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勇者「結婚しろ」 魔女「なんでだよ!!」

1:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/05(金) 21:04:04.88 ID:v0N5d5doo


勇者「試練の塔制覇したじゃん」

勇者「この塔の最上階までたどり着けたら魔女が願い事叶えてくれるって言ってたよ?」

魔女「確かにそうですけど。 でもあくまで叶えられる範囲でと言いましたよね?」

勇者「叶えられるだろ」

魔女「叶えられません」

勇者「別に魔法で出来ない事を願ってるわけじゃない」

魔女「一人の女として出来ないと言ってるんです!」

勇者「我儘なやつだな」

魔女「どっちがですか」

勇者「いいから俺と結婚しろよ」

魔女「誰がするか!」



2:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/05(金) 21:06:19.34 ID:v0N5d5doo


勇者「何がダメなんだ」

魔女「貴方は勇者で魔王を倒した男ですよね?」

勇者「あぁ、そうだな」

魔女「私は魔女で魔王の配下の1人ですよ?」

勇者「元だろ?」

魔女「だとしても貴方は我が主の敵とも言える存在なのですよ?」

勇者「お前は魔王から離反していただろうが」

魔女「な、なぜそれを……」

勇者「これでもう何も問題ないな、俺と結婚しろ」

魔女「はぁ、めんどくさいですね。 魔法で記憶弄って街まで吹き飛ばしますよ」

勇者「やめとけ、俺にはこの全ての魔法を斬る伝説の剣がある」

勇者「お前の魔法は俺にはきかん」

魔女「あぁもう本当にめんどくさいな!!」




3:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/05(金) 21:07:52.97 ID:v0N5d5doo


勇者「諦めろ、お前は俺に勝てないんだ」

魔女「ぐぬぬ……」

勇者「お前は俺の言うことを聞くしかない。 そういうわけで結婚しろ」

魔女「しません」

勇者「俺のなにが嫌なんだ? 顔もいい、背も高い、金もある、強さも世界一だぞ」

魔女「私の塔をいとも容易く、しかも1人で攻略したところです」

勇者「ただの僻みじゃないか」

魔女「そもそもですね、この塔は色んな人が挑戦してくるんです」

魔女「みんなが貴方みたいにバトルジャンキーじゃないんですよ」

勇者「というと?」

魔女「この塔の魔物は普通の人を即死させないような難易度でなければいけないんですよ」

魔女「でもそれだと貴方にとっては温すぎるみたいですね」

勇者「なるほどな、つまり難易度の設定と俺の強さが合ってなさすぎたと言いたいのか」

魔女「そういうことです。 貴方用に塔の難易度を変えておきますので、それをクリア出来たら結婚しますよ」

勇者「ほう、言ったな?」

魔女「ぐっ…… い、言いましたとも! クリアできたら、ですよ!」

勇者「よし、じゃあまた明日くる」

魔女「ふっ、望むところですよ」

勇者「じゃあまた明日な」

魔女「いえ、もう貴方とは二度と会うことはありませんよ。 さようなら」




4:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/05(金) 21:08:57.71 ID:v0N5d5doo

………………………………
……………………
…………
……


勇者「よしっ、制覇したぞ」

魔女「おかしいっ!!」

勇者「さ、約束通り結婚しろ」

魔女「何かの間違いです!! だって貴方にはその剣があるから物理強めな奴ばっかり配置したんですよ!?」

魔女「動く石像沢山作って、転移の罠も用意して、友達の暗黒騎士さんも呼んだんですよ!?」

勇者「用心しながら進んだ昨日より、ノリノリだった今日の方が早かったな、記録更新だ」

魔女「おかしいです」

勇者「さぁ、結婚しろ」

魔女「その願いは受け付けられません」

勇者「おい、昨日約束しただろ」

魔女「願いには限度ってものがあります。 無理なんです」

勇者「実は結婚してるとか?」

魔女「配偶者はいません」

勇者「恋人が?」

魔女「いませんね」

勇者「なら何も問題は無いじゃないか」

魔女「あ、ありますよ!」

勇者「どんな?」

魔女「そ、それはですね……」



5:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/05(金) 21:13:38.05 ID:v0N5d5doo


魔女「私、実は400年生きてるんですよ」

勇者「へぇ? の割に見た目は18歳くらいだが」

魔女「身体は魔法で昔から成長を止めてるだけです」

勇者「魔法って万能なんだな。 その美しい見た目も魔法で変えてるのか」

魔女「失礼な人ですね。 地ですよ地!」

勇者「マジか。 長いこと旅してきたがお前ほど美しい女性は見たことがないぞ」

魔女「そ、そうですか? ありがとうございます」

勇者「あぁその長くて美しい銀色の髪に吸い込まれるような蒼い瞳、そして絹のような白い肌」

魔女「褒め殺しても結婚しませんからね」

勇者「ちっ。で、さっきの400年生きてることのどこが問題なんだ。 俺は年齢なんて気にしないぞ」

魔女「私は年上が好みなんです。 貴方まだ20歳でしょ」

勇者「お前より年上のやつがいてたまるか。 俺は気にしない、だから結婚しろ」

魔女「400年経ってから来てください」

勇者「鬼かお前は」

魔女「それはどちらかと言うと貴方です」

勇者「お前頑固すぎるぞ」

魔女「貴方が強引すぎるんだよぉ!!」

勇者「……ちょっとは譲歩しろ」

魔女「絶対に譲れないものを譲れと言われても無理ですね」



7:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/05(金) 21:24:54.06 ID:v0N5d5doo


勇者「分かった、じゃあこうしよう」

魔女「……なんですか」

勇者「お前は俺と1年、俺になにか危険があれば守ってくれ」

魔女「なんですかそれ」

勇者「つまり、この塔を離れて俺の側で共に暮らせということだ」

魔女「うーむ」

勇者「それなら別に叶えられる願いだろう」

魔女「うーんそうですねぇ」


確かにこれはかなり願いとしての譲歩だ
魔女にとって1年など瞬きの時間なのだ、決して長い時間ではない

彼女は息を大きく吸い、そして吐き出した
その吐息の中に諦めを含んで


魔女「分かりました、では1年貴方の側で仕えましょう」

勇者「よし」

魔女「そういえば名乗っていなかったですね私はサーシャと申します」

勇者「そうか、俺は勇者アルスだ」

魔女「ではよろしくお願いしますねアルス」

勇者「よろしくサーシャ。 気が変わったら俺と永遠になってくれてもいい」

魔女「するか!!」




8:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/05(金) 21:26:47.57 ID:v0N5d5doo


魔女「アルスって普段なにしているんですか」

勇者「一応身は王都アリアハンに置いてある」

勇者「そこで兵の稽古つけたり、王に雑用頼まれたりする事もあるな。 旅をしていることもまぁ多い」

魔女「へーそうなんですね」

勇者「魔王が死んだとはいえ魔物はまだまだ多いからな、トラブルは耐えない」

魔女「そういうものなんですね」

勇者「何とかできないのか?」

魔女「出来ますよ? ただそれは貴方との契約範囲外です」

勇者「ケチだな」

魔女「貴方の要求が毎回高度すぎるんですよ」

勇者「とりあえずこれから王都まで戻る」

魔女「あ、転移魔法使えるんですね」

勇者「いや使えないよ。 ここまで走ってきた」

魔女「え? この塔ってアリアハンからかなり離れてますよね」

勇者「本気で走れば1時間で着く」

魔女「いやいやいや!! 馬を全力で飛ばして1日はかかりますよ!?」

勇者「馬と一緒にするな」

魔女「なにこの人怖いんですけど」




9:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/05(金) 21:30:17.23 ID:v0N5d5doo


…………………………………………

勇者「帰っきたぞ殿下」

国王「おぉ、早かったなアルス。 ん? そちらの美しい女性は?」

魔女「お初にお目にかかります国王陛下。 私は試練の塔の主人である南の魔女、サーシャと申します」

国王「あの塔の魔女だと?」

勇者「あぁ、俺が願いで側に置くことにした」

国王「なっ…… 馬鹿者!! 魔女といえば魔王の配下なのだぞ! それを城内に入れるとは何事か!!」

勇者「大声出すなよ殿下。 こいつは魔王から離れた裏切りの魔女だ」

勇者「それに俺がこの伝説の剣を持っている限りこいつは俺には逆らえない。 俺がこいつを監督すれば文句はないだろ?」

国王「魔法をすべて切り伏せる伝説の剣、無名か。 はぁ……アルスがそこまで言うのなら私は受け入れるがな」

国王「くれぐれもその魔女が悪行を働かないように目を離すな」

勇者「当然」

国王「そして魔女ということは伏せておけ。 それこそ狩られかねん存在なのだ。 魔女という身分は伏せ、宮廷に仕える魔法使いということにしておこう」

勇者「サンキュ殿下」

魔女「国王陛下のご配慮、痛み入ります」

国王「良い。 窮屈な生活にならないように配慮はするが、そちらでも気をつけるのだぞ」

勇者「おう。 じゃあ行くぞサーシャ」

魔女「ご好意恐れ入ります。 失礼致しますわ国王陛下」



10:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/05(金) 21:33:26.46 ID:v0N5d5doo


魔女「いくら勇者とはいえ、一国の国王にあの態度はいいんですか?」

勇者「公の場ならともかく、あんなのプライベートみたいなもんだ。 そこまで固くならなくていいんだよ」

魔女「国王陛下は懐が広いのですね。 私のことも受け入れてくださいましたし」

勇者「はっ、どうだかな。 俺が魔王討伐で出立する時はほんの少しの金しかくれなかったぞ」

魔女「アルスはそういう事いちいち覚えてるタイプなんですね」

勇者「若い俺に絶望を与えるには十分すぎる仕打ちだったと思うが?」

魔女「昔の話を蒸し返すのはモテませんよ」

勇者「お前が嫁にくれば問題ないだろ」

魔女「沈黙魔法かけるよ!?」


「あぁ勇者様こんなところに!」

勇者「ん?」

「カイン将軍がお呼びです!」

勇者「あーそういえば稽古つけてやるって言ってたわ」

「はっ! 訓練所のグラウンドでお待ちです!」

勇者「はぁ、分かった。 あとで行くと伝えておいてくれ」

「はっ! 失礼致します」

勇者「めんどくさいな」

魔女「お仕事ですか?」

勇者「あぁそうだ」

魔女「くふふ、頑張ってくださいね」

勇者「何言ってんだ、お前も行くんだよ」

魔女「なんでだよ!」

勇者「なんでこのクソ暑いのに俺だけ動かなきゃいけないんだ。 道連れだ」

魔女「横暴だ……」



11:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/05(金) 21:44:00.02 ID:v0N5d5doo


魔女「あそこですか?」

勇者「そう、あのめっちゃ日が当たるところだ」

魔女「って、行かないんですか?」

勇者「少し涼んでからいこう」

魔女「えー…… アルスは怠け者なんですね」

勇者「力は温存しておくタイプなんだ」


苦笑する彼女は、日差しが厳しい中訓練に励む兵たちを眺める
アルスも同じようにそれを見ると赤髪の将軍、カインが兵の切り込みを素早く弾いて剣を落とさせたところだった

カインはうちの兵軍最強の剣士だ
先も略奪の限りを尽くした国際指名手配の盗賊団がうちに流れてきた際、カインが率いる小隊がそれを壊滅させた功績は記憶に当たらしい


魔女「強いですねあの、赤髪の方」

勇者「あぁ、うちのエースだからな」

魔女「なるほど。 それならあの強さは納得です」

勇者「お前に剣士の強さが分かるのか?」

魔女「えぇ、長く生きてますからね剣術も少しだけやってました。 あの将軍には…… 勝つのは少し難しいかな」

勇者「ふーん。 ちなみにあいつより俺の方が遥かに強いぞ」

魔女「え゛」

勇者「鼻くそほじりながら勝てる」

魔女「う、嘘ですよね? 魔法とか使ってっていう話ですよね?」

勇者「んなわけないだろ」

魔女「うーわー…… 私はどうやったら貴方に勝てるんですか」

勇者「勝てないからやめとけ。 大人しく結婚しろ」

魔女「しないよ!!」


顔を赤くして怒る彼女をみて思わず笑いがこぼれる
サーシャがふくれたまま横目で見てくる。 出会ってから数回繰り返したこの挨拶がわりの、からかいが楽しくてしょうがない


勇者「そろそろ訓練に行ってやるか…… あーめんどくさい」

魔女「頑張ってください勇者様」

勇者「からかうなよ」




12:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/05(金) 21:48:11.63 ID:v0N5d5doo


魔女は木陰でアルスたちの訓練を眺めていた
アルスが連れてきた謎の美女は兵士達の視線を釘付けにし、訓練に身が入っていない輩を勇者は完膚なきまでに叩きのめした

そうしてアルスたちが訓練を行って3時間ほど経ち、日が傾いてきて今日の訓練を終えようとした時間
一人の兵が血相を変え、訓練所に駆け込んでくる


「伝令! 隣のレーベの村近郊警戒中の兵士より、ゴブリンの大量の群れが村に接近中とのこと!」

将軍「なに!?」

「数が多く、村に駐屯している兵たちだけでは対応出来ない可能性が高いとのことです!」

将軍「すぐに救援に向かう! 各兵馬を用意しすぐに出立する!」

勇者「俺らも行くぞ」

魔女「私もですか」

勇者「当たり前だ、お前が行かなくて誰が俺を守るんだ」

魔女「貴方なら守る必要が無いくらい強いんじゃないですか」

勇者「いいから乗れよ。 馬には?」

魔女「乗ったことありますよ、バカにしないでください」


アルスは近くの馬に乗り、サーシャに手を差し出す
彼女は一切の躊躇いもなくその手を取り、勇者の後ろに座って彼の身体に腕を回した


勇者「先に行くぞカイン!」

将軍「我々もすぐに向かいます! お気を付けて」




13:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/05(金) 21:53:28.89 ID:v0N5d5doo


アルスは馬を限界まで早く走らせる
レーベの村までは徒歩なら半日ちょっと、馬なら飛ばせば三時間もかからない
サーシャは振動にやられた腰をさすりながら、アルスに声をかける


魔女「ゴブリンってそんなに危険なんですか」

勇者「魔物の中では脅威度は最も低いやつ
だ。 背丈も子供くらいしかなく知性も低い」

勇者「だが武器を持っている沢山の子供が強い殺意を持って向かってくると考えれば恐ろしさは分かるか?」

魔女「なるほど、訓練を積んだ兵士はともかく普通の人には危険ですね」

勇者「そういうことだ。 ゴブリン1体1体はともかく、群れを作って行動するからな。 その数厄介だ」

魔女「なるほど。 下級魔物とはいえ舐めちゃいけないってことですね」

勇者「そういうことだ。 まして今回は数が更に多いということだからな。 油断はできない」

勇者「急ぐぞ、舌を噛むなよ」

魔女「はい」



14:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/05(金) 22:00:39.68 ID:v0N5d5doo


村に近づくと問題のゴブリンの大群が視認できた
通常であれば数体で群れを作るゴブリンが百体を超える数でまとまっている

群れの先頭の方では兵士がゴブリンたちの足を止めようと奮戦しているものの、ゴブリンの膨大な数に押されて一人、また一人とどんどんと倒れていく


魔女「まずいですよ」

勇者「分かってる」


アルスは馬から飛び降りると群れの中に突っ込んでいく
気が付くのが遅れたゴブリンは驚きの表情のまま顔面を真っ二つにされて血を噴水のように吹き出しながら倒れる

その間にもアルスは踊るように剣を振るってゴブリンたちを次々に屠っていく

サーシャが馬を木に止めている間にアルスはさらに敵陣深くまで斬り込み、群れの隊列が大きく崩れていた
だがアルスの強さを恐れたゴブリンたちはバラバラに動き始め、ある者はアルスに向かい、またある者は迂回をしながら村を目指して走っていく


勇者「ちっ!!」


八方からゴブリンが一斉に襲いかかり、アルスは足止めを余儀なくされる
一刀で数体をまとめて倒すも、息をつかせずにゴブリンが次から次に向かってくるため、村に走っていったゴブリンのもとへと行くことが出来ない

焦りばかりが募っていく
額に嫌な汗が浮かび、剣を握る手に力が入る


勇者「やばいな」


個々の能力は大したことがない
だがそれでも数の暴力というものは脅威であり、さすがの勇者も苦戦を強いられていた


魔女「手助けはいりますか?」

勇者「頼めるのか!?」

魔女「本当に危なくなったら助けてあげますよ」

勇者「畜生だな猫の手も借りたいというのに」



15:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/05(金) 22:05:01.44 ID:v0N5d5doo


だが軽口を叩いている間にもゴブリンたちはどんどんと村へ近づいていく
さすがのアルスも笑えない状況になってきたことに口数はどんどんと減っていく

アルスの周りにいよいよゴブリンの死骸の山が築かれてきた時、騎馬隊を率いたカインが到着する


将軍「アルス様!」

勇者「遅いぞカイン!!」


一目で戦況を理解した将カインはどんどん兵士達に指令をしていく


将軍「村に向かっているゴブリンを最優先に撃破しろ。 後ろから追撃するのももちろん、前に先回りし挟撃していけ」

将軍「アルス様への援護は最小限で構わん。 あとは村へと向かい村民の避難を誘導しろ。 俺は遊撃する」


指令を受け散った兵士達によりゴブリンは瞬く間に数を減らしていく

アルス単独では不利であった戦況は一転、ゴブリン殲滅は時間の問題だった


勇者「ふぅ」

魔女「なんとかなりそうですね」

勇者「結構危なかったぞ」

魔女「数の暴力は本当に恐ろしいですよ。 人間がかつて一国の兵団で魔王を討伐しようとした時もいい線行ってましたし」

勇者「元主君を倒すのにいい線とか言うのはどうなんだおい」



16:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/05(金) 22:10:33.22 ID:v0N5d5doo


魔女「……ん? 転移魔法を探知しました」

勇者「なに?」

魔女「ここに転移魔法で転移してくる者がいるようです」


サーシャがそう言った束の間、空間に大きな紋章が浮かび上がる
その紋章はどんどん大きくなり、ついには端から端を視界に捉えられないほどにまで膨れ上がった


勇者「なんだこれは!」

魔女「まずいですよ、こんな大掛かりな転移魔法、かなりまずいです」

勇者「なにがまずいんだ全然分からないぞ!」


サーシャからの返答はなかった
ただそれは見ればわかるものだったからだ

先は百をせいぜい超すほどのゴブリンの群れだった
この転移魔法から現れたのはゴブリンだけではなく狼や鳥、ゾンビなど多様な魔物たちが混ざりあった千を優に超える軍勢だった

視界を埋め尽くす魔物魔物魔物魔物
暗くなった夜の世界に、蠢いていた赤い数千の瞳が一斉に動き出した

あまりの数の差に兵たちに絶望の色が拡がる
たかが十数人の兵がどうにかできる戦況ではなかった

だが兵たちの後ろの村には数千を超える人たちが魔物の襲撃に怯えている
ここを突破されることは村民たちが喰い尽くされ怯えが絶望へと変わることだ
それだけは絶対に阻止しなければならない


将軍「なんとしても引き止めろぉー!! 気合入れろやぁぁ!!」

「「応ッ!!」」


勇将の一声で兵たちに気合が入る
皆の殺気が一気に膨れ上がり、そしてそれが引き放たれる間際、サーシャが口を開いた


魔女「私がやります、皆さんは下がっていてください」

将軍「なに?」

魔女「私が広域戦術魔法で一気に壊滅させます」

勇者「だそうだ。 全員下がれ! 勇者命令だ!!」

将軍「アルス様! こいつは信じられるのですか!?」

勇者「出来なきゃどっちにしてもやばいんだ、言う通りにしようぜ」

将軍「くそっ、頼むぞ女の魔法使い」

魔女「任せてください。 これは私よ得意分野ですから」




17:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/05(金) 22:13:40.26 ID:v0N5d5doo


サーシャが魔法の言葉を紡いでいく
柔らかく、誰もが聞き惚れる声

だがそれは同時に冷たい声音でもあり悲しみや怒り、そして悲哀が混じっているのを魔法に詳しくないアルスでも感じる

言葉が紡ぎ終わりサーシャが両手を掲げると魔物の軍勢の足元がキラキラとガラスのように光る
空から見れば大きな文様が描かれているのが見えたのだろう

紋様はあっという間に拡がり、そして輝きを増していく


将軍「これほどの広範囲魔法陣……! 信じられん!」

勇者「おいおいこりゃすごいな」


サーシャは静かに目を閉じる
彼女が腕を勢いよく振り下ろすと紋様の輝きは最高潮を迎え、同時に劫炎が立ち上った

真っ青な炎が立ち上がり魔物たちの体を包み込んでいく
炎に包容された魔物はたちまち炭へと形を変え、そしてそれすら形を留めない

炎が鎮火した時、そこにあったのは魔物の死体はなく、草原が大量の塵の山へと変わっている様子だった


魔女「……ふぅ」

魔女「さすがに疲れますねこれは」




18:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/05(金) 22:18:46.86 ID:v0N5d5doo


夜が明け、すっかり日が昇ってから城へと戻ったきた将軍とアルス、サーシャは事の顛末を王へと報告した


国王「なるほど皆よくやってくれた。 今回のことはどう考える?」

勇者「裏で他を引いている誰かがいるのは確実だな」

将軍「あんな数の魔物を用意し、転移魔法を使える者です。 その力の強大さは計り知れません」

勇者「だがそんなどデカイこと、個人の力で可能なのか?」


話を突如振られたサーシャは苦笑しながら答える


魔女「長い時間をかけて用意をすれば個人でも可能でしょうが、それよりも組織で行動していると考える方が自然でしょうね」

国王「うーむ…… つまりどこかの誰かにこの国は狙われているということか」

将軍「そう考えるのが自然であると考えます」

勇者「だが不可解なことはある。 それだけの魔物を用意していながらなぜレーベの村を襲わせた?」

国王「というと?」

魔女「最初から国が狙いだったのならこの王都を直接攻撃すれば良かったはずなのです。 だとすれば考えられることは……」

将軍「今回の魔物の襲撃事件は宣戦布告、挨拶がわりの攻撃だった可能性があります」

国王「うーむ……」

勇者「あれほどの戦力を用意できるという脅しでもあるわけだ。 これから気を引き締めなきゃまずそうだぞ」


魔女を除く一同の顔に緊張が走った
胃を痛めた国王が、腹を擦りながら皆を労う


国王「これ以上ここで空論を重ねても仕方がなさそうだ。 しばらくは厳戒態勢で防御を固めるしか行くしかあるまいよ」

国王「皆ご苦労だった。 ゆっくり体を休めてほしい」



19:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/05(金) 22:21:34.07 ID:v0N5d5doo


報告を終え、シャワーを浴びたアルスはサーシャに呼び止められる


勇者「なんだお前待ってたのか? シャワーは浴びないのか」

魔女「保清魔法がありますから別に入らなくても困らないんですよ」

勇者「便利なもんだな」

魔女「それでですねアルス?」


ふわふわと宙に浮きながら、アルスを覗き込んだサーシャは申し訳なさそうに声を潜める


魔女「私今日どこで寝ればいいんですか」


あぁ部屋を貰っていなかったのかと得心がいったアルスは、浮かぶサーシャの手を取り引き寄せる


勇者「俺の部屋で寝ればいいだろ?」

魔女「ですよねーそう言われると思いました」

勇者「嫌なのか」

魔女「だって何されるか分かったものじゃないですし」


困ったような顔を浮かべながらも口角が上がっているサーシャも案外こういう話が好きなのだろう


勇者「婚前交渉は嫌だと? 案外純粋なんだな」

魔女「誰がするか!!」

勇者「いずれ結婚するんだ、早いか遅いかの違いだ」

魔女「するなんていつ私が言ったか!? 言ってみろこのこの!」


アルスの肩を掴んでグラグラと揺らし、アルスはあははと笑いながらなされるがままにされている
その余裕がなんかムカつく、と呟いたサーシャは再びふわふわと宙を漂った




20:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/05(金) 22:24:05.55 ID:v0N5d5doo


魔女「今日のあの魔物と転移魔法、もしかしたら他の魔女の仕業かもしれません」

勇者「お前以外にも魔女はいるのか?」

魔女「えぇ、私は南の魔女。 あと東西北にそれぞれ任された魔女がいますよ。 魔王の配下にいましたから一応は皆顔見知りです」

勇者「ふーん。 というか、そもそも魔女ってのはなんなんだ」

魔女「皆元人間ですよ。 個々に事情があって魔王に付き従う代わりに強大な魔力を分けられた魔法使いです」

勇者「その中の強い魔力を持つ魔女の1人が今回の騒動を起こしたと」

魔女「あくまで可能性の話ですからね」

勇者「なるほど、それは恐ろしい話だ。 下手をしたら残りの魔女3人が手を組んでいる可能性だってあるわけだしな」


話しているうちに勇者の部屋の前につく
アルスはサーシャの腕を引き、お姫様抱っこをするように抱える

苦笑しながらも腕の中に収まる彼女はアルスの部屋の中へと入っていった



21:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/05(金) 22:24:41.79 ID:v0N5d5doo

また今度
お読みいただけたら幸いです



元スレ
勇者「結婚しろ」 魔女「なんでだよ!!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1493985844/
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        コメント一覧

          • 1. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年05月06日 00:18
          • 続きないのかい。
          • 2. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年05月06日 00:38
          • 続きがとても楽しみだ
          • 3. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年05月06日 00:52
          • Sweet Child O' Mineだな
          • 4. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年05月06日 01:26
          • 続き、待ってます。頑張ってください。
          • 5. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年05月06日 01:50
          • 案外魔女ノリノリだな
          • 6. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年05月06日 02:05
          • 5

            なんだこれは…秀作だなぁ

            続き待ってるよ
          • 7. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年05月06日 02:09
          • 5 これはいいな。
            もし完結まで続くのであれば大作になる予感がプンプンするぜ
          • 8. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年05月06日 02:26
          • たまにこういう作品が出てくるからSSってやめられない。
          • 9. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年05月06日 02:42
          • すげぇところで終わったなw
          • 10. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年05月06日 03:02
          • くっ、殺せ!これの続きが読めないならどうせ生きる価値などない!
          • 11. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年05月06日 09:09
          • ドラクエ3の世界…

            魔女…

            あっ…
          • 12. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年05月06日 09:17
          • unnamed memoryのまんまじゃないか。パクリか?
          • 13. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年05月06日 10:47
          • 続きあくしろください
          • 14. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年05月06日 11:52
          • 続きはよ
          • 15. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年05月06日 12:41
          • なろうに似たような設定の作品あったな(^-^)
            文章の構成は段違いだが(^。^)
          • 16. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年05月06日 13:19
          • こういうのって大体勇者が規格外の強さ+面倒くさがりなんだよなぁ
            某東アジア人みたい

            まぁ気だるげに見れたからいいけど
          • 17. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年05月06日 13:26
          • ↑くっさ
          • 18. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年05月06日 15:32
          • 未完だったか
          • 19. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年05月06日 19:16
          • 多分付き合ってくれとかだったら普通に受けてたんだろうね
            結婚はちょっと重いわーって感じなんだろう
          • 20. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年05月06日 19:52
          • ちゅっちゅしてたヽ( ´¬`)ノ
          • 21. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年05月06日 21:23
          • >>12
            めっちゃわかる
          • 22. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年05月06日 21:25
          • アルスって7の人かと
          • 23. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年05月07日 04:27
          • 面白い!続編に期待です
          • 24. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年05月07日 10:05
          • 4 塔まで走って一時間なのにレーベまで馬で三時間かけるのは何でなんだろう?
          • 25. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年05月07日 17:43
          • すげー微妙にではあるが塔への入り口のがアリアハンより近くなかったか
            うろ覚えだわ
          • 26. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年05月08日 00:51
          • これから期待
          • 27. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年05月08日 19:31
          • 4 SS自体は良作だ
            ちっと設定おかしいところもあるが今後に期待できる作品
            だだ管理人よ、完結してからまとめてくれ
            まとめの意味がない
          • 28. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年05月14日 08:58
          • Unnamed memory のダイジェストなんかって思うくらいパクリ。作者に報告させていただきますね
          • 29. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年06月09日 10:47
          • 何が書きたかったんだ…?飽きたのか?
          • 30. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年08月14日 23:54
          • 続き早く読みたい!!

        はじめに

        コメント、はてブなどなど
        ありがとうございます(`・ω・´)

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