男「俺に一回いいことするとスタンプを一つ押す“俺スタンプカード”を作ることにした」
- 2017年08月07日 04:10
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男「いえ、結構です」
店員「失礼いたしました」
男「最近さ、どこの店でもスタンプカードやらポイントカードやらやってるよな」
友人「そうだな」
男「ほら見てくれよ。財布の中、カードだらけ」ギッチリ…
友人「少しは整理しろよ……」
友人「そりゃあれだろ。リピーター増やすためだろ」
友人「それに、同じような店があったとして、一方はスタンプカードあり、一方は無しだったら」
友人「みんなスタンプカードがある方に行くだろうし」
友人「スタンプやポイント貯めるために必要以上に来店する効果も期待できるだろ」
男「スタンプカードにはお得感を感じさせる効果があるってことか……」
友人「なんだ?」
男「俺、いいこと思いついた!」
友人「いいこと?」
男「俺さ……“俺スタンプカード”を作ろうと思うんだ」
友人「“俺スタンプカード”……? なんだそりゃ」
友人「うん」
男「スタンプカードのルールはもちろん、“俺に一回いいことをしたらスタンプを一つもらえる”!」
友人「それで……?」
男「そうすりゃみんな、スタンプ欲しさに俺に親切にするって寸法よ!」
友人「えええええ……?」
男「ってわけで、さっそくスタンプカードを手作りするぜ!」
男「100枚作った! あとスタンプもな!」
ジャン!!!
友人「うおおお……すげえ」
友人(この労力をもっと他のことに使えよ)
男「スタンプの欄は20個、つまり20回親切にすれば満タンになる」
友人「20回もかよ……強気な設定だな」
男「これを道ばたに置いて、と……」ドサッ
男「きっと明日になったら、通行人が全てのカードを持ってってるに違いない!」
友人(絶対一枚も減ってないと思う……)
男「おおっ! 100枚全てなくなってる!」
友人「マジで!?」
男「ってことは、100人は“俺スタンプカード”に興味を持ったってわけだな」
男「その人たちがどんな親切してくれるのか、楽しみだぜ!」
友人(掃除の人にゴミとして捨てられただけってオチじゃねえかなぁ……)
男「ん?」
少女「暑いので、お水をお持ちしました!」
男「こりゃどうも」グビグビ
男「っぷはーっ、よく冷えてるね! どうもありがとう!」
友人(なんだこの女の子?)
男「いいとも!」ポンッ
少女「これで一個目! やったぁ!」
少女「また来るからね!」スタタタタッ
男「な? さっそくスタンプ欲しさに親切する子がやってきただろ?」
友人「う、うん……」
友人(まあ、子供はこういうイベント好きだろうしな)
男「なんですか、おじいさん?」
老人「おこづかいをあげよう」チャリンッ
男「こりゃどうも! ありがたくいただきます!」
友人「えええええ!?」
男「ああ、はいはい」ポンッ
老人「よっしゃ! あと19個じゃ!」
男「また来て下さいね~」
老人「また来るよ~」スタスタ
男「へっへっへ、儲け儲け」
友人「あんなジイさんまで……」
キキッ!!!
DQN「よう」ザッ
男「うわっ!?」
友人「なんだこいつ!?」
友人(どう見ても、親切しにきたようには見えないが……)
男「これは本……≪ケンカ必勝法≫か」
DQN「この本を一通り読めば、突然強盗や通り魔に襲われても安心だぜ!」
男「どうもありがとう!」
DQN「じゃ、スタンプくれ」サッ
男「はいよ」ポンッ
DQN「ありがとよ! じゃな!」ブロロロロ…
男「ふぃー、ちょっとビビったよ」
友人「あんな悪そうな奴まで……すごい効果だな」
男「まさか、こんなに反響があるとは思わなかったな」
友人「まったくだ……」
友人(世の中、俺の予想以上にお人好しというか暇人が多いんだな)
男「よぉ~し、もっともっとカードを量産(コピー)して、親切にしてくれる人を増やすぞ~!」
…………
友人「……あれからどうだ?」
男「おかげで毎日快適だよ!」
男「バスや電車じゃ必ず席譲ってもらえるし、おやつやジュースもらえるし」
男「こないだなんて、若い女性に手料理まで作ってもらっちゃってさぁ~」
友人「へぇ~……(ちょっと羨ましいじゃねえかよ)」
男「最近じゃ、俺に親切にしたい奴らが行列を作るようにまでなってさ」
友人「行列!?」
男「忙しいったらないよ! じゃな!」スタスタ
友人「……」
男「はいはい」ポンッ
少年「レアなカードあげる!」
男「はいよ!」ポンッ
女子大生「お弁当作ってきましたぁ~ん」
男「ほいっ!」ポンッ
男「押さないで、押さないで! 俺にいいことしたら、ちゃんとスタンプは押してあげるから!」
ポンッ ポンッ ポンッ
………………
…………
……
男「ん~……そろそろ20個集める奴が出てくる頃合いだな」
友人「……ところでさ」
男「なに?」
友人「誰かが20個貯めたらどうすんの?」
男「どうするって?」
友人「当然、なにか特典があるんだろ?」
男「え」
男「考えてなかった……」
友人「ハァ?」
友人「どうすんだよ、スタンプ集める理由の一番大事なとこじゃねえか!」
友人「20個集めてなんもなかったら……怒る人絶対出てくるぞ!」
友人「それがもし、いつだったかのDQNみたいな奴だったら……」
男「やばい……どうしよう!」
ズラッ……
男(今日も大勢が、俺に親切するために並んでる……)
男(中には常連もいて、もう19個貯まってるって奴も多い)
男(かといって特典なんかなんも思いつかない……どうしよう、どうしよう……)
男「肩を揉んでくれて、どうもありがとう」
少女「じゃあ、スタンプください!」サッ
男「い、いいよ……」ポンッ
少女「やったーっ! これで20個集まった!」
オオォ~……!
パチパチパチパチパチ… パチパチパチパチパチ…
男(ううう……こうなったら!)
少女「ふぇ?」
男「せっかく20個スタンプ集めてくれたところ、悪いんだけど……」
男「実はこのスタンプカード、まだ特典の類をまったく用意してなくて……!」
男「俺からあなたたちに何も差し上げることはできないんだ!」
男「申し訳ありませんっ! 許して下さいっ! この埋め合わせは必ず……!」
男「……へ?」
少女「だってあたし、何かが欲しくてスタンプ集めてたわけじゃないし」
少女「親切して、スタンプ押してもらうのが楽しいんだもん!」
少女「だから新しいカードちょーだい!」
男「……!」
「そうそう!」 「別に特典なんかいらないよ!」 「スタンプ集めが楽しいんだから!」
男(そうか、そうだったのか……)
男(この人たちは“スタンプ集め”そのものを楽しんでたんだ……)
男(たしかにラジオ体操のスタンプなんか、休まず出たところで何かをもらえるわけじゃなかったけど)
男(集めるの楽しかったもんな……)
男(スタンプカードは、スタンプを集める過程こそに価値があるって人も大勢いるんだ……!)
男(こんな俺のためにスタンプを集めてくれて、本当にありがとう)
男(俺ってダメな奴だけど、せめて……)
男(せめて少しずつでも、みんなに親切を返していこうと思う……!)
男(こっちだって苦労してカード作って、しかもスタンプを集めるという楽しみを与えてやってるんだ!)
男(むしろ、こいつらをもっと利用しなきゃ損だ!)
男(こうなったら徹底的に“俺スタンプカード”を満喫してやるぜ!)
男「いいか、みんな! 今日からはもっともっと俺に親切にしろ!」
男「プレゼントも、安物じゃスタンプはあげないからな! 高いやつ持ってこい!」
オーッ!!!
男(どんどんスタンプの基準を引き上げ、次々と高額商品を貢がせ)
男(身の回りのことも全部“俺スタンプカード愛好家”にやらせ)
男(美人がいたら“俺の女になればスタンプ何個も押してやるよ”と持ちかけた!)
男(おかげでハーレムが出来上がった!)
男(ヒャッハーッ、“俺スタンプカード”さまさまだぜ!)
男「さあ並んで並んでーっ! スタンプの押印を始めるよー!」
男「プレゼントなら1万円以上じゃないとスタンプはあげないよ!」
男「女性はキスはスタンプ1個、彼女になったらスタンプ5個あげるよー! ただしブスはお断りだ!」
青年「あ、あのニンテンドースイッチです」
男「お、ありがと! さっそく転売するよ! ほら、スタンプ!」ポンッ
ポンッ ポンッ ポンッ
男「うへへ……」ホワァァァ
女子高生「キスしたから、スタンプください!」
男「あいよ」ポンッ
男「……あれ?」
ポンッ ポンッ ポンッ
男(スタンプが押せない……インク切れだ。チッ、しょうがねえな)
男「すみません皆さん、インクが切れちゃったんで、今日のスタンプ押印は無しということで……」
女子高生「ハァ? なにいってんの?」
「ふざけんなーっ!!!」
男「え」
男「え……え!?」
男(まさか、こんなに怒るなんて……!)
男「わ、分かった! じゃあインク補充してくるから、ちょっと待って……」
「待てるかっ!」 「スタンプよこせーっ!」 「俺はもうすぐ20個貯まるんだぞ!」
男「ひ、ひいい……!」
「押さなきゃただじゃ済まさないぞ!」
「スタンプを押せぇぇぇっ!」
「押せ」 「押せ」 「押せ」 「押せ」 「押せ」 「押せ」 「押せ」 「押せ」
ザッザッザッザッザッ…
男「あ……あ、ああ……あああ……」
男「く、来るな……来るなァッ!」
うわあぁぁぁぁぁ……!!!
…………
友人(そういやあいつ、どうしてるかなー。最近会ってないけど)
友人(今日もみんなからスタンプ目当てで親切にしてもらってるのかな)
テレビ『昨日、ある男性が大勢の人間に踏み潰されて死亡する、という痛ましい事件が発生しました』
テレビ『事件が起こった詳しい原因はまだ分かっておりません』
テレビ『目撃者の証言によると、遺体には無数の足跡がつき、体はぺしゃんこになっており』
テレビ『まるでスタンプカードのようだったと……』
― 終 ―
元スレ
男「俺に一回いいことするとスタンプを一つ押す“俺スタンプカード”を作ることにした」
http://vipper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1502013958/
男「俺に一回いいことするとスタンプを一つ押す“俺スタンプカード”を作ることにした」
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コメント一覧 (20)
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- 2017年08月07日 04:35
- 転売に草
面白かった。
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- 2017年08月07日 06:52
- これはまるでソシャゲでSSR確率をたった0.01%上げることよりも、そのサービスが終了することを嫌がるやつしか居ないことのようではないか!
なんて高度な皮肉なんだ!!
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- 2017年08月07日 07:50
- おもんな
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- 2017年08月07日 08:01
- 毎回落ちが好き
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- 2017年08月07日 08:21
- 最後が面白かった(小並感)
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- 2017年08月07日 09:03
- インガオホー
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- 2017年08月07日 09:55
- 世にも奇妙な風やんな
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- 2017年08月07日 12:04
- この男が自分に対して何かいいことをする
↓
いいことをしたのでスタンプを押す
↓
スタンプを押すのはいいことなのでまたスタンプを押す
↓
スタンプを(ry
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- 2017年08月07日 12:42
- なるほど、世にも奇妙な物語だ。
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- 2017年08月07日 13:41
- うまくおちてる
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- 2017年08月07日 19:03
- おーほっほっほっ
まさか、カードだけでなく自身にスタンプを押すとは
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- 2017年08月07日 20:32
- 週刊ストーリーランドとも言えるな
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- 2017年08月07日 21:04
- 男ざまぁ
因果応報はすっきりする、やったぜ。
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- 2017年08月07日 21:40
- 落ちで台無し
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- 2017年08月07日 21:56
- 面白いな
俺もこういうの書けるようになりたい
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- 2017年08月08日 02:41
- 実際集めることに意味もっちゃって集めたあとはただ満足することなんて日常的だわな
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- 2017年08月08日 02:43
- なんとか祭り
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- 2017年08月08日 23:02
- 面白かったぜ
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- 2017年08月10日 11:53
- オチまで完璧やん
「俺スタンプカード」 終