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('A`)はベルリンの雨に打たれるようです【後半】

関連記事:('A`)はベルリンの雨に打たれるようです【前半】





('A`)はベルリンの雨に打たれるようです【後半】






247: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/24(水) 00:16:11.91 ID:FI3x2H040

ビスマルク、グラーフという艦隊決戦の要を手に入れたが、戦力はイヨウ中佐も言っていたとおり質量両面で此方が未だ圧倒的に劣る。

加えて俺たちは孤立しているため、艦娘艤装の燃料・弾薬を補給できないという深刻な事情がある。もし西側へバカ正直にビスマルク達を中核とした攻勢をかければ、枯渇は一瞬だ。

そのためこの作戦の厄介な点として、俺たちは前段防御をなるべく艦娘の火力を使わず、かつ迅速に打通しなければならない。……吝い話だが、正直最初のグラーフによる爆撃すら本当はケチりたかった程こちらには余裕がない。

《Graf Zeppelinより前線指揮車、電探に感あり!!》

そして、相手はヒト型の中でも秀でた存在である“姫”だ。

人間達がそうであるように、彼女もまた俺たちの策を予測し、動きを読み、手を打ってくる。

《ベルリン市西部より機影多数接近!!数は80前後!!》

《Prinz Eugenより前線指揮車、敵機種視認!Helm爆装型がほとんどですがBallらしき機影も10機ほど見えます!

Ar-196改、捕捉される前に一時離脱!》

(;'A`)「っ、随分仕事が早えーじゃねえか……!」

艦娘の航空戦力に対して凶悪な制空能力を持つBallだが、対空格闘能力と対地攻撃力を両立したフォッケウルフの存在を考慮に入れると10機はいくら何でも少ない。おそらく、“万一”此方がメッサーシュミットやフォッケウルフを出したときの保険だろう。

当然覚悟はしていたが、やはり此方の状況はお見通しらしい。

《Bismarckより前線指揮車、私達が出た方がいいかしら?》

('A`)「……いや、この程度なら艦載機を使わなくても簡単に対処できる。艦娘各位はミルナ中尉の指揮下で対空迎撃の用意を!

ただし、艤装は使うな!配布されているアサルトライフルで対処しろ!」

《はぁ!?》

《ず、Z3-26より前線指揮車、こんな小火器で戦闘機撃墜しろというの!?冗談でしょ!?》

('A`)「安心しろ、今の天候ならそれで十分撃ち落とせる!七面鳥より簡単にな!」

ここから先は、お互いの手の読み合いだ。ただしこっちの手札は恐ろしく悪い、奇策とはったりと我慢の連続になる。

………ああクソッ、面倒くせぇ!!



248: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/24(水) 00:18:20.65 ID:FI3x2H040

('A`)「先遣機動部隊2~5班の被害状況は!?」

(*゚∀゚)《各班からの損害報告無し、まだまだ行けそうだぁ!》

('A`)「よし、指揮車より機動部隊各班、後続待つな!突貫、突貫!!」

《《《Jawohl!!》》》

(*゚∀゚)《その言葉を待ってたぜお客さぁん!!アッヒャァーーー!!!》

ツーが歓喜の叫びを、6気筒ディーゼルエンジンが獰猛なうなり声をそれぞれ上げる。

雨水を蹴立てて急加速した三台のエノクが、引き絞り放たれた矢の如く広場から飛び出した。

('A`;)「……お早い到着だな」

突撃再開から30秒と経たないうちに、空から降ってくるレシプロエンジンの低い音。何十機分もが重なって響いてくるそれらの一部が、此方に近づいてくるにつれて様子を変えていく。

獲物を見つけた歓喜を現すように一瞬ひときわ大きな音をまき散らした後、甲高い風切り音を唸らせつつ“奴ら”は一斉に高度を下げ始める。

高度を下げるにつれて、音は更に悪魔の襲来を知らせるサイレンに、そして、俺たちに死への旅立ちを促すラッパの音に。

《敵機直上、数は5!!急降下きます!!》

(#'A`)「機銃仰角最大!全車対空射撃開始!!」

火を噴く三挺のラインメタル。“ジェリコのラッパ”を高らかに吹き鳴らしながら駆け下りてきた【Helm】の編隊に火線が突き刺さり、先頭を飛ぶ一機が火を噴いた。

だが、撃墜機を追い越す形で加速突出した別の一機が弾幕をかいくぐる。

('A`;)「散開回避!!」

懐に飛び込んできたHelmが両脇に抱える、二つの爆弾の片割れが切り離された。かつんという軽い音を立てて、爆弾はそのまま地面に突き刺さった。

(;'A`)「───っぐ!!」

(;*゚∀゚)《ひょおあっ!?》

轟音と閃光。視界が一瞬白く染まる。



249: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/24(水) 00:21:03.84 ID:FI3x2H040

手のひらサイズの物体が放つものとしては反則が過ぎる巨大な爆発。熱風が顔に吹き付け呼吸を阻害し、衝撃波に煽られた車両がコントロールを失いかけて激しく蛇行する。

(#*゚∀゚)《っ、落ち着きなさいなじゃじゃ馬タヌキちゃん!!》

危うく横転しかけたエノクを、巧みなハンドル捌きでツーがギリギリ立て直す。そのまま流れるような軌道で道脇に寄せると、ほんの1メートル横を後続機の機銃掃射が弾痕を残しながら通過した。

……助けて貰った立場でアレだが、馬と狸どっちだよ。

('A`;)「指揮車より2号車、3号車、被害状況知らせ!」

(;//‰ ゚)《此方2号車、損傷無し!》

《3号車、被弾免れました……っ、後方より敵機来ます!!》

(;'A`)「射撃、射撃、射撃!!弾幕まき散らせ!振り切れ、振り切れ!!」

追いすがってきた敵機に再度車列を組みながら一斉射撃。当てるための攻撃ではないが、爆撃・対地掃射の突入コースを塞がれた敵機は忌々しげに陣形を解いて上空に戻っていく。

(#//‰ ゚)《敵機後退、敵機後退!》

('A`)「前線指揮車より機動部隊各班、被害状況と敵機数知らせ!」

《此方2班、損害無し!襲撃敵機は8、内2を撃墜!》

《3班より指揮車、8号車の機銃手が負傷も軽傷につき影響なし!敵機5襲来、撃墜1、損傷1!》

《4班、損害無し!襲来敵機11、損傷3も撃墜に至らず!》

《5班より指揮車、襲来4機にBallが1含まれるも迎撃成功。敵機に損害無しも編隊は後退》

しめて33機。グラーフの報告から逆算すると、最低4割の戦力ならなかなかの「釣果」か。

そして、釣られた敵機は損害をほとんど受けていないにもかかわらず空域を離脱していく。

《………空母Graf Zeppelinより前線指揮車、あー、敵空襲部隊の迎撃を完了した》

つまり、別方面で「本命」の部隊が致命的な損害を受けたということだ。

《襲来敵機52、内撃墜39、損害10。撃墜にはBall4機を含む。

また、当方損害並びに艤装の弾薬消費、0………どういう手品だこれは》



250: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/24(水) 00:26:13.86 ID:FI3x2H040

《深海棲艦の艦載機を、通常兵器でこんなに一方的に撃墜できるなんて……》

《Bismarckより前線指揮車………えーと、ドックン=メンドイフェルだっけ!?貴方海軍に来ない?きっとエーリヒ=レーダーも真っ青の提督になれるわよ!!》

('A`)「過剰極まりない評価をいただき痛み入るが面倒臭いので断る、それと人を勧誘する前にまず名前を正確に覚えて貰えると嬉しいね」

ひとまず、此方の突貫に“何らかの意図”を感じとり戦力を分散させてくれたのは大いに助かった。ミルナ中尉達を救援する際に、エノク部隊による攪乱が大きな戦果を挙げていたことがここで生きた。

たとえ全ての艦載機が殺到していたとしても撃退は容易かっただろうが、50機と80機とではやはり難度が大きく変わる。艤装温存の目的も平行しなければいけない以上、後方に温存している主力部隊の負担は爪一枚分でも減らせるなら減らす。

《Prinz Eugen、水上偵察機再度上げます!》

('A`)「了解した、頼む。

高層観測班、敵の動きを報告しろ!」

前段防御第一陣の早すぎる壊滅、全く損害を与えられぬまま失敗した空襲。

加えて、LAPV軽装甲車隊による電撃的な後方浸透の可能性の示唆。

軽巡棲姫が警戒するに足る材料はばらまいた。後は向こうが更なる安全策として、ここで防衛線を下げてくれると最高の展開になるが───

《高層観測班より前線指揮車に通達!敵前段防御艦隊、第二陣が一斉に東進を開始!此方に向かってきます!

更に第三陣、第四陣で発砲煙を複数視認!砲撃きます!!》

('A`;)「そりゃそう楽な相手じゃねえよなクソ!!全車曲がれ!!」

(*゚∀゚)《っひゅうう!!》

女の悲鳴のようなスリップ音と共にドリフトカーブを決めたツーが脇道に飛び込み、後続二台もこれに続く。俺たちが本来直進する予定だった経路に瞬く間に砲弾が殺到し、泥とアスファルトが十数メートルにわたって舞い上がった。

更に、砲弾の一部は俺たちの傍に着弾せず、頭上を飛び越えてより東へと飛翔する。

地鳴りのような爆発音が連なり、空気が震えた。



251: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/24(水) 00:27:50.81 ID:FI3x2H040

(;'A`)「前線指揮車より後方全戦隊・全拠点、被害状況知らせ!!」

《高層観測班より前線指揮車、命中弾無し!損害ありません!》

ξ;゚⊿゚)ξ《レオパルト並びにプーマ、全車損害無し!予備戦力てして待機中のLAPVも全て健在!》

《迫撃砲隊、全部隊移動完了していたため無事です!》

《Graf Zeppelinより前線指揮車、展開中の全艦娘点呼完了!損傷艦無し、損傷艦無し!》
  _
(#゚∀゚)《此方ジョルジュ=オッペル、部隊損害無しもベルリン大聖堂に直撃弾!ベルリン大聖堂は崩落した!》

凸 ('A`) 凸「や っ た ぜ」
  _
(;゚∀゚)《何故!?》

ξ;゚⊿゚)ξ《今そんな場合じゃねえだろ!!》

損害報告がないどころか、最高のGoodニュース付きだ。これが喜ばずにいられるか。

………という冗談はさておいて。

('A`;)(大きな損害が出なかったのは幸いだがいきなり至近弾多数か……!)

おそらく、先程の特攻に近い空襲で此方の位置情報を艦載機の犠牲と引き替えに掴んだのだろう。本来なら向こうも弾着観測射撃の為に常時偵察機でも上げておきたいのだろうが、深海棲艦側で水偵や艦載機を用いた観測情報を円滑に全艦船に伝えられる“知能”の持ち主は限られている。

下手に軽巡棲姫や他のヒト型が観測機を飛ばせば、離陸箇所や滞空域から正確な位置を割り出されてそれこそ“事故”に繋がる可能性が高まる。

そのため軽巡棲姫は、位置特定を防ぐためにわざわざ市外から艦載機を呼び出して“威力偵察”によって此方の戦力展開を確認した。

('A`;)(………となると、向こうの航空戦力もまだ余裕あるなこれは。もしくは奴らの空母機動艦隊が到着しつつあるか)

少なくないもののなんとも中途半端な空襲部隊の規模や此方の動きに伴ってあっさりと分散した点は確かに不可思議だったが、これで合点がいった。最初から壊滅ありきの偵察編隊だったのならある程度情報を取得できる“数”さえ確保できればどう動かそうが問題ない。

………そもそも、恐ろしく脆いとはいえ80機の戦闘機が“中途半端な数”に見えてしまう辺り、どうも俺の感性も順当に奴らの物量に狂わされている。



252: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/24(水) 00:44:29.42 ID:FI3x2H040



とにかく、先程の航空戦力の特攻によって得た情報から“お姫様”は少しだけ踏み込んだ戦略方針を立てたようだ。

《前進中の敵艦、駆逐14、軽巡4、内elite・flagshipは各2ずつ!このままいけば先鋒部隊は五分以内に全班が接敵します!》

即ち、東部街区への浸透強襲による艦娘戦力の強制的な消耗。

('A`)「前線指揮車より高層観測班、敵防衛線第二陣は“全て”攻勢に出ているか?」

《はっ、展開していた全艦隊戦力が進撃中です!!》

('A`)「そうか」

全戦力投入。つまり、棲姫は第三陣以西に俺たち先鋒が突出する可能性は考慮していないか、していたとして容易く潰せる存在という評価を俺たちに下している。

(//‰ ゚)《ま、要は俺たちの突撃が“半ばハッタリ”だとバレたわけだな》

ざっくりと言ってしまえば、サイ大尉の台詞が全て。実際俺たちが後方浸透したところで、艦娘戦力を車内に隠しているわけでも超強力な秘密の火砲を装備しているわけでもない。生身の戦艦からすれば、そこらの蟻を踏みつぶすより簡単に処理できる存在。

そう。所詮俺たちの突撃はハッタリだ。

(#'A`)「先遣機動部隊各班、速やかに敵第二陣の予想進撃経路に展開!遅滞戦術を敢行し奴らの動きを鈍らせろ!!

第二陣、状況を報告せよ!」

《フランス広場より前線指揮車、シュプレー川の渡河と橋頭堡の建設、戦力集結を全てのポイントで完了。いつでも行けます》

ただし、あくまでも“半ば”だ。

(#'A`)「前線指揮車より第二陣────強襲打撃部隊各位に伝達、前進開始!!」





( <●><●>)《そろそろ、その指示が出ることは解っていました》



255: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/25(木) 11:43:57.86 ID:Rz3NgEnD0

第三陣以降による前衛艦隊への支援射撃はなおも続いている。俺たちの周囲に飛来する砲撃は散発的で、大半の砲弾は遙か頭上を飛び越えてベルリン東部に集中した。

味方の迫撃砲隊も果敢に撃ち返しているが、数十隻の「艦隊」と本格的な砲撃戦となれば手数も威力も圧倒的に足りない。

《トレプトゥ=ケーペニック区、敵の砲撃が激しさを増しています。120mm砲一門を直撃弾により損失しました》

《パンコゥ区、高層観測第6班待機所に敵艦砲射撃直撃!通信途絶!》

《プーマ六号車、至近弾多数!陣地転換急げ!!》

《フリードリヒスハイン区、敵艦砲射撃直撃により死傷者多数!衛生班を至急寄越してくれ!》

(;'A`)「……っ」

無線から次々と飛び込んでくる本格的な被害報告。だが、これはこっちにとって予想外でも異常なことでもない。

此方の優勢は、「艦娘戦力を早期に南から引きずり出したい」という向こうの思惑やそれを逆手に取った作戦、そして何よりもそれらが奇跡的にかみ合った運によって支えられてきたものだ。言うなれば、今までの極僅かな損害と優位な戦況こそ“異常”。

《第五高層観測班も敵艦砲射撃により沈黙!おそらく全滅!》

《視点が減ると戦況に支障が出るぞ!新手をビルに上がらせろ!!》

《機動警察の小隊待機地点に直撃弾!8名死亡、2名重体!!》

《こっちも二人やられた!一方的に撃たれている!》

今の状況は、深海棲艦と人間の本来の力関係に基づいた“正常”な光景だ。

《第2班より指揮車、敵前衛艦隊の一部を捕捉!これより攻撃を開始する!》

《第3班、交戦開始!!気をつけろ、ト級のflagship付きだ!!》

……そして、本当に、本当に吐き気がするような事実として。

《……Z1 Leberechtより前線指揮車、たくさん陸軍の人たちや警官隊が周りで、目の前でやられてる!僕らに援護射撃の許可を!!》

('A`;)「前線指揮車より艦隊各位に伝達、砲撃は許可できない」

俺の立場からすれば、シュプレー川の向こう岸で深海棲艦の砲撃で吹き飛び死んだ味方の存在を。

('A`#;)「現在、作戦は“順調に推移”している!Bismarck以下全艦引き続き弾薬の温存と敵砲撃の回避・防御に努めろ!繰り返す、全艦引き続き艤装の弾薬を温存せよ!」

《……そんn……っ、Jawohl!!》

敵が「計算通りの場所に食いついた証」として、喜ばなければならない。



256: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/25(木) 11:47:45.87 ID:Rz3NgEnD0

本当なら、今し方自分が放った言葉の意味について激しい罵詈雑言を吐きつつ腕にナイフの一つも突き立ててやりたい。

だが、今は作戦中だ。俺に我を失い嘆き狂う“権利”はない。

《2ブロック西に艦影を捕捉!!》

(#//‰ ゚)《こっちでも確認した!!気を引くぞ、撃て撃て撃て!!》

('A`#)「奴らの進路を塞ぐ!ツー、艦隊の真横から追い抜けるか!?」

(#*゚∀゚)《お安い御用ってね!!》

少なくともelite以上の個体であることを示す10M強の巨体に機銃掃射を浴びせながら、三台のエノクは猛然と角を曲がり敵と同じ道路に入り込む。そのまま挑発するように三隻の非ヒト型の真横を駆け抜けると、水飛沫をぶち上げながら横並びに奴らの正面に展開する。

『ォオオオオオ………』

('A`#)「……さっきも言ったよな、てめえの顔は見飽きたって」

ホ級elite、脇にはイ級通常種二体。この、ホ級+イ級の組み合わせは海上・陸上を問わず深海棲艦の最も数多く見られる戦闘形態だ。実際リスボンの時にも、全部が通常種だったが顔ぶれの艦隊と交戦した。

誰かが言った。RPGやアクションなら、奴らは間違いなく最初のステージから現れ続ける典型的な雑魚キャラパーティーのような立ち位置だと。

当初はジョークとして笑い話の種になったそれは、何百隻葬ろうが常に戦場に顔を出し続けその圧倒的な数で人類の屍を積み重ねるその姿への憎しみと共に語られるようになる。

いつしか、奴らは八つ当たりに近い侮蔑と畏怖、そして必ず狩り尽くしてやるという決意と憎悪を込めて各国の兵士達の間でこう呼ばれるようになった。

('A`#)「とっととくたばれ!!

Feuer, Feuer!!」

“1-1艦隊”と。



257: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/25(木) 11:50:41.38 ID:Rz3NgEnD0

『ギィヤァアアアアアッ!!!』

(#//‰ ゚)「Go go go go!!」

(#*゚∀゚)「イ級は眼をねらいな!視界を奪えば動きを制限できる!!」

機銃3挺と、15挺のアサルトライフルによる一斉射。今度はエノク各車の運転手も降りて、文字通り此方の全火力をつぎ込んでいる。

『ウォオオオオオオオッ!!!!』

「Target have No damage!!」

……まぁ、たとえ陸戦兵器でもある程度容易くなぎ倒せる耐久力とはいえ、流石に自動小銃と軽機関銃で軍艦の装甲にダメージを与えられるはずはない。

艦娘達にとってのクリボーは、今の俺たちからすれば立派なクッパ大王だ。

『オォアッ!!』

《Ups!?》

('A`;)「退避!!」

ホ級が艤装の一部を此方に向け、機銃掃射。他の二台に叫びつつ銃座から飛び出す。

主兵装である「5inch単装砲」による砲撃ではなかったことは幸いだが、7.62mm弾を食い止めるのがやっとのエノクの装甲で対空機銃の射撃は耐えられるはずもない。

車体が火花を散らしながら穴だらけになり、内一台がエンジン部分の辺りから小さな炎を吹き出した。

(;'A`)「───逃げろ!!」

(*;゚∀゚)「わわっ………あうっ!?」

弾かれたように立ち上がり、そこらの瓦礫や車の影へと転げ込む俺たち。背後で2号車が爆散し、一瞬反応が遅れたツーが爆風によって吹っ飛んでくる。

………俺の背中に向かって。

(*;x∀x)「あでっ!?」

(゚A゚)「ウボアッ!?」

衝撃が背中に走り、ツーのヘディングで俺は進路先の横転したトラックの影に無理やり押し込まれる。人体を幸運にもクッションとすることが出来たツーは、幸いにも大きな怪我を負わずに悶絶する俺の横に着地した。

(;*゚∀゚)「うっひぃ、死んだと思った………あんがとな少尉!」

::( A ;)::「ゴホッ…カヘッ……」
 _,
(*゚∀゚)「……おいおい、ドイツ陸軍屈指の美女に礼言われたんだからもうちょい嬉しくしろよ」

お前ちょっと黙ってろ。



258: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/25(木) 11:52:15.00 ID:Rz3NgEnD0


('A`;)「……ッホ、ゴホッ!!被害報告!!」

「ベーデカー軍曹以下3号車、全員無事です!負傷者も無し!!」

(;//‰ ゚)「2号車1名負傷だがかすり傷だ!まだやれる!」

なおも機銃掃射がそこかしこのアスファルトを削る中、声を張り上げて互いの状況を確認。よし、欠員無しならまだ行ける。

(#'A`)「よし、ベーデカー!俺と共にエノクの残骸までもう一度前進だ!サイ大尉、グレネードをホ級の頭部と砲塔に撃ち込んで援護を!!」

「Jawohl!!」

(#//‰ ゚)「Received order!!」

('A`#)「ツー、バルテン、フラッシュバン投擲だ!!イ級二体の眼をくらませろ!!」

(*#゚∀゚)「Ja!! 」

「Jawohl!!」

二人が腰から閃光弾を外し、ピンを取って遮蔽物越しに道路に投げ込む。

『『ァアアッ!!?』』

『───!? ア゛ア゛ッ!?』

(#//‰ ゚)「Grenade fire!! Grenade fire!!」

何束かの爆竹にまとめて火を付けたような連続的な爆音と瞬く光。イ級二体が驚きと混乱でふらつき、事態を飲み込めずにいたホ級にはすかさず海兵隊のM203グレネードランチャーが火を噴く。

『オ゛ォ゛ッ、ア゛ア゛ァ゛ッ!!』

(#'A`)「Los Los Los!!」

「Feuer!! Feuer!!」

正規の迫撃砲弾ならともかく、アサルトライフルの下部に備え付けられている40mm擲弾の威力など深海棲艦の装甲からすればたかが知れている。だが、効果が無くとも奴らの弱点部位への爆発攻撃はほどよい挑発にはなったようだ。

『アアアァァッッ!!!!』

(;//‰ ゚)「っと、伏せろ!!」

(#'A`)「前進止めるな!姿勢低くして突っ込め!!」

更に俺たちからも放たれていた顔面に向けての火線を振り払うように右手を震った後、再び機銃掃射を俺たちと海兵隊に向けて放つ。

ホ級eliteの注意は、こっちに全て向けられていた。

「────Panzer faust, Feuer!!」

『ウ゛ア゛ア゛ッ!!?』

当然、側面から突如飛来した新たな攻撃に対応できるはずがない。



259: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/25(木) 11:56:47.16 ID:Rz3NgEnD0

「パンツァーファウスト、ホ級eliteに全弾直撃!!」

( <●><●>)「ダメージがあるのは解ってます。総員、少尉達と合流しつつホ級砲塔部に集中砲火を。

また、イ級に関しては迅速に沈める必要があります。海兵隊も射撃を開始して下さい」

「「Jawohl!!」」

「「Yes sir!!」」

『アァアアッ!!!』

『ア゛ア゛ァっ、オァア゛ッ!!?』

ホ級の横っ面に叩き込まれた三発の対戦車ロケット弾。これを合図として、戦闘区画に飛び込んできた装甲車の一団から新たな部隊が路上に飛び出し次々と追撃を開始する。

即応警官隊───即ち“機動隊”が保有している装甲車だが、中に満載されていたのは増援のドイツ陸軍とアメリカ海兵隊の混成部隊。

それぞれ派遣に際し対深海棲艦の市街戦ということでパンツァーファウスト3、ジャベリン、ミラノ対戦車ミサイル、M72 LAW、果てには用途が変わりほとんど退役済に近かったはずのカールグスタフと、文字通りかき集められた重火力兵器が可能な限り配備されている素敵仕様部隊だ。

「Enemy Lock!! Fire!!」

『ォオオッ!!?』

「Go flank, Go flank!!」

ダイレクトアタックモード(直進軌道)で放たれたジャベリンミサイルがホ級の頭部に直撃する。怯んで機銃射撃が止んだ隙に、今度はLAWを構えた一団が俺たちの後ろを通って道の反対側へと駆け抜ける。

「Fire!!」

『ヴァッ────グァッ……!?』

四発の66mm HEAT弾が、向かって左側のイ級に突き刺さる。イ級の側面表皮が砕け散り、絶命こそしなかったが爆圧と激痛から苦悶の声を上げて路上に倒れ込んだ。

『オ゛オ゛ッ!!』

( <●><●>)「Los!!」

怒りの声を上げてホ級が艤装をアメリカ海兵隊の方に向けた隙に、ティーマスが数人のドイツ兵を率い俺達がいるエノクの残骸の影に滑り込む。奴さんが涼しい顔をして担ぐのは、カールグスタフM3。

('A`)「よぅ、そんな骨董品担いでどうしたよ。博物館にでも行く気かい?」

( <●><●>)「私なら少尉殿自体を持ち込みますね。そのお顔でしたら蘇った原人と伝えれば信じて貰えるはずです」

たまにはこっちから軽口をと思い突いてみたが、20倍で返される。

断言するが、俺がこいつに口で勝てることは永遠にない。



260: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/25(木) 12:21:16.52 ID:Rz3NgEnD0

( <●><●>)「カールグスタフ撃ちます。音量注意です」

('A`)「あいよ、因みに後方の安全は確保されてるぞ」

( <●><●>)「ありがとうございます。

Feuer」

『ッアアオァァッッ!!!!?』

バックブラストの熱が頬を撫でる。砲撃はホ級の左肩に直撃し、奴は肩口を押さえながらふらふらと後退った。

『アァ………アァァ……』

『────……』

随伴のイ級達の内、向かって左手の個体はあのまま事切れたらしい。海兵隊のLAWになぎ倒された状態のままぴくりとも動かなくなっている。

右手のイ級も、猛烈な砲撃を三方から受けて虫の息だ。

「Feuer!!」

『オ゛ォ゛ア゛っ!?』

( <●><●>)「ターゲットにダメージ有り。

各位、砲撃に“間”が出来ないよう撃ち続けて下さい。特にホ級の艤装部分には集中攻撃を、我々に照準できないよう常に射線をぶれさせなさい」

軽巡ホ級に関しては、流石にeliteということもあってまだ抵抗の余力はありそうだ。ただ、ティーマスが周到に張り巡らした火線を間断なく全身に浴び続けており、その余力はみるみる削られていく。

「頭部と砲塔を狙い続けろ!奴に反撃の間を与えるな!!」

「イ級は通常種の上もう大破している、脅威じゃない!牽制射撃で十分だ、ホ級に重点的に火力を振れ!!」

もう一つのプラス要素として、南部から送られてきた増援部隊の全体的な質の高さがある。特にミルナ中尉を初めとする中核部隊は、リスボンで深海棲艦と実際に交戦した経験を持つ精鋭だ。

ティーマスの的確な指揮に加えて、自主的に弱点部位に狙いを集中させたり攻撃動作を妨害するタイミングで砲撃を行うためホ級は反撃を完全に封じ込められ一方的な攻撃に晒される。

( <●><●>)「Feuer」

『オッ……アァアアアアアッ!!!!?』

十何発目かのカールグスタフの着弾。ティーマスが狙ったのは、ホ級の両脇から突き出る連装砲の内右側の一門。

轟音とホ級の断末魔が不愉快に混ざり合う中で、黒煙と炎を吹きだして直撃を受けた連装砲がはじけ飛んだ。



261: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/25(木) 12:48:55.13 ID:Rz3NgEnD0



( <●><●>)「追撃を………砲撃飛来!伏せなさい!!」

(*;゚∀゚)「ひゃあっ!?」

俺達が“1-1艦隊”と交戦する街角のT字路に、連続的に幾つかの砲弾が落下し炸裂する。2階建ての大手チェーン店レストランが崩落し、付近に止まっていた増援部隊の装甲車が一台押しつぶされた。

方角は西、深海棲艦のものだ。

('A`;)「損害報告!」

「装甲車一台が破壊されましたが死傷者は無しです!

───八時方向、またきます!!」

('A`;)「散開……あ?」

新手の砲撃は俺達の頭上を飛び越す。しかしながらイヨウ中佐達のいる方面に行くわけでもなく、俺達の交戦している地点から2ブロックほど先の、無人の十字路というなんとも感想に困る地点に着弾した。

違和感を覚えて耳を澄ませると、どうにも砲撃の統一性に乱れが感じられた。改めて冷静に周囲を見回すと、東側へと飛翔する砲弾の量が目に見えて減り、西部街区のあちこちに撃ち込まれる砲撃の割合が目に見えて増えている。

だが、その射線は統率の取れたものとは言い難い。放たれるタイミングがバラバラなら、着弾点も散らばっていていかにも狙いが定まっていない。

まるで、“急に現れた攻撃能力を持つ敵”に、慌てて無理やり照準を合わせ直そうとしているかのように。

('A`#)「─────迫撃砲隊、照準修整は終わっているか!?」
 、、、、 、、、、、
《手筈通り、ぬかりなく!!》

('A`#)「よし、残余全砲門敵前衛艦隊に集中!撃ち方ぁ始め!!」

《Jawohl!! Feuer, Feuer!!》

一瞬の間を置いて、東から美しい弧を描きながら幾十発にも及ぶ120mm砲弾が飛来する。

『オァア゛ッ、オォッ……アァアッ!!?』

頭部、砲塔、右腕、左腕、胴体………全身にくまなく叩き込まれる砲撃が、ホ級の装甲を砕き、艤装を貫き、肉を裂く。

左手が砲弾にもぎ取られ、腹の辺りに穴が空く。

『ア゛……ア゛ぁ゛………』

やがてホ級は、自身の艤装に押し潰されるような姿勢で前のめりに地面に倒れ込んだ。



268: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/30(火) 00:23:45.49 ID:oJKoS9010

『オォアア───グァッ!?』

「Enemy down!! Enemy down!!」

「Los, Los!!」

最後の一隻となったイ級が戦場から逃れようとするが、既に大破しているその身体で逃げられるはずもない。踵を返そうとしたところに横っ面から数発のミサイルとロケット弾が叩き込まれ、断末魔と共に倒れる。すぐさまイ級達“1-1艦隊”の周囲に、ドイツ兵と海兵隊が小銃を構えて群がる。

生死を確かめるために、頭部や砲塔、眼など奴らが敏感に反応する箇所に弾丸が撃ち込まれた。

「轟沈を確認! Street Clear!!」

(#//‰ ゚) 「負傷者の確認急げ!!重傷者は速やかに後方に下げろ!!」

('A`)「ベーデカー軍曹、他の部隊の状況は!?」

「ニ班~四班も後続部隊との合流、戦力の再編を完了しています!」

('A`)「よし、各班に戦闘態勢を維持、指示があるまで待機するよう伝えろ!」

「Jawohl!!」

フランス広場を中心としたシュプレー川以西への橋頭堡の建設と戦力の集結は、深海棲艦側の主力艦隊もある程度は動きとして掴んでいたはずだ。しかしながら艦娘や戦車、プーマ戦闘車、迫撃砲などに動きがなく渡河したのはほぼ歩兵とまともな重火器を装備していない軽車両群とあって、奴らは案の定「即時の対処必要無し」とみなし此方の後衛に火力を集中させた。

結果、非ヒト型なら十分なダメージを与えうる対装甲火器が集中配備された打撃部隊をほぼ大きな損害無しで最前線まで引き込むことに成功している。

ここまでは、順調。作戦の第一段階はほぼ完全に成功した。

('A`)「………ツン、レオパルトとプーマ全車両の発進を準備させておいてくれ。

Prinz Eugen、水偵による上空警戒厳と為せ!ベルリン西部のあらゆる動きを見落とすな!」

ξ゚⊿゚)ξ《了解!》

《Jawohl!!》

問題は、ここからだ。



269: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/30(火) 00:25:29.98 ID:oJKoS9010

無線で後衛に指示を出しつつ、俺はちらりと西の空を見上げた。

('A`)(……やっぱりな)

脳裏を過ぎった違和感は気のせいではない。

軽巡棲姫は、状況打開のために次の手を打ってくる。

(//‰ ゚)「ドク、各隊は戦力の再編を終えてるぞ!」

サイ大尉が俺の元へ駆け寄ってきて声を荒げた。部隊の損害が軽微であるにも関わらず攻勢が止まったことに、疑問と軽い焦燥を感じているらしい。

(//‰ ゚)「とっとと強襲打撃部隊と連携して敵主力艦隊の元まで浸透を開始すべきだ!時間は奴らの利益にしかならない、それに艦砲射撃を一方的に食らうことになるぞ!!」

( <●><●>)「その艦砲射撃が、止んでいます」

(//‰ ゚)「………あ?」

ティーマスの指摘に、サイ大尉は一瞬呆けた表情を浮かべた後ハッとして空を見上げた。

完全に止んだわけではないが、ティーマスの言うとおり深海棲艦の砲撃は先程までに比べて極めて散発的なものに変わっている。着弾地点も分散しており、明らかに此方を撃破する意図が見られない。

( <●><●>)「シュプレー川以東の、本隊への砲火が再度増えた様子もありません。先程の強襲打撃部隊の突入時から混乱が尾を引いているという説も時間が経ちすぎていて考えづらい。

深海棲艦側の動きが不自然なのは解ってます」

優秀な相棒のおかげで、説明の手間が省けた。………ティーマスに少尉の地位譲って俺二等兵になっちゃダメかな、一先ずこの修羅場を生き延びたら上層部に提案してみよう。

( <●><●>)「………少尉、貴方がとても下らないことを考えているのは解ってます」

('A`)「ソ、ソンナコトナイヨー」

ホントに出来た部下兼昔馴染みで涙を禁じ得ない。

ともあれ、ティーマスが今説明したとおり、深海棲艦側が「何か」を考えているのは間違いないだろう。

《────Prinz Eugenよりマントイフェル少尉に通達!!》

当然奴らが、性悪の軽巡棲姫が考える「何か」が俺たちにとって愉快な内容であるはずがない。

《前線部隊展開ライン正面、5kmの地点で“道路の隆起”を複数確認!!時速30km程度で其方に向かっています!》



270: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/30(火) 00:27:09.81 ID:oJKoS9010

地面の隆起。

その言葉を聞いた瞬間思い出すのは、解囲作戦の折ツンたち機甲部隊を“地下から”襲撃した数隻の非ヒト型の存在。

どうやって地下に、何故水上と変わらない速度で移動できるのか、どこから現れたのか……沸いた疑問の数々は、頭がいい研究者の奴らに究明を任せることにする。

どんな理屈であれ、深海棲艦が「地下の移動」を可能とするなら対処するのが俺達の仕事だ。

(#'A`)「前線部隊各位、敵襲があと10分もせずに来るぞ!速やかに迎撃態勢に移れ!!」

( <●><●>)「パンツァーファウスト装備者は健在な建物の二階に上がって道路を撃ち下ろせるよう準備を。それから前方2ブロック先にC-4の設置もお願いします」

「「Jawohl!!」」

(//‰ ゚)「海兵隊総員射撃用意!!砲撃とC-4で焙り出された深海棲艦の身体を穴だらけにしてやれ!!」

「「Yes sir!!」」

指示が飛び交い、戦闘準備に移る各位。

だが、敵が打った手は一つではなかった。

《Graf Zeppelinより前線指揮車、新たな敵航空隊が北よりベルリン市空域に侵入!数は80~100、全機が前衛に向かっている!!》

(;'A`)「……っ」

食いしばった歯の隙間から、思わず呻き声が漏れた。航空攻撃との連携となれば迎撃の難易度が大きく上がる。

それにしても、度重なる空襲の撃退で優に200は越える敵機を撃墜しているはずだ。確かに「まだ余裕を持っている」とは思っていたが、さっきの今でこの数を出してこれる深海棲艦の物量には舌を巻きざるを得ない。



271: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/30(火) 00:29:04.71 ID:oJKoS9010

(;'A`)「三時方向、各位対空警戒!!前衛各部隊、残ったエノクは全て艦載機の迎撃に回すんだ!!

Prinz Eugen、敵航空隊の侵入軌道知らせ!!」

《Prinz Eugenより前線指揮車、敵編隊低空軌道でベルリン市に突入!其方への到達まで180秒!!》

深海棲艦側の到着が、距離と時速から計算して10分程度。同時攻撃にならないのは不幸中の幸いだが、本当に気休め程度の「幸い」だ。

('A`;)「屋上の奴らは下手に攻撃をかけず身を隠せ!それと、エノク機銃座に二人つけ!路上の部隊は車両の残骸、深海棲艦の死骸、瓦礫に側溝、どこでもいいから隠れろ!!」

俺自身も、アサルトライフルを小脇に抱えホ級の死体の傍に滑り込む。

(*゚∀゚)「よっと!」

('A`)「ブッフハ」

ツー、ティーマス、ベーデカー軍曹と他何人かのドイツ兵も俺の傍に身を隠す。ツーはスライディングの際に泥と雨水を盛大に俺の顔面にぶちまけてきた。

何か怨みでもあるのかてめぇは。

(*゚∀゚)「あひゃっ、悪いな少尉!」

('A`)「絶対悪いって思ってないよねその感じ。

………各班、来るぞ!!」

“ジェリコのラッパ”とはまた違った恐怖を掻き立てる、低く規則的なレシプロエンジンの回転音。凶暴な獣が群れ迫ってくるような威圧感に、小銃を構えつつ俺は僅かに息を呑む。

《───敵機射程内に捕捉!!》

《撃ち方、始め!!》

やがて、戦闘が始まった。



272: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/30(火) 00:30:59.75 ID:oJKoS9010

遠くから微かに、無線からははっきりと聞こえてくるアサルトライフルの射撃音。そしてそれらを掻き消すような、敵機の飛翔音と機銃掃射の弾着音。

《2名負傷、2名負傷!!》

《エノクが一台破壊されたぞ!!》

《第三班交戦開始……ぐぁっ!?》

《1名やられた!!》

《負傷者を物陰に運べ!!》

深海棲艦機の撃墜を示す爆発の音は疎らで、代わりに無線を通して伝わるのは呻き声、悲鳴、鉄の弾丸が肉を引き裂く音。

容易く想像できる“向こう側”の惨状。だが、それらが頭に浮かぶ間すらなく。

(#//‰ ゚)「Enemy incoming!!」

('A`#)「Allemann flakfeuer!」

敵機が、襲いかかってきた。

「Keep fire───ups……」

「伍長が撃たれました!!」

「手を止めるな!止めるな!!」

「足が!俺の足がぁ!!」

初回の襲撃時と先程の被害ありきの威力偵察のように、“七面鳥”として正面から射線に飛び込んできてくれた敵機とはワケが違う。

街並みを掠めるように600km/hで飛び去りながら行われる超低空からの対地掃射は、さながら鉄の暴風だった。

次々と撃ち倒されていく味方に対し、此方の弾幕は空を切っていく。頼みの綱だったエノクは、接敵から5秒で二台とも射手を撃たれて沈黙する。

('A`;)「……クソッ!!」

撃墜できる敵機はほとんどない。せいぜい片手で足りる程度。速度を重視してか爆装機が見られない以上、正直隠れてやり過ごした方がよほど此方の損害は少ない。

それでも、無傷で通過させるわけには行かない。同様の軌道で本隊にも突入されれば、今度は艦娘にも被害が出るかも知れない。

時間にして、20秒に満たない襲撃。

(;'A`)「被害報告!!」

「負傷者搬送手配急げ!」

その20秒で、辺りには血の臭いが充満した。



273: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/30(火) 00:33:24.27 ID:oJKoS9010

《此方ニ班、エノクは全車両完全に破壊されました!死亡6、負傷5、内重篤2!!》

《五班、エノク3両中2両を損失。死亡4、負傷10》

《墜落した機体の巻き添えを受けて屋上班が丸ごとやられた!代わりの隊いけ!早く!!》

ベルリン市の南北の幅は直線距離で30km程度、Helmの最高速度なら3分もあれば飛び過ぎることが出来る。この内俺達前線部隊の襲撃に裂いた時間は、おそらく1分もない。

(;'A`)(……で、その一分でこのざまかよ)

低空域での空襲。家々やビルが建ち並び入り組む街中を高速で飛び回ることになるため、当然深海棲艦側にとってもリスキーな戦術ではある。

だが、俺達人類側は頭上を高速で飛び去っていく1m行くか行かないかの機影を正確に狙い撃たなければならなくなり、その命中率は大きく落ちる。

現実に、前衛部隊が受けた損害は今までとは比べものにならない。投入していたエノクのほぼ全てを失逸し、死傷者も相当数が出た。
こっちの撃墜機数は、おそらく20機程度だろう。

唯一の好材料は、それでも敵機がそのまま市街地を迂回するような動きで西へと飛び去っていったこと。

ただ、それ以上に最悪なことに敵襲はまだ終わっていない。

《Prinz Eugenより前線部隊各位、“隆起”はなおも前進中!!後150秒で各部隊展開地点に到達します!!》

(;'A`)「負傷者収容の速度を上げろ!!それと射線の再構築だ、急げ!!」

徐々に聞こえてきた地響きと、ボコリと突然持ち上がり傾いた十数ブロック先のビルを見て、俺の背筋に冷たいものが走る。

当たり前の話だが、雨で冷えたせいじゃない。

('A`;)「敵艦影視認!!各部隊、戦闘準備急げ、次が来るぞ!!」



274: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/30(火) 00:36:38.26 ID:oJKoS9010

バキバキとアスファルトを割り、揺れと破壊を周囲にもたらしながら此方に突っ込んでくる“隆起”。道路上に乗り捨てられていた何台かの車やバイクがけたたましい音を立てて盛り上がった街路や道脇のショウウインドウに転がり込む。

('A`#)「────Feuer!!」

その隆起の先端がC-4爆弾が並べられている地点まで差し掛かった瞬間、俺は声高に叫ぶ。海兵隊の一人が起爆スイッチを押し、幾つかの建物の屋上でパンツァーファウスト3が火を噴いた。

『グォオオオオオオオオオッ!!!?』

火柱と、轟音。地面を突き破り、ハ級の縦長な頭部が姿を現す。

「Feuer Feuer Feuer!!」

「Kill the enemy!!」

ジャベリンが、パンツァーファウストが、LAWが、カールグスタフが、唸りを上げてハ級の巨体を滅多打ちにする。

『オァッ、ア゛ア゛ア゛ッ?!』

苦悶の声と共にのたうち、なんとか地面から這い出て此方に攻撃しようとするハ級。かなり数を減らしたとはいえ、未だ多数が健在の火砲の前ではそれは叶わぬ夢だ。

全方位から待ち伏せの末猛射撃を食らい、たちまち全身から黒煙と青色の体液をまき散らしだした。

圧倒的優勢。だがそれは、俺達の区画が比較的空襲による損害が軽かったために得られた局所的なもの。

《此方五班、敵艦に前衛火線の突破を許した!隊列が内部から食い破られている、損害大!!》

《三班よりCP、イ級の襲撃を止められません!火力が絶対的に不足しています!!》

('A`;)「………ウツダシノウ」

全体的な面で言えば、戦況は最悪の状態に移行しつつある。

('A`;)「………こうなりゃやむを得ねえか。前線指揮車よりGraf Zeppelin、第二次支援空爆を」

《ぷ、ぷ、Prinz Eugenより在ベルリン全部隊!!緊急連絡!!》

本当に、最悪の状態に。

《前方、ベルリン西60km程の地点に、深海棲艦艦載機の大編隊を“視認”!!おそらく目標は、ベルリン全域の空襲です!!》



275: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/30(火) 00:43:40.44 ID:oJKoS9010

  _
( ゚∀゚)《………ジョルジュ=オッペルよりPrinz Eugen-09、そんな遠距離の深海棲艦機を“視認”だと?冗談言うな、幾ら妖精の眼がいいからってんなことあり得ねえぞ》

《一機一機を視認したわけではありません、AR-196妖精の視界が捉えたのは深海棲艦機の“編隊”です!!》
  _
( ゚∀゚)《》

( ゚д゚ )《………何てことだ》

報告の意味に気づき、ジョルジュが絶句する。ミルナ中尉の、打ちのめされたような呆然とした呟きが無線から漏れる。

受け入れたくない悪夢のような現実を、プリンツは震える語尾を抑えながら俺達の鼻先に突きつけた。

《敵の編隊規模が多すぎて、西の空で巨大な黒雲のようになっています!数は解りません、どれほど少なく見積もっても2000機を優に超えるとしか答えようが………。

空が三分に敵が七分、空が三分に敵が七分!!》

('A`)「………」

( <●><●>)「………少尉、何か策を」

('A`)「…………今、考えてる、けど」

こちらの予想規模を圧倒的に上回る、まさに雲霞の如くとしか形容が出来ない艦載機の接近。深海棲艦が意図していることはすぐに解った。

爆撃や機銃の狙いが低空突入しなければ定められないのなら、狙う必要が無いほどの膨大な火力を投入して全てを焼き払えばいいというある意味で単純明快な理論。

即ち、絨毯爆撃。

('A`)(どうやって、北部はまだ完全に制圧されたわけじゃ、フランスやイギリスへの対処も、ベルリンの艦娘潰しが奴らにとってそれだけ、いや、理由はいい、策を、あぁ、でも)

見えない。

打開する策が、見えない。



276: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/30(火) 01:00:11.09 ID:oJKoS9010

狙いを定める必要が無い圧倒的な物量が押し寄せてきている以上、定点爆撃どころか低空域への突入自体おそらく敵機はしない。つまり、こちらのアサルトライフルによる対空射撃は届かない。レオパルトの主砲撃なら或いは高度に届くかも知れないが、僅か九両では焼け石に水だ。

艦娘による対空砲火とGraf Zeppelinの全艦載機を形振り構わず投入しても、流石にここまで規格外の物量相手には弾薬も燃料も持つはずがない。

無理やりこちらに都合良く考えて「この大編隊が敵艦隊の限界ギリギリの戦力であり、多大な損失は避けたい存在である」と仮定する。その場合なら、“幾らかの損害”を与えれば退かせることは出来るかも知れない。
だが、殲滅の必要が無いにしてもこの編隊が後退を決意するほどの損害となれば、どのみちビスマルクもグラーフもプリンツも、駆逐艦達も余力が残るとは思えない。機甲部隊にも大きな損害が出るはずだ。

そうなれば、今度は健在している第三陣以降の敵防衛線も、主力艦隊も突破は出来ない。残る道はベルリンの放棄か、玉砕上等の突撃かの二択。

('A`)(待て、決め付けるな。何か、何か策が)

ゲームなら、スタートボタンを押せばポーズ画面が現れて時が止まり、幾らでも考える時間が生まれる。しかし、今俺がいる場所は現実の戦況。

《敵機、間もなく市街地に到達!!後150秒ほどと思われます!!》

《Graf Zeppelinより前線ならびにCP、レーダーでも機影を捉えた!!ダミーじゃない、正真正銘敵の編隊だ!!……クソッ、いったい何機投入してきたんだ奴らは!?》

時間は、思考する間にも無情に過ぎ去っている。

('A`;)(何か、何か、何か………あぁ、クソッタレ!!)

空回り、混乱する思考の中で、妙に冷静な自分がぽつりと呟いた。






こりゃ、詰みだ。



277: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/30(火) 01:02:26.66 ID:oJKoS9010






頭上を、風切り音が駆け抜けていった。




.



278: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/30(火) 01:20:56.36 ID:oJKoS9010


('A`;)「───────!!?」

顔を、上げる。

《Prinz EugenよりCP、高速飛翔体が東部よりベルリン上空を通過、敵編隊に着弾!!》

一瞬の静寂を切り裂き、西から響いてきた爆発音と雷鳴のように瞬く閃光。プリンツの口調は明らかに混乱しており、上擦り震えてかなり聞き取りづらい。

無理もない、それをよく知る俺ですら、驚愕で思考がまとまらない。

それは、深海棲艦の砲撃や艦載機のものでも、艦娘の放ったそれらでもない。軍人として聞き慣れていたが、しかしこの場では聞こえるはずがないと思っていたもの。

我らがドイツの“忌むべき過去”がその先駆を生み出した、人類の知恵と技術の結晶である近代兵器。

《高速飛翔体、更に2発が着弾!!深海棲艦編隊、爆炎に包まれ被害甚大!!隊列大きく乱します!!》

空対空ミサイルの、飛翔音。

《敵編隊、ベルリン上空への侵入を中断し散開───きゃあっ!?》

息継ぐ間もなく、甲高いジェット音と共に今度は銀色の機影が音速で空を飛び去っていく。4つの銀影の内一つが、新たに1発のミサイルを西に向かって撃ち放った。

('A`)「………F-16」

《高層観測班より全在ベルリン軍に伝達!!》

呆然と空を見上げていた俺の耳朶に、絶叫が突き刺さった。驚愕と歓喜に溢れた声で、観測班の一人が狂ったように叫んでいる。







《友軍機がベルリン上空に飛来!!

増援は、ポーランド空軍機です!!!》



282: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/31(水) 01:19:12.28 ID:qbOhevfD0






《敵群体にミサイル全弾命中!!効果絶大、撃墜多数!!》

(‘ L’)《続けて撃つぞ!!全機照準!!》

炸裂したミサイルの爆炎に焼かれ、巨大な黒い“群れ”が揺れ蠢く。

まるで、一つの巨大な生物が苦しみ悶えているような光景。フィレンクト=クフィアトコフスカ空軍中佐は、目の前の“巨獣”になおも照準を合わせつつ編隊の先陣を切る形で肉薄する。

(‘ L’)《Czarny-01, FOX-2!!》

《Czarny-02, FOX-2!!》

《Czarny-03, FOX-2 FOX-2》

《Czarny-04 FOX-2》

ほんの100M、空対空戦においては目と鼻の先に等しい至近距離からのミサイル攻撃。加えて数千体規模の密集とあれば、当然ロックオンなど必要ない。

4発のミサイルが炸裂し、火の玉が幾つも咲き乱れた。“巨獣”はますます激しく身もだえし、みるみるうちに身体の形が崩れていく。

《Engage!!

Niebieski-01, FOX-2!!》

《Niebieski-02, FOX-2!!》

反転・迂回するフィレンクト達とすれ違う形で、新たに空域に突入してくるF-16の編隊。

息を継がせぬ波状攻撃、背後で新たな爆光が煌めいた。

(‘ L’)《Czarny-01よりHQ、【アオガシマ式戦術】の効果は絶大!敵編隊に大きな打撃!!》

《HQよりCzarny-01、了解した。残弾が尽きるまでは他の編隊と連携し引き続き敵爆撃隊へ反復攻撃を続けろ。情報によれば後続編隊の存在も示唆されている、奴らを絶対にベルリン市空域に侵入させるな》

(‘ L’)《了解!!》



283: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/31(水) 01:24:02.16 ID:qbOhevfD0

ぐいっと操縦桿を傾け、左旋回。全身にかかるGに歪む視界と軋む骨。

丹田に力を込めてこれらに耐え、再び深海棲艦機の大群体を視界におさめる。

立て続けに16発ものミサイルを叩き込まれれば相当な撃墜機が出たはずだが、群体は未だに発達した雷雲のように巨大だ。

元々攻撃を依頼した例のドイツ陸軍の大佐によれば、予測される編隊規模は日本で観測された過去最大のもの───2000機規模に匹敵するだろうとの話だった。だが、この様子を見るにおそらく記録は無事更新された。

(‘ L’)《3000……いや、それ以上いるか》

しかも、司令部曰く後続もまだまだ控えているのだという。尋常じゃない物量に、思わずフィレンクトはコックピットで舌を巻く。

(;‘ L’)《本当に……とんでもない奴らとの戦争になったものだ!!》

発射ボタンを押す。AIM-120空対空ミサイルが雨空を駆け抜け、眼前に広がる“漆黒”に直撃。オレンジ色の炎が、獣の身体から流れ出る血のように群体から突き出し空を焦がした。

(‘ L’)《HQ、地上部隊の現状を教えてくれ!!》

《HQよりCzarny-01、“騎兵隊”はベルリン市に随時突入中。まぁ電波妨害のせいで通信も続々途絶えてはいるが、レヒフェルトからの報告が正しければ問題なく在ベルリンドイツ軍並びにアメリカ海兵隊と合流しているはずだ》

(‘ L’)《それを聞いて安心したよ!!》

市内に展開しているドイツ陸軍の戦力の内、組織的な抵抗力を保持しているとされるのは凡そ2000程度。軍と連動して動いているベルリン市警や機動隊を数に入れても一個旅団を少し越えた程度の兵力にしかならない。加えて寄せられた情報によれば、機甲戦力は骨董品の第ニ世代戦車に雀の涙の装甲車だ。

艦娘が合流しているそうだが、戦艦、空母、重巡が各一隻ずつで残りは駆逐艦だという。

数も質も大きく上回り、しかもなお増え続けている深海棲艦を相手取れるような戦力ではない。というか、これでポーランド軍到着まで持ちこたえた時点でおそらくベルリンの防衛指揮官はとびきりの変態だとフィレンクト達は結論づけた。



284: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/31(水) 01:30:34.42 ID:qbOhevfD0


(‘ L’)《Gun gun gun》

《Good kill Good kill》

腹に抱えていた最後の1発を撃ち込み、更に群体の鼻先まで飛び込んでM61A1バルカン砲をお見舞いする。砕かれ貫かれた敵機がぼとぼとと落下していく中、友軍機がすれ違いざまに賞賛の声を送ってくる。

(‘ L’)(……それにしても、妬けてくるな)

群体に突っ込む直前で反転しベルリン上空を駆け戻りながら、市街地を眼下におさめたフィレンクトはふとそんなことを思った。

欧州全域の現状を的確に分析するどころかイタリアの出撃が遅れることまで見越し、早い段階でポーランドへの増援要請を開始していたレヒフェルト基地の陸軍大佐。

国防体制を理由に渋る政府に対して、南部を経由して交渉の場に乱入し艦娘の存在を外交カードにほとんど身一つで増援の確約を取った連邦共和国首相。

そして、その首相を救助して市外に逃し、質も数も劣る戦力で深海棲艦を迎撃し続けた在ベルリンドイツ軍の面々。

優秀なだけでなく、その優秀な人材が全てを賭して祖国を守ろうとする姿に、フィレンクトは少なからぬ羨望と感銘を覚えている。

そして、同時に。

(‘ L’)《────我々も、負けていられないな!!》

そんな彼らと肩を並べて戦える自分が、軍人として誇らしくもあった。



285: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/31(水) 01:40:33.37 ID:qbOhevfD0










便宜上【軽巡棲姫】と呼ばれている“彼女”は、初めて感じる得体の知れないものに戸惑っていた。

【全の意志】によって与えられる機械的な憎悪とは違う、「自分の身体の中」からせり上がってくるような奇妙な衝動。命令に忠実に、思い描いたとおりに人類に襲いかかる同胞達が、しかし彼女の思い描いた光景を造ることは出来ず跳ね返され、沈められていく様を目の当たりにしてわき上がってくる不快な感覚。

“彼女”は、脆弱なくせに頑強に抵抗する眼前の人間達の姿に、明らかに苛立っていた。

『………』

忌々シイ。

実際に言葉にこそしないが、眇められた彼女の眼がその“感情”を雄弁に語る。

言ってしまうなら非効率的な、しかし看過してしまうことが出来ない【個の意志】に基づく苛立ち。彼女は歯噛みし、地団駄を踏み、長く垂れた髪の奥から東の空を見上げる。

腹立タシイ。

無駄ナ足掻キヲ。

鬱陶シイ。

聞こえてくる同族のものでは無い砲声が、人間共が上げる歓喜と鼓舞の雄叫びが、空を飛び回る鉄の塊が。

全てが、“彼女”の精神を逆なでする。



286: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/05/31(水) 01:52:04.95 ID:qbOhevfD0

彼女の張り巡らした策は、今のところ上手くいっていた。艦娘達の目をかいくぐり、人間共が住まう陸の奥深くに同胞達と共に入り込み、奴らが「クニ」と呼んでいる活動領域を内部から食い破った。

目的の場所に「核」も据え、“彼女”の同胞達は猛烈な勢いで数を増やしつつある。西に居た人間と艦娘達は一方的に蹂躙され、海からやってきた新手も叩きつぶした。ほくそ笑んでしまうほど美しく、“彼女”の策は上手くいっていたのだ。

だが、今はどうか。南に逃げた人間共は戦力をまとめ上げると同胞達の南下を完全に食い止め、より東へと進むはずだった“彼女”たちは半ば廃墟と化した街で立ち往生している。

ようやく抵抗の芽を摘めるかと思えば、人間側にも新手が現れて彼女が呼び寄せた艦載機を根こそぎ焼き払った。

『…………』

“彼女”は、戦闘能力こそ高いが種族の中で極端にプライドが高いというわけではない。とはいえ全くないわけでもないし、「脆弱で愚かで取るに足らない存在」である陸の猿に、良いようにあしらわれても傷つかないほど低くもない。

今の“彼女”の中には、人類をどのようにいたぶり叩きつぶしてやろうかというどす黒い悪意が、“彼女自身”が抱いた悪意が渦巻いている。

『……………』

『─────』

“彼女”は、背後の同胞に目で準備ハイイカ?と問いかける。

赤い眼をした同胞は、任セテヨとでもいいたげに妙に自然な笑みを浮かべ────








ドルンッ、と。

跨がるそれのエンジンを、鳴らして見せた。



291: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/02(金) 00:17:05.12 ID:qucG80lV0








頭上で鳴り響く俺達への福音は、ミサイルと戦闘機だけでは終わらなかった。

《────前線各位、衝撃に備えろ!!

弾着、今!!》

観測班からのそんな声と共に、十何発もの砲弾が───迫撃砲などとは比べものにならない威力を誇る、152mm 36.6口径榴弾が豪快に唸りながら飛来する。

空気が、地面が、巨大な炸裂音と共に震えた。砲火を諸に受けた深海棲艦達の悲鳴や呻き声が一瞬響いたが、連続する爆発音に奴らの声すら飲み込まれていく。

《ケーペニック区よりCP並びに前線指揮車、ポーランド陸軍の自走砲隊が展開を完了!前線への支援砲撃を開始!!》

《こちらリヒテンバーグ区、レオパルト2PL並びにPT-91【トファルデ】が戦線に合流しました!このまま既存の装甲戦力との合流に移らせます!!》

《CPより前線各隊、攻撃ヘリ部隊が我々の上空を通過して其方に向かった。後数秒もせず攻撃が行われるはずだ、巻き込まれないよう注意しろ》

(;'A`)そ「おわっ!?」

(;//‰ ゚)「伏せろ、それと下がれ!! Go back!!」

オペレーターの台詞の途中から聞こえてきた、雷鳴を思わせるヘリコプター独特のローター回転音。低空を飛んできたポーランド軍保有のMi-24………所謂“ハインド”が滑るような動きで俺達の頭上に現れた。

『ォオオオオオオオオッ!!!?オォッ……オォォ………』

ホバリング飛行から放たれるチェーンガンと対戦車ミサイルによる猛攻。既に満身創痍になっている通常種の駆逐艦が耐えきれるはずもなく、ものの数秒の攻撃でハ級は息絶えぐたりと倒れて動きを止める。

「く、Clear!!」

海兵隊の一人が我に返って叫び、その声が俺達に「大規模な援軍の到着」という現実をようやく明確に認識させた。



292: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/02(金) 00:20:10.85 ID:qucG80lV0

「援軍………援軍だ!それも空軍や戦車まで!!」

「やった、やったぞ────!?」

歓声が上がりかけた瞬間を見計らったように、西側で上がる反撃の砲煙。戦闘ヘリの装甲が艦砲射撃に耐えられる道理はなく、直撃を受けたハインドが木っ端微塵になり、炎が発する熱が地上の俺達に吹き付けた。

('A`;)「逃げろぉ!!」

( <●><●>)「っ」

(*;゚∀゚)「ひゃあっ!?」

「Deckung!!」

ハインドの残骸が火の玉と化し、こちらへと墜落してきた。逃げ出した俺達の背後で残骸はホ級の屍に突き刺さり、一際巨大な爆発を起こす。

(;メ A )「コハッ────」

浮遊した身体が、近くの横倒しになった車に叩きつけられた。止まる呼吸と軋む骨、チカチカと視界に星が飛ぶ。

ξ;゚⊿゚)ξ《ドク!!貴方がいる区画でヘリが撃墜されたけど大丈夫!?応答してドク!!》

(メ;'A`)「ゴホッ……あー、何とか無事だ」

足下に転がった無線機ががなり立て、ツンの叫び声が朦朧とした意識を何とか繋ぎ止めてくれた。また気絶しようものならティーマスやジョルジュに何を言われていたか解ったものじゃない。

密かに感謝しながら腕に力を入れて身体を起こす。咳き込んだところ、何滴かの血が足下に飛散した。

ξ;゚⊿゚)ξ《無事なの!?本当に無事なのね!?》

(メ'A`)「繰り返すが無事だよ中尉殿。勿論最高の気分からはほど遠いがな」

ξ; ⊿ )ξ《そ、そう……Je suis soulage》

最後の方は何を言っているのか解らない。ドイツ語でぉK。

(メ'A`)(しかしなんでここまで心配されて……あぁ)

生じかけた疑問は、幸い根付く前に氷解した。

前線指揮官が戦死となれば指揮系統が混乱しかねない、そりゃあ最優先の安否確認は当たり前だな。



293: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/02(金) 00:31:25.97 ID:qucG80lV0

(メメ<●><●>)「おや少尉、悪運強く生き残っていたようで何よりです」

(メ'A`)「あぁ全くな。死んでた方が永久休暇で楽だったかも解らん」

駆け寄ってきたティーマスの手を取り立ち上がりながら、自身の身体の状態を確認する。……幸い致命傷はや動けなくなるような怪我は負っていないが、呼吸が苦しく腕に断続的な鈍い痛みがある。さっきツンにはああ言ったものの、実際に「無事」なのは命だけといったところか。

('A`メ)「ベーデカーとツーは無事か?」

(メメ<●><●>)「軍曹は気絶していましたが軽傷です。建物の残骸に運び入れて安全を確保しました。

アハッツ伍長は……」

(*メ゚∀゚)「無事だ!!」

Σ('A`メ;)「うおっ!?」

予期せぬ場所から出た声にびくりと震える。見れば、ティーマスの右手に小柄な軍服姿の人影が抱えられていた。

(メ;'A`)「まぁ無事なのは何よりだ……サイ大尉、他の奴らは!?」

(メ//‰ ゚)「少なくとも今の爆発では欠員がない!軽傷者数名といったところだ!!」

('A`)「なら何とかなるな。各位速やかに隊列組み直して戦線の維持を!!このまま次の敵襲が来たら一溜まりもないぞ!!」

「「Jawohl!!」」

「「Yes sir!!」」

(メ#'A`)「前衛各班、状況速やかに報告せよ!!」

《ニ班より指揮車、Mi-24の支援射撃によりイ級の撃沈を完了!戦力再編完了しました!》

《こちら三班、深海棲艦の撃沈に成功も支援に入ったMi-24は敵の対空砲火により撃墜されました。乗組員は全滅です》

《四班、何とか立て直しました。Mi-24も健在!》

《五班同じく!》

崩壊寸前だった戦線は何とか立ち直ったらしいが、投入された戦闘ヘリは早くも二機撃墜されている。

敵の反撃が予想以上に迅速で、かつ激しい。流石に国外からの、それも艦娘戦力を保有していない国家からの陸空の援軍は向こうにとっても巨大な計算外の筈だ。が、こうもすぐ態勢を建て直されると少し辟易する。



297: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/05(月) 22:02:14.93 ID:MGWwwK4M0

《Feind Artillerie! In Deckung!》

今度の砲煙は眼前───西側から一斉に上がった。数十発の砲弾が芸術的な弧を描き、唸りを上げて俺達の頭上を飛び過ぎる。

(=;゚ω゚)ノ《CPより各区、被害を報告せよ!!》

《トレプトウ=ケーペニック、第一砲兵隊展開地点に複数発が着弾!!120mm砲4門を失逸、死傷者多数!!》

《リヒテンバーグ区よりCP、突入してきたレオパルト2が今の砲撃で1両破壊!!また、ベルリン市警の狙撃班が通信途絶!!》

ξ;゚⊿゚)ξ《敵艦砲射撃を被弾しMi-24が一機墜落、巻き添えを食らってプーマ戦闘車を1両ロスト!

繰り返す、プーマ戦闘車ロスト!!》

悲劇的な報告が数多無線から流れる中、敵味方の砲撃は空中で激しさを増しながら入り乱れる。ベルリンの東西双方で幾つもの爆炎が上がり、建物の崩落音や深海棲艦の悲鳴、怒号がそこに重なった。

「敵艦砲射撃、来ます!」

('A`;)「伏せろ!!」

何発かの砲弾は、俺達が展開している地点の周囲にも着弾する。地面が震え、泥と砂利が飛び散り降りかかる。

……弾量はまだ大したことはないが、至近弾な上着弾地点が収束している。先の通信を聞く限り、後衛部隊にもかなり大きな損害が出た。やはり、敵前段艦隊は完全に混乱から立ち直っている。

(メメ<●><●>)「援軍到着で華麗に逆転開始、とはなりませんね。なかなか」

(メ'A`)「ま、小説や映画みたいに単純じゃないさ現実は」

ティーマスのぼやきにそう返しながら、俺の口元には思わず苦笑いが浮かんだ。

('A`)「たとえ映画だったとしても、俺達はそういう感動の場面を演出して貰える立場にはなれないだろうよ」

(メメ<●><●>)「そんなことありません。テネシャンスD辺りでボーカル勤めてそうですよ少尉」

('A`)「誰がジャック=ブラックだ」

だいたい体格的には真逆の系統だろ俺。



298: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/05(月) 22:08:56.02 ID:MGWwwK4M0

《パンコウ区オシエツキー通り、敵砲弾が直撃!機動警官隊と歩兵分隊に死傷者多数!!》

《高層観測班、既に拠点ビルの半数が崩落し通信途絶!!Prinz Eugen、水偵の高度は維持してくれ!!》

《Jawohl!!》

俺の容姿に関する諸々はともかくとして、援軍到着後も状況は引き続き芳しくない。第二陣まで殲滅されたとはいえ、前段艦隊の非ヒト型は未だ優に40隻を越える───最悪50隻に届く戦力を保有している。

加えて、後衛には軽巡棲姫ら中核艦隊も健在だ。大編隊による空襲も、F-16の波状攻撃で何とか防いでいるがいつまで持つかは解らない。

ただし、苦境であること自体は変わらないとしてもその「度合い」も不変というワケではない。

('A`#)「CP、ポーランド軍の自走砲隊に前段艦隊の展開地点からシュパンダウ区への砲撃目標変更を指示してくれ!!」

(=゚ω゚)ノ《CPよりフロントライン、シュパンダウ区のどの地点だよぅ!?》

(#'A`)「シュパンダウ区ならどこでもいい、ただなるべく自走砲は全車両での砲撃を行うよう手配を!!」

(=゚ω゚)ノ《解ったよぅ!!》

普通だとここで目標変更の理由付けや砲撃座標の明確な指定を求めてくるのだが、イヨウ中佐は二つ返事で引き受けてくれた。やはり、こういった急場で即断即決を下してくれる上官はありがたいものだとしみじみ実感する。

(=゚ω゚)ノ《~~~~。

砲撃開始10秒前!前線各位、衝撃に備えよ!!》

きっかり10秒後、とびきり巨大な風船を破裂させたような乾いた音が背後で幾つも響いた。

(=#゚ω゚)ノ《弾着まで10秒……5秒………弾着、今!!》

優に20発を越える榴弾は、前段艦隊すら遙かに飛び越えてベルリンの西端へ。中佐のカウントが終わると同時に、家々の隙間を縫って30km彼方より爆発音が連続的に聞こえてくる。

(;//‰ ゚)「……砲撃が!?」

そして束の間、前段艦隊による砲撃がピタリと止まった。

('A`#)「Bismarck、同区画に主砲射撃!!位置はどうでもいい、とにかく一発ぶち込め!!」

《Jawohl!!

Feuer!!》

瓦礫だらけのベルリンを、「戦艦」の砲声が震わせる。



299: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/05(月) 22:17:43.80 ID:MGWwwK4M0

SKC/34型 38cm連装砲。史実で【戦艦ビスマルク】の建造をわざわざ遅らせてまで搭載された巨砲の威力は、現代においても健在だった。

深海棲艦の軽巡・駆逐共が放ってきた砲弾や自走砲隊の榴弾とは一線を画した、桁違いの一撃。かえって「轟音」以外の比喩表現が見当たらない凄まじい弾着音の後に、着弾点付近の建物が崩れ去る耳障りな騒音が続く。

《Prinz EugenよりCP、Bismarck zewiによる艦砲射撃の弾着を確認。なお、敵艦隊への損害は不明!》

《ちょっとドックン、命令があったから撃ったけどあんなところを攻撃して何か意味があったの?》

('A`)「まずいい加減人の名前を覚えてくれるとありがたいなお嬢さん」

とはいえ、ビスマルクが言わんとすることは解る。シュパンダウ区は敵前段艦隊の展開地点から離れていて、地図で見た限り街区の面積も狭くはない。38cm砲の巻き起こした爆発も、区画全体から見れば決して大きくはない。

一応襲撃開始直後に軽巡棲姫と護衛艦隊が目撃された区画ではあるが、「シュパンダウ区の中程で見た」という漠然とした情報のみであり明確な展開地点は不明のまま。そも、敵中核艦隊が未だにシュパンダウ区に展開しているという保障もなかった。

中核艦隊を本気で撃沈しようとするのなら、艦娘と自走砲を総動員してシュパンダウ区全域を更地にするほどの砲幕を張る必要がある。

『『『────ォオオオオオォオオオオオッ!!!!』』』

《Prinz Eugenより市内各区画に通達!》

尤も、俺は最初からそんなもん狙っちゃいないが。

《敵前段艦隊、砲撃を続行しつつ一斉に進撃を開始!!全艦がこちらに向かってきます!!》

(=゚ω゚)ノ《釣り出し成功、お見事だよぅ少尉》

さっすが中佐は話がわかる。



302: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/05(月) 22:30:29.51 ID:MGWwwK4M0

《えっ、ちょっと待ちなさいよ。釣り出しってどういう意味───きゃあっ!?》

無線越しに砲弾がアスファルトを砕く音と、とてもドイツ海軍最強の艦娘が上げたとは思えない高い悲鳴が耳に飛び込んできた。次いで、高層観測班から敵砲火がビスマルクの待機地点に集中している旨が焦燥剥き出しの声で知らされる。

戦艦の居場所を晒したのだから、優先して潰そうと思うのは当然か。ともあれ、わざわざ追加の「裏付け」までくれるとは親切な話だ。

('A`)「ビスマルク、損害状況知らせ!」

《数え切れないほどの至近弾に、駆逐艦のものと思われる砲弾が一発直撃!

とはいえ小破にすら至ってないわ、艤装運用に問題なし!》

('A`)「解った、はっきりした損傷を受ける前に一度後退しろ!!」

《Jawohl!!》

深海棲艦は陸上における進行速度は俺達と大きく変わらないが、非ヒト型はその巨体と馬力を活かして建物を崩しながら市街地を“直進”する。狙い通りのこととはいえ、前段艦隊の到着まで時間は潤沢とは言い難い。

打てる手は、同時進行で打つ。

(#'A`)「ティーマス!」

( <●><●>)「Ich verstehe.

前衛部隊各位、路上に再びC-4の設置を急いで下さい。……それと、街路両脇で3階建て以上の建物があればその最上階壁にも取り付けるように。アサルトライフル並びに携行砲のメンテナンスも───」

目配せしただけで飛ばされる的確な指示。しかもこちらが出す予定だった内容とほぼ変わらないときた。

階級譲渡が無理なら佐官への特進を進言しようかと半ば本気で検討しつつ、手元の無線をツンの下に繋げる。

('A`)「ツン、ポーランド軍機甲部隊との合流は!?」

ξ;゚⊿゚)ξ《第一波との合流は完了、割り振りも無線合わせも済んでるけど……貴方いったい何したの!?どうして深海棲艦が突然前進なんか───》

('A`)「解説は後だ!レオパルト1とプーマを一両ずつ指揮所の防衛に残して、自走砲以外の全装甲戦力を渡河させろ!」

ξ゚⊿゚)ξ《───了解!!》

('A`)「総員に伝達!!間もなく再編された主力機甲部隊が前線に到着する、各部隊は現戦線を固守し主力到着まで耐え抜け!!」

ここで一瞬、サイ大尉やミルナ中尉のように洒落た演説の一つでも飛ばせないかと言葉が途切れた。

まぁ、学がない上コールガールすら口説いた事が無い俺に、あんな演説が思いつくはずもない。

ついでに言えば時間も無かったので、俺はドイツ人のステレオタイプらしく「仕事」の内容だけを伝えることにした。

(#'A`)「これより、深海棲艦の前段艦隊との決戦に移る!!ベルリン奪回への分水嶺だ、全火力を動員して迅速に殲滅しろ!!

化け物共に、艦娘以外にも敵がいると言うことを……」



303: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/05(月) 22:31:43.31 ID:MGWwwK4M0

(#'A`)「俺達人間が、奴らの“敵”であるということを教えてやれ!!」

《「《「─────Jawohl!!!!」》」》



304: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/05(月) 22:34:58.65 ID:MGWwwK4M0

深海棲艦側にとって最も避けたい事態は、当然のことながら旗艦である軽巡棲姫の撃沈。当然前線への配備はあり得ず、周辺をヒト型で固めた上で後衛待機が基本線となる。

本来なら向こうはそもそもベルリン市から遠く離れた位置に中核艦隊を据えたいはずだが、ここで問題となってくるのが非ヒト型の統率だ。

《Mi-24、第二波が前線に突入する!航空攻撃に巻き込まれるなよ!》

《ZSU-23-4【シルカ】六両が新たに到着しました!!》

(#'A`)「三両は前線に回してくれ!残り三両は艦娘達の護衛に付けろ!」

《Jawohl!!》

姫や鬼の恐ろしさは戦闘能力もさることながら、特筆すべきは“非ヒト型”の統率能力。リ級やル級に代表されるヒト型種が5、6隻のコントロールを限界としているのに対し、姫級は少なくとも100隻以上の非ヒト型を操れるのではとの説もある。

ただし、ポルトガルでの例を見れば解るとおり無制限で100隻を自在にコントロールできるわけではない。アルカンタラマールで交戦した“1-1艦隊”が断熱シートを戦車に被せただけの欺瞞すら見抜けなかったとき、装甲空母姫は打撃艦隊への備えとして遙か外洋に展開していた。

『ォオオオオ……』

《高層観測班より通達、イ級1体が自走砲隊の砲撃により沈黙!おそらく撃沈と思われます!》

('A`#)「中佐、ポーランド軍に攻撃をやり過ぎないよう注意して下さい!前進を辞められたらせっかくの釣り出しが無意味になる!」

(=#゚ω゚)ノ《了解だよぅ!!》



305: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/05(月) 23:11:00.06 ID:MGWwwK4M0



姫級が非ヒト型を自在に操れる限界距離は、凡そ50kmされる。30km四方のベルリンに確実に指示を届かせかつ電波妨害まで行うとなれば、行動範囲は自然ベルリンに限られる。

後は具体的な位置をどうやって特定するかだが、ポーランド軍の到着がその問題を解決してくれた。

(#゚д゚ )《総員前進開始!!

Los Los Los!!》

《CPより前線、BM-21【グラート】が二十両新たに戦線に到達、砲撃準備完了!!》

('A`#)「ロケット砲は貴重だ、展開位置は分散しつつ合図があるまで待機!照準は敵前段艦隊に集中させるよう指示を!!」

152mm砲。口径のみで言えば第二次世界大戦時の軽巡洋艦主砲に匹敵し、射程と威力も申し分ない【戦場の女神】の一つ。無論“戦車砲よりは効果的”というだけでヒト型達からすれば大差の無い威力ではあるが、少なくとも20門以上が一斉に放たれれば威嚇効果としては決して低くない。

案の定、すぐ近くに飛んできた“脅威度が上がった攻撃”への動揺からか、前段艦隊への指揮が一瞬止まった。

《ポーランド陸軍、携行砲装備の歩兵隊が先行して其方に向かった!合流して防衛線の強化を急げ!!》

《高層観測班より前線各位、敵前段艦隊と接敵まで後30秒!!警戒を!!》

(#'A`)「総員構え、総員構え!!」

(#//‰ ゚)「気合い入れろ、敵は手強いぞ!!」

後は、ビスマルクによる正真正銘“一撃轟沈もあり得る攻撃”を加え、奴らの位置をこちらが把握していると教えてやればいい。

自然、“事故”を防ぐために奴らが取れる策は絞られる。

こちらの重火力部隊や艦娘の浸透を防ぎつつ、かつ向こうが艦娘の殲滅を狙うための手段、即ち。

『『ォオオオオォオオオオオオッ!!!!』』

「Enemy contact!!」

('A`#)「Feuer!!」

前段艦隊の集中運用による、決戦突撃。



308: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/06(火) 23:31:23.42 ID:7DWlqEE60

正面の道路をひしめきながらこちらに進んでくる深海棲艦達。奴らとの戦闘の口火を切ったのは米海兵隊のLAWとティーマス指揮下部隊のカールグスタフだった。

『オォアアアアッ!!?』

唸りを上げて飛んでいった10発近い対戦車弾頭が、先陣を切っていたハ級の鼻先に直撃する。黒い表皮が裂けて砕け、火花と爆炎、青色の体液が雨に混じってまき散らされた。

『ァアアアアア───ア゛ア゛ッ!?』

(#//‰ ゚)「撃たせるかよこのディープワンめ!!

Keep fire!!」

「「「Yes sir!!」」」

隣で射撃体勢に移ったロ級に対しても、サイ大尉以下海兵隊のジャベリンミサイルが降り注ぐ。

猛烈な勢いで叩き込まれる火線に、先鋒二隻の足が止まった。

('A`#)「とにかく射撃間隔を開けるな!!奴らに砲撃の間を与えないようにしろ!!」

( <●><●>)「上部からの砲撃も有効に活用して下さい。非ヒト型は総じて下半身が小さくバランスが取りづらい、衝撃を与え続ければ射線をブレさせ攻撃の手を止めることが出来ます」

彼我の距離は700Mほど。1キロに満たない距離など“軍艦”からすれば目をつぶっても当てられる至近距離だ。

故に此方は、前段艦隊を殲滅するためになるべく“撃たせない”事が重要になる。

(#'A`)「前衛各位、残弾や余力は一切気にするな!!確実に、一匹残らず奴らを仕留めろ!!」

「《「《Jawohl!!》」》」

止まないどころか勢いを増す雨の中で、砲煙と火薬の匂いが街路に満ちていく。



309: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/06(火) 23:38:00.51 ID:7DWlqEE60

『ウォオオオオ………』

「Enemy down!!」

('A`;)「よし、さい先が───うおっ!?」

(;//‰ ゚)「Ups?!」

既に自走砲隊の攻撃で十分な損害を受けていたのか、ハ級の方が早々に蹌踉めき道路に倒れ込む。

だが、喜ぶ間もなくその後から突き出された艤装が火を噴き、弾丸が低弾道で俺達の頭上スレスレを飛び過ぎた。

『キィアアアアアアアアアアアッ!!!!!』

('A`;)「っ」

砲撃を食らった装甲車数両の爆発音を掻き消すようにして、その艦は声高に叫ぶ。他の非ヒト型よりも1オクターブ高い鳴き声は不快感も増しており、耳を抑える手を止められない。

( <●><●>)「………相変わらず奇っ怪な外観ですね」

声の主の姿を目にし、ティーマスがぼそりと呟いた。

軽巡級の個体であるそいつは、ホ級やト級と同様に頭部と思わしき位置には眼球がない。

のっぺりと頭を覆う白い表皮は被り物のようで、世界的に有名な某ホラー映画の殺人鬼を連想させた。先ほども言った通り眼球はないが、人ならば眼に当たる位置に切り抜いたような穴が空いていることも余計にマスクのような印象を与えてくる。

ホ級やト級に比べるとやや人間に近い体付きといえる。だが胸から下を覆う嘲笑を浮かべたような形の大顎と完全に艤装と融合した右手、何よりもその顎の最下部から突き出した地上を移動するための蜘蛛のような八本の足が明確に“奴”を化け物としてカテゴライズさせた。

『キィアアアアアアアアアアアッ!!!』

奴────軽巡ヘ級が、右腕を此方に向けながらもう一度雄叫びを上げる。

('A`;)「散開!!」

2発目の砲弾が、新たに何両かの装甲車を吹き飛ばした。



310: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/06(火) 23:48:34.07 ID:7DWlqEE60

(;'A`)「点呼、負傷者がいたら報告しろ!!」

( <●><●>)「此方ティーマス、幸い負傷無し。他の兵も無事です」

(//‰ ゚)「アメリカ海兵隊をなめんなよ、あの程度なら避けられる!」

(*゚∀゚)「ツー=アハッツ、健在だぁ!!」

ベーデカー軍曹と共に瓦礫の影に飛び込みながら叫ぶと、幸いにして欠員が出た様子はなかった。なおも何発か砲弾が撃ち込まれる中ちらりと物陰から顔を出し、改めてヘ級を観察する。

全長は五メートル前後、隣のロ級と変わらない。

「……通常種で良かったですね」

('A`)「あぁ、本当にな」

ヘ級flagshipは他の非ヒト型に比べて一段高い戦闘能力を有しており、ヒト型を除くと軍内でも強くマークされる個体の一つだ。特に対潜能力は凶悪で、世界初となる艦娘の“轟沈”はヘ級flagshipと潜水艦娘が遭遇してしまったため発生している。

それも、質量共に他国を圧倒する日本の艦娘が犠牲になったため、当時は特に艦娘保有国を中心に世界中でヘ級の危険性が大々的に取り上げられることになった。

無論、あくまで“flagshipじゃない分マシ”という話であって“楽に片付けられる相手”には残念ながらならない。今の砲撃で隊列も乱され、攻撃は続いているものの敵の反撃も此方に届き始めている。

ましてや、今回の敵は二隻や三隻ではないから尚更厄介だ。

《Prinz Eugenより前衛各位、前段艦隊に動きあり!!

各班正面にて、敵艦隊は戦列を複縦陣に移行中!一斉砲撃を行おうとしている模様です!》



313: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/07(水) 00:38:01.36 ID:QJ8KbxUB0

ガラガラと建物がくずれていく音と、立ち上る土煙。それはヘ級達に後続していた、後続の深海棲艦が前に出つつある印。言うなれば「T字不利」が取られているに近い状況を打破するための軽巡棲姫の差し金だろう。

予想される前段艦隊の残余戦力は50隻程度。此方の前衛部隊が展開している5カ所の拠点に均等に戦力が割り振られたとして、俺達前衛部隊は各所が10隻前後の軍艦と生身で交戦している計算になる。

正念場だ。

(#'A`)「CP、Mi-24があれば敵前段艦隊への攻撃に回してくれ!!自走砲隊には同時にシュパンダウ区への砲撃要請を!!」

(=゚ω゚)ノ《了解だよぅ!ちょうどヘリ部隊の第三波が突入する、全機を攻撃に回す!!》

直後に頭上を飛び越す砲弾と、その後を追って飛来するMi-24。新たな編隊は榴弾がシュパンダウ区へ着弾する瞬間に合わせる形で、一斉に前段艦隊めがけて突入する。

『オォアッ!?………グゥアアアッ!!!?』

『ルァアッ!?』

非ヒト型といえど、上位種の命令があればそれに従うだけで個々の感情や自我を全く持たないわけではない。“自分たちの本陣”に派手な攻撃があれば反応するのは当たり前だし、知能が低い分その反応はより動物的になる。

砲撃に釣られたヘ級達はほぼ全艦が後方に気を取られ、陣形転換も不十分なままヘリ部隊の突入を無防備なまま受ける形となった。

『アォオオオ………』

『グア……』

次々と上空から襲いかかるAT-6 スパイラルミサイルに、既に中破まで行っていたロ級が瞬く間に動きを止める。ビルの向こう側でも何か大きな物が倒れ込む音が聞こえ、すぐに高層観測班からの「ト級沈黙!!」の報告が無線から飛び込んできた。

『キィアアアア────アアアアアアッ!!?』

('A`#)「Los, Los!!」

(#//‰ ゚)「Guys, Go attack!!」

しぶとく生き残るヘ級が艤装をヘリに向けようとするが、当然させるわけがない。

陣形を立て直した俺達から放たれる、ロケットとミサイル。ジャベリンは艤装に、パンツァーファウストは頭部に、カールグスタフは脚部にそれぞれ直撃しヘ級のグロテスクな身体を撃ち抜く。

『ギッ、ギィイイイ……ッ!!』

とはいえこの頃にはヘリ部隊の方が兵装をほとんど撃ち尽くしたらしく、4機編隊のハウンドは12.7mm弾を牽制としてまき散らしながらゆっくりと後退を開始した。

空襲の圧力から解放されたヘ級が、苦悶の声を上げながらも右手を此方に向ける。

尤も、時既に遅しという奴だが。

《CPより前線各位、弾着間もなく。衝撃に備えろ》

『ギッ……ガァアアアアアアッ!!?』

BM-21グラートによる、ロケット弾の一斉投射。

文字通り“豪雨のように降り注いで”きた122mmロケット弾に、ヘ級の身体は断末魔と爆音の中でバラバラに引き裂かれた。



314: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/07(水) 01:09:27.89 ID:QJ8KbxUB0

('A`)「各班、状況を報告しろ!!」

《第二班、交戦中の敵艦の内イ級elite、ヘ級をそれぞれ1隻ずつ撃沈!また、ホ級が大破状態で後退を開始!》

《第四班より前線指揮車、Mi-24の空襲でロ級2隻が轟沈。また、今のロケット弾投射によりホ級1、ト級elite1が沈黙しました》

《第五班、敵前段艦隊3隻の排除を確認、残余7!》

《此方第三班、交戦中の敵艦隊9隻の内2隻が沈黙!また、ト級eliteが大破状態に移行!》

交戦開始から機甲部隊の到着を待たずに、11隻もの敵艦を沈めることに成功した。はっきりいって、即席の陽動がここまでハマるとは思っていなかったため喜びよりも先に戸惑いが来る。

だが、望外の結果だった故に思考が冷静なままでいれられるのは寧ろありがたい。

('A`)「ロケット砲は再装填に時間がかかる、今のような大砲撃をもう一度行うには間が空く!

各班突出は避けて引き続き敵艦隊の打撃に勤めろ、機甲部隊到着まで此方から攻勢には出るな!」

《《《Jawohl!!》》》

指示を出し終えたところで聞こえてきたのは、新たな車両のエンジン音。といっても、戦車や装甲車のそれより遙かに馬力が低いエンジンが奏でるものだ。それが十何個か重なって、水飛沫の音と共にこの区画に近づいてくる。

( ’ t ’ ;)「※※※、※※※※!!」

深海棲艦への攻撃を続ける俺たちのすぐ傍に、金髪の男が乗る物を先頭として4台の軍用バイクが軽くドリフトしながら停車した。すぐ後に軍用トラックが一台続き、荷台の上に乗っていた武装兵十数人が金髪の男の指示に従って一斉に路上に飛び出す。

ライフルグレネード付きのPMK-PGN-60をほぼ全員が構え、内半数ほどはRPG-7かカールグスタフを背負っている。更にトラックの荷台には、SPG-9まで三脚で備え付けてあった。

先程無線でCPが伝えてきた、ポーランド陸軍の携行砲装備部隊の到着。はっきり言って最高のタイミングに、はっきり言って指揮官と思わしき金髪の男にキスの一つもかましたくなる。



317: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/07(水) 23:31:51.40 ID:QJ8KbxUB0

( ’ t ’ )<ポーランド陸軍一等准尉、カルリナ=ヴォジニャックです!>

バイクから降りた男……というより青年は、背負ったカールグスタフが通常より大きく見えるほど背が低く華奢だった。英語でカルリナと名乗ったそいつは、俺の下まで駆け寄ると砲声に呑まれないよう声を張り上げる。

( ’ t ’ )<ドク=マントイフェル少尉ですね?これより我が分隊は指揮下に入ります!!>

('A`)<増援感謝する!しかしよく一目で俺のことが解ったな!!>

( ’ t ’ ;)<イヨウ中佐が特徴的な顔立ちなのですぐ解るだろうと……あ、いえ!何でもないです!!>

('A`)

無事作戦が終わった暁にはあの中佐と少し話し合う必要がありそうだ。

というかお前もオブラートに包めやイケメンに言われると二重に抉られるわ。

('A`)<……まず前段艦隊を殲滅する、全火力を正面の敵艦隊に投射してくれ!>

( ’ t ’ )<了解!

※※※※!!」

台詞の後半はおそらくポーランド語での指示だったのだろう。兵士の一人がトラックの荷台に駆け上がり、SPG-9の操作に移る。

残りの面々も、一斉に背負っていた携行砲やアサルトライフルを構え前段艦隊の方に向けた。

( ’ t ’ #)「Strzelac!!」



318: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/07(水) 23:41:33.43 ID:QJ8KbxUB0

号令一過、新たに24の銃口・砲口が火を吹く。路地を満たす硝煙の濃度が更に増し、ポーランド軍による弾幕が深海棲艦に真っ向から叩きつけられる。

『ヴォオオアアッ!!?』

カルリナ達の攻撃は、バラバラにされたヘ級の遺骸を踏み越えて前進してきたイ級に全て直撃。 多数の砲撃の勢いに圧されたイ級の頭部が跳ね上がり、そのままひっくり返るようにして背中から仰向けに路上に倒れ込んだ。

《────弾着、今!!》

『ギィアッ!!!?……アァ……ァァァ………』

剥き出しになった腹に、タイミング良く迫撃砲弾が立て続けに何発か突き刺さった。

イ級は起き上がれない亀のようにじたじたと足を動かしていたが、声も挙動も弱々しくなっていき最後の一発であっさりと絶命する。

「イ級通常種の沈黙を確認!正面敵残余艦数残り7!!」

《此方五班敵艦隊半数を撃沈。戦闘を続行する》

《四班、ホ級を制圧した!あと少しだぞ、踏ん張れ!!》

敵前段艦隊の損害は、間断ない火砲投射と幾度かの空襲によって今や五割に達しつつある。陽動以外で艦娘の力を使わない中で半数の敵艦を撃破となれば、自分で言ってしまう形になるがこれは奇跡的な大戦果と言える。

此方にも損害は出ているものの、深海棲艦の最大目標である艦娘への攻撃は全くといっていいほど許していない。あくまでベルリンに限った話でいえば、戦況は圧倒的優勢だ。

(#'A`)<カルリナ、もしC-4を持ってきていたら幾つか健在な建物の内壁に仕掛けてきてくれ!>

( ’ t ’ #)<了解!

※※、※※、~~~!!」

無論それは数字上の話であり、ここまでやってなお俺達の状況は微塵も予断を許さない。

('A`#)「ベーデカー、残余敵艦の内訳を報告しろ!!」

「ト級の通常種が一隻、それから“1-1艦隊”とヘ級、ロ級が二隻です!!

ト級以外は、全てelite!!ニ班~五班においても、残存戦力の主力はeliteです!!」

カーテンコールの訪れは、まだまだ遠い。



319: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/07(水) 23:56:58.24 ID:QJ8KbxUB0

五つの防衛線を構築する敵前段艦隊は、最後の線である第5陣のほぼ全てをeliteで固めるというかなり慎重で防衛的な展開をしていた。そのため俺達が第1陣、第2陣を一方的に殲滅しつつも、敵艦隊は非ヒト型の上位種戦力を自然な形で温存している。

攻勢にあたっても敵艦隊は極力通常種を前衛に集め、自走砲による砲撃や打撃部隊への盾となるように陣形を組んだ。此方もなるべく優先して上級個体を狙いはしたが、ニ班と四班で撃沈、三班で大破艦が確認できた程度で未だ20隻を超えるeliteが戦闘能力を有して前線部隊と対峙する状態。

火力の差は歴然であり、軽巡棲姫からすればベストとまでは言えずともベターな戦力比に持ち込めている筈だ。

……尤も、それは此方にも言える話であって。

ξ#゚⊿゚)ξ「─────Panzer vor!!」

敵戦力を減らしつつの“時間稼ぎ”は、もう十分過ぎるほど終わっている。

ξ#゚⊿゚)ξ「Feuer!!」

『ォオオオオオオアッ!!?』

ツンの叫びと共に、戦車隊の先陣を切っていたレオパルト1が105mm砲を撃ち鳴らす。ヒュンッ、という巨人の口笛のような飛翔音を残してAPFSDSが空間を駆け、最後の通常種であるト級の左頭部に突き刺さり装甲皮を貫く。

::(* A )::「ブフムッフフッ」

金髪巻き毛のフランス女がドイツ陸軍の戦車に乗って後方にポーランド軍の装甲部隊を率い、ドイツ語を叫びながら突入してくるというグローバル化の集大成のような光景に思わず変な笑いが口をついて飛び出した。

( <●><●>)「キモッ」

(*゚∀゚)「キモッ」

('A`)

ドイツ連邦陸軍少尉ですが部下が辛辣です。



320: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/08(木) 00:22:46.05 ID:k+hQ6MSy0


眼から流れてきた汗(比喩表現)を袖口で拭き取り、改めて区画に突入してきた友軍戦力を確認する。

ツンのレオパルト1を先頭に、真後ろにプーマ戦闘車と、もう一両のレオパルト1。最後尾には自走対空砲ZSU-23-4【シルカ】が後続。左側に並ぶのは、ポーランド陸軍の戦車であるレオパルト2A4とPT-91【トファルデ】が二両ずつ。

更に軍用トラック一台分ほどのスペースを空けて、トファルデとレオパルト2A4各2両にハンヴィー4両からなる第2陣が続いた。

敵艦砲射撃による混乱や損害もあって若干歪な編成ではあるものの、合計16両という強力な装甲戦力の到着は頼もしい。

一方で、強襲打撃班の搭乗していた車両やカルリナ達の到着によってかなり兵力が密集した形だ。敵艦砲射撃が直撃すれば、命中位置次第では駆逐艦の砲弾でも甚大な損害に繋がる。

まずは、こちらから再度攻勢に動く。

(#'A`)「ツン、装甲車隊を一部右手1ブロック先から迂回させろ!敵艦隊の側面を突く!」

ξ#゚⊿゚)ξ「了解! ※※※!!!」

指示を受けたツンが無線に向かってカルリナと同じ響きの言語で何ごとか叫ぶ。ポーランド語まで習得済みとは本当に頼れる才女様だ。

('A`)<カルリナ、一部歩兵を戦車隊に随伴させてくれ!敵の空襲があった場合はアサルトライフルの射撃で援護を!>

( ’ t ’ )<了解!>

('A`#)「サイ大尉、ベーデカー、ティーマス、前進するぞ!奴らの攻撃目標を分散させる!」

「Jawohl!!」

(//‰ ゚)「Roger that!!」

( <●><●>)「Ich verstehe」

('A`#)「ツー、お前も後続しろ!!

Los Los Los!!」

指示を終えた俺は、物陰から路上に飛び出すとアサルトライフルを構えて前段艦隊に向けて駆けだした。



321: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/08(木) 01:04:28.17 ID:k+hQ6MSy0

『ガァアッ!!!』

(*;゚∀゚)「………ひょおうっ!?」

道路に飛び出した瞬間、ト級が反撃の砲火を放つ。突風と熱を残して跳んできた砲弾に、ツーが奇声を上げながら身を竦めた。

爆発音。振り返れば、PGS-9が装備されていたトラックが燃えている。拉げた荷台の上では人の形をした何かが炎を纏い、やや離れた位置では今の攻撃に巻き込まれたらしいドイツ兵が上半身だけで転がっていた。

('A`;)「怯むな!いけ、いけ!!」

ξ#゚⊿゚)ξ「ドク達の援護を!!

Feuer!!」

『ウグアッ!?』

『ギイッ!!?……アアアッ!!!』

レオパルト1と、トファルデの主砲が立て続けに吠える。前者の弾丸は寸分違わぬ狙いで先程の着弾点をもう一度射抜き、後者の砲弾はその隣に進み出てきたロ級eliteに直撃する。

だがロ級の方は衝撃に踏みとどまり、艤装をゆっくりと此方に向けてきた。

「Fire!!」

『ガッ……!?』

その横っ面に、サイ大尉に後続していた海兵隊がLAWをぶち込む。踏ん張りきった直後で態勢が安定していないロ級の巨躯が揺れ、砲塔ががくりと下を向いた。

ξ#゚⊿゚)ξ「Go Missile!!」

《Jawohl!!》

『アゲァッ!?ア゛ア゛ッ……オォオ………』

ツンが叫び、プーマ戦闘車の砲塔からスパイクLR対戦車が二発連続で撃ち出される。

一発目が頭部を上から撃ち抜き、二発目は持ち上がり露わになったロ級の下あごを吹き飛ばし艤装に突き刺さる。

ロ級はぐらりぐらりと身体を揺らし、イ級の屍の上に折り重なるようにして倒れ込み息絶えた。

『ォオオオオッ!!!』

完全に左頭部を失ったト級の方は、しかしながらまだ生きていた。仲間の死に対する怒りからか一際高く咆哮すると、200mほど距離を詰めていた俺達に向かって機銃を放つ。

('A`#)「飛び込め!!」

(*゚∀゚)「うひぃっ!!」

咄嗟にツーの首根っこを掴みながら、陥没した道路の穴の中に飛び込む。アスファルトを弾丸が削り、すぐ傍を火線が走り抜けた。

道路はハ級による地下からの攻撃で、そこかしこがめくれ上がったり陥没している。幸い、隠れる場所には事欠かない。

敵を引きつけつつのゲリラ戦にはうってつけだ。



324: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/08(木) 23:43:32.71 ID:k+hQ6MSy0

('A`)「ツー、行くぞ!」

(*゚∀゚)「あいよぉ!!」

『ォオオオッ!!!』

ツーと共に穴を駆け上がり、ト級に向けて銃撃。狙うはレオパルト1が穿った左頭部の貫通痕。

傷跡への攻撃はアサルトライフルの射撃でも幾らか効くのか、ト級は低い声で嫌がる素振りを見せるが身体の構造が祟って銃火を遮ることは出来ない。無理やり身体を捻って射線を躱そうとする。

「Fire!!」

『ォオアッ!?』

そこに撃ち込まれたのは海兵隊が構えるジャベリンミサイル。ただし、狙った先は頭部ではなく、ト級の腕。

ト級は胴体と足を持たず、陸上移動の際には中央頭部から直接生えた二本の大きな腕で「歩行」する。未発達で小ぶりな足しか持たない上に胴体の大きさに対して脚部の形状がアンバランスな駆逐艦よりマシだが、それでも地上での機動力は高くない。

ξ#゚⊿゚)ξ「Feuer!!」

『ウ゛ア゛ア゛ッ……』

回避運動のためにもつれていた腕に直撃するミサイル。ぐらりと傾き戦車砲の射線に晒されるト級の頭部艤装。

4両の戦車による一斉射撃は、吸い込まれるようにして頭頂から生えた砲塔に直撃。

グワリと音が鳴り、艤装が爆散。弾薬の誘爆によってト級の中央頭部が火の玉と化し、数秒間の制止を経てそのままト級は腕を折り斃れる。



325: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/08(木) 23:51:30.74 ID:k+hQ6MSy0

『キィアアアアッ!!!』

(;'A`)「止まるな!!」

そのまま足を止めず走り抜け、今度は路上に転がった黒焦げの市営バスの下へ。入れ替わりで前に出てきたヘ級eliteの機銃掃射が後ろから猛然と追いすがってくる。

命がけの鬼ごっこはかろうじて此方に軍配が上がり、ツーと俺が残骸の影に飛び込んだ直後弾丸が炭化した車体にめり込んだ。

『グェアッ!?』

『キィ………キィアアアアッ!!?』

同時に砲声。ヘ級の後ろで今度は単縦陣への移行運動をしていたイ級の横っ面で爆発が起きる。思わぬ方向からの一撃にふり向いたヘ級の腹にも、連続して二発の砲弾が突き刺さった。

『ウォオオッ!?』

『ゴォアッ!?』

ヘ級とイ級への砲火を皮切りに、奴らの右手から横殴りに叩き込まれる砲弾と銃弾の嵐。ホ級が砲塔を向けようとしたが即座に砲火が集中し、照準を絞る前に放たれた艦砲射撃はあらぬ方向へと飛翔する。

ξ#゚⊿゚)ξ「ドク、別働隊が敵艦隊側面に到達!攻撃を開始したわ!」

('A`#)「正面戦車隊並びに随伴歩兵隊、最大火力にて敵艦隊を打撃せよ!!とにかく撃って撃って撃ちまくれ!!」

ξ#゚⊿゚)ξ「Jawohl!!

※※※、※※※!」

( ’ t ’ #)「※※※※!!」

弾幕射撃が更に勢いを増して俺達を追い越し、ヘ級達に猛烈な勢いで襲いかかる。無数のマズルフラッシュと爆発光が、雨の中で途切れることなく煌めく。

『ォオオオオォオオッ!!!』

(;'A`)「………っ!」

次々と深海棲艦達の巨躯に吸い込まれていく火線。だが、全身に銃火を纏いつつもヘ級が右手の艤装を強引に持ち上げツン達の方へ───はっきりと、ツンが乗るレオパルト1へ向ける。

ξ;゚⊿゚)ξ「……ヤバ」

(;'A`)「ツン────!」

砲声。



326: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/08(木) 23:54:17.37 ID:k+hQ6MSy0

ξ;>⊿<)ξ「きゃあっ!?」

不幸中の幸いというべきかヘ級が放った砲弾は、苛烈な砲火の衝撃で軌道がぶれレオパルト1への直撃を免れる。

それでも、周囲を固めていた随伴歩兵の直中に飛び込んだ砲撃による損害は小さくない。海兵隊とドイツ兵それぞれ数人が武器を構えていた着弾箇所からは人影が消え、代わりに一掴みほど人体の残骸のみが残された。

(;'A`)「ツン、無事か!?」

ξ; ⊿゚)ξ「…っ、大丈夫!かすり傷すら負ってないわよ!

Feuer!!」

『イ゛ァ゛ッ?!』

こみ上げてきた何かを飲み下したような間が空いたあと、気丈な返事と共にすぐさま指揮を再開。

4両の戦車隊による一斉射撃。ヘ級の右手艤装が爆散し、艤装の破片が俺達の周りまで散らばってくる。

( <●><●>)「Feuer」

(//‰ ゚)「Fire!!」

『ギィッ───ヴガァアアアアッ!!!?』

傷口を抑えて蹲ったヘ級の胴体に、下から殴り上げるようにしてカールグスタフとパンツァーファウスト、そして最後の一門となったLAWが直撃。

無理やり起き上がらされた上半身を横合いから戦車隊と随伴歩兵隊の一斉砲火が殴りつける。下半身を覆う顎のような艤装が破砕され、肩口から引き裂かれた右腕がくるくると空に舞い上がり路上に落下した。

ξ#゚⊿゚)ξ「Feuer!!」

( ’ t ’ #)「Strzelac!!」

『ガッ、ギッ………』

カルリナとツンの号令は、同時。膨大な量の砲弾に加え、計ったようなタイミングで飛来した迫撃砲隊の支援射撃が加わりヘ級を滅多打ちにする。

爆圧によって脇のビルに押しつけられるような形になったヘ級はそのまま数秒にわたり無抵抗で撃たれ続け、やがて糸が切れた操り人形のように身体から力が抜け動かなくなった。



328: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/09(金) 00:57:02.22 ID:89CTCDsC0

側面と正面の2方向から攻撃に晒される敵艦隊は、一方への反撃を計れば他方からの集中砲火でそれを妨害され今や反撃さえままならない状態となっている。

ただでさえ至近距離のところを更に肉薄し、背後から飛ぶ味方の射線にすら身を晒す形で実行した“釣り”。目の前をうろちょろと鬱陶しく動き回る俺達を潰すことに夢中になり、敵艦隊は側面への警戒を完全に怠った上ツン達正面戦車隊への攻撃すらろくに行えていない。

命懸けの餌役は無事狙い通りの釣果に繋がってくれた。もう一度やれと言われても死んでもゴメンだが。

(=#゚ω゚)ノ《前線衝撃に備えるよぅ!!

弾着、今!!》

遠くの方で榴弾の炸裂音がズンッと響き渡り、直後に何か重いものが地面に斃れる音が続く。俺達以外の前衛部隊も戦況は順調に推移しているらしく、無線からはなおも断続的に敵艦の撃沈や損害報告が流れてきている。

《CPより前線各位、敵前段艦隊の損耗率60%を突破。

また、敵爆撃編隊は未だ増強を継続もポーランド空軍の迎撃により打撃を受け続け前進には至っていない。市外から艦隊の増援が到着した様子も確認できず。

我々が優勢だ、オーバー》

勤めて平静を装いながらも、言葉の節々に驚愕と喜悦が浮かび上がったオペレーターの経過報告が耳に入った。まぁあの絶望的な状況から市街地中央まで戦線を押し返し、おまけに艦娘戦力はなおもほぼ完全な状態で健在と来ている。

確かに、俯瞰してみるとなかなか信じがたい巻き返しぶりだ。ポーランドからの増援といういい意味での計算外が発生したことも含めて、オペレーターの興奮は無理のないことかも知れない。

('A`)「………ツー」

だが、俺はまだオペレーターの歓喜に同調するつもりはない。

(*゚∀゚)「あん?」

('A`)「後退の用意しとけ。ティーマス達にもハンドサインで伝えろ」

作戦が終わっていないからと言うこともあるが、何よりも絶対に忘れるべきではないことが一つ。

“此方にとっての優勢は、敵にとっての苦境”だ。

(*;゚∀゚)「え、なんで?」

('A`)「いいからすぐに準備だ。合図があったら走れ」

《Graf Zeppelinより前線、レーダーに感あり!!》

向こうが、このまま無策で前段艦隊の壊滅を待つはずが無い。

《機影100余、ポーランド空軍と交戦中の主力部隊とは別に低空域で突入!

マントイフェル少尉、全機が貴方のところに向かっている!注意しろ!!》



329: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/09(金) 01:15:24.73 ID:89CTCDsC0

グラーフからその報告が無線越しに伝えられた瞬間、俺はホ級elite等残った深海棲艦達に背を向けて走り出す。ツーが直ぐに続き、ティーマスやサイ大尉、ベーデカーも次々に物陰から立ち上がり踵を返す。

(;'A`)「ツン、援護を!!」

ξ#゚⊿゚)ξ「任せなさい!!

Feuer!! Feuer!! Feuer!!」

( ’ t ’ #)「※※※※!!」

『ギアガッ!?』

『ァアアァア……』

味方陣地へ疾走する俺達とすれ違い、砲弾が風を蒔いて敵艦隊を襲う。攻撃態勢に入ろうとしたロ級が側面と正面から同時に十数発の砲弾を受けて蜂の巣になった。

(=#゚ω゚)ノ《マントイフェル少尉、そっちに砲撃が行ったよう!!衝撃に備えて!!》

間髪を入れずCPからの報告。榴弾が雨空から降り注ぎ、炸裂。爆発音と着弾音、ホ級共が上げる断末魔が次々重なり、筆舌に尽くしがたい不協和音のオーケストラが開催される。

(;'A`)「っととと!?」

『アァ………ァァァァァ……』

十何発目かの弾着で引き起こされた揺れに足を取られ、俺は前のめりにすっ転びつつ味方部隊の展開地点まで何とかたどり着く。

背後では、弱々しい鳴き声と湿った地面に重い何かを横倒しにしたような音が響いた。

《イ級elite、沈黙!》

ξ#゚⊿゚)ξ「そのまま撃ち続けて!ドク、怪我は!?」

('A`)「おかげさまで五体満足だ!

ティーマス、欠員は!?」

( <●><●>)「ご安心を、全員無事なのは既に解っています」

('A`)「よし!間もなく敵機が来るぞ、総員対空警戒に移れ!!」

俺の叫びにまるで合わせたようなタイミングで、真正面……つまり西側から砲声に混じって微かに聞こえてくるレシプロエンジンの音。音源はぐんぐん近づいてきており、会敵が間もなくであることをご親切に俺達に教えてくれる。



330: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/09(金) 01:37:29.02 ID:89CTCDsC0

ξ;゚⊿゚)ξ「ドク、別働隊はどうする?!退避させるなら直ぐに動かすけど……」

('A`)「いや、退避は必要ない。それと正面戦車隊も深海棲艦への攻撃は続行!ただ機銃の仰角は調整しておいてくれ!」

ξ゚⊿゚)ξ「解った!各機銃手、対空戦闘用意!!」

絨毯爆撃によるベルリン全域の焦土化を狙ったことからも解るとおり、深海棲艦側は既に悪天候化の急降下攻撃は最早効果がないことを“学習”した。

そして、大物量による無差別攻撃が“国外からの増援”という彼我どちらも想定していなかった事態で頓挫した以上、空襲方法は自然と先程俺達に対して大きな成果を上げたもう一つの方法────低空域での平面飛行から対地掃射に限られる。

加えて言うなら、敵機は前線の中央に布陣する俺達に戦力の全てを注ぎ込んできた。おそらく戦況の推移や増援戦力の流入の仕方を観察した結果、軽巡棲姫はここが人類側前衛の中枢だと見抜いたのだろう。

《接敵30秒前!!》

急速に近づいてくる艦載機の飛翔音を聞きながら、俺はつくづく思う。

《敵機、来襲!!》


('A`)「C-4、爆破!!」

敵が予想通りの動きをしてくれたのは、本当に幸運だった。



331: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/09(金) 02:08:13.70 ID:89CTCDsC0

道路両脇に立ち並ぶ、幾つかのビルや家、或いはその残骸。

特に三階建て以上のものに重点的に仕掛けられていたありったけのC-4爆弾が、海兵隊の起爆スイッチによって一斉に炸裂する。

同時に、ダイレクトアタックモードで待機していた虎の子のジャベリン数門も火を噴き、次々と建物に着弾した。

『『『!!?!??』』』

道路に面する側の壁が吹き飛び、窓ガラスが粉砕され、屋根の一部が飛び散る。

敵艦隊と俺達の間に横たわる、700Mの空間。艦載機隊の突入コースでもあったその空間は、C-4爆弾の起爆によって飛散した礫の散弾に覆い尽くされた。

『────!!?』

『!!!?』

『───………』

時速六百キロで低空通過する戦闘機など、人間の動体視力で捉えるには限界がある。だが、艦娘達が使う“三式弾”の要領で「敵機の軌道そのもの」を攻撃すれば話は別だ。

同高度で飛散した礫は突入してきた【Helm】達を真横から撃ち抜き、軌道を遮って激突させ、上から降り注いで押し潰す。少し大きめの“瓦礫”が落下した時など、一気に七、八機が上から押し潰される形で粉砕される。

艦載機達に届かない、更に下側の“散弾”も敵機の入射角を妨害する。何より厄介なことにこれらは意図的に狙って放たれる弾丸ではない。軌道も速度も大きさもすべてがランダムであり、密集して突入してきた敵編隊は回避も攻撃もままならず撃ち抜かれ羽虫のように堕とされてく。

('A`#)「Flak Feuer!!」

(#<●>∀<●>)「フゥハハハハハーーーーー!!!!人類の敵は消毒だぁあ!ーーーーー!!!」

(*;゚∀゚)「ヒェッ」

ξ#゚⊿゚)ξ「全車両一斉射!!撃てぇえええ!!!」

散弾の飛散空域から逃れるべく上昇する敵機は、統率も取れていなければ速度も大きく落ちている。200前後のアサルトライフルによる一斉射や戦車隊の機銃掃射、何よりも、【シルカ】の対空弾幕を切り抜けられるはずがない。

( <●><●>)「───【Helm】、最後の一機を撃墜」

ξ#゚⊿゚)ξ「視認できる後続の敵影無し!頭上安全確保!!」

敵航空隊は、全滅した。



332: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/09(金) 02:50:14.48 ID:89CTCDsC0

『ォオォォォォ………───』

「Enemy down!!」

散弾攻撃の間も、側面部隊による攻撃と迫撃砲隊の支援は当然継続している。

数を減らし、航空支援も不発に終わったホ級達に最早抵抗の術が残されていなかった。

航空隊の殲滅劇が終わる頃、正面でもう1体のイ級eliteが火達磨になりながら息絶える。

残るは、ホ級とロ級の2隻のみ。

《敵前段艦隊、戦力稼働率20%切りました!》

(=#゚ω゚)ノ《Graf Zeppelin以外の全ての艦娘部隊に通達!!速やかに戦闘態勢!!

ドク=マントイフェル少尉からの合図があり次第突入せよ!!》

《Jawohl!!

ようやく真打ち登場なのね、本当に待ちくたびれたわよ!!》

《此方Graf Zeppelin、共に前衛で戦えないのは残念だが艦載機の用意は出来ている!指示があればいつでも飛ばせるぞ!!》

《Prinz Eugenより全戦隊、敵艦隊の増援未だ無し!戦況我々に極めて優勢です!!》

《CPより前線各位、Mi-24の第4波が突入開始!!

どうやら我々の奮戦が伝わっているらしい、過去に類を見ない大編隊だ!巻き込まれるなよ!!》

飛び交う通信は、今や活気に満ちあふれ誰もが力強い声でやりとりをしている。まだ中核艦隊が残っていることは皆理解しているだろうが、此方にもBismarck zweiを筆頭に艦娘はいるのだ。

極めて軽微な損害で前段艦隊を殲滅しつつあり、続々到着する援軍のおかげもあって質量共に充実した装甲戦力も合わせれば戦力比でも完全に敵艦隊を逆転している。油断は出来ないが、俺達は「勝機」と十分にいえるものを手にした。

────だと、言うのに。

(;'A`)「…………」

( <●><●>)「………少尉?」

俺の脳裏を過ぎったのは、何故か“奴”の満面の笑みで。

《Mi-24第4波、後五秒で─────!?》

その予感を裏付けるように。

数機の【ハインド】が、弾丸に貫かれて火の玉に変わる。



333: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/09(金) 03:14:33.93 ID:89CTCDsC0

新たに空を照らす、四つの炎の華。交わされていた無線が一瞬完全に沈黙し、何人かの息を呑む音が伝わってきた。

《………!? ゆ、友軍機、次々と被弾撃墜!!》

《墜落してくる、散開しろ!》

まるで呆けたように空中で一斉に動きを止めてホバリング状態になっていたMi-24の編隊は、五機目の犠牲が出たところで我に返り慌てて散開運動を開始。

だが、乱れた隊列に容赦なくその正確無比な砲撃は叩き込まれる。六つ、七つと落下する火の玉が増えていき、街のあちこちに突き刺さる。

幾つかの悲鳴が、爆発音と共にぷっつりと途切れた。

(=;゚ω゚)ノ《CPよりマントイフェル少尉、今のは敵前段艦隊の砲火か!?》

('A`;)「いや、違う!!それより遙かに遠くだ!!ベルリンの西………シュパンダウ区からの砲撃と思われる!!」

(=;゚ω゚)ノ《シュパンダウ区………》

ξ;゚⊿゚)ξ「冗談でしょ?それってつまり───」

《前線各位、此方Prinz Eugen!!西部街区から“艦影”が急速に接近!!

敵艦数は6、全て“ヒト型”です!!》

プリンツの絶叫に近い報告が、俺達の鼻先に改めて“絶望”を突きつける。

《おそらく中核艦隊の構成艦と思われます、後数十秒で接敵───何よこれ、あいつらどこでこんなものを………》

混乱の極みに達したプリンツの無線越しの声は、途中で遮られて聞こえなくなった。

その方角から聞こえるはずのない、複数の“エンジン”が奏でる駆動音と。

艦砲射撃による、轟音で。



334: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/09(金) 03:42:46.13 ID:89CTCDsC0

( A ;)「…………っっっ!!」

まるで、思い切り頭を殴りつけられたような衝撃。

僅か数メートル背後で巻き起こった大爆発が発する熱と音量、そして閃光が五感を麻痺させ一瞬俺の意識を現実から切り離す。

飛びかけた意識を繋ぎ止めたのは、皮肉にも火達磨で落下してきたPT-91【トファルデ】が地面に叩きつけられる二度目の轟音だった。

('A`;)「……クソッ、被害報こk」

俺の隣で、「ぐしゃっ」というトマトが潰れたような生々しい音が鳴る。

首から上がぐちゃぐちゃのグロテスクな肉塊に変わったベーデカー軍曹の胴体をそのまま踏みつぶして、騒々しいガスの排気音をまき散らしながら一台のドデカイバイクが飛び込んできた様が、まるでスローモーションのように俺の視界に映し出された。

どう考えても正規品ではない、例えばアーノルド=シュワルツェネッガーやジェイソン=ステイサムが乗っている方が様になる化け物じみたデカさのソレが、そのまま100Mほど前進した後ドリフトしながら俺達が展開するT字路の丁度真ん中辺りで停車する。

『~~~♪』

バイクに跨がっていた黒髪の女は、鼻歌交じりに右腕を近くのビルに向けた。

( ゚ t ゚ ;)「──────!!!?」

「艤装」が、腕周りに展開される。

「────重巡リ

主砲を向けられたドイツ兵の最後の叫びは、砲撃に飲み込まれ掻き消えた。



341: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/10(土) 23:33:20.01 ID:Ha2dbAED0

素人目にも違法な改造がたっぷり施されていると解る、派手な塗装に規格外の図体を持った世紀末仕様のバイク。

その上からひらりと舞い降りて傍に立ったソイツの────リ級eliteの紅い二つの瞳が俺を真正面から見据えた。

(;'A`)

『────』

視線が交わったのは、刹那。瞬き一度分の間にすらならない。

当然言葉など発せられていないし、発していたとしてそれが意思疎通を可能とする「音」にするには時間が足りない。そもそも、奴らが人語を俺達に解る形で実際に喋ることが出来るのかも甚だ疑問だ。

だが、俺はその時、奴の感情を確かに「聞いた」。

奴の言葉を確かに「感じた」。












サァ、私ト遊ボウ。
.



342: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/10(土) 23:42:17.62 ID:Ha2dbAED0

(;'A`)「全歩兵隊、目標を重巡リ級eliteに変更しろ!!」

ざわりと肌が粟立ち、背中に先程の何十倍も強い寒気が走る。ほとんど反射的に叫びつつ、G36Cを俺自身もリ級eliteに向ける。

(;'A`)「戦車隊への攻撃を絶対に許すな!倒せなくてもいい、とにかく攻撃を集中して足だけでも止めろ!!」

「「「Jawohl!!」」」

当然歩兵の携行火器などどれだけ寄せ集めても効果が無いとは解っているが、撃たずにはいられない。指示を出さずにはいられない。

一応言葉にしたとおり、ツン達装甲車隊を破壊させないという理由もあるにはある。残りたった2隻とはいえ前段艦隊は全滅には至っていない。ここで戦車を潰されてホ級達の雪崩れ込みまで受ければ、俺達の区画は全滅も十分視野に入る。最低限正面の敵艦隊を完全に沈黙させるまでは、別働隊との連携を維持して戦車隊に働いて貰う必要がある。

それでなくても向こうが撃ってくるのは重巡の主砲撃だ。密集した状態で直撃を受ければ、それだけでも損害は甚大になる。

だが、そう言った理屈や理論は全て建前に過ぎない。

割合として最も大きく、かつ単純な理由は、恐怖。

奴の感情を知ることで唐突にわき出た恐怖と嫌悪が、俺を攻撃に突き動かした。

(;'A`)「────Feuer!!」

全身に靄のように纏わり付く恐怖を振り払おうとするように、俺は声を限りに叫ぶ。

幾十の砲撃が、幾百の銃撃が、全方位から“化け物”に殺到する。



343: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/10(土) 23:52:14.01 ID:Ha2dbAED0

『……………』

仮に非ヒト型であればflagshipですら一息に沈められそうな、まさに“弾幕はパワー”を地で行く猛射撃。

息を継ぐ間すらなく注ぎ込まれる弾丸の群れが自身を守る障壁の上で弾けて火花を散らす様を、リ級eliteは腰に手を当てて立ち尽くしながら見つめている。

………ツンがル級と遭遇した際には、ミルナ中尉等歩兵隊の攻撃もダメージを与えた様子は無いもののル級の動きを封じる役には立っていたという。eliteとはいえあくまで重巡、耐久力や装甲値、馬力などは戦艦に劣るはずだ。

それらを考慮すれば、「重巡リ級eliteは俺達の猛攻に動きを縫い止められている」というのが本来導き出される自然な結論。

だが、銃火と爆光の合間から見える奴の視線がそれを真っ向から否定した。

『…………?』

(;'A`)(………あの時と同じだ、おちょくってやがる!)

タホ川で俺達の攻撃をわざわざスレスレで回避しながら見せた、戯ける子供のような表情。小首を傾げ、もう片方の手をこめかみに当て、此方の動きを観察しているような視線の動き。

弾幕の中で相変わらず立ち続ける姿は街角でくつろぐティーンエイジャーのようで、少なくともアレを「凄まじい攻撃の圧力のせいで動けない」状態に見えたとしたら俺は精神異常者だ。

薄ら笑いと共に細められた眼が、口より遙かに雄弁に奴の「言葉」を物語る。

マサカ、コレデ終ワリジャナイダロウネ?

モウ少シ、オモシロイモノ見セテヨ。

('A`)「………なら、お望み通りにあっと驚かしてやるよ」



344: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/11(日) 00:30:59.49 ID:JslRmT7e0

小銃の銃口を心持ち奴の眼の辺りに持っていきながら、一瞬近くにいた海兵隊の一人にハンドサインを送る。彼は即座に頷くと、さりげなく別の射撃を行っている兵士の影に隠れて腰に手をやり何かを取り外した。

ツンがル級と交戦した際に、“それ”は非常に大きな効果を発揮したという。考えてみれば当たり前のことだが、ヒト型の障壁は閃光や音といったものまで完全にシャットアウトしてくれるわけではないらしい。

別に、必ずしも攻撃だけが方法ではない。強烈な光と予期せぬ大音響は、時として銃口を突きつけるよりもよほど確実に敵の動きを止めてくれる。

「Flash Ban!!」

叫び声と共に投げられる閃光弾。正確なコントロールで飛ばされたそれは、ノーバウンドでリ級の足下まで到達する。

『────♪』

(;゚A゚)「………はっ!?」

かつん、かつんと、二回乾いた音がした。

地面を閃光弾が撥ねた音ではない。それは、リ級eliteがまるでブンデスリーガのような鮮やかな足捌きで閃光弾をトスし、そのまま背後に蹴り上げた音。

( ゜ t ゜ ;)「────!!?」

低いライナー性の弾道で更に飛距離を伸ばした閃光弾は、リ級eliteを背後から攻撃していた部隊────カルリナ達ポーランド兵とドイツ軍の混成部隊が敷く隊列の真っ只中で炸裂した。

(   t   ;)「……………ッッッ!!!」

「※※※※!?」

「※※※……※※……」

「な、何が………」

「クソッ、おいしっかりしろ!敵はまだ健在だぞ!!」

フラッシュと、殺傷力はほとんど無い爆発音が連なり鳴り響く。200メートル以上離れた此方にはほとんど影響がないが、問題は信じがたい奇襲でこれを至近距離から諸に受けたカルリナ達だ。

凡そ70名ほどの部隊は、前衛の約半数は完全に機能が停止していた。耳を抑えながら蹲るなどして咄嗟に回避したり閃光弾の効果が十分に行き届かない位置取りだった残りの半数も、味方の介抱や戦列の組み直しに追われて完全に攻撃の手が止まった。

途端、リ級が動く。



346: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/11(日) 01:17:50.92 ID:JslRmT7e0

『─────!!!』

(;゚A゚)「伏せろ!!」

(;//‰ ゚)「Shit!!」

ξ;>⊿<)ξそ「きゃああ!?」

「※※※ッ!!?」

両手の艤装が同時に唸り、俺達と奴の右側面から攻撃をかけていた部隊に機銃掃射が襲いかかる。直ぐ後ろでホ級達への攻撃を継続していた戦車三両の装甲にも弾丸が降り注ぎ、レオパルト2A4の車上でポーランド兵が一人後頭部を撃ち抜かれてハッチの中に崩れ落ちた。

『─────!』

(;<●><●>)「リ級、後衛部隊に突貫!!」

珍しく動揺が露わになったティーマスの声を尻目に、少し芝居がかった動きでバイクを飛び越えながら疾走。砲撃する素振りは一切見せず、カルリナ達めがけて疾走していく。

「………なっ!?り、リ級接きn」

「総員白兵用i」

最初に気づいたドイツ兵二人が、進路を塞ごうと飛び出す。

振りかぶられる拳。生々しい破砕音と共に一人の頭がはじけ飛び、もう一人は動きの延長で繰り出された回し蹴りに四肢を飛散させながら胴体だけがビルの壁に叩きつけられた。

『───!!』

「く、来るな!!来るなぁ!!!?」

「※※※※※※※※!!!!」

何人かの後衛兵が半狂乱で小銃弾をばらまくが、当然そんなもの微塵の効果もない。

「ひっ」

『ッ!!』

上から抑え付けるようにして右手を振り下ろし、最前列にいた小太りの兵士が短い悲鳴を残して上からぐしゃりと潰される。

元は人間だった赤い肉塊を踏み越えて、リ級eliteは文字通り後衛部隊に“殴り込ん”だ。

(;*゚∀゚)「おいドク撃とうぜ!このままだと後衛が全滅だ、効かなくても気ぐらい引かねえと!!」

(;'A`)「バカか、あの乱戦状態にぶっ放したらいくら何でも味方撃ちは避けられねえぞ!!」

とはいえ、待っていたところで状況はどのみち悪化の一途だ。あの弾幕が動きの抑制効果すら得られていなかった以上どのみち限りなく絶望的であるにしろ、座して全滅を待ってやれるほど此方は潔い人間性ではない。

それに、同僚だけではなく核をぶっ放されるかもしれない国に外から増援に来てくれた奴らも“遊ばれて”いるのを見殺しにできるほど、【有能な軍人】でもない。

(#'A`)「ツン!戦車の稼働状況とホ級共の状態を!」

ξ;゚⊿゚)ξ「別働隊は全車両健在、私達も損失はさっき破壊されたトファルデのみ!機銃手が一人やられたけど継戦には問題ないわ!」

(#'A`)「引き続き前段艦隊への攻撃を続行、それと後続の“バイク”に気をつけろ!!

────総員、目標重巡リ級elite!

Los Los Los!!」



349: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/11(日) 23:32:45.29 ID:JslRmT7e0

幾らかの随伴歩兵を戦車隊の周りに残して、響く砲声を背に後衛に向かって走る。

( ’ t ’ ;)「※※※、※※!!」

『………』

リ級は、更に前へ。何とかフラッシュバンの衝撃から立ち直ったカルリナ達が至近距離から弾幕を浴びせるが、それをものともせずに踏み込むと、低い姿勢から拳を固めて振り上げた。

「プヘッ」

ブチュリ。筋繊維と血管がまとめて引きちぎられる音がここまで聞こえてきて、拳を受けたポーランド兵の首が千切れて天に舞い上がる。

「お゛ぁっ!?」

やけくそに近い形で別方向から飛びかかった兵士の腹には、肘打ちが(まさしく)突き刺さった。血と内蔵が破れた肉の隙間からぼたぼたとこぼれ落ち、奴の腕を伝って足下に生臭い水溜まりができる。

(#'A`)「狙え、撃て!!」

( <●><●>)「Allemann sperrfeuer!!」

リ級が乗ってきたバイクを踏み越え蹴倒しつつ、暴れくるうリ級に背後から肉薄。残り50メートル程まで詰めたところで、俺とティーマスを含めた20人ばかりがリ級への射撃を再開した。

『─────』

「Oh !?」

リ級の反応は早かった。首無しポーランド兵の肩の辺りを鷲掴みにし、振り向き様に俺達の方へ投げつける。

全盛期ボリス=ベッカーの全力サーブを彷彿とさせる勢いでそれは飛来した。俺達に後続してきた海兵隊の一人に屍体の砲弾が直撃し、彼は低い呻き声と共に吹き飛ばされた。

『♪』

(*;゚∀゚)「来たぞおい!!」

(;'A`)「畜生が!!」

(;<●><●>)「っ」

そのまま、タックルをかますレスリング選手のような姿勢で突進してくるリ級elite。当然銃弾で止められる筈はなかったので、隣のティーマスを咄嗟に蹴り飛ばしつつ自身も真横に転がる。

俺とティーマスが直前まで立っていた場所に叩き込まれる拳。殴られた箇所を中心に、およそ1メートル四方の地面がひび割れ陥没した。



351: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/11(日) 23:51:15.43 ID:JslRmT7e0

(;'A`)「【Astro Boy】かっての!!」

直ぐに地面から飛び起きてもう一度リ級に射撃を加えつつ頭を過ぎったのは、ガキの頃にちらりと目にした日本の古いアニメーション。そのアニメの主人公である少年型の高性能ロボットは、テレビ画面の中で10万馬力のパワーを振るい悪役達を次々とぺしゃんこにしていたのを覚えている。

ただし、世界的に有名なコミック・アーティストが生み出したそのロボットは正義の味方であり、決して人間に拳を振りかぶることはない。

『────♪♪♪』

…………それに俺の記憶が正しければ、悪役をぶちのめすときにしてもこれほど獰猛で凶悪な笑みを浮かべて武力を行使してはいなかったはずだ。

『────!!!』

(;'A`)「っ………ぐぁっ!?」

ほとんど零距離射撃だったはずだがやはり微塵も影響はない。拳を地面から引き抜くや否や飛びかかってきたリ級は、今度はぐるりと体を捻り回し蹴りをかましてくる。

身をかがめて躱すが、風圧だけでも首がもぎ取られるのでは無いかというほど凄まじい衝撃が走る。堪えきれず、そのままごろごろと数メートルにわたって水浸しの路上を転がる。

「※※※※!!」

『────』

俺が離れた隙を突いて、ポーランド軍のハンヴィーが機銃掃射をかける。が、リ級は其方を見向きすらせずに艤装だけ構え、砲撃。火柱が上がり、銃声が止まった。

「少尉、離脱を……がっ!?」

「Ah………」

今度は海兵隊とドイツ兵が数人ずつ、両側から挟み込むように展開して牽制射撃。リ級は両腕の機銃を同時に放って彼らをなぎ倒しながら、なおも俺を追撃する。

( A ;)「うぁっ────!?」

『~~♪』

ようやく起き上がりかけていた俺に、奴の拳が迫る。咄嗟に横に転がって直撃こそ免れたが、先程より遙かに近くで感じた拳圧は爆風のそれと大差が無い。

゚∴・( A ;)「ゴアハッ……!」

衝撃で再び身体が浮遊し、叩きつけられた場所はさっき俺が蹴倒した奴のバイク。呼吸が止まり、背中と脇腹の辺りでビキリといやな音がした。

ξ;゚⊿゚)ξ「ドク!!!」

(;<●><●>)「少尉!!」

ティーマスとツンの叫び声に続いて、四方でアサルトライフルや機関銃の乾いた発射音が重なる。幾十の銃火が障壁上で爆ぜるが、それらを意に介す素振りすら見せずリ級は満面の笑みを浮かべながらゆっくりと俺に向かって歩いてくる。



352: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/11(日) 23:55:22.94 ID:JslRmT7e0


『~~~~♪』

(; A )「………」

バイクの上で仰向けになったまま、銃声に混じって朦朧となっている意識に微かに聞こえるリズム。

それは、確かにリ級の歩みに従って近づいてきている。

(;'A )「……鼻歌なんぞ歌いやがって」

明確に奴の「声」だと決まったわけではないし、仮にリ級が音の主だとしてもそれがどこから出されたものかも解らない。更にいえば、例えばその音が他の深海棲艦への通信波のようなものである可能性も捨てきれない。

だが、なんとなく俺は確信していた。その独特のリズムで奏でられるなんとも形容しがたい不可思議な音は、間違いなくリ級eliteの発する“鼻歌”だ。

(;'A )「……っ」

たいそう上機嫌で近づいてくるリ級eliteから逃れようと、僅かに自由が利く手で下のバイクを押して身体を動かそうとする。酷く緩慢な動作で数ミリずつずれていく俺の様子を見て、奴の笑みが一段深くなった気がした。

(#<●><●>)「───────ぁああああああああああああっ!!!!!」

(;'A`)そ「はっ!?」

『!?』

悠然と歩み寄るリ級に、雄叫びと共に“人影”が衝突した。姿勢を低くして突っ込んできたティーマスが、弾丸のような勢いでリ級eliteの腰辺りに組み付いた。

華奢とはいえ軍人として鍛えた成人一人分の全力の体当たり。流石に転倒したりはなかったものの、リ級eliteの身体が一瞬衝撃で揺れて歩行が止まる。

(#<●><●>)「ツーさん!!」

(*#゚∀゚)「あらほらさっさー!!」

(;'A`)「おおお!?」

ぐいっと肩口が引っ張られ、“自称美人女性兵”が俺の身体をバイクから引きずり下ろしそのまま物陰へ一直線に引っ張っていく。

ちょ待て待て待て待て背中摩ってるいでででででで!!!!



356: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/12(月) 00:11:39.08 ID:UzMXyL4n0

『────!!!』

(;< >< >)「カハッ……!」

(;'A`)「ティーマス!!」

リ級は忌々しげに纏わり付いてくるティーマスを睨んだ後、その手をふりほどいた後軍服を掴んで放り投げる。一瞬脳裏を過ぎった強烈な違和感は、正体を追求する前にその光景によって消し飛んだ。

派手な音を立ててティーマスの身体が瓦礫に叩きつけられた。リ級の姿勢が十分に立て直されていなかったこともあり勢いは今までに比べて弱いが、それでも負った傷が小さいとは思えない。

(;'A`)「ツー放せ!ティーマスを……!」

(*#゚∀゚)「その身体で相棒を心配できる心意気は買うけどじっとしてなお馬鹿さん!あんたその身体で何する気だよ!!」

『───……!!?』

俺を怒鳴りつけつつ、なおも一人で引きずっていくツー。追おうとしたリ級の足下に、フラッシュバンが一発投げ込まれる。

『ッッッッ!!!!』

(#//‰ ゚)「Shoot, Shoot!!」

( ’ t ’ #)「※※※※!!」

今度はしっかりと至近距離で炸裂した閃光と爆音。仰け反るリ級に向けてサイ大尉指揮下の海兵隊が弾幕を張り、完全に態勢を立て直したカルリナ達も射撃に加わった。

リ級の足が止まる間に、俺はツーによって再び戦車隊の近くまで来て崩れ落ちた建物の影に引き込まれる。

(*;゚∀゚)「ぷぇー…あっぶね!」

ξ;゚⊿゚)ξ「ドク、ドク!!ねぇ、ドクは無事なの!?」

(*゚∀゚)「安心しねぇフロイライン!我らが少尉殿は生きてるよ!」

ξ; ⊿ )ξ「………っ!別に心配してないけど、心配かけないでよバカ!!」

('A`;)「どっちだよ……」

ツッコミつつも、視界の端でティーマスも海兵隊に回収されていたことに僅かに安堵の息が漏れた。



358: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/12(月) 00:32:11.73 ID:UzMXyL4n0

『ォオオオオオオ………』

俺が救出されてからほとんど間を置かず、戦車隊の向こう側で上がった呻き声。地面に重い何かが倒れ込み、レオパルト2A4の戦車兵が拙い発音の英語で「エネミーだうん!!」と叫んだ。

('A`)「ツン!!前段艦隊の状況は!?」

ξ;゚⊿゚)ξ「今し方ホ級eliteが完全に沈黙したわ!ロ級は既に倒してあるから、これで私達の正面は完全に殲滅よ!

……ってかあんたね」
??_,
(*゚∀゚)「今し方大ダメージ食らって運び込まれたのにもう戦況の確認とは恐れ入ったね。佐官になったらあたしの昇進もついでに頼むよ」

('A`;)「冗談抜かせ、これ以上階級上がったら面倒くさくて仕方ねえだろうが」

……ツンやツー以外に、随伴していたポーランド軍や海兵隊、連邦共和国の同胞諸君からまでじとっとした視線が突き刺さった。その目つきやめてイタイイタイ、ついでにいうと肋も痛い。

('A`;)「あー……ツー、リ級の様子は?」

(;*゚∀゚)「とりあえずサイ大尉達とカルリナ准尉達が止めてくれてるけど、あんなんだから直ぐに立ち直るだろうし………うぉおおおっ!!?」

『…………ッ!!!』

数十人分のアサルトライフルを束にしてもかなわない、凄まじい銃撃音が区画に鳴り響く。更に間髪を入れず、上空から飛来した対戦車ミサイルが数発連続してリ級の障壁に着弾し爆炎をまき散らす。

「Air sport incoming!!」

先程敵艦隊に追い散らされた編隊の生き残りなのか、或いは新手なのかは判別が着かない。とにかく上空に三度現れたMi-24ヘリが、リ級に向けて猛然と攻撃を開始した。



359: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/12(月) 00:56:18.04 ID:UzMXyL4n0

「友軍機対地掃射、リ級eliteに全弾集中!!」

「リ級elite動きません!攻撃を受け続けています!!」

「やれやれやっちまえ!そのままぶっ殺せ!!」

戦車隊に随伴していた面々はやんやの歓声を上げ、その声援に応えるようにMi-24による空襲は一段と激しさを増した。ロケット弾とミサイルの雨にチェーンガンの猛射も加わり、リ級の障壁上から爆光が途切れる様子はない。

先程は奇襲砲火によって一方的に撃墜されたが、本来戦闘ヘリの火力は“ヒト型”にとってもある程度高い脅威度を誇る。少なくともこうも一方的に受け続けていいものではないはずで、俺達陸の人間をわざわざ格闘戦でいたぶるのとはワケが違う。

そのため、艤装による反撃の素振りも見せず攻撃を受け身動きをしないリ級の姿は、確かに周りから見れば“攻撃すらできない”ように見えるのだろう。

────だが俺は、遠目にもかかわらず奴の「眼」に気づいてしまった。

苦痛というよりは不機嫌…………例えるなら最高に楽しい遊びを邪魔された子供のような、幼くも獰猛で残忍な光を宿した「眼」が。

(;'A`)「………逃げろ!!逃げろ!!」

『───────!!!』

聞こえないと解っていても、声を限りに叫ぶ。同時にリ級は、おもむろに足下から何かを持ち上げそれをMi-24めがけて無造作に投げ上げた。

グシャリ─────その音は、Mi-24のコックピットが叩きつけられた大型バイクによって潰されたことによって発せられたもの。

(*;゚∀゚)「…冗談じゃねえぞ!!!」

('A`;)「逃げろ!!退避、退避!!」

ξ;゚⊿゚)ξ「戦車隊全速前進!!」

コントロールを失ったMi-24【ハインド】が、激しく回転しながら此方に向かって墜落してきた。ほとんど反射的に痛む身体を堪えて立ち上がり、物陰から飛び出して疾走する。

「※※※※!!?」

先程ホ級の撃破を報告した兵士の乗るレオパルト2A4のスタートが、計器のトラブルか動き出しが遅れる。

「~~~~~~っ」

無情にもその車両に向かって、Mi-24は堕ちていき────




  _
(#゚∀゚)「Leberecht!!」

「Jawohl!! Feuer!!」

12.7cm連装砲の砲撃によって、衝突の直前に空中で爆散した。



364: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/15(木) 00:01:24.29 ID:qoUzhAK/0

「続けて撃ちます!! Feuer!!」

『………!』

更に二回、右手に構えられたレーベレヒトの連装砲が火を噴いた。今度の砲弾は立て続けにリ級に着弾し、障壁がチカチカと明滅する。

駆逐艦とはいえ艦娘の攻撃。流石に勝手が違うようで、僅かだが明確な“焦り”の色を浮かべて奴はレーベレヒト達から距離を取った。

『────!!』

「わっ!?」

リ級の艤装が起動し、反撃の砲火。横っ飛びで躱したレーベレヒトの背後で、既に半壊状態だったビルが直撃弾によって消滅する。

戦車や護衛艦でもほぼ一撃で粉砕される通常兵器より遙かにマシとはいえ、艦種がもたらす火力差はあまりにも大きい。まともに食らえば一発で中大破の大打撃を被る可能性も十分だ。

('A`#)「ツン、戦車隊全車両の火力をリ級に集中!効かなくてもいいから機銃もぶち込め、とにかく奴への攻撃を絶やすな!」

ξ#゚⊿゚)ξ「解った────Feuer!!」

『……ッ』

反転を終えたツン達を含め、7両の戦車隊による砲撃。レーベレヒトの存在にリ級が気を取られていたことも有り、この内五発が甲高い金属音を立ててリ級に命中した。

『────』

《うわっ!?》

反撃の砲火は狙いを急に変えたせいか照準が定まっておらず、頭上を飛び越えて数キロ先で炸裂する。乗り捨てられた自動車でも巻き込まれたのか、何か大きな鉄の塊が地面に叩きつけられたような音がここまで届く。

「Feuer!!」

『ッッッ!!?』

すかさず、態勢を立て直したレーベレヒトが全ての艤装を稼働させ一斉射をリ級に浴びせかける。

真正面から斉射を受けたリ級の身体が衝撃で僅かに浮き上がり、艤装と障壁からバチバチと火花が飛んだ。



366: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/15(木) 00:10:30.10 ID:qoUzhAK/0

  _
(#゚∀゚)「クソッタレ、【ハインド】が堕とされたのが痛ぇ!

レーベは戦車隊と連携してリ級に攻撃続行、俺も援護に回る!ビロード、負傷者の救援と残存兵力の回収を急げ!!」

「解った!」

(;><)「了解なんです!!」
  _
(#゚∀゚)「Allemann vorwarts!」

「「「Jawohl!!」」」

ポーランド軍と合流する形で進み出てきたジョルジュの部隊が、半円形の隊列でリ級を包囲して弾幕射撃に移行する。携行砲や手榴弾も総動員しての猛攻だが、今度はここにレーベレヒトの“軍艦の火力”と戦車砲の砲撃が加わっている。

『グゥッ…………!』

膨大な至近弾が巻き上げる泥に視界を遮られ、全方位から襲い来る火線の爆圧に動きを封じられるリ級。轟音渦巻く中で微かに漏らされた奴の苦悶の声を、俺は確かに耳にした。

(*゚∀゚)「おっほー、艦娘の到着かよ!」

戦車隊の砲撃音にさえ負けない歓声を張り上げながら、横でツーが嬉しそうに手を叩く。

(*゚∀゚)「温存してたZ1達を出してきたってことは、いよいよこっちの反攻ってことか!?こっからがーーーっと向こうの大将首を取りに行くんだろ!?な、そうだろドク!?」

('A`;)「お前のいうとおりだったらさぞや素敵なんだがな……!」

さっきの今でその考えにたどり着けるお気楽思考は羨ましい限りだが、プリンツの報告によれば突入してきた敵艦隊は全てヒト型───つまり基本的には重巡洋艦以上の艦種になる。

軽巡と駆逐しか居なかった前段艦隊との攻防でもあれだけ青息吐息だったのに、通常兵器のみで食い止めきれるわけがない。このリ級eliteのように敵艦隊が全て“遊び”に走ったとしても、もって10分あるかないかといったところだろう。

即ち前線へレーベレヒトが突入したのは、温存する“必要”がなくなったからではなく“余裕”がなくなったからと考える方が遙かに自然だ。

それでも僅かにツーの予想通りにならないかと叶わぬ思いを抱きつつ、イヨウ中佐に無線を繋げる。

(;'A`)「前線よりCP、Z1 レーベレヒト=マース並びに増援部隊と合流を完了した!以後の指示を請う!」

(=;゚ω゚)ノ《CPより前線、無事で何よりだよぅ!早速、合流した部隊と交戦中のヒト型を牽制しつつ速やかに後退を開始してくれよぅ!》

果たして帰ってきた返事は、予想を最悪の形で裏付けた。

(=;゚ω゚)ノ《君達以外の前線部隊は壊滅、敵中核艦隊はシュプレー川を渡河したよう!

トレプトゥ=ケーペニックとパンコウで遅滞戦を展開してるけど、戦況は圧倒的に不利だよぅ!》



367: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/15(木) 00:23:21.68 ID:qoUzhAK/0

(;'A`)「……前線よりCP、侵入した敵艦隊の概要を教えてくれ」

(=;゚ω゚)ノ《右翼、パンコウ区防衛線正面にリ級通常型2、ル級flagship1、タ級flagship1!

また左翼トレプトゥ=ケーペニック防衛線正面に、敵艦影1!》

(;'A`)「1……?」

中央の俺達と交戦するこのリ級もそうだが、あまりに戦力が偏りすぎている。無論ヒト型である以上一隻でも通常兵器相手には十分だろうが、それなりの損耗は強いられるはずだ。

(=;゚ω゚)ノ《………左翼の一隻は、過去に世界中のどの戦線でも確認されていない新型艦だよぅ》

俺の疑問を敏感に感じ取って、中佐は直ぐに補足を入れる。

(=;゚ω゚)ノ《詳細は一切不明だよぅ。身長は此方のZ1やZ3と同じ程度という点と、艤装が巨大な尾のような形をしているという点以外交戦している部隊の混乱が酷くて入ってこない。

コンツィ中尉が戦線の指揮を執っているけれど、左翼の損害拡大は右翼の何倍も早い。ポーランドから派遣されてくる陸軍部隊もピストン投入しているけれど、まるで止められる気配がないよぅ》

(ノA`)「………」

あまりにも絶望的な情報ばかりを突きつけられて、急速に痛み始めた頭を抑える。

例え新型艦であったとしても、ミルナ中尉の経験と指揮能力なら本来十分に対応ができるはずだ。少なくとも、損害を最小限に抑えつつの漸減戦闘程度はわけなくこなせる力があの人にはある。

それが適わぬほどの戦況ということは、“新型”とやらが尋常ではない、まさに規格外の戦闘能力を持っていることの証左。

('A`)「………………」

(*;゚∀゚)「………ドク?どうしたきめー顔して」

('A`)「元からだよ。というかせめて恐い顔にしてくんない?」

同時に、もう一つ気づきざるを得ない事実がある。敵艦隊にそこまで押し込まれているのなら、レーベレヒトだけではなく最早ビスマルクやグラーフも温存する余裕はないはずだ。にもかかわらず、両翼に展開するのはポーランドとドイツの陸軍部隊のみ。

つまりこれは、“艦娘が受ける損害”を最小限に抑えるためのいわば時間稼ぎ。

対深海棲艦兵器として最も有用な存在を確実に逃がすための、“必要な出血”。

('A`)「………ビスマルクとグラーフは、よく納得しましたね」

(=゚ω゚)ノ《……………君ほどの力を持つ尉官と戦えたことを、僕は誇りに思うよぅ》

ベルリン放棄の、下準備。



368: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/15(木) 01:04:13.55 ID:qoUzhAK/0

戦車砲と艦砲射撃の音、銃声が壮絶に混ざりあい辺りを満たす。だが、俺の耳にはそれらの騒音より遙かに重く、大きく、イヨウ中佐の淡々とした語りが響く。

(=゚ω゚)ノ《言いたくないけれど、最早大勢は決したよぅ。ベルリン放棄と聞いてGraf ZeppelinはともかくBismarckは烈火の如く怒っていたけれど、彼女にも戦況の詳細を話してなんとか納得して貰ったよぅ……まさか戦艦がバイクで乗り込んでくるなんて、ヴァルハラへの土産話には丁度いいよぅ》

中佐はそう言って、自嘲気味に乾いた笑い声を上げた。

(=゚ω゚)ノ《艦娘の回収手配は完了している。ポーランド陸軍にオーデル川での防衛線へ一時的に参加させることを条件として艦娘の移送を手伝わせるようにした。君達の後退が完了次第、遅滞部隊も順次退却を開始する。

とはいえさっきも言ったとおり遅滞部隊は到底長くは持たない、そっちもリ級eliteの存在がある以上難しいとは思うけれど、何とか退却して欲しいよぅ》

('A`)「………その口ぶりですと、どうも中佐は脱出するつもりがないようですが」

(=゚ω゚)ノ《無謀な作戦でたくさんの兵士を死なせた責任は僕自身が取らなきゃ行けないよぅ。

それにこう見えて僕は日本通でね。カツナガ=モウリというサムライが大好きなんだよぅ》

学のない俺にはまるで馴染みのない名前だが、口ぶりから“どんなことをした人間か”は概ね想像がつく。

黙り込んだ俺に、中佐は更に言葉を重ねた。

(=゚ω゚)ノ《これは命令だよぅ少尉。

────そして、これが現段階で可能な次善の手だ》

('A`)「っ」

そうだ。そんなことは言われなくても解っている。

中核艦隊に奥深くまで食い破られたことによって、“軽巡棲姫のみに艦娘の全火力を集中する”という【最善の手】は最早打てない。

軽巡棲姫の撃沈が限りなく不可能に近い状態になった今、俺達がベルリンでこれ以上交戦することはほとんど無意味。次に為すべきことは、Bismarck zweiを初めとする貴重な戦力を可能な限り温存して逃げ延びること。

そして、退却の態勢が整うまでの遅滞部隊の犠牲も、艦娘という“貴重な戦力”を確実に逃がすために囮となるイヨウ中佐の犠牲も、この戦争に少しでも希望を残すための必要経費だと。

そんなことは、俺にだって解っている。



369: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/15(木) 01:14:41.54 ID:qoUzhAK/0

('A`)「────ツン」

ξ;゚⊿゚)ξ「何よ!リ級の奴ならすこしずつダメージは蓄積してるけど」

('A`)「退却の指揮は任せた」

ξ;゚⊿゚)ξ「あーもう!解っt………」

でも、解っていることだからこそ。

ξ゚⊿゚)ξ「………は?」

(*;゚∀゚)「………あー、ドク?お前何するつもりなんだ?」

('A`)「あぁ、別に何って程のことじゃない」








('A`)「ちょっとした悪あがきだ」

それが心底、気にくわないんだよ。



372: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/19(月) 22:32:35.86 ID:3i1wtBQb0

脇腹の鈍い痛みを堪え、レオパルト1の影から飛び出す。包囲下でリ級への攻撃を続ける兵士達の後ろを駈け抜けて、一直線に向かった先はロ級の砲撃で吹き飛ばされた輸送トラックの傍。

(;//‰ ゚)「ドク!?」

(=;゚ω゚)ノ《少尉!一刻も早く退却を開始しろ、聞いているのかよぅ!?》

ξ;゚⊿゚)ξ「あんたいったい何する気なの!?ドク、ちょっ……止まりなさいよぉ!!」

無線や後ろから聞こえる声を完全に無視して、俺はトラックの脇に倒れている目的の物────カルリナ達が乗ってきていた、軍用バイクを引き起こす。

(;'A`)「………」

他の三台は砲撃に巻き込まれたのか滅茶苦茶に壊れており、まともに原形を保っているのはこの一台だけだ。そしてこの一台だって、外観に傷がないだけで内部回路や機関も無事とは限らない。

祈るような気持ちでエンジンを捻る。

(;'A`)

(;'∀`)

ドルンッと音が鳴り、排気口が煙を吹き出す。

揺れる車体に薄らと刻まれた、「KAWASAKI」の文字。俺は苦笑いを浮かべて8文字のアルファベットを眺めた。

(;'∀`)「っはは……流石だなものつくり大国は……!」

これで、逃げられなくなった。

逃げる必要が、無くなった。



373: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/19(月) 22:48:05.21 ID:3i1wtBQb0

('A`)「……中佐」

(=#゚ω゚)ノ《マントイフェル少尉、繰り返すが命令だ!!速やかに部隊を纏めて帰還を───》

('A`)「30分だけ時間を下さい。

30分過ぎて敵艦隊に変化がなければ、“中佐の指揮で”オーデル川まで退却を」

(=;゚ω゚)ノ《………っ!》

バイクに跨がり、エンジンの回転数を上げながら空を見上げる。もう数え切れないほどの反復攻撃を続けているF-16の編隊が、バルカンを放ちながら通り過ぎた。

('A`)「………マンドクセ」

思わず、本音が漏れる。

俺は別に英雄願望も出世欲もないし、愛国心だって皆無じゃないが潤沢に持ち合わせているとは言い難い。

本当なら、今すぐ踵を返して逃げ出したいぐらいだ。幸いにしてイヨウ中佐から撤退の“命令”は既に下されている、仮にベルリンを捨てたとしても、軍法会議にかけられるようなことにはならないはずだ。………そもそも、軍法会議を開く上層部が生き残っているのかどうかも疑わしいしな。

俺達は十分に戦った。逃げる権利はあるし、艦娘や機甲戦力が損失する前に退却することは戦略的にも間違っていない。何よりも、中佐の言うとおりにした方が楽だ。死ぬ確率も、当然俺が今からやろうとしていることよりは遙かに低いだろう。

────だけど。

('A`#)「ジョルジュ、ティーマスとツン達を頼んだ!!」
  _
(#゚∀゚)「飲み代一ヶ月おごりな!!」

('A`#)「死ねクソ眉毛!!」

こんな結末は、きっと誰も望んじゃいない。

リ級に立ち向かったフランス広場の警備隊も。

規格外の化け物と戦わされたベルリン市警も。

退役済の戦車で逃げずに深海棲艦に立ち向かった戦車隊の奴らも。

遠く離れたドイツの土地で死ぬことになった海兵隊も。

核が降り注ぐかも知れない国に飛び込んできたポーランド軍も。

今まさに侍のまねごとをしようとしているドイツ陸軍の中佐殿も。

もう一度ベルリンが灰になる様を見せつけられている艦娘達も。

死んでいった奴も、生きている奴も、こんな結末のために戦っていたわけじゃない。

ξ; ⊿ )ξ「────ドk」

('A`)「ドイツ陸軍少尉、ドク=マントイフェルよりベルリン市内の全戦力並びにCPに通達!!」

これは俺の自己犠牲精神でも、愛国心でも、偽善ですらない。ただの自己中心的な責任放棄だ。

国を守るために死んでいった戦友だの、政治の壁を乗り越えて救いに来てくれた友軍だの、首筋が痒くなるような肩書きの奴らの「無念」を背負って生きる方が。

('A`#)「これより俺は、敵旗艦【軽巡棲姫】の撃沈に向かう!!総員、何としても現戦線を維持しイヨウ=ゲリッケ中佐の指揮下で反攻に備えよ!!」

“これ”よりも遙かに、マンドクセェ。

(#'A`)「───Los!!」

叫び、地を蹴り、絞っていたエンジンを解放する。

Kawasaki KLX250が、一声吠えた後西へと疾走を開始した。



375: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/19(月) 23:05:23.73 ID:3i1wtBQb0





─────ヤッパリ、君ハ面白イ人間ダ。



376: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/19(月) 23:14:49.96 ID:3i1wtBQb0

【彼女】は、砲火の中で一人笑う。紅の瞳を細め、真っ白な肌に僅かに血の気を差し、口元を自然に綻ばせ、笑う。

凄まじい砲弾と銃撃の中でも聞こえてきた、“あの人間”の叫び声。後に続いた、乗り物のエンジン音。

それらを耳にした瞬間、彼が“何をしようとしているのか”を正確に理解した【彼女】の身体は、心は、歓喜に震えた。

────ソウダ。コレダカラ私ハ君ヲ見テイタインダ。

頭がキレて、圧倒的に不利な中でも考えることをやめず。

脆弱な存在のくせに戦い続け、いつの間にか戦況を互角以上に引き上げて。

何度絶望を突きつけても、直ぐに新たな策で立ち向かってくる。

あの痩せぎすな“人間”との戦いは、スリリングで、変化に満ち、この上なく楽しい。

艦娘なんかとの戦いよりも、ずっとずっと。

  _
(#゚∀゚)「あのクソバカもやし野郎の背中を守れ!!何としてもコイツをここで沈めろ!!」

ξ# ⊿ )ξ「Feuer, Feuer, Feuer!!

アイツの指示を聞いたでしょ!?アイツがあそこまで言うってことは、絶対に何かが起きる!!その“何か”が起きるまで、死に物狂いでここを守りなさい!!」

「「「Jawohl!!」」」

他の人間達と駆逐艦と思わしき艦娘は、更に激しい攻撃を【彼女】に加える。障壁の出力が弱まり、四肢に装備される艤装から次々と火花や黒煙が吹き出し始めた。

「リ級elite、状態中破に移行!!」

(#><)「トドメを刺すんです!!絶対に火線を絶やすな!!!」

(#//‰ ゚)「ディープワン共を深海に叩き返せ!!」

自身の身体に浮かぶ損傷、周りの人間達の怒号、そして入り交じる火線。その直中で、恍惚とした表情すら浮かべて【彼女】は呟く。







ダカラ私ハ、君ガ愛オシイ。



377: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/19(月) 23:41:02.63 ID:3i1wtBQb0

両腕の艤装が起動する。逆巻く砲火の中で、【彼女】の両腕がさながら通せんぼをするような形で左右に開かれた。

( ゜ t ゜ ;)「※※※※!!!」

ξ;゚⊿゚)ξ「こ、後退────きゃああっ!?」

2門の主砲が火を噴く。左手で直撃を食らった戦車が吹き飛び、金髪巻き毛の女が乗る車両も爆風に煽られて横転。右手ではバズーカやアサルトライフルで攻撃をかけていた一団が、凡そ半分ほど肉塊になる。

「この────え!?」

正面にいた艦娘が改めて艤装を構えたときには、【彼女】の足は既にその眼前まで踏み込んでいた。

驚きに見開かれた鮮やかな青色の眼に向かって微笑んでやりながら、右拳を振るう。

「────ゥゲホッ!?」

衝撃で歪む皮膚と、ぐちゅりと伸縮する内蔵の感触が伝わってきた。その小柄な艦娘が吐き出した体液がまき散らされる様に僅かに眉を顰めつつ、拳を振り抜く。

「っあ………」
  _
(;゚∀゚)「レーベ!?」

(;><)「救護班、彼女を回収するんです!!携行砲所有者、残弾全て奴に叩き込み足止めを!!」

(;//‰ ゚)「おら紳士共、夢にまで見たか弱い女を守るシチュエーションの到来だ!!

Go go go!!」

気を失ったらしい艦娘は、吹き飛ばされた先に転がっていた戦車の残骸に叩きつけられズルズルと地面に崩れ落ちた。それを守るためか、人間の兵士達が進み出て【彼女】と艦娘の間に立ち塞がる。

健気に効きもしない小銃で弾幕を張ってきた彼らの勇気に応えるべく、彼女は舌なめずりと共にその懐に飛び込み内一人の顔に手を伸ばす。

「ォウァ」

悲鳴ともなんとも判別がつかない奇声を残して、彼の頭が握りつぶされた。



378: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/20(火) 00:21:15.08 ID:FxmbLDhi0

「………No, no, n」

無造作に腕を振り、直ぐ隣にいたもう一人の頭を粉砕しながら【彼女】は軽くため息をつく。

やはり、“アノ人間”がいなくなると退屈だ。他の個体は勇敢だし数も多いが、とてつもなく脆い上に“アノ人間”に比べて機転が利かない。ただ立ち向かってくるだけの獲物を潰す“作業”は、特に【全の意志】の憎しみに興味が無い【彼女】からすれば趣向に合わないのだ。

────マァ、仕方ナイカ。

「わぁっ!?」
  _
(;゚∀゚)「クソッ……!怯むな!撃て!!」

【彼女】は軽くため息をつくような素振りを見せ、無造作に右手の主砲を放つ。また一つ戦車が燃え上がり、周囲にいた兵士達の射線が乱れた。

遊ぶことに夢中になって艦娘の突入を察知できなかった点や、その結果あらゆる火力を投入した集中砲火によって身動きが取れず中破まで押し込まれた点は彼女のミスだ。結果、策を思いついた“アノ人間”は動きを縫い止められている彼女を尻目に西へと向かった。

更に言うと、乗ってきたバイクを含めて他に“足”となり得る存在を破壊してしまったのは他ならぬ彼女自身でもある。

「り、リ級、此方に向かってきます!!」
  _
(;゚∀゚)「退避、退避しろ!!」

姿勢を低くし、眉毛が濃い人間が率いる部隊に向かって突っ込んでいく。一人をひっつかんで遙か上空に投げ飛ばしつつ、彼女は再び深いため息をついた。

今から【姫】の元に向かったとて、“アノ人間”の策が成るにしろ成らないにしろほぼ確実に間に合わない。それに万一策が成った場合、いくら何でも川を渡った“同胞”達を孤立させるのもまずい。

セイゼイ、スグ全部潰サナイヨウ気ヲツケテ遊ボウ。

そう心に決めて、【彼女】は更にもう一人を蹴り砕く。

ふと、遙か東にも“凄い人間”がいるという話を思い出した。



379: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/20(火) 00:55:09.08 ID:FxmbLDhi0



《BBCより緊急報道です。先程ノルウェー政府より公式発表が有り、ベルゲン上空の制空権失陥を公式に発表しました。ノルウェー、スウェーデン、フィンランドの北欧3ヶ国連合空軍は壊滅的な打撃を受けた模様です》

《トルコ政府はTRTの取材に対し、中東諸国と共同で日本に艦娘の派遣・国外鎮守府の設置要請も視野に入れた要請を出す用意があると回答しました》

《ドイツ・ベルリンへの正式な軍事介入を発表したポーランド政府ですが、これにルール地方への核攻撃を準備しているロシア政府は強い不快感を示しています》

《現在スペイン空軍はヨーロッパアメリカ軍、フランス軍と共同で深海棲艦への攻撃を敢行していますが、敵の大規模な侵攻を食い止めきれていません。また、フランスの許可を得て越境した一部陸軍はフランス西部の主要都市に戦力の配備を開始しているとのことです》

《キューバ政府は、欧州・大西洋の危機的な状況に過去のしがらみを捨ててアメリカ、EUに全面協力をすると表明。大西洋に艦隊を派遣しました》

《ロシア政府による核発射宣言から3時間が経過しましたが、未だ西ヨーロッパにおける混迷は治まる気配を見せません》

《CCTVより、スポーツニュースの時間です。我が中華人民共和国の卓球界にニューヒーローが誕生しました。広東出身の劉?厳がスーパーリーグで大金星です》

《ルール地方には未だ1万人を越える生存者が逃げ遅れているという情報も有り、ロシアが核を発射した場合国際的な批判・孤立は免れないと見られています。茂名官房長官も、先日3ヶ国協定を結んだばかりのロシアの動きには非常に強い批判を浴びせています。

NBSではCM後も引き続き、ヨーロッパ戦線の情報をお伝えしていきます》

《あの名作アクションゲームが、オープンワールドになって帰ってきた!!

今度の舞台はまさに、中国全土!!雪原を、平原を、山あいを駆け抜け敵を薙ぎ倒せ!!

今度の無双は、1000人じゃあおさまらない!!

一万人をぶっ飛ばす爽快感!!真・三○無双8、今冬発売予定!!

先行予約で、程普ドイツ軍コスチュームがあたる!!》



391: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/23(金) 23:34:45.90 ID:rsc+wgkx0






かつて、カルタゴの名将・ハンニバルはこういった。

視点を変えれば、不可能が可能になる、と。

実際、彼は自身の言葉通り常に斬新な視点から様々な戦略を練り上げ、アルプス越えやカンナエでの勝利など数々の【不可能】を【可能】に変えてきた。その変幻自在にして大胆不敵な戦術は彼の死後2000年以上経った今なお研究の対象であり、ドイツ学園艦の戦車道教育や艦娘達の座学にも用いられる。

尤も、当然の話になるがハンニバルの相手は同じ“人間”───つまり、人知の枠の中に収まった存在だった。

例えば大津波。
例えば大地震。
例えば大嵐。
例えば大噴火。

そういった“人知を超越した厄災”に対するとき、人間は驚くほど無力になる。
どれだけ視点を変えようとも、どれだけ策を練ろうとも、被害を軽くすることはできても厄災そのものに打ち勝つことはできない。



────そして。

「ヘリが一機やられた!!」

「負傷者下げろ、負傷者下げろ!」

《此方19号車、現地に到ちゃ

「増援の市警装甲車が破壊されました!!」

《レオパルト五号車よりCP、T-72が3両撃破された!プーマ戦闘車も沈黙、更なる機甲戦力の増強を求む!!》

(;゚д゚ )「Allemann zuruck!

次のブロックまで退却しろ、機甲師団と擲弾装備兵でしんがりだ!」

『────www』

ミルナ=コンツィの前に現れたソレは、まさしく立ち向かうことが不可能な“厄災”そのものだった。



392: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/23(金) 23:45:01.15 ID:rsc+wgkx0

頭上を、ポーランド軍の戦闘装甲車であるKTO-ロマソクが飛び越えていく。16トンの重量を感じさせぬ軽やかさで飛翔してきたそれは、ベルリン市警のパトカーを一台真上から叩きつぶした。

因みに砲撃で吹き飛ばされきたものではない、此方めがけて“投げ飛ばされた”ものだ。

(;゚д゚ )「道路両脇の家屋を爆破しろ、瓦礫の山で奴の進路を封鎖するんだ!」

《Jawohl!! Feuer!!》

数両の戦車が一斉に砲弾を放つ横を、ミルナは負傷した味方兵を引きずりながら駆け抜ける。背後でコンクリートの塊が崩れ落ちる音が聞こえ、足下から震動が伝わってきた。

《目標破壊、進路を封s

(; д⊂ )「うおっ!?」

爆風が吹き付け、握り拳大の礫が頬を掠める。

バランスを崩してつんのめるミルナの横を、火達磨のレオパルト1が地面をバウンドしながら通り過ぎる。立ちこめる爆炎と土煙の向こう側へ機銃を放つエノクが、2発目の砲撃で吹き飛ぶ。

(メ゚д゚;)「っ、誰か援護してくれ!負傷者の回収を………」

引きずろうとした兵士の身体があまりにも軽い。違和感を覚えてふり向くと、腰から下がなくなっていた。

一瞬悔しげに表情を歪めた後、ミルナは屍体を打ち捨てる。“敵”は、彼に部下の死をまともに弔う暇さえ与えようとしない。

「エノク、破壊されました!PT-91【トファルデ】、レオパルト1もロスト!!

尚、瓦礫によるバリケードは崩壊、妨害効果無し!!」

「砲兵隊より連絡、正面新型艦の艦砲射撃が展開地点に直撃!迫撃砲多数と操作人員を失逸、支援攻撃困難とのことです!」

(メ;゚д゚)「砲兵隊は市街地からの離脱を許可!CPも間違いなく同じ判断だ、万一咎められたら全責任は俺が取る!」

「バルシュミーデ少尉の携行砲部隊、敵艦への側面奇襲失敗!通信途絶!」

(゚д゚メ;)「第二波、第三波奇襲部隊に攻撃中止を通達!後方部隊と合流して防衛線の構築に参加するよう伝えろ!」

入ってくる報告も、眼前に広がる状況も、どちらも地獄の様相。それは最早“戦闘行動”といえるような有様ではなかった。

それでも、ミルナは指揮をやめない。彼自身混乱と恐怖から思考が停止しかけているのを強靱な精神力で辛うじて耐えている。

もし彼以外の誰かがこの場を指揮していれば、おそらく疾うの昔に正気ではなくなっていただろう。

「中尉、いったいアレは………奴は何なんですか!?」

「幾ら新種のヒト型とはいえ戦闘能力が今までの個体と違いすぎる、戦車も携行砲もまるで効果がない!!」

(メ゚д゚;)「考察は後だ!とにかく今は退却と次のブロックでの防衛線を────」

頭の上で妙な“気配”を感じて、ミルナたちは視線を其方に向ける。

「ヒッ…………」

まるで、獲物を狩る直前に鎌首をもたげた蛇のように。

路地の一角で漂う土煙を突き抜けて、巨大な“尻尾”が屹立していた。

先端に着いたウツボの頭部を象ったような艤装────そこから突き出した四つの砲は、全てミルナ達をにらみ据えている。

(;゚д゚#)「…………走れ!!」

砲弾が、降り注ぐ。



393: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/23(金) 23:46:23.97 ID:rsc+wgkx0


( д メ)「ぅぐあっ……………!!?」

背中に感じる、強烈な圧力と熱。衝撃が身体を突き上げ、足が地面から離れて空を掻く。

砲弾の破片や飛び散った瓦礫が背面のあちこちに突き刺さり、皮膚を破り肉を裂く。迸る血液が、吹き飛ばされるミルナの軌道に併せて中空に紅い線を描いた。

(メ д ;)「ガフッ……」

そのまま、砲撃で拉げたレオパルト1の残骸に全身を叩きつけられる。想像を絶する激痛はかえって意識を手放すことを許さず、悲鳴の代わりに口から漏れたのは血の臭いが混じった弱々しい呼気。

それでも、手や足の感触は確かに存在した。痛みがもたらす痙攣のせいで今は自由が利かないが、神経が繋がっている感覚もある。機能を取り戻し始めた耳には、周りで部下達が上げるうめき声も薄らと聞こえてきた。

“艦砲射撃”に巻き込まれたにもかかわらず、大きなダメージは受けたが致命傷を免れ四肢の欠損もない。
それは本来奇跡に近い幸運。

::(メ д #)::「……………ッッ!!!」

だが、ミルナ=コンツィが感じたのは幸運に対する安堵ではなく、脳の奥を焼き焦がすような激しい怒り。

唇が、苦痛を耐えるためではなく悪態が飛び出すのを防ぐために噛みしめられる。

砲弾や爆風より速く走れる人間は存在しない。攻撃が行われたのは頭上5メートルにも満たない至近距離からである点を考えれば、狙いが定まらなかったということも考えづらい。

要は、あの状況からはどれほど自分たちが幸運だったとしても助かる可能性などあり得ない。

向こうが、“故意に爆心地をずらす”ような真似でもしない限り。

(メ д゚#)「く、そっ、がぁっ!」

ミルナ=コンツィは、明確に理解した。

自分たちは、遊ばれている。

人間の子供が面白半分に蟻の巣を踏み散らしているように。

猫がネズミや虫を前足で執拗にいたぶるように。



394: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/23(金) 23:52:39.42 ID:rsc+wgkx0

脳漿や血液が沸騰しているのではないかと錯覚してしまう激烈な怒り。体内でアドレナリンの濃度が一気に跳ね上がり、痛覚が遮断され身体の自由を一時的に取り戻したミルナは脇に転がるG36Cを掴んで立ち上がった。

(#゚д゚メ)「携行砲保有部隊と装甲戦隊は全火力をあの艤装に集中、牽制攻撃をかけろ!付近残存部隊は目標のブロックまで負傷者を回収しつつ後退急げ!!」

《レオパルト六号車よりコンツィ中尉、お言葉だけど先ず貴方が後退するべきです!あんな砲撃を受けて中尉の身体が大丈夫なはずが……》

(#゚д゚メ)「俺に構うな!行け!!」

《………Jawohl!!》

無線に向けて叫びつつ、“尻尾”に手榴弾をピンを引き抜き投げつける。手榴弾は防壁に当たってカンッと小さく乾いた音を立てて跳ね上がり、丁度真上の辺りで爆発する。

《総員、全車両、攻撃開始!》

《中尉を援護しろ、Feuer!!》

その爆発が合図だったかのように、何十もの砲声が重なり徹甲弾や対戦車ミサイルが尻尾にあらゆる方向から殺到した。5メートルを超えようかという巨体が爆光に全身を包まれて見えなくなる………が、直ぐに応戦の砲火がその中から放たれ街の一角で炸裂した。

《此方カンナビヒ少尉、部隊待機地点に艦砲射撃着弾!死傷者数名!》

《デーベライナー隊より各部隊に通達、敵艦艤装に損傷見られず。繰り返す、敵新型艦未だダメージ無し。

……Verdammt!!》

《Fuck!!》

《Kurwa!!》

損害無しの報告が流れた瞬間、デーベライナー軍曹と同時にポーランド兵とアメリカ兵も異口同音に毒づく。

ミルナも思い切り罵倒の言葉を並べ立ててやりたいという気持ちは同じだが、その光景は彼が半ば───どころか九割方予想していたものでもある。だから落胆はしないし、思考を止める理由にもならない。

(;゚д゚メ)「前衛の負傷者回収がまだ終わっていない、後衛部隊は引き続き火線を展開しろ!陣地転換をこまめに行い反撃による損害はなるべく抑え────うおっ!?」

横っ飛びでその位置から動いた直後、機銃弾がレオパルト1の残骸にぶち当たり火花を散らす。射角にそって視線を動かすと、口元から細い煙を吐き出す“尻尾”の姿がそこにあった。

笑っているように半開きになった口内から顔を覗かせるのは、連装式の対空機銃。

無線通信での指示をわざわざ大声で放していたのが聞こえたのだろう。指揮官は優先して潰した方が良いという判断か、イキのいい玩具と遊びたいという嗜好か、或いはその両方か。

どちらにせよ、周囲で負傷者の回収を続ける救護班にも散発的に砲撃を加えてくる後衛部隊にも射線は向けられていない。ミルナにとってはその事実さえあれば、理由などどうでもよかった。

(#メ゚д゚)「捕まえてみろ化け物!!」

叫び、G36Cを構え、引き金を引く。弾丸が障壁の表面で小さく火花を散らす様を見届けると、そのまま踵を返し全速力で前衛部隊とは別方向に走る。

『………♪♪』

その後ろを、機銃掃射の火線と艦砲射撃の爆発が追いかけていく。



395: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/23(金) 23:56:24.18 ID:rsc+wgkx0

────ミルナ=コンツィドイツ陸軍中尉は、怒りを覚えていたが怒り“狂って”はいなかった。彼の脳内に残る冷静な部分は、彼我の戦力差を的確に把握している。

《此方救護班、前衛の負傷者・生存者の回収を完了!》

《ポーランド軍のMi-24、敵艦“本体”の対空射撃によって撃墜されました!》

(メ゚д゚;)「CPにヘリ部隊の突入は今後控えるよう通達しろ!………っくぉ!?」

バイカーギャング仕様のバイクを乗り回して突然こちらに飛び込んできたあの“新型”は、おそらく過去に確認されてきた深海棲艦の中でも格段に高い戦闘能力を誇る。現に単艦である上にこれだけあからさまに“遊んで”いるにもかかわらず、ミルナ達の方面は右翼のパンコウ区よりも遙かに深く押し込まれた。

右翼でも此方の損失は甚大ながら、通常種のリ級2隻に小破の損害まで与えていることを考えればあまりにも状況差がありすぎる。

《中尉!?いったい何があったんですか!?》

( ゚д゚メ)「機銃が掠めただけだ、心配ない!この歳で鬼ごっこなんてやる羽目になるとはな!」

さっきの喩えを繰り返すが、要はあの“新型”は【人間の軍隊】にとってほとんど天災と変わらないとミルナは結論づける。大津波や大嵐に人間が立ち向かったところで、少なくとも“今の科学”では打ち勝つことはできない。できることと言えばせいぜい被害をなるべく受けないよう被災範囲から遠くに逃げることと、後は収まってくれと神に祈ることぐらいだ。

(=#゚ω゚)ノ《CPよりトレプトゥ=ケーペニック区防衛ライン、新型の状況を教えるよぅ!!》

( ゚д゚メ)「防衛ライン前衛よりCP、敵のお嬢さんは俺の抹殺に大層御執心……!」

自身の無力さへの口惜しさこそあれ、ミルナは役目を見失わない。

敵が天災に等しい存在である以上、立ち向かうことは自分たちの領分から外れる。

今の彼に課せられているのは、部隊の被る損害を可能な限り減らし、厄災から逃れ────

(#゚д゚メ)「攻撃を開始するなら、今だ!!」

(=#゚ω゚)ノ《此方CP、状況を確認した!!

全駆逐艦隊に通達、目標敵新型艦!攻撃を開始せよ!!》

────残る全てを、味方の“女神”に託すことだ。



396: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/24(土) 00:00:13.24 ID:W1r6lzRK0









《《Z1, Feuer!!》》

《《《Z3, Feuer!!》》》

ミルナ=コンツィ中尉をしつこく追い回していたであろう“尻尾”が、12.7cm連装砲の弾丸で動きを止める。

障壁の上で弾けた爆炎は、決して大きな物ではない。だけど“尻尾”の主にも、今の砲撃が私達艦娘によるものだと十分に理解できたのだろう。混乱というほどのものでもないけれど、訝しむようにぐるりと────“5箇所から飛来した”砲撃の出所を確かめようとしたのか艤装をもたげて辺りを見回す。

『…………!』

そこに、肉薄するのは、二台のパトカー。

ただし屋根の上に、私とビスマルクお姉様を乗せてだ。

「Prinz、続けて撃ちなさい!!

Feuer!!」

「了解ですお姉様!

Feuer!!」

猛スピードで“尻尾”に接近していくパトカー。その屋根の上で跪くような姿勢を取り、私はお姉様に続いてSKC20.3cmを撃つ。砲撃の反動で浮き上がりひっくり返りかけた車体を、つま先をめり込ませ両手に全身の力を込めることで抑え付けた。

『ィアアアアアアッ!?』

戦艦と重巡洋艦の主砲、4基8門の一斉射撃。

流石にその威力は絶大で、向こうも効果無しとはいかなかったらしい。先端の艤装から火花をまき散らしながら、“尻尾”が苦悶とも怒りとも着かない声で鳴きながら身を捩らせる。

『ウァア………!』

そのまま“尻尾”は一瞬此方に先端を向けて低いうなり声を上げると、笛で操られる蛇みたいな動きでシュルシュルと立ちこめる煙の中に戻っていった。



397: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/24(土) 00:05:06.82 ID:W1r6lzRK0

《よし、現地に到着!

お嬢さん方、武運長久をお祈りするよ!》

《ニ号車、十号車、移送任務完了につき後退します!頼むよ艦娘さん、あいつら化け物をやっつけてくれ!!》

「ええ、任せてちょうだい!きっとこの国を、貴方たちの街を守ってみせるわ!

─────さて、と」

私達を“尻尾”が引っ込んでいった区画から直線距離200M程度の位置まで運んだ二台のパトカーは、屋根から降りた私達に激励の言葉を残してUターンする。

お姉様はサムズアップと満面の笑みでその声援に応えた後、一転して厳しい表情で正面───さっき、“尻尾”が引っ込んでいった辺りを睨んだ。

「Bismarck zwei、敵新型の正面───と、思われる場所に到着したわ。黒煙の噴出が未だに激しくて艦影を視認できない」

( ゚д゚メ)《ミルナ=コンツィよりBismarck zwei、負傷者や生存者は近くに残っているか?》

「……。

いいえ、見当たらないわ」

( ゚д゚メ)《確認感謝だ。

…………すまんが、“奴”に対して俺達陸軍ができることはない。お前達に全て任せる》

「あら、誰に物を言ってるのよ。このBismarck zweiに何もかも任せなさい!」

( ゚д゚メ)《俺達はこのまま右翼のパンコウ区に戦闘可能な部隊で転進、防衛線に参加する。

………艦娘部隊の、武運を祈る!》

………無線越しでも解るほどとても悔しそうなミルナ中尉の声だったけれど、判断はとても冷静で的確だ。

中央の増援に向かったレーベみたいに砲火力がそこまで高くない駆逐艦ならともかく、私やビスマルクお姉様のように重巡以上の等級になると主砲火力が高い故に友軍を巻き込む危険性が跳ね上がる。広く間隔が取れる海上ならいざ知らず、市街戦で陸軍と共闘する場合、敵の配置や攻勢によっては通常兵器の支援部隊の存在は寧ろありがた迷惑になることも多い。

だから、中尉が後退した部隊をそのままパンコウ区に転用してくれることはとてもありがたい。

ましてや、今回は相手が相手だ。



398: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/24(土) 00:15:55.26 ID:W1r6lzRK0

「Prinz EugenよりCP、全艦隊戦力の敵新型艦包囲完了。ミルナ中尉以下陸戦隊も後退、離脱済みです。

………本当に、グラーフさん以外の全戦力を此方に回して良かったんですか?」

(=゚ω゚)ノ《問題ないよぅ。その代わり、Graf Zeppelinの艦載機による航空支援とポーランド軍の後続戦力は以後全てパンコウ区、フリードリヒ=スハイン区に回して右翼艦隊、中央のリ級eliteを打撃するよぅ。

寧ろ君達は正真正銘左翼に投入できる最大にして最後の防衛戦力だ。油断はしないで欲しいよぅ》

「できるわけないじゃないでしゅかぁ……」

………内心に渦巻く不安から台詞が口の中でひっかかり、なんとも奇妙な口調になってしまった。

私達艦娘を運用するにあたって、国際社会は公式・非公式を問わず様々な規則や条約を設けた。アイザック=アシモフの提唱したロボット三原則より発想を得た「艦娘三原則」や国家間での艦娘の奪い合いを避けるために設けられた「艦娘保有制限条約」のように正式に国際連合で会議を持って締結された物から、“資源確保や偵察任務に潜水艦娘を酷使するのはやめるべき……でち”という提唱者不明の怪文書(因みに誰も実行していない)まで数千を軽く超える。

その中の一つである、「同一種の艦娘を同艦隊内で運用してはならない」という規則は、法・条約的拘束力こそないもののある理由から全世界の海軍教本にも記載される基本中の基本だ。

“新型”を包囲する形で区内の離れた位置にレーベ達とマックス達は配置されているけれど、通信は連携を迅速に取るため各個が直接行っている。作戦後何の影響もないかどうかはかなりギリギリなように思う。

イヨウ中佐ほど優秀な人が、この教範を知らないということはあり得ない。にもかかわらず、多少の対策こそとられているとはいえ事実上その禁を犯してまで投入し得る戦力を全てトレプトゥ区に注ぎ込んだ。

「………………ッ」

つまり、さっきまでミルナ中尉たちが戦っていた敵の新型艦が「そこまでしなければいけない」とイヨウ中佐に判断させるほどの敵と言うこと。しかも私達は勝つ必要が無く、ドク少尉が無線で宣言した30分という時間が稼げれば十分であるにも関わらず。

……お姉様の前でみっともない姿を見せたくはないけれど、私は生唾を飲み下す音を止められなかった。

心底、恐い。だけど、私達は艦娘だ。

やるしか、ない。



399: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/24(土) 00:26:41.54 ID:W1r6lzRK0

「………Bismarck zweiより包囲網各艦並びに護衛部隊、其方は異常ないかしら?」

《Z1-23、状況クリア!敵影ありません!》

《Z3-04、周辺に異常なし》

《Z3-08同じく》

《Z1-02、何もないよ》

《こちらZ3-11、穏やかなものだわ。

………不謹慎だったかしら》

お姉様が、レーベ達に連絡を取る。時間にして中佐達とのやりとりも含めてせいぜい2、3分しか経過していないはずだけど、しかし私にはその時間が何十倍も長く感じられた。

右翼と中央から聞こえてくる砲声や銃声、頭上を飛び交う戦闘機のエンジン音が市街地に木霊する中で、この辺りだけ奇妙な沈黙に包まれる。

「────!」

…………それまで何かに纏わり付いているかのような不自然な動きで一定の位置に渦巻いていた黒煙が、ブワリと揺れる。

「お姉s」

全て言い切る前に、私の視界は大きく開かれた口とその中に並ぶぎらぎらした鋭い歯に埋め尽くされた。

「─────Prinz, 下がりなさい!」

「きゃあっ!?」

『─────ア゛ア゛ッ!!』

ぐいっと首筋を猫のように引っ張られ、(また)情けない悲鳴を上げながら仰向けに地面に倒れて尻餅をつく。さっきまで私の顔があった位置で、巨大な顎がガチリと空を噛んだ。

「ふっ!!」

『ゴォアッ!?』

顎………いや、煙の中から伸ばされた尻尾の先を、お姉様は力一杯フックの要領で殴りつける。艤装の一部が鈍い音を立てて砕け、尻尾は呻き声を上げた後凄いスピードで再び煙の中に引っ込む。

─────だけど、今度はこれで終わらなかった。



400: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/24(土) 01:00:20.88 ID:W1r6lzRK0

「お姉様!?」

「っ、大丈夫よ!じっとしてなさい!!」

鳴り響く轟音。煙を切り裂いて次々と飛来した砲弾から庇うようにして、ビスマルクお姉様が私の上に覆い被さった。

一発が至近で炸裂して泥を巻き上げ、もう一発が背後からお姉様を射抜く。

「うっ………」

幸い、かつて大英帝国を震え上がらせた戦艦の装甲は伊達ではない。障壁はお姉様の身体を爆風から完全に守り切った。

でも、全くの無傷というわけにもいかない。艤装から火花が飛び、お姉様を覆う障壁が一瞬黄色く明滅する。

(一撃で、小破まで……)

《Z1-23よりビスマルクさん!何が起きたの!》

《Z3-11より旗艦、攻撃準備はできてるわ!いつでも言って!》

「Prinz Eugenより各艦、座標同一で速やかに支援砲撃の再開を!私とBismarckが攻撃を受けて………!?」

指示を出す暇なんてなかった。お姉様が咄嗟に私を更に後ろまで投げ飛ばし、そこに新しく四発の砲弾が飛来する。

内一発が、直撃。当たり所が良かったのか障壁の色は黄色から変わらないものの、背負う艤装の端で機銃が小さく爆発して根本から吹き飛んだ。

「Feuer!!」

衝撃を何とか踏みとどまって耐えたお姉様が、主砲を放ち反撃する。

───けれど、38cm砲が炸裂するよりも僅かに早く、煙の中から飛び出してくる“人影”があった。

背後で爆炎をまき散らすお姉様の38cm砲弾など気にとめる様子すら無く、その影は小柄な体躯を更に小さく丸めて弾丸のようにお姉様めがけて突進する。

『────♪♪♪』

「あ゛うっ!?」

速い。反撃も、回避も、防御もままならずに跳躍と共に振り切られた尻尾がお姉様の腹部を殴打する。凄まじい打撃で浮き上がった身体は、着地と共に二、三歩後退って横倒しになった戦車の残骸にぶつかりようやく止まった。



402: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/24(土) 02:10:08.70 ID:W1r6lzRK0

「…………この!!」

なおもお姉様に肉薄しようとした“影”に向かって、膝立ちの状態から20.3cm連装砲を連射。迫る四発の砲弾を、“影”はバレリーナみたいに軽やかな動きで後ろに飛んで回避する。

そして、元々そうするつもりだったような迷いのない動きで今度は私に向かって突進してきた。

「なっ────きゃあっ!?」

慌てて機銃と副砲を放ち動きを止めようとしたけれど、驚くほど低い姿勢から弾丸のように飛び込んでくる動きに対応できない。“影”ほんの数歩で私との距離を零にして、そのまま大きな動作で尻尾を振りかぶる。

「うぁっ………!?」

顔スレスレを薙いだ尻尾の一撃を避けて崩れた体勢。予想だにしなかった白兵戦に混乱する頭はめまぐるしい動作に追いつけず、続けて放たれた回し蹴りが私の胸板を殴打した。

「けほっ────がっ、ゴホッ!?」

激痛と圧迫感に口から息が漏れる。後ろに流れた身体に、今度は背中から尻尾の一撃。無理やり引き起こされたところで、肘打ちが顔に、更に尾の追撃が脇腹に突き刺さる。

「………ブフッ」

口の中に広がる鉄の味と、生ぬるい液体の感触。こみ上げてくる吐き気と激痛が合わさって視界が激しく揺らぎ、脳が揺すられて立っていられない。

(何……なの……この、戦い方………)

ぐらりと前のめりに倒れかけながら、ぐちゃぐゃになった思考が脳内でぐるぐると回る。

陸であれ海であれ、砲雷撃戦で深海棲艦と戦うための教育と訓練を受けてきた私達。反艦娘団体の暴動に備えた対人戦の手ほどきも多少は受けているが、“同等の戦闘能力を持つ相手”との格闘戦など想定していない。

予想が全くつかない動きの数々に、対応がまるでできない。一方的に、嬲られる。

「痛っ…………」

膝を突いた私の頬に、拳がめり込む。血の味が更に濃くなるのを感じて、私の身体は裏拳によって地面に横倒しにされた。

『…………wwww』

降りしきる雨の中で、敵の尻尾がなんとも禍々しいシルエットを浮かび上がらせながら振り上げられるのが眼に映った。

動けない私の頭を噛み砕こうと、大口を開けた牙だらけの顎が迫ってくる。



403: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/24(土) 02:37:21.89 ID:W1r6lzRK0


……………響いたのは、私の頭が噛み潰される咀嚼音、ではなかった。

『─────!?』

何か巨大なものが空を切る音。常軌を逸した大きさの打撃音と、堅い何かが砕ける鈍い音が間を置かず続く。逃れる術がなかったはずの痛みも死も訪れないことに訝しみ、恐る恐る眼を開けた。

「…………プリンツ、大丈夫かしら?」

荒い息で、それでも私に向かって背中越しに微笑みながら、ビスマルクお姉様が立っていた。手に何か棒状の、太く大きな物を持って構えている。

それが、へし折られた戦車の残骸の主砲だと気づくのに幾らかの時間を要した。

『────!!』

「…………っふ!!」

『ギァッ………』

距離を取っていた“影”が、再び自らの尾を伸ばしてくる。が、お姉様が手に構えた筒で跳ね上げるようにして下顎を殴打すると、形容しがたい不快な鳴き声を残して尾は自らの主の元に舞い戻る。

「Feuer!!」

『………』

流れるような動きで艤装を展開し、射撃。これは躱されたが、若干の警戒心を抱いたのか向こうは反撃せずに私達から僅かに距離を取った。

「それで?まだ戦える?プリンツ」

「………あ!はい!まだ何とか!

あの、お姉様………そんな戦い方、いったいどこで」

「zweiへの改装を受けるために日本に行ったときに、ちょっとね」

立ち上がろうとする私への射線を塞ぐ位置取りで筒を構え直しながら、お姉様はそういって肩を竦めた。

「なんとかっていう映画スターみたいなすっごい筋肉身につけたAdmiralから、色々教わったのよ。

……ま、まさか役に立つとは思わなかったけどね」



410: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/24(土) 23:32:06.96 ID:W1r6lzRK0

「日本ですか………」

私がまだただの軍艦だった頃に、当時ハーケンクロイツを掲げていた祖国が同盟を結んだ海の向こうの国というのはなんとなく知っている。ただ、私は所謂【実装艦】とは違いドイツの国営工場で建造されたので実際に行った経験はない。

そのため、持っている知識は例えば“なぜか潜水艦娘達に倒錯した性的嗜好が覗える指定制服を着せるHENTAIの国”という断片的かつ真偽も微妙なものばかりだ。

………まぁお姉様のこの急激な変化(というより悪化)の具合を見る限り、ろくでもない一面がある国なのは間違いないと確信した。勿論歴史も民族性も完全無欠な国家なんてこの世に存在しないことは理解しているけれど、それにしてもこのかつての血盟者は瑕疵の方向性が一般的な国家と随分違う気がする。

などと、私が東洋の端っこに浮かぶ島国についてなんともいえない思いを抱えていると。

「来るわよ!!」

「えっ?」

“影”が、再び動いた。

「Artillerie!!」

「うんにゃあーーーっ!!?」

尻尾の先端で艤装が稼働し、此方に向けられた砲口。雷鳴みたいな音を響かせて向かってきた熱と鉄と火薬の塊を、私とお姉様は左右に飛んで避ける。

「ぶぎゅっ!?」

こういうとなんとも鮮やかに回避したようだけど、実情はだいぶ違う。最小限かつ的確な身のこなしで素早く射線から外れたお姉様と対照的に、私は低俗なコメディ・コミックの登場人物みたいな慌ただしさでバタバタと地面を這いつくばって爆心地から逃れた。

結果大いにバランスが不安定になっていた私は、爆風で押されたことによって再度水溜まりに頭から突んだ。



411: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/24(土) 23:41:05.28 ID:W1r6lzRK0

次の攻撃が来る前にと慌てて泥を吐き出しながら立ち上がろうとした私は、後ろの───さっきまで私達が立っていた辺りの光景を目にして思わず悲鳴を上げた。

(なにこれ………一発の砲弾でこんな………)

巨人がスプーンでその一角をくり抜いたみたいに、ぽっかりと口を開ける穴。直系7~8メートルはあるそれが先程敵艦が放った砲撃によるものだと理解した瞬間、全身に雨粒よりずっと冷たい汗が噴き出た。

こんな威力……私やお姉様でもまともに食らったら一溜まりもない。一撃大破だって十二分にあり得る。

「突入するわ。プリンツ、援護して!」

「ふぇっ!?や、Ja!」

新型の攻撃の威力はお姉様も十分に理解しているはずなのに、彼女は何の躊躇もなく戦車砲を(打撃武器として)構えて前傾姿勢で突貫する。私の顔からは更に血の気が飛んでいったが、同時にその気高く勇敢な姿に恐怖も私の身体から抜けた。

ドイツ海軍重巡洋艦Prinz Eugenともあろうものが、お姉様一人だけを戦わせるなどあってなるものか。

「Beginnen Feuerschutz!!」

『!!』

幸い、さっきの回避行動でお姉様の身体は射線から外れている。攻撃には直ぐに移れた。

僅かに角度を調整し、主砲2基4門を同時に射撃。

距離にして300Mに満たない、至近距離からの射撃だ。こっちが外す道理も、向こうが回避する暇もない。

───筈なのに。

『────!!!』

「くぅっ……!」

「嘘でしょ!?」

あり得ない反応速度で振られた尻尾に、砲撃が下から跳ね上げられる。打撃された場所が先端ではないため信管が作動せず、起爆しないまま私の砲弾はあらぬ方向へと舞い上がる。

そのまま咄嗟にガードの姿勢を取ったお姉様に蹴りが突き出され、これを筒で受けたお姉様の突進が衝撃で止まる。ほぼ同時に、ふっ飛ばされた砲弾がどこか遠くで立て続けに炸裂した。



412: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/24(土) 23:52:12.13 ID:W1r6lzRK0

《Z3-11よりBismarck並びにPrinz Eugen、当艦付近に至近弾4!そっちの敵艦の砲撃なの!?》

「………うん!そんなところ!!」

胸にちくちくと突き刺さる罪悪感を勤めて無視しながら、水偵射出のカタパルトを構えAr-196改を空に撃ち上げる。

「Prinz Eugenより包囲網構成艦各員に通達!水偵を上空に上げた、感覚をリンクし弾着観測射撃にて敵艦に全火力を集中して!!」

《《《Jawohl!!》》》

基本的に艦種を問わず、艦載機はそれを出撃させた母艦以外で指示や収容、補給などを行うことはできない。ただし水偵や水戦、或いは日本の【サイウン】等の偵察機は、母艦以外───更に言えば駆逐艦や未改装の潜水艦のように本来艦載機を搭載できない艦種の子たちでも【視界共有】ができる。

勿論映像が安定しないなど母艦に比べると制限はかかるし、多数の艦娘と視界をリンクさせることは妖精さんにも大きな負担を強いる。

けれど、弾着観測射撃ができるとできないとでは攻撃効率に大きな違いが生じる。ここはもう一頑張りして貰うしかない。

「お姉様、水偵を発艦させてレーベ達とリンクさせました!駆逐艦隊による支援射撃可能です!」

「Ja! ありがとうプリンツ、貴女みたいなKameradin持てて幸せね!!」

『ッ!!』

私の報告に、あのまま白兵戦に突入していたお姉様は“影”と激しく打ち合いながらにやりと大きく口元を歪める。

……私に向けてのお褒めの言葉を伴った、大好きなお姉様の笑顔。

「……」

なのに、目にした瞬間、なぜか私の肩には小さな震えが走る。



413: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/25(日) 00:05:48.56 ID:SQt7g1jh0

そのまま、“尻尾”の艤装に覆われた部分とお姉様が構える戦車砲が空中で何度か凄まじい速度で衝突する。

艦娘と深海棲艦の“白兵戦”、しかも片方は戦車の残骸を引き抜いたものが得物───見方によってはシュールとも、タチの悪いジョークとも取れる光景。

だけど相手もお姉様も、その動きは見とれてしまうほど洗練されて無駄がなく、そして激しかった。

「はぁっ!!!」

『ッッッッ!!!』

攻防の中で生じた一瞬の隙。お姉様が大きく腰を落とし、図太い戦車砲を勢いよく槍のように突き出す。

“影”はこれを尾の艤装部分で受け止めたが、衝撃までは殺しきれなかったのか身体が浮き上がり2,3メートル後ろにはね飛ばされた。

「「Feuer!!」」

『………!!』

機を逃さず、私とお姉様の艤装───15.5cm連装副砲が同時に火を噴く。流石に主砲を撃てるような距離ではないけれど、副兵装での射撃ならば威力的にこちらが巻き込まれる心配はない。

勿論威あの敵艦に大きなダメージは与えられない。でも、副砲とはいえはね飛ばされた矢先に砲撃を受ければ踏ん張りは利かないだろう。

転んで隙を作ることを嫌ったか、“影”は着弾の衝撃に身を任せて更に10メートル近く後方へと跳んだ。

「─────全艦、一斉射撃!!」

『!!!?』

その着地点に、連なり炸裂する五発の砲弾。やはりダメージは小さいけれど、予想外のタイミングに加えて上からの攻撃。おまけにAr-196改を用いた弾着観測射撃。

動きが完全に縫い止められる。

────そして、今度は彼我の距離も十分だ。

「「Feuer!!」」

38cm連装砲。

SKC34-20.3cm連装砲。

全門が一斉に火を噴き、砲弾が放たれる。

火柱が、天を焦がす。



414: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/25(日) 00:53:14.24 ID:SQt7g1jh0

絶望的な状況下に置かれていた友軍を救援した後の包囲戦。完璧な誘導で敵艦の動きを制限したところへ戦艦と重巡による主砲射撃。

ど派手な爆発と、敵の姿を覆い隠す爆炎。

ハリウッド映画辺りなら、派手な演出や勿体ぶったBGMを施されて“実は健在だった敵艦”が観客の悲鳴やスクリーンに投げつけられるポップコーンと共に颯爽と再登場するのだろう。

《…………冗談でしょ》

現実にはそんな演出は存在しない。渦巻く焔と煙を尾で切り裂き悠然と“影”は再び現れた。水偵から妖精さんの眼を通してその様子を見た駆逐艦の一人が呆然とした口調で呻く。

影の………【彼女】の周囲を守る障壁が、火柱から出てくる直前オレンジ色に一瞬明滅する。流石に重巡洋艦と戦艦の一斉砲撃をまともに受けて損害を抑えることは難しかったようで、少なくとも中破レベルの大きなダメージは受けているらしい。

『─────♪』

なのに、【彼女】は笑っていた。

目深に被っていたフードを脱ぎ捨て。

先端の艤装部分から小さく火花を上げ続ける尾をゆらゆらと小刻みに震わせ。

人間や艦娘だったら“美少女”に分類されるだろう、幼さが残るけれど整った顔立ちに狂気を、狂喜を滲ませて。

【彼女】は、心底嬉しそうに満面の笑みで私達を見つめる。

少しだけ長く伸ばされた白い頭髪の隙間から覗く、玩具を見つけた子供みたいにきらきらと輝く眼が、真っ直ぐに私とお姉様を見つめる。何かを呟くようにして、青白い唇が動く。

………きっと、偶然だ。深海棲艦が人語を発したという話は、一度も聞いたことがない。

だけど私には、【彼女】の唇がこう言ったように見えた。


───アイツノイッタトオリダヨ。



415: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/25(日) 01:44:42.98 ID:SQt7g1jh0

深海棲艦が作る表情としては、あまりにも“血が通っている”微笑み。

本当に人間や私達のものと遜色がない自然さなのに、溢れ出る狂気。

「────あぁ、やっぱり貴女も“此方側”なのね」

そして………私の隣に肩を並べるビスマルクお姉様も、【彼女】と同質の笑みを浮かべていた。

「あのAdmiralから、彼のKameradinのアオバから、貴女たちの存在は聞いている。戦い方を見て、薄々そうだと気づいていたわ」

「お姉様………?」

興奮気味に、お姉様は【彼女】を見つめながら捲し立てる。その口調は徐々に速度を増し、今や熱にうなされた重病患者のように夢見心地なものになっていた。

「ええそうでしょ?きっと貴女も気づいている。

そうよ、私達ははぐれ者。だけどそんなものは関係ない。私がどんな存在であろうとも、私がナチス・ドイツ海軍ビスマルク級1番艦、Bismarckであるという事実は変わらない。

この地がドイツであるという事実は変わらない。私が守るべき国であるという事実は変わらない!!」

台詞の最後は、ほとんど叫ぶようにして放たれる。お姉様は………Bismarck zweiは、どこか箍の外れた笑みと共に【彼女】に向かって手招きをする。






「Bismarckの戦い、見せてあげるわ!

さぁ、かかってきなさい!!」



416: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/25(日) 02:31:32.19 ID:SQt7g1jh0





(`・ω・´)「…………以上が国防省の見解です、大統領」

(゚、゚トソン「………そう、ですか」

(`・ω・´)「南部ドイツ全域やライプツィヒ、ドレスデンなど主にドイツ国内で極局所的にはある程度優勢の地域も見られます。

しかしながら、現状よほど劇的な“何か”が起きない限り最早オーベル川以西のヨーロッパ失陥は確定したも同然です」

爪'ー`)「既にフランス・ドイツ・北欧の戦況は、“敵の攻勢をどの辺りで食い止められるのか”に重点を置く段階まで悪化しています。

特にフランスはコマンダン=テストのみとはいえ艦娘保有国。彼女らの損失は第二の防波堤である英国、はては合衆国の国防それ自体にも影響します」

(゚、゚トソン「………」

ハハ ロ -ロ)ハ「大統領閣下。本来なら我々も、“最後の手段”に打って出ることを本格的に検討しなければいけない立場です。

────ロシアが汚れ役を買って出てくれるというのなら、渡りに船だと私は考えます」

(-、-トソン「……………」

(`・ω・´)「大統領閣下、ご決断を」

(゚、゚トソン「…………在ロシア大使館に連絡を。それから、日本のミナミにもアポイントを取って下さい。

不測の事態に対する保険として、【海軍】出撃の手配をしておきましょう」

(`・ω・´)「かしこまりました、では」

(゚、゚トソン

( 、 トソン「…………この悪の帝国のどこが、世界の警察なのかしらね」



417: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/25(日) 02:45:04.51 ID:SQt7g1jh0





《先程アメリカホワイトハウスでフォックス=カーペンター国務長官が記者会見を開き、ロシアの核兵器使用の意志を覆すことはできなかったと談話を発表しました。

この発表は事実上ロシア連邦のドイツに対する核兵器投射を黙認するという前倒しの宣言とみられ、先に同様の意思表明を行っていたイギリス、フランス、元々肯定的な立場だった中国も含めてこれで常任理事国は全てロシアの核兵器使用を認めた形になります。

これに対し日本、インド、台湾などアジア諸国からは非難声明が続出し────》



422: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/26(月) 00:02:30.88 ID:xO5NyUVn0







段差を踏み越えてジャンプした車体が、10メートルあまりの浮遊を経て着地する。ズンッと身体の芯に響いた震動を、歯を食いしばって耐える。

(;'A`)「チッ、ここもか!」

ちらりと前方の状態を確認し、舌打ちと共にハンドルを右へ。本来進むはずだった道路は隆起と砲撃によるクレーターで悲惨な有様になっていて、バイクのスリムさを考慮に入れても到底走れる代物ではなかった。

元々深海棲艦の爆撃や砲撃で道路事情が最悪であることを考慮に入れてのバイクチョイスではあったし、軍用のオフロード仕様なのである程度の荒れ地はツーの運転するエノクを下回る乗り心地にさえ目をつぶれば走破できる。

(;'A`)「……また!」

とはいえ、ベルリンの道路網は俺が想像していたよりもずっと「最悪」だった。ビルが崩れ落ちて隙間なく塞がれてる場所やさっきのように隆起やクレーターが多すぎて流石に走行できない場所が大通りから裏路地まで至るところに見受けられ、その都度“目標地点”への移動は遠回りになっていった。

(;'A`)「ここ───またか………!」

本来バイクの速度を考えれば大した距離ではない、多少経路が膨らんだところで増える時間は5分か10分かのレベルだ。

だが、ロシアの核兵器発射時刻やヨーロッパ全体の戦況、そして何より後方でリ級達に遅滞戦術を強いているだろうイヨウ中佐達の事を考えればその僅かな時間が身を焦がすほどにもどかしい。



423: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/26(月) 00:11:24.22 ID:xO5NyUVn0

幾つかの角を曲がり、幾つかの道路の状態に苛立ちを募らせ、それでも少しずつ西へ西へと進む。

ツン、ジョルジュたちと別れてからおそらくまだ5分と経っていない。だが俺には、もう1時間は経ってしまったんじゃないかと錯覚するほど時の流れが早く感じられた。

(;'A`)(クソッ、こうなりゃ多少の悪路でも道自体があるなら強行するしかない……!慎重になってても時間が経ちすぎたら元も子もない────)

(;゚A゚)そ「うぉおおっ!?」

砲声。放置停車されていたものが吹き飛ばされたのか、火達磨のスポーツカーが一台眼前の十字路左手から現れる。

咄嗟にバイクにピタリと身を伏せながら僅かに車体を傾け回避。背中に熱を感じつつ、その十字路を駆け抜けた。

(;'A`)「……っ、あぁそうだよな!」

背後で、更に何台かの車が吹き飛ばされていく音が重なる。そしてその中に混じってなおはっきり聞こえる、異常に大きなガスの排気音。バイクや車にちっとも詳しくない俺だが、その音だけは聞き覚えがあった。

(;'A`)「そりゃあ完全放置とはいかないよな!!」

重巡リ級たちが此方に突入してくるときに使っていた、あのバカでかいギャング仕様のバイクが奏でていたものと同じだ。

『─────!!』

(;'A`)「っと!!」

背後から追ってくる“艦影”二つ。その片方が、左手の艤装を起動し弾丸を放つ。

再び身を伏せた俺の周囲で、無数の機銃弾が火花を散らした。



424: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/26(月) 00:26:07.58 ID:xO5NyUVn0

『『────』』

('A`;)「………随分近未来的な造形だなオイ」

背後から追走してくる敵艦の外観を一言で表すなら、“より人間に近づいた軽巡ヘ級”だろうか。

両腕はヘ級同様完全に艤装と融合していて、後方から追撃してくる二隻はどちらも左手が機銃で右手が単装砲だ。頭部にマスクのようなものが被せられているという点も共通するが、此方は上半分のみの装着。鼻から下は装着物がなく、青白く血の気を微塵も感じさせないマネキンみたいな口元が剥き出しになっている。仮面の左側、眼の位置に穴は穴が開けられその中から覗く眼が青く光を放つ。

服装?はル級とリ級を足して二で割ったような組み合わせで、一昔前のセパレート水着のような形状の胸当てが肋骨の辺りまでをぴったりと胸部のラインを浮き上がらせながら覆う。少し縮れ気味の首筋辺りまでの長さになる髪が、雨の中で靡いていた。

ヒト型深海棲艦の一種、雷巡チ級。本来はヒト型と違って足を持たず、海上移動に極端に特化した機械ユニットが腰から下に直接装着されている。そのため過去確認されたチ級は、eliteやflagshipといった上位種でも出現箇所が海上に限定されており、人類や艦娘の間でもチ級は【雷巡】という艦種の特性も相まって海上限定の敵艦という認識だ。

………で、何の悪夢なのか今俺の後ろから追撃してくるチ級は、下半身を海上ユニットではなくバイクと結合させベルリン市街地の真っ只中を推定時速100kmオーバーで疾走している。

('A`;)「マイケル=ベイの映画かっての!!」

愚痴を飛ばしながら腰のホルスターからピストルを抜き、背中越しに当てずっぽうで引き金を引く。

『────!』

たまたま命中したらしく乾いた音が聞こえてきたが、チ級は他のヒト型同様障壁を持つ。当たり前だが、効果はない。



425: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/26(月) 00:38:16.03 ID:xO5NyUVn0


『───! ───!!』

(;'A`)「……っ!」

右手後方で“気配”を感じ、ハンドルを握る手に力を入れる。俺が車体を左に寄せたのと、二度の砲声は同時だった。

本来進路上だった箇所で上がる二つの爆炎。ぱらぱらとコンクリート片が降り注ぐ。

『─────!』

(;'A`)そ「危ねぇっ!?」

すぐさま、真後ろに着いたもう一台から機銃掃射が放たれる。此方もハンドルを即座に右に切り、射線から逃れる。

(;゚A゚)「───どわぁっ!?」

がつんっと前輪に衝撃が走り、ひっくり返って転がっていた軽自動車を踏み台に再びバイクが宙を舞う。胃がひっくり返りそうな浮遊感をたっぷり一秒ほど味わった後、縮み上がった“タマ”を突き上げるようにして車体が地面を踏みしめた。

(; A`)「────っの!」

悶絶したくなるような痛みだったが、聞こえてきた打撃音がそれを許さない。

エンジンのギアを上げて加速する。猛スピードで路を駆けるバイクの直ぐ後ろ、ほんの1メートルほどの位置にさっき俺がジャンプ台にした赤い軽自動車が突き刺さった。

また車体を左へ。道路脇の家屋に砲弾が直撃し、飛んできた瓦礫も回避するため一瞬歩道に乗り上げる。放置された露店の木箱数個を踏みつぶし、道路に戻る際に台を足に引っかけて蹴倒す。

道路に散らばった幾つかのくだものを踏みつぶして、チ級達はなおも追ってくる。……違法改造バイクがベースになっているためか、どうも基本速度は向こうが上のようで差が詰まり気味だ。

(;'A`)(このまま肉薄され続けたら回避が間に合わなくなる………なら!)

意を決し、俺は次の十字路が眼に入った瞬間にハンドルを切り左に曲がった。



426: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/26(月) 00:51:03.23 ID:xO5NyUVn0

通りに入った瞬間、今までと“質”が違う揺れを感じた。つんのめる形で後輪が浮き上がり、一瞬逆ウィリーのような状態になって数メートル走行する。

(;'A`)「おぉっとぉ……!?」

転倒しかけた車体をなんとか立て直し、そのまま前へ。

俺が突入した通りは、今までは走行を回避していたレベルの量の砲撃痕や隆起、陥没、放置車両などがある荒れ果てた道路。当然、移動の難易度は今までの比ではない。

バイクが浮き、揺らぎ、滑り、そこら中にぶつかる。車体のありとあらゆる装置やパーツが悲鳴を上げて、途切れない揺れが俺の肋骨を軋ませた。

(; A )「がぁっ!?」

突き出していた自動車のパイプにひっかかり、足の軍服が破れ脹ら脛の皮膚を裂く。鋭い痛み、だが視線を切ればたちまち大事故待ったなしだ。

『『────!!』』

当然、チ級も俺を追って通りに入る。乗用車を殴り飛ばし、水溜まりを蹴立て、速度を落とすことなく俺へと迫る。

『────!?』

『ア゛ア゛ッ!?!!!!?!』

そして、内一隻が悲鳴と共に空に舞い上がった。



427: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/26(月) 01:13:34.65 ID:xO5NyUVn0

おそらく、雨水が溜まっていた砲撃痕に気づかず前輪を引っかけたのだろう。僅かに背後を振り返ると、まるで前転しようとしているかのように後輪を上に向けて飛翔するチ級の内一隻の姿が見えた。

『ギァアアアアッ!!?』

自身が意図しない形で跳躍してしまったチ級は態勢を立て直せず、そのまま道路脇のビルの一つへと突っ込む。横向きで支柱に衝突した際に「車体」がへし折れ、後ろ半分が脱落する。

『グアッ……アァッ……アァァ………』

前輪だけになった下半身では到底まともな着地などできず、転倒したチ級の身体は数メートルにわたり地面を転がった後街灯に腹をぶつけて止まった。

気絶したのか、或いは完全に撃沈できたのかをしっかりと確認する暇はない。ただ、あれだけ完全に移動手段が破壊されれば追撃はできない。

(;'A`)「よしっ!」

狙い以上の結果が生まれ思わず拳を握りしめる。

チ級の艤装がもしリ級達が乗っていたバイクと同系統のものであるとすれば、此方が乗るミリタリータイプと違って極端な荒れ地の走行は考慮に入れられていない可能性が高くなる。バイカーギャングの目的は基本的に示威行為であり、改造は自然速度を出すためのものに限定されるはずだ。人が殆ど通らない荒れ地を走るための対策が施されているとは考えづらい。

そのため此方の軍用オートバイでも走行が困難な地形におびき寄せられれば破壊とまではいかずとも距離を大きく開けるチャンスができると踏んでいたが、一隻が早々に完全脱落といい意味で計算が外れてくれた。



428: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/26(月) 02:07:20.87 ID:xO5NyUVn0

まぁ、最高の結果が生まれたとはいえ危機が去ったわけではない。

『─────ア゛ア゛ア゛ア゛!!!』

(;'A`)「っ、お盛んなことだな!」

過去に交戦した深海棲艦の行動パターンからある程度解ってきたことだが、あいつらは(特定の個体を除いて)“同族”の死や損傷に強い反応を示す場合が多い。後ろのチ級もどうやらその類いのようで、単装砲と機銃による攻撃の勢いが今までより更に増した。車や瓦礫が転がっていても、お構いなしにそれらも砲撃で吹き飛ばしながら追ってくる。

────あっという間に距離が詰められるが、今の俺にとっては寧ろありがたい。

('A`)「………」

一つだけ持ってきていた手榴弾を腰のベルトから取り外して、ピンを抜く。タイミングを計り、後ろに転がす。

『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!』

………チ級の沈黙の時に、解ったことは三つ。

一つ、上半身は例の障壁によって通常兵器ではダメージが与えられないが、下半身のバイク部分は何らかの理由で障壁の効果が及んでいない。

二つ、バイク部分については耐久力も高くない。

三つ、チ級は特に地上戦に不慣れなためか、不測の事態に弱い。

故に。

『ア゛ア゛ア゛───ヴアッ!!?』

('A`)「Fahr zur Holle」

冷静さを欠いた状態のもう一隻を破壊することは、これら三点を考慮すれば簡単だ。

ご丁寧に直進してきてくれたチ級の前輪が手榴弾の起爆によって吹き飛び、残った後輪部分に火が回った状態でチ級が転倒する様を一瞬だけ確認する。此方としては足さえ奪えれば十分なので、直ぐに視線を戻す。

『グア゛』

ただ、背後でもう一つ大きめの爆発が起きたのだけは音で理解できたが。



429: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/26(月) 03:01:44.87 ID:xO5NyUVn0

(;'A`)「……撃破できたとはいえまた時間食ったなクソッタレ。いい加減“目的地”について欲しいもんだ」

(; A )「がっ──────!?」

呼吸が止まるほどの、信じがたい衝撃。さっきまでのチ級の砲撃が子供のお遊びになってしまうような、巨大な火柱が俺の左右で上がる。

高々と飛んだバイクは、奇跡的に転倒せずまた地面を走り出した。

(;゚A゚)(艦砲射撃………少なくとも戦艦クラス………正面から………!!)

ブレーキに伸びかけた手を引っ込めて、前方に目をこらす。

彼方で、微かに光が見えた。

(; A )「っつぅ………!!?」

今度は前方数メートルほどの位置で砲弾が炸裂する。揺れと土砂でハンドルを取られバランスを崩しかけるが、ギリギリのところで持ちこたえる。

(;'A`)「うぉあああああっ!!?」

三たびの砲撃。これは両側のビルに直撃した。崩れ落ちてきた瓦礫を、ワケのわからない叫び声を上げてギリギリのところで躱す。

────そして、見えた。

立ちこめる土煙の向こう側に。

俺が進んでいる、真っ直ぐな道の彼方に。

三つの、影が見えた。

まだ、顔が判別できるような位置ではない。見えるのはあくまでも人影だ。

だが俺は、確信を持って誰にともなく叫ぶ。

(#'A`)「────軽巡棲姫、捕捉!!」



433: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/28(水) 22:30:37.41 ID:+IPvwG8p0

三つの光が、彼方で瞬く。

(; A`)「……っぐ……おぉっ………!!?」

押し寄せてきたそれは、鉄と火薬の暴風だった。

『『『─────!!』』』

軍艦3隻分の、機銃の一斉掃射。雨音が完全に掻き消され、アスファルトを弾丸が削り、火花がそこら中で飛び散る。道の脇に転がっていた車が蜂の巣にされて火達磨になる。背負っていたG36Cを一発が僅かに掠め、高い金属音が鳴った。

奴らの攻撃は“砲撃”を含まない。にもかかわらず、機銃掃射の衝撃のみで地面が揺れている。

(;'A`)「………っ、嘗めんな!!」

弾幕。まさにそれ以外の表現が思いつかない、膨大な数の火線が混ざり合う。

その真っ只中で、俺はバイクの速度を最大まで上げた。

(; A )「うおっ────!」

空気抵抗を、そして被弾面積を減らすため、限界まで運転席に身を伏せる。ハンドルを握る手と前方を見つめる両眼に全神経を集中し、張り巡らされる火線の隙間を縫うようにして駆ける。

『『!!!』』

(;'A゚)そ「ひっ……!」

迫る三つの艦影。両脇の二つが、砲声を伴う一際大きな光を放った。

ほとんど水平射撃で放たれた、二発の艦砲射撃。砲弾が炸裂する直前、ギリギリのタイミングで着弾点の傍を走り抜ける。

背中に吹き付けた爆熱に、情けない悲鳴が喉から漏れた。脳裏を走馬燈のような映像が駆け回り……その、ズボンが雨でびしょ濡れになっていることを死ぬほど感謝した。

それでも、ハンドルを放さない。速度を落とさない。

『………ッ!!』

奴らとの距離が、この間にも更に詰まる。比例して、火線も濃密さを増していく。

────彼我の距離、目測凡そ200M。ただの小さな点に過ぎなかった三つの艦影を、朧気ながらはっきり人間の形として視角が、脳が、認識する。

このタイミングだ。

(#'A`)「─────ぅおらぁあっ!!!!」

ハンドルを放す。車体から身体を起こす。背中のG36Cに手を伸ばしながら、KLX-250を前に蹴り出すかのような動きで座席から飛ぶ。

『───────!!!?』

物理法則に基づいた当然の帰結として、俺の身体はバイクから離れ宙を舞った。



434: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/28(水) 22:38:49.83 ID:+IPvwG8p0

(;゚A`)「ぶっ───ぉ」

一瞬の浮遊感を経て襲ってくる、全身をバカでかいハンマーでぶん殴られたような衝撃。息がつまり、チカチカと眼の奥で星が飛ぶ。

知覚の限界を超えた激痛にブラックアウトしかけた意識を繋ぎ止めたのは、なんとも皮肉なことに直ぐ後に続いた別の痛み。

(;゚A゚)そ「あづあああいでででででででで!!!??!」

慣性に従って路上を滑り出す身体。雨によって幾らか摩擦が減り、前後に防弾板を縫い込んだ最新式の軍服を着ているとはいえ気休めにもなりはしない。

すさまじい速度で擦れる背中の皮膚が破れ、血が滲み、摩擦熱が軍服を通して背骨を炙る。落下直後に味わった瞬間的な痛みに程度では及ばないものの、継続して襲ってくる激痛に精神が焼き切れそうになる。

(;メ'A )「………ッ、おぉっ!!」

歯を食いしばり、銃を構え、引き金を引く。狙う先は、運転手を失った後も走り続けるKLX-250───そのエンジン部分。

乾いた銃声が響く。此方に向けて放たれる無数の銃火の中で、ただ一筋、細い火線が逆方向に伸びた。

……これがアクション映画の一場面の光景だったなら、弾丸は見事に狙いの位置を貫いていたのだろう。だが、残念ながら俺はトニー=ジャーでも、ジェイソン=ステイサムでも、ジョシュ=デュアメルでもない。

(;メ'A`)「───クソッタレ!!」

放った弾丸はエンジンどころかバイクの車体にすら数発当たった程度で、残りの殆どは射線がばらけ見当違いの方向へと飛んでいく。

銃撃を受けてバランスを崩したKLX-250は横転し、50M程その状態のまま滑走した後カラカラと虚しい音を立てて奴らの足下で停止した。



435: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/28(水) 22:43:34.80 ID:+IPvwG8p0

『…………』

あれだけ激しかった銃撃が、まるで指揮者の合図を受けたオーケストラの演奏みたいにピタリと止まった。真ん中の“艦影”はおもむろに脚を持ち上げ、力なく地面に転がるKLX-250をそっと踏みしめた。

(メ; A`)「ゴホッ………ゲホッ……」

バイクから一拍遅れて滑走が止まった俺は、咳き込み、背中の激痛に耐えながらその光景を眺めている。

俺と奴らの距離は、あと150Mといったところだろうか。両側に立つ戦艦ル級二隻と、真ん中のヒト型が俺自身は初めて見る艦影────おそらく軽巡棲姫の姿形は解るが、この距離では流石に表情などを窺い知ることはできない。

『─────フッ』

(メ;'A`)「………Verdammt」

だが、俺は感じた。

奴は、俺のことを………いや、ベルリンでの人類の抵抗自体を嘲笑っている。

(メ; A`)(はっ………さっきまでのお返しってか)

そもそも、さっきの“派手だが当てる気はない”機銃掃射や艦砲射撃の時点で薄々勘づいていたことだ。空を高速で飛び回る戦闘機を追い払い撃墜するために張り巡らされる弾幕に、時速100kmにも満たないバイクが飛び込んだところで普通なら一瞬でスクラップになって終わる。

俺が単騎で飛び出したことは、リ級達の報告か空でポーランド軍に迎撃されている爆撃隊からの監視か、とにかく何らかの方法で旗艦である軽巡棲姫のところにも届いていたのだろう。

そして、これを俺達の「最後の攻撃」と見た(事実そうなのだが)軽巡棲姫は、シュパンダウ区からここまで出てきて俺を待ち構えていた。

散々に翻弄されて痛くプライドを傷つけられた報いを受けさせるために。

自らの手で、俺達の「最後の手段」を叩き潰してやるために。

死に物狂いでここまで来た俺に、最大限の絶望を突きつけるために。



436: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/28(水) 22:53:29.59 ID:+IPvwG8p0

思えば、チ級による追撃すら──あの二体が破壊されたことは予想外だったとしても──奴が俺をここに連れてくるための誘導だったのかも知れない。それだけ奴には俺が自分を狙っているという確信も、そして俺達の策を粉砕できる自信もあったのだろう。

『──────♪』

そして奴は今、その通りになったことで勝ち誇っている。散々手こずらせてきた俺達の、最後の希望を打ち砕いてやったと嘲笑っている。








(メ A )「……………ッ!」

────それが、“自分の中でそのつもりになっているだけ”だとは気づかなかったようだが。

(メ#゚A゚)「ああああああああああああああああああっ!!!!!」

喉を振り絞って絶叫し、全身の力を込めて立ち上がる。骨が軋み、傷から血が滲み、焼け付くような痛みが脳を震わせるが、その全てを無視して足を踏み出す。

ヒーローでもスーパーマンでも何でもない、痩せぎすで満身創痍の軍人の全力疾走。自分で俯瞰する余裕はないけれど、きっと無様で滑稽なフォームになっているとは予想がつく。

『……………!?』

それでも………なおも迫ってくる俺の姿に、軽巡棲姫が少しだけ後退ったように見えた。



437: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/28(水) 23:20:41.22 ID:+IPvwG8p0

構えたG36Cが、鉛のように重い。一歩踏み出す毎にのたうち回りたくなるような痛みに視界が霞む。

(#メ A )「あぁああああああああああああっ!!!!」

それらを耐え、誤魔化すために叫び続ける。声を出すことを止めれば、途端に意識が途切れてしまいそうだ。

前へ。前へ。前へ。

叫び、敵影だけを見つめ、走る。蹌踉めき、躓き、水溜まりに滑り、それでもとにかく進み続ける。

『…………』

彼我の距離、120M。

最初は戸惑い気圧された軽巡棲姫も、大声はただのハッタリでこの突貫を破れかぶれの特攻と踏んだらしい。動揺は直ぐに消え、此方に左手を向けた。

軽巡ト級を思わせる、巨大な顎を象った艤装が展開される。口の直ぐ上には4連装の魚雷発射管が、更にその上には単装砲と2門の対空機銃がごてごてとどこか不格好に突き出している。

どの艤装が使われるにしろ、生身に近い俺が食らえば跡形も残るまい。おまけに両サイドのル級も砲をこちらに向けていて、回避は難しい。

上等だ。こっちも、回避するつもりは毛頭ない。

(メ# A`)「っ!!!」

G36C、一連射。弾倉一つが空になるまで引き金を離さず撃ち放つ。銃から伝わってくる振動すら痛みに変わるが、歯を食いしばって耐える。

『……………?』

ただし火線は、棲姫にも両脇のル級にも向いていない。三隻の足下───KLX-250、その燃料タンクが、狙いだ。

『『『────!!?』』』

爆炎が、奴らの足下を焦がす。

彼我の距離、100M。



438: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/28(水) 23:46:12.95 ID:+IPvwG8p0

基本軍用車は燃えにくいディーゼルエンジンを主流にしているが、偵察を主な任務として足回りが重視されるオートバイに関しては殆どの場合ガソリンエンジンが採用される。無論ポーランド軍が同様の考えだとは限らないので一抹の不安はあったが、あの爆発、景気の良い燃えっぷりを見る限り杞憂に終わってくれたようだ。

『………ッ、…………!!』

無論、それなりの爆発とはいえ所詮バイク一台分。“軍艦”に大きなダメージを与えられるような規模にはどう考えてもなりっこない。だからこそ軽巡棲姫も、仮に俺の策が成功したとしても“撃沈はない”と踏み、前に出てきたといえる。

だが、至近距離で炸裂した爆光は、周囲でちらつく焔は、例えダメージにならなくても“動きを抑え、射線を遮る”目眩ましとしてはあまりに十分すぎる。

『『…………!!』』

軽巡棲姫からの指示か、ル級が機銃を放ち始める。だが、炎越しに放たれた弾幕は次々とあらぬ方向で火花を散らし、俺の周りにすらまともに飛んでこない。

(メ#'A`)「─────」

身体を丸め、姿勢を低くし、足を止めずに突っ込む。

彼我の距離、80M。

『…………!!!』

(#メ'A`)「っと!!」

『ッ?!』

ようやくル級の内一隻が態勢を立て直し、勢いを弱めていく炎の向こうで艤装を構える。───が、俺が左手に立ち並ぶビルの一つに銃口を向けると、其方に釣られて自ら射撃の機会を手放した。

(メ#'A`)凸「はっ、バーーーカッ!!!ゲホッ、ゴホッ!!」

さっきのバイクの件が頭にあったのだろうが、これはただのハッタリだ。間抜けに虚空を警戒するル級に中指を突き立ててやりながら、前へ進む。

互いの距離は、60M程になっていた。



439: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/29(木) 00:27:57.36 ID:8fhCldZ+0

『ギィッ………!』

ここにきて、目の前の三隻も焦燥を露わにした。俺の前進が「やけくそのkamikaze」なんかじゃないことに、「KLX-250による自爆攻撃」が二重の目眩ましであることに、ようやく奴らも気づいたのだろう。

『ア゛ア゛ア゛ッ!!!』

あからさまに苛立った声で、軽巡棲姫は俺に再度艤装を向ける。

(メ#'A`)「はっ、不機嫌だなお姫様!!」

軽巡棲姫は目元をゴーグルのようなもので覆っており、他のヒト型に輪を掛けて表情が読みにくい。だが、上げられた声には苛立ちと、俺への殺意が溢れていた。

そりゃそうだ。奴らはあれだけはっきりと人類を見下している。艦娘に比べて、少なくとも陸の俺達は恐れるに足らない存在だと蔑んでいる。

そして、その自分たちに遙かに劣るはずの存在に翻弄され、幾度も策を破られ、同族を殺され、今また自らの思惑さえ逆手に取られて追い詰められている。

苛立たないはずがない。焦らないはずがない。

軽巡棲姫にしてみれば、この行為は憂さ晴らしなのだろう。何らかの策を弄そうとするこざかしい陸の猿を、自らの一撃で吹き飛ばしてやろうという八つ当たり。

─────だが。

(#メ'A`)「遅えよ」

全ては、賭けだった。

もしも軽巡棲姫が、中核艦隊を引きずり出されたことに対する苛立ちを抱いていなければ。

もしも俺達の策を自ら潰す方向に動かなければ。

そしてなにより、もしも俺が軽巡棲姫ののど元までたどり着けなければ。

一つでもズレれば、何かもが瓦解した分が悪いどころではない危険な賭け。

だが、俺達はその賭に勝った。

(#メ'A`)「チェックメイトだ化け物ぉおおおお!!!!!」

叫び、全身を躍動させ、腰から取り出した【切り札】を──────フラッシュバンを奴らの足下に投げつける。

彼我の距離は、50M。

『『『────アアアアッ!!!?』』』

閃光と、爆音。

三隻の動きが、再び止まった。



440: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/29(木) 00:58:27.43 ID:8fhCldZ+0

(#メ゚A゚)「ぅおあああああああああああっ!!!!!」

最初で、最後のチャンスだ。ル級だろうが軽巡棲姫だろうが、とにかく一隻でも衝撃から立ち直ればもうこっちに手立てはない。攻撃された瞬間に、ドク=マントイフェルという存在は木っ端微塵でゲームオーバーだ。

叫び、走る。全身の力を一滴残らず絞り出しながら、駆ける。

彼我の距離は、40M。

(; A )「クッ、ソッ、がァあああああああああ!!!!」

全身が悲鳴を上げている。脳が苦痛を、限界を認識しないようにと叫び続けるが、その叫びがまた体力を削る。

距離、30M。

(;メ A )「     !!!」

視界が揺れる。耳が機能を失い、自分が何を叫んでいるのかすら解らない。

それでも、脚だけは前へと進み続ける。

距離、20M。

(;メ A )

脚の感覚が消える。揺れる視界と、フラッシュバンの衝撃から立ち直ろうと蹲り頭を振る軽巡棲姫の姿が近づいていくことだけが自分がまだ前に進んでいると教えてくれる。

残り、10M。

『    !!!』

軽巡棲姫の上半身が起き上がった。よろめき、長い髪を振り乱し、それでも左手の艤装を持ち直し、ソレを身体の手前まで持ち上げる。

『     !?』

5M。艤装を構えようと此方に向き直った棲姫の口元が何かに怯えるように引きつった。

1M。脚がもつれ、地面に倒れ込みかけた身体を、伸ばした手が何かに引っかかってギリギリのところで支える。妙にひやりとした感触に、僅かな心地よささえ覚えつつ身体を前へと投げ出す。

もう、視界にも何も映らない。ただ、自分が何かを抱擁していることだけ理解する。

0M。

俺の耳元で、誰かが叫ぶ。

『──────コナクテイイノニ……ナンデクルノヨ…………クルナ、来るなぁああああ!!!』



441: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/29(木) 00:59:35.17 ID:8fhCldZ+0




(メ'A`メ)「断る」






442: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/29(木) 01:00:41.72 ID:8fhCldZ+0





─────俺は手元のナイフを、ソイツの首筋に突き立てた。





443: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/29(木) 01:22:39.93 ID:8fhCldZ+0







ξメ;゚⊿゚)ξ《此方フリードリッヒスハイン=クロイツベルク区よりCP、重巡リ級eliteが戦線を離脱!繰り返す、リ級eliteが突如戦闘行動を中止し戦線を離脱!》
  _
(メ;゚∀゚)《レーベの様態を確認しろ!かなり手酷くやられたぞ!》

(;メ><)《防壁状態赤色、大破状態ですが脈拍有り!少なくとも処置を行えば十分回復できるんです!》

(;メ//‰ ゚)《部隊損害が大きすぎて追撃は不可能!これより艦娘を含めた負傷者を回収し後退を開始する!》

(;゚д゚メ)《右翼、パンコウより全部隊に通達!敵艦隊、後退を開始!!》

《高層観測班よりCP、敵の爆撃編隊が退いていきます!また、近隣ですが市外の複数区域残存部隊との通信が取れました!通信妨害が消滅!!》

《少尉だ、マントイフェル少尉がやってくれたんだ!!》

《Hurra!! Hurraaaaaaa!!!!》

無線で、歓喜の雄叫びと情報伝達の声が飛び交い混ざり合う。砲声も銃声も止まないけれど、それらすら興奮を抑えきれない人々の声でしばしば掻き消されている。

私でも、それらが示す事実は直ぐに気がつき胸が激しく高鳴った。

敵の旗艦が────軽巡棲姫が、あの通信を入れてきた少尉の手で撃沈されたんだ。



444: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/29(木) 02:02:08.22 ID:8fhCldZ+0

「お姉様、市内中央、右翼の敵艦隊並びに航空隊が離脱を開始!敵旗艦軽巡棲姫が撃沈された模様です!」

「ええ、私にも聞こえたわ…………さて、見知らぬ敵艦さん」

『─────』

お姉様は、手元の戦車砲を一度振りかぶって目の前の“新型”に突き出す。

「中央と右翼の貴女のお友達は退いたみたいだし、爆撃隊も尻尾を巻いて逃げていく……。このままだと、空からも陸からもここにわんさか援軍が来ちゃうわよ?

私とプリンツもまだまだ余裕はあるし、流石の貴女もマズいんじゃないかしら?」

………お姉様はこう言うけれど、これはほとんど虚勢に近い。

“新型”の……【彼女】の現在の損傷状態は、相変わらず橙色───即ち中破。対して此方は、私が小破でお姉様が中破。

状況だけを見れば互角だけど、その実向こうはあの不意打ち以降まともに損害を受けていない。着実にダメージが蓄積されている私たちは、明らかに押されている───どころか圧倒的に不利だ。

おまけに、周囲に展開しているレーベ達支援部隊の残弾も心許ない。向こうの高すぎる戦闘力を考えると、たとえ援軍がやってきたとしてそれらごと薙ぎ払われる可能性すらある。

「さぁ、どうするの?」

『………………wwww』

一歩踏み出して問いかけるお姉様を見つめ、【彼女】は突然今までのものとは毛並みが違う笑顔………“狂気”が抜けた、まるで遊び疲れた子供みたいな邪気のない笑顔を浮かべた。

「っ!!」

「きゃあっ!?」

ズンッ、と地面が揺れて、辺りに煙が立ちこめる。それは、【彼女】が足下に砲撃を行ったために発生したもの。

『♪』

ジャアネとでも言うように手を上げて。

煙の向こうに、【彼女】の姿が消えていった。



445: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/29(木) 02:27:01.67 ID:8fhCldZ+0

………しばらく奇襲を警戒して身構えるが、10秒、20秒と時間が過ぎても何も起こらない。

息が詰まるような、何時間にも感じられる数十秒が過ぎ去った。

「────Bismarck zweiより支援艦隊各位に通達。敵新型艦の離脱を確認。状況を一時終了せよ」

《《《Jawohl!!》》》

「────ぷはっ」

お姉様のその声を聞いて私は、ようやく肩の力を抜くことができた。…………肩だけじゃなくて腰まで抜けてしまい、泥濘の地面にお尻をビタンと着いてしまったのはご愛敬ということにしておきたい。

「Prinz? ちょっとばかりそれはドイツの“れでぃ”として端なさ過ぎるんじゃないかしら?」

「あ、あはは………」

お姉様に窘められて、照れ隠しに頬を掻きながらもう一度立ち上がる。

「すみませんお姉様、思わず安心してしまって」

「……ま、その点は無理もないわ。私もアイツの強さには驚かされたもの」

視線の先は、煙の向こうに…………【彼女 】が消えた先に向けられる。

お姉様の表情からは既に安堵が消えていた。

「アイツとは間違いなくまた戦うことになるわ………次は負けないわよ。何てたって、この私だもの!」

「………はい!」

自信に満ちあふれたその言葉に「いつも通り」の雰囲気を感じ取り頷きつつも、私の脳裏にはふと、別の疑問が張り付いた。

<ええそうでしょ?きっと貴女も気づいている。

そうよ、私達ははぐれ者。だけどそんなものは関係ない>

お姉様が【彼女】と砲火を本格的に交える前に叫んだ、あの言葉。

<私がどんな存在であろうとも、私がナチス・ドイツ海軍ビスマルク級1番艦、Bismarckであるという事実は変わらない。

この地がドイツであるという事実は変わらない。私が守るべき国であるという事実は変わらない!!>

あれはいったい、どういう意味だったのだろう……?



446: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/29(木) 03:10:24.30 ID:8fhCldZ+0






(メメ A )

傷だらけで倒れる一人の男。その傍に【少女】は立っていた。

身長は、130cmあるかどうかといったところ。極東の島国をどことなく想起させる、古めかしい衣服────人類間では“着物”と呼ばれる服に身を包む。【少女】の同族達に共通する、人工的な艶やかさを持つ頭髪を右側に垂らし、錨を連想させる髪留めでまとめている。

全体的に黒を基調とした衣服故に、彼女のとびきり白い肌と、着物の所々を纏める白い襷がよく映えた。

『…………』

【少女】は、眠り続ける男の顔を、どこか楽しそうに覗き込む。つんつんと指先で突いたり、頭髪を手で梳いてみたり、力なく伸ばされる腕に組み付いてみたり。

そんな、眠る恋人を眺める女子のような他愛のない動作を、降りしきる雨を気にとめる様子も無いまま続ける。

『………♪』

一通りそれらの動きを堪能した後、【少女】はゆっくりと名残惜しそうに立ち上がった。

その場を立ち去ろうとした【少女】は、はたと何かに気づいて踵を返す。男の耳元まで唇を近づけ、彼女は小さな声でささやく。

次ハ、私トモ。

ふわりと袴の裾を翻し、【少女】は雨の中を今度こそ男の傍から立ち去っていく。

(メメ A )

後には、雨に打たれる一人の男と、うなじに深深とナイフが突き刺さった一つの屍体。


そして、頭部を吹き飛ばされた二つの屍体が転がっていた。



447: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/29(木) 03:27:34.35 ID:8fhCldZ+0








(=#゚ω゚)ノ「どういうことだよぅ!!!!」

絶叫が、テントの中に響き渡る。

(=#゚ω゚)ノ「もう一度言えHQ!!同じことを、もう一度、僕にはっきり聞こえるように言ってみろよぅ!!」

先程まで市内の他の部隊同様歓喜に沸いていた面影は、最早微塵も見られない。雨音を押し潰して聞こえてくる外の歓声とは対照的に、イヨウ以外の全員は呆けたような表情で立ち尽くしている。

深海棲艦からのベルリン奪還────誰もが不可能だと考えていた事象を、彼らは成し遂げた。払われた犠牲は決して小さくなかったが、圧倒的に劣る戦力での軽巡棲姫撃沈という大戦果も上げての勝利。

それはドイツはおろかヨーロッパ全土の苦境を救う勝利であると誰もが信じていたし、実際状況はそうなるはずだった。

《………イヨウ、現場を見ていない私が、お前の気持ちを“理解する”等とは口が裂けても言えない。そして実際私も、お前達にこの命令を下すことは心底から辛い。

何より私自身が、ベルリンの奪還によって戦況を打開できると信じていたからだ》

だが、南部の暫定総司令部と連絡がついた彼らに、一番最初に総司令官が突きつけた命令は。

(;`∠´)《しかし、今は状況が変わったんだ………!》

ドレスデン以北のドイツ領全域の───ベルリンの放棄撤退だった。



450: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/29(木) 04:14:11.58 ID:8fhCldZ+0

(;`∠´)《お前ほどの男だ、おそらくルール地方の……艦娘艤装工場を中核とした区域の惨状はとっくの昔に予測済みだろう!

それと同様の事態が!!コペンハーゲンで発生している!!!》

(=;゚ω゚)ノ「………っ」

ベル=ラインフェルトのここまで悲壮な声を、イヨウ=ゲリッケは長い付き合いの中で初めて聞いた。そしてその声によって、彼はようやく“それ”を現実として受け入れた。

(=;゚ω゚)ノ「………南部への退却の経路は」

(`∠´)《……まずオーデル川でポーランド軍と合流、共同防衛線で深海棲艦の侵攻部隊に備えてくれ。ポーランドが崩壊すればドイツ・イタリアは完全に孤立しヨーロッパの全土失陥が決定的になる。逆に、奴らはポーランド軍が健在である限り横やりを恐れてドレスデン以南への侵攻は鈍化するはずだ。

既にリーンウッド首相が渡りを付けてポーランド以外にチェコ、イタリア、スイス、オーストリア、クロアチアとの連合軍結成が確定している》

(=゚ω゚)ノ「………やるねぇ、あの首相」

何よりも大きいのはスイスの連合軍参加だ。戦力的な面と言うよりは、“永世中立国が禁を破って戦線に参加した”という点が大きい。各国と連携を取るに当たって、足並みを揃える際の大きな材料となる。

(=゚ω゚)ノ「なかなかの腹芸だ、日本のミナミやアメリカのトソンとタメはれそうだよぅ」

(`∠´)《その辣腕ぶりを見届けるためには、何としてもドイツを国家として残す必要があるがな》

(=゚ω゚)ノ「全くだ。…………」

長い沈黙が、二人の間に横たわる。

(=゚ω゚)ノ「………勝てるかね、この戦争」

(`∠´)《さぁな》

イヨウの問いは、彼のものとは思えぬほど不安げなもので。

ベルの答えは、彼のものとは思えぬほど投げやりなものだった。









(`∠´)《私には解らんよ》



451: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/29(木) 04:43:56.88 ID:8fhCldZ+0





【棲姫】は怒り狂っていた。

結果として、彼女の策は成功した。だがその内容は、“完璧”にはほど遠い。

予想を遙かに超える数の同胞が、ある街で屍となった。

強い力を持つ同胞が、その街ではよりによって“人間”に殺された。

彼女にとって、別段同胞が幾ら死のうが知ったことではないし、“全の意志”がどれほど彼女に賞賛を送ろうが関係がない。

ただ、彼女の完璧を乱されたことが。

彼女の誇りを傷つけられたことが。

彼女を怒り狂わせている。

イツカ、報イヲウケサセル。

【棲姫】──────人類からは“空母棲姫”と呼ばれているその個体は、暗い怒りを胸に宿しつつ眼前の同胞達に進撃を命じる。

優に千を越える“群れ”が、かつてデンマークと呼ばれた国の境から溢れ出た。



452: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/29(木) 05:19:44.91 ID:8fhCldZ+0







《CNNより緊急報道です。先程ロシア軍が、ルール地方に戦略核兵器を発射したと正式に発表致しました》

《ロシア政府は予定より三時間早い核兵器使用の決断について、国防上絶対に必要なことだったと談話を出しています》

《ファルジャジーラの取材に対し、ロシア外交部は「必要な措置だった」の一点張りです》

《ルール地方には多くの生存者が取り残されていたとみられ、国際的な非難は免れないでしょう》

《東欧の親ロシア政権国でも今回の件については難色を示す国が多く、国際的な孤立も危ぶまれています》

《日本、アメリカの両国はこの件について沈黙を守っており、先日締結した3ヶ国協定への影響を考え様子見の姿勢を貫くようです》

《イギリス政府はロシアの処置に対して“我が国としてはロシアの立場にも共感できる面がある”と一定の理解を示しています》

《戦車道博覧会への需要を見越してヨーロッパに投資していた戦車道関連企業の株が軒並み暴落し、ニューヨーク市場は大混乱の様相を呈しています》

《5000万人を越えるとも言われる避難民の受け入れ先をどうするかなど、フランス・ドイツを始めヨーロッパ諸国は大きな問題を抱えることになるでしょう》

《デンマーク、オランダ、ベルギー、ルクセンブルクは連絡が全土で完全に途絶えた状態であり、米軍の増援作戦も失敗した今生存者の安否が気遣われます》



453: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/29(木) 05:42:09.27 ID:8fhCldZ+0





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454: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/29(木) 05:42:52.04 ID:8fhCldZ+0

《事件発生から四日と2時間が経過しましたが、事態沈静の見通しは全く立っていません》

《ロシアの核兵器投射後も深海棲艦の進軍速度に変化はなく、フランス・ドイツにおける深海棲艦の展開量は10000を越えるとみられています》

《フランス政府はパリの完全陥落を受け、オルレアンに総司令部を置いた最終防衛ラインを策定。スペイン陸軍と共同で全戦力をこのラインに集結しました》

《ヴィルヘルム=スハーフェン鎮守府を始め北部鎮守府との連絡は全て途絶しており、ドイツ軍は全保有艦娘の約80%を損失したとみられます》

《行方不明となっているマモン元帥が深海棲艦の侵入を隠蔽していた可能性が浮上、ドイツ海軍に国際的な批難が集中しています》

《ドレスデン以南のドイツ領は深海棲艦の侵入をベル=ラインフェルト陸軍大佐の指揮下なんとか食い止め、壊滅を免れています》

《ドイツ、イタリア、スイス、オーストリア、ポーランド、チェコ、クロアチアからなる東ヨーロッパ連合軍はドイツ陸軍のベル=ラインフェルト大佐を陸軍総司令官に、イタリアのデレ=フェデレ海軍中佐を海軍統合提督に指名しました。この陸海両軍の異例の大抜擢は、年功や階級ではなく実力を重視した人選であり連合軍がヨーロッパの奪還を諦めていないという意志の表れでしょう》

《ロシア国内では先日の核兵器使用を追求する抗議デモや集会が連日のように行われていますが、徐々にこれらは過激さを増しており、警官隊、陸軍との衝突による死傷者も出ています》



455: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/29(木) 05:47:51.12 ID:8fhCldZ+0

(゚、゚トソン《欧州の失陥は人類の甚大な損失であり、我々は何としてもこれを奪還しなければなりません。インド洋に到着した我がアメリカ軍と自衛隊の合同艦隊も含めて、まさに人類の力を結集する必要があります》

(#^Д^)《南政権はアメリカに追従しヨーロッパに自衛隊と艦娘を送り出しましたが、これは帝国主義の復活です!!南政権は、皆さんの危機を煽り、また、大日本帝国を造ろうとしています!!》

(゚、゚トソン《今回ヨーロッパにおいて、深海棲艦は人類側の警戒網をすり抜け、明確に我々の裏を掻く形で電撃的に侵攻してきました。彼らの動きは知性的であり、極めて危険なものです》

(#^Д^)《深海棲艦には高い知能がある個体もいるそうです!なら話し合いができるじゃないか!それをしないのは、政権の怠慢だ!!!》

(゚、゚トソン《ベルリンとパリは敵の手に落ちました。ストックホルム、マドリードも時間の問題です。そして彼らの侵攻はワルシャワ、ロンドン、モスクワ、ニューヨーク、北京、東京へと続いていきます》

(#^Д^)《だいたい遠い遠いヨーロッパは我々に関係ない!何のために行くのか!!ただ戦争がしたいだけじゃないのか!!》

(゚、゚トソン《最早、深海棲艦の脅威は過去のものではありません》

(#^Д^)《深海棲艦に脅威なんか無い!皆皆与党の嘘だ!!》



456: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/29(木) 05:50:24.71 ID:8fhCldZ+0


(゚、゚トソン《明らかに、全世界が戦時下にあります》

(#^Д^)《戦争をもう一回起こさないように、皆で声を上げていこうじゃありませんか!!!!》



457: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/29(木) 06:08:49.92 ID:8fhCldZ+0







「…………君の名前は、よく知っているよ。正直、君ほどの戦車乗りが志願してくれるなら、これほどありがたいことはない」

「そして、君は年齢その他の条件も満たしている。本来私に、君が軍に入隊することを止める権利はない。

否、寧ろ歓迎しなければならないのだろうな」

「なら、早く手続きを終えてちょうだい。私は拉致されたり銃で脅されたりして、無理やりここに来たわけじゃない。明確に私の意志でここに居るわ」

「…………」

「なんなら、国歌でも歌って見せる?」

「……………君は、まだ若い。未来がある。戦争なんかに身を投じるべきじゃない」

「………」

「それに、こんなことは言いたくないが君はあのチームで差別されていたとも聞く。六年前、制海権・制空権が世界規模で一時的に喪失される前にこの地に来たばかりに、日本に帰ることができなかった、とも」

「…………」

「君がもし、君を差別した人々を見返すために志願したというのなら、私は君の志願書を破り捨てなければならない。私の役目は軍を勝たせることではあっても、若者を死に急がせることではないからね」



458: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/29(木) 06:22:49.91 ID:8fhCldZ+0

「………貴方の言うとおり、見返してやりたいという気持ちが無いと言えば嘘になる。差別してきた奴らが憎くないなんて、絶対に言えない」

「でも、私にバカなことをしてきたのは“そいつら”であってドイツそのものじゃない。ハインみたいに理解してくれた奴も、一緒に肩を並べて“私の戦車道”に付き合ってくれた子たちも居る」

「何より、私よりもっともっと酷いことを言われても、もっともっと深くこの国を愛して、守ろうとしている人たちが居る。実際に私を守ってくれた人たちが居る」

「だから私は、逃げたくない。ここで、この国のために戦いたい」

「………これほど残酷な言い方もないが、君の血は半分が日本人だ」

「ええ、でももう半分はドイツ人よ」

「…………はぁ」








(`∠´)「────東欧連合軍にようこそ。歓迎するよ、エミ=ナカスガ2等義勇戦車兵」

「……Jawohl!!」



464: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/29(木) 10:54:55.53 ID:8fhCldZ+0









北欧が人類の領土ではなくなってから、今日で十日目になる。

ワチャワチャと内輪揉めが大好きな人類にしては珍しいことに、ドイツ・イタリア・ポーランドを主力とした【東欧連合軍】は極めて迅速に設立された。また抽出された防衛戦力は瞬く間に最前線に展開し深海棲艦の津波のような攻勢を何とか押しとどめている。

ドイツ軍の残存艦娘戦力が僅か18隻という致命的な損害を被っていたため絶望的な戦況が予想されたが、イタリアが自軍艦娘の他国派遣に全く“渋り”を見せなかったことやオーベル川におけるポーランド軍の頑強な抵抗、米軍・スペイン軍の全面的な協力によってフランス戦線がギリギリのところで踏みとどまったことなどが相互に影響し最悪の結末を免れていた。

(=゚ω゚)ノ「────とはいえ、絶望的なんて言葉すら生ぬるい状況であることには変わりないよぅ」

机の上に広がったヨーロッパ全域の地図を指さしながら、イヨウ中佐は断言する。

(=゚ω゚)ノ「我々ドイツは艦娘の大半を北部戦線で損失し、頼みの綱のイタリアは練度はともかく数の面で決して潤沢とは言い難い。対し、深海棲艦側は展開数だけで優に10000隻超という途方もない戦力が欧州に展開しつつある。コペンハーゲンとルールに築かれた奴らの橋頭堡───【泊地】を攻略しない限り、我々に勝ち目はない」

〈::゚-゚〉「ですが、我々の保有戦力ではどれだけつぎ込んだとしても敵制圧区域への浸透は不可能です。火力、数、場合によっては機動力においてすら我々は上回られかねません」

(=゚ω゚)ノ「無論、我々の戦力のみで攻勢に移れるとはベル達上層部もこれっぽっちも考えちゃ居ないよぅ」

イッシ=ストーシュル少佐の問いに、イヨウ中佐の指がイタリアへと伸びる赤い矢印を指し示す。



465: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/29(木) 11:03:42.30 ID:8fhCldZ+0


(=゚ω゚)ノ「日本、アメリカを中心に、現在世界各国でヨーロッパ反攻作戦に向けた国際的な統合軍設立の動きが高まっているよぅ。実際日本からは、既にインドを経由して空母機動艦隊と先遣編成された艦娘部隊がイタリアに向かっている。

また、太平洋を通してアメリカ東海岸にも空母艦娘が集結しつつある。カナダやブラジルも協力を表明した。

日米海軍を中核とした、【人類連合軍】の集結完了。そこまで現戦線を何としても維持し続けることが、今後の僕らの任務だよぅ」

ξ;゚⊿-)ξ「……気の遠くなりそうな話ね」
  _
(;゚∀゚)「長丁場とかそういうレベルじゃねえなこれ。何ヶ月どころか、下手したら年越すぜ」

ジョルジュとツンが、中佐の言葉に呻き声を上げる。特に陸海空路全てが機能せずフランスへの帰国の術を失っているツンからすれば、その解決が遠い先とはなかなかハードな現実だろうな。

ξ゚⊿゚)ξ「……」

('A`)「……?」

ξ*゚⊿゚)ξ「…………んっん!」

眼が合った。赤面された。咳払いされた。

え?何?ズボンのチャックでも開いてたか?
  _
( ゚∀゚)「死ね」

('A`)「えっ」
  _
( ゚∀゚)「死ね」

やだ……同僚が凄く恐い……。



467: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/29(木) 11:39:28.39 ID:8fhCldZ+0

イヨウ中佐は、現ドイツ軍の最前線をなぞる。口調は砕けたものだが、その眼差しは刃のように鋭かった。

(=゚ω゚)ノ「我々機動迎撃大隊の役割は、ドイツ戦線における敵艦隊への臨機応変な対処。ま、有り体に言っちまうなら便利屋だよぅ。

深海棲艦の攻勢に対し、常に不利な地点を補強し、戦況を互角以上に持っていく………とりあえず、休暇申請が絶望的に降りないことだけは確かだよぅ」

('A`)「……休暇なんざない方がマシですよ。うっかり休もうものなら病室で一週間の素敵なバカンスをプレゼントされかねない」

(=゚ω゚)ノ「それもそうだよぅ」

ブリーフィングルームの中が笑い声に満ちたが、俺からすれば割と本気で笑い事じゃない。

つーかあんな怪我だったのによく1週間で戦線復帰できたな俺。アレか、ドイツの技術力はって奴か。

(=゚ω゚)ノ「とはいえ、我々の手元にはリスボンやベルリンを生き抜いた歴戦の精鋭部隊と貴重な戦車、機動車両が相当数配備されている。

加えて、アメリカ軍の命令で一時的に東欧連合軍に身を置くことになったサイ大尉の部隊も後日合流予定だよぅ」

( ゚д゚ )「例の新設部隊の件はどうなりました?ほら、対ヒト型に特化した白兵部隊の編成は?」

(=゚ω゚)ノ「残念ながらアレは白紙化したよぅ。フランス軍が身を以て無謀さを示してくれたからね」

(;'A`)「…………」

別段俺に責任のあるものではないし、イヨウ中佐もそんな意味で口にしたわけではないだろう。それでも、なんとも言えない罪悪感に居心地が悪くなる。

俺が軽巡棲姫を文字通りの白兵戦で仕留めたという話は、ベルリン放棄が決定したその日の内にヨーロッパ全土を駆け巡る。

砲弾や銃弾は完全に防ぐが人間の身体は障壁を透過できる、そして障壁下の体表硬度は人間のそれとかわらず、急所も共通している───もたらされたこれらの情報は、原理の追求もそこそこに巨大な衝撃を軍部に与える。

そして、それに窮地の極みにあったフランス軍が飛びついた。

膨大な数の深海棲艦によって全方面の防衛線が崩壊し錯乱状態にあったフランス軍は、あろうことか即席の銃剣突撃隊を編制して戦艦タ級flagshipを旗艦としたパリ侵攻部隊に突撃させちまった。

……結果については“パリが人肉のミンチでまみれた”とだけ伝えておく。

俺のあの軽巡棲姫に対する一撃は、心理の隙を突き、油断を突き、はったりをかまして辛うじて加えたものだ。いわば搦め手につぐ搦め手と運の産物であり、正攻法からはほど遠い。

そもそも、針鼠のように武装した軍艦に肉弾突撃をかけたとてたどり着く前に圧倒的な火力で殲滅されるのがオチだ。加えて深海棲艦は膂力でも人間を凌駕しているため、肉薄に成功してもなお対処される可能性も十分にあり得る。

結局のところ、よほど完璧に奇襲をこなすか、向こうがまともに身動きが取れない地形におびき寄せて多少の犠牲に目をつむり強襲するか、或いは尋常ならざる手練れの兵士が肉薄に成功するか、まぁどれも現実味のない話だ。



468: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/29(木) 11:57:46.04 ID:8fhCldZ+0

(=゚ω゚)ノ「……さて。このように、我が部隊は今後深海棲艦と戦うにおいて非常に優秀な戦力が揃っている。ストーシュル少佐とデレ中尉指揮下の戦車隊、コンツィ中尉指揮下の機動車両部隊、そしてヴォーグルソン大尉指揮下のアメリカ海兵隊………僕の稚拙な指揮を補ってあまりある、最高のメンバーと言っても過言ではない部隊だ」

(ⅲд )「」

中佐の言葉を聞いて、ミルナ中尉の顔に青い線が降りる。

……あの人真面目だからなぁ。大方、中佐が拙いなら自分の指揮はどうなんだと本気で反省してしまっているのだろう。

(=゚ω゚)ノ「しかしながら、敵は何せ地上を闊歩する軍艦だ、しかも今や数においても我々に対して優勢となっている。人員がどれほど優秀であっても、対処できるレベルには限りがある。

そのため────我々は根本的な“火力”も補わなければならない」

('A`)「………え?」

ここで何故か、イヨウ中佐は俺に視線を転じた。

とてつもなく、イヤな予感がする。

それこそ、リ級がバイクで突っ込んでくる直前とどっこいどっこいの、イヤな予感が。

(=゚ω゚)ノ「諸君、喜ぶよぅ。

我々は、世界で初めて艦娘・陸軍の正式な混合部隊として設立することになった」



470: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/29(木) 12:21:26.08 ID:8fhCldZ+0

 
……扉を開けてブリーフィングルームに入ってきたそいつは、ずかずかとホワイトボードの前まで進み出て腰に手を当て仁王立ちになる。

肩が露出し、身体にピタリと張り付いた“HENTAI”仕様の軍服。目深に被るアイゼンクロイツを付けた軍帽の下から、見るからにやる気に満ちあふれた両眼が俺達を見つめていた。

(=゚ω゚)ノ「彼女は我が隊で最も部隊運用が高い者に───ドク=マントイフェル少尉の指揮下に入って貰う。上層部、本人ともに許可は取っているよぅ。なお、君に拒否権はない」

(ノA`)「」

ξ;゚⊿゚)ξ「」

恐れていた事態、恐れていた中佐の言葉に額を抑えた。何故かツンも身体を強張らせていたが、その理由を考える余裕がないほど強烈な目眩が俺を襲う。

提督のまねごとってだけでも割と勘弁願いたいのに、よりによって「こいつ」か。

俺の気持ちを知ってか知らずか、かつて戦艦フッドを海の藻屑に変えた“ドイツ海軍最強の艦娘”は満面の笑みで俺に右手を差し出した。

「Bismarck zweiよ。

これからはKameradじゃなくてAdmiralと呼んだ方がいいかしら?」

('A`)「勘弁してくれ………」

絶望的な気分で差し出された手を握り返しながら、俺は深く深くため息をついた。






('A`)「昇進なんてまっぴらゴメンだよ。休暇の次にな」

…………心の底から、マンドクセぇ。



471: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/29(木) 12:22:10.37 ID:8fhCldZ+0

~('A`)はベルリンの雨に打たれるようです~

完!こr



472: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/29(木) 12:23:27.05 ID:8fhCldZ+0






.



473: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/29(木) 12:23:55.36 ID:8fhCldZ+0






.



474: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/29(木) 12:24:30.65 ID:8fhCldZ+0







( T)「『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』『パラノーマル・アクティビティ』を代表とした、あえてドキュメンタリー風に撮られた映画を『モキュメンタリー』と言う」

よう、俺だ。何やってるかって?
趣味でやってる俺の映画論の授業だ。受講者はクソ映画四天王しかいない
教科書は主に荒木飛呂彦大先生の著書を使用している。ええ事書いてんやでこれ……

( T)「武器人間もこの手法で撮られた映画で……と、時間か」

不知火「構いません。続きを」

( T)「いやお前らこの後五十鈴と対潜訓練あるだろシバき回されるぞ。俺が」

不満顔なお三方には悪いが、五十鈴は本当に俺のことシバき回しかねないので中途半端ではあるが授業を切り上げる
天龍は多少遅れても甘いのにあいつはマジで色々と厳しい。サマーシーズンは水着でうろついてる癖に

( T)「では来週も受けてくれるかな?」

\いいともー/

( T)「はい、お疲れ様でした」

毎度お決まりのやりとりで締め、三人は談笑しながら教室を出る
その背中を見送った後、黒板消しを手に取り板書を消そうとすると

叢雲「司令官」

入れ替わりに、いつも以上に厳しい顔をした我らが初期艦にして副司令艦の叢雲が声を掛けてきた
あれ……?俺なんか怒られるような事したっけ……?



475: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/29(木) 12:26:19.12 ID:8fhCldZ+0

(;T)「す……すいません……」

叢雲「何が?」

とりあえず謝っといたが、どうやら叱りに来たようではないらしい

(?T)「怖い顔して入ってくるからだろ……笑えよベジータ」

叢雲「誰がM字ハゲよ」

(?T)「サイヤ人の王子に対する酷え風評被害。どうしたよ」

叢雲「海軍本部から連絡よ」

(?T)「シカトしとけ」

叢雲「アホか。ロマさんからなんだけど」

持ってた黒板消しが手から滑り落ち、膝に白粉を粧す
嘘だろ……クソめんどくせえ……

(;T)「クソめんどくせえ……」

叢雲「出てる出てる本音出てる。着歴見てみたら?」

ポケットに突っ込んでいたスマホを確認してみると、三件の着信履歴が表示される
このまま無視してFGOの種火集めに興じたい所だが、更に面倒になるので嫌々掛け直す他ない
そもそも叢雲が伝えに来た段階であの野郎はこいつに直接電話をしたんだろう
人の弱みに付け込みやがって。三日三晩耳元で羽虫が飛び回ればいいと思った

(?T)「やだぁ……めんどい……」

叢雲「ガキか。早く掛けなさい緊急の用かもしれないでしょ?」

(?T)「時雨に受け答えさせたい……」

叢雲「ロマさんの知能レベルがあのバカと同じになるじゃない。いいから早く!!」

(?T)「ハァ……」

着歴を無視して時雨に電話を掛ける

時雨《死ね》

(?T)「お前が死ね」

コール一回もしないうちに、スピーカーから罵倒が返ってくる。何なのこいつ

(?T)「M-1教室、ダッシュで来い」

時雨《お前が来い》

(?T)「叢雲が怒ってるぞ」

叢雲「ちょっと」

通話が切れ、慌ただしい足音が近づいてくる
これだからバカは扱いやすくて助かる

時雨「ごめんなさい!!」

叢雲「アンタと同じ反応じゃない」

(?T)「お前が怖いのが悪い」



476: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/29(木) 12:27:57.33 ID:8fhCldZ+0

叢雲「さっさとロマさんに掛けなさい。次はキレるわよ」

時雨「お、怒ってるんじゃないの?」

叢雲「怒ってないわようるさいわね。三つ編み毟り取るわよ?」

時雨「やっぱり怒ってるじゃないか!!」

これ以上のおふざけは許されなさそうだ。観念して着歴を押す
数回のコールの後、うんざりするほど耳にした聞き覚えのある低音ボイスが返ってくる

(?T)「死ね。俺だ」

《なんだ貴様第一声から。てめえが死ね》

時雨「誰に電話してるの?なんで僕呼ばれたの?」

叢雲「ロマさんよ」

時雨「なんであの野郎への電話で僕が呼び出されなきゃいけないのさ……」

叢雲「嫌がらせじゃない?」

時雨「僕に対する?あいつに対する?」

叢雲「両方」

(?T)「おう、おう……いや、暇だけど……おう、今その辺ヤバいんだってな」

(?T)「えっ、えっ?はっ?ええ……急過ぎへん……?」

時雨「またサプライズ出撃かな?」

叢雲「ロシア」

時雨「へっ?」

叢雲「ロシア正規軍への助っ人として駆り出されるわ」

時雨「……遠くない?」

叢雲「サバンナちほーの時よりマシでしょ」

時雨「どうして知ってるのさ?」

叢雲「真っ先に私に電話が掛かって来て一切合切説明されたから」

時雨「提督って最高責任者だよね?」

叢雲「その筈よねぇ」

(?T)「ハーーーーーーーーーー……拒否権ないんだろどうせ……クソが……すぐにヤンジャン読めねえだろ……」

(?T)「いや我が輩も辛いって知らねーよお前はそれが本業だろうが」

叢雲「アンタもそれが本業よ」

(?T)「黙ってろ叢雲。わーったよクソが行けばいいんだろ行けば」

(?T)「ちなみに俺も戦……ですよね知ってました椅子に座り過ぎていぼ痔になれ」

(?T)「装備そっちで用意しとけよ俺なんも持ってかねえからな。は?余裕ですし?深海棲艦なんて素手で余裕ですし?」



477: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/29(木) 12:30:30.64 ID:8fhCldZ+0

( T)「……はい、はい、ああ、うん、解った。ああ、そんじゃあ現地で」

( T)「ああ待て!!ちょっと電話代わるから!!」

電話を切ろうとした奴を止め、スマホを時雨に渡す

( T)「ロマだ。嫌がらせしろ」

時雨「任せろ。もしもしいぼ痔マン?時雨だy切ったよあの野郎」

( T)「連れねえな……」

時雨「白露型一の美少女にこの仕打ちは無いんじゃないかな?」

( T)「やかましい」

叢雲「ロマさんもアンタらのお遊びに付き合うほど暇じゃないんでしょ」

電話の相手は、海上自衛隊一等海尉にして『海軍』准将
百隻の深海棲艦を相手取り、犠牲者0で快勝した『イツクシマ作戦』の立役者にして
かつて戦場を共にした旧知の仲であり、キングダム初期の軍師になる前の河了貂萌えのド変態クソ野郎

( ФωФ)

杉浦六真である
勝手見知った仲からは、『ロマ』と呼ばれている

( T)「ロシアかぁ~~~~……またややこしい場所でよォ~~~~……」

叢雲「ウチが駆り出されるって事はよっぽど切羽詰まってるようね」

( T)「リスボン沖以来どこもかしこもガタガタになってんからなぁ……」

そろそろかとは予感していたが、実際指令が来ると気持ち的にしんどい
無駄に数だけは多いクソザコ深海ナメクジの癖に俺を煩わせないでほしい。無条件で死んでほしい

( T)「ハァ~~~~~~……時雨」

時雨「ヤダ」

( T)「ピロシキ食いに行くぞ」

時雨「絶対ヤダ」

( T)「行くぞ」

とは言え、これも仕事だ

( T)「叢雲、六人ほど見繕ってくれ。派手な戦だ。とびきりイカれた連中を連れて行く」

叢雲「既に。はい」

叢雲は小脇に抱えていたタブレット端末を差し出す
こいつの仕事の早さには毎回舌を巻く。俺いらんのとちゃうか?

( T)「ハハァ、ご機嫌なメンバーだ。お相手が可哀想にならぁ」

叢雲「とっくに収集掛けて会議室で待機させてるわ。さっきすれ違った不知火も今し方」

( T)「よし、ブリーフィングが済み次第状況開始だ」

時雨「本当に僕も行くの?」

( T)「行くぞ」

時雨「おやつは何百円まで?」

( T)「遊びに行くんじゃねえんだぞ。だが、まぁ……」

( T)「千円まで許可する」



478: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/29(木) 12:32:42.30 ID:8fhCldZ+0

~('A`)はベルリンの雨に打たれるようです~

完!これ



479: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/29(木) 12:36:20.82 ID:8fhCldZ+0

というわけで、ほぼほぼ二ヶ月にわたる激闘、皆様のおかげで無事完走させていただきました。更新の合間合間に入る支援レスの数々、本当に心の底から嬉しく励みになりました。

特にスランプで更新が出来ない日が続いたときなどは、読んでくれる人、待っていてくれる人がいるということは本当に嬉しいことでした。

でもマッ鎮の人にムカデ人間にされそうなんです助けて



481: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/29(木) 12:42:22.48 ID:8fhCldZ+0

で、通知事項としては見ての通りあの「地獄の血みどろマッスル鎮守府」とシェアワールドをさせていただけることとなりました。正直お話を持ちかけられたときの驚きは例えようがないもので、本当に嬉しい限りです。マッ鎮さんあらためてありがとうございます。

でも人肉饅頭とムカデとピンクフラミンゴは勘弁して下さい。

ではまた次回、マッ鎮とのシェア作品か(,,゚Д゚)(*゚ー゚)の日常回か、どちらかでお会いできればと思います。

ご静聴、ご助言、支援、誠にありがとうございました。



484: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/29(木) 12:54:26.04 ID:8fhCldZ+0

過去作一覧

歌丸「お待たせいたしました」提督「大喜利のコーナーです」

ダージリン「こんな言葉を知っていて?大喜利はいいぞ」歌丸「三枚やって」

( ^ω^)はホームレスのようです

( ・∀・)戦車道連盟広報部のようです

( ´_ゝ`)流石な鎮守府の門番さんのようです(´<_` )

( ^ω^)戦車道史、学びます!のようです

川 ゚ -゚)艦娘専門店へようこそ!のようです

('A`)が深海棲艦と戦うようです

( ^ω^)戦車道史、教えます!のようです

|w´‐ _‐ノv空に軌跡を描くようです

l从・∀・ノ!リ人 流石なれでぃたちの大騒動のようです

( ^ω^)その時、戦車道史が動いた!のようです

( ´_ゝ`)流石な鎮守府が安価で運営されるようです(´<_` )

川д川 ある鎮守府が呪われたようです

川д川 ウホウホ!!鎮守府に颯爽と登場した貞子ゴリラ、トランスフォームウホ!!



486: ◆vVnRDWXUNzh3 2017/06/29(木) 12:59:47.75 ID:8fhCldZ+0

この作品は、地獄の血みどろマッスル鎮守府、鬱田ドクオ、ss速報vip、シン・ゴジラの提供でお送りしました
no title



元スレ
('A`)はベルリンの雨に打たれるようです
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1494212892/
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         コメント一覧 (24)

          • 1. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年06月29日 16:12
          • 面白いとは思うけど
            いろいろ要素詰め込みすぎ、あと鑑これガルパン?をクロスさせてるみたいだけど
            どっちつかずの中途半端な気もする、陸上なら艦これである必要性がほぼない
            戦車だけでいいじゃんって気がする、それこそ何ぞ想像の変なクリーチャでもだして
            戦車でやっつけるぞーでいいじゃねぇ?って気がしたよ
          • 2. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年06月29日 17:17
          • ほとんのこと言うとガルパンは戦車戦の再現じゃなくて
            女子高生が部活で実物大のリアル戦車戦ゲームやってるだけだから
            あんまし軍事モノとのクロスとか合わないんだよなあ

            まあメインは艦これみたいだからなんでもいいけど
          • 3. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年06月29日 17:22
          • なんか…クソに仕上がったね
          • 4. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年06月29日 17:23
          • マッ鎮とのシェアワールドとかまた何処かで霊的な存在が現れそう
          • 5. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年06月29日 21:04
          • 手刀でも飛んでくるんかと思ったわ
          • 6. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年06月29日 23:45
          • ブロッケンJrーーー!
          • 7. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年06月30日 00:20
          • クッソ面白くない
          • 8. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年06月30日 01:24
          • 名作っぽいタイトルから糞煮込み
            これよりAIのほうが見たいわ
          • 9. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年06月30日 12:39
          • クソつまらない
          • 10. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年06月30日 17:37
          • 俺は好きだぜこういうの
          • 11. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年06月30日 20:41
          • うん、面白かった。続きが楽しみだ。
          • 12. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年07月01日 02:29
          • 立て、JD!
            お前がブロッケンJrから受け継いだのは技だけか!?
          • 13. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年07月01日 03:27
          • 良かったけど前作のほうが好きだな
          • 14. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年07月01日 15:39
          • 戦車道いらなくね
            あと展開がテンプレかつ雑い
          • 15. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年07月01日 15:48
          • パンプキンとか空想入った軍事もの好きだからかなり面白い まだ途中だけど
            つまんないってのは他に面白い作品をしってるから?粗がひどいから?実はただあなたの嗜好に軍事があってないからじゃない?もし前者なら興味があるから逆に教えてほしい それがギャグのみとか意味なく最強主人公ハーレムとかじゃないよな?
            どっちかというと戦車道っていう設定が余分に感じるだけで米1のはなんかおかしくないか? 作者の話のイメージのために戦車道なだけで別に搭乗員が男性軍人の戦車隊でいいわけだし
          • 16. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年07月01日 18:12
          • これ最強主人公ものじゃん
          • 17. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年07月01日 18:55
          • 普通の艦これssなら絶対出てこない兵器が活躍してるのとかすごい新鮮だった。もちろん粗い面も眼にはついたけどね

            ※16
            言うほど無双してたか?まあ知力チートの感はあったがリ級にはボッコボコだったし最終的に首都奪われてるんやで?
          • 18. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年07月02日 16:54
          • 5 尋常ならざる手練の兵による深海棲艦に対する白兵戦・・マッ鎮・・あっ・・(察し
          • 19. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年07月15日 13:53
          • 十分おもしろかったけど読者様は厳しいねぇ
          • 20. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年11月26日 00:11
          • 読者様はあらゆる創作にケチをつけ論い文句言う機械みたいなもんだからね、哀れなものだ
            面白かった、続きが楽しみだ
          • 21. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年01月14日 00:14
          • 最後の方に出てきた着物着た深海棲艦らしき奴って何者?オリジナル?そこだけすごくモヤモヤする
          • 22. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年01月15日 17:04
          • ※21
            襷とか櫛の形とか容姿から察するに駆逐古姫だと思う。
          • 23. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年01月20日 14:39
          • ※22
            おお!ありがとうございます〜
          • 24. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2018年04月15日 17:31
          • 続き期待

        はじめに

        コメント、はてブなどなど
        ありがとうございます(`・ω・´)

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