不良「おい、ジャンプしろよ」青年「はいっ!」ピョンッ 不良「……落ちてこねえな」
- 2017年12月05日 04:10
- SS、神話・民話・不思議な話
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青年「はい?」
不良「ちょっとだけでいいんだ。金貸してくれよ」
青年「ぼく、人に貸せるほどお金持ってませんよ」
不良「またまた~、持ってるんだろ?」
青年「持ってませんって」
不良「いいから、ジャンプしろよ」
青年「はいっ!」ピョンッ
…………
不良「……落ちてこねえな」
不良「ジャンプした奴はいつか落ちてくるってのが、世間の道理ってもんだろう?」
不良「なのにどうして落ちてこねえんだよ!」
不良「どうしよう……」
不良(まぁいい、もうちょっとだけ待ってみよう)
不良「……」
不良(落ちてこない……)
不良(こりゃどう考えてもおかしい!)
不良(こうなったら――)ピッピッ
不良「みんな、集まってくれ!」
ワイワイ… ガヤガヤ…
不良女「どうしたんだい?」
舎弟「どうしたんすか?」
不良「みんな、よく集まってくれた」
舎弟「そりゃ、アニキの招集にはすぐ応じないと、あとが怖いんすもん」
不良女「で、なにかあったのかい? 次の抗争?」
不良「いや、実は……」
不良女「もうどこかに墜落してんじゃないの?」
不良「そうかもしれねえし、そうじゃないかもしれねえ」
不良「だが、このままにしておくわけにはいかねえ! 俺にはジャンプさせた責任がある!」
不良「みんな、手分けして捜してくれ!」
オッス! オオッス! ワカリヤシタ!
ブォォォォォォォ…
不良「これは……生徒手帳。あいつのか。ジャンプした時に落としたんだな」
不良「生徒手帳は地面に落ちてるのに、持ち主は落ちてこないってどういうことよ」
不良「住所は……この近くじゃねえか」
不良(こうなった以上、親御さんには報告しないといけないだろうな)
不良「……あのー」
青年父「なんだね、君は?」
青年母「息子の友達?」
不良「いえ、違うんです。友達というか、恐喝者なんですけど……」
青年父「ほう、恐喝者がなんの用だね?」
不良「実は……」
青年母「息子がジャンプしたまま、落ちてこない!?」
不良「すみません!」ガバッ
青年父「すみませんで済むか!」
青年父「君がジャンプさせなければ、こんなことにならなかったんだぞ!」
青年父「なぜ殴ったり押し倒して、ムリヤリ金を奪わなかった!? バカモン!」
不良「そういう力押しのやり方は好かないもので……」
青年父「まったく……近頃の不良は情けない。私が若い頃はもっと……」
青年母「あなた、落ち着いて」
青年母「だけど、息子にもしものことがあった時は……分かってるわね?」
不良「はい、警察でもなんでも行きます。賠償金も支払います」
青年父「おほっ! 嬉しいねえ!」
不良「だけど、俺はまだ諦めちゃいません。必ずや息子さんを見つけ出してみせます!」
青年父「うむ、あっぱれな心がけ!」
青年父「息子も草葉の陰で、喜んでいるだろう」
不良「勝手に殺さないで下さい!」
舎弟「アニキ!」
不良「おう、どうだった?」
舎弟「ダメっすね。仲間みんなで捜したっすけど、人が墜落したなんて情報はどこにもないっすよ」
不良女「アタシも収穫ゼロ」
不良「そうか……」
不良(ってことはまだジャンプし続けてるのか? 分からねえ……)
不良「ん?」
舎弟「突飛な話になるんすけど」
不良「話してみろよ」
舎弟「実は空には、天空人が住む国があるらしいんすよ」
不良「本当に突飛だな」
舎弟「もし、ジャンプした奴がそこに到着してたら……この現象も説明つくんじゃないっすか?」
不良「ありえるな……」
不良「よし、飛行機をチャーターするか!」
不良「ったく、どえらい出費だぜ」
不良女「だけどこういう時、金を出し惜しみしない男ってかっこいいよ」
不良「そ、そうか?」
舎弟「じゃあ、行くっすよ!」
不良「お前、飛行機の操縦なんてできるのか?」
舎弟「石垣島で親父に習ったっす!」
不良「石垣島ってしょぼいな。ハワイじゃねえのかよ」
舎弟「石垣島バカにすると許さないっすよ! いくらアニキといえど!」
不良「おっと、悪かったよ」
不良「うへぇ~、高え!」
不良女「バイクで飛ばすことはしょっちゅうあるけど、飛行機で飛ばすのははじめてだね」
舎弟「お!」
モクモク…
舎弟「あのでかい雲、怪しいっすね!」
不良女「ああ、いかにもって感じだね」
不良「よーし、突入!」
不良女「雲の上に、城が建ってる……!」
舎弟「あれは≪天空の城ラピュタ≫っすよ! ガチであったんすねえ! ガチラピュ!」
不良「青年はあの国にたどり着いた可能性があるのか……」
舎弟「やっべえ! ガチラピュっすよ! ガチラピュ!」
不良女「とにかく行ってみるしかないね」
舎弟「うわぁ~、ガチラピュ! ガチラピュ! ガチラピュ!」
不良「うっせえ」ゴンッ
舎弟「らぴゅっ!」
天空人「お前たち、何者だ!?」
不良「え、えぇ~と……」
舎弟「なんつったらいいんすかね……」
不良女「地上の者さ」
天空人「地上の者だと!?」
天空人「待っていろ。天女様に報告してくる!」
天女「ほう……地上からの来客など、久しぶりじゃのう」
天空人「処刑しますか!?」
天女「いや、それには及ばぬ」
天空人「やはり……処刑ですか!?」
天女「いやいや、そこまですることもあるまい」
天空人「となると……まさか処刑!?」
天女「このバカタレ」ベチンッ
天空人「ありがとうございます!」
天女「どれ、侵入者を連れてくるがよい」
天女「おぬしらが地上の人間か。わらわはこの国の支配者、天女じゃ」
舎弟「美人っすねえ……」デレー…
不良「ぱねえ……」デレー…
不良女「コラ!」ギュッ
不良「あいだっ!」
天女「地上の人間と会うのは久しぶりじゃ。何をしにここにきた?」
不良「実は……」
天女「己が恐喝した人間を助けるために、わざわざこの国までやってきたと申すか!」
天女「なんとも愉快な御仁じゃ!」
天女「ぶふぉっ! ほほほっ……! ほほほほほっ……! ほっ……!」
天女「ほっ……! ほっ……! ほっ……!」
不良「いくらなんでも笑いすぎじゃないですかね」
天空人「天女様のツボに入ってしまったようだ」
不良「いや、急いでるんで」
舎弟「高校生ぐらいの男が、こちらにお邪魔してないっすかね?」
天女「さっきもいったが、おぬしらは久しぶりの来客だからのう……しかし……」
不良「しかし?」
天女「そういえば、さっき……わらわが露天雲風呂に入浴してたら……」
不良&舎弟「入浴!?」
不良女「コラァ!」ドカッ
青年『どうしよう……止まらない……』ギュゥゥゥゥゥン
天女「こんな光景を目の当たりにしたぞよ」
不良「それだ!」
不良女「考えられるね……」
舎弟「しかし、たかがジャンプで宇宙に行けるもんすかね?」
舎弟「地球から脱出するには、重力を振り切るためにとんでもない速度が必要なんすよ?」
不良「もし、ジャンプ中に加速してるなら、それぐらいの速度が出ることもありえる」
不良「みんな、このままNASAへ行くぞ!」
ゴォォォォォォ…
天空人「……気持ちのいい奴らでしたね」
天女「うむ、地上の者がみんなああであれば、わらわたちも嬉しいのじゃがな」
アメリカ人「ナンデスカ?」
不良「スペールシャトルを貸してくれ! 金はいくらでも払うから!」
アメリカ人「ホワイ!?」
不良「恐喝して跳躍させた奴が宇宙まで飛んでいっちまったんだ! それを助けたいんだ!」
アメリカ人「Oh、ジャパニーズサムライネ!」
アメリカ人「イイデショウ! 使ワセテアゲマショウ!」
不良「サンキューベリマッチ!」
不良女「アタシも行くよ!」
舎弟「オレも!」
不良「いや、俺一人で大丈夫だ。これ以上お前たちに迷惑はかけられねえ」
不良女「でも……!」
不良「心配すんな、必ず戻る!」
不良「お前を置いて死んだりしねえよ! 今までだってそうだったろ?」
不良女「……うん」
舎弟「行っちまったっすね……」
不良女「無事帰ってきてくれよ……まだキスもしてないんだからさ」
不良「お、体が……!?」フワ…
不良「うわぁ~、気持ちいい! これが無重力かぁ!」フワ…
不良「昔、スロットで大勝ちした時はこんな感じの気分になったなぁ!」フワ…
不良「まぁすぐ大負けして、地の底に転落する羽目になったけどな!」フワ…
不良「っと、楽しんでる場合じゃねえ! あいつを捜さないと!」
青年(ぼくはどうなってしまうんだ……!?)ジタバタ
青年(お父さん、お母さん……!)ジタバタ
不良「いたっ!」
不良「今助けてやるぞっ! よぉ~し、命綱つけて船外に飛び出してやる!」バッ
シーン…
不良「……」パクパク
青年「……」パクパク
不良「……!」パクパクパク
青年「……!」パクパクパク
シ~ン……
宇宙「はいっ!?」
不良「なんでこんな静かなんだよ!?」
宇宙「いやだってほら、宇宙って空気ないですし。当然、音もないわけでして」
不良「ふざけんなよ! クライマックスなのにサイレント映画みたいになってどうすんだ!」
不良「どうにかしろ!」
宇宙「分かりました! 一時的に空気を導入します!」
不良「十秒以内な!」
宇宙(なんてワガママな人だ……)
青年「あ、あなたはさっきの!?」
不良「助けに来たぞ!」
青年「ありがとうございます!」
不良「俺につかまれっ!」
ガシッ!
不良「やった!」
青年「ううっ、助かった……」
不良「ようし、このままスペースシャトルに引き込むぞ!」
不良「よし宇宙、なんかBGMかけて盛り上げろ!」
宇宙「は、はい!」
宇宙「デデッデッデデ…デデッデッデデ…」
不良「なんでターミネーターなんだよ!」
宇宙「じゃあダース・ベイダーのテーマを……」
不良「お前の選曲センスは狂ってる!」
天空人「あ、あれはスペースシャトル! さっきの悪そうな少年が手を振ってます!」
天女「どうやら、恐喝した相手を助けられたようじゃな」
天女「よくやったのう……みごとじゃ!」
不良女「さすがアタシが認めた男だよ」
舎弟「ガチかっけえっす!」
青年母「息子を助けてくれてありがとう!」
青年父「ふむ、あっぱれ!」
青年父(賠償金を当てにして高級オーディオを買っちゃったのはどうしよう……)
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ…
不良「……ところで」
青年「あ、はい!」ゴソゴソ…
青年「よかった! ポケットに100円が入ってました! どうぞ!」
不良「やれやれ、大赤字のカツアゲになっちまったぜ」
おわり
元スレ
不良「おい、ジャンプしろよ」青年「はいっ!」ピョンッ 不良「……落ちてこねえな」
http://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1512404707/
不良「おい、ジャンプしろよ」青年「はいっ!」ピョンッ 不良「……落ちてこねえな」
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コメント一覧 (23)
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- 2017年12月05日 04:38
- 安定の神話タグ
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- 2017年12月05日 04:54
- サイタマかな?
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- 2017年12月05日 06:49
- なんだこれwwww
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- 2017年12月05日 07:07
- マ グ ヌ ス 中 村
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- 2017年12月05日 07:10
- かなり好き
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- 2017年12月05日 07:35
- HOP-UPしている +33.4点
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- 2017年12月05日 08:33
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これと似たような不良の話見たことあるぞ。
同じ作者さんだろうか?
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- 2017年12月05日 09:10
- 割とよかった
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- 2017年12月05日 09:39
- 後のスーパーマリオオデッセイである
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- 2017年12月05日 09:42
- 確かにこういう不良出てくる作品いくつか見た気がする
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- 2017年12月05日 10:51
- バ、バカな!?
垂直高飛びチャンピオンのツェズゲラさんを大きく上回る飛距離だとっ!?
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- 2017年12月05日 12:39
- >>2
川越だったらありえる
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- 2017年12月05日 13:56
- 十万使って十円取り立てに行く萬田はんみたい
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- 2017年12月05日 15:32
- 出てくるキャラがどれも立ってて面白いな
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- 2017年12月05日 19:37
- 読み始めてタイトル理解した、普通に金落ちてこないって話かと思った
それにしてもタイトルもキャラも笑いどころしかないな
ショートゆえに色々ぶっ飛んでるのもGOOD
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- 2017年12月05日 23:08
- 安定の神話カテ
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- 2017年12月06日 01:34
- すき
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- 2017年12月06日 01:39
- ばかばかしくてすき
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- 2017年12月06日 04:18
- よくこんなの考えついたな すごいわ
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- 2017年12月06日 13:59
- アナコンダだかは出てこないの?
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- 2017年12月06日 19:19
- マグヌスで草を禁じ得ない
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- 2017年12月14日 23:42
- 普通に面白い
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- 2018年01月16日 18:35
- イイハナシカナー