男「ぼくの家は嫁と姑の仲が悪すぎて困る」
ピピピピピ… ピピピピピ…
ガバァッ!
嫁「起きたァ!!!」
姑「起きたァ!!!」
男「う~ん……」モゾ…
姑「アタシのが早かったよー!」
嫁「いーえ、私のがコンマ一秒早かったですぅ~!」
姑「アタシのが、刹那の差で早かったよォォォォォ!」
男「まあまあ、朝から喧嘩しないで。朝ごはんにしてくれよ」
嫁「すぐ作るわ!」
姑「アタシに任せなァ!」
嫁「トーストよ!」ババッ
姑「ご飯とみそ汁よ!」ババッ
男「お、どちらもうまそう――」
嫁「……」ギロッ
姑「……」ジロッ
男(うわっ、睨み合ってる……!)
姑「そっちこそ! トーストなんて貧弱な食い物じゃ、栄養になりゃしないよ!」
嫁「なんですってェェェ!? ご飯なんて前時代的な食い物よ! 古代文明よ! オーパーツよ!」
姑「ふん、トーストなんざ残飯にも劣るのさ! ペラッペラで貧相だもんねェ! キエエッ!」
男「まあまあ、二人とも……食べもしないで、批判するのはよくないよ」
嫁「それもそうね。たまには朝からご飯を食べてみましょ」モグッ
姑「トーストをいただこうかね」パクッ
姑「パン……なかなかの味だねえ」モグモグ
嫁「ほわほわのご飯を噛んで、そこに味噌汁を流し込む時の感覚! たまらないわ!」ジュルルッ
姑「程よく焼けたトーストの歯ごたえ……なんともいえない快感に浸れるねェ!」サクッ
嫁「おかわり!」サッ
姑「トーストもう一枚!」サッ
男「あの、ぼくの朝食……」
嫁「行ってらっしゃーい」
姑「行ってらっしゃい」
男(なんだか胸騒ぎがするなぁ……二人でとんでもないことしなきゃいいけど)
姑「いいともさ」
嫁「じゃあまず……なにをします?」
姑「アンタが選択していいよ」
嫁「じゃあ……洗濯しましょう」
姑「ぶふっ!」
姑「アンタ、ギャグセンスはだいぶ向上したようだねェ! ウインク!」パチッ
嫁「ありがと、お義母さん! だけど両目をつぶったらウインクじゃないですよ」
姑「いつでもいいよ」
嫁「私が洗って!!!」ゴシゴシゴシゴシゴシ
姑「アタシがすすいで!!!」ジャブジャブジャブジャブジャブ
嫁「私が乾かして!」バッサバッサバッサバッサバッサ
姑「アタシが畳むゥ!」バババババッ
嫁「タイムは!?」
姑「12秒55!」
嫁「記録更新だわ!」
姑「いよっしゃァァァァァ!」
ガシッ!
姑「アタシが行くよ」
嫁「お義母さんは休んでて下さい。私が行きますから」
姑「おやおや、嫁の分際でアタシを足手まとい扱いする気かい?」
嫁「そんな……私はただ、お義母さんには休んでてもらおうと……」
姑「嫁に休ませてもらうほど、耄碌しちゃいないよ」
嫁「……」ゴゴゴゴゴ…
姑「……」ゴゴゴゴゴ…
嫁「だったらこうしましょう……二人で行くというのは?」
姑「名案!!!」
嫁「今夜はお肉にしません? 牛肉を買いましょう」
姑「いやいや、豚肉の方がおいしいんだよ」
嫁「あらら、お義母さん、牛肉のおいしさを知らないの?」
姑「おやおや、お若い人には豚肉の味が理解できないようだねェ」
嫁(むむむ、お義母さんのせいでトンカツが食べたくなってきちゃった……どうしよう)
姑(う~む、嫁のせいでローストビーフを食べたくなってきたよ……どうしようかねぇ)
店員「いらっしゃいいらっしゃい! 今日は鶏肉のセールだよ~!」
嫁姑「それだぁ!!!」
姑「ヒマだねえ……」
嫁「じゃあゲームでもやりません?」
姑「いいねえ、なにやる?」
嫁(ぷよぷよだとお義母さんにはとても敵わないし……)
姑(スト2じゃ昇竜拳を出せないアタシが不利だねえ……)
嫁姑(だったら――)
嫁姑「64スマブラ!!!」
姑「……」カチカチカチカチカチカチ
嫁「お義母さん、PKサンダー体当たりばかりやるのやめて下さい!」カチカチカチ
姑「そっちこそ、カービィのストーンばかりで芸がないよ!」カチカチカチ
嫁「あっ、モンスターボール!」カチカチッ
トサキーント… トサキントトサキント… トサキーント…
嫁「クソがァァァァァ!!!」
姑「ヒッヒッヒ、ざまあないねえ!」
姑「って、ああ! PKサンダーの操作ミスって、ネスちゃんが奈落の底にィィィィィ!」
チュドーン
姑「そうだね」
嫁「じゃ、ドラマに……」
姑「ワイドショーに……」
嫁「あ?」
姑「あ?」
嫁「どうせ政治家とか芸能人のスキャンダルしかやってないじゃない! 面白くないわ!」
姑「ふん、ドラマなんてつまらないよ! どうせミステリーかメロドラマなんだろう?」
姑「せめて時代劇じゃなきゃ見る気も起きないねェ!」
嫁「きえええええええええええっ!!!」
姑「ぐえええええええええええっ!!!」
嫁「新聞のテレビ欄をもう一度見てから、あらためて議論しましょう」
姑「たまにゃいいこというじゃないか」
嫁「ふふっ、でしょう?」
嫁姑「……」
『ワイドショー 芸能人Aの不倫騒動の続報!』
『ドラマ 湯けむり時刻表トリック殺人事件』
嫁「ワイドショーのが面白そうだわ! 他人の不倫は蜜の味!」
姑「いーや、ドラマだね! 湯けむり時刻表トリック超気になる!」
嫁「雨ですね」
姑「雨だねぇ」
嫁「ご近所に報告を!」
姑「応ッ!!!」
シュバババババッ!
姑「ホントだねぇ」
プルルルル…
姑「はい、もしもし」ガチャッ
電話『オレだよ、オレオレ』
姑「どうしたんだい?」
電話『仕事中に事故っちゃってさぁ~、示談にするために500万円必要なんだ』
電話『今すぐ振り込んでくれないかなぁ~』
姑「……」
嫁「どうしました、お義母さん? 人気アイドルに初めて出会った生娘のような顔して」
姑「ついにうちにも来たんだよ、オレオレ詐欺!」
嫁「えーっ!?」
嫁「なんかワクワクしてきましたね!」
姑「だろう?」
嫁「どうします?」
姑「決まってるじゃないか……」ニィィ…
姑「潰す!!!」
嫁「うっふっふ、いいヒマ潰しができましたねえ!」
電話『なんだい? 母さん』
姑「500万円は現金であるけど、アタシ振り込み方が分からないんだよ」
姑「だから、直接アンタに渡したいんだけど、いいかい?」
電話『……いいですよ! じゃあ、これからいう場所に来て下さい!』
姑「じゃ、すぐ渡しに行くからね!」ガチャッ
姑「……かかった!」
嫁「うふふ……私ったら、遠足前夜のあのワクワク感を思い出しましたわ」
姑「アタシも亡き旦那との初デートのドキドキ感を思い出したよ」
業者「お待ちしてました!」
姑「息子はどこだい?」
業者「彼は今、別の場所にいまして……私が代理人なんです!」
姑「ふうん、そうかい」
業者「ところで、500万円は持ってきて下さいましたか?」
姑「ああ……持ってきたよ」
姑「パンチをねえ!!!」
ドゴォッ!!!
姑「どうやら、このビルはここらのオレオレ詐欺の総本山に間違いないようだねぇ」
嫁「ええ、まともに金を稼げそうにない、ウジムシどもがいっぱいいますわ」
ゾロゾロ… ゾロゾロ…
「なんだこいつら!?」 「サツか!?」 「女二人かよ」 「生かして帰すな!」
姑「生かして帰すな……だってさ」
嫁「それはこっちのセリフよ」
嫁「いたいけなご老人を騙してあさましく金を荒稼ぎした罪、償うがいいわ!」
姑「おやおや、こんなもんかい? あっさり全滅しちまったねぇ」
嫁「全然大したことないわね、お義母さん!」
大男「クックック……少しはやるじゃねえか」ヌウッ
嫁「む……強そうなのが出てきましたよ!」
姑「これはこれは、マスターハンドのご登場だねぇ……」
バキィッ!
大男「ふん、効かねえな」コキコキッ
嫁「なんですって!?」
姑「なんだって!?」
大男「どおりゃあっ!」ブウンッ
ドゴォッ!!!
嫁「きゃああああっ! つ、強い……!」
姑「うぐぐ……! こりゃあ、ぶったまげたよ……!」
姑「アンタは逃げな! ここはアタシが食い止める!」
嫁「ダメです! お義母さんが逃げて下さい!」
姑「そんなことしたら、息子に怒られちまうよ! アンタが逃げるべきだ!」
嫁「いいえ! 男というのは妻より母親を愛するものなんです!」
姑「うちの息子はそんなマザコンじゃないよォ!」
ギャーギャーッ! キエエエエッ!
大男「なにケンカしてやがる……! 二人まとめてビルから叩き落として……」
大男「あ? 誰だ、てめえ――」
バキドガグシャッ!!!
姑「きっと嫁姑アタックが、今頃効いてきたんだねぇ! 北斗の拳みたいにねえ!」
嫁姑「やった! やった! やった!」ピョンピョンピョン
?(ふう……今朝の嫌な予感が忘れられなくて、会社を抜けてきてよかったよ)
?(あとは二人に任せて、会社に戻ろうっと)
嫁「ねえ、聞いて聞いて~」
姑「今日二人で、オレオレ詐欺グループを潰したんだよ」
男「へえ~、そりゃすごいね」
嫁「私たちの雄姿……あなたにも見せたかったわ」
姑「アンタもアタシらみたいに頼りがいのある男になっておくれよ」
男「いやぁ~、二人にはとても敵わないよ」
男(二人が少し仲良くなってくれたようで、なによりだ……)
嫁「オ”エ”エ”エ”エ”エ”エ”エ”エ”エ”ッ!!!」
男「どうし――」
姑「どうしたんだい!?」
嫁「ちょっと吐き気が……」
男「すぐに――」
姑「すぐにお医者さんに診てもらおう!」
嫁「はいっ! お義母さん!」
男「……」
嫁「ぃよっしゃぁぁぁぁぁぁ!!!」
姑「ィエェェェェェェイ!!!」
男「やっ――」
嫁「やったわね、お義母さん! 今夜はレッド・ライスよ!」
姑「元気な孫を産んでおくれよ!」
嫁「もちろんですわ!」
ガシィッ!
男「……」
嫁「あいだだだだだっ! う、産まれるぅぅぅぅぅっ!!!」
姑「しっかりおし! アタシがついてるからね!」
嫁「はいっ!」
男「ぼ、ぼくも……」
嫁姑「男は黙って見てなさい!!!」
男「は、はい!」
赤子「オギャァーッ!!!」
嫁「産まれたァッ!」
姑「やったわ! アンタと息子によく似た女の子じゃないか!」
嫁「じゃあ、さっそく二人で名前考えましょ!」
姑「そうだねぇ! じっくりと考えようじゃないか! イッヒッヒ!」
アハハハハ… ウフフフフ…
男「……」
男「ぼくの家は嫁と姑の仲が良すぎて困る」
おわり
元スレ
男「ぼくの家は嫁と姑の仲が悪すぎて困る」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1499085998/
男「ぼくの家は嫁と姑の仲が悪すぎて困る」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1499085998/
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コメント一覧 (8)
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- 2017年07月04日 03:01
- このテンポ嫌いじゃない
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- 2017年07月04日 03:02
- >>姑(スト2じゃ昇竜拳を出せないアタシが不利だねえ……)
フフ…未だに昇竜拳出そうとして、波動拳が出るんですよ…
SSは喧嘩するほど仲が良いってヤツでした
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- 2017年07月04日 03:26
- 仲良きことは美しき哉 哉・・・
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- 2017年07月04日 13:07
- 喧嘩する程仲が良い
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- 2017年07月04日 14:11
- 旦那にして息子のシュッとした伏線回収
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- 2017年07月05日 00:50
- 皆可愛いw
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- 2017年07月05日 10:25
- >フフ…未だに昇竜拳出そうとして、波動拳が出るんですよ…
おまいは俺か?w
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- 2017年07月06日 12:36
- やって分かるトサキントのウザさよ
SSは凄い面白かった