武内P「大人の魅力、ですか」【前半】
武内P「……はぁ」
美嘉「わっかんないかなー★ この魅力が」チラチラ
武内P「城ヶ崎さんは、いつでも魅力的なアイドルです」
美嘉「そ、そう? でも、昨日までのアタシよりも凄いみたいな★」チラリズム
未央・凛「……うわぁ」
美嘉「ゴホン! ほら、ちゃんと見てみなって★」
武内P「昨日までと、特に変わった点は無いように見えますが……」
美嘉「昨日までのアタシには無い大人の魅力がさ、あるでしょ?」
武内P「……」
美嘉「……」
未央「しぶりんやばい、私もう見てられない」
凛「奇遇だね、私もだよ」
武内P「大人のフェロモン……ですか」
美嘉「そう! 大人のフェロモン★ もうヤバい、ドバドバ出てるっしょ★」
武内P「……すみません」
美嘉「……」
武内P「……」
未央「こんな悲しい話があっていいのかな」
凛「まあ、プロデューサー相手だし、仕方ないかな」
武内P「……」
美嘉「……」
武内P「その、大人のフェロモンを出すにはコツがありますから、お気になさらず」
美嘉「……は?」
武内P「焦らず、ゆっくりと練習すれば、必ず出せるようになります」
美嘉「ん?」
未央・凛「ん?」
武内P「はい」
美嘉「コツを掴めば、大人のフェロモンが出せるようになるの?」
武内P「そう、ですね。私は、出す方はあまり得意ではないですが」
美嘉「……マジで言ってる? ってか、アンタも出せるの?」
武内P「勿論です。プロデューサーは、フェロモンを抑える事も必要になりますから」
美嘉「大人のフェロモンが、出し入れ自在?」
武内P「はい」
美嘉「……」
未央・凛「……」
武内P「そう……でしょうか?」
美嘉「それじゃあさ、試しにフェロモン出してみてよ」
武内P「い、いけません! どうなるか予想が――」
美嘉「いいから!」
武内P「っ!? 城ヶ崎さん……?」
美嘉「今日のアタシは、昨日までのアタシと違うの」
武内P「……では、少し準備させてください」
美嘉「オッケー★」
武内P「……お待たせしました」
美嘉「上着を脱いで、ネクタイを外しただけ?」
武内P「いえ、あとはシャツのボタンを少しだけ外し、袖をまくります」
美嘉「へ、へぇ?」
武内P「……私から、半径3メートルは離れてください」
美嘉「そ、それだけなら別に平気だし★」
武内P「城ヶ崎さん、離れていてください」
美嘉「う、うん」
未央「しぶりん、今の時点ではどう?」
凛「まあ、悪くないかな」
美嘉「? 何よソレ、アタシをからかって――」
武内P「……」ムッワアア
美嘉「はっ!?///えっ、何!?///えっ!?///」
未央「あれ……? なんか、プロデューサーかっこよくない!?」
凛「なんだかいつもと雰囲気が……えっ、何?」
武内P「これが、大人のフェロモンです」ムッワアア
美嘉「へっ?///な、何?///」
武内P「城ヶ崎さんは、焦らずとも今でも十分魅力的なアイドルです」ムッワアア
美嘉「う、うん///」
武内P「大人の魅力に囚われずとも、ありのままが一番だと、私は思います」ムッワアア
美嘉「……」
武内P「城ヶ崎さん?」
美嘉「……違う。今日のアタシは、昨日までのアタシとは違うんだから!」
武内P「!?」
武内P「い、いけません! あまり近づいては!」ムッワアア
美嘉「これくらい」
美嘉「――――チョー」
美嘉「―――――――余裕」
美嘉「―――――――――だし」
美嘉「……★」
美嘉「」
武内P「城ヶ崎さん! しっかりしてください! 城ヶ崎さん!」ムッワアア
未央「今……流れるように腰が砕けてったね」
凛「美嘉の所だけエスカレーターが設置されてるのかと思った」
武内P「本田さん、渋谷さん、ありがとうございます」ムッワアア
未央「良いって良いって。無茶したのは美嘉ねぇなんだから」
凛「そうだよ。気にすることないって」
武内P「……すみません。一度フェロモンを出すと、止めるまでに時間が……」ムッワアア
未央「プロデューサーが美嘉ねぇを助けられないのはそれが理由だったんだね」
凛「今はソファーに寝かせてるけど、プロデューサーは近づかなくていいから」
武内P「……はい」ムッワアア
未央「……」
凛「……」
みく「おはようございま――って、えっ? 何、この状況!?」
夏樹「美嘉が寝てるけど……何かあったね、コレ」
李衣菜「……あれ、今日のプロデューサー何だか……カッコイイ?」
武内P「おはようございます」ムッワアア
未央「やっほー三人とも! いやー、さっきは大変だったんだよ!」
みく「そうじゃなかったら、今こんな状況になってないでしょ」
凛「美嘉が、プロデューサーの大人のフェロモンにやられちゃってね」
李衣菜「な、何それ」
夏樹「……へえ、面白そうな話じゃん」
武内P「……そういうわけですので、今は私に近付かないでください」ムッワアア
夏樹「悪いけど、それは聞けないね」
武内P「き、木村さん?」ムッワアア
夏樹「それだよそれ、その呼び方。アタシは、まだそれを改めさせるのは諦めてないんだよ」
武内P「いえ、ですが……」ムッワアア
夏樹「フェロモンに耐えたら呼び方を変える、これでどうだい?」
武内P「……」ムッワアア
夏樹「それに、何だろうと逃げるのはロックじゃないからね」
李衣菜「やっぱりなつきちはカッコイイなー!」
みく「……」
夏樹「大丈夫だって」
夏樹「……ほら、別に平気だろ?」クネッ
李衣菜「……ん?」
みく「……あれ?」
夏樹「アタシに、大人のフェロモンなんかきかないんだって」クネッ
未央「なんというか、立ち方が……」
凛「……峰不二子みたいになってるね」
夏樹「だろ? なんたって、アタシには熱いロックの魂があるからね」クネクネッ
未央「あれ、机があるから角度的にプロデューサーに見えてないだけだよね」
凛「見えてたらあんなに普通に対処してないって」
李衣菜「なつきち……? えっ、あれ……嘘でしょ?」
夏樹「? どうした、だりー?」クネクネッ
李衣菜「もうやめてよなつきち! 私、そんななつきち見てられないよ!」
みく「……ふふふ」
李衣菜「みくちゃん!? 何がおかしいのさ!」
みく「所詮、ロックなんてその程度にゃ!」
李衣菜「ま、まだ負けてない! なつきちはまだ戦ってるよ!」
夏樹「おいおい、まるでアタシがやられてるみたいに言うなよ」クネクネッ
凛「思いっきりやられてるように見えるけど」
みく「やっぱり、ロックより猫耳にゃ! 熱いロックよりも、キュートな猫耳の方が強いにゃ!」
みく「みくの、猫耳に対する熱い思いがあればPチャンのフェロモンなんかに負けない!」
みく「みくは、自分を曲げないよ!」
武内P「!? いけません前川さん! 私に近づいては――」ムッワアア
みく「Pチャン、勝負にゃあああああああああああん好きにしてええええええ?」ジュンジュワー
未央「ヘアピンカーブにも程があるよ!」
ガシッ!
みく「にゃん?にゃん?にゃん?にゃん?にゃん?にゃん?」ジュンジュワー
未央「ナイスキャッチ!」
夏樹「は、はやく何とかしてくれ! なんでか力が入らないんだ!」クネクネッ
凛「微塵も腰に力が入ってないからだよ!」
李衣菜「まずい! このままじゃ二人が!」
凛「李衣菜はそこに居て! 結果は見えてるから!」
李衣菜「それでも! 仲間を見捨てるのはロックじゃない!」
李衣菜「自分がロックと信じるものがロックなら――」
李衣菜「――ロックを信じる私を信じあああああ無茶苦茶にしてええええええ?」ジュンジュワー
未央「言わんこっちゃない!」
武内P「……前川さんと、多田さんの様子はどうでしたか?」
未央「プロジェクトルームでウサミンとなつきにガチ説教されてるよ」
武内P「お二人には……申し訳ないことをしてしまいました」
凛「本当、菜々さんが通りかかってくれて助かったよ」
未央「いやー、17歳でも、ウサミン星人には大人のフェロモンはきかないみたいだね」
武内P「それは……いえ、この話はやめましょう」
未央「? どうしたのしぶりん? 急に改まった顔をして」
凛「プロデューサー、ちょっと良いかな」
武内P「? はい、何でしょうか」
凛「……」クネクネッ
武内P「?」
凛「……」ウフーン
武内P「? あの……?」
未央「しぶりんやめて、プロデューサー困ってるから。私も困るから」
武内P「あの……渋谷さん?」
未央「……うん、そうだね、しぶりんも大人の魅力とか憧れるよね」
凛「……」プルプル
未央「わかるよ、わかる。同い年だもん、そりゃわかるよ」
凛「……グスッ」
未央「今度からさ、ニュージェネでフェロモン出す練習しようね。しまむーも一緒にさ」
凛「……ヒック」
未央「プロデューサー、私達、もう行くね」
武内P「……はい。本田さん、渋谷さんをお願いします」
ガチャッ、バタン
武内P「やはり、皆さんには大人の魅力は早すぎましたね」
美嘉「……ん……あれ……?」
武内P「目が、覚めましたか?」
美嘉「……・」
武内P「申し訳ありません。私の不注意で、城ヶ崎さんにご迷惑をおかけしてしまいました」
美嘉「……膝枕?」
武内P「その……差し出がましい真似だとは思ったのですが」
美嘉「……と」
武内P「と?」
美嘉「TOKIMEKIどこまでもエスカレート!」
武内P「!?」
美嘉「サイダーみたいにはじける恋モード!」ジタバタ
武内P「あの、寝たまま歌って踊らないでください! 城ヶ崎さん! 城ヶ崎さん!?」
美嘉「……」
武内P「目が、覚めましたか?」
美嘉「……はい、おかげさまで」
武内P「まさか、寝たままフルで歌って踊るとは思いませんでした」
美嘉「……ご迷惑をおかけしました」プルプル
武内P「いえ、それは……では、お互い様という事で」
美嘉「……」
武内P「……」
美嘉「……」
武内P「……誕生日、おめでとうございます」
美嘉「……えっ?」
武内P「その、ずっと言うタイミングを見計らっていたのですが……」
美嘉「えっ?」
武内P「……」
美嘉「えっ?」
美嘉「……」
美嘉「えっ?」
武内P「……」
美嘉「……なーんだ、覚えてたんだ★」
武内P「当然です。ですが、大人の魅力と言われたものですから……」
美嘉「いやー、別に?★ アタシも誕生日を迎えた事だし?★」
武内P「……」
美嘉「一つ大人の階段を登ったアタシだよ★ どう? これなら、R18だって――」
武内P「城ヶ崎さん、17歳の誕生日おめでとうございます」
美嘉「……」
美嘉「ん?」
美嘉「ちょっと待って?」
武内P「はい、何でしょうか」
美嘉「昨日までのアタシは17歳」
武内P「はい、そうですね」
美嘉「そして、誕生日を迎えたアタシはー?」
武内P「? 17歳ですが……?」
美嘉「……」
武内P「それでは、僭越ながら私が誕生日の歌を贈りたいと思います」
美嘉「……」
武内P「貴女が、これからも笑顔でいられるように……」
武内P「あっか~る~い笑ーいを~振りまいて~♪」
おわり
このスレを再利用して即興でテキトーに書いていこうと思っています
なので、今後はこのスレで書いていく感じですね!
人が居て、スレタイなネタ振りがあれば即興でそれも書こうかと思っています
もし居合わせた場合、武内P「」の形でアニデレなら大分クレイジーでもいけると思いますので、ネタ振りしてくれると嬉しいです
じゃあさっそくリクエストで
武内P「TV番組"未成年の主張"でアイドルの方々が私に告白してきた」
把握
記憶探りの動画漁りながらだからちょっと時間かかります
ナレ「未成年の主張」
イエエエエイ!
ナレ「今回はV6が訪れたのは、東京都某所にある芸能プロダクション、346プロ」
ナレ「このプロダクションでは、トップアイドルを目指し、個性的なアイドル達が笑顔で活動をしている」
坂本「それではアイドルの皆さん張り切っていきましょー!」
岡田「ましょー!」
アイドル達「イエエエエエイ!」
ナレ「今回は、生徒たちに変わってアイドル達には、事務所の屋上から全所属アイドル達に向かって主張してもらう」
卯月「「こんにちは!」
岡田「めっちゃ元気ww」
坂本「良い笑顔だねー」
卯月「はい! 笑顔は私の取り柄なんです♪」
坂本「さすがアイドルって感じだねー」
岡田「俺、あんまり得意じゃないんだよね」
坂本「それダメでしょ」
アハハハハハ!
卯月「はいっ♪」
岡田「え、あれスマイリングって読むんだ」
坂本「え、なんて読んでたの」
岡田「……」
坂本「……」
岡田「それじゃあ早速いっちゃってもらいましょー!」
坂本「言わねえのかよ!」
アハハハハ!
『プロデューサーさんへ』
・ ・ ・
卯月「……」
アイドル達「イエエエエイ!」
武内「……」
卯月「島村卯月、頑張ります♪」
アイドル達「可愛いー!」
・ ・ ・
岡田「あの子のあれ、持ちネタなんだよ」
坂本「詳しいじゃん」
アハハハハ!
卯月「いつかアイドルになるんだって、夢見て頑張ってたんですー!」
アイドル達「知ってるー!」
武内P「……」
卯月「そんな私を見つけてくれたのが、プロデューサーさんでしたー!」
アイドル達「ヒュウウウウウ!」
武内P「!?」
卯月「私がくじけそうになった時もー! 必死にはげましてくれましたー!」
アイドル達「わかるー!」
武内P「……///」
卯月「そんなプロデューサーさんにー!」
卯月「伝えたい事がありまーす!」
アイドル達「ヒュウウウウ!」
武内P「……!?」
・ ・ ・
坂本「え、何!? 告白!? マジで!?」
岡田「え、大丈夫? 放送出来るのこれ?」
卯月「……」
アイドル達「……」
武内P「!?……!?」
卯月「……」
アイドル達「がんばれー!」
武内P「!?」
卯月「島村卯月、頑張ります!」
・ ・ ・
坂本・岡田「……」
アイドル達「……」
武内P「……」
卯月「反応に困るので、ポエムを言ってこないでくださーい!!」
・ ・ ・
坂本「え!? あの人あの顔でポエム言うの!?」
岡田「やべえ、めっちゃ聞きたいwwww」
・ ・ ・
武内P「……」
武内P「善処しまーす!」
卯月「それ、ダメな時の返しじゃないですかああ!!」
・ ・ ・
坂本「やめてやれよwwww」
岡田「聞きたくなるわ―」
ハハハハハッ!
坂本・岡田「こんにちは!」
みく「こんにちは!」
坂本「お名前は!」
みく「前川みくですにゃん♪」
岡田「岡田准一ですにゃん♪」
みく「!?」
坂本「お前もやるのか――坂本昌行ですにゃん♪」
みく「!?」
みく・坂本・岡田「……」
みく・坂本・岡田「にゃんにゃん♪」
坂本「なんだよこれwwww」
ハハハハッ!
『プロデューサーさんへ』
・ ・ ・
坂本「もう直接言えよwwww」
岡田「どれだけ距離が遠い関係なのwwww」
・ ・ ・
みく「にゃああああああ!」
アイドル達「にゃああああああ!」
武内P「……」
・ ・ ・
坂本・岡田「にゃああああああ!」
ハハハハハッ!
アイドル達「なーにー!」
武内P「……」
みく「ずっと頑張ってきたけどー! もう限界にゃあああああ!」
アイドル達「にゃあああああ!」
武内P「……!」
・ ・ ・
坂本「俺、この子好きだわ―」
岡田「俺は別にそうでもないわ」
坂本「えっ?」
アイドル達「……」
武内P「……」
みく「猫キャラだけど、お魚は嫌いにゃあああああ!」
アハハハハッ!
アイドル達「にゃああああああ!」
武内P「!?」
・ ・ ・
坂本「ダメじゃんwwww」
岡田「どうして魚嫌いなのに猫キャラ選んじゃったのwwww」
アイドル達「……」
武内P「……」
・ ・ ・
坂本「これは本気だね、『にゃあ』取れちゃってるもん」
岡田「さあ、どう返す!?」
・ ・ ・
武内P「……」
武内P「企画、検討中でーす!」
みく「まだお魚のお仕事続くのおおおおおお!?」
アイドル達「にゃあああああ!」
・ ・ ・
坂本「このプロデューサー、自分の主張曲げねえなwwww」
岡田「もうこの人に主張して貰う?」
ハハハハハッ!
坂本・岡田「こんにちは!」
凛「こ、こんにちは」
坂本「どうしたー元気ないぞ―?」
岡田「こんにちは!!」
凛「こ、こんにちは!」
坂本「はい、お名前は!」
凛「渋谷凛です!」
岡田「あれ、君って敬語使えたんだ?」
凛「!?」
坂本「え、詳しいじゃん」
岡田「うん。それに、大声で挨拶するタイプじゃないよね?」
凛「なんでやらせたの!?」
ハハハハッ!
『プロデューサーさんへ』
・ ・ ・
坂本「また!?……またなの!?」
岡田「いやでも、俺あの人かなり好きになってきたから良いよ」
坂本「良いんだwwww」
・ ・ ・
凛「……」
アイドル達「いえええええい!」
武内P「……」
アイドル達「知ってるー!」
武内P「……」
・ ・ ・
坂本「敬語だね」
岡田「そっちでいくんだね」
・ ・ ・
凛「見た目が怖いから、捕まってるプロデューサーを何回か見てきました―!」
アイドル「私もー!」
武内P「!?」
・ ・ ・
坂本「皆見たことあるの!?」
岡田「俺も見て―wwwwww」
凛「怖いのは見た目だけだとわかりましたー!」
アイドル達「イエエエエイ!」
武内P「……」
凛「貴方のおかげでー! 毎日が輝いて見えまーす!」
凛「アイドルをやる意味もー! 見つかる気がしまーす!」
アイドル達「イエエエエイ!」
武内P「……」
・ ・ ・
坂本「良い話じゃなーい」
岡田「え、お金のためじゃないの」
坂本「……水差さないでくれない?」
ハハハッ!
凛「もしも、アイドルをやる意味が見つかってー!」
凛「私がトップアイドルになって、引退した時にー!」
アイドル達「……」
武内P「……」
・ ・ ・
坂本・岡田「……!」
・ ・ ・
凛「っ……! 引退した時、お互い――」
武内P「善処しまーす!」
凛「逃げないでよー! そしてお断りなのかよー!」
・ ・ ・
坂本・岡田「アッハッハッハッハ!」
ハハハハハッ!
ナレ「続いてのコーナーは――」
おわり
武内PのSS見てると、蒼い子や歩く{検閲済み}とかが迫ってきても武内Pは(突然裏切る可能性はあるけど)自分の味方になる他のアイドルがいるけど、恐らくまゆ専属ぽいまゆPはいつも逃げ場なさそうだな…
やってみよう
まゆ「お疲れ様です」
武内P「それでは早速ですが、成果の方はいかがでしたか?」
まゆ「うふ、貴方のおかげで、と~っても喜んでくれましたよぉ」
武内P「そうですか、それは、何よりです」
まゆ「やっぱり、CPのプロデューサーさんはとっても優秀ですねぇ」
武内P「……」
武内P「はい。とても、良い笑顔だと私も思います」
まゆ「うふ、ダメですよぉ。まゆは、運命の紅い糸で結ばれた相手がいますから」
武内P「……そういう意味では」
まゆ「わかってますよぉ。冗談です」
武内P「……」
まゆ「実は……」
武内P「また、ですか」
まゆ「はい……プロデューサーさんへの想いが止まらなくて」
武内P「佐久間さん、時には強引に押すことも必要でしょう」
武内P「ですが、彼はとても面倒見の良い男です」
まゆ「はい。だって、まゆの事をいつも見ててくれますから」
武内P「なので、焦る必要はありません。いいですね?」
まゆ「わかってはいるんですよぉ」
武内P「……」
まゆ「注意、ですかぁ?」
武内P「あまり、手作りの物を渡すのは控えた方が宜しいかと」
まゆ「えっ?」
武内P「佐久間さん、貴女はまだ16歳で、アイドルとしても階段を登っている最中です」
まゆ「でも……」
武内P「そんな貴女が、自分のために時間をかなり割いていると思っている」
まゆ「うふ、まゆの想いの強さがわかって貰えますね」
武内P「それもありますが、それ以上に彼は悩むでしょう」
まゆ「……悩む?」
武内P「はい」
まゆ「だったら、悩む事はないですよねぇ?」
武内P「そうですね、一人の男性としてはそうかもしれません」
まゆ「だったら……」
武内P「しかし、彼もまた、プロデューサーなのです」
まゆ「……」
武内P「プロデューサーの自分が、アイドルである貴女の妨げになっているのかもしれない」
まゆ「そんな事は!」
武内P「貴女の事を大切に思っている彼ならば、きっとこう考えるでしょう」
まゆ「……」
武内P「はい」
まゆ「……」
武内P「なので、手作りは重要なイベントの時に合わせていきましょう」
まゆ「でも、他は既製品になっちゃいますよぉ?」
武内P「緩急をつける事も大切です」
まゆ「緩急?」
武内P「手作りには思いの強さが篭っています」
武内P「ですが、それが続いてはそれに慣れてしまいますから」
まゆ「……なるほど」
まゆ「はい、と~っても楽しみです」
武内P「佐久間さん、これは、一つの賭けになりますが」
まゆ「賭け、ですかぁ?」
武内P「クリスマスには、何もプレゼントを用意しない、という手もあります」
まゆ「!?」
武内P「続けても?」
まゆ「……聞かせてもらえますか?」
まゆ「まゆは、いつも頑張ってますよぉ?」
武内P「今まで、彼のために使っていた時間も使用して、です」
まゆ「それは……」
武内P「そうする事により、彼はそれまでの悩みから開放され、心に余裕が生まれます」
まゆ「……それで?」
武内P「彼はこう思うはずです。――『まゆはとても頑張っているな』」
武内P「『やっと、アイドルとして一緒に、真剣に頑張ってくれるようになった』」
武内P「『せっかくのクリスマスだし、今までのお返しも込めて』――」
まゆ「ご褒美……!?」
武内P「その通りです」
まゆ「つまり、大きなリボンを買って、私をラッピングすれば……!?」
武内P「佐久間さん、それは用意している内に入ります」
まゆ「……」
武内P「ですが、佐久間さんに限らず、女性は武器を持っています」
まゆ「武器? 女の武器と言えば……涙?」
武内P「そうです。それを最大限に活かしていきましょう」
まゆ「でも、プロデューサーさんからのクリスマスプレゼントを貰ったら悲しくなんて――」
武内P「――嬉し泣き、という物があるのはご存知ですね?」
まゆ「!」
武内P「世の男性は、女性の涙に弱いものです」
まゆ「それで、プロデューサーさんはまゆの涙を拭って――」
武内P「――しかし、それだけでは足りません」
まゆ「まだ……ですかぁ?」
武内P「佐久間さん、貴女と彼の関係は、アイドルとプロデューサーですね?」
まゆ「うふ、そうですねぇ、運命の紅い糸で結ばれた、ですけど」
武内P「貴女は、女の武器ともう一つ、アイドルとしての武器も持っています」
まゆ「それは……?」
武内P「笑顔です」
武内P「これを活用しない手はありません」
まゆ「……どうやって?」
武内P「嬉し泣きからの――笑顔です」
まゆ「そんなにうまくいきますか?」
武内P「まず、間違いないでしょう」
まゆ「……言い切りますね」
武内P「一緒に努力を重ねてきたアイドルが、涙と共に笑顔を浮かべている」
武内P「……プロデューサーは、笑顔に弱いのですよ」
まゆ「……うふ、さすがですねぇ」
まゆ「やっと、プロデューサーさんと結ばれる事が出来ます」
武内P「佐久間さん、焦ってはいけません」
まゆ「?」
武内P「この場合は……そうですね、頬にキスが限度でしょうか」
まゆ「それだけ……?」
武内P「十分です。今後の展開も含めて考えると、それがベストだと私は考えます」
まゆ「今後……?」
武内P「はい」
まゆ「……」
武内P「続けても?」
まゆ「お願いします」
武内P「なので、一気にそこから逸脱するような行動はあまりよろしくありません」
武内P「だからこその、頬にキスです」
まゆ「……」
武内P「プレゼントを用意しなかった事も、ここで活きてきます」
武内P「アイドルとして頑張ってきて、お返しを用意する暇も無かった」
武内P「そんな貴女が、アイドルとしてお返し出来る精一杯」
まゆ「それで、頬にキス……ですかぁ」
武内P「頬にキスした後、照れ笑いも浮かべれば……はい、間違いないですね」
まゆ「……素晴らしいです」
武内P「それを何とかするのが、プロデューサーの役目ですから」
まゆ「あの……」
武内P「はい、何かありましたか?」
まゆ「プレゼントに、指輪を贈ってもらう事は可能ですか?」
武内P「それは……少し、難しいでしょうね」
まゆ「……そうですかぁ」
武内P「ですが、アクセサリーの類を送るように、それとなく話をふっておきます」
まゆ「うふ、ありがとうございます」
まゆ「はぁい」
武内P「佐久間さんは、クリスマスまで手作りの贈り物を控えてください」
武内P「これは、貴女が趣味に時間を費やすのを控えてまで努力した、という演出にもなります」
武内P「料理の差し入れ等はそうですね……二回までなら良いでしょう」
まゆ「それだけですかぁ?」
武内P「はい。全てはクリスマスで、最大の結果を得るためと自重してください」
武内P「そして、アイドルとしての活動にも一層励んでください」
武内P「努力に応じて、アクセサリーのランクが上下するのはおわかりですね?」
まゆ「もちろん」
まゆ「許可?」
武内P「仕事の合間の世間話では、十分に時間が取れません」
武内P「なので……そうですね、クリスマスまでに二回、彼と飲みに行きたいのです」
まゆ「二回、ですか」
武内P「一回では恐らく時間がたりませんので」
まゆ「わかりました。まゆから、CPの皆にはそれとなく許すように言っておきますねぇ」
武内P「ありがとうございます」
まゆ「うふ、こちらこそ、ありがとうございます」
まゆ「まゆもレッスンがありますから」
武内P「はい、頑張ってください」
まゆ「本当、思い切って相談してみて良かったです」
武内P「担当は違えど、アイドルの悩みを解決するのはプロデューサーの役目ですから」
まゆ「CPのプロデューサーさんは、とっても優秀なんですねぇ」
武内P「……こうでもしないと、飲みに行く自由すらありませんが」
まゆ「うふ、でも……まゆのプロデューサーさんもとっても優秀なんですよ」
武内P「? はい、それは良く知っていますが……?」
まゆ「CPは人数が多いから大変でしょうけど、頑張ってくださいね♪」
おわり
ある、男と女の話をしようか。
その男は、とても誠実だが、とても不器用な男だ。
背は高く、顔も厳しい。
男の顔を突然見せられた少女が気絶した事もある位ね。
そして女は、とても神秘的だが、とても親しみの持てる女だ。
美しい容姿はいつでも人を惹き付け、魅了する。
まさしく、本の中から出てきたお姫様といった具合だね。
私は、一見何の共通点も無い彼らが少し似ていると思っているのだよ。
ん? どこがかって? っと、その前に煙草に火を付けてもいいかな?
何? ダメ? アイドルの前で煙草は駄目か……そうか…・・。
せっかく喫煙所の設置を取り付けたんだがねぇ……。
君達は、年に一回開かれる事務所のパーティーには参加した事があるかな。
ああ、そうだね、もうそんなに経つか。
だったら、詳しい話はせずとも平気だね。
しかしまあ、せっかくだから聞いてくれたまえよ。
346プロでは、年に一回パーティーが開かれる。
社員やアイドルに関係なく、とても盛大に、華やかに。
これは昔からの伝統でね、プロの楽団を招きもするし、毎年大いに盛り上がる。
私はこれがとても楽しみでねぇ!
皆が見せる、普段見たことの無い表情がとても新鮮で、出る酒もまた美味い!
あんなに高価なワインをタダで飲めるんだ、楽しみにしない訳がないさ!
……ああ、すまない、また脱線してしまった。
っとと、そんなに怒らないでくれたまえよ!
ゴホン!
これは、先に言った誠実な男と、神秘的な女の、不器用で、親しみの持てる話さ。
パーティー会場には、多くの人が集まっていた。
赤や黄色、青にピンクにオレンジと、色とりどりのドレスを纏ったお姫様――もとい、アイドル達も沢山。
それはとても華やかで、私はここで働いていて良かったと思ったね。
だってそうだろう? こんな仕事をしても居ない限り、年頃の娘さんと接する機会なんて無いからね。
……っと、話を戻そうか。
会場にはとても陽気な音楽が流れ、参加者は皆、それぞれ楽しんでいた。
仲の良い者同士で談笑する者、普段関わることの無い者同士で交流する者。
会話よりも食べることに集中する者や、中にはひたすらメガネを布教している者もいたね。
皆、それぞれが自由に、とてもいい笑顔で笑っていた。
しかし、男の顔には笑顔はなかった。
いつもの事?
いやいや! 男が表情を出すのが苦手だから笑顔では無かったのではないよ!
男はね、とても緊張していたんだ。
男は、いつものスーツの上下では無かった。
それは当然だね、何せパーティーだから。
黒いタキシードを着こなし、髪を整えた姿は、まあ、様になっていたね。
背が高いせいで調達に苦労したようだが、その甲斐はあるだけの見栄えだった。
そんな男の姿を見て、担当のアイドル達はとても色々な反応をしていたねぇ。
素直に褒める声や、普段からそうしていろという声。
悪くないかな、という素直ではない声を聴いた時は私も笑ってしまったよ!
女は、いつものアイドルとしてのドレスでは無かった。
それも当然だ、何せパーティーだから。
新緑のパーティー用のドレスは彼女の美しさを際立たせ、ある種、近寄りがたい神秘性を感じたね。
細身な彼女のために仕立てられたドレスを纏った彼女は、まるで女神のようだったよ。
そんな女の周りには、とても色鮮やかな花達が一緒に居た。
しかし、普段とは違う女の様子を心配する声がほとんど。
最初は私も何事かと思っていたんだが、すぐに納得したよ。
陽気な音楽が、優美なワルツに切り替わる前に、男が女の方へ歩み寄っていったのを見てね。
着飾っているとは言え、男の風貌はとても恐ろしいものだ。
男の事をよく知らない人間は、自然と彼に道を譲っていった。
だから、男は真っ直ぐ、曲がることなく、女の元へ向かっていった。
そう、まるで花道のようだったね。
男が近づいてくるのを見た女の周りの花達は、
何かを察したように、あとは任せたと言わんばかりに女の元を離れていった。
陽気な音楽が終盤に差し掛かった時、男は女の元へたどり着いた。
男の恐ろしげな容姿と、女の美しい容姿は、とても並び立つようなものではない。
それなのにね、まるで、一枚の絵画の様に美しい光景だと私は思ったよ。
男は真っ直ぐに女を見つめ、言った。
「私と、踊っいただだっ――……すみません」
ハッハッハ! 肝心な場面でこれだよ! 傑作だろう?
男は何事も無かったかのように――とは行かなかったが、もう一度女に言った。
「私と、踊って頂けませんか?」
男の真っ直ぐな誘いに、女は問いで返した。
「どうして、私をお誘いに?」
女は、もう枯れた私から見てもとても魅力的な女性だ。
その問いは、我々男性からしたらなんとも意味の無いものだ。
魅力的な女性をエスコートしたい、それだけで十分なのさ。
しかし、男の答えは普通とは違っていた。
「私がプロデューサーで、貴女がアイドルですので」
失礼な答えだと思うかね?
……だが、その答えを聞いた女は、とても満足そうに微笑んだのさ。
「まあ、貴方がプロデューサーで、私がアイドルだからダンスのお誘いを?」
「はい」
楽しそうに微笑む女に、男は真っ直ぐに返した。
「今日の貴女が履いているヒールでは、ダンスの相手に困るだろうと思いまして」
「確かにそうですね。私、女にしては背が高くて可愛げがないですから」
「い、いえ! そのようなことは、決して!」
「ふふっ、冗談です」
焦る男を見た女は、綻ぶ様な笑顔を浮かべていたね。
「……貴女は、とても素晴らしいアイドルです」
「はい、ありがとうございます」
「そんな貴女が、せっかくの舞台で壁の花になるのは見過ごせませんから」
「まあ、とても情熱的なお誘いをする、仕事熱心なプロデューサーさんですね」
男は無言で女へ手を差し出し、女はその手をとり、笑った。
その笑顔は、私にはアイドルとしての笑顔ではなく、ただの女の子の笑顔に見えたがね。
――あとは、君達も見ていただろう?
二人のダンスはとても素晴らしいもので、君達も盛大に拍手をしていたじゃないか。
他に何か? そうだねぇ……。
ああ、少しだけ話を補足しておこうか。
一見無趣味に見える男はね、ある時期になるとダンス教室に通うんだよ。
それに加えて、うちの事務所のトレーナーに何やら協力をお願いしているみたいだ。
職権乱用? ああいや、違う違う! トレーナー達も楽しんでいるみたいだよ。
無口な馬車が、必死になって頑張ろうとしているのは、応援してたくなるものじゃないか。
女が、普段とどう様子が違ったのかって?
そんなのは簡単だよ。
私でもつい飲みすぎてしまうようないい酒を前にして、彼女が一滴も飲んでいなかったからさ。
ああそれに、あんなに高いヒールを履いているのもパーティーの時だけだね。
まるで『美女と野獣』?
いやいや、あれはとんでもなく甘いラブ・ストーリーじゃないか。
言うなれば、あれは三角関係だね。
男と、女と、そして、仕事の。
とても不器用で、親しみが持てるだろう?
さあ、話はおしまいだ。
気になっていた謎は解けたかな?
いやいや、これ以上私から話す事は何もないよ。
これ以上は、本人の口から聞くべきだ。
さ、もう行きなさい。
私はこれから至福の時間を過ごすんだから。
必死になって勝ち取った、この喫煙所!
ん、そういえば、君達ならわかるかな。
彼女が言っていたんだけどね、私には意味がサッパリわからなかったんだよ。
何だったかな……ああ、そうそう!
ハイヒールを履いて、はい、ヒール。
――だったかな。
ああっ!? もうこんな時間じゃないか!
……やれやれ、煙草を吸いそびれてしまったよ。
私の癒やしの時間が。
おわり
武内P「顔が赤いですが、大丈夫ですか?」
未央「へっ!?///ううん、なんでもないよ!?///」
凛「そ、そうだよ///プロデューサーは気にしなくていいから///」
卯月「……///」
未央(プロデューサー、気付いてないのかな)
凛(どこからどう見ても、あれ、完全に……)
卯月(勃ってます)
未央「お、オッケー!」
未央(言えないよ! 言えるわけないじゃん!)
凛「本当、気にしなくていいから」
凛(アンタの身に起こってる事が気になってるの!)
卯月「……」
卯月(勃ってます)
未央「はいはーい!」
未央(何!? 何なの!? セクハラ!?)
凛「うん、わかった」
凛(態度はいつもと同じだし……気付かないなんてあるの?)
卯月「……」
卯月(勃ってます)
武内P「秘密、ですか?」
凛「そうだよ。だから、プロデューサーは聞かなくていいから」
武内P「そう、ですか」
卯月「……」
未央「プロデューサーに聞かれたら、秘密じゃなくなっちゃうしね!」
凛「プロデューサー、ヘッドホンでもつけて音楽でも流してなよ」
卯月「……」
武内P「……はぁ、わかりました」
凛「だね。事務所から離れると、何か起こった時対処出来ないし」
卯月「……」
未央「しまむー、ほら、行くよ」
卯月「……」
凛「卯月? ねえ、どうしたの卯月?」
卯月「……」
未央「ダメだ。視線が完全に固定されてる」
凛「……とりあえず連れて行こうか」
卯月「……」
卯月「……」
未央「しまむー、遮蔽物があるのに凝視し続けてるね」
凛「……私、友達なのに卯月の事何にもわかってなかった!」
未央「こんな状態になるなんて、私だって思ってなかったよ」
卯月「……」
未央「これはもう……私達にはどうしようもないね」
凛「諦めるの? 卯月がこんな状態なのに、黙ってみてるわけ?」
未央「しぶりーん、それは違うよ」
凛「?」
未央「助けを呼ぶんだよ! ほら、こういう事に詳しい仲間が私達には居るじゃん!」
凛「……なるほど、悪くないね」
卯月「……」
未央「……と、言うわけなんだよ」
美波「えっと、それで私達が呼ばれたの?」
凛「うん。二人なら、何とかしてくれると思って」
奏「何とかって……言われてもねぇ」
未央「みなみん、はやみん! お願い!」
凛「CPとクローネのリーダーが揃ってるんだから大丈夫だよ」
美波「そう言われると……弱いなぁ」
奏「私はクローネのリーダーになった覚えはないんだけど?」
卯月「……」
奏「どうって……放っておけばその内収まるものなんじゃないの?」
凛「奏……卯月を見て」
奏「?」
卯月「……」
美波「どこか一点を見続けて……ああ、なるほどね」
奏「えっ? どういう事?」
未央「またまたとぼけちゃってー! 本当は、はやみんもわかってるんでしょ?」
凛「奏ならわかってるに決まってるよ」
未央「だね! しまむーが、プロデューサーの股間を凝視し続けてるなんてお見通しだよね!」
奏「ちょっと待って。何、その私への信頼は!?」
美波「未央ちゃん、問題はそこじゃないでしょ」
凛「確かにそうだね。全く、とぼけるなんて奏も人が悪いんだから」
奏「……なんだか、酷い扱いを受けてるように感じるんだけど」
美波「奏さん」
奏「どうしたの美波」
美波「北風と太陽作戦で行こうと思うんだけど、奏さんはどう思う?」
奏「待って。私に意見を求めるのは、何故?」
未央「なるほど……冷静になって収まるのを待つよりも」
凛「逆に興奮させて、パッションを弾けさせよう……って事か」
奏「!?」
卯月「……」
凛「やっぱり、二人に相談して正解だったね」
美波「それじゃあ、サッと行ってガバッとやってシュッとやってピュッって感じでいいかしら?」
奏「え、あの、ちょっと……!?」
卯月「……」
未央「しまむー、待っててね! すぐに、元のしまむーに戻してあげるから!」
凛「卯月、すぐに良くなるから。それまで頑張って」
奏「……」
奏「……!?」
武内P「……」
美波「プロデューサーさん、画面と音に集中してこっちに気付いてないみたい」
奏「ね、ねえ美波?」
美波「チャンスは今しかないわ、奏さん」
奏「あの、ちょっと」
美波「うふふ、やっぱり、奏さんって呼び方しちゃうなぁ」
奏「いや、だからね」
美波「最初に、私より大人だなって思った印象が抜けなくって」
奏「美波? 美波さん?」
美波「でも、私の方がお姉さんなんだから、頑張らなくっちゃね!」
奏「……」
美波「や、やだ、プロデューサーさんったら……///」
奏「な、何……え、えっ?///」
美波「とっても苦しそう、早くなんとかしてあげないと」
奏「……」
奏(勃ってる)
美波「すぐ楽にしてあげますからね!」
奏「……」
美波「美波、行きま――」
奏「……」
美波「っ!? 奏さん!?」
奏「……」
卯月・奏「……」
未央「しまむー……はやみん……!」
凛「まさか、奏までやられるなんて……」
美波「私一人だと、どうしても気付かれちゃうし…・…」
卯月・奏「……」
未央「でも、このままだとどんどん人が来るよ」
凛「……私、もう直接言ってくる」
美波「!? 駄目よ凛ちゃん! 女の子がそんな事しちゃ!」
凛「でも! だからって!」
卯月・奏「……」
卯月・奏・杏・きらり・李衣菜・かな子「……」
凛「ほら! モタモタしてるから犠牲者が増えた!」
未央「じゅ、17歳って難しいお年頃だよね」
美波「……やっぱり、私が行くわ」
未央「みなみん!? 無茶だよ、危険すぎる!」
凛「美波までこうなったら、どうしたらいいかわからない!」
美波「ありがとう二人共、心配してくれるのね」
17歳達「……」
美波「でも、なんとかなる気がするの」
未央・凛「……」
美波「ふふっ、根拠は無いんだけどね♪」
美波「……」
美波「――美波、行きます!」
17歳達・美波「……」
未央「完全に気のせいだったじゃん!」
凛「もう少しの所で固まっちゃったね……」
未央「しぶりん、もういっそ私達も凝視して固まっちゃう?」
凛「馬鹿言ってないで、何とかする方法を……」
ガチャッ
ちひろ「もう、皆! レッスンの時間が過ぎてるのに来ないって、トレーナーさん怒ってるわよ!」
一同「!?」
未央「しまむー!? 目が覚めたんだね!?」
卯月「み、未央ちゃん?」
奏「……ふふっ、私の視線を独り占めした代価は、キスで頂けるのかしらね?」
凛「奏、今そういう感じ出すの、やめて」
奏「……」
一同「……?」
ちひろ「はーい、皆急いで! ほら、走った走った!」
一同「は、はい!」
ちひろ「プロデューサーさん! プロデューサーさん!」
武内P「……」
ちひろ「もう! プロデューサーさーん!」
ユサユサ!
武内P「……千川さん?」
ちひろ「はい、私ですよ。千川ちひろです♪」
武内P「……」
武内P「ありがとうございます……! 助かりました……!」
武内P「……申し訳、ありません」
ちひろ「ふふふ、どんなLINEしたか覚えてます?」
武内P「いえ……あの時は、心を無にしてとにかく落ち着こうと必死だったので」
ちひろ「『ち○ちん爆発しそう助けて』ですよ、プロデューサーさん」
武内P「……」
ちひろ「もう! 最初はセクハラだと思ったんですからね!」
武内P「……大変、申し訳ありませんでした」
武内P「島村さんの異変に気付いたら、徐々に、その……はい」
ちひろ「なるほど」
武内P「……他の方には、気付かれなかったでしょうか」
ちひろ「それは……あー、大丈夫なようなそうでないような」
武内P「……」
武内P「……一体、何故この様な事に……」
ちひろ「何か、変なものでも口にしましたか?」
武内P「いえ、今日は千川さんに頂いた特性スタミナドリンク以外、特には……」
ちひろ「……」
武内P「? 千川さん? あの、どうかされましたか?」
ちひろ「そ、それはほら! まだプロデューサーさんが元気ですから!」
武内P「も、申し訳ありません! 見苦しいものを……!」
ちひろ「いえいえそんな、いやいやまさか!」
武内P「千川さん、顔が青いですが、大丈夫ですか?」
ちひろ「まさかこの事態が私の責任……!?」ボソボソ
武内P「あの、どうしてこちらににじり寄ってくるんですか!?」
ちひろ「確かに? いつもお疲れだったので? ちょっと強めの?」ボソボソ
武内P「い、いけません! や、やめ、駄目です! 何をする気ですか!?」
武内P「来ないでください千川さ――ん!!」
おわり
武内P「……」
今西部長「……いや、違うよ?」
楓「……」
武内P「……」
部長「……」
武内P「いえ、しかし……」
楓「私はまだ25ですし、まだまだアイドル活動を続けたいです」
武内P「……」
部長「……うん、そうだね」
楓「……」
武内P「……」
部長「……」
武内P「今は」
楓「仕事が恋人ですね」
武内P「……」
部長「……いるのかね?」
武内P「い」
楓「まは仕事が恋人ですね」
武内P「……」
部長「……」
楓「若い二人で、ですか?」
武内P「……」
部長「……いや、違うね?」
楓「もう、私はまだまだ若いですよ」
武内P「……」
部長「……」
武内P「それは……」
楓「そのお話、お受け出来ません」
武内P「……」
部長「……高垣君に、じゃなくね?」
楓「それを聞いて安心しました」
武内P「……」
部長「……」
武内P「そう、ですか」
楓「けれど、その方と私の歩む道は違う」
武内P「……」
部長「……うん、それはそうだね」
武内P「……」
部長「……」
武内P「……」
楓「共に、階段を登っていき――あっ、違う」
楓「そのお話、お受け出来ません」
武内P「……」
部長「……」
楓「……」
武内P「……」
楓「私は、そうは思いません」
武内P「……」
部長「……うん、高垣くんには聞いてないね?」
武内P「……」
楓「……」
武内P「……」
楓「その話、」
武内P「高垣さん」
楓「おうけ……はい」
武内P「少し、部長と話をしますので」
楓「……」
部長「……」
武内P「はい、とても良いお話だと私は思いました」
楓「!?」
バシバシ!
武内P「私には、勿体無い話です」
楓「!」
バシバシ!
部長「……」
楓「……!」
ぐにー!
武内P「ふぇふふぁ」
部長「……高垣君」
楓「……」
武内P「……」
部長「……」
楓「……!」
バシバシ!
武内P「はい」
楓「……!」
バシバシ!
武内P「ですが、その話、お受け出来ません」
楓「!」
バシバシ!
武内P「はい、まだまだプロデュース活動に専念したいと思っています」
楓「♪」
バシバシ!
部長「……その、痛くないのかね?」
武内P「痛いです」
楓「~♪」
バシバシ!
武内P「申し訳ありません。今は、仕事が恋人ですから」
楓「♪」
部長「……なるほど、そうか」
武内P「申し訳ありません」
楓「♪」
楓「ふふっ……――笑顔で!」
武内P「……」
部長「……彼は、高垣君の担当じゃないね?」
楓「!?」
武内P「……」
楓「……!」
バシバシ!
武内P「今日は奢りますので、ご勘弁を」
楓「居酒屋で大丈夫ですよ~」
武内P「……」
部長「……彼女も、かい?」
楓「……」
武内P「……」
楓「……」
武内P「……お猪口で、ちょこっとだけですよ」
楓「!?」
バシバシ
おわり
武内P「しかし……私はそういうった遊びはしたことが無く」
きらり「ぜーんぜん大丈夫だにぃ☆ きらりがぁ、バッチシフォローするゆ☆」
みりあ「あのね、みりあお姉さんになったでしょ?」
武内P「はい、それはお聞きしています」
みりあ「だから、妹が大きくなる前に練習しておきたいなあって思ってたの!」
武内P「……なるほど」
みりあ「……えへへ」
武内P「……」
みりあ「……」
きらり「んもー! Pちゃんは、きらり達とおままごとしたくないのぉー?」
武内P「いえ、そういう訳では……」
きらり「うきゃー☆ みりあちゃん、Pちゃんおままごとしてくれるってぇー☆」
みりあ「本当!? わーい! プロデューサー! きらりちゃんありがとー♪」
武内P「……」
みりあ「あははっ! プロデューサー緊張してるー!」
武内P「……」
みりあ「あっ、今はプロデューサーじゃなかった!」
武内P「……はい、おと」
みりあ「ねっ、お母さん!」
武内P「……」
きらり「……」
武内P・きらり「!?」
みりあ「もー! お母さんったら、たまに呼び方を間違えるんだから!」
武内P「いえ、あの、配役が間違っていま」
みりあ「今は夫婦で子供も居るんだし、ちゃんとお父さんって呼びなさい!」
武内P「……」
きらり「……」
武内P・きらり「!?」
きらり「お……お母さん……?」
みりあ「! ねえねえお母さん! 今の聞いた!?」
武内P「え、あの」
みりあ「もー! 今、きらりちゃん……じゃなかった」
きらり「うゆ?」
みりあ「きらりが、初めてお母さんって言ったんだよ!」
武内P「そ、そこまで子供の設定なのですか!?」
みりあ「……もー! 設定とか言わないで、真面目にやってー!」
武内P「す、すみません」
ナデナデ
きらり「にょ、にょわー☆ て、照れるにぃ///」
みりあ「! また喋った! 凄い凄い、うちの子天才かもしれない!」
武内P「は……はい、そうですね」
みりあ「プ……お母さんも褒めてあげないと!」
武内P「え、偉いですね」
みりあ「むー! そんなんじゃなく、もっとちゃんと褒めてあげて!」
武内P「は、はい……!?」
武内P「いえ、それは……その……!?」
みりあ「……頑張ったら、ちゃんと褒めて欲しいもん」
武内P「……赤城さん、その、私は」
みりあ「……」
武内P「……」
きらり「……」
きらり「お、お母さーん☆ な、ナデナデして欲しいにぃ///」
武内P「……!?」
きらり「お、お母さーん☆」
みりあ「……」ジーッ
武内P「……いえ……あの……!?」
きらり「……」
みりあ「……」ウルウルッ
武内P「……」
武内P「よ……よし、よし……」
ナデ……ナデ……
きらり「う、うっきゃー☆ は、恥ずかスィー☆」
武内P「……」
きらり「うゅ……///」
武内P「……その、もう、終わりにしましょう」
みりあ「えー! もうちょっとだけ! お願いプロデューサー!」
武内P「いえ、ですが……」
みりあ「お願いお願い! ねぇねぇ、良いでしょ?」
武内P「……では……本当に、あとすこしだけですよ」
みりあ「わーい!」
きらり「……///」
きらり「Pちゃん、付き合ってくれてありがとにぃ」ボソボソ
武内P「……諸星さん?」ボソボソ
きらり「みりあちゃん、お姉さんになったでしょぉ?」ボソボソ
武内P「はい、それはご本人からも聞いています」ボソボソ
きらり「だから、甘えたいんだけど、しっかりしなきゃって思ってて……」ボソボソ
武内P「それで……諸星さんを自分に見立ててやりたい事を、というわけですか」ボソボソ
きらり「うん、それでみりあちゃんがハピハピすゆなら、きらりも頑張るにぃ☆」ボソボソ
みりあ「何かなぁ?」
武内P「……」
みりあ「あっ! また呼び方間違えてる!」
武内P「す、すみません……お、お父さん」
みりあ「ん、なーにー?」
武内P「お父さんが、子供の頃にして欲しかった事は何でしょう?」
みりあ「子供の頃に?」
武内P「はい。それをしてあげると、喜んでくれると思うのですが」
きらり「Pちゃん、ナイスだにぃ☆」ボソボソ
みりあ「えーっとね……あっ、肩車!」
武内P・きらり「肩車!?」
みりあ「うん!」
武内P「私が諸星さんを……肩車……?」
きらり「ぴ、Pちゃん、それはさすがに……!?」
みりあ「あのね! 肩車って、普段と違って地面が遠くて、とっても楽しいんだよ!」
武内P「……」
きらり「……」
武内P・きらり「……」
みりあ「うわー! すごいすごい!」
武内P「だ、大丈夫ですか諸星さん……!?」
きらり「じ、地面は遠いけど、て、天井がとーっても近いにぃ!」
みりあ「ねー! とってもいい眺めでしょー!」
きらり「あ、圧迫感が……う、うん! とってもハピハピするにぃ☆」
武内P「さ、左右に揺れないで頂けると助かります……!」
きらり「にょ、にょわー!? ごめんにぃ!」
きらり「……ゆ、ゆっくり! ゆっくり降ろしてー!」
武内P「は、はい……!」
ユルユル……
武内P「降ろし……」
ガチャッ
……ストン
武内P「……ました」
美嘉・莉嘉「……」
武内P「……」
美嘉「オハヨー★」
莉嘉「ヤッホー☆」
きらり「お、おっすおっす///」
武内P「お……おはようございます」
美嘉「……で?」
武内P「……?」
美嘉「アンタ、きらりちゃんの股に顔突っ込んで何したのワケ?」
武内P「……」
武内P「!?」
きらり「そ、そうだよぉ☆ 今のはぁ、おままごとだにぃ☆」
美嘉「お、おままごと!?」
莉嘉「えーっ!? アタシだけ仲間外れ!?」
みりあ「あっ、莉嘉ちゃんも一緒にやろうよ!」
きらり「みりあちゃんがお父さんでぇ、Pちゃんがお母さん、きらりが子供役なんだゅ」
美嘉「アンタがお母さんだったの!?」
武内P「……」
きらり「う、うん……///」
莉嘉「ずるーい! アタシもナデナデと肩車してよP君!」
武内P「いえ、あの……もう」
莉嘉「お願いママー☆ ほら、お姉ちゃんも!」
美嘉「えっ!? あ、アタシも!?」
莉嘉「二人でお願いすれば聞いてくれるかもしれないじゃん!」
美嘉「……」
美嘉「しょ、しょーが無いなぁ★ 可愛い妹の頼みは断れないしね★」
莉嘉「ママー☆ ナデナデしてー☆」
武内P「……な、撫でる程度でしたら」
ナデナデ
莉嘉「……ニヒヒ! P君にナデナデして貰っちゃったー☆」
武内P「……あの、もう」
美嘉「えっ、莉嘉がナデナデ? じゃ、じゃあアタシは肩車?」
武内P「は、はい!?」
美嘉「ま、ママー★ か、肩車してー///」
武内P「!?」
美嘉「あ、アタシだって恥ずかしいんだから、早くしてよね!?///」パカッ
みりあ「お母さん、子供に差をつけるのはだめだよ!」
莉嘉「P君! お姉ちゃん待ってるよ!」
きらり「うゅ……きらり、あんな感じだったのぉ?///」
美嘉「さ、さっさとしてよ!///」パカッ
武内P「あ、あの!?」
美嘉「早く! この格好、チョー恥ずいの!///」パカッ
武内P「い、いけません! もうやめましょう!」
武内P「あの、城ヶ崎さん! もうこんな事はやめましょう!」
美嘉「ここまで来て何言ってんの!」パカッ
武内P「ですが……!」
美嘉「さっさと突っ込んで!」パカッ
ちひろ「……何をですか?」
武内P・美嘉「……」
武内P・美嘉「!?」
ちひろ「美嘉ちゃんが、股をパカリと開いた時からです」
美嘉「い、言い方!///」
武内P「あ、あの! 誤解です!」
ちひろ「誤解……ですか?」
美嘉「そ、そう! アタシが子供で、コイツがママで!」
ちひろ「……」
ちひろ「特殊すぎる……!」
武内P・美嘉「ああっ!? もっと誤解が!?」
武内P「せ、千川さん! これは、おままごとで……!」
美嘉「そ、そう! ごっこ! ごっこなの!」
ちひろ「……なるほど」
武内P「わかって頂けましたか……!」
美嘉「ヤバかったー★ 本気だと思われたら大変だったし」
ちひろ「……事情はわかりましたが、お二人はアイドルとプロデューサーです」
ちひろ「……遊びでも……その、気をつけてください」
おわり
武内P「……!」
蘭子「おは――」
武内P「!」
蘭子「――煩わしい太陽ね」
武内P「……惜しい……!」
蘭子「……」
武内P「いいえ、神崎さん、諦めてはなりません」
蘭子「しかし……」
武内P「申し訳ありません、これは、私の責任でもあります」
蘭子「何を言う! この業は我が物! 我が友に責は……!」
武内P「いえ、私の責任です」
蘭子「……」
武内P「まさか、普通の言葉を出すのがここまで困難になってしまうとは……」
蘭子「……」
武内P「ですが、さすがに使い分けが出来ないとなると不便ですから」
蘭子「それは……」
武内P「もう一度、頑張りましょう」
蘭子「我が友…・…! 其の悪魔の如き異様の内に秘めた気高き」
武内P「……やはり、私の顔は怖いですか」
蘭子「す、すまない」
武内P「……い、いえ、お気になさらず」
武内P・蘭子「……」
武内P「!? い、いけません! それだけは!」
蘭子「ばってん! 他ん方法んなか!」
武内P「神崎さん! 落ち着いてください!」
蘭子「プロデューサーに迷惑かけて、私、何しよっと!?」
武内P「神崎さん! ガチ熊本弁はいけません! 神崎さん!」
蘭子「……」
武内P「……」
蘭子「……未だ胸の奥に炎が燻っている」
武内P「ゆっくり、ゆっくりで構いません」
蘭子「羽をもがれた堕天使の如く、地を這うものだとしても……?」
武内P「はい、私は構いません」
蘭子「我が友……!」
武内P「貴女の、笑顔のためですから」
武内P「いえ、プロデューサーとして当然の事ですから」
武内P「……それに、努力をすれば、きっと普通に話す事も可能になります」
蘭子「……そうであろうか」
武内P「はい。貴女らしさ、というのは勿論大切です」
蘭子「魂の開放!」
武内P「ですが……やはり日常生活で不便ですから」
蘭子「……二匹の獣の交わりによって生まれし至高の存在を」
武内P「まさか、ハンバーグ等の単語もこうなってしまうとは……」
蘭子「……」
蘭子「如何にこの身が堕天使と言えど、魂の切り替えは容易くは無い」
武内P「やはり難しい、ですか」
蘭子「……夢幻の道」
武内P「そうですね、やはり、少しずつ改善していきましょう」
蘭子「……針に包まれた、全てを喰らい尽くす魔獣」
武内P「はい、トンカツも一人で頼めるようになりましょう」
蘭子「我が友……!」
蘭子「聞かせて貰おう! 深遠なる魔王の思う理を!」
武内P「神崎さんの言葉の、若干甘い所を利用できれば、と」
蘭子「あ、甘い……!?」
武内P「はい。神崎さんの言葉には複数のパターンがあります」
蘭子「!」
武内P「見るとわかりますが、完全に置き換えている場合」
蘭子「!?」
武内P「単語等を置き換えてはいますが、話の流れとして通じる場合」
蘭子「!!?」
武内P「あとは、ちょっと雑だな、という、大まかに分けて三つです」
蘭子「!!!!?」
武内P「例えばですが、神崎さんの有名な『闇に呑まれよ』ですが」
武内P「こちらは……さすがですね、とても情熱が感じられます」
蘭子「そ、それで……?」
武内P「ですが、『何かしら?』と、少し丁寧になっただけの言葉もあります」
蘭子「そ、それは、その、……!」
武内P「そういった部分を拡大する方向でいけば、道は開けるかと」
蘭子「そ、そうかしら……?」
武内P「はい、必ず」
蘭子「なく……?」
武内P「『ご機嫌いかがかしら?』ならば、どうかと」
蘭子「……ご」
蘭子「――ご機嫌いかがかしら」
武内P「! 神崎さん!」
蘭子「プ、プロデューサー! 私、出来ました!」
武内P「この調子で、日常生活に困らない程度に回復していきましょう!」
蘭子「はいっ!」
蘭子「ククク……! 絶望を切り裂く、漆黒の刃よ!」
武内P「では、先程のハンバーグですが……」
蘭子「……!」ゴクリ
武内P「ハンバーグ、という言葉を使うのではなく、メニューを指差して……?」
蘭子「――こちらを頂けるかしら?」
武内P「! 神崎さん!」
蘭子「凄い! 凄いです! これなら注文出来ます!」
武内P「はい……!」
蘭子「我が友よ! 心よりの感謝を!」
武内P「プロデューサーとして当然の事ですから、お気になさらないでください」
武内P「ひとまずレッスンの時間も迫っていますし、ゆっくりやっていきましょう」
蘭子「……新たな進化を遂げた今の我ならば、可能やもしれぬ……!」
武内P「……?」
蘭子「闇に呑まれよ!――いえ、」
武内P「!? 神崎さん、それは無茶です!」
蘭子「――お疲れ様かしら?」
おわり
アイドル達「……」
武内P「皆さんの意見、とても参考になりました」
アイドル達「……」
武内P「皆さん、キレるのは十代の特権では無い、という事を知っておいてください」
アイドル達「……」
アイドル達「……」スッ
武内P「そうですか」
アイドル達「……」
武内P「今、嘘をついた人は手を挙げてください」
アイドル達「……」スッ
武内P「正直にお答え頂き、ありがとうございます」
アイドル達「……」スッ
武内P「手を挙げないでください」
アイドル達「……」
武内P「まずは、参考になった方からです」
アイドル達「……」スッ
武内P「全員、手を挙げないでください」
未央「!」
武内P「貴女が書いたのは、欲しいものリストですね」
未央「……」コクリ
武内P「ショッピングが趣味の、貴女らしいトリセツだと思いました」
未央「……」スッ
武内P「ですが、こういった形で物をねだるのは関心しません」
未央「……」
卯月「!」
武内P「『笑顔』と『頑張ります』で埋め尽くされたトリセツはちょっとした恐怖でした」
卯月「……」
武内P「ですが、これを私に提出されても、私は一体どうすればいいのか……」
卯月「島村卯月、頑張ります♪」
武内P「……はい、頑張ってください」
凛「……」
武内P「トリセツを聞いていないにも関わらず、かなり似通った内容になっていましたね」
凛「ふーん。まあ、悪くないかな」
武内P「地味にですが、一番反応に困りました」
凛「ふーん!」プンプン
武内P「申し訳ありません」
凛「ちゃんと見ててよね」
武内P「はい、可能な限り、という事でしたら」
美波「!?」
アーニャ「プロデューサー、どうして、です?」
美波「……」
武内P「いえ、しかし……」
アーニャ「仲間外れは、かわいそうです」
美波「……」
アイドル達「……かわいそう」
武内P「……わかりました」
美波「……」
武内P「図解入りで、自分を解説するのはやめてください」
美波「……」
武内P「『ここが弱点だ! ここを突けば、美波、いきます!』」
美波「……///」
武内P「トリセツというか、怪獣図鑑を思い出しました」
アーニャ「ニェット! 美波はかわいい! 性獣、違います!」
武内P「そこまで言っていません」
アーニャ「プロデューサーはひどい、です」
武内P「星を見に行きたい、という事ですが」
アーニャ「私は、いつも美波の味方です」
武内P「未成年の方を22時以降、どこかへお連れするのは難しいです」
アーニャ「私は、もう、完全に怒りました」
美波「アーニャちゃん、私達いつも一緒よ!」
アーニャ「美波! 私達の友情は、変わりません!」
武内P「ですが、プラネタリウムでしたら、スケジュールを調整すれば可能です」
アーニャ「小さな歩幅にあーわせー♪ 生まれ変わるよ~♪ 違う自分に♪」
美波「アーニャちゃん!?」
蘭子「何かしら?」
武内P「貴女の提出されたコレは、私にコレを着ろ、という事だと思うのですが」
蘭子「流石は我が友、我が言の葉を理解しグリモワールの一部を託した甲斐があったというもの!」
武内P「巨大な羽を背負いながらの仕事は、はい……」
蘭子「……」
武内P「……」
蘭子「……」
武内P「……衣装部に掛け合ってみます、あまり期待はしないでください」
蘭子「!」
杏「……」
武内P「貴女の、働きたくない、という気持ちは痛い程伝わってきました」
杏「……」
武内P「右下に小さく、飴が欲しい、と書いてありましたね」
杏「……」
武内P「今後はそういった対応をしていきます。非常に参考になりました」
杏「……」グッ
かな子「……」
武内P「貴女が書いたのは、食べたいものリストですね」
かな子「……」コクリ
武内P「申し訳ありません。非常に高カ口リーな物ばかりなので、残念ですが許可出来ません」
かな子「美味しいから大丈夫です」
武内P「私はカ口リーの話をしています」
かな子「……」
智絵里「……」
武内P「……」
智絵里「……」
武内P「私は貴女を見捨てません、安心してください」
智絵里「はい……!」
アイドル達「……なんだか優しい」
武内P「……それぞれ、事情というものがありますから」
智絵里「……」
きらり「……」
武内P「申し訳ありません、毎日お姫様だっこは難しいです」
きらり「……」
アイドル達「……」スッ
武内P「皆さん、それ頂き、という顔で手を挙げないでください」
アイドル達「……」
武内P「ですが、1シーズンに一回程度の方向で調整していこうと思います」
アイドル達「!?」
きらり「にょわー☆」
莉嘉・みりあ「……」
武内P「あの……お二人は、何故城ヶ崎美嘉さんのトリセツを?」
莉嘉「書いてるうちに」
みりあ「えへへ、盛り上がっちゃって」
武内P「そうですか」
莉嘉・みりあ「♪」ニコニコ
武内P「ですが、あまりにも詳細すぎて……いえ、やめておきましょう」
莉嘉・みりあ「?」
李衣菜「……」
武内P「多田さんは、今特に関心がある人の名前ですね」
李衣菜「……」コクリ
武内P「非常に言いにくいのですが、全員ジャズ関連の人物です」
李衣菜「!?」
みく「アホにゃ」
武内P「はい、前川さん、いじめないであげてください」
みく「……ぷくく!」
李衣菜「……」ウルウル
武内P「前川さん、いけません」
みく「……」
武内P「あの、犬の犬種に順位をつけられていましたが、何の意味が?」
みく「!?」
李衣菜「アホだ」
武内P「はい、多田さん、やり返さないでください」
アイドル達「ぷくく……アホタリスク」
みく・李衣菜「……!」プルプル
武内P「皆さん、そういった事は感心しません」
アイドル達「……」
武内P「わかっていただけて何よりです」
アイドル達「……」スッ
武内P「はい、そうですね」
アイドル達「……」
武内P「今、手を挙げられた方達は、CPではありませんね?」
アイドル達「……」コクリ
武内P「どうして私にトリセツを提出したのですか」
アイドル達「……」ヤレヤレ
武内P「……ひとまずそれは置き、聞いていきたいと思います」
楓「……」
武内P「何故、居るんですか?」
楓「……」ワクワク
武内P「いやぁ、本当に高垣さんは頼れるアイドルですね!」
楓「!?」
バシバシ!
武内P「仕方ない人扱いはしませんよ、絶対に!」
奏「……///」
武内P「理想のキスのシチュエーションを10点程挙げられていましたね」
奏「……///」
武内P「あの……おもしろクール枠になりたいのでしょうか?」
奏「?」
武内P「すみません……まさか、高度1万メートルから落下しながらが理想とは」
奏「……///」
アイドル達「……それはちょっと」
奏「!?」
武内P「はい、皆さん。そういった事は感心しないですよ」
文香「……」
武内P「鷺沢さんが提出されたのは、本のレビューですね」
文香「……」コクリ
武内P「私にこれを読んで欲しい、という事でよろしいでしょうか?」
文香「……」コクリ
武内P「ですが、トリセツというか、詳細すぎてネタバレになっているのですが」
文香「……」
武内P「……はい、時間を見つけて読もうと思います」
アイドル達「……」スッ
武内P「そうですね、今手を挙げられた方達がそうです」
アイドル達「……」
武内P「ですが、皆さんは仕事もレッスンもあります」
アイドル達「……」
武内P「勿論、私も仕事があります」
アイドル達「……」
アイドル達「……」
武内P「何故、CP以外の方達も私にトリセツを提出したのか」
アイドル達「……」
武内P「申し訳ありません。私には理解できませんでした」
ちひろ「プロデューサーさん、それには理由があるんですよ」
武内P「千川さんの課金誘導のトリセツが一番心にきました」
ちひろ「……」
武内P「すみません、続けてください」
武内P「私の事が、ですか?」
ちひろ「プロデューサーさんって、どこか距離を置いている所がありますよね」
武内P「それは……プロデューサーと、アイドルですので」
ちひろ「だから皆、色々なトリセツで、プロデューサーさんの反応を見ようとしたんです」
武内P「……なるほど、そういう事でしたか」
ちひろ「そうでもしないと、いつもみたいに距離をおかれちゃいますから」
武内P「それは……そうかもしれませんね」
アイドル達「……」
武内P「私は、皆さんが欲望に忠実なトリセツを提出していたとばかり思っていました」
アイドル達「……」フイッ
武内P「お願いします、目を逸らさないでください」
アイドル達「……」
武内P「ですが、皆さんは私の事を知ろうとしてくれていたのですね」
アイドル達「……」スッ
武内P「全員手を挙げるなら、何故直前で目を逸したのかわかりかねます」
アイドル達「……」
武内P「お願いします。その、やはり……困ってしまいますので」
アイドル達「……」
武内P「あの……皆さん?」
アイドル達「……」
武内P「口頭では納得していただけないのでしょうか?」
武内P「……まさか、『トリセツ』が必要なのですか?」
おわり
武内P「にらみつける」
凛「威力が出る技じゃないでしょ」
武内P「その……人を睨みつけるというのは」
未央「あ、やっぱり駄目?」
卯月「プロデューサーさん、優しいですもんね♪」
武内P「……」
未央「えっ、その顔で!?」
凛「コラ! 未央!」
卯月「未央ちゃん! 失礼ですよ!」
武内P「……」
未央「あーっ! ごめんごめん、プロデューサー!」
武内P「……いえ、仰っている事は、何となくですがわかりますので」
武内P「本田さんを……ですか?」
凛「それの何がお詫びになるの」
未央「ほら! 本当に怖い人に囲まれた時のための練習、とかさ?」
卯月「もー、未央ちゃんも自分で言ってる事がわかってないじゃないですか」
未央「あっははは!」
武内P「……」
未央「ってことで、お詫びと興味本位で、本気で睨みつけてみてよ!」
凛・卯月「未央(ちゃん)!」
武内P「……」
未央「お願い! 私も、演技の参考になるかもしれないしさ!」
武内P「……そういう事でしたら、努力してみます」
卯月「未央ちゃんったら、調子が良いんですから」
凛「いつかバチが当たるよ」
未央「えへへ……さあ、プロデューサー! 本気で睨みつけちゃって!」
武内P「……はい、では――」
武内P「!」ギンッ!
未央「」
じょぱっ!
凛・卯月「失禁!?」
未央「」
凛「駄目……完全に気を失ってる……!?」
卯月「水風船が破裂した時みたいでしたよ……!?」
武内P「お、お二人とも! 本田さんを――」
武内P「――お願いします!」ギンッ!
卯月「」
じょぱっ!
凛「卯月ーっ!?」
武内P「ご、誤解です! そ……そんなつもりは……!?」
凛「何、まさか慣れない事をしたから、顔が戻らなくなってるって言うの!?」
武内P「お、恐らく……そうではないかと」
未央・卯月「」
凛「とにかく、なんとかするからプロデューサーは見ないで!」
武内P「わ、わかりました!」
未央・卯月「」
武内P「誰か、助けを呼ぶというのはどうでしょうか?」
凛「それは駄目。結果が見えてる」
武内P「ですが……!」
凛「二人だけでも手に負えない状況なのに、これ以上増えられたら困るって言ってるの!」
武内P「す、すみません」
未央・卯月「」
未央・卯月「」
武内P「申し訳ありません……まさか、こんな事態になるとは」
凛「多分、言い出した未央本人も全く思ってなかっただろうね」
武内P「本田さんと島村さんには、本当に申し訳ない事を……」
凛「未央は自業自得だけど、卯月は完全に余波だから後でちゃんと謝って」
武内P「はい……勿論です」
未央・卯月「」
凛「……ふぅ、終わったよ」
未央・卯月「」
武内P「……本当に、助かりました」
凛「体を拭いて、服は着替えさせた。まだ、気を失ってるけどね」
武内P「……お疲れ様です」
凛「まさか、友達のこんな後始末をするとは思わなかった」
武内P「……今後、このような事が起こらないよう、徹底して行きたいと思います」
凛「うん、そうして」
武内P「……」
武内P「や、やめておきましょう!」
凛「当たり前でしょ。私は、ひどい目にはあいたくないから」
武内P「……」
凛「でも、そろそろ顔も戻ったんじゃない? 大分時間も経ってるし」
武内P「そうですね、恐らく――」
コンコン、ガチャッ
みく「おはようにゃPチャン!」
李衣菜「おはようございまーす」
武内P「――戻っていると思います」ギンッ!
みく・李衣菜「」
じょぱっ!
凛「アスタリスク――っ!」
凛「……これでよし、と」
未央・卯月・みく・李衣菜「」
武内P「その……渋谷さん、大変申し訳ありません」
凛「今日で、一生分の友達のこういう後始末をしたと思う」
武内P「……」
凛「本当は、顔を見て文句を言いたいんだけど」
武内P「すみません……自分では、よくわからないものですから」
凛「どれだけ不器用なの」
武内P「……」
武内P「! なるほど、その手が……!」
凛「自分の顔だから、怖いとは思わないんじゃないの」
武内P「そうですね。いつも、見慣れている顔ですから」
凛「……」
武内P「では、撮ります」
カシャッ!
武内P「……撮れました。では、確認を――」
凛「待って!」
武内P「? 渋谷さん?」
凛「嫌な予感がするから、自分で確認するのは待って」
武内P「……わかりました」
凛「……はい、送ったよ」
武内P「あの……神谷、と書いてあるのですが」
凛「奈緒なら大丈夫。加蓮がついてるから」
武内P「あの……本当に大丈夫なのでしょうか?」
凛「大丈夫、あの二人なら」
武内P「……わかりました」
武内P「……既読がついた瞬間に、北条さんから電話がかかってきましたね」
凛「うん、あんなに焦ってる加蓮の声、初めて聞いたよ」
武内P「……」
凛「『奈緒の膀胱が爆発した! 奈緒の膀胱が爆発した!』ってさ」
武内P「全く大丈夫ではなかったのでは……!?」
凛「大丈夫だよ。加蓮、落ち着いたら奈緒の様子を写真で送ってきたし」
武内P「……北条さんは冷静ですね」
凛「言ったでしょ、あの二人なら大丈夫だって」
武内P「……」
武内P「私にも……皆目検討がつきません」
凛「皆が目を覚ました時のために、」
未央・卯月・みく・李衣菜「」
凛「ちゃんと顔、隠しておいてよね」
武内P「……はい、もうご迷惑をおかけする訳にはいきませんから」
凛「……」
武内P「……渋谷さん?」
凛「いや……どんな顔してるのかな、って思っただけ」
凛「でも、見た人間が全員こうなっちゃう程だよ?」
未央・卯月・みく・李衣菜「」
凛「普通は気になるでしょ」
武内P「……」
凛「まあ、私は見ないけどね」
武内P「それを聞いて安心しました」
凛「……」
未央「いやー、本当迷惑かけたねしぶりん」
卯月「うぅ……ありがとうございます……!」
凛「良いって、気にしてない」
みく「それにしても……うぅ、思い出しただけでチョロッと出そうになるにゃ」
李衣菜「わかる! っていうかやめて! 私もチョ口リといきそうになるから!」
未央「はっはっは!……ねえ、本当やめよう?」
卯月「は、はい! この話はもうやめましょう!」
凛「……」
李衣菜「私だって指先の震えが止まらないもん!」
未央「私なんて膝まで震えてるよ!」
卯月「ふふ……プロデューサーさんには悪いですけど、変に仲良くなれましたね♪」
みく・李衣菜・未央「……だね!」
凛「……」
卯月「凛ちゃん? どうかしましたか?」
凛「……別に? 何でもないよ」
未央「もしかして、しぶりんも見たかったりする?」
凛「み、未央!? べ、別に……そういうわけじゃないけど」
みく「凛ちゃん、今はみく達がついてるにゃ!」
凛「みく……」
李衣菜「遠慮なくじょぱっても、助けるのが私のロックだよ!」
凛「李衣菜……いや、そこは見るなら普通に準備してからにするよ」
卯月「さすが凛ちゃん、冷静です♪」
凛「卯月……なんだかほんのりバカにしてない?」
凛「それなら……多分、奈緒のLINEに写真が残ってると思う」
みく「なるほど。それを送って貰えば良いんだね」
李衣菜「早速、送ってくれるよう頼んでみなよ!」
凛「そうだね。先に、奈緒に送ってくれるようLINEしておく」
卯月「……あれ? でも、確認する時に――」
凛「……」
ズットツーヨク♪ソウツーヨク♪
凛「ん? 加蓮から着信が……」
凛「うん……わかった、すぐ行く」
未央「? どうしたのしぶりん?」
凛「奈緒と加蓮、クローネのプロジェクトルームに居たんだって」
みく「? それがどうかしたの?」
凛「写真を確認する前に、奈緒が高笑いしたから……人が集まってきたんだって」
李衣菜「……まさか」
凛「うん、だから、助けに行かないと」
卯月「凛ちゃん、頑張ってください!」
凛「え、私一人でいくの?」
みく「クローネのプロジェクトルームには、あの顔があるんでしょ?」ブルブル
李衣菜「ロックじゃないとは思うんだけど……」ガタガタ
卯月「そう思うと、足が動かないんです」ビクビク
凛「……」
凛「!」キッ!
未央・みく・李衣菜・卯月「?」
凛「……」
凛「私もちょっと気絶してくる」
おわり
武内P「働く女性は素敵ですね」
専務「専務の美城だ。キャリアウーマンのイメージは、私が一番だろうな」
楓「今は、そうですね……お仕事は恋人のようなものですね」
ちひろ「……」
専務「……」
楓「……」
専務「時には対立しながらも、彼は私を助力してくれもする」
楓「ふふっ、後輩達の参考になんて……頼られてしまってるかしら」
ちひろ「……」
専務「……」
楓「……」
専務「彼はとても優秀だ。私は、優秀な人間は歓迎する」
楓「アイドルとして、プロデューサーとして対等な関係でいられますね」
ちひろ「……」
専務「……」
楓「……」
専務「意見は合わないが、それもまた必要な事なのかもしれないな」
楓「お仕事に対する思いは、そうですね、とても似ていると思います」
ちひろ「……」
専務「……」
楓「……」
専務「ネクタイをなおすのは、少しやりすぎだったかもしれないな」
楓「トラブルがあった時も、すかさずお互いがベストな動きをしました」
ちひろ「……」
専務「……」
楓「……」
専務「私もここだけの話だが、どうやら憎からず思われていると聞いたな」
楓「実は私も、何か特別な関係なのではと噂されてるみたいです」
ちひろ「……」
専務「……」
楓「……」
専務「私は平行線だと思っていたが、歩み寄りたいと言われたな」
楓「私を頼る位のファンですから、共に歩んでいると言ってもいいかもしれません」
ちひろ「……」
専務「……」
楓「……」
専務「上司と部下、スタンダードな組み合わせだな」
楓「アイドルとプロデューサー、スタンダードな組み合わせですね」
ちひろ「……」
専務「……」
楓「……」
専務「お互い意見は対立するが、認め合う事も出来る」
楓「私がちょっとお茶目しても、困った顔をしながらも許してくれます」
ちひろ「……」
専務「……」
楓「……」
専務・楓「?」
ちひろ「毎日、千川さんの作る特製スタドリの味噌汁が飲みたい、って言われました」
専務・楓「!?」
ちひろ「うふふ、困っちゃいますよねぇ」
専務・楓「……」
ちひろ・楓「?」
専務「出勤前、貴女にネクタイを直して貰えたら良いですね、と言われたな」
ちひろ・楓「!?」
専務「フッ、困ったものだな」
ちひろ・楓「……」
ちひろ・専務「?」
楓「その……ええと、ここだけの話ですけど……」
ちひろ「うふふ、私達と違って嘘はつけませんね」
専務「フッ、君がモデルから女優にならなかった理由が伺える」
楓「……」
専務「そうだな。私はあまり気が長い方ではない」
楓「素敵なステッキは、誰に倒れるんでしょうか」
ちひろ・専務・楓「……」
ちひろ・専務・楓「さあ、誰が一番素敵?」
武内P「働いてください」
おわり
需要は俺にあるので書きます
アイドルマスターアジア シンデレラGールズ
凛「さすがは大手、って感じだね」
卯月「あっ……えへへ♪」
卯月「へ~、美城ってこういう漢字書くんですね」
未央「ふっふっふ! 時は来た!」
????「――左様! 時は来た!」
https://www.youtube.com/watch?v=kihf8gIfxTY
ストーカー「――さて、遂に思いつきで始まってしまいました」
ストーカー「……アイドルを目指す少女達」
ストーカー「そして……それをビルの屋上から見ている怪しげな人影」
ストーカー「男は一体何者なのでしょうか? 果たして、その目的は?」
ストーカー「それは、私にも未だ見当がつきません」
ストーカー「……」
ストーカー「それでは! アイドルプロデュースぅ!」
ストーカー「レディイイイ……ゴ――ッ!」
始動! シンデレラガールズと東方不敗!
武内P「……では、行きましょう」
武内P「他のメンバーを紹介します」
未央「おおー!」
卯月「はい!」
凛「……」
武内P「同時に、皆さんにとって初めての仕事を行ってもらいます」
未央・卯月・凛「えっ!?」
スタジオ
卯月「うわー! 凄い……!」
未央「スタジオ、って感じ……!」
凛「……」
卯月「綺麗です!」
武内P「これから、皆さんには今後の宣材写真を撮影して頂きます」
未央「アー写?」
卯月「このセットで撮るんですか?」
武内P「いえ、こちらです」
未央・卯月・凛「……」
武内P「他のメンバーは、もう撮影を始めています」
別スタジオ
みく「うふふっ♪ にゃあ♪」
・ ・ ・
かな子「ふふっ」
・ ・ ・
美波「うふふ」
・ ・ ・
アーニャ「ダー」
・ ・ ・
東方不敗「ワッハッハッハッハ!」
きらり「あれあれー?☆」
美波「あっ、残りのメンバー?」
李衣菜・智絵里「えっ?」
未央・卯月・凛「……」
莉嘉・みりあ「ねえねえ!」
みりあ「お姉ちゃんたちって、シンデレラプロジェクトの仲間?」
卯月「はい♪」
未央「そうだよ!」
莉嘉・みりあ「わーい♪ やったね♪」
東方不敗「……ほう、なかなか良い面構えをしておるわ」
莉嘉「ヤッホー☆ アタシ、城ヶ崎莉嘉☆ 中学一年だよ、仲良くしようネ☆」
卯月「はい♪」
未央「おーう!」
凛「あ、さっき、木登りしてた……」
莉嘉「あっ、さっきのお姉ちゃん!」
みく「まーた木登りして……危ないにゃ」
卯月・未央「にゃ?」
みく「前川みくにゃ♪ ヨロシクにゃん♪ 皆は、何キャラでいくのー?」
卯月「ええと……」
未央「キャラかぁ……」
武内P「……二人、足りないようですが……」
きらり「にゃにゃにゃー☆ 杏ちゃん、ハッケーン☆」
杏「双葉杏ー……ヨロシクー……」
未央「働いたら……負け……?」
東方不敗「――そして、最後がこのワシ」
武内P「! 東方先生、いつの間に後ろに……?」
東方不敗「プロデューサー、芸能界は戦場」
東方不敗「ファイターたるもの、油断はあまり関心しませんな」
武内P「……」
東方不敗「この芸能界を戦って、戦って、戦い抜いて!」
東方不敗「最後のアイドルとなり、アイドル・ザ・アイドルとなった暁には――」
未央・卯月・凛「……」
東方不敗「全人類を抹殺し、この地球に自然を……緑を取り戻してくれるわ!」
東方不敗「ワッハッハッハッハ!」
未央・卯月・凛「……」
卯月「し、島村卯月です! ええと、頑張ります♪」
凛「渋谷凛です、よろしく」
未央「本田未央! 高校一年、未央って呼んでね!」
武内P「……――以上、15名が、メンバーになります」
武内P「はい、シンデレラプロジェクト、遂に始動です」
CPメンバー「わーい!」
東方不敗「……くくく、我が野望、遂に動き出しよったわ!」
・ ・ ・
カメラマン「――今度は、四人一緒に撮ってみるから、普段どおりワイワイやってみて!」
卯月「は、はいっ!」
未央「普段通りって……」
凛「……」
東方不敗「せやあっ!」
ポイッ
未央「ぼ、ボール?」
ポイッ
卯月「わっ!? へぶいっ!?」
凛「おっ……と」
東方不敗「それそらどうした! なっちゃいないぞ!」
卯月「しまむー……?」
未央「しぶりん! パス、パース!」
凛「し、しぶりん……? まあ、良いけど」
ポイッ
未央「ナイスパース! しまむー、トス!」
ポイッ
卯月「へぐっ!?」
未央「しぶりん! スパイク!」
凛「ふっ……!」
未央「マスター! ブロック!」
東方不敗「せやああっ!」
ビュウウ―ッ!
パァンっ!!
未央・卯月・凛・東方不敗「……」
未央・卯月・凛・東方不敗「ハハハハハ!」
未央「アハハッ! さすが、合格理由が笑顔のわ・た・し!」
卯月「うふふっ! 私もです♪ 合格理由――笑顔!」
東方不敗「ククク! ワシの時も、アヤツはそう言っておったわ!」
凛「……それしか言わないから!」
未央「……へっ?」
未央「……ぷっ! 皆一緒かぁー!」
未央・卯月・凛「ふふふふっ……!」
東方不敗「馬鹿の一つ覚えと言うが、その一つにしてやられたわ!」
一同「ふふふっ……!」
武内P「……」
美嘉「!」
美嘉「ねぇ、あの子達三人と、ファイター一人、今後のスケジュール決まってる?」
武内P「……いえ」
・ ・ ・
カメラマン「はい、撮影終了ーっ!」
莉嘉「ねえねえ、皆で取ろうよ☆」
みりあ「撮るーっ!」
東方不敗「ほう、悪くない提案ではないか」
卯月「プロデューサーさーん! 一緒にどうですかー?」
みりあ「ねぇねぇ!」
武内P「……」
武内P「……いえ、皆さんでどうぞ」
一同「えーっ!?」
カメラマン「撮るよ、笑って―!」
未央・卯月「ええーっ!?」
凛「……」
東方不敗「……ほう」
未央「私達が……ライブに……?」
美嘉「そっ★ アタシのバックで、丁度こんなカンジの子達とファイターを探してたんだー★」
ちひろ「美嘉ちゃんの担当からもオーケーを貰いましたが、どうしますか?」
武内P「……自分としては――」
今西部長「うん! 良いんじゃないかな」
武内P「……」
部長「遅かれ早かれ、この子達と東方先生もステージに立つんだ」
部長「――こういう始まりも、また、アリなんじゃないかな」
東方不敗「ほう? お主、戦の心得があると見える」
部長「……」
卯月「見覚えが……」
美嘉「ねぇ! 部長さんもそう言ってる事だし★」
未央・卯月・凛「部長!?」
東方不敗「その身のこなし……やはり只者ではなかったか!」
武内P「……では、ライブの資料をお願いします」
ちひろ「はい、早急に♪」
美嘉「えっ? オッケーってこと……?」
ちひろ「はい♪」
美嘉「ヤッタ―★ ライブ、楽しもうね★」
未央・卯月・凛「は、はい!」
東方不敗「この東方不敗マスターアジア、先輩アイドルと言えど遅れは取らぬわ!」
(Gガンのアイキャッチ)
一服したら>>292書きます
仕事の打ち合わせが終わり、帰路につこうとした時、346プロ内にあるカフェで彼を見つけた。
いつも通りのスーツ姿に、近くに寄っては見る事が出来ない頭頂部の寝癖。
ノートパソコンを見つめる難しい顔は、見る人にとっては怖いものらしい。
私は、彼を怖いと思った事はない。
感覚がズレていると偶に……いや、よく言われるが、そんな事は無いと思う。
彼の見た目、ぴにゃこら太みたいで可愛いと思うのよね。
私と同様、仕事が恋人と公言しているだけあって、彼の仕事に対する姿勢はいつも真剣だ。
恐らく、彼がカフェで格闘中なのも、担当するアイドル達や、事務員の千川さんに「休め」と言われての事だろう。
けれど、彼はそれを良しとしない。
その事を同僚として心配もするが……――同時に安心もする。
私は、アイドルとして、階段を登っている。
彼は、プロデューサーとして、階段を上る手助けをしている。
彼は私を担当しているプロデューサーではないけれど、偶に見かけるその姿がとても頼もしく見える。
無口な彼だけれど、仕事に打ち込むその背中を見ると、
――貴女は一人ではないです。
こう、言っているように感じるから。
彼を専有している訳ではないのに、まるで戦友のような関係。
……あら、今のは中々じゃない?
彼は、まだこちらに気付かない。
思えば、偶々会った時も挨拶はいつも私からしている気がする。
アイドルに笑顔を向けられて挨拶されているのに、彼はいつもの無表情。
これは、とても不公平な話だと思うの。
「……ふふっ、いつ気付くかしら」
抜き足、差し足、忍び足。
バレないように、見つからないように。
「……」
もしかしたら、私には忍者の才能があったのかもしれない。
だって、彼ったら私に全く気付かないんですもの。
「……」
彼にとって、アイドルの私の輝きは、目の前のノートパソコンの淡い光よりも弱いのか。
確かに、今はあまり気合の入っていない私服だし?
ああ、それならバッチリメイクをして、衣装を整えてたらもう気付いてたかもしれないわ。
今から取りに行ったら……さすがに彼も休憩時間が終わってしまうわね。
彼は、まだこちらに気付かない。
「……」
静かに椅子を引いて正面に座ってみても、彼の目はノートパソコンに釘付けのまま。
きっと頭の中は、彼が担当するアイドルの事でいっぱいなのだろう。
戦友としてとても喜ばしいけれど、まるで気付かれないのはちょっぴり腹立たしい。
「……」
けれど、彼はいつ私に気付くのかしら?
ここまで気付かないのなら、逆に、どこまで気付かないか試したくなってきたわ。
「……ふふっ」
っと、いけないいけない。
気付かれないようにしようとした途端、楽しくなって笑みが零れてしまった。
あまり大きな声は出なかったけれど、気付かれてはいないかしら?
「……」
けれど、彼は、まだこちらに気付かない。
全くもう、普段から笑顔しか言わない割に、目の前のアイドルの笑顔に気づかないなんて!
そんなに担当アイドル達は魅力的?
やっぱり、若い子の方が目を惹かれますか?
「……」
なんて、貴方はそんな事は微塵も考えず、仕事の事を考えているのよね。
趣味と実益を兼ねた、とってもお似合いの仕事ですこと。
……っと、ふふっ、それは私にも言えるわね。
「……」
けれど、やっぱりちょっと疲れた顔をしてるみたい。
いつもより……そう、目がキリッとしてるもの。
そんなキリッとした目で見たら、気の弱い子は胃がキリキリしちゃうと思いますよ。
……うーん、イマイチ。
「……」
やっぱり、彼は、まだこちらに気付かない。
私が目の前に座っていると気付いたら、貴方はどんな顔をするのかしら。
そして、どんな言葉をかけてくるのかしら。
私からは挨拶しませんからね?
今回は、貴方から声をかけてくる番って決めたんですから。
「……」
……けれど、嗚呼、こんなにゆっくりしたのは久しぶりかもしれないわ。
何もせず、ただ目の前を見つめるだけ。
それだけのに、こんなにも楽しくて、こんなにもワクワクしている。
偶には、こんな時間があっても悪くない。
「……」
けれど、もうすぐこの時間も終わり。
気付いたら大分時間が経っていたし、そろそろ彼も事務所に戻るだろう。
時間切れでの幕切れは、まあ、区切れとしてはありきたりよね。
「……」
それでも、彼は、まだこちらに気付かない。
「……」
残念だけど、今回の勝負は私の負けになりそう。
だって、私から挨拶をするのはいつもの事だもの。
――そう思った時、ピウと、少し強く風が吹いた。
肌寒くなってきたこの時期の風は、細身の私には少し堪える。
もう諦めて、時間切れになる前に、私から声をかけてしまお――
「楓?」
――う……!?
「は、はいっ!?」
突然彼の口から私の名前が出たので、素っ頓狂な声をあげてしまった。
これでは、アイドル失格だ。
「っ!? た、高垣さん!?」
……はい?
彼は非常に取り乱し、今にも椅子から転げ落ちそうになっている。
これは、一体どういう事?
それに、急に名前で呼んだと思ったら、次の瞬間には『高垣さん』に戻っている。
色々と納得出来ない。
「ええと、大分前からですけど……」
「それは……申し訳ありません、まるで気付きませんでした」
だったら、名前を呼ぶ前に取り乱して然るべきだろう。
まさか、嘘を……つけるタイプじゃないわね。
直接、聞いてみるしかなさそう。
「あの、どうして、突然名前で……?」
「ああ、それは……こちらが、先程の風で運ばれてきたので……」
そう言うと、彼は大きな手の平に何かを乗せて、こちらに見せてきた。
「ふふっ、そういう事でしたか」
「……」
彼の、右手で首筋を触るいつもの癖。
その反対の手の上には、風で運ばれてきたという、真っ赤に染まった楓の葉が乗っていた。
おわり
おやすみなさい
非武内Pです、申し訳ない
オレP「担当アイドルが漏らしたら?」
ちひろ「はい?」
オレP「あ、大きい方でした? だったら、パクリですね」
ちひろ「うん?」
オレP「アンダスタン?」
ちひろ「……アンダスタン」
ちひろ「……」
ちひろ「ヘルプミー! 早苗さーん!!」
早苗「……で、どうしてあたしは呼ばれたの?」
オレP「聞いてくださいよ早苗さん! ちひろさんがひどいんです!」
ちひろ「聞かない方がいいです早苗さん! さっさとしょっぴいてください!」
早苗「え、ええと……!?」
オレP「ちひろさんが、オレのアイドルへの愛情をわかってくれないんです!」
ちひろ「この男、アイドルへの愛情と劣情の区別もつかないんです!」
早苗「そ、そうなの……?」
オレP・ちひろ「……」
早苗「まず、事の発端は何だったの?」
オレP「いえね? アイドルが漏らしたら、飲むか食べるかするって言ったら」
早苗「はい、ストップ。逮捕」
オレP「!? キャントストップ!」
ちひろ「私、プロデューサーさんの事は一刻も早く忘れますね」
オレ「ここで終わったら、オレはちひろさんを一生忘れませんよ!」
オレP「早苗さん、オレだってわかってるんですよ」
早苗「? 何がよ」
オレP「アイドルだって、オシッコもするしウ○コもする」
早苗「……そうね」
オレP「それがね、突発的に、何の予兆もなく襲ってきた時」
早苗「……」
オレP「そんなアクシデントに対応するため、オレ達プロデューサーがいるんです」
早苗「は……はぁ」
早苗「仮に、何なの?」
オレP「早苗さんが漏らしたとします」
ちひろ「早苗さん、問答無用でしょっぴいて良いですよ」
早苗「抵抗する暇すら与えないわ」
オレP「仮にですってば、仮に!」
早苗「あたしゃ、大事なライブ前にそんな事態になるのかい」
オレP「常に最悪の事態を想定しておくことが大切なんです」
早苗「……まあ良いわ、供述を続けて」
オレP「あー、セクシー、あー、ギルティ」クネクネッ
早苗「? 何、その動き」
オレP「あたしは早苗、28歳。なんだかお腹が急にバッキュンしてきたわ」クネクネッ
早苗「ぶっとばすわよ!?」
オレP「……すみませんでした」ボロッ
早苗「今度やったら、本当にただじゃすまないからね」
オレP「……とりあえず、話を戻しますね」
ちひろ「メンタル強いですね」
オレP「褒めても何も出ませんよ」
早苗「……」
オレP「大事なライブ前、急にお腹がわっしょいしたとします」
早苗「あん?」
オレP「大事なライブ前、急にお腹が痛くなったとします」
早苗「そりゃ……トイレに行くわよ」
オレP「ブッブー! そんな時間はありませーん!」
早苗「腹立つリアクションしてくれんじゃない」
オレP「腹痛い時の話をしてますよ?」
ちひろ「片腹痛いみたいな顔しないでください」
早苗「はぁ?」
オレP「ウォシュレットのきもちになるですよ」
ちひろ「ダッシュで仁奈ちゃんに謝ってきてください!」
オレP「いやいやいや……えっ?」
早苗「そろそろ腹に据えかねるわよ?」
オレP「……すみませんでした」
早苗・ちひろ「はぁ?」
オレP「ライブ前の大事な時ですよ?」
早苗「はぁ」
オレP「アイドルの右手は、マイクを掴むためにある」
オレP「アイドルの左手は、ファンの声援に応えるためにある」
オレP「アイドルの口は、美しい歌を紡ぎ出すためにある」
早苗「……」
オレP「だったら、汚いものはオレが引き受けるしか無いじゃないですか!」
ちひろ「あ、汚いっていう認識は持ってたんですね」
早苗「でも……だったらなんで食べるって結論になるのよ」
オレP「大事なライブ前にアイドルが粗相とか、シャレにならないですから」
オレP「証拠隠滅ってやつですよ、フフ」
早苗「ドヤ顔でうまく返した感じ出さないでくれる?」
ちひろ「手を使えば良いじゃないですか」
オレP「オレの右手は、アイドルを舞台に導くためにあります」
オレP「そしてオレの左手は、アイドルのチャンスを掴むために」
オレP「……ほら、両手なんてとっくにふさがってるんですよ」ヤレヤレ
ちひろ「やっぱり両手空いてるじゃないですか!」
オレP「オレの口がどんなに汚れたって良い」
オレP「その分、アイドル達が綺麗な歌を歌えるなら、それで良い」
早苗「狂気!」
オレP「プロデューサーなら、誰だってそう思ってます」
オレP「プロデューサーなら、誰だってゴクリといくしパクリといきます」
ちひろ「他のプロデューサーさんを巻き込まないでくださいよ!」
早苗「な、何よ」
オレP「オレは、もしも貴女がライブ前にてんやわんやしたら、絶対に助けます」
早苗「安心して、その機会は絶対に来ないから」
オレP「貴女のお尻に顔をうずめ、渦の中心核をちゃんと綺麗にします」
早苗「来ないって言ってんでしょうが!」
オレP「何故なら……オレが、プロデューサーだからです」
ちひろ「全然いい話になってませんからね!?」
ちひろ「早苗さん、脱出不可能な牢獄に入れることは?」
早苗「難しいかもしれないけど、世のため人のため頑張るわ」
オレP「ヘイヘイ、お二人さん? 話聞いてました?」
ちひろ「ええ、聞いてましたよ」
早苗「イヤという程、君のアイドルへの愛情はわかったわ」
オレP「そいつは良かった! それで、感想は?」
ちひろ・早苗「……」
ちひろ・早苗「クソ食らえよ」
おわり
美嘉「ちょっと凛! 今回はマジでヤバいんだって!」
武内P「あの……仰っている意味が、よくわからないのですが」
美嘉「ほら……アタシって、カリスマJKとしてやってるワケじゃない?」
武内P「そうですね。とても魅力的だと思います」
美嘉「そ、そう?///アンタもそう思う?///」
凛「照れてないで話を進めて」
武内P「あの……私には、普段の城ヶ崎さんと変わらない様に見えますが」
凛「うん。私にもそう見える」
美嘉「ああもう! ちょっとそこで見てて!」
武内P・凛「?」
美嘉「ヤッホー! チョーイケてるってカンジ!」
武内P・凛「……」
美嘉「ほら、ヤバいでしょ!?」
武内P「あの……」
凛「どこが?」
武内P「……申し訳ありません」
凛「大丈夫大丈夫、美嘉はいつもイケてるよ」
美嘉「ちょっと凛! 適当に返事しない!」
凛「……」
美嘉「いい? もう一回いくからね?」
美嘉「アタシってば、カ・リ・ス・マ!」
美嘉「……ほら! ね!?」
凛「そうだね、カリスマだね」
美嘉「凛!? 面倒臭がらないで!?」
美嘉「!」
凛「? 何か違いがわかったの?」
武内P「その……いつも言葉の中に感じられる黒い星が感じられません」
美嘉「そう! それ! まさにソレなの!」
凛「ふーん」
美嘉「おーい! もうちょっと興味持って!?」
美嘉「でしょ!? アタシからカリスマを取ったら、JKアイドルになっちゃう!」
凛「私は、あの黒い星がカリスマだったのかと思ってるよ」
武内P「JKアイドルは……はい、無数に所属していますから」
美嘉「そう、そこなんだよね……」
凛「……そんなに深刻になること?」
美嘉「でもほら……アタシには、妹の莉嘉がいるじゃん?」
凛「ああ、なんとなくわかったよ」
武内P「城ヶ崎莉嘉さんは、既にカリスマJCとして認識されていますからね」
美嘉「その姉のアタシがカリスマを失ったら……!」
凛「カリスマJCの姉のカリスマが無い方、って呼ばれるのかな」
美嘉「イヤアアア! そんなの耐えられない!」
武内P「じょ、城ヶ崎さん! 落ち着いてください!」
美嘉「……ゴメン、こんな事してる場合じゃないよね」
美嘉「……ううん、今まで黒い星しか使ってこなかったからダメみたいなの」
武内P「そう……ですか」
美嘉「……」
凛「いや、あのさ」
美嘉「? 凛、どうしたの?」
凛「どうしてそこまで深刻なのかな、と思って」
武内P「……城ヶ崎さんがこのままカリスマ――黒い星を使えない場合……」
美嘉「……引退、するしかないかな、って……」
凛「……」
凛「えっ?」
美嘉「だから、ずっとヤバいって言ってたんだよ!」
武内P「引退とまではいかなくても、仕事量は十分の一に落ちるでしょうね……」
凛「じゅ、十分の一……!?」
武内P・美嘉「……」
凛「な、何か黒い星――カリスマの行方に心当たりはないの?」
美嘉「朝起きたら消えてたんだよ……寝る前まではあったのに」
凛「……」
凛「み、美嘉……?」
美嘉「実はさ、アタシの黒い星――カリスマって、元からあったワケじゃないんだ」
武内P「元からあった訳ではない……?」
美嘉「……そう、小さい頃にね、星にお願いしたの」
凛「星にお願い?」
美嘉「うん……名前も知らない、北斗七星の横に光ってた星に」
武内P「……」
武内P「!?」
武内P「あの……」
美嘉「だけど、北斗七星は知ってたんだ。名前、なんだかカッコイーじゃん?」
凛「それは……うん、わかる気がする」
美嘉「必死で莉嘉と一緒に探して、アタシだけ横にあった星を見つけたの」
武内P「……やはり……!?」
美嘉「その星にお願いした次の日の朝から、アタシは黒い星がつくようになってた」
凛「……なんだか素敵だね」
武内P「……」
美嘉「……だから、もしかしたらもう黒い星はどこにも無いのかもしれない」
凛「まだ、わからないよ」
美嘉「ううん、魔法が解けて……天に還る時が来たのかも」
武内P「!?」
武内P「城ヶ崎さん!」
ガシッ!
美嘉「な、何!?」
武内P「良いですか、決して諦めてはいけません!」
美嘉「ちょ、ちょっと……痛いって……」
武内P「っ! す、すみません」
美嘉「な、何?」
武内P「私は、貴女をとても素晴らしいアイドルだと思います」
美嘉「う、うん」
武内P「そして、私の知る貴女はそんなに簡単に諦める人ではありません」
武内P「……必ず探し出しましょう……カリスマ――いえ、黒い星を」
美嘉「……」
武内P「私も……微力ながらお手伝いします」
美嘉「……うん、ありがと」グスッ
凛「当然、私も手伝うよ。友達のためだもん」
美嘉「凛……えへへ、サンキュ」
凛「……まあ、とは言ってみたものの」
武内P「……何と言いますか」
美嘉「探し方すらわからないしねぇ」
武内P・凛・美嘉「……」
凛「もうさ、試しに違うのをつけてみれば?」
美嘉「違うのって……」
美嘉「こんなのとか?イイカンジ??」
武内P「待ってください! それは危険すぎます!」
美嘉「そ、そう? ならやめとくけど……」
武内P「城ヶ崎さん……!?」
美嘉「もー! アンタはアタシの担当じゃないんだから!」
武内P「ですが……!」
美嘉「仕事を放ってまで、アタシの黒い星探してちゃダメでしょ!」
武内P「しかし……命がかかってるかもしれませんから……」
美嘉「命って……アイドル生命の事?」
凛「大げさだよ、プロデューサー」
武内P「……」
武内P「城ヶ崎さん……」
美嘉「もしも黒い星が見つからなくて、カリスマがなくなったとしても、アタシはアタシ」
美嘉「……でしょ?」
凛「美嘉……」
美嘉「だから、アンタも見てなさいよ! これからのアタシを!」
武内P「……」
美嘉「元カリスマJK――城ヶ崎★美嘉の活躍を!」
武内P・凛「!?」
美嘉「? 何よ、その顔」
凛「へ、変な所に挟まってたー!?」
武内P・美嘉・凛「……」
武内P「少し……驚きすぎましたね」
美嘉「驚いた拍子にどっか飛んでったって……そんなのアリ?」
凛「ねえ、あれがカリスマだとしたら、美嘉のカリスマ剥がれやすすぎない?」
美嘉「ひどくない!?」
武内P「しかし……全く手がかりが無い状態に逆戻りですね」
美嘉・凛「……」
コンコココンコン、コンコン!
凛「このノックの仕方……未央だろうね」
ガチャッ!
未央「おっはよー!☆☆★ なんだか今日は絶好調の未央ちゃんだよ!☆☆★」
武内P・美嘉・凛「!?」
未央「あれ?☆☆★ どうしたの、変な顔して?☆☆★」
美嘉「あ、あああ、アタシのカリスマ!」
武内P「いえ、その……それに加えて……!?」
凛「他の二つはどこから持ってきたの!?」
武内P「……結局、社内の遺失物係に届けるしかありませんでしたね」
凛「白い星を使うアイドルは多いから……」
美嘉「まあでも、アタシのカリスマは戻ったじゃん★」
武内P「……そうですね、本当に、良かったと思います」
美嘉「チョーイケてるっしょ★」
未央「ふーん。まあ、悪くないかな」
凛「!?」
未央「どうしたの?」
凛「ねえ……未央?」
未央「ほら、行くよ。蒼い風が、駆け抜けるように!」
凛「もう良いよ!」
おわり
武内P「三村さん、間食をやめましょう」
かな子「……」
武内P「カ口リー計算云々の次元を越えてしまっている、私はそう考えます」
かな子「……」
ガサゴソ…
かな子「マシュマロ美味しい~」
武内P「話を聞いていますか、三村さん?」
かな子「……」モタモタ
武内P「名残惜しそうにしないでください」
かな子「……」
武内P「はい、ありがとうございます」
かな子「……」
スッ…
武内P「置いてすぐに取ろうとしないでください」
かな子「……」コクリ
武内P「結果的にそれは成功し、一時期三村さんの体重は減っていました」
かな子「……」コクリ
武内P「しかし、減少していった体重は元に戻り、一向に減る気配が無くなりました」
かな子「……」
かな子「……」
武内P「これが今の貴女のレッスン――いえ、最早トレーニング内容です」
かな子「……」
武内P「一つお聞きしますが、今、貴女はベンチプレスで何キロを?」
かな子「120」
武内P「お菓子を食べるためにパワーキャラになるなど、聞いたことがありません」
かな子「……」
武内P「ですが、どう考えても鍛えすぎです」
かな子「……」
武内P「トレーナーの皆さんが口を揃えて言っていました」
かな子「……」
武内P「『あの子の肉体には神が宿っている』と」
かな子「えへへ♪」
武内P「あまり、おかしな物を宿さないでください」
かな子「お菓子?」
武内P「違います」
かな子「……」
武内P「その……失礼ですが、二の腕を触っても宜しいでしょうか?」
かな子「はい、良いですよ」
武内P「ありがとうございます。では、失礼します」
ふにふに
かな子「……」
武内P「……少しふっくらしている、普通の腕ですね」
かな子「わかりました」
武内P「よろしくお願いします」
かな子「えいっ!」
メキメキィッ!
武内P「……突然、腕が丸太にすり替わったかと思いました」
かな子「お菓子作りって、結構力を使うんですよー」
武内P「お菓子どころか、色々粉々になりますよ」
かな子「……」
武内P「三村さん、やはり間食は控えましょう」
かな子「……」
スッ…
武内P「話の途中でマシュマロに手を伸ばさないでください」
かな子「……」
かな子「……」
武内P「確かに、現状でも問題が無いと不満に思うかもしれません」
かな子「……」
武内P「ですが、今の三村さんはアイドルの皮を被った別の何かになろうとしています」
かな子「!?」
武内P「……お気づきいただけた様で幸いです」
かな子「……」
武内P「『地面に根が生えているかのように、微動だにしなかった』」
かな子「……」
武内P「これは、日野さんからの証言です」
かな子「体幹も、鍛えてます」
武内P「はい、どちらもアイドルの発言とは少し違いますね」
かな子「!?」
武内P「『一緒に四葉のクローバーを探していたら、手が緑色の汁まみれだった』」
かな子「……」
武内P「力を制御できず、葉をすりつぶしてしまっているじゃないですか」
かな子「……」
かな子「!?」
武内P「『ハイタッチしたら5m吹っ飛んだ』」
かな子「……」
スッ…
武内P「心を落ち着けるためにマシュマロを食べようとしないでください」
かな子「……」
武内P「お菓子を我慢し、アイドルの道を進むのか」
かな子「……」
武内P「お菓子を我慢せず、力を追い求めるのか」
かな子「……」
武内P「決めましょう、三村さん」
武内P「……」
かな子「これからも、アイドルを続けていきたいです」
武内P「……」
かな子「だけど……お菓子を我慢出来るかわからないんです」
武内P「……」
かな子「もしも私がお菓子に手を出しそうになった時、止めて貰えますか?」
スッ…
武内P「早速手が出ていますよ」
かな子「美味しいから大丈夫ですよ~」
武内P「!? 止まってください!」
かな子「最後にこれだけ~」
武内P「ダイエットに失敗する人の常套句じゃないですか!」
かな子「美味しいから大丈夫ですよ~」
武内P「くっ……!」
ガシッ!
かな子「マシュマロ食べた~い」
武内P「なんてパワーだ……!」
かな子「美味しいから大丈夫ですよ~」
武内P「止まらない……!」
かな子「うふふっ♪」
武内P「くっ……!」
武内P「――ショコラ・ティアラ!ショコラ・ティアラ!」
かな子「……Ready Ready Step!」
武内P「……止まった……!」
かな子「……止めてくれて、ありがとうございました」
武内P「いえ、私は手助けをしただけです」
かな子「えっ?」
武内P「止まったのは貴女の、アイドルを続けたいという意思です」
かな子「……」
武内P「しかし、間食をやめるというのは難しそうですね」
かな子「……」
かな子「!」
武内P「しかし、食べるお菓子はこちらで用意した物になります」
かな子「……」
武内P「お菓子作りも、味見をする危険性が大きいので全面的に禁止に」
かな子「!?」
武内P「こちらは……そうですね、日曜大工等の、他のモノ作りで対応していきましょう」
かな子「……」
かな子「……」
武内P「しかし、今の貴女はパワーオブパワー、筋肉の塊です」
かな子「……」
武内P「ですが、貴女ならばきっと昔の自分を取り戻せる」
武内P「……私は、そう確信しています」
かな子「……」
スッ…
武内P「マシュマロに手を伸ばさないでください」
武内P「今回は、私も驚きました」
かな子「プロデューサーさんのおかげで、すっかり元通りです♪」
武内P「まさか、三日足らずで元通りとは……」
かな子「うふふっ、頑張りました♪」
武内P「……」
かな子「それで……この前のマシュマロって、まだ残ってますか?」
武内P「残っていますが……あの、まさかそのために?」
かな子「マシュマロ食べた~い♪」
武内P「いえ、ですが……」
かな子「美味しいから大丈夫ですよ~」
おわり
ネタふりですけど
闇落ちした楓さんがマスコミやらテレビやら、ありとあらゆる手段を使ってプロデューサーの外堀を埋め、自分と身を固めさせる話とか読んでみたいですね
私は今、怒っている。
「この度は誤解を招く行動をしてしまい、ファンの皆様や関係者の方達には、大変ご迷惑をおかけしました」
それは、パシャリパシャリと私と彼に降り注ぐシャッターの光と音にではない。
今日は休日の予定だったと言うのに、この様な記者会見の場に出なければならなくなったからでも、
ましてや、このような場でもいつもと変わらない無表情の彼にでもない。
「高垣さんとは、どういったご関係でしょうか!?」
「私は彼女が所属する事務所のプロデューサーというだけであり、特別な関係はありません」
勿論、今の彼の答えはわかっていたもので、それに関しての怒りもない。
と言うか、今の質問が私に飛んできたものだとしても、私は全く同じ答えを返すだろう。
「ですが、この写真を見る限りでは、とても親しそうに感じるのですが!?」
そう言った記者さんの手には、ここ数日世間を騒がせている週刊誌の、あるページが開かれている。
載せられている写真に写っているのは、彼の腕にしがみついている私。
ハッキリ言ってしまうと、酔っていて全然覚えてないのよね。
だから、私は今、怒っている。
「高垣さんは、その時泥酔しており、意識的にやった事ではないと言っています」
その通りなんです!
確かに、酔っていたとは言え私の行動はアイドルとして軽率だったかもしれない。
けれど、酔ってふらついた時に、異性とは言え腕にしがみつく事までダメなのかしら。
そのまま転んで怪我をすれば良かったとでも言うつもり?
「貴方は、何故その時その場に居たのでしょうか!?」
「彼女と一緒に居た同僚の方に連絡を受け、自宅まで送り届けるようにと頼まれたからです」
「泥酔した女性をというのは、問題があるのでは!?」
「はい、確かにおっしゃる通りだと思います」
強くなるフラッシュとシャッター音。
「ですが――、」
彼は言葉を少し区切り、ハッキリと、
「――私はプロデューサーであり、アイドルに手をだす事は絶対に有り得ません」
そう、告げた。
会場中が息を呑むように一瞬静まり返ったのは、彼の気迫か、はたまた容姿によるものか。
それは、私にもわからない。
だからこそ、私は今、怒っている。
「彼女の周囲の方達も、それを理解した上で、私に高垣さんを送る様に頼んだのだと思います」
信頼出来る人間に任せる、というのは正しい判断ではないか。
だからええと……うん、瑞樹さんと早苗さんが一緒に呑んでたのよね?
だから、二人は悪くないわ。
「ですが……それは私と、当人達にしかわからない事であり、軽率な行動でした」
悪かったのは、タイミングだけ。
誰も、何も悪いことなんてしてないもの!
なのに、
「なので、今回の件の釈明と、今後の反省のために……この場を設けさせて頂きました」
嗚呼、なのに!
どうして禁酒しなければいけないの!
私の怒りは、留まることを知らない。
「それでは、高垣さんに質問です!」
「はい、何でしょうか?」
少し飲みすぎて、たまたま近くに居た男性にしがみついただけなのよ。
それだけのに、大好きなお酒を禁止された上に、こんな場に引っ張り出されて。
「今回の件に関して、どうお考えでしょうか!?」
「そうですね……私も、とてもビックリしています」
週刊誌が発売されて、すぐに連絡があった。
そこからずっとお酒を飲むのを禁止されて、今までの行動を注意されて。
挙句の果てには、アイドルなんだから普段の言動にも注意しなさいだなんて!
「記憶をなくす程飲んだなんて……本当に久々でしたから」
そう言ったら、何故か会場中がどう反応したものかと静まり返った。
……どうしてかしら?
こんなに怒るのだって、本当に久々。
「だから、きっと楽しいお酒だったんでしょうね」
だからこそ、その結果がこれではあまりにもあんまりではないか。
悲しみを通り越して、怒りを覚えるのも当然の権利。
「し、しかし! 今回の行動はファンを裏切る事になるのでは!?」
「それは有り得ません」
断じて言える。
「彼も言った通り、今回の件は転ばないようにしがみついただけです」
私は、ファンを絶対に裏切らない。
「相手がどうこうの話ではなく、ただ、支えになるものに手を伸ばしただけ」
それに、
「それに、私のファンの方達は、私がお酒が大好きだと知ってくれているでしょうから」
だから、今回の件では私のファンの方達はまるで騒いでいない。
面白おかしく騒ぎたい人達の声で禁酒しなければいけないなんて、アイドルの道は厳しい。
前に怒った時は、どうだったかしら。
「……では、二人の間に特別な感情は一切無い、と?」
随分と散発的になったフラッシュとシャッター音。
会見の時間も長いものではなく、この質問が最後になるだろう。
それもそのはず。
「はい。私はプロデューサーであり、彼女はアイドルですから」
仕事人間である彼と私の間に、そんな甘い感情があるはずもないのだから。
お互いがそう思っていると、少なくとも私は信じている。
それがこんな事になってしまうだなんて、本当に怒りが込み上げて仕方ない!
「……」
――彼の、プロデュースに対する情熱を馬鹿にしないで!
――私の、アイドルに対する想いを甘く見ないで!
「うっ……ぐすっ……!」
……思い出した。
私は、怒ると泣いてしまうのだった。
まずい!
まずい、まずい、まずい、まずい!
「っ……!」
雪崩のように降り注ぐ光と音から逃げるように下を向く。
今のこの私の顔を撮られる訳にはいかない。
涙が止まったとしても、メイクを崩した表情を見せる訳にはいかない。
「うっ……ふうぅ……!」
あともう少し、ほんのちょっとで終わったのに。
皆、絶対に誤解してるわ。
この涙の正体が怒り涙だなんて、誰が信じてくれるっていうの。
けれど駄目、止まらない。
「……うぅ……っぐすっ……!」
顔をこすらないように握りしめた手は真っ白に。
会見のために用意された衣装には、怒りの雫の跡がどんどん増えていく。
まるで止まらない。
怒りも、涙も、シャッターも、何一つ。
「……っく……ひっく……!」
私の名前を呼ぶ声が、そこかしこから聞こえてくる。
アイドルとしてそれに答えなければならないのに、出来ない。
だって、今の私の表情はとても歪んでいて、見せられたものではないから。
だから、早く、早く――
「高垣さん」
「……ひぐっ……うっ……!」
とても、とても近くから彼の声が聞こえる。
顔を上げて確認は出来ない。
だけど、この低く響いてくる声は間違いなく彼のものだ。
「こちらを使ってください」
「……っく……ふぐぅ……!」
俯いた顔と、涙の跡を遮るように差し出された、青いハンカチ。
きっと彼はこれで涙を拭けと言っているのだろうけど、今の私にそれは出来ない。
だって、手が震えてしまってるんですもの。
禁酒なんてされてなければ、手が震えるなんてなかったかもしれないのに!
駄々をこねるように、私は首を横に振った。
「……」
「うぅ……ふぅっ……!」
気配で、彼がハンカチを差し出した逆の手を首筋にやったのがわかる。
きっと、彼は今とても困っているのだろう。
けれど、しょうがないじゃない! 私だって、出来ないものは出来ないの!
「高垣さん――目元、失礼します」
「う……?」
ゆっくりと、青いハンカチが顔に近づけられ、優しく、そっと目に当てられた。
それだけ……そう、本当にそれだけなのに。
「……」
「……」
私の涙は、怒りは、まるでハンカチに吸い込まれるように、嘘の様に止まった。
優しく添えられたハンカチは柔らかく、これならメイクの崩れも最小限で済むだろう。
柔軟剤、使ってるのかしら。
「……」
もう、涙は止まった。
あとは顔を上げるだけだけど、今は、それがとても怖い。
こんな会見の場で突然泣き出した女に向けられる視線はどんなものだろうか?
想像するだけで足がすくみそうになるが、逃げることは許されない。
プロデューサーの彼が涙を止めてくれたのだ。
ここからは、アイドルである、私の仕事だ。
「……」
やさしく涙を受け止めてくれていたハンカチから、彼の手から離れ顔をゆっくりあげる。
降り注ぐシャッターの光と音はすさまじかったが、まずはやることがある。
助けてくれた彼に、お礼を言わなくちゃ。
「……あびがどうございま゙ず」
「……」
その顔は何ですか?
あれだけ泣いたらね、鼻水だって出ますよ!
「……失礼します」
「……ずずっ!」
今の、呆れるような顔以上に、何か失礼な事をしようというの?
私だってね、怒る時は怒るんですからね!
……泣いちゃいますけど。
「……」
「っ!?」
彼のとった行動は、私がまるで予想していないもの。
あろう事か、この男は、ハンカチを私の鼻に当てて、
「ちーん」
こう、言った。
25歳にもなって、アイドルなのに、衆人環視の中、鼻をかませる姿を晒せと!?
「……」
「……ずずっ」
……良いですよ、覚悟してください。
アイドルだって、全部が全部綺麗なものじゃないんですから!
会場に、プピーと、私の鼻をかむ音が響き渡った。
……マイクが音を拾うなんて思ってなかったわ。
「……」
「……」
彼は、無言で私の状態をチェックしている。
泣いている私にハンカチを差し出したのも、プロデューサーとしての性だったのだろう。
けれど、今気になっているのはポケットにしまったハンカチの処遇です。
代わりのものを買ってお渡しするので捨ててください……その、流石に恥ずかしいので。
「……」
チェックが終わったのか、彼は膝立ちの状態から立ち上がり、中腰になった。
泣いてしまったのは私の自業自得だけど、鼻をかむ必要は無かったと思うの。
だから、そこに関しては文句を言っておかなくちゃ。
「……柔軟剤」
「? 高垣さん?」
私のつぶやきに、彼の動きが止まる。
「柔軟剤入りのハンカチを使う、自由なんざ要りません」
「……」
あっ、違う。
前から考えてた駄洒落を言えるタイミングだと思って、間違えちゃった。
「……ふふっ」
無表情な彼が呆気にとられているのがおかしくて。
あんなにも荒れ狂っていた私の心が穏やかで。
自然と、笑みが零れた。
「……くくっ! 何故、今それを……っくく!」
「ふふっ……だ、だって、チャンスかなと思って……ふふっ!」
ああ、おかしい!
駄洒落が会心の出来だったからか、彼も声を上げて笑っている。
こんな姿は初めて見たし、それがまたおかしくて笑いが止まらない。
「ふふっ……うふふっ」
「……」
笑い続ける私を見て、彼は一言、こう言った。
「良い、笑顔です」
降り注ぐシャッター音が、まるで拍手のように感じる。
気の所為だろうか、記者の方達も皆笑っているように見える。
だったら、それに笑顔で応えなければ。
「はい――私は、アイドルですから」
結論から言えば、私が禁酒される事は無かった。
「高垣さん、しっかり歩いてください」
「ステップの練習で~す♪」
会見の時のやり取りは、テレビや新聞だけでなく、インターネットの動画サイトにもアップされた。
その反響は、当初のものとはまるで違う、とても大きなもの。
海外のニュースでも取り上げられ、一時期は彼もその対応に追われていた程だ。
「ほら、貴方も一緒に踊りましょう?」
「……」
いつもの、右手を首筋にやる彼の癖。
そして、彼は私の手を取った。
「あら、付き合ってくれるだなんて、『王子様』は今日は酔ってるんですね?」
「……その呼び方は、ご勘弁を」
反響はとても大きかった。
それも、とても好意的にだ。
今の彼は、『鼻かみ王子』として、世間に認識されている。
「うふふっ♪ やっぱり、お酒は最高ですね♪」
「……程々にしてくださいね」
ステップからのターン。
曲も歌もない、気の向くまま、自由に。
今日のお酒は、とても楽しい。
「お二人さん! いつ結婚するんですかー!」
突然声がかけられたが、それがどこからかはわからない。
わからないから、大声で答える。
「「しませーん!」」
図らずも、彼と返事がかぶった。
それがまたおかしくて、顔を見合わせて笑い合う。
私はアイドル。
彼はプロデューサー。
他の誰が何と言おうと、私達の間にあるのは恋や愛という甘い感情ではない。
私達がそう言うと……皆口を揃えて「頑固」と言うか、閉口してしまうのだけれど。
私達の関係を一言で表すなら……ふふっ、今は飲み友達かしら♪
(ED曲:『LIVE PARTY!!』)
おわり
おやすみなさい
武内P「乳首がキノコになっていました」
アイドル達「……」ジーッ
武内P「しかし、この様な状態では現場入りする事は難しいと判断しました」ピコンッ
アイドル達「……」ジーッ
武内P「なので今日は、皆さんには各々行動していただく形になります」ピコンッ
アイドル達「……」ジーッ
アイドル達「……」ジーッ
武内P「あの……皆さん?」ピコンッ
アイドル達「……」ジーッ
武内P「すみません……あの、あまり見ないで頂けますか……?」ピコンッ
美波「無理です」
アイドル達「……」ウンウン
武内P「……」ピコンッ
みりあ「ねぇねぇ、プロデューサー」
武内P「はい、どうされましたか?」ピコンッ
みりあ「えへへ、ちょっと触ってみてもいい?」
武内P「!? い、いけません! アイドルが男性の乳首を服越しとは言え!」ピコンッ
みりあ「でも、今はキノコなんでしょ? ねぇねぇ、お願い!」
武内P「いえ、しかし……!」ピコンッ
アイドル達「……」ジーッ
武内P「そこまで……ですか?」ピコンッ
みりあ「うん! そうなったら、プロデューサーのせいだよ!」
武内P「それは……困りましたね」ピコピコンッ
アイドル達「……動いた……?」
武内P「? 皆さん、どうされましたか?」ピコピコピコンッ
アイドル達「……!?」
武内P「……仕方ありません、少しだけですよ」ピコンッ
みりあ「やったー♪」
武内P「……」ピコンッ
アイドル達「……」
みりあ「えへへ……えいっ♪」
つんっ!
武内P「うーふっ!」ピコピコピコピコンッ!
アイドル達「!?」
みりあ「えへへ、ありがとプロデューサー♪」
武内P「……お役に立てたようでしたら、幸いです」ピコンッ
みりあ「それじゃあ、お仕事頑張ってくるね―!」
武内P「はい、頑張ってください」ピコンッ
みりあ「行こっ、莉嘉ちゃん!」
莉嘉「あ、アタシも触ってみた……あっ、みりあちゃん待ってよ~!」
ガチャッ、バタンッ
武内P「……良い、笑顔です」ピコピコンッ
アイドル達「……」ジーッ
アイドル達「……」ジーッ
武内P「皆さん……?」ピコンッ
アーニャ「プロデューサー」
武内P「? どうされましたか、アナスタシアさん?」ピコンッ
アーニャ「私も、アー、ツンツンしたい、です」
武内P「!?」ピコピコンッ
美波「あ……アーニャちゃん?」
アイドル達「……」ジーッ
アーニャ「……美波」
未央「でも、今はキノコだよね」
みく「みく、キノコはヘルシーで良いと思うにゃ!」
凛「ふーん。この時期のキノコ狩りも、悪くないかな」
蘭子「ふっふっふ! 今が収穫の刻!」
武内P「まさか……年が若い方達がキノコに魅入られている!?」
アーニャ「ウラー!」
武内P「くっ!」ピコンッ!
未央「ちょっとだけ! 先っぽだけだから!」
武内P「いけません!」ピコンッ!
凛「逃げないでよ!」
武内P「逃げますよ!」ピコピコンッ!
蘭子「闇に呑まれよ!」
ヒュッ!
武内P「傘で突いたら本当に大変な事になりますから!」ピコピコピコピコンッ!
美波「いけない……皆、我を忘れてる……!」
みく「――Pチャン、背中ががら空きにゃ」
武内P「っ!? しまっ――」ピコンッ!
みく「今日のみくはイタズラネコちゃんにゃあああああ!」
くにくにくにくにっ!
武内P「や、やめ、んんんぬふぅ!?」ピコピコピコピコンッ!
ホワホワーン
美波「あれは……あの、少女漫画の背景みたいなのは何……?」
智絵里「……私も、触りたいです」フラフラッ
美波「智絵里ちゃん!? まさか、あれはキノコの胞子!?」
武内P「い、いけませんんんああ!?」ピコピコピコピコンッ!
ホワホワーン
凛「独り占めは良くないよ」
蘭子「共に宴を開こうぞ!」
アーニャ「ダヴァイ♪ ダヴァイ♪」
みく「あっ、ちょっと! 皆引っ張ったら――」
武内P「くっ――!」ピコピコンッ!
みく「もう! 逃げられちゃったでしょー!」
未央「ごめんごめん! でも、また捕まえればいいじゃん!」
凛「未央にしては良い事言うね」
蘭子「我が友よ、おとなしく胸になる禁断の果実を差し出すが良い」
アーニャ「私、早くズヴィズダが触りたいです♪」
武内P「なんてことだ……!」ピコピコピコピコンッ!
武内P「新田さん! 貴女はまだ正気を!?」ピコンッ
美波「はい! 私が気になるのは、真ん中のキノコだけですから!」
武内P「答えがおかしい気もしますが、はい、今はとても頼もしいです……!」ピコンッ
美波「私があの子達を抑えている内に、早く!」
武内P「ありがとうございます!」ピコピコンッ!
武内P「っ――!?」ピコンッ!
智絵里「どこへ行くんですか、プロデューサーさん?」
武内P「緒方さん……そこをどいていただけますか」ピコピコンッ
智絵里「見捨てないで……くださいね?」
武内P「……!」ピコーンッ!
智絵里「見てください……ほら、四葉のクローバー」
かな子「キノコはヘルシーだから大丈夫ですよね~」
杏「それよりさ、キノコ食べたくなってこない~?」
きらり「えっ……!?」
杏「キノコ食べたい~!」
きらり「違う~! 乳首だよ~;;;;」
杏・きらり「う~~~」
杏「キノコ、キノコ、キノコ、キノコ!」
きらり「乳首、乳首、乳首、乳首!」
武内P「狂騒曲にも程がありますよ……!?」ピコピコピコピコンッ!
智絵里「幸せの証……!」
武内P「違います! これは違いますから!」ピコンッ!
かな子「マシュマロ食べた~い」
武内P「今、マシュマロは関係ないではないですか!」ピコピコンッ!
きらり「にょわー☆」
武内P「くっ……! もうかわしきれない……!?」ピコピコピコンッ!
杏「良いぞ~! そこだ~! やれ~!」ヤンヤヤンヤ
武内P「……」ピコンッ
武内P「……四葉に見せかけた三つ葉だったようですね」ピコピコンッ
卯月「――島村卯月、頑張ります♪」
武内P「!?」ピコーンッ!
卯月「何にも無い……私だけ、何にも無い……!」
ガシッ!
武内P「は、離してください! 島村さん、手を離してください!」ピコピコピコンッ!
卯月「何にも無いが、あるんですよ?♪」ニコッ
武内P「いい笑顔ですが、恐怖しか感じません!」ピコピコンッ!
卯月「キノコっ、のっこ~のこ元気ノコ♪」
くにくにくにくにっ
武内P「んんんうううふっ!?」ピコピコピコピコンッ!
ホワホワーン
くにくにくにくにっ
武内P「や、やめてくだんんんああっ!?」ピコピコピコピコンッ!
ホワホワーン
アイドル達「……キノコっ、のっこ~のこ元気ノコ♪」
武内P「き、来ては行けませ――」ピコピ
美波「……」
武内P「に、新田さんまで……!?」コーンッ!
楓「ゆきぐ~にマイタケ、ホ・ク・ト♪」
武内P「貴女は何故居るんですか高垣さああああん!?」ピコピコピコーンッ!
武内P「んんんあああいけま、いけま、んんんふおおっ!?」ピコ――ンッ!
ホワホワーン
武内P「……」ピコンッ
ちひろ「あの……昨日は大変だったみたいですね」
武内P「はい……もう、本当に」ピコンッ
ちひろ「ええと、でも、一日で治るはずじゃ?」
武内P「腫れです」ピコンッ
ちひろ「えっ?」
武内P「……腫れ、です」ピコンッ
ちひろ「……」
武内P・ちひろ「……」
武内P「いえ、有給休暇は当然の権利ですので、お気になさらず」ピコンッ
ちひろ「……うふふ、でも、そんなになってたら触りたくなる気持ちも少しわかります」
武内P「っ!?」ピコンッ
ガタタッ!
ちひろ「じょ、冗談です! 冗談ですよプロデューサーさん!」
武内P「す、すみません……取り乱しました」ピコンッ
武内P・ちひろ「……」
武内P「胞子の影響で、今朝起きたら昨日の私と同じ状態になっていたそうです」ピコンッ
ちひろ「まあ……」
武内P「なので、危険を排除するために今日は全員自宅待機という形にしました」ピコンッ
ちひろ「そう、ですね。それが一番だと思います」
ちひろ「……」
ちひろ「あれ? ちょっと待ってください」
武内P「? どうか、されましたか?」ピコンッ
ちひろ「自宅から通っている子も居ますけど……女子寮の子もいますよね?」
武内P「……」ピコンッ
武内P「!?」ピコンッ
武内P「……はい、もしもし」ピコンッ
みく『助けてPチャアアアン! 皆が、皆がみくの乳首を狙ってくるにゃあああ!』
武内P「前川さん!? 襲われているのですか、前川さん!?」ピコンッ
みく『幸子ちゃんがカワイイとか今は関係なっ、やめ、やめてえええ!』
武内P「前川さん!? 前川さん!?」ピコンッ
みく『あかん! ホンマにあかんって! ホンマに――』
プツッ!
武内P「前川さん!? 返事をしてください、前川さん!?」ピコンッ
ちひろ「みくちゃん、一体どうしたんですか!?」
武内P「……前川さんはもう……もう……!」ピコンッ
ちひろ「っ……!?」
ちひろ「駄目ですよ! 場所は女子寮なんですよ!?」
武内P「はい、ですので」ピコンッ
ちひろ「……ん?」
武内P「お願いします、千川さん! 皆さんを助けてあげてください!」ピコンッ
ちひろ「……えっ?」
武内P「貴女なら、きっとキノコに負けることはありません!」ピコンッ
武内P「千川さんならば、この先生きのこる事が出来るはずです!」ピコンッ
ちひろ「内心では私もキノコるって思ってるじゃないですか!」
おわり
武内P「それは、はい、ありますよ」
卯月「ええっ、そうなんですか?」
武内P「意外、でしょうか?」
未央「見た目的に、怖いものなしって感じだからねー!」
卯月「も、もう! 未央ちゃん!」
武内P「……」
武内P「あまり……思い出したくはないのですが」
未央「ありゃ、そんなに?」
武内P「……」
卯月「あの、でも……話して楽になる事ってあると思うんです」
武内P「島村さん?」
卯月「いつも助けてもらってるし、今度は私が助けになれたらなぁ、って……えへへ」
武内P「……」
卯月「わ、忘れてないですよ~!」
武内P「……しかし、そうですね。島村さんの言う通りかもしれません」
卯月「プロデューサーさん?」
武内P「聞いて、いただけますか?」
未央・卯月「……」
未央・卯月「もちろん(です)!」
未央「……もしかして、怖い体験って私のアレ?」
卯月「……アレ、なんですかね?」
武内P「そうですね、本田さんのあの発言には驚きましたが、その後です」
未央・卯月「……」
武内P「その……渋谷さんが全力で睨んできたのが、はい、とても怖かったですね」
未央・卯月「……」
武内P「……」
武内P「あの時の光景をハッキリと思い出すだけで――」
卯月「……プロデューサーさん?」
武内P「」
卯月「プロデューサーさん? あの、プロデューサーさん!?」
武内P「――っぶは!……はぁ……はぁ……!」
未央「な、何……!?」
武内P「この様に、心臓が一瞬止まります」
未央「説明のために気軽に心臓を止めないで!?」
武内P「いえ、そんな事はありません」
未央「でも、心臓が止まる程怖いんでしょ!?」
武内P「今は大丈夫なのですが、心の奥底にあの光景が恐怖として刻まれているようで……」
未央「トラウマになってるじゃん!」
卯月「でも、今の凛ちゃんは怖くないんですよね!? ねっ!?」
武内P「はい、なんとか大丈夫です」
未央「……なんとか」
卯月「……ですか」
卯月「そ、そうです! 他にはないんですか!?」
武内P「……他に、ですか」
未央・卯月「……」
武内P「そうですね……あります」
未央「……ある」
卯月「……んですね」
未央「あ、もしかして!」
卯月「私まで辞めちゃうんじゃないかと怖かったんですか?」
武内P「それは……不安ではありましたが、恐怖とは違いますね」
未央・卯月「……」
武内P「その……お二人が休まれた時、渋谷さんに全力で怒鳴られたのが、怖かったですね」
未央・卯月「……」
武内P「……」
武内P「あの時の光景をハッキリと思い出すのは……出来ません」
卯月「もしかして……怖くて記憶が飛んでるんですか!?」
武内P「いえ、そんな事は、決して」
未央「じゃ、じゃあどうして?」
武内P「その……今は、オムツを着用していないので」
卯月「漏らすほど怖かったんですか!?」
武内P「……その時は予め着用していたので……はい、事なきを得ました」
未央・卯月「……」
武内P「いえ、そんな事はありません」
未央「でも、怒鳴られたら漏らすんでしょ!?」
武内P「その状況にならない様、コミュニケーションは取っているつもりです」
未央・卯月「……」
未央「やばいよしまむー、めっちゃ気軽にとんでもない蓋を開けちゃったよ」
卯月「はい……数分前に戻って未央ちゃんを止めたいです」
未央「へへっ、私も♪」
卯月「……」
未央「……ごめん」
卯月「は、はい! クローネの話の時も、二人だったって聞きました!」
武内P「それは……はい、そうですね」
未央「な、なーんだ! じゃあ今は大丈夫なんだね!」
卯月「は、はい! 良かったー! 安心しました!」
武内P「二人きりの時は、意識を保てる様、こう、舌を噛んで――」
未央「全然大丈夫じゃない! 全然大丈夫じゃないよねそれ!?」
卯月「安心できる要素が一つも無いじゃないですかぁ!」
武内P「……」
未央・卯月「……」
未央「そりゃ誰だって思うよ」
卯月「はい、未央ちゃんの言う通りです」
武内P「なので、お二人には協力して欲しいのです」
未央「もしかして――」
卯月「凛ちゃんを怖がらなくなる特訓ですか!?」
武内P「いえ、違います」
未央・卯月「へっ?」
武内P「極力渋谷さんの神経を逆撫でず、かつ、私と渋谷さんが二人きりにならないよう協力を」
未央・卯月「弱気!」
未央「そんな縋るような目で見ないで……!?」
卯月「でも……本当に、それしか方法は無いんでしょうか?」
武内P「……島村さん?」
卯月「凛ちゃんを怖がらずに、仲良くする事は出来ませんか?」
武内P「……」
卯月「私にとって、二人はどっちも大事な人なんです」
未央「しまむー……」
卯月「だから、プロデューサーさんが凛ちゃんを怖がってるのは、とても悲しいんです……」
武内P「……」
武内P「……本田さん」
未央「私にアイドル辞めるのを辞めさせた位だもん、その位出来るよ!」
卯月「はい! そのとおりです!」
武内P「……島村さん」
ガチャッ
凛「おは――」
未央「しぶりんが睨んだら心臓止まるのだって、絶対なんとかなる!」
卯月「凛ちゃんが怒鳴ったら漏らしちゃうのだって、きっとなおります!」
武内P「……!?」
凛「……」
卯月「そうです! 怒鳴られたからなんだー! オムツがないからなんだー!」
未央・卯月「えへへ♪」
武内P「……!……!」
凛「ふーん、楽しそうだね」
未央・卯月「……」
未央「えっへへ、心臓が止まるかと思った♪」
卯月「ふふふっ、私は漏らすかと思っちゃいまいた♪」
武内P「……!……!」
凛「……」
卯月「……はい」
武内P「あ、あの……!?」
未央・卯月「お仕事お仕事」
武内P「!?」
凛「私はちょっとプロデューサーに話があるから」
未央「おっけー、しぶりん」
卯月「それじゃあ、私達は行きますね」
武内P「ま、待ってください!」
未央「本田未央! 今日も元気に行ってまいりまーす!」
卯月「島村卯月、頑張ります♪」
武内P「あの、待っ――」
……バタンッ!
武内P「……!」
凛「……」
武内P「……!」
凛「怒鳴られたら漏らすんでしょ? 怒鳴らないよ」
武内P「……!」
凛「ほーら、プロデューサーの好きな笑顔だよー」ニコニコ
武内P「……!」
凛「どうしたの? 何か言いなよ」ニコニコ
武内P「……良い、笑顔です。はい、確かに笑顔は好きです」
凛「ふーん?」ニコニコ
武内P「……ですが――」
武内P「――今、一番怖い体験の真っ最中です」
おわり
正妻だね(ニッコリ
武内P「笑顔の練習、ですか?」
武内P「ですが……渋谷さんは、とても良い笑顔をしています」
凛「私の練習じゃなくて、プロデューサーの」
武内P「私の……ですか?」
凛「そう」
武内P「……」
武内P「それは……はい」
凛「それについてどう思ってるの?」
武内P「小日向さんには……はい、大変申し訳無いことをしたと思っています」
凛「それで、その後にさ」
武内P「?」
凛「いい笑顔で笑った、って聞いた」
武内P「……」
凛「だから、それを意識して出せるようにすれば良いんじゃないかな」
武内P「……」
凛「これから二期生の相手もしなきゃいけないんでしょ?」
武内P「……」
凛「また、気絶させるつもり?」
武内P「……」
凛「言い訳は聞きたくない」
武内P「……」
凛「良いからほら、やってみせてよ」
武内P「……」
武内P「……」ニゴォ
凛「……ひどいね」
武内P「……」
凛「こうだよ、こう」ニコッ
武内P「……」
凛「どうかな?」ニコッ
武内P「はい、とても、いい笑顔です」ニコッ
凛「!?」
武内P「? はい? どうか、されましたか?」
凛「ちょ、ちょっともう一回」
武内P「……はぁ」
凛「こうだよ、こう」
凛「……」ニヘラッ
武内P「!? 渋谷さん!?」
凛「ん?」ニヘラッ
凛「……えっ? 嘘っ?」
武内P「下手というか、こう、締りの無い感じに……」
凛「締まりがない!?」
武内P「はい……残念ながら」
凛「えっ……なんで……?」
武内P「……」
武内P「はい」ジーッ
凛「……」
武内P「……」ジーッ
凛「……」ニヘラッ
武内P「下手、ですね」
凛「……まさか、プロデューサーに笑顔が下手って言われるなんて……!」
武内P「……」
凛「……笑顔のスランプなんて聞いたことないよ」
武内P「もう一度、先程の流れをなぞってみましょう」
凛「?」
武内P「先程の、いい笑顔を思い出すためです」
凛「……なるほど」
武内P「このままでは、仕事に支障が出てしまいますから」
凛「……」
武内P「……」ニゴォ
凛「うん、やっぱり下手だね」
武内P「……そして、渋谷さんがお手本を」
凛「こう?」ニコッ
武内P「はい……! とても、いい笑顔です」ニコッ
凛「……」ニヘラ
武内P「ああっ、惜しい!」
凛「……わざとやってる?」
武内P「……はい?」
凛「……」
凛「そう言うんじゃないから」
武内P「……?」
凛「……ぷ、プロデューサーって私の普段の笑顔はどう思う?」
武内P「渋谷さんの普段の笑顔……ですか」
凛「うん、そう」
武内P「そうですね……凛とした外見とは裏腹な、とても朗らかで優しい笑顔だと思います」
凛「……ふーん」ニヘラ
武内P「ああっ……! また……!」
凛「ぷ、プロデューサーは見ないでいいから!」
武内P「すみません、仰っている意味がよく……?」
凛「……もう、今は私の話じゃないでしょ」
武内P「いえ、ですが……!」
凛「じゃあ、プロデューサーがお手本を見せてよ」
武内P「私が笑顔の……ですか……!?」
凛「そう。担当アイドルのため、頑張ってよね」
武内P「……」
凛「うん、見てるから」
武内P「……」キリッ
凛「……」ニヘラ
武内P「!」ニッゴォ
凛「ぷっ!? な、なにそれ!? ふっくくく……!」ニコニコ
武内P「! それです、その笑顔です!」ニコニコ
凛「……」ニヘラッ
武内P「ああっ!? また!?」
武内P「あの、何がでしょうか?」
凛「プロデューサーは、笑顔が下手なままで良いよ」
武内P「あの、それは……?」
凛「プロデューサーが笑顔がうまくなった方が……大変だろうから」
武内P「はぁ……?」
凛「わからなくていいよ」
武内P「……」
武内P「それは……」
凛「良い? わかったらほら、返事」
武内P「……はい、わかりました」
凛「よし」ニコッ
武内P「……良い、笑顔です」ニコッ
凛「……」ニヘラッ
武内P「……あの、渋谷さん」
凛「えっ? な、何?」
武内P「笑顔の練習をしますか?」
おわり
武内P「常務を倒したら、私、首になりますから!」
武内P「何と言ったら良いのでしょうか……物理的に倒したら、私、首になりますから!」
みく「Pチャン……何言ってるにゃ?」
武内P「……さよなら、という意味です!」
李衣菜「そんなぁ……」
武内P「勝手で、悪いのですが……」
凛「いい考えだと思ったのに」
武内P「どこがですか!?」
卯月「でも、とってもいい考えだと思ったんです」
武内P「いえいえ、待ってください!」
美波「でも、常務の強引なやり方に対抗するには……」
武内P「こんなに強引な対抗策を提示されるとは思っていませんでしたよ!」
アーニャ「プロデューサーなら、パツイチ、です♪」
武内P「そうですね、一発で逮捕されますよ!?」
武内P「赤城さん、どこでそんな言葉を覚えたんですか?」
莉嘉「カリスマJCのぉ、オ・ネ・ガ・イ☆」
武内P「私を反逆のカリスマにするおつもりですか?」
きらり「顎を撃ち抜けば、脳がハピハピするにぃ☆」
武内P「的確なポイント指示をありがとうございます……と、言うとでも!?」
武内P「緒方さん、戦地に送り出す感じをださないでください!」
かな子「これ……マシュマロです……美味しい~♪」
武内P「そうですね! 自分で食べたら美味しいですね、三村さん!」
杏「プロデューサー……杏、果報は寝て待つタイプだよ」グッ
武内P「やめてください! 双葉さん、あの、本当に行きませんよ!?」
武内P「物語というか、逮捕劇になります!」
みく「Pチャン……これを使って欲しいにゃ」
武内P「ネコミミで殴れと? あの、凶器がネコミミで良いんですか?」
李衣菜「プロデューサー……私からはこれを」
武内P「あの……何も無いんですが」
李衣菜「熱いロックの魂と、エアギターです!」
武内P「どちらも要りませんが、どちらも物ではありませんからね!?」
武内P「自前のものも合わせて、もう耳が6つになりましたよ」
夏樹「コイツを使ってくれ……へへっ、それもロックだろ?」
武内P「ギターって……ガチの凶器になるやつじゃないですか!」
楓「私からは……これを」
武内P「柔軟剤? あの、柔軟剤でどうしろと?」
アイドル達「?」
武内P「あの、確かに企画を出してくれるのは嬉しいと言いました」
アイドル達「……」
武内P「しかしですね、全員一致で物理的に常務を倒すに決まるとは思っていませんでしたよ」
アイドル達「えへへ」ニコッ
武内P「いいですねパワーオブスマイル! パワー担当は私ですか、皆さん!?」
アイドル達「……」
武内P「……わかりました、行ってきます」
アイドル達「!?」
武内P「皆さんの意見を尊重するのも、プロデューサーの役目ですから」
アイドル達「……」
コンコン!
常務「……話は聞いている、入り給え」
ガチャッ!
武内P「失礼します」
常務「!? なんだ、その格好は!? 猫耳にうさ耳に……ギター……!?」
武内P「個性を尊重した、パワーオブスマイルですよ」
常務「それが……?」
武内P「ええ、どうやらそうらしいです」
常務「!?」
武内P「このギターで顎を打ち抜き、ネコミミとウサミミでなんやかんやします」
常務「!!?」
武内P「けれど、大丈夫、四葉のクローバーのお守りがありますから」
常務「……意味がわからないな」
武内P「ええ、実は私もです」
常務「……」
武内P「……」
武内P「そうですね、これが最後になるかもしれませんから」
常務「だが、君は止まりたいと思っている」
武内P「……その通りです」
常務「そして、私は君を止めたいと思っている」
武内P「……」
常務「最後になるかもしれないのに、不思議なものだ」
武内P「ええ……平行線だった私達の意見が、初めて重なりましたね」
常務「ああ、これはまさしく――」
武内P・常務「ファイナルファンタジー、テン」
おわり
しぶりんがポンコツ過ぎる
ウサミンとの距離感が妙に近いシチュが欲しい
武内P「悲しい夢を見た、と」
武内P「その、具体的にはどういった内容で?」
菜々「……孤独死」
武内P「……はい?」
菜々「……一人アパートで、ひっそりと息を引き取る夢です」
武内P「それは……また……」
菜々「……」
菜々「……はい」
武内P「あの、何故、私なのでしょうか?」
菜々「……CPのプロデューサーさんも、孤独死するタイプかなと思って」
武内P「……」
菜々「キャハッ!」
武内P「……」
菜々「……すみません」
武内P「孤独死が二つ並ぶだけの様な気もしますが……」
菜々「……」
武内P「……すみません」
菜々「……いえ、お気になさらず」
武内P「……」
菜々「……」
菜々「あの……電話が鳴ってますよ?」
武内P「……少し、失礼します」
菜々「あ……はい」
武内P「もしもし、お待たせしました。……はい……はい……」
菜々「……」
武内P「その件に関しては……はい、そのようにお願いします……」
菜々「……」
武内P「――すみません、お待たせしました」
菜々「……」
きゅっ
武内P「あの、安部さん? 何故、私の上着を掴んでいるのでしょうか?」
菜々「危なかった! 今のは危なかったですよ!?」
武内P「は、はい!?」
菜々「私がウサミン星人じゃなく、ウサギだったら孤独死してましたよ!?」
武内P「は、はぁ……?」
武内P「その……申し訳ありませんでした」
菜々「いえいえ、お仕事ですから!」
武内P「それでその……手を離していただけますか?」
菜々「ピピピピピ! あっ、今! 今ウサミン星から電波を受信しました!」
武内P「……はぁ」
菜々「手を離すと死ぬそうです! ウサミン、ピーンチ!」
武内P「……」
武内P「いえ、あの……ですが……」
菜々「うぅ……本当に怖い夢だったんですよぉ……!」
武内P「あの……申し訳ありません」
菜々「田舎の両親には戻ってこいって言われるし、でも諦められなくて……!」
武内P「あの……」
菜々「その結果孤独死なんて夢を見たら、ウサミン星人ならこうなります!」
武内P「トイレに……行きたいのですが」
菜々「!?」
武内P「――すみません、お待たせしました」
菜々「……」
ぎゅっ
武内P「あの、安部さん? 上着の袖をそんなに強く掴まないでください」
菜々「もうギリッギリ! ギリギリですよ今のは!」
武内P「は、はい!?」
菜々「後二分、いや、一分遅かったら、男子トイレの前で死んでましたよ!?」
武内P「は、はぁ……?」
武内P「その……申し訳ありませんでした」
菜々「キャハッ! ラブリーな17歳なので、大丈夫ですよ!」
武内P「しかしその……手を離していただけますか?」
菜々「ピピピピピ! あっ、また! またウサミン星から電波が!」
武内P「……はぁ」
菜々「手を離すと死ぬって言ってるでしょうが! ですって! プロデューサー、ピーンチ!」
武内P「……」
武内P「……」
菜々「ナナが孤独死したら、次はプロデューサーさんですよ?」
武内P「……」
菜々「良いんですか? 皆を残して死んじゃっても良いんですか?」
武内P「……」
……ヌギヌギ
菜々「あの、どうして上着を脱いで――」
武内P「っ!」
ダッ!
菜々「ちょっ、何で逃げるんですか!?」
武内P「いくら社内とは言え、限度というものがあります!」
菜々「でもでも!」
武内P「……!」
菜々「な、なんて逃げ足の早さ! こうなったらメルヘン――」
武内P「……!」
菜々「メルヘン……メルヘンダーッシュ! メルヘンダーッシュ!」
武内P「……!?」
菜々「メルヘンダーッシュ!」
武内P「……離れて、ください」
菜々「ぜぇ……はぁ……!」
がっしいっ!
武内P「あの、背中にしがみつかれると、流石に重いのですが……」
菜々「「ぜぇ……はぁ……!」
武内P「あの、胴体に回した足の力を緩めては……」
菜々「ぜぇ……はぁ……!」
武内P「……頂けないようですね」
菜々「ぜぇ……はぁ……!」
がっしぃっ!
武内P「……わかりました、もう逃げませんから」
菜々「……本当に?」
武内P「……」
菜々「……」
武内P「本当です」
菜々「間が! もうね、今の間はウサミン星人じゃなくても嘘だってわかりますよ!」
武内P「……」
菜々「……」
コンコン、ガチャッ
みく「おはようございま――って、何してるの!?」
菜々「あっ、おはようございます! 孤独死対策です、キャハッ!」
武内P「……だ、そうです」
みく「……意味がわからないにゃ」
武内P「ええ……私もです」
みく「……なるほど、そういう事だったんだね」
菜々「はい! わかってもらえましたか?」
みく「ナナチャン! ナナチャンは間違ってるにゃ!」
菜々「えっ!?」
みく「ナナチャンには……みく達が居るにゃ!」
菜々「……みくちゃん」
みく「ガチで孤独死しそうなのは、Pチャンだけにゃ!」
武内P「……」
武内P「えっ?」
みく「Pチャンはきっと、10年後も、20年後もずっと笑顔ですって言ってるの」
菜々「ふむふむ……それは、ナナも想像できます」
みく「だけど、ある日突然事務所に来なくなるにゃ」
武内P「前川さん……?」
菜々「そして二日後くらいに自宅に行ったら……」
みく「息を引き取ったPチャンが……ううっ、考えただけでも泣けてくるにゃ……!」
武内P「……」
菜々「みくちゃんが――皆がいますっ!」
みく「ミミミン♪ミミミン♪ウーサミンッ♪」
菜々「メルヘンチェーンジ! キャハッ! ラブリー17歳!」
みく「その意気にゃ!」
武内P「……」
菜々「……」
…ストンッ
菜々「ありがとうございました! もう、大丈夫です!」
武内P「……そう、ですか。それは……はい、良かったです」
菜々「あっ、良いですね! 是非、ご一緒させてください!」
みく「あっ、そうだPチャン!」
武内P「!」
みく「この上着、Pチャンの?」
武内P「……これは……はい、そうですね、ありがとうございます」
みく「もー! クリーニングに出すのは自分だからって、物を乱暴に扱っちゃ駄目にゃ!」
武内P「……はい……すみませんでした」
みく「それじゃ、みく達はもう行くね!」
菜々「それじゃあ、失礼しまーす!」
ガチャッ、バタンッ
武内P「……」
武内P「……」
ちひろ「……プロデューサーさん? 何か、考え事ですか?」
武内P「いえ……アイドルとプロデューサーは、近いようで遠いものだ、と思いまして」
ちひろ「はぁ……?」
武内P「……」
ちひろ「あの……何かあったんですか?」
武内P「……ああ、いえ」
武内P「悲しい現実を見せられたな、と」
おわり
忘れないように安価うっときます>>476
武内P「これが今回の分のビデオですか」
武内P「なるほど、後で確認します」
小梅「ふふ……頑張った……」
武内P「いつも、お疲れ様です」
ありす「あれは……」
桃華「CPのプロデューサーちゃまと、小梅さん……?」
武内P「いえ、白坂さんも頑張っていますので、当然の事です」
小梅「今日のはね……よく、撮れてると思うんだ……」
武内P「それは、とても楽しみですね」
ありす「えっ? えっ……?」
桃華「小梅さんが、頑張って、大胆で、ビデオで……ええっ……!?」
武内P「そうですね……合わせると、100点は越すかもしれません」
小梅「そんなに……?」
武内P「はい。最近では、撮影する時のぎこちなさもとれてきましたね」
ありす「もしかして……」
桃華「ロ漫譚が既に100を越えている……!?」
武内P「白坂さんの頑張りを考えると、当然の結果です」
小梅「でも……嬉しいな///」
武内P「良い、笑顔です」
ありす「二人は、とても仲が良いんでしょうか?」
桃華「と、言うよりも……口リの極みかもしれませんわよ、あれは……!」
武内P「そうですね……何か、動きをつけるのはどうでしょうか?」
小梅「動き……?」
武内P「はい。せっかくのビデオですので」
ありす「あれは、どういう意味でしょうか……?」
桃華「なんて事なのかしら……! 動きをつけたら倍率ドン、更にドンですわよ!?」
武内P「楽しいというか……そうですね、また違った見方が出来るかと」
小梅「それじゃあ……うん、頑張ってみるね……」
武内P「はい、頑張ってください」
ありす「ビデオ……動き……頑張る……?」
桃華「恐らく合意の事とは言え……事務所転覆で煉獄、いえ、監獄行きは免れませんわ」
武内P「前回頂いたビデオの感想、ですか」
小梅「うん……自信が、あったから……///」
武内P「そうですね、とても素晴らしいもので、私も楽しめました」
ありす「まさか……えっ、そんな……?」
桃華「楽しんだ!? まさか……アームストロングカノンを使ったと……!?」
武内P「お疲れ様です」
小梅「……ありがとう///」
武内P「とても、美しかったです」
ありす「レッスンの個人指導……?」
桃華「どうしましょう……悪・即・斬するべきなのかしら……?」
武内P「私も一緒に、ですか?」
小梅「うん……駄目、かな……?」
武内P「……」
ありす「……」
桃華「あの様子だと……まだ不犯の誓いは破られていないようですけれど……」
武内P「……では、機会がありましたら、その時に」
小梅「! えへへ……嬉しい……///」
武内P「……」
ありす「お願いしてみたら……私も……」
桃華「一歩を踏み出してしまうなんて! クズ龍閃を超えるつもり!?」
武内P「白坂さんなら、きっと大丈夫です」
小梅「……そうかな」
武内P「ええ、きっと」
ありす「……私も、個人指導をお願いしようかな」
桃華「うふ、いけませんよ」キンッ
ありす「あっ……か……!? そ、そうですね」
桃華「二階堂兵法、心の一方……危なく犠牲者が増える所でしたわ」
武内P「そんな事はありません」
小梅「でも……」
武内P「白坂さんにはいつもお世話になっていますから」
ありす「……とても、信頼されてるように見えます」
桃華「これはもう憲兵……早苗さんを呼んで牙突して貰うしか方法が……」
武内P「はい、何でしょうか?」
小梅「ここで一緒に撮るのは……駄目、かな……・?」
武内P「ここで、ですか?」
ありす「……ちょっと、羨ましいかもです」
桃華「おろー!?……ち、違いましたわ! 駄目ー!」
武内P「その……少しだけ、でしたら」
小梅「……本当?」
武内P「ええ、構いませんよ」
ありす「……私も、ああやって頼られるようになりたい」
桃華「少しだけと言って、大量の炸裂弾を使用するに違いありませんわ!」
武内P「はい」
桃華「お待ちになって!」
ありす「あ、あの!」
小梅「? 橘さんと……」
武内P「櫻井さん……・?」
桃華「これ以上不埒な真似をなさるようでしたら……わたくし、櫻井桃華が人誅を下しますわ!」
武内P・小梅「? 不埒……?」
武内P「何の、話でしょうか?」
ありす「小梅さんのビデオを見て、個人指導してたんですよね?」
桃華「それも100点を越す、回転式機関砲の如き量で!」
小梅「えっと……違うよ?」
武内P「はい、白坂さんの提出されたビデオには、白坂さんは映っていませんよ」
ありす・桃華「……」
ありす・桃華「へっ?」
武内P「白坂さんがカメラマンとなり、撮った映像を私に提出していたのです」
ありす「それじゃあ、個人指導は……?」
小梅「し、してないよ……見てもらってる、だけ……」
桃華「それでは、CPのプロデューサーの斬馬刀の活躍は……」
武内P「あの、意味がわかりません」
ありす・桃華「……」
武内P「? はい、ありませんよ」
ありす「ふふふっ! 桃華さん、どうしてさっきから焦っていたんですか?」
小梅「えへへ……ふ、不思議だね……」
桃華「お、おほほほほ! 何でもありませんわよ!」
小梅・ありす・桃華「あははは!」
桃華「――何が可笑しいッ! で、ではなく、おかしな話もあったものですわね!」
武内P「……」
武内P「……」
ちひろ「あっ、また小梅ちゃんからのビデオを見てるんですか?」
武内P「はい。今回は、山の風景ですね」
ちひろ「ロケで行った先のビデオを撮ってくるなんて……うふふ、慕われてますね」
武内P「……そうなのでしょうか」
ちひろ「はい♪」
武内P「ですが……この映像を見ていると、不思議と不安になります」
ちひろ「不安に、ですか?」
武内P「……ええ」
武内P「……所持しているだけで駄目な気がするのです」
おわり
武内P「三年目の浮気ぐらい多めにみろよ」
武内P「……」
ちひろ「……うふふっ♪」
武内P「また……懐かしい歌ですね」
ちひろ「この間入ったお店でずっとかかってて、耳に残っちゃって」
…カタンッ
武内P・ちひろ「……?」
未央「第一回チキチキ! シンデレラプロジェクト緊急対策会議ー!」
美波「み、未央ちゃんテンション高いわね」
卯月「こいつぁ面白くなってきた、って顔してます」
未央「いやいや、私もね? 悲しい気持ちでいっぱいだよ?」
凛「微塵もそうは感じないんだけど」
未央「……いや、何と言うか……テンション上げてないと、ほら、ね?」
アイドル達「……」
李衣菜「うん、全然そんな感じしないよね」
莉嘉「あっ、ハイハーイ! アタシ、聞いたことがある!」
きらり「えっとぉ、何を聞いたのぉ?」
莉嘉「P君、ちひろさんの言う事だけは素直に聞くらしいんだよね!」
アイドル達「……」
かな子「プロデューサーさんって、結構頑固な所があった気が……」
杏「そういえばだけど……杏、見たことあるかも」
アーニャ「何を……です、か?」
杏「残業しようとするプロデューサーを強引に帰してる所だよ」
アイドル達「……」
凛「わからないよ。ああいうタイプって、浮気してもバレなさそうだし」
未央「バレてるから口論してたんじゃないかな」
蘭子「闇に魅入られ……魔が差した」
美波「プロデューサーさんも、男の人だしね……」
アイドル達「……」
みりあ「ねぇねぇ、プロデューサーとちひろさん、別れちゃうの?」
智絵里「プロデューサーとちひろさん……見捨てられるのはどっちなんでしょうか」
かな子「まだそうと決まったわけじゃ……クッキー美味しい~♪」
きらり「うゅ……でも、理由はどうあれ二人がケンカするのは悲しいにぃ」
アイドル達「……」
蘭子「あの二人は運命が定めた者達ではなかった、という事かしら」
卯月「う~ん……やっぱり誤解な気がします」
美嘉「……ヤッホー★ 今、凄い話が聞こえてきたんだけどさ」
未央「あっ、美嘉ねぇ! こっちも今、緊急会議してたんだよ!」
美嘉「……なんか、アイツとちひろさん、ひとつ屋根の下暮らしてきたらしいんだよね」
凛「……ふーん、同棲してたんだ」
李衣菜「それなのに浮気……いやー、ロックだねぇ」
莉嘉「えー、アタシやだよ! チョー怒られるもん!」
杏「杏も今回はパース。本人たちの問題だしね」
みりあ「でも……これからどうなっちゃうのかなぁ」
智絵里「冷え切った二人……静かなルーム……お家と一緒になっちゃう」
蘭子「!? この、また別の闇の気配は一体……!?」
アイドル達「……」
凛「浮気相手って誰なんだろうね」
美波「プロデューサーさんと仲がいい人となると……」
美嘉「……今西部長とか?★」
きらり「美嘉ちゃんはぁ、ちょ~っと静かにしてようにぃ☆」
美嘉「えっ、何で!?」
アイドル達「うんうん」
美嘉「えっ、アタシの扱いってそんな感じ!?」
かな子「うんうん、ふざけてる場合じゃなさそう……ビスケット美味しい~♪」
みく「でも……浮気相手を見つけてどうするにゃ?」
美波「勝負……とか?」
卯月「でも……浮気相手の人の方が勝った場合……」
アイドル達「……」
蘭子「我らの手に負えぬ闇に封印を!」
李衣菜「でも、関係がこじれてあの二人の関係が解散になったら?」
みく「みく達みたいに、すぐ再結成は出来るのかな……」
美波「その……二人の解散芸とは、また違う話だから」
アイドル達「……」
未央「それだ! さっすがだよしぶりん!」
アーニャ「だけど、アー、相手がわかりませんよ?」
みりあ「ねぇねぇ、誰か仲の良い人っているのかな?」
美嘉「やっぱり部長だって★」
莉嘉「お姉ちゃんは黙ってて、カリスマJCのぉ、オ・ネ・ガ・イ☆」
美嘉「……」
アイドル達「……」
凛「そう考えると、大人組の人になるかな」
卯月「……あの、仲が良い大人の人で思いついたんですけど」
美波「ええっ!? 卯月ちゃん、誰か心当たりがあるの?」
未央「……やばい、多分、私もしまむーと同じ人が思い浮かんだかも」
凛「……有り得そうで困るね」
アイドル達「……」
智絵里「三年目って、危ないって言うよね……」
かな子「そんな時期だと……ケーキ美味しい~♪」
杏「どっちの緑が勝つかな? 杏、ちょっとワクワクしてきたよ」
きらり「コ~ラ杏ちゃん! そういう事言っちゃメッ、だゅ」
アイドル達「……」
李衣菜「ロックすぎてヤバいでしょ。いや、もうロックってレベルじゃないって!」
美嘉「えっ、何々? えっ、誰の事言ってるの?」
莉嘉「アタシはあの人の方が勝つと思うな! その方が刺激的じゃん☆」
みりあ「あのねあのね、みりあはちひろさんがお似合いだと思うな~♪」
美嘉「んっ? んっ? えっ、皆わかるの?」
アイドル達「……」
楓「こんにちは、何の話をしてるのかしら?」
蘭子「ぴっ!?」
アイドル達「……!?」
楓「あら? 皆静かになっちゃったけど……」
アイドル達「……」
楓「?」
楓「ええ、ちょっと大事な話があって」
アイドル達「……!?」
美嘉「へー、大事な話ってアイツに?」
楓「それと、ちひろさんにも。ふふっ、今から楽しみだわ♪」
アイドル達「……!」
美嘉「あっちのルームで二人で話してるよー★」
楓「ありがとう。それじゃあ、お邪魔しました」
美嘉「ハイホーイ★」
アイドル達「……」
美嘉「……ん? どうしたの、皆? 顔、チョー怖いんだケド★」
アイドル達「……」
武内P『いえ……しかし、仕事が』
ちひろ『もう、いつもそう言って!』
楓『私と仕事、どっちが大事なんですか?……ふふっ、一度言ってみたかったんです♪』
武内P『……』
未央「……意外と和やかだね」
卯月「……ちょっと安心しました」
凛「……喋らないで。よく聞こえないから」
楓「さっきは二人で、とても楽しそうでしたね」
武内P「あの、いえ、あれは……」
ちひろ「ええ、とっても楽しかったです♪」
楓「ひどい人……もう、私とは遊んでくれないんですか?」
武内P「……」
カタンッ
武内P・ちひろ・楓「?」
ちひろ「よく言うわ~いつも騙してばか~りで~♪」
楓「うふふっ……私が何にも知らない~とでも思っているのね~♪」
武内P「いえ……今日は本当に仕事が……!」
ちひろ・楓「開き直~るその態度~が~気に入らないのよ~♪」
武内P「……もう、勘弁してください」
ちひろ・楓「両手をついて、謝ったって~、許してあ・げ・ない♪」
おわり
武内P「犬猫診断、ですか」
武内P「しかし……何故、そんな事を?」
みく「もしもCP皆でネコチャンイベントをやる時に、知ってたら良いかなって」
武内P「なるほど……確かに、それはあるかもしれません」
みく「だから、Pチャンに協力して欲しいの!」
武内P「わかりました。お手伝いさせて頂きます」
凛「私? 私は、どう考えても犬タイプだと思うんだけど」
みく「Pチャンはどう思う?」
武内P「……少し、失礼します」
凛「? 何、アゴの下なんかを触って……」
武内P「……」
凛「……ゴロゴロゴロゴロ」
武内P「渋谷さんは、意外にも猫タイプだったようですね」
みく「ちょっと待って!? 何それ!?」
凛「ゴロゴロゴロゴロ」
のしっ…
みく「Pチャンの膝の上に乗って丸く……!?」
武内P「あの、協力とは、こういった形でよろしかったでしょうか?」
凛「ファー……ゴロゴロゴロゴロ」
みく「想像の遥か上だよ! こんな事になるなんて全く思ってなかったにゃ!」
凛「……スピー……スピー」
みく「……寝ちゃったにゃ」
武内P「このまま、ソファーで寝かせておきましょう」
みく「……」
武内P「次は、どなたになさいますか?」
アイドル達「……!」
アーニャ「私、ですか?」
みく「あーにゃんなら、きっと猫タイプだと思うにゃ!」
武内P「……では、失礼します」
アーニャ「……ふふっ! くすぐったい、です、うふふ!」
武内P「……では、少し背中を撫でさせていただきますね」
アーニャ「背中?」
武内P「……」
アーニャ「……ハッハッハッハッ」
みく「!?」
アーニャ「ハッハッハッハッ」
ころんっ
みく「お腹を見せて仰向けに寝転がった!?」
武内P「さすがにお腹を撫でるのはまずいので、新田さん、お願いします」
美波「はっ、はい!」
アーニャ「ハッハッハッハッ……クゥーン」
みく「何なの!? Pチャンのその技能は一体何なの!?」
アーニャ「……スピー……スピー」
美波「寝ちゃいました、ね」
武内P「ソファーに運んで、寝かせておきましょう」
みく「……」
武内P「次は、どなたになさいますか?」
アイドル達「……」
武内P「? まだ、お二方しか診断は終わっていませんが」
みく「で、でも……」
李衣菜「もしかして、みくちゃん……」
みく「な、何?」
李衣菜「自分が犬タイプかもしれない、ってビビってるんじゃない?」
みく「そ、そんな事ないにゃ!」
武内P「……」
凛・アーニャ「スピー……スピー……」
李衣菜「ふーん?」
みく「李衣菜ちゃんだって、ああなるのは怖いんでしょー!?」
李衣菜「わ、私はああはならないよ! 何せ、ロックな魂があるからね!」
みく「へー! じゃあ、実際にやってみればわかるにゃ!」
李衣菜「良いよ、やってやろうじゃん!」
武内P「では……次は多田さんで、よろしいですか?」
李衣菜「はい! プロデューサー、手加減なんかいりませんからね!」
李衣菜「クゥーン……キュウウーン……」
みく「いやー、見事なドッグな魂にゃ」
武内P「前川さん、お腹を撫でてあげてください」
みく「はいはい……ほーら李衣菜ちゃん、なでなでー」
李衣菜「クゥーン……スピー……スピー」
みく「寝るの早っ!?」
武内P「次は、どなたになさいますか?」
アイドル達「……」
みく「美波にゃん、いいの?」
美波「アーニャちゃんだって頑張ったんだもの」
アーニャ「スピー……スピー……」
美波「それに、リーダーでお姉さんの私がここで頑張らないと、ね♪」
武内P「では……次は新田さんで、よろしいですか?」
美波「はいっ!」
アイドル達「……」
美波「あっ……? やぁん? くすぐった……んっ?」
武内P「……では、背中を撫でさせて頂きます」
美波「んんっ? 背中をそんなにっ……? こんなの初めてっ?」
みく「ストップ! ストップにゃあああああ!」
美波「はぁ……? はぁ……? みくちゃん、どうしたの……?」
みく「それはこっちのセリフにゃ! す、スケベすぎるよ美波にゃん!?」
武内P「どうやら、新田さんは犬猫というより、ただのメスのようですね」
みく「担当アイドルに対して言うセリフじゃないにゃ!」
武内P「そうですね、この診断は年齢が若い程早く結果が出ます」
美波「でも……アレ以上続けたら、私……」
武内P「新田さんは、現状ならば診断結果に頼らず犬猫どちらのタイプも選べます」
美波「そう、なんですか?」
武内P「はい。なので、犬系、猫系を問わず、メスとして活躍出来るかと」
美波「――はいっ! 美波、いきますっ!」
武内P「良い、笑顔です」
みく「……」
アイドル達「……」
武内P「ご安心ください。高校卒業程度の資格がなければ、新田さんの様にはなりません」
みく「じゃ、じゃあ、美波にゃん以外は大丈夫なんだ」
美波「もう! まるで、私が大丈夫じゃなかったみたいじゃない!」
みく「あれで大丈夫だと思ってた事が驚きにゃ!」
武内P「……次は、どなたになさいますか?」
アイドル達「……」
アイドル達「スピー……スピー……」
みく「……」
武内P「さて、残るは前川さんだけですね」
みく「み、みくは診断されなくても大丈夫にゃ! 絶対ネコチャンだから!」
武内P「そう、でしょうか?」
みく「……」
武内P「診断してみた結果、意外な方が犬タイプ、猫タイプ逆のケースもありましたし」
みく「……!」
武内P「もしかしたら、前川さんも……」
みく「んっんー……あー……ごろごろごろごろ」
武内P「? 前川さん?」
みく「いやー、みくのネコチャンパワーが、喉の撫でられる前に溢れちゃったにゃ!」
武内P「……はぁ」
みく「これはもうネコチャンにゃ! 間違いないにゃ! にゃー!」
武内P「……」
みく「そうにゃ! みくは、きっとネコチャンタイプにゃ!」
武内P「……では、失礼します」
みく「ま、待って! 心の準備が!」
武内P「……」
みく「Pチャン、落ち着いて! 落ち着いて話し合うにゃ!」
武内P「……」
みく「だ、駄目……にゃ、にゃ……にゃあああああああ!?」
アイドル達「……スピー……スピー」
武内P「……」
ガチャッ
ちひろ「おはようございま……って、皆寝ちゃってるんですか?」
武内P「千川さん、おはようございます」
ちひろ「あの……一体、何が?」
武内P「いえ、犬猫診断を少々」
ちひろ「あぁ、なるほど」
アイドル達「……スピー……スピー」
武内P「予想通りの方も居ましたし、イメージとは真逆の方もいましたね」
ちひろ「実際にやってみるものですねー」
武内P「はい。今後の企画に活かせるかと」
ちひろ「ところでプロデューサーさん」
武内P「? はい、何でしょうか?」
ちひろ「私って、結構尽くすタイプなので犬タイプだと思うんですけど、どう思います?」
武内P「……」
ちひろ「もー! 返事に困らないでくださいよ!」
武内P「そう、ですね。私もそう思います」
ちひろ「あら」
武内P「……プロデューサーと言えども、サラリーマンですので」
ちひろ「……会社の犬、って事ですか?」
武内P「そう、なりますね」
ちひろ「もう! 私はそういう意味で言ったんじゃないですよ!」
武内P「? では、どういう意味でしょうか」
ちひろ「先の見えない道を歩くアイドルを導く、大型の無口で優しい盲導犬みたいだな、って♪」
おわり
プゥッ。
今後の活動に関して、私達は話し合っていた。
黒いソファーに、ガラス製のテーブルの上に載せられた資料。
正面に座る彼女は、真剣にそれを覗き込んでいた。
そして、ふと、会話が途切れた瞬間、先の音が聞こえたのだ。
私は、プロデューサーと言えどもアイドルに幻想は抱かない。
彼女達の存在は現実であり、当然、放屁もする。
そこに人間としての違いなどあるはずもなく、仕方の無い事なのだ。
プロデューサーとして、いや、一人の大人として今取るべき態度。
注意をする、というのも正しい選択だろうが、私はそれを選ばない。
何故ならば、相手はまだ年端もいかない少女であり、
私の様な男にそれを指摘されるのは非常に気恥ずかしいものであるだろうからだ。
故に、私がとるべき行動は一つ。
何もなかった事にする、これだ。
咳払い一つせず、さも聞こえなかったかのように自然に振る舞うのがベスト。
プッ、プゥブゥッ、ブリリッ、ブプッ。
私の予定は、儚くも崩れ去った。
響き渡る音と、異臭と共に。
私は、今どんな顔をしているのだろうか。
恐らくだが、全ての感情が抜け落ちた無表情でいると思われるが、
確認のしようは無いし、その必要はないだろう。
今、目を向けるべきは私の表情などではなく、目の前の少女の危機。
広がる染みは、未だ留まる事を知らない。
「大丈夫、ですか?」
微塵も大丈夫ではない事は百も承知だ。
彼女は突然脱糞して大丈夫でいられる様な異常な神経の持ち主ではないし、
申し訳ないが、私もその様な神経のアイドルを担当したいとは思っていない。
しかし、何か声をかけなければならないのなら、まずは安否確認から。
大事故が起こっているとしても、確認を怠るものではないのだ。
「……――何が?」
何が?
彼女は、そう、言ったのか?
まさか、現実を受け入れる事が出来ないでいるのか?
私達は、無表情で見つめ合った。
こういう時にする表情を私は知らない。
異臭が鼻にまとわりついてくる。
感覚器官の一部として、嗅覚は危険を教えるためにもあると何処かで聞いたことがあったが、
目の前の危険から逃れる事は出来ないし、ただ、止まないアラームに成り下がっていた。
「……」
自然と、右手が首筋にいった。
心を落ち着けるためのルーティーンという物が一時期話題になったが、
私のこれもそうなのだろうか、よく、わからないが。
落ち着いて、現状を把握し直そう。
目の前には、脱糞し、現実を受け入れられないアイドルが一人。
駄目だ、冷静になって考えなどしたら、その瞬間に心が折れてしまう。
今の私は、人間ではないと考えるべきだ。
ただ、与えられた問題に対処するだけの、無口な車輪、それが今の私だ。
車輪ならば、道中汚物の上を走ることもあるだろう。
行こう、蒼い風が駆け抜けるように。
空調の暖房の風向は、私に向かっていた。
私は、無言でその不愉快な臭いを運んでくる風を止めた。
私は立ち上がり、ゆっくりと彼女へ向かっていった。
その間にも彼女に特筆すべき反応は一切なく、ただ、机の上の一点を見続けていた。
視線の先には、今後予定されているシンデレラプロジェクトの企画書が並んでいる。
彼女が、どの点に注目しているのかわからない。
だが、彼女は今、必死で戦っているのだ。
アイドルとしての自分を必死に頭の中に思い描き、
脱糞してしまった情けない自分と必死に戦わせているのだ。
その戦いを応援するのが私のプロデューサーとしての役目であり、
邪魔をする事など出来はしない。
――パブリュッ。
……どうやら、まだ全てを出し尽くしてしまった訳ではなかったらしい。
だが、彼女の顔には微塵の動揺も見られないし、むしろ、堂々としているとさえ言える。
これも、ひとえに彼女がアイドルだからこそ成せる業。
ステージに立つ前の彼女もこんな顔をしていただろうか。
いや、今は考えるのは辞めておこう。辞めておくべきだ。
「足元、失礼します」
未だ微動だにしない彼女の足元に跪いた。
距離が近づいた事により、異臭はより強烈なものとなって私の鼻孔を刺激、いや、大打撃してくる。
この様な状況だからか、彼女の食生活に偏りがあるからか、それはわからない。
だが、私にとってそんなものはどちらでも良かった。
臭い。
とても、すごく、臭い。
「……」
鼻をつまんで臭いを遮ってしまえば楽になれるだろう。
だが、それによって彼女はとても傷ついてしまうだろうし、今後の関係にも大きな支障が出るだろう。
それは喜ばしい事では無いし、私の望む所でもなかった。
私はプロデューサーだ。
アイドルが諦めない以上、私がそれを見捨てる事はない。
ああ、だが――
――とても……臭い。
「靴を脱がせますね」
幸い、座っていたソファーが少し沈み込んでいたため、彼女の足元は無事に済んでいた。
座り心地がとても良い、この黒い皮のソファーを私はとても気に入っていたし、
これを使用したアイドル達も、初めて座った時に少しはしゃいでいたのを覚えている。
その思い出のあるソファーが物理的に汚されてしまった事に物悲しさを感じるが、
彼は、その身を呈して被害を最小限に留めてくれているのだ。
……長い間、お疲れ様でした。ゆっくり、休んでください。
「……」
靴を脱がせるという私の言葉への反応はなく、彼女は未だ己と戦っていた。
なので、私は彼女の右の足先を左手で優しく持ち上げ、
右手で、体が揺れない様、恭しく彼女の靴を脱がせた。
おかしなものだ。
シンデレラはガラスの靴を履かせて貰う物語だと言うのに、今、私がしているのはその真逆。
それだと言うのに、今、これは彼女がアイドルとして続けていくために必要な事なのだ。
アイドルに教えられる事も沢山ある。
だが、こんな教えられ方をするとは全く思っていなかった。
「……」
無事、両方の靴を脱がせるのに成功した。
今、彼女の靴は少し離れた位置に避難させており、安全は確保されている。
だが、問題はここからだ。
「では、靴下も脱がせますね」
これは、私にも正しい判断なのかはわからなかった。
靴下を脱がせるというのは、靴を脱がせるよりも遥かに難易度が高いからだ。
脱がせる事自体は難しくはないのだが、問題は体の揺れ。
もしも、彼女が靴下を脱がせる時に体を揺らして、ソファーに体を横たえでもしたら?
……そう、大惨事に陥ってしまう。
果たして、これが正しい選択なのだろうか?
「……」
自問自答する私の目に、彼女がコクリと頷いたのが見えた。
私に、貴女を信じろというのか?
脱糞をしてしまったアイドルの貴女を?
……答えは決まっている。
アイドルを信じるのが、プロデューサーだ。
「……」
今、私の目の前には滑らかな肌の、彼女の両の素足があった。
これもひとえに、彼女の普段のレッスンの成果。
鍛え抜かれたバランス感覚は、沈み込んだソファーに座りながら、
他人に靴下を脱がされるという非常に難易度の高い行動すら乗り越えていった。
その事を褒めたい衝動に駆られたが、今はまだ、戦いの最中。
決して、今は褒めるタイミングではない。
「……」
靴も、靴下も避難させた。
これ以上、余計な被害が増える事もないだろう。
さて……
……――ここから、どうしたものか?
私は、出来るだけの事はやったつもりだ。
これ以上は、本人が動くべきではないかと思うのだが。
しかし、彼女は動かない。
そして、異臭も止まらない。
「……」
「……」
二人の間に流れる沈黙。
少し前に、この沈黙を破って彼女が脱糞したのが、今は遠い過去に感じられた。
しかし、問題は何一つ解決していなく、問題どころか、便も山盛りだ。
何故それが私にわかったかと言えば、何の事はない、少々下痢気味だっただけの事。
「……」
「……」
無言で見つめ続ける私の視線を振り払うかの様に、彼女はフルフルと、首を横に振った。
一瞬その意味が理解出来なかったが……理解したくはなかった。
彼女と、短くない期間アイドルとプロデューサーとして付き合ってきて、わかってしまった。
彼女は、この先も私の助けを必要としているのだ。
頼られている、のだろうか。
使われている、のだろうか。
そのどちらでも、私は構わない。
ただ、本当に私がやらなければならないのですか?
自分で後処理をする事は、本当に出来ないのですか?
答えてください。
お願い、シンデレラ。
「……」
アイドルとは何だろう。
プロデューサーとは何なのだろう。
自分自身に問いかけてみるが、鼻につく異臭が考えを纏めさせてはくれない。
私は、上着を脱ぎ、ネクタイを外し、ワイシャツを脱ぎ、遠方へ避難させた。
これからする事を考えれば、この判断は当然のもの。
アイドルの前で私がこの様な姿を晒すなど思ってもみなかったが、
アイドルが私の前でこの様な姿を晒すなど思ってもみなかった。
私は、これから、アイドルの汚物を処理する。
自分に言い聞かせ、心を鎮める。
そうでなければ、心が沈まる。
――彼女は、今、泣いているのだ!
――それを笑顔にさせずして、何がプロデューサーだと言うのか!
……私の心は、泣きたい気持ちでいっぱいだった。
「……」
無言で彼女の前に立った。
変わらない表情、姿勢、そして、異臭。
この状況が夢であれば良かったのにと思うが、紛れもない現実だ。
私の右手には、パンツを両断するためのハサミが握られていた。
彼女も、まさかここまで大惨事になったパンツを洗って再使用するとは思えなかったし、
脱がせる時に私に汚物がかかるかも知れず、それは避けたかった。
「パンツは切ってしまおうと思っていますが、宜しいですか?」
「……」
彼女は、無言で頷いた。
返事くらいちゃんとしなさいと言えれば良いのだろうが、
私は、生憎とそういったコミュニケーションが苦手だった。
だから、彼女がパンツを切っても良いと、首肯だけでも反応を見せた事を喜んでおこうと思う。
私の左手には、タオルと、ビニール袋が握られていた。
タオルはハンドタオルで面積は非常に心許ないし、ビニール袋もそこまで大きいものではない。
だが、今は、この二つがとても頼もしかった。
偶然にも、いや、奇跡的にも、この事態に対処するだけの道具は揃っていたのだ。
アイドルの神というのは、非常に気まぐれで、残酷かもしれないが、
希望を残してくれていただけ感謝するべきなのかもしれない。
目の前にアイドルの神が居たら、私は全力で殴り飛ばしているだろうが。
「……」
「……」
汚物の処理を始める前に、彼女には言っておかなければならない。
「……人間、誰しも過ちを犯してしまうものです」
彼女の前に膝立ちになり、彼女が見つめる一点との視線を遮り、言った。
そこで、彼女が脱糞してから、初めて私達の目が合った。
「……?」
首をかしげる彼女に向かって、私は言葉を続ける。
「今回の事は、既に起こってしまった事です」
「……」
「ですが、今回の事を反省し、次につなげる事が出来る」
「……」
「次からは、気をつけましょう」
責めているように聞こえなかっただろうか。
私は、心の底から、次はこんな事の無い様にして欲しいと思っているだけなのだが。
「っ……!」
彼女の目から、大粒の涙がポ口リポ口リと零れ落ちた。
そして、彼女はあろうことか、私に抱きついてきた。
鼻に広がる、シャンプーの香り。
態勢が変わった事で広がる、強烈な異臭。
私は、抱きつかれた事に動揺しながらも、
二つの香りが織りなす絶望のハーモニーに歪む表情を見られなかったのに安堵していた。
「……」
そうだ、彼女はアイドルとは言えまだ年端もいかぬ少女なのだ。
それが他人の前で脱糞した時の気持ちは、私如きに推し量れるものではなかったのだ。
表面上の冷静な姿を見て自分一人で納得していたが、違った。
彼女は戦いながらも、不安に押しつぶされそうになっていたのだ。
「うっ……ぐすっ……!」
「……」
耳元から聞こえる彼女の嗚咽。
今の、抱きつかれている状況はアイドルとプロデューサーとしての、正しい距離感とは言えない。
しかし、状況が状況だ。
今は、彼女を突き放す場面では、無い。
「大丈夫です、私に任せてください」
「ひっく……うぅ……!」
優しく、小さな子供に言い聞かせるように、言った。
ハサミをソファーに置き、彼女の背中を安心させるように軽く、ポンポンと叩いた。
プッ、プッ。
その拍子に、放屁。
「うぅ~~っ! ひっ、ぐ、ううう!」
彼女は号泣した。
やはり、慣れない事はするものではなかった。
「……」
今、私が彼女にかけられる言葉は何一つ無い。
兎に角、今は一刻も早く汚物の処理を済ませてしまおう。
彼女に抱きつかれたまま、耳元で鳴り響く彼女の泣き声をBGMに、
私は彼女のスカートに手を回し、まくりあげた。
広がる、強烈な異臭。
しかし、私は負ける訳にはいかないのだ。
舌を噛み、漏れそうになったえずきをそのまま噛み殺した。
既に私の右手は、彼女の汚物によって汚れている。
これ以上自身の手が汚れる事に、何の躊躇いがあろうか。
脇に置いていたハサミを取り、彼女の肌を傷つけないよう、
パンツと肌の間に滑り込ませた。
ハサミが冷たかったからか、これからパンツを切られるからか彼女の体がビクリと震えた。
しかし、今の私はその程度では止まらない。
ここまで来たら、もう、止まれない。
ジョキリ。
彼女のパンツの側面がハサミによって両断された。
広がる、強烈な異臭。
目に飛び込んでくる、未消化のコーン。
「……」
SAY☆いっぱい輝く
輝く星になれ
運命のドア 開けよう
今 未来だけ見上げて
輝くのは星ではなく、コーン。
残酷な運命のドアを開け、私は天を仰いだ。
「……」
そっと 鏡を覗いたの
ちょっと おまじない 自分にエール
だって リハーサル ぎこちない私
鼓動だけかがドキュンドキュン(汗)
ファンファーレみたいに
鏡を覗いたら、私は今どんな顔をしているのだろう。
ちょっと、というか、とんでもない呪いに自分を応援したくなってくる。
鼓動だけでなく、脳が、ドキュンドキュンと警鐘を鳴らしている。
ファンファーレ? ファン、ファン、ファンファンファン、ファンファンのファン♪
慣れないこのピンヒール
10cmの背伸びを
誰か魔法で 変えてください
ガラスの靴に
こんな状況に慣れたくは無い。
10cm? 被害の範囲はそんなものではない。
シンデレラへの道とは、ここまで険しいものなのか。
「……」
SAY☆いっぱい輝く
輝くSUPER ST@Rに
小さな一歩だけど キミがいるから
星(せい)いっぱい輝く
輝く星になれるよ
運命のドア 開けよう
今 未来だけ見上げて
広がる星々をビニール袋に詰めていく。
小さいどころではない、進捗状況は良好だ。
透けたビニール袋からコーンが見えるが、気にするのはよそう。
目立つ箇所の汚れも拭いた、さあ、袋の口を閉じよう。
今、未来だけ見上げて。
全ての処理が終わった。
彼女は、今はシャワー室でシャワーを浴びているだろう。
履く物がないと汚れたスカートのまま移動せねばいけないと思っていたが、
彼女のカバンの中にレッスンの時に使用するジャージが入っていたのは僥倖だった。
私はやり遂げたのだ。
誰にも彼女が脱糞した事実を知られる事なく、送り出す事が出来た。
これは奇跡と言っても過言ではないだろう。
だが、問題はまだ残っている。
「……」
この、ソファーだ。
染みは誤魔化しようのない程広がっているし、何より、臭いがついてしまっていた。
私の鼻も大分麻痺しているとは思うのだが、この臭いだけは誤魔化しようがない。
どちらにせよ買い換えなければならないが――
コン、コン。
「っ……!?」
まさか、このタイミングで、来訪者が……!?
ガチャリ。
ゆっくりと、ドアが開かれていく。
彼女を送り出した事に安堵し、鍵をかけ忘れてしまっていた私の迂闊さを呪った。
覆水盆に返らずとは正にこの状況だ。
ドアが開かれ、私の目に映ったのは、この部屋の異臭に気づき歪んだ表情だった。
ここで、対応を間違ってはいけない。
ここで間違ってしまったら、今までの努力が全て水泡に帰す。
それだけは、彼女の名誉と、私の犠牲のために、あってはならない。
「……すみません、先程まで取り込んでいまして」
今、ここで私が脱糞して誤魔化すか?
いや、それは無理だ。
それでは、部屋に入った時に感じた異臭の説明にはならない。
どうすれば良い、何と言えば良い……!?
「……」
その時だった。
私の脳裏で、悪魔が囁いたのだ。
私の中にも、こんな悪辣な考えをする悪魔が潜んでいたとは、思いもしなかった。
今の私は、強烈な異臭によって、思考までも染まってしまったというのか。
しかし、この手は既に汚れている。
ならば、まみれようではないか。
「せん――……いえ、すみません。体調が、悪かった様なので……」
悪魔の思考に。
私達は、アイドルのために存在している。
故に、共にまみれて頂きます。
明言はしなかったので、追求される事は無いでしょう、ご安心ください。
しかし……大変、申し訳ありません。
「……ははは」
思わず、乾いた笑いが零れた。
部屋には、未だ異臭が立ち込めていた。
おわり
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