男「お前簡単に折れすぎなんだよ!」アバラ骨「すみません……!」
- 2017年06月01日 00:10
- SS、神話・民話・不思議な話
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女「や、やめて下さい!」
チンピラ「いいじゃねえかよォ、ちょっと付き合えよ」グイッ
男「待てーっ!」
チンピラ「なんだァ? てめェ……」
女「あ、あなたは……! 警察からも頼りにされている“町のお助け人”……!」
チンピラ「ようするに、サツの犬ってわけか。ブッ飛ばしてやる!」
男「来るがいい」
ボゴッ!
男「ぐっ……!?」ミシッ…
男「でやぁっ!」
バキィッ!
チンピラ「ぐはぁっ!」ドサッ…
女「やったぁ!」
男(ぐっ……! こいつのボディブローでアバラがイッちまったようだな……)
男「これも仕事ですから……」
ズキッ…
男(ううっ……戦いが終わったら、ますます痛くなってきた……)
署長「またしても君には助けられてしまったねえ」
男「いえいえ……」
署長「あのチンピラには、我々としても手を焼いていたんだよ」
男(あ~……もう話なげーよ! 痛い、痛い、痛い、痛い、痛い!)
署長「さっそく署員の前で、君のことを表彰させてもらうよ」
男(そんなもんいいから、早く帰らせてくれえっ!)
医者「……折れてるね。肋骨が三本、ヒビが入ってる」
男「やっぱり……」
男「パパッと治せませんか?」
医者「骨折をパパッと治せる方法を知ってたら、今頃私はノーベル賞だよ」
医者「肋骨はギプスもつけられないし、安静にしてもらうしかないね」
男「安静にっていわれても……痛くてたまらないんですよ!」
医者「とりあえず、鎮痛剤を出しておくよ」
男「いてぇ~!」
男「ゴホッ、ゴホッ、ゴホッ!」
ズキッ…
男「ちくしょう、咳をしただけでも響く!」
男「――おい、アバラ骨ッ!!!」
アバラ骨「は、はいっ!」
アバラ骨「す、すみません……!」
男「いつだったかも、暴走族を相手した時、鉄パイプ当たったぐらいで簡単にヒビ入ったよな」
アバラ骨「は、はい……」
男「そのたびに俺は地獄の苦しみを味わってんだぞ! 分かってんのか!?」
アバラ骨「もちろんです……!」
男「いいか、今度折れたら承知しないからな!」
アバラ骨「はい……」
鎖骨「ああ……これでもう何度目だ?」ボソボソ…
尾てい骨「折れることがステイタスだとでも思ってるんじゃないの?」クスクス…
頸骨「自分に酔ってるんだろうな」アハハ…
アバラ骨「うう……」
――――
男「しばらく安静にしてたら、やっと治った!」
男「よぉーし、今日からお助け人稼業再開だ!」
男「……といいたいところだが、まずはこないだ警察からもらった報酬を銀行に下ろしに行くか」
アバラ骨(ぼくも折れないよう頑張らないと……)
手下A「オラオラオラ、このバッグに金詰めろや!」
手下B「早くしろ! 警察が来ちまうだろうが!」
男(む、あれは≪コアクトー団≫の連中!)
男(前に叩きのめしてやったが、また性懲りもなく悪さをしてるのか!)
男「やめろっ!」
手下A「あっ、お前は! この町を守るお助け人!」
手下B「ちょうどいい、昔やられた恨みを晴らしてやるぜ!」
手下B「このバットでブン殴ってやる!」サッ
男(ナイフとバットか……優先して倒すべきはナイフだな)
男「とりゃっ!」
バキィッ!
手下A「ぐはぁっ!」ドサッ
手下B「よくもやりやがったな!」ブンッ
ドカッ!
男「ぐっ!(腹にバットが……!)」ミシッ…
ドゴォッ!
手下B「ぐぎゃあっ!」ドサッ
手下B「す、すいやせん……ボス……」ガクッ
ワーワーッ! イイゾー! カッコイイー!
銀行員「ありがとうございます! おかげでお金を奪われずに済みました!」
男「いえ……」ズキッ
男(痛い……! これもしかして、またアバラやっちまったんじゃ……!)
医者「うーん……また折れてるね」
男「やっぱり……! せっかく治ったとこだったのに!」
医者「鎮痛剤を飲んで、しばらくは安静にするように」
男「あの……鎮痛剤ってもっと強いのもらえないんですか?」
男「それこそ一粒飲んだら、ずーっと痛みが消えるような感じの」
医者「ダメダメ、あれ以上強いのは君の体によくないからね」
ズキズキ…
男「いてぇぇぇ……!」
男「くそっ、たかがバットの一撃をもらったぐらいで……!」
男「おい、アバラァ!!!」
アバラ骨「は、はいっ!」
男「なんで治ったとたんに折れてんだよ! お前マジでいい加減にしろよ!?」
アバラ骨「すみません、すみません!」
男「どうしてくれんだよ、この痛みィ! あぁん!?」
アバラ骨「あ、あの今度こそ、頑張りますから……」
アバラ骨「……え」
男「お前が体にいると、はっきりいって迷惑なんだよ! すぐ折れて痛みの原因になるからな!」
アバラ骨「そっ、そんな! 待って下さい!」
男「出てけえっ!!!」
アバラ骨「うっ……」
アバラ骨「うわ~んっ!」ピューンッ
背骨「そりゃそうさ、あんだけ怒られりゃな」
大腿骨「物理的に打たれ弱いだけじゃなく、精神的にも打たれ弱いんだな!」
アハハハハ… アハハハハ…
男(ふん……これでせいせいしたぜ)
アバラ骨「……」グビグビ
アバラ骨「もう一杯!」コトッ
マスター「飲みすぎですぜ……お客さん」シャカシャカ
アバラ骨「これが飲まずにいられるかってんだ! うわぁ~ん!」
医者「おや?」
医者「君は……男君の肋骨じゃないか」ガタッ
アバラ骨「あなたは、ぼくの主人の主治医さん……」
医者「私はこのバーの常連でね。こんなところで何やってるんだ?」
アバラ骨「じ、実は……」
アバラ骨「そうなんです……」
アバラ骨「ぼく、これからどうしたらいいのか……」ウッウッ…
医者「人と肋骨が分離してしまうなんて、初めての症例だが」
医者「主治医として放っておくわけにはいかんな」
医者「マスター、このアバラ骨君に私から一杯頼む」
アバラ骨「!」
<町>
男(アバラがいなくなってからしばらく経つが……あいつどうしたかな……)
男(いや、もうあんな奴のことを気にするのはよそう!)
男「――ん」
ボス「よう」
男「お前は……≪コアクトー団≫のボス!」
ボス「その通りよ」
男「今までは手下どもに悪さをさせてたが、ついに自ら出てきたか……」
ボス「二人の手下をやられた借り……返させてもらうぜぇ!」
男「――っと」サッ
ボス「うおりゃ!」ブオンッ
男「くっ!」サッ
男(さすがにボスだけあって、手下よりずっと手強いな……だが!)
男「だっ!」
ドゴォッ!
ボス「ぐおっ……! へへへ、いいパンチじゃねえか」
男(俺のパンチで倒れないだと!?)
ボス(なら、アバラ骨が折れてる可能性が高い! これを狙わない手はねえ!)
ボス「ここだァ!」
ドゴォッ!
ボス「決まった!」
男「……」ニヤッ
ボス「き、効いてねえ!?」
男「俺のアバラを狙ったんだろうが……残念だったな」
男(俺にアバラ攻撃は効かない……なぜなら、もう俺の体内にアバラはないんだからな!)
男「ぐあああっ……!」ガクッ
ボス「え!?」
男「あぐぅぅぅぅ……!」ゲホッ
男(痛い!!!)
男(内蔵にこいつのパンチがダイレクトに入っちまって……メチャクチャ痛い!)
男(こんなダメージ受けたの生まれてはじめてだ!)
ボス「オラッ! オラッ! ――オラァッ!!!」
ドスッ! ボスッ! ボゴォッ!
男「ぐおおおおっ……!」
男(やばい……マジで死ぬ……!)
男(そうか……肋骨――アバラ骨は胴体にある内蔵を守る大切な部位……)
男(あいつはずっと、折れたりヒビが入ったりしつつ俺を守ってくれてたんだ……)
男(それなのに俺は……アバラ骨を体から追い出しちまった)
男(俺はなんてバカなことを……!)
男(アバラ骨……今お前はどこにいるのかな……)
男(きっと、俺の醜態を知ったら、笑い転げるに違いない……)
男(すまない……)
男(どうか、お前は幸せに生きてくれよ……)
男(……)
アバラ骨「ご主人をそれ以上殴るなぁっ!」ツンツンッ
ボス「うわぁっ!? どこからともなくアバラ骨が飛んできた!」
男「お前……! どうして……!?」
アバラ骨「今は会話してる場合じゃありません! さ、ぼくを再び体内に!」
男「わ、分かった!」
アバラ骨「中に入ります!」ドヒューンッ
男「合体!」シャキーン!!!
ボス「えーっと……ようするに今までお前の腹はスカスカで、今アバラが戻ったってわけか?」
男「そういうことだ」
ボス「関係ねえ! だったら今度は、オレのパンチでアバラを粉砕してやらぁ!」
ボス「うおりゃあっ!」ブオッ
ドゴォッ!
ボス「うぎゃああああああっ!」
ボス「瓦十枚砕く、オレの拳が……!」メキメキ…
男「パンチでアバラが折れるどころか、アバラが相手の拳を折った!?」
アバラ骨「実はぼく、体を追い出されてから、バーでお医者さんに出会って――」
医者『これは私のおごりだ』スッ…
アバラ骨『これは……牛乳!』
医者『骨を丈夫にするのに必要なのは、カルシウム、ビタミンD、そして日光浴だ』
医者『これからしばらく、牛乳をたくさん飲み、ビタミン剤を飲み、よぉく日を浴びるがいい』
医者『そうすれば、君を追い出した彼を見返すことも夢じゃない』
アバラ骨『分かりました……やってみます!』
アバラ骨「丈夫になる訓練をしてたんです!」
男「そうだったのか……」
男(たしかに俺も内蔵にダメージを受けてる……これじゃいいパンチは打てない)
男「――だったら!」
男「今の頑丈になったアバラ骨を活かした攻撃をすればいい!」バッ
ボス「飛び上がった!?」
男「この硬いアバラでお前を押し潰してやる!」
男「アバラ・ボディプレス!!!」
ボス「うわあああああああああ!!!」
ズドォンッ!!!
男「……やったな!」
アバラ骨「はい!」
頭蓋骨「アバラの奴……パワーアップして帰ってきやがった」ニヤッ
鎖骨「くそっ、もうバカにできないな……」
尾てい骨「俺たち他の骨も、アバラに負けないように頑張ろうぜ!」
オオーッ!
医者「なにしろ、内蔵にダメージを受けてるんだからねえ……ま、見たところ大丈夫そうだが」
男「お医者さん、お手数かけます」
アバラ骨「今後は安心して下さい! もう内蔵にダメージは通しませんから!」
男「……頼んだぞ、アバラ骨!」
アッハッハッハッハ…
一度は折れてしまった男とアバラ骨の絆――
しかし、もう二度と折れることはないだろう……。
― 完 ―
元スレ
男「お前簡単に折れすぎなんだよ!」アバラ骨「すみません……!」
http://vipper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1496234770/
男「お前簡単に折れすぎなんだよ!」アバラ骨「すみません……!」
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コメント一覧 (16)
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- 2017年06月01日 00:29
- 日本医療協会推薦図書
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- 2017年06月01日 00:52
- あばら骨は折っても心は折るな、か
いい話じゃあないか
創作物の演出のために折れた、あるいはこれから折れるあばら骨の為に10秒の黙祷っ!
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- 2017年06月01日 01:30
- アバラ骨に守られてるのは肺や心臓だけでお腹の内臓は無防備な件
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- 2017年06月01日 01:41
- アバラ「イキ過ぎィ!」
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- 2017年06月01日 01:43
- ※3
肝臓と腎臓も守ってるんだよなあ……意外とこの2つは高い位置にあるんやで
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- 2017年06月01日 01:44
- ※3
あばら骨から斜め下方向、内臓に向かってチョッピング気味に貫くような一撃だったのかもしれない。
つまり脇近くから5cm以上体内にめり込む強烈な一撃だったんだろう。
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- 2017年06月01日 02:14
- うっわまたこういう系か。揚げ足取りばっかじゃなく自分で考えて書けや。
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- 2017年06月01日 02:25
- アバラがあーバラバラになっちゃったよ
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- 2017年06月01日 08:27
- 折れずに衝撃もろに受けるのも不味そうな
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- 2017年06月01日 10:24
- 肋が折れるならなければいいというスタイル
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- 2017年06月01日 12:21
- 尾骶骨とかいう無能は何偉そうにしてんねん
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- 2017年06月01日 17:14
- あばら骨出てったあたりから我慢できず笑いっぱなしだったわ
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- 2017年06月01日 18:14
- ※7はSSに何を求めてるんだ?
なろうにでも行っとけや
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- 2017年06月01日 21:57
- 太い枯れ枝食らってアバラ折れた時は、
空を見上げて「??」って感じだったからなあ。
その後の下山がアホほど痛かったけど
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- 2017年06月02日 02:37
- 避けるなり腕で受けるなりしない男さんサイドにも問題が・・・
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- 2017年06月03日 17:58
- 現実的な折れやすさなら鎖骨くんもなかなか…