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バードウェイ「ようこそ、『明け色の陽射し』へ」 ~断章のアルカナ~【その3】

バードウェイ「ようこそ、『明け色の陽射し』へ」 ~断章のアルカナ~【その2】
387:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/22(火) 10:51:07.45 ID:1k+vy+yM0



――断章のアルカナ 最終話 『オズの魔法使い』




388:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/22(火) 10:53:17.09 ID:1k+vy+yM0

――4th.

――『明け色の陽射し』 極東支部(兼・上条のアパート) 朝

上条「うー……?」

円周 スースー

上条「……毎日ベッドから落ちる訳ねぇだろ。おーい」

円周「……んー……?」

上条「よいしょっと」

上条(ちょい寒くなってきた朝、円周の高い体温はカイロ代わりになりそう……扱いがペットっぽい気がする)

上条(鋭すぎる牙を気にしなければ、の話だけど)

上条(やったら軽い体を適当にベッドに投げ……いやぁ、定員オーバーかぁ?)

上条(シェリーがバードウェイを抱え込んで寝てる。バードウェイの方は苦しそうだけど、まぁいいか) ポイッ

円周「……むぎゅ」

上条(さって、俺は朝飯を作るとしましょうかね)

……

上条「おーいお前ら朝だぞー、おっきろーっ!」

円周「……おはよー」

バードウェイ「……ち。寝苦しいと思ったら、またコイツか……」

シェリー「……」

円周「お兄ちゃん、お姉ちゃんもおはよー。ほら立って?お顔洗いに行こ?」

バードウェイ「先に借りるぞ」

シェリー「だぁぁぁぁぁぁりぃぃっ……」

円周「お酒臭いなぁ、もう」

シェリー「黄泉川から誘われたのよ。しょーがねぇだろ」

円周「お酒始めたの最近なんでしょ?慣れてる人と同じペースじゃ潰れるってば」

シェリー「だりぃ……あー、肩貸して」

円周「しょうがない、ねっと!」

シェリー「おぅふ。世界が揺れてやがるぜ……」

上条「……なんかもう、最初の頃は考えられなかった光景だな」



389:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/22(火) 10:55:26.34 ID:1k+vy+yM0

バードウェイ「まぁ良くも悪くも馴染んだのだろう――と言うか、予想以上にダメ人間だな」

上条「芸術家って見るからに一芸特化っぽい感じだし、仕方が無いじゃないかなぁ」

バードウェイ「頭のネジが外れた連中と言ってやればいいのに」

上条「朝から飛ばしすぎだ――ってお前、意外と寝起きに強いのな」

バードウェイ「子供扱いは止めろ、と何度も言ってるんだが――体に教え込む必要があるのかなぁっ?」

上条「今日はサバの香油通し焼きだねっ!ほぉら焼き立てが一番美味しいんたぞぉっ!」

バードウェイ「うむ。日本に来た以上、和食を堪能せねばな」

上条(良かったー)

バードウェイ「オシオキは放課後でもいいだろう。楽しみにしておけ?」

上条「……それまでに機嫌治ってるといいなぁ」

……

円周「ごちそうさまでしたーっ!」

バードウェイ「ごちそうさま」

シェリー「あー……ごちそうさまでした」

上条「はい、お粗末様でしたー。っと円周、今日は早番だっけ?」

円周「遅番だねぇ。片付けとお洗濯はやっとくからねっ」

上条「悪いな」

円周「うーん、居候その三が役に立たないからねぇ」

バードウェイ「三じゃないぞ。最初にここをアジトにしたのは『明け色の陽射し』なんだが?」



390:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/22(火) 10:56:58.85 ID:1k+vy+yM0

バードウェイ「むしろ貴様らが要らぬ騒動をデリバリーしくさったんだろう」

円周「そうじゃなかったら今頃ラブラブだったのに、とか?」

バードウェイ「表へ出ろ。人形モドキに『恐怖』の感情を叩き込んでやる」

円周「うん、うんっ!そうだよねっ、こんな時『木原』ならこうするんだよね……ッ!」

シェリー「あー……円周、着替えー」

円周「あ、ごめんね?殺し合いは少し待ってて?」

上条「やめなさいお前ら。メシの量減らすぞ」

バードウェイ「だがしかしお前のその視線がクロムウェルから以下略そして目潰しっ」 ズブッ

上条「のぉぅっ!?また俺が理不尽に攻撃をっ!?」

円周「でもないと思うけど……んー、お姉ちゃんの体ってすっごく均整が取れてるよねぇ」

上条「実況だけするとか生殺し過ぎる!」

バードウェイ「不健全すぎる生活環境でどうにかしたオルソラを誉めるべきか、迷う所ではある」

シェリー「テメェら私の努力とかって可能性は考えねぇのかよ」

バードウェイ「違うだろ、実際。『必要悪の教会』でも依存しまくってると見るが」

シェリー「……合ってるけどなぁ。つーかアイツも私なんかに構ってねぇで、男の一人でも作ればいいのによぉ」

円周「ローマ正教のシスターさんって、結婚はアリなの?」

シェリー「あー……ちっこいの?」

バードウェイ「その名で呼ばれるのは酷く気に入らないが、実は可能だ」

バードウェイ「ローマ正教では司教未満は妻帯を許されている、と言う事になってはいる。が、女性が聖職に就く事自体が難しい」

バードウェイ「そもそも十二使徒自体に妻帯者が居る上、マグダラのマリア――イエスの母でない方のマリアが妻だった説もある」

バードウェイ「教会側は否定しているが、彼女は懺悔した娼婦と見なされる場合も多く――」

円周「あ、じゃあお兄ちゃんなんてどうかな?甲斐性以外はあると思うよ?」

上条「呼んだ?……つーかまだ目が痛くて、見えないんだけど」

バードウェイ「……まぁ、アレだ。したいならばすればいいだろう。イギリス清教に改宗しても、同じ神には違いないのだから」

シェリー「アンタ今20億人にケンカ売ったぞ?……って、スーツ着るの面倒だなぁ」

円周「あーもうっ、きちんと頭梳かして!」

シェリー「いいんだよ、これで。別に見合いの席じゃあるまいし」

バードウェイ「と言うかお前ら、時間はいいのか?」

上条「時計時計……げ。すまん、俺先に出るわっ!」

シェリー「待てコラ!私はまだ終わってねぇぞ!」

上条「お前は黄泉川先生が迎えるくるからいいじゃんか!俺はバス通学なのっ!――って、先に出るわっ」

バードウェイ「ならば、私も出ようか。鍵を忘れるなよ、小娘」

円周「いってらっしゃーーいっ!」

パタン



391:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/22(火) 10:58:34.88 ID:1k+vy+yM0

――通学路

バードウェイ「しかしまぁ馴染んだものだな、お前もあいつらも」

上条「その中にお前も入れとけ。最初の方はよく口喧嘩で殺し合いにまでなりそうだったよな?」

上条「今じゃすっかり――あれ?今朝もしようとしてませんでしたっけ?成長してないよね?」

バードウェイ「仲間の絆的なものを期待されても困る。どうせ、お前の家を出たら魔術結社、科学サイド、イギリス清教の三竦みへ戻るんだからな」

上条「それもなんか寂しい話だ……なんとか、ならないのか?」

上条「割と気に入ってるんだよ、こう言う穏やか――じゃないけど、まぁまぁ家族っぽい生活」

バードウェイ「それは禁書目録が帰って来たら言ってやるといい」

上条「……そうだよな。お前が居るのってパトリシアのついでだもんな」

バードウェイ「あと4日なのか、もう4日しかないのか。気分の持ちようだな」

上条「シェリーも、あんまこっちには居られないだろうし。円周はどうするんだろうな?」

バードウェイ「間違ってもお前の所で保護しようとするなよ?『必要悪の教会』がぶち切れる」

上条「科学サイドの元狂信派ですもんねー。実際にはほぼ被害者側だけど」



392:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/22(火) 11:00:02.22 ID:1k+vy+yM0

バードウェイ「人生とはそういうものだよ。別れがあれば出会いもある。それは仕方がない事だ」

上条「強いんだな、お前は」

バードウェイ「なんだね、いよいよ『明け色の陽射し』へ入る気になったのか?」

上条「この生活を続けられるんだったら、それも悪くねぇよなって」

バードウェイ「出来ない訳でもないが、それをするには多大な犠牲を支払わねばならない。お前も私も」

バードウェイ「……まぁ、どうしても、と言うのであれば手が無い訳でもないのだが」

上条「マジで?じゃ、それで行こうぜ!」

バードウェイ「……ぅ。ま、まぁまぁ、その内にな?」

上条「そっかー」

プップー

上条「バス来たんで、んじゃ」

バードウェイ「あぁ、勉学に励みたまえ――では、サヨナラだ」

上条「おー」

ガタン、プップー

バードウェイ「……さて、次は」



393:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/22(火) 11:01:07.91 ID:1k+vy+yM0

――自宅前 道路

シェリー「……おぅ」

バードウェイ「しかしアレだな、お前もそうやってれば少しは見れる外面だってのに」

シェリー「いーんだよ、私はこれで。一生喪服を着ていくって決めてんだから」

バードウェイ「魔術名にするぐらいだから相当なもんだとは思うが、まぁ程々にな」

シェリー「あぁ」

バードウェイ「ではな」

シェリー「待てよ」

バードウェイ「うむ?」

シェリー「あー……その、何よ。アレだ。アンタもあれだぜ」

シェリー「ガキはガキらしく、もうちっと他人を頼りゃいいんじゃねぇか?」

シェリー「世の中にはボランティアで解決してる物好きが居るみたいだし」

バードウェイ「お前にだけは言われたくない台詞だと思うがね」

シェリー「でないと私みたいになっちまうわよ」

バードウェイ「それは……まぁ、検討に値するな」

シェリー「やかましい。さっさと行っちまえ」

バードウェイ「言われなくても――では、またどこかで」

シェリー「願わくば敵同士で相見えない事を、ね」



394:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/22(火) 11:02:57.81 ID:1k+vy+yM0

――自宅

円周「お帰りなさいませっ、お嬢様!」

バードウェイ「ネタに走るのはやめろ。あと、朝一でお前のテンションは心に毒だ。一言で言えば、鬱陶しい」

円周「レヴィちゃんに好かれようとは思ってないけど、一応聞いとくねっ」

円周「それで?お兄ちゃんとお姉ちゃんにお別れはしてきたの?」

バードウェイ「そんな大層なものじゃないが、するだけはしてきた。まぁ理解してないのも居たとは思うが」

円周「普段お見送りなんてしないのねぇ。普通は分かると思うんだけど」

バードウェイ「何にせよ言うだけは言ったさ。どう受け取るかは本人次第」

バードウェイ「お前にも世話になっ――ってはないな。むしろ迷惑を散々掛けられまくった」

円周「わたしはレヴィちゃんにとっても感謝してるよ?」

バードウェイ「……ふむ。で、あれば疑問に思っていた事が幾つかあるのだが」

円周「答えられる――憶えている事なら、大体は」

バードウェイ「お前の『卓上演劇(デーブルトーク)』、じゃなかった『他者再生(エミュレータ)』は元々マルチタスクなんだよな?」

円周「だねぇ。秘密にしてたけど」

バードウェイ「ならば何故雲川鞠亜に負けた?『木原数多の思考を持つ、木原加群』であれば、彼女の想定を上回る事も出来たろうに」

円周「良く憶えてないから、殆どは想像になるけど――必要がないって思ってたからかも?」

円周「だって普通は『円周としての癖を読まれる』とは思わないでしょ?だからそこまで複雑な処理は避けていたんじゃないかな」

バードウェイ「『卓上演劇』で充分だろうと高を括っていた?」

円周「脳にかかる負担の軽減って言って欲しいけどね」

バードウェイ「下手に簡略化させて、必要な処理をショートカットしてしまった感じか」

円周「うんうん、そんな感じで」

バードウェイ「次にお前は今、『憶えていない』と言ったが、矛盾しているよな?」

円周「何が?必要な記憶以外は切り捨てたって言ったよね?」

バードウェイ「バゲージよりも前は忘れた、と言って居た筈だが――単刀直入に聞こう」

バードウェイ「お前、実は全然憶えてないんだろう?」



395:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/22(火) 11:05:00.89 ID:1k+vy+yM0

円周「……言わない?お兄ちゃん達には内緒だよ?」

バードウェイ「『明け色』の名に誓おう」

円周「大体九8日前ぐらい?」

バードウェイ「私達と接触した初日じゃないか!……どうしてそんな嘘を」

円周「お兄ちゃん、悲しいお顔するだろうから、何となく?あ、でもデータとしては断片的にあるんだよ?」

円周「ただ実感は全くないってだけで。人の書いたご本を読んでる感じかも」

バードウェイ「何だかんだで成長しているのか、お前は」

円周「記憶がないのに?経験が残せないのに?」

バードウェイ「禁書目録と同じだよ。記憶がリセットされていても、性質が変わりはしない――尤も、周囲がそう仕組んでいる気もするがね」

バードウェイ「と言うかその内外共に危険極まりない能力、何とかならないのか?」

円周「視床に『学習装置』でセッティングした所は、少しずつ記憶野へ移しているみたい?」

バードウェイ「芳川と何かやってたな、そういえば」

円周「記憶が大幅に無くなったから丁度いいって、桔梗おば――お姉ちゃんが」

バードウェイ「彼女も少し病んでいる気がするが……まぁ、感情が戻ってくるのは歓迎――出来る、のか?」

円周「情緒不安定になるかも知れないよねぇ」

バードウェイ「……では最後の質問だが――その前に『木原数多』の『再生』は出来るのか?」

円周「うん、データ端末とのリンクも復活したし、大丈夫だけど……?」

バードウェイ「『再生』中はお前の記憶はあるんだよな?」

円周「書き込み付加にすればバッファにしか残らないけど。何?秘密のお話なの?」

バードウェイ「お前達は知らない方がいいって話だよ。それじゃリードオンリーで頼む」

円周「うんっ――『……あぁ、やっぱり来やがったか』」



396:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/22(火) 11:06:39.78 ID:1k+vy+yM0

バードウェイ「私は君と初対面なんだが、そこら辺の整合性はどうなっているんだ?」

円周「『どぉもなってねぇよ。ただこのガキが「木原数多ならこう言う、こうする」ってのをデタラメにやってるだけだ』」

円周「『理屈自体は子供のゴッコ遊び。ただし精度は極めて高い』

円周「『ガキも知らない――通常は必要ない膨大なデータをストレージに保存し、適宜読み込む』」

円周「『肉体スキルに関してはほぼ100%再生出来るってぇ代物だぁな』」

バードウェイ「その代償に脳の魔改造が妥当とは思えんが――まぁいいさ。それよりも聞くがね」

バードウェイ「――『木原円周はエリスのクローン』だな?」

円周「『……根拠は?』」

バードウェイ「明確な返答ありがとう、木原数多。君に――今の君に何を言っても憶えていないだろうが、探偵役として最後の義務を果たそう」

バードウェイ「まず円周は幼い頃に誘拐された。しかし誰も助けはしなかった。何年もの間だ」

バードウェイ「狂犬よりも狂っている君達にしては、少々おかしな対応だとは思わないかな?」

円周「『一族同士の繋がりは薄いんだよ。別に珍しいこっちゃねぇ』」

バードウェイ「では次にコイツが『木原が足りない出来損ない』なんだったな?」

バードウェイ「ならば何故、この歳まで誰にも害されずに育ってきた?『木原』を植え付けられてもおかしくない筈だろう?」

バードウェイ「『善悪を判断しないバケモノ』ってのは、裏を返せば『誰も教えてやらなかった』状態なんだ」

バードウェイ「物好きの木原の誰かが、そこら辺を踏まえて『教育』してもおかしくはないのに」

円周「『俺が引き取って育ててた、っつーかぁ『学習装置』で頭ん中弄ったのは俺ですけどぉ?』」

バードウェイ「それも実は伏線なのだろう?ある程度――そうだな、エリス・オリジナルと同じ歳まで育ててから、クロムウェルに何かの実験名目で引き渡す」



397:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/22(火) 11:08:31.06 ID:1k+vy+yM0

バードウェイ「その際には記憶をフォーマットし、『エリス』としての記憶を植え付けた上で、というのが君のプランだった筈だ」

円周「『遺伝子操作して、性別いじくってまでかぁ?』」

バードウェイ「そこまでしないといけなかったのさ。『木原』には底意地の悪いおばさんが居るらしいし」

バードウェイ「実際君が退場してから、バゲージで使い捨てにされそうになったしね」

円周「『苦しい話だなぁ、おい。状況証拠だけって話』」

バードウェイ「よく陰謀論か語られる際、『証拠がないのが証拠』と言われるな」

バードウェイ「曰く、闇の勢力は絶大な影響力を持っていて、証拠全てを残さないんだ、と」

円周「『バカが信じそうなこった。グーグルアー○で不審船探すアホと同レベルだ』」

バードウェイ「……まぁ、それはそれで構わないと思うよ」

バードウェイ「例え『木原円周が最初からクロムウェルへ懐いていた』としても。それもきっと偶然なのだろうな」

円周「『……』」

バードウェイ「何にせよ、計画は潰えた。罪悪感なのか、それとも計画の再開の布石を望んでいたのかは誰も知らない」

バードウェイ「だが、君の残した遺産を使って騒ぎを起こした連中が居た」

バードウェイ「本来であれば君の記憶データは、『木原円周』へ残した手向けだったのかも知れないのに」

円周「『「SEED」だよなぁ。つかーあんな大騒ぎしてガキ一匹捕まえるんだったら、最初っからフルインストールしてるっつーの』」

バードウェイ「そうだな。誰かが何らかの手段を用いて、この一連の『木原』騒動を起こした」

バードウェイ「最初に『SEED』を作ったのは誰か?そして工山規範に『インストール』させたのは誰だ?」

バードウェイ「……死人を墓から引っ張り出して、弄んだのは」

円周「『検討は着いてんのか?』」



398:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/22(火) 11:09:43.24 ID:1k+vy+yM0

バードウェイ「どうやらこの話で私は探偵役ではなかったようでね」

バードウェイ「あくまでも第三者として物語に関わり、私はただの異分子だと思っていたのだが」

バードウェイ「ソイツはクロムウェルを学園都市まで呼び、『キャリー・イェール版タロット』を復元させ――」

バードウェイ「『木原数多』を殺すために『ハーメルンの笛吹男』の魔術を私に使わせたんだ」

バードウェイ「『明け色の陽射し』が数日掛けて作り上げた儀式魔術を乗っ取り――いや、同調してか」

バードウェイ「私達から盗んで行った。それが基幹だよ」

円周「『てぇ事はだ。最初からテメェが魔術を使う事は想定済みってぇ話かよ』」

バードウェイ「この物語の主役は私だったのだよ。君達は私を追い込むための手段に過ぎん」

バードウェイ「……情を移らせたのは木原円周ではない。まんまと一杯食わされたのが全てだ」

バードウェイ「だがまぁ『後』は私がケリをつける。少々乱暴になるので、良い子の諸君は寝る時間だ」

円周「『右手のにーちゃんにでも頼った方がいいんじゃねぇのか?』」

バードウェイ「ダメだな。これはもう――」

バードウェイ「――『明け色の陽射し』へ売られた戦争なのだよ」



399:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/22(火) 11:11:25.49 ID:1k+vy+yM0

――学校

上条「いやー、疲れたー」

青ピ「ってかカミやん疲れてる所しか見ませんけどぉ?――って、そうでもないよーな?」

上条「うん、まぁここ数日はそんなでもない。朝からちょっと決闘騒ぎがあったぐらいで」

青ピ「カミやんちはどんだけ緋色に染まってるの?それはもう日常とは言いませんやんか」

上条「俺以外が流血沙汰にならなかったら、まぁ平和ですよねっ」

青ピ「泣いているのは――ボク?悲しくなんて無いのに!」

上条「そうだぜ?割と良くある事だし」

シェリー「おい、上条は居るか?」

上条「あー、はい。どうしました」

シェリー「いや何って訳じゃねぇんだが、クソガキがだな」

上条「どっちの?」

シェリー「性格が悪りぃ方だ」

上条「どっちもじゃね?」

シェリー「外見が白いの」

上条「あぁ、はいはい。バードウェイがどうしたって?」

シェリー「スペースも来てない、んだな」

上条「いやだから、何かあったのか?」

シェリー「いやぁ、何もねぇんだがな。多分」

上条「うん?」

シェリー「……はっきり言った訳じゃねぇが――まぁいいか」

ガラッ

上条「なんだよ」

青ピ「あのぅ?カミやん先生?」



400:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/22(火) 11:12:58.49 ID:1k+vy+yM0

上条「なんだよ、つーか先生って何?」

青ピ「シェリー先生とのご関係は?」

上条「知り合い。ショッピングセンターでテロ騒ぎあったじゃん?あん時、黄泉川先生と一緒に世話になってさ」

上条「その縁で暫く美術講師引き受けたとかなんとか……?」

吹寄「ウチの学校は予算が少なくて、人も回ってこないからね」

上条「身内の人間を入れて予算節約……いや?シェリーって有名じゃなかったっけ?」

青ピ「そ、そうなんっ!?てっきりボクぁまたいつものパターンで同棲してるもんだとばかり!」

上条「やだなぁ、そんな訳ないじゃないですかぁ」

青ピ「そ、そうやねっ!ボクはカミやんの事信じていいんですよねっ!?」

上条「当たり前だろう!俺達親友じゃねぇか!」

青ピ「……カミやんっ、カミやぁぁんっ!」 ヒシッ

上条「お、おうっ!」

上条(こいつ名前なんつったっけ?)

吹寄「なにやってんるだか、三バカの二人」

姫神「決して嫌いじゃない。そういうのもアリだと思う。うん」

ガラガラッ

シェリー「あぁ今晩遅くなるかもだから、先にメシ食ってろ」

全員「……」

シェリー「バードウェイは……まぁ、気にすんな。どうせ間に合わねぇだろうし」

ガラッ

上条「あ、ごめん。僕ちょっとお手洗いへ」



401:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/22(火) 11:14:21.96 ID:1k+vy+yM0

青ピ「――ってな訳で、第百二十一回上条弾劾裁判を始めたいと思います!」

上条「待てやコラ!?弾劾って何?俺なんか悪い事したかよっ!」

姫神「この状況下でしてないっ思う方がおかしいと思う」

上条「姫神まで敵かっ!?俺は別に疚しい事はしていないさ!」

青ピ「ほー、マジで?マシでそう思うんでっか?」

上条「幾ら俺が年上のおねーさん好きであっても、困ってる同居人に手を出す程落ちぶれてねぇ!」

姫神「クロムウェル先生。どうしたの?っていうか聞いても良い話?」

上条「ビジネスホテルの壁に落書きしたら、ブラックリスト入りした上で追い出されたって」

吹寄「芸術家らしいエピソードではあるけど、ねぇ?」

青ピ「まぁ実際にやったらドン引きってぇ感じですわ」

上条「だから俺は仕方が無く友達の同居を認めたんだよ!どうだ、疚しい所なんかこれっぽっちもねぇ!」

青ピ「あー、ごめん、ごめんね。カミやん?ボクら疑っちゃって」

上条「俺が毎度毎度疑われるのは仕方がないけどさ、もうちょっと信用してくれたっていいんじゃね?」

土御門「それはさておき、褐色金髪美女ってずぅんごくエ口いよにゃー」

上条「だよなぁ?エ口いよなっ!」

一同「……」

上条「ち、違うんだ!これはきっと敵の魔術師の攻撃なんだ!」

上条「つーか今土御門居なかったかっ!?野郎の声が聞こえた気がした!」

青ピ「つまり『手は出してないけど、ものっそい意識はしている』でファイナルアンサー?」

上条「違うよっ!いや、違くないけどさっ!俺の話を聞いてくれよぉぉっ!」

吹寄「キリキリ吐きなさい上条当麻。骨は拾ってあげるから」

上条「委員長までそんな事言うのかっ!」

姫神「委員長じゃないんだけど。ずっと委員長と思ってた」

青ピ「ではホンモンの委員長からの命令ですわ。素直に言ったらええですやん?な?」

青ピ「別に誰がチクる訳じゃ無いですし、ここだけの話にしときますよって」

上条「だからそーゆーんじゃないんだって!」

ガラガラッ

シェリー「悪ぃ。やっぱ飲み会キャンセルだって――」

上条「そりゃまあ意識はしてるけど!だつてシェリー可愛いもんっ!」



402:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/22(火) 11:15:15.17 ID:1k+vy+yM0

上条「普段はズボラで格好もだらしないけど、結構根は優しかったり、気ぃ遣いだっりするし!」

上条「でも友達だから意識しないようにするじゃねぇ――」

シェリー「」

上条「えっと……何?どういう事?本格的にドッキリなのか?」

シェリー「……あぁ、いや別に?全然全然?な、ほら?」

上条「お、おぅっ!」

シェリー「その、私もまぁ、あれだし、まぁその――」

シェリー「――今日、早めに帰るわね?」

ガラガラッ

上条「待て待て待て待てっ!?違うんだ!そうじゃねぇんだ、いや違わないけども!」

上条「つーかお前らも無責任すぎるだろ!何全員目ぇ合わせないようにして席へ戻るのっ!?」

青ピ「……カミやん」

上条「な、なんだよ」

青ピ「やったね!明日はお赤飯だよ!」

上条「ウルセェよ!そんなんじゃねぇよ!」

上条「どう考えても家帰ったら気まずいだけに決まってだろ!?なあぁっ!?」

上条「お前らっ!責任取れって、きーけーよおぉぉぉっ!?」



403:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/22(火) 11:16:40.50 ID:1k+vy+yM0

――放課後

上条「……疲れた。精神的にどっと疲れた……」

姫神「お疲れ様。今回のは悪くは無いと思うけど。小萌先生とか大人を頼るべき」

上条「あぁうん、幾らなんでも俺だって分かってるけどさ。その」

姫神「あっち関係の人?」

上条「うん。元敵の、はい」

姫神「誰彼構わず味方にするのは悪い癖。主に私の個性に関しても不都合」

上条「それは姫神のご都合ですよね?ケンカせずに済むんだったら、そっちの方が良いんじゃねぇかなって」

青ピ「――オイ、カミやん聞いたかっ!?」

上条「何?これ以上俺を弄ったって何にも出て来ないよ?」

青ピ「校門のトコにメイドさんがビラ配りに――」

上条「何やってんだグラアァァァァァァァァァァァァァァッ!?」

青ピ「――来てるんだけど、って最後まで言わせて欲しかったんですけど」

青ピ「って先に征かせるかぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

姫神「あ。窓から」

姫神「……」

姫神「よい子のみんなは窓から出ちゃダメ。うん。死ぬから」

吹寄「バカは死んでも治らない、の史上初の実験をしてみたい所だけどね」

……



404:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/22(火) 11:17:55.44 ID:1k+vy+yM0

――校門前

青ピ「前世ではアナタの兄だった気がしま――げふっ!?」

上条「ぜー、はーっ……ケガは、ないか……?」

円周「たった今目の前で傷害事件があった以外は、これといって特に?」

上条「……つか何やってんのおぉっ!?人んち学校でビラ配りか!?」

円周「新規のお客様を開拓しないといけないんだって、店長が」

上条「いっぺんお前のトコの店長と話をつける必要があるよね?中学生のバイト雇うのもどうかと思うけど」

円周「大丈夫だよぉ、店長17歳の女の子だしっ」

上条「そういう問題じゃねぇと思うが」

青ピ「……たか」

上条「あん?」

青ピ「またカミやんですやんかっ!?何?ボクらなんか悪い事しまし――」

円周「はいはーいっ、ごめんんねーっ?」 キュッ

青ピ「……ぅぐっ」 パタン

円周「お兄ちゃんにおイタしちゃ、めっ、だからねー?」

上条「あれお前何したの?人って軽く首筋抑えだけで気絶しないよね……?」

円周「あぁこれ?加群おじちゃんがよく使ってたスキルをシェアリンクしてるだけだよ」

円周「頸動脈を圧迫するだけだと、失神するまで数秒かかるんだけどぉ」

円周「動脈の血管を掌で包みながら、●●の方に●●●●●●するとぉ」

上条「はいストップー!それ以上は危険だから、ね?マジで洒落にならないから!」

円周「んー、抽象的に言えば『無理矢理パソコンの電源を落とす』って感じかな?」

上条「お前何やってんだ!?路上で人の知り合いに殺し技かけてんじゃねぇよ!」

円周「え?だったら掌底で●●を叩き折って●●に●●●●た方がいいって事?」

上条「即死じゃん!?つーか引くよ!メイドさんがラフプレイしまっくてたら、他のお客さん来ないものっ!?」



405:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/22(火) 11:18:59.99 ID:1k+vy+yM0

円周「わたしに優しくオトして欲しい人は、き・て・ねっ?」

生徒達『オオオォォォォォォォォっ!!!』

円周「はーい、ビラをどーぞ。ね?問題なかったでしょ?」

上条「……もうヤダっ!こんな学園生活普通じゃないし!」

円周「男の子はみんな、そーゆー時期があるって聞いたけど?」

上条「中二病はね……うん、特別になりたくてしょうがないって言うか。そういう時期は必ず来るけど」

円周「まぁお兄ちゃんも来てよ、ねっ?」

上条「その内気が向いたらって事で」

青ピ「是非お義兄さんと一緒に伺いますわっ!」

円周「わーいっ!」

上条「復活が早いのは今更だけど。コイツ、中身は虎より始末悪ぃぞ?」

青ピ「そりゃ当然魔族とのハーフやったら当然ですやんかー。カミやんってば当たり前の事を今更ですやん?」

上条「どっからその結論持ってきた?魔族って何?新しい食べ物か何か?」

青ピ「ネリ○さんをボクに下さああああぁぁぁぁぁぃいっ!」

上条「相変わらず未来に生きてんな!……居ないと思うけどなぁ、悪魔。居たら居たで話の収拾がつかなくなるし」

円周「知的好奇心は刺激されるよねぇ。そういうの」

上条「悪魔さん逃げてー!?ロズウェルの宇宙人みたいな末路しか思い浮かばない!」



406:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/22(火) 11:20:26.90 ID:1k+vy+yM0

――自宅 夜

円周「たっだいまーっ」

シェリー「……おー」

上条「お帰りー。ってお前らバードウェイと一緒じゃなかったのか?」

シェリー「あー……居ないのか?」

上条「まだ帰ってきてないから、そっちだとばかり」

上条「……探しに行った方が良いのかな?」

シェリー「やめときなさいな。相手はライフル撃ち込まれたって平然としてるガキよ?」

上条「強かろうが子供に変わりねぇし、監督するのは年長者の義務だよ」

上条「しっかし遅くなるなら遅くなるで、言ってて欲しいよな」

円周「あ、コイツ出したんだ?」

上条「そろそろ寒くなって来たろ?今夜は鍋にでもしようかなって」

円周「お姉ちゃん」

シェリー「……だな」

上条「どした?」

シェリー「はっきり言うけど、多分バードウェイはもうここへは来ないわ」

上条「来ないって、なんでまた?まだ4日あるのに」

円周「んー、馴れ合うのはゴメンだって事じゃないかな」

上条「馴れ合うも何も俺達は、少なくとも俺は友達のつもりだぞ?それがなんだって」

シェリー「『それ』も問題なんだよなぁ。アンタの無自覚な所もだ」

シェリー「魔術と科学が奇跡的なバランスで成り立っているのは理解出来るよな?その間で色々見てきたんだから」

円周「今までは『木原数多』っていう、学園都市にも都合の悪い存在と戦ってた訳でしょ?だからここにいられたんだけど」



407:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/22(火) 11:22:27.76 ID:1k+vy+yM0

上条「いやでも後少しなんだぜ?」

シェリー「『明け色の陽射し』はイギリス清教の敵だ。つーか『取り敢えずパトリシアを殺しとけ』って命令が出るぐらいのな」

円周「だからレヴィちゃんはお兄ちゃんに、そしてインデックスちゃん?へ気を遣ったんだよ」

上条「……そうか」

シェリー「私みたいな下っ端じゃなく、禁書目録が『許可』した形でありゃ多少は違うんだが。悪いな」

上条「いや、誰も悪くないさ。朝もバードウェイに言われたけど、いつかは元の三竦みへ戻るって言われてたし」

上条「ただそれがほんの少しだけ、早まっただけだし」

円周「お兄ちゃん……うん、そうだよねっ!」

上条「あぁっ!」

円周「減ったハーレムは適当に補充するもんねっ!」

上条「人聞きは悪ぃし全っ然分かってなかったし!?」

シェリー「まぁそんなに気にするなよ。生きてりゃ会えんだろ、簡単にくたばりそうな女じゃねぇわよ」

上条「だよなぁ。長生きしそうではあるけど――あ」

円周「なぁに?あ、お別れ会でもしたかったの?」

上条「それはしたかったけど。ってそうじゃなくって忘れ物が」

シェリー「あいつ何か持ってたかぁ?サイフとか携帯とか、ナショジオとサイエンス読んでた……か?」

円周「わたしやしシェリーちゃんと違って、バックはなかったしねぇ」

上条「いやぁ、それがなぁ……ぱんつ」

シェリー「……」 ズズッ

円周「うっわぁ……」 ズズッ

上条「引くな引くな引くな!?別に俺が盗ったって訳じゃねぇよ!?」



408:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/22(火) 11:24:14.20 ID:1k+vy+yM0

シェリー「いや今のは流石に冗談だけど。もしかして洗いに出したのが?」

上条「さっき洗濯してベランダに干してあるけど」

円周「雑誌類は綺麗に持っていったのに、また凄いもの忘れちゃったねー……あ、もしかして、別の意図があるのかも?」

上条「ぱんつに深い意味がある訳ないと思うが……」

円周「かあさんがーよなべーをしてー」

上条「寒い特に穿けってのか!?設定が無茶にも程があるすぎるだろ!」

シェリー「でも捨てるのもアレだし、だからって持ってても、なぁ?」

円周「ベストはわたし達から返す、もしくは知らんぷりして捨てる、の二択かな」

上条「最後の最後で妙なトラップ踏んだ感がしないでもない……まぁ、その話はそのウチ考えようか。うん」

円周「戦わなきゃ、現実と!」

シェリー「幾ら逃げても現実は追いかけてくるんだぜ?」

上条「無理ゲーじゃん!?俺が持ってても『きゃードーン!』されそうな気がするし!逆に捨てても『うそードーン!』される未来が見える!」

シェリー「骨は拾ってやるから、な?」

円周「なにそれすっごく見たい!」

上条「おいお前ら人の不幸を流すのってどうなの?血は流れているの?だとしたら何色なの?」



409:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/22(火) 11:25:37.43 ID:1k+vy+yM0

円周「……血、見たい?ね、見せてあげよっか?」

上条「嫌な予感しかいねえからノーサンキューだ!唐突にエ×スイッチ入れるのやめて下さい、ねっ?」

上条「……まぁでも真面目にな、お前らが帰る時には前もって言ってくれよ?」

上条「送別会――なんて、きちんとした形じゃねぇけど、それでもお別れは言いたいからな」

シェリー「私は……禁書目録次第だわな。あんまり刺激すっとヤクザ神父に燃やされそうだし」

シェリー「そもそもイギリスじゃなきゃ生きていけないって訳でもねぇから、お前らが年度変わりまで先生やったって構わねぇわよ」

円周「うーん。だったらわたしも出て行かなきゃいけないよねぇ。お姉ちゃんの面倒看るよ!」

上条「……そうしてやってくれ。シェリー一人にすると不安が。オルソラの気持ちが分からないでもない」

シェリー「ウルセェわよ。こちとら三十路近くまで一人でやってんだから」

円周「奇蹟に近いと思うんだよねぇ、割と」

シェリー「アンタには言われなくねぇぞ」

上条「んじゃメシの用意すっから、手ェ洗ったらテーブル片付けといてくれー」

円周「はーいっ!」

シェリー「スーツ肩凝ってしょうがねぇな」

上条(さて準備。一度は火を通したから、もう一回煮立ててれば良いか)

上条「……?」

上条「……しまった。一人分多いんだっけ」



410:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/22(火) 11:29:18.23 ID:1k+vy+yM0

――3rd.


――上条のアパート(※元・『明け色の陽射し』 極東支部)前 放課後

御坂 ソワソワ

上条「あ、どうも、こんにちは」

御坂「ぅえっ!?う、うんっ!どぉも」

上条「今日はいいお天気ですね?」

御坂「そうかな?台風来るって聞いたような」

上条「じゃ、さようなら」

御坂「うん……」

上条(……良し!)

御坂「ちょっと待って?どうして今の流れで私をスルーしようとすんのよっ!」

上条「え、だってお前直ぐ攻撃するじゃん!?だから穏便に済ませようとしたんですけどぉっ!」

御坂「アレは――挨拶代わりに決まってるじゃない!」

上条「ホラ!そういう所がだ!俺じゃなかったらこんがりと電子レンジになってんですからね!」

御坂「電磁波だから、電気よりも波に近い性質なんだけど」

上条「騙されないぞ!俺はもうビリビリするのは嫌なんだ!散々虐殺ウサギ喰らったんだからな!」

御坂「散々って――アンタ!一体どこの誰の電撃喰らったって言うのよ!?」

上条「え、食いつく所そこかぁっ!?」

御坂「信じられない……私、私信じてたのに!」

通行人A「おい……あの子って……」

通行人B「うっわー、泣かせてるし」

上条「待ってくれないかな?俺のホーム(家の近く)での好感度がダダ下がりなんだけど」



411:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/22(火) 11:31:18.10 ID:1k+vy+yM0

御坂「私が!私がどんな思いでビリビリしてたのか……分かってる癖に!」

上条「え、御坂お前――もしかして」

通行人C「よし行け!告白しろ!」

通行人D「いやぁ、この展開だとアレでしょ?どうせ」

御坂「ムシャクシャしてやってたに決まってるじゃないっ!!!」

上条「うん、知ってた」

通行人E「ヘタレた」

通行人F「ヘタレたよ、また」

通行人G「つーか気づけよ。バカじゃねぇの?フラグ立ってんじゃんか」

御坂「つーかうっさいわよ外野!散れ散れっ!」

上条「いやだから、あの御坂さん?俺んちの近くなんで刃傷沙汰はちょっと……」

御坂「うるっさいわね!大体アンタがいけないんでしょーが!はい、これっ!」

上条「これ?――メモリーカード?」

御坂「……何よ!頼まれたから持ってきてあげたのに、その態度って無いわよね!」

上条「そうなのか?……そう。悪かったな、ごめん」

御坂「ば、バカじゃないの!?そんなゴメンの一つぐらいで私が機嫌治すと思ったら大間違いなんだからねっ!」

通行人H「上条もげろ」

通行人I「まさか現実でお目にかかれるとは……あ、写メ撮っとこ」

上条「あー、それじゃ家上がってお茶でも飲んでく?」



412:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/22(火) 11:32:27.17 ID:1k+vy+yM0

上条「お茶請けが……きなこ棒ぐらいしかないけど」

御坂「はぁ?いらないわよ、そんな駄菓子ぐらいで釣られると思わないでよね!」

上条「そっか?折角上手く出来たと思ったんだけど」

御坂「食べるに決まってるじゃない!何言ってんのよ!」

上条「……なぁお前、躁鬱病って知ってる?」

御坂「誰がパラノイアだっつーの!」

上条「いやぁ……うん。つーかさ、一つ聞いていい?さっきから気になってたんだけど」

御坂「べ、別に通りかかっただけなんだからね!だからそのっ、ついでに持ってきてやった、的な感じで!」

上条「お前――なんで俺んち知ってんの?」

御坂「……」

上条「……」

御坂「――さ、さぁってと!それじゃお邪魔するわねっ!」

上条「誤魔化されてねぇよ!?何一つ大惨事のままじゃねぇか!」

通行人J「ちなみに女性のストーカー加害者は少ないけど、それは外見がそこそこであれば『まぁいっか?』で済ませるケースが多いんだ」

通行人K「まぁ合意であればオッケーってのもなんか。男は悲しいよね」

上条「ねぇそこの人?俺通報した方が良いのかな?っていうかおっきな声出した方が良いのかな?」

通行人M「もげろ」

通行人N「ちんこもげろ」

通行人H「上条はEDになればいいと思うよ。いやマジで」

上条「うるっせぇぞ外野!あと今、通行人Hはどっか見覚えがあるからな、なぁっ!?」



413:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/22(火) 11:36:20.17 ID:1k+vy+yM0

――自宅

御坂「お、おじゃましまーす……?」

上条「おー、いらっしゃい。あ、靴は脱ぐんだぜ」

御坂「……あんた。どんだけ私がお嬢様だって思ってる訳?」

上条「常盤台の子達はなぁ?俺知ってるのって御坂、白井、食蜂さんぐらいか」

御坂「あの女との関係を問い正したい所だけどねっ!」

上条「いやぁ憶えてないですし――あ、お茶入れるから、座布団どーぞ」

御坂「あ、はい。ありがとうございます」

上条「……なんで緊張してんの?付き合い長いのに、俺ら」

御坂「うっさいな!男の部屋に上がるのって初めてなのよ!」

上条「いや別にカレカノって訳じゃないんだから、取って食おう的なイベントも起きないし」

御坂「そ、そうよねっ!緊張なんかしてないわよ、全然っ!アンタも口開けてないで、こっち見なさいよ!」

上条「おーい、御坂さん?お前が今話しかけているのは洗濯機だ」

御坂「知ってたわよ!悪いっ!?」

上条「うん、知ってる方が色々悪いとは思うよ?――ってお湯沸いた。緑茶でいいな?」

御坂「あ、いえお構いなく。あ、でも意外ね」

上条「何が?」

御坂「一人暮らしの割には綺麗ってのがパターンじゃない?」

上条「パターンってなんだ。パターンって」

御坂「汚いって事じゃなくって、そこそこ散らかってて生活感があるって意味よ。あ、ほら」

御坂「ここに下着出しっぱなしじゃない。もー、私が本当の彼女だったら小言言われまく――」

上条「お待たせー。なに?」

御坂「……っ」

上条「はい?」

御坂「……ぱんつ」



414:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/22(火) 11:37:59.89 ID:1k+vy+yM0

上条「違うんだっ!?そうじゃないんだっ御坂さぁんっ!?」

上条「話を!まずは話を聞いてくれませんかっ!?」

御坂「……これ、女の子のよね?結構ちっちゃい子の」

上条「ち、違うっ!?これには事情があって!」

御坂「……ばーか」

上条「敵の魔術師がベクトルを一方通行でオティヌスはぁはぁ――へ?」

御坂「何構えてんのよ?私はあんたの事知ってるって言ったでしょ?」

上条「そ、そう、か?ビリビリしないの?」

御坂「あんたの方こそ私をどんな風に考えてんのよ。つーか失礼にも程があるじゃない」

上条「だ、だよねっ!俺達もう、誤解されるような付き合いじゃないもんねっ!」

御坂「取り敢えず、アンチスキルに自首しよう?そうすれば、執行猶予ぐらいで済むと思うんだ、うん」

上条「100%誤解ですよねっ!?何一つ俺を理解してねぇし、完全に犯罪者扱いじゃねぇかよおおぉぉぉぉぉっ!?」

御坂「待ってるから!私、アンタの事を待ってるから!」

御坂「例えば世界中がアンタを敵だっていっても、私はあんたの事を――!」

上条「出来れば別のシチュで聞きたかったけどなその台詞!つーか信じるって言ってる本人がまず信用してねぇよ!」

御坂「……それとも、私と逃げちゃおっか?」

上条「話を聞いてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」



415:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/22(火) 11:39:01.10 ID:1k+vy+yM0

――10分後

御坂「あー……居たわねー、あの子か」

上条「そうそう!ハワイに一緒に行った子だって!たまたま忘れてっただけだから!

御坂「んむぅ。困るって言うか、まぁ困るわよね。逆の立場だったらちょっと考えちゃうし」

上条「だよね?俺がおかしいんじゃないよね?」

御坂「じゃ私はその子を撃てばいいのね?」

上条「ごめんよ?俺やっぱおかしいみたいだ、お前の言葉何一つ理解出来ないもの」

御坂「大丈夫よ!レベル5なら一人や二人何とかなるって!」

上条「言わないよ?俺の御坂美琴さんはそんな物騒な事は!」

御坂「だ、誰があんたのよ!?」

上条「……あ、戻った」

御坂「そ、その代わりあんたは私のなんだからねっ!」

上条「戻ってなかった――いやいや、いつまでもボケてないでそろそろ本題を」

御坂「あ、このきなこ棒美味しいわね。作ったの?っていうか家庭で作れるの?」

上条「あぁうん。今日の料○でやってたんだ。ってか水飴ときなこの味しかしない筈だけど」

上条「てか、よく知ってんな?こーゆーの食べるんだ?」

御坂「実家に居た頃とか、ママに近所の駄菓子屋さんへ連れてって貰ってたし」

御坂「他にも仙台駄菓子だっけ?あの中にも入ってたような」

上条「予想よりも作りすぎちまったから、良かったら持ってくか?」

御坂「いいのっ!?」

上条「そんな驚かれても困る、っていうか人にあげるのもちょっとアレな代物だから」

御坂「通販で売ったら激売れ間違いなしね」

上条「誉めてくれるのは嬉しいけど、出来ればサミーを忘れないであげて?」



416:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/22(火) 11:40:28.60 ID:1k+vy+yM0

御坂「あー、メモリーカードね。佐天さんと一緒にいた男の人から渡して欲しいって」

上条「男の人……何?またあの子強い引きでトラブルを踏み抜いたの?」

御坂「って思って……これ、内緒ね?」

上条「約束する」

御坂「ここへ来る前に軽く中の動画見ちゃったんだけど。別におかしな内容じゃないっぽいわ」

上条「その判断は正しいと思う」

御坂「まぁザッと見た感じ、フツーに話してるだけみたいよ」

上条「ちなみにその人、彼氏さんとか?」

御坂「結構歳離れてたし、頼まれた、みたいな事言ってたから、ほぼ初対面みたいな感じかな。なに?気になるってか!?」

上条「……分かるよな?俺がどんな意味合いで心配してるか、お前なら!」

御坂「良い子なのよ?うん、どこに出してたって胸を張って良い子だって言えるんだけど――」

上条「どこにいたってトラブルを引っ張ってくるっていうか、何かデジャブを感じるけどもだ!」

御坂「あー……分かる気がする。誘蛾灯的な」

上条「内容はなんだったの?つーか緊急で見た方が良い感じ?」

御坂「でもないけど、まぁ見る?」

上条「えっとカメラカメラ……」

御坂「パソコンないの?って携帯で見ればいいじゃない」

上条「……お前も見るんだよな?」

御坂「ま、まぁ?」

上条「だったらカメラに入れて、テレビにケーブル繋いで再生、っと」 ピッ



417:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/22(火) 11:44:02.73 ID:1k+vy+yM0

――いつもの喫茶店(※動画)

麦野「……」

佐天「――はいっ!と言うわけでやって来ました!『新・学園耳袋!』今日は出張版ですよー!」

佐天「なんと今日はゲストがいらっしゃってます!その名は――」

麦野「……」

佐天「そーーーのーーーなーーーはっ!!!」

麦野「……」

佐天「えっと、すいませんガン無視って酷くないですかね?」

麦野「――はい?」

佐天「良かったー、聞いて貰えましたっ!さっ、お名前をどうぞ!」

麦野「麦野、です……?」

佐天「そーですかっ!本日のゲストは麦野さんって女性の方ですっ!見れば分かるねっ、すっごいキレーな人だぞ!」

麦野「はぁ、どーも」

佐天「ってかそのお洋服miumi○じゃないですか?もしかして、とは思ったんですけど!」

麦野「そう、だけと、よく分かったわね」

佐天「いやいやっ、とてもお似合いですよー、ってかモデルさんですか?背も高いし、実にセクシーな感じで」

麦野「その質問に答える前に、聞きたいんだけど良いかしら?」

佐天「どぞっ」

麦野「ここ、喫茶店よね?」

佐天「はいっ」

麦野「あなたはたまたま相席になった人よね?混んでる感じには見えないけど」

佐天「あいまむっ!」

麦野「なんでゲスト?っていうかいきなりハンディカム回して何やってるのよ?」

佐天「あ、ご存じじゃないですか?『新・学園耳袋』?」

麦野「耳袋ってのは江戸時代に書かれた怪談ものだっけ?」

佐天「それの現代版です。こう見えてケーブルテレビでも流れてるんですよー」

麦野「あ、そうなの?ごめんね、あんまりテレビ見ないから」

佐天「『新・学園耳袋』、日曜夜27時で絶賛放映中でーすっ!」

麦野「朝だよなぁ?それもう深夜じゃねぇし、日曜の夜に見る奴いねぇだろ」

佐天「あれ?今口調が?」



418:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/22(火) 11:46:24.66 ID:1k+vy+yM0

麦野「それで?なんでアタシがその番組に出てんのよ、つーかゲストって何?」

佐天「えっとですね、都市伝説ってご存じでしょうか?人面犬とか、花子さんみたいなの」

麦野「そりゃまぁ話ぐらいは」

佐天「番組がそんなあったかも知れない、無かったかも知れない話を追いかける、って主旨なんですが」

麦野「無かったかも、のはただの捏造よね?」

佐天「がぁっ!しかぁし!最近学園都市でも妙な噂が流れているので、ここは一つ街の方から話を伺えればな、と」

麦野「急に言われても――あー、知り合いで一人、好きそうなのはいるかー」

佐天「マジですかっ!?是非ご紹介をお願いしたいですっ!」

麦野「ん、まぁいいけど――(暗部って訳じゃなくなったし)暫く待ってれば来ると思うわ」

佐天「ありがとうございます」

店員「――すいません、お客様。相席をお願いしたいのですが」

佐天「あたしは別に構いませんけど」

麦野「私も別に」

店員「ありがとうございます――お客様、どうぞこちらへ」

壮年の男性「いやぁ申し訳ない。お友達の会話は邪魔しませんから、どうぞ続けて下さい」

壮年の男性「コーヒーを一つ下さいな。あと軽く食べられるものを」

店員「承りました。少々お待ち下さいませ」

佐天「外人さんですかっ?」

麦野「あ、こら!」

壮年の男性「いえいえその通りですからねー。ポルトガルから来ました――ってカメラ?」

佐天「今ちょっと学園都市内のケーブルテレビの企画で、都市伝説について調査してるんですよー」



419:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/22(火) 11:49:15.38 ID:1k+vy+yM0

佐天「宜しければおじさんもご存じのお話があれば、是非」

壮年の男性「都市伝説ですか?とは言っても在り来たりのものしか存じませんよ」

壮年の男性「私としてはこちらで流行ってるものに興味がありますが」

麦野「(ノリノリだな、おっさん)」

佐天「こっちで、ですか?うーん……白いカブトムシの大量発生以外、これといって面白そうなのはないんですよねぇ」

壮年の男性「実験動物的なものが逃げ出した――エイリアンアニマルみたいなものでしょうか」

佐天「ですかねぇ。チュパカブラスもその類って言われてますし」

壮年の男性「私も仕事柄、色々な所を歩き回っていると、ご当地モンスターは結構聞きますな」

佐天「ほうほう。どんな感じの?」

壮年の男性「それは――では、なく。学園都市の話では?」

佐天「いやもうぶっちゃけ目新しいの無くてですねー。次はどうしたもんかって困ってるんですよ」

壮年の男性「では定番的なものでいいのではないですかな?色物ばかりを追うのではなく、初心へ返る意味合いも込めて」

佐天「初心、ですか……あー、それじゃ『人攫い』なんて話がありますねぇ」

佐天「能力の高い子供がいつの間にか居なくなっていたり、みたいなの」

壮年の男性「……ここってそういう所なんですか?」

佐天「いやいやっ!違いますって、噂ですよ、噂」

佐天「あたしの友達には能力の高い人もいますけど、お二人はふつーにしてますからっ!」

麦野「(いやぁ、そいつらがレアケースって可能性もあるけど。実際『書庫』の改竄は日常茶飯事みたいだし)」

壮年の男性「日本では『神隠し』でしたっけ?カミサマが連れて行ったりする感じで」

佐天「あー、そっちの神様はお一人ですもんね」

麦野「人んちの信仰対象をお一人様みたいに言わないの」

佐天「あ、すいませんっ」

壮年の男性「いえいえ私も一応十字教徒ですけど、そんなに信心深いって訳じゃないですので」

壮年の男性「……神隠し――あぁ、そう言えばこちらにもありますね。有名な人攫いのお話」

壮年の男性「『ハーメルンの笛吹男』、とか」



420:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/22(火) 11:51:23.85 ID:1k+vy+yM0

――喫茶店

店員「お待たせ致しました。ではごゆっくりどうぞ」

壮年の男性「ありがとうございます」

佐天「あー、昔絵本で読みました。ネズミを退治するけど、子供も連れて行っちゃうみたいなの」

麦野「……あれってペストって説があるけど。だから耐性の弱い子供が一斉に死んじゃった、って」

壮年の男性「はい、その説もあります。ネズミは黒死病を媒介しておりましたし」

壮年の男性「墓地と納骨堂の関係から、土葬から火葬へと転じて行ったのも関係性がありそうですよ」

麦野「他にも十字軍遠征の暗喩と言うのもよく聞くわね」

佐天「子供達がですか?」

壮年の男性「猫も杓子も、という勢いでしたからねぇ。そもそも巡礼者を保護しながら行く小規模のクルセイドもありましたし」

壮年の男性「でも途中で力尽きたり、売られていったりと悲惨な最期もあったようですよ」

壮年の男性「そこら辺は『少年十字軍』に詳しく書かれて――確か日本のマンガにもあったような……?」

麦野「そこまでして結局、聖地を取り戻したのは第二次世界大戦後だしね。しかも正確には十字教徒じゃないし」

壮年の男性「それを言われると辛いものがありますな。当時ですら様々な国の思惑で振り回されてきましたし」

壮年の男性「同じ十字教国を襲撃したり、東方植民地を拡張したりと混沌とした状況になってましたから。えぇ」

麦野「オスマントルコは、異教徒の存在も税金付きで認めてたんだってぇから、色々と底が知れるわ」

壮年の男性「いえいえ。それは一概に言えませんよ」



421:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/22(火) 11:53:08.57 ID:1k+vy+yM0

壮年の男性「当時のスルタンはアンティオキア公国を滅亡させ、国民は殺すか奴隷にしてますから」

壮年の男性「それ相応の危機感を十字教側は抱いていたかと」

壮年の男性「実際、裏付けるように15世紀には帝国がヨーロッパへ侵攻していますからねぇ」

壮年の男性「彼の勇名轟くHELLSING――もとい、ヴラド=ツェペシュ公が活躍されたのもその辺りです」

佐天「あ、知ってます。外から攻めてこられないよう、ワザと残酷な刑罰をしたって王様ですよね」

壮年の男性「ですね。ただしドラキュラの作者であるブラム=ストーカー氏はアイルランド人である事を鑑みませんと」

麦野「『血を吸う貴族』で『ドラゴン』っつったら、ウインザー朝に『死ね』って言ってるのと同じよね」

壮年の男性「聖ジョージやア・ドライグ・ゴッホ等は王権の象徴たり得ますからな」

佐天「なる、ほど?」

壮年の男性「あぁ脱線しました。笛吹男の話でしたな」

壮年の男性「――その第9次クルセイドが終了したのが1272年」

壮年の男性「そしてハーメルンの街で子供が消えたのは1284年6月26日ですね」

佐天「そんなに離れてませんよね。でも参加したにしては、うーん?干支一回りぶんは近くもないような?」

壮年の男性「時系列を追えばその通りですが、当時は情報の伝達速度もカメのようですからねぇ」

麦野「……そうか。逆に避難するって考えもあるのよね」

壮年の男性「可能性ですがね。後の魔女狩りに関しても集団的なパニックに陥りやすい下地はあるようで」

壮年の男性「現在唱えられている説の中で、最も支持を集めているのが『東方開拓』です」



422:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/22(火) 11:55:28.63 ID:1k+vy+yM0

壮年の男性「子供達は親を捨てて、クルセイドで拡張した東方へと移り住んだと」

佐天「ご両親と別れてまで、ですか?」

壮年の男性「貧しい家庭であれば、遠くへ出稼ぎをする必要に迫られますし、全く珍しい事ではありません」

麦野「まぁそう言う時代だったって話ね」

佐天「でも、だからって笛吹男さんに全て責任押しつけるのもなんかって気がします!」

壮年の男性「日本では人が居なくなった場合、『神様が隠した』って考えるんですよね?」

佐天「神様っていうか、天狗とか、はいそんな感じですけど」

壮年の男性「『子供の失踪』という結果に対し、『神隠し』と言う原因を後付けしました。ここまでは宜しいでしょうか?」

佐天「えぇ。当時は世界情勢なんて分からないでしょうし、客観的に分析出来る人も組織も無かったでしょうからね」

壮年の男性「同様に私達は『子供の失踪』に『笛吹男』と言う原因を後付けしたんですよ」

壮年の男性「神様が怖いから、日本とは違う形になりましたが」

佐天「あー、なるほど」

麦野「つっても推論だけでしょうが」

壮年の男性「西洋では『狼男伝説』が数多く残っています。それこそ『リターナー』と同じぐらいの頻度で」

佐天「リターナー?初めて聞きます」

麦野「日本語の『黄泉帰り』って所じゃないかしら?」

壮年の男性「墓から戻ってくる死人はどこでも聞きますが、西洋は狼男が一杯居ます。それは何故か?」

佐天「狼さんがたくさんいたからでしょうか?」

壮年の男性「はい、つまり?」

佐天「え、えぇっと――パスいちで!」

麦野「何回ルールだ?……ああっと、アレよね。日本には『天狗』って伝説があった。だから天狗のせいにされた」

壮年の男性「西洋には狼が住む深い森があった。だから狼男のせいにされました」

佐天「はい?」



423:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/22(火) 11:57:48.98 ID:1k+vy+yM0

壮年の男性「例えば村で子供がいなくなったとします。日本では天狗の仕業。西洋では狼男に食われたと」

佐天「あー……はいはい。なんか分かったような気がします、はい」

麦野「ちなみに天狗は『あまついぬ』の略だから、一応犬の仕業で東洋共に共通はしてんのよね」

壮年の男性「加えて魔女もヤマンバも性質はよく似ていますし」

佐天「なんて言うか、二人ともお詳しいんですねぇ」

麦野「わたしは知り合いから聞かせられた。つーか詳しいなアンタ」

壮年の男性「私は商売柄色々と――と、そうそう」

壮年の男性「今では『人攫い』は誘拐全般の古い呼び方ですが、元々は東京周辺に出る怪異の事だったそうです」

佐天「え、そうなんですかっ!?」

壮年の男性「えぇ、と言っても山の方?らしいのですが」

麦野「……まぁ、昔は子供がいなくなれば大抵バケモンのせいに出来たからね」

ピピピピッ、ピピピピッ

佐天「あ、すいませんあたしです。ちょっと失礼しますね」

麦野「あぁ」

壮年の男性「お気になさらず」

麦野「……」

壮年の男性「……そう言えば」

麦野「あん?」

麦野「今では大変らしいですけどねぇ。そっちの市場も」

麦野「そっち、って?」

壮年の男性「人攫いではなく人買いの方です。貨幣経済の浸透と言いましょうか、弊害と言うべきなのか」



424:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/22(火) 12:01:03.26 ID:1k+vy+yM0

壮年の男性「昔はアレですよ。貨幣経済の信用なんて皆無でしたから」

壮年の男性「親が中々子を手放さず、『人攫い』専門の集団があちこちに居たんですね」

麦野「……そりゃな。ガキつっても農村じゃ充分に労働力になるんだから、早々手放しゃしねぇだろ」

壮年の男性「でも今はもうダメなんです。だってお金で買えますから」

壮年の男性「ソ連が崩壊して、旧東欧諸国は大不況に叩き込まれました。まぁ実際にそういう土地だったんですが」

壮年の男性「今じゃそこら辺を中心に、人買いのシンジケートが暗躍しているそうですよ」

壮年の男性「お金と引き替えに泣く泣く子供を売り渡す親がぞろぞろと。嘆かわしい話ですよねぇ」

麦野「お前――」

壮年の男性「そして質が悪いのは自国政府が無視している事ですな」

壮年の男性「社会保障費に大した予算は割けない。かといってそういった貧民達を放置しては犯罪の温床となる」

壮年の男性「なので『本来国家が保護すべき社会弱者を外国へ売り捌く』と」

壮年の男性「棄民政策。そして『貧困と犯罪の輸出』とでも言うのでしょうかねぇ」

壮年の男性「ほんと嘆かわしい限りですな」

壮年の男性「効率社会も結構ですが、親が進んで売り飛ばすのはいやはや――『私達』としても商売あがったりでして、はい」

麦野「私達、ってのは」

壮年の男性「昔は良かった。信仰と信心、そして隣人愛に守られた人々の手から無理矢理子供達を攫えば良かったのですから」

壮年の男性「『ハーメルンの笛吹男』の二つ名に相応しく、どこへ行っても恐れられましたとも。えぇ」

壮年の男性「現地の騎士達だけでなく、十字教徒や裏社会ですらも私達を敵と見なし戦っていた闘争の日々は遠く」

壮年の男性「今はやりがいもない、と言うか私達が出張る必要すらなく」

壮年の男性「僅かな金銭をマフィアにちょいと支払えば、それでもう売買は成立してしまうのですからねぇ」

麦野「――アンタ、何なのよ?どう考えてもカタギじゃねぇよなぁ、あぁ?」

壮年の男性「『宵闇の出口』の元ボスと言っても、科学サイドのあなたにはご理解頂けないかと存じますが」



425:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/22(火) 12:03:14.45 ID:1k+vy+yM0

麦野「分からないわね――取り敢えず、潰しとっかって事以外は」

壮年の男性「おやおや?無辜の一般人に手を上げるのは流石に」

麦野「それが遺言でいい――」

プツッ、ジジジッ

佐天「――あれ?麦野さんは?」

壮年の男性「あぁトイレ――じゃなかった、ミタライ?」

佐天「『おてあらい』ですよ」

壮年の男性「だ、そうですよ」

佐天「そうですか。えーっと、あれ?カメラが少しズレてる……」

壮年の男性「――そうそう。お聞きしたいのですが、こちらの住所をご存じでしょうか?」

佐天「えー、何々……行き方ぐらいは、はい。そんなには遠くないですよ」

壮年の男性「知り合いが『カミジョー』と言う方にお世話になっているそうで」

佐天「上条……上条当麻さんですか!?」

壮年の男性「お知り合いでしょうか?」

佐天「はいっ!何度かお話しさせて貰ってますよっ。そっか、上条さんの知り合いかー」

壮年の男性「はは、奇遇ですねぇ。まるで狙ったみたいです」

佐天「やだなぁ、そんな偶然ある訳無いじゃないですか」

壮年の男性「ですよねぇ。たまたま相席になるなんて、魔法でも使わない限りはとてもとても」

佐天「でっすよねー……あれ?でも席結構空いているのに、どうして相席になったんでしょうか……?」



426:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/22(火) 12:04:31.49 ID:1k+vy+yM0

壮年の男性「恋の魔法、的な?」

佐天「えー、ちょっと年上過ぎますって。あたしのお父さんよりも多分、上っぽいですし」

壮年の男性「それは残念」

佐天「今から会いに行かれるんですか?」

壮年の男性「出来ればサプライズさせてあげたいんですが、花束でも買っていきましょうかね?」

佐天「って言われても――あぁ、じゃこうしません?ビデオメッセージ!」

佐天「今からこのカメラにおじさんのメッセージを吹き込んで貰って、それを先に送っておきます」

壮年の男性「ほう」

佐天「最期に『実は俺も学園都市に来てるんだぜ!』で締めたら意外性ありますよね、ねっ?」

壮年の男性「それは中々楽しそうですが――メモリーカードは宜しいので?」

佐天「RAID?だかって内蔵HDDにも並列して保存するみたいですから、問題ありませんっ!」

壮年の男性「そうですか……本当にありがとうございます。いやぁ初対面の方に申し訳ない」

佐天「いえいえ困っている時にはお互い様ですから」

壮年の男性「――では、後でお友達は解放しておきましょう。お礼になるかは存じませんが」

佐天「……え、はい?」

御坂『おーいっ、佐天さーん』

佐天「あ、ちょっと失礼します――聞いて下さいよ御坂さん!この人――」

壮年の男性「……ふむ、残念。需要はありそうなのですが。まぁ仕方がないでしょうか」

壮年の男性「約束を守る相手には手出し出来ない……まぁベタですがねぇ」

壮年の男性「では改めて――上条当麻君」

壮年の男性「Eu sou seu inimigo.」

壮年の男性「Por favor, escolher voce ou algo para minha garganta, eu vou matar ou comer」

壮年の男性「――Por favor, siga-me. Me e seu inimigo」

ジジッ、ブツッ



427:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/22(火) 12:06:04.71 ID:1k+vy+yM0

――現在 上条の部屋

上条「御坂、今のメッセージって」

御坂「『私はあなたの敵です』」

上条「っ!?」

御坂「『あなたはが私の喉へ噛みつくか、私があなたを食い殺すか選びなさい』」

御坂「『――私を追いなさい。あなたの宿敵である私を』」

上条「佐天さんに連絡取れるかっ!?アイツは!」

御坂 ピッ……

上条「……」

御坂「……出ない」

上条「クソっ!お前ら最期に会ったのはどこだよ!今から急いで――」

佐天『――もしもーし?聞いてますかー……あれ?』

御坂「佐天さんっ!?佐天さんなのよねっ!?」

佐天『えぇまぁはい。あたし以外居ないって言うか。どうしましたか?』

御坂「大丈夫なのっ!?さっき話してた男が居たら、直ぐに離れてアンチスキルを呼んで!」

上条「あと出来れば人の多い建物に入ってくれ!」

佐天『はぁ……?良く分かりませんけど、あたし今病院にいますんで大丈夫かと』

佐天『一緒にいた麦野さん――女の人が体調悪くて倒れちゃったみたいなので、付き添い中です。はい』

御坂「良かった……」



428:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/22(火) 12:07:36.69 ID:1k+vy+yM0

上条「取り敢えずは、だけど。御坂、悪いけど」

御坂「黒子を行かせる――その前に、佐天さん?聞こえる?」

御坂「あの男はどこに行ったか、どこに行くとか言ってなかった?」

佐天『えっと……あぁ!言ってました言ってました、確か』

佐天『「ビデオレターを見終わったタイミングで、直接会いに行ったら驚くかな」って」

ズドォォォォォォォッ!!!

上条「御坂っ!俺の後ろに!」

壮年の男性「大丈夫、お友達に手を出してはいませ――あ、違います。そうじゃない。間違えました」

壮年の男性「確か、こんな時には――そうそう」

壮年の男性「『実は俺も学園都市に来てるんだぜ!』、でしたっけ?」



429:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/22(火) 12:09:28.28 ID:1k+vy+yM0

――半壊した部屋

上条「お前はっ……!

壮年の男性「木原さんのアジトでお会いしましたが、あまり憶えてはいらっしゃらないでしょう?そういう術式ですので」

上条「何しに来やがった、ってのは今更なんだよな」

壮年の男性「強いて言えば一つだけ誤解があるようなので、訂正して頂ければ幸いですな」

上条「なんだよ?まさか今更『敵じゃない』とか言うんじゃないだろうな!?」

壮年の男性「いえいえ、もっと根本的な事です。そしてそれはあなたのこれからにも関係する話」

壮年の男性「実は――私、そちらのお嬢さんに、ここの住所教えてないんですよねぇ」

上条「……はい?」

御坂「……」

壮年の男性「『あ、そういえば頼んだのはいいけど、住所教えるの忘れました』って、後をつけたらこの有様で」

上条「……御坂、さん?」

御坂「えっ……敵の魔術の攻撃よ!騙されないで!」

上条「え、今それ言うの?」

壮年の男性「間違いではないですが、ユダヤ陰謀論みたいに全責任を押しつけられましても」

上条「……いやまぁ、その件は置いておくとして、お前は何なんだ?『木原』の復讐なのか?」



430:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/22(火) 12:11:47.22 ID:1k+vy+yM0

上条「一体何がしたいんだよっ!」

壮年の男性「あぁすいませんね、上条君。あなたに直接用事はなかったんですけど」

壮年の男性「バードウェイさんが見当たらないもので、こちらへお邪魔すればもしかして、と」

壮年の男性「念のために確認しますが、お知り合いですよね?」

上条「――お前、バードウェイに何かしやがったのか?」

壮年の男性「いえ、そんなに大した事は特に。ただちょっとだけ――」

壮年の男性「当たったら蒸発する程度の術式で、隠れていたビルごと攻撃し――」

上条「お前えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」

壮年の男性「――人の話は最後まで聞きましょうか。『戦車』」

 魔術師との間の空間、遮るものが何かも無かった所へ、くすんだ銀色の塊が現れる。
 馬に引かせるタイプの『戦車』、骸骨のレリーフの入ったそれが突進してくる。

 轢かれる。そう把握するよりも先に右手を動かす。

上条「『右手』を知らねぇのか!」

壮年の男性「はい。存じています」

 バキィィンッ、といつものように無力化させる音が響き――数瞬後、数百キロの鋼鉄の塊に上条は跳ね飛ばされていた。

御坂「ちょっ――と!」

 磁力を利用して壁を駆け上がった御坂に抱き留められる。

壮年の男性「そりゃ対策ぐらいはするでしょう?これは、アレです。クロムウェルさんのゴーレムと同じで」

 男がカードを取り出すと、戦車は男の前までバックしていく。

壮年の男性「異能の力を打ち消しはすれど、確定してしまった結果は消せない――鋼鉄の塊を動かす魔力は消せる、が」

壮年の男性「慣性で飛んでいくのはどうしようも無い。まぁ銃弾を撃ち込んだ方が早い気もしますけどねぇ」

御坂「鋼鉄?だったら――私が!」

 グゥン、と戦車が止まるべき位置を大きく越え、玄関もろとも男を破壊しようとする。

壮年の男性「――『愚者は天に昇りて皇帝となる』」



431:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/22(火) 12:13:43.31 ID:1k+vy+yM0

 魔力が男を中心に渦を巻く。当然魔力を知らない者には見えないが、御坂の電磁波を読み取る能力が異様な圧力を察知していた。

上条「野郎っ!」

御坂「ダメ!?あれは、ダメっ!」

上条「離――」

壮年の男性「――『皇帝は教皇を弑逆して星を堕とす』――」

 御坂の磁力が失われる程、周囲には魔力が荒れ狂う。
 バチバチと火花のように飽和状態となった空間に、審判者の声が轟く。

壮年の男性「――『そして下されるは永劫からの鉄槌』」

 誰の目にも見えるようになかった魔力――『天使の力』が明確な形となって現れる。
 ただ一振りの、しかし人の背丈を遥かに超える。

 『戦槌』が。

上条「だから効かねぇつっってん――」

 怒鳴るが早いか、一撃を入れようと。

壮年の男性「……残念。この程度でしたか」



432:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/22(火) 12:15:27.58 ID:1k+vy+yM0

 振り下ろされる狂気へ『右手』を突き出して消し去る――筈の力が、明確な質量を伴って押し潰してくる!

上条「なんだ……これはっ!?」

壮年の男性「あなたが打ち消す能力であれば、常に供給され続ける膨大なテレズマを叩き込めばいいだけの話。加えて」

 パァンッ。

上条「……ぐぁっ……!?」

壮年の男性「魔術師だからといって銃を使ってはいけない話もなく。私の所もバードウェイさんの所と同じで、純粋な魔術結社ではないんですね」

壮年の男性「……ま、言っても仕方がないでしょうが。それでは、ではでは」

壮年の男性「――おやすみなさい、上条当麻君。良い悪夢を」

 全てが吹き飛ばされる。
 壁、天井、床。それら全てを撃ち抜き、崩壊させていく

 受け止めずに投げ出せば、と言う考えが脳裏に浮かぶが、この規模で術式を発動した以上、下手に弾き飛ばせば、飛ばした先で二次被害を生みかねない。
 かといって手を離してしまえば、背後の御坂や下に住む住人達にまで被害が及ぶ。

 当然、術式を放った側にすれば、『他人を見殺しに出来ない』のですら、想定内だったのだろうが。



433:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/22(火) 12:16:42.80 ID:1k+vy+yM0

 アパートの消失は避けられない。だからといってこのまま抱えていれば崩壊に巻き込まれる。
 仮に万が一、『天使の力』が途中で消えたとして――物理的に、ただ当然の事実として。

 レベル0がアパートの崩落に巻き込まれれば、死ぬのは必然だ。

上条(やば……これ、詰んだ……か?)

 往生際の悪い男が、起きない奇跡を望む。背後に庇われてる少女の方は、まぁこれはこれで悪くないかも?と思い始めた頃。
 起きない奇跡は起きない変わりに、現れるべき必然は堂々と登場する。

少女「『世界は22に別れ、千々に別れた世界で愚者は知識を求め旅に出る――』」

少女「『――吊し人は罪を知り智恵を得て隻眼となる――』」

少女「『――短い旅の果てに旅人は魔術を友とし罪を母に迎え、法を従える女教皇とならん!』」

 ゴゥン。ただそれだけの音が響き。
 全てを押し潰そうとしていた『天使の力』は霧散した。

上条「……バードウェイ……!」

バードウェイ「違うな新入り。ここはそうじゃないだろう。こう言うんだよ」

バードウェイ「『馬鹿で愚かな俺を助けて下さってありがとうございます。とてもお優しくて将来性たっぷりの偉大な――』」

バードウェイ「『――ボス』ってな?」



434:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/22(火) 12:17:39.02 ID:1k+vy+yM0

――半崩壊したアパート

バードウェイ「それにしてもアレだな、私が居ない間に随分とシケた顔をするようになったじゃないか」

バードウェイ「つーか一人欠けた後に早速一人補充しようとするとは、中々大物ではある」

上条「違うよ!?なんでそんな話になってんのっ!?」

壮年の男性「甲斐性で御座いますなぁ、こればっかりは業かと」

上条「あれ?お前も敵なの?分かってたけどさ」

バードウェイ「えっと……なんだっけ?『岸田メ○?』」

壮年の男性「『宵闇の出口』の『Homem de ratoeira』……笛吹男(パイパー)と呼ばれておりますれば」

バードウェイ「一度殺したよな?」

笛吹男「えぇ、そちらも今朝方始末した筈ですが?」

バードウェイ「死体の確認もせずにさっさと立ち去った奴が、言うべき台詞じゃない」

笛吹男「そちらも同じでしょう。私に変装した部下の、顔の皮すら剥がずに立ち去ったみたいですし」

バードウェイ「そうだなぁ。お互いにミスがあったという事で水に流そうじゃないか」

笛吹男「ですなぁ、痛み分けですか」

バードウェイ「では改めて」

笛吹男「はい」

バードウェイ・笛吹男「殺す――」

 カッ!

笛吹男「これは――閃光弾っ!」

バードウェイ「――と、思ったんだが。今日はちょっと忙しくてね」

バードウェイ「揃ってしまった『断章のアルカナ』は暫く預けといてやるよ。もう少し借りたオモチャで寂しく遊んでいればいい」

笛吹男「『明け色の陽射し』のボスともあろうお方が、盗人相手に逃走ですか?いやはや過去の威光も地に落ちましたなぁ」

上条「テメェっ!」

バードウェイ「無駄だ。魔術を撃ち込んでも防がれるだろうし、お前が行っても『戦車』に撥ねられて終りだ」

バードウェイ「それより――行くぞ」

上条「バードウェイ?飛び降りてもここ五階――のおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?」

御坂「ちょっ!?待ちなさいよねっ!」

バードウェイ「これで落下制御魔術失敗したら笑い物だろうなぁ」

上条「笑えないよっ!?だって笑う前に死んじゃう、死んじゃうからっ!?」



435:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/22(火) 12:19:29.36 ID:1k+vy+yM0

――XX学区 路上

バードウェイ「ここまで来れば大丈夫だろう」

上条「……本当に?それ映画の世界だと死亡フラグだけど」

上条「つーか御坂は?地面に落下した時には居た筈だけど」

マーク「お嬢さんは私達の方で送り届けておきましたよ」

上条「ならいいけど、ってかすげー久しぶりだな」

バードウェイ「ご苦労だった。車を」

マーク「はい、ボス……少々混んでますので10分ほどかかるかも?」

バードウェイ「チッ。余計な気遣いを」

マーク「何の事か分かりませんが。暫しお待ち下さい」 サッ

バードウェイ「――だ、そうだ?」

上条「あぁはいどうも?ってかさ、アレなんなの?『木原』は終わったんじゃなかったの?」

バードウェイ「巻き込んでおいて気が引けるが、ここからは進む道を分けようか」

上条「バードウェイ?」

バードウェイ「君はそちら、私はこちら。線引きはきちんとしないとな」

上条「……えっと、バードウェイさん?」

バードウェイ「さんは不要だ。というか白いのもお前も外見で人を判断しすぎじゃないか?」



436:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/22(火) 12:22:35.95 ID:1k+vy+yM0

バードウェイ「あの魔術師は私達の方で始末をつける。君は『他の連中に累が及ばないか?』と案じているのだろうが、それはない」

バードウェイ「奴が人攫いする時には必ず魔術を使う。というか使わざるを得ない。子供であろうが、人一人を運ぶのは困難だからな」

バードウェイ「我々はそれを探知して的確に攻撃する――というか、して見せた」

バードウェイ「以後、奴が不用意に『そっち系』の魔術を使いはしない。居場所がバレるからな」

上条「アイツはもう俺や御坂達を巻き込まない?」

バードウェイ「それは私が生死不明だったせいだよ。以後は不用意な真似は出来んさ」

バードウェイ「私達を潰すまでは一切手を出さないだろう」

上条「……そうか。それじゃ俺はどうすればいい?」

バードウェイ「気になるようだったらお友達の側に居てやれ。ついでにフラグの一つも立ててやれば安心するだろう」

上条「あ、いやそうじゃなくって、お前を手伝うからどうすればって、意味で」

バードウェイ「やめろ馬鹿者、手を出すな。『アレ』は私達の獲物だ」

上条「お前……ムキになってんのか。お前らしくも――ない、事もないけど」

バードウェイ「……ならないといけないのさ。どうしても」



437:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/22(火) 12:24:24.09 ID:1k+vy+yM0

バードウェイ「魔術結社だなんだと言ってはいるが、その実態はマフィアと変わらん」

バードウェイ「名誉と闘争、表沙汰にならない歴史の表面下での戦争は当たり前だ――事実、連中を一度壊滅させたのは私だしな」

上条「……」

バードウェイ「お前も奴が不合理な動きをしていたのに気づかなかったかね?」

上条「そういや……知り合いの子と会ってたけど、人質には使わなかったり」

上条「さっき撃たれたのもペイント弾……ワケわからねぇよ」

バードウェイ「一応、ではあるが『関係無い人間を極力巻き込まない』という配慮をしたんだろうな。建前上は」

バードウェイ「馬鹿者が中途半端に首を突っ込んでいた手前、『灰色』として攻撃したんだよ」

上条「……あれ、どう見ても本気だよね?大人げないにも程があったよね?」

バードウェイ「奴がぶっ放す前、警告や知己かどうかの確認はしなかったか?まさか手を先に出したりはしてないだろうな?」

上条「家を壊したのはあっちが先だよ!」

バードウェイ「分かり易い解説どうも。筋は通しているのか、あぁ気分が悪い」

バードウェイ「アイツも『そう』なのさ。数百年――あぁいや、奴は笛吹男の後継を自称しているから700年以上か」

バードウェイ「だから『面子』を何よりも重んじる」

上条「お前への復讐なんだろ?だったら余計に放っとけねぇよ!」



438:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/22(火) 12:25:49.32 ID:1k+vy+yM0

バードウェイ「涙が出る程有り難い話をありがとう、上条当麻君。だがね、こうも考えて欲しいんだ」

バードウェイ「『魔術結社へ復讐しようとする男を、学園都市製の能力者の力を借りて倒した』と」

バードウェイ「我々は業界から笑い物にされるだろうね、確実に」

上条「それの――何が悪ぃんだよ!それで助かるんだったら――」

バードウェイ「ダメなんだ!そうじゃないんだよ!」

バードウェイ「確かに私の命は助かるかも知れない。結社の仲間達も命を落とさないで済むかも知れない」

バードウェイ「でも、私達の心が死ぬんだ。プライドが!魂が!そして存在意義がだ!」

バードウェイ「自分達の不始末、しかも相手が見かけ上は堂々と臨んできているのに、第三者の力を借りられる訳が無い!」

バードウェイ「私達が面子を失うって事は、そういう話なんだよ!」

上条「それは」



439:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/22(火) 12:27:16.31 ID:1k+vy+yM0

バードウェイ「……例えばの話。自分のミスから2万人近い命を生み出し、1万人が殺されたとしよう」

バードウェイ「どう足掻いても、逆立ちしたって勝てない相手に死をも恐れずに立ち向かっていった」

バードウェイ「それは何故だ?どうして彼女はその選択肢を掴んだんだ?」

バードウェイ「戦わない理由なんて、それこそ幾らでもあったろうに」

上条「……」

バードウェイ「……君が戦った理由と大して変わらない。他人からすればおかしな生き方なのだろう」

バードウェイ「魔術結社の矜持。今や朽ちかけてる古い樹の戯言かも知れない。けれど――」

バードウェイ「――それをしなければ、私が、私でなくなってしまう――」

バードウェイ「――死ぬなんかよりも、それはずっとずっと怖いんだ」

上条「……」

バードウェイ「だからもう、ここからは別れよう。上条当麻」

バードウェイ「魔術サイドと科学サイド。そんなものを気にしているのが馬鹿馬鹿しくなるぐらい」

バードウェイ「僅かな間だったが、楽しかったよ」

上条「バードウェイ……」

バードウェイ「では――こんどこそ、サヨナラだ」



440:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/22(火) 12:29:34.35 ID:1k+vy+yM0

――XX学区 路地裏の路地裏

上条「――って遅いなマーク。渋滞にでも巻き込まれてんのか?」

バードウェイ「そうだなぁ、時間帯で言えば混み合う――待て待て、違うだろ、そうじゃないだろ」

上条「道間違ったのか?大丈夫、そんな時には地図アプリがだな」

バードウェイ「道を間違ったのは私じゃない。お前だ、お前」

上条「先に歩いてないのにその無茶振りはどうかと思うんだよ、うん」

バードウェイ「いやいや、だから!お前は科学サイドだろうが!」

バードウェイ「え?じゃない!さも当然のように何着いて来ているんだっ!?」

上条「いやだって、手伝おっかなって?」

バードウェイ「……貴様はホンッッッッッとに人の話を聞いてないんだな、あぁ?」

バードウェイ「これは、私達の、ケンカだ」

バードウェイ「分かるか?日本語は通用するんだよな?肉体言語がいいって言うんだったら、そっちでもいいぞ?」

上条「そんなイジられかたは初めてだっ!?」

バードウェイ「何度も言ったが、面子やら誇りやらが魔術結社としての有り様だ」



441:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/22(火) 12:31:19.31 ID:1k+vy+yM0

バードウェイ「だから貴様が出る幕は――」

上条「いやいや、そうじゃない。違うんだバードウェイ」

上条「俺がお前の味方するってのはそう言う事じゃなくてだ」

バードウェイ「じゃあ何だ?何がしたい?お前の信念は私達の誇りよりも強固とでも言うのか?」

上条「そういう話でもねぇよ。信念に大小は無いだろうし、比べていいもんでもねぇ」

上条「つーか忘れてんのかお前。何回か言った筈だけど」

バードウェイ「何をだよ」

上条「俺は約束したじゃねぇか、だからだよ」

バードウェイ「……うん?」

上条「どんだけ偉かろうか、ボスだろうが、そんなは関係無ぇんだよ」

上条「『俺はお前を守る』って決めてんだ。それ以上でもねぇ以下でもねぇ」

バードウェイ「わ、私をか?貴様が?」

上条「前にも言ったけど、『他の誰かを巻き込むんだったら、俺を利用しろ』って憶えてるよな?それでケンカもしたけど」

上条「今回も、アレだ。俺はとっくに巻き込まれてんだよ!だったらする事は決まってんだろ?」

上条「俺が関係ない、筋違いだなんてよく言えたよな。大体俺は今――」

上条「『明け色の陽射し』の一員なんだろうが!」



442:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/22(火) 12:33:28.32 ID:1k+vy+yM0

――XX学区 路地裏の路地裏

バードウェイ「……ぅ、うん。まぁまぁ?なんだ、そのいいんじゃないか、たわしとしては」

上条「噛んでるよ?」

バードウェイ「煩いな!誰だって動揺するだろう!?その、一応確認するんだが、本気なんだよな?」

バードウェイ「……『明け色の陽射し』の一員的な話は?」

上条「こんな時に嘘吐くなんて有り得ねぇだろ」

バードウェイ「いやまぁ、うん――本気、か?本当の本当に?」

上条「何回言わせんだよ。いや、何度でも言うけどさ」

バードウェイ「そ、そうか……?いやでも、私の勘違いと言う事もあるし。まだまだっ私は騙されないぞっこの『幻想殺し』め!」

上条「『女殺し』的な意味は、無い。前にもどこかで言った気がするけど」

上条「――あ、そういやお前、大切なもの忘れてっただろ」

バードウェイ「な、何がだ」

上条「えっと――」

上条(ぱんつ、っては言いづらいよな?んじゃ遠回しでいいか)

上条「大事な、ものだよ。いつもは目に見えないけど、みたいなの」

バードウェイ「謎かけか。大体場違いな話だろうが!」

上条「いや、これは後回しにすべきじゃないんだよバードウェイ。大切なんだって」

バードウェイ「大切、なぁ――それは、もしかして、なんだが」



443:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/22(火) 12:35:58.94 ID:1k+vy+yM0

バードウェイ「とてもとても大切なもので、掛け替えが無くて――」

バードウェイ「――私が居なくなって、初めて気づいた、とか言うんじゃないだろうな?」

上条「……あぁ、その通りだ」

バードウェイ「それだとまるでプロポー――なに?」

上条「何、ってそりゃお前」

バードウェイ「」

上条「……お前が居なくなるまで気づかなかった!あって当然だと思ってたんだ!」

上条「普段は意識しないけどさ、やっぱりその、無くなったら気づくだろ!?」

バードウェイ「お前……いやでもっ!?流石にまだ、早いって言うか」

バードウェイ「誤解するなよ?私もまぁ、うん、嫌いじゃないとは思うんだよ」

バードウェイ「でもほら、こう言うのは段階を踏んで、的なのがあるだろうが!」

上条「好きとか嫌いじゃないだろ!必要だろ!俺にもお前にも!」

バードウェイ「お前は……」

バードウェイ(ここまで強烈に求愛されるとは……!)

上条(ぱんつって必要ですよね、はい)



444:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/22(火) 12:37:49.02 ID:1k+vy+yM0

バードウェイ「……分かったよ、上条当麻。そこまで言うのであれば、まぁ私も覚悟を決めよう」

バードウェイ「元々『結社』にとっては利用価値のある男だ。諸手を挙げて賛成こそすれ、反対する奴は八つ裂きにするから心配はいらん」

上条「お、おぅ?」

上条(ぱんつ穿くのが反対?マークが変態こじらせてんのかな?)

バードウェイ「苦労が無いとは口が裂けても言わんよ。だがしかしその全てから私はお前を護ろう。そしてお前は私を護れ」

バードウェイ「――死が二人を分かつまで、な」

上条「……うん?十年早いんじゃなかったのか?」

バードウェイ「4年弱早いっ!」

上条「なんだろうな、この周期?段々短くなってるけど。ん、そりゃ構わない――何か結婚式のアレみたいだな」

バードウェイ「馬鹿者が!そういうのはアレだっ!……もうちょっと、困るって言うか。いや!困らないけど!なぁ!?」

上条(あれ?俺また地雷踏み抜いたの?もしかしてすっごい大きいの)

バードウェイ「……やれやれ、とんだ『ローマの休日』になってしまったようだが。まぁ仕方があるまい」

バードウェイ「思えばお前がやたら私に構うのも、そういう縁だったのかも知れないなぁ」

上条「それ言ったら、お前は北極で助けてくれたじゃんか?借りは俺の方がデカんだからな」

バードウェイ「いやその、借りとか貸しとか、なんだ……アレだよ、『ファミリー』なんだから」

バードウェイ「助けて当然、助け合って当然だ……でもまぁ、お礼を言うのは、言ってくれるのは、嬉しい、かもな」

上条(ファミリー?あぁマフィアとかでよく言うもんな)



445:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/22(火) 12:39:19.34 ID:1k+vy+yM0

上条「取り敢えずは、あの魔術師ぶっ飛ばしてからだな。全部」

バードウェイ「……あぁ。あったなぁ、そんな話」

上条「大事じゃないですかねっ!?すっごく!」

バードウェイ「人生の一大事に比べれば些末な話だよ。正直、時間を割いてやるのも惜しいぐらいだ」

上条「さっきと言う事違ってやしませんか?……まぁいいから、行こうぜバードウェイ」

バードウェイ「――おい、新入り。私はバードウェイじゃない」

上条「え」

バードウェイ「レイヴィニアって呼ぶんだ!いいなっ!?」



460:田中(ドワーフ) ◆7fp32j77iU 2013/10/30(水) 12:19:36.71 ID:ZbrusG1n0

――路地裏

上条「しかし遅いなマーク」

バードウェイ「気を利かせたつもりなのだろう。もしくは『笛吹男』に襲撃されてるかもしれんが」

上条「ってか、ざっとしか聞いてないけど、車で移動とかあんま隠れてないよな?」

バードウェイ「奴らは学園都市側ではないからな。監視カメラや携帯のハッキングを恐れずに済む」

バードウェイ「むしろ霊装で会話する方が盗聴される恐れがあるぐらいだ」

上条「ふーん。つーか『ハーメルンの笛吹男』のハーメルンってドイツの街だったよな?」

上条「けどアイツ確か、『ポルトガルから来た』っつってるよーな?」

バードウェイ「詳しくは長くなるから歩きながら話そう。待っていても時間の無駄だ」

上条「わかった。けど、どこに?隠れアジト的なとこか?」

バードウェイ「……自分の格好を見てみろ。下手打ったコンビニ強盗みたいになってるから」

上条「ペイント弾喰らった場所がカラーボール食らったみたいになご覧の有様に……」

バードウェイ「その塗料自体に追尾用の魔術が――おい、動くなよ」 クンクン

上条「おぉいっ!?急に顔近づけてどーしたっ!表通りで人多いんだからなっ」

バードウェイ「……ふむ。特にこれといって問題はないか」

上条「えっと、絵面が危険な事になってますよ?つーか魔力感知したの?」

バードウェイ「いや、我慢出来ないほどキツい体臭だったらどうしようと」

上条「関係無ぇなっ!?それと10日以上一緒に住んでる奴が今更だろうっ!」

上条「……あ、俺っ銃弾だと思って撃たれた所に触ってるから、打ち消しちまったのかも」

バードウェイ「妥当な線だろうな。何せ『笛吹男』は『盗躁の魔術師』と呼ばれてるくらいだし」

上条「逃走、闘争?逃げていく方?闘う方か?」

バードウェイ「盗むと躁鬱の躁で、『盗躁』。派手にやらかして盗み出すって意味さ」

上条「どっかの怪盗三代目みたいなの想像した」

バードウェイ「奴らが主に盗んで――攫っていくのは『人』だ。それも子供に限る」

上条「っ!」

バードウェイ「魔術の実験に使って廃人にしたり、どこかへ売り飛ばしたり」

バードウェイ「『宵闇の出口』は元々『黄金の夜明け』と呼ばれていた、大きな魔術結社の一つでな」

バードウェイ「同じく枝分かれした『明け色の陽射し』の親戚だと言えなくもない――が!」

バードウェイ「私達が『効率的に統治する方法を探求する』のに対し、奴らの組織は『盗賊団』が前身、そして解体した後の今もだ」

バードウェイ「だからいつの間にか、奴らのボスは『笛吹男』と侮蔑と畏怖を込められて呼ばれるようになり――」

バードウェイ「――連中も嬉々として自称し始めたんだよ」



461:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 12:21:15.83 ID:ZbrusG1n0

――輸入洋品店

バードウェイ「お邪魔するよ」 カランコロンッ

上条「おいっ!こんな高そうな店で買えないよっ!つーかスーパーでも苦しいぐらいなのに!」

店員「これはこれはボス。ようこそおいで下さいました」

バードウェイ「世話になる。爺は来ているな?」

店員「えぇ、こちらへどうぞ」

上条「顔馴染みの店?……あぁこっちのに来るのも三回目だっけ」

バードウェイ「そうではないよ。ここは『明け色』傘下の店だ」

上条「お前ら店まで経営してんのかっ」

バードウェイ「違う違う。ブリテンに本店があって、ここはその支店」

バードウェイ「ある意味アイルランド人と同じで、生活互助会みたいなものさ」

上条「宗教みたいなもん?」

バードウェイ「というか不思議に思わないかね。これだけデカい科学の街に、魔術結社の一つや二つや三つ、潜り込んでない方が不自然だ」

上条「……いいのかなぁ、これ」

バードウェイ「とはいえ、別に何か工作をしている訳でも、イリーガルな諜報活動をさせている訳でもない」

バードウェイ「たまたま、偶然にも、神の気紛れにより、我が結社の構成員の店があっただけの話」

上条「もしも誰かが捕まったら?」

バードウェイ「個人でした事だ。結社とは関係ない」

上条「ブラック企業じゃねぇか!?」

バードウェイ「ブラックロッジだよ?」

上条「うん、知ってた」

老人「『……ようこそおいで下さいました、レイヴィニア様』」

バードウェイ「『ご苦労。待たせたな』」

老人「『とんでも御座いません。この爺、お嬢様のご命令とあらばどこへでも馳せ参じますぞ』」

上条(見るからに職人って感じの人。仕立て屋さんなんだろう)

上条(てか会話内容は英語だから、半分ぐらいしか理解出来ない……頑張らないと)

老人「『何でもキャベツ野郎と抗争中だとか。ここは私が「鉄血の腕(アイアンブロウ)」にてお助け致します!』」

バードウェイ「『年寄りの冷や水だ、自制しろ』」

老人「『ですがお嬢様!』」

バードウェイ「『お前に何かあっては曾孫と私が悲しむ』」

老人「『……口がお達者になりましたなぁ』」

バードウェイ「『あとキャベツ野郎ではなく、その子孫だな。自称だし、コーカソイドには違いないだろうが』」

上条(キャベツがどうこうって……あぁ、今晩の献立か何か?)



462:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 12:22:12.23 ID:ZbrusG1n0



バードウェイ「『お前の方こそ口に気をつけろ。我が大英帝国が植民地を失ったサムライの末裔だぞ』」

老人「『否定はいたしませぬが』」

バードウェイ「『そもそもアレはルーズベルトがアカの狗に成り下がった結果だよ――というか、さっさとやってくれ。時間が惜しい』」

老人「『それでは』――それでは、こちらへどうぞ、お客様」

上条「はい――お前は来ないのか?」

バードウェイ「……自分の下着姿を嫁入り前の淑女へ見せようとは、随分いい趣味をしているなぁ、貴様」

上条「違う!?そうじゃなくてだ。連中との絡みって意味だよ!」

バードウェイ「心配はいらん。というかしてもいない」

バードウェイ「だってこれからはお前が守ってくれるんだろう?」

上条「……言った手前守るけどさ。危機意識ぐらい持とうぜ?」

バードウェイ「言って事は守らないと。なぁ、『お兄ちゃん』?」

上条「気がつけば妹が四人!その内半分が俺より年上って……?」



463:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 12:23:18.05 ID:ZbrusG1n0

――バットヤード

老人「ではお召し物を脱いでそちらへお立ち下さい」

上条「あ、はい」

老人「細かい採寸を致しますので、少しくすぐったいかも知れませんがご辛抱を」

上条「はい、大丈夫です――っていうか、代えの服を出してくれるんじゃ?」

老人「えぇ、それも致しますが、新しい服をつくのに寸法は知らねば――と、もしかして何も聞かされておいででない?」

上条「というか追ったり追われたりしてんのに、こんなんでいいかな、と」

老人「パイパーについての子細はご存じで?」

上条「こっちに来てからは多分、最初っから関わってます」

老人「……ふむ、だから。でしょうか」

上条「何がですか?」

老人「いえ独り言で御座います。では失礼致します」

上条「いやあの待って下さいよ。採寸はいいんですけど、何か服を仕立てるって事ですよね?」

上条「遠慮したいって言うか、貰う理由が無いって言うか」

老人「代々続いておるしきたりで御座いますれば、あまり深くはお考えにならない方が宜しいかと」

老人「所謂『新入り』へ対し、入社に当たって服をプレゼントされております。私の一族は代々仕立てる任を仰せつかっておりますれば」

上条「『明け色』のって事ですよね?」

老人「確かに金銭的な価値は……まぁ、ほんの少しだけ御座いますよ。ユニークなCloseの、衣服の形をしたゴミに比べればですが」

上条「口悪いなっ!?結社の人って全員そうなのかっ!」

老人「確かに新入りでは風格も経験も浅く、大抵はスーツが似合わない――『服に着られている』状態となるでしょう」

老人「ですが、それでよいのですよ」

老人「経験が無ければ積めばいい、風格もその内出て来るでしょう。結社の中で揉まれていけば、いつかは」

老人「『立派な服に見合った中身になる』、それだけの話で御座います」

上条「……」

老人「親が子供の成長を願って、少しだけ大きい服を買う。まぁそんなようなものですなぁ、要は」

上条「……期待されるのはプレッシャーもあるけど、ちゃんと応えたいなっては思う」

上条「そうじゃないと、相手の『信用』を裏切る事になるから」

老人「結構。それだけ知っていれば充分。まだ辞退されるおつもりでしたら、一発殴って叩き出す所でした」

上条「またまたー、ご冗談を……冗談ですよね?」

老人「お嬢様は孫娘のようなものですからなぁ。口先で騙すような男には容赦致しません」

上条「まぁちっさいのに良くやってるし。バードウェイ」



464:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 12:25:23.33 ID:ZbrusG1n0

老人「癖の強い魔術師の集まりにも関わらず、裏切り者を全く出さない理由はそこいら辺にあると私は考えております」

上条「まず信頼しないと信頼してくれないって話?」

老人「それでも最初から信用に値しない、どころか会話する余地のない連中は多う御座います」

老人「ライム野郎の教会系魔術師なんか、内部監査と粛正が恒例行事ですから」

上条「……あんまり弁護はしたくないけど」

老人「ふむ?」

上条「アイツらの目的は『イギリスを守ろう』って事なんだから、それだけデカい組織じゃないと出来ないだろうし」

上条「面子集める上で色々と入り混じまうのは、何か仕方がないって気もするけど」

老人「ますます結構。共通の理念などと言う看板が無いと理解されておいでだ」

老人「余所様がどうであろうと、我々は我々のスタイルを守れば良いかと」

上条「でも個人的にはさ。連中も国が好きで人が好きでやってる奴も居て」

上条「それを、その事実を見なかったフリにも出来ないって言うか」

上条「……バードウェイの後見人っぽい人に言うのは、良くないとは思うんだけど」

老人「ほぅ、ご存じの上でも我を通されるか?」

上条「ちょっと前にあいつが『自分が自分じゃなくなるのは死ぬより怖い』って言ってたんだけど」

上条「……俺、頭悪いから正直良く分からなかった。でも」

上条「ガキを守るのは大人の役目だろ?『結社』――お前らが、今までしてこなかった事をだ」

上条「俺がしようって約束したんだよ」

老人「……クソ生意気な東洋人め。地獄へ落ちろ、サンドリヨンの継母に食われてしまえ」

上条「だから口悪ぃな!?バードウェイの口の悪さはお前らが影響したんじゃないのか!」

老人「採寸はもうしてやったから、さっさとそこにある予備のスーツを着て出て行け!シャツと一緒にハンガーにかけてる奴だ!」

上条「これ?」

老人「あぁそれじゃない!そんな若造が着る、ラペルの厚いみっともない奴じゃダメだ!」

上条「ラペルって?」

老人「スーツの下襟がラペル、上襟がカラーと言うんだ。幅広い不格好なラペルが流行ったのは、カブトムシとか言う若造の影響だ」

上条「ビートルズって言えよ。あんま知らないけど」

老人「いいか?ライム野郎の紳士ってのは、胸ポケットにハンカチを入れるもんだ。こういう風にさり気なく」

上条「あー、映画とかで見たような」

老人「けどワイドラペルだと引っかかるんだよ。ほれ」

上条「確かなんかみっともないかも。バランス悪い」

老人「そうそう。だから本場の人間は黙ってハンカチを差すもんだ。どうせ持ってないんだろ?くれてやるから持っていけ」

上条「マジで?いいの?」

老人「どうせ売るほど余ってんだから問題ない。店の客に一枚を二枚分の値段で売りつけるから心配するな」



465:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 12:26:32.56 ID:ZbrusG1n0

上条「商売人として問題がありすぎるだろ」

老人「どうせ高く売れば高いだけ有り難がる馬鹿者どもだ。その筋の商品、一年程度見てれば分かるような違いにも、一生気づかないような連中だぞ?」

老人「スーパーの野菜売り場で腐りかけのキャベツ買って来ようが、目利きの問題だろうが」

上条「さっきと言ってる事違うな!ユニークなナントカはどこ行った?」

老人「物の価値に合ってるかどうか、って話だよ。ガキには理解出来ない」

老人「あぁそうそう。お前の名前はなんて言うんだ?刺繍するのに必要だろう、書いていかないなんて気が利かない東洋人だな」

上条「いやそこまでしてくれなくたって、別に」

老人「仕事なんだよ。じゃなきゃ誰が貧乏そうな東洋人の相手なんかするもんか。ここへ書いていけ」

上条「……ムカつくなぁ。えっと……」 カキカキ

老人「なんて読むんだ?最初の二文字がファミリーネームか?」

上条「名前が当麻、名字が上条だ」

老人「カミジョー……うむ、そうするとトーマ=K=バードウェイか。使徒トマスの名を生意気にも使ってやがる」

上条「……はい?」

老人「まぁ、何とか仕上げといてやるから。服に着られぬように精進しろ若造が」

上条「そりゃどーも」

老人「――あと『パイパー』には殺されるな。注文がキャンセルさせられたら、売り上げが減るからな」

上条「……分かったよ、じーさん。アンタも立派になった時の服を作ってくれるまで、精々長生きしやがれ」

老人「死ぬなって事だろ?最近の若いのは優しくて泣きそうだ」

上条「近いウチだよ。具体的には今月中に立派になってやるよ」

バードウェイ「――おい馬鹿者ども。レディを放置しといて意気投合してるんじゃない」

老人「いえ若造に礼儀を教えていたまでです――さっさと出て行け。仕事の邪魔だろ」

上条「わかったよクソジジイ。もう二度と来ないからな!」

老人「ふざけんな!ウチの女房が作ったマズいフランス料理をお見舞いしてると思ってたのに!」

上条「だったら丁度いい!さっき逃げる前に偶然袋詰めしていたきなこ棒をくれてやるぜ!」

バードウェイ「分かったから暇な時にやれ。今は一応抗争中だ」

バードウェイ「あときなこ棒は私にも寄越せ。割と好物だ」



466:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 12:28:44.84 ID:ZbrusG1n0

――店内

バードウェイ「……本当に貴様は人と仲良くなるのは早いよなぁ」

上条「なんつーか変わったジーサンだよなぁ。お前の後見人みたいだって言ってたけど」

バードウェイ「私の前の前のボスの時代、マーク的な立ち位置にいた魔術師だ。今では引退して趣味で仕立人をしている」

上条「何か偏屈なイギリス人っぽい感じ」

バードウェイ「元々はフランス人で、ヴィシーの際のユダヤ狩りで嫌になってイギリスに亡命。それからずっと、だな」

上条「へー?凄い人なの?」

バードウェイ「彼の作ったスーツは必ず『明け色』へ入った人間へ送られる」

バードウェイ「今では流石に廃れたが、古参の中には生涯着続けた人間も少なくない」

上条「職人さんなんだなぁ……あ、もう一つ聞いて良いか?」

バードウェイ「あぁ私達の下着の替えとかも用意させておいたよ」

上条「いや、そーゆー事じゃ無くって。何で今このタイミングで日本の、しかも学園都市にいるの?」

バードウェイ「……」

上条「……」

PiPiPi、PiPiPi……

バードウェイ「おっとすまない。その質問は後日秘書を通して説明させるとしよう」 ピッ

上条「うん、意外とお前らが緩いのは最近分かってきたような気がする」

バードウェイ「『私だ――が、あぁウルサイウルサイ。もう聞いたのか』」

上条「っていうかお前も日本語で話す必要は無いと思うんだけど」

バードウェイ「パイパー対策でクイーンズよりもマシだろ?無駄だとは思うが――『こっちの話だよ、何?』」

バードウェイ「『……』」

上条(電話の向こうでパニクってるっぽいマークの声がする。緊急事態かな?)

バードウェイ「『……なぁ、マーク?マーク=ハン○?』」

上条「それK-1選手。最近『あっれー?こんなに強かったっけ?』って総合格闘技でも活躍してる人」

バードウェイ「『お前がどうしても言うのであれば、この件は白紙にしよう。何せお前の言う事は大抵間違っていないからな』」

バードウェイ「『いやいや謙遜は要らんよ。滅私奉公とまでは言わないが、お前の忠義にはいつも感謝している』」

バードウェイ「『――だが、それならば当然?「代わり」はいるんだろうな、あぁ?』」

バードウェイ「『「右席全員を倒す」程度の実力、そして「学園都市第一位を蹴散らす」程度の能力を兼ね備えた相手だよ』」

上条「イナイイナイ。そんなバケモノ居るワケが」

バードウェイ「少し自覚しろよバケモノ――『で、どうだね?』」

バードウェイ「『……ふむ?黙ってしまったなマーク。どうしたんだ?』」

バードウェイ「『流石に今のは私も大人げなかったか。流石に撤回するよ。条件も変えよう』」

バードウェイ「『では「正々堂々決闘」なんてどうかな?女を賭けて勝負は神話の時代からのお約束だ』」

上条(バードウェイさんが生き生きとして、ものっそい悪い顔で喋ってる……!)

上条(悪い子じゃないし、むしろ良い子なんだけど……未来の彼氏は相当苦労するだろうなぁ)

バードウェイ「『では本人に話を聞いてみようか』――なぁ?」

上条「はい?」

バードウェイ「将来を誓い合った男女を無理矢理引き離すため、マークが決闘したいと言っているんだが」

上条「今からそっち行って、寝言ごとをぶっ飛ばせばいいのか?」

バードウェイ「『――だ、そうだ。どうする?』

上条(このクソ忙しいのに何やってんだよマーク)



467:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 12:30:12.43 ID:ZbrusG1n0

バードウェイ「『――そうだなぁ、その通りだよマーク。お前は理解が早くて嫌いじゃない』」

バードウェイ「『……いや、心配してくれるのは有り難いと思うし、お前の懸念も理解は出来る』」

バードウェイ「『だがあそこまで熱烈に求婚されてしまっては、覚悟を決めねばならない』」

上条(姉妹か親戚の結婚式でもあんのかな?)

バードウェイ「『了解した。では――何?何だと?』」

バードウェイ「『それは構わないが……』」

バードウェイ「おい。マークが何か話したいんだと」

上条「うん?――『もしもし』」

マーク『えっと……はい、まぁなんて言ったらいいのか、分かりませんが、その』

マーク『ご愁傷様ですっ!いやホンットに!』

上条「『いきなり何なの?お疲れ様です、のイギリスバージョンはその挨拶なのか?』

マーク『いやまぁスペンサー老がエラく気に入ったので、今更手遅れ状態になっていますが、まぁまぁ』

マーク『いいですか、上条さん!生きていれば絶対に良い事はあります!だから早まった真似はしないで下さいねっ!?』

上条「『ごめんな?何か心配してくれてんのは分かるんだけど、何を言っているのか、何一つとして分からないよ』」

マーク『あー……でも、よくよく考えれば俺もクソガキのお守りから解放される、んだよなぁ……?』

上条「『もしもーし?マークさーん?』

マーク『小間使い兼執事兼奴隷の仕事をせずに済む……!』

上条「『おーす?聞いてますかー?』」

マーク『さっさと出来れば結社は安泰。元々ボスの性別年齢も都市伝説みたいなもんだし、不利益はない、か』

マーク『よっし分かりました!そう言う事であれば私は全力でサポート致しますっ!』

上条「『よく分からないけど、お前自分の都合を何かよりも優先させたよね?よく分からないけどもっ!』」

マーク『分かりました!まぁ本人同士が幸せであるのなら、私は涙を呑んで認めましょう!』

上条「『声がとても笑っている気がするんですけど』」



468:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 12:30:59.32 ID:ZbrusG1n0

マーク『それじゃ今日はメールで送ったホテルに泊ってください。そちらから歩いていける距離ですし、万が一であれば応援も短時間で、はい』

上条「『分かった』

マーク『あぁ後、上条さんにお願いがあるのですが』

マーク『実はボス、一人で眠るのが苦手でして、普段は抱き枕かパトリシア嬢を利用されているのです』

上条「『パトリシアが抱き枕扱いってのもアレだけど。んで?』」

マーク『えぇ当然ホテルには無いでしょうし、また襲撃の心配もありますので上条さんが代役で』

上条「『あぁうんいいけど』」

マーク『……コイツ本当に頭悪りぃよなぁ……』

上条「『え、なんだって?』」

マーク『定番の返しありがとうございます。後は……電気とか全部消してくださいね、じゃないと眠れませんから』

上条「『それも分かった』」

マーク『ではご武運を祈っております。明日の朝は応援を連れて伺うと思いますので、何事もなければ待機していて下さい』

上条「『了解。でもあんまりそっちも無理するなよ?死んじまったら、何にもならないんだからな』」

マーク『またまたぁ。上条さんだって「死ぬよりも大切だ」とか言って、色々な所に首突っ込みましたよね?』

上条「『俺は良いの。俺の知り合いは、ダメだ』」

マーク『そりゃ手厳しいですよ。ではまた明日』

上条「『んじゃまた』」 ピッ

バードウェイ「また碌でもない事を吹き込まれたんだろ?」

上条「いや細かい指示が幾つか……あ、メール来た」

バードウェイ「どれ――ホテルだな」

上条「今晩ここに泊まれって指示と、明日は朝一で応援を連れてくるって」

バードウェイ「応援……?無関係な連中は協力出来させられないんだが」

上条「雇った、とかそーゆー事じゃねぇの?」

バードウェイ「それも宜しくないのだよ。向こうがそうしてない限り、こちらがするのは拙い」

上条「あっちは『木原』騒動でやらかしまくってるのになぁ。ってかさ、連中がなんであんな事件仕掛けたんだ?」

バードウェイ「それも話すと長くなるのでホテルへ行こう。と言うか腹が減った。何か作れ」

上条「ホテルじゃ無理だろ」

バードウェイ「長期宿泊者用のビジネスホテル、と書いてある。簡単なキッチンが付属してあり、ツインルームがベースだそうだ、が」

バードウェイ「……あぁ、すまん」

上条「何?どったの?」

バードウェイ「個室だけでお前の部屋よりも広いな」

上条「言わなくていいじゃない?指摘しない方が優しさだって事もあるんだよ!?」



469:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 12:32:11.68 ID:ZbrusG1n0

――ビジネスホテル

上条「――はい、メシ出来たぞー」

バードウェイ「……あぁ味噌汁は良い。疲れた体を癒してくれる……」

上条「ライスは売ってる奴、味噌汁もレトルトのだけど。グラタンは鍋とオーブンレンジで作ったんだからな」

上条「……いや、俺何回も言ってるけど、こんな事してる場合じゃないよね?」

バードウェイ「そこら辺は食事が終わったら話そう。面倒臭いからマークに丸投げしたい所ではあるが」

上条「つーか俺、『お前らが何かやってる』以外の情報が与えられていないんだが」

バードウェイ「おっと、『死ぬなら死ぬでも構わない』出力で術式かまされて、二度も命を助けられた男の台詞とは思えんなぁ?」

上条「そりゃ感謝してるけどっ!それと説明責任は別物でしょーが!……つか俺このネタ一生引っ張られそうな気がする」

バードウェイ「いいじゃないか。それはそれで楽しそうだ」

上条「……まぁどっちかっつーと、お前が無理難題ふっかけてこない方が気になるけど」

バードウェイ「どういう意味だ」

上条「『命を助けてやったんだから協力しろ』みたいな感じで」

バードウェイ「貴様は私をどう思っているのかね?」

上条「ドSロリのバードウェイさん」

バードウェイ「爆破――じゃない、融解したアジトに置いてきたビリビリウサギが惜しまれるな」

上条「……頼むっ!あれだけはっ、あれだけは壊れててくれっ!」

バードウェイ「と言うか何度かスルーしてしまったが、決して恥ずかしい訳でもないんだが、と三度前置きするんだが」

上条「超回りくどいな」

バードウェイ「バードウェイじゃない、レイヴィニアと呼べ」

上条「あー、うん、慣れたら追々な?」

バードウェイ「……でもまぁ人前は少しだけ、ほんの少しだけ躊躇するよなぁ。ふむ?」

バードウェイ「私も『トーマ』と呼ぶ必要もあるし、暫くは猶予期間と行こうか。お互いに」

上条「だなぁ……だなぁ?」

上条(何かスルーしちゃいけない気がするけど、大丈夫かな?)

バードウェイ「それより食べてしまおう。きちんとした飯を食うのは昨日の……朝食以来だ」

上条「四人で食った時ぶりか。随分大変だったよなぁ……ともあれ、いただきます」

バードウェイ「いただきます」

上条「グラタンはお代わりあるから遠慮するなよ」

バードウェイ「食事以外でも今までした事が無い――いや、たくさん食べる女は嫌い、か?」

上条「俺の作った飯なら逆に嬉しいかも」

バードウェイ「貴様はもう少し女性の機微について勉強――は、要らんな。これ以上面倒臭くなったらかなわん」

上条「……言葉の意味は良く分からないが、罵倒されている事だけは分かるからな?」



470:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 12:33:14.53 ID:ZbrusG1n0

――食後

バードウェイ「……眠くなってきた」

上条「事情説明は?アレだよね、お前ら人のアパートぶっ飛ばしておいて、アフターケア無しってどういう事だよ」

バードウェイ「いいじゃないか、別に。お前が知ったからって物事がどうにかなるとも思えん」

上条「魔術に関しちゃそうだけど」

バードウェイ「あぁすまない、昨日の朝から寝てないんだよ……仮眠を取るから、暫くしたら起こしてくれ」

上条「あぁいーよいーよ別に?疲れてるんだったら、そのままベッドで寝ちまえ」

バードウェイ「おい新入り。ボスをベッドまで運ぶ栄誉を与えてやろう」

上条「へいへい。よいしょっと」

バードウェイ「お、てっきり猫の子状態で運ぶと思ったが、中々気が利くじゃないか」

上条「前にもあったよなぁ、ってうか路地裏でマフィアに絡まれてるお前を運んだのが最初だっけ」

バードウェイ「帰りの飛行機でパトリシアに自慢してやったら、盛大に羨ましがられたよ……というか、あの時以来か」

バードウェイ「光栄に思えよ?貴様の腕の中のレディを抱いているのは、父親以外ではお前が始めてだからな」

上条「どこ?どこにそんな人が――待て待て待てぇぇっ!?魔術武器振り回そうとすんじゃねぇっ!」

上条「つーかお前本当に眠いのかっ?何か説明が面倒だからとかじゃねぇの?」

バードウェイ「あーもーねむいなー。このままだと少しぐらいイタズラされても気付かないなー」

上条「お前らから俺はどんな目で見られているの?海原?それとも白い人?」

上条「――降ろすぞ?」

バードウェイ「ご苦労……なんだ、ここはラッキースケベで押し倒すシーンじゃないのかね?」

上条「だってあれフィクションだもの!現実には早々有り得ないよ!」

上条「ってかいつも言ってるけど、実際にあんな事故起こしたら、例えば仲が良ければ良い程気まずくなるよっ!」

バードウェイ「まぁいい……では、おやすみ」

上条「うん。洗い物終わったら来るからな」

バードウェイ「あぁ――あぁ?」

パタン

バードウェイ「……」

バードウェイ(うん……?今何か聞き捨てならない台詞を聞いた気もするな。よし、落ち着いて考えよう……)



471:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 12:34:14.71 ID:ZbrusG1n0

バードウェイ(まずは……あぁスペンサー爺に許可は取ったし、本国にも伝わっているだろう)

バードウェイ(あの爺が気に入った、のだから誰も文句は言えない。というか言ったら老人どもをまとめて敵に回す)

バードウェイ(マークも渋々認めさせた。そもそも若い連中は奴と共闘し、どんな大バカなのかを知ってる。ここまでは良しとしよう……)

バードウェイ(現時点で『明け色の陽射し』がほんのちょっと追い込まれているが、まぁ逆に言えばチャンスでもある)

バードウェイ(『宵闇』の死に損ないどもはいつか必ず仕掛けてきた。それが学園都市であっただけの話)

バードウェイ(地理的にも人員的にもアウェイ。しかも手駒は限られている……)

バードウェイ(そんな状況下でトー――新入りの力を借りて殲滅すれば手柄だ)

バードウェイ(『明け色』の名誉は守られ、実力も認められる。うん。中々悪くないな)

バードウェイ(平時であれば民族やら人種でモメるんだろうが、まぁ解決出来れば悪くない)

バードウェイ(と、なると問題は……)

バードウェイ「……」

バードウェイ(パトリシア、か)

バードウェイ(確かに聡明な上、利発で優しい良い子だ――私に似て)

バードウェイ(その上将来性は充分、絶世の美女に育つだろうな――私に似て)

バードウェイ(……ヤツを側に置いてたら、フラグを立てられるんじゃないか、という不安が……?)

バードウェイ(……むぅ。どうしたものか、さっぱり分からん……)

バードウェイ(起きたら……占いで)

バードウェイ「……」

バードウェイ(……そう言えば、最初の頃タロット占いをして)

バードウェイ(成程、この結果を暗示していた……のか……)

バードウェイ(……『一度争った相手』……『不毛な闘争』……『国際結婚』)

バードウェイ(まぁ……私の腕が良かっ――)



472:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 12:35:55.32 ID:ZbrusG1n0

――深夜

ギュッ

バードウェイ「……うん?」

バードウェイ(暗い……あぁ、どこかのホテルに泊まったんだったか)

バードウェイ(食事を取って……歯も磨かずにそのまま……)

バードウェイ(淑女たる私が有り得ない。まぁ多少は仕方がない。と思うようにする)

バードウェイ(パトリシアの事を考えていたら眠ってしまった……のか。筈だ)

バードウェイ「……」

バードウェイ(暗くて良く分からないが、えっと、アレだ)

バードウェイ(ここはベッドの上だよな、あぁ?それは知ってる)

バードウェイ(柔軟剤の匂いとスプリングが下品なぐらい効いていて、寝心地が悪いような、そうでないような)

バードウェイ(だというのに、だとすれば――)

バードウェイ(私を後ろから抱きしめてるのは、誰、だ?)

バードウェイ「……!」

バードウェイ(……よし、落ち着こう。こんな時には占いをだな)

ギュッ

バードウェイ「……」

バードウェイ(お、おいおいおいおいっ!?幾ら何でも早過ぎやしないかっ?ジャパニーズは奥手だと聞いたぞっ!?)

バードウェイ(昨日の今日でこの展開は、うん、流石に、なぁ?)

バードウェイ(いやまぁ私も、アレだ。法なんてクソ喰らえの結社のボスである以上)

バードウェイ(こう、条例的なものは怖くもない、んだが)

バードウェイ(まぁ……まぁ!その、簡単に許す女だと思われたくもないし?)

バードウェイ(だからといって無碍にするのも、なんかアレだ!可哀想だし!)

バードウェイ(取り敢えずだ。取り敢えずは会話して、雰囲気次第って言うか、うん!)

バードウェイ(……あー、でも着替えとかシャワーとか、ガン無視したんだよなぁ……)

バードウェイ(だなぁ、流石にこの状況は難しいし?)

バードウェイ「……ま、待とうか上条当麻?」

バードウェイ「いやまぁ、そのなんだ?私としては嫌じゃない?嫌じゃないんだがな?」

バードウェイ「その淑女的なものがね?アレがアレしてアレな訳であって――」

シェリー「――んー?あぁ悪ぃ。ついやっちまった」

バッ

バードウェイ「――へ?」



473:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 12:37:22.23 ID:ZbrusG1n0

シェリー「抱き枕、抱き枕……あぁ、こっちか」

円周 スゥスゥ

シェリー「んー」 ギュッ

円周「……むー?なんじー?」

シェリー「……まだ朝じゃない」

円周「んー……」

シェリー「……」

バードウェイ「……おい」

バードウェイ「なんで貴様らが私のベッドでクークー寝こけているんだ馬鹿者どもがああっ!!!」

バードウェイ「いやっ!何となくどっかの誰かが仕組んだのは検討もつくがだっ!」

バードウェイ「だからって同じベッドに来ないでも部屋はあるだろうがっ!なあぁっ!?」

シェリー「……あー、ウルセェ。来いっ」 グッ

バードウェイ「おいっ!人を抱き枕代わりに使うんじゃない!」

シェリー「……クーラーの調節分からねぇんだよ。つーかガキは体温高ぇから、カイロ代わりにいい」

バードウェイ「……貴様らはっ!」

シェリー「……」 ギュッ

バードウェイ「聞いているのかっ?オイコラっ!?」

シェリー「……すぅ」

バードウェイ「……はぁぁぁぁぁっ……」

バードウェイ「バカに付き合っているとバカになる、か」

バードウェイ「……まぁいい。今は、眠ろう……」

バードウェイ「……けど忘れないからな?この復讐は日を改めて……」

バードウェイ「……」

バードウェイ スー



474:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 12:38:21.04 ID:ZbrusG1n0

――2nd.


――ビジネスホテルの一室 朝

バードウェイ「タレ……?このナットウは調味料が付いているのか?」

円周「だねぇ。出し汁とか塩麹とか、黒酢入りの醤油ってもあるみたいだけど」

上条「ウチでいつも買ってる納豆は安さ優先だから、出汁とか辛子とか入ってないヤツなんだよ」

シェリー「いいじゃねぇか何だって」

円周「お姉ちゃんは醤油派だからねぇ。でもトッピングを色々変えると美味しいかも」

バードウェイ「例えば?ケチャップでも入れるのか?」

上条「ベタなのは刻んだネギ、鰹節かな。あっとは……みじん切りにした漬け物っても入れるって聞いたような?」

バードウェイ「それは少し試してみたい気がするな」

上条「ってかイギリス組、お前らいい加減馴染みすぎじゃねぇか。そろそろ英国の誇りを思い出せ」

バードウェイ「煩いなぁ。いいじゃないか、良い物は取り入れてきたのが我らの文化だ」

円周「『大英帝国』名乗ってた割に、食事が全然発達しなかったってのは、どうなのかな?かな?」

シェリー「前にも言ったけど、極端な分業制と見栄の文化で余所は余所、ウチはウチってぇの感じだったからね」

バードウェイ「貴様の先祖が起こした清教徒革命によって、質素を美徳するバカが増えたせいかもしれん」

シェリー「私にゃ関係ねぇだろ。つーか多分先祖じゃねぇわよ」

上条「イギリス飯はなぁ……知り合いがホームステイした時、『毎日毎日嫌がらせされてるのかと思った』って」

円周「それ、本当に嫌がらせされてたんじゃないの?今でも完全な格差社会だよねっ」

上条「最初の飯で出て来たのが、ジャガイモとベーコンの所謂ジャーマンポテトの亜種だったんだって。塩と胡椒のシンプルなヤツ」

上条「結構旨いし、元々あんま強い味付けは好きじゃなかったから、『あ、美味しいですね』っつって喜んだんだけど」

上条「それがね、うん。毎食出て来るんだって」

バードウェイ「あー……困るよなぁ。それきっと年寄り夫婦だろ?」

上条「厚意でやってくれるのは分かってるから、何か言おうとすら出来ず大変だったって」

シェリー「言ってやりゃ良かったんだよ。我慢して食ってる方がよっぽと失礼だっつーのに」

上条「半分過ぎたぐらいから、夕食は和食を作って三人で食べる事にしたんだけど……」

シェリー「何か失敗したの?」

上条「最終日に『孫娘(一桁)をやるからこっちの学校へ通わないか?』って冗談で言われたらしい」

円周「ロ×だったら歓喜なんだけどねぇ、×リだったらばの話だけど」

上条「余談だが、一緒に行った『名前を言ってはいけないあの人』が、無理矢理アレをアレしようとして翌年から留学中止」

シェリー「関係無い話だけど、ヴォルデモ―○は純血主義の割に自分は混血なんだっけ?」

バードウェイ「ヒゲの伍長の爺さまがユダヤ人だった説もあるし、劣等感と自己認識が崩壊するんだろうな」

円周「どっちつかずは両方から嫌われるしねぇ」

バードウェイ「てかお前ら、記憶無い割に結構憶えてないか?」

上条「俺は生活に関する記憶はまるまんま残ってたし、円周もそんな感じじゃ?」

円周「わたしが消されたのは『木原数多』にとって不要な部分だから、日常的な常識は残しておいたんだと思うよ」

上条「と言うか積もる話もあるだろうし、さっさと食って作戦会議しようぜ」

三人「はーいっ」「あぁ」「おー」



475:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 12:39:57.80 ID:ZbrusG1n0

――食後

バードウェイ「――よし、お前ら帰れ」

上条「開幕それかっ!?」

円周「あー、そこら辺の『名誉ある戦い』だっけ?の話は聞いたから」

シェリー「つーかなぁ、黄泉川から連絡あって帰ってみれば家はほぼ全壊だし?」

シェリー「連絡も入れないでお前ら何やってんのよ?」

円周「『それは済まないと思っている。だがこれは我らの、そう「明け色」の問題なんだよ』」

シェリー「円周を拾って、今みたいに『レイヴィニア=バードウェイ』を『他者再生』させてみた」

円周「レヴィちゃんだったら、きっとわたし達も見張らせているだろうなー、って結論が出たから、捕まえて色々お話聞いて」

シェリー「スペースと連絡取って、『じゃ早速』っつって昨日の夜、こっちに合流したのよ」

上条「心配だなー、その見張りの人」

シェリー「大丈夫よ?最初から味方だって分かってたから、無茶させなかったし。うん、させなかったから!」

上条「何で二回言うの?具体的には何しくさって来たの?」

円周「あー、うん。性癖がね、ちょっとアレになっちゃっただけだから」

上条「詳しく話しなさい!つーか肉体壊さなっきゃいいってもんでもねぇし!」

バードウェイ「……帰る家を壊されたから、つまりお前たちも参加する資格はあると?」

シェリー「つーかなぁバードウェイ。はっきり言うが」

シェリー「この戦い、本当は勝算なんてねぇんだろ?な?」

上条「……何?」

バードウェイ「いいえ、そんな事はないよ。私が戦う以上『それ』はない」

シェリー「そもそも、で言えば全部はテメェのお人好しがなけりゃ起きなかったんだよ」

バードウェイ「それも仕方がない。私達が目指しているのは『秩序ある世界の支配』だ」

円周「うん、うんっ!そうだよね、こんな時、『レイヴィニア=バードウェイ』ならこう言うんだよね……ッ!」

円周「『――故に意味のない混沌や破壊が行われそうな場合、介入を躊躇わない』」

円周「『別にお前たちでなくても、あの状況であれば私達は私達の利益のために助けてやっただろうな』」

円周「一生恩に着ろよ愚民どもっ!主に朝昼晩、おはようからおやすみまちっぱい様を崇めるのだっ!」

上条「最後違うよね?別人降りて来ちゃった?」

バードウェイ「やりづらいな……どれ、その口を縫いつけてやろう、お嬢ちゃん」

円周「うん、うんっ!そうだよね、こんな時『木原』なら売られたケンカは買わないといけないんだよね……ッ!」

上条「はいはいそこで『幻想殺し』」 ペチ、ペチッ



476:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 12:40:56.76 ID:ZbrusG1n0

バードウェイ「あイタっ!?貴様、淑女にてを上げるとは何事だっ!」

上条「淑女ならケンカしないのっ。あと円周も分かったか?……円周?」

円周「……」

上条「あ、悪い。痛かったか?そんなに強くいった憶えないんだけど」

円周「気持ちよかっ――むぎゅっ!?」

シェリー「――ってなワケで、今回の事件。クソ木原以前の問題として、私らは最初っから当事者なんだよ」

シェリー「だから、テメェの都合なんか知ったこっちゃねぇし。ダメっつわれても私らは参戦するからな?」

円周「『組織』なんてに捕らわれて躊躇する方が、『木原』らしくないよねぇ、うんっ」

バードウェイ「……どぉにもお前らの厚意がくすぐったくてしょうがないが、まあいいだろう」

バードウェイ「ただし覚悟はして貰いたい。私達と共に来る事になれば、現在の君達の陣営から疎まれる可能性がある」

バードウェイ「最悪の場合、裏切りと見なされ粛正もされかねん」

シェリー「イギリスのクソどもに義理立てするつもりはねぇわよ……つーか『騎士派』の脳筋ども、全っ然変わってねぇじゃねぇか」

円周「わたしも別にー?加群おじちゃんみたいに外へ出るのもアリだと思うしねっ」

バードウェイ「二人に感謝を……まぁ、いざとなればウチで引き取るさ」

上条「良かったな、バードウェイ」

シェリー「とか言ってるバカも――あぁ、成程」

円周「うーん、まさかそう来るとは。まさに電撃戦だよねぇ」

上条「俺?俺がどうしたって?」

バードウェイ「とまぁ色々言った所で、お前らが来た時点で手遅れだからな。これからどうするのかを話そうか」

円周「はーいっ!その前に『木原数多』の事とか、何をどうしてこうなったのか、って聞きたいんだけどっ」

シェリー「断片から大まかな全体像の想像は出来るんだがよ。どうしたって全部のピースが足りねぇ」

バードウェイ「そうだなぁ。確かに君達は聞く権利を有している。何故ならば――」

バードウェイ「――図らずも『断章のアルカナ』を揃えた当事者なんだから」



477:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 12:41:58.19 ID:ZbrusG1n0

――十分後

円周「お茶入ったよー」

シェリー「茶請けは?」

円周「角砂糖ぐらいしかないけど」

バードウェイ「おい貴様ら、人が折角溜めたのにその反応は何だ?あぁん?」

上条「まぁまぁバードウェイさんっ!多分良く分かってなくて『あぁそーなんだ?』ってだけだと思いますからっ!」

シェリー「アンタもスペースみたいに飼い殺しされる姿が目に浮かぶなぁ」

円周「奴隷みたいなお兄ちゃんっ!うん、そーゆーのも嫌いじゃないねっ!」

上条「お前ら人の未来設計図を勝手に描くの止めて貰える?つーか当たりそうでガクブルなんだからなっ!」

バードウェイ「――さて、では全ての発端からだが」

上条「話しちゃうの?もうなんかグダグダになっちゃってんだけど、無理があるよね?」

バードウェイ「半年程前、私が『宵闇の出口』というポルトガルの魔術結社を潰したのが始まりだな」

シェリー「あー聞いた事あるわ。半分都市伝説みたいな、人攫い専門の魔術結社だっけ?」

バードウェイ「正確には『子供を使い潰すのを躊躇わないクズども』だ」

円周「学園都市と同じだよねっ」

上条「嬉しそうに言うな」

バードウェイ「その通りだな」

上条「肯定しないでくれませんか、その、複雑なんですけど」

バードウェイ「そういう意味じゃない、くもないか。実際には学園都市へ『素材』として子供達を提供していたんだろうな」

円周「あー、もしかして『木原数多』とかと交流があったって事?」

バードウェイ「で、なければ舞台をわざわざ『ここ』にあつらえる理由が分からん」

シェリー「想像はついてはいたけど、『木原』も?」

バードウェイ「まぁ待て。物事には順番がある。こっちは素人にも分かるように話さなくてはならないんだよ」

上条「すいませんねっ!えぇっ」

バードウェイ「で、その『宵闇の出口』は私の妹を――大分端折るが、誘拐しようとしたので潰した。連中のボスも殺した」

円周「筈だった?」

バードウェイ「曲がりなりにも歴史はそこそこあるからなぁ。ゴキブリとある意味同じさ」

バードウェイ「『宵闇』とは元々、『明け色』と同じ『黄金の夜明け』と言う巨大な魔術結社から枝分かれしたものだ」

シェリー「『黄金』は19世紀末のイギリスの魔術結社。『獣』のアレイスター=クロウリーが有名かしらね」

上条「どっかで聞いたような……?」

バードウェイ「ただし『黄金』の歴史はもっと古い。表舞台に名が出たのはその時代だったと言うだけだ。そして――」

バードウェイ「『明け色』はもっと古い。当初は『たまたま効率的に人を支配する方法』を探していた人間達の集まりだったのが」

バードウェイ「『魔術を取り込んだつもりが、逆に取り込まれていた』と言う訳だ」

上条「元々の目的は別だったんだよな」

バードウェイ「だがそれは宵闇も同じ、『元々は盗賊団だった』のだよ」

バードウェイ「『ハーメルンの笛吹男』と言う名の、な?」



478:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 12:43:27.66 ID:ZbrusG1n0

円周「あっれー?それっておかしくないかなぁ、だってポルトガルでしょ?ドイツから遠いじゃん」

円周「っていうかEU最西端なんだけど、場所が違いすぎるよね?」

バードウェイ「あくまでも自称なんだよ。そう呼ばれるようになったのか、それとも最初からそうだったのか。それは本人達も知らないだろう」

バードウェイ「ただし分かってる事はある。それは連中が『盗躁』に特化した魔術に長けている事だよ」

円周「とうそう?」

バードウェイ「要は『騒いで盗む』って話だな。伝説にある『笛吹男』のように、騒ぎを起こしてはごっそり頂いていくと」

シェリー「普通の盗賊だったら目立たないようにするわなぁ」

バードウェイ「まぁそんな連中のボス、通称『笛吹男』が今回の裏を引いていたって訳だ」

シェリー「このガキが捕まった時、私の相手をした魔術師か?」

バードウェイ「後から話に聞くに、そうだろうね」

シェリー「いやだけども、私が言うのも何だけど強くねぇぞ、アイツ?」

円周「非戦闘員のお姉ちゃんでも充分渡り合えたんだしねぇ。手加減してたのかな?」

バードウェイ「だから言っているだろう。『盗み』が専門の魔術結社だと」

バードウェイ「場をグダグダにして逃げ出すのは得意でも、正面切ってガチで戦うのは苦手なのさ」

シェリー「待て待て、それもおかしいだろ。だったらお前ら『明け色』はどうしてさっさと始末をつけない?」

円周「えげつない術式で今頃、『もう死なせてくれ!?』って言わせてた筈だしねっ」

上条「人んちを好き勝手言わないの」

バードウェイ「そうしたいのは山々なのだがなぁ」

上条「意外にブラックだったっ!?」

シェリー「……こいつんトコ、マフィアもビビって逃げ出すんだぞ?」

円周「色んな意味で手遅れなんだけどねー。なむなむ」

上条「円周さん、そこを詳しく話してくれませんかね?主に俺の精神安定のために」

バードウェイ「まず、だ。クロムウェルがこの街へ呼ばれたのは何故だ?」

シェリー「なんだよ関係無――ある、のか?」

バードウェイ「詳しくは私も聞いていない。推論の根拠を得るため教えてくれないか」

シェリー「現在残されているタロット――『キャリー・イェール版タロット』の復元作業だ」

シェリー「正確には『現在残っている11枚以外のアルカナを、当時の技法で再現させる』試みだよ」

バードウェイ「かくして『失われたタロットは全てのアルカナが揃った』と言う訳か」

上条「それを使ったから、つまり原初のタロットを使ったから『笛吹男』は強いって事なのか?」

上条「それって『オーディンの槍とそっくりに作った霊装があれば、同じ効果がある』ってぐらいのトンデモじゃねぇのか?」

円周「そんな単純には行かないと思うけど――わたし、なんだよね?悪いのは」

バードウェイ「善し悪しじゃない。先程も言ったように君でなくても助けた――助けざるを得なかった」

バードウェイ「あの時、ネットに拡散していた『木原数多』を殺す際、私は『ハーメルンの笛吹男』の術式を使った。だが、それは」

バードウェイ「あの状況は『全て最初からそう仕組まれていた』ものだったんだよ」

シェリー「……オイ!確かテメェらあん時、『明け色』総出で儀式魔術してやがったよなぁ!?」

バードウェイ「そうだな。それが目的だった。まさに『笛吹男』の名に相応しい手口だと言えようか」

バードウェイ「連中は『私達の魔術に同調し、霊装に蓄えていた魔力を盗んでいった』んだ」



479:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 12:44:23.33 ID:ZbrusG1n0

シェリー「……具体的には?」

バードウェイ「分からん、というか我々でも検討がつかない」

バードウェイ「最低でも普通の魔術の魔力100年以上は確実だろう」

上条「そうか!だから俺の『右手』でも消せなかったのか!」

円周「『常に供給され続ける力』は完全に打ち消せないもんねぇ」

バードウェイ「そうした奪った力を復元させたイェール版タロット――通称『プリマ・タロッコ』へ入れ、奴らのトンデモ霊装は完成した訳だ」

上条「いやいやっ!デタラメ過ぎんだろうが!やり方にもしても杜撰って言うか、強引って言うか!」

シェリー「……私も同意見だ。そんな方法で出来る訳がない」

シェリー「だって『筺の半分が偽物』であり、『魔力も他人の物』でしょ?無茶にも程があるわ」

シェリー「と言うかなぁ、バードウェイ。つーか最初っから疑問に思ってたんだけどよぉ」

シェリー「テメェや人攫いどもがやったら『プリマ・タロッコ』に拘る理由ってのは何なんだよ?」

バードウェイ「……うむ。いい質問だね」

上条「どういう事だよ?」

シェリー「お前にゃ初日に言った筈だがよ――そもそも、だ。『霊装ってのは神話や伝説の武器を模す』んだよな」

シェリー「オティヌスの『槍』だってそうよね。ありゃ全能神としてのオーディンのグングニールの霊装を作るって話じゃねぇか」

シェリー「だっつーのによぉ、どうしてテメェらはあくまでも『タロット』に拘るんだ?」

シェリー「タロットってぇのは『霊装』だろ、ただの?これといった神話や背景もない、ゲーム感覚で何となく伝わってきただけ」

バードウェイ「――これから話す事は他言無用で頼む」

バードウェイ「もしその誓いを破るようであれば、私の親であろうが手に掛けねばならん」

円周「わたし、外に出てようかな?」

バードウェイ「『木原数多』モードにして、バッファ書き込み無効で頼む」

円周「りょーかい――『あぁ?何か用かよクソガキが』」

バードウェイ「クロムウェルは?」

シェリー「聞かなくちゃいけないでしょーが。もしかしたら内容から連中を打倒できる発想が浮かぶかも知れないし」

バードウェイ「……お前は」

上条「誓うよ」

バードウェイ「聞くだけ無駄だったか。では確認が取れた所で改めて」

バードウェイ「実はね、『タロットとは霊装ではない』んだよ」



480:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 12:45:39.15 ID:ZbrusG1n0

シェリー「……はぁ?お前、今更何言ってやがんだよ」

バードウェイ「あれは正確に分類するのであれば。恐らく世界中で全てのタロットを合計すれば数百万セットは存在するであろう、その全てが――」

バードウェイ「――『たった一つの魔導書の写本』なのだよ」

シェリー「――おいっ!?そりゃ――アレだ!……本当、に?」

上条「魔導書ってのは、何だ?」

バードウェイ「禁書目録の保護者たるお前がそれを聞くのか……?まぁいいい。誤解されたままでは不都合だな。専門家、頼む」

シェリー「面倒臭ぇな――たまには人様の役に立てよクソ木原」

円周「『魔術ってぇのは「式」だ。1+1=2って具合に結果も式もある程度決まってる』」

円周「『能力者と違う点は、それを『人が本来持ってる魔力』で呼び込むもんだなぁ』」

上条「……この人、何なの?つーか良く一方通行倒せたよなぁ」

円周「『ただし、この「式」ってのがクセモンでよぉ。科学と違って中々、人が試行錯誤でどぉにかなるってもんじゃねぇんだよ』」

バードウェイ「きっと木原加群の知識でもアクティブになっているんだろう……何故あるのかは不思議だが」

シェリー「『グレムリン』に入る前から研究していたって、おかしかねぇだろうけどな」

円周「『だから魔術師どもは「別世界にある式」を知ろうとしたんだよ。天界とか魔界とか、神話に出て来るような所のよ』」

上条「あるのか?」

円周「『力場の集大成とか、テレズマの集合知と呼ばれているが、まぁ?何かは、ある』」

円周「『実際にそこいらから「魔力」を引き出し、「テレズマ」とか呼んでるようだぜ』」

円周「『そういった知識――所謂「魔術式」を集めて書き記したモンが魔導書なんだよ』」

シェリー「補足しとくが、そういう『異界の知識』は人間にとって猛毒だからな?普通の人間が見りゃ確実に発狂する」

バードウェイ「だから普通は、もっと毒を薄めた『写本』程度でお茶を濁す――んだがな」

円周「『強い力を欲しがる魔術師に取っちゃ悩みどころだよなぁ?』」

シェリー「中世頃なら兎も角、今じゃ徒弟制度の方がメジャーではあるけど」

上条「……なーんか納得出来ないよなぁ。異界からの知識を学べば魔術の使える式が分かるってのは」

円周「『そうなぁ……ある有名な本の中に「海を割って渡る」魔術が記載されている』」

円周「『それの魔導書を目にして「式」を知れば、理解すりゃ、魔力を遣って同じ魔術が使えるようになるんだ』」

バードウェイ「あまりいい例えではないがね。面倒そうで嫌だ」

円周「『ただし「原典」は毒が強すぎる。だから「だれでもわかるおはなし」って写本にして毒を極端にまで薄め、世界中に広がってるんだわ』」

上条「……まぁ魔術師がそうだってのが分かれば、うん」

シェリー「それで?一体『プリマ・タロッコ』は何の魔導書なのよ?」

バードウェイ「『死者の書』だ」

シェリー「んなっ!?」

円周「『へぇ……エジプトの』」

上条「世界不思議発○で見た事ある。王様のお墓に埋葬されたパピルスだっけ?」

シェリー「お前それ――シュメールに続く古ぃ冥界下りの魔導書じゃねぇかよっ!?そんなもんがどうして世界中に複製されてんだっ!?」



481:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 12:47:19.13 ID:ZbrusG1n0

バードウェイ「新入り。内容は知ってるか?」

上条「俺!?えっと……死んだ人の魂が、冥界へ行って審判を受ける、だっけ?」

バードウェイ「そうだなぁ。『毒を薄めた後』の死者の書にはそう書いてあるな」

シェリー「逆じゃないの?それから劣化して広まったのが、テメェらのタロットだっつー話じゃねぇのかよ」

バードウェイ「おいおい、止めてくれよクロムウェル。私はお前の破天荒な所が気に入っているが、中々こう言う所では常識の枠を出られんようだな」

シェリー「んだと……?」

バードウェイ「『王家の墓にあった物が、どうしてオリジナルだって分かる』んだい?」

シェリー「それじゃ――まさか!?」

バードウェイ「今、王家の墓に残っている『死者の書』は魔導書の後半部分でしかないのさ」

シェリー「……あぁクソ!そうか、そういう事だったのかよ!」

上条「すまん、シェリー」

シェリー「タロットってぇのは0番の『愚者』が旅をする物語だってのは知ってるよな?」

シェリー「『魔術師』に会ったり、『隠者』を見つけたり、『皇帝』や『法皇』に会ったり」

シェリー「けど途中からは『死』のカードが出た以降は、死後の世界を彷徨うって説がある」

シェリー「それまでが人物ばっかりだったのに、『悪魔』や『塔』、『太陽』や『月』、『星』……どう考えても抽象的なもんになってくんだよ」

バードウェイ「そして現在伝わる『死者の書』は、タロットの後半部分、それも一部しか表していない」

上条「半分だけしか残っていないってのは、どうしてだ?」

円周「『エジプトの死生観じゃ、生きて死んで一周、じゃねぇのか?』」

円周「『人によっちゃ生き返ってリセットされるんだし、生命のサイクルが「死後」も含まれてて当然だぁな』」

バードウェイ「私の前のボスの見解と同じだね。彼らにとって死後とは『人生の残り半分でしかない』のだと」

シェリー「だから入れられる『死者の書』も後ろ半分だけ、かよ……」

円周「『「死者の書」の正式名は「日下文書」、つまり「日上」もあったっていいってか』」

バードウェイ「魔導書が脈々と受け継がれていく内、現在のタロットの姿になった――そう、伝えられてる」

シェリー「……納得はしてないが、理解はした。けどおかしな点もある」

シェリー「お前らが――『黄金』の残党がタロットに詳しいのも分かった」

シェリー「つーか濁しやがったし、突っ込んだら蛇が出そうだからお前らの出自についても触れない」

バードウェイ「わざわざご親切にどうも。『黄金』系結社として痛み入るよ」

上条「えっと」

円周「『今日もいい天気だよなぁ、お兄ちゃん?』」

上条「その口調でやめなさい」

シェリー「で、だ。そんなタロットにお詳しいテメェらがどうして盗人程度に後れを取った?たかが盗むしか能のない連中にどうして?」



482:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 12:48:28.74 ID:ZbrusG1n0

円周「『そいつぁ「連中も後継者の一人」なんじゃねぇのかよ、クロムウェル』」

シェリー「何?」

円周「『「ハーメルンの笛吹男」の説の中には「民族の大移動」って説もある。最近は呼び方も変えろって言われてるらしいがな』」

円周「『連中がヨーロッパに移動生活を行い始めた当初、フランスに来た連中はこう言っていたらしいぜ』」

円周「『「我々は低地エジプト出身の善良なキリスト教徒だ。一度信仰を捨てたが、今では巡礼の旅に出ている」と』」

円周「『尤も、連中は色んな所で様々な嘘吐いて矛盾しまくっちゃいるんだが』」

円周「『お前よぉ、「サーカス団は人攫い」ってぇ伝説は聞いた事あるか?』」

上条「あー……誰か言ってたような?都市伝説じゃないのか?」

円周「『いや、実際にな。連中は移動しながら人の物を盗み、犯罪を繰り返していた集団だな』」

シェリー「当初は巡礼者として手厚く持てなされたんだが、一切帰ろうとしない。どころか勝手に定住する始末なのよ」

シェリー「実際に最初の80年が過ぎた頃、各国では連中の追放令が相次いでいる」

円周「『大都市の周りに勝手に住み着いて税金は納めない。法律は守らないってぇ最悪の集団だったんだと』」

バードウェイ「当然定住政策も取られたが……まぁ、彼らにとって放浪は文化なのだから、現在まで続いているよ」

バードウェイ「だが現実問題として、彼らの文化は私達定住する人間にとっては、ただの脅威に過ぎない」

バードウェイ「フランスでは母国へ送り返され、スロバキアでは壁が作られた。それが、現実」

シェリー「ブリテンでも10カ月の間に6人の子供を出産したって届けて、月7000ポンド」

円周「『111万円』」

シェリー「の、社会保障費を受給してたって問題になってんのよ」

バードウェイ「ギリシャでも彼らのキャンプを捜索してみたら、4歳の女の子が見つかった事件が先々週辺りに起きている」

上条「でも、それって」

円周「『あー、ムリムリ。世界の潮流は移民排除へと舵を切ってんだよ。もうどうしようもねぇのさ』」

円周「『外国に住んでテメェらの暮らしや文化を保っていたい』」

円周「『けど祖国にゃ帰りたくねぇ。便利で豊かな国でずっと住んでいたい』」

円周「『それで軋轢生まねぇ訳がねぇさな……どっかで聞いた話ではあるがね』」

上条「……『笛吹男』はそういう」

バードウェイ「背景がある『かも知れない』ってだけさ。一緒に酒を酌み交わした訳でもないのだから、ただの推測だよ」

シェリー「しかしよりにもよって『死者の書』かよ。原典じゃない分だけマシっちゃマシだけどよぉ」



483:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 12:50:04.32 ID:ZbrusG1n0

バードウェイ「ちなみにそういった理由から、『明け色』の魔術師の力は『笛吹男』には通用しない」

バードウェイ「私達の使っているタロット――『死者の書』の写本が『プリマ・タロッコ』の劣化複製品である限り、そして」

バードウェイ「我々の魔力を用いているため、昨日私の力を以てしても傷一つ着けられなかった」

円周「『具体的にお前の力は何割まで落ちてんだ?』」

バードウェイ「そうだなぁ。アルカナが全て揃っていれば聖人とタメを張れる――1神裂といった所か」

バードウェイ「今は、あー……0.2神裂、か」

上条「神裂を単位に使うのやめてあげて!東京ドームと違って向こうは人なんだよっ!」

バードウェイ「まぁそんなこんなで絶体絶命の状態に立たされている――」

バードウェイ「――と、思うだろう?思うよなぁ、普通は」

上条「やだ、超悪い笑顔っ!?」

シェリー「ガキはもうちょっと楽しそうに笑うもんだかな、ふつー」

円周「『こいつもこのガキと同じぐらい歪んでやがんじゃねぇのか』」

バードウェイ「新入り。お前に預けていた物を返して貰おうか?」

上条「お、俺?えっと、何かあったっけ?」

バードウェイ「ショッピングモールで預けただろう、アレだよ、アレ」

上条「おぉう……?」

バードウェイ「詰んだか?まさかここまでひっぱっといて『ダメでしたー』ってオチなのかっ!?」

シェリー「あー……じゃ、私がゴーレムで囮になるから」

円周「『いやぁ、バレッバレだと思うぜ?それよっか白モヤシ引き込んで、瞬殺した方が早ぇって』」

円周「『アイツが魔術結社入りなんて超面白そうじゃねぇか』」

上条「――あぁ、うんうんっ!憶えてる憶えてるっ!タロットな!」

バードウェイ「……貴様、これが終わったらそのしっかりとした記憶力で憶えとけよ?」

上条「だってもう色々事件がありましたしっ――えっと、確か、ついさっき制服のズボンから取り出したんだよ、うん」

シェリー「銃弾弾いたってブラフかました時のな」

バードウェイ「そうだ。これこれ」

シェリー「……おい、こらクソガキ。テメェは何やってんだよっ!?あぁっ!?」

上条「どうしたんだよっ?」

シェリー「よくまぁンな賭けしやがった、っつっーかお前、人類の文化遺産に対する冒涜じゃねーのか、これ」

バードウェイ「どうだね?まさか向こうも馬鹿に切り札を持たせているとは思うまい」

円周「『説明しろロ×ハバアとリアルババア』」

上条「お前っ!片方はホンモンの×リなんだからなっ!」

シェリー「お前はあとで、殺すからな?」

バードウェイ「止めておけ、私が先だ――と、遊んでる場合じゃない。寄越せ」

バードウェイ「……ふむ。全部揃っているな、良し良し」



484:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 12:51:00.86 ID:ZbrusG1n0

上条「なぁ、教えてくれよ?そのタロットが何だって言うんだ」

バードウェイ「あー、現在最古のスフォルツァ版タロット群、そしてその中でも最古のイェール版タロット」

バードウェイ「つまり『笛吹男』が核として用いているタロットだが、実は」

バードウェイ「あれは、『このタロットの複製に過ぎない』んだ」

上条「……はい?」

バードウェイ「大昔に極めて精巧な偽物を作り、向こうと入れ替えたんだよ。やり合うのは分かっていたからな」

円周「『なんだそりゃ。ご都合主義にも程があるじゃねぇか』」

バードウェイ「作られた年代は同じ、言ってみれば姉妹版。どちらにも大した優劣はない。またこれに入っていた魔力を盗まれもしなかった」

上条「それを使えば、もしかして!」

バードウェイ「あぁ。私達の魔術がヤツに通用するんだよ」

シェリー「いや待て。理屈じゃそうかも知れないけど、あっちには膨大な『天使の力』があるんだろ?」

バードウェイ「どちらも持っているのは銃だ。口径の大小こそあれ、頭にめり込ませばそれで終いって事だな」

円周「『……なぁ、クソガキ。俺ぁ疑問に思ってたんだが』」

バードウェイ「なんだね」

円周「『「笛吹男」ってぇのはどうして、この街から去らねぇんだ?』」

円周「『向こうは筋も通さねぇマフィアだって事だろ?だったにテメェが反撃する「かも、しれない」リスクは避けて、さっさと逃げんじゃねぇの?』」

円周「『復讐にしたって、お前らに一泡吹かせた時点で面子丸潰れだろ?だってのに、わざわざ残る必要があんだよ』」

シェリー「効率的じゃない、か?」

バードウェイ「あぁそれは『笛吹男』の特性なんだよ。伝説で奴がしたのは覚えているか?」

上条「ネズミ退治と子供の誘拐だよな?」

バードウェイ「そう。だから奴の大規模な魔術には、『それ』が必ず入るんだ」

バードウェイ「まず『約束を破らない相手からは盗めない』のが一つ」

バードウェイ「これは『専守防衛』も含まれているようで、自分から手を出すのは不可能……まぁ、逆に言えば手を出させれば可能だって話さ」

バードウェイ「次に『奴が盗んだ場所に一定以上留まり、自分達が居るアピールしなければいけない』と」

バードウェイ「これはハーメルンの街の郊外の洞窟、そこで一定期間留まった事から来ている」

上条「なんで留まるんだよ。さっさと逃げればいいのに――って良くないけども」

バードウェイ「そういう術式なんだから仕方がない。ジークフリートに『塗り残しに気をつけろ』とは言わんだろ?」

バードウェイ「以上二つのルールを奴は破れない」

シェリー「いや、アンタからもう盗んでるわよね?何か約束破ったの?」

バードウェイ「あぁ半年前にね。私は『殺してやる』と言ったんだが。守られてないため、『盗み』が可能になったんだと思うよ」

上条「相手も無茶苦茶だよなぁ」

バードウェイ「“も”が気に入らんが、概ね同意しよう。魔術師なんて変人ばかりだ」

シェリー「テメェが言うな」

円周「『テメェもだババア』」

バードウェイ「兎も角、奴が『明け色』から盗んだ日、そしてハーメルンの子供達を攫った日から導き出すに」

バードウェイ「明日の午後を過ぎれば、タイムリミットって事だよ」



485:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 12:52:04.53 ID:ZbrusG1n0

――コンビニ

店員「らっしゃぃあっせっ」

上条「メシメシ……と、どれがいいかな?」

円周「大変だったよねぇ。何かお姉ちゃんがグッタリしてるし」

上条「あーうん衝撃の事実的なアレがね?言えないんだけど、多分それが研究者としては歯痒いんじゃないかな」

円周「大変だなんだねぇ。ってか思ったんだけど、シェリーちゃんって美術家としては地に足が付いてるよね?」

上条「向こうじゃ学校の講師もやってるみたいだしなぁ」

円周「何かわたしのイメージだと、魔術師って職業不詳の自称自営業っぽい人が多い気がするかも?」

上条「世間からは理解出来ないからねっ!あと多分人前では出られないアレコレありそうだし――って、ラザーニ○だ」

円周「ラザニア?新商品だよねっ?」

上条「名前似てるよなぁ。何か違うのかなぁ?」

笛吹男「あぁそれあんまり美味しく御座いませんよ?なんかこう酸っぱいだけで」

上条「そうなのか?」

笛吹男「正確な発音はラザニアよりもラザー○ャの方が近いんですが、CMに福○使うよりも先に味をなんとかすべきかと」

上条「だからって生姜焼き弁当買っていく訳にもいかないしなぁ」

笛吹男「大所帯ならばおでんでも買って行かれてはどうでしょうか?」

上条「あー、悪くないなぁ。んじゃそうするわ――何?」 クイクイッ

円周「(この人、だよね?首折っちゃっていいのかなっ)」

上条「(気づかないフリだよっ!つーか俺達だけでどうにかなる訳ないじゃん!)」

笛吹男「ご相談は当人が居ない時の方が宜しいかと。と言うよりも、偶然出会うってありえないかと」

上条「いやあの、うん。割と無い訳じゃないんだよ、まぁまぁ」

円周「神様が嫌がらせしてるんか、ってぐらいにアクロバティックな人生送ってるもんねぇ」

上条「俺はっ!平和で穏やかな人生が欲しいんだよっ!」

笛吹男「どうせ見捨てられないのであれば、無意味かと存じます。過去、何度だって舞台を降りる選択肢は御座いましたでしょう?」

笛吹男「今日の用事も残念ながらそっち関係で――お誘いに参りました」



486:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 12:53:12.27 ID:ZbrusG1n0

上条「フルートの演奏会でもしようってんじゃねぇだろうな?」

笛吹男「まさか。なに、ちょっと決闘でもしようかな、と」

上条「まぁそうなるよなー。期日まで逃げ回ってるのもいい加減限界だし」

上条「『勝負を挑んだんだけど、応じなかったので引き払った』って口実も出来る」

笛吹男「流石はバードウェイさん。ご慧眼で」

上条「……俺が考えたとか、そういう可能性もあると思うんだ、うん」

笛吹男「同業者でなければ無理だと思いますよ。クロムウェル様であれば別でしょうけど――あ、これどうぞ」

上条「触っても?」

笛吹男「ただのコピー用紙ですから。日付が変わる頃、そちらでお待ちしておりますので、もし宜しければお越し下さい」

上条「行かなかったら?」

笛吹男「『明け色の陽射し』の面子は丸潰れ。まぁでも死ぬよりはマシでしょうが」

上条「……なぁ、思ったんだが」

笛吹男「無理ですよ。それはもう、私達は住んでる場所も生き方も違いすぎる」

笛吹男「私は――私達は顧客が居て相応の対価があれば、何一つ躊躇う事無く手を汚します」

笛吹男「それが犯罪だの人道無視だの言われますが、私達は長年そうやって生きて来ました」

笛吹男「変わる道もあったのかも知れません。いや、実際に変わった同胞も数多くいます」

笛吹男「けれど私は、私達は変えられなかった。ただそれだけの話です」

上条「俺はっ!」

笛吹男「ダメです。それは、いけません。あなたの目の前にいるのは、人の皮を被った獣に過ぎないのですから」

笛吹男「実際に私はそちらのお嬢さんやクロムウェル様へ対し、酷い事をいっぱいしたでしょう?あなたはそれを怒ったでしょう?」

上条「……」

笛吹男「ですからどうか、躊躇わないで下さい。で、ないと――」

笛吹男「――あなたのお友達も、連れて行ってしまいますよ?」

上条「テメェはっ!」

笛吹男「おやぁ?その紙の裏側、何か付いていますよね?」

上条「これ――ゲコ太、と茶色の髪の毛……まさかっ!?」

笛吹男「あっははははははははははははははははははっ!笑えますなぁ、上条当麻君!」

笛吹男「お待ちしておりますが、まぁまぁ来なければ来ないで、どこにでも高く売れそうなサンプルが手に入りますし?」

笛吹男「ではまた後ほどお会いしましょう」

上条「――おい」

笛吹男「はい?」

上条「お前のその、クソふざけた幻想っ!俺が、この俺が絶対に――」

上条「――ブチ、殺すからなっ!!!」



487:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 12:54:39.77 ID:ZbrusG1n0

――ビジネスホテル

上条「――って事があった」

バードウェイ「ふーん?」

上条「……これ、御坂がつけてたストラップの人形なんだよ!ほら、ここに傷が出来てるだろ?」

上条「ロシア行った後についちまったって、凹んで――なぁ、聞いてるのか?」

バードウェイ「いやあの、だからな?……まぁいいか。心配なら電話してみろ」

上条「電話?……あぁ!もしかしたら通じるかも知れないしな」 ピッ

御坂『――もしもしっ?もしもしっ!?』

上条「『御坂かっ!?お前今どこにいるんだっ!?』」

御坂『うん?どこってそりゃ、学校、だけど』

上条「『――はい?』」

御坂『それよりもそっちは大丈夫なのっ!?朝、アパート見に行ったら、工事が始まってたけど、だれも居なくてっ!』

上条「『いやまぁそんなに進展はないんだけど――』」

……

御坂『ゲコ太?あー、それ昨日巻き込まれた時に無くしちゃってたのよ!』

御坂『良かったぁ……見つからなくてさぁ……私、どうしようかって』

上条「『……なんか想像と違うけど。まぁいいや、もうすぐケリはつけるから、それまで大人しくしていろ。いいな?』」

御坂『ちゃ、ちゃんとゲコ太は返しに来なさいよね!いいっ!?約束だからねっ!』

御坂『アンタなんか全っ然心配になんかしてやらないけどっ!ゲコ太は大事なんだからっ!』

上条「『……うん。お前はそれでいい思うよ。それじゃまた』」 ピッ

バードウェイ「古き良き時代のツンデレだなぁ。カトレ○はいいものだ」

上条「言うほど古くはねぇぞ?……ってか、どーゆー事?」

バードウェイ「先に説明しただろ?一応、『結社』同士の抗争、しかも正々堂々としたものだから、第三者をどうにか出来ないって」

バードウェイ「それに奴が誰かを攫う時には、注文があってからだ。そうじゃない限りは基本的に無害なんだよ」

上条「じゃあ何か?一応は善意で返しに来たって受け取ってもいいのかよ?」

バードウェイ「プレッシャーを掛けるため、かも知れないがね」

上条「なんだかなぁ」

バードウェイ「考えるだけ無駄なのだよ。奴のオリジナル――少なくとも、魔術の基軸に置いてある『ハーメルンの笛吹男』をなぞっているだけだ」

バードウェイ「約束を守るものには対価に相応しい結果を出す、約束を破る相手には相応の罰を与える」

バードウェイ「ちょっとした都市伝説みたいな連中なのさ」



488:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 12:55:24.10 ID:ZbrusG1n0

上条「子供を実験に使ってる、って言ってなかったっけ?」

バードウェイ「必要があればするし、なければしない」

上条「……なんかなぁ?」

バードウェイ「どうしたかね?私が予想以上に相手を買っていて、嫉妬でもしたのかい?」

上条「うーん、ある意味そうかも?俺なんかだと、どうしても『善悪を判断できるんだったら、そうすりゃいいのに』って」

バードウェイ「昨日も言ったかも知れないが、私は――『明け色の陽射し』にだって誇りはあるさ」

バードウェイ「だから『部外者』の手は借りられない。何故ならばそうしてしまえば、過去積み上げてきた先人達を汚すからだ」

バードウェイ「それは理解出来るな?時として自分の命よりも大切なものがある、という事に関してだ」

上条「あぁ」

バードウェイ「同様に『宵闇』もまた同じなのだよ。『人攫い』などという、何一つ誰一人共感はおろか、石を投げられるべき存在であってもだ」

上条「……誇れないのに、誇るのが?」

バードウェイ「私もそうだよ?由緒ある魔術結社などと誇ってはいるが、そもそも魔術師とは日陰者だ」

バードウェイ「善悪の境は曖昧だし、様々なケジメも着けてきてはいるが、イギリス清教からは敵扱いだ」

上条「それは――違うと思うぞ。少なくともお前は俺を助けてくれたじゃねぇか」

バードウェイ「本当に?『結社』のためかもしれんぞ?」

バードウェイ「こうして、こうやって、だ。外見は幼気な少女のナリをしてはいるが、その実、裏では何を考えているのか分かったもんじゃない」

バードウェイ「全てが全て、クロムウェルのように裏表がない人間ばかりだとは限らないさ」

バードウェイ「木原円周のように、中身ががらんどうの空虚な人間もいるし」

バードウェイ「『笛吹男』のように、『人によく似た何か』である人間もいるさ」

バードウェイ「……さて、君の前にいる私は、一体どちらなのだろうな?」

上条「……お前は円周を助けてくれたさ。『明け色』が魔術を使ってくれなかったら、今でも『木原』の脅威は続いていた」

上条「シェリーもそうだよ!何だかんだ文句は言いながら、お前は首を突っ込んだじゃねぇか、なあっ!」

上条「そうやって嘘を吐いて、誤魔化そうとしても無駄だよ――レイヴィニア」

バードウェイ「……ここで名前を呼ぶのか。いかんな、これは――」

上条「お前がどんだけ偽悪ぶろうが、どれだけ人から憎まれ役を買ったってだ――」

上条「――俺は、お前の事を嫌ってなんかやらねぇからなっ!!!」

バードウェイ「……ふむ。拙いな、これは、本当に」

上条「何がだよ?」

バードウェイ「どうやら私は自分でも思っている以上に」

バードウェイ「君の事を気に入ってるようだ」



489:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 12:56:37.48 ID:ZbrusG1n0

――1st.


――XX学区 深夜0時

マーク「――着きましたよ、ボス」

バードウェイ「運転。ご苦労」

シェリー「空港みてぇにだだっ広いトコだな」

上条「飛行場だったらしい。なんかの事故が起きて封鎖されて、それっきり」

円周「って設定で、多分表に出せない実験に使われてるんだと思うけどねっ!」

上条「そんなに楽しく言うようなこっちゃねぇな。つーかさ、なぁ円周?」

円周「なぁに?」

上条「どうしてお前、ここへ来てメイド服なの?」

円周「んー、今日は遅番だったから着替えるの面倒臭かったし?」

上条「ってかバイト入れるのってどうなの?」

円周「あー、違う違う。そうじゃなくって、一応鞠亜ちゃんも会っときたいから、ね?」

上条「あぁなんだそれなら、うん。分かる」

円周「鞠亜ちゃんがねぇ、『女の勝負服はメイド服に決まってるだろ!』って」

上条「ごめんな?いつもいつも言うけど、お前が、お前らが何を言っているのか理解出来ない」

円周「多分『今晩勝負を賭けるんだぜ!』って言ったのを、性的な意味と勘違いしたんじゃ?」

上条「うん、知ってた。それ雲川先輩に情報上がるんだろうなぁ……」

シェリー「緊張感ねぇよなぁ」

バードウェイ「今更だろう、それこそ」

マーク「では、行きましょうか」

上条「お前も、つーか手出し出来ないんじゃ?」

マーク「あくまでも自分は見届け人のつもりで来ています」

上条「……いや、魔術効かないのにどうするって話だが」



490:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 12:57:47.16 ID:ZbrusG1n0

――飛行場跡

笛吹男「――あー、時間通りですねぇ」

バードウェイ「レディを待たせなかっただけ、良しとしようか」

バードウェイ「それよりもそっちの面子は一人でいいのか?」

笛吹男「『宵闇』の最後のメンバーですからねぇ。そちらは大所帯でまぁ」

バードウェイ「どうせそっちは『明け色』から盗んだ『断章のアルカナ』を使うんだろ?」

バードウェイ「こっちらの霊装はお陰で碌に使えないし、そっちは『原典』に近い魔導書持ちなんだ。多少は大目に見ろ」

笛吹男「……まぁハンデを貰っているのは私の方ですし?全員相手でも吝かではありませんが――と言うか、その魔力」

笛吹男「やはり『本命』の霊装を他に預けておいてでしたか。流石で御座いますなぁ」

バードウェイ「貴様如きに使ってやるのは勿体ないのだが、今日は機嫌がいいので特別だよ」

笛吹男「ハロウィンも近いですしねぇ――で、狙うのは『死者の書』のソートでしょうか」

バードウェイ「……それぐらいしか勝ち目はないからなぁ。ちっ、流石に読まれているか」

上条「あのー、ちょっといいかな?」

バードウェイ「黙ってろ。今それっぽい事を言って、盛り上げてるんだから」

上条「そんな理由なのかっ!?」

笛吹男「まぁまぁいいではありませんか。何でしょう、何かご質問でも?」

上条「さっきからソートとか言ってるし、『死者の書』の話聞いて思ったんだけど――」

上条「お前らの持ってるタロット、それって『本』じゃないよな?カードであって」

笛吹男「仰る通りで。魔導書ならずとも、本は例外なくページ順に閉じられている物で御座いますな」

バードウェイ「その通り。桃太郎が家来を作る前に鬼ヶ島へ着いてしまっては大変だろ」

上条「だったらその『死者の書』のオリジナル、どういう配列なんだ?」

シェリー「……あぁそれは気になってたわね。タロットは『愚者』が世界を旅する寓話になってんだよなぁ」

シェリー「王の墳墓で見つかった『死者の書』は、死人が冥界の神オシリスに逢って終りだったっけか?」

笛吹男「流石にクロムウェル様はご慧眼で」

バードウェイ「残念だが、その答えは出ていないんだよ」

シェリー「試してこなかった、ってのかよ?勿体ねぇ」

バードウェイ「タロットが『死者の書』の魔導書なんてトンデモ発想誰もしてこなかった」

バードウェイ「そもそも魔導書として復活させようだなんて馬鹿者は、目の前のコイツ以外には存在しない」

シェリー「だったら解明しようが無いんじゃないのか?」

笛吹男「でも、ないのですよ。それは魔導書の特性を利用すれば不可能ではない」

笛吹男「こうやって一枚一枚はただの霊装。しかし二枚、三枚と続けることで、アルカナは物語を生みますな」

笛吹男「『愚者』、『教皇』、『力』のコンボでは術者のブーストと言った具合に」

笛吹男「『死者の書』がその効力を発揮するのは、この並べ方が原典と同じ形になる時。つまり――」

バードウェイ「最も強いアルカナの組み合わせが、『死者の書』の本来の並びという事だな」

シェリー「……成程。分かったか?」

上条「何となくは、うん」

笛吹男「文字のない絵本のページをバラバラにしてしまっても、その順番は『最も意味が通る』形で並べてやれば元通りになるって話でしょうか」

上条「あー、うん?大丈夫だよ?」



491:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 13:00:02.01 ID:ZbrusG1n0

笛吹男「――さて、始める前に二つだけ忠告を。バードウェイさんだけではなく、皆さんにも」

バードウェイ「なんだ?命乞いでもしたら助けてくれるのか?」

笛吹男「私の『プリマ・タロッコ』は数枚並べれば、その出来の悪いタロットを凌駕致します」

笛吹男「そう、それこそ『一発で「死者の書」の正式な並び順を発動しない限り』は、ね?」

バードウェイ「……随分と余裕だな」

笛吹男「二つ目の忠告へ入る前に――『盗賊団に過ぎない私達が、これだけの情報を持っているのか』、そう疑問に思いませんでしたかな?」

笛吹男「本来、ただの人攫い。盗賊風情には過ぎる情報でしょう?」

バードウェイ「それは――貴様あぁっ!?」

上条「バードウェイっ!?」

バードウェイ「盗んだのかっ!?私達からっ!?魔術の秘技をっ!?」

笛吹男「だけじゃない!だけじゃないんですよ、レイヴィニア=バードウェイさん!」

笛吹男「あなたがその、後生大事にお持ちのタロット、恐らくそれが本来の『プリマ・タロッコ』――すなわち、『死者の書』の器足るべき存在!」

笛吹男「けれど!良く考えてご覧下さいな。一介の魔術結社如きが、イェール大学からすり替えられたのか、と!」

笛吹男「それをすり替えたのは一体どこの組織であったのかを!」

バードウェイ「そんな昔からっ!貴様らとは因縁があったのか!?」

笛吹男「そうですよぉ。確かにすり替えるよう依頼を受けたのは私達だ。けれど!」

笛吹男「そのすり替えた大事な大事なタロットを!そのまま素直に渡すとは、随分甘い考えていらっしゃいますな!」

上条「じゃ――これは!」

笛吹男「偽物だとバレてしまっては角が立ちますからな。元々それはあなた方が用意した、ただの模造品」

笛吹男「とはいえかなりの良品でしょうから、一流の魔術師が使っていても、何ら問題はないでしょうがね!」

バードウェイ「……」

シェリー「――ダメだな。行くわよ」

円周「はーいっ、と」

上条「俺もっ!」

シェリー「お前は後ろのお姫様を正気付かせてやれ。時間は稼ぐ」

円周「多分わたしとお姉ちゃんだけだと、火力不足だしなぁ」

上条「けどっ!」

シェリー「こんなピンチ、別に珍しかねぇよな」

円周「いつもの、事だし?」

上条「お前ら」



492:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 13:01:19.09 ID:ZbrusG1n0

シェリー「――我が呼びかけに応えろよ、土塊」

シェリー「――魂無きその身に宿すのは『命』」

シェリー「――例えばそれは永遠じゃないし、永劫にも届かない短い命だが」

シェリー「――そいつを誇りするかどうかは私が決める。立ち上がれ!」

シェリー「――エリス=ゴーレム!!!」

 オオゥんっ!物言わぬ塊が吠える訳はなく、だかしかしその場に居た者の耳には咆哮として届く。
 綺麗に舗装された石畳を巻き上げ、石と土で練り上げられた巨人が立ち上がった。

シェリー「あー、もうゴチャゴチャ面倒臭ぇ!要はグッチャグチャにした方が勝ちなんだろうが!」

笛吹男「相変わらず見事な造形美で。これを崩すのは正直惜しゅう御座います」

シェリー「うふ、うふふふふふふっ!」

シェリー「遊びましょう?ね、アナタ?」

シェリー「楽しいクソ忌々しい私の可愛いお人形さんでぇ――」

シェリー「――テメェのケツごと墓穴掘ってやんよおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

 ずぅぅぅぅぅん!!!

 拳が薙ぎ払――。

笛吹男「――『皇帝』」

 ギギギギギギィンッ!

 振り払った手からは無数の槍――知識のある物が見れば『パイク』と呼ばれる長槍――が、ゴーレムの腕を串刺しにし、縫い止める。



493:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 13:02:22.90 ID:ZbrusG1n0

笛吹男「アルカナ一枚で詠唱も不要。人様から借りた力とはいえ、チート過ぎます――」

 ぼき、と。
 つまらなそうに呟く笛吹男の首が。地面へ対して直角にねじ曲がる。

笛吹男「ごぼっ……?」

円周「あはぁっ、ごめんね?辛いけどぉ、とってもとっても辛いけどっ」

円周「わたしは『木原円周』だから、こんな時にはこうするんだよね……ッ!」

 ぶちぃっ。
 尋常ではない膂力で笛吹男の首が引き千切られる。

 辺りに血しぶきが舞う――前に、その体は、首が宙に溶け体が風に吹き消える。

円周「あっちゃー。だよねぇ、そんな簡単にはいかないんだよねっ!」

笛吹男「私はとても臆病でして。最初から幻術を少々――『戦車』」

 少しぐらいのビル程もある鉄の塊が現れ、円周に突撃した。

シェリー「気ぃ抜いてんてじゃねぇわよクソガキがっ!」

 ゴーレムの体当たりを受けて、その軌道は大きく変わる。

 数では押している。手数すらも上回っている。

 だが、決定的な一撃は入らない。
 僅かな動作で、タロットを起動させてしまえば、それだけで充分。
 即席のコンビネーションだけではなく、お互いに信頼しきった者同士の連携ですらも無防いでしまう。

 そう、足りないのは。
 決定的な、一撃。

上条「――バードウェイ。レイヴィニア=バードウェイ!」

バードウェイ「……見ろ、いや見るな!これがだ、この程度が『明け色』のボスだ!」



494:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 13:03:32.64 ID:ZbrusG1n0

バードウェイ「たかが盗賊如きに騙され、最後の最後で切り札を失う――笑えばいいさ」

バードウェイ「この程度の私達をなっ!」

上条「……レイヴィニア!聞いてくれっ!」

バードウェイ「何をだっ!?私達はもうとっくの昔に終わった存在だぞ!?」

バードウェイ「けどなっ!それはもう私達達だけじゃない!どいつもこいつもオシマイなんだよっ!」

バードウェイ「世界で最も支持を集めるローマ清教ですらも!ミレニアムは二度過ぎても何も起きない!」

バードウェイ「どころか徐々に人の日心は移ろい、お前たちの――そう、『科学』を信仰してしまうだろうが!」

バードウェイ「私達がどれだけ!どれだけ頑張った所で――」

バードウェイ「カビの生えた魔術結社の時代なんかじゃないんだよおぉっ!」

上条「……バードウェイ。つーかボス、聞いてくれ」

バードウェイ「笑えばいいさ、上条当麻。貴様に散々偉そうな事を言っておいて、最後はこのザマだ」

上条「笑わないよ、俺は。笑うもんか」

上条「お前は古い結社をもうダメだって言うけど、別にダメだって良いじゃねぇか」



495:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 13:04:49.80 ID:ZbrusG1n0

バードウェイ「……なん、だと?」

上条「結社を誇りに思う、自分の先祖が築いてきたもんを大切にするのは、わかる」

上条「誰だって間違うじゃねぇか!失敗するだろうが!どんだけ立派な人達だったとしてもだよ!」

上条「現に一回『明け色』は騙されてる!お前だって霊装に込めた魔力を盗まれた!けどな!」

上条「――その『仕返し』をするのは、俺達ですりゃあいいだろう!」

上条「因縁がたまってきたら、お前がその手で取り立ててやればいいじゃねぇか!なあっ!?」

バードウェイ「私達、が?」

上条「第一、その霊装が本当にすり替えられたもんかどうかも怪しいだろ!つーかお前があっさり相手を信じるなんておかしいだろうが!」

バードウェイ「……うん?」



496:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 13:06:02.85 ID:ZbrusG1n0

上条「俺のボスは……アレだよ!もっとこう余裕たっぷりでクソムカつくガキなんだよ!」

上条「騙されたら万倍に返さないと気が済まないような、そりゃあもう酷い酷いブラック企業も逃げ出す奴だって!」

上条「平気で部下は騙すは足蹴にするわっ、ちっこい割には態度がビッグで偉そうだけど!」

バードウェイ「……ほぉ」

上条「飯はよく食う割に全っ然成長しないで、一体将来はどんなだけって不安になるぐらいなんだし!」

上条「だからっ!だからこのまま黙って見過ごすような真似は――バードウェイ、さん?」

バードウェイ「……よくもまぁ、散々好き勝手言ってくれたなぁ、貴様」

上条「バードウェイっ!復活してくれたんだなぁっ!よぉしここから反撃――」

バードウェイ「誰が性悪のアバズレだっこの貧乏人がっ!!!」

上条「言ってねえよ!?そんな主旨の話じゃないでしょーがっ!」



497:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 13:07:08.86 ID:ZbrusG1n0

バードウェイ「……あぁもうイラつく!何であんな盗賊如きにここまでいいようひっかき回されるんだっ!」

上条「そりゃ相手が上手に立ち回ってるだけだって事じゃ……?」

バードウェイ「私の祖先も祖先だっ!こ、のっ!完璧なレイヴィニア様でなかったら、きっと今頃『びぇぇぇぇぇんっ!』って泣きじゃくっていただろうがな!」

上条「いやあの?実際それに近いぐらい凹んでましたよね、バードウェイさん?」

バードウェイ「バードウェイじゃないボスと呼べ。貴様なんぞ、一生私に傅いていればいいんだっ!」

上条「俺奴隷じゃねぇかよっ!」

バードウェイ「黙ってろ20円で売られた男――背中を貸せ」

上条「背中?えっと――」

バードウェイ「後ろから私を抱きしめろと言っている!鈍い男め!」

上条「ごめんなっ!……あれ?今の俺悪いのかな?」



498:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 13:08:12.95 ID:ZbrusG1n0

 上条当麻が静かに後ろからバードウェイを包む。
 ただし『右手』は触れぬよう、そして飛んできた術式を打ち消せるように、敵へと向けて。

 先程までの言葉とは裏腹に、腕の中で小刻みに震える少女はやはり。
 年相応のそれと変わらない。

 前線では彼女に助けられた二人が、命を賭して稼いでくれる。
 恐らくそのプレッシャーに戦いているのだろう。

上条「大丈夫だ。お前なら、きっと出来る」

 その言葉に根拠などは無い。けれど。

バードウェイ「……まぁ、そうだな。この私がやって駄目だったのであれば、他の誰がやった所で失敗するんだろう」

 タロットを構え、正面の暴虐に立ち向かう術を探る。
 22に別たれた世界は今、一つの物語としての生を得る。



499:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 13:09:11.72 ID:ZbrusG1n0

バードウェイ「『全ては無に、無は全てに還元される――そう、死神は蕩々と説き逝く』」

――『死神』のアルカナ

バードウェイ「『逆巻く力は行き場を失い、我が身を滅ぼす力とならん』」

――『力』のアルカナ

バードウェイ「『けれどそれは立場故の過信とは言えず、教皇は一人ほくそ笑む』」

――『教皇』のアルカナ

バードウェイ「『皇帝は彼を妬み、独り善がりとなり』」

――『皇帝』のアルカナ

バードウェイ「『恋人達はその愛の深さ故に仲違いをする。が、しかし』」

――『恋人』のアルカナ

バードウェイ「『想い人達は未来に希望を見る。友人だけではない、もっと別の可能性を』」

――『星』のアルカナ

バードウェイ「『つまらない闘争であっても、星詠みを裂ける障害にはならず』」

――『戦車』のアルカナ

バードウェイ「『秘めたる母性に惹かれるのもまた、運命と言えようか』」

――『女帝』のアルカナ

バードウェイ「『かくして死神は審判を下す。全ての過去との因縁をこう、結論づける』」

――『審判』のアルカナ

バードウェイ「『光あれかし、闇あれかし――無謀な汝らの未来には、無貌の世界が広がっている、と』」

――『世界』のアルカナ



500:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 13:10:17.28 ID:ZbrusG1n0

 ヴゥン、と膨大な威力の魔力が形を取る。
 色無き色を無色に染まり、形無き形を得て。
 この世界に召喚された力場が不可視の存在となり、停滞する。

 主からの命を受け、襲いかかる猟犬の如く。ただ、忠実に傅く。

上条「これって――最初に占って貰った時の……?」

バードウェイ「それと同じだ。良く憶えていたな」

上条「そりゃ忘れる訳が無い……忘れられる筈が、無い」

上条「でも、いいのか?22枚全部使わなきゃ、『死者の書』を再現する可能性すら無くなっちまうんだろ」

バードウェイ「それこそお断りだ。どうして私が!このレイヴィニア=バードウェイが!」

バードウェイ「たかだか“ほんのちょっとピンチになったぐらい”で、人攫い如きに本気を出してやる義理もないさ」

バードウェイ「これでいい。いや――」

バードウェイ「――私は、これが、いい」

上条「……お前は、ホンットにお前だよなぁ」

 言う少女の顔を覗き込む無粋はせず――どうせいつもの『物凄く悪そうな笑顔』が張り付いているだろうから。



501:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 13:11:37.98 ID:ZbrusG1n0

バードウェイ「さて――これで終りだよ、『笛吹男』」

バードウェイ「君の、君達の長い長い流浪の旅は、今日ここが終着点だ」

バードウェイ「哀れな人攫いよ。ルーツを持たず、人様の命を掠め取って生き長らえてきたドラクルよ」

バードウェイ「人は家に帰る。故郷に帰る。獣ですら家族の元へ帰る」

バードウェイ「生き物が死ねば土へと還り、その命は循環していくと言うのに」

バードウェイ「君たちは何を道標にし、何を探し求めるのか?」

バードウェイ「家を捨て宿り木すら捨てた憂いの三賢者よ。君は還る場所は――」

バードウェイ「――『ハーメルンの笛吹男』の物語だ!」

 『天使の力』が笛吹男へ向かい、近くに居たクロムウェルと円周が慌てて飛び退く。

笛吹男「これは中々……『明け色』のボスの一撃としては少々物足りない気も致しますが」

 それでも並の魔術師ならば、これと言った抵抗もなく呑み込まれてしまっただろう。
 霊装を奪われ、魔力を盗まれた状態では間違いなく、最大と言っていい出力に違いない。

笛吹男「けれどまだまだ。これだと片手で吹き飛ばせま――」

 にやけた笑みを張り付かせたまま。



502:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 13:12:32.44 ID:ZbrusG1n0

 ゾン!

笛吹男「……ぁ?」

マーク「すいませんね。いやはや、美味しい所を持って行ってしまいまして」

 背後に回っていたマークの術式が、笛吹男の腹を貫通していた。
 制御を失ったアルカナでは抵抗しきれず、バードウェイの放った一撃が男を押し潰していく。

笛吹男「……いや、あの、これって!違いますよね?『明け色』の魔術は効かないんじゃ……?」

バードウェイ「そうだなぁ、お前の言う通りだよ。『プリマ・タロッコ』と同格か、それ以上の霊装じゃないとお前には効かない」

バードウェイ「――そう、『明け色』以外の魔術でもない限りは、だ」

笛吹男「いやでもこれ、これはっ!これは一体!?」

 ジジジ、と不吉な音を立てて膨大なテレズマに呑み込まれていく。
 その顔は苦悶と唖然とした表情に占められていた。

笛吹男「マーク!マーク=スペース!あなたにそんな魔術が使えるなんて、聞いてな――」

マーク「違います、ボス。それは“自分”の名前じゃありません」

 マークは――いや、マークの外面をした者は『手に持った黒曜石のナイフ』をブラブラさせつつ、こう嗤った。

海原(マーク)「初めまして、海原光貴です」

笛吹男「ぐがあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁっ!!!」

 小さな太陽が地上に振ってきたかのような光量が辺りを包み、戦闘は終わる。
 それが二つの『結社』の数百年に渡る因縁の終了を意味していた。



503:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 13:13:41.99 ID:ZbrusG1n0

――飛行場跡

笛吹男「……全く。ペテンにも程がある……」

バードウェイ「まだ息があるのか。流石に魔導書持ち相手に、全力の2割程度じゃ殺しきれなかったようだ」

シェリー「どうせ手加減したんだろうが、このツンデレ」

円周「だよねぇ。ホンットにお兄ちゃんに甘いんだから」

バードウェイ「黙れ。殺すぞ」

上条「海原――え、海原っ!?」

海原(マーク外見)「えぇ、メイド喫茶以来ですね」

上条「いやでもっ!名誉ある決闘とかっ!」

海原「自分はあなたにこう言ったではありませんか。『見届け人になるつもりだ』と」

海原「ですが笛吹男は『全員でかかってきて構わない』と仰ったので、遠慮無く背後から刺させて頂きました」

上条「バードウェイさんっ!?さっきパニクって言ってた事と違いますよねっ!」

バードウェイ「そりゃお前、保険の一つや二つは入っておくだろうし、油断させるための演技ぐらいするだろう?」

上条「だってさぁっ!」

バードウェイ「そもそも『俺はお前を嫌いになってなんかやらない』と豪語した以上、約束は果たして貰うぞ、あぁ?」

海原「ナイスツンペ×っ!」

上条「やめろっ!海原も余計な事言って猛獣を刺激するんじゃねぇっ!」

シェリー「いやぁ……さっきのは、なぁ?」

円周「うーん、どうなんだろうねぇ。ってかレヴィちゃんの場合、ブラフと強がりが半分半分って感じな気がするんだ」



504:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 13:15:14.23 ID:ZbrusG1n0

バードウェイ「さて――お前の負けだよ、笛吹男。『プリマ・タロッコ』を返却すれば命までは取らない」

バードウェイ「そろそろお前が死ぬ前に魔力を還して貰いたい所だが、どうだね?」

バードウェイ「というかせめて、周囲に漂う『天使の力』を霧散させろ。チカチカして目に毒だ」

上条「うん?」

シェリー「こいつらのタロットは一枚一枚に力があるだけじゃなく、使えば使う程、『場』に力が溜まんだよ」

海原「一部のRPGで攻撃すればするだけ、気力が高まっていく、ようなものでしょうか」

笛吹男「……詐欺師にペテンで勝つとは……これが、『明け色』か……!」

バードウェイ「正面切っては勝ち目のない相手でも、後ろから刺せばいいだけの話。お前たちが散々使ってきた手口だ。文句は言わせん」

バードウェイ「いい加減身の振り方を考えろ。『宵闇』をお前一人で名乗ったところで何が出来る?」

バードウェイ「大人しく隠居してサッカーでも見ていろ、この人攫いが」

笛吹男「……私は、ね。私はスーペル・リーガに立つのが夢でした」

上条「ポルトガルのサッカーのプロリーグか」

バードウェイ「何を今更。したいのであれば、すれば良かったんだよ」

バードウェイ「安易に家業を継ぐなんてしなければ、今毎きっと」

笛吹男「……弟が、居ました。二つ下の。笑うと花が咲くような、憶えている……」

笛吹男「私が10になった時、父から『宵闇』の真相を聞かされ……私は泣いて吐いた」

笛吹男「そして、こうも言われました――『お前が笛吹男にならなければ、弟を継がせる』と」

上条「……それじゃ!」

バードウェイ「……」

笛吹男「……まぁその弟も、敵対する組織に殺されましたが……真実を知らないまま、穢れのないままで」

笛吹男「『宵闇』も私で最後の一人……これ以上、復讐される事もないですし――」

バードウェイ「……私はな。お前を殺せなかったんたじゃない、殺さなかったんだ」



505:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 13:16:23.09 ID:ZbrusG1n0

バードウェイ「組織と魔術知識は壊滅させたが、人間は其程手に掛けていない」

バードウェイ「『穏健派』と呼ばれるお前が居れば、姿を変え、名前を変えてどこかで再出発すると願っていたんだが」

笛吹男「それは感謝しております……つい最近、『人攫いなんて時代遅れだ』と言いましたが、実にその通りで」

笛吹男「特定の国家が棄民政策を取っている以上……我々の仕事は上がったり、はい」

笛吹男「だから、そろそろ店じまいに、とは考えていたんですが……」

笛吹男「誰かがケジメを着けなければいけないのであれば、それは……私しかいないでしょう」

笛吹男「『宵闇』のボスは私なのですから……」

バードウェイ「……」

笛吹男「……ねぇ、バードウェイさん?私とあなたは、似ているな、と」

笛吹男「あなたは――本当に、ご自分の意思で、その場に立っておられますか?」

笛吹男「妹さんを巻き込みたくなくて、仕方がなしに――」

バードウェイ「違う。それは違うよ、笛吹男」

笛吹男「……どう?古くさい『結社』に囚われ、何も出来ない人形ではないのですか……?」

バードウェイ「それは――」

上条「――違う。ウチのボスはお前とは」

バードウェイ「新入り」



506:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 13:17:52.44 ID:ZbrusG1n0

上条「フィアンマが世界を壊すって時、バードウェイは立ち上がったぞ。それが、違う」

上条「そしてまたグレムリンがどうしようも無い事をし始めた時、こいつらは戦いを選んだぞ。それも、違う」

上条「……人の生まれや、民族や人種!確かにそれで世界ってのは決まっちまうかも知れない!けどなっ!」

上条「お前は最初っから『諦めた』だろ!?弟さんが死んでも、ただ無気力に嘆いていただけだろうが!」

上条「変えようとする努力を放棄して!誰かが悪い、誰かの責任だなんて言っても良くなる訳ねぇじゃねぇかよ!」

上条「周囲に正論を吐く人間が誰も居なかったら、お前が言えば良かったんだ……!」

上条「お前が……変えようとすれば……っ!」

笛吹男「……おやおや、意外ですなぁ。『幻想殺し』が泣き虫だったとは……」

笛吹男「――いいものを見せて下さったお礼に、私も――」

バードウェイ「いかんっ離れろ!」

笛吹男「私もただ遊んでいた訳ではありません。既に21枚のアルカナの配置は済んでおります」

バードウェイ「やめろっ!死ぬぞ!」

笛吹男「『プリマ・タロッコ』、私には過ぎた代物……遣う度に一年ほど寿命が減るようですが……まぁ」

笛吹男「後一枚を並べるぐらいには――『塔』!」

 『プリマ・タロッコ』――原初のタロットとの二つ目を得て、名前と姿を変えた。
 膨大な魔力を得て過去の栄光を一時的に取り戻す。

 異界の知識、神への莫逆たる存在。
 冒涜の象徴である『死者の書』としての存在を。価値を。役割を。

上条「俺の後ろへ!」

シェリー「いやぁ、これはなぁ」

円周「ちょっと、無理っぽいけど」

 先程バードウェイが放った一撃がビル程の大きさの塊だとするなら、『死者の書』が創りだした魔力は新興住宅地程の大きさ。つまり。

海原「これは……飛行場、全部を覆っていますね」

上条「こんなにかよ……!」

笛吹男「やはり悪役は最後まで悪役らしくありませんと……ね」

 血を吐きながら笛吹男は笑う――誰を?



507:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 13:19:29.83 ID:ZbrusG1n0

 けれど、精一杯の願いは神にすら届かない。
 彼らもう、大分前に祈りを捨ててしまっていたのだから。

バードウェイ「……そうか、やはりお前達はそれを選んでしまったのだな」

 グシャ。

 『天使の力』から具現化した腕が、鈎爪を持つ禍々しい巨大な腕が、笛吹男を握り潰す。

笛吹男「……な!あ、が」

バードウェイ「クロムウェル。スフォルツァ版タロットに語られた噂があったよな?」

シェリー「『タロットで“塔”を引いてしまうと、悪魔が現れて持ち主を連れ去ってしまう』――か?」

笛吹男「それは――あくまでも噂でっ!?」

バードウェイ「間抜けは貴様らだよ、笛吹男」

バードウェイ「私達が貴様らのような人間達を信用すると、本気で思っていたのか?」

笛吹男「それじゃ――最初からっ!?」

バードウェイ「あぁ『明け色の陽射し』は、貴様らが必ず『死者の書』を復活させると踏んでいたのだよ」

バードウェイ「『プリマ・タロッコ』を核にして、『断章のアルカナ』を完成させる馬鹿が出ると予測していた。それも数百年以上前からだ」

バードウェイ「悪用されるのを恐れた私達は、わざとタロットの一部を失伝させた。警告の意味も兼ねて『塔』と『悪魔』のカードを」

バードウェイ「……まぁ、アレだな。貴様が盗んだアルカナにはある呪いがかかってる」

バードウェイ「特定の条件下でアルカナを使った場合、術者本人へと攻撃が下されるように」

笛吹男「ぐぅっ!?」

 『天使の力』で出来た悪魔の腕は締め上げる力をより一層強める。
 元より致命傷に近い傷を負っていたのだから、とても耐えられる筈が無い。

上条「――っ!」

バードウェイ「行くなっ上条当麻!」

 駆け出そうとする上条を制止する。幾ら『右手』があった所で、桁違いの量の『天使の力』を打ち消せなどはしないのだろうが。
 振り返った先で彼が見たボスの顔は、表情は。



508:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 13:20:29.71 ID:ZbrusG1n0

バードウェイ「……これで、いいんだよ。これで」

上条「バードウェイ……」

バードウェイ「悪の結社である『宵闇の出口』のボスにして最後の一人」

バードウェイ「『ハーメルンの笛吹男』は、ここで死ぬんだ」

バードウェイ「……卑怯な手を使って、それでも堂々と正面から戦い、負けた」

バードウェイ「決闘なんてする必要すらないのに、己の力を過信して応じてしまったが故に」

バードウェイ「そう、それだけの話だ」

上条「けどなっ!」

バードウェイ「――終わらせてやるんだよ。奴が悪い魔術師である内に」

笛吹男「……ありがとうごさいます……バードウェイさん……」

バードウェイ「――貴様は地獄へ堕ちろ。『笛吹男』にはそちらが似合いだろう」

笛吹男「いえ、お断わり致します――旅に出ますよ。長い長い旅に」

笛吹男「誰も私を知らない街へ行って、笛を吹いて子供達に聞かせ――」

笛吹男「――私が去った後には、誰も残らない――そう、それが――」

笛吹男「――本物の『ハーメルンの笛吹男』で御座いますれば」

 こうして一つの結社の長い旅は終り、そして終りのない旅が始まる。
 少年が望んだ自由を、齢数十年にして漸く手に入れた。

 『天使の力』が消えた後、そこには瓦礫と粉砕されたコンクリートだけが残っており、人がいた痕跡は残っていなかった。

 ――そう、まるで『笛吹男』は最初から存在しなかったように。



509:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 13:21:36.29 ID:ZbrusG1n0

――バッドエンド3

――『明け色の陽射し』 支部(兼・上条のアパート)

上条「……あのー、バードウェイさん?」

バードウェイ「……いやぁ疲れたよ。ホンットに歳は取りたくないもんだ」

上条「お前が言うなローティーン。いや、そうじゃなくってですね、こう説明を求めたいって事なんですけど」

バードウェイ「あの馬鹿に関してか?正直、思い出したくもないんだが」

上条「や、それもあるんだけど」

バードウェイ「仕方がないなぁ。あまり説明は好きじゃないんだが、私が解説してやろう。この、私がなっ」

上条「お前って解説大好きだよね?教えたがりって言うか」

上条「それも知りたいんだけど、それよりももっと疑問があるんだよ」

バードウェイ「なんだね。エ口いのは駄目だぞ?」

上条「しねぇよ!?どんだけ見境無いんだ俺!」

バードウェイ「ちょ、ちょっとだけなら?」

上条「どうしよう最近ボスがおかしいんです」

上条「……だからそうじゃなくって。ここ、俺の部屋だよね?」

バードウェイ「見れば分かるだろ。この古いコタツに見覚えはある筈だが」

上条「コタツ出したのは憶えてるけど、その後半壊したような……?レイアウトは微妙に違ってるけど」

バードウェイ「科学の進歩は凄いなー」

上条「おいっ都合が悪くなると科学サイドに丸投げはやめろ!」

上条「それも不思議なんだけど――バードウェイさん、君いま俺の膝の上に居るよね?」

上条「ぶっちゃけ今座椅子状態にあるんだけど、これってどういう意味?」

バードウェイ「煩い黙れ。20セントで買った椅子が喋るな」

上条「……あるぇ?俺達って結構仲良くなった気がするんだけど……?」

上条「あぁなんだ夢か!俺は夢見てんのな、そっかー」

上条「アレだろ?どうせコタツの中に浜面が居て、『ドッキリで隠れたんだけど、出るにでれなくて酸欠ぎゃー』なんだろ?」

バードウェイ「その結論づけもおかしいと思うが、まぁ納得するのであれば好きにしろ」

バードウェイ「『僕たちは夢と同じもので織り上げられている』か。至言だとは思うが」



510:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 13:22:51.52 ID:ZbrusG1n0

バードウェイ「それで?私に聞きたい事とは何かね」

上条「今回の事件、つーかお前また隠し球とか伏せたままやりやがったろっ!?」

バードウェイ「ん?なんだ怒っているのか?」

上条「当たり前だよ!俺がどんだけ心配したと思ってやがる!?」

バードウェイ「だって『嫌いになるなんて無いぐらい大好き』なんだろう?だから安心して騙せるってものさ」

上条「いやそこまで言った憶えは……」

バードウェイ「えっと、『部下が私を好きすぎて困る』っと」 ピッ

上条「ツイッタ○に投稿すんな。炎上するから」

バードウェイ「まぁアレだよ。上条当麻」

バードウェイ「正直な話、アレの全てが演技と言う訳でもない」

上条「……笛吹男を油断させるためにしたんじゃないの?」

バードウェイ「あの時点で奴の真意は計りかねたからな。まさか自殺志願者だとは――何となくしか、思ってなかったさ」

バードウェイ「ともあれ『明け色』だけではなく、魔術結社全般が斜光なのは間違いないからな」

バードウェイ「……お前が『自分で変えればいい』と言ってくれた時には、心が震えたぞ?」

上条「あ、コラっ!その上でもぞもぞしないのっ!そのキャラは円周担当だから!」

上条の下条さん(お久しぶりですね)

上条「お前は黙ってろ!つーかもう出番は来ねぇよ!」

バードウェイ「とはいえ解説もなにも、あの場で言った通りだよ。もうこれ以上裏らしい裏はない……(事もない)」



511:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 13:24:20.44 ID:ZbrusG1n0

上条「盗んだとか、盗ませてやったとか、そこら辺が良く分からなくて」

バードウェイ「あー……まず、現在巷に溢れるタロットは『死者の書』と言う魔術書の劣化写本だ。ここまではいいか?」

上条「うん。失っただか、無くなってるそれを復活させようってのがアイツだったんだろ?」

バードウェイ「そうだ。で、現在残っている写本の中で最古の『プリマ・タロッコ』を核に造り上げた」

バードウェイ「『木原数多』が肉体の筺(はこ)を用意して、中身を書き換えようとしたのと構図は似ている……いや、逆か」

バードウェイ「今となっては奴が本当に復活を望んでいたのかも怪しい」

上条「お前らの溜めてた魔力?だかも奪って、だよな」

バードウェイ「だが私達『明け色の陽射し』は、連中やその他の馬鹿者どもが『死者の書』を復活させるのを危惧していた」

バードウェイ「だからまず、『プリマ・タロッコ』に『塔』と『悪魔』のアルカナを最後に使えば、術者へ跳ね返る呪いをかけておいた」

上条「具体的には、って聞いても分からないか」

バードウェイ「イコノグラフィ――日本語で図像学と言う学問がある」

バードウェイ「この絵のこの小物は、何々の宗教学的な意味を含んでいるとかな」

バードウェイ「『死者の書』が最高のアルカナコンボで発現するように、私たちもアルカナの図柄に細工を加えて、魔術儀式の自動発動を仕込んでおいた」

上条「時限爆弾みたいなもんか?……あー、シェリーも『なんかおかしい』って言ってたっけ」

バードウェイ「あれは元々私達の持ち物だ。名前を書いて怒られる筋合いはないよ」

バードウェイ「そして次に『宵闇』に働きかけて、用意した偽物と呪いをかけた本物をすり替えようとした」

バードウェイ「もしもここで彼らが素直に従うようであれば……いや、言っても仕方がないか」

バードウェイ「現実として彼らは私達が用意した偽物を私達へ返し、呪いのかかった本物は自分達で所有してしまったのだからな」

バードウェイ「要は偽札と一緒だな。作る方は自分達がババを引かされぬよう、必ず分かる『符丁』を入れる」

バードウェイ「ユキチに『風×』と名前を書いたり、そういう事だな」

上条「それ違う人だと思う。個人的には番外個体やってほしかったけど」

バードウェイ「私達が自分で作った偽物を見抜けないでも思ったのか、連中は」

バードウェイ「後はまぁ……海原光貴は向こうから接触してきた」

上条「あの野郎……!俺の知り合いは信用出来ないとか言ってた癖に!」

バードウェイ「私は処刑するつもりだったんだが、その時なんて言ったと思う?」

上条「『中学生ハァハァ』?」

バードウェイ「……お前、魔術師相手に侮辱も程があるだろう」

上条「お前は、ヤツを、知らない」

バードウェイ「『上条さんのお友達であれば、信用出来るかと』、だ。少しは反省しろ」

上条「海原……」

バードウェイ「『宵闇』に関してもそうだよ。一応私が皆殺しにした『と言う設定』になっている」



512:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 13:25:25.76 ID:ZbrusG1n0

上条「でも殆どは殺してない、のか?」

バードウェイ「わざわざ私が手を下さずとも、あと何代かすれば崩壊していただろうな」

バードウェイ「奴も言ったように『人買い』がビジネスとして成り立ってしまったため、ハーメルンの笛吹男はその役割を終えたんだ」

バードウェイ「昔と違って貨幣経済の浸透、特定国では家畜より価値が低い人民」

バードウェイ「後は少々旅好きなマフィアが居れば誰だってやれてしまうんだよ」

上条「だから――あそこで死ぬのが正解、か」

バードウェイ「……同じ『結社』である私には分かる。どうしても連中は、笛吹男は自然消滅なんて耐えられなかったんだ」

バードウェイ「だから最後に勝負をして、惨めな敵役としてでも名を残したかったんだと思うよ」

上条「だからってさぁ。そんな事しなくたって」

バードウェイ「これはマークの話なんだが、昔犬を飼っていたそうだ」

バードウェイ「その犬とは幼い頃から兄弟同然で育ち――だが、人間とは比べるべくもなく寿命には差がある」

バードウェイ「老衰で床に伏せる事が多くなった老犬を、毎日毎日介護していたんだが、ある日」

バードウェイ「その犬は仲の良かったマークの掌に思いっきり噛みついたんだ。血が噴き出し、肉が見える程、強く」

上条「……」

バードウェイ「その後数日も経たずに老犬は天へ召されたが、お前は老犬が何で噛みついたのか分かるか?」

上条「覚えていて、欲しかったんじゃないかな?」

バードウェイ「マークもそう言っていたよ。そして自分の掌に今でも残る傷跡を誇らしげにしている」

上条「笛吹男も同じように」

バードウェイ「……どうだろうな、それも。殊勝な事を言っていたようだが、それもまたフェイクに過ぎないかも知れない」

バードウェイ「『盗躁』の名は伊達ではないよ。『必要悪の協会』やイギリス、ローマからも数世紀逃げ切り、尻尾一つ掴ませなかった」

バードウェイ「……ヤツがまだ生きていて、どこかで子供達相手に笛を吹いている気もするがね」

上条「……そう、かもな。きっとそうだ」



513:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 13:26:55.06 ID:ZbrusG1n0

バードウェイ「『死者の書』も取り戻せたし、奪われた魔力も還して貰った」

バードウェイ「これで私も漸く1神裂へ戻れたという訳さ」

上条「だから神裂さんを聖人単位でイジるの良くないと思うの」

上条「最近の『あれは……っ!?聖人級の力かっ!』って風潮はちょっと」

バードウェイ「教皇級が右ストレート一発で沈んだもんだから、説得力を失ったんだと思うがね」

バードウェイ「ちなみに今の流行は『魔人級』かな」

バードウェイ「ともあれこれで数百年前からの因縁にはケリがついた。このっ!偉大な私の力を以てしてなっ!」

上条「あー……そういや俺、なんだかんだで幻想ぶち殺せなかったなぁ」

バードウェイ「私は形の上ではクロムウェルとクソガキを助けた。私の魔術が無ければ救いようはなかった。それは、事実だ」

バードウェイ「だが上条当麻。その『心』を救ったのは紛れもなくお前だと思うよ」

バードウェイ「クロムウェルがほんの少しだけ目を細めて微笑んだり、クソガキが嫌われないように遠慮するようになったのは」

バードウェイ「間違いなく貴様の責任だ」

上条「俺は、大した事なんてしてないよ――って今責任って言ったか?なぁ?」

バードウェイ「たまには活躍を誰かに譲るのもいいもんだ。なぁに、これから嫌でも主役にならなければいけないからな」

上条「まぁ変に気負うよりはポジティブでいいけどさ――ってそういやさ、もう一つ聞いていい?」

バードウェイ「さっきから聞いてばっかりだが、うむ?」

上条「『死者の書』ってどんな魔導書なの?てか誰が書いたの?」

バードウェイ「あー……聞きたいのか?どうしても?」

上条「いや別にどうしてもって訳じゃないけど、つーか無理には」

バードウェイ「聞きたいのであれば私の夫になるしかないなぁ?その覚悟があるのであればっ!」

上条「ないですっ!ごめなんさいっ!?」

バードウェイ「……ちっ、臆病者め。そこは『そんなものにも興味はないけど、お前の婿になれるんだったら知りたい!』って言う所だろうが」

上条「お前の中での俺かっけーな!つーかどんだけ俺お前が大好きなんだよっ!?」

バードウェイ「き、嫌いなのか……?」

上条「そりゃ!……だってほら、なぁ?」

バードウェイ「ちなみに私は好きだぞ。むしろ愛しているといってもいいぐらいだ」

上条「バードウェイ……?」

バードウェイ「お前が欺されてアタフタする様は大好きだっ!見ていてとても心が踊るなっ!」

上条「……どうしてお前とパトリシア、ここまで差が出ちゃったんだろう……?」

バードウェイ「DNAは同じなのになぁ。偉大すぎる姉を持つ気苦労は察してやれ」

上条「今テメェの暴虐武人ってぷりを論点にしてるんだからね?どうか察してあげて?」

バードウェイ「『傍若無人』だ。合ってない気がしないでもないが」

上条「ま、でも無事終わって良かったよな。俺たちに関しては、だけど」

バードウェイ「……それがなぁ。そう手放しで喜んでもいられないんだよ、流石にな」

上条「まだなんかやり残しがあるのか?」

バードウェイ「ないからこそ困っているのさ」

上条「うん?」



514:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 13:28:00.10 ID:ZbrusG1n0

バードウェイ「『姉と弟』で姉は弟を取り戻した。度は失った弟を、そして捨てた自分を掬い上げた」

バードウェイ「『ラプンツェル』では楼閣の姫は知恵の実を口にした。もう独り悲しく歌う事はないだろう」

バードウェイ「そして『オズの魔法使い』は堂々開幕し――」

バードウェイ「臆病者のライオンは『勇気』を手に入れ」

バードウェイ「心の無いブリキの木こりは『意思』を手に入れ」

バードウェイ「脳の無いカカシは『智恵』を手に入れた」

バードウェイ「――かくしてドロシーは無事カンザスへと帰還しました、とさ」

上条「……そっか。もう……ん?帰還し“た”?」

バードウェイ「僅か二週間しか経っていないのにな。この『幻想殺し』め」

上条「だから『女殺し』的な意味はないと何度言えば……まぁ、楽しかったなぁ」

バードウェイ「不愉快な事も多々あったがね。主にデカいガキとチビのガキのせいによってだが」

上条「精神年齢は三人ともそんなに変わらないような気がするけど。うるさかった分だけ、寂しくなるよなぁ……」

バードウェイ「――以前、私がこういったのを覚えているか」

バードウェイ「『今の生活を続けるには、多大な犠牲を支払わねばならない』と」

上条「あー、確かそれ」

バードウェイ「あの時は軽いジョークのつもりだったんが、どうする?」

バードウェイ「お前が望むであれば、私は叶えてやってもいいんだぞ」

上条「マジでか!?スゲーなバードウェイ!……あ、でも」

バードウェイ「あぁいや別に何かの対価は要らないよ?今回の件で活躍してくれたし、そのぐらいはタダで叶えてやろう」

バードウェイ「何せ私は『魔法使い』だからね。その程度雑作もないさ」

上条「ホントかっ!?じゃ頼む……ってあるぇ?いつかもこんな風に騙されなかったっけ?」

バードウェイ「……では、えっと……目をつぶっていろ」



515:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 13:29:28.98 ID:ZbrusG1n0

上条「うん。なんかマジックみたい?」

バードウェイ「そのまま、待て。いいか!?目を開けたらダメなんだからなっ!? ゴソゴソ

上条(何かバードウェイがゴソゴソしてる?なにやってんだろ人の膝の上で?)

バードウェイ「よーし行くぞ?心の準備はいいか?後からキャンセルもクーリングオフも効かないんだからな?」

上条「大丈夫だ。やってくれ」

バードウェイ「では、私の言葉をリピートしろ」

上条「おう」

バードウェイ「『私は一生貴方の物です――』」

上条「『私は一生貴方の物です』」

バードウェイ「『――そう、生涯かけて証明するとここに誓います』」

上条「『――そう、生涯かけて証明するとここに誓います』」

バードウェイ「――ならば仕方がない。私がお前を貰ってやろう」

上条「――え?」

バードウェイ チュッ

上条「」

バードウェイ「――っと、目を開けていいぞ新入り。じゃなかったトー――うん、新入り」



516:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 13:30:52.36 ID:ZbrusG1n0

上条「何やってんの、何やってんのおおぉぉぉっ!?バードウェイさぁぁぁぁぁんっ!?」

バードウェイ「あん?困ったやつだな、女の口からそれを言わせるつもりなのか、恥ずかしいヤツめ」

上条「キ――とかした奴の方がもっと恥ずかしいじゃねぇかよおおぉっ!?」

バードウェイ「まぁ色々考えたんだが、お前は私が貰う事にした」

上条「俺の!?俺の意見はどこ行ったああっ!?最近家出したまま帰って来ないんですけどぉぉっ!?」

上条「ってかその結論は一体どこから出して来やがったの!?」

バードウェイ「まず魔術サイド、科学サイド、そして『明け色の陽射し』の三つは相容れない」

バードウェイ「だから『全員私の所で引き取る』事にしたんだよ」

上条「えっと……?何?どゆこと?」

バードウェイ「そろそろ帰ってくる頃――あぁ、来たな」

パタン

円周「たっだいまーーーっ!あ、お兄ちゃんねぇねぇっ、すっごいんだよ!外人さんばっかり!」

シェリー「……そりゃそーでしょうが。つかアンタの方がアウェイなんだからな」

上条「お前ら!?つーか……待て待て。今円周さん、不吉な事言わなかった?ねぇ?」

円周「うん?……あー、レヴィちゃんまだ言ってないんだ。お兄ちゃん可哀想」

上条「可哀想って何?どんな残酷な事実が俺を待ち受けているの?」

シェリー「あー、見た方が早いだろ」

上条「見る?何を?」

シェリー「ん」 スッ

上条「窓……あー、すっかり秋めいてきたよね。街路樹が色づいて風に葉が舞う、的なねっ」

上条「行き交う人もすっかり暖かそうなコートを着て、着てい――」

上条「……」

上条「うん?あれ?」

バードウェイ「気づいたか」

上条「ねぇシェリーさん?どうしてみんな外人さんばかりなの?」

シェリー「そりゃ全員ここいらに住んでるんじゃねぇのか?近くに学校もあるし、若ぇ奴が結構居た」

上条「ねぇ円周さん?どうして日本人どころか、東洋系が誰一人としていないの?」

円周「どっちかって言えば校外だからかなぁ。あんまり観光客も通らないよねぇ」

上条「あの、バードウェイさん?」

バードウェイ「何かね。あとバードウェイじゃない、レイヴィニアと呼べ」

上条「ここ、どこ……?」

バードウェイ「ブリテンだが何か?」

上条「何か、じゃねぇぇぇぇぇっ!なんで連れてきたっ!?どうして俺がいるのか説明しやがれっ!?」

上条「俺が納得できるような理由をつけてだっ!なぁぁっ!?」



517:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 13:32:10.57 ID:ZbrusG1n0

バードウェイ「――まぁ、これは割と真面目な話になるが、例えば兵器開発ってあるよな?核や無人兵器とかを想像してみろ」

上条「それ、本当に関係あるのか……?難しい話で誤魔化そうとしてんじゃねぇの?」

バードウェイ「基本的に西側諸国ではやれ非人道的だの、核の悲劇がどうのと騒ぐ」

バードウェイ「それ自体は間違いでもないし、好きにすればいいと思うんだよ。私達の住んでいる国は自由に物が言える国だからな」

バードウェイ「でも仮に西側諸国全てが止めたとして――独裁国家や、一部の東側国家は止めないんだよ。どうしても」

バードウェイ「なぜなら彼らには民主主義が無く、故に力によって民衆が押さえつけられのを知っているからだ」

上条「うん……?」

円周「『銃を規制しましょう』って言っても、一般人へ流通する銃の量が減るだけで、犯罪者はお構いなく使うぜって話だよねっ」

バードウェイ「科学と魔術もそうなんだよ。今までは不可侵、お互いの領分を守って接してきた」

シェリー「……まぁ、それだって怪しいモンだかな」

バードウェイ「だがイギリス清教と学園都市、グレムリンとバゲージ。パンドラの箱はとうの昔に開いてしまったのだよ」

上条「だから何――って『明け色』も!?」

バードウェイ「『明け色の陽射し』は『科学』をも取り込む。そう、これは必要に迫られてだ」

上条「でも!それって他の組織から狙われるんじゃないのかよっ!?」

バードウェイ「だからなんだ?それが、どうした?」

上条「どうした、って」

バードウェイ「私達が科学を使わなければ、相手もそうするだろうと?」

バードウェイ「さっき言った兵器の話と同じだよ。西側が一つ減らせば、東側は二つ増やす。そう言う関係なんだ」

バードウェイ「――そう、『明け色』とは魔術結社ではない」

バードウェイ「『他人を効率よく支配するための方法』を学んでいる内に、いつの間にか魔術結社になってしまった存在だ」

シェリー「……それも怪しいんだよなぁ。キェリー・イェールの時系列にはローゼンと肩を並べるしよぉ」

円周「ってか『死者の書』の遺産管理人だったら、紀元前まで遡るんだよねぇ――って、知らないんだったっけ」

バードウェイ「だからこれは本来の姿に変えるだけの話。今までの魔術サイド偏向がイレギュラーなのだよ」

上条「いや分かったけど……でも、俺関係ないですよね?そろそろおウチに帰してくれませんか?」

バードウェイ「――ってのが建前だ」

上条「嘘かよっ!?つーか建前長いな!」

バードウェイ「まるっきり嘘という訳でもないが、まぁそれだけ大風呂敷を広げればお前達を受け入れやすいんじゃないかな、的な発想だ」

上条「プランが杜撰すぎるだろうが!」



518:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 13:33:29.05 ID:ZbrusG1n0

バードウェイ「幸い学園都市も『フォーマット』したばかりのガキであれば、情報漏洩の心配もないと快く送り出してくれたし」

円周「パティちゃんとも仲良くなったんだよ!ね、ねっ偉い?誉めて誉めて!」

バードウェイ「性格に難があって、モラルの持ち合わがなく、殺傷能力が異様に高い以外は、歳も近いし妹の護衛にうってつけだろう」

上条「護衛にしちゃオーバーキル過ぎるだろう!あとそれ難ばかりじゃねぇか!つーかお前それがしたかっただけだろ!」

バードウェイ「イギリス清教の方も問題はない」

シェリー「週末、寮に荷物取りに行かないとなぁ――あぁ、伝言があるんだったわ」

上条「インデックスから……?」

シェリー「『よくやった!でもあの子を悲しませたからいつか殺す!』」

上条「あぁ面倒臭ぇっ、面倒臭ぇよなっ!ステイルはなぁっ!」

バードウェイ「最後に君の処遇だが、学園都市は渋った」

バードウェイ「なので取り敢えずは留学という形で様子を見よう、という所に落ち着いたんだ。うん、我ながらいい落とし所だな」

上条「言っとくけどな、お前のやってる事は『笛吹男』の別のバーションでしかねぇからな?実質人攫いだよね?」

バードウェイ「来週から高校転入おめでとう。大丈夫だ、『結社』系だから名前さえ書けば卒業出来るぞ!」

上条「大丈夫じゃねぇよ!?俺の人生設計100%詰んでるじゃねぇか!」

上条「浜面っ!?HAMADURAはどこだよっ!?」

上条「どーせアレだろ?また『実は夢でしたー』ってオチがつくんだろ、なあぁっ!?」

上条「出てこいよ浜面っ!お前の嫁さんが誰かで一ボケするんだよなっ!なっ!?」

バードウェイ「諦めろ。さっきのアレで婿入りは確定済みだ――が、なんだ」

バードウェイ「どうしても、私が嫌だって言うのであれば。私はっ!」

上条「嫌じゃねえっ、嫌じゃないけどもっ!」

バードウェイ「ちなみに愛人は……三人まで許す」

円周「はいっ!立候補します!――お姉ちゃんと一緒に!」

シェリー「私は関係ねぇだろ。つーか友達はそんな事しないのよ」

円周「けど、この小説には『友達から始まる恋だっていいじゃない』って」

シェリー「あ、う、そう、なのか?……そっか、するんだ」

上条「お前も比較的常識人をエ口ゲ脳に洗脳しないでっ!?そ・れ・はっ!フィクションだからっ!?」

バードウェイ「往生際が悪いんだな、お前も」

上条「だってさぁ、つーかなぁっ!もっと他に穏当な方法だってあるじゃねぇかっ!?」

バードウェイ「何度だって言うが、もう諦めろ」

バードウェイ「君が私を『惚れさせた』時点で全ては終わっているのだよ、上条当麻君」

バードウェイ「何を言った所で、どう足掻こうが君は私のモノなんだからな」

上条「……いや、なぁ?」

バードウェイ「その代わりに私をくれてやろう。『レイヴィニア=バードウェイ』をだぞ?」



519:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 13:34:39.20 ID:ZbrusG1n0

バードウェイ「貴様は悪を撃つ剣であれば、私はその収める鞘となろう」

バードウェイ「お前が邪を滅ぼす狼であれば、私はその甘やかす飼い主となろう」

バードウェイ「君が良き夫であれば、私はその貞淑な妻となろう」

バードウェイ「……どうだ?等価交換と行こうじゃないか」

上条「俺、そんなにお釣り持ってないんだけど」

バードウェイ「ならばそっちの二人も混ぜてやれ。その程度では私と釣り合うとも思えんがね」

上条「お前さ。割とずっと前から思ってたんだけども、実は」

上条「すっげー優しいし、一度関わった人間見捨てられないぐらいに、超甘々だよな」

上条「口が悪いのはちょっとどうかって思うけど」

バードウェイ「黙れ新入り。そいつは『明け色の陽射し』の最高機密だぞ」

バードウェイ「文句があるのだったら塞いでみろ。私も、貴様が漏洩させようとした時には、そうしてやるから」

上条「こう?……あ、よく伸びる」 ムニーッ

バードウェイ「いひゃいな馬鹿者め!違うだろっ!?もっと他に方法はあるだろうが!」

シェリー「素直になれよツンデレ」

バードウェイ「黙れ。殺すぞ」

円周「うん、だからこうやって――」 チュッ

上条「」

円周「ちゅちゅっ、あぅ……ちゅぷ」

円周「くぷ、ちゅちゅっ、ちゅば……ちゅ」

円周「くぷ、あぅ……や……ちゅぅぅぅっ」

円周「――ね?こういう事だよねっ!」

上条の下条さん(やだ、情熱的……!)

上条「」

シェリー「魂抜けてんなぁ」



520:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 13:37:13.65 ID:ZbrusG1n0

バードウェイ「……決めた。貴様はドーバーで人体の限界に挑戦させてやるっ!」

円周「まずはブラをしてから出直して来るんだぜっ」

バードウェイ「よく言った!今日が貴様の命日だな!」

上条「二人とも人の部屋でバトるな!あぁもうなんか訳分からん状態になってるし!」

シェリー「by前屈み条」

上条「しょうがねぇじゃんかっ!?痛みには耐えられるけど、それ以外はっ!」

シェリー「がんばれー。どっちに手を出しても法的にアウトだからなー」

上条「他人事だなオォイっ!」

シェリー「だ、だったら私で練習……する?」

上条「他人事じゃないっ!?むしろ悪化してるじゃねぇか!つーか割と可愛いんだよチクショウっ!」

円周「ぶー。お姉ちゃんって結構いいとこ持ってくよねぇ」

バードウェイ「あんまり言ってやるなよ。アラサーには後が無いのさ」

シェリー「殺すぞ?」

上条「……まとまりねぇよなぁ、お前ら」

バードウェイ「まぁ、なんだね。これから色々とあると思うが、改めて――」

バードウェイ「――ようこそ、『明け色の陽射し』へ!」


――断章のアルカナ 最終話 『オズの魔法使い』 -終-

――バードウェイ「ようこそ、『明け色の陽射し』へ」 ~断章のアルカナ~ -完-



バードウェイ「ようこそ、『明け色の陽射し』へ」 ~断章のアルカナ~【その4】
元スレ
バードウェイ「ようこそ、『明け色の陽射し』へ」 ~断章のアルカナ~
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1378160982/
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