【ポケモン】しんのすけ「アローラ地方を冒険するゾ」その5【クレしん】
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ウルトラビースト大量出現事件から1ヶ月後……。
ウルトラビーストの襲撃によって、荒涼とした街並みと化してしまったハウオリシティでは人々はポケモンと供に壊された建物や道路の修復といった地道な復興作業を行ったおかげで、以前の街並みを取り戻しつつあった。
ビーストも一部を除いてこの世界に順応してきたのか、ホールが開かれた当初と比べて獰猛さはなりを潜めていた。それでも、キャプテンやしまキングたちはビーストの動向に目を光らせている。
ハウ「じーちゃーん! 頼まれた角材持ってきたよー」
ハラ「うむ、ではそちらに積んでおいてくれますかな」
ハウ「うんーガオガエン、おねがいー」
ガオガエン「ガオッ」ドスンッ
グズマ「グソクムシャ! そこのガレキにアクアブレイクだ」
グソクムシャ「オオオッ!」ブンッ!
ドゴッ!!
パラパラパラ
ハラ「むおっ!?」
ハラ「これ、グズマ! 壊すにしても加減がありましょうぞ! 破片が周りに当たると危険ですぞ」
グズマ「そら、今度はそっちの柱、ブッ壊しな!」
グソクムシャ「ズモォォッ!」ブンッ!
ドゴッ!!
ハラ「こ、これっ……調子に乗っていると自分が痛い目に……」
ヒュウウウ……
ゴンッ!
グズマ「おおっ……! おおおおお!!」ジタバタジタバタ!
したっぱB「グズマさん! 大丈夫ッスカ!?」
ハラ「言わんこっちゃありませんな」
ドラコ「ああ、でかいコブが……」
スッチー「まぁ、大きいコブ。写真に撮ってPoketterに投稿しましょ、スカりん」
スカりん「そうだねスッチー。僕たちも写ろうよ!」
グズマ「オメーらイチャイチャしてねぇで手伝えや!」
しんのすけ「ほっほーい!」
グズマ「あ? じゃがいも小僧……」
ハウ「おーしんのすけー!」フリフリ
しんのすけ「よ、師匠!」
ドラコ「師匠じゃねぇって言ってるだろ!」
ハラ「しんのすけにみさえさん、体調はいかがですかな?」
みさえ「ええ、エーテル財団の方々のおかげでなんとか」
ハラ「それはなによりですな」
みさえ「差し入れ持ってきたので、よかったらどうぞ」つマラサダ
ハラ「おお! それはありがたいですな。ではハウ、グズマ、休憩にしますかな」
ハウ「わーい! いっしょに食べよーよー」
しんのすけ「やれやれ、付き合ってあげますか」
グズマ「フン……」
ガオガエン「ガオ~」ムシャムシャ
グソクムシャ「ズモォ……」ムシャムシャグソクムシャ
ハラ「人とポケモンが力を合わせ、街を復興させる……。うむ、よき流れですな」
しんのすけ「てゆーか、なんでくさやのおじさんはハラのおじさんと一緒にいるの?」
グズマ「グズマだ! わざと言ってるだろ……」
ハラ「グズマはなにを隠そう、昔このハラの弟子でしてな」
ハウ「ふーん、元スカル団のボスがじーちゃんの弟子……」
ハウ「って、ええーっ! 初耳だよー!」
しんのすけ「なんで弟子やめちゃったの?」
ロトム図鑑「スケスケの下着ドロボーしたからだよ」
グズマ「んなわけねぇだろ! ブタ! 島巡りだとかキャプテンだとかくだらねぇ風習にいちいち拘るのが面倒だったからだよ」
しんのすけ「人生損してますなぁ。人と出会うのは自分を高める経験になりますぞ」
みさえ「偉そうに……。あんたの場合、お姉さん目当てでしょ」
ハラ「グズマ! 相手の良さを認め、さらに上をいくようにせい! 人に!ポケモンにもまれ! 己の赤心みつめるのだ」
ハラ「さっきのガレキの破片がわかりやすいだろう。壊すことばかりに集中し、ガレキの破片がどこへ飛び散るかもわからないままだから、痛い目を見るのだ」
グズマ「なんと言われようと、ブッ壊すのがオレさまのやりかたよぉ!いまだに師匠のつもりかよ? オレ様があんたを見限ったんだ」
しんのすけ「うーん、そんなに壊すのが好きなら解体業でも始めたらいいのに」
みさえ「いいわねぇ。たくさん人に頼られるかもしれないわよ?」
グズマ「るせーよオバサン! 気安くオレさまに指図するんじゃねぇ!」
みさえ「誰がオバサンよ! あ゛あ゛? もういっぺん言うてみい!」グリグリグリ!!
グズマ「いだだだだ! やめろやめろ!!」
ハラ「しまキングの名において、この街の復興を手伝わせ、一人前のトレーナーにする! それをもってスカル団の罪を償わせる証とさせてくれ」
しんのすけ「ふつつかものですが、どうぞ」ペコリ
グズマ「お前が勝手に決めてんじゃねーよ……」イテテ
ハラ「わはは。2人ともいろんなところに行くのですな! ポケモンや人に出会うことで、人生は面白くなりますぞ!」
グズマ「クッ……」
グズマ(――師匠)
ハラ「……それにしても、あれから1ヶ月も経つのですな」
みさえ「そうですね。なんだかあっという間な気がしますね。みんな大変な思いをしたというのに」
ハウ「ルザミーネさんの具合はどうなのー?」
みさえ「まだ、なんとも言えないわ……眠っているみたい」
ロトム図鑑「むしろあの毒を喰らって1ヶ月で復帰したしんのすけとお前が異質な気もするぞ」
みさえ「どーゆー意味よ! えっ?」
ハウ「リーリエも大変だろうなーおれも時間ができたら、ルザミーネさんのお見舞いに行こっかなー」
エーテルパラダイス 医務室
リーリエ「ウツロイドさんの……毒ですか?」
ザオボー「はい、UB01……ウツロイドには、寄生能力があります。ですが、ウツロイドは寄生した対象を操るわけではありません」
ザオボー「対象の能力を極度に引き上げて、自分の身を守らせるのですよ。そのために、寄生する対象に神経毒を注入するのです」
ひろし「神経毒?」
ひまわり「たい?」
ザオボー「ウツロイドの毒には強力な覚醒作用があり、寄生された対象には、極度の興奮と自我の開放が発生――つまり、ウツロイドに寄生された対象は心身の能力を強制的に100パーセント引き出され、あるがままに、ありのままに振舞ってしまう……ということですよ」
グラジオ「母上がビーストに執着したのも、恐らくウルトラホールの実験中に偶然ウツロイドと出くわし、その時受けた毒が原因……とも考えられるな」
ひろし「……しんのすけを操ったのも、その毒と能力を代表が応用したってとこか。ウツロイドではなく、代表の身を守らせるためにしんのすけの自我を逆に抑えてたんだな」
リーリエ「……しんちゃんもみさえさんもウツロイドさんにとりつかれて……神経毒を注入されていましたが、なぜかあさまだけ意識を失ったのでしょう?」
ザオボー「代表が注入された毒の量は2人の比ではありませんからね。心身に影響が出てしまうのも明々白々でしょう」
リーリエ「治療薬はないんですか?」
ザオボー「今のところはありません。ですが、代表がウツロイドをゲットしているおかげで、現在その個体から血清を精製中ですよ」
ひろし「血清はどのくらいで出来るんだ?」
ザオボー「わかりませんねえ。今はしぜんかいふくの特性を持つサニーゴやヒトデマンに、少量の毒を注入して抗体を作らせているのですが、個体によって抗体を作るスピードはまちまちですからね」
ザオボー「……ともかく、あなたのお子さんと奥さんについては、最低でも1ヶ月間ここに入院させて様子を見てみましょう」
グラジオ「オレもできる限り様々な方面へアプローチをかけるつもりだが、ザオボーも早めに頼む」
ザオボー「ええ、ええ、お任せを。必ずや、代表の意識を取り戻してみせましょう」
ザオボー(結局あの後ヒラに戻ってしまいましたが、イチからやり直してもう一度支部長に返り咲くチャンスです。アイシャルリターン、です)
ウィーン
ひろし「ビーストたちの残した爪あとはとてつもなく大きい、か」
リーリエ「かあさま……早く目を覚まして欲しいです」
グラジオ「今は血清が出来るのを待つしかないな……。一応、他にアテが無いとも言えないが……」
ひろし「本当か? どんな?」
グラジオ「それについてはいずれ話す。情報が不確かだからな……もう少し調べておきたいんだ」
リーリエ「博士から? わかりました」
ひろし「俺もしんのすけとみさえの見舞いに行くか。リーリエちゃんは代表のところへ行ったらどうだ?」
リーリエ「いえ、わたしもしんちゃんのお見舞いに……。ずっとかあさまに付きっきりでしたから、寂しがっているでしょうし」
ひろし「そっか、ありがとな」
リーリエ「いいえ、わたしも今までしんちゃんに助けてもらいましたから」
グラジオ「じゃ、オレが呼ぶまでの間、待っててくれ」
スタスタ
ひろし「よし、俺たちも行こうぜ」
リーリエ「はい。……でも、やっぱりしんちゃんもみさえさんも不安です。かあさまのように意識が失わないだけ、良い方なのは分かりますが……」
リーリエ「本当にあの時はびっくりしちゃいました。靴の臭いで記憶を取り戻して目を覚ますなんて、聞いたことありませんから……」
ひろし「世の中理屈だけじゃないってことさ。時に家族の絆は、不可能を可能にするんだ。リーリエちゃんにも、分かる時が来るって」
リーリエ「そう……ですね!」
ひまわり「たい!」
リーリエ(ただ、やっぱり臭いで解決ってなんだか不潔で釈然としませんが……)
ひろし「入るぜー!」コンコン
リーリエ「お邪魔します」
リーリエ(しんちゃん……容態はどうなのでしょうか……)
期待と不安が入り混じりながら、病室のドアを開ける2人。そこでひろしとリーリエが目撃したものとは……。
ビッケ「はい、しんのすけさん。あ~ん」
しんのすけ「あ~ん♪」パクッ
しんのすけ「ん~おいちーい」デレー
ビッケ「うふふ、それはよかったです」ニコニコ
みさえ「……」ハア
ひろし「し、しんのすけ……」
ひまわり「ケッ!」
リーリエ「……」ビキッ
しんのすけ「なーに? オラ今忙しいんだけど」ジロッ
ひろし「どこが忙しいんだよ! ビッケさんにあーんしてもらって迷惑かけてんじゃねぇよ! 羨ましいけどさ」
みさえ「あ?」ギロッ
ビッケ「いえいえ、いいんですよ。しんのすけさんには、ビーストのことがありますし……私もこれくらいでよければお役に立てますから」
しんのすけ「そうそう」
ひろし「そうそうじゃないだろ!」
リーリエ「ビッケさん……」ゴゴゴゴ
ビッケ「は、はい?」ビクッ
リーリエ「しんちゃんの面倒を見ていただいてありがとうございます。後はわたしがやるので、どうぞ休んでください」
ビッケ「え? ですが……」
リーリエ「休んでください。後は、わたしが、やりますので」
ビッケ「は、はい!」テクテク
しんのすけ「あーん! ビッケおねいさーん!」
リーリエ「出て行かせたの、じゃないです! ビッケさんにもお仕事があるんです! しんちゃんのものじゃありません!」ムスッ
リーリエ「まったくもうっ、しんちゃんはわたしがいなきゃダメなんですから!」
しんのすけ「それ……オラに対する当て馬?」
リーリエ「……当てつけって言いたいんですか? 」
しんのすけ「ふーんだ! だいたい、オラ1人でも妖怪メノクラゲオババとビーストなんてへっちゃらだし。今回はたまたま、お尻の調子が出なかっただけだもん!」
リーリエ「へぇ? そうなんですか。わたしとカザマさんたちがいないと、ずっとしんちゃんはかあさまとビーストさんの息子になっていたんですよ?」
しんのすけ「あーもう! あっち行ってよ!」プイッ
しんのすけ(…………)
しんのすけ「……オラをお助けしてくれてありがと」ボソッ
リーリエ「ふふっ、どういたしまして。わたし、しんちゃんを守るって約束したでしょ? これからも、わたしが守っていきますから――」ナデナデ
ひろし「みさえ、調子はどうだ?」
みさえ「えぇ、あなたとしんのすけのおかげですこぶる良くなったわ」
ひろし「わ、悪かったって……」
リーリエ「……ええ、まだかあさまは――屋敷でずっと、眠っています」
みさえ「そうなの……」
リーリエ「はい、ですがザオボーさんもビッケさんも、かあさまが捕まえたウツロイドさんの毒から血清を作るみたいで……それで治ると良いのですが」
みさえ「早く目覚めるといいわね」
リーリエ「みさえさんとしんちゃんは、ここに入院してからお身体の体調はいかがですか? なにかおかしなところとかありませんか?」
しんのすけ「オラ、ビッケさんを見ると胸がキュンってなってぇ。こりゃ入院が必要ですなぁ」
ひろし「健康そうでなによりだよ……!」
みさえ「そうね……私もなんともないわ。でも、そのウツロイドっていうポケモンの毒で、私もしんのすけもどうなるかわからないものね」
リーリエ「ひろしさんも、もし2人になにかあったら、すぐにビッケさんとザオボーさんを呼んでくださいね。すぐに対応しますから」
ひろし「おう、ありがとな」
しんのすけ「ま、かーちゃんはなんとなく妖怪メノクラゲオババになってからただでさえ強い凶暴性がもっと増した気がするけどね」
みさえ「なんですってえぇぇっ! どこが凶暴性が増したっていうのよ!」ガバッ!
しんのすけ「ひいいっ! 今まさにそうじゃーん!」ダッ
ウワァァァ!!
ひろし「……こうして見ると、本当になにも変わってねぇんだけどなあ」
リーリエ「そうですね。それがかえって怖いのですけれども」
トントン
ウィーン
グラジオ「リーリエ、いるか?」
リーリエ「にいさま?」
しんのすけ「おおっクジラくん!」
グラジオ「すぐにシークレットラボへ来てくれ。ククイ博士が呼んでいる」
リーリエ「わかりました」コクン
リーリエ「じゃあしんちゃん、野原さん、またお見舞いに来ますね」
みさえ「うん、ありがとね」
しんのすけ「次はなんかお土産持ってきてねー」
ウィーン
みさえ「……」
みさえ「あなた……あのね」
ひろし「ああ」
みさえ「さっきはリーリエちゃんの前で強がっていたんだけれども、本当は……」
ひろし「変なところでもあるのか?」
みさえ「不思議な気分なの。……今はあなたやしんのすけ達がいるから落ち着いていられるけれど……」
みさえ「1人でいると、すぐしんのすけを探したり、あなたに連絡しようとしたり……これがウツロイドの毒なのかしら? 私、なんだか怖いの」
ひろし「……そうか」
――ウツロイドの毒には強力な覚醒作用があり、寄生された対象には、極度の興奮と自我の開放が発生――つまり、ウツロイドに寄生された対象は心身の能力を強制的に100パーセント引き出され、あるがままに、ありのままに振舞ってしまう
ひろし(……自我の開放って、こういうことを言うんだな)
みさえ「ありがとう、あなた……」ウルッ
ひろし「愛する妻のためなら、なんだってするさ。みさえ……」
しんのすけ「やれやれ、子供はお邪魔ですからどこか行ってますかな」
ひろし「意味知ってて言ってんのかよっ!」
しんのすけ「ぶりぶりざえもん、暇だからお散歩しに行こーよ」
ロトム図鑑「いいだろう。そろそろパズルゲーに飽きてきたしな」
みさえ「ちょっと、どこへ行くのよ?」
しんのすけ「ビッケおねいさんのとこー」
ひろし「おいおい、さっきリーリエちゃんに迷惑かけるなって言われたばかりだろうが」
しんのすけ「じゃ、そゆことでー」ウィーン
ひろし「お、おいっ、しんのすけ……」
グラジオ「連れてきたぞ」
ククイ博士「おぉ、来たね! リーリエ!」
リーリエ「博士。どうなさったのですか?」
ククイ博士「あぁ、実は2人の力を借りたいという人たちがいてね。もうそろそろ、ここにやってくるはずなんだ」
リーリエ「わたしとにいさまの力を……ですか?」
グラジオ「それはどんな人物なんだ……?」
ククイ博士「僕も詳しくは知らない。ただ、国際警察に所属する人物、とだけ聞かされているけれどもね」
リーリエ「こっ、国際警察ですか?!」
グラジオ「……まず間違いなく、ビーストの事に関わることだな」
リーリエ「どうして国際警察の方が、わたしたちの力を?」
ククイ博士「それは本人たちから直接聞くといいだろう。大丈夫、僕がついているから、ワイドガードを使った気分でいればいいよ!」
リーリエ「はぁ……」
コンコンッ!
グラジオ「……さっそく、来たようだな」
ククイ博士「はい、どうぞ!」
ウィーン!
???「失礼します」
部屋の中に入ってきたのは、紫色の髪を結ったスーツ姿の女性と、くたびれたトレンチコートをスーツの上に羽織った男性だった。
???「……君がリーリエくんとグラジオくんだね? わたしの名は『ハンサム』。所謂、国際警察です。そしてこちらは私のボス……」
???「私は『リラ』と申します。国際警察特務機関「UB」対策本部部長です」
リーリエ「は、初めまして。リーリエです」
リーリエ(リラさん……綺麗な方です)
グラジオ「グラジオだ。今はエーテル財団の代表代理をしている。よろしく頼む」
ハンサム「自己紹介が互いに済んだところで早速だが質問だ、君たちがUB―Parasiteと接触したのは事実だろうか?」
グラジオ「Parasite……ウツロイドのことだな」
リーリエ「かあさまと融合したビーストさんのことをおっしゃっているのなら……」
ハンサム「……!」
リラ「……やはりそうですか」
ハンサム「もともと望まずしてこの世界に落とされたビーストは、攻撃的になり……その結果、アローラに与えた被害は甚大だ。それは、君たちもよく知っているだろう?」
グラジオ「ああ」
ハンサム「それに加え、ウルトラビーストはこの世界の理を越えた存在。ゆえに通常のボールでは捕らえることはできない。最高の捕獲性能を持つマスターボールでも不可能だ」
リラ「……我々に課せられた任務は3つ」
リラ「1つ目は未知なるUBの生態の調査をすること」
リラ「2つ目はUBを警戒し、その危険から人々を守ること」
リラ「3つ目はUBを保護……もしくは殲滅すること」
リーリエ「殲滅……?」
ハンサム「もしUBがこの世界に仇なす害獣であれば、存在を消すよう上層部から命令を受けているのだ」
ククイ博士「僕も同感だね。ビーストも生きる世界が違うとは言え、れっきとしたポケモンだよ。人間の勝手で存在を消す真似をするのはやぶさかではないね」
リラ「もちろん、私もハンサムさんもそのようなことは望んでいない……」
リラ「UBであれ、ひとつの命。保護し、救いたいと考えています」
ハンサム「だがUBの保護……。言い換えると、捕獲は殲滅よりも手が掛かる。我らには戦力もない状態だ」
リラ「長くなってしまいましたし、単刀直入に申し上げます……」
リラ「この事件に深く関わり、UBの知識と対策法を研究しているあなた方に手を貸して欲しいのです」
グラジオ「待て……ならば代表代理のオレに言えばいい話だ。なぜリーリエを巻き込む必要がある」
リーリエ「ほしぐもちゃん……いえ、ルナアーラさんのことですね」
グラジオ&ククイ博士「!」
リラ「ウルトラホールを作り出す力を持つアローラの伝説のポケモン、ルナアーラをゲットしたトレーナーであるリーリエさん。あなたの力が必要不可欠なのです」
ククイ博士「そうか、ルナアーラの力を使ってウルトラホールを作り出し、ビーストをウルトラスペースに帰してやる……ということだね」
リラ「UBを捕獲するためのウルトラボールを量産するにも、コストと時間がかかってしまいます。そのあいだにも、ビーストによる被害が広がってしまいます。ですから、ルナアーラの力を用いて、UBを元の世界へ帰して頂きたいのです」
リーリエ「ほしぐもちゃんの……」
リーリエはウルトラボールを取り出して、中にいるルナアーラを案じるようにボールを見つめた。
ふと、ルザミーネに利用されたコスモッグの光景が蘇ってくる
――ケージの中のコスモッグをまるごと使えば、ウルトラホールもたくさん……。ふふっ、どれだけのビーストちゃんが来るのかしら?
――さぁ、おいでなさい! ビーストちゃん!
リーリエ「……」
リラ「どうかお願いします……。私たちはビーストを救いたい。そのためには、あなたの力が不可欠なのです」
しんのすけ「うんうん、話が弾んでおるようですな」
全員「!?」
ハンサム「ど、どこから声が?!」
ハンサム「ええっ?!」クルッ
ハンサムが後ろを向くと、しんのすけがハンサムの背中を掴んで貼り付いていた!
しんのすけ「よ!」
ククイ博士「しんのすけ……!」
リーリエ「しんちゃん!」
ハンサム「君は一体いつから私の背中に?」
しんのすけ「んっとねー、おじさんとおねいさんが外でアローラの美味しい飯どころの話ししながら部屋の中に入ってくるところからだゾ」
リラ「最初から聞いていた、ということですね……」ハァ
ハンサム(背中に子供がいたことに気がつかないまま話を進めていたとは。国際警察失格だ……)orz
リーリエ「勝手に入ってきたらダメですって!」
しんのすけ「いやぁビッケおねいさんのところへ遊びに行こうと思ったら、新しいおねいさんを見つけちゃいまして。5歳児としてほっとけないでしょ」
グラジオ「オマエのような5歳児がこの世に2人といるか……!」
しんのすけ「ねぇねぇおねいさん。警察なんでしょ? オラ恋泥棒だから逮捕してー」
ククイ博士「大丈夫、しんのすけも今回のビースト事件の中心人物なんだ。リーリエと供にルザミーネをウツロイドから開放し、ビーストの世界から連れ帰ってきたんだ。それに、この子はウルトラビーストの捕獲に成功している」
リラ「なるほど、この子がルザミーネに連れ去られた例の子……ですね」
しんのすけ「どう? オラとデートしたくなった?」
ハンサム「ボス、さすがにこんな小さな子をチームに入れるのはいかがなものかと思うぞ」
リラ「そうですね……腕の立つトレーナーという点では評価はできますけれども」
しんのすけ「うーん、おじさんの声ってなんかとーちゃんと似てるから頭が混乱するゾ」
ハンサム「そういう君も、以前カロスで出会った男と同じ語尾で話すものだからややこしいな」
ロトム図鑑「フッ……久しぶりだな。ハンサム、リラ」
ハンサム「キミは!」
リラ「BRX2……ですか?」
ロトム図鑑「そのコードネームで呼ぶな! 今の私はレオナルド・ロトブリオだ!」
ロトム図鑑「当たり前だ。何度も言っただろ。私は国際警察元ハッカー兼サイバーテロ部隊所属だと」
グラジオ「そんなこと、誰が信じるか……」
ハンサム「そうか……アローラにいるという話は聞いていたが、この子のロトム図鑑になっていたとはな」
しんのすけ「図鑑らしいことはひとつもしてないけどもね」
ロトム図鑑「お前がポケモンを登録しないからだろうが!」
リラ「話が脱線しかかっているので元に戻しますね。……リーリエさん、どうか我々のチームに加わって欲しいのです」
リーリエ「……ごめんなさい。考える時間を頂けませんか?」
ハンサム「考える時間と言うと?」
リーリエ「……リラさん、ハンサムさん、あなた方がビーストさんを元の世界に戻したいという気持ちは伝わってきました。わたしも、出来ることなら力になりたいです」
リーリエ「ですがルナアーラさんは、わたしにとって最初に心を通わせたポケモンさんで……家族でもあるんです。トレーナーさん同士のポケモン勝負はともかく、ビーストさんと命がけで戦って、危ない目に遭わせたくないという気持ちもあります」
リーリエ「それに、かあさまのこともあります。今はまだ眠ったままですが……心配ですので、そばにいてあげたいのです」
リラ「家族――ですか」
ハンサム「なるほどな……」
グラジオ「1ヶ月……。ずいぶん長い時間を与えるんだな」
ハンサム「1ヶ月ではどのみちアローラにいるすべてのビーストを保護するのは不可能だ。それに、リーリエくんがポケモンを家族と思う気持ちは、私もボスも分からんではないのだ。だからこそ、ルナアーラや母親と向き合って真剣に考えてもらいたいのだ」
リラ「そのあいだ、グラジオさん。あなたがその間我々のチームに加わってサポートしていただけませんか?」
グラジオ「ああ、オレもシルヴァディも、ビーストとは戦い慣れている。出来ることなら、ウルトラボールの量産化も検討してみるつもりだ」
リラ「ありがとうございます」ペコリ
リーリエ「ごめんなさい、ワガママを言ってしまって……」
ハンサム「いや、気にしなくていいさ。こういう事態も想定済みだ」
しんのすけ「ねぇオラは? オラ、リラおねいさんといた~い」
ククイ博士「しんのすけ、君にはまだ大大試練が残っているじゃないか。そのためにも、今は安静にしてなきゃダメだろ?」
ハンサム「UBの世界で、キミが体験したことやBRX2の活躍も聞いておきたいしな」
しんのすけ「ハッサムのおじさんは別に来なくていいけど」
ハンサム「むむっ、これは手痛いな……。それとハッサムではなくて、ハンサムだよ」
リラ「私たちは各地のモーテルを中心に行動するつもりです。連絡先を渡しておきますね。何かあれば、こちらから連絡します」
グラジオ「ああ」
しんのすけ「いいなぁ……」
リーリエ「さ、しんちゃん。戻りましょう」
ハンサム「しかしアローラでキミと出会うとは夢にも思わなかったよ。これもひとつの運命というべきか……」
ロトム図鑑「国際警察に戻るつもりはないぞ。あっちではいちいちネットするたびに口うるさく言われるからな」
ロトム図鑑「それに、国際警察のやり方は私のセンスに合わん。正直言ってダサいぜ」
ハンサム「ああ、私たちも戻って来いとは言わない。お前は国際警察とは無関係のポケモンになったんだ。好きに生きるといい」
ロトム図鑑「当たり前田のクラッカー」
リラとハンサムの話を聞いたリーリエは、屋敷の一室で機械に繋がれてベッドに眠るルザミーネのそばにいた。
お見舞いに飾られていた花を取り替えながら、目を閉じて穏やかに眠っているルザミーネを見つめた。
リーリエ「かあさま……わたし、国際警察にチームに入らないかって誘われたんです」
リーリエ「でも、ほしぐもちゃんにビーストを戦わせるのが、わたし、どうしても不安で……迷ってしまって」
リーリエ「かあさまだったら、なんて言いますか?」
「ルザミン的にはー、まずはリラちゃんの携帯番号とメルアドの調査が大事かなーって」
リーリエ「え?」
「せっかく今世紀最強のトレーナーの野原しんのすけくんがいるのに、無視するなんて、ルザミン悲しいもん」
リーリエ「……そこでなにしているんですか? しんちゃん」
しんのすけ「あ、バレた」
リーリエ「はぁ、またついてきたんですね」
しんのすけ「ずっとこっちにいるから暇なもんで」
リーリエ「しんちゃん、ちょっと外で話しませんか?」
しんのすけ「オラ、これからカザマくんたちのトイレニングしなきゃいけないのに」
リーリエ「さっき暇って言ってましたよね?」
最初に口を開いたのはリーリエだった。
リーリエ「……しんちゃんは、どう思いますか?」
しんのすけ「なにが? ハンサムっていう名前なのに大してハンサムじゃないおじさんのこと?」
リーリエ「そっちじゃないです! 失礼ですよ、もうっ」
リーリエ「国際警察の方と一緒に、アローラにいるビーストさんを元の世界に返すっていう作戦のことですよ」
しんのすけ「ほーほー」
リーリエ「リラさんのお話を聞いて、わたしもほしぐもちゃんも、力を合わせてアローラの人たちを助けることができるかもって思うと、なんだか嬉しかったんです」
リーリエ「……でも、一方でほしぐもちゃんがコスモッグだった頃のことを思い出して、そう思うと危ないことをさせたくないと言うか……複雑な気持ちなんです」
リーリエ「トレーナーとして、ほしぐもちゃんと戦えばいいのか、それとも守るべきか分からないです」
リーリエ「先輩のしんちゃんだったら、もしカザマさんたちとビーストさんを元の世界に帰すために手伝って欲しいとリラさんから頼まれたら、どうなさいますか?」
しんのすけ「オラだったら、まずはリラちゃんとおデートかなぁ、えへへー」
リーリエ「あ、あのですね……そういうことを聞いてるわけじゃないんです」
リーリエ「ほしぐもちゃんに……ですか?」
しんのすけ「そ、オラもカザマくんたちと遊ぶとき、なにして遊ぶかいつも相談してるし。ま、大体ネネちゃんが強制的にリアルおままごとにするけどね」
リーリエ「クスッ、しんちゃんのようにポケモンさんと話せるわけじゃないんです」
リーリエ「でも、話せなくても、ポケモンさんと心を通わせられるのなら……ほしぐもちゃんの気持ちも、きっとわかりますよね!」
しんのすけ(オラもリラおねいさんと心を通わせたい)
リーリエ「しんちゃん、わたしほしぐもちゃんの気持ちも聞いてみたいと思います。相談に乗ってくれて、ありがとう!」
しんのすけ「困ったらいつでもオラに聞きに来なさい。恋の悩みもナンパ術も不良に絡まれた時の対処法も受け付けますぞ」
リーリエ「はい、頑張ります!」グッ
エーテルパラダイスの職員用病室で野原一家とリーリエが他愛のない世間話をして過ごしていると、ビッケとザオボーが病室に入ってきた。
ビッケ「野原さん、朗報ですよ。ウツロイドの毒に対する血清が出来上がりました」
ひろし「本当か?!」ガタッ
ザオボー「ええ、ヒトデマンやサニーゴを中心に試したのですが、目論見通り抗体が採取できましたので思ったより早く出来上がりました。これを注射すれば、しんのすけさんとみさえさんの毒は綺麗さっぱり中和されるはずです」
しんのすけ「ちゅ、注射?」ビクッ
リーリエ「かあさまも、それで毒が治るのでしょうか?」
ビッケ「……一回での完治は難しいでしょうね。なにせ、ウツロイドの神経毒は、代表のカラダの隅々まで行き渡っていますから。……ですが、これは大きな一歩だと思いますよ」
リーリエ「そうですね……! この調子でいけば、いつかかあさまも元通りになります!」
ザオボー「では、最初に誰が注射を受けますか?」
しんのすけ「オ、オラ遠慮しときます」
みさえ「なに言ってるの。ちゃんと注射受けなさい!」
しんのすけ「かーちゃん先受けなよ。早くいつもの優しいママに戻って欲しいし」
みさえ「あら、嬉しいわ。でもね、ママは先にしんちゃんから治って欲しいなって思うの」
しんのすけ「ホントはかーちゃんが注射受けたくないだけのクセに」
みさえ「いいからさっさと受けんかい!」
しんのすけ「やだやだーっ! どうせ注射されるなら20代前半のナースにされたいのー!」ジタバタ
ザオボー「やれやれ、後がつかえているというのに。これだからお子様は面倒なのですよ」
リーリエ「はあ……どうしたらよいのでしょう?」
ひろし「ま、しゃあねえな。こうするっきゃないか――」
ひろし「あの、ビッケさん」ゴショゴショ
ビッケ「はい? ……ふふ、分かりました」
ビッケ「しんのすけさん」
しんのすけ「な、なに?」
ビッケ「もし注射受けてくださったら、高い高いしてあげますよ♪」ニコニコ
しんのすけ「まじ~? いいの~?」デレデレ
ビッケ「ザオボーさん、今です」ボソッ
ぷっす
――い や あ あ あ あ あ あ あ あ あ ん ! ! !
しんのすけ「あー、あんときはホントに痛い目みたなー」
ハウ「注射ならしょうがないでしょー。ビッケさんに見とれて注射打たれるなんてしんのすけらしいけどー」
みさえ「でも、エーテル財団って本当にすごいわね。ウツロイドの毒の血清をすぐ作れちゃうなんて」
ハラ「アローラのポケモンと人間の力が成せる技……というところですかな」
テクテク
???「よう! しんのすけ! ハウ!」
しんのすけ&ハウ「その声、はかせー?」
ククイ博士「まずは、退院おめでとうだね! 調子はどうだい?」
しんのすけ「たまにおねいさんを見ると胸がキュンとなって、恋の病になっちゃったり」
ククイ博士「調子はばっちりって捉えておくよ。ハウもお疲れ様!」
ククイ博士「エーテルパラダイスでマーレインやバーネット博士と一緒にウルトラビーストについて話し合っていたのさ。研究所については、リリィタウンに簡易研究所を建てているよ」
ハラ「おお、ククイが帰ってきたということは、いよいよ始めるということですな!」
みさえ「なにをですか?」
しんのすけ「ナマコブシ投げ?」
ククイ博士「大大試練さ!」
しんのすけ&ハウ&グズマ&みさえ「大大試練!?」
ククイ博士「そう、しんのすけもハウも、4つの島の大試練を達成したからね。後はいよいよ、ラナキラマウンテンで総仕上げだ!」
しんのすけ「てゆうか、ハウくんポニ島の大試練たっせーしたの?」
ハウ「うんー! しんのすけが入院してる間に、ポニ島に行ってハプウさんと戦ったのー」
グズマ「オイオイ、こんな状況だっていうのに、大大試練なんてやるつもりかよ」
ククイ博士「こんな状況だからさ、グズマ君!」
ハラ「確かにアローラはウルトラビーストの襲撃で、甚大な被害を出してしまいました。アローラだけではない。そこにいる人々やポケモンの心に、大きな傷をいまだ負っています」
ククイ博士「だからこそ、君たち2人が大大試練を受けて、島巡りチャンピオンになる姿を見せることで、みんなに元気を与えてあげたいんだ!」
ククイ博士「それに、他の地方にもアローラ地方は元気であることをアピールしたい! だから、今回の大大試練は全国ネットでライブ中継も行うつもりだよ!」
ククイ博士「ええ、奥さん。しんのすけくんもハウくんも、全国に映るんですよ!」
しんのすけ「らいぶちゅーけーって? 新手のキス?」
ロトム図鑑「ライブ中継とは、簡単に言えば生放送だな。お前たち2人が、全国に映し出されるのだ」
しんのすけ「おおっ、オラたちテレビに出られるの?! 美人のアナウンサーとか来る?」
ハウ「わー、タレントになったみたいー!」
ククイ博士「テレビというより、ポケチューブによるライブ配信がメインになるかな。でも、インターネットだから世界中のトレーナーが君たちの活躍を見るってことなんだぜ!」
みさえ「すごいじゃない、2人とも!」
ハラ「このハラ、孫がネットに映ってハラハラしますぞ!」
グズマ「はっ、馬鹿らしい……」
みさえ「それで、いつ大大試練は行われるんですか?」
ククイ博士「明日の夕方! 後は君たち次第だよ!」
みさえ「えっ?!」
ハウ「明日ー! はやいー!」
ハウ「うわー今からワクワクしてきたー! ねーガオガエンー!」ウキウキ
ガオガエン「ガオーッ!」ムキムキッ!
ジュナイパー(ボール)『大大試練……思えば長い道のりだったなぁ』
しんのすけ「どんな試練なの?」
ククイ博士「それは秘密さ。君自身の目で確かめて欲しい」
しんのすけ「おケチ!」
グズマ「秘密にするようなもんじゃねぇだろ。各島のしまキングとクィーンに勝ち抜く儀式じゃねぇか」
みさえ「他の地方のポケモンリーグみたいなシステムね」
ククイ博士「それはこれまでの話しさ。なにせ、ハラさんも他のしまキングたちも各々の島を復興するための指揮を取らなきゃいけないからね」
ククイ博士「そのためにこの1ヶ月間、しまキングたちと話し合いをして、今回だけ特別に、新たな試練を用意したんだ」
ハウ「そっかー。でも、たくさんの試練こなしてーたくさんのポケモンたちと戦ってきたもんねー! どんな試練でもしんのすけとおれの2人ならこなせるよー!」
しんのすけ「おうー頑張れよー」
ハウ「しんのすけもやるのー!」
ククイ博士「ハハハ、それじゃあ2人とも明日に備えて入念に準備を怠らず、ゆっくり休めよ」
しんのすけ「ほーい!」
ハウ「うんー!」
リリィタウン仮設住宅にて
ひろし(電話)『いよいよしんのすけとハウくんは大大試練を受けるんだな!』
みさえ「ええ、しかも明日なの」
ひろし『明日か……しんのすけとハウくんの活躍を見に行きてえなあ』
みさえ「それがね、ラナキラマウンテンは4つの島の大試練を受けた子としまキングたちに認められた人以外は入っちゃいけないんですって。普通の人が入るには危険って言うらしいから……」
ひろし『あー、そりゃ仕方ないか。だけど、みさえもスマホを使えば見れるだろ?』
みさえ「ええ、でもメレメレ島の人たちと一緒に、ハラさんの家に集まって2人を応援するらしいから、私そこに行こうと思うの」
ひろし『いいねぇ、俺もそうするかな。それで、しんのすけは今何してるんだ?』
ロトム図鑑「ブキッ!」
みさえ「……ぶりぶりざえもん使って、アクション仮面の動画見てるみたい」
ひろし『……そ、そうか。まぁいつも通りで安心したというか、不安というか……』
みさえ「ここまで来たのならきっと大丈夫よ。しんのすけもあの子も、強くなったんだから」
ひろし『そうだな、しんのすけを信じよう』
みさえ「大大試練を達成したら、しんのすけアローラの有名人よ! 私も鼻が高くなるわぁ」
ひろし「……そうだな」
みさえ「どうしたの? なんだか急に声に張りが無くなったみたいだけど」
ひろし『いや、なんでもないんだ……それじゃ、もうすぐうちに着くから』
みさえ「うん、それじゃあね」ガチャッ
ヨワシ『でも、大大試練ってなにをするのかな?』
キテルグマ『名前からして、普通の試練や大試練とは一味違うってことよね』
フェローチェ『みなさんからお聞きになった話をまとめると、誰かと戦うのではないでしょうか?』
ミミッキュ『でも、しまキングたちは来ないって博士は言ってたよね』
ヨワシ『戦うとは限らないんじゃないかな。カキさんやマオさんの試練のように、ものを探したり、間違いを見つけたりするのかも』
キテルグマ『マサオくん、もう少し頭を働かせなさいよ。そんな子供だましな試練を二回もすると思う? それに、全国に放送されるのよ?』
ヨワシ『ご、ごめん……』
しんのすけ「わかった! お笑いの審査!」
ロトム図鑑「あるいはババ抜き」
キテルグマ『あたしの話聞いてなかったのかよ、あんたらは!』
しんのすけ「お笑いならテレビ映えすると思って」
フェローチェ『さすがしん様! ちゃんと自分たちが映されることも考えて予想するなんて!』
キテルグマ『どこがじゃ!』
ジュナイパー『絶対違うと思う』
しんのすけたち「!」
ミミッキュ『どんな試練が来ても、今までのように僕たちが力を合わせていこう。それで、みんなで島巡りチャンピオンになろう!』
ヨワシ『ボーちゃん……』
ミミッキュ『自分と仲間の力を信じれば、なれる!』スッ
ジュナイパー『そうだね! 今まで僕たちはそうやってたくさんの試練を達成してきたんだ。怖いものなんてないよ!』スッ
ボーちゃんの影の手の上に、カザマの翼が乗せられる。
ヨワシ『わかった、ボーちゃん! 僕やってみるよ!』スッ
キテルグマ『ここまで来たら、とことんやりましょ!』スッ
フェローチェ『あいも、しん様を勝利へ導けるのなら、みなさんに力をお貸ししますわ!』スッ
翼の上に次々と手やヒレが乗せられて、最後にしんのすけの手が乗っかる。
しんのすけ「よーし、いつもの奴行くゾ!」
ジュナイパー『アローラ防衛隊ッ!』
全員「『ファイヤーーッ!!』」
ハウ「みんな、明日がんばろーねー! ゼンリョク出そーね!」
ハウは寝室の自分のベッドの上で、自分のポケモンが入っているボールたちに向かって呼びかけた。
もちろん、反応はないものの、心なしかどのボールからも気合の入った反応が帰ってきた気がする。
その中でハウは、ひとつのボールを手に取って話しかけた。
ハウ「君も、明日が晴れ舞台だねー。ガオガエンたちと一緒にゼンリョク出し切ろー!」
~もししんのすけがカヒリと出会ったら~
しんのすけ「あーミクリに弟子入りしたいなー」
???「ちょっとよろしいですか?」
しんのすけ「お?」
カヒリ「初めまして。あたし、カヒリと言います」
しんのすけ「おおっ! きれいなおねいさん! オラ野原しんのすけ5歳、暇なときはいつも浜辺に打ち上げられたナマコブシごっこしてますぅ」
カヒリ「……失礼ながら、ライチさんの大試練、空から見ていました。ヨワシに群れをまとわせられるトレーナーは中々いないので、驚きましたね」
カヒリ「最初は5歳でカプに選ばれたという話を聞いてうさんくさいと思っていましたが……なるほど、あなたはまだ幼いですが、もっと経験を積めば、間違いなく世界に羽ばたける実力者になれると思います」
しんのすけ「えっ? オラ天狗みたいに羽が生えて宇宙に飛んでっちゃうの?」
カヒリ「そういう意味での羽ばたける、という意味ではありません! 才能があるということです!」
しんのすけ「おねいさんオラを見る目ありますなあ、オラに惚れた?」
カヒリ「はあ……なんか調子、狂いますね」
カヒリ「5番アイアンとは違いますが……そうです。あたしはポケモンとゴルフを極めるため、世界中を巡っています。今はたまたま故郷のアローラに戻ってきたのです」
カヒリ「あなたの親がゴルフをなさっているのですか?」
しんのすけ「まあね、とーちゃんがいつも接待でゴルフやってんの。あとたまにかーちゃんがキャバクラから帰ってきたとーちゃんを5番アイアンでシバいてるの何度か見たから名前覚えちゃった」
カヒリ「そ、そうですか……」
カヒリ「……実はあたし、数年前にこのアローラの島巡りチャンピオンになりました。ですから、あなたの先輩ですね」
しんのすけ「いやぁオラ、おねいさんの後輩になれるなんてこーえーですなあ」
カヒリ「しんのすけくん、島巡り頑張ってください。あたし、次にあなたと会うときはゼンリョクで相手します!」
しんのすけ「オラはおねいさんとゼンリョクでおデートできればそれでぇ」
カヒリ(博士に呼ばれて来たのですが……ライチさんの大試練の時と同じ子とは思えませんね。この態度と気迫の変わり様はなんなのかしら)
カヒリ「では……失礼します」
しんのすけ「ほっほーい! またねー」
フェローチェ『しん様、お願いがあるのですが……』
しんのすけ「なに?」
フェローチェ『一度、あいの技を見て欲しいの。どれだけしん様のお役に立てられるか、キチンとアピールしたいのですわ』モジモジ
しんのすけ「えぇーめんどくさ」
フェローチェ『そうおっしゃらないで。きっとあいの魅力に気付けますから』ガシッ
キテルグマ『ケッ、よく言うわよ』
フェローチェ『なによ、あなた』キッ
キテルグマ『離してあげなさいよ、しんちゃんが嫌がってるじゃない!』ガシッ!
フェローチェ『あなたには関係なくってよ!』ググッ
ギチギチギチ
しんのすけ「あのオラ真っ二つになっちゃいそうなんですけど!」グググッ
フェローチェ『なにを言い出すのやら。ポケモンにとって大事なのはトレーナーに頼りにされるか、そうではなくって?』
キテルグマ『なによ! ちょっと触っただけでポッキリ折れそうな身体のクセに!』
フェローチェ『鈍重そうな身体。起き上がるのもさぞかし大変でしょうね』
キテルグマ『なんですってええ!!』
ジュナイパー『まぁまぁ2人とも』
ヨワシ『落ち着いてよ~。ホントにしんちゃんが死んじゃうって』
キテルグマ&フェローチェ『ふんっ!』パッ
しんのすけ「あー、裂けるチーズみたいになるとこだった」
ジュナイパー『……あいちゃん、言っちゃあなんだけど、なんでしんのすけにあそこまでアピールするんだい?』
フェローチェ『しん様は、二度もあいの命を救ってくださったもの。一度はアーカラで、二度目はウルトラスペースで……』
フェローチェ『それに、しん様はわたくしに『あい』という名前を授けていただきました。これはしん様があいをあいたらしめさせてくれる証ですわ』
キテルグマ『あんた変よ』
キテルグマ『えっらそうに! だいたい、あたしが先にしんちゃんにゲットされて旅してきたのよ』
フェローチェ『なにを言い出すのやら。ポケモンにとって大事なのはトレーナーに頼りにされるか、そうではなくって?』
キテルグマ『なによ! ちょっと触っただけでポッキリ折れそうな身体のクセに!』
フェローチェ『鈍重そうな身体。起き上がるのもさぞかし大変でしょうね』
キテルグマ『なんですってええ!!』
ジュナイパー『まぁまぁ2人とも』
ヨワシ『落ち着いてよ~。ホントにしんちゃんが死んじゃうって』
キテルグマ&フェローチェ『ふんっ!』パッ
しんのすけ「あー、裂けるチーズみたいになるとこだった」
ジュナイパー『……あいちゃん、言っちゃあなんだけど、なんでしんのすけにあそこまでアピールするんだい?』
フェローチェ『しん様は、二度もあいの命を救ってくださったもの。一度はアーカラで、二度目はウルトラスペースで……』
フェローチェ『それに、しん様はわたくしに『あい』という名前を授けていただきました。これはしん様があいをあいたらしめさせてくれる証ですわ』
キテルグマ『あんた変よ』
フェローチェ『こうなったら、どっちが好きか、どっちが頼りになるか、しん様に決めてもらいませんこと?』
キテルグマ『望むところよ! しんちゃん!』
キテルグマ『あたしのほうが好きよね? 頼りになるわよね?!』
しんのすけ「えー?」
フェローチェ『あいですよね?!』
キテルグマ『はっきりさせなさいよ!』
フェローチェ『あなたには答える義務があります!』
しんのすけ「……あのねえ」ジロッ
しんのすけ「オラ、ポケモンには興味ないの。邪魔だからあっち行くかボールに戻って」
フェローチェ『……ッ!』
フェローチェ『……かっこいい///』ポッ
キテルグマ『えっ』
フェローチェ『やっぱりしん様は他の方とは違う何かを持っていますわ!ゼッタイにあいの方へ振り向かせてみせますわん!』デレデレ
キテルグマ『……アンタ絶対変よ』
フェローチェ『しん様~!』
ジュナイパー『くそーなんであんな奴があいちゃんに……』
ヨワシ『あいちゃん……僕も助けたのに』ウルウル
ミミッキュ『女心は、難しい』
ハウオリシティ 船着場
しんのすけとハウはそれぞれ大大試練の為の準備を終えて、港に集まっていると、ククイ博士とウラウラのしまキングクチナシ、そしてアセロラが待っていた。
アセロラ「しんちゃんお久しぶり! 元気そうでなによりだよ!」
しんのすけ「アセロラちゃんもお久しぶりぶりー」
ククイ博士「2人とも……いよいよだね」
ハウ「うんー。緊張して、いっぱいマラサダ食べてきちゃったー」
しんのすけ「なんでおじさんもいるの?」
クチナシ「博士から聞いているだろ? ウラウラ島はラナキラマウンテン、そこで大大試練をすることになってるんだ。カプの村への案内役だよ」
ハラ「ハウ、多くは言わん。ひたすらゼンリョクを出して大大試練に挑むのですぞ!」
みさえ「しんのすけも、頑張って! ママもパパも、みんな応援してるから!」
ハウ「うんー! おれー絶対に島巡りチャンピオンになるからねー!」
しんのすけ「いってきまーす」
クチナシ「じゃ、行こうか。旅は道連れってね」ニヤッ
クチナシ「ここがラナキラマウンテンの麓だよ」
しんのすけ「でけー」
アセロラ「あのリフトに乗って登っていくんだよー。でも、アローラでは珍しく寒いから気をつけてね!」
しんのすけ「アセロラちゃんも行ったことあんの?」
アセロラ「キャプテンになるとき、ちょっとね」
アセロラ「アセロラ、しんちゃんもハウくんもどっちも応援してるからねー。エーテルハウスで子供達と見てるから!」
クチナシ「ま……2人ともゼンリョク出していきなってことだ。大大試練でなにがあろうとね」
ハウ「ここまで案内してくれてありがとー!」
しんのすけ「寒いのかーやだなー」
ククイ博士「よーし、それじゃあリフトに乗るよ!」
ハウ「う、うう寒いよー!」ブルブルッ
しんのすけ「やっぱりSSだからあっという間に着いたね」
ハウ「てゆうか、博士は寒くないのー?」
ククイ博士「平気さ! ぼくの心はブラストバーンよりも燃えている!」
しんのすけ「精神論って奴ですな」
ククイ博士「……それにしても、僕たちも随分遠くまで歩いて――ようやくここへ辿り着いたんだね」
そう言うと、ククイ博士はぐるりとラナキラマウンテンの山頂から大地を見下ろす。雪景色の中で、遠くにアローラの海が広がる。よく見れば、他の島やエーテルパラダイスが豆粒のように小さくだが見える。
ククイ博士「思い出さないかい? 君たちが最初にハラさんからポケモンをもらって、旅に出て……」
ククイ博士「4つの島をめぐり、試練と大試練を乗り越え……」
ククイ博士「スカル団と戦い、エーテル財団の闇に立ち向かい、ウルトラビーストにも負けなかった」
ククイ博士「たくさんの試練を経て、僕たちは今、ここにいるんだ!」
ハウ「お゛、お゛れ゛も゛や゛ばい゛がも゛―!」ガタガタ
しんのすけ「オ、オラもとんしょくになりそう……」
ククイ博士「それを言うなら、凍傷だろ」
ククイ博士「よーし、あそこに中に入れる場所があるんだ。そこで大大試練を行うんだよ」
しんのすけとハウ、続いてククイ博士が目の前にある洞窟の中へと入ると、あちらこちらに輝く鉱石が壁から生えている長い通路を歩いた。
そして、階段を登っていくと、頭上が透明のクリスタルで覆われた広間へとたどり着いた。周りには壁に沿うように放送用の機材が設置されており、クリスタルの向こう側には夕日が広がっている。
ハウ「ここが大大試練を行う場所なのー?」
ククイ博士「ああ、そうだよ!」
しんのすけ「ひろーい。野球とか出来そう。ひょっとして大大試練って野球なの?」
ククイ博士「まさか! それよりしんのすけ、君のぶりぶりざえもんを借りるよ!」
ロトム図鑑「なにをするつもりなのだ?」
ククイ博士「ライブ中継の手伝いだよ。機材と接続して、カメラを回したり、通信を安定させるようサポートして欲しいんだ」
ロトム図鑑「いいだろう。だが、後で収益の半分はよこせよ」
しんのすけ「あまり焦らさないでよ、はかせ」
ククイ博士「ああ、だけどその前に君たちに言っておくことがある」
ククイ博士「まずは、よくここまで来たぜ! 島巡りでの試練、大試練をすべて達成! 本当におめでとう!!」
ハウ「えへへー」
ククイ博士「最後に残るのは! 大大試練挑戦! お楽しみはこれからだ!」
ククイ博士「ラナキラは、島巡りの仕上げをおこなう場所! さらに伝説のポケモンに敬意をこめて、空に一番近いここで執り行われる!」
しんのすけ「伝説のポケモンといえば、ほしぐもちゃんとリーリエちゃんも見てるのかな?」
ククイ博士「もちろん!リーリエには真っ先に放送があるって伝えたからね。彼女も絶対に見ます、と自分のことのように意気込んでたよ!」
ハウ「リーリエもみんな見てるからー、絶対に達成しなきゃねー」
しんのすけ「オラのかわいい姿が全世界に生中継されるなんて……は・ず・か・し・い///」
ハウ「いつもおしりとか出してるのにー恥ずかしいもへったくれもないと思う」
ロトム図鑑「準備OKだ。放送スタートだ」
ククイ博士「よーし、たった今から放送が始まったよ。これから、大大試練の内容を伝えるね」
ククイ博士「大大試練の内容――それは」
しんのすけ&ハウ「……」ゴクッ
ククイ博士「君たちがポケモン勝負で戦うこと!」
ククイ博士「1人だ!」ビシッ
ククイ博士「島巡りチャンピオンになれるのはたった1人だけだ!」
ククイ博士「キャプテンから課せられた試練を越えて、しまキングとクィーンとの戦いを越えて――」
ククイ博士「そして最後には、一緒に困難を切り抜けてきた友も越えて――そこでやっと、君たちのうちどちらかが島巡りチャンピオンになれる!
ククイ博士「ポケモンと試練を乗り越えた強さと、お互いを知り尽くした友との戦いに勝つ心の強さ、その2つの強さを持つものが島巡りチャンピオンになれると、しまキングたちは判断した!」
しんのすけ「ほーほー……」
ククイ博士「君たちは親しい友の敗北を乗り越えるための覚悟は出来ているかい?」
ハウ「しんのすけ!」キッ!
しんのすけ「ほい!」
ハウ「おれーしんのすけが相手でも負けないからねー!」
しんのすけ「おおっ、ハウくんすごい気迫」
ハウ「本気の真剣勝負だよー! おれとーポケモンたちのーゼンリョクをぶつけて勝つからね!」ビシッ!
しんのすけ「おーし、オラだって負けないゾ! オラのゼンリョク、受けるがいい!」
ドドドドド!
ククイ博士「うん、2人ともすさまじいきあいためだ! 激しい技のやりとりからうまれるすごいポケモン勝負、期待してるぜ!」
ククイ博士「しんのすけ! ハウ! 島巡りのトリを飾り、新しいチャンピオンを生み出すにふさわしいポケモン勝負をしよう!!」
ククイ博士「それでは、島巡り最後の締めくくり――大大試練、始め!!」
大 大 試 練 開 始 !!
ポケモントレーナーの ハウが
勝負を しかけてきた!
ハウ「行くよーライチュウ!」ヒョイッ
しんのすけ「ボーちゃん、レッツラゴ!ー」ヒョイッ
ライチュウ「ライラーイッ!」ポンッ!
ミミッキュ『ボーッ!』ポンッ!
同時刻
~メレメレ島 リリィタウン~
イクヨーライチュウ!
ボーチャン、レッツラゴー!
ハラ「むおっ、始まりましたな」
ひろし「まさかしんのすけとハウくんの一騎打ちなんてな……」
みさえ「ハラさんもこの大大試練の内容を考えたんですよね。どういう理由で決めたんですか?」
ハラ「うむ……ハラを断つ思いで決断しましたな」
ハラ「本音を言えば、しんのすけもハウも、心身ともに島巡りを経て強くなりました。このようなことをせずとも、彼らは島巡りチャンピオンになれる資質があります。このハラも、そうさせてあげたかったですな」
ハラ「この大大試練で敗者はもとより、勝者は親しい者を乗り越えなければいけない覚悟を背負わなければなりません」
ハラ「そしてなにより、勝つことと負けること……それを越えたものを彼らに知ってもらうために、2人に戦ってもうことになりましたな」
ひろし「言うことは正しいが、これはどっちを応援すりゃいいのか分かんねぇな……」
みさえ「私も、複雑な気持ちね……」
ひまわり「たい……」
グズマ「……」
グラジオ「互いの手を知っている仲間同士のポケモン勝負、か。しまキングたちも考えたもんだな」
リーリエ「わたし……しんちゃんとハウさん、どっちを応援すればいいのかわからないです」
グラジオ「……だろうな。その気持ち、わからんでもないが、オレはどちらに肩入れするつもりはない」
グラジオ「オレにはこの大大試練の本質が、ポケモン勝負の勝ち負けとは別のところにあると思う」
リーリエ「勝ち負けとは別、ですか?」
グラジオ「そうだ。2人が勝ち負けを越えたものに早く気付けるか、そこが勝負の分かれ目になるだろう」
グラジオ「……リーリエ。オマエも1人のトレーナーとしてこの戦い、微塵も見逃すなよ。そして、しんのすけとハウが得たものを理解するんだ」
リーリエ「はい! わたしも、しんちゃんとハウさんの戦い、最後まで見届けるつもりですから! 2人とも、勝ち負けを越えたものを見つけられるよう応援します!」
グラジオ(この大大試練は甘さを見せたほうが脱落する。だが、この2人なら……あるいは)
グラジオ(勝ち続けることの意味……それをしんのすけとハウは知ることができるか? オマエたちの行く末、オレが見届ける!)
しんのすけ「ピカチュウとライチュウ対決、ですな」
ハウ「そりゃー見た目だけだよー」
ハウ「ライチュウ、10まんボルト!」
ライチュウ「ラーイッ! チュウウウッ!!」バチチチッ!!
ミミッキュ『ボーッ!』シューン!!
ライチュウは全身から電撃をボーちゃんに向けて放ち、すぐさまボーちゃんも光の壁を出現させる。
しかし、光の壁を貼り終えるよりも早く、ボーちゃんに10まんボルトが直撃する!
ミミッキュ『ボッ……!』カクンッ
ジュナイパー(ボール)『あのライチュウ、早い!』
しんのすけ「でんじはは使えないの?」
ジュナイパー(ボール)『無理だよ。相手はでんきタイプだから、まひさせる事はできないんだ』
ミミッキュ『でんじはでまひして身動きを封じる作戦は取れない。なら……』
ハウ(たぶんボーちゃんはおにびか、のろいをかけてくるかなー? だけど、させる前に倒させてもらうからねー!)
ライチュウ『ライラーイッ!』ゴウッ!
ミミッキュ『えいっ!』ボウッ!
ライチュウが電気をまといながら、サーフテールに乗ってボーちゃんに急接近してくると同時に、ボーちゃんも頭上に火の玉を3つ出現させてライチュウに向けて放つ!
ライチュウ『ライライチュウ!』サッサッサッ!!
ミミッキュ『は、はやい!』
襲い来る火の玉に身体を傾けながら避けていくと、ライチュウはボーちゃんに電気をまといながら突進した!
ドンッ!
ミミッキュ『ボ……!』ザザザッ!
ハウ「まだまだー! ほっぺすりすりだよー!」
しんのすけ「ほっぺすりすり……?」
ライチュウ『ラーイッ!』ギュンッ!
サーフテールから飛び降りたライチュウは頬に電気を溜めながらボーちゃんに接近すると、そのまま顔を近づけて擦り寄った。
ミミッキュ『ボボボボボボ!』ビリビリビリ!!
しんのすけ「頬ずりされてるのにボーちゃんビリビリしてる!」
ミミッキュ『ボ……身体が痺れる……!』バチッ、バチッ
ジュナイパー(ボール)『ボーちゃんがまひになっちゃうなんて……!』
ハウ『そのままもう一度スパークだよー!』
ライチュウ『ラーイッ!』バチチチッ!
再びライチュウはサーフボードに飛び乗ると、電撃をまとって再びボーちゃんへ突撃する!
ミミッキュ『ボ!』ジャキンッ!
すれ違いざま、痺れる身体をこらえて、ボーちゃんは影の鼻水を爪に変形させてライチュウに向けて振り下ろした!
ライチュウ「ライッ……!?」ザクッ!!
ミミッキュ『ボッ……』バチチッ
しんのすけ「ボーちゃん、だいじょぶ?」
ミミッキュ『ボ……あのライチュウ、とても早くて隙が無い。たぶん、僕におにびとかのろいを打たせないために速攻をかけてきてる。光の壁が張れて攻撃出来ただけでも幸い』
ミミッキュ『……とっておきの奥の手が、ある』
ジュナイパー(ボール)『奥の手?』
ミミッキュ『うん。でも……その奥の手使ったら、僕も力尽きちゃう。しんちゃん、どうする?』
しんのすけ「……やれやれ、このままボーちゃんが猫死にするのやだし、仕方ないか」
ミミッキュ『わかった。あと、猫死にじゃなくて、犬死にだよ』
しんのすけ「じゃあ奥の手ってバレないようにおにびとかやっちゃおうよ」
ミミッキュ『ボー!』
再び彼の周囲に青白い火の玉が出現する。
ハウ(せめてライチュウをやけどにさせてから退場ってところかなー? ここからが勝負どころだねー。どこまでボーちゃんのサポートを抑えられるか……)
ハウ「一気に決めるよー! ライチュウ! ボルテッカー!」
ライチュウ「ラーイッ……」バチチチチッ!!
ククイ博士「ボルテッカー……! ライチュウ系統だけが扱える、でんきタイプ最強のワザ! そこまで覚えていたとは!」
ハウ「行けー! ライチュウー!」ビシッ
ライチュウ「ヂュウウウゥッ!!」ゴウッ!!
ライチュウ自身が電気玉と化しながら、地面をえぐりおにびもかき消しながら、ボーちゃんへと突っ込んでいく!
しんのすけ「ボーちゃん!」
ミミッキュ『ボ!』ギンッ
ククイ博士「!」
バチッ!バチッ!バチッ!
時折バチバチと電気を大きく弾けさせ、ライチュウはボーちゃんへと突進し、壁に叩きつけるほどのスピードで跳ね飛ばした!
ドンッ!
ミミッキュ『うっ……』ドサッ
しんのすけ「ボーちゃん! 奥の手使うんじゃなかったの?」
ミミッキュ『……あとは……しんちゃんたちに……任せた』ガクッ
しんのすけ「そんなぁ」
ライチュウ「ライラーイ!」
しんのすけのパーティーの中で一番の厄介者であるボーちゃんを倒せて喜ぶハウ。しかし、ククイ博士は厳しい目でハウ、そしてミミッキュを見据えていた。
ククイ博士「……果たしてそうかな?」
その言葉が異変の皮切りになった。
突然、ボーちゃんの姿が被っているピカチュウの形をしたボロ布だけになった。
そして、ボーちゃんの本体らしき黒い塊が超光速でライチュウに接近すると、巨大化して覆い尽してしまった!
しんのすけ&ハウ「!?」
ライチュウ「ラ、ライッ!?」
ゴポッゴポポッ!
ライチュウ「ライッ! ライイイッ!」
ハウ「どうしたのー!? ライチュウ!!」
驚愕するしんのすけとハウ。
そして、あぶくが立つような音がひとしきり収まると、黒い塊が動き出して、ボロ袋へ戻っていく。
そして、力尽きてひんしになったライチュウが、地面に転がった。
ライチュウ「」
しんのすけ「ほーほー……」
ククイ博士(みちづれ……ボーちゃんが初めて見せる技だね)
ハウ「うー、ライチュウありがとー! 引き分けでも、ボーちゃんを倒せたもんねー」シュンッ
しんのすけ「ボーちゃん、ハウくんに好かれてますな。あとはみんなにお任せあれ」シュンッ
キテルグマ(ボール)『好かれているんじゃなくて、警戒されてるんでしょ』
ミミッキュ(ボール)『だね』
ジュナイパー(ボール)『ハウさん……敵にすると本当に強い相手だ!』
ハプウ「ふむう、相討ちか」
ハプウ「ハウはいい線行っておったな。しんのすけのミミッキュ……ボーちゃんとやらは、攻撃の起点にされるからのう。下手をすればヤツ1匹で勝敗が左右される。スピードと威力にモノを言わせて短期決戦を挑むのは正解とも言える」
ハプウ「だが、みちづれまで読みきれなかったのが失策じゃったな。もっとも、今のしんのすけの反応から見るにあやつも知らなかっただろうが……」
ハプウ「しんのすけたちのポケモンは、次にどんな出方をしてくるかわからない――それがあやつらの恐ろしいところであり、面白いところじゃ」
ハプウ「さぁて、次は何を見せてくれるのかのう。2人とも楽しみじゃ!」
しんのすけ「かかってきなさい!」スッ
ハウ「行くよー! ネッコアラ!」ヒョイッ
しんのすけ「ネネちゃん、レッツラゴー!」ヒョイッ
ネッコアラ「グーグー……」ポンッ!
キテルグマ『あたしの出番ね! 行くわよっ!』ポンッ!
ハウ「よーしネッコアラ、かわらわり!」
ネッコアラ「グー……!」ダッ!
ネッコアラは立ち上がると、手に持っているまくら木を抱えて走り出した! ネネも手に持ったピッピ人形を両手で握り締めて身構えた。
ネッコアラ「スピー!」ブンッ!!
ズンッ!
キテルグマ『――重ッ!』ググッ
光の壁を砕いた一撃が、そのままネネに振り下ろされる。かろうじてネネはピッピ人形で防ぐものの、互いに力の比べ合いが始まった。
ジュナイパー(ボール)『ボーちゃんが張った光の壁が壊されちゃった!』
しんのすけ「寝たまま攻撃するなんて、器用ですな」フムフム
キテルグマ『舐めるんじゃないわよっ! 起きて戦ってみなさいよ!』グググッ!!
ミミッキュ(ボール)『いや、ネッコアラは生まれてから死ぬまで寝てるから無理』
ハウ(このまま押し切るとーまた攻撃を我慢されちゃうかもしれないねー)
ハウ「ネッコアラー! そのままあくびだよー!」
ネッコアラ「ふぁ……」
キテルグマ『うっ!』モアッ!
キテルグマ『気持ちわるいわね! 離れなさいよ!』ブンッ!
キテルグマ『う……なにこれっ』フラッ
しんのすけ「どした? なんか酔っぱらっちゃったみたいだけど」
ジュナイパー(ボール)『さっきのあくびだ! あくびでネネちゃんが眠りそうになってるんだよ!』
しんのすけ「あくびが移っちゃったのかーよくあるある」
ヨワシ(ボール)『感心してる場合じゃないよー。このままじゃネネちゃん眠っちゃうよ!』
キテルグマ『こんなあくびくらいで、眠ってたまるもんですか!』ギュッ
キテルグマ『おりゃあああっ!!』グワッ!
ハウ「ウッドハンマーで迎え撃とー!」
ネッコアラ「グー……!」ブンッ
ネネは眠気をこらえつつ、ピッピ人形を握ってネッコアラにアームハンマーを繰り出す! ネッコアラもまくら木を抱えて、逆袈裟に振り上げるようにピッピ人形とぶつかり合う!
バチッ!
キテルグマ『うっ!』
しんのすけ「ピッピ人形が飛ばされちゃった!」
ネッコアラ「グゥー!」ブンッ!
ネッコアラのウッドハンマーがネネの頭にヒットする!
キテルグマ『うあっ!』フラッ
ドサッ
キテルグマ『ううっ……』クラッ
キテルグマ『……』zzz
しんのすけ「……倒れちゃったの?」
ククイ博士「いや、あくびの効果で眠ってるから、まだ倒れた扱いになってないよ」
ハウ「ここで一気に決めるー! 我慢を爆発させたらーこっちがやられちゃうしー」
ハウ「ネッコアラ! たたきつける!」
ネッコアラ「スピー……!」ブンッ!
キテルグマ『うあっ!』ドゴォ!
ネッコアラ「ムニャムニャ」ギュルルン!
まくら木を軸にコマのように回転しながら、ネッコアラはネネに体当たりを繰り返す!
ドコドコドコッ!!
キテルグマ『ううっ! うっ!』
しんのすけ「おわっ、ネネちゃん早く起きてー! ママー朝だぞー! 起きてー!」
ハウ「まだまだー!」
キテルグマ『うぅ……』
キテルグマ『んっ……ここは?』
ゾワッ!!
キテルグマ『!!』
「へへー……こんなところでなにしてるの?」
キテルグマ『え?』
ピッピ人形「ネネちゃん約束したよね? 必ず1匹は倒して、勝つって」
キテルグマ『え?』
ピッピ人形「へへー♪ あたしに嘘ついたの? ねぇねぇ、嘘ついたの?」
キテルグマ『そ、そんな……ネネ、嘘なんて』
ピッピ人形「さんざんわたしを武器にしてうさ晴らしに使って、挙句の果てには約束を破る。ずいぶんいい身分ね」
じりじり、とピッピ人形が赤い月をバッグに詰め寄ってくる。ネネも後ろへ下がろうとするが、恐怖のあまり足がすくんで動けない。
ピッピ人形「ネネちゃんの武器になって、うさ晴らしの道具になるのが私の存在意義なの。いっぱい私を叩いてくれないと困るの」
ピッピ人形「じゃないと、ネネちゃんのカラダ、乗っ取るから。へへー♪」
キテルグマ『ひ……ひいいっ!』
ネッコアラ「スビッ!?」ドゴォッ!!
ネネが悪夢を振り払うように思いっきり薙いだ拳が、ネッコアラにクリーンヒットした! 何度も何度も拳を振り回す。
キテルグマ『来ないで来ないで来ないで!!』ドゴッドゴッドゴッ!!
ネッコアラ「グッ……ズビッ!」
ハウ「あちゃー、眠っててもダメだったかー」
しんのすけ「おおっ、寝てても我慢するなんてネネちゃんやるー!」
ジュナイパー(ボール)『ホントにそうかな? なんか怖がってるように見えるけど』
キテルグマ『ハァハァ……夢、だったの? 今のはなに?』
ジュナイパー(ボール)『ネネちゃん、ぼーっとしてないで! しっかり!』
ハウ「だけど、向こうも相当ダメージを負ってる……。よーし、ここが勝負どころだ!」
ハウ「ネッコアラー! ウッドハンマー!」
ネッコアラ「グゥー……!」グワッ
キテルグマ『ハッ! そうだった! よくわからないけど、ネネ、こいつを倒さなきゃいけないんだっけ!』
まくら木を抱えて迫るネッコアラに対して、ネネもピッピ人形をすぐに拾って構え、攻撃の態勢を取る。
キテルグマ『おりゃああっ!!』ブゥンッ!
居合抜きをするように、互いの得物がそれぞれ相手に向かって振り抜かれていく。
ネネのピッピ人形はネッコアラの脇腹めがけて、ネッコアラのまくら木はネネの脳天めがけて振り下ろされる!
ドゴッ!
ドズムッ!
キテルグマ『うっ……!』クラッ
ネッコアラ「……!」フラッ
しんのすけ&ハウ「!!」
ほぼ同時に、キテルグマの頭にまくら木が、ピッピ人形がネッコアラの脇腹に当たって、両者が地面に倒れこむ……。
キテルグマ「」
ネッコアラ「」
ククイ博士「また、引き分けか……!」
ハウ「五分五分、だよー」
ジュナイパー(ボール)『ネネちゃん、大丈夫?』
キテルグマ(ボール)『う、うん。なんとか引き分けに持ち込めたけど……さっきの感覚、なんだったのかしら』
ミミッキュ(ボール)『鬼気迫るものが、あった』
フェローチェ(ボール)『しん様、次は誰を出しますの?』
しんのすけ「それじゃーマサオくん、行きますか!」
ヨワシ(ボール)『任せてよ!』
しんのすけ「マサオくん、レッツラゴー!」ヒョイッ!
ヨワシ(群れ)『いつもより派手にぶっぱなしてやるぜ!!』ポンッ!
シャワーズ「シャワワ!」ポンッ!
ハウ「みずポケモン対決だねー。今度は負けないよー!」キッ
しんのすけ「水着のおねいさんがいればもっと画面映えするかもね」
ハウ「こんな時でもそーゆーことしか考えないのー? シャワーズ、アクアリングだよー!」
シャワーズ「シャワッ!」ブクブクッ
ヨワシ(群れ)『なんだァ? あの輪っか』
ハウ(ハプウさんとの大試練とリーリエとの練習で、マサオに大きい攻撃当ててもー群れをバラバラにして避けちゃうことがあるからねー。だったら、確実に群れを減らすやり方で行くよー)
ジュナイパー『マサオくん! シャワーズはみずタイプだ! ハイドロポンプやねっとうを使うより、物理攻撃で攻めるんだ!』
ヨワシ『おうっ、このまま押しつぶしていくぜっ!』
マサオが巨体を動かして、シャワーズに突進して攻め込んだ。マサオのとっしんを避けきれず、シャワーズの小さな身体が弾き飛ばされる!
ズズンッ!
シャワーズ「シャワ……ッ!」
ハウ「シャワーズ! どくどくだよー!」
シャワーズ「シャワーッ!!」バシャッ!
ヨワシ『なっ……!』ビシャッ!
シャワーズの口から放たれた紫色の液体がマサオの群れに飛び散った。ヨワシたちの群れに毒が行き渡り、何匹かのヨワシが群れから離れていく。
シャワーズ「シャワワ……」シュウシュウ
しんのすけ「なんか傷が塞がってない?」
フェローチェ(ボール)『あの輪っかがシャワーズの傷を治しているようですわん』
ジュナイパー(ボール)『そうか……! ハウさんは、マサオくんの攻撃を耐えて回復しつつ、どくで確実に体力を奪いに来たんだ!』
ヨワシ『群れをバラバラにして回避されるのを警戒してきやがったな』
ミミッキュ『それだけじゃない。シャワーズは、特性でみずタイプの技を受けると回復するから実質、マサオくんはハイドロポンプもねっとうも使えない』
ヨワシ『その想いに答えてやんなきゃオスがすたるってもんだぜ! なぁしんのすけ!』
しんのすけ「おおっ、男らしい。いつもはへたれてるのに」
ヨワシ『るせーやい! 行くぜい野郎ども! 毒になんか負けんなよ!』
「ヨワーーーッ!」
マサオの号令で群れが一度バラけると、一斉にシャワーズへとなだれ込んだ。ほとんどそれぞれが体当たりするにとどまっているものの、次々とシャワーズにダメージを与えていく。
ドカドカドカッ!!
シャワーズ「シャワッ! シャワワッ!」
ヨワシ『そっちがチマチマ攻めるってんなら、こっちは一気に削りきってやるぜ!』
ククイ博士「うーむ、まさに『ふくろだたき』だね! ちょっと違うけど」
ハウ「シャワーズ、れいとうビーム!」
シャワーズ「シャワーッ!」ズピーッ!
押し寄せてくるヨワシたちに対して、シャワーズがなぎ払うようにれいとうビームを発射した。シャワーズに接近していたヨワシたちが次々と凍らされて地面に落下していく!
ヨワシ『やっべぇ! みんな戻れ!』
しかし、れいとうビームで何匹かヨワシが撃墜されて、サイズが小さくなっている。更に毒によって、ヨワシが数匹ほど離れていく。
ビキビキビキッ!
ハウ(どんどん群れが離れていくねー。でも、まだ油断はできないやー)
ハウ「シャワーズ! シャドーボール!」
シャワーズ「シャワワーッ!!」ドンッ!!
ヨワシ『このっ!』ブシュッ!
シャワーズの口から影の球体が空を切り、マサオに向かって飛んでいく。すぐさまマサオはみずでっぽうで相殺しようとするが、毒でマサオ自身弱ってることもあり、まとっているヨワシの数が少ないため、そのまま押し切られて群れが大きく散らされてしまった。
ドンッ!
ヨワシ『ぐああっ!』
シャワーズ「……」シュウウウッ
さらにその間にも、アクアリングでシャワーズの体力が回復していく。
ジュナイパー(ボール)『厄介な奴だな。ここまで来たら、次の一発で仕留めないと群れが散っちゃうよ!』
しんのすけ「おおっ、なになに?」
ヨワシ『野郎ども! ビーストと戦った時にやったアレ、やるぜ! あのちっこいのをブッ倒すぞ!』
ヨワシたち「ヨワーーッ!!」ドドドドドッ!!!
すると、再びマサオをまとっていた群れが分離する。今度はふくろたたきをするわけでも、技を回避するために取るわけでもない。
ハウ「マサオの群れが――」
ククイ博士「別のものに変わっていく!」
群れが巨大な魚の姿から、巨大ロボットの上半身へと形を変えていく。やがて、しんのすけの目の前には、慣れ親しんだロボットの姿が出来上がっていた!
しんのすけ「おおっ! カンタム!!」
ヨワシ『前に一度、お前の目を覚まさせるために見せてやったんだぜ。ま、覚えてねぇだろうが』
しんのすけ「いっけーマサオくん! カンタムパーンチッ!!」グッ!
ヨワシ(群れ)『行くぜぃ! うおりゃあっ!!』ドウッ!!
2つの豪腕を象ったヨワシたちがハイドロポンプによる推進力を得て、ロケットパンチの如くシャワーズへと飛んでいく!
ハウ「――!」
ドッゴォォォォォォッ!!!
大地を穿つ衝撃波と、爆発するようにヨワシたちがあたりに飛び散る。
しんのすけ「おーっ! マサオくんかっこいー!」ウキウキッ
ハウ「す、すごいー。今の技、なにー?」アゼン
しんのすけ「カンタムロボの必殺技、カンタムパンチだゾ」
ククイ博士(むしろヨワシの覚える技で言うなら、すてみタックルに近いね。それにしても、まさかあんな姿になってロケットパンチを放つとは……!)
霧が晴れると、倒れたシャワーズの姿があらわになり、同時にマサオのぎょぐんが解除された。
シャワーズ「シャ……シャワ」ピクピクッ
ヨワシ(単)『ううっ……もう毒が回って……動けないよぉ』クラッ
コニコシティ
カキ「まさか3回連続で引き分けになるとは……! なんて熱い勝負だ!」
マオ「珍しいこともあるんだね!」
ライチ「それだけ、今のしんのすけとハウの実力は拮抗してるってことだよ。2人は一緒に島巡りしてきたからね。仲も良いし、お互いを知り尽くしているからよ」
スイレン「……」
マオ「どうしたの? スイレン」
スイレン「あっ、その……今のヨワシ……いえ、マサオさんの姿を見て、感動しちゃって」
ライチ「そういえば、あの子はせせらぎの丘でしんのすけにゲットされたんだっけね」
スイレン「はい。ライチさんとの大試練で群れを率いた瞬間が見られなかったのがとても残念ですが……こうして勝負を通して、立派な姿が見られただけでも満足です!」
スイレン(マサオさん……他のヨワシにいじめられていたあなたが、本当に、本当にここまで強くなりましたね。嬉しいです。しんのすけさんも、マサオさんのおやになって導いていただき、ありがとうございます!)
しんのすけ「運命の赤い糸的な何かを感じますなー」
ハウ「お互いのポケモンももう2匹しか残ってないんだねー! 勝負に夢中になってたら、あっという間だったよー!」
しんのすけ「アクション仮面とか見てたら、すぐ時間が過ぎちゃうよねー」
ハウ「でも、次のバトルからはもっともっと、楽しくなると思うよー。おれもーこの子を戦わせるのは初めてだからねー」スッ
ハウが手に持ったボールを掲げると、差し込んでいる光がきらりとボールの青いカラーと網目模様を照らした。
ククイ博士「ついに来たか! ハウ!」
しんのすけ「あれって、あいちゃんに入れてるボールと同じだ!」
ジュナイパー(ボール)『まさか!』
ハウ「行くよー! マッシブーン!!」ヒョイッ
マッシブーン「ブンブーンッ!」ポンッ!
筋肉そのものといえる赤い巨躯と、ダイヤモンドより硬くて長い口吻を持つ、異形のポケモンがウルトラボールから繰り出される。
しんのすけ「ほーほー……」
マッシブーン「ブーン!」サイドチェスト!
現れたウルトラビースト、マッシブーンは自らの存在をアピールするようにマッスルポーズを決めた。
しんのすけ「どこで捕まえたの?」
ハウ「ナイショー。さーしんのすけもあいちゃんを出しなよー。水対水の次はビースト対ビーストだー!」
しんのすけ「おーうっ!」スッ
しんのすけ「あいちゃん! レッツラゴー!」ヒョイッ!
フェローチェ『お任せくださいませ!』ポンッ!
ジュナイパー(ボール)『あいちゃーん!』
ヨワシ(ボール)『がんばって、あいちゃん!』
キテルグマ(ボール)『ケッ!』
あいとマッシブーンがそれぞれにらみ合う。マッシブーンが筋肉を膨張させて、あいも片足を前に出して構えを取った。
リーリエ「ハウさんがビーストさんをゲットなさっていたなんて……。にいさまは知っていたのですか?」
グラジオ「ああ……。母上が多くのウルトラボールを用いて多くのビーストを捕獲していたのは知っているな?」
リーリエ「はい、実際にカザマさんたちと一緒に、ビーストと戦いました」
グラジオ「そこで捕獲されたビーストたちは、ここで保護して生態の観察や研究することになったんだ。今アローラにいるやせいのビーストたちの保護に役立てるために。そして、いずれは人間とポケモン、ビーストたちが共存できるようにな」
グラジオ「なにより、ポケモンはトレーナーと供にいることで真価を発揮する……だから、おやがいるビーストの観察と研究も兼ねて、ハウに母上が捕獲していたビーストの1体を託したんだ。……さすがにウツロイドやアクジキングのような危険なビーストは渡せないがな」
グラジオ「あいつなら、ビーストもポケモンも隔てなく大事にしてくれるだろうからな。ハウも、ビーストと友達になれるのは嬉しい、と快く了承してくれた」
リーリエ「マッシブーンさんとハウさんが仲良くしている姿、目に浮かびますね」
グラジオ「この対戦は、世界中にも衝撃を与えるだろう。なにせ、アローラに災いをもたらしたビーストたちが、こうして2人のトレーナーが連れて、肩を並べて戦っているんだからな」
リーリエ「ビーストも世界こそ違うけれどポケモン……博士もそう言ってましたね!」
フェローチェ『やああっ!』ブンッ!
マッシブーン「……!」バッ!
ドッ!
だが、マッシブーンも攻撃が来るのを予測していたのか、すぐさま胸の前で両腕を交差して、けたぐりを防ぐ!
フェローチェ『はっ!』ダッ!
あいも負けず、素早く背後に回り込むと、背中に向けてもう一度けたぐりを放つ。
ドゴッ!
……だが、一撃で並みのビーストを屠れるほどのあいの蹴りに、マッシブーンはびくともしなかった。
マッシブーン「ブーン……」
フェローチェ『……さすがですわん』
ハウ「マッシブーン! かみなりパンチ!」
マッシブーン「ブーンッ!」バチチチッ!
フェローチェ『うっ! これは厄介ですわね……』
フェローチェ『驚きましたわ! ウルトラスペースにいた方々と違って、とても鍛え上げられていますわん! これがトレーナーに育てられたビーストの力ですか!』
フェローチェ『ですが、わたくしだって同じです! わたくしも、しん様のお役に立つために、この世界でカザマさんたちと一緒に特訓しましたもの!』
フェローチェ『その力、とくとお見せしますわん!』キィィィン
あいは空中で態勢を立て直すと、マッシブーンに向かって両手を伸ばした。すると、青い光が両手の中心に集まり、光線が発射された!
ズピーーーッ
ハウ「マッシブーン、きあいだまーっ!」
マッシブーン「ブゥゥン!」ギュオオッ
あいに対抗するように、マッシブーンは両手を掲げて気合を込めるとと、両手のひらの上に気が集まり、光の玉を形成していく。
マッシブーン「ブンッ!」ゴウッ!
そして、あいの放ったれいとうビームに向けて、きあいだまを投げ放った!
れいとうビームにきあいだまが直撃すると、瞬く間に凍結した。
ビキビキビキッ!
ドォォォンッ!
氷の欠片と黒煙を突き破りながら、あいがマッシブーンにとびひざげりを放つ!
マッシブーン「ブゥゥンッ!」ドッ!
マッシブーンは再び両腕でとびひざげりを受け止めると、あいが地面に着地に、今度は前蹴りを繰り出した!
フェローチェ『ふっ! やっ!』ブンブンッ!
マッシブーン「ブゥゥゥン!」ガシッ! ドカッ!
マッシブーンも、あいの猛攻を受け止めるだけでなく、隙を見つけては右ストレートを振り放つ。あいも回避しつつ、押し蹴りで反撃する。
ドカ!バキッ!ドゴッ!グガッ!!
フェローチェ『ふっ! やぁ! たぁ! せい! はぁ!』
マッシブーン「ブンブンブンッ!!」
ドカ!バキッ!ドゴッ!グガッ!!
2匹のビーストによる足と拳による激しい応酬が繰り広げられ、このまま永遠に続くかと思われた。
しかし、あいは一瞬の隙を突き、マッシブーンの腹に前蹴りを打ち込んだ!
フェローチェ『やっ!』
ドゴッ!
マッシブーン「ブンッ……!?」グラッ
さらに、瞬間200km/hで繰り出されるドロップキックがマッシブーンの胸筋を押し出した。巨体を誇るマッシブーンもさすがに堪えたのか、うめき声を上げながら後退した。しかし、再び構えを取ろうとする。
マッシブーン「……」ググッ
しんのすけ「!」
フェローチェ『これで終わり、ですわ!』グッ
地面に着地して、とどめの一撃としてとびひざげりを放つ構えを取る。
しんのすけ「あいちゃん! ストップ!」
フェローチェ「!」ダッ!
しかし、しんのすけの言葉にあいの身体は追いつかず、マッシブーンに向かってまっすぐ飛び出してしまった!
途端に、ハウが勝ち誇った笑みを浮かべた。
ハウ「マッシブーン、カウンター!」
マッシブーン「ブンッ!」ゴウッ!
ゴスッ!
フェローチェ『うぐっ!?』メキィ
ククイ博士「入った! 凄まじいカウンターだ!」
キィーーン
ドゴォン!
フェローチェ『うぐっ……』
ヨワシ(ボール)『あ、あいちゃんっ!』
ハウ「ばっちり決まったねー!」
マッシブーン「ブンブーン!」バックダブルバイセップス!!
ハウ「フェローチェってとても素早いからー見切ってカウンターを入れればなんとかなるかなって思ったけど正解だっだねー」
フェローチェ『ううっ……』
ヨワシ(ボール)『あいちゃん、大丈夫?』オロオロ
キテルグマ(ボール)『あんなデカブツの攻撃をまともに食らったら、あいなんて一撃KOに決まってるでしょ』
しんのすけ「ほうほう、デカブツの攻撃でオダブツ、ですな」
ヨワシ(ボール)『ダジャレ言ってる場合じゃないでしょ!』
ミミッキュ(ボール)『相手もかなりタフネス。あいちゃんの攻撃をあれだけ食らっても、まだ平気そう』
フェローチェ『こっちも……まだ行けますわん!』ユラリ
フェローチェ『あの方はカザマさんにとって不利なタイプですわん。それにハウさんの手持ちにはまだポケモンが1匹控えていますもの』
ジュナイパー(ボール)『それは……』
フェローチェ『わたくしが最悪、引き分けまで持ち込んでみせます。あと1回は耐え切れますわん』
ヨワシ(ボール)『でも、あっちにはカウンターがあるんだよ? また当たったら今度こそあいちゃん倒れちゃうよ』
しんのすけ「カウンターが当たらないところから攻撃すりゃいいじゃん。れいとうビームとか」
フェローチェ『さすがしん様! その手がありましたわね。遠距離を中心に攻めていけば、カウンターは仕掛けられませんもの』
しんのすけ「じゃ、あいちゃんおねがーい!」
フェローチェ『がってんですわん!』
あいは後方に下がると、後頭部に生えている髪のように見える翅を小刻みに震えさせた。耳障りな羽音から繰り出される超音波がマッシブーンに襲いかかる!
ジジジジジ!!
マッシブーン「ブブブッ?!」
ハウ「うー、カウンターを警戒してきたかー。でも、おれだってー! ストーンエッジ!」
ドンッ!
マッシブーンはむしのさざめきを耐えながら拳で地面を叩くと、槍のように鋭く尖った岩が飛び出し、あいに向かって次々と伸びていく!
フェローチェ「!」
むしのさざめきを止めると、あいは足に力を溜めて頭上へ跳躍、さらに両手かられいとうビームをマッシブーンに放った。
マッシブーン「ブー……!」ビキビキビキッ!!
今度はきあいだまで相殺できる余裕はなく、れいとうビームを受けて全身が凍りついてしまった。
しかし、氷漬けになったマッシブーンは自ら震えだし、氷にひびが入る。
バリンッ!
マッシブーン「ブーーーンッ!!」ダブルバイセップス!!
ハウ「マッシブーン、いわなだれ!」
氷漬けの状態から自ら脱出すると、マッシブーンはストーンエッジで出来た石の柱を砕き、あいに向けて怒涛の勢いで投げつける。
フェローチェ『……!』シュパパパパ!!
あいは反復横跳びをするように避けつつ、確実にマッシブーンに向けて距離を詰める。そして、顔めがけて上段蹴りを繰り出す!
ドゴッ!
マッシブーン「ブブッ!?」
軽やかな身のこなしであいはしんのすけの傍へ戻っていった。
ククイ博士(カウンターを警戒しながらのヒット&アウェイか)
フェローチェ『うっ……』フラッ
マッシブーン『ブーン……』ゼイゼイ
マッシブーンも先ほどのむしのさざめきとれいとうビーム、そしてけたぐりでだいぶ体力が削られた。あいも、カウンターのダメージが響いている。
ククイ博士(両者ともに満身創痍だね。次の攻撃で、決着が付く)
ククイ博士(でもやっぱり――)
ハウ(たぶん、これ以上カウンターだせる機会はなさそうだねー。だったらここで攻めて決めるー!)
ハウ「……マッシブーン! アームハンマー!」
しんのすけたち『「あいちゃん! ファイヤーッ!」』
マッシブーン「……ッ!」ダッ!
フェローチェ『はい! 行きますっ!』
両者が走り出し、急接近する。マッシブーンがアームハンマーをあいめがけて、あいはマッシブーンにとびひざげりを、それぞれ放つ!
フェローチェ『はぁっ!』バッ!
ドゴッ!
マッシブーン「……!」
フェローチェ『……!』
あいのひざがマッシブーンの腹にめり込み、腹と背中がくっつきそうなほどに沈んでいく。だが、マッシブーンの大木のような右腕も、あいの腹に叩きつけていた。
マッシブーン「ブ……」フラッ
フェローチェ『しん様……あい、成し遂げましたわ』フラッ
ドサッ!
しんのすけ&ジュナイパーたち「あいちゃん!」
エーテルハウス
アセロラ「やっぱり引き分けだねー!」
クチナシ「こうなるだろうとは思ってたけどよ」
クチナシ「っていうか、試合見んのにおじさんを巻き込むなよ……」
アセロラ「おじさん一人じゃ寂しいかなって思って! こーゆーのはみんなで見たほうが楽しいでしょ?」
クチナシ「……ま、これを見る価値はあったな。ビーストを連れたトレーナーが、こうして大大試練で戦わせるなんて……すげーもん見ちまった」ニヤッ
アセロラ「お口あんぐりしちゃったよ! だってしんちゃんもハウくんも、ビーストを捕まえてたんだもん」
クチナシ「だが……本番はこれからだね」
アセロラ「うん! まだ2人とも、Zワザを使ってないからね!」
アセロラ「しんちゃんとハウくんのゼンリョク……それでチャンピオンが決まるよ!」
フェローチェ(ボール)『ふぅ……ポケモン勝負ってこんなに大変なものですのね』
キテルグマ(ボール)『ふーん、よくやったじゃん』
ヨワシ(ボール)『あいちゃん、お疲れ様!』
ミミッキュ(ボール)『お互いに、あと残り1匹。カザマくんと……』
ジュナイパー(ボール)『ガオガエン、だね』
ミミッキュ(ボール)『タイプ相性は悪いけど……大丈夫?』
ジュナイパー(ボール)『わかってる。僕らにはあのZワザがある。それで決着をつける! ……向こうもそれをわかっててZワザを撃ってくるだろうけどね』
ククイ博士「さあ2人とも! ここまで引き分け続きだったけど、泣いても笑っても互いに残り1匹! どちらかがこの場所で立っていた方が島巡りチャンピオンだ!」
ハウ「しんのすけー」
しんのすけ「なにー?」
ハウ「おれーしんのすけと島巡り出来てよかったー! だって、こんなに楽しい勝負が出来るなんて思わなかったからー!」
しんのすけ「いやん、なんだか告白されたみたい。でも、オラもハウくんと島巡りして楽しかったゾ」
ハウ「だから最後はーおれとガオガエンのゼンリョクをしんのすけにぶつけていくねー!」
しんのすけ「じゃーオラもカザマくんと一緒にハウくんにゼンリョクぶつけちゃうねー!」
ガオガエン「ガォォォッ!!」ポンッ!
しんのすけ「カザマくん! レッツラゴー!」ヒョイッ!
ジュナイパー『しんのすけ! 準備は出来てるか?』ポンッ!
しんのすけ「まっかせなさい!」
対峙するカザマとガオガエン。
唐突にハウが笑顔を浮かべた。
ハウ「ねーねー、しんのすけが初めて戦った時を思い出さない?」
しんのすけ「そーいや、そうですな」
ジュナイパー『うん、そうだね。あの時はオマエ、ろくな命令しか下さなかったんだから……』
――じゃ、カザマくん、オラにおしゃくしてくれたまえー
――指示って、そういう指示じゃなぁぁい!
ジュナイパー『今も子供だろっ! 大体、今だって指示出せてないじゃないか!』
ジュナイパー『まったく……ここに来ていい加減なこと言ったら、承知しないからな』
しんのすけ「ほーい!」
ハウ「あの時はおれが勝ったけどー。今度もまたおれが勝つよー!」
しんのすけ「いやいや今回はオラが勝つもんね。おねいさんが懸かってるから!」
同時に、2人の脳裏には島巡りで出会った人達の顔と、たくさん思い出が蘇ってきた。
ククイ博士に連れられて、ハウと出会った。
橋ではコスモッグがオニスズメに襲われて困っているリーリエを見つけた。
最初に選んだポケモンではカザマと出会った。
スカル団からリーリエを守った。
試練でカザマとぶりぶりざえもんと力を合わせて(?)ラッタを倒した。
アーカラでマサオとネネ、あいに出会った。
グラジオと戦い、敗北したものの、勝つことの意味を教えられた。
アセロラの試練でボーちゃんと会った。
スカル団に連れ去られたヤングースを助け出した。
二度目に来たエーテルパラダイスでは、ハウとグラジオ、ひろしたちが力を合わせてリーリエを助けた。
ポニ島では、ナッシーアイランドでリーリエと互いに自分の気持ちを語り合った。
ルザミーネにウルトラスペースへ連れ去られて、アローラのみんなに助けられた。
知恵を絞り、試練を乗り越えた。
友と力を合わせ、しまキングたちに打ち勝った。
この旅で得たもの全てを、ゼンリョクで相手にぶつける。それだけだ。
ハウ「行くよー! しんのすけ!」
しんのすけ「おうっ!」
バッ バッ ブゥゥン バァーン!
ガオガエンは Zパワーを 身体に まとった!
ガオガエンが 解き放つ
全力の Zワザ!
ハ イ パ ー ダ ー ク ク ラ ッ シ ャ ー !
ガオガエン「ガオオオッ!!」
ガオガエンは咆哮を上げると、カザマの周囲の地面が隆起し、炎で出来た特設リングが出現した!
ジュナイパー『あぢぢぢぢっ! しんのすけまだかよ!』メラメラメラ
しんのすけ「もうちょっと待ってー!」
ガオガエン「オオッ!」ドドドド!
リングへ駆けたガオガエンは、そのままコーナーポストに乗ると、へそを中心に炎と闇の力を溜め始めた!
A! B! B! A! A! B! →! →! ←!
ククイ博士「なんだ? あんなZポーズ、見たことがない!」
ピカッ! ゴウッ!!
カザマは Zパワーを 身体に まとった!
カザマが 解き放つ
全力の Zワザ!
ア ク シ ョ ン ビ ー ム ガ ン !
カザマは片翼を上げると、赤と青と白色の光が集まってきた。そして空いたもう片方の翼を弓状に折り曲げた。光が虹色の矢の形になると、カザマは光の矢を翼につがえて引き絞った。
ハウ「ゴーゴー! ガオガエンッ!!」バッ!!
闇と炎の力をまとったガオガエンは、コーナーポストから大きく飛び上がりカザマの頭上めがけてダイブしてくる。その様子は黒く燃える火山岩に思える。
一方、カザマも手を離すと、光の矢が先端にアクション仮面を象った赤いビームとなり、ガオガエンに向けて発射される!
キィィィン
ドゥゥゥッ!!
ガオガエン「ガオオオッ!!」
ビームガンとZパワーを纏ったガオガエンがぶつかりあい、周囲に白と黒の閃光と衝撃波が走る!
ククイ博士「うおっ! なんてワザのぶつかり合いだ! ギガインパクトも真っ青だぜ!」
ジュナイパー『うぐっ!』
足元に展開されている炎のリングの熱がカザマに伝わり、足から全身にかけて焼けるような苦痛が走る。それがビームガンの威力を弱めてしまった!
ガオガエン「ガオオオッ!!」ズズズッ
ジュナイパー「!」
ハウ「もうちょっとだよー! 頑張れーガオガエン!」
しんのすけ「おわっ! カザマくん!!」
光に包まれながらも、ガオガエンの巨体が見えた。様子がうかがえるほどに圧されていることに、カザマは更に焦りを覚えた。
ジュナイパー(だ、ダメだ! このままじゃ負けちゃう――!)
ビームガンを放つ手が震えて、どんどん気力が抜けていく。カザマの脳裏に、初めてしんのすけと会った時の記憶が蘇る。
――だーいじょぶだいじょぶ、オラにまっかせなさい
あの時は、本当に島巡りを達成できるのか不安でしょうがなかった。
だけど、新しい仲間と出会い、試練と大試練を達成して、しんのすけとカザマは大きく成長して、自分たちの足でここまでやってきた。
その結末がこれか。
ジュナイパー(くそっ……! ここまで来たのに!)
しんのすけ「カザマくん! 負けるなーーっ!!」
しんのすけの応援を皮切りに、次々とボールからマサオたちが飛び出して、カザマに激を送る。
ヨワシ『諦めちゃダメだよ!』
キテルグマ『へたれてんじゃないわよ! ネネたちのエースなんだからもっと気張って!』
ミミッキュ『そのとーり!』
フェローチェ『しん様と一緒にここまで来たのなら、もっとゼンリョク出せるはずですわん!』
ジュナイパー(みんな……)
みんなの激励を聞いた瞬間、カザマは夢から覚めたような感覚になった。同時に、消えかけていた闘志と勝ちたいという意志に再び火が灯った。
ジュナイパー(そうだ、僕らのゼンリョクはこんなものじゃ終わらないはずだ!)
ジュナイパー『おおおおおっ!!』
しんのすけ「アローラ防衛隊、ファイヤーーッ! カザマくん! ファイヤーーーッ!!」
ヨワシ&キテルグマ&ミミッキュ&フェローチェ『ファイヤーーーッ!!』
ジュナイパー『ファイヤーーーーーーーッ!!』ゴウッ!!
再びカザマは赤いオーラを纏い、全身全霊、ゼンリョクをビームガンに込める。すると、ビームガンに勢いが戻り、ガオガエンを押し戻していく!
ガオガエン「ガッ……ガオオッ!?」
ハウ「ガオガエンッ!」
威力が高まったビームガンに圧され、とうとうガオガエンはクリスタルの天蓋を突き破り、天空高く飛ばされてしまった。ラナキラマウンテンのてっぺんに、空を貫く勢いで赤い光の柱が立ち昇る。
ドォォォォォン……
ビームガンの光が収まると、ガオガエンが落下し、炎のリングのど真ん中に落下した。同時に、炎のリングも散るように消えてしまった。
ガオガエン「……」
ハウ「……!」
ガオガエン「ガ……ォォッ……」グググッ
ジュナイパー『……ガオガエン』
まだだ……まだ勝負はついちゃいない、ガオガエンはビームガンでボロボロになった身体に鞭を打ち、緑色の瞳でカザマを睨みつける。
ガオガエン「……!」
フラッ
ドサッ
キテルグマ『あたしたち、やったのね!』
ジュナイパー『うん! 僕たち勝ったんだ!』
ヨワシ『やったやったー! 勝った勝ったー!!』
フェローチェ『しん様! カザマくん、お見事ですわ!』
しんのすけ「よくやったー! カザマくんはポケモンの中のポケモンだゾ!!」
「せーのっ!」
しんのすけたち『「わーっしょい! わーっしょい!」』
しんのすけたちはカザマを囲むと、一斉にカザマに胴上げをした。カザマは照れながらも笑い返した。
ジュナイパー『ハハッ、みんなのおかげだよ。ありがとう!』
ひろし「みさえっ、島巡りチャンピオンだ! 俺たちのしんのすけが、島巡りチャンピオンになったんだ! それも、最年少だぞっ!」ウルウル
みさえ「うんっ、しんちゃん……! よく頑張ったね……!」ポロポロ
ひまわり「たいーっ!」
ハラ「……あっぱれ、と言う他ありませんな」
グズマ「……マジかよ。あのじゃがいも小僧」
ハウ「ううっ……悔しいーっ!!」
しんのすけ「!」ビクッ
ハウが今までにないほどの大声を上げて、びっくりしたしんのすけたちは胴上げをやめてハウを見た。
ジュナイパー『いでっ!!』ドスン!!
ジュナイパー『急にやめるなよ!』
ハウ「ごめんねー! 勝利を味わせられなくって……みんな、ここまで頑張ってきたのにー!」
ガオガエン「……ガオ」
ハウ「おれ、もっと強くなるー! この悔しさ、絶対に忘れないからー!」
ククイ博士「……ハウ」
ハウ「島巡りチャンピオンおめでとー! スゴイよしんのすけー!」アクシュ
しんのすけ「寝起きのかーちゃんの方がもっとスゴイ顔になるけどね」
ハウ「おれ負けちゃったけどーもっと鍛えて、大大試練また受けるからー。おれが島巡りチャンピオンになったら、また戦ってくれるー?」
しんのすけ「ヒマがあったらね」
ククイ博士「……しんのすけ!」
しんのすけ「お?」
ククイ博士「すばらしい! 以前、僕は言った……。その時、ベストの技を選べるポケモンとトレーナーのコンビが繰りだす技が最強だと。まさにその通りだった!」
ククイ博士「誰もが認める、島巡りチャンピオンの誕生だ! ホクラニ岳のてっぺんで言っただろ? アローラ地方のポケモンもトレーナーもみんな、最高だからね!」
しんのすけ「そうだっけ?」キョトン
ククイ博士「だけどまだまだ、僕は満足できていない! こんなに素晴らしい勝負だったのに、ただネットで生放送するだけなんてもったいない!」
ククイ博士「もっともっと、たくさんの人たちにアローラを知ってもらいたい! 世界に 知ってほしい! だから僕は今ここで世界中に宣言する!」
ククイ博士「最高のトレーナーと最高のポケモンが最強の技を繰り出せる場――アローラポケモンリーグをここに設立するよ!」
ククイ博士「ああ! キミとしんのすけの戦いを見て、なおさら夢を叶えたくなった! 今の僕の心は、ブラストバーンなんて目じゃないほど燃え盛っている!」メラメラ
しんのすけ「おお、暑苦しい……」
ククイ博士「さあしんのすけ、ハウ。とんぼがえりでメレメレ島に戻ろうぜ! リリィタウンでお祭りだよ! みんな、大大試練をこなしたしんのすけと、ゼンリョクで戦い抜いたハウを祝福してくれるさ!」
しんのすけ「おお、お祭り。今度はちゃんとした屋台置いてあるといいですな」
ハウ「わーい! みんなに大大試練のこと、いっぱい話したいー!」
ロトム図鑑「おい、私を置いてくな!」
ククイ博士「ああ、ごめんごめん! それじゃあ改めて、みんなで戻ろうか!」
大大試練を終えたしんのすけたちはラナキラマウンテンを下り、ウラウラ島からメレメレ島に戻り、リリィタウンに向かうと、ひろしたち野原一家、ハラ、グズマ、そして街の人々が島巡りを終えたしんのすけたちを歓待していた。
しんのすけ「ほっほーい! とーちゃんかーちゃーん!」フリフリ
ハウ「じーちゃーん!」フリフリ
ハラ「おお! 2人とも帰ってきましたぞ!」ニッ
みさえ「しんちゃん、島巡り達成おめでとう! よく頑張ったね!」
ひろし「さすが俺の子だ! 大大試練見てて年甲斐もなく泣いちまったよ」
ひまわり「たいたーい!」
しんのすけ「あー疲れた。でもこれで、オラもゆーめー人になっておねいさんにモテモテですな! ワッハッハッハッ」
ハラ「しんのすけ、見事に島巡り達成ですな。太陽と月のように照らし照らされる関係……きみの島巡りにおいてそのような出会いがあり、成長なされたようですな!」
しんのすけ「ここはまだそんなに大きくないけどね」
ひろし「だからそこの話じゃねぇって」
ハラ「ハウ、大大試練……いかがでしたかな?」
ハウ「悔しいけどーしんのすけが島巡りチャンピオンになれたのが嬉しいのー。それにーしんのすけとゼンリョクで戦って、とても楽しかったー! 引っ越してきたのがしんのすけで、おれ、ホントによかったよー!」
ハラ「うむ、この敗北はハウが強くなるための大きな一歩となりましょうぞ。このハラ、ハウが島巡りを経て成長したことに、感動を覚えますな。オニのハラにも涙、ですぞ」
ハラ「ハウ、あなたは私の誇りですぞ」
ハウ「えへへー、じーちゃん、おじさんーありがとー」
ハラ「互いを尊敬し、力を高め合う。それを大大試練を経て、2人は知ったわけですな。グズマ、大大試練を通して君に感じるものがあったのではないですかな?」
グズマ「ハッ、どうでもいいぜ」
しんのすけ「くさやのおじさんも島巡りすれば?」
グズマ「今更しねえよ、バカバカしい」
しんのすけ「んもぅ、恥ずかしがっちゃダーメっ」
ハウ「ねー」
グズマ「あぁ、うっとおしい奴らだ! 帰るぜ!」スタスタ
しんのすけ「あーあー、行っちゃった」
ハラ「そっとしておいてやってくだされ。ああ見えて、彼なりにしんのすけのことを祝ってやっているのですな」
ハラ「では! アローラ最年少島巡りチャンピオン! その誕生を祝って、みなでとことんまで楽しみますぞ!」
「おおーーうっ!!」
穏やかに照らされる月の下、リリィタウンの人々はしんのすけたちを囲いながら祭りは続いていく。
リーリエ「しんちゃん!」
しんのすけ「おーリーリエちゃん。クジラくん」
リーリエ「島巡りチャンピオン、おめでとうございます! エーテルパラダイスからですが、ちゃんとバッチリ見ていましたよ!」
グラジオ「フッ……ハウも、たいしたものだ」
ハウ「えへへー」
ハラ「本当なら、アローラ中のキャプテン、そしてしまキングたちも祝いのため、来てもらうはずでしたが……」
みさえ「いいえ、こうしてリリィタウンの人たちに祝ってもらえるだけでも充分です」
しんのすけ「なら、ハラのおじさんのハラ太鼓見せてよ」
ハラ「ハラ太鼓ですかな? はっはっはっ、そんなことをすれば、このハラ、攻撃力が上がるより先に体力が切れてしまいますな!」
イリマ「しんのすけくんもハウくんも、大大試練お疲れ様です! 初めて会った時と比べると、めざましい成長を遂げましたね!」
ハウ「へへーイリマさん、ありがとー!」
ハラ「だが、びっくりしましたな。しんのすけがビーストをゲットしていたのは知っましたが、ハウも捕まえていたのはあの映像で初めて知りましたぞ」
イリマ「ビーストは確か普通のボールでは捕獲できませんよね? どうやって捕獲なさったのですか?」
ハウ「エーテル財団からビーストを捕まえられるボールごと借りたのー」
イリマ「なるほど……エーテル財団はポケモンを保護していますから、ビーストに関しても保護活動の一環で専用のボールを作ったのでしょうか? 仕事が早いですね」
イリマ「ビーストをしんのすけくんとハウくんが勝負で出したこと、他の島でも持ち切りになってるんですよ」
ハウ「うんー。どうやって捕まえたのー? とかー、襲ってきたりしないー? とか言われるー」
イリマ「ビーストを捕まえることについては賛否両論ありますからね。新しい共存の形と言う意見もあれば、アローラを襲った敵をポケモンとして扱うなんてとんでもないことだ、という意見もありますから」
ハラ「向こうがゲットされてそれを望んでいるのなら、こちらも喜んで受け入れますが……」
イリマ「確かにビーストには凶暴なところはありますが、こうしてゲットされてトレーナーと供に戦えるということは、人とポケモン、そしてビーストが共存出来る道もきっとありますよ。いつか僕も、ビーストをゲットしてみたいですね」
ハラ「人とポケモンとビースト……異なる3つが合わされば、アローラにどんな未来がやってくるのか、このハラ、ハラハラしてきますなあ」
ハラ「お、なにをして盛り上げるのですかな?」
リーリエ「ケツだけ星人はやめてくださいね」
しんのすけ「ちょっとまってね」ゴソゴソ
しんのすけは持っていたリュックから黄色い衣装らしきものを取り出すと、それに着替えた。
モヒカンのようなとさかに黄色い外殻を手に持ったそれは、エーテルパラダイスで見せたカプ・コケコのコスプレだった。
しんのすけ「カキークケコー!」
ハラ「おお! カプ・コケコの仮装ですかな?」
ハウ「あー! おれもピカチュウのコスプレするねー!」
グラジオ「……嫌なものを思い出させるな」
ハウ「グラジオもールガルガンのコスプレしなよー!」
グラジオ「するか!」
リーリエ(にいさまのコスプレ……ちょっと気になりました……)
しんのすけ「カノエイコー! コイケユリコー! カキクケコー!」
ハウ「ピッピカピカピ、ピッピカチュー! ピッカァ!(裏声)」
ハラ「わはは、全然声が似てませんぞ、お二人共!」
ククイ博士(ポケモンのコスプレ……なんか近視感あるんだよなあ)
ギュンッ
バチチチッ!
ハウ「!」
ハラ「!」
ククイ博士たち「!」
合いの手も音楽も止まり、しんのすけ以外の全員が土俵に視線を集中させて驚愕の表情を浮かべていた。ただひとり、しんのすけだけきょとんとした表情でみんなを見る。
しんのすけ「どうしたのみんな? 食あたりでもした?」
リーリエ「……しんちゃん、後ろです」
しんのすけ「お?」クルッ
カプ・コケコ「……」
そしてカプ・コケコは、不思議な模様で彩られている黄色い殻で、軽くしんのすけを小突いた。
カプ・コケコ「……」
しんのすけ「コケ?」
ハラ「……どうやら、カプ・コケコは、しんのすけ――そしてカザマと戦いたいようですな」
リーリエ「カプ・コケコさんが?」
ハラ「カプ・コケコは大大試練をご覧になっていたようですな。しんのすけとカザマ、ハウとガオガエンの繰り出したゼンリョクのZワザの応酬、それがカプ・コケコの闘争心に火をつけたのでしょうな」
ハラ「しんのすけ、カプ・コケコと戦ってくだされ」
しんのすけ「えー、めんどくさ」
みさえ「しんのすけ!」
ジュナイパー(ボール)『しんのすけ! 戦おうよ! 守り神と戦える機会なんて滅多にないよ!』
カプ・コケコ「カプゥーコッコォー!」
しんのすけ「やれやれ、仕方ありませんな」スッ
グラジオ「……こんなことになるとはな」
ククイ博士「ああ、カプ・コケコと戦うなんてね!」
ハウ「うんー」
リーリエ「ハプウさんがしまクイーンになられたときを思い出します。少し、ドキドキしてきました! 守り神カプ・コケコさん……」
しんのすけとカプ・コケコが向き合った瞬間、Zリングを通じ、頭の中に声が響く……。
カプ・コケコ『……イクゾ』
しんのすけ「!」
しんのすけ「カザマくん! レッツラゴー!」ヒョイッ!
ジュナイパー『カプ・コケコ……ゼンリョクで行きます!』ポンッ!
カプ・コケコ「コッコォォッ!」
バチチッ!
しんのすけ&ジュナイパー「!」
みさえ「な、なにこれっ! 土俵が電気で覆われたわ!」
しんのすけ「なんかピリピリするぅ」
カプ・コケコ「カプゥーコッコォォーーッ!!」バリバリバリッ!!
カプ・コケコの全身から稲妻が放たれ、場に広がっている電流の力も借りて威力を増しながらカザマに襲いかかる!
バチバチバチッ!
ジュナイパー『うわっ……くっ!』
ひろし「なんて威力だ……ケタが違う」
ククイ博士「しんのすけ、エレキフィールドになっているときは、でんきタイプの技が1.5倍になるんだ! 気を付けろよ!」
ジュナイパー『こっちも反撃だ!』ドシュドシュッ!!
負けじとカザマもかげぬいで2つの矢羽根を飛ばした! しかし、カプ・コケコは2本の影の矢を素早く躱すと、今度は全身に電気をまとい始めた!
カプ・コケコ「コッコォォーッ!!」ギュンッ!
ジュナイパー『スパークか! くっ……!』スッ
ガキィンッ!
すかさずカザマは翼を逆立ててカプ・コケコのスパークを受け止める。全身に電撃が走り抜くが、決してカザマはカプ・コケコから目を離さず堪える!
ジュナイパー『ぐぅぅっ……! はあっ!』ブンッ!
カプ・コケコ「カプゥッ?!」ザンッ!
反撃とばかりに今度はカザマがリーフブレードでカプ・コケコを追い詰める。しかし……。
カプ・コケコ「カプゥーーッ! コッコォォォッ!」パァッ!
カプ・コケコから放たれた不思議な波動が、カザマに殺到する!
グワァァァン!!
ジュナイパー『ぐぁぁぁぁっ!!』ドサッ
しんのすけ「カザマくん、だいじょぶ?」
ジュナイパー『あ、ああ……だけど、なんて威力の技だ……!』
ハウ「今の技、なにー?」
ククイ博士「あれは恐らく……カプ神のみが使うとされる、しぜんのいかりという技だろう」
イリマ「僕の見立てでは、恐らくジュナイパーの体力は半分を切っているでしょう。メレメレ島の守り神……改めて能力の高さに驚かされます」
カザマが体勢を立て直すと、再びカプ・コケコの声がしんのすけとカザマの頭に響く。
カプ・コケコ『アノZワザデコイ……!』
ジュナイパー『しんのすけ! アクションビームガンだ!』
しんのすけ「ブ・ラジャーッ!」
A! B! B! A! A! B! →! →! ←!
ハウ「あのZワザだー!」
ピカッ! ゴウッ!!
カザマは Zパワーを 身体に まとった!
カザマが 解き放つ
全力の Zワザ!
ア ク シ ョ ン ビ ー ム ガ ン !
カザマは片翼を上げると、赤と青と白色の光が集まってきた。そして空いたもう片方の翼を弓状に折り曲げた。光が虹色の矢の形になると、カザマは光の矢を翼につがえて引き絞った。
カザマは手を離すと、光の矢が先端にアクション仮面を象った赤いビームとなり、カプ・コケコに向けて発射される!
ドドドドド!!!!
カプ・コケコ「……!!」バシンッ!
ドッゴォォォォォッ!
ハラ「むおっ! なんという威力ですかな!」
グラジオ(これがリーリエの言っていた、新しいZクリスタルの力か……!)
リリィタウン全てが吹き飛びそうな衝撃波が収まり、しんのすけとカザマの前方には砂煙が舞い上がっていた。
シュウウウ
カプ・コケコ「……」
その砂煙の中から、外殻で身を守ったカプ・コケコの姿が現れた。煤汚れた外殻が2つに割れて、中の顔が露わになると、カプ・コケコは平然としてしんのすけとカザマを見据えていた。
ハウ「うそでしょー! 無傷!?」
ジュナイパー『僕らのゼンリョクが防がれるなんて……!』
しんのすけ「すげー」
カプ・コケコ「カプゥーコッコォー!!」
唖然とする一同を他所にカプ・コケコは雷のような囀りをあげると、赤いオーラをまとい始めた!
しんのすけ「あれってZワザ!?」
ハラ「……まさか!」
カプ・コケコは Zパワーを 身体に まとった!
カプ・コケコが 解き放つ
全力の Zワザ!
ガ ー デ ィ ア ン ・ デ ・ ア ロ ー ラ !
カプ・コケコ「……!!」バシンッ!
ズズンッ!
ひろし「な、なんだ?」
リーリエ「地震ですか……?!」
ビキビキビキッ!!
ハウ「地面からなにかが出てくるー!」
土俵を突き破り、地面がひび割れて中から黄色い光の巨人が現れた。巨人はしんのすけとカザマが見上げるどころか、リリィタウンに建っている家より巨大で、頭部がない。
カプ・コケコ「……!」ガシンッ
そして巨人と一体化したカプ・コケコは、大木を束しにしても足りない太さの腕を振り上げた。
ブゥンッ!
ジュナイパー『うわああああっ!!』
ドシンッッ!!!
カザマは潰されて大きな振動が周囲に広がり、完全に土俵は原型を失った。中には体勢を崩して、転んでしまった人もいる。
巨人が消えると、ノックアウトになったカザマが現れ、カプ・コケコは地面に降り立った。
ジュナイパー「」ピクピク
ひろし「な、なんだったんだ? 今の」
みさえ「しんのすけ! カザマくん! 大丈夫?」
しんのすけ「オラは平気。カザマくんは?」
ジュナイパー『見ればわかるだろっ!』
ククイ博士「ハラさん、今のは……!」
ハラ「うむ」
しんのすけ「ハラのおじさん、今のZワザ?」
ハラ「あれはガーディアン・デ・アローラ。島の守り神のみが扱える、究極のZワザですな。このハラも、若い時に一度、お目にかかったことがあります」
ハウ「すごいー! アローラにはまだまだ知らないZワザがたくさんあるんだねー!」
ハラ「カプ・コケコはしんのすけを一流のトレーナーとして認めたようですぞ。これからも驕らず、精進せよ、と言うことですな」
しんのすけ「ほうほう、闘魂注入みたいなものですな!」
リーリエ「カプ・コケコさんは、島巡りを終えたしんちゃんのことを祝っているのですね!」
カプ・コケコ『……シンノスケトカザマノZワザ、ヨカッタ』
ジュナイパー『あ、ありがとうございます。カプ・コケコ……』
しんのすけ「どういたまして。カプ・コケコくんもすごいZワザ持ってるねえ」
カプ・コケコ『マタ、タタカエルトキガ、タノシミ』
リーリエ「あの……カプ・コケコさん」
リーリエ「あなたのおかげで、コスモッグはルナアーラになれました。代わってお礼を申します。本当に、ありがとうございます!」
カプ・コケコ「……」
カプ・コケコ『ホシノコノセワ、カンシャスル。アラタメテ、タノンダゾ』
ハラ「カプ・コケコもリーリエに感謝しているようですな。これからも、ルナアーラを大事にしてくだされ」
リーリエ「はい!」
ククイ博士「でも、しんのすけも水臭いぜ! 新しいZワザがあるなら、僕に教えてくれても良かったのに」
ハウ「そうだよー、あんなZワザ、初めて見たー」
しんのすけ「こってり忘れてた」
リーリエ「うっかり、です。そういうわたしも人のこと、言えませんけど……」
ククイ博士「そのZクリスタル、見せてくれよ。君たちの放ったアクションビームガンという技について、もっと知りたいんだ!」
しんのすけ「洗って返してね」
グラジオ「……ひろし、すまないな。あんなことになってしまって」
ひろし「いや、グラジオ君が気にするようなことじゃないさ。それより、今はしんのすけを祝ってやらないとな。そんな辛気臭い顔するなって」
グラジオ(あの3人に……また辛い思いをさせることになるとはな)
ロトム図鑑「あーあ、結局図鑑は大して埋められなかったか。ビーストのデータも先にマーレインが作っちゃったみたいだし」
しんのすけ「……」
しんのすけ「ぶりぶりざえもん」
ロトム図鑑「あ?」
しんのすけ「ほい、これあげるよ」つ でかいきんのたま
ロトム図鑑「え?」
しんのすけ「だってぶりぶりざえもん、オラと一緒に島巡りしてくれたし、妖怪メノクラゲオババに捕まってた時も、夢でオラをお助けしてくれたし」
しんのすけ「……それに、またそのうち助けてもらうから」
ロトム図鑑「フン、そこまで言うならもらってやる」
ロトム図鑑(……ありがとよ)
――ぶりぶりざえもんはねー、オラの友達で、救いのヒーローポケモンなんだよ
ロトム図鑑(救いのヒーロー、か。人助けも、悪くないもんだな)
ククイ博士「しんのすけ!」
しんのすけ「お?」
ハウ「おれー、もっともっとーイリマさんたちと修行して、本気のじーちゃんに勝ってー!またしんのすけに挑むねー!!」
しんのすけ「がんばってねー」
リーリエ「しんちゃんも頑張るんです! しんちゃんもカザマさんたちも、もっともっと、強くなれるんですから!」
ククイ博士「しんのすけ! キミのパートナーも、みんなにみせてほしい! 島巡りの冒険で、ともに たくさんの発見と体験をしたパートナーを!」
リーリエ「はい、今のしんちゃん、とっても輝いています!」
しんのすけ「おっしゃー! みんな、レッツラゴー!」ヒョイッ
ジュナイパー『カプ・コケコに認められたけど、まだまだ僕らは強くなれるんだ! しんのすけもみんなも島巡りチャンピオンになっただけじゃ物足りないだろ?』
ヨワシ『うん! もっと強くなって、色んなところを冒険したい!』
キテルグマ『ネネも、島巡りチャンピオンになるだけで満足してないわよ! もっともっと、グローバルに活躍しなきゃ!』
ミミッキュ『ボー!』
フェローチェ『あい、しん様と出会えてとても幸せですわ! こっちの世界に来てよかった!』
ハラ「では、もっともっと祭りを盛り上げましょうぞ!」
しんのすけ「ほっほーい!!」
こうして、島巡りを終えたしんのすけを祝う小さな祭りは、遅くまで続いた。いつまでもいつまでも、みんなと一緒にこの穏やかな幸せが続くと、ひろしとグラジオを除いて誰もがそう思っただろう。
だが、別れの時は、刻一刻としんのすけ達へ近づいていったのだった……。
エーテルパラダイスのシークレットラボにて、リーリエとグラジオはビッケ、ザオボーとこれからのことを話し合っていた。主にルザミーネの容態と、アローラに残っているビーストの保護についてである。
リーリエ「かあさまの容態は?」
ビッケ「やはり野原さんのように血清のみでの治療法では……。効き目は出ておりますが、もう一息、といったところですね」
リーリエ「そうですか……」
グラジオ「……リーリエ、オマエの耳に入れておきたい話がある。母上の治療についてだ」
リーリエ「え――どんな話ですか?」
グラジオ「カントーにいる、マサキという男を知っているか?」
リーリエ「……マサキさん?」
ザオボー「ソネザキ・マサキ。カントーのポケモン預かりシステムの管理者ですね」
リーリエ「預かりシステムの管理者がどうなさったのですか?」
グラジオ「知らないのか? 10年ほど前、ポケモンを転送する実験の失敗でそのポケモンと合体してしまった話を……」
リーリエ「あっ、思い出しました! 本で読んだことがあります! その後、レッドさんに手伝ってもらって、ポケモンから無事に分離できたとか……」
グラジオ「その融合と分離の技術を、かあさまの神経毒を取り除くのに応用できないか、と思ったんだ」
ビッケ「その手があったとは……盲点でしたね」
リーリエ「なら、わたし……カントーに行ってきます! マサキさんから話しを聞いて、かあさまを助けられる方法を見つけてきます!」
ビッケ「捕獲されたビーストは、預かりシステムに認識されませんからね。ウルトラボールは、ビーストを捕まえるために1からボールの構造を変えていますので……」
リーリエ「そうなんですか?」
ザオボー「ええ、ええ、セキュリティの都合上、ビーストはパソコンに預けた方が安全面でも効率的ですからね。放置していい問題じゃないですよ。ビースト独自の預かりシステムを作ってもらう必要がありますねえ」
グラジオ「それに、マサキは生粋のポケモンマニアと聞くからな。おそらくウルトラビーストに興味を示してくれるだろうよ」
リーリエ「みなさん……。なにからなにまで、ありがとうございます」
グラジオ「それに……今は時間が必要だ」
リーリエ「え?」
グラジオ「家族が元通りになるための時間が、な」
リーリエ「……そうですね。家族の絆の強さを、ウルトラスペースで見せつけられました。ひろしさんとみさえさんがいなければ、かあさまとしんちゃんは助けられなかったです。わたしたちも、ああいうふうになれるでしょうか?」
グラジオ「なれるさ。時間はかかるだろうが、その分じっくりと繋がりを深めていけばいい」
グラジオ「まだ……あと1人残っているしな」
ビッケ「モーン博士……ですね」
リーリエ「とうさま……」
ザオボー「ええ、はっきり申し上げますと、ウルトラボールの量産化は技術面でも資金面でも困難と言わざるを得ませんね……なにせ、今回の事件で信用を失い、多くのスポンサーや企業とのパイプが切れましたから」
ビッケ「ですが、ポケモンの保護活動と被災者への支援を見て、新たに提携を結んだ企業もいます。その方々と協力していけば、ウルトラボールの量産も夢ではありません」
グラジオ「頼む。オレたちが蒔いた種はオレたちの手でどうにかしなきゃいけないからな」
ビッケ「はい」
グラジオ「リーリエ、お前に例の話がある。ザオボーとビッケは、仕事に戻ってくれ」
ザオボー「ええ、了解しました」
ビッケ「かしこまりました」
ザオボーとビッケがシークレットラボを出て行くと、グラジオは改めて周りに誰かいないか確認を取る。
そしてドアを締め切ると、
グラジオ「リーリエ、そろそろリラとハンサムに返事をする準備は出来ているか?」
リーリエ「はい。わたし、ほしぐもちゃんと協力してビーストさんを元の世界に返してあげたいです」
リーリエ「アローラには、数え切れないほどの思い出と、恩があります。ですので、わたしなりに恩返しがしたいです。それに、ほしぐもちゃんと一緒にビーストさんと戦うことで、トレーナーとしての経験を積みたいのです」
グラジオ「フッ……そうか」
グラジオ「だが、さっきマサキの話をした時、カントーに行くとかどうとか言ってなかったか?」
リーリエ「あ、あれはその、言葉の綾というか、たまらず言ってしまって……」アタフタ
リーリエ「ヌ、ヌルさんを連れていったにいさまに言われたくないですっ」
グラジオ「……そうだな」
リーリエ「それじゃあわたし、博士に、この事をお話ししてこようと思います。しんちゃんとハウさんにも、ビーストさんの事、色々教えてもらいたいですし」
グラジオ「……リーリエ、一つ聞きたい」
リーリエ「え? どうかしたのですか?」
グラジオ「……ひろしとみさえから、何か話を聞いていないか?」
リーリエ「野原さんから? いいえ、何も」
グラジオ「……そうか、なら良いんだ」
リーリエ「????」
ただでさえ、暗そうなグラジオの表情がさらに暗くなっていることに引っかかりながらも、リーリエはラボを出て行って船着場へと向かった。
これからしんのすけたちに、自分がみんなのように一歩踏み出せるのを報告しに行くことに、胸を躍らせていた。
連絡船の乗船場からポートエリアに出たリーリエは、ふと懐かしさを覚えて周りを見渡した。
建物はちらほら崩れているものが未だにあり、カイリキーやゴーリキー、ハリテヤマが瓦礫を撤去したり、材木を運んでいる。
警察署やポケモンセンターなど、既に建て直された建造物や施設も見受けられ、ハウオリシティに以前の街並みが戻りつつある。
リーリエ(そういえば……島巡りを始めてばかりの時、ここでスカル団の方々から、しんちゃんに助けてもらったんですよね)
――ハァーやれやれ、しょーがないなぁ
リーリエ(あの時は守られっぱなしでしたけど、今度はわたしとほしぐもちゃんが、しんちゃんを守ります。それでしんちゃんを連れて、旅に出るのです!)ムフー
ハウ「あれーリーリエ? そんなところでどうしたのー?」
リーリエ「あ、ハウさん。アローラ」
ハウ「アローラ。今日はどうしたのー?」
リーリエ「今日は博士に用事があって……。それに、ハウさんとしんちゃんにも、ビーストさんについてお聞きしたいことがあってこちらに来ました」
ハウ「いいよー。おれもーしんのすけと博士に、イリマさんから貰ったマラサダ分けようかなって思ってたんだー。リーリエもおひとつどうー?」
リーリエ「ありがとうございます。後で頂きますね! では、しんちゃんと博士を探しましょう」
ハウ「じゃあ最初におじさんたちのいる所に行こー!」
リーリエ「はい!」
ハウ「しんのすけーいるー?」ピンポーン
リーリエ「……返事が無いですね。留守でしょうか?」
ハウ「珍しいねー。いつも誰かいるはずなんだけどなー」
リーリエ「仕方ありませんね。では、ククイ博士のところへ向かいましょうか」
ハウ「だねー」
リーリエとハウは、テッカグヤによって破壊された研究所の代わりに建てられた簡易研究所へと向かった。
その道中、広場でハラと何か話しあっているククイ博士と、しんのすけたち野原一家がいた。
みさえ「色々、ありがとうございました」ペコリ
ハラ「こちらこそ。アローラを救っていただき、メレメレを代表してお礼を申し上げます」
ハウ「あー! 2人ともいたいたー!」
しんのすけ「よ、ハウくん、リーリエちゃん」
ククイ博士「おや? ハウにリーリエじゃないか。来てくれて、ちょうどよかったぜ」
ハウ「こっちもーリーリエが博士としんのすけに用事があるんだってー」
リーリエ「ちょうどよかった、とはどういうことですか?」
ククイ博士「ああ、そうだな……しんのすけ、君から話すかい?」
しんのすけ「どっちでもいいよー」
ククイ博士「あ、あのな……大事な話だろ?」
しんのすけ「んーっとね……」
しんのすけ「オラたち、カスカベに帰ることになりました!」
リーリエ「!?」
ハウ「へーそうなんだー……」
ハウ「って、え゛え゛え゛え゛え゛え゛ーーーーーっ!?」
【大大試練編 おしまい】
このSSを執筆する前に書いた「アローラ防衛隊」のコンプセントアートですが……。
塗り絵にでもどうぞ。
あ、ちなみに私が描いたイラストは好きに加工、転載してくれて構わないです。もちろん自己責任ですが……。
【おまけ その2】
しんのすけ「ほーら、月刊メレメレを飾っているイリマくんの生写真ですよ〜」
ひまわり「うひゃ〜! きゃきゃきゃ♪」
グラジオ「……ずいぶん変わった妹だな」
ひまわり「!!」
ひまわり「きゃ~っ! とっとていたいや~!」
しんのすけ「ほうほう、ひまはクジラくんにも興味おありのようですな。抱っこしてみる?」
グラジオ「いや、オレは……」
しんのすけ「いいからいいから、ほい」
グラジオ「お、おい……!」
ひまわり「きゃーっ! いひひひ!」デレデレ
グラジオ「確かに……しんのすけの妹だな」
――にーさま! にーさま! えへへ!
――ただ……にいさまがヌルさんとエーテルパラダイスを出た後、かあさま、大変だったのですよ!ビッケさんがいてくれなかったら……
グラジオ「……」
グラジオ「……しんのすけ」
しんのすけ「お?」
グラジオ「あまり妹を心配させるようなこと、するなよ。兄なら、妹のそばにいて守ってやれ」
しんのすけ「いきなりどしたの?」
しんのすけ「ま、クジラくんに言われるまでもないゾ。オラはひまの素敵なお兄様ですから」
グラジオ「フッ……お前なら、心配いらないか」
ひまわり「うひゃひゃ~♪」
ある国際警察の日記
「4月18日 ここはカスカベ地方の……。爆破されたサイ……ロ組織バネ……め基地に残さ……スーパー……ーから、電子生……の……滓を……ベージ」
「…月…日 デー……の存在……る……を……現実世界に……す計画を……案。人工の……ディを……作するが……同……できず……敗。電化製……と同化できる……トムに注目」
「…月6日 ついに計画が……れた。……トムの……と……の……を同化。大……博士の指揮のもと……れた実験は大成……。明確な意志……知能を……生まれ変わった。ただし、元々のデー……の損傷が……ためか、電子……の記憶は……い」
「…月23日 ……ムとして生まれ変わった……は……ロ……の能力に加え……元来持って……た……コンピュー……と人体への……グ能力を有している……。上層部は……をBR……2というコード……ムを与え、サイバー……ハッ……部隊に配置。今後の……躍に期待」
「9月1日 あのポケモンは駄目だ……セコくて強欲過ぎて私の手には負えない!」
ハウ「か、帰るって引っ越すってことー? なんでー?!!」
しんのすけ「主にとーちゃんの甲斐性のせい」
ひろし「うるせーよ! 間違っちゃいないけどさ……」
リーリエ「ひょっとして、お仕事の都合……なんですか?」
ひろし「ああ……カスカベ地方にいた頃に勤めてた会社から、カスカベ地方に戻るように言われたんだ」
リーリエ「転勤……」
――……なにせ、今回の事件で信用を失い、多くのスポンサーや企業とのパイプが切れましたから
リーリエ(……その中に、ひろしさんの会社も、入っていたのですね)
ひろし「それはいんきんだろ!」
げ ん
こ つ
しんのすけ「」
ひろし「」
みさえ「2人とも女の子の前でそんなこと言うなっつーの!」
リーリエ「……いつ、アローラを発つんですか?」
みさえ「今月いっぱい、ね」
ハウ「今月いっぱいって……もう1週間もないよー! まだしんのすけがアローラに来て3ヶ月くらいしか経っていないのに……こんなのってないよー!」ウルッ
ひろし「……ごめんな、2人とも。せっかくしんのすけと一緒に島巡りして友達になってくれたのに」
ハラ「ハウ……時には、どうしようもないこともあるのです。野原さんたちの気持ち、わかってくだされ」
ハウ「う……うう……」ポタポタ
リーリエ「……そう、ですね」
リーリエ「しんちゃん、よかったですね。また向こうのお友達に会えるんですよ? カスカベ地方に戻るの、楽しみじゃないですか?」
しんのすけ「まあね、そろそろカスカベ防衛隊もどうなってるか、隊長として抜き打ちテストしなくちゃ」
リーリエ「ふふ……さ、ハウさん。わたしたちがしんちゃんに出来ること、考えましょう。このまま泣いてたって、何も始まりませんよ?」
ハウ「……うん」グスン
しんのすけ「ま、オラのためにたくさんの思い出、作って欲しいですな!」
ひろし「偉そうに言うなっつーの!」
ククイ博士「そうだ! 送別会をやろうよ! この間のお祭りの時は他の島のしまキングやキャプテンたちは来れなかったれども、もう一度誘って、エーテルパラダイスでしたようにみんなで集まって、野原さんたちを見送ろうよ!」
ハウ「うー……」
ハラ「ほうほう、では私とハウの家で開くのがちょうど良いでしょうな。野原さん、送別会に是非出てくれませんかな?」
みさえ「ええ、喜んで!」
しんのすけ「わーい! パーティーだー!」
ククイ博士「それじゃ早速、他のしまキングたちに呼びかけてみるよ!」
リーリエ「わたしも、アセロラさんやハプウさんに声を掛けてみますね!」
ハウ「おれもなんかできないか、考えてみるねー」
ひろし「ああ、楽しみにしてるぜ!」
リーリエ「……」
しんのすけ「……」
ハプウ『ほへえ……そうかしんのすけの奴、カスカベ地方に帰るのか。残念じゃのう、アローラで鍛え続けていれば、いずれはしまキングに負けない実力者になれたじゃろうに』
リーリエ「それで……ハプウさんは送別会に来ていただけますか?」
ハプウ『もちろんじゃ! しんのすけが島巡りを終えた後の祭りには参加できんかったが、送別会にはバンバドロと供に必ず出るぞ!』
リーリエ「ありがとうございます! しんちゃんも、きっと喜ぶと思います!」
ハプウ『しんのすけも、わしの友達じゃからな。これからアローラを去る友に、きちんと別れを告げねばのう』
ハプウ『ではな、しんのすけによろしく伝えておいてくれ』
リーリエ「はい! では失礼しますね」
ハプウからの連絡を切ると、リーリエはひと息ついて、夜風に当たるために屋敷の外に出た。
リーリエ(アセロラさんも来てくれるみたいですし……きっと、送別会も楽しくなりますよね)
リーリエ(……しんちゃん)
しんのすけの口から、カスカベ地方に帰ることになったと聞いた瞬間、リーリエの心にぽっかりと穴が開いた。
必死に表に出したい感情を抑えて仮面を被り、本心を隠して、泣きじゃくるハウを励ました。
だけど、本当に泣きたいのは自分なのに。リーリエも子供のように泣きじゃくって、今の気持ちを吐き出してしまいたかった。
リーリエはルナアーラの入ったウルトラボールを取り出すと、それを投げた。
リーリエ「ほしぐもちゃん、出ておいで」ヒョイッ
ルナアーラ「マヒナペーア」ポンッ!
ルナアーラ「……マヒナペ」シュン
リーリエ「寂しく……なっちゃいますね。ほしぐもちゃんも、しんちゃんのケツだけ星人、好きでしたものね」
ルナアーラ「マヒナペーア」
リーリエ「思えばずっと、わたしもほしぐもちゃんも、しんちゃんといましたもんね。旅してる時も、困った時もそばにいて助けてくれて……これからっていう時にいなくなって……ずるいですよね」
ルナアーラ「マヒナペ!」
リーリエ「ほしぐもちゃんもずるいって思いますよね! ほしぐもちゃんも、しんちゃんともっと旅したかったですよね」
リーリエ「わたしも、一人前のトレーナーになって、しんちゃんがどんな風に成長していくのか、見守っていきたかったな……」
リーリエ「いなくなるって……本当に寂しいものなんですね」
ため息を漏らしてしんみりしていると、背後で足音が聞こえた。振り返ると、グラジオがバツの悪そうな顔で立っていた。
リーリエ「……にいさま」
リーリエ「はい。しんちゃんの口から直接……にいさまは、知っていたのですか?」
グラジオ「ああ……大大試練が始まるより前にな。ひろしも知っていた」
グラジオ「……もっと早く言うべきだったかもな。オレが大大試練の邪魔にならないために黙ってたばかりに、オマエらに余計辛い思い、させてしまったな」
リーリエ「にいさまの所為じゃありません! ……これは、仕方のないことです」
リーリエ「それに、寂しくないと言えば嘘になりますが……やっぱり、きちんと笑顔で見送りたいです」
グラジオ「……そうだよな。オマエにとってしんのすけは、自分を変えてくれた人だからな。最後は笑顔で見送ってやれ」
リーリエ「それに、まだしんちゃんには、わたしがこれからやるべきことを話してませんし、思い出も作りたいです」
グラジオ「……ああ」
ひろし「この食器、どこの箱に入れたらいいんだ?」
みさえ「ああ、そっちの箱にしまって」
ひろし「おう、じゃあこれも片付けておくか」
みさえ「ビーストに家具を燃やされちゃったから、なんだかあっと言う間に片付きそうね」
ひろし「そうだな……なんとか使えそうな家具を瓦礫から引っ張ってきたけど、これだけでもめっけもんだな」
しんのすけ「かーちゃんのダイエット食品とか無駄なものも燃えちゃったから、ちょうどよかったわねー」
ひろし「ああ、全くだ」
みさえ「なんですって?」
ヨワシ『ねえねえ、カスカベ地方ってどんなところなんだろう?』
キテルグマ『そういえば、あんまりしんちゃんからカスカベ地方の話って聞いてないわよね』
ヨワシ『でも、やっぱり今まで住んでたアローラを離れちゃうのは寂しいね』
キテルグマ『そうねぇ、せっかくアローラで有名になれたっていうのに』
ジュナイパー『ぶりぶりざえもん、カスカベ地方についてなにか知ってるか?』
ロトム図鑑「カスカベ地方だと? カントーの近くにあるが、アローラと比べればパッとしない、ありきたりな地方だ。海もないからポケモンの種類もそこまで多くないし、特に面白みもないぞ」
ジュナイパー『本当かよ。おい、しんのすけ。カスカベ地方ってどんなところなんだ?』
しんのすけ「んっとねー……カスカベ地方にはチョコビとアクション仮面がいてーカスカベ防衛隊がいてー……なんか他にあったっけ?」
ジュナイパー『お、おいおい……。自分の住んでた地方だろ』
ミミッキュ『カザマくん、自分にとって慣れ親しんでるものほど、説明しにくいものだよ』
ジュナイパー『うーん……そういうものなのかなぁ』
フェローチェ『わたくし、しん様が住まう場所なら、例え水の中火の中森の中、どこでも構いませんわん』
キテルグマ『けっ!』
しんのすけ「うん。みんなカスカベ防衛隊のメンバーから名前を取ったんだゾ。ボーちゃんなら、石が好きだからきっと話も合うと思うよ?」
ミミッキュ『ボ! 楽しみ』
フェローチェ『あいも一度、名前の由来になった子をお目にかかりたいですわ。ひょっとしたら、恋敵になるかもしれませんし』
キテルグマ『ネネも、リアルおままごとが好きなカスカベのネネに会ってみたい!』
ヨワシ『僕も、いつもいじめられてるけど、キメるときはすごいっていうマサオくんに会いたいなぁ』
ジュナイパー『僕も、風間って子に興味あるよ。僕にそっくりっていうんだから、きっと頭もいいんだろうな』
ヨワシ『そう考えると、なんだかカスカベに行くの、楽しみになってきたね!』
ジュナイパー『うん、カスカベではどんなポケモンが住んでいるんだろう?』
しんのすけ「そんな大したの住んでないって。ヤミカラスとか、たまに道端でポチエナとか歩いてるくらいだもん」
ジュナイパー『夢を壊すようなこと言うなよ……』
こうして、各々は様々な思いを抱えながら短い時間を過ごしていった。
ひろし「いよいよ明日でアローラともお別れか……」
みさえ「なんだか、短いようで何年もここにいた気がするわ」
ひろし「ああ、しんのすけの島巡りに、エーテルパラダイス、ウルトラビーストと、たくさんの出来事が一気に起きたからな」
しんのすけ「全く、落ち着きのない一家だ」
ひろし&みさえ「お前が言うなっつーの!」
みさえ「でも、アローラの人たち、優しくて親切で……来て良かったわ。またいつか来れるかしら?」
ひろし「来れるさ。なぁ、しんのすけ」
しんのすけ「そうだねとーちゃん。でも、今度来たときはいい女と島巡りしたいね」
ひろし「アローラガールと島巡りか……俺も島巡りするかな」
みさえ「あなた!」
ピンポーン
しんのすけ「お?」
しんのすけ「ほーい!」
ガチャ
ハウ「アローラー、しんのすけー!」
アセロラ「はーい! 古代のプリンセス、アセロラちゃんでーす」
しんのすけ「ほうほうご両人。こんな夜遅くに新聞の勧誘とはご苦労様」
ハウ「新聞の勧誘じゃないよー」
しんのすけ「じゃあポスティングのアルバイト?」
アセロラ「なんで紙媒体にこだわるんだよ。送別会の準備が出来たから、迎えに来たの!」
ハウ「おばさん、アローラー! 送別会のお迎えに来ましたー!」
ひろし「おっ、準備出来たのか!」
アセロラ「うん! 人もこの間よりたくさん来てるよ!」
ハウ「マラサダいっぱい買ってきたよー!」
みさえ「じゃあ、待たせるのも悪いし、私たちも行きましょうか。ハウくん、アセロラちゃん、案内頼めるかしら?」
アセロラ「任せてー!」
ハウ「じーちゃんのうちまで案内するねー」
ハウ「ライチさんー! 連れてきたよー!」
ライチ「お、今日の主役がついに来たね」
しんのすけ「ライチさ〜んお久しぶりぶり〜会いたかった〜ん」
ライチ「アーカラの大試練以来だね。まずは、島巡りチャンピオンおめでとう!」
しんのすけ「いやあライチさんのためなら島巡りなんて晩飯前ですよー」
ライチ「それを言うなら、朝飯前でしょ?」
スイレン「しんのすけさん、お久しぶりです。私の約束、覚えてますか?」
しんのすけ「スイレンちゃんと? さあ?」
スイレン「まあ! ひどいです! わたくしの婿になって家を継ぐというのは嘘だったんですか?!」
しんのすけ「ええっ?! オラそんな約束したっけ?!」
スイレン「ふふふ……釣られましたね。嘘ですよ」
しんのすけ「……んもー、人騒がせなんだからー」
スイレン(ハプウさんからしんのすけさんのお話を聞いて考えたウソでしたが、簡単に釣れました♪)
スイレン「同じくアーカラのキャプテン、スイレンでございます」
ひろし「あ、どーも……」テレテレ
みさえ「しんのすけがお世話になりました」
ライチ「しんのすけ、この間は行けなくてごめんね。ライチさんも色々忙しかったからさ」
しんのすけ「オラ、こうしてライチさんが来てくれるだけでほっぺが赤くなっちゃって……」
ライチ「ふふ……いつもあたしを口説いちゃって、嬉しいねえ」ナデナデ
しんのすけ「あは〜」
みさえ「……けっ!」
ひろし「くそ〜羨ましすぎるぜ! なんでお前だけ……」
しんのすけ「足が臭いから」
ひろし「関係ないだろっ!」
アセロラ「それより、そろそろ中に入ろうよ! みんな待ってるよ!」
ひろし「おっと、そうだな」
スイレン「さあさ、こちらへどうぞ」
ひまわり「たいやーっ!」
みさえ「すごい飾り付け! これみんながやったの?」
ハウ「うんー、そうだよー!」
アセロラ「食事も、みんなで作ったんだよー!」
リーリエ「あ、しんちゃん……」
ククイ博士「ん、来たみたいだぜ!」
ハプウ「おお、しんのすけ! 久しぶりじゃなあ」
しんのすけ「ハプウちゃんも変わってませんな」
ハプウ「大大試練、見ておったぞ。あのZワザはもとより、中々晴れ晴れする戦いじゃった!」
ハプウ「しんのすけのご家族も、今夜は存分に楽しんで欲しい。わしらもゼンリョクで、お主らを送ろうぞ」
ひろし「おう、俺たちも楽しませてもらうよ」
ハラ「うむ、みな揃いましたな!」
ハラ「それではこれより、野原さんたちの送別会を行いたいと思います」
ハラ「しんのすけ、送別会を始める前に一言頼めますかな?」
ククイ博士「ああ! ギガインパクトがある挨拶、みんなに言ってあげるんだ!」
しんのすけ「ほーほー」
マイクを渡されたしんのすけは、壇上に上がると一同を見渡した。みんなが、しんのすけがどんな挨拶を言うのか期待しながら視線を集める。
そして、しんのすけは口を開くと……。
しんのすけ「よ!」
全員「」ズルッ
リーリエ「しんちゃん……いくらなんでも短すぎです!」
ハラ「で、では皆の衆、今宵は明日旅立つ野原さんに向けた送別会を始めるとしますかな!」
各々飲み物を片手にしんのすけと今回の島巡りの思い出話をし、新たにひろしとみさえに挨拶したりと、送別会を楽しんだ。
マオ「さ、みんな食べて食べて! 」
ハプウ「わしの畑で採れた新鮮な野菜もあるぞ」
ひろし「おっ、みずみずしくて潮の香りがするな。この野菜!」
しんのすけ「オラ、お野菜は別にいいかな」
リーリエ「食わず嫌いはよくないですよ、しんちゃん」
しんのすけ「じゃあリーリエちゃん代わりに食べれば」
ライチ「あら? 好き嫌いは良くないわよ? あたしはね、好き嫌いせずによく食べる子が好みなの」
しんのすけ「ハプウちゃんの野菜は何杯でもイケるゾ。コクとのどこしがまったりしてますな」モグモグ
リーリエ「」ズルッ
ひろし「ビールかよっ!」
ハプウ「この変わり身の速さは賞賛に値するな……」
マーマネ「しんのすけ……アローラ……」
しんのすけ「よ、ご両人」
マーレイン「まずは島巡り達成、おめでとう! 」
マーマネ「……ウラウラのみんな、注目してる。しんのすけ、すごい」
しんのすけ「それほどでも」
マーレイン「残念だね、君がアローラを去るなんて。しんのすけくんの才能なら、ハラさんからキャプテンに指名され――将来、しまキングにだってなれたかもしれないのに」
マーマネ「うん……。僕も勝負したかった」
マーマネ「それで、ロトム図鑑を預かってもいいかな……?」
しんのすけ「いきなりですな。なんで?」
マーレイン「餞別になれるかわからないけど、僕らなりにしんのすけにプレゼントをしたくてね。それで、ロトム図鑑をアップデートすることを思い付いたのさ」
マーマネ「勝負できない代わりに……お礼」
ロトム図鑑「んあ?」
マーレイン「やあ、ぶりぶりざえもんくん」
ロトム図鑑「何の用だ?」
マーマネ「キミを……アップデートしようと思って」
ロトム図鑑「私をアップデートだと? 私のレベルを-85なんて結果を出したポンコツ装置を作ったお前たちにアップデートなんて出来ると思えないな」
マーレイン(まだ引きずってたんだね)
ククイ博士「まあそう言うなよ、ぶりぶりざえもん! マーレインもマーマネも、優れた発明コンビだからね」
しんのすけ「ぶりぶりざえもんも、しばらく修行して来なさい」つロトム図鑑
マーレイン「やあありがとう。バージョンアップを終えたら、必ず郵送するよ」
ロトム図鑑「おいっ! 私の意見は無視か!」
マーマネ「ロトム図鑑……早くアナライズしたい」
ロトム図鑑「貴様ら! もし私になにかあれば国際警察が黙ってないぞ!!」
しんのすけ「おたっしゃでー」ドナドナドーナードーナーニバシャガユーレールー
みさえ「結婚ですか?」キョトン
ライチ「こう言うと恥ずかしいけど、まだ彼氏が出来てなくてねえ……」
バーネット「だ、大丈夫ですよ。きっと、ライチさんにも素敵な男性が現れますって!」
みさえ「そーよ! 男なんて星の数ほどいるんだから、いっそ選り好みしちゃいなさいよ」
ライチ「そ、そうかい? なんか自信ついてきたよ」
しんのすけ「……星に手は届かないけどね」ボソッ
ライチ「」orz
みさえ「余計なこと言うなっつーの!!」
しんのすけ「ま、安心なさい。オラが貰ってあげますからー」
ライチ「ほ ん と に ? ! 今すぐ貰ってくれるの? ライチさんがしんのすけくんをお持ち帰りしてもいいんだねっ?!!」
しんのすけ「ひいっ!?」ビクッ
ライチ「罪を重ねるより彼氏作って愛と思い出を重ねるのが最優先なのおおお!! マオにはまだ分からないでしょうけどねえええ!!!」ゴゴゴゴゴ
マオ「ひええっ!」
カキ&スイレン「いつものライチさんじゃない……」
しんのすけ「ライチおねいさん、松坂先生みたい……」
プルメリ「結婚ね……今んところあたいには縁がなさそうだね」
バーネット「本当に怖いのは、女の執念ってところかしら……?」
しんのすけ「お、幸薄そうなおじさん」
アセロラ「あー! クチナシおじさん来てたのー?」
プルメリ「おっさん……来てるなら来てると言えばいいのに」
クチナシ「おじさん、しまキングだからねえ。島巡りを終えたトレーナーに、一声かけなきゃな」
クチナシ「ま、坊主。島巡りチャンピオン、おめでとさん。向こうでも元気でやれよってね」ニヤリ
しんのすけ「おじさんも、なにかいい出会いとかあるといいねー」
クチナシ「……じゃあな」スタスタ
アセロラ「あーあ行っちゃった……。もっと楽しんでいけばいいのに」
しんのすけ「やっぱり地味ィ」
プルメリ「ま、なんだかんだで、しんのすけを見送ろうって気持ち、ちゃんとあるんだね。じゃなきゃ、ウラウラからこっちまで来ないさ」
プルメリ「まぁ……あいつはこういうの、出るの苦手だからね」
ハラ「グズマは一応呼んだのですが、祭りの後からずっと、ポニ島へ修行しに行ってしまいましてなあ」
しんのすけ「おお! びっくりした!」
プルメリ「修行……か、やっぱりしんのすけとハウの戦いを見てトレーナーとして何か感じるものがあったんだろうね」
しんのすけ「ちゃんと首を洗えるといいね」
プルメリ「それを言うなら足を洗う、だよ」
――その頃、屋敷の外では
クチナシ「……そんなところで何してるんだ? グズマのあんちゃん」
グズマ「ああ? なんだっていいだろ? 」
クチナシ「ま……飲みモンくらいなら取ってきてやるよ」
グズマ「うるせえよ! ブッ壊されたいか、クチナシさんよ」
クチナシ「……別にいいけどよ。グズマのあんちゃん、何事もほどほどにな」スタスタ
グズマ「……」
ひろし「え? ああ、まぁ」
カキ「なるほど……。おれの試練でも、しんのすけと同じく観察眼に優れていたところが見受けられた。さすがは親子というべきか」
ひろし「いや、あれは観察力もへったくれもねぇと思うけど……」
スイレン「しんのすけさんに、なにか特別な訓練でもしてあげていたのですか? 私の試練での行動には驚かされました!」
ハウ「カザマと一緒にヨワシの中に突っ込んで、群れを率いているぬしヨワシをクリティカットで倒したんだよねー」
イリマ「それはすごいですね! ひろしさんはなにか勝負のコツでもお教えになったんですか?」
ひろし「いや、俺は何も……。それに、元トレーナーと言っても、バッジを途中で集めるのやめちゃったしな」
ハウ「ホントかなー? だって、しんのすけってーゼッタイただの5歳の子供じゃないよー! スカル団とかエーテルパラダイスの時も、ほとんどしんのすけが解決したようなものだよー」
カキ「やはり……しんのすけにはなにか秘密があるのでは?」
ひろし「……わかった、ちょこっとだけあいつの強さを教えるよ」
イリマ「おおっ、本当ですか?」
ハウ「なになにー? 教えてー!」
カキ「どんな冒険を繰り広げてきたのですか?」
ひろし「……例えばだな、しんのすけとしんのすけにそっくりな王子様と一緒に地下宮殿に行ってなんでも願いが叶う伝説のポケモンと出会ったり――」
ひろし「温泉に入ってすごいパワーを得て巨大ロボットを倒したり――」
ひろし「後はシロにくっついた、地球がぶっ壊れる威力の爆弾を狙ってきた2つの組織から逃げたり――」
ひろし「俺とみさえが薬を飲んだらポケモンになってある組織に攫われちまって、しんのすけとカスカベ防衛隊が助けに行ったり――」
ひろし「最近だと、宇宙からやってきたポケモンの光線を浴びて子供になっちまって、元に戻るためにそのポケモンたちと一緒に全国を回って親玉を探し回ったんだ」
ハウ「へー」
スイレン「うふふ、面白い話ですね!」
イリマ「やっぱり、秘密ってところですか。気になります!」
カキ「だが、嘘ならスイレンの方が上手だな」
ひろし(嘘じゃねぇんだけどなー)
スイレン「ですが、驚かないでくださいよ? 実はしんのすけさん、ポケモンとお話が出来るのです!」
カキ「スイレン、それも嘘だろう?」
スイレン「さーて、どうでしょうね~♪」
ハウ「どしたのー? 暗い顔なんかしてー」
しんのすけ「オラ、島巡り終わって、がっかりしたことがあるの」
アセロラ「ガッカリ? どうして? 島巡りチャンピオンになったんだから、もっと胸を張っていいんだよ?」
しんのすけ「だって、オラ島巡りチャンピオンになっておねいさんにモテモテになりたかったのに、全然そんな気配がないもん! 来るのはオラと勝負したいっていうむさくるしい男のトレーナーばっか! オラの努力ってなに?」
ハプウ「……なぜお前の頭は女の子ことばかりなのか。呆れてものも言えんな」
ハウ「おじさんに似たからだよー」
ハプウ「ま……年頃の娘はライチくらいしかおらんが、わらわにアセロラ、それにリーリエもおるぞ? みな、お前のこれからの活躍に期待しておるのじゃ!」
アセロラ「うんうん! しんちゃんモテモテだね!」
しんのすけ「10代前半はちょっと……」
アセロラ「それどーゆー意味? アセロラじゃ不満なの?」
ハプウ「ま、そう言うと思ったわ」
ハウ「しんのすけらしいねー」
マオスペシャル・Z「」ズオオオ
しんのすけ「これ……なに?」
ハプウ「……マオ、この料理はどうやって作った?」
マオ「えっと、とっておきのスターのみとサイコシードを砕いて、ミックスオレを混ぜてドロドロにしたあとしんかいのきばで混ぜて……」
ハプウ「分かった。もう何も言わんで良い」
しんのすけ「と、とーちゃん食べてみなよ。最近、昼ご飯とかにこだわりがあるんでしょ? とーちゃんの食レポ聞いてみたいな~」
ひろし「そ、そんなわけねぇだろ! 俺がそんなこだわり派に見えるか? しんのすけが食べてみなよ」
ライチ「へえ……マオ、ずいぶん手の込んだ料理を作ったのね。味見してもいいかしら?」パクッ
しんのすけ&ひろし「!??」
ライチ「……うん、おいし! しんのすけも食べてみなよ」
しんのすけ「え、えぇ……」
しんのすけ「……」ゴクッ
――あたしはね、好き嫌いせずによく食べる子が好みなの
しんのすけ「……愛の力は何者にも負けないっ!!」パクッ
しんのすけ「……」モグモグ
ひろし「お、おい。しんのすけ?」
ハプウ「平気なのか……?」
しんのすけ「……」ゴクン
ハウ「しんのすけー?」
しんのすけ「……ライチおねいさん、ごめんなさい」
ドサッ
ひろし「おいっ! しんのすけ、しっかりしろ! しんのすけ!」
リーリエ「しんちゃんっ!! 大丈夫?!」
ハウ「わー! しんのすけが気ィ失っちゃったー!」
マオ「そっか、あたしの料理ってぶっ倒れるほどおいしかったのね!」
ハプウ「絶対違うと思うぞ」
カキ「マオ……力入れすぎだ」
しんのすけ「う……うーん」
リーリエ「あ、目が覚めましたか?」
しんのすけ「ハッ! ここはどこ? オラはクロツグ?」ガバッ
リーリエ「ここはハラさんとハウさんのお家で、あなたはしんちゃんでしょ?」
しんのすけ「あれ? そうだっけ?」
リーリエ「しんちゃん、マオさんの料理を一口食べて気を失ったんですよ」
しんのすけ「のわわ〜っ! 思い出した! オラもうライチおねいさんの彼氏になれない……」
リーリエ「そっちですか?!」
リーリエ「はあ……心配して、なんだか損しました。いつものことですけど」
しんのすけ「てゆうか、リーリエちゃんこそ、なんでここにいるの?」
リーリエ「しんちゃんが倒れちゃったから、看病してたんです」
しんのすけ「やれやれ、リーリエちゃんに看病されてもらうなんて、オラもずいぶん体力が落ちましたなぁ」
リーリエ「あー! そういうこと、言うんですか?」
しんのすけ「えっ? 空飛ぶの? 乗りたい乗りたい!!」
リーリエ「さて、どうしましょうか」シラー
しんのすけ「いいじゃん乗せて乗せて! よっルージュラ! 色女! 憎いねーっ! ほい決まり! 」
リーリエ「クスッ……それ、褒めてるんですか? 仕方ないですね、じゃ、2人であの窓からこっそり出ましょうか」
しんのすけ「わーいわーい!」
リーリエ「出ておいで、ほしぐもちゃん」ヒョイッ
ルナアーラ「マヒナペーア!」ポンッ!
しんのすけ「よ! ほしぐもちゃん!」
ルナアーラ「マヒナペ!」
リーリエ「ふふ、ほしぐもちゃんも、しんちゃんと会えて喜んでるみたいですよ」
しんのすけ「ケツだけ星人ブリブリ〜ブリブリ〜!」
ルナアーラ「マヒナ! マヒナペ!」キャッキャッ
リーリエ「もうっ! しんちゃんったら……まあ、今回はいいかな。ほしぐもちゃん、お願いね!」
ルナアーラ「マヒナペ!」バサッ!
ルナアーラはしんのすけとリーリエを、両翼で抱えると軽やかに満月の浮かぶ星空へと飛び出した。頭上の星空には薄い雲ひとつない。
しんのすけとリーリエはジェットコースターに乗ったような気分で、歓声を上げて見下ろすと、メレメレ島の街や野原、山、海とパノラマが広がっていた。
しんのすけ「わーお! すげー!!」
リーリエ「わたしもほしぐもちゃんと空飛ぶの初めてですが、とっても興奮してます! ほしぐもちゃんすごいです!」
ルナアーラ「マヒナペーア!!」
リーリエ「そうですね!」
リーリエ「……ね、しんちゃん」
しんのすけ「なに? どしたの?」
リーリエ「わたし、ハンサムさんとリラさんのチームに入って、ほしぐもちゃんと一緒にビーストさんを元の世界に帰そうと思います」
しんのすけ「ほう」
リーリエ「最初は、またほしぐもちゃんを失うのが怖くて、奥手になっていたのですが、みんなが、ポケモンさんと未来を切り開く姿を見て、自分もそれに憧れていたことを思い出したんです」
リーリエ「わたしも、ほしぐもちゃんと一緒に未来を切り開きたい。きっとかあさまも、そう望んでいるような気がして……失う怖さよりも、ドキドキがまさったんです」
ルナアーラ「マヒナペィーア!」
リーリエ「そのため、わたしもトレーナーとして強くなるために、ビーストさんを助けるのです」
しんのすけ「だいじょぶ、リーリエちゃんはきっといいトレーナーになれるよ」
リーリエ「本当ですか?」
しんのすけ「うん! オラの言うことはごくたまに当たるんだ!」
リーリエ「たまにですか……」ズルッ
リーリエ「……そうかも、しれませんね」シュン
しんのすけ「?」
しんのすけ(いつもならムキになって返すはずなのに、どうしたんだろ?)
リーリエ「わたし……しんちゃんがカザマさんと一緒に元気でいるところ、見ているのが好きなんです。……あんなふうに離れ離れになって、しんちゃんが危ない目に遭うのは、絶対嫌ですから」
リーリエ「……しんちゃん、ナッシー・アイランドでわたしが話した夢、覚えてますか?」
しんのすけ「なんだっけ?」
リーリエ「……やっぱり、覚えてないんですね。しんちゃんらしいですけど」ムスッ
しんのすけ(んー……なんだっけ! 確か借りたアクかめのDVD返すとかそんな約束じゃなかったハズだけど~!)オロオロ
リーリエ「……本当はわたし……しんちゃんにはカスカベへ帰って欲しくないです。このまま、ずっとそばにいて欲しいです。あなたはわたしの夢だから。あなたがいなくなったら、掴んだ夢を忘れてしまいそうで――」
しんのすけ「……」
しんのすけは悲しげに俯くリーリエに顔を近づけると、耳に向けて……。
しんのすけ「あむ」ハミッ
リーリエ「ひゃあ!」ビクッ
しんのすけ「なんかしょんぼリーリエしてたからデラックスさせようと思って」
リーリエ「それを言うならリラックスです!」
しんのすけ「ま、そんなに寂しいなら、会いに来ればいいじゃん。いやー、モテる男は辛いぜ」
リーリエ「え? 会いに……ですか?」
しんのすけ「うん」
リーリエ「……今のわたしじゃ、きっとまた、しんちゃんに守られっぱなしになっちゃうと思います」
リーリエ「だから、かあさまが治って、ビーストさんも元の世界に返して、トレーナーとして強くなったら、その時はしんちゃんに会いに、カスカベ地方に行きます!」
リーリエ「そうしたら、わたしと一緒に旅に出ましょう。 それまで、待っててくれますか?」
しんのすけ「うーん……考えとく」
リーリエ「約束、ですよ? カスカベに帰っても、あなたはあなたのままでいてくださいね」
しんのすけ「何言ってんの? オラはオラだゾ」
リーリエ「ふふっ、そうですね」
しんのすけ「てゆうか、寒くて風邪引きそう」ガタガタ
リーリエ「本当はこうやって空飛ぶのもダメなんですけどね」
しんのすけ「リーリエちゃん、結構アクティブになったね」
リーリエ「ふふ、誰かさんのせいです。ほしぐもちゃん、そろそろリリィタウンに帰りましょう」
ルナアーラ「マヒナペーア!」
ルナアーラは一番道路に降り立つと、ボールに戻った。
そのまましんのすけとリーリエはリリィタウンで様子を伺うと、みんな外に出てカキとガラガラによる踊りに魅入っていた。
カキ「ふん! はっ! ほっ!」ハイッ! ハイッ! ハヤハヤハヤ
カキ「ほっ!」ハーイ!
ダイチ「アローラ!」シュバッ
オーッ!! パチパチパチ
リーリエ「みなさん、踊りに夢中で……抜け出したことを気付かれていませんね」
しんのすけ「だね」
ハウ「あれー? 寝てたんじゃないのー?」
リーリエ「ちょっと、外の空気を吸わせてあげてたんです」
ひろし「しんのすけ、具合はどうだ?」
しんのすけ「身体もムスコもビンビンですよ」
マオ「ごめんね? しんのすけくんには、マオスペシャル・Zは刺激が強すぎたかも」
ハプウ「強すぎるとかそういうレベルでは無いと思うが……」
スイレン「マオさん、気合入れすぎです! しんのすけさんは子供なんですからちゃんとしたもの、食べさせませんと」
マオ「分かってる分かってる、次から気をつけるから!」
ハラ「うむ! では、そろそろバトルロイヤル大会にしますかな」
バーネット「ロイヤルマスクも来るのかしら?」
ククイ博士「もちろん! バトルロイヤルのあるところに、彼は必ず現れるからね!」
しんのすけ「そういや、クジラくんいないね」
リーリエ「にいさまも呼んだのですが、やっぱりかあさまの代理としてお仕事、しなくちゃいけませんから……」
しんのすけ「ビンボー暇なし、か」
リーリエ「ちょっと違う気もしますけど……」
リーリエ「かあさまも、来ることが出来たらきっと、笑ってくれたのに……血清のおかげで、少しは良くなったんですよ? きっと、見送りにも来てくれたはずです」
しんのすけ「ルザミーネおねいさんか……お元気になるといいね」
ハウ「ふたりともー何してるのー? バトルロイヤルやろーよ!」
しんのすけ「今行くー!」
イリマ「審判はキャプテンのイリマがつとめますよ!」
しんのすけ「わーいオラ出る!」
ハウ「おれもー!」
ロイヤル「おっと! このバトルロイヤルの伝道師、ロイヤルマスクの事を忘れては困る!」ドンッ!
バーネット「きゃーっ! ロイヤルマスク!!」
しんのすけ「ククイマスクー!」
ロイヤル「ロイヤルマスク!!」
ハラ「さあ、残り1人。誰が出ますかな?」
リーリエ「あ、あのっ! わたしとほしぐもちゃんが出ます!」
ザワッ!
ハウ「えー!? リーリエがー?」
しんのすけ「ほーほー」
ロイヤル「ほう! 伝説のポケモンの使い手か! 相手にとって不足はないぜ!」
ライチ「まさかあの子の進化した姿がルナアーラだったとはね……。星の子と呼ばれる理由が分かったよ」
マーレイン「これは、誰が勝つか全く予想ができなくなってきたね」
ハラ「おお、この戦い――ハラハラしますぞ!」
みさえ「リーリエちゃん! 頑張ってー!」
ひろし「しんのすけもガンバレーっ!」
ひまわり「たい!」
イリマ「では、それぞれポケモンを1匹お出しください!」
ハウ「出番だよ! ガオガエン!」ヒョイッ
ロイヤル「さあ行くよ! ルガルガン!」ヒョイッ
リーリエ「ほしぐもちゃん! お願い!」ヒョイッ
ポンッ! ポンッ! ポンッ! ポンッ!
ジュナイパー『よーし! 負けないぞ!』
ガオガエン「ガオオッ!!」
ルガルガン「ウォーンッ!!」
ルナアーラ「マヒナペーアッ!!」
土俵に現れた4匹のポケモンたちがそれぞれの存在を主張するように咆哮を上げる。
そして、それぞれのトレーナーが命令を下すと、バトルロイヤルが開始された!
みんなが送別会に熱中して、楽しんでいった。
しかし、楽しい時はあっと言う間に過ぎていき、最後にはみんなでZポーズを決めて(木の陰ではクチナシとグズマも加わりながら)記念撮影を取って、しめくくられた。
そーべつかい、とっても楽しかった!
オラ、アローラに来てよかった!
とうとう、野原一家がアローラを別れる時が来た。
ハウオリシティの乗船場では、しんのすけたちを見送るために、送別会で帰らずに残った人たちが集まっていた。
ハプウ「お主らがいなくなると、アローラも少し静かになる気がするのう。ひまわり、次に来た時はバンバドロに乗せてやろう」
バンバドロ「ムヒイウン!」
ひまわり「たい!」
アセロラ「またみんなで遊びにおいでよ!」
ひろし「ああ、また来るよ」
ライチ「しんのすけ……アローラに来て、島巡りしてくれてありがとう。アンタのこと、あたし忘れないよ」
しんのすけ「オラ次来た時はライチおねいさんと愛の島巡りできたらなぁ~って」クネクネ
ライチ「ふふっ、そうだね。あんたが成長して立派なトレーナーになったときのお楽しみとして、取っておくよ」ナデナデ
しんのすけ「ほーい! オラ頑張っちゃいま~す!」デレデレ
しんのすけ「プルメリのおねいさんもくさやのおじさんも、もうスケスケおパンツの下着ドロしちゃダメだゾ」
グズマ「だから下着ドロなんかしてねえと言ってるだろが!」
プルメリ「グズマ……いたのかい?」
グズマ「……ケッ、おいしんのすけ。アローラの風が吹けば、何が起きるかわかんねぇ。お前が来た時なんかまさにそうだ」
グズマ「また会う時、オレ様がどうなってるか、お前が確かめてくれや」
しんのすけ「グズマのおじさんも達者でねー」
グズマ「くさやだっつってるだろ!」
ハウ「あははー今のはグズマさんが間違ってるよー」
プルメリ「プッ!」
グズマ「うるせえっ! 笑うな!」カアアッ
ハラ「果たして……しんのすけはアローラの風が吹いたことでやってきたと言えますかな?」
グズマ「あ?」
ハラ「君は言うなれば、嵐を呼ぶ子供。アローラで生まれた過去の因縁を吹き飛ばし、アローラに新たな種を蒔き、そしてアローラを去って行く……」
ハラ「カプ・コケコが君を選んだ理由が、なんとなく分かりますぞ。そして、カスカベに帰ってからも、君は嵐を呼び続けるのでしょうな」
しんのすけ「オラんちはいつもかーちゃんのおかげで嵐が吹きっぱなしだけどね」
みさえ「やかましい!」
ククイ博士「しんのすけ……短い間だったけど、君との冒険は新たな発見でいっぱいだったよ! またいつでもアローラに戻っておいで。いつか、僕の夢が叶った時、ぜひアローラポケモンリーグに挑戦して欲しい」
ハラ「その時は是非とも、このハラもオニのハラで戦いを挑みますぞ!」
しんのすけ「ハラのおじさん、してんのーになるの?」
ハラ「うむ、わしはじじいですがポケモンリーグの四天王になって、挑戦者の壁となるのも、悪くありませんな」
ハウ「……」
ハラ「ほら、ハウ。後ろを向いていては、別れは告げられませんぞ」
ハウ「うっ……ぐすん」フルフル
ククイ博士「ハウ……涙、溢れちゃうよな。でも……大事な人を見送る時は笑顔だぜ」
しんのすけ「ハウくん、お願いがあるの」
ハウ「なにー? なんでも言ってー」
しんのすけ「オラ、カスカベに帰っちゃうからアローラ防衛隊の隊長、ハウくんに任せるね」
ハウ「たいちょう?」
しんのすけ「そ、だからアローラの平和は、ハウくんに任せたゾ!」
アセロラ「よかったじゃん、ハウくん!」
リーリエ「2代目隊長、ですね!」
ハウ「うんっ、任せてー! アローラはおれたちが守るからー!」ズズッ
ハウ「おれねー必ず強くなるー! それでーいつかマラサダいっぱい抱えてカスカベに行くからーまた遊んだりー勝負しようよー!」
しんのすけ「おーし、オラ、今度はカスカベ防衛隊隊長としてお相手するから!」
ククイ博士「アローラ防衛隊隊長と、カスカベ防衛隊隊長――まさに、隊長同士のドリームマッチ、だね!」
???「……ここにいたか」
乗船場に現れたのは、エーテルパラダイスにいるはずのグラジオだった。
グラジオは車椅子を押しながら、しんのすけたちのもとへ近付いた。その車椅子に乗っている人物を見て、みんなが驚きを隠せなかった。
ルザミーネ「……」
グズマ「代表っ!」
ルザミーネの視線は仰天するリーリエとグズマ、そして野原一家を順に動いていった。
リーリエ「いつ、目が覚めたんですか?」
グラジオ「……昨日の夜にな。それで、しんのすけたちがカスカベ地方に帰ると聞いた途端、見送りに行くと言いだしたんだ……オレは止めたんだがな」
ルザミーネ「……みなさん……」
ウツロイドの神経毒の影響か、ルザミーネは途切れ途切れに言葉を紡いでいく。
ルザミーネ「……この度は……わたくしのワガママで……数え切れないほどの被害を出してしまったことを……お詫びします」
リーリエ「……かあさま」
ルザミーネ「野原……さん……。わたくしたち家族を……救っていただき……ありがとうございます」
ひろし「あ、ああ……」
ルザミーネ「みさえさん……あなたの言葉……わたくしの心に深く届きました……。これからも……母親として……この子達との関係を……治していきたいと……思います」
みさえ「ええ、必ずよ。子を想う心を取り戻したあなたなら出来る!」ギュッ
みさえはルザミーネに目線を合わせるようにしゃがむと、彼女のやせ細った右手を、包み込むように両手で強く握った。
ひろし「その時はお互いの家族が揃ってるといいな」
みさえ「家族が元通りになるの、応援してますから」
ルザミーネ「しんのすけくん……リーリエのこと……ありがとう……」
しんのすけ「どうってことないゾ。また道に迷ったり人に頼ってばかりだったら、オラを呼んでください。すぐ駆けつけますんで」
リーリエ「大丈夫ですよ、かあさま。わたし、もう1人で色んなところに行けますから。それに、今は大切なパートナーもいますから」
リーリエの元気な笑顔を見て、ルザミーネも表情が和らいだ。もう彼女の瞳にはビーストに執着していた狂気の光は映っておらず、代わりに子供たちの姿があった。
ルザミーネ「……リーリエ。……素敵な子と……お友達になれたのね……嬉しいわ」
ひろし「何を?」
グラジオ「家族の誰かが危険な目にあったら、みんなで乗り越えることだ。オレたち家族には……まだ父が戻ってきてないからな。母上と財団の収拾がついたら、今度は実験中に消えた父を探しに行くつもりだ」
ひろし「そうか。ようやくグラジオ君たち家族も、元通りになるための一歩を踏み出したんだな。頑張れよ」
グラジオ「フッ……。それに、なんというか、父は近くにいる気がするんだ。ウルトラスペースではなく、この世界のどこかにな」
ひろし「きっと見つかるさ。グラジオ君たちが親父さんのことを信じている限りな」
グラジオ「ああ……。しんのすけ、オマエに礼を言う。リーリエのこと、母のこと……心から感謝している……」
グラジオ「オレがオマエにできるのはポケモン勝負だけだからな。いつかカスカベに行き、お前にまた戦いを挑むつもりだ。その時は、オレたちのゼンリョク、みせてやる!」
しんのすけ「そういや、お互い一日一善だったねぇ。次はオラが勝つからね。ヌルヌルくんと一緒にかかって来なさい」
ククイ博士「それを言うなら1勝1敗、だろ」
グラジオ「オマエらが強くなるならオレも負けてられない……。オレたちは仲良しではない。でも悪くない関係だ。じゃあな、勝ちつづけろ!」
しんのすけ「悪くない関係ってどんな関係? もしかしてオラとクジラくんの身体中のホクロを数えられるような関係~?」
グラジオ「フッ……相変わらず下品なやつだ……」
しんのすけ「締めはリーリエちゃんだから、気の利いたセリフ頼むね〜」
みさえ「こーらっ! 変なプレッシャー与えないの!」
リーリエ「ふふっ……しんちゃん。言いたいこと、たくさんあります」
リーリエ「向こうに着いても、ケツだけ星人とかインドぞうさんとか、しちゃダメですよ」
リーリエ「それから……ナンパもしないでね。声かけられた人、困っちゃいますから」
リーリエ「あと……約束も忘れないでね。わたし、もう二度は言いませんよ?」
リーリエ「それと……」
リーリエ「……」
しんのすけ「?」
リーリエ「あの……お願いがあるんです」
しんのすけ「どしたの?」
リーリエ「えいっ……」
しんのすけ「」
ハプウ「」ホニャア
アセロラ「」オクチアングリ
グズマ「ケッ!!」
プルメリ「」フッ
ハラ「おおう、めでたい!」
ハウ「ほわー……」
ククイ博士「うおう……」
ライチ「」
グラジオ「」
ルザミーネ「まぁ……」
ルナアーラ(ボール)「マヒナペィーアー!!」ヒューヒュー!
リーリエ「――またね、しんちゃん!」ニコッ
しんのすけ「…………」
しんのすけ「い……っ」
リーリエ「え?」
しんのすけ「いやあああああっ! オラもうお嫁に行けなーーい!!」ダッ
ひろし「あ、おい、しんのすけ!」
みさえ「しんのすけったら……じゃ、ありがとうございました」
ハラ「アローラ一同、これからの野原さんたちの幸せを祈ります。お元気で」
しんのすけは船尾に出ると、ポートエリアでみんなが手を振ってくれた。
ハプウ「達者でなー!」
バンバドロ「ムヒイウン!」
アセロラ「元気でねーっ!」
ライチ「またアローラにおいでーっ!」
ククイ博士「しんのすけ! アローラ!」
ハウ「アローラ!! またあおーねー!!」
リーリエ「しんちゃん! アローラ!!」
しんのすけ「みなさーん!」
しんのすけ「オラ、アローラ地方のこと、絶対に忘れるまで忘れません! じゃ、そゆことでー!!」フリフリ
どんどん、リーリエたちの姿が、メレメレ島が、アローラ地方が地平線の向こうに消えていく。
それでも、しんのすけはアローラで出来た友達に向けて、手を振りつづけていた。
ヨワシ(ボール)『見えなくなっちゃったね……』
キテルグマ(ボール)『……しんちゃん。みんなと別れると、寂しくなっちゃうね』
ミミッキュ(ボール)『代わりといっちゃなんだけど、僕たちがいる』
ヨワシ(ボール)『うん! もうアローラ防衛隊じゃないけど、心の中ではみんなまだアローラ防衛隊だよ!』
フェローチェ(ボール)『カスカベに着いても、あいたちはしん様と一緒、ですわん』
ジュナイパー(ボール)『だから、もっともっと強くなって、いつか戻ってきたとき、みんなに強くなった僕らの実力を見せてやろうよ!』
しんのすけ「……」
ジュナイパー(ボール)『……しんのすけ』
しんのすけ「……ううん、ない」
ひろし「……泣いてるのか?」
しんのすけ「オ、オラ泣いてないゾ! いやあ、うるさくて方向音痴なリーリエちゃんがいなくなって、オラ腰の荷が下りた下りたワッハッハッハッ……」
みさえ「しんちゃん……いいのよ。今はたくさん泣いても」ナデナデ
しんのすけ「……っ」ポタポタ
ライチ「あの子は、あの子自身が選んだ道を進んで行くんだね」
ハプウ「そして、わしらにはわしらの、進むべき道がある」
ハラ「太陽と月が巡り会うように、それぞれの道を進んだその先で、またしんのすけや野原さんと相見える時が必ずやってきますな」
グズマ「次に来た時は、あいつをブッ壊せるくらいに強くなってやるぜ。必ずな!」
プルメリ「体も、心もね」
ハウ「おれも本気のじーちゃんにもー、強くなったしんのすけに勝つためにーもっともっとポケモンたちと鍛えるよー!」
ククイ博士「ああ、僕たちも次にしんのすけと会った時に胸を張れるよう、ゼンリョクで道を切り開いていこう」
グラジオ「ああ……立ち止まってる暇はない」
リーリエ「どんなことがあっても、わたし大丈夫ですよ。しんちゃんや、みなさんの笑顔をもらいましたから……」
ククイ博士「さあ、帰ろう! みんな待ってる……家族が、待ってるぜ!!」
リーリエ「はい!」
その えがおが たくさんの であいを つくり
であいが かがやく みらいを つくる
みんなに あえて よかった
あなたに あえて よかった
【EDテーマ はじまりのうた】
ひろし「……結局、ここに戻ってきたんだな」
みさえ「本当ね……」
ひまわり「たい!」
しんのすけたちは赤い屋根と白い壁が特徴的な、自分たちが住んでいた家を見上げた。
長い間住んでいた家は、相変わらずローンがあと32年残っている風格を見せつけており、しんのすけたちを暖かく出迎えていた。
ひろし「じゃ、入ろうぜ。我が家に!」
しんのすけ「ほい!」
ひろしは鍵を取り出すと、ドアノブに入れて回した。ガチャリと鍵の開く音が内側から響く。
「ただいま!」
「おかえり、とーちゃんかーちゃん!」
クレヨンしんちゃん×ポケットモンスター サンムーン
嵐を呼ぶゼンリョク! アローラ地方大冒険!
おしまい
サンムーンの物語の内容がクレしんに当てはめると面白そうと思って始めてみたのですが……やってみたいことをやってたら思ったより長くなってしまいました。
オチも当てている人がいてびっくりしました。さすがにみさえのマザービースト化は予想できた人は(スレを見た限りでは)いませんでしたが。
続編など色々考えたのですが、クレしんと一番雰囲気や展開があっているのはやはりサンムーン……ということで、今のところ次回作などは考えていないです。ウルトラサンムーンも、実際にプレイしてみなければ分からないことが多いのですが……。
こんなやりたい放題な作品を読んでくださり、ありがとうございました。
・ポニ島編後半以降の展開について
これは構想の段階から考えていました。
せっかくのクロスオーバー作品ですから『ポケモンでもクレしんでも出来ない、出来なかったことをやってみよう』というテーマを掲げて執筆しました。しんのすけが敵の手に落ちたり、リーリエが主人公の手持ちでルザミーネに挑んだり、Zクリスタルを作ったり……。野原一家にも活躍の場を与えたかったし。
ポケモンリーグの設定や四天王戦をカットしたのには色々理由があります。4人連続で戦闘を書くのが単純に怠くて面倒になる……というのはあるのですが、しんのすけがリーグのチャンピオンになれば、余計アローラから離れられなくなるだろうと思ったからです。本編でも、防衛戦があるので、余計チャンピオンとしての責務が重いことも描写されてますしね。
このSSの締めくくりは「しんのすけたちがカスカベの家に帰る」というシーンにゼッタイしたかったので、ポケモンリーグという設定が邪魔になってくるんですよね。
なので、まだククイ博士がリーグの構想を練っており、島巡りの締めくくりも大大試練という扱い……という設定に変えちゃいました。なのでカヒリさんは泣く泣く出番カット……おまけで登場したのでそれで許してください。
これに関しては、キャラのバランスを取る意味で登場させました。しんのすけが冒険したり戦うなら、風間たちの存在は必要不可欠と思いましたし。
もちろん、かすかべ防衛隊の面々はポケモン、後はスカル団という扱いなので、若干キャラは変わってしまいましたが、かねがね好評で嬉しかったです。みなさんがネネちゃんやボーちゃんはどんなポケモンなのか予想しているのを見てニヤニヤしてました。
ちなみに手持ちの選考基準ですが……。
風間……ガオガエンやアシレーヌでは風間のキャラと合わないと思い、消去法で。
マサオ……弱気なマサオがなにかのきっかけで強気になる設定が、ヨワシの特性とマッチしたので。
ネネ……うさぎつながりでミミロル辺りにしたかったが、ミミロルはアローラに出ないので、可愛らしい見た目ととてつもないパワーの持ち主であるヌイコグマ系統に。
ボーちゃん……見た目に反してとんでもない実力者である、というのがボーちゃんと合っていたので。
あい……単純に雰囲気と見た目で。ちなみにUB枠は最初はあいとフェローチェではなく、ひまわりとウツロイドだった。
ぶりぶりざえもん……戦闘に参加せずとも、物語の盛り上げ要因になれると思ったから。
あのシーンから、あのセリフ、あのキャラクターの設定など、一部ポケモンの世界観に合わせるよう差し替えているものがあります。是非探してみてください(さすがに全作品の要素は出せませんでしたが)。
ちなみにちょこっとだけですが、アニメサンムーンやポケモンシリーズの要素も入っています。
・設定のオリジナル解釈やシナリオ改変
色々矛盾してるかもしれませんが、目をつぶっていただくとありがたいです。
それでは、重ね重ね、このSSを読んでいただき、ありがとうございました! またどこかで、縁があれば新しいSSをお見せできたらと思います!
アローラを離れて、太陽と月が幾度となく空を巡ったある日のこと……。
カスカベ地方 アクションタウン
かわのそば公園
バッ バッ ブリブリブリブリ!
ピカッ! ゴウッ!!
カザマは Zパワーを 身体に まとった!
カザマが 解き放つ
全力の Zワザ!
シ ャ ド ー ア ロ ー ズ ス ト ラ イ ク !
しんのすけ「カザマくん! ファイヤーッ!」
ジュナイパー『行くぞッ!』バサッ
カザマは真上に飛翔すると、周囲に無数の矢羽根を扇形に並べた。そして矢羽根と供にユンゲラーへ急降下する!
そしてユンゲラーに直接攻撃したと同時に無数の矢羽根がユンゲラーや周囲に突き刺さり、黒紫の爆発を引き起こした!
ドゴォォン!!
ユンゲラー「……!」ガクッ
風間「ああっ、ユンゲラー!」
しんのすけ「イエーイ!」
風間「くそーっ、今度こそって思ったのにー!」
ネネ「やっぱ強いねしんちゃん!」
しんのすけ「ま、島巡りチャンピオンですからー」
マサオ「でも、しんちゃんが帰ってきたときと比べると、風間くんも腕を上げたよ」
ジュナイパー『うん、この調子で強くなればいいライバルになると思うよ』
しんのすけ「うーん……風間くんとカザマくんが同時にしゃべってると変な気分」
風間「しゃべってる? むしろニックネームが一緒の方がややこしくてしょうがないだろ」
しんのすけ「アローラでもカスカベ防衛隊ならぬアローラ防衛隊を作ろうとしたら自然とこーゆー名前になって。性格もみんなにそっくりだしー」
ネネ「キテルグマのネネが本当にリアルおままごとが好きで……」
ボーちゃん「ミミッキュのボーちゃんが、石好き!」
キテルグマ『あと、ピッピ人形を殴るところもね』
ミミッキュ『ボー!』
ヨワシ『ホントホント、僕とマサオくんも、立場がそっくりだもん』
フェローチェ『カスカベのあいも、幼稚園で一度お見かけしましたが、中々の強敵、ですわね』
マサオ「このポケモン? もどことなくあいちゃんに似てるよね」
風間「ウルトラ……ビーストだっけ? ポケモンとはまた違う生き物なのか?」
しんのすけ「オラもよくわかんなーい」
フェローチェ『しん様、わからないのでしたら、今後、お時間があればあいの住んでいる世界についてもゆっくりとお教えいたしますわ!』
ヨワシ『しんちゃんに惚れてるところも似てるなんて……はぁ』
キテルグマ『なになに?』
ネネ「今回のテーマは『ウェイトレスからやまおとこを寝取ろうとするエリートトレーナーの愛憎劇』キーワードは、ヨーテリーとゴツゴツメットよ!」
キテルグマ『まぁ、面白そうじゃない! 三角関係っていうのはありきたりだけど、ヨーテリーとゴツゴツメットは予想外の組み合わせね!』
ネネ「でしょ? 今回の肝はゴツゴツメットで……」
ジュナイパー『なんか自然に会話してる……』
風間「うーむ、お互い共通の趣味を持ってるからコミュニケーションが取れるのかも……」
マサオ「お互い、ネネちゃんには苦労してるみたいだね……」
ヨワシ『あはは……』
しんのすけ「こーゆーのを自画自賛、というのか」
ジュナイパー『ギリギリ違う気がする』
ミミッキュ『ボ……川辺でいい石見つけたんだ。その石と交換しない?』
ボーちゃん「いいね。今度僕もとっておきのコレクション、見せてあげる。いいものがあったら、交換しよう」
マサオ「もうこんな時間なんだね」
風間「それじゃあ日も暮れてきたし、そろそろ帰ろうか」
マサオ「そうだね」
ネネ「じゃあまた明日!」
ボーちゃん「ボー!」
風間「しんのすけ、次は負けないからな!」
しんのすけ「やる気があったらね」
ジュナイパー『そこはいつでも来い、とか言うもんだろ』
アクションタウン
自宅
しんのすけ「ただいマラサダ久しぶりに食べたくなってきたー」
みさえ「ただいま、でしょ」
『……に起きた謎のポケモン襲撃事件で、プロゴルファーのカヒリさんがアローラ地方に賞金を引き続き寄付すると発表。また、キャプテンであり、独創的な絵で各地方で高い評価を得ていることで有名なマツリカさんは、アローラへの義援金を目的にチャリティーオークションを……』
ひろし「そういえば、カヒリはアローラ出身のトレーナーだったっけなあ。ゴルファーとして一度会ってみたかったなぁ」
みさえ「みんな、元気にしてるかしら?」
ひまわり「たい」
ひろし「復興が終わったら、またアローラ行こうな」
しんのすけ「ほい!」
ピンポーン
みさえ「はーい! 今出まーす」ドテドテ
ガチャ
みさえ「はい、どちら様で……」
カイリュー「きゅー」
みさえ「えっ? か、カイリュー?!」
ひろし「どうしたんだ? みさえ」
しんのすけ「ひょっとして試食品食べ過ぎの罪で警察がやってきたとか?」
げ ん
こ つ
しんのすけ「」
みさえ「やかましい!」
カイリュー「きゅー」
カイリューは下げている郵便カバンから小包を取り出すと、伝票と一緒にみさえへ差し出した。
ひろし「カイリュー便ってことは、結構遠くからの荷物ってことだな。ええと印鑑印鑑……」
ひろしが伝票に印鑑を押して小包を受け取ると、カイリューはしんのすけたちに一礼して、暴風を巻き起こしながら飛びさっていった。
みさえ「送り主は誰から?」
ひろし「……ククイ博士から、しんのすけ宛だ!」
みさえ「じゃあアローラ地方から来たのね!」
ひろし「ああ、お前のだよ」ハイ
しんのすけ「わーい! 中身はなんだろー?」ベリベリ
みさえ「あっ、ちょっと! こんなとこでビリビリに破かないの!」
ひろし「ま、いいじゃないか。アローラの人たちからの手紙なんだから」
しんのすけ「おおっ、これって……!」
小包の中身は、電源が落ちて休眠状態に入っているぶりぶりざえもんだった。
小包からぶりぶりざえもんを出すと、すぐに目を覚ました。
ロトム図鑑「ふあ~あ、よく寝た……」
しんのすけ「よ、ぶりぶりざえもん」
ロトム図鑑「……しんのすけ? ということは、ここがカスカベ地方か」
ひろし「そういえば、お前今までどこにいたんだ?」
ロトム図鑑「ふん、アローラに残ってマーマネとマーレインに改造されていたのだ。アップデートしたおかげで、随分身体が軽くなった」
しんのすけ「そういやそうだったね」
ロトム図鑑「今まではアローラに生息するポケモンにのみ対応していたが、これからは全国のポケモンにも対応出来るようになった。アローラにいないポケモンを、ビーストも含めて登録できるようになったというわけだ」
ロトム図鑑「他にも、フェスサークル、自己修復機能の強化、ジャッジ機能、今日の誕生月占い、といったシステムが大幅にアップデートされたそうな」
しんのすけ「それってすごいの?」
ロトム図鑑「フッ、お前にとっては豚に真珠だろうがな」
ひろし「お前が言うな! タイプ相性も分からないくせに!」
みさえ「あら? 手紙も入ってるわよ? しんちゃん、リーリエちゃんからじゃないかしら?」つ手紙
しんのすけ「ホント? どれどれ?」
しんちゃんがカスカベ地方に帰ってずいぶん経ちますが、わたしもアローラのみなさんも、とっても元気です!
わたしはリラさんとハンサムさん、そしてほしぐもちゃんと一緒にアローラにいるビーストさんを元の世界に帰しながら、トレーナーとしての腕を磨いています。
実は、ほしぐもちゃんにお友達が2匹も出来ました! 1匹目はハラさんから頂いたアシマリさん。2匹目は、ラナキラマウンテンで見つかったタマゴから孵った、アローラ特有の姿をした白いロコンさんです!
2匹とも元気いっぱいで、とっても可愛いです。しんちゃんに見せてあげたいな。ほしぐもちゃんも2匹の面倒を見て、すっかりお姉さんです。カザマさんたちとも、きっと良いお友達になれますよ。
ハウさんは、メレメレ島の復興作業の傍ら、本気のハラさんとしんちゃんに勝つためにイリマさんやグズマさんたちと猛特訓をしています。たまにわたしとポケモン勝負をするのですが、ハウさんは以前より格段に強くなってますよ! しんちゃんとカザマさんも、負けてられませんね!
ちなみに、しんちゃんが作ったアローラ防衛隊バッジ、実は今アローラでとっても流行っていますよ。アローラ復興のシンボルとして、ハウさんとマーマネーさんが広めたんです。
ククイ博士は、今、アローラにはいないんです。ではどこにいるかと言うと、なんとカントー地方です!
リーグ設立という夢を叶えるために、カントー地方でポケモンリーグのシステムを勉強するため、ジムリーダーや四天王とポケモン勝負しつつ、情報交換を行っているそうです。
アローラポケモンリーグが出来るまでまだまだ先ですが、もし、ポケモンリーグが出来たら、是非しんちゃんも挑戦しに来てください。さらに強くなったみなさんが待ってますよ。
にいさまも、かあさまと協力しながらエーテル財団の代表代理として、ポケモンさんとビーストさんの保護に尽力しています。ただ時折、外に出ては、とうさまの行方を捜しに行ったり、何故かポケリゾートに行ったりするのですが、かあさまもわたしも、にいさまが無茶しないか心配です……。でも、少しずつ家族が元通りになってきています!
家族が力を合わせれば、どんなことも乗り越えられる……野原さんたちから教わったことです! いつか3人でとうさまも見つけ出してみせます!
それとも、もう夢は見つかっていますか?
……最後になりますが、アローラでやるべきこと、みんなやり終えたら、必ずあなたに会いに行きます。待っててくださいね。
いつ会いに行くか、ですか? それは内緒です。だって、しんちゃんをびっくりさせたいですから。
アローラでいっぱいしんちゃんに振り回されたから、このくらいはいいよね?
リーリエより
P.S
ほしぐもちゃんについて、一度大変なことが起きたのですが……それについて、いつかしんちゃんとお話しできたらなと思います。あ、ほしぐもちゃんは今も元気ですよ?
ロトム図鑑「ずいぶん長いな」
みさえ「まあ、リーリエちゃんったら。しんちゃんに言いたいことがいっぱいあるのが伝わってくるわ」
ひろし「しんのすけ、お前も早めに返事書きな。向こうもきっと、しんのすけからのお手紙待ってるはずだから」
しんのすけ「そうだね。じゃあ最近とーちゃんが夢中になっている、おとなのおねえさんのマチコちゃんについてでも書きますか!」
ひろし「なっ、なんでそれ知って……ハッ!」
みさえ「ふーん……マチコちゃんに夢中になってるっていうのは否定しないのね……」ゴゴゴゴゴ
しんのすけ「かーちゃんの いかりのボルテージが あがってゆく!」
ロトム図鑑「ひろしは おびえている!」
げ ん
こ つ
ひろし「」
ロトム図鑑「」
しんのすけ「」
みさえ「余計なナレーション入れるなっちゅーの!!」
みさえ「あ、はーい!」ドテドテ
しんのすけ「今日はよく人が来る日だな」
「…………!」
みさえ「あら、まあ! あなたは……!」
「…………?」
みさえ「はい! しんのすけ、いらっしゃい! アクション仮面が来てるわよ!!」
しんのすけ「えっ? ホント!?」ダッ
しんのすけは興奮しながら玄関に向かうと、果たしてそこには、しんのすけにとって世界で一番尊敬している人であり、カスカベ地方で放送されている特撮の主演俳優であり、このカスカベ地方のチャンピオンを務めている男――アクション仮面こと郷 剛太郎が立っていた。
アクション仮面「やぁ、しんのすけくん!」
しんのすけ「アクションかめーん! お久しぶりー!」
アクション仮面「南の島での試写会以来だね」
しんのすけ「 どーしてオラんちに来たの?!」
アクション仮面「もちろん、君に会うためさ」
ひろし「感激、だろ」
みさえ「あの、良かったらうちに上がってください。お茶でも出しますから」
アクション仮面「いえ、お構いなく。すぐに済む話ですので」
アクション仮面「しんのすけくん、実は私も、君がアローラの大大試練に挑戦する中継を見ていたんだよ。君とポケモンたちのゼンリョクと絆の力、見事だったよ。最後のZワザもね」
しんのすけ「アクション仮面に見られてたら、オラも島巡りした甲斐がありましたなあ〜」
アクション仮面「そう、あの大大試練で君と君のポケモンたちに、無限の可能性を感じたんだ。そこで、しんのすけくんに、これを渡そうと思う」
アクション仮面が持っていた鞄から取り出したのは、アクション仮面が劇中で付けている変身ベルトだ。「A」マークが目印のバックル部分に、七色に光る不思議な石がはめ込まれていた。
しんのすけ「なにこれ? アクションストーン?」
ロトム図鑑「これはキーストーンと呼ばれる石だ!」
みさえ「キーストーン?! ってことは……!」
アクション仮面「そう、しんのすけくんには、メガシンカを会得してもらいたい! そのため、メガシンカの伝承者のいるカロス地方に行って欲しいんだ!」
ひろし「か、カロス地方!?」
アクション仮面「ああ、しんのすけくん。私とルカリオは、強くなるため世界中を回って武者修行をしてきたからね。メガシンカはその時得たチカラのひとつさ」
アクション仮面「いずれ君には、カスカベ地方を回って、ジムリーダーを打ち倒し、私に挑戦してきて欲しい。君なら、このカスカベ地方のチャンピオンになれる資格がある!」
ひろし「アクション仮面からのお墨付きじゃねえか、さすが俺の子だぜ!」
しんのすけ「オラ、アクション仮面の頼みならなんだって聞くゾ!」
みさえ「でも、カロス地方を一人旅って、いくらアローラの島巡りを終えたとは言え、ちょっと不安です」
アクション仮面「ああ、その点に関してはご心配なく。私は同伴出来ませんが、なんでもしんのすけくんと一緒にカロスへ行きたいと言う子がいるので、その子とカロスを旅してはいかがでしょうか?」
ひろし「しんのすけと一緒に……?」
しんのすけ「オラと一緒に旅したい人なんてずいぶん変わってるなあ」
「しんちゃんに変わってるなんて言われたくないですっ」
懐かしい声と供に、玄関の向こうから、声の主はひょっこりと顔を覗かせて現れた。
半袖のシャツにスカートという活発的な服装、ポニーテールにした金髪が、夕闇の中でも自己主張するように輝いている。華奢な腕には、Zリングが付けられている。
アクション仮面「この間、アローラへ被災者に慰問へ行った時に彼女と出会ってね。しんのすけくんをカロスへ行かせる話をしたら、しんのすけくんの同伴者になりたいと申し出たんだ」
彼女は、緑色の瞳を優しく細めながら、しんのすけに近づいた。
しんのすけ「リー……リエちゃん」ポカン
リーリエ「やっぱり、びっくりしましたね!」ニコッ
ロトム図鑑「いや待て! 手紙が届いたのさっきだろ。来るの早すぎじゃないか?」
リーリエ「そうですよ? しんちゃんと野原さんをびっくりさせるために、手紙がおうちに来たときと同じ時間にここへ着くようにわたしが考えたんです」
しんのすけ「……リーリエちゃん」ウルッ
しんのすけ「リーリエちゃん! オラ、オラ会いたかったぁ〜っ!!」ギュウ
久しぶりに会えた親友に感激して、しんのすけは思わずリーリエの胸に飛び込んだ。
リーリエも以前より明るい笑顔でしんのすけを受け止めて、きつく抱きしめて再会を喜びあった。
リーリエ「えへ! わたしも、しんちゃんに会えて嬉しいです!」ギュウ
リーリエ「……約束、果たしに来ましたよ。一緒にカロス地方へ行きましょう!」
リーリエ「はい! お手紙に書いてある通り、かあさまはすっかり回復なされました! その……お恥ずかしいのですが、かあさまから後押しされて来たのです」
――あなたはあなたの夢を追っていきなさい。わたくしの事なら大丈夫。親が子供の足を引っ張るような事、しちゃいけないでしょう?
リーリエ「しんちゃんのことなら、わたしに任せてください。お手紙のように、わたし、トレーナーとして一人前になりましたから!」
ひろし「……そっか、良かったな、しんのすけ」
みさえ「リーリエちゃんとカロスへ行って来なさい。しんちゃんなら、きっとメガシンカを会得して、カスカベ地方のチャンピオンになれるわ!」
ひまわり「たい!」
シロ「キャンッ!」
しんのすけ「リーリエちゃん、ふつつかものですが、よろしくお願いします」
リーリエ「はい! わたし、しんちゃんが行くところ、どこへでもついて行くって決めましたから!」
リーリエ「それに……今、すごくドキドキが止まらないのです。こうしてしんちゃんと、一緒に冒険して、新しいポケモンさんや知らない人と出会えることが楽しみなんです!」
アクション仮面「よし! ではしんのすけくん、リーリエくん、一週間後また迎えに来る! その間、カロスに旅立つ準備しておいてくれたまえ!」
しんのすけ「ほい!」
リーリエ「はい!」
ヨワシ『カロス地方かぁ、新しい仲間ができるといいね!』
キテルグマ『メガシンカ……ネネにもできるかしら?』
ミミッキュ『僕、カロスの石とメガストーンを集めたい! 人間とポケモンの絆が深く関わるキーストーンとZクリスタルは、きっと無関係じゃないかも』
フェローチェ『あいも、しん様の行くとこなら、どこへでも行きますわ!』
ロトム図鑑「こうなればヤケだ。とことん付き合ってやる」
しんのすけ「よーーし! みんなカロスに出発おしんこー! オボンのぬか漬けー! ファイヤーー!!!」
フ ァ イ ヤ ー ー ー ッ ! ! !
アローラの島巡りを終え、リーリエと供にメガシンカを会得するため、しんのすけは再び旅に出る。
彼らの明日に待っているのは光、それとも闇? しんのすけたちが歩んでいく未来は?
しんのすけとリーリエの冒険はまだまだこれから――2人にとって物語の最初の1ページを開いたに過ぎない。
to be continued…
じゃ、そゆことで~アロ~ラ~!
元スレ
【ポケモン】しんのすけ「アローラ地方を冒険するゾ」その2【クレしん】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1497270152/
【ポケモン】しんのすけ「アローラ地方を冒険するゾ」その2【クレしん】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1497270152/
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コメント一覧 (34)
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- 2017年06月22日 02:27
- 一気に見ようと思ったけど長い
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- 2017年06月22日 04:54
- 川の中、に、石が、ある
拾いに、行く...あ”ッ!この川!深いッ!!
ボッッと!ボボボボボォッ!ボボボボボボッ!
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- 2017年06月22日 07:04
- いいクロスだった
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- 2017年06月22日 07:37
- 今更しんのすけがウツロイドくらいでなすがままにされるわけがない感
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- 2017年06月22日 08:56
- リアルタイムで更新されてたの読んでたけど完結してたんだなぁ
面白かった
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- 2017年06月22日 15:08
- なんだこの大作!?
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- 2017年06月22日 15:22
- 川に溺れた鼻垂れも助けられない奴が別の世界へ遊びに行くな
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- 2017年06月22日 16:02
- クレしんの要素も上手く取り入れられていて面白かった!つい、一気に読んでしまったよ
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- 2017年06月23日 00:31
- クッソ長くて全部読んでたらこんな時間だよ
面白かった
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- 2017年06月23日 00:33
- 苦労人の100倍面白かった
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- 2017年06月23日 13:22
- 久々に大作来たな…
しかしSMやったことないからしんのすけのPTがゲームでどれくらい強いのか分かんないな
バランス的にどうなの?
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- 2017年06月23日 15:03
- 旅パとしてみるならいいほうだとは思う
偽装旅パとして戦えるかと言われるとフェローチェが邪魔をする感じ
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- 2017年06月23日 15:39
- めちゃくちゃ長くて時間かかったけど全部読んだよ
おもしろかった
別の舞台での話も読みたいね
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- 2017年06月23日 15:45
- 長すぎて読もうか迷ったけど読んで良かった
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- 2017年06月23日 16:08
- 苦労人って何?
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- 2017年06月23日 19:38
- リーリエがルザミーネと戦う展開は意外
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- 2017年06月24日 13:31
- 小ネタがくど過ぎる気もしたが原作寄りの下品さも相まって面白かったゾ
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- 2017年06月24日 16:00
- >みさえがマザービーストに
予 想 で き る わ け ね ぇ だ ろ
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- 2017年06月24日 16:27
- みさえがルザミーネにいつ説教をするのかもやもやしてたけどあんな形でルザミーネに戦いを仕掛けるのは予想できなかった
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- 2017年06月24日 17:03
- クレしんSSとして見るなら良作
ポケモンSSとしてなら並
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- 2017年06月25日 17:46
- 初っぱなで読む気失せた
長すぎ
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- 2017年06月27日 03:45
- 面白かったわ
ただマツリカちゃんの出番が少なすぎる訴訟、彼女はギリギリ20いかないくらいだと思うししんのすけのタイプかと思ったがどうなんだろうね
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- 2017年07月03日 21:53
- 面白かった
続編でも別地方編でもいいからまた書いて欲しいな
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- 2017年07月18日 22:43
- みさえのマザービースト化予想できた人すげぇわww 予想できなかったけど違和感ないから笑えるww
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- 2017年07月26日 07:25
- このSSメッチャ泣ける!
シリーズ中盤以降涙が止まりませんでした!
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- 2017年07月29日 22:59
- とりあえず... 1日で読んだけど... おもしろすぎる。そして、楽しすぎる超感動しました星5つでは足りないほど。カロス地方のほうはやるのですか?やるのであれば楽しみに待ちます。感想が多くなりましたがこれからもがんばってください応援しています。本気と書いてマジで
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- 2017年09月22日 23:41
- 素晴らしかった
あなたの頑張りと作品の素晴らしさにグラシデア!
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- 2017年10月25日 20:46
- こいつのSSのコメントってどれもこれも同じ傾向で草も生えない
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- 2017年11月20日 07:49
- このSSの展開ってUSUMの一部の展開と似てるよな。ハウとチャンピオンの座を賭けて戦ったりグズマの改心理由がスカル団の下っ端たちだったり……予言者?
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- 2018年06月28日 18:51
- こいつのせいでクレヨンしんちゃん嫌いになりそう
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- 2018年07月17日 17:59
- 途中で読むのやめたけどガバガバやな
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- 2018年08月16日 13:53
- レッドの長いSSは読めたけどこれは無理
つまらん
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- 2019年02月19日 21:04
- 久々に読み返したけどやっぱり良作!
カロス編も期待!
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- 2019年08月19日 14:59
- 何度読み返しても面白い。
カロス編が読みたい。