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【モバマス】早坂美玲「アイドルサバイバルin仮想現実」【その1】

1: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/02(水) 14:19:24.42 ID:qXdvBosP0


前スレ
【モバマス】渋谷凛「アイドルサバイバルin仮想現実」【後半】


【概要】

池袋晶葉の協力の下、とある企業でデジタル上の空間で仮想現実を体験する機械がつくられる

そのPRの為にキュート、クール、パッションの属性から6名ずつ、計18名のアイドルがその仮想現実空間に送られた。

・参加者がアイドルであるので、ただ実験的であるだけでなくバラエティ要素を加味すること

・デジタルが現実に準拠してどこまで不確定要素に耐えられるかをテストすること

これらの点を考慮してアイドルたちは現実の肉体が傷つくことはないその世界で模擬実戦、戦争ゲームに身を投じことになる。

そこで対戦相手として用意されていたのが、アイドルの性格をトレースしたロボット、通称「ボット」

ボットたちは銃や刃物とはまた違う武器である「能力」を躊躇なく使いアイドル達を追い詰める

現実から来たアイドルたちは、空間内のどこかにそれぞれのアイドルに用意された特定のアイテムを手に入れることでしか能力を使えない

それでもなんとかボットに勝利を納めていくアイドルたちに対し、ボットたちも手を組み、策を巡らせていく


【用語】

・プレイヤー

今回の企画に選ばれた18名のアイドル、現実の方から晶葉の造った機械を通じて仮想現実空間にアクセスしている

初期の段階では能力がない

・ボット

多数のアイドルの協力により池袋晶葉が造ったプログラム上の存在。実在のアイドルの人格をかなりの精度で再現している

ただし、戦闘行為をするにあたって多少ばかり好戦的な部分が加えられている

練習用ボット:プレイヤーの姿を模したボット、チュートリアルとして用意されたため戦闘力、スタミナ共にほとんどない

通常ボット:プレイヤーの対戦相手のボット、最初から能力を所有している

・アイテム

仮想空間内に点在するボットやプレイヤー以外のモノ

銃、剣、車、戦車などの武器や乗り物、回復作用のあるドリンクなど


・キーアイテム

プレイヤーが能力を発現させるために必要なアイテム

どこかに隠していたり、ボットが持っていたりする


・スタミナ

プレイヤー、ボットに初期値100%で与えられている。これがゼロになるとゲームオーバー

あくまでもらったダメージをカウントするだけのもので、体調を表しているわけではない

プレイヤー同士がユニットを組むことでその合計値を全員で共有できる。


・CHIHIRO

仮想現実空間運営用自律ボット

戦闘とは別の用途で作られたボット。仮想空間におけるプレイヤーとボットの動きを観察し現実世界へ報告する

また能力の使用により空間内に生じたバグや負荷を処理している

所在、外観などは詳細不明



2: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/02(水) 14:21:31.99ID:qXdvBosP0




【プレイヤー】

・活動中

クール

渋谷凛 神谷奈緒 北条加蓮 白坂小梅 大和亜季 ?

キュート

佐久間まゆ 緒方智絵里 輿水幸子 早坂美玲 小日向美穂 双葉杏

パッション

星輝子 三好紗南 諸星きらり 堀裕子 小関麗奈 ?


・行動不能

なし


【ボット】

・活動中

クール

高峯のあ アナスタシア 森久保乃々 水野翠 望月聖 佐城雪美 八神マキノ 二宮飛鳥

キュート

遊佐こずえ 白菊ほたる 棟方愛海 島村卯月 古賀小春 

桃井あずき 前川みく

パッション

高森藍子 村上巴 本田未央 



・行動不能

練習用ボット18名

上条春菜 梅木音葉 橘ありす 結城晴 塩見周子

福山舞 向井拓海 市原仁奈



11: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/03(木) 00:29:15.11ID:OBKamfu70




タタンタタン・・・ タタンタタン・・・



智絵里「えと、あの......わたしなんかで、いいんでしょうか...?」

杏「ゲームってさー、体を動かさなくてもできるってトコに意義があると思うんだよね、杏は」

P「それはテレビゲームだけだろ杏。それに智絵里、そういう心配はしなくて大丈夫だ、何があっても大丈夫なように現実の方で待機してるからな」

地下鉄か、長いトンネルを走っているように、車窓から見えるのはただの暗黒だけである

その闇の中を走る電車内で向かい合わせになった座席には四人の人間がいた。

一人は緒方智絵里、座席の端に詰めるようにちょこんと腰を下ろしている


智絵里「...わ、わかりました...プ、プロデューサーさんがそう言ってくれるなら、わたし...」


もう一人は双葉杏、智絵里の隣で座席に脱力したように浅く腰掛け、緩慢な空気を全身から醸し出していた

杏「今、杏が見てるものがバーチャルだーって言われてもねぇ・・・あ!じゃあプロデューサー、リセットボタンないの?リセットボタン!」


二人の対面の座席に座っているのはスーツ姿の男、モバP

プロデューサーとして今回の企画の実現にあたって東奔西走し、あちこちで打ち合わせと段取りを行ってきた影の功労者でもある


P「ありがとうな智絵里・・・それと杏、そういうゲーム思考は今回いらないぞ」


彼は仮想現実に18名のアイドルを送り込むにあたってその過程となるこの仮想現実の電車で企画の趣旨を説明しているところだった

18名のアイドルを3名ずつに区切り、同じ内容でもアイドルそれぞれが分かり易いように噛み砕いたり、場合に応じて適切な比喩を用いたりと工夫することも忘れていない

P「えっと、こんなところだな・・・」


その説明もここにいる三人で最後だった

ふう、とPは一息つくと隣に視線をやる


P「で、お前は何か質問とかないのか?」

そこに見えるのは目に優しくないピンク色に包まれた背中だけ

P「美玲ー?なんでさっきからずっと窓の外ばっかり見てるんだ・・・なにか見えるのか?」

この場における四人目、彼女はPの説明の途中辺りから窓の外におでこをくっつけるようにして窓の外を覗き込んでいた

外にある何かに興味津々であることがその背中からひしひしと伝わってくる


早坂美玲「おい、プロデューサー。 か、かそう現実?とかいうヤツ何も見えないぞ!」


座席のうえに膝立ちのままPを振り向く、隣に座っているPと目があった


P「はは、楽しみにしてくれているのは分かるけど、面白いのが見れるのはまだ先だからな?」


美玲「なッ、た、楽しみになんてしてないぞ!これはあれだ!オマエが嘘ついてないか確かめただけなんだッ!」


P「嘘ってなんだよ、嘘って」


美玲「むー!えっと・・・で、デジタルとかバーチャルとかよくわかんない言葉でウチらをドッキリにはめようとしてるかもしれないし!」

P「そんなことしないって・・・折角楽しみにしてくれてるんだもんな?」

美玲「~~っ! だ、だから楽しみなんかじゃないって言ってるだろッ!」



12: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/03(木) 00:29:43.54ID:OBKamfu70


美玲は振り向いた姿勢から改めて体ごと向き直るとムキになって言葉を並べはじめた

こういう照れ隠しもまた彼女にはよくあることなので隣に座るPもその対応は慣れたものである


美玲「う~~~!」

智絵里「あ、あの...美玲ちゃん、落ち着いて...」

杏「じゃ、杏ちょっと二度寝するから駅に着いたら起こしてねー」

P「こら」


タタンタタン・・・ タタンタタttttt・・・


突如、規則正しく響いていた車輪の擦れる音が変調する


智絵里「あれ...?」

美玲「なんだこのヘンな音・・・」

P「おっと、転送が始まったみたいだな」

事情を把握していたPだけが落ち着いて、次にかける言葉を吟味する


P「智絵里、杏、そして美玲。この仕事は間違いなくお前達が今まで経験したものとは違ったものになる。だが、俺はお前たちがそれぞれ自分の持ち味を存分に生かしてくれると信じてる。」

「難しいことかもしれないが、でもまずは思いっきり楽しんでくれると嬉しい」

言い終えて、Pは三人のアイドルを見渡す、自分の思いは伝わったのか確かめるために

智絵里「......はい!」

杏「・・・・・・・・まあ、ほどほどにやるよ」

美玲「うー・・・言われなくたって、ウチはうまくやるし」


個性派アイドルだけあってその返答もてんでバラバラだった。思わず彼も苦笑を漏らす


P「・・・元気のいい返事をくれたのは智絵里だけかぁ、はっはっは」






美玲「・・・・・・・・・」





13: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/03(木) 00:30:25.59ID:OBKamfu70



美玲は眼帯に覆われて半分になった視界にその横顔を映す

困ったようにタハハと小さく笑った表情

精一杯の励ましに対し、思ったよりいい反応が返ってこなかったのだから当然といえば当然か


タタtttttttttttttt...


電車の中に明かりが差す、強い光が車内に満ちた

彼の言葉を借りるなら”転送”とやらが始まったんだろう



まず杏の姿が光にくらんで見えなくなった

次に、智絵里の姿が光の中に消えていく



最後に隣にいるPの姿が美玲の目の前で光の中に溶けていこうとしていた



美玲「プロデューサー!」


眼帯をしていない方の目を光に負けずしっかりと開く


ほとんど姿の見えなくなったPが美玲の声に反応してこっちを向いた、ように見えた




でもどうせもう聞こえてないだろうから言ってしまえ、と美玲は口を開いた





美玲「ウチ、頑張るからちゃんと見とけよッ!」










___ステージ"シティ"へのダウンロードを開始します___



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14: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/03(木) 00:30:53.61ID:OBKamfu70




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

そのボットは夢を見ている


プログラム上の人格である彼女に睡眠の概念はないはずなのに


だが彼女自身は自分は夢を見ていると確信していた



彼女は首を巡らせる、彼女は自分が白い床の上に直に座り込んでいたことに気づいた


ペタンと足を広げ、ふらふらと視線を漂わせる


ツルツルとした床の手触り、彼女は床に顔を近づけてみた


うっすらと床を透かして何かが見える、この床は白く着色されたガラスのようだ


「............」


遠い


第一印象はそれだ。

ガラスでできた床、そこから下に広がっていたのは数え切れない程のビル、家、道路

摩天楼が自分の今いる場所のずっと、ずっと下に存在していた。


「.....?.....」


彼女は考える。

あれほどたくさんのビル、しかも高層ビルの群れを一望できてしまうここは一体どこなんだろうかと

展望台だろうか?それにしては高すぎる。それに今彼女が座っている床を支える柱は下には見当たらない

じゃあ飛行機だろうか、UFOだろうか?自分はそこに乗り込みその床面のガラスを覗いているんだろうか

だが今の眺望が動いているようには見えない、従って彼女がいる場所も移動はしていないはずだ


「.........」

まあいいか、と彼女は顔を持ち上げる、白い床がどこまでも続いている、突き当りの壁は見当たらない

一体どこまで広いんだろうか、この白い床は



15: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/03(木) 00:31:54.85ID:OBKamfu70




「......?......」


高層ビルの群れを上から俯瞰できる場所、彼女はそれをやや持て余し始めた

一体何だろうこの夢は、そろそろ何かが起きはしないのだろうか


こつこつ


指で床ガラスをこづく、硬質の感触がしたような気がした

自分の柔らかい指じゃあ何をどうすることもできないと分かった


コツコツコツ


次に聞こえたのは足音だった

ガラスを踵で叩くような音が彼女に近づいてくる


「............」



彼女が振り向いた先にいたのもまたボットだった

胸元に赤いバッジを光らせた少女だ


コツコツコツ

コツコツコツ

コツコツコツ


気がつくと彼女の周りに何人ものボットが立っている

だがいずれのボットもその視線は足元、床のガラスを通り過ぎた先にある都市に向けられていた

床にへたりこむようにして周りをぼんやりと眺めている者はいない


「............」


彼女はそのことに少しだけ疎外感を感じる


カツ・・・・・・・・・ン!


彼女以外のボットが床を軽く蹴っ飛ばした、


するとそれが合図だったように床のガラスに丸い穴があきはじめる


割れたのではない。静かにガラスの表面が震え、水面に広がる波紋のようにまん丸の口を開けたのだ


直径は1メートルもない、人一人が通ることができるくらいのものだ

その穴から遥か下には高層ビルからなる摩天楼


彼女以外のボットたちはそれこそが自分のために用意された出口なのだと躊躇なくそこに飛び込んでいく



16: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/03(木) 00:32:32.11ID:OBKamfu70



何人ものボットたちが降り注ぐ雨のように仮想の都市へと落ちていく

長い金髪のボットも

着ぐるみを着たボットも

メガネをかけたボットも

爬虫類を抱いたボットも

カチューシャを付けたボットも

みんながそれぞれ自分の足元に空いた出口から仮想空間へ飛び込んでいく


「............」


彼女はそれを上から見下ろすしかない、ガラスの床は彼女に対して沈黙したままだ

これはなんの夢なんだろう

この夢は何が言いたいんだろう



ぐらり



視界が急速にぼやけていく


夢から醒めるのだ


彼女はうつぶせに床に体を倒した、白のガラスを透かして眼下に街が見える

彼女以外のボットはあそこに行けたのだ


やがてその眺望もぼやける

夢の終わり


彼女はぼそりとつぶやいた



「......いいなぁ」




その言葉を発したのは夢の中か、それとも外か


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17: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/03(木) 00:33:03.79ID:OBKamfu70



こずえ(ボット)「.........」


こずえ(ボット)「.........ふわぁ...」



どこかのビルとビルの隙間で彼女は目を覚ました

仮想現実の中は晴天だった。

だが彼女のいる場所に人工太陽の光は届かない



彼女は自分の置かれている状況を他人事のように観察する

どうやら手足を投げ出し、ビルの壁にもたれて眠っていたようだ



こずえ(ボット)「.........んぅ...」



空を見上げる、並んだビルで細長く区切られた青い空、

もちろん白いガラスが浮かんでいたりはしない



こずえ(ボット)「...?...」



彼女は自分の体を調べ、自分にプログラムされた記憶やデータを確認する

彼女はそこで自分に「能力」が備わっていないことに気づいた



18: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/03(木) 00:33:48.56ID:OBKamfu70




こずえ(ボット)「.........」



ボットなら間違いなく最初から所有しているはずのもの

それが自分にだけない



こずえ(ボット)「......ぁ...」


なんとなく、彼女はそこでさっき視た夢を思い出した

自分にだけ用意されなかったモノの夢を

あの夢は今の自分のことを暗示していたのかとぼんやり推測する




こずえ(ボット)「.........いいなぁ...」








ゲーム開始0分

全ボット行動開始

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25: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/04(金) 01:10:39.05ID:4F+BeHei0


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チャプター
早坂美玲


美玲は唸っていた


予想を裏切る展開の連続に歯噛みするように犬歯を剥き出し威嚇していた


美玲「う~! がおーッ!!」


うなっている原因は3つある


まず一つ目は美玲が意識を取り戻した場所がよく分からない工場だったからだ

壁を見れば工場内の空気を入れ替えるための換気扇が一直線に並んでいる

天井はとんでもなく高い。そこに肋骨をイメージさせるような鉄骨が規則正しく敷き詰められているのが見えた

広いはずの空間は何も運んでいないベルトコンベアと、まるで自販機の親分のような馬鹿でかい機械が床面積を狭めている

しかもそういった機械や設備のあちこちに吹き出物のように取り付けられているボタンや血管のようにあちこちを結んでいるコードやパイプの類がまるで生き物の体内のような生々しさを出していた

いきなりこんなところに放り出されれば不機嫌にもなる


次の原因はボットの存在

見ず知らずの工場に放り出されて十数分、工場の外から聞こえてきた晶葉のスピーチが終わってから数分

美玲もそこで留まっているわけにもいかず散策を開始しているうちに出会ったのだ

その姿は早坂美玲と瓜二つ、ほの暗い工場内にあっても目に鮮やかに映るピンクのフード

ケモノミミ、眼帯、鋲の打たれた装飾品で飾った体、爪の手袋、鏡で確認するまでもない美玲本人のボットだった

スピーチを聞いていなければ大いに混乱して、唸るどころではなかっただろう


早坂美玲(ボット)「・・・・・・」



唯一違う点といえばライブで使った手袋、獣の爪を模したそれをつけていたこと

美玲の普段着は割と派手な方であるが、それでもその装飾は浮いていたからすぐ分かった

もちろん本物の美玲にはない、日常生活を送るにはやや不便なデザインな上、ライブ専用の道具だから今つけていないのは当然ではある

その手袋のデザインも自分の普段着も美玲のお気に入りではあるが、それを同時に着用しているせいで美玲のボットのファッションがややちぐはぐな印象になっていた


見知らぬ場所。ちぐはぐなボット


そして最後の原因が否応なく美玲の警戒心を高めていた



美玲「ガルルルルルルルル・・・!」



美玲(ボット)「・・・・・・」



26: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/04(金) 01:11:25.06ID:4F+BeHei0




美玲はボットの方向を強く睨みつける

工場内を歩き回って数分後に遭遇してからずっとこの状態が続いていた

眉間に皺の寄った強い視線を向けられたまま美玲のボットは無言で直立したままだ

だらりとぶら下げられた両腕の先で三本の爪がゆらゆらと揺れている














そして美玲のボットは力尽きたようにその場に倒れた



そのまま手袋を残してその姿が霧のように消えていく

だが、自分の映し身が消えても美玲の視線は揺らがない

美玲は最初から自分のボットと一緒にいたそのボットの方向をずっと睨んでいたのだから


そのボットは、右腕をふらふらと降る。

さっきまで美玲のボットを後ろから串刺しにしていたから腕が疲れたのかもしれない



彼女は消えていく美玲の方をちらりと一瞥したあと、離れた場所から自分に唸りを上げている美玲の方を見やる










アナスタシア(ボット)「アー...、えっと」




アナスタシア(ボット)「私......ボットと本物...間違え、ました?」










ゲーム開始10分経過

早坂美玲(ボット)消失

アナスタシア(ボット)VS早坂美玲

開始


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27: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/04(金) 01:17:30.48ID:4F+BeHei0


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練習用ボットの存在は知っていた


戦闘力、スタミナ共ほぼ0で、あくまでこの世界での戦闘行為になじませるためのボットだと

あとは偶にキーアイテムを持っているのがいたりするそうだが、有体に言うと踏み台なのだろう

だから開始数分、あるいは数秒で倒されるボットだというのが通常ボットからの見解だった


だからこの工場の中にはプレイヤーの早坂美玲がいるとは仲間から聞いたとき

先陣を切るつもりでこうやって一人侵入し、美玲の後ろ姿を見つけたときにすかさず攻撃したのだけれど


まさかまだボットの方が生きていたとは。工場の内部が複雑だったから遭遇できなかったのだろうか

晶葉の仕事のちょっとしたミスだろうか


まさか今倒したと思った人物が曲がり角から出てくるとは思わなかった



アナスタシア(ボット)「...びっくり、ですね」



美玲「なッ、なななにがびっくりだ!ウチの、ボ、ボットとかいうヤツに何してるんだオマエ!」

アナスタシア(ボット)「プレイヤーと間違えて、えっと...攻撃、してしまいました」

美玲「なんだそれ、間違いで攻撃したのか!?」


プレイヤーの方の美玲が吠えてくる

アナスタシアはそれに返答しながら足元に視線を落とす

そこに転がっているワンセットの、あまり実用的なデザインとはいえない手袋

おそらくあれがキーアイテムだろうとアナスタシアはあたりを付ける


美玲「いくら自分じゃなくても何かイヤな気持ちになるだろッ!何考えてんだ!」


目の前にいる美玲は相変わらず元気よく噛み付いてくるが、まだこの世界のルールを把握できていないようだ

思わぬ形とはいえチュートリアルを飛ばしてしまったのだからそれも仕方ないか


アナスタシアは歩き始める

アナスタシア(ボット)「なんといわれても...こちらにも、理由があるのです...」


美玲「ッ!?」




28: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/04(金) 01:19:14.97ID:4F+BeHei0


ゆっくり歩きながらアナスタシアは自分の右腕に能力を発動させる

腕の表面に冷気が奔る

肩口から肘へ、肘から手首へ、手首から指先へとそれが広がっていく

ピシピシと角ばった音が鳴る、右腕がその硬いものにパキパキと包まれていく


美玲「なんなんだそれ・・・?何する気だよ」

アナスタシア(ボット)「もちろん、戦います」


それはまるで氷柱、

アーニャの右腕を氷が包み、その先端が肩から指先に向かうに連れて鋭く尖っている

その様はカマキリの腕にも、馬上槍を構えた騎士にも見える

包丁やナイフといった凶器とはどこか現実離れした外観が逆に脅威として美玲の瞳に映っていた

美玲「はぁ!?」

美玲はまだ状況が飲み込めない、チュートリアルを強制的にスキップされたから頭が追いつかない

アナスタシアの一部を覆う氷の中に細身の女性的な腕が見え隠れする、氷の表面がチカチカと光を反射していた

アナスタシア(ボット)「この氷は...正直、重くて邪魔なのですが、これも能力を使うには必要なのです」

美玲「は、能力・・・晶葉の言ってたヤツ、か・・・?」

アナスタシアは歩く、美玲は動かない

先頭というなれない行為に移れない


美玲「(なんだ、なんなんだよ!なんでアーニャが刺はやしてるんだッ!?あれか?ボットとかいう・・・)」


アナスタシアはゆっくり歩いてくる、その所作があまりにいつも通りなのでまだ現実での感覚が抜けきらない

美玲は彼女の右腕を見る、彫刻にでも使えそうなサイズの氷塊がくっついていることだけがこの場における唯一の不自然だった

そしてその氷の中に誰かがいた

こっちを不思議そうな顔で見つめている


美玲「(だれ、じゃない・・・)」


氷の中ではなかった。それは氷の表面に映った顔だった


美玲「(あれ、ウチの顔じゃん)」


氷の表面に映った自分の顔が見えるくらいの距離

アナスタシアと美玲の間は数十センチに縮まっていた




アナスタシア(ボット)「...痛くは、ありません」



氷に映った美玲がブレる

氷の槍がが振るわれた

精神的な意味においてスタートダッシュの地点で致命的に出遅れたプレイヤー、早坂美玲

不十分な理解、そして不足した経験の彼女を無慈悲な暴力は待たない


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29: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/04(金) 01:22:31.64ID:4F+BeHei0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ぱちっ


きょろきょろ


ぱちぱち、


ぱくぱく


地面の上を何かが這い回る、甲虫のようなそれに肢はない

オタマジャクシのようにひょろひょろと目的もなくどこかへ漂っていく


みく(ボット)「にゃあ、のあチャン?何見てるのにゃ?」


のあ(ボット)「何を見るべきか、何を知るべきか......それを見極めることもまた、観察には欠かしてはいけない要素...」


みく(ボット)「よくわかんないけど、のあチャンの体からいっぱいお目目が這い出てくるのは軽いホラーにゃ、何やってるのか説明をよーきゅーするにゃ!」


アナスタシアが潜入した工場の入口脇で二人のボットが座っている

だがいささか奇妙な光景だった

一人は猫のように手足を地面にぺたりと付けて座っているし

もう一人に至ってはもたれかかった壁に半分溶けかかっていた

まるでその工場のコンクリが生乾きであったのかと疑いそうになるほど自然に溶け込んでいる

ゼリーに差し込んだスプーンのようだ



さらに妙なことにその人物を中心に壁が波打ち、その度に小さな虫のようなものが蠢きながら地面へ滑り降りていく


いや、虫ではない、それははっきり言ってまぶただった。


人間の瞳を覆う皮膚の部分、それが何枚も何枚も地面へと走り出していた

よく見るとまぶただけでなく耳たぶのようなものもある

もうひとりの少女はそれを怖々と眺めているだけ


みく(ボット)「で、どうなの?なにか面白いもの見えたにゃ?」

のあ(ボット)「少し待って頂戴...いま視覚をつないでいるところよ」


そう言うとのあは目を閉じ、能力の精度を上げる作業に入った


みく(ボット)「にゃあ、アーニャも、のあチャンが工場の中からプレイヤーを見つけた途端に意気揚々と行っちゃったから暇にゃあ・・・」

のあ(ボット)「.........」

自分の体から切り離した部分を建物と混ぜ、擬似的にボットとして自分の一部にする

そうやって作られた眼球や耳は合計で15個

これ以上のことをやるにはもう少し能力の出力を上げなくてはいけないがまだこのままでいいだろう





30: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/04(金) 01:23:20.57ID:4F+BeHei0



__?___・・・___。___!___




のあ(ボット)「......!...」


走らせた「耳」がこの近くから何かの声をキャッチした


ゲーム開始からまだ30分と経っていないにもかかわらず既に接触を始めた者がほかにもいるのだ


その耳が拾う音に集中する




「あの、扉、開きません...それに能力も使えなくなってるみたいです......」


「あらら・・・あたしの尻尾もなんか三本しか出せなくなってるし。どゆこと?」


「能力、確かに発動しませんね?どうしたんでしょう・・・う~ん」


「なんだか...眠くなって、きました...」


「あぅう...私たちボットなのに...このままじゃ、役割を果たせません、どうしよう...もしかして...わ、私のせい?」


「まあまあ、待ってればそのうち開くって」


どうやら一箇所に集まっているようだがその会話の意図するところが読み取れない

能力が発動しない、それに閉じ込められている・・・?



のあ(ボット)「これは、知っておくべきことね」



その耳のいる場所に他の眼球を移動させるよう支持を飛ばす

自分の一部であるそれらは一糸乱れぬ動きでその命令に従った

耳のいる方向にひょろひょろと肌色の虫もどきが集まっていく

視覚を共有しているのあにもその映像が見え始めた


のあ(ボット)「(家?...それにしては...あまりにも朽ち果てている...どうゆうこと?)」


視界に映る建物はまるで何年も放置されていたかのようにそこらじゅうにヒビが入り、窓も割れていた

眼球が視界に捉えたその、廃墟というべき建物に近づいていく


遠く離れたところからの眺めが徐々に距離を詰める

建物の窓から中が覗けそうだ

もう少し、もう少し



ザザッ・・・!
ッザザザザザ!



のあ(ボット)「(......?何かしら...映像に乱れが......)」



31: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/04(金) 01:25:32.82ID:4F+BeHei0







ブチュンッ!!!!














廃墟に近づいた眼球が全て破裂した









のあ(ボット)「!!?」


みく(ボット)「にゃにゃっ!?どしたの、のあチャン?」


のあが閉じていた目を見開く、表情は驚愕一色だ

みくが心配そうにその顔を覗き込む


みく(ボット)「何見たの?何があったのにゃ?」


のあ(ボット)「.......ただの廃墟じゃなかったのよ...」

落ち着きを取り戻したのあが言う、自分が知ったことを


みく(ボット)「...?」


のあ(ボット)「あの家は朽ちていたんじゃない...」


のあ(ボット)「私の一部が潰れたことで遅まきながら理解したわ」



32: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/04(金) 01:28:08.72ID:6b1NyIANO


のあ(ボット)「あの家があれほど壊れかけて見えたのは、内に封じた者達の影響よ」


みく(ボット)「にゃあ・・・ぜんぜんわからないにゃあ」

まるで自分に言い聞かせるように言葉を紡ぐのあにみくが小首をかしげる


のあ(ボット)「埓外の能力が含む情報量が、あの家を内側から崩壊させようとしているのよ、私の眼球を押しつぶしたように」


みく(ボット)「にゃあ?能力が家を、ほーかい?」


のあ(ボット)「......みく、準備しなさい...」


みく(ボット)「にゃ?」



のあ(ボット)「見るべきものよりも、知るべきことよりも......今はもう、動くべき時よ」



のあ(ボット)「こうしてはいられないわ、あれが解き放たれれば私たちも無事では済まないもの」



のあ(ボット)「レッスンよ、アーニャに合流するわ」




35: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/05(土) 00:50:36.28ID:VPhv9b2t0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

チャプター
早坂美玲



「ぎゃん!?」


背中がヒリヒリする

ウチがまず感じたのがソレだった

思いっきり吹っ飛ばされてザリザリって変な音がして目の前に天井が飛び込んできた

視界の隅の方でアーニャが右腕を不自然に掲げているのを見てようやくウチがあの右腕にブン殴られたと分かった

ウチはいつの間にかは仰向けに地面に横たわって天井を眺めていた


美玲「何するんだオマエぇ!?」

地面に手をついて起き上がる、意外と痛くなかったからできたけど頭の中はまだハテナマークがぐるぐるしてた

アーニャはなぎ払った右腕を構え直して、よく見ると足元に氷のカケラがいっぱい散らばって鈍く光を反射してた

ウチを殴りやがった時に壊れたみたいだ

フン!何も言わずにいきなり暴力振るうからだし!!

アナスタシア(ボット)「.......やはり痛いのと、それに似た感覚がないと...すぐに起き上がってきます...ね」


ゴリっ、

アーニャは床に散らばった氷を踏んづけるとまたこっちに歩いてきた

しかも、右手にはまた氷が張り付きはじめてるじゃん!


美玲「それズッこいぞ!何回も使えるなんて!」


少しずつアーニャの腕が太く重くなっていくように見える、しかも先っぽがどんどん鋭くなってるし!

ウチは後ろを向いて逃げ出した。

出口がどこにあるかわかんないけどとりあえず訳のわかんない機械よりもあの尖ったのから逃げる方が先決だった


アナスタシア(ボット)「...逃がしま...せんよ?」


ガリッ

後ろから、硬いもので地面を引っ掻いたような音が聞こえた

そして強い足音

アーニャが走って追いかけてきたんだ!

ウチはでっかい変なマシンに狭められた通路を走り抜ける


美玲「はあっ、はあっ、はあ・・・!」


なんだよこれ!めっちゃ疲れるじゃんか!?プロデューサーのヤツ、こんな大変なのを楽しめなんて言ってきたのか!?

丸っこいボタンやスイッチが壁にセミみたいにビッシリ張り付いてるのが気持ち悪い


美玲「あっ!」

植物のツタみたいに垂れ下がった導線とかチューブの向こうに扉みたいなのが見えた

あちこちを見回しながら走っていたウチはそこに方向を決めて足に意識を集中した



36: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/05(土) 00:51:11.62ID:VPhv9b2t0



後ろからはガツンガツンと騒音がなってる、

アーニャのデカい腕ががいろんなものにぶつかって走りにくいんだな


工場の壁にこじんまりと付けられた小さい扉、

モノを運んだりするんじゃなくて作業員用の入口だからあんなちっちゃいのか?


工場の地面の上ででっかいワニみたいに横たわってるベルトコンベアを飛び越えて扉までの道をショートカット

もうちょっとだ!


美玲「むぎぎぎぎぎぎ!」

運動会のかけっこの時みたいに手もぶんぶん振って走る、眼帯のせいでちょっと距離感がわからないけど

そして、ドアノブをがっちり掴んだ、そのままの勢いで体当たりする

美玲「だあっ!」

でも引き戸だったみたいで、ウチは扉に跳ね返されて、


その扉に氷柱が突き刺さった


アナスタシア(ボット)「凍らせた水は...とっても硬い、です」


扉にかじりつくような位置にいたウチに間違って刺さりそうな場所、

扉と床を一緒に縫い付けるみたいに透き通った氷が貫通してる

これじゃ扉はあかない




美玲「あ、あ・・・」


振り向くとベルトコンベアの向こうにいるアーニャが、こっちに向かって何かを投げつけるようなポーズをしていた

右手の氷は剥がれてる。剥がれた氷は今ウチの十センチ横に突き立ってた

氷の表面に映ったウチの顔は、今度は青ざめてた


美玲「こ、こっちくんなバカああああああ!!」


壁沿いにむちゃくちゃに走り出す、壁から生えてるボタンに方がぶつかるくらいスレスレに、アーニャから少しでも離れるように

どうしよどうしよどうしよ、扉あかなくなっちゃった!逃げられないじゃんか!


ウチの声のせいで後ろから足音が聞こえてるのかわからない、だから余計に混乱して大声を上げる


美玲「があああおおお!!」


蛇みたいに床をのたくるコードに足が引っかかる、けど無理やり立ち直して走り続ける右に曲がってり左に曲がったりもしたけど機械がジャングルみたいに入り組んでいてわかんない

そのジャングルが急に開ける

美玲「!?」

ちょっと離れたトコに氷の粒が散らばっている

そこはさっきウチがいたところだった

美玲「戻ってきちゃった・・・」



37: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/05(土) 00:51:56.51ID:VPhv9b2t0


ガゴンガゴンガゴン

いつの間にか工場のあちこちから駆動音、この部屋の中をぐるっと一周するベルトコンベアが動き始めていた

アーニャの足音は聞こえなくなった

ウチはアーニャの姿を探そうと周りをきょろきょろ見まわす

ベルトコンベアは床だけじゃなくて、山を描くみたいに斜面になって、ウチの背より高いところでも動いていた


ガコンガコンガコンガコンガコンガコンガコン・・・


灰色の機械がまるで内臓みたいにおんなじ動きを繰り返してる

その中に一つだけ灰色じゃないものがあった、色鮮やかなピンクのものがポテッと置かれている


美玲「ウチの手袋・・・」


ボットが付けてたヤツがそこに残っていた。

ウチはそれに近づいて手に取る、なんでこれだけ残ってたんだ?しかも両腕とも



ピロン



美玲「わっ!??」


いきなりどっかから電子音が聞こえてきた。

携帯のメール着信みたいだ

手袋を両手に掴んだままあわてて周りを見渡す

周りには誰もいないから上もついでに見上げてみる


ガコンガコンガコンガコンガコン



















アーニャと目があった





ウチの頭の上を走るベルトコンベアから身を乗り出してこっちをじっと見ている

瞬きもせず見開かれた二つの碧眼にそのまま吸い込まれそうな気がした

こっそりウチの近くまで移動してきたアーニャが右腕をこっちに向けたままそこから飛び降りる

キラキラ光るでっかい氷柱が落っこちてきた



38: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/05(土) 00:52:42.02ID:VPhv9b2t0




美玲「うわあわあああ!!」


その場から横にジャンプする


なんとかアーニャが飛び降りる前に気づけたから間に合う____



アナスタシア(ボット)「...先手は打って、ます」



___はずだったのにウチの足が動かなかった



その場で転ぶ、今度はうつ伏せで地面に叩きつけられた


美玲「がふっ」


声を漏らそうとした瞬間、ずぶり

ウチの肩を凍った槍が貫通していた

針とかバラのトゲの十倍くらいの大きさのとげが背中から入って鎖骨のあたりから出ている

床に突っ伏したウチのすぐ真横に突き立った


なのに

なのに


アナスタシア(ボット)「...痛く、ないでしょう?」


冷たくも、熱くも、しびれたりも、ましてや痛くもなかった



アナスタシア(ボット)「...私の能力は、知覚消失」


ぐぐぐ、


体に刺さった刺に力が加えられたのが感じられる、痛くなからそれを冷静に理解できた

体の中を通っているはずなのに、それがわからない。

ちょっと押さえつけられているだけのような気がしてくる


アナスタシア(ボット)「えっと...麻酔、を打たれた部分を触られても分からないのと同じです。私の氷は一切ダメージを体感させません、ただスタミナを減らすだけです」


背中側からアーニャの声が聞こえる


何が言いたいのかわかんないけど、ようするにアーニャに殴られても痛くないってことか

そういえばさっきも地面にぶつかったときは痛かったけどそのまえに殴られたのはわかんなかった


地面に押し付けられた、いや縫い付けられた?その状態で首だけ動かしてアーニャを振り返る


アーニャの左腕に氷が張り付き始めていた。

ゆっくりとだけど腕の周りに角ばったガラスのようなものがまとわりついてる



39: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/05(土) 00:53:14.32ID:VPhv9b2t0



そのときウチの足が見えた

針のように細くて、シャーペンくらいの長さの氷柱がウチの足と床をつないでいた

美玲「はぁ・・・?」


いま目で見るまでわかんなかったし、今見ても信じられない

なんにも感じなかった


アナスタシア(ボット)「美玲がこちらに気づく少し前に...上からこっそり落としました......うまいこと足に刺さって、よかったです」

ウチの足が動かなかった理由がわかったけど、どっちみち足と肩を抑えられてて身動きできない


パキ...ピシ...


左腕に氷が集まってる

こっちは氷柱というよりハンマーだ。丸っこい氷の塊が左の拳を中心にどんどん大きくなっていく



アナスタシア(ボット)「撲殺でも...痛くは、ありません...一瞬です」

美玲「やッ!」


美玲は思わず目を強く瞑った

アナスタシアはそれを確認し、ほっと息をつく


槍の右腕、槌の左腕

槍で牽制して槌を振るう

だが元より痛みのない世界、さらに彼女の能力なら痺れすらも感じさせない

だが、どうせなら何も感じずに済むに越したことはないのだ


目を閉じていれば、何も知らずに終わらせられる、私の能力はそういうものだ


アナスタシアはずっしりと重くなった左の拳を肩の高さまで持ち上げる

あとは足元に押さえつけた小柄な少女に叩きつければ十中八九何も知らずにゲームオーバーにできる

目を閉じていれば彼女はいつ自分が攻撃されたかすら知ることはできないだろう




アナスタシア(ボット)「まずはодин...一人目、です」




せめて一撃で終わるように、手加減をなくすために、肩よりもさらに腕を押し上げていく、少しずつ氷のグローブがもち上がるにつれ、左手が不安定に揺れる

振り下ろす。


重いものが落下する速さと、それに相乗させた腕力が氷塊に致死の破壊力をもたらした




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




40: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/05(土) 00:54:32.66ID:VPhv9b2t0



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

アナスタシアの左腕は美玲の背中の中心、

丁度心臓を後ろから叩ける場所に命中していた


アナスタシア(ボット)「・・・?」


だが、手応えがない

クッションのようなものに止められている


柔らかい素材でできたもの

それは手袋だった


早坂美玲がライブで使っていた3本の爪をモチーフにした手袋

その爪は柔らかい素材で出来ていて、ありえないことにそれが重さ数キロの氷の拳を止めていた


だが、それはおかしい。

その手袋は美玲が腕の中に抱えていた

そして彼女は今うつ伏せに倒れているのだから、手袋は彼女の体と地面のあいだにサンドされているはずだ



アナスタシア(ボット)「.........なんです、それ...」




アナスタシアは美玲の心臓を背中から攻撃した



そして手袋は、なんの弾みでそうなったのかは知らないが

その攻撃を止めることに成功していた















美玲の心臓を体の前面から貫通し、背中側から飛び出ることで



ゲーム開始14分経過

早坂美玲 能力獲得


早坂美玲VSアナスタシア(ボット)

継続中

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



45: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/06(日) 00:33:48.84ID:ffNJVArm0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


チャプター
早坂美玲


仮想現実の世界において出血はない、骨折もない、肉体損壊などもってのほかだ

晶葉とプロデューサーによりそういう仕様になっている


だから美玲の肩を貫いてる氷の槍に血液や体液の類は付着していない

それにここで槍を引き抜いても体に穿孔が残ることはない

それはそれで不気味だが、もしそうじゃなかったらもっと洒落にならない光景になるのでそれを思えばマシだった


と、ボットでありながら人間臭い思考を辿り、アナスタシアが美玲を傷跡一つ残さず叩き潰すはずだった

だがどうだ、決定打となる氷の大槌は不自然に止められている

ピンク色の三本の爪が美玲の体を前から後ろに貫通し、あまつさえ自分の氷にまで食い込んでいる



見る限り、いやどう考えても布に綿を詰めて作られた爪だ

氷に傷をつけられそうな素材ではないし人体にめり込むようにも見えない

まさか本当に獣の爪にでもなったというのか



アナスタシア(ボット)「(抜けない、この爪?私の氷に刺さって...ます?)」

美玲「・・・・・・?」



いつまでも訪れない攻撃を疑問に思い美玲がうっすら目を開く

氷点下で無痛の槍と偽物の獣爪に前と後ろからえぐられてもなお未だ致命傷に至ってない

だが美玲にとって視覚的な衝撃は十分だったようだ、眼帯で隠されていない方の目を驚愕に見開く


美玲「ウ、ウチの爪、氷!?」

アナスタシア(ボット)「!・・・美玲っ!」


とにかく次激のために一旦腕を、だが左手は爪に取られている

アナスタシアは右腕を肩から抜いた、美玲の体が引っ張られる、だがそこに痕はない

引き抜いた拍子に指先の纏う氷柱が折れて砕けた

肩の楔が取れた拍子に逃げ出そうとした美玲に爪ごと左腕を押し付ける




この爪はまずい

アナスタシアはその直感で動いた



46: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/06(日) 00:35:12.88ID:ffNJVArm0



アナスタシア(ボット)「(右手を完全に氷柱にするまで十秒・・・ですが五秒、いや三秒で、します)」



握っていた右拳を開き、貫手にする

指そのものを氷柱にするイメージ

そのまま肌の表面だけに霜のように氷を薄く貼り付ける

氷ですっぽりと腕を包んでしまうのではなく、氷のコーティングだけに済ます事で攻撃準備時間を大幅に短縮した



美玲「おお、おい!?」

アナスタシア(ボット)「つぎこそ・・・!」



左手が重しになっている美玲はまだ動けない


氷を貼った右手は氷柱よりリーチが短い

だからアナスタシアは倒れこむように膝を着き、

そして右手を突き出した


揃えられた五本の指が空を裂く

今度は美玲も目を閉じてなかった、間近に迫る攻撃に戦慄し、指先がこわばった



アナスタシアの尖った指

美玲の震えた指



バキンッ!







先に相手に届いたのは美玲の「氷の爪」だった



美玲の体から突き出て、氷に食い込んだ爪が

氷を破壊すると同時にまるでネイルアートのように爪先に氷をくっつけたまま動いた

いやそれはただ単に氷の重さで爪の一本が倒れただけかもしれない


自分を固定していた左手の氷がいきなり砕けた瞬間、アナスタシアの姿勢が崩れる

しかも美玲のすぐそばに膝をついた態勢、氷の爪の攻撃圏内だった


アナスタシア(ボット)「ヤー...私の...こ、おり!?」


まるで自分自身の左手に殴られるような錯覚

もともと大きめだった氷塊、

亀裂が入り、尖ったそれが爪となって自分に向かってきた

美玲「もうなんなんだよ!」



47: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/06(日) 00:36:59.22ID:ffNJVArm0



自由になった左手を翻し、美玲の横から飛び退いた

その美玲も慌てて立ち上がった


アナスタシア(ボット)「よく分かりませんが、能力に救われましたね、美玲...」

美玲「能力・・・?ってなんだよこれぇ?!」


立ち上がった美玲が自分の体を見下ろして叫ぶ

手袋が二つとも、ひとつは心臓の上、もう一つはその少し横、右胸に埋まっていた

それを両方とも一度に引き抜く、普通体に異物が食い込んでいたら無闇に引き抜いてはいけないのだが、混乱した彼女の行為を咎める者はその場にいない


ガリッ ゴトッ



心臓に刺さっていたものを抜いた時、背中側に突き出た爪先にくっついていた氷がこそぎ落とされた。あれだけ強固に食い込んでいたものも外れるときはあっという間だ


美玲「はぁー・・・はぁー・・・」


爪の手袋を両手に持ったままここまでの怒涛の展開に乱れた呼吸を整える


それぞれ少しずつデザインの違う爪、共通点はどちらも3本であること

そしてそのどちらも美玲の体に一切ダメージを与えてなかったこと

美玲本人も背中に目を向けるまで刺さっている自覚がなかったくらいだからその点においてはアナスタシアの氷と似ていないこともなかった


無痛の氷と無害の爪



だがアナスタシアはそうは解釈しない


アナスタシア(ボット)「(あの、能力......見たことがあります)」


体を貫かれてなおノーダメージでいられる能力、その能力が似ているのはむしろ自分よりも・・・



アナスタシア(ボット)「(...のあ、)」



物体と一体化する能力を持つ高峯のあに物理的攻撃はほぼ無意味


槍も銃弾も全て飲み込まれる、だからといって肉弾戦を挑もうとコンクリや鉄と一体化すればそれも効かない


手袋の刺さっていた美玲の様子はそれを彷彿とさせた


アナスタシア(ボット)「(...ですが、まだ美玲の能力がそれと決まったわけでは、ありませんし...)」


左手を見る、そこに纏わせていた大玉の氷は叩き割られたようにえぐり取られ、手指がむき出しになっていた

あのなんでもないおもちゃのような爪モドキのせいで、だ。

アナスタシア(ボット)「(例えば、あの爪は、刺さった”物体だけ”を破壊できる、とか......それなら体は無傷だったこと、とも繋がります...)」


美玲を見ると彼女は既に手袋をはめていた。自分の体に刺さていたものとはいえさっき自分の身に起きたことからアレが武器になることを察したのだろう

しかし・・・やはり何度見ても破壊力のある装備とは思えない



48: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/06(日) 00:37:51.29ID:ffNJVArm0



美玲「ガルルルルルル・・・・・・」


アナスタシア(ボット)「............」


アナスタシアからは美玲がどういう思考の末、逃亡から戦闘に意識を切り替えたのかはわからない

あの爪が武器になると確信したからか、使いこなせる自信があるからか、すでに能力の全容を把握したからか


なんにせよ、戦わなくてはいけない


アナスタシア(ボット)「......гвоздь 」


水晶のような透き通った物質が指先にくっつく、そこに更に氷がまとわりつく

だらりとぶら下げた両腕。そこから伸びる指全てに、鍾乳洞のように少しずつ下へ下へと氷がコーティングされていく

指の一本一本が細長い氷柱になっていく、最初のものよりずっと細く、ずっと脆そうだ


アナスタシア(ボット)「私も......爪、です」


出来上がったのは十本の細長い氷爪

その本数もリーチも美玲のものを上回っていた



美玲「が、が・・・がおおおおおおッ!!!」


一瞬ひるんだ美玲がそれでも果敢に飛びかかってくる


狼を模したおもちゃの爪2×3本、鶴の嘴のようにピンと伸びた氷の爪10本

装備”だけ”見ればアナスタシアに分があった


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


よくわかんないけどこれがウチの武器なんだ

手袋の中身がぎゅうぎゅうと指を圧迫してくる

この爪で自分の体を触ろうとは思わない、また刺さったらなんかヤだし


地面を蹴っとばす


アーニャに飛び込んでいく




美玲「が、が・・・がおおおおおおッ!!!」


両手を振りかぶる

まだノーリョクとかちゃんと使える気はしないけど

多分、さっきみたいにぶっ壊したりなら普通にできるんだッ!


パキンッ


ウチの左手に手応え。アーニャの氷が折れていた

攻撃に合わせて持ち上げた右手、その小指についていた氷の爪が指を離れてくるくる回って飛んでいく



49: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/06(日) 00:39:17.81ID:ffNJVArm0



アーニャはそっちを見もしない、ただ右手首を回しただけ、

それだけで残った四本の爪が弧を描きながらウチを狙う

爪が長いから手首を動かすだけでもウチに当てられるんだ!

目を瞑って反対の爪をむちゃくちゃに振り回す、また手応え。パキパキって二回も

でも急に手が動かなくなった、空中でぴたっと釘付けにされる

ウチは目を開けた


アーニャの左薬指から伸びた爪が手首に刺さってウチの手の動きを止めていた


感覚がないから目で見るまでわからなかった

美玲「・・・やめ、ろッ!」

アナスタシア(ボット)「ニェート...やめません」

反対の手首にも爪が刺さる、今度はアーニャの右親指の爪

痛くないけど動けない、串刺しにしている爪が長いせいでウチとアーニャは近づけない

アーニャの爪は残り7本

その内の2本がこっちを向いた、左右の中指がゆっくり曲がっていきその先端についた氷がウチに狙いをつけてる

アーニャは指を動かすだけでウチを狙えてる

ウチは手首を固定されたまま足を踏ん張ってアーニャ体当たりしようとするけどそれも食い止められる


美玲「んぐぐぐぎぎぎ・・・」

アナスタシア(ボット)「力押し・・・ですか・・・!」


ウチの手首を通った氷の爪にヒビが入っていく

アーニャは攻撃を一旦やめてウチに対抗してきた、押し合いだ

でもウチの体はちっさいからちょっとずつ負けてきた

でも二人分の力で挟まれた氷の爪はどんどんヒビが増えてきてる


美玲「がるるるるうう!!!」

アナスタシア(ボット)「・・・・・・!!」


氷が割れてもウチの爪がアーニャに当たるかは分かんない

それくらい氷の爪は長いんだもん



50: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/06(日) 00:40:43.32ID:ffNJVArm0



靴が地面に擦れる音


二人で歯を食いしばる音


ウチとアーニャをつないでる氷がゆっくりひび割れる音



ぴきぴきぱりぱり


この音が次の動きまでのカウントダウン


爪ごと拳を握る、刺された手首にも力を込める




アナスタシア(ボット)「...っ!?」



アーニャもうちを抑えてる爪に力を込める、でも爪が長くて拳が握れないから力が込めにくそうだ



美玲「がるうぅぁあ!!」











ぱきっ!







溜めに溜めたウチの腕の力が自由になった





51: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/06(日) 00:41:09.35ID:ffNJVArm0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

早坂美玲は直進する

突き出した両手をアナスタシアに向けて

美玲「がおおおッ!!!」


アナスタシアは一歩後ろに下がった

そして右足を振り上げた

美玲と同じアイドル、若林智香がチアリーディングでやるように、足を高く真上に


パキパキ



右足の踵には既に氷のナイフが作られている



美玲は突き進むつもりだった、だから氷の楔をへし折る気で突貫している

アナスタシアは迎え撃つつもりだった、だから氷の楔をへし折られても良かった

仕込んだ刃物は研がれていたのだから

二人で力比べをしている間に着々と踵を尖らせた氷で覆っていたのだから



アナスタシアが一歩下がったことでできた間合いに美玲が踏み込む



右足を振り下ろせば脳天に氷のナイフが突き刺さる





アナスタシア(ボット)「...ふっ!」







だから振り下ろした



52: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/06(日) 00:42:06.37ID:ffNJVArm0




わざわざ氷の爪を十本も用意したのは囮だ。質より量のブラフ

どうせ美玲の爪で破壊されてしまうのなら最初から脆くていい、数だけ増やせばそれで事足りる



天に向けて持ち上げられた白い脚がしなやかに動き、

氷の刃が落下するより速く美玲に迫る



それは、美玲にとって雷のようだった




美玲「   」


アナスタシア(ボット)「   」





破壊音





アナスタシアの足は美玲の脳天をかすめ、その腕に振り下ろされていた



氷が砕ける音、アナスタシアのではない





美玲の”爪に貼り付けられていた氷”が砕けた音だ






まるで磁石で砂鉄を集めたように美玲の爪には今まで砕いた氷がくっつき、

その攻撃を硬く、強く、リーチを長くしていた


アナスタシア(ボット)「げほっ!......シトー...?」

美玲から距離を取る、一歩ではない、1メートル以上、3メートル距離を置いた



美玲「・・・どうだ!!い、痛くないけどビックリするだろッ!!」



アナスタシア自分の体を見下ろす






腹に刺さった氷柱の中に銀髪と碧眼が映りこんでいた



53: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/06(日) 00:43:10.82ID:ffNJVArm0



踵のナイフが届く前に美玲の爪が

いや、爪の先に貼り付いた氷柱がアナスタシアに命中していた

足より短かった分、至近距離では腕に分があったようだ


いたくない、いたくない、何も感じない


アナスタシア(ボット)「(...大体分かりました)」


氷柱が腹から滑り落ちる、地面に叩きつけられて三つに割れた

美玲は腕を蹴り下ろされて地面に倒れている


アナスタシア(ボット)「(爪は氷をただ破壊したわけでなく......おそらく食い込んだところから氷を分解して、爪の”パーツ”にした...)」


そしてそれが通用するのが物体だけだったのだ、体にめり込んでもそれは分解できないから無害だった

アナスタシア(ボット)「(爪自体は本当にただの飾り、だから能力がその強度を補って......)」


ベギギ、ボゴッ


美玲「ぐるるる・・・手が重いい!!」


アナスタシア(ボット)「......アー...」



美玲が立ち上がろうとする

手袋は工場の床に埋まっていた、さっきの踵落としのせいで

それを引きぬこうとしていた


ボゴゴゴ、バギン、ギギギギ


コンクリらしき床に亀裂が広がる


もちろん14歳の腕力で砕けようとしているのではない

美玲の手袋の能力が発動しているのだ

コンクリを剥がして、爪を強化するパーツの形にしている

アナスタシアの左手の氷で作った氷の爪のように


美玲「んがああ!!」




亀裂が弾け、床がえぐり取られる



えぐり取られた部分は小さな少女の両手に凝縮されていた




アナスタシア(ボット)「...強そう......ですね?」



54: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/06(日) 00:45:27.99ID:ffNJVArm0



その手袋に、最初のおもちゃじみた印象はない、

重量を持った灰色の破片がバスケットボール大の拳になり、そこから骨組みの鉄材が鋭く飛び出ている

釘バットよりも大きくて凶暴な見た目、脅しではない殺傷力が見て取れた


少なくとも氷で作った盾で防げる質量ではなさそうだ

アナスタシアは次の動きに迷う、逃げるか?どこに?闘う?氷と鉄同士で?


美玲「さっきのお返しだし!!」


美玲が再度突っ込んでくる、さっきの失敗から学んでいないのか、だが今度は失敗しなさそうだ

アナスタシアは足に力を込める、避けるために



アナスタシア(ボット)「......?...!?」


ぐらり


視界が揺れた、腰に踏ん張りが効かない


アナスタシア(ボット)「(さっきのおなかへの一撃が...思ったより効いてた......?)」


痛みも感覚もないと致命傷が分からない、自分の能力が裏目に出た結果

美玲によるまぐれの一撃がアナスタシアの足を一瞬だけ引っ張った


ほんの一瞬


美玲の両腕の先、コンクリから飛び出した太い鉄棒が振り下ろされるまでの時間だった


アナスタシア(ボット)「(氷は___)」


____自分の身をコンクリから守れるほどの強度はない


























みく(ボット)「ねこぱんち☆」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



57: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/07(月) 00:53:26.31ID:H7P1bpo60



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
早坂美玲


無我夢中とかいうヤツでアーニャに両手を突き出したとき、

ウチの両手には変なのが付いてた

そのまま突き出すとアーニャのお腹に刺さって、でもウチも踵落としされてそのまま突き抜けたりはできなかった

ウチの爪は今度は床に埋まりこんだ、しかも抜けない

前を見上げたとき、アーニャに刺さった氷柱を見て、初めてウチは自分の爪にくっついてたのがアレだったと分かった


美玲「(え?・・・ウチの爪になんでアーニャの氷柱が・・・?)」


でもそんなの考えてる余裕なんてない

ウチの頭にあったのは


美玲「(もっとデっかくて、強そーなのを・・・!!)」


踵落としのせいで無理やり頭が冷やされた

ウチはこの手袋だけじゃあ何もできない

さっきの風景を頭に描く

爪の先っぽに接着剤で付けられたみたいになってた氷のトゲを思い出す


美玲「(刺さるときはスポッと刺さるのに抜けない!!)」


手袋が何かとくっついたセでウチの手が動かない



美玲「ぐるるる・・・手が重いい!!」



地面に切れ目が入ってくる、ビシビシって音が聞こえる

でもウチの腕の力のおかげという感じはしない


美玲「んがああ!!」


地面とウチを無理やりつないでたモノが断ち切れて、勢いよくウチの両手が跳ね上がった



58: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/07(月) 00:54:11.12ID:H7P1bpo60


美玲「(また・・・くっついてる!!)」


ウチの両手はゴツくて重たそうな鉄とかと合体してた

うまくやれた!

アーニャを睨む、さんざん怖い思いさせやがって!!

いやいやいや!!!別に怖くなんてなかったしッ!言ってみただけだし!



美玲「さっきのお返しだし!!」



ずっしり重たくなった両手に振り回されて、フラフラした走りだったけどアーニャに向かって走って

アーニャが近づいてくる、綺麗な目がこっちを見てた

そのデカいのを一気に振り下ろす



みく(ボット)「ねこぱんち☆」


それを横から飛んできたヤツが邪魔しやがったんだッ!

上から下への一直線の動きのはずだったのに、それを思いっきり横に押し出されたウチはその場でくるくる独楽みたいに回りそうになる

ウチの右手は丈夫だから無事だったけどその重さに振り回され転びそうになる



みく(ボット)「にゃあん!危機一髪のとこだにゃ!」



ウチの右からすごい速さで体当たりみたいなことしてきたのはみくだった

さっきまでいなかったし、足音もなく一気に近づいてきてた

今は猫耳と尻尾の飾りを揺らしてアーニャの側に立って、心配そうにその顔を覗き込む

よく見たら少しだけアーニャの顔色が悪い



アナスタシア(ボット)「アー...すいません、みく...すこし、急所をやられました」

みく(ボット)「だいじょーぶにゃ、みくも来たからには安心にゃよ?」

アナスタシア(ボット)「...ところで、どうしてここに...?...ここの、プレイヤーの相手は私のはず、です」

みく(ボット)「ん~、のあチャンが、何かを見たらしいんだけど・・・みくよくわかんないにゃ」



59: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/07(月) 00:54:46.44ID:H7P1bpo60




みく(ボット)「にゃ?」

美玲「がぁあおぉおおッ!!!」


二対一、ウチはそれでも突っ込んだ

いきなり襲われるし、ウチの爪が変なことになるし、ここに来てからよく分かんないことばっかだ

プロデューサーはゲームだとかなんとか言ってた。手を抜いたら多分良くないことになる、それぐらいは分かった


みくはアーニャの肩を抱えて後ろに跳んだ、びっくりして飛び退いた猫みたいな動きでいきなりウチと離れていく

いくらアイドルがレッスンで鍛えてるからってあんなアクション映画の主役みたいな動きはできない


そのまま後ろ跳びで壁の真ん中らへんの高さのベルトコンベアに飛び乗った、その上を運ばれていく


みく(ボット)「にゃはははん!垂直跳びにゃ!」

美玲「に、逃げるのか!?ずっこいぞッ!」


アナスタシア(ボット)「...みく...?美玲は、どうするんですか...?」


ベルトコンベアの真下まで慌てて走っていったけど、みくのいるとこまでは高過ぎて爪も届かない

ゴトン、ボロボロ

ウチが走ってる間に爪にまとわりついた部品が取れていった、ウチの足跡をなぞりながら破片が散らばる

接着剤が剥がれたみたいだと思った、肩が軽くなったけど武器がなくなったみたいで心細くなった


みく(ボット)「アーニャはみくと一旦離脱にゃ」

アナスタシア(ボット)「...シトー...?」

二人がコンベアの斜面を上がってどんどん遠のいていく、何か話してるけど聞こえない



美玲「うぐぐぐ・・・いきなり襲ってきて逃げるとか・・・!」



みくたちはベルトコンベアからさらに上の方にあるパイプとかに飛び移って天井に向かっていく

工場の壁のそばにはコードやボタン、おっきい箱がいっぱいあったから壁は登れそうだった

でも登れたとしてもウチの体力と腕力じゃあ追いつけそうもない、




美玲「(・・・登る、か・・・)」








壊す?



60: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/07(月) 00:55:30.17ID:H7P1bpo60


ウチはその思いつきを実行に移した。

目の前にある壁に思いっきり両手の爪を突き刺す

何の抵抗もなく柔らかいはずの手袋の爪先は埋まりこんだ

ウチが壁に突き立てたトコを中心として勝手に亀裂が走り出す

手袋に包まれたウチの手にゴツゴツものが寄ってくる

亀裂は落ちてきた雷を下からなぞるみたいにジグザグしながら工場の天井に広がっていく

コンクリがさっきよりずっと大きく抉れそうだ

みく(ボット)「げっ!?っにゃ!」


壁から鉄の板っきれとかボルトが弾き飛ばされてウチの上に落ちてくる

工場の壁中のあちこちを固定してる金具がゆるくなって、落っこちていく

アナスタシア(ボット)「!? 揺れて、ます...!」


美玲「がるるる・・・は・ず・れ・ろぉお!!」


ケーキを荒く切り分けるみたいに亀裂の入った壁が崩れ始める

完成した巨大ジグソーパズルをひっくり返したみたいだった

今、壁から生えてるパイプを登ってたみくたちが一緒に落ちてくる

ウチの頭の上にもいっぱい瓦礫が降ってきてる

逃げようとしたけどウチの両手がそれを止めてきた


美玲「爪・・・?」


今度の両手の材料はコンクリートじゃなくて鉄だった

黒っぽくて、鈍く光ってて、さっきのコンクリートの爪より小さいのにそれよりも重たい

壁の中の一部、水道管とか、ネジ、ボルトがギュウギュウに集められてる

ウチはそれで頭を覆い隠した、上から降ってきたガレキがいっぱい衝突する

ガンガンガンガンガン、鍋をたたいたみたいな音が頭のすぐ上で鳴り続ける


美玲「む!!が!!あ!!」

みく(ボット)「にゃあああああ!??」

アナスタシア(ボット)「...おち、る...!!」


爪の隙間から見上げると二人がバランスを崩してパイプもろともこっちに落ちてくるのが見えた

みくがさっきやったすごい速い動きならあの高さからでも着地できるだろうけど、一緒に落ちてくるいろんなものの下敷きになるかもしれないし

でもウチも逃げないと


ガンガンって音が止まった隙にウチは鉄とかガレキの雨が降る壁から逃げ出す

両腕の先が重くて肩がちょっと痛くなった気がした


美玲「どうだ!!」

「ウチだってやればできるんだモン!!」

走りながら壁の方を振り返ってウチは叫ぶ


ウチの勝ちだろ!コレは!



61: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/07(月) 00:56:09.91ID:H7P1bpo60





~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

手、腕

右手 左手

右腕 左腕

右手 左腕 右腕 左腕

右腕 左手 右腕 左手

右手 左腕 右手 左腕

右腕 左手 右腕 左手


それらが固く握り締め合っていた


友情を確かめる男たちの握手のように

平和条約を締結した大統領たちのように

アイドルとの握手会で感極まったファンのように



のあ(ボット)「みく、詰めが甘すぎるわ...爪だけに...あら?これは私の芸風じゃあ...ないわね」


今にも工場の床に滝のように降り注ごうとしていたガレキの雨

大粒の流星群にも似たそれらが、映像の一時停止のように






全て、空中で静止していた





わずかに残った壁の一部や、空中にあるガレキ

その中からまるでイソギンチャクの触手のように生えてきた腕たちによって






美玲「はぁああ!?キモチわるッ!!」


至るところから出現した腕は互いにその手を握り合い、落下しようとする重力と渡り合っている

大きなガレキをつなぎ合わせて支える様はまるで不細工なジャングルジムだ。


そこにみくとアナスタシアも掴まっている



みく(ボット)「!!にゃあ、たすかったにゃ!」

アナスタシア(ボット)「...ダー、のあ、そこにいたんですね...」



ベコベコと工場の天井がめくれ上がる、そこにできた穴の淵から高峯のあが美玲を見下ろしていた



62: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/07(月) 00:57:17.68ID:H7P1bpo60



美玲「げっ・・・三人目、ってやっぱり逃げる気だろオマエらッ!!」


工場の天井は高い、美玲とのあの直線距離は十メートル近く離れている

みくがアナスタシアを担いで天井の穴を飛び越えるとのあのすぐ隣に着地した


美玲は完全に逃げ切られてしまった



美玲「ぐるるるる・・・!!」


のあ(ボット)「.........もう少し、強い輝きを持った星でいて欲しいところね。」

「私たちがいずれ相手にしなければならない...禍々しい存在に備えるためにも」



アナスタシア(ボット)「シトー...のあは、何を言っているのでしょうか......みく、あなたは知ってます?」

みく(ボット)「うんにゃ、みくもまだちゃんと聞いてないのにゃ」



のあ(ボット)「さあ、行きましょう...こうしている間にも星と時は巡っていくのだから」



美玲「あっ!!待てコラーッ!!・・・ああもう!!」




穴の淵から三人の姿が見えなくなった、美玲は急いで出口の方に走る、さっきは氷柱に封鎖されたが今なら自分の能力で開けられるはずだから





この瞬間、逃げる者と追う者の立場が逆になっていたはずだった



63: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/07(月) 00:58:35.31ID:H7P1bpo60



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ものの数秒で工場から離れた三人たちが次の目的地への道中、言葉を交わしている


アナスタシア(ボット)「アー、のあ、今回はすいません、でした私の、失敗で...」

みく(ボット)「アーニャ・・・大丈夫にゃ!プレイヤーはまだまだいるんだし美玲チャンはあとでリベンジすればいいんだにゃ!」

アナスタシア(ボット)「はい、今度は、負けません」






のあ(ボット)「いいえ、アーニャ......再試行という行為は確かにデジタルの特権だけれど」



「この世界では”今度”なんてないわ」







その言葉はひどく冷たく、有無を言わさぬ強さをもってアナスタシアに届いた

アナスタシア(ボット)「!......そう...ですか」



名誉挽回の意志を否定されたと感じ、アナスタシアが俯く


みく(ボット)「え、それはアーニャにひどくない?のあチャン」

のあ(ボット)「私はアーニャのことを責めているつもりはないわ」


反駁するみくにのあが平然と返す、視線は前を向いたまま、工場を振り返ろうともしない


アナスタシア(ボット)「...?」

みく(ボット)「にゃ、どういう」








のあ(ボット)「こういうことよ」


パチッ


のあが指を一度鳴らした



そして背後から三人の背中に叩きつけられる倒壊音

ダイナマイトが何百発と爆発したような轟音

ガレキの滝などという生易しい音量ではない



アナスタシア(ボット)「!?」

みく(ボット)「なんや!?」



64: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/07(月) 00:59:51.93ID:H7P1bpo60





二人が振り向く






















美玲のいた工場がペッしゃんこになっていた















ゲーム開始15分経過

早坂美玲

VS

高峯のあ(ボット)&アナスタシア(ボット)&前川みく(ボット)


ボット側の戦闘放棄により続行不可能



67: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/07(月) 23:37:47.72ID:H7P1bpo60



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~










チャプター
神崎蘭子









~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



68: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/07(月) 23:39:04.09ID:H7P1bpo60



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


トタタタタタタタタタタタ





神崎蘭子(ボット)「ククク...我こそは幻夢の住人にして、汝の影なり...」





蘭子(ボット)「この場にて、其の方を討たせてもらうぞ!」




トタタタタタタタタタタタ


照明は電源が切られている、辛うじて飾り窓のようなところから外の光が降り注ぐ

その施設内は三階建てだったが上から下までを見通せる吹き抜けがあり、そこを通じて一階にも明暗をつくり


水たまりほどの大きさの、ほんの少しの光の円が規則的に並んでいた


蘭子(ボット)「この万物の集う要塞こそ墓標にふさわしい・・・!」


影に隠れた部分ではマネキンが各々好きなポーズをとっている

別の場所には統一性のない色とりどりの菓子類がパッケージごとに積まれ、

また別の方向に視線を移せばケイタイショップの店頭に陳列されたスマホのモデルを確認できただろう



トタタタタタタタタタタタタタタタタタ


そこはデパートのショッピングモール

壁一面に所狭しとジャンルを問わず店舗が敷き詰められた施設

だが人口密度は限りなくゼロ、営業準備すらされていない、光源は窓からの細い明かりのみ



そこで活動しているのもたった二人だけだった



69: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/07(月) 23:39:59.68ID:H7P1bpo60



蘭子(ボット)「さて、何処まで、そして何時までその逃走が、許されるか、拝見させてもらおうではないか!」



数少ない光に照らされたその二人のシルエットは全くの同一

同じような歩幅と同じような腕の振り方で、一人が逃げ、もう一人が追いかけている



一つ追記しておくと追う者の胸の一点は赤く点灯しており、その走行に合わせて真っ赤なラインを闇に描いていた

ボットのバッジだ。どうやらプレイヤーとボットの戦闘が始まっているらしい



蘭子(ボット)「・・・と・・・時の針は、止まらず・・・我もまた・・・」



トタタタタタタタタタタタタタ



二人の足音が吹き抜けを反響する





蘭子(ボット)「し、しばし待たれよ・・・し、しば」




横方向に広い施設の中で追いかけっこが続く





蘭子(ボット)「・・・・・・しば・・・」




70: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/07(月) 23:41:50.99ID:H7P1bpo60




ちなみに、



その逃走劇が始まってからもうすぐ十分が経過しようとしていた








蘭子(ボット)「ちょ、ちょっ・・・いい加減に、ちょっと・・・止まってよぉ・・・!」





神崎蘭子「ド、ド、ドッペルゲンガー怖いぃ!!(げに恐ろしきは我が影よ!!)」





トタタタタタタタタタタタ








ゲーム開始10分経過

神崎蘭子VS神崎蘭子(ボット)

開始延期

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



71: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/07(月) 23:42:23.21ID:H7P1bpo60


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~







チャプター
十時愛梨








~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



72: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/07(月) 23:43:28.09ID:H7P1bpo60


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

人はいつ容赦をなくすか


どのようにして戦うことを受け入れるか


どのあたりで武力を振るうことに慣れるか



渋谷凛は思い出のために

北条加蓮は自分を貫くために

佐久間まゆは仕事の成功のために

緒方智絵里は報恩のために

小関麗奈はプライドのために



引き金を引ける。能力の使用に容易く踏み切れる

もちろんそれは仮想現実空間をフィールドとしているという前提においての話ではある

この世界ではどれだけ傷つこうと現実に戻ればリセットが効く

それは匿名の掲示板ならば普段言えない、あるいは言わないような言葉を書き込めるのと似ている

とにかく、その事実があるからこその実力行使、



取り返しがつくから、やりすぎていい



早坂美玲を始めとした他のプレイヤーの戦闘行為の底には少なからずそういう考えがあった






だが、これはあくまで例だ

人が引き金を引くに至る理由は一つ二つに限らない











十時愛梨「えっ、これ、私のせいですか?」



73: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/07(月) 23:44:24.16ID:H7P1bpo60


 

十時愛梨は引き金から指をどける


おそるおそるといった様子で視線を手に持ったエモノから足元の人影にスライドさせた


そこで仰向けに倒れているのもまた十時愛梨

豊満に突き出た胸の頂点で赤いバッジがほのかに光っている、ボットだ。



プレイヤーの愛梨は両手で保持していた鉄砲を下ろす

その銃身は長く、弾丸を装填するようなポンプが備え付けられている

片手で扱うには明らかに持て余すサイズで、内蔵されている弾となるモノがずっしりと重い



愛梨「ああ、ど、どうしましょう?でもこれって倒しちゃって良かったんですよね?」




誰にともなく呟く、何が起きたのかわからず戸惑っているようだが





ほとんど何の迷いも躊躇もなく自分の映し身に向けた鉄砲の引き金を絞ったのは間違いなく彼女だ




74: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/07(月) 23:46:04.96ID:H7P1bpo60



倒れたボットが霧のように消えていく、数秒後、そこに残ったものはなかった



愛梨「あれ?消えちゃいましたよプロデューサーさん!?・・・って、いないんでしたか」

「うーん、じゃあさっきの人、晶葉ちゃんの言ってたボットだったんですね」



ひとしきり戸惑ったあと愛梨は鉄砲を携え、どこかへと歩き始めた


愛梨「う~ん、でもこんな簡単にやられちゃうのかなぁ、ボットって」




手に持った武器を見下ろす



ちゃぷん


歩くのに合わせて中に詰まった液体が揺れた













愛梨「水鉄砲なのに」







『銃器に人を傷つけるほどの威力がない』


それが、十時愛梨が容易く引き金を引けた理由だった



幸い、水鉄砲にしては比較的強力だったため練習用ボットには効果があったようだが



ゲーム開始10分経過

十時愛梨(ボット)消失

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



75: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/07(月) 23:46:41.59ID:H7P1bpo60


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

カラン

コロコロコロ・・・

コツン


ガラスの空き瓶が硬い床を転がっていく

やがてその先に置かれていた同じ空き瓶にぶつかり止まった

回復アイテム、ドリンクの空き瓶がまた無造作にほうられたらしい



その部屋はそこそこ広いのだが、窓も閉じられ照明もつけず真っ暗、

一応どこからか漏れてくる炎の赤さに照らされてはいたが部屋の中を立ち歩くには不十分だ



?「・・・・・・」



だがその人物は動く必要はなかった、ただ目の前に置かれた装置の中から赤々と覗く炎を見つめていればいいのだから


まばたきもせずその装置を眺める。その中は高温で触れることはできないし、触れる気もない

というか自分の作業を自分で邪魔する気はない




?「・・・・・・」




小さな丸椅子にちょこんと腰掛けた少女、そのまん丸の瞳が闇の中にうっすらと照らされた

胸元には炎のように赤いバッジ



76: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/07(月) 23:48:09.41ID:H7P1bpo60




?「・・・まだですかー?」


別に今ここにいない仲間にかけた言葉ではない


一人つぶやきながら足をパタパタとゆする


カンッ

カラカラカラ

コツン


その足に蹴られ、また別の空き瓶が部屋の奥に転がっていった

暗闇の中にさっきの瓶にぶつかって止まる


?「・・・・・・ん、誰か来ましたかねー」


部屋の外、どこか遠くで足音が聞こえた気がして彼女は椅子の上から立ち上がった

彼女が前から立ちのいたおかげで装置から漏れる光が部屋の奥まで届き、

空き瓶全体が赤く照らされる


なんてことない空き瓶だ、その中身によってプレイヤーが体力を回復できる代物

ただその中身がないというだけの話





問題とすべきはその本数





最初転がっていった空き瓶

それがぶつかった空き瓶

その隣に倒れている空き瓶、そこに折り重なっている空き瓶、その向こうに積まれている空き瓶

etc、etc...




夥しい数の回復ドリンクの空き瓶が天井に届きそうな勢いでピラミッドを作っていた




今にも崩れてきそうだし、もしそれがだれかの上に崩れたら大ダメージは免れない、そんな量だった

まるで軍隊かどこかに向けた支援物資をまるごと盗んできたような有様だ



77: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/07(月) 23:49:33.50ID:H7P1bpo60



?「・・・気のせいですか」



椅子の上に腰を戻す。また爛々とした目で装置を眺める

「出来栄え」を期待する、美味しく出来てるだろうか






ボットたちは自分にあるルールが課せられていることを知っていた





『アイテムの直接的破壊を禁ずる』




武器の使用、破壊は認める

だがプレイヤーが回復アイテムを使ってしまわないようにするのはルールとして禁じるというものだ


回復キャンディを砕いたり、ドリンクを下水に流したりなどの行為は禁止

そして何よりキーアイテム

能力の開花を恐れ、これを破壊することもボットのプログラムは許可しなかった


あまりプレイヤーを不利にしすぎないためにと用意された、初期から能力を使える通常ボットたちへの数少ないハンデのルールだ












そして彼女に与えられた能力はそのルールを覆す









?「・・・・・・」



壁際にうずたかく積まれた空き瓶のタワーがその証左

そのビンの中身は現在進行形で、その装置と彼女の能力によって破壊されている



破壊され、別のものへと変化している



78: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/07(月) 23:54:40.10ID:H7P1bpo60



?「ドリンク結構たくさん使いましたけど・・・これ、美味しくなりそうですね」



メラメラと燃える炎の音色が少女の耳をくすぐり続けている

部屋中に食欲をそそる良い匂いが漂い始めてきた



その匂いにうっとりと鼻をひくつかせ、少女は近くの机の上に目をやる


?「さて、こっちは大丈夫そうですし___」


机の上に置かれているのはドリンクとはまた違う何か

闇に紛れてよく見えない





?「___これ終わったら、このキーアイテムもあたしの能力で処分しちゃいましょうかね」






ゲーム開始15分

報告事項なし


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



79: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/07(月) 23:59:27.25ID:H7P1bpo60


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

今度の敵は誰でしょう


次回開始するチャプターを選択してください
安価+3下

1、神崎蘭子
2、十時愛梨


>>66
そりゃこの先、住宅街壊滅させる人ですから・・・




80:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/08(火) 00:01:04.40 ID:9T7wGqXjo

1



81:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/04/08(火) 00:01:36.22 ID:nJWLRPvd0

1



82:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/08(火) 00:03:05.51 ID:TVo139qW0

2



83:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/08(火) 00:15:11.62 ID:B8kdv+zDO

1



84: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/09(水) 00:39:06.86ID:PKx/2Br40


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

チャプター
十時愛梨


ちゃぷん


そういえば、どうしてこの水鉄砲に最初から水が入っていたんでしょうか?


自分の身長の倍ほどある高さの棚に挟まれた通路を駆けながら疑問を抱く

棚の中にもまた水鉄砲、その隣には浮き輪

向かいの棚にはぬいぐるみが小奇麗に並べられてますね


ここっておもちゃ屋さん?


電気が点いてないのでうっすらとしかわかりませんがものすっごい高い棚ばっかりです

さっき思わずこの水鉄砲を手にとったのもこの棚のうちのどこかでした


でも、どうにも真っ暗な足元と事あるごとに立ちはだかる棚で思うように進めません

このおもちゃ屋さん、そこそこおっきいんでしょうか?


ガシャン!

愛梨「きゃっ!」


通路を曲がろうとしたのですが暗くて曲がりそこねてぶつかりましたぁ・・・

鼻がちょっぴり痛いです

いたた・・・

・・・?



愛梨「ひゃっ!?」




薄闇の中、見上げた棚の表面が生き物のみたいにうぞうぞー、ってなってますよ!




あわてて後ろに下がった拍子に水鉄砲の引き金を引いちゃって、勢いよく飛び出た水が命中しました

するとうぞうぞしてたのがいくつか取れて床に転がり落ちました

よく見るとそれはどれもおもちゃの人形でした



うーんと、棚に宙吊りにされてたからぶつかった時に一斉に揺れ始めて、暗かったからそれが変なふうに見えた、ってことでしょうか・・・



変な勘違いしちゃったなぁ



85: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/09(水) 00:40:29.00ID:PKx/2Br40


改めて黒々とした壁、いえ、暗くてよく見えない棚をじっと見つめます

うん、やっぱりただ吊られたおもちゃが揺れているだけですね!

下からゆっくりと、目線を上げていきます





そんな風に私が一人納得していた時でした





棚の上から大きな箱が私の上に落下してきたのは






真上を見上げた私の真正面で、


半分だけ開いた箱の中身にはぎっしりと何かが詰まっています


暗くて見えないはずだったのに中身が薄明かりを反射して、


何本もの、硬そうな瓶が




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



86: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/09(水) 00:41:04.27ID:PKx/2Br40



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


足音はしない

だが規則正しく素早いリズムを保って走り続けている

彼女は前を見据える


??「!」


彼女の目が何かを捕捉し、鋭く細められた



たんっ



一度だけ足音が聞こえた、彼女が足を強く踏み出したのだ

そのまま流れるような動作でベンチの影に隠されていたドリンクの瓶をひっ掴むと、また足音なく駆ける



??「(これで、何本目でしょうか・・・)」



肉食獣を思わせる俊敏さで回復アイテムを奪い去った彼女の片手には紙袋が抱えられている

その中には先と同じ回復ドリンク、銃弾、刃物、その他諸々の、所謂アイテムが無造作に放り込んである

ここまでの道中で彼女が集めてきたものだ




??「(他のボットの方々は今頃、各々が能力を奮いつつ独自の兵法にてプレイヤーを討っているのでありましょうな)」




視線を絶えず巡らせながらも足の動きにブレはない

照明もない通路の中、彼女の姿はシルエットでしか見えない





だが彼女の目には闇の中でも視えるものがあった




??「(あのマネキンの装飾品・・・)」




「(キーアイテムですね)」



87: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/09(水) 00:42:02.06ID:PKx/2Br40




彼女の目にはアイテムだけがぼんやりと光って見えていた




彼女の走っている周りには雑多なものが陳列されている

だがそれらはあくまで飾りのオブジェ、他のマネキンの衣装もまた布製のオブジェクトでしかない




彼女の能力はそこに紛れたアイテム、つまり何らかの効果を持った物体を浮き彫りにする





??「(この術があれば、いずれはプレイヤーに利するモノ全てを先に見つけ出し、ボット側の手に収めることができますな)」



直接戦闘向きでなかったのはやや惜しいが、この能力ならボット達の勝利を影から支えることができる


模擬戦闘、このゲームの表舞台に立つことはなくとも、その陰であることができる


むしろ自分にぴったりの能力ではないか


だから彼女はその広い施設内を隈なく移動し、一つの漏れもなくアイテムを回収しようとしていた



駆け足のルートを折れ、暗がりに立ちすくむマネキンの頭に乗った装飾品をかっさらう

そして彼女の足は止まらない、流れるように紙袋の中身を増やしていく



??「(ややっ?)」



視界の隅に見逃してはならない仄かな光を見出す

彼女の能力が見抜いたアイテムの塊だが





??「(ドリンク・・・いやそれにしても多すぎる、箱詰めではありませんか・・・)」



88: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/09(水) 00:42:49.84ID:PKx/2Br40



今まで見つけてきたものは全て非常灯のような微かな輝きだったが、今度のものはそれらと違い

それらがいくつも寄せ集まって強く光って見えた

もちろんそれはそう見える能力を持つ彼女だけに許された光景だが


??「(これぞ大収穫)」



その”光る箱”を見上げた、何やら高い場所に置かれているようで走りながらでは取れない


だがプレイヤーならそもそも見落としていただろう、あらためて自分の能力の有用性を確信する


身軽な彼女は一旦荷を置き、近くに手を引っ掛けられる箇所を探りつつ上に登り始めた


垂直な壁かと思ったらどうやら棚らしい、指をかける所には困らなかった


それに人一人の体重にもグラつかないくらいしっかりと床に固定されていた







??「(・・・ふう)」


容易く棚の頂上、外からはそうは見えないが確かにドリンクの詰まった箱に手が届く




??「(さて、どうやって下まで下ろしましょうか。どうせボットにはアイテムの破壊が出来ませんし、ここから叩き落すのもありですが・・・)」

「(・・・そういう荒っぽいのは最後の手段ですね、ここはもっと隠密に、静かに遂行すべき場面で)」




タタタ・・・

静かに、気配もなく思考に耽る彼女を邪魔したのははっきりと響く足音、場所も近い



??「(むむ・・・何奴)」





だが彼女は焦らない、気配は完璧に消せているのだ、それに自分がいるのは天井近くまで伸びた棚の頂点

この暗さで見つかる道理は__



89: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/09(水) 00:44:02.20ID:PKx/2Br40



ガシャン!


愛梨「きゃっ!」



??「(!?・・・気づかれた!?)」


ぶつかられたことで彼女の足場が大きく揺れ、慌てて態勢を整える



だがその間に隣に置かれた箱がずり落ちようとしていた




一瞬、自分の身を優先した彼女にそれを止める術はない

??「(・・・そんな)」


愛梨「ひゃっ!?」


下にいる人物の胸元にボットであることを示す赤はない

このままではプレイヤーの手に、戦況を確実に左右する量の物資がもたらされる


この模擬戦闘という戦

その影に潜んで動くつもりだった彼女はここで戦闘の必要を迫られる


??「(こんなに早くわたくしが暴かれることになるとは・・・)」

「(ですが・・・・・・仕方ありません)」

しかし迷いはなかった





















浜口あやめ(ボット)「いざ、参ります!」





ゲーム開始15分経過


十時愛梨VS浜口あやめ(ボット)


開始

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



90: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/09(水) 00:44:52.74ID:PKx/2Br40


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ホタル・シュバルツなんとかのハイライトの無い目がすごいイイ





次回開始するチャプターを選択してください
安価+3下

1、神崎蘭子
2、早坂美玲

安価ありがとうございました





91:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/09(水) 00:59:07.91 ID:1ceS0hUSo

踏み台
安価なら2



92:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/09(水) 01:03:26.32 ID:SNSjv1kd0

1



93:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/04/09(水) 01:05:38.84 ID:aY2LY6cK0

2



94:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/04/09(水) 19:02:13.61 ID:1wnhHxCA0

1



95: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/09(水) 23:57:57.43ID:PKx/2Br40


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
早坂美玲


工場の内部、その特にたくさんの機械が密集していたり、多人数で作業するために広いスペースを確保した箇所は柱が少なめになっている

そのため屋根の裏には丈夫な梁が組まれてたりするのだが、この場合それらは屋根を支えるものでなく美玲を押しつぶすための追い討ちにしかならなかった


雨粒の数千、あるいは数万倍の質量を持つ豪雨がひとしきり降り注いでから、数分後





結論から言うと早坂美玲の腕力では自分の頭の上に落ちてくる分さえ支えきれなかった



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

美玲「______」 




美玲「______」




美玲「_____?」



ウチは真っ暗なトコで目を覚ました、

目を開けても閉じても見えるものが変わらない

起き上がろうとしても両手がどっかに挟まってる


美玲「ぐぎぎ・・・ふんぬっ!」


ピンと横に広がったままビクともしないので起き上がることもできない

そもそも寝ているのか起きているのかも暗くて分かんない

上下の感覚がうまくつかめない


美玲「やばいじゃん・・・ウチ閉じ込められた・・・?」


美玲「・・・・・・・・・」


美玲「うがあああ!!」


足を上に振り上げる 思ったより近くにぶつかった

ウチは思ったより狭いトコに閉じ込められてる、脚すら伸ばせない

続けてガンガン蹴り続けると土埃が顔に降ってきて目にも入った、手が動かせないから目をこすれない


美玲「い、痛くないモンッ!!うがあああ!」


身動きできずに蹴りだけでウチを閉じ込めてる殻みたいなのに攻撃する

多分、ウチはガレキの隙間すっぽり入り込んでる、だから腕以外は動かせる

何発蹴った忘れたけど膝がだるくなってきて力が抜けてきた



96: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/09(水) 23:58:31.37ID:PKx/2Br40


美玲「くぅ、開けよコラ!!」


最後に両足を揃えて蹴り上げたところで一旦蹴るのをやめて足を下ろす

次に両腕を引き抜こうともがく、でもこっちは手首のあたりでがっちり固定されてる


美玲「でも、これ・・・手袋から手だけ引っこ抜いたら・・・」



腕ではなく指だけ動かす、キツキツだけどちょっとだけ動いた


美玲「このまま・・・このまま、ゆっくりゆっくり・・・」


ベキッ




美玲「・・・っつ・・・?」




小石がおなかの上に落ちた感覚、見えないからわからないけど痛くなかったし重さからそれくらいだと思う

さっきは埃しか落ちてこなかったのに



指を引き抜くため力を込める




ベギギギ


パラパラ・・・



美玲「あ・・・え?」


ウチが指に力を加える度にどこかでガレキの軋む音がする



腕とか足じゃなくてなんで指?

でもウチにそういうのは分かんないからとにかく指だけでもがく



97: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/09(水) 23:59:01.30ID:PKx/2Br40




ベギギ



パキッ




美玲「うぐぐうううぐぐ!!!」




バギッ




ウチの頭とかお腹とか倒した脚の上にちっちゃい石がいっぱい降ってくる

でもくらいからわかんないし今は土まみれでも外に出たい


目の前は真っ黒、そこに白い穴が開いた




___光が外から漏れてきてる!





美玲「むっがああああああ!!!」



むちゃくちゃに手を開閉させた


点がちょっとずつ広がって、丸になる

それが伸びていって線になる、ウチの目がそこから届く光に眩む

線が折れ曲がりながら長くなっていく




ウチの前にジグザグの光が口を開いた




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



98: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/09(水) 23:59:42.26ID:PKx/2Br40




運良くがれきの隙間に逃れたおかげで美玲は助かった


なんてことには勿論なってない



高峯のあはそんな余地は残していなかった


天井に張り巡らされた梁の鉄骨は正確に美玲に落ちていくようにしていたし、

それと同時に床材も美玲を取り囲んで逃さないように操作していた



美玲「ぷはっ!!!」



そして美玲の体にそれに抗う力はなかった


美玲「ぺっぺっぺ!!うえぇ・・・服もぐちゃぐちゃじゃんか」



だが現に、美玲の周りにはガレキや鉄材が寄せ集められ簡易シェルターになっていた




美玲「なんだこれ・・・・・・卵の殻?」





美玲の能力によって、






美玲「ってウチの手くっついてるし!!」


自動的にそうなったのか、彼女が無意識にそうしたのかは不明だが、



美玲の両腕の爪はそこらじゅうの物を引き寄せ取り込み接着し変形させ、

最終的に美玲の小柄な体躯をすっぽり覆い尽くしていた


その爪の根元は手袋であり、それを装着している美玲の腕が重みで動かせなかったわけだ



99: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/10(木) 00:00:23.88ID:vlb8i5Kt0



美玲「うわ・・・ぐちゃぐちゃだし・・・ここホントに工場か何かだったのか?」


手袋にまとわりついた廃材の爪が崩れる、腕を引き抜き美玲はようやく解放された

立ち上がって、手袋をつけたまま手首を軽く回し、調子を確かめる


美玲「うわ・・・でっか・・・」


一通り身体チェックを終え、改めて周りを見渡す

まず目に付くのが工場を形作っていた建築材の成れの果て

その先には 見上げることすらできない高さの高層ビルの林

どの建物も角ばった頂点を思い思いに天に向け、押し合うように並んでいる

自分がひどく小さい動物にでもなったかのように錯覚しそうだ


美玲「ぶぺっ、埃っぽい・・・とりあえずここから動こっと」


小さな足でがれきを踏み分け、怪我をしないよう慎重に動き始めた

何かの弾みで崩れたがれきの下敷きになったら今度こそ洒落ですまない















パタン






~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



100: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/10(木) 00:01:13.14ID:vlb8i5Kt0


美玲の足元が揺れる

それはがれきの均衡が崩れたせいではない

底から突き上げられていた


美玲「わっわっわ!?」


だが、美玲にはそこまではわからない

あわてて足場の上でバランスを取り揺れを収めようとするが原因が彼女ではない以上揺れは止まらない


やがて地面から飛び出したのは1メートル四方の立方体の箱


青系の色でまとめられたそれの存在は廃材の中では明らかに浮いていた


美玲「いっ・・・サ、サイコロ?なにこれ・・・」


美玲の問いかけを無視し、箱はなんの動力もないまま転がり始める




パタンパタンパタンパタンパタンパタン




美玲「あっ!おい待てッ!」


不可思議極まりない青い箱、今の今まで自分のいたところから出し抜けに現れた不審な物体


美玲はそれを追いかけた。今の所、行動の指針が定まっていないならこれについていくのもアリだろう


工場の倒壊から生き残ったという余裕がそれを選択させてしまった









______________

 早坂美玲+  80/100



______________


ゲーム開始19分経過


報告事項なし



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



101: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/10(木) 00:07:44.60ID:vlb8i5Kt0

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


次回開始するチャプターを選択してください
安価+3下


1、神崎蘭子
2、十時愛梨


急なお知らせですが個人的な事情で投下が不安定になる可能性がでてきました。

明日は投下できそうですが、そのうち2、3日に一度ペースになるかもしれません

ご迷惑をお掛けするかもしれませんがこれからもよろしくお願いします


安価ありがとうございました



102:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/10(木) 00:13:12.04 ID:RGKeea4WO

1



103:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/10(木) 00:21:12.43 ID:Ubu2kZsWo

1



104:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/10(木) 00:32:42.97 ID:gW5FrWyDO




105: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/11(金) 00:35:53.14ID:csc+ma370


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
神崎蘭子




自分そっくりの人間がこの世界には少なくとも三人いるという





どこからどう発生した俗説なのか、どういう根拠に基づいてそのような言葉が人口に膾炙しているのか蘭子は知らなかった






蘭子「我は魔王!この世に唯一無二にして絶対の者ぞ!!」




とりあえず、初めてその話を聞いたときの感想がそれだった




蘭子「はぁ・・・ふぅ・・・!!」


蘭子(ボット)「時よ止まれ!(待ってくださいぃ!)」



蘭子は自分の映し身から逃走していた、いきねり受け入れるには蘭子は幼かったらしい

同年齢の三好紗南と違って未だにこの世界がゲームである事実に馴染んでいないようだ



蘭子「(うう、足疲れてきた・・・このまま逃げ続けるのも・・・)」

蘭子「(どこかに逃げ込んで、えっと・・・武器?能力? を探すんだっけ?)」



106: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/11(金) 00:37:05.53ID:csc+ma370


デパートはかなり横に広い、まだ階段を上がることなく直進し続けても店の端には着かない

後ろから追いかけてくるボットともそれほど距離が離れていない

がむしゃらに逃げ続けるのはもう無理




蘭子は直進から折れ、近くに開いていた店舗に飛び込む

商品棚が多く、店内の通路は狭かった




その間を転びそうになりながらも手を付きながら駆け抜ける

その後をボットが続く。店の奥は窓もなくさらに暗くなっていた




蘭子(ボット)「夜の帳が降りたようではないか・・・(暗くてよく見えないです)」




そこで思い出したように慎重に走りを止め、一歩ずつ進み始めた


ガンッ


蘭子(ボット)「!?」



いきなり

すぐそばで硬質な音、足元に何かが落下した音だ。

ガンッ ガンッ




蘭子「えいっ!!」




ガンッ

立て続けに音が鳴る、同時に床からボットの足を通じて振動も伝わる

店の奥に引っ込んだ蘭子が何かを投げつけてきている音だと気づいたときにはもう遅かった





ゴスッ




蘭子(ボット)「流星の衝突!?(いたぁーっ!・)」



107: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/11(金) 00:37:57.23ID:csc+ma370



頭に命中する。



ふらふらと後ろによろめき、闇の外へ逃れる




蘭子(ボット)「なに、これ・・・」



それは偶然だった

たまたま蘭子が逃げ込んだ店が暗く、外からは蘭子の姿が見えにくかったこと

そしてボットの胸に光るバッジは、闇の中では大きな目印になったこと

そしてそこがケータイショップで、手元にあった携帯のモデルは投げるのに適していたこと




蘭子「消えた・・・?」




長かった割に拍子抜けするほどあっさり決着がついてしまった

たった一発携帯のおもちゃをぶつけられただけでボットが消失していく





~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



















?「蘭子さんのボットが倒されたみたいよ」


??「やっとかい!どんだけまたせんねん!」


?「そもそも14歳の子に対人戦闘なんて土台無茶な話なんだから、これでも早いほうでしょ」


??「そんなもんなんか?まぁこっちも準備整える時間もろたと思っとこか」


?「そうね、そっちは大丈夫?」


???「はぁい!大丈夫でぇす!」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



108: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/11(金) 00:38:46.95ID:csc+ma370


この世界に流血はない

どんなダメージを受けようと体に傷ができることはなくそれゆえ血を流すこともない





蘭子「うぅ?」


蘭子「いない?・・・もういない?」




外からは見えない暗がりの中、壁に背をくっつけて蘭子は呼吸を整える

一応彼女もここにくるまでにプロデューサーからこの世界のことは聞いていたのだがそれでも彼女には何もかもいきなり過ぎたようだ

ぜえぜえと息を吐いている、スタミナに変動はなくとも疲労は存在するのだ

蘭子「つ、翼を休める時。この地は雌伏には難き、安寧を求めよ・・・(疲れちゃった、でもここ床硬いし、どこかで休もうっと)」

暗がりの中おっかなびっくり立ち上がる

壁に手をつき、商品棚を頼りに真っ暗な場所から、そこよりは少しだけ日の差す場所に踏み出そうとする



蘭子「・・・?」



初めに地面に落ちた携帯電話に気づいた

自分が投げたおもちゃのものだ、



それがひどく汚れている



暗くてよくわからないがペンキのようなものが付着しているように見えた

色までは見えないが、液晶が漏れ出したということもないだろう





蘭子はそれに近づくように店から出た

窓から注がれた細い光の領域にその身がさらされる

今まで闇に染められていた身に日が差す










蘭子「ひっ!?」



109: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/11(金) 00:40:03.21ID:csc+ma370



その姿、自分の姿を見て息を呑む


自分のお気に入りの服

黒衣、フリル付きのスカート、少し厚底のブーツ




それらが全く別の「色」に汚されていた




泥が擦り付けられたように所々

大部分とは言わないが、明らかに無視できるようなシミではなかった


袖口も、スカートの裾も、それだけでなく手のひらにはべったりだ


もしかしたら背中や尻の部分にも付着しているのかもしれない



蘭子「こ、ここここれって」




闇に溶ける黒色を台無しにするような目の覚めるようなビビットトーン




ピンク色のそれはいつの間にか蘭子の体中を乱雑にペイントしていた





だが闇の中、明るさのないその場においてその色は___




110: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/11(金) 00:43:36.84ID:csc+ma370






蘭子「血・・・?」





自分がまるで血まみれになったようだ



何の色?血?いつ付いた?これって私の?どうしてケイタイにも付いてるの?

私いつ攻撃されたの?


ゲームの設定や仕様についてまだ明るくない彼女の思考が混乱する







しかし彼女はまだ攻撃されてない

これはただの準備だ





蘭子が実際に血を見ることはない


だが血まみれになっていしまうほどの致死級の攻撃が来るまでにはもう少し時間がある












具体的には、あと3秒ほど








ゲーム開始13分経過

神崎蘭子(ボット)消失


神崎蘭子VS?&??&???

開始


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



111: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/11(金) 00:44:37.40ID:csc+ma370


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

短め

次回は2、3日の間にでも



次回開始するチャプターを選択してください
安価+3下


1、神崎蘭子

2、十時愛梨

3、早坂美玲


安価ありがとうございました



112:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/11(金) 00:47:46.06 ID:7x9/7qUY0

1



113:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/11(金) 00:53:47.37 ID:0eeLuiQGo

2



114:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/11(金) 00:56:54.19 ID:/dE1hOxA0

3



115: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/13(日) 23:53:49.33ID:88ws1vkY0





~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

チャプター
早坂美玲



パタンパタン

灰色の建物が見下ろす道路の真ん中を青い箱がコロコロと転がって自走している

直方体のビルに立方体のサイコロが明らかに不自然だった


美玲「っ・・・っく待てって!」


行動するにあたってなんの指標もなかった美玲にとって、それは見逃せない異変だった

1メートル四方の箱、美玲から見て中型犬くらいの大きさのそれを追いかけていく


美玲「(あのヘンな箱って、どうやってウチのいたトコから出てきたんだ・・・?)」


崩れた工場跡の残骸の中から飛び出てきた異物を追跡し続ける

その速さは小走なら並走できるほどで、決して早いものではない

だが、止まる気配が全くない


美玲「っはぁ・・・っはぁ・・・どこまで転がってくんだ、よ・・・!」


パタンパタンパタン

パタンパタンパタン


都会を模しているにもかかわらず人気のない道

そこを駆け抜けること数分、異変が重なった


パッタンパタパタパタ

横道から飛び出してきた別の箱が合流するように転がってくる

その見た目も先のモノと全く同じだ


美玲「もう一個!?」

パッタン


今度は反対側の道からも


パッタン


また一つ建物の二階の窓から転がり落ちてくる


パッタン


目の前を走る異物が増え始める



116: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/13(日) 23:54:56.59ID:88ws1vkY0



美玲「え、これ・・・」


パッタンパッタンパッタンパッタン
パッタンパッタンパッタンパッタン
パッタンパッタンパッタンパッタン

パッタンパッタンパッタンパッタン
パッタンパッタンパッタンパッタン
パッタンパッタンパッタンパッタン


美玲「はぁ!?」

パッタンパッタンパッタンパッタン
パッタンパッタンパッタンパッタン
パッタンパッタンパッタンパッタン


無機的な構造物がまるで生き物の群れのように転がる様は不気味でしかない

パタンパタンという小さな音も多く重なると不安を煽る嫌な音だ

夥しい数の同じ物体がまるで一つの目的地に向かうように集結しつつある

何かとんでもないものについてきたのでは

美玲がそう思うのも仕方ない、

美玲「(やっぱりここは一度離れて・・・)」


パッタンパッタン


だが少し遅かった。すでに箱は美玲の後ろからも迫って来ており

そこで足を止めることは後ろから追突されることになる


箱の数はとっくの昔に美玲が把握できる範囲を超えていた




足を止め、振り向いた美玲に、雪崩のように圧し掛かる


美玲「いつの間に、こんないっぱい増えたんだ、よッ!!!」


大量の箱が美玲に衝突する寸前、美玲は地面に両手を突き刺した、能力により美玲の腕が手首まですっぽりと埋まる





そしてちゃぶ台返しの要領で一気に掬い上げた




美玲「どぉだあ!!」


美玲の両手がアスファルトの破片を纏い、三倍ほどの大きさに膨れ上がっていた

今までに比べると小さい爪だが、かといってそのまま振り上げることは彼女の腕力では出来ない

だが、後ろから迫る箱への防壁にはなる、彼女の小さい体だけなら充分カバーできるだろう



117: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/13(日) 23:55:58.20ID:88ws1vkY0



次の瞬間から容赦なく箱がぶつかってきた



だが、ずっしりとした重さがそれに耐える



そのおかげで美玲が轢かれることはなく、箱はゴツゴツと互いにぶつかり合いながら美玲の両脇に流れていく


青い箱が川の水のように流れていく、美玲はまるでその流れに耐える杭のようだ




美玲「ぐぎぎぎぎ・・・!」



しかしあまりの物量に小さな防壁が圧される、すべてを横に受け流せているわけではなさそうだ




パキッパキキ





美玲「!・・・?」

ゴツゴツガツガツと顔をしかめたくなるような衝突音の奔流の中に違う音が混じり始めた



卵の殻が割れる音

それを想起させるような響きだ


美玲からは自分の肥大化した手で隠れて音の正体は見えない



パキリ



それは箱が分解し始める音



一つの箱から六枚の板へ、転がる箱から宙を彷徨う板へ





そして板は青いタイルようなパネルへと構造を変えていく





箱の形が崩れ、中にしまわれていたものがそれぞれこぼれ落ちていく


それは、手榴弾

それは、拳銃

それは、回復ドリンク


美玲の腕とタイルに板挟みになったアイテムが絡み合う



118: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/13(日) 23:57:16.31ID:88ws1vkY0



一つ、密室を作ること


一つ、能力者の決定に基づきプレイヤーを閉じ込めること



一つ、その中で失われたスタミナを森久保乃々へ移すこと



一つ、それ以外の時はどんなアイテムでも自動的に集め続けること




それがそのタイルたちの役目

そして収納していたアイテムをぶちまけてしまったタイル達は次のアイテムを探し始める




美玲「ふぅ、大分勢い収まったか・・・?」




それはすぐそこにあった


キーアイテム、手袋



本来、キーアイテムは一度能力が発現してしまえばその後は必要なくなる

あくまで”鍵”、プレイヤーが能力を得るためだけのものだ



だが例外的に、美玲の手袋はキーアイテムであると同時に、能力使用の要となるアイテムでもあった



タイル達は誰からの示唆もなくそれを認識した


パタンパタンパタンパタンパタンパタンパタンパタン!!!!!!


塞き止められていたタイルたちが防壁、美玲の手をよじ登り始める


明確な意志を持ち、美玲に襲いかかっていく


美玲「っな!?なんでいきなりこっちにくんだよッ!」



119: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/13(日) 23:58:04.66ID:88ws1vkY0



いままで自分を避けるように流れていった箱とは別に

中身をこぼした箱たちが美玲に飛びかかる、よじ登る、のしかかる


もう防壁など意味はない、もともと後ろから迫る物量に対し美玲だけを守る大きさしかなかったのだから、登るほどの高さもない



美玲「う~~がぁあ!!」



手に腕に肩に頭にタイルがくっついてくる

一枚一枚は重くないが視界が塞がれ、体が圧迫され、非常に邪魔だ



美玲が指に力を込めるとアスファルトが剥がれていく、どうやら能力が解除されたようだ

美玲は自由になった手を振り回した、タイルに爪がぶつかる


ぶつかって、はじかれる


美玲「ウチの爪が、刺さらない・・・?」


いつもなら不気味なほどの手応えのなさで爪が対象に埋まるはずだった

なのにタイルは美玲の爪にはじかれて飛んでいくだけだ

そしてまた襲いかかってくる



能力同士のぶつかり合い

どうやらこの時点ではタイル、つまり乃々の能力が優っているらしい




美玲「うがががあああ!!!離れろよおッ!!」




顔もない、手足もない、声もない

だが確かな実感を伴いベタベタと美玲にまとわりつく何枚ものタイル

美玲の小さな体はあっという間に覆い尽くされ、外からはくぐもったうめき声だけしか聞こえない












それが次の瞬間、爆ぜた



120: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/13(日) 23:58:57.28ID:88ws1vkY0



蜘蛛の子を散らすように、美玲から一斉に離れていく

後には地面にへたりこんだ美玲が一人


先程までの粘着質な様子が嘘のようだ

箱の群れは、またどこかに向かって黙々と転がっていった




美玲「・・・・・・なんだったんだよ・・・ん?」




美玲は自分のすぐそばにいくつもの武器が転がっているのを見つける

防壁のあたりにせき止められていたものだ





手榴弾、拳銃、何かの瓶

美玲にとってはゲームかテレビでしか見ないような代物が大半だ

箱からこぼれたままにされたらしい








美玲はその一つを手に取る

拳銃のグリップを握り

引き金に人差し指をかける










手榴弾を反対の手にとってみる

手のひらにゴツゴツと硬いものが当たる

深緑の部品に飾られた外見の中、一つだけ鈍く光る輪っかがあった

美玲の知識だとこの輪っかを引くと爆発するであろう、ということぐらいしかわからない






121: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/14(月) 00:00:09.27ID:ckfQObuA0


右手の銃、左手の手榴弾

それらを握った両手を交互に見る




美玲「あ・・・・・・・・・え?」







とんでもないことに気づいた

新しく手に入れた武器なんてどうでも良くなるくらいの大事だ






それは自分が他のアイテムを握っていること












手袋のなくなった両手で









美玲「ウ、ウチの武器・・・とられたぁあああッ!!??」



美玲は立ち上がり箱が去っていった方向を振り返る




ずっと先の曲がり角を右折していく最後尾の箱だけ辛うじて見えた



そして視界から消えた箱を追ってあわてて走り出す



122: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/14(月) 00:01:02.58ID:ckfQObuA0


こうして次の戦いは幕を開けた


誰の能力なのか

誰と戦っているのか

何処に行けばいいのか

何時まで追いかければいいのか

何をどのようにすれば自分の勝ちなのか



美玲はまだそれを知らない




ゲーム開始24分経過

早坂美玲VS森久保乃々(ボット)

開始?


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



123: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/14(月) 00:02:55.66ID:ckfQObuA0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

乃々は遠距離自動追跡型スタンド使い



次回開始するチャプターを選択してください
安価+3下

1、神崎蘭子
2、十時愛梨
3、早坂美玲



124: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/14(月) 00:17:13.22 ID:hSiJu6b0O

踏み台
エラーのせいで上がってないので



125:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/14(月) 08:42:00.38 ID:CLshn/bnO

踏み台上げ



126:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/14(月) 08:45:44.35 ID:h/e4pe0Eo


1



127:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/14(月) 12:27:01.65 ID:T8I9Pg4go

3



128:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/04/17(木) 15:06:23.63 ID:5quUuqAy0

1



131: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/20(日) 23:25:31.25ID:5RAoI7tw0



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
神崎蘭子




??「うおぉ重たっ!? 泉、台車とかないんか、ここデパートやろ?」


?「ん...あとで探そっか......でも摩擦係数を書き換えたから引きずって運ぶのはだいぶ楽になったはずなんだけどね。さくら、蘭子さんはまだ見えるところにいる?」


???「うんと・・・あ、まだ一階だよぉ。イズミンのピンク攻撃にびっくりしてるみたぁい」


?「さくらがピンクじゃないとダメって言ったんでしょ......とりあえず第一段階は完了したのね」


??「よっしゃ、今のうちに押せ押せ!アタシらこの妙にごついのしか武器ないんやしこれで決めなアカンで!」


???「アコちゃんイズミン、ファイトだよぉ!」


?「手伝いなさい」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~










血と言うにはあまりに鮮やかすぎる桃色


何故か服や肌に染み込まないのでその色がにじむこともない

まるで蛍光塗料のようだ、いつ塗られたのかはわからない

蘭子の体が闇の中に浮かび上がっている


蘭子「な、なに、これ・・・!」


慌てて自慢の黒衣を拭うも消える気配はない、それどころか腕についた分が伸ばされて広がるばかりだ


自分が這い出てきたケータイショップを見る

咄嗟の判断で逃げ込んだ場所だった上、今いるところよりさらに暗がりとなっているため気づかなかったが、よく見ると店の奥の壁が淡く発光しているように見える

この桃色の蛍光塗料らしきものがペンキのように塗られていたようだ


蘭子「(ひぇ・・・どうしよう・・・とりあえず、お水の使えそうな場所に・・・)」



デパートの水場で思いつく場所といえばお手洗いくらいしかないが、それならたくさんあるだろう

もっともこの仮想がどこまで現実に似せているかによるが



132: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/20(日) 23:26:55.64ID:5RAoI7tw0



三階から一階まで一気に見通せる吹き抜け。三階に設置された天窓のような場所から届く細い明かりを頼りに通路を進む

通路の両脇には実際には機能していないであろうが実際のデパートを真似た店舗が設置されている

そこらに目をやりながらどこに行くべきか思案する

そうしていると逃げている最中には気づかなかったものが見えてきた




蘭子「・・・なんと異様な光景か、我は斯様な事象を前に瞳を曇らせていたというのか(...なにこれ、さっきは気づかなかったのに)」




あちこちに、真っ暗場所でもうっすらと目を引く色が塗りたくられている


そのピンクの蛍光塗料らしきものは通路そのものではなく店舗を少し入った床や壁、手摺などを中心として分布しており、

踏み入ればうっかり踏んづけたり手に付着したりしそうな仕込み方だった

現に蘭子は逃げ込んだケータイショップで迂闊にもその仕掛けにやられている



蘭子「(・・・そういえば幸子ちゃんが仕掛けられたドッキリでもこんなのあったなぁ・・・)」

「(確か、扉を開けた先の床がローションまみれの斜面になってるとかいうの・・・)」



だが、意気揚々と自信たっぷりに部屋に踏み入ったせいで、綺麗に尻餅をついた挙句ヌルヌルになりながら滑っていった愛すべき仲間のことは今は置いておく




蘭子「奇っ怪なり...(へんなの...)」




そうとしか言えないが、なんとなくマズいというのは分かる

光源の少ないフロアにおいてこの色をつけていると目立ってしまうということが。


つまり敵、さっきのようなボットがいたとすれば自分は狙い撃ちにされてしまう


蘭子「(ここは明るい場所に逃げるのが先かな・・・)」

と、蘭子が落ち着きを取り戻し移動を決意したとき






コツン


蘭子「古の玩具?...(さっきの携帯電話?)」


靴のつま先に携帯のモデル、ついさっき自分が投げつけたものの一つがぶつかった

それもべったりとピンクに着色されている



逃げ出そうとした矢先、それを牽制するようなタイミング



133: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/20(日) 23:29:16.65ID:5RAoI7tw0



というか、蘭子はまだつま先どころか足を動かしてすらいない

なのになぜ足元に転がったモノがぶつかり音を立てるようなことがあるのだろうか

そのケータイのおもちゃが自分で動いたわけでもあるまいし



と、蘭子が考える時間はなかった、とっくに時間切れだった。





けたたましい音とともにガラスが砕ける




それはデパート三階から一階を見下ろす吹き抜けの手摺、鉄枠に囲われたガラスだった


「それ」が勢いよくぶつかった拍子にガラスがひび割れ、欠片が蘭子の近くに降り注ぐ


蘭子は足にぶつかった小道具より数倍大きい音に対し、反射的に吹き抜け越しに三階を見上げる




土屋亜子(ボット)「はいどーもーどーも!おまっとさん。倒しに来たで!」



村松さくら(ボット)「蘭子ちゃん、覚悟してくださぁい!」



大石泉(ボット)「ガラスを突き破っちゃってるけど......まぁ、待ち構えてた甲斐があったし良しとしますか。」





三階の、吹き抜けの手すりから身を乗り出すようにして三人のアイドルがいた

蘭子からは暗さに加え、少ない明かりも逆光になっていて顔は見えない

ボットであることを示す赤い点のような灯りが三つ浮かんでいるのは見えた


だが聞き覚えのある声。事務所で聞いたことのあるそれと同一の声



蘭子「・・・泉さん、さくらさん、亜子さん」



亜子(ボット)「大あったりー!!」


ガラスのヒビが広がる

ガラスから突き出た「それ」が亜子の手によって動かされたからだ



134: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/20(日) 23:30:29.99ID:5RAoI7tw0




その鉄製の長い筒が蘭子のいる階下に向けられる




その筒はガラスのむこうで金属のパーツでできた外装につながっている





外装に包まれた内部には、弾丸を装填して発射する一連の動作を高速で行う機構が詰め込まれている





そこに連結されたハンドルに亜子の手が添えられる





三本の足で支えられた本体、



その側面部から垂れ下がってるのはくすんだ金色の装飾品



それは長く長く、一つにつながった銃弾




これらが一つずつ機構に飲み込まれていき、一つずつ凶器と化す



泉(ボット)「お高いところからではあるけど、」


さくら(ボット)「いっぽー的にプレゼントでぇす!!」


亜子(ボット)「出血大サービスですわ、これ」




女子高生三人でも扱うには重厚すぎる銃器



設置型のマシンガンが火を噴く



秒間数百発の凶弾が蘭子に降り注いだ








ゲーム開始13分経過

神崎蘭子VS大石泉(ボット)&土屋亜子(ボット)&村松さくら(ボット)

継続中


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



135: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/20(日) 23:31:29.65ID:5RAoI7tw0



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



森久保乃々の世界は狭い




しかしそれでも充実している。と本人は思っている




一メートル四方のタイル、それともパネルと呼ぶのだろうか、

それを5、6枚組み合わせた即席の箱

乃々の体はその箱にすっぽりと収まっていた

真っ暗にするわけにもいかないので一面だけ開かれた場所から外の景色を見るともなしにみていた

といっても薄暗い部屋の天井だけなのだが、彼女は別にそれでも問題なかった


乃々(ボット)「......はずなんですけど」







みく(ボット)「んにゃ?どしたの乃々チャン?」


のあ(ボット)「.....なかなか面白い力よ、乃々。これが貴方を象徴するイコンというわけね」


アナスタシア(ボット)「アー...この、板?...勝手にどこかへ、飛んでいったみたいです、ね」






 
どうやって自分のことを探し当てたのか、乃々の隠れ家には闖入者がいた




136: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/20(日) 23:32:52.33ID:5RAoI7tw0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


_________

______

___



のあ(ボット)「___つまり、ボットの中に明らかに規格外の者が紛れているみたいなのよ」


みく(ボット)「...ふーん、よくわかんにゃいにゃ。とりあえずそれが急いで美玲チャンとの勝負を片付けた理由かにゃ?」


アナスタシア(ボット)「アー、だから途中で私と美玲のところに駆けつけたのですね......タイミング良すぎだと思いました」


乃々(ボット)「そんなこといわれても、もりくぼはここでおとなしくしているしかないんですけど...」


みく(ボット)「確かに、みくものあチャンが何を心配してるのか分かんにゃいにゃ」


アナスタシア(ボット)「ダー......強いボットがいることは、なにも悪いことではない、ような...」

乃々(ボット)「物騒なのはごめんなんですけど...」


どこかの建物の地下の部屋、のあは自分が能力を通して知った事実を話題にあげていた



しかし情報の共有自体には成功したがその危険度までは共感を得られていないらしい。

物体と一体化する能力、それをのあ以外が有していない以上は実感できないのも仕方ない


あの得体の知れない圧力に自分を潰される感覚は。


話を聞いていたみくが疑問を挟む


みく(ボット)「でも近づいただけで潰されるってどういうことなのにゃ?」

アナスタシア(ボット)「ンー...そういう能力だったんじゃ、ないでしょうか?」










乃々(ボット)「...はい?」

のあ(ボット)「...」



137: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/20(日) 23:34:37.63ID:5RAoI7tw0





部屋の中の空気が一瞬だけ不安定になった



四人いる全員が全員、疑問符を浮かべている



会話に消極的な乃々もおもわず顔を上げた





乃々(ボット)「えっと...あれ?もりくぼがおかしいんですか...」

のあ(ボット)「みく、アーニャ...あなた達は知らないの?」



みく(ボット)「にゅん?」

アナスタシア(ボット)「シトー?」




乃々とのあ、みくとアナスタシア

両者の間に目に見えない差のようなものが現れていた


見解の相違、というより相互理解のパーツの欠けたような感覚



138: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/20(日) 23:35:55.41ID:5RAoI7tw0




乃々(ボット)「あの...もしかしたらもりくぼの勘違いかもしれないですけど...」


「容量の大きすぎる能力はそれだけで周りに影響があるとかなんとか聞いたような...」




のあ(ボット)「そうよ、能力の規模はそれすなわち空間に与える歪曲の大きさ......大きすぎる力は存在そのものが世界への重しになる」




乃々が自信なさげに言葉を紡ぎ、のあがそれを引き継いだ



みく(ボット)「んー?みく、晶葉チャンからそんなこと聞いてないにゃ・・・」

アナスタシア(ボット)「ヤー、私もです」



だが、二人は知らなかった。

これがのあの危機感を共有できなかった理由だ



乃々(ボット)「私の場合...能力が容量を圧迫してるせいで、スタミナまで削られるんですけど......いい迷惑なんですけど」


みく(ボット)「ふーん、でもどうしてのあチャンと乃々チャンが知っててみくたちが知らないのにゃ?」

アナスタシア(ボット)「ダー、仲間はずれ、私...悲しいです......ぷくー...」


箱の中で膝を抱えたままの乃々から視線を外し、みくが首をかしげる

壁際に座り込んだアナスタシアも不満げに頬をふくらませた。


のあ(ボット)「私も今の今までこれを周知の事実として話していたのよ。黙っていたつもりはないわ」






139: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/20(日) 23:40:42.50ID:5RAoI7tw0





みく(ボット)「んん?それじゃ・・・ボットの間に共有できてない情報があるってことにゃ?」

アナスタシア(ボット)「......ボットはみんな仲間のはずなのに、変ですね」



つまりそういうことだった

のあと乃々、みくとアナスタシアの間に知識の隔たりがあったのだ

そして「ボット同士なら知っているだろう」という思考がその発覚をこの瞬間まで妨げていた

偶然か、仕組まれていたのか、



乃々(ボット)「どっちにしてものあさん、ボットにやられたんですよね...」

のあ(ボット)「それは正鵠ではないわね、あれは私の落ち度でもあったのも事実...」



乃々(ボット)「だとしても......もう、もりくぼには誰が味方かわかったもんじゃないんですけど......ふれんどりぃふぁいあ、とかごめんですけど」

アナスタシア(ボット)「アー...ふれんどりいふぁいあ...ってなんです?」

みく(ボット)「味方から撃たれることにゃ・・・・・・でも乃々チャンは大げさだとは思うけど確かにお互いの能力以外の隠し事があるかもしれないっていうのは、変な話にゃ」



プレイヤーと敵対することを当座の目的として動作しているボットでありながら、ボット同士も一枚岩ではない。

乃々が今恐れたのはその可能性だった。


今はそれほど大した情報ではなかったとはいえ、もしかしたらここにいる四人も知らない情報を独占したボットが他にいるかもしれない。


だとすると本当に万が一とはいえ、最悪の場合同じボットすらも敵になる可能性も否定できない



みく(ボット)「うにゅにゅ・・・のあチャン、まだなんか隠してないよね?」

のあ(ボット)「隠すという表現は適切でないわね......これは齟齬というものよ」

アナスタシア(ボット)「アー、ちょっと不安になります、ね?」

のあ(ボット)「そうね...一度お互いが知っていることを教え合ってみるのがいいかしら...」



乃々(ボット)「あの...結局、私の隠れ家にきた意味は...」

アナスタシア(ボット)「...のあのことですし...深い意味があるようで無い...かもしれません」

のあ(ボット)「ちょっかいを出しに来たのよ、無意味ではないわ」

乃々(ボット)「ええぇー...」





140: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/20(日) 23:43:13.64ID:5RAoI7tw0




アナスタシアが箱にこもって膝を抱える乃々を覗き込む。

のあとみくはあれこれと言葉を交わしている。プログラム上の記憶から重要と思えることをピックアップしあっているようだ

しかしのあの話す内容が途中から出世魚に関する豆知識になっていたのでみくがギャーギャー騒いでいる



乃々(ボット)「うう......『夜』が来るまではスタミナをなんとかやりくりするつもりでしたのに、もう不安なんですけど......」

アナスタシア(ボット)「夜...ночь...なんですかそれ、教えてください乃々」


乃々がボソッと漏らした単語にアナスタシアが食いついた。

その反応に思わず乃々もぎょっと顔を上げる



乃々(ボット)「え...あの、もしかして...」



まさかと思いつつも確認を取ろうとおずおずと口を開いた


アナスタシア(ボット)「ダー、私、知りません...ですから教えてください」

みく(ボット)「みくもー」    

のあ(ボット)「......のあもー」
    



乃々(ボット)「や、やぶへびぃー......」





~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



141: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/20(日) 23:44:07.78ID:5RAoI7tw0




・・・なるほど、そんなものがあるなんて知りませんでした・・・・・・




 ザザッ!




・・・みくもにゃ!晶葉チャンは不公平にゃ!みく、ヨルとかちっとも知らなかったにゃ!・・・




ザザザッ!




・・・私もよ...乃々、教えてくれたことに感謝するわ。・・・

・・・やはり今のままではダメね、このままではただ押しつぶされるだけ・・・




ザザ ザザザッ...



・・・なんでしたら『夜』が来る前にプレイヤーを全滅させるか、すくなくとも『夜』に負けないように強くなる必要はあるんじゃないですか?...もりくぼは知りませんけど・・・


・・・はぅ...もりくぼは慣れない説明に疲れたのでしばらく自分の世界に籠ります・・・





ザザザ__ザザザ、ザッザザ_ザ。ザザ___......
































飛鳥(ボット)「へぇ・・・なかなか興味深い話だったね」




142: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/20(日) 23:44:50.16ID:5RAoI7tw0



どこかのビルの一室、周囲からは簡単にのぞき込めない位置取りの部屋


飛鳥はアンテナのように広げていた指を閉じた

傍受していた会話は聞こえなくなる

もともと彼女の能力は一人分の音声しか聞き取れないため、連続して複数人の会話を盗聴するためにはいちいち一人ずつチューニングして行かないといけないから骨が折れるのだ



彼女はいま部屋に一人だ、そのつぶやきを聴く者はいない

仲間がいないわけではないがその全員がとある作戦のために動いている



飛鳥(ボット)「廃墟のボット、能力の容量、そして夜......どうやら晶葉さんは隠し事が好きらしいね」




ゲーム開始22分経過

報告事項なし



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



143: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/20(日) 23:45:28.97ID:5RAoI7tw0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


チャプター
早坂美玲




アイテムを自動的に探索、主人である森久保乃々のもとに運搬する

そして命令さえあればプレイヤーすら監禁し、スタミナの材料にする


見た目は青いパネル

ときに部屋になり、箱になり、机になる



そして今は箱となって転がりながら何処かへ向かっている

その中に入っているのはとあるキーアイテムだ

最初に確保した他のアイテムを放り出してでも奪取する価値のあった品



美玲「なんだよこれ......」



箱の中には美玲の手袋が入っている

そのこと自体は問題でない、箱が転がっていく速度は美玲でも充分追いつけるものだったのだ





問題は追いついた後だった



美玲「これじゃ、どの箱に入ってるのか分かんないじゃんか!?」



途中いくらか崩れたとはいえ、美玲が追いついたときには全てのタイルは箱の形を取り戻し

牧場の羊の群れのように、あるいはサバンナのシマウマのように密集し、一群となって行動していた。

どの箱も同じ大きさ、同じ色合い、同じ移動速度


小走りで最後尾から追跡している間にも、
まるで青くて角ばった巨大な生き物の背中を見ているような錯覚を覚えそうだ



144: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/20(日) 23:46:43.17ID:5RAoI7tw0




美玲「うぅ・・・そうだ!普通にかんがえたら一番後ろを走ってる箱の中だろ!」


そうだ、確か自分にまとわりついた青い板はあとから遅れて群れについていったんだから後ろの方のはず



美玲は箱の群れの最後尾を転がる箱に飛びついた、ポケットには無理やり詰められた手榴弾が入っているにもかかわらず。

それでも箱は止まらずしがみついた美玲を引きずっていく


美玲「むぎぎぎぎぎぎ・・・!」


美玲は片手で引かれたまま反対側のポケットに突っ込んでいた銃を取り出した

そのまま銃のグリップをハンマーのように振り下ろす

箱がその程度で壊れることはなかったが板同士の継ぎ目が少しだけ緩んだ

中身がわずかに光に照らされる


が、


美玲「(うぅう!なんだまたよピストルかよッ!!)」



隙間からのぞいていたのは自分の望んだものではない

箱はすぐに閉じてまた転がり始めた

これで自分の手袋を見つけるための最初で最後の目星が尽きた


美玲「ぐぎぎぎ、この箱止まんないし!!」


それでも近くの箱にしがみつきながら辛うじて追いすがる

箱は止まらないし、よく見るとあちこちでぶつかりながら箱どうしの場所が絶えず入れ替わっている


美玲「これじゃあウチの手袋、どこか分かんないじゃんか・・・」


全く同一の入れ物が数十個、そのどこか二つ、あるいは一つに探し物


入れ物は絶えず動き回っている。トランプの神経衰弱どころの難易度ではない



145: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/20(日) 23:50:03.59ID:5RAoI7tw0




美玲「どうしたらいいんだよコレ・・・」

変なモノ追いかけてくるんじゃなかった



いきなり出てきた青い箱

いきなり増えて、いきなりまとわりついてきて

いきなりとんでもない不意打ちを食らった



そうして美玲から思わず弱音が吐き出されたときに起きた、

今度の事態もいきなりだった





美玲「ぎゃんッ!?」





無防備だった美玲の顔面に何かが衝突する

痛々しい音がビルの壁に反響した

箱を追いかけることに気を取られていた彼女はその一撃をモロに喰らっていた


美玲「・・・な、はぁ!?」





それは件の青い箱のうちの一つ




まるで後ろから見えない糸で引っ張られたように流れに逆行し、

その最後尾にいた美玲に突貫した。



美玲「(なんでいきなり・・・)」



唐突な展開、ゲーム内だからあまり痛くないとは言え虚を突かれ一瞬、意識が霞む



146: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/20(日) 23:52:48.41ID:5RAoI7tw0



工場の廃材から飛び出した謎の箱


大移動


奇襲


紛失、


ここまでは乃々の持つ能力の範疇だった


だが一部の逆走は明らかな異常、


早坂美玲はもちろん、森久保乃々すら把握していない事態が起きていた








ゲーム開始26分経過

森久保乃々(ボット)
VS

早坂美玲

VS
???



継続中

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



147: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/20(日) 23:56:29.47ID:5RAoI7tw0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
更新遅れてすいませんでした。ライブツアーしてました



次回開始するチャプターを選択してください
安価+3下

1、神崎蘭子

2、十時愛梨

3、早坂美玲


安価、コメントありがとうございました




148:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/21(月) 00:04:01.54 ID:rIn0fFkao

事務所内がローションまみれ、ってどこかで見たな・・・ksk



149:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/21(月) 00:42:32.52 ID:Fwo2jZKQo

自分はその逆でした
グラップラーアキなんで出んのや・・・
ksk
安価なら1



150:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/21(月) 00:49:41.29 ID:MKj+XYrWo

2



157: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/29(火) 23:20:31.85ID:0woBuVrk0



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
十時愛梨


危機感



どれだけ危機感を持って事に当たることができるか

今回の企画に限らず何かに挑むためにはそのことが肝要だ

危機感のなさはこの場において油断にしかならない


だが愛梨が遅まきながら抱いた危機感はただ目の前のアクシデントに対する反射的なものでしかなかった


愛梨「きゃっ!」


とっさの判断で慌てて飛び退いた場所に鈍重な音を立ててダンボール箱が墜落した

中に詰め込まれていた何かの瓶が衝撃で飛び出す、そのうちのいくつかが愛梨の足元に転がってきた

アイテムの性質なのか見た目がガラス質にかかわらず今の落下で割るどころかどの瓶にもヒビすら入っていない。


愛梨「あっぶないですね・・・」


愛梨は肝を冷やしたように後ずさろうとする。

だが、まだ危機感が足りなかった


後ずさるのではなく即刻退避するか、少なくともどこから落ちてきたのか即座に確認するべきだった


そうすれば闇に浮かぶ赤い光にも気づけたのに



あやめ(ボット)「ニンッ!!!」



それは落下しながら上から下へ一直線、愛梨の右腕を一閃した


全くの不意打ちに、痛みに似た痺れが走る



158: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/29(火) 23:21:33.20ID:0woBuVrk0




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


愛梨「っ!?」


声が出ない

私は腕を抑えながら後ろに倒れそうになって、慌てて足を出して体を支える

水鉄砲も腕と胸のあいだに挟まったからなんとか落とさなかった


えっと・・・ガチャーンって大きな音がして

上から落ちてきた何かをよけたと思ったら腕がバチってなって・・・


愛梨「・・・ぇ、え?」


赤いランプ?発光ダイオードみたいな光がひゅんひゅん動いてる


私のすぐそばにいたそれがさっき落ちてきた何かの箱を私との間に挟むみたいにして私から離れた

よく見るとただの光じゃない

人影みたいなのがいて、シルエットが薄く見えてる。その胸のあたりの一点が赤く光ってるんだ



愛梨「・・・だれですか・・・?」



「・・・・・・・・・」


その、人?というかボット、は何も答えない


赤い光だけがゆらゆらと宙を漂っているように見えている

私はしびれの抜けきらない腕で手の中のおもちゃを構えた

ちゃぷんと中の水が揺れる


愛梨「・・・あの・・・」


続けて言葉をかけるけど・・・・・・何だろう?

自分の行動がどこかずれてるような、うっかり脱いじゃいけないとこで脱いじゃった時みたいな場違いな感じが・・・


あれ、そもそも私、さっき何されたの?



159: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/29(火) 23:22:40.47ID:0woBuVrk0



愛梨「!」


そう思ったときには赤い点は赤い線になって


流れ星みたいに光の尾を引いてこっちに向かってきた

その瞬間私は見た

その赤い光を鈍く反射する尖った何かを、二つ


愛梨「(あ、わかった)」 


光の点を狙って水鉄砲を構える

今更ながらこれが心もとない装備だと確信する

相手の武器に比べてなんと頼りない



愛梨「(私、本気で狙われてる)」


がむしゃらに引き金を引く

一直線に水が飛び出すと同時に腕に訪れる反作用が飛沫を作った



160: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/29(火) 23:25:28.13ID:0woBuVrk0



この水鉄砲に攻撃力はない。

だが人一人なら充分のけぞらせることができる


そしてなにより、

この武器に銃声はない

そして暗がりではその銃口の先も読めない



だからこそ必発必中の不意打ちだった



「!」



なのに


それはよけられた


真横に飛び退くように、光が真横に軌跡を真っ赤に描く


狭い通路の壁際ギリギリに影が身を寄せ、そこからもう一度愛梨に飛びかかった



愛梨「いったぃ!?」


腕の次は二の腕への切りつけ、

影と交差する刹那、愛梨の右肘より上に熱さが発生した


たたらを踏みつつ振り返る。愛梨の踵が瓶の一つに当たった




止まらない

追撃は止まらない



危険色、赤色の灯りがめがけて膨れ上がるような錯覚

ボットが一直線に向かってきたのだ

姿の見えない敵を闇の中から見出す唯一の目印

それが獣の眼光のようにぎらりと光る


愛梨「なんなんですか!なんとか言ってくださいよぉ!!」


水鉄砲をボットに向けて構えるのは間に合わない、だから盾にした。

両手で保持して使うサイズのそれの横側はある程度の面積がある

胸に横抱きにすれば急所は守れるし、まっすぐ飛び込んだ攻撃ならまず間違いなく防げる




161: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/29(火) 23:28:03.18ID:0woBuVrk0







「甘いですよ、愛梨殿」





愛梨「!? あやめちゃ」


水鉄砲がカバーしていた範囲のわずかな隙間を縫って潜り込んだモノ


それは苦無。忍者の使うオーソドックスな刃物だった




鎖骨のすぐそばの肩口にざっくりと

横腹、腰の淵を貫通するようにさっくりと



2本の刃物が愛梨の体に潜り込む





あやめ(ボット)「わたくしの眼には、暗闇でもその武具の形がよく見えておりますので」








_____________

 十時愛梨  75/100



_____________



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



162: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/29(火) 23:28:45.00ID:0woBuVrk0




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



?「・・・ゲームとはいえ、パパッと出来上がったりはしませんか・・・」


どっしりと据え付けられた装置からわずかに漏れる光に赤々と照らされた部屋、

そのボットは既に十分以上その近くの椅子に腰掛け、自身の能力のもたらす効果の成就を待っていた


?「そのほうが出来上がった時の喜びも大きいですけどね!」






あやめ(ボット)「浜口あやめ。ただいま戻りました」


その部屋にもう一人のボットが足音騒がしく踏み入る

その手にはダンボール箱、中には何かの瓶がぎっしりと詰められていた

もちろんアイテムだ



?「おかえりなさい!またたくさん集めてきましたね」



がしゃんと乱暴に箱が机の上に放られ、瓶がぶつかり合う


あやめ(ボット)「ええ、途中プレイヤーとあいまみえましたが・・・」

?「倒したんですか?」


ボットが椅子から立ち上がり、箱の中身をあらためる。

これらもじきに彼女の能力により機能を失うのだ


あやめ(ボット)「いえ、しばらく動けなくなる程度のダメージを与えましたが、今回はアイテムを優先しました」

?「それがいいですよ、あたしたちは正直戦闘向きの能力じゃないですし。まぁあやめさんは運動神経が高いですけどね」




あやめ(ボット)「それにしても・・・ふむ、美味しく焼けているようですね」

?「でしょう?」



装置から漏れる煙と匂いにあやめが反応する


ゴツゴツとした煉瓦に外装を覆われ、小さな鉄の扉が固く閉ざされている

中で燃えたぎる火炎の光以外が漏れ出してくることはない





163: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/29(火) 23:30:23.12ID:0woBuVrk0






あやめ(ボット)「ところでこの”パン”、どれくらいで完成するのですか、みちる殿」


大原みちる(ボット)「うーん・・・あたしのオリジナルの記憶によると、普通のパンなら一時間もかからないと思うんですけど」





ふたり揃ってその装置を眺める

どこか古めかしいデザインで、オーブンというよりは窯に近い



あやめ(ボット)「うむむ・・・あまり悠長にしていることもできませんよ?もう少し早められないですか?」

みちる「んー・・・あたしが誰かにやられちゃわない限りはこのパン焼き機の能力も止まらないし、そんな焦らなくてもいいんじゃないですかー?」


アイテムをパンに作り変える能力を持つパン焼き機

それを操作する能力者、大原みちる


広大な仮想空間のどこかに紛れ込むように隠されたアイテムを見抜き、探り当てる目を持つ能力者、浜口あやめ



あやめ(ボット)「あ、そうです。これもキーアイテムですので、そちらのものと共に後でよろしくお願いしますね」

みちる(ボット)「おお、これで二つ目ですね」




あやめが懐から取り出したものをみちるが受け取り、机に置く

これで彼女たちが抑えたキーアイテムは二つ





一方は黒と濃い目のピンクでデザインされたウサ耳カチューシャ

おもちゃよりはしっかりと作りこまれているようで、どうやらバニーガールの衣装の付属品のようだ




もう一方はどこにでもある市販のものらしきスケッチブック

開かれたページには天使のような悪魔のような、形容し難い格好の少女が描かれていた









164: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/29(火) 23:32:08.59ID:0woBuVrk0













みちる(ボット)「あ、できたみたいです。やっぱり現実のより早かったみたいですね」



「次のパン、いきますか!」














ゲーム開始16分時点

十時愛梨VS浜口あやめ(ボット)

ボット側の戦闘放棄により続行不可能


ゲーム開始21分経過

報告事項なし


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



168: ◆E.Qec4bXLs 2014/05/07(水) 23:39:47.23ID:0UjRKW5e0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
神崎蘭子



ハチの巣


おびただしい量の銃弾に貫かれたあとの人体をそう比喩することがある


だがここは仮想の現実、そして何より「見るに耐えない表現」は規制されている

人体に潜った鉛の粒が抉るための肉はない、ただダメージの数値として処理が施され、目に見えないスタミナだけが減らされていく

そのあとは潜った場所の反対側から抜けていく


だから神崎蘭子の電子の肉体が感じたのは痛みに似た何か

そしてその身に余る衝撃のみ




蘭子「_______」




14歳がモデルの体は無様に跳ね飛ぶ。


現実なら弾が命中した箇所が爆ぜていてもおかしくないが、それが起こらなかった分が吹き飛ばすエネルギーにされたようだ

だが皮肉なことにそのおかげで雨のように降り注いだ弾丸の大部分を回避できていた



169: ◆E.Qec4bXLs 2014/05/07(水) 23:40:56.80ID:0UjRKW5e0



蘭子「けほっ!!えほっ!・・・」


背中を打ち付け咳き込む

壁際に並んだ店舗の一つ、さっき出てきたケータイショップの一つ隣のスペース

そこが蘭子が偶然吹き飛ばされた場所だった。3階からは完全な死角になっている


ひどく痺れる箇所、肩や腕を抑え蘭子は自分の体を引きずり店舗の奥に避難した


蘭子「(うぅ、ぴりぴりする・・・)」


リアルな痛みではないがそれでも内心は動揺どころではなかった。いきなりの銃撃に呼吸が乱れ目眩までする

動悸が激しくなったような気もしてきた、どこまでがリアルの感覚かわからない


べちゃ


蘭子「けほ・・・!」


床に手を付き、後ずさるときにぬるりとした感触

その店舗の床にもまたあのピンクの塗料が撒かれていた

塗りたてのペンキのように蘭子の手足や靴に上塗りされていく

銃声はしない。

蘭子を死角に吹き飛ばしたところでぴたりと止まった


蘭子「(ここに隠れてたら上から撃たれない、よね?・・・でも降りてきたらどうしよう・・・)」



他にも仲間がいたらどうしよう、逃げるとしたらどこに、この店の奥のスタッフルームはどこかにつながっているだろうか、そこにも敵がいたらどうしよう

反撃する手段もないし、状況を覆せる手段がない



とうとう壁際の、小物やら装飾品の飾られた棚の取り付けられた面に背中がぶつかった

よく見ると他にも壁から生えたフックからおしゃれな服が吊るしてあった、どうやらブランドものの服屋を模しているらしい

ついさっき自分のボットから逃げた時と全く同じ構図である。

違いは逃げ込んだ場所がケータイショップではないこと

スタミナも精神力も大幅に削られていること

手足の一部が動かせないほどに痺れていること

自慢の黒衣がピンクに染められていること




170: ◆E.Qec4bXLs 2014/05/07(水) 23:44:01.15ID:0UjRKW5e0



その後、体感で何十分も経過した、



だが実際は十分もたっていないかもしれない

蘭子は身をこわばらせ無音のままこちらを伺っているであろう三人に神経を尖らせ続けていた




こつんっ


蘭子「ひゃうっ!?」


静まり返ったスペースに小さく音が鳴る

蘭子の靴に何かがぶつかった音だ


蘭子「・・・・・・・・・・・・・・・?」

手のひらサイズのそれを手に取る

蘭子「これって」

それはピンクに汚れた携帯電話、今は静まっているが銃撃が起きる少し前にも足元に転がっていたのと同じおもちゃだ


蘭子「どうしてここに・・・?」

さっきこれが転がっていたのは通路であり店内ではなかった

まさか都合よく自分と同じ方向に弾き飛ばされた?

だとしてもその機体の表面に弾痕はないのはおかしい

これでは自分を追いかけてきたようではないか




その疑問はもうすぐ解消される

第二波とともに



_____________

 神崎蘭子 79/100



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~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



171: ◆E.Qec4bXLs 2014/05/07(水) 23:45:31.51ID:0UjRKW5e0









亜子(ボット)「21ダメージかぁ・・・」






マシンガンのハンドルから手を放し、亜子はひび割れたガラス越しに階下を覗き込んだ

そこには痛々しく穴だらけになった床しかない、蘭子は横方向に逃れ、しっかりと三人の死角に入っていた

そしてそのまま何の動きもないまま時間だけが経過しているところを見ると自棄になって通路側に飛び出してくることはなさそうだ



さくら(ボット)「あれぇ?もっとあたってなかったかなぁ・・・」

泉(ボット)「弾みで飛んでいったせいで外れたんでしょ、至近距離なら決まっていたわね。無理だろうけど」

マシンガンの横から帯状に伸びた弾丸はまだ十分な長さがある、プレイヤー1人屠るくらいなら十分お釣りがくるだろう

それでも泉は先ほどの不意打ちが完全には決まらなかったのが不満らしい


亜子(ボット)「だいじょーぶやって泉、弾なら融通きくんやし」


ガラスにもたれながら何も掴んでいない右手を握り込む

いつの間にか、その手の甲には数字のような紋様が浮かんでいた



21



たしかにそう読める、先ほど蘭子に与えたダメージと一致する数字だ


亜子(ボット)「アタシの能力があればなぁ!」

マジシャンのように右手を一気に開く

先程までそこにはなかったはずのもの

マシンガンの弾丸がその手のひらからジャラリとこぼれ落ちた

同時に手の甲に浮かんでいた紋様が消えていく


さくら(ボット)「はわぁ、手品みたぁい」

泉(ボット)「プレイヤーにダメージを与えると武器が手に入る能力、だっけ」

亜子(ボット)「そんなかんじやね、しかもうまいこと食らわせたら使った分よりようけ手に入るんやで!」


そう言うと亜子は足元に散らばった弾を立てて一列に並べ始めた



172: ◆E.Qec4bXLs 2014/05/07(水) 23:47:56.49ID:0UjRKW5e0


等価交換


それが土屋亜子の能力だった。

彼女の周囲でプレイヤーが受けたダメージを貨幣として、それを他の武器や銃弾と交換できる

削ったスタミナを別の何かにする、という意味では森久保乃々のそれと非常に似ている。

乃々はそのすべてを自身のスタミナという概念に変換し、亜子は武器、装備という現物に還元するというだけの違いだ



亜子(ボット)「ひのふの・・・なんや1ダースぽっきりかい・・・」


「もうちょい近づいて一発でも急所なんかに当たってくれたら大ダメージで大儲かり、もらえる弾丸も倍々ゲームやってんけどなぁ・・・」


泉(ボット)「そこは痛し痒しかな、接近戦だと足元を掬われかねないし」

さくら(ボット)「うーん?・・・えっと、うん!そーだねぇ!」


手すりに手をかけ身を乗り出し吹き抜けから蘭子のいた地点を見下ろす。

穴だらけになった床板がめくれ、飛散しているが泉が探しているソレははっきり見えていた


泉(ボット)「うん、ちゃんと塗料にまみれたみたいだね」


血糊には程遠い、闇目に鮮やかな桃色が引きずったような軌跡を残している

それはすぐそばの店舗の中に伸びていて、そこに蘭子がいることは上からでも瞭然


泉(ボット)「ま、どこに隠れても意味はないんだけど」


手すりにかけた手から能力を発動させる


その影響が現れたのは手すりと一体の鉄枠、そしてそこにはめ込まれたガラス

マシンガンの銃筒に貫かれ派手な蜘蛛の巣模様のできた分厚いガラス


その蜘蛛の巣模様が消えて、溶けた


ガラス全体がドロドロに変質し、ぬるりと波打ったことで表面の傷も含めて滑らかに均されていた


泉(ボット)「亜子、銃口を左に、あと角度も10度ほど下げて」

亜子(ボット)「がってん!」


ハンドルを握り直した亜子が泉の指示通りマシンガンの向きを微調整する

本来なら割れたガラスに引っかかるはずの銃筒が、柔らかくなったガラスを掻き分けるようにスムーズに動いた

そして矛先が蘭子の逃げ込んだスペースの出口付近に向けられる


さくら(ボット)「わぁ、水飴みたぁい!」

泉(ボット)「食べちゃダメよさくら。硬度と粘度の数値を書き換えただけで、これはガラスなんだから」


波打つガラスという不可思議に感嘆の声を上げるさくらを泉は冷静にたしなめる



173: ◆E.Qec4bXLs 2014/05/07(水) 23:51:50.28ID:0UjRKW5e0




プログラムの改竄



大石泉のその能力は出力と規模こそ小さめだが、応用力だけで言うなら島村卯月に並んでボット内トップである

仮想空間に設置されたあらゆるオブジェクトの、現実のものと似せるために設定された数値、

質量、動摩擦係数、静摩擦係数、粘度、硬度、粘着力、照度、密度、etc...そして色までもを書き換える


壁の表面だけをピンク色の、少しの粘着性を持ったペンキのような性質に変え

設置型のマシンガンと地面との間の摩擦を減らすことである程度の運搬を可能にし

そして今もガラスを柔らかくし、音もなく銃口を調整することに一役買った


泉(ボット)「さくら、あとお願いね」


さくら(ボット)「はぁい!」



お膳立てはした

トドメの一手が放たれる



174: ◆E.Qec4bXLs 2014/05/07(水) 23:52:38.98ID:0UjRKW5e0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


こつん


ことっ


からん


蘭子「・・・ふぇ?」


最初は足の先、ブーツのつま先にケータイが小突くようにぶつかってきた

それだけでない、インテリアとして背後の棚に置かれていた小物までもがひとりでに棚から転げ落ち始めた

ポルダーガイスト現象のように、次々に棚からこぼれ落ち、転がり出す

そして蘭子のもとに集まりだす


磁力に引き寄せられた砂鉄のように見えない力に引き寄せられる

蘭子「何事ぞ・・・え、え?」

だが蘭子にそんな自覚はない


もとより蘭子さえも何かに引き寄せられ始めているのだから

ずるり、と膝と床が擦れ合う

背中を預けていた壁から離れていく


蘭子「あれ?わ、私・・・どうして」


ケータイと小物が共にベルトコンベアに乗せられたかのごとく引きずられていく

慌てて立ち上がろうとした蘭子だが、すぐに転倒した

不安定な姿勢で転んだせいでしたたかに顔面を床に打ち付け、悲鳴が漏れる



175: ◆E.Qec4bXLs 2014/05/07(水) 23:53:47.34ID:0UjRKW5e0


蘭子「ひう、なにこれぇ・・・」


顔を拭おうと腕を上げる

そこでようやく気づいた

顔の近くに持ち上げた腕が横から何かに引かれているような感覚


引いているのは腕そのものではなかった

服の袖が引かれるようにピンとつっ張っているのを見る限り、


蘭子「引っ張られてるの、袖・・・服?」


束の間だけ冷静な思考を取り戻す。体全体に及んでいる謎の引力をよく観察した


蘭子「(私を、というより・・・私の服が引っ張られている?)」


自分の黒衣を見直す、今それはピンクのペンキもどきに汚れている。

手足に付着していたものもつい拭ってしまったせいでピンク色の手形のようなものまで付けられて、見る影もなくなっていた


蘭子「これって・・・」


周りを見渡す、地面を転がっていく小物たち、それらは不自然にピンクの彩りを加えられていて、

棚の上に残ったままの小物には暗くてわかりづらいが、見た感じ妙な色付はされていない。






蘭子「薄紅の、吸引力か?(ピンクのペンキがついたものだけ・・・動いてる?)」






そこでまた蘭子は不自然に態勢を崩した

引く”力”が強まっている

いきなり横薙ぎに視界が揺さぶられた


蘭子「___む_」

店の出口、デパートの通路、敵の射程圏内に向けて

数多のガラクタにまみれて蘭子の体がスライドしていった



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



176: ◆E.Qec4bXLs 2014/05/07(水) 23:56:18.75ID:0UjRKW5e0



さくら(ボット)「ピンクのものをい~っぱい集めちゃうよぉ!!」


さくらが力むように両の手をにぎる


それだけで周りの状況は一変していた



トラップとして泉が施していたピンクの塗装

それがスライムのように、あるいは壁画が動いているような不気味さで床や壁を伝って動き始めた

他にも近くの店舗から大小様々な雑貨がこぼれ落ち始める。

それにも例の塗装がこびりついていた


亜子(ボット)「おおっ、今蘭子ちゃんのスカートのはし、チラッと見えたんちゃうか?」


ハンドルを握りながら下を監視する亜子が声を弾ませる


泉(ボット)「次に姿を見せたら、また吹き飛ぶ前に集中放火ね」


さくら本体の足元に転がってきたピンク色の帽子を足で踏み止め泉が呟く

早いとこさくら能力で蘭子を引きずり出さないと先にさくらがピンクまみれになってしまう



さくら(ボット)「ふぬぬ~~!!」



177: ◆E.Qec4bXLs 2014/05/08(木) 00:01:21.04ID:8Kw4i4aB0




ピンクのものを集める



村松さくらの能力の説明はそれに尽きる

ピンクのものを操る、ではなく一直線にさくら本体に引き寄せるだけ

能力としての強度は高いが、この「ピンク色」の定義がかなり曖昧なためどうにも実用的でない


だからこその泉の仕掛けだ


ピンクに塗装された壁や床のある場所に踏み入るもよし、あらかじめピンクの液体まみれにされた品物に触るもよし

どこかしらを着色しさえすれば、さくらの力は有無を言わさず発動する


最低でも銃弾の届くエリアまで引きずってこれれば、あとは亜子がハチの巣にしてくれるだろう


亜子が武器を補充し

さくらが敵を集め

その間を泉が取り持ち

武力に物を言わせ問答無用で叩く

それがニューウェーブの戦法だった


泉(ボット)「.........」


亜子(ボット)「.........」


さくら(ボット)「ふんぬぬぬ~!」



3階から1階を見下ろす、死角となっていた店舗のスペースから少しずつ小物にまみれた黒衣のはしが見え始めていた

蘭子が中で何かにしがみついているのか、その動きはひどく緩慢だ


泉(ボット)「さくら、力を強めてみて?」

さくら(ボット)「! はぁーい!」


次の瞬間、俄かに周囲が騒がしくなった

あっちこっちの店舗に仕掛けられていたピンクの置物や商品が棚から一斉に転げ落ちたのだ

まるで地震が起きたようだが、人間や床は一切揺れていない

地鳴りのような音を立てて雑音の合唱が始まる


もちろんその影響は蘭子の着ていた服にも訪れて、






亜子(ボット)「___出たぁっ!!!」




178: ◆E.Qec4bXLs 2014/05/08(木) 00:03:26.86ID:8Kw4i4aB0




引っこ抜かれたように蘭子の服がまろびでる

逃げ場のない通路の中央まで引きずられ、



吹き飛ぶ猶予もなくハチの巣にされた



途切れない銃声がボットの聴覚機能を圧迫する



ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!


さくら(ボット)「ひゃわっ!?」

さくらが能力の発動をやめ、反射的に耳を塞ぐ


ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!


亜子(ボット)「・・・やっかましいなぁあああ!」

亜子が声を張り上げる


ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!


泉(ボット)「え、なに!?聞こえない!!」

泉がマシンガンの付近から距離を置く


ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!


銃口はマズルフラッシュを噴き出し、

そこから吐き出された鉛の雨が蘭子の黒衣を穿ち続けた




179: ◆E.Qec4bXLs 2014/05/08(木) 00:04:15.37ID:8Kw4i4aB0



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~





みちる(ボット)「~♪」



あやめ(ボット)「みちる殿、こっちのパンはこんなものでいいのでしょうか?」


みちる(ボット)「いいですね!美味しく焼けた姿が今から楽しみです!」

あやめ(ボット)「はぁ・・・美味しくなるのでしょうか?」

みちる(ボット)「大丈夫ですよ、小麦粉は無敵です!」


みちるの能力が作り出した大型のパン焼き機の前で二つの人影が作業を続けている

手元にある物体に力を加え、こねて伸ばして丸めたあと仕上げに形を整える


あやめ(ボット)「聞くところによると酒の類の入ったパンというのもないことはないらしいですが・・・」


二人はパンを作っていた

ドリンクと、キーアイテムを盛大に放り込んで

大量の空き瓶がそばに転がっている。

みちるの能力の下準備のため、アイテムたちをパンらしくしなくてはいけないのだ


みちる(ボット)「できました」


小麦粉がベースの生地に包まれた塊をそっとプレートの上に乗せる


若干ひらべったい四角形で端っこからは、黒地にピンクのアクセントが効いたウサ耳が見えている



180: ◆E.Qec4bXLs 2014/05/08(木) 00:06:54.48ID:8Kw4i4aB0



あやめ(ボット)「それ・・・食べられるのですか?」

みちる(ボット)「はい!焼けば、あたしの能力でアイテムとかがいい感じにパンの具になりますから、決してゲテモノ食いではありませんよ!」



恐る恐るといった様子のあやめからの問いにみちるは自信満々に胸を張る。

そしていつの間にか装着していたキッチン用手袋でプレートを確保するとパン焼き機の鉄扉の奥に設置した



みちる(ボット)「もちろん小麦粉があっての話ですけどね」

あやめ(ボット)「そうですか、ところでその小麦粉の方はみちる殿の能力で捻出できないのですか?」


鉄扉をしっかりと閉めた途端その中からゴウとくぐもった炎の音が漏れ出した



みちる(ボット)「あー、無理ですね。だからこうやってデパートの食品街の一角を占拠してるわけですし」



あやめ(ボット)「やはりですか、ニンニン」



みちるは先に焼いていたパンに手を伸ばすとそれを頬張りだした

反対の手で別のパンをあやめに差し出しながら



そうしている間にもキーアイテムが焼けていく

そのプログラムが全く別のものに書き換えられていく



みちる(ボット)「フゴ!フゴフゴフゴゴ?(ほら!美味しいでしょ?)」

あやめ(ボット)「あ、これ本当にパンですね」



広い広いデパートの中、二人の暗躍に気づく者はいない



ゲーム開始24分経過

報告事項なし



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181: ◆E.Qec4bXLs 2014/05/08(木) 00:11:35.49ID:8Kw4i4aB0










長い長い数秒が過ぎ、ようやく銃声が止む





さくら(ボット)「はぅ、耳鳴りしちゃう」

泉(ボット)「ボットなのに何言ってるの」


亜子(ボット)「えーと、残弾は・・・まだあるな」


さくらの能力もマシンガンの大音声も止まり、三人の声以外の音が消える


亜子は自分の手の甲に注目する、そこに蘭子に与えたダメージが表示されるのだ


亜子(ボット)「(蘭子ちゃんがアタシらに会うまでノーダメやったとしたら今ので79ダメージ・・・)」


「(そんだけありゃ今ぶっぱなした分の弾に色付いて返ってくるどころか、プレイヤー撃破ボーナスも合わせて新しい武器もゲットできるで!)」


「(手榴弾か、それともライフルか・・・さくらや泉でも使えるやつやないとな・・・)」


亜子の人格をトレースしたボットの知能が、予測をもとに戦略を組み立てていく

彼女の能力は攻撃の要なのだから、ここでの細かい計算が次の戦闘に波及していくのだろう





亜子が見守る中、手の甲をなぞるように紋様が浮かび上がった





182: ◆E.Qec4bXLs 2014/05/08(木) 00:12:56.27ID:8Kw4i4aB0




































      0


















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 神崎蘭子  79/100



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ゲーム開始24分経過

神崎蘭子

 VS

大石泉(ボット)&土屋亜子(ボット)&村松さくら(ボット)

継続中



188: ◆E.Qec4bXLs 2014/05/18(日) 23:34:03.53ID:4H+uNMH40



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チャプター
一ノ瀬志希&池袋晶葉



志希「あたしさ、匂いで人間を作れって言われたことがあるんだケド・・・この話聞きたい?」



壁に並んだ、全部で18機のカプセルを眺めつつ、志希が話を振ったのはちょっとした暇つぶしのためだった

晶葉「君の海外での思い出話にも興味はある、だが先に報告することがあるだろう」


志希に背中を向ける形でディスプレイと向き合っていた姿勢を解き、肩のコリをほぐしながら晶葉が振り返る

その視線の先にいる志希は、さっきまで使用していた機器とそれをカプセルとつないでいた端子をくるくると巻き取るように回収していた。

志希「? あーうん、プレイヤーの本体はみんな健康体だったよん♪血圧心拍数発汗量のどれも異常値は無し、ばっちぐー」

仮想空間に切り離した意識を送り込まれ、無防備になったプレイヤーの肉体は転送装置も兼ねたカプセルの中で保護、管理されている

かといってその本体に何かないとは限らない、だからこその精密検査だ。

志希は先程まで別の装置を用いてカプセルの中に人を納めたままその身体検査を行っていた


志希「状態としてはそれこそ夢を見ている状態かな? ちょっとばかし汗っかきの子がいるけど脱水症状起こすほどじゃない、悪い夢に魘されてるな~ってくらい」

晶葉「ならいい。三十分後にもう一度途中経過を診てもらうから、そのつもりで頼む」

志希「頼まれたーん♪」


晶葉の隣にぽすっと腰を下ろした志希がはだけた白衣を整えもせずに晶葉と同じ画面を眺める

晶葉「で、さっきの話の続きはどうなるんだ」

志希「あ、聞く?聞いちゃう?」


晶葉「興味がある。”匂いで人間を作る”という意味がわからないしな、匂いは感覚であって物質ではないのに」

晶葉はじっと眺めていた画面から目を引き剥がし、メガネをずらして目を擦った。流石に疲れたらしい




189: ◆E.Qec4bXLs 2014/05/18(日) 23:36:14.70ID:4H+uNMH40


志希「順を追って話すって」

「きっかけはギフテットのあたしのことがどっかのお金持ちさんの耳に入ったってコト」

「ある日研究室でハスハスしてたとこを留学先の先生、あれ教授?だったかに呼び出されて連れてかれたとこにいたのがお金持ちだけど目の見えないおじいさん、」

「で、その人に頼まれたのがさっきの内容。お金は積むから匂いで人間を作れってさ」

「つまりなんてゆーかな...人間が”そこにいる”と思えるような匂い?」


「よーするに体臭だよ体臭。そのオジサマは亡くなった奥様の体臭を香水で再現しろって言ってきたんだよね~」

「香水ってフツー、体臭をごまかしたり飾ったりするためのものでしょ?その逆をあたしにやれだってさ」


晶葉「それはまた..........奇天烈な」


晶葉が目頭を揉みながら感想を言う。志希は伸ばしっぱなしの前髪に指をくるくる巻きつけていた


晶葉「で、それは上手くいったのか?」

志希「う~ん、かなり難航したんだよねぇ。体臭といったってまさか加齢臭作るわけにもいかないし。そのおじいさん目が見えない代わりにあたし並に鼻が良かったから誤魔化しも効かないし。それに何より匂いのモデルがお墓の下だったのがチメー的」

「そのおじいさんは妻の形見で生前着てたドレスとかお高いコートだのについた匂いから再現してみろー、とか言うし」

晶葉「ふーむ。体臭なんぞその日のコンディション次第で変わってしまうものだろう。匂いに敏感な人間にとっては尚更だ。そのご老人には無茶を言っている自覚はあったのか?」

志希「うん、いくつか作ってみたけどどれも気に食わないって没にされちった、投げ出さなかったのが今でもフシギー」

志希「まー、オジサマもギフテットなら出来ると思ってたんじゃないかなー?天才なんだからなんでもできるんだろー! というよくある誤解と偏見だねー」


「んまー、結果的にはオジサマを満足させるモノは出来たし、間違ってはないかもね」


晶葉が意表を突かれたように片眉を上げて横を見る。志希はあっけからんと笑っていた

晶葉「ギフテットの面目躍如だな。難航したとか言いつつちゃっかり成功しているではないか」



志希「あー・・・なんてゆーか満足させたわけだけど成功したわけじゃないんだよ・・・」

晶葉「?」



志希「実を言うと香水は完成しなかったのにゃあ」





190: ◆E.Qec4bXLs 2014/05/18(日) 23:37:58.06ID:4H+uNMH40




晶葉「・・・は?」


志希「にゃはぁん」


呆気にとられた晶葉は今度こそ体ごと隣を向いた。

晶葉「待て待て待て・・・難易度の高い香水作りを頼まれて、しかも相手は鼻のきく盲人で、結果として香水無しに満足させた?意味がわからんぞ」


志希「発想の転換というか認識と感覚の違いだね、極論そこに死んだ妻がいると思わせられればそのオジサマにとって匂いなんてなんでも良かったんだよ」

「つまり死んだオクサマの匂いが漂ってればいいってわけじゃなかったってゆー、あたしの苦労はなんだったのだー」

志希はその時のことを思い出すように肩をすくめやれやれとため息をついた


晶葉「つまりなんだ?例えばその妻とやらそのものの体臭ではなく、間接的に妻を連想させるもの、料理や化粧なんかの香りでお茶を濁したということか」

志希「半分正解にゃん」

「その亡き妻ちゃんが生前使ってたってゆー香水を邸宅の使用人がこっそり隠しててね、色々誤魔化してそれを嗅がせたらビンゴだった”これぞ私の妻の香り”だってさ」


晶葉「ギフテットとはいえ十代の少女を呼びつけておいて随分粗末な幕切れだな・・・、」

成功譚とは呼べない、そんな志希の昔話に興が削がれたとでもいうように晶葉はディスプレイに視線を戻した

志希「で、どー思う?」

その隣でゴロンと寝っ転がった志希が晶葉の顔を下から覗き込む

晶葉「ふむ、匂いというのも突き詰めて言えば脳に対する刺激なわけだから案外研究を重ねれば脳を騙し、その手の感覚を喚起する芳香も出来たかもしれないな」

志希「うん、やっぱそう思う?」

晶葉「おそらくそこまで行くと幻覚剤というか完全に危険な薬品に分類されそうだがな」

志希「にゃふふん」

もとよりなんのオチもないただの雑談だったらしく、そこで会話が途切れる

カプセルや他の機材から流れる低く唸るような駆動音を除いて沈黙する

志希「そういやこの晶葉ちゃんの発明した機械も似てるよね。ありもしない場所、居もしない人物を脳に錯覚させてるんだから」

晶葉「そうだな、たしかに原理はその香水と同じだ。そっちが化学物質を使っていて、こっちは電子制御を用いているというだけの違いだな」

「あと訂正しておくと、完成品こそ私の手が大幅に加えられているが、元となるシステムの発明自体は企業のしたことだ」

志希「あーそだっけ、あと街の仮想モデルもその企業のだっけ?」

晶葉「そうだ、私の専門はロボットだからな。街一つ再現する超高精度物理シュミレーションソフトなど私一人では到底無理だ。というか君はその説明もされていたと思うのだが...」

志希「とか言いつつちゃっかりうちの事務所のモデルも混ぜ込んでるじゃん・・・ってことは純粋に晶葉ちゃん謹製なのはボットだけかぁ」

晶葉「君が香水でやろうとしたことを電子信号でやってるだけだがな」

志希「でもあたしと違ってそっちは成功してるよね、それにちゃんとした人間のイメージを作れてるし」

今頃は仮想の電子世界で跋扈しているであろうボットのことを思いながらずらりと並んだディスプレイに目をやる

その画面は見知らぬ街を鳥瞰するものや何かの数値をグラフにしたもの、得体の知れない英数字の羅列を流し続けるものなど様々だ


晶葉「......ちゃんとは...してないな」

志希「うん?」




191: ◆E.Qec4bXLs 2014/05/18(日) 23:41:21.54ID:4H+uNMH40


晶葉「このボットたちは所謂人間味をテーマに事務所のアイドルの手を借りたのだが」

志希「手じゃなくて脳みそでしょ?」

晶葉「言葉の綾だ。とにかくボットというのはそのモデルになったアイドルの思考を真似て行動するロボットだ。だから今回の模擬戦闘のように共通の目的を与えられても解決までのアプローチに違いが発生する」


志希「あとゲットした能力にも差が出てるよね。で、ちゃんとしてないってどゆこと?」

晶葉「ボットの、なんというかその・・・感情のようなものが薄いのだよ」

志希「かんじょう?ロボットなのに?」

晶葉「そうだ、CHIHIROが読み取ってくるデータを見るにボットたちは限りなく人間に近い思考プロセスをたどって行動してはいるし、言動も人間そのものなのだが...なんだろうな...それでも人間には見えない」

志希「...?例えばどんなトコが?」

歯切れ悪く言葉を探しながら画面を睨む晶葉に志希が疑問符を浮かべる

晶葉「まず一度決めた行動に迷いがない。発砲も捨て身も長時間の待ち伏せも、コンマ一秒の躊躇もなく実行に踏み切っているあたり人間のプレイヤーとは違う。まるで容赦のない歴戦の兵士のようだ」

「だから、それを踏まえて客観的に眺めているとどうしても人間のふりをしているようにしか思えないのだ」

志希「まぁ...ロボットだし?そういうラグとか思考停止って機械には再現できないものでしょ」

晶葉「そうなんだがな......躊躇、恐怖、焦燥そして混乱。もしロボットに感情を与えられる日が来たとしても彼女らがこれを得ることはないかもしれないな」


志希「混乱、ねぇ...機械の混乱ってそれただの故障だもんね」




192: ◆E.Qec4bXLs 2014/05/18(日) 23:43:14.06ID:4H+uNMH40



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チャプター
神崎蘭子




ボットに混乱はない



推測と違うことが起きたならすぐさま思考を立て直す

考えることをやめない、電源が切られるその時まで


さくら(ボット)「あれぇ!?アコちゃん、それどうしてゼロなのぉ?」


人間じみた発言を繰り出そうと、電子の頭脳は冷静に視界から消えた相手を探している


泉(ボット)「見なさい、どうやら亜子が撃ち抜いたのは蘭子さんの服だけのようね」


索敵に使う目と耳のセンサー、焦燥もなくそれらはなんら支障なく稼働し


亜子(ボット)「むこうに逃げよったで...大損こかせよって...今度こそ往生せんかい」


怒りを真似ながら、次なる攻撃への移行をスムーズに完了させた




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193: ◆E.Qec4bXLs 2014/05/18(日) 23:45:50.24ID:4H+uNMH40




チャックを力任せに引っ張り上げる

腕の引っかかった袖を無理に通す

はだけた襟元から覗いた肩を乱暴に隠す

その間も走る足は止めない


背後からは囮にして近くの棚の足に袖口をくくりつけた服が引き裂かれていく音がする

いや、それは聞こえていると思っているだけだ。

今蘭子の鼓膜を叩く音は数十数百の弾丸が火薬を爆ぜさせ空を裂く音だけ

その銃弾の撃ち手が囮に気づき、今にも自分に銃口を向け直すのではないかという恐怖が蘭子の足を急き立てる


蘭子「い、忌々しき...!!あぅ...もういやぁ......」


着ていた服を囮にし、近くの棚に飾られていたブランド物の衣装を身につけながらの逃走

足はもつれ、息は上がり、涙で景色がにじんでいる

そこは仮想の世界でも、蘭子にとって恐怖も混乱も焦燥もすべてが本物だった

蘭子「はぁ...はぁ...!」

とっさの判断で選んだためサイズが合わずだぶついた袖から無理に指を突き出す

特に汚れてしまっていたブーツは脱ぎ捨て今は裸足にスニーカー履きだ

蘭子「わぷっ!?」

つまずいたはずみで視界にかかったフードを頭を振って振り払う


薄手のワンピースに前の開いたパーカー、そしてスニーカー

カラーを黒に統一したのはアイドルとしてのセンス故か。それが今の神崎蘭子の格好だった


横の店には逃げ込めない、ピンクのコーティングのある空間には踏み込めない

逃げるなら直線を行くしかない、行き止まりの無い横道が見えるまでまっすぐまっすぐ、それがマシンガンの射線上だとしてもそこを走りぬき逃げ切るしかない

だがデパートは広い、逃げても逃げても視界の両脇を流れていくのは何かの店舗のみ


そしてだしぬけに

絶えず蘭子の背中を叩き続けていた発砲音が止まる

蘭子「......!...」

それが弾切れの証なのか、囮がバレてしまったということなのか。



194: ◆E.Qec4bXLs 2014/05/18(日) 23:46:34.10ID:4H+uNMH40


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「今度こそ倍プッシュや!」

「待って、あそこまで離れちゃうと亜子の能力の効果範囲外じゃない?」

「あっ、うわ...ほんまや」

「ま、大丈夫でしょ、仕込みは他にもあるんだから。ね? さくら」

「はぁい、もおちょっと強めにするんだよね?」

「うん、お願い。私はこっちに来た”流れ弾”を防ぐ盾を作るから」

「はぁ、アタシは一旦休業かい」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



195: ◆E.Qec4bXLs 2014/05/18(日) 23:49:49.04ID:4H+uNMH40



ぐにゃり



蘭子の見ていた景色が歪んだ

水面に写っていた風景が波紋で揺れるように

蘭子「夢か...現?(なに、これ)」

その正体は蘭子の視界を占めていたピンクの塗料

暗闇の中浮いたその色が一斉に動き始めたのを見て、まるで風景が揺れたような錯覚が起きた

いや、実際はさっきから少しずつ動いていた。だからこそ蘭子は横に逃げることができなかった


蘭子「解せぬ...はその収斂の、急速たるや?(どうして、さっきより動くのが早くなってるの?)」


村松さくらの能力はその使いにくさに反比例して強度は白眉だ

有無を言わさずプレイヤーを引きずり出し、数を問わず多数の物体に同時に均等に作用する


それが手加減抜きの強度限界まで発動された


十分距離を開けたはずの蘭子の周囲にすら多大に影響を及ぼすほどに

ニューウェーブの波状攻撃に対し

神崎蘭子の安全圏は未だ遠い


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



196: ◆E.Qec4bXLs 2014/05/18(日) 23:51:05.10ID:4H+uNMH40



ペンキ?


さっき私の体にこびりついていたあのベタベタした変なのが壁から剥がれるみたいに通路に流れてきた

さっきからちょっとずつ動いてたけど、あれはもっとゆっくりだったのに

私が走るさきにも流れてきた、うん、本当に流れるみたいにさらさらっと


「......!!えいっ!」


思った以上に急速に動き始めたそれが道をピンクの川で塞いじゃう前に飛び越える

靴の裏についちゃわないように手加減抜きで、転びそうになりながらも着地できた

靴のつま先に目を落とす、少ない明かりだけど私の足は何もない暗い部分を踏んでいた

うん汚れてな...

「っ!?」

その足元めがけてピンク色のボールが転がってきて慌てて飛び跳ねる

それはピンクに塗られた林檎だった。

どこからか転がってきて私の足元を通過し後ろに引っ張られていく

ただそれだけの動きなのに私からすればそれは罠にしかならない

少しでも触れれば同じように後ろに引っ張られて...


蘭子「我を、戦慄せしめんとするか...(怖いよぉ...)」

コロン

前を向き直したところに今度はコップが転がってきた、やっぱり口紅みたいにピンクの汚れつきだ

足元を見ながら躱す。他にも通路の床を水溜りみたいにピンクが侵食してきている。

でもここを一気に駆け抜けないと後ろの三人が追いかけてくるかもしれない



蘭子「........」


蘭子「......よしっ」


足元から視線を上げる。見据えるのは闇の先、見えない出口



197: ◆E.Qec4bXLs 2014/05/18(日) 23:52:39.82ID:4H+uNMH40









だったのに




ソファ、レモン 目覚まし時計、麦わら帽子、消化器、ベルト、買い物かご、ハンガー、三輪車、事務椅子、枕、マネキン、鉛筆、消しゴム、不細工なぬいぐるみ、ゴミ箱、クッション、電気スタンド、電話機、エプロン、辞書、豆電球


蘭子「......は」


果物、文房具、家具、衣類、書籍、etc etc...


蘭子「...いつの間に」


大きな物小さな物丸い物四角い物尖った物重そうな物軽そうな物


そのどれもが少しだけピンクに汚されていて



その「少し」の部分に全体が引っ張られて


津波のように私に押し寄せた



蘭子「っ......きゃああああああ!!!」





198: ◆E.Qec4bXLs 2014/05/18(日) 23:55:23.67ID:4H+uNMH40



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「さくらの能力はピンクであればあるほど強く働く」

「だからちょっとしかピンクじゃないものだと力は弱い」

「でもさくらが能力の出力を上げて強く引っ張ればそんなのは関係なくなる」

泉(ボット)「そうよね、さくら?」

さくら(ボット)「えぇと...はい?」

亜子(ボット)「さくらぁあ!!?」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



一番大きな物

ソファがワイヤーに引っ張られたみたいに倒れてくる

蘭子「っあ、わわ!!?」

逃げないと! 逃げないと!!


その影を避けるように横に方向を変えて走る、でも店のスペースには踏み込まない、ピンクの水溜りができてるから

そこにも鉛筆がコロコロと転がってきたからつんのめるように足を止めた

ぬいぐるみが地面を這いながら滑ってくるのを踏みつけないようにジャンプ


蘭子「ククク.......み、見切ったもん!」


これは別に私を狙ってるんじゃない、その移動の線上に私がいるからこうなるんだ

だから全部はよけなくていい、ぶつかりそうなのだけを避ければ


蘭子「...!」


マネキンが着ている服をアピールするように腰に手を当て、そのポーズのまま私に迫る。

私より背の高い人形が足を動かさずに暗闇の中を動いてくるのはすごい怖いけど


蘭子「えいっ、やぁっ!!」


そのマネキンが着ている服の、ピンクじゃないとこをつまんで力いっぱい横に受け流す

マネキンは最初グラッと揺れてからこけた。でもやっぱり腰に手を当てたまま私が来た方向に滑っていく

蘭子「さらば桃の傀儡、よ!」

言いながらまた転がってきた男性物の傘をまたいで、座布団を迂回し、スイカを飛び越える



199: ◆E.Qec4bXLs 2014/05/18(日) 23:57:25.60ID:4H+uNMH40




ガガガガガガガガガ!!!!



蘭子「ひゃっ!?」




何の前触れもない銃声、さっき散々聞いたあの怖い音がまた聞こえた、ほんの少しだけ


後ろの三人に見つかった!?


私は足を止め振り返る。地面を転がったり滑ってきた物はもう大部分が私の後ろに流れて行った

他にも私の進行方向からいっぱい転がってきてるけど私にはぶつかりそうもない離れた場所ばっかりだ


蘭子「...はぁ...はぁ...」


後ろには暗闇、その奥に向かっていく大小様々なピンクのオブジェしか見えない

さっきの三人からは距離を取ったし、あのボットは上の階にいたからもっと離れてる


蘭子「なにゆえの銃撃か.........?」


ソファの背もたれが破けてぽっかりと穴が空いていた

さっき避けたソファ、穴が開いたその部分からポツポツと穴が地面に続いている。

そこに銃弾がめり込んでるんだ。ソファを越えてこっち側に蟻の行列みたいに弾痕がまっすぐ伸びている

でたらめに私を狙ったみたいだけど、私が横に避けてたから全然当たりそうもない方向に続いていた


蘭子「...自棄を起こしたか...外れておるぞ」


パリ...カチャン!


黒い穴がポツポツと続いていく先を目で追った先に商品棚があった。

私の道を通せんぼするみたいに進行方向にズラッと並んでいて、その引き戸のガラスが軒並み割られている


パリ、パリ...

ガラスのヒビが広がる



200: ◆E.Qec4bXLs 2014/05/19(月) 00:01:32.62ID:RueIKKOn0


あれ?


この棚にはピンクのあれが塗られてない...?

蘭子「む?」

ガラスはゆっくり割れていく、銃弾のせいで脆くなっているみたい...

蘭子「我は、」

ペキペキペキ、ペキ


ガラスごと戸が外れそうになっている


蘭子「前途を塞がれて、」


ピシピシピシピシピシピシピシ


なんだろう?...あれって


蘭子「どこに逃げるのだ?」



ガラスが内側から押し出されてるみたい



ガッシャアアアアアアアアアン!!!!!!


蘭子「!!」


ヒビの入ったガラスが完全に砕ける、棚の内側から爆発したみたいに____




201: ◆E.Qec4bXLs 2014/05/19(月) 00:05:04.11ID:RueIKKOn0




   痛い




   フォーク



蘭子「     」



    右  
        足


           ナイフ


お 腹


    柄 の長い フォーク


蘭子「      」



        肩

  
痛い


   果物 ナイフ

痛い


 左 腰? 胸? 太もも? 全部?



     包    丁


痛い 痛い痛 い


               血の色じゃな


蘭子「    ぁ   」


いたいたいたいたいたいたい



刃先  だけが

 べっとり ピンク色の





棚に詰め込まれていた刃物が通路全体に炸裂して


その一部が私のいろんなとこにいっぱい刺さった




202: ◆E.Qec4bXLs 2014/05/19(月) 00:07:10.78ID:RueIKKOn0



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デパート三階


通路の横の道を封じ、一直線上のその先に溜め込んだ刃物をさくらの能力で爆発的に引き寄せる

おそらくそれは作動したはずだが念の為にさくらの能力は発動したままだ。

そのせいで未だにさくらによってくるあれこれを泉が盾で防御している。その盾も近くの店舗の看板を剥がし軽くて丈夫に改造、もとい改竄したものだ


亜子(ボット)「あ~~やっぱアタシの能力届かんわ」


泉(ボット)「さてと、一回きりの罠まで使ってるんだから......あ、ガラスなら私の能力でくっつけて直せるか」

さくら(ボット)「これ終わったら追いかけるの?」

亜子(ボット)「そりゃ、これが決定打になるかはここからじゃよく見えんしな。トドメ差しに行かなあかんやろ」

泉(ボット)「即死じゃなくてもしばらく動けない位にはやれているかしらね。マシンガンはどうする?置いておく?」

さくら(ボット)「わたしの能力なら簡単に引っ張れるよぉ?」

泉(ボット)「それだと何かの拍子に壊れるかもしれないからだめ」

亜子(ボット)「じゃあ、今さくらんとこに集まってきてるモンでやるか。しもたな、アタシらがおる階までピンクずくしにするのは余計やったかもしれん。」

さくら(ボット)「わはー、散らかってるー!」

泉(ボット)「さくらに寄ってきてるのよ...全く、あなたが能力を発動している間、飛んできた色んなものからあなたを守っている私の身にもなって頂戴」

亜子(ボット)「しっかし...この戦法、連続しては使われへんな。いちいち片付けなあかんし...」

さくら(ボット)「ええ、お片付けぇ?」

泉(ボット)「蘭子さんに止めをさしたらね」


亜子がマシンガンの弾丸を抜き取り、タスキのように肩にかける

この銃器は置いたまま蘭子のもとへ行くつもりだから、これはマシンガンが奪取された時のための備えだ。

泉は転がってきた物品の中から手頃な武器になりそうなものを吟味し、その横でさくらが能力の発動を止めようと四苦八苦していた。

能力の出力こそ下がったようだがまだ完全にOFFにできず足元にピンクのキーホルダーをくっつけている


さくら(ボット)「あれぇ...能力切れないよぉ?」

泉(ボット)「ゆっくりやってみなさい。あっと...これでいいかしら」

亜子(ボット)「なんやそれ、金属バット?・・・武器にするにやったら、できれば一発で相手をいてこませそうなヤツがええけどなぁ」

泉(ボット)「それって能力の関係上?」

亜子(ボット)「そやそや、一撃必殺もボーナス対象やでマイナス分は取り返さなあかんし」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



203: ◆E.Qec4bXLs 2014/05/19(月) 00:08:38.61ID:RueIKKOn0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~





それは


高速で移動していた



最初こそ地面を引きずられていたが、あまりの速さに今ではほとんど地面から離れて飛んでいるようだ



それは



あちこちにその体をぶつけながらも止まらない



目的地に向けて一直線に飛んでいる






~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



みちる(ボット)「あれ?」


あやめ(ボット)「どうされました?」


みちる(ボット)「パン焼き窯、というかパン焼き機の調子が...悪いみたいで...」


あやめ(ボット)「はぁ...わたくしには分かり兼ねますが」


みちる(ボット)「う~ん、火は止められませんし、置いとくしかないんでしょうか」


あやめ(ボット)「みちる殿の能力になにか不調が?」


みちる(ボット)「いえ、んー、なんでしょう。窯の中のパンがなにかの干渉を受けてるような...」


あやめ(ボット)「その戸を開けて確認できないのですか?」


みちる(ボット)「そんなことしたら能力が制御できなくなっちゃいます、あとパンが生焼けどころかキャンセルされるかも...」


あやめ(ボット)「では静観しかないでしょうな」


みちる(ボット)「でも、うぅん......なんなんでしょうこの感覚...」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



204: ◆E.Qec4bXLs 2014/05/19(月) 00:11:32.35ID:RueIKKOn0







ボットは混乱しない





予定外の出来事に直面してもその思考に1ビットのゆらぎも起きない。

それが起きた瞬間には次の思考が開始されている



例えばデパートの三階に存在する数少ない光源である天窓


そこを「何か」が突き破って猛スピードでさくらに向かおうと





ガッシャアアアアアアアアアアアアン!!!




粉状に散らされた天窓のガラスが地面に降り注ぐよりも

さくらにソレが衝突するほうが早い、そのことが一目瞭然なほどにソレは速かった


さくら(ボット)「ええぇ!?」


亜子(ボット)「さくらぁ!」

泉(ボット)「避けて!!」


軌道は一直線にさくらをめざしている



その青い箱は、



村松さくらの能力で引き寄せられたものではない


さくら(ボット)「とうっ」


だからさくらは横っ飛びで受身も考えずに精一杯その場から逃げた

地面に散らばったピンクの座布団が彼女を受け止めてくれるだろう


そのはずだった





「うわああああああああああああッ!!??」



さくら(ボット)「______へ?____」




206: ◆E.Qec4bXLs 2014/05/19(月) 00:27:23.88ID:RueIKKOn0




さくらが引き寄せていたピンクのもの



それは森久保乃々の青い箱ではなくその中に閉じ込められたピンク色の手袋だったり、

その箱に必死にしがみついていた早坂美玲の濃いピンクのパーカーであったりした







美玲「止おおおまあああれえええええええええええッ!!!」






横っ飛びでは逃げるには足りない。箱はほんの数ミリ軌道がずれただけでは勢いは豪ほども緩んでいない

能力の最高出力で引き寄せられ、さらに落下の加速まで付加された一辺1メートルの立方体が





村松さくらの体ごと三階の床をぶち抜いた






ゲーム開始28分経過

森久保乃々(ボット)

VS

早坂美玲

VS

村松さくら(ボット)



神崎蘭子

 VS

大石泉(ボット)&土屋亜子(ボット)&村松さくら(ボット)


継続中





208: ◆E.Qec4bXLs 2014/05/19(月) 00:31:48.17ID:RueIKKOn0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~





ボットは混乱しない






予定外の出来事に直面してもその思考に1ビットのゆらぎも起きない。

それが起きた瞬間には次の思考が開始されている



たとえデパートの片隅でこっそり稼働させていたパン焼き機の、



その鉄扉を紙屑のように吹き飛ばしながらパンがロケットのように飛び出そうとも


それが黒地に”ピンク”のウサ耳とスケッチブックを混ぜ込んだパンでも





けたたましい爆発音を立てて鉄扉が弾ける

そこから見える赤々と燃えた炎を背景に小麦粉にまみれたそれらが飛び出した

近くにいたボットに目もくれず飛び去っていく



あやめ(ボット)「っ!!」



瞬時に浜口あやめは能力を発動させ、

その目は自分たちのいる場所から高速で離れていく2つのキーアイテムを捉えた



あやめ(ボット)「みちる殿!?今のは一体...?」



何が起きたのかはわからない、アイテムを確保したいが明らかに追いつける速度ではない

だから状況把握を優先した。アイテムを追っていた目線をみちるに戻す

そういえばさっきから随分パン焼き機を心配しているかのように鉄扉の前に陣取っていた

この異変の前兆を感知していたのかもしれない。なら今のも彼女には何かわかったのだろうか




209: ◆E.Qec4bXLs 2014/05/19(月) 00:34:32.43ID:RueIKKOn0



あやめ(ボット)「みちる殿...?」



みちる(ボット)「    」



彼女は無言で窯の口を覗き込んでいる、鉄扉が外れ、むき出しになった炎を。

あやめからはその背中しか見えない




ぐらり


大原みちるの体が傾き


どさり


天井を見上げるように倒れた



胸の真ん中に鉄扉の破片を深々と食い込ませながら



あやめ(ボット)「.........みちる殿...」





ボットは混乱しない


予定外の出来事に直面してもその思考に1ビットのゆらぎも起きない。

それが起きた瞬間には次の思考が開始されている


だが今回は間近で起きたゆえにそれでも間に合わなかっただけの話




炎が霞んで消える

プレートが歪んで消える

残った窯も砕けて消えた



210: ◆E.Qec4bXLs 2014/05/19(月) 00:41:04.72ID:RueIKKOn0




あやめ(ボット)「..........」



ボットは混乱しない


予定外の出来事に直面してもその思考に1ビットのゆらぎも起きない。

それが起きた瞬間には次の思考が開始されている


人知れず武器やアイテムを一箇所に集めること

彼女の暗躍の意味がたった今消えた


だが彼女の次の策は既に組み上げられている



こうして機械の電脳も人間の頭脳も裏切って、戦闘は次のステージに移項した




ゲーム開始28分経過

大原みちる(ボット) 消失


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~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



222: ◆E.Qec4bXLs 2014/06/01(日) 23:42:43.04ID:uJX+jEAZ0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
早坂美鈴

____________

 早坂美鈴+ 70/100


____________


____________

 土屋亜子+  95/100


____________


____________

  大石泉+  95/100


____________


____________

 村松さくら+ 36/100


____________



泉(ボット)「さくら、隕石まで引き寄せたの?」

亜子(ボット)「いや、それはないやろ。あれはプレイヤーや」


美玲が、正確には彼女が掴んでいた箱が天窓を難なく貫通し三階の床に大穴をあけた。

そこから広がった亀裂はすぐそばにいた村松さくら以外の二人も巻き込み、泉と亜子は二階の床に尻餅をついていた。

10

亜子の手の甲に数字が灯る。すぐそばでプレイヤーが受けたダメージの数値だ

亜子(ボット)「こんだけとはいえ、突っ込んできた側すらダメージ受けとるんか......さくらはどうやら無事みたいやな...」


泉(ボット)「亜子、わかるの?」

「あのプレイヤーとさくらだけ一階まで落ちていったのよ?」

亜子(ボット)「まぁ、分かるもんは分かるんよ」


へたり込んだ二人からわずか数メートル隣、そこにも三階のものよりは少しだけ小さいとはいえ明らかな破壊による大穴があいていた

泉(ボット)「私が迂闊だった、でもあの瞬間に打てる手は打ったわ」

そういって右手の手のひらを、調子を確かめるように握って開いた



223: ◆E.Qec4bXLs 2014/06/01(日) 23:43:19.99ID:uJX+jEAZ0



突如飛来した物体がさくらに衝突しようとした瞬間

泉は自身の能力を三階の床の一部に発動させ”床の弾力”を換えていた

トランポリンやエアバックのように、上からの衝撃を地面に逃がせるようにしていた。

これで少なくとも上と下からはさまれ潰れた蛙のようになることはないと踏んでいたが、泉の能力はそこまでが限度だった

泉(ボット)「でも、あの勢いを完全には相殺しきれなかった」

出力と規模の限界、泉の能力は一度に広範囲には使えず、そのためさくらの足元にしか適用できず、

そして完全に衝撃を吸収しきれる程までの改竄はできなかった

結果として三階はおろか二階まで崩落させられている。

頼みの綱、マシンガンもどうやら一番下まで叩き落されたらしく、見当たらない。例え見つけても再使用は難しいだろう



亜子(ボット)「まっ、しゃーない。プレイヤーいてこまして、挽回するしかないな。そんで一旦根城換えるしかあらへん」

「アタシらの能力がありゃ、どんな逆境もひっくり返るで」

立ちあがった亜子の手にはいつの間にか小振りな拳銃が握りこまれている、落下により美玲が受けた10のダメージを彼女の能力を通じて武器と交換したのだ

泉(ボット)「そうね、まずはさくらを助けないと」

二人並んで穴の淵に立つ。影になっているためその向こうを覗き込むことさえできない

ただ一つわかっているのはそこに敵と仲間がいること



泉(ボット)「ところでその銃の弾って」

亜子(ボット)「三発こっきり」

泉(ボット)「...十分ね」



ボットに躊躇はない

二人のボットは一階につながっている破壊の痕に足を踏み入れた



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



224: ◆E.Qec4bXLs 2014/06/01(日) 23:44:14.16ID:uJX+jEAZ0



美玲「げほっ!なな...なんだったんだッ!?」


美玲は瓦礫の山の頂点で起き上がると砂埃を払うようにかぶりを振る。仮想現実内に埃は存在しないのだが反射的に体についた汚れを取ろうとしている

美玲「あー!!ウチの手袋!!」

すぐそばにはバラバラの6枚に分かれた青いパネル、あれほどの衝撃にかかわらず傷一つついていない

その隙間から両揃いで美玲の手袋がピンクの爪をのぞかせていた。

それを手に取り、両手にはめる。使いこなせたとは言えないがそれでも強力な能力がその手に戻った


美玲「ふう...う~。なんだか体がヒリヒリする...どっかで休もっと」

美玲の持ち物はこれで手袋と拳銃、手榴弾、ドリンク。一人で戦うにはやや心許なかったが能力次第でどうとでもなるだろう

慎重に、足を踏み外さないように瓦礫の小山を下っていく、幸い大した高さはない。すぐに一階の地面を踏めるだろう


だがボットは待ってはくれない

次の攻撃は







下からだった


さくら(ボット)「いないいない...ばぁ!!!」



瓦礫の隙間から鉄の棒が突き出される。

あてずっぽうに放たれたそれは美玲の鎖骨のあたりに鋭くぶつかりうめき声を上げさせる


さくら(ボット)「ボットだけどいたぁい...」

美玲「うぐぎぎ...えっ、ゾンビ!?」

肩で瓦礫を押しのけるようにしてさくらが美玲の足元から上半身を抜け出させる。下半身は埋まったままだ

以前小梅に見せてもらった映画で、墓の下から次々とゾンビが飛び出すシーン。今のさくらはまさにその様相をなしていた

思わず後ろに後ずさる、鉄の棒で突かれた痛みでよろめいたというのもあるが、とにかく一度さくらから離れたかった


美玲を突いた棒は床や壁の中に埋め込まれていた骨組みの一部で、その先は尖ってはいない。



美玲「あぐッ!?」


さくら(ボット)「にがしませんよぉ...!」



225: ◆E.Qec4bXLs 2014/06/01(日) 23:45:34.63ID:uJX+jEAZ0




だが鉄の棒は美玲の体に食い込んで離れない

ぐいぐいと美玲の肌を突き破るかのように押し込まれていく

いや、これはむしろ

美玲「(ウチの方から近づいて行ってるぞッ!? なんだよこれ!!)」

さくら(ボット)「スタミナちょうだ~い...いたいよぉ~」

ぎりり...

特徴的なピンクのパーカーから覗く美玲の首元、鎖骨を通じて野太い金属が食い込んでいく音がした

村松さくらの能力が少しだけ発動している。美玲のとさくらの距離が縮まり、それに応じて美玲の体に痛みが入り込む


美玲「いたいたい...やめろぉッ!!」

鉄棒を振り払う

すぐさま能力が発動し、それによってベキリと折れ曲がった骨組みがさくらの手を離れ、美玲の手袋に巻きついた


さくら(ボット)「あれっ?」


硬くて重いはずの、さっきまで自分が武器にしていたモノが振りほどかれ

まるで飴細工のようにグニャグニャになって小さな少女の両腕に巻きついていくさまをさくらは茫然と見る


美玲「今度の爪はウチでもなんとか持ち上げられるぞ...!」


さくらの腕力で支えられる程度の大きさと重さだったそれが今、湾曲した一本爪となって美玲の両腕に宿る

そのシルエットはカマキリのようにも見えた。


美玲「でりゃあああああああああ!!」


それを振りかぶり、振り下ろす。

未だ瓦礫から抜け出せていないさくらに逃げる術はなく、それを跳ね返す力もなかった

そこで美玲の片足が不自然に横滑りしなければ命中していただろう

さくら(ボット)「へ?」

振りかぶった勢いもあって、小さい体はがれきの斜面から投げ出されたように転げ落ちていく



美玲が足元の瓦礫の表面がまるで研磨剤に磨かれたようにツルリと光っていた。




泉(ボット)「間に合ったわね」

さくら(ボット)「イズミン!」



瓦礫の山の頂点に着地した泉がそこに押し付けていた手のひらを離した



226: ◆E.Qec4bXLs 2014/06/01(日) 23:46:57.66ID:uJX+jEAZ0


亜子(ボット)「ほれ、さくらもはよ抜け出ぇや」

さくらの脇の下を抱え、その体を野菜のように引き抜く。すでにさくらと瓦礫の間の摩擦も泉により軽減されている

美玲「げほっ!な、何だお前ら!!」

瓦礫山の麓に転げ落ちたところから起き上がり、頂上の三人を睨む

がらん、と音を立てて両手に巻きついていた廃材が落下する。能力が切れたのだ

亜子(ボット)「見ての通りボットやけど?」

そう言いながら右手の銃を眼下に向け__

美玲「っ!!?」

攻撃の気配を感じた美玲がその場から逃げ出した。走りながら近くに落ちてきていた岩のような瓦礫を掠るようにひっかくとそれだけで美玲の爪は建材を纏い硬化した

引き金が引かれる、美玲の左手がはじかれた

美玲「んがっ!」

ビリビリと振動が腕を伝い、肩まで達する。硬質な素材で守られていたとは言え衝撃は素通りしていた

泉(ボット)「さくら」

美玲「うわわっ!?」

態勢を崩した美玲の体が宙に浮いた。さくらの能力で三人の元に猛スピードで引き寄せられていく。亜子が2発目を撃つ準備は出来ている

とっさに体をかばう、ゴツゴツとした岩のようになった手袋は美玲の矮躯の、その急所を守るには十分な大きさだ。

亜子(ボット)「便利な能力や...なぁっ!!」

二度目の発砲

さくらに引き寄せられる力と真っ向からぶつかる銃撃。美玲にとっての盾にヒビが入る、だが貫通はしない

美玲「うあっ!!効くかそんなもんッ!!」

今度は美玲の攻撃だった。引き寄せられる勢いを上乗せし腕をなぎ払う。

それはハンマーに近い威力だ。美玲を逃がさないための力が手袋を通じて美玲の腕力に上乗せされていた

引き金を引いたばかりの亜子にそれが振るわれる



泉(ボット)「___なるほどね、周りのオブジェクトを武器にする能力か」


ぐにゃ


美玲の爪が泉に命中する、彼女は亜子をかばうように一歩前に出ていた

べきべきべきと、美玲の手が纏った瓦礫がその勢いに変形するほどの衝撃。誰がどう見ても会心の一撃だった。爪が泉の胸にめり込んでいくように___





227: ◆E.Qec4bXLs 2014/06/01(日) 23:48:15.89ID:uJX+jEAZ0


泉(ボット)「___私には、効かないかな」


ぐにゃ


確かに瓦礫は変形していた

その硬度と弾性力をゴムと同じくらいに”改竄”されたせいで


美玲「はッ!?」

さくら(ボット)「わぁい」

亜子(ボット)「ほれ、最後の一発」


至近距離の3発目が美玲の肩肉を抉る。実際にはそうならないがそれと同じだけの衝撃に、またも彼女の体は瓦礫の山から転げ落ちた


 8


美玲「ぎゃんッ!?」


土煙が立つ、近くの廃材が音を立てて崩れ落ちる、ピンクのソファが停止する


亜子(ボット)「なんや8かい、やっぱちっこい武器だとここらが限度かい」

そういう亜子の空いた手には今使っている銃のマガジンが握られていた。能力により還元されたものだ。今度は3発ではなくしっかり全弾装填されている

ジャコッ、と音を鳴らし8発の銃弾が亜子の銃にリロードされる。


さくら(ボット)「もぉいっかいー...美玲ちゃんよせちゃう?」

砂煙のたった山の麓に目をやりさくらが尋ねる

泉(ボット)「うーん、どう亜子?次は仕留められる?」

亜子(ボット)「小粒だろうと鉛玉や、ドタマに当てれば一発やで。ガッポガポや!」

その保証を合図にさくらの能力が発動する

瓦礫の山のあちこちから砕けてバラけたピンクのガラクタが転がってきた。

砂煙は晴れず美玲の姿も見えない。だが能力で引っ張り出せば__


泉(ボット)「?」

亜子(ボット)「出てこうへんな。どっかにしがみついてんのかい」


からんからんと他のモノが煙を飛び出し山の麓から登ってくる中、美玲のパーカーだけが見当たらない。

さくらが不思議そうに首をかしげた



228: ◆E.Qec4bXLs 2014/06/01(日) 23:49:33.38ID:uJX+jEAZ0


さくら(ボット)「だったら能力、もっと強めにす____」


「んんん...!!」


突如視界そのものを上下する地響きが三人を襲った。元々不安定な足場にバランスを崩し膝をつく

泉(ボット)「地震!?でも、それにしては...」

亜子(ボット)「ちょちょちょい待ちぃ!?」

右に左に風景が揺れる。何の前触れもない地震に対応が遅れる。そしてそのことに気づいたのは泉だった

さくら(ボット)「な、なにこれぇ...」



泉(ボット)「嘘でしょ__これ......私たちの足元しか揺れてない」




美玲「んんんがあああああああああ!!!」



亀裂

地鳴り

崩壊


「は?」


ニューウェーブの乗っていた瓦礫の山が左右にパックリと割れた。




モーセが海を割ったという逸話のように、上から下へ一刀両断、二つに掻き分けられる。三人の足場が消える


美玲は両腕に力を込めて引っ張るがそれはビクともしない。その両腕は二つに分かれた瓦礫の山にそれぞれ突き込まれている


彼女の能力は瓦礫の山そのものを二つに裂き、美玲の両手の爪にしていた。

高峯のあ達との戦闘で崩れ落ちてきた天井から身を守ったときのような、彼女の体躯を凌駕するサイズの両爪を再現している

足場を奪われた三人が美玲の巨大な爪の間に落ちてくる。山といっても高さは精々2、3メートル。墜落死するほどのものではない

しかも能力のデメリットとして美玲自身が腕の重さで身動きが取れなくない。しかし、風上にいた三人を引きずり下ろした美玲にはこの隙を突いた決め手が必要だった


だから


美玲「ふんッ!ぐぎぎぎぎ...」

瓦礫の中に埋めていた手を握る。何かの石や鉄材が指の動きを阻害するのも構わず全身全霊の握力で「パー」を「グー」に



229: ◆E.Qec4bXLs 2014/06/01(日) 23:50:41.63ID:uJX+jEAZ0


亜子(ボット)「やってくれるやないけ...!...あり?」

聳え立つ爪の間に挟まれる形で落下し尻餅をついた三人、その一人は既に立ち上がって、しかし手持ちの武器をなくしたことに気づいた。

さくら(ボット)「アコちゃん、ピストルなら上の方に引っかかってるよぉ?」

泉(ボット)「ここからじゃ、届かないわね」

残る二人も続々立ち上がる、美玲から視線を外すことはない。しかし美玲は動けない。その指を除いて


亜子(ボット)「...泉、なんとかならんか...?」

泉(ボット)「...刃物くらいなら用意できるわ」


美玲の右の人差し指が、狭い空間の中力任せに曲がっていく


美玲「うににに...!!」


泉が自分たちを挟む双璧、それを構成する廃材に手を伸ばす、その手を戻した時には捩じり取られ、先が鋭く尖ったパイプが握られていた

美玲「(力強ッ!?)」

泉(ボット)「一度柔らかくして、ちぎり取ってから硬くしたわ」

泉から即席の槍を受け取った亜子が美玲に狙いを定める。ボットに躊躇はない


美玲「ほ、本気かよッ!?」

未だ腕は抜けない。だから指だけでも精一杯握る

亜子(ボット)「わるぅ思わんといてや?これがボットの仕事やねん」

ただでさえ彼我の距離はそう広くない。だからさらに距離を詰めて直接刺すようなことはしない。亜子は槍投げをするように構える


美玲の指が”それ”に引っかかった


美玲「!!」

亜子「美玲ちゃん倒して、そのポイントで商売再開や!!」



槍が一直線に放たれる


美玲が右手を一気に握りこむ











そして美玲が瓦礫の中にあらかじめ埋めておいた拳銃の引き金が絞られた





230: ◆E.Qec4bXLs 2014/06/01(日) 23:51:59.52ID:uJX+jEAZ0




美玲「(モノに埋まって腕が動かせなくなるなら、そのモノの中に別の武器を入れちゃえばいいんだッ!)」


槍の数十倍の速度で鉛が飛ぶ


銃身は瓦礫に埋まる事でしっかりと固定されていた。おかげで一分のブレもなく弾丸は狙い通りまっすぐと直進し、


さくらの右胸を貫いた


それは急所ではなかった。だが大ダメージであることに変わりはなく、


さくら(ボット)「あ...ぇ?」

泉(ボット)「さくら!?」

すでに大部分の体力を失っていたそのボットの体はそれがトドメだったようで、宙に溶け、消えていった。


能力の発動限界時間に達した。美玲の手が瓦礫の山から嘘のようあっさりと抜ける。右手には拳銃が握られている。

引き金を引くにはあまりにも不釣り合いに太いぬいぐるみじみた爪。だが彼女の能力のせいかその引き金のカバーは広げられたように歪み、発砲を可能にしていた。

美玲「へへっ!お返しだッ!!」

泉と亜子はさくらの居たあたりに目を向けていた。ボットでなかったら茫然としていたのかもしれない

勢いづいた美玲が二発目を放つ、柔らかい両手でしっかりと銃をホールドしながら。


パンッ!


美玲「っ!?」



だがその引き金が引かれるより早く、美玲の頭のすぐ隣で小さな爆発が起きる

亜子(ボット)「やってくれたやん...」

それはさくらの方を向いたまま無造作に発砲された一撃、狙いも適当な美玲を一瞬止めた牽制の攻撃


パァンパンパンッ!!


さらに撃ち込まれ、美玲から狙いを外れた流れ弾が廃材たちを爆ぜさせる。美玲が慌てて後退し、亜子から逃げだした。近くの物陰に飛び込む


泉(ボット)「亜子!?ここで無駄弾は...!」


亜子(ボット)「......この手ぇだけは使わんと済ましたかった...」


亜子が悔しそうに唇をかみながら言葉をこぼす

泉(ボット)「?...どういうこと?」



231: ◆E.Qec4bXLs 2014/06/01(日) 23:54:04.24ID:uJX+jEAZ0




弾丸はたった八発きり、その残弾すら減っていく。そして亜子たちから離れてしまった美玲を引き戻す能力者もいない。

状況はボット側にとっての不利、あるいは亜子に言わせるところの__


亜子(ボット)「損失や」

発砲が止まる。同時に銃を構えた亜子の変化に泉が気づいた。

泉(ボット)「亜子...その左手...」


亜子(ボット)「商売っちゅうのは損して得取れ、や......一方的に稼ぐだけが全てやない」


亜子の左手、ダメージがポイントとして表示されていた右手の反対の手に紋様が浮かび上がっていく


泉(ボット)「!...それって、もしかして...!」

亜子(ボット)「アタシの最後の手段...能力のもう一つのボーナス効果...」


「...損害ほ__いや...ちゃうな」


左手の紋様、それはくっきりと数字を象徴していた




亜子(ボット)「生命保険や」






 100








232: ◆E.Qec4bXLs 2014/06/01(日) 23:54:40.35ID:uJX+jEAZ0



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
神崎蘭子



______________

 神崎蘭子    45/100



______________





「現実の肉体に全く外傷を与えることなく、痛みだけを脳に送り込む機械」


そのような技術がもしも、万に一つも”企業”から外部に漏れてしまった場合に起きうる悲劇は少なくない

例えば尋問の新体制、拷問用の新兵器、証拠の残らない新手の暴力手段、などの開発


十四歳の少女とはいえ天才の名を欲しいままにする池袋晶葉がそのリスクを見逃すはずもなく、だからこそ仮想現実内での痛みは緩い。

視覚、聴覚、嗅覚を始めとした五感にリアルな感覚を送り込むシステムにこそ技術の粋を凝らしたが痛覚に関しては細心の注意を払い”開発しすぎないように”していた。


現実でも脳が痛覚を麻痺させる物質を分泌させることがあるように、この世界でもある一定以上の痛みを再現する仕組みは存在しない。



まるで天井をまるごと崩落させたかのような体の芯に響く倒壊音

それが蘭子の鼓膜を揺らしたのが数分前










蘭子「_____ぁぅ__」






233: ◆E.Qec4bXLs 2014/06/01(日) 23:55:40.52ID:uJX+jEAZ0



ちゃりん、ちゃりんと小さな刃物がこぼれ落ちていく。もちろんそこに血など付いてはいない

神崎蘭子はゆっくりと起き上がっていた。その体は小さく震えている。

痛みではない。恐怖と、そして痛みの代替品の倦怠感のせいで、今にも体を支える腕が肘から崩れてしまいそうだ。


蘭子「(な んの 音__?)」


いま自分が逃げてきた方向から断続的に物騒な音が響き、それは地面を伝い蘭子の腕を奔っている

闇のむこうは何も見えない。そして多分、向こうからもこちらが見えていない。


蘭子「(誰 か来たの ?)」


火薬の炸裂する発砲音 何かがガラガラと崩れ落ちる音 幽かだが、確かに慟哭らしきものも聞こえる



234: ◆E.Qec4bXLs 2014/06/01(日) 23:56:12.65ID:uJX+jEAZ0



蘭子「い、戦の鬨が...我をさし置いて...鳴り響くというのか...(私じゃない誰かがボットと戦ってる?)」



刃物は全て抜け落ちた。地面からゆっくり手を離し、覚束無い膝だけで体重を支える。


これはチャンスだ。


自分に執拗なまでの追い討ちと罠を張り巡らせてきた敵からの追撃はない。もしかしたら最後の罠で仕留めたと判断したのかもしれない

だが現状、自分を追っていたニューウェーブは追撃の手を止め、蘭子から離れた場所で別の誰か、十中八九他のプレイヤーと戦っている。

なら隙だらけだ。いま蘭子に照準を合わせる者はいない。未だに体の動きが鈍いが、それでも進行方向にある商品棚の一つをどかして進むことぐらいなら余裕のはずだ。

体力の殆どを持って行かれた蘭子はよろよろと立ち上がった。

そして自分の逃走を邪魔していた商品棚の一つに手をかける、あとはこれを引き倒すなり横にずらせばいい。




235: ◆E.Qec4bXLs 2014/06/01(日) 23:58:19.03ID:uJX+jEAZ0


これで彼女の逃走は完遂され___







蘭子「た、助けなきゃ」







商品棚の中に残っていた果物ナイフの柄をしっかりと握る。

向き合うは、闇。自分が逃げてきた場所

また撃たれるかもしれない。

また刺されるかもしれない。

そもそも本当に他のプレイヤーがいるのかも実際のところ保証はない。


それでも、蘭子の選択肢から逃走の二文字は消えていた



236: ◆E.Qec4bXLs 2014/06/01(日) 23:59:07.40ID:uJX+jEAZ0


着慣れない服で、履き慣れない靴で、持ちなれない凶器で、確かな一歩を刻む。


その勇気と優しさに何者かが応えたのか


ぽすっ


と、商品棚を背にした蘭子の前に”それ”が落ちてきた。


蘭子「......?」


最初は白っぽいボールに見えた

次はピンクのウサギに見えた

最後に大きめの本に見えた


蘭子「......!」


蘭子は慌ててそれに駆け寄る。いまだふらついた足取りで


それはパンだった

正確にはパンになるはずだったモノだ。今それは能力者の消失によりパンとしての形を保てず、小麦粉の生地が白い粘土のような塊と化している


蘭子「なにゆえこのような地に!?(どうしてここにあるの!?)」


そのまるっこい塊から飛び出たそれに蘭子は既視感を覚える

もし商品棚を越えて逃げ去っていたのならそれを目にすることもなかっただろう。



237: ◆E.Qec4bXLs 2014/06/02(月) 00:00:18.00ID:gxEXYXbM0








蘭子「グリモワール!?」



神崎蘭子のスケッチブックに





ピコン











ゲーム開始31分時点


村松さくら(ボット) 消失


ゲーム開始32分経過


神崎蘭子 能力獲得



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



241: ◆E.Qec4bXLs 2014/06/16(月) 23:28:22.40ID:lJTQ0fj/0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
神崎蘭子


神崎蘭子は中二病である。

それ故に自身の中に持つ、理想の姿を追い求め続けることに心血を注ぎ続けている。

例えその姿が他人の目からどれほど奇異に見えようと、現実的なそれとかけ離れていようと彼女はそれに憚ることはない。

黒衣をまとい、髪を灰色に染め、赤い眼差しを輝かせる。

そして彼女はまた、幸福な中二病でもある。

青春を費やし続け今なお発展途上にある彼女による彼女のための彼女のイメージ。

それはアイドルの個性として特筆すべき武器と認められ、その姿を追求し表現することを止めるものはいなくなった。

もう彼女を否定する者はいない。ファン、事務所、仲間のアイドル、プロデューサー、その全てが彼女の支持者であり肯定者だ。


神崎蘭子は幸福な中二病である。




蘭子「......これは...」


その場にかがみこみ、スケッチブックのページをめくる。そこに描かれているのは彼女描いてきた自分の姿の一部

ブリュンヒルデ、魔王装束、見よう見まねで描いた城や魔法の杖。一部は衣装のデザインにも取り入れられたことのある彼女のための、彼女の絵。

デジタルの世界でそれが完璧に再現されていた。

蘭子「私の、絵」

その絵を一枚一枚めくっていく。はるか上の天井から細く伸びた日の光にページを当てながら。

自分の手や体が影にならないようにスケッチブックを体から少し離し、ページの端をちょこんとつまみながら眺める。

蘭子「誰にも、見せたことないのに...」

実際にはライブ衣装のデザイン案としてプロデューサーには嬉々として頻繁に見せていたし、事務所の机の上などに無造作に置き忘れることなどが多々あったため、人目につくことも多かったのだがそれを差し引いてもかなりの再現度である。

そこまで確認すると蘭子それを手にとったまま、ついでにグリモワールと一緒に引っかかっていたウサ耳もパーカーのポケットに押し込み立ち上がる。




242: ◆E.Qec4bXLs 2014/06/16(月) 23:29:19.39ID:lJTQ0fj/0


どこまで再現されているのかをページをめくり確かめつつ、駆け足を再開する。いささか以上に不注意だが、誰かの危機の可能性に劣らず自身の根幹を成す記帳も彼女は捨て置けなかった。

相変わらず不足した光源では先は見えない、だが今も断続的に火薬の破裂音や瓦礫の軋る音が届いてきていた。最初に聞こえていたようなまるで隕石の落下のような轟音よりは小さかったが___



新たな轟音でたった今、騒音の記録が塗り替えられた。



蘭子「!!?」

足元の床にまで亀裂が駆け巡る、壁を伝った衝撃が天窓のガラスを粉微塵に粉砕する、見えない衝撃に後ろへ飛ばされそうになる

蘭子「な、何事だ!?」


天窓だった破片がキラキラと少ない明かりを反射しながら降り注ぐも闇の向こうは見えない。

だが、戦況が一変したことぐらいはわかった。このむこうで誰かが戦っているのは間違いない、それもおそらくほぼ丸腰の蘭子では太刀打ちできないレベルで。

ポケットの忍ばせた果物ナイフが急に頼りないものになる、腰がひける、今更ながら迷いが生じる。


!!!!!!!!ー!!!!!!!!!!!!!!!!ー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


もはや音として聞き取れるかも怪しい。

蘭子「......ラグナロク」


先ほどの騒ぎが川のせせらぎだったと思えるほどの振動、衝撃。隕石どころか流星群がこのデパートを廃墟に変えようとしているように絶えず降り注いでくるかのような音の擾乱。


ピリピリ...


だから蘭子の手元で小さく上がったその音にはなかなか気付けなかった


ピリピリピリピリ...

ドサッ

蘭子「あっ」

手にかかっていた小さな重みが消え、スケッチブックがこぼれ落ちる。残ったのは綺麗にちぎれたページ一枚だけ

スケッチブックのリングの跡が残った紙を片手に、落ちた本を拾おうとかがみ込んで「きゃっ!」

態勢を崩し、盛大に転んだ。かがんだところで腕をぐいっと引っ張られたように不自然に肩を床にぶつける。

蘭子「ぁう...なんで...」





243: ◆E.Qec4bXLs 2014/06/16(月) 23:29:57.51ID:lJTQ0fj/0



腕を見る、何もない

手を見る、何もない

ちぎれた絵を見る。




”何も描かれていない”



蘭子「え...?」


足元を見る、


そこには当然のように巨大な「鎌」が転がっていた。


三日月のようにぐにゃりと伸びた刃に禍々しく牙が並び、石突には眼球のアクセサリが誂えられ、全体が有機的に脈打っている


蘭子「これって...私の、[覚醒魔王]のときの...」


かつて彼女がデザインしたライブでのアイテム。ステージの上で理想を実現させた彼女の姿を振りまくための重要なファクターだったもの


考えるだけ非現実的だが、ここは仮想現実。ありえないことなどありえない世界

ならばこれは非現実であれど事実なのだろう。



蘭子の描いた絵がこの世界で形を成し、顕在化した。



蘭子「...すごい......すごい!!」



拾ったスケッチブックを膝に置き、鎌を持ち上げる。ライブ用の軽い素材のものとは違う、紙の数十倍の重みがズシリと蘭子の肩に伝わる

その重みに蘭子は確かに現実的な強さを感じとった。アイデアの再現ではなく、顕現だった。もう迷いはない

夢にまで見た虚飾の存在が、いまここで仮想の中に実像を伴っている。



彼女は今もなお幸福な中二病だった





244: ◆E.Qec4bXLs 2014/06/16(月) 23:31:47.40ID:lJTQ0fj/0



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

猛追、衝突、瓦解、煩雑、掃射


人体の数十倍の重量と人力を超えた速度がデパート中の柱も置物も商品も蹴散らし、壁にクレーターを量産し、震動で上階から転がり落ちてきた何もかもを平等に真っ平らに圧していく


泉(ボット)「......ひとつ聞きたいんだけど、亜子」


亜子(ボット)「なんや泉!!もうちょい大きい声で話してくれんか!?あっちこっちがしっちゃかめっちゃかでよう聞こえんねん!!」


泉(ボット)「これ、なんでハンドルの部分がゲームのコントローラーなのよ!?これ、おもちゃじゃないの?!」


亜子(ボット)「そりゃアタシも泉もオリジナルは運転免許なんてもっとらんやろ!!アタシの能力で変換するための妥協点みたいなもんや!」


搭載された無線で二人は言葉を交わす。泉は内側で操作に、亜子は外側で攻勢に、それぞれの役割を遂行する。


亜子(ボット)「ボットやねんからはよ学習してまえ、美玲ちゃん逃げよるで!!」


泉(ボット)「きょ、距離感を掴むのに手間取るわね、これは...」


装甲板が壁から生えた店舗の看板をこそぎ落とし削り取っていく

美玲の体よりも一回り大きなタイヤが荒々しく轍を刻み付け進路を描き

跳ね飛ばし轢き潰しエンジンが獣の彷彿とさせる唸り声を上げた


美玲「うがあああ!!なんだよそれッ!!どっから出したッ!?」


両手を振り回し、降りしきる瓦礫に足を取られながらも懸命に逃走する。その両手には即席の爪、そこらの石粒と鉄片だけでできた小さなそれは辛うじて美玲の盾になっていた。だがその爪も亜子から繰り返し放たれる銃撃に耐えきれず、痛々しく穴ボコだらけにされていた。

美玲を追いかける「それ」は操縦者が不慣れなせいか、ハンドルに妙な仕様が凝らされているせいか真っすぐには走れていない。ジグザグに走りながら左右の壁を凹ませ、デパートを建物ごと破壊的に鳴動させる。


ガオオンガオオンガオオンンン!!!


マンモスより大きく、亀の甲羅より硬く、イノシシより速く、人間と同じくらい凶暴。

ハンドルがボタンとカーソルに改造されているが、兵器としての価値に曇りはない。




上部に機関銃を備え、大型装甲車が早坂美玲を追い上げる





ゲーム開始35分経過

大石泉(ボット)&土屋亜子(ボット)

VS

早坂美玲

継続中



245: ◆E.Qec4bXLs 2014/06/16(月) 23:33:03.85ID:lJTQ0fj/0



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


美玲「んがあああ!!」


ヒビだらけの地面に両手を突き立て、ちゃぶ台返しの要領で持ち上げる。

それに呼応して放射状に盛り上がった地面が建材と鉄材の爪になった。しかし全く効果がない

即興のバリケードは装甲板と重厚なタイヤの前で爆散するだけで、その速度を緩めることはない。辛うじてタイヤが乗り上げ、方向が変わるが美玲が逃げ切る程の時間は稼げない。

亜子(ボット)「無駄やでー!!!」

たたらを踏んだところに亜子の手元で銃口が火を噴く。わずかに残った部品が美玲を守って吹き飛んだ。

美玲「ッ!!なんっだよそれぇえッ!!」

美玲にはわからない、薄暗いデパートの中、なんの前触れもなく通路の道幅いっぱいまで埋め尽くさんばかりの巨大車両が出現した原理を、それに対する対策も。

泉が手元のコントローラーを操作し、アクセルの「ボタンを押す」

本来ならハンドルやブレーキが設置されているはずの位置からコード一本で繋がったそれがタイヤとエンジンに命令を送る


ガオオンガオオオンンン!!!

美玲「ちょ!?」

破壊し尽くされた床の凹凸を踏み鳴らし直進した装甲車が0.1秒前に美玲がいた地点を蹂躙する、ショーウィンドウを突き破りマネキンを轢死体に変えた。

美玲「何考えてんだよオマエ!危ないだろッ!!」

自分の身長の倍以上の車高、その上に据えられた機関銃に陣取る亜子に向かって怒りをぶつける。

亜子(ボット)「無論、アタシらボットの勝利や!!」

泉(ボット)「つまり、プレイヤーの打倒、スタミナを削り切ることね」

十字キーを押し込む。突き割ったガラスを踏みにじりながら巨大な車がバックし、機敏に方向を変えた。狙いは美玲

装甲車にとって十分とは言えない通路幅が機動力をいくらか奪っていなければとっくに美玲はやられていただろう。だが、それも限界が近い

オリジナル由来のバイク乗りの矜持として、単車で直接相手を轢くことはしなかった向井拓海のボットとは違いこの二人の攻撃に制約や躊躇はない。


ガオオオオオオンンンンン!!!


急発進、エンジンが吠える


美玲「ウウウウウウゥゥガアアアアアア!!!!」


一際高く積もった瓦礫の山を爪にまとう。美玲の腕力ではビクともしないそれは能力の引力により動き出した

装甲車の進行方向に転がりこんだ猥雑な石塊が数トンの車両を押しとどめる両手になる

それは、しくじれば自分が潰されかねない能力の大出力。美玲自身が動けない程の質量とサイズの物質をまとったバリケード



246: ◆E.Qec4bXLs 2014/06/16(月) 23:34:02.56ID:lJTQ0fj/0



ズズンン!!!


亜子(ボット)「うおっ」

泉(ボット)「きゃっ!」


美玲「ぐぎッ...!!!」


衝突した震動が美玲の両腕から肩、そして背骨にビリビリと伝導し仮想では存在しないはずの内臓を揺らされる。

装甲車がしばし停止した。

美玲「(あとは何秒か待って、この両手が抜けてから逃げれば...!!!)」



泉(ボット)「ギアチェンジはこのボタンかな」



タイヤの表面がほぼ垂直にそそり立ったバリケードの壁面を噛む、車体が傾き持ち上がる

ガオンオンオンン..........!

美玲「は?...あ?」

美玲を照らす少ない明かりに影が差した。美玲が顔を上げる

唸るようなエンジン音に合わせてゆっくりタイヤが摩擦力を発揮する。装甲車が爪の表面を登る、バリケードを乗り越える


美玲「えええええええええ!!??」

泉(ボット)「ゆっくりゆっくり、慎重に......亜子?屋根から落ちてないわよね?」

亜子(ボット)「お、オーラーイ...」


急勾配になった車体、その上部に設置された機関銃に亜子がしがみついている。美玲の腕はまだ抜けない、頑強な装甲を纏った車がバリケードをのし上がり美玲を上から覗き込む。

フロントガラス越しに泉と美玲の目があった。


美玲「こんなんありかよッ!!」

泉(ボット)「馬力の差よ」



クライミングが終わる。バリケードを乗り越え、前輪タイヤが空中に躍り出た。



そして美玲をめがけた落下が始まる




247: ◆E.Qec4bXLs 2014/06/16(月) 23:35:03.78ID:lJTQ0fj/0


泉(ボット)「せー...のっ!」


亜子(ボット)「どっせえええやあああああああああ!!!」


美玲「やめろおおおおおおおおおおおああああああ!!!」


彼女は動けない










蘭子「えっと...わ、わぁー!!」



闇にまぎれた少女が無謀に飛び出す、唯一無二の力を振りかざして

美玲の後方から、重爪を踏み越えようとした重量級の車両の真正面に躍り出た

これで何の手もなければ美玲と共に蘭子も被害を免れない、そんな位置からの迎撃態勢

蘭子「えいやっ!!」

ほぼ落下に近い角度で猛進する装甲車に対し下から斬り上げる。

異形の鎌は勢い余って蘭子の手から離れ、回転しながら真っすぐな軌道を描き飛んでいくと___


美玲「はぁッ!?蘭_」

蘭子「伏せてっ!!」




装甲車のフロントガラスが砕け散る、

デパートの床に新たにクレーターが残される、

猛回転する後輪が石つぶてを噴水のように巻き上げながら摩擦音を甲高く鳴らす、

美玲の爪がただの瓦礫の山に戻り地鳴りを上げて崩れ去る、

蘭子は思わず悲鳴を上げ、

美玲は吠える


その全てが同時に起きた。


一瞬の時間にすべてが圧縮されてしまったような大音量がデパート中に反響する





248: ◆E.Qec4bXLs 2014/06/16(月) 23:35:32.73ID:lJTQ0fj/0



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

交差するその瞬間


泉(ボット)「(なにか飛んできた!?)」


くるくると回るそれは棒状の何か

まっすぐ泉に飛んでくる


「(空中じゃ方向なんて変えられないのに___)」


がんっ!


それは急降下する車両のフロントガラスに弾かれた

泉の視界からフェードアウトしていく


「(!!...そりゃ投擲で防弾ガラスが割れたら苦労しないわよね)」


泉は意識を切り替えた

ここからが問題だ。いかにしてこの重量級の車体を横転させずにうまく着地させられるか

ハンドル代わりのコントローラーを握り締める


「(アクセル全開で止まらず走り抜けるしかないわね。美玲ちゃんを下敷きにしちゃうだろうけ......ッ!?)」


視線

視線

死線

視線



”なにか”がガラス越しに泉を見た


「(...なんなのこの感覚!?)」






249: ◆E.Qec4bXLs 2014/06/16(月) 23:36:25.09ID:lJTQ0fj/0




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

同時に

車の上部にしっかり固定された銃座にかじりつくようにしていた亜子もその視線を感じた


亜子(ボット)「(なんやあれ)」


その発生源は紛れもなく、”あれ”だ

泉の運転する車が中空ではねた長い棒状の何かの、その先端!!


「(目ん、玉_?)」



くるくる回る棒、その先から伸びた刃の根元についた目玉の飾り

その目玉が見開かれている


「(なんでこっち見れてんねん、あないくるくる回っとるのに___)」


思考の猶予はない、すぐそこは地面

一瞬の間にボットが思考できたのはここまでだった



「「__!__」」



見えない魔力に引かれ、鎌が動く

刃の縁にピアノの鍵盤のようにずらりと並んだ牙が蠢く

誰かの魔王的な妄想を具現させるように、恐怖を実行する






機関銃を、装甲板を、フロントガラスを


上からガブリと噛みちぎった









装甲車が墜落する



250: ◆E.Qec4bXLs 2014/06/16(月) 23:37:15.98ID:lJTQ0fj/0



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



パラパラ......


蘭子「__ぅん?」

美玲「...いっててて...」


先ほどの一瞬に比べれば静かとしか言い様のない静寂が場を満たす。エンジン音はしない


美玲「...蘭子?」

蘭子「よ、よもや瑕疵などあるまいな...(大丈夫?)」


崩れてきた瓦礫に半分だけ埋まったような状態の二人、抜け出すのは簡単そうだ。

美玲はいきなり現れた蘭子に戸惑う、逃走だけで手一杯だったのだから気づかなかったのだ

だが、自分のピンチに駆けつけたか、それに近いものだと美玲なりに解釈し瓦礫に埋もれた自分の足を引っこ抜くと手袋を外し、蘭子の手を引っ張った


蘭子「あ、ありがとう...」

美玲「たぶん、こちらこそだぞ」


見ると蘭子の格好が随分見慣れないものになっていた。黒いパーカーに簡素なワンピース、足など普段のファッションとは似ても似つかないスニーカーだ。


美玲「......蘭子も頑張ってたんだな」

蘭子「?__あっ!」


パンパンとスカートについた砂粒を払いあっていると蘭子が声を上げた。

その視線の先には彼女が放った魔王の鎌、その牙と眼球をイメージした生物的な武器が地面に刺さっていた

美玲「あの長いのが蘭子の武器なんだな...」

蘭子「うん...あれ?」

鎌の石突に埋め込まれた目の瞼が閉じた。

すると鎌全体が幻のように消えていく。夢の終わりのように跡形もなく消失した


美玲「あれっ、おい消えちゃったぞ!?」

蘭子「消えちゃった!?...あ、でも...だ、だ、大丈夫だよ?きっと......ページはまだ残ってるから...多分」

パーカーの下にしまった画帳を服の上から撫でる。蘭子は大体自分の能力を把握した


蘭子「魔王の力が虚実の境を越えるのは、刹那の刻限に至るまでだったのだろう...(少しの間しか私の能力は使えないんだね、きっと)」

美玲「うん?」

蘭子「うむ、如才ない」

美玲「...お、おう」





251: ◆E.Qec4bXLs 2014/06/16(月) 23:38:09.00ID:lJTQ0fj/0



二人はいくらか落ち着いてきていた。一方あたりには土煙がもうもうと立ち上り視界が塞がれていて足元の悪い中ではうかつに歩き回れない



ギャキュッ!

ガオオオオオオオオオオオオオオンンンンンンンンン!!!

ギギギィキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキ!!!



「「!!!??」」


キーを回す音、エンジンの慟哭、タイヤのスリップ音

やにわに音が充満する

ヘッドライトが灯る。それは薄闇のデパートの中に獣の双眼のようなギラギラとした光をばらまく



泉(ボット)「あなたたち、受けたダメージはどれくらい?」



奇跡的に横転しなかった装甲車が動く音が反響する。

前後の壁にぶつかりながらバックと前進を繰り返しながら少しずつ車体の方向を変えていく、砂の雨が蘭子たちの頭に降る


ライトが二人を照らした。爪のバリケードを越えたあと勢い余って20mほど直進していたようだ。瓦礫の山に光が反射し、間接照明のように装甲車の全貌を浮かび上がらせた


蘭子「むむ...」

美玲「うっそだろ...」




毟り取られている。




機関銃が、銃座が、車の天井が、フロントガラスの上部が




もはやそこに何かあったとは思えない。装甲車はまるでオープンカーのように変貌していた

装甲車の側面に貼り付けられた装甲の上側が何かの「歯型」をのこして消滅している。フロントガラスも下半分しか残っていない



そこからコントローラーを握った大石泉の姿が覗いていた。座席のネック部分も千切れている




泉(ボット)「聞くだけ無駄か......あの変なのが、みんな食い散らかしちゃったもんね」




「武器も、屋根も......亜子も...」



252: ◆E.Qec4bXLs 2014/06/16(月) 23:40:25.69ID:lJTQ0fj/0



ガオオオオンガオオオオンガオオオオオオンンン!!!


エンジンが怒っているかのように繰り返し唸る。孤軍となったボットを嘆くように慟哭する


蘭子「ま、まだ走れるの...!?」

美玲「くっそ、こうなったら...」


美玲がポケットをまさぐる、拳銃と、もう一つ武器があったはずだ。

そこで装甲車が再発進した、美玲の作った瓦礫の山で二人をサンドイッチするように一直線に。

美玲の手にそれが握られる

蘭子「あわっ、新しい武器出さないと...!!」

ポケットから引き抜く

美玲「これで、どうだぁッ!!」



尖った犬歯にピンを引っ掛けるように引っこ抜かれた手榴弾が投げられた。



森久保乃々の能力の落とし物、拳銃とドリンク、そしてパイナップル型の手榴弾


泉(ボット)「.........」


猪突猛進する装甲車に天井はない。ハンディサイズの爆弾は容易く車内に飛び込んでいった、そこは泉に致命傷を与えるには十分な至近距離で



美玲「やったッ!入った!」

蘭子「美玲ちゃんすごいっ!」



フロントガラスがあったところを越えたそれは、車内の何処かへ転がった瞬間に炸裂し、最小限に調整された火薬が飛散させた破片がボットの肉体をえぐるだろう








泉(ボット)「それが奥の手なのね」





253: ◆E.Qec4bXLs 2014/06/16(月) 23:41:12.95ID:lJTQ0fj/0



だから



泉(ボット)「それの仕組みは知ってるわ」




泉は






手榴弾を





泉(ボット)「要は破片に当たらなければいいんでしょう?」












空中で握り潰した







254: ◆E.Qec4bXLs 2014/06/16(月) 23:42:19.53ID:lJTQ0fj/0



ドォンッ!!!



泉の手から離れた瞬間、火薬が炸裂する。だが手を離れた以上その火薬が与えられるのはわずかな火傷だけ

そのエネルギーのほとんどは火薬の周りにくっついた榴弾。その破片を吹き飛ばすことに使われる。


だが泉は爆発の一瞬前に握り潰していた。


正確には”少女の握力で潰せるくらいにまで柔らかくなるように榴弾の硬度を改竄していた”


能力を限界出力まで使用した結果だ。泉の至近距離で爆散したそれらのほとんどが泉に命中するがその肉体をえぐることはなかった

榴弾の一つ一つの硬さは既にグミやナタデココと同じになっていた。彼女の制服には焦げ目すらついてない。

泉(ボット)「攻撃より防御向きなのよね、私の能力」

コントローラーから離していた手を戻した。アクセルのボタンを押しなおす


蘭子「もういっ...かい!!」

美玲「ガルルゥアアァッ!!」


蘭子はまたもいつの間にか出現させた武器を手に持っていた。デザインから判断してさっきの棒状のものとはまた違うようだ

美玲はその手にさっきよりかなり小型な爪を装備してこっちに向かってくる。背後に逃げ場がないからそうするしかないのだろう


両者の距離、10m。あと2、3秒ほどで二人にぶつかるだろう

だが二人は既に得物を振りかぶっている。美玲はともかく、蘭子の武器がまたも”得体の知れない攻撃”を放ってくることを考えれば___




泉(ボット)「(よくて相討ち、か...お互い背水の陣ね、でも)」



ボットは学習する

混乱せず、自暴自棄にならず、次の策を練り上げる


泉(ボット)「(摩擦力を操作...)」


コントローラーを握ったまま能力を発動させる。

その効果はコントローラーを伝い、コードを伝い、装甲を伝い、そして厚いタイヤに達した







泉(ボット)「(タイヤ表面の、床に対する摩擦力を私のできる最大にまで上げて、一気に加速する!!)」




255: ◆E.Qec4bXLs 2014/06/16(月) 23:43:30.97ID:lJTQ0fj/0



ギャリッ!!


タイヤ表面の凹凸が地面を”噛む”。



亀裂、石粒、瓦礫の残骸を踏む度にスリップや空転を起こしていたタイヤが今、がしりと地面を捉えた



タイヤの回転エネルギーが全て直進するための運動エネルギーに注ぎ込まれる。



泉(ボット)「ッ!!」


次の瞬間起きた急加速に泉は背後のシートに叩きつけられた



蘭子「__!?」

美玲「ッ!!」




2秒はあったはずの猶予が1秒以下になり___



蘭子の武器の振り下ろしは間に合わず____



美玲の爪は加速を止めるには力不足で____















泉(ボット)「冷たっ...!?」



256: ◆E.Qec4bXLs 2014/06/16(月) 23:55:45.50ID:lJTQ0fj/0


泉の目が冷たい何かに遮られた。涙を流したように視界がにじむ


だがそれは涙ではない。

ただの、水だった


泉の体に水がぶつかっていた。制服が濡れて透ける



泉(ボット)「(雨__冷却水__いや__)」



ずるっ


高圧で噴射された水が泉の肌から摩擦を奪い、コントローラーがその手から滑り落ちた。

泉の膝にぶつかり、誤った方向キーが押し込まれる



泉(ボット)「(そんな___ここにきて、ただの水で_)」



水の摩擦力を変えるのは間に合わない、既にコントローラーは手からこぼれた

逆に摩擦力を上げられたタイヤは律儀にもドライバーの手を離れたコントローラーからの指示に従い、進路を変えてしまう


装甲車の進路が折れ曲がる。フロントガラス越しに見えていた蘭子と美玲がスライドアウトしていった


代わりにヘッドライトが照らしたのは__



泉(ボット)「(水て、っぽう?)」



二階から、下階いるこちらに向けておもちゃを構える十時愛梨だった。



装甲車は今、最高速度で走っている


眼前には頑強な壁面



ブレーキは間に合わない







衝突の衝撃から彼女を守るはずだったシートベルトとエアバックは蘭子の攻撃で食われていた



ゲーム開始40分経過


土屋亜子(ボット)消失

大石泉(ボット)消失



257: ◆E.Qec4bXLs 2014/06/16(月) 23:57:52.72ID:lJTQ0fj/0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
車は安全運転を心がけましょう

今回はここまでです

2週間も空けてすいませんでした

ちょっとしたおまけを置いていきます




最初の電車内での車両ごとのグループ分け

クール
凛 奈緒 加蓮/小梅 亜季 蘭子

キュート
まゆ 美穂 幸子/美玲 智絵里 杏

パッション

裕子 輝子 紗南/愛梨 きらり 麗奈




258: ◆E.Qec4bXLs 2014/06/17(火) 00:01:10.90ID:33FHMWLz0



練習用ボットの消失に至った原因

消失時刻が早かった順


・小関麗奈 3分

キーアイテム、レイナサマ砲の暴発で自爆
___________________
・三好紗南 3分

たまたま近くにあった消化器の噴射を至近距離で吹きつけられ負傷
___________________
・渋谷凛 5分

腹部への膝蹴りと踏みつけで負傷
___________________
・佐久間まゆ 5分 

リボンで首を絞められ、窒息前に頸部の物理的圧迫のダメージで負傷
___________________
・大和亜季 6分

軍隊式格闘術に勝てず負傷
___________________
・神谷奈緒 6分

ハリセンを取り上げられ3発ほどひっぱたかれ負傷
___________________
・堀裕子 6分

超能力による攻撃を試みて自滅
___________________
・諸星きらり 6分

きらりん☆パンチで返り討ちにされる
___________________
・星輝子 7分

キノコの扱いを間違え、オリジナルの逆鱗に触れる
___________________
・輿水幸子 8分

オリジナルとカワイイ合戦中に石につまづいて転倒、後頭部を強打し負傷
___________________
・白坂小梅 9分 

オリジナルから長袖の余った部分でペシペシ叩かれたことによる小さいダメージの蓄積
___________________
・十時愛梨 10分

高圧水鉄砲の直撃によるダメージの負傷
___________________
・早坂美玲 10分

アナスタシアによりオリジナルと間違われて体を貫かれる
___________________
・北条加蓮 10分

オリジナルがゲームに対し真剣に取り組むようスパルタ的に励ました後、自殺
___________________
・神崎蘭子 13分

携帯のモデルが額にクリーンヒットしたことによる負傷
___________________
・緒方智絵里 18分

逃げ回るオリジナルを追いかけている途中に遭遇したまゆにより通常ボットと間違われて刺殺される
___________________
・双葉杏 36分

オリジナル諸共きらりに抱きしめられる
___________________


ではまた次回に



259: ◆E.Qec4bXLs 2014/06/17(火) 00:09:02.43ID:33FHMWLz0

追加

・小日向美穂 15分

戦闘意欲が極端に希薄でおとなしく叩かれる



264: ◆E.Qec4bXLs 2014/06/29(日) 23:39:03.56ID:pfAhl4IS0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




「私たちボットがプレイヤーに勝利、彼女らを倒すというのは...本来とても難しいことです...」



「それこそ...プレイヤーがボットを倒す何十倍も」

「いえ、あやめさん...これは決して弱音や諦念ではありません...純然たる事実...ボットの限界の話、です」



「そして限界を踏まえたうえで、ボットがプレイヤーを圧倒する方法の話です」


「...そもそもボットがプレイヤーに優っている点はいくつかあれど、それらは全て『早さ』......この一言に収斂されます」

「ゲームが始まった段階で既に能力を持ち、余分な思考を除いた判断速度でプレイヤーの足並みが揃うのを待たずしてボット同士が手を組み、罠を仕掛け、息を潜めて待ち構える、その間になんの躊躇もなく、即決即断,,,」


「ですが、所詮それだけなのです」


「私たちに出来るのは先回りだけ、最後の一手が決定的に足りないのです」


「それもそのはずです、私たちを動かしているのは...結局はモデルとなったアイドルたちの思考回路、の贋作......戦闘マニュアルではないのです」


「人間の本能には闘争心が眠っているそうですが、ボットに本能はありません。そして、その差が戦闘の土壇場での分水嶺となっているのです」


「たとえルンバが...メイドや召使より優秀な掃除夫であろうと留守番や料理ができないように...有能であって万能でない、といったところでしょうか...」



「”出来ることしかできない”、要は、ボットたちは不可能を可能にできないのです...」



「これが人間と機械の、致命的な格差...」



「すいません...そのような顔はしないでくださいあやめさん、話はここからですから」





265: ◆E.Qec4bXLs 2014/06/29(日) 23:40:40.40ID:pfAhl4IS0



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



ガラス張りの自動ドアを粉微塵にしながら歪な装甲車両がデパートを飛び出す。

その装甲車両は屋根の大部分が不自然に引き剥がされていたので宙を舞ったガラス片が降り注ぐのを止められない



美玲「うわったったた!?」

蘭子「ひぇっ」

愛梨「きゃあっ!」


美玲が天に向けるようにかざした爪がガラス同士をくっつけ足跡のパラソルを作り、やや大きい欠片を防ぐ

装甲車は本来通行人が上るためのステップやスロープにタイヤをバウンドさせながらなんとか道路に乗り付けた

そこで愛梨がおっかなびっくり操作していたコントローラーからようやく顔を離し、蘭子と美玲に向き直る


愛梨「はふ~、なんとかなったぁ~!ところでどうして私が運転手なの?」

美玲「だってウチら免許持ってないし」

蘭子「加えて、愛に充ちた果実の持ち主は我らの中で長寿を生きし者なり(それに、愛梨さんが一番年上ですし)」


車内に落ちたガラス片を爪で掻き出しながら美玲がいい、片手に凝った意匠の杖を持った蘭子が続いた

愛梨「う~、たしかに私もそろそろ自動車免許を取ることも考えてるけど、なんだか納得いかないよ~。これゲーム機だよ?」

下半分だけ残っていたフロントガラスと乗っていたボットを盛大に吹き飛ばしながら壁に衝突した装甲車は幸いにもまだ走行可能だった。

今そのコントローラーは十時愛梨の手にある。結局なにかしらの能力を作動させずに終わった蘭子の二つ目の武器は消失しないまま能力者の手に収まっている


蘭子「(う~ん、不発のままだったから消えないのかな、これ?)」


ひとつ目の禍々しい鎌と違ってこちらはなにやら白い羽があしらわれた短い杖で、所在なさげにいじるもなにも起きない


美玲「とりあえずどっか行こう!誰かに会えるかもだしッ!」

愛梨「はーい、でもあとで運転交代してね?」

蘭子「鎧と車輪の行脚なり!!」


人気のないビル街にエンジンの回転音を反響させながら装甲車は消えていった。



ゲーム開始45分経過

報告事項なし




266: ◆E.Qec4bXLs 2014/06/29(日) 23:42:19.89ID:pfAhl4IS0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ゲーム開始43分時点


ドゴンンンッ!!!


「うわっ!!なに?なんなのさ!?」


あたし目の前の道路が弾け飛んだ。アスファルトの黒っぽい塊が飛んでくる

あたしは空から何かが落ちてきたのかと思って思わず上を見上げた

ところがそこであたしが見たのは何かがどこかに”飛んでいった”跡みたいな煙の尾だった



愛海(ボット)「なんだったのあれ...」


地面に目を向けるとそこにはぽっかりと穴が空いていて地下かどこかに繋がってるみたいだった。

あたしは恐る恐る穴に近づいていく、さすがに覗き込んだりはしないけど。


愛海(ボット)「えっと、さっきのは...空から降ってきた音じゃなくて、地下から飛び出した何かが空に向かって飛んでいった、ってことかな?」


穴に目を向け、飛び出してきた何かの軌道を目で追うように上を見上げる

雲一つない青い空といろんな高低の建物だけで視界が埋まった。

飛んでいった何かはもう見えない。その代わりにあたしの視覚はさっきまでなかったものを捉えていた

愛海(ボット)「あれ...だれかいる?」

十階建てくらいの雑居ビルの屋上に人影があった。さっき一度見上げたときは気づかなかったはずなんだけどな...

その人影もどうやらあたしと同じものを見ていたらしく、空のどこかに視線を固定していた


??「____」

ここからじゃ距離が遠くて顔はおろか胸にバッジがついているかどうかも見えない

愛海(ボット)「ボットかな?プレイヤーかな?」

呼びかけて確かめたいけどこんなとこで大声は出せないし、もしプレイヤーだったらあたしの能力じゃ負けちゃうだろうし...

??「__!___」


愛海(ボット)「あ...」


こっちみた


と思ったら消えた


えぇっ!?

愛海(ボット)「あれ!?いなくなっちゃった!?」

誰かは判別できなかったとは言えはっきり見えていた人影が掻き消えるようにいなくなった。瞬きした隙に隠れちゃったのかなんて思いたくなるほど予備動作もない一瞬だった

だからあたしはもう一度穴の方に視線を戻した。今とりあえず思考できるのがこっちだけだから





マキノ(ボット)「なるほど、あの砲弾はここから飛んできたというわけね。地下に基地でもあるのかしら?」



267: ◆E.Qec4bXLs 2014/06/29(日) 23:44:18.74ID:pfAhl4IS0


愛海(ボット)「のわぁっ!?」


当たり前のようにそこにいたマキノさんが穴の淵に立ってその中を覗き込んでいた。いつの間に!?


マキノ(ボット)「あら、驚かしてしまったかしら」


愛海(ボット)「うん、思考回路に問題は起きなかったけどびっくりはしたかな...」


マキノ(ボット)「ごめんなさいね、こういう能力なのよ」


愛海(ボット)「こういう、っていうと?」


マキノ(ボット)「視覚と聴覚、あと会話機能だけを時間制限付きで瞬時に離れた地点に座標移動できる、といったところかしら」

愛海(ボット)「なんだかすごいね...」

よく見ると確かにマキノさんの体は半透明に透けていた。うっすらと体の向こうにひび割れたアスファルトが見える

マキノ(ボット)「でも飛び石伝いに連続で移動ができないから、いちいち移動前にいた拠点に戻らないとならないのだけど」



愛海(ボット)「拠点?」


能力について愚痴らしきものをこぼしたマキノさんの言葉の中の馴染みのない単語に反応する

マキノ(ボット)「ええ、拠点よ。何人かのボットがそこに詰めているの」

愛海(ボット)「そうなの?」

マキノ(ボット)「そうよ、愛海さんも一人でプレイヤーを相手にできそうにないなら来てみたらどうかしら?私たちなら他のボットと愛海さんで一個戦力に仕上げることもできるわよ?」

愛海(ボット)「へー、なんかお山がいっぱいありそう!あたしも混ぜてよ!」





268: ◆E.Qec4bXLs 2014/06/29(日) 23:46:31.82ID:pfAhl4IS0


なにやらボットもボットでいろんな動きを始めているみたい。そうだ、それにあたしは今情報が欲しいんだった。

ほたるちゃん、藍子さん、聖ちゃんがどうしてあの廃屋もどきの中でくすぶっているのか

あたしのしていることは余計な世話かもしれないし、それに多分あたしはボットとして味方を増やそうとしているだけだろうけど



マキノ(ボット)「じゃあ私は徒歩の移動はできないけど、今から少しづつ道案内するからついてきて頂戴」


そういうとマキノさんはその場から消え、3秒ほどして少し離れたところにまた現れた。一度拠点に戻ってからもう一回こっちに来てるんだと思う 


あたしはそうやって消えては現れてを繰り返すマキノさんを追いかけていった。



マキノ(ボット)「ところで愛海さんの能力を聞いてもいいかしら」

愛海(ボット)「おっぱいを触った相手の能力がわかる能力だよっ!うひひ...お山を通じてあんなこと(能力の効果)やこんなこと(効果範囲)を...」

マキノ(ボット)「なら、ちょうどいいわ。見てもらいたい子がいるのよ」

愛海(ボット)「えっ」

マキノ(ボット)「えっ」




一方その頃、穴のそこ深く、地下に大きく開いた空間に敷き詰められた戦車の上で


  「あの一台だけ砲台が上を向いて、る・・・?」

 
  「・・・誰かいるんですかね?」




裕子「・・・・・・ま、いいでしょう!!意外と地上まで近かったようですし、壁でもよじ登れば脱出できるでしょう!問題は戦車をどうするか、ですか」



プレイヤーとボットは錯綜する。誰も意図しない形で、あるいは誰かの思惑通りに


ゲーム開始45分経過

堀裕子

VS

棟方愛海(ボット)&八神マキノ(ボット)

開始失敗



269: ◆E.Qec4bXLs 2014/06/29(日) 23:48:26.72ID:pfAhl4IS0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「おや、愛梨さんたちは...行ってしまったようですね...」



「なんとも歪な装甲車、まるで...オープンカーです」



「先ほどの話の続きですが、まず質問です。」




「私たちは、どうして能力が使えるのでしょうか?」




「......私たちの頭の中にはモデルとなったアイドルの思考パターンと知識しかないはずにもかかわらず、どのように能力を認知、行使しているのでしょうか?」


「...考えうる解答は一つ。私たちには新たに知識が追加され続けているのですよ」


「最初から与えられたものか、あるいはボットたちが学習しているか。おそらくは後者でしょう」


「この学習機能...これが....ボットが、そして機械が人間に追いすがる、唯一の切り札なんですよ」


「これを踏まえて、ボットがプレイヤーを上回る戦術的思考を手に入れればいいのです」

「その方法は至ってシンプルです...戦いを観察し続けること、これに尽きるでしょう」

「負けそうになったら逃げる、あるいはいっそ戦いに参加せず他のボットとプレイヤーの戦いを観戦し続ける」

「遠距離攻撃、近距離攻撃、真っ向勝負、不意打ち、多対一......どのように手を変え品を変えてもボットたちは一度に勝負をつけようとし、だから負けるのです」

「純粋に経験から学ぶ力においてもボットはプレイヤーを大きく凌駕しますし......戦いを長引かせ、回数を重ねるだけそこから得ていく経験値の差が開いていくのですよ、あやめさん」

「これは極論、というか詭弁ですが......高い学習能力をフル回転させ、ボット同士が本気でぶつかりあえば際限なく互いの実力を高め合うことができるでしょうね」




「矛盾...絶対に貫く矛と絶対に守る盾の例えとは違いますが......常に、必ず相手を上回る策を練り続けようとする私たちボット、これを二つ戦わせれば......」



「あやめさんは、気になりません...?」






270: ◆E.Qec4bXLs 2014/06/29(日) 23:49:31.69ID:pfAhl4IS0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~





幸子「どうなってるんですか!?なんであのキノコ...キノコ?...いきなり歩き出しましたよ!?」

小梅「体が...おおきいから...は、速い...」

輝子「カムバック!マイフレェエエンド!!」

ミドルキノコ「fFfF」



申し訳程度の照明が点々と連なる地下の下水道、そこを大きな影がのっしのっしと突き進み、その後ろを小さな影が三つ並んでちょこちょこと追っていた。

星輝子の能力により生み出される足の生えたキノコ

本田未央、島村卯月を始めとした「戦力外たちの宴」の防衛部隊から痛手を食らわされ、逃げ出したあと呼び出したそれは茸の平均どころか三人の身長も抜くほど大きかった

そしてそれがなぜか今、どこかへ向かって歩き去ろうとしているのだ。もともと輝子の指示に従うでもなく湿度の高い場所を探し歩くような性質だったが、それにしても勝手である。


小梅「はぁ......ふぅ......!」

幸子「小梅さん!大丈夫ですか!?」

輝子「あぅ、ご、ごめん、うめちゃん...わ、私のトモダチが...」


一番年下の小梅の息が乱れ始め、三人が足を止める。事の発端である輝子の表情がキノコを追わなければという焦りと友人を置いていけないという義務感の間に揺れる


小梅「う、ううん...だ、大丈夫...だよ...?」

幸子「そうですよ!輝子さんの友達はボクらの友達でもあるんですから!彼...?は今ちょっとボクのカワイさにあてられて照れ隠しに逃げてるだけなんですよ!そうに決まってます!」

輝子「さっちゃん,,,うめちゃん...」

小梅「あ、あれ...キノコさん、は...?」

幸子「えっ?」


立ち止まり、小梅に目を向けていた数秒の間にキノコは姿を消していた。薄明かりではその姿は追えない上、もしかしたらどこかの曲がり角を折れたのかもしれない

輝子「ひゃっ!?ノォオオオオ!マイフレェエンド!」

幸子「小梅さん、走れますか!?」

小梅「う、うん...!」

薄暗い中で散らばって走るのは危険だ。キノコが消えたと思しき方向に全力でダッシュする輝子、その後ろを幸子が小梅の背中を支える形で追いかける




輝子「はっ、はぁっ!...ぜえぇっ!...ゼェエエェェッ!!!」

幸子「ちょ、輝子さん!呼吸音が!変な呼吸音が!」

小梅「はぁっ...!...はひゅ...はひゅんっ!」

幸子「こっちも!?」





271: ◆E.Qec4bXLs 2014/06/29(日) 23:51:38.29ID:pfAhl4IS0



下水道の湾曲した壁面に伸びた影が慌ただしく揺れている。その先頭を行く輝子が突き当たりの道を曲がった。幸子たちの視界から消える



幸子「あ、ちょっと輝子さ」




ドンンンッッッ!!!





ミドルキノコ「fffFFfff!!?」

小梅「っ!?」

幸子「ひっ!?」




まばゆいばかりの閃光が地下下水道を白一色に染め、爆音と爆風の起こす震動に二人が膝をついた

曲がり道のむこうで突如発生した爆発。そこを曲がる前だったため大したダメージはなかったが


幸子「え...これ、輝子さんは...」

小梅「っ!しょ、しょーちゃん...」

立ち上がり、曲がり角の向こうへ走り出す





輝子「オ、オォォ......マイフレェンド,,,」




272: ◆E.Qec4bXLs 2014/06/29(日) 23:52:28.53ID:pfAhl4IS0



引き剥がされた壁の破片が転がっている中、腰が抜けたよう輝子が座り込んでいる。


そこにあのキノコはいない。


爆発を直接くらい消失したのだろう、輝子はそれを盾にした形で直撃をまぬがれたようだ。

そしてその向こう側にいたのは二人のプレイヤー

屈指の実力を持つボットを手に入れたばかりの能力と機転で出し抜き、辛くも勝利を収め、

その後幸子たちと同じく下水道に逃げ込み、身につけた能力の理解を深めていたところ、その音でキノコを引き寄せてしまった実力派のプレイヤー




亜季「う...」

麗奈「あ、亜季?大丈夫なのあんた!?」


幸子「はい?」

小梅「...ぇ?」

大和亜季と小関麗奈だった。




ゲーム開始55分経過

______________

 大和亜季  105/200


______________
______________

 小関麗奈+ 105/200


______________


______________

 輿水幸子  200/300


______________
______________

 白坂小梅  200/300


______________
______________

 星輝子+  200/300


______________



273: ◆E.Qec4bXLs 2014/06/29(日) 23:53:12.34ID:pfAhl4IS0



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

______________

 双葉杏+  44/200

ユニットメンバー
・諸星きらり

______________

______________

 諸星きらり 44/200

ユニットメンバー
・双葉杏

______________



杏「杏の能力ってこれ?」


______________

 双葉杏+  49/200
        
ユニットメンバー
・諸星きらり
・  
______________

______________

 諸星きらり 49/200

ユニットメンバー
・双葉杏

______________


きらり「うゆ、この数字なんだ   にぃ?」

杏「あー多分、これライフゲージ的なあれでしょ」

きらり「そーゆーの、きらりわかんない...」

杏「あーっと...これがゼロになったらアウトって感じだよ」

きらり「うーん...でも今その数字増えたにぃ?」

杏「それが杏の、のーりょく?...とかなんじゃないの?」



274: ◆E.Qec4bXLs 2014/06/29(日) 23:55:21.07ID:pfAhl4IS0



仮想空間内の公園


ボットがどこかへ消え去ったあと、なんとか体を持ち直した杏ときらりは今ベンチに座り、目の前に浮かんだボードのようなモニターを並んで眺めていた。


杏「あーもー、それにしても回復能力ねえ...何もせずダラけるのにはちょうどいいっちゃいいね...」

きらり「んもー、そんなだと杏ちゃん、うゃーってなちゃうゆ?」

杏「でもさー、変に動き回ってまた変なことになるのもやだし......きらりだっていやでしょ?」

きらり「んー、でもでも!今度はちゃんときらりが杏ちゃんを守ってあげるにぃ!」

杏「それは......まぁ、すっごく嬉しいけど...」


きらりの膝の上で安楽な姿勢を取りながら杏は画面をぼんやり眺める。




自動回復能力

何もせずともただただスタミナが転がり込んでくる。そしてそれはユニットを組んでいる相方も同様に。

印税生活を夢見る彼女にふさわしいかといえばこれほどふさわしい能力もないだろう。



杏「まぁ回復役、ヒーラーって普通は後衛だしねー。きらりが杏を守ってくれるなら......杏もきらりを助けるよ」

きらり「うるるる、杏ちゃーーん!!」

杏「うぐぇ!ちょ、しまってるしまってる!」



ズン...



杏「!」きらり「!」


ベンチが揺れた。



275: ◆E.Qec4bXLs 2014/06/29(日) 23:56:25.64ID:pfAhl4IS0



地震によるものではない。二人は直感で理解した。地震にしては、揺れが突発的すぎる。



ズン...



それに何より

杏「これ...」

きらり「近づいてきてるにぃ...」



ズン...!



ベンチごしに二人の体に振動が走る。地面の底の底から突き上げるような何かの気配

きらり「杏ちゃん逃げるにょ!」

杏「わかった!きらり、出口はあっちだよ!」



だが、遅かった



きらり「にょわ!?」


二人のすぐそばの地面が大きくひび割れる。

地下にいる何かが地盤ごと公園の土を突き上げているのだ。

それほどの衝撃、震動。

杏「ひっ、なにこれ...」



ズン!!!


分厚い土塊がめくれ上がる。なんの変哲もない公園の地面に大穴が空いた


きらり「杏ちゃん!」

杏「わっ」



きらりが杏を腕の中に抱える。二人の逃走は間に合わなかったのだ





??「.........」



276: ◆E.Qec4bXLs 2014/06/29(日) 23:57:24.93ID:pfAhl4IS0


何かが地の底から上がってくる


地面にぽっかり空いた空洞はどうやら地面に通じるトンネルらしい



ズガガガガガガ

ゴゴンッ


??「......ふぅ」








裕子「さいきっく!大!脱出!ショー!」






杏「はぁ?」

きらり「んにぃ?」


二人の目が点になる。それもそうだろう

地面に空いた大穴から見知ったアイドル仲間の一人が意気揚々と飛び出してきたのだから



彼女の身長と不釣合に長大なサイズの戦車を後ろから押しながら



裕子「いやー!我ながらナイスさいきっく!」

「天井まで壁をよじ登れなかった時はどうなるかと思いましたよ!」

「ふふん、ですが壁を砕いて地面を斜め上に掘り進む!さいきっくパワーのおかげで上手くいきましたよ!」



誰に聞かれるでもなくここに来た経緯を一人噛み締めるように語っていた

彼女の能力、通称さいきっく力技はあくまで物体の変形、破壊にしか発動しない。だから壁をよじ登るなどの運動能力は彼女本来のままだったため失敗した

最終的には地面を斜めに掘り進むことが地下軍事基地に放り込まれた堀裕子の脱出方法だった。

その方法で斜め上斜め上へと坂道を作りながら、その突貫工事の出口がどこに向いているのかも把握せず戦車を手土産に地上を目指し、その行為が実を結んだらしい

裕子「おや?」

杏「......」

きらり「...ユッコちゃん?」

裕子「ああっ!きらりさん、杏さんと会えたんですね!私のさいきっくが役に立って良かったです!」



ゲーム開始55分経過

双葉杏 諸星きらり

ユニット結成



277: ◆E.Qec4bXLs 2014/06/29(日) 23:58:45.61ID:pfAhl4IS0




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「ま、待ってくださいあやめさん...これはあくまで思考ゲームの一つですよ」



「私の能力は一部のプレイヤーにしか有効ではありませんから、あなたと戦ってもきっと勝てないでしょう」


「え?ああ,,,この、格好ですか?どうやらオリジナルのライブ衣装だったそうで...えっと、初期装備?でした」



「話が少しだけそれましたね...ボットがプレイヤーに勝つ方法...でしたか」


「まずは前提として、ほぼ初期パラメータのままボットがプレイヤーに勝つのは非常に難しい」

「それを覆すことができるのが、学習能力と...そして、それが生み出す膨大な経験値です」

「ですがここにジレンマが生じますよね...?」

「普通に戦ってもボットは敗北し、消失してしまう。,,,なのに戦闘を行わなければ経験値を得ることもできない...」

「適度に戦い、適度に逃げる...これも難しい...」

「でも...あるんですよ、自分がプレイヤーに消失させられる前に一気に経験値を稼ぐ方法が」





「”蠱毒”ってご存知ですか?」




「...甕の中に閉じ込めた大量の毒虫を殺し合わせる...するとその中で最後まで生き残った一匹が、常識を超えたな呪いをもつ、というものです...」




「古代中国ではその一匹を呪術的な素材として用いていたそうですが...」

「ああ、たしかにボットを毒虫に、この仮想現実全体を甕に見立てることはできますね...」

「難しい?...確かに難易度は高いでしょうね...私の能力では到底できそうにもありません」

「でもですね、これだと甕が大きすぎますよね...それに生き残った時にはボットは一体切りですし」

「もっと小さくていいのです...」

「そしてポイントはプレイヤー...この場合は、そうですね...呪術対象、とでも例えましょうか。毒虫と呪いたい相手を同時に甕に閉じ込めるのです...」

「複数のボットとプレイヤーを同じ場所に集め、我武者羅に戦わせる」

「プレイヤーにとってその混戦状態は不利でしかありません......が、ボットにとっては混沌としていればいるほどそこから学び取る内容も多いのです」

「なにせ、ボットは混乱しないのですから」

「どのような状況に直面してもその思考に1ビットのゆらぎも起こしません」

「蠱毒、毒虫の甕...この場合毒虫はボットの比喩ですが、この毒というのはボットの能力のことでしょうか?」

「それとも......ボット自身になるのでしょうか...?」

「なんにしてもこの蠱毒状態こそが......ボットにとって次の段階に至るためのレッスンになるでしょうね」




「あるいは地獄の釜、でしょうか...?」




278: ◆E.Qec4bXLs 2014/06/30(月) 00:02:35.00ID:bjbXWOsb0

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

その場所は元々広い住宅街だったが、いまそこは見渡す限りの石塊と瓦礫、残骸の海と化していた。

荒涼としたその土地は見晴らしがよく、ほとんど真っ平らになったそのフィールドでは、誰が逃げようとしてもすぐに見つかってしまうだろう

そう言う意味ではこの場所は心理的に封鎖されていた

誰ひとりとして逃がさない閉ざされた空間だった


まるで口に蓋をされた甕のような




のあ(ボット)「.........」





______________

 神谷奈緒  46/200


______________
______________

 北条加蓮  46/200


______________

______________

 佐久間まゆ  70/100


______________
______________

 小日向美穂+ 65/100


______________
______________

 三好紗南+  50/100


______________

______________

 高峯のあ+  98/100


______________
______________

 前川みく+  95/100


______________
______________

 アナスタシア+ 70/100


______________
______________

 村上巴+    80/100


______________



279: ◆E.Qec4bXLs 2014/06/30(月) 00:04:52.53ID:bjbXWOsb0




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



巴(ボット)「ほれ、まだスタミナはあるじゃろ!立てや!そんでもってうちに全力で食らいついてこい!」






加蓮「ぜぇ...はぁ...い、いわれなくても...!」



奈緒「す、好き勝手...言いやがって...」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



みく(ボット)「にゃんにゃにゃ~ん♪美穂ちゃんも紗南ちゃんも動きが遅すぎにゃ!あくびが出ちゃうにゃん」







美穂「あ、あぅう...みくちゃんの方が速すぎるんだもん...」



紗南「あいててて...そんな身体パラメータなんてチート級だよっ!」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


まゆ「...うふ、うふふ、うふ......」




アナスタシア「アー、無理して笑わなくてもいいのでは?...まゆ...膝がガクガクしてます」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



地獄を思わせる、ひたすらに荒れ果てた地で、

レッスンという名の地獄の釜の蓋が開いていた





ゲーム開始55分経過

神谷奈緒&北条加蓮&佐久間まゆ&小日向美穂&三好紗南

VS

村上巴(ボット)

VS  

高峯のあ(ボット)&アナスタシア(ボット)&前川みく(ボット)

継続中

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



280: ◆E.Qec4bXLs 2014/06/30(月) 00:10:47.85ID:bjbXWOsb0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

今日はここまで

次回開始するチャプターを選択してください
安価+3下

1、輿水幸子&白坂小梅&星輝子&小関麗奈&大和亜季

2、双葉杏&諸星きらり&堀裕子

3、神谷奈緒&北条加蓮&佐久間まゆ&小日向美穂&三好紗南

4、早坂美玲&神崎蘭子&十時愛梨


コメントありがとうございました




281:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/30(月) 00:22:16.67 ID:s2fbniGDo

乙ー
踏み台



282:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/30(月) 01:50:17.43 ID:CbK1+kkw0

乙!



283:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/06/30(月) 01:51:38.15 ID:et4dZebS0




285: ◆E.Qec4bXLs 2014/07/15(火) 00:17:02.81ID:4YM54seg0



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
佐久間まゆ




殺陣、凝闘



いわゆる演技での戦闘行為というものは知っていた



ここ最近だと剣士、拳闘士、ガンスリンガー、海賊などの役に扮した事務所の仲間が鬼気迫る演技を見せていた

鍔迫り合い、決闘、銃撃戦、海上戦

剣、篭手、リボルバー、ナイフ、大砲

多人数戦、一騎打ち



そういったアクション面に特化した演技のことは知っていた


今ここで、彼女にも、その技術があれば



この状況を変えることができただろうか






アナスタシア(ボット)「無理ですよ」

「ここは現実であって現実ではありませんし。演技力でどうこうできる程度の...アー...逆境、ではありません」



まゆ「ぜぇ...ぜぇ...で、ですよねぇ...」





まゆの両指に絡まるように果物ナイフが揺れる

その刃は氷と何度もぶつかりあったせいでギザギザに刃こぼれし、とても使い物になるようには見えない

アナスタシア(ボット)「むぅ、氷にしては耐久度が低いですね...本来氷はもっと硬いものなのですが...」

そう言いながらもアナスタシアの両手を中心にかたまった篭手のような氷の装備の、
そのひび割れた部分を覆い隠すように細かい氷の粒が貼り付いていく



286: ◆E.Qec4bXLs 2014/07/15(火) 00:18:18.44ID:4YM54seg0



最初、まゆには武器の数でアドバンテージがあった。


集めに集めた夥しい本数の刃物と少ない銃器

それに対してアナスタシアの武器は途絶えることなく補充され、形成され、まゆに振るわれた、


比較的大きなサバイバルナイフには、腕をまるごと防御する氷塊が


細長く伸びたダガーナイフには、それを上回る長さの氷の槍が


まゆの武器、攻撃手段は多彩であり、豊富なはずだった。


だがそれに即座に対応し、相性のいい形態変化を行われては威力も半減



そして今も、小ぶりな刃物を破壊すべくアナスタシアの両手にはゴツゴツとした透明の篭手が冷たく装備されている




まゆ「(ちょ...っと、不利すぎますねぇ。何をやってもやり返されてしまいますし...)」


さっと周りに視線を走らせる。その瓦礫の隙間にはここ数分でアナスタシアに切りかかった際に、あるものは弾き返され、刃が欠け、どこかに飛んでいった武器がいくつも転がっているはずだ


まゆ「(あと何本くらいでしょうか...)」


アナスタシアを見据えたままスカートのリボンに手の平を走らせる、リボンに挟む形で服に固定したナイフが数本ほど指に触れた


まゆ「(右手側に二本、左手側に一本...今使っている刃こぼれしたのが一本ですかぁ...)」

アナスタシア(ボット)「そうやって」

まゆ「!」




アナスタシアが地を蹴る。闘いの最中に足元にこぼれ落ちていた、水晶のような氷の粒がジャリリと踏みにじられる

5メートルとなかった距離がわずか2、3歩で縮められ、その3歩目に拳が振り下ろされた

まゆ「っつぅ!」

果物ナイフの背で攻撃を受け止める。まるでボール大の雹となった拳がひび割れる


アナスタシア(ボット)「今更残りの武器を気にするくらいなら、他のプレイヤーに武器を分けたり...しなければよかったのです...」


ヒットアンドアウェイ。振り下ろした右拳を戻しながら一歩引く


そして返す刀で左の拳が突きこまれた。まゆの胴に吸い込まれるようにえぐりこまれる


彼女の軽い体は受身も取れずに背中から地面に叩きつけ得られる





287: ◆E.Qec4bXLs 2014/07/15(火) 00:19:05.83ID:4YM54seg0




まゆ「あいったぁ...」


背中にしびれ、しかし一番ダメージの大きいはずの胴体には何の違和感もなかった


ダメージの感触を与えない。それがアナスタシアの能力だからだ。だからまゆは背中を抑えながら即座に起き上がれた



まゆ「...ま、まゆだけ生き残っても......その後全てのボットを相手はできませんから...」


アナスタシア(ボット)「なるほど、えっと...打算的? ですね、まゆ」



アナスタシアはまた数歩下がり、自分の両手を検分している。右手の篭手に深い溝が入っていた。

力加減を顧みず振り下ろしたため武器自体が損傷したらしい。これでは追撃はできない

だがそれでも構わない、まゆのものと違い彼女の武器は尽きないのだから



まゆ「ぜぇ...はぁ、まゆは、こ、これでも...仲間思いなんですよぉ...?」


カラン

まゆの手から刃先の曲がったナイフが放られる



アナスタシア(ボット)「アー、そうですか...ですが、みんなで生き残りたいのはこちらも同じなので...」


アナスタシアが篭手をフラフラと振ると氷の破片が剥がれ飛び、空中でキラキラと日の光を反射した

「ちゃんと、倒させてもらいますよ。」

「そしてこの戦いを糧に...私たちは他のボットよりも高みにのぼります...」

「...бедствие......アー」




「...災厄から...生き延びるためにも」





ゲーム開始56分経過

佐久間まゆVSアナスタシア(ボット)

継続中



288: ◆E.Qec4bXLs 2014/07/15(火) 00:19:59.51ID:4YM54seg0



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
小日向美穂&三好紗南



美穂「だ、だだ大丈夫かなぁ?ま、まゆちゃん、痛そうだよぉ...」

紗南「いやいや!!こっちも大変だから!となりの画面にも注意を向けとく的な場合じゃないって!」



そこはまゆとアナスタシアのいる地点から10メートルと離れていない場所

建物の残骸がごろごろと積もり、それがいい具合にボットから身を隠す障壁となっていた


この場合もちろん身を隠さなければいけない相手は前川みくだ


今もそこらじゅうにある瓦礫の岩場のどこかからこっちを睨めつけているはずだ。

そして狙われている二人、小日向美穂と三好紗南の装備は奇妙の一言に尽きた

一人はクマのぬいぐるみを小脇に抱え、手にはオートマの銃を一丁怖々と握りしめている

もう一人はポータブル型ゲーム機を現在進行形で片手操作しながらもう片方の手で五連の回転銃を持て余していた

戦闘にそぐわないアイテムはどちらも彼女たちの能力の象徴、それ以外はまゆから手渡されたものだ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
まゆ「頑張って生き残りましょうねぇ?」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
美穂「うぅ、そんなこと言われても...」

引き金にホンの少し指をかけては引っ込める動作を繰り返す

手の中にある殺傷力の権化。それを振るうのがどうにもためらわれるのだ



紗南「美穂さん、ちゃんとそっち見張っててね!」

美穂「う、うん...」


美穂の背中に自分のそれをぶつけるように紗南と二人、背中合わせに立つ

だが身長が噛み合っていない上、銃の扱いが覚束無いせいでその臨戦態勢が即興であることがバレバレだった


美穂「......みくちゃん...ど、どこだろ?」

紗南「......しーっ、静かに」


みくの姿は見えない。二人お囲むようにあちこちに散らばった鉄筋やコンクリの小山の影に潜んでいる

氷に金属が叩きつけられる鈍い音がそう遠くない場所でしきりに鳴っている。まゆの戦闘は未だ続いているようだ

だがそっちに視線は向けられない。手の中で無骨な銃器を握り締める



289: ◆E.Qec4bXLs 2014/07/15(火) 00:20:51.78ID:4YM54seg0




美穂「(...あ)」

空中の一部がちらちらと光っている。アナスタシアの手から細かく散った氷が細雪のように宙を舞っていた

なのに美穂は思わず横ではなく上を見上げてしまった。




そしてみくと目があった




みく(ボット)「にゃあああああああああああ!!!」


美穂「ひゃああああああっ!?」



前でも後ろでもない、空中に飛び上がっての上方からの奇襲




反射的に美穂の腕が上へ跳ね上がる。だが、引き金が引けない




紗南「ぅえっ!?」

遅れて紗南も上を見上げたが、もう遅い

みく(ボット)「ねこきっく!」

頭から地面に着地する瞬間、ほぼ同時に両足を回転させた蹴りが二人の背中を反対方向に突き飛ばす

見上げるほど高くまで跳躍を可能にする脚力をまともにくらい、受身も取れずにうつ伏せに倒れたままザリザリと地を滑る

美穂「きゃあっ!」

紗南「うあっ!」

二人を蹴りつつ空中でくるりと回転したみくが着地した。まるっきり高所から落下したときの猫の動きだ

みく(ボット)「ふふん、窮鼠猫を噛むなんてことわざもあるし、みくは油断なんてしないにゃあ!」


猫耳を揺らし、ボットが追撃に移る

砂塵を巻き上げ、みくが跳ねる。その方向は水平、飛ぶそうな速度で地を駆る。


二人の敵が態勢を崩しているのなら強そうな方から突き崩すのが定石。二人のうちの年上、美穂にみくが肉迫する


美穂「__っえぇ!?」


銃を警戒してかその軌道は縦横無尽。右に左へ三角飛びを繰り返しながら確実に距離を詰めている

だが、もはや美穂の目では人間大の猫と化したみくの姿を追うことはできない



290: ◆E.Qec4bXLs 2014/07/15(火) 00:21:56.03ID:4YM54seg0


紗南「美穂ちゃん!!」


起き上がった紗南が銃を構えるが狙いがつけられない。足跡型のクレーターを点々と目で追うだけだ、それも見る間に増えていく


ダンッダン、ダンダンダンダンダン!!!!!!


みく(ボット)「おーそーい――――――にゃっ!!!」


ボットは容赦しない

武器がないなら肉弾戦を選択することにも躊躇はない



美穂「ひっ!」


超超至近距離、

顔面数センチ先にみくの瞳が割り込む


銃の射程どころではない、両手を広げれば抱きしめることすらできる距離



紗南「能力を___!」



驚愕に白く染まった美穂の脳裏に紗南の言葉はかすかにしか届かない

代わりに届いたのは猫の手にしたみくの掌底だった。

加速の勢いの乗った一撃は胸の中央に深く深くめり込んで___









ぼふっと弾んだ






みく(ボット)「にゃ?」






みくの手の平から手応えが消える



291: ◆E.Qec4bXLs 2014/07/15(火) 00:23:17.31ID:4YM54seg0





ぼふんっ、ぽふ、ぽふ





そのまま地面にバウンドしながら転がって行く



紗南「ま、間に合っ...た?」



離れた距離にいた紗南が息をついた



美穂「わぷっ」




殴り飛ばされたはずの美穂のいた地点、



そこに転がっていた”プロデューサーくん”から美穂の声が漏れ出る




ぬいぐるみと一体化する能力。それにより布と綿の体はみくの一撃を受け取め、受け流していた



みく(ボット)「にゅにゅう...美穂チャンが消えた?」


殴った相手がぬいぐるみと入れ替わった感覚に、能力を知らない彼女の動きが止まる


紗南「(チャーンスッ...今だっ!!)」



パン!!



後ろからの紗南の発砲。みくの死角へと銃弾が潜り込む。猫のように動けても銃弾より速くは動けない

みく(ボット)「____っにぁ!?」

対応が遅れたみくにその致死級の攻撃を避けることはできなかった



292: ◆E.Qec4bXLs 2014/07/15(火) 00:24:00.93ID:4YM54seg0









だが、銃を構えた人間を見てから動くことができる者はいた



紗南の動きを見逃さなかったボット




高峯のあが

いたのだ







ガキンッ!!!




銃弾が弾き返される。みくの背後を守るように生えた鉄製の柱に一筋の弾痕が刻まれる





そのほっそりとした柱はまるで女性の指にも見えた




みく(ボット)「ふ、ふぅ...のあチャン助かったにゃ!!」

背後を顧みたみくがのあに声をかける。彼女は遠く離れた場所に静かに直立したままだ

のあ(ボット)「注意すべきは窮鼠だけではない...見えない敵にこそ注意を払うものよ...みく」

物体との一体化、および操作。物体に満ちたこのフィールドでは、高峯のあにとって距離は関係ない。今この時この場所で、彼女にとって全てのプレイヤーは射程圏内なのだ

ボロボロとみくの背後を守った柱が崩れ落ちていく

崩れ去ったとき、そこにもう人猫の姿はない。みくは音もなく疾駆していた

みく(ボット)「不意打ちするような悪い子には~~~ねこぱんちにゃっ!」

紗南「か、かかってこぉい!!」



敏捷な猫

音速の銃弾

ゲームの電波

三つの速さが激突する



ゲーム開始56分経過

小日向美穂&三好紗南VS前川みく(ボット)

継続中



293: ◆E.Qec4bXLs 2014/07/15(火) 00:24:55.32ID:4YM54seg0



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
北条加蓮&神谷奈緒




巴(ボット)「はん、この修羅場でなにぼんやりつっ立ってるか思たが、のあさんはあの立ち位置で十分やれるんけ」




紗南からみくへの銃撃を能力たやすく防いだ高峯のあの手並みを遠目に眺めて、巴が感心したように声を上げる

首と視線は完全に敵であるプレイヤーからそれている。油断もいいところだ


ぎりっ


巴(ボット)「おっ」


右腕が”鳴る”


その瞬間には引き金が絞られ地面をビリビリと震わせる豪音とともに巴の銃が火を噴いていた



よそ見をしたまま放たれたそれはまっすぐ伸ばされた腕のずっと先、小高い瓦礫山に命中し、巴の身長より数倍巨大なそれが




ダイナマイトで吹き飛ばされたように跡形もなく破裂した




奈緒「ぅおおおわああっ?!!」

加蓮「あっぶなっ!!」



ほぼ更地になったその影から慌てて二人のプレイヤーが逃げだした、間近で起きた小規模の爆発に無意識に耳を抑えている


巴(ボット)「おうおうおう!身ぃ隠すモンがドンドンのうなっとるでの!そろそろ逃げてられんぞ!!」


身を潜めていたプレイヤーと真逆、周りに何の遮蔽物もなく盾も持たず、チャカ一つで巴は荒廃した土地に一人立っていた

右腕に巻き付いた、拳銃から伸びた手錠の鎖がさらに”太く、長くなった”



ぎりり



巴(ボット)「ヒリヒリするのぅ、これがスリルとかいうヤツけ」



294: ◆E.Qec4bXLs 2014/07/15(火) 00:26:15.03ID:4YM54seg0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


加蓮「なによあれ!なんであの程度の銃でバズーカみたいな威力なの!?」

奈緒「知らねえよ!そういう能力なんだろ!あとそっち詰めろ」



加蓮「いや奈緒が連れてきたんだし、なんか能力のヒントとかもらってないの!?」

加蓮が奈緒に詰め寄る。別の瓦礫の影に二人して転がり込みながらも焦燥が抜けきらない


それでも息を切らせながら奈緒が途切れ途切れに覚えている限りの情報を紡ぐ


奈緒「ここに、合流する前、あたしの前で...一発だけ撃ったんだが、その時は別にあんな威力じゃなかった、しっかりと確かめたわけじゃないけど」

加蓮「じゃあ、やっぱり...そういう武器を強くする的な能力ってことなの...?」


うんざりしたような声が漏れる、まだいくらか身を隠す場所が残っているとはいえ、これではジリ貧だ


奈緒「そう考えるしかねえな、でもそれなら攻撃が当たらないように逃げながら反撃すれば...」

加蓮「......本当に出来ると思ってる?」


対応策を提案する奈緒に加蓮は目を鋭く細め指摘する


奈緒「...やるしかねえだろ、それにほら今の所あたしらのダメージって銃じゃなくて吹き飛んだ石とかがぶつかったときのばっかだし」

加蓮「それは巴がなぜかテキトーな狙い方しかしないからでしょ、本気で狙ってきたらどうするのよ...」

奈緒「う...そうだよな....」

加蓮「それにその方法なら、さっきから何度もやってるのに全部失敗してるじゃない」

奈緒「あー、やっぱそれが一番謎なんだよなぁ...」


瓦礫の端に身を寄せ、向こうを覗く。離れた場所では相変わらず巴が身を守ろうとする素振りさえなく直立している


その右腕には手首から二の腕にかけて蛇のように太い鎖が巻きついていた


明らかな変化、最初は手錠のものと同じように十数センチもなかったにも関わらず、今や腕を2周3周して余りある長さだ



奈緒「威力が上がることと、あの伸びる鎖は関係あるのか...?」



加蓮「それも考えなきゃね...でも一番考えないといけないのは...」





「アタシたちが攻撃しようとするのと同じタイミングで反撃される現象のことね」





295: ◆E.Qec4bXLs 2014/07/15(火) 00:27:15.32ID:4YM54seg0




奈緒「...現象ってのは比喩としちゃ大げさだろ」


加蓮「でもそうとしか言えないよ、それのせいでアタシたちはあんなに無防備に突っ立ったままの巴に手も足も出ないんじゃないの...」




それが二人が防戦一方である理由だった


二人の装備はもう貧弱ではない。まゆの武器を分けてもらった結果、加蓮リボルバーには6発の弾丸がこめられ、奈緒の手にも巴の銃に勝るともとも劣らない大きさのオートマが収まっていた



なのに勝てない



攻撃するには十分な装備に1対2の状況、そして無防備なボット



きっかけは巴の右手首にかかっていた手錠の鎖が伸び始め、銃と腕を一体化するように巻き付き始めたことだ


がっちりと固定された銃から放たれる不自然で規格外な威力の豪砲


それを避けつつ反撃することも二人には出来たはずだったし、実際何度もその機会は巡ってきていた



最初は瓦礫の影を通じて巴の背中側に回り込んでの反撃

次は二人が別々の位置から挟み撃ちにするような不意打ち

最後には、片方を囮にしてもう片方に奇襲もかけさせた




だが全てが失敗に終わった、否、終わるどころか始まりすらしなかった



巴の背後を取った時にも、瓦礫の影から銃を構えた時も、囮に気を取られた瞬間に引き金を引いた時も___



___巴は全く同じタイミングで引き金を引いているのだ



しかもその度に鎖がより長く太くなっているような気もする

危機察知能力か、センサーか。なんにせよこっちの攻撃を見抜いた上で大砲級の銃撃を行われては作戦など木っ端微塵だ

加蓮「一体どんな能力ならそんなことができるんだろ...」

奈緒「やっぱり能力なのか?鎖が伸びてるのは...多分銃の威力を抑えるだけのものだろうけど...」


プレイヤーの攻撃を先読みする能力

ボットの武器の攻撃力を強化する能力


奈緒「巴が能力を二つ持ってるってのは?」

加蓮「...それは最悪の可能性、だけどありえない、もしそうだったらもっと早くケリをつけに来る」



296: ◆E.Qec4bXLs 2014/07/15(火) 00:30:19.23ID:4YM54seg0


奈緒「そっか......ちっきしょー、でも能力がどうとか考察してる場合じゃないんじゃねえか?」

加蓮「......アタシは相手の能力を見抜けたおかげで暴走バイクに乗ったボットにも勝てたけど?」

奈緒「まじかよ...」

奈緒の驚愕混じりの声を聞きながら、加蓮は積み上がった瓦礫のわずかな隙間越しに巴の姿を見て取った

加蓮「諦めちゃダメだよ、奈緒。そしたらきっと、なんだってできるんだから」

拓海さんの時よりは楽だといいな

そうして思考を開始する


ゲーム開始56分経過

北条加蓮&神谷奈緒VS村上巴(ボット)

継続中



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



297: ◆E.Qec4bXLs 2014/07/15(火) 00:31:03.96ID:4YM54seg0




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

今日はここまで

次回開始するチャプターを選択してください
安価下

1、輿水幸子&白坂小梅&星輝子&小関麗奈&大和亜季

2、双葉杏&諸星きらり&堀裕子

3、早坂美玲&神崎蘭子&十時愛梨

4、渋谷凛&緒方智絵里


コメントありがとうございました



298:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/15(火) 00:53:57.71 ID:XQTs91WEo


ひさしぶりにしぶりんが見たい
4



303: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/06(水) 23:48:50.21ID:7I6Q0Kd90



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
渋谷凛&緒方智絵里



あずき(ボット)「逃っげろーい!大脱走大作戦!!」



凛「っ!!逃がさない...!」



跳ねるようにあずきが駆け出し、その後ろを凛が追う

二人の進行方向には事務所。現実感を喪失する仮想世界の中にあって唯一現実との共通点ともなりうる特異点。既知の場所でありながら未知の要素の詰まった建造物

凛の手には猟銃が握られているが既にその弾はない。彼我の距離は5メートル





智絵里「...ぁぅ」

そこに智絵里はいない。状況に置いていかれたまま、仁奈から受けたダメージも抜けきらずその場にへたりこんだまま、既に戦意も失せている


なぜなら彼女は見てしまったから。

能力の渦中から生還した人間を

自分の能力の被害者を

その憔悴した姿を



なまじ一度発動させてしまうと取り返しがつかず

そして何より

その”末路”を知らずに済ませられる能力だけに、

一度自分がしでかしたことを知ってしまった智絵里にもう一度能力を、少なくとも戦闘に使うことはできなかった



智絵里「...ごめんなさい...凛さん...」






304: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/06(水) 23:50:11.58ID:7I6Q0Kd90



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



あの事務所みたいな建物に逃げ込ませるのは絶対ダメだ!


それまでに追いついてピアスを取り戻す!



ギリギリで手の届かない所にあずきの背中、追いつけそうで追いつけない

着物の裾がひらひらと手の届かないところを揺れる



凛「...っふ!」


手に持った銃を構える、多分狩猟に使う感じのそれで、撃つんじゃなくて、打つ


あずき(ボット)「うぇっ!?」


バットみたいに銃筒を握る、実際金属バット並みに痛いだろうけど、走りながらだから足元が危うくなる


凛「止」



頭の高さに銃を振り上げたまま必死で態勢を整える



凛「まっ」



あずきがちらりとこっちを見た後、足をはやめる

右足を思いっきり踏み込む、地面と一体化した感覚



凛「てぇっ!」




速度差で逃げ切られる前に一気に振り下ろす、鉄の棒があずきの背中を捉える



305: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/06(水) 23:51:59.70ID:7I6Q0Kd90






あずき(ボット)「やーだよっ」




私のフルスイングが空振る、空中で小さな鞠の脇をかすめていく



ここで使ってきたんだ、あの変身能力...!




しかも



あずき(ボット)「それだけじゃないよっ」

凛「っ!!」




鞠だけじゃない、


小さな星型の何かが鞠の周りに撒き散らされたみたいに

いくつもいくつも、あずきが変わり身のさなかにバラまいて___



鞠を外した銃がそのうちの一つにぶつかって、それが合図だったみたいに他の星諸共一斉に爆ぜた



あずき(ボット)「逃げながら反撃大作戦っ!大・成・こー」





だけど私が





あずき(ボット)「う?」



伸ばした指先は、鞠に引っかかった



凛「今度は、私のピアスをだしなよ」


引き寄せる、私の腕には尖ったガラスみたいなカケラがいくつも刺さっている、痛みは気にならない

あずき(ボット)「り、凛ちゃん痛くないの!?」

あずきが人型に戻る、でもその着物の襟元は私ががっちり掴んだままだ

ゼロ距離であずきと相対する、あずきは私が不意打ちに怯まなかったことに驚いてるみたい。予想が外れたような顔だ





凛「さっきまでもっと怖くて危ない場所にいたからね」



306: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/06(水) 23:53:08.77ID:7I6Q0Kd90




柔道の試合ならこのまま背負い投げができる間合い、着物の襟元を引っ張る


あずき(ボット)「あ、ちょ...やんっ...!」


そこには黒い箱、私のピアス


それに手を伸ばす前にあずきがアイスピックを突き出してきた、


頭の動きだけで避ける


そのまま返す刀で頭突き


あずき(ボット)「みゃっ!?」

凛「っ!」

鞠に変身して直撃はよけられた。




でもあずきの胸元から黒い箱がこぼれ落ちて、二人の間に放られる



凛「返してもらうよ」

あずき(ボット)「っだ、め_!」



着物から放した手を伸ばす、



あずきが声を上げるけど人型に戻るより私の手の方が少しだけ速いから___








ゲーム開始58分経過

渋谷凛 能力獲



307: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/06(水) 23:55:03.07ID:7I6Q0Kd90



























智絵里「____凛さんっっっ!!!」







遠くから焦ったような、悲痛そうな智絵里の声がして






次の瞬間私とあずきはとんでもない力で地面に叩き伏せられた





狙いも何もない上からの大威力の攻撃

問答無用でアスファルトに頭をうちつけられる

上下左右の狂った世界観の中、衝撃に破裂した鞠の赤や青の色紙だけが鮮やかで____




_____________

 緒方智絵里+ 59/100


_____________

_____________

 渋谷凛+  20/100


_____________


ゲーム開始58分経過

桃井あずき(ボット) 消失


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



311: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/08(金) 00:13:30.30ID:5MKc1+QZ0



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
渋谷凛&緒方智絵里



本田未央の『ミツボシ効果』 領域へ踏み込んだ侵入者への罠

水野翠の『二律反省』 対象を地面に縫い付け動きを止める技

市原仁奈の『U=パーク』 圧倒的体格差で敵を蹂躙する特質

それらを影から支える島村卯月『M・M・E』、佐城雪美『黒猫電話』


この布陣は鉄壁である。


だがこれらはあくまで地面を走り来る敵に対してのみ発揮される防御力である


陸、海、空 ここに海はない。


では空は?

万に一つ空から攻めてくる敵、プレイヤーがいたときどう対処するのか?



バサァッ、バサァッ



凛「...っつ、うぅ...」



シュルルル




智絵里「...あ、ぁああ.......」



これがその答えだ




広げられた翼が空気を叩く音がする。振り下ろされた尻尾を巻き取る音がする



小春(ボット)「ヒョウくん、あずきお姉さんまで攻撃したらダメですよ~!」




ヒョウくん「.....」



事務所二階の窓から小春が非難めいた声を上げる、だがそれに返事はない。なぜなら彼は爬虫類だからだ




例えその体長が10メートルに届こうとも、背中から翼竜を思わせる翼を生やしていようとも




この大型生物が、ヒョウと名付けられたペットが、古賀小春の能力『美女と聖獣』こそが、この防衛部隊の対空兵器だった



312: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/08(金) 00:15:12.62ID:5MKc1+QZ0


ヒョウくん「.........」



空中に静止したまま尾をゆする。上空から強襲し、アスファルトに凛とあずき諸共振り下ろしたそれには傷ひとつ付いていない



ヒョウと名付けられたそれはボットではない。古賀小春というボットのアイテムである。それ故に能力はない。だが同時にスタミナという制限もない。つまり、古賀小春に何かが起きない限り永久に動き続ける



ゴッッッ!!!



両翼が唸る。空中を滑るような速移動、次の標的は緒方智絵里







智絵里「...ひっ!?」



無機質な、餌をみるような爬虫類の目が彼女を捉えて離さない







~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

最初はあずきちゃんと凛さんがつかみ合ってるように見えた


不意にそこに影が差して、いきなり、上から伸びてきたのは...しっぽ?


顔を上げると当然のような顔をして恐竜がいた。それがわたしの方を向いて始めて小春ちゃんのイグアナだとわかった

今、まっすぐ私の方へ飛んでくる。その動きを追うように、翼の風圧に負けたビルの窓ガラスが順に砕け散る



「いっ、いや...」



声が続かない、足に力が入らない、まだ痺れてる。


でも痺れてなかったとしても逃げるなんて絶対できない



手元のアクセサリを握り締める、四つ葉のクローバーを模した飾り、わたしの能力の鍵




でも、これは___使えない






313: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/08(金) 00:16:05.70ID:5MKc1+QZ0




ぐんっ



ヒョウくん「......!」



影が私の上に差すと同時にそのイグアナが空中で一回転する、背中のトゲや翼が空を切る音がわたしの耳にまで届く



「...あ」



ぎゅるんっ!!!



翼と胴の回転に遅れて


 長い   長い    長い



ザラザラしてそうな、しっぽが、ギロチンみたいに、隕石みたいに


ゴツゴツとした表皮
          
        何を考えているのかわからない瞳

  筋張った翼


 わたしに向けて振り降ろ





   まっくら





  に
 



314: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/08(金) 00:17:29.27ID:5MKc1+QZ0




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「智絵里ちゃん、跡形もなくなったね」

「倒しちゃった?」

「......きっと、スタミナ...なくなった...」

「凛お姉さんはまだ生き残ってるみたいです~」

「しかし、あずきさんまで巻き込んでしまいましたね...」



圧倒的戦力差




ただでさえ強力な大型生物が、卯月による能力強化により翼をも有するに至った存在

本来空中戦を想定されていたそれの、地上戦にみせた戦果に五体のボットが感嘆じみた声を漏らす



卯月(ボット)「でも仁奈ちゃんがいなくなったのは残念だったね」

未央(ボット)「でもくよくよしてられないよ!」

雪美(ボット)「...卯月...次にやること...わかる?」


ボットは状況を学習する、そして最善手を打つ


卯月(ボット)「うん、それは大丈夫、もう出来てるから」

翠(ボット)「しかし、これで私たちの決め手はあのヒョウくんだけになるんですね...」

未央(ボット)「大丈夫だって!小春ちゃんをあたし達でガードしている限りここに攻め込まれることはないんだから!」

島村卯月、他人の能力を強化する能力者、なんの気も衒わない普通にして万能の能力

ミツボシ効果の星型を増加させるために、

黒猫電話の精度を向上させるために、

聖獣ヒョウくんの翼を生やすために、

着こなせる着ぐるみの重量制限を突破するために

融通が効かない代わりに有無を言わせぬ強制力を有した能力の持ち主である翠を除いて、そのポテンシャルは今まで他のメンバーに均等に分割した上で発揮されていた


そしてその一角が崩れた今、


小春(ボット)「じゃあ卯月お姉さん、ヒョウくんをお願いします~」

卯月(ボット)「うんっ!」



能力を再調整し、そして再始動する動作が卯月の電脳で処理される





315: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/08(金) 00:18:31.57ID:5MKc1+QZ0




ドクン



仁奈に回されていた分がそのままヒョウくんを強化する力に、そして翼竜の強さは倍加する



ヒョウくん「...............」



ドクン




小春()「わあ~!ヒョウくんかっこいいです~!」






ドクンッ!




道路いっぱいに血管の透けた爬虫類の翼が広がる



四車線でもその幅は足りず、翼の先がガラスを押し割る


地面に着陸すると同時に体重でアスファルトが足跡型にクレーターを作る



尻尾をひと振り。その動きでだけで旋風がびゅうびゅうと空気を唸らせる



緑の肌は鎧のように金属的な、それでいて有機的な滑りを帯びた輝きをたたえる




体長 15m 体重 推定80キロ 開翼長 20m越え



巨体に見合わぬ軽量化されたボディ、そして大きな翼



それが




動いた




次の狙いは渋谷凛


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



316: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/08(金) 00:19:32.45ID:5MKc1+QZ0





地面が振動している




まるで横たえた頭を跳ね上げようとするみたいに激しい揺さぶりに即頭部が痛い


でもそれ以上に全身がだるい、骨をまるごと引っこ抜かれたように力が入らない




90度傾いた世界の中、背中から大きな翼を生やした...恐竜?

それが地面を走ってくるのが見える。尖った爪が地面を粉々にして粉塵を巻き上げ地鳴りを生む

起き上がる力はない、自分の耳を触る、柔らかい耳たぶに硬質な感触、ここに来たとき最初につけていたピアス




それを引きちぎる




金具が曲がったような気がするけど大して痛みもなく耳からピアスが外れる

近くにはひしゃげた黒い箱、さっきの衝撃で箱はダメになったけど中身は無事みたい

凹んで歪んだ蓋の隙間から蒼色の、蒼い石のピアスを両手につまみ取る



もうなにも聞こえない、地鳴り以外は

もう何も見えない、爬虫類の巨大な足の裏以外は



指先で金具を外す、ピアスの尖ったピンの部分が日光を反射している



そして耳に突き刺した



「____これで」






「能力とかが使えるんだっ...け__」



ゲーム開始59分経過

渋谷凛

VS

本田未央(ボット)&島村卯月(ボット)&水野翠(ボット)
&佐城雪美(ボット)&古賀小春(ボット)

継続中



317: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/08(金) 00:20:52.72ID:5MKc1+QZ0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~














「......えぐっ......ぐすっ...」








赤い空 緑の大地 




「......結局...すんっ...グスッ...つ、ちゃった」




緑を彩るのは野草





「......使っちゃった......能力...」



その全てはクローバー




「......う、うあああん...ぐしゅ...」




四葉のクローバーの装飾が施された扉

薄く戸が開かれたその下にうずくまり






「もう、こっ...こんなところには......誰もいれないって、ぐすっ、決めた、のに...」





たった一人の世界で緒方智絵里は悔い続ける



雲一つない、風もない平野でクローバーは静かにさざめく



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



318: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/08(金) 00:22:19.86ID:5MKc1+QZ0
























00:00:59:00.00




































00:00:59:01.01




















319: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/08(金) 00:23:52.34ID:5MKc1+QZ0



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



日の当たらない路地裏を二つの影が横切る




___きっとそれは『夜』のことだろうね___




マキノ(ボット)「どうして、ああいう大事なことを黙っていたのかしらあの子は......!」

戦力外たちの宴の創立メンバーの一人、二宮飛鳥の話した情報を反芻しながらマキノはひとりごちる

愛海(ボット)「うーん、でもあたしの持ってきた話と組み合わせて初めて意味が分かる感じだったし」

狭い通路を一列になるようにマキノを先導する愛海がフォローする




___愛海の言う動けないボットたち、能力のせいでそれが枷になっているというのなら間違いないだろうね___




マキノ(ボット)「何より度し難いのは、ボット間に情報格差が生じているという事実...諜報活動が聞いて呆れるわ」

愛海「そうだねーおかげであたしもあちこち走り回ったし」

マキノ(ボット)「で、愛海さん。その廃墟とやらはこの先でいいのよね?」

愛海(ボット)「うんっ、この通りを抜けて街外れに出たら見えてくるはず」



八神マキノ、棟方愛海の二人は今、高森藍子らのいる街外れの廃墟を目指し走っていた


ほとんど戦闘力を持たないため通る道はどうしても目立たない小道になっているが、それでもかなりの速さだ


さらにマキノは生身だ。


能力による分身は偵察には向けど、移動能力は皆無なため他のボットをスカウトしたようにこうして直々に出向いている


愛海(ボット)「一時間で外出が解禁されること、あの三人は知ってるのかなぁ...」

マキノ(ボット)「知らなかった場合、それを教えることも含めていまこうして走っているんでしょう。おそらく、この戦争ごっこ開始から一時間が経つまで猶予はないわ」



愛海(ボット)「それにしても飛鳥の能力ってすごいね、おかげであたしの抱えてた問題解決しちゃったし!」

マキノ(ボット)「せっかく手に入れた情報も話そうとしなければ無意味ね。でも、あとで本人にもそう言ってあげなさい」




320: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/08(金) 00:24:58.05ID:5MKc1+QZ0


飛鳥は語った。事の全貌を



___『夜』というのは所謂、エコノミーモードのことだそうだよ___



___この世界を構成する要素の一部、光とその反射を極端に制限する。そしてこの街が暗くなるから『夜』なんだ___



___仮想の中で電気代を節約したところで何も変わらない?確かにそうだね___



___でもよく考えてご覧よ愛海。僕らがこの空間を認識できるのはまず視覚センサーのおかげで、そして視覚は光を捉えるものだ___



___逆に言えばこの世界は常に僕らに大容量の視覚情報を光という存在を通して送り続けていることになる___



___例えばボクが手元にあるボールを投げるとしよう、するとこの世界はそのボール一つの動きに対し重力や空気抵抗、そしてそれを見るボクらの目に届く光の動きまで演算しなければならない___



___マキノさんは高校生だからもう物理は習っているだろう?放物線運動の式だよ、えっとh=vt-1/2gt^2、とかそんなのだよね、中二だからよく知らないんだ___



___とにかくボール一つでこれだ。だから何人もの人間が好き勝手動き回るこの状況は世界にとって、そう、終わらない計算問題のようなものらしいんだ___



___それに例え誰もいなくてもビルの壁に反射する日光や風向きの変化は絶えず起こっているしね___


___そこで『夜』だよ。光を絞ることで世界への負荷を減らすのさ___



___ここで愛海の話とつながってくるんだけどわかるかい?___



___おそらくその三人の能力はこの世界にかかる負荷が大きすぎるんだ___



___残念ながらボクの想像力ではそれがどんな能力かはわからないけどね___



___だから他の負荷が軽くなる夜まで、行動を制限されているのさ___




___えっ、その夜がいつ始まるかって?確か僕が盗み聞いた限りでは___






321: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/08(金) 00:26:07.36ID:5MKc1+QZ0



愛海(ボット)「この仮想世界って時計ないんだけど、一時間ってもう経ってるんじゃないかな!」

マキノ(ボット)「まだ空は明るいわよ。____それに愛海さん、気づいているかしら」

愛海(ボット)「何が?」

マキノが神妙な様子で愛海に声をかける、二人の速度は変わらない、狭い通路に声が反響する



「この仮想現実にはないのよ___太陽が」



愛海(ボット)「へっ?」

思わず上を見上げる



しかし路地裏から見上げる空は狭いが、確かに太陽は見えない。



愛海(ボット)「そういやそうだね。じゃあなんで今こんなに明るいんだろ?」

マキノ(ボット)「さあね、調査が必要なのは確かだわ。」

「それに......太陽のない世界における『夜』というのは、どういう定義なのかしらね?」

愛海(ボット)「う~ん...」



そうこうしている間に二人の足元に路地裏の終わりから光が注がれる。



愛海(ボット)「あっ!あれだよ!あのビルの向こうに見えてるボロっちいやつ!」

愛海が警戒もなく声を上げる、マキノはそれを窘めない

マキノ(ボット)「わかったわ」



その体が透け始める、肌や衣類を透過して背景が見える。彼女の能力が発動しようとしているのだ



マキノ(ボット)「私は先に行くから後からいらっしゃい」

愛海(ボット)「いきなり言って大丈夫?」

マキノ(ボット)「ボット同士で問題なんて起こらないでしょう」

「それに私は能力発動中は相手に干渉できないけれど、逆に相手からも干渉されないから何も起きようがないわ」



マキノが足元から順に消え始める、目標の座標に転移しようとしていた。そして電子の幽霊が跳ぶ



愛海(ボット)「あ、いっちゃった......」

「あたしも急ごうっと、ほたるちゃんたち、まだプレイヤーのこととか全然知らなさそうだしねー」

そのあとを追い、二人目も廃墟に向け走り始めた


  そして



322: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/08(金) 00:27:10.33ID:5MKc1+QZ0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~













飛鳥(ボット)「これで良かったのさ」







「こうすればボットは勝てるんだろう?」




「本当ならボクも一緒に行くのが正しいんだろうね」



こずえ(ボット)「.........あすかー?」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
















のあ(ボット)「......動いた」



「......乃々、あなたの言う通りだったのね」



「でも、こんなもの。認めないわ」






~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



323: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/08(金) 00:29:02.90ID:5MKc1+QZ0






飛鳥(ボット)「マキノさんも、愛海も、考えれてみればそうなる可能性があるくらいはわかるじゃないか」


「ほたるや聖、藍子さんにとっては」








「他のボットがいなくなった方が能力を使いやすいって可能性が」







「だから、これが世界の出した最善策、ボットの正解なんだろうね」



「___だったらボクは徹底的に世界に抵抗してやるさ」
























ゲーム開始60経過


『夜』を開始します


八神マキノ(ボット) 消失

棟方愛海(ボット) 消失



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



324: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/08(金) 00:32:07.79ID:5MKc1+QZ0



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

今日はここまで

飛鳥ちゃんの説明が分かりにくいと感じたら「世界」の部分を「サーバー」「メモリ」「マザーコンピューター」とかに置き換えて読んでください


次回開始するチャプターを選択してください
安価下

1、輿水幸子&白坂小梅&星輝子&小関麗奈&大和亜季

2、双葉杏&諸星きらり&堀裕子

3、早坂美玲&神崎蘭子&十時愛梨

4、神谷奈緒&北条加蓮&佐久間まゆ&小日向美穂&三好紗南



325:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/08/08(金) 00:33:09.07 ID:bXzo5jpDO

4



326: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/09(土) 00:01:19.36ID:Xg8VdY5e0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
神谷奈緒&北条加蓮&佐久間まゆ&小日向美穂&三好紗南




三好紗南には今、二つの景色が見えている



「にゃぁぁぁぁぁあーはっはは~!!」

「ひゃあぅ!?」



一つは荒廃した住宅街、今彼女が置かれている状況そのもの



もう一つは



紗南「(ああもうどうなってんの!?他の戦車は!?)」



車載カメラの映像とでも言えばいいのだろうか、それはゲーム画面を通して見える風景だった

彼女の能力は現在、ゲーム機を通じてこの仮想世界のどこかにある戦車とリンクしていた



だが、つながっているだけで動かない。主導権が何か別のものに奪われているようなのだ



紗南「んもうっ!他のとはアンテナ立たないし!この一台だけが頼りなーのーにー!」


美穂「あの...紗南ちゃん?」



紗南の隣に置かれたぬいぐるみが恐る恐るといった風に声をかける。それは能力を発動した美穂本人だ

美穂「みくちゃんの動きが早すぎてもうどうしようもないよ?」

紗南「う~ん...動きの速い敵には範囲攻撃がベターなんだけどねぇ、それも難しそう...」



ぬいぐるみに化けたおかげで一度は致命傷を避けた美穂だったが、それも能力でぬいぐるみになったと見抜かれるまでの一時凌ぎにしかならなかった





327: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/09(土) 00:03:12.24ID:Xg8VdY5e0




だからこうして、二人揃って小さな瓦礫の隙間を縫うようにみくの猛攻から逃げ回っている


みく(ボット)「むぅ...逃げ回られると猫だから追いかけたくなっちゃうのにゃ」


あたりを見渡せる高所に、不安定な足場にも関わらず猫のようにしなやかに着地し、周りを睥睨する


紗南「ぬぬぬ...戦車の主導権さえこっちが握れば自動照準で焼け野原にできるのに~!」


美穂「焼け野原!?」





反撃の目は、まだ出ない




______________

 小日向美穂+ 65/100


______________
______________

 三好紗南+  50/100


______________




ゲーム開始58分経過

小日向美穂&三好紗南VS前川みく(ボット)

継続中


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



328: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/09(土) 00:04:04.38ID:Xg8VdY5e0



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



ガタンガタンガタタタン



「はいよーはいよー進めや進めー、っと」

「この乗り物、すっごく揺れるにぃ」

「そうですか?私、気になりませんっ!」



ガタコンガタコンガタコン




数キロ先の戦場の喧騒を何も知らないような風で、その戦車は呑気に行進していた



杏「裕子ちゃん、飴もってない?」

裕子「飴?そんなものあるんですかね?」

杏「うん、きらりがちょっと前にくれたんだよね」

裕子「そうなんですか」

きらり「そうだゆ!」



操作方法が簡易化されているため戦車の中には二、三本のレバーとブレーキペダルらしきものしかないとはいえそこはあまり広いとは言えない



幸い杏がかなり小柄なためそれほど窮屈している様子はない。



杏「しかしラッキーだったねきらり。戦車で移動なんて。これもうこのゲーム楽勝でしょ」

きらり「で、でもでも~何が起こるかわかんないゆ?またよくわかんないのが、えとえと...うや~って」

裕子「ふふっ!ご安心を!何があろうと私のさいきっくが一捻りですよ!」

杏「あー......これは不安だわ」


ガタタンガタタン



車一つ通らない道をキャタピラがのんびりなぞっていく




329: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/09(土) 00:05:02.69ID:Xg8VdY5e0





杏「___ところでさ、このゲームの終わりってなんだろうね」

きらり「終わり...にゅ?えとえとー...ぼっとってゆーのをみんなエイヤーってやっつけるんだゆ?」

裕子「確か私たちが最初にあったのがボットでしたよね、他にもたくさんいるんでしょうか」

杏「まー、いるんだろうけど、全然会わないよね。そのほうがいいんだけどね」

裕子「プレイヤーが18人ということはボットとやらも同じ数なんじゃないですかね、あっと...でもそれだと私たちの偽物だけで18人になってしまいますし...」

きらり「きらりは杏ちゃんといるときに一人しかあってないゆ」

杏「杏はベンチで昼寝してた時に愛海のボットを見たねー」

「この街の広さはわからないけど、まあそれなりの人数いるんだろうね...はぁめんどくさ」

裕子「ううむ、全員倒すにも情報が少なすぎますね!あぁっと、方向転換しますよ、気をつけて」

運転席にいた裕子が手元のレバーの傾きを変える。戦車内の部屋が振動し、それが進行方向の変化を乗り手に伝える

杏「おっとと...」

きらり「ところで裕子ちゃん、きらりたち、どこに行くんだにぃ?」

裕子「あぁ、はい」


きらりの膝にいた杏が体勢を直す。きらりの問いかけに裕子が振り返る


裕子「さいきっく自分ダウジングで決めた方向ですよ!」

きらり「にう?」

杏「おい」

裕子「? これもサイキックパワーですよ?」



こともなげに言い放たれた方針。だがそれは、

杏「あてずっぽうじゃんか!?」

裕子「いえいえ!サイキックパワーですって!」

杏「いやいやいや...一旦止まってよホント!ボットの連中に会っちゃうフラグじゃん!」

裕子「さいきっく却下!」



面倒なことが起きそうな予感を察した杏と自信満々に操縦桿を握る裕子がぎゃーぎゃーと言い合う




きらり「きらりも心配だにい...」

それを見てきらりがぼそりと不安をこぼすと同時に、




ガクンッ!



330: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/09(土) 00:06:13.14ID:Xg8VdY5e0




「ふわっ!?」「にっ?」「言ってるそばから!?」



車内が急激に傾き、杏が転げ落ちそうになる、高低差の急変に運転席の裕子が椅子から飛び上がる

そのままぎりぎりと床の勾配が増加していく。座り込んだきらりが杏とともに壁際に滑り出す。



裕子「なんですかなんで、すか...」


慌てて車載カメラ越しに外の様子を確認した。そして事態を把握する



ぎぎぎぎぎぎ...



裕子「下の車道に移る、歩行者用の階段に踏み込んじゃったみたいですねっ!」



杏「じゃあ早くバックしてよ!?」




ついにきらりの膝からこぼれ落ちた杏が無我夢中で操縦桿にかじりつく



杏「むぎぎぎ!固っ!!きらりも手伝っ...」


ガクンッ! 


キャタピラが階段を一段踏み外す


杏「のわっ!?」

きらり「杏ちゃん!アブナイに!」


安定しない足場できらりが杏のもとに這い寄る



331: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/09(土) 00:07:07.35ID:Xg8VdY5e0







裕子「おっとと」



天地の傾いた車内の中、裕子は腕一本で体重を支えていた




裕子「杏さん杏さん、こういう時は一回エンジンを止めてキャタピラをロックしちゃえばいいのです」

杏「はぁっ!?」


そのまま、もう片方の手をひょいと伸ばしてレバーのそばにあったスイッチをひねった

ゴゴン...


簡易化された操作性によりエンジン停止がサイドブレーキのような役割とも兼任されていたのか、車体の傾きが止まる


傾いたまま床が停止する。どうやら窮地を脱したらしい


きらり「よかったにい~杏ちゃぁん...」

杏「あぁもう、ロクでもないったらありゃしない」

裕子「?」

杏「なぜそこで不思議そうに小首をかしげる!?」










______________

 双葉杏+  59/200
   


______________

______________

 諸星きらり 59/200



______________

______________

堀裕子+   90/100



______________





ゲーム開始58分経過

報告事項なし



332: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/09(土) 00:09:04.46ID:Xg8VdY5e0


道路の横から細く伸びる階段

本来歩行者が使用するはずのそこへ乗り出した1台のタンクボット、戦車

戦車は停止している

戦車は停止している

戦車は停止している

戦車は停止していた



杏「え?」




きらり「んに?」



裕子「はい?」




突如、駆動音を漏らし、砲塔が動き出す


そして機械音を立てて砲弾が自動装填される


そしてどこか遠くへ狙いを定める


そして



















紗南「繋がった___!!!」



エンジンが切られ、主導権をなくした戦車は容易く外部入力で操作された


轟音

破壊をもたらすそれが立て続けに響いた

何発も何発も何発も

狙いは


前川みく



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



336: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/10(日) 00:39:27.86ID:5lAhtCf50


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
北条加蓮&神谷奈緒



攻撃は最大の防御というのなら今の村上巴がそれだ




ドガァン!!!




奈緒「のわぁ!?」

また一つ、バリケード代わりの瓦礫が粉塵に帰す

加蓮「う~ん...」



何度目かわからない遁走、次第に逃げ込める場所も減ってきている。そんなジリ貧状態のさなか加蓮は思考を巡らす

降り注ぐ粉塵を防ぎつつ二人揃って走り出す



加蓮「確かに映画とかで見るピストルとは比べ物にならない威力なんだけど...無限に上がり続けてるわけじゃないんだね...」

奈緒「お前、意外と余裕!?」



小岩の影に転がり込む、既に巴からは20メートル近く距離がある、拳銃があるとは言え二人の腕では命中させることは難しいだろう


巴(ボット)「つーまーらーんー...」

だがその距離は巴には意味がない。ジャンパーからマガジンを取り出し、小さな手のひらで問題なく弾のリロードを終えると、そのまま流れるような動作で腕を伸ばし、発砲



「のぉ!!」

伸ばした腕の先、着弾点がまとめて吹き飛ぶ。照準も何もない範囲攻撃に二人はまたも逃走を強いられる

加蓮「っ!...いったいなぁ。でも、さっきから攻撃がワンパターンになってる。やpっぱりあの銃もこれ以上は威力が上がらないのかな?」

奈緒「っだ、だとしてもこっちの攻撃を先読みされたらっ、意味ねえだろ!」

加蓮「そうだよね。でも、今思えば...」

巴(ボット)「何をコソコソ話しとるんじゃ!」

追撃、さらに一発の弾丸が撃ち込まれる。それは二人から少し外れた地面に命中した



それでも衝撃で石礫が飛散する。



加蓮「きゃぁっ!!」

奈緒「あっぶねええ!!!」




思わず顔をかばった手のひらに大粒の石片が食い込む。




337: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/10(日) 00:40:48.50ID:5lAhtCf50


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



頬がチクチクする。いつの間にか地面に倒れていた。近くには奈緒がいる


さすが年上というか、アタシと違って既に立ち上がっている。



奈緒「加蓮、早く起きろ...」

その言葉はあたしの方を見ないままかけられた。奈緒の目線はずっと向こうを見ている


奈緒「巴の奴がしびれを切らしやがった...」



その視線に沿って首を動かす。


瓦礫と砂利の海の向こうの人影が見える



奈緒「こっち来てんぞ、おい...」



鎖が巻き付いたせいで、右腕だけが太くなったような異様なシルエット



巴が足元の石を踏み分けながらこっちに来る。



加蓮「これマズイって...」

奈緒「だから言ってんだろ。ほら、早く立てって」

加蓮「うん...でもどうしよう、まだ能力の謎、解けてないのに」

奈緒「こだわりすぎだろ...」



ジャリッ!



高く、砂利を踏みつける音が鳴る。巴はすぐそばまで来ていた。



巴(ボット)「おうおうおう、割と元気そうやないけぇ!」


致死級の小型兵器を片手に、二人のプレイヤー相手に泰然自若を崩さない






338: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/10(日) 00:41:36.83ID:5lAhtCf50



加蓮「ッ!」

巴(ボット)「こっちも真面目にやっとったのに、応えてないとちょい凹むの」


ざらり


鎖が軋み、巴が銃を構える、片手での鷹揚な構えではなくしっかりと両手でホールドされている


奈緒「てめっ...!」


思わず手に持ったオートマのグリップを握る。だが今まで巴に先読みされ続けてきた苦い経験がその腕を止める


ここで銃を抜いたら間違いなく、先に撃たれる。その確信が経験則に刻み込まれていた。おなじく加蓮も地に膝をついた態勢で中途半端に動けずにいる


彼女らは攻撃に踏み入れない。対して巴はいつでも引き金を弾ける。今はただとっさの判断で回避されないかを吟味して言えるだけの時間だ。


ボット一人に一方的に押し付けられた膠着状態。



二人は今、巴の能力の前に屈しようとしている



それももう終わる


巴(ボット)「じゃあ____」

















キイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!!!









加蓮「うるさっ!?」



339: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/10(日) 00:42:40.17ID:5lAhtCf50






それは空気を切り裂く音。それは空を驀進する音。





突如降り注いだ大音量が、巴の動作を止める



奈緒「なんだよあれ......さっきの倍以上はあるぞ」


加蓮「は?」


巴(ボット)「はっ!!また来よったんじゃのう!」



それは隕石に見えた


1、2、3............計10発の砲弾



抜けるような雲一つない青い空に黒いシルエットを転々と投射し、そしてどんどん地面に近づいてくる

奈緒「だ、誰だよ、こんな事しやがるのは...!?」

加蓮「これって...」



巴(ボット)「はん、邪魔しよってからに!!」

銃の構えを解き、巴がまだ空高くにある砲弾の雨に体を、そして銃を向ける

奈緒「なっ(隙だらけ!?)」



状況の急変。いきなり自分たちに背を向けた巴に奈緒の思考が停止する

一方、加蓮は___銃を抜いていた

この距離なら先読みも何も___ない!!






巴(ボット)「どけ」



その加蓮が横からの衝撃に吹き飛ばされる



加蓮「あっ_ぐぅ_!?」

奈緒「加蓮っ!!」

起き上がりかけたところを張り倒され、無防備に倒れ伏した加蓮に駆け寄る



ゴトンッ



340: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/10(日) 00:43:56.14ID:5lAhtCf50



奈緒「...なんだ、それ」


そして巴に視線を戻した彼女の目にまたも理解の外の出来ごとが起きる


ズズッ


巴(ボット)「......撃ち方よーし、じゃ」



それは肥大化した鎖。


手錠どころか、碇を吊り下げることさえできそうな野太い鎖が巴の上半身を覆っていた。


長さが余った分が地面に垂れ下がり、まるでアルマジロと鎖帷子を混ぜたような奇怪な風貌で。そこから伸びた細腕が狙いを空へ定める


加蓮を弾き飛ばしたのもその鎖の一端だった。


その威力はもはや鈍器に等しい



キイイイイイイイイイイイイイイイイイイイインンン!!!!!!



巴(ボット)「おどれらも邪魔じゃ!」



幾重にも巻かれた鎖がその頑強さと攻撃性を誇示し、


村上巴という一体のボットを巨大な何かに変貌させていた。


引き金に指がかかる














そして世界から音が消えた











数瞬遅れて、

それがあまりに大きすぎる発砲音による暴力的な静寂だったと知る


ドォッ___



341: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/10(日) 00:46:05.78ID:5lAhtCf50














___オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンンンンンンンンンンン!!!!!








大砲の爆音を間近で聞かされたようなものだ。


二人は耳を抑えるが、音どころか衝撃波が巴の周囲2メートルをクレーターにする勢いで吹き払う


わずかに遅れて空から爆発音。


空から舞い降りようとしていた砲弾のいくつかが今ので空中爆散した。





巴(ボット)「全部まとめては無理けぇの。ま、いいわこっち向いとったのは逸れたじゃろ」

銃を下ろすと同時に鎖が収縮し、分厚く巻かれた鎖の鎧の中から巴の赤髪が覗く


銃弾が空中で砲弾と衝突することで起きた大爆発はほとんどの砲弾の軌道を捻じ曲げ、


結果として奈緒と加蓮は累を逃れていた


巴(ボット)「さぁ、やろか......い?」




その二人は消えていた。空へ向けていた姿勢を戻した巴の前から忽然と、


巴(ボット)「今の見て尻尾巻いた言うんか...イラつかせよんのぉ!!」


だが、怒り心頭といった言葉と裏腹にボットは索敵を開始していた

______________

 神谷奈緒  39/200


______________
______________

 北条加蓮  39/200


______________

ゲーム開始58分経過

北条加蓮&神谷奈緒VS村上巴(ボット)

継続中



342: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/10(日) 00:46:59.56ID:5lAhtCf50



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~





「___おい、こんなとこ隠れても長くはもたねえぞ...?」

「奈緒、声大きい」

「お、おう。でもどうすんだ?お前の予想大外れじゃねえか、なんだよあの必殺ゲージ三本消費したみてえな大技はさぁ...」



「ねぇねぇ奈緒?」

「あん?なんだ加蓮、その声」


「あんたさ、最初、ここに連れてこられるまでは巴に攻撃されなかったんだよね」


「ん?...おう、まあ色々言われたり脅されたりしたし、撃たれかけもしたが基本、何もされてねえな」


「うんうん...そっか、あははっ」

「何笑ってんだお前」




「ふふっ.........わかっちゃった」

「は?」



「やっぱり能力は一つだけだったみたい」

「それって...」






「巴の能力、解けたよ」






345: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/11(月) 00:22:19.53ID:k+4SyoVC0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
小日向美穂&三好紗南



高峯のあの能力による物体の操作は無制限に、無秩序にいつでもどこでも行えるというものでもない


そもそも建造物でできた腕も遠隔操作できる感覚器官も能力の応用によるものであって、そしてそれらも事前に物質がのあの支配下に置かれたことで出来る芸当だ


支配下にして一体化、全にして一の能力。例えば一度手に触れるか、データ上の肉体の一部を溶け込ませることが彼女にとっての条件である


そうして彼女はそこにいる一個体でありながら仮想世界に浸透する”全”にもなりうる。そう言う意味では、この住宅街全体はとっくに彼女の手のひらの上だ



すでにこの住宅街は一度、完膚なきまでに満遍なく彼女の能力に掻き混ぜられ瓦礫の海と化しているのだから。



のあ(ボット)「......どうやらさっきのも含めて紗南の仕業みたいね」


空の彼方より飛来する破壊の象徴、砲弾が巴の攻撃により一部が撃墜、残りが軌道を捻じ曲げられて数瞬の後


のあの背後の瓦礫の山、それが突如崩れさると磁石に集まる砂鉄のように一定の規則を持ってまとまり始める

それは柱を形成し始める。のあの細身をたやすく凌駕する直径の柱が螺旋状に石を砂を鉄骨を飲みこんでいく。最初の一山では飽き足らずさらに周囲のガラクタが引き寄せられ、柱を太く巻きながら上へ上へと伸びていく

やがて有機的なうねりをまとい、何かのオブジェの体を成し始めた。そのイメージは腕、モザイク状に組み上げられた巨人の腕



紗南「ラスボス巨大化フラグ...!?」

奈緒「悪魔の実の能力者かよ...」

天に掲げられた巨腕。自由の女神像が地中深くより出土したかのような光景

のあ(ボット)「流星というには」


腕の素材同士の軋轢が不協和音を発し、腕が動く。鉄骨の指が砲弾を包み込むようにキャッチした


「随分と剛気なことね...」


威力を相殺しきれなかった分が、手のひらに亀裂を生んだが、こうして村上巴と高峯のあにより紗南の砲撃は完全に封殺されてしまった


「返すわよ」


硬質な石材がしなり、軋る。弓なりになったそれが戻ると同時に砲弾は遥か彼方へ唸りを立てながら消えた





346: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/11(月) 00:23:17.58ID:k+4SyoVC0



紗南「な、なにそれ...」


一方、自失しているのは紗南だ。ほとんど必殺と言って差し支えなかった奥の手が何の手応えもなく返されてしまったのだからそれも当然だ。


美穂「...あれも、紗南ちゃんの能力だったんだ...」


同じく目の前で起きたSFアクション映画さながらの異常事態の連続に半ば言葉を失っていた美穂が紗南に向き合う

紗南「もうこれ、無理ゲーでしょ......捨て身の必殺技の効かない相手とかバグじゃん...」


ゲーム機を握る力も弱々しく垂れ下がる。


美穂「...でっでも、のあさんの目をご、誤魔化せばなんとかできるよ...!」

紗南「......できるの?...ぬいぐるみとゲーム機で?」

美穂「で、できるもんっ...!」

紗南「ガンも使えないのに?」

美穂「うっ...」

すっかりナーバスになった紗南の隣にかがみこんだ美穂が励ますもあっけなく腰を折られる

みく(ボット)「んんにゃあああ!!!美穂チャンも紗南チャンもどこいったにゃあ!」

美穂「!?」

紗南「...」


隠れ場所にしている背後の瓦礫、その向こうからきんきんと甲高い声が届く

みく(ボット)「ぬいぐるみに隠れたって無駄にゃあ!」

「今度はぬいぐるみもろとも爪とぎに使ってやるにゃ!」

美穂「...ひぇっ」

紗南「!」

凶暴な宣誓に思わずぬいぐるみを抱きすくめる。拳銃を握るのにはまだ躊躇いがある。紗南同様、彼女も彼女で何ら攻撃の手がないのだ

紗南「......ねえ美穂さん、ホントに勝てると思う?」

美穂「ぇ...?」

その隣で静かにゲーム機がリスタートされた


紗南「じゃあもう一回、試させてよ」


______________


 小日向美穂+ 65/100


______________
______________

 三好紗南+  50/100


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ゲーム開始58分経過

小日向美穂&三好紗南VS前川みく(ボット)

継続中



347: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/11(月) 00:24:34.54ID:k+4SyoVC0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

チャプター
佐久間まゆ








ガリンッ!!




まゆ「なんなんっ、ですかっ、ねぇっ、あれはっ...」



ガリンッ!! ガリンッ!!



アナスタシア(ボット)「の、のあの力、です」



ガリリッ...!!



まゆ「そうですかぁ...巴ちゃんといいのあさんといい、能力持ちの方が羨ましいです、ねっ!」



ガツンッ!!


アナスタシア(ボット)「!?」



アナスタシアの右の耳にナイフが突き立つ。




すっかり刃が損壊し、一見するとノコギリにしか見えないそれは、


まゆの手の中で凶悪な威容を醸し出していた




その上に馬乗りになったまゆは次の刃物を取り出す





二人の状況は一変していた

______________

 佐久間まゆ   60/100


______________
______________

 アナスタシア+ 60/100



______________



348: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/11(月) 00:25:52.89ID:k+4SyoVC0


佐久間まゆの武器はナイフでもまだ見ぬ能力でもなく、

その人間性、

特筆するなら「集中力」である


料理をこなし、炊事をこなし、編み物をこなす集中力

秘めた思いのために、秘めた想い人のために手練手管、試行錯誤、権謀術数をこらす集中力

それは刃物にも銃器にも能力にすら比肩する可能性をありありと内包していた


目的のためにならどこまでも思考をクリアに、なんの雑念も介在しない、させない

執着心、そう言い換えてもいいかもしれない




__戦場が停止したあの一瞬___




紗南の能力により投入された砲弾の局地的な雨の中、無力なプレイヤーが惑い、ボットが状況の把握及び対処に思考を割いた一瞬


佐久間まゆだけは不変だった。

彼女だけは戦闘から目を逸らさなかった。



そもそもボットは二転三転する状況を滞りなく把握し常に思考を止めない、そういう存在である以上あの紗南の攻撃を無視するなどできなかった

有能ゆえに変化を見逃せない。

ポテンシャルが大きいからそれを満遍なく分割し振り分けてしまう

わずかな間隙に全ての集中力をもって執着する、一局専心集中の攻撃にここで遅れを取った

これが機械と人間の差、

あくまで考えてからしか動けないボットと、考えそのものを排除して動ける人間の差だった




ガリンッ!!

まゆ「硬いですねぇ」

まゆの手に握られているのは文化包丁だった。それが氷と氷の隙間に捻じ入れられ、ぐりぐりと削り始める

その小柄な体にのしかかられたまま地に倒れたアナスタシアは必死で次の氷を生成する。

本来の氷なら刃物で削ることなどできないはずだった

だが崩れた端から継ぎ接ぎのように形取られた氷には接着が甘い箇所などいくらでもあった


ガリンッ!!


ゼロから氷を纏いなおす時間などない。まゆの前にそんな十分な猶予はない

両手で顔を覆い、そこに纏いつかせた氷が追加される端から次々と剥ぎ取られる

しかも破壊の方が早い



349: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/11(月) 00:27:44.88ID:k+4SyoVC0




アナスタシア(ボット)「ぐっくくく...同じアイドル相手に容赦のない、ことですね...」

「(のあは,,,能力を大規模に使いすぎましたし、こっちにまで手を回す余裕はなさそうですね)」


まゆ「同じアイドル、ですかぁあ?」


ガツッ


アナスタシア(ボット)「ん、うっ...!?」


氷の隙間に刃先を食い込ませ、まゆがそこに体重を乗せながら上半身を近づけていく



まゆ「まゆは確かにアーニャちゃんとは一緒にCDデビューした仲ですけどぉ...」



ピシピシと氷に入った亀裂が広がっていく、


腕力では互角でもこればかりはどうしようもない。



まゆの顔がアナスタシアの顔を覗き込む


まゆ「所詮あなたはまねっこのお人形さんですしぃ...」


ビシッ

アナスタシア(ボット)「っ!」

今、まゆからアナスタシアの顔は見えない、両腕の氷に隠されている



まゆ「まゆに言わせてもらえば......ちぃっとも似てないんですよぉ!」



バキリと音を立て氷が大きくめくれ上がる、


まゆの上半身の体重が全て乗った一撃が



アナスタシアの顔面につきこまれた







今までとは比べ物にならない鈍い音、今までと違う手応えがまゆの腕を這い上がる






350: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/11(月) 00:29:51.85ID:k+4SyoVC0

















ゴンッ







まゆ「______え?」



それは、氷の仮面だった



まゆの攻撃をいなす間、その時間稼ぎの間にゼロから作られた、100%の硬度をたたえた氷の鎧面

硬さ故に生じた衝撃が、びりびりとまゆの腕を痺れが這い上がる

アナスタシア(ボット)「そうですか」

剥がれ落ちた両腕の氷と違い、指先はまだ氷が貼り付き氷柱のトゲになっている

まゆ「っ!!?」

顔面で攻撃を受けたことにより、アナスタシアの両手は既に自由を得ている、



そして、氷柱がまゆの首に突き立てられた


それがこの世界での死であろうとも


彼女に痛みは訪れなかった


痛みのないまま___









______________

 佐久間まゆ    0/100


______________

ゲーム開始58分経過

佐久間まゆVSアナスタシア(ボット)

勝者:アナスタシア(ボット)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



356: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/12(火) 00:13:13.86ID:jlUZGChq0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
北条加蓮&神谷奈緒



のあ(ボット)「これもまた...星の巡り合わせ、だったのね」



一人のプレイヤーが虚空に溶けていく。その光景を静かに見つめ言葉を漏らす

そのあとゆっくりと周りを見渡す。

遥か先まで荒廃した地に潜んでいるプレイヤーは四人


のあ(ボット)「死線を共にした盟友の敗退、その否応ない波紋を彼女たちは受け流すのかしら、それとも受け止めるのかしら...?」

アナスタシア(ボット)「アー......どうなのでしょう、ボットにはわかりかねます...ね」


その隣にたった今死闘を終えたばかりのアナスタシアが涼しい顔で並ぶ。

氷の仮面をまとった姿は実際は涼しいどころか冷たいのだろうが


アナスタシア(ボット)「...それにしてものあ、あなたの言った通りでしたね。レッスン、効果がありました」


のあ(ボット)「......美玲のことね」


アナスタシア(ボット)「ダー、勝ち負けに関係なく、美玲との戦闘を経験することで能力が......アー、洗練、されていたのが、わかりました」


のあ(ボット)「そう、アーニャ......次はどうするのかしら?」


アナスタシア(ボット)「アー、次、ですか...」



二人は視線を巡らすとその姿を認めた

それは混沌としていた戦場の片隅にあって不遜に仁王立ちする影、村上巴



のあ(ボット)「あなたが加蓮や奈緒とも戦うというのなら...」



「私があの子を”取り除い”てもいいわよ...?」






357: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/12(火) 00:14:27.83ID:jlUZGChq0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


巴(ボット)「...向こうが一歩先んじよったのう」

「うちの相手も、もうちぃとばかしガっついてくれたらやり易いんじゃが...」


さっきまでの威容から元に戻り右腕だけに細く長く鎖の巻き付いた姿で、崩れた足場を歩きまわっている

じゃらんじゃらんと腕の動きに合わせて鎖が鳴る。


巴(ボット)「..................」


警戒心もそこそこに足を止める。巻きついた鎖が少し太くなっていた


巴(ボット)「......(来るか?)」


右腕をまっすぐ伸ばし、周囲に向かってゆっくりと回していく、360°全方位を警戒するように体ごとゆっくりと回っていく


じゃらり、じゃらり、じゃらり


巴(ボット)「............」


じゃらり、じゃらり、






ぎちっ


巴(ボット)「そこかぁ!!!」


拳銃を振り下ろす、同時に引き金が引かれ銃弾が飛び出す


銃口が向けられたのは、巴の足元。

彼女は地面めがけて貴重なはずの銃弾を躊躇いなく発射していた。


ぎちちっ


いつの間にか鎖から蛇のように太くなっていた鎖が巴の腕と肩を固定し、

彼女の細い体に去来する反作用を押さえ込んでいる

ボゴンと巴の両足の間に小規模のクレーターが発生するが、

巴にそこにいた”何か”を吟味する暇はない

すかさず上体を捻るようにして真後ろに突如出現した”何者か”に発砲、返す刀で腕から伸びた鎖を別方向にいた”それ”に叩きつける





358: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/12(火) 00:16:51.62ID:jlUZGChq0



巴(ボット)「何や気色の悪い,,,」


頭や腹らしき部位に大穴を開けて”それ”が倒れ伏す。それは全くもって奇妙な物体だった


石ころや金属片をまとめ、それをワイヤーや鉄骨で無理やり人の形に縛り上げたような無骨で不気味なヒトガタ


指もなく目鼻のようなものもない。

酸性雨で風化しつくした銅像の方がまだ人間味がありそうな”何か”が巴の前後に二体。

おそらくは最初の一発を打ち込まれた巴の足元にも一体いただろうから計三体だろう


巴(ボット)「これは、どういうつもりかのう...」


「のあの姉さん」


眼光鋭く視線を向けた先には二つの影、アナスタシアと高峯のあ。

巴の視線はその後者に注がれていた


副次的とはいえ物質の操作と再構成を司ることさえ可能な能力者


のあ(ボット)「私は自身の宣言をたがえたつもりはないわ......言ったはずよ、貴方も私たちの糧であると...」


そう言ってパチリと指を鳴らす




それだけで状況は零から一へ、無から有へと変化した


ゴゴンッ!ゴバァッ!


地平線の果てのビルディングを除いて何もないかに見えた光景、それが急変する



「◇■◆△~(▲▼◇)▽!!!」
「□◇ッ□◇◆◇ッ◆△◆△▲ッ▼▽!!!」 
「▼■ーー▽◇!!!」
「■□◇◆△▲▼▽~~~!!!」
「■△~▲□__▼▽◆ー!!!」

おおよそ言語化できる範囲を超えた大音声があちこちから連続して立ち上る。鎖の音どころか銃声を打ち消された

悲鳴にも雄叫びにも聞こえるそれは声ではない。石と金属が唸りをあげ、軋みあい、擦れ合う音だ。

先ほどの土塊と鉄片の編み人形が五体。それぞれの足らしき部位を二本、よろよろと動かしながら巴のもとに近づいてくる

その姿は醜悪の一言、ひび割れたレンガを人の形に積み上げただけに見えるもの。太い木の枝に鉄骨をくっつけただけのもの。鉄条網を無茶苦茶に丸めて辛うじて人型に体裁を整えたものなど到底自走できそうな人形には見えないが、それでも確実に動いていた

強いて例えるなら「物体のゾンビ」の行進。捨てられた玩具が元の持ち主への復讐へ訪れたような悪趣味な光景が巴を包囲する

巴(ボット)「...ほっほ~う、逃げよったプレイヤーのあほんだら探す前の肩慣らし___」




ゴドンッッ!!







「__にもならんわ」



359: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/12(火) 00:17:42.51ID:jlUZGChq0




鈍重な音を立て鎖が巴の体を包むほど大きくなり、その一瞬の後




放たれた銃弾は一発


アナスタシア(ボット)「___!?」



のあ(ボット)「__っ」



それが巴の前方の三体のヒトガタをまとめて粉砕し、



背後にいた二体も衝撃はだけで崩壊させると






高峯のあの上半身を吹き飛ばした



360: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/12(火) 00:18:53.73ID:jlUZGChq0



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~





加蓮「なに、仲間割れ...?」


奈緒「いやそれどころじゃねぇって!なんだよ巴のやつ、のあさん倒しちまったぞ!?」


バリケードと鳴る瓦礫があらかた吹き飛ばされた巴の周辺。


奈緒と加蓮は瓦礫の後ろではなく、その下にいる。


のあにより崩された数多の瓦礫と地面のわずかな隙間に身を潜め、

何かの拍子に天井代わりのコンクリの塊が崩れないことに賭けて身を隠していた


加蓮「んー、ちがうくない?」

二人はそのわずかな隙間から、のあが腰から下だけの姿に成り果てた様子の一部始終をのぞき見ていたところだ

奈緒「違うって...」



加蓮「ほら見て、のあさん自己再生してる」


奈緒「それはそれで怖いわ...ってマジじゃねえか!?」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



361: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/12(火) 00:20:10.28ID:jlUZGChq0


石材や鉄材、果てはただの土さえもピースに見立てたパズルを解くように高峯のあの上半身が「積み上げられていく」

やがてその表面が液体のように波だったかと思うと皮膚や髪、衣類の質感まで完全に再現した高峯のあが現出した


巴(ボット)「...えっぐいのお、おどれ」


元の細さに戻った鎖を持て余すように腕を振りながら巴が苦い顔をする。

大威力にもかかわらず手応えがなかったのが気に入らなさそうだ


のあ(ボット)「■◇△...そうかしら?私たちは所詮は実体を持たない人形、0と1の傀儡、目に見えるものなど意味をなさないわ」

アナスタシア(ボット)「ニェート、のあ......こちらとしてもさすがに見てて、クるものがあります...」

のあ(ボット)「えっ」



物体との一体化、それは突き詰めればのあ自身もまた物体に過ぎないということだ。

そして物体を人形に出来るのなら、人形である自身を物体として扱うことも彼女に限定すれば可能だった


しかし、これは無限に使えるやり方ではない。

ただこの住宅街の至る所に「高峯のあ」の一部が混ざり込んでいるからこそガラクタ類を自分の部品にできただけのこと。

無論そこまで種明かしをするつもりは毛頭ないが




巴(ボット)「なんじゃ、やっぱうちの獲物をぶんどろういう魂胆け?」



のあ(ボット)「...それだけでもない、かしら?」


アナスタシア(ボット)「ダー......巴とも戦ってみたい、です...私はまだ、レッスンしたりません」



362: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/12(火) 00:21:16.77ID:jlUZGChq0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



奈緒「しっかし、あれだな...のあさんの未来からきたアンドロイド疑惑がさらに強まったな」

加蓮「何言ってるの?アタシの説明聞いてた」


奈緒「聞いたけど、まだちょっと半信半疑だぜ。確かにパッションっぽい感じだけど、巴はそんなシンプルな能力なのか?」


加蓮「間違いないって、奈緒の話を聞いて、のあさんとのさっきのバトルを見て確信した。」


「それにシンプルだけに境界線の見極めがすごく難しいんだからね?そこんとこわかってる?」


奈緒「わかってるよ、...でもちょっとワクワクしてきたな。ここに凛もいりゃさらに良かったんだが」


加蓮「...巴を倒して、ここを生き延びたら凛のこと探しに行こっか」


奈緒「......そ、そうだな...(言えねえ、そのセリフに死亡フラグがビンビンに立ってるとか言えねえ...!)」


そして加蓮は奈緒にオートマを手渡す。

幾分軽く感じられるそれを奈緒は片手で受け取った


加蓮「じゃあはい、任せたよ」

奈緒「おう、お前を信じるぞ」

その短いやり取りで心構えは完了する。

二人の間にまどろっこしい能書きはいらない




こうして二人の進退、ひいては生死を賭けた「とっておきの仕掛け」が作動をはじめた





ゲーム開始59分経過

北条加蓮&神谷奈緒

VS

村上巴(ボット)

VS

高峯のあ(ボット)&アナスタシア(ボット)

開始

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



366: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/13(水) 00:29:27.46ID:QW+Val6U0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
小日向美穂&三好紗南


みく(ボット)「にゃんだか、あっちはあっちで楽しそうにやってるにゃあ...」


「紗南チャンもそう思わないかにゃあ?」


紗南「いーや全然!ゲームバランスがなっちゃいないから見てられないよ」


しっぽを振りながら瓦礫の山の上に仁王立ちする小柄な少女と相対する

二人の距離は5メートルといったところ、みくの能力の恩恵である動物的な身体能力ならその程度の距離はなんら問題ではないのだが、かといって無謀に飛び掛ったりはしない。

紗南「......」


ハーフパンツのポケットからゲーム機が覗いている、空いた手は銃に添えられみくに照準を合わせている


みく(ボット)「当ったるっかにゃ~?当ったるっかにゃ~?」

みくが体を揺らしながら挑発する。まるで5メートルという距離なら反射神経で銃弾など回避できるとでもいうように

紗南「当てるよ__あたしが、いや」

みく(ボット)「にゃ?」

紗南の表情はあくまで不遜不敵、そのまま静かに続ける


「__みくちゃんは、あたしたちが撃つ」


その言葉を合図に、みくの背中側のがれきにまで近づいていたぬいぐるみが起き上がる。

美穂「...うぅ、できるかな、できるよね」

その腕にはふわふわの体と正反対な重厚な拳銃が抱き込まれていた

紗南と交わした先ほどの打ち合わせを思い出す。

_紗南『まず美穂さんはぬいぐるみモードでみくちゃんの後ろまで回り込んで攻撃して』_

体躯より明らかに小さすぎるぬいぐるみから這い出した美穂がその拳銃をうけとった

_紗南『当てなくてもいいよ、でもまず一発で注意を引いて』_

体を起こす、慣れない手つきで拳銃を支える

美穂「できる、出来るに決まってる...!」

みく(ボット)「にゃにっ!?」

指を握り込むと引き金が引かれた。最初の号砲が鳴らされる



______________

 小日向美穂+ 65/100


______________
______________

 三好紗南+  50/100


______________



367: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/13(水) 00:30:36.50ID:QW+Val6U0



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

美穂の放った銃弾はみくにかすめることもなく、やや離れた地面を削るだけだった。そして当のみくの姿も既にその場から消えている


みく(ボット)「びっくりしたにゃあ、またぬいぐるみに隠れてコソコソしてたにゃ?」


足元の瓦礫を蹴り崩す勢いでみくが駆ける、跳ぶ。ジグザグに軌道を変えながら美穂へ迫った


美穂「ひっ!」


美穂の体が固まる


みく(ボット)「これで___」



紗南「あたしを忘れないでよっ!!」



第二射、みくの背後からの射撃




みく(ボット)「にゃうっ!」美穂「ひやっ?!」


それがどれほどの高速移動であろうとも目的地は一つ、紗南は美穂に当たらないように、それでもギリギリを狙い打つ


_『その後あたしも攻撃するから、みくちゃんはこれであたしたち二人の両方を警戒するはず』_


攻撃の手が美穂に届く直前、急ブレーキをかけたみくの状態が後ろに反り返る。その瞬間、みくの動きは止まったも同然だった。

美穂「...えいっ!」

反撃の一発が後ろに反り返ったみくに放たれる、だが一歩遅かったその攻撃はまた外れた

常人を超えた脚力で後ろに跳ねる。そしてみくは美穂と紗南を三角形の頂点にするような位置に着地した

みく(ボット)「うにゅにゅ、美穂チャンも積極的になったにゃあ」



_『そしたら、あたしがみくちゃんに全力で攻撃する。』_



銃声が鳴り響く、何度も何度も。その全てがみくを狙い、たとえ逃げてもそれを追って追撃が行われた


_『みくちゃんは美穂さんにも警戒しなきゃいけないからこれで大分優位に立てるはずなんだ』_


みく(ボット)「よっ、ほっ、にゃっ!」

銃撃、狙撃、乱射、掃射、紗南の手から放たれた銃弾が一発二発とみくの逃げ道を追い込んでいく

地面が踏み割られた上に鉛に削られ銃痕を残す音が連続する。

美穂「紗南ちゃん、大丈夫だよね、まだ弾、残ってるよね...?」




368: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/13(水) 00:31:26.34ID:QW+Val6U0



みく(ボット)「にゃんにゃんにゃ~...んっ!」


しっぽを振り、耳をパタつかせ、上へ横へと猫がはねる。その後を火花と硝煙が追いかけるが一向にその姿を捉えることはない


紗南の体では発砲と並行して走り出すことなど到底不可能である以上、そこにどうしようもない機動力の差が生まれていた

そして_

紗南「___あ、」

みく(ボット)「んにゃ?」


_『でも、それが通じなかったら』_


紗南の手元で引き金が空を掻く、銃弾を撃ち出していたという手応えが消えていた


_『...美穂さんに助けてもらうね』_


みく(ボット)「...もうおしまい......にゃあ?」



三好紗南、残弾ゼロ



紗南「___っ!」


万が一命中することのないよう、つかず離れずの距離で逃げ回っていたみくの動きが停止、否、終了する

紗南とみくの動きは同時にして全く同じだった。

地を蹴り、一点に向かって走り出す。ふたりの共通の目的は

美穂「二人とも...!?」


丸腰になり弱体化した相手を放置して武器を持った別の相手を先に潰しにかかるみく

丸腰になり弱体化した自分の身を守る庇護を求めて別の仲間を先に頼りに向かう紗南


_『でももしかしたら武器を持ってる美穂さんの方に行くかもしれないから......そのときはごめん』_


美穂「紗南ちゃんっ!!」


_『...確かに無茶だけどさ、のあさんの目が逸れてる今この時がチャンスなんだよ?』_


明らかに、みくの方が何倍も速い、そして素早い。


_『だったらやるしかないじゃん。それに策はもう一つあるし』_


美穂が瓦礫の山から飛び出しながら発砲した。それは適当につけたような狙いではなく、まっすぐみくを目指して飛んでいく


みく(ボット)「にゃやっ!?」


今までとは違う、真剣でそれ故にボットからは危険な攻撃がみくの予想と反応を上回った





みくの衣服、その胸の中央に穴があく



369: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/13(水) 00:32:29.11ID:QW+Val6U0



真正面からの衝撃にみくの体が真後ろに転がり、頭から地面に落下した。


紗南「美穂さんっ!!」


一拍遅れて紗南が美穂の腕の中に飛び込む。拳銃を地面に放り美穂もそれを受け止めた


美穂「...私、人を仲間のアイドルを撃っちゃた...」

紗南「いやいや、これゲームだって!それに相手はロボットなんだし!」

テンパっているのか、大げさなくらい落ち込んだ様子の美穂を鼓舞し、紗南は離れた場所の戦闘風景に目をやる



2本足で歩く奇怪な物体の軍隊、自己再生する実力が未知数の存在、氷の鎧を自在に操る少女、全身に鎖を巻きつけた異様な風体の怪物



魑魅魍魎の跋扈する空間が、そう離れていない場所で現在進行形で展開されていることに今更ながら戦慄した



紗南「あっちじゃなくてよかったね、ほんと」


美穂「う、うん」


言葉少なに自分たちの幸運に感謝した。



紗南「でも当初の予定と違ったけど、美穂さんのおかげでなんとかなったよ、ありがとうっ」



美穂さん「いやいや、そんな、お礼だなんて...」


「__お礼を言うにはまだ早いよ
                        




にゃあ?」



370: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/13(水) 00:33:27.05ID:QW+Val6U0



二人の体がくの字に折れ曲がる、猛烈な速度で突進したみくが紗南と美穂に衝突し、そのままの勢いで地面に叩きつけた。



叩きつけられた二人を中心に円を描くように瓦礫が砕け、小規模のクレーターが発生する。それほどの衝撃だった




美穂「_____っか、ふ__?!?」

紗南「いっ~~~~~~~~たぁ!!?」



みく(ボット)「猫はそう簡単に自分の死体を見せたりはしないのにゃよ?」




並んで倒れた二人を両足で踏み付け、服の胸元に穴を開けたままみくがころころと笑った。


その穴からひしゃげた銃弾が一発、ぽろりと転げ落ちた


よくみると穴があいたのは彼女服だけで、美穂の攻撃はそのすぐ下で止まっていた




アナスタシアにより作られた硬度100%の氷のチョッキの表面で



紗南「なに、そ_れ」

みく(ボット)「アーニャンの作った氷をのあにゃんに加工してもらったのにゃあ。ピストルなんか簡単にハジいちゃうにゃ!」


辛うじて言葉を発せた紗南の質問にこともなげに答える。

美穂「そ___ん、な」

みく(ボット)「じゃあ、ピストルもないみたいだし___」

みくがどこか艶かしい動きで自身の豊満な胸の間に手をいれる。引き抜かれたその手には手のひらに収まるような小型の拳
銃が握られていた

紗南「ちょ、ちょちょっと待って!!」




パンッ!



紗南の頭のすぐ隣、わずか数センチの場所に着弾する

紗南「____ひっ!?」

みく(ボット)「みく、犬じゃないから『待て』はできないにゃ。それにこのピストルは二発しか弾が入れられないから無駄撃ちはできないにゃ____」





「____だからばいばい美穂チャン」



紗南の頭のすぐ隣、そこには美穂の頭があった



371: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/13(水) 00:34:23.85ID:QW+Val6U0



みく(ボット)「じゃ、つぎ紗南チャンね」


コキリと軽い音がして二発目が装填される音がした。



紗南「じゃ、じゃあ、待たなくてもいいから!せめてあたしに電源を切らせて!!」



みく(ボット)「にゃあ?」



電源、というここでは聞きなれない単語に戸惑う。まさか電池を自分の命の比喩にでもしたのだろうか



紗南はみくの足の下で苦心しながらゲーム機、彼女の能力の象徴を取り出し、みくに示した


みく(ボット)「なにそれ?」


紗南「あたしの能力装置!でも電源切ったら使えない!!」


みく(ボット)「...!」



能力、という単語にみくが片眉を動かす



紗南「ゲーマーを自称するからには、セーブもせずゲームを点けっぱなしで放ったらかしにはしたくない!すぐ終わるから!ね!?」

ボットは迷わない。紗南の能力を知らないだけにここで悪あがきに何かされるより、自分から戦闘不能になってくれるならそれでいいだろう

みく(ボット)「......じゃあ、にゃんにゃんにゃんに引っ掛けて二秒ね。スイッチ押したら切れるでしょ?嘘付いたら許さないよ?」

紗南「うん、あたしは嘘つかないよ...じゃあいくね」







三好紗南は思い出す、美穂と交わした会話の最後を



_『ああ、もう一つの策?これは美穂さんの能力が使えない時の奥の手みたいなものかな』_



スイッチを押す。もちろん電源を切るスイッチではない


三好紗南には二つの光景が見えている


一つは目の前にいるボット、前川みくの顔



そしてもう一つは




372: ◆E.Qec4bXLs 2014/08/13(水) 00:37:24.10ID:QW+Val6U0




















_____________

コントロールモード

→ ・プロデューサーくん
  ・戦車
           1/1 
_____________


ゲーム画面を通して映される、ぬいぐるみから見た彼女の後頭部だ



紗南「ほら、嘘じゃない。約束通り___」



プロデューサーくんが、美穂の半身が、

紗南の力を借りて美穂の落とした銃を拾い、

引き金を引いた













紗南「みくちゃんは、あたし”たち”が撃つ」







______________


 小日向美穂+ 0/100


______________
______________

 三好紗南+  36/100


______________

ゲーム開始59分経過 小日向美穂&三好紗南VS前川みく(ボット)

勝者:三好紗南



【モバマス】早坂美玲「アイドルサバイバルin仮想現実」【その2】
元スレ
早坂美玲「アイドルサバイバルin仮想現実」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1396415964/
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