《仮面ライダービルド》万丈の葛藤
自分でも抑えられない衝動。戦兎は暴走していた俺を止めるために、見たこともない姿に変身し、完膚なきまで俺を叩き潰した。
≪マックスハザードオン!ガタガタゴットン!ズタンズタン!≫
俺を倒した後も、黒く、そして強くなった三羽ガラス共を圧倒してやがった。あの野郎、また強くなりやがったな。これならグリスもぶっ飛ばせるかもしれねぇ。あの時は気楽にそう思ってたんだ。
一海「やめろーーーー!」
《ハザードフィニッシュ!》
止めるべきだった?けど俺はあそこで動けなかった。情けねえ、何もできねえ、大事な相棒を俺は…
戦兎「…俺が、やったのか…?」
ーーーーーーーーー救ってやれなかった。
これは、東都と北都の代表戦が始まるまでのお話…
仮面ライダーによる一対一の代表戦。つまりお互いの主力の最高戦力を使って、東都と北都が戦争の勝敗を決める。被害が甚大な東都にとって、最も平和的な解決法だ。
泰山「頼む。東都のため、戦ってくれんか」
戦兎「…俺はもう、戦いたくないです」
微かに震えた声で、そう言い残して出ていった。
いつまでたっても、戦兎の瞳は虚ろなままだった。あれだけ東都を守ろうと必死だったのに、全てがどうでもよくなったみてえだった。
泰山「…」
美空「…」
紗羽「…」
万丈「…あの」
…なんとかするしかねえだろ、俺。
万丈「…あんな状態のあいつに、東都の未来を任せてらんねーだろ」
あれから、あいつと顔を合わせることが少なくなった。最近何処かに入り浸ってるようだ。一体何をしてんだか、俺にはさっぱりわかんねえけど。
万丈「俺が、戦争を終わらせるんだ」
美空「万丈…」
万丈「…っし!そう決まったなら特訓しねえとな!こんなもんじゃ、グリスに勝てねえ!」
万丈「勝つんだ…あいつに頼らなくても、俺が…」
一海『…』
謝罪の言葉しか出てこなかった。俺を止めようとして、あいつは無茶をした。俺のせいだ。俺の…
一海『半端な覚悟で戦場に戻ってくんじゃねえ』
忘れられない。あいつらが仲間を失った時のあの眼を。今すぐにでも俺達に復讐したいはずなのに。
自分が、どうしようもなく惨めに思えた。
心の中にある色んなもんを振り切るように、俺は言い放った。
強くなる。あいつがハザードトリガーなんか使わなくていいように。グリスに勝つために。
クローズチャージ「もっと強くなるんだ…!もっと、もっと、もっと!」
弱い自分に打ち勝つために!
クローズチャージ「うおおおおお!!」
負けねえ…負けねえぞ!俺は!
スターク「…頑張るねぇ…」
ビルド「はぁ…はぁ…」
内海「…よし。今日はここまでにしよう」
ビルド「…はい」
戦兎は自分を限界まで追い込み、更に強くなっていく。だが、変身を解除して見えた戦兎の表情は、どこか腑に落ちない様子だった。
戦兎「…内海さん」
内海「どうした?」
戦兎「この特訓のおかげで、様々なボトルの特徴を使いこなせるようにはなれた。俺自身も、前より強くなっている実感もある。けど…」
戦兎「もし…もしだ。このボトルでも敵わなかった時、俺は…」
「心配するな」
内海「! スターク…」
スターク「今のお前はグリスと互角と言ってもいい。たとえ劣勢になっても、奴がボトルに対応する前に勝負を決めればいいんだよ」
戦兎「…あんたの口から出たことなんて、もう信用できるかよ」
スターク「…はっはっはっ!その信用できない男に、最初に泣きついてきたのは…一体どこの誰かなぁ?」
戦兎「っ!てめぇ…」
内海「…口が過ぎるぞスターク」
スターク「ま、そういうことだ。気楽にやれよ、心が病んだままじゃ、今の万丈みたいになっちまうぞ?」
戦兎「何…?」
戦兎「どういうことだ!あんた、また何かしたのかよ!」
スターク「…何も?俺はあいつになーんにも手出ししてねぇよ?」
戦兎「なら、なんで…」
スターク「それぐらい自分で考えろ。チャオ!」
戦兎「おい!待てよ!」
戦兎「ごめん内海さん!俺、あいつを…」
内海「ああ」
戦兎「くそ…!あのバカ…!」
内海「…大した性格の悪さだな、スターク」
クローズチャージ「ぐっ!?ちくしょう、まだまだ…!」
美空「また…もうやめなよ万丈!今度こそただじゃすまなくなっちゃうよ…」
クローズチャージ「これぐらいの痛みで負けるかよ…!俺は…あいつのために…」
「誰のためだって?」
「「!」」
美空「戦兎!」
クローズチャージ「…何しに来やがった」
戦兎「ん?そりゃあお前、バカみたいに熱血してるバカを止めに来たんだよバカ」
クローズチャージ「うるせーよ…」
やる気が一気に失せた。変身を解いてから興奮が収まってくると、痛みや疲れが俺の体にガツンと押し寄せてきた。
戦兎「お前が何しようが知らねーけど、寒くなってきたしそろそろ帰るぞ。皆に心配かけてんじゃねーよ、バカ」
万丈「…んだと?」
…心配かけるなだと?どの口が言ってやがる…
戦兎「バカは風邪引かないからいいけど、なんたってこのてーーんさい物理学者の俺は…」
万丈「ざけんな!」
万丈「その戦いから逃げたお前に、あれこれ言われる筋合いはねえ!」
戦兎「…!」
美空「万丈!!!」
万丈「…あっ」
嘘だろ俺。やっちまった。あいつが一番後悔してんのに、俺はまた…
万丈「…わりい、言い過ぎた」
こいつと、久しぶりに目が合った気がした。初めて会った時とは比べ物にならないほど、戦兎の顔はやつれていた。
本当に馬鹿だ。今、誰よりも傷ついて、誰よりも悩んでるのは、俺じゃない。こいつなんだ…
戦兎「…いや。そうか、そうだよな…うん」
戦兎「万丈、そして美空。お前らに話さないといけないことがある」
美空「私も…?」
戦兎「ああ。大切な話なんだ」
万丈「…」
戦兎「…」
万丈(信じらんねえ…)
あいつは、代表戦に出ると言った。
相手は強敵のグリス、ハザードトリガーを使わないで勝つなんて、いくらあいつでも無理だ。
ハザードトリガーなら…グリスとも互角にやれるだろうな。
だけど、ハザードトリガーを使えば暴走して、また青羽のように犠牲を出すかもしれねえ…けど、そうなったら…
そうなったら…誰が止めるんだ…?
もういい…考えるのは疲れた…俺は馬鹿だから…
………
万丈「…負けんなよ」
序盤は目にも止まらぬ連撃で、グリスを押していたビルド。そのまま押しきれればビルドの勝ちだったが…俺の悪い予感は当たっちまった。
《ハザードオン!》
万丈「! あいつ…」
スパークリングでもとうとう勝てないと悟ったのか、ついにハザードトリガーを使いやがった。
《アンコントロールスイッチ!ブラックハザード!ヤベーイ!》
万丈「…」
自我を失わずに勝つ、それが理想だけど…あいつにそんな余裕はなかった。
グリスに苦しめられているビルドを見るのは、決していい気分ではない。だが俺はそれでも、動くことはなかった。
紗羽「はぁ…ふぅ…はぁ…」
俺を見るその目は、何かを訴えかけていたようだった。
紗羽「…戦兎君が、ハザードトリガーを使った!」
やっぱりだ。俺にあいつを止めてほしいんだろ。
万丈「…俺にはどうしようもねぇよ」
暴走したあいつを、俺が止められるわけねーだろ…
グリスにすら勝てない俺が…
紗羽「…戦兎君が、死んでもいいの!?」
万丈「ーーーー!」
間に合え…間に合え!
紗羽『戦兎君…美空ちゃんに万が一の時の自爆スイッチを渡してたみたいなの。美空ちゃんにそんなもの…使わせるわけにはいかない!だからお願い万丈、戦兎君を死なせないで!』
紗羽『貴方しかいないの!戦兎君を止められるのは!』
そうだ…俺しかいねえ。
ごちゃごちゃ考える前に動けよ…
いつだってそうだ…
あいつの側にいてやれんのは…
俺しかいねえだろうが!
万丈「おおおおおおおおお!!」
ビルド「…」
美空「だめ…」
一海「くっ…」
ビルド「…フッ!」
美空「だめーーーー!戦兎ーーーー!」
ハザードフォームの容赦のない一撃。阻止できる者などいないと誰もが思っていた。
クローズチャージ「調子良さそうじゃねぇか…戦兎!」
美空「万丈…!」
ビルド「…」
一海「よせ…今のお前じゃ…」
クローズチャージ「うるせえ…やるしかねぇんだよ!」
うじうじ悩んでても仕方ねぇだろ俺!俺は馬鹿なんだから、やれることを一生懸命やるぐらいしかできねえ!そんでもって、絶対後悔しないようにすりゃいいんだよ!
クローズチャージ「目ぇ覚ませ!戦兎!!」
必殺の一発を戦兎にぶちこむ。
強力なハザードも、スクラッシュドライバーを制御できるようになり、なんとか止めることが出来た。
一海「あいつ…殻を破りやがった」
紗羽「…やったね」
美空「ありがとう…万丈」
良かった…
戦兎「っ、ここは…」
万丈「…勝ったんだ」
戦兎「…お前が止めてくれたのか」
万丈「…いや」
万丈「皆のおかげだ」
これで皆、何も失わないで済むんだな…
だけど…今度こそ…
俺の力で、守りたいモノが守れた。俺はそう信じてる。
香澄…俺、負けねえから。
だからもうちょっとだけ…
俺に力、貸してくれよな。
クローズドラゴン「♪♪」
戦兎の代表戦の特訓の時、万丈何してたんだろって思って書いた。昨日のss《仮面ライダービルド》万丈「香澄…!」シコシコ
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1520237965/の贖罪で書いた部分もあるけど…やっぱり無理しない方がいいですね。人間得手不得手がある。
オチが考えつかなくてまーた香澄よろしくENDになっちまった。万丈大好きだからね、仕方ないね。
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コメント一覧 (11)
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- 2018年03月07日 06:20
- マスター「いいよな、互いにぶつかりあって刺激しあって成長していくの。ここは俺もちょっとうるっときちゃったよ。これからも二人の成長のために俺も頑張るとしようウン」
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- 2018年03月07日 07:39
- スターク「実はパンドラボックスも、ルパンコレクションの1つなんだぜ」
ルパレン「そうか、じゃあいただくぜ!」
ライダー組「そうはさせるか!」
パトレン「待て怪盗!」
今年のコラボ回こんな流れになりそう
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- 2018年03月07日 07:44
- はやくチヒロとイユをベストマッチさせてネオシグマになるんだよ!
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- 2018年03月07日 08:21
- 戦兎ぉぉ!やめるるぉ!
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- 2018年03月07日 10:03
- お前らが米を書かないのは勝手だ
じゃあ代わりに誰が書くと思う?
万丈だ!
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- 2018年03月07日 11:25
- この焼き増しの感じはワンピースの総集編思い出したわ
この人の前のssどんなのかと思ったら作風違いすぎて草生えた
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- 2018年03月07日 16:44
- マスタークは早く○ねば良いのに
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- 2018年03月07日 18:01
- マスタークは良い性格してるからまだまだ頑張ってほしいわ。
そしてクローズ出番少なすぎ問題。クローズチャージへの移行早すぎんよー。
あと玄徳が思いの外帰ってくるの早くてビックリしたわ。作品内でどれくらい時間経過してるか分からんけど。
もうちょい終盤かと思ってた。
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- 2018年03月08日 06:44
- コメディリリーフすら生き残れない厳しい世界
そう考えると全作の神は偉大だった
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- 2018年03月09日 14:37
- 神はリセット含め100回以上死んでるんだよなぁ…頭おかしい(誉め言葉)
最近の潤いが始まる前の「これまでの仮面ライダービルドは!」パートくらいしかないのいやーきついっす
頼むからハッピーに終わってくれよ
チラシに書けカス