【モバマス】北条加蓮「Frozen Tears」
前作
佐久間まゆ「遠く届かなかったあなたへ」
十月も中頃の放課後
事務所に向かおうと下駄箱で靴を履き替えて歩き出そうと言うときに
文化祭企画委員会といったたいそうな腕章をしている女子生徒に声をかけられた
先に行っておくとアタシ北条加蓮はただいま絶賛売り出し中のアイドルで
決して大物芸能人というわけではない
やっと高校に入ってすぐ、まだ新しい環境にも慣れてない時期に
変な男の人に名刺を渡されて適当に話を聞いていたら
あっという間にアイドルに転身してしまった訳である
デビューして半年くらいたった頃だろうか
たまたま事務所の偉い人に見つかって大きめのプロジェクトに抜擢され
テレビ露出が増えてきたなーと思っていたところにこんな声をかけられたのだ
「そこをなんとか!!」
アタシが話を切ろうとしたときに被せて頼み込んでくる実行委員の人
よく見たら先輩のようで今にもつかみかかってきそうなほどの勢いで迫ってくる
「だからアタシ、今はアイドルだから気軽に出られないの」
プロデューサーさんにも釘を刺されてはいることだが
一応アイドルは仕事だから事務所の仕事以外ではステージに立つことを極力控えるようにとは言われている
それでも実行委員の人は食い下がる
「はいはい、考えるだけならね~」
そう言ってアタシはその場を後にする
後ろから「絶対考えてね~」と声が聞こえてくるけど
実はあんまり考えるつもりもなく
携帯で先日リリースされた自分のデビュー曲を聴きながら
事務所に向かうことにした
年も一つ上だけどアタシがアイドルになってから不安だったときとかに
一番に仲良くしてくれた、今では美嘉、加蓮と呼び捨てる仲になっている
「おっすー加蓮★あれ?どうしたの?考え事?」
結局事務所までの間考えるつもりもなく歩いていたつもりが
ずっと頭の中にさっき言われた文化祭の話がもやもやしていた
「やっぱり悩み事?相談乗るよ★」
「うーん、美嘉になら話してもいいかなぁ…」
「実はさっきさぁ、学校で文化祭委員?のひとに文化祭でライブしてくれないかって頼まれたんだけど…やっぱ、ダメだよね、アイドルのアタシが勝手にやったら…」
美嘉はアタシの話をゆっくり聞いてくれている
すると美嘉は
「へーすっごいじゃん!!」
「え?」
「アタシも言われたことあるんだけど、どうしてもその日外せない仕事があってさぁ…文化祭のライブ立ってみたかあったなぁ」
美嘉は懐かしむようにうなずく
アタシの目を見つめ話を続ける
「もっと自信持ちなよ、アイドルって、みんなに好かれるためにはさやっぱり自分も信じてあげられないとダメだと思うなー」
美嘉はアタシの心の奥底を見透かしたように言う
「それに」
「ん?」
「アタシは加蓮はしっかりアイドルできてると思うよ★」
「あはは…ありがと」
アタシは美嘉の言葉を思い出す
「自分を…信じる、かぁ」
そしてアタシはその言葉を受け入れるようにして復唱する
アタシは冗談で返す
「あーなにそれーいつものアタシは先輩じゃないって言うの~?」
「うそうそ、でもいいの?ライブに勝手に出たりして」
「勝手にじゃなかったらいいんじゃないの?」
「どういうこと?」
確かに、プロデューサーに話を通したら行けるかもしれない
「まぁ、私もあんまり乗り気じゃないんだけどねー」
「えー!もったいないよ!!アタシ見に行くからさ★」
「ほんとに~?まぁ考えとくよ」
「うん、楽しみにしてる」
そんな話をしているうちにトレーナーさんが来てレッスンが始まることになった
「北条さん!!昨日の話考えてくれた!?」
昨日私に話しかけてきた文化祭実行委員の人が、また今日も声をかけてきた
「北条さんがライブしてくれたらきっといいライブになると思うの!!」
「だからその話は事務所に聞いてもらわないと…」
「この間のライブ見たよ!!すっごくよかった!!」
「へぇ、見てくれたんだ。それはありがとう」
「それで、やっぱりこの学校にも北条さんのファンはたくさんいると思うの」
それについてはあたしもそう思ってはいた
最近アタシ宛てに机の中にファンレターが入っていたり
教室まで来て手渡しされたり
みんなほんとによく見ていると思う
「そこまで言ってくれたのはうれしいんだけど、もうちょっと考えさせてもらえないかな」
実行委員会の人は目を丸くし、その後すぐに笑顔に戻った
「考えてくれるの!?」
「ちょっとだけね、アタシ自身もちょっと興味でできた」
「ほんとに!!?」
「でもほんとに事務所の人に聞いてみないとわからないから、返答は待ってほしいかな」
「うん!!わかった!!」
その日はそう言って委員会の人と別れた
その時の感動がずっと頭の中に残っている
けどそんなお仕事は滅多に来るようなものではない
これはチャンスなのでは?
そんな考えがまたアタシの頭の中でもやもやし出した
結局今日も事務所までの間ずっと頭の中に残ってしまい
事務所に着いたとたんプロデューサーに相談することにした
「んー、どうした北条、なんか用か?」
プロデューサーはカタカタと叩いていたパソコンを閉じ
アタシの方へ向き直した
「文化祭?ステージにか?」
「うん、そうらしい」
「北条は出たいのか?そのステージ」
「うーん、すごく出たい…って訳じゃないけどライブの機会があるなら立ってみたいってのが本音かな」
「ライブかぁ…ライブねぇ…」
プロデューサーさんは何か少し考え込むようにパソコンを弄りだした
「いんや?だめではない…けど」
「けど?」
「うーん、あっ!!そうか!!」
プロデューサーは何かを思いついたように立ち上がりにやりと笑う
「え?なになに?」
「話は変わるが北条、おまえにいい話があるんだがどうだ?」
「いい…話…?」
今日は自分から委員会の会議をしているという部屋に行き話をすることにした
「うん、事務所の人に聞いてみたら案外OKだったらしい」
昨日事務所でプロデューサーには許可をしてもらえている
「それでね、アタシが出るのに条件って言うかお願いがあるの」
「お願い?」
「それくらいはやりますよ!!はぁ…北条さんがライブしてくれるのかぁ」
委員会の人は恍惚の表情を浮かべアタシの手を握ってきた
「ありがとうね!!」
委員会の人はうれしそうにアタシの手をぶんぶんと振り回す
ぶんぶん振り回される手を見ながら昨日のプロデューサーの話を思い出した
「実はこの間のライブの反響がよくてなぁ
実はテレビ取材とかの話もちらほら来てるんだ」
「テレビ!?ほんとに!!?」
「あぁ、それでちょっといい話がたくさん来てるんだ、新曲とかな」
「新曲もあるの!?」
「利用?」
「あぁ、せっかくだからテレビ取材も入れて新曲の発表もしたらいいじゃないか」
「それいい!!」
「だろ?」
「ちなみに新曲ってできてるの?」
「一応な、覚えるの時間かかりそうか?文化祭まであと何日だっけ?」
「えっと11月のはじめの方だから半月くらいかな?」
「もちろん!!」
アタシは掌をグッと握りしめプロデューサーに向けた
「やる気は十分みたいだな」
「当然!!」
「オッケー、じゃあ明日も学校あるだろ?そこでその委員の人に俺に連絡くれっていっといて」
そう言ってプロデューサーは自分の名刺と白いCDを渡してくる
「なにって…新曲いらないのか?」
アタシはプロデューサーの手からCDをひったくりすぐに鞄の中に隠す
「ありがと!!」
アタシは顔がにやけているのを隠せない
「ふふっ」
「あっ、CDは事務所のレコーダー使ってくれていいからな」
「はーい」
ライブまでの半月アタシは自分でも驚くくらい真剣にレッスンに臨んだ
もう一度あの景色を見たいから
「みんなー今日は来てくれてありがとー」
アタシはステージの横で何を話そうかについて悩んでいた
せっかく学校でやるんだったら学校での生活について話そうかな…
でもみんなが知っている話しても面白くないかな…
そんなことを考えているうちにプロデューサーと文化祭委員の人が側に来る
「ううん、こっちこそありがとう」
文化祭委員の人は以前見せたような感じで目を丸くする
「アタシにこんな機会を作ってくれて、感謝してる」
「いえいえ、そんなことないですよ」
アタシと委員の人はお互いに笑い合う
「まぁ今日はどっきりもあるしな!」
プロデューサーはすごくいい笑顔でそう言う
きっと新曲発表のことだろう
「みんなぁー!!今日は来てくれてありがとー!!!」
アタシは一つ目の持ち歌『薄荷』を歌いきり
アタシのイメージカラーなのか青色のペンライトに染まる観客席を見て
アタシは満足げな顔を浮かべる
「さて…今日はみんなにサプライズがあるんだ」
アタシは観客席のみんなを見渡してそう告げる
「なんかこういうの恥ずかしいな…」
アタシは一言つぶやき
「今日は…新しい曲を歌います」
観客がざわめく
こうやってアタシを応援してくれているみんなのために一生懸命歌います…聞いてください」
アタシは大きく息を吸い
ここまで一生懸命に練習してきた日々を思い出しながら新曲の名前を口にする
「Frozen Tears」
文化委員の人とプロデューサーが作ってくれたこのライブ
絶対いいものにしたい
サビに入り後ろの人まで届けようと顔を上げたときに
ふと、入り口付近に立っているアタシに声をかけてくれた文化祭委員の人が見える
その近くにはプロデューサーもいる
みんながアタシをみてアタシを応援してくれているんだ…
そう思うとなぜか泣けてきそうになった
こんな身近にも応援してくれている人…いたんだ
「凍った星が瞬く夜~♪」
『Frozen Tears』を歌いきりゆっくり目を開ける
みんなから沸き上がる歓声
「みんな!!ありがとー!!!」
感動…届けられたかな…
そう想い、入り口にいるプロデューサーを見る
(美嘉の…妹…?)
「さぁ!!今日はスペシャルゲストをお招きしてやっています文化祭ライブ!!」
司会を務めているいつもお昼の放送をしている放送部の子の声が聞こえる
スペシャルゲストって…恥ずかしいなぁ
「なんと!!今日はもう一人、来てくれています!!」
え?何それ、アタシそれ聞いてないよ?
司会の言うがままに観客は振り返る
アタシも真正面の入り口を見つめる
そこには桃色の髪の毛をした彼女が立っていた
「スペシャルゲスト二人目はぁ!城ヶ崎美嘉さんでーす!!」
「えええぇぇぇぇぇぇ!!!!」
観客が今日一番の歓声を上げる
アタシも素の声で驚いてしまった
そういえばライブやるって伝えてなかったはずだけど…
「やっほー加蓮!!来ちゃった★」
美嘉は花道を通ってステージ上まで上がってくる
「さぁみんなー盛り上がっていくよー!!」
アタシは訳がわからずにただ呆然としていた
観客のワーという歓声に満足したのか
美嘉はアタシの方を振り返ってにっこりと微笑み
「自分のこと信じれるようになった?」
きっとプロデューサーはアタシに自信をつけるためにOKを出したんだ…
こんなにたくさんの人がたくさん応援してくれていることを私に伝えたかったんだ…
美嘉の一言はあたしの心に溶け込み代わりに涙になって溢れ出る
「うん…うんっ!!!」
流れる涙もそのままに再び観客の方を見てマイクをかまえる
「みんな!!まだまだいっくよー!!!」
これが今の私の全力!!
みんなにもっと届きますように…
また次回お会いしましょう
元スレ
【モバマス】北条加蓮「Frozen Tears」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1499266494/
【モバマス】北条加蓮「Frozen Tears」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1499266494/
「シンデレラガールズ」カテゴリのおすすめ
「ランダム」カテゴリのおすすめ
コメント一覧 (6)
-
- 2017年07月06日 16:55
- 学校名公開すんのかよ
-
- 2017年07月06日 17:31
- 加蓮とギャル組の絡みもっと見たい・・・見たくない?
-
- 2017年07月06日 20:27
- ※1
アイマス関係で今更。
アニデレのニュージェネなんかアー写が制服だぞ。
-
- 2017年07月06日 20:46
- ※2
見たい!
-
- 2017年07月06日 22:05
- よし、ならお前がかけ
-
- 2017年07月09日 22:24
- 理不尽すぎて草