ニート「ネットカフェ行こうっと!」母「あの子ったら働きもしないで……」
- 2017年11月16日 04:10
- SS、神話・民話・不思議な話
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カタカタ… カタカタ…
ニート「ぐ、ぐぐぐ……」カタカタ
ニート「くそぉぉぉぉぉっ!」バンッ!
ニート「ハァ、ハァ……ネットの達人たる僕が、あんなムシケラに論破されるなんて!」
ニート「よぉし、今日は気分変えてネットカフェ行こうっと!」ガタッ
ニート(うちの近くのネカフェは安いし、漫画も豊富だし、気分転換には最高だ!)
母「あの子ったらもう……働きもしないで……」
ニート「えぇ~、満員なの?」
店員「申し訳ございません」
店員「よろしければ、お席が空くまであちらでお待ち頂くこともできますが……」
ニート「待てるわけないだろぉ! 今いる客をどかすことはできないの!?」
店員「そういうことはできかねますので……」
ニート(あーあ……あてが外れたなぁ)
ニート「どうしよう……ん?」
ニート「あそこにあるのは……≪ネットカフェ≫!?」
ニート「看板にばっちり、ネットカフェって書いてあるじゃないか!」
ニート「やったぁ! 行こ行こ」
大将「いらっしゃい!」
ニート「!?」ギョッ
ニート(な、なんだ? このネカフェに似つかわしくない、いかついおっさんは……)
ニート「あの~、ここはネットカフェですよね?」
大将「おう、ネットカフェだよ! あんた、客かい!?」
ニート「は、はい、客です」
大将「おっしゃ、こっちに来てくれ!」
大将「せっかく開店したのに誰も客が来ないから、ガッカリしてたとこなんだ!」
大将「ま、楽しんでいってくれや!」
ニート「この業界も競争が激しいっていいますからねえ」
大将「そうなんだよ! よく分かってるな、兄ちゃん!」
ニート「ど、どうも」
ニート(なんだここ……? プール……?)
ニート「あの、なんですかここ? スイミングでもさせられるんですか?」
大将「スイミング? 水泳のことか。バカいっちゃいけねえ!」
大将「あの中にはすでに、たっくさん魚が泳いでるんだからよ!」
ニート「へ?」
大将「おっと、ネットを用意しなくちゃな」
大将「ほら、これだ」
ニート「なんですか、このでかい網は? 重りもついてる……」
大将「決まってんだろ、投網だよ!」
ニート「投網!?」
大将「なんたって、ここは投網を体験できるカフェだからなぁ! だから≪ネットカフェ≫!」
ニート「なんだってえええええ!?」
大将「さ、打ってみろ!」
ニート「打つ?」
大将「投網を投げることを打つっていうんだよ! さ、投げてみろ!」
ニート「いや……」
大将「遠慮せずに!」
ニート「あの……」
大将「早くっ!」
ニート「ど、怒鳴らないで下さいよぉ……」オドオド…
ニート「じゃあ……」ガシッ
ニート(うわ、投網に使う網ってこんなに重いのか……)ズシッ
ニート「ええいっ!」バッ
大将「へっぴり腰!」
ニート「うわぁ……全然ダメだ」
大将「なにやってんだ! 1メートルも投げられてねえじゃねえか!」
ニート「す、すみません」
大将「もっと気合入れて、腰入れて投げるんだよ!」
ニート「は、はいっ!」
ニート(あああ~……なんでこんなことに……)
大将「そんなんじゃ魚を逃がすだけだ!」
ニート「だあっ!」パサッ
大将「ダメダメ!」
ニート「こうか!?」パサッ
大将「全然なっとらん! やり直し!」
大将「疲れたかい、兄ちゃん。ならお茶を出してやろう。なんたってカフェだからな!」
ニート「申し訳程度のカフェ要素!」
ニート「……」ゴクッ
ニート(あ~……疲れた体にお茶の渋みが染み渡る!)
大将「うまいか!」
ニート「おいしいです」
大将「飲んだら即再開な」
ニート「ひええ……」
大将「まあ、少しは上達したな」
ニート「どうも……結局魚は獲れませんでしたけど」
大将「また来いよ!」
ニート「はい……」
ニート(二度と来るか! こんなわけ分からないカフェ! 詐欺だ詐欺!)
ニート「あ~……筋肉痛がひどい」ズキズキ…
ニート「運動なんかろくにしてなかったのに、急にあんなことするから……」
ニート「……」
ニート(だけど……投網、ちょっと楽しかったな。普通のネカフェよりも料金も格安だったし)
ニート(また明日も行こうかな……)
ニート(いやいや! 明日はちゃんとしたネットカフェに行くんだ!)
ニート「結局、また来ちゃいました」
大将「おう兄ちゃん! 待ってたぜ!」
大将「今日こそまともに投網を打てるようになってくれよ!」
ニート「はいっ!」
ニート「はい!」グッ…
ニート「ほれえっ!」
バサァッ!
大将「いいぞ!」
大将「今のはよかった! 魚こそ獲れなかったが、いい網の広がり方だった!」
大将「兄ちゃん、センスあるぜ!」
ニート「ありがとうございます!」
ニート「だあっ!」バサァッ
大将「狙いが甘い!」
ニート「でいやっ!」バサァッ
大将「網がちゃんと広がってねえぞぉ!」
ニート「うおっしゃあっ!」バサァッ
大将「今のはいい! コツを掴んできたな!」
ニート「とりゃああっ!」バサァッ
大将「よし! 引き上げろ!」
ニート「はいっ!」
ニート「よいしょぉっ!」グイイッ
ニート「!」
ピチピチ… ピチピチ…
大将「おっ、獲れたぞ! アユやニジマスが獲れたみてえだな!」
ニート「やったーっ!」
ニート「ありがとうございます!」
大将「これはアユの塩焼きだ!」
ニート「……うまい! うまいです!」
大将「こっちはニジマスのムニエル!」
ニート「おいし~い!」
大将「どうだ、カフェで養殖されたものとはいえ、自分で獲った魚の味はまた格別だろ!」
ニート「はいっ!」
母「ねえあなた、あの子にもっと強くいってよ。毎日ネットカフェに通ってるみたいで……」
父「しかしなぁ……あいつ、このところどんどん体格がよくなっていってないか?」
父「万一反抗された時のことを考えたらとても強くはいえんよ……」
母「そうねえ……。ネットカフェって体を鍛えられるような施設なのかしら」
ニート(このところはもうほとんど自由自在に投網を扱えるようになったぞ!)ムキッ
ニート(だけど正直、物足りなくもなっている)
ニート(もっと……もっと上のステージに行きたい……!)
ニート「大将、お願いがあります」
大将「なんだい、改まって」
ニート「僕を……大将の船に乗せて下さいませんか!」
ニート「僕、もっともっとネットについて学びたいんです!」
大将「そろそろいってくる頃だと思ってたぜ」
大将「いいだろう、ついてきな!」
ザザァン…
ザァァァァァァ…
大将「どうだ、オイラの船は?」
ニート「いい船ですね!」
大将「オイラの本業は漁師でな。沿岸漁業ってやつをやってるんだ」
大将「投網とはまた違い、網を仕掛けて魚が罠にかかるのを待つってスタイルだ」
ニート「定置網漁業というやつですね!」
大将「その通り! よく勉強してるじゃねえか!」
大将「どこに網を仕掛ければ魚をよく獲れるか見極めるってのが、漁師としての腕の見せ所だな」
ニート「大将!」
大将「どうした? まだ仕掛けるポイントには早いぞ」
ニート「大将、ここですよ。ここに網を仕掛けましょう」
大将「なにいってんだ。こんなとこに仕掛けたって……」
ニート「僕には分かるんです……。海が……海が呼んでいる」
大将「……」ゴクッ
大将(こいつのツラ、今までとはまるで別人……!)
大将「いいだろう、ここに網を仕掛けよう!」
ビチビチッ ビチビチビチッ
大将「大漁だ! こんなに獲れることなんてめったにねえぞ!」
大将「お前さん、すげえじゃねえか!」
ニート「ありがとうございます」
大将「よし、もういっちょいくか!?」
ニート「いえ……この辺にしておきましょう」
大将「どうして?」
ニート「海が……そういってるのです。あまり欲をかくな、程々にしておけ、と……」
大将「分かった……獲りすぎるのもよくねえしな」
ニート「いや、僕はニートですし、そんなものを受け取るわけにはいきませんよ」
大将「なるほど、ニートにもプライドがあるってわけかい」
大将「じゃあ、小遣いだ! これなら受け取れるだろ?」
ニート「は、はい」
ズシィ…
ニート(重い……!)
ニート(これが働いて稼いだ金の重みか……!)
ニート(親のスネをかじって得たお金とは全然ちがう……!)
母「今日はお刺身よ」
父「お、うまそうだな~」
ニート「ほう、これはいいインドマグロだ」
母「! よく一目で分かったわね……。あんた、魚に詳しかったっけ?」
ニート「海よ……大いなる恵みに感謝いたします」ペコッ
父母「!?」
父「おい……あいつ、どうしたんだ……?」ヒソヒソ…
母「さぁ……おかしな宗教かなんかにハマってなきゃいいけど……」ヒソヒソ…
<海>
大将「このところ、魚があまり獲れなくなったな……ま、こういう時もある」
ニート「……」
大将「またなにか感じるのか?」
ニート「海が……泣いている……」
大将「へ?」
ニート「海のことを考えず、乱雑に漁獲をする者がいると、嘆いているのです……」
大将「そいつは密漁者だ!」
大将「漁業にゃ、免許がなきゃ魚を獲っちゃいけないとか、魚を獲りすぎちゃいけないとか」
大将「獲っちゃいけない魚がある、とか……まあ色んな決まりがあるんだが」
大将「そういったことを無視する輩がいるんだよ」
大将「今回のやつはかなり悪質みてえだな」
ニート「許せない……!」
ニート「海の怒りが……僕の心を奮い立たせる……!」
大将(すげえ気迫だ! まるで海が乗り移ったかのようだ!)
ニート「大将、悪しき密漁者を捜し出し、“海罰”を与えましょうぞ!」
大将「おう!」
大将「しかし、密漁者はどこにいるのやら……」
ニート「海が教えてくれています……大将、あちらです! あちらに舵を切るのです!」
大将「分かった!」グイイッ
ザァァァァァ…
大将「――見つけたぞ! ありゃあ改造船だな!」
密漁者「ヒャッハーッ! 今日も大漁だぜ!」
密漁者「貴重な魚を根こそぎゲット! 漁業法や漁業組合なんざ知ったことかよーっ!」
密漁者「ゲ、地元の漁師どもか! 捕まってたまるもんか!」
密漁者「逃げっぞ! 最高速でな!」
ギュオオオオオオオッ!
大将「くう……なんつう速さだ! オイラのボロ船じゃとても追いつけねえや!」
ニート「心配はいりませんよ」
ニート「どうか私に悪しき者に海罰を下す資格を与えたまへ……」
ニート「私に力を!!!」
ポセイドン『よかろう……』
大将「ひえええ~っ! わざわざギリシャからご足労おかけしやした!」
ニート「いかがですか、大将?」
大将「こりゃあいい!」
大将「波と風がオイラたちに味方してくれて、みるみるうちに追いつくぜ!」
密漁者「やべえ、追いつかれる!」
密漁者「こうなったら銃であいつらを……!」ジャキッ
ニート「焦らないで下さい。使う前に船ごと捕えてしまえばいいだけのことです」
大将「捕えるってどうやって!?」
ニート「今こそネットカフェでの修行の成果を見せる時……」グイッ
ニート「投網ッ!」ブワッ
バサァァァァァッ!!!
密漁者「うわああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
こうして密漁者の船は捕獲され、海に平和が戻った。
ニート「いえ……大将の操縦がよかったおかげですよ」
大将「なぁ、お前さんもそろそろニートにも飽きただろう」
ニート「そうですね……」
大将「オイラのもとで“漁師”になってみねえか?」
ニート「はいっ!」
ニート「今後ともよろしくお願いします!」
…………
……
漁師「大将、今日も大漁でしたよ!」
ピチピチ… ピチピチ…
男「すっげえなぁ~あの若いの! 網さばきは抜群だし、しかも海の生態系は乱さねえ!」
男「あいつが漁師になってから、海が元気になったってもっぱらの評判だ!」
男「ありゃあいったい何者なんだ?」
大将「ああ、あいつは……人呼んで“ネットの達人”よ」
おわり
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コメント一覧 (24)
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- 2017年11月16日 04:38
- カッケェ! 俺もネットカフェに行けばポセイドン召喚出来るようになるかな?
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- 2017年11月16日 05:36
- 行かずとも色んなネットゲームでガチャガチャしてればポセイドンさん位なら召喚できますよ^^
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- 2017年11月16日 06:13
- ポセ〜イドンは海を行け〜
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- 2017年11月16日 06:45
- ※2
面白いと思ったの?
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- 2017年11月16日 07:24
- つまんねぇ。
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- 2017年11月16日 07:35
- このあと漁師をめぐってポセイドンとネプチューンとスサノオが恋の鞘当てを繰り広げることになるのだが、それはまた別の話
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- 2017年11月16日 08:58
- 前半は楽しそうかな?って感じ
後半は…ね
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- 2017年11月16日 10:35
- 嫌いじゃない
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- 2017年11月16日 12:23
- 続け
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- 2017年11月16日 13:06
- ええやん気に入ったわ
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- 2017年11月16日 13:06
- 多分給料もらった時点でニートではなくなってると思うんですけど
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- 2017年11月16日 13:11
- 綺麗に落ちたな
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- 2017年11月16日 13:39
- 神話だコレw
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- 2017年11月16日 14:52
- すき
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- 2017年11月16日 15:46
- 落語みたいにオチたな
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- 2017年11月16日 16:29
- 投網投げれるくらいとかどんだけでかいんだ?
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- 2017年11月16日 17:49
- ※11
給料じゃねぇ!お小遣いだ!
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- 2017年11月16日 22:14
- クッソワロタwwwこういう話好きだわ
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- 2017年11月16日 23:00
- せめてわだつみ(日本神話の海神)にしてやれよ
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- 2017年11月17日 03:05
- オチで草
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- 2017年11月17日 19:48
- うまい
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- 2017年11月18日 11:17
- 想像通りのオチだった
でもニートのメンタルじゃねぇな
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- 2017年11月18日 15:23
- ポセイドンわろた
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- 2018年09月17日 23:52
- 普通に楽しめた。
が、ニートが主人公のSSは作者の心境が投影されてると考えてしまうから嫌だわw