【モバマス】楓「二日酔いの誘惑」
「なんですか?」
仕事終わりの居酒屋。どうしても、と聞かなかった楓さんを連れての酒の席。
程よく酔いが回り上機嫌の彼女は、空になったお猪口をプラプラさせる。
仕事スイッチがオンになっている時は、立ち振舞いや雰囲気。どれをとっても『綺麗』という表現が適切だ。
それは、お酒が入ったときでも変わらない。
酔いに朱く染めた頬、トロンとした瞳。それを照らす暖色のライト。
その全てが高垣楓という女性の魅力を引き出し、大人の色気を引き立たせる。
スキを見せればダジャレをぶっ込み、軽くあしらえば傷心しましたと飲みに誘ってくる。
自由気ままとは彼女のためにあるのではないかと思うほど、オフの時はギャップが凄い。
現在はその子供っぽさが全面に出ているようで、揺れるお猪口を見つめながらニコニコしていた。
「私、綺麗って言ってもらったことはありますけど、一度も『かわいい』って言ってもらえてない気がするんです」
いきなり何をぶっこんでいるのだろうか。塩焼きしたホッケをつまんでいた箸が思わず止まる。
「するんです」
呆気にとられているとズイッと身を乗り出してくる。
ニコニコしたままなところを見るに、完全にからかいモードである。
「酔ってますね?」
「酔ってないです」
「酔ってる人は大体そう言うんです」
決まり文句を言いながら身を乗り出す楓さんをなんとかたしなめる。
口を尖らせてブーイングしてくるが、酔っぱらいには付き合っていられません。
「随分と強引に粘りますね……」
「そうです、強引なんです。今日の私はゴーイングマイウェイ……フフッ」
「……くだらないこと言ってないで、ほら。お冷でも飲んでください」
「口元にやけてますよ?」
「気のせいです」
いきなりだった上に酔いが回って笑いの沸点が低くなってる今、楓さんのちょっとしたギャグでも笑いそうになる。
目を逸して誤魔化すが、ニヤニヤされているところを見るに完全に手玉に取られている感がある。くそぅ。
「なんですか?」
「『かわいい』って、言ってください?」
「……可愛いですよ、楓さん」
「ぶー。心がこもってないじゃないですかぁー」
……今のは本気で可愛かったが、なんか言ったら負けな気がするのでお口チャック。
というか、こんな綺麗な女性を捕まえて『かわいい』は失礼ではないだろうか。
確かに子供っぽいところがあるが、それは『かわいい』というより『しょうがない』とか『どうしようもない』という方が大きい。
そう思われてもなおふざけ続けるあたり、筋金入りだなぁとは思うが。
「んー……特に理由はないんです。ただ、ふと思いついたので」
また思いつきでこの人は……。
脱力する俺を見てクスクス笑っているこの飲ん兵衛をどうギャフンと言わせてやろうか。
「ふふ、それに……褒められて嬉しくない女性はいませんよ?」
「そういうものですかね」
「そういうものなんです」
残っていた熱燗をぐいっと煽る。
飲み込んだ際の喉を焼く辛味を楽しみ、しばし一息。
「……それは、どういう」
「その意味は、貴方がよく知ってると思いますよ?」
「……うぐ」
しまった、ギャフンと言わせるどころかこちらがギャフンと言いたい形勢に持ち込まれた……!
一息ついたと思ったらこれである。ニコニコしているのが非常に恨めしい。
素直にかわいいと言えば済むのだが、この余裕そうな笑顔を崩さないとなんか負けた気がする。
「……そういう面倒くさい所、可愛いと思いますよ」
「むぅ。まだちょっと投げやりです」
「……そうやってむくれているところも可愛いですよ」
「……もう、そうじゃなくてですね。そんな流すようにじゃなくて――」
「……好きですよ、楓さん」
「そうそう、そういうふうに心を込め――、え?」
「お。その驚いた顔、可愛いですね」
ので、今までのお返しに本音を込めて、素面じゃまず言えないことを言ってみた。
するとまぁ効果覿面。やったね。明日覚えてたらまず後悔しそうな事口走ったけどそれはそれだ。
「なんでしょう?」
「その、聞き取れなかったのでもう一度……」
「驚いた顔も可愛いですね」
「そっちじゃないです! もう……!」
ふふふ、形勢逆転。今日の後悔なんか明日の俺に任せとけ。
今はこの楓さんいじりを楽しむのだ……!
「そっち、ってどっちでしょう?」
「……わかってるくせに。……酷いですプロデューサー」
「拗ねないでください。可愛いですよ?」
「うー……!」
「ははは! 怒ってる楓さんも可愛いですよー!」
ただ、やりすぎると後が怖そうなのでここらへんで止め――
「……好きって、言ってください」
「…………はい?」
ようとして不意打ちを食らってしまった。
酔いのせいでろくに回らない思考が完全に停止し、理解が追いつかない。
「え、あの楓さん?」
「好きです、プロデューサー。貴方の目が、声が、心が。貴方の何もかもが大好きです」
先程までのふざけた雰囲気が一転する。とんだ特大級のカウンターがあったものだ。
ようやく理解が追いつくが、泳ぐ目は楓さんの潤んだ瞳やしっとり濡れた唇を追いかける。
「……ふふ、やっぱり貴方のそういう顔、可愛いと思います」
「楓さ」
アルコールに混じった甘さと『楓さんの唇、やわらかいなぁ』なんて他人事のような思考が頭の中を支配して魅了していく。
ほんの一瞬なのに永遠のように感じられたその甘美な温もりは、余韻を残して冷めていく。
正常な思考すら奪われてもなお、どうしても目の前の女性から目を離せずに居た。
「……プロデューサーは、私の事好きですか?」
どうやら、『高垣楓』という女性は酒よりもたちの悪い酔い方をするらしい。
彼女の全てに酩酊して、魅了された今の俺に彼女に抗うすべはない。
ずるいなぁなんて思いながら、先程の冗談交じりではなく、心からの本心を彼女へ。
酔った楓さんは強引でゴーイングマイウェイ。
そして、下手に刺激すると彼女の魅力に酔わされる。
いい教訓だ、覚えておこう。
元スレ
【モバマス】楓「二日酔いの誘惑」
http://wktk.open2ch.net/test/read.cgi/aimasu/1503427382/
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コメント一覧 (30)
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- 2017年08月23日 06:29
- SSに完璧を求めすぎ
好きなら好きでいいだろ
もっと気を抜いて読めねぇのか
めんどくさいやつだな
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- 2017年08月23日 07:55
- ※1
全部一から十まで説明してもらわないといけないのか。足りない部分を想像することはできないのか。
自分が想像力や柔軟性において大きく劣った人間であることに留意したうえで書き込んだ方がいいと思うぞ。
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- 2017年08月23日 07:57
- 個人的なことは
「●●するべき」とかではなく、
何々した方が好みとでも
書いておけばいいと思うよ。
自分の意見を書くなとは言わんけど。
文章に100パーセントの正しいはないんだから。
人が書いてる以上はね。
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- 2017年08月23日 08:47
- ※3
その現場を想像したからこそおかしいことに気づいたんだろ
物理的に再現が難しいことすら「SSだから」で受け入れるのは、それこそ想像力の欠如
愚鈍な思考停止でしかない
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- 2017年08月23日 09:47
- 気持ちのいい話に対して気持ち悪いコメントだよな
物語の本質に全く関係ない所が気になるんだな
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- 2017年08月23日 10:41
- ※1
状況は思いついてるけどそれに対して理解納得したくないだけやろ
つまりただただ気に入らないだけなんだよなぁ
思考力どうこうじゃなくて受け入れる能力に欠けてるだけやんけ
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- 2017年08月23日 10:46
- まったりなイチャコラ大好物だから良かったわ。さあ、次々書くのです。
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- 2017年08月23日 10:54
- SSは頭からっぽにして息抜きに読むもんじゃないのか…。
かわいい、きれい、それでよいじゃないか!
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- 2017年08月23日 11:09
- 物語の本質(笑)
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- 2017年08月23日 11:34
- ※10
きも
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- 2017年08月23日 12:08
- このあとめちゃくちゃ
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- 2017年08月23日 12:37
- 別にテーブル挟んでなくても身を乗り出すのは可能だしな
何勝手にテーブル挟んでるんだから
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- 2017年08月23日 13:38
- めんどくさ
じゃあ個室で向かい合わせで飲み始めました
最初の台詞の時に隣にススッと寄って来ましたってことでいいやろ
書いてなくも自分で補完出来んか?
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- 2017年08月23日 13:47
- 荒れてんなぁ
自分はこういう雰囲気ただただ好き
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- 2017年08月23日 20:28
- 米欄を荒らす人はもうかえっでください…ふふっ
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- 2017年08月23日 20:33
- たった
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- 2017年08月23日 20:50
- ※14
俺の妄想によれば、
最初は堀炬燵の個室で向かい合わせ
>8の「ほらほら~」あたりで座席を滑りながら右隣へ
インド人も納得!
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- 2017年08月23日 22:51
- ※5
お前さんの頭の中にいる登場人物って全く動かんのか?
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- 2017年08月23日 23:33
- このレベルのSSですら荒れるんか
ホントに象は質が悪いよな
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- 2017年08月24日 00:35
- 質は悪いけど荒れてるっていうより一人が発狂してるだけなんだよなあ
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- 2017年08月24日 01:17
- ※1 5
気持ち悪すぎる。
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- 2017年08月24日 03:49
- 親密な雰囲気は漂っていたけれど、状況を描写が少しだけ足りなかったでいいんじゃない。
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- 2017年08月24日 08:13
- 居酒屋にはペアシートと言うのがあってだな
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- 2017年08月24日 10:24
- ※5
Pが音速で動いたり分裂するSSを普通に受け入れてしまってた自分はだいぶ思考停止してるなぁ(白目)
そもそもPって何者だっけ(錯乱)
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- 2017年08月24日 12:40
- 場所から時間から店の間取りからいちいち説明を始めるSSあったらそれこそ最初の数行で読む気なくすな
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- 2017年08月24日 12:52
- ※23
うん、それで終わる話なんだけどね
与えられた情報(この場合はSS)を自分の中で昇華出来ない人が発狂しててね…
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- 2017年08月24日 15:18
- なんで面白いか面白くないかでスパッと言わないで、変に論者ぶってるんですかねぇ……
ここ感想のコメント書くところであって討論会場じゃないぞ……?
俺はこの作品好きだぞ。
状況描写が詳しくないからこそ想像掻き立てられてそのシーンを想像できるし、雰囲気とかもう大好物だわ
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- 2017年08月24日 18:05
- ※28
それが出来ない奴が暴れた跡なんだぞ
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- 2017年08月25日 00:41
- 頭からっぽにして読め!
以上!!!
居酒屋?カウンターかと思ったけど人前でアイドルがキスはありえないし
じゃあ個室か…身を乗り出す、ってことは差し向かいかな?でもテーブル挟んだ距離で相手をポカポカ叩くのは無理だろう…
となると隣合わせ、でないとキスも簡単にはできないよな
しかしまだこの二人はっきり付き合ってはいないっぽい…それなのに個室で端から隣合わせに座るだろうか?
作者にはもうちょっと整理して欲しかった