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【モバマス】早坂美玲「アイドルサバイバルin仮想現実」【その2】

関連記事: 【モバマス】早坂美玲「アイドルサバイバルin仮想現実」【その1】











375: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/13(水) 23:48:16.20ID:QW+Val6U0



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
北条加蓮&神谷奈緒



のあ(ボット)「......みく...」



消えていく。守ろうとした仲間が消えていく



巴(ボット)「よそ見たぁ余裕じゃのう!」


その横顔に叩き込まれた銃弾がのあの肩から上を真っ平らに吹き飛ばした


そして、数瞬の後には元通りに......少なくとも見た目だけなら全く同じ姿に再生する



アナスタシア(ボット)「のあ。...みくが...」

のあ(ボット)「......ええ、見落としたわ。まさかぬいぐるみまで動かせるなんてね...」

アナスタシア(ボット)「みく...三人で一緒にいたかったです...」



そう言うアナスタシアの体を何箇所か覆う鎧、氷でできたそれにもいくつか穴が空いていた


内部まで貫通してないのが救いだが、得体の知れない攻撃力の巴の前にこの防御力もいつまで続くかわからない


のあ(ボット)「ここはもう退いてしまいましょう、刻限も近いことだし」


アナスタシア(ボット)「そうで、っ!?」


バキンッと音を立ててアナスタシアの仮面が半壊する、半分に割れた仮面の奥から端正な顔が覗いた。

その表情は一見すると無表情。たった今消失した仲間に対して何も思うところがないかのような顔つきだった


巴(ボット)「なぁにをべちゃべちゃ喋くっとんじゃ!おどれらの売った喧嘩じゃろ!!」


巴の声が二人を叩く。


のあ(ボット)「____そうね。じゃあ終わらせましょう」


それはあっけないほどに単調な声。目的を奪われたような空虚な声



この戦闘に、彼女の言うレッスンにはもう価値などなくなったとでも言いたげな雰囲気でゆっくり腕を持ち上げる


巴(ボット)「っ!させるかいっ!!」


先んじた巴の銃撃がのあの腕から先を吹き飛ばす。

だがそれも効果はない

変化はすでに起きている



376: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/13(水) 23:49:13.70ID:QW+Val6U0



巴(ボット)「なっ!?」


粉塵を巻き上げ巴の足元が畳返しのようにめくれ上がる。

それも前後左右から巴をすっぽり包み隠すように

いくら強力な能力であろうともそれが最大限に発揮できるのは一度に一方向のみ。


その隙を突かれた


巴(ボット)「しゃらくさい!」



壁のように四方から立ち上がった壁の一枚に弾丸を撃ち込む。


一発では砕けず、続けざまに何発か撃ち込んだことでようやく壁の一枚が中程で崩れ落ちた


それを蹴倒して包囲から抜け出す。


その頃にはあの二人の姿は消えていた。



巴(ボット)「......ほう」




その代わりに




奈緒「よう、巴」





本来の敵、ボットが討伐すべき対象がそこにいた。







ゲーム開始59分経過

北条加蓮&神谷奈緒

VS

村上巴(ボット)

開始

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



377: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/13(水) 23:50:31.99ID:QW+Val6U0



じゃらり


巴の右腕から細身の鎖がぶらさがる。

鎖は元の細さに戻っていた


奈緒「...わるいな、逃げてばっかで」


まるっきり悪びれず、飄々とした様子で、あまつさえひらひらと手を振りながらそんなことを言う奈緒に巴の銃口が持ち上がる


もう片方の手に握られた銃も狙いを定めるでもなく垂れ下がっている


巴(ボット)「ようやっと覚悟決めよったかいの...あ?もう一人はどこじゃ」

奈緒「巴ならわかるんじゃねえのか?」

「今まで完璧なタイミングでアタシたちにカウンター決めてきたじゃん」


彼我の距離は10メートル、声は届くが銃弾を当てるのは素人にはやや難しい。そんな距離


しかし巴にこの距離は関係ない。ただひたすらに強力な攻撃は攻撃範囲などに縛られない。




___のだが、巴はその攻撃を放たない。鎖は相変わらず細いまま静かに巻きついていた。



巴(ボット)「__?」


その鎖が長く、そして太くなるのはなにも示威行為ではない。それは大砲に匹敵する威力を銃弾に付加させる際、反動を抑えるためだ。

逆に言えば鎖が細いままの今、彼女の武力、ひいては攻撃力は拳銃一丁分か、あるいは____



奈緒「ばんっ!」


手に持った銃をもち上げ


パンッ!


巴(ボット)「!」

奈緒が巴に向けて引き金を引いた、


「遅れて」巴も反撃の一発を放つ。


二人の攻撃はどちらも外れた。

しかも奈緒めがけて放たれた巴の弾は外れるどころか大した威力も発揮せず土煙を上げるだけだった

巴(ボット)「(どうなってるんじゃ...うちの能力がなんも反応しよらん)」

その違和感を何より受け取るのが能力の使役者本人だった。目の前で起きている事実と本来起きるはずの予想が違いすぎる

本来なら巴に向けて攻撃をしようとしたプレイヤーは今頃、粉微塵のはずだ。なにせこれほどあからさまに敵対しようとしているのだから__




奈緒「っはは。マジで巴の能力発動してねえじゃん」

巴(ボット)「っ!」



378: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/13(水) 23:51:59.79ID:QW+Val6U0



奈緒「おいおい、無茶するなよ、それにそんな細い腕だけじゃ銃の反動を抑えきれないんだ、ろっ!!」


スタートダッシュ


次の攻撃代わりに奈緒が走り出す

銃を持った相手に無謀極まりないが、それでも一目散に


ダンッ!


巴もそれに応戦し、発砲するが細いままの鎖と細い両腕だけでは大型の銃の反動を殺しきれず。弾がうまくは当たらない


パンッ!


逆に走りながらの奈緒から牽制に放たれる銃声に反応してしまう


もちろん走りながら撃たれた弾丸が巴に当たることはない。

それどころかどこに飛んでいったのかもわからないことからかなり見当違いの方に飛んでいったようだ

巴(ボット)「どぉなっとるんじゃこりゃぁあ!!?」


本来なら、自分に仇なす輩に有無を言わせぬ攻撃が叩き込まれていたはずだ

本来なら、相手が自分を追い詰めようとした時にはそれを返り討ちにしていたはずだ


なぜならそういう能力だから


奈緒「ロボットだろ!自分で考えろ!」


巴の正面を回避し、横っ飛びに転げるようにしながら奈緒が挑発する。


巴(ボット)「言いよるやないけぇ!!」


素早く態勢を整えて発砲するが、反動を抑えきれず、すでに2、3メートルまで接近している奈緒にかろうじてあたらない


だが今は、自慢の武器は威力を発揮せず、自分は追い詰められている


パンッ!

奈緒が腕を無理にひねり、巴に銃を向けると銃声が響き渡る

巴(ボット)「___っしゃらくさい!!」

反射的にその射線からのけぞる。奈緒はもうすぐそこに来ていた

巴(ボット)「_じゃったら、こんだけ近けりゃ当たるじゃろぉが!!」

奈緒「ぅおっ!?」

逆襲。巴は地を蹴ると奈緒へ体当たりした。

右手に銃を掴み、左手で奈緒の体に掴みかかる。たとえ奈緒が銃を持っていようと、このゼロ距離ならむしろ小柄な巴の方が有利だ




がしっ

巴(ボット)「なっ」

奈緒「やっとここまで近づけたぜ」



379: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/13(水) 23:53:10.38ID:QW+Val6U0



その唯一の武器を手放して奈緒は巴の銃身を掴んだ。自分の体に当たらない方向に捻じ曲げる。


巴(ボット)「...っちぃ!!なんでうちの能力が...!」

奈緒「うん?ほらあたしの銃をよく見たら分かんじゃねえのか?」

巴(ボット)「あん!?」


奈緒の拳銃はつかみ合うように互いに膠着した二人のすぐそばに落ちている。


どこにでもあるようなオートマの、巴の得物より少しばかり小さくそれでいて無骨な銃器


なんの変哲もないといえば確かに無い。



黒く固い引き金、撃鉄、遊底、排莢口、照門、安全装置、銃把......そこで終わり



巴(ボット)「おい、おいおいおい...!?」



そこで終わり



つまり銃把の先がない。そこに見えているはずのものがない




”そこ”には暗く、黒い穴があいているだけだった



巴(ボット)「奈緒さん、おどれ、気でも触れたんか!?」



奈緒「でも、加蓮の言った通り、お前の能力発動しなかったみたいだな



巴、お前の能力は__」






巴(ボット)「なしておどれ、チャカに弾どころか弾倉すら入れとらんのじゃ!!?」




奈緒の銃。


そのマガジンを装填するはずの場所にぽっかりと四角い穴があいていた






「お前の身が危険になるほどお前を強くするんだよな?」



380: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/13(水) 23:54:49.79ID:QW+Val6U0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

加蓮は隠れていた瓦礫からそっと見を起こした


彼女の手にはもう一丁の銃が握られ、その銃口から細く消炎の煙が立ち上っていた。


今まで隠れていた彼女は一体何に向けて発砲を繰り返していたのか?


それは奈緒の持っていた空っぽの銃のことを考えれば簡単にわかる。


加蓮は奈緒の「撃つふり」に合わせて適当な場所めがけて発砲し銃声を立て、

あたかも奈緒が発泡したように見せかけていた


奈緒に武器があるように見せかけるように騙すため、奈緒が巴にとっての脅威であると錯覚させるために





奈緒「___で、実際はあたしは丸腰、だから巴の能力も反応せず鎖も細いままだったってわけ」


巴(ボット)「っち、それでなんでうちの能力が自動発動って分かんねん!うちが自分で威力変えられる思うんが普通じゃろ!」



手錠につながった大型の銃が巴と奈緒の間で四つの手に掴まれ、綱引きのようにギリギリと音を立て押さえつけられる

奈緒「んあ、それは__」




加蓮「___それだと、巴のあの予知の説明がつかないからね」



巴(ボット)「二人目、そういやおったのぅ、こうなるんを待っとったわけかい」


加蓮「まぁね、アタシあんまり体動かすの得意じゃないし?」



巴を強敵たらしめていたもうひとつの特性、


予知としか思えない反射速度のカウンター


これも彼女の能力が彼女自身の危険に反応する性質だからこそ出来た技だ。


加蓮「巴が誰かに狙われたのを察知して、手錠の鎖が太くなる。で、巴は腕に巻き付いた鎖の変化で自分の危機を知る。」


「そしたらすぐに周りを攻撃すればいい。威力が上がってるんだから狙いがテキトーでもなんとかなるってこと」


奈緒は巴が、その能力を特に大きく発揮した場面を思い返す。

高峯のあの物量作戦、三好紗南の空爆、そのいずれもが彼女自身を危機に追い込むものだった。



__『なんにせよ、ワレみたいなボロボロの相手なんぞお断りじゃ』___

__『うちは奈緒さんを助けるつもりは微塵もないけえ。ただ奈緒さんのコンディションが回復して十分戦えるようなるのを待っとるだけじゃ』___


奈緒「今思えば最初に会った時のセリフもヒントだったな、あれは自分を脅かすような敵じゃないと逆に戦えないって意味だったわけだ」

巴(ボット)「ぐっ...」



381: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/13(水) 23:56:06.79ID:QW+Val6U0



加蓮「さて、どうしよっかな...ここでアタシが巴に銃を向けるとまた能力発動しちゃうし...」


奈緒「おい!そこは考えてなかったのかよ!」


加蓮「いや、冗談だって」


そう言うと、両腕を奈緒に掴まれたままの巴の服の襟元を掴み、


地面に引き倒した。空を仰ぐように背中から地面にぶつかる



巴(ボット)「げっほ_!?」

奈緒「うおっ、加蓮!?」

加蓮「どれだけ強くても、引き金が引けなきゃ意味ないよね?」

そのまま背中にのしかかる、巴の右手と銃は、狙ってか偶発的なものか巴の体の下敷きになっていた。


さらにその上に加蓮が膝立ちで体重をかけている


奈緒「いや、こえぇよ加蓮」


巴の額に銃口をぶつける、奇しくもそれは以前巴が奈緒にした行為と似ていた

加蓮「じゃあね___」


そして加蓮は引き金を











引かれた








巴が背中の下で引いた引き金は銃弾を放ち、

それは巴の肉体を背中から腹へ貫通した

そのまま加蓮に命中する


______________

 神谷奈緒  31/200


______________
______________

 北条加蓮  31/200


______________



382: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/13(水) 23:58:04.10ID:QW+Val6U0



加蓮「っいったぁ!?」


命中と言っても二の腕のあたりで、それは急所ではなかったようだが思わずのけぞる


次の瞬間、加蓮の下で膨大な体積と質量が爆発的に発生する。



ゴドッゴガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!!



それは鎖、いやもう鎖かどうかわからない。

2トントラックのタイヤのような大きさの鉄の塊が加蓮を押しのけ

いくつもいくつも渦をなして巴に巻きついていく。

ガゴンガゴンガゴンガゴンガゴンガゴンガゴンガゴンガゴンガゴンガゴンガゴンガゴンガゴンガゴンガゴンガゴンガゴンガゴンガゴンガゴンガゴンガゴンガゴン!!

鎖同士が火花を散らしながらぐるぐると巨大な何かへ変貌していく


「げほっ...うちの能力、よう見抜いた、のぅ」


奈緒「加蓮、早く逃げろっ!!」

加蓮「な、なによこれ」


巴の上から弾かれ、尻餅を突いた加蓮を奈央が引きずりながら巴のいた場所、そこにいる鎖の怪物から逃げ出す

「そうや...う...ちの能力は特攻、ほんでカチコミ向きじゃ。修羅場であるほど...熱く、熱く滾ってくるんじゃ...」


ギャリリリリリリリリリッ!!


鎖どうしが引き締め合うように固まる。そこにいたのは全長3メートルはあろうかという生物


いや、生物とは言えない。ただ野太い鎖を全身に巻きその肌を一辺残らず覆い尽くした巴だ



「けど、考えが甘かったのぅ、逆にこうも考えられたはずじゃろ?」



「うちがダメージを負って弱ってもうても能力は発動するってなぁぁあああ!!!」



自分が危険な状態であるほど、その逆境を覆すように強くなる能力


それは向き合う相手が強くあればあるほど強くなるということ

なら逆に自分自身が弱く、弱体化するごとに強くなるというのもまた自明



____________

 村上巴+  9/100


____________




「人間ばらが!!!こっから先は全滅必至じゃ!!覚悟せえよ!!」




383: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/13(水) 23:59:09.04ID:QW+Val6U0




鎖のうずから光が漏れる。それは破壊の光。限界の限界を超えて強化された銃の、その銃口から噴き出す閃光、マブルフラッシュ



___ゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!____



ただの銃弾が隕石のように炎と光の尾を引き、遥か彼方に飛んでいく




その数瞬の後、遠くに見える都会のビル群の一角が、崩れ落ちた。




奈緒「っつ、どこまで強くなる気だよ!!」

加蓮「しかも、巴が弱ってるこの状態じゃ、アタシたちが丸腰だとか全然関係ないし...!!」


もう鎖が細くなることはない、もうその肉体が無防備になることはない、力ずくで押さえ込まれることもない


巴のボットとしての命が風前の灯にある今、その能力が解除されることはない


致命傷に近い傷を負い、誰よりも弱体化した彼女に勝てる強者など存在しない



銃口が角度を修正し、奈緒と加蓮に向く

鉄と鎖の巨人が二人に狙いを定め___



加蓮「___っ_!!」

奈緒「_____!!」

















紗南「なに、あの黒いの」








その姿が崩れ落ちた









384: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/14(木) 00:01:13.44ID:qSS4UHQM0



ガランガランと鎖がほどけ地面に落下していく


奈緒「は?」

加蓮「え?」


あまりにもあっけなく、あともう少しというところで無残に、まるで天寿を全うしたように静かに、自然に落下し鎖の残骸が積み重なっていく


奈緒「おい、なんだよこれ」

加蓮「鎖が__溶けてる?」


崩れ落ち積み重なった鉄の塊が泥のようにあるいは砂のように融解し瓦解し風化していく。

早送り映像を見ているように、みるみるうちに跡形もなくなっていき、


消え去ったあと、そこには鎖の切れた手錠付きの大きな銃が残っているだけだった


紗南「奈緒さん!加蓮さん!」

加蓮「さ、紗南?」

奈緒「お、おう...お前も生き残ったのか?」


紗南「それどころじゃないよ!!周りを見て!!」

加蓮「周り?」



そして二人は気づく

空がゆっくりと赤くなっていることに。ゆっくりと日が暮れていることに


ゆっくりと夜が近づいていることに。


そして何十、何百、否、何千何万という存在がその空にいることに

巴を消し去ったのもその一群の仕業だったということに



奈緒「なんだよこれ何なんだよこれ...!!」

紗南「今調べたんだけど......あれ全部ボットみたい」

加蓮「嘘でしょ...何匹いるのよ...まるで雲じゃない」


バサッバサッバサッバサッ
ア”ーーー!!バサッバサッ
ア”ーーー!!バサッバサッ
ア”ーーー!!ア”ーーー!!






闇に翼を溶かし、空を蹂躙しながら飛翔する

今この時、この瞬間、仮想空間の空全域をカラスが埋め尽くしていた


ゲーム開始61分経過

村上巴(ボット) 消失

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



385: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/14(木) 00:07:23.40ID:qSS4UHQM0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~










「...ああ、どうしましょう...どうしましょう......ご、五万羽だなんて」









「こんなにたくさんのカラス、私に制御できそうにありません」






「しかもカラスの一羽一羽、その全てに能力が備わっているというのに、私の命令なんて聞くんでしょうか...?」







「ボットの皆さんにまで迷惑をかけていなければいいんですが...」








「はう...私のせいで、またボットの誰かが...迷惑を被ってしまうのでしょうか...」







「で、でも私が、頑張ってプレイヤーの人たちをみんな倒してしまえば___」






白菊ほたる(ボット)「___誰も不幸になりませんよね...?」






___夜が、始まる






~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



386: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/14(木) 00:08:39.85ID:qSS4UHQM0


今日はここまで

なつきち引きました

次回開始するチャプターを選択してください
安価下

1、輿水幸子&白坂小梅&星輝子&小関麗奈&大和亜季

2、双葉杏&諸星きらり&堀裕子

3、早坂美玲&神崎蘭子&十時愛梨

4、渋谷凛&緒方智絵里


コメントありがとうございました



387:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/08/14(木) 00:09:37.47 ID:AxWp6IpDO

4



393: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/01(月) 11:05:13.89ID:xicfRciR0



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
渋谷凛&緒方智絵里




ヒョウくん「..........」



空中に静止したまま爬虫類の目がぎょろりとあたりを一瞥する


大なり小なりビルが道路沿いに連なっている都会ならありふれた光景


それが一変していた。



黒、黒、黒黒黒黒黒黒黒黒


すべての建物の、その屋上や窓枠沿いが無造作に漆黒に染まっていた


右から左、前から後ろに巡らせた視線いっぱいが黒く線引きされている



その全てが黒い。

嘴が、翼が、瞳が黒く染められた鳥類、カラスが見える風景すべてを不自然に埋め尽くしていた



ヒョウくん「......」



視線を戻す


つい先ほど地面に叩きつけた尻尾がプレイヤーの一人を地面のクレーターの一部にしたはずだった



そこにあるのは己の尻尾の先。



もぎ取れた己のしっぽのみ

ヒョウくん「......!」



小春(ボット)「ヒョウくん!?し、しっぽ...どうしちゃったんですか...!?」




いつの間にかその巨体に見合う野太い尻尾が本体から離れ、大蛇の死体のように地面に横たわっている


ガァーガァー

アァアー


イグアナを取り囲んだカラスの群のどこからともなくかすれた鳴き声が漏れる。笑い声のように




394: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/01(月) 11:06:21.92ID:xicfRciR0


ピシ、ミシ...


家鳴りのような音がどこからか、いや周囲全ての建物から細く響き出す


ア”アァアー


カラスを中心としてビルの壁面に亀裂が広がる


ガァアアアー!!!


卯月(ボット)「うそ、建物が...」

翠(ボット)「...とてつもない早さで...古びて、ますね」


朽ちていく、朽ち果てていく、荒廃していく


無機的な灰色のコンクリートがセピア色にくすみ、節くれだち、波打ち、そしてひび割れていく


周囲の風景が蝕まれていく。白から黒に、灰色から錆色に


ヒョウくん「......」


考える考える。

叩きつけた尻尾が予備動作もなくもぎ取れている


それは問題ない。

ボットとしての古賀小春が存在する限りこの肉体に敗北はない。



既に尻尾は新しく生え始めている



だが、尻尾をちぎったのがカラスの能力なら








あのプレイヤーはどこに行った?




395: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/01(月) 11:07:51.92ID:xicfRciR0

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~





ごつり、と後頭部をざらざらした感触が撫でる


凛「...な、なに?」


先ほどよりかはいくらか安定を取り戻した頭と視界で体を起こす、目の前には壁と砂利

日光らしきものがうっすらと差し込んできているがそれでもやや薄暗い。上を見ると天井らしきものがすぐ近くに目に入った



凛「あれ、私...たしかあの、羽の生えた恐竜みたいなのに...」



確か地面にめり込む勢いで叩き伏せられたはずだ。その証拠に今自分がいる場所が周りより幾分か沈み込んで



凛「地面...平らだね」




正確には真っ平らという訳でもなく、コンクリートのザラつきが臀部と手のひらから伝わってくる



コツンと硬い音がして地面をなでていた手が鉄のようなものに当たる。よく見るとその鉄は落ちているのではなく地面にくっついているようだ。


どうしてそんなものが車の走る道路にあるのかは分からないが、それより自分のいる場所を把握する必要がある。凛は上半身だけを起こしたままぐるりと周りを見渡す



凛「あれ...ここ、どこ?」



なにやら見える景色に違和感がある。見たことがあるのに見たことがない、そんな風景だ


腰を下ろしたままの地面も、すぐ目の前の地面も見たことある素材、コンクリート



それはいい、だがまずひとつ変なのがこの場所は天井が著しく低い。立ち上がろうとして気づいたが女子にしては背の高い凛がおそらく中腰でも辛い態勢になるほどに天井と地面が近い

そしてこの地面も何かのパイプや鉄の枠のようなものがあちこちに配置されとても歩きやすいようには見えない。

そしてその地面の先。



凛「道が...ない?」



今いる地面をずっとたどった先からは光が届いていたが、ぷっつりと途切れ、狭い地面と天井の隙間から向こう岸(?)の建物が細く覗いていた



凛「なんなの...ここ」



396: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/01(月) 11:09:22.82ID:xicfRciR0





だまし絵のような、


何かを見間違えたような。


知っているのに知らない風景。


壁に手をついて立ち上がる。


天井が低いので中腰だが、これで移動ができる

じゃり

手をついた拍子に壁の一部らしきもの、小石程の破片が取れ、手のひらに残る

凛「...?」

なんとなく手にとったその石ころから手を離す、石は地面に垂直に落ちていくだろう




こつん




だが石は凛から見て、水平に落ちていった




凛「......は?」



壁を見る、さっきの石が張り付いている。


磁石のようにぴったりと貼り付き、地面に落ちる様子はない



それをもう一度拾う、磁力のような抵抗は感じない。手を離すと、また壁の元に戻る



凛「なにこれ、重力が横向きに働いてるとか、いやでも私は」



苦しい態勢で視線を巡らす、確かに今いる地面は鉄やパイプを除いてほぼ真っ平らで、ゴミや石はない、全て壁に張り付いてボコボコとしたシルエットを見せていた



パリッ!

凛「わっ」

何気なく移動した先、ガラスのようなものを踏み割ったらしい、足元で小さく割れる音が鳴る



慌てて足をどける。そこにあったのは四角いガラス、鉄の枠にはまり、今は割れた四角いガラス、その向こうには小さな部屋があって・・・






凛「これ...窓、ガラス?」




397: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/01(月) 11:11:34.00ID:xicfRciR0




遅まきながらゆっくりと凛の頭が状況を把握し始める。




凛「なんで、地面に窓ガラスが、窓があるの...?」



どうして地面に窓があるのか、

どうして石が自弁から見て水平に落ちていくのか、

どうしてこの天井が低いのか、

道が途切れているのか、

どうしてアスファルトだった地面がコンクリートになっているのか




窓ガラスの一部が青く光る

渋谷凛の足跡の形に蒼く光る



地面に、いやもうそれは彼女にとって地面ではない。


そこに目を向けたことで彼女は自身の靴の裏がかすかに青く光っていることを自覚した


渋谷凛の能力はとっくの昔に発動している





彼女はさっき倒れていたクレーターそばのビルの隙間、



路地裏の間隔の狭い”壁面”に立っていた





ゲーム開始61分経過

渋谷凛

VS

白菊ほたる(ボット)

VS

本田未央(ボット)&島村卯月(ボット)&水野翠(ボット)
&佐城雪美(ボット)&古賀小春(ボット)

開始


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



398: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/01(月) 11:14:24.29ID:xicfRciR0


次回開始するチャプターを選択してください
安価下

1、輿水幸子&白坂小梅&星輝子&小関麗奈&大和亜季

2、双葉杏&諸星きらり&堀裕子

3、早坂美玲&神崎蘭子&十時愛梨

4、神谷奈緒&北条加蓮&三好紗南


遅くなってすいませんでした

次回予定作のプロット練ってました



399:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/09/01(月) 11:15:32.66 ID:lMRP4wR60




405: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/03(水) 15:33:24.57ID:/eGgr8ux0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
早坂美玲&神崎蘭子&十時愛梨



 ぴょこん ぴょこん

 ぴこぴこ ぴょこぴょこ



うさぎの耳がフラフラと揺れている、カチューシャの上でピコピコと


愛梨「あっ!これすごいですよ!頭を振って揺らしたほうが、効果が早いみたいです!」


それはウサ耳のカチューシャ、

最初は神崎蘭子が偶然拾ったものだったが、どういうめぐり合わせかこうして合流したことにより彼女の手に渡ったものだった

バニー衣装の付属品にして十時愛梨のキーアイテム、黒を基調とした細長い耳が風のない車内で自由気ままに振れていた

そう、そこは車内。

蘭子、愛梨、美玲の乗り込んだ装甲車の車内であった

美玲「......」

とはいえ激戦を経て天井をはじめとした車体上部をえぐり取られ、迷彩色のオープンカーもどきと化したその場所を車内と呼べるのか


蘭子「おぉ......不思議の国のアリス...!(わぁ...魔法みたい...!)」


スケッチブックを小脇に、そしてそこから生み出した用途不明の杖を握り蘭子が驚嘆の声を漏らす


その視線の向いた先、装甲車の天井は目に見える速度で”修復されていた”


痛々しくギザギザの痕を残して食いちぎられた装甲板がうねうねとその面積を増やし、フロントガラスの亀裂が消え天井が形作られていく



物質の修復、それが十時愛梨の能力だった






406: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/03(水) 15:35:10.77ID:/eGgr8ux0




美玲「......」



愛梨「ぴょーんぴょーん♪こうやって跳ねたらもっと早く治るかな?」

座席に座ったまま呑気に上半身を上下させると頭頂部から生えたウサ耳も機敏に反応する


美玲「......」


運転を交代していた美玲がコントローラー、ここではハンドル代わりとなるそれを静かに握り締める。

視線は道のずっと先を見据えたままだ

後部座席にはシンデレラガールの一代目と二代目

蘭子「ふむ、愛の果実の力を以てすれば我らが覇道に曇りなし...!!(愛梨さんの能力があればなんとかなりそうですねっ!)」



美玲「むっがあああーーーーーーーー!!!!」

愛梨「ひゃっ」

蘭子「!?」




ついに堪忍袋の切れた美玲がコントローラーを握りながら吠える。細い両足をばたつかせ運転席についたまま地団駄を踏む。無論そこにブレーキやアクセルの類はない




美玲「そんなこと言ってる場合かっ!!?」

「思いっきり曇りまくってるじゃんかぁああああああ!!」


ビシッ!!バキョ!


フロントガラスに黒い影が飛び散る


それは装甲車の真正面から飛び込んできたカラスのボット


すでに何羽、いや、何百羽目かわからない数のカラスが装甲車のボンネットやガラスに衝突し、美玲の眼前のフロントガラスをキャンバス代わりにその死に様をまざまざと見せつけている


美玲「もうやだぁあ...なんだよこいつらぁ、どこに行っても飛んでくるしぃ!」


カラスが装甲車の速度に追いついてくることはない。

だが前後左右、どの方向に逃げ込もうと、どれだけ速く走ろうと向かう先には必ず黒い群れが向かってくるのだ

街は完全にカラスの庭となっていた。

カラスの羽音の聞こえない場所がない、

その耳障りな鳴き声が聞こえない場所がない、

高速で飛翔する影を見かけない場所がない


蘭子「隻眼の狼牙よ、騎馬の担い手を継承するか?(美玲ちゃん、運転代わろっか?)」

ボットである以上、カラスの死骸が血を吹き散らしフロントガラスを彩ることはなく、衝突してすぐに霧のように消えていく。

それでも延々と鳥類の集団自殺じみた異常な光景が眼前数センチで展開され続けている美玲を見かねて蘭子が声をかける

美玲「そ、それもそれでイヤだっ!誰がココで投げ出すかっ!...ていうかコレ、絶対止まったらダメなヤツだろぉっ!!」



407: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/03(水) 15:37:08.93ID:/eGgr8ux0



バリンッ!!


美玲「うええぇっ!?」


美玲の近くでガラスが蜘蛛の巣状にヒビ割れる、

だが装甲車の丈夫なガラスなのでそれ以上亀裂が広がることはなく、愛梨の能力により徐々に元通りになっていく


美玲が運転を交代できない理由、それはこの状況にあった。


愛梨の能力は結構な速さで装甲車を修復している、しかしその修復は一向に終わらないのだ


それもカラスが車体のどこかに衝突するたびにその箇所が凹み、剥がれ、赤錆び、壊れていくからだ

いくら元が廃車寸前だったとはいえ、鳥の体当たりで壊れるような車種ではないにも関わらず



まるで【不幸にも】カラスのぶつかった場所が脆くなっていたかのように、


頑丈な装甲が為すすべもなくボロボロにされていく

今は猛スピードでカラスの大部分を振り切っているからこの程度で済んでいるが、もし交代のために速度を緩めようものなら全方向から襲い来るカラスの猛攻によりあっという間に廃車に追い込まれてしまうだろうことは容易に予想がつく


現に今も天井は完全に修復されきっておらず大きな穴があいている


愛梨「でも、十分で交代って決めましたし...」

美玲「いいからっ!!愛梨は早くクルマ直せっ!!」




蘭子「むぅう...かくなる上は」

荒々しく走行し、それに連動して不安定に揺れる車内で、ぎゅっと握った杖を見つめる

あの禍々しいい鎌同様、自分の能力で生み出された道具マイクと羽根のあしらわれたデザイン

蘭子「よしっ!」

愛梨「あわっ!?」

ひとつ息んだ蘭子が座席から立ち上がる

愛梨「蘭子ちゃんあぶないよっ!?」

美玲「ちょ、何してんだオマエ!」

大して天井の高くない車内、座席から立ち上がり、彼女は更に座席の上に土足で立った

蘭子「わぶっ!?!?」

そうなると自然、彼女の上半身は天井の大穴から乗り出すことになる。強い風が彼女の整えられた髪を強く吹き抜け、顔面を叩いた



ガァアアアアー!!!!



吹き荒れるのは風だけではない、黒い竜巻のように荒れ狂うカラスの大群が装甲車への正面衝突から蘭子へ狙いを変える

天井は幾分か修復されてもそこに設置されていた銃座は未だ影もない。彼女の上半身は無防備だった。



そこへ黒い大きな影が殺到する



408: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/03(水) 15:39:06.93ID:/eGgr8ux0




蘭子「__我が魔砲、喰らうがよいわ__」

「__えっと......えいっ!!」


その声は風に巻かれて彼女自身にも聞こえない



だが前方から迫るカラスの群れに向けて、確かに杖を振った


蘭子「(えっと、こうやったら前の武器も使えたよね......これでいいかな?)」



強風により綺麗なフォームとは言えないがとにかく杖を前めがけ振った直後にそんな心配が頭をもたげる





その不安は全くの無用だった


美玲「___あぁ?___」




上も前も黒々とした影に覆われていた視界がにわかに明るくなった



愛梨「わっ!?」




___ゴッ!!___





黒と対になる白が空間に充満する



そして蘭子を中心として破壊的な光が拡散した



それは日光が影を消し去るようにカラスを飲み込み羽一枚残さず消滅させていく




やがて光が収まったとき、そこには道路を走り続ける装甲車が一台あるだけだった



美玲「うおっ!?なんだ今のッ!?蘭子がやったのかッ!!すげぇッ!!」

蘭子「ふ、ふん!他愛ない!これぞ魔王の力ぞ!」

蘭子「(あわわ......周りのビルまで跡形もなくなってるぅ......こ、ここまでのことになるなんて思わなかったよぅ......びっくりした)」

愛梨「目がチカチカします...」


身を乗り出した蘭子を愛梨が優しくひっぱり戻しながら目を瞬かせた。


蘭子の手からあの杖は消えている。どうやら効果は一度きりらしい



409: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/03(水) 15:41:15.36ID:/eGgr8ux0




美玲「ビルの二階から上が全部消し飛んでる......って、うえぇあのカラス野郎、まだまだいるじゃんか」


安心したのか美玲が装甲車の速度を落とす。


辺り一面の”見晴らしが良くなった”ことで美玲たちは朧げに状況を悟り始める


どうやらカラスは自分たち以外にも標的があるようで、遠目に見ていくつかの場所に集中して飛び回っていた


特に高層ビルの集中しているあたりと、逆に都市郊外の住宅が立ち並んでいそうな場所の二箇所が顕著だった



そして、


愛梨「あれ?カラスさんのせいかと思ってましたけど......お空が暗くなってきてますね?」


装甲車の窓越しに空を見上げた愛梨が指摘した

美玲「ホントだ。日が暮れたのか?...でも太陽なんかウチ見てねえぞ?」

蘭子「訪れた黄昏よ.........うむ?」



赤と紫のグラデーションからすこしずつ黒くなっていく空を天井の穴を通して見上げていた蘭子が何かに気づく

暗くなっていく空の中に何かある。


それは最初から当然のようにそこにあったかのごとく動かないまま姿を浮かび上がらせる


まるで昼時には明るさに紛れて見えなかっただけのように、暗さに比例して輪郭をあらわにし始める



愛梨「あれって......」

美玲「太陽はないのにコッチはあるのかよ」

蘭子「ふむ、美しい...」





それは月だった




夜が訪れる事で隠れていた姿が見えるようになったのだ


まるで、昼の空に姿を隠しこっそりと下界を覗くことに飽きたように

ちなみに池袋晶葉はその月を、

否、月の形をしたボットを「CHIHIRO」と名づけていた



410: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/03(水) 15:43:32.29ID:/eGgr8ux0


空が完全に暗黒に満ちる。

ここでようやく三人は空の変化が自然現象に比べて早すぎることに気づいた


愛梨「はわー...きれーですね!」


装甲車を停め、三人でしばしの間夜空を見上げていた

やがて空を覗かせていた天井の穴も愛梨の能力により閉じていく


愛梨「あらら、閉じちゃいます...」

蘭子「果実の魔法よ(愛梨さんの能力ですね)」

美玲「じゃあ蘭子、ウチと運転交代だなッ」

少しずつ見えていた空が狭まっていく。

美玲は運転席から後部座席へ小さい体を滑り込ませ、入れ替わるように蘭子が運転席に腰を下ろす



美玲「そーいや、蘭子って今パーカーなんだな、その黒カッコいいぞッ!」

蘭子「え?...そう?......えへへ」

愛梨「私も今うさちゃんですよ?ほら、ぴょーんぴょーん♪」

美玲「ウサギはオオオカミの餌だぞッ、がるるる!!」

愛梨「ええっ!?」


美玲が蘭子の座っていた位置にぽすっと腰を下ろすともう一度空を見上げた

ほとんど直りかけた天井には今や丸い穴はなく、多少大きめの亀裂を残すのみとなっていた

細長い隙間から明るい満月が覗いている



その月を何かが横切った



美玲「げっ、またカラスかッ!?」

小さな黒い影が一つ、美玲から確認できたのはそれだけ

愛梨「どうしたの美玲ちゃん?」

美玲「カラスが飛んでいっただけだ、アイツらまだウヨウヨいやがるからなッ!」

愛梨「でもこの近くのはみんな蘭子ちゃんが追い払ったんじゃないのかな?」

美玲「だから一羽だけだったぞ...がるる、一羽なら怖くないモンッ!今度会ったら引っ掻いてやる」

愛梨「う~んでも私には羽音は聞こえなかったような...?」

美玲に並んで愛梨も空を見上げる、うさ耳もそれにならってぴこんと揺れる

運転席では蘭子がコントローラーの操作をなんとか覚えようとしていた

美玲「そりゃ...離れたところ飛んでるんだから聞こえるわけないだろ」

愛梨「でも羽音が聞こえないくらい離れたらシルエットが小さくて見えないと思いますよ?」


偶然か気の迷いか洞察力か、そうして生み出された愛梨の指摘により車内の空気に疑問符が漂う


美玲「......あれ?」

愛梨「......うん?」

蘭子「古の魔導機械...(操作方法がよくわからないよぅ...)」



411: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/03(水) 15:45:43.74ID:/eGgr8ux0


次の瞬間、影が装甲車内部に侵入してきた。


美玲「んにゃッ!?」

正確にはそれは錯覚で、実際には月明かりにより少しは明るかった車内が完全に闇に閉ざされただけだった

蘭子「ひゃうっ!?」

ゴォンッ!!

目の前を照らしていたガラス越しの光が途切れ、慌てた蘭子が車を急発進させる


愛梨「きゃんっ!」

美玲「わぷっ」

反動で小柄な美玲が愛梨の胸に飛び込む形で態勢を崩す


蘭子「あっ、こうやるんだぁ...!」

調子づいた蘭子がそのまま車を走らせる

美玲「ぷはっ、こら蘭子!安全運転だぞッ!」

愛梨「あんっ......美玲ちゃん、この状態でしゃべられると...」


やがて車の中に光が戻る。

月光を遮っていた何かの影から脱したようだ

美玲「なんだったんださっきのは...がるるる...」

後部座席で体が絡まったまま、愛梨の肩ごしに美玲が後部ガラスから外を見上げた



一体何の影が装甲車に闇をもたらしたのか、

今度はもっと巨大なカラスの大群だろうか、

警戒心も露にキッと空を睨む



美玲「___がるっ?」



睨んだ先に美玲に視線を返す者はいなかった、それは生物ではなかったからだ


さっきの「何か」とは比べ物にならない巨大な影が月を覆い隠しながら地上に迫っている



美玲「___蘭子...」



呆然とした様子で言葉が漏らされる

蘭子「うむ?」




どんどん近づいてくる。

それが風を切る音が聞こえてきそうだ




美玲「走れ!!!」



412: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/03(水) 15:46:53.76ID:/eGgr8ux0


それは落下していた。

数千トンの質量とともに






美玲「ペッしゃんこになるぞぉぉおおおおおおおおおおッ!!」






見た限りで十数階はありそうな



高層ビルが降ってきた










































望月聖(ボット)「............」




ゲーム開始63分経過

早坂美玲&神崎蘭子&十時愛梨

VS

白菊ほたる(ボット)&望月聖(ボット)

開始

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



413: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/03(水) 15:47:43.32ID:/eGgr8ux0



安価についてですが、しばらく一個下にします

次回開始するチャプターを選択してください
安価下


1、輿水幸子&白坂小梅&星輝子&小関麗奈&大和亜季

2、双葉杏&諸星きらり&堀裕子

3、神谷奈緒&北条加蓮&三好紗南

コメント、安価ありがとうございました



414:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/09/03(水) 15:48:07.50 ID:H7iBinU70




416: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/04(木) 23:56:40.31ID:Og8GrVe+0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
神谷奈緒&北条加蓮&三好紗南







________________

name:烏

category:ボット

skill:
周囲に存在するボット、プレイヤー、
オブジェクトの防御力及び耐久力を
一定の時間間隔でゼロに近づけ続け
る。オブジェクトは耐久力がゼロに
なると自壊する。
________________





紗南「ど、どく状態、的なぁッ!?」

奈緒「ガード崩しとか言ってる場合じゃねえっ!!」

加蓮「いいから走りなってゲーム脳!!」



破壊の限りを尽くされた住宅街跡地を三人が並んで全力疾走する

その背後からはカラスの群れが迫る。

月明かりの下ではその群れの姿は巨大な獣の威容を持ち、何千の羽音が重なり合い渦巻き合い、エンジンの唸りに似た響きを立てている



加蓮「っはぁ、はぁ...!」

奈緒「ああくっそ、走りにくいなぁ!」

紗南「でも、コレって...なんだろ、追い込まれてる気がする...」




並んだ加蓮と奈緒の間に挟まれる形で並走する紗南が視線だけ周りに走らせながら呟く

そこには其処此処に転がった瓦礫の山、その上にはまた別の群れが電線の上の雀のように静かに並んでとまっている

それは三人をどこかに追い込むための障壁のようでもあり、

プレイヤーの逃走を見張る番人のようでもあった


奈緒「だよなぁ...!これ絶対誘導されてるよなぁ...!」

加蓮「かといって、はぁ、今の戦力じゃ...他の方向に、はぁ、突っ切れそうもないでしょ」


三人は駆ける、追い詰められていく方向へ、

建物の密集する都会の中心へと為すすべもなく。

そこには住宅街跡地の数十倍の数を引き連れた、カラスの本隊がいる



417: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/04(木) 23:57:56.49ID:Og8GrVe+0


紗南「でも、なんかないの...!このままじゃジリ貧だって...!」


佐久間まゆ、小日向美穂。

霧のように消えていった二人の姿を思い出す


そして背後からは明確な存在感を伴った黒い霧、

このボットの群れがどこかの誰かの能力なのか、

ネトゲなどにおけるイベントようなものなのか、まだ判断はつかない



だが少なくとも何も分からないままにゲームオーバーするのは、ゲーマーとして我慢ならない



紗南「けほっ!こんなとこで、中ボスの仕掛けたトラップみたいなので、あっさりやられ、ぎゃふんっ!?」

奈緒「うおっ、紗南!?」


三人の中で一際小柄な紗南が転倒する。

あたりは暗く、地面は凸凹で何に蹴躓いたかも判然としない


奈緒「ちょ、早く起きろ!」

奈緒が足を止めて声を上げる。その声もカラスの立てる鳴き声と羽音の前では無残に散った


加蓮「!」

紗南「いったぁ......くはないんだけど、ちょ、ちょっと待...って」

加蓮も足を止める。

紗南の靴の先が瓦礫の隙間に突き込まれるように挟まっていた

奈緒「あぁもう、ほら手ぇ貸せ!!」

引き返した奈緒がやや乱暴に紗南の腕を引いた、

手に握られたゲーム機が乱暴な動作にさらされ通信中の画面が乱れる

______________

name:___

category:___

skill:___

______________


紗南「あうっ、やばっ......結構深くまで入っちゃったかも、足抜けない」

奈緒「うおおい!?なんっだよ、その死亡フラグ!?」

ア”ア”ァアアアアアアアー!!!

黒い大群から耳障りな雷鳴がいくつも降り注ぐ。尖った嘴を矢にして一直線に飛来した

紗南「う、腕がイタタ...!!」

奈緒「言ってる場合か!加蓮、お前も手伝え!!」




加蓮「_____いや」

紗南「え?」



418: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/05(金) 00:00:04.97ID:Og8GrVe+0




必死になって叫ぶ奈緒の耳に加蓮の返事が短く刺さる。


加蓮の視線は紗南の足、そのつま先を潜り込んだ先をを見つめていた

奈緒と対照に冷静そのものといった様子で、



加蓮「多分それは___」





__ゴッ!!!___




混乱も、焦燥も、冷静も、その瞬間意味をなくした。

白くて、そして明るすぎる光が視界を塗り替える

三人には何が起きたかわからない、カラスも同様にわからない

とにもかくにもそこでそこで起きたこと、都市の中心から爆発的に漏れ出した光が郊外の住宅街を飲み込みその場にいた全てから視界を奪った








ゲーム開始63分経過

北条加蓮&神谷奈緒&三好紗南

VS

白菊ほたる(ボット)

継続中



419: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/05(金) 00:01:31.44ID:OAETak2W0











カツン カツン カツン






加蓮「アタシは『いや、必要ないよ多分その下に道があるから』って言うつもりだったのにぃ」





奈緒「いや、悪かったって...てっきり紗南を見捨てるのかと思ってさ」


紗南「でもあの状態でよく気づいたよね、マンホールとか、すごいよ加蓮さん」



三人は今地下下水道に降りる梯子を上から下へ一列に並んで降りていた。




仮想現実においても住宅街に水回りが再現されているなら下水道も再現されているだろうと、そこまで考えていたわけではないが、


とにかく彼女は紗南の足を見て、そして蓋が剥ぎ取られたマンホールとその上にかぶさった瓦礫との隙間に気づいた



加蓮「とにかく、カラスが追ってこないうちに先に進むよ」

紗南「うん......よいしょっ!」



梯子の一番下を降りていた紗南がこれといって不潔さのない下水道の足場に着地する

照明らしきものもあるがここも地上に負けず劣らず足元は覚束ない



しかし指針はあった




420: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/05(金) 00:02:18.71ID:OAETak2W0



奈緒「で、そのサーチモードだったか?それを使えば他のプレイヤーのいる方向がわかるんだよな?」

紗南「うん、距離までは分かんないけど、ゲーム機の向いてる方向の直線上にいることはわかるよ」

紗南のポケットの中から取り出されたゲーム機の画面がチカチカと明滅する。不安定ではあるがかろうじてどこかと通信を行えているらしい


______________

name:_us_k_

category:_l__

skill:_dfsd__?

______________



奈緒「なんかバグってね?」

遅れて着地した奈緒が暗闇の向こうに機械を向ける紗南の手元を後ろから覗き込む

紗南「だから同心円状に電波みたいなのを飛ばすコントロールモードと違ってこっちは一方向にしか通信できないんだって...」

薄闇の中、ゲーム画面のバックライトにより三人の顔が浮かび上がる。紗南はゲーム機の向きを慎重に調整する。どこにいるとも知れないプレイヤーにピントを合わせるように。

実際それは針の穴に糸を通すよりも難しいだろう。方向も距離もわからない場所にいる相手を目隠しでスナイプするようなものだ

加蓮「街の方向に向ければ少なくともさっきの光を出した相手にはつながるかもねー」

紗南「うん、やってる......あ!」


蜘蛛の糸を掴むようなか細い手がかり、紗南の能力が何かを掴む





421: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/05(金) 00:03:56.78ID:OAETak2W0











______________

name:大和亜季

category:プレイヤー

skill:

・・・Now Loading・・・

______________








紗南「亜季さんだっ!!」


奈緒「プレイヤーとして来てたのか、あの人ミリオタだし強そうだな」


加蓮「これ、能力のところロード中みたいになってるけど、どういうこと?」

紗南「うん?ホントだ能力なしの人は『なし』って出るんだけどなぁ...通信状況が悪いのかな」


そうこうしている間に画面は乱れ始めた。

通信状況の悪化している、おそらく通信先の人物である亜季が移動を始めているのだろう



奈緒「うおっ、急げ!見失うぞ!」

加蓮「わかってるって...紗南、まだ走れる?」

紗南「大丈夫っ!ここまできたらぜーーったい最後まで生き残ってやる!!」



そうして三人はまた走り出した、細い糸をたぐり寄せるように。


こうしてプレイヤーたちは集い始める







ゲーム開始65分経過

大和亜季 能力獲得


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



422: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/05(金) 00:04:29.18ID:OAETak2W0



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
次回開始するチャプターを選択してください
安価下

1、輿水幸子&白坂小梅&星輝子&小関麗奈&大和亜季

2、双葉杏&諸星きらり&堀裕子

3、早坂美玲&神崎蘭子&十時愛梨

4、渋谷凛&緒方智絵里

最近クロスも含めてデレマスのバトルものSSが増えてきましたね。どれもクオリティが高くて焦ります





423:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/05(金) 00:17:41.46 ID:ETZAkeKx0

乙です
4で



426: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/06(土) 23:48:31.04ID:Dvn6GY6b0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
渋谷凛&緒方智絵里


今まで平然と歩いていた地面、いや壁に対しておっかなびっくり足を踏み出す



足は平然と彼女にとっての前方に着地し、ほんの一瞬片足で壁に立つこととなっていた凛本人も重力に引かれることもなかった


凛「どこにでも立てる...ってこと?舞の能力に似てるといえば、似てるのかな」


いくらか調子を取り戻した頭で冷静に能力を精査する。

福山舞。重力を無視した一輪車さばきを振るうための能力

今の凛の状況はそれに近い。


凛「でもそれじゃあ、私がさっきの場所から逃げられた説明にはならないし......」


壁に立ってかがんだ姿勢のまま視線を動かし、壁の途切れた先、つまり路地裏から出た先の道路を見る



ア”アァアアアアアーー!!



巨大な翼竜が宙を暴れまわり、それにまとわりついた黒い鳥が齧られ、振り払われ、そして尻尾や羽に叩き伏せられる

だが次から次へと途切れることなく、無限と見紛うほどにカラスは到来し続ける


凛「なんなの、あれ......でも、私のいる位置はさっきの場所からそう離れてないみたい」


少し考える。

離れた場所に瞬時に移動して、そしてその場で重力を無視した姿勢をとることができる

凛は取り急ぎそう解釈することにした



ズズン!!!



凛「わっ!?」

ムチのようにしなる尻尾が凛のいるビルの壁面を叩く。

だがそれは叩くという生易しい表現では済まず、直方体のビルは大きく折れ曲がり崩落を始める

それは一撃の威力もさることながらカラスの能力により耐久力が大幅に下げられていることも原因だったが、

凛にそれを察する余裕はない



427: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/06(土) 23:50:53.52ID:Dvn6GY6b0


凛「うっそ、でしょ...」


本来の重力に従い崩れ、隣のビルとの隙間が崩れ落ち始めた巨大な破片に埋まっていく

自分めがけて水平に飛んでくる岩塊は凛にとって大砲を連発されるようなものだ。

反射的に走り出すもその地面さえも亀裂とともに平らな部分をなくしていく


凛「まっ、間に合えっ...!!」

だが、間に合ったらどうなる?今自分が走っているのはビルの壁、なら自分には今水平方向に重力が働いている。もし壁のない場所に出たら、道路の上を水平に落ちていくのか?


凛「って、言ってる場合じゃな...い!!」



前に向けて壁を蹴り、飛び出す。

背後ではビルが完全に原型をなくしていた

凛の体は本来の地面にほど近い、空中に飛び出していた

凛「...」


薄暗い狭い場所から月明かりの下へ躍り出た凛の目に、周囲の風景が一気に実感を伴い襲い来る


今にも倒壊しそうな危うげな、まるで廃墟のようになった街並み、その中で事務所だけが無事だった


月を覆い隠すほどの巨大な生物、その周りを、時に旋回し時に攻撃をしかけている小さな鳥の群れ


カラスの群れをかすめるように突き立つ矢と、そこから同心円上に広がるモノクロの模様


同じように空中のあちこちで大小の規模で爆発を繰り返す星型のディスク


それらの全てが事務所に飛来するカラスを食い止め、爆破し、蹂躙する。だがどこかから次の群れが現れ、一向に減る様子はなさそうだ


凛「......!」

事務所の中には明かりが灯っている、二階の窓には何人かの人影。人数を数える余裕もなく逆光で姿も見えないが、




卯月(ボット)「・・・!」




その中の一人と確かに目があった

胸元に赤い光を宿したボットが何かを言ったが、距離があって聞こえない

凛「(あの場所へ...!)」

不自然な方向へ働いている重力が凛をどこかに引っ張っていくのを感じた瞬間、凛はそう念じていた

念じるというほどの強いニュアンスはなかったかもしれないが、それでも彼女の能力は応えた




凛の視界の端、靴が蒼く光る。月夜に蒼い光が灯る



次の瞬間には凛の着地は終わっていた





428: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/06(土) 23:54:40.91ID:Dvn6GY6b0





凛「なんだか、慣れ親しんだ場所に帰ってきた気分、かな?」




それなりに空いていたはずの距離を一瞬で詰め着地した事務所の壁面にしゃがみこむ

今の彼女には階段は必要ない。

二階も三階も外から地続きに歩いていける場所にあるのだから





そして、そこに窓があるのなら___




未央(ボット)「うえっ!?しぶりん!?」


アスファルトの地面と違い平坦なコンクリートの壁面に障害物などほとんどない

それはボットからすればまるで凛が壁を垂直に駆け上ってきたようで、





ビシッ






カラスの迎撃のために開かれていた窓とは別の窓に踏み込む




蒼い足跡が刻み込まれ、砕け散った



卯月(ボット)「凛ちゃん!?ここ二階だよ!?」


翠(ボット)「......隙を突かれましたか」


未央(ボット)「どっちにせよしぶりんとはいずれ戦う運命だったんだね!」


小春(ボット)「あ、あわわわ...どうしましょう~」


雪美(ボット)「.........知ってた...」


十の瞳が彼女を捉えて離さない、対する彼女は涼しげな表情で部屋の中心に降り立った




凛「さぁ、残していこうか___」





429: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/06(土) 23:55:26.36ID:Dvn6GY6b0




「強化」「規制」「地雷」「殲滅」「予知」


それぞれが強力無比な能力を誇る五体のボット


だがそれはあくまで距離をおいたうえでの防衛戦にこそ力を発揮するものばかりだった

そう広くない密室。外からは絶えず襲い来る『夜』のボットの力、内には正体不明の力を使う『敵』のプレイヤー

挟撃。

「戦力外たちの宴」にとって、ここが分水嶺であり正念場だった








ゲーム開始63分経過


渋谷凛
VS
白菊ほたる(ボット)
VS
本田未央(ボット)&島村卯月(ボット)&水野翠(ボット)
&佐城雪美(ボット)&古賀小春(ボット)

改め

渋谷凛
VS
本田未央(ボット)&島村卯月(ボット)&水野翠(ボット)
&佐城雪美(ボット)&古賀小春(ボット)
VS
白菊ほたる(ボット)

開始

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



430: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/06(土) 23:57:14.51ID:Dvn6GY6b0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

できればマメに更新したいので今回も短くなりました

次回開始するチャプターを選択してください
安価下

1、輿水幸子&白坂小梅&星輝子&小関麗奈&大和亜季

2、双葉杏&諸星きらり&堀裕子

3、早坂美玲&神崎蘭子&十時愛梨






431:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/09/07(日) 00:01:59.75 ID:+m09EWOI0

1



434: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/11(木) 22:00:24.53ID:uJGFkVjn0


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チャプター
輿水幸子&白坂小梅&星輝子&小関麗奈&大和亜季






【ドックタグ】







「金属やステンレススチールなどの小さな板」に個人を識別するためのデータを打刻して用いる、

板は「二枚式」のものと一枚式のものがあるが、一枚式のものは中折式となっており二枚に分割できる

主に「軍隊」において兵士を識別するために使用され、

一枚は戦死した兵士の戦士報告用に、

もう一方は遺体を判別するために付けたままとなる






ピコン





下水道に小さく電子音が響く







ゲーム開始65分経過

大和亜季 能力獲得



435: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/11(木) 22:03:59.35ID:uJGFkVjn0


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幸子「......で、たまたまボクらが持っていたこのセンスのない首飾りがそうだったと...」

輝子「フヒヒ...た、確かに、その説明を聞いたら...亜季さんの、き、キーアイテム?......だな」

幸子「より効率的に使える方がいるのならお譲りするのを渋る理由もありませんよね!ふふん、ボクは太っ腹ですからね!」


小梅「えっと、えっと...これって、あのお屋敷で、み、見つけたんだよ...ね?」

輝子「そうだ、たしか...うめちゃんが、も、持ってきたん...だよな、すごいぜ」

幸子「フフーン!さすがボクの仲間だけあっていい働きをしましたね!褒めてあげます!」


輝子「フヒヒ...よしよし......すごいぞ、うめちゃん...マイフレンド」

小梅「え、えへへ...」


それはプレイヤーのグループ同士における、お互いの装備の確認中の出来事だった


このゲームのルールに沿うのなら、本来他のプレイヤーもまたボットの討伐数を競い合う相手ではあった。

だがボットの強力すぎる能力を目の当たりにした以上、今更人間同士で争うという発想はなかった



そういった経緯のもと五人、正確には二人と三人は互いの装備を確認しあい、いくつかの銃器に埋もれたブレスレットに亜季が反応し、今に至った



亜季「幸子殿、輝子殿、小梅殿...それで、こちらは本当にいただけるので?」

幸子「小梅さん、いいですよね?」

小梅「う、うん......いいよ?」

亜季「かたじけない!!!」

小梅「ふわっ...!?」

亜季「この恩は戦果を以て返させていただくであります!!!」

輝子「フヒヒ、ちょっと、お、おおげさな...ような」

小梅「あう...」



大仰なまでに感謝の姿勢を示す亜季に尻込みする。




麗奈「で、どーなのよ亜季?」



そんなやりとりを横目に、

通路の床に並んだ物騒な装備をぼんやり眺めていた麗奈が顔を上げる




436: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/11(木) 22:06:43.75ID:uJGFkVjn0



麗奈「なんか変わった?」

亜季「むむ、変化でありますか...ところで麗奈は何を?」

麗奈「いや、別に...ただアタシは能力のせいで銃とか使えないなーって思っただけ」




幸子「...?、そういえばさっきの爆発も麗奈さんの能力なんですよね」

麗奈「そーよ、触ったものがバクハツするの、おかげで石ころとかゴミしかつかめないわ...」

小梅「あ、そっか、ぴ、ピストルだと...ぼ、暴発しちゃう.......ね?」


数丁の拳銃とショットガン、マガジンを前にどこかふてくされた様子でいる麗奈だが、先ほどの誤爆の責任を感じてか覇気がない



麗奈「アタシのことは今はいいのよ...で、亜季はどんな能力な訳?」

亜季「ふむ、これといって体調に変化は見られないようでありますが...」


右手にドックタグを掴みぶら下げたまま、自分の体を見回す。

五人の中で最年長の上しっかりとした体つきの亜季は身長もそれなりにあるが、その体に見かけ上これといった変化はない


小梅「う、腕がグロ、グロテスクな触手に変形、したりとか...!」

輝子「か、髪から、胞子が飛んだりとか...フヒヒヒ!」

幸子「なんですかそれ!?」

麗奈「やめなさいよ変な予想は!アタシのユニットなのよ!?」



その後亜季はくるくるとその場で回ってみたり、輝子のように手拍子を叩くもなにも起きなかった



亜季「それより私が気になるのは...このタグの打刻された内容であります」

麗奈「内容?あんたの話じゃなんだか個人を見分ける文字だそうだけど」

幸子「何が書かれてるんです?」

亜季「50、であります」

小梅「ご、ごじゅう...?」



亜季が細い鎖につながれたプレート二枚を四人の前に持ち上げる

輝子「ホントだ...50って、数字だけ書かれてる」



暗がりの中だからわかりにくいが、わずかな光を跳ね返し確かにそこに「50」の字が刻まれていた



麗奈「なんの数字なのかしらね、残弾数?それとも能力とはなんの関係もないのかしら...」

幸子「というか...これだけではちょっと判断がつきかねますね...」

輝子「ま、まぁ...ここならあ、安全だし...いろいろと、試したらいいんじゃない、かな...」


首をかしげている亜季たちに恐る恐るといった風に輝子が提案する。


彼女もここまでの戦闘や闘争で精神的に疲弊していることもあり、休憩したいという思いもあった



437: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/11(木) 22:09:03.54ID:uJGFkVjn0




_そして_



小梅「う、うん、それが...いいと、お、思う......お外は、怖いし」




_ボットたちは_





亜季「そうでありますなー、ではもう少しだけブリーフィングとしましょうか」




____そんなプレイヤーの事情など察しない














浜口あやめ(ボット)「......見つけました」


















この数秒後、下水道の一部が文字通り消滅する









438: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/11(木) 22:11:02.19ID:uJGFkVjn0


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浜口あやめ(ボット)「......見つけました」




???「...何人ですか?」



あやめ(ボット)「【銃】が2丁、別々に動いている気配...これは2人ですね

そして反対方向から【キーアイテム】が一つと同じく銃が数丁、これは......2、いえ3人?」



???「ということは多くて五人...蠱毒を行うには申し分ない人数ですね」

仮想現実の街並みは変化をはじめる。

月明かり以外の光源として街灯が灯り始め、しかしビルの灯りは点いておらず、それによってゴーストタウンじみた空気を街中に漂わせている



今その街を支配しているのは空を埋めつくすほどのカラスだけだ


その街灯の一つが作り出した小さな光のスポットの中、二つの影がひっそりと存在していた


あやめ(ボット)「そうですか、しかしわたくしは忍ゆえ、正面きっての白兵戦は不得手なのですが...」


???「...史実では忍者の仕事は間諜と暗殺だったとも言われてますが......暗殺は戦闘とは違いますね...」


その一方、浜口あやめはアスファルトに手をつき、地面を睨んでいる



正確には【地面の向こう側にあるアイテム】を見極めていた



彼女の能力、アイテムを見分け、見抜く力、その応用だった。



???「『夜』はボットの能力の性能が上げる......それによってレントゲンのように...アイテムや、武器だけを見透かしているわけですか」


あやめ(ボット)「元々私の能力は重要なアイテムほど光って見えるというもの、闇の中でこそ力を発揮することは分かっていました」


地面につけていた手を離し、かがんでいた態勢を起こしたあと、もう一人の方を見遣る

その一人は街灯の光の輪の届かない場所に佇み、半身を闇に沈めているため表情は伺えない



あやめ(ボット)「で、どうするのです......どこかのマンホールから侵入するのですか?」

???「いえ、実は...あやめさんには会わせてませんでしたが...私はもう一人、別のボットと一時的に...そう一時的に手を組んでいるので、そちらの方に」

あやめ(ボット)「それは共同戦線、ということでしょうか?」


闇の中で静かに、ゆっくりと言葉を紡ぐもう一人のボットから聞かされた事実にあやめはやや怪訝そうな顔をしながら質問する


デパートを出た後に偶然遭遇できたボット、『夜』が訪れてもなお一切の戦闘に備える兆しを見せようとしない、その能力さえ不明なボット

街灯が逆光になり表情は見えないが、月明かりが辛うじて浮かび上がらせた長髪が揺れたように見えた。

顔をこちらに向けたらしい

???「......いいえ?」



439: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/11(木) 22:14:01.93ID:uJGFkVjn0


あやめ(ボット)「いいえ、と言いますと?手を組んでいるということは共同戦線とは違うのですか?」


???「...あの子は私と違って一騎打ちがお望みだそうなので...今も街中を駆け回って相手を探しているのでしょう」

あやめ(ボット)「一騎打ち、一対一......なるほど、あなたの言う蠱毒、集団戦とは真逆ですね」



???「ですが...そろそろ、戻ってくるでしょう...場合によってはあの子は私の能力が必要でしょうし」

あやめ(ボット)「......あなたは、」


あやめが一歩足を動かす、もう一人から離れるように


あやめ(ボット)「能力ぐらいは明かしても構わないのでは?あなたの話では我々ボットは、できるだけ多くの情報を有していたほうが有利なのでしょう?」



???「先ほどから常時、使わせていただいてますが...」



一歩、光の輪の中に踏み込んできた。

あやめが警戒の意図から離れた距離を詰めてくる

首から下が光の中に浮かぶ。

あやめ(ボット)「...?なんですか、それ」

首から下、腕の中に何かを抱えていた。

あやめが目を凝らすが能力は発動しない。アイテムではないようだ

なら何を持っているのか、あやめの能力に引っかからない物品はそれは何の効果もないものか、ボットやプレイヤーのみだ



???「分かりませんか?......さっきからあちこちで見掛けているので、知らないということはないでしょうけど...」



黒っぽいものが腕の中で蠢く、それは



あやめ(ボット)「あの厄介なカラスではありませんか...!」



あやめが更にもう一歩、後ずさる。

もぞもぞと、目の前の腕の中で動いているのは確かに一羽のカラスだった



仮想現実を蝕み無差別に荒廃させる能力を振りまく災厄の一部。



それが無抵抗に抱かれていた



その行為によって彼女の体に変調があるようには見えない。



???「違和感を覚えませんでしたか?......私たちの周りだけカラスが来ないのが...」


あやめ(ボット)「!...そういえば.........っ!?」




440: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/11(木) 22:17:42.01ID:uJGFkVjn0



あまりに周りが静かすぎる。

遠くからは羽音や鳴き声が絶えず鳴り響いている。

だが、それが一向に近づいてくることがない



そして辺りを見回したあやめはその違和感を正体を見つける



???「......そろそろ、あの子も戻ってくる頃でしょうか...一応この付近から離れはしないと伝えておきましたが...」



大人しくなったカラスは一羽だけではなかった


街灯の作る影だけではない、道路のあちこちにカラスはいた、おそらく大分前から。


だがどの個体も動こうとしていない


あやめ(ボット)「これは......」

例外を除いてボットの死体はこの世界に残らない、ならこのカラスは倒されたものではない。



だがどの一羽にしても飛ぶどころか攻撃的な様子も見せない



道路にも能力が使われたような亀裂や風化は見られない



全くの無害な様子で、躾のされた伝書鳩のごとく鳴き声ひとつ立てずそこにいた



???「ほら、あやめさん...来ましたよ」

あやめ(ボット)「...これは一体...」


???「あの子が先陣を切ってくれます、私たちは少し下がっていましょう」





闇の中、停止した鳥の群れの中、ボットたちは動き出す







この数秒後、下水道の一部が文字通り消滅する




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441: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/11(木) 22:19:43.17ID:uJGFkVjn0


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そこは都市の中の死角、

建物と建物の間の奥まったスペースにひっそりと存在した





こずえ(ボット)「あすかー......これなにー?......」





小柄なボットが窓から漏れる薄い月明かりだけを頼りにした室内を器用に歩き回っている中、「それ」に気づいた


それは一見するとただ壁に貼り付けられただけの紙切れ、

だがそこには今となっては連絡の途切れたボットの一人が残した有用な情報となるはずのものだった



飛鳥(ボット)「ありすが残してくれたメモさ、彼女が己にできること以上を残そうと足掻いた証、といったところだろうね」



橘ありす

ボットとプレイヤーの位置情報の収集に関してトップレベルの能力を有したボット、

タブレットや遠距離でも使える連絡手段を持たない味方のボットのために彼女が残した情報



こずえ(ボット)「......ありす...?......でもー、ありす...いないよー?」

白い髪を揺すり小柄な少女が小首をかしげる

窓際に腰掛け、エクステを垂らしながらもう一人の少女は静かに外を見た



飛鳥(ボット)「...そうだね......確かに彼女はもういないよ」



視線をメモに、今となってはおそらくなんの価値もない情報の群れに戻す



そして絵本でも読み聞かせるようにメモの一枚を読み上げ、言葉を添えていく



442: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/11(木) 22:24:02.36ID:uJGFkVjn0



『A、三人ひと組で行動中のボット、一人のプレイヤーと接触中』



飛鳥(ボット)「これはニューウェーブ、そして蘭子のことだね」

こずえ(ボット)「...そうなのー?」

飛鳥(ボット)「ああ、あれは蘭子の声だった......ボクの能力で探った結果が正しいとするなら、ね」




『B、同じく三人ひと組のボット、ただしプレイヤーと接触後一人が別行動を開始』



価値をなくした不完全な情報の不足部分を補う。

それはまるでメモを残した者への弔詞のようで、



飛鳥(ボット)「これはにゃんにゃんにゃんの三人だよ......最も、別行動中だったのあさんは合流したうえ、人数も二人になったようだけどね...プレイヤーの方は美玲、だったかな....?」



『C、一人で行動、何人かのボットとプレイヤーと接触するも戦闘はなし、原因不明』



飛鳥(ボット)「ここに書かれているものが示しているのはとあるボットのことだよ、こずえも会ったはずさ...記憶をたどってご覧よ」

こずえ(ボット)「...うーん......えっとー...あつみー?」

飛鳥(ボット)「正解、愛海のことさ......彼女とはもう少し話をしたかったね」



『D、三人ひと組、町外れにて待機中?』




こずえ(ボット)「...これはー?」

飛鳥(ボット)「...ほたる、聖、そして藍子さんだよ......今頃思う存分能力を振るっているんだろうね、それがボットの存在意義だと言わんばかりにさ...」

こずえ(ボット)「のーりょくー......いいなぁ...」




こずえの隣に並びながら壁に貼られた文字を目線だけでなぞっていく


不意にその目線が止まる。


視線の先には他の物と同じ一枚のメモ





443: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/11(木) 22:26:08.71ID:uJGFkVjn0



こずえ(ボット)「ねー...あすかー......これはー......?」


立ち止まった飛鳥の服の裾がくいくいと引かれる



飛鳥(ボット)「................」

メモを二度、三度見直す。

自分の能力で盗聴した中にこれに該当する者はいなかった。



だったらこれは



飛鳥(ボット)「......これは......いや、君は......」



『E、休むことなく街中を走り続けているボット、マキノさんによる勧誘は困難』



......誰だ......?





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444: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/11(木) 22:28:36.34ID:uJGFkVjn0




ジ、ジジジジッ



輝子「フヒ...?」


それは小さな物音だった



幸子「では、こちらの弾丸は頂いても?」

麗奈「アタシたちの武器に入るサイズじゃないものね...まぁ、精々感謝しなさい!」

小梅「これ...しょ、ショット、ガン...?」

亜季「そうでありますな、残りの弾数が数える程しかないのが不安ではあります」



他の四人は並べた装備を吟味し、その分配を決めていいる

そこから少し離れた場所で暇を持て余し気味だった輝子は壁に備え付けられた照明器具の、その向こうから届いた音を感じた



輝子「あ、あの...さっちゃん、うめちゃ...」

幸子「というかそもそも!...これだけでは圧倒的に戦力不足なんですよ!どこかに武器を探しに行きましょう!」

亜季「なるほど、まずは補給ということでありますか、五人もいれば探索能力も期待できるでしょう」

輝子「あぅ...き、気づかれて、ない...」



いつの間にか話は今後の行動指針の話にシフトしていた。彼女の声が掻き消える



ジジッ!!


その間にも音は鳴り続けている。心なしか音量が大きくなっているような気もしてきた


輝子「(何の音だろう...?)」


ひんやりとした壁に恐る恐る耳を当て、音源を確かめる



小梅「あ、亜季さん...まだ、の、能力...分からない...?」

亜季「残念ながら、音沙汰なしであります」




ジジジジジジ!!!



445: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/11(木) 22:32:08.83ID:uJGFkVjn0


厚い壁の向こうには確かな存在感があった。輝子はその音の心当たりを胸に聞く


輝子「(蝉の声...?...じゃなくて、蛾...)」



ジジジ!



輝子「(飛んでる蛾が...夜の街灯の近くでこんなふうに...音を)」



輝子「(ううん?......あれって蛾の飛ぶ音じゃなくて)」



ジジジジジジジジジジジ!!!!!


輝子「(誘蛾灯とかに近寄り過ぎた蛾が......)」






ジュウッ!!

輝子「(焼ける音)」






バギン!!!


内壁を断ち割り、

亀裂を押し広げながら下水道内を膨大な量の光源が侵食し始めた



麗奈「ふわっ!?」

下水道が昼日中と同じくらい明るくなる。

ここにきてようやく他のメンバーも異変に気づいた


輝子「フ、フヒ!?」



ギャリリリリリリリリ!!!


チェーンソーのように火花と音を立てながら、姿を現した何かが下水道をじわりじわり突き進む


小梅「しょ、しょーちゃん!...こ、こっち!!」

輝子「お、音が...!!し、してたのに...教えられなかった...」

幸子「それはいいですから!」

腰を抜かしかけている輝子を幸子が引っ張り、その幸子を亜季が引き寄せる。反対側の腕には麗奈が既に確保されていた

ジリッ!ギャリリリ!!!!

それは例えるなら「侵食」

アセチレンバーナーの光の塊に似た何かが音と光をまき散らしながら暗闇と、そして壁材を食い尽くしていく



446: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/11(木) 22:34:32.38ID:uJGFkVjn0


光の柱が下水道の壁をゆっくり動いていく、

その後ろには鉱物が焼き切られたような痕が細く続いていく



ジジジジジジジ!!!


プレイヤーの方を向くわけではなく、ただ淡々と右から左へ一定の速度でその通り道にあるものを断ち切っていく。


麗奈「なによこれ!?光ってて何がなんだかわからないじゃない!!」

小梅「ま、眩しい...みえ、見えない...」


そして光の柱が反対側の壁に埋もれていく、下水道から喧騒が去る。暗闇が戻る


小梅「えっと、あれ...?」

亜季「こっちの被害はないでありますな...?」

幸子「フフーン!どうやらどこかのボットさんのはカワイイボクには掠りもしなかっ」

ギャリリリッリリリ!!



輝子「フヒヒャッ!?」

幸子の腕の中で輝子が飛び跳ねる、

輝子が振り返った先、数メートル離れた場所からまたもあの光の塊が壁を断ち割ってきていた



ギャリリリリジジジジジジジジ!!!!



亜季たちがそこから距離を取る。

さっきの切断痕が未だに熱されたように赤く発光している


麗奈「これって、アタシたちを挟み撃ちにするつもり...!?」

亜季「相手はおそらく大まかにはこちらの位置を掴んでいるのかもしれませんね...」

小梅「ち、チェーンソーで...扉を壊されて...家の、中に...侵入、される...ホラー映画で見た...!」


光の刃が出てきた方とは反対側の壁に抉り込む。火花が散る

亜季「しかし、一旦この付近から離れるべきなのは確か...」

輝子「に、逃げるか...」

亜季「退避します!」


光の刃が完全に壁の向こうに消えた。

その後には焼き切られた壁材が赤く熱された痕を引いている



幸子「今のうちですっ!!」





447: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/11(木) 22:37:41.38ID:uJGFkVjn0


麗奈「ちっ、ここは逃げてやるわよ...」

小梅「ま、また、走るのぉ......?」

輝子「み、道が...見え、ない...」

だが暗闇の中を強烈な光に侵され、そのあと闇に戻された今、五人の目もまた闇に不慣れな状態に戻されていた


そして、敵対者、ボットの目的は既に半分以上果たされていた


ガゴォンッ!!


「!?」

重力が狂う。
世界が反転する。


「光」が断ち切った部分が歪み始め、五人のいる地面が持ち上がり始めた


地震のあとの地盤のズレのように、
切り取り線のように、


五人のいた区間だけが周りから切り離され、傾き始める


麗奈「ぎゃふん!!」

幸子「げふっ!...が、顔面からぶつかってもカワイイボげふっ!?」

小梅「わ、わ、わ...す、すす滑ってく...!」

輝子「ヒャアアアッハアアア!?」

狭い空間に破壊音と阿鼻叫喚が綯い交ぜのままコダマする

亜季「...まさか......これは...!」

一秒と同じところに立っていられない程の震動の中、

亜季が手の届くところを「転がり落ちそう」になっていた麗奈と輝子を腕に抱え、なんとか態勢を整えようとする


ベキッ!ベキャベキャベキキッ!!


下水道の天井がひび割れる、いや天井かどうかはもうわからない。

明らかに致命的な破壊を実感させる規模の亀裂が下水道を覆いつくさんばかりに拡散する


亜季「まさか...」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴン!!

地面が持ち上がるような感覚が足を登ってくる




亜季「私たちを下水道と地盤ごと地上まで持ち上げっ」



天井に広がった亀裂から明かりが覗く。

それは月光だった___




こうして亜季の予感は的中し、下水道の一部が消滅した

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448: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/11(木) 22:39:55.06ID:uJGFkVjn0


固い土壌の地面をスコップでめくり返したように、下水道も地上もその区別をなくして隆起する。


ガゴンッ!!


五人の体が石材とともに宙に投げ出された。


唯一地面の割れ目に引っかかるようにして投げ出されずに済んだ幸子が這々の体で石塊から抜け出す



???「.........1、2...やはり五人ですか」

幸子「え?」



混乱する頭で、それでもその静かな声を捉えた

その影は絶妙な位置取りで街灯から全身を照らされない地点にいたため首から上は見えない


幸子「な、なんですか、その格好...」

自慢の髪や、衣服を乱しながらやっとのことそれだけの言葉を吐く。

???「なにか...変な所があったでしょうか...?」


身を隠すためなのか闇に紛れる暗色の青を基調とし、

しかしそれと対照的になるな金の装飾が施された「衣装」

あまつさえ背中には長いマントがひらめいている。そして腕の中にはカラス


明らかに今までのボットとは違う、装備が、雰囲気が、

そして危険度が


???「幸子さん、そろそろ気をつけたほうがいいですよ?」

幸子「へっ?」


ゴガァン!!!

幸子の上に瓦礫が降り注いだ。

破壊と自壊がその地点を埋めつくす。



幸子の姿が見えなくなった

他の四人を巻き添えにしながら上空に放り上げられていた巨大な瓦礫の数々が重力に引かれまた落ちてきたのだ

???「.........これで終わられても困りますね」

バコッ

壊れた瓦礫の山が膨れ上がる、下から何かが押し上げていた

バガァン!!







輝子「ヒィイイイイイヤッハハァアアアア!!!」

ミドルキノコ1「FFfFFfFFF!」

ミドルキノコ2「FFfffff!!」



449: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/11(木) 22:42:19.67ID:uJGFkVjn0


大小の差をものともせず瓦礫を吹き飛ばしながら姿を現したのはキノコだった。

だがその身の丈2メートルはある上、雄叫びを上げている

そしてキノコの傘に守られるようにして他の四人の姿があった


麗奈「おおう、やるじゃない...」

小梅「ま、マタンゴ...み...みたい」

幸子「し、死ぬかと思いました...ボ、ボクはカワイイので、そんなことはあるはずありませんけど...」


亜季「...これは、あのボットの仕業ですかな」


亜季が足元の岩をどかしながらいち早く敵に狙いを付ける。

いつの間にかベルトやポケットにさっきまで並べていた拳銃が挟んである。

どさくさの際に確保していたのだろう



輝子「知るかァ!!ヒャッハァアアア!!蹴散らせ!!」

ミドルキノコ1「FFf!」



危険にさらされたことで神経が昂ぶっているのか、テンションが吹っ切れた輝子が影に向かって叫ぶ。

そしてそこ目掛け足を生やしたキノコが魚雷のように突進する。


???「私では...ないのですけどね」




光剣


その何かを表す言葉はそれしかない




有り余る長さの、光の刃が猛進するキノコを上下に真っ二つにし、周囲を昼間と同じ程に目映く照らし、五人のいる場所を切り裂きなぎ払った


輝子「マイフレエエェンド!!??」

小梅「ま、またっ...まぶしい」


どこから伸びてきたのか分からないほどの長さの、大蛇のように時折しなる様な動きを見せながら光る何かが場を蹂躙する




ガアアアアアアンン!!!!

五人がバラバラの方向に吹き飛ばされた



亜季「(戦力の差がっ、ここまで...!!)」

麗奈「亜季!!」

幸子「こ、小梅さん、輝子さっ」

ある者は背中から墜落し、ある者は地面の上を転がっていく



450: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/11(木) 22:45:25.60ID:uJGFkVjn0




輝子「うめちゃん、あ、亜季さん...み、みんな...!」



一体残ったキノコが自動的にその身を守っていた輝子だけが、

呆然としながらも周りを見回す余裕があった。



亜季が一際遠くに転がっていく


麗奈が路地裏の方向に投げ出されていた


小梅と幸子は偶然同じ方向に飛ばされている



自分は、キノコが一体いるだけ。

そしてすぐ前には影となったボットが一体



輝子「(違う、ボット...もう一体...いた!)」

???「気を付けてください...」

輝子「ヒッ!?」

???「どうやらこのカラスには...物が壊れやすくなる力があるようなので...」



ビシッ



輝子「ハ?」



轟音、

光剣、

倒壊


仮想現実の一角で

一棟のビル一部が





ナイフにスライスされたバターのように「斜めに削げ落とされた」




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



451: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/11(木) 22:49:26.66ID:uJGFkVjn0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
星輝子



耳鳴りがしそうな音が止んだあと、私はマイフレンドの下から這い出した



輝子「フヒゥ......なんてこった...マイフレンド」


四つん這いのまま背後を振り返ると、丁度石やガラスまみれになって潰れたおっきいキノコが消えていくところだった


輝子「すまない...ゴメンよ...」


周りは崩れたビルが高く高く積み重なっていてバリケードみたいになってた。

高さが私の身長の何倍もある

さっちゃんもうめちゃんも、いない......またボッチになっちゃった



亜季「輝子殿、大丈夫で...ありますか?」

輝子「フヒッ!!?」

亜季「落ち着いて」



いつの間にか亜季さんが膝をついた状態で隣にいた

よ、よかった......ボッチじゃなかった。あれ、じゃあ麗奈は...


亜季「いいですか、よく聞いてください」

そのまま亜季さんがヒソヒソバナシをするみたいな小さい声で話しかけてくる。視線は別の方向だ

亜季「私たちはどうやら分断されてしまったようであります」

輝子「ぶん、だん...?...フヒッ!?」



亜季さんの目線を追った先にさっきのボットが立っていた

顔は相変わらず見えないけど、マントみたいなのがヒラヒラしているのは見えた



???「......」



亜季さんはえっと...警戒心?を張ってそのボットを睨んでいる

亜季「私たちはそれぞれ別のユニットを組んでいます、なのでここで私たち二人を倒すことで結果的に五人全員を倒すつもりなのでしょう」

輝子「.........あっ!?」

最初何を言われたのか分からなかった、けど思い出した。

さっきの地下で麗奈が言ってたこと




ユニットメンバーがひとりでも倒されると残りのメンバーもゲームオーバーになる......!





452: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/11(木) 22:53:34.85ID:uJGFkVjn0


???「確かに...それも効率的、ですね」

亜季「!!」


???「一つ訂正を加えるなら、これは私ではなく......もう一人の意向によるものです」



パァン!!

輝子「っ!?」

亜季「この音は、麗奈の能力...」


ビルの瓦礫を挟んだ向こうから破裂音が小さく響いてきた。


......誰かと誰かが戦い始めてる?


バガァアアン!!!


破裂音が聞こえてきた方向から次は太陽みたいな眩しい光が溢れ出てきた


亜季さんや私、あとボットのいる場所が一瞬だけ明るくなる




???「おや、これはいけないですね...」


輝子「あ...」






その光がボットの全身を照らした















古澤頼子(ボット)「...怪盗は、そうそう正体を表さないものなの...ですが」






453: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/11(木) 22:55:19.33ID:uJGFkVjn0




シルクハットに片眼鏡、マントとスーツをはためかせて、そこに立っている



頼子(ボット)「.......では、壺の中に多少の『仕切り』が出来てしまいましたが___」



カラスの羽音がどこか遠くから響いてくる

隣で亜季さんが銃を構える音がした






頼子(ボット)「蠱毒の舞台を始めましょう」





ゲーム開始70分経過

大和亜季&星輝子

VS

古澤頼子(ボット)

開始

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



454: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/11(木) 22:58:57.27ID:uJGFkVjn0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
輿水幸子



今のボクは全く「らしくない」



意気揚々と小梅さんと輝子さんを導いているつもりで、あっさりと返り討ちにあい、

薄暗い地下におめおめと逃げた矢先に爆発事故、危うく輝子さんを傷つけさせてしまうところでした

挙げ句の果てには土の中にこそこそ隠れているモグラを堀り返すみたいに、あっさりあぶり出される始末



幸子「これでは、いけません......ボクはカワイイのですから...何者にも屈してはいけないのです」


手の中の重さをもう一度確認する


あの光剣?とにかくぴかぴかと眩しいばかりの妙な攻撃で地盤ごと掘り起こされようとしていたとき、とっさに掴んだ一丁の銃

弾丸は確か...8発。

亜季さんにもらった弾はすべて装填してあります。

逆に言えばこれがボクらを守る最後の盾にして矛なわけです



幸子「どうやら...また、あの光っている何かで壊されたビルが障壁になっているようですね」

あたりに人影はない、はぐれましたか?



小梅「......さ、さっちゃん」

と思っていたら近くの別のビルの影から小梅さんが顔をのぞかせました

どうやらボクより先に身を隠していたようです。

ボクもそれに倣い小梅さんの横に駆け寄りました



幸子「小梅さんは無事だったんですね...ところで薄々予想はつきますが他の方々は......」

小梅「た、多分...瓦礫の向こうに...ば、バラバラに...なっちゃった...?」

幸子「ですよね...ユニットメンバーのボクらが無事ということは輝子さんも無事ではあるんでしょうが」



さっき見たカラスを持ったボットはいません、しかし空を見上げると其処此処に黒い影が飛び回っているのが見えます



幸子「このカワイイボクが目を離したせいで、随分と街が様変わりしてしまいましたね」

小梅「ご、ゴーストタウン...」


その小梅さんの例えは的を得ていました、確かに目に付く建物はどれもガラスが割れ始めていますし建物シルエットもどこか古ぼけています



455: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/11(木) 23:02:13.09ID:uJGFkVjn0



幸子「十中八九あのカラスのせいでしょうね、確かそんなことをあのボットが言っていました」

小梅「そ、そうなんだ...カラスの...の、呪い...だね...」

幸子「とにかく!輝子さんに合流しましょう!」



ボクは勢いこんで座り込んだ状態から立ち上がります、背後では朽ちた壁からぼろぼろと小石のような破片が取れましたが気にしません


小梅「で、でもどうやって..」

幸子「ボクらの身体能力ではあのバリケードは越えられません、道路を通って向こう側まで回り込みます」

ここはどうも大通りのようなので道幅はかなり広いです、

まあそうでないと下水道など掘り起こせませんが。

ここを回り込むには随分な遠回りが必要になりそうですね


小梅「.......わ、わかった...頑張って...は、走る...!」


ボクの隣で小梅さんもトレードマークの長袖を揺らしながら立ち上がりました


幸子「さぁ行きますよ!目的地までは迂回しなければなりませんから、早く着くに限ります!」






カラン







「...あの......すいません」






幸子「え...?」

道路に一歩踏み出した矢先に声をかけられました。

思わずそっちに目を向けます



幸子「ひっ!?」



豪華な装飾、鋭い刃、鈍く跳ね返される月光



そんなサーベルが視界に入り、ボクは思わず飛び退きました




456: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/11(木) 23:04:19.79ID:uJGFkVjn0





「...私の能力が、なぜか不調らしくて...」




彼女は月の光を浴びて妖しくシルエットをゆらめかせながらこっちに歩いてきます

小柄な体躯、

禍々しい凶器、

胸元には赤い光、

彼女がボットであることは間違いありません




幸子「小梅さん...いきなり問題発生です」

小梅「う、うん......」



後ろ手に小梅さんを庇いながらボク自身も一歩下がります






「...えっと、このあたりで私のカラスに何かがあったようなので、様子を見に来たのですが......」





ア”アァアアアアアー!



今になってカラスの鳴き声が耳につき始めました

目の前にいる彼女は事務所で何度か見かけた普通の格好でした。

だからこそ手に持たれたサーベルが一層不気味で___











ほたる(ボット)「...何か、知りませんか...?」







ゲーム開始70分経過

輿水幸子&白坂小梅
VS
白菊ほたる(ボット)

開始
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



457: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/11(木) 23:10:05.84ID:uJGFkVjn0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
小関麗奈





麗奈「アーーッハッハッハッハッハ!!」




アタシは上機嫌に笑う。

かそうげんじつ?とやらのおかげか、途中で咳き込んだりなんかもしないで笑えたのがさらにアタシの機嫌をよくする


数分、いや数秒前までのイライラした気分はぜーんぶ吹き飛んだわ



麗奈「もう一発喰らいなさい!」


都会の中のそれほど狭くない路地裏、そのビル壁を蹴っ飛ばすと一部が剥がれて落ちた

どういうわけか昼間の時よりビルが古くなってたみたいで、表面をちょっと壊すくらいならアタシの脚力でも十分だった

手のひらに収まるほどの平たい石みたいなのを右手で掴む、ギュッと握って、それがアタシにとっての必殺兵器になったと確信した



麗奈「そーれっ!!」

パァアン!


さっき投げたものより強く投げつけてやったわ!


相手は手に持った光の剣でまた石を弾いたつもりだろうけど、爆発のせいで大した防御にはなってないみたい


もっとも、こっちの攻撃も未だに弱いままなんだけど



麗奈「アッハ!みっともないわね!さっきのバカみたいな大きさにすればいいのに!」



できないのを分かって煽る。

アタシにとって狭くは感じないけど、相手は剣を振り回すために隣接したビルの隙間幅に気を使ってそのサイズを小さくしている。


だからなーんにも怖くないわ!!

地下下水道を抉りとった時に比べると蛍光灯か、精々大きめのサイリウムでも持ってるようにしか見えないわ



麗奈「アタシはこういうのを待っていたのよ!こういうカタチとは言え、アンタをボッコボコにしてやれる日をね!!」



ちょっと前、地下から追い出されたり薙ぎ払われたり、

目の前にいる「コイツ」に散々してやられたけどそれはもういい

今からやることを思うと笑いが止まらないわ!



麗奈「このレイナサマの前にひれ伏しなさい!」



458: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/11(木) 23:22:36.64ID:uJGFkVjn0


もう一回、さらに強く壁を蹴り付けると面白いくらいにポロポロと石塊が転がり落ちてきた、

石の塊、

アタシの弾丸



?「そうか...」




麗奈「さぁ!!いつか来る、アタシが『本物』を倒す日のための練習台になりなさい!!」



?「......悪いな麗奈、」


「それは聞けない!!」



視線は動かさず、両手に手頃な石を掴む、イヤでも気分が高揚するのを感じる




麗奈「ここがアタシ、レイナサマの世界征服の第一歩よ!!」


向こうもアタシに応戦するかのように生意気にもこちらに向けてあの変に眩しい剣を構えた


?「いや、麗奈の世界征服はここで終わりだ......」



そして暑苦しい‎能書きを垂れ始める。















南条光(ボット)「なぜならその野望は!!ここで!!アタシが!!打ち砕くからだ!!!」







まぁいいわ、叩き潰してあげるわよ!!







ゲーム開始70分経過

小関麗奈VS南条光(ボット)

開始

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



459: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/11(木) 23:28:12.62ID:uJGFkVjn0


ありすのメモ帳に関しては前スレ>>833のあたりに描写があります


次回開始するチャプターを選択してください
安価下

1、双葉杏&諸星きらり&堀裕子

2、早坂美玲&神崎蘭子&十時愛梨

3、渋谷凛&緒方智絵里

4、神谷奈緒&北条加蓮&三好紗南



460:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/09/11(木) 23:34:06.95 ID:ATQPvzLJo

1で



466: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/19(金) 14:55:20.14ID:nBNOkGqK0

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
堀裕子

ゲーム開始8分時点




裕子「さーいきっく...ダウジング!!」

ヂャリーンッ




その掛け声と共に金属食器が振り上げられる。

勢い余ってすっぽ抜けたそのスプーンは硬質な音を立てて地面に墜落し、しばしの間コンクリートの上を跳ねた


カラカラカラン...


くるくると緩やかに回っていたスプーンが停止した。

裕子が注目したのはその柄の部分だった。




裕子「ふっふっふ、なるほど、わかりましたよ...このスプーンの指し示す方向こそが私の進むべき道であると!!」


要は占いの一種だった。棒を倒して次の進行方向を決めるだけの。

だがそれでも自分を信じている裕子には強い確信になったらしい



摩天楼の根元で、ほぼ丸腰に等しい装備、スプーン一本を携え無人の道路を臆することなく進んでいく





裕子「おや......?あそこで誰かが動いてますね...?」



そうして進んでいくこと数秒、裕子の目が何かを捉えた。

ビルとビルの切れ目から伸びる坂道のずっと奥、比較的こじんまりとしたオフィスビルの密集地の中の一件



467: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/19(金) 14:57:16.34ID:nBNOkGqK0



裕子「うーん、胸は光ってはいないのでプレイヤーの方でしょうか?ここからじゃよく見えません...」

「はっ!?...こんなときこそ、さいきっく双眼鏡!」

はむっ、とスプーンを口に咥え両手をレンズに見立てて遠くに目を凝らす









輝子「フヒ...だ、誰も、いなかっ...た。ボッチ、だな...とりあえずあっちに行こう」



が、既にその人影は角を曲がり見えなくなっていた



裕子「...えーっとなになに...」



代わりに彼女の視界に入ったのその人物が現れた建物の看板のみ










裕子「...あれって私たちの事務所ですかね?」








結果から言えば彼女はその建物には踏み込まなかった。

この時点では___






ゲーム開始6分時点
堀裕子(ボット) 消失
堀裕子 能力獲得

ゲーム開始7分時点
星輝子(ボット) 消失
星輝子 能力獲得



468: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/19(金) 14:58:24.20ID:nBNOkGqK0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
双葉杏&諸星きらり&堀裕子


______________

 双葉杏+  153/300
   


______________

______________

 諸星きらり 153/300



______________

______________

堀裕子+   153/300



______________




ビュンッ



裕子「なるほど!こうしているあいだにも私たちのスタミナ?とやらが回復していくわけですか!」

杏「まー、そんな感じ?ダラダラしてても楽できる能力なわけ」

きらり「杏ちゃんらしぃにぃ」



ビュンッ



裕子「それにしてもボット?とやらは一向に姿を見せませんね」

杏「杏はそのほうがいいんだけどねぇ」

きらり「うゆ......きらりもあんな怖いのはコリゴリだゆ」

裕子「ほほう、お二人にはなにやらあったようですね、聞きませんけど」

杏「あーうん、説明めんどくさいからそれでいいよ。正直杏も何が何だったのかわかんないし」

きらり「いっぱいいっぱい痛い思いしたにぃ」


三人は、正確には杏はきらりの背にいるので二人は今都心をやや外れた道を歩いていた。

道を一本横にずれれば車線の多い大通りに望める場所である。「目立つ場所は変なのに見つかりそうだし」という杏のアイデアだった


ビュンッ


最初にアシとして使っていた戦車。歩行者用の階段に乗り出し転げ落ちかけたそれのキャタピラを窮余の一策として止めた直後、

謎の原因で砲撃を開始したせいで攻撃に使える砲弾は底を突いていた。

まさか数キロ離れた地点からのハッキングじみた外部操作だとは思いもよらない三人はそこから脱出していたのだった



469: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/19(金) 14:59:53.45ID:nBNOkGqK0


ビュンッ

しかし、傾いた内部から苦労して外に出たはいいものの、その頃には街の様子は様変わりしており、そうなると車両も迂闊には乗り捨てられなくなっていた

街には夜の帳が下り、闇に紛れてカラスが襲い来るのをどうにかしなくてはいけない。

その結果が現状だった





裕子「さーい...きっく、ハエ叩き!!」


ビュンッ

ア”ァッ!


杏「しかし大した能力だよねぇ、サイキック力技。特撮好きの光あたりがプレイヤーとして来てたら大喜びしそうだよ。スーパーマンパワーとか言って」

きらり「でも~、もうちょっと離れて使って欲しいにぃ...さっきからぶつかりそうだゆ...」

裕子「了解しましたっ...ほいさっ!」



掴んだ手に力を込め、一息に振りかぶり、振りまわし、ビュンと振り下ろす。

その度に三人目がけて飛翔してきた黒い一群は薙ぎ払われ、叩き落とされ消えていく



裕子「おや?いなくなりましたね、カラスさん」

杏「裕子に構うより他のところに行ったほうが成果が上がるとか判断したんじゃないの」

きらり「ユッコちゃんすごーいにぃー!」



そうしてカラスのボットを時に追い払い、時に難無く返り討ちにしているうちに三人の周囲を旋回していた一団はいなくなった。


三人をターゲットにするのを保留にしたのか、実は他の地域を飛び回っている別の一団が向かってくるまでのインターバルなのかは判断がつかない

とにかく、三人に一時の休息が訪れた。

実際に忙しく動いていたのは裕子一人だが

ビュンッ

裕子「むむ、どうやらいなくなったようですね!さいきっくおしまい!」

杏「おつかれー、さすがはパッションというかきらりとは別方向にアグレッシブだね」

きらり「うゆ?きらりって何か変かなー?」

杏「いや.....きらりはずっとそのままでいてね」

きらり「んに!」

裕子「じゃあ一旦”これ”下ろしますね」

掴んでいた砲筒から手を離す。キャタピラが大袈裟な音を立てて路面に減り込む

装甲はカラスの能力や用途から外れた使い方によりあちこちに穴が空き凹んでいる

こうして裕子の怪力により長く伸びた砲口を掴まれハエ叩きのように振り回されていた戦車は既に廃車になった


ゲーム開始65分時点

堀裕子 双葉杏 諸星きらり

ユニット結成

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



470: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/19(金) 15:01:47.30ID:nBNOkGqK0


高所から何度も墜落したようにシルエットを歪めた戦車、そのキャタピラを覆う装甲部に杏が腰を下ろした

きらりがその横にぴったりとくっつくように腰掛ける



杏「せっかく静かになったんだから、しばらくここにいよっか」

きらり「裕子ちゃんの能力のおかげだにぃ!」

裕子「そ、そうですか!?いやぁ照れますね!さいきっく照れり...」



実際今の彼女たちの状態で動き回っても遭遇できそうなのはカラスの群れくらいなので、動かないという選択肢はあながち間違ってはいなかった

裕子はどういう意図があってかわざわざ装甲部ではなくひん曲がった主砲の上に飛び乗った



杏「しっかし、ここまでくるとあれだよね、逆にきらりの能力も見てみたくなるよね」

きらり「うにゅ?んー...確かにきらりも面白ーいことしてみたーい!」



裕子「うーん、そういえばきらりさんにとっての能力の鍵は何になるんでしょう?」

杏「鍵ぃ?」



裕子「ほら!私のスプーンや杏さんのぬいぐるみのことじゃないですか!!キィィアイテェェム!!ですよ!」

杏「あーそれね、杏の場合は勝手に押し付けられただけだからなぁ」

きらり「そうなんだー、きらりのキーアイテム?はどんなだろーねー?」

杏「どんなんだろーって...きらりにもなんかないの?こう、なんていうか、これぞきらり!みたいな」

きらり「んゆー?.......いっぱいありすぎてわかんないにぃ...」



キーアイテム

それらは明言はされていないがモデルとしては現実世界でアイドルのトレードマークのようになっているものが多い

現実世界で杏が愛用していた古びたぬいぐるみや裕子が常備していたスプーン、麗奈の手製のイタズラ道具

輝子のキノコの鉢、凛が愛着を持っていたピアス、美穂のぬいぐるみ、蘭子のグリモワール、美玲のケモノ手袋



中には例外も存在する。




471: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/19(金) 15:03:51.15ID:nBNOkGqK0


例えば、紗南のゲーム機や亜季のドックタグ、そして愛梨のウサ耳などは厳密には本人の持ち物ではない


ただアイドルの個性や仕事を説明する上で欠かせない要素、この場合「ゲーマー」「ミリオタ」「バニー」といった記号に関連づいていただけである


ちなみに今もこの仮想現実のどこかを彷徨しているであろう緒方智絵里のキーアイテムであるアクセサリも、「四つ葉のクローバー」という記号以外に彼女とは接点を持っていないものだった




裕子「....きらりさんはかわいいものならなんでも集めていましたしね、そうなると特定のものに当てはめるのは難しそうです...」

「......はっ!?ま、まさか今こそ私のさいきっくダウジングを使う時では!?」

杏「いや、それはいらない」



きらり「んにぃー.......かわういーものー...きりんさんにーぞうさんにー...」

杏「なーんかあれじゃない?あのきらりんハウスに入ってるおもちゃとかだったら大体きらりのアイテムなんじゃないの?」

きらり「うゆー、でもきらりんハウスはきらりのおうちだしー」

杏「まぁ忘れかけてたけどここはゲームの中だしねぇ、きらりの自宅があるわけもないかぁ」







裕子「へ?でも事務所ならありましたよ?」




杏「...は?」

きらり「...にょ?」


思わぬ横槍に、そしてその内容に杏ときらりが一時停止する


杏「じ、事務所...?」

きらり「きらりたちの事務所...あるの?」

裕子「はい、そうですよ。看板もかかってたので間違いありません!」

杏「じゃあそれ最初に言っとこうよ!!絶対重要なヤツじゃん!」

裕子「うーん?...でもボットとは出会わなかったので!」

きらり「そういう話でもないにぃ」


ゲーム開始直後からボット共々雑魚寝をしていた杏と、その杏を探し回っていたきらり

その二人に比べると今まで謎だった裕子のこれまでの行動履歴があっさり明らかにされる


そのなかで裕子は事務所を目撃していたらしい



杏「まーいーか、ユッコだし...で、どの辺で見たのさ」

裕子「ふっふっふ、遂にこれを話す時が来ましたか...そう、あれはこのイベントが始まって間もない時分のことでした...」

杏「あっ、そういうのいいんで」


ぴしゃりと冗長になりそうな裕子の言葉を断ち切る



472: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/19(金) 15:07:15.66ID:nBNOkGqK0




杏「きらりんハウスとまではいかなくても事務所とかならきらりにゆかりのありそうなブツの一つや二つは見つかるんじゃないの?」

きらり「きらりもそー思うゆ、裕子ちゃん、きらりたちに事務所の場所教えて欲しーにぃ」

裕子「ふふん、いいでしょう......うん?あれ?」



きらりに請われ、裕子は得意げな顔で腕を組みながら事務所の位置を思い出そうと記憶を探り始めたが、すぐにその眉が八の字に曲がった



裕子「そもそもここ、どこでしたっけ?」

杏「あっ」

裕子「初めて来る場所なのでイマイチ地理がつかめないんですよねぇ...」

きらり「うゆっ」



困り眉のまま小首を傾ける裕子を見ながら杏ときらりが同じような表情でぽかんと口を開けた

確かに全く知らない街で、しかも晶葉の意図によるものか時計や地図の類がどこにも見当たらないのだ

空に浮かでいるのも月だけである以上、星を見て方角を知ることもできない

この状況での道案内は裕子にとっては無理難題に等しかった




杏「ほ、ほら、なんかないの?近くで目印になるものとか!」

裕子「目印...ですか...うむむむ、あっ」

きらり「ゆっ?」



裕子「そうです!確か周りより一際大きなビルが見えました!!元々私がいた場所には背の高い建物が多かったんですけど、その中でもさらに大きかったですね!」


杏「ふうん...たしかに目印としては心強いけど、そのビルからどれくらい離れてたとかはわからない?あんまり離れてると探すのめんどくさそうじゃん」

きらり「それもだけど...そのおっきなビルってどれのこと?よいしょっと」

杏「おっとっと」


杏を肩車し立ち上がったきらりが戦車の上で背伸びをしながら周りを見回す



裕子「えっとですねー...」


裕子が主砲の先の方に足をかけながら遠くを見通す仕草をする

月明かりのおかげで辛うじて真暗ではない景色にビル群が墓標のように直方体のシルエットを浮かべている

裕子はその中を右から左へと視線を流す。裕子たちを囲んでいるビルもあってかその視界は良好とは言えないが、




裕子「あっ、あれですね!あの方向にある4つ並んでいる、その中で一番大きいやつです!!天辺にある避雷針が特徴的なんですよ!!」



473: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/19(金) 15:11:31.69ID:nBNOkGqK0


きらり「杏ちゃーん、おねがーい!」

杏「うわわ...ただでさえ高いのに更に持ち上げないでよ......避雷針ねぇ、うわっ遠っ...」

裕子と杏が同じビルを目で捉える。

確かに件のビルは周りより頭一つ抜け出た高さで、長大な避雷針のせいか尖ったシルエットも、墓標というよりは卒塔婆に似ていた



これは三人は知る由もないが、その高層ビル内では数十分前まで渋谷凛とボットの死闘が行われていた

高層階の窓から事務所を見つけられないようにするという理由の下、能力とキーアイテムが絶えず入り乱れた戦闘が、

一人の能力持ちプレイヤーの乱入によりその結果は最終的にはプレイヤー側を利したが、もちろんそれを知ることもない





そのビルの隣をナニカがふわりと飛翔している





裕子「ん?今あのビル光りませんでした?」

きらい「窓がひかってゆの?」

杏「んー、めんどくさくて見えなかったけど」


それが見えたのは一瞬のことで、光る何かはその高層ビル向こう側、裕子たちの死角に消えた





そして




杏「はえっ!?」


見るともなしにビルを眺めていた杏が頓狂な声を上げる








視線の先でビルが丸ごと一棟消えていた







地上百数十メートルの高さと、

それに見合う膨大過ぎて勘定するのも馬鹿らしい質量と巨大さを誇る建造物が、

いともたやすく、


その場から消えたように”吹き飛ばされた”



474: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/19(金) 15:15:58.16ID:nBNOkGqK0


きらり「にょわっ!?」

裕子「あれもさいきっくぱわーですか!?」


きらりと裕子の目にも嫌が応にもその光景は飛び込んでくる

空のダンボール箱を蹴り上げるような気軽さで、高層ビルが空高く舞い上がっていく光景は

やがてビルはミサイルのように避雷針を地に向け落下していく。

あれの墜落、いや着弾した付近は無事では済まないだろう

幸いなのは3人にとってその惨事事態は対岸の火事であり、自分たちには累は及ばないであろうということだが、





聖(ボット)「.........」





死角を作っていた建造物が人智を超えた力で取り除かれたことでそれの正体が明らかになる


直線距離にして遠く遠く離れた場所に彼女はいた。


裕子にも、杏にも、きらりにも、その姿ははっきりと見える


丸く浮かんだ月の少し下方向、空中にふわりと浮かんだ望月聖の姿が、

月明かりを一身に受け、さらにその光に対抗するように自身もまた光を発している





__左右に3対、計6枚の、白く輝いた翼が広がっていく___





聖(ボット)「......ふぅ...」



聖なる天使の姿を借りて


『夜』のボットが空を支配する





そして忘れてはいけない

地上にいる者が天空を舞う瞳から逃れる術はないことを


聖(ボット)「あっちにも......います」


ゲーム開始70分経過

双葉杏&諸星きらり&堀裕子

早坂美玲&神崎蘭子&十時愛梨
VS
望月聖(ボット)

開始
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



475: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/19(金) 15:17:10.45ID:nBNOkGqK0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
しのしの相談箱の方を読んでくださった方、ありがとうございました


次回開始するチャプターを選択してください
安価下

1、輿水幸子&白坂小梅&星輝子&小関麗奈&大和亜季

2、早坂美玲&神崎蘭子&十時愛梨

3、渋谷凛&緒方智絵里

4、神谷奈緒&北条加蓮&三好紗南



476:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/09/19(金) 15:25:04.27 ID:UQId8lDG0




478: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/25(木) 11:35:33.95ID:9KvZNd+U0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
早坂美玲&神崎蘭子&十時愛梨


真っ逆さまに墜落した高層ビル。
建材で出来たそのミサイルが地盤ごと大地を減り込ませていく。
着弾の衝撃で爆散した何千枚のガラスが霧となってその下のクレーターを覆い隠す

6枚の羽を震わせ大空に陣取った望月聖からはその光景を正確に把握することができた


だが一滴の雨粒でも蟻にとっては天災であるように、そのミサイルの着弾点付近にいた者たちからにとってその瞬間、現状把握ほど難しいものはなかった





蘭子「ら、ラグナロクッ!!...ノアの大洪水!!...ジャッジメント・デイ!!(も、もうおしまいだよぉ!!)」

美玲「よくわかんないこと言ってる場合かッ!!もっとスピードだせッ!!」

蘭子「こ、こころえっ...きゃんっ!?」

美玲「ああもうウチに替わ、ぎゃふっ!?」

愛梨「あぁ!美玲ちゃん走ってる車の中で動いちゃ危ないよっ!」


波紋状に波打つ地面に揺られ、上下左右不規則に振り回される車内で、それでも奇跡的に横転しないまま装甲車は猛スピードで駆ける


運転席に座った蘭子がコントローラーを握る手に力を込める。

もう後ろを振り返っている余裕はない。

破壊的な地響きが座席を伝い蘭子の背中を絶えずノックし続けている


愛梨「美玲ちゃん落ち着いてっ」

美玲「わぷっ!?」

愛梨が、後部座席から身を乗り出そうとして盛大に転びかけた美玲を宥めながら胸元にホールドする

美玲の顔に合わせて形を変える胸にも構わず、背後のガラス越しに後ろを見やる。

既にガラスも天井も彼女の能力がすっかり直してしまっていた

背後に広がる光景、ガラス越しでは全景を捉えられないほどの塔、実際はビックビルディングが土煙とガラスの霧をまといながら変貌していく


重力と落下の加速で地面に近い階から粉微塵になっていく、その瓦礫を積み重ねながら次の階がずり落ちる、また次の階が粉
砕されずり下がっていく


下から順番に破壊されながら全体は斜めに傾き始めている。ロケットがエンジンを切り捨てて飛ぶように、地面側のフロアを犠牲にしながら着実に”こちらに倒れてきている”


愛梨「蘭子ちゃん!どこか横道に曲がれない!?このままじゃ追いつかれる!!」

蘭子「ひゃいっ!?」

美玲「もがっ!もががっ!!」

愛梨「ちょ、美玲ちゃ、ぁんっ...」


近距離で発された筈のその声は届かない、街そのものを揺るがしかねない破壊音は装甲車内も例外なく埋め尽くしていた




479: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/25(木) 11:38:38.04ID:9KvZNd+U0


そもそも今まで何とか横転はしていないが、今このとき避難のための速度で曲がってもそうならない保証はなかった



信号の灯らない交差点を最高速で突っ切る。

数秒後、その信号機も瓦礫の雪崩に埋もれた



だがいくら高層ビルとはいえ天を衝くほど高いわけではない。

完全に横向きに倒れきってしまえば爆薬でも積んでいない限り、その時点で脅威ではなくなるはずだった

倒れた塔に潰されるか、迫ってくる塔の影から逃げ切るかのデッドレース





そして




蘭子「ひぇ...」

愛梨「行き、止まり...」

美玲「もごっ!?」




前方50メートルばかりで直線道路は途切れていた。そこからは右か左へ折れる道路しかないT字路


袋小路でなかっただけマシかもしれないが、

いくら道路の車線が多く道幅が広くともそこを最高速のまま安全に曲がるテクニックなど蘭子にも愛梨にもなかった


背後からはガラスとコンクリの土石流が迫る


蘭子「ぶ、ブレーキ?ブレーキ!?これ曲がれるのぉ!?」

愛梨「と、止まっても後ろから来てるよ!!」

美玲「もごもっ!」


大声で声を掛け合う、そのほとんどは後部座席と運転席の間で外の音に阻まれる



蘭子の悲鳴を聴く者はいない。

愛梨の警告を聴く者は、



美玲「っぷはぁあっ!!」

美玲だった。



480: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/25(木) 11:39:59.41ID:9KvZNd+U0



愛梨の豊満な胸から半ば押し付けられる形だった顔を引き剥がす


美玲「んがぁッ!!!」


不安定な姿勢で両腕を振り上げ両手の爪をうならせる。



その切っ先が愛梨を捉えた



非現実的なピンクの獣爪が二つ、胸と腹を突き抜けるように愛梨を貫く






愛梨「____え...?」

美玲「ガルルルルッ」



愛梨の目が見開かれる、信じられないという風に目の前の小柄な少女の細腕に穿たれた己を見下ろす





そして何より彼女を混乱させたのが、”それが全く痛くないということ”だった




美玲「愛梨ッ!!ウチに捕まってろよッ!!」



愛梨はそのことを知らなかったし、美玲はそのことを伝えそびれていた

このゲームの始め、アナスタシアとの戦闘で判明した事実。



早坂美玲の能力はプレイヤーに全くダメージを与えずにすり抜けるということを



美玲「とにかくッ!!」

愛梨の胴のむこう、装甲車の後部座席を通して装甲車に触れた爪が能力を装甲車全体に及ばせる



メキィッ!!


蘭子「ひゃうっ!?」

突如、車体左側の装甲が大きく膨れ上がり硬い装甲板が軋んだ音を立てる

運転席側のドアがその歪みに引っ張られ無残にも車外に剥がされた

蘭子「あっ、え...?」

ドアの形切り取られた外の風景が轟音を立てて後ろに流れていく中蘭子の目はそれを捉えた




美玲「ムリヤリ曲がっちゃえばいいんだろッ!!」



481: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/25(木) 11:43:39.86ID:9KvZNd+U0




剥がれたドアと歪んだ装甲がそれぞれ飴のごとく捻られドリルのような何かを形作っていく



そこに作られていたのは爪だった。


鋭く曲がった巨大な3本の爪が装甲車の左側だけから生えた



愛梨「わっ...すごい」


早坂美玲の能力、破壊と変形が車体の片側一部を獣の爪に仕立て上げた



ガッ!!!ガリリリリリリリリリリ!!!



3本の爪が一息に地面に突き立つ、

猛スピードで走行する車両の左側から地面を引っ掻いた傷痕が白線のように引かれていく



美玲「んがあああああああああ!!!蘭子ッ!ブレーキ押すなよぉおおお!!」




ガリリリリリリリリリリリリリリ!!!



いよいよ目と鼻の先には頑強なビルが迫っていた


蘭子「こ、これは...!!」



ガギッ!!


道路に長い引っかき傷を付け続けていた装甲爪が地中のどこかに引っかかった

その瞬間装甲車の左側だけが急停止する。


そして爪の刺さった地点を軸に、


タイヤと地面を盛大にスリップさせながら装甲車は左に急回転した



正面の壁までわずか数メートルでの急カーブ。

爪を使った疑似ドリフトだった


蘭子「ま、曲がっ...た!!」

美玲「走り続けろォッ!!!」

愛梨「め、目が回る...」



482: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/25(木) 11:45:03.50ID:9KvZNd+U0




ノーブレーキで左折した車が歪んだ形のままに走行し、その後ろをかすめながら高層ビルだったものは完全に倒れ伏し崩落した

生き延びた三人が快哉を上げる



美玲「いよっしゃー!!ウチやったぞッ!!」

蘭子「あっあははっ......やったぁ」

愛梨「すごいよ美玲ちゃん!!えいっ!」

美玲「わぷっ、ま、またそのムネかッ、ふぐぐ」



感極まった愛梨が美玲を抱き寄せ胸に埋める。

美玲の両腕まだ愛梨を貫いたまま後部座席に固定されている

一方運転席の蘭子はコントローラーをおっかなびっくり操作し速度を緩めた。

当座の危機は脱したがまだ油断はできない

愛梨の能力が修復したバックミラーで背後を確認する。

そこでは天変地異でも起きたかのような惨状が横たわっていた



蘭子「わ、我らノアの方舟にて、滅び行く世界を脱け出さん...(なんとか助かった...?)」

ほっと一息をつく。

だがそもそもさっきの事態が埒外すぎて失念していたが、これは誰かの攻撃だったのか?


美玲の能力により引き剥がされたドアの方を見る。

外では静かな街の夜景が広がっていた




___そして見上げた先、そこに月を背後に据え、六枚の翼を広げた影がいた


蘭子の能力が事前に周囲の建物を消し去っていたおかげでその姿を見つけるのは容易だった



蘭子「美玲ちゃん、愛梨さん...あれ、見てください」

美玲「もごぐ...なんだあれ...」

愛梨「と、飛んでるね...」


直線距離にして遠く離れた

その神々しいとさえ言えそうな人影をしばしの間呆然と眺めていた






突如三人が見ている前でその姿が掻き消える




483: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/25(木) 11:47:07.53ID:9KvZNd+U0


望月聖は急降下していた。

6枚の翼のうち2枚を使い空から地へと垂直に加速する



そして先ほど「弾」にした高層ビルに比べると圧倒的に背の低い建物の密集した区画に接近すると次の行動を起こした



しかしそれは行動と呼べるほど活発なものではなかった

飛行に使った2枚とは別の4枚の翼をふわりと舞わせただけだ



そよかぜでも起きればどこまでも飛んでいきそうなほど儚げな翼が何棟かのビルを連続して撫でていく





たったそれだけの動作で、たったそれだけの接触で





何十トンもの重量をもった建物がゴムボールのように吹き飛ばされた




何棟もの建造物が畑の野菜でも引き抜くような手軽さで地中に埋まった基礎ごと弾かれ、投げられ、宙を舞う


聖(ボット)「プレイヤー...いっぱいいますから...これくらいしないと...」


飛行する聖の通った場所がクレーターを残して破壊されていく。


道路沿いの建物が次々に空へ消えていく


さっきの攻撃から逃げていった車のいるあたりと、

空から見たときにチラリと見えた戦車のような乗り物のあったあたりを狙うつもりで小石の代わりにビルを投げる



神聖なる存在に抗えるものなどいない。


光り輝く翼が齎す破滅の前に万物はなされるがままに消えていく





484: ◆E.Qec4bXLs 2014/09/25(木) 11:47:41.25ID:9KvZNd+U0




望月聖の能力はつまり「そういうもの」だった



この仮想現実における森羅万象の全てより俊敏で、柔軟で、強固で、そして神々しい




相対的にではなく絶対的な強さを持つ翼



そんな不条理な物質を6枚背中に携え聖は攻撃という名の作業を続ける


蘭子の能力が既に破壊していた物件も含め、舞い上げられたビルが重力に従い落下し、仮想の街全体に直方体の大型隕石が雨霰と降り注いだ


空を飛べないプレイヤーたちは地上を逃げ惑うしかない



あるいは戦うか





「さーいきっく!戦車バーット!!」

「むっがぁあー!!!アイツぜってー引っ掻いてやるッ!」






ゲーム開始71分経過

双葉杏&諸星きらり&堀裕子

早坂美玲&神崎蘭子&十時愛梨

VS

望月聖(ボット)

継続中


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



487: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/02(木) 23:38:28.12ID:NnKOBqiw0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
双葉杏&諸星きらり&堀裕子&早坂美玲&神崎蘭子&十時愛梨




堀裕子の能力の特色はざっくり言うとその怪力にある


街灯を手刀で断ち割り、戦車を持ち上げ、地盤を砕き進む


特にその能力が発揮されるのが、直接的であれ間接的であれ、何かを壊す時だ


例え超能力でスプーンを曲げることができなくとも、彼女は戦車砲くらいなら片手で曲げられる





「さーいきっくぅ.........ホームランッ!!!」



廃車どころか原型をとどめているかも怪しい戦車が乱暴に振り回され、空からビルを打ち返す

亀裂だらけだった窓ガラスを完全に吹き散らしながらコンクリの隕石は再度宙を舞い、少し離れた場所に落下した

戦車の方は廃車寸前でも戰爭を耐え抜くための装甲板だけあって建造物に叩きつけられてもビクともしない



杏「アメコミのスーパーマンじゃないんだから...」

きらり「にょわぁ...」


裕子の振り回す戦車の巻き添えにならないような、

それでいて裕子が打ち漏らした建物に潰されない距離をキープしながら杏が呟く



杏「そんでもってあっちはあっちで神話の神様みたいだしさぁ...」

きらり「にょわわぁ...」




首を向けた先には月と翼。部屋の模様替えでもするような手軽さで周囲のビルを持ち上げ、吹き飛ばすシルエットが空を踊っている



488: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/02(木) 23:40:05.56ID:NnKOBqiw0



裕子「ヒットエンドルルラァアン!!」



体を一回転させるように戦車を回しビルの上半分を打ち飛ばす。


それを最後に建造物の空気を切り裂く落下音は止んだ



杏「おっ、終わったっぽい?」

ガッゴォオン、とけたたましい音を立ててくの字に折れ曲がった車体が放られる




裕子「いやー!いい汗かきました!...と思ったらかいてませんでした!」

杏「そりゃゲームだしね」

きらり「裕子ちゃんかーっこいいゆー」



そうして裕子も杏ときらりの隣、落ちてきたビルの影に腰掛けた。


そこは聖からは死角になっている


裕子「それよりなんなんでしょうね、あれ?」

杏「チートキャラとかじゃないの、いきなり夜になるわヤバげな敵は出るわで大変だよもう、面倒くさいなぁ」

ポケットから出したスプーンをさすりながら裕子がきょとんとした顔で疑問をあげ、杏がげんなりした表情で返す



きらり「ゆゆ?」


崩れた建物の隙間から飛行する影を見ていたきらりが何かに気づいたような声を出す


きらり「にぃにぃ、杏ちゃん裕子ちゃん、あのぴかぴかしてるの見て見て~」

杏「んあ?きらり、あんまり顔出し過ぎたら危ないよ?」

きらり「うゆ...でもでもあれ!きらりたちとは違う方向ばーっかりアタックしてるゆ!」

裕子「おおっ!確かにそうですね!どういうことでしょう?」

杏「杏たち以外のプレイヤーでもいたんじゃないの?今のうちに逃げる?」



きらり、杏、裕子と並んで遠くを睨む。


きらりの言うとおり確かに月明かりの下、翼をはやし縦横無尽に空を駆ける影は別の方向へと飛翔し建造物を投げつけていた

それが空を飛んでいるということに加え、周囲数百メートルの目立った建物が根こそぎ消えたからこそはっきり見える



489: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/02(木) 23:43:46.07ID:NnKOBqiw0



杏「あっちからはこっちが見えてないっぽいねー」

裕子「つまり反撃のチャンスですか!?」

杏「ちゃうわ、今のうちに事務所に行くんだよ。んでもってきらりのキーアイテムとやらを探しちゃうんだよ」



きらり「杏ちゃん...なんてゆーか...働き者してう?」

杏「っち、ちがうし...どうせだから三人揃って能力あったほうが後々楽できると思っただけだよ」

裕子「そうでしたね!では早速向かいましょう!」

杏「だから待ってってばタイミング見てよ」

思わず力んだ風に裕子が立ち上がろうとするのを杏が服の裾を掴んで止める



きらり「でもでも~、事務所ってあのぴかぴかしたのがペっちゃんこ~ってしちゃったんじゃないかにぃ?」

そこにきらりが口を挟む。

聖の攻撃により事務所が既になくなっている今、確かにその可能性は大いにあった


裕子の言によれば事務所の近くあるらしい高層ビルを始めその周辺の建物は根こそぎにされている。

その中に事務所そのものが混じっているか、

あるいは他の建物に圧し潰されているのも否定できなかった



裕子「それはたどり着いてから考えましょう!」

きらり「んにぃ!?」

裕子「いえ!もしかしたら無事かもしれないじゃないですか!」

杏「ポジティブすぎる...」



裕子「それに周りの建物が壊滅したおかげで逆に探しやすくなったでしょうし!」

きらり「裕子ちゃん...ものすごーくぶっそーな発言だゆ...」

杏「じゃあ危険地帯を迂回しつつ~って感じで行こっか...はぁ、めんどくさい」


そう言う間にきらりが杏を背負う、ここらへんは二人の無言のコンビプレイだった

一方、裕子も周囲、正確には聖を警戒するようにこそこそと建物の影から這い出す



先頭を切った裕子が四つん這いのまま視線を巡らせ、安全を確認したあと後ろを振り向く

裕子「敵もどうやら別のものに夢中みたいです!さぁ!私について来てください!」

杏「うんありがとー。でもハイハイで行く必要はないんじゃないかなぁ...」

きらり「裕子ちゃん、赤ちゃんみたいだにぃ...」


裕子「むむっ!これが私なりのさいきっく隠密で___」


まだ建物の影に待機していたきらりの指摘に反駁しようとした裕子の声が突如途切れる

杏たちの眼前で、横薙ぎに飛来した物体が衝撃と共に裕子を吹き飛ばした




その物体には羽が生えていた



490: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/02(木) 23:45:44.22ID:NnKOBqiw0




裕子「いたた...なんですか!?敵襲ですか!?」



地面の上をゴロゴロと数メートルばかり転がっていったところで裕子が勢いよく起き上がる

大したダメージではなかったようだ



きらり「一応無事でよかったゆ...」

杏「...言わんこっちゃない、さっき飛んできたのはなんだったのさ...」


それを見てほっとしたように息をつき飛んできた物体に目をやる。



それは背中から羽を生やしていた。

といってもそれは望月聖のものより数段小さいもので、



「あう、ぶつかっちゃった......もう、スピード出しすぎだよぅ」



「た、手綱が我が手を振り切ったのだ...うぅ(うまく操作できなかったんですよぉ...)」



そして杏たちの目の前でパラパラと解けながら消えていった




それは望月聖の能力とは別のルーツより発生した飛行能力

杏「は?」

きらり「ゆ?」


局所破壊から広域殲滅、そして飛行まで可能にする能力者、神崎蘭子


そして、彼女の胴にしがみつくようにして一緒に飛んでいた十時愛梨


裕子と衝突した二人が腰や背中をさすりながら起き上がった



491: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/02(木) 23:47:24.88ID:NnKOBqiw0





愛梨「あわっ!?裕子ちゃん大丈夫っ!?ごめんね!」

蘭子「す、すまない超能力者よ...」

裕子「飛んできましたね!?さいきっく飛行ですか!?」


二人が慌てて裕子に駆け寄るが本人はそれほど堪えてないようだ。

ユニットを組んでスタミナに余裕があるおかげだろう


蘭子「然り...でも本当にごめんね?......飛んでたら他のプレイヤーが見えたから、つい嬉しくて飛び込んじゃいました...」

杏「え?なに?蘭子ちゃん、空も飛べるの?」

きらり「羽、ぱたぱたちっちゃかったにぃ」




蘭子「い、否...我の能力は一つにして一つにあらず...」

愛梨「って、それどころじゃないんだよ!」

能力の説明をしようとスケッチブックを取り出した蘭子を遮る形で愛梨が焦った声を上げる




杏「それどころじゃない?まぁそうだよね。さっさと逃げないと...」

愛梨「それです!」

蘭子「失念していた...火急の用なり!(そうだ!大変なんです!)」

杏「わっ!?」

裕子「わぷぷっ」

きらり「にょ?」

杏の言葉に愛梨が身を乗り出し、抱き起こされていた裕子の顔が胸にもぐり込む



同時に遠くから倒壊音が届く。

聖の翼がまた何か巨大なものを壊したらしい





蘭子「獣爪の......みっ、みれ、美玲ちゃんが!」




愛梨「私たちを逃がすために一人で...!」






~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



492: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/02(木) 23:48:47.07ID:NnKOBqiw0




周囲数百メートル上の道路が地図から消えた



望月聖は下界を見下ろし、そう判断した




眼下には地盤ごと掘り起こされ無造作に放られ、一つとして直立を保った建物は見当たらない



道路もなぎ倒された建造物の下に完全に埋もれてしまっている



幼児に散らかされた積み木のような無秩序の荒廃の風景



彼女の能力は、この状況をものの数分で作り上げてなお傷一つ付けず夜空に照り映えていえた



聖(ボット)「だいたい...こんな感じ、ですか...?」



それでも仮想現実は広く、視線を遠くにやれば数えられる程度とはいえ無事の建物はまだ残っている



それでも、この近くにいた存在は全て瓦礫の下敷きだろう



聖(ボット)「.........」



翼の角度を調整し、高度を落とす。完全に着地することはない。



度を越して派手な破壊活動のあとだ。いつまでも空にいれば目立って仕方ないだろう



斜めに傾いたり、完全に天地が逆転したビルが何の法則性もなく並んでいる



493: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/02(木) 23:51:09.38ID:NnKOBqiw0




聖(ボット)「...私を、守って」



飛行と攻撃のために広げられていた翼が繭のように背中から前へかけて聖を包み込む


外の様子を伺う隙間を作るためと、最低限の移動のため二枚だけは閉じられずに広がっている


その翼の白さのせいか、聖の外見が羽を生やした卵そのものになる


聖(ボット)「......ほたるちゃんや、藍子さんは...上手く出来ているでしょうか...?」


ボットが今どのくらいいて、どのくらいプレイヤーを圧倒しているのか、少ない情報で推測を行う


聖(ボット)「(ほたるちゃんの能力は、ほぼ自動操縦だから、本当ならどこかに隠れていればそれだけで十分勝てるよね)」

どこかを固まって飛び回る鳥類の群れについて考える


聖(ボット)「(藍子さんの能力は、能力の範囲が狭いし、藍子さんものんびりしてるからプレイヤーに逃げられたら不利...かも)」

自分とほたるより遅れて出発した仲間のことを考える



聖(ボット)「でも...藍子さんの能力は、勝ち負けとかそんなじゃないし...考えるだけ無意味」

しばらくして思考を打ち切る


なぜなら複雑な作戦は必要ないから。

自分の翼は絶対の存在であることは確定している


どんな大きさの、

どんな固さの、

どんな鋭さのものが、

どれだけの速さで自分に向けられようと


私の翼に触れれば全て塵になる



聖(ボット)「だから...気をつけたほうがいいのは、変な能力を持ったプレイヤーだけ」


物理的に自分の敗北はありえないが、能力がプレイヤーに何をもたらすかはわからない


自分が既に持っている情報を見直しても、塩見周子や高森藍子という予測不能な例外がいるのだ



494: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/02(木) 23:53:14.40ID:NnKOBqiw0


用心するならその一点だ。

と聖が結論を出したところで


ガゴォン!!!


聖の近くで不安定な角度で立っていたビルが崩れる

空を飛んでいる聖には砂粒一つ当たらない、だが


聖(ボット)「......?」

滝のように流れ落ちた瓦礫が停止する

それは次の瞬間一固まりにより集まり、巨大な腕の形になった

腕の先には一本一本が氷山ほどの大きさもある爪が生えている


美玲「ウチが相手だぞッ!」


重力に逆らい能力により稼働したコンクリの腕と爪が空中の聖を襲う

その手のひらだけでも卵のように丸まった聖を握り潰せるほどの大きさだ


美玲「らぁっ!!」


美玲の腕力ではなく能力そのものの力が爪を食い込ませる


聖(ボット)「...むだ...」


そしてそのまま、握り締めた爪も指も消失した


聖は何もしていない、翼も聖を包みこんだままピクリとも動いていない


それでも翼に衝突した爪は、腕や指もろとも粉塵になっていた


美玲「オマエ......聖か...?」


自分の攻撃がみじんも効果をなさず砕けていく中、美玲が警戒心を露にしてつぶやく

翼の盾の隙間から聖の顔が覗いていた



瓦礫に半ば埋もれ、倒壊した建物の中にいる美玲と何もない空を浮かぶ聖の視線が交差する



美玲「ウチらのことムッチャクチャに攻撃してきやがって!!ぜってー許さないかんなッ!!」

聖(ボット)「......そう」




獣が吠え、天使が見下ろす

森羅万象を砕き操り自らの武器とする早坂美玲

森羅万象を寄せ付けず一方的に破壊する望月聖




495: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/02(木) 23:54:13.83ID:NnKOBqiw0



そして戦闘が始まる


地面は掘り返され土くれの山に


建造物は粉々に砕かれ灰色の砂に


形あるものが消え、街の名残が消えていく


二人の戦いが終わったとき


仮想現実の一部が完全な砂漠と化すことになる




そのとき、倒れ伏しているのは___




______________

 双葉杏+  147/300
   


______________

______________

 諸星きらり  147/300



______________

______________

 堀裕子+   147/300



______________

______________

 神崎蘭子+  69/100
   


______________

______________

 十時愛梨+  61/100



______________

______________

 早坂美玲+  50/100



______________

ゲーム開始75分経過
早坂美玲VS聖(ボット)
開始

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



496: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/02(木) 23:55:08.34ID:NnKOBqiw0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
星輝子&大和亜季




キノコ型ボットは強くなる



自身の生みの親である能力者、星輝子の危機の応じて。



彼女のスタミナが減るごとに体積を増し、力を増す


完全逆襲型の能力者ならぬ能力茸


ボットが輝子を追い詰めれば追い詰めるほどに

その敵の前により高い壁として立ちはだかる




ジャイアントキノコ「FFFFFFF!!!」


ガァンッ!


2メートル近くまで膨れ上がったキノコの、その笠が頭突きを振るう


くらった相手はその体をくの字にひん曲げ地面を転がっていく



頼子(ボット)「なるほど...大した威力ですね...」



頼子の声は平淡で、それでいて好奇に満ちていた



輝子「ど、どう...どうして...!」



対する輝子の声はその真逆、混乱と焦燥、目の前の光景を許容できない、

あるいはそれを拒否するかのように焦点が定まっていない



497: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/02(木) 23:58:03.30ID:NnKOBqiw0




地面に膝をついた輝子のすぐそば


亜季「ぐ、くくく...」


大和亜季が苦しげに呻きながら体を起こす





”キノコから頭突きをくらった”肩を押さえながら





ジャイアントキノコ「FFFFFF!!」

頼子(ボット)「ふむ、やはりこちらのキノコさん...輝子さんのダメージにのみ、反応するようですね...」



ゆらゆらと頭を揺らすキノコの横に怪盗が並び立つ


まるで今ここにおいては古澤頼子こそがそのボットの主人であるかのように



輝子「どうして......どうしてなんだマイフレェェンド!!」




何羽ものカラスが黒い円を描いて三人の頭上を飛ぶ

キノコが足の形をした根っこで地面を踏み鳴らす



それらはそれぞれ白菊ほたる、星輝子の「所有物」だった



頼子(ボット)「どうしてでしょうね...わかりませんよね...?」


「...いつ、どこで、何を盗まれたかなんて...」





それらは今

古澤頼子の「コレクション」となっている




ゲーム開始75分経過

大和亜季&星輝子
VS
古澤頼子(ボット)

継続中


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



498: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/03(金) 00:06:31.83ID:tIMLZoEN0


次回開始する戦闘シーンを選択してください
安価下

1、南条光 白菊ほたる 古澤頼子

2、望月聖

3、本田未央&島村卯月&水野翠&佐城雪美&古賀小春

4、高森藍子 

これの続編で二十代以上が参戦したらこの戦いはどうなるんだろうなとか考えてたけど

しゅがーはぁとが物理的に無双している姿しか見えない

あと芳乃ちゃんとかもいるしなー

次回作はモバマスで妖怪大戦争とかしたい(未定)




499:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/10/03(金) 00:41:43.66 ID:gGsj2+vMO

4



501:</b> ◇E.Qec4bXLs<b> 2014/10/09(木) 20:42:27.23ID:Xln05VgA0

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ゲーム開始60分経過時点



八神マキノ

自分の分身の立体映像を遠隔地に出現させる能力



例えるなら幽体離脱

仲間に説明するときそうは言ったが

実際のところそれは千里眼に近い能力だった


距離を無視した視界を確保し、それと同時に本体はこの世界から一時的に消える

100%安全な状態で一方的に情報をかき集めることができる



望月聖が干渉するもの全てを破壊する「無敵」だとするなら

八神マキノは全てのものから干渉されないという「無敵」



彼女がボットではなく人間だったらなら、やや驕りととも取れるそんな感情を持っただろう

その能力にとって、仮想現実は「テレビ画面の向こう」だった






そして今




「___ほかの方の協力は必要ありません」





もし彼女が人間なら、そこにある感情は恐怖だった






藍子(ボット)「だってほら、フロントメンバーの攻守交代はもう始まってますし」

マキノ(ボット)「か...らだ...動かない...?」



テレビの向こうから伸びた手が彼女を掴んでいるかのような、ありえない状況




八神マキノは捕らえられていた

目の前にいる高森藍子に





502: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/09(木) 20:44:31.28ID:Xln05VgA0




マキノ(ボット)「い、いきなり...どういうこと...」

藍子(ボット)「...いきなりって...私の目の前に急に現れたのはマキノさんじゃないですか」



実際に藍子の手指がマキノに触れているわけではない

だが、現に藍子が何らかの動きを見せ、マキノの体が動かなくなった



マキノ(ボット)「(どういうこと...元々転移先からの移動はできなかったけれど...)」

「(指一本動かなく...それに...離脱、能力の解除すらできないだなんて)」


能力を無効化する能力?いや、能力自体は発動している。ただし解除ができない

相手の体を動かなくする能力?それも違う、そもそも私の体はここにあってここにないのだから

今分かっているのはただ一つ、自分は藍子の能力の範囲内に踏み込んでしまったこと



藍子(ボット)「あ...皆さんはもう出発されるんですね?」

マキノ(ボット)「......あなたたちは...」



目線だけを藍子から外す。

藍子の背後からほたると聖が歩いて来ていた

聖は寝起きのように足元が頼りなく、ほたるは気が急いているのか頻りに周囲を気にしていた



ほたる(ボット)「あ、藍子さん...そちらの方は?」

藍子(ボット)「私の能力に引っかかったんですが、こっちで何とかしておくのでほたるちゃんはほたるちゃんで頑張ってきてくださいね?」

ほたる(ボット)「?...分かりました、えっと...頑張ってきます」


それと同時にほたるの背中が気球のように膨れ上がる。

黒を基調とした衣服の背面が彼女の身長の数倍に達し、そして破裂した

そこから黒い血飛沫となってカラスが四方に飛び出していく



マキノ(ボット)「(これは...音葉さんの生み出す武器どころの量じゃない......!)」

そのうちの一部がほたるに取り付き、羽ばたく。

何十羽ものカラスが彼女を引き上げ、その体が地面から浮かび上がり始めた



聖(ボット)「.........なら、私も」

そういう聖に後光が差す。

そして彼女の背中から後光の正体、輝く翼が六枚姿を現した

ほたる(ボット)「それでは、行ってきますね...」

聖(ボット)「行って...きます...」

藍子(ボット)「行ってらっしゃい」

黒い羽と白い翼をまとい、少女たちが空へと消えた



503: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/09(木) 20:46:21.67ID:Xln05VgA0



それを見送ったあと藍子がつぶやく

藍子(ボット)「......あの子達も大変なんですよ」

マキノ(ボット)「...どういうこと?」


藍子(ボット)「あの子たちは能力のはこの仮想世界に対して容量が大きすぎるんです、だから『夜』まで能力の使用を待つしかなかったんです」

マキノ(ボット)「それは知ってるわ、光の反射や屈折を逐一計算している状態の世界ではサーバーの処理が追いつかないんでしょう?」


藍子(ボット)「......光だけではダメなんですよ」

マキノ(ボット)「なに?」


マキノが聞き咎める、この能力の本文は情報収集。

会話からだけでも得られるものはあるはず


藍子(ボット)「この世界は一つのテーブルの上にあるのと同じです...」

マキノ(ボット)「そして、そこに我々ボットやプレイヤーが乗っていると?」

藍子(ボット)「乗り切らないんですよ......光の計算処理を一部除いただけでは」

マキノ(ボット)「乗り切らない...?......ぐぅっ!?」


藍子が手を差し伸ばす、マキノとの距離が少し短くなる

同時にマキノの体が縮こまった、全方位から圧力をかけられたようにその体が折れ曲がる


藍子(ボット)「聖ちゃんの翼はもちろん、ほたるちゃんの使うカラスは見た目こそ小さいですが、スペックはボット一人と同等...そんなものを数万羽、テーブルに乗り切るわけがありません」

マキノ(ボット)「だ、だから...他のボットまで、仲間まで...手にかけようというの...!?」

藍子(ボット)「これが私たちの下した結論......人工知能が導いた結果です」



マキノ(ボット)「だったらせめて...」

今ここに、自分より少し遅れて愛海が来ている

ここにこさせるのはまずい、どうすればいい


なんとかしてこの事実を、『夜』が味方でないという事実を愛海に伝えなければ


藍子(ボット)「乗り切らないどころか、無理に乗せればテーブルそのものに大きな穴が空いてしまいますから...」

マキノ(ボット)「せめて...最後に、あなたの能力を......教え...」


どうすればいい、時間を稼ぐ?能力の謎を解く?

この世界のどこにもない体で?




504: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/09(木) 20:56:54.69ID:Xln05VgA0




藍子(ボット)「能力...私のですか?」

マキノ(ボット)「そうよ...私を縛ってる、この、能力くらい、教えてくれても......」



藍子(ボット)「ん......えっと...?」

マキノ(ボット)「......?」


マキノの言葉を受けた藍子が何やら難しい顔をする、

先刻の言葉に何か腑に落ちない点があったかのように


藍子(ボット)「.......そうですね...なんと言いましょう」

マキノ(ボット)「......」


時間を稼いだところで自分は助からない

だが今の自分で最大限にできることは、ある


マキノのボットとしての知能は一つの可能性を見出していた


”二宮飛鳥が今の自分たちを盗聴している可能性”に


愛海が、藍子に倒されるマキノを見て、さらに逃げおおせる可能性もないことはないが、

遠く離れたアジトで飛鳥が『夜』についてより詳しい情報を手に入れてくれる公算の方が高かった


マキノ(ボット)「(元々私は戦闘向きじゃあない...これだけの時間が経った今プレイヤーも一筋縄ではいかない......足でまといになるくらいなら、残った仲間に能力の情報だけでも...!)」


”残った仲間”


向井拓海については聞いていたが、

彼女はそれ以外も予測がついていた

梅木音葉、橘ありす、結城晴、福山舞、桃井あずき


これだけの時間が経過しても戻らない、仲間たちの辿った結末を


マキノ「(戦力外たちの宴...正直ふざけた名前だと思ったけど、私は確かに最期まで戦力外だったみたいね)」


今、「戦力」として動いているのは六人

島村卯月、本田未央、佐城雪美、水野翠、古賀小春、市原仁奈

そして予測がつかないのが二人

二宮飛鳥、遊佐こずえ

飛鳥は拱手傍観を決め込んでいるし

こずえに至っては戦力どころか戦闘力すらない

この世界がテーブルで、その上にボットがいるというのなら、こずえはどこにいるのだろう

マキノ(ボット)「.........(小梅さんの遺体といい...結局、私に理解できたことは何もなかった...)」


藍子(ボット)「あの...マキノさん...”この能力”って言ってましたけど...」

マキノ(ボット)「!!」



505: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/09(木) 21:00:07.78ID:Xln05VgA0



思考を巡らせていたのはマキノだけではない

藍子が考えをまとめ終わったように口を開く

その間もマキノの体は指一本動かず、今にも押しつぶされそうな圧力がかかっている



「まだ使ってないんです、能力」


「............は...?」


困ったような笑みを浮かべ、藍子は言う


「マキノさんの今の状況は、あくまで能力の過剰な容量による副産物です」


「そん、な...」


がさり、マキノは背後からの物音を聞いた


最悪のタイミンげで、同胞が訪れる


愛海(ボット)「あっ!藍子ちゃ__」


マキノ(ボット)「あつっ...逃げ____」


藍子(ボット)「それでは、能力を使いますから___」





「___ちゃんと感じてくださいね?」





八神マキノ(ボット) 消失

棟方愛海(ボット) 消失

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



506: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/09(木) 21:02:51.48ID:Xln05VgA0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ゲーム開始?分時点



それは一人の少女の夢の続き



一面の真っ白なガラス越しに街を見下ろす曖昧な夢



こずえ(ボット)「.........」



ガラスの床は所々丸く切り取られている。


人一人が通過できるほどの丸穴



小柄なこずえならなおさら余裕を持って通過できる直径だ



こずえ(ボット)「......これ...ちがうー...」


だがこれは彼女の「入口」ではない

確かに見た

別のボットがここを入口に使っているのを


ならばこの穴はその彼女のものであり、こずえのものではない



入口はひとつではない、


大きさの大して変わらない丸穴はそこかしこに用意されている


だがどれもこずえではない誰かが潜っていった





仮想の世界の”歪み”を象徴するポッカリと空いた穴から

ボットとしての”能力”

世界を歪める力を授かりながら




507: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/09(木) 21:06:35.99ID:Xln05VgA0



こずえ(ボット)「...こずえのは...どこー...?」


ここに留まっている自分には無いもの


ここを抜け出すことで手に入るもの






にゃあお




こずえ(ボット)「.........ねこー?」


白い世界に黒点


その子猫の黒い体はこの場所によく映えた



こずえ(ボット)「...ねこー......」



てくてくとどこかへ歩き出した猫を追う


穴だらけの床を恐れることなくまっすぐ歩んでいく



にゃぁあおー



こずえ(ボット)「......待ってー...」



やがて猫が立ち止まり、こずえもそこに並ぶ

そこにあったのはまたしても丸い穴、

だが他の物より数段小さい。


それこそ子供しか入れなさそうなほどに


こずえ(ボット)「!...これぇ...これ...だよー」


根拠はない、だが確信があった

ついにみつけた。


猫に連れられ見つけたこれこそが遊佐こずえの能力のための歪み



508: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/09(木) 21:09:12.47ID:Xln05VgA0



座り込んで、丸い入口の外周をなぞる


傍らを見ると黒い子猫もまたじっと佇み、こずえを見返していた



こずえ(ボット)「...ありがとう...こずえ...いくねー?」


にぁおう


ガラス越しではなく直接に下を覗き込む

そのまま落ちていこうとしたところで



ふしゃーーっ!!



突如、子猫が吠えた

尾を立て、毛を逆立てて対象を睨んでいる


こずえ(ボット)「...どう...したの...?」

子猫の視線を追う

そこにはただ白い背景があるだけ

誰かがいるようには見えない、だが


ぴしり


こずえの入口、その外周にヒビが入った


何者かが体重をかけたように


正円に歪みが生まれる、子猫は未だ吠え立てている

知らず知らず、宙を見つめたまま視線が動かせなくなる

こずえ(ボット)「......あなたー...だぁれー?」


ぴしりぴしり


これは侵略だ

誰かがこずえの物を横取りしようとしている

世界の条理に逆らって

遊佐こずえにしか使えないものを遊佐こずえ以外の誰かが使おうとしている


「     」



509: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/09(木) 21:12:15.33ID:Xln05VgA0



猫でもこずえでもない誰かがこの場にいる


亀裂がその存在証明だ


丸い穴が歪曲する



こずえ(ボット)「...だめ...だめー」



今やはっきりとその存在を感じ取れる

誰か、侵略者の見えない姿を

それを食い止めようと、せめてもの抵抗に手を伸ばす







「      」

こずえ(ボット)「ぇ?」



何かを言われたような気がした


気配が消える


こずえの入口の向こうへと

こずえの歪みの向こうへと







こずえ(ボット)「.........だれかを...さがしてる、のー?」





夢が終わる



ゲーム開始?分時点

遊佐こずえ(ボット) 能力未獲得



510: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/09(木) 21:17:03.21ID:Xln05VgA0

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


死者の行進


十数分前に夜の帳が下りた仮想世界にそんな光景が展開されていた


のあ(ボット)「......損傷が酷い...ここに来るまでにどれだけが無事でいられるか」


カラスの飛び交う空を忌々しげに見つめる

問題はこのカラスの存在そのものではなく、カラスがこの街へ蓄積させていくダメージだ


カァアアーーー!!

ザシュッ!!


地面すれすれを飛行していたカラスが切り裂かれる

切り裂いたのは死者のごとき存在

枯れ枝のように細くなった手足に申し訳程度の肉付き


スプーンでくり抜かれたように大きくえぐれた胴体

人間の形を保っているのが不思議なほど歪んだシルエット


それが何体も何体も何体も何体も何体も行進している


共通の目的地へ向けて、崩れそうな足を引きずり


指の代わりに誂えた槍のように尖った腕でカラスを追い払いながら


盲進し、前進する



511: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/09(木) 21:21:21.71ID:Xln05VgA0



アナスタシア(ボット)「...このカラス...やはりなにかの能力が...あるようですね、私の氷、ボロボロです...」


のあの側で武器である氷柱を構え、

同じく飛びかかってくるカラスをいなし、叩き、突いていく


のあ(ボット)「この街全体に散らしていた『私』の一部がこれほど減らされるなんて...」


暗くなった街の小さなオフィスビルの屋上から道路を見下ろす

そこに広がっているのは自分

つまり高峯のあというボットの「本体」へ戻ろうと足を動かす死者の群れ

村上巴に襲い掛かった人形達のような風貌の、瓦礫でできたゾンビたち

これら一体一体がかつて高峯のあの一部であり、

物体の中に侵食することでそれを支配し、操っていたものの正体

そうして仮想現実の街中に張り巡らされたのあの骨肉が今、彼女の下に帰還している


カァアアアーー!!


そして同時に先程から、何百体と並び眼下を埋め尽くす行進にカラスが襲来していた

のあのコントロールが可能な範囲では迎撃が試みられている

だが粗末な人形のボディで飛ぶ鳥を落とすことはボットにとっても非常に難しく

瓦礫の人形からただの瓦礫へと朽ちていき

カラスの体当たりに次々と沈んでいく



アナスタシア(ボット)「アー、地面や建物の中を...潜らせてはダメなのですか...?」

のあ(ボット)「そうしたものはどれも最初の段階で朽ち果てていったわ...あのカラスに触れられるだけで消失してしまったみたい」


だからこその死者の行進

だからこその人形形態

高峯のあの一部をカラスから守りながら本体へ運搬するための手段




512: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/09(木) 21:22:52.77ID:Xln05VgA0



アナスタシア(ボット)「...まさか『夜』がここまでのものとは...思いませんでした」

のあ(ボット)「そうね、街中に同化させていた『私』のうち...いきなり三割近くが使い物にならなくなったのは予想外だったわ...」


高峯のあ、物体と一体化する能力者


その能力により直接攻撃により受けるダメージを散らしてきた


上半身が破壊されようと修復は容易だったし痛手でもなかった


ア”ァアアアアーー!


だが、こうして散らばった彼女全体に同時に攻撃を仕掛けられれば___


白菊ほたる

彼女は間違いなく高峯のあの天敵だった



数百体に及ぶ死者の行進と死肉を漁るカラス


世界の片隅に地獄絵図が花開く



_____________

 アナスタシア+ 60/100


_____________
_____________

 高峯のあ+   55/100


_____________




ゲーム開始80分経過

報告事項なし

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



513: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/09(木) 21:24:44.62ID:Xln05VgA0



その地獄絵図を遠く眺める者がいた


藍子(ボット)「......あのあたりですか...ちょっと遠いですかね」


町外れの廃屋を出てのんびり歩くこと数分

藍子はようやく街に踏み込んでいた。

他の二人と比べるとやはりその速度は数段落ちる

散歩でもしているようにしか見えない進行速度、だがボットである彼女に無駄はない



藍子(ボット)「あっちの建物がなくなって閑散としてる場所は...多分聖ちゃんがいるのかな」

「カラスは......その逆方向に集まってますね....近いほうから向かうとしましょう」


月明かりを遮る黒い雲、幾千のカラスの流れを観察する


彼女はカラスたちの、ボットやプレイヤーを優先して攻撃する習性、否、「機能」を知っていた


そして自分とほたるだけはカラスの災禍が通じないことを把握していた

ガ、ガァア...ガアガ...


「あぁ、私のところにも来てたんですか...」


藍子もまた現在進行形で無差別破壊の標的だった。

彼女の周囲には二重にも三重にもカラスが飛び交い、そして嘴を向け飛来している



すでに廃屋から街に来るまでの間に、カラスによる藍子への攻撃は三桁を超えていた



そしてその全てが失敗していた




「そういうのは、私には効果がありませんよ?...あぁ、ほたるちゃんに言わないと意味はないですね」


藍子はゆるりとカラスに目を遣る、



彼女の周囲数メートルで空中に剥製のように固まったカラスたちに、


片腕を振る、その動きだけで停まっていたカラスの体表にノイズが走り、消滅した



514: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/09(木) 21:27:08.40ID:Xln05VgA0



『夜』が始まってから今の今まで、


藍子に攻撃を仕掛けたモノは何であろうと不可視の壁に阻まれ、停止した


そして彼女の判断次第ではその姿も最初からなかったかのようにかき消されていった


「あぁ、もう...次から次へと...ほたるちゃんに、私のところへは来ないようちゃんと頼んでおくべきでした」


のんびりとした歩みの彼女は素早いカラスには格好の標的で、

同時に彼女の能力は途方もない障壁だった


「...あれ?あの家...カラスがいっぱい集まってますね」


学習することなく自分に向かってくるカラスが流れ作業的に消滅していく中、

彼女の視界はそれを捉えた



ボロボロに朽ちた住宅が並ぶ中、周りより少しだけ小奇麗な屋敷が鎮座している


カラスの能力が及んでいない建物、

それはつまり建物よりも優先される存在が中にいるということだ



「ボットでしょうか......プレイヤーだといいですねっ」



そして彼女は丁寧に玄関口に回り、扉を開けた



___________

 高森藍子+ 100/100


___________




ゲーム開始80分経過

報告事項なし



515: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/09(木) 21:29:38.46ID:Xln05VgA0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
???



小さな白い女の子を押しのけたのが一時間前




人形のように空っぽの体を手に入れたのも一時間前




そこから一時間、体の動かし方を延々と試し続けていた




起き上がるどころか瞬きすらできなかったようだ



だから死体と間違われ、置いていかれてしまった



そばにいた友人に何度か呼びかけたが聞こえなかったらしい




静かな部屋に咀嚼音が響く



「それ」は何かを食している



仮想の世界の中で食事に勤しむというのは異常事態だが



それは栄養補給のためではないだろう



その行為の意図するところを少ない判断材料から推測するに、


「それ」が摂取しているのは容量だった





516: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/09(木) 21:30:51.26ID:Xln05VgA0


他人の入口に横入りし、

別人の体を乗っ取って、

あちこちにガタが来ているのかもしれない


こうして動けているのがギリギリである今、

余分なスペックが必要だったのだろう




窓から入ってきていたカラスを咀嚼している

部屋の隅に生えていたキノコを食い尽くしていた




他のボットを吸収することで肉体を保とうとしている




断っておくと、これらの記述は全て推論に過ぎない




生あるものに、ましてや現代科学でそれを完璧に説明することなどできない




部屋の扉が開いた



藍子(ボット)「えっと...おじゃまします」



そして邂逅する



517: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/09(木) 21:33:48.85ID:Xln05VgA0




「    」


「うーん...あなた、ボットですよね...?バッジがついてますし...」


「    」



「あの...?...」



「 . ・」



「それ」は小さくて細い指を蠢かせた



呼応するようにその肉体が変化する。


吸収したボットがその動きに応える



カラスの羽が寄り集まり、背中から黒い翼が


キノコの細い根が捻り合わされ手足の短さを補うような触手が



藍子(ボット)「あぁ、あなたも他のボットはいらない、と...」





藍子(ボット)「...小梅ちゃん」



小梅(ボット)「 . ’ ..・」






藍子は自分に向けて鎌首をもたげた触手からその意味を悟る


大きすぎる能力にとってこの仮想世界は非常に窮屈だ


味方のボットすらも障害でしかなくなってしまう程に


だから敵意を向けてきた、と判断した




518: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/09(木) 21:35:33.70ID:Xln05VgA0



彼女が知らないのは唯一つ


相手が望んでいるのは彼女のスペックであること


そして彼女の相手はボットではないということ

もしかしたらプレイヤーでもないということ




遊佐こずえの能力を奪い

白坂小梅の死体に取り憑いた




科学の世界にとって冒涜的な存在



藍子(ボット)「それにしても...小梅ちゃんは変わった能力ですね。もう、原型をとどめてないじゃないですか...」












小梅(あの子)「 ・.. ・ ’・’ 」











ゲーム開始86分経過

高森藍子(ボット)

VS

白坂小梅(あの子)

開始

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



519: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/09(木) 21:37:46.50ID:Xln05VgA0

チャプター
星輝子&大和亜季



倒壊したビルと周囲を渦巻くカラスの群れが状況を密室じみたものにしていた



頼子(ボット)「見知らぬ街、見知らぬ世界、初めて体感する虚構...」



亜季「輝子どの!私の背後に!あなたのダメージはこの状況を悪化させます!」

輝子「ごっ、ごめんなさい...わ、私のせいだ...」

接近戦は3メートル近くなった図体を縦横に振りたくるキノコが対応し

離れた場所からの銃撃はカラスが視界を遮り狙いをつけられない



頼子(ボット)「そんな中プレイヤーが信用できるもの、それは他の人間と、そして自分の能力です...」



そして遠くも近くもない距離、キノコからもカラスからも絶妙な間隔を保ったまま

古澤頼子が独り言にも似たつぶやきを漂わせる

怪盗のマントが闇にはためく





頼子(ボット)「私が盗むのはそういうもの.....絶対の信用を置いた、絶対に安全だと思われていたモノを頂いていくのです...」




亜季「訳のわからないことを...!」

輝子「そういえば、亜季さんの能力あ...まだ、わからないんだったな...」



520: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/09(木) 21:39:42.59ID:Xln05VgA0



手に持った小回りのきく拳銃を振り回し、カラスを追い払う

発砲してもいいのだが群れの数に対して残弾が足りない



亜季「輝子どの!あの菌類を消す手段はないのですか!」

輝子「わ、わかんない...出すのはわかる、けど、また盗られるのは...ヤダ」

亜季「たしかにご遠慮願いたいでありますな...っと!」



向かってきた一羽に亜季の長い脚から繰り出される上段蹴りが命中する



頼子(ボット)「......あぁ、それはやめたほうが良かったですね」



余裕のつもりか腕を組み、あまつさえよそ見していた頼子が言う


亜季「こんな風にチマチマとみみっちく攻撃してきて何をっ...!?」

輝子「ッ!?...ど、どうした!?」



亜季の顔が苦痛に歪む、上段蹴りから下ろした足に強い違和感があった


幸い痛みは一過性のものだったが、思わず膝をつく



頼子(ボット)「このカラスの能力は耐久力の低下、生身で触れればプレイヤーさえも対象です」



__もしこれが仮想でなければ、足の骨が砕けて別の方向を向いていたでしょうね___



そんなありもしない仮定を口にする



521: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/09(木) 21:41:03.16ID:Xln05VgA0



亜季「...油断したであります...」


輝子「(頼子さん...どこ見てたんだろ?)」


亜季の背に隠れながらこっそり頼子の目線を追う

そこは崩れてきたビルの残骸で出来たバリケード。

その上にカラスが何羽かばかりとまっている


輝子「(どうして一気にかかってこないんだろう...?...あ!)」


電源が切れたように微動だにしなかったその中の一羽が慌てたように羽ばたき始め、

辺りを飛ぶ一団に加わった


輝子「(さっき...亜季さんが倒したから?)」

細い指で亜季の背中をぐっと掴む


亜季「!...なんでありますか輝子どの?」



輝子「よ、頼子さん...なんかヘン...だよ?」

亜季「それは...どういうことで?」

輝子「...えっと___」



522: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/09(木) 21:42:46.64ID:Xln05VgA0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


頼子(ボット)「...二対一、いえカラスたちを併せて二対十ですか...」

「ボットはボットでも...もう少し高度な思考回路を備えたものも交えたいのですけどね...」

「蠱毒と銘打ったからには...この仕切りをどうにかしたいものです」



頼子はバリケードを見る、これを破るには頼子自身はやや火力が足りない

壊そうと思えば壊せる策もあるのだが、少し時間がかかる



頼子(ボット)「他の戦いが終わっていなければよいのですが...」



確認事項としての独り言をこぼす間にも輝子から盗んだボットは彼女の側で泰然自若としている

プレイヤーも何やら密談をしているようだ


頼子(ボット)「.......人間がモデルの機械である私にとって、人間の脳が考え出す作戦というのは未知数にして脅威...一体何が飛び出すんでしょうね?」



彼女が戦闘スタイルとして選んだ「蠱毒」は混戦をこそ望む



能力も戦力も火力も武力もぐるぐるにかき混ぜられ、狭い空間に戦闘情報が横溢していく

その中から必中の策を見つけようというものだ


頼子(ボット)「だから、あまりじっとしていられても困ります」


指を鳴らす

ガァアア”アァ!!

二人を自分側に追い立てるようにカラスが二人の背中を襲う


亜季「...ぬっ!...輝子どの!とにかくその方法で行くであります!」

輝子「フヒッ!?...分かっ、た!」




523: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/09(木) 21:45:44.15ID:Xln05VgA0



パンッ!

輝子の柏手を打つ音が瓦礫に反響した

その小さな手の平を出口に彼女の倍はありそうな菌類型ボットが顕現する


パンパンッ!


続いて二体、合計三体のボットが輝子と亜季を囲むように立ち上がった



頼子(ボット)「...ほう、打って出ましたか...!」

亜季「行くでありますよっ!」

輝子「ッシャオラァアア!!行けェ!!」


シャウトを上げキノコの一体にしがみつく、同時にキノコは走り出した。


輝子を傘の上に乗せて


頼子(ボット)「捨て身ですか...」

ジャイアントキノコ「FFF!!」


輝子「目ェ覚ましやがれマイフレェエエエンド!!」


頼子を庇うように立ったキノコと輝子の乗ったキノコが衝突する

大きさ力ともに互角。

2本の足を踏ん張り押し合いになった



そこに輝子の2体目が追撃を加える



輝子「押していけえええ!!!」

同じ力量なら数の差で勝るまで。

頼子側にキノコが傾いていく



頼子(ボット)「おやおや」



だがそれは飽くまで正攻法での話



頼子(ボット)「...そこには私の手が届きますよ...?」



直径2メートルもない円内、古澤頼子の能力範囲


輝子「フヒッ!?」

三体が三体とも頼子の手にかかる。力比べが止まる

頼子(ボット)「さて、亜季さんは...と」

キノコ同士の間から目を通す。その瞬間、輝子はキノコの上から頼子に飛び掛った



524: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/09(木) 21:48:14.27ID:Xln05VgA0



頼子(ボット)「!」



輝子「アァイイキャァアンフラァアアイイイイ!!!!」



頼子(ボット)「___まぁ、それはいいとして」

その決死の特攻をこともなげに躱す



そこに亜季の銃弾が飛び込んだ。

頼子(ボット)「!...っと」

亜季「掠るだけでしたか...!」


離れた場所、一体だけ残ったキノコの側で頼子に向けた銃を構えなおす


頼子(ボット)「全く、おいたが過ぎますね...」

三体のキノコが頼子を守るように取り囲む、亜季と輝子から姿が隠れる


同時に飛行していたカラスが亜季めがけて一斉に飛び掛った


亜季「輝子どのっ!!」

輝子「う、うん!」

亜季の側にいた一体が地面に向けて飛び込んだ。


そのまま逆立ちの態勢になる

キノコの傘が独楽の軸のように回転し、胴体と足もそれにつられて回転する



そして飛びかかったカラスが叩き落とされた


糸がほつれるようにしてバラけ、鞭のように伸びた足によって



輝子「き、菌類の根っこ...舐めるな、よ?」



その言葉と同時に足ではなく根としての姿を取り戻した部位が四方八方に唸りを上げてカラスを狙い始めた

ガッ! ガァアッ!



525: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/09(木) 21:50:30.08ID:Xln05VgA0



元来、茸にとって重要なのは地中に伸びた根っこである。

ボットであってもそれは同様らしく、

カラスの能力にも簡単には屈せず、結果、飛んでいたカラスは全滅した


亜季「撃ち方よし!」


そして確保された亜季の視界は良好


キノコの陰に隠れた頼子に狙いを定め、引き金を引く

頼子(ボット)「っ!!...」



鉛の弾丸はあっさり盾としてのキノコの体ごと頼子の肩を貫いた




輝子「ごめんよ、マイフレンド...」



だが、まだ浅い。

ボットである頼子はまだまだ倒れない



頼子(ボット)「...なるほど、これをキノコではなくボットとして見ていた私ではできなかった攻撃ですね」



瓦礫のあちこちに留まって待機していた他のカラスが一斉に飛び立つ


逆立ちしたキノコの根が一斉に振り回される


頼子がボットの裏側に完全に身を隠す


亜季の視界に黒い影がちらつく


輝子が叫ぶ



輝子「マイフレンド!最後のひと踏ん張りだァアア!!」


ジャイアントキノコ「FFFFFFFFFF!!!」


頼子(ボット)「今度は先ほどの倍の数です...!!」


亜季「悪あがきを...!」



526: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/09(木) 21:52:06.80ID:Xln05VgA0



空気が裂ける音

カラスの悲鳴

銃声



最初に倒れたのは亜季を守っていたキノコボットだった



カラスの能力を直に喰らい続けた根がついに朽ち果て、

その隙を縫うようにして殺到したカラスがその本体を消し去った



そして次に累が及んだのは亜季だった



能力だけでなく、突き出したクチバシでその肉体を狙う


亜季「づあっ!!」

銃廷でカラスを打ち払うが2本の腕ではその攻撃の半分も防げない



頼子(ボット)「輝子さんの捨て身で目を引いてからの亜季さんの中距離銃撃、それもここで打ち止めです」


唯一攻撃を食らった右肩を抑える、当然、流血はない


頼子(ボット)「さて、亜季さんが済めば......あぁ、ユニットなのでスタミナは妙に多いんですね...」






輝子「よ、よぉ...」

頼子(ボット)「......は?」



ずぼっ、と



頼子の周囲を固めていたキノコとキノコの隙間、そこから輝子の顔が覗いた



彼女のコレクションに輝子が無防備に踏み入っていた



至近距離で顔を合わせる



527: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/09(木) 21:54:29.81ID:Xln05VgA0




頼子(ボット)「......いつの間に...それに、どうして」


彼女を守っているはずのキノコはピクリとも動かない



友人である輝子を傷つけたりしないとでも言うように



輝子「や、やっぱりだ...!」



『やっぱり』

元々無口な彼女はそれ以上の言葉を発さなかった


ただ服の下から、亜季に渡されたもう一丁の銃を取り出し


ほぼゼロ距離で頼子に銃弾をブチこんだだけだ




タァンッ!!


頼子(ボット)「かふっ......!?」


星輝子が気づいたこと


『多数のカラスを支配下に置いているにも関わらず一度に使う数が少ない』


一羽が亜季に倒された後、近くにとまっていたカラスが動き始めたのを見て、彼女はそれに気づいた


どうして物量で一度に決めてしまわないのか

どうして何羽かを動かさないまま待機させているのか

それを亜季に伝えた。



そして彼女は一つの推論を立てた


それは塩見周子の能力の欠点を見抜いた時のような確固としたものではなく当て推量のようなものだったが、


打開策のために他にすがるべき仮説はなかった





『古澤頼子はボットを何体でも盗むことはできるが、一度に操れる数に限度がある』






528: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/09(木) 21:56:09.65ID:Xln05VgA0



キノコ一体も含めてカラス数羽

彼女はそのリミットギリギリで二人を相手していたのでは

だからこそ物量で押し返す作戦を取った

ほとんど賭けのような捨て身の戦法だった

だが、どうやら成功したらしい



輝子「ヒャアッッハアアアアアア!!!バンバンバァン!!」

頼子(ボット)「水を得た魚ですねっ...」


一発当たったのが嬉しかったのか輝子はさらに連射する

頼子はキノコの包囲を抜け地べたを転がるように回避した



怪盗の怪しげな優美さは既に無い



頼子(ボット)「(大体分かりましたよ二人のとった作戦は...)」

「(おそらくどこかで私の能力の限度を見抜いたのでしょう)」

「(だからこそキノコを増やし、私の目を近距離の輝子さんに向けさせた...)」

「(さらにその後...亜季さんの攻撃により今度は中距離に気を引かせる...)」

「(亜季さんの射撃の腕は、この世界でも本物...だからこそ私はそちらを潰すことを優先した)」

「(...亜季さんの近くにいたキノコは、その注意をさらに強く向けさせるためのもの...)」

「(そうしてまんまとカラスを総動員した私は...すぐ近くにいたキノコを待機状態にしたまま...輝子さんの接近を止める手段を持たなかった)」




怪盗は夜の存在だ


だが古澤頼子は『夜』のボットではない


だから能力の質もたかが知れていた


白菊ほたるのように五万羽を操るスペックを持たなかった


怪盗は華麗に盗むだけ

盗んだものをどう扱うかまでは考えない

ただただ観客の意表をついて魅了するだけの存在だ



529: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/09(木) 22:01:34.80ID:Xln05VgA0



___だから


頼子(ボット)「私の舞台は...まだ終わりません」

輝子「ハアァッ!?」



ぼたっ

亜季「むっ!」

カラスが地に落ちる。

模造品になったかのように無抵抗にぼたぼたと地面横たわった

同時に三体のキノコが動き出す。

頼子のコントロールがカラスからキノコへ移動した証だ


ジャイアントキノコ1「FF!!」

ジャイアントキノコ2「FFF!!」

ジャイアントキノコ3「F!」


亜季めがけてミサイルのように三体が突貫した、輝子の捨て身を真似るような一直線の攻撃

ひとかたまりに飛び込んできたそれを危なげなく躱す


亜季「っと...自棄になったでありますか?」


輝子「ヒャッハ!よくもオレ様のダチに手ェ出してくれたなァ!オイ!」


頼子(ボット)「......」


1メートルの近距離で輝子が、5メートルの中距離で亜季が銃を構える


輝子の腕前の程は知らないが、これだけ近ければ弾も当たるだろう。亜季なら言わずもがなだ



引き金が引かれ___





頼子(ボット)「.............ライトアップ」




銃声をかき消すような轟音を立てて瓦礫が粉砕される

キノコボット三体の体当たりがバリケードを勢いのままに突き破っていた



530: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/09(木) 22:03:42.92ID:Xln05VgA0



頼子(ボット)「知らなかったでしょう?カラスの能力は常時発動型......私が操っていなくてもいいんですよ?」


そこは先程まで頼子が盗んだカラスたちが待機していたポイント

そこだけが特別脆くなって、正確には脆くされていた



次の瞬間、そこから強烈な光が噴き出す



周囲が昼間のような明るさを取り戻す



麗奈「あぁん!?亜季、そこにいたのアンタ!?」

光(ボット)「余所見とは随分と余裕だな!」

麗奈「うっさいわね!!」

そこにいたのは目映く光る剣を構えたボット南条光と、

両手いっぱいに小石を握り締めた小関麗奈



亜季「麗奈...!?」

亜季の注意が一瞬逸れる、だが輝子が銃弾を放った

しかしそこに既に怪盗の姿はない。

二人の中間あたりに飛び込んでいた



急激に空間を満たした激光により亜季と輝子の影がグンと伸びている


その影を踏めるような位置に彼女はいた



頼子(ボット)「さて、怪盗の奥の手をお見せしましょう」



そこは彼女のテリトリーだ



531: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/09(木) 22:06:29.45ID:Xln05VgA0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


______________

 大和亜季+  80/200


______________
______________

 小関麗奈+  80/200


______________



______________

 輿水幸子  140/300


______________
______________

 白坂小梅  140/300


______________
______________

 星輝子+  140/300


______________



怪盗の指が妖しく蠢く



ポンッ

そんな間抜けな音を立てて

古澤頼子の盗みは完了した



幸子「なっ、なんですかコレ!?」


小梅「しょ、しょーちゃんが...!」



麗奈「はぁっ?なにコレ!!アタシは何もしてないわよ!?」



壁の向こうでそれぞれが驚嘆の声を上げる

観客の意表をつくどんでん返し



怪盗が最後に盗んだものは



頼子(ボット)「言ったでしょう?............『他の人間と、そして自分の能力』」



「『私が盗むのはそういうもの。絶対の信用を置いた、絶対に安全だと思われていたモノ』と......!」




532: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/09(木) 22:07:47.59ID:Xln05VgA0


______________

 小関麗奈+  79/100


______________
______________

 輿水幸子  139/200


______________
______________

 白坂小梅  139/200


______________




______________

 星輝子+   1/100


______________
______________

 大和亜季+  1/100


______________



五人の目の前にパネルが浮かび上がっていた


それは五人のユニット登録のときに表示されたもので___



亜季「こ、れは...!!」

輝子「ぼ...ボッチになっちゃった...」



頼子(ボット)「ユニットを組むというのもプレイヤーにのみ許された能力だったんですよ?」


「...だから盗みました。驚いたでしょう?私が盗んでいたのはボットではなく...能力の一部だったんです」






533: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/09(木) 22:13:10.98ID:Xln05VgA0



亜季「!!......だがもう一度組み直せば.........ッ!?」


トン


輝子「フヒっ?」


トン


肩を叩かれたような軽い感触


見ると、そこには小枝のように細い、

大したダメージも与えられなさそうな、



それでいて鋭く尖った刃物が刺さっていた















あやめ(ボット)「生憎と、忍のわたくしは直接戦闘は不得手ゆえ」





彼女は頼子の背後、ビルと瓦礫の隙間にずっと潜んでいた、

それら二本を投擲したあと暗闇から姿を現す




あやめ(ボット)「かような、暗殺の真似ごとになってしまいました」




亜季「____」

輝子「____」



彼女の能力なら武器を持った人間を闇討ちすることなど容易い


細い刃物一本、たったそれだけの、痛くも痒くもない攻撃だったが


だがそれでも、ダメージはゼロではない




534: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/09(木) 22:14:12.01ID:Xln05VgA0




頼子(ボット)「やはり混乱は良いものですね......光さんがビルを倒壊させた時にはどうなるかと思いましたが...」

「光さんとの約束も守れました......正真正銘、あなたが望んだ麗奈さんとの一騎打ちです」


あやめ(ボット)「多人数戦なら勝てると申していたのは、こういうことですか......」



頼子(ボット)「ふふっ......怪盗の手管に驚いていただけましたか?忍者さん」









______________

 星輝子+   0/100


______________
______________

 大和亜季+  0/100


______________



蠱毒の壺の一角が落ちる

怪盗と忍者だけがそこに立っていた






ゲーム開始78分経過


小関麗奈VS南条光(ボット)

継続中



大和亜季&星輝子
VS
古澤頼子(ボット)


勝者:古澤頼子(ボット) 浜口あやめ(ボット)



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



535: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/09(木) 22:19:46.64ID:Xln05VgA0



次回開始するチャプターを選択してください
安価+3下

1、輿水幸子&白坂小梅&小関麗奈

2、双葉杏&諸星きらり&堀裕子

3、早坂美玲&神崎蘭子&十時愛梨

4、渋谷凛


イレギュラーチャプター

(安価+5までに過半数の投票で閲覧可能。別の安価との同時投票は有効)

5、池袋晶葉&一ノ瀬志希&佐城雪美&岡崎泰葉






536:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/10/09(木) 22:23:03.80 ID:bFyMo78N0




537:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/10/09(木) 22:27:40.05 ID:o1RkXQOBo

4と5、っていう風に指定していいの?

そういう意味じゃないなら4で



538: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/09(木) 22:28:49.09ID:Xln05VgA0

>>537
そう言う意味です
わかりにくくてすいません



539:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/10/09(木) 22:30:26.33 ID:qK3xz0Tv0

4 5



540:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/10/09(木) 23:43:58.34 ID:HD6sxerko

5



541:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/10/10(金) 02:11:05.70 ID:3Myl5Nn9o

2 5

大和軍曹死んでしまった…
残念だ



542:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/10/10(金) 13:13:44.77 ID:ysqSXbbxo

4



545:</b> ◇E.Qec4bXLs<b> 2014/10/19(日) 23:01:57.52ID:3tSaKvvK0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
渋谷凛


雪美(ボット)「............」



にゃあおー



予知能力者、佐城雪美の腕の中に抱かれた子猫の電話が鳴く



凛「......っはぁあ...はぁ...!」



現実世界に帰ってきたのかと錯覚するほど見慣れた風景


完全にリアルのままに再現された事務所の風景


唯一つ致命的に違う部分、


そこにいるはずの仲間が敵であること


ライバルなどと言う生優しい言葉ではない

見知った顔全てがその死力を尽くして自分を狙ってくる恐怖

この仮想現実に来て分かっていたはずだった



卯月(ボット)「凛ちゃん、いくらなんでも武器もなしに来るっていうのは...」

未央(ボット)「いやいや~!普段のクールさの中に見せるこういう向こう見ずなとこもしぶりんの魅力だってあたしにはわかるよ!」

雪美(ボット)「.........でも...そんなのじゃ......勝てない」




そこは事務所の応接室、二つのソファと間にテーブルを挟んだ形でボットとプレイヤ-が向かい合う


凛「......ふぅ...っつ...!」


プレイヤーである凛がふらつく体を必死で支える



546: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/19(日) 23:10:00.21ID:3tSaKvvK0



仮想現実ではダメージは痛みではなく疲労として現れることもある


音葉により一度に大量のスタミナを削られた奈緒しかり

NWの罠にかけられ、全身を刃物で貫かれた蘭子然り


今の凛がまさにその状態だった


凛「(あの変な星爆弾で未央が攻撃...卯月がそれの補助、あの星をばらまいてる)」


背後の壁にもたれることはできない。2本の足だけでバランスをとる


凛「(それで...その二人に指示を出してるのが雪美......あの子が一番厄介だなんて思わなかったよ)」



雪美(ボット)「............」



これまでの趨勢を思い出す


入り込んだ建物が中身まで事務所と瓜二つであることの驚きを隠しながらも、まず武器を調達しようと考えた

幸い自分の能力は移動や回避には非常に優れていた

そこそこ広い事務室の天井や壁面、ときにはロッカーにくっつくようにして重力無視の縦横無尽に逃げながら室内を物色しようとしたはずだった


小春の攻撃手段であるヒョウくんは外から中へは入れないだろうし

翠はどうやら自分を直接攻撃するつもりはなさそうだし、外のカラスの対応で手が離せない


そこに雪美が動いた


凛「......っはぁ...モグラ叩きのモグラになった気分だよ...」


自分でも何を言っているのかはわからない。

だがそう例えるしかない



雪美が参戦しても攻撃手段は変わらなかった

未央がどこからか星型のディスクを滑り出させ、

それを強化した卯月とともに凛に投げつける


ただし雪美が参戦した瞬間その命中率が大きく変動した。


具体的には100%に




547: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/19(日) 23:14:49.01ID:3tSaKvvK0



ビリヤードのように壁を複雑に反射した星が凛に命中する


爆散した破片が凛の逃げきれないぎりぎりの範囲から飛来する


瞬間移動した先に地雷のようにいつの間にか星が設置されている



それは自分の一挙一動一投足を先読みされているに等しい驚異を凛に与えていた


凛「(......逃げても逃げても...そこを叩きに来るんだもんね)」


衝撃を増殖させ、

スーパーボールのように部屋を跳ね回り、

一定量の振動を越えたあたりで爆散する

そのパッション由来の大味な攻撃は範囲が広いが弾幕が薄い。


だから移動に制限のない凛にとっては恐れるほどのものではなかった


だが絶妙に、未来を知った上で最大限効果的に配置されれば話は別だ


今の所クリティカルヒットは避けられているが攻撃の度にどこかに必ず攻撃が掠めていく


凛は把握していない事実だが、卯月の能力により未央の能力は数量以外に威力も強化されている

それが少しずつ凛へのダメージを蓄積させていた


卯月(ボット)「ダメだよ凛ちゃん?雪美ちゃんをそんな怖い顔で睨んだりしたら」

雪美(ボット)「.........いい...私も.........目を離さない......から」



詰将棋のように一手ずつ追い詰めていく


駆け引き、そして読み合い


それは機械の得意分野だ




ゲーム開始70分経過

渋谷凛
VS
本田未央(ボット)&島村卯月(ボット)&水野翠(ボット)
&佐城雪美(ボット)&古賀小春(ボット)
VS
白菊ほたる(ボット)

継続中

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



548: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/19(日) 23:18:05.93ID:3tSaKvvK0



未央(ボット)「そ~れ~じゃ~あ~!みおちゃんアタックやっちゃおっかな!」

凛「.........!」


手品師のトリックさながら、未央の両の手の平に星が浮かんだ


雪美(ボット)「.........」


そのまま右手を振り上げ、


雪美(ボット)「............みお」


それを合図に振り下ろされる


凛「(また、来た...!)」


3つの星型が机に衝突し、倍速で跳ね返る

振動の増幅により物理法則を無視した勢いが飛び石伝いに凛を狙った



凛「(今度は絶対に当たらない...!)」



これ以上のダメージは看過できない

地面に平行に滑るようにして、凛の体が応接室の棚に着地する

視界の中で未央の姿が直角に折れ曲がった


「......うづき」

「頑張りますっ!」


パァンッ!!


卯月が足を踏み下ろす。

その動きで足の裏のもう一つの星が踏みつけられた

未央の左手からあらかじめ落とされていたそれに衝撃が加わる

振動の無線伝達により、凛が躱したはずの三つの星が空中で破裂した



凛「(...よけた、のに...!)」


重力に対しさらに直角に折れ、次の瞬間には天井に貼り付く



それでも



凛「なんで...」







549: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/19(日) 23:23:25.59ID:3tSaKvvK0



投擲は終わっていた


両手に三枚ずつ顕現した星型のうち、

右手の三枚を投げつけ、

左手の一枚を「スイッチ」として卯月の足元に落とし



残った左手の二枚が既に天井に向けて飛んでいた



凛「目の前に...!?」



どのタイミングかはわからない、

だが凛が天井に着地するピッタリのタイミングで二枚の星型は到着していた



雪美(ボット)「...いち」

卯月(ボット)「にのっ!」

未央(ボット)「さんっハイッ!!」



一度踏まれてバラけた「スイッチ」の星の破片

三人が散らばったそれを一斉に踏んだ



凛のゼロ距離で星が炸裂する



手榴弾のように細かく飛び散った破片がダーツよろしく壁を穿つ




雪美(ボット)「.........」



未央(ボット)「あらら......しぶりん...やっる~!」


その破片の一つに凛が立っていた。

重力に対してやや斜めに向いた体幹で、頭が天井スレスレに届いている



卯月(ボット)「敵ながら流石だねっ!」


飛んでくる破片を能力により足場として「設定」したことで出来た回避


凛「......あっぶない...」






550: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/19(日) 23:27:58.17ID:3tSaKvvK0



とある映画でピーターパンがフック船長の突き出したレイピアの刃先に立つシーンがあるが

それよろしく能力により飛んでくる切っ先と同じ速度で移動すれば少なくとも空中では破片は体に刺さらない

そして元々狙いなど付けられてない大部分の破片は凛が急速に離れたことでその体をそれた


卯月(ボット)「すっごーい!クモみたいだねっ!」

未央(ボット)「いや、言ってる場合じゃないから...雪美ちゃん!」

雪美(ボット)「......」


それでも、全ては躱せなかった


凛「......っ」


右腕に食い込んだ三角形のトゲを払い落とす


凛「(あまかった...ありすたちもあずきも逃げてばっかだったし、ヒョウくんも外にいる...明らかにヤバそうな仁奈も偶然とはいえ倒せた...)」

「(事務所の中にここまで攻撃的なのがいるなんて想定してなかった......)」

ましてやそれが雪美だなんて

ちゃんとした床に着地しながら件の少女を見つめる


雪美(ボット)「...凛......いたい?...」

凛「ううん全然?所詮ゲームだし」


未央(ボット)「でもー...ゲームだからって手を抜くしぶりんじゃないよねー?」


そういう未央の手にはもうすでに次の星型が準備、装填されている


卯月(ボット)「そうそう、小春ちゃんたちを通過してきたんだから、それだけで凛ちゃんの実力と真剣さは本物だよ」

次は卯月の手の中にも構えられていた。弾数を増やすらしい


凛「(それにしても...くらくらしてきた、まるっきりいつもの未央と卯月なのに、しっかり私を攻撃する準備を整えてる)」


いつもの友人がいつもの表情のまま襲い来る。まるで悪夢だ

応接室の窓を背中に雪美を挟んだ二人が武器を構える



にゃあおう



猫が鳴く



551: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/19(日) 23:30:36.81ID:3tSaKvvK0


凛「.........(一旦逃げる?でも何もできてないし...なにか一矢報いないと)」

卯月(ボット)「...(私は雪美ちゃんの合図で投げればいいんだよね...よし、頑張ります!)」

未央(ボット)「......(ゆきみんがこっそりサインを出して...それであたしが動く!)」

雪美(ボット)「.........」



未来を知る方法は存在するか


実際はないこともない

天気予報、株価予想、ハザードマップ

過去の情報、現在の情報を積み立てて未来の情報に手を伸ばす

そういった方法を本当に予知と呼べるかはともかく



雪美の能力はその方法を予知に用いていた



そしてこの場合、現在進行形でこの世界の情報を無差別に収集、整理している存在は一つ


雪美(ボット)「......お月様......見てる」


凛「......?」



CHIHIROだけだ


プレイヤーとボットの動向、能力の発動とそれが引き起こす世界の歪曲全てを監視、処理、記録するボット


にゃあおー


雪美の能力の要はそこにいた

そしてすべてを見ていた




552: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/19(日) 23:35:10.36ID:3tSaKvvK0


卯月(ボット)「雪美ちゃん?」


雪美(ボット)「.........未央、右に動いて」


未央(ボット)「...オッケ」



ボットは余計な思考を挟まない。

地面を蹴るようにして右手側に飛ぶ



そのタイミングに合わせたように、外から内へと応接室のガラスが突き破られた


三人にガラスの粉を降らしながらも致命的な衝突を避け、一抱えほどの瓦礫の石塊が通過する



一発が壁に大穴を開け



凛「__ぁぐっ__!?」



もう一発が壁際にいた凛の胴にまともに命中し、そのまま一直線に大穴へ吹き飛ばした




予測、あるいは予知通りに



雪美(ボット)「......凛......ばいばい...」



仮想現実空間が稼働して72分と数秒



CHIHIROが望月聖の能力による最大規模の破壊を観測した頃



彼女の翼の余波が瓦礫を通じ、必殺の威力で凛を打ち砕いた頃




事務所の上にビルが降る



553: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/19(日) 23:37:22.45ID:3tSaKvvK0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


凛の姿はもうない




卯月(ボット)「なんだか...すごいです」

未央(ボット)「あ、あたしたちの事務所が...」



窓もソファも机も瓦礫が飛び込んだ衝撃でひっくり返り、向こうの部屋が覗けるほどの大穴をこしらえ


たった一度の攻撃で応接室がその体を無くしていた


未央(ボット)「ゆきみんはこれを予知したわけ?」

雪美(ボット)「.........ううん......まだ...くる」

未央(ボット)「へ?」


疑問の声が掻き消える


落ちてきたビルが着弾し、

事務所のすぐ隣に建っていた建物が沈んでいく

一棟の建物がまるごと四散し、地響きが応接室の三人、そして事務所にいた全員の足場を揺らした


卯月(ボット)「あうっ!!?」

未央(ボット)「のわあっ!?」


卯月が窓の外を振り返る。

そしてついさっきこの部屋に飛び込んできた瓦礫などただの切れ端でしかなかったことを理解した



事務所の倍以上の体積とさらにその倍々の重量をもったビルディング



次は運良く隣の建物に当たることもない、まとめて潰されることは明白なサイズ比だ


雪美(ボット)「......まに、あう...」



雪美がそう言い終わると同時

事務所の表、応接室の割れた窓越しにそれが姿を現した




554: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/19(日) 23:40:35.53ID:3tSaKvvK0


エレベーターのように下からその巨体を上昇させ、卯月と目を合わせる


卯月(ボット)「え......ヒョウくん?」

ヒョウくん「............」


首にリボンを巻いた翼竜が両翼を唸らせ、風を切り、真正面からそのビルに向かう


爬虫類らしく変化のない表情はこの状況下では勇ましくもあったが、そのままでは行為は蛮勇でしかない


いくら巨体とはいえ相手は一棟の、そして高層の建造物

二歳児と2トントラックほどの覆せない体積差。重量ならばそれ以上だろう

落ちてくるそれへ、真下から迷いなく突っ込んでいく

そして


「___流鏑馬...というのなら分かりますが...」


天へ向かう龍の背に掴まっていた彼女が姿を現す



翠(ボット)「...仮にも竜に乗って弓を射る機会が訪れるとは思いませんでした」



翼竜は、ぐんっと胴を回転させる勢いで背の角度を垂直から水平へ修正する

それにより彼女もまたその背にまっすぐに立ち直す




深呼吸


脱力


集中


弓を構える


腕を天に向けて



翠(ボット)「.........」



矢を添える


矢尻を握った手が耳元に来るまで引く


目線はまっすぐ


狙いを定めて


呼吸を止める


そして矢は放たれた




555: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/19(日) 23:44:36.26ID:3tSaKvvK0



蚊の刺すような一撃がコンクリートの巨塊に食い込む

射られた点を中心に的の図柄がじわりと浮かんだ



翠(ボット)「......能力、発動」



水野翠の能力


『矢の範囲にある、いかなるものも彼女の60メートル以内を侵すことはない』


強引に、即座に、抵抗もなくコンクリの大型隕石の軌道が逸れた

その急カーブに暴風が吹き荒れ、翠が姿勢を崩しかける


翠(ボット)「...っと...危ない」


同時に、直下のカラスを軒並み下敷きにしながらビルは豪快な音を立て墜落した


ギリギリで事務所からは外れた位置で







卯月(ボット)「た、助かりました...?」


未央(ボット)「ほへー...みどりんカッコイー」


二人が応接室の窓から身を乗り出す


小春(ボット)「ヒョウくん素敵です~!ペロペロです~!」


別の部屋でもまた、窓に駆け寄った少女が喜びの声を上げた




雪美(ボット)「.........?...」



そして予言の少女は一人疑問を漏らしながら窓と反対側

壁に空いた大穴を見つめていた




556: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/19(日) 23:46:34.95ID:3tSaKvvK0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

望月聖の能力の絶対性

六枚の翼に無限の攻撃力と無限の防御力

どんな攻撃も通用せず、どんな防御も意味がない



事務所に飛来した瓦礫の礫にもまたその余波が上乗せされていた


凛は間接的とはいえ聖の一撃をまともに食らったことになる



スタミナが少しでも残る可能性などなく


助かる道理もない



本来ならば





「っけほっ!...うぇ、がふっ」




空から落ちてきた地面に対して斜めに傾いたビルの下側

そこに蓑虫よろしく逆さまに貼り付いた凛が息を整えていた


「隕石...かと思ったら次は建物が丸ごと...どうなってるの、これ」


その隕石に直撃されたにしてはありえないほどの気丈さで呟く


「......あれが雪美の能力...?じゃないよね、多分。雪美のはあのやたら当たる勘の方だろうし」


よく見ると凛の服の一部、ちょうど腹にあたる部分が淡く光っている

その薄明かりが布越しに凛の周囲を把握させるだけの光源となっていた



「ふぅ......皮肉だよね」




557: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/19(日) 23:48:49.22ID:3tSaKvvK0



服をまくり上げる、隕石に穿たれた胴を晒す



「ボットの能力がボットの攻撃を防ぐなんて」



そこにあったのは薄い板、青い光を四角に放射する物体


橘ありすのタブレットがスカートに挟まれるようにしてそこにあった



『ボットは直接的にも間接的にもアイテムを破壊できない』



それはこの世界の掟の一つ

大原みちる以外には、例え望月聖であろうと破れない不可侵のルール

最後の最後で佐城雪美の予測の陥穽を突いたアイテム

それらが盾になり、凛を皮一枚のところで救っていた


「画面にヒビも入ってないや...よっぽど丈夫だったんだねコレ」



彼女はそれを知らない

「......(あと、これだね)」

タブレットをしまっていたところとは別、スカートのポケットをまさぐる

「(...大切そうにしまってた、いや隠されてた?みたいだけど...これって明らかに__)」

応接室の壁のむこう、現実世界では半ば物置と化した資料室に当たる場所

致死の攻撃に凛が打ち抜かれていたはずの場所、

そこで運良く命を繋いだからといってただ逃げだす程、彼女は素直ではなかった


「__奈緒の髪飾りと、加蓮のネイル、だよね」


ボットはアイテムを破壊できない、だが隠すことはできる

そして隠されていたそれらの一部は今ここにあった


____________

 渋谷凛+  32/100


____________

ゲーム開始75分経過

渋谷凛
VS
本田未央(ボット)&島村卯月(ボット)&水野翠(ボット)
&佐城雪美(ボット)&古賀小春(ボット)

プレイヤー側の戦闘放棄により続行不可能

本田未央(ボット)&島村卯月(ボット)&水野翠(ボット)
&佐城雪美(ボット)&古賀小春(ボット)
VS
白菊ほたる(ボット)

一時中断



558: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/19(日) 23:51:40.45ID:3tSaKvvK0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
イレギュラーチャプター

《不気味の谷》

池袋晶葉&一ノ瀬志希&佐城雪美&岡崎泰葉




_________________

  すべて/不在着信   編集


tfPnvsoE/ifevvszerRs490o 今日

    助手       月曜日

    助手       土曜日

    助手       金曜日

__________________________________







559: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/19(日) 23:53:42.95ID:3tSaKvvK0




「ふうむ...では本当に雪美は私の携帯電話には掛けてきてないんだな?」


「...うん......その時......私、お仕事......してた」



「はすはす♪...うんうん、やっぱり泰葉ちゃんはたんぽぽの香りだね~」

「...蒲公英ですか?香水の類はあまり付けないようにしていますけど...」

「あふん...そーじゃないんだなーこれが~」




晶葉「...何をやってるんだ君は」

泰葉の隣に腰掛け髪の匂いを嗅いでいる志希をたしなめる

晶葉の向かいのソファには雪美がちょこんと腰掛けている


ここは談話室、そして簡素なソファとウォーターサーバーだけが備え付けられた室内には四人の人間しかいない


池袋晶葉、一ノ瀬志希、岡崎泰葉、そして佐城雪美


ボットではなく生身の人間としてそこにいる。膝の上で気持ちよさげに欠伸をする猫も同様に生身だ

だが、こうしている間にも彼女のラボでは18台のカプセルが稼働している

それでも二人がその場を離れているのには理由がある


岡崎泰葉「...えっと、先ほどの話が聞こえてしまいましたけど...晶葉さんの携帯に着信があった時間帯は私と雪美ちゃんは一緒でしたよ?」


佐城雪美「......同じスタジオで......撮影...してた」


晶葉「ふーむ、だが......声紋を調べた限りあの声は雪美のものだったのだがな...」

志希「にゃふ?...ケータイを変な機械に繋いで何かしてるなーって思ってたけど、声紋調べてたんだ」

雪美「......せい...もん...?」

泰葉「何やってるんですか貴方たちは...」


晶葉の携帯電話の不可解な着信、判読不能な電話番号にノイズまみれの音声

最後に一言だけ残った誰かの声。晶葉と志希の二人はそれらの解明に動いていた

その最初の一歩が、声の持ち主だと推測された雪美への聞き込みだったのだが

晶葉「...まさかボット制作時に使わせてもらった音声データがどこかで漏れたか...?」




560: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/19(日) 23:55:21.31ID:3tSaKvvK0



雪美「...ボット...今、みんなが遊んでる...ゲームの...?」

志希「ゲームか...本人たちは多分ガチになってるだろうけどね~」

注意されたからか、泰葉から少し離れた場所に座りながら志希がケラケラと笑う

泰葉「ゲーム...あぁ、プロデューサーさんから聞きましたね。なんでも最新の技術を導入したとか...?」

晶葉「むむ、助手にしては説明が曖昧だな...ゲーム自体は確かにこれまでにない技術だが私は仕上げにしか関わっていないぞ...」

雪美「そう...なの...?」

志希「そーそー、箱庭はほぼノータッチのテスト品だよん。晶葉ちゃん謹製なのは電子のお人形さんたちだけ」



泰葉「............人形...ですか?」


飄々と解説する志希の言葉に泰葉が反応した

いつの間にか志希の白衣の端をその手に握っている


泰葉「それって_」

晶葉「_おいおい、人形とは違うぞ志希」


雪美と自分の携帯電話に交互に向けていた視線を切り晶葉が聞き咎めた


晶葉「確かに外部からの命令がなければ動かないのは事実だが、ただ言われるままに動くというわけではないのだからな」

志希「そーだっけ?......えっと、そーだったね、さっき聞いたっけ」

泰葉「............」

雪美「...?...気に...なる......」


頭越しに交わされる二人の会話に興味を惹かれたのか、雪美が小首をかしげる

表情に大きな変化は見られないが子供なりに好奇心を刺激されたらしく目を輝かせている

晶葉「んん?...ほうほう、私が言えたことではないがその歳で私の研究に関心を持ってくれるか!」


晶葉はそれに気分を良くしたらしく、携帯電話を白衣にしまい雪美に向き合うと講義でもはじめるかのようによどみなく話し出した

一応それも子供向けにかなり噛み砕かれた抽象的なものらしい


晶葉「私が作ったボットの最大の特徴はそれぞれが必ずしも最適解を出すとは限らないということだ。」

「あらかじめ刷り込んだ事務所の一部の人間の思考パターンを参考にしてそれに沿って行動するようになっている」


「言ってしまえばモノマネでしかないのだが、ふふふ...それも最初のうちだけさ」


雪美「...最初......だけ...?」



晶葉「そうだ。最初は模倣だが、それを軸に周りの環境から学習し個性へと昇華させるのだよ」

泰葉「模倣を個性に...それって具体的にはどういうことなんですか?」

晶葉「具体的に?...うむ、なんと説明しようか...」


体を雪美と泰葉両方に向けるようにして顎に手を当て沈思する

専門用語をなるべく使わないで説明するにはどうしたらいいだろうか




561: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/19(日) 23:57:41.21ID:3tSaKvvK0



晶葉「___例えば、水の入った容器が一つあるとして、君たちならどうする?水の量や容器は自由に規定してもらって構わない」


雪美「...お水......飲み物...コップ?」

泰葉「飲む...と言いたいところですが、アイドルですし喉のことを考えるとそのままというのは抵抗がありますね、加湿器にでも入れましょうか」

志希「にゃはっ!そりゃフラスコに適量移して実験開始でしょ~」



例示として出された質問に綺麗に三者三様の答えが返される


晶葉「とまぁ、今のように水と容器という二単語からコップ、薬缶、フラスコという意見を引き出せたわけだ」

「他に想像のつく限りでは......茜ならランニング後に盥いっぱいの水を頭からかぶるかもしれないし、凛や夕美なら花瓶に花でも挿すのかもしれない」

「では次に......迷子になった猫を探すならどうする?」


雪美「...居場所...ペロに......教えてもらう......」

泰葉「探し中の張り紙か、ネットで呼びかけますかね」

志希「ハスハスして匂いを辿るよ!」



晶葉「という風に同じ問題でも解決方法は多岐にわたるわけだ」

泰葉「まるで心理テストみたいですね」

晶葉「そうだな。ボットに入力された最初の情報がそれだ。『お前のオリジナルはどういう時にどう行動するか』その心理テストの答えを一通り網羅した上で生まれる」

志希「なーるほどね~、物事に対するリアクションが本人と全く同じなら少なくともボロは出ないもんね」


雪美「......リアクション......みくと...お魚さん...とか?」

晶葉「おおう、分かってくれたか。みくのボットにも魚を見たときの反応はインプットされているのだよ」


10歳児にもある程度は分かるように説明できたことが嬉しいのか顔を綻ばせる

その向かいで思案顔をして同じく自分なりに理解に努めていた泰葉が怪訝そうに口を開いた


泰葉「それって、つまり決められた刺激には決まった反応しか返さないということですか?」

志希「シミュレーションゲームみたいだねー、まぁ実際物理シミュレーションソフトなわけだけど」


面白がった志希がその指摘の尻馬に乗る。いつの間にか泰葉のすぐ隣に戻っていた


志希「よく知らないけど恋愛ゲームみたいな感じ?話しかけ方とかプレゼントとかで返事が変わっていくし、そっくりだよねー」

泰葉「それはよく知りませんけど...」

晶葉「あの手のゲームは所詮、最初から用意された選択肢の幅しか反応がないだろう。私のボットはそうじゃないぞ」

特にそれに気を悪くするでもなく晶葉の説明が続く

晶葉「ボットは唯反応を返すだけではなく、常に思考している。ここで、さっきの心理テストとやらが活きてくるのだよ」

「ボットは周りの変化だけでなく自分についても考察を重ねている。”自分は何故水の入った容器をタライでも薬缶でもなくコップだと考えたのか”」

「”何故猫を探すのに、その匂いを重要なファクターに据えたのか”といった具合に自分の性格、人格、存在にも解答を出そうとしているわけだ」

雪美「......ペロは...そんなに...匂わない...よ?」

志希「そなの?嗅いでいい?」

泰葉「.........」




562: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/19(日) 23:58:47.36ID:3tSaKvvK0




晶葉「数値解析という学問では答えとなる数字だけで未知の数式を導き出すわけだが、やろうとしていることはそれに近い」

「凛のボットだとするなら...”水に花を挿すということは自分は花好きか花に詳しい人間かもしれない”という推測を心理テストの答えの数だけ積み重ねていく...」

「こう言うとなんだが、プロファイリングにも近いな、手掛かりや物的証拠から人物像を描き出すというところが...」

雪美「プロ...フェイ...フェイ?」


志希「でもそれってさー...完全に同じ人間にはならなくない?」

泰葉「そう...ですよね...いくら表面を全く同じ風に演じて、その内奥を再現したとしても、それは演技でしかありません...」


水を差すようなことを言われても晶葉は特にそれを否定するでもなく続ける


晶葉「だな...さらにボットと人間では周りの環境が違いすぎる。同じ人格に育つほうがおかしいが......私はそれをボットの個性だと思っている」


雪美「.........」


泰葉「じゃあそれって最後には、別人格になってしまうんですか?」

晶葉「...別人格に成る、か...あるいは育つ、とも言えるな」

「最初は模倣でも成長を続けていけば最後は誰にも模倣できない個性になる......といいんだがなぁ」


そこで話はおしまいとでも言うようにソファから降り、白衣の裾を正し始めた


晶葉「時間を取らせて悪かった。一旦ラボに戻るよ」

雪美「......別に...いい......」

泰葉「...こちらも興味深い話が聞けましたし」


志希「ねぇねぇ泰葉せんぱーい、もうちょっとの間ハスハスしていーい?」

泰葉「......はすはす?」






563: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/20(月) 00:01:53.71ID:B98Kmoz40


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

談話室を出た二人が事務所の廊下を並んで歩く

年齢も身長も差のある二人の白衣の裾が同じようにはためいていた



志希「にゃふん......さよなら、たんぽぽの君...」



晶葉「君には留守番を頼んだほうがよかったのかな」

志希「やーん、そんなことされたら失踪しちゃうぅー」



冗談ともつかない志希の軽口に付き合いながらも晶葉の足並みは乱れていない


志希「...で、晶葉ちん、電話の件はもういーの?」

晶葉「いいわけない、だが泰葉と雪美が嘘をつくはずもないしな。もう一方の可能性にアプローチするよ」


志希「もう一方?」


晶葉「ボットが”こっち”に来た可能性だよ」



志希「んん?...なにそれ、電子のお人形さんがコンピューターの中からこっちにお話しに来たってこと?」

晶葉「何をしたかはまだ分からないが、可能性は絶対にゼロというわけではない」



そう言いながらも晶葉の口調は断定のそれに近かった。そのことに気づいた志希が歩きながら晶葉の顔を覗き込むように上体を曲げる

志希「うーん...晶葉ちゃん、なーんか隠してない?」

晶葉「隠す?ボットのことか?」


顎に手を当てるようにしてしばし考える。その間も歩行速度は変わらない

やがて意を決したように話し始めた。心なしか声が平坦になっている

晶葉「......最後には別人格になる、といったな」

志希「うん、さっき言ってたね~」


晶葉「実は...私が思うに新しく人格を作るのは飽くまで途中経過であって、最後ではないのだよ」

「正直、実現の目は限りなく小さいがな...」






564: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/20(月) 00:04:28.11ID:B98Kmoz40



最初は人間の粗雑な模倣、

それが周りの環境に影響を受け、あらゆるものに絶えず疑義を持ち、解を求め

プレイヤーを通して人間の思考と触れ合い、思考し、行動し、

やがて全く別の人格と思考を持つに至る



志希「___で、それ以上ってあるの?」


事務所の奥にあるラボの扉が見えた二人の歩が少しだけ緩やかになり、扉の前で完全に停止した



晶葉「__人間になるんだよ」



携帯電話を取り出し、手早く信号を入力する。

厳重にロックされていた扉から開錠音が鳴った


一瞬言葉の詰まった志希が開いたドアの奥の景色、

機械の立ち並んだ区画に目をやり、もう一度晶葉を見る


怪訝そうな、面白がっているような、虚を突かれたような表情で聞き直した


志希「......人間に?ボットが?」


晶葉「ボットが、だ......途方も無い処理能力のコンピューターがあればの話だがな」


志希「本気で言ってる?」


晶葉「......さぁ、どうだろうな」


外出中だったせいでラボの中は薄暗い。

その暗闇のなかに白い衣が消えていった

やがて二人の姿が廊下から見えなくなり、

自動的に閉まったドアがその闇も遮断した




565: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/20(月) 00:05:10.47ID:B98Kmoz40



ゲーム開始81分経過

行動中のボット 全16体

高峯のあ アナスタシア 森久保乃々 

水野翠 望月聖 佐城雪美 二宮飛鳥 古澤頼子  

遊佐こずえ 白菊ほたる 島村卯月 古賀小春 

浜口あやめ 高森藍子 本田未央  南条光


白:坂|小>{梅;




行動中のプレイヤー 全14体

凛 奈緒 加蓮 小梅 蘭子

智絵里 幸子 美玲 杏

愛梨 紗南 きらり 裕子 麗奈




全ボットのプレイヤーとの接触が完了しました

1件の不審なデータがあります




566: ◆E.Qec4bXLs 2014/10/20(月) 00:10:51.86ID:B98Kmoz40


次回開始するチャプターを選択してください
安価+3下

1、輿水幸子&白坂小梅&小関麗奈

2、双葉杏&諸星きらり&堀裕子&神崎蘭子&十時愛梨

3、早坂美玲

4、神谷奈緒&北条加蓮&三好紗南


ニュージェネの漫画で泰葉さんが烏龍茶は喉の油を取り過ぎちゃうとか言ってましたね

泰葉さん書くの難しい。ただの敬語キャラになっちゃう、あの雰囲気が出ない

本編は次回からまたドンパチやりますので

今回はちょっとした休憩だと思ってください

ありがとうございました



567:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/10/20(月) 00:14:22.55 ID:gGwE2CdbO

1



568:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/10/20(月) 00:43:40.73 ID:jierYJqoo

4



569:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/10/20(月) 01:54:02.30 ID:wxMQqb8S0

4



570: ◆E.Qec4bXLs 2014/11/05(水) 09:18:44.37ID:jhlcpBHT0

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
北条加蓮&神谷奈緒&三好紗南



地上での戦闘が激しさを増す中、地下もまた腹の底を揺さぶるような地響きが絶えず起きていた


壁に吊るされた照明のもたらす仄かな明るさとは別の白光、ゲーム画面のバックライトがそこにいた三人の表情をくっきりと浮き彫りにしている


奈緒「あっ?」

紗南「あれ...!?亜季さんが!」

加蓮「消えちゃった?」


地図もないままに地下下水道を踏破することはできない。

だが、自分たちの進むべき方向だけでも見出す必要があった

そこで羅針盤の代わりとなったのが三好紗南の能力の一つ、一直線上に存在するボットかプレイヤーを発見し情報を詳らかにする能力だった

彼女たちはこの『一直線上』を利用し、入り組んだ地下下水道を迷うことなく進んでいた

それはさながら空にあって不動である北極星を目印に見失った道を探る遭難者に近い


だが数分前、その指標は消えた


加蓮「亜季さんが動いたってこと?」

奈緒「そりゃ、ある程度は動くだろうけどさ、でもさっきまでは何とか照準合わせてたじゃねえか」

紗南「いや、大丈夫だよ...亜季さんがやられてなければ...」


一時的に足を止め、壁にもたれて休憩を始めた加蓮を尻目に紗南が手元のゲーム機を傾ける

圏外に置かれた携帯電話でなんとか電波を拾おうとするような動きに対してその画面に変化はない

サーチモードという表示だけが無常に輝くだけだ


奈緒「......やっぱ...やられちまったんじゃねえか...?」


壁に体重を預けた加蓮とは別に、その場にしゃがんで足を休めていた奈緒がぽつりと言う


紗南「でも亜季さんだよ?この手のサバゲーでほいほい負けるはずないって!」

奈緒「でもよぉ、まゆも美穂もやられちゃったじゃんか...美穂はともかくまゆはボット相手にかなり押してたのにさ」


弱音とは少し違う。

どちらかというと今、自分たちのいる仮想世界の厳しさ、難易度を紗南に説こうとしているような、


”ここでは誰かの勝ち負けを予想なんてできない”


奈緒の言葉はそう言いたかったのかもしれない


紗南「でも、だったら!アタシたちどうするの...!?」

ゲームを掲げていた腕をだらんと下ろし、奈緒に向き直る

画面が漏らしている、目に眩しい光が紗南から外れその表情が闇に沈む




571: ◆E.Qec4bXLs 2014/11/05(水) 09:21:00.87ID:jhlcpBHT0



紗南「あんなカラスまみれの地上にレベル1の装備で出たって死にゲーだしさぁ...」


それは間違いなく弱音だった



加蓮「それにしたっておかしいでしょ?」



切り込むように加蓮が疑問を投げつける。

奈緒か紗南か、あるいは両方に言っているかのように

二人と同様に疲れているはずの彼女の声に弱った部分は見られない


加蓮「亜季さんが負けたのなら、必ず亜季さんの位置を探っている間に敵のボットの情報が飛び込んでくるはずなんだから」

紗南「そりゃ、そうだけど...でも今までは引っかからなかったのに今になって見つかる?」

加蓮「それは紗南の腕がいいからでしょ、今まで途切れることなく歩きながら、見えない遠くの亜季さんの位置にゲーム機を向け続けてきたんだから」

奈緒「だから余計な情報はキャッチしなかったってか...まぁ、亜季さんを脱出の目印にすることしか頭になかったしな」

加蓮「っていう風に考えると亜季さんは負けたんじゃなくて、紗南の能力の届かない場所に追いやられたんじゃないかな」


紗南「う...確かにこの能力、直線でどれくらいの距離までカバーできるのか検証できなかったけど...」

加蓮「あるいは亜季さんか、それともアタシたちが電波を遮断するような攻撃をされてるとか?」


ともすれば自分たちの危機とも取れる言葉を、いっそあっけからんと言ってのける


加蓮「なんにしても亜季さんを仕留めたのならアタシたちのところにその手掛かりが入ってくるはずなんだから、それはないよ」

そしてそう締めくくった



もちろん加蓮は知らない、残りの二人も知る由もない



電波よりももっと高速で強健な存在、


「光」を使った攻撃が、

数百メートル先の亜季を含む5名を地上に掬い上げたことを


それが数分前であり、そしてたった今、加蓮の言葉を借りれば大和亜季は「仕留められた」ことを




ゲーム開始81分経過

報告事項なし




572: ◆E.Qec4bXLs 2014/11/05(水) 09:23:00.39ID:jhlcpBHT0

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


真っ赤な色が真っ黒な世界に浮かぶ


その赤はボットのバッジの色だ


かつての摩天楼、今となってはゴーストタウンと成り果てた風景を見下ろす


高い高い視界から


高いビルも低いビルも、その窓ガラスの枚数も


屋上に設置されたタンクの大きさも全て見通せる位置


高空からの光景



カラス型ボットの彼、あるいは彼女のそれは鳥瞰という



彼らは群れで飛翔する、群れで攻撃する


防御はない、

休憩や撤退もない、

仲間を援護することも勿論ない


それ以上のプログラムは組み込まれていない


彼らの主はそれ以上を与えていない


変わりに賜ったのは錆びた剣


斬るもの全てを腐敗せしめるおぞましき刃


彼女に代わって、この現実全てを無に帰す力





573: ◆E.Qec4bXLs 2014/11/05(水) 09:24:22.98ID:jhlcpBHT0



それを振るうべき相手を眼下に見つけた


群れと共に急降下する。


両翼を震わせ、ビルを横目に垂直に地面へ向けて加速する


いる。

何人も何人も何人も、いる


どこを見ているのかわからない瞳で、それでもどこかをじっと見たまま歩いている


集団で、もしかしたらカラスよりも大群で、どこかへ向けて歩き続けている


だが、カラスたちはその集団の行き先を知ろうとは思わない、思えない


ただ、最短距離で、効率重視で標的を朽ちさせるのみ


そして集団の頭頂部が目と鼻の先になるまで接近したところで一度、羽ばたく


嘴を突き刺した、鈎のような肢で引っ掻く、能力で腐敗させる


主の指令どおり、小さな鳥類の体で標的相手に精一杯に暴れまわった



しかしその攻勢は永遠には続かない



宙をジグザグに飛翔していたその姿は敵に捕捉され貫かれる


鉄屑とアスファルトでできた槍に


同時にカラスに触れた部分がボロボロと崩れていく


それはガラクタの人形、ガラクタの軍隊、偽者の偽物


高峯のあの細胞を核に単調な動きを繰り返すだけの粗末な分身


地を這うように練り歩くボットと、黒い稲妻として捨て身の荒廃を振り撒くボット


どちらも主の命に忠実に行動を続け、決して止まらない





574: ◆E.Qec4bXLs 2014/11/05(水) 09:26:26.83ID:jhlcpBHT0



ぶつかり、突き、刳り貫き、刺し、薙ぎ、切りつけ、腐らせる


石が、土が、羽が、鉄が、軋轢音が、鳴き声が、零れ落ちていく




そして、そして、そして



その付近で飛んでいるカラスは最後の一羽だけとなる



対して、結果としてカラスに体格差で勝っていた人型は十数体



それでも最初は百体近くいたのだから、損害は軽くない

損害、つまり高峯のあの受けるダメージだ

一羽の鳥はそれでも攻撃をやめない、体格、物量ともに負けていても躊躇はない



カラスは最短距離での体当たりを敢行する。主人の命の下に

対して人形は歪に捩じくれた槍で迎え撃つ。主人の命の下に



一羽と一人が接触し



二つは横薙ぎに殴り飛ばされた



「___。。、。。__」



横槍ならぬ横殴りを入れられる。しかもそれはただの一撃ではない



いくつものボットを犠牲に増幅された威力。

それが一人と一羽を撃ち抜き一緒くたのごちゃごちゃした塊となって爆ぜさせた



「____・。、」



そしてそれも吸収される。一緒くたのごちゃごちゃした塊となって

カラスはもう一羽もいない、だがガラクタ人形ならまだいる

それは周りを振り仰いだ。更なる容量を求めるために


「。・__?_?__」


そこでそれは違和感を持った




周囲の人形が全て消えていることに




575: ◆E.Qec4bXLs 2014/11/05(水) 09:28:21.75ID:jhlcpBHT0



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


アナスタシア(ボット)「...シトー?何が起きているんですか?」

のあ(ボット)「分からないわ...でも、これが夜の洗礼なのかもしれない。そうじゃないのかもしれない...」

「どちらに転ぶにしても転がり始めた事象は私たちの手に負える大きさでは...ないみたいね」


のあは最後のカラスがいなくなったタイミングで残りの人形を「解体し」

地中を潜らせ、迅速に回収した

元々ガラクタの部分にはカラスの能力から自身の一部を保護するための被膜の意味合いしかなかったのだからそれも当然だった


二人は今崩れかけた背の低いビルの3階に隠れていた。

近くを飛ぶカラスを打ち払い終えた後のしばしのインターバルの間に


のあ(ボット)「もはやボット同士であることが味方同士であるとは限らない...プレイヤーとの見境もないのね」


ひび割れた窓越しに外を見下ろす。

先程まで分身のいた場所を小さな少女がてくてくと歩いている


アナスタシア(ボット)「あのボットたちに...プレイヤーは勝てるでしょうか?」

のあ(ボット)「裕子をはじめとして...何人かのプレイヤーには戦闘を行わざるを得ない状況に追い込んだりもした...」


地下の戦車格納庫に落としたプレイヤーを回想する


わざわざ敵に塩を送るような真似をしたのには、少なくとも最初は理由があった




576: ◆E.Qec4bXLs 2014/11/05(水) 09:32:53.04ID:jhlcpBHT0



のあ(ボット)「全ては今陥っているこの状況に対処するため...だったというのに」


プレイヤー側の戦力をある程度まで引き上げたところでそれを打ち負かし


その戦闘で得た、あるいは学習したデータを元に自分たちをボットとして上のレベルに上げる


そして『夜』に訪れるであろう強敵と、その能力から生き残る


彼女たちは自己評価を誤らない。

この世界に来た時のままのステータスと能力だけで敵を打倒しうるとは考えていない

概要だけみるならそれは「経験値稼ぎ」だ。

敵が強いほどにより多くの値が得られるのなら、敵を打倒可能なギリギリまで強化する、それがのあたちの戦い方


今現在、別の地点で古澤頼子が画策していた「蠱毒」と根幹は同じ


のあ(ボット)「...なんにしても始まってしまったのなら足掻くしかないわ。全ての手札を切ってでも」


違いは高峯のあがプレイヤーの「質」にこだわったとすれば

古澤頼子はプレイヤーの「数」を重要視していたことか


アナスタシア(ボット)「あれは...小梅ですか?ボットだったんですね...」

のあ(ボット)「相手をする必要はないわ...今の戦力だともう回りくどい手段は取れない。プレイヤーを直接叩くしかないわ」


覗いていた窓辺から離れる。

人形、ひいては身体の一部が随分と失ってしまった。

この状態でもこれから起きるであろう戦闘に備えなければならないのだ


ボットは混乱しない

予定外の出来事に直面してもその思考に1ビットのゆらぎも起きない。

それが起きた瞬間には次の思考が開始されている





だから




577: ◆E.Qec4bXLs 2014/11/05(水) 09:34:26.35ID:jhlcpBHT0



「__・。、!・__」


窓越しに小梅らしき少女と目があったときも

ガッシャアアアアアアン!!!

窓ガラスを粉砕しながら

小柄な肉体に見合わぬ跳躍力で3階の窓まで飛び上がってきたときも

「みつけましたよー?」

小梅を追って高森藍子が現れた時も

のあとアナスタシアの心は折れない




ゲーム開始95分経過

高森藍子(ボット)

VS

高峯のあ(ボット)&アナスタシア(ボット)

VS

白坂小梅(あの子)

開始



578: ◆E.Qec4bXLs 2014/11/05(水) 09:36:47.24ID:jhlcpBHT0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ゲーム開始90分時点



異形、醜怪、埒外


一瞬たりとて同じ形を保たない。

不定形にして変幻自在


目線を一度でも切ってしまえば、次に目を向けた時にそこにいるものは全くの別物になっている


高森藍子の相手はそういうボットだった


それを白坂小梅と呼ぶのは余りにも憚られたし、実際それは白坂小梅ではなかった


「___・・。_。」


藍子(ボット)「どういう能力なら”そんなこと”になるんですか...」


狭い屋内を「根」が這い回る。

キノコの軸から生えたそれらが天井や床をのたくりながら藍子を目指す


その軌跡もまたは複雑怪奇に曲線を、Z字を、渦巻きを描いていた


空間を縦横した根が養分を求めるように藍子の背中に飛び込む


彼女の目は、ボットの目はめまぐるしく変わる目前の状況の把握に使用されていた




579: ◆E.Qec4bXLs 2014/11/05(水) 09:37:44.85ID:jhlcpBHT0


だが、それでも


藍子(ボット)「幸い、ただの物理攻撃なようなので私には届きませんが」


ぴたり


藍子の背中まで悠々1メートルは残したまま根の触手が停止する


そこにある不可視の壁に閉ざされたかのように、先へと進もうとしない


いや、正確には完全には止まらず、ゆっくりと先端を伸ばしてはいた



だが余りに遅い、遅い、遅すぎる



たった一メートルを突き抜けるだけで何時間もかかってしまうのではないか、

そう思わせるほどに鈍重な進行


「___?・・__?_。」


藍子(ボット)「......私には追いつきませんよ?__絶対に」


既にその先端、切っ先を向けている触手は一本ではない。だがその全てが


何本もの触手が、何回もの刺突が、鞭打が、巻きつきが、"停まっている"




580: ◆E.Qec4bXLs 2014/11/05(水) 09:39:12.40ID:jhlcpBHT0


「・・._・。、||・__」


ぐちゅりっ


触手の先端が花の蕾のように咲き裁たれ、裂き割れる

そこからカラスが首をもたげた。鋭くとがった黒い嘴が太い爪のように藍子に狙いを定め、

首だけが発射された

ぐちゃんっ


だがそれもすぐさま空中で停止する。藍子自身に害はない


それでも藍子の顔が曇った。

すぐそこにカラスの生首が浮いていればそれも当然だが



藍子(ボット)「本当に...いやな攻撃ですね」



改めて小梅だったものを見つめる

その小柄だった体にはキノコの根が絡み、カラスの肉が貼り付き、ひとつのボットとなっていた

それぞれのパーツが勝手気ままに蠢き、犇く。

例えるなら今、その形はカタツムリのようで、

だがそれも次の一瞬で別のなにかへ変貌する。

次は猿に似た形へ、次は蛸へ、次は樹木へ、次は___


「___・。。、_・/>>・・」


複数のボットを一体のボットへと混ぜ合わせる能力。


そしてその能力は今、一体の部品に藍子を組み込もうとしているのだ





だが、それは叶わない





581: ◆E.Qec4bXLs 2014/11/05(水) 09:40:22.75ID:jhlcpBHT0



__ブヅッ__


藍子が一歩踏み出し

一本の触手が消える

足の下でノイズを立てて掻き消えた触手に目もくれず、

藍子はまた一歩を踏み出す


ノイズ


藍子(ボット)「他にできそうなことも無いようなので、こちらから行きますね?」


「・・・_・_??__??_」


藍子を取り囲んでいた触手の包囲網の一部、本体へ通じるエリアが突破される


ノイズとともに消滅し、素通りされた


触れることも無く、無かったことにされていく


「?_?<?」



藍子の歩みは遅い、だが誰にも止められない

近づけば減速し、停止し、消滅する

『高森藍子の空間』を侵せない



藍子(ボット)「大丈夫ですよ?私の能力はダメージとは無縁のものですから。痛くは、ありません」


狭い廊下をひたひたと、ゆっくりと、まっすぐに


ぐちゅりぐちゅりぐちゅりゅ


包囲網の残った部分、藍子の進行方向の逆、背後側の触手が花開いた


先端を十字に裂いてまたもカラスの首がミサイルのように発射される


こんどは何本も何本も、何発も何発も、何度も何度も


尖った嘴がスティンガーミサイルのように再接近する


「____・・。。_」




582: ◆E.Qec4bXLs 2014/11/05(水) 09:41:26.72ID:jhlcpBHT0



藍子はそれを見ない。

どの攻撃も彼女に触れる前に動きを自粛することは分かっていた

彼女の歩みは変わらない、距離が詰まっていく

対して、小梅だったものは変わった

四方へ伸ばしていた触手を縮ませ、カラスの羽を纏め上げる

ぐねぐねと揺らいでいた形態が、一つの定まった定型へと蠢きだす


藍子(ボット)「もう攻撃はやめですか...」


壁や天井に拡散していた部品が本体へ

藍子とその周囲の空間を避けながら小梅だったものの下へ


一つの散在が一つの存在へ


ついに形ばかりの障害物すら無くなった通り道を

それでもマイペースに藍子は進む


藍子(ボット)「......小梅ちゃん?」

「_______」


最後、そこにいたのは一人の少女だった


見た目だけなら、彼女はどう見ても白坂小梅で、




藍子(ボット)「......じゃ...ない、?」


雰囲気、そして表情は全くの別物だった




583: ◆E.Qec4bXLs 2014/11/05(水) 09:42:54.18ID:jhlcpBHT0



「__!__」


”それ”が膝を曲げ、腰を沈め、地を蹴った

その動作だけで床板は爆発したように割れる

文字通りのロケットスタート


破壊的な踏み込みを助走に、その勢いのまま”それ”は



高森藍子の、そしてボットの知覚センサーを軽く越える速度で衝突した



藍子(ボット)「っ!?」


びたっ!


果たして、それは停まった。

今までとなんら変わりない結末


二人の距離は1メートルの間隔を開けて固定された


逆に言えば、二人の距離は瞬きする間に1メートルまで詰められてしまっていた


「~~~~___~~~~~~」

藍子(ボット)「なんですかあなたは......なんですかあなたは!」


それでも届かない、見えない壁に遮られたように


だが、止まろうとしない。


引っ掻くように、齧り付くように、じわりじわりと指を伸ばしてくる

カラスのミサイルにもキノコの根にもなかった力押しで、文字通り力尽くで


「”・、。!”__>。。。・。。_」


木の洞から漏れる澱んだ空気のような、頭の底に吹き込んでくるような音

それが小梅らしき、小梅以外の何者かの口元から聞こえてくることに気付く


藍子(ボット)「どうやら...他のボットの容量を自分の身体パラメーターに上乗せしたようですね...!」


機械的な推測で状況を把握し、藍子は次の一手を打つ


それは至極単純で効果は絶大



いつの間にか止めていた足を再度、一歩踏み出しただけだ



停止した相手に藍子の方から歩み寄る、その動きだけで

彼女の能力は次の段階へ移る




584: ◆E.Qec4bXLs 2014/11/05(水) 09:44:27.16ID:jhlcpBHT0



藍子(ボット)「どんな感じですか?自分が押しつぶされるって」


停止から消滅へと


__プツッ__


”それ”の両腕から先が消失した



「___?!?。・。、」

藍子(ボット)「あれ?この世界だと...ボットは一息に消えてしまうはずなんですが」


仮想現実では流血はない、肉体の損壊もない。

だが、確かにその両腕が肘から失せていた


ぐじゅる


その断面から何かが飛び出す

管のような、紐のような、粘土のような

血管のような、神経のような、筋肉のような、何かがまろびだしまとまり__


「__、。、。。」


両腕は元通りに生え変わった


藍子(ボット)「吸収したボットを使ったんですね?」


それを見てもボットの彼女は動揺しない

ここまでの動きから、このくらいの異常事態は予想がついていた

藍子(ボット)「ですが___」

だから。

もう一歩を踏み出し、もう一度押し潰そうと


「___!!!__」



高森藍子は足を動かし



白坂小梅に似た何かは腕を動かした




585: ◆E.Qec4bXLs 2014/11/05(水) 09:46:27.17ID:jhlcpBHT0


屋敷の廊下の壁面に向けて両腕が振り抜かれ、床板の時同様それは爆散した

複数のボットのスペックを全開にした一撃


狭い廊下にしばし暴風が吹き荒れる


藍子(ボット)「きゃっ!?」


屋敷全体が倒壊しかねない衝撃、波打つように引き剥がされる床板


埃ではなく、粉微塵になった木屑が藍子の周囲を漂う

尖った木片や木の板は空中で停止していた


藍子(ボット)「けほ、けほっ!」



小さな小さな、取るに足らない木の粉にむせる

嫌がらせじみたそれも、相手からの精一杯の抵抗だったのかもしれない

残ったのは天井にまで亀裂を波及させた大穴だけ


あの不定形のボットの姿はない


藍子(ボット)「逃げられました...?」


耳障りなノイズと共に

採集標本さながら空中に縫いとめられていた木片が軒並み消失させる

それでも消えきらずに残った木屑の粉が宙に浮く中、また足を進めた


あくまでマイペースに、ただし方向だけは変更して


藍子(ボット)「変形に、自己強化に、再生...ずいぶん多彩な能力の方でしたね...」


先の怪物が空けた穴のフチに足を掛ける、だが痛々しく破砕された木片の鋭利な先端は彼女を傷つけない


藍子の存在、その周囲の空間に削り取られるようにノイズを鳴らし消えていく

地面以外のすべてが高森藍子に道を空けながら消尽する



藍子(ボット)「...私やほたるちゃんや聖ちゃん以外にあそこまでこの世界に負荷を掛けるボットがいるなんて...」



そんな存在は取り除いておくべきだろう

自分たちの能力を全開にするためにも


ボットはそう決定を下した


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



586: ◆E.Qec4bXLs 2014/11/05(水) 09:49:12.02ID:jhlcpBHT0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
渋谷凛



目に見える範囲にならどこにだって行ける


どこにだって足跡を残せる


彼女は自分の能力をそう推理した


凛「......せーのっ!」



表面が朽ちたビルの屋上のへりに足をかけ、空中に身を投げる



十数階はある階層からのジャンプ。

遥か下に細くなった道路を見下ろす


そのままトン、と軽やかに着地した。

大通りを挟んだ向かいにあるビルの窓ガラスに



凛「(空を自由に飛ぶ、とは違うけど...こういう自由さも悪くないね)」

そのまま次なる屋上に向けて窓ガラスを垂直に歩く。ちょうど彼女と敵対したボットの一人、福山舞が一輪車でやってのけたように

凛「......(それにしても真っ暗...街灯と月がなかったと思うとゾッとする)」



ガァアー!


難なく壁面を登りきり、正確には歩き切り屋上に到達したところでまたあの耳障りな鳴き声


凛を察知したカラスがビルの屋上よりも上空から殺到していた


だが、カラスが到達した時には凛はもうそこにいない



587: ◆E.Qec4bXLs 2014/11/05(水) 09:50:57.43ID:jhlcpBHT0




凛「___よっと」


隣接する同じくらいの高さの建物の屋上に着地し、態勢を整える



少し離れた場所ではカラスたちが無人の屋上を彷徨うように旋回していた



凛「見つけてから動くより、見た瞬間に動き終わってる方が速いよね?」



カラスには凛が消えたように見えているのか、未だにすぐ隣のビルに移動した彼女に気づかない


それでも念のために死角となりそうな給水タンクの影に腰を落ち着け、服の中に手を入れた



そこからタブレットを取り出す


凛「(どういうわけか武器が見つからない...みんなが探し尽くしちゃったのかな...)」


みんな、というのがボットを指すのかプレイヤーを指すのかはともかく

未だに故障どころか充電も切れることなく稼働しているその画面を確認する

いくつかの赤い丸、そして青い丸が不規則に散らばっている

いや、いくつか固まった丸点が見受けられるようになっていた

それは凛を中心としたボットとプレイヤーの方角と距離のデータ


今の彼女を突き動かすもの


凛「とりあえず...まず会わなきゃいけないのはプレイヤーだよね。戦力的な意味合いも含めて」


それにちょっと寂しくなってきたし

とは口に出さないが否定もしない




588: ◆E.Qec4bXLs 2014/11/05(水) 09:52:40.46ID:jhlcpBHT0



凛「ここから...一番近い所にいるのは......」


彼女の細い指が画面をなぞっていく


凛「この辺にいる子かな...さっきからあんまり動いてないし」


やがてある一点で止まった。

この世界に来て久しぶりにコンタクトをとる、智絵里以来のプレイヤーを決める


凛「それに三人で固まってる...私のことも受け入れてくれるかも」


三つの点がひと固まりになって移動している

見たところ近くにボットはいない

タンクに背を預けながら凛は画面のその部分を指でコツンと叩いた


凛はまだ知らない


自分が選んだその三人の中に北条加蓮がいることも、神谷奈緒がいることも




ゲーム開始80分経過

報告事項なし




589: ◆E.Qec4bXLs 2014/11/05(水) 09:54:14.07ID:jhlcpBHT0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
早坂美玲



廃墟と化した町並みを一人のボットとプレイヤーが駆ける


渋谷凛と同様に、早坂美玲もまた自身の能力の舵を取り始めていた


美玲「(大体分かってきたぞ...ウチの能力は二つの方法でボットのヤツを攻撃できるんだ)」


倒壊し地面に対し斜め刺さった建物、その影に滑り込み、特徴的な手袋の爪を地面に突き立てる

柔らかい素材で出来ていたはずのそれは何の抵抗もなく石材を貫通する


美玲「(普通に腕の周りをコンクリとか鉄で固めて、ウチの力で振り回すやり方)」

アナスタシアと戦った時の、工場の壁を引き剥がそうとした時の、ニューウェー部の操る装甲車に立ち向かった時の力


ボゴリ、と地面が小さくまくり上がり美玲の両手を駆け上がるようにしてまとわりついていく



美玲「(こっちはウチの手に長くくっついてるけど、動かすのがキツい...!)」


その音をボットの耳は聞き逃さない



聖(ボット)「......そこ...」


地表すれすれに高度を落とした聖の、6枚あるうちの2枚の翼が地面を撫でる。

同時に地響きが割れた窓ガラス達を震わせる

翼の先の軌道をなぞりながら起きた地割れが美玲のいるビルへとジグザグの口を開いた



590: ◆E.Qec4bXLs 2014/11/05(水) 09:58:50.65ID:jhlcpBHT0


底なしの割れ目にビルが沈んでいく。ビスケットのように外装が砕けて地下へ吸い込まれていく

その影の美玲もろとも


美玲「......(もう一つは能力そのものの力...ウチの手に”引き寄せる力”そのものを使って爪を動かすやり方)」


崩れ落ちてきた工場の屋根から身を守った時の、ニューウェーブのさくらを倒すキッカケになった時の、装甲板の一部を変形させて急カーブした時の力


美玲「(こっちはウチの手からすぐに離れる、時間制限が短い...)」


周囲に転がっていた何もかもが亀裂に飲み込まれながら美玲を押し流す

彼女は動かない、動けない。地面から重力に逆らい両腕をかけ登っていく廃材は既に背中を覆い始めていたからだ

それでも、流れ落ちる瓦礫に下半身まで埋まったまま吠えた



美玲「だけどなぁッ!!こっちの方がスッゴく強いんだぞッ!!!」

聖(ボット)「...!」



ビルの崩落が、瓦礫の流れが、停止した

写真に撮られた一風景のように一切が鳴動をやめる。


まるで絵画の中に迷い込んだような停滞感

そして逆流、形成、襲撃


美玲の数千倍の体積の建物が屋上から一階まで真っ二つに別れ、2本の塔に変形した

しかも地上から上へ向けて三叉にさらに分割されそれぞれが尖塔をなしている

三つに裂けた2本の塔。その姿は


聖(ボット)「......腕、と爪?」

美玲「そうだッ!!」




591: ◆E.Qec4bXLs 2014/11/05(水) 10:01:00.19ID:jhlcpBHT0


ビルが倒れる。今度は重力ではなく、美玲の能力に従って

聖の6枚の翼に向けて6本の爪が倒れ込んでいく

たった一本であってもその爪のサイズは尖塔ほど。聖や美玲の何倍もの大きさと重さで


美玲「こんだけデカいとスグに解除されるけどッ!」

「そのまえに一回でも食らえぇッ!!」


地表近く、望月聖の小柄な体を包み込みながら数十トンの攻撃がもう一度地響きを起こした

今度の震動には瓦礫の山から腕の抜けた美玲も吹き飛ばされる


美玲「ははッ!どうだッ!」




もちろん、聖にとってどうということはない



倒れこみ、崩れ落ちた爪の塔。

二方向から聖に向けて振り下ろされた尖塔がはじけ飛ぶ


聖「......見つけました...」


翼が繭のごとく聖を包んでいる

周りの瓦礫を押しのけながら優雅に開帳された


闇目に眩しい光の中、傷一つない聖と泥まみれの美玲の視線が交差した


美玲「チッ!!しぶといなぁもう!!」

聖(ボット)「それはこっちのセリフです...」



早坂美玲は知らない

自分の力では望月聖に届かないことを

彼女では聖と肩を並べるには一手足りないことを



早坂美玲は知らない

その一手が、すぐそばに隠されていることを



ゲーム開始80分経過

早坂美玲VS聖(ボット)

継続中



592: ◆E.Qec4bXLs 2014/11/05(水) 10:02:13.55ID:jhlcpBHT0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

長いこと開けてすいませんでした


次回開始するチャプターを選択してください

1、輿水幸子&白坂小梅&小関麗奈

2、双葉杏&諸星きらり&堀裕子&神崎蘭子&十時愛梨

3、早坂美玲

4、渋谷凛

安価下



593:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/05(水) 10:07:13.56 ID:uHBLPFuEo

1



598: ◆E.Qec4bXLs 2014/11/22(土) 23:51:03.11ID:Fu8g34Ep0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
輿水幸子&白坂小梅&小関麗奈




アイテムの探しどころとは



例えば三好紗南は入り込んだビルの中で幸運にも自身のキーアイテムを見つけ


渋谷凛は事務所の中で加蓮と奈緒のキーアイテムらしきものを手にしたし


小関麗奈と大和亜季はアーケードのシャッターの空いた店の中で多数の銃器を得た


いくつかの例外は確かにあるが基本的にこのゲームではアイテムの類は屋内、室内に隠されている傾向が強いらしい




小梅「そ、そういえば...武器、は建物のな、中の方が、多いって...亜季さんが」


幸子「なるほど!つまりこの倒壊したビルの瓦礫の中からならこの窮地を脱する何かが手に入るかもしれませんねっ!」




ガァアアーーー!!


幸子「__いや無理でしょう!?」


向かってきたカラスに石を投げつける、やや大きめのものだったため辛うじてヒットした

ビル一棟が丸々崩壊した恩恵というべきか、大きめの破片ならそこら中にあったのだ

窮余の一策、ではなく苦肉の策としか言い様のない反撃


幸子「しっ、しかもこのカラス...凄くシツコイです!カワイイボクにお近づきになりたいのは分かりますけど!」


その細腕で投げつけられた破片は重石となり、カラスを地面に押さえつけていたが、

それでも這い出そうと懸命に羽ばたいていた

さらにカラス単体の能力によりそのストッパーは脆く、今にもカラスを解き放ちそうだ


小梅「しょ、しょーちゃん...どう、なったんだろう?」

幸子「この壁の向こうで生きているでしょう!そうに決まっています!輝子さんの能力はとっても強いんですから!」


もう一つの瓦礫を持ち上げ、地面に縫い付けられたそのカラスに追い打ちをかけた


迎撃一つにしても彼女の丁寧さはこういうところに表出している


小梅「さ、さっちゃん...だ、だいじょうぶ...?」

幸子「問題ありません!小梅さんは早くなにか役に立つものでも発掘しててください!」



崩れたビルのバリケードを背に、小梅をかばうような位置でカラスの群れに相対する



599: ◆E.Qec4bXLs 2014/11/22(土) 23:52:35.85ID:Fu8g34Ep0



幸子「ふぅ......カワイイボクにこんな肉体労働を強いるなんて、許されない重罪ですよ!」


ガラン、と音を立てて亀裂に刺さっていた鉄のパイプを引き抜いた

仮想の現実ではそんな荒事で手の平に傷が付くこともない



カラン、と音を立てて研がれた剣先が地面をなぞる



ほたる(ボット)「......それでも、かまいません」



二人から届かない、そして怪しい動きを見落とさない絶妙な距離でサーベルを保持する

仮想の現実では彼女の一挙一動の全ては世界を傷つけることになる



幸子「ふ、フフーン!なんですかさっきからチマチマと!」

「そんな野蛮な鳥類の一羽二羽でボクらを止められると思っているんですか!」


ビシっとパイプの先を目の前のボットに向ける。

彼女の気勢は未だ削がれていない


というのもほたるがその攻撃に本腰を入れていない、否、「入れられない」状況にあったからだ


ほたる(ボット)「私の能力は手加減が肝心なのですよ...」



サーベルを掲げ、振り下ろす



ボッ!


風を切る音が耳に届く、だが斬撃は当然届かない



幸子「何を......ひっ!?」


強気に言葉を返そうとして、手元を見た幸子が息を飲んだ



幸子の握っていたパイプが半分以下の長さになっている



指のすぐ上で切断されたように、だが切断されたはずの先端が見当たらない

鉄パイプの先は完全に消失していた、

能力により脆弱に腐蝕し粉微塵に風に溶けていたのだ

サーベルを振り下ろす一瞬の間に


ほたる(ボット)「やり過ぎてしまうと......何も残らないですから」




600: ◆E.Qec4bXLs 2014/11/22(土) 23:54:52.16ID:Fu8g34Ep0



ヒュンヒュンと剣先を縦横に振る

その先端の描くラインを追って黒い線が空を走っていた


ほたる(ボット)「私のカラスは......こういう使い方もできるんです、よっ!」


突きを放つ

夜の空気が切り裂かれ、その動きをカラスが一列に追う



その姿は突き出される黒い槍と化し、



幸子「(さっきより断然疾いっ......!?)」


咄嗟に体をずらした幸子の肩をかすめ、小梅の背中を打った



小梅「うぁっ!?」

幸子「小梅さんっ!!」


崩れ落ちた小梅の体を支える、小梅が被さっていた場所に深く穿たれた穴を見てその威力に背筋が凍る


穿たれた穴からはカラスの黒羽が覗いていた、

だが特攻に耐え切れないボットの体は間もなく立ち消えた


ほたる(ボット)「さて...」


サーベルを天に突き上げる、その動きだけでほたるの頭上でカラスが黒く渦巻いた



だがまだ、彼女は決め手となる一撃を放てない



ほたる(ボット)「(問題は一つ...誰かが私のボットに干渉......いや、はっきりと侵食してること)」



誰かが自分の能力を脅かしている。

その一点が彼女の攻勢を後一歩のところで留めていた



そもそも自身の能力に違和を感じたからこそこの場所まで彼女は足を運んだのだ

おそらく幸子や小梅によるものではないはずだが、確信が持てないうちに大味な攻撃はできない


幸子「カワイイボクたちをいたぶろうだなんて...!」

小梅「けほっ...!」


ほたる(ボット)「(せめて、あのバリケードのそばから離れてくれれば...少なくともその向こうにいる誰かの脅威は取り除けるのですが...)」




601: ◆E.Qec4bXLs 2014/11/22(土) 23:56:13.96ID:Fu8g34Ep0



バリケードの向こう

そこにはまさにほたるを脅かしている張本人、古澤頼子がいる


蠱毒の仕掛け人



直接の戦闘力を持たないはずのボットが二人ものプレイヤーを討ち


逆に圧倒的戦力差を有するボットが丸腰のプレイヤー相手に二の足を踏んでいる


それは全く不条理で奇妙な状況だった



無作為に寄せ集められた者たちによる化学反応ならぬ科学反応


その毒はボットもプレイヤーも飲み込んでいく


もちろんそれは残る一角でも例外ではなく___




602: ◆E.Qec4bXLs 2014/11/22(土) 23:58:51.41ID:Fu8g34Ep0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
小関麗奈




麗奈「たぁっ!!」



投げつけられた小石がミサイルとなって狭い路地を跳ね回っていく



麗奈「(大体分かってきたわ...アタシの能力の特性)」


足元には大小のがれきと石、彼女の攻撃の唯一の手段にしてプレイヤーとしてのライフライン

それらを削ってボットを討つ

今もまたひび割れた壁面に跳ねた石がボット目掛け飛来し、


だが打ち払われた


圧縮された光量、あるいは熱量により強制的に誘爆させられて


麗奈「(そんでもってアイツの弱点もね...)」



光(ボット)「どうした麗奈!!そんな離れた場所から石を投げるだけじゃアタシは倒せないぞ!!」



闇を照らしながら、勇ましく戦意をみなぎらせ麗奈と対峙する姿は変わらない

こともなげに火薬玉となった石を退けた剣、目映く光るそれを構えなおした


麗奈「はん、今のうちに精々吠えてなさい」


手の中でジャラジャラと次の小石を弄びながら綽々と言い放つ

その視線は南条光ではなくその武器、光剣に固定されている


よく見るとその長さは不安定に伸縮していて、

光が掴んだ柄から離れるほどにその「ブレ」は顕著だ


麗奈「(最初はバカみたいに蛍光灯でも振り回してるのかと思ったけど...)」

「(......あれは棒が光ってるとか、そういうショボいのじゃないわよねぇ...)」


イメージとしては花火、それも市販されているような手で持って遊ぶタイプのそれ

順手に構えられた手の中から鮮やかな白光が吹き出している




603: ◆E.Qec4bXLs 2014/11/23(日) 00:06:43.90ID:/jQt+YwZ0



光(ボット)「さぁこい!」


麗奈「(だからなんだって話だけど...形のないただの光の塊で殴れるわけないし......だから”その辺”がアイツの能力ね)」


光(ボット)「言っておくがアタシの能力は!この世界の光を自由自在に変形させる力!」

「生半可な攻撃では傷一つ付きはしない!よく肝に銘じておけ!」


麗奈「(自分で言ってるし......そもそも光を変形ってなによ)」


駆け引きも何もあったものじゃない、いきなり手の内を明かす行為

確かにボットの戦い方にはオリジナルの性格と特徴が顕著になるものだが、


最後の最後まで理解の追いつかない千変万化の奇策を披露し続け、

しかし結局底力を見せないまま消えていった塩見周子とは大違いだった

尤も、「光線を変形」などというのも、仮想現実でなければ到底理解しようもない言葉だが



麗奈「教えてもらわなくて結構よ!弱点は丸分かりなんだからっ!」


両手で石を持ち上げる、片手で投げるにはやや大きすぎた




麗奈「特大のレイナサマボム!喰らいなさい!」

光(ボット)「させるかっ!!」



5メートル程の距離を光が詰める、


その前に石は麗奈の手から放られた


突進する光の眼前を石塊が遮る、だが彼女は止まらない


手に持った剣の構えを変えた。突きの型に


ガッ!


剣先が空中で石に食い込む、


ボットとボムとの距離は1メートルを割っていた



光(ボット)「いっけぇえええええええ!!!」






604: ◆E.Qec4bXLs 2014/11/23(日) 00:09:57.85ID:/jQt+YwZ0



思わず麗奈がひるむほどの雄叫びをあげる





その声に呼応するように剣先が伸びた





変幻自在は伊達ではなく、剣よりもむしろ槍となって石を遠ざけた


麗奈「そんなのアリなの!?」


遠ざけた先、狭い路地の一直線上にいる麗奈に向かって穂先が伸び続ける


光(ボット)「やたらめったら能力を使ったバチだ!」



カァン!


剣先、今は穂先を離れ、石が前方に弾かれた



麗奈「___っ!!」

「(アタシの能力はっ......!!!)」



なまじ大きめの石を選んだだけに、そのしっぺ返しは麗奈にとって手痛いものになるだろう


麗奈の手を離れ、光の能力に跳ね返され、


そして結果的に麗奈の手前でそれは爆散した










    ポフッ


冗談じみた貧弱な効果音と共に




光(ボット)「......は?」

麗奈「ばぁーーーーーーーーーーーーっか!!!」



槍を構えたままの光の耳に嘲弄の声が届く、だが声だけだ

麗奈の姿は先の、爆発とも言えない「散布」によって生じた煙の向こうにある


麗奈「アタシの能力が一番効きやすいのは、アタシの手のひらに収まるサイズのヤツだけなのよ!!」




605: ◆E.Qec4bXLs 2014/11/23(日) 00:14:18.85ID:/jQt+YwZ0




その煙幕の中で彼女は野球投手よろしく腕を大きく振りかぶる


しっかりと握り締められた拳の中には小さな小さな石礫がギッチリ詰められていた

そう。小さな礫が


「持つ」でもなく「掴む」でもなく


「拳の中に握り締められて」いる



麗奈「(そりゃそうよね、火薬の威力は凝縮した方が強いに決まってるわ)」


塩見周子との戦いを思い出す


あの時は手に持っていた紙屑を適当にちぎってそのまま投げていた


地下下水道での能力の練習と、その後の誤爆を思い出す


最初は爆発の具合を見るために手の平より大きい欠片で練習ばかりしていた


そのあとキノコが来た時は咄嗟のことだったため爆散して小振りになった破片しかなく

そしてそれを緊張で強く握り締めていた





光(ボット)「これはっ!?」


極小の爆弾の弾幕が南条光を取り囲み、



麗奈「そして光!気付いてるかもしれないけど言ってあげるわ」



極光を打ち消すほどの閃光が満ちて



「アンタの能力はねぇ、使えば使うほど弱まっていくのよ!」




極悪な威力が暴風のごとく吹き荒れた





ゲーム開始78分経過

輿水幸子&白坂小梅 VS 白菊ほたる(ボット)

小関麗奈VS南条光(ボット)

継続中



606: ◆E.Qec4bXLs 2014/11/23(日) 00:16:43.19ID:/jQt+YwZ0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

光るものを物質として固定し、使役する


そんな能力だからこそ南条光はその名の示す通り光を剣として振るうことができた


だが、その能力はどうしても有限のものだった



なぜならその光剣は”目に見える”のだから



一般的に明るい場所で人間が物を見るとき、それは物体そのものを見るというよりも

厳密には物体に反射した光を目で捉えることでようやくそれを一つの物体として認識している


能力により生み出された光剣も例外ではない。

麗奈も光も、そして亜季も輝子も幸子も小梅も


その光剣から”漏れ出して”いる光を通して、その武器を認識していた


南条光の能力の範囲はその手元にしか作動しない。

そのためどうしても能力の効力の弱い箇所が生じる

だからこそ、そこから崩れた光線により彼女の武器は武器としての姿を成していた


諸刃、ではなく脆い刃の剣

南条光が武器として集めた光は時間とともに流れて消えていくのだ




607: ◆E.Qec4bXLs 2014/11/23(日) 00:18:54.21ID:/jQt+YwZ0



ちなみに、麗奈はそこまで難しく理屈立てて事態を理解したわけではない



麗奈「アーーハッハッハ!!聡明なアタシは気づいてたわよ!」

「アンタが剣を振り回すたびに!壁に伸びたアンタの影が短くなってたのをね!!」

「そんなの見たらアンタの眩しいだけのガラクタの光がちょっとずつ薄まってることぐらい分かるわよ!」


爆光から目を庇いながら勝ち鬨を上げる


もしも二人が戦っている場所が壁の間隔の狭い路地でなければ、

そこに投射された光の影が麗奈の視界に入ることはなかった


もしも二人の戦いが夜に行われていなければ、

麗奈は相手の武器の光量の微妙な変化を見抜けなかった


もしも塩見周子との戦いを経験していなければ、

周囲を神経質に観察し状況を把握することの重要性を理解していなかっただろう



麗奈「というかやっぱり周子と比べるとやり方が単純だったわね...」


苦戦の記憶を振り返る。

光のボットはほぼ最大威力のレイナサマボムにより半壊したビルの壁だったものに埋もれ姿も見えない


爆風にえぐられた壁面からはビルの内部、オフィスらしき部屋が覗いていた


閃光がその有様をくっきりと浮かび上がらせ続けている


麗奈「亜季は無事なんでしょうね......途中でなんか変な表示が出てたけど」





608: ◆E.Qec4bXLs 2014/11/23(日) 00:21:44.15ID:/jQt+YwZ0


振り返り、足元の崩れた破片を踏みつけながら路地の外へ向かう、

次は倒壊したビルのバリケードを超えなければならない


麗奈「厄介なことしてくれたもんね...これ爆破して大丈夫なのかしら...でも、幸子は爆破とかそういうのに巻き込まれそうだし...」


背後からの光で延長された自分の影に向かって歩く


麗奈「さっきからカラスの鳴き声ばっかりしてるんだけど......ここってホントにゲームよね?」


文字通りついさっきまで地下に潜っていた麗奈に白菊ほたるのことを知る余地はない

積み上がった足場に乗り上げ空を見上げると確かにカラスが輪を描いて飛んでいるのが見えた


背景は闇夜だったが月光と背後から照らされ続ける閃光が相まって視認は簡単だった


黒羽の艶まで見通せるようだ。それを見て麗奈が言葉を漏らす



麗奈「いやいや...いやいやいやいや......」



麗奈「おかしいでしょ......」



振り返る




麗奈「なんでアタシの爆弾がこんな...こんなに何秒も長いこと光ってんのよ!!!」





光(ボット)「知らなかったのか?」



そこにあったのはまん丸の鏡。

だがよく見ると鏡ではない。


光を反射するのではなく光そのものを放っているのだから

それは光子の塊そのものだから





609: ◆E.Qec4bXLs 2014/11/23(日) 00:37:22.22ID:/jQt+YwZ0




光(ボット)「光は何より速いんだぞ!」


起爆した瞬間。


爆風よりも爆熱よりも早くに、爆光は南条光に到達していた


そしてそれは彼女にとっては剣であり槍であり、盾だった


爆発の猛威も、二次災害としてのビルの半壊も彼女はしのぎ切った

南条光の能力は小関麗奈の能力を出し抜いた



麗奈「このアタシの___能力が」


盾の形が変わっていく


光(ボット)「ちゃんと覚えておくんだな!!!」



まん丸だったものから、神殿を支える柱のような円柱に

そしてやがて細く平たく凝縮されていく



空を突き上げる見上げんばかりの大剣の形状へと、



全ての影を打ち消さんばかりの光量で路地の空間を埋め尽くす


身長の何倍もの大剣を両腕に掲げた光と、

小さな手のひらに小石を込めただけの麗奈の視線が刹那、かち合う





麗奈「......ひ、光ぅうううううう!!!」



光(ボット)「__麗奈ァアアアアアアアアアアア!!!」






ほんの一秒にも満たない時間



仮想の世界は、


夜が訪れる前の明るさを取り戻した






610: ◆E.Qec4bXLs 2014/11/23(日) 00:38:10.31ID:/jQt+YwZ0



_____________

 小関麗奈+ 0/100 


_____________



ゲーム開始80分経過

小関麗奈VS南条光(ボット)

勝者:南条光(ボット)



611: ◆E.Qec4bXLs 2014/11/23(日) 00:40:05.52ID:/jQt+YwZ0

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

待たせてしまい申し訳ありませんでした



次回開始するチャプターを選択してください

1、双葉杏&諸星きらり&堀裕子&神崎蘭子&十時愛梨

2、早坂美玲

3、渋谷凛

4、神谷奈緒&北条加蓮&三好紗南

安価下



612:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/23(日) 00:41:08.72 ID:czuK1fQDO

3



614: ◆E.Qec4bXLs 2014/12/14(日) 00:03:28.60ID:KnW1a+/t0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
渋谷凛




跳ぶ、飛ぶ、そして翔んでいく




明かり一つ灯さず立ち並ぶコンクリート製の巨大な墓標の間を次々に移動していく



凛「(こうして見ると、本当にゴーストタウンだよね...)」



音も軽やかに垂直な壁面に着地し、右手に伸びる遠い地面を見下ろす

彼女はとっくに能力を使いこなしていた


凛「私の目標は、と...」


タブレットの画面の中心には自分を示す赤い丸、

少し離れた場所にはボットを表すいくつもの青い丸

彼女の視線はその中の一点に止まる

そこでは3つの赤丸がゆっくりと進んでいた。どういうわけだかその周りにはボットはいない


凛「アプローチするならこのチームだよね...ほかの人たちじゃあ私が入り込めなさそうだし...」


そう言って視線をずらした場所では赤い丸と青い丸が多重に円を描いて行き交っていた。

絶えず戦闘が行われている証だ。ほぼ丸腰の彼女では巻き込まれるだけだ




ぶわり




凛「......っ!」


覗き込んだ画面からそんな音が聞こえてきた気がした

小さな青い丸が霧のように画面を侵食し始めている。カラスの大群だ


凛「(追いついてきてる...というよりまた別の塊が私に狙いをつけてきたんだね)」




615: ◆E.Qec4bXLs 2014/12/14(日) 00:05:16.12ID:KnW1a+/t0



膝を軽く曲げ、跳躍の姿勢をとる。


次に瞬きを終えた時には別の建物に着地していた


そのまま飛び石伝いの要領で数十メートル単位のショートカットを行っていく


凛「私が余計なものを連れて行くわけにはいかない...合流するなら振り切ってからじゃないと!」


背後でガラスの割れる音が滝のように連続して鳴り響く

一羽一羽の能力が少しづつこの世界を朽ちさせていく

それの数倍、幾千のカラスが倍の速度で壁面を荒廃させ、窓ガラスが羽の風圧にうち負けていく


凛「(追いつかれる...?)」


機動力においては渋谷凛が現状での最上位のプレイヤーではある


しかしその事実をして、黒いボットは彼女に肉迫する。


その圧倒的な物量で


アァアア゙ーー!!



ガラスが粉々の飛沫に変貌していく破裂音が木霊する

凛「__っ!!?」


前方に黒い羽が霧のように立ちはだかっていた



凛「ビルの隙間を飛び跳ねてるだけじゃアレの視界からは逃げられないか...!」


耳元を風がよぎって行く。

その音にまぎれてはいるが確実に羽音が背後に迫っていた

かと言って地面を走るのは得策ではない。

なにせ相手は空一面を覆う程の群れだ、地面に降りることはすなわち逃げ場を塞ぐことに等しい

だからこうして高層ビルの、決して低くない階の窓ガラスを蹴って進んでいる。


それでもカラスはその「空路」を埋め尽くし始めていた


凛「じゃあ、上に行く...!」





616: ◆E.Qec4bXLs 2014/12/14(日) 00:06:22.84ID:KnW1a+/t0



最初に能力が発動した時のことを思い出す


凛「(私の能力はただ何処にでも立てるだけじゃない...)」


建物の間を緩やかなジグザグを描いて跳んでいく



その軌道が直角に近い角度で上空へ折れ曲がった



あくまで道路に沿っていた移動経路を、脱する


凛「視界に入る場所になら...どこにだって行ける!」


目指すは上階、屋上、


凛「避雷針...!」




そして、上空




靴の裏が蒼く瞬いた。



凛の姿が消える





617: ◆E.Qec4bXLs 2014/12/14(日) 00:08:01.83ID:KnW1a+/t0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


腕力ならば堀裕子が


破壊力なら小関麗奈が


回復力なら双葉杏が


修復力なら十時愛梨が


機動力なら渋谷凛が暫定的にこの世界でのトップだ


そしてその機動力をもって駆け回った結果、彼女は大量の情報を手に入れることと相成った





凛「.............」




耳を聾する羽音の嵐から抜け出て数秒。

恐らくこの世界の中に現存する中で一番の高所に到達した凛は沈黙する

彼女の目には仮想世界の全景が映っていた


背の低いオフィスビル、斜めに傾いた高層建造物、大穴のあいたデパート、車の一台もない道路や駐車場


夜の影に飲み込まれかけながらも緑がかった月明かりが浮き彫りにするその姿、


地平線を埋め尽くす直方体の黒い森、そしてここで彼女は初めてこの街は四方を低山に囲まれていることを知った


その山の向こうの景色は見えないけれど、この呑み込まれそうなほどに広い仮想現実の有限を見た


自分たちがいた世界は意外に狭かったのだ



凛「......、...」





618: ◆E.Qec4bXLs 2014/12/14(日) 00:09:19.49ID:KnW1a+/t0



ビルの全体に比べてあまりにも細い避雷針の頂点に危なげなく直立し、しばしその光景に見惚れたように静止する


凛「.........」


凛「.........」


凛「.........」



凛「.........あっちの方と」


凛「...こっちの方」


もちろん見惚れてなどいなかった


見渡した限りで明らかに危険地帯、アンタッチャブルな方角を見定めていた


そしておおよその距離を元にタブレットと見比べる



凛「(あの翼を生やして飛んでいるのは、ボットか......すぐ近くにプレイヤーが一人)」

「(でも、少し離れた場所に五人...一人が気を引いている間に、何かしようとしてるの?)」

タブレットで知ることができるのは位置情報だけ、あとは彼女自身が推測するしかない


視線を別のポイントへ向ける


凛「(あそこの”穴だらけ”の建物にはボットが三人、いや四人?)」

「(なんでかプレイヤーもいないのに戦ってるみたい...仲間割れ?)」


首を回す


凛「(あのとんでもなく光っている所は...)」

「(ボットが4人も...それに対してプレイヤーが2人だけ、か)」

「これじゃあ、あそこのプレイヤーはもう......ん?」



凛「ん?」



彼女は見た。

タブレットの上で起きたその「変化」を

だが、その意味するところを正確に理解することはできなかった

できないままに彼女は次の移動を開始する


凛「(まずはさっき目星をつけた三人の場所に!)」




619: ◆E.Qec4bXLs 2014/12/14(日) 00:11:26.00ID:KnW1a+/t0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


機動力は情報収集力につながった


高所から見渡した景色と手元にあったタブレットは安全な道程を示し


一時の間、彼女の目は全てを見通した






同様に






彼女もまた見通されていた






同じく高所、上空にいた存在に















聖(ボット)「.........じぃー...」







美玲「なっ、なに他所見してんだお前ッ!!」



タブレットで知ることができるのは方向と距離のみ


何をして、何を見ているかは分からない


ましてや、画面上のドットが自分を見つめているかなど

凛には知る由もなかった



ゲーム開始87分経過

望月聖(ボット)VS早坂美玲&渋谷凛

開始

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



620: ◆E.Qec4bXLs 2014/12/14(日) 00:13:30.43ID:KnW1a+/t0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

生存報告の更新、もっとたくさん書きたい


次回開始するチャプターを選択してください


1、双葉杏&諸星きらり&堀裕子&神崎蘭子&十時愛梨

2、早坂美玲

3、神谷奈緒&北条加蓮&三好紗南

4、輿水幸子&白坂小梅

安価下



623: ◆E.Qec4bXLs 2014/12/26(金) 21:54:04.03ID:mlSoY6ao0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
神谷奈緒&北条加蓮&三好紗南





奈緒「マジか、紗南!?」





不必要に大きな声は窘められることなく返答された


紗南「だからちらっとだけど反応したって!」

加蓮「本題はそっちじゃなくって、その反応した相手ってのは間違ってないよね?」

紗南「うん!間違いないよ!」


どこまでも続く広い下水道の中、身を寄せ合うようにして三人で画面を覗き込む


その喧騒と対照的にサーチモードにされたまま保持された画面は沈黙したまま


だが確かに、ゲームで鍛えられた紗南の目は画面の変化と表示された文字を読み逃がさなかった



______________

name:渋谷凛

category:プレイヤー

skill:・・・Now Loading・・・

______________





紗南の能力を司るゲーム機、

そのサーチモードは直線上にしか作用せず、動いている相手には非常に相性が悪い


ましてや三人は知る由もないが、凛はおそらく現在時刻この世界で一番機敏に動き回っている


だというのに渋谷凛の能力の軌道と、

三好紗南の直線は偶然の刹那交差した


そのほとんど起きないであろう偶然が起きるくらいにお互いの距離は近づいている



624: ◆E.Qec4bXLs 2014/12/26(金) 21:56:33.91ID:mlSoY6ao0



加蓮「とにかくこのチャンスを逃しちゃダメだよ...大体どの方向で反応したとかわかる?」


小柄な紗南に背後からもたれかかるようにして画面を覗き込む


奈緒「や、やっぱ地上に出たほうがいいのか!?」

加蓮「最終的にはそうなるかもね」

紗南「でもどこから?やっぱりマンホールとか登っていくの?」

加蓮「なんにしても早いほうがいいよね、凛だっていつまでもフラフラはしてないだろうし」

奈緒「でもあのカラスがなぁ...」

紗南「あぁそっか...どうみてもザコなんだけど数が多すぎるよね」


いよいよ移動範囲を下水道から地上へ移そうという段階になってもまだ三人を憂慮させるのがそれだ


地下にいる自分たちに対し、上空を舞うそれらのボットは十分に距離があるのだが


時折その存在を紗南の手元の画面上に表示しては三人を牽制していた


加蓮「___でもこのタイミングしかないでしょ?」


その事実をして加蓮は言う


奈緒「...そりゃ、凛には会っときたいけど」

紗南「カラスのせいで巴ちゃんが一瞬で撃破されちゃうの見ちゃったし...」

加蓮「あーもう、臆病だなぁ...!」


文字通り千載一遇の契機、凛との合流というカードが目の前にぶら下がってなお消極的な二人に焦れる


加蓮「というか奈緒、アンタ体力ゲージギリッギリの体ひきずってアタシらのとこに来たじゃん。あのガッツはどうしたのよ?」

奈緒「いや、あのときは何故か巴が手伝ってくれてたし...」

「というかお前も単車相手に特攻かましたりしてたらしいじゃねえか」


紗南「へ、へぇ...?」



625: ◆E.Qec4bXLs 2014/12/26(金) 21:58:46.28ID:mlSoY6ao0



頭上を行き交う二人の会話の剣呑な内容に紗南が若干顔を引きつらせる


そのとき画面上に、ついに待ち望んでいた変化が訪れた


紗南「りっ、凛さん出たよ!」


奈緒「なにっ!?またか!?」


上ずった紗南の声に奈緒が食ってかかる


加蓮「どこなの?どの方向に凛がいるの...!?」

より一層両側から掛かる圧力が増加し、ゲーム機を取りこぼしかけた

紗南「わわっ、ちょっ落ち着いて!」


強風から蝋燭の火を守るように、凛へと繋がったリンクを断ち切らぬよう期待を保持する

それを察した二人の追求も自然に収まった


奈緒「えっと...確か直線上に居る相手に作用するんだろ......?」


加蓮「で、つまり画面の上が向いてる方向なわけで...」


紗南「うん......そういうこと」


見やすい角度に掲げられたゲーム機から視線を持ち上げる


上へ、そこにあるのは冷たさしか感じられない下水道の天井


だから、凛がいるのは



紗南「アタシたちの真上だよ」





ゲーム開始87分経過

報告事項なし



626: ◆E.Qec4bXLs 2014/12/26(金) 22:02:41.34ID:mlSoY6ao0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
早坂美玲



ゲーム開始86分時点



目に付く限りの高層建築物は全て塵芥に帰した


完全に全ての建物を破壊し尽くしたわけではないし、それもできない


美玲「(アイツ等...逃げられたか?)」


破壊をまぬがれた背の低い2、3階建てほどのテナントビルに身を潜ませる


美玲「(あんまりウチが暴れすぎて流れ弾が飛んでったら危ないからなぁ)」


爆心地にしか見えない風景を見回す、

望月聖との戦闘の余波をまぬがれたきれいな街並みは随分遠のいた


美玲「(あの無事に残ったビルのどれかに隠れて逃げ切れたらいいんだけど)」


にゃんにゃんにゃん相手に攻撃を凌ぎ切り、単体での撃破ではなかったとは言えニューウェーブを下した


彼女にはその経験値があった、いきなりポッと出の敵には負けないという気負いもあった


だから結果として今、味方を逃がすべく殿を勤めている。



ここまでの戦力差、つまり能力の差は圧倒的だ。

壊して作り直す美玲と何もかも壊し尽くす聖

それでも美玲は勝つつもりだった、勝てるつもりだった



見せつけられたのは


埃でも払うようにあしらわれ砂礫となっていく街並みと傷だらけの自分


そして

それほどの惨状の中でも傷ひとつ付くことなく泰然とした聖の姿だった



美玲の自信が瓦解していく、


能力への自負が氷解していく



彼女の中で、

仲間のもとへ無事に帰れるだろうという心算はとっくの昔に___



美玲「がぅっ!!」



627: ◆E.Qec4bXLs 2014/12/26(金) 22:05:09.78ID:mlSoY6ao0



ビルの壁に裏拳を叩き込む


ズプリとその拳が壁に飲み込まれたのを感じた


美玲「がぁるるううぅう......」


この世界はまやかしだ。自分たちが興じているのもただのゲームだ



だがアイドルとしての仕事でもある



だったら、どんな実力差を見せつけられようと



アイドルとして、負けていい理由なんてない


美玲「そうだ...そうだぞ...諦めてる時間なんてないんだッ!!」


聖(ボット)「......?」


外壁を伝い、地面を伝い、能力が波及して


かつてビルだった破片を持ち上げながら爪が現れた、

その何もかもが巨大だ


聖(ボット)「......こりてない」


同じく破片でできた爪が投石器のように弧を描き、

そこに載った2トントラック大の瓦礫が宙を飛んだ

自分めがけて飛んできたそれを聖はわざわざそれを打ち返したりしない

翼一枚かざせばそれだけでぶつかった方から砕けていった


美玲「とりゃああああああ!!!」

雨後の筍のように次々と地面から爪が生え始める。

そしてその全てが地上を埋めてつくしていた瓦礫を投げていく

能力で可能となる事象の限界ギリギリまでの酷使。

それは地面から生えた爪が一度の投擲と同時に衝撃で崩れていくことからも察せられた

隕石の間逆、地上から空への土石流、破壊力を装填した土の花火

だが彼女の表情にさしたる変化はない

聖(ボット)「......質より量で来ても無駄、です」

6枚の翼のうち4枚がふわりと聖の体を包み込んだ

次の瞬間、繭に包まれた聖を無数の岩塊が打つ

だが、

打ち抜けない、繭となった翼を貫けないまま砂と散っていく

それどころか彼女の位置を空中に保っていた2枚の翼の羽ばたきすら止められない

何度も見た光景、見飽きた展開、予定調和の攻防



628: ◆E.Qec4bXLs 2014/12/26(金) 22:08:06.34ID:mlSoY6ao0



美玲「へへっ、今度こそびっくりさせてやるッ!!」


最後の爪が掘り上げた地面を投げ飛ばしたのを見届ける間もなく

美玲はその場を離れていた

半壊して何階建てかもわからなくなったビルの埋まりかけの窓に飛び込む



美玲「逃げるのも防御するのももうやめだッ!!」

ビルの中に隠していた、

いざという時の逃亡の手段だった「それ」に左の爪を突き立てた


耳鳴りを起こしそうな甲高い音と共にバラけた「それ」が美玲にまとわりついていく


あるいは美玲が飲み込まれているようにも見える


美玲「(”ウチに直接装備する”モード...これを使うとしばらくウチは重さでほとんど動けない...)」


能力の副次的効果で動かしていた先程までの投擲とは違う


ここからは美玲自身が打ち、殴り、削らなければならない


ガゴンッ


美玲「うぐぎぎ...!」


ギギギ...


背中に金属特有の冷たさと重量がのしかかる。

だがそれでも完全ではない。

彼女が押しつぶされるのも時間の問題だ


美玲「もういっちょ!!」


左腕を中心に背中におぶさった巨大な質量が右腕にまとわりつく前に地面に振り下ろす


美玲「”ウチから離れた位置に作る”モードを...」


「...このビルに使う!」



次の瞬間、彼女のいたビルが全壊した



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



629: ◆E.Qec4bXLs 2014/12/26(金) 22:10:33.87ID:mlSoY6ao0



ゲーム開始87分時点


聖(ボット)「.........もう終わり...?」


彼女を包んでいた翼が開く


聖(ボット)「......逃げた...?」


光り輝く繭の中から見た外の風景は、端的に言って荒廃と終末


神話において地上に舞い降りた天使が人間の世界を見たとき、今と同じ感想を持ったかもしれない


聖(ボット)「...!」


そしてその目は確かに見た

遥か遠くの街並みを取り巻くカラスの

不自然な旋回を



何かを追っている?



聖(ボット)「.........じぃー...」


目を凝らせば、いた

蒼く光る何かがビルの屋上、その尖塔のような避雷針の先にいる


ボットではないし、ボットだったところで構わない



美玲「なっ、なに他所見してんだお前ッ!!」



次なる標的を定めたところで、活きのいい声が飛んできた、同時に近くのビルが全壊する

転回しかけた体を戻す、そこで聖はまたも神話じみた光景を目の当たりにした


それはまさにバベルの塔


3本でもない、4本でもない、たった1本きりの塔

全壊した跡地からうずたかく固められた瓦礫と鉄骨の爪が高く高く伸びていた

聖が破壊してきた高層ビルの分まで空へ近づこうとするかのように

天に遊ぶ神を討たんとするかのように




美玲「正真正銘!これが最後だッ!!!」





630: ◆E.Qec4bXLs 2014/12/26(金) 22:13:29.78ID:mlSoY6ao0



その爪先に、聖と同じ目線にのし上がった美玲が吠えた


天の使いと、地を這う獣が並び立った


月夜の中でありながらその姿は黒々として月光を返さない


聖(ボット)「.........変なの...」


美玲の「その姿」をみて短的に感想をこぼす


ピシリ、バベルの爪塔に修復不能のヒビが入った

塔全体が大きくしなっていた、

今から美玲そのものを投擲するために



ボットである聖もすぐにそれを察した



これをいなすのは簡単だ

飛んでくるタイミングに合わせて自分を翼で完全に覆い隠せばそれでおしまい

哀れ、空を夢見たケダモノは光の盾にはねつけられ、遥か眼下の地面に真っ逆さま



だが、


今はそんな回避行動の手段を選択するつもりはない



次の標的「渋谷凛」がいるのだから

短期決戦を挑もうというのなら望むところだ

さっさと終わらせよう

こっちも一々”石っころ”を防ぐのに退屈していたのだ




聖(ボット)「...おいで...?」






631: ◆E.Qec4bXLs 2014/12/26(金) 22:14:26.38ID:mlSoY6ao0



地割れやビル丸ごと投げみたいな間接攻撃はもう終わり



無限の力を直接ぶつけてあげる




二枚の翼が空中の位置を保持し


二枚の翼で自分の前を薄くガードし


二枚の翼を槍のように美玲に向けた



何者にも冒されない3対6枚の翼による攻防一体の構え



美玲「言われなくても行ってやるよッ!!」



塔が完全に崩落する0.1秒前、


美玲は射出された



最後の装備として


丸ごと一台作り変えられた装甲車と共に





632: ◆E.Qec4bXLs 2014/12/26(金) 22:18:20.82ID:mlSoY6ao0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
双葉杏&諸星きらり&堀裕子&神崎蘭子&十時愛梨

ゲーム開始85分時点



きらり「そーこーしゃ?」


裕子「走・攻・守?」


杏「装甲車?なんなのそのチート」



愛梨「うん、美玲ちゃんが言うには最初はボットさんの持ち物だったって、ねっ蘭子ちゃん?」


蘭子「しかり...我と隻眼の獣爪が幾度もあの鎧の車輪の轍となりかけたことか...(そうです!私と美玲ちゃんは何度もあの装甲車に轢かれかけたんですよ!)」


地下下水道でもなく、道路でもない場所を疾走する


杏はきらりに背負われ、蘭子はスケッチブックを抱え、愛梨の頭上でバニー耳が揺れる


後方で裕子は曲がったスプーンを元に戻そうと躍起になりながらも器用にペースを乱さず足を動かしている


裕子「それで、そのお車は美玲ちゃんが乗ったままと?」


目線を手元に向けながら愛梨たちに相槌を打っていた裕子がそう返した


愛梨「聖ちゃんを...その、倒した後に私たちに追いついてくる手段がないといけないかなって」


豊満な胸と細長いバニー耳を存分に揺らしながら答えた


蘭子「かの獣爪が我らの中で最も操舵の才があったのも事実(それに美玲ちゃんが一番あのコントローラーの操作が上手でしたし)」

杏「へえー、このステージに車とかあったんだ...そっちに乗った方が楽だったかな」

きらり「杏ちゃんゲームでもなまけてちゃ、メッ!だゆー?」





633: ◆E.Qec4bXLs 2014/12/26(金) 22:21:33.49ID:mlSoY6ao0



杏を背負いながらも先頭を走っていたきらりがそんな風に背後の少女を窘めながら身を沈めた




きらり「きらりーん......キーック!!」



杏「えっ、ちょ」


沈めたカラダを戻す反動を利用して、

一般的な女子の平均を上回る長い脚から強烈な前蹴りが放たれた



それによってオフィスらしき部屋から廊下に出ていく扉が蝶番ごと吹き飛ぶ


愛梨「あわ~」

裕子「おおっ、流石きらりさん!私のさいきっくにも負けず劣らずですね!」

けたたましい音を立て顔を出したのは蛍光灯一本機能していない通路


今、五人が通路として使っているのは数あるビルの一階廊下だった


建物間の移動を最小限に、裏口や窓に入り込んだり

場合によっては裕子の能力により力技で入口をこしらえながら屋内を縫うように移動している

こうすれば少なくとも空から狙われることはないし、上空を飛ぶ物体にとって一階は死角となる


愛梨「それで...私たちはその事務所の偽物?みたいな場所に行くんですよね?」


裕子「はいっ!何があるかわかりませんけど、何かあるかもしれませんし!」


杏「とりあえず何かあるんだ...」


扉一枚吹き飛ばすきらりの蹴りの反動が返ってきたせいで若干苦し気な杏が補足するように言葉を継ぐ

杏「まぁ他に行くとこもないし...それにダラけるならやっぱ事務所でしょーって話ね」

蘭子「なるほど、解した...してこの指針は正しき星辰となるか?(わかりました...ところで方向あってますか?)」

杏「どうだろね...裕子、こっちであってる?」

裕子「さいきっく大丈夫です!」

今の所、唯一目的地についての情報を持つ裕子が自信満々にスプーンを掲げた


杏「不安だ...」

きらり「にょわぁ...」

既に乗り捨てたが、かつては戦車の道案内を任せて痛い目を見た二人が顔を曇らせる

愛梨「なるほど!裕子さん、頼みますね!」

裕子「お任せ下さい!ムムーン!」



杏「.........まぁいいか」

諦念じみたため息をつき、きらりのうなじに頬をこすりつけるようにもたれた

きらり「うぇへへ、くすぐったいにぃ」



634: ◆E.Qec4bXLs 2014/12/26(金) 22:24:26.14ID:mlSoY6ao0




杏「...そういや蘭子さ」

蘭子「如何した、小さき妖精よ」

杏「その美玲だけどさぁ、杏たちに追いついてくるときってどうするの?

蘭子「む?」

杏「いやほら、探知機でも持たせてないとダメっぽくない?」


現在、愛梨と蘭子をかばって聖と戦闘中の美玲について、

逃走か勝利か、いずれかの形で決着がついた彼女が自分たちに合流するにはどうするつもりなのか


蘭子「ふむ...なんら問題ない」


彼女は小脇に抱えた画帳を示す


万物を喰らう鎌、視界を灼きつくす杖、そして空路を舞う羽を生み出し

取扱説明もなく、法則もなく、ただし確実に状況を好転させてきた力の象徴を、


彼女は既にそのページを一枚ちぎり、取り次なる力を使っていた

美玲と別れたすぐ後に


あまりにも扱いづらく、あまりにも予測できない能力



だが、彼女はある種の確信を持っていた


この能力は必要な時に自分を助けてくれた


だから___


蘭子「___我が願えば、力は我に応えん」





635: ◆E.Qec4bXLs 2014/12/26(金) 22:29:57.85ID:mlSoY6ao0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
早坂美玲


ゲーム開始88分時点


防弾ガラスと装甲板が捻り合い、

得体の知れないボルトやパイプがそれを彩った爪


その長さはすでに本体の身長を抜いている、

両腕に三本ずつ全部で六本


さらに分厚いタイヤや座席を解体したような歪な集合体が美玲自身を背中から抱きしめていた


彼女の小柄な体を包むには多すぎた”材料”が両腕だけに飽き足らず背中や足にまで牙と爪を形成している


毛羽立った背を丸め、牙と爪をむき出しに、

今にも飛びかかろうとする姿は狼に似ていた


美玲「(ここまでのものになるなんて思わなかったけどな)」


そんな美玲がミサイルとなって空を飛ぶ


装甲車一台と早坂美玲一人。その重量差は恐らく百倍ではきかない


それに蘭子が運転する車をドリフトさせた時とは違う

車から爪を生やすのではなく車そのものを爪にしている

その重さは全て美玲の双肩にかかっているはずだ


美玲「ぅううぅがあああぁあ!!!」



そんなものを振り回す膂力はない、

だから能力をもう一段階使い自身を「投げさせた」



もう装甲車としては使えない、

乗れない、逃げられない

美玲「そぉれがどうしたぁああああ!!!」


空中で加速のついた1トンの凶器が突っ込む


鉄と人と爪と牙が防御を捨てて振るわれた


聖(ボット)「......えい」


美玲の右手の3本の爪と、聖の左肩から生えた一枚の翼が交差し



ザクンッ

切り落とされた右の爪が落ちていった



636: ◆E.Qec4bXLs 2014/12/26(金) 22:32:42.03ID:mlSoY6ao0



美玲「まだっ__」


ギャリッ

右肩の翼が美玲の左の爪を突き貫いた


美玲「だッ!」

背中に据え付けられた爪が伸びる


ガィンッ

聖の体にかかっていた翼の盾に弾かれて折れ曲がった


聖(ボット)「...」

美玲「___!」




削ぎ落とされていく


鉄の鎧が、爪が、装甲が


移動も防御もかなぐり捨て攻撃のみに全てを懸けて、

だがその攻撃の全てが夜闇の中に剥ぎ落とされた


聖(ボット)「...」


あとは美玲をはたき落とせばいい

槍として突き出していた二枚が内側に曲がった

聖の射程圏内に飛び込んできた美玲を包み込んで押しつぶすために


美玲「__ん」


しかし忘れてはいけない

美玲はもう止まれないということに


「__がぁっ!!」


滞空のための二枚は聖の背後で静かに揺らめきながら


攻撃のための二枚は美玲の両の爪を切り落としながら


防御のための二枚は美玲の頭上から聖へ伸びた牙を遮りながら






美玲自身がそのまま聖の胴体めがけて飛び込んでくるのを防げなかった





637: ◆E.Qec4bXLs 2014/12/26(金) 22:34:37.27ID:mlSoY6ao0



腕も足も届かない

能力もまだ解除できない

だから、噛み付いた


そもそもビル一棟を犠牲にして1トンの鉄塊を投げ飛ばしたのだ

ちょっとやそっとで止まるはずもない



それでも聖ならそれを止められたはずだった

ハエ叩きのように地面に叩き落とすか、

繭の完全防御態勢を取ればそれだけで完封できた


そしてそのまま凛を追えばよかったのだ


だが彼女は迎え撃ってしまった


無限の攻撃力と防御力を正しく使い、


空中を突進してくる美玲を真正面から瞬殺しようとした



美玲「がぶぅぅぅッ!!」

聖(ボット)「...ゃ!」


自前の牙をむき出しにした美玲に対し両腕で自分を庇う


ここにきて初めて、聖は翼以外の手段を行使した


そして当然、それは効果を成さなかった

13歳の少女に装甲車一台分の慣性の掛かった人間を止めきれるはずもない

細腕ごと押し込まれる 



虫歯一つない丈夫な犬歯が聖の白い肌に食い込んだ





638: ◆E.Qec4bXLs 2014/12/26(金) 22:37:28.17ID:mlSoY6ao0


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チャプター
神谷奈緒&北条加蓮&三好紗南


ゲーム開始88分時点



加蓮「行くわよ奈緒!紗南!」

奈緒「あーもう...わかった!こうなったらヤケだ!」

紗南「まだ真上にいるよっ!」

縦に並んだ三人が下水道を走る、といっても長距離を移動するつもりはない


加蓮「あった!」


10mも走らないうちに先頭の加蓮が急ブレーキをかける

そこにはマンホールに通じる梯子が伸びていた、地上への数少ない出入り口だ


紗南「でもっ、本当にいいの!?もしかしたらこの真上にビルがあって凛さんがどの部屋にいるか分かんないなんてことも...」

奈緒「マンホールが近くにあんだからそこまで心配するほどでもないだろ、つっても賭けではあるな」


いまだに怖気づいた様子の紗南と吹っ切った奈緒もそう言いながら足を止めた

加蓮は既に梯子の段に飛びついて登り始めている

地上へ続く穴へ、照明のない暗くて狭い空間に突き進んでいく


奈緒「ほれ、紗南」

その後ろを追って奈緒が紗南を担ぎ上げた、

ゲーム機をポケットにしまわせ梯子の最下段を掴ませる


紗南「わわっ!アっ、アタシから?!いいの?」

奈緒「そりゃここまで来れたのもお前の功績だし、というか紗南の身長じゃ登りにくそうだから支えてやらないと」

紗南「奈緒さん...」


狭い空間の中を加蓮、紗南、奈緒が並んで梯子を登る

そして詰まった


加蓮「奈緒......」

奈緒「あ?どうした早く登ってくれよ、パンツ見るぞ」

加蓮「バカ...あのさ」


「マンホールって、どれくらいの重さだったっけ?」


紗南「あ......」




639: ◆E.Qec4bXLs 2014/12/26(金) 22:40:34.87ID:mlSoY6ao0



奈緒「...えっと...原則として普通のマンホールは50kg以上...って、え?」


加蓮「いま、アタシの頭の上にあるのよね......ごッついのが」


紗南「ゲ、ゲームだとステージ移動のときとか案外簡単に持ち上げてたりするよ!」


状況を察し始めた他二人をフォローするように紗南が声を張り上げた、わんわんと暗闇に反響する


奈緒「お、おうそうだ!アニメでも自称普通の高校生のくせに簡単にマンホールを開けたりしてたぜ!」

紗南「ほら、だってさ!加蓮さん!そういうのもあるって!」

奈緒「......そうそう!普通のマンホールだったらボルトで地面に固定されてるのにな!」


今度こそ全員が静止した


耳が痛くなるほどの静寂が満ちる


試しに加蓮が天井の黒い蓋を押し上げようと力む


無機質で無反応な手応え



加蓮「......ここにきて、こんな」


奈緒「くそっ、変なとこまでリアルにしやがって!」

加蓮が愕然としたうめき声を上げて、奈緒が誰に向けるでもなく悪態をつく

一旦態勢を整えようと奈緒が梯子から降りかけたところで



「ううん、そんなことない」


その声は奈緒と加蓮に同時に届いた



紗南「いけるかも...」



誰に聞かせるでもない、

思考をまとめた頭から口へ不意に漏れ出たような呟きも


狭い空間にはよく響く




640: ◆E.Qec4bXLs 2014/12/26(金) 22:43:14.37ID:mlSoY6ao0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
早坂美玲


ゲーム開始88分時点


聖の視界が大きく傾く


空中での姿勢を保とうと背後に控えた2枚の翼を忙しなく動かす


「がぁるるるうううううううううう!!!!」

「や、やめ......ゃ!」


獣耳を飾った頭を腕で押し返すが思うように力が入らない

懐に潜り込んできた彼女の上下の犬歯が聖の右肩を鎖骨ごと喰らい、齧りついていたからだ


ギャリンッ!


美玲の両腕の延長線上、その体躯を上回るサイズの鉄爪二対が翼に無造作に切り裂かれていく


食いつき絡み合う不安定な二人から、滑らかな断面の金属片が落下していった


「がっぎぎぎぎ...!!!」

「...お、重い...」


噛み付きのしかかるようにして今、聖もまた装甲の重量を前から背負わされている

逆に美玲は余分な部品が背中側で連結されているおかげで負荷が両腕以外にも分散されていた

その美玲の背中から聖目掛けて伸びていた牙が反り返される、聖の頭を覆っていた翼二枚によって


聖(ボット)「......潰れて...ください」


ザクン、とついに最後の爪を切り離された


そして翼が花びらのように上下左右対称に開いていく、美玲を包み押し潰すために


「がるっ!?」

美玲も両爪を持ち上げようとする


ほとんどが抉り取られ、両腕で辛うじて動かせるほどに軽くなってしまった貧相な武器を振るうため


もはや武器というより鉄くずの廃材に手を巻き込んだようにしか見えないそれを聖にぶつける



641: ◆E.Qec4bXLs 2014/12/26(金) 22:46:36.21ID:mlSoY6ao0



しかし元々重厚な装甲板でできたそれと、


文字通り”羽のように軽い”翼では速さが違う



美玲「____あ」


グキャッ


美玲の目の前に真っ白なシェルターが降りて、


輝く翼は蕾のように閉じた





パチィッ!


聖(ボット)「ん...」


柔軟さと剛健さの同居する翼同士が擦れ合う音が一つ

プレイヤーを包んだその四枚が互いに重なり繭を形成している

ただし今回のものは聖を守護するのではなく美玲を圧殺するためのもの

何の音もしない、望月聖の翼は音すら通さない



聖(ボット)「....おっとと」


静寂を取り戻した世界で聖の体が傾く


自身の前面に人一人と削り取ったとはいえ装甲車一台近い重量がぶら下がっているのだから当然だ

美玲の最後の突貫による慣性もなくなった今、この存在は重しでしかない

文字通り強力無比ではあるが所詮は翼、バランスを崩せば飛べるものも飛べはしない


パチッパチチ...


ダメ押し、とばかりにもう一回り白い蕾を縮こませ、中身を押しつぶす


聖(ボット)「...じゃあ、さようなら」


不安定ながら二枚の羽で態勢を維持して四枚の翼をそろそろと開いていく

尋常ではない圧力をかけられた鉄片や配線、装甲板が奇怪な形状のゴミとして隙間こぼれていった


バラバラと、パラパラと、ボタボタと...


聖「.......重たくなってきた」



642: ◆E.Qec4bXLs 2014/12/26(金) 22:48:51.20ID:mlSoY6ao0



翼が完全に開き切り、

聖の前面から背面へと戻っていく


その前に


何かが翼に引っかかった

唐突に開閉が中断される






「.....がふっ」




ぐねぐねに折れ曲がった爪が内側から翼を掴んでいた

両腕からそんな物体を伸ばした、人間の形をしたそれを聖は認められない


「な、なんだこれ...?」


全身に食い込んだ鉄片がウロコ状にその矮躯を覆っている



聖(ボット)「...!...」


ベグシャ!


開きかけた翼の四枚を再度閉じた、すりつぶすように



聖の眼の前から意味不明の存在が消えた



だが彼女ははっきりと感じていた




聖(ボット)「お、重たくなってる...?」



この中にいるのは剥き身のプレイヤーだけのはずだ


凶器も武器も、勢いさえも通用しなかった早坂美玲だけのはずだ


それに自分の翼に触れて無事でいられる存在がいるはずもない



643: ◆E.Qec4bXLs 2014/12/26(金) 22:52:04.65ID:mlSoY6ao0


聖(ボット)「こうなったら...」

二枚の翼だけではもう支えきれない

早急にこの蕾に閉じ込めた存在を地面に叩き落とすべく急降下した

重力加速に翼の推進力を加えて落下するより速く落下していく

そして、中身をぶちまけるように翼を開いた、その中身を二度と見ないで済むように急旋回しながら

ガシャンッ!

無造作に打ち出された装甲板が地面に突き刺さった音だけが響く


だがそれでも


「何すんだコイツッ!!」


それはしっかりと翼にしがみついてきていた


聖(ボット)「ッ、また...!」


今度はちゃんと開いた六枚羽、その一枚に長く、歪曲した爪が絡まっている

全身を醜怪なウロコ状の鉄片に包んだ存在もそのままだ



聖(ボット)「どうして...まだ、生きているんですか...!?」

美玲「ウチにもわかんないしッ!!」



そのウロコが剥がれるように体表を移動し、早坂美玲は顔を出した

美玲の纏った装甲が移ろいでいく、翼を掴んだままの爪も同様に


聖(ボット)「ううん...おかしい、掴んだりできるはずがないんです...絶対に...」

美玲「そんなの知るかッ!!」


刻一刻と変化していく自分の装備を顧みることもなくより一層爪を握り込む


ガオオォオンン!!!


聖(ボット)「!?」

そこで二人の耳に届いたのは確かに装甲車のエンジン音だた


それに連動して美玲の体が機械的に持ち上げられる、聖と美玲の視線が数センチの間隔を空けてかち合う


美玲「やっと...やっと、ウチの番、だッ!」



ゴツンッ!!!!!!


聖(ボット)「~~~~~~!?」



いくつもの偶然を越えて辿り着いた対等な土俵で


最初に炸裂したのは美玲の頭突きだった



644: ◆E.Qec4bXLs 2014/12/26(金) 22:56:30.45ID:mlSoY6ao0



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
双葉杏&諸星きらり&堀裕子&神崎蘭子&十時愛梨



杏「愛梨、そのバニーの耳ってどーなってんの?」

愛梨「はい?あぁこれですか?なんだかさっきからずっと動いてるんですよね~」

きらり「とーってもかーわうぃーにぃ♪」



外から見られないように窓枠の下に三人並んでしゃがみこみながら会話する

杏の指摘した兎耳はもちろん十時愛梨の能力「修復」を司るもの

それはこうして静かにしている最中も吹きもしない風に揺れるようにぴこぴこと動いていた



なぜならその能力が現在進行形で発動しているからだ

その対象を早坂美玲が壊して作り直した「装甲車」にして



きらり「愛梨ちゃんのはどんなものでも直してきれいきれいにしちゃうの?」

愛梨「そうんですよー、ただ壊れた街までは直せないみたいで...今は動いてるだけかな?」



望月聖の能力の本質は無限の破壊力にある


それを使えばいくら装甲車のパーツに身を包んでいようとも紙くずと同じだ


ただし、


たとえ彼女にとって紙くず程度の強度しかなかろうと例外として


”存在しなかった物”を存在する前に破壊することはできない


そして十時愛梨の能力はその存在しない物を補い続けるものだ




645: ◆E.Qec4bXLs 2014/12/26(金) 23:02:02.60ID:mlSoY6ao0



最初、蘭子の力により食い破られた装甲車の天井を元通りに修復し


次に雨あられと降り注ぐカラスとそれらが宿した破壊の奔流に同じく対抗し続けた


無から有を生み出すこともデジタルの世界なら非常に容易い


杏「直すっていてもどんなもんなのよ、それ。やっぱゲームだし一瞬で直るの?」

愛梨「う~ん、一瞬ではありませんけど、物凄く早いのは確かですね...割れたフロントガラスにヒビが広がるよりも早いです」

きらり「すっごーい!」


欠損した部分、失くなってしまった部分を生産し、補填し続ける愛梨の力

偶然か必然か

その生産力は聖の破壊力をギリギリで上回り、美玲を完全なる破壊から守りきっていたのだ


美玲は聖の翼を掴めてはいない、掴んだ部分から弾け飛んではいる

ただその欠損が補われ続けているだけだ



しかし同時に美玲の力もまた装甲車には働いている



破壊と再構成の力は無限の生産と結びつき、決して壊せない装備を作り上げていた


さらに歪な融合は装甲車のエンジンさえも再構成し

その馬力を美玲の爪を振るう力に昇華させた


だが、それを正確に知る者が現れることはない



646: ◆E.Qec4bXLs 2014/12/26(金) 23:03:49.51ID:mlSoY6ao0





きらり「それにしてもユッコちゃんたち...大丈夫かにぃ?」


杏「まぁ、杏のスキルがあれば大丈夫でしょ、蘭子は知らないけど」


愛梨「はうっ、そうでした!でも蘭子ちゃんは私とユニットっていうのに設定したから平気だよね?」



現在”別行動”をとっている裕子と蘭子の安否を気遣う



杏「まぁ、ユニットメンバーになんかあったら分かるでしょ」

「こんなに事務所の近くにいるんだし」


壁に背をつけたきらりの腕の中で身じろぎする、そこからは窓の外は伺えない


だが、窓の外には今、

下手な建物よりも長大な爬虫類が静かに佇んでいることだけは確かだ




ヒョウくん「.........」




愛梨「ヒョウ君ってあんなに大きかったんですね~」


きらり「きらりよりもずっとずっとおっきいー」


杏「いや、ゲームだからね?......はぁ、それにしてもメンドくさい」

「まさか事務所がボットの巣窟になってて、しかもそこに突入することになるなんてね」




647: ◆E.Qec4bXLs 2014/12/26(金) 23:07:31.35ID:mlSoY6ao0


愛梨「時計はないですけど、多分そろそろ蘭子ちゃんたちが仕掛けますよ...」


今になって小声になった愛梨が耳打ちする

今から少し前、五人は今事務所から数えて六軒隣のビルにまで近づいてきていた

しかし一筋縄で踏み込める場所でないことを知った彼女らは作戦を立てた


その内容は五人中三人がパッションだけあって、シンプルかつ大胆






裕子「エスパーユッコここに推・参!!」



蘭子「我こそは仮想の庭園に降り立つ悪姫ブリュンヒルデなり!」






かつて幸子たちが通った坂の上に顕然と並び立つ

感情の色のない爬虫類の視線にも怯むこともなく威風堂々と


たった二人でボットの部隊に立ち向かうプレイヤーとして





杏「裕子たちが動いたよ...」

きらり「ゴーゴーだにぃー」

愛梨「こっそりですよねっ、こそこそ~っと...」



ボットの目線を、事務所の裏手へ向けて動き出した仲間から逸らす陽動役として









ゲーム開始90分経過

双葉杏&諸星きらり&堀裕子&神崎蘭子&十時愛梨

VS

本田未央(ボット)&島村卯月(ボット)&水野翠(ボット)
&佐城雪美(ボット)&古賀小春(ボット)

開始

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



648: ◆E.Qec4bXLs 2014/12/26(金) 23:10:09.40ID:mlSoY6ao0


全然終わらないや、なんでだろ、もう次回作考えてるのに

ここまでお読みいただきありがとうございました



次回開始するチャプターを選択してください


1、双葉杏&諸星きらり&堀裕子&神崎蘭子&十時愛梨

2、早坂美玲

3、神谷奈緒&北条加蓮&三好紗南

4、輿水幸子&白坂小梅


安価下



649:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/26(金) 23:10:45.65 ID:eq54dNwQo

3



657: ◆E.Qec4bXLs 2015/02/10(火) 09:30:39.73ID:5Z6nAWAa0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
神谷奈緒&北条加蓮&三好紗南


緑の月に照らされた夜景

半壊した摩天楼


それらを鳥瞰しながら飛んでいるカラスの群れ


その中の一羽が方向を変えた

うねる黒羽の流れを無視し地上を目指す


他の数千羽から外れ、急降下していく。決して力尽きて墜落しているのではない

確固たる目的を持ち、そこへ向けて加速していく

月明かりの届かないビルの谷間へ吸い込まれるように


目標はすぐにそのカラスボットの視界センサーに入った

茶色がかった長い黒髪、

淡く輝く蒼色の靴、

現在進行形で夜を生き残るプレイヤー


彼女はボットの接近にまだ気付いていない。



そして既に気付いたところで反応出来る速度ではなかった



そのカラスの目標は渋谷凛___





ガィン!!






___のすぐ隣、


マンホールの蓋









658: ◆E.Qec4bXLs 2015/02/10(火) 09:32:23.41ID:5Z6nAWAa0




凛「わっ!?」


風圧でなびいた髪の隙間から、矢のように突き立ったカラスが見えた


凛「(見つかった...!?)」


瞬間、凛の姿が消え、近くのビルの日除けの下に移動した

飛んできたカラスは一羽だけ。そのカラスも自殺ものの突貫により消失した


凛「(いない...?今までだと一羽でもこっちに来たら群れでついてきてたのに...)」


ガィンッ!!!


凛「ひゃっ!?」


再度、同じようにカラスが急降下し、マンホールの蓋に体当たりし、同じ音が響いた


凛「(なに?...狙いは私じゃなくて......地下?)」


カラスのバンザイアタックの目的は明らかにその下水道への入口だった


だが油断はできない、それは空からの死角である日除けの下から彼女が出ていい理由にはならない


ガィンッ!

ガィンッ!

ガィンンンッ!!


動物の集団自殺現象が凛の目の前で起きている、

一つ違和感があるとすればそのペースが一羽ずつであることか



ガキョッ!!!



音が変わった。同時にマンホールに深い亀裂が生じる


凛「!!」


ボットの狙いはプレイヤー、そのボットがこじ開けようとしていた入口が今、開いた


凛「(これ...まずいんじゃないの?カラスが狙ってるのはあの下にいる誰か...!)」


タブレットの画面を思い出す、三つ並んで表示されたプレイヤーの証を

ゴトリ、とマンホールの蓋だった半円の鉄板がずれた




凛「(あそこにいるのは私が探してた三人...!!)」






659: ◆E.Qec4bXLs 2015/02/10(火) 09:33:46.05ID:5Z6nAWAa0


手元を探るとヒビの入った窓硝子が指に触れた


凛「(向かいのビルに瞬間移動...その軌道上でマンホールに向かってくるボットにこれを突き刺す!)」


手首をひねって硝子の破片をもぎ取る

武器は即席、視界は不良、だが覚悟はできた


凛「......誰かは知らないけど...目の前でみすみすカラスの餌にはさせないよ」


ゴトリッ

アァア”ーー


蓋の破片が押し上げられ、カラスが鳴いた


凛「!...今出てきたら__!」






「ぃよっしゃあああ!やっと開いたぁあああ!!」


凛「な?」



「お手柄だよ紗南ちゃん!!」

凛「か?」



「それほどでもないって、アタシのゲーム機でカラスが操れるかも賭けだったし!」

凛「さ?」



「一羽ずつしか動かせなかったけどな」


「贅沢言わないの、アタシたちに至っては能力なしだし」



自分の緊張状態など素知らぬというような、場違いな大声

四苦八苦しながらも三本の腕が二つに割れた破片を押し上げていた


そのマンホールと蓋の隙間から漏れ出る声に聞き覚えが無い訳もなく


凛「奈緒、加蓮、紗南?!」

加蓮「あ、凛やっぱりいた」


その声に応えたように最初に加蓮が地上に顔をのぞかせた





660: ◆E.Qec4bXLs 2015/02/10(火) 09:36:08.14ID:5Z6nAWAa0


奈緒「はぁっ!マジで凛か!?おい加蓮、早く登れって!」

加蓮「ちょっお尻触んないでよ!」

紗南「せ、狭い...!」


地上の地獄絵図を知ってか知らずか姦しくも壮健そうだ

徐々に加蓮の上半身が地上に押し上げられる


凛「はは...」


一時間ほど前とまるっきり変わってない友人の様子に脱力したような笑いが漏れる

日除けの下から一歩外へ踏み出す、カラスの羽音はとっくの昔に遠ざかっていた

だから、次の群れが上空を通過する前に、安全な場所へ友人を連れ出さなければ...


凛「ほら、加蓮...手、貸すよ」

加蓮「ありがと」

地面から上半身だけを覗かせた少女に手を伸ばす

凛「......って、これ二つに割れた蓋が邪魔だね」


50から60キログラムのマンホール蓋だったもの、

カラスの能力を利用する形で真っ二つに割られたそれの半分は押しのけられ、依然もう片方が蓋として加蓮の脱出を妨げたままだった


凛「急いでね...早くしないと見つかるから」

加蓮「見つかるって...もしかしてあのカラス?」

凛「そうそう、さっきまで向こうからこっちにかけてものすごい大群がいたんだから...」


加蓮の手を繋いだまま、視線を遠くに向ける

まだ空は黒くない



それに万一の時は自分の能力を使えば逃げられる



凛「(ん?逃げるにしても、この能力って...他の人も引っ張って行けるのかな?)」




わずかの間、頭をよぎった疑問



自分の能力の限度、何ができて何ができないかについての疑惑



もし、これがなければこの後、渋谷凛がとった行動も変わっていたのかもしれない







661: ◆E.Qec4bXLs 2015/02/10(火) 09:37:43.43ID:5Z6nAWAa0








__ゴォオオオオオオオオッ!!!!!













凛「!!」

加蓮「何アレっ!!?」


地上に乗り出していた二人は見た

空が白く灼けるのを



紗南「うるさっ!」

奈緒「何の音だ!」


地下にいた二人にとってその光景はただの轟音で

加蓮にとってそれは避けられない破滅で

凛にとってそれは回避できた攻撃で



だけど


凛「加蓮!!」

加蓮「___え?」

奈緒「わっ!?」

紗南「きゃあっ!」


彼女は逃げるより先に、友人の安全を優先した

掴んでいた手を離し、加蓮もろとも三人を地下に突き落とすことで


自分も飛び込もうにもその穴は四人が入るほど広くなくて

だから自分は地下の逆、上空へ跳ぼうとした


もしかしたら加蓮の手を掴んだまま跳べたかもしれない

だが、跳べなかったかもしれない。それに跳べたとして、奈緒や紗南はどうなる?


そんな疑問が一手、凛を遅らせた


そして凛は一歩だけ、逃げ遅れた


ゲーム開始90分時点
_____



662: ◆E.Qec4bXLs 2015/02/10(火) 09:38:57.95ID:5Z6nAWAa0



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
神崎蘭子?


ゲーム開始89分時点





ぱたぱた ぱたぱた ぱたぱた





それはカラスのいない空を飛ぶ


カラスも通らない領域を悠々と通過する


行き当たりばったりでプレイヤーを探すカラスとは違う


それは夜目が効いた。しっかりと前を見据え、翔んでいく





ぱたぱた ぱたぱた ぱたぱた





カラスの真逆、真っ白な羽を優雅に振るいながら


目指す先はひとつ



663: ◆E.Qec4bXLs 2015/02/10(火) 09:45:15.23ID:5Z6nAWAa0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
早坂美玲



美玲「むぎぎぎ...!」

聖(ボット)「むぅう...」


膠着状態


全てを破壊する攻撃力と、無限に修復する回復能力は拮抗したまま


自身の能力に両腕を抑えられている美玲は自前の歯を立てようと首を伸ばし

六枚の翼だけで対抗している聖はその頭を腕づくで押し返す


聖(ボット)「(私の翼はなんにでも勝てる......

例え美玲さんが千人で襲ってきたって、美玲さんが今の千倍大きな体でも...一瞬でぺちゃんこにできる

そういう能力なんだから...当然そうなります)」


ちらりと押さえ込んだ美玲の頭部から翼の先へ視線を向ける

そこでは進行形で破壊と再生を続ける装甲車の破片が有機的な動きでまとわりついていた

硬質な鉄板が高速で膨張しながら破裂する様は、もはやそれが人工物であったことすら忘れさせる



聖(ボット)「(でも、倒しても壊しても、蘇ってこられたら...!)」



美玲「がるぅあっ!!」


ゴゴォン!


装甲車一台分、もはや一台という単位で数えられるかは不明だが、

その重量を伴って二人は「また」墜落した


ここまで力関係は確かに拮抗している、


荒ぶっているのは二人の状況だ


四枚の翼で美玲一人を包み込むように押しつぶしている今、

二枚の羽で姿勢など保持できるはずもなく、食らいつく美玲を引き剥がす意味も含めて

二人は巨大なスーパーボールとなってそこらじゅうを破壊しながら上下左右に跳ね回っていた


勿論聖自身は飛行に用いている翼で身をかばいながらだ。




664: ◆E.Qec4bXLs 2015/02/10(火) 09:48:31.13ID:5Z6nAWAa0



ガッゴォオン!ガガァン!!


美玲「(くっそ!聖のやつ!ウチが離れないからってムチャクチャな飛び方しやがって!)」


プリンをスプーンで削るように、翼が擦れた跡の地面がめくれ上がっていく


美玲「(というか、これホントにヤバい...!)」


石礫が上から横から降り注ぐ、押しくら饅頭の二人がそこらじゅうの瓦礫を砂礫に変えていく



そして、その時は訪れた



ジグザグに破壊を撒き散らす二人の軌道が一棟のビルを「また」貫いたとき、


一階の窓ガラスを突き破り、そのまま屋上に至るまでの十階分の天井と設備を砕きながら屋上へ突き抜けたとき、



美玲は聖の元から剥がされ、丸腰で宙に放り出された



そのままビルの屋上、大穴の開いたそのすぐ横に背中から落下する



美玲「___あがぁっ!?」

聖(ボット)「___やっと」



四枚の翼の中には抜け殻となった装甲板の獣爪だけが残った

どれほど修復されようと、その繰り手がいなければなんら脅威でない


グシャリッ


聖(ボット)「もうコレ、いらないですよね?」


爪の原型をなくした装甲が修復を繰り返しながら落ちていく


聖(ボット)「初戦から散々、でしたが...」

六枚の翼を拘束するものはもう何もない、


美玲「あ__あ、あ...能力の、時間切れが、こんなとこでッ......!」


緑の月を背後に、対称な円弧を描いて翼が開く


聖(ボット)「ばいばい、です」


健闘した敵へのせめてもの餞別に、全力で翼を振った、無限の力が空気を叩く


竜巻がビルを丸ごと飲み込んだ


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



665: ◆E.Qec4bXLs 2015/02/10(火) 09:50:36.00ID:5Z6nAWAa0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ぱたぱた ぱたぱた ぱたぱた



聖(ボット)「............」


回転するミキサーに投げ込んだウエハース

カラスにより老朽化させられていたとはいえ、建物一棟がまるまま粉微塵に消えていく


もう一度、今度は軽やかに風を起こすとその砂塵も掻き消えた

あとには何も残らない、鉄骨すらも風に舞っていった



聖(ボット)「でも、まだ生きてる......」


「(装甲車が、まだ直り続けてるから...)」


眼下にある物言わぬ瓦礫にまみれながらも確かに活動している物体をみて、推測する


確かに十時愛梨の能力は今もまだ運転手のいない車両を修復している


しかし聖はその修復を”早坂美玲の”能力による現象だと誤解していた


だからこそ能力の主はまだゲームオーバーになっていない、という認識


翼の角度を緩やかに調節しながら360度を慎重に見渡す。装甲板の軋りを耳で聴きながら



ぱたぱた ぱたぱた ぱたぱた



聖(ボット)「......なに、あれ」



結果から言えば、誤解ではあったが誤認ではなかった





666: ◆E.Qec4bXLs 2015/02/10(火) 09:52:42.03ID:5Z6nAWAa0



ぱたぱた ぱたぱた ぱたぱた


そこに見えたものは至ってシンプル


自分から遠く遠く離れた小さなシルエット


美玲がいて、空を飛んでいた。


しかも白っぽい羽が生えていた



聖(ボット)「........ふくろう....ミミズク?」



美玲「............げ、みつかったぞッ!急げよお前ッ!!」



羽は美玲のものではなく、美玲の首元を掴んで飛翔する鳥類のものだった


速度こそ心もとないが確かな力強さで美玲を難なく運搬している


その、自分の後頭部のあたりで懸命にはばたく”鳥型ボット”を急かす


美玲はそのボットの鳥に見覚えがあった。そして彼女の推測が正しいのならそれは__





美玲「お前あれだろッ!蘭子のCDジャケットで蘭子の手に乗ってたトリだろッ!?」





___神崎蘭子の能力が寄越した伏兵だった




カラスも近寄らないこの空間においてどのタイミングで美玲に合流したのかはわからない

だがそのボットは蘭子の望みに応え、美玲を救ったことだけは事実で

そして今、彼女らの姿も聖から遠く離れたビル群の中に潜もうとしている



聖(ボット)「いつのまにあんな遠くにっ...!!」



完全なるボットとしての不覚、装甲車に能力が発動しているのなら、美玲自身も近くにいるだろうという誤解


それが蘭子の手引きによる美玲の逃走を助長した


十時愛梨もまた、美玲を間接的に救ったのだ





667: ◆E.Qec4bXLs 2015/02/10(火) 09:54:55.26ID:5Z6nAWAa0



美玲の姿が見えなくなる


バサァァアッ!!!!


その場で六枚の翼が聖の背後に翻る



聖(ボット)「(追いつき、貫き、トドメを差す...)」



ロケットスタートのための、一瞬の溜め

無限の攻撃力を加速に転化するためのラグ



美玲「ヤバッ!アイツ追いつく気だ!!急げ急げ鳥ィ!」

聖の力を知る美玲の声が焦燥にまみれる


ぱたたたたたぱたたたたた


聖(ボット)「(速くなった?...でも、関係ない!)」


きりきりと翼が引き絞られる、最高速の体当たりを敢行するために__



ガゴン・・・



美玲「ヤバイヤバイヤバイヤバイッ!!」

その光景は美玲にとって、ギロチン台の上で刃が引き上げられていくのを見ているようで


ガシャンッ・・・




聖(ボット)「今度こそ___」


美玲「__なんとかしろォ!!!」






ジャキッ・・・!




668: ◆E.Qec4bXLs 2015/02/10(火) 09:56:19.94ID:5Z6nAWAa0


翼が羽ばた


ドガガガガガガガガガガガッ!!!!


 
   「は?」


 銃
   弾が


      聖  を



ドガガガガガガガガガガガッ!!!!




669: ◆E.Qec4bXLs 2015/02/10(火) 10:09:53.68ID:5Z6nAWAa0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


最初に用意したのは土屋亜子だった


そこを、神崎蘭子が毟り取った


十時愛梨はソレを戻そうとしたが


白菊ほたるがそれを許さなかった


最終的には


ソレは早坂美玲の支配下に置かれた



ドガガガガガガガガガガガガガガガ!!



聖(ボット)「____こ__」



乱射された数十発の弾丸の内、聖に命中したのはたった二発

だがそれで充分、致命的だった

仮想でない現実だったなら、たった一発でも聖の体を飛び散らせる威力なのだから



装甲車の、”固定銃座”から放たれる、大口径の弾は



美玲「......おい、なんだアレ?ウチが...さっきまで使ってたパーツだろ?なんで勝手に動いてんだ?」



彼女も気付いてなかったことだが、装甲車の銃座自体は少し前に修復されていた


そして愛梨と美玲の能力が同時に作用した結果、そのトリガーは美玲の制御下にあったのだ


ただ、彼女は爪と牙以外の武器の存在を知らず、その機銃は無駄な重しとなっていて


たった今、ようやくその出番が来たのだ




670: ◆E.Qec4bXLs 2015/02/10(火) 10:11:00.94ID:5Z6nAWAa0



聖(ボット)「____が____ぃあ___」


翼を全て移動のためだけに使おうとして、防御をしていなかった

足元のずっと下からくる遠隔操作攻撃に対してなどなおさらだ


ハンドガンやマシンガンとは訳が違う。装甲車に固定してしか使えないほどの口径と反動を誇る威力を浴びて




もう何も見えない




唯一自分を見下せる月も、逃げ延びようとする美玲も、

正体不明な鳥のボットも、

渋谷凛も


ただ落ちていくだけ、

そして多分地面に墜落する前に彼女は消失する

それは聖本人にも分かっていた



パチィッ!




だから





パチチチィッ!


美玲の耳に嫌な音が届く、硝子を引っ掻くような耳障りな音が


「アイツ...何やってんだ...?」


パチチチチチィッ!!


翼と翼が擦れ合っていた

それの意味するところは【矛盾】

パチィンッ!!


無限の攻撃力と無限の防御力の衝突

どんなものでも貫く翼と

どんなものでも防ぐ翼の



671: ◆E.Qec4bXLs 2015/02/10(火) 10:22:10.43ID:5Z6nAWAa0



パチチチチイイィイィィイィイ!!



そこに秘めたエネルギーを無限に押し込んでいく

六枚の翼が四枚に、二枚に、最後に一つの小さな球体にまで圧縮され



聖(ボット)「なくなっちゃってください」




爆ぜた






__ゴォオオオオオオオオッ!!!!!








夜空が白く灼ける












ゲーム開始90分経過


望月聖(ボット) 消失

早坂美玲+   0/100

渋谷凛+    0/100

神谷奈緒  能力獲得

北条加蓮  能力獲得


望月聖(ボット)VS早坂美玲&渋谷凛

引き分け


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

CAUTION!

仮想現実空間運営用自律ボット

CHIHIROより池袋晶葉へ


・過度の情報が処理されました。容量不足によるパフォーマンスの低下にご注意ください


仮想空間稼働90分経過



672: ◆E.Qec4bXLs 2015/02/10(火) 10:23:29.35ID:5Z6nAWAa0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

こんなに遅くなるとは思わなかった

待たせてしまって申し訳ございません

待ってくれてありがとうございます


次回開始するチャプターを選んでください


1、双葉杏&諸星きらり&堀裕子&神崎蘭子&十時愛梨

2、輿水幸子&白坂小梅


安価下



673:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/10(火) 10:31:26.40 ID:LmgevIUCO

1



【モバマス】早坂美玲「アイドルサバイバルin仮想現実」【その3】
元スレ
早坂美玲「アイドルサバイバルin仮想現実」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1396415964/
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