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バードウェイ「ようこそ、『明け色の陽射し』へ」 ~断章のアルカナ~【その2】

239:田中(ドワーフ) ◆7fp32j77iU 2013/10/01(火) 07:03:59.61 ID:X7KuMeYY0



――断章のアルカナ 第二話 『ラプンツェル』




240:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/01(火) 07:06:09.00 ID:X7KuMeYY0

――『明け色の陽射し』 極東支部(兼・上条のアパート) 深夜

上条 グーグー

円周 スースー

バードウェイ「……?」

バードウェイ「……ぁん……?」

バードウェイ(豆球……ベッドの上――三人でかっ!?)

バードウェイ「……」

バードウェイ(……あぁ、そうか。確かアンチスキルとやらの取り調べを散々受けて)

バードウェイ(コンビニで買ったソバを食べて、そのまま寝たんだったか……)

上条 グーグー

バードウェイ(……まぁ、モール内を走り回ったしな。疲れもするだろう)

バードウェイ「……」

バードウェイ(人生初の男との同衾が『コレ』というのも、少々アレだなぁ)

バードウェイ(ま、ノーカウントで良いか。明らかにコレは別種だ)

バードウェイ「……」

バードウェイ(……なんだ?眠れん)

バードウェイ(車の中で眠ったから?いや、熟睡は出来なかった筈だ)

バードウェイ(と、すれば別の外的要因――そうか!コーヒーか!)

バードウェイ(あんなクソ不味いもの飲まされて、と言うか苦くてかなわん。良く平気だな)

バードウェイ(カフェインを摂取するなら茶で充分と思うんだが)

円周 スースー

バードウェイ(コイツはコイツで『幻想殺し』の右腕に抱きついて寝ている。流石にバケモノでも自分を失うのは怖いのか)

バードウェイ(その『自分』とやらの定義も怪しい所だな。器が人の形をしていても、中身までそうとは限らん)

バードウェイ(被害者か加害者かの境は曖昧だが……まぁ今晩ぐらいは許してやらんでもない)

円周 スースー

バードウェイ イラッ

バードウェイ「……?」

バードウェイ(うん?どうしてイラついているんだ、私は?)



241:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/01(火) 07:09:56.52 ID:X7KuMeYY0

バードウェイ(ふむ……?)

バードウェイ「……あぁ!」

バードウェイ(そういえば昼間、このバカが小娘にキスされてやがったじゃないか)

バードウェイ(そうかそうか、そのオシオキをするの忘れていた。私とした事がうっかりだな)

バードウェイ(さて……虐殺ウサギグローブ――は、今一だな。慣れてしまったのか、肩こりが取れるとか言っていた)

バードウェイ「……」

バードウェイ(肩が凝る、のはジャパニーズ特有の現象だ。論文でも書いてみようか?)

バードウェイ(日本へ来て外国人が『肩こり』の概念を本国へ持ち帰り、という話はたまに聞く)

バードウェイ(あれは肩のマッサージが気持ちよくて、ただ単に依存症になった気もするが)

バードウェイ(まぁ今回はビリビリ無しだ。あまり連呼していると別のフラグが立ちそうな予感もするし)

バードウェイ(後は……リードでもつけて散歩か?悪くない)

バードウェイ(どちらが上なのか、教え込ませるのは実に好みではある)

バードウェイ「……」

バードウェイ(……待てよ?確かこの間、日本のファッション誌を見たんだよ)

バードウェイ(そこに載っていたな――『NEXTサスペの新アイテム・ハーネス』と!)

バードウェイ「……」

バードウェイ(ハーネスは胴輪だぞ?基本馬に着用する馬具だからな?)

バードウェイ(首輪と違って負担が少ない分、20年以上前から犬用にも広まっているが)

バードウェイ(未来に生きている、と言うか死んだ方が良いと思うぞ。特に編集)

バードウェイ(お前らの頭がオカしいのは結構だが、『海外からそう見られる』んだからな?ネタじゃなくて)

バードウェイ「……」

バードウェイ(そういう意味で却下だ。躾がファッションだと思われるのは我慢ならん)

上条 グーグー

バードウェイ(……しかし気持ち良さそうに寝ているなー、こいつは)



242:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/01(火) 07:11:10.43 ID:X7KuMeYY0

バードウェイ(少しムカつくが……ふむ)

バードウェイ「……そうだ!」 ググッ

バードウェイ(近いな、と言うかまぁ……色々だ!色々あるんだ!)

バードウェイ(信賞必罰の言葉の通り、貴様には褒賞と罰を与える)

バードウェイ(褒賞は昼間の働きにだ。一歩間違えれば――最悪、木原数多が痺れを切らして狙撃しかねん状態で、だ)

バードウェイ(あっさりクロムウェルを口説き落とした功績――おや?なにかモヤッとするな?)

バードウェイ(そして罰だが――貴様はこれから起こる、人生最大の栄誉を授かった事を知らないだろう)

バードウェイ(……ま、こんなところか)

バードウェイ「……」

バードウェイ(クソガキは右頬にしたんだっけか。ならば私は反対側に)

バードウェイ(なんだろうな?既にこの配置的なものに作為を感じないでもないが。まぁまぁ?)

バードウェイ(光栄に思えよ、新入り)

バードウェイ チュッ

バードウェイ「……ふぅ。意外に大した事はなか」

円周「――って言う訳にはお顔が真っ赤だけど?」

バードウェイ「……」

円周「あ、ごめんねー?最初っから全部見てたし聞いてたし内心もエミュレートして読んでたよ?」

バードウェイ「き、さま」

円周「わたし、デバッグしてただけで眠ってなかったんだよね、うんっ」

円周「やっだもぅレヴィちゃんってば乙女だし!うん、うんっ!こういう時、『木原』ならこう言うんだよね……ッ!」

円周「『素直になれよツンデレ』」

バードウェイ「――殺すっ!殺してやるっ!木原全員皆殺しだぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

円周「きゃーおにいちゃんたすけてー」(棒読み)



243:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/01(火) 07:13:07.71 ID:X7KuMeYY0

上条「……ん?なに、どったの……?」

円周「レヴィちゃんがねーぇ」

バードウェイ「『世界は22に別れ、千々に別れた世界で愚者は知識を求め旅に――』」

上条「なんで呪文!?どうして真夜中に詠唱してるのっ!?取り敢えず霊装を仕舞えっ!」

円周「お兄ちゃんの寝込みを襲おうって」

上条「お前じゃないんだからしねーよ!んな物好きいる訳がねぇし!」

バードウェイ「……ほぉ?」

上条「え、なんでお前がキレてんの?」

円周「えーっ?本当なのになーっ」

上条「つーかね、何度も言うけどいい歳した――って言うにはちょっと早い娘さんがだな。そういう事しちゃいけません!」

上条「大体ロリ痴女の需要がどこにあるって言うんだよ!」

バタンッ

マーク「あるよっ!あるに決まってるじゃねぇかっ!!!」

上条「真性きやがったっ!?深夜に人んチ押しかけての第一声がそれかっ!?つーか近所迷惑と世間体を考えろ!」

マーク「永遠はあるよ!ここにあるよ!」

上条「あとファンと俺を刺激するから余計な事は、言うな?」

マーク「おっと取り乱しました。失礼を」

上条「いや割といつも取り乱しているよね?そっちがデフォだよね?」

マーク「ですが上条さん、いや!Lolico13!ご自身の魔術名を否定するとは何事ですくわっ!?」

上条「よーし俺は今から全力そげぶするからな?出来れば幻想以外も殺せるといいなーっ!」

マーク「ロ×の風上にも置けませんねっ!」

上条「風下にだって置けないよね?つーかその性癖は一生隠しとけ!」

バードウェイ「『――吊し人は罪を知り智恵を得て隻眼となる――』」

バードウェイ「『――短い旅の果てに旅人は魔術を友とし罪を母に迎え、法を従える女教皇とならん!』

マーク「あ、ボス!愚者→魔術師→刑死者→女教皇の4コンボはマズいです!」

上条「どんくらい?」

マーク「んー……このテレズマですと半分ぐらいでしょうか?」

上条「部屋の半分かっ!?ふざけんなよっ!」

マーク「いえ、アパート半分倒壊します」

上条「マップ兵器かっ!?つーか逃げろ円周――円周?いないなっ?」

マーク「あ、ベランダから逃げていきました。それじゃ私も失礼しまーす」

上条「あ、コラ待ちやがれ!?つーか何!?なんでこんな流れになってんの!?」

バードウェイ「はっはぁっ!貴様が犯した罪を数えろおぉっ!」

上条「犯して、ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」

ズドォォォォンッ!!!



244:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/01(火) 07:15:40.68 ID:X7KuMeYY0

――学生寮

男「『――え、マジで?ケミカロイドって凍結しやがったのか?』」

男「『あー、あのガキどもが?暴走?……ふーん』」

男「『つか、つーかよぉ?アレの欠点ってペ×野郎向けの人形遊びだろ?耐久性がフィギュアに劣るっつー事なのに』」

男「『ジジイも軍用品として使えねぇから、相手にしなかったんだが……わかってねぇよなぁ、開発も』」

男「『そもそも能力主義なんて言ってる連中、「劣ってる連中を慰めるための言い訳」なんだよなぁ』」

男「『なんであーゆー手合いは、直ぐ暴力に走ろうとすんのかねぇ。おじさん悲しいぜ』」

男「『――で?お前は今何やってんだ?あぁ?』」

男「『いや、そろそろシャバの空気が吸いたくなったんじゃねぇか』」

男「『加群、病理、乱数。あとジジイもどっかに失踪してやがるし?どうしたもんかぁ、ってな』」

男「『導体と相殺に連絡取ろうにも、あっちはシカトしてやがるんだわな。これが』」

男「『加群も何だかんだ言って、最後は「木原」らしい最期だったみてぇだし……まだ動いてるっつー情報も入ってんだが。一応』」

男「『円周と那由他ぁ?あいつらはダメだろ。使い物にはならねぇよ』」

男「『……ま、少ぉし手ぇ加えりゃあ、化けるかも知れねぇが』」

男「『――あぁ。それじゃ出たくなったら連絡寄越しな。んじゃな』」

ピッ

男「――さてと……あぁもう時間かよ。面倒臭ぇが」

プツッ

工山規範「……」

工山「……あ、あれ?」

工山(ボクは何を……あぁ寝オチしてたのか。ヘッドギア落ちてる)

カチャカチャ

工山(……良し、と。これで今日も) ピッ

工山(『同期』させてっと――)



245:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/01(火) 07:17:30.21 ID:X7KuMeYY0

――『明け色の陽射し』 極東支部(兼・上条のアパート) 朝

バードウェイ「――さて、今日集まって貰ったのは他でもない」

円周「あ、お兄ちゃん、お醤油とってー?」

上条「おー……ってシェリー味噌汁の中にご飯を入れんな。行儀悪いぞ」

シェリー「あぁ……?昨日アンタもやってたじゃねぇか」

上条「昼と夜は良いんだよ。日本にはな、朝からぶっかけご飯を食べると、結婚式の日に雨が降るって言い伝えがあって」

シェリー「カツオブシも取ってくれ」

円周「はいどーぞっ、シェリーお姉ちゃん」

シェリー「アンタまた……まぁ良いか、面倒臭ぇ」

上条「聞けよぉぉっ!?大事な話をしてるんだからね、今!」

円周「よしよし」 ナデナデ

シェリー「あんまソイツを甘やかすな。癖になんぞ?」

上条「冤罪にも程があるわっ!?もうちょっと世界は俺に優しくてもいい筈だし!」

円周「大丈夫っ、お兄ちゃんならそーゆーのもアリだからっ」

上条「ありがとう……?いやいやっ、なんか納得出来ねぇな!」

円周「むしろ相性ピッタリだし?」

上条「どうしてこのパーティには中間が居ない?……今思えば、あの残念な金髪は癒しだったよなぁ……」

円周「うん、うんっ!こんな時あの金髪ならこう言うんだよねっ!」

円周「『まぁ結局、諦めた方が良いって訳よね?ふぁいおーゆり○っ!』」

上条「明らかにバランスが悪いだろう!全員ボケだぞ、俺が全部拾うなんて無理筋じゃねぇか!」

円周「って言ってる間にもボケ一つ流されてるしねー。可哀想なゆ○かちゃん」

上条「せめてっ!せめてもう一人ぐらいまともな子がいればっ!」

円周「ぶー。お兄ちゃん浮気は良くないよっ」

上条「お前の脳内設定で俺は兄貴なの?それとも恋人なの?そろそろはっきりしてほしいんだけど」

円周「最近はどっちもって多いよね?流行りなのかなっ」

上条「現実の話をしようぜ?俺達が住んでる所の話だよ!」

シェリー「え、でもアンジェレネから借りた本だと、大体同じ意味って書いてあったわよ?」

上条「すげーなラノベ!?つーか向こうまで侵食してやがるんだっ!」

シェリー「神裂もハヤ……なんとかってマンガをだな」

上条「おっとそれ以上は止めてくれないか!『むしろ最近あっちの方が出てますよね?』とか言うと俺が泣くんだからな!」

円周「うん、パトリオットは無いと思うんだよ。いくらなんでも他に見せ場作れたよね?」

上条「お前からも言ってやって下さい、ボスっ!」

バードウェイ「……」

上条「あれ、バードウェイ……?」

バードウェイ「――はい、貴様らが黙るまで5分かかりました」

上条「陰湿だな!」



246:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/01(火) 07:20:09.39 ID:X7KuMeYY0

円周「あ、お姉ちゃん。お漬け物も入れると美味しいよ?」

シェリー「ピクルスは苦手なんだよなぁ、私」

円周「このきゅうりはお味噌――豆をペースト状にした後、発酵させたのに漬けた奴だから、酸っぱくはないよ?」

円周「むしろ旨み成分が増えているから、甘みと風味が際だってるんだよね」

シェリー「へぇ……?興味なかったけど、日本のメシもイケるもんだなぁ」

上条「あの、すいません二人とも?そろそろバードウェイがぶち切れて魔術ぶちかますから、そろそろ話聞いてくれないかな?」

シェリー「朝のクソ忙しい時間になに話すっつーんだよ、あぁ?」

バードウェイ「そういう貴様こそ、毎日毎日その忙しい時間に人の家で食事を集りに来ているようだがな!」

シェリー「え、友達ってそういうもんじゃねぇのか?」

バードウェイ「……」

上条「……」

円周「……あー、うん」

シェリー「……そっか、悪ぃ事したわね。それじゃ明日からは――」

上条「待って!?合ってる!その解釈で合ってるからねっ!?」

上条「仲の良い友達の中に、きっと毎日メシ一緒に食ったりする時もあるって、なっ!?」

円周「あ、ごめんねお兄ちゃん?わたし友達はいないから、分かんないや」

上条「意外。お前の外面で騙される奴、結構居るんじゃ?」

円周「興味ない相手は無視するしねー。レヴィちゃんはどう?」

バードウェイ「私はまぁ……普通だな」

円周「普通にお友達が居ないんだねっ?性格キツいし、現実世界でのツンデレはタダの嫌な人だし」

バードウェイ「よーし、表で話そうか――主に肉体言語で!」

円周「うん、うんっ!辛いけど、とってもとっても辛いけどっ!降りかかる火の粉は磨り潰さなきゃいけないよねっ!」

上条「喧嘩禁止です!あと食事中にバタバタしない!」

シェリー「……なんつーか、私も寂しい奴だとは思ってたんだけど」

シェリー「意外と珍しくもない、のか?それともたまたまぼっち系が集まっただけかしら?」

上条「ま、まぁまぁ?今まで、アレだったけどさっ!これからは俺達が友達だしっ!」

上条「段々と慣れていけばいいから、な?」

シェリー「そう、よね?うん」



247:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/01(火) 07:22:38.87 ID:X7KuMeYY0

バードウェイ「……さて、話もまとまった所で――」

上条「あ、すまん。そろそろ学校行かないと時間がマズい」

シェリー「私もだな……ちっ、面倒臭ぇよっと」

円周「それじゃわたしも途中まで送るよー。お兄ちゃんだけだと、襲われてもどうしようも無いしねー」

上条「はっきり言われると傷つくんだが……」

円周「だーいじょーぶっ!わたしは当麻お兄ちゃんがゴミ虫でも愛しているからね?」

上条「……すいません。愛が!愛が重すぎるんですっ!」

シェリー「諦めろ。どーせ『可愛らしい解剖用カエル』程度の認識じゃねぇのか?」

上条「……せめてもっと素直な相手ならっ!」

シェリー「まぁ逆に考えるんだな。『愛されているウチは、死ねない』って」

上条「わぁいったっのしいっなー」(棒読み)

シェリー「んじゃ私は先に――あ、そうだ。上条、顔上げろ」

上条「はい?」

シェリー チュッ

上条「」

円周「あーーーーーーっ!お姉ちゃんとお兄ちゃんがちゅーしてるっ!」

シェリー「え、友達ならするんじゃねぇのか?本に書いてあったぞ?」

上条「『僕は友達が少な○』は、フィクションだ!タダの、物語だっ!」

シェリー「そ、そうなのか……?てっきり仲の良い友達ならすると思って……」

上条「待て待て待て待てっ!?そのパターン止めろって!」

円周「なんか鉄板になりそうなネタだよねー、それ」

シェリー「それじゃ先行くわ」 パタンッ

上条「待てコラシェリー!?マジなのかネタなのかをハッキリさせていけ!」

円周「――って、怒ったフリをして誤魔化そうとしているよね?ねっ?」

上条「お前もアレだな!……うんよし学校へ行こうかっ!」

円周「誤魔化すのが下手なのも程があるよねー。でもそんなお兄ちゃんも、いいなぁ」



248:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/01(火) 07:24:45.53 ID:X7KuMeYY0

上条「あ、すまんバードウェイ。食器とか流しに置いといてくれ」

円周「それじゃ、お留守番よろしくねー?」

上条「あ、おい手を繋ぐんじゃない」

円周「いいでしょ、ね?ちょっとだけ、停留所までだか――」

パタン

バードウェイ「……」

パタン

マーク「おっはようございまーす……?あ、ボス。本日も良い天気で。はい」

バードウェイ「……なぁ、マーク?マーク=R=ヒュー○?」

マーク「スペースです、ボス。世界規模のマルチ商法の創始者であり」

マーク「『母親が30歳で死んだから健康食品売ります』と言いながら、自分もアル中ヤク中で夭逝したバカじゃないです」

バードウェイ「今、我々が居るのはアウェーだし、相手も結構な相手だよなぁ?」

マーク「先日のやりとりを見れば、それ相応の難敵かと」

バードウェイ「その相手にだ。しかも今度は『私』と言う誤差を修正し、全力でかかって来る相手に」

バードウェイ「こんなグダグダでどうしろって言うんだっ!?」

マーク「いやぁ……まぁ、はい」

バードウェイ「なんだぁ?私が負けるとでも思っているのか?」

マーク「理不尽すぎますよボスっ!?罠じゃないですか!」

バードウェイ「……まぁいいさ。学校が忙しいというのであれば」

マーク「あのー、ボス?お顔がめっさ悪い感じになってますよー?」

バードウェイ「――ムリにでも付き合って貰うまでだよなぁ……!」



249:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/01(火) 07:26:58.63 ID:X7KuMeYY0

――停留所

円周「うーん、人いっぱいだよねぇ」

上条「気にはなってたんだけど、お前学校とか行かないの?」

円周「行ってもなぁ。あ、だったらさ!」

上条「俺の学校への進入は禁止だ。中学生、つーかお前背の高い小学生しか見えないから、絶対バレるって」

円周「ちぇーっ。世の中には何の脈絡も伏線もなく、合法ロ×の先生だっているのに」

上条「あれはまぁ……うん。そーゆーもんだとしか言えないけどなっ。エルフだから140歳、みたいな!」

円周「わたしは別にお勉強したい時には勝手にしてるから大丈夫だよ?」

上条「君に必要なのは情操教育とか道徳の部分だと思うけど」

上条(この子のぶっ飛んだ行動を見る分に、多分『暗部』の連中達と似たような扱いか)

上条(そういえば一方通行もフラフラしてるし、心配しなくていいのかな?)

円周「白い人は8兆円の借金バックれた人だからねー。まぁ元々の実験とかでちょっとした地方銀行並みのお金は持ってるけど」

上条「マジか!?すっげぇなぁ……ってあれ、俺今口に出してたっけ……?」

円周「大丈夫だよっ!お兄ちゃんの思考パターンは手に取るように分かるからっ!」

上条「学習するってそういう意味かよっ!?プライベートを尊重して欲しいですよねっ!」

円周「ってか観察して分かったんだけど、そんなに大した事は考えてないよね?アドリブに弱いし、言われてるほど女たらしでもないし?」

上条「よしまずそこから教えて貰おうか?俺の評価って他じゃなんて言われてるの?『暗部』でも有名ってどういう事?」

メイド服「取り敢えずで敵をハーレム要員にする異能の持ち主」

上条「心当たりは無いっ――よ?」

円周「てか魔術サイドの殆どが元敵だし?否定するだけの根拠に乏しいよねぇ」

メイド服「と、ウチの引きこもりが言っていた気がしないでもない」

上条「つーか誰だお前っ……雲川先輩の妹さん、だよな?」

雲川鞠亜(メイド服)「視線を顔から胸元に下ろすのは失礼だと言っておくよ。上条当麻、だっけ?」

円周「おはよー鞠亜ちゃんっ。お兄ちゃんは雑食で、何でもいけるクチだから気をつけてね?」

上条「そもそも視線を下ろした事実はないし、冤罪確定なんだが!」

鞠亜「バゲージで色々あった相手と仲良く手を繋いでいれば、噂が事実無根かどうかは分かりそうなものだと思う」

円周「鞠亜ちゃんもこの間はごめんね?次はもっと上手くヤるから?」

上条「日常シーンへ殺気を持ち込むも止めてっ!?」

鞠亜「君の実態を知らなければ『仲の良い兄妹だな』で、済ませられる話だけれどね」



250:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/01(火) 07:30:06.59 ID:X7KuMeYY0

上条「雲川も登校?つーか朝からメイド服なの?」

鞠亜「メイド服は私達にとって制服だからな」

円周「頭の悪そうな名前バッジと風俗にいそうな黒黄色シマシマは、正気なの?」

上条「だからお前はそういう事言うなって。人の嫌がる事は言っちゃいけないんだぞ?」

円周「そなの?そんな風には見えないけど」

上条「いやいや、そんな事ないって。誰だって自分の趣味を貶されれば傷つく――」

鞠亜「……良し!今のは中々良かったぞ!私のプライドが傷つけられてレベルアップだ!」

円周「ほらね?」

上条「あ、あれ?こないだはシリアスしか見てなかったから分からなかったけど、実はこんな子なの?」

円周「何となく方向性は理解出来るんだけど、屈辱の耐性をメイドで補強する意味がちょっと分からないよねぇ」

鞠亜「経験値がまた増えるっ!いいのか私!?」

上条「……あの、関係者だと思われたくないから、向こうへ行って貰えませんか?」

鞠亜「まただっ!また私の経験が!」

上条「すいません円周さん、キツいの宜しく。正気に戻してあげて」

円周「あ、胸のカップは私と同じぐらいかな?芹亜お姉ちゃんとは似てないよね?」

鞠亜「胸の話はするな。殺すぞ?」

円周「うん、うんっ!とっても気が進まないけどっ!売られたケンカは買わないといけないよね……ッ!」

上条「だからお前らはどうしてそんなに沸点が低いんだっ!?つーか雲川先輩に似てないし!」

鞠亜「姉ほど達観してないのは認めるが、年相応じゃないかね」

円周「加群おじさんを持ち出さなかったし、気を遣ってるつもりなんだけどなぁ」

上条「そんな気遣いはいらん。あと雲川先輩は中学ん時もあのままっぽい気がする」



251:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/01(火) 07:32:33.75 ID:X7KuMeYY0

鞠亜「ま、そんな訳で今日は朝から出向だよ。繚乱とは別の場所で実習さ」

上条「メイドの実習?へー、どっかのお屋敷でか」

鞠亜「いやメイド喫茶でだが?」

上条「メイド違うじゃんか!?何、お前らの学園のメイドってあーゆー所を目指してんの!?」

鞠亜「逆だな。店側から請われてレクチャーしに行くと」

円周「今は『メイド服さえ着てればメイドですが何か?』的な風潮だもんねー」

鞠亜「そういった悪しきエセメイド達を駆逐するためにも!我々が本物を示す時なのだよ!」

上条「オイコラ色物メイド。ドヤ顔でその台詞言う前に自分の格好顧みろ」

円周「イロモノ加減じゃ巷に氾濫するメイドもどきと大差ない、っていうかより酷いぜ、っていうか」

鞠亜「おおっとそれ以上私のレベルを上げるのはやめて貰おうかっ!CPが溜まりすぎて使い道に困ってしまうからな!」

円周「あー、分かる分かる。世界○とかでさ、攻略wikiやガイドブック全然見ないで進めて」

円周「後からやり直しすると大変だから、スキルポイントは必要最低限しか遣わない、的なの」

鞠亜「……でも本命はパーティに入れてないプリンセスとかビーストマスターだった日にはね。もう、ガッカリって言うのか」

上条「……もうヤダ……どうしてこの手の変人しか居ないのっ!?」

円周「っていうかさ。鞠亜ちゃんレベルアップしてるの?本当に?」

鞠亜「なんだね。私のライフスタイルに疑問でも?」

円周「なんか傍目には『詰られて喜ぶ変態女』にしか見えないんだけど?」

鞠亜「……」

上条「あー……確かに」

鞠亜「――と、言う訳で私はそろそろ行かねばならない。愚鈍なご主人様に仕えなければいけないからねっ」

上条「逃げんなコラ。目的と手段が逆転してんぞ」

円周「……んー」

上条「どした?」

円周「ね、お兄ちゃんと鞠亜ちゃんにお願いがあるんだけどぉ」

上条「ダメだからね?人体は気軽に壊しちゃいけないって約束したよな?」

鞠亜「なんだそのバイオレンスな約束は……?」

円周「わたしも鞠亜ちゃんと一緒に働いてみたいなー、って」

上条「なんでまた?」

円周「メイドさんのスキルがあった方が得じゃないかな?」

上条「一部だけだからね?殆どの人間は人生でメイドと接点無しで終わるからな?」



252:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/01(火) 07:34:31.89 ID:X7KuMeYY0

円周「その需要も結局『メイド服着た可愛い娘』だし?」

上条「否定しきれないのがアレだけど――大体、雲川が良いって言わないだろ?あっちは遊びでやってるんじゃないんだから」

鞠亜「んー、まぁ構わないよ」

上条「いいのかよっ!?」

鞠亜「誰かに教えるのは私の勉強になるだろうし、メイドの仕事を学びたいのであれば是非もないさ」

鞠亜「ただその代わりと言っては何だが、バゲージの遺恨は今後無しにして欲しいが」

円周「わたしが負けちゃったのはわたしが弱いからだし、鞠亜ちゃんを恨んではないよ?」

鞠亜「……その言葉が信じられれば良かったんだが」

上条「いいのか?本当に」

鞠亜「さっきも言ったがアバウトな店だし、一人増えるぐらいは問題ないだろう」

鞠亜「むしろ失敗すればするでオイシイ、らしい」

上条「なぁその店って本当にメイドさん必要としてるか?綺麗な服着た可愛い女の子だけだよね、欲しいのは」

鞠亜「おっと不用意な発言は控えて貰おうか!」

上条「……何?俺なんかまた言ったの?」

円周「フラグメーカーの仕様だしねー。ってワケでよろしくお願いしまーーーすっ!」

上条「いいか?雲川の言う事は守るんだぞ?」

円周「うんっ、勿論だよっ」

鞠亜「ここだけを見れば普通の兄妹に見えるな」

上条「人を殺すのはダメだからね?あと、解体して結果的に殺すのもダメ」

円周「再起不能は?間接を三つぐらい増やすとか?」

上条「悪い相手なら、まぁ一つぐらいは……?」

円周「白くてメンタルの弱いしましまが来たら?」

上条「被保護者さんに通報しなさい。全力で来てくれるから」

鞠亜「ごめん。錯覚だったよ、全て」

円周「やっぱり人数多いとツッコミ最低二人は必要だよねー。鞠亜ちゃんもウチに来なよ?」

鞠亜「全力で断る!これ以上風評被害を拡大させるもんか!」

上条「……何?そっちもなんか言われなき被害を受けているの?」

鞠亜「それも君のせいなんだがね、手癖の悪さ的な」

上条「冤罪だよっ!?何一つ俺関係ねぇし!」

円周「鞠亜ちゃんも油断してるとぉ――」

上条「やめろ。出会う人間片っ端から意味ありげに俺の悪口を吹き込むな!」

鞠亜「そういえば仙人のような姉もいつの間にか……!?」

円周「キーワードは『放課後・使われていない体育倉庫・写メ』だよねっ」

上条「お前らいい加減にしないと出るトコ出るよ?特にちっこいのは不穏当すぎるわっ!」

鞠亜「……姉のGだけでは満足出来ないって言うのかっ!?」

円周「むっ、流石おっぱいソムリエ上条当麻って言われるだけの事はあるねっ」

上条「前に言ったけど、普通の学校に使われてない倉庫なんて無いからな?予算着いてるんだから、余計な建物が増やせる訳がねぇっ!」

上条「あと円周さん?そのとても心惹かれる職業は実在するの?国家資格なの?それともガンダーラ的な所に行く必要があるの?」

プップー



253:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/01(火) 07:36:16.56 ID:X7KuMeYY0

鞠亜「あぁバスも来たようだし、取り敢えず今日一日は預かるよ」

上条「ゴメンナサイは?時間潰しでからかってた俺に謝る発想はお前らにないの?」

円周「じゃ、お兄ちゃんもお勉強頑張ってね?放課後のアレもっ!」

上条「ねぇ放課後のって何?意味ありげに言うの止めてくんないかな?」

鞠亜「ではまた」

円周「ばいばーいっ」

上条「いいかっ!面倒起こすなよ、絶対に!絶対だからねっ!」

円周「遠回しに『キハラって来い』って意味かな?」

鞠亜「曲解にも程がある。まぁメイドとしてのスキルは教えるから、暴れるのだけは勘弁だ」

パシュ、プップー

鞠亜「そうじゃないとあの『お兄ちゃん』にも迷惑がかかる。わざわざ私が釘を刺す必要は無いだろうがね」

円周「ここであのバスを追い掛けてって、バスジャックしたら楽しいだろうなー」

円周「お兄ちゃんが『何してんのっ!?何してくれてんだぁぁぁぁぁっ!?』って狼狽える姿は好きなんだよねっ」

鞠亜「……凄いのに慕われているんだな。流石に同情するよ」

円周「あ、鞠亜ちゃんも大好きだよ?」

鞠亜「おや?震えが止まらないんだが、風邪でも引いたのかも」

円周「そんなあなたに持ってて良かった木原印の風邪薬!」

鞠亜「――さて、実習先のメイド喫茶へ向かおうかっ!全力で行くぞっ!」



254:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/01(火) 07:38:22.70 ID:X7KuMeYY0

――学校

青ピ「カミやんお疲れだにゃー?」

上条「それ土御門の台詞……ってまだ帰ってねぇの?」

青ピ「みたいや。あンのアホ、可愛い妹ちゃん置いてどっこで遊んでんだか」

上条「まぁフラっと戻ってくると思うけどなー」

青ピ「そんなことよりもぉぉぉぉっ!カミやん!」

上条「突っ込む気力もねぇし。何?」

青ピ「今日は何とイギリスからの交換留学生が!」

上条「何やってんだあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?展開読めたものっ!」

青ピ「ちょ、どーしましてん?」

上条「二択だもんっ!分かってるしぃっ!?どうせまた開口一番それっぽい台詞大混乱ギャーでロ×条ペ×麻』とか呼ばれるんだろっ!?」

青ピ「あぁいや、カミやん?そうじゃなくって――」

上条「ってかね!すぐ男女の仲を疑うのは良くないと思う!カップリングとか考えるのはイケナイよぉっ!」

姫神「おはよう。でもそれを言ったら色々と破綻するんじゃ?」

上条「男女の仲にだって友情は成立するよな、なっ?」

ガラガラッ

小萌「はいはーい、おはようなのですよー。エキサイトしている上条ちゃんは席に着いてくださいなのですー」

上条「先生っ!ボク気分が悪いのでおうち帰ってて良いですかっ!?」

小萌「はーい単位ギリギリで落第寸前の子は、寝言を言わずにきちんとお勉強しましょうねー?」

上条「小萌先生まで俺の敵にっ!?」

姫神「ロシアに謎の失踪をしていたから。仕方がないと思う」

上条「あれだって俺の意思――だけども!帰還が遅れたのは俺の責任じゃねぇよ!」

小萌「――ってな訳で留学生です。皆さん仲良くして上げて下さいねー」

上条「覚悟決めだぞっ!ドS×リでもドS×ドでもかかってこい!」

青ピ「どっちも同じですやん」

上条「よーし来い!ツッコミの準備は万全だ!」

青ピ「なんでカミやんをここまで駆り立てるん……?」

ガラッ

マーク「初めまして皆さん。マーク=スペンサーです」

上条「まぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁくっ!?マーク=スペースっ!?」

マーク「一応偽名使ってんですから一秒でバラさないで下さい」



255:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/01(火) 07:39:40.23 ID:X7KuMeYY0

小萌「えと、偽名って?」

マーク「あぁお気になさらずリトルミス。チュッパチャップ○でもどうぞ?」

小萌「は、はぁ?」

上条「何で来やがった!?俺の平穏の地に何の用だよおぉっ!」

青ピ「いや、血涙流さずほどのもんじゃないですやんか」

姫神「上条君の知り合い?」

マーク「はい。同じサークル仲間でして」

小萌「あ、そうなのですか?ちなみにどんな?」

マーク「各国の食文化を勉強するサークルですよね?」

上条「あ、あぁまぁそんな感じで?」

マーク「留学生と言うよりも社会見学、ゲスト扱いで10日程お世話になりますが、よろしくお願いします」

青ピ「んー、なんか大人っぽい人やね」

姫神「外人さんは年齢不詳な感じなのかも」

上条「(大人だしなぁ、実際)」

上条(いやでもバードウェイや円周に乗り込まれるよりは、全然マシだ)

マーク「ちなみに妹もこちらに来ていますので、もしかしたら見学に来るかも知れません」

マーク「まぁその時は兄妹共々いじめないで下さいねー」

上条「……あぁなんだ。もうそこら辺は既定路線なのね?フラグは悪い意味で立っちゃってんのな?」

小萌「それじゃ上条ちゃんの隣の席で、面倒見てあげて下さいね?」

上条「……はーい」

マーク「よろしく……ま、人生諦めが必要かと」

上条「もう突っ込む気力もない……寝かせて……」

マーク「(じゃあ寝る前にボスからの素敵な伝言が御座います)」

上条「(いやあぁぁぁぁぁぁぁっ!?)」

マーク「(あ、いえネタじゃなくマジな方です。えっと)」

マーク「(『白いのの意識が戻ったから、放課後集合』と)」



256:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/01(火) 07:41:47.71 ID:X7KuMeYY0

――放課後 一方通行の病室

バードウェイ「――さて、今日集まって貰ったのは他でもない」

シェリー「魔術サイドに白いのがちょっかいかけてきた件だろ?」

一方通行「今度こそ潰すぞババア?」

上条「病室でケンカしない!つーかシェリーは円周の事言えないからな!」

芳川「あのー、ちょっと良いかしら?今魔術って聞こえたんだけど」

一方通行「あァそりゃ学園都市製じゃねェ能力者だ。あンま突っ込むな」

芳川「……明らかに違うと思うんだけど、その説明じゃ」

一方通行「余計な所に首突っ込ンだら、出れなくなンぞ?」

芳川「オーケー。分かったわ」

シェリー「学園都市よりかは人道的だと思うけどな」

一方通行「そいつァ俺も同感だがなァ」

上条「まぁそっちは一方通行に聞いてくれ――ってかその人誰?」

バードウェイ「――っていう話をしようとしていたら、貴様らがぶち壊してくれたんだかなあぁぁっ!?」

上条「ごめんなさいっ!?つーかキレキレじゃないですか!」

芳川「帰っていい?と、いうよりどうして私が呼ばれたの?」

一方通行「黙っとけ。オマエは後で『学習装置(テスタメント)』について喋って貰うンだよ」

芳川「『学習装置』っ!?あれは廃棄されたって聞いたわよ!」

バードウェイ「何だ、何も話していないのか?」

一方通行「面倒臭ェ」

バードウェイ「……その面倒が他者に回ってくるんだが。まぁいい。前回は色々と混乱していただろうし、おさらいも兼ねて確認しようか」

上条「あ、ごめん。その前に一ついいか?」

バードウェイ「言ってみろ。お前好みの年上のおねーさんだからって、張り切るな馬鹿者」

上条「何で今俺怒られたっ!?……いやいやっ、一方通行の体って大丈夫なのか?今日まで意識無かったんだろ?」

一方通行「あァそいつァ嘘だ」

上条「そっかそれなら良かった――待って?」

バードウェイ「バカが吊られやしないと罠を張ったんだよ。結果はゼロだったがね」

上条「それもなんかなぁ……つか心配した俺の立場は?」

芳川「言っておくけど能力が不安定になってるのは本当よ。だからこの子にムリさせないでね?」

一方通行「黙ってろクソババア。オマエは俺のかーちゃンか」

バードウェイ「『体晶』だかの影響が抜けるまで、あと10日程。無理以前に暴走すればこちらの命が危ない」

一方通行「ウルセェよ」

バードウェイ「他に質問は?トイレに行きたいのであれば今のウチにしとけ」

シェリー「帰りてぇ」

バードウェイ「――ではまず。お前達に接触を取って来たのが『木原数多』で合っているな?」



257:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/01(火) 07:45:54.52 ID:X7KuMeYY0

芳川「待って?その人確か、失踪してる筈だけど」

一方通行「知り合いかァ?」

芳川「何十人もいる共同プロジェクトに入った事があるだけだから、会話は殆どしてないわ」

芳川「『天才』って言葉が物足りないぐらいの結果を出していた研究者ね」

芳川「専攻は能力開発、だけど。彼が何かしたの?」

一方通行「あァまァ。俺はクソ木原に呼ばれて行ったら後ろからブスリ、だ」

一方通行「だがそこにいたのはその木原数多じゃねェ。ただのガキで」

一方通行「そついが反射を貫通させやがったンだよ」

芳川「状況が理解出来ないんだけど……?」

一方通行「あァ。木原数多の方は何回か『手首の返し』?でボコボコにされたンだが、そいつは全く同じ精度でしやがったンだ」

一方通行「そン時に漏らしてた言葉が『インストール』だなァ」

バードウェイ「クロムウェル。お前はどうだ?」

シェリー「……」

上条「頼むよ、アイツをぶん殴るために必要なんだ」

シェリー「あー……私に接触した木原は『20年に死んだ奴のクローンを作ってやる』って」

芳川「……悪い噂は聞いていたけど、ここまでとはね」

一方通行「けっ!どォ見ても悪党顔だろォがよ」

バードウェイ「お前も大して変わらんが。他に何か言ってなかったか?」

シェリー「私が『それはエリスじゃねぇ!』って言ったら、『学習装置で記憶や性格をインストールすりゃいい』……クソが!」

上条「ここでも『学習装置』か」

バードウェイ「後は二人が顔を合わせて、ある小娘――木原円周を取り合った」

バードウェイ「片方は割り切るため、もう片方は割り切らないため」

バードウェイ「狙いはもう一つ深い所にあったんだが、まぁかいつまんで言えば『共倒れ』だ」

バードウェイ「両方をつぶし合わせ、そっちとこっちを仲違いさせる。それだけが目的」

バードウェイ「まぁそれはそこ馬鹿者が止めたので事なきを得たんだが」

上条「全ての黒幕は円周で、その円周は『木原数多』がインストールされていた……!」

バードウェイ「以上により我々は『木原数多』との抗争に突入した――ん、だが。問題が一つ持ち上がる」

一方通行「木原くゥンは俺がぶち殺してンだよなァ。確実に」

シェリー「あぁ?それじゃ仕組んだのは別の人間って事かよ?」



258:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/01(火) 07:47:19.07 ID:X7KuMeYY0

バードウェイ「『木原数多』が死んでる以上、そう考えるのが普通だ。けれど私は門外漢なので知らないんだよ」

バードウェイ「以上の事が他人にも可能かどうか、可能であればどんな人間なのか」

バードウェイ「専門家であるあなたの意見を伺いたい」

芳川「……元々『学習装置』はクローンに人格やある程度の常識や知識を植え付けるための装置よ」

芳川「でも生きている人間の人格を書き換えたり、他の人格を残したままインストールなんて聞いた事はないわ」

芳川「少なくとも私が関わっていた時の『学習措置』であれば、だけど」

一方通行「天井のクソが仕掛けたテロみてェに、誰かがやってンじゃねェの?」

芳川「……あのねぇ、確かに『学習装置』は人の記憶を書き込むのは可能よ?けど」

芳川「白いノートに書き込むのと、びっしり書き込んだノートを消して書き込むの。明らかに難易度は違うでしょう?」

芳川「天井亜雄は……まぁ、それなりに優秀な研究者であったけど、精々赤いペンで一行上書きする程度しか出来なかった」

芳川「それこそ『木原数多』級の人間じゃないと、『学習装置』の改良は不可能よ」

バードウェイ「技術的な意味で?それとも設備や開発予算的な意味で?」

芳川「両方ね――それより、こちらからも聞いて良いかしら?」

バードウェイ「魔術を学びたいのであればウェルカムだ」

芳川「えっと……?」

一方通行「冗談だ。流しとけ」

芳川「え、えぇ。それじゃ『逆』の可能性についても聞きたいのだけど」

芳川「あなた達の言う『インストール』は間違いじゃないの?」

バードウェイ「うん?」

芳川「『学習装置』を改良するよりも、例えば……その、円周って女性が、反射貫通の能力者だった可能性だってあるんじゃないかって」

バードウェイ「それは違う。何人かインストールさせられた人間が居て、そいつらをここで分析して貰ったんだよ」

芳川「他にも居るのっ!?」

バードウェイ「結果はクロ。この男は『異能を打ち消す』能力なんだが、こいつが触る前と後でスキャンした結果、脳の一部に電気の流れが違っていた」

芳川「データは見せて貰えないのかしら」

バードウェイ「白いのには送ったんだがな、後で見せて貰いたまえ――とにかく、そういう意味で自作自演と言う線はなくなった」



259:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/01(火) 07:49:45.96 ID:X7KuMeYY0

一方通行「つーかよォ。インストールってなンなンだ?あのガキは出来て他の連中は反射貫通出来なかったのは、どォしてだ?」

バードウェイ「想像でしかないが、元々身体能力系の能力者なのだろう。イメージした通りに体を動かす、的な」

バードウェイ「だからこそ何人かインストールされた中で、唯一反射貫通を正確に再現出来た」

上条「んー、俺からも質問」

バードウェイ「なんだ?」

上条「お前じゃなくて、先生っぽい人に――『学習装置』で記憶や人格が書き込めるんですよね?」

芳川「そうね」

上条「でも俺は御坂妹達に何回か触ってるけど、アイツらの記憶が無くなるとかは無かったけど?」

バードウェイ「ちなみにどんなエ口い触り方をしたんだ?」

上条「そうなぁ、病院で――違うよっ!?誘導尋問だっ!?」

芳川「それは多分、あなたの異能が『不自然な状態を自然な状態にする』んじゃない?違う?」

上条「はい。知り合いの魔人――じゃなかった、暇人はそう言ってた」

芳川「育った人間には記憶と人格があるのが自然、無かった子達が時間を掛けて『学習』したのは不自然ではない」

芳川「でも既に記憶があるのに、上書きされたり書き換えられたりするのは」

上条「『不自然』であり、能力の対象になる、か」

シェリー「しかしその理屈で言えばマズかないか?」

一方通行「一回完全に記憶なり人格を消した後に書き込めば、もう元には戻らないって事だァな」

上条(俺の記憶が戻らなかったのもそのせいかも?完全に失った記憶は『自然』な状態になりようがないしな)

バードウェイ「まぁ『学習装置』が『実現可能』だと分かっただけでも良しとしよう。次は『木原数多』だ」

バードウェイ「私の推測からすれば十中八九グレムリンと縁がある」

バードウェイ「ハワイでのやりとりを知っていたり、そもそも二つのサイドをケンカ別れさせようとしたり、推測というのもおこがましいぐらいだ」

芳川「……ギズ○?」

一方通行「反学園都市の組織だ。ンなに可愛くはねェよ」

バードウェイ「従って資金力や技術力だけではなく、相手が科学と思っていたら魔術師が出て来る可能性も高い」

上条「なーんか防戦一方だなぁ、俺ら」

バードウェイ「でもない。下っ端どもを拷問――もとい、優しく訊ねてたら、色々吐いたぞ」

上条「今不穏な単語が出て来たっ!?」

バードウェイ「プチ拷問しちゃったゾ☆」

上条「可愛いけどもっ!何か、何か違うなあぁっ!」



260:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/01(火) 07:54:36.80 ID:X7KuMeYY0

芳川「インストールは?」

バードウェイ「家捜しやネットリ歴――もといネット履歴を調べ上げた」

一方通行「……俺がなァ」

バードウェイ「暇だったし良いだろ。で、出て来たのが、こいつだ」

芳川「……ヘッドギア?」

一方通行「なンでも一日一時間着けるだけでレベル3になれるンだと」

上条「その数字がまたリアルだな」

バードウェイ「『SEED』。『学習装置』の書き込み端末なんだろうな」

バードウェイ「最初は脳の一部分に代理演算……まぁ電卓?をインストールさせるから、確かに思考は早くなる」

バードウェイ「だが続けて使っている内に、インストールされるのは『木原数多』の人格データとなる」

一方通行「木ィ原くゥン、ついにウイルスになっちまったかァ。ま、ピッタリだけどよォ」

バードウェイ「ちなみにコイツを配ってたサイト並び関係者の自宅はついさっき襲撃した」

上条「危なぇな。誘えよ!」

バードウェイ「私の話を聞かなかったお前が悪い――別にお前のためなんかじゃないぞ?いいか、勘違いはするな?」

芳川「ねぇ一方通行、この子もしかして?」

一方通行「黙ってろ。当事者以外は知らねェ」

シェリー「あん?何の話だ?」

バードウェイ「『SEED』を送った住所を押さえたんだが、どうせ全てではないだろうし、ダミーも多いんだろうな」

バードウェイ「彼らがどこから入手したのかは調査中だ――が、まぁあまり期待はしない方が賢明か」

芳川「学園側に禁止って通達を出し――たら、きっとみんな欲しがるでしょうね」

上条「病んでる子は病んでるしなぁ。上に行きたい気持ちは理解出来るけど」

一方通行「雑魚はなにやったってェ雑魚なンだよ」

バードウェイ「さて、では話をまとめてみようか」



261:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/01(火) 07:57:00.91 ID:X7KuMeYY0

バードウェイ「……現時点で、『木原数多』が直接手を下した例はない」

バードウェイ「もしもネットの外、つまり現実世界に『木原数多』が存在するのであれば」

バードウェイ「そうでなくとも協力者が居れば、こんな回りくどい方法でなくともいい」

バードウェイ「で、あれば――回りくどい方法を『するしかない』理由があるのではないか?」

上条「誰かが『木原数多』に見せかけてるって考えは?」

バードウェイ「非効率過ぎる」

芳川「そうね。別にこの子達を確保したり、煽るのだって『インストール』した子を巻き込まなくても良いんだし」

バードウェイ「実際にそこから『SEED』の集配所が割れたのだしな」

バードウェイ「――ともあれ、それが現時点で分かっている事さ」

一方通行「面倒臭ェよなァ、ほンっと」

シェリー「クソはクソらしく車にでも轢かりてりゃいいのによぉ」

バードウェイ「おい、そこのコミュ障ども。お前らが『こんにちは』って自己紹介してれば、戦闘は避けられんだからな?」

バードウェイ「中二病丸出しで突っ込んだバカは、もう少し反省しろ」

上条「いやぁ、それちょっと無理なんじゃ?」

バードウェイ「あぁそうそう。お前に狙撃防止のアルカナを持たせているって言ったよな。覚えているか?」

上条「そりゃ当然。助かったぜー」

バードウェイ「あれは嘘だ」

上条「――え」

バードウェイ「タロット自体に魔術的な効果は今もあるが、お前が持っている時点で無効化されている」

上条「じゃ、じゃあじゃあこないだのは何だったんだよっ!?」

バードウェイ「アレは予め私が“場”に掛けた防御結界みたいなものだよ。クロムウェルは気づいていたようだが」

シェリー「流石に空気読むだろ」

バードウェイ「あの展開であれば『アメリカ魔法』で一発逆転が来るとは分かったからな」

上条「つ、つまり?」

バードウェイ「現在『木原数多』はお前に銃が効かないと思いこんでいるが、実際には効く効く。相性:◎」

上条「二倍ダメージかっ!?」

バードウェイ「ハッタリでもしておかないと確実にスナイプされるからな。感謝したまえ、私の偉大さに」

一方通行「はったりじゃねェか」



262:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/01(火) 08:00:15.61 ID:X7KuMeYY0

バードウェイ「さて、我々はヘッドギアの解析、並びにネット上にあるであろう『木原数多』の人格データを追跡する」

バードウェイ「幸いにもショッボい協力者しか居ないため、大した脅威にはなっていないのが現状だが」

バードウェイ「ともあれ現状はそのぐらいだ――で、芳川桔梗さん?」

芳川「何かしら?」

上条(綺麗な人には綺麗な名前がつくもんですねっ!)

バードウェイ「新入りは空気読め、後でオシオキだ」

上条「読んでるじゃん!?あ、いや思ってもないけど!」

バードウェイ「貴様はエ口い事考えると鼻筋に血管が浮かぶんだっ……!」

上条「マジでかっ!?……いや、別になんともなくね?」

一方通行「……今時よォ、ンなベタネタで引っかかるかァ?」

上条「え?」

バードウェイ「マヌケの罪は二割増しにするとして――あなたの意見を請いたい、いや」

バードウェイ「『木原数多』へ対抗するため、あなたの力を貸して貰えないだろうか?」

バードウェイ「私とライオン女、それと貧乏そうな男には圧倒的に『そちら』の知識が足りない」

上条「ごめんよ?俺、学園都市側なのに、どうして一般人扱いなの?」

芳川「……ここまで聞かせられて、放って置くつもりはなかったけど」

芳川「いいわ。やりましょう」

バードウェイ「あなたに心からの感謝を――マーク」

マーク「――はい」

バードウェイ「必要な環境や設備、また報酬はそちらの男に言ってくれ」

芳川「分かった――その、報酬についてなんだけど」

芳川「『魔術』ってのを教えて貰う訳には行かないのかしら?」

バードウェイ「可不可であれば“可”だ。けれどそれは最低でも学園都市から決別する事を示している」

バードウェイ「それを良く踏まえた上で、覚悟をしたのでならば話を聞こう」

芳川「……」

一方通行「……オマエにゃ“それ”は向いてねェよ。どっかの非常勤講師が精々なのに、あっちもこっちも高望みし過ぎなンだ」

芳川「言ってくれるわね……で、えっと?」

バードウェイ「レイヴィニア=バードウェイだ」

芳川「芳川桔梗です。宜しく」

バードウェイ「では早速今後の方針なのだが――」

芳川「取り敢えずヘッドギアの分解と使われている部品の分析――」

一方通行「ダウンロードした人格データのCRC――」

上条「……なーんかする事ねぇなぁ」

シェリー「科学だしなぁ。タダの魔術師と学生の見せ場はねぇだろう」



263:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/01(火) 08:05:14.84 ID:X7KuMeYY0

上条「んー……シェリーも仕事帰りだったのか?」

シェリー「あぁ。呼ばれたんだよ。つっても片手間でも出来るようなやっつけだったけどね」

上条「へー、ってか結局そっちのどんな依頼だったんだ?」

シェリー「スフォルツァ版タロット、まぁ現存してる古いタロットの復元“推定”作業だな」

上条「推定?」

シェリー「あぁ。スフォルツァ版タロットはイタリアのミラノ公爵スフォルツァ家が画家に描かせたもんだ」

上条「そこら辺はバードウェイから聞いた。キャリー?なんだっけ?」

シェリー「『キャリー・イェール版タロット』だ。スフォルツァ版の中でも一番古い。つまり正真正銘最古のタロットよ」

上条「色が落ちたとかカビが生えたとか、そういう復元処置?」

シェリー「いや、そうじゃなくてだな。キャリー・イェールのアルカナは全部で11枚しかねぇんだよ」

上条「半分以下じゃんか」

シェリー「そうよ。だからまぁ、『残りの12枚を当時の画風で描かせたらどんな感じ?』ってのが、今回の計画」

上条「あー……半分以上ピースの欠けてるパズルを、残った破片から全体の絵を描く感じ?」

シェリー「それだなぁ。『こんな感じに描いたんですけど、当時の流行りの書き方で合ってますか?』ってのにダメ出しをする仕事」

上条「散逸したアルカナの復元なぁ。それ、そんなに価値があるもんなのか?」

シェリー「さぁ?そっちの魔術は専門外――でも、ないか。カバラとタロットは親和性が高いけど」

シェリー「ま、私には関係ないし、そもそも学園都市主導のプロジェクトだし?」

上条「魔術サイドから見たら?霊装にするとか?」

シェリー「あー……神話象った武器は多いがなぁ。でもタロットはちょっとアレだ」

シェリー「グングニールって知ってるか?オーディンの持つ槍。ゲームとかにも出てんだろ」

上条「あるなぁ。最上位系の武器だ」

シェリー「アレの名前を持つ霊装は大量にある。でもまぁ効果はまちまち」

シェリー「私の知ってる限りだと、雷喚んだり、ルーンのランダム精製だったり、貫通強化とかな?」

シェリー「何が言いたいかって言えば、普通の霊装がモチーフにするのは『神話』なんだよ。神の武器とか逸話とかを再現するんだ」

シェリー「けどタロットはそうじゃねぇだろ?」

上条「あー確かに。バードウェイの場合だと『タロットを使って寓意を再現』してるよな?」

シェリー「……お前、そういう勘だけは鋭いのな」



264:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/01(火) 08:09:16.95 ID:X7KuMeYY0

シェリー「だからまぁ?こいつらみたいに使う事はあっても、『タロットカードを再現したって意味はない』んだ」

上条「それが神様の武器でもない限りは、って話か?」

シェリー「大体そんな感じじゃねえか。タロットは『手段』であって『目的』じゃねぇ」

上条「タロットに関しての逸話とかないの?」

シェリー「『黄金』系の魔術師が好んで使う以外には殆ど……あぁ、まぁ今で言う都市伝説みたいなのは聞いたな」

シェリー「キャリー・イェール版を含むスフォルツァ版タロット、通称『プリマ・タロッコ』」

シェリー「『原初のタロット』って言う意味なんだが、このタロット群には共通点があんのよ」

シェリー「それは『どのデッキも共通して二枚だけ足りない』の」

上条「イェール版は11枚、他のも散逸してるだけじゃないのか?」

シェリー「んー、その可能性もあるかしらね?」

シェリー「けれど、幾つか残っているデッキの内、『悪魔』と『塔』のアルカナだけなくなっているのは不自然じゃない?」

シェリー「だから後にタロットを、というか古美術の収集家達はこう囁かれた」

シェリー「『タロットで“塔”を引いてしまうと、悪魔が現れて持ち主を連れ去ってしまう』」

上条「お、おぉう!都市伝説系の話だなっ」

シェリー「だから当時の持ち主達は意図的にその二種類のアルカナを廃棄した、という噂」

上条「すっげー縁起の悪いカードだから、最初から存在しなかったとか?」

シェリー「それだと後年のタロットに悪魔と塔があるのはおかしいじゃない?」

上条「教会とかに配慮……も、今更っぽい気がするし」

上条「それじゃ今回の事件とタロットの復元は無関係かぁ……いやでも、タイミングが良すぎるって」

上条「前に言ってたけど、『木原数多』がシェリーを罠に嵌めるために喚んだんじゃないか、って」

シェリー「やりかねないけど……なーんか不自然なんだよなぁ」

上条「どこが?」

シェリー「バードウェイはそう睨んでるんだろうけどよぉ。それにしちゃ手が込みすぎてる」

シェリー「再現されたアルカナが異常な程、塗料からキャンバス、描き方も完璧に当時のやり方を模倣してんのよね」

シェリー「ホンモンだっつって売ったら高値がつくレベルよ」

上条「カモフラージュ的な奴かも?」

シェリー「だったらもっとやっつけ的な感情が入る筈だ。私の勘だけども」

シェリー「……まぁ何にせよ。仕事は今日で終りよ」

上条「え、帰っちまうのか?」

シェリー「別口で誘われている仕事もあるんだが、クソ木原をぶん殴るまでは帰らねぇ――帰“れ”ねぇわよ」

上条「寂しいような、残念なような」

シェリー「だったら遊びに来い。ウチの女子寮は慢性的な人手不足だし」

上条「パシリ前提じゃん!?」

シェリー「何だったら管理人にでもなっちまえ。オルソラと神裂のどエ口い体が毎日拝めるぞ?」

上条「べ、別に俺はそんな事じゃ心轢かれないからなっ!やめろよっ!それ以上余計な事は言うなよっ絶対に!」

シェリー「キモノ?の下って下着着けないんだなぁ」

上条「取り敢えず英語は話せないとダメかな?家事全般は出来るし、就労ビザはそっちで何とかなんない?」

バードウェイ「おい、そこの話についていけない残念なガキども。そろそろ戻ってこい」



265:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/01(火) 08:11:38.09 ID:X7KuMeYY0

バードウェイ「――と、言う訳で専用の部屋は用意してある。マーク、お連れしろ」

マーク「はい。ではこちらへどうぞ。表に車を回して御座いますので」

芳川「じゃ、さっき言った通りに」

バードウェイ「頼む」

一方通行「俺ァネットの方か――って待て待て。どォして俺もローテに入ってンだ」

バードウェイ「元の恩師だろ?死者は墓場へ返してやる義理もあると思うがな」

一方通行「……墓穴掘ったのも俺なンだがなァ」

バードウェイ「クロムウェルは私と外回りだ。着いて来い」

クロムウェル「私もか?」

バードウェイ「嫌とは言わせんぞ。お前のゴーレムは探知系も結構イケる筈だ」

クロムウェル「あー、禁書目録探しに見せちまってたかー」

バードウェイ「ヘッドギアのソフト面やウイルスの配布先は、私達だとどうしようもないからな」

バードウェイ「だからハード面から探すぐらいはしないとな」

上条「そっか。それじゃ」

バードウェイ「あぁお前は別行動だよ。もっと大切な役割がある」

上条「……マジで?俺要らない子じゃない?」

バードウェイ「そうだ。お前にしかできない事だ」

上条「……良し!言ってくれバードウェイ!」

バードウェイ「夕飯はテンプラ、出来れば鳥肉のテンプラがいい。なんだっけかな?あの葉っぱ?」

クロムウェル「三つ葉?」

バードウェイ「それも頼む」

クロムウェル「それじゃ私は肉無しの掻揚げで。タマネギ入れるの忘れるなよ」

バードウェイ「……貴様は朝だけじゃなく、夕飯もねだりに来るのか……?」

上条「えっと、あの……なんつーか、俺の想像してたのと違うよね?」

上条「どっかに乗り込むとか!尾行するとか!そーゆー事じゃねぇの!?」

バードウェイ「……あのなぁ、上条当麻?よく考えてみろ?」

バードウェイ「『SEED』自体はレベル3になれるって触れ込みだ。分かるよな?」

上条「あ、あぁ」

シェリー「つまり実質それ以下の連中を相手しかいねぇって話だ」

上条「レベル低い強敵だっているかも!」

バードウェイ「こんな胡散臭い、中二病をこじらせでもしないと着けられないような、痛々しい帽子をだぞ?」

バードウェイ「真に受けるような連中だったら、下地からして大した連中じゃないだろう?」

上条「元々ゴミみたいな相手しか引っかからない?」

バードウェイ「そう思わせておいて、という罠の可能性もあるが。まぁそれを言ったら始まらん」

バードウェイ「ともあれ人手は足りている。お前は夕飯の事だけ考えろ」

上条「えっと――『マークさん、お前んとこの結社、明らかにブラック結社だよね?』っと」

バードウェイ「泣きそうな顔でメール打つんじゃない!文句は本人へ直接言え!」



266:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/01(火) 08:15:11.60 ID:X7KuMeYY0

シェリー「あー……ほら、だったら円周の能力でも聞いとけば?」

バードウェイ「あれもある意味、お前しか出来ないよなぁ」

上条「俺って『円周係』なの?」

バードウェイ「適材適所だ、がんばれー……っと、そうそう。言い忘れてた」

上条「何?天ぷらソバにでもしろって?」

バードウェイ「そんなハイブリッドがあるとは……!?……ではなく、ここでの会話は秘密にしとけ」

上条「はい?」

バードウェイ「『木原』に聞かれると少々拙い。だから情報が漏れるリスクは最低限に抑えるべきなのだよ」

上条「それは……理屈は分かるけどさ!」

バードウェイ「納得はしてないって顔だな」

上条「でもそれは円周に変な人格がインストールされていたからであって!」

バードウェイ「成程。君の理屈は理解出来る。しかし君は事態を理解してはいない」

バードウェイ「別に洗脳などしなくとも、幾らだって協力は出来るだろう?例えば――」

バードウェイ「『最初から木原円周は向こう側で、スパイになるために潜り込んできた』とかな?」

上条「お前それ本気で言ってんのかよ……!?」

一方通行「……おい。そりゃァそのちっこいのが正論だァ」

バードウェイ「ちっこいは余計なお世話だよ、白いの」

一方通行「『木原』ってェのはそういうもンなンだよ。少なくとも一長一短で更正するよォな奴じゃねェ」

上条「でもほら、信じるのって大事じゃないかな?子供は信頼に応えたい、ってやる気を出すような感じで」

上条「お前だってそうだったろ?打ち止めとか居なかったら」

一方通行「……買いかぶってくれンのは、反吐が出る程嬉しいンだがよォ。そいつァお前の理屈だ」

一方通行「俺がモルグへ送った連中は少なくねェ。そいつらの家族からすりゃァ悪党だってェのは今も変わらねェだろォ」



267:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/01(火) 08:16:46.60 ID:X7KuMeYY0

一方通行「オマエみてェに不殺を貫く義理はねェし、そっちの方が良いと判断すりゃ迷いもねェし」

一方通行「そンな俺だから言わせて貰う。『木原』は、あの『木原』は鬼子だァな」

一方通行「あンなガキっぽいナリをしてンのも全部擬態で、本性は虫みてェな野郎だって可能性もある」

一方通行「気ィ許したつもりでも、実は喉笛に食いつかれてンのはどっちだ、ってなァ?」

上条「……その、さ。俺は、まぁ人を見る目はないし、はっきり言やぁ不幸だけども」

上条「それでも、信じた相手に裏切られた事はないんだよ」

バードウェイ「ふん、皮肉のつもりか?」

上条「お前は違うだろ。裏切ったフリをして、世界を救おうとしただけだ」

上条「でも、結局はまた、戻ってきてくれただろ?俺を信じてくれたよな?」

上条「お前もそうだよ一方通行。確かにお前はそう『割り切って』生きていこうとしたんだと思う」

上条「だからもし、お前の前にお前が殺した奴の家族が来たら、俺も一緒に頭を下げるよ」

上条「そんな『価値』がある友達だって、そんな事が出来る相手だって教えてくれたのはお前じゃないのか!?」

上条「お前が打ち止めにした事は、誰が何と言おうと『正しい』よ。それは俺が、保証する」

一方通行「……バカじゃねェのか?ほンっとォに」

上条「目の前子供一人助けようとして、学園最強を失いそうなったバカに言われたくはねぇよ」

シェリー「バードウェイ」

バードウェイ「……わかったよ。ならばそれもお前の『運』に賭けてみよう」

バードウェイ「情報云々に関してはお前に任せる。好きに話せばいい」

上条「ありがとう」

バードウェイ「上条、上条当麻!」

上条「……ああ」

バードウェイ「ただ一つだけ約束をしろ。私はお前を『信じた』、だから――」

上条「――俺もお前を『信じる』よ。何があっても」

バードウェイ「結構。では作戦に移りたまえ」

上条「了解――っとそうだ、バードウェイ」

バードウェイ「何だ」

上条「もし円周が何かして、危なくなった時には俺が責任取るから」

バードウェイ「生意気言うな。私を守るなんざ10年早い」

上条「あれ、周期短くなってね?」



282:田中(ドワーフ) ◆7fp32j77iU 2013/10/07(月) 12:57:39.54 ID:82F5LURh0

――とあるメイド喫茶

カランカランッ

円周「『お帰りなさいませっご主人様!何名様でいらっしゃいますかー?』」

上条「取り敢えず雲川さん呼んでくれないかな?ぶん殴って説教するから」

上条「半日会わない内に、そのあつらえたようなミニスカメイド服を着せたバカを呼べ!」

円周「『鞠亜ちゃんご指名入りましたー!』」

上条「そういうシステムなのかっ!?完っ全にっいかがわしい店じゃねぇかよっ!」

円周「あれあれー?当麻お兄ちゃん、いかがわしいお店ってどういう意味?」

上条「へ?お前何で突然素に戻って」

円周「いかがわしいってどういう事?何をするのが、ダメなの?ね、ねっ?」

上条「あ、あれ?どうして俺はメイド喫茶の入り口で言葉責めをされているの?」

円周「お兄ちゃんはどんな事を想像したのかなー?具体的にどんなイケナイ想像しちゃったの?」

円周「ほぉら、円周に教えて?ねっ?」

上条「もう何か空気違うしっ!?つーかお前が俺をお兄ちゃん呼ばわりすっと、周囲から何故か殺気が飛んで来るんだよ!」

鞠亜「……おいそこの変態エセ兄妹。営業妨害にも程がある。帰ってやれ」

円周「うん、うんっ!帰ってからヤるよっ!」

上条「帰ってもやらねぇよ!ヤらねぇよっ!?」

鞠亜「あー、すまない先輩。今丁度、というか二時間ぐらい前から満席でな」

上条「いやあの円周迎えに来ただけだから、お構いなく?」

鞠亜「……ふふっ!たった数年先に生まれただけの相手に、先輩と呼ばせられる屈辱!また経験値が上がるぞ!」

上条「構えよ!客じゃねーけど必要最低限の礼儀は持て!」

鞠亜「やれやれ、困ったちゃんなご主人様だな――だが、それがいい!」

上条「……父さん母さん、都会はとても怖い所です……!」

円周「実家のパパとママ、元気でやってるかなー?」

上条「うん、お前の両親じゃないけど元気だよ?」

円周「やったねお兄ちゃん!家族が増えたよ!」

上条「それの元ネタは夢も希望もない最低のお話だからな?」



283:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/07(月) 12:58:57.61 ID:82F5LURh0

円周「今日はねー、鞠亜ちゃんが来るって告知してあったから、お客さんいっぱいなんだよー?」

上条「……どう考えてもメイドのスキル上達以前に、商売ネタになってるよな?」

鞠亜「エセメイドを量産させるのは諦めるとして、せめて質を上げようとする方針なんだがね」

上条「事態の解決どころか、その内悪貨が良貨を駆逐する勢いなんだが――つか帰るぞ」

円周「遅番の人来るまで30分ぐらいだし、もう少しだけいちゃダメかな?」

上条「そんぐらいだったら、まぁ」

鞠亜「それでは店内でお待ち下さいご主人様――と、言うべきなのだろうが、生憎満席でね」

上条「あぁ気を遣わなくってもいいって。近くのコンビニで立ち読みでもしてっから」

円周「店内にお兄ちゃんの知り合いとかいないの?メイド好きの一人や二人、居そうだけど?」

上条「いないっ――事はないけども!流石にそこまでアレな知り合いは居ないよ」

円周「それじゃ、さっきから手を振ってるあの人はだぁれ?」

海原『やぁっ奇遇ですねっ!』

上条「……他人です。知りません」

海原『守ると言っておきながらロシアまで出張させた上条さんではないですかっ!』

上条「……あれ、俺が悪いのかな?確かに動機はそうだけど、『知り合いのために核ミサイル止める』って……?」

円周「まぁ『知り合い』のためだったらそこまではしないよね。『知り合い』なら、だけど」

上条「うん?どういう意味?」

円周「『はーいっ!ご主人様お一人ご案内でーーーっす!』」

鞠亜「どうぞこちらへ、ご主人様」

上条「あぁどうも」

鞠亜「……格下の相手を丁寧に持てなさなくてはならない!これは人間耐久度がまた上がるっ!」

上条「お前もどっかおかしいよね?円周の事あんま強く言えないぐらい、何か病んでるよね?」



284:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/07(月) 12:59:50.83 ID:82F5LURh0

――同席中

海原「お久しぶりです。海原です!」

上条「知ってる。つーか誰に自己紹介してんの?」

海原「そんな事よりも中学生!メイト喫茶でジュニアハイスクゥゥルが合法的に拝めるとは中学生!」

上条「その語尾止めない?」

海原「自分を常盤台マニアだと思わないで頂きたい!」

上条「ふと思ったんだけど、お前って本当は幾つなの?ガワは中学生ぐらいだけど、中はオッサンだったら偉い事になるよね?」

海原「何を仰いますやら。自分は御坂さんLOVEであって決して中学生が好物でありません!――んが!」

海原「ただ、愛しているのですっ!!!」

上条「もうちょっとボリューム落として?周りの人らも、うんうんって頷いてるし、どんだけこの店は終わってんの?」

海原「見て下さいよお義兄さん!ほら、妹さんのメールアドレス貰っちゃいました!」

上条「少し頭冷やそうか?俺に殴られるのと、俺に殴られてから一方通行にシバかれるのどっちがいい?どっちも?」

上条「つーか没収だ。名刺寄越せ」

海原「あぁっ!せっかくジャンケンゲームで勝って貰ったのに!?」

上条「えっと……『hamadura-superstars-item-no-mens@doXXXXne.jp』……?」

上条「……ごめん、コレ返すわ。俺が悪かった」

海原「流石お兄ちゃん!心が広いですね!」

上条「確認するけど、それ円周から貰ったんだよな?」

海原「はい!『寂しくなったらここに掛けてね?』と!」

上条(あー……自分のアドレスとは言ってないからセーフ、か?)

上条(浜面、エ口サイトにでも登録したのが流出してんぞ)

円周「お待たせしましたーっ!お兄ちゃんご主人様っ!」

上条「エ口ゲで言いそうだよね?……って俺、頼んでないけど?」

円周「店長からのサービスなんだって。オムライス嫌いじゃなかったよね?」

上条「むしろ好きだけど。んじゃ遠慮なく」

円周「あ、美味しくなる魔法を掛けるからちょっと待って?」

上条「やめろよっ!?痛々しいんだろ、どうせっ!?」

円周「『ふんぐるいむぐるうなふ――』」

上条「期待は裏切ったけど喚ぶな喚ぶなっ!?この世界でサス○ェの次に面倒臭ぇ連中とコンタクトとるんじゃねぇっ!」

海原「蕃神系の魔術師は新大陸に多いようですよ?」

上条「的確なアドバイスありがとうな!神様今Sのオマケで話書いてるみてぇだけども!」



285:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/07(月) 13:00:57.12 ID:82F5LURh0

円周「お、おいしくなぁーれっ!きゅるるんっ?」

海原「恥ずかしがってるその様子を激写――」

上条「――ってしてるバカに『幻想殺し(簡易版)』」

海原「冷たっ!?いきなりお冷やぶっかけるなんて酷いじゃないですか!?」

円周「ごめんねー、ご主人様?店内では撮影禁止だからね?」

円周「誰だって不意打ちで撮られるのは嫌でしょ、うんっ」

上条「良かったー、その程度のモラルはあんのね」

円周「だからまず『勝てばラミカプレゼントゲーム』をクリアして貰わないとっ。一回500円だけど」

上条「金次第っ!?良識ねーじゃん!?風俗と何が違うよっ!?」

円周「どんな美人さんでも老いるんだから、稼げる内に稼いだ方が良いって思うんだけどなぁ」

海原「ですよね。反原発で元アイドルのババアがヌードとか、誰得状態ですし」

上条「……いいのかなー?女性から反発来そうな感じもするけど……?」

円周「女性の敵は女性なんだよ、お兄ちゃん」

海原「中には『家庭を持って子供が小学生になったらパート出て、後はちょいちょい趣味で生きよう』って専業主婦を望む方も居ますしねー」

円周「でも何故かそういう人は同性から『お前のようなヤツが女性の地位をダメにしてるんだ!』って責められて」

海原「普通であればそういった生き方も尊重されて然るべきなのに、『女性平等論者』からは目の敵にされる、と」

円周「『自分達以外の生き方を認めない』ってのがデフォだし、よくある話だよねっ」

上条「……お前らなんでそんなに詳しいの?飲み屋で上司から愚痴られたの?」

円周「まぁまぁそんな事は良いから食べてみてよ?」

海原「美味しかったですよ」

上条「不安だけど、頂きます――ん?」

円周「どうどう?」

上条「美味い、のは美味いけど。これって、俺の味だよな?お前が作ったの?」

円周「一昨日作ってくれたの『覚えた』んだよ?ね、ね、良くできてるかな?」

上条「……あぁ、うん。良いと思うけど」

円周「良かったーーっ!それじゃご主人様、ごゆっくりーっ」

上条「おー……ってお前時間を忘れるなよ!」

円周「いえっさーーーっ」

パタパタパタ

海原「新しい妹さんですか?」

上条「だったら楽だったんだけど。んー」

海原「あまり嬉しくなさそうな?成長する妹に対して感情を持て余すんですね、分かります!」

上条「おい変態。妄想はフィクションだけにしとけ?」



286:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/07(月) 13:02:09.93 ID:82F5LURh0

海原「では何でしょうか?悩み事でも?」

上条「やけに突っ込んでくるなぁ、今日は」

海原「……まぁたまには、そういうのも良いんではないかな、と」

上条「たまにはね……まぁ、たまにはいいか」

海原「えぇ。自分で良ければ聞きますよ」

上条「知り合いの話なんだけど」

海原「性欲を持て余す?」

上条「ごめん、俺今からお前を殴るわ?せーのっ!」

海原「ジョークですって!ジョーク!」

上条「あとせめて感情ぐらいにしとけ。色々と問題あっから。えと、なんだっけ?」

上条「……俺は一人っ子だから分かんないけどさ。弟なり妹が居たとして」

上条「そいつらは兄貴や姉貴の真似をするんだって?」

海原「……これはまたピンポイントで来る話題ですね。いやはや、なんとも」

上条「例えばオモチャとかも、上の兄姉が持ってるのを欲しがる、みたいなの」

上条「それっていつまで続けりゃ良いと思う?」

海原「兄の背中を追いかける妹、ですか……自分にも心当たりがありますが」

上条「お前、兄妹いるんだ?」

海原「というよりは兄妹弟子みたいな感じですかね。尤も、付き合いは長いので家族のそれに近いと思います」

上条「……その割に中学生ヒャッホウ!は、どうなの?反省しないの?」

海原「自分から言える事は『好きにさせとけ』でしょうか」

海原「『真似するな!後を追うな!』と言った所で聞きはしないでしょうし」

上条「……」

海原「いつかきっと、後ろを追いかけるよりも大切な何か見つける――それが普通ではないかと」

上条「……だな。それが『普通』だよなぁ」

海原「でももし、それが。妹が、例えばの話」

海原「自分の『隣』に並ぶのを望んだとすれば」

上条「……うん」

海原「……どうしましょうか?」

上条「考えてないんかいっ!?」



287:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/07(月) 13:03:22.74 ID:82F5LURh0

海原「いえ、お話も結構ですが、その前にすべき事があるのではないかと」

上条「何?」

海原「冷めますよ、オムライス?」

上条「……まぁ、それはそうか」

海原「考えるのはいつでも出来ますし、最悪棺桶に入ってからは暇になるでしょうからね」

上条「……お前、結構計画性ないよな?衝動的っつーか、外見に反して熱いっていうか」

海原「人の生き様は外見に出ると言いますが、借り物ですしね。自分は」

海原「故郷では『メキシコに吹く熱風!』と呼ばれるぐらいですし」

上条「サンタ○?柱の男だよね?シュトロハイ○から命名されたのに、カー○達からもなんでそう呼ばれてんの?」

海原「あぁ失敬。どうぞ召し上がって下さい……これからは自分の独り言と言う事で」

上条「……?」

海原「ここ数日、いえ下手をすれば一週間以上前から、妙な魔力の流れを感じます」

海原「自分には興味がないので放置していたのですが、少し気になりまして」

海原「ほら、選挙とか役所の広報カーとかあるじゃないですか?スピーカー鳴らして近づいてくるの」

海原「それと同じで妙な魔力も高まるにつれ、漸く正体が掴めてきた、ような気がします」

上条「随分と慎重な言い方だな」

海原「どうせまた一枚噛んでいるのでしょう?なら余計な先入観は与えず、自分の感想を直に伝えた方がいいかと思いまして」

上条「……それじゃ、お前ここで待ってた――」

海原「――のは、勿論タダの偶然ですけど。だからこれは世間話です」

上条「うん、知ってた」

海原「ベースは、恐らく十字教徒系の魔術、でしょうか。この街に大規模な儀式魔術を展開しようとしています」

上条(バードウェイが何かしようとしてるんだろうけど、またアイツ事後承認で動いてんのか)

上条「街ごと?」

海原「どんな種類のものかは分かりませんが……どうにも、不気味でしてね」

上条「良くない術式だって思うのか?」

海原「とは言いません。言いませんが、不気味と言いましょうか」

海原「アステカ帝国の最期はご存じでしょうか?……まぁスペインに滅ぼされて、今も尚間接的に十字教の支配下にあるのですが」

海原「帝国を滅ぼす際、動員された魔術師の『ニオイ』がするんです」



288:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/07(月) 13:05:35.52 ID:82F5LURh0

上条「ぶっちゃけるけど、今はイギリスの魔術師と共闘してるんだ。それじゃないのか?」

海原「いえ……いや、違うような気がします。イギリス――イングランドはイギリス清教でしょう?」

海原「スペインはローマ正教系。どうにもそちらのニオイがすると言いましょうか」

上条「俺の知り合い以外にも誰かが動いている、か?」

海原「あくまでも可能性ですが」

上条「その話、直接言ってやってくれないか?俺に伝えるだけじゃ、分からない事もあるだろうし」

海原「……すいません。それは出来かねます」

海原「あなたを信じていない訳でもないのですが、あなたが信じると決めたお相手までは、流石に」

海原「仮に学園都市へ攻撃を仕掛けようとしているのであれば、自分が会いに行くのは消されに行くようなものですし」

上条「いやぁ、そういう奴じゃないと思うけどなぁ」

海原「自分はセーフティみたいなものだと考えて下さい。危険な術式であれば、一も二もなく介入しますから」

上条「そりゃありがたいけど」

海原「勿論、あなたを敵に回したとしても、ですが」

上条「忠告……警告どーも。ま、お手柔らかにな」

海原「そちらこそお友達を大切に。外見がそうであっても決して油断なさらぬよう」

上条「後から刺す気満々じゃねぇか」

海原「それは自分のキャラではありませんが、臨機応変で。ではこの辺で失礼します」

上条「悪いな、なんか。待ってて貰っちゃって」

海原「おや?偶然だと言いませんでしたっけ?」

上条「そうだった。んじゃまた」

海原「えぇ。出来れば会わすに済む事を祈って」



289:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/07(月) 13:07:36.53 ID:82F5LURh0

――帰り道 夕暮れ

上条「おつかれー。大変だった?」

円周「そんなには?メイドさんも大変だなっては思ったけど」

上条「アレはメイトじゃなく、コスプレしたウェイトレスさんの仕事だと思うけど」

上条「あ、でもお前ちょっと恥ずかしそうにしてなかった?オムライスに妙な呪い掛ける時とか?」

円周「演技に決まってるじゃん?恥ずかしがった方がお客様も喜ぶし」

上条「……え!?って事はよくマンガやアニメでネタにされるような話は」

円周「お金のために割り切ってるよ。むしろ「バカじゃねーの?」って笑ってると思うし?」

上条「営業妨害になんねぇかな……」

円周「やってる方はプロだからねー。むしろ広まったら広まった勝ちみたいな?」

上条「バカしてるつもりがされていたり?」

円周「メイド喫茶も初めの頃はそうだったんだって。17歳の先輩が言ってたよ?」

上条「年齢はスルーするとして。まぁ最初は色物だけど、色物として取り上げられていく内に定番になっちまったしなぁ」

円周「だから後は差別化――ご飯が美味しかったり、女の子がお料理したり、色をつけるんだって」

上条「お前も作ってたんだっけ」

円周「キッチンのバイト募集中だから、一緒にやろーよーっ?ね、いいよねっ?」

円周「従食もつくし、鞠亜ちゃんルートにも入れるし、いいことずくめだよねっ!」

上条「勝手にルートを固定するな!……普段ならやるかもだけど、今はいつどんな事が起きるか分からないからなぁ」



290:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/07(月) 13:08:38.11 ID:82F5LURh0

円周「むー。それじゃわたしもダメかな?『良かったら明日も』って鞠亜ちゃんから誘われてるんだけど」

上条「あ、気に入ったんだ?情操教育には良くないと思うけど」

円周「え、好きじゃないよ?全然?」

上条「――はい?」

円周「別に嫌いって訳でもないけど。んー?どっちかっていったら『どうでもいい』かな?」

上条「うん?それじゃなんでやってんだ、つかやりたがったんだ?」

円周「『若い女の子は可愛いモノが好き』なんだよね?だから」

上条「えっと……もうちょっと分かり易く頼む」

円周「って聞かれてもなぁ。シェリーお姉ちゃんにも説明したんだけど、分かって貰えなかったみたい」

上条「こないだの話だよな?無線が切れ切れでよく聞こえなかったけど、『筺(はこ)』がなんとかって」

円周「それそれ。人は肉体の中に色々なモノを詰めてるよねって」

円周「信念、記憶、お仕事、趣味、家族……あとお友達とか?」

円周「でも逆に――中身が『からっぽ』であっても、その人は人間なのかなって」

上条「……それ、ちょっと場所移そうか。そこに公園あるし、少しぐらい寄り道したって良いだろう」



291:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/07(月) 13:11:36.57 ID:82F5LURh0

――公園

ガコンッ、ピピピピピッ……

自販機(cv.成瀬未○)『はっずれー。残念でしたねーっ』

上条「……まぁ、いつもの事だけど」

円周「こう言うのはゲームセンターのプライスマシンと同じで、一定額に達するまで絶対に当たらない仕組みなんだよ」

上条「そうなのかっ!?てっきり運が悪いのかとばかり」

円周「『設定額まで貯まりきった自販機に出くわす』事自体は運だと思うけどねー」

上条「単純な運だけじゃないって分かっただけとでも良しとしよう……椰子の実サイダー?」

円周「――は、お兄ちゃんどうぞ。わたしはコーヒーが好きかなぁ」

上条「寒いしなー」

円周「あっちのベンチ開いてるね、行こうっ?」

上条「ん」

円周「あ、お兄ちゃん、先座ってー」

上条「お、おぅ?」

円周「しっつれいしまーーーすっ!」 ポスン

上条(円周が膝の上に乗っかってきた……軽いな)

円周「ごちそうさまでしたーっ」

上条「飲むの早ぇなオイ」

円周「言われてみれば喉渇いていたかも?」

上条「店内は結構暑い、っていうか熱気ムンムンだっだよなぁ」

円周「流石に雲が出来る程じゃあないけど、お客様はみんな薄着だよねっ」

上条「え、エコで良いんじゃないかな?」

円周「お店のご主人様は、どうしてみんな黒い服しか着てこないの?仕様?」

上条「CPを別の所に割り振ってるから、ファッションまでは気にしないだけじゃないかな?」

円周「携帯でパンツ撮ろうとした集中力を別に回して欲しいかも」

上条「……一応聞くけど、そいつどうした?」

円周「指の関節を一つ“ずつ”増やして、アンチスキルに突き出しておいたよ?」

上条「まぁ……自業自得かぁ?」



292:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/07(月) 13:12:53.90 ID:82F5LURh0

円周「――で、お話しってなぁに?みんなの前では出来ない事?」

上条「あー、まぁ。お前が『足りない』ってのは何かなって思ってさ」

円周「わたしには足りないんだって。本来入っているべき感情とか、『木原』としてあるべきものが」

円周「まぁそれはわたしの能力も関係してるんだけどねぇ」

上条「そういや聞いてなかったな。つか聞いてもいいのか?」

円周「別に内緒にするつもりはなかったんだけど――そだね、見て貰った方が早いかも」

円周「あっちにさ、ド下手なストリートダンス踊ってる女の子達がいるよね?」

上条「いる……な。下手かどうかは分からないけど」

円周「んー、あぁいう子達は形から入るからねー。まぁそれもアリだと思うけど」

上条「何かマズイの?ヒップホップ系?だかのだらーんってした格好じゃん」

円周「元々はアメリカの貧民層発祥の音楽スタイルだからねぇ。そういった子達は親兄弟のお下がりしか貰えないとか普通だし」

円周「ラッパーが元ギャングはザラで、死んじゃった大物の中には麻薬の運び屋さんとかも居たりするし」

円周「ムーブメントが起きると、憧れた人達がサイズの合ってない服をわざわざ買うとか逆だよねー。明らかに」

上条「ブルース歌手が大金持ちになったりとか?」

円周「今じゃ『俺は金持ち万々歳』的な歌詞も多いし、プロモーションビデオを見てると美人のねーちゃん侍らせてばっかだし、なんだかなぁって」

上条「……日本にもいそうだもんなぁ。親の金で四大入って新品のフーディ着てラップ歌ってる奴とか」

円周「外人さんが片刃の曲刀持ってサムライごっこしてるのと同じだよねぇ」

円周「剣術が幾ら上手になっても、日本人からすれば笑っちゃうだけだよ。それと同じ」

上条「随分辛辣だけど、まぁそれはそれでいいんじゃいないかな、うん」

上条「本人が好きでやってるなら、誰に笑われたってさ」

円周「お兄ちゃんは甘いなぁ。でもそう言う所は愛しているよっ!」

上条「はいはいどーも」

円周「もういいかな。んじゃちょっと見ててよ、っと」

上条(そう言うと円周は膝の上から下り、彼女曰く『ド下手なストリートダンス』を披露し始める)

上条(俺との雑談中に見ていた子達のと、寸分違わずに。途中で少しトチる様子も正確に再現している)

円周「――はい、ありがとうございましたー。これがわたしの能力『卓上演劇(テーブルトーカー)』だよ」

上条「凄げぇな。見ただけでコピーできるのかよっ!」

円周「ううん。出来ないよ?」

上条「いや、したじゃん今っ!」



293:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/07(月) 13:14:29.75 ID:82F5LURh0

円周「んー、なんて言ったらいいのかなぁ……?これは低能力(レベル1)なんだ、お兄ちゃん」

上条「そう、か?少なくても異能力(レベル3)ぐらいはあると思うんだけど……あ!なんかすっげー疲れるとか?」

円周「別に人並みじゃないかな、ってそうじゃなくて。本当にレベル1なんだって」

円周「分類的には電気能力者で、外部入力で相手の動作を覚えて、体に電気信号を流して再現するってだけの」

上条「いや、お前の見る限りだと充分なんかに使えそうだろ?」

円周「その『外部入力』ってどうすると思う?」

上条「外部って、そりゃ憶えるんだろ?パソコンみたいに取り込めないから」

円周「その『憶える』のに『何時間も何日もかかる』んだって、普通は」

円周「だってそうだよね?普通の人だったら完全記憶能力でも持ってない限り、人の動作を憶えるなんて無理だし」

円周「『卓上演劇』は『自身の記憶にある動作を、正確に再生出来るだけ』の能力なんだよ」

上条「……つまりアレか?お前が今のストリートダンスをうろ覚えだったら」

円周「当然うろ覚えにしか再生出来ないよ?」

上条「意味無ぇなその能力は!」

円周「だから汎用性も低いし、応用しようにも机上の空論だし?見て憶える自体は誰だって出来るから」

円周「目の前で絵を描いた人が居るとするよね?理論上は『卓上演劇』を使えばその人と同じ絵は描けるんだ。でも」

円周「『下書きから塗りまで全ての動作を記憶し続けるなんて、まず不可能』だよね?」

上条「……ホンっとーーーにっ、使い道ねぇな」

円周「あくまでも『自分の思い通りに体を動かせる』能力だし?逆に同じサインを数百枚書くとかは向いてるよねっ!」

上条「そんな状況一般人には生涯来ないよ?」

円周「いやー?鳴護アリサちゃんから泣きつかれたり?」

上条「仮にそうなったとしても、サイン色紙楽しみにしてるファンの人に申し訳ないだろ――あれ?待て待て?」

円周「年上好きにとってはシャットアウラお姉ちゃんの方が好みだよね?」

上条「俺はジェントルだからムキになって否定はしないけども!……いやいや、そうじゃなくてだよ」



294:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/07(月) 13:15:47.16 ID:82F5LURh0

上条「お前今使ってたよな?目の前で、たった数分ぐらいしか見てない踊りを正確に再現したよね?」

円周「したねぇ」

上条「もしかしてあっちで踊ってるあの子達知り合い?前から観察してたとか?」

円周「興味ないから自信はないけど、今日が初対面だと思うよ?人も踊りも」

上条「じゃあなんで、つーかどうやったんだ?一回見たぐらいじゃ、完全記憶能力でもない限りは――」

円周「あ、お兄ちゃん気づいちゃった?それが『木原』なんだよ」

上条「数分間の体の動きを完全に記憶したのかっ?」

円周「んー、足りないよ?それだけじゃ『木原』に届かないかも」

円周「あの日、数多おじちゃんにハッキングされた時から、わたしはスマートフォンもデータ端末も首から下げてないけど」

円周「あれは一体何のためだったと思う?ね、答えて答えて?」

上条「話の流れからすりゃ『外部からの入力』か……?あのグラフだけで?」

円周「あったりーっ!お兄ちゃんにはわたしをプレゼントーーーっ!」

上条「……」

円周「あ、あれ?引いちゃった?」

上条「……なぁ、円周」

円周「なぁに?」

上条「グラフだけの入力で個人を再生してしまった、それが――」

円周「わたしの『木原』だね?」

上条「凄い、けど。それはただの模倣だろ?」

円周「だけじゃない、ってのはお兄ちゃんも第一位相手で分かったでしょ?

円周「わたしは『木原数多』の戦闘データを再生出来れば反射も貫通出来た」

円周「それだけじゃないよ?中には人格パターンも戦闘データも入ってるから、それを脳内で『卓上演劇』すれば――」

円周「その人と同じ思考、同じ動きが出来るんだよぉ。ね?凄いでしょ?」

上条「再生とか!でもお前の体は子供で!」

グシャッ

上条(円周は笑ったまま、スチール缶を親指と人指し指だけで握り潰した)

上条(大人だって無理……どうなってる!?)

円周「――って考えるんだろうけど、それは『生物のリミッター』を外してるから」



295:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/07(月) 13:17:10.27 ID:82F5LURh0

円周「ソフトウェアにバードウェアの性能が足りなくって再現出来ない、って問題は解決済みだし」

上条(思考を読まれた?読心能力?)

円周「あー、違う違う。『上条当麻ならこう考える』って思ってるだけだから、能力は関係ないよ?」

円周「付き合いの長いお友達が、何となく行動パターンが分かるってぐらいの話だから?」

上条「……いや、俺ら出会って一週間経ってねぇだろ?」

円周「あれぇ?『勉強』してるって言わなかったっけ?ま、いいや」

円周「で、その『生物のリミッター』は力加減だね。全力で人を殴ったら、殴った拳も折れるからセーブしてる的な」

円周「それを任意で調整出来るってだけだし?『木原』の中じゃ基本的な能力だよねぇ」

上条「……大丈夫なのか、それ?」

円周「えっ?」

上条「その、なんか危険そうだよな?自我を失ったり、とか」

円周「そうだねぇ。たまーに境が曖昧になるぐらいだけかな?」

上条「……お前もうその能力使わない方が良いんじゃねぇのか」

円周「だから能力自体はレベル1なんだって。わたしの使い方が上手なだけで?」

円周「例えば肉体硬度を上げられる能力があったして、それは使い用だよね?」

円周「格闘技に長けた人間であれば相性抜群だけど、研究職だと何の役にも立たないっぽいし」

円周「たった『隠し芸でウケを取る程度の能力』であっても、『木原』であればこういう風に使うんだねっ」

上条「……他人の行動や戦闘パターンを再生?能力は流石に出来ないだろうけど、それって反則じゃねぇのか」

円周「過大評価してくれるのは嬉しいけど、まだまだ足りない。『木原』が足りないんだよ」

円周「『卓上演劇』の欠点は幾つかあるけど、この間鞠亜ちゃんが拳で教えてくれたのは『癖』なんだって」

円周「どんなデッキでも、戦闘パターンを無数に持っていたとしても、選択するのは『わたし』って個人でしょ?」

円周「だからパターンが読みやすい、的な?」

上条「同じデッキであっても、初心者と熟練者じゃ強さが違うもんな」



296:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/07(月) 13:18:24.44 ID:82F5LURh0

円周「あとは『どうやっても本人はなれない』かなぁ」

円周「模倣はどんなに上手くやっても模倣に過ぎないし、思考パターンをどれだけ積んだって本人にはなり得ないからねー」

上条「充分脅威だと思うけど、それ」

上条「格闘術?とか銃とかの名人を『卓上演劇』で使えば」

円周「当然出来るよねっ!……あ、けど今は断線してるから二人分ぐらいしかストックはないけど」

円周「木原加群の研究データの半分だけ、後は『上条』の行動データをラーニング中みたいな感じ」

上条「加群、グレムリンではベルシって呼ばれた人だっけ。雲川さんの先生でもある人……」

上条「話逸れるけど、『木原』ってのはそんなに酷い一族なのか?」

上条「加群さんや円周ぐらいだったら、まぁ?昔の一方通行や黒夜みたいなもんだし?」

円周「その二人を『酷くない』カテゴリに入れてるお兄ちゃんには戦慄すら覚えるけどね。んーと、『木原』はねーぇ」

円周「『科学のためなら自分を含めた全てになんだってする』人の集まりかな?ど」

上条「マッドサイエンティストの集まり、つったら悪いか」

円周「お兄ちゃんが想像しているのを数倍悪くしたので正解、かな。でも逆に言えば『科学に関係無ければどうだっていい』んだよ」

円周「木原加群は一度『木原』を止めようとして、学校の先生になった。確かに病理おばさんが諦めさせたけど、基本的には無視だったし」

上条「良くも悪くも研究にしか興味がないのか?」

円周「逆に必要だと思ったら同じ『木原』でも躊躇なく遣い潰すけど、わたしみたいに?」

上条「……木原数多には貸し一なんだよな。近い内に取り立てるつもりだけど」

円周「――それじゃ、わたしが『足りない』話に戻るけど。正しくは『補充してない』が正解かも知れないね」

円周「さっきも言ったけど普通は憶えられないよね。人一人の思考・行動パターンなんて無理だし?」

円周「外部からの補助があったとしても、限界はあるよ。だから」

円周「『普通じゃない方法』を採っただけだから」

上条「お前……それじゃ!?」

円周「流石お兄ちゃん、分かっちゃったかぁ――ってまぁヒントは色々出てるけど」



297:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/07(月) 13:20:24.19 ID:82F5LURh0

円周「『学習装置』に『卓上演劇』を組み合わせてあるんだよ、うん」

円周「オンラインゲームでさ、端末であるハードディスクに背景とか音楽とかの一部データをインストールするじゃん?」

円周「他のデータは適宜ダウンロードして、読み込みを早くする、みたいな?珍しくもないよねぇ」

上条「だから、だからってお前はっ!」

円周「大丈夫だよぉ、当麻お兄ちゃん。わたしは『脳内バッファに基幹データを確保』してあるけど」

円周「それは別に生きていくには必要のない情報の所へ、上書きしているだけだから」

上条「本当か?つかそれってどこだよ!?」

円周「ここでやっとお兄ちゃんの最初の質問、『足りない』に戻るんだよ、やったねっ!」

円周「データがあるのは『視床』。嗅覚以外の感覚神経を大脳へ中継する所であり」

円周「感情の発現や運動の促進とかをする働きがあるみたいだねー」

上条「それじゃお前は、誰かに感情を消されたって言うのかよ!?」

円周「だーかーらっ!言ってるじゃない、お兄ちゃん。お兄ちゃんには『木原』が足りないって」

円周「確かに一人じゃ出来る事じゃないから、数多おじちゃんに手伝って貰ったけど。それは」

円周「うん、うんっ!そうだよね、わたしが『木原』になるためだったら仕方がないんだよねっ!」

上条「まさかお前、自分の意思で……?」

円周「んー、生命の危機に関する感情系は消さなかったけど、それでこの間ムキになって鞠亜ちゃんには負けちゃったし」

円周「だからって全部消す訳にはいかないよねぇ、流石に」

上条「……あぁ、そうか。何となく、そんな感じはしてたけど」

上条「お前は大体、いつも笑ってるけど――全然楽しそうじゃなかった」

円周「そうなのー?」

上条「テレビとかで無理矢理演技してるような、そんな感じだったし」

円周「……そっかぁ。お兄ちゃんに看過されるなんて余っ程ダメなんだろうなー」

上条「その言い方もどうかと思うが……あ、でもさ、お前本当に感情がないの?」

上条「俺に無茶振りしたり、俺に無理ネタ振ったり、俺にバードウェイし向ける時なんか生き生きとしてっけど?」

円周「どーだろ?お兄ちゃんとシェリーお姉ちゃんは大好きなんだよ」

円周「でもそれって同じ『筺』だからかなー、って思ってたんだけど」

円周「お姉ちゃんは心におっきな『隙間』があるから、だからわたしと同じだ!って感じたんだぁ」

上条「その理屈じゃ俺も何か」

円周「あるよね、お兄ちゃんも?」

円周「人には言わない――言えないけど、決して塞がらない『隙間』みたいなの?」

円周「そんな傷があるから、わたしと似ているから懐いたんだよ、きっと」



298:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/07(月) 13:21:34.10 ID:82F5LURh0

上条「……これは、シェリーが言ってたんだけど」

上条「お前を引き渡せばエリス・クローンを作ってくれる、って言われたのを知ってて。それでもお前は行こうとしてたんだよな?」

円周「……笑わない?話しても良いけど、笑っちゃヤダよ?」

上条「笑うような所は一切無かったと思うけど。約束する、笑わない」

円周「約束ね?破ったら社会的にハリセンボン呑ますからね?」

上条「初めて聞いたなそのっ脅し文句!?社会的にってどういう意味だっ!?」

円周「わたしは『木原』じゃないし、でも『普通』でもない。だから」

円周「わたしっていう『パーツ』でお姉ちゃんが満たされるんだったら」

円周「まぁいいや、って」

上条「……うん」

円周「あーーーーーっ!?お兄ちゃん約束破ったし!」

上条「違う違う!そう言う意味で笑ったんじゃない!お前がおかしくてとかじゃねぇよ!」

円周「ちょっと待ってね?今ハリセンボン用意しちゃうから。あ、でも吉×まで行くの面倒だなぁ」

上条「お前っ俺に何食わせようとしてんのっ!?まさか芸人の方かっ!?」

円周「クールー病が怖いけどねー。脳がスカスカになったら、わたしが一生面倒看てあげるから、ね?」

上条「……待とう?お前は本物のヤンデレなんだからな?」

上条「えっと……あぁ、今笑ったのは安心したからだよ。お前には『足りなく』なんかねぇって」

円周「わたしが?」

上条「あぁ。もしもお前が言う通り、情も何もないような奴だったらシェリーを助けようだなんて思わないし、好きになったりしない」

円周「そう、なの?わたしは『足りない』んじゃないの?」



299:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/07(月) 13:23:04.16 ID:82F5LURh0

上条「俺の友達にはクローンの奴が何――千人か居るけど、そいつらは『造られた体』なんだよ」

上条「でも、だからって卑下する訳じゃないし、今はまだぎこちないけど立派に生きてる」

上条「円周の理論だと、そいつらの『筺』は偽物だかに魂も宿ってないって事になるのか?」

円周「そう、なのかな……?良く分かんないけど」

円周「……なら、わたしは『筺』が本物だから、宿ってる魂は正しいって事……?」

上条「違うさ。それはどっちも間違いだ」

円周「……どゆこと?」

上条「魂が宿ってようがいまいが、『筺』が自然なものなのが不自然なのか――」

上条「――別にどっちだって構わねぇって話だな」

上条「『人間』の定義は分からないし、分かってる事の方が少ないと思うけど」

上条「少なくともそいつらが人と同じような格好してて、意思疎通が出来るんだったら」

上条「誰か他人のために、自分を投げ出すような事が出来るんだったら、それはもう人間以外の何者でもないと俺は思うし。何より」

上条「お前らは、俺の友達だって事実は変わらない。それは絶対にだ!」

上条「もしも誰かがお前や妹達を『こいつらは人間じゃない!』なんて言うかも知れない」

上条「生まれてきた事すらを否定されるかも知れない。でも、そん時は!」

上条「俺が、そいつらの幻想をぶっ殺す!」

円周「でもっ!わたしは『木原』の落ち零れだしっ!」

上条「……勉強が出来る出来ないんだったら、俺も落ち零れだなぁ」

円周「『木原』が足りないって!『木原』らしくないって!」

上条「お前を遣い潰そうとするなんて、そんなの身内でもなんでねぇよ。『木原』なんて止めちまえ」



300:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/07(月) 13:24:54.64 ID:82F5LURh0

円周「え」

上条「お前は確かに『木原』だった。それは絶対に変わりはない。事実なんだからな」

上条「でも、だからっつってこの先ずっと連中の流儀に従う必要はないだろ?」

上条「人が同じ生き方をずっと強いられなきゃいけないなんて、それこそやっちゃいけない事だろ」

円周「……『木原』を捨てるの?」

上条「感情が無いだなんて言うけど、少なくともお前は『木原』に対して家族愛みたいなのは持ってんだろ?」

上条「形は歪かも知れないけど、身内を頼りたいってのは誰だって持ってる『感情』だ」

円周「お兄ちゃん……わたし」

上条「どんな教育されたのかは分からないが、お前は、お前だよ」

上条「普通ではないかも知れない。でも感情をそこそこ持った女の子だ」

上条「……なんつーか、まぁこれは俺の考えだけど。そもそもが、だ」

上条「笑って人の間接へし折って笑うようなお前が、『木原』だと『筺』だのって拘る事自体」

上条「『円周』らしくはねぇな、って思う」

円周「わたし、らしく」

上条「子供はいつか親兄弟から離れる時が来るし、お前はちっとそれが早かったたけの話」

上条「お前には俺とかシェリーとかがいるし、友達に迷惑かけちまえよ」



301:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/07(月) 13:26:33.40 ID:82F5LURh0

円周「……えぐっ……!」

上条「……今まで一人でよく頑張ったな?偉かったぞ」

円周「お兄ちゃんっ、お兄ちゃんっ!」

上条「……うん」

円周「お兄ちゃんのお嫁さんになるねっ!」

上条「いいシーンが台無しだなっ!?どっからその発想出て来やがった!?」

円周「え、『木原が嫌なら上条にしてやんぜ!』ってプロポーズが?」

上条「一言も言ってねぇ!?」

円周「お兄ちゃんっ」 ガシッ

上条「ちょっ!?急に抱きつくな!」

円周「……」

上条(――ってまぁ、強がっているのはバレバレで)

上条(腕の中で声を殺して泣きじゃくる――多分、生まれて初めて『安心』して泣いてる女の子を。つか今の俺達の姿を見た人は)

上条(『仲の良い兄弟だな』って思うんだろう)

円周「……よっっし!お兄ちゃんゲットだ!……」

上条「気のせいなの?もう少し空気読もう?せめて小声で言うとか考えなかった?」

上条(……まぁ、そんな感じで。また少し仲良くなった、んだよな?俺騙されてないよね?)



302:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/07(月) 13:28:02.55 ID:82F5LURh0

――上条のアパート 夜

バードウェイ「――とまぁ今日は収穫無し。本格的な行動はSEEDの解析待ちとなる」

円周「あ、ごま油で揚げるんだ?サラダ油じゃなくて?」

上条「んー、まあ毎日食べる訳じゃないし、少しぐらいは贅沢したっていいだろ」

シェリー「へぇ。これがテンプラか……家庭用コンロで出来るものなの?」

バードウェイ「幸いにして良いスタッフも集められたし、時間の問題だろうな」

上条「学園の外の電気コンロじゃ火力が足りないけど、まぁ突っ込むな。色々あるから」

シェリー「フライヤーってのを見たんだが、あれは実用的じゃないのか?」

上条「あれは素材自体に油分がないと美味しくないらしい、って通販マニアが言ってた」

上条「フライドポテトを作ってみたら、風味のないマッシュドポテトが出来上がったって」

円周「水と空気で揚げてるからねぇ。どうしても物足りなく感じちゃうだろうし」

シェリー「どんな感じか興味はあるわね。借りて来られねぇかな?」

上条「他のクラスの女子が借りたいっつってたかな?――っと、油に入れるから離れててくれ」

円周「はーいっ!」

ジュゥゥゥゥッ

バードウェイ「かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁみぃぃじょぉぉぉぉおおおぉぉぉぉぉっ!!!」

上条「ヤダ霊現象っ!?」



303:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/07(月) 13:29:16.13 ID:82F5LURh0

円周「はいはい、お兄ちゃんは料理中で危ないからねー?レヴィちゃんはこっちでわたしと遊んでよ?ねっ?」

バードウェイ「……どけ小娘!私は今からそのバカの顔面をカラッと揚げねばならん!」

上条「人の顔面で何するつもりだっ!?つーか目が離せないのに後ろで何騒いでやがるっ!?」

シェリー「あー、あれだな。鍋の中にぶち込むだけだろ、台詞から察するに」

上条「死ぬよっ!幾ら学園都市だからって無茶すれば!多分!」

円周「絶対とは言い切れない所はアレだけどねぇ。ってレヴィちゃん、テレビでも見て待ってよう?」

バードウェイ「オイ貴様!軽々しく私に触れるなっ!」

円周「よいしょっと。あ、軽いねぇ」

バードウェイ「さーわーるーなっ!子猫みたいに抱きかかえるんじゃない!」

円周「たかいたかーいっ!」

バードウェイ「……もう殺す!」

円周「……うん、うんっ!そうだねっ、そろそろカビの生えた魔術結社も賞味期限切れなんだよねっ!」

円周「こんな時加群おじさんだったら、こう壊すんだよね……ッ!」

上条「俺の背後で殺し合いするの止めてっ!?誰か助けて上げてえぇっ!?」

シェリー「こんぐらいで騒いでんじゃねぇわよガキども」

上条「おおっ!頼むぜシェリーさん!」

シェリー「任せろ……友達だろ?」

上条「……あぁ!」

シェリー「いいか、アンタ達?今はガキかも知れないけど、誰だって成長するもんだ」



304:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/07(月) 13:30:33.32 ID:82F5LURh0

シェリー「いつまでガキみたいな事ばっかしてっと、体だけデカい最悪の大人になるわよ?」

バードウェイ「だがなぁ。20姉前の思い出し殺意で、科学サイド皆殺しにフラッと来た奴にだけは言われたくないな」

円周「しーっ!レヴィちゃん酷い事言ったらダメだよ!お姉ちゃんはアーティスト気取ってるんだから!」

バードウェイ「おっとすまない。そうだな、お前はアーティスト()だもんな?少々変人であっても許されるもんな?」

円周「ごめんね、お姉ちゃん?悪気があって言ってる訳じゃないんだよ」

円周「どんだけ痛々しかろうと、そろそろゴス着れる上限に達してるけど、別に悪いっては思ってないからね?」

円周「ただそれが痛々しいだけだからねっ?周りは気を遣ってるってだけだから、うんっ、大丈夫だよっ!」

上条「オイバカヤメテあげて!?元からメンタル弱いシェリーさんをはぐれ悪魔超○コンビがイジるのやめてあげてぇぇぇぇっ!?」

シェリー「……なぁ……?」

上条「は、はい?」

シェリー「アンタがもし道に迷った時には夜空を見上げればいい」

上条「どうしたの?本格的に世迷い言言い出したんだけど!?」

シェリー「そうすりゃクソ汚ぇ都会の空気であっても、薄ぼんやりと星の明かりが見えるじぇねぇか」

シェリー「……私は、そのどれかになって見守っててやるから、な?」

上条「詩的な表現で絶望的な事を言い出したな!?つーかメンタルが弱すぎじゃねぇか!」

上条「っていうかそんな気分で夜空見上げたくないもの!だって夜空見上げる度に『あ、シェリーだぁ』ってしんみりするもの!」

バードウェイ「――と、そろそろ出来たんじゃないか?」



305:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/07(月) 13:31:44.13 ID:82F5LURh0

円周「だね、運ぶの手伝うよー。お姉ちゃんはテーブル片付けてといて」

シェリー「ん、あぁ。そうだな」

上条「ちょっと待とうか?お前ら今の全部お芝居なの?俺担ぐために仕掛けた、ねぇ?」

バードウェイ「と言うか平然と全て調理するのもどうかと思うが」

上条「現実逃避してたんだよ!『これキレイに揚げ終わったらケンカは終わってる!』って夢の世界で願ってたんだよ!」

円周「あ、ソバはザルだよね。ん、付け合わせの刻みノリも用意してと」

上条「お前らなんだよおぉっ!?とーしてそんなに連携良くなったのぉぉっ!?」

シェリー「めんつゆは……あ、希釈しないでいいのかよっと」

バードウェイ「柚醤油を入れた方が好みだが」

円周「あーそれ和風レストランぐらいにしかないよ?ご家庭じゃ使う機会が中々限られるからねぇ」

円周「ポン酢とレモン果汁で代用――ってお兄ちゃん?みんなで食べよ、ねっ?」

上条「……お前ら妙に馴染んでやがるよな?特にジョンブル二人」

バードウェイ「察しろ。大英帝国として世界の40%を持っていたのにも関わらず、何故かイギリス料理が碌なモノがないという現実に」

シェリー「普通は植民地の美味いモノ取り入れるのに、それをしなかった国民性だからなぁ」

上条「……それって家の近くにピザ屋とイタ飯屋と牛丼屋があるから、中々料理が出来ない一人暮らしの発想じゃ……?」

バードウェイ「その例えを否定する要素がない」

円周「ニューリベラリズムの行き着いた先が料理を作らない母親だからねぇ。国民性ってだけじゃないと思うけど」

バードウェイ「利便性を追求して分業制に特化し続け……まぁそれがいいのかどうかは分からんがね」

上条「メシを見るにアイタタな結果になってんじゃねぇか」

円周「イギスがネタ抜きで再興を謀るんだったら、魔術王国でも目指した方が良いかも?ポッタ○も大人気だったじゃん」

バードウェイ「残念。この世界に魔術は存在しないのだよ」

シェリー「バラした日にゃ大混乱は必至だろうしなぁ」

上条「つーか狭い!お喋りは食いながらでいいだろ!」

三人「はーい」



311:田中(ドワーフ) ◆7fp32j77iU 2013/10/14(月) 12:15:32.31 ID:Q0LxgS/b0

――食事中

バードウェイ「――シェフを呼べ!」

上条「えっと……『ボスのテンションがダダ上がりなんですけど、どうすれば?』っと」

バードウェイ「言いたい事があれば直接言え、直接。マークにメールで愚痴るんじゃない」

上条「つーか気になってたんだけど、マークは?」

バードウェイ「芳川桔梗の警護だな。襲撃に備えて何人か配置してある」

上条「マークってそんなに強かったんだ」

バードウェイ「プロの魔術師程度ならばまず負けん……と、いいなぁ」

上条「希望かい」

バードウェイ「慎重になりすぎる所がある。例えば相手の力を見極めてから攻撃する、とかな」

シェリー「タロットってぇのはそういうもんじゃねぇか。相手の防御に合ったぶち破り方を探るんでしょうから、むしろ近道じゃ?」

上条「すまん。意味が分からない」

円周「目の前に壁があって解体しましょう。材質を調べてブルーシートを張って、埃が立たないように放水しながら壊すのがマークさんのやり方」

円周「ジョンブル組二人は『壊れるまで殴ればいいんじゃね?』派」

バードウェイ「合ってはいるが、クロムウェルと同じ扱いは止めて貰おうか。コイツはそれ以外に方法がないからだ」

シェリー「……いや、ゴーレム以外にも術式は持ってるからな?基軸をゴーレムにしてるってだけで」

上条「分かったような分からないような――って、いい加減情報交換しようぜ」

上条「一応円周の能力も聞いといたし、きちんと共有しておいた方がいいと思うんだ」

円周「お兄ちゃんに頼らなくても教えたのにー。水くさいなー」

バードウェイ「適材適所だ。まぁソイツと情報を共有するのは一抹の不安を覚える所ではある」

円周「信用ないなぁ」

バードウェイ「――だが、まぁ逆に考えろ。『木原円周』よ」

上条「バードウェイ……?」

バードウェイ「君のおじさんにも言った事だが、君達がどこで何をしようが、どんな人道を踏み外した研究をしていようが、私には関係ない」

バードウェイ「だからまぁ君もグレイであり、一応、渋々、仕方が無く、本当に極めて不本意な事に」

バードウェイ「どっかのバカ兼天然人たらし兼新入りが突っ込んだ以上、助けざるを得なかった訳だが」

上条「……あれ?遠回しに非難されてる?」

シェリー「ダイレクトに『自重しやがれ』って言われてんのよ」

バードウェイ「だが、もし一度信頼を得ておいて裏切るのであれば、それ相応の覚悟を持つ事をお勧めしようか」

バードウェイ「今までは『存在を許しておいてやった』だけの相手が、『明確な敵』へと変わり堂々と排除出来るんだからな?」



312:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/14(月) 12:17:11.21 ID:Q0LxgS/b0

円周「あー、しないしない。だってメリットがないよね?わたしがレヴィちゃん達を裏切るって事は、何らかのリターンがないと」

上条「『あればするし?』みたいな感覚はやめなさい」

円周「数多おじちゃんは何でトチ狂ったのか分かんないけど、学園都市とイギリスはグレムリンって言う共通の敵を持ってる訳でー」

円周「イギリス清教を切ってまで、今の学園都市に何の得があるのか?『木原数多』がどう利益を得るのか?って答えが出ないんだよ」

シェリー「グレムリンは学園都市潰しを標榜してんだから、クソ木原は単独で動いてんじゃねぇのか?」

上条「だったら何がしたいんだろうな……?」

バードウェイ「考えられるのはアイツ自身が『向こう側』へ行ってしまったとかだな。木原加群という前例がある以上、それもアリだ」

バードウェイ「ただそこまでして何が得られるのは、甚だ疑問ではある」

円周「『グレムリン傘下の学園都市』とか?でもおじいさんから重宝されていた数多おじちゃんが、地位を捨ててまでする意味がないし」

上条「おじいさん?」

円周「ボトルシップみたいなんだって。揺らしたいよねっ」

バードウェイ「面倒はごめんだ、お前も自重しろ。というかあの超ニートが出張る……あぁ頭が悪い方の右手狩りには出たんだったか」

上条「……俺?」

バードウェイ「お前は救いようがない方だな」

上条「悪口だよね?それもう俺怒っていいんだよね?」

円周「流石お兄ちゃんっ!言われるままにイギリス行ってクーデターを秘密裏に鎮圧したと思えば、その足で第三次世界大戦を終結!」

円周「今時007でも出来ないような行動力だよねっ!」

シェリー「常日頃仲間だ友達なんだを連呼しつつ、実際には最初から最後までぼっち旅。有り難くて泣きそうよね?」

上条「悪かったよ!あん時はテンパってたんだって!」

シェリー「つーか確か露出狂女の貸しがあったよな、テメェとは」

上条「……いやまぁ気持ちは理解出来るし、あそこで抵抗するのもアリだとは思うんだけどさ」

バードウェイ「アレは逃げて成功だったのさ。ヘタれのキャーリサ殿下が“誰も信用できない病”をこじらせた喜劇だ」

バードウェイ「誰かさんは誰も信じずにクーデターを起こし、誰かさんは誰も信じずに世界を救おうとし」

バードウェイ「そして誰かさんは誰も信じずに解決しやがりました、とさ。めでたしめでたし」

上条「……あれおかしいな……?ここ俺のホームじゃなかったっけ?いつの間にアウェイに?」

シェリー「せめてなぁ?天草式の連中は心中してでも突っ込む気満々だったってのに、どうやった連中を撒けたんだとか疑問もあるし」

上条「土下座した方が良いのかな?俺が謝ればいいんだろっ!それで気が済むんだよなぁっ!?」



313:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/14(月) 12:18:52.36 ID:Q0LxgS/b0

円周「それでレヴィちゃん達は何か分かったの?」

バードウェイ「大した成果は出ていないが――」

上条「っとごめん、今の間に洗い物しとくわ」

バードウェイ「デザートはリンゴで頼む」

上条「無いよ!」

シェリー「帰りがけスーパーで買ってきといた」

上条「用意がいいな。つーか女の子三人も居て手伝う気はねぇのかよ?」

シェリー「よし、じゃあ私がリンゴを芸術的に剥いてやる」

上条「あ、ごめん?座ってて?」

円周「シェリーお姉ちゃんの場合だと、美術スキル以外に手を出すと大失敗ってイメージが」

シェリー「テメェらの顔の顔も剥がしてやろうか?」


――夜

上条「終わったー。あとリンゴどーぞ」

バードウェイ「取り敢えず新入りは正座だな」

上条「どうしたっ!?俺が洗い物をしてる間にどういう結論が出たのっ!?」

シェリー「いやぁ流石にローティーンにプロポーズは、引く」

上条「お前どんだけ脚色しやがった!?」

バードウェイ「そもそもロリコ×は『自分よりも弱い相手にしかどうこう出来ない』というメタファーがだな」

上条「その学説、一時期流行ったけど科学的根拠は皆無なんだよね?ゲーム脳と一緒で」

円周「そんなっ!?夕日をバックに『俺は円周率に詳しいんだ、3.7564……』って言ってくれたのは嘘だったの!?」

上条「嘘だろ全部!幾ら俺だって円周率を『みなごろし』とは言わん!カイワレ総理とは違うんだ!」

シェリー「そもそも円周率を持ちだして口説くって、どういうシチュなんだよ」

バードウェイ「――と言う訳で、今度は家庭で作る手巻き寿司を頼みたい訳だ。いいな?」

上条「どっからどう話が跳んだらその展開になるの?……いや、作るけどさ」

バードウェイ「ポテトサラダの手巻き寿司があると聞いたんだ」

上条「いやー、こないだの広告に載ってたけど、日本に十何年か住んでるけど初めて見た」



314:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/14(月) 12:20:31.40 ID:Q0LxgS/b0

バードウェイ「しかし『卓上演劇』か……宴会芸程度の能力を、よくまぁ最悪に応用させるんだ」

円周「『人の動作を見て覚えて真似出来る』のは、時間さえあれば誰だって出来るしねぇ。それだけじゃ面白くないかなぁって」

バードウェイ「一つ聞くがシングルタスクなんだよな?」

円周「だねぇ。マルチタスクが出来れば異能力(レベル3)ぐらいだったと思うけど」

シェリー「シングルタスク?」

上条「パソコンの用語、だと思う。シングルが単独処理、マルチが並列処理」

シェリー「うん?」

上条「そうだな。例えば――」

バードウェイ「――『Hello, world!』と三秒間メッセージの出るプログラムを作るとしよう」

バードウェイ「構文は『mes “Hello, world!”』と『wait 300』、『End』。それぞれ『文字を書く』『三秒待つ』『終了させる』の意味だ」

バードウェイ「言語によってはバッファを確保したり、変数・変列型の宣誓を必要するのだが、ここでは省く」

バードウェイ「シングルタスクとはそれを記述されている順番に実行する。一度に一つずつの仕事しか出来ない訳だ」

バードウェイ「対してマルチタスクとは、同時に幾つのも仕事を並列して処理出来ると」

バードウェイ「デュエルタスクであれば『Hello, world!』を同時に二つ、それ以上であれば性能の許す限り幾らでも並列処理出来る」

シェリー「それがどうしてコイツの能力に関わるのよ?」

円周「チェスや将棋とかで人と機械が勝負するよね?あれは何千何万の選択肢を計算するの」

円周「ここのマスへこの駒を進めた場合、進めなかった場合って感じに。全部の選択肢を想定し、最善のモノを選択するだけ」

シェリー「あー……あれか?多次元宇宙みたいなもんか?犬が吠えた世界と吠えなかった世界とか、どんどん枝別れする世界の中で」

円周「自分に相応しい世界を選択する――まぁ能力の根幹でもある『自分だけの現実(パーソナルリアリティ)』も原理は同じだけど」

バードウェイ「もし小娘にマルチタスクが出来ていれば『木原数多の思考パターンを持つ木原加群』、みたいな最悪が誕生していたろうが」

円周「行動パターンと思考パターンが分けられたら、もっとえげつない戦い方出来て楽しいだろうしねぇ」

円周「思考パターンを複数、並列処理で走らせて最善のモノを取捨選択――って、お兄ちゃん?どうしてうなだれてるの?」

上条「科学サイドの端くれである俺の立場はっ!?ようやく出番が来たと思ったのに!」

上条「つーかどうしてボスはプログラム知ってるのっ!?構文からして中級言語っぽい感じだったけど!」

バードウェイ「そりゃ勉強したからに決まってる。踏み込むかどうかは別にして、“そちら”のやり方を知っていて損はあるまい」

バードウェイ「あと気持ち悪いからバードウェイと呼べ」

円周「ちなみに木原数多が『インストール』するのも同じ原理だよ。人の思考のメインを奪って操作する、みたいな感じで」

円周「人間の交感神経・副交感神経以外は、基本シングルタスクだしねぇ」

上条「……頭痛い」

バードウェイ「よくやった!よく気づいたな!あぁ確かにお前は頭イタイんだっ!」



315:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/14(月) 12:22:48.22 ID:Q0LxgS/b0

上条「追い打ちは勘弁な!……いやいや、円周の能力はいいんだってば。実際にシングルタスクだったから、こないだ利用されちまった訳だし」

上条「それとも他の人達もデュエルタスクにすれば『インストール』を防げる、とか?」

円周「んー、難しいかなぁ?構造上の問題だしねぇ」

円周「脳幹を半分に割ってぇ、左右で分けるとかハードの拡張無しにはまず無理」

バードウェイ「二つ程度が競合しても、無理矢理『木原数多』が勝ちそうな気もするがね」

上条「んじゃバードウェイの方、あれから何か進展あったのか?」

バードウェイ「『SEED』の分解と中のソフトウェアの分析。どちらもまだまだ」

バードウェイ「ただ芳川は初見で『アンバランスだ』とは言っていたな」

上条「やり方が?」

バードウェイ「ヘッドギアは手製らしい。工業製品として作られた訳では無く、ジャンクパーツから製作した可能性が高いそうだ」

シェリー「そうした方が身バレする確率を抑えられる?」

バードウェイ「そう言っていたな。またプログラムは白いの次第、つまり序列一位が手こずる程度には手の込んだ防壁だ」

上条「それって超高難易度じゃんか」

バードウェイ「ハードの話だが、『それにしてはしょっぺェ』との感想も上がっている」

バードウェイ「まずはサーキットが――」

上条「あの、バードウェイさん?出来れば結果だけを、ですね」

バードウェイ「『高校生が無理して作ってみました』」

上条「あー……」

バードウェイ「この件に関しての『木原』専門家のコメントは以下の通り」

上条「誰?そんなコメンテーター聞いた事が無いんですけど?」

円周「『最新のオンゲインストールしたのは良いけど、パソコン古くて処理落ちしまくり』」

上条「意外と身近に居たねっ、そういえばっ!」

シェリー「良く分からねぇが、しでかしてる割には装備が酷いって事かしら?」

バードウェイ「どうにも落差が酷くアンバランスだ、と繋がる」

シェリー「制作委託した相手がガキだった?」

バードウェイ「には、まず不可能な技術が含まれている。その割には下手だと」

バードウェイ「まるで使い慣れていない工具でやっているかのような……」

上条「『インストール』は出来たが体に馴染んでない?」

シェリー「それが妥当だろうなぁ」

上条「……ってかさ、反射の件でも思ったんだけど、『インストール』しても完璧に肉体を扱えるんじゃないのな?」

円周「『学習装置』でセッティングした上で、『卓上演劇』を使わない限りは難しいと思うよ」

バードウェイ「勝手知ったる肉体とは別に、人様の体を使おうって話だ。その程度のデメリットが無くてはおかしいだろうさ」

円周「そもそも数多おじちゃんの戦闘パターンが『金槌レベルの衝撃を顕微鏡の精度で』だからねぇ」

円周「聞いた事はないけど、わたしと同じ肉体制御系の能力者だったのかも知れないし」

上条「成程。だから余計に」

円周「正確に体をコントロール出来ないのが、もどかしいのかも知れないね」

上条「ビリビリがビリビリ出来ないようなもんか。ふむ」



316:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/14(月) 12:24:47.78 ID:Q0LxgS/b0

バードウェイ「報告は以上だな――で、だ。明日からの予定なんだが」

円周「あ、わたしとお兄ちゃんはメイド喫茶勤務だからね?」

バードウェイ「……ほぉ?」

シェリー「お前ら、人が街中駆けずり回ってる時に何やってんだ?あぁ?」

上条「俺は決まってねぇし!確かに円周は許可したけど!」

円周「鞠亜ちゃんって言うメイドさんが居てだねぇ」

上条「相手は中学生だしっ!俺は別にメイド好きって訳じゃねぇよ!」

円周「その子のお姉ちゃんがGなんだって!やったよお兄ちゃん!薄い本が厚くなるねっ!」

シェリー「お前それ……いや、引くだろ。ないない、ないわー」

バードウェイ「人間ってどこまで汚くなれるんだろうな?」

上条「二人とも待ってくれないかな?犯罪者を、しかもシリアルキラーを見るような目で見るのは止めてくれないか?」

円周「あ、お揃いだねぇっ!」

上条「揃ってねぇよ!決してワンペアになんかなってねぇ!」

バードウェイ「おっとここに学園都市を襲撃したテロリストが一人」

シェリー「あぁ確かに。イリーガルの代表格、今やアメコミにすら登場するブラック・ロッジの首領様もいるじゃねぇか」

上条「す、スリーカード?」

バードウェイ「すまないが、ちょっと頭の後ろ見てくれないか?」

円周「どうしたの?」

バードウェイ「少し前にどっかのバカにハンドドリルを押し当てられてなぁ。いやー、物騒だなぁ学園都市って所は」

シェリー「表面上は治安も良いって聞いたんだが、随分悪い奴も居るのよね」

上条「そろそろ全員で結託して俺を罠へ嵌めるの自重して貰えませんか?俺の胃壁がピンチなんだよっ!」

シェリー「女三人に男一人の時点で諦めろ。ほら、少しぐらい触ってもラッキースケベって事にしといてやるから、な?」



317:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/14(月) 12:26:19.54 ID:Q0LxgS/b0

上条「無理だよっ!よく知り合いから『ラッキースケベ()』とか言われるけど、それってタダ気まずくなるだけだからな!?」

上条「あとお前にその単語を教えた奴を教えろ!ちょっと行って幻想殺してくるからっ!」

円周「てへぺろっ☆」

上条「よっし俺は女の子に拳を振う事だって躊躇わないからな!絶対だぞ!絶対だからなっ!?」

円周「そんなにお兄ちゃんに問題でーす」

上条「な、なんだよっ!?」

円周「今のわたしの『卓上演劇』は『木原加群』の『人体破壊』がアクティブになってるんだよねぇ」

円周「ネットワークを介した外部入力が不可能だから、一人分のスキルしかないけど」

円周「んでもってぇ『リミッター』は常時外れているから、人一人を撲殺ぐらいは簡単だしぃ?」

上条「近寄るなっ!近寄るんじゃねえっ!?」

円周「あ、心配してないでね?お兄ちゃんを『学習』してる分、加群おじちゃんの『蘇生』部分に上書きしちゃってるからっ!」

シェリー「つまりそりゃ、アレだな」

バードウェイ「『壊すだけで元へ戻せない』、か」

円周「大丈夫?関節を外すだけだから、ねっ?」

円周「外す時に“は”痛みもないし?」

シェリー「外した後は折れたぐらい痛いんだっけかな、確か」

バードウェイ「しかも下手にそげぶすると、『卓上演劇』の動作が解除されるため、ただ力任せに外されるだけだしなぁ」

上条「ウソウソウソウソっ!そげぶしないからっ!冗談だしっ!」

円周「大丈夫っ!……じゃ、無かった。うん、うんっ!『木原』ならこんな時、こう言うんだよねっ!」

円周「『俺の愛はァ……一方通行だァっ!!!』」

上条「それ『木原』じゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」



318:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/14(月) 12:27:19.61 ID:Q0LxgS/b0

――数日後 ある学生寮 昼

工山規範「あー……」

工山(今日もサボっちゃったかー……なんかこう、体だるいよな)

工山(病院に行――たって、意味はないんだろうし、どうしようか)

ピンポーンッ

工山「……?」

女性『すいませーん。工山くんいるじゃんかー?』

工山(……いや、ホントに誰?学校の先生?サボってるから……あぁ、様子を見に来てくれたのか)

女性『もしもーし?声だけでもいいから聞かせてくれるじゃん?』

工山(どんな人……?……あぁいかにも、って人だな)

女性『居ないじゃん?居留守使っても無駄じゃんよ、あんたはもう包囲されてるじゃんし!』

工山(不登校未満相手に包囲ってなんですか、つーか誰?『落第防止』の教師?)

女性『ほんとーーーにっ居ないじゃん?マジで?居留守使ってない?』

工山(……いやぁ、居留守も使いたくなると思うけど)

女性『後悔しても知らないじゃんよ?警告はしたじゃんね?』

工山(誰に言ってんの?)

女性『よし。居ないじゃんよ』

少年『――おゥ』

バキバキベキベキッ

少年「工ゥゥゥゥやァァァァァまァァァくうゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥンっ!」

工山「んなっ!?誰っ!?白くてシマシマがドアぶち破って!?」

少年「いるじゃねェか。なにシカトしてやがンだ、あァっ!?」

工山「すいませんすいませんスイマセンッ!お願いだからアンチスキル呼ばせてください!」

女性「おー、ここにいるじゃんよ?」

工山「え、それどういう意味――げふっ!?」

少女「――動くな。私の質問へ簡潔に答えろ」

工山「だ、だれ……?」

少女「君は知らないでいいし、知る必要もない。が、不都合を感じるのであれば、『真っ昼間から殴り込む程度の暴力主義者』と認識してくれたまえ」



319:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/14(月) 12:28:09.34 ID:Q0LxgS/b0

少女「次、私に余計な時間を取らせれば右手をへし折る。その次は左手、右足、左足をぺきりと行く」

少女「あぁ五回目から先は聞かない方が良い。これが片付けば遅めのランチでね、食欲を失うのはお互いに不都合だろう?」

女性「(随分手慣れてるけど、マジでしないじゃんね?)」

少年「(まァ、多分)」

少女「分かるだろ?だから慎重に答えるのをお勧めするんだが――どうだろう、私の“穏やかな”提案に従ってはくれないだろうか?」

工山 コクコクコクコクッ!

少女「結構。では君の名前は?」

工山「く、工山規範です」

少女「以前にアンチスキルの世話になっているようだが、理由は?」

工山「ある風紀委員の詰め所に不正アクセスを!でもそれはずっと前の話です!奉仕活動もしましたし!」

少女「ずっと前?具体的にはいつの話だね?」

工山「夏休みが始まる前、えっと具体的には――」

少女「そこまで結構だ。ふむ……成程、そうか。そうなるか」

工山「え、はい」

少女「ありがとう。君の協力のお陰で大体アタリをつける事が出来たよ」

工山「そ、そうですか……」

少女「すまなかったね。ドアはすぐにでも業者に――と、しまった。最後にもう一つ聞いてもいいかな?」

工山「はい?」

少女「『今日』は何月何日だ?」

工山「それは当然――あ、あれ……?」

少女「うん?憶えていないのか?まぁ無理もないか、君は学校に来なくなって『2ヶ月ほど経つ』のだから」

工山「――え?」

少女「では質問を変えよう、工山君。『昨日の日付はいつ』だ?」

工山「XX月YY日、だけど」

少女「それは丁度今日から二ヶ月前の日付だね――おい」

少年「……まァ、ちっと寝てろ」

工山「待っ――!?」

バタンッ

少女「そっちはどうだ?」

少年「こっちのモバイルから書庫(バンク)にアクセスした履歴が。普通消すだろうがァ」

少女「……チッ。予想以上に小物だったか」

少年「まァいいじゃねェか。『SEED』配ってた野郎確保したンだからよォ」

少女「この程度で潰せるようなら、最初から苦労していない――と言う訳で後は任せる」

女性「それはいいじゃんけど」

少女「後で新入りを向かわせるから、適当に殴って貰えば元に戻る」

女性「つーか何でいないじゃん?こーゆーのは真っ先に首突っ込むもうとする筈じゃんし?」

少女「一身上の都合によりメイドカフェでバイト中だ」

女性「……はいぃ?」



320:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/14(月) 12:29:34.72 ID:Q0LxgS/b0

――とあるメイド喫茶

バードウェイ「――さて。では現在までの状況をおさらいしようか」

円周「『いらっしゃいませーーっご主人様っ!何名でいらっしゃいますかぁっ?』」

バードウェイ「昨日までに20人近く『木原数多』を叩きのめした訳だが、今一効果が上がっていない」

円周「『二ひ――二名様ですねっ!ではこっちへどうぞ萌え豚ご主人様っ!』」

バードウェイ「……奴は何を狙っている?潜伏するにしてもお粗末、ただ手駒を増やしているにしてもおかしい」

円周「『メニュー?メニューが欲しいの?欲しいんだったら、それなりの態度ってものがあるんじゃないかなぁ?』」

バードウェイ「だとすればどう考えたものか……お前はどう思う?」

上条「場所、変えない?」

円周「『’お待たせしましたご主人様っ!なるべく早く帰ってね!』」

バードウェイ「どうしてだ?」

上条「こんな雰囲気で出来る訳ねぇだろ!?つーか態度悪ぃなアイツ!?」

シェリー「そーゆー店じゃねぇのか?本で読んだけど、こんなもんだったわよ」

上条「リアルとフィクションの境は分けよう?イギリスだってポッタ○居ないでしょ?」

シェリー「ある意味『ローマの休日』は実現できそうな感じもする、かしら?」

上条「俺は関係ない俺はフラグ立ててない俺はキャーリサと会わない……っ!」

鞠亜「『お待たせいたしました、ご主人様』――休憩は30分だからな。早めにキッチンへ戻ってくれ」

上条「……はーい」

バードウェイ「多忙な『当麻お兄ちゃん』のためを思って来てやったんだが、やれやれお気にそぐわなかったか」

上条「悪意ですよね?冷やかしに来たかっただけですよね?」

シェリー「……お、カレー美味ぇな」

上条「いいんだけどさぁ、こう」

バードウェイ「芳川と白いのも誘ったんだが、一蹴されたよ」

上条「いやだから、帰って報告すればいいんじゃね?いつの間にかシェリーも住み着いたし?」

シェリー「仕方がないでしょう。ホテルを追い出されたんだから」

上条「ホテルの壁に油絵描いてりゃなぁ……」

シェリー「ガキ二人泊めてんのに一人増えたって構わねぇだろ」

上条「子供と大人の女性は違うんですよっ!主に外聞的に意味でねっ!」

シェリー「友達ってS××するんだろ?」

上条「夜○さんだよね?しかもそれ薄い方のだから、100%個人の妄想だからね?」

円周「人体改造はちょっと引くよねぇ」 トスッ

上条「いきなり話に混ざるな!あと俺の膝の上に座るんじゃねぇって」

バードウェイ「結局いつもの面子に落ち着いてしまった訳だが、まぁいい」

上条「え、マジで?メイド喫茶と言う名の金毟りカフェで作戦会議すんの?」

バードウェイ「日本の文化の一つとして興味はあった」



321:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/14(月) 12:30:55.76 ID:Q0LxgS/b0

上条「ネタ抜きで止めてくれません?つーかメイドの発祥ってイギリスじゃなかったっけ?」

バードウェイ「正確には家事使用人だな。家令や執事以外にも従者とか、戦場にも使用人付きで行っていたから」

上条「……家来、みたいな感じで?」

バードウェイ「も、含むが、基本は主人の世話が優先される。食事やその他、軍馬の世話等々」

シェリー「そもそも騎士は貴族階級だし、金属鎧が主流になってくると一人では脱ぎ着出来ねぇんだよ」

上条「イメージと違うなぁ、それ」

円周「でも当時から主人による性的搾取は頻繁にあったし、中には週一でメイドの振りをしてくれる人を雇ったりもしてたしねぇ」

上条「どんだけアレな国なんだよ、イギリス」

円周「まぁでもそれが成り立つ程には裕福な生活や文化があった訳だし?いいと思うよ」

円周「はい、お兄ちゃん。あーんっ?」

上条「自分で食えるって……なんだろうな、喫茶店で食べるカレーが自分ちの味付けって言うのは、なんか、なんつったらいいのか」

円周「ウチは味にも拘ったお店になっておりますっ」

シェリー「男が作るんだったら、別にレトルトでもいいんじゃねぇの?」

バードウェイ「そこはそれ、母親以外のメシを食った事がない連中は癒しなのだろう。可哀想だから放っておいてやれ、な?」

鞠亜「オイお前たち営業妨害は止めるんだ。気持ちは分かるが、非常に分からないでもないが」

円周「現状で誰も損してないんだからなぁなぁで済まそうぜ、って話だよねーっ」

上条「まぁレシピ書いたの俺だけど、作ってるのはメイドさんもいるし?あんま言うのも」

バードウェイ「――と適度に周囲を牽制した所で本題と行こうか」

鞠亜「なんだね?悪巧みならば私も混ぜて貰おうじゃないか」

上条「帰って?お仕事しようぜ?」

鞠亜「……そしてまた私には経験値が溜まるなっ!」

シェリー「学園都市もアレよね?『濃い』よなぁ、どう考えても」

上条「個性豊かで良いんじゃないんですかね、はいっ。自由な校風もウリですし!」

円周「自由と無責任は別なんだけどねぇ――ってお話は?」

バードウェイ「良い話と悪い話、そしてどうでもいい話の三つあるが、どれから聞きたい?」

上条「どうでもいいってのは興味あるけど……でもホンットにどうでも良いんだろな」

上条「んじゃ良い話からで」



322:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/14(月) 12:32:11.53 ID:Q0LxgS/b0

バードウェイ「今さっき穏便に話を聞いてきた工山規範は、時期的に見て早い段階で『インストール』されたようだ」

円周「最初の『木原』って事かな?」

バードウェイ「白モヤシが殺したと証言している後、時期的にも工山が不登校になった境と一致している」

バードウェイ「実際に奴の部屋には『SEED』の材料や、他の連中に発送したログも完全に残っていた」

バードウェイ「ここまでの一連の犯行、と言うか『木原数多』の親は工山だったと」

バードウェイ「発送先はアンチスキルが『お話』を聞くそうだ」

上条「それ……解決じゃね?」

バードウェイ「本当にそう思うか?」

上条「無理、だよなぁ……無駄に厄介だな、『木原』」

円周「いぇいっ!」

シェリー「誉めてねぇ――いや、誉めてるのか?」

バードウェイ「芳川と白いのの意見も同じだ。『ここまで手が込んでいるのに、これで終りな訳が無い』とな」

上条「それが悪い話?」

バードウェイ「ここまでは良い話。まぁ一応のケリはついたという意味で、良かったのかも知れないが。で、だ」

バードウェイ「悪い話は『インストール』の元データの事だな」

バードウェイ「ダミーの人格データ、と言うかネストとディレクトリをそれっぽく分けたハードディスクを用意して」

上条「簡潔にお願いします」

バードウェイ「『インストール』されるデータの場所を確認した」

上条「それ良いニュースじゃね?それを消しちまったら解決じゃん」

バードウェイ「データそのものは白いのがハッキングして消しんだが、暫くして再実験してみたら別のデータを『インストール』すると」

バードウェイ「どうやら学園都市のイントラの中に、幾つも存在しているようだ」

上条「イントラって?」

円周「会社や省庁とかで、内部のコンピュータだけを繋げて構築してるネット環境、かな?」

円周「学園都市は都市そのものが巨大な一つのイントラで作られてて、外部との接続を許してる状態だねっ」

上条「……学園都市のパソコンの中に、うじゃうじゃしてるって?」

バードウェイ「その理解でいい、か?……まぁ第一位が片っ端から消して回ってるのが現状だよ」

上条「……なんだかんだで、付き合い良いよな」

バードウェイ「同時に芳川がデータそのものを分析し、効率的に検出・排除出来るプログラムを組んでいる」

上条「完全にウイルスだな」

バードウェイ「以上、悪い話だ」

円周「悪いって言うよりも、面倒?」

バードウェイ「しかしそれ程心配はしなくていい。『勝手にファイルをコピーする』のは普通のセキュリティソフトで防げると確認された」

上条「って事はもう心配なくて良い、とか?」

円周「セキュリティの甘い人なんか掃いて捨てる程一杯だよ?『木原数多』がコピペするって可能性もあるし」

上条「何にせよ本人をどうにかしないと、かよ」



323:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/14(月) 12:33:20.85 ID:Q0LxgS/b0

バードウェイ「そしてどうでもいい話だが……工山はハッキングが趣味らしい」

上条「ホントにどーでもいいなっ!……いやいや、大事じゃね?」

バードウェイ「つい三日前にも書庫(バンク)に侵入したそうだ」

上条「まさかそこにっ!?」

バードウェイ「個人データの中には紛れ込ませるのは、幾ら何でも悪目立ちすぎるだろう」

円周「誰かの個人情報が知りたかった、とか?」

バードウェイ「現在調査中だ。工山の行動も同じくだが、そちらの方もあまり期待しないでくれ」

上条「記録がない?」

バードウェイ「監視カメラの映像を見るに、全くと言っていい程外出してない」

円周「『SEED』の材料と発送は?」

バードウェイ「近くのコンビニで両方済ませている。材料の送り主は調査中、と……ふぁふ」

上条「あー、大変だったもんな色々と。先帰って寝てろよ」

円周「そこだけ聞くと凄い台詞だけど……あ、シェリーちゃんも寝てる」

シェリー「……クソつまんねぇ探知の連続で、それなりに疲れてんのよ」

バードウェイ「まぁ兎に角、今日は先に帰らせて貰うよ。いいか?きちんと送って貰え?」

上条「おうっ!ちょっと情けないけどなっ!」

シェリー「寄り道はさせないで、真っ直ぐ帰りなさいね?」

円周「はーいっ!」

上条「……なんだろうな、この屈辱感……?」



324:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/14(月) 12:34:38.63 ID:Q0LxgS/b0

――バックヤード

円周「お疲れ様でーすっ!」

鞠亜「はい、お疲れ様。悪巧みはもういいのかい?」

円周「んー、一段落した感じみたいだし?」

鞠亜「それは残念。困っているんだったら、無理矢理にでも助けたんだが」

円周「情報戦だから鞠亜ちゃんより芹亜お姉ちゃんの方がありがたいかも」

円周「でも『木原』相手だから、下手に介入されると拙いかもねぇ」

鞠亜「木原、だと?」

円周「加群おじちゃんじゃないよ。数多おじちゃんの方」

鞠亜「本当に必要ないのか?先輩には借りが一つあるんだから、遠慮なんていらないんだぞ」

円周「『メイドさんハァハァ体で返して欲しい』、って言ってたっ!」

鞠亜「それを本当に言うようであれば、堂々と踏み倒せるんだがな。言わないから逆にタチが悪い」

円周「自分に対して強いられてるみたいにストイックなんだよねぇ」

鞠亜「そこら辺は男には珍しくない、んじゃないか?先生もそうだったし」

鞠亜「寡黙な人だったけれど、私達にはいつも優しくしてくれた」

円周「それが初恋?」

鞠亜「『初恋は叶わない』というジンクスがある訳だが、まぁ私もそのクチだよ」

円周「……うー、わたしの初恋は叶って欲しいなぁ」

鞠亜「先輩……しかないよな。ここで別の人だったら意外すぎる」

円周「鞠亜ちゃん……わたし、実はねっ!鞠亜ちゃんに殴られてからずっとずっと――!」

鞠亜「やめろ、それ以上私に近づくな!」

円周「――って話は共学よりも繚乱は多そう」

鞠亜「無くは無い。ただ私は変人扱いされているから、無縁だけども」

円周「ちょっと興味あるよねぇ」

鞠亜「……」

円周「何?やっぱりキスする?みんなにはナイショね?」

鞠亜「やっぱりの意味が分からないなっ!……いやそうじゃなく、君は変わったな」

円周「……ごめんね。わたし、鞠亜ちゃんとはお友達でいたいから、ね?」

鞠亜「そっちじゃないな。ボケ倒すの止めてくれないか?」

円周「舌を入れなければ、まぁ?」

鞠亜「それ男から一番嫌われるパターンだからね?……いやいや、そうでもなく」



325:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/14(月) 12:35:58.49 ID:Q0LxgS/b0

鞠亜「変わったというのは性格だ。私が知っている『木原円周』はもっとサイケデリックな性格だった気がするよ」

鞠亜「……それともこちらが“素”なのかい?」

円周「よく、分からないけど」

鞠亜「急ぐ必要はない。現状の『誰も傷つけないで済む環境』が続けば、それで充分に学習は出来るだろうし」

鞠亜(急ぐ必要は、ない。ただ)

鞠亜(善性を獲得してしまえば、自身の過去の行いに押し潰されるかも知れない)

鞠亜(けれどそれは、『こちら側』に籍を置くのであれば避けては通れない)

鞠亜「……まぁ、どこぞのお人好したちが何とかするんだろうけど」

円周「だよねぇっ、いっつも死にそうな目に遭ってるもんねっ!」

鞠亜「思考パターンを読むんじゃな――ん?」

円周「気を悪くしちゃったの?ごめんね、つい癖で」

鞠亜「そうじゃないよ。何か今ひらめいた気がしたんだが……まぁいい」

円周「加群おじちゃんのお話でも聞きたい、とか?」

鞠亜「それは是非にでも聞きたいね。暴力を用いるのも吝かではないよ」

円周「芹亜お姉ちゃんから聞いてないの?」

鞠亜「ある程度は、だな。先生が『木原』としてどんな研究をしていたのかは全く」

円周「んー……あ、そうだ!丁度今、加群おじちゃんの思考パターンがアクティブになってるんだったっけ」

鞠亜「何?」

円周「うん、うんっ!こんな時、『木原加群』だったらこう言うんたよね……ッ!」

鞠亜「お前――っ!?また先生を侮辱するのか!」

鞠亜「先生は!先生はお前なんかに分かる訳が――」

円周「『“それ”は気にしないでいい。全てに100%正しい答えはまず有り得ないし、だからといって捨てていいとも限らない』」

鞠亜「だからそれは先生なんかじゃない!あってはいけないんだよっ!」



326:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/14(月) 12:38:52.68 ID:Q0LxgS/b0

鞠亜「生者が死者を勝手に代弁するなんて!どんだけ傲慢な事だと思ってやがる!?」

円周「『君が私をある程度理解してくれるのは嬉しく思う。けれど、私も「木原」であるのは間違いないんだ』」

円周「『目的のために手段を選ばず、時として手段のためには目的を選ばない』」

円周「『同じ「木原」であるが故に、この「木原」が私の思考をトレースしやすいのもまた事実だ』」

鞠亜「……せん、せい……?」

円周「『……済まなかった。私は、私達の下らない闘争に、君たちやあの少年を巻き込んだ事を申し訳なく思う』」

円周「『敵は取ったが……だが、失われたものは二度と帰ってこない』」

鞠亜「……先生は、先生、なのか……?」

円周「『あくまでもエミュレーションだ。だから100の言葉の中で、私が現実で言ったであろう言葉は一つか二つかも知れない』」

円周「『聡明過ぎる故にクラスで孤立していた君だ。信じられないかも分かる。でも、だからこそ』」

円周「『私は聞いて欲しいと思う』」

鞠亜「やめろ!先生は!先生はなっ!」

円周「『君達の教師であった時、ほんの僅かな時間でしかなかったが――』」

円周「『――私は、とても幸せだった。穏やかでやりがいある仕事だったよ』」

円周「『だから、と言う訳ではないし、君が強く望めばこの「木原」は私の研究データの開示も拒まないだろう』」

円周「『でも、君達の中で――「君の中での木原加群は、無口な教師“だけ”でいたい」と願う』」

円周「『私のやって来た事、それを知られたくないと思うのは、私のエゴだろうか?』」

鞠亜「……バカヤロウっ!先生は、先生はなっ!そんな事は言わない!」

円周「『……そうか。君の中の「木原加群」は――』」

鞠亜「違う!そこじゃない!私の先生は――」

鞠亜「生きてる間は!こんなにベラベラ喋るような性格じゃなかったんだよ!」

円周「『……ありがとう、雲川鞠亜』」

鞠亜「アンタに言いたい事はいっぱいあったよ!私だけじゃなくて!他のみんなだってそうだ!」

鞠亜「それを黙って行きやがって!姿を眩ますなら眩ますで、サヨナラの一言ぐらい言われせたっていいだろ!」

鞠亜「だから!だからっ!」

円周「『あぁ』」

鞠亜「……ありがとう、先生」

円周「『……あぁ』」



327:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/14(月) 12:40:14.06 ID:Q0LxgS/b0

――十数分後

鞠亜「――さて、と言う訳で通常業務へ戻ろうかっ!」

円周「鞠亜ちゃんお目々が真っ赤だし号泣したのもバレバレだし?」

鞠亜「君のロールプレイに付き合ってやっただけの話だよ。私クラスになると嘘泣きの一つや二つ当たり前だろう?」

円周「や、さっきから鞠亜ちゃんにハグされてお顔が痛いんだけどねっ」

円周「肋骨的なものがゴリゴリ頬に当たるって言うか?」

鞠亜「女の器量は胸の大小で変わりはしない。むしろ拘る方がどうかしている」

円周「『俺加群、ツルペタはぁはぁ』」

鞠亜「黙れ。殺すぞ……あぁ、そうか。そう言う事かっ」

円周「小学校の先生って性犯罪者の比率が高いんだよねぇ」

鞠亜「今その話をする意味が全く分からないんだが、そうじゃない。さっき感じた違和感だ」

円周「……ごめんね?あんまり上手く『他者再生』出来なかったかも」

鞠亜「違う!君が私に負けた理由の方だ!君の思考パターンは偏っているからだったんだよ!」

円周「んん?どういう意味?」

鞠亜「例えばイギリス人の行動・思考パターンを模倣するとしよう。でもそれには背景にある情報が不可欠だよね?」

円周「歴史とか民族性とか、ピューリタン――じゃなかった、イギリス清教とかも大切だよね」

鞠亜「だから君の再生が不完全すぎたのも、そこら辺の問題だったんだよ」

鞠亜「上っ面しか見てないんだ、そりゃ本物とかけ離れるのは当たり前」

円周「結局わたしに足りないのは、なぁに?」

鞠亜「それは……私が言うべき事ではない、と思うよ。言わなくても知っていると言うべきか」

鞠亜「でもそれは『足りない』んじゃないんだ。『足りなかった』んだ」

鞠亜「僅かではあるが君の中に存在し、これからも増え続け――て、欲しいと私は願うよ」

円周「むー、抽象的すぎるし!」

鞠亜「別に意地悪をしているんじゃない。ただそれは他人から知らされる類のものではないってだけで」

円周「寝癖?」

鞠亜「……気がつけばいつの間にか、と言う点では惜しいか。まぁ悲観するような話じゃ――」

ガチャッ

上条「おーいお前らー、そろそろ店長が戻ってこいって――」

鞠亜「……」 (※円周をハグしている)

円周「むに?」 (※鞠亜にハグされている)

上条「あー……うん、ごめんな?俺は何も見てなかったよ?」



328:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/14(月) 12:41:37.06 ID:Q0LxgS/b0

鞠亜「待て上条当麻!君は致命的な勘違いをしている!」

上条「嫌いじゃない!俺は決して嫌いじゃないよ!うんっ!」

円周「あ、やっぱりお兄ちゃん百合厨だっだんだねぇ。ベンジャミ○先生のご本が多いと思ったら」

上条「て、店長には上手く言っとくから!心配はしなくていいぞっ!あと円周さんは帰ったらお話があります、主にプライバシーについて!」

上条「それじゃっ!」

鞠亜「ちょまっ!?」

パタンッ

鞠亜「……」

円周「……」 クンクン

鞠亜「まずいマズい拙いっ!?先輩の口から姉に伝わったら大惨事だ!死ぬまでこのネタでからかわれるっ!?」

鞠亜「君も弁解しなくては――」

円周「……ね、鞠亜ちゃん?」

鞠亜「な、なにかね?」

円周「鞠亜ちゃんって、いいニオイがするよねっ……!」

鞠亜「離せ私にはそういう趣味はないっ!」

円周「成程成程、一度組んじゃえば能力は使えないのかー。だったら力任せに押し倒せば良かったんだねぇ」

鞠亜「だからそう言うのはノーサンキューっ!誰かに見られたらどうするっ!?」

円周「『鞠亜ちゃんが見てる』的な?」

鞠亜「私のトラウマを刺激するなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」



329:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/14(月) 12:43:02.96 ID:Q0LxgS/b0

――帰り道 夕方

円周「――って鞠亜ちゃんはトラウマがあるみたい」

上条「御坂さんちのスールみたいな感じか。でもまぁ本人同士がいいんだったら、別にいいんじゃね?」

円周「百合厨の人は心が広いよねっ」

上条「濡れ衣だなっ!俺はベンジャ○ン先生じゃなく黒○先生の方のファンだしぃ!」

円周「いやでも鬼ごっ○も百合百合しい花が咲いていた気がするけど……?」

上条「あんまり言うな、な?色々と問題があるから」

円周「でもあれで良かったのかなぁ?」

上条「本物じゃないだろうけど。間違った事は言ってないと思う」

円周「鞠亜ちゃんからは精度上がったって誉められたけど、原因が分からなきゃ意味はないよねぇ」

上条「まぁでもあんま良い事じゃない、って俺は思うけど」

円周「お兄ちゃんは反対なの?」

上条「判断そのものは正しいと思う。加群さんの『木原』時代のデータを渡さなかったり、思考パターンで話した内容も」

上条「けどそれは『木原加群』じゃないだろ?」

円周「精度の問題?」

上条「生命の尊厳の問題、かな?例えば円周が俺のデータを完全に『卓上演劇』したとする」

上条「生まれてからのデータ全てを完全に分析すれば、限りなく俺と同じ思考や行動が出来るんだろう」

上条「だからって俺じゃない、よな?」

円周「……うん。お兄ちゃんはお兄ちゃんだし、代わりは存在しないって思う」

上条「それと同じで。どれだけ上手く、『木原加群』を再現したって、それはオリジナルじゃない」

円周「理屈は、分かるけど。言っている事も理解出来るけど」

円周「じゃあじゃあ、どうして鞠亜ちゃんは泣いちゃったの?最初は怒ってたのに」

上条「それも、ある意味同じだ。『雲川芹亜が何を考えているのか、それは雲川芹亜にしか分からない』だろ?」

上条「……まぁ、俺の想像だけど。嬉しかったってのは間違いないと思う」

上条「一度は正面から殴り合った相手に気を遣われた、とかじゃねぇかな」

円周「そっかぁ。喜んでくれたんだ……」

上条「単に雲川さんの欲しかった台詞を言っただけかも?明日にでも聞いてみればいい」

円周「……嫌がらないかな?」

上条「頑張れ」

円周「えーっ!?お兄ちゃん無責任すぎるしっ!責任取ってくれなきゃやだよぉっ!」

上条「路上でその言葉叫ぶの止めて貰えないかな?多分わざとだと思うんだけど」



330:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/14(月) 12:44:19.52 ID:Q0LxgS/b0

円周「でもっ」

上条「人の嫌がられる事をして嫌われるのは当然だ。逆に人の喜ばれる事をすりゃ、好かれる、かも知れない」

上条「とにかく、勉強しろ。俺とかシェリーとか、練習相手はいるんだからな?」

円周「……」

上条「こればっかりは慣れて貰うしか――ってどした?急に立ち止まって?」

円周「あの、ね?今、気づいたんだけど」

上条「うん」

円周「わたしがもし、鞠亜ちゃんに酷い事して怒らせちゃったら、ゴメンナサイ、するんだよね?そうすれば許してくれるの?」

上条「取り返しのつかない事でもない限りは、多分大丈夫だと思うけど――お前なんかやったのかよ!?」

円周「そうじゃない、そうじゃないんだよ!鞠亜ちゃんには、そんなに酷い事はしてないと思う。でも――」

円周「――わたしが、『木原円周』が今まで殺してきた人は、もう無理だよね……?」

上条「それは……」

円周「その人を再生するデータも無いし!その人達はもう」

上条「そう、だな。それは円周の言う通りだと思う。けど――」

壮年の男性「あのー、すいません?ちょっといいですかー?」

上条「悪い、今立て込んでるから。他の人に頼んでくれ」

壮年の男性「道をお伺いしたいんですが――」

上条「――駅前じゃあるまいし、住宅地の真ん中で迷う奴なんていねーよっ!」

バキィッ!

壮年の男性「うぉうっ!?」

パキィィィンッ!

上条「……クソ!このタイミングか!待ってたのは、『これ』だったのかよ!?」

 周囲を歩いていた人間、仕事帰りのサラリーマンやOL風の女、数人の高校生たちがニヤリと同じ表情を作る。

男「『暫くぶりだなぁ、「幻想殺し」?』

 陽は地平に落ちようと傾き、闇が周囲を喰らい出す。



331:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/14(月) 12:45:21.38 ID:Q0LxgS/b0

――同時刻 上条のアパート

シェリー「泥を掬い上げて眠りなさいな――エリス!」

 いつの間にか持ち込まれていた石膏像。のそりと一震えすると、玄関から殺到しようとする男たちを薙ぎ払った。

 だがしかしそれは陽動。
 本命である即死性のグレネードを“抱えたまま”の工作員たちが、窓ガラスを破って特攻してくる。

 『インストール』してあるが故に無謀すぎる行動。並の魔術師ならば対処出来ずに終わっただろう。

 しかし。

バードウェイ「――弁えろ」

 ズゥン!と象徴武器を一振りすると呪文も無しに衝撃が飛ぶ。
 一瞬で外へと投げ出された男たちは空中で誘爆した。

シェリー「……胸糞悪ぃぜ」

バードウェイ「手は抜くな。操られているとは限らん」

 元より気を抜ける状況ではない。だが、二人の表情はどちらかと言えば澄んでいた。

シェリー「……ガキ二人が居ねぇ分、教育に配慮しなくていいのかしらね?」

バードウェイ「おいおいクロムウェル。滅多な事を言うもんじゃ、ない」

 言葉はあくまでも諫めるように。しかし口から出る台詞は嬉々として。

バードウェイ「私達は『さっさと片付けて、助けに行かなければいけない』んだ。つまり――」

シェリー「『死ぬほど急いでる』んだから、まぁ――」

バードウェイ・シェリー「「――これは、しょうがない」」

 爆音が轟く。



332:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/14(月) 12:47:06.09 ID:Q0LxgS/b0

――帰り道、帰れない道

 陽は完全に落ち、幾つかの街灯だけが周囲を照らす。
 オバケの一つでも出そうな雰囲気ではあるが、そちらの方がまだ幸運だったかも知れないが。

男「『どぉしたい?親の敵でも見るような目ぇして?』」

男「『あぁお前さんを一度殺した相手はちっこいシスターさんだっけか?そっちの敵はとらねぇのか?』」

 普段であれば堅実そうなサラリーマン風の男。しかし軽薄な笑みは、悪意たっぷりの言葉回しには心当たりが有りすぎる。

上条「お前らは『円周がこうなるのを待ってた』のか……!」

上条「俺達と仲良くさせる事で!『円周に善悪を学ばせる』ためだったのかよ!?」

 後ろに隠れる少女を庇うために前へ出る。それはいつもの事だ。

男「『あー、あっあー。そうじゃねぇな、それだけでもねぇよ。つか』」

男「『わざわざどうして弱らしたか、ってぇ所に答えがある』」

上条「捕まえようと!……してるんじゃ、ないのか?」

 わかってねぇなぁ、と肩をすくめる男達。
 余裕を見せているのか、彼らが包囲を詰める気配はない。

上条(時間稼ぎさえすれば……バードウェイ達が、来る……!)

男「『――的な事を考えてるんだろうが、生憎それはちぃと難しい。何故ならあっちも襲撃してっからな』」

上条「アイツらは、お前らなんかに負けない!」

男「『だなぁ。それはどうしようもねぇ現実だが――』」

壮年の男性「――あ、あのー?」

 先程一撃を入れて昏倒させた男が、頭を振って立ち上がろうとする。
 どう見ても一般人の彼は、事態を把握してそうにない。

上条(二人を守りながらどうにか?……いや、するしかない!)

上条「えっと、おじさんはこっちに!」

壮年の男性「は、はぁ?」

上条(せめて円周が普段通りなら、どうにかなったんだが)

男「『おー、そいつも守るのかい?大変だなぁ、ヒーローさんって奴ぁ』」

上条「……俺はヒーローなんかじゃない。けど、お前には一生――何回生まれ変わっても、分かりやしねぇよ」

男「『そいつぁ敵なんだぜ?銃持ってお前をぶっ殺そうとしたのに?』」

上条「フザケんなっ!?お前が命令したんじゃねぇか!」

上条「人の体を操って!動かして!好き勝手しやがったのはお前だろうが!」

 それは上条の辿り着いた結論。『操られているから仕方がない』と。
 不可抗力ではあるし、刑法でも無罪に当たるだろう。
 人間感情としても、いざ自身が同じ立場に立たされた時を考え、どうしても甘くなってしまう。

 けれど。『木原』はそれをも利用する。

壮年の男性「ねぇ、上条当麻君――」



333:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/14(月) 12:48:20.54 ID:Q0LxgS/b0

壮年の男性「――『インストールする前から敵』という発想はないのですかな?」

上条「――え」

 瞬間、発光。
 振り向く暇も与えず、只の被害者であった男の手から離れた赤い光が上条の太股を貫通した。

円周「お兄ちゃんっ……?お兄ちゃんっ!?」

上条「お前――お前がっ!」

壮年の男性「お初にお目もじ致します。『グレムリン』の魔術師で御座いますれば」

 慇懃無礼に一礼。どこか執事を思わせる雰囲気のまま、魔術師は少し距離を取る。

円周「お兄ちゃん!傷が――」

 どくどくと穿たれた傷口から血は止まらない。
 傷痕を押さえようにも、華奢な掌からは防ぎきれない程に命が流れだしている。

上条「……」

男「『お?静かになったか?死んだとか?』」

円周「……木原おじちゃん、わたしはっ!」

男「『俺達を皆殺しにする、か?いいんじゃね?すれば?』」

魔術師「それは流石に困りますなぁ」

円周「……ふざけてるの?わたしは!確かに迷ってるけど!」

円周「当麻お兄ちゃんを傷つけた相手になら、なんだって――」

男「『まぁ落ち着け。そうじゃねぇ、お前が本気でするんだったら、難しくもねぇだろ。けどよぉ』」

男「『傷の手当て放っぽっときゃ、そのお兄ちゃんは死ぬだろうが?』」

円周「……っ!」

上条「……なにが、したいんだよ……?」

 息も絶え絶えに肺から押し出すように上条が呟く。

男「『あーそりゃ簡単だ――お前に「諦めさせる」ためだよ』」

上条「俺に……?」

男「『じゃねぇよ無能、お前なんかに価値はねぇ。そっちの「木原」にだ』」

 円周は上着を脱ぎ、止血帯を作ろうとする。しかしどこを縛ったらいいのか分からない。

魔術師「早く止血しないと死にますよ?動脈を破っているので、時間との勝負ですな」

 テレビのマラソン中継でも見るように、軽い言葉。
 何度も何度も円周は失敗を繰り返し……ようやく出来たのは、只キツく布を巻いただけの、お粗末な応急手当だった。

円周「……ごめんなさい、お兄ちゃん!ごめんなさいっ!」

上条「お前……どうして謝って……?」

男「『そいつは今「木原加群」をアクティブにしている。簡単に言うと人体破壊と蘇生のスペシャリストだ』」



334:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/14(月) 12:49:35.29 ID:Q0LxgS/b0

男「『だから本来であれば、別に何一つ苦労する事無く、お前の傷口の手当も出来る――どころか、この場で簡易手術も出来た』」

男「『だが、こいつが現実だよ。上条当麻』」

男「『そのバカは「壊す」事だけを残して、加群の「治す」部分を消しやがったんだろ』」

男「『これが、現実。これが、「木原」なんだよ』」

円周「……ごめんなさい、ごめんなさい。ごめんなさいっ!」

男「『善性がどうだっつった所で誰一人救えねぇ。助ける事なんて出来やしねぇ』」

魔術師「――まぁ、アレですな。『木原数多』さんが何をやっていたかと言えば――『待っていた』と」

魔術師「あなた方が『木原円周に善意を植え付け、自壊するのを待っていた』だけですよ。ただそれだけのお話」

 たたみ掛ける『木原』の悪意。
 出口の見えないトンネルを除くかのような、底の知れない悪意の塊。
 木原円周が獲得した善性に真っ向から反発する『悪性』の存在。

男「『生き方なんてぇのは絶対に変えられねぇんだよ!テメェがぶっ殺した、踏みにじった連中は生き返りはしねぇ!』

男「『「木原」に帰ってこい?そうすりゃ悩むも必要もねぇ。善性なんてクソだ!』」

男「『辛いんだったら、捨てりゃいい!モラルも正義もテメェが決めればいい!』」

男「『お前はもう、「木原」としてしか生きていけないんだよ――なぁ、「木原」円周!』」

 これがもし暴力であれば、木原円周は膝を突かなかったであろう。痛覚を遮断するか、『気にしない』事にして笑いながら拳を受け続けたかも知れない。
 これがもし脅迫であっても、木原円周は頭を垂れなかったであろう。大切なものが存在しない相手に、脅しが通用しないのだから。

 だか、しかし、けれども。

 自分の最も大切な存在――『理解』してくれる、受け入れてくれる人間の前で、まざまざとおのれの持つ業を暴き出された。
 獲得したばかりの『善性』により、自責の念に囚われた心をハンマーで打ち砕くように。

 もう、保たない。

円周「ごめんなさいごめんなさいごめ――」

 彼女の言葉を最後まで言わせず――いや、言わさず。
 くしゃり、と。そう、何でもないように、極々普通の事であるかのように、円周の髪を撫でたのは。

上条「――充分だ。もう痛くはねぇよ」

 『木原』が最悪であるのがいつもの事であるように。
 彼が立ち上がるのもまた、いつもの事だ。



335:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/14(月) 12:50:49.42 ID:Q0LxgS/b0

円周「お兄ちゃんっ!?立ったら傷口がっ!」

上条「お前の痛みに比べりゃ、どうって事はねぇよ」

円周「わたし?わたしは別に――」

上条「じゃあ何で今、お前は泣いてやがるんだよ!」

 確かめる円周の頬に流れるものはない。
 だが、上条には見えている。

円周「わたしは何もっ!」

上条「分かるんだよ!お前は何も言ってないけど、お前はずっと泣いてたじゃねぇか!」

上条「誰にでもなれる能力なんて!お前が誰からも見てほしいって願望じゃねぇのか!?」

上条「でもそれじゃダメなんだよ!誰かになれるとかなれないとか、そう言う事じゃねぇ!」

 目の前の少女は、こんな傷ついてたのに。
 誰も助けなかったのは。

上条「お前が言わなきゃいけなかったのは、『助けて』って言葉だけだ」



336:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/14(月) 12:52:01.53 ID:Q0LxgS/b0

――帰り道、終り

男「『ぶ、ぶはははははははははははははははっ!』」

 血を吐く――と言う吹く――上条の言葉にも、一層深さを増した闇には届かない。

男「『いいねぇ。格好いいねぇ、おじさんも一回ぐらいは言ってみてぇよ、その言葉』

上条「お前が――お前たち『木原』がこの子をっ!!!」

男「『あーまぁそうだわなぁ。それは間違いであり、正解でもあるんだが。今は関係ねぇ』」

男「『でもなぁ今のはちっと頂けねぇと思うぜ、俺は』」

上条「お前に何が分かるんだ木原数多っ!」

男「『分かるんだよ、分かっちまんだよ!俺は「木原」だからな』」

男「『テメエみてぇな甘っちょろいクソ野郎とは相容れない、ってぇ事がよ』」

上条「……つっ!?」

男「『あーもうホラ、無理してカッコつけっから、そうなんだってばよ――オイ!』」

魔術師「お待ちを――失礼します」

 背後に回っていた魔術師が上条に肩を貸し、ゆっくり地面へ下ろす。
 ベルトを外して足の根本を縛り、応急処置を始めた。

上条「なに、を」

魔術師「すいませんね、呪的防御がかかっていると聞いたものですから、少し強めにやってしまいました」

男「『ま、こいつはこんなもんか。んじゃまぁ――行くぜ?』」

上条「お前ら、何が――」

 集まっていた男達がバラバラの方向へ消え始める。
 一人は徒歩で暗がりへ歩み、一人は学生らしく自転車に乗り、また他の一人は駐めてあった車を動かす。

 代表格の『木原』――そして『円周』も同じ車へ。

上条「……待てよ!?どうしてお前ま――くっ!?」

魔術師「ですから安静に。ショック死してもおかしくない傷なんですから」



337:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/14(月) 12:53:27.58 ID:Q0LxgS/b0

上条「ウルセェよっ!円周っ!」

 地を這う体力すらなく、上条は声を振り絞る。
 そんな彼に、彼女は『いつもの楽しそうな満面の笑み』で応える。

円周「……ねぇ、とーまお兄ちゃん」

円周「わたしも、『上条』になりたかったよ」

円周「そして出来れば、『そっち側』に居たかった」

円周「それは――『木原』じゃない、『円周』はそうしたかったよっ!」

 表情が心の底からでない事ぐらい、短いながらも濃密な付き合いをした人間には分かる。
 理解して、しまう。

上条「駄目だ円周っ!戻って来いっ、お前には帰れる家があるんだろうっ!?」

上条「家族じゃねぇけど、待ってる俺達が居るんだよっ!だから、だからっ――」

円周「……ううん、駄目なんだよ当麻お兄ちゃん。何故なら、それは――」

円周「『木原』なら、こんな時、こうしなくちゃいけないんだからっ!!!」

上条「……っ!」

 木原円周にトドメを刺したのは誰か?
 自分達が決定的に『違う』と思い知らしめたのは。

円周「だから、だからね、お兄ちゃん――」

 意識が暗転する。
 地面に倒れたのか、地面がせり上がって顔を殴ったのか、分からない程に疲労は蓄積していた。
 闇に刈り取られる意識の中、声ならぬ声を聞く。

円周「――その『右手』で、わたしを殺して、ね?」



338:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/14(月) 12:54:26.23 ID:Q0LxgS/b0

――病院 朝

上条「――」

上条「……?」

一方通行「……目ェ覚めたみてェだな」 ピッ

上条「……一方通行……?」

一方通行「『起きた……あァ』」 ピッ

上条「……っ!?」

一方通行「大腿部の動脈損傷と筋肉裂傷、暫くベッドで寝てやがれってェのが医者の診断だァな」

一方通行「……つってもまァ、言う事聞きゃァしねェだろォってンで――」

上条「円周は……?」

一方通行「――俺がバカの世話任されてンだが、ぐらいは言わせろ。あー、木原円周な?」

一方通行「オマエを襲撃した連中は行方不明、あン時監視カメラは切られてた上、同時刻に『木原』が起こした事故でアンチスキルは後手後手だ」

一方通行「ンで、しょうがねェから工山ンちにあったリストから、虱潰しにやってンのが、ここ三日の間だなァ」

上条「……三日?オイそれじゃ!」

一方通行「血ィ流したオマエを保護してから寝っぱなしだったンだが」

上条「……悪い。俺――」

一方通行「……あァなンだ。それはもう手遅れなンだよ」

一方通行「『木原円周』はもう、この世界に居ねェってのがこっちの推測だ」

上条「……?どういう」

一方通行「状況証拠からオマエのボスが出した結論は、だ」

一方通行「『クソ木原はクソガキを諦めさせるのが目的だった』ってェ話……なンで俺が説明しなきゃいけないンだか」

上条「……おかしいだろっ!?そんなもんはっ!」

一方通行「……あァ『無理矢理ふん捕まえてフォーマットしちまえば良くね?』かァ?俺もそう言ったンだが」

一方通行「『インストール』された連中は、『木原数多』が出ている間の事は一切記憶してねェ。が、だ」

一方通行「あのクソガキは何となく憶えてる――電気系、しかも脳神経に介入できる異能なンだろ?」

一方通行「だから最初に『インストール』喰らった時にゃ、能力で不完全にガードを――」

上条「……そうじゃねぇよ」

一方通行「あ?」

上条「どうして円周なんだよっ!?あいつはまだまだこれからじゃねぇか!」

上条「やっとだ!自分のしてきた事に罪悪感を持って!これからどうしようかって所だったのに!」

上条「やって来た事に向き合おう、ってのが……悪い事なのかよ……?」

一方通行「……たまァに思うンだがなァ。人生の幸運、不幸ってェのは分からねェよな」



339:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/14(月) 12:55:50.86 ID:Q0LxgS/b0

一方通行「俺みてェな最悪のクソッたれがあのチビと出会って、ちょい最悪のクソッたれになったンだが」

一方通行「てめェ自身のやった事に気遣ねェ方が幸せだったのかもしれねェよな?」

上条「……なぁ一方通行。それは――分からないよ」

上条「誰がどんな生き方をしようとも、他人から見て幸せだって思われなくても。本人が納得してりゃ、いいっては思う」

上条「結局、自分がどんだけ幸せかなんてのは、自分自身で決める話だからな」

一方通行「まァ……な」

上条「でもな、円周は違うんだ!泣いてたんだよ!」

上条「あんな顔して――『自分を消しに行った』奴が、幸せな訳ねぇだろうが!」

一方通行「あー、怒鳴るな怒鳴るな。そいつァクソ木原にぶつけてやれ」

上条「一方通行……?」

一方通行「どォせバカが突っ込むだろォから、肩貸してやれってェ言われてンだよ」

上条「……ありがとう」

一方通行「別にィ?礼を言われるよォな事ァしちゃいねェがだ。もしも、だ」

一方通行「記憶を消した後に書き込めば、そりゃもォ『右手』で戻らねェンだよなァ。分かってンのか、そこら辺?」

上条「あぁ、知ってるさ」

一方通行「以上を踏まえて『木原円周の体を乗っ取った木原数多』、なんつー最悪のシロモンが出来た日にゃ、オマエはどォすンだ?」

一方通行「『学習措置』で『木原数多』を消して、一から子育てでもするのかよ?」

上条「取り敢えず、一発殴る」

一方通行「……まァ、そォなンだろうォな」

上条「中身で誰であろうとながろうと、俺はあの子を助ける。中身がオッサンだろうが、関係は、ない」

上条「例え『木原数多』であっても――いや、あったからこそ、か」

上条「これからの人生を見捨てるつもりも、知らんぷりするつもりもねぇよ」



340:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/14(月) 12:57:42.94 ID:Q0LxgS/b0

――車で移動中

芳川「――で?どこまで行けばいいの?」

上条「……どうしよう?」

一方通行「バカじゃねェの?オマエバカじゃねェの?何テンションだけで病室飛び出してンの?」

芳川「ウチの子がツッコミを入れる日が来るとはね……!」

一方通行「オマエもいい加減にしろよクソババア?ウチでもオールボケに囲まれてンじゃねェか」

上条「あなたは菩薩みたいな人だっ!結婚して下さいっ!」

一方通行「『あー、オレオレ。今オタクの新入りさンがさァ』」

上条「ごめんよ一方通行君?もうふざけないから携帯を俺に返して、ね?」

芳川「よ、よろしく?」

一方通行「オマエもバカの戯言本気になンじゃねェよ適齢期。つーか人の携帯で婚活サイトに登録してンじゃねェよ」

上条「もしもし?上条だけど」

バードウェイ『ん?どこの上条さんだ?生憎ネタで求婚するような知り合いは居ないもんでね』

上条「怒ってるじゃん!?……イタタ」

バードウェイ『あぁ、私の知り合いの頭イタイ上条さんか』

上条「もっとこう、なんつーかな!お前も人に対する思いやりを育てた方が良いよ?マジでマジで!」

上条「つーかお前らは――探してんだよな、やっぱり」

バードウェイ『お前が寝てる間、クロムウェルは不眠不休で探し回ってはいるが、進展はない』

上条「あ、そうだ!俺、グレムリンの魔術師とかち合ったんだよ!」

バードウェイ『現場に飛散した“術式ではない”テレズマがあった。だから我々も存在は把握している』

上条「そいつが妨害している、んだよな」

バードウェイ『学園都市側の監視カメラを拝借したい所だが、三日前に『木原』がやらかしたお陰で手が出ない』

上条「お前でも無理なのか?」

一方通行「時間さえ寄越しゃァ、まァ?そこいらのハッカーには勝てても、一流連中とツールも無しにやり合うのは専門じゃねェよ」

上条「アンチスキルから、黄泉川先生からはアクセスして貰えないのか?」

芳川「君が襲われた時、多発事故が起きたのよ。勿論、『木原数多』が人為的に引き起こしてものでしょうけど」

芳川「そっちの事後処理と対策でてんてこ舞いかしらね」

上条「そいつらを縛り上げても」

バードウェイ『何も出て来なかったよ。先日の工山規範しかり、逮捕された連中は有益な情報は何も持っていなかった』

上条「……完全に手詰まりじゃねぇか……」

バードウェイ『他に判明した事は――あぁその工山がおかしな事を言い出してな』



341:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/14(月) 12:58:45.94 ID:Q0LxgS/b0

バードウェイ『とある実験で作った「ワクチン」で「木原数多」を消した所、「俺は工山じゃない!」と言い始めた』

上条「また随分乱暴な方法を――工山じゃない?」

バードウェイ『私に聞かれても分からんよ。記憶が混濁しているか、錯乱しているのか、その両方なのかも知れない』

バードウェイ『そもそも学園側の「書庫」では工山の顔写真が載っていて、それと彼だと証明しているのだからな』

上条「……」

バードウェイ『どうした?傷が痛むのかっ!?』

上条「確か、さ。今捕まってる工山は『書庫』にアクセスしたんだよな?数日前に?」

バードウェイ『お前が寝ている期間をそこへ足す必要があるが、そうだな』

上条「『今捕まってる工山は、本当に工山』なのか?」

バードウェイ『……何が言いたい?』

上条「工山が工山だって証明してんのは『書庫』だけだ。つまり」

上条「『書庫をクラッキングして、偽物の工山の顔と偽物とすり替え』れば――」

一方通行「本物の工山は好き勝手に動ける、かよ。クソ木原のやりそォなった」

上条「誰か工山の素顔を知ってる人は居ないのか?あと出来れば『書庫』を調べられるような凄腕のハッカーとか!」

バードウェイ『少し待て!今黄泉川に連絡を取って――何?』

バードウェイ『大丈夫なのか?……あぁ、分かった』

上条「居たのか!?俺達はどこへ行けばいいっ!?」

バードウェイ『風紀委員の中に一人凄腕のハッカーが居て、しかもそいつは工山を最初に捕まえたんだそうだ』

上条「そうか!だったらそいつの所に」

バードウェイ『――現在、ジュニアハイスクールで授業中なんだそうだ』



342:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/14(月) 13:00:37.80 ID:Q0LxgS/b0

――貸倉庫 昼

 窓もなくモニタの光だけが光源となっている、ガランとした空間。
 荷物が天井近くまで重ねられていてもおかしくないのだが、あるのは数人の人影と机だけ。

 唯一の家具である机の上にはノートパソコン、それから伸びるケーブルが『SEED』と接続され、床に横たわった少女に被せられている。
 殺風景を通り越して異様な有様であったが、疑問を挟むような者は居ない。

魔術師「いよいよ、で御座いますなぁ」

工山「『まぁな。対して嬉しくもねぇが、肉体の有り難みを感じるとか、どんな幽霊だっつの』」

魔術師「肉体と精神は切り離して考えられませんしね。私達の方では肉体を『捨てる』と言う概念はありましたが」

工山「『結局の所、精神が剥離したとしてもそれを外部に伝える手段がなきゃ、死んじまってんのと変わりはねぇよ』」

工山「『そう言った意味でカミサマだのアクマだのは、存在しねぇのと同じだろうぜ』」

魔術師「唯物論に従えば、ですか?しかし実際に魔導書を紐解けば『異界』の知識が汚染してきますし、証明は成されているのではないかと」

工山「『汚染、ねぇ?発狂か廃人程度で済むってぇのも変な話だわな。もっとリスクがあってもおかしかねぇのによぉ』」

工山「『アレだ。エキノコックスって知ってるか?』」

魔術師「寄生虫でしたな。狼や狐から人が感染するとまず死ぬという」

工山「『いや早期発見なら助かる――じゃねぇ、あーゆー寄生虫ってのは中間宿主、終宿主ってのがあんだよ』」

工山「『まずは幼生が昆虫に寄生し、それを食った鳥や動物に行って成虫になるんだ』」

魔術師「……あの?これから昼食なのですが。ラザーニャとか言う、ラザニアに似たコンビニ弁当をですね」

工山「『だが本来入るべき宿主じゃねぇ場合、激しい拒絶反応を引き起こすんだよ』」

魔術師「宿主の構造が違いますからな」

工山「『テメェらの魔導書やら異界ってのもそうじゃねぇのか?お前らが持つべきじゃなく』」

魔術師「私達以外に使われるべきものである、ですか?科学のような、オカルトのような」

工山「『古代人が作ったオーパーツだの何だの言うがね。結局ソイツらと俺達が同じ種族だって保証はねぇ訳で』」

魔術師「暗黒神話大系によれば私達人類は、『彼ら』に奉仕する奴隷でありましたな」

工山「『まぁ何にせよ――』」

 キギイ、と。暗闇に少しずつ光が差す。



343:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/14(月) 13:02:24.11 ID:Q0LxgS/b0

 何重にも架せられている鍵を。電子にも強固な戒めを事もなく引き千切り、動力を切った扉を軽々とこじ開ける。

工山「『遅かったじゃねぇか、ヒーローさんよぉ』」

上条「……そうだな。それはまぁ、認めるよ」

上条「散々あんたに振り回されたし、今もあんたの都合の良い光景なんだろうな。けど!」

上条「それも、もう――最後だ!」

工山「『上条さん超かっけー、俺がマジ惚れるわー、って』」

工山「『テメェはどう思いますか、なぁ?――「木原円周」さん?』」

 無造作に横たわっていた少女――木原円周。
 工山の呼びかけに応え、ゆっくりと体を起こす。

 頭にくっついていたヘッドギアを乱暴に引き剥がし、いつもと同じように、嘲笑いかける」

上条「円、周……?」

円周「おはようお兄ちゃんっ!大好きだよっ」

 しかしその笑みは。どうしようも無く違っていて。

円周「『――なんて言う訳ねぇだろうが、ボケぇぇっ!』」

 『インストール』は終了していた。



344:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/14(月) 13:03:21.73 ID:Q0LxgS/b0

――倉庫

円周「『ヒャィィーハァッ!絶望しなぁ、「幻想殺し」さんよおっ!』』

 木原円周の姿と声を使い、簒奪者は高らかに謳い上げる。

円「『ここにゃテメェに救えるような奴ぁ居ねぇんだよ!』」

円周「『テメェだってアレイスターのプランからは逃げられねぇ!クソみてぇな悪夢の中で、ゲ×吐いて死に晒――』」

シェリー「死ぬのはテメーの方だよド腐れ野郎っ!!!」

 倉庫の入り口から最短軌道を描いて土塊が突進する。
 上条が止める間もなく、木原達を押し潰し――そうになる前。

 バキィィンッ

 側に控えていた魔術師が何らかの力を行使し、跳ね返した。

円周「『まだ生きてやがったかクソババアっ!』」

シェリー「オイオイ何言ってんだよ、オォイッ?あの程度で死ぬとか殺すとか、随分ヌルいんだなぁ学園都市ってぇのはよぉ」

円周「『よく言った!もう殺すっ!』」

シェリー「これ以上アタシから奪うんじゃねええぇぇっ!!!」

 再度突進しようとしたゴーレムが弾き返され、倉庫の壁をぶち抜いて行く。

魔術師「シェリー=クロムウェル様。ここは何分狭う御座います。お話は外にて賜りましょう」

シェリー「これはこれはご丁寧にどうも――テメェの血袋を泥で一杯にしてやるよ!」

魔術師「では、参りましょうか」

 魔術師二人が場所を移し、散発的に爆音が遠ざかる。
 室内に取り残されたのは三人――なのか、それとも二人なのか。

円周「『おーおー張り切っちゃってまぁ、何もかも遅ぇってのにどうしちまったんかねぇ』」

上条「……お前はシェリーと知り合いだったんだろ?何も思わねぇのか!?」

円周「『あぁ知り合いじゃねぇ。少なくともデータでしか知らない』」

上条「……あぁ?」

円周「『考えてもみろよ。人間一人分の記憶、ネットに保存するなんざ、どんだけ容量食うと思ってんだ』」

円周「『余所様のハードディスクに忍び込む、つっても限界はある。だから』」

円周「『俺は必要最低限の記憶しか、「こっち」に保存してねぇんだよ』」

上条「何?何を言ってるんだ?」



345:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/14(月) 13:05:06.24 ID:Q0LxgS/b0

円周「『面倒臭ぇな。人間ってのは色々な記憶を憶えてんだよ。勉強した内容だけじゃなく、朝飯とか日常会話とかな』」

円周「『そういった細々とした記憶まで残すのは無駄だろ?』」

上条「『インストール』した連中も、か?」

円周「『あいつらはもっと断片的にしかしてねぇよ。使い捨ての兵隊に手間暇掛けねぇだろ』」

円周「『OSの再インストールと同じだ。ハードディスクをフォーマットした後、一から情報書き込むのが筋だが』」

円周「『一々記憶消すのは面倒だろ?だから少々齟齬が起きたとしても、ウイルス程度で済ませてやったんだ』」

円周「『だから兵隊どもはお前かワクチンで元へ戻る――くぅっ!俺って優しいな、なぁ?』」

上条「……円周は」

円周「『うん、きちんとフォーマットしといたぜ?記憶が入ってる所、丸々全部』」

円周「『だからもう、何をやったって戻りようがねぇ。元に戻るべき記憶が無ぇんだからな!』

円周「『――いいねぇ!その面ぁ!世界を救ったヒーローさんよぉ、たった一人のガキを救えない今、どんな気持ちだ?』」

上条「……お前は!お前だけは!」

円周「『――お前は「木原円周」を理解してない』」

円周「『こいつぁ小さい頃にあるバカに誘拐されたんだよ。理由は嫉妬だか、研究だか知らねぇが』」

円周「『窓もない部屋で何年も何年も、足枷嵌めて放置プレイだ』」

上条「……」

円周「『でも、こいつはある時、攫った連中を融かして帰って来た!「木原」らしくて結構だなぁ!そん時何つったと思う?』」

円周「『何年も監禁していた相手をぶっ殺して清々した?本当はいい人で殺したくなかった?違うね、こいつはそうじゃねぇ!』」

円周「『ただ「研究を見て欲しかった」んだとよ!たったそれだけの理由で、このバカはたまたま作った強酸で人をヤってきやがった!』」

円周「『その後はまぁ――お前も知ってるだろ?バゲージでもこっちでも善悪の区別無く、興味のためだったらなんだってするんだ』」

円周「『そんなバケモンが、人としての道徳に目覚めたからって、今更「良い子」なんてなれる訳ねぇだろうがよ!』」

円周「『何故理解出来ねぇんだっ!?俺をぶっ殺そうが、テメェらは誰も助けられねぇんだよおおぉぉっ!』」



346:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/14(月) 13:06:08.16 ID:Q0LxgS/b0

上条「――黙れ。それはお前が決める事じゃねぇ」

上条「誰かを救うとか救わないとか、どうだって良いし、興味もない」

上条「俺が世界を救ったとか言うけどな!――俺は只、友達を助けに行っただけなんだよつ!」

上条「人殺しがどうした?悪い奴だったからどうだって言うんだよっ!だからっつっても――」

上条「円周や一方通行が、今俺の友達に変わりはしないんだよ!」

円周「『一万人ぶっ殺したクソガキと、劣化コピーのちょいクソガキ相手に、情でも移ったのかぁ?』」

円周「『救えねぇよ、テメェは。誰一人何一つ』」

上条「俺が誰かを救うんじゃない!俺はただ『助かりたいって足掻いている奴を引っ張り上げるだけ』なんだよっ!」

上条「――この、右手でなっ!」

 信じるものは何か?その信念は何なのか?
 逃げ場を奪われ、絶望しかできない状況に置かれても。

 上条当麻は、前へと進む。

円周「『聞いてましたかぁ?俺の話と俺の話と俺の話とか?つーか何、今更どうこう足掻いた所で――』」

上条「じゃ聞くけど。木原数多」

上条「俺は只、お前に近寄っただけだ。お前の言ってるのが正しければ、俺はお前に何も出来ない」

上条「円周の体使って、殴りかかって来られたら――俺は反撃も出来ないだろう。だってのに、だ」

上条「どうしてお前は『下がって』るんだ?」

円周「『……』」

上条「お前も思ってんじゃねえのかよ――『もしかしたら』って」

円周「『……く、ぎゃははははははははははははははははっ!』」

円周「『有り得ねぇよ!そんな訳はよぉぉっ!』」



347:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/14(月) 13:07:44.71 ID:Q0LxgS/b0

円周「『最先端科学を征く学園都市で!その頂点に立つ俺がっ!』」

円周「『何かをし損じるなんて事ぁ――』

上条「最先端の科学がどうした?テメェらの身内も守れねぇような連中がっ!」

上条「テメェ自身も守れる訳がねぇだろうがよおぉっ!」

上条「円周!聞いてるんだろ!?木原円周!」

上条「お前はどうなんだっ!?このまま消えちまってもいいのかよっ!」

上条「何か言えよっ!どうして欲しいか言ってくれよっ!」

工山「『無駄だっつのによぉ。そんなに撲殺して欲しいんだったら、してやりゃいいじゃねぇか』」

工山「『ガキはもう素直にフォーマットしたんだろ。だから遠慮する必要は』」

円周「……お兄ちゃん」

上条「円周っ!円周なのかっ!?」

工山「『遊んでんじゃねぇよ。つーかお前も信じてんじゃね――』」

円周「『――ろせっ!ガキを殺せっ!』」

工山「『あぁ?……お前、マジなのか!?』」

円周「――お兄ちゃんっ、わたしをっ――」

円周「――助け、て……?」

上条「――了解。もう心配は要らない」

上条「俺は、その幻想をぶち殺してやるっ!!!」

 無造作に。軽く開いた右手で。

上条「――帰ってこい、円周」

 いつもように円周の髪を、撫でる。



348:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/14(月) 13:09:13.78 ID:Q0LxgS/b0

 パキイィィィィィンッ!

 異能を消す力が、音が響く。

円周「……お兄ちゃん……」

上条「……あぁ」

円周「お兄ちゃんっ!わたし、わたしねっ!」

上条「……いいよ、それは――大切だけど、今は」

上条「帰ろう、お前の家へ?シェリーが完徹三日目に突入してフラフラしてっから」

円周「……うん、うん……ッ!」

工山「『オイオイオイオイ、何やってんだ俺?あぁ?』」

工山「『ノリノリで演技すっとこじゃねぇだろが!どう考えても記憶が戻る訳ねぇだろうが!』

工山「『奇蹟なんて起きねぇだろうが!お前は絶望して這いつくばるんじゃねぇのかよ!?』」

上条「工山、じゃなかった木原数多。お前が負けた原因はたった一つだよ」

上条「――お前は円周を知らない。あの子がどんな風に笑うのか、何をすれば喜ぶのか」

上条「この子が、どれだけ狡猾なのか、ってのも含めて」

工山「『……何だと?』」

円周「数多おじちゃんはさ『一度人格を乗っ取られた』ら、対策はしない方なのかな?」

円周「対抗策の一つも取らないで、漫然と過ごすの?自殺願望でもないとそれはないよねぇ」

工山「『何が出来るってんだよ!ネットも使えねえ、「学習装置」も無い状態でだ!』」

円周「わたしは能力を使って、記憶の複製と書き込みをしてたんだ」

円周「本来であれば感情が入ってる視床――わたしが能力を強化するため、調節した所にね?」

円周「だから本来記憶がある所の記憶は消され、『木原数多』が占有しちゃったけど」

円周「『元へ戻るべき記憶』が、別の場所に残っていたから、お兄ちゃんの能力で復旧は出来たんだよ」

工山「『出来る訳ねぇだろうが!人の記憶を一々手動で書き込んでいったら、どんだけかかると思ってやがるっ!?』」

円周「だっよねぇ。だからわたしの記憶はスカスカなんだけど、まぁまぁ?」

円周「バゲージより前、お兄ちゃんやお姉ちゃん、鞠亜ちゃんと出会う前の記憶なんて、要らないじゃん?」

円周「だから結構書き込み自体は早く終わってたんだけど、ねっ?」

工山「『……それでもだっ!お前の脳髄にあったのはフルインストールした「木原数多」と、みみっちい記憶の残りカスだろうがよ!』」

工山「『その状況下で、何をどうやったら「円周」を“主”だって考えるんだっ!?』」



349:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/14(月) 13:10:16.15 ID:Q0LxgS/b0

 パキイィィィィィンッ!

 異能を消す力が、音が響く。

円周「……お兄ちゃん……」

上条「……あぁ」

円周「お兄ちゃんっ!わたし、わたしねっ!」

上条「……いいよ、それは――大切だけど、今は」

上条「帰ろう、お前の家へ?シェリーが完徹三日目に突入してフラフラしてっから」

円周「……うん、うん……ッ!」

工山「『オイオイオイオイ、何やってんだ俺?あぁ?』」

工山「『ノリノリで演技すっとこじゃねぇだろが!どう考えても記憶が戻る訳ねぇだろうが!』

工山「『奇蹟なんて起きねぇだろうが!お前は絶望して這いつくばるんじゃねぇのかよ!?』」

上条「工山、じゃなかった木原数多。お前が負けた原因はたった一つだよ」

上条「――お前は円周を知らない。あの子がどんな風に笑うのか、何をすれば喜ぶのか」

上条「この子が、どれだけ狡猾なのか、ってのも含めて」

工山「『……何だと?』」

円周「数多おじちゃんはさ『一度人格を乗っ取られた』ら、対策はしない方なのかな?」

円周「対抗策の一つも取らないで、漫然と過ごすの?自殺願望でもないとそれはないよねぇ」

工山「『何が出来るってんだよ!ネットも使えねえ、「学習装置」も無い状態でだ!』」

円周「わたしは能力を使って、記憶の複製と書き込みをしてたんだ」

円周「本来であれば感情が入ってる視床――わたしが能力を強化するため、調節した所にね?」

円周「だから本来記憶がある所の記憶は消され、『木原数多』が占有しちゃったけど」

円周「『元へ戻るべき記憶』が、別の場所に残っていたから、お兄ちゃんの能力で復旧は出来たんだよ」

工山「『出来る訳ねぇだろうが!人の記憶を一々手動で書き込んでいったら、どんだけかかると思ってやがるっ!?』」

円周「だっよねぇ。だからわたしの記憶はスカスカなんだけど、まぁまぁ?」

円周「バゲージより前、お兄ちゃんやお姉ちゃん、鞠亜ちゃんと出会う前の記憶なんて、要らないじゃん?」

円周「だから結構書き込み自体は早く終わってたんだけど、ねっ?」

工山「『……それでもだっ!お前の脳髄にあったのはフルインストールした「木原数多」と、みみっちい記憶の残りカスだろうがよ!』」

工山「『その状況下で、何をどうやったら「円周」を“主”だって考えるんだっ!?』」



350:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/14(月) 13:12:37.83 ID:Q0LxgS/b0

工山「『消えて無くなるのはお前の方じゃ無かったのかよおぉっ!?』」

円周「うん、うんっ!それはねぇ、きっとわたしの能力のせいだと思うよ?」

工山「『「卓上演劇」如きレベル1がなんだってんだ!マルチタスク出来ない以上、データ総量の大きい方を優先するだろ!』」

円周「あー……ごめんね?わたしの本当の能力は『卓上演劇』じゃなく、レベル3の『他者再生(エミュレータ)』なんだよね」

円周「効果自体は『卓上演劇』とほぼ同じだけど、『複数の人格を同時起動出来る』――」

円周「――つまりマルチタスク出来るから、主はあくまでも『わたし』なんだよね」

上条「つまり?」

円周「パソコンでゲームをしても、OSを乗っ取ったりしないでしょ?」

工山「『テメェはぁぁっ!ガキが!「木原」の足りねぇクセしやがって!』」

円周「え、なぁに?数多おじちゃんまさか『わたしが本当の事を申告する』とでも思ったのぉ?」

円周「『木原』が足りてないのは、数多おじちゃんの方じゃないかなぁ?」

工山「『……』」

円周「あ、怒っちゃったー?許して、ねっ?」

工山「『……確かに。ここじゃあ俺の負けだぁな。ムカつくが認めてやるぜ』」

工山「『だがよぉ。ここで工山をぶっ飛ばしても、そりゃ俺じゃねぇ』」

工山「『テメェらは頑張っちゃいるが、結局今回も俺にゃ届かなかったんだよ!』

バードウェイ『――等と、勝利宣言をしても虚しいだけなんだがな』



351:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/14(月) 13:13:52.31 ID:Q0LxgS/b0

工山「『バードウェイか!テメェ姿も見せずにどこにいやがる?』」

バードウェイ『少し野暮用でね。新入りに持たせた携帯電話で失礼するよ』

工山「『姿を見せねぇのはこっちも一緒――』」

バードウェイ『――では、ないよ?私達は君の居場所を特定している』

工山「『……へぇ?言うだけ言ってみ?』」

バードウェイ『君はこの学園都市のイントラ――つまりネット内に存在しているデータの塊だ』

バードウェイ『自己データを無限増殖していくウイルス、と言った方が良いのかな?』

工山「『く、ひゃはははははははははははははははっ!』」

工山「『そうだなぁ!俺は確かに只のデータの塊だ!「木原数多」なんて名乗っちゃいるが、本当はどうなのかも怪しいぜ!』」

工山「『「SEED」なんてぇ使うバカに乗り移る悪霊みてぇなモンかね?』」

バードウェイ『そんな良いもんじゃないさ。君は病気だよ、ペスト程度のな』

工山「『それで?俺をどうしようって?まさか「右手」でサーバー殴ってナントカしようってんじゃねえだろな、あぁ!?』」

工山「『ハッ!やれるものならやってるよな、とっくによぉ!分かってんだよテメェらが俺に手も足も出せねぇなんてのはよ!』」

工山「『屏風の虎と一緒だなぁ。テメェらの武器は届かねぇ!けど俺からの攻撃は届く!』」

工山「『今度こそ、百人!いや千人単位の「木原数多」で始末してやんぜ!』

バードウェイ『難しい話ではないよ、木原数多。君は“そこ”にいる』

バードウェイ『対象が分からなければ、術など掛けようがないが。まぁ逆に?』

バードウェイ『「居る」という「定義」さえしてしまえば、幾らでもやりようはあるんだ』

工山「『何を言ってやがんだよ、お嬢ちゃん?』」

バードウェイ『そもそも「人の定義」とは曖昧なものだ。右手を失った存在は人だろうか――と問えば、多くはそうだと答えるだろう』

バードウェイ『だが両手がない場合はどうなる?足だったら?首だけだったら?』

バードウェイ『シリンダーの中に浮かぶ脳髄だったら?それが「人」なのだろうか?』

バードウェイ『まぁ私は別に興味もないし――事も、ないか。が、それは境界線を越えるのでこちらから踏み越えはしないよ』

バードウェイ『だから私は魔術師らしく、魔術を掛けるだけの話』

バードウェイ『「体を捨て電気反応だけになった相手」にな?』

工山「『……あぁ?』」



352:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/14(月) 13:15:24.07 ID:Q0LxgS/b0

バードウェイ『術式の名前は「ハーメルンの笛吹男(パイドパイパー)」』

バードウェイ『効果は中世で行われた鼠殺しだ――が、一部ポカーンとしている馬鹿者がいると思うので、解説しておこうか』

バードウェイ『中世、ハーメルンという街へ笛吹の男がやってくる』

バードウェイ『街では鼠が悪さをして大変困っていたが、笛吹は鼠の駆除を申し出る』

バードウェイ『男が笛を吹くと街中の鼠が現れ、男についていった。男は近くの湖に膝まで浸かると――鼠たちは皆溺れ死んだ』

バードウェイ『この後、報酬を貰えなかった笛吹は笛を吹き、子供達を誘拐してしまった――と言うオチがつくが』

バードウェイ『さてさて、聡明な木原アマ……なんとか君。有名な伝説をモチーフにした魔術、その効果はどうだと推測するかね?』

工山「『……自殺、か!』」

バードウェイ『黒死病を媒介したのは鼠とノミ。彼らを殺したとしても、死骸がそこら中に残ってしまえば新たな感染症が広がる』

バードウェイ『それを防ぐため、この術式は「人里離れた場所で自滅する」ようになっている』

バードウェイ『いやはや、人間の知恵だね』

工山「『……ハッ!そんなバカな事が出来る訳ねぇだろ!俺がどこにいるのかも――』」

バードウェイ『君が「フルインストール」する際、当然「全ての人格データを用意する」必要があるね?』

バードウェイ『そのデータの場所、ダウンロードした履歴はこちらで押さえている。君の育てた白いのが頑張ってくれたんだ』

バードウェイ『虫のように隠れていれば良かったのに、君は下手な欲を出して「本体」とも言えるデータ群を晒してしまった訳だな』

工山「『まだ、まだだ!他の俺が――』」

バードウェイ『あぁそりゃ他にも居るだろうな?君に「インストール」された連中が』

バードウェイ『でも君達は必ずネットで「同期」させて連絡を取るのだろう?そこら辺の流れも突き止めてあるし』

バードウェイ『そっちにも彼らが同期する度に「木原」だけが消えていく』

工山「『やめろっ!?コイツが、コイツの体がどうなっても良いのかっ!?』」

バードウェイ『ふむ、人質かね?ようやく事態の深刻さと魔術の脅威を理解出来たのは良かったのだが』



353:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/14(月) 13:17:02.50 ID:Q0LxgS/b0

バードウェイ『生憎とそれは無理なのだよ、木原君。あぁその人間が無価値という訳では無いんだ』

バードウェイ『実はもう「笛吹男の魔術は掛け終わった後」なんだ』

工山「『――は』」

バードウェイ『新入りが長々と話している最中、暇で暇で仕方がなかったので、つい』

バードウェイ『だからもう、君が何をしようがしまいが、泣こうが笑おうが、本体のデータは「死んだ」んだ』

バードウェイ『残された君達は次に何をすればいいのか、同期して確かめるだろう?そうすればその者達も「自滅」スイッチが入る』

バードウェイ『安心したまえ。君の人格データに“だけ”効果を発揮するのは、工山君の偽物で実験済みだから』

バードウェイ「と、そろそろいいかな?――おい、新入り」

上条「――いえっさー、ボスっ」

バードウェイ『――あぁそう言えば。私の銃は届かない、君がそう言ったのを憶えているか?』

バードウェイ『だがまぁ私の専門は別なんだ。銃を使わなくとも魔術があるのさ』

工山「『バードウェイ!レイヴィニア=バードウェイっ!!!』」

バードウェイ『――ばぁーん、ってね?』

上条「死人は、墓へ帰りやがれえぇっ!!!」

パキイイィィィィンッ……!!!



354:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/14(月) 13:18:04.26 ID:Q0LxgS/b0

――バッドエンド2

 居酒屋チェーン店。

浜面「――って訳でさぁ、俺悪くないよね?俺別に悪い事したんじゃないよね?」

上条「……」

浜面「ねぇ、聞いてんの大将?ねぇってばよ」

上条「お、おぉう?あー、ごめんボーっとしてたみたい」

上条(あるぇ?俺何でスーツ着て浜面と飲んでんだ……?)

浜面「俺が上司にメール出したらさぁ、激おこじゃんか?なにもそんなに怒らなくたっていいんじゃね?」

上条「ん、あぁ?誤字だろ?なんて入れたんだ?」

浜面「あー『小一時間立ったら』ってのをだな」 ピッ

ケータイ『濃い乳時間×ったら』

上条「アウトじゃん!?出る所に出たら完敗するぜっ!」

浜面「てか、こないだ嫁さんに指摘されるまで、『小一時間』を『濃い乳時間』だと信じてた」

上条「浜面君、お前大丈夫?社会人の常識以前に問題だよね――って嫁?お前に?」

浜面「いや、何言ってんだって。オタクの嫁さんとよく一緒にいるでしょーよ」

上条「俺もっ!?誰と!?エリスじゃねぇだろうなっ!?」

浜面「エリスぅ?また新しいラッキースケベ的な話?」

上条「いや、お前に言われるのは心外なんだけど……」

上条「つーか誰?俺誰と所帯持ってんの?またこの展開なの?」

浜面「……げふっ。あーでもあんたんとこの嫁さんは良いよなー。家事も出来るし料理も美味い、ある種男の理想的な感じじゃね?」

上条「メシが美味い、か」

上条(それで考えられるのは五和とオルソラ……いや、つか他に女の子の手料理食べた事ないっけか)

上条(土御門の妹さんはノーカンとしても、他に――あぁ。御坂は……既製品でしたっけ)

上条(あとレッサーは上手かどうか別にして『料理する』って言ってた)



355:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/14(月) 13:18:51.27 ID:Q0LxgS/b0

浜面「いやでもウチの嫁のメシが一番ですけどねっ!えぇっ!」

上条「お前の嫁さんも気になってんだけど、結局滝壺さんになったの?」

浜面「えっ?」

上条「えっ?」

浜面「……それじゃそろそろ帰ろうぜ?あんま遅いと叱られっちまうし」

上条「誰に?お前の嫁の名前だけ教えて?なんだったら子供の名前でも良いから」

浜面「でもそっちは年下じゃんか?いいよねー、体もつのー?」

上条「露骨に話を逸らされたんだが……年下、ねぇ」

上条(って事はレッサー?オルソラは年下じゃねぇよな)

上条(つか五和って幾つぐらいなんだろ?タメぐらいって感じはするけどさ)

浜面「それじゃ――っとすまん」 ピッ

上条(あ、携帯だ)

浜面「『うん……うん、大丈夫だって!浮気?してないってば!』」

上条(あぁ、良い旦那やってんじゃんか。相手はスッゲー気になるけど)

浜面「『あぁ、コンビニで豆腐?わかった、了解、それじゃ――にゃあ』」

上条「待てやコラ!お前今『にゃあ』つったか?言ったよな?」

上条「お前散々ロシアまで行っといて最終的にはフレメアに着地したのっ!?不時着にも程があるだろ!どんだけ滑走路の手前に落ちたんだ!?」

浜面「よーしっ大将っ!それじゃまたなーーっ!」

上条「……よく麦野さんと滝壺さんに殺されなかったな。ある意味凄ぇけど」



356:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/14(月) 13:20:32.44 ID:Q0LxgS/b0

――自宅前

上条(――と、まぁ自宅まで来ちゃいましたけど)

上条(住んでるアパートそのまんまってのも、どうかと思わないでもないけど。それはそれでリアル、なのか?)

上条(前回のエリスに比べたら、うん。男の娘じゃなきゃ、まぁまぁ的なね?)

上条「……」

上条「……よぉっし!行くぞっ!」

上条「たっだいまーーーっ!」

ガチャッ

円周・鞠亜(メイド服)「「お帰りなさいませ、ご主人様っ!」」

上条「あ、すいません。部屋間違えましたー」 クルッ

円周「――はい、確保―っと」 ガシッ

鞠亜「往生際が悪いんだな、君も」 ガシィッ

上条「離せっ、離せようっ!?アパートの一室にメイド居る時点でおかしいじゃねぇかよぉっ!?」

舞夏(メイド服)「おー、上条じゃないかー。玄関でなにやってんだー?」

上条「そりゃまぁ確かにお前はそうだろうけどさぁっ!俺が言ってんのはそうじゃないじゃん!?もっと一般的な問題だ!」

土御門(メイド服)「カミやんちじゃいつもの事だにゃー」

上条「おいクソメガネ?お前何やってんだ?暫く姿見えないと思ってたら、メイド好きが高じてメイドになったの?」

土御門(メイド服)「意外と暖かくて、秋口頃からは着やすいんだぜぃ?」

上条「着ないからな?着る必要性がないからね?あとお前が着てるのはレイヤーさん向けので、本職用のではないんだ」

円周「まぁまぁ良いから中へ、ねっ?」

鞠亜「そうだぞご主人様……全く、手がかかってまたレベルアップしてしまうじゃないか!」

上条「面倒臭っ!?個人メイドになっても面倒臭さそのままかっ!?」



357:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/14(月) 13:22:00.02 ID:Q0LxgS/b0

――自宅

円周「今日も一日お疲れ様でしたー、お兄ちゃんご主人様―」

鞠亜「ご飯にするかね?それともお風呂?それでもなく」

上条「言わせねぇよ?ベッタベタのシチュってどういう事?今時、家帰ってメイドって何の話?」

円周「お兄ちゃん、忘れちゃったのっ!?酷いよ、あんなに情熱的にプロポーズしてくれたのにっ!」

上条「……なんつったの、俺?どんな取り返しのつかない事言っちゃったの?」

円周「『一生俺のメイドさんになってくれないかぶち殺す?』」

上条「脅迫っ!?途中からそげぶがくっついちゃってるけど、もしかしてそれ噛んでただけじゃねぇのっ!?」

上条「……いやでも、んな憶えねぇけど、それ自体はまぁまぁ合法だよね?都条例的なアレコレをさっ引いたとしても、自由の範囲だよな?」

上条「んじゃなんで雲川さん居るの?二人のメイドがお帰りなさい、ってそれもうお店だよね?」

円周「あー、それはわたしが鞠亜ちゃんを誘ったら、『経験値稼ぎなら?』って事で」

上条「はい?」

鞠亜「好きでもない男に抱かれるとかっ、これ以上の屈辱はないだろうな!」

上条「あのー、雲川さん?俺前も言ったかも知れないけど、心の病気は専門の人に診て貰った方が良いよ?ねっ?」

上条「雲川先輩には俺が言っておくから、取り敢えず帰れ、な?」

円周「いやでも個人の性癖はしゃーない、ってKAKER○先生も言ってるし?」

上条「性癖じゃねぇだろ!?……あぁいや、合ってのんか?つーかそれで良いのか?」

鞠亜「勘違いするなよっ!私は別に君の事が好きなんじゃないんだからなっ!」

円周「おー、本気で言ってるのに、なんかツンデレっぽい感じがするよねぇ」

上条「……ツンデレが発生しすぎて、色んな所で問題になってる気がするよな。マジで」

円周「BL系では宿命の敵同士のカプで、『なんでこの二人?』って聞くと」

円周「『あぁコイツ、ツンデレだからこうなんスよ』って真顔で答えられた事あるしねぇ」

上条「怖いから中身には触れないけど、大抵の男は女が好きなんだからね?ロ×であっても一応は」



358:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/14(月) 13:23:03.45 ID:Q0LxgS/b0

円周「――あ、良い事考えたぁ」

上条「ごめんちょっと俺、書類忘れたみたいだから暫く――離せっ!?お前らの変態プレイに俺を巻き込むなっつってんだろ!?」

円周「よぉぉっし!それじゃ今日も経験値上げしよっかぁ!」

上条「助けてー!?誰か、誰かっ!?」

鞠亜「大丈夫、先輩。無理矢理されるのもそれはそれで興奮――じゃなかった、レベルが上がるぞ!」

上条「お前もう本末転倒すぎるじゃねぇか!?ちったぁ自分の言動顧みやがれ!」

円周「うん、うんっ!こんな時、『木原』ならきっとこう言うんだよね……ッ!」

円周「『もう諦めたらどうですかー?』」

上条「人生かかってんだよ!主に俺とか俺とか俺のが!」

円周「やだ……上条の下条さんは元気……!」

上条「話を聞けぇぇよおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?」



359:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/14(月) 13:24:16.32 ID:Q0LxgS/b0

――倉庫

円周「――むー?」

上条「おはよー」

円周「……なんか今、4年ぐらい先の夢を見てた気がする……」

上条「ふーん?知りたいけど藪蛇になりそうだから、自制するな?」

円周「えっと、あれ?どうしたんだっけ?」

上条「『木原数多』をぶっ飛ばした続き。今、こっちに黄泉川先生達が向かってんだって」

円周「お姉ちゃんは?

上条「逃げられた。つか隣隣」

シェリー スースー

円周「こうやって見るとキレイ系なんだけどなぁ。言動が残念すぎて」

上条「自然体で良いんじゃね?……というかこのパーティ、これっぽっちも色気がねぇなぁ」

円周「お姉ちゃんは慣れてないってのもあると思うけど。そこは可愛いよねぇ」

上条「完徹しながら魔術使ってたんだから、あとで礼は言っとけ――お前は?記憶、とか」

円周「何が無くなってるのかが、まず分からないみたい」

上条「うん?」

円周「福袋を買いました。でも途中で落としました。さて、中身はなーんだっ?」

上条「逆に残ってる部分は?」

円周「専門知識は……数多おじちゃんも使うつもりだったみたいで、丸々残ってる、かも?」

円周「雑多な記憶のアーカイブは完全にフォーマットされてるや。腐っても『木原』だなぁ」

上条「……」

円周「でもまぁお兄ちゃん達の記憶はあるから、別に困りはしないけどねー」

上条「……ん、まぁそれで良いんだったら、まぁけど。そんなに気負うなよ」

円周「気負ってないよ?やだもうっ、お兄ちゃんってばシスコンさん?」

上条「……これから、だからな。これからだ」

円周「そうだねぇ。あとカップは二つぐらい上がって欲しいかなぁ」

上条「まだ早いよ、バーカっ」

円周「ぶーっ、おっきくなったもお兄ちゃんには触らせてあげないもん!」

上条「大きくなると良いなぁ。いつの話だか分からないけど――つーかなぁ」

 むにー、と円周の頬を引っ張る。意外に良く伸びた。

円周「むー、あにするお?」



360:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/14(月) 13:25:49.14 ID:Q0LxgS/b0

上条「ガキが粋がるんじゃねぇよ。お前はまだ子供なんだから、さ」

上条「『木原』だかなんだか知らねぇけど、スプリーキラーとか言われてっけども、お前、只の、ガキじゃねぇか」

上条「自分のしでかした事に責任も持てない子供だよ……まぁ、俺もな」

 手を離して両手を見る。年相応とは言えない程、大小の傷痕が残っている。

上条「色々言われちゃいるけど、その実殆どは誰かに助けて貰ったり、人のケンカに乗っかったりした結果だしなぁ」

上条「あん時も、他のあの時も余計に首突っ込んで大怪我したり、やってる事はガキだけどさ。まぁでも」

上条「だから助けて欲しいって時には。次、お前がどうしようも無くなったら――」

上条「――きちんと『助けて』って言えよ、な?」

円周「わたしは」

上条「視床、だっけ?お前が能力を強くするために、上書きした所」

円周「感情を司るとこ、だけど」

上条「芳川さんに聞いたんだけど、人間の脳は一度書き込まれたらそれっきり、って訳じゃないんだと」

上条「お前が勝手に書き換えた所も、それなりに感情が表に出れば上書きされるって」

上条「……確かに、今のお前は『足りない』のかも知れない」

上条「元から少なくなってたのに、『木原数多』が消しやがったから、余計に」

上条「けどな、『お前』はそこに居るんだ」

上条「無くなったんだったら探せばいい。落としたんだったら拾えばいい」

上条「『足りない』んだったら、『足りる』まで詰め込んじまえよ」

円周「……うん」

上条「朝起きてバードウェイやシェリーとケンカしながらメシ食って」

上条「学校行って周囲をドン引かせて。メイドカフェ行ってカモ相手に金巻き上げて雲川さんとボケ倒して」

上条「日が暮れたら手ぇでも繋いで家に帰ればいいじゃねぇか。んなダラダラっとした毎日続ければ、その内きっと」

上条「お前ん中の、お前って『筺』は一杯になってんだよ」

円周「……そう、かな?わたしはここにいても、いいのかな……?」

上条「人の機嫌伺うような殊勝なキャラじゃねーだろ、お前は」

円周「……あはっ……お兄ちゃん、酷いなぁ」

円周「でも――うん、うんっ!分かったよ!」

上条「……そか」

円周「お兄ちゃんとしては三人とも行くルートなんだねっ!」

上条「全く理解してねぇな!?あれ、お前ラジオでも聞いてたの?」



361:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/14(月) 13:26:47.23 ID:Q0LxgS/b0

円周「なんか未来予想図がハーレムルートになってるんだけど」

上条「例だ、例!わかりやすくしただけだっ!他意はねぇしっ!」

円周「って事なんだけと、どうかな――シェリーちゃん?」

上条「はぁ?何言ってんだ、おま――」

シェリー「……マジで?ほら、サブイボが」

上条「なんで起きてんだあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?つーか、まさか!まさかお前聞いて――」

黄泉川「なー、だから言ったじゃんよ?こいつはまた弱った女につけ込むじゃんて」

上条「先生までっ!?来たなら声かけろっ、かけろよおぉぉぉぉぉぉっ!?」

上条「も、もしかしてこれはっ!この展開は最悪のアイツが――」

バードウェイ「『だから助けて欲しいって時には。次、お前がどうしようも無くなったら――』」

バードウェイ「『――きちんと「助けて」って言えよ、な?』」 キリッ

上条「やーーめーーろーーよぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?そういうテンションじゃねぇ時に持ち出すの卑怯だろうが!」

上条「つーか全員じゃんっ!?どうして俺、今良い事言ったのに!全部台無しだし!?」

バードウェイ「頑張れよ、『お兄ちゃん』」

シェリー「そうだぜ、『お兄ちゃん』。妹の面倒ぐらいしっかり看やがれ」

上条「え、俺この先円周係って事か!?ずっと!?」

黄泉川「まぁお前は一人ぐらい世話した方が力出るじゃんよ、『お兄ちゃん』」

上条「やだ妹が四人も出来たっ!?」

円周「まぁまぁ色々あったけど――」

円周「――これから、よろしくね、お兄ちゃんっ!!!」


――断章のアルカナ 第二話 『ラプンツェル』 -終-



362:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/14(月) 13:28:19.21 ID:Q0LxgS/b0

――次回予告


――幽州。今ではない、いつか

野盗「おいおいお嬢ちゃん達よぉ、この橋通りたければ今履いているニーソ置いていきな」

愛紗「ふっ、野盗と思えばただの変態の群れか。我が青竜刀の露と消えるがいい!」

鈴々「にゃー?別に靴下ぐらい鈴々はあげても良いと思うのだ?」

桃香「だ、駄目よ鈴々ちゃん!?あの人達はその――」

愛紗「人の物を強引に取るのは良くないって意味ですよね!桃香様!」

桃香「え?あぁうんうんそうなんだよ!ちゃんと働いたり、自分で編まなきゃいけないんだよね!」

野盗「い、家には病で伏せっている弟が居るんだ!弟が『ニーソが、ニーソをペロペロしたい』ってうわごとを言うんだよっ!?」

愛紗「もう死んだ方が良いな、その弟」

桃香「っていうか時代考証がね?頑張ろ、もうちょっと考えてみよ?」

野盗「あぁもうやっちまえ、お前らっ!」

桃香「きゃぁっ!?」

愛紗「数が多い!」

鈴々「桃香お姉ちゃんっ!」

野盗「ひゃっはーっ!今夜はニーソでご馳走だぜ!」

男?「――よっと」 カ゚ッ

野盗「ぐああっっ!?」

男?「危ないから、俺の後へ」

桃香「は、はいっ」

野盗「だ、誰だテメェっ!男はニーソ履いてねぇからどっかいけ!」

愛紗「もし履いていたら奪うのか……?」

野盗「可愛は正義!」



363:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/14(月) 13:29:18.54 ID:Q0LxgS/b0

男?「なんか数も多いし、斬ったら汚れそう――召喚、『ケルベロス』!!!」ヴヴウゥンッ

愛紗(なんだ?地面に広がった光の円から何かが出て来る!?)

鈴々(虎よりも大きいのだー……白い狼?)

ケルベロス『盟約により魔獣ケルベロス推参仕りました。我が牙、我が体、我が煉獄の炎は主がために』

ケルベロス『救世主(メシア)様、どうかご下命を拝する栄誉をお与え下さいませ』

桃香「喋った!?」

男?「からかうのはやめろって――パスカル、薙ぎ払え!」

パスカル(ケルベロス)『カズトおにーちゃんは変わらないよね――よっと』

ゴオオオオオォォォォォォッ!!!

野盗達「ぐああああああぁぁっ!?」

愛紗「凄い!辺り一面が炎で――」

鈴々「うー、もふもふしたいのだー」

男?「――大丈夫?怪我はない?」

桃香 ポーーーーーーーッ

男?「えっと?」

愛紗「あぁ大丈夫、助かった事に関しては礼を言おう」

鈴々「もふもふっ、もふもふしたいのだっ!」

愛紗「こら鈴々っ!」

男?「あぁ、いーよいーよ」

鈴々「本当なのか!?」

男?「パスカルが嫌だって言わなかったらな」

パスカル『うんいいよー。あ、でもシッポ引っぱったりはやー』

鈴々「わーい、なのだっ!」 モフモフモフモフッ

愛紗「喋る、狼……」

男?「別にケルベロスは珍しくもないと思うけど。あぁどっかのシェルターから来たの?」



364:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/14(月) 13:30:30.72 ID:Q0LxgS/b0

愛紗「しぇ?すまない、聞き覚えのない単語だ」

男?「と言うか、ここどこだ?昨日までカテドラルに居たと思ったんだが」

愛紗「かて、どら?それも知らないな」

男?「参ったなー……あーでも姿をくらまそうとしてたから、丁度良いっちゃ良いのかも」

桃香「あ、愛紗ちゃん!ちょっとちょっと!」

愛紗「なんですか桃香様。引っ張らなくても」

桃香「そうじゃなくって!この人、管輅先生の予言にあった――」

 世界が乱れ、大陸が血によって赤く染まる時、人の英雄が現われる。
 それは天の世界より遣わされた救世主――ではない。決して“この”世界を救うために訪れた存在ではない。

男?「まぁなんか物騒みたいだし、近くの街まで送るよ」

 だが彼の者は紛れもなく救世主である。
 遠き所の、いつか、どこかの国を悪しき物から、そして正しき物から、人を救った存在。

桃香「あのー、あなたのお名前は――?」

男?「北郷、北郷一刀」

 彼の者は白き獣を友とし、この世界をも再び導かん。

パスカル『おにーちゃんはね、前の世界“も”救ったんだよ』

北郷「こら余計な事言うな。ってかお前今“前の世界”って言ったか!?」

 超ハードルート(現実→真・女神転生Ⅰ→現在)を辿った北郷一刀の、ある外史の物語が始まる――。


――次回予告 -終-



365:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/14(月) 13:31:25.54 ID:Q0LxgS/b0

no title



366:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/14(月) 13:32:23.64 ID:Q0LxgS/b0

――次回予告

少女「昔々――ではない。かといって最近の話でもない、とあるおとぎ話」

少女「新大陸、カンザス住むドロシーはある日竜巻に家ごと飛ばされてしまう」

少女「行き着いた『オズの国』でドロシーは旅に出る。カンザスへ帰るため」

少女「大魔法使いの『オズ』が暮らすエメラルドの都へと向かった」

少女「ドロシーは出会う――臆病者のライオンと」

少女「ドロシーは出会う――脳の無いカカシと」

少女「ドロシーは出会う――心の無いブリキの木こりと」

少女「まぁアレだよ。ドロシー達は冒険した末、こう悟った」

少女「臆病者のライオンは『勇気』を手に入れ」

少女「脳の無いカカシは『智恵』を手に入れ」

少女「心の無いブリキの木こりは『意思』を手に入れた」

少女「かくしてドロシーは無事カンザスへと帰り来たる事が出来ましたとさ」

少女「めでたしめでたし」

少女「……」



367:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/14(月) 13:33:16.69 ID:Q0LxgS/b0

少女「クロムウェルは『勇気』を手に入れ」

少女「小娘は『意思』を手に入れた」

少女「と、すれば差し詰め私は『智恵』かね。ふむ」

少女「――『それ』は必要ない。私はもう持っているものだ」

少女「至高にして唯一、輝かしい『結社』である我々の英知に欠けたる所など、無い」

少女「重ねて言おう。我らは望であり、朔たる存在では――無い!あってはならないんだ!」

少女「――などと、まぁ年相応に肩肘を張ってみても、だ」

少女「如何ともしがたい時代は抗する術もなく、千年王国は二度目の死を遂げた」

少女「ならば孤独に星を詠みあげながら征くのもまた、悪くはないかも知れないな」

少女「それもまた、アルカナの導きによって」

少女「……これは、とある星詠みの物語」

少女「『栄光』を失い、輝きを見上げ嗤う支配者の物語」

少女「『断章のアルカナ』最終話」

少女「――『オズの魔法使い』」


――次回予告 -終-



バードウェイ「ようこそ、『明け色の陽射し』へ」 ~断章のアルカナ~【その3】
元スレ
バードウェイ「ようこそ、『明け色の陽射し』へ」 ~断章のアルカナ~
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1378160982/
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