【モバマス】渋谷凛「アイドルサバイバルin仮想現実」【後半】

関連記事:【モバマス】渋谷凛「アイドルサバイバルin仮想現実」【前半】





【モバマス】渋谷凛「アイドルサバイバルin仮想現実」【後半】






616: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/15(土) 23:17:20.99ID:1xY+x1YV0



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チャプター
小日向美穂


      __   
__  __  __  __
  __      __



...?



まゆ「美穂さん、どうかしました?」

美穂「ん、なんでもない...」



頭の上の方からまゆさんの声が聞こえて、そっちに首を向ける

まゆちゃんと私は今、とりあえず二人で街の外側を目指している

もちろんどっちが外への道かなんてわからないけど、建物の高さが低い方、標高自体は低いけど山みたいなのが見える方向に歩いてる

なぜかまゆちゃんはくまさんモードこと、プロデューサーくん状態の私を胸に抱えたまま移動している

確かに私の今の体重はぬいぐるみと同じだけどその気になればぬいぐるみのまま動けるし、人間の体に戻ることもできるんだけど、

そうなった場合私を吸い込んでいたプロデューサーくんは私が持ち運ぶことになるけど



あまりにも当然の流れで抱きかかえられているので私からは何も言えない



617: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/15(土) 23:18:13.86ID:1xY+x1YV0


まゆ「たまに、銃声が聞こえてきますねぇ・・・」


美穂「うん、模擬戦闘って、やっぱりピ、ピストルなんだね・・・うぅ、怖くなってきたよぉ・・・」


まゆ「そうですねぇ、智絵里さんを探しつつ、街を探索しつつ、ついでに何人か倒していきましょうか・・・」


美穂「ええぇっ!?」


まゆちゃんはたまに好戦的な発言をするから考えが読めない時がある

でも言葉は物騒だけど私を抱きしめる腕はあったかい

      __   
__  __  __  __
  __      __



ぬいぐるみの私の耳に銃声が聞こえた

今までのと違ってかなり近い

まゆちゃんも気づいたみたいで、ピタリと足を止めた


まゆ「今度は随分近くで銃声が聞こえましたねぇ・・・」


美穂「うん、ピストルの音以外にもなにか聞こえるね・・・なんだろうこの音」

まゆさんが警戒心を高めたのが私の体に回された腕越しに伝わる


というかまだ私くまさんモードなんだけど・・・戻ったほうがいいよね?


まゆ「?・・・それと美穂さん、今はまだぬいぐるみの方でいてくださいねぇ?」


美穂「ど、どうして?このままじゃ、わ、私邪魔にならない!?」


まゆ「いえ、この状態なら、二人でも同時に動けますし、逃げる時にうっかりはぐれる可能性も下がるでしょうから」


まゆちゃんはそう言って私を抱えたままビルの隙間に身を隠した

もちろん私はなされるがまま・・・ほ、ほんとに邪魔になってないのかな・・・?



618: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/15(土) 23:19:11.81ID:1xY+x1YV0


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  __      __


まゆ「ふむ、妙ですねぇ」

美穂「・・・まゆちゃん?どうしたの?」


息を殺して周りを伺いながらまゆちゃんが小さい声でつぶやく、完全に密着してるぬいぐるみの私じゃないと聞こえないくらいちっちゃい声だった



まゆ「誰かと誰かが戦っているにしては、静か過ぎません?」

美穂「うーん・・・私はよくわからないけど、確かにさっきの一発が聞こえてからは、銃声はしないね、他の変な音が聞こえてるけど・・・なんだろこれ?」

まゆ「変な・・・音?」


まゆちゃんが不思議そうに言う、表情は私の位置からは見えない

美穂「うん、なんて言ったらいいかわかんないけど・・・」

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  __      __



美穂「あ、また聞こえたよ?」

まゆ「?・・・えっと、まゆにはわかりませんねぇ、どんな音なんですか?」

美穂「・・・ごめん、どう表現したらいいかわかんないけど、遠くから呼ばれてる感じがするんだ・・・」

まゆ「そうですか・・・ぬいぐるみ仲間からの交信ですか?」

美穂「えっ、あ、いや、どうなんだろ・・・」



うーんなんなんだろ




619: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/15(土) 23:22:32.64ID:1xY+x1YV0



銃声の方はさっき一発聞こえたっきりで静かになったまま

でもなんとなくしか方向がわからないから、ここに隠れているのが正解なのかはわからない


まゆ「とにかく、移動しませんとねぇ、ここで隠れていても外にはいけませんし・・・」

美穂「でも、どの道を通ったら安全かわからないや・・・ど、どうしよう・・・?」


私たちがかろうじてわかるのは私たちの進行方向上のどこかの建物のあたりから聞こえてきたということだけ

ここは後ろに下がったほうがいいのかな・・・うぅ、地図がないとどう行けばいいのかわからないよう・・・


      __   
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  __      __


まゆ「どうします?このまま路地裏に引いて裏道から迂回します?」


美穂「うーん、でもピストル相手だともし狭いところで出くわすと逃げられないし・・・」


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美穂「こっち・・・かな?」

まゆ「!・・・横道ですか、たしかに裏道よりは広いですねぇ・・・いいかもしれません」



620: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/15(土) 23:23:42.30ID:1xY+x1YV0


私がくまさんの手で指差したのは(このぬいぐるみには指がないから、手で示した、かな?)今いる日陰の、狭い道から車道をはさんで向こう側に見える道、

広過ぎる道でも、ピストルで狙われると逃げられないのは一緒だし、車二台分くらいの幅なら、いざ!ってときでも大丈夫かなぁって思ったんだけど、

半分位は直感だった気もするけど


遠くからの銃声は聞こえない、行くなら今!・・・だよね

まゆ「じゃあ、目立たないようにいきますよ?」

まゆちゃんは私を抱えながら裏道を抜け、車道を小走りで横断していく

このまま行けば銃声の聞こえたどこかからは離れてるのかな、


ギィ


まゆ「!!」

美穂「わっ」

ちょうど進行方向上にあった建物の入口の扉が開いた、扉はこっちに開いていて、その影にいる人は見えない

ど、どど、どうしよう!!

回れ右して一旦となりの建物の中とかに避難したほうがいいのかな!?



??「・・・・・・・・・」



扉の影からその人がこっちに出てくる

まず足のつま先が見えて

前髪、

顔、

上半身




赤いバッジ




そしてその下、

胸元に抱えられていたのは






とっても長い形の銃___



621: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/15(土) 23:26:10.83ID:1xY+x1YV0


      __   
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  __      __


??(ボット)「!」


その子も一瞬で扉の死角から来ていた私とまゆちゃんに気づく、

でも、相手からはまゆちゃんがぬいぐるみを持って走ってきてるようにしか見えてないと思うけど


??「っ!」

ぐっ、とそのボットの腕に力がこもったのが何故か分かった


銃身の、多分ピストルの弾が飛び出す長い筒が、

空気を切り裂くように素早くこっちを向いて___













美穂「だめぇ!!」






622: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/15(土) 23:27:58.48ID:1xY+x1YV0



まゆちゃんの腕を強く蹴って私はそのボットの銃の先っぽに飛びついた


ぬいぐるみの体から飛び出すみたいに人間に戻るとそのまま体をのしかからせて銃を抑えた

プロデューサーくんが抜け殻みたいに地面に落ちていく


??「へっ!?」


ぬいぐるみが飛び出してきて、それが人間になるとは思わなかったみたいで

しかもいきなり自分の手元に人間一人分の重みがかかったせいで銃の狙いはずっと下がって地面になった


美穂「ま、まゆちゃん!!い、今のうちに、逃げてぇ!!」

私の選んだ道のせいで敵に会っちゃったんだもん、!

私のせいだ!

だからここは私が何とかしてまゆちゃんだけでも・・・!


      __   
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  __      __



623: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/15(土) 23:29:07.37ID:1xY+x1YV0


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  __      __

      __   
__  __  __  __
  __      __







まゆ「お手柄ですよぉ・・・美穂さん」






上条春菜(ボット)「・・・・・・こふっ」




美穂「え・・・?」




まゆちゃんは

私が銃を抑えた隙を付いて逃げるんじゃなくて

逆に春菜ちゃんに近づいて





_細身のナイフで


_顎の下から上に向かって深々と






ゲーム開始32分経過

上条春菜(ボット)消失

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



624: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/15(土) 23:34:00.72ID:1xY+x1YV0


______________________
      MENU


→・プロデューサーくん 
  アクセス中

 ・ミニキノコ
  圏外

 ・ミニキノコ   
  圏外

______________________



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


______________________





・・・・・・コントロールモード・・・・・・

         終了します


______________________



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
______________________





 『サーチ』
 
→『コントロール』


______________________


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




625: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/15(土) 23:34:37.64ID:1xY+x1YV0



紗南「・・・はぁっ、はぁっ・・・あぁもう!」


最初のメニュー画面に戻ったゲーム機を持ったまま床に転がる


床は冷たいし片足はまだ痺れてて立てない



紗南「・・・ボットの調査、そして干渉が、あたしのゲームの、そんでもってあたしの能力・・・」


でも、春菜さんがこのビルに上がってきたら間違いなく詰む


紗南「こ、コントロールっていう割には、・・・ここに引き寄せただけじゃんか・・・!」


手元にあるのはゲーム機のみ、

あたしは最初サーチモードで春菜さんが近づいてないかを見るつもりだった。

でも、そこでもうひとつあった『コントロール』のアイコンをヤケになって選んだんだ

うまいこと行かなければもう終わり、くらいの気持ちで


そのあとのことは無我夢中でボタンを連打したりしてたから覚えてないけど、


このコントロールモードっていうのは、どうやら条件付きでボットを遠隔操作できるみたい、


メニュー画面を見る限り、人間以外のボットに限定されてるけど



626: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/15(土) 23:35:09.26ID:1xY+x1YV0


現実であたしがやってるゲームのキャラ操作とは全然違ったけどそれは今はいいや


問題は今頃この近くにいるプ、プロデューサーくん?とかいうボットがどうしてるかだ


あたしはサーチモードにした画面をジッと見つめる



プンッ
_________________

name: 小日向美穂

category: プレイヤー

skill: 
ボット「プロデューサーくん」に同化
及び操作可能、ただし耐久力は通常プ
レイヤーより大幅に低下する

_________________

プンッ
_________________

name: 佐久間まゆ

category: プレイヤー

skill: 
なし


_________________


あっちこっちに向けて、何度ゲーム機の角度を調整してもこの二人以外のデータは受信されなかった

つまり春菜さんはここから遠く離れたところに移動したか、

この二人に倒されたか・・・



627: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/15(土) 23:36:38.38ID:1xY+x1YV0





紗南「・・・あたし、助かったの・・・?」





声に出すともうだめだ、

それを合図に一気に緊張がとけて体が脱力する

急速に安心感が湧いてきて、ほっとして

このまま眠ってしまいたくなる



でもここで安心し切るのはだめだ



紗南「もう、一人じゃ、やだよぉ・・・」



仲間が欲しい


ワンプレイヤーじゃ、あたしの心がもたない


多分、いや間違いなくあたしは美穂さんとまゆさんを自分の安全のために利用した


だからまずそれを一生懸命、あやまって


仲間にしてもらおう、あたしの能力なら損はさせない、と思うし


そろそろ足のしびれも頑張れば立つことぐらいはできるレベルに収まった


よたよたと立ち上がる、顔面から転びそうになって慌てて手をついた




今からボットに倒されるかもしれないと思った時よりも

このままじゃ孤独になると思った時の方が足に力が入り易かった



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



628: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/16(日) 00:48:39.24ID:yyTaBTze0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
輿水幸子&白坂小梅&星輝子



仁奈(ボット)「仁奈は今!!ティラノサウルスでやがります!足元でフラフラしてると、踏んづけて食っちまいやがりますよ!」



輝子「フヒィァア!!?」


小梅「あわわ...」


幸子「ふ、ふふん!だ、だれが爬虫類の相手なんてするものですか!!こ、ここ小梅さん!輝子さん!事務所に逃げ込みますよ!」


ゴツゴツとウロコばった肌質

小さいながらも睨まれると立ちすくみそうになる爬虫類特有の眼

ずらりと並んだ鋭い牙、野太い爪

すべてがその存在がティラノサウルスであることを証明していて



それと同時にティラノサウルスの胸のあたり、二本の前足の中間ぐらいから仁奈の顔が見えていることが

これが仁奈の着ぐるみであり、その能力であることを証明していた



幸子「っていうかそれホントに着ぐるみですか!!?明らかに体に合ってないでしょう!!」

小梅「はぁ...はぁ...きょ、恐竜の体に...仁奈ちゃんの顔が、はぁ...く、くっついただけにしか...見えない」

輝子「フヒ お、おなじ、フヒ...おなじく」



629: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/16(日) 00:49:13.34ID:yyTaBTze0




三人は恐竜から同じ方向、事務所に向かって逃げる。幸子以外は既に息切れを起こしていた


仁奈(ボット)「待ちやがるがいいです!!」


ズンズンと巨体を自慢するように足音を鳴らしながら三人の背後に迫る

普通ならとっくに追いついて追い越してもいい速度差なのだが、

仁奈は二、三歩進んでは止まり足元の三人にランダムに噛み付こうと首を突っ込んでいたので、

追いついては逃げられ、追いついては逃げられを繰り返していた


事務所までもう少し


小梅「はぁっ、はぁっ、あ、あそばれてる...気が、する...!」

輝子「ひ、ヒャアア!?アッブネェエエエエ!!」

幸子「なんなんですか!!なんなんですか!?・・・む!?」


三人のうち先頭を走る幸子がそれに気づいた。

道路脇、看板の影に隠されるようにして設置されていたあの忌々しい星型、


仁奈の起こした地響きのせいか振動を感知して震えているせいで隠し場所からはみ出していた



幸子「二人共!!ボクが仁奈さんを食い止めます!!全力で走ってください!」

幸子は足を止め振り返る、二人は幸子を追い越したところで戸惑ったように減速した



小梅「はぁ...えっ?」

輝子「くい、とめ...さっちゃん!?」


ズンッ!!!


仁奈(ボット)「がぁおぉおーー!」


幸子「いきますよ!!」



630: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/16(日) 00:51:04.81ID:yyTaBTze0


幸子はヘッドスライディングのように飛び込んだ場所から、

その星型を掴むと立ち上がる間も惜しんで仁奈に投げつけた



幸子の小さい両手で一度につかめたのは精々3つ4つ、



仁奈(ボット)「うお!?未央おねーさんの勝手に使いやがりましたね!いけねーんですよ!!」



仁奈の猛進は止まらない



地面を強く踏む足、地をえぐる爪


そのすぐ横に幸子の投げた星が転がっていく


カアン!!!


輝子の声とは比べ物にならない振動、大型恐竜の鳴らす地響き

それが《ミツボシ効果》を直撃した

仁奈の足元で炸裂する


仁奈(ボット)「んなっ!!なんでやがりますか!!」


いくつかはその太い足に辛うじて刺さったが大ダメージには至らなかった


だが、そこに気を取られ一瞬、仁奈の走りが乱れてしまう





631: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/16(日) 01:20:37.62ID:yyTaBTze0



ティラノサウルスの前足はひどく短い

しかしこの恐竜は二本の足で獲物に一気に追いすがる

力強く踏み出される足が生む決して遅くない速度、

それは胴体の長さに並ぶとも劣らない長さの尻尾というバランサーあってこそだ


だが、それでも、

捕食のために特化したその走り方は不安定だったことに変わりはない


仁奈も同様に



仁奈(ボット)「わあああ!?でやがります!?」



地面を叩き割らんばかりの轟音を立てて転倒した


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
事務所


卯月(ボット)「あー!!仁奈ちゃんこけちゃった!!未央ちゃんどうしよう!?」

未央(ボット)「なんだとー!この私の能力を利用するとは生意気なー!」

翠(ボット)「...これは、やはり油断してはいけないと、厳しく伝えるべきでしたね...」



 ガリリ  ジー

 ガリリ  ジー

雪美(ボット)「...........」


窓の近くで外の様子から目を離さない三人を横目に雪見は自分の能力をいじっている

黒猫の形に似た電話、古風なダイヤル式のそれに細っこくて白い指を差し込んでは回し、ダイヤルが戻ればまた回す


小春(ボット)「あれ、雪美ちゃん、なにしてるんですか~?」


それに気づいた小春がソファの、雪美の隣に座ってその手元を覗き込む

だがダイヤルがマイペースにガリりと回されてはジーと巻き戻っているだけで何もわからない



632: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/16(日) 01:21:56.07ID:yyTaBTze0


雪美(ボット)「......私...能力......あぶないの...知るだけ......」

「戦いで......何も...できない...」


そう言って雪美は手元の電話をいじりつづける

小春(ボット)「でも、雪美ちゃんはちゃんとできてるですよぉ~?」

そんな雪美に、小春は励ますつもりで頭を撫でた

ヒョウくん「・・・・・・」

小春の腕に抱えられたイグアナはいつもどおり神妙な顔をしている


雪美(ボット)「...私...試してみる......この能力...」

「ほかに...何が......できるか」


雪美の能力《黒猫電話》は主になにがしかの出来事に対して受身だ。

それにあくまで知らせるだけのものであり、対処まではできない

雪美はその自分の現状を打破しようとしているのだ

まずは一歩目として自分の能力の象徴、電話に何らかのアクションを試みている


小春(ボット)「わぁ~、雪美ちゃんすごいですぅ~」

雪美(ボット)「でも.......何も...おきない」

受話器も耳にあてたまま静かに指を動かし続ける



633: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/16(日) 01:22:24.81ID:yyTaBTze0


ガリリ ジー

ガリリ ジー

ガリリ ジー

ガリリ ジー

ガリリ ジー

ガリリ ジー

雪美(ボット)「.......おねがい...P...」


自分のオリジナルと魂が繋がっている、らしい人間の名前を呼ぶ


ガリリ ジー

ガリリ ジー




prrr...


雪美(ボット)「!!」

小春(ボット)「?」

ヒョウくん「・・・」



634: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/16(日) 01:24:03.51ID:yyTaBTze0



思いは実った

受信限定のはずの《黒猫電話》に何かが起きた

prrrrrrrrrrrrr


ガチャッ


雪美(ボット)「!......もしもし...」





受話器に意識を集中する


聞こえるのはノイズノイズノイズ


・・・””・!!!・・・」・!・__・



・・?・・・「・・・・・。・・・・・


ノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズ
ノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズ
ノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズ
ノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズ
ノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズ
ノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズ



誰かの声



聞き覚えがある声




635: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/16(日) 01:26:02.18ID:yyTaBTze0




雪美(ボット)「・・・・・・・・・・・・」




雪美(ボット)「・・・・・・・・・・・・」












雪美(ボット)「・・・・・・あきは?・・・・・・」



ブツッ


ツー

ツー




ゲーム開始45分経過

佐城雪美(ボット) 能力獲得





輿水幸子&星輝子&白坂小梅

VS

本田未央(ボット)&島村卯月(ボット)&水野翠(ボット)
&佐城雪美(ボット)&市原仁奈(ボット)&古賀小春(ボット)

《ミツボシ効果》《U=パーク》《M・M・E》発動中


継続中

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



636: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/16(日) 01:41:37.21ID:45wU0EoEO

~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ヒョウくんは厳密にはボットよりもアイテムっぽいカテゴリなので、(ボット)は無しです


次回開始するチャプターを選択してください
安価+3下

1、諸星きらり
2、堀裕子
3、北条加蓮

次回、優先して閲覧したい戦闘シーンを選択してください
安価+4下

4、VS塩見周子
5、VS 本田未央(ボット)&島村卯月(ボット)&水野翠(ボット)
&佐城雪美(ボット)&市原仁奈(ボット)&古賀小春(ボット)




637:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/16(日) 01:44:25.18 ID:PbjE2pOU0

3
6



638:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/16(日) 01:51:12.77 ID:0nspSSYDo

2 4



639:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/16(日) 01:52:27.34 ID:KxBkYF0s0

25



640:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/16(日) 02:02:00.11 ID:uRBz4Uwb0

3
4



641:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/16(日) 02:02:29.63 ID:OxOfrmN10

3 4



643: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/16(日) 22:44:37.43ID:yyTaBTze0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
堀裕子


さて、きらりさんは、無事杏ちゃんと会えたのでしょうか


私のサイキック棒倒しの示した道をたどるならきっと間違いなくたどり着けるでしょう。

しかし、その道中で敵に襲われてしまうこともありますからね!気をつけてもらわないと!


裕子「ふーむ、模擬戦闘というには戦闘の相手が見当たりませんね・・・はっ!?」

分かりました!

こういう時こそ、さいきっくの出番ですね!



私は道の真ん中で立ち止まりました

この道は車一台分の幅しかないので迷惑になるかもしれませんが、幸いここにはバスや電車の類はありません

ふむ、電車といえば、となりに居合わせた紗南ちゃんと輝子ちゃんは元気でしょうか


裕子「さて、やはりここは、さいきっくダウンジングといきたいところですが・・・」


あいにく今の私はスプーン一本のサイキッカーです、ふむむ・・・


やはりもう一度サイキック棒倒しを・・・ですがどうせならここは別のサイキックを試したいところですね。



644: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/16(日) 22:45:07.50ID:yyTaBTze0



裕子「ぬぬ~、さいきっく沈思黙考!」

集中力を高めるため目を瞑ります

左手にスプーンを握り、右手を頭に当てて念を送り込みます

いでよ天啓!さいきっく思いつき!



裕子「はっ!・・・・・・こっちです!」


分かりました!

私は目を見開くと同時にびしっと指を向けます

この方向こそ私のサイキックの差し示す正しき道!








・・・壁ですか



裕子「・・・・・・・・・ふふふ」


ふふふ、超能力に頼りすぎるな、というサイキックからのさいきっく説教ですね!



645: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/16(日) 22:45:47.03ID:yyTaBTze0



その壁にはこれといった隠し扉もなく、ごく普通のコンクリート、といったところでしょうか

ゲームなのでコンクリとか、そういう表現ではなさそうですが・・・

ですが、こうなった以上は仕方ありません!


この壁を超えていきましょう!私にはもうひとつの能力があるのですから!


裕子「む~ん・・・」


右手を壁に当てます、冷たいのが手のひらから感じられますね


集中、集中、集中



裕子「さいきぃぃぃぃっく、力技ァ!!」





掌底打ち、とかなんとか有香さんが言ってましたね、ということは空手の技だったんでしょうか?

壁にくっつけた私の手のひらから蜘蛛の巣のようにヒビが走り出し壁が大きめのがれきに変わって崩れ落ちていきます


ガラガラと崩れた先はどこかの建物の敷地でしょうか、随分開けています


裕子「さて!」


私は足元のがれきをどけて進みます、

少しばかり手加減したせいかがれきの一つ一つは歩くのに邪魔な大きさです

もっと全力でやれば多分、粉々にできたのですが

裕子「よっと、ほいっと・・・」



646: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/16(日) 22:46:33.72ID:yyTaBTze0


がれきの荒々しい断面で足を切ったりしないように、

その上をひょこひょこと飛び跳ねて進んでいた私は自分の足元から注意を逸らせません


だから気づいたんでしょう




??「.........」




裕子「のわあ!?」




ボコボコしたがれき、そこに、こけたりしないように慎重に踏み出された私の靴、


そのちょうど横、まるで私の靴に入ったロゴマークを盗み見するかのように目がありました!





それはがれきの隙間からこちらを覗いている、などという意味ではなくそのままズバリ、

がれきにくっついた切れ長の瞼がぱっちり開き、その中からどう見ても人間のものとしか思えない生々しい瞳がこちらを見ていたのです




647: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/16(日) 22:47:15.17ID:yyTaBTze0


??「......そう、私の存在に気づいたのね...」


パチリと一度瞬きをしたあとその瞳は私の足元でしゃべり始めました

いえ、目は普通は喋りません、ですが無機物のがれきから目が生えている段階でその手の議論に意味はないでしょう


??「...もっとも...この世界において、存在するということ自体にどれほどの意味があるのか......それゆえに私は何物でもあって何者でもないのでしょう.....」



何言ってるのかよくわかりません、ですのでこの人がボットなのかプレイヤーなのかも分かりません!


??「...でも...私が私であることに変わりはないわ...たとえこの世界を構成するものが0と1の羅列だとしても......その中心を回り続けるものは...私なのだから.......」


目はこっちから視線をそらすことなく、だから私も自分のつま先を見つめるような姿勢を戻せません





??「あなたもまた......この世界に与えられた未知に...振り回されない自分を有しているのね......面白いわ...」





裕子「そ、そうですね!サイキックアイドルに不可能はありません!」



648: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/16(日) 22:48:45.71ID:yyTaBTze0




??「...そうね...どこまで変わらずにいられるかしら...」






そこで、すこし、目の、その輪郭が歪んだように見えました

まるで笑ったように見えました





??「......自分の映し身...危険と恐怖を容赦なく醸し出す火器......現実感を喪失させる異能......模擬戦闘などと銘打ちながら...これを遊びとして捉えている者のほうが少なくなってしまったわ...」



次に唇が目の下側に現れました、ちょうど福笑いで人の顔を形作ったような不格好さで、不気味です

それがやはりよく分からない言葉を紡いでいます



??「ある者は並大抵でない勇気を奮い...ある者は引き金を引くことの躊躇をなくし...ある者はこの世界そのものを歪ませる程の異能を得たわ...」



また唇が、少し離れたところの別のがれきから生えてきました、がれきに施された彫刻などではありません、生えてます




649: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/16(日) 22:49:57.78ID:yyTaBTze0



??「さて、堀裕子...」


また唇、三つ目


??「私がこれまで見つめてきた他の子たちは......この世界から何かを得て変わったわ...もちろん彼女達自身の軸を壊すことなく」


四つ 五つ 六つ目・・・・・・


肉づきの薄い唇が、入学式の日の桜の花びらのようにあちこちに

がれきだけではありません、私が壊していない地面にも壁にも、

私の足元に出現した最初の一つを中心に波紋のように広がっていきます


??「...あなたにプレゼントよ...これをどう使うか...この世界に...どう取り組むか...見せてもらうわ」





ぱかっ





淀みなくつらつらと言葉を続けていた唇が一斉に大きく口を開きました

右も左も前も後ろも、すべての唇が一斉に、

口の中は真っ暗です

すべての花びらがまるで一瞬で黒く闇をのぞかせる穴になったように錯覚した瞬間




地面が崩れていきました



650: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/16(日) 22:50:35.34ID:yyTaBTze0




まるでその口の穴が地面そのもののキリトリ線になったように、


地面が私を中心とした大きな丸を描いて崩れ、私を乗せたまま下に落ちていきます


この地面の下には下水道でもあるのでしょうか、それとも何もないのでしょうか


私がサイキック思いつきで通ろうとした場所が頭上へと離れていきます


ぽっかり空いた穴から漏れる光が遠のきます


私は暗い場所に落ちていく


どんな暗闇もさいきっく自分紅葉を使えば明るく照らすことはできるでしょう


落下が終われば試してみますか





ゲーム開始33分経過

報告事項なし



651: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/16(日) 23:05:01.30ID:yyTaBTze0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

???「にゃあにゃあ、なにしてんのにゃあ?」





??「ちょっとした道案内......自分という存在の変換点へ誘導しただけよ......」


???「相変わらず、わっけわかんにゃいにゃあ・・・」


??「...この世界に来てなお...自分を曲げない者にであったの...そのままどこまで行けるか試してみたくなるのも仕方ないわ...」


???「知らんにゃ、でも自分を曲げないのはみくの特権にゃ!譲らないにゃ!この世界でもみくは自由気ままな猫ちゃんにゃ!」


??「...ボットの役目を堂々と放棄宣言するみくにゃんに失望しました。みくにゃんのファン辞めます」


???「やめるなだにゃあ!ボットのみくにファンなんていないけどやめるなだにゃああ!」





????「そろそろ、美玲、探しに行きませんか?...このままでは...その...逃げられてしまいます」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



652: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/16(日) 23:06:03.57ID:yyTaBTze0


チャプター
大和亜季&小関麗奈


麗奈「あああもおお!!イライラさせんじゃないわよ周子!!」


亜季「麗奈!おそらくそれが周子の狙いです、気を引き締めて!」


麗奈と亜季は今、互いに背中をつけあわせるようにして死角をなくすようにして戦っている

そうでもしないと、周子にはもはや対抗出来そうもないのだ


周子(ボット)5「あはは、おっかしいー」


一人の周子が天井から逆さまにぶら下がっている


周子(ボット)2「真剣になるのはいいけど、あたしたちの中の誰に対して気を引き締めるのかな?」


もう一人が積み上げられたダンボールの後ろからひょこっと顔をのぞかせる


周子(ボット)「ちゃんとあたしのこと見ててよね」


一人は片膝を立てたまま床に座っている


周子(ボット)4「でないと、撃っちゃうぞ♪」


一人は亜季に銃口を向けた



653: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/16(日) 23:06:34.66ID:yyTaBTze0



亜季「っつ!」


周子(ボット)4「なんちゃって」


その周子の手のひらから銃が消えた、

亜季の意識が一瞬、空白になる


周子(ボット)5「ざんねーん、こっちでしたー」


バン!


天井からぶら下がったように”見える”周子が麗奈にむけて発砲した


麗奈「ったぁ!?」


その銃弾は麗奈の足元をかすめ、致命傷にはならなかったがやはり二人を動揺させるには十分だった


周子(ボット)「麗奈ちゃんのびっくりした表情追加ー」


そういって

四人の周子がダンボールの間を漂うように、

亜季と麗奈を取り囲んで回り始める



654: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/16(日) 23:07:33.98ID:yyTaBTze0



周子の攻撃はさっきからこの調子なのだ


二人を惑わすようにあちこちから幻覚攻撃を仕掛けてはその合間に一発だけ銃弾を放つ、


しかもたまに撃つふり、ブラフの時もあるので全く動きが読めないのだ


周子が攻撃に使うハンドガン、ほぼ間違いなく最初この部屋で亜季の姿を真似ながらダンボール箱を物色していて見繕ったものだろう、

だとするなら替えのマガジンのなどは用意してないと見るべきか、いや周子相手だとそれすらも怪しい


こっちから決定的な一撃を与えられない、

しかしむこうも散々こっちを引っ掻き回しておきながらその隙をついてもまともに攻撃を当ててこない

それがさっきから続いている


麗奈「周子!いつまでふざけてんのよ!やるならパッパときなさいよ!」


亜季「(たしかに麗奈の言うとおり、周子はいつまでこうしているはずでありますか)」

ほとんどがブラフとは言え何回か発砲してきているのは事実なのだ、

弾切れがじきに訪れるはずだ

それに自分たちはユニット、スタミナは二人共に200、

普通に考えたらもっと積極的に攻撃を加えるべきだろう、

しかも周子の能力は相手の隙を開けることに特化してるといってもいいのだ




しかし周子は持久戦を選んだ。

じわじわと、集中力をちらしていく、敵対の現実感をぼやけさせていく

ぞわぞわと、戦闘意思を削いでいく、意識下に諦念をすり込んでいく


周子はじっくりと麗奈と亜季を観察しながら考える

・・・少なくとも、まだ能力が本調子じゃないしね、慎重にいっとかないと




655: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/16(日) 23:08:19.05ID:yyTaBTze0



麗奈「だぁーーーーー!!言っといてあげるわ!!アタシと亜季は今ユニットを組んでるのよ!!」

麗奈が怒鳴る、

麗奈「スタミナだって二倍の200よ!それが二人!いつまでも時間稼ぎみたいにチマチマやったってアンタに有利になんてなんないんだからね!」

それはいわゆる示威的行為、逆に周子の方に自分たちとの戦力差を知らしめるつもりの発言だった



周子(ボット)4「ん?」

周子(ボット)5「・・・?」

周子(ボット)「あれー?」

周子(ボット)2「おやー?」


だが周子たちの反応は芳しくない





周子(ボット)「もしかして知らないの?...ユニットを組むことのデメリット」






亜季「・・・?」

麗奈「はぁ!?」



周子がダンボール箱の上に片足だけでバランスをとりながらポツリとつぶやいた

一人の人間の体重を空っぽの箱が支えられるわけないので、また幻だろう

だが、その発言までが嘘とは限らない



656: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/16(日) 23:10:14.73ID:yyTaBTze0


周子(ボット)「麗奈ちゃんと亜季さん、スタミナが二倍になったんだっけ?」


麗奈「そうよ!アタシたち二人のスタミナのところに200って書かれてたわよ!」

亜季「そうであります、周子のお得意の虚言も、ネタ切れでありますかな」



周子(ボット)「それってさ、なんで掛け算じゃなくて、足し算だとか考えないわけ?」




周子(ボット)「ユニットを組んでもメンバーのスタミナは増えないよ」




周子(ボット)「ただ、共有されるだけ」




周子(ボット)「一人で100だったものが二人で200になるだけ」



周子(ボット)「三人ならみんな合わせて300かな?」



麗奈「なによ!別にそれでいいじゃない!もったい付けるんじゃないわよ!」


麗奈は周子からの言葉に反駁する、周子の言葉が事実だとしても何がデメリットだというのか

だが、亜季は違った、亜季は理解した

亜季「・・・麗奈、この話そう単純じゃないであります・・・」

麗奈「なんでよ亜季、ユニットなら100以上のダメージ食らってもリタイヤにならないのはホントでしょ!?」




周子(ボット)「それはまぁ確かにメリットだね・・・少なくともプレイヤーを一人即死させるレベルの攻撃には耐えられようになるとは思うよ?」



周子(ボット)「でもさ、もしユニットの亜季さんか麗奈ちゃんが合計で200ダメージ受けたらどうなるか分かってる?」









周子(ボット)「スタミナを共有してるもう片方も、一緒にリタイヤだよ?」







657: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/16(日) 23:11:17.41ID:yyTaBTze0




ユニットは一蓮托生、力を合わせれば強くもなるが、それは諸刃の剣でもあった

その事実が周子の口から明かされた


亜季「・・・やはり・・・!」

麗奈「な、んで・・・晶葉はそういう説明をしてないのよ!!」


亜季の手に緊張感が走り、麗奈の頭に血がのぼる


二人の頭に軽い気持ちでユニットを組んだことを後悔する気持ちはない

だが、なんとなく頭の片隅にあった「ユニットを組んでいる余裕」は一気に消し飛んでいた




周子(ボット)「さぁさ、麗奈ちゃん、どんどん失敗できなくなってきたねぇ?」


周子は言う


ぽんぽんと


亜季と麗奈の肩に両手をおきながら


麗奈「っい!?」

亜季「また幻・・・!」



箱に座っていた周子はいつの間にか消えている


そしてゼロ距離、二人のすぐ横で三本の尻尾が揺れていた




麗奈「このっ・・・!」

亜季「舐めるなであります!」



背中合わせの麗奈と亜季が同時に振り返る、



658: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/16(日) 23:13:19.50ID:yyTaBTze0



周子はミスを犯した



亜季はそう確信した






周子の能力は、要は”見え方だけ”を変えるものだということは薄々感づかれていた。

もし幻覚で物理的なダメージを与えられるなら、わざわざ一丁の拳銃をちまちま使う必要などないのだから、

それに今までの分身もさんざん動き回っていたにもかかわらずダンボール箱が周子の足にぶつかることはなかった

だから周子の幻覚は映像のように触ることも触られることもできない類のもので、




つまり今肩に触れている手は本物の周子のもの




麗奈はそこまで考えてはいなかった

だが亜季は注意深く戦場を観察し、その考えに至っていた



だが、それを麗奈に口頭で伝えるわけにはいけない。

亜季は油断した周子から何らかの接触を待っていたのだ

そして時は今



659: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/16(日) 23:14:30.67ID:yyTaBTze0



亜季「(ここで逃すわけには・・・!)」


一気に体を回転させる、ダンボール箱が視界をよぎる


周子の体にショットガンを押し付ける

そのまま引き金を引く

これを一瞬でやるだけ




亜季は素手での近接格闘にも多少の心得はあった

だが、周子相手にそんなことはやってられない



幻覚を見せられる前に一気に___



ここで亜季の視界を白が覆い尽くす




亜季「ぶっ!?」


周子がその自慢の尻尾を亜季と麗奈の顔前で振ったからだ



一瞬の思考停止

一瞬の逡巡

一瞬の迷い



周子の悪意はその一点を狙っていた



じわじわと、ぞわぞわと相手を追い詰めながら





二人を致命的なミスをやらかす精神状態にしていた





660: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/16(日) 23:17:12.79ID:yyTaBTze0






周子(ボット)「ばぁん!!!!!!」





そして大声で驚かせる


麗奈「ひゃ!?」

亜季「っく!」


振り返った二人が同時に引き金を引く


急な旋回で安定しない態勢で、

視界が塞がれた状態で、

普通なら引かない状況で、引いてしまった



___その銃口が誤って仲間に向けられているとも知らず



パン!


ドォン!




661: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/16(日) 23:18:10.61ID:yyTaBTze0



山に住む狐はよく旅人を騙したという話がある


化かして、石ころを木の実だと思わせたり

山道の同じところを何度もぐるぐると通らせたり



旅人が二人組の時などは、

その片方に化けて、喧嘩するよう仕向けたりもしたそうだ




麗奈のハンドガンの銃弾は亜季を貫き

亜季のショットガンの散弾は麗奈を抉る






威力の違う二種類の弾丸

だが二人のスタミナは_

______________

 小関麗奈  120/200


______________

______________

 大和亜季  120/200


______________



ゲーム開始25分経過

小関麗奈&大和亜季VS塩見周子(ボット)

継続中

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



662: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/17(月) 00:34:55.64ID:xkyajF+50


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

やあ、ボクだよ二宮飛鳥だ


今からマキノさんの能力の面白いところを紹介してあげよう

暇つぶしがてら聞いてくれると幸いだ


何度も言ったようにマキノさんの能力は擬似ワープ、とも言えるもの


その精度の程は知らないけど、マキノさんは自分が指定した位置に自分の仮初のボット、

あの蜃気楼のような存在を送り込み、その先からデータを受信している、

まあ一応受信だけでなく言葉を伝えるくらいなら出来るらしい


さて、これの面白いとこはこの仮初のボットを送り込んだ本体はどうなっているのか、なんだけどね


消えるんだよね、跡形もなく


ありすの能力、タブレットの画面という狭い庭にドットを使ってボットやプレイヤーの位置をマッピングする《ドットガーデン》にも映らないそうだ

これはよく考えるとマキノさんは一時的にこの世界から消えていることになるんじゃないかな、

だったらずっと蜃気楼でいれば無敵じゃないのかい?なんて言っては見たけどマキノさんいわく永続的には使えないらしい

時間制限、夢から覚める時間があるんだってさ


それにただでさえボクらボットは生身の人間と比べて不確かな存在だ、その上さらに蜃気楼になるなんてたまったものじゃないだろう


そう、時間が来ればマキノさんは能力を解いてこの拠点に現れるのだ


戻ってくるのだ



663: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/17(月) 00:36:44.51ID:xkyajF+50



こずえ(ボット)「...あすかー......なぁに、これぇー...?」


飛鳥(ボット)「・・・これはエクステだよ、ボクのオリジナルは校則の厳しい所で学んでいるらしくてね、それに対する些細な反抗という、待って待って待って待って引っ張っちゃダメだよやめてやめてストップ!ストップだこずえ!」 


こずえ(ボット)「...ふわぁ?...あすか...いたいのー?」


飛鳥(ボット)「確かにボクはイタい中二ではあるけど! そうじゃなくて、引っ張っちゃダメ!」



こずえは座っているボクの前に立ってボクのエクステをぐいぐい引っ張っている

確かに珍しいかもしれないけど引いちゃダメだ

でもボクの両手は現在繊細なチューニング作業中、

加蓮さんと拓海さんの戦闘の盗聴を止めるわけにはいかないから動けない



マキノさん早く戻ってきて



こずえだけ置いていかれても困る


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



664: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/17(月) 00:37:40.70ID:xkyajF+50



こずえ(ボット)「んぅ...?」


飛鳥(ボット)「・・・・・・触るのはいいけど引いちゃダメだよ?」


こずえ(ボット)「うんー......わかった...よー?...」


飛鳥(ボット)「疑問符はとって欲しかったな・・・」



ボクの必死の説得は実を結び、現在こずえはボクの膝の上に座ってエクステをいじっている

もちろん外したりはしないさ、つけたまま触らせているよ。だからこそ膝の上なわけだし

ボクのアイデンティティだからねそこは譲れない



遊佐こずえ、何の能力も持たないボット、というのはマキノさんから聞いた話だが

たしかにこの小さい子供は能力を使おうとする様子はない



こずえ(ボット)「....さらさらー...なのー」


飛鳥(ボット)「人工物の方が、得てして本物より手触りが良かったりするものさ」


こずえ(ボット)「あすかー...こずえは...さらさらー?」

飛鳥(ボット)「どうだろうね。なかなか特徴的な癖っ毛ではあると思うよ」



こずえに答えながら頭の中を走る声に耳を澄ませる



ああ、どうやら拓海さんが敗北したようだ



ボクは両手を下ろすと能力を解いた。これ以上聞くことはないだろう

拓海さんの能力、名前をつけようとしたら嫌がられたんだよね・・・

ちょっとだけ物思いにふける



665: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/17(月) 00:38:29.40ID:xkyajF+50



こずえ(ボット)「?...あすか......かなしいのー?...」


飛鳥(ボット)「さぁ、ボクはボットだからね、そういうのは分からないよ。あとボクのエクステ食べないでくれるかな?」


こずえ(ボット)「...あむー...」


飛鳥(ボット)「ちょ、」


よっぽどボクの髪からぶら下がる装飾品がお気に召したらしい


変わった子だ


これでオリジナルは11歳、ボクのオリジナルと3つしか離れてないのだから驚きだ



ボクは三年前の11歳のころ、どんな子供だったかな?

と、思い出そうとしたけどよく考えたらボットのボクはまだ生まれて三ヶ月と経ってなかった

たとえ三年前の記憶があっても、それはボットとしてのボクの個性を形成するためにオリジナルと晶葉さんが用意しただけのデータだ



個性



ボットたちにとっての個性とはなんだろうか?



666: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/17(月) 00:39:10.15ID:xkyajF+50



基本的な思考アルゴリズムにアイドルたちの人格データを組み込んだもの

それがボクたちの姿形、為人をかたどる1と0の塊


こずえ(ボット)「あむあむ...あすか...えくすて......すきなのー?」


飛鳥(ボット)「多分好きなんだろうね、でもヨダレまみれなのはいやかな」


ボクは本当にエクステが気に入っているのかな?

エクステ好きの性格に作られただけじゃないのかな?


あと、こずえ、

もうボクのエクステが半分以上口に含まれてるんだけど、そろそろいい加減にしてくれ


こずえ(ボット)「...んむんむ」


飛鳥(ボット)「やれやれ」


ボクは右手だけ宙に上げると、能力を行使する、まず適当に誰かの声を拾うことから始めよう

ちょっと自分の存在を疑うという嫌な思考に陥りかけたので現実逃避のついでだ

そういえばこの能力もボクらボットにとっては自分を構成する個性の一つだろう

じゃあ、それがないこずえは・・・



こずえ(ボット)「...もぐむぐ...」


飛鳥(ボット)「やめるんだこずえ。ぺってしなさい、ぺって」



こずえはボクの胸にもたれかかりながらエクステをボクの首元くらいまで口にふくみ始めていた


もうほんと勘弁して



667: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/17(月) 00:39:51.62ID:xkyajF+50





こずえ(ボット)「んむ?...んぺぇ...」

飛鳥(ボット)「・・・やっと吐き出したかい・・・ああよく考えたらボットに唾液なんてなかったね」


こずえ(ボット)「あすかー...のうりょく......つかってる...?」

飛鳥(ボット)「うん?そうだよ」


こずえはボクが不自然にあげた右手を見るとエクステを吐き出し、そう訊いてきた

ボクは普通に返答する


こずえ(ボット)「...のうりょくー...」

飛鳥(ボット)「まぁ、たいしたことない、ただの盗聴器だけどね、体がラジオなんだよ」



こずえ(ボット)「...ふーん...」




こずえはボクの首元に手を回し、ゆっくり抱きついてきた、

ボクの右胸のあたりに耳を当て、ボクの体がラジオであることを確かめようとしているようだ



668: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/17(月) 00:40:39.86ID:xkyajF+50


こずえ(ボット)「......ふわぁ...あすか...あったかいのー」


飛鳥(ボット)「はは、どうだい?ボクの能力が分かりそうかい?」


こずえ(ボット)「...んーんー...」


こずえは首を振ったけどその髪の毛も動いて首元がくすぐったい


こずえ(ボット)「ふわぁ......のうりょくー...」


こずえが耳元で囁く、こっちまで眠くなりそうだ

こずえの方はそのまま眠ってしまうつもりらしい、抱きついたまま離れなかった













こずえ(ボット)「.........いいなぁ......」




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



669: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/17(月) 00:41:13.76ID:xkyajF+50


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

次回開始するチャプターを選択してください
安価+3下

1、諸星きらり
2、渋谷凛
3、緒方智絵里

次回、優先して閲覧したい戦闘シーンを選択してください
安価+4下

4、VS塩見周子
5、VS 本田未央(ボット)&島村卯月(ボット)&水野翠(ボット)
&佐城雪美(ボット)&市原仁奈(ボット)&古賀小春(ボット)



画像コメントありがとうございました



670:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/17(月) 00:42:39.26 ID:DChVxXGmO

24



671:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/17(月) 00:43:58.58 ID:RiVYlwwm0

24



672:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/17(月) 00:51:39.24 ID:ehqT8KQx0

25



673:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/17(月) 00:51:47.16 ID:3xrHiWXQo





674:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/17(月) 00:52:56.75 ID:HJ2jfFh00

14



676: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/17(月) 23:34:53.88ID:xkyajF+50

8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞
∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8
8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞
∞8∞8チ8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8
8∞8∞8∞8∞8ャ8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞
∞8∞8∞8∞8∞8∞8プ8∞8∞8タ8∞8∞8∞8
8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8ー8∞8∞
∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8
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∞8∞8渋8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8
8∞8∞8∞8∞8谷8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞
∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8
8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞
∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8
8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞
∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8凛8∞8
8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞8∞



677: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/17(月) 23:35:42.80ID:xkyajF+50


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


凛「・・・つ・・・」


だるいような、重いような

ついさっきまで熟睡していたところを無理に起こされたときみたいに頭がぼんやりする

目の前には真っ赤な空



凛「・・・・・・えっ!?」


慌てて起き上がった、何が起きてるの?

まず思い出そう、順番に


私は最初、武器になるものを求めて目に付く限りで一番大きなビルに入った

そこで、まるで尾行されてたみたいなタイミングで晴と舞が乱入してきたんだ

その後ありすに私のピアスを見せられて、それを追いかけることになった

多分ピアスを囮に私を罠に嵌めようとしてたんだろうけど、それでも私は追った


そのあとありすたちは私を罠にはめる前にビルから飛び降りて、

私も手近な机と一緒に飛び降りた、で、舞の小さい一輪車の上でピアスを取ろうとして

どこからかあずきが現れて、ピアスを持ったまま逃げちゃったんだ



ちがう、それよりももっと大事なことがあるだろう

私はビルから落ちたはずだ、少なくとも地上10階以上の高さからあのまま地面に叩きつけられていたはずだ




678: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/17(月) 23:36:39.99ID:xkyajF+50



私は周りの風景に目をやる


太陽の位置は見えないけど、空の色から今が夕暮れなのはわかる

私が倒れていたのはどこかの野原、草原みたいな場所で、地平線までずっと一面が真緑色だ


空は真っ赤で地面は緑色


ほかには何もない、遠くにビル群が見えるわけでも、山や小屋すら見えない


凛「もしかして、私・・・ゲームオーバー?」


そうだとするなら納得がいく、

ゲームに入るときは文明的な電車、ゲームから出るときは何もない草原で待機




凛「あーあ、結構頑張ったと思ったのにな・・・」


そのままゴロンと雑草の絨毯に背中を横たえても良かったけど、さっきまで寝てたみたいだし私は起き上がることにした


ついでだからこの野原がどのへんまで続いているのか気になったから見てみようと思ったのもあるかな


凛「へー、誰もいないね、私が一人目の脱落者だったのかな」


そう考えるとちょっとショック、私の頑張りはみんなのより負けてたってことだし


私の靴の下で草がしなっているのが靴裏を通して伝わってくる。

さっきまでコンクリートジャングルを走り回っていたから、ちょっと新鮮


凛「・・・・・・あれ?」


最初何かの板が立てられているのかと思った

草原の真ん中にポツンとつっ立った分厚い板


近寄ってみるとそれが扉だとわかった、でもほんとにただの扉ってだけでどこかへの入口には見えない



だってドア枠に戸がはまっているのが置かれているだけ、どこでもドアみたいなものだった

試しにドアノブを回してみたけど、鍵がかかっていた、いや鍵の意味はないと思うけど・・・



凛「・・・ワープゲート?」


この扉を開くと光に包まれてどこか別の場所に着いたりするのだろうか?



679: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/17(月) 23:37:51.74ID:xkyajF+50



ドアノブの上には鍵穴があった、

よく見ると全体的に細かい装飾品で飾られた扉は鍵穴の周りにもおしゃれが施されていた


この鍵穴の周りをふちどる模様は・・・ハートマークが4つ円を描くような、この草は


凛「・・・クローバー・・・?」

しかも四つ葉

思い浮かぶのはキュートアイドルの一人、緒方智絵里


なんだか違和感がある。

ここはゲームオーバーの人が来る場所のはずでしょ?

どうして一人のアイドルを連想させるようなものが・・・




凛「あれ・・・・・・・・・ありす?」



ドアノブの鍵穴から目線を上げたことで少し離れたところに誰かの背中が見えた


視界中にひろがる緑色の中、ポツリとありすの上着の、落ち着いた色だけが浮いている


私は慎重に近づいていく。どうやら倒れているようだけど、油断はできない

ありすにはゲーム内で一杯食わされてるからね、晴や舞にも気を付けないと、近くにいるかもしれない



こつん



足に何かがぶつかる、私の靴のつま先がタブレットを踏んでいた。

たしかありすが抱えていたものだ

その電源はまだ生きているらしく、画面には赤丸が1つと青丸が3つか4つほど表示されていた



凛「なるほどね、これで私を尾行できたんだ」



見た感じプレイヤーとボットの位置をGPSマップみたいに知ることができる能力、あるいはアイテムだったんだろう

まあ、ここには緑の草原と赤い空しかないからもう必要ないかな



680: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/17(月) 23:38:39.41ID:xkyajF+50



ありすの背中に視線を戻す、

あれ、よく見ると


凛「上着だけ・・・?」


ありすの上着だけが草原にかぶせるように落とされている

暑いから脱いだのかな、よく見るとその近くには晴のかぶっていた帽子があった

他にも舞が乗っていた一輪車、これはまた少し離れたところにあったのでありすの上着に近づいたときに見える位置に転がっていた


凛「ボットもゲームオーバーになるとここへ送られるのかな」


で、そのあと上着を脱いでどこかに行ったみたいだね、草しかないのに


いやここからは見えないけどもしかしたら斜面の向こうとかに何かあるのかな


どっちにせよ行儀悪いな、脱いだら脱ぎっぱなしなんて、

仕事に使った衣装をきちんと畳んでいた三人の姿を思い出す、

ああ、あれは現実の方のありす達だったね


私はなんの気無しにありすの上着を手でどかした、

もしかしたら、ありえないけど、あのピアスがあったりしないかなと思ったというのもある


すると上着に隠れるように、ありすの着ていた服一式がスカートも含めて落ちていたのがわかった


・・・ありす、いま全裸?


よく見ると晴の帽子の近くにもボーイッシュな、というかまんま男物の服がまとまって落ちているし

舞の身につけていた衣類も一輪車の下敷きになっていた


凛「なに?・・・ボットは服を残して消滅するの?」

あるいはどこかで三人が水浴びでもしてるの?



681: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/17(月) 23:39:31.06ID:xkyajF+50


ぶちっ



無造作に脱ぎ捨てられていた服を引っ張り上げようとしたとき

そんな音がした


凛「・・・・・・?」


服が重い、じゃなくて服に何かが引っかかっている



ぶちぶちぶちっ



紐が切れるみたいな音が連続する

服が地面に縫い付けられているのだろうか


凛「・・・ふんっ!」



ぶちちちちっ!



思いっきりありすの服を引き上げた

ありすの服にまとわりついていたものが一気に断ち切れていく




根っこ



細い細い根っこが


何本も何本も何本も何本も何本も何本も
何本も何本も何本も何本も何本も何本も
何本も何本も何本も何本も何本も何本も
何本も何本も何本も何本も何本も何本も



服の”中”から生えていた




ああ、違う、



地面から生えた根っこが

服の中に侵食していた



まるで服の持ち主を養分にするように



682: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/17(月) 23:41:08.79ID:xkyajF+50




おそまきながら私は悟った

ありすも晴も舞もどこにも行ってなかった

どこにも行けなかった

服を着てここにいた




でも服の中身は既に何も残ってない



凛「・・・・・・・・・・・・」




中身は多分もうこの世界にもない




私はその場にペタンと座り込む、呆気にとられていた

私の推測でしかないとはいえ、目の前の状況がその推測に疑わしさを感じさせない



地面に座り込んだおかげで私はやっと気づいた



この草原、野原、雑草


よく見ると全部、クローバーで出来ていた






ハートマーク型の三枚の葉をつけた小さな草が

地平線までの地面すべてを覆い尽くしている



私以外はみんなこのクローバーに、喰われていた



空は赤い、血のように



そして

座り込んだ私の足に、一本の細い根っこが絡みついた






ゲーム開始?分経過

【ERROR!】



683: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/17(月) 23:42:11.65ID:xkyajF+50


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

チャプター
輿水幸子&白坂小梅&星輝子


幸子「いまですよ!!」

小梅「う、撃っちゃう?」

輝子「ヒャッハァア!!よくもやってくれやがったなぁ!」


目の前には倒れふした恐竜こと市原仁奈、小梅と輝子はそこに銃を向けている

この隙に攻撃を加えるつもりなのだろう

幸子「ちょっと待ってください!下手に当ててもこの分厚い肌には効きそうもありません!」

小梅「じゃ、じゃあ仁奈ちゃんの顔を、撃つ......」

輝子「う、うめちゃん...こ、こわい」

幸子「た、確かにそこしか有効な一撃は与えられそうにありませんが・・・」


だが、倒せるのか?当てられるのか?

そもそも目の前の巨体はうつ伏せに倒れていて仁奈の顔の部分は見えない

このままでは何もできずに仁奈が起き上がるのも時間の問題だろう

その証拠にティラノサウルスは2本の足だけでなんとか起き上がろうともがき始めていた

仁奈(ボット)「よくもやってくれやがりましたね・・・・・・」


幸子「・・・!!二人とも!やっぱりここは一旦事務所に駆け込みますよ!」

小梅「え・・・?」

幸子「こんなデカブツ相手にしてたら下手すれば弾切れです!まだ事務所にいるかもしれない敵の方が倒せる可能性は高いです!」

輝子「じ、事務、所・・・?」


幸子「えぇ、おそらくこのタイミングでの攻撃の数々、誰かが事務所からボクらを遠ざけようとしているに違いありません!」


小梅「...あ!そ、そっか...」



684: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/17(月) 23:42:54.68ID:xkyajF+50



得体の知れない炸裂する星、そしてそれに乗じた力押しの強襲

今までほとんど接触のなかったボットから畳み掛けるような二連撃

明らかに狙ってきている


幸子「だから、仁奈さんが起きる前にボクたちの方から事務所を襲撃してやります!」

小梅「わ、わかった!」

輝子「フヒッ!」

仁奈(ボット)「に、逃げやがりますか!?」


一目散に自分から離れていく小さな三人に未だにうまく起き上がれないまま仁奈が吠えた

輝子「フハハハあばよ!」


ぱちーん!


ミニキノコ「?fff」

トコトコトコ

仁奈(ボット)「はい?」



はなれていく際にせめてもの仕返しと輝子が自身の能力によるキノコを向かわせた


仁奈(ボット)「こんなのがなんでやがりますか!」


パクッ

ミニキノコ「f!f」


だがそれはティラノサウルスの着ぐるみに飲み込まれた


輝子「ノォオオオオオオオ!!マイフレェンド!!」


幸子「何遊んでるんですか輝子さん!!」

小梅「は、はやく...」



685: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/17(月) 23:43:43.35ID:xkyajF+50



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




翠(ボット)「.........」



深呼吸


脱力


集中


弓を構える


腕を水平に



翠(ボット)「.........」



矢を添える


矢尻を握った手が耳元に来るまで引く


目線はまっすぐ


狙いを定めて


呼吸を止める




まずは止まった的から

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



686: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/17(月) 23:45:27.51ID:xkyajF+50


カランカランカランカランカランカラン!


次の異変に気づいたのは幸子だった


例えるなら流れ星、

さっき自分たちの妨害をしてきたあの星型のディスクが、地面を滑るようにこっちに向かってきたのだ


幸子「はぁ!?なんですかあの星、勝手に動く機能もついてるんですか!?」


小梅「...え?あ、前からも星...」

輝子「でも、今度はよ、よけられそう...」

事務所と、そこへ向かう幸子たちの間を地面を這いながら一直線に星は進む

てっきり地雷のように隠して使われると思っていたあの星が、意思を持ったかのように幸子たちを狙って直進してきている

だが、決してよけられない速度ではない


幸子「ふふん!どうやらボットの方も頼みの仁奈さんが倒れ、ネタ切れのようです、ねっ・・・と!!」

タイミングを見て走りながらジャンプ、幸子の小さな足の下を星が通り過ぎていく

小梅「うわっとと...」

小梅もぴょんと跳ねて星をスルーした

輝子「ヒャッハアアア!!クリアァ!」

星から攻撃を喰らっていた輝子も怖気づくことなく飛び越える


幸子「さぁ、また次の星が流れてくるまでに行きますよ!銃の準備はいいですね!」

輝子「お、おっけい...!」

小梅「は、ハンドガン...い、いつでも、撃てる」

幸子が振り返り、後続の二人が無事だったことを確かめ、攻撃の意思を新たにする

幸子「じゃあ行きますよ!!」

事務所まであと30メートル

そして前を向いてまた走り出そうとしたところで



カツッ!!




空気を切り裂く音を聞く暇もなく矢が一本突き刺さる

輝子「フヒイ!?」

小梅「さ、さっちゃん...!?」



687: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/17(月) 23:46:02.46ID:xkyajF+50



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


残心




翠(ボット)「・・・・・・・・・ふぅ」




止まった的は当てられた




次の動く的の相手もこれで問題はない




一息




次の矢を手に





残りは二射

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



688: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/17(月) 23:47:15.26ID:xkyajF+50


幸子「・・・・・・・・・あれ?」


矢は幸子には当たっていない。その足元より少しだけずれた地面に突き立っていた


小梅「よ、よかった、さっちゃん死んじゃったかと思った」

輝子「弓矢を使うアイドルって......み、翠さん?」


かといって自分のすぐそばに矢が突き立てばド肝を抜かれるだろう


幸子「ふ、ふふ、ふふん・・・!か、カワイイボクには矢もあああ、当たりませんょ!」


ここで威勢良く振舞うあたり彼女もただものではない

輝子「げ、限界ギリギリ...の、ロケでも、なんだかんだで無事な、さ、さっちゃんだもんね...」

小梅「い、いつも...体、張ってるもんね...」

幸子「ふ、ふん!さあもう事務所は目と鼻の先です!しかし弓矢というと翠さんですね。全く!ボクを狙おうとするなんて!」


そして幸子を先頭に三人はまた走り出す、早くしないと仁奈が起き上がってしまう


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

幸子を始めとした三人は、一つ誤解をしていた



水野翠の趣味は「弓矢」ではなく「弓道」であるということだ


彼女は武力をふるう武器ではなく、競技の道具として弓を引いている


ときに天然と称される彼女の性格は真面目にして実直、そして規律を重んじる



そんな水野翠をモデルにしたボットが、人間を狙って矢を放つわけがない



だから彼女は矢を外してなどいない

彼女は狙い通りの的に矢を当てていた



規律と反省と二律背反

《規律反背》

発動



689: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/17(月) 23:48:44.10ID:xkyajF+50

幸子「あれ?」

それに気づいたのも幸子が最初だった

というか最初に翠の能力の範囲内に踏み込んでいたのも幸子だった


小梅「さ、さっちゃん...?」


輝子「ど、どしたの...た、立ち止まって...」


幸子を追い越してしまった二人がそこで立ち止まり、振り帰る


幸子「・・・いや、よくわからないんですけど・・・足が・・・あれ?」


足が動かない、いや動きはするのだが、前に進もうとすると進まなくなる


小梅「あし...?」

輝子「フヒッ...さ、さっちゃん!?そ、それなに...?」

小梅「え...」

次に異変に気づいたのは輝子だった、幸子の足元を凝視している

小梅も遅れて気づく



それは的だった

弓道で用いられる、白地に黒線の同心円が描かれた的


直径にして1メートル程のそれが地面に出現している

先ほど地面に刺さった矢を中心に

幸子はその模様を踏んでいた


いや逆だ、

翠は、幸子がその的を踏むような位置に矢を放っていた



翠(ボット)「弓道の遠的競技においては、射手と的の距離は一般的には60メートル」



翠(ボット)「しかし幸子さんたちは射手、つまり私に対して距離が近づきすぎです。反省してください」



翠(ボット)「...そして、規則と規律を以て、きっちり60メートル先まで離れてください」



690: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/17(月) 23:50:20.47ID:xkyajF+50


ぐぐぐっ




幸子「わわっ!?」


小梅「!?」

輝子「フヒッ!?」


地面に描かれた的の模様が動き出す、

その上の幸子も同様に、引きづられるように地面を滑り出す

事務所から離れていく、直線距離にして60メートル地点を目指してズルズルと


幸子「ちょ、なんですかこれ!?足も地面から離れません!!」

小梅「さっちゃん!」

輝子「つ、捕まって...!」


二人を置いて一人後ろへ引っ張られていく幸子の手を慌てて掴む、

だが小梅と輝子が非力なのか能力が強力なのか、幸子はやはりズルズルと事務所から遠のいていく


三人まとめて離れていく

小梅「ん、ん~!!」

輝子「ファッキン!!止まりやがれコンチクショオオオオオオ!!」


幸子「ま、まってください!!このままじゃ小梅さんたちまで矢に狙われてしまいます!!一旦はなれ」




カツッ!



小梅「わっ...!」

輝子「う、うめちゃ」



カツッ!




最初に小梅のすぐ後ろに矢が刺さり、慌てて飛び退いた輝子の足元にもまるで影を地面に縫い付けるように命中した


幸子の時と同じように二人の足元にも的の模様がにじむように現れる

こうなっては足を踏ん張って幸子を引っ張り戻すことなどできない

ズルズルと三人仲良く引きづられていく



691: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/17(月) 23:51:57.53ID:xkyajF+50


幸子「わ、わわわわわ!」

小梅「...み、見えない、何かに、あ、足引っ張られてる...ホラーみたい...」

輝子「ファァァァァァァアァック!!!」



人がルールに沿って自発的に動くのではなく

ルールが人を強制的に動かすという不条理

規律を重んじるが故に生じる横暴 という二律背反



最初の一射は囮として《ミツボシ効果》の星を動かし

残りの三射で三人の動きを射止めた


幸子「ど、どうなってるんですか!何が起きてるんですか!」

小梅「ね、ねぇ、...じ、事務所から離れる、ってことは...」

輝子「こ、これ...や、やばいやつだ...フヒ」


事務所から離れていく。元いた所へ押し戻される


そしてその場所には









仁奈(ボット)「ふっふっふ・・・お帰りなさいでごぜーますよ!!」





ゲーム開始47分

輿水幸子&星輝子&白坂小梅

VS

本田未央(ボット)&島村卯月(ボット)&水野翠(ボット)
&佐城雪美(ボット)&市原仁奈(ボット)&古賀小春(ボット)

《規律反背》《ミツボシ効果》《U=パーク》《M・M・E》発動中


継続中

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



693: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/17(月) 23:53:08.41ID:xkyajF+50


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ゲーム開始40分経過


音葉(ボット)「..................」


ふわりふわりと、燃え上がるように赤い翼を生やしたまま音葉は滞空している


視線は眼下二十数メートル、神谷奈緒が落ちていった先を見つめている


音葉(ボット)「(......加蓮さんの殺意の音、銃声が当たる前...奈緒さんは身を捻っていた)」


音葉(ボット)「(もしかしたら、致命傷は避けていたのかも...しれません...)」


崖の下は大した本数ではないとはいえ、何種類かの樹木が植えられ、上空からは葉に邪魔され様子が伺えない


厄介な場所な所に転げ落ちられた、木々の枝の鳴る音に遮られ奈緒が音を発しているのかも見えない




マキノ(ボット)「.........最後の一撃に加え、この高さからの垂直落下、まず助かりはしないでしょう」




音葉から少し離れた場所、さっきまで音葉と奈緒が戦っていた道路に当然のようにマキノがいた

その姿はホログラムのように頼りなく、その姿は背後の風景すら透けて見えていた

まさに蜃気楼だ、実体がない



694: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/17(月) 23:54:04.48ID:xkyajF+50



マキノ(ボット)「お疲れ様音葉さん。奈緒さんを倒したようね。本来の目的だった足止め以上の戦果だわ」



音葉(ボット)「...完全に、とどめがさせたわけではないので...もしかしたら...生きているのかもしれません...」

マキノ(ボット)「それならそれでかまわないわ。トライアドの結成自体は十分妨害できたのだから」

マキノ(ボット)「私は一度拠点に戻って、飛鳥さんから拓海さんの戦況を聞いてくるわ」


音葉(ボット)「...わかりました......私も戻ります.........」


そこで空中にいる音葉はマキノをじっと見つめた。うっすらと道路のアスファルト模様が透けて見えるマキノを

マキノ(ボット)「?...音葉さん...どうかしたの?」


音葉(ボット)「いえ...ただ、」

音葉(ボット)「...その姿の時のマキノさんから聞こえる音は、とても...視え辛くて、それが物悲しいと思っただけです......」


マキノ(ボット)「?...そう。たしかに論理的に考えて今の私は存在が希薄なのだから音も同じということなんでしょうね」


どこか悲しげに告げる音葉に対してマキノは理知的な表情を崩さず応える


マキノ(ボット)「では、私はこのまま失礼するわ。拠点で会いましょう?」


ブンッ、とマキノの姿がそこから掻き消える


音葉(ボット)「............」


拓海のバイクの排気音から生成した翼はまだ背中に残っている

やはりバイクも然ることながら拓海本来の持つエネルギーの大きさもあったのだろう

音葉が戦闘を行うにあたって、
音葉の能力が使える範囲内に音を届けられる拓海を送り込む。

だれの立案だったか。とにかくこれで拓海も無事に拠点に戻れば作戦は十全に成功なのだろう





695: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/17(月) 23:55:18.70ID:xkyajF+50



音葉(ボット)「......」


最後に奈緒の落ちていった小さな林を一瞥して、音葉は赤い翼をはためかせた


雑多な音にまみれたこの戦いはいつまで続くのだろう



音葉はそんなことを思いながら街の方向へ、ビル群へ向かって飛んでいく







ぐっ



一瞬、後ろから引っ張られたように感じた



音葉(ボット)「...?...」



体が動かない




力が抜ける



音葉(ボット)「......これは...」



何の音もない



胸、心臓のあたりに鈍いしびれ




696: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/17(月) 23:56:24.63ID:xkyajF+50



何の音もない




音葉(ボット)「...撃たれ...ました...?」



何も聞こえない



音も届かないほどの遠くからの攻撃、



銃声もすぐには届かない距離からの狙撃



背中から生えた翼が散り散りにバラけていくのが分かった



何も聞こえない



何の音もない




ぐっ



ぐっ



また後ろに引かれるような、

いや、前から後ろへ突き抜けていくような衝撃が二つ




音葉(ボット)「......何も...聴こえません...見えません」



落ちていく



奈緒とはまた違うところへ


小さくほどけた赤い羽を空へ撒き散らしながら


堕ちていく



697: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/17(月) 23:57:35.55ID:xkyajF+50




ターーーーーーーーーーーーン・・・・・・



ようやく、

遅れて

音が音葉の耳に届いた





音葉(ボット)「_____ああ____」



その音が、音葉が最後に見た音になった



排気音の翼よりもずっとずっと赤い


銃声の殺意よりもずっと透き通っている


奈緒の不屈の声よりもずっと頑強だ


誰のものでもいい


宝石などでは例えられない音、


そんな殺意の銃声






音葉(ボット)「_________なんて、美しい____」



これほどの美しさ

是非、他の人にも見せたかった___



ターーーーーーーーーーーーーーーーン・・・




ゲーム開始43分経過

梅木音葉(ボット)消失


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



698: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/18(火) 00:04:23.83ID:XGfqK98T0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
当たり所によっては割とすぐ死ぬ



次回開始するチャプターを選択してください
安価+3下

1、三好紗南
2、双葉杏
3、北条加蓮

次回、優先して閲覧したい戦闘シーンを選択してください
安価+4下

4、VS塩見周子
5、VS 本田未央(ボット)&島村卯月(ボット)&水野翠(ボット)
&佐城雪美(ボット)&市原仁奈(ボット)&古賀小春(ボット)


コメント本当に本当にありがとうございました



699:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/18(火) 00:05:34.77 ID:YmmRGadD0

24



700:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/18(火) 00:06:39.51 ID:ah1wPTzC0

35



701:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/18(火) 00:07:11.71 ID:7c/88Ve6O

24



702:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/18(火) 00:07:18.02 ID:3Oz697aDO

35



703:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/18(火) 00:07:24.12 ID:pA4DsJhko





704: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/19(水) 00:11:36.11ID:s1OnGM4k0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
双葉杏


??「..............はぁ」

私は自分のスタミナを確認します



また......維持コストがかかってるんですけど


私のスタミナ......ガンガン減ってるんですけど


このままでは私はプレイヤーと戦う前に自分の能力で自滅しちゃう流れなんですけど


何がボットですか。


かなり都合よく振り回されてる感が否めないです


晶葉さんは何を考えてこんな能力を私に与えたのでしょう


私はもっとのんびり、いえむしろ何もせず静かに仮想空間ライフを送りたかったです


ああ、またスタミナが勝手に減りました


早いとこ能力を使って回復しないと


能力の副作用のせいで減り続けるスタミナを能力で補充する。


これあれですよね、マッチポンプ?とかいうやつですよね



森久保乃々(ボット)「何なんでしょう......いえもう本当に」



705: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/19(水) 00:12:07.85ID:s1OnGM4k0




もたれかかった樹木のザラつきを後頭部で感じます

私は今、公園の茂みの中に座り込んでいます。身を隠しています



乃々(ボット)「......杏さん、ですか...」


茂みの間からベンチに無防備に寝っ転がった杏さんの姿が見えます

どうしてボットまで一緒になって寝ているんでしょうか


同じボットの私はこんなに色々悩んで迷って疲れているというのに



乃々(ボット)「...でも、杏さんに能力を使うわけにはいきませんし...」


まず間違いなく使っただけ私が損をする、


そうですね、せめてもう少し活動的なプレイヤーがいいですね、能力を使うなら




乃々(ボット)「............っぁ......」




また私のスタミナが減りましたね。お胸がチクチクします


これというのも私の能力のせいです


私の能力が最初、あんなものに自動発動したのがいけないのです


あんなものを取り込むから、こうして維持コストとして私が犠牲になるのです


早く条件にあったプレイヤー来ませんかね


え?もりくぼが自分の足で探しに行けって?



むぅーりー




706: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/19(水) 00:12:55.21ID:s1OnGM4k0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

杏「ところでさー」

杏(ボット)「なにー?」

杏「あんたさ、ほんとに何もしないでいいわけ?」

杏(ボット)「働けと?この杏に働けと?もう十分やったよ杏は」

杏「そーだっけ・・・」

杏(ボット)「ほら、オリジナルの杏に能力伝授したじゃん」

杏「いや、たまたまじゃん」


杏たちは別々のベンチに寝そべってい同じ空を見上げながらまどろんでた

ボットだかロボットだかに眠るなんてことがあるのか疑問だけど


杏(ボット)「ん、いやいや、ボットたちも戦うだけが能じゃないんだよ」

杏「は?」

杏(ボット)「たとえば練習用ボットは戦うことよりもプレイヤーをこの世界に慣れさせるほうが目的だし」

杏(ボット)「それに今にして思えば杏の仕事はオリジナルの方の杏に能力を与えるのが仕事だった気がする」

杏「さっきも言ってたけど、なんでそれが仕事なのさ。キーアイテム?・・・とかって自分で探すのがセオリーでしょ・・・」


杏(ボット)「んー、ほら。杏は怠けてキーアイテムなんて探さないと晶葉が判断したからじゃない?」



707: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/19(水) 00:13:41.19ID:s1OnGM4k0


杏「うあ、納得してしまった。プロデューサーも一枚噛んでるね、それ、」


会ったことないほかのプレイヤーよりいきなり有利だと思ったらこういうことか


「ちょっとオマケしてやるからちゃんと頑張れよ」


プロデューサーが呆れ半分にそう言ってくる顔が浮かんだよ今

こんな得体の知れない空間の中でもあの人の顔を思い出すのには苦労しない

割と長い付き合いだからなー・・・


・・・・・・・・・。




杏「・・・・・・・・・うあー」


ベンチに背中をこすりつけるようにしながら体を起こす

寝に入るトコだったから余計に重労働だよ


杏(ボット)「え、何、起きるの?やる気出したの?」

杏「んーにゃ、体起こしただけ」


・・・とりあえず、だよ

全く何もせずに寝ちゃうのだけは勘弁しといてあげよう


後頭部をベンチの背もたれの上に乗せる。自然顎が上がり、空を見上げる形になった


とりあえず、そうだね・・・誰かほかのプレイヤーが来たら運んでもらうことにしよう




足音



きらり「うっきゃー!!見覚えのある後頭部だと思ったらやっぱり杏ちゃんだにぃー!!」



マジか



きらり「ユッコちゃんの言うとおりに進んだら杏ちゃんに会えたにぃ!さいきっくぱわーすごいにぃ!!」



何してくれてんだあの似非サイキッカー



708: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/19(水) 00:14:21.42ID:s1OnGM4k0




杏の視界に逆さまに飛び込んできたのはプロデューサーに並んでよく見知った顔、きらり

いつの間に、とか、きらりもプレイヤーだったの、とかユッコがなにしたのか、とか

きらり一人現れただけで杏の頭にクエスチョンが複数突き刺さったけど、それもきらり本人にブッ壊された


きらり「わーい!杏ちゃーん!おっひさー!!」


杏「のわっ!?ちょ、ちょ、きらり!?いきなり後ろから持ち上げられると怖い!」


きらりは感極まったみたいに杏を持ち上げると自分の頭よりも高く掲げた。

さっきまで寝ていたベンチが遥眼下に落ちていくような錯覚

このままでは、流れるように強烈なハグが待っている

力加減さえしてくれればきらりのハグも結構気持ちいいんだけど、テンションマックスのきらりにそれは望めない


杏「違うから!!違うから!!もうホント違うから!!こっちがボット!!あっちが本物だから!!」


杏(ボット)「っは、はぁ!?何言ってんの!?」


きらり「にょ?」


もうひとつのベンチで唖然とこっちを見ていたボットの杏を指差す、きらりの視線もそっちを向く



きらり「・・・・・・・・・・・・・・・」



きらり「・・・・・・・・・・・・はぴ?」


杏がふたりいる光景を目の当たりにしてきらりの動きが止まる。思考停止みたい


杏はきらりの腕の中、いまならそれほど力もこもっていないから抱かれてる側としては割と居心地がいいね


きらり「にょわー!!!杏ちゃんが二人だにぃい!!ダブル笑顔だにぃ!」


ぐえっ



杏(ボット)「なん・・・だと・・・?」


きらり「ダブルでドーーーン、っだにょわーー!」


難しいことを考えるのはやめたらしく次の瞬間きらりは杏とボットの方の杏を両手で抱えていた

いや、ぶっちゃけ締め上げられてる



709: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/19(水) 00:15:31.28ID:s1OnGM4k0



杏「き、きらり・・・ストップストップ・・・ゲームだから痛くないけど締まってる締まってる・・・」

杏(ボット)「いたたたたたた・・・あ、」

杏「ちょ、あんた体消えてるけど!?」

きらり「にょわにょわ~杏ちゃん会いたかったにぃ♪」


きらりの絞め上げがダメージとして換算されているのかボットの体が消えかけていた

た、たしか練習用ボットは体力が少なめなんだっけ?


杏(ボット)「あ、杏はここまでだ・・・あとは任せた、ぞ・・・ガクッ」


杏「あ、杏うううううう!?」


きらり「にょ!?杏ちゃん一人になっちゃったにぃ?」


ようやく落ち着いたらしいきらりが杏を胸元に抱え直した、きらりと目線がかち合う


杏「えっと、さっきのは杏のボットだったから・・・だから消えたわけね」


きらり「そうだったのかにぃ・・・きらり、ひどいことしちゃった?」

杏「あーいや、あいつの役目はとっくの昔に終わってたはずだから、あれでよかったんだよ・・・」

きらり「?」

さらば、ボット杏、あんたは勤勉だったと杏が明日まで語り継いであげよう

杏「いや、なんでもない、じゃ、きらり行こっか。杏のことおぶってよ」

きらり「!・・・がってんしょーちにょわ!」

さて、えらい出来すぎなタイミングだったけど仲間もみつけたし、

ちょっとだけ、ほんのちょっとだけプロデューサーの期待に応えて仕事してあげようかな







乃々(ボット)「きらりさんとか............ナイスタイミング、なんですけど」



ゲーム開始36分経過

双葉杏(ボット)消失

諸星きらり&双葉杏VS森久保乃々(ボット)

開始


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



710: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/19(水) 00:16:27.22ID:s1OnGM4k0



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
輿水幸子&白坂小梅&星輝子


Make More Effort

縮めて M・M・E

二宮飛鳥はこれを「もっと頑張る」の英訳として能力名にした

まぁ中二の英語力ゆえにこういう結果になったのだろう


島村卯月の能力は極めて単純、普通、なんの変哲もないもの

それゆえにどんな使い方でもできるのだ


”他人の能力を強化できる能力”というのは


未央の《ミツボシ効果》は最初その名のとおり星型のディスクを三つしか出現させられなかったが《M・M・E》によりその限界量を大幅に超えて能力を行使できている

また仁奈の《U=パーク》も着ぐるみでありながら本物のティラノサウルスばりの力を振るうことができるのは卯月の能力に依るところが大きい

もしかしたら雪美の《黒猫電話》に何らかの変化が起きたことすらその能力の影響だたのかもしれない


ただし例外として《規律反背》で用いられる矢の本数を増やすことはできない

これはルールとして弓道の一試合に用いられる矢が二射または四射と定められていることによる

規律を重んじる能力がゆえに融通が利かないのだ


四本の矢を放ったあと次の矢を放つためには一度、能力をすべて解除する必要がある


翠は、一本は星型のディスクを滑らせることに

残りの三本は幸子と小梅と輝子に一本ずつ使っていた


これなら四本で十分だろう



711: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/19(水) 00:17:24.10ID:s1OnGM4k0



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

卯月(ボット)「やった!!あの三人を捕まえたよ!!」

未央(ボット)「翠ちゃんナイス!」



矢を放つことに集中していた翠を邪魔しないように部屋の隅にいた二人が戻ってくる


翠(ボット)「ふぅ......ギリギリ四本で事足りましたね。」


窓際にいた翠が弓を下ろす


窓の外には地面に足を縫い付けられたようになった三人と、その三人を誰から順番に食べてやろうかとティラノサウルスの気持ちになって吟味している仁奈がいる


翠(ボット)「この能力がある間、対象は60メートルより近づくことも遠のくこともできません、ピッタリ60メートルで固定されます。逃走は不可能でしょう」


未央(ボット)「すごいよ翠ちゃん!やったね!初戦にして大勝利だよ!」

卯月(ボット)「さすが、未央ちゃんと翠ちゃん!」

翠(ボット)「い、いえ、雪美さんや卯月さんのサポートも欠かせない要素でしたよ」

卯月(ボット)「え?・・・え、えへへぇー♪」

小春(ボット)「私の出番がなさそうなのが残念です~」

未央(ボット)「あ!ごめんね小春ちゃん!でもこれからもっと強いプレイヤーが来るときにまた頼むね!」

小春(ボット)「はい~わかりましたです~!」

ヒョウくん「・・・・・・」


あとは仁奈が三人を屠ればまずは一勝だ。


卯月(ボット)「・・・・・・勝てたよね?」


ボットの一つ一つの能力は癖が強すぎて使えなくとも、

目的と協力しあえる仲間がいればプレイヤーを圧倒することも可能。


未央(ボット)「・・・・・・うん」


論理的に効率化を図ればどんな能力も何らかの使い道がある。


マキノから協力を提案されたとき、そう言われたのを思い出す


小春(ボット)「・・・・・・はい~」


現に今、あの三人は手も足も出せずにティラノの顎に噛み砕かれようとしている



712: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/19(水) 00:18:42.54ID:s1OnGM4k0





翠(ボット)「・・・・・・・・・?」




はずなのに







雪美(ボット)「.........あれ...なに...?」


いつの間にか雪美も窓のそばにいる、視線は窓の向こうに向けられている








だから事務所にいた全員にその声が聞こえた








仁奈(ボット)「な、なな、なんでやがりますかあああああ!!!???」






ゲーム開始48分

輿水幸子&星輝子&白坂小梅

VS

本田未央(ボット)&島村卯月(ボット)&水野翠(ボット)
&佐城雪美(ボット)&市原仁奈(ボット)&古賀小春(ボット)

《規律反背》《ミツボシ効果》《U=パーク》《M・M・E》発動中


継続中

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



713: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/19(水) 00:21:19.02ID:s1OnGM4k0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
次回へ続く 



次回開始するチャプターを選択してください
安価+3下
1、渋谷凛
2、堀裕子
3、佐久間まゆ


次回、優先して閲覧したい戦闘シーンを選択してください
安価+4下

4、VS森久保乃々
5、VS塩見周子
6、VS本田未央(ボット)&島村卯月(ボット)&水野翠(ボット)
&佐城雪美(ボット)&市原仁奈(ボット)&古賀小春(ボット)


《CHIHIROと能力》

(安価+6までに過半数の投票で閲覧可能。別の安価との同時投票は有効)

7、池袋晶葉&一ノ瀬志希




714:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/19(水) 00:22:08.82 ID:iVaI8lsB0

147



715:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/19(水) 00:22:12.07 ID:pZCl+qoG0

1
4
7



716:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/19(水) 00:22:57.10 ID:Ip+HZDXDO

1 6 7



717:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/19(水) 00:22:58.14 ID:8UTQf2BNo






718:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/19(水) 00:34:33.51 ID:A5whgt1co

347



719:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/19(水) 01:19:50.93 ID:H5YpZhBXo

森久保乃々(14)

no titleno title



720:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/19(水) 02:26:15.94 ID:8H8u9Kqdo

147



721: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/20(木) 00:12:58.44ID:8l6SmDUn0



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
渋谷凛


ぶちっ


三つ葉のクローバーが無残に千切れて宙を舞う


凛「・・・っはぁ、はぁ・・・!」


絡みついた根を振りほどいた足とは逆の足にも根が張っている


それを振りちぎると同時に走り出す


クローバークローバークローバークローバー

どこまで行ってもそれしか目に入らない。空の赤色と補色関係の緑、

延々と見続けていると目がチカチカしてくる。だがほかに何もないのだからしょうがない


足を止めるとまた根が私めがけて動き出す。走っている間はただの植物なのに、このクローバーの根は止まっているものを養分にするようだ

ありすたちも最初は逃げ回ったのだろう、だけど限界が来た。体力の問題もあるんだろうけど、多分そう言うんじゃない


凛「どこまで行っても・・・クローバー畑しか、ない・・・」


風景になんの変化もない。こんな中、目的地もなく走り続けるなんて精神的に無理だ。ロボットなら出来たかもしれないけど、ボットたちが朽ちているのを見た限りダメだったんだろう


凛「っく、はぁ・・・」


大した距離を走った覚えはないけど、その場に疲れて立ち止まってしまう



722: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/20(木) 00:13:43.92ID:8l6SmDUn0



凛「おちつけ・・・別に、わざわざ走ることないんだし・・・歩こう」


ぶちちっ


ほんの一秒だけ足を止めて考えをまとめただけでもう両足に細い根がくっついていた


このクローバーには休ませる気が一切ない。

自分たちの上を動き回っている存在が完全に止まるまで追い回すつもりだろう

たしかそう、動物実験で兎だったか鼠を数時間にわたって眠らせないために、

ベルトコンベアみたいなところで動物を延々歩き続かせるというのがあったっけ?

私はいま仮想内だから肉体がない。

だけどあとどれくらい歩き続けられる?

一時間?十時間?一日?一年?


凛「このクローバーは・・・精神的にでも体力的にでも、私が疲れて動けなくなるまで私を追い立て続けるんだよね・・・」


まずわかっていることを口に出して確認する


凛「で、そのクローバーは今のところ、この世界すべてを覆っている・・・だから安全なエリアを探すのは難しい」

緑の大地、赤い空、クローバークローバークローバー

三つ葉、三つ葉、三つ葉


凛「そもそも・・・この世界は何?」


ビルもない、武器もない、青かった空は真っ赤、まさか第二ステージということはないでしょ

それに執拗なまでのクローバーの存在感、推測できる可能性の中で最も信憑性が高いのは



凛「・・・智絵里の能力、だよね・・・」



サッカーボールが巻き戻るだの、一輪車で壁を走るだの、尾行能力だの、鞠に変身できるだの

それどころの規模じゃない。

これはおそらく仮想空間の中に仮想空間をもう一つ作っているということなんだろう

もちろん晶葉じゃないからそれが有り得ることなのかは分からない。実はただ幻覚を見せられているだけで、私の本体(?)はまだビルから落ちたあとの地上に横たわっているという可能性もある

幻覚?そもそも仮想現実自体がハイクオリティの幻覚みたいなものだ。


だから問題はやはり脱出方法を探すことの一点だ



723: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/20(木) 00:14:25.44ID:8l6SmDUn0



私は歩きながらそう結論づける。ここはゲームオーバー後の世界じゃない

だから出口はある。ビルから落ちた私がどうなってこうなったのかはわからないけど



凛「私はまだ、終わってない」




しっかりと自分に宣言する。


私はクローバー畑の中にぐるっと大きく円を描くように歩いたあとその場所に着いた


凛「脱出に使えそうなのは、ここぐらいだよね」







どう見てもドアが枠と戸が突っ立ってるだけにしか見えないけど、仮想現実ならこの扉を開けたら出入り口、なんてことも十分ありうる

足を止めずに扉の周りを観察する

木製みたいだけど所々にあまり派手になりすぎないような金属製の装飾がされていて、

さっきは気づかなかったけどその一つ一つに四つ葉のクローバーの刻印みたいなのがついている

後ろに回り込む、このドアノブは前も後ろもドアノブに鍵がつけられているタイプだ、これじゃあどっちが入口かは分からない

鍵穴らしきところに穴の周りをふちどるようにやっぱり四つ葉のクローバー模様


凛「・・・・・・・・・」

歩きながら足元を見る、三つ葉のクローバーが私の靴に踏まれて、それでも気丈に起き上がっている


三つ葉 三つ葉 三つ葉 三つ葉


目の前の扉のシンボルは四つ葉


三つ葉ばかりの世界に一つだけ四つ葉をイメージした扉

扉の鍵穴にも四つ葉


凛「いや・・・」


凛「いやいや・・・」


凛「いやいやいや・・・まさかとは思うけど」



724: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/20(木) 00:16:06.39ID:8l6SmDUn0


足を止め、視線を上げる

見渡す限りクローバーだらけの世界


みたところ三つ葉しかない




凛「(でも、もしこの中に一本だけ四つ葉があったとしたら?)」




靴を登ってきた根が足首にまで絡みつき始めた





凛「(決まってる、その四つ葉はこの世界じゃ特別な意味を持つはず・・・)」




一瞬気が遠くなりかけたが思い直して足首に絡んだ根を振り切る


ぶちちちっ!





凛「(例えば、四つ葉のクローバーが脱出の鍵、具体的には扉の鍵になっているとか・・・)」





しかし根をちぎるために振り上げた足は次の一歩を進めない


まさかまさかと思うほどほかの可能性を信じられない、

もしそうだったと思うと足が震える、




凛「まさか、扉の鍵は四つ葉のクローバー・・・とか?」




地平線の向こうまで広がっているであろう三つ葉のクローバー畑の中で私はポツリとつぶやいた


第一問

24階建てのビルに入っている机の数を考えて答えよ

第二問

地平線まで視界を埋め尽くすクローバーの本数を考えて答えよ

第三問

その中から少なくとも一本以上、四つ葉を見つけ出せる可能性を考えよ



ゲーム開始?分経過

【ERROR!】

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



725: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/20(木) 00:16:41.44ID:8l6SmDUn0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
輿水幸子&白坂小梅&星輝子


ジメジメしたところが良い

トモダチを増やすのが良い

自分達が成長するのも良い


私たちは足を授かり移動を知り


私たちは意志を授かり希望を知り


私たちは擬似の身にて繁殖を望む



ひだの間に音を感じる

傘が誰かの声に震える

柄が悲鳴を感じ取った


あの音を知っているあの声を知っているあの悲鳴を知っている


ジメジメしたところでも、トモダチを増やしているところも、成長しているときでも


あの声は私たちに注がれていた


ゆっくりと、愛を囁くようにかけられていた声が、今は恐怖に乱されている


なんとかしなくてはこの声の主には恩がある


愛情はトモダチを通して十分に受け取った


ジメジメとは言わずとも、今の私がいるところもそれなりの湿度と温度だ


恩に報いるには余りある


授かった足に力をこめろ、柄と傘とひだを震わせろ



まずは

この着ぐるみとやらを内から突き破ってみようではないか


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

_____________



726: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/20(木) 00:17:11.84ID:8l6SmDUn0



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

_____________

 輿水幸子  210/300


_____________

_____________

 白坂小梅  210/300


_____________

_____________

 星輝子+  210/300


_____________




仁奈(ボット)「な、なな、なんでやがりますかあああああ!!!???」



身動きの取れない三人のうち、その一人輝子に噛み付いたまでは良かった

着ぐるみとはいえ《M・M・E》に強化された牙の威力は絶大だった

あとは何度か食んでいれば一人ずつ始末できたし、ユニットだったら一網打尽にできたはずだったのだ

翠の能力が発動している間、その体は60メートル地点で地面に固定されるので、噛み付いたとしてもそのまま地面から引っこ抜くことはできないが

逆に言えばどんな攻撃からも逃げられることはない。

《規律反背》《U=パーク》は一方的殲滅が可能な組み合わせのはずだった。


その着ぐるみが突き破られるまでは


幸子「輝子さん!大丈夫ですか!?いえ大丈夫じゃないですね!・・・あぁもうなんで足が動かないんですか!!」

小梅「...しょ、しょーちゃん...い、いまそっちに...あぅ、動けない...」

輝子「い、意外とジメジメしてたぜ...きょ、恐竜の、口の中ってのは」

幸子「実は割と元気なんですか!?」


ついさっきまでティラノの牙から致死級の攻撃をくらっていた輝子に二人が声をかける


そして次に、目の前で起きた激変に三人揃って目を向ける



727: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/20(木) 00:17:43.31ID:8l6SmDUn0




仁奈(ボット)「仁奈のキグルミに、なにがおきてやがりますかあぁあ!?」



ティラノサウルスそのものの巨体が悶えながら壁や地面をのたうち頭を打ち付けている


幸子たちは足を縫い付けられたままその情景を見守るしかない


幸子「あの、・・・あれって・・・」

小梅「しょー、ちゃんの.........」

輝子「フヒ...き、キノコ」







ビッグキノコ「FFFFFFFFF!」


仁奈(ボット)「ティラノのボディになんてことしやがりますかぁあ!??」


仁奈のティラノサウルス。

その喉元の布地をキノコが突き破っていた。

いや、ティラノの喉を食い破るような大きさはとてもキノコとは言えない

幸子「い、いつの間にあんなキノコ仕込んだんですか・・・?」

輝子「いや、えっと、あ...そ、そういえば...い、一匹だけ出したけど」

小梅「で、でも...な、なんでこのタイミング、で......?」

幸子「き、きっと輝子さんのピンチにキノコさんも本気を出したんでしょう!」

輝子「フ、フヒヒ、で、でもここから逃げられ...ない」

暴れる恐竜を前に三人は各々言葉を交わすしか出来ることがない

依然として足は動かないのだ。今に暴れる仁奈の尻尾が三人に振るわれてしまうかもしれない

自慢の着ぐるみを傷つけられてひどく動揺している。ボットとしては9歳児をモデルにしているのだから仕方ない


仁奈(ボット)「仁奈のティラノがぁあ!?」

仁奈(ボット)「こ、こうなったら!仁奈のとっておきの着ぐるみに着替えてやるでごぜーますよぉ!!」


だからいきなり事務所に向けて引き返し始めた、ティラノの体を振り乱しながら

それは相当の混乱の最中の判断だったとはいえ戦略的撤退だった




だが事務所からすれば見境なしの突進にしかならない



728: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/20(木) 00:18:13.65ID:8l6SmDUn0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ズンンン・・・・・・


未央(ボット)「ちょ、ちょっと!?いきなり変なきのこが生えてきたと思ったら仁奈ちゃん戻ってくるよ!?」


卯月(ボット)「あれって・・・こっち見えてないよ、ね?」


小春(ボット)「このままじゃティラノさん、事務所にぶつかっちゃいますよ~?」


雪美(ボット)「..........翠...!」


翠(ボット)「......仕方、ありませんか...」


ズンン!!


戦況は簡単に二転三転する

論理的判断だけではそれを予測するには足りなかった

ボットとはいえ中身は十代の少女と年齢一桁の子供、その揺り返しは大きい

圧倒的有利だったはずの状況から一転、味方が脅威となって自分たちを襲ってきていた



翠(ボット)「................」



その事実を重く受け止め、自分の未熟さを噛み締め、翠は口を開いた



翠(ボット)「......能力、解除...」



四射がリセットされる。そして翠の手に新たに四本の矢が現れた



ズンンンン!!!



仁奈(ボット)「に、に、仁奈のティラノを修理させてほしーですよぉお!!」



事務所に向かって巨大な恐竜が突っ込む

星型ディスクも何もかも蹴散らしながら、無我夢中で突進する


未央(ボット)「に、仁奈ちゃーーーん!!先に能力解除して!!」

卯月(ボット)「ああ!仁奈ちゃん聞こえてないよ!」

小春(ボット)「私の能力も間に合わないです~」

ヒョウくん「・・・」

雪美(ボット)「..........」


ズンンンンンンンンンンン!!!!!!!!


ティラノサウルスが転びかけながらも尻尾を他の建物に乱暴にぶつけながら無理にバランスをとって猛進する


その頑強な後足が事務所へ到達、否、衝突するまでの最後の一歩を踏み込んだ



729: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/20(木) 00:18:46.45ID:8l6SmDUn0






カツッ!!!







その恐竜の足元に矢が突き刺さる


《規律反背》再度発動




翠(ボット)「まさか、仲間に使うことになるとは.........仁奈さん...一度離れて、落ち着いてください」


膨大な運動エネルギーを持った突進が急停止する


仁奈(ボット)「な、なにしやがりますか!?」


首からキノコを生やしたティラノサウルスが後退していく。ビクともしないはずの古代の暴君が引っ張られていく





雪美(ボット)「...多分...輝子.......能力...持ってた...」

未央(ボット)「くぅ~!!油断した!!」

翠(ボット)「なんにせよ、まずは仁奈さんを介抱しないと...」

卯月(ボット)「え?幸子ちゃんたちは?」


翠(ボット)「............」

卯月(ボット)「?」

小春(ボット)「能力がリセットされた隙に逃げたみたいです~」



仁奈が引き戻された場所、さっきまで輝子たちに噛み付いていた場所には、

もう誰もいなかった





ゲーム開始50分

輿水幸子&星輝子&白坂小梅

VS

本田未央(ボット)&島村卯月(ボット)&水野翠(ボット)
&佐城雪美(ボット)&市原仁奈(ボット)&古賀小春(ボット)



プレイヤー側の戦闘放棄により続行不可能


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



730: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/20(木) 00:19:35.76ID:8l6SmDUn0



現実世界
チャプター
池袋晶葉&一ノ瀬志希




志希「泰葉ちゃんってね・・・たんぽぽみたいな匂いがするんだよ!」



晶葉「・・・・・・ここにいない人間の話をされてもな・・・」



そこは相変わらず薄暗く、

機材の山、コードの川、人が入れるサイズの大型カプセルの畑になっていた

唯一の光源、巨大なディスプレイと複数のサブ画面の前で晶葉は難しい顔を、

その後ろで座布団もしかず地面に寝そべりながら志希がゆるい顔をしている


志希「こうね、なんていうのかな?たんぽぽみたいに深く根を張ってる、というか簡単にはブレない、秘めたる心根、、そういう力強さを感じるんだよね・・・・・・泰葉ちゃんをハスハスすると♪」


晶葉「褒めるのはいいが事務所の先輩に何してるんだ君は」


志希「ん~?・・・コミニュケーション?」


晶葉「意思の疎通は双方の合意の上に成り立つものだぞ」


志希「じゃあ違うかー」


晶葉「おい、どうやって匂いを嗅ぎに行ったんだ合意じゃなかったのか!?」


志希「気分の上げ下げが激しくて自分を見失いそうになったときは泰葉ちゃんの匂いを嗅ぐといいね!」


晶葉「話をそらすな。そして誰に勧めているのだ誰に」



731: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/20(木) 00:20:10.24ID:8l6SmDUn0



そんなやりとりの間も晶葉は目の前の画面から目をそらさず、指はキーボードの打鍵を止めていない


そのまましばらくキーを打ち込む音が鳴り続ける






晶葉「・・・・・・ふぅ」


志希「おつかれー、ところで何してたの?」


一段落着いたらしい晶葉の肩に志希が顎を乗せた。晶葉は今更その程度のことには構ったりしない


晶葉「CHIHIROからいくつか不審なエラー情報が送られてきてな、こっちからいくつかコマンドを入力していたのだよ」

志希「えらー・・・?」


晶葉「ああ、プレイヤーが消えただの、ボットが消えないだのそんな内容だ。その程度のことは予想の範囲内だったから対処は易いがな」


志希「ふぃーん。・・・とゆーか、そもそもCHIHIROってなに?」


晶葉「うん?説明しなかったか?」

志希「いや、企業の人にしてたのは聞いてたけどー」

「・・・ああいう、肩書き重視の大人を相手にする用の、いちいち回りくどくて面倒な表現を使った説明じゃなくて、晶葉ちゃん自身の言葉で聞きたいなーって?」


晶葉「・・・そういう砕けた話は私の助手にしかしない」


志希「今は私が助手だよ♪・・・いやむしろ役割分担してるしー、いいじゃんいいじゃん」


志希はごろごろと猫のように晶葉の肩に顎をグリグリと押し付ける

晶葉も変に意地をはるつもりもなかったらしく、ひとつため息をつくと説明を始めた


晶葉「CHIHIROというのは、正式名称は割愛するが、仮想現実空間を観測するために私が1から作ったボットだ。」

「他のボットと違ってこいつにはアイドルの人格がトレースされてたりはしないが、こいつもれっきとした私の作品、ロボットの一つだよ」

「今回の企画にあたってはただ観測する他にもある程度の干渉を許可しているがな」


志希「干渉って何してるの?見てるだけのために作ったんじゃないの?」

晶葉「それは一応本来の役目ではあるのだが、今回は不確定要素のシュミレーションというのがある以上、見ているだけでは困るのだよ」

「世界を歪めようとする要素があれば逐次修正するか、現実にいる私たちに報告してもらわねばな」

志希「世界を歪める、というと」




晶葉「決まっている、ボットやプレイヤーが持つ能力のことだ」




「仮想現実における究極のイレギュラー、最上のバグ、不確定要素の代名詞」


「その使用による仮想空間への傷や後遺症を空間へ干渉し、是正しているのだよ、CHIHIROは」



732: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/20(木) 00:20:43.38ID:8l6SmDUn0


志希「へぇ、能力って晶葉ちゃんが作った道具じゃなかったの?」


晶葉「私が作ったのはキーアイテムだけだ。キーアイテムがどんな能力を開拓するのかは私にも分からん」


志希「?どゆこと?」

晶葉「簡単な話だ、不確定要素が見たいならその種を撒けばいい」


「キーアイテムは特定アイドル専用の、仮想空間の一部を改変するウイルスだ。」


「そのウイルスがアイドルと仮想現実の関係性を崩して作り変えることで能力は顕現する」



志希「・・・・・・おおう、つまり晶葉ちゃん、自分で自分の作ったものを壊そうとしてるわけ?」


晶葉「ばかいえ、あくまで不確定の何かを起こすきっかけのためだ、破壊ではない。取り返しのつかないレベルの崩壊を避けるためにCHIHIROと私が仮想内と現実から見ているのだよ」


志希「はへー、色々考えてるんだねー。」


晶葉「・・・それだけわかってもらえたら十分か。ちなみにこの仮想空間そのものにもなかなか面白い仕掛けがあってな・・・」



だんだん得意げになってきた晶葉が志希が聞いたこと以上の内容を説明しようとした。

が、一旦中断して画面を再確認する


そこには一つのアイコン


晶葉「ちょうどいい今私が説明しようとしていたことだ。みたまえ」


志希「ん?これって・・・」


それはCHIHIROからの、

仮想空間内の変化を報告するボットからの連絡だった



733: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/20(木) 00:21:25.19ID:8l6SmDUn0



































ゲーム開始60分経過


『夜』を開始します

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



734: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/20(木) 00:25:20.84ID:8l6SmDUn0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
泰葉ちゃんは出ませんごめんなさい



次回開始するチャプターを選択してください
安価+3下
1、北条加蓮
2、緒方智絵里
3、小日向美穂


次回、優先して閲覧したい戦闘シーンを選択してください
安価+4下

4、VS森久保乃々
5、VS塩見周子



735:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/20(木) 00:26:11.46 ID:QUpv0f5RO

15



736:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/20(木) 00:34:11.60 ID:1NshbjBl0

34



737:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/20(木) 00:39:04.93 ID:dIB7t8Tj0

1
4



738:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/20(木) 00:39:57.70 ID:bL5Z5PlGo

24



741: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/21(金) 00:26:01.20ID:ag37QSz50



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

チャプター
北条加蓮

ゲーム開始34分経過

_____________

 北条加蓮  80/100 


_____________



空が青い


仮想空間だからもっと奇抜な色でも面白かったかもしれないのに

まぁ、緑とか黄色の空じゃあ、こうやって縁側に座って見上げるには不合格だろうけど


加蓮「あー、つかれた」


拓海さんを倒してから大体十分後くらいに

アタシは休憩していた

住宅街から脱出することも考えたけど、銃弾のストックもないままにフラフラするのは危険だったから

手近な家、田舎に帰ればありそうな和風の木造建築に入り込むとその縁側で足のしびれが引くのを待ち、呼吸を整えた

都会っぽいところと田舎っぽいところが混在していて、そういう不自然なところがここが仮想であることを再認識させてくれる

ちなみに武器として拓海さんが使っていた木刀が残ったので、アタシはそれを頂戴してある


加蓮「んー・・・」


アタシはぐっと背伸びした後にアキレス腱のあたりを伸ばして、しびれが抜けたかを最終確認する




ターーーーーーーーーーン・・・



加蓮「!?」


どこか遠くから銃声、それもアタシのリボルバーとは質が違う、もっと間延びしたような、狙撃音だ。

思わず右手に銃を構えて腰を浮かせ、周りを警戒する。



742: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/21(金) 00:26:35.17ID:ag37QSz50


狙撃音はそのあと二回聞こえたけど、あたしの近くに何かが来ることはなかった


加蓮「・・・・・・・・・」


加蓮「・・・ふぅ、」


それでもしばらくは臨戦態勢のままにして、たっぷり十秒数えてから構えを解いた


加蓮「リボルバーどころかライフルまで使ってるの?この模擬戦闘。まさかバズーカとか戦車まで出てくんじゃないでしょうね・・・」


なんにしてもこの戦いはアタシの与り知らないところでもガンガン進んでる。

そろそろ復帰しないと置いてかれちゃうな。それは困る


加蓮「じゃあ、最後にこの家の中をちょっと漁らせてもらおうかな」


アタシは縁側を越えると屋内に引っ込んだ。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
家屋の壁を何かが走っている


ねずみや小虫のように、重力に引かれることもなく


それは見た目は一本の線、壁に入った切り込みのようだった


その切り込みがするすると壁を這い回りながらどこかへと進んでいく


ピタリ


やがてその切り込みは動きを止めた

そうしてみるとその壁にはまるで最初からそこに切り込みがあったように見えてくる


ぎぱっ


切り込みが内から割り開かれる


ぎょろっ


その中には瞳


壁から目が生えていた



「(..........見つけたわ...)」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



743: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/21(金) 00:27:24.06ID:ag37QSz50



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

台所には包丁もあったけど、多分木刀の方がいざって時に使いやすそうだからパス


手当たり次第に引き出しを開けてたら銃弾の入った箱を見つけた、アタシのリボルバーにはサイズが合わない、もったいないけど持ち運ぶには重いのでここに置いていく


こたつの上にはミカンの代わりに飴玉が三つほど置かれていたので一応もらっておく


あとは最低限の「家っぽいもの」例えば風呂とかトイレとかの設備があるだけで怪しいものはなかった


加蓮「そこそこ大きい家だと思ったけど一階はもう調べ終わっちゃった、二階も何もなさそうだけど行っとこっと」


木造二階建ての階段を上がる、ポケットの中で飴玉がゴロゴロしてる


飴玉、とうことはこれって杏のキーアイテムだったりするのかな?でも三つもあるけど・・・


階段は短くすぐに二階に到着、物色開始


二階には寝室しかなかった、電気スタンドがあったけどそんなものは武器にはならない。

あとは何もないだだっ広い部屋が一つ。

時間の無駄だったかな。念のためこの部屋を一周してから引き上げようかな


加蓮「いくらリアルでもこんだけ殺風景な家だと現実味が薄れるなぁ・・・」


適当に家具のある部屋もあればこんなふうに何もない、ただ壁と床と窓だけの部屋もある。


アタシは天井に隠し扉でもないかと思いながらその部屋をぐるりと周り、締めに窓から外を眺めた。

周りには二階建て三階建ての住宅、その向こうにそれより少しだけ背の高いテナントビル。


視線を左にやればそれよりも遥かに背の高いビルディングの列が遠くに

右にやれば住宅街の終わりの方に小高い山が近くに見える、

山は一部が舗装されて道路にされていた



アタシは、なんとなく人心地付きたくなってさっき手に入れた飴の一つを手にとった

もしかしたらスタミナ回復アイテムだったりして



744: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/21(金) 00:28:23.48ID:ag37QSz50


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~





あまり序盤からプレイヤーの数を減らしたくはない




ボットとはいえ、見つけた端から全員各個撃破していくわけにはいかないのだから



こちらは3人、プレイヤーは18人だから単純に考えて六倍の戦力差



もちろん他のボットだっているでしょうけど、私たち以外のボット全員がやられる可能性もある



そう考えると無闇矢鱈と戦闘を行うのはやはり避けたい



『夜』がくればあまり悠長なことも言ってられないけれど、まだそれまでは時間がある。


動けるうちに動いておきましょう



理想は一網打尽


プレイヤーのスタミナと武器を削りながら追い込んでいく


そして少しずつ弱らせながら一箇所に集め、


一気に叩く



堀裕子はちょっとした気まぐれで地下に送ってみたから今は放置、

早坂美玲は逃げたきりまだ見つかっていない、捜索中




じゃあ、まずは目に付いたこのプレイヤーから行ってみましょうか

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



745: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/21(金) 00:29:35.93ID:ag37QSz50


加蓮「あっ」


包み紙をはがした時の弾みで飴玉が転がり落ちた


毒々しい色をした球が床に落ちる


飴玉が割れることはなかったけど、床に落ちた物を口にするのはやや抵抗がある


加蓮「あっちゃあ・・・」


仮想現実だからホコリとかバイキンの心配はしなくていいと思うんだけど

現実の方での生活の習慣としてやっぱりこれを口に入れるのは・・・


でも捨てっぱなしは良くないので一応拾おうと身をかがめた


加蓮「・・・実は貴重なアイテムだったりしてね」


膝を曲げず、体の柔らかさを使ってヒョイっと飴を素手で掴むつもりだった


コロッ


飴玉が床を転がってアタシの指先からずれた。拾い損ねる


加蓮「あれっ?」


コロコロコロ・・・


飴玉は引っ張られるみたいにアタシから離れて転がっていく


そのまま壁にぶつかるかと思ったら、飴はその手前で急停止する

よく見ると床の一部に小さい割れ目ができていて、そこに飴玉がはまりこんでいた


ぎゅぱっ


割れ目が広がった、

違う、割れ目じゃない

あれは口だ、唇の薄さからして女性のもの





加蓮「・・・って、はぁあああっ!??」



746: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/21(金) 00:31:12.80ID:ag37QSz50



床の上にいつの間にか出来た口が転がってきた飴玉を唇で挟んでいる!?

なんで!?


ばりっ ぼりっ ごりっ


そのまま「口」は飴玉に歯を立てると一気に噛み砕いてしまった


加蓮「壁の次は床から出てくるの!!?」


アタシはその唇に銃を向けた。

壁いっぱいの大きな口とかじゃなくて標準サイズの唇だし、アタシの足元に現れたわけじゃないからそんなに脅威じゃない


そのはずだけど、なんの予兆もない出現から考えて、

アタシが後手に回ってしまったしまったのは明白だろう



ぼりぼりぼりぼりぼりぼりっ


飴を噛み砕く音がここまで届く


??「...口は災いの元......なればこそ、それを敵視するのは何も間違ってはいないわ...」



??「でも残念ね...そっちは囮よ......」



銃を構えたアタシの腕が誰かにつかまれる

引き金にかけた指をがっちり押さえ込まれた


加蓮「・・・え?」

壁から生えた手に

・・・って、また壁から生えてくるパターン!?


壁はコンクリートの打ちっぱなしだったはずだ。

そこからコンクリートと同色の灰がかった細い女性らしい腕がこっちに伸びている

窓際にいたアタシは十分届く範囲だったんだろう


加蓮「ちょっ、は、はなしてよ!」


力任せに振り回してもまるでその腕そのものがコンクリート製になったみたいにビクともしない

こっちの腕がコンクリートに埋め込まれたみたい


??「...もうすこし......待っていて頂戴...現実の理から外れてなお、流れる時間に意味があるのならば、だけど...」


ぎょろり


アタシの手と銃をまとめて掴んでいる腕と壁の付け根、

その少し上の方に今度は目玉が生えた、この言葉はさっきから飴玉をかじっている口とは別の方向から響いてくる



747: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/21(金) 00:32:17.17ID:ag37QSz50



??「...今からあなたの仲間に会わせてあげるわ...」


??「......厳しい道程になるでしょうけど、それまで体力を尽きさせないようにね...」



ずずず・・・


アタシの平衡感覚が狂う

いや狂っているのはアタシの感覚じゃなくて、周りの方



??「......私にとってこの世界の物質に明確な差分は存在しない...全てが0か1のリズム」



そうだ!


飴玉が転がり始めた時に気づくべきだった!



??「そんな私にとって...それらのリズムの中に自分を介入させるのは造作もないこと......」



この床、この部屋、いやそれどころじゃない

多分この家ごと・・・



??「...貴方たちがこの世界で見てきた......無機物と定義される物体の内のいくつか......」



傾き始めてる!!



高峯のあ(ボット)「それはもう私の一部よ」




ずずずずずずずずずずず・・・・・・






ゲーム開始38分

高峯のあ(ボット)VS不特定多数のプレイヤー


開始、あるいは継続中


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



748: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/21(金) 00:32:50.19ID:ag37QSz50


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

チャプター
双葉杏&諸星きらり


パタン


きらり「にゅ?」


パタンパタン


杏「え?なに?」


パタンパタンパタン


未だに再会の喜びを噛み締めるきらり、なされるがままの杏


仲睦まじいとも言える二人の耳に妙な音が届く


パタンパタンパタンパタン


それは例えるならタイル

白と青で交互に並んだ1メートル四方の薄い板がどこからともなく現れて地面に敷かれ始めていた

軽い素材で出来ているらしい、耳障りというほどでもない音量でピッタリと地表を埋めていく


パタンパタンパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタ



四角いタイルを使って大きく四角形を作り上げるように、部屋に敷かれたカーペットの模様のように青色と白色が交互に並んでいく


きらり「杏ちゃん?なんか、ぱたぱたーってなってるゆ?」

杏「そうだねー、あれ、これ杏たち包囲されてない?」




パタパタパタパタパタパタパタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタ



749: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/21(金) 00:33:24.81ID:ag37QSz50



その通りだった。外側から正方形の辺に沿うように、さらにその幅を小さくしていくようにタイルは公園の地面を埋めていく


角ばった螺旋を描くように、中空に突如発生した、としか言えない量のタイルがその中心のきらりと杏めがけて包囲網を狭めていった


杏「こ、これ絶対めんどくさいやつだよ!きらり脱出!」


きらり「おっつおっつばっちし!きらりん☆だーっしゅ!」


なんか知らんがヤバそう


自分たちが(正確には自分を担いでいるきらりが)踏んでいる地面を埋め尽くそうとしているタイル、

これが完成したらおそらくめんどくさい、杏はそう判断した


なんとなくタイルは踏まないほうがよさそう、きらりはひとっ飛びにタイルでできた包囲網の端を目指す


きらり「きらりーーーん・・・っジャーーーーーーーーーーンプ!!!」

杏「ぐえっ」


きらりが自分たちを囲むタイルを飛び越える、ドーナツ状にタイルで囲まれたエリアからその外に飛び出そうとする



カッコン


きらり「にょわっ!?」


だがもう遅かった

二次元的に二人を囲んでいたタイルは既に三次元での包囲に移ってしまった


次のタイルはただ地面に置かれるのではない、

突き刺さるように垂直に突き立ち、カーペットではなく壁を作り始めた



750: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/21(金) 00:33:53.41ID:ag37QSz50



何枚も何枚も何枚も何枚も何枚も何枚も
何枚も何枚も何枚も何枚も何枚も何枚も
何枚も何枚も何枚も何枚も何枚も何枚も
何枚も何枚も何枚も何枚も何枚も何枚も垂直に突き立っていく


タイル敷きの地面同様に青と白の模様だ

今にも安全地帯、タイルのない地面に届こうかというきらりの右足がタイルでできた壁にはじかれる



カッコン カッコン カッコン
カッコン カッコン カッコン
カッコン カッコン カッコン
カッコン カッコン カッコン
カッコン カッコン カッコン
カッコン カッコン カッコン
カッコン カッコン カッコン
カッコン カッコン カッコン
カッコン カッコン カッコン



きらり「にょ、にょわ~・・・」


杏「・・・もう杏しーらない・・・」


タイルでできた巨大な箱に二人は閉じ込められた、もはや空しか見えない

だが、さすがのきらりも空は飛べないのでそこから脱出するのは不可能そうだ


そして唯一出口らしい天井もタイルが埋め尽くしていく


杏「・・・これ閉じ込められた」

きらり「やばーい、真っ暗になっちゃうにぃ・・・」


日光がタイルに遮られていく


パタン


そして最後のタイル一枚分だけ開いたスペースから見えていた空も完全にシャットアウトされた



751: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/21(金) 00:34:54.69ID:ag37QSz50


杏「うわ、真っ暗、眠たくなってきたよ杏は」

きらり「杏ちゃん、ここで寝ちゃダメだにぃ!」


密閉された暗闇の空間、だがそれは以外にもすぐに終わった

タイルのうちの何枚かが照明のように淡く光り始めたからだ

にわかに箱の中が明るくなる。青色の灯りが二人の顔を闇から浮き彫りにする

そして明るくなったことでその変化にも気づいた


きらり「杏ちゃん、あれ見て?」

杏「ん、なに・・・・・・飴?」


ぼんやりと青色に染められた小さな空間の中、

六枚のタイルで出来た立方体のテーブル

その上に飴が置かれていた


さっきまではなかったものである


きらり「杏ちゃん・・・」

杏「あ、怪しすぎる・・・」


閉じ込められた場所で出された飴、

いくら杏でも自分たちを閉じ込めた犯人も、このタイルの仕組みも分からない中で口にしようとは思わなかった


タイルの壁、床、テーブル

タイルづくしの世界の中で唐突に現れた飴玉


杏「杏、密室クリアするゲームとかもしたことあるけど、こういうのは見たことないな・・・手がかりが飴一つって・・・」

きらり「でも杏ちゃん・・・食べちゃ、めっ!だゆ?・・・あっ!!」


暗転


きらり「にょにょ!?」


その瞬間、すべてのタイルの照明が消え、暗黒が戻った


点滅


杏「あれっ?」


だが一瞬の後、また灯りが灯る、次は白いタイルから発せられる清潔な光が二人を照らした


きらり「あっ!」


また変化が起きていた



きらり「飴、なくなっちゃったにぃ?」



752: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/21(金) 00:36:41.67ID:ag37QSz50




タイルのテーブルと一緒に飴玉がどこかに消えている

さっきの明滅の間に空間が変化していた


次に杏たちの目の前にあったのは二つのテーブル、またもタイルの立方体でできたものだ


杏「今度は台がふたつ・・・で、その上にあるのは」


一つのテーブルの上には黒光りする鉄塊

もう一つには鋭く尖った細い金属




光源の安定しない狭い密室、



そこに閉じ込められた二人の前に様々なものが差し出されるように現れる





最初に置かれていたのは飴だった









そして今、二人の前には銃と刀が置かれている





753: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/21(金) 00:38:22.94ID:ag37QSz50


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




乃々(ボット)「もりくぼはなにもいりません」





乃々(ボット)「飴もムチも、アイテムも武器もいりません」



乃々(ボット)「なんでも持って行ってください」



乃々(ボット)「ただ静かに、誰にも邪魔されず暮らしたいだけです」



乃々(ボット)「そのためならなんだって差し上げましょう」



乃々(ボット)「もりくぼにとっては、そんなの、能力内にしまっておくだけでコストがかかるだけの重荷ですし」



乃々(ボット)「なんでもあげます。もりくぼは平穏のためなら全てをなげうちましょう」



乃々(ボット)「でも、あなたたちのスタミナは代わりに置いていってください。でないともりくぼは死んでしまいますから...」



_____________

 森久保乃々+ 87/100


_____________

_____________

 双葉杏+  99/100


_____________

_____________

 諸星きらり 99/100


_____________





ゲーム開始37分経過


諸星きらり&双葉杏VS森久保乃々(ボット)

継続中


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



754: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/21(金) 00:42:09.89ID:ag37QSz50


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
起承転結でいうと承


次回開始するチャプターを選択してください
安価+3下

1、三好紗南
2、渋谷凛
3、神谷奈緒

次回、優先して閲覧したい戦闘シーンを選択してください
安価+4下

4、VS森久保乃々
5、VS塩見周子
6、VS高峯のあ



755:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/21(金) 00:44:28.13 ID:BOidGlTbO

35



756:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/21(金) 00:45:37.02 ID:gPsOD1k80

裁くのは俺のスタンドだ



757:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/21(金) 00:48:09.56 ID:IumymNK40

3
6



758:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/21(金) 00:56:10.43 ID:aJn/7QHio

3 5



759:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/21(金) 02:05:11.63 ID:NIO2YiWno

24



760:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/21(金) 08:57:02.46 ID:oxDy5yfJo

高峯のあ(24)

no titleno title



761: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/22(土) 00:22:51.23ID:yeUOdhdx0



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
神谷奈緒


ボットたちの動きに齟齬が生じ始めていた


非戦闘的な能力しか持たないゆえにプレイヤーを分断する作戦をとった八神マキノ


強力な能力を有するがゆえにプレイヤーを一固まりにして大戦力で一気に叩く作戦を実行する高峯のあ


真逆とも言える作戦、どっちがプレイヤーたちに有効なのかは結果が出るまでわからない


だが少なくとも、

自分たちの作戦を推し進めるにあたって、強力な実行力を持っていたのは後者の陣営だった


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

住宅街が破壊されていく


膨大な質量に骨組みごと粉々に砕かれ、ごく普通の家屋ががれきへと転じていく


その巨大な物体は軌道上の家々を引き潰していく


そのさまは解体現場におけるブルドーザーの有無を言わせぬ破壊的行進に似ている


ただ今回に限って言うならその行進により住宅街にがれきで出きた太いラインを引いているのもまた家であったということか


おそらく和風の家屋、二階建てであったであろう建造物がまるで巨人のホッケーパックのように住宅街を滑りながら障害物となる他の住居を突き破っていく


まるでどこかを目指しているかのように一直線に、緩やかであるが決して速度を緩めることなく、破壊の行進を続けている


その家だけだはない、住宅街の外れ、都市郊外からも一件の3、4階建て程のビルが障害となる家をすりおろしながら動いている


このビルにも、先の日本家屋同様に中にはプレイヤーが閉じ込められたまま運ばれているのだろう




無機物と一体化する能力者、高峯のあ




寝返りを打つように、カメラに向けるポーズを変えるように、

彼女はこの仮想現実の地図を、破壊という画材で塗り替えていく




762: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/22(土) 00:24:38.37ID:yeUOdhdx0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

その有様を黙って眺めているボットがいた。

彼女はプレイヤーを分断して各個撃破する気も、一網打尽にする気もなかった

ただどうせなら自分が納得する形、正々堂々としていて自分にも他人にも誇れる決着のつくような勝負を望んでいた


そんなボットが、最初に遭遇したプレイヤーが瀕死だったのは偶然か必然か




?「なんてゆうたか・・・日本の怪獣映画のなんかじゃあ、あの変な家よりもっとゴツい怪物が都会のド真ん中でビルとかなぎ倒していくんかのう」




標高的に周りより少しだけ高所となる地点、住宅街を見下ろせる位置に彼女たちはいた


一人は背が低く小柄な体躯で鉄柵に腰掛け、眼下の破壊行進を眺めている




手持ち無沙汰気味に膝に置かれた右手首には手錠がつけられている、

そして手錠の反対側には少女の手にはどう考えても不相応な大型銃がつながれていた

おそらくは、うっかり取り落とさないように銃と手首をつないでいるのだろうが

その不釣合いなサイズではまるで囚人につながれた鉄製の重しのようにも見えた


?「おうおうなんじゃ・・・あの家ども、こっちに来とるけん、逃げたほうがよさげかもしれんのう・・・」


そう言ってもうひとりの少女に声をかける

体を振り向かせた時に手錠の鎖がチャリリと鳴った

声をかけられたもうひとりは、鉄柵から少し離れたベンチにぐったりと体重をかけ力の入らない体で必死に意識を保っていた



奈緒「・・・あぁ、そうかも・・・でも、どこに、逃げるってんだ」









村上巴(ボット)「さぁ・・・何処にしたもんかのぅ、まぁうちも考えるけん・・・ワレのことやろ、必死こいて頭ひねらんかい、スタミナも空っ穴なんじゃろ?」



763: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/22(土) 00:25:17.16ID:yeUOdhdx0


梅木音葉との戦闘で即死は免れたものの虫の息と言っても過言でない状態で奈緒は言葉を返す


巴(ボット)「なんにせよ、ワレみたいなボロボロの相手なんぞお断りじゃ」



巴(ボット)「かといって見逃すゆうのも、やっとこさプレイヤー見つけた身ぃとしては癪やけん・・・奈緒さん、せめて半分くらいは回復してもらわんとな」



巴(ボット)「死にかけの相手にとどめさしただけ、そんなんうちの女が廃るけえの」


まるでもみじのように小さい掌に無理に大型銃を握り込み、巴はニッと笑った


ボットやプレイヤーの持つ能力は仮想空間にとってのイレギュラーである


そしてボット、村上巴


模擬戦闘という奸計と武力が蠢く戦争の場において決闘めいた古風な勝負のつけ方を望む彼女もまたボット全体にとってのイレギュラーだった


奈緒「・・・なあ、なんで、・・・あたしのこと助けて、くれたんだ?」


巴(ボット)「あぁ?寿命伸びただけで何を勘違いしとるんじゃ奈緒さん、そのうち、うちときっちりやりあってもらうけえの、今のうちに精々覚悟決めときいや」





ボットは蠢く

プレイヤーと共に






ゲーム開始40分経過

神谷奈緒VS村上巴(ボット)

開始延期


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



764: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/22(土) 00:25:49.47ID:yeUOdhdx0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
大和亜季&小関麗奈

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
それはじっと待っていた

役に立つ時を、真の機能を発揮する時を

地面に横たわりながら、その手が触れる時をじっと待っていた

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

麗奈の体に散弾が食い込む、そして貫いた

もちろんこれはゲーム、その弾痕が痛々しく赤黒い穴を残すことはない

だが、その衝撃は13歳の体躯を容易に吹き飛ばす


麗奈「っぎ・・・!?」


背後は最悪なことに窓だった


この部屋に僅かながら光を取り込んでいた窓のガラスを突き破る


二階から麗奈の体が落ちていく


亜季「麗奈っ!!」

自身も脇腹のあたりを銃弾に貫かれながら亜季が自分の仲間の名を叫ぶ


同時に窓に向かってスタートダッシュを踏み込んだ


亜季「(麗奈から離れるわけにはいかない・・・!二階程度なら受身を取れば飛び降りられるであります!!)」


周子(ボット)「いや、させないけどね?」

その前に周子が立ちはだかった

策がうまくいったのが嬉しいのか、尻尾がパタパタと喜悦を表すように振られている


だが亜季は止まらない、所詮は幻影、物理的に食い止められるなら止めてみろ

そしたらそれが本物の周子だ、こっちから逆にCQCを叩き込んでくれる


周子(ボット)「ユニットは分断するほどやりやすいんだよねー、一人倒せばみんな倒したことになるし」


周子は動かない、

まだ自分の使う幻覚の有効範囲が視覚限定であることを見抜かれていないと高をくくっているのだろうか

余裕がその立ち姿から溢れていた


亜季「ふっ!!」


その体にタックルを決める、だが周子の体は煙のように散らされるだけで亜季に反作用が来ることはなかった

亜季は別にそのことに驚いたりしない、むしろ好都合だ

さぁ飛び降りろ、窓辺まで数十センチ



765: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/22(土) 00:26:29.35ID:yeUOdhdx0














周子(ボット)「ばぁん」


その数十センチの短い距離にいた本物の周子が引き金を引いた



パン!



彼女は自分の幻覚の姿の、ほんの少しだけ後ろに待ち構えていたのだ

幻影を亜季が通過してくることを見越して


銃弾はほぼ真正面から突っ込んできた亜季の額を少しずれ、こめかみを掠めた


亜季「くぁっ!!」


勢いを殺され、横に倒れこむ


下手すればそのまま即死だったが、やや前傾態勢だったためそれを免れたのだ


周子(ボット)「一体全体、何が嘘で何が本当なのかなー、あたしもわかんなくなってきたよ」


亜季「くっ・・・」


周子(ボット)「でも、これは実弾だから安心してね」


ダンボール箱を巻き込んで倒れた亜季を見下ろすようにしながらハンドガンを構える





周子(ボット)「じゃね♪」









766: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/22(土) 00:27:54.26ID:yeUOdhdx0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
それは足音を感じ取った

自分に駆け寄る音だ

それはこの足音を知っている

それは足音の持ち主に拾い上げられた

小さな手が自分をしっかりと掴んでいる


それはキーアイテムだった


地面に放置されたままだったが、ついに今その真価を発揮した


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「こんの・・・バカギツネーーーーーーーーーーーーーーー!!!」


周子(ボット)「!!?」


亜季「え!?れ、麗奈?」



ビシッ



窓に背中を向けていた周子の背中に軽い何かがぶつかった


窓の外、一階から投げつけられたのだ

周子は本物の自分の背中にあたり、床に落っこちたそれに目を向ける


周子(ボット)「・・・おもちゃ・・・厚紙?」


床の上には手作りのおもちゃに使われる部品のような、丸めた厚紙をテープで留めたようなものが落ちている

どう見ても丸めたゴミだ


麗奈「これでも喰らいなさい!!」


引き続き麗奈は手に持ったガラクタを二階の窓の中、周子に投げつける


二階から落とされたあと、拾ったのだろう

ダメージからの復帰の早さは驚嘆に値する

これも骨折のない仮想現実のなせるわざか



周子に投げたのはそのガラクタの一部



厚紙やガムテープで作られたジョークグッズの一種、


不発の、使い物にならなかったはずのガラクタ


麗奈のボットが使っていたオモチャ



767: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/22(土) 00:28:28.91ID:yeUOdhdx0



スペシャルレイナサマ砲

ボットが消えたあともその場に残り、だが麗奈本人からはスルーされていたそれ、


手近にあった投げやすいものだから、という理由だったが、それはついに麗奈に拾われた


小関麗奈のキーアイテム


ピコン


そして麗奈の能力が発動した



それは、ボットと違い不発などではなかった





今回はしっかり爆発した







本物の周子はこの瞬間、初めてダメージを受ける






ゲーム開始30分経過

小関麗奈 能力獲得

小関麗奈&大和亜季VS塩見周子(ボット)

継続中


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



768: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/22(土) 00:48:55.89ID:AH5LDOKiO


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ボットは消失したけどバズーカまで消えたとは書いてませんでした


次回開始するチャプターを選択してください
安価+3下

1、佐久間まゆ
2、渋谷凛
3、星輝子

次回、優先して閲覧したい戦闘シーンを選択してください
安価+4下

4、VS森久保乃々
5、VS塩見周子
6、VS高峯のあ



769:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/22(土) 00:53:42.96 ID:W11kkMKS0

発射した物を爆弾にする みたいな能力か
15



770:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/22(土) 00:53:51.80 ID:AUzzY7kDO

35



771:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/22(土) 00:54:37.98 ID:FYFSzVI0o

14



772:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/22(土) 00:55:39.24 ID:DcOkrX8P0

25



773: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/23(日) 01:04:15.53ID:2MtHrapt0



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
佐久間まゆ


まゆ「これで、音葉さんは倒せましたかねぇ」


手近にあった机や椅子を組み上げて作った銃座

そこに置いたスナイパーライフルのスコープから目を離し彼女はそばにいた二人に確認する


紗南「・・・えっと、うん・・・」


紗南は手元のゲーム機を横や縦に傾けて確認する

画面はサーチモード

さっきまではそこに梅木音葉の情報が表示されていた

あとはゲーム機が反応した直線上に銃を向け、照準を合わせ

まゆが引き金を引いただけ


サーチモードの効果範囲は非常に限定されている

だからゲーム上部の直線上にいるアイドルにしか反応しない

しかしそのおかげで紗南は春菜の位置に気づけたし、音葉がいる方角を探知できるのだから痛し痒しといったところか

遠い距離であるほど微調整が必要であるから簡単なことではないが

漠然と近くにいる、という情報だけでは遠距離狙撃などとても無理だったことを考えればやる価値はあった


美穂「なんていうのかな・・・紗南ちゃんらしい能力だね」


紗南を膝の上に載せた美穂が感心したように言葉をもらす

今はぬいぐるみの状態ではない人間の形態に戻っている

ぬいぐるみはというと紗南と同じように美穂が膝に抱いていた



774: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/23(日) 01:04:41.41ID:2MtHrapt0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

上条春菜を倒したすぐあと、そのボットが手に持っていたロングレンジ用の銃が持ち運べるかを確かめていたところに紗南が現れた

その様子はどうみても疲労困憊、長時間ストレスにさらされた者のそれ、

さらに謝られるわ、春菜を倒したお礼を言われるわ、の大わらわだった。



美穂「紗南ちゃん、もうそろそろ落ち着いた?」

紗南「うーん、まあ大分マシになった・・・」

紗南をぬいぐるみと一緒に抱きしめながら美穂がその顔を覗き込む

美穂「そっか・・・・・・よかった」



まゆ「それにしても、紗南ちゃんも能力があるんですか・・・まゆ、ちょっと焦っちゃいますねぇ」



ライフルは置いたまま、まゆは近くにあった椅子に腰掛ける

美穂「そんな焦らなくても・・・まゆちゃんは今でも十分強いよ?」

紗南「そうだよ、あたしなんてボット一人相手に大苦戦しちゃったし、ゲームっていう割にはかなりガチだもんこれ」


まゆ「うふふ、ゲームである前にお仕事ですから・・・手抜きは許しませんよぉ?」


美穂「ま、まゆちゃんが、許さないなんて言葉を使うとちょっと怖いかな・・・あはは」

紗南「・・・う」


まゆの服には相変わらず刃物が仕込まれている、それに美穂はまゆの容赦ない攻撃も目の当たりにしていた

いま、こともなげに音葉を狙撃したことといい、その外見と行動力に裏打ちされた言動は底知れぬ恐ろしさがあった


紗南「えっと、あっと・・・じゃあ!そろそろ次のボットとか探してみよっか・・・?」

美穂「そ、そうだね!」

まゆ「・・・?」


少しばかり肌寒くなった空気を払拭するように紗南がゲーム機のスイッチを入れる

使うのはもちろんサーチモード、コントロールモードはまだ使いこなせてないためしばらく使うことはなさそうだ



775: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/23(日) 01:05:28.93ID:2MtHrapt0



まゆ「あ、それでしたら・・・智絵里さんも探してくれません?」

紗南「智絵里さん?まぁプレイヤーも探せるけど・・・個人を指定して探したりは難しいよ?」

まゆ「いえ あくまでできたら、の話ですから・・・最優先はやはりボットですので」

美穂「まゆちゃん・・・」

紗南「えっと・・・」


ゲーム機からガリガリと稼動音が小さく鳴る

このあとしばらく角度を調整すればそのうちどこかしらの情報をキャッチする手筈となっていた

そして方向の探知からすかさず遠距離狙撃。美穂が体を張ったおかげでライフルの弾丸が余計に減ることはなかったため残弾にも余裕がある




偶然ではあったとはいえ、まゆたちはサーチアンドデストロイ、敵を見つけて即座に討つ装備を揃えていた






紗南「あっ!見つけたよ、画面が反応してる!」


美穂「もう!?・・・音葉さんを見つけた時より早いんだね」


まゆ「ということはもしかして、近くに来ているのかもしれませんね」


次なる接敵にやや浮き足立つ二人と対照的にまゆは気を引き締める












紗南「でた、次のボットはのあさんだよ!」





776: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/23(日) 01:06:04.88ID:2MtHrapt0





美穂「のあさんもボットなんだ・・・プレイヤーでもおかしくなかったけど」

まゆ「紗南さん、名前より先に能力を教えてください、対策を講じた上で攻撃します」


探索と特定は終了

まゆは椅子から腰を上げるとライフルに手を添えた、視線は窓の外に向けている



紗南「のあさんの能力は・・・えっと?『オブジェクトとの同化』・・・?」

美穂「?それってどういう・・・」

まゆ「いまいちピンときませんねぇ、ほかの説明文はないんですか?」


紗南はそのシンプルな一文が表示された画面を見て

美穂は紗南の肩越しにやはり紗南の手元を覗き

まゆは説明の不十分さに紗南の方を振り返った

だから




のあ(ボット)「.......こういうことよ...」




一歩出遅れた


まゆ「!」

美穂「きゃあっ!!?」

紗南「ぼ、ボット・・・!」


のあは、いつの間にかすぐそば、三人が視線を外していた窓のこちら側、ライフルの銃座に寄り添うように立っていた


ひゅんっ


のあが右手をほぼ垂直に振り上げるとそれだけでその右手の軌道上にあったライフルは銃座ごと真っ二つにされた


一瞬のことではっきりとはわからなかったが、それはまるでライフルにのあの右手が溶け合うように同化して、そして分離されたように見えた

その証拠に間近にいた三人の耳には破壊音も切断音も聞こえなかったし、ライフルもあっさりと二つに断たれ、まるで今まで接着剤でくっつけられていたのが取れたのかと勘違いしかけた



777: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/23(日) 01:07:52.77ID:2MtHrapt0



まゆ「(なるほど、こんなに近くいいればそりゃ反応しますよねぇ)」


左手を突き出しながらスカートのリボンに差し込んでいた刃物を指に引っ掛ける

流れるようにそれを握りこんだままのあに突き刺す


のあ(ボット)「...さすがね...」



しかしその刺突は皮膚で止まった

否、のあの体から突き出てきたコンクリ片のようながれきに食い止められ刃のほうが欠けてしまった


紗南「ひぇっ!?どど、どうなってんのそれ!?」

美穂「ま、まゆちゃ・・・」

体から不自然極まりない物体をはみ出させた、悪趣味な彫刻のような姿に二人はおののく


まゆ「っく・・・!」

まゆは攻撃を休めない、そもそも伸ばせなくても手の届きかねない距離、逃げるのは敗北に直結する

反対の手、そこに細身の、メスに似たナイフを2本まとめて握る、まゆの手は小さいがそれでも握れないことはなかった


それを至近距離で投擲する



のあ(ボット)「......この世界に実体はない...故に私にもまた実体という言葉は意味を持たないわ......」

「....私も世界も、所詮同じ紙に同じインクで描かれた絵でしかないのよ......」



だがそのナイフはのあの細い胴にぶつかるとそのままするりと体に吸い込まれてしまう


まゆ「効かな、い・・・?」


やはり能力がないと、自分はポンコツなのか___


美穂「まゆちゃん!!逃げるよ!」


ぐいっ、と後ろから手を引かれる、美穂と紗南が逃走を決意したらしい


だがやはり一歩遅かった



778: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/23(日) 01:08:38.33ID:2MtHrapt0



ベギギギギギギギギギギギ!!!!!!


のあを中心として爆発的に広がったひび割れが壁と天井を網羅する


紗南「て、天井が崩れるよ!」


三人で出口に殺到する

だが、防がれる、塞がれる

天井から降臨した物体によって



それは巨人の手

灰色の、生を感じさせない無骨な手


コンクリのがれきの手の平、

建物の骨組みとなる鉄骨でできた指

割れた蛍光灯が爪のように指先で尖っている




廃材を利用した芸術作品、と言っても通りそうな外見のそれは三人を床に押し付けた

三人にとっては天井が崩れてきたほうがマシだったろう、この手にはがれきの重さに何か得体の知れない膂力が加味されているのだから


美穂「あうぅ・・・ふぇ」

紗南「づ、づぶれる・・・」

まゆ「こんなの・・・むちゃくちゃです!」


絶妙に、潰れないように力加減をしながら、それでも限界ギリギリの圧力でスタミナを削る


のあ(ボット)「...今はまだ苦渋の中、地に伏していなさい...けれど...貴方たちはまだ、永遠の眠りにつく刻ではないわ」


うめき声を見下ろしながらのあは静かに立つ



ゲーム開始38分

高峯のあ(ボット)VS不特定多数のプレイヤー


開始、あるいは継続中

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



779: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/23(日) 01:14:39.15ID:2MtHrapt0



ベギギギギギギギギギギギ!!!!!!


のあを中心として爆発的に広がったひび割れが壁と天井を網羅する


紗南「て、天井が崩れるよ!」


三人で出口に殺到する

だが、防がれる、塞がれる

天井から降臨した物体によって



それは巨人の手

灰色の、生を感じさせない無骨な手


コンクリのがれきの手の平、

建物の骨組みとなる鉄骨でできた指

割れた蛍光灯が爪のように指先で尖っている




廃材を利用した芸術作品、と言っても通りそうな外見のそれは三人を床に押し付けた

三人にとっては天井が崩れてきたほうがマシだったろう、この手にはがれきの重さに何か得体の知れない膂力が加味されているのだから


美穂「あうぅ・・・ふぇ」

紗南「づ、づぶれる・・・」

まゆ「こんなの・・・むちゃくちゃです!」


絶妙に、潰れないように力加減をしながら、それでも限界ギリギリの圧力でスタミナを削る


のあ(ボット)「...今はまだ苦渋の中、地に伏していなさい...けれど...貴方たちはまだ、永遠の眠りにつく刻ではないわ」


うめき声を見下ろしながらのあは静かに立つ



ゲーム開始38分

高峯のあ(ボット)VS不特定多数のプレイヤー


開始、あるいは継続中

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



780: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/23(日) 01:15:11.15ID:2MtHrapt0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
大和亜季&小関麗奈


足元に転がったままの紙くずが爆発した

規模としては小さかった、多分花火に使う程度のものだろう

癇癪玉のように派手な音と、



目の眩む光



周子(ボット)「ひゃっ!」



周子は幻覚を使う


だから相手はあらぬ方向に周子を見出し、

手に持つ武器をあらぬ方向に振るってしまい、周子に掠めることもない


拳も、剣も、刀も、銃弾も


周子にとっては避けるまでもないものだった


だが、音


そして、光


全方位に放射される無秩序なソレからは逃げられない



麗奈「・・・はあ?」


ゆるく煙を吐き出す二階の窓を呆気にとられて見上げる

自分はただ、亜季を助けたようとしただけだ

だから近くに転がっていた失敗作のレイナサマ砲を窓にめがけて放っただけだ

まるごと投げるには大きさ的に無理そうだったので適当なとこで二つにへし折って、投げやすくなった片方を石ころみたく投げ込んだ


なのにまさか爆発するとは


亜季「とうっ!」


その隣に亜季が着地する、本人も予測しなかった方法で麗奈が作った隙をうまく利用して窓から飛び降りたのだ



781: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/23(日) 01:15:44.30ID:2MtHrapt0


麗奈「あっ、アンタ!?大丈夫だったの!?」


着地と同時にその場で前転し衝撃を殺した亜季に慌てて近寄る


亜季「ええ、麗奈の爆弾のおかげで隙ができましたので」


麗奈「え?アタシがやったの?」


亜季「?自覚がないのですか、いえ、議論は今は捨て置きましょう」


麗奈「周子の奴は?まさかまだ生きてる?」


亜季「おそらくは・・・あまり強い爆熱でもありませんでしたし」


麗奈「チッ!多分これがPの言ってた”能力”ね、どうせならもっと派手に爆発できるのにしなさいよ」


亜季「麗奈、それよりも今は逃げるであります」


麗奈「は!?なんでよ!?折角能力手に入れたんだから次はこっちから攻めればいいじゃない!!」


亜季「麗奈!!戦力の詳細を把握できないうちから濫用するのは逆に危険です、逃げますよ!!」



亜季の厳しい眼光が麗奈を射抜く、サバゲーで培った経験による判断、とはまた違う、

自分の身、ひいては麗奈の身の安全を気にかけた上での年上の大人としての判断だった



麗奈「う・・・・・・わかったわよ」

亜季「それでいいのです、麗」








「だれ」「が」「にげる」「って?」




782: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/23(日) 01:16:38.55ID:2MtHrapt0




ぼすっ


今にも駆け出そうとしていた二人の前に道を塞ぐように何かが落ちてきた


それはダンボール箱、さっきまで散々見た中では大型の一つ


ぼすっ

ぼすっ

めしゃっ

ぼすっ

ぼすっ

ぼすっ


次々と、二階の窓から投げ込まれる

それは綺麗に亜季と麗奈を取り囲んだ

もちろん嫌がらせなどではない


このダンボールはクッションだ


周子が二階から飛び降りるための


その証拠に、二階から投げ落とされたダンボール箱の全てに周子が乗っているのだ

ダンボール箱がまるで台座のように周子の視線を押し上げている


麗奈「また偽物?・・・はん!あんたの芸も見飽きたっての!」


亜季「たしかに、狭い部屋でなければ幻覚など怖くはありませんな」


今までの感じから周子の幻覚は、周子の姿と武器を変えるだけのものだった

ならば周子から離れてしまえば、なにも警戒することはないのだ

そのためにはまずこの包囲を突破する必要があるのだが


周子(ボット) 「あたしを」
周子(ボット)イ「びっくりさ」
周子(ボット)ロ「せたからって」
周子(ボット)ハ「あたしに勝」
周子(ボット)ニ「ったとか思」
周子(ボット)ホ「いこむのは良」
周子(ボット)ヘ「くないよー?」


麗奈「なによ変な喋り方して!」



783: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/23(日) 01:17:13.01ID:2MtHrapt0




周子の幻覚に変調が起きていた

今までのものはまるで本当に周子が複数いるかのような生々しさがあった

だが見え方しかいじれない以上、その言葉は一人四役ほどをこなしていたのだろうが、それでも亜季には区別のつかない演技力だったはずだ

それがその演技をする余裕もなくしているのか

ひどく不安定、幻影全員がひとりの言葉をリレーするようにちぐはぐに喋っている

また幻影で作られた周子も様子がおかしい

確かに数はさっきの二倍近くまで増えているのだが、その姿にブレが生じていた


着物を着た周子

ラフな格好の周子

黒いビキニ姿の周子

コートを羽織った周子

狐の耳を頭から生やした周子


明らかにさっきは居なかったモノが混じっている

見た目は個性たっぷりだが、しゃべると途端に違和感が生じる



ちゃんとした幻覚を見せる力が損なわれている

まさかさっきの爆発が予想以上に効いたのか?

それともいきなりの衝撃に動揺しているせいで能力がコントロールできていないのか

亜季ではそれは正確に推し量ることはできない


周子(ボット) 「麗奈ちゃ」
周子(ボット)イ「んすごいじゃん」
周子(ボット)ロ「こんなドンピシャのタイミン」
周子(ボット)ハ「グで能力ゲットするな」
周子(ボット)ニ「んて。」
周子(ボット)ホ「あたしも頑張」
周子(ボット)ヘ「らないとねぇ」


だが、まだ形勢はこちらに傾いたままだ。これがまた周子に戻る前に

亜季「麗奈、私が合図したら私と同じ方向に飛び込んでください」

麗奈「?どういうことよ・・・周子に体当たりするの?」

亜季「いえ、幻影は私たちにさわれません、ですから」



周子(ボット) 「なにな」
周子(ボット)イ「に」
周子(ボット)ロ「作戦会議か」
周子(ボット)ハ「なー?」


ひしゃげたダンボールを足場に同じ顔、違う服装の人間がけらけらと笑う

だがその姿はまるで乱造品の壊れやすい人形に見えた




784: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/23(日) 01:18:37.83ID:2MtHrapt0


亜季「今っ!」

麗奈「!」

二人が包囲網の一角に突っ込む、コートを羽織った周子のいる所だ


周子(ボット)ハ「・・・・・・・・・!」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

藍子(ボット)「・・・周子さん」


「貴方の能力は私のものと少しだけ似ています」


「・・・いえ、少しではありませんね。」


「この仮想現実を"捻じ曲げる”という点では私たちの能力はなんら変わりません」


「それ故に貴方にも、私よりは弱めですが、制限がかかっています」


「だから能力を使うときは気をつけてください」


「なまじ半端な制限だけに、なにかの拍子で能力が不安定になる可能性が高いですから」


「・・・・・・やっぱり、できるなら『夜』が来るまでここで待っていて欲しいです」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

周子(ボット)ホ「心配」
周子(ボット)イ「してくれ」
周子(ボット)ニ「てありが」
周子(ボット)ハ「とう、で」
周子(ボット)ヘ「もね、藍」
周子(ボット)ロ「子ちゃん」




周子(ボット)「しゅーこちゃんを甘く見ないで」
_____________

 大和亜季  120/200


_____________

_____________

 小関麗奈+ 120/100


_____________

_____________

 塩見周子+  97/100


_____________


ゲーム開始31分経過

小関麗奈&大和亜季VS塩見周子(ボット)

継続中

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



785: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/23(日) 01:19:10.44ID:2MtHrapt0


亜季「今っ!」

麗奈「!」

二人が包囲網の一角に突っ込む、コートを羽織った周子のいる所だ


周子(ボット)ハ「・・・・・・・・・!」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

藍子(ボット)「・・・周子さん」


「貴方の能力は私のものと少しだけ似ています」


「・・・いえ、少しではありませんね。」


「この仮想現実を"捻じ曲げる”という点では私たちの能力はなんら変わりません」


「それ故に貴方にも、私よりは弱めですが、制限がかかっています」


「だから能力を使うときは気をつけてください」


「なまじ半端な制限だけに、なにかの拍子で能力が不安定になる可能性が高いですから」


「・・・・・・やっぱり、できるなら『夜』が来るまでここで待っていて欲しいです」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

周子(ボット)ホ「心配」
周子(ボット)イ「してくれ」
周子(ボット)ニ「てありが」
周子(ボット)ハ「とう、で」
周子(ボット)ヘ「もね、藍」
周子(ボット)ロ「子ちゃん」




周子(ボット)「しゅーこちゃんを甘く見ないで」
_____________

 大和亜季  120/200


_____________

_____________

 小関麗奈+ 120/100


_____________

_____________

 塩見周子+  97/100


_____________


ゲーム開始31分経過

小関麗奈&大和亜季VS塩見周子(ボット)

継続中

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



786: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/23(日) 01:20:41.88ID:2MtHrapt0



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
連投失礼しました

プレイヤー

クール
凛 奈緒 加蓮 小梅 亜季 ?

キュート
まゆ 智絵里 幸子 美玲 美穂 杏

パッション

輝子 紗南 きらり 裕子 麗奈 ?



次回開始するチャプターを選択してください
安価+3下


1、輿水幸子
2、渋谷凛
3、堀裕子

次回、優先して閲覧したい戦闘シーンを選択してください
安価+4下

4、VS塩見周子
5、VS森久保乃々
6、VS高峯のあ



787:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/23(日) 01:21:48.59 ID:09YP0WbRo

16



788:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/23(日) 01:22:44.34 ID:3hVJgcOj0

レイナ様が限界突破したから勝てる
35



789:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/23(日) 01:26:12.30 ID:MuzdeHEk0

3
4



790:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/23(日) 01:26:27.55 ID:+b7OoPbZ0

34



794:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/23(日) 12:26:17.77 ID:kCDBLPeMo

村上巴(13)

no titleno title




795: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/23(日) 23:42:26.81ID:2MtHrapt0


レイナサマやらかしたうばばば
投下します

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
堀裕子


私のサイキック力技はモノを壊す分には超人的な力を発揮するのですが、私そのものが強くなったわけではないのです

だから防御力まではサイキックされていないのですね



裕子「あいたたたた・・・」



背中に硬い感触、私と一緒に落ちてきたがれきが背中の下で細かく砕けています


多少は衝撃をカバーしてくれたかもしれませんが、幾分か体力を削られてしまいましたね


空にはポッカリとお月様、ではなく私が落ちてきた穴から見える日光が暗い天井に丸い光を供給していました



___...そうね...どこまで変わらずにいられるかしら...___




___...あなたにプレゼントよ...これをどう使うか...この世界に...どう取り組むか...見せてもらうわ___



ふむ、そういえば落っこちる直前にそんな感じのことを言われたような・・・


地面にたくさん現れた口、唇、目

喋っていたということは舌や歯もあったのでしょうね


まぁそれはさて置き、一体どういう意味合いだったのでしょうか。

がれきの小山からガラガラと慎重に滑り降ります


裕子「まさか、あれがさいきっく謎掛け・・・!」


ジャンプして届く距離ではないのは一目瞭然でしたので、私は縦ではなく横に移動を開始します


周りは暗くて何も見えません

今私のいるスポットライトに当てられたような狭い円から出ていくのはなかなか勇気がいりますね


さて、ではまず所持品を確認しておきましょうか


えっとまずは・・・


【スプーン×1】

私のボットが持っていたものですね、触ると一度だけ電子音が鳴りました。
そのあとから私のサイキックパワーが目覚め、何か物体に触れている時だけ力持ちになりましたよ!
ちなみにちょっとだけ曲がってます



796: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/23(日) 23:44:28.59ID:2MtHrapt0




・・・以上です!


ポケットから出したスプーンをグッと握り締める、超能力は使っていないのでへし折れることはありません


裕子「心に一本の芯を!!懐に一本のスプーンを!!サイキックアイドル堀裕子!さいきっく探検開始です!!」


私は臆することなく光の輪の一歩外、暗闇に向かって勢いよく足を踏み出しました


ごちん!


裕子「あいたっ!?」



ただしその一歩目で私の爪先は硬い何かにぶつかってしまいました

慌てて前に手を突き出すとそこには平たくて冷たい大きな何か、



・・・・・・壁ですか。またですか



私の行く道はまたしても壁に阻まれました。


裕子「むむ?むむむ・・・」



壁をぺたぺたと触りながらそれに沿って動いていきます

暗闇の中を少しずつ横向きに移動していきます。


あっという間に壁を一周してしまいました

意外と暗闇は狭いようです。光を中心として学校の教室程度の広さでしょうか


裕子「しかしこれは、鉄製でしょうかひんやりしていますし、所々溶接したような継ぎ目がありますね」

手触りだけではそれしかわかりません、しかしこの部屋はまったくの密室ということでもなさそうです


裕子「・・・暗くてよく見えませんが、ここの部分だけ他の部分と手触りが違いますね・・・」


扉でしょうか?


しかし開きませんね、ここはさいきっくで突破しましょうか


さいき~っく

裕子「力技っ!」


扉らしきエリアに体当たりをかまします。

体の当たった部分が深く沈むように凹んだ感覚、金属製品が壊れたような音、

そのまま私は壁の向こう、その先に開いた空間に突き抜けていきます

やはりここは扉でしたか!



797: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/23(日) 23:45:14.48ID:2MtHrapt0



裕子「さいきっく侵入!」


ブンッ・・・

ツツツツ・・・・・・

私がその空間に踏み入ったことでセンサーか何かが反応したのでしょう、

照明が起動しました。

私のいる壁際から部屋の奥に向かって順に光が侵食していきます


ツツツツツツツツツツ・・・


蛍光灯、よりも大きい照明が私のはるか頭上で光を放射します、天井が高いですね


上を見上げると、等間隔でならんだ照明が水玉模様のようにいくつもいくつも灯り始めています


一つ、二つ、十、二十、五十・・・


あれ、照明が多い、というより




この部屋めちゃくちゃ広くないですか?


照明に照らされた広大な空間の、向かいの壁が今ようやく見えました。


同時に、私がいるのがその空間全域を一度に見渡せる、少しだけ高い位置にあることもわかりました


裕子「なんと・・・さいきっく驚愕・・・」


目の前には手すりがあります、そこに手を着くと、より広く空間を見下ろせました


柱はありません、体育館のように天井は梁とか鉄骨などで支えているのでしょう

そのおかげで確保された広いホールのようなスペースにはびっしりとソレが並んでいます


碁盤目上?等間隔?見下ろしている身としては巨大なチェック柄にも見えました


でも一番わかりやすいイメージとしては全校集会

朝礼台に登った校長先生は、整列した生徒たちがこう見えているのかもしれません




798: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/23(日) 23:46:16.03ID:2MtHrapt0



もっとも、


その生徒の服は鉄板でできたりはしてないでしょうけど



その生徒にはキャタピラなんてついてないでしょうけど



その生徒には大砲なんて装備されてないでしょうけど




その生徒は戦車ではないでしょうけど





地下軍事基地、格納庫、装甲、迷彩柄

だいたい私が連想できるのはそのへんの単語だけですね




見渡す限り並んだ戦車が私の眼下に静かに運転される時を待っていました




ゲーム開始43分

報告事項なし


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



799: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/23(日) 23:47:02.25ID:2MtHrapt0

~
チャプター
大和亜季&小関麗奈

_____________

 大和亜季  120/200


_____________

_____________

 小関麗奈+ 120/200


_____________

_____________

 塩見周子+  97/100


_____________


麗奈が何らかの方法で起こした爆発はそれ自体の威力としては大したことなかった


駄菓子屋にでもおいてそうな火薬玉と花火の混ぜ物、

音と光のジョークグッズ、

おふざけの威力、びっくりさせるだけしか能がないオモチャ


周子(ボット)「じゃあ」「あたしの能力」「がここまで乱」「れるわ」「けないよ」「ね?」


コートを羽織った周子の姿がノイズの入った映像のようにブレた


亜季「(偽物!・・・ならこのまま突っ切るであります!)」



そもそも何体偽物がいようと本物は一体、物理的に攻撃できるのも一体なのだ

たとえ百人の周子に囲まれていても実際に壁となっているのはそのうちの一人


包囲を突破するためのロシアンルーレットとしては亜季たちに分があった


麗奈の手を引きつつ突貫、どこかに潜んでいる本物が自分の背中に向かって銃を向けていると考えるとゾッとするが、とにかく今は逃げが肝心


麗奈「あ、亜季!?」


亜季「こっちです!!」


コートの周子の姿が霞んだ、もうまともな幻覚すら作れなくなっているのだろうか



800: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/23(日) 23:48:23.82ID:2MtHrapt0



麗奈「あ!やっぱり偽物ね!!」


麗奈も地面を蹴り加速する、背後から撃たれる前に幻覚に体当たりをかまして脱出する決心がついたようだ


他の周子は亜季に襲いかかってきたりしない、人形のように地面に置かれたダンボールの上に棒立ちのままだ

自分たちの中の一人が突き破られようとしているにもかかわらず、反応すらしない、まるっきり映像、立ち絵だ


駆ける駆ける駆ける

周子とダンボールでできた円を突き破らんと


しかしまるで自分からその陣形を崩すように周子の姿が消えた

亜季と麗奈の前にぽっかり隙間ができる、そこにはダンボール箱しかない


亜季「!」

麗奈「ははん!アタシの能力にビビったのね!」

二人は一気に加速した


周子(ボット)「なわけないでしょ」


その声ははっきりと聞こえた、

そして麗奈たちの真正面に周子が不意に現れる

何もない空間から、いやダンボール箱しかない場所から






そのダンボール箱が周子に変身したのだ






亜季「(幻覚だと分かりやすくしたのはブラフ!?ダンボールの方に化けて私たちをおびき寄せたのでありますか!?)」



801: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/23(日) 23:49:50.87ID:2MtHrapt0



二人の足は止まらない

偽物だと思って特攻したら、その偽物の足元に本物がいた、今から銃を構えても間に合わない


よく考えるべきだった、どうしてわざわざあんな箱までいくつも落としてきたのか


複数の周子に化け、亜季にも化けた。なら人間以外に化ける可能性だって十分あった


むしろ周子は最初からあの部屋でダンボール箱に化けて自分たちを待ち伏せしていたのかもしれない


亜季は思わず、つんのめるように足にブレーキを__


麗奈「これでも喰らいなさい!!」


麗奈は止まらなかった、罠に嵌められてなお、攻撃に転じた


手に掴んでいた、ほとんどゴミになったレイナサマ砲の破片を力いっぱい投げつける

走りながらの投擲だったので大した威力にもならなさそうだったが

その問題は麗奈の能力がカバーしてくれる


ぱん!


くるくると回転しながら周子を目指したそれが爆発した

大した威力はない光と音の威嚇、閃光弾のオモチャ


だが、周子の戦略は一貫して幻覚を使い相手のペースを乱すものだったことを考えれば、

こうやってこっちからペースを乱す攻撃は十分通用するはずだった








そう、はずだった






周子(ボット)「はずれ」





至近距離で爆発を起こされた周子が消えた


偽物のすぐそばで隠れていた本物が消えた






いや、違う

その”いかにも本物らしく現れた周子”すら偽物だった


幻覚に隠していたモノも幻覚だったのだ



802: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/23(日) 23:52:30.82ID:2MtHrapt0



亜季「は・・・?」

麗奈「え、これも偽__」

周子(ボット)「こっちだ、よ!」



亜季と麗奈の首元を後ろからつかみ、

そのまま背後から押し倒す

ほとんど前に意識のいっていた二人はあっさり倒れこんだ



誰もいない商店街に鈍い音が二つ響く


亜季「がふっ!」

麗奈「いったぃ!」


ナニかが二人を上から押さえつけていた


周子は

亜季に化けた

たくさんの自分にも化けた

いろんな衣装を着た自分に化けた

その自分をダンボール箱に化けさせることもできる

危険な武器を持っているように見せかけることもできる

手に持った紅茶を緑茶に見せかけることもできた、味はそのままだったが


何が本物で何が偽物かが曖昧


そして周子はそれすら化かす


偽物でも本物でもないモノ、


つまり何でもないモノに化けた


誰にも見えない姿に化けた


だから、透明になった


もう周子は見えない


ただでさえ判然としなかった、それこそ蜃気楼のようで実態のつかめなかった周子は完全に消えてしまった


二人にのしかかっているナニかの姿は見えない

だが皮肉にも姿が見えていた時よりもその存在感を二人は実感できていた


そこに居るのはただの悪意

そこに在るのはただの悪意、


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



803: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/23(日) 23:53:45.50ID:2MtHrapt0


麗奈「ぐぅ・・・このアタシに乗っかかるなんていい度胸じゃない・・・!」

亜季「(銃が、動かせない・・・・・・見えない何かに踏みつけられてる・・・?)」



「ん?ああそっか、あたし今二人に乗ってたんだっけ」



ぐぐぐ、と二人のうなじのあたりを掴んで地面に押し付けてくる力が増した

顔がざりざりとこすりつけられる


「ごめんねー、なんかよくわかんないけど・・・もうあたしにもあたしが見えないんだ」


「あーあ、透明ってのはやりすぎちゃったかな・・・あたし元に戻んないかも」




ほかの幻影の周子は消えている、ダンボールの数も減っていることからあの箱の一部もやはり幻覚だったようだ


幻覚に幻覚を重ね、嘘に嘘を重ね、本命はそもそも視認すらできない姿になった上での背後からの強襲


亜季「(・・・姿が見えないと、どう押さえつけられていて、どう抜け出せばいいのか見当がつけられないであります・・・!)」


麗奈「ぐぎぎぎ・・・!!」



「さて、しゅーこちゃんの乗っかりプレイもそろそろおしまい」


「手元に銃もあるし、終わらせてようかな」


そして、周子は腰のあたりに差していたハンドガンに手を伸ばそうとして、


「あれ・・・」


腰のあたりに重みがあるのだがいまいちそのポイントに手が引っかからない

なぜなら今周子の身に着けているものは周子自身も含めてすべて透明なのだから



804: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/23(日) 23:55:38.54ID:2MtHrapt0



現実世界での幻覚というと、それは人が頭の中だけで見る客観できない光景という意味合いになる

だが仮想空間は現実と違い、それそのものが頭の中の世界だ。幻覚の意味合いも少し変わってくる

頭の中の世界に、頭の中でしか見えないものを持ち込んでいる、主観と客観が同次元に並んでいるのだ。



つまり有体に言うと周子の能力、仮想の中に仮想を作る力は、周子自身にも作用している




あの廃墟では紅茶は周子にも緑茶に見えていたし

周子が亜季に変身した時には周子にも自分が亜季に見えていた

周子が四人に見えた時も本物の周子は、自分そっくりの人間がほかに三人いる光景を目の当たりにしている



つまり二人の隙を突くために透明になった周子にも、自分の姿がみえていない


「ここらへんに・・・・・・お!」


指先が硬い金属にぶつかる、それをひっかけるように持ち上げる



周子のオリジナルはダーツを嗜んでいた、

だから例え透明なダーツの矢があったとしても経験からしっかり握ることができるだろう

だが周子のボットが今掴もうとしているのは矢ではなく透明な銃、しかも自分まで透明なのだ、

視覚に頼りがちな人間にこれは予想以上にハードルが高い

距離感もつかめない、衣類にかかる重さで銃の大凡のあたりをつけるしかない



引き金らしき部分に人差し指らしき部分をかける

ほかの指で適当にグリップを握る


「よっとと・・・じゃあね麗奈ちゃん」


麗奈の後頭部に銃口をぶつけた、ゼロ距離射程


麗奈「はぁっ!?」


人差し指を握りこむ


亜季「麗奈!!」







がきっ






弾は出ない



805: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/23(日) 23:57:42.94ID:2MtHrapt0


「・・・・・・・・・・・・・・・・・え・・・?」


引き金が動かない


指に力を込めてもびくともしない


麗奈「・・・?」

亜季「?」


ハンドガンに安全装置がかかっていた



おそらく二階から飛び降りるときに何かの拍子でかかったのかもしれない



目をつぶったまま銃を掴むことはできる

目をつぶったまま銃を構えることはできる

目をつぶったまま引き金を引くことはできる




だが、銃に明るくない周子に目をつぶったまま安全装置が外せるのか?



安全装置自体は簡単に外せる、ツマミを少しひねればいいのだ

その場所を知ってさえいれば簡単なはずだ、亜季なら呼吸するように速やかにできただろう


だが周子は銃を探りあてて握るだけで一苦労だったのに


よく知りもしない銃の構造などを把握しているはずもなく







麗奈「だりゃああああああああああああああ!!!」



806: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/23(日) 23:58:36.45ID:2MtHrapt0



麗奈は、自分の後頭部にぶつけられている何かにうつぶせのまま思いっきり拳をぶつけた



「あっ・・・!!」



周子の手から離れた銃が宙を舞う、その際に周子の能力の効果範囲からはずれ、もとの色を取り戻した

なぜか麗奈の能力は発動せず、鈍い音を立てて金属色の塊が地面を転がる




銃がないと決定打がうてない、周子は地面に転がった銃を一瞬だけ追おうと腰を上げてしまった

二人にかかっていた体重が減る


亜季「・・・ふっ!!」


その「隙」に亜季は体をひねり体は天を向いた、自分に乗っかった何かにあてずっぽうに腕を払う


「いったぁ!」


亜季の手に何かの手応え、そして重さからの解放

周子は地面に倒れ、その下の二人は即座に起き上った。




麗奈「見なさい!!これがチャンスをものにするレイナサマの力よ!」



807: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/24(月) 00:00:49.70ID:4NQ9WoZG0


亜季「ですが相手の姿は見えませんね、厄介であります」


「いったいなぁ・・・もう、頬っぺたが腫れちゃうじゃん・・・・・・もう自分でも見えないけど」


亜季と麗奈は周子と向き合う

幻覚と幻影と嘘の果てに姿すら失くしたボットに対峙する


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~





CHIHIROはこの世界を安全に運営するのが目的だってのは知ってた


ほたるちゃん、聖ちゃん、藍子ちゃん


あの三人は危険と判断されたみたい


能力のキャパが桁違いすぎて、えっと・・・演算処理が追い付かない?・・・とかなんとか


だからCHIHIROは独断で隔離用のプログラムを作ったらしい


それがあの廃墟だった、ひどい話だね


あたしは隔離とはいかなかったけどリミッターみたいなのをいつの間にかつけられてた


しゅーこちゃんを縛ろうなんて、まったくひどい話だね


そのせいで能力がうまく使えなくて、透明になったまま元に戻れないじゃん

分身はいけたのに透明だとだめって、なんでだろ?


でも晶葉ちゃんの作ったものをずっと隠しとくわけにはいかないから、

あたしたちにはちゃんと解放される予定があった


『夜』


その時が来ればあたしの尻尾だって三本から九本に戻るし、幻覚で作れる分身の数だって___



麗奈「これでも食らいなさい!!!!」




808: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/24(月) 00:02:01.90ID:4NQ9WoZG0




麗奈ちゃんがダンボールを箱ごと投げつけてきた、

ふむ、テキトーに投げた割にはいい線いってるね

あたしはひょいと避ける、


ダンボールは安っぽい音を立てて破裂した、ちょっと眩しい、耳がキーンってなった


あぁ、ほんまどないしましょ


ちらっと、はじかれて取り落とした銃を見た

よくわからないけど銃は使えなくなったし、どうやって攻めよう




亜季「・・・あ!!」





ん?

亜季さんどしたの





亜季「麗奈!!ダンボールをもっと爆発させてください!できるだけ広い範囲で!」






亜季さんが指示を飛ばす、麗奈ちゃんはまたダンボール箱を拾い上げた

さっきはやけになって投げつけてきたそれを今度は計画的に千切っていくつかの部品にして投げてくる


でもごめんね、ぜんぜん見当違いの方向だよ?



809: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/24(月) 00:03:21.58ID:4NQ9WoZG0



薄暗い商店街の通りにチカチカと閃光と破裂音が連発する


その間にあたしは爆弾(?)をひょいひょいよけながら麗奈ちゃんに近づく

さっきは不意打ちで喰らっちゃったからね、気を付けないと


麗奈ちゃんにはあたしは見えてない、


千切ったダンボールをポイポイ投げてる かーわいい


亜季さんはあたしが落とした銃を拾っていた。壊れたと思ったけどもしかして直せるの?



麗奈「亜季!こんなもんでいいの!?周子がどこにいるのか見えないと意味ないじゃないの!」



そうだね、そもそも今あたし

麗奈ちゃんの真後ろにいるし



麗奈ちゃんは気づかずに前にダンボールの紙片を投げているパンパンパンって音と光


このまま後ろからキュッと首でも絞めようかな、

でもその攻撃方法じゃスタミナ全部は削れないよね、

それにそんなことしたらあたしの場所亜季さんにばれるし




パンパンパン!





あたしの場所?

透明になったあたしの居場所ってどこ?

そもそも嘘とまやかしで出来たあたしというボットはどこにいるの

あたし一人が認識していてもほかのプレイヤーやボットが見向きもしてくれないならあたしは本当にそこにいるのかな?



810: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/24(月) 00:05:08.15ID:4NQ9WoZG0



麗奈ちゃんの隙だらけの背中を見ていたらそんな考えが浮かんできた




少なくとも今麗奈ちゃんと亜季さんはあたしを探してくれてるけど、

この二人を倒したら誰があたしを探してくれるんだろ



パンパンパンパァン!!




なんの目的地もなく宿も所持金もなく暗い街をキャリーバッグ一つで歩き回っていた記憶がよみがえる

周りの人はだれも見向きもしない、ただの通行人Aとしてあたしを意識もせず通り過ぎて行く

なーんとなく不安になっても、それを見ないようにしてた頃の記憶



ああでも、これオリジナルの記憶だね、あたしには関係ないや



藍子ちゃんのふんわりとした表情を思い出す

ほたるちゃんの不安げな目を思い出す

聖ちゃんの寝ぼけ眼を思い出す




とにかく『夜』を待とう




パァンパァンパァン!




そしたら能力も本調子になる、あたしの姿も元に戻るでしょ


晶葉ちゃんの作った仮想をもう少し楽しみたいし、ここでやられるわけには



811: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/24(月) 00:06:45.51ID:4NQ9WoZG0







亜季「そこでありますな、周子」











パン!








   い 

    た   

       い


    ?




812: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/24(月) 00:08:35.19ID:4NQ9WoZG0




あたしはその場に崩れ落ちた


麗奈ちゃんの肩に掴まって体を支えようとしたけど、あおむけに倒れていく


後頭部を地面に打ち付ける


体に力が入らない、かなり痛いとこ撃たれた?

なんで?

あたし透明なのに、


自分でも自分がわからないのに




亜季「影は透明になってなかったであります」





亜季「仮想の中に仮想を作る、たしかに恐ろしい能力ではありましたが、その力はあくまで外見を変えるだけのもの」


亜季「いえ、外見というよりも、どう見えるか、ですか」


亜季「ですが例え周子がどう見えようと、”どこにいるか”は変えられなかったでありますな」


亜季「ここが晶葉の作った世界である以上、プレイヤーからは消えたように騙せても、世界そのものから消えることはできなかった」


亜季「だから、触れば手が当たるし、音や光も届いていた」


亜季「あの部屋も、この商店街も薄暗かったので影の動きには気づきませんでした」


亜季「ですが麗奈の爆発の光は、周子の存在をしっかり影にしてくれましたよ」




亜季さんはあたしが落とした銃を構えていた。

あれ、使えたんだそれ。流石ミリオタ、銃の扱いに詳しいね



813: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/24(月) 00:11:54.81ID:4NQ9WoZG0



麗奈「あ。ああアタシの真後ろにいたの!?」


麗奈ちゃんが飛び退く、逆に亜季さんは銃をこっちに向けて近づいてきた


その足取りはまるで透明なあたしが見えてるみたいに迷いがない


体に力が入らない、クリティカルヒット、だね。

さすがミリオタ、影とやらだけであたしの急所に目星をつけられたんだ、すっごーい


地面に横になったあたしの視界、

近づいてくる亜季さんの足と、麗奈ちゃんの怪訝そうな顔と




地面に映ったあたしの影が見えた





なるほど、これを目安に近づいてきてるのね


あたしの影は、あたしがどんな背格好でどんな髪型なのかを鮮明に表していた




ああ、そうそう、あたしはこんな感じだった


幻覚能力の使い過ぎで忘れかけてた




亜季「・・・・・・何か言い残すことはあるでありますか?」


麗奈「ちょっと!?早く撃たないとまた逃げられるわよ!?」



あーあ、もう終わりかなぁ




814: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/24(月) 00:13:04.36ID:4NQ9WoZG0



透明になんてなるんじゃなかった。あたし、ちょっと焦ってたのかも

まさか元に戻れなくなるなんて




これも麗奈ちゃんの能力で調子狂ったせいだよ



それを言うなら麗奈ちゃんが窓から落ちるようなことをしたあたしのせいかな



でなきゃ麗奈ちゃんが能力をゲットすることもなかったし



それともあの二階で仕掛けたのが悪かったのかな




まぁ、いいや

あたしは自分の影を見た、

姿を失くしたあたしの最後の存在証明







「あたしは、ここにいる」






パン!





ゲーム開始34分経過


塩見周子(ボット)消失


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



815: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/24(月) 00:25:27.18ID:4NQ9WoZG0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
銃って怖い


次回開始するチャプターを選択してください

安価+9までで票が一番多かったものが閲覧可能


1、渋谷凛

2、神谷奈緒

3、北条加蓮

4、堀裕子

5、緒方智絵里

6、佐久間まゆ&小日向美穂&三好紗南

7、輿水幸子&白坂小梅&星輝子

8、双葉杏&諸星きらり

9、大和亜季&小関麗奈


画像とコメントありがとうございました



816:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/24(月) 00:26:19.20 ID:7TmlLmoDO

1



817:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/24(月) 00:27:14.84 ID:024XskvhO

1



818:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/24(月) 00:28:54.40 ID:I9u4UjK40

2



819:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/24(月) 00:29:04.16 ID:a2yxUqnw0

5



820:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/24(月) 00:29:26.14 ID:jzzFhkTe0

あーんしゅーこちゃんが死んだー!美じ(



821:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/24(月) 00:29:34.72 ID:dV/fBDcC0

5



822:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/24(月) 00:33:21.06 ID:qWxdmnTf0




823:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/24(月) 00:34:28.24 ID:I9u4UjK40

2



824:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/24(月) 00:34:52.72 ID:0V3YKyNCo

2



825:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/24(月) 00:36:18.64 ID:OFe37X7T0

あれ、二重投稿してたっぽいな



826:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/24(月) 01:10:17.80 ID:MugnCvuFo

1



827: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/25(火) 00:28:18.56ID:6PwUEBYb0


安価+9までで

1、三票
2、四票
5、二票

より、奈緒ちゃんに決まりました。
ご協力ありがとうございました

投下します


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
神谷奈緒


疲れとスタミナは別物

この空間ではとりあえずそうなっているらしい


あたしは音葉さんからもらった会心の一撃で減らされたスタミナが疲労の原因だと思ったが、巴が言うにはそういうわけでもないようだ。


巴(ボット)「そもそもスタミナだの武器だのいうんは、晶葉さんが模擬戦闘のルールのために後付けで用意したカラクリじゃき。スタミナがプレイヤーの体調をそのまま表してるとかそない大層なもんやないけえ」


巴(ボット)「やけん、奈緒さんが疲れたのはただ単にいっぺんにごっついダメージもろた後遺症みたいなもんじゃ、同じダメージにしてもチマチマ小分けにしとったらそこまで疲れんかったじゃろ」


巴(ボット)「スタミナはいくら待とうが回復せん、やけど疲れやったら休めば消えよる。うちと戦うまでせめてそのハリセン振り回せるくらい元気になってもらわなのう」


・・・どうにも巴はただプレイヤーを倒すだけじゃなく、そこに正々堂々、というかドラマ?を求めているように見えた

言動からそういうところがありありと見えるし、現に今も弱ったあたしを介抱、とはいかずとも攻撃することもなくつかず離れずの位置を保っている

音葉さんみたいに徒党を組んでいるのとはまた違う・・・・・・つーか、ボットってこんなに個性豊かなのかよ


奈緒「そういやさ、巴。音葉さんとか・・・他のボットとは会ったのか?」


胸のあたりを中心として広がっていたひどい痺れみたいなのが半分以上引いてきたところで、あたしはようやく質問できるぐらいの余裕を得た


巴(ボット)「あん?音葉さんとはあっとらんし、あっとったとしても誰が教えるかい」


手すりに腰かけたままの巴が首だけこっちに向けて、そうぶっきらぼうに返事した。

べつに味方になったわけじゃないもんな、そりゃ教えてくれるわけないか


巴の右手には銃が手錠でつながれてる。亜季さんとかなら詳しい名称もわかるんだろうけど、あたしにはわからない

ただ、刑事ドラマとかで出てくる銃よりもゴツくて、巴の掌で握るには明らかに無理のあるサイズなのはわかる

洋モノのゲームのガンアクションゲームにおける、後半にならないと手に入らないレアもの武器的な風格がある、それがなんだか巴の小さい体にアンバランスだった


巴(ボット)「それよりアレ、どうするんじゃ奈緒さん・・・みたとこ、うちらボットの仕業っぽいで」


奈緒「あー、まじか。こっちも味方じゃなかったか・・・」

さっきあたしが落っこちた小さい林から少し上に登ったとこ、巴に引っ張られて運ばれた地点

そこからはビル街を遠くに見渡せたし、眼下には住宅街が広がっていた



828: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/25(火) 00:29:30.69ID:6PwUEBYb0


問題はその住宅街、今現在巴と眺めている風景


奈緒「ボットだとしても一体誰の能力だっていうんだよ・・・」


あたしはベンチにもたれかからせていた体を何とか持ち上げ、住宅街を見下ろす


巴(ボット)「知るけえ・・・ただ、ごっつう怖い力ゆうんは見りゃわかるがの」




イメージとしては巨大なサメ、


一軒家を背びれの代わりに住宅街の地下をぐいぐい泳いでいる巨大なサメ

地上に見えているのはその和風の家屋だけ、それがほかの家をかき分け、薙ぎ払いながら陸地を泳いでいるみたいだ

しかもそのサメももう一匹、こっちは3,4階建てくらいの商社ビルみたいなのがやっぱり周りの建造物を張りぼてみたいに蹴散らしながら進んでいる


あの二件、中に人がいたらやばくね?


奈緒「・・・というかアレがボットの仕業だってわかるのか?」

巴(ボット)「あれじゃ、能力の使いこなし方が人間離れしとる。ついさっき能力手に入れたばっかりのプレイヤーじゃ、ああは使えんからの」


こっちは割と素直に答えてくれた。


巴(ボット)「で、どうするんじゃ?・・・・・・あれ、近づいて来とるぞ」


奈緒「だよな・・・」


あの”陸ザメ”二匹はところどころ曲がりくねったりしてはいるがその軌道は少しずつこっちによって来ていた。


あの速度だとあたしがいる高所まで山肌を削りながら駆けあがってくることも十分ありうる


巴(ボット)「うちは奈緒さんを助けるつもりは微塵もないけえ。ただ奈緒さんのコンディションが回復して十分戦えるようなるのを待っとるだけじゃ」


巴(ボット)「やけど、その待ち時間も残りすくのうなったみたいやの、うちも事情が変わった」


巴(ボット)「・・・奈緒さんが黙ってあのごっついのに押し潰されるゆうんなら、うちはもうなんも言わん。うちはしょぼい虫でも踏んだと思って他のプレイヤー探しに行くわ」



チャリチャリと鎖を鳴らしながら巴は銃のグリップに指を回す

やっぱりサイズあってないな。




ごつっ



そのゴツイ銃口がいきなりあたしの頭に当てられた、

巴はいつの間にか至近距離に来て、その引き金に細い指をかろうじてひっかけている



829: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/25(火) 00:31:34.00ID:6PwUEBYb0


奈緒「いっ!?」


巴(ボット)「・・・幸いうちには時間があるけえの、もっと骨のある連中探す前に・・・練習台にでもなってもらうのもええの」



銃を向ける巴の目は明らかにこっちを試していた、

あの馬鹿でかくて得体のしれない能力相手に戦いにいくか、ここで死ぬか



巴の向こうからは相変わらず途切れることのない破壊音が叩きつけられてくる

その音がまるでカウントダウンのように大きくなってきた



ずずずずずずずずず!!!!!!!!!!



巴に向けられた銃の先が固い、

ごつごつと頭をこすってくる


ボットっていったら機械のプログラムみたいなものなのに、

巴は映画とかで見たロボットより数百倍人間じみていた




巴(ボット)「おう奈緒さん、はよう選び。うちもだらだらしとったら、巻き添えをくいかねん、」

「戦うか、それともここで頭に風穴あけるか?」



あたしは多分今、窮地に立たされている

巴に負けるか、いずれここに襲来するあれに物理的につぶされるか

だからここは












奈緒「・・・・・・あたしは戦わない」






巴(ボット)「・・・おお、逃げるんかい」

奈緒「あんなのに勝てる訳ねえだろ」



830: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/25(火) 00:32:31.61ID:6PwUEBYb0




ぐっ、


引き金にかかった巴の人差し指に力がこもる






奈緒「だけど、ここから逃げるわけにもいかない」



巴(ボット)「・・・・・・どういうことじゃ」




巴は怪訝そうに眉をひそめた

あたしは視線を巴からずらして、住宅街を見下ろす

何件もの家が現在進行形でがれきの海へとシェイクされている危険地帯がそこにあった

住宅街に踏み込めばひき肉にされるのは目に見えている


だけど


あたしは


奈緒「加蓮を探さなきゃならねえんだよ」


あと、この空間のどこかにいるであろう凛も



奈緒「だからあたしは戦わない。けどあの住宅街の渦中には用がある」



巴のほうに視線を戻す、巴はまだ引き金を引いてない



奈緒「あたしは今からあのでけぇのが好き勝手してる中に突っ込む、巴のおかげで疲れ自体はもう取れたしな」





巴(ボット)「・・・・・・」






奈緒「巴こそ早く逃げたらいいんじゃねえのか、巻き添え食らいたくないんだろ?」



831: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/25(火) 00:33:29.52ID:6PwUEBYb0



びきっ!

巴の眉が一瞬だけ怒りにゆがんだ




巴(ボット)「!!・・・ほぉ・・・言いたいことはそんだけでええんか?」




銃の引き金が動く、

やべぇ、怒らせた?



ドォオン!!!!!!



間近でとんでもない爆発音が轟いて、あたしは反射的に目をつぶる


だが暗闇の中、あたしの頭には痛みどころか痺れもない


奈緒「・・・・・・・・・・?」



巴(ボット)「おもろいコト言いよるのぉ・・・奈緒さん、さぞかし倒し甲斐あるんじゃろなぁ・・・」



巴は腕を横にし、住宅街のほうに銃を向けていた。弾丸はどこかの家めがけて飛んで行く



巴(ボット)「うちが逃げる?冗談も大概にせぇ・・・」



こっちを見ている巴の目はメラメラ燃えている、ただ単に怒っているのとは違う炎だ






巴(ボット)「んだらうちも、奈緒さんがどこまでやれるか見せてもらおうやないけ・・・」


奈緒「・・・は?」


どういうことだ、何を見るっていうんだ?





832: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/25(火) 00:34:34.72ID:6PwUEBYb0



じゃらん!


鎖を一際大きく鳴らして巴はあたしに言い放った





巴(ボット)「うちも一緒にカチコミしてやるけぇの」





奈緒「・・・はぁああああああ!!?」

お前もボットだろ!?何言ってんの!?











本来なら敵対関係のはずのプレイヤーにボットが協力しようとしていた




イレギュラー

勝利ではなく勝負にこだわるボット、村上巴


今この瞬間、彼女もまた不確定要素の一つとなった




ゲーム開始40分経過


高峯のあ(ボット)VS不特定多数のプレイヤー

継続中

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



833: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/25(火) 00:35:12.17ID:6PwUEBYb0



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


その壁に書かれた文字には秩序があった



『A、三人ひと組で行動中のボット、一人のプレイヤーと接触中』


『B、同じく三人ひと組のボット、ただしプレイヤーと接触後一人が別行動を開始』


『C、一人で行動、何人かのボットとプレイヤーと接触するも戦闘はなし、原因不明』


『D、三人ひと組、町外れにて待機中?』


『E、休むことなく街中を走り続けているボット、マキノさんによる勧誘は困難』


『F、全く移動しないプレイヤー(追加情報、双葉杏と判明)』




飛鳥(ボット)「このメモ、何分前の情報だったかな?」


マキノ(ボット)「ありすさんが最後にこの拠点に戻ったときにいくつか書き足したのが大体二十分くらい前かしら......」



それはありすの能力で表示されたボットとプレイヤーの位置から読み取れたことをメモしたものだった

タブレットを扱えるのがありすだけであり、なおかつありすが拠点を離れることもあった以上、どこかに他のボットのために最新情報を記録しておく必要があったのだ

ちなみに、音葉や拓海はこのメモからそれぞれ奈緒と加蓮の位置にあたりをつけて行動していた。


だがこのメモはあくまでその時の情報を記録したもので、時間が経ちボットやプレイヤーが移動してしまうとその価値の殆どをなくしてしまう



834: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/25(火) 00:36:08.43ID:6PwUEBYb0



飛鳥(ボット)「ありす、戻ってこないね・・・・・・拓海さんも負けちゃったみたいだし」


マキノ(ボット)「そうね、でも音葉さんは奈緒さんに致命傷を与えたわ、もうじきここに戻ってくるはずよ」



飛鳥(ボット)「凛さんを撒くのに手間取っているのかな。あの人は明らかに一筋縄ではいかないタイプの人だし」


マキノ(ボット)「晴、舞、あずきさん、そしてありす。論理的にはプレイヤー1人に遅れを取ることはないはずよ」



二人は淡々と事実を確認し、推測を立てていく


飛鳥(ボット)「じゃあ、もう戻ってきてもおかしくないはずなんだけど・・・・・・何が起きたんだろうね?」


マキノ(ボット)「.........」



そこで会話は止まる、

プログラムでできたボットたちは本来、根拠のない予測を述べたりはしない


述べたりはしないはずだ




飛鳥(ボット)「ところで、これはもしもの話なんだけど・・・まぁ話半分に聞いてくれるとありがたいね」


マキノ(ボット)「・・・・・・なにかしら」


唐突とも思える話題転換、マキノは怪訝そうに眉を寄せたあと続きを促す



飛鳥(ボット)「練習用ボットの中には倒されたときにキーアイテムを落としていくのがいただろう?これはまぁプレイヤーごとのハンデの意味もあるんだろうけど」

「つまりボットの中には攻撃に使った武器をそのままアイテムとして使えるのもいるんだよね?」


マキノ(ボット)「何が言いたいのかしら」








飛鳥(ボット)「いや、ほら、ありすのタブレットはどうなんだろうって思ってね」



835: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/25(火) 00:39:55.36ID:6PwUEBYb0



マキノ(ボット)「!・・・・・・ありすが倒れてもタブレットの能力は生きたままかもしれない、そう言いたいわけね?」



それは本来するはずのない、根拠無き予測のはず

だが、プレイヤーを倒すことが目標のボットにとって無視できない予測だった



飛鳥(ボット)「非常に最悪の展開だと思わないかい?・・・ボクらのアドバンテージ、位置情報の一方的な取得権を失うどころかプレイヤーに渡ることもありえるんだから」


マキノ(ボット)「それは考えうる限り最悪の展開ね」


そこでまたふたりは沈黙する、



《戦力外たちの宴》の戦力が侵されようとしている、

ジョークだとしても笑えない


壁に貼られたメモは二人に混じって言葉を発したりしない







こずえ(ボット)「ふぁ......」



ただ飛鳥の膝上にいた小さな少女があくびを漏らす音が鳴った


ゲーム開始43分経過

報告事項なし


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



836: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/25(火) 00:40:38.33ID:6PwUEBYb0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



次回開始するチャプターを選択してください

安価+9までで票が一番多かったものが閲覧可能


1、渋谷凛

3、北条加蓮

4、堀裕子

5、緒方智絵里

6、佐久間まゆ&小日向美穂&三好紗南

7、輿水幸子&白坂小梅&星輝子

8、双葉杏&諸星きらり

9、大和亜季&小関麗奈




837:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/25(火) 00:41:27.05 ID:SoEOAmbTo

乙 7



838:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/25(火) 00:42:23.39 ID:OcikypHX0

1



839:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/25(火) 00:42:37.39 ID:rdSkq+JDO

7



840:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/25(火) 00:43:20.70 ID:DR4KMwLS0

乙です 1



841:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/25(火) 00:44:33.34 ID:A9eW5TCO0

5



842:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/25(火) 00:45:34.95 ID:9y+Mg40Vo

乙!




843:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/25(火) 00:51:23.52 ID:5Jro3JdG0

3

そういえば投票が3・3・3になったらどうなるの?



844:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/25(火) 01:39:04.91 ID:U1M15W1Bo

1



845:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/25(火) 01:40:56.33 ID:rB2hfR5I0

3



846: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/26(水) 00:36:22.49ID:13oV0y+k0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
717153313

7、二票

1、三票

5、一票

3、三票

今回は
チャプター
渋谷凛
チャプター
北条加蓮

をお送りします

>>843
次回からは同票になった場合、先に投票されていた方を有効にします(今回の場合は1)

今回のはこちらの不備でした



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チャプター
渋谷凛


少しだけ横に移動する

その場にかがむ

すると視界いっぱいにクローバーが広がる

三つ葉三つ葉三つ葉

手でそれらをかき分ける、かき分ける

三つ葉三つ葉三つ葉

かき分ける、かき分ける

三つ葉三つ葉三つ葉

かき分ける、かき分ける

三つ葉三つ葉三つ葉


ぶちっ


そのうち地面をまさぐる両手が動かしにくくなってくる

しゃがんだ足もゾワゾワする、あのいやらしい根が絡みついてきているのだ


そしたら根を引きちぎりながら立ち上がる、そして少しだけ横に移動して捜索再開


しゃがんで、かきわけて、ぶちぶち、立ち上がる、移動



大体、もって十秒くらい


それ以上その場にとどまると本気で引っ張らないと引き剥がせないくらい根が絡んでしまう


五秒から七秒くらいまでなら、絡みついてきてもまだ軽い力で振り払える

だから私はその周期で細かく移動する

いちいち移動のたびに全力を発揮できるほど熱血キャラでもないからね、私は



847: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/26(水) 00:37:41.77ID:13oV0y+k0



凛「でも、この根っこ、私が寝ている間には絡んでこなかったんだよね・・・」


ぶちぶちっ


一度動き始めたものはターゲットに認識される、とか


じゃあ目覚めた時あのまま寝っ転がっていれば狙われなかったのか、いや無理な話だ


ぶちちっ


しゃがんで、かきわけて、ぶちぶち、立ち上がる、移動


しゃがんで、かきわけて、ぶちぶち、立ち上がる、移動
しゃがんで、かきわけて、ぶちぶち、立ち上がる、移動
しゃがんで、かきわけて、ぶちぶち、立ち上がる、移動
しゃがんで、かきわけて、ぶちぶち、立ち上がる、移動
しゃがんで、かきわけて、ぶちぶち、立ち上がる、移動
しゃがんで、かきわけて、ぶちぶち、立ち上がる、移動


だけど私の前にはいつまでたっても三つ葉しか現れない


凛「・・・・・・あぁ、もう」


何が楽しいのか、何度引きちぎられても私が立ち止まれば根っこは飽きることなく絡みついてくる


よく見ると私が引きちぎった根っこのかけらにも、また別の根が絡みついて地面の下に引きずりこんでいた

再利用のつもりかな

そしてそれだけじゃない、


凛「一輪車・・・」


養分を吸収するものがなくなったからなのか、クローバーの根が一輪車やサッカーボール、タブレットにまで絡み始めていた

私に比べるとすごく遅いけど、緑の細い線がその表面を確実に侵食している

私以外のものが全部緑色に塗り替えられていく


ぶちっ


ぼんやりとその様子を眺めていたらまた足を取られそうになって、あわてて根を引きちぎる


凛「・・・見つからない」


どこまで行っても三つ葉、緑、三つ葉、緑

空を見上げると緑とついになるような真っ赤な色に目が眩む


視線を戻すと一面のクローバーが地平線の彼方まで地面を埋めている、土の色なんて見えない



848: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/26(水) 00:38:12.97ID:13oV0y+k0



これだけの中から、四つ葉のクローバーを探す?


たとえ現実であってもそうそう見つからないような代物なのに?


砂丘の砂粒の中から一粒だけ混じった大豆を探し当てるような、気の遠くなる作業


そもそも私の推測はあってたの?

四つ葉のクローバーは本当に重要なの?


ぶちちちっ


なんの変調もない手作業がいやになってついつい余計な思考を巡らせてしまう


移動を続けるうちに少し離れてしまった扉に視線を投げかける


赤と緑の世界の中で唯一のアクセント、四つ葉の装飾が施された扉、

まだ何かが出来るかもしれない。と、そう思わせるたった一つの手がかり


もしあの扉自体がただの置物だったら・・・・・・


私は今度こそ一歩も動けなくなるだろう



ぶちっぶちっぶちっぶちぃ


凛「・・・・・・・・・」



足が重い、

根が絡みついているから、とかそういうんじゃない


終わりの見えない作業への辟易、

その作業そのものが徒労かもしれないという不安

そしてもしそうなら容易に想像がついてしまう自分の末路



それらの思考がクローバーとはまた違った意味で私の足に、手にまとわりつく



849: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/26(水) 00:38:57.35ID:13oV0y+k0



凛「!!・・・・・・だめだ、しっかりしないと、私」


三つ葉のなかから四つ葉を探し当てる

思いつく限りじゃ今はこれしか有効策がない


私は、自分の頬を叩く・・・のはアイドルとしてプロデューサーに怒られそうだからとりあえずその場で一度、柏手を打った


パァン!


初詣先の神社でよく耳にした小気味いい快音が意識を引き締める


凛「よし、」


根を振り払うと、離れたところにしゃがんで目に付く範囲のクローバーをすばやく精査する


三つ葉三つ葉三つ葉三つ葉三つ葉


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「_え____四______?_____」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

何かが頭をよぎった

そのことは今は気にせず、力強く足を踏み出し、次の場所に当たりを付ける


ぶちっ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「...えっと......四つ葉のクローバー...ですか...?」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

三つ葉三つ葉三つ葉三つ葉三つ葉


立ち上がる


ぶちっ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「はい...その...す、好きなんです......集めるのが......たくさん見つけたら、わたしも、もっと幸せになれるかな...って」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

しゃがむ、視界いっぱいの緑

この中から四つ葉を見つけるんだ

指先でかき分ける、目を凝らす


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「り、凛さんも、お一つどうぞ......幸せの...お、おすそ分け、です......」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

クローバーをかき分けていたら、いつだったか現実の方で智絵里と交わした記憶が再生されてきた



850: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/26(水) 00:39:45.56ID:13oV0y+k0


ありすを始めとしたボットとプレイヤーの私もこの空間に巻き込んだ智絵里


智絵里の立ち位置はプレイヤーとボット、どっちなのかな


ボットとプレイヤーのどっちに狙いをつけて能力を使っているんだろう



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「大丈夫、です......四つ葉のクローバーは......また探せばいいんです......何度だって」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ぶちっ


手探り


ぶちっ


視界が緑色に埋め尽くされて、そこをいじっている自分の手がぼやけてきた



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「探すのが...大変?......そんなことないです、よ?......わたしは探すのにちょっと、時間がかかってしまいます...けど」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

三つ葉三つ葉三つ葉三つ葉三つ葉

三つ葉三つ葉三つ葉三つ葉三つ葉三つ葉

ぎっしりと並んだクローバーが、じっとこっちを見ている気がした

そして手の代わりに根っこが私を捕まえようとしている


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「最近は...近所の公園の隅の、小さいクローバー畑が...よく行くスポット...です」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
小休止として、立ち上がって伸びをした


空の赤さが目にしみる


緑ばかり見た後だと、逆に毒々しく見えた


すぐに、クローバー畑の探索に戻る


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「はい......オフの日に行ってます......れ、レジャーシートを広げたくらいの......小さいスポット、ですから」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

作業に終わりは未だ見えない

でも私は、負けない

ここで諦めたりはしない

私は



851: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/26(水) 00:40:47.89ID:13oV0y+k0




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~














「でも、それだけ狭くても、丸一日...探して......一本も見つからない時も...あります」











~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




私は_________





ゲーム開始?分

【ERROR!】


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



852: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/26(水) 00:41:33.05ID:13oV0y+k0




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
北条加蓮


洗濯機に入れられた衣服の気持ちがよくわかる



目に入る世界すべてから上下左右の概念が消えている


地面と壁の境界が消えていく


自分の声も聞こえない


360°全方位から届く破壊的な爆音が耳を叩く


アタシが今いる家は辛うじて自壊しないまま何か大きな力に引きずり回されている


多分道路なんかも無視して、壁もほかの家も、電柱も何もかもにぶつかって回ってる


暴走列車に閉じ込められたみたいにアタシは壁や地面に体を打ち付ける


加蓮「____________!!!」


悲鳴もがれきの軋轢音で聞こえない


ただ、いまだにアタシは窓から放り出されたり、壁に頭をしたたかにぶつけたり致命傷を負ったりはしていない



のあ(ボット)「............」



それというのも壁から生えた手がアタシの手を銃もろともがっちり掴んでいるからだ

それが杜撰とはいえ命綱になっているおかげで、猪みたいに住宅街を跳ね回る家の中にいながらも大怪我はしていない


ただ、何かと衝突する音が雷みたいに鳴るたびに弾みでどこかしら体を打ち付け続ける



のあ(ボット)「............私は、知ってしまった」



何かをなぎ倒す音、大きな何かが瓦解する音の隙間を縫うようにのあさんの声が聞こえた

静かに、どこまでも響くような透き通る声が破壊音とは別にはっきり聞こえてくる



のあ(ボット)「あの存在の胎動はすべてを終わらせる......それはきっと勝者のいない...殲滅だけの時間のはじまり」



853: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/26(水) 00:42:25.85ID:13oV0y+k0



でも何を言いたいのかは分からない、アタシがその意味を考える暇もなくダメージの嵐にさらされていく



のあ(ボット)「私は...私たちには...力が必要なの。それも、能力だけに依らない......実戦からの学習と経験が紡ぎ出す力が...」



よく見るとあちこちでシャッフルされて飛び交っている壁の破片やがれきに、目や口がついていて、それがこっちを向いていた



のあ(ボット)「私は...あの子達をこの世界から欠けさせたくない......かといって私一人で守るにも限度があるし、きっとあの子達はただ守られるだけを望まない......」



一際大きな音が鼓膜を振るわえせた、

腕を掴まれたまま音の聞こえた方向に目を向けるとそこに大穴があいていた

ぶつかりすぎてついに、というか遅すぎるくらいだが、家が半壊したのだ

外からの光がアタシが置かれている惨状をありありと浮かび上がらせる


そして外の光景も目に飛び込んでくる


津波にでもあったように住宅街がすり潰されていた、

周りの家が二階建てだったのかすら判断がつかないほどに粉々にされている

がれきの海は平坦で、その遠くに並んだビルまで見通せるようになっていた




のあ(ボット)「だから加蓮...紗南、まゆ、美穂.....どうやら他にもいるようだけど......私たちと闘ってもらうわ、そして私たちはその経験を糧に、殲滅を乗り切ってみせる......」




そして、もう一件、アタシの真正面から


3階建てくらいのビルがこっちに猛スピードで突っ込んできている


曲がる気配はない、正面衝突する気満々だよアレ


高層ビルでなくともビルはビル、あんだけでかいのにあんな速度でぶつかられたら今度こそやばい


連続する破壊音が内からと外からで二倍になる


のあ(ボット)「安心して......まだ、完全には倒さないわ、少しスタミナを削らせてもらうだけ......そしてプレイヤーに集まってもらうだけ......」


明らかに少しじゃ済まない、それぐらいはわかる


壁の腕は振りほどけない、ある意味アタシを守っていた壁もぽっかり穴があいている



854: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/26(水) 00:43:24.41ID:13oV0y+k0





衝突まで5秒





舗装された道路をはがしたり木材の柱をへし折る音が警報みたいに鳴り響く






衝突まで3秒





そこに別の音が混じった


落下音?


風を切りながら何かが飛んでくるような音が






衝突まで1秒






ヒュルルルルルルルルルルルルルル・・・・・・






のあ(ボット)「.........これは...?」




爆発音





加蓮「___!?____」





855: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/26(水) 00:44:08.15ID:13oV0y+k0





アタシのいる家の、一直線上の進路が一気に爆散した

この家とビルがもう少しで衝突していたであろうポイントが吹き飛ばされる



その爆風で今までなんとか形を保っていたアタシの足場が崩壊する


のあさんの、壁から生えた腕も、床から伸びてきたヒビに巻き込まれて砕けた


ジェットコースターの落下みたいに自分の体が重力に引っ張られる


このままじゃあがれきの下敷きだ、アタシはさんざんあちこち打ち付けられて、

半分やけになっていたから、迷わず外に飛び降りられた、

壁に空いていた穴から、外へ


二階から飛び降りるか、崩れてきた天井にぺしゃんこにされるか


加蓮「ホントはどっちもやだけど!!」




でも、




二階からの落下の衝撃に備えていたアタシは意外に早く着地した


おびただしい量のがれき、その山がたまたまアタシの着地地点に積もっていた



おかげで尻餅をついたけど二階分の高さから直接一階に叩きつけられずに済んだ






加蓮「た、たすか・・・った?」



がれきの山を慎重に、それでも急いで駆け下りる

背後ではさっきまでアタシがいた家屋ががれきの山へと変わっていった

脱出成功

さっきの爆発と運のおかげで大ダメージは避けられた、かな?


なんだったんだろ・・・あの爆発、味方がいるのかな?


いまスタミナどれくらいだろう





856: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/26(水) 00:45:13.33ID:13oV0y+k0










のあ(ボット)「今のは、砲弾」




「(じゃあ...裕子の仕業かしら......プレイヤーとして、その気になってくれたということ?)」




「(いえ、確かにあの戦車の性能ならここまで攻撃は通るでしょうけど、裕子はどうやってこの戦場を知ったのかしら)」



「(裕子を落とした場所と、この住宅街は離れているし、闇雲に操作してあのピンポイントな砲撃ができたというの......?)」





「(!!......そういうことね...)」





のあ(ボット)「誰かが、いるのね」


「遊んでばかりの堀裕子を戦闘へ参加させるために引き合わせた、戦車型操作ボット」


「そのボットに干渉できる誰かが、この戦場に」



ゲーム開始42分


高峯のあ(ボット)VS不特定多数のプレイヤー

継続中

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



857: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/26(水) 00:47:18.59ID:13oV0y+k0



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
大☆混☆戦 まで秒読み中



次回開始するチャプターを選択してください

安価+9までで票が一番多かったものが閲覧可能


4、堀裕子

5、緒方智絵里

6、佐久間まゆ&小日向美穂&三好紗南

7、輿水幸子&白坂小梅&星輝子

8、双葉杏&諸星きらり

9、大和亜季&小関麗奈


コメント、安価ありがとうございました




858:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/26(水) 00:48:15.28 ID:yoARroeAO

4



859:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/26(水) 00:48:34.09 ID:HrDDjJin0

のあさんとこすごい面白そうだな
6



860:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/26(水) 00:49:01.46 ID:w82VwIXl0

5



861:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/26(水) 00:50:23.77 ID:5oCzlc9L0

5



862:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/26(水) 00:51:45.56 ID:32cpmcEd0

5



863:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/26(水) 00:54:03.74 ID:bRApvSooo

6



864:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/26(水) 01:15:26.59 ID:8/9VsQoL0




865:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/26(水) 01:16:14.48 ID:+SA3JXzXo

6



866:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/26(水) 02:22:28.87 ID:lVUYIGmEo

5



869: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/27(木) 00:31:18.69ID:p4dsANL70


465556965
4、一票
6、三票
5、四票
9、一票

チャプター
緒方智絵里
をお送りします


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
緒方智絵里


ボットには大きく二種類に分けられる


自分で考えて動くものと、外部からの命令で動くものだ


前者は、自律型

今回プレイヤーとの対戦に選ばれた通常ボット、練習用ボット

そして仮想現実の空間の均衡を保つCHIHIRO


星輝子の能力によって生み出されたキノコ型ボットも一応このカテゴリに含まれる

ただし輝子自身も知る由もないが、キノコには「星輝子の身を守る」という簡素なプログラムしか備えていないため、

キノコ達が本当に自分の思考を持ち、それに沿って動いているのかは実際のところ不明である。


とにかく、キノコを例外とすれば、

この種のボット達には目的達成(今回の場合模擬戦闘での勝利)のために各々が思考し、模索し、実行するスキルを持ち合わせている



870: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/27(木) 00:32:17.89ID:p4dsANL70



後者は、操作型

外部からのアクセスがない限り、ただの置物である



例えばプロデューサーくん、

このぬいぐるみ型のボットはプレイヤー小日向美穂と一体化して操作されない限り、一つのキーアイテムとしてそこらに転がっているだけだった



例えば堀裕子と引き合わされた戦車群、

無人兵器も珍しくなくなった時代だが、この戦車型ボットは誰かが搭乗するか”何らかの手段で外部干渉”しない限り砲弾を放つことはない

ちなみにこの戦車、砲弾の自動装填を始めとして、一通りの操縦は簡素なものにされている

そうでないと一部のマニアックなミリタリー知識を持つ人間にしか操作できなくなるからだ。




またここにも例外が存在する

ボット、高峯のあ

彼女は建物、地面を始めとしたそこらじゅうに溢れたオブジェクトと一体化し、操作する

これは何の機能も持たなかったはずの物体を自身の操作型ボットに変えてしまう能力とも解釈できる










そして今ここに、ボットであってボットでない、どっちつかずの存在がいる。


ボットとして見るなら前者、自律型のボットだが、

そうでないものとして見るならそれはただのアイテムだった。



しかも体力を回復するでもなく、銃弾を発射するでもなく、

ただそこに転がっているだけのお飾りのアイテム




???「(・・・・・・あやしい)」



871: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/27(木) 00:32:44.80ID:p4dsANL70




鞠、というより赤青黄の色鮮やかな紙風船の姿だが、

時にどこからか吹く風に揺られ、時に緩やかな傾斜を転がりながら少しずつ移動している


その鞠に自由な移動能力はない、アイテムとしてされるがままである



???「(これは追跡しなきゃ、だねっ!)」



ただしその中には、一つのボットの意識がはっきりと存在している。


ボットでもありアイテムでもある存在

目も耳もない、ただの鞠

だが彼女は確かに対象の後ろ姿を見て、対象の足音を聞いている



あずき(ボット)「(・・・名付けて、智絵里ちゃん追跡大作戦!)」



対象の名は緒方智絵里



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



872: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/27(木) 00:33:28.94ID:p4dsANL70



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

あずきは見ていた

ありす、晴、舞、そして今回の作戦の相手凛が地面に吸い込まれるように消えていくのを

正確にいうなら落下の末、地面に叩きつけられるというところで、地面に現れた模様に消えていったのを

そしてそのすぐそばに智絵里がいたのを

ガラスの割れる音を聞いて近づいてきたのだろう、そして能力を使ったのだ



突如現れた模様。そのとき空中にいたあずきからはその模様はハートマークに見えた、

もしかしたらクローバーの葉の形を模していたのかもしれない、智絵里の趣味がクローバー集めであることを考えれば、そっちの可能性が高そうだ


「事務所の方向から凛の注意をそらす」


それがトライアドプリムス分断作戦のうちの一つであり、

あずきの役目は凛の注意を引くであろうキーアイテムであるピアスを速やかに現場から持ち去ることだった

そもそも武闘派の能力者さえいれば凛を倒してしまえたのだが、音葉も拓海も別件で動いていた上、あとのメンバーも事務所の防衛にあたっていた。


とにかくそれは今はいい。問題は消えてしまった仲間のことだ




あずき(ボット)「(みんながあのまま消失しちゃった、とは考えたくないなぁ・・・)」


鞠の姿から人型のボットに早変わりする、

そのままひょいっと、近くの物陰に移動するとまた鞠に変身する


この状態なら狭い隙間にも隠れて智絵里を観察できる


智絵里「............」


智絵里はこちらを振り返る様子はない、まっすぐ歩いていく


あずき(ボット)「(よしよし、気づいてないね、追跡作戦万事順調・・・♪)」





・・・でも、とあずきは鞠の中で考える


あずき(ボット)「(このままついて行っても、どこかでマキノちゃんに連絡を取る必要が出てくるんだよね・・・)」

「(でも、通信機なんてないし、なにかを伝えるためには秘密基地まで戻らなきゃいけないし、でもその間に智絵里ちゃんがどっか行っちゃうかもだし・・・)」

「(せめて、ありすちゃんが無事ならあずきの居場所を探知させて、マキノちゃんが跳んできてくれるんだけどなぁ・・・)」



873: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/27(木) 00:34:47.11ID:p4dsANL70



___何故かあずきは鞠の状態になっている間、ありすのタブレットの探索網に引っかからない、

でもボットに戻れば反応するから、まるで画面上でシグナルが点滅しているように見える、

この独特の反応のおかげで、ありすはタブレット上の夥しい数のドットからあずきを見分けることができる


が、そのありすの安否が不明なのだ


あずき(ボット)「(智絵里ちゃん、隠れ家とかないのかな・・・そしたらあずきも一旦退却できるんだけど・・・どこまで行くんだろ・・・)」


この手の追跡は相手に本拠地があればこそ、その特定のために役立つ行為だ

なんの目的もなくふらふらしている人間をつけまわしても有力な情報は得られないだろう



あずき(ボット)「(・・・・・・・・・・・・)」



「(・・・・・・あずきが倒しちゃう?・・・)」



晴や舞、そしてありすがどうなったかはわからない。なにせ目の前でどこかに消えていったのだ


だが、消えたというのが文字通り消失したのだろうか、と言われると確信は持てない


”範囲内にあるものすべてを消し去る能力”


智絵里の能力がそこまでえげつない物とは考えにくい、突拍子がなさすぎる


それよりはまだ何処かへワープさせるとか閉じ込めるとかの方が納得がいく


あずき(ボット)「(えっと、たしか乃々ちゃんの能力がそんな感じだったよね)」


八神マキノが言っていた、勧誘に失敗したボットの内の一人



プレイヤーもアイテムを何もかもを一箇所に閉じ込めてしまう能力

特にアイテムは種類を問わず自動的に能力が発動してしまうらしい




マキノ(ボット)「でも、おそらく乃々さんの能力はそれだけではないでしょうけどね、でもそれ以上は訊く前に逃げられてしまったわ......」




マキノは最後にそう締めくくっていた。


とにかく、自分の仲間が瞬殺されたとは考えにくいし、考えたくない


能力によってどこかに閉じ込められているという推測がここでは自然だ


なら智絵里を倒せば消えた仲間も戻ってくるのでは?


あずき(ボット)「(マキノちゃんのいう論理的な考えってやつじゃないけど・・・でもどっちにせよ智絵里ちゃんは放っておけないよっ!)」




874: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/27(木) 00:35:31.71ID:p4dsANL70




人間の状態に戻る、

自分のオリジナルとなじみの深い着物姿

その胸元を緩めて中をあさる

中に入っているのはピアスの入った箱、


それと細い針金のような道具、アイスピック



あずき(ボット)「(あずきが持ち運べる武器は、ピアスのこともあるからこれが限度だったんだよね・・・)」


あずきは鞠に変身するとき人間状態で懐に入れていたものも一緒に鞠の一部にできる


ただこれをやるには大きさや重量の制限がかなり厳しく、銃弾何発かなら持ち運びに問題ないのだが拳銃一丁ではアウトなのだ、


鞠に変身した時に鞠の中からはじき出されて、所持できなくなる


今回はピアスを持って逃げることを前提にしていたのでさらに条件は厳しい


結果として、アイスピックがピアスと一緒に着物の中にしまっていても鞠に変身できる限界重量だった




あずき(ボット)「(・・・こころもとない、もともとあずき、作戦では戦う予定はなかったしなぁ・・・)」



あずき(ボット)「(でも、あずきの隠密行動大作戦ならいけるねっ!)」



智絵里は相も変わらず目的もなく歩き回っているように見える、

ただ一向に休憩する気配がないことといい、その背中から真剣さがつたわってくる



あずきはその背中めがけて一気に飛び出した




智絵里「.........?」




残り10メートル、智絵里は振り返らない



875: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/27(木) 00:36:23.39ID:p4dsANL70



あずき(ボット)「とおうっ!!」


残り5メートル、地面を強く蹴って智絵里の懐に狙いをつける


こっちに気づいて振り返るまでに一気に攻撃を加える


ゲームとはいえこの世界にも急所はある、接近戦ならアイスピックでも十分勝機はあった



智絵里「.........!」



残り3メートル



智絵里は振り返らない



智絵里「.........ぁ」










そして振り返らずに能力を使った









あずき(ボット)「!??」





”近づいてきたから身の安全のためにとりあえず攻撃しよう”


智絵里の背中はそう言いたげに見えた




駆けだしたあずきは止まらない


あずき(ボット)「(ちょ、後ろも見ないで能力使う!?もし味方のプレイヤーだったらとか考えないの!?)」



876: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/27(木) 00:37:06.07ID:p4dsANL70


智絵里の、大人しい見た目を裏切るような容赦も遠慮もない攻撃が実行される



翅を閉じていた蝶が飛び立とうとするように、智絵里の足元の影が花開く


智絵里自身に変化はなく、その影だけが急速に拡張されハートマークに似た模様をかたどる



じっと小虫の接近を待っていた食虫植物のような、

巣を張って蛾や蝶の飛来を待っていた蜘蛛のような



クローバーの葉の形の陥穽がぱっくりとあずきに口を開いた




智絵里「......後ろから...い、いきなり走ってくるなんて...き、きっとボットです...よね?」





今更になって首を後ろへ向けつつぽつりと呟く


智絵里「もし、違ってたら...ごめんなさい」


しかし、そう言う智絵里の表情からは何の感情も読み取れない







振り返った智絵里の目にはクローバーの葉型に広がりきった影



智絵里「でも......謝っても意味はないです、よね...?」





そこには誰もいない。能力の象徴である葉型の影に呑まれたのだろう、と予測した





結局、智絵里は後ろからきた誰かを見ることもなく視界から取り払ってしまったようだ



877: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/27(木) 00:38:02.74ID:p4dsANL70


智絵里「えっと......これで葉っぱ二枚分、使ったの...かな?」


そして恐ろしいことに智絵里には、能力を味方につかってしまったという可能性を危惧する様子がなかった



それはある意味で容赦のなさ、



まゆ、加蓮、凛がそれぞれ戦闘の中で見せた、その異様な行動力やモチベーションに非常に似ていた


智絵里は前を向きなおすと、また当てどなくボットを探すために足を動かし



智絵里「.........?」






ふわっ





すぐ目の前に何かが落ちてくる


風にさらわれてきたのだろうか


赤、青、黄色に彩られた、ボールのような___














あずき(ボット)「・・・助走ジャンプ&変身大作戦・・・成功だよっ!」




それが人間に変身して右手に構えた鋭利な武器を突き出してきた





878: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/27(木) 00:38:47.52ID:p4dsANL70





智絵里が能力を発動したと思った瞬間、あずきはその影に触れないままに空中に跳んだ、


そのまま空中で鞠に変身することで、跳んだ勢いはそのままに軽い体で智絵里の頭上をふわりと飛び越えられたのだ


あずき(ボット)「(まさかできるとは・・・)」





_____________

 緒方智絵里+ 85/100


_____________

_____________

 桃井あずき+ 100/100


_____________


ゲーム開始48分経過

緒方智絵里VS桃井あずき

開始




879: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/27(木) 00:39:26.52ID:p4dsANL70



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
一人分しか書けませんでしたすいません


次回開始するチャプターを選択してください

安価+9までで票が一番多かったものが閲覧可能


4、堀裕子

6、佐久間まゆ&小日向美穂&三好紗南

7、輿水幸子&白坂小梅&星輝子

8、双葉杏&諸星きらり

9、大和亜季&小関麗奈


安価、コメントありがとうございました





880:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/27(木) 00:42:20.97 ID:6kOpPdt60

8



881:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/27(木) 00:43:39.68 ID:hOKb7sGko

緒方智絵里(16)

no titleno title



882:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/27(木) 00:51:41.22 ID:1eOjhXO4O

8



883:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/27(木) 00:58:17.89 ID:6YJolWfbo

7



884:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/27(木) 01:17:13.63 ID:GKIcsLfV0

6



885:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/27(木) 01:18:32.16 ID:0Z1ovm7g0

9



886:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/27(木) 01:24:11.48 ID:By/Y2Umyo

9



887:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/27(木) 01:29:41.97 ID:w02k/Pfb0

8



888:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/27(木) 05:01:48.98 ID:BJJy3Trz0

6



890: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/28(金) 00:12:33.52ID:Egxayl8u0



88769986

8、三票
7、一票
6、二票
9、二票

九票に足りていませんがこの後6、9が来たとしても8が先に投票されているので8が優先されます

ということで今回は

チャプター
双葉杏&諸星きらり

をお送りするにぃ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
双葉杏&諸星きらり


ジジッ・・・


パタン

ジジッ・・・


パタン

ジジッ・・・


パタン


暗転

明滅


タイル張りの密室の灯りが点いては、消える

見える世界すべてがが暗黒に満ちた、かと思えば俄かに青い光が天井や壁に広がる


不規則なタイミングで視界を闇に塞がれるうちに時間の感覚も消えていきそうだ


きらり「うう~目がチカチカしてきたにぃ・・・杏ちゃん・・・どうすゆ?」

杏「確かにこれじゃあ眠れないねぇ・・・」


その部屋の真ん中に二人はいた、きらりは杏を腕の中に抱いたまま、杏はその腕の中でなされるがままだ

パタン

部屋の明かりがつく



891: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/28(金) 00:13:29.36ID:Egxayl8u0


するとさっきまではなかったはずのタイル製のテーブルが二人のすぐ隣に存在していた


きらい「にょわぁっ!?」


杏「あ、また飴じゃん」


テーブル上にはまたも飴。これが銃だった時もあればナイフだった時もある


それがまるで、手に取ってくれと言うようにすぐそばになんの予兆もなく現れる




さっきからずっとこの調子なのだ。部屋が点滅するたびに何かが差し出される




きらり「・・・むっ!杏ちゃん、怪しいものに触っちゃダメ!」

杏「ぐぇ、ギブギブ・・・」


ついつい飴に手を伸ばした杏を、きらりは抱きしめるようにして止める



杏「でも、きらり、この部屋、さっきからずっとこのままだよ?いくら杏でもそろそろ退屈してきたんだけど」

この部屋、居心地よくないし

と付け足して杏はきらりを見上げる


きらり「むぇ・・・」


それはたしかにそうだ、全く変化のないままただ目のチカチカするような部屋に入れられていると非常にストレスがかかる

タイル張りの壁を見回す。

大して厚くも重くもないそれは、何故か壊せない

相手の目的が読めない

今の状態に終わりが見えない



ジジッ・・・


暗転



892: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/28(金) 00:14:12.53ID:Egxayl8u0




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ハムスター

滑車

カラカラカラ


蒸気

タービン

ごうんごうんごうん



コリオリの力

海流

ざぶざぶざぶ


来場者

回る入場ゲート

がっこんがっこんがっこん



プレイヤー

青と白の密室


あわあわあわあわ

とたとたとたとた

しおしおしおしお



しーん



乃々(ボット)「おかしいんですけど......きらりさんが大人しいなんて...もりくぼの予想は大外れなんですけど」






_____________

 森久保乃々+ 81/100


_____________




乃々(ボット)「ぅぁあ......またスタミナ減ってます......」




893: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/28(金) 00:15:07.47ID:Egxayl8u0




森久保乃々の能力は強いて例えるなら「発電機」である


ただし発電に使うのは人間であり、ここで生産されるのは電気ではなくスタミナである

乃々の能力で生み出されたタイルは触れたものにダメージを与える

同時に奪ったスタミナは乃々へと流れていく仕組みになっている


このタイルの空間では、すべてのエネルギーが保存され乃々へ流れていくのだ


閉じ込めたプレイヤーが壁を叩いたり、歩き回ったりすることで少しづつ蓄積させたダメージ分だけ乃々は命を長らえる

そしてそれを誘発する小道具として銃や回復アイテムも一緒に閉じ込めてある


乃々(ボット)「(杏さんは閉じ込めたところで動かないでしょうから、パッションのきらりさんが来た時は、うまくいくと思ったんですけど...)」

「......どうして、どうして動いてくれないんですかぁ......」



だがそれと同時にその発電機の維持コストとして乃々のスタミナは減っていく


だから乃々は自分の体力が減る以上に体力を浪費してくれるプレイヤーを電池として閉じ込めなければならなかった


なのに、捕まえた有力株、諸星きらりは密室の中で動こうとしない


乃々(ボット)「きらりさんが慎重派だなんて、知らなかったんですけど......」





とりあえず、まずい


とりあえず、想定外




乃々(ボット)「そもそもなんでもりくぼの能力はこんなめんどくさいものなんですか......どこかで静かに過ごしてたかっただけですのに...」


積極的に能力を使っていかないと自分がやられてしまう、でもそうなるとプレイヤーに関わる必要性が出てくる


乃々(ボット)「......晶葉さん、いぢめですか......サボろうとしたのがいけなかったのですか......」




894: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/28(金) 00:15:44.71ID:Egxayl8u0


照明の不安定な密室、アトランダムに出現するアイテム



そんな場所に置かれて耐え切れず、あの二人が空間を壊す勢いで狂乱するか


耐え切った結果、森久保乃々が自分の能力に喰われて自滅するか




乃々(ボット)「うぅう......むぅーりぃー、もりくぼは生きるんです...ここで消えるわけにはいかないんです...」



滑車を回すためにハムスターを追い立てる


タービンを回転させるために蒸気を上げる


海をかき混ぜるなら地球の自転の力を使う


入場ゲートを動かすには来場者数を増やす



密室でパニックを起こすには




乃々(ボット)「......ハプニング、事件が必要ですよねぇ......」



895: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/28(金) 00:16:42.38ID:Egxayl8u0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

青 





そして暗黒の黒


青白黒青白黒青白黒青白黒青白黒青白黒青白黒青白黒青白黒青白黒青白黒青白黒青白黒青白黒青白黒青白黒青白黒青白黒青白黒青白黒青白黒青白黒青白黒青白黒青白黒青白黒青白黒青白黒青白黒青白黒青白黒青白黒青白黒青白黒


めまぐるしい光が目を焼く


きらり「・・・きらり、なんだか気持ち悪くなってきたゆ・・・」

杏「・・・杏も・・・」


きらりは杏を腕の中に大事に大事に抱え込む

なんとなくではあるがきらりは察していた




きらり「杏ちゃん、ごめんだにぃ・・・」

杏「なに?」





きらり「うゆ、多分・・・きらりが来たからこんなコトになっちゃたんだよね?」




その推測はあたっていた。

電池としてきらりは乃々の眼鏡にかなっていたからこそ能力が使われたのだから


杏「・・・なにいってんのさ、きらりらしくもない」

きらり「だって、だって・・・」


寝っ転がったまま平和にやっていた杏のそばに自分が近寄った途端にこの有様、

きらりほど純粋な良い子なら自分に責任があると思うのも仕方ない




だからきらりは動けない、動かない

巻き込んでしまった杏を危険に晒せない



896: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/28(金) 00:17:19.32ID:Egxayl8u0


ジジッ・・・


暗転


ぎゅっと、


暗闇の中、どんな攻撃からも杏を守れるように全身で包む


杏「・・・・・・・・・」


パタン


タイルが倒れる音が暗闇に響く


もう何度目になるかわからない繰り返された現象


だが、ついに変化が訪れる


杏「・・・・・・?・・・あれ?」


きらり「んに・・・?」


点滅を繰り返され、一向に暗闇には目が慣れないまま、静かに灯りがつくのを待つはずだった


一秒

二秒

五秒

十秒


だが、その点灯が起こらない


きらり「・・・まだ、明るくならない?」


杏「電池切れかな?」



変化が起きたということは、それはきらりの我慢強さの勝利だ

その結果が目の前に示される



897: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/28(金) 00:20:16.13ID:Egxayl8u0



パッタン







暗がりに四角く切り取られた光が差し込まれた








きらり「にょわっ!?」


杏「開いた・・・!」




壁の一部、一枚のタイルが剥がれ落ちている




一直線に伸びた光が少し離れた位置の二人を照らす


そこから見える風景はなんの変哲もないさっきの公園の並木

だが、時間の感覚も狂いかねない密室にいた二人には、何時間も前に見たモノのように感じた



きらり「・・・・・・?」

杏「きらり!あそこから出られるんじゃない!?」

出し抜けに生じた変化にどう反応していいのかぼんやりとしていたきらりに杏が呼びかける


きらり「!・・・うん!」

「きらりーん・・・だーっしゅ!」



1メートル四方の穴、体の小さい杏はもちろん、きらりでも通るのに苦労はしないだろう

もし穴が天井に空いていたら出るのに苦労したかもしれないが、

その四角い隙間は壁に空いている上、地面からもそう離れてはいない。



898: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/28(金) 00:23:12.84ID:Egxayl8u0


きらり「よかったにぃ杏ちゃん!すぐにでよー!」 

杏「うん、よかったね何もなくて、杏は疲れたよもう・・・」


タイルの床を蹴って脱出口へと駆け出す、ここまで意味不明な空間ならあの四角い出口が閉じてしまうこともありうる

急がないと


闇に差す一筋の光に向かって杏を抱いて全力疾走する



まだ目が慣れていないため他の物は目に入らない



壁に空いた穴のすぐ下に、またもタイルのテーブルがあるのも逆光で見えない



その上にまた飽きもせず銃が置かれているのも見えない



無造作に置かれているように見えて、銃口がきらりに向けられているのも判別できない









乃々(ボット)「......もりくぼは、こういうのがきらいですけど......」




四角い光の中に小さなシルエットが差し込まれる



タイル一枚分のスペースから密室だった空間の中へと手を入れる



899: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/28(金) 00:24:17.78ID:Egxayl8u0





テーブルに置かれた銃を手に取る





そして乃々はそのまま引き金を引いた



標的は今にも自分が覗き込んでいる穴からこちら側へ飛び出そうとしている少女たち



何度も何度も何度も何度も何度も引き金を絞る





乃々(ボット)「もりくぼは.........私は、生きさせてもらいます」




タイルの壁に銃声が反響する、悲鳴がかき消される






”この密室においてはすべてのエネルギーが保存され、乃々へ流れていく”





きらり達から失われたスタミナは何処へ行く

タイルに吸収され乃々へと




900: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/28(金) 00:31:11.82ID:Egxayl8u0




乃々(ボット)「あぅ......やっぱり完全密閉じゃないと、スタミナの伝達率も下がりますけど......」


「でも、もっと早くこうしていれば良かったです」


「では...もりくぼはお腹いっぱいなのでしばらくは別の場所でひっそり暮らします......」





「さようなら」





パタンパタンパタン



壁から外れたタイルを追うように、穴を広げるように他のタイルも次々と機能をなくして剥がれ落ちていく


密室だったものが崩壊していく

公園の風景から異物が消える


その跡には二人のプレイヤーが残された




_____________

 森久保乃々+ 100/100


_____________

_____________

 双葉杏+  29/100


_____________

_____________

 諸星きらり 15/100


_____________





ゲーム開始48分経過


諸星きらり&双葉杏VS森久保乃々(ボット)

ボット側の戦闘放棄により続行不可能


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



901: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/28(金) 00:31:52.12ID:Egxayl8u0




そこは現実世界でアイドルたちから「事務所」と呼ばれ親しまれていた場所によく似ている

いまその中の一室で何人かの少女が各々自分のことをしていた

その中の一人がソファの上で目の前に置かれた電話機に視線を落としていた


ニャー ニャー ニャー


黒猫に似た電話が鳴る



「.........もしもし......」



受話器を耳にあてた


砂塵の嵐のような、要領を得ない雑音が好き放題に流れ出す


だが彼女にはわかる、なんとなくこの後恐ろしい敵が現れるということが


なにせ、そういう能力なのだ


この手のノイズが受話器から流れることは、自分のいる場所に良くないことが降りかかる予兆なのだ


だからその度に彼女は逃げ回っていた。


だが今は違う



雪美(ボット)「......卯月...未央...」



近くにいた、頼れる仲間を呼ぶ



902: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/28(金) 00:33:12.05ID:Egxayl8u0


「わかるよゆきみん!次の敵だね!」

「今度も頑張ります!」


雪美(ボット)「...翠......小春...仁奈...」



「ええ...あい分かりました...」

「はい~」

「ティラノのリベンジでやがります!」



電話のことはすでに仲間たちには周知だ。


”未来の災いを予測する能力”


ボットたちはそれを嘘くさいと切って捨てたりはしない


すでに戦闘準備を整え始めていた



「今度は勝つぞー!!」

「はい!島村卯月!頑張ります!」

「ヒョウくんも私と一緒にがんばりましょうね~」

「・・・」

「仁奈の隠し玉、みせつけてやるでごぜーます!」




今から行われるのは紛れもない戦闘行為であるはずなのに準備をする少女たちは実に和気藹藹としていた

それがなんだかおかしくて、


雪美(ボット)「...............ふふ......」



903: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/28(金) 00:35:32.36ID:Egxayl8u0




事務所の防衛、ボットの勝利への布石へとみんなで動き続ける


だが、自分にできるのはここまで、予兆を伝えるだけだ。



雪美(ボット)「(...そういえば、私から掛けられたあの電話...何だったんだろう...あきはの声が聞こえたけど...)」




雪見自身も知らなかった、能力のもう一つの使い方、

電話を用いた、こっち側からのアクセス。

一度しかできなかったあれにはどんな意味があったのか












彼女は知らない


自分の能力が何に干渉しているのか


《黒猫電話》がどこから未来の情報を掴んできているのか




未来を予測する能力の仕組み




その重要さを知らない

それが引き起こす悲劇を知らない


ゲーム開始53分経過

報告事項なし


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



904: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/28(金) 00:36:28.37ID:Egxayl8u0



次回開始するチャプターを選択してください

安価+9までで票が一番多かったものが閲覧可能


4、堀裕子

6、佐久間まゆ&小日向美穂&三好紗南

7、輿水幸子&白坂小梅&星輝子

9、大和亜季&小関麗奈


安価、画像ありがとうございました



905:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/28(金) 00:37:06.86 ID:wc0MWdH50

9



906:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/28(金) 00:41:38.48 ID:8Nhmw6Sjo

6



907:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/28(金) 00:47:50.87 ID:v9zOx568o

7



908:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/28(金) 00:48:23.32 ID:h3ykyn+r0

9



909:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/28(金) 00:49:23.17 ID:bw7smFjIo

6



910:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/28(金) 00:54:26.58 ID:a92hDWfw0

9



911:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/28(金) 01:00:36.41 ID:8Uv08fzD0

9



912:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/28(金) 01:05:53.47 ID:+nA3gT4z0

6



913:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/28(金) 01:10:15.09 ID:huHcPUZ+0

6



914: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/29(土) 00:00:46.39ID:IH6W17gg0


967969966

9、四票
6、四票
7、一票

9の方が先に投票されていたので早いもの勝ちで9

チャプター
大和亜季&小関麗奈

をお送りします

ご協力ありがとうございました

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~  
チャプター
大和亜季&小関麗奈







下水道





と聞くと大抵は薄暗くてドブの匂いのイメージがつきまとう


だがここは仮想現実であり臭いの元となる汚水も生ゴミも存在しない


それどころかやや頼りない明かりだが照明まで整備されている


だから下水道というより地下通路かトンネルといったニュアンスの方が強かった


そして今

大和亜季、小関麗奈の二人はそこにいる



亜季「もともと、下水道やこの手の地下の通り道には作業員用の明かりがあるものです」


麗奈「作業員もなにもここゲームじゃない・・・」


パン!


麗奈の手から放られたがれきが、安い爆竹のような音を立てて弾ける



がれきは通路の壁の一部にヒビを入れて欠けさせたものの一部だ



915: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/29(土) 00:01:54.06ID:IH6W17gg0



亜季「ふむ・・・やはり手のひらで包んだ物が爆発するでありますか」


麗奈「どうでもいいけどこれしょぼくない?もっと派手にドカン!といかないものなの?」


亜季「それを今調査しているところでしょう、麗奈・・・では次はもう少し大きめのがれきで試してみましょうか」



マンホールをこじ開け、はしごを下り、明かりの灯った通路を少し奥に進んだところ

亜季は麗奈とともにその能力の性質を分析していた



周子との戦闘で止むを得ず何度も繰り返した爆発、そして発砲。

これだけ物音を立ててしまうと静かだった商店街とは言えいったい誰がやってくるともしれない


だからひとまず身を隠そうと亜季が勧めたのが地下だった。

麗奈は最初嫌がったが、地下が思ったより不潔でないことが分かると文句を言うのをやめた

現実でなら水が流れていたであろう、細長くどこまでも続く通路に二人並んで座り込む



麗奈「このていどの爆弾じゃ大した武器にはならないわよねぇ・・・」


13歳相応のちいさい右手で持つにはやや大きいボール状のがれきを握る


それを下水道の内壁にぶつけるように投げつけた


さっきとさして変わらない音量の破裂音、

がれき自体もさっきより大きかったせいか損傷具合は少ない


麗奈「よくこんなので勝てたわねアタシたち」


壁に跳ね返ってコロコロと転がってくるがれきを見ながら麗奈が小さく呟く


実際、辛勝も辛勝といったところだった。

亜季が偶然周子の能力の欠陥に気づいたからよかったもののそれまで散々いいように振り回されていたのだからそう思うのも仕方ない


その功労者、亜季はというとこれまで麗奈の能力の実験に使ってきた拳大のがれきを注意深く観察している


亜季「破片の大きさに依らず、破裂音はほぼ同じ・・・・・・破片そのものを爆発させているわけではなく、破片に火薬のような爆発物を付着させている・・・・・・?」


亜季「麗奈、たしか両手で握った時は少しだけ爆発力が増しましたよね?」


そろそろ能力による閃光に飽き飽きしてきた麗奈に尋ねる


二人の周りには大小大差ないがれきがゴロゴロと散乱していた



916: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/29(土) 00:04:04.65ID:IH6W17gg0


麗奈「え?うん・・・・・・あ、これね」


転がったがれきの一つをつまみあげる、それは他の物に比べると少しだけヒビが大きく入っていたため

損壊具合からみれば爆発力は他より大きいと言えなくもなかったが、大した差ではない


麗奈「でもアタシの能力が両手で使えるってだけでしょ?二倍になったところで元が大したことないなら意味ないわ」



今のところ麗奈の能力を試行錯誤して得られた情報は二人の状況を大きく変えるものではなかった


・麗奈が片手、または両手の平で握った、または包んだものが爆発する

・ただし麗奈の手から離れていなければ爆発は起こらない

・握らないと能力は発動しないので、触るだけでは爆発しない。よって壁や、車のような大きなものは対象外

・手の甲や腕は能力対象外。殴ったり腕が当たるだけでは爆発しない

・手のひらに握られるなら一度にいくつでも爆弾にできる(ただし爆発も同時、一度に握るため小石位にしか使えない)


・爆発の威力は爆竹程度、ただし若干強くなるときがある(条件不明)



亜季「折角手に入れた能力です。ここでモノにしなくては後の戦いで却って邪魔になりかねません。」

麗奈「モノにするもなにも、これ戦いに使えるの?」

亜季「それを今から二人で考えるのです・・・」


ミリタリーの知識から爆弾に関連するものを引き出そうと試みる

少量の爆薬を武力にするには・・・


この能力がもっとシンプルに 手のひらから火薬爆薬の類が湧き出る、とかならそれをかき集めるという方法で強力な爆弾も作れたのだが

いかんせん触ったものが爆発する、というもので火薬の類は見当たらなかった

火薬もなしに爆発を引き起こすのは凄いことだが、その規模が奇術師の手品レベルではどうにもこうにも・・・


亜季「(ですが・・・毎回同じ規模というわけでもなかった・・・もしかしたら麗奈が気づいていないだけで爆発の規模は調整できるのでは?)」


実験中、何度か閃光と爆音が通常より大きかった時があった。

そのあと慌ててつぎのがれきの破片で試してみたが望んだ威力は得られなかった


亜季「(威力はランダムなのか、実は法則があるのか・・・)」


両手で触ったときは?

たしかに爆発の規模は二倍になったが、元が小さすぎるし、実際大した威力ではなかった


拾っては投げ、拾っては投げ、試行錯誤を繰り返しても威力は上がらない



917: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/29(土) 00:04:54.83ID:IH6W17gg0



麗奈「・・・ねぇ、こういうのはどう?ほかに油とか爆薬とか燃えやすいものかき集めて、そこにアタシが爆弾で点火するっていうのは!」


亜季「・・・ふむ、罠を張るということですか。それも一つの手でありますな」


だが、この空間に銃はあるが、ガソリン、爆薬などまで揃っているだろうか、そしてそれが充分集まるだろうか

やはり能力を使いこなした上での戦力強化を第一に置きたいところだ



亜季「私にもなにか役立つ能力が備わっていれば良かったのですが・・・」



と、ひとりごちたとき







麗奈「!!・・・あ、亜季・・・!」


隣にいた麗奈が体にぶつかってきた、思わずそっちに意識を向ける








麗奈「誰かいる・・・!」








麗奈は下水道のむこうをじっと見ていた




そこにも道しるべのように明かりが点々としていたが、奥の奥まで見通すには不十分な光量だったため

その何者かの姿を視認することは亜季にはできない



・・・ず・・・ず・・・ず・・・




亜季「!」




だが足音は聞こえた




重たい何かが地面をこするような音が一定のリズムを持って暗がりから響いてくる


その音だけで得体の知れない重量感を感じさせる、そういう音だった



918: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/29(土) 00:06:18.48ID:IH6W17gg0


麗奈「・・・・・・!」


ごとっ、


麗奈が手元に転がっていたがれきの一つをゆっくり拾い上げる


攻撃するつもりか


その腕を握って亜季が止めさせた


亜季「ここで動くのは危険であります・・・」


麗奈「でも・・・もしこっち来たら・・・銃弾だって余裕はないし・・・」


亜季「もしかしたら別の場所に曲がって行くのかもしれません、ここは抑えて下さい」


ひそひそと声をひそめる


・・・ず・・・ず・・・ず・・・ず・・・


足音は遠のいているのか近づいているのか判然としない

まるで音が狭い下水道に反響するごとに重みを増していくようだった

麗奈は足音の聞こえる方向を睨みながらがれきを握りしめていた


油断した、こんなところまで何者かがやってくるなんて・・・


亜季は自分の失態に歯を噛み締める


・・・ず・・・ず・・・ず・・・ず・・・


・・・・・・ず・・・








ずずずずずずずずずずずずずず!




麗奈「!?!」

亜季「(こっちに来た!??)」


麗奈が、がれきを拾った音が聞こえたのか

それとも能力の実験中の音を辿ってきていたのか

それとも気配でも感じ取ったのか



闇が色濃くなるような錯覚、

頼りない光源の死角にある闇が深くなった



919: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/29(土) 00:07:32.16ID:IH6W17gg0



ずずずずずずずずずずずずずずずずずず!!!





間違いない。

どこかで通路を横に曲がることなくこっちに来ている




亜季「(やむを得ないでありますな!)」

ハンドガンを素早く構える


腕を水平に、闇の中へ一直線に弾丸が飛ぶように


だがその標敵は見えない


麗奈「亜季・・・!今なら、投げていいんじゃないの?明るくなるでしょ?」


亜季に手を掴まれたまま麗奈が小声で提案する、がれきは握りっぱなしだ


亜季「・・・・・・他の敵が潜んでいたら、音で気づかれてしまいますが・・・いえ、それは銃も同じですか」



ずずずずずずずずずずずずずずずずず!!!!!!


足音はもう間違いなくこちらへ近づいてきている


あちこちの壁や地面に反響したそれは、人間のものとは思えない引きずるような音を途切れることなくかき鳴らす


ついにシルエットが二人の目に飛び込んできた




大きさは中肉中背の男性くらい


体つきは亜季よりはがっしりとしている


あんなアイドルがいたのだろうか、それともまた別の存在か






ここが臨界点だった




920: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/29(土) 00:09:50.68ID:IH6W17gg0



亜季「こうなっては仕方ありません!麗奈!明かり頼みます!」


麗奈「任せなさい!」



亜季「(麗奈の爆弾の閃光で相手の姿を捉え、私が銃撃する!!)」



亜季は麗奈の腕から手を離すと同時にそれを銃に添える




麗奈の手に握り締められたままだったがれきが闇の奥に飛んでいく


だがその閃光が闇を切り裂いてくれるはず___


















________カッ!!!!!!________


























今まで見たこともない熱と光が下水道に満ちた




麗奈「____はぁ!!?」


亜季「なぜこのタイミングでこれほどの規模の爆発が・・・・・・!!」



921: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/29(土) 00:11:32.54ID:IH6W17gg0



こちらへ向かってきていたシルエットが焼き尽くされる








???「fffFFfff!!?」








しかも意図せず起きた爆熱と爆光が狭い空間内でさらに膨張した





そして周囲のものを何でもかんでも飲み込まんと一気にその勢力を広げる





麗奈「きゃあ!?」

亜季「く・・・!」



自分たちのもとへ殺到する獰猛な爆風から麗奈を守るように腕の中に包み込む


どうせスタミナは共有されているのにそうせずにはいられなかった




やはり完全にコントロールできるまで能力使用は控えさせるべきだった___


能力の制御を失ったボットの最期をこの目で見ていながらなんてザマだ___





腕の中に麗奈の体温を、背中に灼熱を感じながら亜季はまた後悔した




922: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/29(土) 00:12:47.52ID:IH6W17gg0



麗奈の能力にはまだ自分達が気付いていないルールがある


爆発の威力を上げる方法は確実にある、それを誤って使ってしまったのだ





一体何を間違えたのか


いやちがう

何かが合っていたのからこうなってしまった・・・






_____________

 大和亜季  105/200


_____________

_____________

 小関麗奈+ 105/200


_____________






ゲーム開始54分経過

報告事項なし



923: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/29(土) 00:13:55.17ID:IH6W17gg0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
これが年長者の苦労
今日もチャプター1つ分だけでしたすいません



次回開始するチャプターを選択してください

安価+9までで票が一番多かったものが閲覧可能


4、堀裕子

6、佐久間まゆ&小日向美穂&三好紗南

7、輿水幸子&白坂小梅&星輝子



安価、画像ありがとうございました



924:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/29(土) 00:15:09.84 ID:5Kap5QOho





925:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/29(土) 00:15:44.28 ID:7ihJXRpR0

4



926:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/29(土) 00:17:56.43 ID:gyUTllYg0

6



927:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/29(土) 00:21:00.53 ID:+gAsdVlg0

7



928:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/29(土) 00:43:40.92 ID:wP/6uSURo

7



929:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/29(土) 00:45:12.56 ID:+8jtb0PGo

4



930:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/29(土) 00:48:31.35 ID:upmfyFyY0

6



931:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/29(土) 00:52:43.75 ID:B6qKef6+0

6



932:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/29(土) 02:07:15.61 ID:mkjT82EDO

7



937: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/29(土) 23:56:22.91ID:IH6W17gg0


646774667

6、四票
4、二票
7、三票

チャプター
佐久間まゆ&小日向美穂&三好紗南

から
お送りします

ちなみにこの三人は、便宜上まとめていますが
いまのところユニット登録はしてません

安価にご協力ありがとうございました


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チャプター
佐久間まゆ&小日向美穂&三好紗南



ボットには二種類ある

自分で考えて動くものと、外部からの命令ありきで動くもの



その後者、操作型ボットにこそ三好紗南の能力は作用する

コントロールモード

一部の例外を含めて操作型ボットに命令を下せる能力

調査ではなく、干渉する能力


紗南「(コントロールモード・・・起動、と・・・)」



紗南は頭の中で能力のおさらいをする、使い方を確認する


___始め、上条春菜の狙撃から逃れている時にヤケになって開いたとき、そこにあったのは何かの名前だった

______________________
      MENU


→・プロデューサーくん 
  アクセス可

 ・ミニキノコ
  圏外 アクセス不可

 ・ミニキノコ   
  圏外 アクセス不可

______________________


ミニキノコが何かは知らない、だがプロデューサーくんは知っていた。


だからこそカーソルを動かして選択したのだが、そこから導かれた次の画面は混沌としていた


ノイズが混じり、色彩がむちゃくちゃ、床に落としたときにバグったと紗南は勘違いした


自分がいるビルの下まで美穂、ひいてはまゆが誘導されてきたのは奇跡に近い



938: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/29(土) 23:57:40.48ID:IH6W17gg0



美穂たちと合流できたあと、能力についてわかっていることだけを説明した。

そのときまゆと美穂から気になることを聞いたのだ


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

まゆ「そういえば美穂さん、何度か”音”が聞こえると言ってませんでしたぁ?」


美穂「あ!そうそう!そ、その音が気になって...わ、私がこっちの道がいいって言ったんだよ、ね...?」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

あとは謎解きゲームの要領だ。

コントロールモードの試行錯誤、

何ができて何ができなかったのか、何が起きて何につながっていたのか

美穂が少しだけ不安げな顔をしたが、なんとかプロデューサーくんも借りて究明を急いだ



紗南「(美穂さんのぬいぐるみに干渉したとき・・・・・・あたしのゲームは多分 混線、してたんだ)」


紗南「(一つのぬいぐるみのボットに対して美穂さんの意識とあたしのゲームから出る・・・電波?赤外線?みたいなのがぶつかった)」


紗南「(結果、ぬいぐるみの中にいた美穂さんは変な音に引き寄せられ、あたしのゲームは軽くバグった)」




のあ(ボット)「もう少しで、ぶつかるわね......大丈夫よ。少しスタミナを削るだけだから」



この時点ではまゆ、美穂、紗南の三人はのあに押さえつけられたまま度重なる衝撃にさらされていた


天井から突き下ろされた巨腕、無骨で鈍重ながれきで形成されたそれは、容赦なく3人を抑えつけ、

建物が生き物のように動き出し、住宅街を縦横無尽に衝突、破壊して回るたびに、その衝撃で揺れる地面が三人を突き上げるように痛めつけている。


窓の外の風景がめまぐるしく移り変わるたびに部屋全体が鳴動し、視界が体幹ごと揺さぶられる


まゆ「・・・つっ・・・この邪魔な重しさえなければ・・・」

美穂「うぅ・・・プロデューサーく、ん・・・」


まゆのナイフはコンクリや鉄骨には使えない

美穂のプロデューサーくんもムギュっと潰されたままだ

だが紗南は、紗南のゲームだけは動かせた

上からの多大な圧力にさらされながらも片腕だけで小さな抵抗を試みている




紗南「(ホンの少し・・・2、3センチ指が動かせれば、ゲームはできる・・・!)」




939: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/29(土) 23:58:21.61ID:IH6W17gg0


______________________





 『サーチ』
 
→『コントロール』


______________________




______________________





・・・・・・コントロールモード・・・・・・




______________________


ローディングが開始される。

サーチモードと違ってコントロールモードは直線上の相手のデータしか読まないということはない

そんな赤外線通信レベルではなく、範囲は不明だがそこらじゅうのボットのデータを拾ってくるようだ


紗南「(なのに圏外はあるんだよね、よくわかんないなぁコレ・・・仮想現実クオリティ?)」


紗南はのあの方にちらりと視線を向ける。

のあは重力をかき乱したかのように荒れ狂う室内においても静かに直立していた

まるで足に根が生えたようだ。このビルそのものと一体化しているからだろうか

だがどこかハリボテというか、全く身動きをしない置物のように見えた



のあ(ボット)「............あの子達は、高みに登らなければ。私が守るだけではだめなの...」



こちらに気づいた様子はないが、オリジナルの高峯のあを知っている紗南としては、あのミステリアスな才女なら気づいていてもおかしくないと気が気でない


紗南「(ダメ元だけど・・・何かないの!?変なきのこボットでもいいから、この状況をどうにかしてくれるなにか・・・!!)」



______________________




・・・・・・コントロールモード・・・・・・



______________________




940: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/29(土) 23:59:03.87ID:IH6W17gg0


______________________
      MENU


→・プロデューサーくん 
  アクセス可

 ・ビッグキノコ
  圏外 アクセス不可 

 ・ミニキノコ
  圏外 アクセス不可

▽ 1/3
______________________



紗南「!!」


画面が変化した、待ち望んだ変化だ。


紗南「(う・・・でも使えそうなものが・・・あれ?)」





紗南は、このマークがゲームのメニュー画面ではちょっとした意味を持つことを知っていた


紗南「(まだ項目が下まで続いてる・・・?)」


押さえつけられた腕は動かせないので必然的に画面を近づけての精査はできない

ゆっくりと十字キーの方に指を持っていく。鉄骨の一部が手の甲に食い込んだ



______________________
      MENU


 ・プロデューサーくん 
  アクセス可

→・ビッグキノコ
  圏外 アクセス不可 

 ・ミニキノコ
  圏外 アクセス不可

▽ 1/3
______________________

______________________
      MENU


 ・プロデューサーくん 
  アクセス可

 ・ビッグキノコ
  圏外 アクセス不可 

→・ミニキノコ
  圏外 アクセス不可

▽ 1/3
______________________


紗南「(もう一回・・・!)」




941: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/29(土) 23:59:54.92ID:IH6W17gg0


______________________
      MENU


→・ミドルキノコ 
  圏外 アクセス不可

 ・ミニキノコ
  圏外 アクセス不可 

 ・ミニキノコ
  圏外 アクセス不可

▽ 2/3
______________________



紗南「(どういうことなの・・・・・・キノコ探知機?)」


ボットが増えたことにより二枚目のページが出来ていた

選択肢が増えるも、しかしどれも圏外

紗南は十字キーの「下」を押し込んだ



______________________
      MENU


 ・ミドルキノコ 
  圏外 アクセス不可

 ・ヘヴィキノコ
  圏外 アクセス不可 

→・ミニキノコ
  圏外 アクセス不可

▽ 2/3
______________________



矢印模様のカーソルが順々に下がっていく


そして



942: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/30(日) 00:00:50.53ID:GCX59RpW0









______________________
      MENU


→・戦車
  アクセス可





 3/3
______________________










紗南「(やった!!)」

他に選択肢はない

紗南は決定ボタンを押した。



この数十秒後、砲撃による今までのものとは比べものにならない衝撃が建物全体に襲い掛かる





操作型ボットと自律型ボット


その二つの分類を紗南は知らなかったが今度は上手くいった





ゲーム開始42分


高峯のあ(ボット)VS不特定多数のプレイヤー

継続中



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



943: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/30(日) 00:01:40.96ID:GCX59RpW0



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

チャプター
輿水幸子&白坂小梅&星輝子






幸子「ふぅ・・・・・・このカワイイボクが撤退を余儀なくされるなんて!」


小梅「しょーちゃん、い、いたくない?」


輝子「も、問題ない......フヒヒ、ちょっとしびれるけど、毒キノコ食べたと思えば......」


幸子「それでも今は安静にしておいてくださいよ!ああ、どうやらボク、猟銃を落としてしまったようですね・・・すいません」


小梅「そうなんだ......でも、あれ...使いにくかったからいいんじゃ、ないかな.......」



三人は自分たちが逃げてきた方向を振り返る。

そこには朧気に照らされた下水道の通路がくろぐろと伸びていた


何らかの原因で自分たちを縛めていた「的模様」が消えた瞬間三人は迷わず逃走を選択した



地雷のような星型のディスク

凶暴な巨大生物(の着ぐるみ)

そして不可解極まりない拘束術



幸子の予想通り事務所に伏兵がいた場合、これ以上のモノに出てこられれば今度こそただでは済まない


それに輝子がかなり手ひどく攻撃を食らっているのに特攻などできない。

ちなみにユニット全員のスタミナが等しく減っていたのは後になってから知ることになった


で、なぜ下水道かというと逃げるにあたって目についたのが蓋の外れたマンホールだったからだ

大きなキノコが仁奈の着ぐるみを部分的に破壊したとき仁奈は恐竜の体で暴れのたうちまわった。



そのときの被害が建物の外壁だけでなく地面にも及んでいただけの話だ。


下水道には汚水もなく、それほど汚いイメージを抱くものではなかった



944: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/30(日) 00:02:19.52ID:GCX59RpW0


幸子「たしか・・・ドリンクみたいなのがありましたよね?」

輝子「う、うん幸子ちゃんに任されたやつ......」

幸子「ボクが思うに多分回復アイテムかなんかですよね?輝子さんが飲んじゃって下さい」

輝子「フヒッ?い、いいの?」


幸子「今回一番被害が大きかったのは輝子さんでしょう?他に誰が飲むんですか」

小梅「わ、私も......しょーちゃんが、の、飲むべきだとお、思う......!」

輝子「!......うめちゃん、さっちゃん...」


輝子が懐から取り出したドリンクはやはり回復機能があったらしい、なんとなくではあるが体のしびれが引いていた




_____________

 輿水幸子  230/300


_____________

_____________

 白坂小梅  230/300


_____________

_____________

 星輝子+  230/300


_____________



小梅「......そ、そういえばしょーちゃん、あのキノコ...も、もっかい出せない、の?」

次の話題は三人を救うきっかけになったあのキノコだった。

ティラノサウルスに飲み込まれたかと思えば急に巨大化した謎すぎる存在

輝子「フヒ.......や、やってみる」

ぺちん、と気の抜けるような軽い音をたてて輝子が手を叩く


その手のひらからポトリと小さな生き物のようなものがこぼれ落ちた

おそらく最初屋敷で見せてもらったミニキノコだろう

根っこがわりに二本の足が生えている


ミニキノコ「ff?」


小梅「お、大きくない...」

輝子「あれ.......ちいさ、い?」



幸子「やはりさっきのものは・・・って、え・・・?」


ミニキノコ?「fff...fffff......」


多少の落胆を含んだ言葉を幸子がこぼしたときキノコの様子が変わった



945: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/30(日) 00:03:01.50ID:GCX59RpW0


少しずつその体積を増している、成長している


小梅「......きょ、巨大化す、るの?」

幸子「こんなキノコあるんですか・・・」


輝子「......ヒャァー......?」


仄明かりに照らされた下水道の壁に奇怪な影が伸び上がる

最初シャープペンシルか単三電池程度の大きさだったミニサイズのキノコがみるみるうちに大きくなる



ミドルキノコ「fffFFFFfff」


最終的にそれは人間と同じ大きさにまでなった、

幸子たちよりも身長が高い

だが恐竜の喉を突き破ったものにはやや身長が足りなかった


輝子「ヒャッハァアアア!!!」

幸子「お、おおう・・・すごいじゃないですか!輝子さんの能力が進化したんですよ!」

小梅「で、でもさっきのより......ちょ、ちょっと、小さい?」

幸子「いえ、それでも何の問題もないでしょう!ボクらの戦力もこれで拡大できますよ!」





カワイイボクと142'S

そこに人間大のキノコが加わった瞬間だった





ミドルキノコ「FFf?」






ゲーム開始52分経過

報告事項なし

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946: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/30(日) 00:04:34.08ID:GCX59RpW0


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チャプター
堀裕子


戦車


裕子「ふうむ・・・」

見上げるようなサイズの硬質なそれが、行っても行っても並んでいる

肌寒い。まるでひんやりとした鉄の質感が空気中に染み出ているようだ


裕子「どうしましょう・・・戦車。誰かが使う予定でもあるのでしょうか?」


落とし穴に突き落とされた先は・・・隠し倉庫?でした

私を落とした方はこのことを承知していたんでしょう。ということは私をここに呼んだことには何か目的が・・・?

むむむ

裕子「・・・・・・さいきっく沈思黙考!」

と頭をひねってみても何も思いつきません

私は沈思黙考を解除しました


ですがここまで来たからにはやはりこの戦車はお土産に持って帰りたいですね




裕子「よいしょっ・・・と」

裕子はキャタピラに脚をかけ、戦車の上によじ登った、なんとなくの知識で戦車は上から入るものだという認識があったからだ

その予想通りにマンホールくらいのサイズの蓋があった、十中八九、入り口の類だろう


裕子「こういうのは・・・・多分横に回して・・・うーん」

晶葉によりこの手の操作は簡易なものにされているはずなのだが、それでもどうも裕子には上手く開けられないらしい

丸い蓋を右に回したり左に回したり押したり引いたり四苦八苦した後


裕子「ふんっ!!!」


厚い装甲ごと蓋を引き剥がした、

明らかに無理な負荷がかかった鉄が軋んだあと、大小二つに断たれる

裕子の手に残った蓋には周りに飴のようにねじ曲がった鉄板がくっついていた


裕子はそのまま蓋だったものを放ると、その中へ飛び込んだ。

意外と広い内装に感心しながら内部を見わたす


裕子「これが戦車の中身ですか!・・・割とシンプルですね!」


中には二、三本のレバーと五百円玉大のボタンしかなかった

あとはおそらく戦車の周囲を映しているであろうディスプレイ

計器の類も見当たらない


本物の戦車を知る人間からすれば失笑もののシンプルさだが、ゲーム内での仕様なのだろう

もちろん裕子にそんな事情は知る由もなく、座席に着く



947: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/30(日) 00:05:10.69ID:GCX59RpW0



裕子「あれ、もう電源は入ってるんですね・・・では全速前進です!」


レバーを一本掴むと思いっきり前に押し倒した


ゴゴンッ!!!


裕子「あいたぁー!?」

戦車は何かにぶつかり、はずみで中の裕子も内壁に頭をぶつけた

きっちりと並べられた戦車の一両だけを急に動かせばそうなるだろう。

裕子の乗った戦車は前に停まっていた別の戦車に追突していた


裕子「ぐぐぐ・・・・・・壁ですか・・・」


シンプルだろうと運転は運転、細心の注意とある程度の技術が必要だということを裕子は少し学んだ


裕子は頭を押さえていた手を離し上を見上げる


真ん丸というにはややイビツに千切り取られた戦車の天井から、この部屋の照明が見える


かなり広い空間だからかその照明の位置は遥かに高い、ジャンプして届く距離でもない

そもそも裕子の能力は純粋に身体能力が上がるだけというわけでもないのだ

物体を握っている筋力は増加すれど、ジャンプ力は増大しない


裕子「どうやってここから出ましょう・・・?」

座席にもたれて裕子は無い知恵を絞った




裕子「あれ?」


天井を見上げた時に気づいた、というか今まで気づかなかった


裕子「あそこ、一箇所だけ穴があいてますね」


この部屋に入ると同時に照明が点き始めたため見落としていたが一箇所だけ人口ではない日光による光があった

この世界は太陽光すらも人口なのだが、とにかく裕子はそれを発見した


裕子「・・・どういうことでしょう、意外とここの天井は薄かったんですかね」


ひょこっと、モグラ叩きのモグラの気分で戦車上部から頭を出す

戦車の列を上からではなく横から見わたす。

すると幾何学模様のように全く同じ形のものが並んでいる中に一点だけ違和感があった


裕子「あの一台だけ砲台が上を向いて、る・・・?」


お行儀よく同じ角度で並んだ砲台の一本だけが上を向いている、出る杭は打たれる、ということわざがあるが確かにその大砲は周りから浮いていた


天井の穴、一両だけ上を向いた砲口



948: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/30(日) 00:09:31.39ID:GCX59RpW0


裕子「・・・誰かいるんですかね?」


戦車に空けた穴から身を出すと、そのまま戦車を飛び石伝いに渡っていき、その違和感を確かめに行った


裕子「やはり開け方がわかりません・・・・・・ふんしょ!」


またも無理やり入口をこじ開ける。

だが裕子が覗き込んだ内部に人影は、なかった


裕子「・・・・・・?・・・」

ちなみにほかの場所でも人の気配はなかった。いくらこの空間が広いとは言えそこらへんの見落としはなかった、はず



これではまるで裕子がいないうちに戦車が勝手に砲撃を開始したようではないか



裕子「・・・・・・ま、いいでしょう!!意外と地上まで近かったようですし、壁でもよじ登れば脱出できるでしょう!問題は戦車をどうするか、ですか」







この出来事と時を前後して、高峯のあは悟った

地下に通じる穴を開けたことは思いもよらぬ展開を生むことになったと。

自分の行動が原因でなんらかの能力が、地下深くに隠されていた戦力にアクセスできてしまったと。

住宅街とは距離のある場所だったにもかかわらず戦車を自分たちの盤上に乗せてしまったと。




ゲーム開始45分経過

報告事項なし

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949: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/30(日) 00:11:10.49ID:GCX59RpW0



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最後に得票数順に三つまとめて大放出させてもらいました



次回開始するチャプターは


・神谷奈緒&北条加蓮&佐久間まゆ&小日向美穂&三好紗南
  
  VS

高峯のあ(ボット)&?&??


になります


その後、次スレの準備に取り掛かろうと思います。

他のチャプターも含めてキリのいいいところでそちらに移ります


安価、コメント、画像にご協力いただきありがとうございました

もう少しお付き合いください




952: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/31(月) 01:49:22.26ID:gxzXcr+W0


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チャプター
神谷奈緒&北条加蓮&佐久間まゆ&小日向美穂&三好紗南




奈緒「かれーーーーーーーーん!!!」


がれきの海を走る走る走る


ブルドーザーの暴走事故跡みたいに、あちこちで建物が等しく廃材の山になっていた

平らな部分なんてとっくの昔になくなった道路を走り、廃材の上を飛び移り、倒れた壁を踏んづけていく


巴(ボット)「おう、奈緒さん。急ぐのもわかるけど気ィつけや、今のスタミナじゃと転んだだけで逝ってまいかねんからのう」

奈緒「ス○ランカーかあたしは!!?」


巴(ボット)「うん?・・・なんじゃそれ・・・」


気が急いているのか先にどんどん走っていく奈緒の少し後ろを巴が追っていた。

小柄な体躯でもひょいひょいと無駄の少ない動きでがれきを乗り越えていく


奈緒「ここだ!」

すっかり地形の変わってしまった住宅街をそこそこ進んだところで奈緒は唐突に立ち止まった。

やはりその周りの住宅も他同様に象かなにかに踏み荒らされた様相をなしている


奈緒「・・・向こうからみたときは確かこの辺に加蓮がいたんだよ」

「そのあと音葉さんと戦う羽目になったから色々うやむやになっちまった・・・」


巴(ボット)「ほお、わかるもんなんかのお・・・うちにはどこも同じにしかみえん」


奈緒「ああ、加蓮のすぐ近くにちょっと周りよりも大きめのお屋敷みたいなのがあったのを覚えてたんだよ・・・」

そういう奈緒が手近ながれきの隙間を覗き込み始める。もしかしたら加蓮が生き埋めになっているかもしれないと考えたのだ

その近くには和風の邸宅にでも使われていそうな瓦や玉砂利がころがっていた


巴(ボット)「そうけえ。うちは山沿いの道路から来たから音葉さんすら見かけとらんかったしのう」


巴は奈緒の作業を手伝わずに遠くを眺めていた。

その視線の先にあるものが危険極まりないため、巴はここに来るまでもそれに注意を怠ったことはなかった


巴(ボット)「しかしなんじゃ、あれは一体何が楽しゅうて暴れとんのじゃ・・・」


視線の先には泳ぐように動き回るビルと家

その二件が今は住宅街の外れにある壊し残した建物にまで体当たりをかましている

静かなはずの仮想現実でこの付近だけが破壊音に溢れていた


巴(ボット)「そもそもあの建てモンは壊れんのかの、能力のせいか」


チャリッ

右手に銃をぶら下げている手錠の鎖を鳴らす

巴(ボット)「(うちの能力、がれきにまで効くんかのう・・・)」



953: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/31(月) 01:51:17.62ID:gxzXcr+W0


まどろっこしくなったのか、奈緒はとうとうがれきの一つを力づくで退けてまで加蓮を探し始めた

何かの拍子にがれきに潰されでもしたらそのままゲームオーバーにもかかわらず、そこに恐れはない


奈緒「どおりゃ!加蓮!!いるかー!!」


ガゴン、と音を立てがれきの山が崩されていくが、とても奥の奥までは調べられそうにない


巴(ボット)「おーい、奈緒さん。別のとこ探さんか?そこにはおらんじゃろ」

奈緒「いや、でも・・・ほかに手がかりなんかないし・・・」


流石にそこまでは放置できないのか、巴が声を投げかける

しかし見通しがよくなったとは言え、やはりそこそこの広さの住宅街で一人の仲間を探すのは無茶だろう

それにここだっていつまで無事かわからない、なにせ建造物が意志を持ったように動き回っているのだ。


巴(ボット)「よー考えい、その廃材ん中に呼びかけて返事がないゆうことは既に逝きおったか、別の場所におるかのどっちかじゃろ」

「それにこの世界じゃ気絶なんてけったいなモンもないけえの」


奈緒「え、そうなのか?」

巴(ボット)「あったりまえじゃろ、この仮想現実自体が寝てる間に視る夢みたいなもんなんじゃから」

奈緒「ああ、そうか・・・どうにもここが作り物って忘れちまうんだよなぁ」

巴(ボット)「・・・うちらからしたらこっちの世界が本物じゃけどの」


巴(ボット)「まぁとにかく、何の反応も返ってこんのに探すのも無駄じゃき、移動せんか?」

奈緒「お、おう・・・というか、そういうことはもっと早く教えて欲しかった・・・」

巴(ボット)「あ?・・・何でもかんでもうちがいちいち教えてやるかい」

奈緒「あー、それもそうだったな」


奈緒は手に持っていたがれきを適当な位置に放った、だがその音も遠くから響く崩落音に掻き消える


いや、それだけじゃなかったビルとはまた別の


巴(ボット)「・・・・・・なんじゃあ?」

奈緒「・・・・・・ミサ・・・イル・・・?」



空気をつんざく落下音が二人に降りかかった

しかしそれは二人の遥か頭上を通りすぎ、どこか飛んでいく

その正体を目視で捉えることはできず、ただ軌跡だけを目で追った





そして耳を劈く爆発音




飛来した何かはビルと家のあたりに着弾すると空気を震わせる衝撃を撒き散らした



954: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/31(月) 01:52:02.61ID:gxzXcr+W0



巴(ボット)「ダイナマイト・・・いや、バズーカ!!?」

奈緒「もうマジモンの戦争かよ!!」


遠くに見える家が倒壊していく、ビルの方はここでもまだ原型を保っていたが一般家屋では流石に限界だったのだろう


巴(ボット)「なんや訳のわからんことになっとんのう・・・」

奈緒「あれって絶対近づかないほうがいいよな・・・」

巴(ボット)「けど、奈緒さんの探しとる加蓮さんがおるかもしれんど?」

奈緒「う、確かに・・・この現象だって、加蓮とボットの戦いかもしれねえしなぁ。じゃあ少しだけ近づいてみようぜ?」


一応今の爆撃か砲撃か、奈緒には判別がつかなかったが、その何らかの攻撃でビルたちの進撃は止まっていた、接近して調査するとしたら今がチャンスだ

二人で煙の立ち上る爆心地を眺める。


突如、二人の背後でがれきが大きな音を立てて崩れた


巴(ボット)「ぬ?」

奈緒「うおっと」


その音が耳に入るなり、自然に崩れてきたのかと振り返る。




前川みく(ボット)「にゃぁん・・・のあチャンやりすぎにゃあ・・・これ大惨事にゃあ」


アナスタシア(ボット)「...動きが止まったら......えっと、合流の合図、でしたね......みく...急いでください」



だが違った、二人のすぐ後ろに聳えていたがれきの山の上、そこに新たに二人のボットが立ったせいで崩れたのだ


前川みく、アナスタシア


何人ものプレイヤーと住宅街を破壊の渦に叩き込んだ高峯のあの仲間である


巴(ボット)「おう、二人共なにしとん!」


奈緒「げっ、お、おい・・・巴・・・」


みく(ボット)「にゃあ?・・・巴チャン?と・・・奈緒チャン!?にゃんでプレイヤーがいるにゃん!!?」


アナスタシア「アー......変...です、ね?」


奈緒たちと同じく煙を上げるビルを眺めていたみくが山の下にいた二人に気づく、遅れてアナスタシアもそこに目をやる


そこで巴がその二人を見上げながら剣呑な雰囲気をまとう


巴(ボット)「・・・・・・奈緒さんはうちの獲物じゃけえ、横取りするなら容赦せんぞ」


奈緒「えものって・・・」


いつの間にか右手は銃のグリップを握っている、勝負にこだわる巴にとって、

万が一戦闘中に横槍を入れられようなことになるのは絶対に許せないからだ



955: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/31(月) 01:52:43.69ID:gxzXcr+W0


そんな危なげな声にあてられ、みくが縮こまりながら言い返す


みく(ボット)「そ、そんなことしないにゃあ!!みくは正々堂々戦うにゃ!」


アナスタシアは、ふしゃー!っと猫っぽく威嚇するみくの隣にぼんやりと立ったまま口を開く



アナスタシア(ボット)「巴...ご心配なく、私たちには......ちゃんと、相手がいるみたいなので...」


みく(ボット)「そうにゃ!のあチャンがいっぱいプレイヤー集めてきたんだもん!!」



奈緒「プレイヤーを・・・・・・集める?」


奈緒の耳にその言葉が引っかかった。

まだほとんど接触のなかったプレイヤーがどこか一箇所にいるというのか


奈緒「おい!それって、もしかして加蓮も」


アナスタシア(ボット)「みく......しゃべりすぎ、です...早く行ってください」


慌てて訊きただそうとした奈緒の言葉をアナスタシアが断ち切る


みく(ボット)「わかったにゃ!!じゃ、巴チャンも奈緒チャン頑張ってにゃあ!!」


巴(ボット)「お?どこ行くいうんじゃワレ」


巴の問いには答えず、みくはがれきの山の上に手をつく、猫の四つん這いのような態勢だ


みく(ボット)「おっしえにゃ~・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・い!!!」


ダンッ!!!


その背中にアナスタシアが掴まった瞬間、みくは一気に足元を蹴った


がれきにヒビが入り、山の頂上が一瞬で平坦になる


そのスタートダッシュのまま、みくはアナスタシアを背中に乗せて飛ぶように駆けていってしまった


奈緒「うおっ!?はやっ!!」


巴(ボット)「まるっきり猫の動きじゃの・・・・・・ああ、そういう能力かい」


悪路、どころか道ですらない場所を動物じみた動きでぴょんぴょんと跳ねては飛び移りながら猫耳と銀髪が遠ざかっていくのを呆然と見送る


だが、


奈緒「あのビルの方に向かってる。・・・あそこに加蓮がいるかもしれねえんだな!」


巴(ボット)「・・・奈緒さん、追うで・・・」


次に取るべき行動は決まっていた



956: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/31(月) 01:53:52.48ID:gxzXcr+W0



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


砲撃の衝撃でビルは大きく傾いていた。


そしてその内部


のあ(ボット)「予定より削れなかったわ......けれどこれもレッスンの糧、私たちが挑むべき相手はもっと険しいのだから」


のあ(ボット)「それじゃあ、私はお暇させてもらうわ.....時が巡ればまた会いましょう」


のあの体がガラガラと崩れていく

物体と一体化する能力、それにより作られたコンクリ製の人形だったのだ。

三人の前でそれが能力の制御を失い、いくつもの石ころに砕けながら地面に広がっていった



まゆ「まゆたちは偽物相手に手玉にとられてたんですかぁ・・・頭にきちゃいますねぇ・・・」


紗南「それより、早く脱出しないと!これビルごと崩れちゃう流れだよ多分!!」


美穂「でで、でも・・・このおっきいのが、のしかかってて・・・う、動けないよぉ・・・」


さっきからのあによって作り出された廃材の巨腕、それが三人を上から抑えていた。

だがそれものあの人形の崩落を真似るようにバラバラと分解されていく

盛大に土煙を巻き上げながら


紗南「うわっ!?げほっげほっ!」


まゆ「こほっこほっ・・・・・なんだか、出られましたねぇ。ここまでやっておいて何だったんでしょう?」


美穂「あわわ・・・」


美穂だけはすばやくぬいぐるみに乗り込む、というか中に避難していたので煙を吸い込まずにすんだ

とにかく何故か無事に、いやここまでで多少のダメージはくらっていたが、三人はのあの手から脱出できた


もともと階段入口のところで抑えられていたのでそこからの脱出は容易かった。

やや傾斜がかかった階段を駆け下り、ビル一階の窓から抜け出す。


まゆ「あれ、ナイフ、結構な本数なくしちゃってますねぇ・・・」


美穂「はぁっ・・・はぁっ・・・よかったぁ・・・出られたぁ・・・!」


紗南「ふう・・・・・・あー、怖かった。」


紗南は脱出の際にしっかりと持ってきていたゲーム画面を覗く。コントロールモードは既に終了していた。


紗南「今回はなんとかなったけど・・・戦車ボットはいつでも使えるように、どこにあるか探しておくべきかなぁ」


美穂「紗南ちゃん、どうしたの?」


紗南「ん、あとで説明するよ」



957: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/31(月) 01:54:52.53ID:gxzXcr+W0



ぬいぐるみから出た美穂からの疑問は一旦スルーして、周りを見渡す

まゆが音葉を倒したときと同じ場所だったとはとても信じられないような変わりようだった

元の形を保った建造物が一つとしてない。

そしてすぐそばには大きなクレーターまで空いている、これは紗南のしわざだが


まゆ「!!・・・・・・誰か来ますねぇ」

美穂「えっ!?」


残り少なくなった刃物を構え、まゆが一点を睨む

美穂がその視線を追うと確かに向かいの崩れ去った家屋から誰かが駆け寄ってきていた

がれきに偶に足を取られながらも、歩みを止めない人物



加蓮「あれ・・・まゆ、美穂、紗南まで!?」



紗南「加蓮さん・・・!」

まゆ「あらぁ?お味方でしたか・・・」

美穂「加蓮ちゃんも無事だったんだ・・・」

クレーターのすぐ横で、四人が向かい合う


加蓮「アタシ・・・のあさんに振り回されっぱなしだったんだけど、何だったのあれ?」

紗南「あたしたちもそうだったよ!ギリギリで手加減されてたけど!」

美穂「ううう・・・もう、ジェットコースター・・・乗れない」

まゆ「そっちも似たような感じだったんですねぇ・・・」


お互いをねぎらうように言葉を交わす

加蓮からすればやっと会えた味方と呼べる人間の登場に、明確に顔がほころんでいる



まゆ「しかしのあさんの目的は一体なんだったんでしょう、こんな生殺しのような真似をして・・・」

紗南「あ、そうそう!言っておかなきゃいけないことがあるんだけど・・・」


だがそこは戦場、それもボット側が提供してきた明らかな狩場だった、和やかにできる場ではない

四人のすぐ近くに、猛スピードで何かが到来する





みく(ボット)「にゃはははーーーーん!!ネコチャンタクシー、とーちゃくにゃあ!!」



アナスタシア(ボット)「アー、乗り心地......最悪です...みくにゃんのファン、やめさせて、もらいます......」


ズダンッ!


みくは足元のがれきを粉微塵にしながら着地し、それでも止まりきらなかった勢いに数メートルほど引きずられ、地面に跡をのこした

そこに現れたのは猫のように四足で地面に立つみくと、その背にまたがるアナスタシア

不意を打たれた四人に動揺が走る



958: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/31(月) 01:56:14.42ID:gxzXcr+W0



加蓮「な・・・みく、アーニャ!?」

まゆ「こんどは、ちゃあんと敵ですねぇ・・・うふふ」

美穂「ひっ!? ま、まゆちゃん?」

紗南「うわ、ほんとに猫だ・・・ちょっと引く」


アナスタシアを背中から下ろし、みくが余裕たっぷりに四人を見回す


みく(ボット)「にゅふふふ・・・・・・のあチャン、こんなに集めてきたのかにゃあ・・・」


アナスタシア(ボット)「四人、ですか...レッスンには丁度いいです...ね?」



まゆ「(集める、レッスン・・・どういうことでしょうかねぇ・・・)」





四人のプレイヤーと二人のボット、

だが数の上での有利はこの世界にはない、それはひとえに能力の影響力によるものだ


まゆ「ところで加蓮さん、もう能力持ってたりします?」

加蓮「ごめん、ない・・・まゆも?」

まゆ「ええ、情けないことですが、ナイフと拳銃だけの心もとない装備だけなんですよぉ」

プレイヤーたちは動くに動けない、今見せつけられたみくの身体能力一つにしても彼我の差を思い知るには十分だった



のあ(ボット)「さて......役者は揃ったわね」



みく(ボット)「にゃにゃ!?のあチャン!」

アナスタシア(ボット)「えっと、この人たちを...私たちの力で、倒せば...いいんですよね?」


更に三人目のボット、高峯のあが出現する

それが当然とばかりに、金魚が水面に顔を出すように地面から浮かび上がってきた

がれきには穴など空いていない



紗南「う、ラスボスっぽいのが来たよ・・・」

美穂「ひぇ・・・来た」



絶体絶命

高峯のあ 前川みく アナスタシア

大災害を引き起こした能力者、人外の機動力を持つ能力者、そして残る一人は未だ未知数。




959: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/31(月) 01:57:06.88ID:gxzXcr+W0


のあだけですら、たった一人で四人を制圧していたのだ、そこにさらに二人もの追加である

プレイヤー四人は、まゆも含めて完全に二の足を踏んでいた。

どう動いても勝てるビジョンが浮かばない


まゆ「・・・・・・」

美穂「あぅぅ」

紗南「(もっかい戦車、いける?)」

加蓮「(残り3発、か・・・木刀は、なくしちゃったなぁ)」



対照的にボットの方は落ち着いて相手を吟味している。みくにいたっては舌なめずりでもしそうだ


みく(ボット)「にゃあん・・・アーニャはだれにするにゃあ?」

アナスタシア(ボット)「なんとなくですが、まゆと闘うのは...怖いです、ね」

のあ(ボット)「恐怖は克服してもらわなければ困るわ......それはいずれ星を曇らせる暗雲となってしまうもの......」


一方的とも言える実力差で構成された状況


そして、最初に動いたのは








プレイヤーだった









奈緒「加蓮!!!あ、あたしとユニット組んでくれ!!!」




加蓮「奈緒!?って、ユニット?」


がれきを踏み越えてやってきた新たなプレイヤー、奈緒が叫ぶ



みく(ボット)「にゃふ!?」

アナスタシア(ボット)「...追いついたのですね...巴はどうなったのでしょう?」




巴(ボット)「おう、おるぞ」




のあ(ボット)「.........これも、乗り越えるべき世界からの試練、かしら」



奈緒が加蓮たちの元に駆け寄るのに前後して、積み重なったがれきの影から巴が姿を見せた



960: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/31(月) 01:57:40.14ID:gxzXcr+W0



ボットとプレイヤーが共に現れる、という異常事態にみくたちが一瞬硬直する。


その隙に奈緒と加蓮はユニットの説明も登録も済ませてしまった



加蓮「奈緒!?あ、あんたスタミナ3ってなにやらかしたのよ!?」

奈緒「お前探したりボットと戦ったり色々あったんだよ!」

加蓮「そういうのは後で聞いたげるから!ほら、早く登録しなさい!」



ここに来る途中、奈緒は巴からユニットについて聞いていた。

そのメリットもデメリットもひっくるめて、である。


そして加蓮もまたたった今、奈緒からそれを聞き、

その上で、リスクを知りながら迷いなくユニットの登録に踏み切った


美穂「あ・・・えっと、奈緒さんも来たけど、巴ちゃんも来て・・・ボットもプレイヤーも・・・ええっとぉ」


紗南「美穂さん落ち着いて!・・・あたしも情報多すぎて混乱してるけどさ!」


まゆ「(ユニット、そういうのもあるんですかぁ・・・それにしても、なんの躊躇もなく登録するなんて加蓮さん、仲間思いですねぇ・・・)」



プレイヤー達の間に俄かに騒がしい空気がもたらされる。


だが、その隙をボットたちは突かない、いや、突けない



みく(ボット)「ふにゃぁぁあ、巴チャン!!どういうつもりにゃあ!!」


アナスタシア(ボット)「巴...プレイヤーに...味方、するのですか......?」


のあ(ボット)「............」




プレイヤーともボットとも離れた位置に立つ巴にみくが食ってかかる

アナスタシアは純粋に疑問そうな顔をして、のあは無表情のままだ



巴(ボット)「うちはボットやけえ、プレイヤーとしか戦わんつもりじゃ」


「やけど、どうせやるにじゃったら、互角とまでは言わんでも・・・ちぃっとばかしは実力も並べんとつまらん」




巴は非難めいた言葉にも強気な姿勢を崩さない



961: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/31(月) 01:58:58.51ID:gxzXcr+W0



巴(ボット)「もともと奈緒さんのスタミナをある程度までなんとかするんが目的じゃったけぇ・・・・・・ユニットのおかげで手間が省けたわ」

「ユニットは組んでても、うちは奈緒さんとしかやらんけえ、そっちはそっちでドンパチやっときぃや」



他人の戦いに多少割り込んだが、あくまで戦闘自体は邪魔しない。

巴はそういうことを言っていた





みく(ボット)「ぐにゅにゅ・・・!なんだかしてやられた気分にゃあ!」

アナスタシア(ボット)「ユニット、ですか......ボット同士では組めないルールですから...そのあたり...よくわかりません」

みく(ボット)「アーニャも流されちゃだめにゃ!巴チャンはみくたちのエモノをかっさらう気にゃあ!!」




のあ(ボット)「...............」








のあ(ボット)「...いいわよ......貴方の思うままにしなさい、巴」






巴(ボット)「ほう、ええんか」







アナスタシア(ボット)「のあ...いいの、ですか?」

みく(ボット)「にゃにゃ!!?にゃに言ってるにゃ!のあチャンが用意したんでしょ!?」




状況は既に混迷を極めていた。ボット同士の関係性に乱れが生じ始めている


そのボットの混乱から、プレイヤーの絶対的不利が覆りかけていた。





962: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/31(月) 02:00:07.16ID:gxzXcr+W0


のあ(ボット)「...でも巴、貴方の相手はユニット、北条加蓮と神谷奈緒の二人よ」



巴(ボット)「!・・・おう」



のあ(ボット)「この趨勢には巴の手が大きく入り込んでいる......ならそれを断ち切るのも貴方」


のあの言いたいことはつまりユニットを作り状況をボット側に不利にした責任を取れ、というものだった





実は不利になること自体はのあにとっては”望んだこと”なのだが、この場を収束させるための方便だ





のあ(ボット)「そうすれば私たちは1対1で戦えるし、貴方も戦いを楽しめるのでなくて?」

みく(ボット)「にゅうん・・・」

アナスタシア(ボット)「.........」






巴(ボット)「おお、ええでその話・・・・・・のった!!」




じゃらん!



巴が大きく振った手につられて銃が揺れた。





のあ(ボット)「...でも忘れないで、私たちもまた”糧”として、戦闘を求めている......」





のあ(ボット)「貴方はプレイヤーとしか争いを望まなくとも、私たちは違う。」


すべてを見通すような鋭く冷たい眼光が巴を射抜かんと向けられた









のあ(ボット)「巴、ここに来た以上は貴方もまた、私たちの敵になるのよ」








963: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/31(月) 02:01:40.51ID:gxzXcr+W0





_____________

 神谷奈緒 66/200


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_____________

 北条加蓮   66/200


_____________
_____________

 佐久間まゆ 80/100


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_____________

 小日向美穂+  80/100


_____________

_____________

 三好紗南+   69/100


_____________



ゲーム開始45分経過




神谷奈緒&北条加蓮&佐久間まゆ&小日向美穂&三好紗南

VS

村上巴(ボット)

VS  

高峯のあ(ボット)&アナスタシア(ボット)&前川みく(ボット)




開始


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



970:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/31(月) 09:10:27.27 ID:/jcs9BUMo

前川みく(15)

no titleno title


アナスタシア(15)

no titleno title




971: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/31(月) 22:18:02.73ID:gxzXcr+W0



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チャプター
渋谷凛


手が引っ張られる


足を誰かが掴んでいる


髪に何かが絡んでくる


胃袋の中で溶かされていくような、


蟻地獄の中心に滑り落ちていくような、


自分が起きているのか眠っているのかも曖昧になる寝起きの時間


私の指が緑色の繊維に縛られている


私の腕に何かが朝顔の蔓のように巻き付きながら登ってくる


膝から下が地面に縫い付けられていく


うなだれた私の髪にクローバーがまとわりつく





凛「はぁっ・・・はぁ・・・っ!」



腕に力を込める、雑草を刈った時みたいな音が何度も鳴る

この音はどれくらいの時間かわからないけどもう何度も聞いた

ぶちぶちと、

何度も何度も

ぶちぶち

何度も、何度も、何度も



972: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/31(月) 22:19:13.77 ID:gxzXcr+W0


 
no title


ぶちぶちと


ちぎってきたはずなのに、いつの間にか私はがんじがらめになっていた。

おかしいな、私は頑張ってたはずなのに。

ちゃんと、探して、いたのに。

諦めてなんかないのに、一面のクローバー畑から四つ葉を探す作業


でも、もう疲れたからかな、腕に力が入らない、足も踏ん張れない。


凛「そんなわけないでしょ・・・まだ私はやれる・・・」


いつの間にか私はクローバーに突っ伏していた。

3枚の葉っぱが目に入りそうな程に近い


凛「(ダメだ・・・起きないと、立たないと・・・!!)」


まるで頭の中で警笛と警鐘を同時に鳴らすように自分の体に檄を飛ばす。

だけど手足はピクリとも動かない、この程度の喝ではもう動いてくれない

例え、どれだけ不眠剤を飲もうと何週間も活動していればいつかは倒れてしまうみたいに

自分を励まし続けるのにも限界が来たのかもしれない


クローバーの中に埋もれた私の耳に小さな音が聞こえる。

猫の欠伸みたいな、てんとう虫の足音みたいな、自分の心臓の音にかき消されそうな音だ


その正体を探るでもなくぼんやりと聞く

手足や肌に触れる草木の触感が増えてきたのもどこか他人事に感じられた



凛「(・・・・・・・・・・・・ああ、これ、根っこが動いてる音だ)」



地の底の方から小さく小さく響いてくる。



973: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/31(月) 22:20:42.65ID:gxzXcr+W0


そんなのが聞こえ始めたということは私の方がそれほど地面に近づいているのか、埋まっているのか


クローバーはじっくりと私に巻きついてくる、気分はガリバー旅行記の主人公。

でも、あの主人公と違うのは、私は多分まだその気になればこの縛めを解けるはずだってこと


その気力が出てこない。あと一歩の踏ん張りが出尽くした。

何時間やった?もしかしてまだ数分?数秒?


もう、髪に絡まった草を振り解こうとする気力も起きない


私の髪、卯月に未央、奈緒や加蓮が綺麗だといってくれた髪

プロデューサーが褒めてくれた髪


凛「プ、ロ・・・デューサー」


仮想現実の電車の中でプロデューサーから話を聞いて


だから見知らぬ街に送られても、落ち着いてられた


でもそのあと、自分のドッぺルゲンガーに会って、倒して


模擬戦闘に参加する身としてできるだけ準備しようと目に付いた中で一番大きい建物に入って


晴と舞にいきなり襲撃されて、サッカーボールでメッタ打ちにされかけて


かと思えばありすが私のピアスで私を罠に誘い出そうとしてきた


よく考えたら仮想現実なんだからあれだって偽物だったのに、なんであんなに必死になったんだろう


でもその時の私にとっては大事なもので、蔑ろにされたくなくて追いかけっこを始めて


三人が飛び降りて逃げたのをこっちも落下物で追いかけて、


あと少しのところであずきに横から持っていかれたんだ




974: ◆E.Qec4bXLs 2014/03/31(月) 22:22:10.11ID:gxzXcr+W0


そのあとのことは記憶が少しとんでるけど、

この場所にいて、ありすのタブレットを見つけて、

一つだけ表示された赤丸がプレイヤー、その画面上の私の近くにあった3つ4つの青丸がボットを表していることを知って

ありすの能力を把握したはいいけど、そのあと見た物が強烈過ぎた

服だけ残して消えたあの三人の残骸はあまり思い出したくない

自分が完全にゲームオーバーになったわけではないという安堵と何をすべきかわからない混乱

そのあとは残酷なまでになんの変化もなかった

あるかどうかもわからない、あったとしても何の意味があるかわからない四つ葉のクローバー探し

終わりない逃走と、目的の定かでない探索


もう・・・いいよね


凛「・・・現実に、帰ろう」

ゲームオーバーになったらきっと目が覚める

次に目を開ければ変な機械の中に私はいるんだ

そこを出れば現実世界なんだ


巻き付いた根っこがその下の土に私を埋めようとじんわり力をかけてくるのが分かる


凛「・・・・・・・・・」

ひんやりした土の温度が眠気を誘いまぶたが重くなってくる


瞼の裏に浮かぶのは、プロデューサーの顔

奈緒、加蓮、晴、舞、ありす、あずき


特ににありすにはしてやられたね、多分引き分けになるのかなこれ・・・


タブレットを抱えて挑戦的な視線をよこしたボットを思い出す



そして私は______
















・・・・・・あれ?


・・・・・・何か、おかしくない?

ゲーム開始?分

【ERROR!】

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



978: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/01(火) 00:18:15.72ID:cDhO/mZU0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

チャプター
緒方智絵里



跳ねる、化ける、戻る、突く、また跳ねる


あずきの戦法は、どこまでも変則的だった。

そしてそれゆえに智絵里には有効に作用していた


智絵里「え、えいっ...!!」

智絵里の足元から影が広がる

それは小柄な体躯を無視した大きさであずきを呑みこまんと伸びていく


あずき(ボット)「あったらないよっ!!」


だがあずきはそれを認めた瞬間にはその場に横っ飛びに移動する、

と同時にその姿は鞠に早変わりし、影が伸びても届かない安全圏へ、ひゅうんと飛んでいく

その場で流動的に動くためのダンスのステップとは違う、

ダンス中に立ち位置を変えるための移動とも違う

だがどちらの効果も備えていた。


ボットとはいえ十代の女子の脚力がモデルでは一瞬で数メートル先まで到達することは難しい


だが空中で鞠に変身してしまえばそれは可能だ。

地面を蹴った勢いがそのまま鞠を蹴飛ばす力になる

最小限のステップで数メートル先まで飛び移れる


智絵里「......あう、そんな...」


それは智絵里からすれば脅威でしかない。

ほんの少しの動きであっちこっちに飛び回られ、その姿も人から球体、球体から人へと目まぐるしく変わる

出来の悪いパラパラ漫画のように、縦横無尽に動き回るその姿に視点が定まらない


あずき(ボット)「背中はもらったよ!」


翻弄されているうちに一気に智絵里に不利な状況に持ち込まれる


智絵里「ひっ!?」


慌ててその場から逃げ出してしまう、さっきからこの繰り返しだ

智絵里の能力、その詳細は省くが要は「広がった智絵里の影に踏み込むとどうにかなってしまう」というものだ


その範囲はクローバーの葉の形、つまり智絵里から大体半径3メートルの扇形になっている

しかもこれは四方のうち一方にしか伸びないため、突破口は十分にあった

決して狭い能力範囲ではないはずにもかかわらずこの状況が作られているのは、あずきの移動法に智絵里の動体視力が追いついていないのが原因だった。


捉えたと思っても能力を使おうとした途端、その予備動作をあずきに見抜かれ、回避されてしまう



979: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/01(火) 00:18:54.24ID:cDhO/mZU0


あずき(ボット)「とりゃあ!」

智絵里「わわっ...!」

横から来たと思ったあずきが一瞬で智絵里の正面に回り込み、アイスピックを振るう

それは辛うじて反応した智絵里からは外れた

だがいくら移動が速かろうと武器が貧弱なのはどうしようもなかった。

そのせいで二人の戦いはどうにも決め手に欠けている

智絵里「い、一旦...は、離れれば......!」

あずき(ボット)「逃がさないよっ!大追跡大作戦っ!」


智絵里のあとを追いつつ、能力の範囲内には踏み込まない距離を保つ



あずき(ボット)「(むぅ、最初の一発がまぐれ当たりしてから、どうもいい感じの攻撃が決まらない・・・)」


あずき(ボット)「(そもそも、このピックで刺すって、あずきにできるかなぁ・・・?かなり抵抗感じるよ・・・)」


人気のない都会の道路を慌ただしく駆けていく


道路のそこここには高層ビルが並んでいたが、智絵里はどこにも逃げ込もうとせず、頼いない足取りで走っている


あずき(ボット)「(こうなったら・・・場所も丁度いいし・・・打倒智絵里ちゃん大作戦、だよ!)」


足に力を込め、飛ぶように駆け抜ける、と同時に鞠に変身し、風の抵抗を減らしつつ込めた勢いで一気に智絵里に追いすがった


智絵里「ひあっ!?」

その急な動きに不意を打たれ、よろめく

しかも間の悪いことに地面のアスファルトがめくれ上がっていた所に足を取られ、

結果、その場で転倒してしまった。


あずき(ボット)「おおっとと!」

行き過ぎた鞠があずきの姿に戻ってブレーキをかける。


智絵里「ぅあっ!!......でも...こ、ここなら...!」


だが、智絵里も転んでもタダでは起きなかった。近くの路地裏に逃げ込む


あずき(ボット)「あっ!!」


ここにきて逃走経路を変えたことに驚き、あずきも路地裏に踏み込もうとして

しかし、路地裏に踏み込む寸前でつんのめるように止まる



智絵里「こ、来られるものなら......来て、ください」



ビルの間、狭い通路のほんの少し先に智絵里がこっちを見て立っていた。


そして、その手には一丁の猟銃が握られている



980: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/01(火) 00:19:25.71ID:cDhO/mZU0



あずき(ボット)「むうう・・・運がいいんだね」


おそらく逃げ込んだところで見つけたのだろう、だが智絵里の体では銃を保持するには小さかったため銃口が不安定に揺れている

だから問題はそこではない、狭い路地ではあずきの移動法は意味をなさないということだ。

いくら速くとも、路地裏では動ける範囲が限られてしまう上、逆に向こうの範囲攻撃には好条件

狭い場所に逃げ込み、武器も得た智絵里

移動術を封じられ、貧弱な武器のあずき

たった一つの動作で攻守が逆転していた。



智絵里「ど、どこかに、い、行ってください......!」



細い両腕を必死に猟銃に回し、精一杯吠える

あずきは路地裏を覗き込んだ姿勢のまま動けない。互いの間隔は5メートルほど

素人が銃弾を命中させるには心もとなく、侵入者が突入するにはリスキーな距離


あずき(ボット)「あずきは、どこにもいかないよ・・・」


アイスピックを右手に構える


智絵里「っ!?」


猟銃にさらに力を込める、だがそれでも銃口はふらふらと揺れていた




あずき(ボット)「作戦じっこーーーう!!!」






ぶんっ



アイスピックが回りながら飛んでいく





ダァン!!!




銃口が火を噴く







あずきの大声と、サイレンサー無しの生の銃声が狭いビルの壁に反響した



981: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/01(火) 00:20:50.86ID:cDhO/mZU0




















そしてその振動で《ミツボシ効果》は弾けた













パァアン!!!


智絵里「きゃ、きゃああ!!?」


薄暗い路地裏の目立たない場所に隠されていた星型のディスクからの奇襲、


いくつもの尖った星が智絵里の身に飛来する

弾丸は的を外れてどこかへ飛んでいった

はずみで猟銃を取りこぼしたが、それどころではない。


あずき(ボット)「作戦成功!!さぁ次だよ!!」


ズンン!!




あずきの上から巨大な影がかかる





そのまま路地裏に長くて太い腕が侵入する、







混乱から脱しきれてない智絵里からはそれがなんなのかはわからない

とても恐ろしくて強いものにしか見えない


智絵里「え、なに...なに?」




982: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/01(火) 00:22:20.69ID:cDhO/mZU0




ズンンン!!!


それは智絵里のいたビルからよく見える場所にあり、


何か巨大な生物が暴れたように道路のアスファルトがめくれた場所であり、


前に訪れた何者かが所持していた猟銃を紛失した場所だった。



智絵里「あ...や、やめて...!」


ぐるん


太い腕が智絵里に巻き付く


その力は少女の細腕ではどうしようもない絶望的な筋力差で締め付けてきた


そのまま一気に路地裏の暗がりからから智絵里の体を引っ張り出す



あずき(ボット)「ふっふっふ・・・捕まえたよ。」



あずきは横に立つ巨大な生物を見上げる、その巨体は智絵里の影には入り切りそうもない



あずき(ボット)「最初から、もしもの為にここまで誘導しながら闘ってたけど、うまくいってよかったよっ!」



その長い腕のような”部位”を高々と振り上げ、そこにくるんだ智絵里を栄誉ある勲章のように掲げる








仁奈(ボット)「今度は、マンモスの気持ちになるでごぜーますよ!!」







仁奈は新しい着ぐるみの特徴である、長い鼻を自慢げに揺らした

ゲーム開始55分経過


緒方智絵里

VS

本田未央(ボット)&島村卯月(ボット)&水野翠(ボット)
&佐城雪美(ボット)&市原仁奈(ボット)&古賀小春(ボット)
&桃井あずき(ボット)

《ミツボシ効果》《U=パーク》《M・M・E》発動中

開始

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



985: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/02(水) 00:27:57.24ID:qXdvBosP0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
緒方智絵里


Unrestrict Park

無制限の園


その能力により市原仁奈はどんな着ぐるみでも着こなせる

どれほど9歳児に見合わぬ大きさであろうと、重さであろうと自由自在にその動物の気持ちで振る舞える

鋭い牙で噛み付くことも、力強い鼻で巻き取ることも、踏みつけることもできる


着ぐるみというものがそもそも人間とそれ以外の垣根を縮めているように

仁奈の能力は生物間における体格差も年代の違いも種としての壁も越える



仁奈(ボット)「智絵里おねーさん、つかまえたでごぜーます!!」



太い四本足で地面を踏み鳴らし、鼻を巻きつけた智絵里を振り回す



その度に智絵里の悲鳴が空中にかき混ぜられる

あずきは右手にさっき回収したアイスピックをぶら下げたまま、マンモスの姿を模した仁奈から踏みつぶされない程度に距離をとって智絵里を見ていた

智絵里の持っていた猟銃は近くには見当たらない。おそらくさっきの路地裏にでも転がっているのだろう

まだ智絵里の能力が完全にはわからない以上、うかつに仁奈から目を離せない。


あずき(ボット)「仁奈ちゃんがなんだかやる気満々なんだけど・・・」


この近くから見えるはずの事務所の方向にちらりと視線を動かす。距離にすれば百メートル弱の間隔

智絵里を追う際にここに誘導していたのは本当は保険のつもりだった、

凛達が落ちてきたビルと事務所が近かったのを覚えていたから、もし戦闘になるような事があればそこを頼ろうとしていたのだ。

もともと最初は尾行だけで済ますつもりだったが、これはいい方に転んだんだろう。


あずき(ボット)「マキノちゃん曰く最強の防衛部隊・・・?だったっけ、これ仁奈ちゃんだけで十分強いんじゃないかなぁ」


そう呟くが、実際は仁奈がこうしてピンポイントの地点にジャストタイミングで現れることができるのは他の能力が影で支えているからこそなのだが

あずきはそこまでは知らない、知っているのは仁奈や小春の能力が戦闘向きであることぐらいだ




仁奈(ボット)「このまま智絵里おねーさんごと、でっけービルに体当たりするでやがります!」




智絵里「げほっ、げほっ.........え...?」



986: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/02(水) 00:29:05.02ID:qXdvBosP0



振り回され目を回した智絵里にさらに鼻を巻きつけていく、それに従ってマンモスの鼻先に智絵里の体が巻き取られていく

いよいよとどめを差すらしい。智絵里をそのまま太い綱のような鼻で固定して走り出す準備を始めている

マンモスの額からは仁奈の本体、その顔が覗いていた。


仁奈(ボット)「せめて、痛くねーようにするので許してくだせー」


智絵里「...!!......けほっ、」


マンモスのおでこから外を覗く仁奈とその鼻先に持ってこられた智絵里が着ぐるみを隔てて向かい合う


智絵里「.........っ...!」

息も絶え絶えな智絵里の瞳が仁奈を視界に収める


あずき(ボット)「んん?あれ・・・?」


マンモスの体は言うまでもなく大きい、その大きさ故にクローバー形の影もその姿全体を捉えることはできない。

だからこうして智絵里は為すすべもなくされるがままなのだ


あずき(ボット)「仁奈ちゃん・・・・・・?」


しかし、もし仁奈がその長い鼻のほとんどを智絵里に巻きつけているなら・・・



仁奈(ボット)「じゃ、いくでごぜーますよ!」



眼前には小さな囚われの少女、自分の体は大型哺乳類、体長は二倍以上、体重は十倍以上も差があるのだ

あとはボットとしての闘争心に基づきこのままどこかに体当たりして押しつぶせばいい



智絵里「..................」



智絵里は、目の前の顔だけ出した仁奈をジッと見つめている。呼吸はまだ荒い




だがその瞳はぶれていない。冷静に、あるものを探っていた




あずき(ボット)「あっ!まずいよっ!!」





987: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/02(水) 00:30:11.20ID:qXdvBosP0


それは着ぐるみの大きさを含まない智絵里と仁奈の絶対距離。


マンモスがどれほど大きかろうと本体の仁奈は小さな子供だ。


例え持ち上げられていたとしてもここまで近づいてしまえば、



ずっ!


マンモスの長い鼻、その隙間から漏れ出すように智絵里の影が噴出する


1/1サイズのマンモスの着ぐるみではなく、そこに内包された小柄な子供を狙って



仁奈(ボット)「なんです!!?」




智絵里の能力範囲は約3メートル、そして鼻の付け根近くまで巻き取られた智絵里とマンモスの額にいる仁奈との距離はそれよりも少しだけ短かった




智絵里「この距離なら......!」




マンモスの鼻を影が奔る、スクリーンに投影された影絵のようにハート柄が着ぐるみの表面を滑りながら広がっていく


あずき(ボット)「智絵里ちゃんを遠ざけて!!!」



それより先にあずきが投げたアイスピックが命中した

仁奈の顔のすぐ横に細い針が突き立つ


仁奈(ボット)「わわっ!!」


思わぬ攻撃に動揺し、鼻の締めつけが緩む、智絵里の体が落下すると同時に影の進行が止まった

仁奈を呑み込むギリギリ直前で、重力に引かれた智絵里に引きずられて影が後退していく


智絵里「きゃあっ!!」


ところどころめくれたアスファルトの上に尻餅をつく、あずきはもちろんその前に智絵里からは離れていた。


代わりに智絵里に近づいてきたのは仁奈の足、いやマンモスの足の裏だった


仁奈(ボット)「今度は変な真似はさせやがりません!!」


ズシン...


前足の一本を智絵里に乗せる、まだ態勢が整っていなかったので全体重はかかっていない

だがそれも時間の問題だし前足一本でも智絵里のスタミナを抉りとっていくには十分だった


智絵里「ひっぐぐぐぅうう...!」


悲鳴とも呻き声ともつかない音が下敷きになった智絵里の口から漏れ出す



988: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/02(水) 00:30:57.81ID:qXdvBosP0



_____________

 緒方智絵里+ 59/100


_____________



あずき(ボット)「仁奈ちゃんそのまま体重かけてて!!」


「あずきは智絵里ちゃんがさっき落とした銃を拾ってくるよっ!!」


仁奈(ボット)「了解でごぜーます!」


足の下にいる智絵里の能力は額の位置にいる仁奈には届かない、

あずきは智絵里に近づかずダメ押しの一撃をくらわせたい


あずき(ボット)「えっと・・・あそこの路地裏かな!?」




もちろんこのまま仁奈に任せていれば智絵里のスタミナが尽きるまで足に力を込め続けるだろう

だが、やはり智絵里の能力が未だ完全には解明できていない上そこにはありすや晴、舞の身がかかっている以上、

やはり倒せるのなら早いうちがよかった




仁奈が智絵里を引っこ抜いた路地裏に駆け出す、智絵里は一発しか撃たなかった、もしかしたらまだ残弾が一発だったりしない限りまだ使えるはず





あずき(ボット)「直接刺したりするよりは・・・まだ銃の方がいいもんねっ!」




989: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/02(水) 00:31:58.99ID:qXdvBosP0









































「銃って、これのことかな」











緒方智絵里ではない

市原仁奈でもない

橘ありすでも

結城晴でも

福山舞でも

もちろん

桃井あずきでもない










凛「この銃、智絵里の能力に、取り込まれてきたよ・・・うっかりだね」


渋谷凛がそこにいた。



990: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/02(水) 00:32:54.63ID:qXdvBosP0

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



マンモスの足に踏み潰されている智絵里のすぐ横、野太い足に寄り添っているかのような位置に凛はいた




仁奈(ボット)「はい?今のは誰の声でやがりますか・・・?」




だから仁奈からは凛の姿は見えない、マンモスの額に位置するその子からは自分の足の間が目視できない

長い鼻と牙が邪魔して死角になっているのに加え仁奈は顔しか出してない分首を回したりできなかったからだ



あずき(ボット)「仁奈ちゃん!!!避けて!!!」


仁奈(ボット)「あずきおねーさん?」



そして凛はいつの間にか猟銃を手にしていた

幸子たちでは二人がかりじゃないと支えきれない、智絵里だと手に余る長さの銃

だが凛になら扱えた。




智絵里「凛、さん......?」



引き金に指をかけ、うろ覚えのやり方で、二の腕や肘を締めてしっかり体と銃を密着させる



仁奈からは凛は見えない、

だが凛からは、上を向けば鼻と牙の隙間から小さな輪郭の顔を視認できていた




マンモスの額、そこにある仁奈の額に狙いを定める



あずき(ボット)「仁奈ちゃん!!!!」


だが仁奈は智絵里の上から足をどかせない

智絵里を踏んづけるのをやめていいのかどうか、判断に迷ってしまった



凛「あずきの仲間ってことはボットだよね」




ダァン!!


その猟銃に一度に装填できるのは二発まで

一発は智絵里が使っていた、凛に撃つことが許されていたのはたった一発のみ


その一発が狼狽えていた仁奈の本体に命中した



991: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/02(水) 00:33:31.90ID:qXdvBosP0


声もなく巨大な着ぐるみが崩れていく、空気が抜けるように、その図体がしぼんで消えていく

智絵里にかかっていた重圧も嘘のように消えた


智絵里「あ、えっと...凛さん...なん、で......どうやって、できたの...?」


謝罪、感謝、その言葉よりも先に疑問が口をついて出た





凛「うん、本当に苦労した」



「四つ葉のクローバー、それを見つけようとずっと探してたのに全然見つからないし」


「ほんとにそれで正解なのかもわからないから、最後には何をする気も起きなくて、死ぬとこだったよ」


「でも、諦めきる寸前に一つだけ気になることができたの」



凛はそこで服の中に手を入れた、中に何かをしまっているらしい

そこから薄い板、雑誌ほどのサイズのものを取り出した







凛「・・・3つじゃなかったんだよ、ボットの反応が」





取り出されたものは、タブレットだった


橘ありすの能力の遺産

ボットとプレイヤーの位置を暴く道具

それを今は凛が所有していた



凛「晴、舞、ありすのことしか頭になかったし、タブレットの画面も流し見だったからちゃんと認識できてなかったんだね」


「ボットの反応は4つだったんだよ」



「ぼんやりとだけど3つか4つのどっちか、とだけ頭に残ってたのがちょっとだけ気になってね。それだけ確認したくなって気力を振り絞って根っこを振りほどいたんだ」



「・・・ただの四つ葉のクローバーじゃあ扉は開かない、だよね智絵里?」



智絵里の知らない要素が凛の言葉にはいくつもあった、だが最後の質問だけは答えられた



智絵里「............はい...」



992: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/02(水) 00:34:12.55ID:qXdvBosP0



凛「四つ葉のクローバー型ボット」






「そのボットの能力で扉を開けるんだよね」


「私たちに絡みついてきた根っこはただの攻撃の手段じゃない」


「その四つ葉のボットが動くための足としての役目もあったんだ」


「その根の動きで、ボットは少しずつ私から逃げていた、これじゃ見つからないわけだよ」


タブレットを腕に抱え、猟銃を構え、



渋谷凛は復活した。



諦念と絶望に沈みかけていた面影はもう無い

なぜならここには街がある、プレイヤーがいる、ボットがいる

うじうじと立ち止まる時間は終わったのだから


智絵里「凛さん...!...」


凛「・・・・・・なに?」


2本の足でしっかりと地面に立つ凛に、踏みつけられていたダメージで未だ地面にへたりこんだままの智絵里が呼びかける


智絵里「えっと......凛さんを巻き込んだこと...謝りたいけど、でもわたし...でも」


「...巻き込んだこと......は、反省してなくて...その、わ、悪いと、思ってなくて!...ゲームだから仕方ない、と思ってそのままにして......あの」


凛「・・・・・・・・・」


智絵里は謝罪ではなく懺悔していた。

ボットと一緒に能力に巻き込んだことを”仕方ない”と一蹴したことを

そのまま懲りなかったことを、容赦をなくした能力の行使を続けていたことを




智絵里「だからわたしを......許さないでください」




凛はそれを黙って聞いている。その間、猟銃の引き金から指は離れることはなかった


凛「・・・・・・・・・」

そして凛は

あずきの方を向いた。


智絵里からは完全に視線を切っている



993: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/02(水) 00:35:42.36ID:qXdvBosP0






凛「じゃあ智絵里のことは許さない」


智絵里「.........」



凛「でもそれもこのゲームが終わるまでの間だけね」



智絵里「.........!」




凛「この確執は現実世界には持ち込まない。それは約束して」



智絵里「.........はい」



凛「じゃあもういい。私は何も言わない」



猟銃を水平に持ち上げる、既に弾切れにもかかわらず、その動作には気を抜けばこちらが負けてしまうような気迫があった




凛「私はこの後、あずきに用があるから」









ゲーム開始57分

市原仁奈(ボット)消失


渋谷凛&緒方智絵里

VS

本田未央(ボット)&島村卯月(ボット)&水野翠(ボット)
&佐城雪美(ボット)&古賀小春(ボット)
&桃井あずき(ボット)


開始

________________________

ERROR 復旧のお知らせ


プレイヤー「渋谷凛」のシグナルを再発見しました

________________________




994: ◆E.Qec4bXLs 2014/04/02(水) 00:51:26.15ID:qXdvBosP0


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【プレイヤー】

クール
凛 奈緒 加蓮 小梅 亜季 ?

キュート
まゆ 智絵里 幸子 美玲 美穂 杏

パッション

輝子  紗南 きらり 裕子 麗奈 ?


【ボット】

クール
 のあ アナスタシア 乃々 翠 聖 雪美 マキノ 飛鳥

音葉(消失) ありす(消失?) 晴(消失?) 春菜(消失) 周子(消失)

キュート
こずえ ほたる 愛海 卯月 小春 舞(消失?) 

あずき みく

パッション

藍子 巴 未央 拓海(消失) 仁奈(消失)




安価、画像、コメントを下さった方にはお世話になりました

凛の言ってた今回の伏線は >>679 の一文です

このスレでの本編はここまでです

次スレ立てたらまたお願いします

次スレでは、このスレで名前すら挙がらなかった残りのプレイヤーやボットが中心になります




元スレ
渋谷凛「アイドルサバイバルin仮想現実」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1393849705/
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