちのガキ、上条ファミリーに入れても良いんだな?』」

上条「俺に飛び火しやがった!?つーか何で俺の友達になるのが罰ゲーム扱いになってんの!?」

海原「ダメに決まってんだろ!不幸になるのが分かってる相手の所に行かせられるか!」

上条「お前もお前で俺の評価が最低じゃねぇか!?つーかキャラ忘れるぐらい嫌か!?」

鞠亜「……ぬぅ、なんという説得力!」

上条「雲川さんは後でお姉さんに一部始終を教えとくから、一生ネタにされ続けるといいよ」

円周「『……ナニソレ?勝手じゃね?つーかそれもう肉親じゃねぇよなぁ、どう考えても彼氏みてぇな感じじゃね?』」

円周「『俺がどうこう言うのは筋違いだとは思うがね。最終的に決めるのはテメェら同士の話だよ』」

円周「――まぁ、男なんて全裸で押し倒せば大抵イケると思うよ?」

上条「シメがその言葉って有り得ないだろうが!?つーかお前他人事だと思って好き勝手言うんじゃねぇよ!」

ショチトル「……分かった。うん、エツァリの気持ちも」

海原「いやですから、これはあくまでも親愛の情でしてね」

上条「海原―?」

海原「……正座ですよね、はい」



751:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/24(火) 14:45:06.58 ID:9Tk76dMe0

鞠亜「うん、君も分かってくれた、のかな?」

ショチトル「あ、料理は――」

円周「あ、暫くキッチンで働けば良いんじゃ?お兄ちゃんが教えてくれるだろうし」

海原「ダメです!この悪魔のような男に近づいては!」

上条「……俺、そこまで言われる筋合いは無いと思うんだけど。特に、お前にだけは」

円周「当麻お兄ちゃんは結構他の人も助けてるけど、こっちのブタ野郎ご主人様は結構身勝手だよね、うん」

海原「そうは言いますけど、ここじゃ言えないような所で活躍してますからね?白いのとかクソメガネとか露出狂女パーティの常識人として」

上条「でも妹さんほったらかしにしたのはダメだろう。つーか正座」

海原「……これ地味にキツいんですが」

鞠亜「……あぁじゃ監視でもしたらいいじゃないかな。幾ら先輩でも、ご父兄が近くにいる状態で押し倒したりはしないだろうし」

上条「なんか今日一日で友達だと思ってた人達の本音を聞いて、俺人間不信になりそうなんだけど……!」

円周「あ、じゃあみんな殺そうか?今度は上手くヤるからっ!」

上条「お前はお前で身勝手過ぎるよっ!?」



752:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/24(火) 14:46:48.70 ID:9Tk76dMe0

――19時 帰り道

円周「楽しかったね、お兄ちゃん!」

上条「……いや、他人の修羅場に巻き込まれてその発想はない」

円周「え?他人の不幸だから楽しめるんだよ?」

上条「お前の情操教育も着々と失敗してる気がすんだよなぁ、これが」

上条「バードウェイとかシェリーとか、どう考えてもアレな人間しか居ないってのも」

円周「じゃ、お兄ちゃんの知り合いで人格者はだぁれ?」

上条「あー……小萌先生、かな?」

円周「わかったよ!その人を『他者再生』すればいいんだねっ!」

上条「わかってねぇ!何一つ理解してないし!」

円周「まぁまぁ冗談はともかく、あの二人上手く行くといいよねぇ」

上条「とは思うけどさ。ってかよく分かったな、あいつらの環境だなんだ、刷り込みってのも」

円周「ううん、全部ハッタリだけど?」

上条「うん、何となく知ってた。つーかボスに鍛えられた」

円周「でもエナリって人も大概だと思うよ、わたしのブラフで動揺するんだったら、その程度の想いだったって事だしねぇ」

上条「エツァリな?超ベテラン俳優さんじゃないからね?」



753:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/24(火) 14:47:50.75 ID:9Tk76dMe0

円周「あー、でもさ。こうも思ったり?」

円周「わたしも嘘を吐いたけど、もしかしてそれがアタリだったのかもしんないけど」

円周「あの二人がお互いを大事にしてる、ってのは本当だよね?ねっ!」

上条「それは……うん、間違いないだろ」

円周「だから、ホラ少しぐらいズルしちゃっても、それは結局近道を通っただけであって」

円周「少しだけ目的地に着くのが早くなったってだけだと思うよ、うん」

上条「嘘を吐いても?」

円周「二人が最終的に幸せになるんだったらいいんじゃないかな?」

上条「……うーん?肯定はしないけど、否定も……むぅ」

円周「フレーザー云々も、術式じゃない魔術ってのも全部デタラメだけどねー。二人が『納得する言い訳』になってくれれば、って」

上条「嘘も方便、か?」

円周「事実だけが人を幸せにするとは限らないし、逆に嘘だって本人同士が良いんだったら、ね?」

円周「わたし達もあぁなりたいなぁっ!お互いを支え合うよな関係にっ!」

上条「お前も懲りない、つーかブレないよなぁ――円周?」 ギュッ

円周「お兄ちゃんの足りない所、欠けてる『筺』は見つかったの?」

上条「俺がか?」

円周「もし無いんだったら、わたしが――埋めるとか、ダメかなぁ?わたしじゃ、足りない?」



754:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/24(火) 14:48:48.34 ID:9Tk76dMe0

上条「あーしたなぁ、そう言う話も。お前は、どうなんだよ?」

上条「お前の『筺』はガラクタで一杯になったのか?」

円周「……最近忙しくて、忘れちゃった」

上条「……そか、うん。まぁ、それもいいんじゃねぇのか」

上条「人だの筺だの、よく分からない話だったけど、それはまぁそれで」

上条「――寂しさを忘れっちまうぐらいに満たされてるんだったら……うん」

円周「……やっぱりね、当麻お兄ちゃん大好きだよっ!」

上条「おいおい、あんまひっつくなって――あれ、この展開どっかで?」

円周「性的な意味でねっ!」 ギリギリギリッ

上条「だからお前、そーゆートコ全っ然反省してねぇじゃねえかよおおおぉぉぉっ!?」

上条「しまった!?今日は最初から腕組んでるから逃げられない!?」

円周「がおー、たべちゃうぞーっ!」


――断章のアルカナ・アフター 『円周編』 -終-



759:田中(ドワーフ) ◆7fp32j77iU 2013/12/24(火) 17:45:58.06 ID:9Tk76dMe0



――先行試作版――




760:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/24(火) 17:46:42.27 ID:9Tk76dMe0



(※設定は予告無く変更される事が、事が事が事が――)


「いぁいぁ、『Only Teasing』だからだよ。言わせんな恥ずかしい」




761:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/24(火) 17:47:19.27 ID:9Tk76dMe0

――某音楽番組

ヅラ「はい、次は初登場ARISAちゃんです」

ヅラ「えっと、ライブ会場のARISAちゃーん?繋がってますかー?」

鳴護『はい、こんばんはー……え?違う?おはようございます?』

ヅラ「髪切った?」

鳴護『あ、いや特には切ってないです』

ヅラ「シングルでミリオン達成だって?すごいんだねー」

鳴護『ありがとうございます。応援してくれた皆さんのおかげです』

ヅラ「髪切った?」

鳴護『切ってないです』

ヅラ「まだ学生さんなんだよね。どう、勉強もしてる?」

鳴護『ボチボチですかねー。選択問題は強いんですけど、筆記問題は得意じゃなくて』

ヅラ「髪切った?」

鳴護『切ってないです。っていうか「似合ってない」って言われてるんですか、あたし?』

アナウンサー「――はい、曲の準備が出来ました。ARISAさんどうぞー」

鳴護『あの、基本髪切った話しかしてないんですけど……』

ヅラ「はい、という訳でARISAさんの新曲――」

ヅラ「――『髪切った?』」

鳴護『切ってないです。あと曲の名前と違いますし、順番間違えてるんじゃ?』

桂「ヅラじゃない桂だ」

ヅラ「おい今の声なんだ?どうやって潜り込んだの?」



762:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/24(火) 17:48:12.47 ID:9Tk76dMe0

――クリスマス LIVE会場

チャンチャンチャンチャンチャンチャンチャンチャンッ

鳴護『――世界が一つであった時代、私達は何を考えただろう?』

鳴護『世界が二つ出会った時代、私達は何を求めるのだろう?』

鳴護『神様が意地悪をして、私とあなたを引き離したけれど――問題はない』

鳴護『だってもう心を伝える方法は知っているから』

ワァァァァァァァァッ……

鳴護『私達が子供の頃、もどかしく考えてなかった?』

鳴護『うん、それはきっと今では答えを見つけている――その手に』

鳴護『――世界が一つであった時代、私達は何を考えただろう?』

鳴護『世界が二つ出会った時代、私達は何を求めるのだろう?』

鳴護『言葉は要らない。手を伸ばせば届くよ』

鳴護『この世界にまだ言葉が無かった時代にも愛はあった』

鳴護『――そう、そのまま抱きしめるだけで……』

ジャジャァァンッ………………

ワアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!

鳴護『――はい、って言う訳でテレビ中継は切れちゃったみたいです。電波が悪いのかな?』

鳴護『けどライブはまだまだ終わらないから、安心してねー?』

ウォォォォォォォォォォォォォッ!!!



763:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/24(火) 17:48:48.81 ID:9Tk76dMe0

鳴護『――みんなーーっ、あたしのライブに来てくれてありがとーーーーーーーっ!』

鳴護『「クリスマスぐらい大事な人といようぜ」、ってあたしの大先輩は言ってたけど』

鳴護『あたしも大切なファンのみんなと一緒で幸せだよーーっ!』

ファン『おおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!』

浜面「あっりっさ!あっりっさ!」あっりっさ!」

ファン『あっりっさっ!あっりっさっ!あっりっさ!』

鳴護『でも来年ぐらいは好きな人と一緒にいたいかなー、なんて?』

鳴護『どう?ダメ?アイドルが恋しちゃうのはNG?』

浜面「上条もげろ!」

ファン『もっげっろ!もっげっろ!もっげっろ!』

鳴護『えっと、個人名を出すのはちょっとアレだよね。うんっ』

鳴護『みんなー、恋はいいよ?好きな人に好きだって言えるんだし』

鳴護『こんなに良い事って他にないよ。うん、ほんとにっ』

浜面「好きだーっ!結婚してくれーっ!」

鳴護『……さっきから彼女持ちさんの声がする気がするけど、メイスクリーン見て?』

浜面「おぅ?」

鳴護『MC中のアレコレがカメラで抜かれて、世界にLIVE発信されてるんだけど。いいのかな?』

浜面「やだ撮らないでっ!?」

鳴護『それじゃ、次の曲行くよーーーーっ!』

オオォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!

鳴護『曲名は――』



764:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/24(火) 17:49:25.57 ID:9Tk76dMe0

――あるファミレス

滝壺 ガクガクガク

絹旗「なにやってんですか、超何やってんですか浜面。滝壺さん置いて一人でライブなんて超有り得ないでしょう」

麦野「ま、常識的に考えりゃペアチケット取る筈が一枚しか当たらなくてさ。それでコッソリ行ったとかじゃないの?」

絹旗「……むぅ。確かに鳴護アリサのクリスマスコンサートは超プレミアですけど」

麦野「だからって彼女置いて行くかよ?あのクソったれ、帰ってきたら顔面無くすまでぶっ飛ばす」

滝壺「……かめらに抜かれているのに、必死に百面相してごまかそうとしている」

絹旗「これはこれで超面白そうですね。あ、超録画してツベにアップロードしましょう」

麦野「つかこれ学園都市の……どっかの学区からの生中継なんでしょ?」

絹旗「ですね。タ○さんの音楽番組中継は超途中でキレてしまいましたが」

麦野「電波障害、か?変な声も入ってたみたいだし」

絹旗「ま、学園都市の有線の超強度と比べるのは酷でしょう……って、滝壺さん?」



765:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/24(火) 17:50:11.66 ID:9Tk76dMe0

滝壺「……これ、なに……?」

麦野「どうしたのよ、凄い汗――滝壺?滝壺っ!?」

滝壺「暗い暗い海が見える……その淵には最果てが無く、ただただ赤黒い白い緑の葉っぱが敷き詰められて――」

滝壺「――海から押し寄せるのは――違う!あれは、あれは――っ!」

絹旗「超落ち着いてく――い!」

滝壺「押し寄せるんじゃ、ない!違う、違、血が、地が、智が!」

麦野「救急車を――早く――!」

滝壺「――海より帰り来たる。慟哭と怨嗟と、赤子の泣き声、それは――」

滝壺「――凱旋、だ」



766:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/24(火) 17:51:06.50 ID:9Tk76dMe0

――同時刻 XX学区 コンサート会場 来賓用駐車場

 完全防音を謳うコンサートホールにして野外音楽堂でもあるライブ会場。
 しかし鳴護アリサの歌声は、人工的に調整された音の流れを無視し、僅かながら会場周辺にも漏れ聞こえていた。
 時として多数のクレームで回線がパンクする程、ホールの苦情係は激務であるのだが、今日に限っては楽なものだった。

 プレミアチケットとなった招待券がないのに、微かにではあるがおこぼれにありつけた。感謝こそすれ、クレームが入る気配すらなかった。
 野球やサッカーの試合が行われているのであれば、適度に“市民の声”を捌く必要があったのに、随分と現金なものだと軽く思っていた。

 しかし、それは暫くすると一つの疑念に思い当たる――「静か“すぎる”のではないか」と。
 ホールの外を通る車の影も、出待ちかチケットを手に入れられず、未練がましくたむろしている人影も。
 普段、普通にしていれば嫌でも目にする影が、当たり前のように存在する雑踏や人の生活音が、何故かポッカリと欠けていた。

 今日はクリスマスイブ。冬至も過ぎたばかりだと言うに、得体の知れない恐怖が背筋を這い上がり、暑くないのに汗がぐっしょりシャツを濡らす。
 気のせいだと言い聞かせても、どうにも不安で不安で溜らなくなってくる。

『――あー、コーヒーでも買って来るわ』

 そう言って出て行った同僚の姿は、未だにあるべき所に帰ってきてない。
 所か、休憩時間を大幅に過ぎ、これ以上ないほどに怠慢――。



767:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/24(火) 17:51:56.64 ID:9Tk76dMe0

 いや――怠慢なのか?もしかして、得体の知れない何か、よりにもよって鳴護アリサのコンサートの日にたまたま当番になったため、巻き込まれたのではないか?
 人影が誰一人と見えず、また同僚も某かのトラブルに襲われてどこかへ消えてしまったとか?

 そう思って、警備員か誰か、とにかく人の居る所まで出ようと思い、部屋を後に――。

「……ァ」

 バタン。

「あっ、す、すいませんっ!」

 部屋のすぐ前に誰かが突っ立っていたらしい。思いのほか勢いよくドアを開けたせいで、相手を転倒させてしまったようだ。
 その証拠に半分開いたドアから上半身と下半身が見える。

 あぁなんだ、その制服は同じ従業員の同僚のもの。丁度帰って来ていた所に、たまたまぶつけてしまったのか。間が悪い。

「え、っと。どうし、た――」

 上半身と下半身?……どうして、それが、別々にあるのだろうか?
 普通は、一般的には、それは別セットで数えられるものじゃない。必ず二人で一つ――と言うか、分けては存在しない。出来ない。

 けれど、ここから見えるパーツ達は明らかに別の方向を向いていて。
 上半身は壁にぶつかり、下半身は床に転がり――あぁ、これはそうか。

 同僚の体は、上下に引き千切られていた。



768:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/24(火) 17:52:40.33 ID:9Tk76dMe0

「ひっ!?」

「……ぁっ、ぁっ」

 まだ生きているのだろう。壁に寄りかかったまま言葉にならない言葉を紡いでいる。
 血の痕が水溜まりを徐々に作り、そこかしこに考えたくもない赤黒い何かが飛び散っていた。生理的にとても受け付けない血臭に胃液が上がってくる。

「く、ぷっ……!?」

 ダメだ、まだ、ダメだ。吐くのは後からでも出来る。今は少しでも早くこの状況を伝えなければいけない!
 警備員でもアンチスキルでも良い!通報が早ければ同僚の命も助かるかも知れない!
 だから、ただ、早く……!

 慌てて部屋に駆け込み、内線用のアナログな電話を取り――音が、しない。
 カチャカチャと適当にボタンを押しても、受話器からは何の反応も返っては来なかった。

 次に私物の系帯電を取り出して、耳に当て――やはり音はしなかった。これは、どういう。

 ふと、思いつく。“そういえば”と。
 少し前に行われてたテレビ中継がぶつ切りになった。それは外部の何かが原因だと思っていた。
 けれど、それは、違う。
 “あの時から既に、ここで何かが起きていた”のではないだろうか?
 大規模なテロとか、暴走した能力者だとか、反学園都市の組織とか。

 だとすれば、ここにいるだけで、危険だ。これ以上踏み留まるべきではない――そうだ!自分には異常を外部に知らせに行かなければいけない!

 そう自分に言い聞かせながら、変わり果てた同僚の側を通――。

「――オイ、そこで何をやってんだ!?」

 第三者の声にビクリとしながら、“そういえば”と再び思う。

 どうして同僚が殺されてる必要があったのか?
 どうして自分は殺されなかったのか?

 血溜まりが“広がりつつあった”のを察するに、同僚が部屋のドアを一枚隔てた外で殺されたのは間違いない。
 ならつまり、そこまで犯人は来ている。

 この、目の前にいる少年の所までは。



769:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/24(火) 17:53:48.33 ID:9Tk76dMe0

上条「――聞いてんのかよ!?こっちに人が倒れてんだ!アンチスキルを呼んでくれって!」

上条(こっちの……あぁ、手遅れか。息をしてない以前に、この血溜まりじゃ)

社員「あ、う……ぁぁっ!」

上条「アンタ、おいっ!?待てよっ!」

社員「お、お前は何なんだよっ!?ソイツみたいに殺すのか、なあぁっ!?」

上条「あぁ!?」

社員「お前がやったんだろ!?お前以外に誰もっ!」

上条(錯乱してやがる……無理もないけど)

上条(バゲージでの経験がなかったら、俺も似たようなもんか)

上条「落ち着いて考えろよっ!俺がもしお前の同僚?かなんかを殺してたとして、わざわざお前に話をする意味がないだろ!」

上条「第一俺はお前みたいに汚れてないし!返り血を浴びずに、どうこう出来るってのか、あぁ!?」

上条(……人体切断なんて、能力か魔術で簡単に出来るとは思うけど、まぁそれ言ったらどうしようもないしな)

社員「あ、あぁ」

上条「だったらそのまま聞いてくれ!俺はこっちから近寄らない、良いかっ!?」

上条「取り敢えず何があったんだよ?コイツは誰に殺されたんだ!?」

社員「わ、分からない!ソイツがコーヒー買いに行って、戻ってこないから探しに行こうと思ったんだ……」

社員「そ、そうしたら、ドアの前で!」

上条「アンチスキルに通報は?」

社員「出来なかったんだよ!有線がダメ!携帯もダメ!一体何がどうなってるんだ!?」

上条「落ち着けって!俺もよく分かってないんだから」



770:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/24(火) 17:54:43.75 ID:9Tk76dMe0

社員「お前は、誰なんだ……?」

上条「俺はバイトで観客誘導してたんだけど、コンサート始まって休憩室――ロビーの脇んトコでテレビ見てたら、急に電源が落ちてな」

上条「何かホールは無事なんだけど、こっち側の施設がダメになったみたいで。手分けして見回ってる最中だよ」

社員「明かりが?気づかなかった……」

上条「……何?」

社員「こっちはずっと電気は点いてるぞ……?」

上条「点いてる、って……?お前、そりゃおかしいだろ」

社員「な、何が?」

上条「――こっち“も”真っ暗じゃねぇか」

社員「……はい?」

上条「俺がマグライト持ってくるまで、照明なんて無かったんだぞ?今だって、ホラ」

社員「……」

上条「つーかお前、電気が完全に消えて、真っ暗闇になってんのにさ」

上条「何をどうやったら、お前の相方が死んでいたって事が分かるんだ?」



771:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/24(火) 17:55:25.40 ID:9Tk76dMe0

社員「見え、るだろう?ほらっ!電気なんか消えてない!」

社員「そこに壁に持たれているのは上半身で!床に転がっているのは足でっ!」

社員「お、俺は外へ出ようとしたら、ぶつかって!それで驚いて!」

上条「……そうか。それじゃもう一つだけ聞いても良いかな?」

社員「な、なんだよっ!?」

上条「今の話から察するに、アンタはこっちの人に指一本触れてないようだが――」

上条「――だったらどうして、アンタの体は返り血で真っ赤に染まっているんだ?」

社員「……」

上条「内線が通じないのは当然だ。だってさっきからずっと停電してるんだからな」

上条「非常灯の明かりもここには届かないのに、どうやってアンタは俺を“視て”るんだよ!」



772:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/24(火) 17:56:15.54 ID:9Tk76dMe0

 少年の指摘に息が詰まる。欠損していた記憶が甦る。
 同僚は確か気の良いヤツで、喉が渇いたと呟いたのを聞いて自販機へ向かったんだった。

 けれど自分はその行為を無碍に踏みにじり、蹂躙し、ハラワタに顔を埋め。
 香しい血の臭い。恍惚とした一時を過ごしたのではなかったのか?

 “そういえば”と三度思う。

「帰らなきゃいけないんだった――海へ」



773:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/24(火) 17:56:53.98 ID:9Tk76dMe0

上条「お前――クソッ!」

上条(皮膚が――鱗?急に緑色になりやがった!)

社員「ゲゴゴゴゴゴゴゴゴゴっ!」

上条「よく分からねぇが――ぶん殴れば!」

パキイィンッ!

上条「ふう、これで元に戻る――ら、ない!?」 ガッ

社員「――ッ!アーァァァァァァァっ!?」

上条「何でだよっ!?どうして元に戻らな――」

少女「――はい、ちょっと失礼しますよっと」

サ゚ンッ!

上条(俺に飛びかかろうとした男は、その勢いを逆に利用されて、カウンターで突き出された“槍”に頭を貫かれる)

上条(人間の頭蓋骨よりも、もっと歪で鋭角が目立つ骨格を突き破り、槍は深々と突き刺さった)

社員「……あ、ギ……ゲゲ……」

上条(ほぼ即死だったのか、数度体を痙攣させると社員――だったモノは地面へ倒れる)

上条(乱入してきた第三者にライトを向けると、こっちが頼んでもいないのに自己紹介を始めやがった)

少女「いつもニコニコあなたのお側に這い寄――」

グリグリグリグリグリッ

少女「痛いイタイ痛いいたいっ!?ちょっ、ジョークじゃないですか、ジョーク!」



774:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/24(火) 17:58:12.12 ID:9Tk76dMe0

少女「場を和ませるためにとっておきの持ちネタをですね」

上条「……何やってんのレッサーさん?つーかお前ここ学園都市なんだけど」

レッサー(少女)「折角ネタを決めようとしたのに、ばっさり切られた!?……あ、すいません真面目にやるんで、マグライトでグリグリはちょっと」

レッサー「まぁオシオキ(性的な意味で)ならバッチ来い!……あ、でも最初は流石に道具はプレイはちょっと」

上条「非常事態だっつーのに!つーか何だよコイツ!?」

上条「真っ暗な所でも平気でウロウロしてるわ!急にウロコだらけの姿になるわ!何なんだっ!?」

レッサー「はぁ、『深きものども(ディープ・ワンズ)』ですねぇ。いやー、まさか実在するとは」

上条「いやだから簡潔に頼むっ!」

レッサー「まぁアレですなー。ぶっちゃけ今度の敵は――」

レッサー「――『クトゥルー』なんだぜ?」


――とある魔術の禁書目録SS -胎魔のオラトリオ(仮)- -現在構想中-


※途中でバックレたら、ごめんね (´・ω・`)
即興で書いてみましたが、まぁこんな感じかなー?ちょっと暗すぎるかも
それでは改めてまた来年



782:田中(ドワーフ) ◆7fp32j77iU 2014/01/07(火) 11:27:25.19 ID:oWowqeUX0



――断章のアルカナ・アフター 『バードウェイ編』




783:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/07(火) 11:28:32.09 ID:oWowqeUX0

――『明け色の陽射し』極東支部 夕食後

バードウェイ「――さて、諸君らに集まって貰ったのは他でもない」

上条「……何?急にどうしたんですか、ボス」

バードウェイ「非常に全く極めて遺憾な事態が発生してしまった事を報告しよう」

上条「またかっ!?またどっかの魔術師が攻め込んで来やがったのかよっ!?」

円周「うん、うんっ!全っ然、全然気は進まないけどっ!新手の顔を剥ぐ毎日が帰ってくるだよね……ッ!」

上条「やだこの子反省してない」

シェリー「ってかどう見ても嬉々としてる……つーか鬼気、かぁ?」

上条「お前ら何なの?どうしてそう好戦的なの?話し合いでどうこうしようってハラはねぇの?」

バードウェイ「武器を突きつけられた上、中指を立てて『仲良くしようぜ!』と言う人間は取り敢えず敵だと割り切る事にしている」

バードウェイ「生憎、それで困った事もないがね」

上条「つーかまた敵なの?俺がまた関係各位に頭を下げて回る日々が始まるの?」

バードウェイ「いやいや、そんなに面白い話ではないんだ。むしろ私としては不本意で、正直躊躇っている」

シェリー「へぇ?珍しいじゃねぇかよ」

円周「その割には楽しそうにしているけど、見間違いなのかな?かなっ?」

上条「その語尾は止めなさい。それ以外は同感だが」

バードウェイ「まさか私も身内に犯人が居るとは思いたくなかったさ」

上条「犯人、ってまた穏やかじゃねぇなぁ。何かあったのか?」

バードウェイ「――犯人はこの中にいる……!」

上条「……はい?」

円周「……レヴィちゃんの気持ちも分かるけどさ、この雪で閉ざされたロッジの中で、犯人捜しはやめにしない、ね?」

上条「俺の部屋だよね?つーか雪って何?年末頃にちょっと降ったけど、それ以外は乾燥してるよね?」

円周「当たっていればいいけど、そうじゃなかったらホラ、ね?誰も得をしないんだから」

円周「ここは黙って、警察の人が来るのを待つべきだと思うんだよ、うんっ」

上条「推理小説でありがちな『ゲストヒロインで実は真犯人だった!』ってリアクションだよね?」



784:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/07(火) 11:30:33.38 ID:oWowqeUX0

上条「つーかそれ前回やって大恥かいた可愛いけど残念な子act2が居たんだけど、もしかして気に入ったの?」

シェリー「あぁ?探偵ゴッコなら勝手にしてりゃいいじゃねぇか。けど付き合うのはゴメンだわ」

シェリー「私は部屋に帰る!犯人が居るかも知れないのに、一緒になんて過ごせる訳がない!」

上条「シェリーさんも一枚噛んでるの?つーかそれ完全に死亡フラグだからね、割と鉄板な」

円周「大体主人公をバカにした人から殲滅していくよねぇ。だったら普通探偵さんが第一容疑者へ回ると思うんだけど」

上条「あれは『ほら、主人公の捜査に協力しないと死にますよ!』って、話の流れをスムーズにだね」

シェリー「常識的に考えりゃ身バレすっかもしんねぇから、探偵真っ先に殺るよなぁ?」

上条「お前もお前で日本の文化に慣れすぎだよね?相○?最近人気落ちてるアレ見たせいなの?」

上条「ってか犯人って何だよ。誰かがお前のアイスロール喰ったとか?」

バードウェイ「……まさか私がたかがデザート一つでムキになるとでも?」

上条「また作ってやっから、なっ?」 ポンポン

バードウェイ「今すぐに私の頭から手をどけろ新入り。麻酔ナシで引き抜くぞ」

上条「機嫌を取ろうとしただけなのにペナルティが重すぎるわっ!」

円周(チラシの裏に手書き)『ここでボケて!!!』

上条「無理じゃんか!?どう考えてもちっこい悪魔が逆ギレするわっ!」

シェリー「悪魔って正しく認識してんのは良いと思うけどな。まぁした所で打開策は無い訳だけど」

バードウェイ「ま、否定出来ない所ではある――では気を取り直して、解明編と行こうじゃないか」

上条「待て待て。解明以前に、俺らどんな事件――つか、何が起こったかすら聞いて無いんだけど」

上条「問題も分かってないのに推理だけ聞かせられても、正直ワケ分からんっつーかな」



785:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/07(火) 11:31:33.30 ID:oWowqeUX0

バードウェイ「ちなみに途中で犯人が名乗り出れば、罪は減刑される」

上条「だから聞けっつーのに」

バードウェイ「逆に最後まで自供しなかった場合――」

上条「ば、場合は?」

バードウェイ「――私が異変に気づいたのは、そうだな……十日ぐらい前か」

上条「言おう?そこは先に言っとかないと、『あ、それじゃ自供しよっかなぁ』ってはならないよね?」

上条「俺犯人じゃないけど、たぶん。うん、きっと……でも覚悟はしてるけど、念のために」

円周「ってかレヴィちゃん減刑する気ないもんね?最初っからどんな刑か言ってなければ、どんな刑でも自己申告でしかないから」

上条「どゆこと?」

シェリー「あー、最初に『ケツバット100回』って言ってれば、自供すりゃ99回以下にすんだろ、普通は」

円周「けど言ってないから、『減刑して100回にしといたら』的な事が通るんだよねぇ、うん」

上条「鬼っ!悪魔っ!このブラックロッジめ!」

バードウェイ「以前のアパート、私達『明け色』の極東支部が半壊した時にまで話は遡る」

上条「お前もパワープレイはいい加減にしないと。強くてニューゲーム並みの強引さってどうなの?」

バードウェイ「一度私はここを引き払い、『笛吹男』との対峙に専念した――まぁ、詳しくは控えるが」

上条「待とう?つーか、おかくしないか?俺ら今、どこの時間軸にいるの?」

上条「なんかこれ時系列、杉井×先生のやらかした暴言&頭イタイ自作自演並みにあやふやにする気満々だけど、今一体いつ頃なの?」

上条「こないだシェリー追いかけて『必要悪の教会』の女子寮行った気もするし」

上条「他にもメイドカフェでビリビリのストーカーをストーカーしているストーカー退治、ってややこしいな!」

シェリー「普通は最初から最後まで構想立ててから書くしなぁ?『最初から端折った』ってのは普通無いわけだし」

バードウェイ「――で、別のアジトで数えていたら少ないんだよ、これが」

円周「何が?」

バードウェイ「私の――ぱんつが」

上条「あれ伏線だったのかっ!?てっきり『やっちゃった』的な一発ネタだと思っていたのに!?」

バードウェイ「――この中に一人、犯人がいる――!!!」

円周・シェリー「この人(こいつ)が犯人です(だな)」 ピシッ



786:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/07(火) 11:36:27.63 ID:oWowqeUX0

上条「ソッコーで指さしやがった!?つーかお前ら事情知ってんじゃねぇかよ!」

バードウェイ「見たかこの推理力!僅か数分で解決に至るとはなっ!」

円周「わたしが変態こじらせた方が良かったのかな?鞠亜ちゃんが見てる、的な」

シェリー「面倒臭ぇからこれ以上持ち属性増やすな。下手に主人公の相方ポジに入っても、変態扱いされんぞ」

上条「白井は……うん、もうちょっと神様控えめにした方が。っていうか押しの強い子に持って行かれているっていうか」

上条「ガチでやり合ったら学園上位に入るんだろうけど、最近ネタキャラ……うん」

バードウェイ「で、被告人?刑の執行前に言い残す事はないか?」

上条「もう確定済っ!?せめて裁判は開こうぜ!?なっ!?」

円周「せめて一本ぐらいは残してあげて欲しいよねぇ。お兄ちゃんの決め台詞も言えなくなっちゃうし?」

上条「お前それっ遠回しに『腕落とせば?』つってねぇか!?なあぁぁぁっ!?」

シェリー「オイオイ、相手はマフィアもビビって逃げ出す悪の秘密結社だぞ?そんな甘っちょろい考えが通用するかぁ?」

上条「お前ら冤罪だって知ってるでしょーがぁぁぁっ!?事実を言ってやってくれってば!」

円周「レヴィちゃんが引き上げた日、お兄ちゃんが『ぱんつどうしたらいいかな?』って」

上条「そうそうっ!そんな感じで!」

シェリー「『捨てるのもアレだし、私らのどっちかに預かってて貰えば?』つったのよ、一応は」

上条「そうそう……あれ?この展開って」

円周「『まぁその内考えればいいか、今は俺の手にあるんだしくんかくんかはぁはぁぺろぺろ』って言って曖昧に」

上条「後半深刻な捏造が加えられているよね?」

バードウェイ「つまり前半は正しかったという事かね」

上条「……はっ!?い、いや違うんだ!これはお前が洗濯に出したまま忘れていったからで!」

円周「ってかさー、あの後どうしたの?翌日ぐらいにアパート半壊しちゃったし、巻き込まれたとか?」

シェリー「だったら不可抗力じゃねぇか、お前もンなに怒る程の――あん?」

上条「……」

円周「どしたの?――あっ、何か心当たりがある、とか?」



787:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/07(火) 11:38:52.64 ID:oWowqeUX0

バードウェイ「だよなぁ、上条当麻君。君には覚えがあるだろう?どうしてこの馬鹿話がここまでデカくなったのか、その理由がだ」

上条「……違うんだっ!?あれは不可抗力で!」

シェリー「え、マジで何かしやがったのか!?」

上条「疚しい事はしてないよっ!でも、ほらっ……疚しい事は、してないよ?」

円周「お兄ちゃんがそこまでキョドるってのも珍しいよねっ。ホントに何があったの?やらかしちゃったの?」

円周「……ぺろぺろ、的な?『このスレには18歳未満は出ていません』って、今の内に言っとく?」

上条「絶対に違う!下着には興味無ぇよっ!」

シェリー「『12歳児もイケる口です』って断言すんのはどうかと思うぜ。いやマジで」

上条「一般的な男の性癖の話をしているだけですからねっ!」

バードウェイ「そ、それで貴様っ!?道理で最近目が合うと思ったら――」

円周「うん、それは確実にレヴィちゃんが見てるだけだからね?」

上条「良かった……最近円周がツッコミ要員になってくれたお陰で、俺の負担が……!」

シェリー「ってボケるくらいには余裕あんじゃねーか」

上条「……あれは俺がメシの片付けをしている時だった――」

シェリー「たかがぱんつに回想か!?」



788:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/07(火) 11:40:36.80 ID:oWowqeUX0

――回想 バードウェイが居なくなった日の夕食後 台所

上条(洗い物は終りっと。結局一人分多くても残らなかったなぁ)

上条(意外とシェリーは空気読むから、多く食べたのかも知れないけど)

上条(円周は……まぁ、マイペースなのは良い事だよ)

上条「……」 キュッキュッ

上条「……良し、と」

上条(次は洗濯を畳んで――って、あぁバードウェイのぱんつ、これこれ)

上条(どうしたもんかなー?嫌がらせな気がしないでもないけど、まさかこんなしょーもない地雷を仕込んだ訳じゃないだろうし)

上条(いやでもこういうのって、ラブコメではよくあるパターンじゃん?例えばさ)

上条(ハンカチ代わりに持ってて、何かの拍子で取り出して汗を拭いて『きゃー変態―!どーん!』みたいなの?)

上条(ってかアレもオカシイよね?主役の子、それ以前にハンカチ使った描写がないのにいきなりだからね?)

上条(普段から使う習慣がないのに、ハンカチ入ってたら警戒するだろうけど……まぁまぁ)

上条(後は……あぁ、何かこう、ヒロインとぶつかったり、持ち物検査をされて『は、ハレンチなっ!』って感じか)

上条(ってか持ち歩かないよね?返す前に誤解されるから包むよね?最低でも)

上条(対処的にはそんな未来はウソであ○の高○君がベストだと思うけど)

上条「……」

上条(だよなぁ?普通はそうするよね?)



789:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/07(火) 11:43:31.66 ID:oWowqeUX0

――回想終り

上条「――って、感じで」

円周「紙袋に入れたの?ちぇーっ、常識的でつまんないやー」

シェリー「ま、そんなもんでしょうよ。ってかそれでキレる意味が――もしかして、違うのかよ?」

上条「……なんか、こう、さ?袋だと妙にリアルじゃん?だからね、小さな紙箱に入れたんだよ」

上条「縦横高さ5cmぐらいの空き箱がたまたまあったから」

円周「こないだ実家の父さんと母さんから届いた、旅先で買った赤べこのキーホルダーのだっけ?」

上条「うんまぁお前の両親じゃないけど、それの空き箱」

シェリー「何故か四人分あって戦慄を禁じ得なかったんだよなぁ」

上条「一言も言ってないのにな!母さんはそーゆー人らしい」

シェリー「んー……まぁ、いいんじゃねぇのか?つーかどんだけ下手打ったのか怖かったんだけど、至極真っ当じゃねぇか」

バードウェイ「……確かに私も否定はしないよ、クロムウェル。ここまでは良かったんだ、ここまでは」

バードウェイ「というか貴様、それだけじゃないよな?箱を用意して入れただけじゃ済まなかったよな?」

円周「え、お兄ちゃんこの上に何かやらかしたの?」

上条「……俺らまぁ、多少仲良くなったとは言え、他人は他人じゃない?家族程は、うん」

上条「だからまぁ、他の人が間違って開けないように、梱包したんだ――」

シェリー「はぁ?それのどこがおかしいって」

上条「――手近にあったのがね、クリスマス用の包み紙とリボンしかなかったんだな、これが」

シェリー「あー……」

円周「ま、まぁまぁ?うんっ、それはねっ!季節柄仕方がなかったんだと思うよねっ!仕方がない仕方がないよっ!」

バードウェイ「そうだな、否定はしない。それだけであったのであれば」

円周「え、まだ続くのっ!?」

バードウェイ「あれは――そう、クリスマスイブの日だった……」

シェリー「引っ張る必要無くないか?口頭で簡単に言やぁいいじゃねぇか」



790:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/07(火) 11:45:50.50 ID:oWowqeUX0

――回想 上条家 クリスマス 昼間

テレビ『――はいっ、今日は世界各地にサンタさんが――』

バードウェイ「……」

バードウェイ(クリスマスなぁ、クリスマス)

バードウェイ(基本十字教圏では『家族や友人達と共に過ごす』んだが、まぁ楽しみ方は人それぞれだろうか)

バードウェイ(よく日本を多神教国家として称し、その一例にクリスマスを挙げられるが)

バードウェイ(その実、全然崇めてない――どころか、騒ぐ口実に使う辺りはむしろ不道徳)

バードウェイ(……ま、それは日本に限った事ではないか)

バードウェイ「……」

バードウェイ(今日は五人――いつもの面子にパトリシアを加えて、ささやかながらパーティか……ふむ)

バードウェイ(悪くはない。悪くはないんだし、海外であれば当然なのだが……ふむ?)

バードウェイ(○○――に、なっての初めての、クリスマスなんだが。そこら辺をもう少し汲むべきだな)

バードウェイ「……」

バードウェイ(……まぁ?そこはそれ、そういう可愛いというか、こちらが率先してイベントを振っていくべきだと思う)

バードウェイ(……とはいえ、なんだ。そう、サプライズの一つぐらいあってもいいだろうに)

バードウェイ「……うん」

バードウェイ(どれ、ここは一つ学校にでも押しかけて――)

ピーンポーンッ

バードウェイ(誰だ?)

配達員『XX宅急便でーす!お届け物に参りましたーっ!』

バードウェイ「……日本語がおかしいんだが」 ガチャッ



791:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/07(火) 11:51:13.75 ID:oWowqeUX0

配達員「あ、おはようございます。XX便です。えっと、上条当麻様のお宅はこちらでしょうか?」

バードウェイ「あぁ」

配達員「上条当麻様方の、レ、レイなんとか、バードウェイ様もこちらに?」

バードウェイ「私だが――私にか?」

配達員「お荷物が届いております。お受け取り証明書にサインか判子をお願いしまーすっ」

バードウェイ「だから日本語が間違っている――誰からだ?」 カキカキ

配達員「えっと……上条当麻様、ですね、はいっ」

バードウェイ「――!」

配達員「――っとはい、確かに頂きました。では失礼――良い悪夢を」

パタンッ

バードウェイ(これは……)

バードウェイ「クリスマス風にラッピングされた小箱……まさかっ!?」

バードウェイ(待て待て、落ち着け。あのバカが気の利かせる筈がない!)

バードウェイ(どう考えても大きさといい、重さといい、軽いモノが入ってるとしか思えないのだが!)

バードウェイ(箱にはバカの筆跡で「バードウェイ」って書いてあるし!誰かのドッキリじゃないよな、これは)

バードウェイ(これはやはり……エンゲージリング、的な)

バードウェイ「」

バードウェイ「……良し!落ち着こう、お前は誰だバードウェイ?」

バードウェイ「『明け色の陽射し』総帥にして、輝かしい栄光の正当後継者たる私が。たかだかこれぐらいで取り乱す訳がないだろう?」

バードウェイ「……」

バードウェイ「取り敢えずは両親に挨拶か、うん」



792:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/07(火) 11:53:37.50 ID:oWowqeUX0

バードウェイ「多少私は若く見られがちだが……上条夫妻もどう見ても同類だし、問題はない。血は争えんか」

バードウェイ「父親は商社の営業マン。正月休みには帰ってくるだろうし、挨拶も兼ねて丁度良い」

バードウェイ「問題はオマケ二人――」

バードウェイ「――は、最悪事故に遭って貰うしかないか。偶然とは怖いからなぁ」

バードウェイ「それよりも、問題はこれだな。こういうのは直接渡すに限る」

バードウェイ「幾らオマケ二人が引っ付いているからといって、こう、昼間コッソリというのは……卑怯、なんだからなっ!」

バードウェイ「まぁいい。それは後日もう一度させるとしてだ」

バードウェイ「問題はサイズ、だな。これで少し大きかったりしたら、昼間の内に直さねばならん」 ガサガサ

バードウェイ「手のかかる相手だが、まぁ――惚れた弱みか、うん」 ガソゴソ

バードウェイ「……?これは……!」

バードウェイ「――ぱんつ?」



793:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/07(火) 11:58:11.79 ID:oWowqeUX0

――回想終り

上条「……あぁ、成程!だからあの日帰ってきた俺は魔術ぶち込まれたのな!あー、納得納得!」

シェリー「日常的に攻撃されてるせいで、慣れっこになってんのな。不憫な奴」

円周「っていうか今、『笛吹男』さんっぽい人が出てたような?それともあれかな?」

円周「素人の怪談話であるように『よく憶えてないんだけど』って言いながら、小説家並みの精度と記憶力で憶えている的な?」

シェリー「100%作りじゃねぇか。いや、そっちの方が良かったけどもだ」

円周「あとレヴィちゃんが意外に家庭的だって事だけど、突っ込まない方が良いのかな?」

シェリー「年相応じゃねぇのか?魔術と裏社会は熟知してても、それ以外は疎いって話でしょうし」

バードウェイ「そんな事はどうだっていいんだよ!問題は貴様がやった事だ!」

シェリー「つまり、この話ってのは」

円周「お兄ちゃんがぱんつを確保してて、でもって適当にラッピングしてて、箱に名前まで書いちゃってた」

シェリー「ま、そうしときゃ普通は開けないもんな。普通は」

円周「で、『笛吹男』さんは爆破後のアパートで拾って『あ、これ大切なもんじゃね?』って、日時指定で配達予約してくれた、と」

シェリー「それ自体はいい話だな。そこだけ聞けば」

円周「一言で切って捨てれば『バカ』だけどねぇ、うんっ」

バードウェイ「――さて、そろそろ良いか。いたいけな少女を弄んだ罪は知ったな?」

上条「俺悪くねぇじゃんか!?むしろどっちかっつーと気ぃ遣った方だよねっ!?」

バードウェイ「残念だが結果が出なければ意味はないのだよ」 スチャッ

上条「そ、それはっ!?あの爆発の中も耐えきったというのか!?」

バードウェイ「ほーら。お前の好きな『スーパーふわふわウルトラかわいいミラクル虐殺肉ミンチ機能付きラブラブブリティ白ウサギグローブ』だぞー」

円周「略して虐殺ウサギグローブってしなかったっけ?」

バードウェイ「じゃそれで」

上条「あばばばばばばはばばばばばばばばばばばはっ!?」

シェリー「おー、超振動している、ってか出力上がってねぇか?」

バードウェイ「手直しする際に少しだけ出力上げておいた。ドMには垂涎モノだぞ?」

上条「俺はドMじゃあばばばばばばばばばばばばばはばばばばばばばばっ!?」

シェリー「なんて?」

円周「『嫌いじゃない。むしろ興奮する。だって俺はドMじゃけんのう』」

シェリー「おー、完璧なエミュレーションだなぁ」

上条「だからお前ら見てあばばばばばばばばばばばばばはばばばばばばばばっ!?」



794:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/07(火) 12:00:32.91 ID:oWowqeUX0

――翌日 ショッピングモール 正月休み中の午前

バードウェイ「いやー混んでいるなぁ。各人一斉に休みが入るのであれば仕方がないか」

パトリシア「ですねー、あんま言っても仕方がないですし」

バードウェイ「どーにも鬱陶しくして適わない。大丈夫か、妹よ?」

パトリシア「あははーっ、お姉さんは心配性なんですからっ」

バードウェイ「そうだな、転んで服が汚れてびーびー泣いてたのは僅か半年前までの話だったな」

パトリシア「気遣ったんじゃなくて遠回しに攻撃されていたっ!?」

バードウェイ「お前も成長――は、してないよな。姉より優れた妹など存在せんわっ!」

パトリシア「ジ○キ様ですかっ!?」

上条「……あのー?」

バードウェイ「何だ?」

パトリシア「何でしょう?」

上条「あ、そういう表情は似てるかも――って違うよ!そうじゃねぇよ!」

バードウェイ「○ャキじゃなくて○ャ“ギ”だな。たまーに間違うんだ、あれ」

パトリシア「名前を言って良いのか悪いのか、どっちなんでしょうね」

上条「聞けよおまいら!特に確信犯的に話をズラす性格悪い方のちっこいの!」

バードウェイ「――貴様、私の妹に暴言を吐いたなっ!?」

バードウェイ「幾ら完璧な姉と比べられて惨めな思いをするからと言って、その暴言は看過出来んぞ!」

パトリシア「あの、お姉さん?お義兄さんが言ったのは、多分私じゃないと……っていうか、真顔で『えっ?』ってされても」

上条「『確信犯じゃなく故意犯だろ』って返ってくるのかと思えば、スルーされて悲しいけど」



795:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/07(火) 12:01:59.61 ID:oWowqeUX0

上条「つーかパトリシアの呼び方もなんか、こう……?」

上条「まぁそれは置いとくとして、なんかおかしくねぇかな?」

バードウェイ「だから何だと聞いている……あぁ両手に花の状態で戸惑っているのだな。このシャイボーイめ」

上条「いや別にそういうのは全然ないですからね?」

バードウェイ「残念だな、妹よ。こいつに取ってお前は花ではないらしい」

バードウェイ「可憐な気高く美しき過ぎる身内を持つと、どうしても比べられてしまうなぁ?」

上条「なぁパトリシア、お前のねーちゃんって何食ったらこんな風にポジティブになれるの?見習いたいぐらいなんだけど」

パトリシア「そろそろ個人的にもムカついてきてるんで、一発キツいのをどうぞ」

上条「ってかお前も散々ボケてた筈だけど――つーかさ、聞いていい?」

上条「パトリシアの体験入学みたいなの、あれって二週間で終りじゃなかったっけ?

バードウェイ・パトリシア「……」

上条「それがどうして年越しちゃってんの?つーかあれ秋頃の話じゃ」

バードウェイ「――では本来の目的を憶えているか!」

パトリシア「はいっ!今日はお買い物に来ているんでしたっけ!」

上条「誤魔化すにしてももうちょっとあるだろ、方法は」

バードウェイ「どっかのバカが私のぱんつを隠匿した上、丁寧に包んで大事に保管していたからな。枚数が足りなくなった」

パトリシア「うわぁ……」 スッ

上条「引くな引くな引く――いや、引くけどねっ!それは良かれと思ってやったんであって!」

上条「俺は別に好きでやった訳じゃねぇよ!むしろ良くやった方だし!」

パトリシア「そういうプレイを人前でするのは良くないと思いますしっ」

上条「やべぇな、やっぱりここ俺一人しかツッコミ居ないみたいだ!」

バードウェイ「あぁホラ、いつまでも馬鹿やってないで行くぞ」

上条「いやだからバードウェイさん口悪いよ?そろそろ直そう?」



796:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/07(火) 12:06:23.99 ID:oWowqeUX0

――輸入洋品店

カランコロンッ

バードウェイ「お邪魔するよ」

パトリシア「こんにちわーっ!」

上条「ってここ。前スーツ貸して貰ったトコか」

バードウェイ「昨日の夜『持ってこい』と伝えてあった筈だが?」

上条「悶絶してたよね!?主にお前が加害者で円周まで上に乗ってきたけど」

バードウェイ「ほへー、大人になっちゃったんだなぁ、お姉さん」

上条「待とうか?今君は深刻な誤解をしていると思うんだよ。俺はそう確信している!」

老人「ようこそおいで下さいました、レイヴィニア様にパトリシアお嬢様」

バードウェイ「暫くぶり、と言う程でもないが」

パトリシア「本当にお爺ちゃん呼んじゃったんですか。お姉さんいつか破産しますよ?」

上条「……俺は?」

老人「あぁすまない。スペースの若造かと思った」

上条「マークいつもこんな扱いなのかっ!?」

パトリシア「ですよねぇ?サークルのお友達っていうより、マフィアの参謀みたいな感じてすし」

上条「あー……汚れがないよねー、そっちは」

バードウェイ「おっと、妹にまで食指を伸ばすのは遠慮して貰おうか」

上条「“まで”ってなんだよ!?“まで”って!」

バードウェイ「あーウルサイウルサイ。それよりも」

上条「あぁうん。これ、この間ジャケット有り難う御座いました」

老人「話は聞いたぞ、トーマ」

上条「ん、いや別に大した事は」

老人「オリーブ野郎のケツに電柱突っ込んだらしいじゃないか」

上条「それ、俺じゃない。っていうか誰もしてない」

パトリシア「またお姉さん何かしたんですか?」

バードウェイ「なぁに、ちょっとしたポーカーのようなものさ」

上条「お前にとっちゃそうなんだろうが、俺とマークの心労にも気を遣え、なっ?」

老人「口に利き方に気をつけろ、若造が」

上条「お前らが甘やかすからっ!こいつは傍若無人な性格になったんでしょーが!」

バードウェイ「貴様――妹に暴言を!」

パトリシア「ってだから多分きっとそれわたしじゃないですし、ってか話が進まないですよ」

バードウェイ「取り敢えず着替えだな。バックヤードへ行くぞ」

パトリシア「あ、わたしは店内ぐるぐるしてますから。ごゆっくり」

上条「良いけど。またなんかすんの?」

バードウェイ「この間仕立てたスーツが出来たんだよ」



797:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/07(火) 12:10:49.15 ID:oWowqeUX0

――バックヤード

上条「ってか早いなぁ。てっきり数ヶ月かかるって思ってたのに」

バードウェイ「ふふんっ。実は以前から用意しておいたのだよ。念のため、とは思ったがまさか当たるとはな」

バードウェイ「意外、でもないか。ある意味必然でもある」

上条「当たる、って何が?」

バードウェイ「……」

上条「流さないからな?何かこないだからずっと納得行かないアレコレあるから、まとめて追求するからね?」

バードウェイ「心配は要らないよ。お前が気にするような事は何一つ無い」

上条「そ、そうかな?なんか、俺のあずかり知らない所で着々と既成事実的なものが――」

バードウェイ「なんだね?私が信用出来ないのか?」

上条「そんな事はないって!」

バードウェイ「なら、それでいい。いや、それ“が”いい」

上条「……そのお前の『悪巧みしてますっ!』って顔がね、うん。俺をとてつもなく不安にさせるんですよ」

バードウェイ「もう、全てにおいて手遅れだ」

上条「そこを詳しくっ!」

バードウェイ「義母さ――詩菜さん、最近は近くのジムへ第三位の母親と通うのが趣味なんだそうだよ?」

上条「よおおおおぉっし!新しい服が楽しみだなぁぁぁぁっ!」

上条「何か今不穏な単語が聞こえてきたけどもっ!前を向いて歩いていけば!きっと何とかなるよねっ!」

バードウェイ「大抵はそのまま穴に落ちるんだが、まぁそれはそれで良しとしよう」

老人「――これで御座います」 スッ

バードウェイ「うむ。ご苦労だったな、スペンサー」

老人「有り難きお言葉に御座いますが、若造のツイードぐらいどうと言う事はなく」

上条「若造は余計だっつーのに……黒、じゃないな、紺色のジャケットか?」

老人「藍で染めたんだから藍色だ。なんだ日本人なのにそんな事も知らないのか?」

バードウェイ「言ってやるなよ。我が国よりツイードの手作業はこちらの方が現存しているじゃないか」

上条「それじゃ――って、見た目よりも、堅いな」



798:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/07(火) 12:15:54.21 ID:oWowqeUX0

老人「ツイードはウール糸を染め上げ、それを綾織りにしたものだ。だから遊びが少ない」

上条「あー、でも暖かい。コート要らないかも?」

老人「スコットランドの羊は寒い所で育つため、毛は太くなるのさ。それを使ってるんだから当然だな」

バードウェイ「元々は確かコート代わりの作業着に着ていたんだよな?」

老人「仰る通りで御座います」

上条「まさにジャケットって感じだけど……あ、でもやっぱ違和感が」

老人「最初だけだ。3年も経てば今は立っている毛が寝て、柔らかくなる」

バードウェイ「少々の雨も弾いて通さないし、カッター程度で斬りつけられても平気だな」

老人「それにそいつは特注製だ」

上条「魔術的な何かが?」

老人「――と、言うよりは、こう」

バードウェイ「……内緒だ、それは」

上条「……気になるんですけど、すっごく」

老人「バカは考えるだけ無駄だから止めておけ。茨姫のばあさんに呪われろ」

上条「だから口悪りいよなぁっ!?」

老人「昔っからお姫様が糸を紡ぐのは勇者のためだって、相場は決まってんだろうが」

バードウェイ「やめないかみっともない。娘を盗られた父親じゃないんだからな」

老人「それが一番適切な表現に思えますなぁ」

上条「なに?お前が糸紡いでくれたって事か!?」

バードウェイ「あー……なんだ、まぁ、暇潰しだな。全部と言うわけではないよ、流石にな」



799:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/07(火) 12:17:50.65 ID:oWowqeUX0

上条「そっか……ありがとうバードウェイ。大事に着させて貰うよ」

バードウェイ「気にするな、とまでは言わないが、大した事じゃないさ、うん」

バードウェイ「お前には護符も霊装も効かないから、これぐらいは、な?」

老人「感謝しろ若造が」

バードウェイ「――なぁ、スペンサー?」

老人「――これはこれは出過ぎた真似を。では少々野暮用が御座いますので失礼を」

上条「あー、なんだ、スペンサーさん?」

老人「あぁ?」

上条「アンタも有り難う。今は確かに『着られている』って感じだけど」

上条「コイツが似合うぐらいにはなってみせるから」

老人「……ちっ、クソ生意気なジャパニーズめ。呪われろよ」

老人「不摂生でハラが出て着られなくなったら、その時は持ってこい。直してやるから」

上条「ならねぇよ。俺はいつでも健康に気を遣ってんだよ!」

上条「その内、バイトでもしてギャラが入ったら、似合うシャツとか買いに来るから用意しとけよ!」

老人「はぁ?そいつぁ何年後の話だ?バイトなんてもう――あぁいや、これ以上は」

上条「どゆ事?俺の人生バイトも出来ないって、一体何が待っているの?死?」

老人「……まぁジーサンどもは全員納得させたから、後は好きにすると良い」

バードウェイ「仲が良いのは分かったから、男同士でイチャイチャするんじゃない」

上条「した憶えはないんだが……」

老人「精々今の内に楽しんどけ。卒業後には直ぐ人生の棺桶入りだよ」

老人「そん時にゃ、ばあさんの不味いライスプティングでお祝いしてやるから感謝しやがれ」

上条「いやいや、人生の墓場ってそれ結――」

バードウェイ「――と、そろそろパトリシアも退屈しているだろうし、戻ろうか」

上条「そうだな。あ、これ着てっても良いのか?」

バードウェイ「むしろそうしないと駄目だな、お前のためにもそれが賢明だろう」

上条「なぁ説明しようぜ?お前の場合、冗談なのか本気なのか、全っ然分からなくてガクブルなんですけどねっ!」



800:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/07(火) 12:21:22.66 ID:oWowqeUX0

――ショッピングモール

上条「……」

上条「……あれ?」

上条(今俺店内に居た、よな)

上条(それがどうして一瞬で外に、しかもここフードコートじゃねぇか)

上条(服の魔術のせい……な、ワケかないか。あんだけペタペタ触ったのに)

上条(って事はバードウェイがまたなんかやったのか?)

バードウェイ「――あぁ居た居た、探したぞ」

上条「おー、どうしたんだ?今一瞬で――」

バードウェイ(※黒髪)

上条「髪の色変わってるっ!?何、2Pキャラなのっ!?」

上条「つーかそのブラウスも何か黒いし!」

黒バードウェイ「何を言っているんだ貴様は。相変わらず馬鹿は馬鹿なんだから、馬鹿みたいに考えても仕方がないんだぞ、この馬鹿」

上条「バカって四回も言いやがったな!?……いやいや、バードウェイさん?」

黒バードウェイ「なんだね」

上条「バードウェイ、なんだよなぁ?他の人じゃなくって」

黒バードウェイ「決まっているだろうが、何を今更」

上条「……つーか、それどしたん?あぁいや、似合ってるけど、急にっていうか。何の仕込み?」

黒バードウェイ「……ふむ。そちらは全く理解してないようだな。面倒だ」

上条「いやいやっ!また面倒ごとを持ち込んだんかいっ!?」

黒バードウェイ「あー、取り敢えず、どっかの喫茶店にでも行こうか。ここで話す内容でもない」



801:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/07(火) 12:25:51.32 ID:oWowqeUX0

――喫茶店

上条「あんみつパフェ二つ、あとは」

黒バードウェイ「ほうじ茶で頼む」

店員「かしこまりましたーっ、少々お待ち下さいー」

上条「お前もう隠す気ゼロじゃねぇか。味覚も子供で隠している設定はどこ行った」

黒バードウェイ「うん?子供?隠すも何も――って、あぁそこからか。面倒臭い仕事を押しつけやがって」

上条「最初に聞くけど、今すっげーピンチとか、そういうことはないんだよな?座っていられるだけの余裕ぐらいあるんだよね?」

黒バードウェイ「余裕があるのは間違いないが、かといって安全とも言い切れないがね」

上条「どっち?」

黒バードウェイ「あー……まず、お前は『死者の書』についてはどれだけ知っているんだ?」

上条「詳細聞いたら『DEADor婿入り』、ぐらい」

黒バードウェイ「あぁそれは心配しなくて良いよ。それだけは有り得ないから」

上条「あ、なんだ。だよなー、流石にジョークだもんねー」

黒バードウェイ「いや、それ自体は正しいんだが――まぁ後で直接本人の口から聞けばいいさ」

上条「本人、って、誰だよ?仕立屋のじーさんとか?それともマーク?」

黒バードウェイ「――それでは講義を始めるが」

店員「お待たせいたしましたー」

黒バードウェイ「ご苦労」

店員「……」

黒バードウェイ「なんだ?」

店員「ナイスツンデレ?」

黒バードウェイ「それは私の担当ではないな。他を当たってくれ」

上条(あれ?なんか反応が違う……?)

黒バードウェイ「まぁ食べながらで良いから聞いてくれたまえ」

上条「ん、あぁ」

黒バードウェイ「もぐもぐもごもごもぐもぐがふっ?」

上条「聞き取れねぇよ!?つーか行儀悪りぃ――あん?」

黒バードウェイ「これは失礼、ってどうしたね?」

上条「お前――バードウェイじゃないなっ!?」

黒バードウェイ「いや?私はバードウェイだよ?」

上条「だよねー。あれ?おかしいな、違和感があるような、ないような」

黒バードウェイ「ま、大した事ではない――それより『死者の書』の話だ」



802:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/07(火) 12:29:08.00 ID:oWowqeUX0

黒バードウェイ「あれは『王者の法(アルス・マグナ)』だ」

上条「へー、そうなんだー」

黒バードウェイ「……」

上条「……ごめんなさいっ!全然分からないですっ!」

黒バードウェイ「……錬金術、って知ってるよな?鉄を金に換える奴」

上条「等価交換すると鎧に魂が入る奴だな」

黒バードウェイ「あれは別に死霊術士の領域へ踏み込んだという訳じゃない……まぁいい。大体そんな感じだな」

黒バードウェイ「で、その始祖はどこから来ているのか――それは」

黒バードウェイ「ギリシャ神話に出てくる『ヘルメス神』だと言われている」

上条「名前ぐらいは聞いた事があるけど。クツ関係のアイテムの人」

黒バードウェイ「より正確に言えば『ギリシャ神話のヘルメス』、『エジプト神話のトート』、そして『錬金術師のヘルメス』」

黒バードウェイ「彼らが同じ存在と見なされ、『ヘルメス・トリスメギストス』なんだが」

上条「えっと……神様が、似たような他の神様と統合される、みたいな感じ?」

黒バードウェイ「本来はそれで合っている。ただしこの場合は、『同じ血族』をそう呼んだに過ぎない」

黒バードウェイ「こういう話は面倒だし、もっとぶっちゃけてしまえば、だ」

黒バードウェイ「『明け色の陽射し』は彼――いや、正確には“彼女”の子孫なんだよ」

上条「へー、そうなん――待て待て待てっ!?それオカシイだろっ!?」

上条「お前らが神様の子孫、って。幾ら何でも――」

黒バードウェイ「君は今、『オカシイ』と言ったがね。それはもっと早く、こう思う必要があったんだよ」

黒バードウェイ「――『アラスカ・ルーン』。そして『ドナーティのホロスコープ』」

黒バードウェイ「『明け色の陽射し』が『黄金の夜明け』に参加したにしては、随分と古くから魔術に慣れ親しんでいるな、と」



803:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/07(火) 12:32:01.71 ID:oWowqeUX0

上条「それは――そう、か!そうだよな!」

上条「そんな遺物みたいなオーパーツ、『黄金』って確か、中世に興った結社なんだよなぁ?」

上条「だったら『それ以前に作られた霊装に「明け色」が絡んでいる筈が無い』、か」

黒バードウェイ「科学の発端は教科書に書いてあるかね。幾ら君でも知っているだろうが」

上条「それは『錬金術』だよな」

黒バードウェイ「――そう、それは『ヘルメス・トリスメギストス』と言う錬金術師によってもたらされた」

上条「それじゃ、科学のルーツは『明け色の陽射し』が一枚噛んでるって事なのかよ!?」

黒バードウェイ「んー?もう一声頼む。それだけじゃない」

黒バードウェイ「現代に通じる魔術、ヘブライ系のカバラや魔導を紐解いていけば、大抵はギリシャかエジプトに通じる」

黒バードウェイ「また歴史家のタキトゥスは、北欧神話のオーディンとヘルメスを同一であると説いている。つまり?」

上条「科学サイドと魔術サイド、両方の源流は――」

黒バードウェイ「ギリシャ神話に出てくるヘルメスは朱鷺の姿を取り、ゼウスに進むべき道を示したと言う――」

黒バードウェイ「――だから彼女の子孫は誇りある家名を声高らかに、こう、名乗る――」

黒バードウェイ「――『バードウェイ』、と」

上条「……すげぇオカルトだな。本当なら、だけど」

黒バードウェイ「ま、疑うのも当然だろう。だがしかし、私には『王の書』――いや『王者の法(アルス・マグナ)』がある」

上条「……つーかさ、それどっかで聞いたと思ったらアウレオルスの術式じゃのねぇのか」

黒バードウェイ「あんな大層なものではないさ。と言うか、『王者の法』とは錬金術ではなく、ただの魔術に過ぎない」



804:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/07(火) 12:35:00.46 ID:oWowqeUX0

黒バードウェイ「『自分だけの現実』と、似た仕組みだよ」

上条「無限に分岐する世界から、自分の都合の良い世界を選ぼうって能力か?」

黒バードウェイ「それのもうちょっと節操のないものだ。例えば」

トンッ

上条「床がっ!?」

黒バードウェイ「――では、暫しお別れだよ上条当麻君」

上条「お前――俺の知ってるバードウェイじゃねぇだろうが!」

黒バードウェイ「そうだよ?」

上条「そうだよ、って」

黒バードウェイ「詳しくは自分で悟るか、誰かに聞けば良い。これ以上は面倒だが――あぁそうそう」

黒バードウェイ「君に一つだけお願いなんだが、出来ればもう少し暖かめの方が好みなんだよ」

上条「なにがだっ!?」

黒バードウェイ「人肌が最善とはいえ、そこはそれ好みの問題、個人差という――」

黒バードウェイ「――暫く会う事はないだろうが、まぁ――」

黒バードウェイ「――だが、必ず」

ジジッ



805:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/07(火) 12:37:40.39 ID:oWowqeUX0

――??? 雪原

上条「……あれ?」

上条「ってなにこれ?これ何?つーかどこよ!?」

上条「放り出されたのが雪原なんて――いや?」

上条(寒くはない?吹雪いてるのに?つーかなんか、体透けてる?)

上条「……」

上条(死んじゃった、的な?いやいやっ!これは夢だ!そうに決まってる!)

上条(そうそう!だって死ぬ筈がないもの!悪運だけは強いじゃない!)

上条「……」

上条(いやー……?そうかなぁ?そうでもないような……?)

上条(つーかさ、つーかね。俺気づいちゃったんだけども)

上条(俺の足下に転がってるのって)

上条(※↓ボディ)

上条(死んでんじゃんっ!?だって血塗れだもんっ!)

上条(つーかここが学園都市だったらまだっ!カエル先生とか居るけどもだっ!)

上条(こんなクソ寒くて吹雪いてるロシアみてーな所なら即死じゃねぇのか!?)

上条「……」

上条(……ロシア?もしかして、ここ)

上条(ってか俺のボディさんが着てる服って確か、『ベツレヘムの星』へ乗り込んだ時の……)

上条「……」

上条(全部、夢?)



806:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/07(火) 12:39:48.13 ID:oWowqeUX0

――ロシアの雪原

上条(あー……まぁ、納得か?慌てても仕方がないしなぁ)

上条(走馬燈にしちゃ、随分とモテたなー。うん)

上条(夢でもない限りはあんなに無節操にはモテたり……しないもんね。分かってるさ!)

上条「……」

上条(……つーか俺、このまま死ぬのか。だよなぁ、どうしようもないしなぁ)

上条(『ベツレヘムの星』は落としたから、後はまぁなんとかなる……出来れば生きて帰りたかったけど)

上条(けどなぁ……うん。これじゃ……)

上条「……」

上条(……まぁ、上出来、かな?第三次世界大戦も終わるだろうし、それだけは)

上条(あーでもグレムリンとのケンカはまだ……いや、あれも俺の妄想か?)

上条(いるかもしれない連中野放しにするのは心残りだけど、まぁ他の連中がなんとか、うん)

上条「……」

上条(……約束、守れなかったなぁ)

上条(インデックスともだし、御坂――つーか海原とのも、か)

上条「……」

上条(あと、バードウェイを守る、って言ったっけか)

上条「……」

上条(……いや、それは俺の――)

上条(無かったんだよ全部。今まで見ていたのは、優しい夢で)

上条(俺は彼女と約束なんて――して、ないんだ)

上条(……うん)

上条「……」



807:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/07(火) 12:42:32.26 ID:oWowqeUX0

上条(……あぁなんか、眠く。うん)

上条(寒さで傷の痛みが麻痺……まぁまぁ、悪い事ばかりじゃないって事さ)

上条(色んな奴に会えて、ケンカして、仲良くなって)

上条(悪くねぇ、かな。うん)

上条「……」

上条(……でも、まぁ、出来れば、だけど)

上条(あいつらと、バードウェイと円周とシェリーと)

上条(バカみたいにギャーギャー言って……騒い)

上条「……」

上条(……眠ろう。少しだけ)

上条(……うん。大丈夫、きっと、なんとか……)

上条(……なる、よ……)

?「――――――っ!」

上条「……」

上条(……うる、さ――)

上条「……?」

?「――しろ!声を出せ!この、このっ――」

上条(なつかしい……この声は)

バードウェイ「――馬鹿者がっ!!!」

上条(……来て、くれ……)



808:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/07(火) 12:44:43.42 ID:oWowqeUX0

マーク「駄目です、ボスっ!吹雪が強すぎてっ!」

上条(……夢の中じゃ……この後、拾われて……)

上条(でも……普通は――)

バードウェイ「他の連中はどうしたっ!?連絡はっ!?」

バードウェイ「はやく――しないとっ!」

マーク「それが出来ないつってんだろクソガキが!いいか?ここはアウェイなんだぞっ!?」

マーク「いくらで強制的に跳んできたとしても、下手に動けばイギリス・ローマ・ロシアに横っ腹を見せてるんだ!」

マーク「こっちが隙を見ているのに食い付かれたら『明け色』は終わるんだよ!分かってんのかっ!?」

バードウェイ「それはっ!」

上条(……正しい、よ)

マーク「……あぁもうそんな顔しないで下さいよ。俺だって好きで言ってる訳じゃ」

バードウェイ「……分かっている。それは」

マーク「……見捨てるつもりも見捨てたくなんて無い!けれどっ!」

バードウェイ「――言うな、マーク」

マーク「すいません、ボス」

バードウェイ「……」

上条(……バードウェイ、俺は分かってるから)

上条(だからもう……うん)

バードウェイ「……けどなっ!あの馬鹿は、あの馬鹿は一人で乗り込んだんだぞっ!?」



809:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/07(火) 12:47:49.48 ID:oWowqeUX0

バードウェイ「それを見捨てるのかっ!?世界が救われたと喜ぶのかっ!?」

バードウェイ「たった一人で馬鹿みたいに突っ込んで馬鹿をっ!私達はっ!」

上条「……」

バードウェイ「見殺しに……する、のか……?」

マーク「……ボス、泣いて……?」

バードウェイ「泣いてなんか居るものかっ!これは――そうだ!怒りだっ!」

上条(いやいや……)

バードウェイ「あの大馬鹿者か私との『約束』を破った事へのなっ!」

上条(……やく、そく?)

マーク「ボス……?それはどういう……?」

バードウェイ「お前は私に言った筈だよ上条当麻!憶えていないのかっ!この裏切り者めっ!」

上条(……言った……?けれどそれは、俺の夢じゃ……?)

バードウェイ「『どんだけ偉かろうか、ボスだろうが、そんなのは関係無ぇんだよ!』」

上条(……それは)

バードウェイ「『「俺はお前を守る」って決めてんだ。それ以上でもねぇ以下でもねぇ!』」

上条(……俺は、言った……!)

バードウェイ「出て来い上条当麻!この大嘘吐きの大馬鹿野郎め!」

バードウェイ「約束も守れないような最低の馬鹿は私が直々に処刑してやるっ!だからっ!」

マーク「……ボス、そろそろ頃合いです」

バードウェイ「いいのか!このままでっ!まだ私達は約束すらしていないんだぞっ!?」



810:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/07(火) 12:49:48.36 ID:oWowqeUX0

マーク「いい加減にしないと。学園都市の能力者が近くに来て――」

バードウェイ「私を、呼べ!私の名をっ!このっ、私の名前をだっ!」

バードウェイ「頼むからっ――!」

上条「……イ」

バードウェイ「――聞こえた……」

マーク「……ボス?それはきっと風の音――」

上条「……バードウェイ……」

マーク「――じゃ、ないっ!?上条さんっ!?」

バードウェイ「どこだっ!?どこにいるっ!?」

マーク「あっちから聞こえ――」

上条「――バードウェイ!レイヴィニア、バードウェイ……っ!」

バードウェイ「――あぁ。あぁっ!」

上条「……居る、のか……そこに?」

バードウェイ「あぁ居るとも――お前の、側に」



811:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/07(火) 12:51:16.55 ID:oWowqeUX0

――喫茶店

上条「……」

ピッ

バードウェイ「『――もしもし?私だが』」

バードウェイ「『そう嫌そうな声を出すんじゃない。まるで私が嫌われているかのように錯覚するじゃないか』」

バードウェイ「『――いや、ちょっと気になる結果が。あぁ、占いのな』」

バードウェイ「『気にするかしないかはそっちの勝手。好きにすればいい』」

バードウェイ「『お代は要らんよ。充分に貰っている――あぁウルサイ。あれは助けてやっただろうが』」

バードウェイ「『とにかくお前は下ばかり見ているから転ぶんだ。たまには空を仰ぎ給え』」

バードウェイ「『ではないと足下を掬われるぞ?いいか?忠告はし――』」

バードウェイ「……切りやがったよ、あの馬鹿者が。全く、人の気も知らずに」 ピッ

バードウェイ「なぁ、そのあんみつパフェ、食べないなら貰うぞ」 スッ

上条「せめて疑問系で聞きなさいよっ!?……あれ?」

バードウェイ「もぐもぐもごもごもぐもぐがふっ?」

上条「聞き取れねぇよ!?つーか行儀悪りぃ――あん?」

バードウェイ「これは失礼、ってどうした?」

上条「お前――バードウェイじゃないなっ!?」

バードウェイ「いや?私はバードウェイだが?」

上条「だよなー、って白っ!?」

バードウェイ「あぁ?何の話だ」

上条「髪も元の金髪、ブラウスも白……あれ、お前今さ、黒くなかった?」

バードウェイ「……ほぅ、それはつまりアレかね?『ボス腹黒いですよ』の裏返しか?良い度胸をしているよなぁぁっ?」

上条「すいまっせんボス!?……いやいや、違うそうじゃなくて」

バードウェイ「馬鹿が。年頃のレディとデートに来てるというのに、白昼夢でも見てたのか?」



812:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/07(火) 12:53:17.10 ID:oWowqeUX0

上条「そう、か……?それにしては死にかけた気がするけど。なんか記憶が混乱して」

バードウェイ「そりゃ副効果だな。大丈夫だ、軸は『ここ』に固定しただろうから」

上条「そう?ならいいんだけど――待て待て、お前今すっげー事言わなかった?」

バードウェイ「あ、馬鹿っよせっ!人が折角曖昧にしてやろうしているのに!」

上条「よさないものっ!だって今の一連のトンデモってなんなんだよっ!?」

上条「ヘルメス何かとか!『死者の書』の正体だとかっ!」

バードウェイ「……あーぁ、やってしまったなぁ、これは」

上条「な、何の話?」

バードウェイ「その様子だと、アレか?全部聞いてきたんだな?」

上条「ん、あぁ。つーか言ったのお前じゃねぇか。別に聞いても『DEADor婿入り』しなくていいって」

バードウェイ「……」

上条「な、なんだよ?」

バードウェイ「確認するが、正確には『出来ない』とか『有り得ない』って言ってなかったか?」

上条「後ろの方だった」

バードウェイ「そりゃ無理だろう。だってあれはわたしの娘だ、幾ら何でもノーカンだな」

上条「――はいぃっ!?」

バードウェイ「あー……『アレ』の話だが、簡単に言えば『世界は無限の選択肢で分岐している』って感じなんだよ」

上条「例えば、今さっきほうじ茶を注文した世界と緑茶を注文した世界に、みたいな?」

バードウェイ「『そちら』ではほうじ茶だったのか」

上条「あ、いつの間にか抹茶になってる」

バードウェイ「『アレ』は『その世界から自分の都合の良い世界を選ぶ』力がある」

バードウェイ「だから私は『イギリスからお前が落ちていた場所』へと跳んだ。ここまでは良いな?」

バードウェイ「そうでもしないとあの混乱の最中、ドーバーから短時間で乗り込めそうになかったからな」

上条「あ、あぁ。俺が北極海にダイブした時だよな」

バードウェイ「でもそれじゃ『足りなかった』んだ。探知魔術も効かない馬鹿なんか放っておけ、と私は言ったんだがね」

上条「……俺の記憶と大分違うよな……?」

バードウェイ「マークが泣き喚いて懇願したので仕方が無く、人力で探していたのがだか、あの時見つけたのは偶然――ではない」

バードウェイ「意識のない程に重傷を負った貴様が声を上げたのは、子孫が『アレ』を使ってお前に細工をした、といった所か」

上条「いやいやいやいやっ!?だって卵が先かって話になるんじゃないのかっ!?」

バードウェイ「『未来からの介入がある事すら織り込み済みの運命』なんだろう、きっと」



813:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/07(火) 12:57:06.37 ID:oWowqeUX0

上条「……待て待て、どんだけ凄いんだその霊装。過去改変だぞ?」

バードウェイ「オティヌスの『槍』も大概だと思うがね。あぁ」

バードウェイ「そんなに助かったのが不服なら、今から北極へ戻って埋めてやろうか。どれ」

上条「すいませんでしたっ!ですからその物騒な銃はしまって、ねっ!?」

上条「……いやいや、今ちょっと思ったんだけど」

上条「アレっつーか、北極まで跳んだ時には『死者の書』使ったって事だよね?」

バードウェイ「当然だな。他の方法もないではないが、それが一番手っ取り早かった」

上条「つまりお前は、『最初っから「死者の書」の正式な並び順を知っていた』……?」

バードウェイ「『知らない』と言った覚えはないよ?」

上条「って事は何かっ!?余裕で『笛吹男』も瞬殺出来たんじゃねぇかっ!」

バードウェイ「『原典』はな。使う度に異世界の知識が流れ込み、術者の命を奪うんだよ」

上条「え、それじゃ」

バードウェイ「魔力を掠め取られた状態で使おうとすれば、良くて術者が発狂。最悪暴走して周囲一帯が虚無に呑み込まれかねない」

バードウェイ「強いが故に使いづらい訳だな、うん」

上条「それを言われると……んー」

バードウェイ「そ、それにだな。いくら『アレ』であるとしても、時間遡航制限はまだあってだな」

上条「……どんな?」

バードウェイ「『術者の身内にしか効力を発揮出来ない』、って」

上条「ふーん?……え、って事はつまり」

上条「でもそれおかしくないか?黒バードウェイがお前の娘なんだろ?」

バードウェイ「可能性としてはパトリシアかもしれんがね。魔術を使っていれば十中八九間違いない」

上条「それで介入したのは、お前にじゃなく俺だったんだよな?意識か何かを跳ばし――」

上条「……」

上条「……あるぇ?つーことはだ。つまりあの黒バードウェイは」

バードウェイ「『お前』ではなく『私達の』が正解だな、うんっ」



814:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/07(火) 13:01:37.87 ID:oWowqeUX0

上条「待てやゴラあああぁぁぁぁぁっ!?つーか、もしかしてアレかっ!?俺達が結婚しなかったら!」

バードウェイ「当然生まれない者は生まれず、貴様は死ぬだろうなぁ」

バードウェイ「まぁ諦めろ。どっちにしろ『アレ』に深く関わった時点で、『DEADor婿入り』は確定済みだから」

上条「それ実質上の一択じゃねーかよっ!!!」

バードウェイ「いやぁ、困ったなぁ?私はだね、元々寛大な方である訳だよ、これが」

上条「……急にどーしたの?わっるい笑顔になってるんだけど」

バードウェイ「だからまぁ秘密を知られたぐらいで、野蛮な『DEADor婿入り』を課すつもりはない。安心したまえよ」

上条「いやあの、バードウェイさん?つーかそれ、死にますよね?多分遡って、俺、死んじゃいますよね?」

上条「要は自然消滅かお前らにチョメチョメされるかの差でしかないよね?結末はDEAD-Endまっしぐらだよな?」

バードウェイ「我々『明け色』としてもだ、正直『嫌いな相手との結婚はゴメンだ』しなぁ」

上条「……つまり?」

バードウェイ「何を今更、分かっているんだろう?……いや、でもまぁ、一応、念のために言っておくか」

バードウェイ「在り来たりな表現で済まないが、私はどうやらお前に惚れているようだ」

上条「……マジで?」

バードウェイ「で、なければわざわざイギリスからお前の着地点を割り出し、敵味方入り交じっている最中に突っ込むものか」

バードウェイ「視て、いたんだろう?そして、私の名を呼んだな?」

上条「……うん、確かに、それは」

バードウェイ「今となっては『約束』が先か後か、まぁ些細な事ではあるが」

バードウェイ「……だか、私は強制しないよ。その程度の誇りはあるつもりだ」

バードウェイ「勿論、『明け色』の名にかけてお前を死なせたりもしない。そう――」

バードウェイ「――『約束』すると誓おう」

上条「バードウェイ……」

上条(そう言って俺を見つめる瞳に濁りはなく、また偽りの欠片もなく)

上条(弱者へ手を差し伸べる聖者のように堂々として)

上条(身震いする程に気高い『誇り』を持ち、それでいて繊細な少女へ)



815:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/07(火) 13:05:07.93 ID:oWowqeUX0

上条(……まぁ、そんな事を考えたのも一瞬で)

バードウェイ「――あ」

上条「……うん」 ギュッ

上条(俺の『右手』でバードウェイ――いや、今日からレイヴィニアだ――の、手を握っただけで意志は伝わったけれど)

上条(それだけじゃ足りなくて、とてもとても物足りなくて)

上条(気持ちは止まらない)

上条「だったら、俺はお前を守るよ。それこそ命懸けで――」

上条「――良かったら、一生」

バードウェイ「……仕方がないな、貴様は。ほんとーーーーっに仕方がない奴だ」

バードウェイ「これで一生私の人間イスが決定してしまったんだぞ。光栄に思うが良い!」

上条「え、今の告白もしかしてドレイになれって事なのっ!?最期の最期でそんなトラップが!?」

バードウェイ「似たようなもんさ。離れたくしても離れられないし、離すつもりもない」

バードウェイ「私の背中を預けるんだ。それ相応の意味を持つんだよ」

上条「え、それじゃお前割最初っから――」

バードウェイ「今日からお前は私の所有物になったんだからな!このっ!偉大なる私のだっ!」



816:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/07(火) 13:07:48.89 ID:oWowqeUX0

上条「だから誤魔化すんだったら上手くやれと……早まった気もするよなぁ」

上条(胸を張る彼女の姿は頼もしげであり、恐ろしくもあり)

上条(まるで悪魔のような笑みを浮かべる、そんな姿を見ていて可愛いなって思っちまう俺も俺だが。まぁまぁ?)

上条(少なくとも退屈はしな――あれ?どっかで似たような感じが――?)

バードウェイ「では、念のためにもう一度。というか、今までは仮入団だったのが、おめでとう!今日から正社員だ!」

上条「何の話――って、あぁアレな?」

上条「何かもう大分昔の話に思えるけど」

バードウェイ「……ま、こう言うのは決まりだからね。言うだけ言っておかないと……こほん」

バードウェイ「では改めて上条当麻君、婿入りおめでとう、そして――」

バードウェイ「――ようこそ、『明け色の陽射し』へ!」


――断章のアルカナ・アフター 『バードウェイ編』 -終-

――バードウェイ「ようこそ、『明け色の陽射し』へ」 ~断章のアルカナ~ -完-



844:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/02/17(月) 12:56:00.06 ID:oqje6o8Q0



『そして静かに幕を開ける。ある反撃の烽火』




845:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/02/17(月) 12:57:31.13 ID:oqje6o8Q0

――???

「……ふむ。とあるゲームでな」

「例えば攻撃する際には六面ダイスを振り、その出目に攻撃に使った武器の威力を足し、それが最終的なダメージとなる」

「カッター程度であれば2、ナイフで7・8?真剣で15ぐらい。銃器では20前後だった気がする」

「対して人間の体力は10程度。カッターが2、ダイスの期待値が3.5として足して5.5。二回も当たれば瀕死だ」

「まぁ主人公達はレベルが上がったり覚醒したり、二桁後半は当たり前。前衛ともなれば三桁体力は必須のインフレ世界」

「敵も同様。取り残されていくのは哀れな一般人だけとなるんだが」

「だがそのゲームには追加ルールがあってね。『ダイスの出目が6である限り、もう一度振り足せる』と」

「これをクリティカル――と、呼んでいたかは忘れたが、まぁそう呼ぶとしよう」

「当たり所が悪かったのか、それとも上手く急所を突いたのか。デザイナー側はそう演出したかったと思うよ?」

「このルールのお陰で『誰であってもどんな相手に対しても一矢報いる』可能性が出来たと」

「理論上は悪魔王ルシファー――最も強いラスボス辺りですら、小学生が投げた石ころで撲殺できる“可能性”はある」

「だが実際の所――大真面目に計算してみたら、その世界で大ボスを倒すにはだ」

「『世界中の人間全員にダイスを振らせ、一回起こるかどうか』の、確率でしかない」

「逆に言えば『世界中の人間に石を投げつけられる』必要があるんだが。普通の相手であれば黙ってはいないだろうね?」



846:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/02/17(月) 12:58:56.87 ID:oqje6o8Q0

「同様に、だ。君は今、『上条当麻と同じ事をするのであれば、誰だって代わりえた』という仮説を立てたが……ふむ?」

「目の前の家出シスター相手に右手を振い」

「一万人殺した世界最強の能力者に立ち向かい」

「変質的な錬金術師に死にかけ、十字教一派と苦楽を共にしたり――」

「時にはイギリスを敵に回し、それでも飽きたらず第三次世界大戦中のロシアにまで乗り込んだな」

「そんな大馬鹿者が。常人どころか聖人や英雄ですらも匙を投げるような事態に対しても、だ」

「何度も何度も死にかけ、挫けて、何の見返りも求めない大馬鹿者が!」

「世界中のどこを探しても『上条当麻』以外の馬鹿なんて、いないに決まっているだろう!」

「可能性はあるかも知れない。もしかしたらもっと上手く、もっと楽に、誰かが何かを助けてくれた“可能性”だ」

「だが!それはあくまでもしもの話だ!現実には起こりえなかった仮定の話、所詮は言葉遊びに過ぎない!」

「あの日、あの時、あの場所で!」

「現実に押し潰されそうになる少女を!」

「妹のために死に場所を見つけた少女を!」

「姉に命を説いた少女を!」

「助けたのは、誰だっ!?」



847:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/02/17(月) 12:59:55.35 ID:oqje6o8Q0

「名も知れぬ英雄か!?万能の能力者か!?それとも偉大な魔術師にして騎士王か!?」

「誰でもない!どれでもない!」

「少しばかり変わった右手を持つ少年――馬鹿で馬鹿な馬鹿の……」

「――馬鹿なんだよ」

「……くく、浅い。浅いなぁ、魔神オティヌス」

「所詮はその程度か。全知にして全能の存在の名を持ちながら、そんな簡単な事にすら気づけないのか」

「……あぁそれじゃ無理だろうな。タロットを使うまでもなく、私には幻視るよ」

「君が魔神になんか、どれだけ時を費やしたとしてもなれやしないさ」

「空しく、そしてただ、虚しく。永劫を一人寂しく彷徨うのが精々だろうね」

「……」

「……と、言うかだな、貴様。君じゃない、頭が悪い方のだ」

「なんだかんだで、まだ生きてるんだろう?どうせ悪あがきをして、死に損なっているんだろ?」

「既に終わった世界で、閉じた世界の終末を突き抜けた先で、私の声が響いているのが証拠だよ」

「理解しろとは言わないけれど、その悪い頭と学生としては色々と致命的な演算能力を総動員して聞きたまえ」



848:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/02/17(月) 13:01:34.49 ID:oqje6o8Q0

「“誰が”とか、“もっと上手く”とか、そういうのは良いんだよ。何をどうやった所で結果論に過ぎない」

「例えば世界を造り直したとして、最初から英雄を設置としていたとしても、それは、ただの、偽物だ」

「悲劇を食い止められて私達は笑うかも知れない。幸福に浸るかも知れない――あくまでも、外面だけだがな?」

「例えばそこがどんなに満たされた世界でも、そして自分の思いのままに出来たとしても、それは夢だ」

「仮に全ての悲劇が回避されたとしよう。元の世界で起きた筈の悲劇が、無かった世界が出来たとする」

「だがそれじゃ『新たに起きる悲劇』は誰が食い止める?」

「学園最強の能力者が最強のままであっても、それはいつか訪れる魔術師には容易に敗れ」

「『必要悪の教会』がほのぼのハッピーな組織になったとすれば、凶悪な魔術犯罪者は誰が審判を下す?」

「グレムリンがグリーンピース程度にまでスケールダウンしたとして、他の人間は邪な考えを抱かないか?」

「それでも――『全人類の思考方向を探知し、特定方向へ誘導させる魔術』なんて方法であれば、悲劇は避けられる」

「だが、しかし、それではだ」

「去勢された家畜の生き方と何が違う?それをまさか“平和だ”などと言うつもりはないだろうな?」

「そもそも論で言うのであれば――まぁ私が言うのも少々棚に上げる気もするがね?」

「『たった一人で地球上全ての命を軽々しく消し飛ばした人格破綻者』が」

「『そんな絵本に出て来そうなヒューマニズムに悪酔いしたゴッコ遊びに付き合う保障』とやらも示して欲しい所だ」

「オカシイと言うのであれば、それは全てだ。最初からだよ」

「全知全能の力を持ちながら、そして世界を壊し、新たに構築する力がありながら」

「元の世界の矯正はせず、只々癇癪を起こした子供のように叩き潰した」

「そんな相手の善性に縋るのであれば、それは自殺と何が違う?」

「……」



849:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/02/17(月) 13:04:03.30 ID:oqje6o8Q0

「……なんだね。まだ目が覚めないのかい?」

「まぁ……貴様という大馬鹿者もなんだかんだで言わせたがり――もとい、悪趣味極まりないからなぁ」

「だからもう一度だけ言おう。いいか?普通は有り得ないんだぞ?光栄に思えよ?」

「……いやでも最近思うようになってきたんだが、こう言うのは言ったもん勝ちな気もするな。結局恥ずかしい思いをするのはそっちなんだし?」

「だから別に私は別に何とも思わないぞ?勘違いするなよ?」

「……」

「……ウルサイな佐天涙子!『惚れた弱み』とか言うんじゃない!デレた憶えなんてないし!“別に”もワザと噛んだんだ!計算だよ!」

「あと概念しか存在しないのにカメラを回そうとするな淫乱ゴールド!お前が持ってるそれはアガシックレコードだ!」

「星の記憶へ私のデレを刻んでどうする!?二周目では創世神話が御坂美琴の日記みたいになるだろう!……いや、デレた憶えはないが!」

「だからオルソラと鳴護アリサは勝手に頭を撫でようと――お前ら、いつか然るべき報いを受けさせるからな?憶えておけよ?」

「……あぁこっちの話だ。オリジンとパラレルが混ざり合った世界で、どーにも下らない事になっている」

「果たしてどの世界の基軸になるのやら。最悪全部入り交じったら悲惨――いや、笑えるだろうがね。私達以外は」

「……」

「――私は、お前“で”いい」

「……いや、違うな。そうじゃないな」

「――お前じゃ無ければ、嫌だろ。お前の居ない世界など、つまらんよ」

「私は、お前“が”いい」


――??? -続-




元スレ
バードウェイ「ようこそ、『明け色の陽射し』へ」 ~断章のアルカナ~
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1378160982/
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          • 1. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年03月19日 16:19
          • 5 上条さんとバードウェイのSS増えて欲しい

        はじめに

        コメント、はてブなどなど
        ありがとうございます(`・ω・´)

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