ガヴリール「千咲ちゃん、胡桃沢先輩と二人でメロンパンフェスに行く」

1:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/05(金) 21:02:58.928 ID:aL/Qm9o600505.net

 
-メロンパンフェス会場前-



タプリス(天界のお父さん、お母さん)

タプリス(今日、わたしは、悪魔である胡桃沢さんという先輩と)

タプリス(メロンパンフェスというものに来ています)


タプリス(全国各地から、30種類以上の超有名メロンパンが大集結)

タプリス(まさに、メロンパン好きによる、メロンパン好きのための)

タプリス(国内最大級のメロンパンの祭典です)


タプリス(大型連休に加えて、晴天にも恵まれ)

タプリス(会場は多くの人で賑わっています)

タプリス(ですが……)


タプリス「どうして、こんな長蛇の列に並ばないといけないんですか!」

サターニャ「……いいから、黙って待ちなさい」



3:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/05(金) 21:06:53.806 ID:aL/Qm9o600505.net

 
タプリス「それに、メロンパン買うだけなら一人でもよかったのでは」

サターニャ「ここは購入数制限があって、一人三つまでしか買えないのよ」

サターニャ「あんたがいれば、少しでも多くのメロンパンを味わえるでしょ」

タプリス「で、でしたら、みなさんも誘えば、もっと買えたのに……」

サターニャ「……何言ってるの、ここは戦場よ」

サターニャ「ぞろぞろと大人数で歩くことなんて、できるわけないじゃない」

サターニャ「遊びでやってんじゃないのよ」

タプリス「いやいやいや……」


係員「まもなく、開場致します!」

サターニャ「それじゃあ行くわ、タプリス」

タプリス「えっ、あ、はい」

タプリス(す、すごい人ですね、押し潰されそう)

サターニャ「私から離れるんじゃないわよ、ほら、手」

タプリス「……あ、ありがとうございます」

サターニャ「……」

タプリス「……」

タプリス(こういう時だけ、頼もしいというか、先輩っぽいというか)

タプリス(……なんだかずるいです)



4:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/05(金) 21:09:03.928 ID:aL/Qm9o600505.net

 
-メロンパンフェス会場内-


タプリス「すごい……いろんなメロンパンがありますね」

タプリス「りんごメロンパンに、オレンジメロンパンって」

タプリス「もう、よくわかりませんね。美味しそうですけど」

サターニャ「素晴らしいラインナップだわ」

タプリス「カレーメロンパンってのも、ありますよ」

タプリス「でもこれ……、いわゆるカレーパンですよね」

サターニャ「いえ、ちゃんと生地はメロンパンになっているのだから」

サターニャ「れっきとしたメロンパンよ」

タプリス「へ、へぇ……」


サターニャ「私はもう、三つ決めたわ。あんたは?」

タプリス「え? あ、ちょっと待ってください、すぐ決めますから!」



5:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/05(金) 21:11:04.981 ID:aL/Qm9o600505.net

 
-メロンパンフェス会場 外-


タプリス「いただきます」パクッ

タプリス「ん~、美味しいです!」

サターニャ「外はカリッと香ばしく、中はふんわりさっぱりした食感」

サターニャ「奇をてらった商品も悪くないけれど」

サターニャ「やっぱり、普通のが最高ね。一番、違いがよく分かるわ」


タプリス「普段、『おいしい』と『すごくおいしい』の二種類しか言わないのに」

タプリス「メロンパンだけ、本気すぎませんか」



7:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/05(金) 21:13:08.761 ID:aL/Qm9o600505.net

 
サターニャ「……決めたわ」

タプリス「え、何をですか?」

サターニャ「私も、ここにメロンパンを出品する!」

タプリス「な、なに言ってるんですか、無理に決まってますよ!」

サターニャ「ここまでのメロンパン通、かつ」

サターニャ「大悪魔である私に、不可能はないわ!」

タプリス「いやいやいや……、全国の選りすぐりの品が集まってるんですよ?」


サターニャ「そうと決まれば、さっそく帰って、調理開始よ」

サターニャ「フェスは明日までだから、急がないといけないわ」タタタッ

タプリス「あ、ちょっと胡桃沢先輩! 待ってください!」



8:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/05(金) 21:15:00.814 ID:aL/Qm9o600505.net

 
-サターニャの家-


タプリス「ところで胡桃沢先輩、パン作りの経験はあるんですか?」

サターニャ「ふふっ、正直、作ったことはないわ」

タプリス「えぇ……」

サターニャ「でも一応、お菓子作りは小さい頃からずっと見てきたから」

サターニャ「おおよその流れは全て、頭に入っているし」

タプリス「あ、先輩の実家って洋菓子店でしたっけ」


サターニャ「まあ、期待してなさい。最高のメロンパンを作り出してみせるわ」

タプリス(ふ、不安しかないです……)



9:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/05(金) 21:16:14.729 ID:aL/Qm9o600505.net

 
-次の日の朝 サターニャの家-


サターニャ「ぜぇ……ぜぇ……、完成よ」

タプリス「ふにゃ……え、完成したんです? というか、徹夜ですか!?」

サターニャ「これよ!」バンッ

タプリス「……先輩」

サターニャ「なによ。あまりの出来に、言葉もないのかしら」

タプリス「なんといいますか、パンっていうより」

タプリス「でっかい、おせんべいみたいになってますけど……」


サターニャ「これだから素人は……とにかく、これを今から持っていくわ!」

タプリス「ちょ、待ってくださいって! もうっ!」



13:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/05(金) 21:17:39.642 ID:aL/Qm9o600505.net

 
-メロンパンフェス会場内-


運営委員「そういうのは、お断りしていますので……」

サターニャ「なんでよ! 私の最高傑作よ!」

運営委員「これが……ですか?」

サターニャ「み、見た目はちょっと悪いかもしれないけど」

サターニャ「食べたら美味しいんだから! ちょっと食べてみてよ!」


タプリス「胡桃沢先輩、あまり無茶を言うのは……」

運営委員「わかりました、それではいただきますね」



14:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/05(金) 21:20:54.390 ID:aL/Qm9o600505.net

 
タプリス「え、食べてもらえるんですか。あ、ありがとうございます!」

運営委員「……」モグモグ

サターニャ「……」ゴクリ

運営委員「あなた、メロンパンが大好きと言っていましたよね?」

サターニャ「え? ええ、もちろんよ」

運営委員「これを自分で食べてみましたか?」

サターニャ「……」

サターニャ「まだ、食べてない」

タプリス「えぇっ! 味見してないんですか!?」

運営委員「では、今食べてみてください」

サターニャ「……わ、わかったわ」パクッ

サターニャ「……」モグモグ

サターニャ「……ッ」


運営委員「私がこれから何を言おうとしているか、わかりましたか?」

サターニャ「……」

タプリス「胡桃沢先輩……?」

サターニャ「……邪魔をして悪かったわね」

サターニャ「帰るわよ、タプリス」

タプリス「えっ、先輩? ちょ、待ってください!」



15:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/05(金) 21:24:11.697 ID:aL/Qm9o600505.net

 
-サターニャの家-


サターニャ「……」

タプリス(胡桃沢先輩……余程ショックだったんでしょうか)

タプリス「先輩、そんなに落ち込まないでください」

タプリス「しょうがないです、全国トップレベルのパン職人さんたちが」

タプリス「腕をふるっている本気のメロンパンたちなんですから」

タプリス「わたしたちのような素人が、勝てる相手では……」


サターニャ「……勝つ?」

タプリス「えっ」

サターニャ「そうよ、それよ! 最初から比べる必要なんてなかったんだわ!」

タプリス「先輩?」

サターニャ「ふふっ、あのメロンパンたちに勝つとか負けるとか」

サターニャ「どうでもいいことなのよ!」

タプリス「は、はぁ……」

サターニャ「決めたわ! 私は必ず作ってみせる!」

サターニャ「全てを超越した絶対的なメロンパン……」

サターニャ「その名も、超絶メロンパンを!!」



16:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/05(金) 21:26:53.194 ID:aL/Qm9o600505.net

 
タプリス「なんか、食べたら失神しそうなメロンパンですね……」

サターニャ「そう、あまりのおいしさにね」

タプリス「ほ、褒めたつもりじゃなかったんですけど……」

タプリス(でも、理由はともあれ、何か真っ当なこと一つに)

タプリス(打ち込んでいくのって、きっと良いことですよね……)

タプリス(それに胡桃沢先輩を、悪の道から遠ざけることもできそうです)


タプリス「わかりました! わたしにもお手伝いさせてください!」

サターニャ「えっ、いいの?」

タプリス「えぇ、一緒に頑張って作っていきましょう!」

サターニャ「わかったわ! 一緒に、絶頂メロンパンを完成させるわよ!」

タプリス「名前さっそく間違えてますって」


――

サターニャ「さて、それじゃあ作っていくわよ!」

タプリス「ちょっと待ってください! 考えなしに作っても……」

タプリス「また、おせんべいができるだけですよ!」

サターニャ「じゃあ、どうしろっていうのよ」

タプリス「ま、まずはレシピ通りに、普通のメロンパンを作るのが」

タプリス「よいかなぁと思うんですが」

サターニャ「私が作るのは、超絶メロンパンよ?」

サターニャ「普通のなんて作っても、仕方ないわ!」



17:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/05(金) 21:29:56.034 ID:aL/Qm9o600505.net

 
タプリス「いやいやいや……基本もわかってないのに」

タプリス「応用なんて、できるはずないじゃないですか」

タプリス「それに、先輩言ってましたよね」

タプリス「普通のが一番、違いがよく分かるって」

サターニャ「た、たしかに一理あるわね……」

タプリス「最初は、普通のメロンパンを、難なく作れるようになるまで」

タプリス「頑張ってみましょう!」

サターニャ「難なくって、どれくらいよ」

タプリス「こればかりは……何度も作ってみるしかないですよね」

サターニャ「まぁ、やるしかないわね。大悪魔の私に、二言はないわ!」



-数日後 サターニャの家-


サターニャ「これで、どうかしら」

タプリス「すごい! ちゃんとパンができてるじゃないですか!?」

サターニャ「それ、褒めてるの? それとも貶してるの?」

タプリス「褒めてますって! おせんべいからパンに進化ですよ!」

サターニャ「ふんっ、とにかく食べてみなさい!」

タプリス「は、はい。いただきます」パクッ


タプリス「……」モグモグ

サターニャ「ど、どうよ?」



18:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/05(金) 21:33:07.013 ID:aL/Qm9o600505.net

 
タプリス「お……」

サターニャ「お?」

タプリス「おいしいじゃないですか!」

サターニャ「ほ、本当? 嘘じゃないわよね?」

タプリス「嘘なんかついてどうするんですか、これはおいしいです」

サターニャ「ふっ、さすが私ね、わかってたわ。これで……」

サターニャ「超絶メロンパンの完成よ!」


タプリス「あ……」

サターニャ「どうしたのよ?」

タプリス「え、えっと……、たしかにおいしいことはおいしいんですが……」

サターニャ「何よ、はっきり言いなさい」

タプリス「あくまで手作りのおいしさっていうか、お店のものと比べると」

タプリス「どうしても劣っちゃうといいますか……」

サターニャ「そ、そう……」

タプリス「あ……で、でも! そう感じるのは、わたしだけかもしれませんし!」

タプリス「他のみなさんにも食べてもらいましょう!」



20:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/05(金) 21:35:57.131 ID:aL/Qm9o600505.net

 
-ヴィーネの家-


ヴィーネ「意外とおいしい」

ガヴリール「意外とうまいな」

ラフィエル「意外と美味しいですね」


サターニャ「意外とって何よ、あんたたち! 失礼すぎるでしょ!」

ヴィーネ「いや、サターニャが料理するイメージなんてなかったし」

ヴィーネ「実際してないでしょ?」

サターニャ「それはそうだけど、メロンパンだけは別なのよ!」

ガヴリール「で、これをどうしたいんだ?」

サターニャ「なはっ、聞いて驚きなさい」

サターニャ「これを、超絶メロンパンとして世に広め、世界中に認識させるのよ!」

サターニャ「全てを超えた、絶対的なメロンパンであるとね!」


ガヴリール「で、これをどうしたいんだ?」

サターニャ「ちょ! 今言ったでしょうが!」

ガヴリール「すまん、あと二回くらい言ってくれ」

サターニャ「せめて次で聞く努力くらいしなさいよ!」



21:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/05(金) 21:39:07.369 ID:aL/Qm9o600505.net

 
ヴィーネ「たしかに、おいしいとは思うけど……」

ヴィーネ「やっぱり手作りの域を超えられるかというと、厳しいわね」

タプリス「そ、そうですよね……」


サターニャ「何よ! みんなおいしいって言ってくれたじゃない!」

サターニャ「おいしければ絶対、みんな認めてくれるわよ!」

タプリス「胡桃沢先輩……」


ラフィエル「だったら、こういうのはどうでしょう」

サターニャ「な、何よ……」

ラフィエル「ガヴちゃんの働くエンジェル珈琲に、ですね」

ラフィエル「サターニャさんのメロンパンを置いてもらって」

ラフィエル「どれくらい売れるかを試してみるんです」

サターニャ「あ、あんたにしては、良い案じゃない!」


ガヴリール「おいおい、なに勝手に決めてんだよ」

ラフィエル「ガヴちゃん、ガヴちゃん」コソコソ

ラフィエル「お友達としては、時には厳しく、現実を教えてあげるのも」コソコソ

ラフィエル「必要だと思いますよ、それに……」コソコソ

ラフィエル「その方が面白いじゃないですか」コソコソ

ガヴリール「ああ、最後しか聞こえなかった」



22:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/05(金) 21:42:15.449 ID:aL/Qm9o600505.net

 
-数日後 エンジェル珈琲-


マスター「ええ、いいですよ」

ガヴリール「マ、マジすか……ド素人が作るパンっすよ?」

マスター「これで、私のコーヒーを飲んでくれるお客さんが」

マスター「一人でも増えれば、私は嬉しいからねぇ」

マスター「それに、現役女子高生が作るメロンパン、売れそうじゃないですか」

ガヴリール「あ、それは引くっす」

ラフィエル「そうですかそうですかぁ」

タプリス「少し鳥肌が……」

ヴィーネ「そんな人じゃないと思ってたのに……」

マスター「ち、違うからね! 私はコーヒー、一筋だからね!」


サターニャ「あんたたち、置いてくれるって言ってんだから」

サターニャ「こんないい人に、文句言ってんじゃないわよ!」

マスター「く、胡桃沢くん……」ジーン

サターニャ「じゃあ、任せたわ! 値段は一個、1万円でお願いね!」


マスター「高すぎ、ですねぇぇぇぇっ!!」



23:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/05(金) 21:44:56.296 ID:aL/Qm9o600505.net

 
-次の日 エンジェル珈琲-


サターニャ「はぁっ!? 一個も売れなかったですって!!」

ガヴリール「ああ。もちろん値段は、下げに下げて50円にしたんだが」

サターニャ「50円って、普通のメロンパンの半分以下じゃない!」

サターニャ「それなのに一個も売れなかったなんて……」

ガヴリール「まあ、この店に来る客が少ないってのもあるが」

マスター「……」グサッ

ガヴリール「現実はこんなもんだ」


サターニャ「そんな……」

マスター「胡桃沢くん、そんなに落ち込まないで」

マスター「私も食べさせてもらったけど、よく出来てて美味しかったよ」

サターニャ「ほ、本当!?」

マスター「ただ……」

サターニャ「ただ?」

マスター「お金を出して買ってもらえる、ってのは簡単なことじゃないんだ」

マスター「それこそ世の中、お金さえ出せば」

マスター「いくらでも安くて良い物が手に入るからね」

マスター「余程、何かに秀でていないと、難しいことなんだよ」


サターニャ「……」

タプリス「胡桃沢先輩……」



24:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/05(金) 21:47:52.572 ID:aL/Qm9o600505.net

 
ガヴリール「まぁわかったなら、これで諦め――」

サターニャ「……嫌よ」

タプリス「えっ」

サターニャ「私は誓ったの! 全てを超えた、絶対的なメロンパンを作るって!」

サターニャ「あの、メロンパンフェス運営委員の鼻を明かしてやるんだって!」

タプリス「……」

サターニャ「ちょっとやって、売れなかったから、なに!?」

サターニャ「私が挑み続けている限り、私に負けはないのよ!!」

マスター「……ッ」


ガヴリール「言いたいことは、それだけか」

サターニャ「……ええ」

サターニャ「マスター、店で大声出して悪かったわね」

サターニャ「メロンパン……置いてくれて、ありがとう」

サターニャ「タプリス、行くわよ」

タプリス「あっ……」


マスター「ちょっと待って!」



25:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/05(金) 21:51:16.853 ID:aL/Qm9o600505.net

 
サターニャ「何よ、まだ何かあるの」

マスター「私の知り合いにね、パン屋を営んでいる女性がいるんだけど」

マスター「前に人手が不足しているって、言っていたんだ」

マスター「も、もし、胡桃沢くんが良かったら」

マスター「そこで働いてみないか?」

サターニャ「えっ」

タプリス「く、胡桃沢先輩! そ、それってチャンスですよ!」

マスター「もちろん、君のやる気があれば、だけど」


サターニャ「どうして……そんなこと教えてくれるのよ」

マスター「さっきの、君の言葉を聞いてね」

マスター「なんか若い頃の自分を思い出したんだ」

マスター「ただ、がむしゃらに、コーヒー作りに没頭していた頃をね」

タプリス「マスターさん……」

マスター「まぁなんだ、しがない中年のお節介と思ってくれて構わないよ」

ガヴリール「……もう少し、この店の心配もした方が良いと思うけどな」

マスター「……」グサッ


マスター「そ、それで、どうするんだい?」


サターニャ「……そんなの、決まってるじゃない」

サターニャ「このサタニキア様が、そこで働いてあげるわ!!」



26:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/05(金) 21:53:54.783 ID:aL/Qm9o600505.net

 
タプリス(こうして、胡桃沢先輩のパン作りの修業の日々が始まりました)

タプリス(学校が終わると一目散に飛び出していって、パン屋へ通い)

タプリス(休日も返上して、働き続けました)


タプリス(最初に、パン屋の店長さんが女性と聞いた時は、少し安心したものですが)

タプリス(実は、男性も顔負けの豪快で勝ち気な方でして)

タプリス(しょっちゅう、胡桃沢先輩とは衝突して)

タプリス(口喧嘩を店中に響かせていたみたいです)

タプリス(それでも今まで続いているのを見ると)

タプリス(意外と馬が合うのかもしれません)


タプリス(そして、店の仕事の合間を見ては、メロンパンを作り続け)

タプリス(その結果に一喜一憂して、時には苦悩しながら、腕を磨いていきました)


タプリス(そう、胡桃沢先輩のメロンパンに対する熱い思いは)

タプリス(衰えることを知らなかったのです)


タプリス(そして……)

タプリス(数ヶ月の時が、流れました)



27:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/05(金) 21:57:04.209 ID:aL/Qm9o600505.net

 
-数ヶ月後 エンジェル珈琲-


 ドンッ

サターニャ「これを、ここに置いてほしいの」

マスター「こ、これは……なんて綺麗なメロンパンなんだ」

サターニャ「……超絶メロンパン、328号よ」


マスター「た、食べてみてもいいかい?」

サターニャ「ええ、どうぞ」

マスター「……」パクッ

マスター「!!??」

マスター「な、なんだこの、メロンパンは!!」

マスター「カリッ、フワッ、モフッ!! それぞれの食感が、頭の中を反芻していく!!」

マスター「止まらない! 手と口が止まらない! 止めてはいけない!!」

マスター「私にはこのメロンパンを!! 食べる義務がある!!」

マスター「私は、このパンと、一緒にならなければ、ならないぃぃぃぃっ!!」


マスター「ぜぇ……ぜぇ……す、すごいよ、胡桃沢くん」

マスター「もちろん君の努力の賜物だとも思うが……」

マスター「これは天性の才能だよ! 君はメロンパンを作るために生まれてきたんだ!」

サターニャ「……当然ッ! 既に知っていたことだわッ!!」



28:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/05(金) 21:59:58.751 ID:aL/Qm9o600505.net

 
-数週間後 エンジェル珈琲-


 タッタッタッ


ガヴリール「らっしゃっせー」

タプリス「先輩! 次のお客さん来ています! 早くしてください!」

ガヴリール「……なんでこんな、クソ忙しくなるんだよ」

ヴィーネ「文句言わないの。私たちも手伝ってるでしょ!」

ラフィエル「それにしても、サターニャさんのメロンパンが」

ラフィエル「こんなにも人気が出るなんて、思わなかったですね」

ヴィーネ「さっき、県外ナンバーの車も来ていたわ」

ガヴリール「マジかよ、サターニャ最低だな」


マスター「こ、こんなに私のコーヒーを飲んでもらえるなんて」ウルウル

タプリス「マスターさん、マジ泣きしてます……」


ガヴリール「で、その元凶のあいつは、どこ行ったんだよ」

タプリス「なんかまだまだ、改善の余地があるとかで」

タプリス「実家の洋菓子店に、修行にいくって言ってました」

ガヴリール「もう、やりたい放題だな……」



29:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/05(金) 22:03:04.986 ID:aL/Qm9o60.net

 
-さらに数ヶ月後 サターニャの家-


タプリス「聞きましたか、胡桃沢先輩!」

サターニャ「何をよ」

タプリス「今度、先輩のメロンパンが商品化されて、コンビニに置かれるそうです!」

サターニャ「そう、興味ないわ」

タプリス「えっ!? ど、どうしてです!?」

サターニャ「あんな機械で作った量産品なんて」

サターニャ「私のメロンパンだなんて言えないもの」

タプリス「で、でも。それでもっと有名になれば」

タプリス「先輩のメロンパンを食べてくれる人が増えますよ!」

サターニャ「……ま、そんなことよりも」

タプリス「ス、スルー!?」


サターニャ「これからは、原材料にもこだわっていきたいと思うのよ」

サターニャ「小麦はもちろんとして……」

サターニャ「現在の超絶メロンパンの隠し味になっているメロン果汁」

サターニャ「これらを、農家と連携して、一から栽培していこうと思ってるわ」

タプリス「そ、そこまで……するんですか……」


サターニャ「というわけで、しばらく家を空けるから」

タプリス「えぇっ、学校はどうするんです!?」

サターニャ「もう休学届は提出済よ、それじゃ次の大型連休に会いましょう」

タプリス「ちょ、胡桃沢先輩!? えぇぇぇっ!!」



30:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/05(金) 22:06:39.703 ID:aL/Qm9o60.net

 
タプリス(その後、胡桃沢先輩は本当に、舞天市を去ってしまい)

タプリス(日本各地の農家を転々としている、と聞いています)

タプリス(たまに電話をしたときに、喜々として成果を報告する先輩は)

タプリス(本当に無邪気で子供っぽくて)

タプリス(わたしも、ついつい笑みが溢れてしまいます)


タプリス(一方で、名物がなくなってしまったエンジェル珈琲は)

タプリス(また以前のように閑古鳥が鳴くようになり)

タプリス(マスターさんの体重は、減っていくばかりのようです)


タプリス(先輩のみなさんも、胡桃沢先輩がいなくなってしまって)

タプリス(ぽっかりと空いてしまった胸の穴を)

タプリス(特に話題にすることもなく、埋め合っていると聞いています)


タプリス(そうして、月日はどんどんと流れ……)

タプリス(運命の、メロンパンフェスの日がやって来たのです)



31:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/05(金) 22:09:29.022 ID:aL/Qm9o60.net

 
-数ヶ月後 メロンパンフェス会場前-


タプリス「お久しぶりです、胡桃沢先輩」

サターニャ「ええ、久しぶり」

タプリス「なんだか、以前にも増して、健康的な感じになりましたね」

サターニャ「そう? そんな変わんないでしょ」

タプリス「そうですね。外見以外は、変わってないみたいで安心しました」


――

サターニャ「この一年、死に物狂いで作り続けてきて」

サターニャ「ついに……この日を迎えることができたわ」

タプリス「はい、長かったようで短かったような、そんな感じがします」

サターニャ「……ありがとね、タプリス」

タプリス「えっ、先輩?」

サターニャ「たぶん、あんたが最初に、私を手伝ってくれたおかげで」

サターニャ「ここまで来ることができた。だから、ありがとう」

タプリス「そ、そんな……わたしなんて何も……」

タプリス「全ては、先輩の行動による成果ですよ、だって……」

タプリス「わたしずっと、先輩のこと見てきましたから、わかるんです」

サターニャ「……そう。じゃあ今日、新たな1ページが刻まれる私の武勇伝を」

サターニャ「あんたにはこれから、広めてもらわないとね!」

タプリス「はいっ!」

サターニャ「それじゃ、行くわよ!!」



32:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/05(金) 22:12:44.688 ID:aL/Qm9o60.net

 
運営委員「あなたはたしか……去年、持ち込みをしてきた方、ですね」

サターニャ「ふっ、覚えていてくれたみたいで光栄ね」

運営委員「まさか今年も……」

サターニャ「ええ、そのまさかよ」

運営委員「何度も言いますが、そういうのはお断りしていますので……」

サターニャ「これを食べても、同じ口が叩けるかしら」


 ドンッ

運営委員「こ、これは……」

サターニャ「私を、去年の私と同じと思わないことね」

サターニャ「さぁ食べてみなさい! 私の最高傑作を!」

タプリス「わたしからもお願いします、食べてみてください……」

運営委員「……わかりました、それではいただきます」


サターニャ「……」

タプリス「……」ゴクリ


運営委員「……」パクッ


運営委員「……ッ」



33:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2017/05/05(金) 22:16:01.540 ID:aL/Qm9o60.net

 
運営委員「口の中に入れた瞬間の、蕩けるような食感」

運営委員「そして広がる、芳醇な甘み」

運営委員「私が今まで食べてきた中で恐らく……ナンバー1です」

サターニャ「これでわかったでしょう、私の実力が」

運営委員「ええ、一年前の物とは……全くの別物ですね。美味しいです」

タプリス「やった! やりましたね、先輩っ!」

サターニャ「ふっ、当然よ!」


運営委員「ですがこれを……」

タプリス「えっ」

運営委員「このメロンパンフェスで、売ることはできません」

サターニャ「はぁっ!? ど、どうしてよ!?」

タプリス「納得できないです! 理由を教えてください!」



運営委員「だってこれ、パンじゃなくて……」


運営委員「ただのメロンじゃないですか」



サターニャ「しまったぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」



おしまい



元スレ
ガヴリール「千咲ちゃん、胡桃沢先輩と二人でメロンパンフェスに行く」 http://vipper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1493985778/
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          • 2017年05月06日 09:19
          • 4 うーん...オチのパンチがちょっと弱い
            けど話は面白かった
          • 2. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年05月06日 09:49
          • 5 サターニャらしいオチで割と好き
          • 3. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年05月06日 10:17
          • 5 あぁ、もう!惜しい!!ww
            でも普通に楽しく読めたよ!
          • 4. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年05月06日 10:27
          • オチもったいねーなー
          • 5. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年05月06日 11:24
          • マスターディスりすぎでしょ
          • 6. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年05月06日 13:48
          • それはメロンパンが凄いのでは無くメロンが凄いだけだ!!
          • 7. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年05月06日 14:52
          • パン職人からメロン農家にジョブチェンジしてるじゃん!
          • 8. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年05月06日 18:23
          • メロンパンフェスほんとにあるのかよ! 知らなかったよ!
          • 9. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年05月07日 03:46
          • 5 こんなん草生えますわ

        はじめに

        コメント、はてブなどなど
        ありがとうございます(`・ω・´)

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