ガヴリール「千咲ちゃん、北の大地で流星群を見る」
- 2017年05月17日 06:10
- SS、ガヴリールドロップアウト
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-湖のほとりの温泉旅館-
タプリス(前略、天界のお父さんお母さん)
タプリス(わたしは今、学校の先輩たちと共に)
タプリス(大型連休を利用して、北海道旅行に来ています)
タプリス(あ、北海道というのは、わたしが下界で住んでいる国の最北に位置して――)
タプリス(って、その話は前もしましたよね)
タプリス(たくさんの自然に囲まれた北海道で)
タプリス(いろんな美味しいものを食べながら、素敵な場所を巡りながら)
タプリス(ついに最終目的地である、ここ、湖の温泉街にやってきたのです)
タプリス(と言っても、ただの温泉街ではありません)
タプリス(ここの湖にはなんと……)
タプリス(空に、巨大な円盤が浮いているのです!)
ガヴリール「私は、ここでずっと温泉に浸かってるわ」
ヴィーネ「えぇ……せっかくここまで来たんだし、街に観光に行きましょうよ」
ガヴリール「どうせこんな小さな街、見るところなんてないだろ」
ヴィーネ「空にあんな円盤が浮かんでるのよ! もっと興味を持ったって……」
ガヴリール「円盤なら、ここからでも見えるしな」
ガヴリール「というかもう、見飽きた」
サターニャ「温泉なんてどこでも入れるのに、ほんとダメ天使ねぇ」
ガヴリール「ほっとけ」
ヴィーネ「それでラフィは?」
ラフィエル「私も、お湯の魔力に逆らえそうにありませんので……」
ヴィーネ「そ、そう……」
タプリス「じゃあ、わたしも……」
サターニャ「あんたは私たちと来なさい、タプリス」
タプリス「えぇ……」
ヴィーネ「タプちゃん、お願い」
ヴィーネ「サターニャと二人きりなんて、どっと疲れるに決まってるもの」
ヴィーネ「私の癒やしになって、ね?」
サターニャ「さらっと、ひどいこと言ってるわね、ヴィネット……」
タプリス「わ、わかりました。わたしも、円盤には興味がありますし」
ヴィーネ「ありがとっ、タプちゃん!」
ガヴリール「じゃあ、悪魔どもに食われんようにな、タプリス」
ヴィーネ「食うかっ!」
タプリス「あははは……いってきます」
-湖畔の遊歩道-
タプリス「すごいです、石がずらっと敷き詰められてます」
ヴィーネ「ええ、なんか常に、足つぼマッサージを受けてるような感じね」
サターニャ「そうかしら、歩きづらいだけじゃない?」
タプリス「それにしても、まずはどこに行きましょうかね」
ヴィーネ「そうねぇ、観光マップは見ているけど……」
ヴィーネ「円盤の他には……温泉とお土産店くらいしか無いわね」
サターニャ「じゃあ、お土産店に行ってみましょ」
タプリス「賛成です!」
ヴィーネ「お土産店は最後にしたかったんだけど……まぁいっか」
ヴィーネ「どんな品揃えなのか見るだけでも楽しそうだしね」
-湖畔のお土産店-
店員の少女「いらっしゃいませー」
サターニャ「へえ、お店の中、結構広いじゃない」
ヴィーネ「ええ、繁盛しているのかしらね」
タプリス「わっ、見てください。円盤のグッズがこんなに……」
ヴィーネ「円盤まんじゅうに、円盤キーホルダー……」
ヴィーネ「円盤のぬいぐるみなんてのもあるわ」
サターニャ「さすが円盤の街……円盤尽くしじゃない」
タプリス「こう見ると、あの円盤も街の人からは愛されてるんですね」
ヴィーネ「でも、あんな巨大な円盤が空にあって、本当に安全なのかしら……」
店員の少女「それについては、全く問題ありませんよ」
ヴィーネ「あ、すみません、聞こえてしまいましたか」
店員の少女「いえいえ。どなたでも、そう感じるのは自然だと思いますから」
サターニャ「実際どうなの? 落ちてきたりしないの?」
タプリス「く、胡桃沢先輩、失礼ですよ」
店員の少女「大丈夫ですよ。えっと、ですね……」
店員の少女「あの円盤がこの街に現れてから、もう数年が経ちますけど」
店員の少女「特に実害があったという話は、聞いたことがないですね」
ヴィーネ「そうなんですか」
店員の少女「安全上の問題で、毎年開かれていた」
店員の少女「花火大会がなくなってしまったくらいでしょうか」
サターニャ「まぁ、それが威嚇になってしまったら、まずいわよね」
タプリス「威嚇って、何のことです?」
サターニャ「あの円盤の中には、この星を侵略しようとする宇宙人が乗っていて」
サターニャ「実は、ここを監視している! とかだったりして!」
タプリス「そんなまさか……」
店員の少女「ふふっ、そんな噂も過去にはありましたね」
ヴィーネ「やっぱりあったんだ……」
店員の少女「ですが、私たちのようにお店を営んでいる側としては」
店員の少女「そんな噂も、万々歳ですから」ニコッ
ヴィーネ「あはは、商魂たくましいわね」
ヴィーネ「それでは、私たちはもう少し、この街をぶらぶらしようと思いますので」
ヴィーネ「帰りにまた寄って、お土産買わせてもらいますね」
店員の少女「わかりました。お話、お付き合い頂き、ありがとうございます」
店員の少女「またのお越しをお待ちしております」ニコッ
-湖畔のお土産店 外-
タプリス「店員さん、とても感じの良い方でしたね」
ヴィーネ「ええ、歳は私たちとそんなに変わらないように見えたのに」
ヴィーネ「あんな風に働いているなんて、すごいと思うわ」
タプリス「そうですね……、って、なんか怪獣のポップがありますよ」
ヴィーネ「ああ、顔を出せる穴が空いてるわね。サターニャ、撮ってあげましょうか?」
サターニャ「ほんと!? って、あんな子供だまし、私がやるわけないでしょ!」
ヴィーネ「今、一瞬、すごく喜んでたじゃない……」
タプリス「これだけ円盤推しなのに、円盤のポップじゃないんですね」
ヴィーネ「さすがに円盤から顔を出すのは、シュールすぎじゃないかしら……」
タプリス「あはは……ですね」
サターニャ「それより、次はどこ行くのよ」
ヴィーネ「そうねぇ、観光マップによると……」
ヴィーネ「街外れに、天文台があるらしいわ。景色が良いみたいだけど」
タプリス「それいいですね! 湖もよく見えるかもしれません」
サターニャ「景色、ねぇ……まぁ、他に行くとこないなら、いいわよ」
ヴィーネ「じゃあ次は、天文台で決定ね」
-天文台前-
タプリス「はぁ……はぁ……、結構、距離ありましたね」
ヴィーネ「ええ。途中、けもの道に変わったかと思ってびっくりしたけど」
サターニャ「何よ、あんたたち。だらしないわね」
タプリス「さすが胡桃沢先輩ですね。ピンピンしてます」
サターニャ「あんたたちとは、鍛え方が違うのよ」
ヴィーネ「それにしても……ここ、本当に観光名所なのかしら」
ヴィーネ「雑草は生い茂ってるし、建物もぼろぼろだし……」
タプリス「知る人ぞ知る、感じなんですかね」
サターニャ「とりあえず中に入るわよ」
ヴィーネ「ちょっとサターニャ! 危ないわよ!」
タプリス「わ、わたしたちも行きましょう!」
ヴィーネ「ええ」
-天文台-
ヴィーネ「外観ほどじゃないけど、中も人の手が入ってる感じはしないわね……」
タプリス「ホコリまみれで薄暗いですし……、なにか出てきそうで怖いです」
サターニャ「なにかって、何よ。もしかして、お化け?」
ヴィーネ「ひっ、や、やめてよ、サターニャ!」
サターニャ「ヴィネット……もしかして、お化けが怖いの?」
ヴィーネ「そ、そんなはずないじゃない!」
~♪ ~♪ ~♪
ヴィーネ「ひえっ! お、お化け!?」
サターニャ「上の方から、何か聞こえるわね」
タプリス「これは……鼻歌? ですかね。他に誰かいるんでしょうか」
サターニャ「行ってみるわよ」
ヴィーネ「ちょ、ちょっと、やめましょうよ……」
-天文台 最上階-
青髪の幼女「~♪ ~♪」
タプリス「素敵な曲……って、お、女の子?」
青髪の幼女「……ッ」クルッ
ヴィーネ「ひっ!?」
青髪の幼女「こんにちは」ニコッ
タプリス「あ、えと……こ、こんにちは」
青髪の幼女「おねーさんたち、何かご用?」
タプリス「よ、用と言いますか、えっと……ここには観光で来ていて」
ヴィーネ「か……」
タプリス「か?」
ヴィーネ「かわいいぃぃぃぃっ!!」
タッタッタッ
ヴィーネ「あなた、こんなところで何してるの! 一人? 一人なの!?」
青髪の幼女「わっ、わわっ」
サターニャ「さっきまであんなに怖がってたくせに……」
タプリス「月乃瀬先輩、かわいい子に目がないですからね……」
青髪の幼女「えっと……ここにはね、流星群を見に来たの」
ヴィーネ「流星群?」
青髪の幼女「うんっ。今日の夜、とってもすごい流星群がここで見られるから」ニコッ
タプリス「それは知りませんでした。で、ですけど、まだお昼ですよね?」
青髪の幼女「待ちきれなくて、もう来ちゃった、えへへ」
ヴィーネ「……ッ」キュン
ぎゅぅ
ヴィーネ「もう! もうもう! かわいすぎる~」スリスリ
青髪の幼女「あわわ……く、苦しいよ」
くぅぅぅ
青髪の幼女「あっ」カァァ
ヴィーネ「あれ。もしかして、お腹すいたの?」
青髪の幼女「……」コクッ
ヴィーネ「じゃあ、私たちとごはんを食べに行きましょう!」
青髪の幼女「ほんと!? 行きたい!」
ヴィーネ「夜までまだ時間はあるし、平気よね?」
青髪の幼女「うんっ!」
タプリス「こんな、かわいらしい子と一緒にごはんだなんて、楽しみですね」
サターニャ「これって、誘拐っていうんじゃないの……」
タプリス「ま、まぁ。地元の子みたいですし、戻ってくれば大丈夫ですよ」
ヴィーネ「さあ、行きましょう!」
青髪の幼女「おー!」
-喫茶・洋食店-
からんからん
サターニャ「へぇ。結構、雰囲気の良いところじゃない」
青髪の幼女「ここのオムライスが、とってもおいしいの!」
ヴィーネ「地元の子に教えてもらえてよかったわね」
サターニャ「やるじゃない、ちっこいの。褒めてあげるわ!」
青髪の幼女「ソースはね、えーっと、デミグヌフソース! がおすすめだよ!」
サターニャ「何それ、すっごい悪魔的な名前ね! 気に入ったわ!」
ヴィーネ「デミグラス、だと思うわよ……」
――
タプリス「わっ、すごい、おいしそうです! い、いただきます!」
青髪の幼女「ん~、おいし~」モグモグ
タプリス「ふふっ、本当においしそうに食べてますね」
タプリス「あ、口にソース付いてますよ」フキフキ
青髪の幼女「えへへ、ありがとう」
ヴィーネ「……」パシャパシャ
サターニャ「ヴィネットは、ちっこいの撮りすぎ。料理も少しは撮りなさいよ」
ヴィーネ「はっ!? つい手が……」
タプリス「ほら、こっちのも食べてみてください。はい、あーん」
青髪の幼女「あーむっ。ん~、おいしーよー♪」
ヴィーネ「……」パシャパシャ
サターニャ「本当においしかったわ、大満足ね」
青髪の幼女「えへへ、おなかいっぱい~」
ヴィーネ「私も、いっぱいになったわ」ツヤツヤ
タプリス「月乃瀬先輩は、別の意味で……ですよね」
サターニャ「さてと、次は……って、なんか空が曇ってきたわね」
ヴィーネ「あらほんと。今日の、この地域の予報は、っと……」スッ
ヴィーネ「午後から次第に雲が出てきて、夕方から雨が振り始める、ですって」
青髪の幼女「えっ……そんな……」
タプリス「あ、このままじゃ夜の流星群が……」
ヴィーネ「そうね……雨の確率、夜は100%になっているわ……」
青髪の幼女「……せっかく、せっかく、楽しみにしてたのに」シュン
ヴィーネ「……」
タプリス「……」
サターニャ「……まだ、諦めるのは早いわ」
青髪の幼女「えっ?」
サターニャ「きっと、雨雲なんて吹き飛ばす方法があるはずよ!」
タプリス「それは……」
ヴィーネ「……そうね」
タプリス「つ、月乃瀬先輩?」
ヴィーネ「よく言ったわ、サターニャ。たしかにその通りよ!」
ヴィーネ「みんなで調べてみましょう!」
タプリス「はい、わかりました! 流星群、絶対に見ましょうね!」
青髪の幼女「うんっ!」
-資料館-
サターニャ「なーはっはっはっ!」
青髪の幼女「なーはっはっはっ!」
タプリス「あはは、すっかりお二人、仲良しさんですね」
ヴィーネ「精神年齢が合うだけじゃないかしら……」
サターニャ「ちっこいの、なかなか筋が良いわね、気に入ったわ!」
サターニャ「この大悪魔であるサタニキア様の、弟子にしてあげてもいいわよ」
青髪の幼女「大悪魔? 弟子?」
ヴィーネ「こらこら、サターニャ。変なこと教えないの」
タプリス「それにここには、晴れ乞い? の方法を見つけに来たんですよ」
サターニャ「そうだったわね、忘れてたわ」
ヴィーネ「まったく……」
――
ヴィーネ「まぁ、定番中の定番といえば、てるてる坊主よね」
サターニャ「でも、あんなので、本当に晴れるの?」
ヴィーネ「そうねぇ……」
サターニャ「どうせなら、小さいのじゃなくて」
サターニャ「どーんと特大サイズを用意したらどうかしら」
タプリス「特大って……」
サターニャ「そうね、中に私たちが入るくらいの!」
タプリス「えぇ……」
ヴィーネ「ああでも。実はてるてる坊主って、元は坊主じゃなくて」
ヴィーネ「実物の女の子が、やってたらしいわよ」
タプリス「へぇ、そうなんですか。知りませんでした」
青髪の幼女「それ、やりたい!」
ヴィーネ「えっ?」
サターニャ「良い案じゃない。ちょうど、ちっこいのが着てる服もそれっぽいし」
青髪の幼女「やる! それで晴れるならやるよ!」
ヴィーネ「でも、ねぇ?」
サターニャ「ほら、タオル巻いてあげるわ。そして、上から顔を書いて……」
サターニャ「できたわよ!」
青髪の幼女「わー! 前が見えないよー!」
サターニャ「ほら、その場でくるくる踊りなさい!」
青髪の幼女「うんっ! 晴れろー! 絶対晴れろー!」クルクルー
ヴィーネ「……」パシャパシャ
――
青髪の幼女「ぜんぜん晴れない……」クスン
タプリス「よしよし、よく頑張ったね」ナデナデ
ヴィーネ「こうなったら次は……、これよ」
サターニャ「それは……呪文書ね?」
タプリス「そんなの、ここにあるわけ……」
ヴィーネ「よくわかったわね、サターニャ」
タプリス「えぇ……本当なんですか」
青髪の幼女「じゅもん!?」キラキラ
ヴィーネ「でも、少し恥ずかしいから」
ヴィーネ「これはサターニャに、唱えてもらおうかしら」
サターニャ「……ディール・オブ・ザ・デイ」
青髪の幼女「ごくり……」
サターニャ「サニー・アンド・ブライト」
サターニャ「レット・ザ・レイン・ゴー・アウェイ……」
サターニャ「メイク・ザ・デイ・ブライト!!」
シーンッ
青髪の幼女「おぉ~、かっこいい!」キラキラ
サターニャ「ふっ、決まったわ」
ヴィーネ「カムイ・パパイヤ・アホーイヤ」
サターニャ「誰がアホですって!」
ヴィーネ「いや、これも呪文なのよ、アホーイヤ」
タプリス「アホーイヤ?」
青髪の幼女「アホーイヤ!!」
サターニャ「アホアホ言うなぁ!!」
-資料館の外-
タプリス「呪文もまったく効果ありませんでしたね」
ヴィーネ「サターニャの魔力が足りないせいよ、きっと」
サターニャ「人のせいにするんじゃないわよ!」
青髪の幼女「アホーイヤ!」
タプリス「すっかり気に入ってしまったみたいですね……」
サターニャ「そんなことより、何か他のはないの?」
ヴィーネ「こうなったら、最後の手段よ」
サターニャ「最後の手段、ですって……?」
ヴィーネ「それはね……」
シュッ シュルシュルシュル
サターニャ「……」
ヴィーネ「……」
サターニャ「……で、どうして私は、木と木を擦らされてるのかしら」
ヴィーネ「この国ではあまりないようだけど」
ヴィーネ「木を燃やして、煙を空に上げると、雲が晴れていくおまじないがあるらしいわ」
サターニャ「それは良いけど、なんで摩擦なのよ! 他の道具でいいじゃない!」
ヴィーネ「えっと……気分?」
サターニャ「ああ、もうっ、やれば良いんでしょ!」
シュルシュルシュル
タプリス「す、すごい……煙が出てきました」
青髪の幼女「おぉ~」キラキラ
サターニャ「はぁぁっ! マッハデビルスピィィンッ!!」
モクモクモク
ヴィーネ「このくらいで良いわね。サターニャ、ありがとう」
サターニャ「ぜぇ……ぜぇ……まったく、悪魔使いが荒いんだから」
サターニャ「それにやることが地味なのよ……」
青髪の幼女「でびるすぴん! かっこよかった!」
サターニャ「そ、そう? やっぱり、あんたは見る目があるわね」
青髪の幼女「えへへ」
タプリス「これで晴れるといいですね」
青髪の幼女「うんっ」
-夕方 湖畔-
ポツ ポツ ポツ
青髪の幼女「あっ……」
サァァァァァ
タプリス「ついに、降ってきちゃいましたね……」
ヴィーネ「とりあえず、あのコンビニで傘を買いましょうか」
-オレンジ色のコンビニ-
サターニャ「へぇ、出来たての唐揚げとかあるじゃない」
サターニャ「ちっこいの、あんたに買ってあげるわ」
青髪の幼女「ほんと!?」
サターニャ「ちょっと待ってなさい」
タプリス「あの胡桃沢先輩が、誰かに奢ってあげるなんて……」
ヴィーネ「ふふっ、よっぽどあの子のことが気に入ったのね」
サターニャ「ほら、食べなさい」
青髪の幼女「ありがとう! はむはむ……」
青髪の幼女「ん~! おいし~!」
サターニャ「そう、よかったわね」
タプリス「それにしても、これからどうしましょう」
ヴィーネ「そうね……とりあえずは、あの天文台に戻りましょうか」
-夜 天文台 最上階-
ザァァァァァ
タプリス「すっかり暗くなってしまいました……」
ヴィーネ「雨も激しくなってきたみたい」
青髪の幼女「……」
サターニャ「ほら、元気出しなさい」
サターニャ「待ってれば、晴れてくるかもしれないでしょ」
青髪の幼女「でも……」
タプリス「そうですよ、まだ諦めちゃダメです」
ヴィーネ「ええ、私たちも付いてるから」
青髪の幼女「……ううん、もういいの」
タプリス「えっ」
青髪の幼女「おねーさんたち、今日は本当にありがとう」
青髪の幼女「いっぱいいっぱい、ごちそうしてくれて」
青髪の幼女「どれもほんとにおいしかった!」
青髪の幼女「それに、みんなで雲さんを晴らすために」
青髪の幼女「いろいろ考えてくれて、いろいろ試してくれて」
青髪の幼女「ほんとに、ほんとに嬉しかったの」
タプリス「ごめんね、力になれなくて……」
青髪の幼女「ううん、そんなことない。だって……見て?」
青髪の幼女「おねーさん達のおかげでね、こんなに……」
青髪の幼女「ニッコリできるんだから」ニコッ
ぎゅぅ
タプリス「……ありがとう」
青髪の幼女「おねーさん?」
タプリス「流星群、次は何年後になるかわからないけど……」
タプリス「今度は見られたら、いいね」
青髪の幼女「……うんっ」
シュンッ
ガヴリール「ふぅ、到着……って、なんだここ、廃墟!?」
ラフィエル「あらあら」
タプリス「えっ、天真先輩に白羽先輩!?」
ガヴリール「お前らが、遅いから迎えに来たんだよ。そろそろ夕飯だし」
ヴィーネ「どうしてこの場所が……」
ラフィエル「うふふ、サターニャさんにセットしたGPS受信機が役に立ちました」
サターニャ「ちょっと! まだ外してなかったの!?」
ヴィーネ「恐ろしい子……」
青髪の幼女「すごい! このおねーさんたち、しゅんって出てきた!」
青髪の幼女「どうやってやったの!?」
ガヴリール「ん? このガキんちょは?」
タプリス「実は……」
ガヴリール「なるほど……今夜、流星群がね」
タプリス「はい。でも、この天気ですから……」
ラフィエル「ガヴちゃん、ガヴちゃん」コソコソ
ガヴリール「なんだ?」
ラフィエル「さっきからこの子に、私たちが飛んできた記憶を消す術を」
ラフィエル「ずっと、かけてるんですけど……」
ガヴリール「お前、マメだな……で?」
ラフィエル「それが、全く効かないみたいなんです」
ガヴリール「はぁ? 効かないってなんだよ」
ラフィエル「恐らくこの子は――」
ガヴリール「……そうか。じゃあ、天界の法には触れてないから良いんじゃないか」
ラフィエル「そうですね、良しとしましょうか」
青髪の幼女「どうしたの? おねーさんたち」
ラフィエル「うふふ、何でもありませんよ」
ラフィエル「それよりも、この街には……」
ラフィエル「なんでも願いごとを叶えてくれる、円盤さんがいるみたいじゃないですか」
サターニャ「えっ、あの円盤、そんなことしてくれるの!?」
青髪の幼女「……えっと、そうなのかなぁ」
ラフィエル「ここは、それにあやかりまして……」
ラフィエル「みなさんでお願いごと、してみませんか?」
ぎゅっ
サターニャ「こんな、五人で手を繋いで輪になって、何か意味あるの?」
ラフィエル「はい。これで目を瞑って、円盤さんにお願いごとをするんです」
ガヴリール「はぁ……なんで私まで」
ヴィーネ「まぁまぁ、そう言わずに、ね」
ラフィエル「それでは、みなさん。いきますよ」
ラフィエル「……円盤さん、円盤さん、お願いします」
シーン
ガヴリール(……まぁ、とりあえず晴れますように)
ラフィエル(雨雲が、どこかへ飛んでいきますように)
ヴィーネ(雨が止んで、空が晴れますように)
サターニャ(ちっこいの、のために空を晴らしてあげて)
タプリス(……あの子に、流星群を見せてあげてください)
ザァァァァァッ
サァァァッ
ポツポツ ポツ ポツ
青髪の幼女「すごい! すごいすごいすごい!」
青髪の幼女「ほんとに雨が止んじゃった! 空が晴れちゃった!」
ヴィーネ「嘘……信じられない」
サターニャ「ほんとに、雨が止んだっていうの……?」
タプリス「え、円盤さんが……本当に叶えてくれたんですかね」
青髪の幼女「ありがとう! おねーさんたち、本当にありがとう!」
ラフィエル「うふふ、よかったですね」
ヴィーネ「何はともあれ、ほんとに良かった! これで流星群、見られるわね!」
サターニャ「ほら、ここじゃ見えづらいから、外に出るわよ!」
タプリス「は、はい! それじゃあ、行きましょう?」
青髪の幼女「うんっ」
タッタッタッ
ラフィエル「どうしました? ガヴちゃん」
ガヴリール「……お前、また天界に連絡して、天候変えただろ」
ラフィエル「ふふっ、なんのことでしょう」
ラフィエル「晴れたのはですね……みなさんの願いが、あの円盤に届いたんです」
ラフィエル「見ましたか? あの子たちの笑顔」
ラフィエル「あれはきっと、かけがえの無いものですよ、ガヴちゃん」
ガヴリール「……ったく、茶番につき合わせやがって」
ラフィエル「ほら、私たちも行きましょう」
ラフィエル「次に見ることができるのは、何年先かわかりませんから」
ガヴリール「ああ、わかったよ」
-夜 天文台前-
ヒュンッ ヒュンヒュンッ
タプリス「すごいです! あんなに星が流れて!」
サターニャ「これはたしかに、すごいわね……」
ヴィーネ「幻想的……」
タプリス「ほら、こちらに来てください。一緒に流星群を見ましょう?」
青髪の幼女「うんっ!」
ぎゅっ
タプリス「綺麗ですね……お星様がお空を走っていきます」
青髪の幼女「ほんとにきらきらしてる、きらきら……きらきら……」
タプリス「ええ……って、あれ、どうかしましたか?」
青髪の幼女「えっ、なんのこと?」
タプリス「いえ、その……涙を、流してますから」
青髪の幼女「え? えっ? うそっ!?」
タプリス「大丈夫ですか?」
青髪の幼女「わかんない……わかんないけど、きっと……」
青髪の幼女「流星群には、特別な思い出があるから、なのかな」
タプリス「そうですか……それを思い出して、しまったんですね」
ぎゅぅ
青髪の幼女「あっ……」
タプリス「だったら我慢せずに、思いきり泣いても、良いんですよ?」
青髪の幼女「……ッ」
タプリス「……ね?」ナデナデ
青髪の幼女「ぐすっ……ありがとう」
タプリス「落ち着いた?」
青髪の幼女「嬉しいはずなのに、みんなニッコリなのに、泣いちゃうなんて」
青髪の幼女「ちょっと恥ずかしい……」
タプリス「そんなときもありますよ。でも、あなたには」
タプリス「ニッコリな笑顔のほうが、似合ってると思います」
青髪の幼女「えへへ……うんっ」ニコッ
――
ラフィエル「あらあら、こんなに懐かれてしまって」
タプリス「あ、白羽先輩」
ラフィエル「ふふっ、かわいい後輩が取られてしまってみたいで、悲しいです」
ラフィエル「ね? ガヴちゃん」
ガヴリール「なんで私に振るんだよ」
タプリス「あははは……」
ガヴリール「それより、もうだいぶ見ただろ?」
ガヴリール「旅館の夕飯、食べ損ねるし、そろそろ帰るぞ」
タプリス「あ、そうですね……」
ヴィーネ「じゃ、じゃあ、この子も一緒に……」
女の子1「あれ、あの人たちと一緒にいるのって……」
女の子2「ほんとね。見かけない人たちだけど、観光客の方かしら」
青髪の幼女「あ、みんなだ!」
ヴィーネ「あ、もしかして、この子のご家族の方ですか?」
女の子1「えっと……はい。そんな感じです」
ガヴリール「そうか。じゃあ、ここで引き渡して、お別れだな」
ヴィーネ「寂しいけど、仕方ないわね。ぐすっ……元気でね」
サターニャ「何泣いてるのよ、ヴィネット……」
ヴィーネ「だって……」
サターニャ「ちっこいのだって、これからもこの街にいるんでしょ?」
青髪の幼女「うん、いるよ!」
サターニャ「だったら、また会えるじゃない」
ヴィーネ「……そう、そうよね。その通りだわ」
サターニャ「また流星群ってのが来たら、ここに来てあげるわ!」
サターニャ「感謝しなさい! なーはっはっはっ!」
青髪の幼女「なーはっはっはっ!」
タプリス「……えっと」
青髪の幼女「……ニッコリ、だよ」
タプリス「えっ?」
青髪の幼女「おねーさんも、ニッコリの方が似合ってるから」ニコッ
タプリス「そうですね、わたしがさっき言ったばかりでした」
タプリス「また一緒に、流星群を見ましょうね」ニコッ
青髪の幼女「うんっ! 約束!」
青髪の幼女「おねーさんたち、今日はありがとうー!」
青髪の幼女「流星群を見せてくれて、ほんとにありがとうー!!」
青髪の幼女「バイバーイ! また会おうねー!!」ブンブンッ
タプリス「はいっ! また会いましょう!」
――
女の子2「なんだか賑やかな人たち、だったわね」
女の子1「……でも、とても良い人たちみたい」
青髪の幼女「うんっ、いっぱいいっぱい、ごちそうになっちゃった」
女の子1「もう……食べ過ぎたりしてない?」
青髪の幼女「えへへ。あ、でも、もうお腹すいてきちゃった」
女の子1「はぁ、そんなことだろうと思って、サンドイッチ持ってきてるから」
女の子1「一緒に食べながら、流星群を見ましょう?」
青髪の幼女「うんっ!」
女の子2「それにしても、今日は100%雨予報だったから、諦めてたのに……」
女の子2「ずいぶんと急に晴れたわね」
女の子1「まぁ、見ることができるんだから、良かったじゃない」
女の子2「そうね」
青髪の幼女「あのおねーさんたちが、雲を晴らしてくれたんだよ!」
女の子1「えっ? そんなことできるわけ……」
青髪の幼女「だからね、恩返ししないと」
女の子2「な、何をする気? って……円盤が!?」
青髪の幼女「ひゅー! どーん!」
青髪の幼女「おねーさんたち、みーんな! ニッコリになーれ!!」
-夜 湖畔 遊歩道-
パァァァァッ
タプリス「う、うそ……円盤が……」
ヴィーネ「輝いてるわね、綺麗だけど……」
サターニャ「なにあれ! なんか花火みたいで綺麗じゃない!」
ガヴリール「おうおう、すごいな」
ガヴリール「あれか? プロジェクションマッピングってやつか?」
ヴィーネ「いや、あんな巨大な円盤にできるはずないでしょ……」
サターニャ「まさか、異星人からの侵略の合図!?」
ガヴリール「んなわけないだろ……」
ラフィエル「タプちゃん、どうしました?」
タプリス「あ、いえ、とても綺麗な光だなって」
ラフィエル「ふふっ、それだけですか?」
タプリス「えっと、自意識過剰かもしれないんですけど……」
タプリス「あの光がなんだか、わたしたちに向けられているような気がして」
ラフィエル「そうですかそうですかぁ」
ラフィエル「……きっと、そうなんだと思いますよ」
タプリス「えっ? し、白羽先輩?」
ラフィエル「あの子と今日一日、何があったのか詳しくは知りませんが」
ラフィエル「かけがえのない、思い出になったんですね」
タプリス「はい。そうですね……そう思います」
ラフィエル「あの光からは、ですね。感謝の気持ちが感じられるんです」
ラフィエル「だからタプちゃんも、それを感じ取ったのではないでしょうか」
タプリス「えっ、それって、まさか……」
タプリス「あの光は、あの子が……?」
ラフィエル「うふふ、どうでしょう」
ガヴリール「ほら、タプリス。旅館に早く帰るぞ、おいしいごはんが待ってる」
タプリス「は、はい!」
タプリス「……」
タプリス「……ッ」クルッ
タプリス「円盤さん! ありがとうございました!」
タプリス「あの子と、わたしの願いを叶えてくれて、本当にありがとうございました!」
パァァァァッ
タプリス(あの子と一緒に見た星々は、一瞬で通り過ぎてしまったけれど)
タプリス(わたしたちに刻まれた大切な思い出は、きっと……)
タプリス(何年経ったとしても、色褪せることはないと信じています)
タプリス「……そうですよね、円盤さん!」ニコッ
おしまい
元スレ
ガヴリール「千咲ちゃん、北の大地で流星群を見る」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1494936164/
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コメント一覧 (5)
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- 2017年05月17日 12:37
- このシリーズも長いことつづくなあ
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- 2017年05月17日 12:41
- 今回はクロス要素もありか
向こうの作品(天メソ)はよく知らんが良い話であった
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- 2017年05月17日 15:09
- クロスオーバーいいわぁ
天メソすき
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- 2017年05月17日 15:44
- そういえばノエルとタプリスは同じ声優か
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- 2017年05月18日 16:21
- うまいこと天体のメソッド要素が混ぜ込まれていて、ちょっと嬉しい