巌窟王「亜種並行世界!」 アンジー「虚構殺人遊戯:才囚学園ー!」

1:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/16(木) 20:58:51.47 ID:o9iNpo8B0

巌窟王「旅行先間違えた」 アンジー「神様ですか?」

の後編の方。もう物語全体で半分越してるので! 今度こそ! 短くなるはずだ!
注意書きは前回と同様なので省略!



2:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/16(木) 21:07:34.56ID:o9iNpo8B0

学級裁判 再開

ナーサリー『前回までのあらすじ! 巌窟王が本気になったのだわ!』

イシュタル『いやー。コイツ、どこかのジャージ着物女の言うことには実は人間大好きってことだし、別に珍しくはないけど』

イシュタル『それにしてもマスターですらない人間の肩を持つってのは中々面白い光景ではあるわね』

ナーサリー『うふふ! いつでも応援してるのだわ! 可愛い可愛い探偵さん!』

イシュタル『上から目線ね、応援が……』

ナーサリー『気に入らない? なら下から目線での応援を手本として見せてほしいの!』

イシュタル『え? え、ええと……』

イシュタル『ど、どうか……この無知蒙昧でドジな女神を助けると思って……頑張ってくだしゃい……』

ナーサリー『うわー。本当にやっちゃったのだわ。女神としてのプライドがないのかしら』

イシュタル『こ、この口リ……!』




夢野「……なんじゃろうなぁ。本来ならこのポジにモノクマーズがいる方が自然な気がするんじゃがなぁ」

赤松「多分それ深く考えない方がいいよ」

白銀「はいはい! やめやめ!」



3:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/16(木) 21:16:09.03ID:o9iNpo8B0

真宮寺「……どうしても僕のことを犯人と主張する気なんだネ?」

最原「うん。ごめん。どうしてもそうだとしか思えなくって」

真宮寺「で。超高校級の探偵である最原くんはともかくとして、まさか巌窟王さんまでそう主張するとは思わなかったなァ」

巌窟王「……」

赤松「ねえ最原くん。一つ聞いていい?」

最原「なに?」

赤松「……なんか普段と様子が違う気がするんだけど、気のせいかな?」

赤松「ちょっと自信満々すぎる気がするんだけど」

最原(……勘が鋭すぎる! さっきは大ポカしてたくせに!)



4:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/16(木) 21:23:09.05ID:o9iNpo8B0

真宮寺「これまでの犯人の足取りを考えると、犯人はほぼ誰にでも該当するんだけど……」

真宮寺「……ねえ。最原くん。キミはどうなのかなァ?」

最原「僕は……」

巌窟王「違うな。最原だけは絶対に違う」

赤松「うん。なんか怪しいとは思うけど、決定的に犯人ってわけじゃないと思う」

赤松「だって、巌窟王さんをアンジーさんのところに導いたのって、最原くんだよね?」

赤松「さっきのまとめを聞く限りでは、だけどさ」

巌窟王「何よりも、コイツにはあの時点で『俺の目からアンジーを完全に隠す方法』があった」

星「まあ、三つの空き部屋を探した後で巌窟王にこう報告すりゃあいいだけだからな」

星「あそこにアンジーはいなかった。他の場所を探してみよう……ってな」

夢野「悪態付きながらも生徒のことを信用していた巌窟王のこと、その一言で百パー丸め込めたじゃろうな?」



5:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/16(木) 21:32:11.84ID:o9iNpo8B0

百田「もしも終一が犯人なら、馬鹿正直にアンジーのところへ巌窟王を誘導するわけがねー、か」

百田「……それ以前に終一だぞ? アンジーを殺すわけねーだろ!」

春川「百田。いい加減にしなよ。前々回の学級裁判では赤松が『偶然に』、前回の学級裁判では東条が『故意に』人を殺してた」

春川「なんでもありなんだよ。人を信じすぎてたら足をすくわれるよ?」

赤松「……」

東条「……それでも私は……最原くんを信じたいと思うの」

王馬「ま、巌窟王ちゃんに並ぶ恩人だもんねー。東条ちゃんならそう言うと思ってたよ」

王馬「……自分の不利益になると頭の中で思ってても、ね」

獄原「でも最原くんのことを信じるとしても、最原くんの主張の方は簡単に信じるわけにはいかないよね?」

獄原「だって真宮寺くんも仲間なんだからさ」

入間「今となっちゃ巌窟王の主張でもあるけどな」

入間「結託しやがって。穴兄弟ってヤツか、アアン?」

赤松「入間さん。黙って」

入間「ぴぐう!」



10:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/17(金) 19:10:59.05ID:0AKaxBIy0

最原(……上手い具合に『犯人は火傷を負っているはず説』を煙に巻かれたな)

最原(でも別にいい。ひとまずはコレで)

最原「……巌窟王さん。何か超高校級の民俗学者の研究教室で見つけたんだね?」

巌窟王「大したものは見つけていない。だが、真宮寺の研究教室には無視できない一つのギミックが存在する」

巌窟王「そして俺の知っている限り、そのギミックを作動させられるのはキーボ、入間、アンジー、真宮寺、そして俺の五人のみ、というだけだ」

キーボ「それって、燻蒸消毒機能のことですか?」

入間「あ? ああ……あー……?」

入間「いや、アレは関係ねーだろ。だって……」

王馬「あっあー。勝手に話を進めないでくれるかな?」

王馬「なに? その燻蒸消毒機能って。よくわからないから一から説明してくれる?」



11:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/17(金) 19:20:00.16ID:0AKaxBIy0

巌窟王「燻蒸消毒機能とは、平たく言えばあの教室をガス室に変えるギミックだな」

巌窟王「水洗いや熱を使った消毒のできない美術品などが多数置かれている博物館ではよく使われるらしい」

巌窟王「ただこれは『常識の範囲外の知識』だったが故に、俺もアンジーから教えられた以上のことは知らなかったのだがな」

天海「確かサーヴァントって一般的な知識を一通り召喚の際に得られるんすよね?」

巌窟王「その知識の配分にも限界があるということだ」

白銀「なんだ……常識の範囲内の知識だけか……」ハァ

春川「白銀? 何考えてるの?」

白銀「いや濃密なオタトークとか期待できないのかなって思っただけなんだけど……はあ……」

巌窟王「たまにそういうのに堪能なサーヴァントもいる。もしかしたら得られる知識にはサーヴァントごとに傾向があるのかもしれん」

白銀「え? 本当!?」キラキラキラ

巌窟王(ただアレらと一緒に趣味を楽しめるかと言ったら微妙だが……)




カルデアのどっか

刑部姫「へーちょ」

黒髭「オイラは兵長じゃねぇ!」ビィィィ



12:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/17(金) 19:28:01.22ID:0AKaxBIy0

真宮寺「……でもその燻蒸消毒機能って一つ欠点があったよネ」

巌窟王「ああ。唯一にして最大の欠点。それは、あの研究教室に使われるガスの毒性が『冗談のように強すぎる』ことだ」

モノクマ「うん! 人間でも一呼吸すれば充分に死ぬよ!」

入間「ていうか、あの燻蒸消毒機能ってそれ以前に……」

入間「……」

キーボ「……まさか、入間さん……」

巌窟王「……クハハ。やはりか、入間」

最原「……ええと。ごめん。何を言いたいのか、まださっぱりなんだけど」

巌窟王「さて。それでは証言させるとしよう。あの燻蒸消毒機能をモロに食らった超高校級のロボットにな」

キーボ「わ、わかりました……では証言させてもらいます」



16:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/18(土) 07:19:56.35ID:ewbtz+fT0

キーボ「あの区画が解放されてからすぐのこと、ボクと入間さんと真宮寺クンはあの教室を調べていました」

キーボ「その折、ボクはあの部屋の燻蒸消毒機能に巻き込まれてしまったのです」

真宮寺「あの燻蒸消毒機能は赤外線で生物の有無を探知していて、中に人間がいる場合は安全装置がかかって作動しないんだけど」

真宮寺「ロボであるキーボくんは、赤外線センサーに引っかからない。だから彼だけが巻き込まれたんだヨ」

キーボ「虹色のなんか見てるだけで正気を失いそうなガスにニ十分くらい揉まれ、あとの十分でガスを徹底的に除去され」

キーボ「そして巻き込まれてから三十分後になんとか外に出ることができました」

キーボ「そのとき、たまたま通りすがったアンジーさんと巌窟王さんも扉の外にいました」

巌窟王「そして俺たちはそこで纏めて燻蒸消毒機能の説明をモノクマから受けていた」

巌窟王「まずは、この燻蒸消毒機能のことを知っていたのが五人だった、ということを覚えておけ」

巌窟王「キーボ。二回目の話だ」

キーボ「……おそらくこっちの方が重要ですからね」



17:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/18(土) 07:26:11.03ID:ewbtz+fT0

キーボ「事件の捜査中、獄原クンに呼ばれてボクは真宮寺クンの研究教室へと向かいました」

キーボ「そこでボクは巌窟王さんから信じられない提案をされたのです」

巌窟王「燻蒸消毒機能にもう一度巻き込まれてみろ。そして前のように、閉じ込められている間は大騒ぎしていろ」

巌窟王「およそ内容はこんなものだ」

最原「それでキーボくんがあの教室に閉じ込められてたのか……」

最原「……あれ? 待って。大騒ぎしていろって言ったの?」

キーボ「ええ。そこが重要なポイントその一です。あの燻蒸消毒機能は外からの音も、中からの音も完全シャットアウト」

キーボ「何も聞こえなくなるんですよ」

最原「……」

最原「キーボくん。その二回目の燻蒸消毒機能のとき、ガスって出た?」

キーボ「流石に勘がいいですね。おそらく最原クンの予測の通りだと思います」

キーボ「ガスは出ませんでした。一切、まったく」

百田「それってよ。その燻蒸消毒機能の設定が誰かに弄られてたって話じゃねーのか?」

真宮寺「確かに、消毒機能の操作は僕の研究教室の中にあるコンパネで可能だろうけど」

真宮寺「それって可能なの? モノクマ」

モノクマ「いいえ! 通常の操作だけでは、どうやったって燻蒸消毒機能の『毒ガスを発生させる機構』のみは抑えきれません!」

モノクマ「へえ……ガスが出なかったんだ。だとしたら……うーん」






モノクマ「誰かに改造でもされたんじゃない?」



18:前スレの535を参照のこと ◆SxyAboWqdc 2017/11/18(土) 07:42:19.55ID:ewbtz+fT0

最原(……自然と視線が一人の女生徒へ向く)

最原(裁判場にいる全員が彼女の姿を捉えた)

入間「……」

入間「えっ。な、なに? なんでこっち見てんの?」アタフタ

最原「……ああ。そうか。心当たりあるかも……この前の食堂で入間さん言ってたね」




入間『……くそ……見つからねぇ……ちくしょう……善行詰んだ俺様になんて仕打ちを……』




最原「あのときは『入間さんがいつ善行詰んだっけ』としか思わなかったけど……」

赤松「燻蒸消毒機能を改造して無毒化させてた……ってこと?」

王馬「それも秘密裏に? あの入間ちゃんが?」

王馬「いや。百歩譲って、入間ちゃんは『勝手に』そういうことをやる人間だとは理解するけどさ」

王馬「『黙って』やるタイプだとは思えないなぁ」

王馬「……ただの無毒化じゃないのなら話は別だけどさ」

巌窟王「……実際にただの無毒化ではないだろうな。おそらく無毒化した際に『何かに使えるかも』と惜しくなって、ガスはどこかに保存してあるはずだ」

巌窟王「魔が差したのだろう? だから詰んだ善行を誰かに話すわけにはいかなくなった」ニヤァ

入間「ばっ、そ、そんなわけ……!」

入間「……」

入間「ああそうだよ! かっぱらったよ! それの何が悪ィってんだよチンカスども!」ウガァ

白銀「わー。清々しいほど逆ギレしはじめた」



20:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/18(土) 17:17:07.58ID:ewbtz+fT0

巌窟王「クハハ。いや? 何も悪くはないぞ?」

キーボ「そうですね……何に使う気だったのかはわかりませんから責められませんし」

キーボ「危険な毒ガス機構を無毒化させたことは素直に褒めるべきです」

王馬「たった今入間ちゃんが認めた以上、その毒ガス絡みで何かあった日には犯人丸わかりだし」

茶柱「犯人……?」

入間「よ、余計なこと言ってんじゃねーよドチビ! 俺様がそんなこと考えるわけねーだろ!」

王馬「……へえ。どんなこと考えてたのかな……?」ニヤァ

入間「あっ」

星「もうやめておけ。これ以上責めても『やってないモン』は責められない。そうだろ?」

赤松「……?」

最原「……」




最原(入間さん、誰かを殺す気だったのかな)

最原(……まあ確かに、確証は何一つとしてないから、この話をこの方向で掘り下げるのは無意味だな)



21:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/18(土) 17:33:09.23ID:ewbtz+fT0

茶柱「……で。燻蒸消毒機能が無毒化されたってことはわかりましたが」

茶柱「それがどうしたんです? 今回の事件に毒ガスは関わってませんし……」

巌窟王「違うな。この燻蒸消毒機能で一番大事な部分は『密室を作り出せる』という部分だ」

巌窟王「それも音が外に漏れない完璧な……」

巌窟王「……ところで、犯人はアンジーを泥酔させるために酒を飲ませたんだったな?」

巌窟王「果たしてそれはどこで行われたのだ?」

茶柱「……」

茶柱「あの。空き部屋を捜査した人に問い合わせたいのですが」

茶柱「酒を飲ませた形跡とか……ありました?」

百田「……ん?」

春川「あれ? そういえば……酒の雫や水たまりとか、一切見てないね?」

キーボ「もしも掃除したんだとしたら血痕とか、アンジーさんが襲われた形跡すら掃除されているはずですし……」

キーボ「いや。そもそも掃除が困難です。床は吸湿性の高い木製で、床下は土でしたから。屋内なのに」

春川「犯人の計画では、そもそも死体発見現場が床下になる予定だったのかっていう疑問もあるし……」

春川「元から掃除をする気もなかったんじゃないかな」

巌窟王「そう。犯人はアンジーに酒を飲ませる際、どこかに場所を移したと考えるべきだ」

巌窟王「……ついでに、安心したいがために無毒化された燻蒸消毒機能をダメ押しに使いもしただろうな?」

最原「……キーボくん。入間さん。巌窟王さん」

最原「その燻蒸消毒機能のこと、誰かに話した?」

入間「……話してねぇ」

キーボ「ボクも同様です。話す必要がありませんでしたから」

巌窟王「アンジーと『アレは危ないな』と世間話した程度だ。私室やアンジーの研究教室の中のような、二人きりの場所で」

最原「じゃあ……!」



23:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/18(土) 17:47:35.22ID:ewbtz+fT0

真宮寺「……は? いやいやみんな。話を聞いてた?」

真宮寺「中に人がいるときに燻蒸消毒機能は使えないんだヨ?」

巌窟王「要は赤外線センサーに引っかかりさえしなければいい。それだけの話だ」

巌窟王「それともう一つ。あそこでアンジーが酒を飲まされたと考えられる根拠がある」

巌窟王「……事件以前より明らかに綺麗になっていた」

獄原「ああ。そういえば巌窟王さん、そんなこと言ってたね」

獄原「でもそれをどうやって証明しようかって話にもなったけど」

巌窟王「そこだな。俺には忘却補正があるから、あの研究教室が事件以前と比べると明らかに綺麗になっていることに気付けるが……」

巌窟王「せめてもう一人、俺と同じ意見のヤツがいれば裏付けとなるだろう」

茶柱「そんな巌窟王さんレベルの記憶力を持った人なんて……」

キーボ「……」

キーボ「あっ! いえ! ボクなら可能ですよ!」

入間「は?」

キーボ「だって、事件前と事件後で二回、燻蒸消毒機能に巻き込まれて真宮寺クンの研究教室に巻き込まれているんです!」

キーボ「巌窟王さんの言っていることが本当かどうか、ボクならわかります!」

キーボ「というより、証明できますよ! 入間さん、アレです!」

入間「……おい。おいおいおいおい! ざけんなッ! アレはそんなことのために付けた機能じゃ……!」

キーボ「なうろーでぃんぐ! なうろーでぃんぐ」ピーッガガガーッ

入間「チクショーーーーーーーッ!」ガビーンッ

百田「い、一体なにが……!?」



ニュッ



赤松「ひいっ! 口から写真が出た!」ガビーンッ

キーボ「これがボクの新機能、録画機能です!」テッテレー!



25:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/18(土) 18:58:54.23ID:ewbtz+fT0

キーボ「さあ! それではコレをデジタル変換して上部画面に大写しにしますよ!」

ナーサリー『了解! それじゃあ伯爵。それをデバイスで撮影して?』

巌窟王「……」スッ

最原(巌窟王さんは気持ちイヤそうな顔をしながら写真を手に取り、デバイスのカメラで撮影した)

最原(すぐに二つの写真が上部画面に映りこむ)

東条「……確かに。巌窟王さんの言う通りね。綺麗になってるわ、明らかに」

真宮寺「……」

巌窟王「どうした真宮寺? 顔色が悪いな?」ニヤァ

巌窟王「なんならここで言うがいい。『ああ、確かに掃除したよ。事件直前に』と言えば筋は通るだろう?」

真宮寺「……!」

最原(……失言を誘ってる。やり口が露骨すぎるけど)



26:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/18(土) 19:07:53.05ID:ewbtz+fT0

真宮寺「……具体的に、巌窟王さんが最後に僕の研究教室を見たのはいつのこと?」

巌窟王「お前が俺の質問に答えたら言ってやろう」

巌窟王「真宮寺。自分の研究教室を掃除したか?」

真宮寺「……」

最原(僕は真宮寺くんが犯人だと確信している。多分、巌窟王さんも)

最原(もしも。巌窟王さんがアンジーさんを探すときに、チラりとでも真宮寺くんの研究教室の中を見ていたとしたら)

最原(そして、そのときの研究教室が掃除されていなかったとしたら)

最原(……その可能性を真宮寺くんが考えていたとしたら、答えはたった一つしかない)

真宮寺「いや。してない……ネ」

巌窟王「ほう……」

巌窟王「さて。約束だ。俺が最後にいつ研究教室を見たか、だろう?」

巌窟王「……」

巌窟王「急激に言う気が失せたな?」

真宮寺「……ふざけないでヨ」ギリッ

巌窟王「クハハ。冗談だ。そうだな、事件前に燻蒸消毒機能から出て来たキーボが開けた扉から見たのが最後だ」

真宮寺「……ッ!」

最原(やり口が滅茶苦茶いやらしいな……)



27:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/18(土) 19:15:36.61ID:ewbtz+fT0

真宮寺「……まァいいや。結局、僕の研究教室が使われた決定的な証拠なんてないんだしネ」

真宮寺「疑問点が二つあるんだから、少なくともそれが解決されない限りは仮説は論外の一言だヨ」

天海「二つの疑問点?」

真宮寺「まず一つ。あの研究教室は何回も言った通り、人間の発する赤外線を探知して作動するか否かを決めるんだ」

真宮寺「つまり中に人がいる限りは作動しない」

真宮寺「二つ目に、入間さんが無毒化のことを秘密にしてたよネ? 犯人がそれを知る機会があったのかな?」

赤松「……あれ。この論調、どこかで見たような」

赤松「……ああ、そうだ。私の学級裁判のときでも、こんなことがあったね」

真宮寺「!」

最原「地雷を踏んだね真宮寺くん。そうだ、赤松さんの事件のときと一緒だよ」

最原「わかりようがないことなら、事前に実験して知ったんだ!」

真宮寺「犯行は突発的なものだったって何回も議論されたよネ?」

最原「そこは撤回する気はないよ。でも……!」

最原「……そうか。そういうことか……?」

茶柱「最原さん?」



31:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/19(日) 11:40:58.06ID:qOrqFToa0

最原(……狂気の有無、か)

最原「仮に。あくまでこれは仮の話でしかないけど」

真宮寺「……?」

最原「中に人がいるままに消毒機能を使える方法があったとして」

最原「その燻蒸消毒機能を使って人を殺そうと思ったらさ」

最原「毒ガスを使うのが一番手っ取り早いよね?」

百田「まあ、わざわざ単体では殺傷能力のない密室のギミックを使おうとか普通は考えねーよな」

最原「多分、犯人は真っ先に毒ガスでの殺人計画を考えたんだと思う」

最原「……でも毒ガスの機能についてはモノクマの説明以上の情報はなかったし、ぶっつけ本番で使おうなんて思えなかったんじゃないかな」

赤松「唯一キーボくんだけが実際に消毒機能に巻き込まれてたけど、結局それだと毒の威力はわからずじまいだったろうしね」

最原「だから犯人はあらかじめ、何かを使って毒の威力を測ろうとしたはずだ」

最原「生物はどこででも調達できたはずだよ。ゴン太くんの研究教室の虫たち、夢野さんの研究教室のピラニア……」

最原「……いや。少なくとも実際に使われた生物がいたはずだ」



32:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/19(日) 11:59:53.67ID:qOrqFToa0

最原「……夢野さんのハトムギだよ。犯人は実験動物として彼を使ったんだ!」




夢野「お楽しみは! そこまでじゃ!」反論!




最原「えっ」

最原(あまりにも予想外の方向から反論がッ!?)ガビーンッ!

夢野「最原よ……お主は一つ重大な勘違いをしておるぞ……」

最原「重大な勘違い?」

夢野「……」ゴゴゴゴゴゴゴ

夢野「ハトムギはメスじゃぞ」

最原「……」

最原(凄くどうでもいい反論だった……!)ガビーンッ!



33:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/19(日) 12:13:03.12ID:qOrqFToa0

夢野「まあそれはともかくとして、記念に反論は続けさせてもらうぞ?」

最原「あ、ああ……うん。いいよ……」

夢野「じゃあ改めて」



反論ショーダウン 真打!

夢野「犯人は突発的に犯行を行ったという話ではなかったのか?」

夢野「一連の工作はすべて巻きで行われたはずという話もあったはずじゃな?」

夢野「アンジーをぶん殴った後で毒ガスを使おうと思ったのなら……」

夢野「少なくとも突発的な犯行だったという前提は撤回すべきではないかのう」


議論発展!


最原「いや。これまでの議論で培った仮説を撤回する気はないよ」

最原「犯人はハトムギを使って毒ガスの威力を測ったはずだ!」

夢野「わからんヤツじゃのう。それは話がおかしいんじゃ」

夢野「いかにウチらが火事で右往左往していたからと言って……」

夢野「アンジーを『ぶん殴った後で』実験したって言説は不自然すぎるじゃろ」

最原「その言葉! 斬ってみせる!」ズバァァァァッ!



34:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/19(日) 12:24:22.71ID:qOrqFToa0

最原「そうだね。アンジーさんを気絶させた後で、ハトムギを使った実験をしていたのなら話がおかしい」

最原「だって毒ガスはモノクマの説明通りなら『即効性』なんだ」

百田「そんなものをわざわざ使うくらいなら、もっと他にいくらでも殺す方法はあったはずだもんな」

春川「絞殺。撲殺。刺殺。夜長は気絶してたんだから、本当にいくらでも、ね」

春川「殺人の委託によるアリバイ工作へ発想が向かわないような人間なら、逆に毒殺っていう発想に至らない」

最原「うん。そうなるね」

夢野「んあー……? 最原、お主一体何が言いたいんじゃ?」

夢野「ハトムギによる実験が行われたって言ったはずじゃろ」

赤松「今更問い合わせるのはなんとなく恥ずかしいんだけど、そのハトムギって……」

東条「夢野さんの研究教室で飼われている手品用の真っ白な鳩の名前よ」

最原「……あのさ。ハトムギによる実験が行われたのが、そもそもアンジーさんの事件以前なんだよ」

最原「その証拠もあったはずだ」

夢野「どこに?」

最原「……ハトムギが食べてたアレだよ」

夢野「……アルミホイルのことか?」



37:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/19(日) 19:56:02.15ID:qOrqFToa0

夢野「……ん? 待て。最原。お主の言っていた『真っ先に考え付いた』って……」

最原「あ。ごめん。紛らわしかったかな」

最原「うん。そうだよ。犯人は『夢野さんのマジカルショーが終わった直後』くらいのタイミングで殺人計画を考えたんだと思う」

赤松「えっ!? ちょっと待ってよ! だってそのとき私たちは……!」

茶柱「そうですよね! モノクマからの動機の提示もありませんでしたし、平和そのものだったんですよ!?」

王馬「んー。その認識が甘かったんじゃないかな。だって、俺たちってこの才囚学園に閉じ込められてるんだよ?」

王馬「しかもコロシアイを強要されている状態で。この環境自体がモノクマの提示している最大の動機だよね」

王馬「わざわざモノクマがアクションを起こさなくっても、こういうことは普通に起こりえるはずだって」

赤松「そ、そんな……!」

最原「でも毒ガスを使った殺人計画は頓挫した。その前に入間さんが無毒化させていたから……」

最原「……あ。ちなみに、夢野さんのハトムギがなんでアルミホイルを食べてたかっていうと……」

最原「多分、ハトムギはアルミホイルで囲まれてたんじゃないかな」

天海「……」

天海「もしかして、最原くん。あの研究教室って!」

最原「うん。アルミホイルで赤外線をシャットアウトすれば、おそらく問題なく動作するんだと思う」



38:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/19(日) 20:11:28.74ID:qOrqFToa0

最原「でも殺人計画が頓挫したとは言っても、犯人はその時点で燻蒸消毒機能の無毒化のことを知ることができた」

最原「ついでに、幸か不幸かハトムギを実験動物として選んだこともプラスに働いた」

最原「彼……じゃなくって、彼女ほど処分しやすい実験動物もいないよね?」

東条「全部終わった後で空に逃がせば、彼女が何を食べていようがもう関係ない……」

獄原「でも、ハトムギさんは戻ってきた。そして証拠を持ってきてくれたんだね」

獄原「……うう! 夢野さんとハトムギの友情……とっても……とっても美しいよ!」

夢野「いや別に友情とかないが……どっちかというと仕事仲間じゃし」

星「俺でもどうかと思うほどドライだな……」

巌窟王「ついでに言っておこう。俺が真宮寺の研究教室を、アンジー捜索の折りに見たときには」

イシュタル『……ああ! 確かにあったわね、アルミホイルの破片!』

ナーサリー『ええ! 今すぐ上部モニタに出すわ!』

最原「決まりじゃないかな? 掃除された研究教室。アルミホイルの破片。酒を飲ませた形跡のない空き部屋……」

最原「更に、空き部屋から真宮寺くんの研究教室との距離はかなり近い」

最原「……犯人の『絶対に、万が一にでも見つかりたくない』っていう念には念をの精神が裏目に出た結果だ」

真宮寺「……」

真宮寺「クク……ククククククク」

真宮寺「ほ、本気で言っているわけじゃないよネ?」

巌窟王「もう諦めろ真宮寺。お前は終わりだ」

真宮寺「……何が……終わりだって……!?」

真宮寺「な、ななっ……なにがっ……なななにっ……なななななななっ!」ガタガタ



39:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/19(日) 20:17:38.97ID:qOrqFToa0

真宮寺?「落ち着くのです! 是清!」

最原「……」

最原「ん?」

赤松「あれっ?」

百田「お?」

巌窟王「!」

巌窟王「……真宮寺の魔力の流れが……変わった?」

真宮寺「ね、姉さん……!」

真宮寺?「ああ、是清。可哀想に。あの子たちは何もわかっていないのです」

真宮寺?「あなたの誠実さ。あなたの愛の深さ……今までずっと仲間としてやってきていたというのに」

最原「……」

最原(真宮寺くんがマスクを脱いだ?)

最原(……いや。様子がおかしいとか、口調が変わってるとか、それ以前に……)

百田「お、おい真宮寺。その頬の傷って……まさか火傷か?」

真宮寺?「……ふふ」

真宮寺?「ふふふふふふふふふ……!」

真宮寺?「それが?」

百田「それがって……!」



40:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/19(日) 20:22:09.69ID:qOrqFToa0

真宮寺「そうだヨ。やっぱりおかしいヨ! だって犯人は全部終わった後で掃除をしたって言ったよネ!?」

真宮寺「だとしたらアルミホイルが残ってるのはどう考えたって変だヨ!」

真宮寺「いや。そもそもアルミホイルで人を二人分、つまりアンジーさんと犯人をセンサーから隠そうと思ったら……!」

最原「かなりの量のアルミホイルが必要になる、か……」

最原「……そんなわけないよ。使うアルミホイルの量はかなり少なく済んだはずだ」

最原「無毒化のことを知った犯人なら猶更ね!」

最原「そして、その方法こそが、掃除後の研究教室でアルミホイルが残った理由の説明になるはずだ!」

真宮寺「んなぁっ……!」

真宮寺「……クク、クククククク……」

真宮寺「い、言ってみなヨ……そんな方法、あるわけが……!」

最原(……よし。いいぞ。この調子だ。この調子で揺さぶっていけば……!)



47:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/20(月) 16:25:41.13ID:gcnkzKN60

最原「ねえ巌窟王さん。この分だ件のセンサーの写真も撮ってるよね?」

巌窟王「ああ。ナーサリー、アレを」

最原「待って。出す前に確認したいんだ。そのセンサーって、もしかして天井にあったりしなかった?」

巌窟王「……」

ナーサリー『大正解よ! 燻蒸消毒機能の動作を司る赤外線センサーは、天井の四隅に四つ設置されていたわ!』

イシュタル『あと床の四隅に一つずつ、でしょ?』

東条「つまり合計で八つということね」

ナーサリー『ちなみに、これがそうよ。大きさは大体人の拳くらいかしら』ピコンッ

夢野「……んあ! わかったぞ! 犯人はこの燻蒸消毒のセンサーを、作動させるときだけ逆方向に首を曲げさせたんじゃ!」

モノクマ「あ。無理無理。そんなことしたら壊れちゃうよ。関節作ってないから」

モノクマ「壊すことに関しても校則で制限したりはしてないけど……写真見る限り全部無事だね?」

真宮寺「ククク……ほらね。じゃあ消毒機能を使ったっていう最原くんの推理は……!」

最原「いや。間違ってないよ。夢野さんの推理は、実はいい線行ってたんだ」

最原「犯人はセンサーそのものを弄って赤外線をシャットアウトしたんだよ!」

最原「つまり、赤外線を発する人体の方ではなく、センサーそのものにアルミホイルを被せることでね!」

真宮寺「……がっ!?」ガビーンッ!



48:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/20(月) 16:35:50.49ID:gcnkzKN60

赤松「……あ、あれ? 待って。今までの推理を聞いててふと思ったんだけどさ」

赤松「人が吸ったら猛毒のガスを出す機構が、ちょっと細工するだけで充分に動作可能だったってことだよね?」

赤松「そ、それってかなり危険だったんじゃ……」

入間「だから俺様が無毒化させたんだよ。この程度の小細工、俺様ならすぐに考え付いたぜ」

入間「それで誰かに利用される前に出し抜いてやらァって思ってよ」

王馬「今回ばかりは入間ちゃんのアホみたいな負けん気に救われた形になるのかな! お手柄だよ!」

入間「あ、アホみたいな!?」ガビーンッ

星「……ただ、どこかに隠しておいてあるはずのガスについては後で処分させてもらおう」

入間「え、ええーっ……マジでー……?」

巌窟王「クハハ! 防毒の力がある俺と、そもそも毒が使えないキーボとで安全に処理してやろう」

キーボ「えっ。ボクも?」

巌窟王「拒否権はないッ!」ギンッ

キーボ「元から拒否する気はありませんでしたが、強要されてると思うと途端にやる気が失せてきます……」ズーン



49:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/20(月) 16:56:01.93ID:gcnkzKN60

最原「掃除した後の床にアルミホイルが落ちていた理由は多分、すべてのセンサーから慌ててアルミホイルを剥がしたからだろうね」

最原「特に、天井のセンサーは取り付けるのも、剥がすのも苦労したはずだ」

最原「犯人が急いでいたんだとしたら、破片程度はセンサーに引っかかって残るかもしれない」

巌窟王「そしてそれが、犯人がすべての工作を終えた後で床へと落ちた……」

巌窟王「ふむ……単純だが、ありえなくもないか」

茶柱「天井のセンサーにアルミホイルを付けるって……それ可能なんですか? あの研究教室って病的に天井も高かったですよね?」

巌窟王「その分、そこかしこに足場や階段があった。更に研究教室上部の方も資料やわけのわからない木製のオブジェのオンパレード」

巌窟王「不可能ではない、と答えるべきだろうな。ここは。踏み台になりそうなものも一つや二つではないのだから」

王馬「燻蒸消毒機能のことを知っていた人間は五人」

王馬「被害者のアンジーちゃん。サーヴァントの巌窟王ちゃん。消毒機能を無毒化させた入間ちゃん。あとキー坊と真宮寺ちゃん」

王馬「あれ? 参ったなぁ。まだ真宮寺ちゃん『だけが』可能ってわけにはいかないんじゃない?」

キーボ「え? ちょ、ちょっと……!」

最原「巌窟王さんの『掃除されていた』って証言を裏付けたり、他にも燻蒸消毒機能が無毒化されていたって正直に証言したりしてたし」

最原「犯人にしては協力的すぎるんじゃないかな」

入間「あと、キーボは俺様の研究教室を何回もノックしてたはずだろ?」

入間「火事が起こっている間限定だったけどよ」

巌窟王「……だとすると、やはりキーボは犯人ではないかもしれんな」

巌窟王「あの燻蒸消毒機能は、一度作動したら三十分は外には出れない」

巌窟王「東条が襲撃されたのが十一時ニ十分で、俺と茶柱が火事を発見したのが十一時四十分」

茶柱「転子が人を集めだしたのが十一時五十分だから……」

茶柱「片付けや準備の時間を加味するに、キーボさんが犯人って説はいくらなんでも無理がありますね」

最原「混乱が収まり始める時間にアンジーさんが死ぬように、ヒルの投入は多少は待っただろうから……」

最原「うん……入間さんの研究教室をノックし続けてたキーボくんが犯人の可能性は限りなく低いと思うよ」



50:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/20(月) 17:18:44.65ID:gcnkzKN60

王馬「……うーん。別にキー坊にも、って意味で言ったわけじゃないんだけどなぁ。キー坊は人徳がないんだね!」

王馬「あ。そういえば人じゃなかったね! ごめんね、無神経なこと言っちゃって! ロボに神経ないけど!」

キーボ「ロボット三原則をここまで破りたいと思ったのは産まれて初めてです」

王馬「……」

王馬「ねえテレクラちゃん! ちょっと見たい写真があるんだけどさ!」

ナーサリー『あら。お呼ばれみたいよ、イシュタル』

イシュタル『誰がテレクラちゃんよ!』ガビーンッ!

王馬「いやまあどっちでもいいんだけど。アンジーちゃんの写真とかある?」

ナーサリー『え? 今それが見たいの? 別にいいけど。ほら』ピロンッ

王馬「……違うな。このアングルじゃない。逆から撮った写真はない?」

ナーサリー『ええっと……あるわね。コレよ』ピロンッ

王馬「……」

王馬「うん! わかった! じゃあ俺も犯人は真宮寺ちゃんだって思うよ!」キラキラキラ!

百田「あ? なんでだよ。ていうか今のやり取りは一体なんだ?」

王馬「いいからいいから!」



54:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/20(月) 20:05:01.86ID:gcnkzKN60

最原「これで三人……過半数まであと六人か」

赤松「……」

赤松「最原くん。何か隠してることあるよね?」

最原「!」

赤松「だって、おかしいよ。話運びが何か変。いつもの最原くんじゃないみたい」

赤松「上手くは言えないんだけどさ……!」

王馬「あーっれれー? 誰にでも優しい赤松ちゃんがそんなこと言うなんて珍しいねー」

王馬「でもさあ、実際に最原ちゃんの言説は筋が通ってるように見えるけど」

赤松「……あの燻蒸消毒機能のことを知っていた人って、本当に五人だけだったの?」

モノクマ「うーん。少なくともボクが燻蒸消毒機能について喋ったのは、さっき挙げられた五人だけだね」

モノクマ「だからボクから情報が漏れたって可能性はほぼ除外していいと思うよ」

入間「ついでに、燻蒸消毒機能のコンパネはインターフェイスがクソだった」

入間「つまりアレを燻蒸消毒機能のコンパネだと認識するためには一度起動させる必要があるんだよ」

キーボ「だからボクが一度巻き込まれたわけですしね」

キーボ「入間さんがコンパネを弄ったのは興味本位からですし……あそこから偶然漏れる可能性もないと考えていいのでは」

巌窟王「アンジーから漏れた可能性も除外だ。俺が『みだりに話すべきではない』と言ったからな」

真宮寺「……」







真宮寺「ああ、そうだ。思い出したヨ……!」

最原「え?」

真宮寺「ちょっと前に、ある人に燻蒸消毒機能のことをポ口リと漏らしちゃったんだヨ」

真宮寺「……東条さんにネ!」

東条「……」

東条「えっ?」



55:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/20(月) 20:11:00.48ID:gcnkzKN60

百田「おい。待てよ。そりゃおかしいぞ。入間ですら……そう」

百田「あの入間ですら! 危ないから他のヤツに喋るのはやめようって発言を控えたようなギミックだぞ!」

百田「よりにもよってテメェが燻蒸消毒機能について誰かに話すとは到底思えねぇな!」

入間「その言い草はあんまりじゃねぇか!? 慰謝料請求すっぞ!」

真宮寺「ククク。いや、ごめんネ。世間話のときについ、サ」

真宮寺「……だって東条さんだヨ? この前の学級裁判のときに、みんなで必死に助けた東条さんだヨ?」

真宮寺「信用しすぎて、油断しすぎて、慢心しすぎちゃって……」

真宮寺「……つい、ネ」

東条「待って……私はそんなことを言われた覚えはないわ」

真宮寺「いや……? 僕は間違いなく、キミに燻蒸消毒機能のことを教えたヨ」

真宮寺「まあ、録音機能を持ったキーボくんじゃあるまいし、証明はできないけどサ」

最原「……」

最原(かかった……!)



57:アンダードッグ効果? ◆SxyAboWqdc 2017/11/20(月) 20:21:24.10ID:gcnkzKN60

最原「……それがキミの主張? 真宮寺くん」

真宮寺「ククク……僕が犯人だなんて、そんなわけないじゃないか」

真宮寺「だって僕はこれまで何も悪いことはしてないんだヨ……!」

真宮寺「みんなと一緒に今まで笑いあってきたんだヨ!」

真宮寺「希望を! 絶望を! この学園に来てからのすべてを、キミたち仲間と共有してきたんだヨ!」

真宮寺「だから……だからだからだからだからだから」

真宮寺「僕を疑わないでヨ! そんな目で見ないでヨ!」

真宮寺「僕はッ! 犯人なんかじゃないんだぁぁぁぁぁ!」

百田「真宮寺……!」

夢野「……確かにそうじゃ。巌窟王と会えたのも、広い目で見ればコイツ監修の魔法陣あってこそじゃしの」

夢野「ただ怪しいというだけで疑うのも論外ではあるんじゃ」

最原「……」

最原「誤魔化されない」

真宮寺「……はっ!?」

最原「……ごめん、真宮寺くん。キミのことはまったく恨んでない」

最原「でも真実から目を逸らす気にもなれないんだ」

真宮寺「……!」

最原「東条さんが怪しい。そうか。それがキミの主張か」

最原「わかったよ。じゃあ真っ先に否定しよう」

最原「……仲間として、この僕が!」ズバァァァァンッ!



59:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/20(月) 20:32:12.15ID:gcnkzKN60

真宮寺「証明できるわけがない……そんなことができるんなら、さっきの時点で……!」

最原「ああ、ごめん。僕も『たった今思い出した』んだよ」

最原「東条さんが自作自演で閉じ込められたわけじゃない。その最大の証拠をさ!」

真宮寺「……は?」

赤松「……思い出した? 最原くんが?」

最原「そもそも、犯人は東条さんをどうやってロッカーに閉じ込めたんだろうね?」

天海「……仮に。仮に東条さんの他に犯人がいるとしたら……東条さんをハンマーでぶん殴った後、血痕その他を軽く掃除して……」

天海「そのままロッカーに詰めて、接着剤を……」

天海「……」

天海「……?」

王馬「およ? どうした天海ちゃん。急に黙っちゃって」

最原「そうなんだ。接着剤をドアに付けなきゃ、東条さんが倒れて外に出てしまう」

最原「……じゃあ、入れるときは? 東条さんの体はどうなってたの?」

天海「そうっすよね……? 考えてみればおかしな話っす。だって気絶して脱力した東条さんを掃除用ロッカーに詰めようと思ったら……」

天海「あっ!」

最原「そうだよ。掃除用ロッカーは、東条さんを入れるときは『横たわった状態』だったはずなんだ!」

真宮寺「ッ!」

最原「じゃあ、東条さんを入れて、ロッカーを接着剤で固定した後、それを元に戻すときに何が起こるかな?」

茶柱「……あっ!」



60:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/20(月) 20:42:53.46ID:gcnkzKN60

巌窟王「……まさか。お前たち、今まで気付いていなかったのか?」

巌窟王「掃除用ロッカー周辺の床には引っかき傷があっただろう? 一度あそこを通りがかった俺ですら覚えているぞ」

百田「そ、そりゃテメェにスキルがあるからだろうが!」

百田「いや。おい。おいおいおい! 終一、なんで今まで忘れてやがったんだ!」

百田「他の連中も!」

白銀「え、いや……ええ?」

白銀「待ってよ。引っかき傷があったからどうだっていうの?」

天海「わからないんすか? ロッカーは横たわった状態から、起き上がったんす」

天海「ロッカーの中にいたはずの東条さんには絶対に不可能なんすよ! ロッカーを起こすなんて動きは!」

白銀「……あっ!」

茶柱「あのロッカーを見たとき、転子は『何かおかしいな』って思ってたんです。だから東条さんを見つけることができた」

茶柱「そうか……床の引っかき傷……! それが違和感の正体!」

真宮寺「そ、そんなの……偽造したものかもしれないじゃないか!」

最原「そんな証拠はないよ! どこにもね!」

最原「あのロッカー単体の重さだと、床に引っかき傷を作るには微妙に足りない」

最原「中に人の体重があって初めて、あの傷はできるんだよ!」

最原「加えて、東条さんは手に怪我をしている! 仮にロッカーに重しを入れて、引っかき傷を偽造しようと思ったら今ごろ――!」

天海「……出血しているはずっす、ね」

最原「断言するよ。そんな傷はなかった!」

真宮寺「――!」

最原「だからもう、犯人はキミしかありえないんだ!」

赤松「……ちょ、ちょっと。最原くん。いくらなんでもそれは……!」

最原「さあ! 真宮寺くん! もう逃げ場はどこにもないよ!」

赤松「最原く――」






真宮寺「出血ならしてたじゃないかァ!」



61:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/20(月) 20:52:48.84ID:gcnkzKN60

赤松「……」

赤松「……?」

百田「……真宮寺……テメェ、今なんつった?」

真宮寺「はあ……はあ……はあ……?」

最原「……真宮寺くん。今、なんて言ったの?」

真宮寺「……」

最原「僕たちは、裁判中にそんな発言してなかったよ」

真宮寺「……」

真宮寺「クク……ククク……なんだそんなことか……」

真宮寺「ごめんネ! 実は僕は知ってたんだヨ。だって、茶柱さんが中庭に戻ってきたときにまくし立ててたからネ!」

真宮寺「東条さんがどんなに酷い怪我をしていたか……片っ端から、駄々流しだったんだヨ!」

茶柱「は?」

キーボ「……ええっと、ボクは入間さんの研究教室の前と、火事の研究教室を往復してましたから録音はできてなかったんですが」

キーボ「どうなんですか? 茶柱さん」

茶柱「……」

真宮寺「覚えてるはずがないヨ……あのとき本当に慌ててたからね」

真宮寺「ククク。大方、僕をハメるために東条さんと二人で口裏を合わせてたんだろうけど……」

真宮寺「徒労だったネ! 僕は犯人なんかじゃ――!」

茶柱「ああ。そうですか」

茶柱「……本当に最低ですね、最原さん」

最原「……ごめん。茶柱さん。もういいよ。本当のこと言っても」

茶柱「……」






茶柱「知りませんでした」

真宮寺「え?」

茶柱「……そんな傷あったことなんて、知りませんでした」

真宮寺「――」

茶柱「だって……転子は『最原さんに後を任せてすぐに研究教室を飛び出した』んです」

茶柱「……知るはずないじゃないですか。そんな傷があったなんて」

真宮寺「……」

真宮寺「は?」



76:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/21(火) 18:19:24.76ID:UWiCkIut0

茶柱「……あとのことは最原さんに聞いてください。転子は……もうほとんどわかっちゃいましたけど」

最原「ごめん。真宮寺くん。こうでもしないと真相が暴けなかったんだ」

最原「だって、決定的な証拠を見つけることができなかったからさ……!」

真宮寺「……」

百田「どういうことだよ。だって、茶柱はさっき言ってたよな?」

百田「終一と二人で東条の怪我を治療してたってよ!」

茶柱「正確に言うと、最原さんが口裏を合わせていたのは東条さんと、転子だったんですよ」

茶柱「三人ぐるみで嘘吐いてたんです」

茶柱「真相はさっき言った通り。転子は東条さんの手の怪我についての詳細なんて全然知りませんでした」

東条「捜査が始まってからも私は手袋を脱いだりしていないわ。この手袋の下がどうなっているかを正確に知っているのは……」

最原「……僕と、犯人だけだよ」



77:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/21(火) 18:27:27.08ID:UWiCkIut0

最原「……学級裁判が始まる前からだ。僕が工作を始めたのは」

最原「茶柱さんがすぐに研究教室を出て行って、あの部屋をザッと見まわしたときに思ったんだよ」

最原「『これとは別にもう一つ事件があればしっくり来るな』って」

最原「東条さんの手からは、確かに血が出ていた。床には引っかき傷。東条さんが閉じ込められていたのは掃除用ロッカー」

最原「中庭では燃えている茶柱さんの研究教室と、それの消火活動に参加している生徒たち」

夢野「確かに……議論をここまで進めたウチたちからすると、すべて仕組まれたとしか思えないようなシチュじゃな?」

春川「トリックなんてこんなもんだよね。バレてみれば『なんであのときわからなかったんだろう』って不思議に思うのがセオリーってヤツ?」

春川「……最原だけはそうじゃなかったんだね」

赤松「その時点で……真宮寺くんが犯人だって思ったの?」

最原「流石にそこまでは。ただ『これから学級裁判が起こったらどうしよう』って不安だったけど」

最原「だって、東条さんが怪しいって思われるような偽装工作のオンパレードだったからさ……!」

最原「……ただ幸運だったのは、それに気づいたのが僕だけだったってことだよ」

最原「偽装された証拠なら、隠滅しても問題ないよね?」

巌窟王「……なに?」ピクッ



78:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/21(火) 18:34:03.65ID:UWiCkIut0

王馬「……最原ちゃん。何考えてるの?」

王馬「偽装工作のオンパレードだって思ったのは最原ちゃんの主観でしょ?」

王馬「もしも仮に、それら全部がストレートに東条ちゃんが犯人だということを示すような証拠だったとしたなら……」

王馬「キミは犯人の片棒を善意で担いだに過ぎないんだよ?」

天海「確かに。あまりにも危険すぎる賭けっすよね。東条さんのことを余程信じてなければ、それこそ怖くて何もできないっす」

王馬「信じたっていうかさー。この場合はただ単に『東条ちゃんが犯人だとは思いたくない』っていう現実逃避の一種だよね」

王馬「……心が弱いんだな、最原ちゃんは」

最原「……」

東条「最原くん……」

最原「結果的には良かったよ。だって、アンジーさんを発見して、疑似学級裁判が始まったときに」

真宮寺「僕が犯人だという確信を得た、でしョ?」

赤松「……!」



79:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/21(火) 18:43:12.38ID:UWiCkIut0

真宮寺「……いつから怪しいって思ったの?」

最原「決定的だったのは、真宮寺くんが東条さんの研究教室で取っていた行動だよ」

最原「妙にゴミ箱に注意してたよね?」

真宮寺「ああ。アレ……ネ」

獄原「どういうこと? なんでゴミ箱に注意してたら犯人なの?」

最原「高確率でそこにできているはずの証拠がなかったから」

最原「東条さんはさ、手袋の下、包帯の上から刃物で手を傷つけられて出血してたんだ」

最原「当然そんなことをしたら包帯は台無しだし、捨てるしかない」

最原「……血が付いた状態の包帯だよ。床に傷ができるのは、掃除箱に詰める際に避けられないって論調だったけどさ」

最原「そのときに東条さんの包帯に血が滲んでいたら……」

天海「東条さんが床の傷の偽造を行ったかもしれない、って主張することができるってことっすね」

天海「でもそれはそれで逆に証拠として露骨すぎる気もするっすけど」

最原「東条さんには前科がある。多少の不自然さは押し通せると思ったんじゃないかな」

最原「それに血が付いた包帯単体では、ただのゴミだし。議論がここまで進まない限りは保険でしかないよ」



80:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/21(火) 19:06:23.30ID:UWiCkIut0

最原「それで最後に、茶柱さんと一緒に最後の……ちょっとした嘘を仕込んだ」

茶柱「最原さんと一緒に東条さんを治療して、落ち着いたあたりで戻ってきたんです」

茶柱「……大体こんなものです。ただ転子は、この嘘が具体的にどういう意味を持つかまでは知らされてませんでした」

茶柱「強いて言うなら『三人くらい怪しい人がいる。その三人から犯人をあぶりだせるかもしれないから協力して』って言われたんです」

茶柱「今から考えると、とんだ方便でしたけどね。あなた真宮寺さん『だけを』狙い撃ちする気でしたね?」

最原「うん」

茶柱「……この世から消えてください」

最原「あの……本当ごめん。今から謝るから……ごめん……」ズーン

星「決定的な証拠はなかった、か。じゃあこれまでの議論も全部……」

最原「出来る限り『それっぽいこと』を話してただけで、実は確証は何も無かったね」

赤松「そんな……あっさりと……」

最原「うん。ごめん。凄く辛かったんだ。でもやっとスッキリしたよ」

最原「……色々失っちゃったけどね」

東条「……」

巌窟王「東条。言いたいことがあるのなら今、言うがいい」

東条「!」

巌窟王「……真宮寺は真実を言ったことによって自爆した。最原は嘘を吐いてまでお前を守った」

巌窟王「だが、お前の目には、それ以外の何かが見えているのだろう?」

巌窟王「俺には見当も付かないがな」フッ

東条「……」



98:じいじ! じいじ欲しい! ◆SxyAboWqdc 2017/11/22(水) 20:05:29.56ID:lMhMHW410

東条「……最原くん。あなたは確かに弱いわね。王馬くんの言った通り」

最原「……」

東条「でも私は嬉しかったのよ。あなたが私を信じてくれて」

最原「えっ」

東条「形はどうあれ、ね。さっきの議論の中でも、私を信じたいと言ってくれた人がいた」

百田「ん」

赤松「……東条さん」

東条「私を疑っていた人も、私を疑うことを辛いと思っていた」

天海「……」

星「……ふん……」

東条「……あなたが暴いた真実って、きっと悲しいものばかりじゃないのよ」

東条「必死で。歯を食いしばって。今にも泣きそうで、身も心も折れそうでも、弱くても」

東条「前に進もうとするあなたは格好いいわ。前にも言ったはずよ、私は」

最原「……」

最原「え。あれ本気だったの?」キョトン

赤松「卑屈すぎないッ!?」ガビーンッ!

巌窟王「さて。それで? 真宮寺、もう反論はないだろうな?」

真宮寺「ああ。うん。ないない。僕が犯人でいいヨ」

真宮寺「……すべての真相は投票の後で、ネ」

最原「……」





最原「ごめん。その前に一つ」



99:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/22(水) 20:08:35.70ID:lMhMHW410

赤松「あ、あれ? もう真宮寺くんは犯行を認めたよね?」

春川「さっきの発言もあるし、もう決定でいいんじゃない?」

最原「うん。犯人は真宮寺くん。僕もそれでいいと思う」

最原「でもさ。犯人だと認めた今だからこそ聞きたいことがあるんだ」

最原「……こればかりは後回しにするわけにはいかないからね」

夢野「んあ? 他に何かあったかのう」

真宮寺「……」

最原「結局、なんでアンジーさんを殴ったの?」

最原「あの空き部屋で、一体何があったの?」

最原「こればかりは犯人である真宮寺くん自身に訊ねないとわからない」

最原「……あと、投票が終わった後で有耶無耶にされたらたまらない」

巌窟王「……答えてもらうぞ?」



100:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/22(水) 20:16:47.61ID:lMhMHW410

真宮寺「クク……ククク」

赤松「……?」

真宮寺「やだヨ!」バァーンッ

白銀「……」

白銀「……は?」

真宮寺「だって、特に何もなかったからネ! ただなんとなく夜長さんを殴っただけだヨ!」

真宮寺「それが真相! それが真実!」

百田「……いやいやいや。いくらなんでもそりゃねーだろ」

星「もういい。どうせ後でアンジーに聞けばいい話だ」

星「モノクマは言ったな。リソースの無駄になることはしないと。だからそれですべてが終わりだぜ」

真宮寺「ククク……クククククク」

最原「……いや。ごめん。そういうわけにはいかないんだ」

星「なに?」

最原「ちょっとした個人的な事情でさ。今すぐ答えてもらわないと困るんだよ」

巌窟王「……」



101:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/22(水) 20:23:50.30ID:lMhMHW410

真宮寺「もう何をどうしようと、僕はあの空き部屋で起こったことを応えないヨ」

真宮寺「仮に! 後で夜長さんにすべてを告白されたとしても! 絶対に!」

真宮寺「でもキミにそれを止める方法はないよネ? だって、僕の隠し事は全部白日の下に晒されちゃったんだからサ!」

最原「……」

最原「じゃあ、キミの最大の秘密を『この場で永遠に秘密にする』のと引き換えっていうのはどう?」

真宮寺「……」

真宮寺「え?」

最原「あのさ。キミがあえて言ってないことって、アンジーさんとの空き部屋のやり取りの他に、もう一つあるよね?」

最原「……それを今この場で喋られたら、凄く困るんじゃないかな?」

白銀「真宮寺くんの、もう一つの秘密……?」

真宮寺「……ないヨ。そんなもの……あるわけないじゃないか……!」チラッ

赤松(……ん? 今一瞬、巌窟王さんの方を見た?)

赤松(というかこの口調、取引というよりは最原くんの方に得だけがある脅迫っぽく見えるんだけど……)

最原「……認めてくれないんだね」

真宮寺「認めるも何も、ないんだヨ! そんなものは!」

真宮寺「仲間だったでしョ!? なんで僕のことは東条さんみたいに許してくれないんだよォ!」

最原「許したいに決まってるじゃないかッ!」

真宮寺「!」

最原「……だから答えてもらいたいんだよ……!」



102:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/22(水) 20:30:34.71ID:lMhMHW410

真宮寺「……ないヨ」

真宮寺「ない、ないないないない。ないんだないんだってないんだヨ!」

真宮寺「どうしてどうしてどうしてどうしてどうして……!」

真宮寺?「どうしてなのどうしてなのどうしてなのどうしてなの……?」

百田「おい。どうしたんだ真宮寺! 何をそんなに怖がってんだ?」

最原「……わかった。じゃあ最後の議論と行こう」

最原「そして……キミがそのとき、まだ『喋りたくない』って言うのなら仕方ない」

最原「お願いだ真宮寺くん。僕の話を聞いてくれ」

最原「……お願いだからッ!」



109:ボックス一つ開けるごとに一レス更新する人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/23(木) 18:38:57.92ID:iW0Kg5E00

巌窟王「……」

巌窟王「最原」

最原「ん? 何、巌窟王さん」

巌窟王「後でアンジーに……」

巌窟王「……いや。なんでもない。気にするな」

最原「……」

最原(やっぱり、この場で真宮寺くんに真実を語ってもらわないとな)

最原(じゃないと、この後に待ち受けているのは……)

真宮寺「言ってみなヨ。僕の秘密って一体、なに?」

最原「……」

最原「ナーサリーさん、だっけ」

ナーサリー『ん? 私かしら?』

最原「ちょっとお願いしたいことがあるんだ」

最原(あ。今更だけど、さっき王馬くんがやってたことの意味がわかったな……)



110:九箱目に到着 ◆SxyAboWqdc 2017/11/23(木) 19:46:57.08ID:iW0Kg5E00

最原「さっき王馬くんに見せた写真をもう一度見せてくれる?」

ナーサリー『あの事件発覚後のアンジーの写真? ええと……コレね』ピロンッ

最原「いや『正面から』の写真じゃなくって逆のアングル……つまり『後ろ側』の写真が見たいんだ」

ナーサリー『あら。ごめんなさい』ピロンッ

イシュタル『んんー? これに何が映ってるっていうのよ』

最原「後ろ手に縛られた手。正確に言うと令呪」

真宮寺「……」

真宮寺「……」ブワッ

王馬「あれ? どうしたの真宮寺ちゃん。汗びっしょりだよ?」

赤松「……」

赤松「……ん? 令呪……令呪……?」




赤松「あっ」



112:十箱目に到着 ◆SxyAboWqdc 2017/11/23(木) 21:04:45.42ID:iW0Kg5E00

天海「……ハッ! そういえば入間さんが何か様子がおかしくなった時期と大体同時になくなったものがあったっす!」

天海「まさかアンジーさんの令呪は……!」

アンジーの令呪の写真『』アルヨー!

天海「……バッチリ残ってるっすね。普通に」

最原「うん。残ってるよ。だから問題なんだけど」

天海「……?」

天海「……」

天海「……ああっ!」

真宮寺「!」ビクッ

百田「……なんだ? 何人か、何かに気付いてるヤツがいるみたいだけどよ」

最原「……真宮寺くん。まだ喋る気になれない?」

真宮寺「……」ガタガタ

最原「わかった。じゃあ続けよう」



126:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/24(金) 17:17:04.93ID:c608UNzy0

最原「……どうして真宮寺くんは、あんな方法でアンジーさんを殺そうとしたんだろう」

百田「なんでって……これまでの議論で散々言ったじゃねーかよ。アリバイ工作のためって」

最原「うん。でもそれって、例えば空き部屋にやってきたのが僕とか茶柱さんとかならともかく……」

最原「アンジーさんに対してやるのは危険だったんじゃないかな。というか自殺行為に等しかったはずだよ」

赤松「あ、あの……最原くん。その辺で……」チラッ

天海「そうっすよ……もう投票でいいっすよね? ね? ね?」チラッ

夢野「……なんじゃ? 何故天海と赤松はそこまで動揺してるんじゃ?」

茶柱「というか、なんか……巌窟王さんの方をチラチラ見てますね?」

ナーサリー『……あっ』

イシュタル『あっ』

イシュタル『もしかして最原アンタそれ――!』

ナーサリー『ネタバレ防止! もう私たちの役割は終わったみたいなので通信切るら切るなのだわ!』アタフタ

イシュタル『ちょ、待――!』



ブツンッ



127:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/24(金) 17:30:52.42ID:c608UNzy0

最原「……今までの議論で出てこなかったのが不思議なレベルで『当たり前』のこと……」

最原「いや。議論するまでもなかったから言う必要がなかっただけかな」

最原「気付く人なら簡単に気付くことだ」

王馬「……」

王馬「これ脅迫として成立してるのかなぁ。実は巌窟王ちゃんも既に気付いてたりしない?」

巌窟王「……いや? 俺には最原が何を言っているのかサッパリだな」ニヤァ

巌窟王「最原が秘密にするというのなら、俺には永遠にその謎はわからないだろうな」

王馬「……」

王馬「……にしし。巌窟王ちゃんも大概、大ウソつきだよね……」

夢野「んあー……さっぱりわけがわからんが、その『真宮寺の秘密』とやらが最低限実在しているということだけはわかるのう」

茶柱「キーワードは令呪と、真宮寺さんの一連の犯行……その流れにあるんですね?」

茶柱「もう何人か気付いてるみたいですけど……」

茶柱「……」

茶柱「……令呪?」

茶柱「ああっ!」ガビーンッ



128:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/24(金) 17:39:02.86ID:c608UNzy0

春川「そうか……私もサーヴァントとマスターの絆について、全部を理解していたわけじゃないけど」

春川「でもあの書物に書かれていることが全部事実なら、夜長に令呪が残っているのはおかしいよ」

百田「あー……?」

春川「……最原。そのカード、本当に切れるの?」

春川「それを巌窟王の目の前で言ったら、真宮寺はもう正真正銘の破滅だよ?」

白銀「え……!? そんな危ない秘密なの!?」

真宮寺「……ひい……ひいいいいいい……!」ガタガタ

最原「真宮寺くん……!」

真宮寺「……そこまで……そこまでわかっているのなら、予測できそうなものだけどネ……!」

真宮寺「最原くん。僕が隠している秘密と、最原くんが握っている秘密……どちらも本質は同じものなんだヨ!」

真宮寺「言ったら僕はどっち道……!」

最原「……」

最原「終わらせないよ」

最原「キミは破滅しない。僕がそんなことさせない」

最原「……僕を信じてほしいんだ」



129:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/24(金) 18:28:11.54ID:c608UNzy0

真宮寺「……」

真宮寺「人を殺す準備をしていたんだ……!」

最原「!」

真宮寺「あの空き部屋で……いや。空き部屋全部に細工して、他の誰かに罪を押し付けるギミックも多数用意して……」

真宮寺「その細工をしている最中に、夜長さんが空き部屋に入ってきたんだヨ……!」

夢野「誰を殺す気だったのか、とかどうやって、とかなんで? とかはこの際は放っておこう」

夢野「じゃあその時点でやめればよかったじゃろ! アンジーをぶん殴る必要はどこにも無かったはずじゃ!」

真宮寺「……その夜の工作がもしも全部上手く行ったら……そのトリックを使って更に誰かを殺す気だったから……」

赤松「えっ」

真宮寺「トリックのことを知った夜長さんを生かしておくわけには……!」

百田「な、なんだよそれ……まるで外に出ることより殺すことの方が大事みてーな……!」

最原「……実際そうだったんだろうね」

巌窟王「フン。まあこんなものだろう。推理の抜けは、ほとんど埋まったのではないか? 最原」

最原「……巌窟王さん」

巌窟王「さあ。纏めだ。その後のことは俺に任せておけ」

最原(そんなわけにはいかないよ)

最原(……とか、面と向かって言えないけどさ)

最原「……うん。わかった。ありがとう、正直に話してくれて」

最原「じゃあ最後に、この事件を最初から振り返って……すべてを明らかにして」

最原「……その後は、絶対に約束は守るよ」

真宮寺「……」

最原「じゃあ、行くよ! これが事件の真実だ!」



132:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/25(土) 07:20:52.70ID:0mluClDQ0

クライマックス推理

最原「それじゃあ、数々の幸運な偶然によって破綻した、この未遂事件を最初から振り返ってみよう」

最原「犯人は夜時間、空き部屋で『人を殺す準備』をしていた」

最原「入間さんは盗難にあって研究教室に引きこもり、アンジーさんは門限でいなくなっているはずの時間だったからだ」

最原「でも準備の途中、空き部屋であってはならないことが起こった」

最原「門限を延長していたアンジーさんが、空き部屋に蝋燭を戻しにきてしまったんだよ」

最原「動揺した犯人は床板でアンジーさんを殴り気絶させた」

最原「その際、床に転がった蝋燭が何かに引火。具体的になにかはわからないけど、犯人はそのせいで火傷を負ったはずだよ」

最原「そしてここから、犯人の狂気に満ちた犯行が開始されるんだ」

最原「巌窟王さんが超高校級の美術部の研究教室へと向かったことに気付いた犯人は、アンジーさんの持ち物を物色した」

最原「そのとき、犯人は入間さんに改造された赤外線センサーと、巌窟王さんと同じ色の炎を出して燃える燃焼促進剤を手に入れたんだ」

最原「アンジーさんを荒縄と猿ぐつわで拘束し、行動に制限を付けた状態で床下に隠した犯人は……」

最原「階段を降りる際に赤外線センサーを設置した」

最原「この赤外線センサーは改造されていたから、学園中どこにいても問題なく作動したはずだよ」



133:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/25(土) 07:34:09.95ID:0mluClDQ0

最原「まず犯人はセンサーの動作に注意しながら、中庭に向かったはずだ」

最原「そこにある建物を使って、派手に人を集めようと考えたんだよ」

最原「その建物っていうのは超高校級の合気道家の研究教室だ。しかも、ただ燃やすだけではなく犯人はアンジーさんから奪ったあるアイテムを使った」

最原「……つまり、黒い炎の燃焼促進剤だよ。犯人はアンジーさんがこれを入間さんから盗んだことを即興で推理した上で使ったんだ」

最原「……ついでに、巌窟王さんがそれを知っていることも」

最原「燃焼促進剤を使ったとは言っても、燃え広がるには時間がかかる。その前に、犯人はある場所へと向かった」

最原「超高校級のメイドの研究教室で、東条さんがゴン太くんのために料理をしていることを知っていた犯人は……」

最原「彼女を殴打し、気絶させた。ただし、彼女のことは殺す気はなかったはずだよ。少なくともすぐにはね」

最原「犯人は東条さんから隠し酒蔵の鍵を盗み出しワインを強奪」

最原「その後、研究教室を軽く掃除して、東条さんを掃除用ロッカーに入れた」

最原「ただし、彼女の手袋の下、包帯の上から刃物で傷を付けた上でね」

最原「そのときの痕跡は、ロッカー周囲の床に傷として残った」

最原「ロッカーが、東条さんを入れたときは横たわっていた状態で、それを起こすときに傷ができたんだよ」

最原「あの掃除用ロッカーは狭くて、直立姿勢でしか人は入れられないんだろうね」

最原「かと言って、気絶して脱力した状態の東条さんを直立状態でロッカーに入れられない」

最原「後で東条さんに濡れ衣を着せるためには、掃除用ロッカーだと都合がいいから別の場所には入れたくない」

最原「時間の無い犯人のそんな苦悩が、この痕跡を残したんだ」



134:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/25(土) 07:42:55.11ID:0mluClDQ0

最原「火事の臭いは強烈で、誰かが外に出てくれさえすれば、すぐに発覚したはずだ」

最原「でももし、誰も外に出ずに火事が発覚しなかったら、きっと犯人自身が火事を発見して人を集めたんだろうね」

最原「犯人にとって幸運なことに、その必要はなくなった。たまたま寄宿舎の外に出た茶柱さんが、火事に気付いたから」

最原「アンジーさんを探すために下に降りて来ていた巌窟王さんと合流し、茶柱さんと巌窟王さんは火事の現場に急行」

最原「……犯人の細工がここで活きた。茶柱さんの研究教室の中で、黒い炎が揺らめいていたんだ」

最原「それを見た巌窟王さんは、一も二もなく火事の中へと吶喊」

最原「慌てた茶柱さんは人を呼びに寄宿舎へと戻り、生徒全員に火事の情報が行き渡った」

最原「この時点で犯人がどこにいたのかは僕にはわからない」

最原「でも……どこにいてもよかったはずだよ。寄宿舎の中で呼び声がかかるのを待つもよし」

最原「何か騒がしいなと思って外に出たと言えば誰も疑わない」

最原「最悪、茶柱さんのように『なんとなく外に出た』でも通じるはずだ」

最原「消火活動に関して素人の僕たちは恐慌状態だったからね」

最原「……アンジーさんや東条さんが消火活動に参加していないことに関しても、そのせいで誰もが無頓着だった」



135:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/25(土) 07:50:58.46ID:0mluClDQ0

最原「僕たちが火事で右往左往している中、犯人は消火活動から離れてアンジーさんのいる空き部屋へと戻った」

最原「犯人の最後の工作が始まったんだ」

最原「アンジーさんを超高校級の民俗学者の研究教室へと運んだ犯人は、ある機能を使って部屋を密室にした」

最原「そう。燻蒸消毒機能だよ。部屋にある八つの赤外線センサーをアルミホイルで無効化すれば、中に人がいても問題なく使用できるんだ」

最原「もちろん、通常の燻蒸消毒機能に巻き込まれたら命はないけど、犯人はそうならないことを事前に知っていた」

最原「誰にも邪魔されない空間を作った犯人はアンジーさんに酒を飲ませ……泥酔させ……」

最原「その後、タイミングを見て彼女を空き部屋の床下へと戻した」

最原「……誰もが予想しない方法で彼女を殺すために」

最原「犯人が最後に調達してきた、ゴン太くんの研究教室に生息する医療用ヒル……それを使ってアンジーさんの殺害に関しては終了する」

最原「もちろん、ただのヒルだけなら人を殺すにはとても足りないけど」

最原「アンジーさんは酒で泥酔していて、ただでさえ体力が消耗していた」

最原「その上、血中アルコール濃度によってヒルは狂い、自らの許容限界を越えた量の血を吸い始めた」

最原「時間さえ経てば、これで間違いなくアンジーさんの命はなかったはずだよ」



136:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/25(土) 07:57:36.60ID:0mluClDQ0

最原「最後に犯人は超高校級の民俗学者の研究教室を徹底的に掃除。アルミホイルも急いで取り外した」

最原「そして、最後にアンジーさんのバッグを、彼女の研究教室に持ち込めればよかったんだけど……」

最原「巌窟王さんが外に出る際に、研究教室の鍵をロックしていたからできなかった」

最原「アンジーさんのバッグの中に酒瓶を入れ、スライド錠のドアの前に放置」

最原「何食わぬ顔で消火活動へと戻った」

最原「……ちなみに、この際に誰かに鉢合わせした場合の言い訳はこうだろうね」

最原「『東条さんを探していた』。または倉庫周辺で鉢合わせした場合は『倉庫に何か使えるものがないか探していた』だ」

最原「でも全員消火活動に必死になっていたから、その恐れも万が一でしかなかったはずだ」

最原「……でも、犯人にとっての万が一は、すべての工作を終えた後で訪れた」

最原「茶柱さんが想定をはるかに超えて粘り強く東条さんを探し、掃除用ロッカーから東条さんを見つけてしまったんだよ」

最原「そこからすべての計画が狂い始めたんだ」

最原「そして……やっとここまで辿り着けた」

最原「この『狂気』に満ちた犯行、その真相まで……!」



137:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/25(土) 08:00:09.71ID:0mluClDQ0

最原「"超高校級の民俗学者"、真宮寺是清くん」

最原「……キミの企みは半ばで終了だ!」


バキバキバキッ ガシャァァァァンッ!

COMPLETE!



140:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/25(土) 15:20:01.44ID:0mluClDQ0

天海「さあ! これで全部の真相はわかったっすよね! それじゃあみんなで投票行きましょう!」

赤松「そうしよう!」

茶柱「ええ! 早くしましょう!」チラッチラッ

百田「急かしすぎだ! 何だよ、なんでそんな慌てて……」

百田「ていうか茶柱はさっきからなんで巌窟王の方チラチラ見てんだよ!」

茶柱「いえ、その気付く前にさっさと終わらせないと……」

茶柱「……あっ! なんでもないです!」アタフタ

赤松(いや! 多分もう巌窟王さんは気付いてる! けど!)

天海(さっさと裁判終わらせて席から離れたいんすよ! 多分、誰かが真宮寺くんを守らないと……!)

茶柱(彼の末路はブスブスの炭化死体です!)



141:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/25(土) 15:22:29.00ID:0mluClDQ0

モノクマ「はいはい! それじゃあ、お手元のスイッチを押して投票してください!」

モノクマ「うーん、今回は疑似だけど、必ず誰かに投票してくださいね!」

モノクマ「流石に殺しはしないけど大分キッツイ罰は与えるから!」

モノクマ「投票の結果、クロとなるのは誰か……」

モノクマ「その結果は、正解なのか不正解なのかーーーッ!」

モノクマ「さあ! どうなんだーーー!?」

巌窟王「……」

巌窟王(アンジー。俺は……)



142:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/25(土) 15:30:18.74ID:0mluClDQ0

真宮寺:十六票

結果は……大正解!


モノクマ「だーいせーいかーい! 今回の事件の未遂クロは……」

モノクマ「超高校級の民俗学者である、真宮寺是清くんなのでしたーーーッ!」


ダバダバダーッ


茶柱「さあ男死ィ! 今すぐ転子が上に連行してネオ合気道の技を片っ端からかけまくってあげますよーーー!」

天海「わあ大変だー。確かに真宮寺くんは許されないことをしたっすけど、そこまでやるのは可愛そうっすよー」ボウヨミー

赤松「痛そうだなー! とても! 茶柱さんの罰は痛いだろうなー! これもう、あれ、死んだ方がマシなくらいかなー!」チラッチラッ

春川「……」

巌窟王「……」

春川「ねえ。そいつ、そこまでして守る価値ある?」

茶柱「!」

春川「……だって、夜長が何もしなくっても、どっちみち誰かを殺す気だったんだよね?」

茶柱「そ、それは……!」

天海「仮にそうだったとしても……いや、俺だって真宮寺くんのことは許せないっすけど……!」

天海「これは真宮寺くんだけのためじゃなくって!」

赤松「……巌窟王さん……!」

巌窟王「……」

巌窟王「……フッ」ニヤァ

赤松(あ、やっぱりダメかもこれ。凄い悪寒がするもん)

赤松(巌窟王さん、真宮寺くんを殺す気だ……!)



143:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/25(土) 15:36:54.33ID:0mluClDQ0

巌窟王「……いや? 情状酌量の余地くらいはあるかもしれん」

巌窟王「言ってみろ。命乞いくらいは聞いてやる」

茶柱(あなたの場合は本当に『聞くだけ』でしょうに!)

天海(情状酌量とか、人間性ゼロの復讐鬼がまあよく言うっすよね!)

真宮寺「……愛する人のため、だヨ」

天海「!」

赤松「!」

茶柱(あ! なんかいい感じの導入! これならギリギリ本当になんとかなるかも……!)

赤松「あ、愛する人って……その人のために外に出たかった、とか?」

真宮寺「いや、僕の愛する人は『この中に』いるから外に出る必要はまるでなかったんだけど」

茶柱「……」

茶柱「……は?」



144:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/25(土) 15:48:15.59ID:0mluClDQ0

かくかくしかじか晩鐘リンゴン

真宮寺「というわけで、彼女が僕の愛する人だヨ」

真宮寺姉「是清の姉です」

茶柱「……口紅をした真宮寺さんが一人でごっこ遊びしてるようにしか……見えないんですが……」

真宮寺「まあ交霊術だからネ」

真宮寺姉「ふふふ。仕方ないわ、是清。私たちのことを理解できる人なんて、一人もいないし必要ないわ」

茶柱「……あの……念のために聞いておきたいんですが、巌窟王さん。これ本物ですか?」

巌窟王「難しいところだな。俺の知り合いには『思い込みだけで』竜へと変貌する女もいる」

巌窟王「思い込みで狂っているのか、本物のせいで狂っているのかは一概に判別できんな」

巌窟王「どちらにせよ、真宮寺にとっては本物だろうが」

巌窟王「魔力の質が明らかに変わっている。ハッキリ言って、確かに封印指定ものの異常ではあるか」

赤松「……」

赤松「えーっと、それで……アンジーさんとか、他の誰かを殺そうとしたのって」

真宮寺「死んだ姉さんの友達になってほしくて……」

赤松(終わった)



145:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/25(土) 16:03:26.22ID:0mluClDQ0

百田「……」

春川「百田? どうしたの? 凄い顔色悪いけど」

百田「わ、悪ィ、ハルマキ……俺こういうの本当ダメなんだ。オカルトとかよ……」

春川「巌窟王の右隣りで何言ってんの……」

百田「汗が止まらなくってよ……く、くそ。手も震えてきやがった。手を繋いでくんねーか?」

春川「ちょ、ちょっと! やめてよ……!」

春川「……みんながいるでしょ」

白銀「あれ? 私たちがいなければよかったの?」

モノクマ「うぷぷ。今回はあくまで疑似だからおしおきはないけど……いい感じに動機の提示にはなったんじゃないかな」

入間「ち、ちくしょう! 俺様の傍にこんな異常者がいたってのかよ……!」

キーボ「……入間さん。言い過ぎ……ってほどでもないですが、でも!」

巌窟王「……」

巌窟王「……クハハ」ユラァッ

赤松「や、やめて巌窟王さん。こっちに来ないで……!」ガタガタ

天海「俺たちは『そういうの』を見ないために今まで頑張ってきたんす! これじゃあ……!」



146:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/25(土) 16:42:08.30ID:0mluClDQ0

巌窟王「真宮寺。お前、あの研究教室で何をした?」

巌窟王「なぜアンジーの体には抵抗の痕がほとんど残らなかった?」

巌窟王「……いや。いい。秘密になったのだからな。俺がそれを知る由はない」

巌窟王「だが――!」

真宮寺(……これでいい。もう、いい。僕はやれるだけのことをやった)

真宮寺(姉さん。これで僕も一緒に……)


ダッ


巌窟王「む?」

巌窟王(今、俺の横を通り過ぎて行ったのは……?)



バキィッ


真宮寺「ぐあっ……!?」

赤松「え……」

天海「最原くん?」

最原「……はあ……はあ……!」

茶柱「……」

茶柱(最原さんが、真宮寺さんを殴った……!?)ガビーンッ!



158:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/26(日) 12:09:18.75ID:322HN4ZW0

赤松「え……最原くん!? え? 最原くんだよね?」

天海「陰キャ系ガリ勉文系属性の最原くんが人を殴った……?」

白銀「え? なんで無駄に言いすぎな評価になってるの?」

天海「蘭太郎お兄ちゃんは混乱している!」ババーンッ

夢野「見りゃわかるわい」

赤松(と、私たちが動揺している内に……)


バキッ バキッ バキッ


真宮寺「ぐえ……ぷげっ……!」

最原「……!」

赤松「ちょ、ちょっと! 最原くん!」

赤松(目を疑うほどに、最原くんが真宮寺くんを何回も殴り始めた)

赤松(何回も……何回も……!)

茶柱「ちょ、ちょちょちょ……! 最原さん!」ガシッ

最原「離してっ!」バッ


バキッ バキッ バキッ


真宮寺「ぐ……ひ、や、やめ……!」


バキッ



159:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/26(日) 12:14:07.25ID:322HN4ZW0

巌窟王「……フン。まあいいだろう。お前も相当腹に据えかねていたようだからな」

巌窟王(まあ、最原の分が終わったら俺の番だが)

赤松(って思ってるんだろうなぁ……!)

最原「はあ……はあ……!」

赤松(……あ。殴るのやめた……)

最原「ふざけないでよ……! この際、キミがここに来る前に何人殺してようが僕たちには関係ないけどさ!」

最原「仲間だと思ってたんなら、僕たちの方に殺意を向けないでよ!」

最原「外に出て友達になるって約束もしてたじゃないか!」

真宮寺「……」

巌窟王「……」ニヤニヤ

最原「……って思ってたけど」




最原「あー、スッキリした」

巌窟王「は?」

最原「……しこたま殴ったら、スッキリした」

赤松「……」

巌窟王「……は?」

百田「!」

百田「……」

百田「ああ、そうだな! 俺もスッキリしたぜ!」

巌窟王「……なに?」



160:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/26(日) 12:24:42.58ID:322HN4ZW0

巌窟王「……おい。なにを戯けたことを言っている。最原。そいつは――!」

最原「わかってる。けど……ああー……スッキリしたなぁ……!」ポロッ

赤松「!」

茶柱「……」

茶柱(……代償なしで人を許すのって、かなり難しいですね。たった今痛感してますよ)

茶柱(でも、これはこれで……代償が安すぎる……!)

巌窟王「……」

巌窟王「そこまで『赦し』が大事か?」

巌窟王「『約束』はそこまで尊いか?」

巌窟王「……わかっているだろう! 最原! そいつは研究教室で――!」

最原(……そうだ。彼は多分、研究教室で脅迫したはずだ)

最原(だって、そうでなければ令呪が使われてないなんてありえない)

最原(あれは『一画使えばサーヴァントを呼び寄せることもできる命令権』でもあるんだ)

最原(酒を飲ませて泥酔させる工程で、アンジーさんは酒で溺れさせないように意識があったはず)

最原(だからこそ、声が外に漏れないように密室にしたんだから)

最原(具体的にどう言ったかはわからない。でも巌窟王さんをダシにされたらアンジーさんなら抵抗できない)

最原(……巌窟王さんと離れるのを嫌がっていた彼女に対しては、一番最悪な脅し文句もある)

最原(抵抗できずに殺されにかかるのって、どれだけ怖かったんだろう……!)

最原(でもそれは――!)

最原「あれ。巌窟王さん。真宮寺くんが研究教室で何をしたかなんて知らないよね?」

巌窟王「……!」

最原「だって、取引で永遠に秘密になったし、巌窟王さんも言われないと見当も付かないとか言ってたしさ」



161:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/26(日) 12:33:12.14ID:322HN4ZW0

巌窟王「……」

巌窟王「モノクマ」

モノクマ「へいへい何でしょう旦那ァ!」

巌窟王「アンジーのところに案内しろ」

モノクマ「およよ? いいの? それで」

巌窟王「……」

巌窟王「二度言わせるな。焼くぞ」

モノクマ「……あーあー。つまんないの。じゃ、ボクの美声についてきてー」スタスタ

巌窟王「……」

巌窟王「確かに……俺には研究教室で何があったかなんて見当も付かないな」

巌窟王「だが覚えておけ。アンジーが望めば俺はそいつを惨たらしく殺すだろう」

最原「……」

巌窟王「お前がやったことなど、何の意味もない」

最原「……そうかも――」

百田「しれないわけねぇだろッ!」

最原「ん?」

百田「……勝手に俺たちの行動に値段付けてんじゃねぇ……!」

百田「上から目線でなんでもかんでも導こうとしてんじゃねーぞ!」

百田「終一はテメェに世話焼かれなきゃなんねーほど弱くはねぇんだよ!」

巌窟王「……ふん」

赤松(巌窟王さんは振り向かず、そのままモノクマについて行ってしまった)



162:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/26(日) 12:42:21.22ID:322HN4ZW0

真宮寺「……」

真宮寺「……く、ククク。これで僕を助けたつもり……?」

最原「……」

真宮寺「甘いヨ。あのまま巌窟王さんに任せておけば……全部丸く収まったはずなのに」

百田「真宮寺」

真宮寺「僕は自分が間違ったことをしたなんて思ってないんだヨ。だって愛は……」

百田「真宮寺」

真宮寺「……愛は永遠なんだ。キミたちには理解できないかもしれないけど、僕は――」

バッキィッ

真宮寺「がはぶっ」バタンッ

百田「ちょっとでいい。寝てろ」

百田「あと頭冷やせ」

キーボ「スッキリしたとか言ってたのに!」ガビーンッ

百田「いやなんかうるせぇしよ」

最原「……」

赤松「……最原くん。あの、手は大丈夫?」

最原「ええっと……思い切り殴ったせいかな……脱臼したかも」

茶柱「……天海さん。治療できます?」

天海「じゃあちょっとガコンッてしますよー!」

最原「え、あ? ええっ!?」


ガコンッ


最原「痛ぁーーーっ!?」



163:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/26(日) 12:51:34.70ID:322HN4ZW0

茶柱「で。えーと。どうしましょうか、真宮寺さん」

獄原「……わからないよ。ゴン太、バカだから」

王馬「ゴン太には元から期待してないから安心しなよ」

王馬「……と、ゴン太を無駄にいびったりする俺も、どうすればいいかなんてまるでわからないけどね」

入間「どうするもこうするも、監禁しかありえねーだろ。こんな危険人物!」

赤松「で、でも仲間なんだしさ! そんなの……」

春川「やめなよ。被害者の夜長が起きるまでは、そんな議論無意味だと思うけど?」

王馬「ん? いやいや春川ちゃん。議論を終えた俺たちには、もう一人の明確な被害者が見えているはずだけど?」

東条「……」

最原「東条さん……」

東条「……最原くんのやったことに泥を付けたくはないわね」

王馬「あれれ? 自分の感情は無視していいの?」

東条「いいえ。むしろ自分の感情に従った結果、最原くんの決定に従いたくなったのよ」

王馬「ふーん。まあ俺はそれでもいいけどさ。どうせ真宮寺ちゃんに狙われるのは女性陣だけだしね」

茶柱「さ、最低ですね! いや大分前からわかっていたことですが、特にあなたは最低ですね!」



164:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/26(日) 13:02:17.33ID:322HN4ZW0

東条「……それよりも、今は大事なことがあるわ」

白銀「これより大事なことって……今季のアニメ何見るかってことと、真宮寺くんのことより大事なこと?」

星「アンジーの見舞い、だろ」

白銀「あっ」

百田「おーっし! 真宮寺は俺が担いでってやる! その他のヤツらはアンジーのところに急いでやれ!」

春川「……え? 私も?」

百田「当然だ! というか俺の代理のつもりで行ってくれ!」

春川「……面倒臭いな」

夢野「じゃがウチらにとっては唯一の明るい話題じゃ」

夢野「なにせ今回は誰も死なんかったんじゃからの!」

最原「……」

最原(みんなが無理に明るさを取り繕う中で、僕は考えていた)

最原(巌窟王さんが言ったこと。アンジーさんが望めば、きっともう巌窟王さんを誰も止められない)

最原(百田くんはああ言ってくれてたけど、やっぱり僕のやったことは無意味な茶番だったのかも……)

茶柱「最原さん。その陰気な面をやめてくれませんか?」

最原「茶柱さん?」

茶柱「……」

茶柱「その……まあ不器用で、どうしようもなく必死すぎて、空笑いすら出てくるような有様でしたけど」

茶柱「……さっきの茶番、悪くなかったと思いますので」カァッ

最原「え、あ、あの……」

最原「……ありがとう……」カァッ

白銀「……」

白銀「あ、あれ? さっきの春川さんと百田くんのときも思ったけど、あちこちでフラグ立ってない?」アタフタ

星「まあこういうこともあるだろう」

白銀「リア充が憎い! リア充滅ぼそう!」キラキラキラ



165:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/26(日) 13:17:41.39ID:322HN4ZW0

最原「あ。でも見舞いに行くにしたって……どこに?」

入間「モノクマと巌窟王は先に行っちまったしな」

キーボ「まあ、上に行ってから考えればいいでしょう」

王馬「ロボットのくせにナビタイム搭載してないのかー。本当ガッカリロボだなー」

キーボ「普通のロボはナビタイムを搭載してません!」

入間「あ? てめーは普通のロボじゃなくって特別なロボだろ?」

キーボ「……」テレッ

赤松「ちょっと照れてる……」

天海「じゃあ、ひとまず上に行くっすよ!」



ゾロゾロゾロ



百田「……」

百田「ごほっ」



168:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/26(日) 17:48:18.81ID:322HN4ZW0

才囚学園 寄宿舎周辺

キーボ「で。ここまで戻ってきたのはいいんですが……」

病院「」デェェェェェンッ

最原「寄宿舎の隣に病院ができてるッ!」ガビーンッ

白銀「あ、ありのまま今起こったことを話すぜ! 『寄宿舎に帰ってきたと思ったら病院ができていた』!」

赤松「これもう決まりだよね? ここにいなければどこにいるんだって話だもんね?」

天海「よし! それじゃあさっさと中に入って面会っすよ! アンジーさーん!」ダッ



カルデア

ナーサリー「素晴らしかったのだわ」グスン

イシュタル「ええ。女神的には茶番もいいところだったけど、素晴らしかったわね」

ナーサリー「一時的でも、あの伯爵を退ける弁舌は称賛に値すると思うの!」

ケツァルコアトル「デース」

イシュタル「というわけで、カルデアの視聴勢からのプレゼントをドサドサ送るわよー」

ナーサリー「アンジーの見舞いもかねるのだわ! この転送装置で! どこに出るかわからないけど!」ポチッ



才囚学園

ヒューッ ドサドサドサッ


天海「ぎゃあああああああああ!」

最原「天海くんが空から降ってきた花とか果物とか本の群れに押しつぶされたーーーッ!」ガビーンッ

王馬「天海ちゃんが死んだ!」

白銀「この人でなし!」



172:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/26(日) 18:05:08.34ID:322HN4ZW0

天海「く……ふはははははは! この程度の重みで俺を倒せると思って――!」

ミニチュア太陽神殿「」デース!



グシャッ


赤松「ねえ今気のせいじゃなければ石造りの何かに思い切り潰されなかった!?」ガビーンッ

夢野「天海ーーーっ!」

王馬「うーん。大丈夫じゃない? 本とか果物とか花とかに上手い具合に守られてる……」

王馬「といいな」

茶柱「願望!?」ガビーンッ

獄原「ゴン太が今すぐどかすよ!」

茶柱「……あ。最原さん。先に行っててください。ここは転子たちがどうにかするので」

獄原「空から降ってきたってことは、多分巌窟王さんのホームからの見舞いだと思うし……」

獄原「天海くんを助けたらコレ持って病室に行くね」

最原「う、うん……」

最原(天海くん、大丈夫だよな……)



174:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/26(日) 18:19:31.56ID:322HN4ZW0

病室

ガララッ

最原「巌窟王さん、いる?」

東条「あら。最原くん」

最原「え? 東条さん?」

巌窟王「……」

最原(……と、巌窟王さんもいる。あと)

最原(……アンジーさんも。寝てるけど)

最原「というか東条さんがなんでここに」

東条「……星くんに教えてもらった縮地法で……」

最原「ああ。あのお見舞いラッシュを避けてきたんだ……」

巌窟王「……生徒たちには伝えておけ。まだしばらくアンジーは目覚めない」

巌窟王「あと、昨夜から寝ていないだろう。人の心配をしている場合か?」

最原「あ」

最原(そういえば……異常に眠いかも)

巌窟王「安心しろ。アンジーは無事だ。妙な細工の類もされていない。だな? 東条」

東条「ええ。そうね。安心していいと思うわ」

巌窟王「……ところで」

巌窟王「お見舞いラッシュとはなんだ? 謎だが心がざわついたぞ」

最原「……後で話すよ……」



175:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/26(日) 18:23:36.20ID:322HN4ZW0

カルデア

イシュタル「……」

イシュタル「今、ケツァルコアトルがいなかった?」

ナーサリー「気のせいじゃないかしら。気のせいだと思いたいから気のせいだわ」

イシュタル「そ、そうよね……」

ケツァルコアトル「そうデース。気のせいネー」

ケツァルコアトル「ところでそろそろBBが帰ってくる時間ネー!」

イシュタル「あ! そういえば!」

ナーサリー「今すぐ彼女を出迎えてこの感動を伝えるのだわ!」ダッ

ケツァルコアトル「……」

ケツァルコアトル「……」ニィィィッ



176:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/26(日) 18:38:50.31ID:322HN4ZW0

お見舞い内訳

ナツメヤシをはじめとしたフルーツ各種十種類(落下などで破損したはずだが元通りになってる)
マーリンの周りにある謎の花(のレプリカ)
彼岸花
その他入院してる人にあげちゃいけない花だけの詰め合わせ
ナーサリーライム各種
ミニチュア太陽神殿(めっちゃ重い)
フィンのところから拉致った鮭

獄原「ねえこの鮭さんどうしたらいい!?」

鮭「」ビチビチッ

夢野「捌き方もわからんし、東条も怪我しておることじゃしのー。ウチの研究教室のピラニアと仲良くしてもらうか」

鮭「!?」ガビーンッ

白銀「なんだろうこれ……なんかお見舞いにしては微妙にズレてるような……」

天海「」チーン

王馬「天海ちゃーん。生きてるー? 生きて……」

王馬「し、死んでる……」

モノクマ「死体が発見され……」

赤松「!?」ビクッ

モノクマ「……ごめん冗談」

白銀「シャレにならないから帰って」



190:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/27(月) 19:36:13.13ID:6JeEnH6S0

最原「……じゃあ巌窟王さん。ひとまずここは……任せてもいいっていうか」

最原「任せろって感じだよね……うん……」

巌窟王「多少は大人になったか。そうだ、言わずとも伝わることもあるぞ?」

東条「……それじゃあ、引き上げましょうか。お見舞い品は入口のあたりに纏めて置いておくって話が纏まったみたいだし」

最原「それじゃ、おやすみなさい……もう夜明け過ぎだけど」

巌窟王「……」

巌窟王「最原」

最原「ん?」


ポイッ


最原「……?」キャッチ!

最原(鍵?)

巌窟王「アンジーの研究教室の鍵だ」

最原「……!」

巌窟王「元は誰にも見せる気はなかったのだがな。王馬のピッキング技術のせいですべて台無しだ」

最原「あ、ああ……捜査のときに美術室に人が集まってたのは王馬くんのせいだったんだ……」

巌窟王「……後で返せ。必ずな」

最原「……」

最原(すぐに見ろ……って言ってるのかな)

巌窟王「ついでだ。密約の履行も行うといい」

最原「……気付いてたの?」

巌窟王「さて、な」

最原「……」

最原(天海くんを連れて行こう)



191:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/27(月) 19:41:12.54ID:6JeEnH6S0

その後 超高校級の美術部の研究教室

天海「……ついに、っすね。俺の才能が……これでわかる!」

最原「モノクマのやることだし、もしかしたらコレでもわからないかもしれないよ?」

天海「だとしても、俺の忘れられた過去を取り戻すことはできるっす!」

天海「……もう、無力なのは御免なんすよ。なんでもいい。原動力でも才能でも、使えるものなら貰いたい!」

最原「そう。じゃあ、もう止めることはできない、かな……」

天海「……ありがとう、最原くん。それじゃあ起動するっすよ!」


ポチリッ


モノクマ『さぁて、大好評により復活した動機ビデオの時間です!』

モノクマ『"超高校級の生存者"である天海蘭太郎くんの大切な人とは誰なのか! はじまりはじまりー!』

最原「……」

最原(超高校級の……生存者?)



192:人選に特に意味はない ◆SxyAboWqdc 2017/11/27(月) 19:53:35.83ID:6JeEnH6S0

モノクマ『ネタバレ防止のため詳しいことは言えませんが、天海くんはその身を犠牲にして二人の高校生を助けたことがありました!』

モノクマ『その二人の生徒は、あなたのことをとても心配しておりましたよ!』

生徒F『私の美しさだけではキミを助けることができない。その事実がただただ口惜しい……!』

生徒C『天海! 負けんじゃねぇぞ! 最悪、柱に体をくくりつけてでも倒れなければ負けじゃねぇ!』

モノクマ『美しい友情……過去に彼らと天海くんの間には、血みどろの青春があったのですが、今ではこの通り無二の親友たちです』

モノクマ『さて、この無二の親友たちが、この後大変なことになってしまうのですが……』

モノクマ『何が起こったかは内緒だよ! 続きは卒業の後で!』


ブツンッ


天海「……」

最原「……天海くん? 超高校級の生存者って……」

天海「わからない。わからない、っすけど……」

天海「……震えが止まらないっす。俺は……彼らのことを知ってる……!」ガタガタ

最原「天海くん?」

天海「俺は……くそっ。俺は……! なんで何も思い出せないんすか!」

天海「なんでここまで役立たずなんすか!」

天海「くそぉっ!」

最原「……」

最原「僕は天海くんのことを役立たずなんて思わないよ」

天海「気休めを……」

最原「真宮寺くんを庇ってくれたじゃないか。赤松さんと一緒に」

天海「!」

最原「……実はさ。巌窟王さんを丸め込むために何を言うか、あの時点で何も思いついてなかったんだよね」

天海「……嘘っすよね」

最原「本当だよ。だから時間稼ぎしてくれて、本当助かったんだ」

天海「……」

天海「……最原くん。キミも王馬くんレベルの嘘吐きっすね。でも」

天海「ありがとう。ちょっと……頭冷やしてくるっす」


ガチャリンコ



193:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/27(月) 19:58:36.18ID:6JeEnH6S0

最原「……さてと。それじゃあ、天海くんもいなくなったことだし、火を付けてみないと……」

ガチャリンコッ

天海「あ。そういえば最原くん」

最原「うひゃあ!?」ガビーンッ

天海「……英霊召喚に関する書物で、令呪の移譲について書かれたページがゴッソリ誰かに盗まれてたんすけど……」

天海「結局、そのページはどこに行ったんすかね?」

最原「……」

最原「見当も付かないな」

天海「……そうっすか。それじゃあ」


ガチャリンコ


最原「……」

最原「これは嘘。多分、そのページを持っているのは――」




入間の私室

入間「……」

入間「……ケケケ」

盗られたページ「」バサッ

入間「ガスでの毒殺は途中で頓挫しちまったが……まあいい。アンジーはまだ生きてる」

入間「さて。どうすっかなー。どうすればいいかなー」

入間「……巌窟王、欲しいなー。欲しいなー」

入間「……ケケケッ。ケケケケケケケ」



194:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/27(月) 20:01:30.42ID:6JeEnH6S0

第三章

Unlimited 在校生 Works

END


残り人数

十六人+一騎


TO BE CONTINUED



ミニチュア太陽神殿を手に入れました!



208:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/28(火) 21:23:34.00ID:6ggIZhts0

ごめんちょっと今日は生放送見てセイレムやるから更新なし
と言いたいところだが時限シナリオか。じゃあすぐドン詰まるな?

余力あるんなら何かしらのマトリクスを何かしら出して何かしら茶を濁そう



210:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/28(火) 21:37:44.59ID:6ggIZhts0

今まで入手したクリア特典

巌窟王のクラッカー
赤松楓の生還を祝うクラッカー。出所は不明。
地獄のような閉鎖空間、響く快音が導くのは希望か絶望か。


巌窟王のマント
東条斬美に貸し出されたマント。ちなみに予備なので一張羅というわけではない。
微妙にタバコ臭いが、包まれてると妙に安心する。


ミニチュア太陽神殿
真宮寺の事件を乗り越えた生徒たちへのプレゼント。微量の魔力を帯びた謎のオブジェ。
全長は星の身長と同じくらい。巌窟王に詳細を訊ねると、不機嫌になった上に黙る。



212:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/28(火) 22:12:51.68ID:6ggIZhts0

サポートサーヴァント

月:BB
巌窟王にとってはすべての元凶。だがこれはこれで楽しいので恨んではいない。
というか恨んだところで注射で反撃されるだけだということを知っている。
才囚学園に関しては全体的なアナライズ担当。実は学園の真相まであと一歩のところまで迫っている。

騎:イシュタル
カンフー系女神。金星の女神。水着の女神。とにかく女神。
もがく生徒たちを興味深く見ているファン一号。
機械はそこまで強くないが、依代の方が強く出ているわけではないので『教えればなんとかなるレベル』ではある。

術:ナーサリーライム
なんかもう色々ギリギリな発言を繰り返す本。第三再臨状態だけど。
才囚学園での冒険をカルデアの女神連中に布教した。
機械には強いのでサポートはそれなりに。

騎:ケツァルコアトル
なにかロクでもないことを企んでいる。



220:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/29(水) 19:09:53.57ID:yMn+Ra070

最原(……虚構と現実)

最原(日常と非日常)

最原(僕たちには縁遠い存在だったはずの魔術の結晶)

最原(……巌窟王さんは無敵だと僕たちは疑っていなかった)

最原(だけど、僕たちが目を逸らしていただけで、非日常はすぐ傍まで迫っていて……)

最原(……現実だと思っていたものが虚構だったと気付くのすら遅れたんだ)


学園某所


モノクマ「……は? 動く? もう? キミが?」

??「……」

モノクマ「早くない? まだ事件三つしか起こってないよ?」

??「……!」

モノクマ「いい機会……ああ、確かにね……うーん、どうしようか」

モノクマ「でもボクもそこまで本格的に手は貸せないよ。校則があるんだから」

??「……」ニヤッ

モノクマ「……じゃ。ひとまず巌窟王さんの処理の方はお願いね。その他は全部やれるから」

モノクマ「もろもろよろしく」

モノクマ「……コロシアイの首謀者さん」ニヤァ



第四章
虚構殺人遊戯:才囚学園、改め、架●●理●園ダンガンロンパ

(非)日常編



230:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/01(金) 18:09:46.95ID:f+xpSk3+0

最原の私室

最原「……朝だ」

最原(ほぼ丸一日寝てたことになるのかな……途中何度か目が覚めたけど、ダルくって起きる気になれなかったからな)

最原「……アンジーさんの見舞いに行こう」




病室

巌窟王「……BBはどうした?」

イシュタル『不貞寝してるわ』

ナーサリー『ええ。不貞寝してるわね。しばらくはやってこないわ』

巌窟王「そうか。まあいい。誰に伝えようと変わらない」

巌窟王「アンジーが目を覚まさない。どうなっている?」

イシュタル『んん? んー……あー……ナーサリー?』

ナーサリー『軽く医学的な探知をかけてみたけど、特に問題はないわ』

ナーサリー『体の中に爆弾とかも埋め込まれていないし、分泌も正常そのもの』

ナーサリー『もちろん、これはBBお手製のメディカルチェッカーの機能に瑕疵がなければの話だけど』

巌窟王「ないと見て良いだろう。アイツもこんなところでミスはしない」

ナーサリー『なら話は簡単よ。起きたくないから起きてないか、さもなくば……』

ナーサリー『起きるのに足りないものがあるのね。王子様のキスとか?』

巌窟王「王子様……」


ガララッ


最原「巌窟王さん、いる?」

巌窟王「いない。帰れ」

最原「ええっ!?」ガビーンッ!

ナーサリー『意地悪しないの!』



231:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/01(金) 18:35:49.76ID:f+xpSk3+0

食堂の外にあるテラス席

百田「あー……暇になっちまったなー」

春川「百田? こんなところで何してるの?」

百田「ん。ハルマキ。いや、さっきアンジーの見舞いにでも行こうかと思ったんだけどよ」

百田「先に終一が行くのが見えたから後にしようって思ってよ」

春川「アンタそんな気遣いできたんだ。意外」

百田「お前たまに信じられないくらい失礼だよな……」

春川「……」アセッ

春川「気遣いできない無神経クソ野郎とまでは言ってないでしょ。ただやり口が大味すぎて面喰うだけ」

春川「正確に言うなら『アンタそんな細かい気遣いできたんだ』ってところかな」

百田「なんでちょっと強引に補足してくんだよ。別に怒っちゃいねーって」

春川「……そっか。最原は夜長の見舞いか。後でちょっと相談したいことがあったんだけど」

百田「俺が聞くぜ?」

春川「悪いんだけど、百田に今話したところで、後で最原に話すことは変わらないんだよね」

春川「アイツの研究教室についての話だからさ」

百田「ああ、あー……毒物が大量にあったんだったか?」

春川「最悪、巌窟王にガブ飲みさせれば処理はできるんだけど……仮にも最原の研究教室のものだから本人の許可なしではできないでしょ?」

百田「巌窟王が可哀想だろ、流石に!」ガビーンッ!



233:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/01(金) 18:57:52.90ID:f+xpSk3+0

百田「でも仮に終一が『毒薬を捨てたくない』とか言ってもハルマキは捨てる気満々だろ?」

春川「まあね……っていうか多分、棚から出すだけで危ないヤツとかあるから触りたくないってのも本当なんだけど」

春川「ソマンとか」ボソッ

百田「絶対に触んな! 下手すりゃ全滅だぞ!」ガビーンッ

百田「いいよもう、放置で! どうせ触ったところでモノクマが補充するだけなんだしよ!」

春川「……放置と言えば、全然話は変わっちゃうんだけどさ」

春川「真宮寺、結局どうするの?」

百田「……それなんだが、俺に考えがあんだよ」

ゴトリッ

百田「コレだ」

春川「巌窟王の持ってるデバイス?」

百田「の二号機だ」

春川「は?」

百田「校舎の中をうろついてたら見つけてよ」

百田「鳴ってるから拾って起動させてみたら……」


~回想~


ナーサリー『あ! いい感じに生徒が拾ってくれたのだわ!』

イシュタル『どれどれ。誰が引っかかったのかしら……ああ、百田ね。才能はなんだったかしら……』

イシュタル『超高校級のロン毛とかだったような気が……』

百田「ロン毛じゃねーし! どんな適当な覚え方してんだテメー!」

百田「……で。これ巌窟王のデバイスだよな。アイツに届けりゃいいのか?」

イシュタル『届けなくていいわ。それとは別だから』

ナーサリー『あまり褒められた行為ではないのだけど、もう私たちとも知らない仲ではなくなっちゃったし』

ナーサリー『このデバイスは生徒と私たち専用のものよ。あの伯爵には内緒にしてね!』


~回想終了~


百田「って感じで手に入れた」

春川「なんかそこはかとなく胡乱なんだけど……」



234:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/01(金) 19:09:42.40ID:f+xpSk3+0

百田「で。色々と話込んでいる内に……っていうか何故か終一のことを重点的にあれこれ訊かれた末に……」

百田「なんとなく真宮寺の話題に移っていってよ」

春川(女子特有の長電話……)

百田「で……まあなんだ。真宮寺はしばらく保護監察すればいいって話になったんだよ」

春川「え?」

百田「いくらアイツでも進んで死にたいとは思わねーだろうし、俺の見える範囲で殺人をやろうとか思わないはずだ」

百田「傍に誰かいりゃあ問題ねーよ。何もな」

春川「……」

春川「それ、いつまで続ける気?」

百田「ひとまず気付いたときにはやって、それ以外は自由でいいだろ」

春川「適当すぎる……」

春川「……でも名目はいいかもね」

百田「仮にアイツがこの学園にいる間に、また誰かを殺そうとしたら……」

百田「ま、監察官として一緒に罪を背負ってやらァ」

春川「バカだね。そこまでする義理ある?」

百田「お前がバカだろ。あるに決まってんじゃねーか」

春川「……」

春川「ふふっ……バカにバカ呼ばわりされた……」

春川「……ぶっ……ぷぷっ……」

春川「あ、ごめん。マジでツボに入っ……!」プルプル

百田「どこまでツボに入ってんだテメェ! かつてないほど笑いやがって!」ガビーンッ!



235:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/01(金) 19:23:13.83ID:f+xpSk3+0

春川「……でもまあ、いいか。いいよ、それで。私はそれで納得してあげる」

春川「ついでに、茶柱じゃないけどさ。誰かに狙われないように、夜長とか東条とか……できる限り守っておくよ」

百田「!」

春川「……アンタみたいに気付いたとき限定だけどね」

百田「ハルマキ。お前……」

春川「なに?」

百田「すげぇいいヤツだったんだな!」

春川「……今までどんなヤツだと思ってたの?」

百田「いいヤツ」

春川「……」

春川「……」テレッ

百田「お! 今照れたな! 照れただろ! てーれーたー!」

春川「殺されたいの?」ギンッ

百田「ゴメンナサイ」

春川(……羨ましいバカさ加減だ)

春川(本当に、コイツは、どこまでも……)

春川(……ん? 草場の陰に誰か……あ、いや。王馬がいる?)

王馬「……」ゴソゴソ

王馬「……」サッ

王馬のカンペ『そこで告って!』

春川「……」ヌギヌギ

百田「ん? どうしたハルマキ。いきなり靴脱いで……」

春川「死ねッ!」ブンッ

百田「投げたッ!?」ガビーンッ

王馬「それ逃げろー!」ダッ



249:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/03(日) 15:24:23.85ID:Cw8D+Wqn0

病室

巌窟王「……」

最原「……アンジーさん。まだ眠ってるね。いつ起きるのかな」

巌窟王「そうそう遠くはあるまい。モノクマの処置は、悔しいが適確だったからな」

巌窟王「無駄にサイボーグ化などはされていないことは東条も確認している」

最原「それがこの学園ではありえそうだから怖いんだよね……」

巌窟王「……」

巌窟王「最原。一つ聞かせろ」

最原「なに?」

巌窟王「どの時点で気付いた? 今回の犯人を俺が殺す気だと」

最原「……」



250:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/03(日) 15:25:50.96ID:Cw8D+Wqn0

最原「疑似学級裁判の序盤」

巌窟王「そんなに最初か」

最原「一番最初に『あれっ』て思ったのは、普段はそんなことは滅多にしない巌窟王さんがヒントを与えるようなことを言ったとき」

最原「前回、前々回の学級裁判だと『自分自身でも本当にわからないこと』を純粋な興味で暴いた結果、議論が発展した、みたいなパターンだったから」

巌窟王「それだけか?」

最原「まだあるよ。これが一番の理由かな」

最原「犯人がアンジーさんの口の中に酒瓶を突っ込み、ヒルの許容限界を超えた血液を吸い出させた……」

最原「このトリック、よくよく考えると被害者がアンジーさんってところに致命的な穴がある」

最原「サーヴァントの巌窟王さんならまず最初に気付いたはずだ」

巌窟王「……」

最原「……令呪で呼べたはずなんだよ。だって、酒で溺死させないために、アンジーさんの意識はハッキリしてたはずなんだから」

最原「荒縄で雁字搦めにされていようと関係ないんだ」



251:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/03(日) 15:27:47.02ID:Cw8D+Wqn0

巌窟王「……見事、と言ったところか。あのシャーロック・ホームズがお前のことを知ったら頭を撫でたがるだろうな」

最原(たまに巌窟王さんって変な冗談言うな……)

巌窟王「俺が気付いていたはず、というところまで推理の中に入っていたな」

最原「じゃないと犯人を殺そうと思うくらい怒らないと思って」

巌窟王「……アイツは我がマスターの理念を踏みにじった」

巌窟王「やり方こそは歪んでいたかもしれないが、意志自体は間違っていない。それにも関わらずな」

巌窟王「しかも『アンジーは巌窟王を呼ばない』という点を考慮に入れて凶行に及んだのだ」

巌窟王「これで犯人に怒らなければ、何が復讐者か」

最原「最後の令呪。これを失ったら今度こそ巌窟王さんは生き返れない。だから……」

巌窟王「……犯人も、アンジーも大馬鹿者だ」



252:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/03(日) 15:28:42.15ID:Cw8D+Wqn0

巌窟王「アンジーが死ねば、どうせこの空間での現界の維持はできなくなる。どっちにしても消えるというのに」

最原「消える前に他のマスターと契約すれば消えない、みたいなこと言ってたけど」

巌窟王「……」

最原「……まあ僕たちにはいらない知識、だよね」

アンジー「ん……!」

巌窟王「む」

最原「アンジーさんっ!」

アンジー「う、う、うう……!」ガタガタ

巌窟王「……もう容態は安定したはずだが」

最原「違う。これは体じゃなくって心の方の問題だ……!」

最原「凄くうなされてる!」

アンジー「か、神様……!」ガタガタ

巌窟王「アンジー! 俺はここにいるぞ!」

アンジー「……ルチャの……女神様……」

巌窟王「……」




巌窟王「は?」

アンジー「ルチャの神様が愉快な腰つきで無理やり迫ってくるよおおおお……!」エグエグ

巌窟王「」

最原「ど、どんな夢かはまったくわからないけど、ありえないほどうなされてる!」ガビーンッ!



253:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/03(日) 15:29:42.87ID:Cw8D+Wqn0

ケツァルコアトル『オーレッ! あなたもマスターたるもの、強くなくっちゃいけませーん!』

ケツァルコアトル『その心意気、覚悟。資格は充分です! 我が加護を受けて超高校級のルチャドーラとして覚醒するのデース!』

アンジー「いやだああああ……いやだよおおおお……! 他の神様信仰したくないよおおお……!」ガタガタ

アンジー「もう高さ足りてるよおおおお……!」エグエグ

巌窟王「」

最原「アンジーさん! しっかりして! アンジーさーーーん!」

巌窟王「……」ズーン

最原「巌窟王さん! 頭抱えてないで誰か呼んできて……巌窟王さん! 巌窟王さーーーんっ!」



258:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/04(月) 19:05:32.70ID:m8ZKClow0

ガシャァァンッ!

夢野「おらぁ! 東条先生の総回診の時間じゃあ!」

東条「呼ばれた気がしたわ」

最原「怖いくらいナイスタイミングだな!」

巌窟王「……東条はともかくとして夢野はいるだけで不安になってくるな……」

夢野「言ってはならん本音をずけずけ言うのう、こういうときだけ!」

東条「……」

東条「ごめんなさい。来たのはいいけど鎮静剤の類はこの病院にはないの」

最原「外見こんな立派なのに!?」

夢野「あのタイムスリップ医療漫画で有名なインスリンは大量にあったんじゃがなぁ」

最原「品揃えが極端すぎる!」ガビーンッ

アンジー「し、神殿……神殿が……神殿が危ない……!」ガタガタ

最原「神殿……」

最原「あの。巌窟王さん、もしかして」

巌窟王「間違いなくあのミニチュア神殿のせいだが、壊せん」

最原「巌窟王さんでも破壊不可能だなんて……」

巌窟王「いや、破壊可能ではあるが破壊したが最後、帰還した後で全力コブラツイストの地獄を見る羽目になるからな」

最原「壊して! 今すぐ!」

巌窟王「断る!」ギンッ



259:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/04(月) 19:16:38.48ID:m8ZKClow0

巌窟王「それよりは夢は所詮夢でしかない。アンジーを起こした方が速かろう易かろうさ」

最原「あ、う、うん! アンジーさん、起きて! 起きて!」

アンジー「チューしてくれれば起きるかも」

夢野「もう起きておるじゃろコイツ」

東条「……いいえ。私自身信じられないけど、今のは寝言よ」

巌窟王「クハハ! こんな寝言があってたまるか!」

最原「……」チラッ

巌窟王「……何故こちらを見ている?」

最原「あの……」

巌窟王「何を考えている……?」ゴゴゴゴゴゴゴ

最原「……アンジーさんにキスできれば……早いかなーって……」ガタガタ

巌窟王「俺が許可を出すと思うか……?」ゴゴゴゴゴゴゴ

最原(ですよねー)

東条「でも現実問題、このままにしておくのも可哀想よ。巌窟王さん」

巌窟王「……」

東条「巌窟王さん?」

巌窟王「夢野はどこに行った?」

東条「あら?」






夢野「ぶちゅー」

アンジー「ギエピー!」ガビーンッ

巌窟王「」

東条「」

最原(意外な人が行ったーーーッ!)ガビーンッ



アンジーは目が覚めた



260:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/04(月) 19:31:02.58ID:m8ZKClow0

アンジー「……お……おっはー……」ゲッソリ

最原「悪夢のせいで凄いげっそりしてる」

東条「いえ。無抵抗で唇を奪った夢野さんのせいでもあるのだけど」

夢野「緊急事態じゃった。仕方あるまい。そこな巌窟王が大人気ない駄々をこねていたのも悪い」

巌窟王「……クハハ……ハハハ」シュン

最原(凄いしゅんとしてる……)

アンジー「え、ええっと……神様も」

巌窟王「……」

アンジー「……」

最原「……」

巌窟王&アンジー「……」アセッ

最原「……僕たちは外に出てるよ」

巌窟王&アンジー「!」

夢野「そうじゃの。色々言いたいこととか、謝りたいこととかお互いにあるじゃろう」

東条「……時間が必要よ。あなたたちには」

巌窟王「……ふん。余計な気遣い……」

巌窟王「と、言える強がりができる余裕もないか」

巌窟王「……感謝を」

最原「いいよ。この程度じゃ、何も返せないくらい巌窟王さんには借りっぱなしだ」

最原「……また来るね」



269:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/05(火) 20:12:19.17ID:d5krnD450

巌窟王「……」

巌窟王「アンジー。お前の中の俺は、こういうとき謝る男か?」

アンジー「ううん。謝らないと思う。重大な過失をしたとして、それをどれだけ重く受け止めていたとしても」

アンジー「後で行動で示すだけで、口では謝らない人だと思う。重大であればあるほど」

巌窟王「……そうか。ならば現実の俺も謝らない。そして行動で示すとしよう」

巌窟王「だが――」

アンジー「わかってる。ごめんなさい。これまでのアンジーはちょっと無茶しすぎてたよ」

アンジー「……どこまでバレちゃった? アンジーの悪事」

巌窟王「すべてだな」

アンジー「……美兎をあしらうの凄い面倒だろうなー」

巌窟王「……非常に興味深いのだが、誰に対しても分け隔てなく接していたお前が、なぜ入間にだけ警戒心を丸出しにしている?」

アンジー「……そう見えてた?」

巌窟王「隠す気があったことに驚きだな」

アンジー「……」

アンジー「ごめん。言いたくない」

アンジー(もしかしたら終一ならわかってるかも、って言ったら不機嫌になっちゃうんだろうなー)

巌窟王「……」

アンジー(既に不機嫌になってた)



270:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/05(火) 20:21:11.93ID:d5krnD450

巌窟王「まあいい。アンジー。それでこれからどうする?」

アンジー「……え? なんのこと?」

巌窟王「……クハハ。すまない、気が逸っていたようだ」

巌窟王「決まっているだろう? 真宮寺のことだ」

アンジー「……」

巌窟王「我がマスター、夜長アンジーよ。お前が望むのなら」

アンジー「神様。そういうのいいよ」

巌窟王「……」

アンジー「……まだ生きてるんでしょ? ならそれが答えだよ」

アンジー「終一あたりが是清を庇ったのかな?」

巌窟王「……ふん。どいつもこいつも……つまらないな」

アンジー「……これまで一緒に暮らしててわかった。神様がアンジーに何を願っているか」

アンジー「要はさ。願われたいんだよね。子供がサンタさんにプレゼントを願うみたいにさ」

アンジー「孫が優しいおばあちゃんに甘えるみたいに」

巌窟王「……」

アンジー「……それ、アンジーの信仰と違う。アンジーの理屈に合わないんだ。ごめんね」

巌窟王「クハハハハハハハハ!」

アンジー「……何がおかしいの?」

巌窟王「ああ、女! 女! お前は何も気づいていない!」

巌窟王「それに気付いた時点で、俺の目的は達成間近だ! そもそもそれが抵抗の『意志』なのだからな!」

アンジー「!」



271:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/05(火) 20:33:04.45ID:d5krnD450

巌窟王「……だが足りない。間近では遅すぎるのだ。そのことを今回の件で痛感したぞ」

巌窟王「アンジー。俺のことを庇ったな?」

巌窟王「一丁前に、自分自身を犠牲にして!」

アンジー「……当然だよー。だってアンジーは……神様の不利益になることしないからさー」

巌窟王「不快だ。そんな献身はクソ食らえだ。誰が頼んだ?」

アンジー「……!」

巌窟王「……次は必ず俺を呼べ」

巌窟王「必ずだ」

アンジー「……」

アンジー「やだ」

巌窟王「……」

アンジー「だって……これは神様の生命線で……」

アンジー「それ以上に、アンジーと神様の絆だもん」

巌窟王「知ったことか」

アンジー「……」

アンジー「……う……!」

巌窟王「俺はカルデアに帰る。そして契約は必ず果たす。つまるところお前を必ず脱出させる」

巌窟王「生きて外に出ろアンジー。どれだけ温かかろうが、俺とお前の絆は運命的な一度きりだけだ」

巌窟王「……使いつぶすことを恐れるな。どうせ長くはもたない絆なのだからな」



272:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/05(火) 20:44:12.68ID:d5krnD450

アンジー「……それならアンジーは一生ここから出られなくていい、って言ったら?」

巌窟王「仮に俺の霊基がここで完全消滅することになったとしても、お前をこの場で焼き殺す」

巌窟王「……契約を途中で放棄するのだ。その程度の覚悟はしておけ」

アンジー「それも……やだなぁ……! とっても、とってもいやだなぁ……!」

巌窟王「……つまるところ、俺はお前に使われるサーヴァント」

巌窟王「どう扱おうが勝手だ。だが無様は晒すな」

アンジー「……あのさ……後で水、貰ってきてくれる……?」

アンジー「その……凄く長い間出るかもしれないから」

巌窟王「……枕に顔を押し付けておけ。笑顔でないお前など見るに堪えん」

アンジー「……えうっ……ひっく……!」

巌窟王(……これだけ強く言っても、コイツは俺を信じることをやめないだろうな)

巌窟王(いつかどこかで俺に強く『失望』するような機会が訪れない限り)

巌窟王(……自分で作れるようなシチュエーションではない。祈るしかないか?)

巌窟王(……フン。焼きが回ったな。アンジーと一緒にいた弊害か。俺が『祈る』などと)

巌窟王(本当に、ここに長くい過ぎた)



275:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/06(水) 20:22:39.09ID:eXITeYgF0

病院のロビー

入間「……さて」ゴソゴソ

入間(毒ガス殺人は真宮寺の裁判のせいで頓挫。となると他の方法でアンジーをぶち殺すしかなくなったが)

入間(どうすっかなー。心当たりなんて他にねーし)

入間(……いや。仮に心当たりがあったとして、最原がいる限りは絶対に上手くいくわけがねー)

入間(ヤローさえいなきゃ他は全員俺様の足元にも及ばねぇカスの集まり)

入間(でも、かと言ってアンジーのついでに最原を殺すのは危険すぎるよな。これじゃ『動機』の点で俺様に疑惑がかかる可能性がある)

入間(ただ外に出たいんなら最原のみを狙い撃ちにすればいい話で、アンジーを狙う必要はないんだからな)

入間(クソッ……最原。ヤローさえ……ヤローさえいなければ……!)

入間「最原ァ……!」ギリィッ

最原「呼んだ?」

入間「ぴぎゃあ!」ガビーンッ!

最原「入間さん。それアンジーさんの見舞い品だから物色しちゃダメだよ」

夢野「ダメじゃぞ」

東条「ダメよ」

東条「……」

東条「ダメよ」

入間「一回でわかるわ! 二回言うな腹立つ!」



276:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/06(水) 20:31:09.56ID:eXITeYgF0

入間「……三人でアンジーんところ行ったのか? 揃いも揃って暇なヤツらだぜ」

最原「よりにもよって怪我人の見舞い品をかっぱらおうとする入間さんよりは千倍マシだと思うけど」

入間「あのな。別世界の物品だぞ。研究したくなって当たり前だろうが」

東条「……気持ちはわからないでもないけど自重して」

夢野「わからないでもないのか?」

入間「……あー。へいへい。後であのズタボロ雑巾ブスに許可取るっつーの。それならいいだろ?」

夢野「お主本当にその減らず口は治らんのう」

東条「もう放っておきましょう。不治の病よ」

入間「……おい。露骨に引いてんじゃねーよブスどものクセに。寂しくて涙が出てきちまったじゃねーか」

最原「強気なのか弱気なのか、ここまで来てもサッパリだなぁ入間さん」



277:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/06(水) 20:37:47.02ID:eXITeYgF0

入間「……」

入間「おいダサイ原」

最原「なに?」

入間「お前、絶対に解けない謎ってこの世に存在すると思うか?」

最原「……」

最原(やっぱり露骨にアンジーさんを殺したがってるよなぁ、入間さん。どうしよう)

最原(気付いてる人は多分、まだそう多くないから今のうちに改心してほしいんだけどな)

最原「……うん。あると思う……けど」

入間「そうか。そうだよな……うん……」

最原(ちょっと揺さぶってみよう)

最原「なんで毒ガスを持っていったの?」

入間「……へっ?」

最原「……なんで?」

入間「……り、理由なんて……あると思ってんのか?」

最原「うん」

入間「ええっと……」

入間「……」

入間「バルサンの代用……?」

最原(無理がある)

入間(って顔してるなコイツ! ちくしょう!)



278:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/06(水) 20:44:40.57ID:eXITeYgF0

東条「最原くん。もういいでしょう。殺すとか殺されるとか、そういうのはもうたくさんよ」

最原「ん……んん……」

夢野「んあ?」

入間「……ちっ! ド低能どもが……」

最原「……」

最原「入間さん。悩みがあるなら聞くからさ。早まったマネだけはしないでね?」

入間「……」

入間「うっせーうっせー! くたばれカース!」ダッ

夢野「あ。逃げおった」

最原「……参ったなぁ……」

東条「隙だらけね彼女。計画を実行に移したとしたら、予想外の方向に大惨事を引き起こすわよ」

最原「うん。わかってる。わかってるんだけど、止めるには決め手がなくって……」

最原「……ひとまず巌窟王さんはアンジーさんに付きっ切りだし、僕もなんとか頑張ってみるけど」

夢野「なんじゃ? アイツが妙な言動を晒すのは別に珍しくもなんともないじゃろ?」

最原「……」

最原(もうコロシアイなんて起こってほしくない。なんとかしないと)



279:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/06(水) 20:51:01.74ID:eXITeYgF0

校舎内

入間「あー! くそ! 無駄に寿命縮んだぜ! ダサイ原のくせしやがって……!」

入間「……早まったマネだぁ? 訳知り顔でほざきやがる」

入間「俺様は……俺様はただ、巌窟王を解析すれば世界を良くできるってわかってるから……」

入間「……ケッ。天才の悩みが凡才どもにわかるはずもねーか」

入間「あーあ。時間無駄にした。適当にゴン太をからかって遊ぶかー。えーとアイツは研究教室かなー」



ドガラガシャガシャッ



入間「ん? なんだこの音。階段の上の方から?」

赤松「きゃー! グランドピアノが階段を転がっていくー!」ガビーンッ

入間「ええーーーッ!? グランドピアノが俺様に向かって――」



グシャッ



285:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/07(木) 20:10:12.04ID:0iFadSJ/0

数分後 病院

夢野「おらぁ! 東条先生の診察の時間じゃあ!」

東条「全治一か月の骨折ね。折れたのが右の尺骨だけでよかったじゃない」

入間「いいわけあるかァ!」

赤松「あ、あの……入間さんごめん! 本当にごめんね!」

入間「ば、バカ松。お前、一応聞いておいてやる。なんでグランドピアノが階段を転げ落ちてたんだ?」

赤松「ええっと……病院に運ぼうと思ったら失敗しちゃって」テヘヘ

入間「なんで!?」ガビーンッ!

赤松「アンジーさんを喜ばそうと思ってさ」

入間「それで道中でグランドピアノが階段を転げ落ちてたのか!? お前なに!? 善意で人を殺すのが趣味なの!?」

夢野「それ以前にどうやってグランドピアノを調達したんじゃ……」

赤松「私の研究教室にあったものを……壁を壊して押して運んでたんだけど」

赤松「階段のことを失念してたなぁ。失敗しちゃった」

入間「テメェ本当にピアノに関わるとサイコな発言しかしねぇな!」

夢野「普段は誰よりも常識人なクセにのう」



286:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/07(木) 20:56:02.79ID:0iFadSJ/0

入間「あーあー……まあいいや。どうせ詰まってた発明品もくっだらねーのばっかだったしよ」

赤松「どんな発明してたの? どうせロクなものじゃないだろうけど」

入間「そこまでにしておけよ加害者」

入間「まあ確かにくだらねーものだけどよ。電子機器を無効化できるハンマーとか爆弾とかそういうのだし」

東条「……え?」

入間「理屈上はエグイサルに叩きつければ一定時間停止させることも可能っちゃ可能だろうけど、現実問題誰がそんな危ない橋渡るんだって話だしな」

夢野「……んあ?」

赤松「……入間さん。それってもしかして、仮に電子的なロックがされた扉に叩きつけたりしたら」

入間「まあ開くな。何の抵抗もなくあっさり開くな。扉っていうのは基本的に『開いた状態』が基本じゃねーと、万が一があったら閉じ込められる」

入間「だから『無効化』したら当然、どんな扉だってくぱぁと開くに決まって――」

赤松「誰か数分前の私の首を吊ってーーーッ!」ウワァァァァ!

入間「ええっ!?」ガビーンッ!

夢野「落ち着けぇ! 落ち着くんじゃ赤松! お主のせいでは……と言うにはあまりにもアレじゃが落ち着くんじゃあ!」

東条「……盲点だったわ。脱出手段がまさかこんな近くにあったなんて……!」

入間「んっ?」



287:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/07(木) 21:25:11.67ID:0iFadSJ/0

入間「……あ。そういえばデスロードの先の、巌窟王が突破できなかった扉って……」

赤松「そう! 電子的ロックの扉! もの凄くゴツいって話の!」

赤松「でも凄いよ入間さん! その発明品が完成したら外に出られるよ!」

入間「あー……?」

夢野「ん? なんじゃ? 嬉しくなさそうじゃの?」

東条「そうと決まれば話は早いわ。私の手がどうなろうと、治療を早送りで実行」

東条「全治一か月と言ったけど五日に縮めさせてもらうわよ」

入間「んなぁ!?」

入間(冗談じゃねぇ! 手ぶらでこの学園を去るわけには……!)


ガララッ


獄原「入間さん! 入院したって聞いてお見舞いしにきたんだけど、何かゴン太にできることは!?」

入間「俺様を今すぐ半殺しにしろ!」

赤松「なんで!?」ガビーンッ

入間「ま、まだだ! まだ俺様は外に出るわけには……!」

獄原「うんわかった! 頑張って半分にするよ!」ガシッ

東条「えっ」

夢野「えっ」

赤松「えっ」

入間「えっ?」



ブチブチブチッ


ギャアアアアアアアア!



296:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/08(金) 21:10:31.92ID:XwHjoF600

十分後 別の病室

巌窟王「なに? 脱出の目途が立った?」

赤松「と思ったらまた頓挫したんだけどね」

夢野「かくかくしかじか~」

巌窟王「なるほど。入間の発明品で外に出ることが可能……」

巌窟王「だったのが、入間のわけのわからない要求のせいで延期か」

赤松「半殺しにされちゃって……二重の意味で」

夢野「人間ってああいうふうに動けないんじゃがのう。関節」

赤松「でも多分、大丈夫。死んではいないし後遺症も残らないらしいから」

巌窟王「入間……入間か。まったくノーマークだったな。まさかヤツに助けられる日が来るとは」

アンジー「……」

アンジー「大人しく脱出させてくれるかな?」

巌窟王「む?」

アンジー「ううん、なんでもなーい」ニコニコ



297:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/08(金) 21:24:11.99ID:XwHjoF600

巌窟王「クハハ! 心配するな! またぞろモノクマがなんらかの妨害を仕掛けて来たとしても俺なら対応可能だ」

赤松「うん! そのときになったらお願いね、巌窟王さん!」

夢野「絶対に全員で外に出るんじゃからの!」

アンジー(アンジーが心配してるのはモノクマじゃなくってむしろ……)

アンジー(言っても仕方ないか。美兎はちょっと予測できない)

アンジー(神様に相談しても、こういうのは多分苦手すぎて絶対に対処できない。したとしても意味がない結果になる)

アンジー「……」

アンジー「終一に会いたいなー。何してるんだろ」

夢野「最原なら入間の治療に付き添っておるぞ?」

アンジー「えっ」


ガララッ


獄原「はあ、はあ……東条さん! 治療道具を倉庫から持ってきたよ、ってアレ。アンジーさん?」

獄原「急ぎ過ぎて病室間違えたッ!」ガビーンッ

赤松「あはは、落ち着いてよゴン太くん。そんなに慌てることないから」

獄原「え? そ、そう? ええと、じゃあアンジーさん。これ東条さんに渡したらちょっと落ち着くから、何かゴン太にしてほしいことある?」

アンジー「今すぐアンジーを半殺しにして」

赤松「なんでっ!?」ガビーンッ

夢野「デジャヴュ!?」

巌窟王「!?!?」

獄原「うん、わかった! 頑張るよ!」


ドシュウウウウ!


超獄原ゴン太「そこを……どいてくれ巌窟王さん……こうなったゴン太は手加減ができない……」ゴゴゴゴゴゴゴ

巌窟王「やってみろ」ビキッ



ゴッ!



赤松と夢野の二人は巌窟王と超ゴン太の衝突による衝撃波で吹き飛び、軽傷を負った。
後にこの惨状を見た天海は『どうして現場で血が流れるんすか』と叫んだとされる。



298:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/08(金) 21:30:57.02ID:XwHjoF600

その日の夜 病院

モノクマ「……ふー……」

病院の廊下「」ゴッチャァァァ

病院の窓「」バッキバキー

病院の天井「」チカチカッバチバチッ

モノクマ「……すごいなー……建てて数日でこんなになっちゃうんだ病院って……」

白銀「バイオハザードっぽいよね。ゾンビのメイクしたら映えそう」

モノクマ「あー。片付けるの本当に面倒臭い……息子たちに押し付けよ。駄賃はイワシ一匹で」

白銀「鮭とかじゃないんだ……」



305:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/09(土) 21:34:38.73ID:rWvXSQW+0

翌日

入間「……体中が痛ェ」

東条「でも決定的にダメージが残っているわけじゃないから、歩いたり走ったりは問題ないわよ」

東条「といっても、右腕の骨折はまだ治ってないから走るのはやめてほしいのだけど。転んだりしたら取り返しつかないから」

最原「やっぱり一秒でも目を離すべきじゃなかったな」

入間「口説いてんのか?」

最原「あはははははははは! 面白い冗談だね! あははははは!」

東条(目が笑ってないわね。余程ストレスため込んでるのかしら)

入間「わ、悪かったよぉ。だからそんなSAN値ゼロの瞳で笑うなよぉ。怖ぇよお」

最原「……はあ。いや、もう、本当に……東条さん。入間さんのことはしばらく僕が世話するよ」

最原「だから東条さんはアンジーさんのところに……」

東条「いえ。彼女ならもう退院したわよ」

最原「えっ」

東条「今ごろ百田くん主催で『お帰りパーティ』をやっているころかしら」

最原(誘われてない……!)ガビーンッ



306:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/09(土) 21:43:50.62ID:rWvXSQW+0

食堂

百田「えー。本日はお日柄もよくー」

百田「面倒くせぇ! とにかくカンパーイ! 飲めや食えや大騒ぎしろーーー!」

一同「かんぱーい!」ガチャーンッ

王馬「……」ゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴク

星「一心不乱にプァンタを飲んでやがる……」

アンジー「にゃははー! 半ばわかってたことだったけど、アンジー祝われてないねーコレ」

春川「うん。ただ夜長の退院にかこつけて騒ぎたいだけだよ」

赤松「モノクマから電子ピアノ貰ったんだ! これでBGMは任せてよ!」グッ

春川「って言っているピアノバカは見ての通りピアノを弾きたいだけだしね」

春川「まったく。みんなはしゃぎすぎだよ。高校生なんだからもうちょっと慎み深くさ……」

アンジー「……魔姫」

春川「なに?」

アンジー「なんでナース服着てるのー?」

春川「……パーティだから」ホクホク

巌窟王「気のせいか? 俺にはお前が一番はしゃいでるように見えるぞ」

アンジー「解斗の傍に長くいすぎたんじゃないかなー」



307:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/09(土) 21:52:47.83ID:rWvXSQW+0

春川「まあ、脱出の目途が立ったっていうのも一番大きいかな」

春川「……今までお疲れ様、巌窟王。好きな料理をよそってあげようか?」スッ

巌窟王「……」ビクッ

春川「……ん? なに? 今ちょっとビクついた?」

巌窟王「いや……」

アンジー「看護師さんが苦手なのー?」

天海「年配の人が医者が嫌いなのと同じノリっすかね?」

春川「……」スッ

巌窟王「……」サッ

春川「……」

春川(面白……!)プルプル

巌窟王「言いたいことがあるならハッキリ言ったほうがいいぞ春川。存分に焼いてやる」ビキビキ

アンジー「魔姫も随分と表情豊かになったよねー」

天海「恋っすよ恋」

百田「……」ゴクゴクゴクゴクゴク

王馬「……」ゴクゴクゴクゴクゴク

白銀「さー! 白熱して参りましたプァンタ早飲み勝負! 果たして勝利するのはどちらかーーーッ!」

白銀「ちなみに東条さんがこの場にいたら余裕でストップかかるくらい医学的に危険だからマネしないでね!」



308:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/09(土) 21:58:37.41ID:rWvXSQW+0

キーボ「ぼえー」キィィィィンッ

茶柱「ぎゃあああああああ! 誰ですかキーボさんにマイク持たせたのーーー!」ジタバタ

夢野「耳がーーー! 耳が腐り落ちて死ぬーーーッ!」ジタバタ

赤松「あ。うなじのあたりに緊急停止ボタンがあるらしいよ」

キーボ「ぼえっ!?」ガビーンッ

星「よし押した」ポチリッ

キーボ「ぐー」スヤァ

茶柱「はあ……はあ……綺麗な川の向こうでお父さんが手を振ってるのが見えました。お父さん生きてるのに」

真宮寺「大丈夫? なにか飲み物持ってくるヨ?」

茶柱「ああ、お気遣いなく……」

茶柱「……」

茶柱「……?」

茶柱「……!?!?」ガビーンッ



309:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/09(土) 22:06:13.50ID:rWvXSQW+0

茶柱「ひいいっぎゃあああああああああ!?」

百田「ごぼぅ!? な、なんだ!? どうした茶柱!」

王馬「はいこれで俺の勝ち」ゲフゥッ

百田「あ、ちくしょう! 負けたーーーッ!」

春川「……ひとまず口の周り拭きなよ百田。ほら」フキフキ

百田「よ、よせよ。自分でできるっつの」

春川「……あ、や、やだ……ごめん。孤児院と同じノリでやっちゃった……ごめん」カァァッ

真宮寺「青春だネ」

茶柱「そうですね」

茶柱「……じゃない。そうじゃない! 自然に無かったことにしないで……!」

茶柱「みなさん! ここに真宮寺……真宮寺さんが!」

百田「おう真宮寺。前は思いっきり殴って悪かったな」

真宮寺「まだ顎のあたりがガタガタだヨ。半分以上最原くんのせいでもあるけどネ」

赤松「本当にボコボコにタコられてたもんね」

茶柱「喧嘩慣れしてない最原さんでも、あれだけの回数殴ればそりゃあ……」

茶柱「何度言えばいいんですか転子はッ! 真宮寺さんが! ここに! いるんですって!」バンバンッ



310:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/09(土) 22:15:22.45ID:rWvXSQW+0

百田「ああ。コイツな……うん。ひとまず俺が保護監察するってことで話が纏まったから大丈夫だ」ピースピース

真宮寺「大丈夫だヨ」ピースピース

茶柱「いやいやいやいやいやいやいやいや!」ブンブンッ

巌窟王「……」

茶柱「……ハッ!」

巌窟王「理由はどうあれ、よくも俺の前に……」

巌窟王「違う。この際俺のことはどうでもいい」

巌窟王「……アンジーの前に姿を現せたものだなぁ? 真宮寺」ボォッ

真宮寺「……」

百田「よせよ巌窟王。そんなことしたらパーティがどっちらけだぜ」

巌窟王「む……」

アンジー「神様。もういいよ。昨日もそう言ったでしょ?」

巌窟王「……」

巌窟王「真宮寺。二度はないということを心しておけよ」

真宮寺「少なくとも、もう才囚学園の誰にも手を出す気はないヨ」

真宮寺「……色々な人に助けられて今がある。そのことを忘れたくはないからネ」

巌窟王「……フン」



311:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/09(土) 22:25:22.30ID:rWvXSQW+0

春川「……あのさ。ふと気になったんだけどさ」

春川「少なくとも、もうこの中に秘密を持った人とかいないよね?」

春川「実は暗殺者でしたーとか、殺人鬼でしたー、みたいな……そういうのもうたくさんだよ?」

王馬「ごめん。実は俺、核爆弾で一国をまるごと滅ぼしたことがあるんだ……」

獄原「ええっ!? そ、そんな過去が!」

白銀「ないない。王馬くんのいつものウソだよ」

王馬「なーんだすぐバレちゃった」

春川「……そっか。それなら残るは……入間だけか」

春川「……いっそのこと私が……」

巌窟王「……む? 何か言ったか、春川」

春川「ううん、なんでもないよ」

百田「……おい」

百田「終一はどうした?」

一同「……」






一同「えっ?」

白銀「恐ろしい集団心理である……」

白銀「そう! 誰も! 最原くんを呼んでいなかったのである!」バァーンッ

赤松「も、百田くんあたりがてっきり声かけてるものかと……!」ガタガタ

百田「すぐ呼びに行ってくるぜ!」ダッ



319:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/10(日) 21:16:41.63ID:muMAMc+A0

五分後

百田「ただいまー」

春川「……最原は?」

百田「『入間さんの世話があるから僕はいいよ。楽しんできて』って言ってた。死んだ目で」

赤松「拗ねちゃってるよ!」ガビーンッ

アンジー「……」

巌窟王「……来て欲しいのなら素直にそう言ってもいいのだぞ?」

アンジー「……終一が来たくないって言ってるのならいいよー」

百田「代わりと言っちゃなんだが東条を連れて来たぞ」

東条「最原くんの手伝いのせいで手が開いてしまったの」

白銀「いいんじゃない? 東条さんも休みが必要だし」

東条「ヤスミ……? 聞いたことのない言葉ね。忌々しい響きだわ」

百田「お前一歩間違えたら思考回路超ブラックだよな。元から」



320:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/10(日) 21:25:00.75ID:muMAMc+A0

謎の超巨大スパコンのある部屋

入間「……」カタカタカタ

最原(凄い集中力だな。この部屋に入ってからずっとコンソールいじってるけど。片手で)

最原「結局、この機械ってなんなんだろ」

入間「超次世代型VRシミュレーションのハード」

最原「え」

入間「ソフトは新世界プログラムって言うらしい」

入間「コロシアイが長く続いたら『殺人の概念がない世界』を投影して中に逃避するのもアリだったかもしんねーな」

最原「いやそれもどうなんだろう」

入間「……テメェはよ。巌窟王のお気に入りだからいいよな。いつの間にか強くなりやがって。ムカつく」

最原「はい?」

入間「気付いてねーか? アンジーの次にヤツと関わって影響受けてる生徒は、天海と同着二位でテメーなんだぜ?」

入間「このコロシアイに立ち向かうってスタンスもアイツ譲りだろうな。チンカスが一丁前にマネしやがって」

入間「AVだけ見てセ○クスをわかった気になる男子より厄介だぜ」

最原「……」

最原(そうかもしれない)



321:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/10(日) 21:32:44.91ID:muMAMc+A0

入間「ま。テメーとは違って天海の方はパッとしねーけどな。影響だけはバリッバリ受けてるだけに無様だぜ。ケケ」

最原「……やめてよ。天海くんをそんなふうに言うの」

最原「気持ちは本物だ」

入間「誰一人としてまだ死んでないから忘れちまったか? コロシアイしてるんだぞ?」

入間「才能の思い出せねーザコなんざ、味方なら足手纏い、敵なら一瞬で死ぬカスだろ。なんでまだ生きてるのかも疑問だぜ」

最原「……」イラッ

入間「……な、なんだよお。急に黙りやがって」

最原(本当にこの人は困った人だな……話せば話すだけ好感度がドンドン下がってく)

最原(でも放っておくわけにはいかないしなぁ……)

入間「……ちっ。時間がかかりそうだな。今日のところは無理そうか」

最原「さっきから何してるの?」

入間「中身を改造してる。まあ巷ではマンネリしかけてるジャンルのくだらねーゲームさ」

入間「……できたら真っ先に遊ばせてやるよ」

最原「……?」

入間(というより、遊んでもらわねーと困るんだけどなァ……)ケケケ



329:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/11(月) 18:56:46.25ID:0rlQra+00

その日の夜 アンジーの私室

巌窟王「……????」カタ……ポチ……

アンジー「何やってるのー、神様」

巌窟王「卒業アルバムの制作のために編集ソフトをいじっているのだが……」

巌窟王「いまいち捗らなくてな。ふむ。どうしたものか……」

巌窟王(だからBBに頼りたかったのだが)

アンジー「じゃあ写真術の本だけじゃなくって、ソフトをいじるとき用の指南書も頼めばよかったのにー」

巌窟王「なんだと? アンジー、もう一回言ってみろ」ゴゴゴゴゴゴゴ

アンジー「指南書も頼めばよかったでしょー」

巌窟王「……」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

巌窟王「その発想は無かったな! クハハ! でかしたぞアンジー!」ナデナデナデ

アンジー「えへへー」

巌窟王「さっそく手配するか」ポチポチ



330:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/11(月) 19:05:09.73ID:0rlQra+00

イシュタル『ええ。指南書ォ? うーん……どう? ナーサリー』

ナーサリー『物理書籍は送れないわ。残念だけど実物のないアーカイブとしての指南書しか』

巌窟王「何?」

イシュタル『いや、その……カルデアの職員がそろそろ怪しんできてて……』

ナーサリー『原因不明なままに物資が次々に消えていくんですもの。仕方ないわ』

巌窟王「……流石に限界が近づいてきたか」

ナーサリー『……あ。でもBBの手作りのアレならアシがつかないんじゃないかしら』

イシュタル『アレ?』

ナーサリー『ほら。最近BBがマシュに送ったビックリプレゼントボックスよ!』

イシュタル『ああ。あの情報を無理やり脳天にぶち込むショッキングな……』

イシュタル『……まあ巌窟王なら大丈夫かしら』

巌窟王(何を話しているのか心当たりはまったくないが、イヤな予感だけが漂うな)



331:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/11(月) 19:12:24.76ID:0rlQra+00

巌窟王「……卒業アルバムの完成は近い……」

アンジー「最後までがんばろー!」

アンジー「……」

アンジー「……あっ」

巌窟王「どうした? アンジー」

アンジー「……ううん。な、なんでもない」

巌窟王「そうか」

アンジー(……カメラマンが神様ってことは、そのカメラには神様自身が映ってないんだよね)

アンジー(それはちょっと……イヤ、だけど……)

アンジー「……」

アンジー(言わないと気づかないかな。いや、気付いてるけどわざと言ってないのかも)

アンジー(……どうしよう)



332:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/11(月) 19:19:49.51ID:0rlQra+00

翌日 朝 新世界プログラムのある部屋

入間「……あと少し。あと少しだ……!」ゼェハァ

最原「だ、大丈夫? 目が充血しきってるけど」

最原(昨日は深夜までコンソールにかじりついて、今日は朝からコレだもんなー)

入間「け、ケケケ……! お前の目ん玉、驚きで爆発させてやるよ……楽しみに待ってな!」

最原(期待できない)

入間「……あ。そうだ。昼飯食い終わったら二、三人くらい暇なヤツを連れて来い。そいつらもテスターにすっからよ」

最原「なんの?」

入間「決まってんだろ。俺様が手ずから作った新作ゲームのお披露目会だ!」

最原「……」

最原(何を企んでるんだろう)



336:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/12(火) 19:36:57.74ID:/En/ko/B0

その後 校舎 某所

春川「……」プンスカプンスカ

最原「あれ。春川さん? どうしたの、凄く機嫌悪そうだけど」

春川「コレ」

最原「……巌窟王さんのデバイス?」

春川「違う。同じものだけど、コレは百田のなんだよ。巌窟王のホームと繋がってる」

最原「え?」

春川「色々あって手に入れてさ。巌窟王には内緒だよ?」

最原「……う、うん。わかった。それはわかったけど、どうして怒ってるの?」

春川「……百田が長電話してて、こっちが用事あるって言っても『後でな』ってあしらわれて」

春川「イラッと来たからスッてきちゃった」

最原「そ、それまさか通話中にってことはないよね?」

春川「大丈夫だよ。百田は『急にデバイスが消えた』としか認識してないから」

春川「……バレなきゃ犯罪じゃないんだよ」ギンッ

最原(怖ぁー……!)

最原「……」

最原「春川さん。昼ごろは暇?」

春川「……暇だけど」

最原(一人目確保)



337:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/12(火) 19:43:52.13ID:/En/ko/B0

昼ごろ 寄宿舎

王馬「巌窟王ちゃーん。あーそぼー」ピンポンピンポーン

王馬「あれー。おかしいなー。なんで応答ないんだろう」

王馬「あ。そうだ。こんなときこそ俺の才能の出番だよね! ピッキングツールー!」


ガチャガチャガチャリンコ


王馬「やっほー! 遊びに来たよ巌窟王ちゃーん!」

巌窟王「」チーン

アンジー「うううう……! や、やめてぇぇぇ……お願いだからこっち来ないでぇぇぇ……」エグエグ

アンジー「クマのぬいぐるみを投げたり、片手で弓とか撃てたりとかしないからぁぁぁ……!」ガタガタ

王馬「……!?」


バタリンコッ


王馬「見なかったことにしよう。巌窟王ちゃんが床に倒れてて、アンジーちゃんが悪夢にうなされてた気がするけど」

王馬「まあ死んでなければ安いよね!」

最原「……あ。王馬くん」

王馬「あ! パーティにハブられてた最原ちゃん! やっほー!」

最原「……」ズーン

最原「……落ち込んでる場合じゃなかった。ねえ王馬くん。暇?」

王馬「暇すぎて自爆テロしそうだよー!」

最原(二人目確保)



338:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/12(火) 19:50:53.18ID:/En/ko/B0

新世界プログラムの部屋に戻る道中

最原「……ということで、不安だから二人に来てもらったんだけど……」

春川「よりによって王馬を誘う? どんな神経してんの?」

王馬「やっだなー! 人殺しに言われたくないってー!」ケラケラ

春川「……」

最原(恐ろしいくらい不機嫌になった。確かに人の組み合わせくらいは考えるべきだったかな……)

白銀「あれ? 珍しい組み合わせ。どこに行くの?」

最原「あ。白銀さん」

王馬「これから入間ちゃんのところに突っ込んでゲームしに行くんだよ。白銀ちゃんも一緒に――」

白銀「行くぅーーーッ!」ドギャァァァンッ

春川「最後まで言ってないのに凄い食いつきよう」

白銀「行くよーーー! どんなクソゲーであってもゲームならかじりつかざるを得ないよー!」ハァハァ

最原(閉鎖空間のせいで飢えてる……)

最原(三人目確保。これだけいれば充分かな)



339:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/12(火) 20:02:59.82ID:/En/ko/B0

スパコン室

最原「ということで連れて来たけど」

春川「つまらなかったら死ぬよ。アンタがね」

王馬「一切期待してないけど入間ちゃんをいびるためだけに来たよ!」キラキラ

白銀「ゲームを持った入間さんが相手なら『覇王翔吼拳』を使わざるを得ない!」

入間「どういう人選してんだテメェ!」ガビーンッ

最原「見つかった暇そうな人がこの人たちくらいしかいなくって……」

王馬「なんかアンジーちゃんと巌窟王ちゃんは部屋に引きこもったっきり出てこないんだよね。なんでだろう」

入間「……」

入間「……今回はアンジーはいない方が好都合、だろうな」

春川「なんか言った?」

入間「ひい! な、なんでもねーよ!」

白銀「ジャンルは何? ギャルゲ? 乙女ゲ? ノベルゲ?」ハァハァ

入間「近い近い近い! 鼻息こっちに吹きかけんなドブスッ!」

最原「……ちょっと可哀想になってきた。大丈夫? 入間さん」

入間「テメェのせいだけどなッ!」



345:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/12(火) 21:59:41.77ID:/En/ko/B0

prrr!

最原「……春川さん。デバイスが鳴ってるけど」

春川「ムカついたのは百田に対してだけだし、ひとまず出てから謝罪くらいはするべきかな」

最原「ところで、百田くんと何を話してたの? その人たち」

春川「なんか最原のことを根掘り葉掘り聞いてた。百田と話すときは大体その話題らしいね」

最原「え? 僕?」

春川「たまにアンジーの話題に入ることもあるらしいけど、そっちは訊かなくっても巌窟王が色々情報駄々流しにしてるから食傷気味みたい」

最原(だからってなんで僕?)

ピッ

春川「はい、こちら春川」

イシュタル『まったく。ビックリしたわよ、いきなりデバイスをひったくるなんて』

ナーサリー『で。デバイスに内蔵されたカメラとマイクから状況は筒抜けなのだけど……』

ナーサリー『VR……つまり電子虚構空間にへのダイブ、ね。ちょっと懐かしいのだわ』

春川「……話の途中で邪魔してごめんなさい」

春川「それはそれとして、無駄話をするためにかけてきたの?」

イシュタル『いいえ。どうせなら私たちも混ぜてほしいと思って』

入間「は?」

白銀「……!」ピクッ

最原(ん? 白銀さんが……ちょっと眉を顰めた。気のせいかな?)



346:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/12(火) 22:05:47.11ID:/En/ko/B0

イシュタル『ねー。別に構わないでしょー。ちょっと一緒に遊ぶだけじゃなーい』

ナーサリー『こういう機械に関しては、こちらも一家言あるわ。安心して!』

最原「……僕には特に、反対する材料がないんだけど。どう? 入間さん」

入間「……まあ、いんじゃね? ただ俺様の魔改造を勝手にいじくるのは許さねーぞ」

イシュタル『元から私はそんなことできないし』

ナーサリー『元から私はそんなことする気ないわ』

白銀「……」

白銀「……あれっ? あそこに今、モノクマがいたような」

最原「え?」

春川「本当? 見間違いじゃない?」

王馬「俺にはなんも見えなかったけど?」

白銀「……」


ボヨヨーンッ


モノクマ「はいはーい! ボクの名前を呼んだー?」

王馬「あーあ。白銀ちゃんのせいで来ちゃった!」

白銀「ご、ごめん……」



347:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/12(火) 22:12:15.76ID:/En/ko/B0

モノクマ「うーん……生徒がいじくる分には、新世界プログラムで遊ぶのはまったく問題なかったんだけど」

モノクマ「部外者にいじくられるのはちょっと困るんだよなー」

ナーサリー『遊ぶだけよ。いじくるつもりはないわ』

イシュタル『ただ、わざわざあなたが出張ってきた時点で、ちょっと興味の種類が変わっちゃったのだけど』

イシュタル『迂闊に出てき過ぎよ』

モノクマ「うぷぷ」


ピロンッ


最原「ん。今の電子音って……」

王馬「モノパッドかな?」

春川「……あんたたち、モノパッドをいつも持ち歩いてるの?」

白銀「え? 春川さんは持ち歩いてないの?」

春川「面倒だから部屋で充電器に刺しっぱなしだよ」

最原「……ええと、校則に追加項目があるね。内容は――」



『新世界プログラムを故意に破壊した場合、その手段によらず生徒全員の連帯責任となり、校則違反の処理が全員に適用されます』


最原「え」

春川「なにこれ……今までで一番、校則の縛りが強くない?」

最原(勝手に春川さんが僕のモノパッドを覗き込んでる……)

最原(でも確かに、校則の質が今までと違うな。異様だ)



348:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/12(火) 22:18:38.38ID:/En/ko/B0

モノクマ「壊さなきゃいいだけだよ。改造、チューンナップは自由」

モノクマ「あ。そうそう……分解も度が過ぎたら『破壊行為』と見なすからそのつもりで」

入間「あー?」

最原「入間さん。こんな校則が追加されることについて心当たりは?」

入間「ねーよ。そこまで重要そうな内容物は特にねーはずだ。中身も改造前から単なるゲームだったしな」

入間「こんな無茶苦茶な縛りを設けてまで守ろうとする意図もまったく読めねぇ」

入間「フェラの必要性以上にまったくもって度し難いな」

白銀「詳しくは……突っ込まないでおくよ……ていうか突っ込めないし」

イシュタル『ナーサリー。中に入れたら調べられる?』

ナーサリー『可能よ。可能だけど……』

モノクマ「今は大したものはないよ。断言する。今はね。だからいくら調べても無駄だね」

最原(……後から何か追加されるってことか?)



349:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/12(火) 22:29:44.12ID:/En/ko/B0

入間「ま、どうでもいいだろ。ひとまず中に入ってみな!」

入間「中々出来が良く作れたからな。脳汁ドバドバ出しながらイッちまうこと間違いなしだぜ!」

春川「……」

春川「最原。コイツにちょっとでも期待できると思ってる?」

最原(まさか)

最原(……と言いたいけど、今まで何度か助けられたことも確かだし)

最原(口が物凄く悪いけど、紛れもなく仲間だからなぁ)

最原「……ひとまず信じてみたいな」

王馬「答えになってないね」

白銀「これ被ればいいの?」

入間「端子を間違った場所に刺すなよー」

春川「ええっと……デバイスのコネクタは……コレか」カチッ

ナーサリー『お先に行ってるわ!』

イシュタル『うふふ! 楽しみね!』

最原「……よし。行こう」ポチッ



355:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/13(水) 21:29:25.28ID:QT80LB590

新世界プログラムの中

最原「……ちびキャラ化してる!」ガビーンッ

白銀「おー! 凄い! 動きが微妙にラグい! カクカク! あはは!」

春川「けなしてるのに物凄くテンション高いね……」

王馬「へー。これがVR空間内での俺たちのアバターか」

春川「イシュタルとナーサリーは? 先に来てたはずだけど」

最原(名前覚えてる!)

最原「……っと。入間さんは……」

最原(しまった。先に来たのは失敗だったかもしれない。入間さんが最後か……)

最原(現実空間内で変なことしてないといいけど)

ブオンッ

入間「おー! よしよし、問題なく全員揃ってるな!」

王馬「あ。来た」


ゲシィッ


入間「がっふあ!?」

王馬「……ふーん。蹴った感覚がちゃんとある。凄いリアリティだねー! 入間ちゃん!」

入間「げ……げ……!」ガタガタ

春川「……王馬。相手が入間だからってやりすぎ」

王馬「いやホストのくせして最後にやってきたのに凄くムカついて……つい」



356:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/13(水) 21:36:39.15ID:QT80LB590

入間「じゃ。さっそく始めっか! 俺様プロデュース! 『推理トライアル』の始まりだぜ!」

最原「推理?」

春川「……ということは、このゲームのジャンルって」

入間「ああ。本格推理アドベンチャーだぜ?」

最原(……なるほどね)

王馬「へえ」

白銀「むっほほーい! テンションバリバリマックスになってきたよー!」フンスフンス

春川「……?」

春川「待って。イシュタルとナーサリーの姿が見えないんだけど」

入間「あ? 入室ログをきちんと確認したが、不明なプログラムが二体こっちに間違いなくやってきてるはずだぜ?」

春川「でも見当たらないよ」

?????「あっあー! こっちこっち! 視線下に落として!」

?????「ルックミー! ルックミー!」

最原「……足元から声がしたね?」

春川「ん?」

イシュタルちゃん人形「ふう! やっと気付いてくれたわね!」

ナーサリー第一再臨状態「こんにちはー!」

最原「……謎のオブジェクトが喋ってる!」ガビーンッ!



357:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/13(水) 21:44:44.26ID:QT80LB590

イシュタル「改めて自己紹介! 巌窟王のホーム、カルデアからこんにちは! 金星の女神のイシュタルよ!」

ナーサリー「御覧の通り紛れもなく本! 歴とした本! 素敵な本! ナーサリーライムよ!」

入間「え、ええーっ……なんじゃこりゃ。こんなオブジェクト設定した覚えは……」

ナーサリー「ないでしょうね! 勝手に作って意識を滑り込ませたわ!」

イシュタル「BBのようなアホみたいなハッキング技術はないけど、コイツもそれなりにハッキング齧ってるのよ!」

ナーサリー「むかし取った杵柄ってヤツなのだわ」

最原「てっきり僕たちみたいに人型のアバター持ってくるものだと……」

ナーサリー「即席で用意できるものがこれしかなくって……」

春川「まあ、いいや。これで正真正銘、全員揃ったでしょ」

白銀「はやく始めようよ! すぐに始めようよ!」ハァハァ

王馬「入間ちゃーん。巻きでお願い。白銀ちゃんの鼻息が後頭部に当たってて凄くうざい」

入間「お、おう。まあとりあえず……ヤるか!」



358:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/13(水) 21:55:53.89ID:QT80LB590

入間「スタート地点は御覧の通り、この洋館風の建物だ」

入間「で。外に出ると廊下がズラーッと長く続いてる」

入間「ここは西の果て。廊下はずっと東に向かって続いてて、その途中にいくつもの部屋が待ち構えている」

入間「……で。ここからがミソだな。その部屋の一つ一つには殺人事件が待ち構えている」

入間「すべての部屋に用意してある殺人事件の真相をすべて指摘できれば全クリだ」

王馬「で。その部屋……もとい用意されてる事件っていくつあるの?」

入間「百個」

最原「百個!?」ガビーンッ

春川「よく用意できたね?」

入間「いくつかは推理小説のパクリまたはアレンジだけどな。俺様の黄金の脳細胞にかかりゃ余裕だぜ」フンス

入間「これだけありゃサンプリングには充分だろ」

春川「さんぷ……?」

入間「……あ! ああ、な、なんでもねえ!」アタフタ

最原「……」



359:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/13(水) 22:03:56.52ID:QT80LB590

イシュタル「……なんとも回りくどいマネをするわねー」コショコショ

最原「うん。どう考えてもコレって……」

最原「……」

最原(いつの間にか僕の頭に乗っかってる! 人形が!)

イシュタル「流石に気づいてるでしょ? コレってどう見てもあなたを警戒した末にできたゲームよ」

最原「うん。多分、これで僕の苦手分野を知って、後でそれを利用したトリックで誰かを殺す気なんだと思う」

最原(気付いてるかもしれないけど一応、誰なのかはボカしておこう)

ナーサリー「人を呼んだのは目的のカモフラージュのためかしら」

最原「それと、出来る限り学級裁判時の状況を再現したいのかも……」

最原「本が宙に浮かんでる!」ガビーンッ

王馬「すげー! マジもんのポルターガイスト初めて見たー!」キラキラキラ

春川「ゲームの世界だよ。一応」

最原(……僕への傾向対策のためか)

最原(なら全部、絶対に解いてやる。フィクションの事件なら怖くもなんともない!)



361:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/14(木) 19:14:43.50ID:okd+02cK0

アンジーの私室

巌窟王「……ハッ! 今、何時だ!?」ガバァッ

時計「」14ジデース

巌窟王「くっ……まさかあんな方法で情報処理能力をぶち込まれるとは思わなかった。BBめ、何を考えている」

巌窟王「だが情報は……問題なく頭に入っているな。結果よければすべてよし、か?」

アンジー「……」スヤァ

巌窟王「む……? アンジー、もう昼だぞ。いつまで寝ている?」

アンジー「うえええええ……もう弓撃ちたくないよー……あとそのバイオレンスな夫婦漫才とか本当やめてよおおおお……!」ガタガタ

巌窟王「!?」ガビーンッ






アルテミス『もー。そんなこと言わないのー。夢から覚めるころには第二のアタランテよー?』

オリオン『ひぎいい! お願い! お願いだから首を絞めるか指導を続行するかのどっちかにしてー!』

アンジー「えええええん……もうやだよおおおおお……」エグエグ

巌窟王「アンジー! 起きろアンジー! 我が声の元へと戻るのだ!」ガクガクユサユサ!



なんとか起こしたころにはアンジーはアルテミスの加護を手に入れていた。
だがアンジー自身が拒否したので即座に巌窟王が燃やした。



362:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/14(木) 19:32:15.68ID:okd+02cK0

数十分後

巌窟王「……通信をかけているというのに誰も出ないな」イライラ

アンジー「も、もういいよ神様ー。アンジーもすっかり元気だからさー」ゲッソリ

巌窟王「見え透いた嘘は顔面に血色を戻してからにしろ」

東条「ごめんなさい。睡眠導入剤もごく弱いものしかないの。悪夢への対処はかなり貧弱なものに限定されるわ」

巌窟王「そうか。ならば仕方ないだろうな。趣味が悪いからアレだけは使用したくなかったのだが」

東条「?」




更に十分後 カジノ

巌窟王「気分転換だ! 存分に遊ぶぞアンジー!」

アンジー「じゃんじゃんばりばりー!」

東条「……なるほど。確かに悪くない対処法ね」

巌窟王「む……先客がいるな」

百田「ち、ちくしょう……! 全部……全部スッちまった……!」ガタガタ

百田「コイン。どこかにコイン落ちてねーか。コイーン!」キョロキョロ

巌窟王「……」

巌窟王「やはり帰るべきか……?」



363:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/14(木) 19:36:48.14ID:okd+02cK0

同時刻 新世界プログラム

入間「……」

入間(バカな……!?)

最原「謎解き終了。これで五十件目。やっと半分終わったね」

イシュタル「……」

ナーサリー「……」

春川「……」

白銀「……」

王馬「……」

王馬「推理のときだけ饒舌になるの気持ち悪いよね」

白銀「やめなよ」

入間(お、俺様の無敵トリックが今のところ瞬殺ーーーッ!?)ガビーンッ!



369:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/15(金) 17:04:42.87ID:lq5RAuTd0

入間(バカな! プライドを捨てて『俺様の思考回路』を排し『凡人のカスどもの思考回路』を完全再現したトリック群だぞ!)

入間(それでもダメなのか!? 超高校級の探偵って、そこまで問答無用なのかよ!)

イシュタル「……ねえ春川? 気のせいかもしれないのだけど」

ナーサリー「最原、ちょっとノリノリになってきてないかしら?」

春川「なってるね」

入間「え?」

王馬「最近ストレス溜まりまくってただろうからねー。それに、人が不幸にならないような事件ならいくらでもやりたいくらいだろうし」

白銀「……そういえば最原くんの好きなものって小説だったような気が……」

入間「え? ノリノリ? あの常時困った犬みたいな顔をしてオドオドしてたクソ童貞が?」

入間「いやいやそんなこと……」チラッ

最原「次行こう」ウズウズ

入間「そんなことあったーーー!?」ガビーンッ



370:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/15(金) 17:10:58.54ID:lq5RAuTd0

入間(そうか。計算違いがあったとしたらコイツのモチベの上昇か!)

入間(いつもは必死で命懸けだったから全力だったが、今はモチベーションの向上で能力値が上乗せされてるってわけかよ!)

入間(ざ、ざけんな……俺様は……俺様はなにもテメェを喜ばせるために、コレを作ったわけじゃ……!)

最原「……」キラキラ

入間「……」

入間「なんかかっけーな」

王馬「え? 入間ちゃん、なんて?」

入間「え? あ……俺様、今、何て言ったんだ?」

最原「イシュタルさん。この事件のトリックは多分、真上から現場を見渡せば解けると思うんだ。だから」ガシッ

イシュタル「え?」

最原「たかいたかーい!」ブンッ

イシュタル「うわっはーーー!?」ヒューッ

春川「もうあからさまにはしゃいでるよ」

ナーサリー「頑張ってイシュタルー!」



371:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/15(金) 17:18:27.05ID:lq5RAuTd0

イシュタル「ばっ……ば、ばばば、バッカじゃないのー!? 私、女神なのだけどー!?」プンスカ

王馬「どう見ても人形だけど」

イシュタル「このゲームの中ではね! あのね! あなたたちも無学じゃないんだからイシュタルの名前くらい知ってるでしょ!?」

春川「メソポタミアの美と豊穣の女神でしょ?」

イシュタル「ほら知ってたじゃない!」

白銀「いや。流石にコードネームか何かで、本物の女神ってことはないでしょ?」

イシュタル「は?」

白銀「英霊召喚の書にも『神霊の類は原則召喚不可』って書いてあったし」

王馬「まあどう考えても本物ってことはないよね。常識的にさ」

イシュタル「……あ、あー……なるほど。なんかあなたたちの意識が低い理由がわかったわ……本物だと思われてなかったのね……」

ナーサリー「実際に英霊召喚で神を召喚することだけは絶対に不可なのだから仕方ないと思うの」

イシュタル「ハハ……虚しい……!」

最原「イシュタルさん。なにか気付いたことは?」

イシュタル「え。ビックリしちゃっててうっかり記憶し忘れちゃった」

最原「たかいたかーい!」ビュンッ

イシュタル「きゃー!」ガビーンッ

春川(……神霊の類は召喚不可能、ね……じゃあアンジーは何をもってして巌窟王を神って判断したんだろう)



372:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/15(金) 17:32:20.03ID:lq5RAuTd0

三十分後

最原「……よし。解けた! これが事件の真実だ!」

王馬「おおー! 八十件突破!」

入間(バカな……バカなぁぁぁぁぁぁぁ! 俺様のトリック群が……!)

入間(い、いや。残りのニ十件は趣向を変えてある! これならダサイ原も確実に躓くはずだ!)

入間(事前に巌窟王から魔術の知識を聞いておいて助かった……!)

春川「じゃあ、次に行こうか。ガチャリンコ」

イシュタル「どれどれ。今回の被害者はどんな死に方を……」

イシュタル「……自殺じゃない? コレ」

入間「いや。違うな。自殺じゃねー。あとのニ十件の事件の中に自殺なんてつまんねー結末の事件は一つたりともない」

入間「全部! 他殺だ!」

ナーサリー「……でもコレ……」

王馬「ええっとー。モノクマファイル……の代用のイルマファイルによると……」

王馬「改めて思うけど口にする度に吐き気を催す名前のファイルだね」

入間「どういう意味だよお!」

王馬「現場は完璧に密室で、被害者が自分の手でナイフを胸に突き刺したってことは間違いない」

王馬「……で。部屋自体には特に仕掛けはなく。被害者の体からは毒物の類は検出されなかった……」

春川「完全に不可能犯罪じゃない?」

白銀「うーん……でも今までの事件の傾向から考えるに、入間さんのゲームは『解ける』って点においてだけは良識的だったから」

白銀「多分、調査すれば何かは出てくると思うんだけど……」

入間「……」ニヤニヤ

最原「……」

最原「ああ、そうか。もしかしたら今までとは趣向が違うのかも」

入間「はひっ?」



373:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/15(金) 17:40:34.93ID:lq5RAuTd0

イシュタル「趣向……?」

最原「今までの事件は『現実でも実行可能』ってところがテーマだった気がするんだ」

最原「でもこれはゲームならではの殺人……つまり、ファンタジーかSFの要素が絡んできてるんじゃないかな?」

春川「……それってミステリとしてフェアなの? ゲームとしてアンフェアじゃない?」

白銀「いや。そうでもないよ? むしろゲームだからこそ推理にファンタジーが絡むってことは往々にしてあるよ」

白銀「ミステリに一切のファンタジーが絡まない作品で、人気の作品って結構限定されるし」

王馬「あの有名な見た目は子供、頭脳は大人な探偵は『主人公の設定』が完全にファンタジーだしね」

春川「ああ……そう考えると、確かに不自然でもないかな?」

最原「白銀さんの言う通り、このゲームは『解ける』っていう点においてはフェアだから……」

最原「多分、僕たちの前提に深くかかわっているもので、しかも『現実的ではないもの』が深く関わっているはずだ」

入間「……」ダラダラダラ

イシュタル「魔術のアーカイブなら持って来れるわよー」

ナーサリー「ええ! 上級魔術から初級魔術まで!」

最原「初級のものにだけ限定してていいよ。素人でも訓練すれば一年で使えるようなヤツ」

最原「この学園の中だと手に入れられる知識に限界があるだろうし」

春川「……事前に巌窟王から取材してたの? 意外にマメだね」

入間(うがああああああああああああ!)



383:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/16(土) 23:23:42.31ID:t+0lq7280

CM

クレオパトラ「熱が……凄い熱……いやエジプトもかなり熱いけども、この熱さは質が違います!」

白銀「クリスマスなのに! もうすぐクリスマスなのに!?」

クレオパトラ「あの小さいサンタが用意したボックスガチャ用のプレゼントも無駄になりそうですね!」

白銀「それはちょっとシャレにならないよ。本当に」ギリィッ

クレオパトラ(渋ドロップに叩きのめされた顔です……本当に辛い思いをしてきたのですね)

白銀「最悪召喚の方で爆死してもいいからドロップの方は切実に改善してほしいとすら思ってるから……!」

白銀「ああ! 誰か! 誰か助けて! お願い! 私たちにクリスマスをーーーッ!」

????「その願い、聞き届けたり!」

白銀「誰!?」

クレオパトラ「美女!? ローマ!? もちろん――」

アルテラサンタ「私だ」バァーンッ

白パトラ「……」

白パトラ(……いや間近で見てもなんだかわかんないコレ……なに?)

アルテラサンタ「ところで……私は神性持ちだぞ」

白銀「ん? うん。確かに。ステータス見る限りではそうだね?」

アルテラサンタ「神性持ちのサーヴァント、だぞ?」ニコニコ

クレオパトラ「……」

アルテラサンタ「……カメオ出演したいと言ったら、どうする? 泣いて喜ぶか?」ワクワク

白銀「え……いや普通にイヤだけ」

アルテラサンタ「ケインを頭頂部にえいっ」コツンッ

白銀「どぼぅあああああああ!」ダバーッ

クレオパトラ「いやあああああああ! 口からキャンディーが滝のようにーーーッ!」ガビーンッ

白銀「ぼどぼどぼどぼどぼど」ダバーッ

アルテラサンタ「カメオ出演、だぞっ」キラキラ



FGOクリスマスイベント『冥界のメリークリスマス』開催中!



387:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/17(日) 19:16:48.09ID:EVTy5E8r0

最原「……よし。とっかかりがあれば大丈夫。ありがとうナーサリーさん」

ナーサリー「ううん、いいの! いつも楽しませてもらってるから!」

最原「え?」

ナーサリー「おっと。口が滑ったのだわ……なんでもないの」

春川「……」

春川「結果的には良かったかな。入間が何を考えていたのか、私には微妙にわからないけど」

春川「最原、凄く活き活きしてる」

王馬「もうすっかり生気取り戻した感じだよねー」

白銀「事件ではずっと頼りっきりだったもん。こんなときくらい楽しんでくれてよかったよね」

入間「……そんなことのために作ったわけじゃ……」

入間(……でもなんか、悪い気はしねぇな……クソっ)

最原「あ。真相わかったかも」

入間「だから早ぇーーーよッ!」



388:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/17(日) 19:33:08.61ID:EVTy5E8r0

イシュタル「……バカね。あの子。入間にサンプリングされたくないのなら、全部の事件に圧勝する以外にも方法があったのに」

ナーサリー「全部の事件にわざと惨敗すればいい、でしょ? それはちょっとつまらなさすぎるのだわ」

イシュタル「確かに私も、勝負そのものを投げ出す人間なんて退屈すぎて射殺したくなるほど嫌いだけど……」

イシュタル(なーんか、危ういのよね。なんでもかんでも巌窟王から吸収しすぎっていうか……)

イシュタル(困難の喉笛を噛み千切るだけが、生き残る手段ってわけでもあるまいに)

最原「……ゲームを続けよう。次の事件だ」ニィッ

王馬「おー!」

イシュタル(すべての出会いが祝福に満ちているわけじゃない、か。考えてみれば当たり前なのにね)

イシュタル(巌窟王。あなた、少しここに長く居過ぎたわ)




一方そのころ カジノ

巌窟王「ジャックポット。ふん、機械相手に運など必要ない。あるのは必然だけだ」

マシン「」メダルジャラジャラーッ

百田「格好つけてる場合じゃねー! テメェもメダルをケースに入れるの手伝えッ!」

アンジー「にゃははー! ハレルヤーッ!」

東条「エンジョイし過ぎね」



391:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/18(月) 18:14:44.62ID:frxZSdH40

数十分後 新世界プログラム内

最原「……全クリだね」

王馬「最原ちゃんおめでとー! 入間ちゃんが賞品として処女くれるって!」

入間「ひぎゃあ! 勝手に俺様の処女を景品にすんな!」

春川「……え? アンタ処女なの?」

入間「は? え、い、いいいいやそんなわけ……ないのか?」チラッ

白銀「いやこっちに訊かれても!」

入間「……」

入間「ヤッて確かめてみるか?」ズイッ

最原「普通にイヤだよ!」

入間「ぐあはふ!?」ガビーンッ

イシュタル「迫り方も酷いなら振られ方も酷いもんね」



392:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/18(月) 18:23:55.71ID:frxZSdH40

入間「……うぐうおおおおおううう……!」ガタガタ

王馬「あらら。最原ちゃんが酷い振り方するから入間ちゃんが想像以上のダメージ受けてるよ」

最原「いや……入間さんなら男なんてとっかえひっかえだろうし、僕一人に振られたところで大丈夫でしょ」

春川「容姿だけは確かにいいからね。容姿だけは」

入間「アホかテメェ! 男をとっかえひっかえとか! そんなことしてたら、いいお嫁さんになれねーだろうが!」

春川「急に幼稚園児みたいなこと言い始めたよ」

白銀「自分の身をひとまず振り返ってほしいよね。一週間分だけでいいから」

ナーサリー「ねえ? スタッフロールがないのなら、そろそろ外に出たいのだわ」

入間「……そこに受話器があんだろ? 受話器を取って自分の名前を呟けば出れる。不明なプログラムの方は知るか」

イシュタル「でしょうね。まあ大丈夫よ、自力で出れるから」

ナーサリー「楽しかったのだわ!」

最原「……うん。僕もだよ」

白銀「謎はほとんど最原くんが解いちゃったようなものだけどね」

春川「手伝いしかできなかったな」

王馬「出しゃばりすぎなんだよッ! 謝れよ! 俺たちに! 主に俺に!」プンスカ

最原「ご、ごめん……」

春川「じゃあ外に出ようか」



393:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/18(月) 18:45:50.56ID:frxZSdH40

スパコン室

茶柱「……ふーん……へー……なるほど。ヘッドギアをプレイ中に外すと大惨事が起きるから絶対にやめろと……」

赤松「そう書いてあるね。今は寝ているようにしか見えないけど、意識は全部あの機械の中に飛んでいるから……」パラパラ

赤松「ひとまず自然に出てくるのを待つしかないかな」

茶柱「赤松さんを連れてきて正解でした。転子一人ではどうにもできなかったので……」

茶柱「なるほど。この珍奇な機械でそんなことを」

茶柱「……」

茶柱「最原さんの顔にペンで猫髭書いてみましょうか」

赤松「やめてあげようよ……と言いたいところだけど水性ペンなら冗談で済むかな」

茶柱「流石赤松さん話がわかってます! じゃあ早速」

ピロンッ

赤松「ん……?」

茶柱「ふふふ……じゃあペンを構えて、手先が狂わないようにほっぺに手を添えてしっかりと……」

最原「ん?」

ガサリッ

茶柱「え?」

赤松(あ。最原くんがヘッドギアを外した)

最原「……茶柱さん? 何してるの?」

茶柱「……」

最原「あの……ちょっと距離が近くて落ち着かないんだけど……」

茶柱「!?!?」ガビーンッ



395:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/18(月) 20:16:24.83ID:frxZSdH40

茶柱「気の迷い……気の迷いです……何故転子は男死に自分から触ったり……?」ガタガタ

王馬「……女の子をとっかえひっかえは最原ちゃんの方じゃない?」

赤松「モテモテだねー。ふふふ」ニヤニヤ

最原(赤松さん段々この空間に毒されてきてるなー……)

春川(善性そのままに才囚学園全生徒の持つ『ウザみ』を獲得してきてる……可哀想に。もう戻れない)ホロリ

赤松「あれ? 春川さん、なんで泣いてるの?」

春川「触らないで。ウザみが移る」グスン

赤松「ウザみ!?」ガビーンッ

最原「ところで二人はこんなところで何を……?」

赤松「意識がない状態で椅子に座ってたみんなのことを心配して、茶柱さんがたまたま近くにいた私を連れて来たんだよ」

赤松「で。さっきまで新世界プログラムの取り扱い説明書を一緒に読んでたの」

赤松「……中ってどんな感じだったの?」

最原「それは僕にはなんとも説明しがたいんだけど……入間さん」

最原「あれ? 入間さんはどこ?」

白銀「さっき、ガックリ肩を落としてどこかに行っちゃった」

最原「……」

最原(諦めてくれるかな? これで)



396:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/18(月) 20:23:38.80ID:frxZSdH40

入間「クソっ! クソっ! クソクソクソ! なんでだ! なんで躓かない!」ズンズンッ

入間「百件だぞ! これだけ作ってすべてにおいて惨敗ってどういうことだよ!」

入間「後半からは魔術の絡んだ事件も混じってたんだぞ! アレで解けるなんておかしいだろ!」

入間「何か……何かないか! 俺様は諦めたりしねぇ! そんなことするくらいなら超高校級なんて呼ばれてねぇ!」

入間「勝ちたい! 俺様は勝って、巌窟王を手に入れたい! 世界をもっと良くしたい!」

入間「そのためならどんな犠牲だって……!」

入間「……」

入間「……あ。犠牲にできるもの、あるじゃねーか」

入間「最原を出し抜けるとしたら、もうこの方法しかねぇ……ブッチ切ってやる!」



397:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/18(月) 20:34:07.25ID:frxZSdH40

カジノ

天海「押せっ……押せっ……!」

天海「むおおおおおおおおおおおおおおお!」フジワラー

アンジー「おおー! 蘭太郎凄いねー! 本日二回目のジャックポットだよー!」

天海「ついさっきジャックポットがあったばかりだからため込んであるコインはたかが知れてるんすけどー!」

巌窟王「……で。百田の方は」

百田「……」ぐにゃあ~

巌窟王「お前もうギャンブルをやめろ」

百田「嘘だ……夢に決まってる……」

東条「夢じゃないわよ」



405:財布ステラァァァァァ! ◆SxyAboWqdc 2017/12/19(火) 19:37:10.79ID:j8vYgR700

最原(その後、入間さんを探してみたけど、見つけることはできなかった)

最原(……あれだけ徹底的に叩きのめしたので、もう絶対に殺人計画は無理だと気づいてくれたはずだけど)

最原(イヤな予感が頭にこびり付いて離れないのは何故だろう)

最原「……入間さん。寄宿舎にもいないのかな。腕が折れてるのに一体どこに……?」

ガシャコンガシャコン

最原「ん? なにこの音……」

巌窟王「クハハハハハハ! 三代目はモンテ・クリスト伯爵ちゃん!」ガシャコンガシャコン

最原(なんか大きな袋を持った巌窟王さんが変な音を響かせながらやってきてるーーーッ!)ガビーンッ

アンジー「あ。終一ー! 賞品が多すぎて運ぶの大変なんだー! 手伝ってー!」ガシャガシャ

最原「え。賞品……ってまさかコレ」

天海「カジノで大勝ちしてきたっす」

東条「本当に気持ちのいい勝ちっぷりだったわ」

最原「うわ。全員なにかしら持ってるね。本当にみんな大勝してきたんだ」

パンツ一丁の百田「そうでもねーぜ」ズーン

最原「スカンピンになってる!?」ガビーンッ!



406:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/19(火) 19:54:04.60ID:j8vYgR700

巌窟王「どうやら超高校級の宇宙飛行士にギャンブラーとしての才はないらしいな。欠片も」

百田「ちくしょう……ちくしょう……」エグエグ

巌窟王「さて。最原。お前にはコレをやろう」スッ

最原「え? お裾分け? 別に気を使わなくってもいいのに……」

最原「ん? 手紙?」

果たし状「」ドーン

巌窟王「しまった。間違えた」ブンドリッ

最原「ねえそれ誰に向けたもの!? まさか僕じゃないよね!?」

巌窟王「何のことだ? アンジー」

アンジー「さっぱり心当たりが無いよー!」

巌窟王「お前にはコレだ。手を出せ」

剣山「」ギャランッ

最原「明らかに針の方を手のひらに向けて渡す気だよね!?」ガビーンッ



407:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/19(火) 20:01:32.73ID:j8vYgR700

天海「アンジーさんの件に関しては驚くほどに大人気ないっすよね……」

巌窟王「む……」

東条「今指摘されて気付いたって顔ね」

巌窟王「……」

ゴソゴソ ポイッ

巌窟王「カフスだ。受け取れ」

最原「え? あ、わっ」キャッチ!

最原「……」

巌窟王「いらないのなら捨てろ」

最原「う、ううん。いるよ。とっても嬉しい」

巌窟王「……フン……アンジー。俺は他の生徒にも賞品を配ってくる。かさばって仕方がないからな」スタスタ

アンジー「早めに帰ってきてねー!」

最原「……ふふっ」

天海「あれだけ邪険にされてても憧れてるんすねー」

東条「まあ……仕方ないわ。彼の言葉は、この空間ではあまりにも刺激的すぎるもの」

東条(でも赤松さんがいつか言った通り……彼のやり方は最原くんにはあまりにも似合ってないのよね)

東条(ちょっとだけ心配よ)



408:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/19(火) 20:15:11.57ID:j8vYgR700

モノクマ「……アップデートの準備はできてるよ」

モノクマ「あとは生徒全員を……そして巌窟王さんをここに連れて来るだけ」

モノクマ「おびき寄せるだけのネタはどうしようか」

モノクマ「……入間さんを利用する? へえ……いいんじゃない?」

モノクマ「で……キミは全部終わった後どうするの?」

モノクマ「……ふんふん。なるほどなるほど」

モノクマ「マジで?」



411:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/20(水) 19:55:15.74ID:q4bbjtUp0

翌日

東条「……え? 今、なんて?」

入間「真面目に治療受けてやるっつってんだよ」

東条「上から目線なのが気になるけど……あなたにしては随分と殊勝ね」

入間「……ダサイ原に蹂躙されて心が折れて……もうお嫁に行けない」エグエグ

東条「!?!?」ガビーンッ

入間「うう……!」シクシク

東条「……」アタフタ

東条「そ、その……元気を出して。治療に全力を尽くすから……」ナデナデ

入間(ちょれぇ)ニヤァ

入間(ああ。やってやるよ。万が一、俺様が敗れたときのために、あのハンマーは完成させといてやる)

入間(……最後の勝負だ。俺様が勝つ)



412:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/20(水) 20:17:17.70ID:q4bbjtUp0

朝 アンジーの私室

巌窟王「……ふむ。生徒全員に配ってもまだ余ったな……残りは消耗品だからまだマシか」

巌窟王「さて。後はどうするか……アンジーを起こしてから考えるか」

巌窟王「アンジー。朝だぞ。起きるがいい」

アンジー「うーん……あと……あと……」

巌窟王「クハハ。あと五分とでも言うつもりか? 待たんぞ」

アンジー「あと五日早い……!」

巌窟王「は?」

アンジー「というか、お前誰ぇぇぇぇぇ……? 近くで見ても全っっっ然わからないよぉぉぉぉ」ガタガタ

アンジー「うええええええん……今度はどこの神様ああああああ……?」シクシク

巌窟王「」




アルテラサンタ『虹をまき散らし、抗議しにきたぞ。三代目はモンテ・クリスト伯爵ちゃんではなくアルテラだ』フンス

ドゥムジ『どこの、と言われたらまあ色々と答えに窮します。私と彼女は出身地と成り立ちが違うので』メェー

ドゥムジ『まあこの際それはどうでもいいでしょう。道端にこびりついている麦わらのようなもの。目に留まってもスルー確定です』

アルテラサンタ『……お前はカルデアに召喚されていなかったから、ここにいるのはひたすらおかしいのだが。まあいい』

アルテラサンタ『巌窟王がカジノで当てたプレゼントの約五倍の満足度に至るまでプレゼント攻撃をやめない!』

羊『めー』

羊『めー』

羊『めー』




アンジー「暑苦しいよぉぉぉぉ……! 羊臭いよおおおおお……!」エグエグ

巌窟王「……」ブチッ



413:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/20(水) 20:22:35.03ID:q4bbjtUp0

カルデア

イシュタル「さーてと。今日も今日とて才囚学園のみんなの観察ねー」

ナーサリー「楽しいわ! 楽しいわ!」クルクル


prrrrr!


イシュタル「あら。誰かしら……って、巌窟王の方か。そういえば昨日は何回も着信履歴があったわね」

イシュタル「なにか緊急の用なのかも」ポチッ

イシュタル「はいはいこちらイシュタルー! 何か用?」

巌窟王『死ね』




ドカァァァァァァンッ!



イシュタル「ぎゃあああああああああああ!」

ナーサリー「ええーーーッ!? デバイスが黒い炎を吐いたのだわーーーッ!?」ガビーンッ!



巌窟王は『どうやったのかは企業秘密』と答えたので、原理は判明しなかった



414:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/20(水) 20:24:59.89ID:q4bbjtUp0

アンジー「はあ……はあ……あー、苦しかったー。窒息寸前だったよ。ありがとう神様」ゲッソリ

巌窟王「またやつれたな」

アンジー「だ、大丈夫……全然大丈夫だから……」ニコ……ニコ……

巌窟王(なんて張りのない笑顔だ)

巌窟王(ふむ……何か手を考える必要があるか?)

巌窟王(こういうときに頼りになるのは……アイツだな)




病院

入間「へくちっ」



423:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/21(木) 21:15:20.81ID:wcBVxcra0

中庭

巌窟王「……」キョロキョロ

夢野「んあ? 巌窟王? 何しとるんじゃ、こんなところで」

巌窟王「夢野か。大した用ではないのだが、入間を探している」

夢野「ヤツなら今ごろ病院ではないかのう。色々心境の変化があって、やっとこさ治療を行う気になったらしいぞ?」

巌窟王「……こんなときに限ってまともなことをしてくれる。下らない用事であったなら即座に中断させて攫ったものを」

夢野「なんて?」

巌窟王「クハハ。気のせいだ」

夢野「……のう巌窟王。もうすぐこの学園生活はきっと終わる」

夢野「ウチらはきっとお主のことを忘れん。だからお主も……」

巌窟王「バカめ。俺を誰だと思っている。復讐者たるこの身に、忘却などという救いはない」

巌窟王「……忘れられないさ。何一つとしてな」

夢野「そうか」

夢野「……そうか」ニコリ



426:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/21(木) 21:35:23.93ID:wcBVxcra0

病院

アンジー「……」ウロウロ

東条「あら。夜長さん、どうしたの?」

アンジー「あ。斬美ー! やっはー!」

アンジー「……どうしたのってほど、大した用じゃないんだけど……美兎はどこ?」

入間「俺様がどうかしたか?」

アンジー「あ。後ろにいたんだ」

アンジー「……あのね。美兎。その……ずっと言えなかったことがあるんだけどさー……」

入間「んだァ? カルトブスのくせして、妙に歯切れが悪ィな?」

アンジー「……ごめんなさい。勝手に発明品盗んで」

入間「!」

アンジー「……それだけ。別に許さなくってもいいから、これだけ伝えておきたかったんだー」

アンジー「もうすぐ美兎の発明品で終わっちゃうから」

入間「……」

入間「消えろ。今すぐ。俺様の視界に二度と入るんじゃねえ」

アンジー「……うん。ごめんね」


スタスタスタ


東条「……言い過ぎよ。いくらなんでも」

入間「るっせぇな! わかってんだよクソッ! ていうか発明品を盗まれたこと自体、ついさっきまで忘れてたわッ!」

東条「……え。じゃあなんであんな……」

入間「……言うつもりはねぇ……!」

入間(どっちにしろ決定したことに変更はない。俺様はアンジーから巌窟王を殺して奪うんだ……!)

入間(俺様は……俺様は……!)



427:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/21(木) 22:02:25.20ID:wcBVxcra0

昼 食堂

春川「百田。コレ。拾ったから返すね」ポイッ

百田「うおーッ! デバイス! なくしたと思ったデバイスじゃねーか!」キャッチ

百田「ああ、ちくしょう! コレがなくなりさえしなけりゃストレス解消のためにカジノでスカンピンになったりしなかったものをよー!」

春川「ん? なんて?」

百田「なんでもねぇ! ありがとうなハルマキ!」ニカッ

春川「……」ジーン

春川「アンタの感謝なんて一銭の価値もないけど」フッ

王馬「俺も大概だけど春川ちゃんもある意味で『口先だけ』だよね」

春川「殺されたいの?」ギンッ

最原「お、落ち着こうよ……王馬くんに関しては本当の意味で口先だけだからさ」

百田「……お。終一。お前それ、巌窟王がよこしたカフス……」

最原「う」ギクッ

百田「早速付けてんのかよ、滅茶苦茶気に入ったんだな」

最原「あ、あはは……いい趣味してるから、ね……」

春川「地味だけど」

最原(がはあ!)

最原「……みんなは何貰ったの?」

百田「星図」

王馬「お菓子各種」

春川「マンウィ●のCD各種」

最原「凄い! 一貫性が見事にない!」



428:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/21(木) 22:08:04.81ID:wcBVxcra0

春川「……聴く?」

百田「聴く」

王馬「ポータブルCDプレイヤーも配布済み……巌窟王ちゃんもやるなー」

最原「プレゼントの質と量も生徒によってマチマチか……」

百田「……」シャカシャカシャカ

春川「夢野のプレゼントが一番意味不明かつショボかったかな。私の知る限りだけど」

最原「何を貰ってたの?」

春川「聴診器。壁に当てたりして、それなりに楽しんでたよ」




女子トイレ

夢野「……?」

夢野「なんじゃ? この先に空間があるような……」

夢野「……あ。開いた」ガコッ



442:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/23(土) 05:19:02.09ID:XCAkBsSo0

夢野「……隠し扉? こんなところに?」

夢野「どこに繋がっておるんじゃろうな、コレ」

夢野「……」

夢野「学校の探索に制限はかけないって校則がわざわざあるくらいじゃ。ちょっと中を覗くくらいなら問題なかろう」

夢野「まさか女子トイレに巌窟王とか最原とか呼べんし」スタスタ




モノクマ「……」

モノクマ「あーあ。入っちゃった」



443:あ……あ……まったく意味不明に刑部姫(二人目)がすり抜け…… ◆SxyAboWqdc 2017/12/23(土) 05:31:13.45ID:XCAkBsSo0

夢野「……なんじゃあ!? ここは!? な、なんか……なんか怪しすぎるぞ! 滅茶苦茶!」

夢野「具体的に『どこが』とか言われたらツッコミどころの多さに眩暈がしそうじゃ!」

夢野「よくもまあこんなに怪しい部屋を作れたモンじゃな!?」キョロキョロ

カタンッ

夢野「ッ!?」ビクゥッ

白銀「あ。夢野さん……? な、何してるの、こんなところで……?」

夢野「し、白銀か……なんじゃ、おどかすな」フイー

白銀「女子トイレに来たら、何か隠し扉的なものが開いてたから来たんだけど……」

夢野「おお! そうじゃ! 巌窟王から貰った聴診器を使っておったらこんな場所に!」

夢野「凄いぞ白銀! 怪しさ満点じゃ! どう見てもコレは!」

白銀「うん。首謀者の部屋……だよね」

白銀「……一旦上に出ない?」

夢野「そうじゃな。流石にもう女子トイレだからとかどうだとか言ってる場合じゃないぞ!」

夢野「すぐに最原と巌窟王を呼んでこなくては!」ダッ

白銀「……あ! 夢野さん! 待って! これを見て!」

夢野「んあ? いや、これを見てとか言われても、ここ微妙に薄暗いからわからんぞ」

白銀「あ、ごめん」



444:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/23(土) 05:36:00.82ID:XCAkBsSo0

バァンッ

白銀「はい。明るくしたよ」

夢野「……び、ビックリしたぞ。なんじゃ今の音。しかも明るくなったって一瞬だけじゃったし」

ポタッ

夢野「……」

夢野「んあ? なんじゃ? 何かウチの制服が濡れて……」ポタポタッ

夢野「……い……た……い……」


バタリッ


白銀「……やっぱ拳銃にライトとしての機能を期待しても無駄かぁ」

白銀「流石にここを見られたら帰せないんだよね」

白銀「……おやすみ夢野さん」

夢野「最、原……巌窟王……首謀者の部屋が……見つかって……」

白銀「……」

白銀「不愉快な寝言だなぁ」



448:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/23(土) 16:58:47.71ID:XCAkBsSo0

学園のどこかの教室

巌窟王「……!」

星「どうした? 巌窟王」

巌窟王「今、夢野の声が聞こえた気がした」

王馬「夢野ちゃんが……?」

星「なにかあったのかもしんねーな……」

星「……それはさておいてフルハウスだ」

王馬「ストレートフラッシュ」

巌窟王「ファイブカード」

星「何っ!?」

王馬「い、イカサマだ! イカサマだよこんなん!」

巌窟王「クハハハハハハ! 言いがかりだな! 早くコインをよこせ!」

燃え尽きた百田「あばよ……ダチ公……」

春川「百田ーーーッ!」



449:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/23(土) 17:15:14.16ID:XCAkBsSo0

春川「……で。ポーカー対決の順位は……」

王馬「一位巌窟王ちゃん。二位が星ちゃん。三位なんていうパッとしない順位で凹んでるのが俺」

王馬「あとはアホみたいについてなかった百田ちゃんがブッチ切りの最下位だね!」

星「まさか賭け事がこんなに強いとは……」

巌窟王「曲がりなりにも英霊。あらゆる分野においてただの人間に負けるわけがないだろう」

巌窟王(そういえば英雄王はチェスにおいては無敵だったな。千里眼のせいで『理屈上必勝法がある勝負全般に無敵』だったか)

巌窟王「俺に勝ちたければ動体視力を鍛えてからにするべきだな」

王馬「やっぱりイカサマしてたんじゃーん!」

星「まあいい。一人ズタボロになってくれたヤツがいてくれたお陰で、俺はギリギリ黒字だったからな」

百田の燃えカス「」

春川「……」ベッシベッシ

巌窟王「よせ。叩いても元に戻らんぞ」



450:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/23(土) 17:21:52.92ID:XCAkBsSo0

巌窟王「さて。時間つぶしは終了。俺はこのあたりで失礼する」

春川「……ああ。そういえば入間と約束してたって言ってたね」

星「何を頼む気だ?」

巌窟王「俺のホームの不手際、いや俺自身の不手際だから言いふらしたくはないな」

巌窟王「……クハハ。圧勝すぎて退屈だったが筋は悪くなかったな?」

百田「俺のことか!?」ガバッ

春川(あ。起きた)

巌窟王「星のことだ。お前は論外だな」

百田「」バタリッ

春川(そしてまた死んだ……)



453:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/23(土) 18:44:24.65ID:XCAkBsSo0

東条「……この分なら明日には骨がくっつくわ。完璧とは言えないけど」

入間「治り方が速過ぎて怖ぇーッ! 痛みが引きすぎだろ! なんじゃこりゃ!」

東条「……」

入間「……?」

東条「聞いたら後悔するわよ?」

入間「ひえっ……」

東条「ところであなた、巌窟王さんと約束していたんじゃなかったかしら」

入間「ろ、露骨に話題を逸らしやがって……いや聞きたくもねーけど!」

入間「行くよ! 行く行く! ていうかもう一刻も早くここを去りてぇ! じゃあな!」ズカズカ

東条「……」

東条「……実は寿命を縮めて無理やり治癒能力を活性化させているの。無理な接骨のせいであなたの寿命は約三年ほど削れて」ペラペラ

入間「助けて巌窟王ーーーッ!」ピューッ

東条「……ふふ。冗談よ……」

東条「半分は」



454:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/23(土) 18:52:20.19ID:XCAkBsSo0

病院ロビー

巌窟王「……来たか。入間」

入間「ひい……ひい……が、巌窟王……!」

巌窟王(何故か妙に息を切らしているな。まあ元気そうなら何よりだが)

巌窟王「早速だが、お前に頼みたいことがある。かなり切実な問題だ」

巌窟王「アンジーを助けろ」

入間「ん……」

入間(ついさっきかなり手酷く当たったから、できれば断りてぇんだけど……)

巌窟王「最近、我がホームからアンジーに対しての精神攻撃が盛んにおこなわれていてな」

巌窟王「つまるところ悪夢だ。お前は夢を見れなくなる装置を作るだけでいい」

入間「一方的につらつら言ってくれるぜ。そんな装置そうそう簡単に作れるわけ……」

入間「……」

入間「いや。都合よくあったな。ちょうど」



455:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/23(土) 19:00:28.54ID:XCAkBsSo0

最原(事件はいつも水面下で動く)

最原(僕たちが『夢野さんがいない』ということに気付いたのは、あの忌まわしい事件の起こるちょっと前になってからだった)

最原(……いつもそうだった。僕が気付いたときには全部手遅れで……)

最原(事態は最悪の方向に転がっていく)

最原(僕はいつだって無力だった)




図書室の向こうの隠し部屋

モノクマ「で。どうするの? 首謀者さん」

白銀「んー。ま、どうとでもなるでしょ。大丈夫大丈夫」

白銀「というか、私たちに負けはないよ。巌窟王さんがいる限りはね」

モノクマ「……楽観的だなぁ。コロシアイの首謀者にしては」

白銀「夢野さんを片付けるのは私がやるよ。モノクマは適当にぶらぶらしといて」

モノクマ「あーい」

白銀「さぁて……勝負はここからだよ。みんな」ニヤァ



466:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/24(日) 17:06:14.97ID:nI0W64No0

カルデア

ナーサリー「……大丈夫かしらイシュタル。もう手術室に入ってから相当立つけど」

ウィィィィンッ

ナーサリー「あ! 先生! イシュタルは……!」

ナイチンゲール「大丈夫。命に別状はありません。ただ……」

ナーサリー「ただ?」

ナイチンゲール「……頭に思い切り炎を食らった影響か、髪の色が変わりました」

エレシュキガル「変わっちゃったのだわー。金髪になっちゃったのだわー。ついでに属性も混沌・悪になったのだわー」ボウヨミー

ナーサリー「うふふ! 大丈夫よ! 大した違いはないのだわ! 相変わらず素敵よイシュタル!」

ナーサリー「むしろ……ちょっと可愛くなったかしら?」

エレシュキガル「あらそう? ありがとう、うふふ」

イシュタル「はい、つまさきをまず踏みつけます」フミッ

エレシュキガル「え?」

イシュタル「そして力が逃げられなくなったのを確認してから……息を整えて」スーハー

イシュタル「鉄、山、靠ォ!」ドカァァァァンッ

エレシュキガル「ぎゃああああああああああ!」

ナーサリー「……ちょっとふざけていただけなのに酷いと思うの」

イシュタル「度が過ぎてんでしょうがァ! 私こっち! 私がイシュタル!」

エレシュキガル「アーチャーはランサーに対して攻撃が半減って聞いてたのに……」プルプル

イシュタル「私、ライダーだからッ! キチンと覚えておけっての!」



467:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/24(日) 17:15:10.86ID:nI0W64No0

ナイチンゲール「……仲がよろしくて大変結構。大して興味はありませんが」

ナイチンゲール「ところで、治療が終わった直後で申し訳ないのですが」

イシュタル「ん? なに?」

ナイチンゲール「……いえ。なんでもありません。自分で探します」

ナーサリー「!」

ナーサリー「……」

イシュタル(これもしかしなくっても巌窟王のことじゃ……)

ナーサリー(私たちに居場所を訊こうとしたのかしら。こっちの時間では彼が消えてそんなに時間経ってないのだけど)

ナーサリー(……そろそろ帰らせないとまずいかもしれないわね。アリスが夢から覚めるように)

エレシュキガル「もしかして巌窟王のことかしら? 彼なら今――」

ナーサリー「広辞苑もお友達よ!」ガンッ

エレシュキガル「がはぁっ」

イシュタル「お友達って割には鈍器にしてるけど」

ナーサリー「薄っぺらな友達よ。厚いけど」

イシュタル「物語以外には結構キツイわね……」



468:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/24(日) 17:33:03.12ID:nI0W64No0

才囚学園 食堂

巌窟王「新世界プログラム……だと?」

入間「ああ。つまり、悪夢を見れないようにするには、こっちで夢の内容を弄っちまえばいい」

入間「夢の中で更に夢は見れないからな」

巌窟王「……」

巌窟王(前に叩き込まれた情報系の知識の中に、ムーンセルの記録も付録としてついてきていたが……)

巌窟王(確かに、あの空間でも夢は見れないらしいな)

巌窟王「ふむ。いいだろう。ひとまずそれで手を打つ。だが」

入間「当然対症療法だ。根本的に解決するためには準備が足りねぇ。コンドームなしでヤるようなもんだぜ」

入間「ひとまずアンジーはこの空間にぶち込む。その後、綿密にデータを取って対策を考える」

入間「俺様に似合わねぇ、クッソみたいに地道~! な作業だが仕方ねぇ」

巌窟王「……ふん」ニヤッ

入間「んだよ、その笑いは」

巌窟王「特に意味や理由などない。ただそうだな。入間、お前は意外と優しいヤツだ」

入間「……!」

巌窟王「……クハハ! 手伝えることがあったら言うがいい。俺が片付けてやろう」

入間「……」

入間「ハッ。カス脳が。俺様一人で充分に決まってんだろ」



471:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/24(日) 20:06:21.86ID:nI0W64No0

茶柱「……あれ。夢野さんがいませんね」

最原「そういうこともあるんじゃない? 夕食の時間は東条さんが怪我して以来、全員バラバラになっちゃったから」

天海「赤松さんなんか、最近は研究教室に引きこもって、呼ばない限りは食事もとらない有様っすよ」

天海「あの調子だと睡眠時間も削ってるんじゃないっすかね」

最原「え。何かイヤなことでもあったの?」

天海「逆っすよ。巌窟王さんのせいで『この空間が安心できてる』から、こんなことになってるんす」

天海「多分アレが本当の赤松さんのライフスタイルなんっすよ。きっと」

最原(本当に自己申告通りに寝食忘れちゃうのか……)

真宮寺「……でも夢野さんが来ないのは心配だネ。確かに彼女は怠惰の極み乙女だったけどさ」

真宮寺「この時間に食事に来ないのは初めてかもしれないヨ」

最原「最近はそんなに怠惰って感じはしないけど」

茶柱「いや。巌窟王さんへの対抗意識で燃えてますが、ふと電池が切れて『めんどい』しか言わない可愛い生物に豹変するんですよ」

茶柱「……ていうか真宮寺さん、もうすっかり元通り馴染んでますね……」

真宮寺「ククク。そうでもないヨ。だってほら、巌窟王さんがたまにこっちに消しゴムを千切って投げつけてくるからネ」コツンコツンッ

巌窟王「……」シュッシュッ

真宮寺「夕飯のお皿に消しゴムが入らないように苦労するヨ」

最原「巌窟王さん! 小学生みたいなことしないで!」

最原(あれ。そういえばアンジーさんもいない……?)



472:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/24(日) 20:16:48.07ID:nI0W64No0

最原(あ。いや。いた。いたけど……食堂の外で何してるんだろう)

アンジー(美兎から『二度と視界に入るな』って言われたから視界に入らないよう注意しないとねー)

アンジー(美兎が出て行ってから夕飯にしよー)

最原(なんか妙に入間さんを注意してるけど……)

茶柱「……ひとまずご飯食べ終わったら夢野さん探してみます」

最原「手伝おうか?」

茶柱「やめてください。あなたが関わると逆説的に事件が起きそうです」

真宮寺「探偵あるところに事件ありってネ」

最原(ひ、否定したいけどできない……!)

天海「……そういえば白銀さんもいないっすね」

真宮寺「自分の研究教室にいるんじゃないかな。最近解放されたって喜んでるの見たしネ」

最原「……今更だけど、ワンマンプレイが大好きな人ばっかりだなぁ」

天海「当然っすよ。全員、別々の才能を持った超高校級なんすから」



473:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/24(日) 20:31:43.91ID:nI0W64No0

巌窟王(さて。俺はどうするか……少なくとも今日も女神陣からの精神攻撃は来るだろうからな)

巌窟王(育ち盛りの女子に徹夜させるわけにもいかない。本当にどうしたものか……)

ピロンッ

巌窟王(む。カルデアからメッセージ……ナーサリーからか?)

ナーサリーからのメール『一緒のお布団で寝たら、ベッドの下の怪物も怖くないわ!』

巌窟王(……ふむ。さて……まさか俺が一緒に寝るわけにもいくまい。となると……)

バタンッ

赤松「ああ! モノクマにピアノのチューニングさせてたらもうこんな時間!」

最原「あ。赤松さん」

天海「今日は自力で研究教室出れたんすね」

赤松「ひ、酷いよ! いつも自力で出れないみたいな言い方!」

赤松「……まあ実際そうだけど。ちょっとだけ」

巌窟王「よし。お前だ」ガシッ

赤松「へ?」



478:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/25(月) 19:29:45.19ID:OIbAI/Cj0

夜 アンジーの私室

巌窟王「そういうわけだ。今日はアンジーの精神を守るために一緒のベッドで寝てもらうぞ!」

赤松「ええーっ……急にそんなこと言われても……」

赤松「お菓子の準備とかジュースの準備とかパジャマの準備とか自分用のお風呂の道具とか色々用意しなきゃなのに……」

アンジー「ビックリしたー。楓ってば凄く乗り気だよー」

赤松「一回調達しに行っていい? いきなり連れ込まれたから本当なにも用意してないよ」

巌窟王「……」ポチポチ

prrrr!

ナーサリー『はいはーい! こちらナーサリーライム! 寝る前の物語をご所望なら不夜城のキャスターを呼んできましょうか?』

巌窟王「……違うな。お前ではない。BBはどうした?」

ナーサリー『ああ。彼女? ちょっと色々あってグロッキーだけど……必要なら引きずり出してくるわ?』

巌窟王「最悪、イシュタルの方でも構わん。女子会? とやらに必要な道具を一式用意してこっちによこせ」

エレシュキガル『女子会!? え? え? 女子会するの? 私も参加していい!?』

バキィッ

エレシュキガル『ごへあ!』

イシュタル『はいはい調子乗らなーい。通信に関してはこっちに任せてちょうだいな』

イシュタル『女子会? いいわよ。寄宿舎の近くに転送されるように手配するわね』

イシュタル『……鈴鹿の部屋にそれっぽいの沢山あったわね?』

ナーサリー『もうカルデアの物資に手を出すわけにはいかないから、彼女から強奪……もとい借りてくるのだわ!』

赤松「い、至れり尽くせり……」



479:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/25(月) 19:42:48.20ID:OIbAI/Cj0

鈴鹿から強奪した物資リスト

・お菓子類およびジュース類
・着ぐるみ型パジャマ他フリーサイズルームウェア
・洗顔料、洗髪セット、入浴剤、化粧水や乳液など各種
・マニキュアなどをはじめとした軽い化粧道具
・自撮り棒(対応する機器がないのでコレは無意味)

巌窟王「これだけあれば問題ないだろう」

赤松「う、うん。大丈夫。大丈夫だけど……」

赤松「……あのさ。ホームの方は大丈夫なの? 明らかに無許可で持ってきてるよね?」

ナーサリー『鈴鹿なら強奪したときにありえないしーーーッ! と叫んでぶっ倒れて心肺停止状態よ』

赤松「殺したの!?」ガビーンッ

ナーサリー『そういうののスペシャリストに任せているだけで死んではいないわ。正確に言うなら心臓が止まって息もしてないだけよ』

エレシュキガル『ごめん。サーヴァント状態だと権能がまともに働かないから一日しか持たないのだけど……』

イシュタル『エレちゃん、がんばえー』

エレシュキガル『ぶっ殺したーい』

巌窟王「これでもう大丈夫だな。憂いは排した!」

赤松「……えーと」

アンジー「……」

アンジー「いや、アンジーはいいよ。ていうか一度たりとも気にしたことないから別にいいんだけどさ」

巌窟王「ム?」

アンジー「……楓はそうじゃないからさー。ね?」

巌窟王「……」

巌窟王(俺が憂いか……!?)ガビーンッ

赤松「ごめん。流石に巌窟王さんの目の前で着替えたくない」

巌窟王「……今日は外で夜を越す……」シュン

赤松「本当ごめん……」



480:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/25(月) 19:58:01.22ID:OIbAI/Cj0

赤松「それにしてもこれだけあると、二人だけっていうのが妙に残念だよね」

アンジー「他の人に声をかけようにも、個室ってそんなに広くないから無理っぽそうだしねー」

赤松「あ! じゃあ外に出たら今度はみんなで女子会しようよ!」

アンジー「……」

アンジー「そのときはアンジーはいないかなー」

赤松「え。なんで?」

アンジー(美兎が……って言うのはちょっと、告発してるみたいでイヤだなー)

アンジー「ううん、なんでもないよー! それより、せっかくの神様の恵みだから、しっかり消費しないとねー!」

赤松「……うん! 太るのとか今日だけは無視しちゃおう!」





寄宿舎の外

巌窟王「……図書室で本を読みながら時間を潰すか」

巌窟王「む?」

茶柱「……」キョロキョロ

茶柱「……」オロオロ

巌窟王(あれは……茶柱か? まだ夢野が見つからないのか)

白銀「……!」

白銀「……」タッ

巌窟王(白銀……? 茶柱に近づいていくな)

巌窟王「……」

白銀「……!」

茶柱「……」ホッ

巌窟王(どうやら白銀が夢野を見つけたようだ)

巌窟王(何事もなくて良かった、と言ったところか?)

巌窟王(……つまらない。図書室に向かうか)スタスタ



482:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/25(月) 20:59:23.54ID:OIbAI/Cj0

病院

最原「……今日は入間さんはこっちに泊まるの?」

東条「ええ。寝ている間も治療は続行よ」

最原「今更だけど、妙な話だよね。こんなに早く骨折が治るのに、東条さんの怪我の方はまだ治りかけだなんて」

東条「理由はいくつかあるわ。まず最初に、この病院が開設されたのがつい最近だったから」

東条「それと『あんな治療方法を施されるくらいなら舌を噛み千切って死んだ方がマシ』だからよ」

最原(本当に何をしてるんだ……?)

東条「……ともかく、私の手の方もそろそろ完治するわ。品揃えは悪いけど、決してハリボテってわけじゃないから」

最原「そっか。よかった」

最原「……じゃあ、入間さんによろしく。僕はもう帰って寝るよ」

東条「ええ。おやすみなさい」

最原(さてと。今日は図書室から借りてきた小説を読みながら寝ようかな。まだ読みかけだし)スタスタ


チラッ


最原「……」

最原(今、誰かが薬品庫に入った?)



483:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/25(月) 21:03:44.46ID:OIbAI/Cj0

百田「……」ゴソゴソ

百田「チッ。しけてやがるな」

最原「百田くん? 何してるの?」

百田「おおっ!?」ビクゥッ

百田「って、なんだ終一かよ。それはこっちの台詞だぜ」

最原「僕は入間さんの容体を確かめに来ただけだよ。で、質問に戻るけど……」

百田「……」

百田「頭がいてーから頭痛薬を探してただけだ」

最原「……そう」

最原(何か違和感があるけど……深く追求するほどでもないか)

百田「……なあ終一。俺、ずっとテメェに言おう言おうと思って先延ばしにしてたことがあったんだけどよ」

最原「なに?」

百田「俺は……」


ブツンッ


最原「……」

最原「停電?」

百田「真っ暗で何も見えねぇ……窓から月明かりが入るだけだ……」



484:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/25(月) 21:13:02.85ID:OIbAI/Cj0

??????「しくしく……しくしく……」

最原「百田くん? 何か言った?」

百田「いや何も……ていうか終一。なに女々しく泣いてんだよ」

最原「いや僕じゃないけど……」

??????『暇だわ……まさかあそこまで拒否られた手前、今日も加護を与えに行くってほど空気読めなくはないし』

????『あら。大丈夫よ私。玩具なら他にもあるもの』

?????『姉様方……あまりこういう趣向は……その……』

最原「……」

百田「……」

最原(明らかに何かがいる……!)ゾクッ

エウリュアレちゃん人形『一夜だけの特別な奇跡よ。思う存分楽しんでね』

ステンノちゃん人形『というか最低でも私たちが楽しめればいいのだけど』

メドゥーサちゃん人形『……すみません。ホントすみません。マジで』

百田「……」

百田「ぎゃああああああああ! 人形が歩いて喋ってこっちに来てるぅーーーッ!」ガビーンッ

ステンノちゃん人形『見舞い品にこっそり紛れ込ませといて助かったわ。動かせるのは一度きりだけど』

百田「逃げるぞ終一! ああ、開かない! ドアが開かない!」ガチャガチャ

最原「百田くん落ち着いて! そのドアはスライド式だよ!」



485:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/25(月) 21:19:52.16ID:OIbAI/Cj0

百田「おっし開いた! さっさと外に出――!」

エウリュアレ『病院なら無意味に迷宮化させたので簡単には出れないわよ』

最原「え? あ? あ、本当だ。なんか間取りが全体的にありえないことになってる!」ガビーンッ

百田「し、しかも引き返せなくなってんぞオイ! さっきの扉はどこだ!?」キョロキョロ

ドスンッ ドスンッ ドスンッ

最原「……なに、この音。何かがこっちに近づいてきてるような……」

ミニチュア太陽神殿「デース!」ドスンッ

ミニチュア太陽神殿「デース!」ドスンッ

ミニチュア太陽神殿「千里の道も一歩からデース!」ドスンッ

最原(あのなんだかよくわからないオブジェが飛び跳ねながらこっちに向かってきてるーーーッ!)ガビーンッ

百田「……」

百田「あぶあぶあぶあぶ」ブクブク

最原「百田くん! 気をしっかり持って! このままだと多分押しつぶされる! 走って!」ユサユサ

ミニチュア太陽神殿「飛び跳ねて移動するの飽きたのでスライドで移動しマース!」スイーッ

最原「うわあああああああ! 動きがひたすら気持ち悪いーーーッ! しかも早ッ!」

百田「ああああああああああああ! ぎゃああああああああああああ!」ドタターッ

最原「ああ、待っ……先に行かないで百田くん! 百田くーーーんッ!」





入間の病室

東条「……あら? 誰かの声が聞こえたような……気のせいかしら?」

入間「ぐー」

東条「まあいいわ。治療続行よ」


東条たちのいる場所は特に変化はなかった



486:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/25(月) 21:27:48.77ID:OIbAI/Cj0

アンジーの私室

アンジー「それでねー! そのときの終一がとっても格好よく見えてねー!」

赤松「あー、わかるわかる。しめるときはキッチリしめるよねー」

赤松「あ。ポテチ切れちゃった……新しく開け……いやでも」

アンジー「今日はカ口リーとか気にしないでいいって神様も言うよー!」バリンッ

赤松「あはは! 悪いんだー!」



迷宮化した病院

ゾンビ鈴鹿「カエセ……カエセ……」ユラユラ

百田「ぎゃーーー! 狐耳でJKルックのゾンビがこっちに歩いてくるーーーッ!」ガビーンッ

最原「な、なんだろう。恨み辛みだけがひたすら声色から伝わってくる……」

ゾンビ鈴鹿「ピザポテーッ!」ダッシュ

ガシッ

百田「何ィ!? 走れるタイプのゾンビだとぅ!? や、やめ、放……」

ガブリッ

百田「ああああああああああっぎゃああああああああああ!」



489:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/26(火) 06:32:47.70ID:t4tWyQUp0

翌朝 病院ロビー

最原「……」ゲッソリ

百田「……」ゲッソリ

最原「やっと……脱出できたね……」

百田「やめろ。もう本当やめろさっきまでの話をするの。マジで忘れたい」

最原「まさかあの謎の狐耳女子高生に電気ショックを与えて蘇生させてゾンビ化を解くなんて思わなかったよ……」

最原「生き返らせる方向でゾンビを除去するとか発想が完璧に百田くんだよね」

百田「だからやめろって……」

最原「生き返った後、何回か礼を言った後どこかに消えていったけど、なんだろう。成仏したのかな」



回想鈴鹿『マジでサンキュ! じゃあ私、このままカルデアに帰って女神どもを全員剣の錆にしてくるから!』

回想鈴鹿『もう悪夢の心配しなくていいってガンちゃん(巌窟王)とアンちゃん(アンジー)に報告よろよろー!』



最原「言っていることの半分以上は意味不明だったな……」

百田「やめろ! 成仏したヤツの言うことなんか思い出したくもねぇ!」

最原「成仏したのにまだ怖いの!?」



490:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/26(火) 06:41:29.73ID:t4tWyQUp0

最原「夜通し走り回って疲れたよ。もうこのまま帰って寝る……」

百田「おいおい。傷だらけだろうが。東条に怪我を治療してもらってからの方が……」

最原「それ百田くんも同じだから……お互いボロボロだよね……」

最原「酷い夜だったぁ……」ズーン





アンジーの私室

赤松「……」

赤松「ああ、そっか。昨日はアンジーさんの部屋に泊まったんだっけ」

アンジー「……むにゃ」スヤァ

赤松「……ふふ。寝ているときは流石に静かだね」

赤松「この光景を巌窟王さんは毎夜見てたのかー……今から考えてみると若干犯罪臭いな」

赤松「……悪夢は見なかったみたい」

赤松「いい夜だったなぁ」



495:もし嘘だったら木の下に埋めてもらっても構わないよ! ◆SxyAboWqdc 2017/12/26(火) 20:43:09.60ID:t4tWyQUp0

病院

東条「……というわけで完治よ」

入間「おいおい。いくら何でも骨折が一夜で治るわけ……」

入間「嘘だろマジで治ってやがる!」ガビーンッ

東条「何をしたのかは具体的には聞かない方がいいわ。産まれて来たことを後悔したくないのなら」

入間「……」ガタガタ

東条「顔色が青いわよ。朝ごはんを作ってあげましょうか?」

入間「お、おう。ところでババァ。一つ聞きたいことがあるんだけどよ」

入間「奥歯が滅茶苦茶痛ぇんだけど……」

東条「無理な治療の副作用よ。三日以内に親知らずが爆発して死ぬわ」

入間「」

東条「……四分の一くらい冗談よ」

入間「ほぼ本当じゃねーかッ! い、痛い! 物凄く奥歯が痛いいいいいい!」

入間「いや腕の治療でなんで親知らずが痛くなるのかまったく原理がわからねぇけど痛いことだけは確かだ! 痛い痛い痛い!」ジタバタ

東条「三日待って」

入間「さっきの言葉聞く限り待ちたくねーよッ!」



496:俺は嘘がこの世で一番嫌いなんだ! ◆SxyAboWqdc 2017/12/26(火) 20:56:56.52ID:t4tWyQUp0

八時以降 食堂

巌窟王「……さて。今日は何を作るか……サラダを作ってから考えるか」

茶柱「あれ? 巌窟王さん? 料理とかするんですね?」

巌窟王「東条がメイドとしての機能を失ったあたりから手慰みにな」

巌窟王「アンジーも喜ぶ。ただ茹でるタイプのレトルトが中心になるがな」

茶柱「まあ料理の素人がやろうとすれば自然にそうなりますよね……」

巌窟王「夢野は見つかったのか?」

茶柱「あ! ええ! 白銀さんが見つけてくれたみたいで!」

茶柱「なんでも転子が学園中を駆けずり回っている間に寄宿舎に戻ってたみたいです!」

巌窟王「そうか」

茶柱「……あ。なんかいい匂い……コーヒーです? コレだけは本格的ですね?」

巌窟王「……飲むか?」

茶柱「……」

茶柱「いえ。遠慮しておきます。男死からの施しとか受け取りたくありませんし」

茶柱「アンジーさんのものでしょう? それは」

巌窟王「……アンジーはどうなったか……今日は無事だといいが」



497:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/26(火) 21:14:39.99ID:t4tWyQUp0

新世界プログラムの部屋

モノクマ「はい。指示の通り、思い出しライトをポンと中に置いといたよ」

白銀「ありがと。これで多分もう大丈夫だよ」

モノクマ「……ところで、茶柱さんにあんな薄っぺらすぎる嘘吐いて大丈夫だったの?」

モノクマ「すぐにバレるよね?」

白銀「ん? 別にバレても構わないけど?」

モノクマ「……何する気? 最終的に何人か間引くんだよね? 巌窟王さん含めて」

白銀「もちろんその決定は覆さないけどさ」

白銀「ちょっと余興を……ね」

モノクマ「ゴン太くんの研究教室からクロバエとか盗んだり、わざわざ廃棄場から腐った果物とか持ってきたのは何のため?」

モノクマ「特に必要だとは思えないけど」

白銀「まあ全然必要ないから後で全部捨てるけど、念のため。念のため……ね」ニヤァ

白銀「さぁて。入間さんは踊ってくれるかな? 彼女に便乗する予定だから動いてくれないと困るよ?」



498:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/26(火) 21:17:46.58ID:t4tWyQUp0

今日のところはここまで!



502:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/27(水) 19:35:06.68ID:owtqZ32g0

ピンポンパンポーン

モノクマ『えー! 校内放送! 校内放送! みなさん、至急体育館までお越しください!』

モノクマ『……最後の謎が待ってるよ! うぷぷぷぷ……』

巌窟王「!」

茶柱「巌窟王さん! 今のは!」

巌窟王「……」

巌窟王「なんということだ……今日のコーヒーは最高の出来かもしれん。試しに作ってみたブレンドが上手く行った……」

巌窟王「このコク……酸味。すべてが素晴らしい……」

巌窟王「ん? 茶柱。何か言ったか?」

茶柱「投げ飛ばしますよ?」




最原の私室

最原「ぐー」スヤァ




最原も気付いていなかった



503:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/27(水) 19:42:34.81ID:owtqZ32g0

体育館

キーボ「最原くん! 起きてください! 最原くん!」ユサユサ

最原「ぐー」スヤァ

赤松「……ダメだ。全然起きないよ。寝起きが悪いとは聞いてたけど、ここまでだなんて……」

百田「ああ、いや……昨日は本当色々あったから勘弁してやれ……」

白銀「……え? なんで最原くんは寝袋に入った状態で熟睡してるの? 体育館のド真ん中で」

キーボ「モノクマが起こしに行ったら全然起きる気配がないから、このまま話をしようってことになったようで……」

赤松「寝袋はモノクマ提供だよ」

最原「ぐー」スヤァ

アンジー「それにしてもいい朝だねー、神様」ズズーッ

巌窟王「良い朝だ」ゴクゴクゴク

星「……何を飲んでるんだ? 二人して」

アンジー&巌窟王「コーヒー」

天海(ハモった……)



506:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/27(水) 20:44:49.43ID:owtqZ32g0

アンジー「……あ。そういえばコーヒーって眠気覚ましの効果もあったよね?」

東条「ええ。カフェインには精神刺激薬としての側面があるわ。確かに」

アンジー「……」グビグビ

アンジー「……」タプタプ

赤松(ん? 口いっぱいにコーヒーをため込んだ?)

巌窟王「……」

巌窟王「口移しで飲ませようとするな行儀が悪い」ベシィッ

アンジー「べほまっ」ブヘッ

キーボ「うぎゃああああああああああ!」ビシャアッ

巌窟王「まったく。色気づいている場合ではないというに」イライラ

アンジー「うう~。酷いよ神様~」

獄原「よくアンジーさんのやろうとしたことがわかったね?」

巌窟王「伊達にサーヴァントをやっていない」

茶柱「……?」

茶柱「あれ。夢野さんが……いない?」

白銀「……」ニヤッ



507:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/27(水) 20:56:20.13ID:owtqZ32g0

モノクマ「はいはーい! 全員揃ったね! それじゃあ集会を始めるよー!」

巌窟王「来たか。モノクマ」

茶柱「……いえ? ちょっと待ってください。全員? 全員と、今言いましたか?」

モノクマ「言ったよ。ちゃんと数えてよ、十六人いるじゃない」

真宮寺「僕たちは巌窟王さんを含めて十七人いたはずだけど?」

モノクマ「……ああ。夢野さんのことを言ってるの? 彼女はちょっと来れないんだ」

入間「来れないだァ?」

獄原「風邪でも引いてるの?」

王馬「いやー。最原ちゃんへの対応を見る限り、風邪を引いてグロッキーだったとしても連れて来ると思うけどなー」

王馬「……風邪以上のことが夢野ちゃんの身に起こってたりして」ニヤァ

茶柱「……」

茶柱「まさか……」

モノクマ「そのことに関して、今のボクから言うことは特にないよ」

モノクマ「ひとまず、集会で周知したいのは別件だからね」

巌窟王「いいだろう。要件を済ませろ」

東条「巌窟王さん」

巌窟王「慌てるな東条。どうせコイツは俺たちを逃がしはしない」

巌窟王「癪だが、今は耐えろ。それが近道だ」

赤松(耐えるとか一番苦手な人がよく言うよ……)



508:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/27(水) 21:11:33.84ID:owtqZ32g0

モノクマ「まあそこまで長くならないよ! この学園に存在する一番の謎……つまり、外の世界の真実を前倒しにして教えちゃおうって話だからさ」

東条「ッ!」

赤松「外の世界の……真実?」

モノクマ「この学園のどこか……いやもう本当面倒臭いや。もっと限定しちゃおう」

モノクマ「新世界プログラムの中のどこかに置いてきたから見てくれば?」

モノクマ「すべてを知ったオマエラはきっとこう言うはずだよ」

モノクマ「『ここで一生過ごせるなんて幸せだ』ってね」ニヤァ

百田「ざけんなッ! そんなこと口が裂けても言うわけねーだろ!」

春川「無駄に噛みつかないでよ。モノクマ相手に怒っても体力の無駄」

モノクマ「うぷぷ……じゃ、そういうことで」

モノクマ「あ。そうだ。最後に、匿名希望で伝言が一つあったんだった!」

モノクマ「『ほとぼりが冷めたら開くよ』だってさ! じゃ、ばーい!」


ドロンッ


白銀「……え? 伝言? 誰から?」

王馬「匿名希望って言ってたね。でも内容も意味不明だなぁ。開くってどこがだよって話だし」

茶柱「……夢野さんを探してきます」

巌窟王「待て茶柱。まず最初に外の世界の真実とやらを手に入れるべきだろう」

茶柱「あなたに指図される謂われはありません。使い魔ごときが調子に乗らないで」

赤松「……!」

天海(あ、やばい。かつてないほどブチ切れてるっす。巌窟王さん相手に八つ当たりしてるし)

天海(……当然っちゃ当然っすけど)

最原「ぐー」スヤァ



510:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/27(水) 21:16:37.49ID:owtqZ32g0

東条「……モノクマからの伝言が気になるわね」

茶柱「……え? なんですって?」

東条「匿名希望……誰がモノクマに伝言を頼んだのかはわからないわ。でも内容がどうも引っかかるのよ」

東条「まるで夢野さんが体育館に来ないことを予測していたかのような……」

真宮寺「ククク。どころか、モノクマが集会で何を言うのかすら予測していたみたいな口調だったネ」

真宮寺「もしかすると、匿名希望で伝言を頼んだのは……今まで有耶無耶になっていたけど、この学園にいるはずだった存在……」

真宮寺「首謀者かもしれないネ」

茶柱「!」

百田「何っ?」

星「……なるほどな」

最原「ぐー」スヤァ



511:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/27(水) 21:26:15.25ID:owtqZ32g0

キーボ「……ということは、夢野さんは現在、首謀者によって行動が制限されている状況にあるということでしょうか」

赤松「それならいいよ。私たちが夢野さんを助ければ全部解決だから」

赤松「……それなら、いいんだけど……」

白銀「……ええと、赤松さん。それ以外に何か可能性があるの? それより悪い可能性なんてないよね? ね?」

王馬「夢野ちゃんが首謀者に殺されちゃった可能性、でしょ? 赤松ちゃんが考えてる最悪の可能性ってさ」

茶柱「!」

赤松「……」

星「……ほとぼりが冷めたら、か。外の世界の真実を知ってしばらくしてから、という意味か……あるいは」

東条「私たちが夢野さんの捜索を諦めかけるタイミングで、という意味かしら」

東条「……考えても始まらないわ。情報が不足しすぎている」

巌窟王「……フン。ならば動くしかないだろう。そら、モノクマはあからさまにそれを提示したな?」

茶柱「外の世界の真実……」

星「虎穴に入らずんば、か。踊らされているようでイヤになるがな」

巌窟王「俺はあえて乗ってやるのも一興だと考える。お前たちはどうだ?」

茶柱「……」ギリッ

最原「ぐー」スヤァ



517:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/28(木) 17:30:22.70ID:xAtfuKba0

茶柱「……」

最原「ぐー」スヤァ

茶柱「サッカーボールキックってどういう技でしたっけー。確かこうやって」スッ

赤松「ストップストップストップ! 茶柱さんのサッカーボールキックだと本当に死んじゃうから!」ガシッ

茶柱「あ! ちょ! わかりましたからあげた片足を掴まないで、バランスが」

茶柱「ひゃっ」

ドサッ

最原「ごふっ」

茶柱「……」

最原「……ぐー」スヤァ

王馬「あらら。茶柱ちゃんが倒れこんでも起きないんだ」

東条「完璧に熟睡してるわ。一体昨日の夜に何が……」

赤松「あれ? 茶柱さん、固まっちゃってどうしたの?」

王馬「もしかして気絶しちゃった? 最原ちゃんのこと、前回の学級裁判でも超嫌ってたもんね」

獄原「そんな気絶しちゃうくらい最原くんのことが嫌いなの!?」

茶柱「あ、いえ。別に。問題はないんですが」

茶柱「……下睫毛が転子より長いのが超イラッと来るなー、と思っただけです」

赤松「……至近距離で最原くんの顔見てるね?」

アンジー「あー! ズルいよ転子ー! アンジーもー!」バッ

巌窟王「俺の目の前でそんな見苦しいマネをするな」ガシッ

アンジー「……」ムクー



518:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/28(木) 17:36:03.75ID:xAtfuKba0

キーボ「本当に今更ですが、最原クンの力を借りることができないというのはボクたちにとってとてつもないディスアドバンテージです」

キーボ「ここまでやって起きないとなると、本当に時間経過でしか最原クンの復活は望めそうにありません」

真宮寺「確かに。普段は頼りない彼だけど、こういうときこそ意見を聞きたいものだよネ」

春川「……どうするの? コイツ抜きで外の世界の真実を探しに行くのは危険だと思うんだけど」

百田「まあ、終一なしでってのは考えられねぇよな……」

茶柱「まったくもう! 本当にこの男死は! もう! もう!」プニプニ

最原「もが……」スヤァ

天海「人差し指でめっちゃ頬突いてますね……」

アンジー「……」ジーッ

巌窟王「ふん。なんだそんなもの欲しそうな顔をして。言いたいことがあるのなら言えばいい」

アンジー「別にー」プイッ

入間「……あー。この大天才である俺様から提案がある。よく聞け馬の骨ども」

王馬「呼ばれてるよ百田ちゃん」

百田「誰が馬の骨だ誰がッ!」



519:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/28(木) 17:48:38.97ID:xAtfuKba0

入間「そこの眠りの最原が眠ってるのなら別にいい。問題にはならねぇ」

入間「どっちにしろ、俺様はテメェらを新世界プログラムの中に送り込むつもりはさらっさらねぇからな?」

白銀「は?」

入間「勘違いすんな。俺様が言いたいのは『準備がまだ』ってことだよ」

入間「まさかとは思うが、丸腰でそんな重要そうな真実に突っ込もうとか考えてねーだろうな? そんな童貞丸出しの考えしてねーよな?」

天海「……言いたいことはまあ、わからないでもないっすけど」

天海「でもプログラム世界っすよね? 物理的な武装なんて持ち込めないっすよ?」

入間「違うっての。逆だ。危険なものを取り除くんだよ。あの世界からな」

入間「別にあの新世界プログラムに人間を殺傷する能力は一切ねぇけど、でも万が一ってこともあるだろうしな?」

入間「ちょっと改造してくる。当然、根本的なアーキテクチャとかは触れねぇけど……校則もあるし」

入間「……夜までには全部済ませたらァ。それまでシコりながら待ってろ」

巌窟王「……いいだろう。そこに関してはお前に一任する」

巌窟王「ついでに、忘れてはいないだろうが……」

入間「あ? ああ、わかってるっつーの。るっせぇな、母ちゃんかよ」

百田「……?」

春川「ま、夜なら最原も起きてるでしょ。準備はそこで全部整う」

茶柱「その間に、転子が夢野さんを探していても問題はないですよね?」

王馬「あの口調だと確実に見つからないとは思うけどね」

茶柱「この……!」

獄原「け、喧嘩はダメだよ! ゴン太も手伝うからさ!」

巌窟王「よし。話は纏まったな。決行は夜だ」

アンジー「じゃあ! そういうことでー! 解散!」

百田「なんでアンジーが仕切ってんだよ……」

アンジー「あ。終一は責任を持ってアンジーたちが部屋に送り届けるからー……ね?」

赤松「ごめん。ちょっと危険な臭いがするから私と茶柱さんで運ぶよ」



520:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/28(木) 17:55:14.85ID:xAtfuKba0

入間「……」ニヤァ

入間(バカどもが。モノクマの……いや、推定首謀者のメッセージの本当の意図に誰一人として気付いてねえ)

入間(もう事件が起こってるもんだと勘違いしてやがるが、違うね。俺様がこれから事件を起こすんだよ)

入間(『ほとぼりが冷めたら』の本当の意味は『入間美兎の事件を生き残ることができたなら』だ!)

入間(……今のうちにせいぜい眠ってな、ダサイ原)

入間(目覚めのある睡眠なんて、これが最後だぜ)

最原「ぐー」スヤァ

入間「……」

入間「ところでどれだけ下睫毛が長ぇんだ?」

茶柱「もうちょっと近づいてくれればわかりますよ」

入間「うっわ、本当だマジで長……」

赤松「あの。運ぶから。ね? そろそろ……」アタフタ

アンジー「……」

アンジー「むー」



525:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/29(金) 18:19:13.34ID:mqb7cacU0

寄宿舎

赤松「よしと。ごめんねゴン太くんも。手伝ってもらっちゃって」

獄原「いいんだよ。こんなことでしか役に立てないからさ」

獄原「……それじゃあ、茶柱さん! 一緒に夢野さんを探そうか!」

茶柱「ええ。ひとまず片っ端から学園中をひっくり返してやります!」

赤松「ひ、ひっくり返すのはやめようよ……私も手伝うからさ」

茶柱「え。赤松さんも?」

赤松「……正直、冷静に考えれば今の私たちに行ける場所に夢野さんがいないことは予想が付くけど」

赤松「でもじっとしていることもできないからさ。ダメ?」

茶柱「だ、大歓迎です! もちろん!」

赤松「よかった! じゃ、行こうか。ひとまず手分けして……」

赤松「……いや。それじゃあ危険かもしれない、かな。やっぱり団体行動で動こう」

獄原「え? なんで?」

赤松「まだ確定じゃないけど、首謀者が夢野さんに何かをしたのなら……」

赤松「一人きりになったところを、また『何か』されるかもしれないでしょ?」

獄原「……あ。そ、そっか。首謀者が学園をうろついてる可能性があるんだね」

茶柱「赤松さん、流石です! やっぱりピアノが絡んでないときの方が明らかに頭が回りますね!」

赤松(よ、喜べない……)

茶柱「じゃあ、行きましょう! 三人で夢野さんを見つけます!」



526:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/29(金) 18:25:31.03ID:mqb7cacU0

コソッ

アンジー「……楓たちは行ったねー」

王馬「おーっし。じゃあピッキングを……」ガチャガチャ

王馬「開いた」ガチャリンコッ

アンジー「ありがとねー、小吉ー」

王馬「ヘッ。いいってことよ。俺たち、仲間だろ?」キラキラキラ

アンジー「うんうん。仲間仲間。じゃあそういうことで……」

王馬「あ。報酬の『俺の似顔絵』は納期一週間以内によろしくね」

アンジー「はーい」

バタムッ

王馬「さーてとっ。俺はどこ行こうかなー」

王馬「……」




王馬「入間ちゃんの殺人計画をぶち壊す用意でもしようかな……」ニヤァ



527:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/29(金) 18:35:30.51ID:mqb7cacU0

校舎内

百田「……お! いたいた! 巌窟王! 一緒に夢野探そうぜ!」

巌窟王「無駄な努力だぞ」

百田「うっせー! やってみなきゃわかんねーだろうが!」

巌窟王「それに、俺には用事がある。夢野捜索に付き合う暇はない」

百田「そうか。用事があるのなら仕方ねぇな」ケロリ

春川「そこで素直に引くんだ……」

巌窟王「ではな」スタスタ

春川(行っちゃった……)

春川「……あ。私も用事があったんだった(嘘)」

百田「あ? なんだよ、ハルマキもかよ。仕方ねーな。ナーサリーかイシュタルに協力してもらって頑張るか」ポチポチ

ガシッ

春川「今考えると滅茶苦茶どうでもいい用事だった。やっぱり協力するよ」

百田「そうか! ところで腕の骨が握力で折れそうなんだが!」

春川「……」ギリギリギリ

百田「ちょ、痛……痛い! 凄く痛いぞハルマキ! 折れ……」


ボギンッ


ギャアアアアアアアアア!



531:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/29(金) 21:16:18.70ID:mqb7cacU0

最原の私室 昼

最原「……」

最原「ふああ……ダメだ、やっぱり体だるい」

最原「もうこのまま今日はずっとベッドかな……」

最原「……巌窟王さんへは百田くんあたりが報告……してるかどうか怪しいな。多分忘れてるだろうな」

最原「まさか病院一つ丸ごと迷宮に作り替えるなんてな……悪気はなかったんだろうけど巌窟王さんから注意を……」

最原「……やっぱり眠くて頭働かない。後にしよう」ゴソッ

最原「……」

最原「寝返りがうてない?」ゴソッ

????「うー……むにゃ……」

最原「……ははっ。寝ぼけてるんだな僕は。なんか毛布が盛り上がってるように見える。別の人の気配もする。抱き着かれてる気もする」

最原「……ありえないな。寝よう」スヤァ

アンジー「むにゃあ……」スヤァ



三十分後、最原は悲鳴とともに跳ね上がった



532:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/29(金) 21:26:53.68ID:mqb7cacU0

三十五分後

最原「巌窟王さんに殺される……人型の備長炭にされる……」ガタガタ

アンジー「もー。大丈夫だよー。そこまで問答無用じゃないからさー」

最原「うん。アンジーさん、慰めてくれてありがとう。ありがたいけどそれよりまず最初にブラジャーがちょっと結構ギリギリな感じだから」

アンジー「えっち」

最原「こんなことを言いたくはなかったけど言うね。無防備に寝ている人の部屋に入り込むほど色ボケしてる人に言われたくないッ!」

最原「……ごめん。まだ眠いんだ。引き続き眠ってていい?」ウトウト

アンジー「ダメだよー。事件起こっちゃったからねー」

最原「事件?」ピクッ

アンジー「誰かに会いに行こうよー。それで事情を説明してもらおう?」

アンジー「……結構、事は重大っぽいからさ」

最原「……」

最原「わかった。もう寝ない。行こう」

アンジー「おー!」

最原「……」

最原「あの。アンジーさん。僕も着替えたりしたいんだけど……」

アンジー「え? すればいいんじゃないのー?」ニコニコ

最原(出てってはくれないみたいだ……)ズーン



533:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/29(金) 21:41:23.19ID:mqb7cacU0

食堂

最原「外の世界の真実。夢野さんの失踪。匿名希望の謎の人物からの意味深なメッセージ……」

百田「どう思う? 終一」

最原(普通に考えれば夢野さんの生存の確率は低いと思う、けど……)

最原(縁起が悪すぎてこんなことを堂々と口に出すわけにはいかないよな)

最原「春川さん。夢野さんは昨日、聴診器で遊んでたって言ってたよね?」

春川「うん。壁にあてて、音を聞いたりして楽しんでたよ。一番ショボいプレゼントだったけど」

最原(何故夢野さんなのか、と考えると、そこに行きつく。夢野さんが普段と違うことをやっていたとしたらそれだけだ)

最原(……どこかの壁の中に何かがあるのか?)

最原「……少なくとも、僕たちが新世界プログラムに行っている間に、夢野さんに命の危機がってことはないと思う」

最原「無事なら無事なまま僕たちのところに返すつもりだろうし、そうでないなら……」

春川「もう殺されているから心配しても遅すぎる、でしょ?」

百田「おいハルマキ」

春川「悪いけど、ここをボカす気はないよ」

春川「……夢野が生存している確率は、死んでいる確率とほぼ半々だと思う」

最原「……」



534:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/29(金) 21:52:44.92ID:mqb7cacU0

最原「ところで百田くん。右半身の動きが微妙にぎこちないけど、どうしたの?」

百田「ハルマキに関節を一瞬で外された。ドミノみたいだったぜ」

最原「なんで!?」ガビーンッ

春川「……勢い余って……」

prrrrr!

百田「お。電話だ」ピッ

ナーサリー『嫉妬というものにお気をつけて! それは人の心をなぶりものにして食べる化け物なのだから!』

最原「オセロー?」

百田「いや意味わかんねーよ。なんでいきなりオセロー?」

春川「……百田。間違い電話だよそれ。電話切っちゃって」

百田「お? おう。今は忙しいからまた後でな、ナーサリー」

ナーサリー『うふふふふふふふふ……』


ブツンッ


春川「……」

最原「……」

春川「最原。何こっち見てんの?」

最原「いや。なんかもう、わかったよ。うん」

春川「……殺されたいの?」プイッ



535:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/29(金) 22:08:20.56ID:mqb7cacU0

スパコン室

入間「……できた」

入間(よし。あとはコレを時限設定して学園中に設置……これで巌窟王のホームとの連絡手段は三日ほどなくなる)

入間「……俺様特製最終兵器(イリスアゲート・エレクトボム)。巌窟王とのホームへ繋がる『波』を完全相殺する爆弾」

入間(これさえあれば、もう巌窟王はホームと連絡が取れねぇ。少なくとも三日間は効果が持続する)

入間(起爆のタイミングは……捜査の途中のド真ん中あたりが一番ダメージがでけぇだろうな)

入間(後の勝負はすべて新世界プログラムの中で完結する。見てろ。俺様の天才的なトリックを!)

入間「さてと。じゃあコレを学園中に仕掛けてこねーとなー」スタスタ



十分後


巌窟王「入間。いるか?」

巌窟王「……留守か」キョロキョロ

巌窟王「手伝いがいるかと思って色々用意してきたのだが……まあいい」

巌窟王「勝手にやらせてもらうさ」



539:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/30(土) 16:53:08.45ID:U2kMLWAU0

入間(最原がいる限り普通の事件では確実に俺様の方に疑念が向く。普通じゃない事件の方も同様だ)

入間(あの超高校級の探偵の才能は、事件を起こそうとする人間に対して危険すぎる)

入間(ならば、と俺様は考えた。例えば『犯人が犯人じゃなかった場合はどうだ』と)

入間(正確に言うなら『事件が起こった後と起こる前で、被害者と犯人が別人に変わっている場合』はどうだ)

入間(そう。俺様は巌窟王を手に入れるために、俺様自身の命を諦めることにした)

入間(まあ……流石にただの自殺じゃない。計画はこうだ)

入間(あの新世界プログラムの隠された能力を使う。俺様はアイツらに嘘を吐いた)

入間(新世界プログラムに人間を殺傷する能力などない、と言ったのは完璧に嘘だ)

入間(新世界プログラムの殺傷能力が隠された能力の内の一つ。もう一つは……人格のインストール)

入間(まず新世界プログラムの中でアンジーを殺害。その後、俺様の人格を夜長アンジーの肉体にインストールする)

入間(なお、そのときに使うのは俺様がプログラム世界の中に意図的に唯一残したハンマー)

入間(その後、入間美兎の肉体の機能を完全にシャットダウン)

入間(外の世界の真実を知った後、外に出て来たときに生徒全員が見るのは『俺様の死体』だ)

入間(夜長アンジーの体の方は俺様が乗っ取ってるから、まさか本当に殺されているのがアンジーだなんて全員夢にも思わないだろうよ)

入間(……死体の方はもったいなさ過ぎるから、後でどうにか保存すっか。これから貧乳ドブスの体の中に入って生きなきゃならないと思うと泣きたい)

入間(だがこの計画にはメリットがある。まずアンジーの優れた魔術回路がすべて俺様のものになる)

入間(アンジーの血液を使って、どうにか魔術回路を俺様に移植できないかと頑張ってみたが……)

入間(副作用だらけで死にかけたからな。マジで。人間ってあそこまでゲロ吐けるんだな……)

入間(ケケケ。さあ。楽しみだぜ。巌窟王。今日からテメェは俺様のモンだ!)




同時刻 スパコン室

巌窟王「ふむ。なるほど。確かにこれならばアンジーも夢は見ないだろうな」

巌窟王「……む? 入間め。ケアレスミスだな、これは。仕方ない、俺が修正しよう」

コンソール『ハンマーのオブジェクトを消去しました』ピロンッ

巌窟王「卒業アルバム作りのために培ったノウハウが生きたな」カタカタカタ



544:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/30(土) 20:31:34.05ID:U2kMLWAU0

校舎内 某所

入間「おし。あとは……あっちだな。設置は急がねぇと」スタスタ

白銀「……」

白銀「へえ。大したものだね。巌窟王さんの通信装置のみに通用するEMP兵器だなんて」ヒョイッ

モノクマ「ボクたちでもあの装置についてはわかってないことは多いのに……流石に腐っても超高校級の発明家なだけはあるね」

白銀「まあ通信している以上、あのデバイスと巌窟王さんのホームを繋いでいるのは電波に類する特殊な波だとは仮定できるわけだけど」

白銀「そこを特定できるからってどうにかできるのは彼女だけだよねぇ」

白銀「……彼女が退場した後も、あの才能はなんとか活用したいものだけどなぁ」

モノクマ「ふっつーにムズいと思うよ」

白銀「だよねぇ」

白銀「……ま、いっか。断捨離断捨離」

モノクマ「ところで、巌窟王さんが新世界プログラムになにかしてるみたいだけど」

白銀「校則がある以上、破壊されない限りは大丈夫だよ」

白銀「ま、入間さんにとってどうかは知らないけどさ」



スパコン室

巌窟王「む? 入間の設定が『物属性』になっているな。『人属性』に戻すか」カタカタカタ



545:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/30(土) 20:36:45.52ID:U2kMLWAU0



最原「……」

最原「約束の時間だ」

百田「行こうぜ、終一。外の世界の真実ってヤツを拝みによ」

春川「……一体何が待ち構えてるんだろう」

百田「安心しろ。何があろうと俺が一緒だ」

春川「……バーカ。私より弱いくせに」

百田「んっだとコラ」

キーボ「行きましょう! きっとその先で夢野さんに会えるはずです!」

入間「……」

入間(始まる。俺様の計画が……!)



546:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/30(土) 20:41:42.74ID:U2kMLWAU0

スパコン室周辺

入間「おっし! 準備はできてんぜザコども! 俺様たちの前にもう障害は何一つとしてねぇと保証してやる!」

入間「あとは俺様の指示通りにしておけば大丈夫だ!」

最原「……こういうときの入間さんは頼りになるよね」

入間「……」

入間「……うひっ」テレッ

王馬「うわあ。もっと気持ち悪くない照れ方しなよ。目が腐りそう」

入間「目が!?」ガビーンッ

茶柱「誰の目が腐ろうがどうでもいいです。早く済ませて夢野さんの捜索に戻りましょう」

最原「……結局見つからなかったんだね?」

赤松「うん。そういう口調の最原くんは、そもそも探しもしてなかったみたいだね」

最原「それは……」

赤松「いいよ。わかってる。私たちの方が間違ってるくらいだからさ」

最原「……」

最原(何もできなかったのは入間さんが準備をしている間に、彼女の研究教室に忍び込んでいたから、なんだけど……)

最原(そんなこと言えるはずもないか)



547:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/30(土) 20:45:03.12ID:U2kMLWAU0

入間「オープンザドアー! さあ、ここから先が俺様の……」

巌窟王「む? 入間か?」

入間「……」

入間「お? 巌窟王?」

アンジー「あれれー? 先に来てたんだねー?」

巌窟王「ああ。全員揃っているのか」

入間「……おい。お前。おい。コンソールいじくって何を……」

巌窟王「クハハ、お前のミスを俺が今修正してやったところだぞ! 喜べ!」ギンッ

入間「……」

入間「…………」






入間「は???????????????????????」



548:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/30(土) 20:50:13.21ID:U2kMLWAU0

入間「どけ」

巌窟王「クハ?」

入間「どけっ!」ガンッ

巌窟王「!?」

最原(入間さんは跳ねるようにコンソールに近づき、巌窟王さんを突き飛ばし、コンソールにかじりついた)

最原(そして画面を凝視しながら何かを高速で操作して……)

最原(顔面を真っ青にして動きを止めた)

入間「……は、ははははははは……確かに……ミスしてたみたい、だな……?」

入間「ああ、うん。ありがとう巌窟王。お陰で助かった。助かっ――」

入間「……」

入間「びえええええええええええええええええええええええんっ!」ダバーッ

巌窟王「!?!?」ガビーンッ

入間「うわあああああああああああああ……ふざけるな! ふざけるな! バカヤロー!」

入間「うわああああああああああああああああ……!」

巌窟王「……ん? 何故泣く? そこまで嬉しかったか?」オロオロ

最原「明らかにそういう涙じゃないよッ!」ガビーンッ!



552:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/31(日) 08:10:29.57ID:jQNeEopp0

入間「ひっく……ひっく……」

アンジー「よしよし」ナデナデ

最原「入間さん、部屋の隅で膝かかえちゃったね……」

星「無許可でプログラムを弄られたのが余程ショックだったんだろう。理由はよくわかんねーが」

東条「巌窟王さん。あなたにはデリカシーというものが一匙足りないわ。大体……」クドクドクド

巌窟王「……」ムスーッ

百田「巌窟王の野郎は東条に説教されて不貞腐れてやがるしよ」

春川「まあ本人は善意でやったんだろうから解せないとでも思ってるんでしょ」

最原「……」

王馬「にしし。今までやってきた工作が無駄になっちゃったね……」ニヤァ

最原「無駄になった方がいいよ」

最原(王馬くんと組んだのは偶然だった。入間さんの研究教室を探っている内に、彼が合流し、協力を持ち掛けてきたんだ)

最原(どうせ何かを企んでいるんだろうから、それを二人がかりでぶち壊してやろうと)

最原(……具体的な策は聞かされなかったけど、もうそれも必要ない。どうやら巌窟王さんが先に無自覚に壊したみたいだし)



553:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/31(日) 08:51:59.17ID:jQNeEopp0

最原「それにしてもこの人……」

巌窟王「……」ブッスー

東条「第一、無形のものとは言え情報や文字列も個人にとっては重要な財産なわけで……」クドクドクド

最原(勘がいいのか悪いのかさっぱりわからないな! 入間さんのことをちょっとでも疑えば、逆に計画を壊したりしなかっただろうに!)

入間「う、うう……ちくしょう。ちくしょう……」

茶柱「入間さん。そろそろプログラムの中に入れてくれませんか?」

入間「勝手に入れよぉ。私、もう知らないぃぃぃ……」

百田「一人称変わってんぞオイ」

赤松「あれ? 百田くん知らない? 極限まで追い詰められると入間さんの一人称って私になるんだよ?」

春川「死ぬほどどうでもいい情報をありがとう」

最原「……残った人が僕たちの体にイタズラしたりしたら困るし。やっぱり全員で入るべきだと思うな」

王馬「あれ? その理屈だと、首謀者が俺たち十六人の中にいない場合は、やっぱり無防備な状態の生身を放っておくことになるよね?」

星「最悪の可能性として、夢野が首謀者だった場合も危険度は同等だな」

茶柱「……」ブチッ

白銀「待って待って! 切れるの早いよ茶柱さん!」



554:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/31(日) 09:11:20.37ID:jQNeEopp0

巌窟王「……」

巌窟王「東条。一旦説教は中止だ」

東条「え?」


ゴオオオオオオオッ!


巌窟王「よし。ドアを焼き潰した。これで大丈夫だ」

赤松「何が!?」ガビーンッ

春川「熱っ……近づけない。これ冷えたら固まってドアが完全に開かなくなるよ」

真宮寺「完璧に閉じ込められたネ」

百田「うおおおおーーーッ! 何やってんだテメェーーーッ!」

巌窟王「閉じ込めたのではなく、締め出したのだ! これで安心して中に入れるだろう」

最原「……外に出るときは?」

巌窟王「再度ドアを焼く」

アンジー「さっすが神様! 賢い!」

最原(いや発想が完全に脳筋なんだけど……!)



556:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/31(日) 15:21:06.44ID:jQNeEopp0

巌窟王「よし。アンジー。少し多めに魔力をよこせ」

アンジー「いいよー!」

ズゥッ

最原「……!」

天海「……最原くん。気付いたっすか?」

最原「……魔術とかは完全に僕にとっては専門外だけど、流石にわかるよ」

最原「明らかに以前までとは『何か』が違う。多分、量が」

巌窟王「フン。あのただの小娘がよくもまあここまで成長したものだ。感嘆に値するだろう」

百田「わかるように言え、巌窟王!」

巌窟王「偉いぞアンジー」ナデナデ

アンジー「……うん。とってもとっても頑張ったからねー」

巌窟王「先に行く。お前たちも後でついて来い」

最原「え? 先に行くって?」

スウッ

最原「……え? 消えた?」

赤松「あ、あれ!? 巌窟王さん、どこ!?」キョロキョロ

獄原「先に行く……って言ってたから、あの機械の中に入ったんじゃないかな?」

入間「ゴン太にしては鋭いじゃねーか。その考察が多分正しいぜ」

入間「魔術の神秘の塊の巌窟王は、言っちまえば情報の塊だからな。体質を変えれば電子虚構世界に入り込むのも容易だろうよ」

入間「前提として機械に対しての親和性……言っちまえば知識が必要だが、まあ俺様の仕込みを軽々ぶち壊した巌窟王なら問題はねぇだろ」

真宮寺「先に行くって言ってたネ。僕たちもそろそろ入るべきじゃないかな?」

東条「……あ」

白銀「どうかした? 東条さん」

東条「逃げられたわ」

白銀「……抜け目ないね!? 本当にあの人!」



557:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/31(日) 15:33:33.31ID:jQNeEopp0

最原(とにもかくにも、僕たちは巌窟王さんに言われた通り準備を始めた)

茶柱「あ。ゴン太さん。右はお箸を持つ方の手……」

茶柱「……そういえばゴン太さんは箸は左で持つんでしたね。ごめんなさい。こっちです」

獄原「こ、こう?」カチッ

最原「あれ? よくゴン太くんの箸のこと覚えてたね?」

茶柱「前に教育的指導をしたときに……」

獄原「うん。うっかりテーブルに片肘をつくっていう紳士的じゃないテーブルマナーを犯しちゃったんだ……そのときに」

最原(多分ぶん殴るとか過激な指導したんだろうなぁ……男子には容赦ないし)

入間「……じゃあ入るぜー。あー、もう……面倒臭ぇ」ポチッ

最原「……」

最原(外の世界の真実、か)ポチッ



558:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/31(日) 15:44:57.33ID:jQNeEopp0

プログラム世界の中

巌窟王「あったな」

思い出しライト「」ドーンッ

巌窟王「……」カチッカチッ

思い出しライト「」ピカッピカッ

巌窟王「……やはり作用しないか。当然と言えば当然だが」

巌窟王「それにしても遅い。一体どこで何をしている」



洋館の中

最原「……あ、あれ!?」

赤松「これがプログラム世界……?」

茶柱「凄い! 現実の世界とまったく遜色がないじゃないですか!」

天海「……あれ。おかしいっすね。前に王馬くんから話を聞いたときは……」

最原(そう。前はグラフィックがあからさまにショボかった。なのに、今、目の前に広がっている光景は……)

最原(現実とまったく遜色のない世界。見た目も、感覚も、すべてが)

春川「入間。これって……」

入間「あ、あれれぇ!? 何これ! どうなってるのぉ!?」アタフタ

王馬「ガチで慌ててるね。入間ちゃんのせいじゃないみたい」

白銀「じゃあ、巌窟王さんがこの世界に何かを……?」

王馬「そんな意味のないことするような人かなぁ?」

最原(そうだよな……プログラム世界の中が進化したからって、巌窟王さんに得なんてないし)



559:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/31(日) 15:54:26.70ID:jQNeEopp0

入間「……アバターの平均化の設定も解けてやがる!」

獄原「平均化?」

入間「要するにゴン太は外の世界と同様にバカ力は出せねぇし、キーボも多少はパワーアップするって話だよ!」

キーボ「あ。やっぱりボクの能力って平均以下と思われてたんですね……」

王馬「超高校級の肩書に対して恥ずかしくならない?」

キーボ「なりません!」

赤松「でもその設定が解けてるってことは、正真正銘、この世界は現実と変わらないってこと?」

入間「……そういえば昨日、新世界プログラムを開いたとき妙なアップデートがあったな……」

最原(……なにか妙な雰囲気になってきたな。モノクマが校則を作ってまでこの装置を守ろうとしたことと言い)

最原(早く用件を済ませて外に出た方がいいかもしれない)

茶柱「それじゃあ、早く外の世界の真実とやらを探して……」

茶柱「そういえば巌窟王さんはどこに?」

赤松「あ」





洋館の外

巌窟王「……まだか」ブルブル



外の気温 マイナス七℃
天候 大雪



561:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/31(日) 17:28:46.99ID:jQNeEopp0

最原「手分けして探そう。巌窟王さんは多分、先に外の世界の真実を探しているんだと思う」

百田「俺たちの目的の場所に巌窟王が先に辿り着いてる、か。ありえなくもねーか。いい格好したがるからなアイツ」

アンジー「よーっし! それじゃあ外に出て神様を探し」ガチャリンコッ


ビュオオオオオオオオオ!


アンジー「死」バタンッ

茶柱「死!?」ガビーンッ

春川「軽く吹雪いてるね。寒いから長時間の活動は危険かも」

真宮寺「……それより夜長さんが寒さのショックで倒れてるけど」

獄原「アンジーさん! アンジーさんしっかりして!」ガクガク

アンジー「アンジーの骨は……海にまいて……」ガタガタ

王馬「顔が面白いくらい土気色ー!」ケラケラ

茶柱「面白がってる場合じゃないですから!」



562:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/31(日) 17:41:16.91ID:jQNeEopp0

最原「ひとまずアンジーさんは洋館の中の捜索チームで確定かな」

百田「終一! 俺と一緒に外出ようぜ!」

アンジー「……」ピクッ

最原「いいけど、なんで?」

百田「雪遊びするしかねぇだろ! こんだけ雪あったら!」

春川「バカ丸出しすぎるでしょ。状況わかってる?」

王馬「ヒャッホーウ! まだ足跡がついてない綺麗な雪に俺の足跡を刻むんだーーー!」ザクザクザク

獄原「ああ! 王馬くん! 先に行ったら危ないよ!」

春川「……バカしかいないの?」

天海「案外、巌窟王さんも先に来て遊んでるかもしれないっすよ」

春川「……」

春川「いや、多分それは……ないよね?」



洋館の外


巌窟王「……」コロコロ



暇すぎてミニチュアスノーマンを作っていた



563:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/31(日) 17:49:34.83ID:jQNeEopp0

天海「ひとまず男子が全員外を捜索して、女子が全員館内を探すってことで大丈夫っすよね?」

春川「ちょっと大雑把すぎる決定だけど、異存はないよ」

アンジー「……竜馬ー。アンジーも外行きたい」

星「俺に代われと? フン……お前さんがそれでいいのなら別に構わねーが……」

星「後悔はするなよ」

最原「え? いや、アンジーさんは中を探した方が……」

ギュッ

アンジー「抱き着いてれば寒くないよー!」キラキラキラ

最原「ええー……」

茶柱「不潔です」

最原「僕に言われてもなぁ!?」ガビーンッ

百田「いいから行くぞ!」ダッ

東条「……」

東条「……!」

赤松「東条さん? どうしたの?」

東条「体の怪我が全部なかったことになってるわ」キラキラキラ

赤松「あ。本当だ……元から治りかけだったけど」

東条「……」フラーッ

赤松「あ! ちょ! 東条さん!」

白銀「外に行っちゃったね。感激に身を任せてどうかしている」

星「命は投げ捨てるものじゃねぇ」

赤松「あー……東条さんなら大丈夫だろうけど……」



564:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/31(日) 17:59:29.92ID:jQNeEopp0

最原「……ん? 百田くん! これを見て!」

百田「どうした終一?」

最原「こんなところに雪だるまが……」

百田「……巌窟王が作ったものか? 他にここに来そうなヤツなんていねーもんな」

最原「でも姿が見えないんだ。視界がそこまで悪いわけじゃないんだけど……」キョロキョロ

百田「おいおい。ここ崖になってんじゃねーか。緩い斜面だから余程勢い付けて転がり落ちない限りは大丈夫だろうけどよ」

最原「こっちに巌窟王さんが行ったとは思えないから近くにいると思うけど」


ザバァンッ!


最原&百田「!?」ビクゥッ

巌窟王「……来たか」

最原「が、巌窟王さん!? 雪の中にいたの!?」

巌窟王「ここに来たのがお前たち二人でよかった。これを受け取れ」

思い出しライト「」ドーンッ

百田「こりゃあ……思い出しライトか?」

巌窟王「それでは俺は……」

巌窟王「!」

最原「ん?」

最原(巌窟王さんが何かに視線を向けて、ふと口を止めた。その先にいたのは東条さんだ)

最原「え? 東条さんがなんでこんなところに……」

百田「……おい。終一。巌窟王が消えてんぞ」

最原「はい?」

最原「……」

最原「……ああ! 東条さんから逃げた勢いで崖から落ちたんだ!」ガビーンッ

百田「救出は……後でいいだろ。お前たち二人でよかったってこういう意味かよ……」



565:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/31(日) 18:02:27.00ID:jQNeEopp0

東条「あ。二人とも……その手に持っているのは思い出しライト?」

最原「うん。多分コレが外の世界の真実の正体だと思う」

東条「そう……」

東条「……あら? アンジーさんは?」

最原「あれ? さっきまで僕にべったりだったのに……」

凍えたアンジー「」ウマルーン

百田「雪に埋まって動かなくなってんぞ! オイ!」

最原「いつの間に!? うわあ! ありえないほど肌が白くなってる!」ガビーンッ

最原「ああもう、主従揃って手間をかけさせてくれるよ!」ザッザッ

百田「さっさと掘り出せーーーッ!」ザッザッ



571:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/31(日) 19:06:13.61ID:jQNeEopp0

巌窟王「……」

巌窟王(さて。俺は……どうするか)

巌窟王(外の世界の真実とやらがどれだけ絶望的な内容なのかは知らんが、もうアンジーは大丈夫だろう)

巌窟王(俺がいなくとも、おそらく最原や百田などと結託し、外の世界へと戻っていけるはずだ)

巌窟王(……間違ってもあの人間城塞のようにはなれない。そうならないように俺がヤツの魂を堕とした)

巌窟王(子供なら、もっと素直でいい。ワガママでいい。癇癪を起こし、周りに当たり散らすのもいいだろう)

巌窟王(そうして自分の無力さを知って、諦めて、だがそれでも譲れないものがあることに気付いて……そうやって成長していけばいい)

巌窟王「……ふん。令呪さえなければいつでも消えてやるものを」

巌窟王「だがまあ、仕方ないだろうな」



崖「」ドドーンッ



巌窟王「……」

巌窟王「……魔力が勿体ないな。自力で登るか?」

巌窟王「……登れるか?」ズーン



572:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/31(日) 19:13:33.05ID:jQNeEopp0

洋館の中

天海「というわけで全員揃って帰還っす」

赤松「外の世界の真実って、思い出しライトのことだったの?」

星「タイミング的にはドンピシャだ。意味を感じる。間違いない、と見ていいだろう」

星「だがここはプログラム世界だろう? 果たして外の世界と同じように思い出しライトが機能するのか?」

入間「理屈上はまったく問題ねぇな」

キーボ「……誰が起動させます?」

真宮寺「待って。その前に一つだけ確認したいことがあるんだけど」

真宮寺「……巌窟王さんはどこに?」

百田「後で俺たちが救出するから大丈夫だ」

最原「というか巌窟王さんなら多分自力でどうにかできると思うけど……」

真宮寺「……よくわからないけど居場所に検討はついてるわけだネ。ならいいヨ」

赤松「……東条さん? 大丈夫?」

東条「あまり、大丈夫ではないけど……」

東条「だからと言って待ってもらうわけにはいかないわ」

最原「じゃあ、スイッチを入れるよ!」

百田「おう!」

最原(大丈夫。この場には夢野さんはいないけど、後で絶対に見つけてみせる)

最原(そして、どんな残酷な真実が待っていようと、僕たちには巌窟王さんがいる)

最原「絶対に大丈夫……」


カチッ



574:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/31(日) 19:16:58.27ID:jQNeEopp0

最原のビジョン

最原(直後に見えたのは……荒廃しきった世界)

最原(人も植物も、何もかもが死に絶えた世界)

最原「え」

最原(海も干上がり、大地は割れ、星が欠けた虚無の世界)

最原「……え? え?」

最原(死。死。死)

最原(みんな死んだ。みんな死んだ。みんな死んで――)



死死死死死死死死――
死死死死死死死死死死――


無。


最原(……なにもかも、終わっていた)

最原(帰る場所が……見えなかった)



575:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/31(日) 19:24:09.20ID:jQNeEopp0

最原「なんだよ。コレ……こんな。こんなはずは……!?」

東条「……ごほっ」ガクリ

星「ッ! 東条!」

東条「……ふーっ……ふーっ……!」ガタガタ

最原「……あ」

最原(呆然としていたせいで反応が遅れた)

最原「……呼吸、できてない、の?」

最原「東条さん!」ダッ

星「まずいなコレは。過呼吸を起こしてる」

最原「落ち着いて東条さん! あんなの……!」

最原「あんなの……」

最原(……嘘だ、と言うことは簡単だ。だけど現実は変わらない)

最原(あの記憶は間違いなく僕自身の……!?)



576:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/31(日) 19:36:21.43ID:jQNeEopp0

東条「……い……!」

最原「なに! 東条さん! なんでも言って!」

東条「ごめんなさい……!」

最原「!」

東条「ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……」ポロッ

星「東条……」

最原「違う!」

東条「……?」

最原「東条さんは何も悪くない! だから謝らなくっていい!」

最原「……謝らないでよ!」

東条「ふうっ……ふうっ……うう、ううううううううう……!」ポロポロッ

最原「……」

最原(東条さんの涙が何でできているのか、僕にはわからない)

最原(わからないけど……少なくとも彼女が何も悪くないってことだけはわかる)

最原(巌窟王さんでも絶対にそう言うはずだ)

百田「……」

百田「おい。誰か、この部屋に近づいてきてねーか?」

最原「え?」

赤松「……巌窟王さんじゃ、ないの?」

百田「それにしては何か、足を引きずってるような音が……」


ズルッ……ズルッ……


最原「……誰……?」



577:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/31(日) 19:40:14.55ID:jQNeEopp0

ドガバタンッ

最原「……!」

巌窟王「クッ……お前たち、無事だったか」

白銀「が、巌窟王さん! どうしたの、凄い血!」

最原(部屋に入ってきたのは、雪と血でべっとり体を濡らす巌窟王さんだった)

最原「どうしたの! 何があったの!」

巌窟王「帰ってくる途中で落とし穴にハマった」

王馬「あ。それ俺とゴン太が作ったヤツだね。中に竹槍とか入ってたら間違いないよ」

巌窟王「入ってたぞ」

王馬「めんご! 巌窟王ちゃん!」テヘリンッ

最原「この期に及んで凄いな王馬くん!」ガビーンッ



578:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/31(日) 19:44:40.59ID:jQNeEopp0

巌窟王「く、クハ……眠い」バタリンッ

巌窟王「ぐー」スヤァ

百田「おい。巌窟王……」

真宮寺「……寝ちゃったネ」

王馬「とりあえずソファに寝かせて毛布でもかけておこうよ。ゴン太」

獄原「う、うん。流石に床に転がしておくのは可愛そうだもんね」

白銀「あ。私、リネン室に行ってくるよ」

白銀「……う……」フラッ

ガシッ

キーボ「し、しっかりしてください白銀さん」

白銀「あ。ああ、ごめん、キーボくん……」

最原「……やっぱりみんな、ダメージは深刻、か……」

王馬「巌窟王ちゃんだけダメージの意味が違うけどね」

百田「テメェのせいだろ」パシーンッ

王馬「痛ァ」



580:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/31(日) 20:05:22.21ID:jQNeEopp0

リネン室

白銀「……」

白銀「モノクマ? いる?」

モノクマ「はいはーい。ここに」

白銀「巌窟王さんは後で強引にでも、って予定だったけど。あの有様だからさ。タイミング見て楽にやれそうだよ」

モノクマ「そだね! じゃ、後は手筈通りに……うぷぷ」

白銀「……ま。全部が全部、とはいかないだろうけどさ。四章の事件は御覧の通り欠番にせざるを得ないから」

モノクマ「うん。うん。そこは仕方ないね。コーラを飲んだらゲップがでるくらい仕方ないよ」

白銀「多分、入間さんだけは正確に気づいてたはずなんだけどなぁ。ほとぼりが冷めたら、の本当の意味」

白銀「でもまあ、約束は約束。熱されないのなら仕方ない。このままあの扉をオープンにしよう」ニコニコ

モノクマ「このままだと色々破綻するけど?」

白銀「いいよ。余興だもん」



581:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/31(日) 20:19:20.71ID:jQNeEopp0

アンジー「……」

最原(……巌窟王さんの服を掴んだまま動かない。一言も声を聞いてないし。大丈夫かな)

星「ほら。東条、水だ。つっても、この世界で飲んだところで意味があるかは知らんがな」

東条「ありがとう。二人とも」

最原「……え? 僕も? 何もしてないけど」

東条「……いいえ。したわ。とっても大事なこと」

最原「?」

星「……鈍感だな。こんなときは超高校級の探偵だとは思えねーぜ」

赤松「……ねえ。どういう意味だと思う? あの記憶って」

茶柱「地球が滅んだ、ということでは?」

赤松「それなんだけど……私たち、それじゃあなんで生きてるの?」

赤松「それ以前に、ここはどこ?」

茶柱「それは……」

茶柱「……あ、あれ。わかりません。そういえばここ、どこなんでしょう?」

春川「普通に考えれば宇宙船とか、地球ではないどこかと考えるのが自然だけど」

春川「その割には重力とか普通に感じるよね?」

真宮寺「結局のところ、地球が……いや、外の世界が滅んだ以上の記憶が蘇ってないんだよネ」

真宮寺「どうしてモノクマがこの情報を前倒しにしたのかも、意図がわからない」

最原「……ひとまず外に出よう。それから考えて――」

入間「外に? なんでだ?」

最原「え?」



582:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/31(日) 20:26:35.70ID:jQNeEopp0

入間「もういいじゃねぇか……外に出たところで死んじまうだけなんだからよ……」ガタガタ

入間「なんだったんだ……俺様がやってきたことは……なんだったんだよ……!」

最原「……いや。一つだけよかったことがあるよ。この記憶を思い出せて」

入間「ああ?」

最原「だって、僕たちはまだ誰一人として死んでない!」

百田「!」

最原「外の世界が滅んでるってわかった今、卒業のルールには何の意味もないんだ!」

最原「これ以降、どんな動機をモノクマが提示しようと、報酬に見合わないのならコロシアイは起こらない!」

百田「……ああ。そうだな。その通り、だな」

百田「んだよ。結構いいことだらけじゃねーか! もう俺たちは仲間に怯えなくっていいんだぜ!」

入間「んなもん……気休めにも……」

白銀「ただいまー。リネン室から毛布を貰ってきたよー」

白銀「……?」

最原「……白銀さん? どうしたの?」

白銀「巌窟王さんは?」

最原「え?」

最原「……あ、あれ?」

最原(言われて気付いた)

百田「……巌窟王がいない? アンジー!」

アンジー「あ、ひ、い……!」ガタガタ

最原「……アンジーさん? どうしたの? 何が……!?」

アンジー「……やだ……もう……やだ……!」ガタガタ

最原「アンジーさん……!」



583:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/31(日) 20:35:57.60ID:jQNeEopp0

ヒューッ ドスンッ

巌窟王「ぐ……!?」

巌窟王「……む。ここは……プログラム世界の外か?」

巌窟王「戻ってきたのか? いや違う……この感覚は弾き出された、と考えた方が妥当か」

巌窟王「一体何故……」

ピロンッ

巌窟王「む?」

アンジー「う、うう……あうううう……!」ガサゴソ

巌窟王「アンジー? 戻ってきたのか?」

アンジー「あううううううう……」ガリガリッ

巌窟王「よせ。慌てるとヘッドギアが余計に取れにくいぞ。今そっちに行く」タッ

ゴソリッ

巌窟王「ほら。取ったぞ。一体どうし――」ガバリッ

アンジー「うううううううう……!」

巌窟王「……アンジー?」

巌窟王(抱き着かれた。強く。強く。こちらの身動きができないほどに)

アンジー「やだ……離れないで……行かないで……!」

アンジー「おいてかないでよぉ……アンジーのことを離さないで……!」

巌窟王「……何があった?」

アンジー「うああああああ……ッ!」



585:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/31(日) 21:04:19.65ID:jQNeEopp0

スパコン室

最原「……う……」ゴソリッ

最原(巌窟王さんが消えた後のアンジーさんの取り乱しようは酷いものだった)

最原(憔悴している入間さんに向かって外に出る方法を聞くために詰め寄り、無理やり聞き出してそのまま脱出)

最原(心配になった僕が一番最初に出てきて、そこで見たのは……)

最原(大泣きするアンジーさんに抱き着かれている巌窟王さんだった)

最原「……」

最原(詭弁だ。さっき僕が、プログラム世界の中で言ったことは全部気休めだ)

最原(間違いなく状況は絶望的で、どこにも居場所も行き場所もない)

最原(世界を変えることも、ましてや救うこともできない)

最原(僕はどこまで行っても……)



586:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/31(日) 21:07:03.97ID:jQNeEopp0

最原「……?」

最原(今、人影が見えたような……)

最原「誰?」

最原(誰もいるはずがない。ここのドアは巌窟王さんが潰して、外からは誰も入ってこれないはずだ)

最原(つまりこの場には夢野さんを抜いた十六人しかいないはずなのに……?)

最原「……」

最原「気のせい、か?」

最原(黒髪の男子がいた気がした。でも、もうその姿は見えなかった)



587:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/31(日) 21:11:43.24ID:jQNeEopp0

カルデア

BB「ふいー。帰った帰った。私の人格もようやく一つに統合されましたし、本腰入れて巌窟王さんの脱出計画に取り掛かれますね!」

BB「みなさーん! BBちゃんが戻ってきましたよー!」キラキラキラ!

ナーサリー「……」ズーン

イシュタル「……」ズーン

BB「……え。なに? 粘菌でも生えそうなくらいジメッとした空気なんですけど……」

ナーサリー「残念。巌窟王の冒険は、ここで終わってしまったのだわ」

BB「は?」

イシュタル「あー……もうダメ。流石に女神にも限界あるっての……」ブツブツ

BB「え? え?」

BB「……あ、あれ? 巌窟王さんは?」

イシュタル&ナーサリー「もう戻ってこない」

BB「……」







BB「えっ」



588:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/12/31(日) 21:12:41.01ID:jQNeEopp0

スパコン室


巌窟王「……おい。最原。ライターかマッチは持っているか?」フー

最原「やめたんじゃなかったっけ? アンジーさんがマネするからって」

巌窟王「今は吸ってないとやっていられん」

最原「……悪いんだけど、持ってないよ……」

巌窟王「……そうか……」

才囚学園生徒一同「……」ズーン

巌窟王「……全員酷い顔をしているな」

最原「それはそうだよ。だって、外の世界が、あんな……」

最原「……」ズーン

巌窟王「……」

巌窟王「帰れないかもしれんな。俺は」ズーン



602:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/01(月) 17:17:13.92ID:er0lfIOS0

prrrrr!


巌窟王「……カルデアからか」ピッ

BB『ちょっと! どういうことですか! 私がちょっと目を離した隙に、なんでこんなお通夜ムードに!?』

BB『ついでに受験失敗と持ち株大暴落が一緒に来たみたいな雰囲気なんですけどー!』

巌窟王「戻る世界が滅んでいたようだ」

BB『……え』

巌窟王「わかっている。普通に考えるなら地球が滅ぶなどということは天地がひっくり返ってもありえない」

巌窟王「抑止力というものはコレを防ぐためにあるのだろう?」

BB『……いや、例外はあります。例外は色々とあります。あるんですけど』

アルテラサンタ『例外だぞっ』ピースピース

BB『ちょっと黙っててくださいッ! 今シリアスムードですから!』

BB『……ああ、もう。いいです。ならもうそんな負け確定のゲームに付き合う必要なんてありませんとも!』

BB『帰還プログラムを今すぐ起動させます!』

巌窟王「なに?」

最原「えっ」

アンジー「!」



603:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/01(月) 17:24:12.52ID:er0lfIOS0

巌窟王「どういうことだ? 難しいということではなかったのか?」

BB『ふっふーん! BBちゃんに不可能なんて言葉はありません! それに最初に言ったはずですよ』

BB『帰還のプログラムを組むのも難しそうです。しばらくそのまま適当にブラブラしておいてくださいってね!』

BB『ただまあ、無理やり脱出させるわけですから霊核に凄まじい負荷がかかる上、それ以外にもどうしようもない弱点があるのですが……』

BB『とにかく! 戻ってきてください、巌窟王さん! もういいでしょう、そこら辺で!』

巌窟王「……」

巌窟王「BB。何を慌てている?」

BB『え? い、い、いやだなぁー……完璧で幸福なBBちゃんが慌てるなんてことないに決まってるじゃないですかー』

巌窟王「……」

BB『……』

BB『マスターが帰ってきました』

巌窟王「……そうか」

最原(それって確か、巌窟王さんの本当の……)

BB『ハッキリ言って、今まであなたがカルデアから消えていたことをここまでカルデア相手に隠し通せたのは彼がいなかったからなんです』

BB『彼が帰ってきてしまった以上、あなたがここにいないことがバレるのは時間の問題……』

BB『時間は未定ですが、査問会の人たちがやってくる以上、あまり大騒ぎはしたくないんですよ』

巌窟王「もみ消せ」

BB『バカな……そんなことができるとでも?』

巌窟王「やれ」

BB『イヤです。あなたをカルデアに帰す方が遥かに楽で合理的です』

アンジー「……」



604:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/01(月) 17:30:44.30ID:er0lfIOS0

巌窟王「……いいだろう。やれるものならやってみればいい」

最原「巌窟王さん……?」

巌窟王「ただし、果たして本当にそんなことができるのかな?」ニヤァ

BB『え? で、でででででできるに決まってるじゃないですかぁ……』

巌窟王「アンジーがいる限り不可能だ」

BB『……』

巌窟王「通信を切る。しばらく通話をかけてくるな」

BB『……わかりました』ブツンッ

最原「巌窟王さん? アンジーさんがいる限りってどういうこと?」

巌窟王「ヤツは言った。負荷がかかる以外にもどうしようもない弱点があると」

巌窟王「……おそらく帰還プログラムを一度使ったら二度と往復ができない、などの本当にどうしようもないものだろう」

巌窟王(素直にカマかけに引っかかってくれて助かった、と言ったところか。コレでまず間違いなく確定情報だ)

天海「……あ。そっか。それなら無理っすね」

最原「えーっと……?」

巌窟王「令呪には『サーヴァントを呼び寄せる機能』がある」

巌窟王「俺を『一度使ったら二度と使えない帰還プログラム』で戻した後、アンジーが『こちらへ戻ってこい』と命令したのなら……」

春川「……巌窟王は永遠にこの世界に閉じ込められたまま、ってこと?」

巌窟王「クハハ。まったく。小娘の契約にここまで振り回されるとはな……」ニヤニヤ

最原(って言ってる割には凄く上機嫌だけど……)



606:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/01(月) 18:30:26.43ID:er0lfIOS0

王馬「そんなこと言っちゃってー! 本当は巌窟王ちゃんも俺たちと離れたくないんでしょー?」

巌窟王「調子に乗るなよ」

王馬「ん……!」ゾワッ

最原(瞬間、巌窟王さんの雰囲気が一変した)

最原(部屋の温度が十度くらい下がったような異常な寒気。吐き気を催すほどの……殺気)

巌窟王「俺の本来の居場所はあちらだ。俺は単に、状況故にお前たちの傍にいるだけに過ぎない」

巌窟王「手は貸す。だが貸すだけだ。共に歩むつもりはない」

王馬「……ふーん……それが巌窟王ちゃんの答え?」

巌窟王「当然だ」

王馬「……」

巌窟王「つまらない、と言った顔だな。俺のことを揺さぶる気だったのか?」

巌窟王「……フン。浅はかなヤツめ」

王馬「誰だって思うでしょ。元いた場所と、アンジーちゃんとの間で迷っていてほしいってさ」

王馬「……俺たちに愛着湧いてたりしてほしいって思って悪いかよ」

獄原「王馬くん……!」

巌窟王「思ってもいないことを白々と……逆に気持ちいいな」



607:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/01(月) 18:41:50.92ID:er0lfIOS0

巌窟王「まあいい。とにかく外に出るぞ。ここにずっといると空気が悪くなりそうだ」

赤松「あ、う、うん。そうだね。夢野さんの捜索も続けないとだし……」

茶柱「じゃあ巌窟王さん。ドアを再び焼いてくれませんか?」

巌窟王「……離れていろ。先ほどよりは火力高めだからな」

ドカァァァァァァァンッ!

巌窟王「ム……!?」

獄原「ちょっと巌窟王さん! いくら何でも威力が高すぎ……!」

巌窟王「違う。俺ではない」

獄原「え? あ、本当だ。ドア、何の代わり映えもしてないね……」

入間「……」

入間「あっ!」ダラダラダラ



616:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/02(火) 10:17:19.57ID:Zhu15dX40

カルデア

BB「……あれ? おかしいですね。通信が一切通らなくなりましたよ?」

イシュタル「え。どういうこと? なんで唐突に……」

BB「こちら側の機器に異常は一切ありませんが……だとすると向こう側から何かされたのでしょうか」

ナーサリー「ねえ。これまずいわよ」

BB「……」

ナーサリー「だって、仮にアンジーの存在が無かったとしても通信ができないのなら元から帰還プログラムなんて使えないわ」

BB「ああ、もう! わかってます! わかってますって! 何か考えないと!」

BB「……あまり女神系サーヴァント以外に頼りたくはありませんでしたが、この際そうも言ってられません」

BB「エジソンさんとテスラさんを呼んできてください!」

イシュタル「あの二人なら精神的ショックのせいで入院してたわ」

BB「あんっの電気バカコンビども……肝心なときに役立たずなんですから!」

ナーサリー「いや原因はあなたよ?」

BB「え?」

ナーサリー「ほら、前にエジソンとテスラの人格を腹癒せに交換させたりしてなかったかしら?」

BB「……」

BB「あっ」




※してました



617:本編の205スレ目を参照のこと ◆SxyAboWqdc 2018/01/02(火) 10:28:24.51ID:Zhu15dX40

BB「そうです! 確かにやっちゃってました! 二つ目の学級裁判のとき停電騒ぎを起こした腹癒せに……!」

イシュタル「あのときは何でやっちゃったのかまったくわからなかったけど、そんな経緯があったのね」

ナーサリー「感情任せの考えなしな制裁のせいで割を食うって、まさに童話のような話なのだわ」

ナーサリー「ところであなた『消したくても記憶を消せない』っていう弱点がなかったかしら。忘れてたフリしても無駄よ」

BB「あのですね! 記憶を焼却できないというだけであって、記憶を捨てること自体は可能なんですよ! 一応!」

BB「あと、例えば今までの人生のことが事細かに書かれた本があったとして、ページを開く手間をかけないと記憶の閲覧はできないんです!」

BB「ぬぐうううう……仕方ないですね。チューンナップは私が手ずからやります!」

イシュタル「何か手伝えることはあるかしら?」

BB「ひとまずイシュタルさんは『良かれと思って手を貸そう』とか間違っても思わないでくださいね!」

イシュタル「ええっ!?」ガビーンッ

ナーサリー「ごめんなさい。こればかりは弁解不可能なのだわ」プププ

イシュタル「謝罪は半笑いを隠してから言いなさい! 腹立つから!」



618:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/02(火) 10:43:22.80ID:Zhu15dX40

才囚学園 スパコン室

入間「い、今何時だ!?」

最原「え? えーっと……え? 三時?」

最原「……午前三時!? なんで!? そんなにあの中にいた!?」

東条「ここに入ったのが午後八時だから、結構長い間中にいた計算になるわね」

星「おい。あの中の時間と、この現実世界に流れる時間に差はねーのか?」

入間「ないはず、だけど……アップデートのせいで何らかの変化が起こっている可能性は否定できねーな」

入間「あるいは本当に、単純に、俺様たちが『長くいたことに気付いていない』だけか」

最原(ありえなくもない、かな。精神的ショックが大きすぎたからな……)

入間「と、とにかくだ! 巌窟王! 俺様を外に出せ!」

巌窟王「……?」

入間「早くしろボンクラ! 早く!」

巌窟王「……いいだろう。下がっていろ。今度こそ扉を破壊する」



620:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/02(火) 17:04:54.45ID:Zhu15dX40

ドカァァァァンッ!

巌窟王「開いたぞ」

最原「熱いからどっちみち、冷めるまでは外に出たくないけどね」

春川「ここを突破しようとか考えるのはただのバカだって」

入間「うおおおおおおおおおおおお! 蝋燭プレイーーーッ!」ダッ

春川「バカがいた」

最原「入間さーーーんッ!?」ガビーンッ

真宮寺「なんか妙だネ。時間を気にしたり、慌てて外に出たり……」

百田「困ってるのなら手を貸すべきか? まあ、走り抜けられないほどじゃないしな」

最原「止めた方がいいって」

百田「いや。行くぞ終一! 一緒に!」

最原「……」

最原「一緒に!?」ガビーンッ


ガシッ


百田「うおおおおおおおおお! 友情パワーーーッ!」ダダーッ

最原「うぎゃああああああああああああ!」

巌窟王「……フッ。バカめ」ニヤニヤ

赤松「本当にバカだよ」

春川「赤松が言うんなら相当なんだろうね」

茶柱「……転子たちは普通に行きましょうか」



621:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/02(火) 17:17:31.34ID:Zhu15dX40

スパコン室周辺

百田「……入間がいねーぞ」

最原「全力で走ってどっか行ったのかな……彼女の身体能力と走りにくい靴のことを考えると、そんなに遠くまで行けないはずだけど」

最原(一体何を慌ててたんだ?)





入間side


入間「ああ! 忘れてた! 起爆の時限スイッチを切るのすっかり忘れてたぜ!」サッサッ

入間「い、いや大丈夫だ。起爆した後で薬品がまき散らされる設定にしたからな。部品は焼けて元が何だったのかすら判別不可能になるはず……」

入間「よし……よし。大丈夫だ。ちゃんと焼けてる……」

入間(……というか、部品そのものが隠し場所から飛ばないように設定したんだよな。そもそもEMP兵器なんだから物理的破壊力は度外視だし)

入間(まさかあんな音が出るだなんて俺様も計算外……まあぶっつけ本番の急ごしらえだから計算外が起こるのは当たり前だけど……)

入間「……」

入間「……いや。違うな。俺様はてっきり『何かの計算外でエレクトボムから爆音が出たのでは』って焦ったけど……」

入間「なんかそういう感じでもねーな?」

入間「ていうか、さっきから妙に……」





最原side


最原「……焦げ臭い?」

百田「お? そうか?」クンクン

最原「いや……ごめん、気のせいかな……?」



623:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/02(火) 18:05:02.48ID:Zhu15dX40

校舎一階

最原「……」

百田「……」

白煙「」モクモクモクモクモクモク

最原&百田「火事だーーーッ!?」ガビーンッ

モノクマ「あ。安心していいよ。ついさっき消火したから。流石に本校舎を燃やされるのは困るし……」

最原「げほっ。でも煙の処理ができてないんだけど!」

百田「おいおい! 火元はどこだよコレ!」

最原「百田くん! ひとまず窓を片っ端から開けよう!」

百田「おう!」

最原「……一体誰がこんなこと……」

最原(火元はどこだ? 食堂とか……じゃないな。倉庫も違う)



624:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/02(火) 18:14:02.95ID:Zhu15dX40

最原「……地下?」

最原(間違いない。煙は地下から来てる。来てるけど……)

最原(地下から爆音? 爆音……おかしいな。致命的に食い違ってる)

最原「……百田くん! ちょっと火元確認してくるよ!」

百田「え? お、おい……ごほっ!」

最原「大丈夫! 危ないと思ったらすぐ戻ってくるから!」ダッ

百田「待っ……ごほっごほっ……」

百田「う……」


ビシャッ


百田「……くそ。こんなときに……!」



625:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/02(火) 18:22:10.20ID:Zhu15dX40

百田「……ちっ。今日は調子がちょっと回復したと思ったんだけどな。帰ってきてからずっとコレだぜ……」

百田「終一……! 地下に行ったのか?」




最原side

最原「……結構煙は散ってる?」

モノクマ「まあ、体が悪くなるってだけで、致命的に死ぬってほど有害ガスは残ってないね!」

最原「……」

最原(どうする。行くか、戻るか……でも何か、この先にとてつもなくイヤな……悪意のようなものが渦巻いてる気がする)

最原「……行ってみよう。何もなかったら全力で逃げればいい」

最原「多分、僕が確認しなきゃダメな気がする……!」

モノクマ「へえー」

最原「……」タッタッタッ……

モノクマ「……いい勘はしてるねー。無駄だけど」



626:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/02(火) 18:47:39.37ID:Zhu15dX40

入間side 超高校級のコスプレイヤーの研究教室周辺

入間「……やっぱり変だ。どうなってやがる! なんでサイレンサーが壊されてんだよ!」

入間(いや。それだけじゃねえ。時限装置が持ち去られて一個だけ起爆しなかったエレクトボムがある)

入間(……俺様の計画が事前にバレてた? でも時限装置なんて持ってったところで何を!?)

コツンッ

入間「ッ!」バッ

赤松「……入間さん? どうしたの、顔が真っ青だけど……」

入間「赤松……!」

入間(扉周辺の熱が冷めたのか?)

入間(……大丈夫だ。俺様は誰も殺してねぇ。殺してないんだから、仮にバレたとしてもなんてことはない)

入間(なんてことはない、はずだよな……?)




最原side 地下の図書室

最原「……」

最原「夢野さん」

最原(もう、悲鳴さえ出てこなかった。ただひたすら自分の心が軋んでいくのを感じていた)

最原(目の裏がチカチカして、今にも倒れそうな感覚)

最原(……失われていく現実感)

最原(夢なら……覚めてくれ……)



627:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/02(火) 19:05:04.63ID:Zhu15dX40

白銀side 一階

白銀(念のため、事前に『入間さんがコロシアイに失敗するバージョン』のパターンも考えといてよかったなぁ)

白銀(ま、パターンとして考えてたのはアンジーさんに絆されて失敗するタイプだったけど。巌窟王さんが壊すとは考えてなかったよ)

白銀(それはさておいて……この子をあそこまで連れて行かないとな)

茶柱「白銀さん! さっさと窓を開けないと……煙くって仕方ありません!」

白銀「……ね、ねえ。茶柱さん。気付いちゃったんだけどさ。この煙、地下室から出てない?」

茶柱「え?」

白銀「炎そのものは消えてるみたいだし、ちょっと様子を見に行きたいんだけど……」

白銀「な、なんかね。とっても、とってもイヤな予感がするの……!」ガタガタ

茶柱「……」

茶柱「いいえ。白銀さんはここで煙の処理を」

白銀「茶柱さん……」

茶柱「大丈夫です! 転子が様子を見てきますから!」

白銀「……えっ?」

茶柱「じゃ、頼みましたよー!」ダッ

白銀「あ! ちゃ、茶柱さん! 待って……!」

白銀「……」

白銀(なんちゃって)ニィィッ



630:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/02(火) 20:53:42.59ID:Zhu15dX40

最原side 図書室

最原「……」

茶柱「……あれっ! 最原さん! こんなところで何を!」

最原「ッ!」バッ

茶柱「……なんです? そんな泣きそうな顔して……」

最原「こっちに来ちゃダメだ!」

茶柱「はあ? 何を言って……う、この臭いは火薬ですか? 火元はどうやらここみたいですね……」

茶柱「……?」

茶柱「別の臭いもしますね。これは腐臭……?」

最原「~~~~~ッ!」

茶柱「……最原さん。さっきから本当にどうしました? 何を……!」

茶柱「それ、最原さんの後ろの扉! 赤松さんの事件のときに話題になった隠し扉ですよね!」

茶柱「開いてるじゃないですか! その先に何が……!」

最原「来ちゃダメだって言ってるだろ!」

茶柱「!」ビクッ



631:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/02(火) 21:05:31.00ID:Zhu15dX40

茶柱「……そこに誰かいるんですか?」

最原「……」

茶柱「……夢野さん?」

最原「うん」

茶柱「……どいてください。転子は、夢野さんを探さないと……」

最原「どかない」

最原「……キミはこの先の光景を見るべきじゃない」

茶柱「どいてください!」ダッ

最原「断る! イヤだ!」


ガシッ ブンッ


ドカッ


最原「あうっ!」

最原(あっさりと投げ飛ばされてしまった)

茶柱「夢野さん! ここにいるんですか! ゆめ……」

茶柱「……あ?」

最原(その先にあるのは……地獄だ)

最原(絶対に見せたくなかった……! なんのために僕は、ここに立っていたんだ……!)



633:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/02(火) 21:17:57.99ID:Zhu15dX40

最原(結論から言えば夢野さんは死んでいた。おそらく殺害方法は銃殺。傍にある銃がそれを物語っている)

最原(ただそれだけなら救いはまだあったかもしれない。問題なのは『損壊が酷すぎる』という一点だ)

最原(相互汚染で遺体の状態を悪くするためだろう。傍には腐った果物が大量に置かれていた)

最原(そして血色を失った肌に群がるのは無数のクロバエ)

最原(夢野さんはゆっくりと着実に食べられていた)

最原(食べやすいように、だろうか。胸のあたりからナイフか何かで『穿った』ような痕がある)

最原(……薄く開けられた目に光はもうない。一体最後に何を見たのか知る術もない)

最原(視覚的に、嗅覚的に、あまりにも無残な夢野さんの死体がそこにあった)

茶柱「あ……あ……い、いや……いや、いや、いやああ……」

茶柱「いやあああああああああああああああッ!」

最原(耳も……引きちぎってしまいたかった)



第四章
虚構殺人遊戯:才囚学園、改め、架●●理●園ダンガンロンパ

非日常編



647:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/03(水) 17:20:45.93ID:olPC3sAu0

最原(夢野さん……)

最原(最初は気だるげな口調が特徴的な女の子だったけど、巌窟王さんが来てからは必死に背伸びしていた彼女との思い出がフラッシュバックする)

最原(……ああ、でもダメだ。そのすべてが今から思い出すと優しい記憶なのに……)

最原(その終点が、この地獄で固定されてしまった)

最原(今はただ思い出のすべてが……胸を掻きむしってしまいそうなほどに痛い)

茶柱「いやああああああああああ……うっ……げほっ……げほっげほっ……」

茶柱「あああああああ……! あううううううう……!」ガタガタ

最原「茶柱さん!」

ガバッ

茶柱「ひぐっ……ひううう……!」

最原「それ以上見ちゃダメだ……心が壊れちゃうよ」

最原(とにかく今は茶柱さんだ。こんな光景、見てていいはずがない。抱きしめてでも視線を隠す)

最原(……迂闊に近づかれて現場を荒らされては困るという打算も当然あるけど)

最原(とにかく後で叩き殺されようと構わない。どんな手を使ってでも茶柱さんをこの場から遠ざけないと……!)



ドカァァァァァンッ!


最原「ん!?」

最原(部屋の奥のあたりが爆発して……)

巌窟王「火元はここか!?」ザッ

アンジー「ここかーっ!」

最原(アンジーさんをお姫様抱っこした巌窟王さんが出て来たーーーッ!)ガビーンッ!



648:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/03(水) 17:28:39.13ID:olPC3sAu0

最原「巌窟王さん!? 何してるの!?」

巌窟王「サーヴァントとは往々にして高校生を横抱きするものだ!」

巌窟王「盾持ちの少女と、赤い弓兵も似たようなことをやっていた!」ギンッ

アンジー「いえーい!」

最原「いやお姫様抱っこについてツッコミ入れたかったのは事実だけど、僕が今聞いてるのは……!」

巌窟王「む? 最原」

最原「え? な、なに?」

巌窟王「茶柱を抱き寄せてるのか……死にたいのか?」

アンジー「後でお祈りは任せてねー」ナムナムー

最原「いや僕もこれはまずいかなと一瞬思ったけど今はそれどころじゃなくって!」

最原「だから! 僕が聞きたいのは……!」

巌窟王「ところでお前、何故ここにいる?」

最原「こっちの台詞!」ガビーンッ!



649:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/03(水) 17:36:47.82ID:olPC3sAu0

巌窟王「む……お前の後ろに広がる光景は図書室……か?」

巌窟王「なるほど。火元は図書室だったのだな。そして図書室に隣接している部屋など一つしかない……」

巌窟王「お前はついに辿り着いたのか。隠し部屋に」

最原「……あの。巌窟王さん。こっちの質問にも後で答えてもらうけど……」

最原「ひとまず今はアンジーさんを連れて出て行ってくれる?」

巌窟王「なに? 何故……」チラッ

巌窟王「……夢野?」



ピンポンパンポーン


モノクマ『死体が発見されました! 一定の自由時間のあと、学級裁判を開きます!』


ブツンッ


アンジー「……秘密子……なの?」

巌窟王「見るな。アンジー」

巌窟王「……いいだろう。この場はひとまず引き返す」

巌窟王「……」

巌窟王「ふん……限界して初めてかもしれないな」

巌窟王「無念、などと思ったのは」

最原「……」



650:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/03(水) 17:46:26.54ID:olPC3sAu0

最原「……」

最原(ひとまず、図書室に目を向けてみよう)

最原(……やっぱりだけど、爆発したというよりは、なにか燃えやすい物に火を付けて炎上させたって感じだ)

最原(だって、この図書室の周りは吸音素材が使われていて、音がほとんど外に漏れない)

最原(だとするとあの爆音はなんだったのかっていう謎が生じるけど……)

最原(……その他にも変なことがもう一つ。どうやって火を付けたんだ?)

最原(後で調べてみないとな……)


ガシッ


最原「ん?」

茶柱「汚らわしい。触らないで」ブンッ

最原(直後、景色が上下逆転した。何が起こったのかを瞬時に僕は理解した。覚悟していたから)

最原(床に再度叩きつけられた僕は痛みを感じる間もなく気絶してしまった)

茶柱「……でもまあ、ありがとうございました」

最原(そんな声を聞きながら)



657:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/03(水) 22:10:16.66ID:olPC3sAu0

十分後

最原「……ハッ!?」

アンジー「あ。起きたよー!」

百田「終一……!」

最原「……え? あ、あれ……?」

最原(アンジーさんに膝枕されてる……)

最原「……みんな揃ってる?」

春川「うん。死体になってる夢野を含めてもね」

最原「……そっか」

赤松「泣きっ面に蜂だよね。卒業のルールに意味がないってわかった途端に、こんな……」

赤松「酷い。酷すぎるよ……!」

獄原「……」

獄原「クロバエさんをどかすのにちょっと時間がかかる。でも絶対にやってみせるから、みんなは下がってて」

王馬「いやいやー! そんなことしなくっても俺が殺虫剤を撒いて……」

獄原「ごめん王馬くん。思ったよりゴン太は余裕がないんだ」

王馬「ん?」

獄原「……知らなかったよ。悲しみを通り越すと怒りしかないんだね……酷い感情だ」

獄原「紳士には絶対に必要のない知識。永遠に知りたくない感情だったよ」ギリッ

キーボ「ゴン太くん、落ち着いて……!」

スタスタスタ

最原(ゴン太くんはキーボくんの静止を無視して、隠し部屋の中へと入って行った)



658:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/03(水) 22:21:57.91ID:olPC3sAu0

モノクマ「はいはーい! それじゃあ、ボクの出番かな!」

モノクマ「あ。ゴン太くんには後で誰か渡しといてね! ザ・モノクマファイルー!」

モノクマ「じゃ、ボクはこれで失礼するよ!」

ドロンッ

真宮寺「……これだけ? 初めて死人が出た割には随分とドライだネ」

巌窟王「確かに気になるが、ひとまずモノクマファイルの内容だ」

巌窟王「……ふむ」

最原(被害者は夢野秘密子。死亡推定時刻は夜の午前二時半ごろ。何らかの理由で死後の腐敗が極端に促進されている)

最原(死因は銃撃による失血死。もがいた形跡がほぼないことから、撃たれた直後あたりから気絶したようだ)

最原(……ん? 午前二時半? バカな)

東条「……これは日付が書いてないから紛らわしいけど……もしかして昨日のって意味なのかしら」

白銀「少なくとも、昨日の夜時間周辺の時間に私が夢野さんを見てるから……」

白銀「それよりも前ってことはないと思う」

茶柱「ええ。よく覚えてますとも。白銀さんは確かにそう言ってましたね」

最原(……あれ。なんだろう。このモノクマファイル。なにか……気持ち悪い)

最原(気のせいかな……?)

白銀「……」



659:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/03(水) 22:32:22.05ID:olPC3sAu0

最原「……夢野さんの死体を見たのって何人?」

百田「茶柱が『直視しない方がいい』って規制したからな。そこまで多かねーよ」

星「……俺は見たぜ。酷い有様だったな……」

星「まったく。タチの悪すぎるブラックジョークだ。できることなら代わってやりてーよ」

星「こんな死に方をしていいヤツじゃない」

王馬「久しぶりだなぁ。星ちゃんからそういう陰気な台詞が飛び出すのって」

星「……」

星「悪かない、と思い始めてたんだ。お前さんたちのことをな」

最原「……」

星「きっかけは……なんだったか……」

星「今となっては思い出す価値もねーな」

赤松「そんな! 星くん、そんな言い方は!」

最原「やめよう、赤松さん。流石にこればっかりはキツすぎるから」

最原「……誤魔化せないよ。この悲しさは……!」

赤松「……」



660:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/03(水) 22:45:50.91ID:olPC3sAu0

巌窟王「……」

巌窟王「試すのをやめよう」

アンジー「神様?」

巌窟王「……歩むがいい。足掻き続けろ! 魂の牢獄より解き放たれて――お前たちは!」

巌窟王「いつの日か、世界を『変える』だろう!」

最原「!」

巌窟王「実はな。先ほどからカルデアと連絡が付かないのだ。クハハ……進退窮まっているのは俺も同様」

巌窟王「これでどの面下げてお前たちのことを試すと言えようか」

百田「……」

百田「はっ。バーカ。励ますんならもうちょいわかりやすい言葉使えっての」ニヤッ

巌窟王「……フン」

最原「……始めるよ。膝を屈したりしない」

最原「それができたら滅茶苦茶楽だし、できたら本当に、仮に殺されるんだとしてもそうしたいくらいだけどさ……!」

最原「頭からこびり付いて離れないんだよ! みんなで頑張ってきた記憶が! その中にいた夢野さんの声も!」

最原「無理だ……最初から。諦められないんだよ」

巌窟王「……余計なお世話だったようだな?」

最原「そうでもないよ。僕は……必ず真相を暴いてみせる」

最原「絶対に……絶対にだ!」

白銀「……」

白銀(余興だよ。仮に真相を暴けたとしても……終着駅は決まってる)

白銀(……楽しみだなぁ)



672:逆転のアフロ安珍 ◆SxyAboWqdc 2018/01/04(木) 18:31:16.42ID:I1Bb8re40

巌窟王「さて。獄原はそろそろクロバエの除去を終えたところだろうか」

百田「確かにそれも大事だと思うけどよ。死体の見分自体はそんな重要でもねーんじゃねーか?」

百田「だってモノクマファイルは今回妙に充実してるだろ?」

最原「……うん。でもそれ、なにかおかしいんだよね」

百田「おかしい?」

最原「だって……えっと、百田くんは夢野さんの状態を見た?」

百田「……実は見てねぇ」

最原「……ちょっとショッキングな内容になるけど、聞きたい?」

百田「ああ。それでいい。遠慮なく話せよ、終一」

最原「ありがとう。じゃあ続けるけど……」

最原「相互汚染狙いの腐った果物の配置。それに並行したクロバエの散布。これらを行ったのはまず間違いなく犯人だと思うけど」

最原「だとしたら、むしろなんでここまでモノクマファイルが充実してるんだろう?」

百田「ん……そうか。巌窟王の二つ目の事件のときは謎解きの鍵になる情報は伏せられまくってたな」

最原「……それにやっぱり、それを引き換えにしても時間がおかしいっていうか」

百田「時間が?」

最原「……ごめん。これ以上は僕自身も言語化できない」

最原(ただひたすら、今回のモノクマファイルが気持ち悪いだけだ)



673:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/04(木) 18:40:01.03ID:I1Bb8re40

最原(……これは僕たちにとって最悪の可能性だ。できれば絶対に潰しておきたい)

最原「巌窟王さん。ひとまず隠し部屋を調べてみてくれない?」

巌窟王「……別に構わない。だがお前、何を考えている? 具体的に俺に何を見つけさせたい?」

最原「そうだな……ええっと……ロックのかかったパソコンとか、そういうの」

最原「どうにかロックをこじ開けて中身を片っ端から見てほしいな」

巌窟王「まだだ。もっと具体的に言え」

最原「……」

最原「……モノクマファイルを……」ゴニョゴニョ

巌窟王「……」

巌窟王「ここにあると思うのか?」

最原「ここでないと困る。他の場所にあったらお手上げだ」

巌窟王「……いいだろう。まったく。こんなときこそBBの手を借りたいのだがな」スタスタ



674:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/04(木) 18:46:50.38ID:I1Bb8re40

最原「あとついでに入間さんにも声をかけておけば盤石かな……」

最原(ん。どうやら図書室から出て行ってはいなかったみたいだ。本棚を調べて……)

最原「……」

最原(……焦ってる? なにを探してるんだ?)

入間「どこだ……ないならないで全然構わないけどよ……!」

入間「……あった! よし!」

最原「何を見つけたの?」

入間「ひっ!」

ガシッ

真宮寺「……証拠を隠そうとしちゃダメだヨ」ギリッ

入間「や、やめ……離せ! 離せよお!」ジタバタ

最原「……なにこれ。デジタルの……時計みたいな」

真宮寺「隠そうとしたってことは、逆説的にこれが何か知ってるってことだよネ?」

真宮寺「……話してくれるでしョ?」

入間「あうう、うううううう……!」



675:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/04(木) 18:56:05.21ID:I1Bb8re40

入間「……俺様の作った時限装置だ……何の時限装置かまでは言わないでもいいだろ?」

最原「時限装置?」

入間「これ単体じゃ何の役にも立たねぇけどな……最低でも何か『発火させるもの』か『起爆させる機構』が必要だ」

入間「まあ……『発火させるもの』を使った装置が一番簡単で用意しやすいんじゃねーの?」

真宮寺「ふーん」

入間「……んだよ! これ以上なにを知りたいってんだよ!」

真宮寺「別に。ただ納得しただけだヨ」

真宮寺「最原くん。実はね、いくつかの本の残骸の中に『燃料の入ったビニール袋が挟まれていた痕跡』があったんだ」

最原「え?」

真宮寺「あと、その袋の端には細長い電気を通すコードが挿入されていた」

真宮寺「最終的にそのコードがどこに向かっていたのかを探していたところだったけど……」

真宮寺「先に入間さんが見つけちゃったみたいだネ」

入間「……」

最原「要は時限発火装置がこの図書室の中にあったってこと?」

真宮寺「おそらく。まあ、ビニールに入った燃料の量そのものは、一つ一つでそこまで多くはなかったはずだヨ」

真宮寺「本に挟み込んでも目立たない程度の薄さだったと思うし……」

真宮寺「時限装置自体は、本棚の奥に隠しておけばコード含めて本に隠れて見えなくなる」

真宮寺「……本を引き抜かれたら一発でバレるっていう最悪の弱点はあったけど」

最原(誰も読まないような本棚を選んで装置を作れば、万が一が起きない限りはバレない、か……)



676:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/04(木) 19:02:57.83ID:I1Bb8re40

最原「……でもこんな装置を作ったところで意義がない」

真宮寺「死体を燃やすにしたって、隠し部屋ではなく図書室を選んだってところで妙だし」

真宮寺「……確かにこれと言った意義は見つからないよネ」

最原(それ以前に、なんでわざわざ入間さんの時限装置を使ったんだ?)

入間「……」

最原(……なにか様子がおかしいし。あの調子だと、最初からここに時限装置があることがわかってたみたいな……)

入間「な、なあ。もういいだろ。俺様はちょっと……用事があるんだが……」

最原「ごめん入間さん。巌窟王さんと一緒に隠し部屋を調べてくれないかな?」

入間「は?」

最原「入間さんの手があれば、多分あの部屋の捜査ももっと効率的に進むと思うんだけど」

入間「……ざけんな! なんで俺様がテメェらザコどものために……!」

真宮寺「大人しく従っておいた方がいいんじゃない?」

真宮寺「……自分自身の証拠を隠滅するよりかは、他の犯人を挙げる証拠を見つけた方が有意義だヨ。潔白なら猶更ね」

入間「……」

入間「……つるぺた口リの死体はどうなってる?」

最原「あ、えーと……」

最原「……あっ」

入間「?」

最原「多分、大丈夫だと思う。臭いの方はどうにもできないけど、視覚の方なら心配しなくていい」

入間「あー……?」



677:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/04(木) 19:18:02.71ID:I1Bb8re40

隠し部屋の中

アンジー「……」

入間「……これ。巌窟王のマントじゃねーか」

最原「うん」

最原(夢野さんの死体の上には、巌窟王さんのマントがかけられていた。その近くではアンジーさんが跪いて、両手を組んで祈っている)

アンジー「……神様は優しいから」

入間「……」

巌窟王「入間。暇なら手伝え」

入間「あ?」

巌窟王「モノクマのカラーリングがされたノートパソコンを見つけたが、ハンマーか何かで粉々に壊されている」

巌窟王「お前なら修繕できるはずだ」

入間「……やってやるよ。貸せ」

最原「……」

最原(ここは巌窟王さんたちに任せよう。僕は他にも調べることがある)

最原(正直、入間さんをここに詰め込んだのは足止めの意味もあるし……今のうちに)



679:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/04(木) 20:40:06.84ID:I1Bb8re40

カルデア

アタランテ「……」キョロキョロ

イシュタル「あー、もう。部品持って来いって、美と豊穣の女神のことをなんだと思って……」

ナーサリー「仕方ないのだわ。チューンナップには色々と入用だし……」

ナーサリー「あと足が付かない場所から持ってくる都合上、どうしても……あら。アタランテ」

アタランテ「ナーサリーか。ちょうどいい。最近BBとつるんでいたからな」

アタランテ「BBはどこだ?」

ナーサリー「……何か御用なら私が伝えておくけど、それじゃあダメ?」

アタランテ「む……? 別にそれでも構わんが。アルテミス様からレンタル品を返して来てと言われただけだからな」

アタランテ「そら。マンウィ●のCD各種だ」ガチャッ

ナーサリー「……あら? そんなものBBはもっていたかしら……まあ一応受け取っておくけど」

アタランテ「ではな。よろしく頼むぞ」スタスタスタ

イシュタル「……ちょっと中身見てみましょうか。イヤな予感がするわ」

ナーサリー「私もそう思っていたところよ」カパリッ



血文字の手紙『復旧マダー? by女神同盟カルデアエディション』



イシュタル「」

ナーサリー「」

アタランテ「あ。忘れていた。私もそのCDを聞いたのだが、いい趣味をしている。後で私にも貸して……」ヒョコッ

イシュタル&ナーサリー「……」ガタガタガタ

アタランテ「!?」ガビーンッ!



この後、イシュタルは『食べる物がすべて激辛マーボー豆腐の味になる豆腐ジェノサイドの呪い』を、ナーサリーは『微妙に湿って本のページがよれよれになるジメジメの呪い』を受けた。BBだけは全力で呪いから逃げた。



684:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/05(金) 20:25:19.04ID:C3Foozo70

図書室

最原「えーっと……真宮寺くん。ちょっと聞きたいことがあるんだけど」

真宮寺「なに? 引き続き火事の現場調べてるけど、今のところ特になにも見つかってないけど?」

最原「あ。いやそうじゃなくって。巌窟王さんが破壊した直後の扉から出た入間さんのことを最初に見かけたのって誰だろうって思って」

真宮寺「何故か知らないけど、赤松さんが見つけてたネ。それ以上のことは知らないヨ」

最原「うん。そっか。ありがとう」スタスタ

真宮寺「……ねえ。ちょっとでも僕のこと疑ったりしないの?」

最原「疑ってるけど、今言ったことが嘘じゃないことはわかるよ。真宮寺くん、意味のない嘘は吐かないでしょ」

真宮寺「……なるほどネ。ククク」

真宮寺「それを引き換えにしても無防備すぎると思うのは、僕の余計なお世話かなァ?」

最原「今日は妙に突っかかるね。ごめん、構ってる時間が惜しいからもう本当に行くよ」スタスタ

真宮寺「……ククク」



686:おめでとう! ◆SxyAboWqdc 2018/01/05(金) 20:30:13.34ID:C3Foozo70

女子トイレ周辺

茶柱「……」

最原「あれ。茶柱さん。こんなところで何してるの?」

茶柱「見張りです。見張り」

最原「見張り?」

王馬「さーいはらちゃんっ!」ピョコンッ

最原「え゛」

最原(王馬くんが女子トイレから出て来た!)

最原「お、王馬くん! 逃げて! 茶柱さんにこんなところ見られたら!」

茶柱「ええ。情状酌量の余地なく確実に始末しますね。ただ今だけは別なんです」

最原「……え?」

赤松「あのね。最原くん。あの隠し部屋と、女子トイレが繋がってたんだよ」

最原「えっ?」



687:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/05(金) 20:39:01.45ID:C3Foozo70

再び隠し部屋

最原「……ああ、本当だ。確かにあの部屋だ」ガチャリンコ

最原(と、同時に、あのときの巌窟王さんがどこから入ったのかもわかった)

最原「巌窟王さん!? なんで女子トイレから入ったの!?」ガビーンッ!

巌窟王「女子トイレから煙が上がっていたのだ。緊急時故に、アンジーを伴って中へと入った」

巌窟王「そこで肉眼ではわからない隙間から煙が出ているのを発見し、隠し扉の存在に気付いたというわけだ」

最原(なるほど。隠し部屋と図書室は隣接しているから、煙が直接的に隠し通路に入って行ったわけか……)

最原(僕たちが一階にかけつけたときにはどこもかしこも煙だらけだったから、一番目立つ煙の発生源の階段を優先したけど)

最原(他の人たちが一階に遅れてかけつけて窓を開けまくったお陰で、二つ目の煙の発生源が見えたってところかな)

天海「……」

最原「……天海くん? どうしたの、凄く顔色悪いけど」

天海「なんでも……ないっす……」

最原「……」

最原(今回は事件が事件だからな。ちょっと調子が悪くなってるのかもしれない)

赤松「……」



688:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/05(金) 20:51:18.85ID:C3Foozo70

戻って女子トイレ

最原「……あ。そうだ赤松さん。一つ聞きたいことがあるんだけど」

赤松「ん? なに? なんでも聞いて」

最原「あの部屋から出て行った後、一番最初に入間さんを見つけたのが赤松さんだって聞いたんだけど」

最原「どこで見かけたの?」

赤松「超高校級のコスプレイヤーの研究教室周辺だったよ」

最原(……スパコン室より上の階だ)

最原「そこで入間さんは何してたの?」

赤松「……よくわからないよ。ただ何かを見て顔を真っ青にしてたってことしかわからない」

赤松「もちろん、私も訊いたんだよ? 何してるのって。でも全力ではぐらかされちゃって」

最原(テンパった入間さんの顔が目に浮かぶようだな……)

最原(……入間さんは半ば無理やり巌窟王さんに協力させてる。証拠を隠滅される前になんとか調べ尽くしたいな)

最原「ありがとう。助かったよ赤松さん。ちょっと白銀さんの研究教室を見に行ってくるね」

赤松「……」

赤松「ねえ。酷い顔色をしてるのは、キミもだよ? 最原くん」

最原「!」



689:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/05(金) 21:03:13.26ID:C3Foozo70

赤松「もちろんさ、全員本当に悲しんで、それでも自分の足に鞭打って前に進もうと努力してるから似たり寄ったりだけどさ」

赤松「キミは特別に酷いよ。見ててこっちの胸が痛くなりそうなくらい」

最原「……」

最原「そんなことないでしょ。気分が最悪なのは確かだけど、僕だけが特別ってわけじゃ……」

赤松「ううん。キミは特別。ちょっと頑張り過ぎだよ」

赤松「……背負いすぎだよ」

最原「……だからって立ち止まるわけにはいかないじゃないか」

赤松「最原くん。そこまで頑張るのは、巌窟王さんがいるから?」

最原「ッ!」

赤松「……巌窟王さんが当たり前にやれることは、キミには当たり前じゃないんだよ」

赤松「今回ばかりは膝を折って、泣きじゃくって役立たずになっても構わないと思う」

最原「……赤松さんらしくないな。そんなネガティブなこと言うの」

赤松「私は最原くんを信じてる。やろうと思えばやれる人。それを今までの学園生活で見て来たよ」

赤松「……だから言うんだけどさ。キミ、この学園生活を切り抜けることしか考えてないでしょ」

最原「……え? それ以外に何か考えることってある?」

赤松「出てからのこと」

最原「……出てから?」

赤松「……まさか、ずっとそんな生き方していくつもりじゃないよね?」

最原「は? いや、そんなことは……!」

赤松「ねえ。私はさ、最原くんが心配だよ。その生き方がクセになっちゃいそうで」

最原「……」



690:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/05(金) 21:14:32.43ID:C3Foozo70

最原「……格好よかったから」

赤松「……」

最原「どんな理不尽にも膝を屈さないあの人が、格好良かったんだ」

最原「困難から目を逸らさない姿に憧れたんだ」

最原「僕は弱いから、ああなれたらどれだけいいかって思ったんだ」

赤松「……そっか」

最原「……できる限り、マネし続けるよ。それでみんなが助かるのなら、それが一番いい」

最原「学級裁判のおしおきが終わったら、最低でも一人欠けちゃうけど……!」

最原「あんな眩しい生き方を見たらさ、膝を屈したくなくなるじゃないか!」

赤松「……私は諦めないことができる。性格的に。少なくとも最原くんより自然にさ」

赤松「だから気付くの遅れちゃったよ。最原くん、よく聞いて」

赤松「……諦めたり、立ち止まったり、投げ出したりすることで守れるものは絶対にある」

赤松「お願いだから、自分の心が壊れる前には絶対にそれを思い出して」

赤松「……ごめんね。キミを止められる私じゃなくって、本当にごめん……!」ポロッ

最原「あ、わ、わ! なんで泣くの!」オロオロ

赤松「なんか……不甲斐なくって……! やること成すこと裏目に出てばっかりだ、私……!」エグエグ

最原「あ、あはは……いいんだよ。そんなことで泣かなくってもさ」

最原「僕は多分、コレでいい」

赤松「最原くん……!」






茶柱「赤松さんを、泣かせましたね……?」ゴゴゴゴゴゴゴ

最原「あっ」

茶柱「死」ブンッ

最原「死!?」ガビーンッ!



グシャッ



691:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/05(金) 21:18:23.73ID:C3Foozo70

最原(出てから、か……)

最原(出たところで、何があるんだろうな)

最原(滅んだ世界? それとも、それ以外の何か?)

最原(……わからない。ただ、僕に希望があるとしたら外の世界に、じゃないだろうな……)

最原(……じゃあどこに? と訊かれても困るけど)

最原(と、考えながら再び僕は意識を手放した)チーン

赤松「さっ、最原くーーーんッ!」ガビーンッ

茶柱「まったく油断も隙もない」



703:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/06(土) 20:18:07.43ID:zKxD9rMY0

隠し部屋

巌窟王「……祈り終わったか?」

アンジー「うん。ついでにお別れもしっかり済ませて来たよー」

巌窟王「そうか。ならば……俺の言いたいことはわかるな?」

アンジー「……んー」

アンジー「一緒に捜査できて嬉しい?」

巌窟王「……」アセッ

天海(多分言いたいことをそのままズバリ言い当てられすぎて面喰ってるっすね、アレ!)アワワ

アンジー「今までは神様が被害者だったり、アンジーが被害者だったりして散々だったからねー」

アンジー「アンジーも嬉しいよー?」

巌窟王「……戯言だな」

天海「自分で聞いておいて……」

巌窟王「何か言ったか?」

天海「なんも言ってないっす……」



704:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/06(土) 20:29:51.26ID:zKxD9rMY0

入間「ノーテンキヤローどもが。人死んでんだぞ」ガチャガチャ

巌窟王「そうだな。だが、死んでしまったものはどうしようもない」

巌窟王「悲しむだけでは人は何もできないからな」

アンジー「……やっぱり神様でもどうにもできない?」

巌窟王「む? クハハ! 『どうにかしたいと思っているのか』と訊かれるかと思いきや! 意外だなァ、アンジー?」ニヤァ

アンジー「……」ムクー

巌窟王「……謝罪しよう。今のは忘れろ」

天海(なんか最近アンジーさんの巌窟王さんへの扱いが上手いっす……)

巌窟王「無理だな。どうにもできない。サーヴァントシステムの根幹をなす聖杯を使ってさえ難しいかもしれん」

巌窟王「かなり広義的な意味で死者の蘇生や過去のやり直しは、おそらく不可能ではないが……」

巌窟王「断言しよう。そんなものを目指すくらいなら、他の何かに傾倒した方が遥かに有意義だ」

巌窟王「この件についてコストにリターンは釣り合わない。絶対に」

天海「可能性はなくもないけど、口が裂けてもお勧めできないくらい酷い道ってことっすね」

巌窟王「それでも進むと言うのなら全力で支援はしよう」ニィッ

アンジー「やだ」

巌窟王「……そうか」

巌窟王「……フン。そうか」シラー

天海「自分で言ったくせに露骨にいじけないでほしいっす!」

巌窟王「いじけてなどいない」



705:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/06(土) 20:39:57.39ID:zKxD9rMY0

巌窟王「さて。入間の修繕が終わるまでは暇だ。アンジー、捜査を開始するぞ」

巌窟王「天海も手伝え」

天海「あいあい。了解っす」

巌窟王「では……この何か妙なベールに守られた謎のオブジェクトから捜査するか」バサッ

マザーモノクマ「やっほー」

巌窟王「……」バサッ

天海「え? なんで戻したんすか?」

巌窟王「……頭が痛くなってきた」

アンジー「肩こりかなー? 揉むー?」

巌窟王「頼む」

アンジー「ちょっと屈んでー」

天海「……ええと、一体何が……」バサッ

マザーモノクマ「ハロー」

天海「……」バサッ

天海「あの。アンジーさん。俺も頭痛が……」

アンジー「やだよー。今は神様の肩揉んでるんだもん」

巌窟王「……」ハフー

天海「ええーっ……」



706:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/06(土) 20:49:26.15ID:zKxD9rMY0

五分後

天海「マザーモノクマ?」

マザーモノクマ「そだよー! すべてのモノクマの母……オマエラが予測していたモノクマの生産機構だよ」

マザーモノクマ「あ。一応、今のうちに言っておくね。ボクもモノクマのカウントに入るから、攻撃は校則違反と見なすよ」

巌窟王「仮にそうだとしても、校則を犯してでも破壊する価値があるだろうがな?」ボォゥッ

マザーモノクマ「ちょ、ちょちょちょ……!」アタフタ

天海「確かに俺もコレを壊したい気持ちでいっぱいっすけど、ひとまずそれは保留しておきましょう」

天海「……それに、これがモノクマの本体だと言われてもにわかには信じがたいっす」

巌窟王「実際に作ってみせろ」

マザーモノクマ「あ、ダメ。今は首謀者権限で『一定の操作』にロックがかけられてるから」

マザーモノクマ「仮に首謀者になにかを命令されたとしても、このロックが外れるまでは何もできないよ」

巌窟王「ふむ……コンソールはどこだ……」ガチャガチャ

マザーモノクマ「ああっふーん! いやん、そんなところいきなり……いじっちゃ、らめぇーーーッ!」ビクンビクン

巌窟王「……どうやら声帯認証のようだ。事前に首謀者がかけた合言葉がない限りはロックは解除されないだろうな」

天海「せめていつからロックがかけられたのかくらいは言ってくれるっすよね?」

マザーモノクマ「……」

天海「ダメか……」



707:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/06(土) 21:01:21.75ID:zKxD9rMY0

天海「でもなんでこんなロックが……首謀者自身にどんなメリットが?」

巌窟王「いつからロックをかけたのか、と問うた時点でわかっているものと思ったがな。それとも目を逸らしているだけか?」

天海「……」

アンジー「アンジーたちが首謀者を追い詰めてるってこと?」

巌窟王「かなり好意的に見るならそうだ。他の見方だと、こうだろうな。首謀者は――」

天海「俺たちの中にいる」

天海「……そして、夢野さんを殺した人と同一人物」

巌窟王「……そうら、わかっていただろう?」

天海「でも夢野さんを殺したのが首謀者なら、ずっと死体を隠していればいい。それをしなかったのは一体なんで……」

巌窟王「二通り考えられる。首謀者自身が外の世界の真実を知らなかった場合」

天海「論外の仮説っす」

巌窟王「もう片方の仮説は……これが俺たちに対する最後の謎であり、最後の勝負だった場合」

巌窟王「俺たちを皆殺しにするつもり、という可能性」

天海「……最悪っすけど、それが一番可能性が高いのでは?」

巌窟王「……さあ。この場合、どうすればいいかわかるか? アンジー」

アンジー「返り討ちー!」キラキラキラ

巌窟王「上出来だ!」ナデナデナデ

アンジー「わーい!」

天海「……それしかないんすかね」

巌窟王「……それ以外の道があるというのなら示してみせろ」

天海(俺は……!)



708:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/06(土) 21:10:51.26ID:zKxD9rMY0

巌窟王「……」

アンジー「どうしたの神様ー? 難しい顔になってるよー?」

巌窟王「いや……最原が覚えていた違和感の正体に気付いた」

巌窟王「この事件、根本的なところで不和がある」

天海「不和?」

巌窟王「……犯人が首謀者だとしたら、現状の展開のフェアとアンフェアの比率が妙だ」

天海「ん……」

天海(そういえば……犯人が首謀者なら、もっと事件を撹乱する方法があってもおかしくないはずっすよね)

天海(いや。ハッキリ言って、他の誰かに罪を押し付けて逃げ切った上で学園生活を続行なんて『明確な反則』すらやられても気付かなかったはず……)

巌窟王「マザーモノクマ。この質問には答えられるか?」

マザーモノクマ「ん? なぁに?」

巌窟王「入間が直しているパソコンの正体だ」

マザーモノクマ「ああ。あれは……」

マザーモノクマ「……ま、直すことと中身を見ることに関して制限はしないから、自分で確かめれば?」

巌窟王「……いいだろう」

天海「……?」



710:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/07(日) 10:59:08.11ID:2u7XNp/j0

春川「……」ジーッ

百田「どうだハルマキ。なにかわかるか?」

春川「……確かに二日間程度ではありえないほどに腐敗が促進されてるね」

春川「これ、相互汚染やクロバエ以外にも、なにか薬品とか使われてるのかも……」

春川「あと、傷口の部分が特に損壊が酷くって、本当に銃殺だったのか怪しいくらいだよ」

巌窟王「傷口というと……」

春川「胸のあたりだね。ナイフかなにかでズッタズタにされて乱暴に『開かれてる』。ジャック・ザ・リッパーなら鼻で笑うような乱暴さだよ」

春川「ここ以外に大した外傷がないことを考えると射入口はまず間違いなくここだったと推測できる」

巌窟王「……今、なんと言った?」

百田「巌窟王? どうした?」

春川「……流石に気づくか。そう。ここ以外に外傷はない」

春川「『銃弾が出て行った形跡がない』ってこと。貫通ではなく盲管。私が『銃殺かどうかも怪しい』って言ったのもそれでさ」

春川「……どうも見つからないんだよね。銃弾が。どこにも」

百田「は? いや、それは変だろ。銃本体がここに置かれている以上、銃弾一つ処分したところで何になるってんだ?」

春川「でもないものはない。口径が小さすぎる銃だと検視してもわからないくらい肉に紛れるってことはあるけど……」

春川「……そこに置いてある銃が凶器ならそれも絶対にありえない」



711:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/07(日) 11:12:00.82ID:2u7XNp/j0

巌窟王「……大きいな。この型はリボルバーか?」

春川「S&WモデルM500。マニアでなくっとも一般で広く知られているかなり有名な型の銃だよ」

春川「……威力が高すぎてね」

百田「ん? 銃なんだから威力が高くて当たり前なんじゃねーか?」

春川「これは常軌を逸してるんだよ。巌窟王、銃に関しての知識は?」

巌窟王「残念だが『銃という概念』に関してだけだ」

春川「そっか。じゃあザックリ説明するよ」

春川「これ『人を撃つこと』を一切想定してないんだよね。毛皮が分厚いケモノを相手にした史上最強のリボルバーだから」

春川「威力がアホみたいに高いし、その反動も大きすぎて欠陥銃と呼ばれてるくらい扱いにくいんだよ」

巌窟王「……む……? 待て。銃弾は貫通していないのではなかったか?」

春川「それなんだよね。こんなもの使ったら、夢野くらいの体格なら上半身の大半が吹っ飛んでたと思うよ」

百田「……さ、流石に誇張だろ?」

春川「……そう思う?」

百田「おいおい……!」

春川「……まあ、もし万が一、これが本当に使われたとするなら、犯人は相当限定されてたはずだけどね」

春川「これを使って無傷で済むヤツなんて、本当に、生徒の中でも一握りだったろうからさ」

巌窟王「……」



712:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/07(日) 11:21:12.84ID:2u7XNp/j0

巌窟王「これの出所はお前の研究教室か?」

春川「……え?」

巌窟王「?」

百田「……巌窟王。知らなかったのか? ハルマキの研究教室に、本物の銃は一切置いてないんだぜ?」

巌窟王「何ィ? 一つもか? 一つたりともか?」

春川「不思議なのはそこも、だね。じゃあこの銃の出所はどこなのか……」

春川「……普通の生徒が現状行き来できる範囲に、ここまで本格的な実銃があった記憶はない」

春川「誰かが今までどこかに隠していたか、さもなければ……」

百田「『普通の生徒が行き来できる範囲以外に行けるヤツが犯人』の場合か!」

巌窟王「……」

春川「……なんだろう。この感覚……凄く覚えがあるんだけど……」

巌窟王「春川。お前も感じるか。違和感を」

春川「うん。でも……それだけじゃなくって、なにか凄く既視感があるんだよね」

春川「なんでだろう?」

百田「……?」



714:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/07(日) 17:59:00.08ID:2u7XNp/j0

巌窟王「他に夢野の死体について何か特徴は?」

春川「右手」

巌窟王「右手?」

春川「……が、なんかよくわからないけどシュレッダーにかけたみたいにぐっちゃぐちゃ」パサッ

春川「袖に隠れて見えづらいかもしれないけど、コレ袖から手が出てないわけじゃないんだよ」

百田(ハルマキは夢野のことを覆っている巌窟王のマントをあげる。巌窟王はそれを覗き見て苦い顔になった)

巌窟王「……指を切断した後で踏みつけたり、更に刃物で破損させたりしているようだ」

百田「……まさかとは思うが、拷問ってことか?」

巌窟王「安心しろ。死んだ後のことだ。出血の痕でわかる」

百田(東条の事件のときに話題に上がってたな、そういや。死んだ後は血流がない、か)

巌窟王「根本的にパーツが欠けているようだ。切断された先が見当たらない」

百田「指がってことか?」

巌窟王「消えているのは人差し指、中指、薬指、だな」

春川「……!」

百田「ハルマキ? 何かに気付いた顔してるぞ。どうした?」

巌窟王「いつもの仏頂面にしか見えなかったが」

春川「いや……大したことじゃないんだけど」

春川「……射入口が胸にあるってことは、夢野は真正面から撃たれたってことだよね?」

百田「それが?」

春川「だとしたら、夢野は犯人の体のどこかを気絶する前に引っかいたかも、と思って……」

春川「……指が犯人を示すカギになるかも」



715:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/07(日) 18:51:25.71ID:2u7XNp/j0

最原「……ハッ! 本日二度目!」ガバリッ

王馬「あ。起きた。そして東条ちゃんをこの場に引き留めたのが完璧に無駄になった」

東条「いいのよ。図書室の方は白銀さんや真宮寺くんが調べていたから」

最原「どのくらい気絶してた!?」

王馬「大体十分くらいかなー?」

最原「ごめん、急がないと……あ! そうだ! 手が開いてる人は僕とツーマンセル組んでくれない?」

王馬「お供するよっ!」ピカリンッ

最原「……」ヒクッ

茶柱「……転子もついていきます」

最原「ありがとう! 本当にありがとう! 感謝の言葉がそれしか見つからない!」

王馬「ふこーへー」

最原「じゃあ、さっそく行こう! 白銀さんの研究教室周辺に!」ダッ

赤松「あ……行っちゃった。凄い急いでたね」

赤松「……つっ……?」

東条「……赤松さん? どうかしたの?」

赤松「ん? いや、なんでもない……?」

赤松(……腕に引っかき傷? なんで? いつの間に……?)



718:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/07(日) 19:27:25.41ID:2u7XNp/j0

白銀の研究教室周辺

最原「……」

最原(巌窟王さんのデバイスがなんで機能しなくなったのかわかった……入間さん……キミと言う人は本当に……)ズーン

王馬「これ、入間ちゃんの研究教室の設計図に書かれてたイリスアゲート・エレクトボムとそっくりそのままな形してるね!」

茶柱「なんです、それ?」

王馬「巌窟王ちゃんとのホームとの連絡手段を完璧にぶっ壊すための発明品だってさ。持続時間は三日って書いてあったかな」

茶柱「は? なんでそんな、何の意味もない発明品がこんなところに……」

最原「何の意味もないってことはないんじゃないかな……」

茶柱「……それ、どういう意味です?」

最原「いや、その……これ、実は元々入間さん発案の発明品じゃなくって依頼を受けて作った品らしくって……」

茶柱「こんな爆弾を一体誰が作ってくれと?」

最原「……」

王馬「それはもちろん嫉妬に狂った、は――」

最原「殺されたくなかったらそれ以上口を開かない方がいいから!」ガバッ

王馬「もがもが」

茶柱「んー?」



719:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/07(日) 19:45:36.27ID:2u7XNp/j0

最原「でも色々とチューンナップされてるみたいだな。なんかのアクシデントで不発になってる爆弾以外は全部……」

王馬「薬品か何かの影響かな? 砕け散ったパーツがことごとく焼けて判別不能になってるね」

王馬「不発の爆弾がなかったら、コレがなんだったのか俺たちでもわからなかったかも」

茶柱「不発の原因は一体なんなんでしょうか」

最原「……」

最原(タイマー……か? もしかして)

最原(入間さんの手が直接届かない場所で爆発したとしたら、リモートコントロールでの遠隔爆破か、さもなくば時限爆破の二通りだ)

最原(でも、入間さんは明らかに、この爆弾が起動したことに対して慌てていた)

最原(遠隔爆破じゃない。これを解除するのを忘れた末に、うっかり爆発させてしまったという感じだ)

最原(……だとすると、元はコレ、時限式だったんじゃ)

最原「不発の爆弾にはタイマーらしきものが見当たらないよね?」

王馬「……ん? それが? タイマーのない爆弾だってあるでしょ?」

最原(さて。今回の件に関してはどうだろう)

茶柱「……あれ? ねえ。この破裂した爆弾のヤツだけ、パーツの形が変ですよ?」

最原「え?」

茶柱「分量が他より少し多いような……」ヒョイッ

最原「……」



何かの残骸「」ブスッ……



最原「!」

最原(火薬の臭い……!)

最原「茶柱さん!」ガシッ

茶柱「ひゃっ!? ちょっと、いきなり転子から取りあげないで――」

最原「!!」

最原(ああ、くそっ! 迂闊だった! コレは爆弾のパーツなんかじゃない!)ブンッ

最原「伏せて!」ガバリッ

茶柱「きゃあっ!?」

王馬「んー? 今最原ちゃん、何を投げて……あっ」

王馬「ああ、そういうことかよチクショウッ!」バッ




バァンッ!



722:私自身のための備忘録 ◆SxyAboWqdc 2018/01/07(日) 21:07:22.18ID:2u7XNp/j0

コトダマ
最原サイド
・モノクマファイル
・充実すぎるファイル情報
・時限発火装置
・隠し通路
・爆音直後からの入間の様子
・イリスアゲート・エレクトボム
・奇妙な残骸

巌窟王サイド
・マザーモノクマ
・声帯認証のロック
・夢野の死体の状況
・S&WモデルM500
・夢野の右手



732:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/08(月) 18:13:59.96ID:PnjfJZhF0

最原「……はあっ……はあっ……!」

最原「茶柱さん! 無事!?」

茶柱「無事っていうか……一体なにが起こったのかわからないんですけど。なんです今の破裂音……」

最原「大丈夫!? 怪我は……ない? ない。よかった!」

最原「……本当によかったぁ……『今度こそ』守れて……!」

茶柱「……ちょっと。この際だからあなたに言っておきますが、転子は!」

最原「痛いッ!」

茶柱「ん?」

王馬「……あらら。最原ちゃん。なにかが左肩にめり込んでるよ」

ポタッ

茶柱「……血?」

茶柱「最原さん、あなた大丈夫なんですか!? 何が――!」

最原「は、ははは……大丈夫。致命傷じゃないみたいだから……」

茶柱「……いい加減に――!」

王馬「あのさぁ。痴話喧嘩なら後にしようよ。至近距離でピーチクパーチクわめきあってても緊張感ないし」

最原&茶柱「え」

最原「……」

茶柱「ああー……確かに。どさくさに紛れて抱き着かれてますねー……」

茶柱「……」カァァ

最原(とても危ない。茶柱さんが怒りで顔を真っ赤にしてあらせられる)ガタガタ

王馬(としか考えられない最原ちゃんは反比例するように顔から血色が失われていくー)



733:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/08(月) 18:19:24.38ID:PnjfJZhF0

最原「ご、ごめん! とてもごめん! ひとまず僕はすぐにどくから!」

王馬「茶柱ちゃん! 最原ちゃんを今動かしちゃダメだ! 俺が今から緊急治療を行う!」

最原「え」

ガシッ

茶柱「……ふ、ふふふふふふふ。これは嘘。これは夢……転子が男死に抱き着かれるなんて……」ギュウウウウ

最原「今となっては茶柱さんが抱き着いてるけど!?」ガビーンッ

王馬「さーて。それじゃあ俺がこのナイフで、今から最原ちゃんの左肩に埋まった『何か』を取り出してあげるからねー」

最原「え。待って。待って。待って? 待って! 待っ――」


ブスッ


最原「ぎゃああああああああああああああああ!」



734:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/08(月) 18:25:33.40ID:PnjfJZhF0

数分後

ズポンヌッ

王馬「よし抜けたー!」

最原「ああっぐ……ぐおおおおう……!」ガタガタ

茶柱「……まったく。転子のことなんか庇うからこうなるんですよ」

最原「うん。ごめん。本当にごめん、と言いたいところだけど、流石にこれは罰の度が過ぎてる……!」

最原「ていうか出血の度合いが酷くなって茶柱さんまで汚れてるし!」

茶柱「え? あー……なんでしょう。ちょっと麻痺っちゃいました」

最原「……」

王馬「さてと。じゃあ改めて、最原ちゃんの左肩に埋まった何かを見てみよう」

王馬「うん! 口径は小さいけど紛れもなく弾丸だね!」

最原「弾丸?」ピクッ

最原「……」

最原「あの。茶柱さん。もう本当に勘弁して」

茶柱「?」

最原「……もう離して……」

茶柱「あっ!」

バッ

最原「や、やっと解放された……」

茶柱「……うう~」



736:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/08(月) 18:34:45.46ID:PnjfJZhF0

最原「口径が小さい……のかどうかは僕には微妙に判断が付かないんだけど……」

王馬「間違いなく小さいよ。なんなら春川ちゃんに問い合わせてみようよ。後でね」

王馬「……で。さっきの破裂した残骸から、なんでこんなものが飛び出したか、だけど……」

最原「……アレだね」

最原(先ほど僕が投げた残骸が、内側から弾けたような形でバラバラになっている)

最原「……これ。薬品で焼ける前は銃だったんじゃないかな」

王馬「それが薬品の侵蝕で弾薬と反応して、今このタイミングで暴発したって? まあありえなくはないだろうけどさ」

王馬「でもアレ、焼けて溶けたことを考慮しても玩具みたいに小さかったよ。俺の記憶が正しければせいぜい」

最原「茶柱さんの手のひらからはみ出る程度……」

王馬「焼ける前は、かなり最小限の殺傷能力しか持たない、それこそ女性でも楽々扱えるような小型銃だろうね。俺の趣味じゃないなー」

最原「……女性でも扱える、か」

茶柱「……最原さん。それは今はどうでもいいので、はやく東条さんのところに行きましょう」

最原「なんで?」

茶柱「なんでって……あなたの怪我の治療ですよ」

最原「あっ」

茶柱「……あなたって人は本当にバカですね」

最原「そ、そんなしみじみ言わなくてもさ……」オロオロ



738:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/08(月) 19:57:53.97ID:PnjfJZhF0

最原「……」

最原「あ、そうだ。東条さんのところに行くのはナシにしよう」

茶柱「は?」

最原「ちょっとあのスパコン室のことが気になってさ……一応調べておきたいんだ」

最原「茶柱さん。悪いんだけど東条さんをスパコン室に呼んできてくれるかな?」

最原「これなら僕が東条さんのところに行ってから、わざわざスパコン室に戻るっていう捜査時間のロスも防げるし」

茶柱「……何を、言ってるんですか……?」

最原「……あ、う、うん。ごめん。やっぱりダメか」

最原「東条さんも調べたいことがあるだろうし……茶柱さんにとっても手間だしね」

最原「……どうしよう。でもこのままだと血でそこら中汚しちゃうし……」

茶柱「最原さんッ!」

最原「えっ!? な、なに!?」

茶柱「……たまには自分のことも省みてくださいよ。あなた、どんどん悪化してる」

茶柱「痛いとか、血が流れてるのが不安だとか、死んじゃったらどうしようとか……そういう自己中心的なこと考えてください」

茶柱「その悪化の原因が転子にもあると思うと胸が張り裂けてしまいそうです」

最原「え!? いや、茶柱さんはたまに凄く暴力的なだけで、それ以外特に……」

最原「……よく考えたら大問題だけど問題ないよ!」アセッ

王馬「誤魔化し方凄い下手」

茶柱「……東条さんならすぐに連れてきます。だからこれ以上、転子のことを悲しませないでください」

茶柱「夢野さんだけでも、たくさんなのに……!」

最原「……ごめん」

最原(という謝罪の言葉を受け取る前に、茶柱さんは走り去って行ってしまった)

最原(あんなに悲しそうな顔を見たのは初めてだ。まともにぶん殴られるより効いたかもしれない)

最原「どうすればよかったのかな……」

王馬「ん? どうもできないでしょ。気にするだけ無駄だって!」ケラケラ

最原(この人本当に臆面もなくこういうこと言うよなぁ……)



739:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/08(月) 20:16:29.16ID:PnjfJZhF0

最原「でもこの傷本当にどうしよう」

王馬「俺の予備のスカーフを突っ込んで止血してあげよう」グイッ

最原「あ゛あ゛ぎあああああああああッ!」

王馬「ひとまず血は止まったよー」

最原「せめて一言ことわってから実行してぇぇぇぇぇぇ……!」ガタブル



隠し部屋

百田「……あっ! ない! ねーぞ!」

春川「百田? どうしたの?」

百田「ハルマキ! 俺のデ――」

巌窟王「……?」

百田「……で、で、デ-トの約束、忘れてないだろうな?」

春川「は?」

巌窟王「百田。そういうことを言うヤツは大抵、後で死ぬ」

百田「う、うっせー!」

百田「……っぶねー、口から出まかせでなんとか誤魔化せたぜ」フイー

春川「……」

春川「私の部屋にする?」

百田「は? 何の話だ?」キョトン

春川「ふんっ!」バキィッ

百田「ハイキック!?」ゴヘア

春川「……くだらないこと言ってないで捜査再開するよ」プンプン

百田「????????」イテェ



ドタドタドタッ


茶柱「東条さん! 東条さんはいますか?」

巌窟王(茶柱……?)

東条「どうかしたの?」

茶柱「それが……!」

東条「……!」

東条「任せて。すぐに行くわ」ダッ

巌窟王「……」

百田「……おっと。東条だけじゃ心配だぜ。俺もちょっと様子見てくらァ……」ソローッ

春川「……?」



745:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/09(火) 19:03:52.35ID:pfNLB4ZS0

巌窟王「茶柱。最原に何かがあったのか?」

茶柱「……ちょっと怪我しちゃいました。更に王馬さんのちょっかいのせいで悪化しました」

巌窟王「王馬……」

茶柱「……元はと言えば転子を庇ったせいですよ。庇ったりしなければ怪我なんかしなかったのに」

巌窟王「余計なお世話だったか? そう断じるだけの胆力がお前にあるのか?」

茶柱「……考えれば考えるほどにイライラします。夢野さんが死んだことに関して悲しんでいるのは自分自身もでしょうに」

茶柱「こっちの気も知らないで、自分の傷は置き去りで人の心配してばかり」

茶柱「同じ痛みを背負ってるのに、こっちばかり守られたら、転子の立つ瀬がないじゃないですか」

巌窟王「……」

巌窟王(チッ。あの人間城塞の顔がチラつくな……)

巌窟王「気に入らないのなら導けばいい。自分好みにな」

茶柱「……」

巌窟王「なあアンジー? そう思うだろう、お前もッ!」





アンジー「そうですね。確かにそう思います」

巌窟王「どうしたアンジー!? 言葉遣いが変だぞ!?」ガビーンッ!



746:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/09(火) 19:14:02.37ID:pfNLB4ZS0

巌窟王「……ハッ! 天海! 隠し部屋の空調設定はどうなっている!? 具体的には湿度だ!」

天海「え? えーっと……うわ。なんか知らないけど加湿されてるっすね」

巌窟王「それだ! アンジーは湿気の類が大嫌いだ! 今すぐに除湿しろ!」

巌窟王「さもなければこの場にいる全員の眼球を生きながら抉り出すぞ……」

巌窟王「……アンジーがな!」ギンッ

茶柱「アンジーさんが!?」

獄原「虫さんたちが過ごしやすいように、それなりにジメジメさせられていたみたいだね」

天海「これも犯人の腐敗促進の一環ってことっすか。道理でなんか蒸し暑いなって思ってたんすよ」

アンジー「うあうあー……」ジメジメーッ

入間「巌窟王! コレを使え! 口の中でひんやりするタイプの棒付きキャンディーだ!」ブンッ

巌窟王「上出来だ入間!」ガシッ

ティンコ型キャンディー「」ヤッホー

巌窟王「最悪だ入間!」ガビーンッ

茶柱「ぎゃああああああああ! 公然わいせつ物陳列罪ーーーッ!」チョップ

バキィィィィンッ!

入間「俺様の飴ーーーッ!」ガビーンッ



747:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/09(火) 19:23:10.26ID:pfNLB4ZS0

天海「……あれ。変っすよ。空調が操作を受け付けないっす」

マザーモノクマ「そりゃそうだよ。そこも首謀者権限のロックによって制限された『一定の操作』だから」

天海「今更っすけど、犯人は自分の罪を隠すつもりはあっても自分が首謀者であることを隠すつもりがないみたいっすね」

入間「あああああああ! やめろ! やめてくれ! 俺様の目を抉るのはやめ、あああああああああ!」

アンジー「イケニエーッ」

入間「と、止めてくれ巌窟王! このままじゃ俺様のつぶらなお目目が!」

巌窟王「……英霊でもできないことはある。つまりそういうことだ」

入間「いやああああああああ!」

真宮寺「滅茶苦茶だね」



753:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/09(火) 21:17:13.76ID:pfNLB4ZS0

眼帯入間「……」ズーン

アンジー「うおおおおおおおおおうううう……」ゴゴゴゴゴゴゴ

巌窟王「完全に変容してしまったか……アレはもはや人ではない」

茶柱「おふざけもそこまでにしておいてください」

アンジー「うん」スンッ

入間「ちくしょー……なんで俺様がこんな目に……」

入間「あ。修理終了した」

巌窟王「やっとか。貸せ。後は俺の役目だ」

巌窟王「……二重にロックがされているな。二つ目のロックはマザーモノクマの首謀者権限によるロック」

天海「やっぱり無駄足っす?」

巌窟王「いや。半分は見れる」

巌窟王「……なるほど。最原の睨んだ通りか。このノートパソコンは……!」

モノクマ「そう! ボクが使っていた『モノクマファイル作成用デバイス』なのでーす!」

天海「……えっ?」

春川「まあ、当然だよね。モノクマファイルも当然どこかで作ってるに決まってる」

春川「まさかこんな何でもないパソコンだとは思わなかったけど」

巌窟王「さあ最原。お前は一体、このパソコンにどんな可能性を見た?」

巌窟王「存分に暴かせてもらおう」



756:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/10(水) 18:56:34.71ID:E7l1mHSX0

巌窟王「……」カタカタカタ

春川「急に静かにならないでよ……それが叶わないならせめて普段からもっと声を落とすよう努力してよ……」

天海「まあ、ビックリするっすよね」

アンジー「そう? アンジーと一緒のときはずっとこんな感じだし慣れるよー」

巌窟王「……首謀者特典」

獄原「え? 巌窟王さん、今なんか言った?」

巌窟王「このパソコンの中身を一通りさらった。中にはモノクマファイルの編集履歴が残っている」

巌窟王「どういうわけだか知らないが、その履歴が入っていたファイルの名前が『首謀者特典』だ」

天海「……特典?」ピクッ

春川「天海? なにかに気付いたの?」

天海「大したことじゃないんすけど……特典って言い方が変だなって」

天海「まるで『誰かから与えられた』みたいな言い方じゃないっすか」

春川「……は? アンタ、天然なの?」

天海「えっ」

春川「逆でしょ。このファイルを手に入れることによって『私たちに与えられる首謀者からの特典』って意味でしょ?」

春川「それ以外にどう解釈のしようがあるっての?」

天海「……」

天海「……うーん……?」

巌窟王「釈然としていないようだな。続けるぞ」



757:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/10(水) 19:08:16.86ID:E7l1mHSX0

巌窟王「それと、生徒とモノクマ(とモノクマーズ)に例外なく適用される校則とは別にして、モノクマルールなるものの存在も明記してあった」

春川「内容は?」

巌窟王「モノクマルールは生徒ではなく、モノクマとモノクマーズにのみ適用され、尚且つ生徒には周知されないルールのことだ」

巌窟王「現状見れる範囲で見つかったモノクマルールは二つ」

巌窟王「一つ、このパソコンへの干渉を禁止する校則を作ってはならない」

巌窟王「二つ、モノクマにも校則は適用されるが、生徒に指摘されなければその限りではない」

春川「……」アゼン

アンジー「あ。魔姫が凄くビックリしてる」

春川「……クソじゃん。それじゃあゲームとして成立しない」

巌窟王「さて。それはどうだろうな。生徒に指摘されなければ、の話だ。指摘すればモノクマも校則が適用される」

天海「……でも一つ目のモノクマルールはひたすら妙っすね。なんでそんなルールが……」

巌窟王「それはおそらく、このパソコンの『モノクマファイルを作る』という機能に起因する」

天海「……聞かせてください」



759:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/10(水) 19:37:01.26ID:E7l1mHSX0

巌窟王「……それにはまず必要なものがあるな。アンジー! 俺の部屋から今までのモノクマファイルを持って来るのだ!」

アンジー「あいあいさー!」ダッ

春川「一応言っておくけどさ。アンタの部屋じゃなくって夜長の部屋だよね?」

巌窟王「ム? 今となってはアンジーの部屋は俺の部屋だ」

春川「……頭が痛い」

天海「いやコレは仕方ないっすよ。巌窟王さんの部屋はもうずっと用意してないんすから。モノクマ」

モノクマ「クソめんどい」

巌窟王「死ね」

獄原「病院は用意できるのに部屋の増設はしないんだね……」

巌窟王「……さて。アンジーが帰ってくるまでは暇だ。他の場所を捜査するぞ」



760:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/10(水) 19:46:46.62ID:E7l1mHSX0

スパコン室

最原「……ん?」

星「来たか」

キーボ「あ。最原クン。王馬クンも」

王馬「お前もついに落ちるところまで落ちちゃったなキー坊……まさか証拠を隠滅しにかかるなんて」

キーボ「出会い頭に不名誉すぎる濡れ衣やめてください」

最原「珍しい組み合わせだね。ここで何か調べもの?」

星「まあな。少し気になることがあった。それの確認のためにキーボと同伴だ」

キーボ「ボクだからこそ役に立てることがあるので!」

最原「この部屋で気になることと言えば……」

星「俺たちと別行動を取っていた巌窟王の行動だな」

最原(ん?)

キーボ「結論から言うと、巌窟王さんは別行動中であっても、この部屋から脱出はしていませんでした」

最原「ええっと、どういうこと?」

星「忘れたか? 巌窟王は俺たちが新世界プログラムに入ってから、ほぼ完全に別行動だったろう」

最原「ああ……」

最原「……なるほど。そういうことか。だからキーボくんなんだね?」

王馬「えー。なになに? 俺には全然わかんないから説明してよー」ニヤニヤ

最原(本当にわかってないのかな……)



761:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/10(水) 20:01:13.65ID:E7l1mHSX0

最原「ええっと、王馬くん。僕たちがこのスパコン室に入ったのは大体午後八時前後のことだったよね」

最原「その後、夢野さんの失踪の件で怖がっていた何人かが新世界プログラムの中に入ることを渋った」

最原「そのとき、巌窟王さんは外から誰も入れないように、このスパコン室の扉を焼いて破壊した……ていうか歪めて開閉できなくしたんだよ」

王馬「俺には溶接したようにも見えたけど」

最原「やっぱり覚えてたんじゃないか……」

王馬「なるほどねぇ。確かに俺たちとほとんど別行動を取っていた巌窟王ちゃんなら、こっそり外に出ることもできるか」

王馬「破壊された扉に関しても『再度焼いて開けて、戻ってきたときに再度焼いて閉じる』ってだけだし」

王馬「……今日の二時半に夢野ちゃんを殺すよう仕向けるのなら、可能なのは巌窟王ちゃんしかいないわけだ」

星「だがその仮説は否定された。キーボの録画機能のお陰でな」

キーボ「間違いありません。王馬クンの言った通り巌窟王さんが別行動中、外に出たとするなら扉に変化がなければおかしい」

キーボ「でもボクの録画機能で照合した限り、ボクたちがこの部屋に入ったときと出る直前とで扉に一切の差異はなかった」

最原「故に巌窟王さんは外に出ていない、か……」

最原(そして壊れた扉から出ることができない、他の全生徒も……)

最原(……段々固まってきたな)



771:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/11(木) 19:40:07.20ID:KuTpifBi0

最原「……じゃあ次はコンソールかな。扉のことは予想外の収穫だった」

星「なに?」

キーボ「え? 最原クンは別の何かを調べに来たんですか?」

最原「大したことじゃないんだけど……一応、念のため。新世界プログラムの入退室のログとか手に入らないかなって」

王馬「よしキーボ! あのスパコンちゃんとお話ししてこい! 話を何が何でも途絶えさせないことがポイントだぞ!」

キーボ「ナンパ!? いやできませんよ、そんなこと!」

最原「……うーん。仕方ないな。ひとまず自力でどうにかしてみて、どうもできなかったら巌窟王さんを頼ろう」

最原「誰か一人くらいは機械に強い人が調べてると思ったんだけど……」

東条「呼んだ?」ガシッ

最原「!?」ビクゥッ

東条「治療開始」ブチッ


ブシャアアアアアア!


最原「にぎゃあああああああああああああッ!」

キーボ「最原クンが血飛沫に飲まれたーーーッ!?」ガビーンッ

王馬「違うよキー坊。あの血飛沫が最原ちゃんなんだ。汚ぇ花火だ」



772:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/11(木) 19:51:18.69ID:KuTpifBi0

数分後

東条「ひとまずはコレでOKよ。まったく……無茶苦茶な施術だったわ。どう修正しようか惑うくらい」

王馬「キー坊の仕事ならこんなもんだよね」

キーボ「え? いやボクじゃないですけどッ!?」

最原「あの……なんか段々頭がフラフラしてきたんだけど……」

百田「後で食堂からスポドリでも持ってこようぜ」

最原「うん……ん? 百田くん?」

百田「野暮用があって戻ってきちまった」

東条「……さておいて、入退室のログね? すぐにさらうわ」カタカタカタ

最原(すっかり回復したなぁ、東条さん)

東条「……出たわよ」ピロンッ

最原「あ。早い。えーと中身は……」


20:15 不明なプログラム入室
20:23 入間入室
20:23 最原入室
20:24 茶柱入室……


最原(その後、大体の生徒は午後八時二四分を中心に新世界プログラムへとやってきていたようだった)

最原(最後に新世界プログラムに入ったのは……白銀さんか)

最原(不明なプログラムっていうのはまず間違いなく巌窟王さんだろうな)



773:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/11(木) 20:03:06.03ID:KuTpifBi0

最原「うん。入室のログに関してはわかった。退室のログを見せてよ」

東条「ないわ」

最原「は?」

東条「……元からないの。何故かは不明よ。もしかしたら誰かに消されたのかも」

最原「……データの復元は?」

東条「流石にそこまでは不可能よ。入間さんに頼んでみましょうか?」

最原(そこまでの時間があるかどうか微妙だな……)

東条「……あと、この入退室のログに関して調べている内に、一つ気になる記述があったの」

東条「入間さんは前に、このプログラムがアップデートされたと言っていたけれど……」

東条「そのとき『アルターエゴ』というプログラムが実装されたと書いてあったわ」

最原「アルターエゴ?」

東条「もう一人の自分。親友。色々と意味はあるけど、プログラムにおいてこの言葉が出るときは『強いAI』のことね」

東条「あの新世界プログラムの中にNPCがいた、ということなのだけど……」

東条「最原くん。そんなものを見た?」

最原「それってモノクマとは違うの?」

モノクマ「違うよ! 補足しておくと、この新世界プログラムの入退室のログにボクは記帳されないんだよ!」

モノクマ「ボクは顔パスで入れるからね!」

最原「ああ、そう……」

東条「この事件とは関係はないでしょうけど……」

最原(……事件が終わった後で新世界プログラムをもう一度調べる必要があるかもな)



775:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/11(木) 21:12:15.30ID:KuTpifBi0

百田「……ああ、くそっ! ない! ねぇぞ! イシュタルか巌窟王かのどちらかに殺されちまう!」

最原「あ。もしかして百田くん! アレなくしたの!?」

最原「まずいよ! 巌窟王さんに先に見つかったら普通に不機嫌になっちゃうよ!」

百田「ああ! どころかイシュタルから何か変なものを押し付けられる可能性すらあるぜ!」

百田「頼む終一! 俺と一緒にアレを探してくれ!」

最原「無理! 後回しにしよう!」

百田「チクショーーー!」

王馬「じゃ。最原ちゃん。一緒に隠し部屋の方にもどろっかー!」ケラケラ

最原「……気が向いたら探しておくよ」



781:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/12(金) 18:03:40.89ID:EoQKMPHd0

隠し部屋

獄原「……うん。そっか。わかったよ。ありがとうクロバエさんたち」

巌窟王「獄原。確かこの学園には野生の虫は存在しないのだったな?」

獄原「うん。ゴン太の研究教室にしか虫さんはいない。間違いないよ」

獄原「……繁殖したら別だけど、今回は別だし」

巌窟王「別?」

獄原「えっとね。クロバエさんの卵は孵化するのが結構早いんだ。大体産みつけられてから二十四時間くらいかな」

獄原「でも今回、夢野さんの死体に大量に産み付けられた卵は一個たりとも孵化していなかった」

獄原「夢野さんが死んだ時間が具体的にいつだったのかは別として、クロバエさんがバラまかれたのは二十四時間以内ってこと」

巌窟王「待て。そんな判別が簡単につくのか?」

獄原「つくよ。根拠は二つ。まずゴン太がクロバエさんの数と成長度合いを完璧に記憶してる。ウジさん状態の子たちもね」

獄原「二つ。元から卵状態だったものをバラまいたのか、それが直接夢野さんの体に産み付けられたのかの判別は付く」

獄原「少なくとも夢野さんの体に直接産み付けられたものは全部孵化していない。だからゴン太は間違ってない」

巌窟王「……流石に虫のことになると心強いな。お前は」

獄原「そう言ってもらえてうれしいけどさ……本当ならこんな才能、役に立たない方がよかったのかもしれない」

天海「……!」ギクッ

巌窟王「天海?」

天海「いや……最原くんも似たようなこと言ってたなってこと、思い出しただけっす」

天海(……才能が人を幸せにするとは限らない。それでも俺は……)

獄原「……多分、犯人はクロバエさんが嫌いな人だと思う」

巌窟王「根拠は?」

獄原「なんか、あえて『卵が孵化しないタイミング』を狙ってクロバエさんが散布されている気がする」

獄原「なんとなくだけど……」



782:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/12(金) 18:29:19.96ID:EoQKMPHd0

春川「真宮寺の事件のときも思ったけど、なんかここの生徒ってば虫の使い方が上手くない? 無駄に」

天海「まあ……毎度毎度巧妙っすよね」

獄原「あ。多分それはゴン太が虫さんたちの生態をことこまかにノートに書いてたからだと思う。ノートは研究教室に放置してたし」

春川「アンタのせいか……」

獄原「そもそも虫さんは使うものじゃないけどね! そこら辺勘違いしないでね!」

獄原「……いや。協力してもらえれば凄く心強いお友達であることは確かだけど! こんな方法での協力は間違ってるよ!」

アンジー「神様ー! モノクマファイル持ってきたよー!」ダダッ

巌窟王「よし。モノクマファイルについての説明を再開するぞ」

天海「了解っす!」



783:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/12(金) 18:36:59.52ID:EoQKMPHd0

編集履歴

・第一の事件 巌窟王
死因
死亡推定時刻
☆その他死体の細かい状況


・第二の事件 巌窟王
☆死因
☆死亡推定時刻
☆その他死体の細かい状況


・第三の事件 夜長アンジー
なし


・第四の事件 都合により欠番

・第五の事件 夢野秘密子
死因
★死亡推定時刻
その他死体の細かい状況


巌窟王「これが編集履歴のページだ。残念だがこれ以上詳しい情報は探しても出てこなかった」

巌窟王「おそらく首謀者のロックが効いているせいだろうな。BBの協力があれば破れたかもしれないが……」

天海「字面だけだとよくわかんないっすね?」

巌窟王「そこで、アンジーが持ってきたモノクマファイルと見比べる」

アンジー「とくと御覧じろー!」



784:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/12(金) 18:47:31.64ID:EoQKMPHd0

第一の事件のモノクマファイル『被害者は巌窟王。死体発見現場は図書室。死因は頭を強い力で打ち抜かれての撲殺。死亡推定時刻は午後九時五十分前後』

第二の事件のモノクマファイル『被害者は巌窟王。死体発見現場は体育館。以上』

巌窟王「そして次に、今回の事件のモノクマファイルだ」

夢野のモノクマファイル『被害者は夢野秘密子。死亡推定時刻は夜の午前二時半ごろ。何らかの理由で死後の腐敗が極端に促進されている』

夢野のモノクマファイル『死因は銃撃による失血死。もがいた形跡がほぼないことから、撃たれた直後あたりから気絶したようだ』

天海「……?」

春川「……もしかして編集履歴で星のマークが付いてる情報って『消された情報』って意味?」

巌窟王「正確ではないだろうな。詳しくは編集された情報という意味だろう」

天海「あれ? でもそうだとするとおかしいっすよ? だって編集履歴には」



・第五の事件 夢野秘密子
死因
★死亡推定時刻
その他死体の細かい状況


天海「……死亡推定時刻の欄に間違いなくチェックが付いてるのに、モノクマファイルにはキッチリ記されてるし……」

巌窟王「……」

巌窟王「何故殺されたのが夢野だったのか……その理由を考えるべきだったかもな」

天海「えっ?」

巌窟王「何故夢野だった? もし犯人が首謀者だとするなら、他に殺したい人間なぞいくらでもいるだろう」

巌窟王「わざわざ夢野を選んだ理由はなんだ?」

巌窟王「この事件には明確に動機が存在するのかもしれない。モノクマが用意した紛い物ではない、正真正銘の動機が」

天海(正真正銘の、動機……?)

春川「それよか、第四の事件ってのが気になるんだけど……」

巌窟王「そこに関しては俺にとっても不明だ。最原ならわかるかもしれないが?」



788:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/12(金) 21:32:39.40ID:EoQKMPHd0

図書室

最原「……ふう! なんとか戻って来れた! 時間あとどのくらいかな」

王馬「ま、ひとまず最後までやってみようよ。何か新発見あったー? 茶柱ちゃん!」

茶柱「……」

最原「……顔が真っ青だよ。どうしたの?」

茶柱「指が……」

白銀「夢野さんの無くなった指が見つかったの」

最原「!」

真宮寺「……焼けちゃってて死後のものか、そうでないものなのか判別が付かないけど……」

真宮寺「何かに引っかかって爪が割れてたヨ」

最原「……そっか」

最原「うん。わかった。ありがとう」

最原(これは……どっちだ? 犯人を示す証拠か、犯人が残した証拠か……)

白銀「……そういえば最原くん。制服が血塗れだけど大丈夫? 王馬くんも」

最原「ん?」

王馬「俺のは返り血だから大丈夫だけど、不潔ではあるねー。捜査が終わったくらいのタイミングで服を着替えて来るよ」

白銀「さっきまでの巌窟王さんみたいだよ。もう元に戻ってるけどさ」

白銀「……ところで、なんで巌窟王さんはあんな怪我してたの?」

最原「……?」

真宮寺「王馬くんのせい……って、よく考えたら確かに変だよネ。電子虚構世界でのことだしさ」

茶柱「まあ、巌窟王さんは転子たちとは違って体ごと全部入っちゃってたわけですし、あの中で怪我したら怪我すると言われたらそれまでですよ」

白銀「ふーん?」

最原「……」



792:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/13(土) 17:40:04.67ID:yHUqitT00

隠し部屋

キタカサイハラ……クハハハハオソイトウチャクダナ? ウン?

最原(……そういえば赤松さんの事件の学級裁判終盤で、巌窟王さんがなにか金言めいたこと言ってたな)

……ム? サイハラ? オイ? ナゼヘンジヲシナイ? サイハラ?

最原(殺人の一番厄介な性質は……)

王馬「おーい。最原ちゃん」

最原「ん? なに?」

王馬「巌窟王ちゃんがずっと呼んでる」

巌窟王「……」ゴゴゴゴゴゴゴ

最原「へあっ!? すっごい不機嫌になってる!」ガビーンッ

巌窟王「入間のパソコンの修繕が終わった。中のロックは出来る限り外しておいた」

巌窟王「おそらくお前の望み通りのものが中にあるはずだ」

最原「……あ、ありがとう」

入間「中身見たいんなら勝手に見ろよ」



793:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/13(土) 17:53:33.43ID:yHUqitT00

五分後

最原「……ああ、これ最悪のパターンだ!」

巌窟王「だろうな。お前も『こうだったら本当イヤだな』と思っただけで、本気で現実がこうだと認識していたわけではあるまい」

最原(……第四の事件が欠番、か)

最原「入間さんが生き残ってくれていてよかった。じゃないと誰もコレを修繕なんかできなかったよ」

入間「は? 口説いてんのか?」ニヤニヤ

最原「そうだと言ったら?」

入間「……えっ」

最原「……」

入間「……あっ、はっ、いやっ、そのっ……」アタフタ

最原(やばい。脊髄反射で出た冗談だとは今更言いづらくなっちゃったぞ!)

巌窟王「最原。脊髄反射で冗談を言うのはやめておけ」

入間「ざけんなぶっ殺すぞダサイ原ッ!」ウガァ

最原「ごめん!」

最原「……あ。そうだ。入間さん。時間に余裕があるようなら、ちょっと僕とスパコン室に行かない?」

入間「ねーんじゃねーの? 今まで通りなら、あと十分くらいでモノクマが捜査を打ち切るタイミングだぜ」

最原「そうだけど……できる限り捜査しておきたいんだ」

入間「ヒールで走り回りたくねぇし」

巌窟王「脱げ」グイッ

入間「ぎゃんっ!」



794:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/13(土) 18:02:12.83ID:yHUqitT00

入間「ああもう! だからって裸足で走らせる鬼畜プレイがあってたまるかよォ!」ダッ

最原「無駄口叩いてないで走って!」ダッ

アンジー「……」

巌窟王「ついていきたかったか?」

アンジー「ついていったところでアンジー、役に立てそうにないから」

アンジー「走ったら靴擦れするしー」

巌窟王「……」

巌窟王「靴のサイズがあっていないのではないか? 靴擦れ対策はキチンとしているか?」

巌窟王「後でモノクマから色々と貰ってくるぞ?」

春川「巌窟王。多分酸っぱいブドウ的な負け惜しみだから本気にしなくていいよ」

春川「ていうか本気にしてほしくなさそう」

アンジー「……」ムクー

巌窟王「……」アセッ

天海(随分と仲良くなったなぁ、この二人も)



795:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/13(土) 18:12:08.80ID:yHUqitT00

スパコン室

星「お? また戻ってきたのか?」

キーボ「おや。入間さんも一緒ですか」

入間「ぜはーっ……ぜはーっ……あー、くそ! しんど! おっぱいが痛い!」

最原「入間さん! お願い!」

入間「命令すんじゃねぇ!」カタカタカタ

入間「……?」カタカタカタ

入間「……」ピタッ

最原「……え。なんで操作やめちゃったの? データの復元は?」

入間「必要ねぇ」

最原「ん?」

最原(……必要が、ない?)

入間「……アホらしいぜ。走って損した」

最原「ええっと……どういう意味?」

入間「消されてない。退室のログは元からない」

入間「……俺様にとっても、この新世界プログラムには謎が多いんだ」

入間「せいぜい一%程度の確率だけどよ……みんなが退室するタイミングで、故障して記帳されなかったんじゃね?」

最原「……」

最原(その一%の偶然が、たまたまこのタイミングで起こるか……?)



796:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/13(土) 18:18:52.41ID:yHUqitT00

隠し部屋

春川「……」ジーッ

春川「……?」

春川(このパソコン、時計が狂ってる?)

春川「……巌窟王。昨日の……いや、今となっては一昨日の午後八時になにしてたか覚えてる?」

巌窟王「入間と話していたな。食堂で」

春川「……そうか。その時間はほとんど全員、食堂にいたっけ」

春川「いなかったのは何人で、誰?」

巌窟王「赤松、白銀、夢野の三人だったか?」

アンジー「正確に言うとアンジーも食堂にいなかったよー。ちょっと気まずかったからねー」

春川「……これ、最原は気付いてる……よね」



キーンコーンカーンコーン


巌窟王「!」



798:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/13(土) 21:02:43.10ID:yHUqitT00

モノクマ『愚かなる人類よ! 裁きの時は来たれり!』

モノクマ『今こそ自らの生の価値を示すのだ!』

モノクマ『というわけで、始めますよ学級裁判! 全員、中庭の赤い扉へとお集まりください!』

ブツンッ

最原「……ついに、か」

百田「ちっ。結局最後の最後まで見つからなかったぜ。アレがありゃあイシュタルと連絡取れると思ったんだけどよ」

最原「え? でも巌窟王さんのデバイスは……」

百田「巌窟王のデバイスが使えないからって、こっちが使えないとは限らねーだろ?」

最原(実は使えないんだよなぁ……)

入間「……裸足でもう動きたくねーんだけど」

最原「も、もうちょっと頑張れない?」

入間「これ以上走らせたら目覚めるぞ。テメェの枕元に鞭を持って毎晩立っておねだりしてやるかんな?」

最原「わかったよ! 巌窟王さんのところまでおぶるよ! もう!」

入間「……」

入間「えっ」

東条(あら。予想外って顔)



799:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/13(土) 21:12:37.83ID:yHUqitT00

校舎の出入り口付近

アンジー「あ。終一ー! 美兎もー! 待ってたよー!」キラキラキラ

最原「ん? アンジーさん」

百田「……お。それ、入間の靴か?」

アンジー「うん! 神様からのプレゼントフォーユーだよー!」

最原(助かった。正直背中に来る胸の感触のせいで後悔しっぱなしだったからなぁ)

入間(うう。運ばれている間、恥ずかしくって口が回らなかった……!)

最原「入間さん。それじゃあそろそろ降ろすよ」

入間「ん……」

入間「……アンジー」

アンジー「ん? なにー、美兎? これから学級裁判だから手短にお願いねー」

入間「……悪かったよ。前はちょっと言い過ぎた」

アンジー「ん……」

アンジー「……もう気にしてないって思ってた。だって美兎、アンジーのために新世界プログラムを……」

入間「……ハッ。ノーテンキブス。俺様が何の打算もなくあんな提案を巌窟王にしたと思ってんのか?」

入間「んなわきゃねーだろ……そんなわけ……」

最原「……」

百田「何言ってんのかわかんねーけど、さっさと行こうぜ?」

星「ああ。真相を確かめないと、俺たちはどこにも行けない」

星「……真相を確かめたところで、どこかに行ける保証はないがな」



800:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/13(土) 21:22:28.69ID:yHUqitT00

赤い扉付近

巌窟王「……最原たちはまだか」

春川「まだでしょ。せっかちすぎだよ、巌窟王」

天海「はやる気持ちもわからないでもないっすけど」

春川「……」

春川「巌窟王。これ」スッ

巌窟王「む?」

春川「……聴診器」

巌窟王「!」

春川「最後まで夢野が持ってたヤツ。ショボいプレゼントだったけどさ、アイツ、本当に喜んでたんだよ」

巌窟王「……」

春川「渡そうかどうか迷ったんだけどさ」

巌窟王「……受け取っておく」

春川「うん。それでいいと思う」

白銀「……犯人、誰なんだろう。本当にこの中にいるのかな」

白銀「信じられないよ」

巌窟王「……ふん。現実とはそういうものだ。残酷で、理不尽。救いようがない」

巌窟王「もちろんそんなことは膝を屈する理由にはならないがな」

白銀「巌窟王さん……」

巌窟王「……俺はこのコロシアイに勝つ。それに便乗したいというのなら勝手にするがいい」

天海「勝手にさせてもらうっすよ」



804:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/13(土) 23:25:56.46ID:yHUqitT00

才囚学園生徒一同の巌窟王への評価

天海
頼り甲斐に溢れた御仁。たまに頼りっぱなしな現状に嫌気が刺す

王馬
音の出る丈夫なオモチャ

キーボ
人間ではないというところにシンパシーを感じていた(過去形)

獄原
ぶっちゃけ言っていることの半分以上がわかっていないけどいい人だと思ってる

最原
憧れている。ただ彼と同じパフォーマンスができないことを理性ではわかっている

真宮寺
実はちょいちょい処分されかかっていることに気付いている


帰る意志と生きるエゴを丸出しにしている巌窟王がちょっと羨ましい

百田
上から目線が気に食わない。気に食わないだけで嫌いではないけど

赤松
一度殺したことへの謝意とか助けられた感謝とかは置いといて最原にとって有害だと思っている

入間
凄く欲しいのほおおおおお!

白銀
視聴率の取れるゴミクズ

茶柱
男死。アンジーへの思いは認めるし、年長者として敬意は払う

東条
凄まじい功績とそれを成し続ける力に感服はするが、配慮が一欠けら足りないことに対して説教はする

春川
絶対に表には出さないが、かなり明確に友情を感じている

夢野
いつか絶対に乗り越えるべきライバル

アンジー
評価不能



809:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/14(日) 16:13:03.21ID:YTh/qlbW0

赤松「……あ。来たよ!」

バタバタバタ

最原「ごめん! 遅くなっちゃった!」

入間「ぜーっ……ぜーっ……おい! 走る必要あったのか!?」

百田「しゃーねーだろ。モノクマに急かされちゃよ」

モノクマ「結構時間押してるんだよ! さっさとエレベーターに入りな!」ビッ

入間「……東条はよくもまあそんな靴で走り回れるよな」

東条「あら。心配してくれるのかしら?」

入間「ケッ」

アンジー「……なにかあったのー? さっきから妙に優しすぎて怖いよー」

最原(確かに。なにか憑き物が落ちたみたいな顔してるな……)

星「これで全員か?」

キーボ「いえ。まだ夢野さんが……」

キーボ「……!」

茶柱「……」

王馬「キー坊。あのさ。ネタ抜きで言っても最悪」

キーボ「す、すみません……でした……」



810:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/14(日) 16:21:21.90ID:YTh/qlbW0

白銀「無理もないよ。私だってまだ信じられないもん……」

白銀「今もまだ、とってもリアルな悪夢を見てる気分だしさ」

白銀「……嘘だったらよかったのにさ……全部……」ポロポロ

赤松「白銀さん……」

巌窟王「……仮に。これから何かの奇跡が起こって夢野が帰ってきたとしても、だ」

巌窟王「今このときの感情は間違っても嘘にはならない」

巌窟王「ああ、そうだ。俺の胸の内は、激憤によって熱くなっている」

百田「分かるように言え! 巌窟王!」

巌窟王「つまりこういうことだ。この学園生活が最終的にどうなろうと」

巌窟王「モノクマ。お前と、お前の裏にいる首謀者は必ず焼き尽くす」

モノクマ「ふーん。やってみろよ」

巌窟王「……」

巌窟王「ところでモノクマーズはどこだ?」キョロキョロ

モノクマ「モノタロウとモノファニー揃って産休!」

巌窟王「何ィ……? しまった。花束でも用意しておくべきだったか」

巌窟王「いや。この際、実用的な育児グッズだろうな。用意すべきは」

百田「せんでいいせんでいい」

春川「アンタ……あんな啖呵切っておいて……」ズーン

アンジー「神様は真面目なんだよー」



811:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/14(日) 16:34:10.24ID:YTh/qlbW0

ガタンッ

ゴウンッ

最原(そして僕たちは、またエレベーターに乗り込んだ。ここに乗り込むのはこれで四度目だけど……)

最原(今は夢野さんがいない)

最原(その事実を認識すると、どうしようもなく胸が痛んだ)

巌窟王「通信が回復次第、BBたちに俺の部屋の財産を切り崩させて育児グッズをいくつか買うが……」

モノクマ「あ。それよか妊娠線が気になるみたいだからクリーム買ってくれる? 高いのは本当高いんだよねぇ」

巌窟王「了解した。ところでベビーカーの用意は……」

白銀「巌窟王さん! 今ちょっとしんみりムードだから黙って! モノクマも!」ウガァ

モノクマ&巌窟王「……」シュン

最原(この二人だけはいつも通りだった……)ズーン



812:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/14(日) 16:46:24.98ID:YTh/qlbW0

チーンッ

モノクマ「あ。ついた」

巌窟王「モノクマ。話は途中だ。ゆめゆめ忘れるなよ」

モノクマ「うぷぷ……その言葉、そっくりそのまま返してあげるよ」ニヤァ

百田「『必ずお前たちを焼き尽くしてやる』の方だよな? 『出産祝い周り』の話じゃねーよな?」

春川「藪蛇になりそうだから絶対に訊かないでよ」

モノクマ「オマエラ! それじゃあ、さっさといつも通り自分の席についてくださーい!」

最原「……」

最原(夢野さん。巌窟王さんに出会ってからは、一途にその背中を追い続けていた超高校級のマジシャン)

最原(必死に、健気に、コロシアイの渦中を今まで生きて来た彼女を殺した犯人が……)





最原(この中にいる……!)

巌窟王「モノクマ。俺は夢野の席につくぞ」

モノクマ「いいよ!」

巌窟王「さあ。始めるぞ」

巌窟王「……必ずや! 真実を暴け!」



813:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/14(日) 16:49:08.93ID:YTh/qlbW0

最原(もしも……もしも一連の犯行に意味があったのなら、いつも通りに暴けばそれでいい)

最原(……そうでない場合は、かなり難しい裁判になる)

最原(それでもやるしかない。僕たちが前に進むためには……)

最原「……前、か」

最原(もうどこにも、何もないことがわかった後だけど)

最原(……大人しく死んでやる理由も特にない)

最原(やるしか、ないんだ……!)



815:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/14(日) 17:56:15.37ID:YTh/qlbW0

カルデア劇場

BB「ひとまずテスラさんとエジソンさんには向精神薬を投与しておきました」

イシュタル「え? 自力でチューンナップするんじゃなかったの?」

BB「まあやっぱりあの人たちがいた方が速く済みそうですので……」

BB「ひとまず彼らをベッドに縛り付けた上でダイナミックコー●と異世界スマ●とポプテピピッ●を延々とヘビロテさせてます」

イシュタル「拷問はジュネーブ条約で禁止されてるのよ?」

BB「ひとまず正気にはなると思います!」キャルンッ

BB「……ところで異世界スマ●に関しては言うほどクソアニメではないと思うのですが」

イシュタル「いや知らないわよ」

BB「ところで、なんで彼らは私たちと最後に通信したとき、あんなところに揃ってたんですか?」

イシュタル「え? あんなところって、スパコン室のこと?」

BB「ん? まあスパコン室ではありますけど。一応」

BB「あら? イシュタルさんってば気付いてなかったんですか? アレって――」




ネタバレにより自主規制



イシュタル「……」

BB「ね?」

イシュタル「なんでそれ先に言わなかったの!?」ガビーンッ

BB「いやわざわざこんなこと確認するまでもなく……」

イシュタル「私たちはそうだけど、アイツら絶対に気付いてないわよ!」

イシュタル「アイツらの向精神薬の量を増やして! 今すぐ!」

BB(チャージマ●研でも追加しましょうか……)



816:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/14(日) 17:56:46.47ID:YTh/qlbW0

ひとまずこのスレでの本編更新はここまで!



820:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/14(日) 19:05:43.94ID:YTh/qlbW0

NEXT

最原「僕らが往くは恩讐の彼方!」 巌窟王「これで終わりだ!」



元スレ
巌窟王「亜種並行世界!」 アンジー「虚構殺人遊戯:才囚学園ー!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1510833531/
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         コメント一覧 (7)

          • 1. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年01月15日 09:19
          • 日刊連載で1日数レスずつの更新なのもあってやっとまとめられたか
            てかながっ!
          • 2. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年01月15日 11:26
          • 次で最後か
            このシリーズは死なないと思ってたからちと意外
          • 3. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年01月15日 12:28
          • 長い上にまだ続くのか……えぇ
          • 4. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年01月15日 12:49
          • 今やってるやつで終わるはずだから…。終わるといいな…
          • 5. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年01月15日 16:11
          • 異世界スマ○はクソというより本当に何もないからクソじゃないんだ

            何もなくただ時間が過ぎるだけで
          • 6. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年01月16日 02:06
          • たまにはこういう大長編も良いもんですね
            全てが終わったら半日掛けて一気に読みたい
          • 7. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年02月09日 18:57
          • 普通に面白いと思うんだがなぁ

        はじめに

        コメント、はてブなどなど
        ありがとうございます(`・ω・´)

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