モバP「助けてスイーツファイブ! 」 南条光「アタシを呼んだか!」
業務に支障が出るほどではないが、なんだか小腹が空いてきた。
頂き物の羊羹があったな、いやいやここはスポンサー様提供のケーキを、なんて思案していると、くう。と、急かす腹の音。
いやいや待て待て、焦るんじゃない。俺は腹が減っているだけなんだ。
ああ、だがしかし、迷ってしまってとてもじゃないが決められない。
そうだ、こんな時に助けてくれるヒーローがいたはずだ!
いざ呼べその名を高らかに!
「助けてスイーツファイブ!」
なんて雰囲気を作って叫んでみる。
すると。
「アタシを読んだか!」
真後ろから声が響いた。
「うおおわあっ!?」
「うわあっ!? 何!?」
驚きに声を上げると、相手もつられて同じく驚く。
姿を改めると、スイーツファイブのリーダー、南条光だ。
「え、いや、ゴメン。まさか本当に来るとは思わなくって……と言うか、いた?」
「え? あ、うん。なんかプロデューサーが一人でブツブツ言いながら部屋中歩いてて、どうしたのかなー……って」
見られてーら。恥ずかしい。
「いや、本当にいるとは思わなかったんだけど、まあいいか。実は──」
かくかくしかじか
「事情はわかったよ…… 。そういう事ならスイーツファイブに任せて!」
ありがてえ、ありがてえ。
「じゃあ、ちょっと出撃要請するから」
そう言ってスマホを取り出す。
「ちょっと待っててね!」
そして、スイーツファイブの他の面々へだろう、電話をかけ始めた。
あ、この子が自分でやるんじゃないのね。
prrr──
もしもし、志保さん? あ、今スイーツファイブの……え、撮影のイメトレ? パフェの食べ歩き? ……そっかごめんなさい! 頑張ってね!
「槙原さんは忙しいって?」
「なあに、よくあるよくある! 次だ!」
prrr──
法子ちゃん? 光だけど、今大丈夫? あ、有香さん達とドーナツショップに並んでる? あ、ううん、全然! 大丈夫だよ、気にしないで! それじゃ!
「ドーナツは無し、と」
「想定内だ! ヒーローは一度や二度じゃくじけない!」
prrr──
かな子さん! 助けて! お腹を空かせた人が……え? いや、かな子さんじゃなくて……ダイエット中? 衣装が? ああ……が、頑張ってください!
「……ダンスレッスンだけじゃなく、ランニングも基礎メニューに加えるか」
「えっと……もうすぐだから! もうちょっとだけ待って!」
prrr──
愛梨さん! 今大丈夫ですか!? はい、プロデューサーがお腹を空かせてて……はい、スイーツファイブとして……え、イヤだ?
な、何で……アタシですか? いや、確かに練習はしてますけど……はい……はい、わかりました、頑張ります。
嫌な言葉が聞こえたが、気にしないことにしよう。
「どうだった?」
「他の人みんな忙しいみたいで……愛梨さんはわかんないんだけど」
どうにも歯切れが悪く、もじもじとしている。まあ製菓要員いないもんね、どうするんだろう。
十時さんについてはわかんないんだな? 本当だな? と確認する勇気はとても無く、続きを促す。
「だ、だから……アタシがホットケーキ作っても、いいかな? 食べてくれる?」
「えっ?」
あまりの可愛さに、思わず変な声が出る。
頬を赤らめ上目遣いでそんな言い方……ふう、致命傷ですんだぜ。
「だ、大丈夫……?」
落ち着け、俺はプロデューサー。プロデューサーはうろたえない。
「いや、何でもない。作ってくれるならありがたくいただくよ」
「そ、そう? じゃあ、ちょっと待っててね」
そう言い残し、調理場へ小走りで駆けてゆく。
いやあ、怖いね、クリティカル。
「お待たせーっ!」
「お邪魔しまーす」
30分ほどで、南条さんが戻ってきた。
お腹の空き具合は、もはや小腹ではなく中腹と言えるほどだ。
「お疲れ様。では早速…….おや?」
1人、増えている。
「何の用だね本田くん。私はこれからおやつタイムなのだが」
「ふっふっふ、さすがだね、プロデューサー。この世紀の美少女本田未央ちゃんを前に、よくそんなセリフが言えたものだね」
何やら意図を含んだ笑みをこちらに向ける。いや、本当に何しに来たんだろう。
「うっす! ぴかるんがホットケーキ作ろうとしてたんで、ハッパかけたっす!」
「アタシ一人でできるかなって思ってたんだけど、未央さんがアドバイスしてくれたんだよ」
あ、そうなんだ。ありがとうございます。
「まあ、ほんとにちょっとアドバイスしただけだけどね。手は出してないから、純度百パーセントぴかるんのホットケーキだよ!」
「でも、おかげでうまく焼けたんだ! ありがとう、未央さん!」
「なーに、いいって事よ! お礼に今度、私にもホットケーキ食べさせてね!」
「うん!」
勝手に盛り上がる二人を見て、相性いいなーこの子ら。今度ユニットでも……なんて考えていると、クルリとこちらに向き直る。
「よーうし、さあ行けぴかるん! プロデューサーにおみまいしてやるのだ!」
「ああ! 行くぞ、アタシの必殺ホットケーキを喰らえ!」
そう言って、焼き立てのブツをこちらへ突き付けてくる。
「いただきまーす」
見た目は均一なきつね色をしており、中までムラなく火が通っているのがわかる。
その上に乗っている溶けかけのバターと、しっとりと染み込んでいるメイプルシロップの美しさたるや。
皿を持った時の重量感も良く、しっかり食べ応えがありそうだ。
バニラビーンスの甘い香りを楽しみつつ、フォークを立てる。サクリ、と音がした。
一口程度のサイズに切り分け、バターの欠片を乗せ、口に運ぶ。
瞬間、口の中で感動が沸き立った。
表面はサックリ、しかし中はふんわり。ほのかなバターの塩みが、メイプルシロップの甘さを引き立てる。
これは、すばらしいものだ。
「うーまーいーぞー!」
思わず立ち上がり叫んでしまう。
ああ、本当だとも、南条さん! 君のホットケーキは最高だ!
「やったー!」
そう言って、嬉しそうに跳ね回る南条さん。見ていてこちらも嬉しくなる。
「そんなに美味しいの? どれ、私も一口……」
「触るなちゃんみお、これは俺のだ」
ホットケーキに伸びた手を、ピシャリと諫める。
「えー、一口くらいいいじゃん、ケチ!」
「いいわけないだろ、これは俺のために作ってくれたホットケーキだぞ!」
「ちぇー。ぴかるん、今度私のも作ってよね、絶対」
「うん、約束だ!」
ゆーびきーりげーんまーんと小指を絡めて歌い始めた。仲いいねえ、君ら。
「よし、約束! じゃあまたねー!」
指切りを済ませると、それだけ言って、もと来た廊下を走っていった。
本当にこれだけのために来てくれたのか。
「美味しいホットケーキ焼いてあげなよ、南条さん」
「うん、頑張る! お母さんと特訓だ!」
「よし、その意気だ! また俺にも食べさせてね!」
「ああ!」
こうして世界は救われた!
ありがとうスイーツファイブ!
僕らのヒーロー、スイーツファイブ!
本田さんが来てくれたのはダイス神のお導きです
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「ランダム」カテゴリのおすすめ
コメント一覧 (18)
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- 2018年03月05日 00:57
- プレミアム感出してたホットケーキミックスがあったけど、最近はまったく見掛けなくなったな……
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- 2018年03月05日 00:59
- 柚を生贄に捧げる!
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- 2018年03月05日 01:02
- 音葉さん謹製のイチゴパスタならあんしんだな!いい人選だぞ橘ァ!!
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- 2018年03月05日 01:04
- 愛梨はなんで断ったんだ? 空気読んだだけ?
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- 2018年03月05日 01:16
- 可愛いなしかし可愛いな光ゥ!
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- 2018年03月05日 01:42
- ぴかるんカワイ杉大問題
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- 2018年03月05日 02:35
- ※5
空気読んだ
初代シンデレラガールは気遣い出来る娘
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- 2018年03月05日 03:05
- ※5
会いたいとき以外にアップルパイ焼いちゃうと制約で大変なことになる
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- 2018年03月05日 05:41
- 控えろスイーツファイブ。
お前如きが橘ありすに勝てると思うな
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- 2018年03月05日 07:25
- ※5
「イヤだ」が無ければ気遣いでよかったけど単純に嫌われてるだけやろなぁ
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- 2018年03月05日 12:41
- 昔読んだディフィカルトファイブを思い出した
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- 2018年03月05日 14:30
- ※11
光メインのssで嫌ってるような発言は書かないだろうから普通に連絡いってたか気遣いでしょ
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- 2018年03月05日 16:27
- ※4
ケーキもまともに切らない音葉のか…
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- 2018年03月05日 17:06
- ※5、8、9、13
いや、ただ単に脱いじゃってるからでしょ(光がPに手作りお菓子を食べさせてあげようというお姉さん心ですよ!)
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- 2018年03月05日 17:40
- 新規SRはよ
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- 2018年03月05日 19:45
- スイーツファイブ言うても半分は食べ専じゃないか
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- 2018年03月05日 19:56
- スイーツファイブには菜帆入れるべきだと常々思ってる
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