【ガヴドロ】ヴィーネ「傘忘れちゃった……」
- 2017年07月19日 01:40
- SS、ガヴリールドロップアウト
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ヴィーネ「はぁぁ……家まで三駅は歩かないといけないし、サイフには34円しかないし、この時間じゃATMも動いてないだろうし……」
ヴィーネ「明日は風邪で出勤かぁ……」トボトボ
プルルルル
ヴィーネ「はい、もしもし?」
ガヴリール『ああ、私だけど。帰り遅いじゃん。どうしたの?』
ヴィーネ「ガヴ。ああいや、前にも言ったと思うけど、月末はやること山積みで……」
ガヴリール『外、雨凄いけど大丈夫?』
ヴィーネ「うあー……。アイロンとお風呂の準備だけしておいてもらえる?」
ガヴリール『……ヴィーネ、今どこら辺? 会社出てすぐ?』
ヴィーネ「ふえ? ええ、ローソンの近くだけど」
ガヴリール『ちょっと近くの軒下に避難しといて』
ヴィーネ「え、ちょ、ガヴ? ……切れちゃった」
ヴィーネ「まあありがたいけど、往復で六駅分もガヴが歩けるのかしら」
ヴィーネ「う、見える。結果的に私がおぶって濡れ鼠。そのまま二人仲良くお陀仏する未来が……」
ヴィーネ「今からでも考え直してもらわないと……」ピポパ
ガヴリール「おまたせ」
ヴィーネ「うひゃああああああああ!!」ビグッ!
ガヴリール「そこまでビビられるのは心外なんだけどな」
ヴィーネ「え、え!? なんで!? だってすぐに家出たとしても……」オロオロ
ガヴリール「てーんしのはねひろーげてー、みんなにーしゅーくーふーくをー」ファサァ
ヴィーネ「ああ、なるほどね……」
ガヴリール「だって天使ですもの」ドヤァ
ヴィーネ「神足通って、乱用しちゃいけないんじゃなかった?」
ガヴリール「みだりな使用じゃないよ。然るべきタイミングで発動しただけ」
ヴィーネ「ものは言いようね」
ガヴリール「ほい、傘」
ヴィーネ「ありがと……」
ガヴリール「あれ? 前にも一回あったぞ。ヴィーネが飲み会でべろんべろんになった時。
係長さんから私に電話がかかってきて、寝ちゃったから回収しに来てくれって」
ヴィーネ「え。そんなことあった?」
ガヴリール「あったよ」
ヴィーネ「……その節は、大変ご迷惑をおかけしました」
ガヴリール「いえいえ。もう慣れました」
ヴィーネ「い、一応弁解するけど、ちょっと飲んだからもう止まらなくなっちゃうのよ!
だから、その、ね?」
ガヴリール「それって弁解になってなくね? 尚のこと駄目じゃん」
ヴィーネ「うぐぅ……。お酒は控えめにします」
ガヴリール「いや、別に制限かけるつもりはないよ。
ちょっとは考えた方がいいんじゃないかってだけだって」
ヴィーネ「……善処する」
ガヴリール「うんうん」
ヴィーネ「なに?」
ガヴリール「お前と、こんな長い付き合いになるなんて考えもつかなかったなって思ってさ」
ヴィーネ「……ああ、そういえば、そうね」
ガヴリール「本当は卒業したら、魔界に帰る予定だったんだっけ?」
ヴィーネ「うん。向こうにお父さんが働いてる福祉関連の会社があるの。
それで、縁故採用してもらえる手はずだったんだ」
ガヴリール「うん」
ヴィーネ「でも、後悔してないわよ。下界で頑張るって決めたのは私だし」
ガヴリール「……ごめん」
ヴィーネ「なんでガヴが謝るのよ」クスッ
ガヴリール「だって、私がもうちょっとちゃんとしてたら……」
ヴィーネ「自惚れないの。私がここにいるのは、私の意思なんだから」
ガヴリール「うん。それも、そうだね」
ヴィーネ「だからガヴはなにも気にしなくていいのよ。わかった?」
ガヴリール「うん。あんがと」
ヴィーネ「うわー、懐かしいわねー」
ガヴリール「あの日、私がお前に声かけなかったらどうなってたんだろうな」
ヴィーネ「……む」
ガヴリール「学校は同じだし、魔界出身だし、仲良くなってたのかな」
ヴィーネ「ど、どうかしらね。ガヴがネトゲにハマったのは自発的なものだし、もしかしたら早々不登校になったのかも知れないわ」
ガヴリール「あー、それだったらお前らとも関わってないわ。
今ごろヴァルハラ王国で神って担ぎ上げられてテングになってるのかね」
ヴィーネ「……」ムスッ
ガヴリール「ヴィーネ?」
ヴィーネ「そんな悲しいこと、言わないでよ」
ガヴリール「あ」
ガヴリール「……そこ、自販機あるけどさ、なんか飲みたいものある? 奢るぞ?」
ヴィーネ「ミルクティー」
ガヴリール「紅茶花伝と午後ティーどっちがいい?」
ヴィーネ「紅茶花伝かしら」
ガヴリール「ん」
ガヴリール「……えーとさ、さっきの話だけど」
ヴィーネ「なによ、ガヴは、その……嫌いなの?」
ガヴリール「……嫌いじゃないよ」
ガヴリール「パラレルワールドの救いようのない私と、ここで歩いてる私とは別人だ」
ガヴリール「ここにいる私は、その――」
ガヴリール「お、お前らに出会えて……えと、よかったと、お、思って、るから」カァァ
ヴィーネ「……うん。ごめんね、意地悪言って」
ガヴリール「全くだよ」
ヴィーネ「言い出したのガヴだけどね」
ガヴリール「うわ、私華々しく自爆しただけじゃん」
ヴィーネ「ふふっ」
ガヴリール「あはは」
ガヴリール「ん?」
ヴィーネ「今度こそ、聞いてくれる?」
ガヴリール「……なにを?」
ヴィーネ「私の、想いとか、そういうの」
ガヴリール「明日、電車代はどうする? 金無いんだろ?」
ヴィーネ「ねえガヴ」
ガヴリール「後で建て替えてくれればいいからさ、帰ったら渡すよ」
ヴィーネ「ガヴ」
ガヴリール「……」
ガヴリール「……うん」
ヴィーネ「そのみんなに私は含まれる……かしら」
ガヴリール「当たり前だろ、そんなの」
ヴィーネ「本当に?」
ガヴリール「怒るぞ?」
ヴィーネ「ごめんなさい。でも、時々不安になるのよね。だって、ガヴが――」
ガヴリール「ヴィーネ、お前疲れてるんだよ」
ヴィーネ「ふふっ、そうかも」
ガヴリール「夕食は食べた?」
ヴィーネ「……」
ガヴリール「返事してくれないと、困るんだけど。途中でコンビニとか寄れないじゃん」
ヴィーネ「その言葉、そっくりそのまま返したいわよ」
ガヴリール「私は駄天使なんだ。多少のことは大目に見てよ」
ヴィーネ「そうやって逃げないでよ」
ガヴリール「逃げてなんかない」
ガヴリール「……ヴィーネ、傘転がって行ったけど」
ヴィーネ「うん」
ガヴリール「これじゃあ私が傘持って来た意味ないじゃん」
ヴィーネ「そうね。無駄になっちゃった」
ガヴリール「自分が何しようとしてるのか、わかってるの?」
ヴィーネ「ガヴに」
ヴィーネ「キスしようとしてる」
ガヴリール「……それがさ、どういう結末を呼ぶのか想像できる?」
ヴィーネ「きっと、いま以上に白い目で見られるでしょうね」
ガヴリール「離れてよ。今ならまだ、女友達の悪ふざけで済む」
ヴィーネ「だって、こうやって捕まえていないと、まだはぐらかされるじゃない」
ガヴリール「今のままじゃ、駄目なの?」
ヴィーネ「私は苦しいわよ」
ガヴリール「私だって、お前にここまで入ってこられて、苦しいよ」
ヴィーネ「……意気地なし」
ガヴリール「だって駄天使ですもの」
ヴィーネ「……ごめんね」
ガヴリール「大丈夫だから。泣きそうな顔するな」
ヴィーネ「うん……」
ヴィーネ「あーあ。これが音に聞く失恋ってものなのかしらね」
ガヴリール「違うよ。断言する」
ヴィーネ「へ?」
ガヴリール「……なんでもないよ」
ヴィーネ「ガヴ、ねえ! それって……」
ガヴリール「拡大解釈するなよ。私は違うって言っただけだ。さっきの返事じゃないって」
ヴィーネ「……どうして?」
ガヴリール「……今のままで、いいじゃん」
ヴィーネ「どうして?」
ヴィーネ「私は、ガヴを拒絶したりなんかしないわ」
ガヴリール「違う。そうじゃない」
ヴィーネ「どういうこと?」
ガヴリール「変わることがさ、ずっと怖かった」
ガヴリール「変わって、離れていくくらいならさ、私は今のままでいいって思うんだ」
ヴィーネ「ガヴって悲観的ね」
ガヴリール「だから私はさ、今を保つために、盲目の子も、サターニャの犬も助けた」
ヴィーネ「立派だったわよ。そういえばこいつ天使だったって再認識したもん」
ガヴリール「臆病なだけだってば」
ヴィーネ「でもね、ガヴ」
ヴィーネ「私たちも変わったわよ。あの頃と比べると、前に進んだのか後退したのかさっぱりわからないけど」
ガヴリール「そう、だね」
ヴィーネ「でもね、私たちは離れていない」
ヴィーネ「だから、きっと大丈夫だと思うの」
ヴィーネ「駄目、かな」
ガヴリール「なんで、そこまで私にこだわるんだ」
ヴィーネ「好きって、そういうものじゃないの?」
ガヴリール「もっといい奴がいる」
ヴィーネ「そうね。でも私、相対的には駄目な悪魔だから。きっとそういう視点も駄目なんだと思う」
ガヴリール「駄目と駄目を掛け算したらよくなるってわけじゃないよ」
ヴィーネ「そんなことは最初から期待してないわよ」
ガヴリール「……なん、で」
ヴィーネ「ガヴは気づいていないかも知れないけど、ガヴは私を迎えに来てくれたから」
ガヴリール「そんなこと、誰だって出来るよ。極論、サターニャやラフィエルでも構わない」
ヴィーネ「でも来てくれたのはガヴよ」
ガヴリール「……ああ、うん。そうだったね」
ヴィーネ「なに?」
ガヴリール「目、瞑って」
ヴィーネ「……うん」
ガヴリール「……るさい」
ヴィーネ「ふふっ、真っ赤になっちゃって可愛い」
ガヴリール「て、手慣れた風で腹立つ……! 既に経験とかあるんじゃないだろうな……」
ヴィーネ「クスッ、ガヴって意外と独占欲強いわね」
ガヴリール「そ、そういうわけじゃ……」
ヴィーネ「でも、気になるでしょ?」
ガヴリール「……うん。もしかしたら、そうなのかもな」
ヴィーネ「ありがとね」
ガヴリール「どうしてお礼言うんだよ。普通、鬱陶しがるところだろ、これ」
ヴィーネ「でも、嬉しくって」
ガヴリール「ふん」
ヴィーネ「安心して。ガヴが、私の全部だから」
ヴィーネ「だから脅えなくても、ましてや不安にならなくてもいいから」
ガヴリール「……やめてよ。泣いちゃうじゃん」
ヴィーネ「胸貸そうか?」
ガヴリール「……うるさい」
ヴィーネ「ん?」
ガヴリール「やっぱり思うんだけどさ」
ヴィーネ「うん」
ガヴリール「迎えに来てくれたのは、お前だよ」
ガヴリール「ありがとう。ずっと見放さないでいてくれて」
ヴィーネ「……ぁ」
ヴィーネ「もう、ガヴは本当にしょうがないんだから」
終われ
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ヴィーネ「傘忘れちゃった……」
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ヴィーネ「傘忘れちゃった……」
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コメント一覧 (14)
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- 2017年07月19日 02:00
- あ、悪魔と先輩の幸せな未来!?
あ、ありえません!!そんなこと!!!!
先輩と結ばれるのは私と決まってます!!
あ、悪魔なんかと…先輩が…結ばれるなんて…
うわああああああああああああああああああああああああああ
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だああああああああああああああああああ
これは夢これは夢これは夢これは夢これは夢これは夢これは夢
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- 2017年07月19日 03:14
- タップリン...
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- 2017年07月19日 06:56
- すごく良かった
幸せ
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- 2017年07月19日 08:09
- ガヴィーネ尊い
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- 2017年07月19日 08:56
- こういうの好き
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- 2017年07月19日 08:59
- これはいいね
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- 2017年07月19日 10:34
- た…尊い
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- 2017年07月19日 11:35
- タプちゃん・・・
それはそうと良いものでした
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- 2017年07月19日 12:37
- 尊い
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- 2017年07月19日 14:08
- タプちゃん…
ガヴィーネいいぞ^~
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- 2017年07月19日 21:59
- あら^~
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- 2017年07月20日 23:49
- 大人になった二人は、どんな姿になっているのかな
少し切ない感じで、でも凄く良いです
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- 2017年07月21日 16:37
- いちいち説明とかしないで世界観作ってるの好き
一瞬自分がロリコンなんじゃないかって錯覚しそうになる時がある
まったく天真先輩はイケない子ですね!