モバP「檸檬の薫り」
志希「キミは記憶力は良い方?」
P「どうだろうな。それなりだとは思うけど」
志希「ま。まだ若いもんね」
P「志希に言われると何だか複雑な気分だな」
志希「誰かと比べる物じゃないからね」
P「まぁ、覚えられなかった手帳にでも書いておけば言い訳だし」
志希「書いてたことを忘れなければいいけどね」クスクス
つかさ「もっといい方法があるぜ」
志希「ん? やっぱり社長となると一家言あるの?」
つかさ「いや、目に留まるとこにポストイット貼っとくとかはするな」
つかさ「それでも忘れるならシンプルに手に書く」
つかさ「まぁ、忘れて大目玉喰らうよりはマシだろ」
時子「それに関しては同感ね」
P「時子が何か忘れることってあるのか」
時子「……」
P「どうした?」
時子「失礼。貴方の名前を忘れてしまったわ」
つかさ「そりゃ大変だ。腕に名前でも書いとくか?マジックあるぜ?」
志希「なんだか。プロデューサーの持ち物みたいだね」
つかさ「うわ。なんかそれアレだな背徳的な雰囲気がビリビリするな」
時子「下らない。流石に名前を忘れる訳ないでしょう」
つかさ「そらな。時子が忘れる訳がないな」
時子「……何か含みがあるわね」
つかさ「考えすぎだろ」アハハ
時子「チッ」
志希「んーん。そこまで」
P「意外だな」
つかさ「てっきり見た物は忘れないとか言い出すかと思ったぜ」
志希「そういうのはアタシじゃないね」
志希「どーにもそういうのは頭の使い方が違うみたい」
P「そうなのか」
時子「でも、流石に豚共よりはマシでしょ?」
P「豚って頭良いらしいぞ?」
時子「チンパンジー並らしいわね。貴方はそれで満足?」
ガチャ
蓮実「こんにちはー」
P「お疲れ様」
志希「おっつー」
つかさ「お疲れー」
時子「おかえりなさい」
志希「ん?蓮実ちゃんなんか持ってる?」クンクン
P「どういうことだ?」
志希「いや、いつもいい匂いするんだけど。今日はまた違う匂いがするんだよね」
蓮実「あ、コレですかね?」
P「ん?」
蓮実「凄いですね志希さん」
蓮実「これ皆さんにあげますね」
志希「おー。ありがとー」
つかさ「いい匂いするなコレ。気分転換になりそう」
時子「……ポプリね」
時子「時子様。たまたまね」
蓮実「まぁ、そこまで本格的にやってないんでポプリもどきですけど……」
P(俺には……?)
蓮実「あ、男の人ってこういうのどうなのかなーって思って……」
志希「にゃはは。フラれちゃったね」
つかさ「ま。確かにお前には縁がなさそうだ。不満なら自分の行いを反省しないとな」
時子「滑稽ね」
蓮実「あ、いや、今度持ってきますからっ」
P「無理しなくていいからな」
蓮実「はい」
蓮実「ちょっと作ってみようかなーって感じで作ってみました」
志希「ふーん……これで全部?」
蓮実「はい。そうですけど?」
志希「そっかー……女の子っぽいね」
つかさ「はー。女の子だねー」
時子「貴方も似たようなものでしょう」
つかさ「少なくとも糠漬けは女の子っぽくないと思うぜ?」
志希「それに関してはどうかーん♪」
志希「今日の仕事は楽しそう?」
P「収録だからな。退屈はしないだろうな」
志希「ふーん。それなら良かった」
蓮実「もしどこか行っても志希ちゃんよろしく匂いで追跡しますね」
志希「むむっ。紐付けされちゃった?」
志希「それを上回るのがシキちゃんなのでした」
P「いや、そこは大人しくしておいてくれよ」
志希「首輪でも付けてみる?」
志希「退屈しないし、ドキドキするし名案だと思うけど」
P「アイドルがそんなこと言うなって」
蓮実「あはは……」
蓮実「ま、まぁ、たまには……」
P「あんまりイメージないもんな」
蓮実「あはは」
志希「それとも別に用意してて皆が居なくなったら渡すタイプ?」
蓮実「え?」
志希「いや、ほら少女漫画とかであるじゃん。そういうの」
P「少女漫画なんて読むのか?」
志希「この間蓮実ちゃんに借りたー」
P「あ、そうなのか」
蓮実「はい。貸しました」
志希「調べてみたら結構人気らしいね」
志希「主人公が想い人に対して素直になれないシーンとかね」
P「なんとなく名シーンっぽいな」
志希「そそ。主人公は優しいから色々考えちゃってねー」
志希「それでも諦めきれない辺りがいいなーって」
P「志希はないのかそういうの」
志希「どうだろ。蓮実ちゃんは?」
蓮実「わ、私ですか?」
蓮実「まぁ、人並に……」ポリポリ
つかさ「なぁ時子」
時子「なに?」
つかさ「蓮実って一番アイドルっぽいよな」
時子「誰と比べて?」
つかさ「あたしら」
時子「そうね。そこは認めるわ」
つかさ「『恐れられ、讃えられ、崇められてこそのアイドル』ってのとは対極にありそうだよな」
時子「そうかしら?」
つかさ「流石にアタシはそう思うけど。蓮実が時子みたいだったら嫌だな」
時子「誰かの理想を表現することに変わりはないわ」
時子「共に誰かが描いた理想を投影することにおいてはね」
つかさ「ふーん……」
時子「なにかしら」
つかさ「意外とアイドルらしいこと考えてるなって」
時子「当たり前のことを言わないでくれる? 頭が痛くなるわ」ハァ
つかさ「それは悪かった」
時子「ん?」
つかさ「似てるかどうかは置いとくけどちょっとだけ似てる所見つけたかも」
時子「どこかしら。答えによっては私は貴方を躾ける必要があるのだけど」
つかさ「口を削ぎ落とすのは勘弁して欲しいな」
時子「それは貴女の回答次第ね」
つかさ「二人共アイドルだと思ってな。ファンとの距離感の取り方が」
時子「……当然ね」
志希「ふぅ。どうだった?」
P「流石だな」
志希「いえい★」
蓮実「流石です」
P「蓮実も良かったぞ」
蓮実「あ、ありがとうございます」
志希「キミに首輪を付けて貰わなくて済みそうだよ」
P「それは残念だな」
蓮実「そういうのが好きなんですか……?」
P「いや、そういう訳じゃないけど」
志希「ドキドキしてるね。匂いが震えてるよ」
蓮実「匂いって震えますか?」
蓮実「志希さんは凄いですね」
P「嘘だぞ多分」
蓮実「えっ」
志希「ま。ウソだけどね。流石にテキトーなこと言い過ぎちゃった」
P「それじゃ、そろそろ帰るか。送ってくよ」
蓮実「ありがとうございます」
志希「おー、それじゃウチ上がってく?」
P「俺は事務所に帰るぞ」
志希「釣れないね」フゥ
蓮実「……」
志希「いい匂いだね。心が豊かになりそう」
蓮実「それは良かったです」
志希「匂いのテーマとかあるの?」
蓮実「これは私の好きな匂いを集めてみたんです」
志希「ふーん。だから蓮実ちゃんっぽい感じがするんだね」
蓮実「分かりますか?」
志希「言われたらってレベルだけど、意思は感じるよ」
蓮実「嬉しいです」ニコ
志希「……ちょいちょい」
蓮実「なんですか?」
志希「ちょっと耳貸して」
蓮実「はい?」
志希「――、――?」
蓮実「え、あ、いや、それはっ!」
志希「ふふーん。その反応はそういうことね」
P「どうした?」
P「珍しいな志希がそんなこと言うなんて」
志希「まぁアタシもそういうお年頃だからねー」
P「ちなみにどんなテレビだ?」
志希「ヒミツ。乙女の秘密は聞くだけ野暮だよ」
P「それは悪いな」
志希「うんうん。そういうこと。だから蓮実ちゃんは後回し」
P「それでいいか?」
蓮実「え? あ、はい。大丈夫です。私は今日観たいテレビありませんから!」
P「いや、大丈夫だありがとう」
志希「そっかそっか。それじゃ、また明日」
蓮実「お疲れ様でした」
P「遅くなって悪いな」
蓮実「いえ、全然大丈夫です」
蓮実「それよりいつも送ってくれてありがとうございます」
P「プロデューサーだからな」
蓮実「プロデューサーの鏡ですね」
P「蓮実はアイドルの鏡だな」
蓮実「私なんてまだまだですよ」
蓮実「…まだまだ」
P「そりゃないこともない」
蓮実「ふふ。そうですか」
P「そこまで出来た人間じゃないしな。取引先に上手いこと言って話通す時とかもな」
蓮実「意外ですね」
P「後から本当にしちゃえば問題ないからな」
蓮実「なんだか不思議ですね」
P「ただの方便だけどな」
P「どうした?」
蓮実「ちゃんとPさんにもあります…ポプリ」
P「そうなのか。ありがとな」
蓮実「あんまり皆さんの前で渡すのもどうかと思いまして……」
P「まぁ、男に渡すのは変か」
蓮実「あ、いえ、そういう訳ではなくてですね」
P「ん?」
蓮実「あ、いや、なんでもないです」
P「お、志希達に渡してたのとちょっと違う気がするな」
蓮実「そ、そうですね」
蓮実「そうなんです!」
蓮実「お仕事に疲れた時とかに嗅いで貰えると嬉しいなって」
蓮実「こう…いつもお仕事頑張って貰ってるのでなんとか力になれたらって」
蓮実「そんな想いも詰め込んでみました!」
蓮実「深呼吸してみたら心地よい気持ちになると思いますよっ!」
P「なるほど……」
蓮実「あ、すみません。そのちょっとホッとしたというか肩の荷が下りたというか……」
蓮実「こう…自分の好きなことに相手が興味を持ってくれると嬉しくてお話したくなっちゃいませんか?」
P「確かにな」
蓮実「ですよねっ!」
蓮実「いえいえ!Pさんのこと考えて作ったらあっという間でした♪」
P「そうかありがとな」
蓮実「あっ!えっとですね。母が教えてくれたんです!」
蓮実「大切な人に送ったらしくて……ってそういう話じゃなくて」
蓮実「えっと…そう!Pさんには笑顔が似合いますからだから匂い嗅いでリフレッシュです!」
蓮実(勢いに乗って随分凄いこと言っちゃったかも……)
P「ありがとな。大切に使うよ」
蓮実「何か思い出がありましたか?」
P「いや、よく言わないか? ファーストキスはレモンの味って」
蓮実「言いますね。甘酸っぱくて切なくて」
蓮実「Pさんにもそんな思い出が?」
P「さぁな」
蓮実「……む」
P「ん?」
蓮実「Pさんの思い出がどういうものか分かりませんけど」
蓮実「レモンの匂いを嗅いで思い出すのは私のことにしてみます…!」
蓮実「人を元気にするのがアイドルです。私はPさんにも元気になって貰いたいですから」
P「ありがとな」
蓮実「ん、んふふ。キミがそう言ってくれるだけで、は、ハスミちゃん的にもオッケーなんだよね」
P「んん?」
蓮実「志希ちゃんの…真似です。匂い繋がりで……ダメでした?」
P「いや、驚いただけだよ」
蓮実「ふふっ。Pさんのジョビ器官を制圧です♪」
P「ただいま戻りました」
時子「随分と遅い帰りね。油でも売っていたのかしら」
P「あぁ、二人を送ってた」
時子「そ。殊勝な心がけね」
P「まぁ、何かあってからじゃ遅いからな」
時子「……」
P「どうした?」
時子「香水…違うわね。何かレモンの香りがするけれど」
P「あぁちょっとな」
時子「あぁ、そういうこと」
P「何がそういうことだ?」
時子「いい匂いね。嫌いじゃないわ」
P「俺も好きだな」
時子「蓮実が好きと言っていた匂いね」
P「そうだっけか」
時子「えぇ。爽やかで甘酸っぱい初恋の匂いですって」
P「ロマンチックだな」
時子「夢を見せるアイドルにだって夢を見る権利はあるもの」
P「時子も意外とロマンチストだな」
時子「その舌引っこ抜くわよ」
P「なにがだ?」
時子「匂いと記憶は密接な繋がりがあるわ。こういうのはあの子の本分でしょうけど」
P「あぁ、プルースト効果か」
時子「豚にしては博識だこと」
P「たまたまな」
時子「そう。なんにせよその匂いを嗅ぐ度に蓮実のことを思い出すのね」
P「そういうことになるな」
時子「滑稽ね。豚ではなく犬だったようね」クスクス
P「そうかもな」
時子「……」
時子「……チッ」
P「どうした?」
時子「別に。あぁ、特別にこのアタシが珈琲でも淹れてあげるわ」
時子「当然飲むわよね?」
P「まぁ、頂けるなら」
時子「滂沱の涙を流して感謝しなさい。地獄のように濃いコーヒーを淹れてあげるわ」クス
余談ですが、『ジョビ器官』は『鋤鼻器官』と掻き、フェロモンを感じる器官です。
失礼いたしました。
元スレ
モバP「檸檬の薫り」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1507731295/
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コメント一覧 (17)
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- 2017年10月12日 00:25
- なんか好きな感じのSSだ
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- 2017年10月12日 01:17
- 時子が何かくれるとか、それもちゃんと口にできるものくれるとか、どんだけ徳を積めばこんなにデレてくれるんだ
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- 2017年10月12日 02:02
- 珍しいSSやな、好きやぞ。
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- 2017年10月12日 04:07
- ワイ豚 とても満足
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- 2017年10月12日 05:35
- 特に書いてないけど、古典シリーズの人か?
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- 2017年10月12日 08:44
- この時子の仄かに愛を感じる感じ良いな
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- 2017年10月12日 09:38
- 時子様のお恵みは、蓮実のポプリに免じてやぞ
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- 2017年10月12日 09:47
- ここまで軟らかい時子も珍しい
ただ公式ではつかさから時子への呼称はさん付けだった様な
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- 2017年10月12日 10:55
- 対抗してコーヒーの香りと自分の記憶を結びつけようとする時子様かわいい
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- 2017年10月12日 12:11
- 豚は匂いでトリュフ見つけるくらい鼻いいんやでー
ただし白トリュフを見つけると飼い主と奪い合いになる模様。やっぱ犬よ
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- 2017年10月12日 12:24
- かな子とPが輝子を取り合うだって?
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- 2017年10月12日 12:28
- 蓮実と志希いいよね…
この人の前作でも出てたけどそのあとシン劇ポプリ回で共演してぶったまげた…
それ以前にモバでご一緒してたっけ?
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- 2017年10月12日 13:30
- 独特のギスギスした感じがあるな。
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- 2017年10月12日 15:16
- 地獄のように熱いコーヒーだ。
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- 2017年10月12日 19:22
- 古典シリーズの人かな
そうじゃなければ駄作
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- 2017年10月13日 02:08
- え?
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- 2017年10月13日 11:21
- 作者が誰なのかによって駄作かどうか決まるとはたまげたなぁ。◯◯作じゃなきゃ俺は嫌いとかならまだわかるけど。
このSSの雰囲気がなんとなく好き。最後までテンポよくて読みやすかった。