うさぎ「あの丘のてっぺんまでかけっこしよう」 かめ「いいよ」
- 2017年11月24日 08:10
- SS、神話・民話・不思議な話
- 11 コメント
- Tweet
うさ子「もし私が勝ったら、わ、私と、その、今度ニンジン畑にデートに……///」ゴニョゴニョ
かめ「……え?」
うさ子「う、ううん、な、なんでもない///
いくわよ、よーい、どん!」
かめ「わっ、ずるいぞ急に!」
うさ子「うふふ///」
うさぎのうさ子は、ぴょんぴょんぴょーんと勢いよく走っていきました。
後ろを振り返ると、かめさんがもう小さく見えます
うさ子は、少し顔を赤らめながら誇らしげな顔をしました
「そう、私は足がはやいんだから」
この恋だって、全速力でぶっちぎってやるわ
「それって、何か意味あるの?」
うさ子は走りながら、以前言われた嫌な言葉を思い出してしまいました
―――
うさ子「やった、またかけっこ私の勝ちね」
うさお(……くそっ、また負けた)
まわりのうさぎと比べても、兄うさおと比べても、
うさ子の早さは頭ひとつとびぬけていました
うさ子「ねね、お兄ちゃん、もう一回競争しよう!」
うさお「も、もういいよ、俺はこれから友達と遊びに行くから」
うさ子「あ……そ、そう……」ズキッ
"友達"
その言葉を耳にすると、うさ子はなぜだか心が痛みました
わいわいとおしゃべりをしていました
楽しそうだなー、と思ってうさ子が近づくと
なぜだか急に静かになってしまいました
うさ子「ねね、みんな、何してるのー?」
うさな「い、いや、別に……」
うさ子「?……そ、そう?」
うさな「……うん」
うさ子「……」
うさみ「……」
うさな「……」
うさね「……」
ひゅうーと、きたかぜさんがとおりぬけました
さっきまでのたのしそうな雰囲気がうそのようです
一同「……」
だれもへんじをしません
そう、うさ子はじまんの足の速さをかじょうにこじするわるいくせがあり、
それがまわりとのわだかまりのげんいんの一つになっているのです
うさ子ちゃんは、うさなちゃんをえんりょなしにぶっちぎり、
「私を抜くまで終わらないよー」と
りふじんなルールを強いた上
体力が尽きて周回おくれになったうさなちゃんを
後ろから煽り続け、延々と走り続けさせた上、
それでも必死に走るうさなちゃんの様子を
わざとこっけいでぶざまにきこえるように
おもしろおかしくばかにしながら、まわり言いふらしてまわりました。
わらっていたのは、はなしているうさ子ちゃんだけです
うさ子「ほ、ほら、うさなちゃん、こないだは楽しかったよね」
うさな「っ!」ビクッ
とっさに見せたその時のうさなちゃんの顔は
うさ子ちゃんのきおくにずっとのこりつづけるでしょう
すこしはうさ子ちゃんにもあったので、このわだいはもうやめることにしました
一同「……」
しばらくちんもくがつづきます
うさ子「そ、そういえば今日は寒いわよねー」ニコニコ
うさ子「あ、雨でも降ったらたいへんよねー」ニコニコ
一同「……」
まわりのごきげんをとるようにうさ子は
あたりさわりのないはなしをふりますが、
いっこうにへんじがかえってきません
うさ子「うちの兄って足が遅くってさー」
うさみ「……」イライラ
うさみちゃんは、はやくどっかいけよ、てきな"あつ"を
ぜんめんにおしだしています
だんだん、うさ子のかおから、えがおが消えていきました
なぜか"いかり"のひょうじょうでした
"なんでこんなれんちゅうのごきげんをとらないといけないのか"
うさ子のあたまはそのことでいっぱいになりました
うさ子「……なんで無視すんの?」イライラ
一同「……」
うさ子「きいてんのか、おら鈍足うさなっ!」
うさな「っ!」ビクッ
うさみ「ちょっとやめなよ」
うさ子「っ!」
うさ子は、反応してもらえていっしゅん
よろんでしまったじぶんにすこしかなしみをおぼえました
うさ子「……っ!」
ずぼしをつかれてしまいました
そう、うさ子は、よわいひとにしかつよくでれないのです
うさみ「あんた、はやくどっかいってよ」
うさ子「で、いや、ふっ」アセアセ
さっきまでのいかりはどこへやら
とっさになにもいいかえせず、てんぱるだけでした
うさ子ちゃんは、きがつよいうさみちゃんがちょっとにがてでした
うさみ「え、何?」
うさ子「足が遅いくせに、足が遅いくせに、あんたらなんか、足が遅いくせに!」
うさみ「は?何それ、いまかんけいあるの?」
うさ子「足が遅いくせに!」
うさ子はもうそれしかいえませんでした
うさ子はくずなうえに、あたまのかいてんもあまりよくないのです
こころのささえはあしのはやさだけでした
うさみ「足の速い?それが、何?」
うさね「それって、何かい意味あるの?」
そのささえが、ちょうどいまくずれていくさいちゅうです
うさみ「は?何あんたチーターより早く走れるわけ?」
うさ子「い、いや……」
うさね「同種より早いって程度で何か意味あるの?」
うさみ「生活の上でそんなに必要?ねえ?」
うさ子「……」グスッ
うさ子は何もいいかえせません
あふれでるなみだがおさえきれず、ついみんなに背を向けてしまった、そのときです
――どかっ
あの内気なうさなちゃんから、むごんのけりが、せなかに入りました
うさみ「わー、すごい逃げ足ね、はやーい♪」
うさね「たしかに必要だったわねー♪」
――くすくす、げらげら
うさ子のうしろから、わらいごえがきこえてきます
うさぎはみみがおおきいのです、はしりながらでも、
いろんなおとがききとれます
――であいはとつぜんやってきました。
うさ子は、いかりとかなしみでいっぱいになりながら
泣きながらいえにむかいました。
そのとちゅう、池のまわりでのろのろと歩くカメをみつけました
そのゆっくりと歩くすがたが、きげんのわるいうさ子のかんにさわりました
うさ子「くそ、目障りだ、この鈍足カメが!」
なんと、うさ子はカメを後ろから、思い切り池へ蹴り飛ばしました
これがうさ子とカメの初対面でした。
うさ子は、池へ落ちていくカメをほうちし、
そのままいえにかえりました
うさ子「……」グスッ
うさお「ど、どうしたうさ子、もしかして泣いて……」
うさ子「うっせー、鈍足クソ兄死ね、話しかけんな!」
うさ子は、せっかくしんぱいしてくれた兄にまで、
つめたいことばを、はきかけてしまいます
兄うさおは、いつものことなのでするーしてくれますが、
ふつうほかのひとはそうはいきません
それをかんがえると、あのカメにしたことはりふじんのきわみでした
うさ子もじつはそれをわかっています。
カメにやつあたりしましたが、まったくすっきりしませんでした
それどころか、カメにたいして"ざいあくかん"が
めばえてしまい、じぶんをせめてしまいました
そしてその"ざいあくかん"が
うさみたちとのかんけいも、ほんとうはじぶんがわるかったのだと
きづくきっかけとなってしまいました
うさ子はどんどんじぶんがきらいになっていきます
"カメがじぶんをくるしめている"というぶぶんだけ
じぶんのなかでおおきくなっていきました
うさ子「あのクソカメのせいで私は……」ブツブツ
りふじんなくずがなんかつぶやいています
そして、まったくしらないカメのそんざいが
どんどんじぶんのなかでおおきくなっていくのをじかくするのは
もうすこしあとのはなしです
どうやら、うさ子はなきつかれて、ねむってしまったようです
兄はそんな妹をきにかけてくれていました
うさお「うさ子、きょうはかけっこできょうそうしようか。」
兄うさおは、うさ子がおちこんでいるのをさっして、げんきづけるために
うさ子のだいすきなかけっこにさそいました
うさ子「は?」
うさお「よーし、きょうはまけないぞー!」
わざとらしくげんきよくはりきる兄をみて、
うさ子はむしずがはしりました
うさ子「勝手に走ってれば?私はひとりで出かけてくる」
兄のあたたかいきもちは、妹にはまったくとどきませんでした
うさ子「速く走れたからって、何になるのよ」ムッ
みょうなすてぜりふをのこして、うさこはひとりででかけていきました
そんなことをじぶんでいってしまったことに、じぶんでおどろきました
うさ子は足がはやいことだけが誇りでした
しかし、そんなことをじぶんで言ってしまったことで
じぶんのそんざいかちがどんどんうすれていくきがしました
わたしには、なにがあるのだろうか
きえいりそうなきもちで歩いていると、なんと
きのうのカメを見つけました
しらずしらずのうちに、きのうの池にきてしまっていたのです
わいわいがやがや、とてもたのしそうでした
会いたくないな
うさ子はそうおもってまわりみちしようとしましたが、
そのはなしているないようをきいて、びっくりしました
「ぼくはきのう、ここでそらをとんだんだー、ほんとだよー」
うさぎはみみがおおきいので、とおくからでもこえがききとれるのです
「そんなわけないよー」
カエルさんや小鳥さん、ネコさんいろいろなどうぶつがあつまって
カメさんのはなしをきいてますが、みんなしんじていません
なんということでしょう
カメは、じぶんが蹴飛ばされたとこに気が付いていなかったようです
いきなり走ってきて、背後からけとばされたのでとうぜんといえばとうぜんかもしれません
きゅうに体がちゅうにういたとしかかんじていなかったようです
カメはこうらがかたいので、いたみはかんじなかったのでしょうか
まわりの仲間がしんじていないことなど、まったくきにせずに
カメはにこにこ笑いながらそんなはなしをしています
まわりのなかまも、それがほんとうかどうかは、そこまできにしていませんでした
どうやら、そんなカメさんの"おんわ"なひとがらが、
なかまをよせつけているようでした
うさ子はにんきものがだいきらいです
あんなにたくさんのなかまにかこまれたことなど、うさ子はいちどもありません
きがついたら、うさ子はふたたび背後からカメを蹴り飛ばしていました
こんどはもっともっとたかくまでうちあがるよう、ぜんりょくでけりとばしました
このくそカメ、しんでまえ!
ただ、本当にしなれてはあとあじがわるいので、ちゃんといけのなかに入るよう
こんとろーるしました
もし、はずしたら、そんときはそんときで、しったこっちゃありません
びっくりした目、つめたい目、敵視する目
まわりのなかまたちの目が、いっせいにうさ子にあつまります
こんなときこそ、じまんのあしのでばんだ
どうせ私の足なんか、このくらいしかつかいみちがないんだ
さあ、げひんな捨てぜりふでも吐いて、にげだそうとしたそのときです
カメはたのしそうにわらいだしました
「ぷっ」「ふふっ」「わはは」
そのカメのようすをみて、みんなでおおわらいしました
「なーんだ、そこのうさぎさんにとばしてもらってただけかー」
さっきまでの"てきい"はどこへやら、きゅうにうさ子をみる目が
あたたかいものになりました
小鳥「バカねー、あんたなんかおもすぎてむりよー」
すっぽん「なんですってー」
イモリ「ねね、うさぎさん、わたしもとんでみたいな」
――わいわいがやがや
あたりは、たのしいふんいきにつつまれました
そして、そのわだいのちゅうしんは、もちろんうさ子でした
うさ子「あ、え、その……」オドオド
こんなのうさ子にははじめてのけいけんでしたので、とまどってしまいました
それとどうじに、うさ子はとてもふしぎなかんじょうが
こころにうかんでくるのをかんじました
はじめてのけいけんなので、
このかんじょうをなんといってよいかわかりません
そんな声にうさ子はとまどってしまいました
なんていってよいか
「そうだったかな、わっはっは」
うさ子が答えるまもなく、すかさずカメはそう言ってわらいました
いったいカメは何をかんがえているのか
なにもかんがえていないのか
ふしぎにおもってカメの方を見てみると、"まんめんのえみ"のカメとめがあってしまいました
ついかおがあかくなり、とっさにうさ子は目をそらしてしまいました
なんだ、あの目は
私はいままで、あんなにあたたかいえがおを見たことがない
にもかかわらず、兄にもはなしたことのないこころのうちを
うちあけたくなりました
「どうかしたかい、うさぎさん?」
カメさんがまんめんのえみではなしかけてきます
なぜか、こころがすけてみられているきがしました
そんなはずないのに
「な、なん……///」
"なんでもない"そんなひとことがうまくいえませんでした
なんだかはずかしくなってしまったのです
そんなすがたをまわりにみられたくありませんでした
とつぜんカメをもちあげ、さかさまにひっくりかえしました
「な、なにをするんだ、うさぎさ……」
――しゅぴー
さかさになったカメさんを、"かーりんぐ"のようりょうで
池にむけて"いんさいどきっく"でけりいれました
――ぼっちゃーん
池とのあいだにはしょうがいぶつはなく、"すとれーと"に
"いん"しました
わけのわからないことをさけびながら、うさ子は
ぜんそくりょくで、そのばをあとにしました
まわりは、なにがおこったのかわからず
ただあぜんとしていました
カメさんがわらうと、みんなもわらいだしました
へんなことをされても、わるくちひとついいません
なぜカメさんのまわりに、こんなになかまがあつまるのか
そのえがおが、ものがたっていました
ねこ「それにしても、あのうさきさん……」
小鳥「うん、とっても足がはやかったねー」
すっぽん「きっくりょくもすごかったわよねー」
うさ子がいなくなったあとは、そんなはなしがちゅうしんでした
"なぜ、私があんなに好かれるのか"
ずっとそのことをかんがえていました
うさ子は、"いじわる"しかしていません
そのげんいんは、なんとなくわかっていました
うさ子のしたことを、あのカメがすべてわらいにかえてしまうのです
さっきカメさんにかんじた、あたたかいきもちのことなどすっかりわすれ、
うさ子は"しっと"がおさえられませんでした
きっと、あのカメには、とくべつな「さいのう」があるにちがいない
ふざけんな、"私にはなにもないのに"!
うさ子はこころのなかで、わけのわからない"いかり"を、カメさんにぶつけはじめました
もうあのカメにはぜったいに会わない
そうきめて、うさ子はいえをでました
「よし、きょうはきのむくままに、てきとーにさんぽしてみよう!」
どうせともだちなんて、いないんだ
ひとりをまんきつしよう、すきなところにいこう!
ただふらふらーと、のんびりと、うさ子はあるきだしました
そのはずだったのに、、、
うさ子は、きがついたら、きのうの池についていました
どうしたんだい、そんなにいきをきらせて」
さいしょにうさ子にきがついたのは小鳥さんでした
おかしいな、のんびりあるいていたはずなのに
うさ子は、小鳥さんに言われてはじめて、
じぶんがかけあしでここへむかっていたことにきがつきました
うさ子は、わけがわかりませんでした
うさ子はなぜか、しぜんとカメさんのゆくえをさがしていました
「わっはっは」
カメさんのわらいごえがきこえたので、こえのするほうをみてみると
なんと、きのううさ子がやったように、カメさんがさかさまにひっくりかえされていました
「ようし、いくよー」
ねこさんが、きのうのうさ子のようにカメさんに"いんさいどきっく"をかましました
――しゅぴー
――ぼっちゃーん
「わっはっは」「あっはっは」
わらいごえがひろがります
けられたかめさんもわらっています
どうやら、きのううさ子がはずかしさあまってやったこういが
たのしいあそびとしてはやっているようです
"きがくるってる"
うさ子はそうおもいました
みんながうさ子に気が付きました
「ねえうさぎさん、きのうの"きっくりょく"すごかったね」
「だれがやっても、あんなにいきおいよくとばなかったんだー」
"だれがやっても?"なんだそれ
あんなことをなんかいもやったの?
"あんたら、きちがいよ"
いつもならそんなつめたいことばをへいきではいていたうさ子でしたが、
なんだかじぶんがほめられているようで、うれしかったので
くちにはだしませんでした
「ねー、もういっかいやってみせてよ」
ねこさんがうさ子にそう言うと、
うさ子は少してれながらうなずきました
――ぼっちゃーん
カメさんは、ねこさんがやったよりも、
ずうっといきおいよく池へすべっていきました
「おおぉぉー!」
ばが、いっきにもりあがりました
「あんこーる、あんこーる!」
そんなこえがあがると、
うさ子もだんだんたのしいきもちになってきました
カメさんよりずうっとおもそうな、スッポンが、すべりたがりました
ええぇぇぇ、こんなんやりたいの?
すべりたいの?ええぇー!?
"のり"とはおそろしいものだとかんじました
そして、この"のり"というものをじぶんがあじわったのも
はじめてのけいけんだと、うさ子ははじめてきがつきました
いっせいにうさ子にあつまりました
「すっぽんは重いから、池まではむずかしいよー」
「がんばれうさぎさーん」
そんなこえがかかると、うさ子がみんなに"ぴーすさいん"をみせました
「こんなの、らくしょーよ!」
じつはこれが、うさ子がここのなかまにむけてまともにはなした
はじめてのことばでした
――どっちゃーん
「わああぁ、すごぉい」
"はくしゅ"と"かんせい"が入りまじりおおもりあがりです
「えへへ///」
うさ子は、えがおでみんなにてをふります
それをみて、またみんなでおおもりあがり
どうやらここのなかまは、
なんでもたのしいあそびにかえてしまうようでした
これもきっと「さいのう」なのかな?
そうおもうと、ほんのすこし、かなしくなりました
そのえがおがまぶしすぎて、おもわずめをそらしてしまいました
"私にはとても、こんな「さいのう」はない"
みんなをたのしくさせるような、えがおでひとをあつめるような
そんな"さいのう"は
私は、にくまれぐちしか、たたけない
たのしいことなんか、しゃべれない
こうげきすることでしか、ひととかかわれない
そんなうさ子の"ゆううつ"が、かめさんの"ことば"と"えがお"に
いっしゅんで、かきけされました
「はぁ?え、は?」
うさ子はいみが分かりませんでした
たのしい?私が?
なにをしたの、私が?
ぽかんとしたうさ子に、なかまたちから、こえがかかります
「そうだよー、こんなにたのしいあそび、どうやってかんがえたのー?」
みんな、こぼれんばかりのえがおです
ちがうでしょ
私がたのしいんじゃなくて、みんなとか、かめさんが
えがおで、たのしいふんいきをつくっているからよ
「ち、ちがうわよ、私がたのしいんじゃなくて、
みんなが"えがお"だから、それでたのしいふんいきになってるだけで……」
私がたのしいわけないじゃない
"にこにこえがお"でたのしいふんいきなんて、つくれたためしがない
「そういううさぎさんも、わらっているじゃないか、わっはっは」
「え?」
うさ子はびっくりしました
かめさんにいわれてはじめて、じぶんが"えがお"でいることにきがつきました
「う、うん///」
うさ子は、"えがお"のまま、こえをかけてくれたねこさんのところへいきました
なんていったらいいんだろう
じぶんが、えがおでいることにきがついてから、"えがお"がとまらない
こんなにこころからわらったのは、いつぶりだろうか
いや、そもそも、こんなにわらったことがあっただろうか
うさ子はたのしくて、たのしくて、しかたがありませんでした
たのしくて、たのしくて、たのしくて、
たのしくて、たのしくて、たのしくて、
いくつならべても、たりないくらいこころから
"たのしい"があふれだしました
えがおが、ずっとおさまりませんでした
ついいわれたそんなことばに、むねがいたくなりました
「そ、そうかな、でも、あしなんかはやくたって、いみないのよ」
「そんなことないさ、わっはっはー」
かめさんが、すかさずこういいました
「うさぎさんのあしのはやさは、さいこうの"さいのう"だよ
もらった"さいのう"にはかならず"いみ"があるものさ」
そのときの、うさ子にはかめさんのことばがふにおちませんでした
あしのはやさを"さいのう"というならば、私はかめさんのような"さいのう"がほしい
みんなとなかよくできるようなさいのうが
みんなのかげにいた、いたちさんから、きゅうにこえがかかりました
「"あしのはやさ"ならここじゃぼくがいちばんさ、うさぎさんにはまけないさ」
「そうそう、いたちくんも、りっぱな"さいのう"だな、わっはっは」
うさ子は、そのはなしには、あまりきょうみがありませんでした
どっちがはやくたっていいよ、だって、あしなんかはやくても……
そんなうさ子のきもちとはうらはらに、こんなていあんがあがりました
「じゃあさー、いたちくんとうさぎさん、どっちがはやいか、きょうそうしてみようよ」
「いいねー、たのしそう!」
まわりがきゅうにもりあがります
いたちさんもやるきです
そんなうさ子のめのまえを、いたちくんは、とととーっとはしってみせます
「どうだい、はやいだろう?」
そのはしりをみて、うさ子はいっしゅんできょうみをひかれました
なにあのはしりかた、ちょっとかわいい
じつはうさ子は、いままでうさぎとしか、きょうそうしたことがなかったのです
この子ときょうそうしたらたのしそうだな
どんなしょうぶになるんだろう
「いいわ、きょうそうしましょう」
「やったー」
いたちくんも、おおよろこびでした
うさ子は、またもやふしぎなかんかくにとらわれました
いままで、私ときょうそうをすることを、
こんなにこころからよろこんでくれたなかまがいたかしら
みんなでもりあがりながら、わいわいときょうそうのじゅんびをしました
じゅんびといっても、"すたーと"と"ごーる"のばしょを
きめるだけですが
うさ子は、これをいつも自分だけでやっていました
はい、こっからここまでねー、と言ってあいてをしたがわせる
あいても、しぶしぶうなずき、すたーと。だいたいこうでした
そんなきょうそうよりも、こういうきょうそうのほうが
たのしいにきまっています
でも、うさ子には、それができませんでした
なぜなら、うさ子とのきょうそうをそんなにたのしみにしてくれるなかまも、
わいわいともりあげてくれるなかまも、いなかったのです
じゅんびのさいちゅう、ふといたちくんと、めがあいました
「ん?どうした、ぼくはぜったいまけないぜ!」
そんなこえがうれしくてうれしくて、
うさ子は、しょうぶのまえから、めがまっかになりました
いたちくんと、うさ子はいっせいにはしりはじめます
"すたーとだっしゅ"はいたちくんのゆうせいでした
とととーっとこまかくすばやいはしりでかけだしました
ぴょーん、ぴょーん
うさ子も、ほんきのはしりをみせます
いたちくんがとととーっとこまかいはしりですすんだところを
ぴょーんと、うさ子はひとあしでおいぬいてしまいます
そこをいたちくんがととーっとおいかけ、
ぴょーんと、うさ子がおいぬく
そんなしょうぶでしたが、だんだんと、うさ子のひとあしに
いたちくんがおいつかなくなってきました
「いたちくん、がんばれー」
まわりからは、"せいえん"と"かんせい"でおおもりあがりです
いたちくんは、だんだんとうさ子にはなされていきます
「く、くそっ」
いたち君は、はしりながら、
どうやってうさ子においつこうか、ひっしにかんがえをめぐらせました
いっぽううさ子は、まったくべつのことをかんがえていました
"たのしい、たのしい"
"きょうそうって、こんなにたのしかったかな"
はしりかたがちがうから?おうえんしてくれるなかまがいるから?
りゆうはわかりませんでしたが、うさ子はそれだけでこころがいっぱいになりました
うん、私がんばる
うさ子はそんなこえをうけて、ぐんぐんすぴーどをあげていき
いたちくんに、"たいさ"をつけてごーるしました
「やったー」
「く、くそ、まけたー」
うさ子のしょうりをみて、みんなおおもりあがりです
「うさぎさん、はやーい」
「いたちくんもがんばったねー」
まわりが、いろいろこえをかけてくれます
うさ子はうれしくて、たのしくて、しかたがありませんでした
きっとこれは、しょうぶにかったからだけではありません
いたちくんが、うさ子にこえをかけます
「ううん、いたちくんもはやかったわ
いいしょうぶだったわ」
うさ子は、じぶんのくちからでたことばに
じぶんでみみをうたがいました
うさ子はこれまで、きょうそうでまかしたあいてに
こんなこえをかけたことがあっただろうか
"まかしたあいては、とことんけなす"
これがうさ子がふだんおこなっていったむいしきのこうどうでした
むいしきだから、たちがわるかったのです
うさ子は、じぶんのちからをこじするためではなく、
じゅんすいにきょうそうをたのしめたのです
「ふふっ」
うさ子といたちくんは、あついあくしゅをかわしました
きょうはじめてあったとはおもえません
"このなかまたちと、ずっといっしょにいたい"
そうおもえばおもうほど、うさ子はふあんがでしかたがありませんでした
私なんかが
いっしょにいさせてくれるだろうか
なかまにしてくれるだろうか
きょうそうであいてをぶっちぎってしまうと、つぎからはみんな
しょうぶをしぶるようになります
きょうそうがたのしければたのしいほど
"またきょうそうしてくれるだろうか"
そんなふあんがおおきくなります
「ね、ねえみんな、よかったら、その、あの///」ボソボソ
おおもりあがりなので、うさ子のちいさいこえは
みんなにはきこえませんでした
"よかったらまたきょうそうして"
"私をなかまにいれて"
"ぷらいど"が、ひといちばい、たかいうさ子が
そんな"すとれーと"にこういをつたえられるはずがありません
いまこえをかけようとしただけで、いままでのうさ子からしたら
すごいことです
かめさんが、きゅうにわけのわからないことばをいい、
みんながきゅうにあぜんとしました
「……?どうしたの、かめさん」
「かめさん、いみわかんなーい」
まわりからそんなこえがあがり、ちゅうもくがあつまります
うさ子もいみがわかりませんでした
「いま、うさぎさんにいま"こくはく"されてね、はっはっは」
かめさんは、うさ子に"まんめんのえみ"をむけました
はあぁぁぁ!?
こ、ここ、こくはく?
わ、私が!?
うさ子は、かおがまっかになりました
もちろん、"こくはく"なんてしていません
「え、ちょ、まっ///」
うさ子は、"ぱにっく"のあまり、こえがうまくだせません
「いやー、かおをあかくしてなにかいってるから、ぼくに"こくはく"を
するのかとおもってね、わっはっは」
それは、かめさんの"ぎゃぐ"でした
「ふざけるなー」「そんなわけないだろー」
そんなこえがとびかい、あたりはわらいでつつまれました
かめさんのこういう"せんす"はどくとくで、
このみのわかれるところです
さいだいのちゃんすでした
「つ、"つきあうのはむり"だけど、"みんな"との"あそびなかま"なら
なってあげてもいいわよ///」
うさ子にとってはこれがせいいっぱい"すとれーと"なひょうげんでした
ちょうどうさ子にちゅうもくがあつまっていたので、こんどはこえがとどきました
「えー、うさぎさん、もうなかまでしょ」
「あたりまえじゃん、いいよー」
そんなこえがかけられ、うさ子はうれしさのあまり、
なきだしてしまいました
うさ子がだれかに"こうい"をつたえたのは、
かぞくいがいでははじめてです
「わっはっは、ぼくと"つきあう"のがそんなにいやだったか」
そんな"じょうだん"がとびかいます
みんなでおおわらいしました
うさ子は、ないているんだか、わらっているんだか
よくわからなくなり、かおがぐちゃぐちゃになってしまいました
かめさんがまた、"まんめんのえみ"をこちらへむけてきます
うさ子は、いまのかおをかめさんにみられるのがはずかしくなり
かおをかくしてしまいました
かめさんには、かんがえが、みすかされているきがする
こころがみられているきがする
もちろん、そんなはずないのだけれど
どうして、私が"ほんとうにほしいことば"を
すっとだしてくれるんだろう
かめさんが、ああいってくれなかったら、
私にはとても"こういをつたえる"なんてむりだった
いや、そもそも、かめさんがいなかったら、
みんなとであえなかった
きょうのような"さいこうのいちにち"に
であえることはなかった
ちらっと、かめさんのかおをみると、すぐにえがおを
かえしてくれました
うさ子はすぐにはずかしくなり、かおをかくします
いま、こころにわいた"かんじょう"をなんとよぶのか
うさ子はしっていましたが、すぐにこころのなかで"ひてい"しました
"うさぎさんちーむ"と"いたちさんちーむ"でさ」
「むこうぎしに、とってもあしのはやい、きつねがいるんだって、
うさぎさん、こんどいっしょにしょうぶしにいこうよ」
みんなから、そんなていあんもあがりました
うさ子は、びっくりとわくわくがとまりませんでした
きょうそうでだれかをまかせたら、
あいてはしょうぶをしぶるものかとおもっていました
そんなたのしみかたが、あったのか
"ことば"をおもいだいました
「うさぎさんのあしのはやさは、さいこうの"さいのう"だよ
もらった"さいのう"にはかならず"いみ"があるものさ」
そうか、わたしの"さいのう"にはそんな"いみ"があったのか
あさごはんをいそいでたべると、
かめさんたちのもとへ、かけあしでむかいました、
きのうをさかいに、まいにち、
つぎのひがくるのが、たのしみでたのしみで
しかたありませんでした
そしてすうじつがたちました
かめさんたちのところへむかうとちゅう、
うさみちゃんたちにあいました
「あら、あいかわらず、"あしがおはやい"こと♪」
「おほほほほ♪」
みんなでいやみをいってきます
いぜんのうさ子なら、こんなのたえられませんでした
ですが、いまはへっちゃらです
「そうよ、私はあしがはやいの、すごいでしょ!」
いそいでかめさんたちのところへむかいました
うさみたちは、ぽかんとしたかおで、うさ子のうしろすがたをながめていました
私のあしのはやさは、りっぱな"さいのう"よ
だって、あんなすてきななかまとなかよくなれたんだもの
うさ子は、じぶんにしかない
たからものをみつけていました
うさ子は、かめさんの"さいのう"にしっとすることはもうありません
「おはよう、うさ子ちゃん、きょうはなにをしようか」
うさ子がかめさんたちのところへいくと、
すぐにみんながこえをかけてくれました
「おはよう、小鳥さん」「おはよう、ねこさん」
うさ子は、たいせつななかまの、ひとりひとりに
あいさつをしていきます
「お、おはよう、かめさん///」ボソボソ
「……ん?」
ただ、かめさんにこえをかけるときだけは
こごえになってしまいます
かめさんが、おきまりの"じょーく"をとばします
うさ子は、かめさんにはこごえではなしかけるため、
かめさんにもよくきこえません
なのでさいきんは、あいさつにそうかえすのが、
ていばんになりつつあります
ただ、やりすぎたせいで、まわりにはもうあんまりうけません
「そ、そんなこと、いってないってば///」
うさ子は、かおをあからめて"ひてい"します
じつはまわりは、
"うさ子はかめさんをすきなんじゃないか"派と
"おとこなれしてないので、はんのうがうぶなだけ"派に
わかれてこっそり"とうろん"してたのしんでいます
"すきなんじゃ派"のねこさんがさぐりをいれてきました
"だまってみまもる"のが"あんもくのりょうかい"だったようで、
ねこさんは、すっぽんに目でたしなめられました
「え、そ、そんなのないわよー///」
うさ子はてれながらそうこたえます
とのとき、ちらっとかめさんのことをみてしまいました
「……ん?」
ついかめさんと目があい、かおをあからめてしまいました
"好きなんじゃ"派のなかまたちが
かちほこったかおをしました
うさ子はなんとなくそれを"さっち"し、
"ふかく"という"くやしはずかし"なひょうじょうをしました
うさ子もだいぶ"なかまのきもち"がわかるようになってきました
これはおおきなせいちょうです
うさ子はつづけます
「あ、"あしがはやい"のが"たいぷ"ね」
まわりはすこしおどろいたひょうじょうをみせます
「すくなくとも、私よりあしがはやくなくっちゃあ"つきあえ"ないわ」
うさ子はそういうとどうじに、"じこけんお"におちいりました
そう、ほんらい"ぷらいど"がたかく、すなおにきもちがつたえられないのです
うさ子は、あえてかめさんと"まぎゃくのたいぷ"を"りそう"として
いってしまったのです
でも、ねこさんは、そんなうさ子のきもちまでみすかしたように
にやにやわらっています
ねこさんは、にやにやしながらはなしだしました
「もし、かめさんときょうそうして、まけたら"つきあう"ことができるの?」
「は、はぁ!?///」
うさ子のかおが、またいっしゅんでまっかになりました
「な、なんでかめさんなのよ、このなかでも"だんとつにおそい"じゃない」
「だってさ、かめさんいがいのおとこは、みんなうさ子にまけちゃったでしょ
あときょうそうしてないの、かめさんだけじゃない」
「あとうさ子に"かてるかのうせい"のあるのは、かめさんだけだよ」
たしかに、うさ子はかめさんとはまだしょうぶをしていませんでした
ねこさんは、みんなからきびしいめでみられたので、
それいじょうはいわないことにしました
いいかげん、すなおになってもいいんじゃないか
これは、ねこさんがくれた"おおきなちゃんす"ではないか
だいたい、こんなことでもないかぎり、この私が
すなおにきもちを、つたえられるわけがない
まわりは、おおおー、ともりあがるなかまと、
そうではないなかまにわかれました
「ま、まぁ、私がまけるわけがないけどね、もしまけたら"つきあって"あげる///」
うさ子は"つきあう"という"たんご"をいっただけで、
かおからひがでそうでした
カメさんはすべてじぶんのあたまごしに、
どんどんはなしがすすんでいきましたが、
ずっとにこにこえがおで、とくにあわてたりはしませんでした
わざとまけるようなつもりはありませんでしたが、
"まぁ、かてないだろう"どこかでそうおもっていて、
みんながもりあがる"ねた"として、つきあってもいいかなー、と
かるくかんがえていました
ふつうにきょうそうしたら、
ぜったいに"しょうり"してしまいます
ちょっとゆだんしてひるねでもしないかぎりは
いやいや
しょうぶのさいちゅうに、そんなことするなんて、おかしい、と
うさ子はなにか、ほうほうをかんがえることにしました
うさ子はかえってから、いろいろかんがえをめぐらせたのち
ひとつのけつろんにたっしました
もんだいは、"それ"をできるかどうか
ううん、"できるか"じゃない"やる"んだ
うさ子はけついをさだめて、しょうぶにいどむことにしました
がんばれ私、ぜったいできる!
そういいながら、きもちをおちつかせましたが、
きもちはおちつかず、
そのひは、"いっすい"もできませんでした
やくそくのじかんより、だいぶはやく
まちあわせばしょについてしまいましたが、
すでにうさ子がまっていました
「かめさん、まってたわ」
うさ子は目がまっかです
「い、いこう、かめさん」
うさ子はかめさんにこえをかけました
ほかのなかまはだあれもいません
うさ子は、ふたりきりでしょうぶをさせてもらえるよう
みんなにおねがいをしていたのでした
かめさんがたずねると、うさ子はいまおもいついたように、こういいました
「あの丘のてっぺんまでかけっこしよう」
え、ここから?
「いいよ」
かめさんは、すぐにへんじをしましたが、すこしおどろいてしまいました
だって、あの丘までは、とーーってもきょりがながいんですもの
まさか、ちょうきょりそうに、なるとはおもっていませんでした
ただ、かめさんは、どちらかというと、ちょうきょりのほうがとくいだったため、
うさ子がきをつかってくれたのかとおもい、とふかくはかんがえませんでした
そして、ありったけのゆうきをふりしぼり、こういいました
「もし私が勝ったら、わ、私と、その、今度ニンジン畑にデートに……///」ゴニョゴニョ
「……え?」
「う、ううん、な、なんでもない///
いくわよ、よーい、どん!」
せっかくゆうきをふりしぼったのに、
なぜかじぶんではぐらかしてしまいました
うさ子は、じぶんのいくじのなさがいやになりました
あれだけ"こころにちかった"のに
"れんあいなんて、かけごとじゃない"
そんなことで"つきあう"なんて、こうかいしてしまう
うさ子は、すなおになれないじぶんがだいきらいでした
そんなじぶんはかえるんだときめたのです
じぶんのきもちは、じぶんでつたえることにきめたのです
かったら"つきあう" まけたら"つきあう"
そんなの、どうだっていい
かめさんに、きもちをつたえるの!
"ちゃんす"はおおいほうがいい
あえて、ちょうきせんにしました
うさ子は、かけっことはべつのしょうぶをしていました
それは、かめさんとのしょうぶであり、じぶんとのしょうぶでもありました
「わ、ずるいぞ急に!」
「うふふ///」
うさ子は、かおをまっかにしながら、ぴょんぴょんぴょーんと勢いよく走っていきました
ちょっといまは、はずかしくてしっぱいしちゃっただけ
まだまだ"ちゃんす"はあるんだから
いっしょうけんめい、私をおいかけてくるかおをみると
いとおしくてたまりません
うしろをふりかえったまま、ついかめさんのかおにみとれてしまいました
なんでだろう、そんなにかっこいいわけでもないのに
うさ子は、かめさんをこのままずっとながめていたいとおもいました
そうこうしていると、かめさんがだんだんとおいついてきます
「はぁはぁ、やっぱりうさ子ちゃんははやいなぁ、わっはっは」
かめさんはいつもの"えがお"で、うさ子においつき、こえをかけました
うさ子は、少し顔を赤らめながら誇らしげな顔をしました
「そうよ、私は足がはやいんだから」
この恋だって、全速力でぶっちぎってやるわ
おおきい"いし"や、"きのえだ"など、
しょうがいぶつのおおいばしょにとまっていたのです
「よし、またぶっちぎっちゃうわよ」
かめさんがちかくにきたことをかくにんしたうさ子は、
そういいながら、わざとあしもとのいしにつまずきました
「きゃっ///」
うさ子は、かめさんのうえにかぶさりました
いぜん、うさみちゃんが、おとこは"すきんしっぷ"によわい
とさんざんいっていたのをおぼえていたのです
「……っ」ドキッ
いつもとかわらないえがおをむけてくれるかめさんに、
うさ子はときめいてしまいました
あいてをときめかせるつもりが、やられてどうするの
じぶんに"かつ"をいれました
「かめさん、あのね、その……」ドキドキ
よし、いいちょうし
このまま、あとひとこというだけよ
"だいすき"と
「……ん、どうしたんだい?」
あと、たったひとことなのに、こえがでてきません
がんばるのよ、私
わたしのこいは
"ぜんそくりょく"で、"ふるすとっる"で、"ひーはー"で
うさ子は"どきどき"しすぎて、じぶんでもわけがわからなくなってきました
ひーはー!
気が付くと、うさ子はかめさんを
おもいきりけとばしてしまっていました
――ばささっ
かめさんは、ちかくのしげみにおちました
うさ子はまたやってしまいました
しかも、こんどおちたばしょは、池ではありません
どうやらうさ子は、きんちょうすると、
かめさんをけとばしてしまうことがあるようです
うさ子は、じぶんのやってしまったことの
しんこくさにきづき
あわててかめさんのもとへ、はしってゆきます
「かめさん、ねえかめさん」
かめさんは、どうやらきぜつしてしまったようです
そばにいることにしました
ごめんなさい、かめさん
そうおもいながら、うさ子は、
のびているかめさんのすがたをみて
"このままでいいから、もちかえりたい"
ともおもいました
おわびに、うさ子は"ひざまくら"というのに"ちゃれんじ"
することにしました
かめさんをひざにのっけてみます
――どきどき
なんだか、うさ子はどきどきがとまりません
このまま、ずっとかめさんをみていたいとおもいました
かめさんが、きゅうに"ぱちっ"とめをさましました
かめさんをずっとみつめていたうさ子はびっくりです
おもわず、めがあってしまいました
「……ん?うさ子ちゃん?」
なまえをよばれたこと
めがあってしまったこと
からだがくっついていること
このみっつがあわさり、うさ子ちゃんのきんちょうは、
ちょうてんにたっしました
ひーはー!
うさ子は、またどんどんじぶんがきらいになってしまいそうです
"かめさんにみっちゃく"さくせんは、やめにすることにしました
こうなったらしかたがない
うさ子は、さいごにとっておきのさくせんにでることにしました
とんでいってきぜつしているかめさんを、そっと"こーす"にもどし、
ぴょんぴょーん、とごーるへむかってはしっていきました
うさ子は、"ごーる"ちかくまでくると
ごろん、とよこになりました
もちろん、ほんとうにねたりしません
かめさんがとおりすぎるのをまっているのです
とことことこーっとはしってくるのをさっすると、
うさ子はねたふりをはじめました
そんなうさ子をよこめに、かめさんはとことこーっととおりすぎていきます
"もしかしたら、おうじさまみたく、めざめのきすをしてくれるかもしれない"
うさ子はそんな"ひげんじつてき"なろまんちっくなきたいもありましたが、
それは、さくせんのほんすじではないので、だいじょうぶです
ちょっとしたかなしみのきもちは
"もしかして、私と"つきあい"たいからがんばってぬかしたのかな?"
という"もうそう"にかきけされました
かめさんが、もうすぐごーるという、いちまでいくと
うさ子は、ぱっととびおき、
ぴょんぴょんぴょーん、とごーるへむけて
はしっていきました
かめさんがみえてきました
"いまだ"
うさ子はさけびます
「かめさーん!」
かめさんがこちらをふりむきました
ここでなにをいうか
きまっています
"こくはく"をするのです
きもちをつたえるのです
"もちろんさー"
きらっ!
で、かめさんが"ごーるいん"
そんなてんかいが、うさ子のりそうでした
うさ子のなかでは、さいだいげんに"ろまんちっく"でした
そんなもうそうだけで、さくやはおなかいっぱいでした
こころのなかで、この"しちゅえーしょん"の"しみゅれーしょん"は、
たくさんしました
そんなにしなくていいよってほどしてました、さくや
ここよ、きもちをつたえるのよ
そうおもったとき、ふとぎもんがわきました
私はかめさんにどんなかんじょうをいだいてだろうか
いせいとして"だいすき"
それはもちろんありました
ただ、それだけだったでしょうか
けとばしてしまって、それをわらいとばされて
しっとがとまらなくって、
あとあと……
なにがあったっけ?
はじめて、ともだちができた
こころのそこから、わらえた
かけっこが、たのしくなった
よるがあけるのが、たのしくなった
わたしの"あしのはやさ"を"さいのう"だっていってくれた
うさ子はおもいだすだけで、めがうるんでしまいました
みんなみんな、かめさんからもらった"たからもの"でした
きがつくと、うさ子は
"しみゅれーしょん"と、まったくべつのことをさけんでいました
もしも、かめさんにであえてなかったら
私はどうなっていただろうか
わたし、かめさんとであえて、ほんとうに……
「ありがとうー!」
「かめさん、ありがとうー!」
うさ子はありったけのおもいを、かめさんにさけびました
かめさんにほんとうにつたえたいきもちは、これだったのです
かめさんは、わかっているんだか、
さだかではありませんでしたが、うさ子のさけびをききながら
いつものえがおで、ごーるいんしました
うさ子もつづいてごーるいんしました
「えー、うそー、かめさんがかったの」
「えーなんでなんでー?」
ねこさんや小鳥さんたくさんのなかまたちが
ぞろぞろと、ごーるちかくのしげみからでてきます
じつは、ごーるのばしょを、もともときめていたうさ子は
くちのかるいねこさんに、ばしょをはなしてしまっていたのです
どうやら、みんなでゴールでこっそりようすをうかがっていたようでした
うさ子はまけたいいわけをみんなにはなします
「わっはっは、じゃあ僕は、うさ子とつきあえるのかな?」
はんぶんじょうだんのようなくちょうで、かめさんいいました
どこまでほんきなんだか、みんなはそうおもっていました
「やだー、ひるねしちゃったからとりけしー」
したをぺろっとだし、うさ子はまんめんのえみをみせました
うさ子のこころはすっきりしていました
いちばんいいたかったことが"こくはく"できたのです
まわりから、つっこみがはいります
「わっはっは、まあ、それでいいか」
どうやら、かめさんは、じぶんがけりとばさえれたことなど
まったくきにしていないようすです
いや、そもそもそのことに、"きがついていないんじゃないか?"
かめさんは、そうおもってしまうほど、きもちのいい"えがお"でした
とってもしあわせなきもちでした
これからも、こんなすてきななかまと、そして、かめさんと
ずっといっしょにいれる
そうおもうと、うれしくて、しかたがありませんでした
"つきあう"とか"つきあわない"とか、どうでもよくなってきました
そもそも、うさ子は"つきあう"とどうなるのか、よくわかっていません
"みんな、ありがとう"
こんな私と、いっしょにいてくれて、ありがとう
うさ子はみんなといると、
どんどん"じぶんのことがすきになっていく"のをかんじました
Fin
「神話・民話・不思議な話」カテゴリのおすすめ
「ランダム」カテゴリのおすすめ
コメント一覧 (11)
-
- 2017年11月24日 10:43
- うさな達は犠牲になったのだ…
-
- 2017年11月24日 11:17
- 絵本みたいな文章なのに語彙力が無いせいでただヒラガナにしてるだけになってるんだが。
-
- 2017年11月24日 12:43
- 振り切るぜ!
-
- 2017年11月24日 12:48
- ヒーハー!(芸人)
-
- 2017年11月24日 15:51
- 読みにくい文章
-
- 2017年11月24日 20:31
- ハートフルボッコな展開にならなくて良かったやら肩透かしやら
-
- 2017年11月24日 22:31
- ???「付き合ってやるよ、十秒間だけな!」アタックライドアクセル
-
- 2017年11月24日 23:12
- すき
-
- 2017年11月25日 03:17
- 児童向けノベル化して小学校とかに置いとくべき
-
- 2017年11月25日 06:15
- 語彙力のなさは誤字脱字と考えればそれほど変には思えない
面白かったよ
まぁ最近のカップヌードルのCMだっけ?アオハルかよって感じだけど…
-
- 2017年11月26日 05:04
- 絵本感出そうとしてるのはわかるが読みづらい、漢字で書いて欲しかった