少年エルフ「人間の娘を育てたら魔王を探しにいくことになりました」【後半】
関連記事:少年エルフ「人間の娘を育てたら魔王を探しにいくことになりました」【前半】少年エルフ「人間の娘を育てたら魔王を探しにいくことになりました」【後半】
女騎士と娘友が霧の中を歩いている。
女騎士「まったく王女は勝手にこんなところまで……」
娘友「娘とエルフさんが一緒だけど……早く追いつかなくっちゃね……」
女騎士「そうだな……ん? 行きどまりか?」
道が大きな岩のようなもので塞がれている。
娘友「道を間違えちゃった?」
女騎士「しかし一本道だったはず?」
ゴゴッ
娘友「これ動くわよ!」
女騎士「魔物かっ! だが何がこようとも……」
ワシャワシャ
無数の節足がうごめいている。
娘友「ヒィッ!!」
女騎士「まさか!?」
巨大フナムシが現れた!
娘友「イヤ――ゴキブリ―っ!!」
娘友は逃げ出した。
女騎士「まてまてまて反則だぁああああああ!!」
女騎士は逃げ出した。
ダダダ……
巨大フナムシ「?」
○海辺の洞窟
少年エルフ「う……ん」
少年エルフが目を覚ます。
魔法勇者「おう やっと起きたか」
少年エルフ「あ……えっと魔法勇者さん」
魔法勇者「起きれるか? 俺たちはこいつに助けられたんだ」
魔法勇者は大きなホタテ貝を指さす。
少年エルフ「貝?」
魔法勇者「驚くなよ」
ホタテ貝が口を開くと人間の顔が現れた。
少年エルフ「うわあああ!?」
ホタテ男「やはり驚かれましたか」
ズズズズ
少年エルフ「えええええええっ!?」
ホタテ男は砂の中から体も引っ張り出して全身を現した。人間の体に貝の頭、顔は貝の中である。
魔法勇者「くっくっく まぁ普通そうなるよな」
少年エルフ「あのあの……あなたは?」
ホタテ男「東の町の者です…… 私は貝にされました」
ホタテ男「あの灯台守はもとは魔法国地方の博士だったそうです」
少年エルフ「そうなんだ」
魔法勇者「そこそこ有名だったぞ 俺も名前だけは知ってたからな」
少年エルフ「へぇ…… どうしてそんな人がこの町に?」
ホタテ男「わかりませんが この海が気に入ったようでそれで灯台守をやっていたそうです」
魔法勇者「こんな所気に居るのか? 変人だな」
ホタテ男「たしかに人嫌いで変わった人でした」
少年エルフ「あの……あなたは灯台守の知り合いなんですか?」
ホタテ男「私は月に数回 食料などを運んでました……先月までですが」
魔法勇者「何があったんだ?」
ホタテ男「あの日は灯台の明かりが消え霧が立ちこめてました 霧の中で何かに襲われて気が付くとこんな体にされました」
少年エルフ「ひどい……」
ホタテ男「灯台守は私を見ると失敗作といって 浜に捨てました」
魔法勇者「失敗ねぇ 元々どうしたかったのも不明だな……ヒトとホタテってなぁ」
ホタテ男「私はこんな体では町に戻れません どうか灯台守を倒してもとに戻してください」
少年エルフ「でもそんなこと……」
魔法勇者「迷ってる時間もないぞ 娘……とその他諸々も捕まってるんだ」
少年エルフ「そうだ娘!? 助けにいかなきゃ!」
魔法勇者「そうだな でも簡単にはいけなくてな」
少年エルフ「行けないってどこ? どこに?」
ホタテ男「船です 彼の実験場です」
少年エルフ「船? だったらボートか泳いでいけば」
魔法勇者「そうは言うがな……」
娘「ん……」
孫僧侶「起きたー? よかったー」
娘「貴方無事だったの ……王女は?」
孫僧侶「その……ここには二人だけでした 姫ちゃん無事かな」
娘「王女…… それよりこの部屋は?」
孫僧侶「さあ よくわかりません船の中みたいなのですが何か変で」
孫僧侶は床を指さす。
娘「なにこれ照明?」
孫僧侶「天井にはテーブルがぶら下がってます なんで逆さまなんでしょうね~?」
娘「窓はないの?」
孫僧侶「そこですよ 夜なので真っ暗で何処かわかりません」
娘は船室の窓を覗き込む。
娘「……そういうこと」
孫僧侶「どういうことです?」
娘「ここは沈没船よ」
孫僧侶「ええ!?」
娘が指さす窓の向こうに魚が泳いでいる。
娘達は沈没船に閉じ込められていた。
神官「しかし沈没船を実験室にしてるとは……」
タコ博士「ここは静かでよい この体になってからは行き来に不自由はせんからな」ニョロニョロ
神官「それにしても……理想のボディって彼女のことでしたか」
実験室の奥には第七王女が寝かされている。
タコ博士「何だ? おかしいか?」
神官「いえ…… でも他にももっとこうボンキュッボーンな子もいたわけじゃないですかぁ」
タコ博士「まったく お前もか……無駄な凹凸なぞ水中では邪魔でしかないわ 見よ! あの無駄のない曲線をイルカのような美しさだろう」
神官「ソウデスネー」
第七王女「ヌフフ(寝言)」
タコ博士「……」
神官「ヌフフって言いましたよ今」
タコ博士「なぁに些細なことだ コレを見よ 分析結果は”ワガママ”と”無邪気”が高い」
神官「デスヨネー」
タコ博士「身体面では”かしこさ”や”器用さ”がかなりの数値だ 私のムスメに実にふさわしい」
神官「あ 意外です…… ってムスメ? ムスメにするつもりですか!?」
タコ博士「そうだ だからこそこの数日 彼女につりあう美触手を選別しておるのではないか」
神官「美……触手……」
ガラガラ
右手がタコ足になったタコ女がガラスケースに入った巨大タコを運んできた。
タコ女A「先ほど勧誘しました」
巨大タコ「……」ニュルニュル
タコ博士「むぅ……太りすぎだバカモンっ 次!」
ガラガラガラ
手足に吸盤がついたタコ女が別のケースを運んでくる。
タコ女B「美脚自慢の帰国子女です」
巨大イカ「……」ペタペタ
タコ博士「長けりゃいいってもんじゃないっ 次っ!」
上半身がタコ……というより巨大タコから生足がぶら下がっているタコ女が別のケースを運んできた。
ガラガラガラガラ
タコ女C「……」ニュル
巨大アンモナイト「……」ウゾウゾ
タコ博士「……よく見つけたな しかし残念だが私が求めるのとは違うのだ わかるか?」
タコ女C「?」
神官「……(タコになっても凝り性は変わりませんね おかげで王女ちゃんがタコ足になるのが免れてますが)」
タコ博士「いいかお前達 私が求めるのはなぁ……」ウダウダ
神官「……さてさて どうしますかね」
○
孫僧侶「やっぱり鍵がかかってますね」
娘「そうね 王女ならすぐ開けれるのだけど……」
孫僧侶「魔法でドッカーンと開けれませんか? ウチの坊ちゃんはよくやってますけど」
娘「出来なくはないけど……ここは海の底よ 外壁まで壊しちゃったら逃げるどころじゃないわ」
タコ女A「おまえらもう起きたのか」
孫僧侶「うわぁ!? 誰?」
タコ女たちが扉の窓から覗き込んでいる。
タコ女A「私たちは博士に仕えるタコ女よ」ニュル
孫僧侶「うわぁ ホントだタコっぽい」
娘「ふぅん その博士とかいうのがあの巨大イカや生物の元凶なのね」
タコ女B「元凶だと? ふざけた口をきくなよニンゲン あの方は新たなる世界をつくる方なのだ」
娘「あらそう そんなことより王女はどうしたの? あの子も捕まえているんでしょ」
タコ女A「王女? あぁ博士のムスメ候補か……あいつのせいでアタシたちがどれほど苦労してるか……」
タコ女B「ホントにもう タコなりイカなり適当にしてって感じよね」
娘「あの子に何かするつもりね」
タコ女A「心配するなお前たちもいずれ適当な実験に使われるはずだ」ふっふっふ
タコ女B「そしたらうんとコキ使いましょう」うっふっふ
タコ女の二人は笑いながら歩いていった。
孫僧侶「感じ悪ぅ……って 私達もあんな風にされちゃうのでしょうか」
娘「出来る訳ないでしょそんなの」
孫僧侶「そっか~ それにしてもお腹すいたなぁ」
娘「そうね……(パパ 心配してるだろうな)」
ベチ ピチピチピチ
部屋の中に魚が放り込まれた。
孫僧侶「うわっ 何?」
娘「食事らしいわ…… 彼女が用意してくれたようね」
タコ女C「……」うねうね
孫僧侶「うわー ほとんどタコだ」
タコ女C「……」ニュルニュルニュル
タコ女Cは触手で歩いていく。
娘「あなた…… その ありがとう」
タコ女C「……」ニュル
タコ女Cは足を一本ふると角を曲がって姿をけした。
孫僧侶「それにしても生かぁ……」
娘「うーん だったら”帯電”」バリバリバリ
娘の手にもった魚が電撃で焼けていく。
魚「」シュー
娘「あつつ 上手くいったわ」
孫僧侶「すごい これもこれも」
娘「ほらこっちを先にたべて 熱いわよ」
孫僧侶「わーい いただきます」
娘は焼けた魚を孫僧侶に渡す。
ぱく もぐもぐ
孫僧侶「……うーん 淡泊な味」
娘「焼いただけだしね ガマンしましょ」
ザザーン
少年エルフ「お爺さんひとりで偵察とか大丈夫かな?」
魔法勇者「大丈夫だ爺はベテランだしな 死んでも死なない」
少年エルフ「たしかに大きなお爺さんだったけど」
魔法勇者「……なぁ お前聞いてもいいか?」
少年エルフ「なに?」
魔法勇者「お前以外のエルフ族に会ったことは? 魔法使いのエルフ族に会ったことはないか?」
少年エルフ「え? その……」
魔法勇者「教えてくれ エルフ族が行きそうな場所は? 人間には教えれないか? どこでもいい頼む」
少年エルフ「あの……あのゴメンナサイ 僕は人里育ちで……」
少年エルフは自身の経歴を魔法勇者に話した。
少年エルフ「だからお母さんしか知らなくて……お母さんも居なくなって……僕も他のエルフ族を探してて……」ぐすぐす
魔法勇者「……そうかスマン ハーフエルフだったのか」
少年エルフ「ゴメンなさい 役に立てなくて」
魔法勇者「いや いいんだ」
少年エルフ「魔法勇者さんはどうしてエルフ族を探してるの?」
魔法勇者「……そうだな」
○沈没船・娘達が閉じ込められている部屋
孫僧侶「坊ちゃんの一族はエルフ族とゆかりがあって それで坊ちゃんの師匠もエルフ族だったんですよ」
娘「そうだったのね」
孫僧侶「それで何があったのかわかりませんが出て行ったお師匠さんを坊ちゃんは探してるんですよ…… どうせ坊ちゃんに愛想を尽かせて出てったのにね」
娘「……(パパ以外のエルフ族がやっぱり居るんだ)」ドキドキ
孫僧侶「エルフ族が人間から好かれたって向こうからしたら大木がセミに好かれてるようなものでしょうね」
娘「……そうね」
孫僧侶「それで娘さんも他のエルフ族を探してるんですか?」
娘「ええ 近くのエルフ族の里には誰もいなかったし エルフの為にも他のエルフ族を見つけないと……」
孫僧侶「そうですねエルフ族にはエルフ族ですよね」
少年エルフ「そうだったんだ」
魔法勇者「まったく自分勝手なオンナだったが一応師匠だしな」
少年エルフ「好きなの?」
魔法勇者「好きィ!? バカいえそうじゃない ただ……尊敬はしてる うん尊敬だ」カアア
少年エルフ「尊敬かぁ(いいなぁ……僕も娘に尊敬されるくらいにならなくちゃ)」
魔法勇者「とにかく お前はエルフ族だ俺よりも師匠と会う確率が高い! 会ったら教えてくれ」
少年エルフ「え? うんわかった」
魔法勇者「そうかよし約束だぞ アイツは片耳が切れていてな……」
\坊ー/
魔法勇者「バカやろう 偵察が大声で戻ってくるな」
少年エルフ「……(お母さんと僕以外のエルフ族の人)」ドキドキ
爺僧侶「偵察してまいりました 貝人殿のいうように灯台は手薄でした」
魔法王子「よし いくぞ」
少年エルフ「うん」
――ホタテ男「沈没船には泳いでいく以外にもひとつだけ方法があります」
灯台に突入する少年エルフ達
ダダダダダダ
魔法王子「うおおおお」
少年エルフ「うわああああ」
――ホタテ男「実験には膨大な魔力が必要とされますが」
イカ男達「!!??」
魔法王子「”爆裂”」
ドドォン
――ホタテ男「その供給源に灯台の魔力を利用してます」
魔法王子「よし登れっ!」
ダダダダダ
少年エルフ「えびぃ!?」
エビ男「ッ!」ブンブン
エビ男は襲い掛かってきた。
――ホタテ男「灯台を元のように灯せば供給路内を通れるようになるはず」
ガキィン
少年エルフ「お爺さん!?」
爺僧侶「ここは任せて坊たちは上へ……孫を頼みます」
魔法勇者「任せろ! 行くぞ」
――ホタテ男「ただし 頂上がどうなってるかはたどり着かないとわかりません」
バァン
魔法勇者「ぜぇぜぇ ここか!」
ブワッ
少年エルフ「うわ!? 何?」
魔法勇者が照明室への扉を開けたとたん二人は濃霧に包まれた!
――???『エルフ』
少年エルフ「だれ? 魔法勇者さん?」
――母エルフ「あらエルフ どうしたのこんな所で」
少年エルフ「お母さん!?」
母エルフ「どうしてそんなに驚くの? ほら家に帰りましょう」
少年エルフ「え? うん(あれ? なんだっけ何か忘れたような)」
母エルフは少年エルフの手とって歩き出す。
母エルフ「ほらお腹は空いてない? 晩御飯は何が食べたい?」
少年エルフ「あのねお母さん……なんでもいいや早く帰ろう」
母エルフ「フフ……」
少年エルフ「それでね いっぱいあちこちに行ったんだよ娘と一緒に……」ピタ
母エルフ「どうしたの?」
少年エルフ「娘」
母エルフ「エルフ?」
少年エルフ「そうだ娘 娘を助けなきゃ」
母エルフ「どうしたの? こっちにいらっしゃい」
少年エルフ「ごめんなさいお母さん 僕行かなきゃ」
母エルフ「何処へいくの?」
少年エルフ「僕はパパだから! 娘を助けにいかなきゃ!」
母エルフ「フフ……それで」
少年エルフ「”旋風”」ビュオオ
―― それでいいのよ
ビュオオオオオオオオオオオッ
風が霧を吹き散らした。
少年エルフ「ううう……ゴメンさないお母さん」
魔法勇者「まて行くな!? ハッ!?」
爺僧侶「今のは幻!?」
巨大蛤「バファ」
照明室の中心に巨大な蛤が霧を断続的に吐き出している。
少年エルフ「この貝が霧を……このぉ! ”竜巻”」
グオオオオオオオオオオオオオッ!!
巨大蛤「」
ゴゴォン ボォン
竜巻が発生して照明室の天蓋が吹き飛ぶ。
爺僧侶「うおおお なんちゅう魔力じゃ」
グオオオオオオオオオオオオオッ!!
巨大蛤「ボフっ」グラッ
巨大蛤が竜巻に巻き上げられて宙に浮かぶ。
魔法勇者「まるで嵐だ! ……流石エルフ族だな」
ブォオン ザブーン
巨大蛤は海へ落ちて行った。
少年エルフ「はぁはぁ……」
魔法勇者「よし 灯台を灯すぞ」
兵士A「凄い風だったな? 何があったんだ」
兵士B「今ので霧が晴れました 勇者丸も修復できてます 行きますか?」
兵士長「出航したいが灯りがなければ……」
女騎士「なんとかなりませんか 王女に何かあってからでは遅いですよ」
兵士長「しかし……」
兵士C「見てください灯りが」
灯台に明かりが灯った。
\おおー/
娘友「これで出航できるわね」
兵士長「ううむ仕方がない……灯台調査に出航する ほかに同行希望者はおるか?」
\いくぜー/ \おれもおれも/
町で待機していた勇者チームが我先に名乗りでる。
兵士長「よーしお前達とお前達も……」
兵士長が勇者チームを選び乗船させていく。
女騎士「ずいぶんと活気がいいな」
町長「なにせ勇者祭ができてませんでしたからな この出航をその代わりにしたいのでしょう」
乗船する勇者チームはそれぞれ大きな旗を抱えて乗り込んでくる。
娘友「そうみたいね 皆お祭り好きねぇ」
男「おお女騎士か? 王女はどうした?」
男が現れた。
女騎士「男!? もう追いついたのか 王女はまだ見つかってない船で探しにいくところだ」
男「そうか わかった 兵士長俺も乗っていいか?」
兵士長「おお!? 男殿ではないですか 是非同行してください」
娘友「あら男さんは顔が広いのね」
女騎士「あいつは一応王国一番だし目立つからな……ったく」
兵士長「よーし……(これだけいれば安心だ)出航!」
\うおおおお/
王国所有の船『勇者丸』が無数の旗をなびかせて出航した、乗船できなかったものも各々の小舟で後を追いかけていく。
男「なんだ? 祭か?」
魔法勇者「よーし これで灯台は大丈夫だな」
爺僧侶「坊 エルフ殿 供給路らしきものを見つけました」
少年エルフ「ってこれなに? パイプ?」
灯台の頂上から海中へ大きなパイプのような物が垂れ下がっている。
魔法勇者「なるほど進化融合させた生体パーツを伝導路にしていたのかこれなら大量生産できるな」
少年エルフ「でもこれなに? 貝?イソギンチャク?」
爺僧侶「ホヤとかそういう生物のようですな……」
少年エルフ「……ここを通るの?」
魔法勇者「……そうなるな よし爺行け」
爺僧侶「……いやいや 坊からどうぞ」
\いやいやお前が/ \いえいえ坊から先に/
魔法勇者と爺僧侶がパイプの前でもみあう。
少年エルフ「そんなことしてる場合じゃ」
魔法勇者「よーし じゃあ年の順だ若い方から……俺は18だ エルフは」
少年エルフ「え? 61」
爺僧侶「おや 同い年ですな」
魔法勇者「しまったぁ!? エルフ族なんだこいつ」
爺僧侶「決まりですな そりゃ」ドン
魔法勇者「あ お前 うわあああああ」
魔法勇者はパイプの中を滑り落ちていった。
\あぁぁぁ/
少年エルフ「大丈夫かな」
爺僧侶「これしき大丈夫です しかし小さなエルフ殿から先にいかせようとするとは……まったく情けない」
孫僧侶「すぴーすぴー」
娘「……(エルフ……他のエルフ族……)そんなことよりまず脱出を」ボソ
ぼぅ
扉の向こうが少し明るくなる。
娘「……(また誰か来た? タコ女? いえ……少女?)」
扉の窓から少女が顔をのぞかせる。
ガチャ ギィイ
扉が開いた。
娘「な!?」
少女?「……」
少女は青白い光をまとって立っている。
娘「……(普通じゃない というより生きてないわね)」
少女は幽霊だった。
幽霊少女「……」ぱくぱく
何かを言おうとするが声は聞こえない。
孫僧侶「ん? うわっなんですかあの子 お化け!?」
娘「落ち着いて 危害を加える気はないみたい」
幽霊少女「……」スッ
孫僧侶「消えた……扉もあいてる やったこれで逃げれますよ」
娘「逃げる前にやることがあるわ」
○
タコ博士「結局造ったほうが早かったか」
神官「そうなんですね」
水槽に大きなタコが泳いでいる。
タコ博士「こいつに私への忠誠を入力したら合体実験だな」
タコ博士は水槽に付属しているパネルを操作している。
神官「精神操作も出来るのですか?」
タコ博士「おおざっぱだかな」
神官「そんなことが出来るなら王女ちゃんに直にした方が早くないですか?」
タコ博士「人間にはまだ出来ん タコくらいならばすぐに済む」
神官「でもタコが忠誠心があるかどうかなんてわかります?」
タコ博士「実績がある 先ほどのタコ女どもはタコを人型に進化させたものだが…… どれも忠実であろう」
神官「え゛っ!? あれタコだけなんですか?」
タコ博士「そうだ 進化誘導因子に人間の血を使っておるがベースはタコだ タコだけでは人型にはできなかったからな」
神官「はぁ……(本当に人間嫌いだな)」
タコ博士「よし……あとは待つだけだな」
神官「あの……毎回こんなに手間がかかるのですか?」
タコ博士「いや 合体させるだけならコレで直ぐだ」
タコ博士は怪しく光る結晶を取り出した。
神官「それは?」
タコ博士「進化合体媒体だ 見せよう」パキッ
タコ博士は結晶を二つに折った。
タコ博士「適当に実験生物を……そうだなこのサメでいいか」
ドスッ
ネコザメ「!?」
タコ博士は手近な水槽のネコザメに結晶を刺した。
タコ博士「ふむ 多重合体も可能か試すか……」
タコ女C「?」
ドスッ
タコ博士はタコ女に残りの結晶を差し込んだ。
タコ女C「!?」
ガシャン バシュウン
タコ女とサメが光に包まれる。
神官「な!?」
タコ博士「ふむ 問題は無いようだな」
光が収まるとサメの頭をもったタコ女が現れた。
サメタコ女「?」ニュル
タコ博士「ふむ また頭か……この方法だと簡便だがどう合体するのか不確定なのだ よし行っていいぞ」
サメタコ女「」ニュルニュル
サメタコ女は出て行った。
神官「はー 驚異の生命体になりましたね」
タコ博士「サメ頭ならもう少し賢くなるだろう さて進捗は……」
ビーッ ビーッ!!
神官「なんです!?」
タコ博士「む? 機関室の出力が……故障か? 肝心な時に」
タコ女A「出力がでてないわよ なにしてんの」
捕虜「ひぃ わかりません何かが魔導機関に詰まったようで」
魔導機関「おわー どこだここは!?」バタバタ
タコ女A「しゃべった……というより誰よ中でふざけているのは」
魔導機関「”爆裂”」
ドドォン
魔導機関が内側から爆破された!
魔法勇者「酷い目にあった……爺のやつ」
タコ女A「な!? 侵入者!侵入者よ!」
タコ女は逃げ出した。
捕虜「おお貴方は一体」
魔法勇者「む? 普通の人間だな捕まっているのか?」
捕虜「はい 我々は船乗りやただの漁師ですイカに捕まってここで働かされてました」
するする
爺僧侶「おや……にぎやかですな」
少年エルフ「ケガなかった?」
爺僧侶と少年エルフがロープで降りてきた。
魔法勇者「なんだそれは!? そんなものがあるなら早く言え!」
爺僧侶「いやいや エルフ殿が見つけてくれたのですよ 坊はせっかちでいけませんな」
魔法ゆうしゃ「いやお前のせいだよ!」
少年エルフ「とりあえず皆さんはこのロープを登ってください 灯台に出れます」
\たすかった/ \ありがたい/
捕虜になっていた者がロープを順番に登っていく。
魔法勇者「さてここはこれでいいが……」
少年エルフ「娘たちを探さないと」
爺僧侶「その前にお客ですぞ」
通路からイカ男達が現れた。
孫僧侶「誰もいませんね」
娘「さっきの爆発音といい何かあったようね」
スゥ
幽霊少女「……」
幽霊少女が現れある部屋を指し示す。
孫僧侶「うわ また出た」
娘「何かを教えたいようね……この部屋は?」
○沈没船・タコ博士の部屋
孫僧侶「うわ汚い 坊ちゃんの部屋みたい」
娘「……研究者の部屋のようね 研究日誌があるわ」
■月■日
あのオトコが持ってきたサンプルからようやく合体の技術も抽出、再現することに成功。既に下等生物の合体には成功した。
■月■日
どれもこれも巨大化傾向が多い。興味深い対象として蛤は自ら特殊な霧を吐き出し地上での活動も可能にした。 この環境では他の水生生物も活動できるようだ。
■月■日
進めもあり自身にタコを合成、手の数が増え非常に便利である。 また水中でも活動が行えるため献体集め、観察が容易になる。
■月■日
献体が手に入ったため実験を行う。近辺で手に入る下等生物で限界点を試した結果、貝まで成功……おそらくそれ以下でも可能性があるが必要性がないため計画はしない。
■月■日
沈没した客船を発見した。 船内を調査したが妻やムスメは見つかる事はなかった、タコばかりだ。 彼女たちの旅行を許したばかりに……このような事が書くべきではない
■日
記憶……いや感情が安定しない。 融合したタコにも精神があったのだろうか? 内なる声が日に日に……
■
私は新たなる種である。 そして父である、美しい種族と導かなくては……もちろんムスメも美しくなければ
○
孫僧侶「……かなりヤバい人みたいですね」
娘「そのようね…… つまりお父さんを止めて欲しいのね」
幽霊少女「」コクン
スゥ
幽霊少女は消える寸前に微かにうなづいた。
第七王女「なんじゃ? ここは」
少年エルフ「よかった王女が起きたよ」
魔法勇者「ようし 後は娘とウチのバカだけだな」
タコ博士「おのれ!」
タコ女B「博士下がって」
魔法勇者「”凍結波”」ヒュオオオ
イカ男達「!?」ピキーン
タコ博士をかばったイカ男が氷漬けになる。
魔法勇者「お前も頭を冷やすかい?」
タコ博士「うぬぬ」
第七王女「うむ きりきり白状するのじゃ そうすれば情状酌量の余地はあるぞ」
魔法勇者「お前……(状況わかってるのか?)」
タコ博士「ぬぬ…… ふっ私はそもそも争いは好まない」
少年エルフ「じゃあ 教えてくれるの?」
タコ博士「しかし計画はやり遂げる どのような手段でもな 巨大イカよ!」
ドドォン
巨大イカの触手が壁を突き破った。
第七王女「なんじゃ!?」
タコ博士「仕切り直しだな なにもかも」
巨大イカの触手が引き抜かれた穴から大量の海水が流れ込んできた。
タコ博士たちは海中へ逃げ込んだ。
魔法勇者「野郎! ”氷牙”」シュキン
魔法勇者の魔法、しかし海中には届かない。
少年エルフ「うわわ どうしよう水が……この部屋沈んじゃう」
第七王女「出口はどこじゃ?」
魔法勇者「あそこだ とりあえず逃げるぞ」
少年エルフたちはせり上がってくる水から逃げる。
少年エルフ達は水から逃れるために走る。
ダダダダ
魔法勇者「あのタコ野郎信じらんねぇ」
爺僧侶「水中では勝ち目はありませんぞ」
神官「まったくですね」
魔法勇者「ってお前だれだ!?」
少年エルフ「神官さん!? よかった無事だったんだ」
神官「はいなんとか」
第七王女「とにかく脱出じゃ」
ザブザブザブ
バタン
少年エルフ「ああ!? 脱出路が」
イカ男達「!?」
イカ男達が先回りしていた。
魔法勇者「どけ ゲソ野郎 ”爆裂”」
少年エルフ「まって」
ドドォン
イカ男達「ッ!!」
イカ男達を倒した。
魔法勇者「しゃあ!」
ドドドドド
脱出路が破れて海水が流れこんできた。
魔法勇者「あ」
神官「あ~らら やっちゃいましたね」
爺僧侶「後先考えずに……まったく情けない」
魔法勇者「うっせぇ! とりあえずに逃げるぞ」
少年エルフ「でも後ろは沈んじゃったよ」
通ってきた通路は既に水没している。
少年エルフ「本当!? 行こう」
爺僧侶「しかし水中で襲われたら……」
神官「ためらっているほど不利になりますよ」
少年エルフ「僕が先に行くよ……えい」ドボン
第七王女「うむ わらわもじゃ」ドボン
魔法勇者「えーいくそっ いったらぁ」ドボン
少年エルフ達は海中へ飛び込んだ。
少年エルフ「……」すいすい
魔法勇者「……」バタバタ
イカ男「」ニュル―ン
泳いでいる少年エルフ達にイカ男が襲いかかってきた。
魔法勇者「……ガハッ(マズイ 魔法が唱えられん)」
イカ男「……」ニュルニュル
イカ男は触手を伸ばして少年エルフと魔法勇者を拘束する。
少年エルフ「……(この放して)」ポコポコ
魔法勇者「……(ほどけん 溺れさせるつもりか)」バタバタ
シュッ
スパン スパパン
イカ男「!?」ニュ
イカ男は触手が切られ逃げ出した。
魔法勇者「ぶはぁ!」
少年エルフ「げほげほ ありがとう王女」
第七王女「あれしきで手も足もでなくなるとは魔法勇者とやらと大した事ないのう」
爺僧侶「まったくですなあれぐらい引きちぎれる位でなければ……情けない」
魔法勇者「お前と一緒にするな脳筋!」
神官「それにしてもそのメスはどこで?」
第七王女「このナイフか? さっきの部屋で拾ったのじゃよく切れるのう」
神官「……(手癖が悪いというか抜け目がないというか)」
魔法勇者「よしここから反撃する方法を……」
ドドォン
巨大イカの触手が壁を突き破って襲いかかってきた!
少年エルフ「うわぁ!?」
第七王女「エルフっ!」
触手が少年エルフを掴みあげた。
ドドォン ドドォン
別の触手が壁を破って襲い掛かってきた!
魔法勇者「”氷牙” くそ一気にきやがった」
爺僧侶「こしゃくな」
第七王女「うっとうしいのう」
それぞれが触手と格闘しだした。
神官「うわぁ どうします」
○
シャキン
少年エルフ「うわっ!?」
少年エルフを掴んでいた触手が切られた。
娘「エルフ 大丈夫」
少年エルフ「娘!?」
娘「パパを汚い手で触るな!! ”電撃”」
バリバリバリバリ
シュッ
巨大イカの触手が引っ込んだ。
娘「あぁよかったエルフ ケガない?大丈夫?何もされてない?」ペタペタペタ むぎゅうう
娘は少年エルフの身体を調べてから抱きしめる。
少年エルフ「ちょっと それはこっちのセリフ……んぷ 放して大丈夫だから」カアア
魔法勇者「……えっと どっちが保護者だっけ?」
第七王女「どっちもどっちもじゃな」
爺僧侶「おお孫よ無事だったか」
孫僧侶「お爺ちゃん 坊ちゃんも来てくれたんですね」
魔法勇者「まぁ一応な……」
少年エルフ「あれ…… なんだか音が」
ドドドドドド
孫僧侶「もしかしてこれって」
海水が無数の穴から流れ込んできた。
少年エルフ「うわああああ」
魔法勇者「またかあああ」
タコ博士「ふうむ 巨大イカでも手を焼くか……」
タコ女B「全員集まりました 仕掛けますか?」
タコ博士「包囲だけにしろ 奴らが弱るまで待つのだ」
タコ女A「なるほど…… どうせ逃げれませんしね」あっはっは
タコ博士「そういうことだ 小一時間もすれば空気が…… なんだ?」
サメタコ女「……ッ」ニュルニュル
タコ女A「うわっキモ!? 今度はサメ」
タコ女B「相変わらず何言ってるのかわからないんだけど?」
サメタコ女「……」ニュルニュル
タコ博士「?」
孫僧侶「どーしましょうこの状況」
少年エルフ達は水没を免れた一角に集まっている。
魔法勇者「攻撃は無くなったが……水位が上がるのが止まらねぇな」
少年エルフ「……どうしよう」
神官「困りましたねぇ」
魔法勇者「お前あのタコ野郎と知り合いならなんとか言ってこいよ」
神官「ええ!? 無理ですってそれが出来たらこんなことになってませんよ」
第七王女「なぜ攻撃してこんのじゃろう」
娘「……多分 酸欠になるのを待っているんじゃない?」
第七王女「ううむ 兵糧攻めじゃな」
爺僧侶「討って出ても水中では分がありませんし耐えるのも長くはもたない……」
幽霊少女「……」スゥ
少年エルフ「うわ!? 君は?」
幽霊少女が現れた。
神官「おや…… 博士のお嬢さんでは」
魔法勇者「え!? お前幽霊とも知り合いなのか」
神官「いえ幽霊になる以前のお嬢さんですが」
幽霊少女「」スゥ
幽霊少女は神官に近寄ると
神官「?」
パァン
神官「ぶへらっ」
幽霊少女は神官をビンタした。
娘「貴方 こんな子にまで…… サイテー」
神官「違います ゴカイです~」
スゥ
幽霊少女は少年エルフに近寄る。
少年エルフ「え? ……下のタルに海藻? 酸素が出るの?」
神官「ははあ そういうことですか」
神官「博士は酸素を大量に発生させる海藻を作ってこの沈没船の空調に利用していました」
魔法勇者「ほう そうだったのか」
神官「それでその海藻は熱と反応して酸素を出します なのでそれを口に含むと水中でも息が出来ます…… コツはいりますが」
少年エルフ「じゃあ その海藻をとってくれば水中でも戦えるの?」
神官「いや無理でしょうね 息が出来るだけです海中でイカやタコには敵いませんよ」
孫僧侶「だったらどうしたら……」
第七王女「その海藻で船の酸素を賄っておったというが具体的にはどうやってじゃ?」
神官「たしか……加熱してましたね 熱いほど反応が大きくなるそうです」
第七王女「なるほど ならばその海藻に熱魔法をかけたらどうなるんじゃ? それも1タル分の量に……」
神官「それは…… 本気ですか!?」
娘「なるほど……可能性はあるわね」
魔法勇者「だったら俺の出番だな」
少年エルフ「……えっと? 何? どうするの?」
タコ博士「そろそろ倒れておるかの?」
タコ女A「まってください様子がヘンです」
沈没船「」ゴボン
沈没船から大きな泡がでてきた。
タコ博士「なんじゃ!?」
沈没船「」ゴボゴボゴボゴボゴボ
ボボボボボ
ドボボボボボボォオオオオオオオン!!
沈没船が爆発して海面へ吹きあがっていく。
タコ博士「なにぃいいいいいい!?」
○
ザザーン
男「王女無事だといいが 今回は流石に心配だな」
女騎士「そうだな…… 兄王はどう仰っていた?」
男「あー そうだな まぁ一言でいうとキレた」
娘友「はぁ…… やっぱりそうなるよね」
男「連れ戻してたら何らかの処分……まぁ外出禁止だろうな」
女騎士「仕方ない…… とにかく無事に連れ戻さないと」
ザザーン
娘友「ハッ(この二人から波動を感じる……)ちょっと失礼しますね」ソソクサ
女騎士「船酔いか?」
娘友「そんな感じで…… ではごゆっくり」
娘友は二人を残してどこかへ行ってしまった。
男「今回は長い旅になってるしな」
女騎士「そうだな…… 次に王都にもどったら少しはゆっくりしたいな……」
男「そうだな」
女騎士「……」
男「……」
ザザーン
男「なぁ お前って好きな奴居るのか?」
女騎士「……は?」
男「いやだから 付き合ってる奴いるのか?」
女騎士「なななナニを言っているのだこんな時にふざけるな」ドキドキ
男「いやいやふざけてお前にこんな話はしないぞ そうだろう?」ズイ
女騎士「それは……いやお前それはどういう意味で(チカイチカイ何が起こってるんだ!?)」ドキドキ
女騎士「うう……(足元がおぼつかない 船が揺れているのかそれとも)」グラグラ
男「危ない大丈夫か」ガシッ
女騎士「ッ!! なにを!?」カアアアア
男「しゃがめ 揺れてるぞ」
ドドドドド
\爆発か!?/ \前方の海面から噴出!/
グラグラ
男「一体なんだ クジラか!?」
前方の海面が泡立ち何かが下からせり上がってくる。
\ウワー/ \キャー/
女騎士「はわわわ」
ドドドドォオオン
男「な!?」
女騎士「は!?」
海面から沈没船の船首が飛び出して来た。
\船だ―?/ \人が降って来たぞ!?/
第七王女「天晴なり! 成功じゃー!」シュタ
男・女騎士「「王女!?」」
娘友「なんでこのタイミングで!?」
近くの物陰から娘友は叫んだ。
男・女騎士「「え!?」」
○海面・浮上した沈没船の残骸
神官「いやはやなんとか海面までこれましたね」
浮上した残骸の上に神官がしがみついている。
少年エルフ「うわー」
ドパァン
娘「ぷはぁ エルフ大丈夫?」
吹き飛ばされた娘と少年エルフが着水した。
少年エルフ「はぁはぁ 大丈夫 皆は?」
\うわあああ/ \きゃあああ/
爺僧侶「坊ちゃん! 孫よ!」
ドゴン
魔法勇者「ふごっ!!」
魔法勇者は残骸の甲板に叩き付けられた!
爺僧侶「ああもう みっともない……」
ドスン
魔法勇者「うごおッ!?」
孫僧侶「きゃあ!? あ……坊ちゃんゴメン」
孫僧侶が魔法勇者の上に降ってきた。
爺僧侶「坊 今のは受け止めるところでしょうが まったく情けない」
孫僧侶「無理よ モヤシの坊ちゃんじゃ」
爺僧侶「それを言うとモヤシに失礼だろう モヤシは結構生命力があるんだぞ」
孫僧侶「そっか じゃあモヤシ以下ということで」
爺僧侶「それぐらいが妥当だの」
魔法勇者「お前らまず俺の心配をしろよ!」
少年エルフ「……治癒しないでいいのかな」
娘「僧侶が二人も居るから大丈夫よ」
少年エルフ「そうだよね(お爺さんが魔法使うの見たことないけど……)」
神官「さあさあ ゆっくりできませんよ船が来てるのでアレに乗せてもらいましょう」
神官が近くを航行する勇者丸を示す。
\おーい/ \王女―/ \無事ですかー/
第七王女「今の声は」
少年エルフ「女騎士さん!?」
娘「友も」
第七王女「男も居るのか 見事なタイミングじゃ」
○海上・調査船勇者丸の甲板
男「お前達無事か? ケガはないか」
女騎士「それより一体どうしてこんなことに!?」
少年エルフ「それは……」
娘友「えっと……アレ見た方が早いみたいよ」
一同「「あれ?」」
巨大イカに乗ったタコ博士が手下達を引き連れて海中から現れた。
\イカだー/ \タコだ―/ \SAN値がピンチ/
突如現れた異形の者に船上はパニックに陥る。
タコ博士「ものども! あのムスメを奪い返せ!」
イカ男達「ッッ」ニュルンニュルン
イカ男たちが勇者丸に襲い掛かってきた!
ニュル べったんべったん
イカ男達が甲板に上がってきて少年エルフ達と町の者を取り囲む。
兵士長「うおおお なんだ!? キモチわりぃ!?」
町長「こんな魔物は見たことがない もしや魔族か!?」
\魔族!?/ \やべぇ/
女騎士「まずいな数が多すぎる」
男「かといって逃げれるわけでもなさそうだ……」
ざわざわ
第七王女「うろたえるでない! こやつらが灯台を占拠しておったのじゃ 東の町の者よ立ち向かうのじゃ これが勇者祭の締めくくりじゃ!」
町長「祭」
\よっしゃー祭じゃー/ \やったるでー/
町の勇者チームが次々とイカ男達たちに挑んでいく。
\\わああああああ//
娘「ほら友 下がってて危ないわ」ズシャ
娘はイカ男を切り捨てながら娘友たちを下がらせる。
女騎士「しかし町の者の加勢があればこの数でもなんとかなるか?」
男「こいつらはともかくあのデカいのはどうするんだ?」
巨大イカが船の前方から近づいてきている。
娘「パパ達は町の人と後方へ アイツは私が魔法でなんとかするわ」
男「よし女騎士 町の者を後ろへ下がらせろ エルフも負傷者に治癒魔法を」
少年エルフ「うん わかった」
第七王女「わらわも巨大イカと戦いたいのじゃ」
女騎士「下がってください 剣ではどうにもなりませんあんな奴」
第七王女「いーやーじゃー わらわは二代目勇者じゃぞ」
女騎士「またはじまった……」
娘友「王女 仲間を守るのも勇者の務めでしょ?」
第七王女「そうじゃが……」
第七王女「ほう写真か!? よーし町の者を守るのは任せるのじゃ!」
第七王女は後方のイカ男に挑んでいった。
男「いつのまにそんな物を?」
娘友「バザールで買ったのよ これで新聞の記事もばっちりよ」
女騎士「毎度のことながら本当に助かる ありがとう友君」
娘友「いえいえそんなそんな」テレテレ
\友はやくー/
娘友「じゃああのデカブツは任せたわよ」
娘「もちろん」
魔法勇者「おっと魔法なら俺に任せろ 娘は俺の雄姿を見届けてくれ」キリッ
娘「貴方…… 呼び捨てにしないでよ 慣れ慣れしい」
魔法勇者「ぐっ」
孫僧侶「そうですよーナレナレシー」
魔法勇者「やかましい」
爺僧侶「それよりもう目の前ですぞ」
巨大イカが足を振り上げて襲い掛かってきた。
魔法勇者「一撃で終わらせる ”多重大爆裂”」キュイイ
タコ博士「なに!? 防御体勢」
巨大イカ「ッ!」ニュルルン
ドドドドドン
連続する大爆発が巨大イカを襲う。
娘「へぇ……(この年でこんな大魔法を)」
孫僧侶「一撃っていいながら連続じゃないですか」
魔法勇者「うっせい」
爺僧侶「しかしこれなら流石の巨大イカも無事ではすみませんな」
もくもく
爆炎が晴れると巨大イカは足を失っていた。
魔法勇者「ほう 耐えたか」
巨大イカ「」ウニニニ
魔法勇者「なに!?」
タコ博士「ふっふっふ こいつにはプラナリア並みの再生力があるぞ」
爺僧侶「ならば畳みかけるまで!坊 再度魔法を……ってどうしました?」
魔法勇者「……今のでガス欠デス」
爺僧侶「あぁまったく肝心なところで!」
孫僧侶「だからバカ坊ちゃんなんですよ もー!」
魔法勇者「うっせぇ ずっと魔法打ちっぱなしだぞ!? これでも魔力はあるほうだろが!」
タコ博士「やかましい」
巨大イカのなぎ払い
ビターン
\ぬわーー/
魔法勇者たちは弾き飛ばされた。
タコ博士「ふっ 人間などこんなものよな」
娘「そうかしら ”落雷”」
魔法勇者「やったか」
しかし巨大イカには効果がなかった。
孫僧侶「そんな!? 直撃だったのに」
タコ博士「知らんのか 濡れた体では電撃は体表を走るのだこいつには大したダメージにはならん」
娘「へぇ 勉強になるわね」
○甲板後方
少年エルフ達が町の人を守りながら戦っている。
女騎士「まずいな 娘君が苦戦しているのか」ザシュ
男「しかしこっちも手一杯だ」ズバッ
イカ男達を切り捨てながら前方の戦いを伺う。
神官「こっちも負傷者が大勢でてますし動けませんね」
少年エルフ「そうだね って神官さんもこっちだったの?」
神官「そうですよ」
神官「あ無理です 魔力もう切れたのでタダの一般人です」
少年エルフ「え そうだったの」
娘友「……(本当にこの人はどうやって僧侶になれたんだろう?)」
○
ズバッ ザシュッ
しだいに負傷者が増え戦える勇者チームも減り防戦になってきた。
女騎士「くそ……たいして強くないが次から次へと」ズバン
男「そうだな……なぁ女騎士」ザシュッ
女騎士「なんだ?」ズバッ
男「さっきの話のつづきなんだが」ドゲシッ
女騎士「さっきの話? って」カアアアア
男「おっと後ろ」ドスッ
男は女騎士の後ろをイカ男を突き刺した。
女騎士「バカ野郎こんな時に言うことが! 町に戻ってからでいいだろ」ズドン
女騎士は横から来たイカ男を真っ二つにした。
女騎士「なんだ? バカ野郎!」ズバッ
男「結婚してくれ」
女騎士「な……」
娘友「キターーー」
少年エルフ「え!? いきなり?」
第七王女「ほう」
神官「あらまぁ」
男「ほらほらぼさっとするな危ないぞ」ズバン
女騎士「//////」プルプル
男「で返事は? こっちは忙しいんだ」
女騎士「こんな場所で……こんな状況で……本気?」カアアア
男「だからお前にふざけてこんなこと言わないって イヤか?」
女騎士「//////」ブンブン
女騎士は高速で首を横に振る。
少年エルフ「ええーここで!?」
神官「やったことないですけど」
男「適当で」ザシュッ
女騎士「え? え! ここ!? 今!?」
\それでは誓約をしていただきます/
男「お前の気が変わらないうちに…… 俺の気かな?」
女騎士「待て! 変わるな変えるな」ガシッ
\健康な時も病めるときも/
男「手っ取り早く頼む」ズバッ
神官「えーとそうですね 男さんは女騎士さんを変わることなく愛する事を誓いますか」」
男「たぶn」女騎士「っ!」ズドン
男の真横のイカ男が吹っ飛ぶ。
男「誓います」
少年エルフ「こんなのアリ?」
娘友「いいんじゃない 一生忘れられないわよ」
第七王女「まったくじゃの」
少年エルフ「いいんだ」
神官「女騎士さんは男さんを変わることなく愛する事を誓いますか」
女騎士「は……い 誓います」カアアアア
男「だから手を止めるなって」ズバッ
イカ男「オノレリアジュウっ」
イカ男が船から落ちて行った。
少年エルフ「なんか今しゃべった?」
娘友「さぁ?」
神官「えーと なんだっけ指輪は……ないか じゃあ誓いのキスを」
女騎士「はっ!? まて心の準備が」
男「諦めろ」
\わああああああ/ \パチパチパチ/
魔法勇者「なんか後ろ盛り上がってるな 拍手まで」
娘「ホントね」
ドドォン
巨大イカのなぎ払い。
爺僧侶「おうりゃあ」
爺僧侶はメイスで受け流した。
孫僧侶「えーい ”*****”(死の言葉)」
しかし効果はなかった。
孫僧侶「何度やっても効かないかぁ」
娘「……(あの2人も大したものね)」
爺僧侶「まだ魔法は唱えられませんか」
魔法勇者「チマチマした魔法じゃ意味がない もう少し耐えてくれ」
爺僧侶「魔力ぐらい気合いでなんとかしてください まったく情けない」
魔法勇者「気合いでなんとかなるか!」
巨大イカの攻撃。
爺僧侶「ムゥン 防御壁」
ビターン
爺僧侶の仁王立ち! 爺僧侶は大ダメージを受けた。
爺僧侶「ほら御覧なさい」ドクドク
魔法勇者「出来てねーよ! おい治癒魔法を」
孫僧侶「あ 魔力切れましたー」
魔法勇者「お前も人のこと言えねーじゃねーかバカ!」
娘「これしか出来ないけど ”治癒”」パアア
爺僧侶「ぬぅ 助かりました」
娘「……(このままでは呼ぶしかないか 仕方ない)」
魔法勇者「スマン助かった…… どうした?」
娘「うーん キャラじゃないんだけどね……味方をよぶわ」
魔法勇者「味方?」
魔法勇者「おう?」
くねくね
娘は不思議な踊りを踊り天高く指さすポーズを決めた。
娘「ホワイトドラゴン カモォー―ン!(高音)」
魔法勇者「……」
孫僧侶「……」
爺僧侶「……」
巨大イカ「……」
タコ博士「……(哀れな 恐怖で狂ったか)」
娘「……」カアア
魔法勇者「えっと 落ち着け な?」
娘「うっさいわね ちょっとまってなさい」
孫僧侶「えっとえっと なんていったらいいか」
爺僧侶「む? なんじゃまた巨大イカか? 下からくるぞ」
ザバーン
白竜「ハーイ 娘ちゃん呼んだ?」
魔法勇者「な!?」
爺僧侶「なんと!?」
孫僧侶「ドラゴン!?」
タコ博士「そんな馬鹿な!?」
娘「……”電撃ィ”」
バリバリバリ
白竜「きゃー ビリッとするー」
電撃が白竜を直撃した。
娘「早くきなさいよ まったく」ガー
白竜「ちゃんと来たじゃない もー娘ちゃんの怒りんぼ」
白竜「ハイゴメンナサイ で要件は? 帰るの?」
娘「その前にアレ 倒して」
巨大イカ「」うねうね
白竜「えーイカ? あんまり好きじゃないのよね」
娘「そいつは合成されてコラーゲンたっぷりの美容イカよ」
白竜「いただきます」ゴォオオオオオオ
白竜は燃え盛る炎を吐いた。
タコ博士「なにぃーーーー!?」
実況者「というわけで今年の年勇者はドラゴンすら従えている第七王女勇者に決定だ」
\わあああああ/ \王女様バンザーイ/
第七王女「うむ くるしゅうない」
実況者「そして同じカニさんチームの二人も」
\パチパチパチ/
少年エルフ「えへへ 照れるね」
娘「……私は疲れたわ」
パシャッ パシャッ
少年エルフ「?」
娘友「ほら笑って 写真を撮ってるんだから」
娘「もう 王女だけにしておいてよ恥ずかしい」
\ヒューヒュー/ \オメデトー/
男「はっはっは 祝ってもらえてるぞ」
女騎士「あぁもう こんなことしてる場合じゃ」カアア
娘「そんなことになってるなんでね…… 見たかったわ」
娘友「見る? 撮ってあるわよ~」
娘「ホント? キャメラって便利ね~」
男「はっはっはいい記念だな 後で焼き増してもらうか」
女騎士「……」カアアアア
第七王女「女騎士 わらわからも祝うぞ おめでとうじゃ」
女騎士「……王女」ガシッ
第七王女「なんじゃ?」
女騎士「捕まえましたよ さあ王都に帰りますよ」ゴゴゴゴゴゴ
第七王女「いや もうすこし祭りをじゃな……せっかく優勝したのじゃし」
男「当身」シュドン
第七王女「はひっ」
第七王女は気絶した。
少年エルフ「……遠慮ないね」
男「さすがに今回はワガママが過ぎた これ以上は無理だ」
娘「まー これでやっと帰れるわね」
白竜「じゃあ 帰りましょうか乗って」
少年エルフ達はホワイトドラゴンが掴む馬車に乗り込む。
○東の町・港
魔法勇者「あいつらはもう王都に戻るようだな」
孫僧侶「あたし達はどうします」
爺僧侶「王都へ行きますか?」
魔法勇者「いやエルフから話も聞けたし 一度もどろう」
孫僧侶「そうですね船にも乗れますし」
魔法勇者たちは隣国行きの船に乗り込む。
神官「うーん エルフさんから勧誘の答えを聞けませんでしたね」
神官「ま 色々収穫はありましたし よしとしましょう」
ホタテ男「神官さま 本当に私のような者が他にも?」
神官「ええもちろん 貴方は新しい方ですが古くからの方もいますよ」
ホタテ男「はぁ?」
神官「会えばわかりますよ」
ホタテ男「わかりました一緒にいきます」
神官「はい では行きましょう」
神官は町はずれの道を歩きだした。
神官「……(エルフさん いずれまた)」
○遠い海上
ザザーンザザーン
タコ博士「ぐぅ」
タコ博士はサメタコ女の背中で目を覚ました。
タコ博士「……お前 他の奴は」
サメタコ女「……」フルフル
タコ博士「匂いが…… そうか私をかばったのか」
サメタコ女「……」ウルウル
タコ博士「国に帰るか……」
サメタコ女「」ニュルニュル
サメタコ女は泳ぎ始めた。
○
兄王「というわけでお前はしばらくここで頭を冷やせ」
東の町から戻った王女は兄王と第六王子に書庫に連れてこられた。
第七王女「なんじゃと!? 東の町を救ったのにこの扱いはヒドイではないか!」
兄王「その件は王国兵でも処理は出来たはずだ」
第七王女「そんなはずはない あの巨大生物はわらわ達だからこそ対処できたのじゃ さらに謎のタコ面の……」
兄王「だまれ そんなことはどうでもいい。 それよりお前の行程無視の方がよっぽど重大だ 約束しただろう? 規定した行程を守って調査を行うと」
第七王女「ぬ それはそうじゃが…… 事は急を要したのじゃ 勇者としての使命だったのじゃ!」
兄王「言い訳無用 とにかくお前は違反したから罰としてしばらくここに居ろ」
第七王女「それでは調査団はどうするのじゃ 魔王の所在はいまだに掴めておらんのじゃぞ」
兄王「お前の調査したところで国内及び近隣諸国に居ないのは確認できた それで充分だろう」
第七王女「何をいっておるのじゃ 他国に居るかもしれんのじゃぞ早急に調査に乗り出さねば」
兄王「ウチはウチヨソはヨソ 第一お前がドラゴン連れて他国にいってみろ外交問題になるぞ」
第七王女「うぬぬ だったら白竜は留守番で……」
兄王「もういい ほらお前本が好きだろしばらくここで勉強していろ 必要なものは運び入れてある食事も届ける」
第七王女「こんな窓もないような部屋に……監禁ではないか」
第六王子「牢屋でないだけ感謝しろ よし閉じるぞ」
第六王子の合図で宮廷魔術師が呪文を唱える
パキン
第七王女「なんじゃ!?」
第六王子「結界魔法だ 流石のお前も結界からは逃げれんだろう」
第七王女「結界じゃと?」
第七王女が開いた出入り口に手を伸ばすと魔法の壁に触れた。
バン
第六王子「無駄だ無駄だ 常時魔術師が外で見張りにつくあきらめろ」
第七王女「うぬぬ おれれバカ六!」
第六王子「なんだと!? 妹の分際でお前は!」
第七王女「バカと言われて怒るのは本物のバカじゃ まったく器が小さいのう」
第六王子「貴様ァ!! この」
ドガン
第六王子は第七王女に詰め寄ろうとして結界に激突した。
第六王子「はふっ」
第七王女「だからバカじゃといったのじゃ 己で張らせた結界を忘れるとは」
兄王「お前ら 本当に……仲良く出来ないのか」ハァ
第七王女「無理じゃな」フン
兄王と第六王子が廊下を歩いている。
兄王「やれやれ とりあえずこれで一安心だな」
第六王子「はんな奴牢屋でもひひじゃないでふか」
兄王「お前鼻は大丈夫か?」
第六王子「もどっはら治癒まほーをひてもらいまふ」
兄王「そうか」
第三王子「兄貴 あそこまでしなくてもよかったんじゃない?」
第三王子が現れた。
兄王「お前は王女に甘すぎるんだ」
第三王子「兄貴は厳しすぎじゃないかな?」
兄王「お前なぁ…… 今回の王女の暴走はお前にも原因があると報告が上がっているが?」
第三王子「え~と そうだっけなぁ?」はっはっは
兄王「まぁいい ようやく帰ってきたんだ はやく報告書をまとめてこい」
第三王子「え~ 何年分あると思ってるの? そう簡単には」
兄王「実から出た錆だろうが! 何年ほっつきあるいていたんだバカ野郎 そもそもな……」
第三王子「あ じゃあ報告書まとめるから後で~」スタタタタ
兄王「あ こら…… まぁいい あとお前は王女と面会謝絶だからな」
第三王子「ええ~ そんなぁ」
兄王「お前ら二人そろったらまた逃げ出すだろうが お見通しだ」
第三王子「そんなまさか」はっはっは
第三王子は笑って逃げていった。
兄王「やっぱりそのつもりだったな」
第六王子「いくら三兄上でも結界ではどうしようもありませんよ」
兄王「……お前は魔法を買い被りすぎだ」
第六王子「買い被りですか……」
第七王女「ふぅむ 見事に天井まで結界に囲まれておるな」
天井近くまで積み上げた本の上で第七王女は唸る。
第七王女「窓は無し 通気口は細すぎるし隠し通路もないのう」
パキン
第七王女「む 結界が?」
ガチャ
召使「王女様 お食事です」ガラガラガラ
召使がワゴンで食事を運んできた。
第七王女「今じゃ!」シュッ
召使「きゃっ!?」
ダダダッ
第七王女は素早く扉をくぐりぬけ外へ駆け出した。
ドガンッ
第七王女「ッ!? あいた~~!?」
外へ出ようとした第七王女は二つめの結界に激突した。
宮廷魔術師A「大丈夫ですか王女?」
宮廷魔術師B「申し訳ありませんが第六王子の指示で二重結界となっております」
第七王女「お~の~れ~バカ六!!」
○
兄王「まったくお前は半日もじっとしておれんのか」
第七王女「ちょっと外の空気を吸いたかっただけじゃ」
兄王「1人にすると何するかわからんな やはりお前には監視をつける」
女兵士「えっとはじめまして王女サマ」
女兵士があらわれた。
兄王「……女騎士には休暇を与えた」
第七王女「なんじゃと!? まさか」
兄王「勘違いするな処罰ではない 俺も驚いたというかようやくというか……結婚したそうじゃないか男と」
第七王女「ああそれで」
女兵士「ええー!?」
兄王・第七王女「「!?」」
兄王「君 どうしたんだ?」
女兵士「え! いえあのスイマセン でも結婚ってあの男さんッてたいちょーが……女騎士さんとがですか」
兄王「そうか君は男の元部下だったな そのうち披露宴をするからその時に招待状が行くはずだ」
女兵士「ヒロウエン はぁ そうですか……はい」
兄王「……とりあえず王女を見張っていてくれ いいか?」
女兵士「はい 了解いたしましたのでありまする」ボーゼン
兄王「……(男~ あいつは本当に)」
第七王女「ふむそうか 男は分隊長だったしのそれでのう」
女兵士「うう~ 王女さまの調査からやっと帰ってきたと思ったら~」えぐえぐ
第七王女「うーむ なんかスマヌ」
女兵士「はぁ~ 女騎士さんかぁ そっかぁ~」ドヨーン
第七王女「……(ううむ この状態の者と四六時中一緒ではかなわんのう)」
女兵士「たいちょーは理想のおとーさんだったのになー おとーさんにしたかったのになー」ぐすぐす
第七王女「そうかおとーさんか……ふむ父上? お主は男を父上にしたかったのか?」
女兵士「え? まぁそーですねーたいちょーと結婚してお父さんになってもらって一生甘いモノを奢ってもらうのが理想でしたねー」
第七王女「(男も大変じゃのう)……しかしそれならばまだ男を父上にする方法がまだあるではないか」
女兵士「え? どういうことです?」
兄王「というわけで第七王女は旅の疲れから臥せっておる お引き取りを」
娘「かしこまりました それでは失礼します」
娘友「……(本当かな?)」
娘と娘友が退室した。
家老「……第七王女はよいご友人を得られましたな」
兄王「そうだな…… それで第七王女の様子は?」
第六王子「大人しく本を読んでるようです ようやく懲りたかなあのアホも」
兄王「第三王子は?」
家老「部屋で報告書のつづきをまとめさせております」
兄王「そうか早く全部まとめるように伝えてくれ ……こんなこと王女が知ったらまた飛び出してくぞ」
娘と娘友からの手紙を読んでいる第七王女。
第七王女「うーむ兄上め わらわを病気で臥せっておるとうそぶいておるな」
女兵士「娘ちゃんか 元気かな?」
第七王女「なんとかして娘たちにわらわの現状を知らせたいものじゃ」
女兵士「お手紙の返事はどうです?」
第七王女「ここをみてみい 封筒のノリがズレておる 検閲されておるの」
女兵士「あらら ホントだスゴイ用心してますね」
第七王女「ここにあった王家の家宝目録にあったアレがあればこんな所逃げ出せれるのじゃがのう……」
第七王女は手紙をしたためながらいう。
第七王女「無理じゃ 三兄は監視されておるじゃろうし第一この王都には既に無いのじゃ」
女兵士「え? ないって家宝じゃないんですか?」
第七王女「家宝として姉上の嫁入り道具として持ち出されておる」
女兵士「あらら それじゃあどうしようもないですね」
第七王女「なので 娘たちにそれをとってきてもらうよう手紙を…… よし出来たのじゃ」
第七王女は手紙を女兵士に渡した。
第七王女「これを娘友に届けるように外の者に手配しておくれ」
女兵士「わかりました でも検閲されるんじゃ?」
第七王女「大丈夫じゃ 見られてもワカラン暗号を使用したのじゃ」
第七王女「男と女騎士の披露宴も終わったのう 行きたかったのう」
女兵士「そうですねー いけませんでしたねー いきたくもなかったですがー」ぐでぐで
第七王女「男を父上にする件はわらわが話した通りにすればよかろう?」
女兵士「いやそうでしょうけど 急には……」
パキン
ガラガラガラガラ
召使「お食事です 女兵士様もどうぞ」
第七王女「うむ いつもすまんのう」
女兵士「ありがとうございます」
カチャカチャ
食事を始める二人。
第七王女「豚の丸焼きのう わらわ一人では無理じゃが…… それじゃ! 丸焼きじゃ!」
女兵士「?」
○別の日・離れの書庫
女兵士「今日は丸焼きらしいですよ」わくわく
第七王女「そうじゃな 準備はよいか?」
女兵士「はい」
パキン
ガラガラガラ
召使が大きな台車を押して入ってきた。
召使「よしょ ふぅ お待たせしましたお食事を……」
第七王女「待っていたのじゃ!」
ガラガラガラガラ
召使「終わりましたー」
宮廷魔術師A「おわったか 今あける」ゴニョゴニョ
パキン
召使「どもー」
ガラガラガラガラ
召使と大きな台車が書庫から出てきた。
宮廷魔術師B「よくまぁ オンナ二人で豚の丸焼きなんてオソロシイネ」
召使「えー? いやそんなに食べれてないですよ ほとんど残してますって」
パキン
内側の結界が再び張られた。
宮廷魔術師A「くっちゃべってないで早く外側をあけろ」
宮廷魔術師B「へいへい」ゴニョゴニョ
パキン
外側の結界が開いた。
召使「よし……(今だ)」
ガラガラ
宮廷魔術師B「ねぇねぇ ほとんど残ってるんじゃ俺たちにくれない? お腹へってきちゃって……」
宮廷魔術師Bが大きな台車に手を伸ばそうとする。
召使「だ!? ダメですーだめですぅうううう」
ドドドドド
召使は猛全と走りだした!
ガラガラガラガラ……
\うおわあああ/ \ごめんなさーい/
第六王子「……なんだ今のは?」
宮廷魔術師A「ハッ 第六王子様今のは第七王女の食事でした」
第六王子「あいつの……妙だな オイ結界を解け あいつらは中に居るのか?」
宮廷魔術師B「え? 出てきたのは召使だけですが?」
第六王子「いいから開けろ」
パキン パキン
○離れの書庫
バァン
第六王子が書庫にはいると椅子で寝ている女兵士と第七王女の寝ているベットが見えた。
宮廷魔術師A「王子! いくらご兄弟でもいきなり女性の部屋にはいるのは……」
第六王子「バカ野郎 これを見ろ」バサッ
第六王子が第七王女の布団をめくると
豚の丸焼き「……」
宮廷魔術師B「え? どういうことだこれ? お前何をしていた!?」
宮廷魔術師が女兵士に詰め寄ると
ポロ
女兵士の変装が落ちる。
召使「……」フガフガ
女兵士は無理やり変装させられた召使だった。
第六王子「あいつ!」
○王城・渡り廊下
ガラガラガラガシャン
大きな台車から第七王女が飛び出した。
第七王女「よし 成功じゃ」
ガバッ
女兵士「ぷはっ ばれてないですかね?」
警報が鳴り響く。
第七王女「だめじゃな もうバレタようじゃ あのバカ六め」
\いたぞあれか?/
女兵士「うわぁ はや!?」
\こっちだ/
第七王女「むぅ 後ろからも」
女兵士「失敗ですかね」
第七王女「まだじゃ」ヒョイ
第七王女は欄干の上に飛び乗る。
\どよどよ/ \あぶねぇ!?/
女兵士「ええ? まさか!? かなり高いですよ」
第七王女の眼下には川が流れている。
女兵士「うう~~ 行きます! 行きますよ!」
第七王女「よーい 行くのじゃ!」バッ
\うわああああ/
女兵士「えーい」バッ
第七王女と女兵士は川へ向かって飛び出した。
ドボーンドボーン
第六王子「信じられん! あのアホ」
○
騎士団長「退院したのか その後の障りはないのか」
男子「はい 大丈夫です」
*「おお 大丈夫なのかジュニア」
*「すこし痩せたんじゃないか?」
男子「大丈夫です明日から通常任務に就きます」
騎士団長「そうか 一応病み上がりだ無理をするなよ」
男子「はい」
自室へと向かう男子。
スタスタスタ
男子「……(やっと退院できたんだ 王女が戻ってくるまでは準騎士として勤めをちゃんと果たさなければ)」
召使A「……あ この子」
召使B「どうぞ」スッ
おしゃべりしていた召使たちが男子に道をあけた。
男子「どうも」
スタスタ
男子は自室へ入っていった。
召使A「誰今の? おおきい子ねー」
召使B「知らないの あの男さんの息子よ」
召使A「え! あの近衛兵だった男さん!? へえーあんな大きな子が」
召使B「あの子は男さんと違ってマジメでいいコよ 顔も可愛らしいし王女さまの護衛についてたから将来も有望よ」
召使A「あらー 私も10歳は若ければほっとかないんだけど」
召使B「だったら 私はダメ元でがんばちゃおうかしら」
召使A「あなたチャレンジャーね」
自室に戻るとルームメイトの先輩騎士が声をかけてきた。
先輩騎士「おお ジュニア挨拶はすんだのか?」
男子「はい 明日から任務に戻りますよ それとジュニアって呼ばないでくださいよ」
先輩騎士「いやなぁ 男さんの息子だろ その方がわかりやすい」
男子「その呼ばれ方は正直いって 若干イヤなのですが」
先輩騎士「そうかもしれねーがおめーは父親が元近衛兵の男さんだろ そしたらあの剣聖の孫でもあるだろ 超エリートじゃん ちょっとぐらい嫌がらせさせてくれよ」
男子「はぁ……(まぁここまでハッキリいってくれるとむしろラクだよな)」
先輩騎士「だから超エリートジュニアお茶いれてくれー お前の退院手伝ったろ腰がやばいンだわ」
男子「はいはい わかりましたよ先輩」
男子「父上 王女護衛任務お疲れさまです 女騎士さんも」
男子は第七王女の護衛から戻ってきた男と女騎士を出迎えた。
\お疲れさまでーす/ \土産はー/ \コラ/
女騎士「ありがとう男子君 皆 えっと土産話ではないが報告があってな……その……」
男「まぁなんだ 俺たち結婚した」
\ふぇ!?/ \ハァ!?/ \ええー/
女騎士「お前そんないきなり!?」カアア
男子「」
女騎士「男子君も困ってるじゃないか!」
男「いやだってどうやって言ってもショックだろ だったら早めに……」
女騎士「心の準備とかが必要だろうがバカ…… すまない驚かせたか男子君」
男子「……ええと はい」
*「マジですか男さん」
*「やっと落ち着く気になりましたか」
先輩騎士「よかったですねぇ女騎士さん 嫁ぎ遅れなくて あ 充分遅いか」
ゴン
騎士団長「お前は…… とにかくおめでとう 式はいつやるんだ?」
男「えー 今更式とかなぁ……」
女騎士「なに? まさか本当にアレで済ませる気だったのか!?」
男「いいじゃないか ちゃんと僧侶もいたし」
女騎士「いやいや アレはないだろアレは」
男「じゃあもっかいやるのか? 指輪やらキスやら全部ちゃんとするのか」ニヤニヤ
女騎士「な!」カアアア
男「俺はかまわんぞ]
女騎士「いや…… アレは流石にもう勘弁してほしい……」カアアアアア
男「それじゃあ式にならないじゃないか どうするんだ? やるのかやらないのか?」
女騎士「いや それは その……」カアアア
女騎士「黙れ 貴様らー」ドドド
\ギャー怒ったー/ \退避退避ー/
騎士団長「間をとって披露宴ならどうだ?」
男「なるほど それなら丁度いいな…… 男子? どうした」
男子「……いえ」
男「まさか反対だったか?」
男子「いえ決して」
男「じゃあ相談しなかったから怒ってるのか?」
男子「それもありません 父上のことは父上で決めて下さればよいので」
男「……だったらなんでそんな顔してるんだ」
男子「いえ……その…… この顔は生まれつきです」
男「……(遠まわしにディスられてるのか俺?)」
男子「というわけですが 俺どうしたらいいですかね」
娘「そんなことで相談にきたの?」
男子「うるさい 俺はエルフさんに相談しにきたんだ」
少年エルフ「えーと 女騎士さんは嫌いだった?」
男子「それはありません 父上と違ってマジメだし人として騎士として尊敬しています ただそのこれからどう接すればよいのか……」
娘友「そうよね 男子君からしたら上司みたいなものだったわけだし 微妙よね」
少年エルフ「そう? 具体的にどんな風に困ってるの?」
男子「それは……うまく言えませんが」
男子「! そうだな……そうかもしれない」
少年エルフ「友ちゃん……(そういえばこの子もお母さんが……)」
娘「そんなの適当でいいじゃない」
男子「それじゃあ失礼だろう 義理とはいえ母親にはそれなりの対応が」
娘「そんなこと言ったってアンタ母親の事覚えてるの?」
男子「もちろんだ…… 俺の母親は厳しい人だった言いつけをやぶった罰に魔法を撃ってくるような……」
娘「それオババよ」
男子「え」
少年エルフ「うん オババだね男もやられてたし君も小さい頃に火球投げられてたよ」
娘「それで火傷を治すのは毎回パパだったのよ 感謝しなさい」
男子「そうだったのか すみませんエルフさん」
娘友「マジで……(オババさんって一体)」
娘「ほらアンタ小さかったから母親の事なんて覚えてないでしょ」
男子「いやまて他にも覚えているぞ 母親は不器用だった! 俺の髪をきってくれたんだが酷い出来で結局丸刈りにした記憶が……」
娘「アンタねぇ」
少年エルフ「それ娘だよ」
男子「ええ!?」
娘「本当に余計な事は覚えているのね~ 不器用? そりゃ私も子供だったからねぇ」ゴゴゴ
男子「まて子供の頃の話だろう なぁ」
娘「今ならこの剣で器用に斬れるわよ 髪伸びたんじゃない? 斬ろうか」スラッ
男子「まて落ち着け」
ドタバタ
少年エルフ「あーもう いつまでたっても子供なんだから」
娘友「ホント姉弟みたいね」
少年エルフ「そう……?(普通の姉弟って剣でやりあうものなの?)」
男子「すいませんエルフさん」
少年エルフ「謝らなくていいよ 娘が悪いんだから ”治癒”」パアア
娘「……男子が動くからよ ジッとしてたらちゃんと出来たわ」
娘友「それ以前に店内で勝手に断髪式はじめないでください」
娘「ん……ごめん」
少年エルフ「はいおしまい 他に痛むところない?」
男子「いえ……ありがとうございます」
少年エルフ「そう よかった」ニコ
男子「……(母親か エルフさんが一番イメージに近いよな)」
娘「男子 エルフは私のパパよ」
少年エルフ「え?」
男子「わかってる」
娘友「……(男子×エルフさん アリかしら)」ドキドキ
少年エルフ「結局相談にのれなかったね ごめん」
男子「いえ いいんです」
少年エルフ「たいしたアドバイスじゃないかもしれないけど 普段通りにしてたらいいんじゃない? そんな無理にこうしようってしなくても」
娘「そうよ アンタはイメージとか思い込みとかにこだわりすぎるから気をつけなさい」
男子「……そうかもしれないな ありがとうエルフさん 娘」
披露宴は宴もたけなわである。
*「じゃあここでもう一度誓いのキスの再現を」
女騎士「なにぃ!? それはもういいだろ」
*「えー 俺たちみてなーい」
\キースキースキース/
女騎士「おまえらー!」
*「ぎゃー メスゴリラが怒ったー」
*「男ー ちゃんと手綱を握っておいてくださいよー」
男「むしろ俺が握られてる方だぞ」
*「じゃあ夜もですか?」
男「夜はむしろ女騎士の方が……」
女騎士「男ー!! 何を言おうとしてるー!!」カアアア
男「はっはっは 顔が真っ赤だぞ」
*「紅白でめでたいな」
女騎士「貴様らー そこになおれー」シャキン
男「やべ逃げろ」
バタバタ
女騎士はケーキ入刀用のナイフを振りかざして男達を追いかけ始めた。
少年エルフ「兵隊の人たちって元気だねー」
男子「まぁ 基本そうですね」
娘「こっちにも元気というか荒れてるのがいるけど」
女薬師「っかぁー もっと強い酒はないの」
ダンッ
女薬師は酒を飲み干すと瓶を机に荒っぽく置く。
少年エルフ「そんなに飲んだら毒だよ その辺でやめておこうよ」
女薬師「なぁにいってんのよぉ 祝いの席でしょ ぶれーこーよぶれーこー」ヒック
8本目の詮を抜く女薬師。
娘友「すごいわね どうしてこんなに荒れてるの?」ボソ
娘「……女薬師は表向きはああいうけど男が好きだったのよ」ボソ
娘友「それで……」
8本目をラッパ飲みする女薬師。
少年エルフ「こら それ以上だめ! こんなトコで吐いたら僕怒るよ!」
女薬師「なによぉうエルフ わかったわ飲まないわよ」
少年エルフ「本当? よかった」
女薬師「男にのませてくるわよ 男に!」ドスドス
少年エルフ「ええっ!? ちょっとまって女薬師」
大股に歩いていく女薬師を少年エルフは追いかけて行った。
娘「やっと静かになったわね」
男子「王女は来れなかったか まぁ仕方ないよな」
娘友「王女はね なんか閉じ込められてるって噂よ」
男子「そうなのか? 旅の疲れで病気になったと聞いていたが」
娘「男子…… あの王女があれくらいで病気になると本気で思う?」
娘友「まぁ病気は建前よね この前の脱走で怒られたんでしょうね」
男子「そうか 次は一体どうなるんだろうな」
娘「さぁ 王女の事だから次の事は考えていると思うけど」
娘友「ねぇねぇ 病気ならお見舞いって名目で会いにいってみない? もしかしたら会えるかも」
娘「そうね 言ってみる価値はあるかな 男子はどうする?」
男子「俺は……やめておくよオンナ同士の方が気が楽だろう」
娘「王女はそういうの気にしないと思うけど…… まぁいいわ気が向いたら言いなさい」
男子「ああ」
\うわあああ/ \ガシャーン/ \わははははは/
少年エルフ「ひゃふ 男子くんみんなをとめてぇ」
娘「どうしたのパパ真っ赤よ のまされたの?」
少年エルフ「ちがうよ アレみて」
女薬師「ほら結婚祝いよー」
男「やめろ女薬師 お前らも酔いすぎだー」
*「俺らの気持ちっすよー」
*「ぶれーこーぶれーこー」
男は女薬師と兵隊仲間から次々と酒を頭から浴びせられている。
少年エルフ「でも 早くとめなひと女薬師が……」
男子「わかりました止めてきます」
○
男子「ほら女薬師さんそれぐらいで……」
男子は女薬師を男から引き離す。
男「おお助かった」
女薬師「なによ男子放しなさい」バタバタ
*「ジュニア邪魔するなよう」
*「マジメか」
男子「先輩たちも悪のりしすぎですよ ほどほどにしないと明日に響きますよ……どうしました?」
先輩兵隊たちが後ずさりする。
女薬師「……う 気持ち悪い」
女薬師の顔は真っ青だ。
男「うわああ男子! 女薬師を向こうに」
\オロロロロロロロ/ \ウワアアア/ \ヒィイイイイ/
娘友「阿鼻叫喚になったわね」
少年エルフ「ああもう 遅かったかぁ」
男子は訓練場に向かいながら数日前に男から言われたことを思い出す。
――男「新婚旅行ってわけじゃないから気にしなくていいんだぞ」
男子「いや どう考えても新婚旅行だろう」ボソ
男と女騎士は北の国へ旅行へ行っていた。
男子「それについて行く娘たちもどういうわけだ?」
少年エルフと娘と娘友も同行して旅立っていた。
男子「まぁいい なまった体を鍛え直さないとな」
\男子 これ男子/
男子「?」キョロキョロ
どこからか呼び止められ辺りを見渡す。
なんと第七王女が用水路から顔を出して男子を呼んでいる。
男子「王女!? 何してるんですかこんな所でそれにずぶ濡れじゃないですか!?」
第七王女「いいから引き上げるのじゃ」
女兵士「あ 男子君!? すごい偶然」
男子「女兵士さんも!?」
男子は二人を引き上げた。
○
男子「なぜこんな所に?」
第七王女「それよりどこか着替えれる所に案内するのじゃ」
男子「だったら城に……」
第七王女「バカもん 城から逃げ出してきたのじゃ 兄上はわらわを閉じ込めておったのじゃ」
男子「そんな……」
第七王女「お主はわらわ達を兄上に引き渡したりはせんじゃろう? そうじゃろう」
男子「でも俺も一応騎士ですし……」
第七王女「うむ しかし兄上からわらわを探すように命は受けておらんな」
男子「はい それはまだ」
第七王女「そしてお主はわらわの騎士じゃ わらわの命令を聞くのは自然のことじゃな」
男子「はぁ 確かに」
第七王女「ならば わらわ達を匿うのじゃ」
男子「しかし…… そんな場所」
女兵士「っくしゅん」
第七王女「ほれ 何処でもよい 早く案内するのじゃ」
男子「むぅ だったら」
男子「……」そー
先輩騎士「ジュニアどうした? それより城から招集がかかったぞ お前はどうする?」
男子「招集ですか!? ええっと一応非番ですので」
先輩騎士「そうだったな お前も旅行いけばよかったのに」
\いくぞー/
先輩騎士「おっといかねーと じゃな」
騎士達は集合して城へ向かった。
第七王女「ふむ 丁度出払った所とは好都合じゃな 灯台元暗しじゃ」
男子「うわ 待っててくださいっていいましたよね」
女兵士「だって馬糞くさいんだもん」
男子「女兵士さんまで…… とにかく早く部屋へ」
男子「入りますよ……ってなんですかその恰好は!?」カアア
第七王女「そうはいってもおぬしの服は大きすぎるのじゃ」
女兵士「ほんとダブダブ」
第七王女と女兵士は男子のシャツを着てダブついている。
男子「ちゃんと下……ズボンも履いて下さい!」カアア
第七王女「むうう だから大きすぎるのじゃ何回裾をまくらなければないないと思うとるのじゃ」
女兵士「それに腰回りも大きすぎてずりおちちゃうよ 他に合う服ないの?」
男子「ありません 第一ここは女性立ち入り禁止ですよ バレたら……」
第七王女「どうせ出払っておるんじゃろう? バレやせん」
ガチャ
女兵士「そうですよねー なんせあたし達を探しにいってるんでしょう」
男子「だからって勝手に出ないでください……なにするんですか?」
第七王女「なにちょっと調べるだけじゃ」
第七王女「こんなところじゃな」
女兵士「さすがに男性ものだとぴったりとは行きませんね ここキツイ」ぎゅうぎゅう
女兵士は胸を抑える。
男子「……それでこれからどうするつもりですか?」
第七王女「むろん 調査を続けるのじゃ」
男子「調査って また旅立つつもりですか!?」
第七王女「当たり前じゃ 魔王の所在はいまだに掴めておらんのじゃぞわらわの旅はまだまだこれからじゃ」
男子「でもどうやって出ていくつもりですか? 旅の用意もなしに」
第七王女「それはここで揃えたのじゃ」ドサッ
男子「それはここの支給品ですよ」
第七王女「もともとウチ(王家)のじゃろ 問題なかろう」
女兵士「外に馬もいますにすぐに出れますねー」
男子「本当に行くつもりですか」
第七王女「そうじゃ それでお主も準備はよいか?」
男子「準備って 俺もですか!?」
第七王女「当たり前じゃ わらわの騎士じゃろう? 伴をせい」
女兵士「それとも残ります? 色々なくなったモノの言い訳とか大変になるかもですけど……」
男子「ッ! ……わかりましたお伴しますよ 行きますよ」
女兵士「やったぁ」
第七王女「どうじゃ わらわの言った通りであろう」
男子「はぁ……(王女にはかなわないな)」
○王都の外
夕闇の中男子達を乗せた馬が走っている。
パカッパカッ
第七王女「よし王都脱出成功じゃ」
男子「馬上です あまり動かないでください」
女兵士「いまさらだけど本当に一緒にきてよかった? 男子くん」
男子「……(本当に今更だなぁ) いいですよしばらくは王都から離れたい気分だったので」
女兵士「そっかぁ よかった」ニコニコ
男子「それより女兵士さんこそいいのですか? しばらく戻れませんよ」
第七王女「女兵士はお主と一緒のほうが都合がいいのじゃ」
女兵士「王女サマ!」
男子「?」
女兵士「それよりどこに向かうんですか? 何か当ては?」
第七王女「とりあえず帝国領に向かうのじゃ」
男子「本気ですか!? 本当の他国ですよ」
第七王女「勇者に国境は関係ないのじゃ ゆけー!」
第七王女一行は帝国領へ向かう。
ガラガラガラ
男「いやぁ 休暇も貰えたし旅行まで用意してもらって悪いなぁ」
女騎士「本当に兄王と王女に感謝ですね」
少年エルフ「……本当に僕達も同行してよかったの?」
女騎士「もちろんだ べ別にしし新婚旅行とかそんなんじゃないからな!」カアア
少年エルフ「そう? ……(やっぱりコレ王女からの新婚旅行のプレゼントだよねえ?)」
男「まーしばらく骨休みだ 王女もしばらく閉じこ……ゲフンゲフン 休養だからな」
娘友「へー 休養ねー(表向きはそうよね)」
娘「それにしてもまだ着かないの? 谷の国から結構たつでしょ?」
男「なにこの峠を越えれば見えるぞ…… ほら」
ガラガラ
少年エルフ「わぁ」
峠を越えて眼下にレンガ造りの街が見える。
娘「素敵ねぇ」
女騎士「ああ 北の国だ」
○
男「本当にいいのか? 部屋は広いし一緒でもかまわんぞ」
娘「何言ってるの せっかく王女が手配したスイートルームなんだから二人だけに決まってるでしょ」
女騎士「いやだから 別にそういうのじゃなくてな」カアアア
娘友「いえいえ これ以上邪魔しちゃ悪いから…… アタシ達は知り合いの宿に泊まるし」
少年エルフ「じゃね ごゆっくり」
バタン
少年エルフ達はスイートルームに男と女騎士を残して出て行った。
女騎士「ああもう 本当にこれじゃあ……」
男「……まぁまぁまぁ せっかくのみんなの好意を無駄にしちゃいけないよな なぁ?」
女騎士「なぁってお前ちょっとまて まだ着いたばっかりだろう!?」
少年エルフ「さてと どうしよっか」
娘「……」
娘友「……やっぱり言ってなかったの?」
少年エルフ「なに?」
娘「パパ 実はね私たち王女から手紙をもらってたの」
少年エルフ「どういうこと?」
娘と娘友が話始める。
○王都出発前のある日・娘友の部屋
娘「王女から手紙?」
娘友「ええ それがコレなんだけど」
娘友は手紙を広げた。
娘「……なんだか王女らしくないわね 当たり障りのないというか」
娘友「でしょ それとコレも入っていたの」
娘「コレって……ロウソク?」
娘友「そそ それでココに書いてある『病に焼きミカンが』云々ってあるでしょ」
娘「そうね……焼きミカン……」
娘友「それとこの手紙 行間がけっこう空いてるでしょ」
娘「ああ それでロウソクを」
娘友「わかった? ちょっと火をつけて」
娘「”火球”」ボッ
娘友「で あぶり出てきたのがコレ」
娘友は少年エルフにあぶりだしの手紙をみせた。
少年エルフ「へぇ あぶりだしか懐かしい…… えっとなんて書いてあるの?」
あぶり出しの字はやたらと達筆である。
娘「まぁ要約すると王女は結界に閉じ込められてるみたい」
少年エルフ「え!? そうなの」
娘友「それで抜け出すのにこの国にあるお宝を持ってきてほしいんだって」
少年エルフ「おたから? 具体的にはどんな?」
娘「元王家の家宝 変身ベルトだって」
少年エルフ「元家宝ってどういうこと?」
娘友「この国に王女のお姉さんが嫁いだ時の嫁入り道具らしいわ」
皇太子妃(第四王女)「きゃー本当に娘様? 感激だわ」
娘「ありがとうございます…… なぜ私の事を」
皇太子妃(第四王女)「これこれ勇者新聞呼んでるの あなた載ってるでしょ」
娘「本当 でもなにこの新聞 王女と調査隊のことばかりじゃない」
娘友「あらー 言ってなかったっけ? アタシが新聞会社買収したの 王女の活躍と調査隊の結果を届けてるわ」
少年エルフ「いつのまに……」
皇太子妃(第四王女)「他にも男子くんカッコいいわよね~ 今日は居ないの?」
娘「いません…… あと王女からの言伝がここに」
皇太子妃(第四王女)「あらこれ 懐かしいわねあぶり出し コレ教えたのアタシなの」
少年エルフ「ええっとそれで変身のベルトは貸していただけますか?」
皇太子妃(第四王女)「あ うん 出来るならそうしてあげたいんだけどねー いまね ないの」
娘「ないといいますと?」
皇太子妃(第四王女)「しばらく前に海賊に盗まれちゃったの」
海賊頭「ふっふっふ念願の変身道具を手に入れたぞ」
子分A「あとは魔力があれば使えますね」
海賊頭「そうだな どこかで魔法使いをさらってだな……」
子分B「おかしらー 大変です海が」
海賊頭「なんだそうぞうしいな」
子分C「海が立ってます」
海賊頭「はぁ?」
子分A「なんだそりゃ」
子分B「とにかくに外を見てください」
海賊頭「なんだありゃ!?」
外を見ると海から垂直に海流が流れている。
○近くの海岸
少年エルフ「んーとあの辺かな? ”大水流”」
バッシャアアアアアンン
ドドドドドド
\どわー/ \ひいー/
娘「パパスゴイわ まるで水龍ね」
娘友「狙い通り海賊が流れてきたわよ」
少年エルフ「娘 やり過ぎちゃダメだよ」
娘「わかってる手加減するわ(とはいっても海水まみれじゃね)……”雷撃”」
バリバリバリドドドーン
\\ウギャアアアアアアアアアア//
娘「んー やっぱりあまり意味なかったわね」
海賊頭「」
子分A「」
子分B「」
子分C「」
プスプス……
娘友「いいじゃない 昔から『悪党に人権はない』っていうじゃない」
少年エルフ「いやいや あると思うけど……」
娘「えっと 例の魔法道具は……」
娘友「アレかな このオッサンが装備してるわ」
娘「うわ 面倒くさいわね」
海賊頭「くくく やってくれたなお前達」
娘友「うわ 起きた」
海賊頭「今ので魔力が充填された俺の悲願が達成される!」
娘「離れて! 変身するつもりよ」
少年エルフ「え!?」
海賊頭「とうっ ”変身”!」
ピカーッ
海賊頭のベルトが輝く!
娘友「うおっ まぶし」
少年エルフ「え?」
娘「パパ 見ちゃダメ」
娘友「キモッ」
海賊頭「なんだと!? この美少女海賊に……なってねぇ!? なんじゃこりゃあ!?」
海賊頭はセーラー服で女装したオッサンに変身した。
娘「それはこっちのセリフよヘンタイ! ”電撃”」
バリバリバリ
海賊頭「ギャアアア」
海賊頭を倒した。
ドサッ
海賊頭「ぐ……何をやっても経済効果のあるピチピチの女子高生になりたい人生だっ……た ぐふ」
娘友「最低の最後の言葉ね」
娘「いやいや気絶しただけでしょ」
ガラガラガラ
娘友「ということで褒美にあっさりと変身ベルトを貰えちゃったわね」
娘「そうね 燃費が悪い上にまともに使えないって話よね」
少年エルフ「まともに使えないってどういうことかな?」
娘友「あの海賊も使ったけど まぁ見れたものじゃなかったわよね そういうことじゃない?」
少年エルフ「えっと魔力充填するから使ってみていい?」ドキドキ
娘「え?」
娘友「あらエルフさんチャレンジャーね~ はいどうぞ」
娘友は変身ベルトを少年エルフに渡した。
少年エルフ「ありがとう…… ”渡魔”」キュイン
少年エルフは変身ベルトに魔力を充填していく。
娘友「何に変身するつもりかな?」ボソ
娘「なんとなく想像はつくけど……」ボソ
少年エルフ「よし……(180センチ180センチ180センチ)”変身”」
ピカ―
娘「いちいち光るのね」
娘友「それはお約束でしょ」
光が収まり変身した少年エルフがあらわれる
少年エルフ(180センチ?)「うわ 娘より高い やったぁ!」
少年エルフが娘を見下ろして喜ぶ。
娘「パパ あの……自分の体をよくみて」
少年エルフ「え? うわぁなにこれ!?」
娘友「うわー エルフさん胴長っ」
少年エルフ(胴長)「えー こんなはずじゃ」
娘友「まぁ まともに使えないっていうのはこういうことなのね」
娘「いいんじゃない? 一応背は伸びたしダックスフンドみたいでカワイイわよ」
少年エルフ(胴長)「こんな180センチやだよ 靴下も履けないじゃない」
娘「だったら私が履かせるわよ 靴下もズボンも下着だっていっそのこと上から下まで全部」ハァハァ
娘友「娘おちつけ それ以上はいけない」
娘達は第七王女の手紙に書かれていたようにホワイトドラゴンの元へ来た。
白竜「なんだか外が騒がしいわね」
娘友「第七王女が脱走したみたい コレ(変身ベルト)はいらなくなっちゃったかな?」
白竜「あらー ちゃんと持ってきてくれたのね懐かしいわソレ」
少年エルフ「知ってるのコレ?」
白竜「知ってるもなにもワタシの物だったから いつの間にか王家の家宝になっちゃってたけど」
娘「でもそれまともに使えないわよ」
白竜「コツがいるのよ 変身後の具体的なイメージがないと思い通りにはいかないから」
娘友「で 王女はそれでどうやって脱走するつもりだったのかしら」
白竜「聞いてないけど……以前相談してたヤツかな? 変身したワタシが王女ちゃんを助けにいくカンジ?」
少年エルフ「そんな相談してたんだ」
白竜「王女ちゃんがアナタ達にソレをとって来させたならきっとそういうこと」
娘「たしかに王女ならそれくらい考えるわね」
白竜「あら? 逃げ出した王女ちゃんがどうするかはわからない?」
少年エルフ「えーと?」
娘「調査隊を続行するわね 魔王を見つけるまで」
白竜「だとしたらどこへ?」
娘友「えーと調べたところ以外?」
少年エルフ「それだと範囲が広すぎるよ」
娘「帝国領ね」
白竜「はい正解」
少年エルフ「え?」
娘友「なんで?」
白竜「王女ちゃんには実は一番調べにいきたい場所があったの」
少年エルフ「どこ?」
娘「帝国領北東部 元魔法王国……さらに言えば 勇者と魔王の決戦の地」
白竜「そういうこと 元魔法の根城があった所よ魔王が居る可能性が一番高いわ」
少年エルフ「そんなところが……」
少年エルフ「どうするって?」
白竜「カンタンよ王女ちゃんを追いかけるか そうしないのか」
娘友「そんなの決まってるじゃない一緒にいかなきゃ」
娘「そうよね放っておけないわよね」
少年エルフ「ん~ やっぱりそうだよねぇ」
白竜「じゃ決まりってことで 出かける準備をするわね」
白竜は指に変身ベルトを着けた。
白竜「あ すごい魔力満タンじゃない エルフちゃんね ありがと」
少年エルフ「うん でも着ける場所そこでいいの?」
白竜「そうよ ワタシの指輪なの」
少年エルフ「そうだったんだ」
白竜「それじゃ久しぶりだけど…… ”変身”」
ピカ―
門番「お……(娘さん達だな 白竜の所からの帰りか)」
娘「お疲れさまー」
門番「うむ」
少年エルフ「お邪魔しましたー」
門番「うむ」
娘友「お勤めごくろうさまです」
門番「うむ」
???「お世話になりましたー」
門番「うむ? ……(4人だったか?)」
○
少年エルフ「すごいバレなかったね」
白竜(人型)「当たり前よ どうみてもニンゲンだもの」
娘「でもなんでオッサンなのよ それじゃあオネエじゃない」
白竜(人型)「しかたないでしょー 久々だったんだから(まぁ本質から大きく変容できないんだけどね)」
娘友「それじゃ さっそく王女を追いかけましょう」
白竜(人型)「まって準備がいるわ」
白竜(人型)「もちろんよ! ……ちゃんと日焼け対策しなきゃ」
娘「あ~もう この美白マニアは~」
娘友「そーね じゃあウチに寄りましょう新商品のサンプルもあるわ」
白竜(人型)「ホント? いくいく」
タタタタ
娘友と白竜は走り出す。
娘「あーあ こんなんでいいのかしら」
少年エルフ「ほら 行こう娘」
少年エルフが娘を促す。
娘「わかったわ いきましょうエルフ」
少年エルフと娘は走りだした。
○
兄王「結局逃げられてしまったのか……」
第六王子「ホワイトドラゴンも居なくなりました」
兄王「すぐに探しに……男と女騎士を呼べ」
第三王子「二人は北の国に新婚旅行中だよ、呼んでも一週間はかかるよ」
兄王「くそうっ 王女めこれも計算の内か!? 誰でもよい誰か探しに行け」
第六王子「私の宮廷魔術師達がすでに追っています」
兄王「そうかよし この件はお前に任せるぞ」
第六王子「御意」
第三王子「……(男たちに知らせたほうがいいかな)」
警備兵「だから許可証をもらってこいって言ってるだろうが」
第七王女「それは出来んと言っておるじゃろう 時間が惜しいのじゃ」
第七王女が警備兵と押し問答を繰り広げている。
女兵士「うーん ダメそうですね 身分を明かすわけにもいかないし」
男「明かしたところで許可がおりるとは考えられませんよ むしろ捕まる可能性のほうが……」
第七王女が警備兵との押し問答をあきらめて戻ってきた。
第七王女「まったく我が国の関所がこんなに厳しいとは……嘆かわしい」
男「……(嘆くところか?) しかし実際どうします?」
第七王女「こうなれば夜をまって白竜を呼ぶしかあるまい きっと娘たちも一緒であろう」
男「白竜をって どうやって呼ぶんですか?」
第七王女「うむ召喚の儀式を教えてもらっておる」
白竜(人型)「あら ずいぶん復興してるのね」
娘友「ゾンビ騒動からずいぶん経ったから」
少年エルフ「あ 女薬師の店と……僕の家だったところ……」
復旧した薬屋の隣は更地になっていた。
少年エルフ「う……わかってたけど悲しい」
娘「無事な荷物は教会で預かってるって」
少年エルフ「そっかぁ 女薬師はどうしてるのかな……あれ閉まってる」
娘友「ここに張り紙があるわよ」
貼紙「しばらく旅に出ます ―女薬師―」
少年エルフ「ええー!? 無責任なことして もー」
娘「仕方ないんじゃない? 女薬師にもいろいろあったし……(傷心旅行ね)」
少年エルフ「むー 勝手なんだから…… それにしてもこんなところにいていいの? 王女を探さなくちゃ」
白竜(人型)「大丈夫よ あの子から連絡がきたらすぐに飛ぶから そのためには人目が少ないところのほうがいいから……」
ピロロロロ ピロロロロ
少年エルフ「何の音?」
白竜(人型)「きたわ連絡よ」スッ
白竜は髪の中から角笛のようなものを取り出すとなにやら覗き込む。
ピロロロロ ピッ
白竜(人型)「あらまだ国境のあたりね これならすぐに着くわ」
娘「へぇ そうなの…… それで今の角みたいなの何? とれるの?」
白竜(人型)「これはスマ……まぁ受信機よ それより準備はいい? 忘れ物ない」
少年エルフ「ないよ」
白竜(人型)「アタシの日焼け止めは持った?」
娘友「とりあえず2週間分はあるわよ」
白竜(人型)「わかったわ」
娘「……(一番荷物になってるわよねアレ)」
バサッ
ホワイトドラゴンが変身を解いて翼を広げた。
○帝国領西部の田舎町
娘友「というわけで 王女と合流して白竜でここまで飛んできました」
少年エルフ「どうして目的地までいかなかったの?」
白竜(人型)「ここから先はどうしても人目があるし 昼間は飛びたくないわ」
第七王女「よしここからは馬車を確保せねば……」
ブロロロ……
馬が引いて無い馬車のようなものが走っていった。
少年エルフ「なに今の!?」
娘友「あれは自動車よ 帝国では一般的な乗り物よ」
第七王女「帝国は魔導が発達しておるからな……よしあの自動車に乗っていくのじゃ」
娘友「じゃああっちに ここじゃ乗り合い馬車も自動車らしいわ」
女兵士「へー 面白そう」
男「あんな不気味なものに乗るのか」
娘「不気味って 魔法と機械よ」
男「……俺は馬のほうがいいな」
娘「馬は国境で返したでしょ あきらめなさい」
男「むぅ」
第七王女「うぬぬ 王都の貨幣は使えぬとな」ぐぬぬ
娘友「忘れてたわねー 国境の町を飛ばしたから両替してなかったわね」
少年エルフ「それじゃあ自動車に乗れないの?」
女兵士「それどころかほぼ無一文ですよ」
娘「都まで行くか国境まで戻るか……」
白竜(人型)「えー 今日はもう飛びたくないわよ お肌が限界よ」
男「(このドラゴンは……)」
第七王女「いーやーじゃー! 自動車に乗りたいのじゃ 早く進みたいのじゃ!」
少年エルフ「そうは言ってもねぇ」
娘「うーん わがまま始まちゃったわね」
男「困ったな」
???「お嬢ちゃんたちお困りですかい?」
娘友「あーー!」
???「おーー!? 商人さんのお嬢さんじゃないですか!?」
娘「知り合い?」
娘友「そうよ 旅の吟遊詩人 よくイベントや宿屋で演奏してもらってるわ」
吟遊詩人が現れた。
吟遊詩人「いやですよお嬢さん あっしらのことは今風にシンガーソングライターといってくだせぇ」
娘友「またそんなガラにもないこといって でもちょうどよかったわ」
ブロロロロ……
吟遊詩人「ほーそれで魔法都市まで行きたいってわけですか」
第七王女「そういうことじゃ」
娘友「でも路銀がこころもとなくてねー」
吟遊詩人「そんなら この先に歌うと銭をもらえるところがあるんですよ やってみますかい?」
第七王女「ほう 面白そうじゃな」
娘「えー そんな歌なんて歌えないわよ」
娘友「大丈夫大丈夫 知ってる歌ならなんでもいいから よーし稼ぐわよ」
男子「俺は歌とか無理なんだが」
吟遊詩人「だったら楽器ですね なぁに簡単なのを教えますから」
少年エルフ「で できるかな」
娘「大丈夫よパパ なんとかなるわ」
バァン
吟遊詩人「おやっさん 居るかい」
DJ「なんだお前か 新曲でもできたのか」
吟遊詩人「いいや今日はあっしじゃなくてこっちが歌うんでさ」
DJ「誰だい?」
娘友「ハァイ この子たちは『ビリビリシスターズ』よここで歌えばお金がもらえるって聞いたけど」
DJ「OK 新人なら大歓迎だ スタジオの準備をするからそっちも用意してくれ」
DJ「ブラボ! 若い子が懐メロを歌うとこうなるのかこれはイイゾ! おっとテープを替えるから少し休憩してくれ」
娘友「よーしこの調子でいくわよ」
吟遊詩人「すごいなお嬢ちゃんたち これならあっしとバンドを組んでくれやせんか?」
第七王女「あいにく使命があるからの それには応じられぬ」
吟遊詩人「ううん もってぇねぇなぁ」
娘「でも王女こんな古い曲よく知ってるわね」
第七王女「時代劇でよく流れるからのう覚えてしもうた」
女兵士「娘ちゃんだってなんで知ってるの?」
娘「まぁオババに育てられたしね 成り行き?」
女兵士「そうなんだ あたしと似たような感じね」
吟遊詩人「にーさんもドラムうまいじゃないですか バンドでもしてました?」
白竜(人型)「そうね…… 昔取った杵柄ってやつね」フッ
娘「どれだけ大昔よ」
白竜(人型)「それをいわないでよ イケズ!」
少年エルフ「僕たちもがんばろうね」
男子「はい……」タン…タン…タン
少年エルフと男子はカスタネットを練習している。
ブロロロロ
娘友「やったわね 随分稼げたわね」
第七王女「これで魔法都市まで一直線じゃ」
娘「そうはいかないみたいよ」
ブルルン
少年エルフ達は渋滞に捕まってしまった。
吟遊詩人「なんだこんなところで」
少年エルフ「ん……検問みたいだよ」
○検問
帝国軍人「本当にここを通るのか」
宮廷魔術師「ああ」
帝国軍人「タレこみには感謝するが なんで余所者の命令なんかに」
宮廷魔術師「だったら勝手に探してもいいのか?」
帝国軍人「ここは俺たちの管轄だ」
宮廷魔術師「だったら早く見つけてくれ 領主は気が短いんだろう?」
帝国軍人「くそ……(余所者が)」
少年エルフ「って感じの会話してるよ」
第七王女「おのれバカ六め あやつの仕業か」
男子「第六王子が他国にも影響力あるのか?」
第七王女「あやつは魔法都市に留学しておったからのう こちらの領主に顔がきくんじゃ」
女兵士「どうする このままだと見つかっちゃうよ」
娘友「ほかに抜け道は……」
吟遊詩人「そうさね 少し戻ると旧道があるね」
女兵士「どこにつながってるんです?」
吟遊詩人「山向こうの村にでるよ そっから魔法都市へも抜けれるよ遠回りだけども」
娘「他に道は?」
第七王女「やりあうとバカ六に居所がばれるのう よし旧道に向かうのじゃ」
吟遊詩人「んー 後ろも混んでるし旧道は車が通れねぇんだわ」
娘「歩きで行くしかないのね」
第七王女「うむむ 仕方ない徒歩で山越えじゃな」
女兵士「なんだか犯罪者みたいですね」
男子「実際に密入国者ですよ俺ら」
白竜(人型)「えー歩くの やだー アタシはこのまま残るわ多分ばれないでしょうし」
娘「あなたねぇ……」
第七王女「それならわらわ達が山を越えたところで呼べばよかろう すぐに飛んでこれるのじゃから」
娘友「そうね 王女がそれでいいなら」
白竜(人型)「さすが王女ちゃんわかってるわね ある程度の荷物も一緒に運ぶから最低限だけ持っていきなさいそのほうが楽でしょ」
第七王女「よしならば善は急げじゃ 支度をするのじゃ」
娘友「渡された地図によるとここから旧道らしいわね」
女兵士「わー 草ボーボー ピクニックですね」
第七王女「よし出発じゃ」
第七王女たちは旧道を歩き始めた。
男子「しかし随分と古いが本当に大丈夫か」
娘「大丈夫よ山には慣れてるでしょ ねぇパパ」
少年エルフ「……」
娘「パパ?」
少年エルフ「え!? うん 大丈夫慣れてるから」
娘「どうしたの何か気配がするとか?」
少年エルフ「え いや」ビク
娘「やーめーなーさーい パパを脅かさない」
娘友「ハイワカリマシタから その手を放してクダサイ」
娘「でも本当に変な気配とかないの? パパ」
少年エルフ「うん……変な気配とかはないよ」
娘「そう じゃあ行きましょう ほら王女達に置いてかれちゃうわ」
少年エルフ「うん……行こう」
少年エルフ「……(なんだろ気配はないけど……これは……匂い?)」
少年エルフ達は草木の生い茂る旧道を歩いていく。
第七王女「ヘイホーヘイホーヘイヘイホー♪」
第七王女は小唄を歌いながら荒れた旧道を歩いていく。
男子「王女足元気を付けてくださいよ」
第七王女「わかっておる」
テクテク
女兵士「男子君って結構面倒見がいいんだね」
少年エルフ「そうだね結構世話焼きだから」
女兵士「うーんしっかりしてるよねぇ 若いのに……王女を任されるだけはあるよね」
少年エルフ「任されるって女兵士さんも護衛でしょ?」
女兵士「え!? そうね一応任命されたしあたしも護衛よね そうだったわ」
少年エルフ「えっと? もしかして違った?」
女兵士「そんなことないって 王女サマの護衛よゴエー あははは……」
少年エルフ「?」
テクテク
娘友「なんで女兵士さんが一緒かと思ってたけど……事態は深刻のようね」
娘「深刻ってあなた…… 考えすぎでしょ」
娘友「でもねぇ なんかアタシは相手されてないし……やっぱ年上って魅力的なのかしら」
娘「さぁ 人によるんじゃない?」
娘友「男子君の場合は?」
娘「アレは…… 年より性格でしょ本人が結構メンドクサイ性格だし」
娘友「そう? でも実際5歳以上上ってアリ?ナシ?」
娘「アリよ 私は40以上離れてても構わないわ」キリッ
娘友「娘に聞いたアタシがバカでした」
少年エルフ「わあ なにこれ変わった木だねぇ」
旧道は竹林の間を通っていた。
娘友「これは竹よ こう見えても草の一種なんだって」
少年エルフ「へー これで草なの? 不思議」
第七王女「この竹の小さいのをタケノコというらしいがそれを食する習慣もあるそうじゃ」
少年エルフ「おいしいのかな?」
娘友「この先の村でもしかしたら食べれるかもね」
娘「そうね…… そうこう行ってるうちに村だわ」
○竹の里
第七王女「随分と静かだね」
村は静まり返っている。
少年エルフ「ん? あっちに誰かいるみたいだよ」
娘友「こんにちわー」
ガラガラガラ
「「きゅあああ」」
玄関を開けると、おびえた様子の村人が奥に集まっていた。
娘「何? 集会……にしては変ね」
若者「あなたたち一体どこから!?」
一人の村人が進み出てきた。
娘友「どこって旧道を通って……」
若者「本当ですか!? 一体どうやって……もしかして帝国軍の方ですか? 援軍はいつこちらに!」
第七王女「なんじゃ落ち着くのじゃ ここに来たのはわらわ達だけじゃ」
若者「ああ そんな……助けにきたのじゃないのですか……」
第七王女「ふむ 助けないとは言っておらんぞ 何せわらわは二代目勇者じゃからな」
若者「ゆう……しゃ?」
第七王女「いかにも 困った人を助けるのは勇者の勤めじゃて」
若者「本当ですかありがたい この村を助けてください」
第七王女「無論じゃ かっかっか」
娘友「あらー 王女のスイッチが入ったみたね」
娘「仕方ないわね」
若者「あの山の中腹に杉の村がありましたが山から化け物が出てきて村人はみんなつかまってしまいました」
第七王女「化け物とな 安心せいわらわ達はこう見えても魔物退治には慣れておる」
若者「おお 確かにお供の方は強そうだ」
若者は男子をみてうなずく。
娘「図体ばっかりでかいくせに」ボソ
男子「ほっとけ」ボソ
若者「私は杉の村の者ですが化け物に襲われたときに一人だけ逃げ延びました 山を下りてこの里に助けを求めたところ 男衆が杉の村に行きましたが……戻ってきませんでした」
第七王女「皆捕まったというのか?」
若者「おそらく…… 山を下りて帝国軍を呼びに行こうとしたものも村を出た途端に化け物に襲われ杉の村のほうへ連れられていきました。」
娘友「変ね? それならアタシ達も襲われそうなのに?」
女兵士「運がよかったのかな?」
娘「どうかしら」
若者「それでここに残るのは年寄と女子供だけです ここもいつ襲われるかおびえていたところです」
少年エルフ「それでみんなここに隠れていたんだ」
男子「それにしても村が丸々一つやられたなんて……一体どんな化け物なんだ?」
若者「……」
第七王女「どうしたのじゃ?」
若者「今あなた方に話したところで……信じてもらえるものかどうか」
第七王女「ふむ? 大抵の魔物なら見てきておるが……獣の類かの?」
若者「いえ あれは獣なんてもんじゃありませんでした」
娘友「じゃあゾンビとかお化け?」
若者「ゾンビ…… まだゾンビが居たというほうが信憑性があったでしょう」
少年エルフ「そんなに言えないようなものなの?」
若者「そうですね……実際に見ないことには」
第七王女「ようし ならばわらわ達が杉の村までいって退治してこようぞ」
若者「おお なんと勇敢な! 流石勇者を名乗られる方たちだ」
第七王女「うむうむ」
第七王女は鷹揚にうなずいている。
娘「実際半分あきらめてるけどね」
娘友「そうね」
少年エルフ「そうだったの?」
若者「とにかく私は一度村の様子を見てこようと思っていたところです」
娘友「でも村を出たら襲われるって」
若者「私だけが知る近道を知っています そのおかげでここまで逃げてこられたので」
第七王女「なるほど では案内を頼む」
若者「わかりました ただしあなた方がついてこれるかどうか」
若者「ここを登ります」ひょいひょい
男子「……ここをか?」
若者は身軽に断崖を登っていく。
第七王女「どうした登らぬのか?」ひょいひょい
第七王女は若者に続いて登っている。
娘友「アタシ無理 これは登れないわ」
女兵士「あたしもー」
娘「だらしないわねぇ」ひょいひょい
少年エルフ「ええ!? 僕たちだけ?」ひょいひょい
娘友「娘と王女はともかくエルフさんも意外と登れるのね」
少年エルフ「えっと 一応山育ちだから」
若者「ほかの方はこれませんか ならば公民館を守ってくれませんか」
男子「わかった 公民館を守ろう……王女無理しないでくださいよ」
第七王女「わかっておる…… まったく女騎士に似て来よって」ぶつぶつ
男子「娘とエルフさん王女を頼みます」
娘「わかってるって」
少年エルフ「男子君たちも気を付けてね」
男子「はい」
男子たちは公民館に引き返していった。
第七王女「村まではどれくらいじゃ?」
若者「ここを登ればすぐです 行って帰るだけなら明るいうちに戻れます」
娘「行って帰るだけならね」
村はずれの小屋に少年エルフ達はたどり着いた。
若者「うまく奴らに気づかれずに村に入れました」
第七王女「うむ それで化け物とはどこじゃ?」
若者「ちょっと遠いですが ここから見えます」
第七王女「うむ…… なんじゃあれは!?」
娘「……キノコ?」
少年エルフ「おっきいキノコが踊ってる!?」
村の中心では人間サイズのお化けキノコが輪になって踊っていた。
パタタタパタパタ パタタタ……
若者「この山は地元ではキノコ山と呼ばれています……しかしあんなモノが出てくるとは」
第七王女「まったく信じられんのう」
娘「それで話しても無駄と言っていたのね」
若者「キノコが襲ってきたなんて話したところで私の正気を疑われるところでしょう」
第七王女「まったくじゃな それに短いが手足までついておるの」
若者「確かに短いですね おかげで足は遅いですが奴らはいくらでもいます」
第七王女「ホントじゃのう広場がキノコで埋まっておる」
娘「それにしても踊るなんて随分人間ぽいことするのね」
少年エルフ「ホント知性があるのかな? あれ?まって人の声がするよ 広場の奥!」
少年エルフが指摘すると広場の奥に村人が捕まっているのが見えた。
若者「竹の里の村人です やっぱり捕まっていましたか」
娘「あいつら捕まえた人をどうする気?」
村人A「おのれ何をする気だぁー」
お化けキノコ「……」
バフッバフッ
お化けキノコは頭を激しく振り胞子をばらまいた。
村人A「げふっげふっ」
村人B「うへぇ 鼻にはいった」
村人C「おいお前……頭!」
にょき
村人B「うわぁキノコが生えたぁ!? お前も!」
にょき
村人C「ひぃい!? なんだこれ抜けねぇ」
村人A「お前ら大丈夫かしっかりしろ……おのれこの化けキノコが焼いてくっちまうぞ!」
お化けキノコ「……」ぬぅ
ズボッ
村人A「うげっ!?」
お化けキノコが村人の口に手を突っ込んだ。
ズボッ
村人A[うげげ マジに食っちまった……うぐぐ」
にょにょにょき
村人A「な!? キノコが体中にうぐわわ」
村人の全身からキノコが生え出しおおわれていく。
若者「そんな……」
第七王女「なんということじゃあのキノコは皆 人間だったのか!?」
娘「うそ……」
少年エルフ「……ちがうよ キノコにされた人とキノコといるよ」
第七王女「わかるのか エルフよ?」
少年エルフ「キノコにされた人は心臓の音が聞こえるよ そうだね広場にいるキノコの半分にならないくらいがキノコにされた人だね」
若者「ちょうど杉の村の人口ぐらいですね納得です それにしてもすごい耳がいいんですね」
少年エルフ「ええまぁ ちょっと耳が長いので」テレテレ
第七王女「しかし人が混じっておるなら一網打尽にするわけにもいかんのう」
娘「そうね 戻せるか分からないけど」
第七王女「しかし人が混じっておるなら一網打尽にするわけにもいかんのう」
娘「そうね 戻せるか分からないけどむやみに倒すわけには」
少年エルフ「……あれが病気みたいなものなら薬が作れるかも サンプルと時間があれば……」
第七王女「そうか エルフは薬草学に詳しいのよな」
若者「そうなんですか? そんなに小さいのに……」
少年エルフ「う……(小さい) その叔母が薬師だったので」
若者「なるほど しかしどうやってサンプルを……」
第七王女「なにあやつらを1人捕まえれば」
ちびキノコ「」
パタパタ
広場の端で小さいお化けキノコが歩いている。
第七王女「今じゃ」
バサッ
ちびキノコ「!?」
第七王女はちびキノコを捕まえた。
第七王女「こやつ足だけじゃのう これくらいならカワイイものじゃ」
若者「捕まえましたか それにしてもこいつら結構ニブイですね 気づいてない」
広場ではお化けキノコが輪になって踊りつづけている。
少年エルフ「気づかれないうちに逃げようよ」
第七王女「そうじゃな しかし人をさらう魔物がさらわれるとはな……夢にも思っておらんじゃろうて」
娘「そうでしょうね」
ちびキノコ「ッ!!」
パタパタタタ
ちびキノコは足を打ち合わせている。
若者「なんだろ拍手みたいですね 足だけど」
娘「……! 拍手じゃなかったみたいよ」
第七王女「なぬ?」
お化けキノコ達「「……」」
気づくとお化けキノコは踊りをやめてこちらを向いている。
少年エルフ「ひっ こっち見てる!?」
第七王女「まさか 目玉がついておらんのだぞ」
ちびキノコ「」
パタタパタタ
娘「まさかこの音」
パタタパタタタ
ちびキノコの音に呼応するようにお化けキノコが手を打ち鳴らして襲い掛かってきた。
少年エルフ「うわぁ 拍手で話してるんだ!」
第七王女「おのれ目玉はなくとも耳はあったのか!?」
若者「とにかく逃げますよ!」
少年エルフ達は逃げ出した。
村人「どうぞ名物のタケノコごはんです」
女兵士「わーいおにぎりおにぎり」
村人「あれ? お連れの方は?」
女兵士「男子君は外の見回りしてます」
村人「あれ 女の子もですか?」
女兵士「あれ? 友ちゃん?」
○
男子「友 どこへ行くつもりだ危ないぞ」
ギク
娘友「えっと ちょっとそこまで」
男子「魔物を見に行くつもりだろう」
娘友「ばれてた? まぁちょっとだけ撮影しておきたくて」
男子「……(例の新聞か)わかった俺も一緒にいく」
娘友「助かるわ 男子君もかっこよく撮ってあげるから」
男子「……俺はいい」
娘友「暗くなってきたわね」
男子「山あいだからな……(王女無茶してなければいいが)」
娘友「さーて件のモンスターはいずこ」
男子「居なかったら戻るぞ あまり公民館から離れられないからな」
娘友「いないかなー カモンカモーン」
ボフッ
お化けキノコ「……」
娘友のすぐ隣にお化けキノコが生えてきた。
娘友「きゃあああ」パシャパシャ
お化けキノコ「!?」
男子「下がれ! 危ない」
男子は娘友をかばった、お化けキノコのしかかり攻撃!
娘友「きゃああ男子君!」パシャパシャ
ボフッボフッ
お化けキノコは胞子をまき散らしている。
男子「ゲホゲホ この野郎!」
男子はお化けキノコを投げ飛ばした。
ドシン
男子「よし逃げるぞ」
娘友「はいはい」
タタタタタ
男子と娘友は公民館へ走りだした。
男子「……よし振り切ったようだ」
娘友「びっくりしたわね キノコが襲ってくるなんて」
男子「まったくだ」
娘友「でも男子君カッコよかったわよ いい写真になったと思う」
男子「……そうか?(いいとこなかったと思うが) 」
娘友「男子君? 顔色悪いわよ大丈夫?」
男子「そういえば気分が悪いな……さっきの粉は毒だったか?」
娘友「タイヘン! 早く戻りましょう」
○公民館
娘友「女兵士さん手伝って 男子君が!」
村人「うわあああ キノコ!」
娘友「え?」
女兵士「うわーどうしたのそれ キノコ生えてるよ」
男子(キノコ)「……なに?」
男子の頭からキノコが生えていた。
若人「早く! 日が暮れたら逃げれませんよ」
少年エルフ達は暮れかけの山中を走っている。
ボフンボフン
地面からお化けキノコが次々と生えてきた。
第七王女「おのれ次から次へと」
娘「パパ あれは?」
少年エルフ「キノコだよ 鼓動がない」
娘「じゃ遠慮なく! ”電撃”」
バリバリバリ
お化けキノコ達「!?」
お化けキノコは黒こげになったが、しかし。
ボボボン ボフンボフン
少年エルフ「うわぁ!? 増えた」
焦げたお化けキノコの周りから更に増えたお化けキノコが生えてきた。
若人「落雷あとにはキノコがよく生えるんですよ」
娘「だったら燃やすわ ”閃熱”」
ヒュゴオオ
お化けキノコ「ッ!!」
お化けキノコが燃えてのたうち回る。
第七王女「おうわ こやつら!?」
枯草に火が燃え移り行く手が火の海になった。
若人「ああ近道が!? 仕方ありません山道を下りますよこっちです」
第七王女「山火事にならんかのう?」
娘「こいつら思ったよりやっかいね」
少年エルフ「とりあえず公民館に」
ダダダ
少年エルフたちは公民館へ向かう。
若人「ここまでくればもう少しです」
少年エルフ「なんとか戻ってこれたね」
娘「キノコもここまでは来ないみたいね」
第七王女「しかしこやつが暴れてかなわんぞ」
バタバタ
ちびキノコが袋の中で暴れている。
少年エルフ「……山に帰りたいのかな?」
娘「仕方ないわよ ほら着いたわ」
娘友「――それはキノコというにはあまりにも大きすぎた
大きく分厚く重くそして御立派すぎた
それはまさにキノコヘッドだった」
男子(キノコ)「行ってる場合か!? なんとかしてくれ」
女兵士「うわー 男子君のキノコおっきい」
男子(キノコ)「……」
娘友「……天然とは才能よね」
男子(キノコ)「とにかく助けてください」
女兵士「え?」
村人「ひいい もうだめじゃおしまいじゃー」
娘友「そんな大げさなちょっと御立派になっただけで」
男子(キノコ)「ぐわ うぐ ぐむむむ」
男子の全身にキノコが生え出して体をを覆っていく。
○
\わー/ \ひえー/
第七王女「何事じゃ!?」
若人「まさかここまで!?」
バタン
娘友「オタスケ―」
娘友と村人の何人か公民館から飛び出してきた。
少年エルフ「どうしたの!?」
娘友「あ エルフさん じつはコレコレシカジカ……」
若人「そんなここまで来るなんて……今までなかったのに」
女兵士「ひゃー 無理っぽいわー」
女兵士も公民館から出てきた。
第七王女「女兵士! 無事か」
女兵士「王女 あたしは大丈夫だけど男子君と何人かキノコに……」
第七王女「なんじゃと男子が」
第七王女が公民館の中をのぞき込む。
キノコ人間達「ふぉふぉふぉ……」
ノロノロ
第七王女「なんということじゃ男子があの中に」
少年エルフ「そんな男子くん……」
娘「とにかく体制を整えないと……どこかに隠れましょう」
村人「だったら竹林に 作業小屋があります」
若人「ここです」
逃げ延びた村人と少年エルフ達は小さな作業小屋にたどり着いた。
娘「……ここはまだ安全のようね」
第七王女「さてどうするかのう」
若人「これでは村を捨てるしか……」
女兵士「えー 男子君あのままなの?」
少年エルフ「それは……」
第七王女「弱点とかはないのか?」
ガヤガヤガヤ
娘友「落ち着いて! 状況を整理しましょうよ」
○
娘「まず杉の村の報告ね 王女」
第七王女「村はキノコどもに占領されており村人もキノコ人間にされておった」
若人「この村の男衆もキノコにされてました」
\うおぉ/ \せがれー/
女兵士「人をキノコにするなんて…… おいしくなさそう
少年エルフ「食べる気だったの!?」
娘友「それで男子君もキノコ男に…… あたしをかばったから」
娘「かばったってどこで襲われたの? 里までは来ないはずでしょ?」
娘友「えーと見回りしてたら 急にいたのよ ホントホント」
娘「……(若干ウソくさい)」
女兵士「そもそもあのキノコは一体どこから来たの?」
少年エルフ「うーん 今までいなかったんだよね?」
若人「そうですね…… 数か月くらいまえから山に変なものが出る噂はありました」
第七王女「わらわの国でも急に魔物が出るようになったしの…… それにしても数か月前になにか変わったことはなかったかえ?」
若人「変わったこと…… そういえば季節外れの嵐がありましたね その後に山でキノコが大量に発生して総出で収穫しましたよ」
娘友「収穫されたキノコの怨念が魔物になったのかしら?」
女兵士「まさかー?」
娘「どこから来たより これからどうするかを考えない?」
第七王女「そうじゃな このまま放っておけば被害が増えるじゃろう」
娘友「魔法でバーっと退治できないの?」
娘「それはね……」
娘はお化けキノコに魔法を使ったあらましを説明した。
娘友「雷効かないの!? ヤヴァイじゃない」
娘「効かないわけじゃないけど……増えるのよ」
若人「あれには参りましたね」
娘友「でも火の魔法は効くのよね?」
第七王女「確かに火は効くが火事になってしまうの」
若人「村人ごと焼き払うというのも…… 本当に助ける手段はないのでしょうか?」
少年エルフ「うん…… そう思ってサンプルを捕まえてきてるんだけど」
バタバタ
ちびキノコが入った袋が暴れている。
娘友「下手に開けないほうがいいかも」
少年エルフ「そう思ってた所 あれを調べれば特効薬とか駆除剤がとか作れるかもしれないけど」
若人「でもそんな都合よく駆除できるものですか? あれに襲われたものは大抵キノコにされてるんですよ 恐るべき増殖力です」
娘「増殖力ねぇ でも今まで山にしかいなかったのよね もしくは山にしか居れなかったか」
少年エルフ「うーん そこだよね……どうしてこの里は今まで襲われなかったのかな?」
娘友「うーん たまたま?」
第七王女「縄張り意識があるのじゃろうか?」
娘「普通縄張り意識ある動物は群れないわよ」
第七王女「そうじゃったな」
娘友「というかアレが動物かどうかも不明よね」
少年エルフ「それに僕たちがここに来た時にも襲われてないよね?」
女兵士「そういえば襲われなかったね」
少年エルフ「それにさっきも…… どうして若人さんや女兵士さんは無事だったの?」
女兵士「え?」
若人「確かに私もキノコになっていてもおかしくなかったですね」
少年エルフ「なにか意外なものが弱点なんじゃない? そのあたりにあるような……」
娘「男子はキノコにされたのに女兵士さんは無事 この差って?」
女兵士「えーと? 性別が違う?」
第七王女「それだと若人殿がキノコにならなかった道理が通らぬ」
少年エルフ「なにか変わったことした? なにか薬を飲んだとか塗ったとか?」
若人「いえ特に変わったとこは何も……」
女兵士「あ!?」
第七王女「なんじゃ!? なんぞ気づいたのか」
女兵士「でもまさか」
第七王女「なんでもかまわん言ってみるのじゃ」
女兵士「おにぎり…… タケノコご飯のおにぎり食べました」
若人「まさか……タケノコ?」
娘友「調べればわかるわ」
娘「どうやって?」
娘友「ここに村人のご厚意いただいたおにぎりがあります」
女兵士「タケノコご飯ー♪」
娘友「ここからタケノコの欠片をとりだして チェスト―っ!」
娘友はちびキノコが閉じ込められている袋にタケノコの欠片を放り込んだ。
ちびキノコ「!!??」
バッタンバッタン
少年エルフ「うわ!? すごい暴れてる」
バタ……シーン
第七王女「動かなくなったのう」
娘友「どうなった?」
少年エルフ「えっと…… うわ ドロドロに溶けてる」
少年エルフは袋を閉じながらいった。
○
若人「まさかタケノコが特効薬とは」
少年エルフ「だから竹林は安全だったんだね」
娘友「というわけで公民館のキノコを駆除しました」
男子「うう? なんだこれは」ドロドロ
男子は溶けたキノコの中から起き上がった。
娘「あーもう 汚いわね 早く洗ってきなさい!」
男子「お おう」
少年エルフ「娘ー もうちょっと言い方ないの?」
娘「いいのよ 心配ばっかりかけるんだから」
少年エルフ「……(一応心配してるんだよねえ)」
第七王女「とりあえずこれでここは何とかなったのう」
若人「そうですね 村人も戻ったようです あとは竹の村を取り戻せれば」
村人「今動ける者がタケノコを採りにいっとるけ お前さんらは今のうちに休みんしゃい」
第七王女「あいわかった ご厚意感謝なのじゃ」
○翌朝
第七王女「皆の者 タケノコは持ったか!」
\オウ!/
少年エルフと村人がそれぞれタケノコやタケノコご飯をもっている。
第七王女「よーし 出発じゃ」
\うおお/
タケノコを持った村人たちとお化けキノコが戦い始めた。
男子「おりゃ」ドス
キノコ人間「フォオオ!?」
キノコが溶けてキノコ人間はもとに戻った。
村人「はっ 俺は一体何を?」
女兵士「すごい 効果抜群ねー」
第七王女「ほれおぬし これを食べるのじゃキノコ耐性がつくのじゃ」
第七王女はタケノコの欠片を村人に食べさせた。
杉の村の村人が次々とキノコから解放されていく。
娘友「えいっ」バシッ
お化けキノコ「ッ!!」
お化けキノコがタケノコで叩かれたところから溶けていく。
娘友「感染しなきゃこいつら楽勝ね アタシでも勝てる」
娘「ほら油断しないで あと相手を間違わないでよ」
娘友「大丈夫だって とう」バコン
キノコ人間「ふぉごご!? イてぇ」
娘友「あ ヤバ」
村人「」バタッ
キノコから戻った村人はそのまま倒れてしまった。
娘「いわんこっちゃない」
娘友「えーと 死ななきゃオーライよ」
娘「そんな適当な」
若人「まぁ タケノコで殴られたくらいなら……柔らかいですし」
娘友「ですよねー よっしゃどんどん行くわよー」
娘「もう…… 珍しく戦えるからってはりきり過ぎよ」
少年エルフ「あまり無茶しないでね…… あ? みんな山から新手だよ」
お化けキノコ達「……」ぞろぞろ
娘友「このタケノコがある限り負けはしない!」
第七王女「そうじゃ おぬしら全部駆逐してくれるわ」
娘友「ぜぇぜぇ とかいったけど ぜぇぜぇ」
第七王女「こ……こやつらどれだけおるんじゃ? ハァハァ」
おばけキノコ達「……」ゾロゾロ
娘「どれだけっていうより……」
ボン
娘の隣にお化けキノコが生えて来た。
娘「シャアッ!」バシュン
娘はタケノコでお化けキノコを薙ぎ払う。
ベシャア……ボボン
溶けたキノコが杉の木に当たるとそこから新たなお化けキノコが生えてきた。
娘「これじゃあキリがないわ」
男子「どうするんだコレ 体力がもたないぞ」
女兵士「それよりも もうタケノコが壊れちゃいました 助けて―」
男子「女兵士さん! せいっ」バシュン
男子が女兵士を襲っていたお化けキノコを薙ぎ払う。
男子「大丈夫ですか」
女兵士「ありがと あ?」
男子「怪我しましたか?」
女兵士「えっと 上――」
ドスン
男子「ぐわ!?」
女兵士「――からキノコが」
男子「早くいってくださいよ うぐ!? ぐわわ」
男子に飛び乗ったお化けキノコが胞子をまくと男子がキノコに覆われていく。
女兵士「きゃああ 男子くん」
少年エルフ「タケノコの効果が弱ってるんだ!? 早く新しいタケノコを」
娘「もうこれしかないわ ほら食べなさい」ぐいっ
男子「それ殴ったやつじゃ ぐげっ!?」
娘は生タケノコを男子の口につっこむ。
男子「ぐおおお にげええええ……」
ドロドロ
男子の体からキノコが溶けていく。
娘「アンタも邪魔よ」パコン
お化けキノコ「」ベシャア
娘が残りのタケノコで殴るとお化けキノコも溶けたがタケノコも壊れてしまった。
娘「ああもう 男子のせいよ まったく」
男子「うげげ(俺がなにをした!?)」
男子は生タケノコの灰汁で舌がマヒしている。
若人「まずいです もうタケノコがありません またキノコにされたものまで」
第七王女「うむむ 撤退じゃ 里まで戻って体制を整えるのじゃ」
女兵士「はーい みなさん里まで避難してくださーい」
第七王女と女兵士が村人を誘導していく。
お化けキノコ達「……」ノロノロ
少年エルフ「あっちいって ”風弾”」ビュオオオ
少年エルフは魔法の風でお化けキノコ達を吹き飛ばした。
娘「パパの魔法が一番無難ね」
少年エルフ「ただの時間稼ぎだけど…… でも里に戻ってからどうするの?」
娘「それは戻ってから考えましょ」
少年エルフ達は追ってくるお化けキノコを吹き飛ばしながら竹の里まで撤退した。
女兵士「どうしますー? 皆さんが集めてくれたタケノコももうこれだけです」
第七王女「少ないのう」
若人「こうなったら山ごと焼いてしまいますか」
娘友「それで倒せるのかな? 残ったらまた増えるでしょうし」
娘「それに竹林が焼けたらどうしようもないわ」
少年エルフ「そうだね すっかり囲まれてるみたいだし」
第七王女「ならば白竜を呼んで一旦脱出じゃ 脱出先でタケノコを手に入れたらよいじゃろう」
男子「なるほどその手があったか」
女兵士「そうだった白竜さんが来たら解決ねー」
第七王女「よしならば合図を送るのじゃ 男子も 皆も一緒にじゃ」
男子「俺もですか!?」
女兵士「わーいやるやる」
娘「私はやめとくわ……(恥ずかしい)」
くねくね
若人「なにしてるんですか?」
娘友「えーと一応召喚の儀式ね」
第七王女達が不思議な踊りを踊ってポーズを決める。
ビシッ
第七王女・女兵士・男子「「ホワイトドラゴン カモォーン!」」
若人「……」
娘「……」
少年エルフ「……? 来ないね」
娘友「うっ頭が!? 『お掛けになった番号は電源が入っていないか電波の届かない場所にあります もう一度……』 はっ 今のなに?」
少年エルフ「大丈夫!? どうしたの」
娘「何を受信してるのよアナタ」
第七王女「ううむ どうやらここでは呼べないようじゃな」
女兵士「そうですねー」
少年エルフ「そうなの?」
若人「そうですね ここは谷合ですから峠を越えないと無線もつかえませんね」
男子「無線…… 無線機があるのか?」
若人「ええ緊急用に…… 杉の村にですが」
娘友「また? もうアソコ行きたくないわよ」
男子「この里にはないのか?」
若人「ここの人が救助を求めに出たときに一緒にもっていったのでありません」
第七王女「ならば方法は…… 杉の村の無線機で助けをよぶしかないの」
○
少年エルフ「いくよ ”風弾”」
ビュオオオオオ
竹林の外にいたお化けキノコの群れの真ん中が開ける。
第七王女「今じゃ 走るのじゃ」
ダダダダ
娘と第七王女を先頭に 若人と少年エルフ 男子と女兵士が走る。
娘友「がんばってねー」
娘友は竹林の中から見送った。
ボン ボボン
一団の前後からお化けキノコが発生する。
娘「本当にどこからでも よけるわよ」
お化けキノコ「……」ブンブン
娘たちはお化けキノコを避けながら進む。
若人「うわわ」
男子「危ない」ズバッ
男子がお化けキノコを切り払う。
男子「ここは俺にまかせて先に……」
スタタタタ
娘たちは振り返らずに走り去った。
男子「せめて振り返って~」
第七王女「よし 登るのじゃ」
娘「行くわよ」
少年エルフ「男子くん大丈夫かな?」
娘「またキノコになってるわよ しんがりなんだし仕方ないわ」
女兵士「救助を絶対に呼ばないといけませんねー」
娘たちは断崖を登り始める。
ブォン バシン
第七王女「なんじゃ!?」
ちびキノコが下から飛んできた。
娘「なにあいつ」
キノコ人間「ふぉふぉふぉ……」
大きなキノコ人間が近くのちびキノコを掴むと投げつけてきた。
バシン
少年エルフ「うわぁ! どうしよう」
女兵士「う~ん 王女ぜったい助けてくださいよ えーい」
女兵士がキノコ人間の上へ飛び降りる。
第七王女「女兵士!」
どしーん
キノコ人間「ふぉ!!」
女兵士のヒッププレス! キノコ人間からキノコがはがれ落ちる。
女兵士「あいたたー あれ? 男子くん?」
キノコ人間は男子だった。
若人「あーあ」
娘「……まったく 自業自得ね」
少年エルフ「そうなの?」
第七王女「とにかく男子と女兵士の犠牲を無駄には出来んのじゃ」
第七王女「よし また近道から登ってこれたの」
少年エルフ「男子くんと女兵士さんのためにも絶対救助をよばなきゃ」
娘「それで無線機はどこに?」
若人「村長の家ですね 広場近くの大きな家です」
○広場
ドンドコドコドコ
広場ではお化けキノコ達が踊っている。
少年エルフ「また踊ってる 踊るのすきなんだねぇ」
若人「しかし手拍子だけでよく踊りますね 歌ぐらい歌えばいいのに」
第七王女「あやつらに口はないからのう」
娘「広場からは無理ね 裏からこっそりいきましょう」
第七王女「賛成じゃ」
○村長の家
少年エルフ達は家の裏口から室内にはいった。
若人「ええとこの辺に……」コソコソ
少年エルフ「うわー 窓の外キノコでいっぱいだ」ボソボソ
第七王女「バレたらやっかいじゃのう」ボソボソ
娘「大きな音を出さなければ大丈夫でしょ」
ピーッガガ――ッ!!
無線機から大音量が鳴り響く。
若人「しまった! 音量最大だった」
ドンドンドン
少年エルフ「うわぁ!? こっちに気づいた」
お化けキノコ達が家に向かって突進してきた。
第七王女「脱出じゃ 峠まで走るのじゃ」
ボボン
第七王女「なに!?」
第七王女が通ろうとした裏口にお化けキノコが生えてきた。
お化けキノコ「!」
お化けキノコはのしかかってきた。
少年エルフ「王女あぶない ”風弾”」
ビュオオ
お化けキノコは吹き飛ばされた。
第七王女「おう 助かったのじゃエルフ」
娘「王女タケノコを構えて! こうなったら突破するわよ」
第七王女「うむ 押し通る」
少年エルフ達は魔法とタケノコでお化けキノコを蹴散らしながら峠を目指す。
第七王女「ふぅふぅ まだか?」
若人「だめですまだ通じません」
若人が無線機を確認するが通じない。
少年エルフ「はぁはぁ…… まだ追ってくる」
娘「パパ大丈夫? 王女も疲れてない?」
第七王女「疲れておるが…… 言ってる場合ではなかろう」
お化けキノコの大群がゆっくりと追ってきているのが見えた。
娘「ここなら……”双閃熱”」ヒュボボボ
お化けキノコ達「「ッーー!!??」」
お化けキノコ達が燃え上がる。
第七王女「おお一網打尽じゃな」
若人「ああ!? なんてことをこちらが上手なんですよ!」
メラメラメラ モクモク
炎と煙が少年エルフたちのほうへ流れて来た。
少年エルフ「ゲホゲホ 危ない逃げなきゃ」
娘「まさかこんな…… ごめんなさい」
第七王女「ふぅ やっと煙を抜けたのう」
娘「あれパパは?」
第七王女「む! 若人殿もおらんぞ」
○煙の中
モクモク
\パパ―/ \若人殿―/
少年エルフ「ゲホゲホ…… あっちかな?」
少年エルフは煙に巻かれてはぐれてしまっていた。
\ゲホゲホ/
少年エルフ「あ 若人さんこっちですよ」
スタスタ
少年エルフは音を頼りに若人を見つけた。
若人「ゲホ よかったエルフさん……これを」
少年エルフ「若人さん 危ない!」
若人の近くにいたお化けキノコを少年エルフが突き飛ばした。
お化けキノコ「!」ボフンボフン
お化けキノコは胞子をまき散らしながら転げ落ちていった。
少年エルフ「ゲホゲホ(吸い込んじゃったかな?)…… 若人さん大丈夫?」
若人「なんてことを 私はもう手遅れだったのに……」
娘「パパ― どこー」
\ここだよー/
少年エルフと若人が煙の中から現れた。
娘「ああよかった はぐれてごめんなさい」
少年エルフ「ダメ 来ちゃダメ」
少年エルフは駆け寄ろうとした娘を制止した。
娘「エルフ?」
第七王女「エルフ…… 若人殿まで」
少年エルフと若人の頭からはキノコが生えていた。
娘「そんな!!」
若人「コレを峠を越えたあたりで使ってください」
若人は無線機を投げてよこした。
パシッ
第七王女「あいわかった」
少年エルフ「早くいって キノコが追いついてきてるから」
娘「そんな! パパはどうする気なの」
少年エルフ「……まだ意識があるうちにキノコを足止めするから」
娘「イヤよ! パパがキノコになるなら私もキノコになるわ」
少年エルフ「ダメだって! それにタケノコがあれば戻るんだから」
若人「そうです救助を呼んできてください 早く!」
娘「でもっ」
第七王女「行くのじゃ娘 わらわ達までキノコになってはエルフも村の者も戻せなくなるのじゃぞ」
娘「……わかったわ パパすぐ戻るからね」
少年エルフ「わかってる いってらっしゃい」
○
第七王女と娘が峠を駆け出すと背後からすさまじい暴風が吹き始めた。
ダダダダ
娘「……(エルフ)」
第七王女「おのれキノコがもうこんなところまで」
行く手にお化けキノコ達がうごめいている。
娘「しかたないわね……(王女の前で使うなって言われたけど) 光よ」ポワァ
娘の持つ剣が光をまとう。
娘「せいッ」
お化けキノコ「?」シュワアアア
お化けキノコは切られたところから消えていく。
娘「よし……効くわね」
第七王女「なんじゃそれは? 魔法剣?」
娘「そんな感じよ…… それより無線機は? 峠は越えてるはずよ」
第七王女「わからん ウンともスンともいわぬ」
娘「どうしたら…… あ! あそこよ」
娘は大岩を指さした。
娘「よいしょ…… ここならしばらくはあいつらもこれないはず」
第七王女「うむよい眺めじゃ あれが魔法都市かのう」
娘「ここなら大丈夫でしょ 通じる?」
カチャカチャ
第七王女「うむ? むぅ?」
ザザー ピー……
第七王女は無線機の使い方がわからない。
第七王女「応答願う応答願う…… 通じておらんのか?」
娘「なによこれ どうしたらいいの?」
カチャカチャ
\こちらは……/
第七王女「通じた! 応答せよこちらは……」
第七王女は話かけるがこちらに反応する様子がない。
娘「王女違うわ コレはラジオよ」
\今日も荒野のラジオからゴキゲンな一曲を……/
第七王女「なんじゃと!? 無線機ではないのか?」
娘「まさか……」
無線機はラジオを受信している。
お化けキノコ達「」バフ
娘「きゃあ もうここまで」
お化けキノコが大岩をよじ登ってきた。
第七王女「うぬぬ 万事休すか」
娘「ダメよ パパを迎えにいくんだから」
娘が剣を構えるとお化けキノコ達が襲いかかって来た。
○荒野のラジオ局
DJ「最初のリクエストは 放送直後から問合せ殺到人気炸裂の謎のガールズバンド! クラシカルな曲を透明感のある歌唱とファンキーな曲調でカバーした実力は本物…… それじゃいこう ビリビリシスターズの『ヘイホーヘイホー』」
無線機から音楽が流れてきた。
お化けキノコ達「ッ!!」
\ヘイホーヘイホー/
第七王女「む この曲はこないだの」
娘「キノコの様子が変ね?」
お化けキノコ達は身もだえている。
\ヘイヘイホー/
お化けキノコ達「ッッ」
シュパァン
娘「きゃ!?」
お化けキノコ達が次々とはじけていく、残りは背を向けて逃げ出した。
パァンパァン……
第七王女「一体なにが起こったのじゃ?」
娘「まさか……歌?」
娘が無線機の音量を大きくする。
\ヘイヘイホー/
パパァン
逃げようとしていたお化けキノコもはじけ飛んでしまった。
第七王女「ふむ 意外なものが弱点だったというわけじゃな」
娘「あいつら音には敏感だったしね」
第七王女「よしこのまま村にもどって……」
第七王女が大岩から降りると無線機は通じなくなった。
第七王女「これは困ったのう」
娘「なにいってるの さっきの誰の歌?」
第七王女「おう そうじゃったな…… して声はまだでるかの?」
娘「ま 歌うくらいの体力は残ってるわよ」
第七王女「よし ここからなら山中に響くであろう」
娘「そうね それじゃ……」
娘・第七王女「「せーの」」
娘友「というわけで 娘と王女のデュエットによってお化けキノコは駆逐されました ちゃんちゃん」
娘「誰に言ってるの?」
娘友「気にしないで」
村長「このたびの尽力 誠にありがとうございます」
第七王女「なにこれも勇者としての勤めじゃて」
村人「これはせめてものお礼です」
男子「っていってもコレ」
女兵士「わー キノコがいっぱい」
村長「なにしろ長いこと山に入っていませんでしたから」
娘「キノコの魔物に襲われたっていうのにのん気というかたくましいというか……」
娘友「いいじゃない 山を越えたら市場で売るわよ ほら持てるだけもって」
第七王女「友もたくましいのう」
○長距離バスの中
白竜と合流した娘たちは魔法都市へ向かうバスに乗っている。
白竜(人型)「あらそんなことがあったの大変だったのね」
第七王女「うむ 大変であったがこれも二代目勇者としての試練じゃて かっかっか」
娘友「そーね これで次回の新聞のネタも決まりね またまた売れるわよ~」
男子「売れてるのかあの新聞?」
少年エルフ「若い女性に人気なんだって」
男子「へぇ」
白竜(人型)「で? 王女の前でアレ使ったの?」ボソボソ
娘「仕方ないじゃない 誰かさんは呼んでも来ないし あの時は必死だったのよ」ボソボソ
白竜(人型)「まー あの子のことだから何も気づかないわけはないけど……」ボソボソ
娘「まだ何も?」ボソボソ
白竜(人型)「今のところわね」ボソボソ
第七王女「おおー!」
娘「なに!?」
少年エルフ「すごいあんなに塔がたくさん」
娘友「かつての魔法国の流れをくむ魔法都市よ 今でも魔法に関しては世界一の都市よ」
第七王女「ここに魔王の本拠地があったのじゃな よし突撃じゃー」
女兵士「わーいとつげき―」
男子「座ってください揺れますよ」
少年エルフ達を乗せたバスは光り輝く塔が無数に立ち並ぶ魔法都市へと進んでいく。
お化けかぼちゃ「……(次は俺たちの番だなウケケ)」
農夫が鼻歌を歌いながら歩いてきた。
農夫「れりごー♪ れりごー♪」
お化けかぼちゃ「(ぬわー この音は ぐわー)」
お化けかぼちゃは元のかぼちゃに戻った。
少年エルフ達は魔法都市に到着した。
少年エルフ「わー すごい大きな塔がいっぱい」
男子「すごいな塔というか砦じゃないか?」
女兵士「でもこんな町中に?」
第七王女「建物の様式がずいぶん違うようじゃのう」
娘友「あれはビルヂングっていうのよ 近代的建築ね」
少年エルフ「へー」
娘「それでこれからどうするの?」
白竜(人型)「アタシはさっさとホテルでゆっくり寝たいわ」
娘「貴方寝てばっかりじゃない」
白竜(人型)「寝不足はお肌の大敵よ」
娘「炎も雷もはじく皮のくせに それくらいが敵になるわけないでしょ」
白竜(人型)「やーん ドイヒー」
娘友「でも確かにまずはホテルを決めない? 今後のことも決めなきゃだし」
男子「……そうだな魔法都市には来たけど 具体的には何をするんだ?」
第七王女「ムロン 魔王城に乗り込むのじゃ」
男子「それはどこなんだ?」
第七王女「……」
少年エルフ「知らないの?」
第七王女「何しろわらわの知る文献は古くてのう」
娘友「じゃ とりまホテルね」
娘友「このガイドブックによるとこの先のホテルがコスパがいいわ」
娘「コスパって…… それ信用できるの?」
娘友「大丈夫よ商隊の人からもらったんだし」
第七王女「それに魔王城については……」
娘友「残念 のってないわ」
白竜(人型)「そりゃそうだわ」
少年エルフ「前みたいに観光名所になってたらよかったのにね」
第七王女「そうじゃのう」
娘達がホテルに向かっていると少年エルフが何かに気づいた。
ガヤガヤガヤ
少年エルフ「あれなんだろう?」
少年エルフの視線の先に人だかりができている。
娘友「あああれ? ちょっと見てく?」
\なんだぁ夢か? ちくしょうヒヤでやりゃあよかった/
\はっはっはっ/
男子「なんだあれ!?」
女兵士「あんな箱に映画が映ってる!?」
娘友「あれは放送よ…… そしてあれが魔法都市が誇る最新マシーン『テレビジョン』よ」
\おめえ本当は何が怖いんだ そうだな熱いお茶がコワい/
\はっはっは/
少年エルフ「すごい…… あんなのあったら映画館行かなくていいね」
少年エルフは感動している。
娘「そう? あんな小さいのじゃ迫力がないじゃない」
白竜(人型)「ま それは人それぞれね」
第七王女「すごいのう わらわもひとつ買おうかの」
娘友「買っても王国じゃ映らないわよ」
第七王女「ううむ そうかおしいのう……」
\ふと顔を上げるとふるいつきたくなるようなイイ女 タンメーだろう!/
\あっはっはっは/
娘「ちょっとちょっと みんないつまで見てるつもり」
第七王女「おう!? そんなに観ておったか」
娘「いいかげんにしないと日が暮れるわよ」
少年エルフ「うん……ごめん なんだか見終えるタイミングがなくって」
娘「まったくもー ほら男子もシャキッとしなさい」
男子「おう すまん」
女兵士「つい見続けちゃいましたねー」
娘「ほら白竜が待ちくたびれたから先にホテルに行ったわよ」
第七王女「いつの間に!? 急がねば」
娘友「さてと明日からどうしようかしら」
第七王女「まずは情報収集じゃな」
男子「何を調べればいいんだ?」
第七王女「魔王について…… と言いたいところじゃがまずはなんでもいいの」
女兵士「えっと? なんでもって?」
娘「仮に復活した魔王がこの都にいるとしたら何か異変が起こってるはずよ」
少年エルフ「そっか 魔物が発生してたりするんだよね」
第七王女「そうじゃな ただここは大都市じゃからの表沙汰には出てないかもしれん」
娘友「だからヘンな噂や情報がないか調べるのね それならアタシの十八番よ」
第七王女「任せるのじゃ ……しかしこんなことより魔王城跡が直接特定できればのう」
第七王女「うーむ わらわの持っておるのでは正確な場所まではのう……」
少年エルフ「そうじゃなくて…… ここにも本あるよね?」
第七王女「うむ?」
少年エルフ「えっと本がたくさんあるところ えっと……」
娘友「本屋?」
男子「古文書とか売ってるのか?」
少年エルフ「本屋じゃなくて…… なんていうんだっけ?」
娘「図書館のこと?」
少年エルフ「うんそれ! 図書館」ニコニコ
第七王女と少年エルフが道を歩いていく。
第七王女「いやまったく わらわとしたことが失念しておったわ かっかっか」
少年エルフ「ふふ でもこんな大きな街の図書館ってやっぱり大きいのかな?」
第七王女「ムロンじゃ 魔法都市の図書館といえば有名じゃぞ そもそも勇者の供だった魔法使いが……」
少年エルフ達に続いて白竜と娘が歩く。
白竜(人型)「アタシは留守番でもよかったのになー」
娘「じゃあ友と一緒に行ったほうがよかった?」
白竜(人型)「それもいいかもー男子君もいっしょだったし」
娘「それは友が断ったでしょうよ」
――娘友「むりむり これ以上フラグが立ったらどうするの!? 回収できないっていうかさせないわよ」
白竜(人型)「え? アタシ嫌われてる?」
娘「それはないわ…… でも(一応男子のことあきらめてないのね……友)」
白竜(人型)「でも?」
娘「人間にもいろいろあるってことよ」
どん
娘は立ち止まっていた少年エルフにぶつかった。
娘「パパ?」
少年エルフ「あ ごめん」
娘「またテレビ?」
\今日のお天気は……/
少年エルフ「ほらすごい 天気予報やってるすごいわかりやすいね」
少年エルフは興奮している。
娘「もー ただの天気でしょ 前を向いてないと危ないわよ」
少年エルフ「うんごめん 注意する」
\このあとのドラマは……/
少年エルフ「……」じー
少年エルフはまたテレビに見入っている。
娘「むー(パパにテレビは危険だわ)」
第七王女「おお さすがに立派じゃのう」
少年エルフ「本当すごーい あ! それにテレビまで」
図書館のホールには大型テレビが備え付けられ観衆が大勢いた。
\本日の相談は……/
娘「ちょっと ここには本を調べに来たのでしょ」
少年エルフ「あ ごめんごめんつい……」
???「コラァ――ッ!」
少年エルフ「!?」ビクッ
図書館館長が現れた。
館長「お前ら図書館に何をしにきとるんじゃ! テレビなんぞ見るんじゃないバカモノ!」
どよどよ
大型テレビの観衆がざわめく。
\なに? あのおじいちゃん/
\また始まったよ/
\だったらテレビ置いとくんじゃねぇって/
館長「おのれー! やはり『てれびじょん』なんぞ置くべきではなかった! 今日こそぶっ壊してや……」
ズゴン
館長「はふっ」
図書館館長は背後から分厚い本で殴られ気絶した。
司書「すいません 祖父が騒がしくて…… どうぞごゆっくり」おほほ
司書は愛想を振りまきながら図書館館長をひきづっていった。
ざわざわ
\やっと静かになった/
\毎日あきねー爺さんだな/
娘「……さてと 調べものしましょうか」
少年エルフ「……うん」
○
少年エルフ「すごい本がいっぱい」
第七王女「さすが大図書館といわれるだけあるのう 手分けして調べるのじゃ」
娘「そうね でもどこから調べたらいいのかしら」
第七王女「わらわは伝記・伝説のあたりを調べるのじゃ エルフは郷土の資料を」
少年エルフ「わかった」
第七王女「白竜は……」
白竜(人型)「ごめんなさい あたし美容と健康の本以外の興味ないの」
娘「貴方ねぇ 何しに来たのか自覚ある!?」
白竜(人型)「だって興味ないの読んでると眠くなるんだもの」
娘「まだ寝足りないっていうの!?」
白竜(人型)「だってー 現代語難しいしー」
第七王女「よし ならば白竜と娘は最近の雑誌や記事を調べておくれ」
白竜(人型)「それくらいなら」
娘「わかったわ」
第七王女「では調査開始じゃ」
○
第七王女は閉架図書の目録を見せてもらっている。
第七王女「これとこれ……あとこれも読みたいのじゃが」
図書館員A「はいお持ちしますのでしばらくお待ちください」
○図書館・ロビー
ペラペラ
娘「ねぇ白竜」
白竜(人型)「なに?」
娘「こんなことしなくても貴方ほんとうは知ってるんじゃないの?」
白竜(人型)「何を? 美容と健康の秘訣?」
娘「そうじゃなくて…… 魔王とか……勇者とか」
白竜(人型)「そうね教えてもいい頃かもね」
娘「だったら……」
白竜(人型)「やっぱり十分な睡眠とバランスの取れた食事 あとは適度な運動がぁあだだだ!」
ギリギリギリ
娘のアイアンクローが白竜の顔を締め上げる。
娘「いい加減にしなさいよ! 怒るわよ!!」
白竜(人型)「あだだだ 既に怒ってるじゃない」
ギリギリギリ
娘「怒ってないわよ~ だから怒る前に……」
図書館員B「貴方たち図書館ではお静かに!」
娘達は図書館員に叱られた。
娘「あ……すいません」
白竜(人型)「ふー 助かった」
ペララララララ パタン
第七王女「ふむ……(目新しいものはなかったの)」
貸し出された図書を瞬く間に読破した第七王女は次の図書を目録から探す。
第七王女「次はコレとコレ……あと『魔法使いの手記』じゃが 原書を読むことは出来んか? あるじゃろう」
図書館員A「原書ですか? ……それは一般公開はしていませんので」
第七王女「ならば写本かこの現代語訳版の初版はないかの」
図書館員A「そうですね 調べますのでもう少しお待ちください」
ペラペラ
少年エルフ「うーんと これは……」
少年エルフは次の本を本棚から抜き出す。
少年エルフ「歴史かな……」
ペラペラ
ページをめくる少年エルフに『エルフ族との戦争』の文字が目に入る。
少年エルフ「戦争! ……(そういえば魔法国はエルフ族との戦争で滅んだって話があったっけ)」
少年エルフ「えーと『戦いにおいてエルフ族は凶悪な魔法と弓術でもって暴れまわり兵の顔の皮を剥い』」
少年エルフ「……(顔? 皮?)」
少年エルフ「『残虐非道で頭蓋骨から作った杯で酒を』……」
パタン スッ
少年エルフは本を閉じて棚に戻した。
女兵士「あー 疲れたー」
第七王女「お疲れなのじゃ」
娘「何かわかった?」
娘友「えーと 行方不明 お化け騒動 都市伝説 ただのヘンタイ ……予想してたけどいろいろありすぎよ」
第七王女「そうかやはりのう」
娘友「そっちはどうだった?」
少年エルフ「んっとねエルフ族の話があったけど……なんか僕の知ってるエルフ族とちがうんだけど」
娘「大丈夫パパ? 顔色悪いわよ」
少年エルフ「うん……ちょっと気持ち悪い」
男子「他には?」
白竜(人型)「そうね 最新の美顔器とかあるらしくってぇ」
娘「コレのいうことは無視して」
白竜(人型)「ああ!? なんかどんどん冷たい扱いになってない?」
娘「だーれーのせいで図書館を追い出されたと思ってるの!」
白竜(人型)「それは大声だした娘ちゃんのせいよ」
娘「あんたが真面目に調べないからでしょーが!!」
白竜(人型)「やん 乙女心はお天気なのよん」
娘「黙れオッサン」
\ドイヒー/ \ギャーギャー/
女兵士「娘ちゃんと白竜さん仲良くなったねー それで王女サマは?」
第七王女「うむ…… いろいろ…… 特に魔法使いの手記について調べたのじゃがのう」
少年エルフ「どうだったの?」
第七王女「勇者の伴の魔法使いが旅の経緯について詳細に綴られたものじゃが…… 魔王城の件になると急に大雑把になるし内容が少ないのじゃ いきなり戦後になるしの」
男子「なんだそりゃ? 魔法使いは魔王城にいってなかったのか?」
第七王女「それは考えにくい むしろ考えられるのは落丁…… もしかしたら検閲があったのかもしれぬ」
少年エルフ「らくちょう?」
娘「本のページ抜けよ」
女兵士「けんえつって?」
娘友「まぁ ざっくりいって表現規制ね こうムフフな内容が」
娘「なんでそっちなのよ むしろ政治的に公になるのが不都合な情報のことでしょ」
娘友「ま そーね」
少年エルフ「えっと? 元のままの内容じゃなかったってこと?」
第七王女「おそらく それで原書の閲覧を申し込んだのじゃが」
娘「まぁ 無理でしょ…… そもそも本物が残ってるの?」
第七王女「そのはずなんじゃがのう あー原書をよみたいのじゃ」
ジタバタ
娘「ジタバタしても始まらないわ それより他の手段で調べないと」
男子「そうだな とりあえず噂を精査したほうがよくないか」
娘友「そーね とりあえず起こっていることだし」
\あーだこーだ/
第七王女「むー」
少年エルフ「……王女 むくれてないで寝たら? 疲れたでしょ」
第七王女「あいわかった ならばエルフもわらわと一緒に寝るのじゃ 弟成分で癒してたもれ」
少年エルフ「イヤです」キッパリ
少年エルフ「うん?」
少年エルフは第七王女の背中で目覚めた。
第七王女「エルフ起きたか」
少年エルフ「え!? なに? どこここ?」
辺りは真っ暗で大きな建物の裏手にいるようだ。
第七王女「静かに 騒ぐでない」
少年エルフ「王女何してるの? 僕はどうしてここに?」
第七王女「ムロン 図書館に忍びこむのをエルフに手伝ってほしいからじゃ」
少年エルフ「えっ……ふが」
第七王女は驚いた少年エルフの口元をふさぐ。
第七王女「言うたであろう魔法使いの手記の原書を読みたいと 直接調べに行こうと思ってな」
少年エルフ「図書館に忍びこむの?」
第七王女「左様 地下の閉架書庫にあるじゃろう 昼間調べた限りでは魔力式の警備ゴーレムがあったのでなそれでエルフを連れてきたのじゃ」
少年エルフ「そんな……」
第七王女「ここまで来て帰るとはいわんじゃろう?」
少年エルフ「ここまでって…… もう仕方ないなぁその本を読んだらすぐに帰るんだよ」
第七王女「わかっておるわかっておる」
少年エルフ「もー わがままなんだから」
第七王女「ふふふ」
ガチャ
第七王女は余裕の笑みで裏口の扉を開錠した。
第七王女「さて警備は……」
少年エルフ「……ねぇ あれ」
少年エルフは壊れた警備ゴーレムと開いた閉架書庫への扉を指さす。
第七王女「なんじゃ!? 強盗か! ケシカラン奴めわらわが成敗してくれるわ!」
ダダッ
第七王女は閉架書庫へ駆け出した。
少年エルフ「ケシカランって…… 自分はいいの?」
ドン バタン
閉架書庫では図書館館長と何者かが揉めている。
図書館館長「貴様 何が目的だ!」
テレビ頭「さー 何が目的でしょうか? 当ててみてください制限時間は30秒ハイスタート! チッチッチ……」
スーツ姿に頭部がテレビになった男が制限時間を刻み始めた。
図書館館長「ふざけおって そもそもなんじゃその被り物は! テレビごと叩き割ってやるわ!」
図書館館長はもっていた魔導書を開いて効果を発動しようとするが。
テレビ頭「ブーッ 時間切れ不正解失格ペナルティデース」
ビカッ
テレビ頭の画面が明滅すると発動しかけていた魔導書の魔力が吸い取られた。
図書館館長「なんじゃと!? ぬう!」
テレビ頭「暴力は反対ですよ これだから古い人間は正直嫌いヘイトヘイトです」
テレビ頭は図書館館長に詰め寄ると明滅する画面で覗き込みながら言う。
テレビ頭「それに本なんて古いです 本なんて5年もすれば誰も見ませんよ」
図書館館長「きっさまぁ! 何をいうか」
テレビ頭「これからはテレビの時代ですよ 書物なんてかび臭いだけです…… それにホラ」
テレビ頭は手近の本を手にして自身の画面へ近づけると呑み込むかのように消えた。
テレビ頭「ザザッ 『昔々ある所にお爺さんとお婆さんとお婆さんがいました』 どうですいい映りでしょう?」
図書館館長「なんということを……それになんだその内容は婆が増えておるではないか!」
テレビ頭「このほうが面白いじゃありませんか どうです滅びゆく図書館なんて辞めてここをテレビ図書館にしてみてわ」
図書館館長「なにをバカな! 第一情報を捻じ曲げて伝えるなんぞ先人への侮辱じゃぞ!」
テレビ頭「貴方は本当にうるさいですね真空管が割れそうです…… そろそろ要件に入りましょうか」
図書館館長「要件じゃと!?」
テレビ頭「……『断片集』はどこですか?」
図書館館長「なに!? おぬしまさか…… そんなものは無」
ドスン
図書館館長「ぐわ」
テレビ頭は図書館館長を壁に投げつけて再び詰め寄る。
テレビ頭「……お判りでしょう『魔法使いの手記』の『断片』ですよ これ以上手間を取らせないでいただきたい」
図書館館長「おのれ……化け物に貸し出す図書なぞここにはないわ!」
テレビ頭「ならば貴方の頭に直接お伺いしましょうかね」
図書館館長「なに!?」
テレビ頭は図書館館長の胸倉を掴み高々を持ち上げ……。
第七王女「まてぇーい 狼藉はそこまでじゃ!」ビシッ
少年エルフ「うわぁ! ちょっとあの人人間じゃないよ」わたわた
第七王女と少年エルフが現れた。
テレビ頭「なんですか 貴方達は?」
図書館館長「逃げろこいつは化け物じゃ」
第七王女「それは承知済みじゃ せいっ!」
シュッ
第七王女はテレビ頭にナイフを投げつける。
フッ
突然テレビ頭の姿が消えた。
ドサッ
図書館館長「ぐわ」
第七王女「どこじゃ!?」
テレビ頭「……危ないですね モニターが割れたら悲劇ですよ」
別の方向にテレビ頭が現れた。
第七王女「そこか!」
シュッ…… カキン
第七王女は別のナイフを投げるがナイフは壁にあたって落ちた。
第七王女「おおう分身の術か!?」
図書館館長「ゲホゲホ…… 妙な魔法を使いおって」
室内なのにあたりに霧が立ち込めはじめた。
少年エルフ「幻術みたい…… だったら本体は」
少年エルフが集中して本体を探り出そうとすると……。
スッ
テレビ頭「おっと 貴方からご招待しましょう」
ピカッ
少年エルフ「うわ!?」
少年エルフは背後から現れたテレビ頭の画面に吸い込まれた。
図書館館長「なんじゃ! 坊主に何をした!」
第七王女「エルフ! おのれ!」
スッ
テレビ頭「二名様ご招待接待ウェルカーム」
第七王女「ぬぅ!」
ピカッ
第七王女もテレビ頭の画面に吸い込まれた。
図書館館長「貴様 あの子らをどこへ……」
テレビ頭「ご安心を楽しい悲しい良いところですよ」
図書館館長「ふざけるな!」
テレビ頭「ふふふ イッツァテレビショ~ウ」
ピカッ
テレビ頭「やれやれ 予想外のお客様でしたが……しばらく退屈しなくて済みそうですね」
テレビ頭は大型テレビの画面に手を触れるとそのまま画面へ入っていく。
テレビ頭「それにしても先ほどは驚きましたね当ててくるとは 次は気を付けましょうそうしましょう」
カラン
テレビ頭の姿が画面に吸い込まれると第七王女のナイフが音を立てて床に落ちた。
○
娘「パパがいない!」
女兵士「王女サマもいないよ?」
娘友「まーたどこかに飛び出していったんじゃないの?」
娘「だだだ大丈夫よパパには発信機があるから」
男子「そそそうだな 多分一緒だな だよな?」
娘友「落ち着きなさいよあんたら」
娘は荷物から探知機を取り出し電源を入れた。
カチッ ツーツーツー
探知機には反応が見られない。
娘「んな!?」ガクッ
男子「しっかりしろ娘」
娘は衝撃のあまりその場に座り込む。
男子「そうと決まったわけじゃ」あたふた
娘友「一応悪いとは思ってたのね」
白竜(人型)「まー どうせいつもの王女のわがままにエルフちゃんが巻き込まれてるんでしょ 多分」
男子「だとしても王女は何かしら行先を伝えてから行っているんだ それが無いということは……」
娘「すぐに戻るつもりだったのね…… だとするとますます何かトラブルに巻き込まれたに違いないわ」
娘友「だったら探さないと 探知機が役にたたないなら地道に探すしかないわね」
女兵士「すごく遠くにいったってことはないの?」
白竜(人型)「今回はわたしが残ってるからそれは考えにくいわよね」
娘「とりあえず王女とパパが行きそうな場所を探しに行きましょう」
男子「おう」
娘友「娘…… アタシもいろいろ調べるから落ち着いて行動するのよ」
娘「……分かってるわ」
少年エルフ「ここは?」
少年エルフは暗くて狭い所で目を覚ました。
パカッ
少年エルフ「!?」
\おやまあ/
\こんなところから子供が/
突如暗闇が割れて声が聞こえる。
お爺さん「というわけでお前は住民を苦しめているオーガを退治しにいきなさい」
少年エルフ「え? え?」
お婆さん「これは食べた者を虜にできるチート団子ですよ持ってお行きなさい」
少年エルフ「それって違法なもの入ってない?」
お爺さん「大丈夫じゃ わしは毎日くっておるぞ」
お婆さん「おほほ」
少年エルフ「……(いいのかな)」
こうして少年エルフはオーガ退治に旅立たされた。
少年エルフ「あれ……(何か探してた気がするけど なんだっけ?)」
娘は少年エルフを探しながら大通りを足早に歩いている。
娘「まさかまたエルフ族ってことがばれて誘拐されたんじゃ……」ブツブツ
男子「王女も一緒なんだそこまでは……多分大丈夫だ……」ブツブツ
娘「イヤな予感がするの 一刻も早くみつけなきゃ!」
男子「お前がそれいうなよ お前の感は当たるんだから!」
白竜(人型)「二人とも落ち着いてよ 焦っても駄目よ」
ピコ―ンピコ―ン
娘「は! 反応が出た!」
娘の持つ探知機が反応を示した。
男子「本当か! どっちだ」
娘「あっちよ!」
白竜(人型)「なんで急に?」
バタバタバタ
ガヤガヤ
テレビの前では今日も人だかりができている。
娘「近いわ まさかまたテレビ見てるの?」
男子「そんなまさか……」
\これがほしいの? 食べる?/
娘「エルフ! エルフの声が……どこ!?」
男子「おい見ろ!? エルフさんがテレビに映ってるぞ!」
なんと少年エルフがテレビに映っている、犬に何かを食べさせているようだ。
娘「なんで!? それにどうして探知機が……」
ピコ―ンピコ―ン
男子「どうなってるんだコレ?」
娘「そうか! だったら」
ダダッ
男子「おい!」
娘は駆け出してテレビ画面に向かって突進する!
ギュオン
\ザワッ/
男子「娘!?」
なんと娘の上半身がテレビの中に入ってしまった。
○テレビの中・『オーガ退治』
娘「居た! エルフー」
テレビから上半身だけ乗り出した娘は、はるか先にエルフが居るのを見つけた。
娘「この空間普通じゃない…… はやくエルフを連れ出さなきゃ」
娘は画面を抜けようとするが下半身がつっかえて通り抜けれない。
\なんだこれ/ \マジックか?/
男子「娘大丈夫か! どうなってるんだコレ!? ウゲ」
男子は娘の足を掴んで引き戻そうとするが逆に蹴られている。
白竜(人型)「あらもー 年頃のコがそんなカッコしてはしたない ほら見せられないわよ~」
白竜は下半身だけで暴れる娘をかばっている。
娘「んっくう 狭い……」
テレビ頭「おやおやおやこれは驚きました しかし御用急用無用に願います」
テレビ頭が娘の前に現れた。
娘「貴方…… 魔族ね」
テレビ頭「ピンポンパンポン大成かーい 景品はタワシ一年ブーン」
娘「ふざけないで エルフをどうする気! 王女もいるんでしょ」
テレビ頭「んー 残念ながら今は放送中ですので テレビは明るい所でなるべくたくさん離れて見てくだサーイ ェア!」
娘「な!?」
ドン
テレビ頭が手を振ると娘は弾き飛ばされた。
娘「いったー あのふざけたテレビ魔人…… やってくれるわね」
白竜(人型)「なにがあったの? とりあえず男子君から降りたら」
娘は男子の頭に尻餅をついていた。
男子「」チーン
娘「あーもう 何気絶してるのさっさと起きなさい」ゲシッ
娘は男子を蹴り起こす。
男子「ぐはっ…… なにがあった?」
娘「行くわよ 居場所がわかったわ」
男子「なんだって どこだ?」
娘「テレビよ」
娘友「あら娘? 何かわかったの?」
司書「お連れ様ですか?」
大図書館の前までくると娘友と女兵士が司書と話していた。
娘「まあね 友はどうしてここに?」
娘友「情報によると昨日の夜に図書館の裏手でエルフさんと王女っぽいコを見かけたって話があって」
娘「いったいどんな情報網もってるの貴方…… それで図書館はどうしたの? 休館日?」
司書「あの実はお爺ちゃんが……館長が行方不明なんです それに蔵書が荒らされていていま調べてるので今日はお引き取りを……」
娘「……館長さんの行方に心当たりがあると言ったら?」
司書「え!?」
ギュルン
娘「やっぱり異空間につながってるわ」
娘は大型テレビの画面から戻ってきて言った。
司書「そんな!? こんな……こんな機能まであるなんて」
娘「いやそうじゃなくて…… 魔族が絡んでるわ」
娘は目にした魔族について説明した。
女兵士「すごいテレビの魔物だってハイカラだね」
男子「そんな奴いるのか?」
司書「たしか……新しいもの好きの魔族の伝承もありますね」
娘友「居るんだ」
娘「おそらく館長さんはあの魔族に襲われて…… その場面に王女とエルフが遭遇したのね」
司書「遭遇ってすごい偶然ですね」
娘「そうね偶然ね ほほほ」
娘友「ほほほ……(多分忍び込んでたのね)」
男子「しかし王女まで連れ去られたかどうかは確証が」
娘友「はいこれ テレビの前に落ちてたって」
娘友は第七王女の投げナイフを示す。
男子「それじゃあ王女も……」
白竜(人型)「それでどうするの? テレビの中へ探しにいくの?」
娘「当然 このテレビなら通れるわ」
女兵士「でも一体中はどうなってるんでしょうね?」
娘「そうね 多分あの魔族の空間ね 何があるかわからないわよ」
男子「そんなこと関係ない はやく探しに行かないと」
司書「あの…… 私も同行しても? 館長もおそろく中に……」
娘「多分ね…… でも危険よ?」
司書「大丈夫です これでも魔導書取扱者甲種です 自分の身は守れます」ブンブン
司書は分厚い魔導書を軽々と振り回す。
娘友「魔導書ってそういうものだっけ?」
司書「ちゃんと使えますよ ほら」
司書は魔導書を開くと魔力を発し始める。
娘「これは頼もしいわね…… こちらからもお願いするわ きっとあなたの知識が必要になるわ」
司書「そうですね図書の事ならお任せください」
男子「よし じゃあ行くぞ」
男子を先頭に大型テレビをくぐっていく。
白竜(人型)「はい いってらっしゃーい」
娘「アンタも来なさい!」
白竜(人型)「やーん」
白竜も娘に引きずり込まれた。
テレビの中にはいると辺りは霧が立ち込めている。
娘友「これ外からテレビの電源消されたら出れなくならない?」
司書「そうですね 図書館員さんにお願いしてきます」
ぎゅおん
しばらくして司書が戻ってきた。
司書「頼んできました 行きましょう」
娘たちはテレビの中を歩きだす。
男子「それにしても妙なところだな 暗いような明るいような」
娘友「それになんだか声がするようなしないような」
司書「そうですね 書庫みたいですね魔導書のささやきみたいな」
娘「そういえば本もなくなってたとか言ってなかった?」
司書「そうですね 閉架書庫の本がずいぶんと」
娘「どんな本がなくなったの?」
司書「ほとんど古文書や魔導書…… ジャンルを問わずに発行の古いものがほとんどです」
ザーッ ザザーッ
娘「何!? 今のは」
男子「何かあるぞ……テレビだ」
前方にテレビが雑多に積まれており画面は砂嵐になっていた。
女兵士「テレビの中にテレビがあるなんて不思議ですね 何が映るのかな?」
女兵士がテレビに近づくとなんとテレビが襲い掛かってきた。
男子「危ない!」
ドン
女兵士「きゃ!」
ガシャン
男子は女兵士をかばってテレビに呑み込まれた。
娘「男子!」
司書「他のも動いてますよ!」
ガシャンガシャン
テレビが襲い掛かる。
女兵士「きゃあ!」
ガシャン
女兵士もテレビに呑み込まれた。
娘「男子! 女兵士! ”雷撃”」
バリバリ ボボン
娘が魔法でテレビを破壊するが二人の姿は見当たらない。
白竜(人型)「気配もないわ 転送されたのね」
娘友「まずいわ分断して各個撃破するわけね きゃあ!」
ガシャン
娘友も飛んできたテレビに呑み込まれた。
娘「友! 白竜あなた本気だしなさい」
白竜(人型)「えー でも司書ちゃんもいるしー 恥ずかしいわ」
娘「いいから! はやく!!」
白竜(人型)「もー 娘ちゃん怖い― えい」
白竜は変身を解いて元のドラゴンの姿にもどる。
白竜「がおー なんちゃって」
娘「いいからさっさと焼き払って」
白竜「はいはい」
ボオオオオオオオオオオオ
白竜が火炎をはいてテレビを一掃した。
司書「すごい ドラゴンに変身できるんですか」
娘「まー そんな感じね」
白竜「すごいでしょー ん?」
ひゅるるる ガシャーン
司書「きゃあ!」
上方から大型スクリーンが降ってきて白竜を呑み込んだ。
娘「白竜! もうなんでもアリってわけ!」
テレビ頭「イエスここはマイルームマイワールド イッツアスモールワールド」
テレビ頭が現れた。
娘「貴方! 一体何が目的なの」シャキン
娘は剣を抜いてテレビ頭との間合いを詰める。
テレビ頭「おっと暗いので足元に御注意ください」
娘「な!? きゃあ!」
娘は足元に現れたテレビ画面に呑み込まれた。
テレビ頭「はい没収となりマス」
司書「そんな!? 皆さん」
テレビ頭「そこのお嬢さんちょうどよかったインタビューに伺おうと思っていたところです」
○
テレビ頭「はい という訳で『テレ子の部屋』の時間です」パチン
テレビ頭が指を鳴らすと辺りの景色は落ち着いた色調の部屋に変わった。
司書「これは一体!?」
テレビ頭「今日のゲストは大図書館で働いてらっしゃる司書さんですどうぞおかけください」
悠々とソファに腰掛けて話始めた。
司書「……そんな事より お爺ちゃんと皆さんはどうなったんですか」
テレビ頭「んー こちらが聞きたいことがあるのですが…… こうしましょう一つ教えていただいたらこちらも一つお教えしましょう 質問ゲームです」
司書「……いいでしょう」
司書はソファに腰掛けた。
娘「……ここは?」
娘は真っ暗な部屋に立っていた。 よく見ると壁のような物が等間隔に並んでいる。
娘「なによコレ? イヤな予感がするわね」
ピロピロピロビビーン
部屋の反対側から突如大音量とともにやたら角ばった魔物が大量に現れた。
娘「来たわね! ……なに隊列?」
ザッザッザッザッザ……
娘が壁に隠れて様子を伺っていると魔物達は横移動して壁に当たると一歩全身し、魔法弾を撃ってきた。
バシン バシュン
飛んできた弾に当たって壁が崩れていく。
娘「だったらこっちも迎撃よ”雷撃”」
バリバリバリ ドドン
娘の魔法によって次々と角ばった魔物が消えていく。
娘「動きが単調ね…… とは言ってもあの数はやっかいね」
ザッザッザッザッザ……
魔物達は仲間が吹き飛ぼうとも隊列を崩さずに横歩きを繰り返している。
テレビ頭「それでは最初のご質問をどうぞ」
司書「……(私から?) ……お爺ちゃんをどうしたのですか?」
テレビ頭「それは見ていただいた方がいいですね 中継先のテレビ頭サーン」
司書「え!?」
どこからかテレビが出てきた。
テレビ「ザザー ドドド ドカンドカン ガガガ」
中継テレビ頭「えーこちらは激しい戦闘が続いております」
\やらせはせんやらせはせんぞぉ!/
司書「お爺ちゃん!?」
テレビでは図書館館長が魔導書を使ってゴーレムを操りテレビ頭達と戦闘を繰り広げていた。
\ドンドン ドカァン/
中継テレビ頭「えー犯人の要求はすべてのテレビの破壊とのことでこちらとの交渉は決裂してそれ以後このような激しい戦闘となっております」
中継先のテレビ頭が真剣な声でいうものの後ろに映っている戦闘中のテレビ頭達はバナナやトマトを投げつけたりとかなりふざけている。
中継テレビ頭「現場からは以上です」
テレビ頭「はいありがとうございます この後も気を付けて中継してくださいね」
パカァン
中継の映像が消える寸前に中継先のテレビ頭のテレビが吹き飛ぶのが見えた、と同時に映していたテレビも吹き飛んだ。
バァン
司書「うわぁ!?」
テレビ頭「注意がちょっと遅かったでしょうかね」
司書「お爺ちゃん……」
テレビ頭「御覧のように大変お元気ですよ…… 今のところは」
司書「……」
テレビ頭「それではこちらの番ですね…… 『断片集』はご存知ですね?」
司書「……えい!」
司書は急に立ち上がり逃げ出そうとした。
テレビ頭「おやおや 急にどうしました?」
テレビ頭は慌てる様子もなく座っている。
バタバタバタ……バタバタバタ
司書「うそ…… 出口がない」
司書は出口を探して走り回るが窓も扉も見当たらない。
テレビ頭「まだ答えを聞いていませんよ お座りください」パチン
テレビ頭が指を鳴らすとソファが飛んできて司書を無理やり座らせた上で逃げれないようにソファの生地が手足をぐるぐる巻きにした。
司書「うう……」
テレビ頭「貴方は『断片集』をご存じですね そうですね」
司書「……はい」
司書はしぶしぶ答えた。
テレビ頭「素晴らしい では次はあなたの番ですよ」
司書「さっきの場所は…… お爺ちゃんはどこなんです!」
テレビ頭「さて? この世界は世界ごとあちこち動きまわりますのでわかりませんね」
司書「なによそれ!」
テレビ頭「では私の番ですね 『断片集』は図書館の何処に保管されていましたか?」
司書「ちょっと さっきので答えたことになるの!?」
テレビ頭「そりゃあまぁ わからないものはわかりませんから」
司書「ふぅん……(まともに答える気はないのね だったら)『断片集』の保管場所なんて知らないわ……痛たたたたた!?」
司書が適当に答えるとソファが噛みついてきた。
司書「おっと 言い忘れてましたがそのソファはウソが嫌いですのでウソを言うと噛みつかれますよ」
司書「っう……(どうしたら)」
テレビ頭「さてもう一度お聞きします 『断片集』は何処に隠されていましたか?」
犬を仲間にした少年エルフは歩いていると何処からか声がかかった。
\おーいここだここ/
大岩の下敷きになっている猿が話しかけてきた。
猿「おらぁ腹へって力がでねぇ 何か食いもんねぇかい?」
少年エルフ「このお団子しかないけど……」
猿「おお! 食わしてくれ」
少年エルフはチート団子を猿の口に放り込んだ。
もぐもぐ
猿「うめぇなぁ おりゃあ」
ドドォン
猿は食べ終えると大岩を投げ飛ばして出てきた。
猿「久々に自由の身だ おめえについてけばもっとコレ食えるかい」
少年エルフ「うん でも今からオーガ退治に行くんだけど」
猿「構わねぇオラ強ぇ奴は大好きだ いっちょいってみっか」
猿が仲間に加わった。
犬「強そうな猿で戦力になりそうですね」
少年エルフ「うん」
司書「……閉鎖図書よ」
テレビ頭「ブラボー! 貴方はお爺様と違って柔軟で素晴らしいですね…… それで閉鎖図書の何処に?」
司書「待ちなさいそれは二つ目でしょう 先に私の質問に一つ答えなさい」
テレビ頭「フームム そうですね では質問をどうぞ」
司書は手にしていた魔導書を握りしめる。
司書「……(本は無事ね)さっきの娘さんはどうなったの?」
テレビ頭「んんー どうでしょうね」
パチン
テレビ頭が指を鳴らすと床からテレビ付きのテーブルがせりあがってきた。
テレビ頭「んんー そうですねまだ頑張ってるようですね ほお7面ですかどこまでいけますかね」
\いつまで続くのよ/ \バリバリバリバリ/
テレビ画面の中では高速で移動する魔物の群れを娘が雷光で迎撃している。
司書「娘さん……」
テレビ頭「このような具合ですね ではあなたの答えをお聞きしましょうか」
司書「……そうね 『断片集』はその名の通りそれぞれ分けられて閉架図書の中に隠されているわ」
テレビ頭「なるほど木を隠すなら森 ページを隠すのは本ですか」
司書「だからそれを見つけるには私たちの使う”調査”や”探索”といった図書管理魔法が無ければ見つけられないわよ」シュン
テレビ頭「おや? 貴方今なにを?」
司書「それは次の質問かしら? 残念だけど質問ゲームは終わりよ ”分類”」
バシュシュン
司書を拘束していたソファが材質ごとに分類分解されてしまった。
テレビ頭「おおっと!?」
司書は自由になるとテレビ付きテーブルの画面へ飛び込む!
司書「娘さん!」
どさっ
頭上から司書が落ちてきた。
娘「司書!? どこから」
司書「いたた それは後で娘さん下です 床を壊してください」
娘「床? わかったわ”重雷撃”」
ドンガラガシャーン
バリバリ…… バリンッ
娘の雷撃が床を破壊すると同時に高速横移動する魔物も消えた。
娘「やったわ ……ってあれは?」
底の方から強烈な光が伸びている。
司書「あそこが出口です 飛び込みますよ急いで!」
娘「迷ってる場合じゃなさそうね」
娘と司書が光に飛び込むと光は消えた。
テレビ頭「おーやおやおや 私としたことが逃げられてしまいました」
テレビ頭は天を仰いて大げさに嘆くがすぐに立ち直る。
テレビ頭「でもまぁ『断片集』の在りかはわかりましたからそこからここからしらみつぶしですから」
パチン
テレビ頭が指を鳴らすと部屋の様子が変わり雑多に積まれた図書の山が現れた。
テレビ頭「わお この量は確かにこれは骨が折れますね でもこうすれば」
ぽいぽいぽい シュンシュンシュン
手にした本を次々と呼び出したテレビの画面に放り込んでいく。
テレビ頭「さて今度は宝探しゲームですよ」
メキメキ
テレビ頭はそう言うと自身のテレビ画面に手足をねじ込み始めた。
メキメキ
体も折り込んで頭部、テレビだけになってしまった。
テレビ頭「おっとこの辺りですかね?」
ガチャガチャ
画面内から手を伸ばしてチャンネルのダイヤルを調整する。
テレビ頭「ではこの辺で チャオ」
メキメキ……メキャ
最後に自らの画面も裏返して消えてしまった。
○
延々と続く本棚の間を司書と娘が歩いている。
娘「ここは一体なんなの? 図書館に戻ってきたの?」
司書「いいえここは辞典の中ですね」
娘「辞典?」
司書「あの魔族は取り込んだものから影像の世界を造れるようです」
娘「ふぅん つまりここはあいつのテレビで映した辞典なのね」
司書「そうなりますね 先ほどこれらの世界を調べたら出入りにはテレビを通るのが必要です」
娘「でもさっきのは?」
司書「あれは照射点で影像の根源です この世界を破壊するのと同じなのでかなり危険です」
娘「以外と度胸あるのね」
司書「ふふ それにこの辞典の世界にこれたのは幸運です ”検索”」シュン
司書が魔導書を操ると一冊の本が棚から飛んできた。
司書「ありました これでなんとかなるでしょう”転写”」パララララ
飛んできた本と魔導書の間でページが飛び交う、内容を写しているようだ。
娘「それは何を?」
司書「これは閉鎖図書の辞典なんです…… だからこんな事も可能ですよ”投影”」
ポン
司書が魔導書の中からテレビを現出させた。
娘「本からテレビって…… 洒落た事ができるのね」
司書「この辞典は実物を投影するのが売りです まぁそれで色々問題があったので発禁処分になりましたが」
娘「でしょうね」
司書「さて『テレビ』の項目を転写したのでいつでもテレビを出せますよ これで移動には困りません」
ガチャガチャ
司書は出てきたテレビのチャンネルを回す。
娘「そうね エルフもみんなも閉じ込められてるのよね」
司書「そうですねお爺ちゃんも助けないといけないですし 回収しなきゃいけないものもあるので」
娘「……『断片集』ね」
司書「なぜそれを!?」
娘「実はね……」
娘は第七王女の目的とこれまでのいきさつを説明した。
司書「そうでしたか わざわざ王国から」
娘「ごめんなさいね こんな事になっちゃって」
司書「いえ むしろあなた方が居なければ祖父を探しにここまで来れなかったかもしれません」
娘「そういってもらえると嬉しいわ はやく見つけないと」
司書「はい」
ガチャガチャ
娘「これチャンネルが多すぎよ 盗まれた図書はどれくらいだったの?」
司書「ざっと千冊ほどですかね」
娘「気が遠くなるわね 人を検索とかできないの?」
司書「検索は本に対してでしかできませんので」
娘「本ね…… だったら断片集の検索は?」
司書「うーん…… 番組にされた本に対して出来るかどうか」
娘「とりあえずやってみてよ」
司書「そうですね ”検索”」
司書はテレビに向かって魔法を唱えた。
ガチャガチャガチャ……
高速でチャンネルのダイヤルが回りある番組が映る。
\きゃああああ/ \ガオオ グオオ/
娘友が何かに追われている。
娘「友が! 行くわよ!」
司書「はい」
娘と司書はテレビ画面に飛び込んだ。
ダダダダ
娘友「助けて――ッ!!」
ドスンドスン
ドラゴン「グオオ」
娘友はドラゴンに追われている。
ひゅーん
娘「チェスト―」
ドスッ
上方から落ちて来た娘がドラゴンの脳天を剣で貫く。
ドラゴン「グギャアア」
ザザ―― プツン
ドラゴンは砂嵐のように明滅したかと思うと消えてしまった。
司書「やはり全て影像なんですね」
娘「そうね…… 大丈夫だった 友?」
娘友「娘゛ぇー ありがとう死ぬかと思ったわよ~」ぐしぐし
娘「はいはい 無事でよかったわ他に誰かみてない?」
娘友「ん…… 見たけど見間違いだったと思いたい…」
娘「え?」
○『ドラゴニック・パーク』 原始の湖畔
白竜「グオオオオオオオオオン」
ドラゴン達「グオオオオオオオオオオオオオオン」
ドラゴンの群れにホワイトゴラゴンが君臨している、群れのリーダーになっているようだ。
ダダダ
娘「なにやってんのアンタわーッ ”落雷”」
ガラガラガッシャーン バリバリバリ
娘の雷が白竜めがけて落ちる。
白竜「グギャアア」
雷を浴びた白竜が暴れ出す。
娘「アンタ私がわからないの!?」
○
白竜の攻撃をかわす娘を遠くから司書と娘友が眺める。
娘友「やっぱりアレ白竜さんだったか」
司書「スゴイですね 野生のドラゴンとあんなになじむなんて 白竜さんって何者ですか?」
娘友「まー 見た通りよ」
○
白竜「グオオオオオオオ」
娘「本当にもうっ! 貴方ねぇ この炎天下にそんなことしてていいの? シミになるわよ!」
娘はそう言うと日焼け止めクリームを高々と掲げた!
白竜「グオ…… やっばい 塗りなおさなきゃ!!」
白竜は正気にもどった。
白竜(人型)「やだわー つい若い頃に戻ったような気分だったわ」ぬりぬり
再び人間に変身した白竜は日焼け止めを塗りながら言う。
娘「若い頃って何百年前なのよ」
白竜(人型)「やーん それを聞かないでよー」
娘友「でもこれで他のドラゴンも怖くないわね 白竜がいるから」
白竜(人型)「ホント 若い子がいるっていいわ ここに住んじゃおうかしら」
司書「ここはテレビ番組の中で現実じゃありませんよ」
白竜(人型)「判ってるわ それが残念ねー」ふー
司書「それで…… 貴方から”検索”の結果が検知されてるのですが本とか紙片をもってませんか?」
白竜(人型)「あら? それだったらコレかしら」
白竜は若干湿った紙片を差し出した、古語でなにかがびっしり書かれている。
娘「これが断片集?」
司書「そうですね この反応は間違いありません」
娘友「……読めない」
司書「古語でしかも暗号化を掛けてますので…… 白竜さんこれをどこで?」
白竜(人型)「んー 人に戻った時に口からねー あんまり覚えてないけど若い子を食べちゃった時にひっかかったのかしらね」
娘「食べたって貴方」
白竜(人型)「あ 食事的な意味で」
娘友「よりコワイ」
娘「菜食主義っていってなかったかしら?」
白竜(人型)「……若いころは肉食系女子だったから ほら最近でも流行りじゃなあい?」
娘「アンタのような肉食系女子が居てたまるか」
白竜(人型)「やーん いけずー」くねくね
司書「とりあえず次いきますね」
司書はテレビを投射して検索魔法をかける。
○
少年エルフはその後も雉を仲間にして海辺まで歩いてきた。
少年エルフ「うわー 海だ」
犬「オーガ島は沖にありますよ どうします?」
少年エルフ「そういえばそうだね どうしよう」
\わいわい/
雉「あっちがなんだか騒がしいですよ」
少年エルフ「なんだろ?」
子供A「よーしこいつは売って金にしよーぜ」
子供B「いや合体経験値用に飼おうぜ」
海亀「ひいい」
少年エルフ「あ ひどい」
子供達が海亀をいじめている。
猿「こらこら おめぇら弱いモンいじめしてんのか?」
子供A「うわ 猿だ」ビク
子供B「目ぇ合わせるな 襲われるぞ」ビクビク
猿「なんだってぇ!?」
\うわあ/
少年エルフ「そんな怖い顔しちゃ…… 君たちダメだよこんなことしちゃ」
子供A「うっせ チービ」
子供B「バーカ」
少年エルフ「ぅ……」
雉「なめられてますよ」
猿「やっぱ ここはガツンといかねーと」
少年エルフ「うーん そうだコレを上げるからこの亀を頂戴」
少年エルフはチート団子を一袋差し出した。
猿「あ もったいねぇ」
犬「まだ大量にあるでしょ いいじゃない」
子供A「……うまそうだな」
子供B「仕方ねーな 交換してやらぁ」
子供達は団子をひったくると走っていった。
少年エルフ「やれやれ……」
子供たちが去ると海亀がお礼をいう。
海亀「ありがとうございます お礼に竜宮城へ……」
少年エルフ「それよりあの島に行きたいんだけど 乗せてってくれない?」
海亀「えー? いやでも乙姫さまとかタイやヒラメが……」
雉「つべこべ言わずに乗せなさい」キッ
海亀「あ ハイ」
○
ゴゴゴゴゴ
男「いやぁ 家族旅行なんて久しぶりだな」
男子「そうですね父上」
ドドドドド
女騎士「それにしてもまさか月に行ける時代が来るとはな」
男「まったくだな はっはっは」
\耐衝撃姿勢をとって下さい/
男子「ほらもうすぐですよ 横にならないと」
男「よしきた」
女騎士「緊張するな……」
シュイン
テレビ画面から娘たちが降り立つ。
娘「今度は何のほ」
ドドドドオオオオオオオオン!!
轟音と共に巨大大砲から巨大砲弾が打ち上げられた!
\おおおお/
娘「何が起こったの!?」
司書「ああっ!? 今のに検索反応がありましたよ」
娘友「今の? アレに? 仕方ないわね落ちてくるまで待ちましょうか」
司書「無理ですよ ここは『月世界家族旅行』の話です あれは月まで行ってしまいます」
娘友「つきぃ!?」
白竜(人型)「あんなところ行ってどうするの?」
娘「そんな大砲で月までって…… 無茶苦茶ね」
司書「まぁ空想のお話ですから しかしどうしましょう…… 原作通りなら無事に戻ってきますが」
娘「このエセ番組の世界じゃ どうかしらね」
娘友「でも追いかけようにもねえ……」
司書「いえ 方法はありますよ」
娘「あるの?」
司書「ええ ちょっとまっててください」
司書はテレビ画面へ戻っていった。
白竜(人型)「どうするのかしら?」
娘友「さあ?」
ぎゅぬぬぬぬ
娘友「きゃあ!?」
娘「今度は何!?」
テレビから巨大な何かが押し出されてきた。 大きな球体のようだ。
白竜(人型)「まさか宇宙船?」
バシュン
司書「うまくいきましたか」
娘友「何これ?」
司書「もう一つの月へ行く本『月世界最初の人』をこちらに影像化しました」
娘「これで月まで追いかけるの?」
司書「そうです 行きますよ」
司書はボール型宇宙船のハッチを開けて乗り込んでいく。
娘友「でもこの作品がこっちに来た影響ってないの?」
司書「それはなんとも…… 似た作品ですから大きく破たんはしないと思いますよ」
娘達はボール型宇宙船に乗り込んだ。
白竜(人型)「で この宇宙船はどういう理屈で月まで行くの?」
娘友「これも大砲?」
司書「いえ これは反重力物質を利用しています」
白竜(人型)「反重力…… まさに夢の乗り物ね」
娘「操縦できるの?」
司書「もちろんです 何度か読み直してますから」
ガチャン ガチャン パチパチ
司書はレバーはボタンを操作している。
娘「……いざとなったら白竜 頼むわよ」
白竜(人型)「無茶いわないで 月は管轄外よ」
ヒュルルルルル
機械が音を立てて動き出す。
娘友「大丈夫よね お話の世界だもん ご都合的に――」
ビュー―――――――――――――ン!!
ボール型宇宙船は空へ向かって飛び出した。
\\きゃあああああああああああああ//
ザザーン
少年エルフとお供は海亀に乗ってオーガの住むオーガが島に上陸した。
少年エルフ「うわー岩だらけ」
犬「いよいよ本拠地ですね」
猿「オラわくわくしてきたぞ」
雉「この脳筋に正面突破させましょうか」
海亀「あのもう帰っていいですか?」
雉「お待ち 帰る足がなくなるじゃない」
雉は海亀に乗ってけん制する。
海亀「はい」
雉「あたしゃこいつを見張っておくから 坊ちゃん達は安心していってきてください」
少年エルフ「えっと うん任せたよ」
犬「……(うまいこと逃げたな)」
猿「ようしいくぞー」
少年エルフ「大きいねー どうやって開けよう」
犬「というか正面からでいいんですか?」
少年エルフ「他に道もないし…… うーん」
トントン
少年エルフ「ごめんくださーい!」
犬「マジか!?」
シーン
返事はない。
少年エルフ「居ないのかな?」
犬「……よかった これで出てきたらどうしようかと」
猿「ちょいと偵察にいきますわ きんとぅーん」
ギュイーン
少年エルフ「うわ 雲が勝手に」
犬「」
猿「じゃ ちょっと見てくっから」
ギューン
猿は雲に乗って飛んで行った。
少年エルフ「猿すごいねー」
犬「雉いらねーなー」
青オーガ「誰かきたのか?」
赤オーガが監視カメラで確認する。
赤オーガ「……なんか子供と犬がいるぞ 迷子か?」
青オーガ「こんな島に迷子がくるか? ……めぼしいものも持ってなさそうだしほっとけ」
猿「おめーらヒデーな居留守かよ」
赤オーガ「なんだこの猿!?」
青オーガ「どっから入った!? まあいい小腹が減ってたところだ」
猿「お? なんだ飯にするのかオラにも食わせてくれよ」
赤オーガ「馬鹿め貴様がおやつだ!」
オーガ達が猿に襲い掛かる。
猿「なんだそういうことか じゃ仕方ねーな」
少年エルフ「……猿おそいねー」
犬「さすがに無謀でしたかね?」
\はぁーー/
どどどーん
\ウギャー/ \ヒイーー/
ひゅるるる どどん
少年エルフ「うわあ!?」 犬「!?」
少年エルフ達の目の前にオーガ達が落ちて来た。
ギュイーン
猿「大将 こいつらオラのこと食おうとしたから先に退治しちまった」
少年エルフ「そうなの? 怪我ない?」
猿「全然」
犬「つうかオーガがボロ雑巾ですよ 一体何をしたらこんな」
赤オーガ「うおお…… 猿ヤベェ 金色の猿ヤベェ」
猿「お まだ生きてたよかったな大将 とどめを」
青オーガ「ヒイイッ! 命ばかりはお助けうおー」
ペコペコ
オーガ達は必死に謝り始めた。
犬「どうします?」
少年エルフ「うーん(なんだかかわいそう)」
猿「ほっといたらまた悪さするぞ こいつら」
少年エルフ「そうなの?」
\もうしません/ \許してクダサイ/
少年エルフ「……うーん」
猿「大将 それより腹へっちまった 団子くれよ」
犬「お前はそればっかりだね」
少年エルフ「団子…… そっか団子だね はい猿」
少年エルフは猿にチート団子を渡す。
猿「やったぁ」
少年エルフ「はい犬も」
犬「ありがとうございます」
少年エルフ 「はいオーガさんたちも」
赤オーガ・青オーガ「へ?」
犬・猿「ええ!?」
少年エルフ「この団子を食べてお供になってよ」にっこり
男「ここが月かなんにもないな」
男は砲弾型宇宙船の窓から月面を眺める。
男子「岩と氷ばかりですね」
女騎士「とりあえず出てみようか……」
男「待て待て 危険って表示が出てるだろう外は有毒な『しんくう』でいっぱいだぞ」
男子「有毒ですか?」
女騎士「せっかく来たのに眺めるだけか…… おや日の出だ」
しゅーしゅー にょきにょき
月面に昼が来ると氷が解けて酸素やらなんやら空気が出来て植物が生えてきた。
男「おおー」
女騎士「素晴らしいな」
男子「みろ外に出ても安全になったようだ ほら蝶もとんでる月面蝶だ」
女騎士「ああ すごい数だ」
男「探検にいきましょう」
男たちはすっかり緑の生い茂った月面へ探検に出かけた。
ビービー
娘友「うーんうーん」
娘「ほら起きて 月についてるわよ」
娘友「月? えっと?」
司書「大丈夫ですか? 発射のショックで気を失っていたのですよ」
娘友「そっか…… でここが月?」
にょきにょき
\ぎえーぎえー/ \ほっほー ほっほー/
娘友「どう見てもジャングルじゃない」
白竜(人型)「そうよね わたしの知ってる月と違うわ」
司書「この話の月では昼の間だけ植物が生い茂るのです 夜になるとまた岩と氷だけの世界になります」
娘「じゃあ 今のうちに砲弾型宇宙船を探さないとね」
司書「もちろんです”検索”」しゅいん
司書は魔法を唱えた。
司書「あれ?」
娘「どうしたの?」
司書「反応が移動してますね」
娘友「ページが歩いてるの? どゆこと?」
司書「……おそらく登場人物の中に断片集が」
男子「父上母上 あそこの洞窟キノコがいっぱい生えてますよ すごい」
男子は興奮してどんどん先へ歩いていく。
女騎士「こら そんなに先に行くと危ないぞ」
男「いいじゃないか そんなに心配するな」
女騎士「しかし」
男「大丈夫大丈夫 多分あいつなりに気を使ってくれたんだろう」
女騎士「気を使って?」
男「まぁ ゆっくり二人で歩くとしようや ゆっくりと」
女騎士「……」カアア
女騎士「まてまて お前何を考えてるんだこんなところで!?」
男「いや ただの散歩じゃないか 一体なにを考えるというんだ? ん?」
女騎士「いや 違ういまのは言葉のあやで」カアア
???「……」じー
男「なんだよ 何があやなんだ? 言ってみろよ」にやにや
???「……」じ――
女騎士「いやそんな まて落ち着け それより誰かに見られてるような」
???「……」じ―――
男「お? ごまかすのか? だったらますます……」
???「……」じ――――
女騎士「いや 本当にアレ誰だ」
男「何?」
???「……?」
男と女騎士は至近距離まで来ていた月面人と目があった。
○月面・洞窟内
\きゃああああああ/ \うおわああああああ/
男子「母上!? 父上!?」
月面人「シャッ!!」
忍びよっていた月面人が振り返った男子を襲った!
ダダダダ
反応を追って娘たちがジャングルを駆け抜けていく。
司書「近いですよ」
娘「まって 月面人だわそれに……」
白竜(人型)「男!?」
娘友「女騎士さんも!? なんでここに!?」
マスクをした月面人に捕まった男と女騎士が洞窟へ連れられて行くのが見えた。
司書「知り合いですか? しかしこの世界の登場人物はすべて影像のはず……」
娘「……原因がわかったわ 男子が居るわ あのバカ」
洞窟の奥で男子が縛られているのが見えた。
司書「なるほどあの方が『主人公』にされているのですね」
娘「どこまでいっても世話をかけさせるんだから」
テクテク
女騎士「不覚 不意を突かれて捕まるとは」
男「しかしスゲーな地下にこんな宮殿があるなんて」
男子「それにしてもこの月面人 俺たちをどうするつもりでしょう」
月面人「とまれ」
\女王様のおなーりー/
ドンドコドコドコ
男「なんだなんだ? 女王」
男子「……」ごくり
ゆっくりと奥の扉から現れたのは……。
第七王女「かーっかっか 侵入者というのはお前たちか」
女兵士「洞窟の入り口をうろついていたんだって」
月面女王の第七王女と従者の女兵士が現れた。
男「オンナ?」
女騎士「それに子供?」
男子「……?(どこかで見たような 思い出せない?)」
○
第七王女「そなたたちには不法侵入の罪が問われておる…… が条件によっては不問にいたす」
男「おお 寛大だな それで条件とは?」
第七王女「それはな…… 我々は見ての通り女性ばかりの女系の一族ゆえに古来より外部から夫となる者を招きいれて来た。 条件とは他でもないお前はこの中の誰かと結婚するのじゃ」
男「おおッ!? マジでかそれなら是非と」
ズドン
女騎士の膝が男の横っ腹に刺さった。
女騎士「貴様はぁ~」ゴゴゴ
男「ゴフッゴフッ」
男子「……」
追跡してきた娘たちが様子を伺っている。
娘友「どゆこと?」
司書「本来は昆虫型月面人なのですが…… おそらく『女系戦闘民族』の話が混ざってますね」
娘「オトコが生まれると殺されてオンナは戦士として育てられるという伝説の民族ね 他民族から婿をとって子供が生まれたら婿は頭から食べられるとか」
司書「……大方あってます」
娘友「マジで」
娘「それにしても男子は王女と女兵士を見てもなにも気づいてないようね」
司書「『配役』されているので役にあった記憶に操作されているのでしょう 自力での解除は難しいかと」
娘「それで王女も女兵士も役にされてるので 性格はそのままみたいだけど」
娘友「だったらそう面倒な事には…… まてよ」
女騎士「月の女王よそれはご容赦ください そのコイツは私の…… 夫ゆえ」カアア
第七王女「ふむ そうであったか それは仕方がないの」
女兵士「えー あたしのお父さんにしたかったな……」
第七王女「ふむ…… ならばそこのお主! この者の息子か?」
第七王女は男子に問いかける。
男子「はい? 俺は息子の男子といいます」
第七王女「よし ならば男子よ女兵士と結婚するのじゃ」
男子「ええ!?」
女兵士「あの子と?」
第七王女は女兵士に耳打ちする。
第七王女「何をいうとる あの者はあのオトコの息子ならば結婚すれば自動的にアヤツも自動的にお父さんにできるであろう 」ボソボソ
女兵士「……そっかでも」ボソボソ
男「よかったな 姉さん女房が向こうから来てくれるぞ」
女騎士「お前は~ 本人同士の気持ちってものがあるだろうが」
男子「ふーむ……(まぁいくらなんでも年の差があるし断られるだろう……)」
女兵士「うーん……」
第七王女「そう悩むか? ならばあの者たちと家族になった時を想像してみい」
女兵士「んーと」
――たいちょうがお父さんで 女騎士さんはお母さん
――それで男子君は年下のダンナさん
――あたしはお姉さん的なお嫁さん
女兵士「……?(名前なんで知ってるんだろう?)」
第七王女「どうじゃ?」
女兵士「……アリかな♪」ニコ
女騎士「マジか!?」
男「っしゃあ 無罪放免」
女騎士「お前は息子の結婚をなんだと思っとる!」ゲシッ
男「ゲハッ」
女騎士のつま先が男のみぞおちに刺さった。
男子「ええ? 初対面なのに?」
女兵士は男子に歩み寄る。
女兵士「なんだろ 初対面って感じしないんだよね~? 君は?」
男子「え? そういわれるとなんとなく……」
第七王女「よーしならば 式の準備じゃ」
男子「ええ!? すぐにか!?」
娘友「まてーーいッ!!」
娘友が物陰から飛び出した。
○
第七王女「なんじゃ曲者か!?」
男子「誰だ?」
女兵士「一族のコではないですよね?」
娘友「まてまてまてーい 男子君とは娘の次に付き合い長いハズなのになんでアタシにはフラグが立たないのよ! 責任者でてこーい!!」
第七王女「……」
男子「……」
女兵士「……」
女騎士「何を言っている?」
男「……ムッ 頭が!?『それは仕様です』 俺は今何を?」
娘友「ムキ―ッ!!」
白竜(人型)「……(憐れな)」
第七王女「ええい何しておる 取り押さえろ!」
第七王女の号令で女性戦士たちが娘友に押し寄せる。
娘友「うわわ 頼むわよ白竜」
娘友は白竜の背中にしがみつく。
白竜(人型)「はいはい いくわよ」
白竜は変化を解いてドラゴンに戻った。
\うわあああ/ \ドラゴンだー/
白竜「さーてそれじゃこのコは貰っちゃうわよー」
白竜は女性戦士を蹴散らしながら首を伸ばして男子を咥えた。
パク
男子「んぐわー」バタバタ
娘友「……ほんとに食べないのよね?」
白竜「ひゃいひょうふよ(大丈夫よ)」
男子「はなせー」バタバタ
白竜「ふぁ(クシャミが出そう……) ふぁっひょい」
ボボフッ
白竜はクシャミと共に炎を吹いてしまった。
男子「」チーン
白竜「……」
娘友「まぁ 吹き飛ばさなかっただけマシかしら」
白竜「ほうね」
第七王女「おのれー 竜を打ち取ったものには勇者の称号を……ゆうしゃ?」
\わーわー/
第七王女の号令で女性戦士たちが白竜にむかっていく。
第七王女「ゆうしゃ…… わらわは……」うーむ
女兵士「どうしました?」
司書「今です」
回り込んできた娘と司書が飛び出してきた。
娘「”睡眠”」シュワン
第七王女「ハヒッ」カクン
女兵士「ひゃ!?」カクン
娘の睡眠魔法が第七王女と女兵士を眠らす。
娘「うまくいったわ 王女をお願い」
司書「よいしょっと 行けますよ」
娘「白竜 はやく」
白竜「はいはい」
白竜が首を伸ばして第七王女を抱えた司書と女兵士を負ぶさった娘を迎える。
女性戦士「大変 女王サマがサラワレタ―!」
女性戦士を蹴散らしながら白竜たちは地下から出て来た。
ドシンドシン
娘「日没が近いようね」
月面に出ると日が傾き植物が枯れ始めている。
司書「筋書どおりですよ これで砲弾型宇宙船が探せます」
娘友「ホントだ あっちにある」
遠くの崖の上に砲弾型宇宙船が刺さっているのが見えた。
白竜「いひょぐわよ」もごもご
男子「」
男子は白竜に咥えられたままである。
娘「……男子を落とさないでよ」
白竜「はひふぁひ」
バサッ
白竜は翼を広げると宇宙船めがけて飛び立った。
娘友「すごいところに刺さってるわね?」
娘「とりあえず乗って」
砲弾型宇宙船に着いた娘たちは乗り込んでいく。
司書「断片集も…… やはりココですね 宇宙船ごと帰らないと」
第七王女「すーすー」
司書は近くの席に第七王女を座らせる。
娘「はやくしないと月面人が追いかけてくるわよ」
女兵士「むにゃむにゃ」
娘も女兵士を席に座らせた。
白竜(人型)「というよりもう来てるわ」
男子「」
ベチャ
娘「男子べたべたじゃない…… 気持ち悪いから端にしてよ」
ゲシッゲシッ
娘はベタベタの男子を端へ蹴とばした。
白竜(人型)「むごい……」
娘「貴方のよだれでしょうが」
白竜(人型)「そんなこといったってー」
娘友「……(両方ムゴイ)」
司書「とか言ってる間に追いつかれちゃいましたよ」
\わーわー/
砲弾型宇宙船は女性戦士達に囲まれた。
娘「この宇宙船も操縦できる?」
司書「どうでしょう…… これかな?」
ボボン
宇宙船は噴射をして崖から飛び出し――
ヒュ――ン
落ち始めた。
娘友「きゃあああー!?」
娘「落ちてるわよ!?」
司書「仕方ないですね ”投影”」シュン
落ちる宇宙船の先に大型テレビを投影した。
ヒュ――ン
娘友「一緒に落ちてたらテレビをくぐれないじゃない」
司書「大丈夫ですよ こちらの方が重いから速く落ちます」
娘友「そんなバカな」
バシュン
砲弾型宇宙船は落下するテレビに追いついて画面の中へ吸い込まれた。
ガシャーン!!
直後にテレビは地面に激突した。
ドサッ
司書「ほらこの通り」
娘友「マジで……」
白竜(人型)「常識は時代によって変わるものね……」
娘「みんな無事? 王女と女兵士は?」
第七王女「うーん なんじゃ? 何が起こった?」
女兵士「あれー 王女サマ…… みんなもどうしたの?」
娘「よかった無事ね ……一応男子は」
男子「うう……何だベタベタする?」ベタベタ
娘友「『役』にされていた間の記憶はないようね」
娘「とりあえずアンタ汚いから洗いなさい ねえ司書お風呂とか投影できる?」
司書「できますよ いろいろ投影しますから休憩しましょう」
娘友「さんせー」
テレビ頭「どうしましょうどうしましょう どんどん集めらてる」
テレビ頭がテレビ越しに娘たちの様子を伺っている。
テレビ頭「困った困ったコマドリシスター このままでは先を越されてしまう」
ウロウロ
テレビ頭「あの手この手いい手はないものか 頭を切り替えるんだ」
ウロウロ
テレビ頭「だめだ尺が足りない 思いつかない―ッ」
ボボン
テレビ頭のテレビが爆発してテレビ頭は止まってしまった。
テレビ頭「」モクモク
\うわー大変だー/
どこからか小さなテレビ頭が大勢現れる。
\大変だ―/ \タイヘンだ―/ \新しいのモッテこーい/
何人かで新しいテレビを持ってくると壊れたテレビ頭めがけて投げつけた。
ガシャン…… ブブゥン
テレビ頭「んッんー! 電波ビンビン僕満足」
テレビ頭のテレビが新品と入れ替わって再び動き出した。
\やったー/ \わーい/
テレビ頭「頭が切り替わったらいい考えが浮かびましたよ ……やはりタタミとテレビは新品に限りますな」
ガチャガチャ
テレビ頭は自身のテレビのチャンネルを切り替える。
テレビ頭「どこに行きましたかね? ……いたいた」
赤オーガと青オーガをお供にした少年エルフはお宝と共にお爺さんとお婆さんの家に戻って来た。
お婆さん「よくやりましたね」
お爺さん「ホントにのう 友達もたくさん増えたようじゃの」
少年エルフ「友達…… うん! いっぱい友達できたよ」ニコニコ
赤オーガ「友達ねぇ」
青オーガ「まぁいいか」
犬「これからどうします?」
少年エルフ「みんなでここに住もうよ 大きな家立ててさ」
雉「それもいいかもしれませんね」
猿「ようしお城を造ろう」
少年エルフとお供たちは力を合わせてお城を立てました。
犬「おおきなお城ができましたね」
少年エルフ「これでみんな一緒に住めるね」
お爺さん「よかったのう あとは幸せにくらすだけじゃの」
少年エルフ「うん」
お婆さん「エルフや川にこんな生き物がいたんだが知り合いかい?」
お婆さんは海亀を拾ってきた。
少年エルフ「あ 海亀さん」
海亀「お久しぶりです やはり助けていただいたお礼をちゃんとしたくて持ってきました」
少年エルフ「別にいいのに 何をもってきたの?」
海亀は大きなつづらと小さなつづらを差し出した。
少年エルフ「プレゼント?」
海亀「はい 貴方様の願いをかなえるつづらです」
少年エルフ「僕のねがい?」
○
少年エルフの前には大きなつづらと小さなつづらがある。
少年エルフ「願い事って具体的には?」
海亀「大きいつづらは貴方を大きくしてくれますよ」
少年エルフ「本当!? じゃあ小さい方は?」
海亀「小さい方は小さくしますよ…… これはまぁ保険ですね」
少年エルフ「じゃあ開けるよ……(180センチ180センチ)」ドキドキ
海亀「どうぞ」
カパッ
ブシュ―ッ モクモクモクモク………
大きいつづらから大量の煙が噴き出した。
ゲホゲホ
青年エルフ「なにこれすごい煙…… すごい大人になってる!!」
少年エルフは青年エルフになっていた。
老海亀「よ……よかったですねぇ」
青年エルフ「海亀さん!? どうしたのシワシワだよ」
老海亀「いやぁ私も煙に巻かれましたし まぁ他の方よりはましですの」
青年エルフ「他のって……」
青年エルフは辺り見渡す。
犬の骨「」
猿の骨「」
雉の骨「」
お爺さんの墓「」
お婆さんの墓「」
青オーガのミイラ「」
赤オーガのミイラ「」
青年エルフ「うわああああああッ!?」
老海亀「ざっと500歳程年をとりましたのでな…… あらから死んでしまいましたね」
青年エルフ「うわああ みんなゴメン!」
老海亀「わ……私もそろそろ寿命のよう……で」プルプル
青年エルフ「まって 死なないで独りにしないでよ」
老海亀「なら小さいつづらを……」プルプル
青年エルフ「わかった! せめて海亀さんだけでもっ」
カパッ
青年エルフは小さなつづらを開けた。
ボワン モクモクモクモク
少年エルフ「……元に戻った? 海亀さん?」
子供に戻った少年エルフは海亀を探す。
少年エルフ「海亀さん うみがめさーん」
コロン
卵「」
少年エルフ「え!? まさか……」
少年エルフは海亀の卵を見つけた。
少年エルフ「うみがめさーん!?」
第七王女「なるほど…… それで残る『断片集』は図書館館長殿が持っておるというわけじゃな」
娘友「そういうこと…… でもあれじゃあねぇ」
図書館館長「騙されんぞ貴様らぁ! わしの本は1ページたりとも見せんわい!!」
キュドンキュドン ズドドドドド
本棚の向こうから怒号と大量の魔力弾が間断なく射出されている。
男子「どうなってるんだアレ うわっと」
キュン ドン!
娘「頭下げてなさい 窓から流れ弾が飛んでくるわよ」
娘たちは司書が投影したトーチカへ避難している。
第七王女「なんちゅう砲撃じゃ」
女兵士「お爺さん1人じゃないの?」
司書「お爺ちゃんは魔導書の著作・編集もできますからね たぶん陣地防衛の魔導書を大量配置してるのでしょう」
娘「魔導書の要塞ってところね」
娘友「アタシ達もテレビ頭の一味と思われてるみたいね…… 正気じゃないみたいね」
司書「そうね…… 最近ボケも来てるから『配役』か『素』かわからないわね」
第七王女「それにしても件のテレビ頭はどうしたのじゃ?」
白竜(人型)「そこらの壊れたテレビがそれじゃない? あの剣幕と弾幕にやられちゃったんじゃない?」
辺りには壊れたテレビのようなものが大量に散乱している。
第七王女「そうかもしれんのう」
娘「……そうだといいけど」
男子「娘? ……エルフさんか?」
娘「うん…… 王女も無事だったからパパも無事よね」
第七王女「ならば迅速にあの要塞を攻略するのじゃ 図書館長殿の協力があればエルフを探すのも容易かろう」
娘「そうね でもどうやって攻略する?」
司書「私がお爺ちゃんの近くまで行けたら確実に止めれます」
男子「その間合いまでどうやって行くかだな……」
第七王女「まずは……」
第七王女「シンプルイズベスト 正面突破じゃ」
白竜「うーん 気乗りしないけど仕方ないか」
娘「あれだけの攻撃に耐えれるのは貴方だけよ 頑張って」
白竜「約束は守ってよ…… 最新エステ全身フルコース」
娘友「エステで済むなら安いものよ」
司書「じゃあ白竜さんお願いします」
白竜「いくわよ」
第七王女と娘と司書を乗せた白竜が本棚の陣地へ突撃する。
ドシンドシンドシン
魔導書A「索敵殺害」キュイィ
魔導書B「サーチアンドデストローイ」キュンキュン
魔導書C「見敵必殺」キュオオオオ
ズドドドドドド キュドンキュドン
魔導書の猛攻が白竜を襲う。
白竜「あいたたた」
第七王女「大丈夫か?」
白竜「まーイタ気持ちいいくらい? いたた」
娘「なにそれマッサージ感覚? 余裕ね」
司書「もうすぐ本陣ですよ」
白竜「突撃―!」
ドシンドシンドシン
白竜は本陣めがけて疾走する。
図書館館長「”防衛配列”」
シュタタタタ
魔導書が積み上がり防壁を構築した。
白竜「こんな本の壁くらい」
べシンッ!! ドドン
本の壁は白竜の突進を跳ね返した。
第七王女「うわぁ」
娘「ちょっと」
司書「きゃああ」
白竜「痛ったー もう怒ったわよ!」
ブオオオオオッ
白竜は燃え盛る炎を吹き出した。
第七王女「ああ 本が燃えるではないか!」
娘「まって……」
魔導書の防壁は炎を受け付けない。
白竜「うっそー!?」
司書「お爺ちゃんの本への守護装丁はおそらく世界一ですよ」フフン
白竜「いってる場合じゃないわ 反撃くるわ!」
ペラペラペラ キュイイイイ
壁になった魔導書がページを開いて反撃してくる。
キュドドドド
白竜「あたたたた 痛いってば」
第七王女「退却 一時退却じゃー」
○
白竜(人型)「もーいやーもう絶対行かないわよ」
白竜はふて寝している。
娘友「というわけでプラン2よ」
女兵士「工作とか懐かしーい」
ペタペタ
男子「おい これで本当に大丈夫なんだろうな?」
男子は魔導書の扮装をさせられている。
娘「人が駄目なら本で潜入ね うまく行くかしら?」
第七王女「大丈夫じゃどこから見てもお主は本じゃ」
大判書(男子)「こんなデカい本とか怪しまれないか?」
娘友「世界最大の本に比べればこれくらい普通よ」
司書「守護装丁も効きましたしちゃんと図書として認識されてますよ」
大判書(男子)「本当かよ……」
娘「ほらさっさと行きなさい」
ゲシッ
大判書(男子)「うおっ蹴るな! 倒れたら起き上がれないぞ」
○
のしのし
大判書(男子)「……(足元が見えない)」
大判書に扮装した男子は図書館館長のいる魔導書の陣地へ近づいていく。
魔導書「!」フワフワ
大判書(男子)「むっ!?」
魔導書が男子の前に現れた。
魔導書「サーチ…… クリア」
大判書(男子)「あ…… どうも」ペコ
魔導書「……」ペコ
娘たちは投影した望遠鏡で様子を伺っている。
第七王女「やったのじゃ 第一関門突破じゃ」
娘「本当にアレでいいのね」
司書「あとはお爺ちゃんですね」
○
図書館館長「なんじゃお前は…… 本か?」
男子は図書館館長に詰問されている。
大判書(男子)「ええっと(ばれてないのか?) ……そうです」
図書館館長「むぅ魔力を感じるの…… 自律型魔導書か?」
大判書(男子)「……(もう少し)」じりじり
男子は少しづつ図書館館長と距離を縮める。
図書館館長「ふぅむ……貴様の表題を言ってみよ」
大判書(男子)「へ? ひょうだい」
図書館館長「タイトルじゃ 老眼でのうよくみえんのでな貴様のタイトルを教えてくれんか」
大判書(男子)「はい……(タイトル!? この本のか……そういや何の本になるんだコレ)」ダラダラ
図書館館長「どうした早く言え」
大判書(男子)「ええっと(なんかそれっぽい事……) ええっと『辞典に載ってなって無い虫』です」
○
\ウソつけボケがー/
ドドーン
\ぎょわー/
娘友「バレタ」
娘「あのバカ」
女兵士「やっぱり無理があったよね」
第七王女「ぬぅ」
司書「じゃ回収しますね”抜出”」
\うわあああああ/
大判書(男子)が司書の魔法で飛んできた。
ドタッ ズサーッ
娘「バカ アンタのタイトルは『今日の小鉢料理百選』よ」
焼け焦げた大判書(男子)「それは先に言っておいてくれよ」
女兵士「どうします ほかに作戦は?」
第七王女「うーむ仕方ないのう」
第七王女「稀覯本作戦じゃな」
娘友「アレを使うのね 今だすわ」
ゴソゴソ
娘友は鞄の中を手探る。
第七王女「せっかく見つけてくれたものなのにのう……惜しいのう」
女兵士「何を探してるんです?」
第七王女「以前に古文書の類を探してもらった時に見つけた稀覯本 というより手紙じゃ」
娘「手紙?」
司書「希少な古文書や手紙なんかもうち(大図書館)にありますが一体どんな?」
娘友「あったわこれ 激レアなんだから」
娘友は古びた巻物を第七王女に渡した。
第七王女「なにせ未発表の伝説の魔法使いの手紙…… それも恋文じゃからな」
司書「な!? 魔法使いの未発見のラブレターーッ!!」
娘「司書 声大きい…… それにしても有名人も大変ねこんなのが残ってるなんて」
娘友「有名人のプライバシーはいいゴールドになるのよ」へっへっへ
娘「友…… 顔がヤバいわよ」
娘友「あら オホホ」
ドドドドドドド……
女兵士「あれ誰か来」
図書館館長「未発表のラブレターじゃとーーーッ!?」
バッ
図書館館長が駆け寄ってきて手紙を奪いとる。
図書館館長「うおおおおお 間違いない本物じゃ!? 何ということじゃああああ」
司書「お爺ちゃんうるさい」
バコン
図書館館長「へベッ!」
図書館館長は司書の魔導書で殴られて気絶した。
娘友「効果は抜群ね」
第七王女「おおう…… 手間が省けたの」
娘「それじゃあこれで『断片集』は回収できたわけね」
第七王女「やったのじゃ 後はこれを解読できれば……」
パチパチパチパチ
テレビ頭「いやぁ おめでとうございます やっと全部集めてもらえましたね」
いつの間にかテレビ頭が現れた。
第七王女「おのれテレビの化け物め」
司書「貴方に『断片集』は渡しませんよ」
テレビ頭「それは結構ケッコウ しかしそれは決行できますかねこれを観ても」
ガチャガチャ
テレビ頭は自身のチャンネルを回すと……。
\マッチ……マッチはいりませんか/
娘「パパッ!?」
テレビ頭の画面にマッチを売る少年エルフが映っている。
○
雪の中、路地で少年エルフはマッチ売りをしていた。
少年エルフ「マッチいりませんかー」
スタスタスタ
人々は足早に通り過ぎるばかり。少年エルフは孤児院に入れられたがそこは悪徳孤児院で品物を売り切らないと罰が与えられるのだった。
少年エルフ「帰りたい…… 帰れない……」
はぁー
少年エルフ「……寒い そうだマッチの火で少し暖めれば」
少年エルフは品物のマッチをひと箱あけてマッチ棒をとりだした。
○大図書館戦争跡
娘「パパー ダメ―!!」
第七王女「点けてはならんー!!」
男子「落ち着け二人とも」
男子が飛び出そうとする娘と第七王女を引き留めている。
テレビ頭「フフフ…… もうすこしでクライマックスですよ 高視聴率の予感」
娘「司書! あの番組に割り込めない?」
司書「検索かけても反応しません なんで!?」
司書が投影したテレビに検索魔法をかけるが画面は砂嵐である。
娘友「さては…… 放送してないのね」
テレビ頭「ピンポンピンポンメガネガール正解! 実はこの番組は収録に切り替えました割り込みは御容赦ください」
第七王女「アヤツからしか入れんというわけか」
テレビ頭「そうですよ さてお時間も迫ってますので集めていただいた『断片集』を頂きましょうか」
娘「……妨害が無いと思ってたけどそういうことね」
第七王女「人質とは卑怯な」
テレビ頭「ンフフ~ いいのですか? バットでデッドなエンドはこの後スグ」
娘・第七王女「「ウヌヌ」」
娘「……できた?」
司書「はい 多分」
第七王女「よしコレを丸めて」クルクル
第七王女は『断片集』を丸めて紐で縛った。
娘「さあ 渡すからエルフを先に解放しなさい!」
テレビ頭「フフー いいところなんですよね 先に『断片集』をいただけますか」
\消えちゃった……/
テレビ画面では一本目のマッチが燃え尽きたところだ。
第七王女「むぅ 仕方ない先に渡すのじゃ」ポイ
第七王女が『断片集』を投げる。
パシッ
テレビ頭「結構結構 ご苦労様です…… ふむこれが『断片集』ですか」
娘「さぁ 早くパパを解放して」
テレビ頭「おや? そうですか? しかしそのような約束はした覚えはありませんな」
第七王女「貴様ァ!」
テレビ頭「フフフ 全ては視聴率のために…… 特別に悲しい楽しいバットエンドを先行上映しますよ」
\オババに会いたい……/
シュボッ
テレビ画面の少年エルフがマッチに火をつけ場面が変わる。
娘「パパッ!」
パープー パープー
豆腐屋のラッパが外から聞こえる。
少年エルフ「あれ? ここは?」
少年エルフはちゃぶ台のある居間に座っている。
バタバタ
女薬師「エルフ 豆腐買ってきたわ オババはまだ?」
女薬師が豆腐を入れた桶をもって入ってきた。
少年エルフ「えっと…… (そうだオババはすき焼きの肉を買いにいったんだっけ)」
少年エルフは設定を思いださせられた。
少年エルフ「まだ戻ってないよ」
女薬師「オババまだかな~♪ スキ焼スキ焼き」
ガラガラガラ
オババが肉屋から帰って来た。
女薬師「オババお帰り~ 遅かったね」
オババ「ああ 肉屋の帰りに見合いの話を持ち掛けられてね…… それで遅くなっちまった」
女薬師「またそんな でイケメン?」キラキラ
オババ「ほら」
女薬師「どれどれ」
オババ「ほらエルフ お前にも」
少年エルフ「僕にも!?」
オババ「お前も見た目はともかくいい年だろう 見るだけ見てみな」
少年エルフ「ふ ふーん」ドキドキ
ペラ
少年エルフ「え゛!?」
オババ「どうだい? いいコだろう」
オババは肉の包みをもって台所へ向かう。
少年エルフ「えっと…… あのオトコの人だけど」
オババ「んん?」
女薬師「オババあたしも いくら美人でもさすがに同性は……」
オババ「おっと逆だ」
ポイ
オババは女薬師から見合い写真を受け取ると少年エルフに向かって放り投げる、
少年エルフ「うわっ」
オババ「でアッチがアンタだ」
女薬師「もー オババは雑なんだから」
少年エルフ「……見合いってそんな」ドキドキ
オババ「いいから見てみな」
少年エルフ「うん」ドキドキ
ペラ
少年エルフ「……えっと この子……」
見合い写真には娘が写っている。
少年エルフ「娘…… そうだ僕は王女と図書館に行って」
オババ「そうだほら しっかりしてちゃちゃっと行きな」
オババは少年エルフを立たせて背中を押すと周りの景色は暗転して少年エルフだけになった。
少年エルフ「オババ? オババ!?」
\パパー/
少年エルフ「娘の声 行かなきゃ……」
タッタッタ
少年エルフが声の方へ走ると光に包まれた。
バリバリバリ
少年エルフ「娘ーッ」
娘「パパー!」
テレビ頭「何ですと!?」
少年エルフがテレビ頭の画面から這い出てくると娘に抱きしめられた。
ぎゅう
娘「あー よかった大丈夫? 怪我ない?」むぎゅうむぎゅう
少年エルフ「ちょっと放して何が起きてるの!?」
第七王女「よかったのじゃ危うく悲劇のヒロインになるところじゃったんじゃぞ」むぎゅうむぎゅう
少年エルフは娘と第七王女に挟まれもみくちゃにされる。
少年エルフ「ヒロインって 僕はオトコだって」
テレビ頭「ば…… バカな自力で『配役』から抜け出すなんて」
白竜(人型)「親子の絆の奇跡ね」ホロリ
娘友「そうなの?」
男子「とにかく 茶番は終わりだ」
女兵士「そうよ なんだだっけ……『だんぺんしゅー』を返しなさい」
テレビ頭「ムム」
第七王女「いや おぬしのような悪者はわらわが退治してやるのじゃ」
娘「そうね…… エルフに悲しい思いさせたのは許せないわ絶対」ゴゴゴ
テレビ頭「ムムム」
司書「そうです お爺ちゃんの仇をとらせていただきます」
図書館館長「」チーン
娘友「いや死んでないし 気絶させたのアンタでしょ」
司書「……覚悟してください」
娘友「スルーっすか」
テレビ頭「ムムムム」
ずぽっ
テレビ頭は断片集を自身の画面に突っ込む。
第七王女「させるかっ」シュッ
バリン ドカン!
第七王女の投げナイフがテレビ頭の画面を破壊する。
ドサッ バチバチバチ
第七王女「うぬ 遅かったか?」
ガシャガシャ
娘「……無いわね 何処かに転送されたのかしら」
女兵士「何処かって?」
娘「そうね 本体とか?」
???「「ピンポンピンポンピンポンポン」」
少年エルフ「うわぁ!? いっぱいいる」
娘友「またこのパターン!?」
テレビ頭の群れ「「テンプレ天丼様式美 いっぱいいるのはいいことだ」」
テレビ頭の群れが現れた。
○『テレビ局前』
テレビ頭「みてください 悲劇のエルフを救出した勇者一向に出待ちの群衆がおしよせます」
辺りは一変して夜の街となるテレビ局がそびえ立っている。
\インタビューにお答えください/ \不正はなかったんですかー/ \今ならこの羽毛布団がもう一枚/
ドドドドド
様々な扮装をしたテレビ頭が群れがテレビ局から飛び出してきた。
娘友「出待ちって……逆でしょ」
娘「それより物量で攻めて来たわね」
第七王女「エルフは取り戻したのじゃ遠慮はせぬぞ 娘!」
娘「そうねお礼をしなくちゃね」バチバチバチ
第七王女「白竜!」
白竜(人型)「え~あたしも? はいはい」
第七王女「懲らしめてやるのじゃ!」
娘「いくわよ”重雷撃”」
ガラガラガラガッシャーン
テレビ頭の群れ「「ビビビビッ」」バリンバリンバリン
白竜(人型)「もう竜使いが荒いんだから」
白竜は本来の姿にもどって燃え盛る火炎を吹き出した。
ゴオオオオオオオオオオオオオ
テレビ頭の群れ「「溶ける― ウボアアアアア」メラメラ
白竜「エステに美白パックもつけてよね」
○
司書「スゴイ…… まるで伝説の魔法使いのよう」
娘友「ま あのコらは特殊だから」
ドドドドド
テレビ頭「アチチ 上も火事下も火事これなーんだ?」
テレビ頭が燃えながら突進してきた。
少年エルフ「うわあ!? こっちきた」
第七王女「むぅ!」
男子「危ない」
ザシュ
テレビ頭「アチャーッ そうです燃えるテレビさんでした」ガシャン
男子が燃えるテレビ頭を切り捨てた。
男子「あっつ こいつら何も感じないのか?」
女兵士「そうかも 頭カラッポだし」
ドシュ
女兵士も襲ってくるテレビ頭を倒しながら答える。
司書「いくらでも沸いてるように見えますよ」
白竜と娘がテレビ頭の群れをなぎ倒しているが後から次々とテレビ頭がテレビ局から出てくる。
第七王女「ならば白竜 テレビ局を狙うのじゃ!」
白竜「はいはーい」
ゴオオオオオオオオオオオオオオッ
???「電磁波バリヤーッ!」
グニュア
白竜の炎を曲げられて拡散する。
第七王女「むっ さてはテレビ局が本体じゃな!」
???「ピンポーンピンポーン」
ズゴゴゴゴ
テレビ局に手足が生えて動き出した。
テレビ局男「そうです私が本体ですよ」ゴゴゴ
少年エルフ「うわ でっかい」
娘友「なるほど テレビは媒体で放送元が大元ってわけ」
娘「どうせ図体が大きいだけでしょ ”重雷撃”」
ガラガラガッシャーン
テレビ局男「おっとヒライシ―ン」
バリバリバリ
娘の雷は避雷針に吸い込まれてしまった。
テレビ局男「電波塔に落雷対策は基本ですよ基本」
娘「へぇ やるじゃない」
第七王女「うぬぬ おのれ」
テレビ局男「貴方たちを番組にすれば高視聴率まちがいない さぁスタジオに入ってもらいましょうか」
テレビ局男とテレビ頭の群れが襲い掛かってきた。
○
ドドドドド
インタビューテレビ頭「すいませーんテレビ局の者ですがお時間ありますかー」
男子「せいっ」ズバッ
レポーターテレビ頭「みてくださいこのおっきなカニ」
娘「邪魔ッ」ズバッ
女兵士「あ もったいない」
司会テレビ頭「さぁ制限時間は30秒お答えください」
白竜「知らないわよ」ゴオオオ
娘たちは押し寄せるテレビ頭を倒していくが尽きるようすがない。
娘友「防戦一方じゃない またこのパターン?」
第七王女「親玉を何とかできんのか?」
白竜「アタシ達は対策されてるしあの巨体じゃ……」
テレビ局男は次々とテレビ頭を生み出している。
少年エルフ「あれだけの魔力を一体どこから補給してるんだろう」
司書「調べてみますね "調査"」ヒィーン
少年エルフ「どう?」
司書「これは…… そんなまさか街じゅうから!?」
第七王女「どういうことじゃ?」
テレビ局男「はっはっはっは お教えしましょう私の魔力は53万の視聴者です」
第七王女「なんじゃと!?」
テレビ局男「あなたの声と受信で最強放送 視聴率こそ我がパワー我が魔力!」
娘友「そんなバカな」
少年エルフ「でも確かに電波があの塔で魔力に変換されてる すごい量!」
娘「じゃあ 視聴者がいる限り魔力が供給されるってこと!?」
テレビ局男「そのとおり 全ては視聴率のために 視聴率は正義!! これぞ視聴率パワー!!」
ドドォン
テレビ局男が大量のテレビを塊にして投げつけて来た。
少年エルフ「”風防波”」ぎゅるるる
バシンバシン ガチャンガチャン
少年エルフが風の障壁で降り注ぐテレビを防いだ。
少年エルフ「うっ…… すごい圧力」
娘「パパ大丈夫? あいつの魔力供給をと止めることができれば」
男子「電波をとめれないのか!?」
司書「それなら電波を反射する金属片を大量にまけば……」
娘友「なるほど 司書さんその金属を投影できる?」
司書「無理ですよ あの巨体を覆うほどの量なんて」
男子「あぶないっ 伏せろ!」
バキンッ
障壁を抜けてきたテレビを男子が剣で薙ぎ払った。
パラパラ
女兵士「きゃっ 破片が顔に」
司書「擦らない方がいいですよ ブラウン管にはアルミ粉末が蒸着してますから」
第七王女「アルミ…… それじゃ!」
娘「そうよ エルフなら」
少年エルフ「え なに?」
娘は少年エルフに作戦を伝える。
少年エルフ「わかったよ…… でもその間の防御は」
男子「俺にまかせてくれ エルフさんは魔法に集中を」
少年エルフ「わかった 行くよ”旋風”」ゴオッ
少年エルフが魔法の風を生み出す。
テレビ頭「おや風が騒がしいですね……」
少年エルフ「まだまだ”突風”」ビュオオオ
テレビ頭「でもこの風少し…… うわあああああああ」ヒュゴッ
旋風が突風を吸収して竜巻になった。
ゴゴゴゴゴ
\うわああああ/ \ぎゃあああ/
テレビ男たちが次々と竜巻に呑み込まれていく。
テレビ局男「む? 今度は竜巻ですか? しかしこの電波塔はタイフーン対策もバッチリです」
竜巻は巨大化してテレビ局男を襲う。
ヒュゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ
テレビ局男「はっはっは この程度なら耐えれますぞ」
娘「パパ頑張って」
少年エルフ「うん”旋風”」
少年エルフはいくつもの竜巻を発生させて竜巻をさらに巨大化させていく。
ヒュゴゴゴゴゴゴゴゴッ
テレビ局男「災害震災タイフーン中継も視聴率が取れるかっこうの番組ますます魔力が……」
\ぎゃー/ バチバチ \ガシャン バリン/ バチバチバチ
テレビ局男「なんだ魔力が減るなぜだ!?」
テレビ局男は自身が徐々に縮んでいくのに気付いた。
娘「うまくいってるようね」
テレビ局男「まさか電波が届かない…… 視聴率パワーが届かない!?」
第七王女「そうじゃ お主はお主のテレビのブラウン管のアルミによって電波を遮断されたのじゃ!」
娘友「身からでたチャフね」
テレビ局男「なるほど 考えましたなしかし私の魔力が尽きるまで耐えれますかな?」
少年エルフ「ううっ……うわっ!?」
ぶわっ
娘「パパっ危ない」ガシッ
竜巻に吸い込まれそうになった少年エルフを娘が捕まえる。
娘「うそ!?」
フワッ
第七王女「エルフッ!」ガシッ
男子「娘!」ガシッ
第七王女と男子が娘たちを引き留めた。
娘友「あっぶなー ってアタシも!?」ふわっ
司書「友さん! きゃっ」ふわっ
ガシッ
白竜「みんな捕まって こうなりゃ我慢くらべよ」
白竜が竜巻に引き込まれそうになった娘友たちと少年エルフ達を抱き寄せて竜巻に耐える。
テレビ局男「ぐぐぐ(動けない…… しかしそれはあちらも同じ耐えれば……)」
第七王女「耐えるのじゃ白竜! エルフ!」
少年エルフ「うう……」
ヒュゴゴゴゴゴッ
テレビ局男「ぐおおお 視聴率…… 私の視聴率が」ボロボロ
テレエ局男はさらに小さくなり崩れていく。
女兵士「まだ……ッ?」
少年エルフ「もう少し……」
ズズッ ズズッ
白竜「みんな離しちゃだめよ……」
白竜ごと竜巻に引き寄せられていく少年エルフ達。
娘「パパっ」ぎゅうううう
少年エルフ「んぐぐぐぐ」
テレビ局男「す 全ては視聴率のためにッ!」ヒュゴッ
テレビ局男がとうとう竜巻に巻き上げられた!
\ぐわああああああああああああああサヨナラ/ ガシャーン
テレビ局男は上空で砕け爆発四散! 空の描かれた天井にヒビが入った。
第七王女「やった やったのじゃ!」
少年エルフ「……お おわった」ヒュッ
ぶわっ どさーっ
少年エルフは竜巻を解除すると白竜ごと床に転がる、さらに巻き上げられていた様々な破片が降ってくる。
ザザザザーッ ガチャガチャガチャン
白竜「あいたた やだもーアザができちゃう」
白竜が翼を広げ降りそぞぐ破片から少年エルフ達を守った。
娘「できるわけないでしょアンタが…… パパ大丈夫? 怪我ない?」
少年エルフ「ないから…… 放して」むぎゅむぎゅ
娘「あーよかったー」ぎゅううう
少年エルフ「はな……」ぎゅぎゅー
第七王女「よしこれにて一件落着じゃな かっかっか……」
パリン
男子「王女まて 様子が変だ」
司書「この空間が壊れますよ」
バキバキバキ パリン ガチャン
頭上のテレビ局頭が砕けた天井のヒビが広がり崩れてくる。
第七王女「なに!? しかし『断片集』を探さねば」
バリバリバリ ピキピキ
白竜「そんな時間はないわよ ここから出なきゃ!」
第七王女「ぬうう 仕方ない撤収じゃ!」
娘「走って! 行くわよパパ」
ダダダダ
少年エルフ「走るから放して……んぎゅ」
娘達は走りだした。
図書館館長「テレビ魔の討伐、閉架書庫の蔵書の数々の奪還と王女様の御一行の皆さまには大変感謝しております」
第七王女「これも勇者の勤め して館長殿『断片集』についてじゃが」
図書館館長「原本は未だ見つかっておりません おそらくあの魔物に食われてしまったかと……」
第七王女「やはりそうか…… ならば写本のほうは?」
司書「目下解析中ですよ 解読した冒頭ならここに写してきました」
第七王女「是非読みたいのじゃ」
第七王女は司書の魔導書を覗き込む。
娘友「『断片集』とっさに司書さんの魔導書に転写したけど手掛かりになるのかな?」
娘「さあどうかしら」
図書館館長「伝説の魔法使いは几帳面な性格で旅の行程を詳細に残してます」
女兵士「そもそもどうしてバラバラのだんぺんしゅーになってたのですか?」
白竜(人型)「……誰かにバラバラにされたか 自身でバラバラにしたのか」
図書館館長「それでも残しておきたかったようですな 代々の館長にその存在だけは伝えられておりました」
娘友「歴史の謎ね~ あ王女何かわかった?」
第七王女がメモを控えて戻って来た。
第七王女「うむ魔王城にたどり着く記述を写したこれを元に捜索再開じゃ」
娘「そうね 行ってみましょう」
テクテクテク
第七王女「ふむふむ……旧教会を起点にたどるとあっちに門があるはずじゃ」
第七王女を先頭にして娘たちは街はずれまで歩いてきた。
男子「けっこう歩いたぞ合ってるのか?」
女兵士「建物も減ってきましたね」
少年エルフ「でもあっちにたくさん人がいるみたいだよ」
娘「あれは…… 何かの学校があるみたいねあれは校舎よ」
娘友「学校ねー アタシたちの学校もそろそろ修復されたかしら?」
娘「……そういえば私たちの学校が崩壊したのって確か」
男子「ゾンビだろ?」
娘「そうだけどゾンビが襲撃したのは確か……」
少年エルフ「中庭に埋まってた手を魔物が持って行ったよね」
娘「そうよだから――」
第七王女「うむ 間違いないここじゃ!」ピタ
第七王女が立ち止まり校門を指し示す。
娘「ここは――」
第七王女が校門に刻まれた学校名を指さして言う。
第七王女「魔王が潜んでおるのはこの『超魔力学園』じゃ!」
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