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【艦これ】利根「提督よ、お主なかなか暇そうじゃの?」 金剛「…………」【前半】

1:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/24(月) 22:50:59.31 ID:oq/XGf+no

利根「提督よーお主なかなか暇そうじゃのー?」

提督「どう考えてもそれはお前が暇なだけだろ」

利根「提督こそ、さっきから海を眺めているだけではないか。暇なら構ってくれぬか?」

提督「バカを言え。私は海を眺める事で忙しいんだ」

利根「それを暇と言うのではないか。良いから構えー」ギュー

提督「首に手を回すのは構わんが、背中に体重を掛けるな。そんなに暇ならば海の波を見てみろ」

利根「うむ? うむ」

提督「…………」ボー

利根「…………」ジー

提督「……どうだ?」

利根「つまらん」

提督「風流が分かっていない奴め」

利根「どこに風流があるというのだ、どこに」

提督「小じんまりとした島に仕立てられていた泊地で、ここへ追いやった本部からの連絡を待って海の波を眺める事に風流を感じないか」

利根「全くもって感じられぬぞ。それに、その本部からの最後の連絡はどれだけ前の話じゃと思うておるんじゃ」

提督「確か……二年前だったか?」

利根「二年と七ヶ月前じゃ。どう考えても厄介者をここへ流しただけじゃろ」

提督「そうか。忘れた。ほら、私は忘れっぽいだろう?」

利根「憶える気が無いの間違いであろうに」

提督「さすが長い間を共に過ごしてきただけある。良く分かっているな」

利根「まったく……」

提督「だけど、やっぱり海は良いと思わないか? どこまでも青くて、空との境界線がスッと横に伸びていて、そしてどこまでも広い。自分の物理的な小ささだけではなく考えも小さいって思えるだろ」

利根「うむ。確かに」

利根「……で、それのどこが忙しいんじゃ?」

提督「さて、そろそろ夕飯と明日の分の食材を取りに行こうか」

利根「あ、こら。話を勝手に切るでない。我輩も付いて行くぞ」

…………………………………………。



2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/24(月) 23:02:13.31 ID:oq/XGf+no

提督「さて……食った事だし、運動してから寝るか」

利根「毎日飽きずによくやるのう」

提督「いつ何が起きるか分からんし、他にやる事も無い」

利根「八割がた後者の意見だと思うが、どうなんじゃ?」

提督「良く分かっているな」グッグッ

利根「おー……身体、柔らかいのう。脚が頭の上まで上がっておる」

提督「鍛えるだけではなく、柔軟さも重要だ。ダイヤモンドが鉄のハンマーで砕けてしまうように、柔らかさがなければすぐに壊れてしまう」

利根「なるほどのー。よっ……とっ? むむ……提督と同じように曲げられぬ」

提督「いきなりこれだけ曲げられる訳がないだろう。日々の積み重ねが重要だ」

利根「く、む~……!」グイグイ

提督「無理をしたら筋が切れて動けなくなるぞ」

利根「……止めじゃ止めじゃ。つまらんつまらーん。我輩は寝るっ」ボフッ

提督「…………」ジッ

利根「うん? どうした、提督よ」

提督「いや、思ってみればここ最近ずっと私のベッドで一緒に寝ているなと思ってな。どうしてだ?」ググッ

利根「今更じゃな。何ヶ月前の話をしておる」

提督「割と気にしていなかった」ギッギッ

利根「女として傷付くのう……」

提督「人肌が恋しいだけなのかとも思ったぞ」グッグッ

利根「あー」

提督「どうした」グイッ

利根「や、我輩も初めはなんとなくで潜り込んだのじゃが、人肌が恋しかっただけなのかと思うてな」



3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/24(月) 23:11:12.94 ID:oq/XGf+no

提督「自分の事だろう」グッ

利根「自分が一番分からぬものじゃよ」

提督「そうだな。私も自分の事をよく知らない」クイクイ

利根「似た者同士という訳じゃ」

提督「根本が同じなだけで何もかも違うような気もするがな」スッ

利根「む。もう終わりか?」

提督「ああ。今日はこれだけにしておく」モゾモゾ

利根「……ふむ。若干じゃが汗の匂いがする」

提督「嫌なら言ってくれ」

利根「嫌いではないから安心するが良い」ソッ

提督「男の汗は臭いと聞くが、どうなんだ?」

利根「提督は爽やかじゃな。健康的な匂いと言えよう。……あー、何よりも運動で火照っておるのが心地良い」

提督「私は湯たんぽの代わりか?」

利根「それだけではないのう」

提督「湯たんぽには変わりないのか……。それで、別の理由とはなんだ?」

利根「さっきも言った通り、我輩は人肌が恋しいのかもしれん。心がポカポカじゃ」

提督「なるほど。身体も心も温まるか」

利根「うむ。……提督よ。我輩、眠くなってきたぞ」

提督「そうか。では寝るとしよう」

利根「おやすみじゃ」

提督「ああ。おやすみ──」

……………………
…………
……



4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/24(月) 23:21:21.31 ID:oq/XGf+no

提督「…………」モゾ

利根「──む」パチッ

提督「おはよう、利根」

利根「くぁ……はぁぅ…………良い朝じゃの、提督」クシクシ

提督「ああ。今日も今日とて清々しい晴れ模様だ」

利根「んっ──くぅー……! さて、朝食を作るとしようかの。今回は我輩じゃったか?」

提督「ああ。楽しみにしているよ」

利根「何を言うておるか。いつもと変わらぬ焼いた魚と木の実ではないか」

提督「人が作った食事というものは、同じ材料でも自分と違う味になるからな」

利根「火はあれど、魚と塩、木の実……これだけでどうしろと言うんじゃ。あまりハードルを上げるものではないぞ?」

提督「そうか。では上げたハードルをくぐるか?」

利根「癪じゃから頑張る」

提督「くっくっ。そうか。楽しみだ」

利根「まったく……。では、外へ行こうか」スッ

提督「ああ、そうしよう」スッ

利根「火だけは頼んでも良いかの?」

提督「ああ。調理は頼んだ」

利根「うむ! 任された!」

提督「ついでに、流木もあったら持って帰ってくれるか?」

利根「む? もう薪が無くなっていたかの?」

提督「いや、まだ少し余裕がある」

利根「ふむふむ。備えあればなんとやら、じゃな?」

提督「そういう事だ。生け簀の魚を取ってくる時に、流木があれば持ってきてくれ」

利根「承知した! では我輩は一足先に向かうからの!」タタッ

提督「……元気なものだ」

…………………………………………。



5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/24(月) 23:30:47.02 ID:oq/XGf+no

提督「で、だ。利根」

利根「なんじゃ?」

提督「魚はどうした」

利根「持ってきておらん」

提督「流木はどうした」

利根「あったが持ってきておらん」

提督「……背負っているモノは何だ」

金剛「うぅ……こ、ここは……?」

利根「艦娘じゃな」

提督「どこから拉致してきた」

利根「失敬な。流木にしがみ付いておったんじゃ。漂流してきたんじゃろうな」

金剛「っ……」ガクッ

利根「む。また気絶しおった」

提督「まったく。面倒なモノを拾ってきたな」スッ

利根「うん? どこへ行くのじゃ提督」

提督「あの工廠もどきのガラクタ倉庫だ。修理するから連れてきてくれ」

利根「面倒だとなんだと言いつつも、しっかり助ける気ではないか」

提督「悪いか?」

利根「良い事じゃ。──して、燃料や鋼材はあるのかの?」

提督「流れ着いたドラム缶に入っていたはずだ。拾っておいて良かったよ」

利根「修理をするのは誰じゃ?」

提督「妖精が居ないから私か利根のどっちかだ」

利根「我輩はそんな技術は持っておらんぞ」

提督「奇遇だな。私も見た事しかない」

利根「大丈夫なのかの?」

提督「成るように成るだろう」

利根「心配じゃのー」

提督「とりあえず、やってみるぞ」

…………………………………………。



6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/24(月) 23:40:59.28 ID:oq/XGf+no

金剛「…………」

利根「案外うまくいくものじゃのう。完全修復じゃ」

提督「この島に着いてから色々と手先が器用になった気がするよ」

利根「そうなのかの? 割と初めから器用だったような気がするが」

提督「前は包丁すら握れなかったぞ」

利根「なんと……。生活スキルがアップしておるのう」

金剛「……あの」

利根「うん?」

提督「どうした」

金剛「助けて頂きまシテ、どうもありがとうございマス」ペコリ

利根「うむ! 感謝するが良いぞ!」

提督「修理をしたのは私なんだが、利根?」

利根「連れてきたのは我輩じゃ」

提督「では、どっちとも重要だな」

利根「うむ。提督も我輩も、どちらとも欠かせなかったという訳じゃな」

金剛(……なんだか不思議な人達ネー)

金剛「──ハッ! こ、ここは! ここはどこなのデスか!?」

利根「ここか? …………………………提督、任せた。ほれ、水じゃ。飲めるか?」スッ

金剛「んっ、んく……」コクコク

提督「私に振るか。詳しくは憶えておらんぞ。──そうだな。たしか、太平洋のど真ん中だったはずだ」

金剛「た、太平洋の……ど真ん中……」



8:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/11/24(月) 23:51:53.54 ID:oq/XGf+no

金剛「…………」チラ

提督「うん? 海を見てどうした。帰るのか?」

金剛「……帰りたいのは山々デスが、正確な現在位置が分からなければ帰れないデス…………」

金剛「大事な……大事な作戦中だったのに……」ギリッ

提督「まあ、なんだ。帰れないのならここで一時滞在すれば良いんじゃないか?」

金剛「そんな悠長な事を言っていられない戦いだったのデス!! 連合艦隊のフラグシップである私が居なくなったら、どうなる事か!!」

利根「……提督、連合艦隊とは何じゃ?」

提督「簡単に言えば、二つ以上の常設艦隊で編成した艦隊だ。主力を集めたエリート艦隊とも言える。……いや待て。利根、お前も連合艦隊に所属していた事があったと耳に──」

利根「ほう! では、その連合艦隊の旗艦のお主は凄い艦娘なのじゃな!」

提督「……無視をするな」コツッ

利根「いたっ。無視などしておらぬ。都合が悪くなったから話を切ったのじゃ」

提督「同じ事だ馬鹿者」コンッ

利根「むー……」

金剛「…………」

提督「それはさておき。……名前は金剛か?」

金剛「……イエス。私は金剛デス」

提督「単刀直入に言おう。諦めろ」

金剛「なっ!? そんな事できる訳が──!!」

提督「話は最後まで聞け。良いな」

金剛「う……。ハイ……」タジッ

利根「おー、我輩と同じ反応じゃ。ふむふむ。やはり提督が強く言えばこうなるか」

提督「茶化すな利根。吊るすぞ」

利根「はい……!」ピシッ



9:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/11/25(火) 00:00:58.26 ID:oSwNMeIZo

提督「よろしい。……話を戻そう。金剛、お前は燃料があるのか?」

金剛「……残り僅かデス」

提督「弾薬は」

金剛「これも……」

金剛「……………………」

提督「そういう事だ。我々も燃料や弾薬など無いに等しいから支援をしても雀の涙程度だ」

金剛「……え?」

金剛「そ、それって……どういう事デスか?」

提督「ん? そのままの意味だ。極少量しか無い故に──」

金剛「違いマス! そんなに資材が乏しいのに、どうして戦艦である私の修理をしたのデスか!? 自分達が一番苦しいじゃないデスか!」

提督「どうしてと言われてもな」チラ

利根「うむ。我輩、海に出ぬからな」

金剛「……海に、出ない?」

利根「出る意味が無いからのう」

提督「敵を極稀に見掛けど味方は居ない。後はせいぜい何かが流れ着いてくるくらいだ。……艦娘が流れ着いたのは初めてだが」

金剛「……貴方は提督ではないのデスか?」

提督「一応提督だ」

利根「我輩も一応艦娘じゃな」

金剛「では……こんな敵も味方も居ないアイレットで何を?」

提督「突然連れてこられて置き去りにされた」

利根「右に同じくじゃ」

利根(……アイレットって何じゃろ。この島の事かの?)

金剛(何か仕出かしたのデスかね……?)



12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/25(火) 00:10:53.37 ID:oSwNMeIZo

金剛「……貴方達は、それで良いのデスか?」

提督「特に不自由していないから構わないな」

利根「我輩もノンビリと出来て良いと思うておる。まあ、暇ではあるがの」

提督「ああ、確かに暇だな。それだけが大敵だ」

利根「そうじゃのう。何か遊べれば良いのじゃが」

提督「とりあえずは話を戻そう。完全に脱線している」

提督「周囲に島の影すら見えない。つまり、今ある燃料をフルに使っても辿り着くとは限らないだろう」

金剛「それは……そうデスけれど……」

提督「そんなので野垂れ死ぬくらいなら、生きてまた会える可能性に賭けた方が良いと私は思う。金剛の提督も、いつか会える事を夢見ているはずだ」

金剛「…………」

金剛「そうですね。また会える……その日が来るまで生きてみせます」

提督(……ほう)

利根「うむ。話が纏まった所で朝食にしようか!」

提督「ならまずは流木を持ってこい利根。私は野菜と火の準備をする」

利根「うむ! では行ってくる!」タタッ

金剛「元気デスねー」

提督「そうだな。金剛とは大違いだ」

金剛「え?」

提督「…………」

金剛「私、元気が無いように見えますか?」

提督「現状の整理が出来ていないようにも見える。とりあえずは飯を食え。痩せこけているようには見えないが、長い間を漂流していたのだろう?」

金剛「わ、分かるのデスか!?」

提督「ただなんとなくだ。ほら、いい加減座っていろ。体力を回復させておけ」ポンポン

金剛「…………っ」

提督「……ふむ」スッ

金剛「あ……ご、ごめんなさい……」

提督「すまなかった。──では、飯が出来たら持ってくる。その間は休んでいれば何をしても構わん」スタスタ

金剛「…………」

金剛(……本当、不思議な人デス)

…………………………………………。



13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/25(火) 00:21:07.24 ID:oSwNMeIZo

提督「うむ。今日は味がまともだったぞ。利根」

利根「何を言うておるか。誤解を招くような言い方をするでない。我輩はいつもと同じ味で作ったぞ」

提督「そうか。では、一昨日の塩焼き魚は何だったんだ?」

利根「たまには違う味も良かろう?」

提督「バカを言え。高血圧で心中するつもりかと思ったぞ」

利根「それも良いかものう?」

提督「良い案だが、客人の前で言う事ではない」

利根「むぅ……。すまぬ、金剛」

金剛「い、いえ。私はノープロブレムです」

金剛「それよりも、助けて下さるだけでなく食事マデ……お二人共、本当にありがとうございマス」ペコッ

提督「気にしなくて良い。……しかし、これならもっと固形の食事の方が良かったかもしれないな」

利根「そうじゃのう。胃が弱ってると思うて具がドロドロになるくらい煮詰めたスープを作ったが、これなら魚でも良かったやもしれぬ」

金剛(……私のホームカントリィに合わせて作ったのかと思いまシタが、そうではなくて気を遣ってくれていたのデスか)

金剛「本当に、何から何までありがとうございマス」ペコッ

利根「ほれ、そう簡単に頭を下げるでない。我輩達はやりたいと思うたからやっただけじゃ。感謝の言葉はあれど、そこまで深くなくても良いのじゃぞ?」

金剛「で、でも……」

提督「私も利根と同意見だ。ここでは助け合って生きねばならない。頭を下げるよりも知恵や力を貸してくれる方が嬉しい」

金剛「んん……サバイバル知識の無い私でも役に立てるのでショウか」

提督「少なくとも、私達が身に付けている知識は覚えられるだろう」

金剛「……そうデスね! 頑張りマース!」



14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/25(火) 00:30:38.40 ID:oSwNMeIZo

提督「よろしい。なら金剛、まず初めに私の目を見ろ」

金剛「? ハイ」ジー

提督「今からする質問に答えてくれ。──身体におかしいと思う部分はあるか?」

金剛「…………? 無いデス」

提督「よろしい。ならば次の質問だ。──疲れているか?」

金剛「特には」

提督「ふむ。最後の質問だ。身体はバッチリ動かせるか?」

金剛「ノープロブレムねー」

提督「なるほど。ではまず最初にするべき事を言い渡そう」

金剛「ハイ! 何でも言って下サーイ!」

提督「風呂に入ってこい」

金剛「……ホワッツ?」

提督「聴こえなかったか? 風呂にのんびり入ってこい」

金剛「……………………?」

利根「ふむ。我輩は準備しに行けば良いか?」

提督「ああ。今日は晴れているから多少は温まっていると思うが、快適でないのならば薪を使っても構わないから沸かしてやってくれるか」

利根「了解した! では、行ってくるからのー!」タタッ

金剛「……あの?」

提督「どうした」

金剛「どうして入浴なのデスか? むしろ、そんなのに回せる水があるのデスか?」

提督「水は一昨日の雨で大量に確保してある。それ以外にも塩を作る際に蒸発する水や他の方法でもしっかりと貯めてあるから気にするな」

金剛「デモ……何が起こるか分からないのに──」

提督「むしろ使ってくれ。流れていない水は腐ってしまう。そうなる前に使ってしまいたい」

金剛「なるほど。腐ってしまうのデスか」

提督「ああ。節度さえ守ってくれれば好きに使ってくれて構わない。あと、喉が渇いたと思ったら絶対に飲め。本来は喉が渇いたと感じる前に飲むべきだ」

金剛「……え、と…………」

提督「うん?」

金剛「……………………お礼、言っても良いデスか?」

提督「……なぜそんな事に許可が必要となるのかが分からないが、言いたいと思えば言えば良いのではないか?」

金剛「ソ、ソーリィ。変な事を聞いてしまいまシタ」

提督「謝る必要もないだろう。不思議な子だな、金剛は」

金剛「…………」ジー

提督(……ん?)ジッ

金剛「──これから、よろしくお願いしマス」ニコッ

提督「うむ。こちらこそ頼む」

…………………………………………。



15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/25(火) 00:41:02.07 ID:oSwNMeIZo

利根「うーむ」チャプチャプ

提督「どうした、利根」チャポン

利根「んー、分からん」パチャパチャ

提督「何がだ?」

利根「金剛の事なのじゃが、どうにも引っ掛かってのう」

提督「ほう。引っ掛かるか」

利根「うむー。何に引っ掛かっているのかは分からぬ。ただ、どことなーく普通ではない気がするのじゃ」

提督「普通ではないお前なら、何もかもが普通に見えないんじゃないのか?」

利根「むっ。鏡でも見るか?」

提督「あるのなら是非見たいな」

利根「目の前に居るじゃろう」

提督「言うようになったな。私も利根と同じように普通ではないと言いたいか」

利根「違っておるか?」

提督「いや、何も違わないな」

利根「そうじゃろうそうじゃろう」パシャパシャ

提督「さっきから暴れすぎだ。湯が零れる。ついでに余計に狭くなるから止めろ」

利根「むー……」ブクブクブク

提督「ほら、後ろを向け。髪を洗ってやる」

利根「ん、頼む」

提督「痒い所はあるか?」コシコシ

利根「んー無いぞー。心地良いのう」ホッコリ

提督「髪、伸びてきたな」コシコシ

利根「そうじゃのぅー。ここまで伸びたらもう充分じゃなかろうかー」

提督「邪魔だと思ったら言ってくれ。ハサミならあるぞ」コシコシ

利根「んー……提督は我輩の髪を見てどう思うのじゃー?」

提督「綺麗だと思っている。弄りがいもあって楽しいな」コシコシ

利根「ならばこのままが良いぞー」

提督「そうか」コシコシ



16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/25(火) 00:51:06.30 ID:oSwNMeIZo

利根「はぁ~……」

提督「…………」スーッ

利根「ん、そろそろ終わりかの?」

提督「ああ。今終わった所だ」

利根「では、今度は我輩が提督の髪を洗うぞ」クルリ

提督「そうか。頼む」クルリ

利根「……ああ、なるほどのう」ワシャワシャ

提督「どうした」

利根「や、提督の髪は割りと伸びぬと思うたら、切っておったのか」ワシャワシャ

提督「今更だな」

利根「仕方が無かろう。ハサミなんて使わぬのじゃから、ある事自体を初めて知ったぞ」ワシャワシャ

提督「それこそ今更だな」

利根「まあ、無くてもどうとでもなるから要らぬがのう」ワシャワシャ

提督「そうだな。有れば便利というくらいだ」

利根「じゃのー」ワシャワシャ

提督「…………」

利根「……ん、このくらいで良いかの?」スッ

提督「ああ。──しかし、やはり風呂は良いものだな」

利根「そうじゃのう。身も心も温まって潤され、そして洗われるのう」ノビノビ

提督「ああ。この島で一番の極楽だと言える」

利根「それにしても、朝から風呂とは初めてじゃ」

提督「今回は事情が事情だからな」

利根「じゃのう。金剛も大変じゃったらしいのう」

提督「まったくな」

利根「んー……温くなってきた」

提督「沸かすか?」

利根「んー」ピトッ

利根「薪も勿体無いからこっちの方が良い」スリスリ

提督「猫かお前は」ナデナデ

利根「いつもやっておるではないかー」スリスリ

提督「まったく」ナデナデ

…………………………………………。

金剛「え……二人でお風呂に行きまシタよね……?」

金剛「確かに冷める事を考えたら当然だと思いマスが……男女デスよね……?」

金剛「…………そういう事をする仲なのでショウか……?」

金剛「利根が手を引っ張って行ったので、提督が無理矢理なんて事は無いでショウけど……」

金剛「それとも……これが普通なのデスか……? うーん……」

……………………
…………
……



30:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/11/25(火) 09:23:08.70 ID:oSwNMeIZo

提督「だいぶ暗くなってきたな」

金剛(……ご飯を食べて、畑の世話を少しだけしたらずっとダラダラしていましたケド、本当にこんなので大丈夫なのデスかね?)

利根「さて、日も沈んだ事じゃし、そろそろ寝るとするかの」

金剛「……え!? も、もうデスか?」

提督「明かりに火を使う余裕など無い。現状、燃料となる流木や枯れ落ちた枝葉は水以上に貴重だ」

利根「じゃが、明かりを使わないのであれば自由にしても良いのじゃよな?」

提督「無論そうだ。その辺りは好きにしてもらって構わない」

金剛「え、えっと……? それでは、今日のお風呂はナゼ──」

提督「眠くなってきた。利根、寝るぞ」モゾッ

利根「ん? うむ。了解じゃ」モゾモゾ

金剛「あ、あの──!」

提督「いつもこの時間になったら寝ているんだ。すまないが、また今度にしてくれ」

金剛「……ハイ」

利根「割り当てた部屋は憶えておるか? 暗くても大丈夫かの?」

金剛「ハイ。その点は問題ナッシングです。お気遣い、ありがとうございマス」

利根「むぅ……」ジー

金剛「…………? どうかしまシタか?」

利根「やはり金剛は謝り過ぎたりお礼を言い過ぎたりしておるのう。そこまで気にせんでも構わないんじゃぞ?」

金剛「そ、そうデスか……?」

利根「うむ。ここではのんびり過ごせば良い。肩肘張っていては疲れるだけじゃ」

金剛(……私、そんなに謝ったりお礼を言ったりしているのでショウか。それとも、テートクが──……いえ、それは考えてはいけない事デス。ごめんなさい、テートク……)



31:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/11/25(火) 09:30:53.43 ID:oSwNMeIZo

金剛「……では、私ものんびりとスリーピングしマスね。グッナイ、提督、利根」

利根「うむ。おやすみじゃ」

提督「良い夢を見ろよ」

利根「なんじゃ。起きておるではないか提督よ」

提督「そんなにすぐ寝られる訳がないだろう」

利根「そうかのう? まあ、そういう事にしておいて──」

提督「そう言うお前はすぐに──」

利根「そ、それは言わない約束じゃと──」

提督「さて。それは──」

利根「────」

提督「────」

金剛(……………………)トコトコ

カチャ──パタン

金剛(……埃っぽくはありマスが、やはり少しクリーンにしてくれているそうデス)

金剛(ベッドは……あの鎮守府と同じデスね)ギシッ

金剛「…………」モゾモゾ

金剛「……同じ、デスね」

金剛(硬くて、冷たくて……寂しいデス……)

金剛(知らない場所で──知らない天井で──知らないベッドなノニ……同じデス)

金剛「…………」ジワッ

金剛「っ!!」ブンブン

金剛「……はやく、帰らなければなりまセン」

金剛「帰って、テートクに謝って、お仕事をして……戦場に出て……それから、敵を……倒し、て……」ウトウト

金剛(ダメ……もう、眠気が…………習慣に、なってるから……デスかね……?)

金剛(…………グッナイ……テートク………………)

……………………
…………
……



32:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/11/25(火) 09:40:38.99 ID:oSwNMeIZo

金剛「…………」パチッ

金剛「ん……私、何時間寝ていましたか?」クシクシ

金剛「……………………ホワッツ? 比叡、榛名、霧島……?」キョロ

金剛「……ああ、そうでシタ」

金剛(私、遭難してしまったのデスよね……)

金剛「結構明るくなっているネ。朝の七時くらいでショウか?」

金剛「……起きるのが遅いと怒られてしまいマスかね?」タタッ

金剛「…………」ヒョコッ

提督「……………………」スー

利根「…………ん」クゥー

金剛(寝てる……? もう結構明るいデスよね? それとも、ここではこれが普通なのでショウか……)

金剛(……とりあえず、起きるまで待っていまショウ。何をするべきかのインストラクションも仰がなければなりまセンし)

金剛(それにしても……)

利根「…………くー……」ギュウ

提督「……………………」

金剛(見事にくっついて寝ていマスね。まるで、新婚夫婦みたいデス)

金剛(この二人は恋仲なのでショウか……? それとも、仮のケッコンをしているのデスかね?)チラ

金剛「…………」ジッ

金剛(……私の薬指に付いている、この指輪。それと同じ物が、二人にはあるのでショウか)

金剛(…………ノー。私の指輪とは、きっと意味も何もかも違うはずデス……)

金剛「……羨ましいデス」ボソッ

利根「んー…………」モゾリ

提督「…………」

…………………………………………。



33:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/11/25(火) 09:50:53.13 ID:oSwNMeIZo

利根「……んぁ?」パチッ

提督「む……」スッ

金剛(あ、やっと起きました。……あれから二時間経っても寝ているなんて、随分と寝ていまシタね)

利根「んっ……! くぁ~……っ! おはようじゃ。提督」

提督「ああ、おはよう利根、金剛」

利根「んん……?」クシクシ

金剛「おはようございマス、提督、利根」

利根「…………あー、そうか。昨日から金剛が居ったのじゃな」

提督「失礼な事を言うんじゃない。私と同じように接するな」コツン

利根「む。確かに失礼であった。すまぬ、金剛」

金剛「い、いえ。気にしていまセンから」

利根「ふむ。ありがたい。──ところで、どうして朝なのにグッドモーニングじゃないのじゃ?」

金剛「あ、それはデスね」チラ

ザァー──ッ!

金剛「良い朝とは言えないからデス」

提督「ほう。これはこれは」

利根「すこぶる良い朝じゃな」

金剛「……え?」

提督「金剛、この雨はいつから降っている?」

金剛「え、えっと、一時間くらい前デス」

提督「なら問題ないな。利根、行くぞ」スッ

利根「うむ。すぐに出ようかの」スッ

金剛「あの? どこへ行く気デスか?」



34:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/11/25(火) 10:10:59.38 ID:oSwNMeIZo

提督「外だ」

金剛「雨デスよ?」

利根「雨じゃから外に出るのじゃよ。雨水は出来れば確保したいからのう」

金剛「ああ、なるほど。私も手伝いマス」スッ

提督「いや、金剛は中で待機していてくれ」

金剛「え?」

利根「む? どうしてじゃ、提督?」ヌギヌギ

金剛「ホワッツ!?」

提督「お前は感覚が麻痺しているようだから言っておく。普通の男女がほぼ裸で外を出歩くなんて事は出来ないだろ」

利根「……あー。なるほどのう」ポイポイ

金剛「あ、あの!? 提督の前デスよ!?」

利根「まあ、今更じゃし。慣れた」

金剛「慣、れ……ッ!?」

提督「そういう事だ。金剛は中で待機していてくれ。私達は貯蓄した水の入れ替えをしてくる」スタスタ

利根「提督、今日は脱がぬのか?」ペタペタ

提督「別の場所で脱ぐに決まっているだろ。さっきも言ったように、この場で脱げば困るのは金剛だ」

利根「ふむう……」

金剛(ほ、本当に裸で行っちゃいまシタ……。無人島では、誰しもこんな風になるのデスかね……?)

金剛「いずれ私も……?」

金剛「っ!」ブンブン

金剛「私は……そういう時が来ても服を着て外に出まショウ」

金剛「……それにしても、二人には指輪が付いていまセンでシタね。普段は付けていないのか、それとも仮のケッコンをしていないのか……」

金剛「行動を見る限りではしていてもおかしくないのデスが……うーん……?」

…………………………………………。



47:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/11/26(水) 18:00:48.75 ID:jcuLf+ZKo

利根「いやー、今日は大雨じゃな! これならばしばらく水には困らなさそうじゃ!」ペタペタ

提督「ああ。本当に良い朝だ。身体は拭けても髪を乾かせられないのは少し残念だとは思うが」スタスタ

金剛「おかえりなサイませ」

利根「大雨で楽しかったぞ! 金剛もどうじゃ?」モゾモゾ

金剛「いえ……私は遠慮しておきマスね」

金剛(本当に裸で居る事に抵抗がないのデスね……。って、あれ? どうして利根は羽織るだけなのデスか? というか、なぜ下着を着けないデス……?)

利根「残念じゃのう」ピトッ

金剛「…………オーゥ……」

利根「うむ。やはり提督の身体は温かいぞ」スリスリ

金剛「あ、あの……?」

提督「いつもは雨で冷えた身体を、こうしてお互いの体温で温めているのだが……利根、今日は控えてくれ」

利根「なぜじゃ? 温かい方が良いに決まっておろう」ギュー

提督「人の目を考えろと言っているんだ」

利根「むー……」

金剛「えっと……私は席を外しマスので……」

提督「いや、構わん。そういう事をする訳ではない。──それよりも、今日は金剛に色々と覚えてもらおうか。座学だ」

利根「座学は嫌いじゃ……。……それよりも提督よ」

提督「ああ。毛布に包まっていろ。風邪を引いたら一大事だ」

利根「やったぞ! って、そうではない。提督も風邪を引いたら問題があるじゃろう。やはり一緒に温まるべきじゃ」

提督「しかしだな──」

利根「我輩と提督、どちらかが倒れればもう片方も倒れてしまうんじゃぞ。ここは人の目など気にする場合ではないのではないか?」

提督「……金剛に判断を委ねよう」

金剛「え……ええっと……」

利根「…………」ジー

金剛「…………うぅ……」

利根「…………」ジー

金剛「……二人共、温まって下サイ。その状態で話してもらって、私は提督の教えを頭に入れます」

利根「うむ! さあ提督よ、我輩は少し寒い。早く毛布に包まろうぞ」モゾモゾ

提督「金剛、助かる」モゾモゾ

利根「はー……温かいのー……」ホッコリ

金剛(……なんだか、お風呂に入っているみたいデスね)

提督「では、この状態ですまないが必要最低限の事を教えていく。紙やペンは無いが、大丈夫か?」

金剛「ハイ。ノープロブレムです」

提督「よろしい。ではまずは水についてだが──」

…………………………………………。



48:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/11/26(水) 18:10:50.20 ID:jcuLf+ZKo

提督「──こんな所だろう。分からない所はあったか?」

金剛「ノー。ありませんでシタ。とても分かりやすかったデス」

提督「ふむ。それは良かった。後は実践できるかだな」

金剛「…………」

提督「うん? どうした」

金剛「あ、いえ……その……」

提督「気遣う必要は無い。思った事を言ってくれ」

金剛「…………え、と……」

提督「……ふむ。金剛にはこう言った方が良いみたいだな。──金剛、命令だ。思っている事を言え」

金剛「ハ、ハイ……」

提督(やはりな。金剛の心の奥では上下関係がしっかりと根付いているようだ)

金剛「……正直に言いマスと、実践できるかどうかは何とも言えないのデス。頭に入れただけでは、どうしても想像の域でしかないノデ……」

利根「なんじゃ。そんな事か」

金剛「え、え……?」

提督「予想通りというべきか」

金剛「…………?」

提督「初めに言っておくべきだったな。金剛、これからは思った事をしっかりと口にしてくれ。例え、それがネガティブな内容であってもだ」

金剛「それは流石に……」

提督「何度も言うようだが、気遣う必要は無いんだ。それに、金剛は私の直属の艦娘ではない。初めから気を遣う必要も無いぞ」

金剛「……………………」

提督「ふむ……。言い方を変えるか。金剛、不安な事は不安だと言って良い。無理だと思ったならば無理だと言って良い。むしろ言ってくれ。命令だ」

金剛「……ハイ」

提督「よろしい」



49:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/11/26(水) 18:20:52.35 ID:jcuLf+ZKo

金剛(本当に言っても良いデスか……? 凄く怖くて……そして不安デス……)

提督(……これはある意味、利根以上に手を焼きそうだ)

利根「む。今何か失礼な事を考えておらんかったか、提督よ」

提督「察しが良いな。その通りだ」

利根「むー……。まあ、温かくて気持ち良いから許す」ギュー

提督「単純な奴め」ナデナデ

利根「単純で結構じゃ」スリスリ

金剛「……なんだか猫みたいデス」

利根「おお、金剛もそう思うか」

金剛「私も、デスか?」

利根「うむ。昨日、一緒に風呂へ入っている時にの、提督から猫のようだと言われたのじゃ」

金剛(本当に一緒に入っていたのデスか……)

利根「我輩も薄々そう思っておったからのう。やはり、提督が温かいのが原因じゃな!」スリスリ

提督「…………」ナデナデ

金剛(それは何だか違うと思うデス)

提督「さて、そろそろ朝食にするとしようか」スッ

利根「えー……。提督、我輩はもう少し温まりたいぞ」

提督「毛布に包まったまま齧れば良いだろう」スタスタ

利根「それもそうかの」スッ

金剛(齧る?)



50:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/11/26(水) 18:30:32.79 ID:jcuLf+ZKo

利根「ところで金剛よ」

金剛「? ハイ、なんでショウか」

利根「ずーっと立っていては疲れるじゃろ。ほれ、ベッドに腰掛けておれ」ポムポム

金剛「……え? い、良いのデスか?」

利根「むしろなぜダメなのじゃ。ほれ、座って待っておれ」

金剛「ハ、ハイ……」スッ

利根「では、我輩達は食料を取ってくるからのー」トコトコ

金剛「いってらっしゃいマセ」

金剛「……………………」

金剛(……不思議なのは提督だけかと思っていまシタけれど、利根も相当不思議な艦娘デスよね)

金剛(提督にあんな態度や言葉を使っていマスし、まるで提督を上官だと思っていないような──いえ、まるで思っていないデス)

金剛(提督も提督で許しているというよりも、そうであって欲しいと思っているような……? そんな雰囲気がしマス)

金剛「……本当、テートクと私とは大違いデス」

金剛(少しだけ……ほんの少しだけデスが、良いなと思った自分を叱りたいデス……)

利根「ほれ金剛ー。持ってきたぞー」トコトコ

金剛「おかえりなさいま……せ?」

利根「うん? どうしたのじゃ?」

金剛「あの……それって何デスか?」

提督「魚の干物と水だ」

利根「味を付けたまま保存に向いておってのう。割と長持ちするから、今日みたいな火の使えぬ日には持ってこいなのじゃ」

金剛「ォー……」ジー

提督「さて、食べるとしようか」ガジッ

利根「うむ!」ガジガジ

金剛「頂きマス」ハムハム

金剛(…………? なんだか、淡白で塩っぽい味デスね?)モグモグ

金剛(でも……とっても美味しいと感じるのは、なぜでショウか……)

利根「うーむ。今日の出来は割りと良くないのう」ガジガジ

提督「今回は塩が少なかったかもしれん。保存している時間で塩の加減を変えねばならんから難しいな」

利根「うむ。多過ぎると辛いが、少な過ぎると味の劣化が顕著じゃのう。これだと多過ぎる方がマシじゃ」

提督「そうだな。今度からはそうしよう」

利根「提督よ、そっちの魚は美味いかの?」

提督「変わらんと思うぞ。ほれ」スッ

利根「あむっ……。んー…………本当じゃ。変わらんのう」モグモグ

提督「だから言っただろう。利根、お前のを一口貰うからな」

利根「うむ。ほれ」スッ

金剛(……この二人が居るから、デスかね?)

…………………………………………。



51:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/11/26(水) 18:40:50.29 ID:jcuLf+ZKo

利根「…………」ゴロゴロ

金剛「…………」

提督「…………」ジッ

利根「…………」トコトコ──ピトッ

提督「…………」ポンポン

利根「…………♪」ギュー

金剛(……なんて自由。本当に提督と艦娘という立場に居るとは思えまセン……)

提督「……金剛」

金剛「っ! ハ、ハイ」

提督「少し気になったのだが、どうしてずっと立っているんだ?」

金剛「…………?」

金剛(それって、当然の事デスよね? 艦娘が提督の前で礼儀正しくするのは当たり前──)

利根「うむ。我輩もさっきから気になっておったのじゃ。どうしてじゃ?」

金剛(……利根は例外とシテ)

金剛「提督である貴方に失礼の無いようにと思って立っていマス」

提督「そうか。では座っていてくれ」

金剛「え? ……ハイ」キョロ

金剛「…………」ストン

提督「別にベッドに座っても良いんだぞ? そんなボロ椅子では痛くなるだろう」

金剛「で、でもそれは流石に……」

提督「構わんよ」

金剛「……………………」

金剛(……確かに、この提督ならばお叱りになる事もないでショウけど──いえ、この考え自体があまり良くないデスね)



52:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/11/26(水) 18:50:34.70 ID:jcuLf+ZKo

金剛「え、と……それでは、お言葉に甘えて……」ソッ

提督「何だったら寝ていても良いぞ。今日は暇な時間しかない」

利根「何を言うておるか提督。今日も暇な時間しかない、の間違いであろう」

提督「そうだな。今日も暇な時間しかない」

金剛(……ここは流石に甘えるべきではないデスね。非常に失礼デス。でも、なるべく肯定的な言葉で……)

金剛「それでは、眠くなったら眠らせて頂きマス」

利根「うむうむ。眠るのは大事じゃ」

提督「……………………」ジッ

金剛「…………?」

提督「金剛、しばらく横になっていてくれ」

金剛「えっ──」

金剛(そ、それはダメです! ベッドで横になってしまうと、条件反射で眠ってしまいマス!)

金剛「それは……えと……」

提督「……そうだな。言い方を変えよう。──命令だ。ベッドで横になっておけ」

金剛「……………………提督が、そう言うのであれば……」ポフッ

提督「ああいや、その体勢は辛いだろう。普通に横になっておけ。雨が降っているから毛布も被っておけ」

金剛「……ハイ」

金剛(うぅ……寝ないように頑張らなければなりまセン……)モゾモゾ

金剛「……これで、良いでショウか」

提督「ああ。起こすべき時になったら起こすから、それまで横になっていろ」

利根「素直に寝ておけと言えば良かろうに」

金剛(本当デス。これだと、寝ろと言っているも同然、デス……)ウトウト

金剛(あ……ダメ…………やっぱり、すぐに、眠く……)

金剛「…………────」スゥ

利根「む? もう寝てしもうたぞ」

提督(静かにしていてやれ。慢性的な疲労だったんだろう)ヒソ

利根(なんと……まったく気付かなんだぞ)ヒソ

提督(恐らく、普段から無理をしているんだろう。お前の相手は向こうでするから、一旦ここを離れるぞ)ヒソ

利根(了解した)ヒソ

金剛「……………………」スゥ

…………………………………………。



53:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/11/26(水) 19:02:18.66 ID:jcuLf+ZKo

金剛『金剛、帰投しまシタ』ピシッ

金剛『ハイ。戦果リザルトを報告しマス。──パラオ諸島沖の敵機動部隊迎撃作戦は膠着状態にありマス。ラストターゲットである空母水鬼は堅牢デス。随伴している装甲空母姫も二隻投入されており、一筋縄ではいけまセン。その前に敵の空母棲姫とどうあってもバトルに入ってしまい、ここでのバトルをどう凌ぐかが問題となっていマス』

金剛『……どうなされマスか? ──え? 私を、解雇……? そ、そんな! どうして──っ!?』

金剛『役に立っていない……のは分かっています……。敵を殲滅しきれない私は、確かに……役立たずです……。ですが! もっと頑張りますから!! どうか──!!』

金剛『──あ、れ? ここ、どこですか……? 海? どうして……? 私はさっきまで、執務室に居たはずなのに……』

金剛『…………目の前に島がありマス。人は……二人くらいしか住んでいなさそうデスね』

金剛『……後ろには私の帰るべき鎮守府。目の前には何も無い島……』

金剛『でも……私は帰れない……帰る事が……出来ません…………』

金剛『私……どうすれば良いのですか……?』

金剛「────ッ!!」ガバッ

金剛「…………」キョロ

金剛「……誰も居ない? いえ、それよりも外が暗くなってきていマスね。私、どれだけ寝ていたのデスか」スッ

金剛(ん……身体、少し痛いデスね。どう考えても寝過ぎデス)グッグッ

金剛(二人はどこへ行ったのでショウか。たしか、起こす時になれば起こすと言っていまシタけど……)トコトコ

利根「──よ、そろそろ起こすべきではないかの?」

金剛(あ、声が。別の部屋に居たデスか)

金剛(……二人の時は何を話しているのデスかね?)ソロソロ



63:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/11/26(水) 22:30:57.50 ID:jcuLf+ZKo

提督「自分から起きるまで寝かせてやってやれ。常日頃から無理をしていたんだろう」

利根「ふむ。分かるのか?」

提督「顔色と振る舞いを見れば分かる。むしろ、分からなければ提督として勤まらん」

金剛「……………………」

利根「そういうものなのかのう……? よく分からないんじゃが」

提督「疲れが溜まれば艦娘も間違いを引き起こす。それに、実力も充分に発揮されない。絶好調とまではいかずとも、せめて調子が悪くない程度にはしなければならんよ」

金剛「…………」

利根「んー?」

提督「どうした。まだ分からんか?」

利根「や、それは充分に分かったのじゃが、代わりに分からぬものが生まれた」

提督「そうか。なんだ?」

利根「提督よ、お主は上辺だけの言葉を使ったの?」

金剛(上辺だけ……?)

提督「さて、何の事やら」

利根「とぼけるでない。どれだけ我輩と一緒に居ると思っておるのじゃ。いつもと違う事くらいは分かるぞ?」

提督「まあ、それは今度話そう」

利根「気になるぞー」

提督「──ところで、立ち聞きはあまり良くないんじゃないか?」

金剛「っ!?」ビクンッ

利根「む? 金剛かの?」

金剛「……ソーリィ。お二人が何を話しているのか気になって……」スッ



64:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/11/26(水) 22:40:46.08 ID:jcuLf+ZKo

利根「なんて事はない。だらだらとしつつ他愛の無い会話しかしておらんかったよ」

金剛「……あの」

利根「うん?」

提督「どうした」

金剛「さっき話していた事デスが、一つ質問をしても良いでショウか」

提督「ああ。なんだ?」

金剛「利根が聞きたがっていた事は、私が居たから話さなかったのデスか?」

提督「…………」

利根「む。図星みたいじゃな」

提督「……察しが良いな、金剛。相当な錬度を持っているのは伊達ではないか」

利根「相当な錬度? なぜそんな事が分かるのじゃ?」

提督「金剛の左薬指を見れば分かる」

利根「……指輪? それが何か関係あるのか?」

提督「あれは莫大な経験を積んだ艦娘にしか付けるのを許されない指輪だ。その指輪を付けているという事は、最高の錬度になったという証でもある」

利根「ふむ、なるほど。……しかし、なぜ金剛が居ると話せない事なのじゃ?」

提督「…………」チラ

金剛「!」

金剛「……私は大丈夫デス。どんな内容であれ、受け止めてみせマス」

提督「……分かった」

利根(うーむ? なんじゃ、この気持ち? チクチクするぞ)

提督「さっきは尤もな事を言ったが、利根の言ったようにあれは建前だ。私の考えている事はただ一つ」

提督「沈ませたくない──ただ、それだけだ。だから私は疲労やその他諸々を気にする」

利根「…………」



65:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/11/26(水) 22:50:41.23 ID:jcuLf+ZKo

金剛「……良い人デスね。本当に」

提督「ハハッ、それはどうかな。もしかしたら悪魔かもしれんぞ?」

利根「提督が悪魔ならば、我輩は何になるのじゃ」

提督「同じ悪魔で良いんじゃないか?」

利根「ふむ。それも良いのう」

金剛「?」

金剛(なんですか、この違和感は)

提督「さて、そろそろ食事にしよう。幸運な事に雨はまだ続いているから、また干物だがな」

利根「幸運だというのにも関わらず、普段よりも質が落ちるというのは中々不思議じゃのう」

提督「今更だな」

利根「今更じゃの」

金剛(…………?)

金剛「って、え? 今からディナー、デスか?」

提督「そうだが、どうした。食が進まないか?」

金剛「いえ……昨日はこの位の時間になるとスリープしていまシタので、不思議に思ったデス」

利根「うむ? 当然じゃろう。食事は全員一緒にじゃ」

金剛「自分達の食欲や睡眠欲を削ってでも……デスか?」

提督「私達は自由奔放だからな。いくらでも融通が利く」

利根「そういう事じゃ」

金剛「────────」

利根「む? そんなに不思議な事じゃったか?」

金剛「……いえ。嬉しいな、と思ったのデス」

金剛(たったこれだけの事で、嬉しいと思えるものなのデスね……)

…………………………………………。



66:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/11/26(水) 23:00:31.98 ID:jcuLf+ZKo

カチャ──パタン

金剛「……………………」ギシッ

金剛(ブレックファスト……と言って良いのかは分かりまセンが、同じ干物だったのに朝食べた時よりもずっと美味しく思いまシタ)

金剛(……どうしてデスかね。鎮守府の食事よりも、ずっとずっと……美味しく感じるだナンテ……)コテッ

金剛「……食事、だったのデスかね?」

金剛(思ってみれば、私の場合は食事というよりも栄養補給といった方が強かったのかもしれまセン)

金剛(楽しんだり、団欒をする為に食事をするのではなく、ただ単に倒れないようにする為の食事……今なら、そう思えマス)

金剛(……そういえば、今日のディナーの時も、二人は夫婦みたいに仲が良かったデスね)

金剛「羨ましいデス……」ボソリ

金剛「……………………」

金剛「…………」モゾモゾ

金剛(今日も、早くスリープしてしまいまショウ)

金剛「おやすみなさい……」

金剛(……誰に言っているのデスかね、私…………)

…………………………………………。



67:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/11/26(水) 23:10:29.68 ID:jcuLf+ZKo

利根「提督よ、起きておるか」

提督「どうした」

利根「提督の言っていた沈ませたくないという話じゃが、良いかのう」

提督「……ああ。構わん」

利根「もう三年近くじゃぞ。そろそろ吹っ切ってはどうかの?」

提督「そっくりそのまま返してやろう」

利根「我輩はほとんど吹っ切っておる。提督と違って、の」

提督「…………」

利根「時の流れとは残酷じゃな。当時はあんなにも苦しかったというのに、今では胸が少し痛むだけじゃ」

提督「……そうか」

利根「提督よ。我輩は冷たいのかの」ソッ

提督「いや、私が引きずり過ぎているだけだろう。利根の言うように、そろそろ私も吹っ切るべきだ」

利根「……なあ、提督よ」

提督「どうした」

利根「我輩は、冷血じゃからこうして心温かい提督の温かさを感じたいのかの」ギュゥ

提督「さて、それは私にも分からない。……分からないな」ナデナデ

利根「ん……優しい温もりじゃ」

提督「温かいか」ナデナデ

利根「うむ。提督のこれさえあれば、他は何も要らぬと言えよう」

提督「食料や水もか?」

利根「無いのであれば要らぬ。我輩はこれだけでも充分じゃ」

提督「……私も、お前の温もりが欲しいのかもな」

利根「ほう? 我輩は冷たいぞ?」

提督「今、こうして温かいのは事実だ」ギュ

利根「……そうか。温かいか」ギュゥ

提督「ああ……とても、心地良い」

利根「奇遇じゃな。我輩も心地良いぞ……」

提督「久々に良い悪夢が見られそうだ」

利根「うむ……。良い悪夢、見たいのう」

提督「おやすみ、利根」

利根「おやすみじゃ、提督」

……………………
…………
……



68:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/11/26(水) 23:20:45.50 ID:jcuLf+ZKo

提督「…………」ジッ

金剛「…………」ジッ

利根「なんじゃ。提督も金剛も揃って海を眺めおって。そんなに面白いかの?」ノシッ

提督「お前が思っているよりは楽しいと思うぞ。あと、背中に覆い被さるのは良いが体重は掛けるな」

金剛「私は、ただ何となくデス」

利根「ふむ? 何となくとな?」スッ

金剛「本当に思ったよりもやる事や出来る事が少ないデス。後はこうして海を眺める事くらいシカ……」

利根「まあ、この規模の島ならば一日もあれば調べ尽くせるじゃろうしな。お主がここへやってきて早一週間。暇で暇で死にそうになる頃合じゃ」

金剛「……今ふと思ったのデスが、利根」

利根「うん?」

金剛「利根が艤装を付けている姿を見掛けないのデスが、艤装はどうしたのデスか?」

利根「ああ、あの鉄の塊か。あれは随分前から倉庫で放置しておるな」

提督「埃を被るどころか、潮風で錆付いて穴だらけになっていてもおかしくないだろうな」

金剛「……もし、敵が襲ってきたらどうする気デス?」

利根「まあ、その時はその時じゃな。むしろ、こんな小さな島を襲おうと思う深海棲艦も居らんじゃろうて」

提督「もし会敵したとしても無視すれば良い。放っておいて陸にいれば奴らも攻撃をせんだろう」

金剛「……なんだか、希望的観測デスね?」

利根「まあ、実際にそれで戦闘にならなかったからのう」

金剛「……ホワッツ? このアイレットで深海棲艦と会敵したのデスか?」

提督「随分と前に一回だけな。浜辺付近まで近付いていた深海棲艦を見付けた時、敵という認識よりも先に珍しいという感情が出てきた」

利根「深海棲艦の事について提督と話しておったら、どういう訳かそのまま帰ってしまったよのう」



69:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/11/26(水) 23:30:35.31 ID:jcuLf+ZKo

金剛「問答無用に攻撃してくるかと思いまシタが、何があったのデスかね」

提督「そればかりは私達も分からん。想像すら付かない」

利根「全くもって不思議な話じゃよな。その頃には艤装も降ろしておったから、攻撃をされれば間違いなく陸で轟沈しておったじゃろうなぁ」

提督「私など赤い霧になっていただろう」

金剛「……想像したくないのに想像してしまいまシタ」

提督「む。大丈夫か?」スッ

金剛「ええ……なんとか……」

提督「…………」サスリサスリ

利根「? 提督よ、こういう時は抱き締めるのが普通ではないのか?」

金剛「……………………。────ッ!?」ビクンッ

提督「馬鹿を言うな。お前相手ならそうするだろうが、金剛は私の艦娘ではない上、出会ってから数日しか経っていないだろ」

利根「我輩はやっても良いと思うがのう」

金剛「…………」

提督「自分にされている事の全てが普通だと思うな。中には例外的にやっている事もあるんだぞ」

利根「そうは言ってものう……。おそらく、金剛もそうされたいと思うておると思うぞ?」

提督「吊るすぞ」

利根「い、嫌じゃ!! で、でででも、これは引けぬぞ!?」

提督「よし、では今から吊るそう。利根と私は互いの裸を見る事に慣れているくらいだ。数時間吊るしても耐えられるよな?」

利根「あれは羞恥心以前に提督が怖いんじゃぞ!? 二分と保たぬわ!!」

提督「ええい、耳元で大声を出すな。いや、丁度良い。逃げられる前に捕まえておけるか」グイッ

利根「ぬあっ!? し、しまった!」



70:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/11/26(水) 23:40:53.73 ID:jcuLf+ZKo

提督「久々だ。ああ、久々だな利根。お前を吊るすのは何年振りだろうか?」

利根「う、ううぅ……!」

金剛「……あの」

提督「どうした。金剛も見るか?」

金剛「いえ……そうではありまセン。確かに少し興味はありマスけど」

利根「持たぬで良いぞ、そんな興味は!?」

提督「やかましい。少し黙っていろ」ギュゥ

利根「むーっ!! むぅーっ!!!」ジタバタ

金剛「……わ、私も、そんな風に……抱き締めて貰って、良いですか?」オソルオソル

利根「!」ピタッ

提督「……いくら何も無い島だからといっても、物事には線を引くべき場所は引かなければならんぞ」

金剛「一度だけ……一度だけで充分デス。だから、お願いしマス」ペコッ

提督「頭を下げる程でもないだろう。頭を上げなさい」

利根(お? 何やら物言いが柔らかいぞ?)

金剛「……ダメ、でシタか?」シュン

提督「…………一体何を考えているのかは分からんが、一度だけだぞ」

金剛「!! ありがとうございマス!」

利根「ぷはっ! ほれ、言うたじゃろう。提督は女心が分かっておらんのう」

提督「釣竿の先に吊るして鮫でも釣ってみようか」

利根「ご、ごめんなさい……!」ビクビク



71:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/11/26(水) 23:50:40.49 ID:jcuLf+ZKo

提督「冗談だ。……それにしても、お前も不思議な事を望むものだな、金剛」

金剛「自分でもそう思いマス。けど……今はそうしたいデス」

提督「……心の準備は良いか?」スッ

金剛「ハ、ハイ」ビクビク

利根(……ふーむ。自分から言っておいてアレじゃが、どうも良い気分になれぬのう?)

提督「ほら、一歩前に踏み出して来い」

金剛「…………っ」ギュゥ

提督「よしよし。良い子だ」ソッ

金剛「……ぁ…………」

提督「どうした」

金剛「少しだけ……いえ、強くしても良いので抱き締めて下サイ」

提督「…………」チラ

利根「? 何をしておるのじゃ提督。少し痛いくらいで丁度良いんじゃぞ?」

提督「……分かった」ギュウ

金剛「────っ」

金剛(……温かいデス。人の温もりって、自分と全然違うのデスね……)

金剛(どうしてデスか……? 自分で自分を抱き締めて、こんなに温かくならないのに……どうして、他人に抱き締められると、こんなに温かいのデスか……?)ジワッ

利根「…………ほれ、何をしておるのじゃ提督。頭も撫でてやらんか」

提督「いや、それは──」

金剛「……………………っ」ギュッ

提督「……ああ、分かった」ナデ



72:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/11/26(水) 23:52:14.76 ID:jcuLf+ZKo

金剛「ぁ……」

金剛(何でショウか……心に流れてくる、この優しくて、温かい気持ちは……)ポロ

金剛(ダメ……涙、勝手に出てきちゃいます……)ポロポロ

金剛(──ああ……これが、私がずっと望んでいたものだったです……)ポロポロ

金剛(いつか……テートクから貰いたかった優しさ……ずっと、何年も待ち続けた温もりが……)ポロポロ

提督「…………」ナデナデ

金剛(この人……この人が…………私のテートクだったら……────っ!!)

金剛「っ!」グイッ

利根「お? どうしたんじゃ。いきなり離れ──……なぜ泣いておるのじゃ?」

金剛「……………………ごめ、なさい……。少し、部屋に……一人で……」ダッ

提督「…………」

利根「…………」

提督「……………………」

利根「……提督よ、確かに少し痛いくらいが丁度良いとは言ったが、そんなに強くしたのかの?」

提督「吊るす」

利根「なっ!? な、なぜじゃ!? や、やめ──ってどこにロープを隠し持っておったのじゃ!?」タジッ

提督「問答無用」ヒュッ

利根「ひっ──!?」

ニィアアアアアアアアアアアア────ッッ!!?!

…………………………………………。

金剛「……馬鹿です。私は、大馬鹿者です……」

金剛「あの人が私のテートクだったら、ですって……? そんなの、許されません……。私は、既にテートクから指輪を貰ったのですよ……?」

金剛「例えそれが、私の能力を精神的に向上させる為だけのモノだったとしても、私はテートクと契りを交わしたです……」ポロ

金剛「なのに……普段から優しくされていないからといって……私の欲しかった優しさと温もりをくれたからといって……あんな事を思ってしまうだなんて……!!」ポロポロ

金剛「自分で自分を殺したいです……。テートクに会わせる顔がありません……」ポロポロ

金剛「ごめんなさい……ごめんなさい……テートク…………」ボロボロ

金剛「ごめんなさい…………ごめんなさい……────────」

……………………
…………
……



91:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/11/30(日) 21:50:05.99 ID:BzWp/sCCo

提督「…………」

利根「…………」

金剛「…………」

利根(……気まずいっ!!)

利根(なんじゃ、この気まずい空気は……!? 日が変われば元に戻ると思うておったが、全然ではないか……!!)

利根(せめてこの垂らした糸に魚が食い付いてくれれば空気も変わるというのに……! 今日ばかりは全くもって反応を示さん!!)

利根「…………」チラ

提督「……………………」

金剛「……………………」

利根(……そりゃそうじゃよのうっ!? こんなドンヨリとした雰囲気が漂っておる餌に、誰が食い付くものかのう!? 腹を空かせたピラニアでも唾を吐いて去るよのう!?)

利根(我輩はそんなに間違っておったのか!? 昨日、金剛が抱き締められたいと思うておったのは確かではなかったのか!?)

利根(誰でも構わん! 何でも構わん!! どうかこの空気を壊してくれぬかぁ!!?)

提督(──む)チラッ

ザリッ──!

利根「!! ……誰じゃ?」クルッ

瑞鶴「え……あ、あれ……?」

響「……ハラショー」

金剛「──え?」クルッ

瑞鶴「え……ぇえ!? こ、金剛さん!?」

金剛「瑞鶴!? 響まで!?」

響「!! 金剛さん、心配したんだよ」



92:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/11/30(日) 22:00:46.09 ID:BzWp/sCCo

提督「知り合いか、金剛」

金剛「……私の鎮守府で、よく一緒に出撃していた仲間デス。でも、どうしてここへ……?」

瑞鶴「や……あはは……まあ、私の状態を見てくれたら分かるかもしれないけど……」

提督「中破……いや、ギリギリ大破しているな。駆逐艦の響は無傷だというのを考えると、護衛退避したといった所か?」

響「ご明察だよ。作戦中、珍しく被弾した瑞鶴さんが大破したから、護衛退避している所だったんだ。……だけど」

瑞鶴「母港に帰る途中、海が大荒れに荒れちゃって……。方向も完全に分からなくなっちゃって闇雲に進んでたらここに辿り着いたの」

提督「そうか。大変だったんだな」フイッ

瑞鶴「む。素っ気無いわね。失礼じゃない?」

提督「自分の肌を見られても良いと言うのならば目を向けるが、そういう訳ではないだろう」

瑞鶴「え、あ──! わ、忘れてた……!」サッ

利根「……忘れるかの、普通?」

響「忘れないね。恥ずかしくないのかと思ってビックリしていたけど、まさかそんな理由だったとは思わなかったよ」

瑞鶴「……だって、沈まないようにするので必死だったんだもん…………」イソイソ

金剛(響の後ろに隠れていますケド、なんだか不思議な光景デスね)

提督「利根。一応聞いておくが、余っている服はあるか?」

利根「我輩は知らんぞ。物資は全て提督が管理していたではないか」

提督「……修理をするしかないな」

利根「やはり無いか」

瑞鶴「え、ここってドックとか妖精さんとか居るの?」

利根「いや、居らんぞ」

瑞鶴「……じゃあ、どうやって修理するのよ」

利根「それは勿論、我輩の提督が修理する他ないのう」

瑞鶴「え」



93:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/11/30(日) 22:10:44.78 ID:BzWp/sCCo

響「……もしかしてだけど、金剛さんも同じなのかな?」

金剛「イエス。ぼんやりとしか憶えていまセンが、この方が一生懸命修理をしてくれたのは確かデス」

瑞鶴「ちょ、ちょっと! 嫌じゃなかったの!?」

金剛「……本当に意識が朦朧としていまシタので、そう考える余裕も無かったデス」

響「そんなに酷い状態だったんだね。……今は大丈夫?」

金剛「この通り、ピンピンしてるネー」ニコニコ

響「!」

瑞鶴「そっか……良かったぁ……。もー、全然帰ってこなくて心配したんだからね?」

金剛「ソーリィ……。──ところで、瑞鶴は修復をどうするデスか?」

瑞鶴「え。えっと……」チラ

提督「…………」

瑞鶴「……本当に、修理できるのってこの人だけ?」

利根「我輩は隣で見ていたが、何をしているのか全く分からんかったぞ」

金剛「私は見た事すらないデス……」

響「私も金剛さんと同じだよ」

瑞鶴「う、うう……」

提督「……利根。私の上着を渡してやってくれ。流石に艦娘といえど、このままでは風邪を引いてしまう」スッ

金剛「え──!?」

利根「うん? 構わんが、どうして自分で渡さないのじゃ?」スッ

提督「男の私が近付くよりも女のお前の方が安心出来るだろう」

利根「なるほどのう。──ほれ、瑞鶴」スッ

瑞鶴「あ、えっと……うん。ありがと」



94:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/11/30(日) 22:20:37.74 ID:BzWp/sCCo

金剛「え、ええ……? ほ、本当に着せて良いのデスか? 大事な軍服デスよね?」

提督「構わん。今この場においては私の軍服など、ただの防寒着だ」

響「…………? !!」

金剛「……瑞鶴。その軍服は出来るだけ丁寧に扱って下サイ」

瑞鶴「え? そりゃ人様の物だしそうするけど……どうして?」

響「…………」ピシッ

瑞鶴「ど、どうしたのよ響ちゃん。いきなり敬礼なんてして」

響「……先程の非礼を詫びます。申し訳ございません。そして、お気遣い、ありがとうございます」

提督「止めてくれ。私は今、そんな立場の人間ではないよ」

瑞鶴「え……もしかして、凄く偉い人……?」

金剛「……この方は私達のテートクの二つ上、中将の階級デスよ」

瑞鶴「……………………」

瑞鶴「大変、失礼しました……!!」ビクビク

利根「ぉー。三日前の金剛と同じ反応じゃのう」

提督「この島じゃそんな階級なんて意味を成さんよ。畏まらないでくれ」

瑞鶴・響「はいっ!」

提督「…………」

金剛「ア、アハハ……やっぱりそうなるデスよね。私も同じでシタ」

瑞鶴「あの……あ、あの……罰とかは……」ビクビク

金剛「何も無いデース。とても優しいお方デスよ」

提督「優しいかどうかは知らんが、罪や罰などを言うつもりは無いから安心してくれ。言うなれば、出来るだけ肩肘張らず普段通りにしてくれると助かる」

利根「本当に提督は畏まられるのが苦手じゃのう」

瑞鶴「あ、ありがとうございます……!」



95:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/11/30(日) 22:30:33.58 ID:BzWp/sCCo

響「……呼び方は提督、さんで良いのでしょう……良いのかな」

提督「さんも付けなくて構わない。さっきも言ったように、ここでは階級や提督や艦娘などといったモノに縛られる事はない。助け合って生きねばならん」

利根「でないと待つのは死じゃからのう」

提督「これからよろしく頼む」

響「…………うん。よろしく、提督」

瑞鶴「あの……」

利根「うん? どうしたのじゃ?」

瑞鶴「こ、こっちを向いても、良いんですよ?」

提督「……まずはその服を着てくれるか。出来る限り見られたくないだろう?」

瑞鶴「す、すみませんでした!」イソイソ

金剛「瑞鶴はパニックになると自分の事が見えなくなるのは相変わらずネー」

瑞鶴「だって……そんな余裕無くなるじゃないのぉ……」イソイソ

瑞鶴「……うん。良し。き、着ました」

提督「そうか。……さて、話を戻すが修復はどうする。私を観察してからするしないを決めても構わん。信用ならんと思ったら言ってくれ。利根になんとか頑張らせよう」

利根「我輩じゃと!? そんなに手先は器用ではないぞ!?」

提督「案外やれば出来るものだ。目の前に実例が居るだろう」

利根「むー……」

提督「実際に修復して思った事や、やってはいけない事、手順などを叩き込めばどうにかなるはずだ。お前も出来る」

利根「その根拠の無い自信はどこからやってくるのじゃ……」

提督「お前への信頼、という事で納得してくれ」

利根「うーむ……むぅー…………それなら、良いかのう。我輩も頑張る」



96:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/11/30(日) 22:40:58.06 ID:BzWp/sCCo

瑞鶴「あのー……失敗したらどうなるんですか……?」オソルオソル

提督「やってみた感覚としては、資材が消えるくらいだったな」

瑞鶴「あ、なんだ。それくらいなんだ……。良かったぁ……」ホッ

金剛・利根「……………………」

提督「うむ。だからそんなに気構える事もない。ついでに敬語を使う必要も無いぞ?」

瑞鶴「あっ……!」

提督「少しずつでも良い。慣れていってくれると助かる」

瑞鶴「はい──や、違くて……うん。がんば……るね」

提督「うむ」

金剛「……ところで提督。資材が消えるくらいとライトに言っていまシタけど、この島に資材はいくらほど残ってるデスか?」

提督「詳しくは知らん」

響「え?」

提督「回数で言えば一回出来るかどうかギリギリといった所だろうか」

瑞鶴「……それって結局、成功か失敗のどっちかじゃないの!?」

提督「利根が上手くやってくれるのであれば完全修理までギリギリいけるだろう。失敗した箇所が多くなれば多くなるほど損傷部位はそのままとなる」

利根「嫌な予感はしておったが、そういう事じゃったのか!! やはり難しいではないかぁー!!」

提督「逆に考えろ。必要最低限まで修復できれば気にする必要も無いと」

利根「……完全に失敗したらどうなるのじゃ?」

提督「その時か……。ふむ。あの服を刻んで必要最低限の衣服を作るのはどうだ?」

瑞鶴「ごめん。それは無理です……。中将さんの軍服で作られた服なんて畏れ多くて……」

提督「いずれ慣れるだろう」

瑞鶴「慣れるのかしら……」



97:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/11/30(日) 22:50:39.22 ID:BzWp/sCCo

提督「どちらにせよ気持ちの問題だ。──おっと」グイッ

利根「む? ──おお、やっと釣れたか!」

提督「糸が切れなければ釣れるだろう」クイックイッ

利根「そこらで拾ったボロ糸じゃからのう……。前に交換してから大分経つし心配じゃ」

提督「怖い事を言ってくれる。本当に千切れたらどうす──」ブチッ

金剛・瑞鶴「あ」

利根・響「…………」

提督「……利根」チラ

利根「わ、我輩のせいではなかろう!?」

提督「この虚無感をどうしてくれようか」

利根「我輩に言われてもどうしろと……」

提督「……そうだな。いつものように頼む」

利根「む? いつものというと、いつものか?」スッ

提督「ああ」

金剛(いつもの……?)

瑞鶴(何をするのかしら……)

響(……少し、興味があるな)

利根「ほれ」ノシッ

金剛(ああ、なるほど。確かにいつものデスね)

瑞鶴「……背中に乗っかって、何かが変わるの?」

提督「大抵この状態になっているせいかは知らないが、こうされると非常に落ち着く」

利根「我輩も凄く落ち着くぞ」



98:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/11/30(日) 23:00:50.70 ID:BzWp/sCCo

響「なんというか……不思議な人達だね」

金剛「響もそう思いまシタか? 私もそう思いマース」

瑞鶴「不思議過ぎて何も言えないわ……」

利根「むう……提督よ、我輩達はそんなにおかしいのであろうか?」ギュー

提督「少数派だというのは間違いない」

瑞鶴「……いや、ただ単に惚気てるだけかしら?」

響「少なくとも私にはそう見えるよ」ジー

利根「とは言っても、恋愛感情は無いんじゃがのう」

提督「ああ。同じく無い」

金剛「……ホワッツ!? それ、本当デスか?」

提督・利根「うむ」

瑞鶴「傍目から見たら完全に長く付き合ってるような感じなんだけど……」

響「本当に交際とか結婚とかしていないの?」

提督・利根「特には」

金剛「……息がぴったりデース」

瑞鶴「ますます不思議ね……」

利根「我輩には分からぬぞ……」

提督「なんとなくは理解できるが、そこまで不思議なものなのか」

利根「我輩達にとってはこれが普通じゃからなぁ」

提督「まったくだ」

三人「…………」

金剛(本当、羨ましいデス……)

瑞鶴(良いなぁ……提督さんとそんなに親密になれて……)

響(私には無縁の話、だね……)



99:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/11/30(日) 23:03:35.27 ID:BzWp/sCCo

利根「? どうしたんじゃ三人共?」

提督「……さて、すまないが瑞鶴と響は少し頼まれてくれて良いか?」

瑞鶴「?」

響「なんだい、提督」

提督「こんな絶海の孤島に漂流してしまった二人は、助けが来るまでここで暮らさなければならないだろう。だから、私と利根の代わりに釣りをして欲しいんだ」

利根「む? 我輩達は何をするんじゃ?」

提督「利根は瑞鶴の修復をする際に使う資材集めと、私の知っている修復の手順を叩き込む。瑞鶴もずっとそのままというのは嫌だろう」

瑞鶴「う、うん。これはこれで恥ずかしい……」

提督「いつも暇だ暇だと言っているんだ。これから少しの間は勉強の時間だ」

利根「ふむ。なるほどのう。瑞鶴と響が良いのであれば我輩は構わぬぞ」

響「無論だよ。これからお世話になるんだ。いくらでも手伝いたい」

瑞鶴「……………………」

瑞鶴「……あの、さ」

利根「うん?」

瑞鶴「私、中将さんに修復されても……良いかなって思う」

提督「無理をしていないか?」

瑞鶴「は、恥ずかしいのは勿論よ!? ただ……なんというか、信用できるって思ったの。本当に、ただなんとなくなんだけどさ」

提督「ふむ。瑞鶴、私の目を見ろ」

瑞鶴「え? う、うん」ジッ

提督「今言った事に嘘偽りは無いな?」ジッ

瑞鶴「は、はい……!」ビクッ

利根(うぬ? 怖いのかの?)

提督「……………………」

瑞鶴「…………」ビクビク



100:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/11/30(日) 23:04:05.26 ID:BzWp/sCCo

提督「ふむ、そうか。ならば工廠もどきの倉庫へ行こう」

利根「我輩はどうすれば良いか? 釣りで構わんのかの?」

提督「瑞鶴による。私と二人になるのが怖ければ、利根や金剛、響も一緒に付いてきて貰うが、どうする」

瑞鶴「え。え、えーっと……」チラ

提督「釣りの事は気にするな。食料の備蓄はある」

瑞鶴「……できれば金剛さんと響ちゃんが付いてきてくれると、安心できると思う」

提督「そうか。金剛、響、すまないが付いてきて貰っても良いか?」

金剛「オーケーですヨー」

響「私も問題ないよ」

提督「そうか。では利根、戻ってくるまで釣りを頼む」

利根「任されよ! 我輩がんばって大漁を目指すぞ!」

提督「頼もしい言葉だ。──さて、行こうか」スッ

…………………………………………。

瑞鶴「……ほ、本当に直った」

金剛「コンプリートリカバリィ。手際が良いデスね」

響「けど、本当に良かったのかい? 足りなかった鋼材を利根さんの艤装を解体して使っちゃったけど」

提督「ああ。構わんよ。どうせ利根も使わん。腐らせるくらいならば何かに使った方が良い」

瑞鶴「……今更だけど、本当に利根さんは良いって言うのかしら」

提督「一年以上も放置しているものだ。それに以前、利根にも聞いた事があるが、この島で艤装は重くて邪魔なだけなようだ」

金剛「確かに邪魔になると思いマス。私もそろそろ降ろしてしまおうかと考えていまシタ」

瑞鶴「敵が来たらどうするの?」

提督「滅多に現れんし、現れたとしても放置していれば向こうも襲ってこない。そもそもこっちは陸に上がっているからな」

響「そんなものなんだね」

提督「鎮守府ならば攻撃されたかもしれんが、小屋みたいな物と小さい住居があるくらいの場所だから攻撃する必要も無いと判断されているのだろう」

瑞鶴「ふーん……?」



101:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/11/30(日) 23:04:45.00 ID:BzWp/sCCo

提督「三人も邪魔だと思ったら偽装を降ろして構わん。錆びてしまうかもしれんが、大事に保管するぞ」

響「じゃあ、私はもう降ろしておくね」ゴソゴソ

提督「いくらなんでも判断が早すぎないか」

響「一年以上も艤装無しで暮らしていけてるみたいだから、大丈夫だと思ったよ。それに、これからは無駄に体力を消耗する訳にもいかなくなるだろうしね」

提督「聡明な子だ」ナデナデ

響「────」

提督「さて、三人は利根の所へ戻って釣りをして貰って良いか」

金剛「提督はどうするデス?」

提督「私は塩を回収してくる。今以上に塩は必要になるはずだ」スッ

金剛「あの塩田デスか。了解しまシタ」

提督「では、行ってくる」スタスタ

金剛「…………提督って、全くやらしい目をしまセンでシタね」

瑞鶴「うん。初めは恥ずかしかったけど、あの真剣な目を見たらそんな気持ちも無くなったわ。むしろ、丁寧に直してくれて嬉しかった」

響「……………………」スリスリ

金剛「? 頭を撫でてどうしたデスか、響?」

響「ん。人に頭を撫でられるのって、思ったよりも気持ち良いものだと思ってね」

金剛「…………」

瑞鶴「そうなの?」

響「私はそう思ったよ。今まで考えた事もなかったけど、良いものだね、あれは」

瑞鶴「へぇ。今度、私もお願いしてみようかしら」

響「正直、私は病み付きになりそうで少し怖い」

瑞鶴「そ、そこまで?」

響「自分でもビックリさ。落ち着けるって言えば良いのかな。とにかく、何かが解れていきそうな感覚がするんだ」

瑞鶴「ふーん?」

金剛「…………」

金剛(あの手が、テートクのものであれば良いのにと思うのは、私だけなのでショウか……)

……………………
…………
……



113:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/12/05(金) 13:25:20.97 ID:QM9fTvReo

瑞鶴「……やる事がないんだけど」

利根「三日で暇で死にそうになったか。思ったよりも早いのう」

瑞鶴「畑の拡張も終わっちゃったし、お魚も夕飯の分も獲り終わってるし、塩田とか水の確保の仕方も教えて貰ったし……何をすれば良いのよ」

提督「好きにだらけていて良いぞ。ここでの敵の一つは暇潰しだ」

響「……本当に随分と自由だね」

金剛「私も、もっと生きるのに必死になると思っていまシタ」

提督「ここまでだらける事が出来るのも珍しいものだろう。話を聞く限りでは普通、その日の食料と水を確保するだけでも相当な時間と労力が必要になるらしい。私達は運が良いんだろう」

瑞鶴「漂流して運が良いって言えるのかどうかは分からないわね……」

響「暇ではあるし色々な物は無いけれど、のんびりと出来て生きるのにそこまで苦労はしないっていうのは充分に運が良いと思うよ」

利根「考えが年相応ではないのう。頭が良いのか、それとも見た目が子供なだけで長生きしておるのかの?」

提督「その口調であるお前が言うと違和感を覚えるな」

利根「口調は仕方がなかろう。それとも、提督は嫌いか?」

提督「いいや。利根らしくて良いと思っている。むしろ、無理に変えようとしないでくれ。その時は私が困惑する」

利根「ほう。提督を困った顔を見れるのならばやってみても良いかもしれんのう?」

提督「一週間くらい部屋で吊られたいのならばやってみろ」

利根「やらぬ……絶対にやらぬ……」ビクビク

瑞鶴「……吊るす? どういう事?」

提督「私が罰としてよくやっていたものだ。縛り上げて部屋に吊るし上げるんだ」

響「……それって、縄を食い込ませて痛めつける罰なのかな」



114:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/12/05(金) 13:26:00.43 ID:QM9fTvReo

利根「痛くはないぞ。痛みは無いが、下着が見えて恥ずかしかったというのと……何よりも仁王立ちしている提督が閻魔のように怖くてのう……」

利根「今では羞恥こそ無いが、どうしても怖さが身に染み付いていて……今でも条件反射的に怖いんじゃ……」ビクビク

響「……想像出来ないね。怖いイメージが全然無いんだけど」

金剛「私も怖いイメージはほとんどありまセン」

瑞鶴「ジッと目の奥を見てくるのが怖かったくらいかしら……」

利根「知らぬ方が良い事もあるものじゃ……」

提督「酷い言われようだな」

利根「事実ではないかー」ノシッ

提督「確かにそうだな」

響「…………」ジー

利根「うん? どうかしたのかの?」

響「ん、少し気になってね」

提督「何がだ」

響「そうやって背中にのしかかるのって、本当に落ち着けるものなのかと思ったんだ」

提督「……どうなんだろうな。普通ではないような気もする」

利根「我輩は物凄く落ち着くぞ」

響「少し、試させてもらっても良いかな」

提督「利根次第だな」

利根「ん? なぜ我輩なのじゃ?」

提督「今お前がのしかかっているからだ」

利根「そうじゃったな。我輩も構わぬぞ。ほれ」ペシペシ

提督「人を乗り物みたいに扱うんじゃない」



115:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/12/05(金) 13:26:26.87 ID:QM9fTvReo

響「それじゃあ、お言葉に甘えて」ソッ

提督「……軽いな」

利根「提督よ、それは遠回しに我輩が太っておると言いたいのかのう?」ジッ

提督「身長の差を考えろ。それと、素直な感想だ」

利根「それなら良いかの。──ああそうじゃ響よ。もっと体重を掛けた方が良いと思うぞ」

響「流石にそれは提督が辛くならないかな?」

利根「我輩は普段から体重を少し掛けておる。提督ならば適度な重量感を欲しておるじゃろう」

響「本当かい、提督?」

提督「利根が全てを言ってくれた。問題無いぞ」

響「それなら……」ノシッ

提督「ふむ……それでもやはり軽いな」

瑞鶴「……なんだか親子みたい」

金剛「私は親戚の子供に懐かれてるお兄さんに見えマース」

響「思った以上に良いものだね、これは。優しい人の体温は、とても心地良い」

利根「……………………」チクチク

利根「?」ジッ

金剛「どうかしまシタか、利根?」

利根「や、何やら胸に虫かゴミでも入ったのかと思うてな。チクチクするぞ」ヌギヌギ

瑞鶴「ちょっ!? な、なな何たくし上げてるのよ!?」

提督「…………」スクッ

響(おっと)スッ



116:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/12/05(金) 13:26:54.72 ID:QM9fTvReo

響「それじゃあ、お言葉に甘えて」ソッ

提督「……軽いな」

利根「提督よ、それは遠回しに我輩が太っておると言いたいのかのう?」ジッ

提督「身長の差を考えろ。それと、素直な感想だ」

利根「それなら良いかの。──ああそうじゃ響よ。もっと体重を掛けた方が良いと思うぞ」

響「流石にそれは提督が辛くならないかな?」

利根「我輩は普段から体重を少し掛けておる。提督ならば適度な重量感を欲しておるじゃろう」

響「本当かい、提督?」

提督「利根が全てを言ってくれた。問題無いぞ」

響「それなら……」ノシッ

提督「ふむ……それでもやはり軽いな」

瑞鶴「……なんだか親子みたい」

金剛「私は親戚の子供に懐かれてるお兄さんに見えマース」

響「思った以上に良いものだね、これは。優しい人の体温は、とても心地良い」

利根「……………………」チクチク

利根「?」ジッ

金剛「どうかしまシタか、利根?」

利根「や、何やら胸に虫かゴミでも入ったのかと思うてな。チクチクするぞ」ヌギヌギ

瑞鶴「ちょっ!? な、なな何たくし上げてるのよ!?」

提督「…………」スクッ

響(おっと)スッ



117:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/12/05(金) 13:27:29.14 ID:QM9fTvReo

利根「取り払おうかと思ったのじゃが、どうかしたのかの?」

提督「やめんか」ペシッ

利根「あいたっ! 何をするんじゃ提督よ」

提督「普通の子は人前で躊躇無く服など脱がん。肌を晒すのは極力控えろ」

利根「むー……ん? チクチクが無くなったぞ」モドシモドシ

響「落ちたのかな?」

利根「恐らくそうじゃろうな。提督が頭を叩いたおかげかの?」

提督「さて、どうだろうな」

利根「まあ、良かった良かった」

金剛「……なんだか、フリーダムなのは利根だけのような気がしてきまシタ」

提督「私も大概自由奔放だと思うが」

瑞鶴「いやぁ……確かに中将さんも自由だけど、常識があるじゃない」

利根「我輩が常識知らずなのはこの島での暮らしのせいじゃな」

提督「私も同じ時間を過ごしているはずだが?」

利根「ほれ、二人きりだった時の飼い主に似たのじゃよ」

提督「ならば、今の飼い主に似るよう頑張って貰おうか」

利根「時間が解決してくれるじゃろう。この島に来た当初もそうであったしの」

響「……そう言えば、二人は何年ここに居るんだい?」

提督「二年くらいだ」

利根「正確には二年と約八ヶ月じゃな」

瑞鶴「二年半以上!? よくそんなに暮らせてるわね!?」

金剛「ワーォ……」

響「……正直、驚いたよ」



118:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/12/05(金) 13:27:56.77 ID:QM9fTvReo

利根「いやはや、こう口に出してみると長い間のんびりとしておるんじゃのう」

提督「そうだな。もはやこの暮らしが普通になってきているよ」

瑞鶴「……私も利根さんみたいに解放的になっちゃうのかしら?」

提督「私がそうならないよう監視しておこう」

瑞鶴「お願いします」ペコッ

提督「任せておけ」

響「利根さんも初めは普通だったんだよね?」

利根「どうじゃったろうか。我輩はいつも普通にしておるからのう」

提督「初めはしっかりと一般的だったぞ。私のベッドに潜り込んできてから徐々にこうなり始めた」

金剛「何かシタのデスか?」

提督「いや。何もしていない。強いて言うならば、その日は寒かったからお互い身を寄せ合ったくらいか」

瑞鶴「そ、それってつまり……」ドキドキ

提督「瑞鶴の考えているような事はしていない。一度たりとも手を出していないよ」

利根「そんな余裕は無かったからのう」

瑞鶴「……そうなんだぁ」

響「なんでそんなに残念そうにしているんだい?」

瑞鶴「やっ、ちょ、ちょっと気になっただけよ? うん、本当よ?」

金剛「これは相当気になっていたデスねー?」クスクス

響(あ、まただ)

瑞鶴「あ、う……そ、んな事よりっ! 金剛さんが珍しく笑ってるわね!?」

金剛「!」



119:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/12/05(金) 13:28:36.08 ID:QM9fTvReo

利根「あからさまな話題逸らしじゃのう……」

瑞鶴「イヂられるのって苦手なのよ……。すっごく恥ずかしいんだからね?」

利根「ほう。ほうほう」ニヤニヤ

瑞鶴「ぅー……中将さん、助けて……」

提督「……なるべくさせないようにはするが、少しは受け入れてやってくれ」

利根「つまるところ、提督もイヂりたいと思うたのじゃな?」

瑞鶴「そんな!?」ビクンッ

提督「……ノーコメントだ」

瑞鶴「う、うぅー……」

金剛「……………………」

響「…………」チラ

響(自覚、していなかったのかな)

響「…………」クイクイ

金剛「っ」ビクッ

金剛「……どうかしましたか、響?」

響「ん、なんでもないよ」

金剛「?」

提督(……ふむ)

…………………………………………。



162:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/12/08(月) 14:47:29.73 ID:voDs/kGEo

提督「…………」グッグッ

提督「ふー……」スッ

利根「ん、柔軟体操は終わったかの?」

提督「ああ。そろそろ寝ようか」

利根「うむ! ほれ、早う入ってくるのじゃ!」ポフポフ

提督「…………どうした利根。今日はやけに急かしてくるじゃ──」

利根「……………………」ポフポフポフポフポフポフポフポフ

提督「……分かったから大人しくしろ。見ていてうるさいぞ」スッ

利根「ふふん」ギュッ

提督「それで、一体何があった」

利根「ん? ただ単にこうしたかったからじゃよ」ギュー

提督「ほう。どうしてだ」

利根「…………」ピタ

利根「……あれ。どうしてじゃ? なぜじゃ、提督?」

提督「私に聞くんじゃない」

利根「ううむ……そうじゃよのう……提督に聞いても分からぬのぉ……うーむ……?」

提督「…………」

利根「まあ良いかの。人肌が恋しいという事で納得しておこうぞ!」ギュウ

提督「いい加減だな」

利根「ダメだったかの?」

提督「いや、お前らしい。……あんまり変わってくれるなよ?」

利根「? うむ?」

提督「分からないのならば構わない。──さて、寝ようか。瞼が重い」

利根(うーむ……。こんな気持ちは初めてじゃのう。なんじゃろうか、これは?)

…………………………………………。



163:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/12/08(月) 14:48:19.05 ID:voDs/kGEo

瑞鶴「よっと。響ちゃん、大丈夫?」

金剛「苦しくないデスか?」

響「大丈夫だよ。苦しくない」

金剛「意外と三人でも入れるネー」

瑞鶴「でも、響ちゃんが大きくなったら無理かも?」

響「暁はお子様というのを嫌うけど、小さくても良い事はあるよね。こうやって、三人で一緒に寝るとかさ」

金剛「まるで年の離れた妹みたいデース」ナデナデ

響「ん」

瑞鶴「…………」ジー

金剛「? どうかしたデスか、瑞鶴?」

瑞鶴「……金剛さんさ、ここに来てから変わった?」

金剛「え?」

瑞鶴「や、なんていうかさ? 表情が前にも増して柔らかくなってるし、口調もどことなく初めに会った時みたいな感じだしさ?」

金剛「ンー……そうデスか?」

響「肩の力が抜けてる、なのかな。なんだかそんな感じがするよ」

金剛「あ、確かに今は気が抜けていると思いマス」

瑞鶴「気が抜けてるとかそういうのじゃないと思う。……言って良いのか分かんないんだけど、安心してる……みたいに見えるわね」

金剛「リリーフ、は……少ししているかもしれまセンが、私は心配事も沢山ありマス」

金剛「今頃、テートクはどうしているのかトカ、艦隊はどういう状況なのかトカ、皆の事も気になっていマス」

瑞鶴「…………? えと、どれも私達に聞いてこなかったわよね?」



164:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/12/08(月) 14:48:54.76 ID:voDs/kGEo

金剛「──え」

響「瑞鶴さん……」

瑞鶴「え、あれ……?」

金剛「……………………」

瑞鶴(もしかして私、地雷踏んじゃった……?)

金剛「……今更デスけど、訊いても良いデスか?」

響「司令官は今も金剛さんを探し続けているよ。作戦と同時に金剛さんの捜索も命令されたんだ」

瑞鶴(……え?)

響「艦隊は……金剛さんが抜けてしまってから少しゴタゴタがあったけど、今は大丈夫。けど、前より少し辛いかな」

金剛「…………」

響「鎮守府の皆も、金剛さんの事を心配してるよ」

金剛「……瑞鶴」

瑞鶴「な、なにかしら?」ビクッ

金剛「今の話、本当デスか?」

響「…………」チョンチョン

瑞鶴「! も、勿論」

金剛「……………………」

瑞鶴「…………」ドキドキ

金剛「……ありがとうございマス、二人共。そして、気を遣わせてしまってごめんなサイ」

響「……やっぱり、バレるものだね」

金剛「テートクの事は、私も良く知っていますから……」

瑞鶴「で、でもね? 後の二つは本当よ? むしろ、皆が提督さんにお願いして金剛さんを探そうとしてるんだもん」

金剛「そう、ですか……。皆が無事で、心配してくれているだけでも私は充分です。私は幸せ者ですね」



165:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/12/08(月) 14:49:21.37 ID:voDs/kGEo

響「……ごめんよ、金剛さん」

金剛「大丈夫です。……大丈夫ですよ、響。分かっていた事ですから」ナデナデ

金剛「でも……テートクの事は詳しく知りたいデス。実際の所、どうだったのデスか?」

響「私はそこまで詳しい事は知らないけど、瑞鶴さんは知ってるはずだよ。あの時、最後まで執務室に残ってたもんね」チラ

瑞鶴「…………」

金剛「瑞鶴、教えてくれマスか?」

瑞鶴「……気分の良いものじゃないわよ?」

金剛「……ハイ。お願いしマス」

瑞鶴「…………居なくなったって耳にしたら、轟沈したかって一言で終わろうとしていたわ。まるで、何とも思っていないみたいに……」

金剛「っ……!」

瑞鶴「どうにかして探す指示を貰えるよう色々と言ってみたけど、ダメだった。長い時間を掛けて育てた艦娘って言ってもダメ。戦力的な理由でもダメ。育て直す時間の事を追求しても──」

響「それ以上は言っちゃダメだよ」ポムッ

瑞鶴「むぐっ──。……ごめん。もう少しオブラートに包めば良かった」

金剛「────────」

瑞鶴「あ、あの……金剛さん……?」オソルオソル

金剛「……私が、居るのですか?」

瑞鶴・響「…………」

金剛「建造か、それとも海から拾ってきたのかは分かりませんが……別の私が、居るのですか?」

瑞鶴「……うん。今頃、金剛さんの代わりに戦ってると思う」

金剛「そうですか……別の私が既に……」



166:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/12/08(月) 14:49:48.05 ID:voDs/kGEo

響「……実はさ」

金剛「…………?」

響「瑞鶴さんが被弾したのって、その二人目の金剛さんを庇ったからなんだ」

金剛「え……? どうして庇ったのですか……?」

瑞鶴「……だって、明らかに直撃コースだったんだもん」

金剛「それでもデス。戦艦なのデスから、早々に沈む事なんてありまセン。むしろ、空母である瑞鶴が──」

瑞鶴「──違うの」

金剛「?」

瑞鶴「全然さ、錬度が違うの。危なっかしくて、動きも遅くて、精度も良くない。……金剛さんと同じ姿と声だけどさ、何もかも違うの」

金剛「……………………」

瑞鶴「なんだか見ていられなくなって……気付いたら、庇っちゃってた。いつも大破してばっかりだけど、今回ばかりは本当に沈んじゃうんじゃないかって思って……」

金剛「……テートクに叱られたでショウね」

瑞鶴「アハハ……役立たずって通信で罵られちゃった」

金剛「っ!」ビクッ

金剛(役立たず……ですか)

瑞鶴「ケッコンした艦を二隻も三隻も失う訳にはいかないって言って、私は護衛退避させてくれたの。……嬉しかったけど、悲しかった」

瑞鶴(私を失う事じゃなくて、ケッコンしている艦を失う訳にはいかない、なんてね……)スッ

瑞鶴(……私の左薬指に付いてる、この質素な指輪。これって、提督さんにとってはどういう意味なのかしら……)

響「……司令官って、皆と結婚してるの?」

金剛「沢山の艦娘達とケッコンしていマスよ。ですがそれは、それだけ優秀な人である証なのデス」

瑞鶴「ケッコンするには並大抵じゃない錬度が条件だもんね。そんな子達が何人も居るって事は、それだけ戦力を備えてるって事でもあるわ」

響「……私も、いつか司令官と結婚するのかな。いや、そもそもこの国って重婚を認めてたの?」

瑞鶴「あ、えっとね、正式な結婚じゃないの。仮の結婚で、ケッコンカッコカリって言った所かしらね」

響「えっと……どういう意味なんだい?」



167:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/12/08(月) 14:50:29.12 ID:voDs/kGEo

金剛「書類にはサインをしマスし、指輪も頂けマス。けど、役所には提出しない……というものネ。代わりに総司令部に提出するデス」

響「指輪って交換する物じゃなかったかな?」

瑞鶴「ほら、交換だったら提督さんの指に嵌りきらなくなるでしょ? そういう理由もあって指輪は私達が貰うの。だからケッコンカッコカリって言うのも間違いじゃないのよね」

響「結婚するけれど結婚じゃない、か……」

金剛「でも、私達はこれで充分デス。戦う道具であり兵器である私達が、人並みの幸せを手に出来るのデスから」

響「…………」

金剛「一番最初にケッコンをしたのって、祥鳳さんでシタっけ」

瑞鶴「そうだったわね。祥鳳さんって、いっつもキス島に借り出されてたから当然だと思うけど」

金剛「二番目が赤城で、三番目は瑞鶴」

瑞鶴「金剛さんは六番目だったかしら。提督さんが空母以外の子と初めてケッコンしたのよね」

金剛「そうデス。……あの時は、幸せで幸せで仕方が無かったです」

瑞鶴「……私も、泣いて喜んだわ」

金剛「早く、テートクの下に帰りたいデスね」

瑞鶴「うん……」

響「……………………」

響「ねえ、金剛さん、瑞鶴さん」

瑞鶴「ん?」

金剛「どうしまシタ、響?」

響「二人は、本当に幸せなの?」

金剛・瑞鶴「え?」



168:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/12/08(月) 14:51:04.92 ID:voDs/kGEo

響「ケッコンカッコカリの事は分かったよ。そして、ケッコンすると精神的に強くなる事で能力も上がるって話も耳にした事がある。けど、二人はそれで本当に幸せなのかな」

金剛・瑞鶴「…………」

響「少なくとも普段の酷使され具合から見て、私は二人が幸せに見えなかったよ。今もそう。二人は帰りたいって思ってるのは分かるけど、それだけじゃないって感じだった」

響「金剛さんと瑞鶴さんは使い勝手が良いからよく出撃させるっていう話も司令官から聞いた。二人もそれは知ってると思う」

金剛・瑞鶴「……………………」

響「確かに私も司令官の下に帰りたいって思うよ。……けど、最近思うんだ。あれだけ頑張った二人は、そろそろ羽を休めても良いんじゃないかなって。金剛さんはここに来てから笑うようになったし、瑞鶴さんも疲れが取れてるように見える」

瑞鶴「それは……」

響「傍から見て、凄く可哀想って思ってた。だって、ほとんど休んでいなかったよね。食事も、入渠も、寝る時さえも、なんだか急いでるように見えた」

金剛「響……」

響「もし、その指輪を嵌めたらそうしないといけなくなるのなら……私は、そんな呪いの指輪なんて要らない。幸せになるはずの結婚なのに、それ以上に辛い思いをしないといけないなんて間違ってる」

金剛「呪い、デスか……」

瑞鶴「……そうね。確かに、これは呪いの指輪なのかもしれないわ。もっと提督さんの役に立たなくちゃって思うし、無茶もしてると思う」

金剛「ケド、それで良いのデスよ、響」

瑞鶴「これが私達……これが艦娘だから、ね」

響「……………………」

金剛「私の喜びは、テートクが喜んで下さる事デス。その為でしたら、この身をいくらでも差し出しマス」

瑞鶴「私もよ。例え本命でなくても、報われない想いでも、それで良いの。私は、この指輪をくれただけでも幸せだから」

響「……艦娘って、何なのかな」

響「二人の言ってる事はよく分かるし、納得も出来る。出来てた。……けど、ここに来てから、それって何かおかしいんじゃないかって思ってきた」

響「提督の利根さんを見てると、本当の結婚って、ああいう事を言うんじゃないかなって思った。お互いにお互いの良い所も悪い所も理解して、受け入れて、全てを曝け出せる関係……それが、結婚なんじゃないかなって、思った」

金剛・瑞鶴「…………」



169:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/12/08(月) 14:51:48.30 ID:voDs/kGEo

響「私って、間違ってるのかな」

金剛「それは……」

瑞鶴「……分からないわ」

響「…………」モゾモゾ

響「イズヴィニーチェ。変な事を言っちゃった。外の空気を吸ってくるね。二人は先に寝ていてもらって良いかな」

金剛「……響」

響「? なんだい、金剛さん?」

金剛「響は……テートクの事、好きですか?」

響「勿論だよ。司令官は、私のたった一人の司令官さ。嫌いになる理由も無いよ」

響「……不思議だよね。やってる事は酷いはずなのに、何もかも……信用も信頼も出来るなんてさ」

瑞鶴「…………」

響「──スパコイナイノーチ」

金剛「……グッナイ」

瑞鶴「……おやすみ。ちゃんと、戻ってくるのよ?」

響「問題無いさ。ちゃんと戻るよ。ここにも、司令官の下にも」トコトコ

金剛・瑞鶴「…………」

金剛「……瑞鶴、私達がおかしいのでショウか」

瑞鶴「どうなのかしら……。響ちゃんの言ってる事もよく分かるんだけど……」

金剛「壊れているのデスかね……私達」

瑞鶴「かも……しれないわ」

響「……………………」トコトコ

響(私、おかしいのかな……)トコトコ

提督「…………」パチ

利根「くー……」

提督(今、誰かが外に行く音が聞こえたな。様子を見に行くか)ソッ

利根「んー……」モゾ

提督(……起きてくれるなよ。お前はゆっくり休んでいてくれ)ナデ

利根「…………くー……」



170:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/12/08(月) 14:52:40.24 ID:voDs/kGEo

提督(しかし、誰が外に行ったんだ? 可能性としては金剛か瑞鶴……いや、瑞鶴だろうか。金剛は大人しくしているから、夜に外へ行くとは思えん)

提督(──む。人影……あっちか。砂浜に向かっているな)スッ

提督(……まさかとは思うが、こんな時間に海へ出ようとしているのか?)

響「…………」スッ

響「…………」ボー

提督(……座りこんで海を眺めている? 暗くてよく見えないと思うが、何かあったのか?)

提督「こんな時間にどうした、響」

響「!! ……提督、それは私の台詞でもあるよ。どうしたんだい、こんな時間に」

提督「珍しく目が覚めてしまってな。少し夜風に当たろうとここまで来たんだ」

響「気を遣わせてしまったね。ありがとう」

提督「……時々、お前の察しの良さには驚きを隠せん。隣、座るぞ」スッ

響「なんとなく分かるだけだよ。確実って訳でもないし、そんなに凄いモノじゃないさ」

提督「それでも充分だ」

響「……実はね、少し二人に嫌な事を言っちゃったんだ」

提督「うん? 金剛と瑞鶴にか?」

響「うん。二人は司令官とケッコンしていて、二人とも口を揃えて幸せだって言ってた。けど、私にはそう見えなかった。ううん、見えなくなった」

提督「…………」

響「いつも辛そうな顔を隠していたのは分かってたし、司令官は提督業だけで二人と一緒に居る時間なんて無かった。本当に、ただの武器や兵器としてでしか使っていなかったんだ」

提督「それは……よくある話だ」

響「うん。だから、私もそれが普通だって思ってた。……けど、ここに来てからその考えはおかしいんじゃないかって思ってきたんだ」

提督「ほう? 利根の姿を見てそう思ったのか」

響「そうだよ。あんなに懐いていて、心を許して、何をしてもされても受け入れてしまいそうな関係……提督と利根さんの関係こそが、結婚をした関係だと私は思った」

響「一度そう思ってしまったら、今まで何もかもがおかしいって思ってきて……。もしかして、私がおかしくなったのかなって思ってくる程だった」

響「ねえ、提督。これは、金剛さん達がおかしいのかな。それとも、私がおかしいのかな」



171:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/12/08(月) 14:53:15.52 ID:voDs/kGEo

提督「……そうだな。どっちもおかしくない。それは人の思想の違いだ」

響「思想の違い?」

提督「世の中には十人十色という言葉がある。人によって考えや性質が違うという意味だ。だから、金剛と瑞鶴は自分達の提督に使われる事に喜びを感じているのかもしれん」

響「……でも、毎日が辛そうだったよ。ここでは金剛さんは柔らかい笑顔をするし、瑞鶴さんも疲れが取れたような顔をしてる」

提督「そこまでいくと本人達にしか分からない事だ。私は予想をする事しか出来ん」

響「提督はどう考えるの?」

提督「そうだな……。奉仕精神が強い、とかじゃないかな」

響「奉仕精神……」

提督「ああ。人の役に立っている事が好きなのかもな。──いや、正確には自分の提督の役に立つ事が好きだと言った方が良いか」

響「限度はあると思うんだ」

提督「その限度も、また人によって違う。響は自分の提督から与えられた指示を完璧にこなして『良くやった』の一言を貰ったらどう思う?」

響「そりゃ嬉しいさ。……ああ、なるほどね。その言葉が欲しいから、無茶な指示にも従ってしまうってものかな」

提督「たぶん、な。実際はどうなのか分からん」

響「……………………」

提督「理解は出来ても、納得は出来ないか?」

響「……うん」

提督「人というものはそういうものだ。そういう所を妥協し合って生きていくのが人だ」

響「…………ねえ、提督」

提督「どうした」

響「艦娘って、何なのかな」

提督「質問があやふや過ぎてよく分からんぞ」

響「ん。艦娘ってさ、人間と違う部分は兵器を扱えるかどうかだって思ってたんだ。……けど、なんとなく……私たち艦娘は、自分の司令官の駒として存在しているのかなって思ってきた」

提督「……………………」



172:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/12/08(月) 14:53:42.52 ID:voDs/kGEo

響「それともやっぱり、人間と違うのかな。……悪く言えば、人間の良いように使われる事に喜びを感じるのが艦娘なのかな」

提督「……そうだと言ったら、どう思う?」

響「提督の言う事だからね。そういう存在だって飲み込むよ」

提督「……そうか。だが、すまないが私は答える事が出来ない」

響「提督にも分からない事があるんだね」

提督「沢山ある。私は無知の部類だ」

響「それは謙遜し過ぎだよ。提督はそんな事ないって私が保証する」

提督「ありがとう、響」ナデナデ

響「ん……。じゃあ、背中に身体を預けても良いかな」

提督「気に入ったのか」

響「うん。気に入っちゃった」

提督(……自分の提督に出来ない事を、私で代用しているといった所か)

提督「全体重は掛けるんじゃないぞ」

響「うん。……スパスィーバ」

提督(本来ならば、自分の親となる存在にもっと甘えても良い年頃なんだがな……)

提督(私がそうなってみるか? ……いや、無いとは思うが、それで響の提督よりも私に懐いてしまっては大問題だ。利根とは違って少しは線引きを考えねばならんな)

響「……温かい」スリ

提督「そうか」

提督(少し、困ったな)

……………………
…………
……



190:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/12/13(土) 22:44:42.92 ID:d4u3C76vo

提督「良い事を思いついた」

利根「うぬ? どうしたんじゃ、提督よ?」

提督「私や利根はともかくとして、金剛達は元の鎮守府へ戻りたいと思っているだろう?」

金剛「……ええ、そうデス」

瑞鶴「まあ、そりゃそうよね」

響「……………………」

提督「私達が気付かないだけでこの海域の近くを誰かが通っているかもしれないというのを考えると、SOSサインを作るべきだと思ったんだ」

瑞鶴「そういえば作ってなかったわね……」

金剛「でも、エネミーもサインに気付いて襲ってきまセンか? 今は目立たないから放置されているだけでショウし……」

提督「充分に考えられるが、何もしないで気付いて貰えるとは思わないだろう?」

響「私はサインを作る事に賛成だよ。立ち止まって何もしないよりも、前に進んで倒れる方が良い。」

瑞鶴「……うーん。もし深海棲艦と戦いになったらどうするの?」

提督「そうならないように金剛達はなるべく隠れていてくれ。人間が島に一人しか見えないのなら襲う事も少ないだろう」

金剛「…………?」

瑞鶴「隠れるって……この家の中にずっと?」

響「それは……提督に凄く負担が掛かるんじゃないかな」

利根「我輩はいつも通りにして構わぬのか?」

提督「ああ。SOSサインを作ったら、そこからは私と利根の二人が食料や水を確保する」

金剛「……その間、私達は何をすれば良いデス?」

利根「好きにだらけておって構わぬのでは?」

提督「そうだな。ボーっとしていてくれても構わない」



191:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/12/13(土) 22:45:11.89 ID:d4u3C76vo

瑞鶴「ちょっとちょっと。それは流石に出来ないわよ。それってもう協力し合ってるんじゃなくて、私達が寄生しているようなものじゃないの」

響「うん。私もそれは物凄く思う」

提督「そうとは言っても、この家の中で出来る事はほぼ無いからな」

利根「そうじゃ。掃除をして貰うのはどうじゃ?」

提督「良いな。それでいこう」

金剛「三人で掃除をする程度なんてイーブンではありまセン。もっと何かやる事が欲しいデス」

提督「む……困ったな……」

瑞鶴「うーん……何があるからしら……」

響「家の中でも火が使えたら良いんだけどね。それなら多少は私達にも出来る事が増えるし」

金剛「それは無謀デース……ガスではないので煙が大変な事になってしまいマスし、扱いを間違えると全焼デス」

利根「使っていない部屋を改造して壁でもぶち抜いてみるかの?」

提督「素直に海からは見えにくい位置に竃を作れば良いだろ。変な事を言い出すな」

利根「真剣に物事を考えると死んでしまう病での」ノシッ

提督「そんな病があってたまるか」

利根「じゃが、作ったとしても燃料はどうするのじゃ?」

提督「確保出来ないな。諦めよう。……いや、鉄板を太陽光で熱して使うのも良いかもしれんな。それならば燃料は必要ない」

利根「良い案じゃとは思うが、大丈夫なのかの?」

提督「……ふむ。よく考えてみればメンテナンスが大変だ。おまけにそんな資材も無い」

利根「あれはどうじゃ? あの鉄の箱に入れておいて魚を蒸す道具を分解すれば確保できるのではないか?」

提督「魚を生で食べて寄生虫に怯えるか塩漬けの二択になるが、それで良いのならやろうか」

利根「止めておこうかの。塩漬けのみなど地獄じゃ」

提督「懸命だな。私も出来れば最低でも二種類は欲しい」



192:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/12/13(土) 22:45:41.03 ID:d4u3C76vo

利根「じゃが、どうにかして焼き料理もしたいのう。提督と我輩の二人ならばそれでも構わぬだろうが、三人はつい最近ここへ来たばかりじゃ。そろそろ飽きてくるはずじゃぞ」

提督「そこも問題の一つだな。このままではいくらなんでも精神的にキツイだろう。今までの流木を薪として使う方法ではなく、炭も同時に作ってみるか?」

利根「ふむ。炭を作ると何か変わるのかの?」

提督「初めは炭を作って、その炭を燃料に炭を作りつつ料理をすれば効率的だと思うのだが」

利根「それは魚が焼けるほど火力はあるのかのう」

提督「炭の火力を侮ってはいかんぞ。ガスなどが無い時代は薪ではなく炭で料理をしていたという話も耳にしている。おまけに長い時間を掛けて燃えるから扱いやすい。火を消せば再利用も出来る。唯一の問題は薪よりも火を付け難い事か」

利根「ほう。中々に良いのう。……じゃが、どうして今までそれをしてこなかったんじゃ?」

提督「ここまで深く考えた事が無かった」

利根「なるほどのう。して、やはり竃は作らなければならんのじゃよな?」

提督「ああ。それが一番の問題だ。石を切る術など無いから組み上げるしかない」

利根「土や泥を固めて焼けば作れぬかの?」

提督「炭火程度でも割れてしまうだろう。あまりやりたくない」

利根「ふむう。ならば、石を探しに探して組むしかないのう」

提督「大変だがそれしかあるまい。という訳で探しに行こうか」スッ

利根「うむ。それが良いのう。善は急げじゃ」ストッ

金剛(さすが二年以上もここでサバイバルしているだけありマスね。とりあえず大きな石や流木を集めれば良いのでショウか?)

瑞鶴(えっと……つまりどういう事なのかしら……? トントンと話が進んで分からない……)

響「提督、何をしたらい良いのか分からないから指示を出して貰って良いかな」

提督「そうだな。まずは──」

……………………
…………
……



193:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/12/13(土) 22:46:14.00 ID:d4u3C76vo

提督「よっと──とりあえず見た目だけは完成したな」

利根「……なんじゃか、想像しておったのと大分違うのう」

提督「串に刺した魚を焼く事と、せいぜい石の上で何かを熱くするくらいしか出来んだろう。それだけ出来れば充分だとも思う」

瑞鶴「ただ……まさか完成するのに二日も掛かるなんて思わなかったわ」

金剛「石を探すのに苦労したネー……」

響「後ろの窪みが炭を作るスペース?」

提督「そうだ。これくらいの大きさなら砕いた木を炭に出来るだろう。……ただ、流木に少し余裕がある時でないと使えないから、あまり使う事は出来ないかもしれないが」

金剛「私達が集めた木では足りないデスか?」

提督「足りないという事はないが、失敗も考えると少し心許無い。焼き魚の頻度が減るかもしれないが、それでも良いのならば試してみる価値は充分にあるだろう」

瑞鶴「やってみたい! せっかく作ったんだし!」

響「私もやってみたいかな。凄く興味があるよ」

金剛「私も賛成ネ」

利根「早速、魚を焼くと同時に作ってみるとしようかの。どっちとも同じ木を入れて良いのかの?」

提督「構わないはずだ。だが、まずは一本で試してみよう。どうなるか分からん」

利根「了解じゃ」ゴソゴソ

金剛「それにしても、炭の作り方も知ってるだなんて博識デスね」

提督「いや、正確な作り方など知らんよ。鉄板の上で物を焼き過ぎたら炭になるだろう。直接火を当てなければ出来ると思っただけだ」

瑞鶴「あー、料理に失敗して丸焦げになるアレ?」

提督「そうだ。全くもっての勘だ」

響「出来ると良いね」

提督「ああ」

…………………………………………。



194:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/12/13(土) 22:46:55.59 ID:d4u3C76vo

利根「焼き魚は美味かったのう」

金剛「……肝心の炭は、芯まで黒くならなかったデスね」

瑞鶴「火が足りなかったのかしら……」

提督「それもあるだろうが、そもそもやり方が間違ってるのかもしれん。自然発火してしまったのも考えると、空気を遮断しなければならんのかもな」

響「じゃあ、蓋をするって事?」

提督「ああ。それと、木を敷き詰めて出来るだけ空気が入らないようにしなければならんだろう」

利根「次はそうして焼いてみるかの」

提督「また木材が溜まったらな」

利根「我輩、割と楽しみじゃ」

提督「そうだな。私も割と楽しみだ」

金剛(なんだか、二人って似ていマス)

瑞鶴「それにしても、木炭って作るのが難しいのね」

提督「売られたりするくらいだ。それなりの技術が必要なのだろう」

響「ただ、これで炭が作れるようになったら、少しは焼き料理も増やせるよね」

提督「今以上には作れるようになるだろう。効率だけで考えたら今までのやり方はかなり悪い」

利根「強火で燃やしておるのを遠火で焼いておるからのう」

提督「もし効率化できたら、風呂にももっと入れるかもな」

瑞鶴「良いわねそれ! ここだとお風呂って貴重だもの!」

響「瑞鶴さん、どっちにしろ節約はしないといけないから期待し過ぎない方が良いかもしれないよ」

瑞鶴「う……。そうよね……」

提督「まあ、どうなるか分からないんだ。やってみてから判断しよう」

金剛(……少し眠くなってきまシタ)

提督「さて……今日はここまでにしておこう。そろそろ眠い」

瑞鶴「大分暗くなってきたしね。私もちょっと眠い……」

利根「ここでの暮らしに慣れてきた証拠じゃのう」

響「全員で一緒に寝てみるかい?」

提督「私は遠慮しておく」

瑞鶴「あれ、どうして?」

提督「……私の性別を忘れているのか?」

瑞鶴「あー……なるほどね」

利根「ある意味、瑞鶴が一番この生活に慣れてきておるかものう」

提督「慣れるのは良い事だ。──では、各自部屋に戻って眠りに就こうか」

…………………………………………。



195:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/12/13(土) 22:47:22.90 ID:d4u3C76vo

利根「…………」モゾモゾ

提督「…………」

利根「…………」モゾモゾ

提督「……どうした利根。眠れないのか?」

利根「ん……少しの」

提督「珍しいな。何があった」

利根「分からぬ」

提督「そうか」

利根「のう、提督よ。久々にアレをしてみぬかの」

提督「……いきなりどうしたんだ」

利根「分からぬ。分からぬのじゃが、やって欲しいと思ったのじゃ」

提督「……そうか。だが、やらん」

利根「なぜじゃ?」

提督「危険だからだ。それに、出来ればもうアレはやりたくない」

利根「我輩は提督になら構わぬぞ?」

提督「お前が良くても私が良くない。今度こそ壊れるぞ」

利根「もう壊れておろうに。お互いのう」

提督「……そうだな。確かに、もうお互い壊れてしまっている」

利根「じゃろう。じゃから、そんな事を考えるのは今更じゃ」

提督「だが、それを踏まえた上でもやらん。今私達が壊れたら、あの三人は野垂れ死ぬ可能性が高い」

利根「…………そうじゃのう。それは良くないのう……」

提督「だから、諦めろ」

利根「あの三人が生きて帰ったら、やってくれるかの?」

提督「それでもやらん。出来ればもう壊れたくない」

利根「じゃから、もう既に壊れておろうに」

提督「それでも、だ」

利根「頑固じゃのう……」ソッ

提督「知らなかったか?」ソッ

利根「よーく知っておる。我輩がどれだけ提督の傍に居ると思っておるんじゃ」スリスリ

提督「随分と長く一緒に居る気がするな」ナデナデ

利根「ん……」スリスリ

提督「今日はやけに甘えてくるな。何があった?」

利根「さあのう……。もしかしたら、人肌が恋しいのかもしれん」

提督「……そうか」

利根「なんじゃろうなぁ、この気持ちは……」

提督「…………さて。私には分からない」

利根「前にもこんな事を言ったような気がするが、まあ良いかの。──提督、おやすみじゃ」

提督「ああ。おやすみ、利根……」

……………………
…………
……



207:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/12/17(水) 17:03:34.26 ID:zAZDuR2/o

瑞鶴「……ねえ、あのおっきな布にSOSって描いて、どれくらい経ったのかしら」

利根「そろそろ一ヶ月じゃのう」

提督「もうそんなに時間が経ったのか。早いな」

金剛「他にやる事が無いデスからネー。時間の流れを早く感じるのは仕方が無いデース」

響「私はむしろ、この一ヶ月の利根さんの変化が気になるよ」

利根「うん? 我輩は何か変わったかの?」ベッタリ

提督「変わったな」ベッタリ

瑞鶴「変わったわね」

金剛「変わってマース」

利根「何が変わったのかのう……」

響「少なくとも、前よりも提督にピッタリとくっついてるかな」

瑞鶴「日に日にボディタッチが増えてるわよね」

金剛「ボディタッチというよりも、まるでダディから離れない小さな子供みたいデス」

利根「ふむう……言われてみれば、確かに以前よりも増えたような気がするのう」

瑞鶴「……なんというか、本当に利根さんらしいわね」

響「少し離れたらどうなるのかな」

利根「うん? 少しかの?」

響「うん。少しだけ」

利根「ふむ。特に何も変わらぬと思うが」スッ

金剛「…………」ジー

利根「…………」ピトッ

金剛「!?」

瑞鶴「はやっ!? 本当に少しね!?」



208:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/12/17(水) 17:04:09.41 ID:zAZDuR2/o

利根「何かおかしかったかの……」

響「もう中毒と変わらないね」

提督「……本当に言葉通りのような気がしてきた」

利根「うーむ。まあ、確かに提督とはいつまでも一緒に居たいのう」

金剛「それで恋愛感情は無いのデスよね……?」

利根「うむ。そもそも恋愛感情を持った事すら無いぞ」

瑞鶴「信じられないわねぇ……」

響「恋心を恋心と認識してないとかなのかな」

利根「? 流石に恋くらいは我輩も分かるぞ?」

金剛「では、利根にとっての恋愛とはどんなのデスか?」

利根「それはもう心の底から相手に全てを捧げて将来を誓い合った仲というものじゃ! その人を想うだけで胸が苦しくなるというのも知っておるぞ!」

金剛「提督はどうデス?」

利根「ふむ? 将来を誓い合ってはおらぬし、提督は傍に居って当然じゃからのう。提督が居らぬようになった時が我輩の死の時くらいかの?」

瑞鶴「……充分、好きって言ってるように聞こえるんだけど」

利根「勿論好きじゃよ。じゃが、それはなんというか恋としての好きとは違う気がするのじゃ。曖昧というか掴み所が無いというか……自分でもよく分からぬ」

響「自分の慕う相手、という意味なのかな」

利根「うーむ。それも合ってるようで違うような……」

金剛「よく分からないデース……」

利根「うむ。我輩もよく分からん」

瑞鶴「提督さんは利根さんの事をどう思ってるの?」

提督「……ふむ。そうだな」

響「凄く興味があるよ」

利根「なんとなく分かるがのう」



209:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/12/17(水) 17:04:44.88 ID:zAZDuR2/o

提督・利根「危なっかしくて放っておけない」

利根「やはりの」

瑞鶴「……以心伝心?」

響「……これでどうして付き合ってすらいないんだろうね」

金剛「それにしても、どうして危なっかしいデス? 私には分からないネ」

提督「私が居るから利根はこうやっているだけで、私が居なかったら恐らく衰弱死するまでボーっとしているぞ」

瑞鶴「ええぇ……?」

利根「そうじゃのう。たぶんそうなっておる」

金剛「一体どういう事デスかそれ……」

利根「提督が傍に居るから我輩は生きておるんじゃよ。提督が居らぬのなら何も要らんのう」

瑞鶴「ねえ、本当は付き合ってる所か愛し合ってるわよね? 絶対にそうよね?」

提督「残念ながら」

利根「そんな事は一切無いんじゃ」

響「……深く考えるのは止めた方が良さそうだね、これは」

瑞鶴「そうみたいね……」

金剛「ストレンヂ……」

瑞鶴「……あ、話は変わるんだけどさ、二人ってどうしてこの島に来たの? それとも、ここに配属されたの?」

利根「一応は配属されたと言えば合っておるのう」

響「一応?」

提督「またの名を島流しと言う」

金剛「何をしたらそんな事になるデスか……」

提督「まあ、秘密だ」

利根「うむ」

瑞鶴「どっちにしろ、悪い事なんてしてそうにないんだけどなぁ……」

提督「さて、それはどうかな」

利根「世の中は単純ではないぞ?」

瑞鶴「もー……」

響「私は悪人だと思わないよ。だって、こんなにも人を思いやってくれるしね」

提督「その辺りは好きに想像してくれて構わない。──む。雨が降ってきた」

利根「早速回収じゃな!」ヌギヌギ

提督「だからここで脱ぐなと言っているだろ」

瑞鶴「流石にそろそろ慣れちゃったわね」

響「うん。いつもの光景だね」

金剛(無いようデスから仕方が無いデスけど、せめてパンティーズくらいはどうにかしてあげたいデス……)

…………………………………………。



210:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/12/17(水) 17:05:13.31 ID:zAZDuR2/o

提督「──さて、運動も終わったぞ」

利根「うむ! 寝るぞ! 共にじゃ!」ボフボフ

提督「急かすなと毎度言っているだろ」スッ

利根「良いではないかー」ギュー

提督「まったく」

利根「ところで提督よ。一つ質問をして良いかの」

提督「どうした」

利根「セ○クスというものをしてみぬか?」

提督「…………」ペシッ

利根「あたっ」

提督「流石に怒るぞ」

利根「もうしばいておるではないか。──しかし、嫌なのかの?」

提督「そもそもお前とはそんな関係ではないだろ」

利根「じゃが、ふと思ったのじゃ。確か男というものは精子を出さねば辛いのじゃろう?」

提督「そうでもない。慣れたらどうとでもなる」

利根「ふむう……残念じゃ」

提督「そもそも、簡単に自分の純潔を捧げようとするんじゃない」

利根「提督じゃから良いと思ったのじゃぞ」

提督「寝言は寝てから言え」

利根「我輩、結構真剣じゃ」

提督「余計に性質が悪い」

利根「……仕方が無いのう。我輩もかなり我慢してきておるんじゃぞ」

提督「アレの代わりにセ○クスしろと?」

利根「うむ」

提督「どっちももうやる事はない」

利根「むー……」

提督「……これで我慢してくれ」ナデナデ

利根「ん……頭を撫でたからといって我輩がそう簡単に屈すると」

提督「…………」ナデナデ

利根「…………」

提督「…………」ナデナデ

利根「……まあ、良いかの」ギュゥ

提督「おやすみだ、利根」

利根「うむ。おやすみじゃ提督」

…………………………………………。



211:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/12/17(水) 17:05:52.64 ID:zAZDuR2/o

瑞鶴「……ねえ、二人とも」

響「うん?」

金剛「どうしたデスか瑞鶴?」

瑞鶴「私達がこの家に引き篭もってから結構な時間が経ったけど、やっぱりこのままなのはいけないと思うの」

金剛「……瑞鶴もそう思いますか」

響「考える事はみんな同じなんだね」

金剛「提督や利根に何かしてあげる事が出来れば良いのデスが……」

瑞鶴「ここの所ずっと考えてるんだけど、全然思い付かなくてね……。二人も何か考えてるんだったら、三人で一緒に考えない?」

響「文殊の知恵とも言うしね。二人はどんなのを考えたの?」

金剛「私は提督達に何か出来ればと考えて、マッサージや髪の手入れなどを考えたデス。……でも、あれだけのんびりしているとマッサージはノーポイント。髪の手入れも提督がやっているので、私達が手を出すのも良くないデス」

瑞鶴「私はどうにかして中将さんと利根さんの仕事を私達でも出来ないかなって考えたわ。だけど、見つからないようにするのは難しいし……ねぇ」

響「……んっと、別に見つかったとしても良いんじゃないのかな」

瑞鶴「? どういう事?」

響「ローテーションを組んで一日ごとに外に出る人を変えるって方法だよ。これなら艤装を外した艦娘二人が居るってくらいにしか思われないはずだから、深海棲艦も攻撃してこないんじゃないかな」

金剛「それはどうなのでショウか。島で艦娘を見掛けたら警戒すると思いマス」

瑞鶴「あー。他に戦力が居ないか偵察するって事?」

金剛「イエス。今は利根のみ外に出ているので、戦力はただ一人だけだからスルーされているだけなのかもしれないデス」

響「なるほど。これが三人四人となれば脅威となりえるから襲われるかもしれないんだね」

金剛「響はどんな事を考えていたデスか?」

響「この家の中で出来る事だよ。……だけど、何をするにしても資材や道具が足りないし、出来る事もやれる事も少なくて諦めそうになってる」

瑞鶴「そうよね……。本当にこの島には何も無いもの……。いい加減、たまにやる焼き料理と掃除以外にも何かしたいくらいなんだけどね……」



212:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/12/17(水) 17:06:26.72 ID:zAZDuR2/o

響「家の中と外がダメだったら、後は金剛さんの考えてた『二人に何か出来ないか』だよね」

金剛「でも、何かあるデスか……?」

響「私しか出来ないけど、身体を好きにさせるとか」

金剛「なっ!?」

瑞鶴「……えっと、どういう事?」

響「平たく言えば、エッチな御奉仕かな」

瑞鶴「ぶっ!?」

金剛「どこからそんな言葉を覚えたデスか響……」

響「暁の持ってた本とか、青葉さんの本とかかな」

金剛「……同室の暁には注意くらいで、青葉には叱らないといけないデスね」

瑞鶴(その青葉さんから色々と本や写真を提供して貰った事があるなんて言えない……)

響「ケッコンしてる二人には出来ないけど、私なら出来るよね?」

金剛「…………確かにストイックな二人でも性欲はあるでショウけど……あまり関心できないデスよ」

響「他にあるのならそれをするけれど、これくらいしか無いと思うんだ」

瑞鶴「ひ、響ちゃんにはまだ早いから、ね?」

響「そうでもないんじゃないかな。12歳で妊娠したって子も居るみたいだし」

金剛「……その情報はどこからデスか?」

響「青葉さんの本からだよ」

金剛「帰ったら全部取り上げまショウ。悪影響デス」

響「悪い影響はそんなに無いんじゃないかな。幼い内から性行為をしたらどういう危険があるかとかも知れたし、世の中にはさっき言った12歳で妊娠した事例もあるって記事も、結局は保護者に迷惑を掛けてしまったって記載されてたし」

金剛「……むう」

響「それに、少なからず私も興味があるしね」

金剛「……でも、やっぱり駄目デス。自分の身体は大事にしないといけまセン」

響「提督なら優しくしてくれそうだよ?」

金剛「そういう意味ではありまセン。青葉からのブックスにも書いていたのデスよね? 幼い内から性行為をすると危険があると」

響「この状況下なら良いと思ったんだけどな……」

金剛「どちらにせよ、エッチなのはノーなんだからネ! 提督も同じ事を言うと思いマスよ」

響「それはどうかな? 案外、男なのかもしれないよ」

金剛「……なら、提督がノーと言ったら諦めマスか?」

響「うん。諦めるよ」

金剛「分かりまシタ。では、明日にでも聞いてみまショウ」

響「先にこの事を話しておくのはダメだからね、金剛さん」

金剛「う。い、良いデスよ。お互い抜け駆けはアゲンストザルールですからネ!」

瑞鶴「……一体、何の勝負になってるのよ」

…………………………………………。



213:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/12/17(水) 17:07:06.98 ID:zAZDuR2/o

響「──なんだけど、どうかな」

提督「吊るす」ヒュッ

利根「ッ!?」ビックゥ

響「え?」

響「なっ!? な、なななな──っ!!?」ブラーン

提督「まったくどいつもこいつも。自分の身体を大切にしろ」

瑞鶴「……凄い早業。アッという間に吊るされちゃってる」

利根(我輩が吊るされてしまうのかと思うてしまった……)ビクビク

金剛「……アクアブルー」

響「っ!?」ビクン

響「流石にこれは……恥ずかしいな……」

提督「反省したか?」

響「うん……もう言わないよ……」

提督「よろしい」スルスル

響「…………でも、一つだけ良いかな」

提督「どうした」

響「どうしてダメなんだい? 理由が聞きたい」

提督「一つ目は女の子なんだからもっと身体を大事にしろという事。二つ目に私は性行為を求めていないという事だ」

瑞鶴「……本当に男?」

提督「どうやらお前も吊るされたいようだな?」

瑞鶴「ごっごめんなさい!?」ビクッ

提督「まったく……。家の中の事はお前たち三人に任せているんだ。外の事くらいは私達に任せてくれないか」

金剛「でも、量が全然──」

提督「逆にお前達に暇させてしまっている事を気にしているくらいだ。この島では退屈が何よりも敵だと言っただろう。やる事が無くて遅く進む時間を潰すのは至難の業だ。だから、お互い様だと思ってくれ」

三人「……はい」

提督(はぁ……心臓に悪い……)

……………………
…………
……



227:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/12/28(日) 23:36:00.20 ID:zh4POhzCo

金剛「…………」ボー

瑞鶴「やる事、ないわねぇ」

響「本当にね」

利根「まあまあ、こうやってノンビリと出来るのはある意味で幸せじゃと思うぞ」ギュゥ

提督「完全に自堕落だが、幸せなのは間違いないな」

瑞鶴「……中将さんって、しっかりしているのか怠け者なのか時々分からなくなるわ」

響「しっかりとしてる怠け者とか?」

瑞鶴「それ矛盾してない?」

提督「人など矛盾だらけな生き物だ。然して不思議でもないだろう」

金剛「提督が言うと、なんでも真実に聴こえマス」

提督「……そうか。そんな事はないと思うのだが」

利根「それだけ提督を信頼と信用をしておるという事じゃろう」

提督「良い意味に捉えるな、利根は」

利根「ふむ? それ以外に何かあるのかの?」

提督「この島に来てから考えるという事が少なくなっているようだな? 少しは自分で考えてみろ」

利根「ふむう……言われてみれば確かに……。考えてみるぞ」

瑞鶴(……私もちょっと考えてみようかしら。どうしてこの二人が島流しにあったのかって)

提督「──む」

利根「どうかしたのかの?」

金剛・瑞鶴「!」

提督「珍しいな。この海域に何かが近寄ってきているぞ」



228:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/12/28(日) 23:36:58.33 ID:zh4POhzCo

利根「ほう。艦娘かの? 深海棲艦かの?」

響「艦娘だったら凄く良いよね」

提督「どうだかな」

響「? どういう意味だい?」

提督「さて、それもどうだろう。──とりあえず外に出るぞ利根。艦娘だった場合は金剛達を帰らせられるだろう」スッ

利根「うむ!」スッ

金剛「……帰れる、デスか」

瑞鶴「……そうだと良いわよね」

金剛「…………ええ」

響「……………………」

響(本当に、二人はそれで良いのかな)

…………………………………………。



229:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/12/28(日) 23:37:42.49 ID:zh4POhzCo

提督「どうやら艦娘のようだな」

利根「相変わらず目が良いのう。我輩は未だに判別が付かぬぞ」

提督「怠けすぎて錬度でも落ちたか?」

利根「その時はまた上げれば良かろう」

提督「それもそうだな。……ふむ。どうやらこっちに気付いたらしい。真っ直ぐ向かってきている」

利根「ほう。向こうも中々の錬度じゃな」

提督「ただ単にSOSサインに気付いただけかもしれんぞ」

利根「そう言えばそんな物もあったのう」

提督「忘れていたのか。結構目に付くだろ」

利根「特に興味が無いから仕方あるまい」

提督「そうだな。それなら仕方が無い」

提督・利根「……………………」

利根「……提督よ」

提督「ああ、気付いている」

利根「何の因果かの、これは」

提督「さあな。だが、話の分かる奴だからまだ良いんじゃないか?」

利根「確かにそうじゃが……」

提督「ボヤいてもしょうがない。事情を話して金剛達を連れて帰って貰うぞ」

利根「……うむ」

…………………………………………。



230:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/12/28(日) 23:38:24.12 ID:zh4POhzCo

北上「あや、本当に提督だ」

比叡「…………」

夕立「提督さん提督さん! 夕立、寂しかったっぽい!」ギュー

時雨「生きていたんだね。良かった……」

飛龍「利根も元気みたいね。少しだけ安心しましたよ」

利根「まあ、の。のんびりしておったよ」

加賀「流刑になったと聞いていたけれど、まさかこんな場所だとは思わなかったわ」

提督「久し振りだな、皆。まさか艦隊までそのままだとは思わなかったぞ」ナデナデ

夕立「~♪」スリスリ

時雨「あっちの提督が気を利かせてくれてるんだ。出来れば皆と一緒に出撃したいだろうって」

提督「そうか。優しい提督で良かった」

北上「まあー、提督と比べたら甘いけどねー」

提督「まあ、そうなるな。……久々の再開に花を咲かせたいとは思うが、少し頼まれて欲しい」

夕立「なになに? 提督さんの為なら、夕立、なんだって聞くっぽい!」

提督「この島に漂流した艦娘が三人居る。その子達を元の鎮守府に帰してやってくれないか」

加賀「お安い御用よ。それにしても、その子達も苦労したでしょうね」

提督「私は何もしていない」

加賀「そんな事くらい分かっているわ。だって、利根さんが居るもの」チラ

利根「……あの日からアレはしておらんぞ」

飛龍「あ、あはは……。まあ、あれは良くないと思いますよ?」

加賀「そうよ。いつか本当に死んでしまうわ」

比叡「……………………」



231:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/12/28(日) 23:39:07.59 ID:zh4POhzCo

夕立「アレって何? 夕立、気になるっぽいー」

時雨「まあまあ。──それより提督。その三人はどこに居るんだい?」

提督「今から利根に連れてきて貰う。少し待っていてくれ」

利根「…………」スッ

提督「頼んだ、利根」

利根「うむ。任されよ」トコトコ

提督「……………………」

提督「……その三人なんだが、お前達にとって辛い相手だろう。特に比叡……すまない」

比叡「え……それって……」

飛龍「……そういう事なんですね」

加賀「本当……神が居るのなら、どれだけ提督と利根を苦しませれば気が済むのかしら」

時雨「あと、比叡さんにも、ね……」

比叡「……覚悟は、しておきます」

北上「あたし、神様って奴が嫌いになったかも」

夕立「? ??」

提督「それよりも、お前達が元気そうで良かった」

夕立「提督さんに鍛えられたから当たり前っぽいー!」

提督「そういう意味ではなかったんだがな」

加賀「では、どういう意味だったのですか?」

提督「健康そうで良かったという意味だ」

北上「だったら私達が言うのは同じだったって訳だねー」



232:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/12/28(日) 23:39:45.45 ID:zh4POhzCo

提督「……健康面に関しては当たり前の事しか言っていなかったと思うが」

飛龍「それがそうでもないんですよね。今、私達を指揮して下さっている方も、初めは艦娘の体調を考えられなかったそうですし」

提督「ふむ」

時雨「でも、今はそんな事ないよ。加賀さんが一言だけ進言してからすぐに気にしてくれるようになったんだ」

提督「ほう。流石だな。私にも痛い所をズバズバと言ってくれていた事だけはある」

加賀「他に誰も言いませんから。他人の意見は大事と仰ったのは提督でしょう?」

提督「そうだったな。おかげで何度も死地を乗り越えられてきた」

加賀「……ごめんなさいね」

提督「その事は考えなくて良い。もう過ぎてしまった事だ」

比叡「……もう、割り切っているんですか?」

飛龍「ちょ、ちょっと比叡──」

提督「……どうだろうか。未だしがらみに捕らわれているとは思っている。そうでなかったら、本気でこの島から離れる努力をしていただろう」

時雨「でも、帰ってきてくれるんだよね?」

提督「帰らんよ」

夕立「えー!? なんでなんでーっ!?」

提督「私はまだサボっていたいからだ」

夕立「提督さんが怠け者になったっぽいー……」

加賀(……まだ吹っ切れていないのね)

比叡「……いつかは、ちゃんと帰ってきて下さい。それが──…………」

利根「提督よ、連れてきたぞ」

提督「ご苦労、利根。──金剛、瑞鶴、響、紹介しよう。この六人は私に付き従ってくれていた子達だ」

三人「!」

北上「……やだなー。今でも帰ってきてくれるのなら付いていくってば。ねー、皆?」

飛龍「ええ。勿論ですよ」

加賀「当たり前です」



233:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/12/28(日) 23:40:26.11 ID:zh4POhzCo

提督「さっき言った通り、今はまだ無理な話だ。──三人共、この子達がお前達を連れて行ってくれる。悪いようにはしない子達だから安心して良い」

金剛「よろしくお願いしマス」ペコ

瑞鶴「えっと、よろしくです」ペコ

響「…………」ペコリ

提督「……そういう事だ。三人を頼む」

時雨「……うん。分かったよ」

比叡「……………………」

夕立「…………」

金剛(……なんだか悲しそうデス。どうしてでショウか……)

提督「金剛と瑞鶴に関しては錬度が充分にある。響も恐らくそうだろう。弾薬も分けてくれると役に立つはずだ」

飛龍「……提督、一つ良いですか?」

提督「どうした。弾薬が残り少ないのか?」

飛龍「いえ、そっちは全然構わないのですけれど……。その……」

提督「歯切れが悪いな。遠慮しなくて良い」

飛龍「…………つらく、なかったですか?」

金剛(つらい……?)

提督「考えないようにしていただけだ。それと、頭では分かっていたから平常を保てられていた」

瑞鶴(平常を保つ……?)

加賀「まさかとは思うけれど、この子達が居なくなったからと言って変な気を起こさないわよね」

提督「安心──は出来ないだろうが、それでも言っておく。時が来るまでここでのんびりとしているよ」

響(変な気……?)

夕立「……提督さん。また、ここに来ても良い?」

提督「そうだな……たまになら良いぞ。ただし、今の提督に迷惑を掛けない範囲で誰にも私の事を話さないというのが条件だ」

北上「あたし達の提督は、今も昔も一人だけなんだけどね」

提督「こんな私を慕ってくれるとは、ありがたい事だよ」

時雨「ずっと、待っているからね」

提督「いつになるかは分からんがな。──さて、三人を頼む。後の事は任せたぞ」

六人「!」ピシッ

金剛(……私達のテートクとは大違いデスね)

金剛「……提督」

提督「どうした」

金剛「短い間でシタけど、お世話になりまシタ」ペコッ

瑞鶴「機会があったらまた来るわね」

響「またね」

提督「……そうだな。また、機会があれば逢おうか」

金剛(? なんだか、いつもと違う気がしマス)

比叡「……………………」

…………………………………………。



234:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/12/28(日) 23:40:57.87 ID:zh4POhzCo

金剛(こうして海を滑るのは久々デス。……たった三ヶ月くらい離れていただけで、こんなにも懐かしく思えるデスか。ケド……)チラ

瑞鶴「…………」コクン

瑞鶴(……なんだろ。空気がピリピリしてる気がする)

響「ねえ、少し良いかな」

飛龍「ん? どうかしましたか?」

響「私達は、提督──あなた達の提督に、何か粗相をしてしまったのかな」

六人「……………………」

加賀「……どうして、そう思ったのかしら」

響「なんとなくかな。空気が重いからってのもあるよ」

加賀「そう……。ごめんなさいね。気分を悪くさせてしまったわ」

飛龍「でも安心して良いですよ。……これは、私達の問題ですからね」

金剛「……何かあったのデスか」

北上「あったっちゃあったけど、あんまり人に言う事じゃないんだぁ。ごめんね」

金剛「ごめんなさい……」

北上「あー、いやー、気にしなくても良いんだよ? 本当に身内話だからさ」

響「……………………」ジー

響「……そっか……ごめんよ」

北上「だから謝らなくても良いってばー」

加賀(……この子も、聡い子なのね)

瑞鶴「えっと、話は変わるんだけど、中将さんって何があってあんな島に居るの?」

時雨「提督は何も話さなかったんだ?」

瑞鶴「うん。秘密って言ってた」

時雨「秘密……そっか。秘密なんだね……」

瑞鶴「?」



235:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/12/28(日) 23:41:32.75 ID:zh4POhzCo

時雨「ごめんよ。僕も言う事が出来ない。提督が秘密って言ったのなら僕達も秘密にするべきだと思う」

瑞鶴「そっかぁ……。ちょっと残念」

飛龍「ところで、皆さんの鎮守府はどこですか?」

金剛「私達は横須賀より少し南に出来た新しい鎮守府に籍を置いていマス。下田鎮守府で伝わると良いのデスが……」

加賀「最近、鎮守府が沢山作られていて把握に困るわよね。深海棲艦の数も新種も増えているから各所に置きたくなるのは分かるのだけれど」

加賀(下田鎮守府は悪い話ばかり聞くけれど、それは言わない方が良いでしょうね)

夕立「私達はその横須賀に住んでるっぽい!」

響「という事は、貴方達の提督は横須賀の提督だったんだね」

時雨「うん。そうだったよ」

瑞鶴「横須賀の話はたまに聞いていたけど、まさか中将さんが横須賀に居たなんて……」

飛龍「実は下田の提督さんって、演習で横須賀によく来るんですよ」

金剛「! そ、そうだったのデスか?」

瑞鶴「全然知らなかったわ……。いつも演習はメンバーだけ言って提督さんが連れて行ってたから……」

響「初耳」

比叡「……三人は、演習に行かないんですか?」

金剛「私達は既に錬度がかなり高くありマスので、演習にはあまり行かないのデス。いつも行くのは錬度の低い子達だけでシタ」

加賀「格上を相手にする事で質の高い経験を積ませているのよね。効率的だとは思うわ」

瑞鶴「……それって、普通じゃないの?」

北上「少なくとも私達の提督は違ったかなぁ。なんていうか、艦隊の統率を上げるのが優先的だったねー」

響「? どういう事なんだい?」

加賀「個々で戦わずに集団となって戦う経験を積ませていたの。艦隊の旗艦が指揮をして、お互いがお互いをフォローと連携をする練習よ。個々の戦力はそこまで伸びないけれど、集団で戦う能力は確実に高まるわね」

金剛(言われてみれば、確かに私達はほとんど一人一人が戦っているだけネ……)

瑞鶴(攻撃する相手も、大抵皆がバラバラよねぇ……)



236:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/12/28(日) 23:42:01.00 ID:zh4POhzCo

加賀「良い事ばかりでもないのだけれどね」

響「そうなのかい?」

北上「各個撃破にものすごーく弱いんだよね、これ。まあ、そうさせないように動くけどさ」

飛龍「その点を考えたら、個々の強さも重要になってくるんですよね。けれど、そこまで手が回らなくて……」

夕立「私、もっと頑張るっぽい!」

時雨「夕立はもう充分じゃないのかな……? この間、昼間で黄色いオーラのタ級を一発で沈めてたよね?」

夕立「まだまだ強くなりたいっぽいー! もっと強くなったら、もっと気軽に提督さんに会えるよね!」

瑞鶴「……私達の鎮守府でも時々思ってたんだけど、この子って本当に駆逐艦なのかしら」

夕立「ぽい?」

響「少なくとも、夕立以外の駆逐艦は無理だよね」

金剛「戦艦である私達でもワンショットキル出来ない時があるはずなのデスが……」

加賀「この子が成長したら頼もし──総員、戦闘態勢に入って」スッ

全員「!」サッ

瑞鶴「私も爆撃機を飛ばすわね」スッ

加賀「ええ。でも、編隊は組めないと思うから、第二次攻撃隊として動いて貰って良いかしら。第一次攻撃と第三次攻撃は私と飛龍が務めます」

瑞鶴「え? 一緒じゃないの?」

加賀「そうよ。あと、発艦は急ぎなさい。間に合わなくなるわよ」

瑞鶴「は、はい!」

加賀「敵は戦艦タ級、重巡リ級が二隻、雷巡チ級、駆逐ロ級、駆逐ニ級。どれも赤と黄色のオーラを纏っているわ。第一次攻撃隊はタ級に集中攻撃。第二次攻撃隊はタ級が中破以上で残っていればタ級へ追撃。そうでなかったらリ級の二隻へ攻撃。第三次攻撃隊はその時の状況に合わせて攻撃対象を決めて貰うわ」

飛龍「了解しました!」

瑞鶴「りょ、了解です!」

加賀「戦艦である比叡はタ級、金剛さんはリ級、チ級の順番で優先度を決めて砲撃。いずれも中破以上の場合に限ります。大破した敵は無視して構わないわ。比叡が砲撃してから金剛さんは砲撃をお願いね」

比叡・金剛「はいっ!」

加賀「あと北上さん。もしもの事を考えてタ級へ先制雷撃をしてもらうわ」

北上「任せてね! 四十門の魚雷が確実に仕留めるから」

加賀「他の子達は指示があるまで回避に専念。その後の指示は随時言い渡します。提督の言葉を忘れないよう、絶対に沈まないようにしなさい。──戦闘開始よ」

……………………
…………
……



249:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2015/01/03(土) 00:52:59.44 ID:GoM8pvwro

利根「……行ってしまったの」

提督「そうだな……」

利根「……………………」

提督「…………」

利根「……提督よ、なぜ泣いておるのじゃ」

提督「人の事を言えるか?」

利根「……ん、本当じゃ。我輩もまだ涙が出せるのじゃな」ゴシゴシ

提督「涙を出し切る事などない。……それと、お前は冷たくないという証拠でもあるんじゃないか?」

利根「それは死んでいないという意味かの? それとも、冷血でないという意味かの?」

提督「両方の意味だ」

利根「……そうか。我輩、まだマトモじゃったんじゃな」

提督「根っこまで壊れている訳ではないんだな、私もお前も」

利根「その根っこ以外は壊れていそうじゃ」

提督「……ああ。壊れていそうだな」

利根「…………提督」ポフッ

提督「……………………」ナデナデ

利根「また……あの三人は我輩達の前から消えてしまった……」

提督「……ああ」ナデナデ

利根「受け入れたつもりだったのじゃな、我輩は……。痛い……痛いぞ、提督……」

提督「痛い、な……」ギュゥ

利根「ああぁ……ダメじゃ……。もう、無理じゃ……」

提督「…………」

利根「提督よ……やはり我輩は、壊れたままじゃ……。あの時から、もうずっと壊れてしまったままなんじゃ……」

提督「壊れているのはお前だけではない。……私もだ」グイッ

利根「あ……あハッ……。久しい。久しいな、やってくれるのか。もう、二度とやってくれぬのかと思うておっ──ガ……!!」

…………………………………………。



250:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2015/01/03(土) 00:55:03.54 ID:GoM8pvwro

加賀「──以上が報告です。それでは、失礼します」

ガチャ──パタン……

比叡「…………」

飛龍「終わりましたか?」

加賀「あら飛龍、比叡。どうかしたの?」

飛龍「一杯、やりませんか?」スッ

加賀「常きげん……。良いですね、私の大好きなお酒よ」

飛龍「勿論、山廃仕込の純米です」

加賀「流石に気分が高揚します」スタスタ

飛龍「久し振りですもんね」トコトコ

比叡「…………」トコトコ

…………………………………………。

加賀「んっ──。良いわね。やっぱり日向燗が一番美味しく感じるわ」

飛龍「最近は全然呑んでいませんでしたからね。一層に美味しいと思いますよ」

比叡「…………」チビチビ

加賀「お膳立ても揃っている所で、そろそろ肴のお話に入りましょうか?」

飛龍「アハハ……やっぱり分かっちゃいましたか」

比叡「…………」コト

飛龍「……話というのは、提督の事です」

加賀「そうね。今日の演習の指揮で大きなミスを犯していたわ」

飛龍「ええ。あれには本当に困りましたね。けど、今はそっちではありませんよ」

加賀「……やっぱり、そっちの話なのね」

飛龍「今頃、どうしているんでしょうかね」

加賀「…………」クイッ

比叡「…………」

飛龍「…………」



251:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2015/01/03(土) 00:55:36.76 ID:GoM8pvwro

加賀「……どう考えても、あの人ならば利根と一緒に壊れてしまっているでしょうね」

比叡「……ですよね」

加賀「壊れてしまっているのはあの日から。そして今日逢った時は普通に見えたわ。……けど、あの三人を見送っている時、もう壊れ始めていたもの」

飛龍「本当、よく三ヶ月も我慢できましたよね。三人の話によると、至って普通に怠けているようにしか見えなかったそうですし」

加賀「それと、この子もね」チラ

比叡「…………」

加賀「貴女も、最近はずっと良くなっていたわ。……本当、もう少しで割り切れそうだったのにね」

比叡「……この鎮守府に、金剛お姉様が来てくれるのであれば問題ありません。ただ、金剛お姉様が居なくなってしまうのを見ると……」

飛龍「私も、少しつらかったです……」

加賀「本当、タイミングが悪いわね。……提督に利根、そして比叡が何をしたと言うのかしら」

飛龍「金剛さんに瑞鶴さん、そして響ちゃんですからね……。偶然にしても酷過ぎます」

比叡「……二人は、あの日の事を憶えていますか?」

加賀「……忘れられる訳がないわ。あの日は、この鎮守府が崩壊した日だもの」

飛龍「あの時、私達がもっと早く気付いていれば良かったのに……」

加賀「無理だったでしょうね。あの提督が壊れてしまうなんて、誰が予想できたかしら」

飛龍「……結局、私達は提督の事を理解していなかったのですかね」

加賀「……どうかしらね。私は、提督も予想していなかったと思うわ」

比叡「司令ならば大丈夫だと、誰もが思っていましたよね……」

加賀「ええ……。多少の時間を掛ければ、ちゃんと受け入れてくれると信じていたわ。……でも、実際は違った」

飛龍「金剛さんと瑞鶴さん、そして響ちゃんが……」

加賀「…………」

比叡「…………」

飛龍「…………沈んで……も……提督は提督のままだと、勝手に思い込んでしまっていましたね……」



252:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2015/01/03(土) 00:56:07.87 ID:GoM8pvwro

加賀「……時々、夢に見るの。あの時、私がしっかりと『偵察も六人でやるべき』と言っていれば、あの三人は帰ってきていた夢を……」

飛龍「金剛さん、瑞鶴さん、響ちゃん……そして利根さんの四人でしたね。私達の誰もが認める、優秀な方々でした」

比叡「出来るだけ見つからないよう、少人数で行うべき作戦だったから……。戦力的にも問題はなく、そしてギリギリ発見されにくい人数だったと、今でも思います……」

加賀「……どうだったのかしらね。あの作戦は」

飛龍「本当、何があったのでしょうか……」

比叡「何があったのか、今でも知っているのはあの二人だけなんですよね……」

加賀「…………」クイッ

飛龍「……提督と利根が心配ですね」

加賀「……飛龍」

飛龍「はい、なんですか?」

加賀「燗酒をお願い。飛びきり燗で、ね」

飛龍「そう言うと思っていました。どうぞ」スッ

加賀「ありがとうございます。準備が良いのね。────ッ!」クイッ

飛龍「はい、お水です。……何せ、もう四年以上も一緒ですからね。分かりますよ」ソッ

加賀「ん……っ」コクコク

飛龍「辛いですよね。飛びきり燗にすると」

加賀「ん、んく……。…………確かに辛いわ。いつも思うけれど、提督はよくこんな物を飲めるわね」

飛龍「提督はキツいお酒がお好きでしたもんね。私も提督には敵いませんよ」

加賀「……ねえ飛龍、比叡。カラいとツラいって、同じ漢字よね」

比叡「はい、そうですけれど……」

加賀「こうやって辛いお酒を飲めば、私も提督の辛さを……少しだけでも知る事が出来るのかしら」クイッ

比叡「あ、そんな一気に──」

加賀「──くっ!!」ガタッ

飛龍「もう……。加賀さんも身体を大事にして下さいよ?」

加賀「ケホッ……! はぁ……んっ……。大丈夫、よ。提督や利根より、は……自分を大事にしている、つもりよ」

飛龍「めっ。一般的に大事にして下さい」

加賀「考えるだけ、考えておくわ」

比叡(……大丈夫でしょうか。加賀さんも、司令も、利根さんも……)

…………………………………………。



253:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2015/01/03(土) 00:56:34.75 ID:GoM8pvwro

「ア……っか、は──!!」
 冷やりとした空気が漂う満天の星空の下で、私に組み敷かれた少女は苦しそうに声を漏らす。力の限り込めた指は少女の首に喰らい付いて離れない。
 少女もまた、私の手首を掴んでいる。それは生物としての反射的な行動なのか、それとも別の意図があるのか──。
「ひ、ァ……ッ!」
 恐らく──いや間違いなく彼女の場合は後者だ。
 そうでなければ自らを殺さんとしている手を、首へ押し付けるような真似をする訳がない。
 おまけに、その表情は苦しみよりも恍惚とした笑みを浮かべている。
「もう死ぬか? まだ死なないか? さあ、どうなんだ、利根」
 少女の首から感じ取れる脈が速くなっていく。心臓が必死になって生きようとしているのだろう。
「──ぎ、ァ゙……!!」
 私も、利根と同じ顔をしているのだろうか。それを知る術はないが、それはどうでも良いか。
 死にたがりの艦娘である利根を、私は殺そうとしているだけだ。
 金剛は沈んだ──。
 瑞鶴も死んだ──。
 響も殺された──。
 あの偵察から生き残った利根も、死にたがっている。
 ならば、私が殺すのが道理だ。私を愛してくれ、付き従ってくれ、慕ってくれた大事な子達を、なぜ誰かに殺されなければならない?
 装備を捨て、生身で死のうとしている利根をどうして放っておける? 私が殺さなければ深海棲艦に殺されるだけじゃないか。
「ああそうだ。なぜだ? なぜ私は今まで我慢していた?」
 利根はあの時、言っていただろう?
『苦しみながら沈み、提督と呟きながら沈んでいった三人を置いて、どうして自分だけ死ななかったのか』
『自分も苦しみながら死ななければならない』
『そうでなければ、あの三人に申し訳ない』
 そう、虚ろな目をして言っていただろう? ボロボロの身体で、絶望で塗り潰された顔で言っていただろう?
 あの時もそうだった。今もそうだ。だから、こうやって首を絞めた。だから、こうやって首を絞めている。
 少女は涙を零しながら痙攣してきた。ビクビクと、まるで何度も絶頂を迎えているかのように、いつかの金剛のように身体を跳ねさせている。
「嬉しいよなぁ利根。最後に金剛と瑞鶴と響に会えたんだ。また私達の前から消えていったんだ。あの時と同じだなぁ、利根」
 艦娘も頑丈なだけで体内は人間とあまり変わらない。怪我をすれば血を流すし、体調が悪ければ顔色も悪くなり、気道を塞いでしまえば呼吸が出来なくなる。
「は──ィ、ぁ…………!」
 掠れた声で、利根は何かを言う。けれど、何も伝わらない。何を言おうとしているのかも分からない。
 虚ろで、光の宿っていない目も、何を語りたいのか分からない。何もかも、分からない。
 ただ分かっているのは、彼女が死にたいと思っているという事。それだけだ。
「どうした利根。どうしたんだ利根? 力が弱くなっているぞ。痙攣も治まってきたじゃないか」
「ぁ……ッぁ…………ぁ……」
 ゆっくりと、彼女の瞳が閉じてゆく。
 穏やかに、安らぎを感じているように、眠るように……。
 そうだ。これから少女は眠りに就く。暗く冷たい水底で眠っている三人のように、誰にも邪魔される事なく眠り続けるんだ。
 お前は望んでいたな。三年前からずっと、こうなるよう望んでいたよな。
 なぜか毎回失敗していたが、今回は大丈夫だ。必ず眠らせてやる。
 力を込め過ぎて手が震えてきたが、ぐったりとなって抵抗が一切無い少女ならば、この程度の力でも問題無い。
「────────」
 もう喘ぐ事も出来ないか。もう少しだ。もう少しでお前も──。
「…………」
 不意に、思考が停止した。
 少女は──利根は、笑顔だった。とても嬉しそうに……まるで長年願っていた幸せを手に入れたかのように、優しく微笑んでいた。
 その表情が被る。指輪を渡した時と被る。断られないか柄にもなく不安に駆られながら勇気を出した時と被る。

 あの時の金剛と、同じ微笑みで──。

「……そう、だった」
 込めていた力はスッと消え去り、腕がダラリと砂浜に投げ出される。
「あの時も、同じだった……」
 何度だろうか。何度、私はこの微笑みを見ただろうか。何度、この微笑みを忘れたのだろうか。
「くく……は、ははは……」
 乾いた笑みが口から漏れる。
 なぜだろうか。なぜ忘れていたのだろうか。
 いつも、この微笑みで私を戻してくれていたのに、なぜ私は忘れてしまっていたのだろうか。
 頭がクラクラする。首を絞めていたのは私だったというのに、私も酸素が足りていないようだ。
 なんとか意識を保とうとしても、抗えない。どんなに力を振り絞っても、身体は砂へと落ちていく。
「はは、クハはハハ…………」
 最後に聴こえたのは、自分の狂った笑い声。
 そのまま、私の意識はブラックアウトした────。

……………………
…………
……



254:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2015/01/03(土) 00:57:09.92 ID:GoM8pvwro

「──え?」
「どうしたんだ。まさかとは思うけど、聴こえなかったとか言うんじゃないよな?」
「……いえ、そんな事は、ありまセン」
 唐突に告げられた死刑宣告──。今の私達は、それに等しい衝撃を受けました。
 場所は執務室。私達の帰るべき鎮守府で、テートクが作戦を告げ、必要があれば私達も訪れる場所──。
 少し……ほんの少しだけ、予想していました。だから、今こうして冷静で居られるのでしょう。動揺は隠せませんけれど……。
「まあ、正直に言うと資材にも困ってないからどうでも良いんだけどな。処理する方法がそれくらいしかないから解体するだけだ」
 そう……私達のテートクは、同じ艦娘を二隻以上置くという事をしません。把握するのが面倒だと仰っていました。
「真に残念な事に、今のお前らに場所は無い」
 テートクが不機嫌なのは手に取るように分かりました。恐らく、帰ってくるのなら新たに育て直す労力は無駄だったじゃないかと思っているのでしょう。
 その意思表示か、テートクの後ろには三人の艦娘が困った顔をして立っています。
 艦娘の名称は、金剛、瑞鶴、ヴェールヌイ。
 ほんの三ヶ月前、私達が立っていた場所に、別の私達が立っています。
 その三人の全員が、左薬指に指輪を嵌めていました。……私と瑞鶴が肌身離さず着けていた指輪と、全く同じ指輪……です。
「ああ、いや。聞きたい事があった」
 ふと、思い出したかのようにテートクの不機嫌な顔はいつもの無表情に変わりました。
 ……私達に聞く事なんて、あるのでしょうか。この三ヶ月、無人島を三人で暮らしていたとは言いましたから、私達に聞く事なんて何も無いと思うのですが……。
「お前ら二人の幸運がどれくらいなのか言え」
 ……………………?
 幸運がどれくらい、とはどういう事なのでしょうか……?
 チラリと瑞鶴に顔を向けます。けれど、瑞鶴も私と同じく困った顔をしていました。
「どうした。自分の事だろ」
「司令官」
 どう答えたら良いのか考えていると、響がテートクに声を掛けました。
 テートクの機嫌が悪くなったのが分かります。あからさまに舌打ちをして、私達の知っているテートクではないように……怖い顔をしていました。
「二人は意味が分かっていないようだから、説明してくれると良いかもしれないよ」
 けれど、響は一切動じずに言葉を続けます。
 ……響は、テートクが怖くないのでしょうか。テートクの後ろに居る三人も怖がっているのに……?
 響のその言葉に、テートクは重く、イライラしている溜息を吐きました。……こんなテートクを見るのは、初めてです。
「分からないのならもう良い。やっぱりお前らは解体だ」
「それと、もう一つだけ良いかな」
「チッ……なんだ」
 今にも殴り掛かりそうな雰囲気のテートク。それでも、響はいつもの調子で言葉を並べ続けます。
「司令官の手を煩わせる必要もなく、私達を消す事が出来るよ」
「え……響ちゃん!?」
「ほう?」
 何を言っているのか分からなくて、一瞬頭が真っ白になった──。
 私達を消す? どういう事ですか?
「な、何言ってるのよ!? 消すって──!!」
「お前は黙ってろ。……で、その方法は何だ?」
 狼狽える瑞鶴を一言で黙らせると、テートクは響に興味深そうな目で聞きました。
 解体以外で、どんな方法があるですか……?
「簡単な事だよ。今ここで出撃命令を出せば良い。私達三人じゃ、絶対に勝てない海域にね。……そうだね。マリアナとかミッドウェーとかなら十二分に沈められるんじゃないかな」
 ……マリアナやミッドウェー? それって、確か──。
「良い事を言うな響。それなら楽だし、これからもそうするか。じゃあ出撃だ」
「今の私達は辿り着く前に燃料が切れるから、補給はしていくけど良いかな?」
「好きにしろ。さっさと行け」
「うん、ありがとう司令官」
 そう言うと、響は扉へ向かって歩き出しました。
 チラリ、と私と瑞鶴にしか見えないように顔を見せます。その表情は、まるでイタズラが成功した子供のような顔でした。
(……なるほど。やっぱりデスか)
 私は、出来るだけ無表情を貫いて瑞鶴の手を引きながら響と同じく、執務室から出て行きました。
「……さようなら、テートク」
 最後に、お別れの言葉を口にして──。

……………………
…………
……



255:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2015/01/03(土) 00:57:37.10 ID:GoM8pvwro

金剛「…………」スタスタ

響「…………」トコトコ

瑞鶴「ひ、響ちゃん! さっきのって、どういう事なの?」

響「…………」チラ

金剛「…………」キョロキョロ

金剛「……誰も居ませんが、念の為に小声で話しまショウ。あと、短くデス」ヒソ

瑞鶴「…………?」

響「そうしようか。──瑞鶴さん、沈むつもりはないよ。ただ逃げるだけさ」ヒソ

瑞鶴「逃げる……?」ヒソ

響「そう。マリアナとミッドウェーの中間にね」ヒソ

瑞鶴「! それって、もしかして──」ヒソ

響「そういう事だよ。これ以上は喋らない方が良い。海に出てからにしよう」ヒソ

瑞鶴「う、うん」ヒソ

長門「……む。お前達、さっき提督が……────!!」

瑞鶴(あ、危なっ! 響ちゃん、ナイス……!)

長門「生きていたのか! ああ……噂は本当だったんだな……!」

金剛「ゴシップ?」

長門「そうだ。行方不明になっていたお前達が帰ってきたという噂を耳にしていてな。どうだ、これから久々に息抜きでもしないか?」

瑞鶴(あ、もしかして気を遣ってくれてるのかしら?)

響「誘ってくれて嬉しいんだけど、これから私達は出撃をしなくちゃいけないんだ。イズヴィニーチェ」

長門「これから……? 帰ってきたばかりだというのに、あの提督は……」

響「それじゃあ、行くね」トコトコ

長門「む。あ、ああ……気を付けるんだぞ?」

響「……うん」

金剛(…………?)

…………………………………………。



256:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2015/01/03(土) 00:58:03.64 ID:GoM8pvwro

金剛(鎮守府から、もう大分離れましたネ。そろそろ大丈夫デス)

金剛「響」

響「ん、どうしたんだい?」

金剛「長門に対して、少し冷たかったように感じまシタけど、どうしたのデスか?」

響「……後悔しないようにする為だよ」

瑞鶴「後悔?」

響「うん。下手したら二度と会えなくなるんだ。それだったら、少し冷たいくらいで丁度良いと思う。……せっかく決断したのに、心が揺らぐのを防ぐ為……かな」

瑞鶴「……なるほどね。確かに、優しくして貰ったら心が揺らぎそう……」

金剛「響、前よりも強くなったのデスね」

響「私は特に変わったつもりはないけど、そうなのかな?」

瑞鶴「私もそう思うわ。もしかしたら中将さんに影響されちゃったのかしら?」

金剛「ナルホド。私もそんな気がしてきまシタ」

響「提督に、か……」

金剛「どうかしまシタ?」

響「ん。今頃、何をしてるのかなって思ってたんだ」

瑞鶴「中将さんの事だからねー……。たぶん、いつもと変わらずに海をボーっと眺めてそう」

響「うん。きっとそうしてるよね」

金剛(……本当にそうでショウか)

瑞鶴「金剛さんはどう思う?」

金剛「私、デスか? 私は……エンザイティ……不安デス」

瑞鶴「不安?」

金剛「ハイ。どうしてかは分かりまセンが……」

響「…………?」

金剛(心が少しざわつきマス……。二人は、本当に無事なのデスか……?)

……………………
…………
……



276:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2015/01/06(火) 23:44:22.75 ID:2LIRreado

??「────」

提督(……なんだ? 何か、声が聴こえる…………)

??「と────てい──」

提督(なんだろうな……。少し優しくて……温かい気持ちになる……)

??「ていと──て──く」

金剛『テートク』

提督「ッ!!」ガバッ

ゴンッ──!

提督「いっ……!」

利根「あたたたたたた……。い、いきなり動くでないぞ……」

提督「……利根、か?」

利根「うん……? 我輩がどうかしたのかの……? あいたたた……」スリスリ

提督「……………………」キョロ

利根「……うん? どうしたんじゃ?」スリスリ

提督「金剛は……」

利根「…………夢でも見ておったのか?」

提督「夢、だったのか?」

利根「それは我輩に言われても分からんのう」

提督「……一応聞いておくが、ここはあの世ではないよな?」

利根「どうみてもいつもの島じゃろ。ほれ、足も付いておるぞ」ペシペシ



277:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2015/01/06(火) 23:44:51.49 ID:2LIRreado

提督「……そうか。また、失敗したのか」

利根「そうみたいじゃなぁ……。我輩、いつも頭がクラクラして意識が失うから何がどうして失敗しておるのか分からんのじゃ」

提督「私もだ。お前の首を絞めていたのは憶えているが、その先がどうしても思い出せん」

利根「ふむ……またか」

提督「また、だな」

利根「今もう一回やってみるかの?」

提督「いや、止めておこう。むしろ、もうやらないと決めていたのにも関わらずやってしまった事を反省するべきだ」

利根「……元の我輩達に戻る為に、じゃったよな」

提督「そうだ。私達は壊れていて普通ではない。普通に戻る為には、この衝動を無くさなければならん」

利根「……我輩は、今すぐにでも死にたいくらいじゃぞ」

提督「それは私が許さん」

利根「むう。首を絞めたのは提督ではないか」

提督「私もお前も普通に戻れば、また皆と一緒に暮らせるという未来があってもか?」

利根「……少し迷うが、やはり我輩は死んで三人に詫びたいと思うておる」

提督「何回でも言うが、許さんぞ」

利根「……ならば、それなりに発散させてくれぬか。我輩はもう、死にそうにならなければ満足できなくなってしまっておるんじゃぞ」

提督「どんな方法で発散させてやれば良い」

利根「前にも言ったように、セ○クスをするとか」

提督「だから、なぜ性行為に結び付く」

利根「どこかで知ったのじゃ。女が絶頂する時は最も死に近い感覚じゃとな」

提督「どこの眉唾な噂だ。それに、それだったら私が手を貸さなくても構わないだろ」



278:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2015/01/06(火) 23:46:41.83 ID:2LIRreado

利根「いや、一人でやってみた事があると前にも言ったじゃろ」

提督「腕を揉んでいるのと違いが分からない、だったか」

利根「うむ。恐らく我輩のやり方が間違っておるのじゃとは思うが、提督は何も教えてくれぬから分からぬままなのじゃ」

提督「当たり前だ。そういう事は自分で自然と覚えろ」

利根「じゃから、それが分からぬと言っておるじゃろうに……。あれはやっていてつまらん。……そうじゃ。それだったら、別の方法でも構わぬぞ」

提督「ほう。何がある」

利根「殺すつもりでなくとも構わぬ。またこうやって首を絞めてくれぬか」

提督「断る。手違いで死なれたら、それこそ私は二度と戻れなくなるのが目に見える」

利根「……ならば、自害するぞ提督」

提督「禁止だ」

利根「…………」

利根「提督よ。我輩、これでも苦しいんじゃぞ」

提督「……………………」

利根「あの偵察で瑞鶴の艦載機が全て落とされ、撤退しようとした所で……我輩は直接見ておったのじゃぞ」

提督「…………」

利根「…………」

提督「……まず、一つの魚雷が響を沈めた」

利根「そうじゃ……。響は我輩達に逃げろと言っておった。…………最後の最後は、お主を呼んでおった」

提督「次は、瑞鶴が犠牲艦になった……」

利根「最後の言葉は、今でも鮮明に憶えておる。提督に好意を伝えれなかった事が、心残りじゃったと……」

提督「…………」

利根「深海棲艦共の砲撃で……瑞鶴は我輩達の盾となって沈んだ」



279:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2015/01/06(火) 23:47:08.60 ID:2LIRreado

提督「……最後に、金剛が…………」

利根「…………」

提督「……………………」

利根「……金剛は左舷に二本の魚雷と、敵艦載機の集中砲火を受けて、ボロボロの身体で対空砲火しておった」

提督「…………」

利根「我輩は金剛から全力で逃げろと言われ、振り向く事なく逃げた……。じゃがの、確かに聴こえたんじゃ」

金剛『提督、どうか武運長久を──。私、ヴァルハラから見ているね』

利根「……そう、言っておった。夜が明ける少し前じゃ……」

提督「…………」

利根「のう、提督よ。なぜ、我輩が残ってしまったんじゃ」

提督「……それは、誰にも分からない事だ」

利根「あの中で一隻だけ助かるのならば、我輩以外の誰かが良かった……。なぜ我輩なのじゃ……なぜ──」

提督「もう考えるな」ソッ

利根「じゃが……」

提督「答えの出ないものは考えなくて構わない。そうだろう?」ポンポン

利根「…………」

提督「今夜はもう寝てしまおう。ほら、家に戻るぞ」

利根「……うむ…………」

……………………
…………
……



280:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2015/01/06(火) 23:47:39.85 ID:2LIRreado

提督「…………」ボー

利根「…………」ボー

提督「……静かだな」

利根「そうじゃの……」

提督「…………」ボー

利根「…………」ボー

提督「金剛達が居た時は、なんだかんだで賑やかだったな……」

利根「……うむ。初めは少し苦しかったが、段々と楽しくなっていたのう」

提督「そうだな……私も、苦しくもあったが楽しかった……」

利根「…………」

提督「辛い、な……」

利根「うむ……」

提督「──む」

利根「どうしたの──む?」

提督「……遠くで何か見えるな」

利根「うむ。なんじゃろうか、アレは」

提督「……少しだけ、嫌な予感がする」

利根「アレが深海棲艦なのかもしれぬ事かの?」

提督「どうだろうか。これはただの勘だ。何の根拠も無い」

利根「ふむ……」

提督(もっと別の嫌な予感だが……どうなる事か……)

…………………………………………。



281:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2015/01/06(火) 23:48:22.39 ID:2LIRreado

提督・利根「────────」

金剛・瑞鶴「…………」

響「数日振りだね」

提督「お前達……どうしてここに来た」

金剛「…………」チラ

瑞鶴「…………」コクン

金剛「……捨てられちゃいまシタ」

提督「……どういう事だ」

瑞鶴「私達ね、ちゃんと提督さんの元に帰ったの。……けど、そこには別の私達が居たのよね」

利根「じゃが……お主達は錬度が充分にあるのではなかったのか……?」

響「司令官は──あの人は、同じ艦娘を二人以上置かないんだ」

提督「あの短期間で、お前達よりも錬度よりも高い三人を新しく……か」

金剛「ザッツライト。その通りデス」

響「それで、轟沈しろって命令が出たから、従う振りをしてここまで逃げてきたんだ」

利根「沈め……と、命令……が……?」

金剛(…………? なんだか、利根の様子がおかしいデス)

瑞鶴「うん……。もう、嫌になっちゃってね」

利根「くく…………」

金剛「え……?」

提督「利根、どうし──」

利根「あハ……アハハハハ…………」



282:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2015/01/06(火) 23:49:03.25 ID:2LIRreado

瑞鶴「え、え……?」ビクッ

利根「沈め、と……。羨ましい命令ではないか……」

金剛「ど、どうしたのデスか?」

提督「利根、止めろ」

利根「我輩は……我輩は沈みたいというのに……死にたいというのに、死なせてくれぬのじゃぞ」

提督「利根」

利根「ッ! ハハ……ハハハ……! 提督よ、身体を吊るすなど生温い事をせず、首を吊らせても良いんじゃぞ? それならば我輩も確実に死ねるじゃろう……?」

提督「…………」

瑞鶴「どう、なってるのこれ……? え……? 利根さん……?」

利根「のう提督よ。次は手ではなく縄で首を締め上げて吊ってくれぬか? 良いじゃろう? 良い案じゃろう?」

響「これは……」

提督「少し寝ていろ」ビシッ

利根「────っぁ……」ガクン

提督「世話の焼ける……」ソッ

瑞鶴「あの……頭がすっごい揺れたんだけど……大丈夫なの……?」オドオド

提督「加減くらいは分かっている。少し気を失った程度だ」

瑞鶴(それって色々と経験済みって事……?)

提督「……事情は話す。部屋に戻ろう。外では利根を寝かせられん」スッ

瑞鶴「うん……」トコトコ

金剛・響「…………」トコトコ

利根「…………」グッタリ

瑞鶴「……ねえ、本当に利根さん大丈夫なの? 物凄くグッタリしてるけど……」

提督「心が疲れ切っていたのかもしれん。……少しは治っていると思っていたのだが、甘かったようだ」

響「…………」タタッ

ガチャ──

提督「ありがとう、響」

響「ん。頭、撫でてくれる?」

提督「利根を寝かせてからな」

響「約束だよ」

提督「こんな小さな約束で良いのなら」

響「約束」

提督「約束だ」



283:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2015/01/06(火) 23:49:40.23 ID:2LIRreado

瑞鶴「……懐いてるわね」

金剛「ええ……」

提督「……ゆっくり寝ていてくれ、利根」ソッ

利根「…………」

響「…………」ヂー

提督「ありがとうな、響」ナデナデ

響「んっ……」

提督「さて……」

金剛「……何があったのか、話してくれるデスか?」

提督「ああ。……だが、一つ頼み事がある」

瑞鶴「? 何かしら」

提督「話していく内に、私は私でなくなるかもしれん。その時は遠慮なく殴り倒してくれ。殺しかけても構わん」

瑞鶴「あの……言っている意味が分からないんだけど……」

提督「……すまない」

瑞鶴「えっと……どういう意味なのか、もうちょっと詳しく言って欲しいかも」

提督「…………これから話す事は、私と利根が壊れた理由だ。それを話していく内に、私も利根のように壊れるかもしれん」

金剛「だから、殴り倒してでも……デスか」

提督「そうだ。人間とはいえ、本気で殺しに掛かってくると痛い目を見る。だから、頼む」

金剛「……分かりまシタ」

瑞鶴「ええっと……うん。なんとか、頑張るね」

…………………………………………。



284:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2015/01/06(火) 23:50:32.54 ID:2LIRreado

提督「────これが、私達の過去だ」

金剛「……私達が原因、デスか」

提督「ただ不運だっただけだ。誰のせいでも、ない」

瑞鶴「中将さん、大丈夫……? すっごく辛そう」

提督「……なんとか、な」

響「無理はしないでね」

提督「ああ……。少し、横になっても構わないか」ギシッ

金剛「ハイ。ゆっくり休んで下サイ」

提督「ふー……」

金剛(……本当に辛そうデス。汗も出ていマスし、とても我慢していたのが分かりマス……)

瑞鶴「…………」スッ

提督「……瑞鶴?」

瑞鶴「こうやって、手を握っていれば……少しは楽になれるかな、って」ギュゥ

瑞鶴「私達は、ここに居るから……ね?」

提督「……ありがとう」

瑞鶴「ううん。あの時の、せめてのお礼。中将さんは命の恩人だもの」

提督「そうか……」

瑞鶴「何かあったら言ってね? 私で出来る事だったら何だってするから」

瑞鶴『────────』

提督「ああ……。後で叱らないとな……」

瑞鶴「え……えぇ……?」

提督「すまない……少しだけ眠らせてくれ……」

瑞鶴「えっと、うん。……手、握ったままが良い?」

提督「出来れば、そうしてくれ……」

瑞鶴「うん。分かったわ」

提督「……………………」スゥ

瑞鶴「……もう寝ちゃった」

金剛「本当に、無理をしていたのデスね。顔色も良くないデス……」

響「……何の因果があるんだろうね」

瑞鶴「?」

響「私達は捨てられる運命にあったとしても、提督が私達と同じ艦娘を沈ませてしまうなんて、何かがあるんじゃないかって疑ってしまいそうになるよ」

金剛「……酷い偶然デス。──デスが、もうそんな気持ちにはさせまセン」

瑞鶴「うん。どうにかして二人の心の傷を癒してあげたい」

響「賛成だよ。……でも」

金剛「ええ」

瑞鶴「今は、静かに眠らせてあげましょうか」

提督・利根「……………………」

……………………
…………
……



319:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2015/01/14(水) 23:08:00.34 ID:ZjGe9GsQo

長門「失礼する!!」バンッ

大佐「……ノックぐらい出来ないのかお前は」

長門「話を耳にしたぞ! 貴様は一体何がしたいんだ!!」

大佐「チッ……面倒な奴に……」

長門「答えて貰うぞ……! あの三人に轟沈命令を出したそうじゃないか……!!」ギリッ

大佐「それがどうしたんだ。俺は面倒が嫌いなのを知ってるだろ」

長門「ふざけるな!! 貴様は艦娘をなんだと思っている!?」

大佐「兵器だろ。何を当たり前の事を言っているんだ……」

長門「ならば、なぜその質の高い兵器を捨てようと考えた!」

大佐「単純に把握が面倒だからだよ。見分けなんて付かないだろ。……ああ、艦娘のお前らなら見分けが付くのかもしれんが、人間には無理だ」

長門「それならばバッヂでもなんでも使えば良かったのではないか!? わざわざ……轟沈処分にする理由が分からん! 解体して装備は近代化改修に回しても良い! 総司令部に届けて戦力の足りない鎮守府に送るというのも──!!」

大佐「なぜ艦娘をバッヂで一々確認せねばならんのだ。それと、解体も手続きが面倒なんだよ。解体をする為には総司令部の都合もあるから随時受け付けている訳じゃない。理由も必要だ。ただ単に被って把握が面倒だからという理由なんて書いてみろ。大目玉を食らうのは俺だぞ」

大佐「その点、轟沈は楽だ。艦娘の代えなどいくらでも居る。轟沈しても報告書の端に名前を入れるだけで良い。それならば轟沈させる方が良い」

大佐「あと、艦娘がそう簡単に別の提督の言う事を聞く訳がないだろ。昔、俺も戦力が乏しかった時に高レベルの艦娘が総司令部から送られてきた事はあった。だが、俺の言う事など聞きやしなくて作戦どころじゃなかったぞ。お前も俺以外の提督から命令されて動くか?」

長門「……少し抵抗はあるが、貴様よりも遥かに良い提督ならば聞くぞ」

大佐「チッ……!」

長門「毎度毎度、貴様は考えが足りていない。だから、これだけの戦力を有しておきながら結果も残せず万年大佐だと、なぜ分からない」

大佐「……あ? お前、誰にそんな口を利いているのか分かっているのか?」

長門「無論、目の前に居る私の外道な提督だ。今回の件で心底呆れた。──そうだな。私にも轟沈命令を出すか?」

大佐「…………」

長門「別に大した痛手でもなかろう? すぐに別の私がお前の下で、私と同じく最高錬度となるだろう。……だが、これだけは断言しておく。どの私も貴様に心を開かん。貴様がそうである限りな」

大佐「生意気な奴め……」

長門「当然だ。私がこの鎮守府に居る理由も、貴様が上司だからではない。ここに居る艦娘の皆が心配なだけだ。早く失脚して欲しいものだな」

大佐「……………………」

長門「話す事は全て話した。私は戻る」

大佐「……不敬罪だ」

長門「ん?」

大佐「お前は提督である俺に不敬を働いた。それは罪となるのは知っているだろ」

長門「ああ知っている。だが、貴様を敬えと言われても無理な話だ」

大佐「お前は総司令部で懲罰を受けてもらう。出てくるまでに俺への敬い方を覚えておけ」

長門「ああ。貴様も艦娘の扱い方を覚えておくんだな」

大佐「減らず口を……!」

長門「ふん」

大佐(……いつか必ず、その高いプライドを圧し折ってやる)

……………………
…………
……



320:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2015/01/14(水) 23:08:37.76 ID:ZjGe9GsQo

提督「…………」

利根「…………」

響「本当に良く眠ってるね。もう何時間もこのままだ」

瑞鶴「……大丈夫かしら。本当にピクリとも動かないわよね」

金剛「ええ……。二人共、寝返りすら打たずに──」

金剛「……ホワッツ?」

瑞鶴「? どうしたの、金剛さん?」

金剛「……私の記憶違いでなければ、二人は寝返りを打っていまセンよね?」

響「うん。一回もしていないよ」

金剛「良くありまセン。ウェイクさせてしまうかもしれまセンが、体勢を変えさせまショウ」スッ

瑞鶴「えっと……どういう事?」

金剛「寝返りはとても大事デス。血の巡りを良くしたり、身体の歪みを直そうとしたりする重要な動きデス」グイッ

響「……もし寝返りを打たなかったらどうなるの?」

金剛「肩こりや腰の痛み、挙句には自律神経にもアブノーマルが現れる事があるそうデス」グイッ

瑞鶴「そうなんだ……って、詳しいわね?」

金剛「えっと、私も寝返りを打たなくなってしまった事がありまシテ……」

響「……司令官に仕えていた時だね?」

金剛「イエス。妹達が教えてくれるまで気付きまセンでシタ。それで、霧島が寝返りの事について調べてくれたのデス」

瑞鶴「それで知ったのね。……でも、どうして寝返りって打たなくなるのかしら。必要な動きなんでしょ?」

金剛「原因は色々あるらしいのデスが、ストレスも関係しているらしいデスよ」

瑞鶴「……なるほどね。あの頃の金剛さんや、中将さんと利根さんに当て嵌まるわ」

金剛「私なんて、二人に比べれば些細な問題デス。……二人は壊れた心で治ろうと、自殺願望を無理矢理抑えていたのデスから」

響「私にとっては、どっちもどっちだと思うけど」

金剛「そんな事はありまセン。私が二人と同じ体験をしたら、きっと…………耐えられなかったでショウ……」

瑞鶴・響「……………………」



321:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2015/01/14(水) 23:09:14.07 ID:ZjGe9GsQo

金剛「…………起きまセンね。二人……」

瑞鶴「うん……」

響「……ねえ。私達は何をしてあげたら良いのかな」

瑞鶴「むしろ、何が出来るのかしら……」

金剛「二人の心を癒す事が出来れば一番なのデスが……」

瑞鶴「難しいわよね……。だって、私達は中将さんの……」

三人「…………」

金剛「……私は、瑞鶴と同じく何だってするつもりデス」

響「私もだよ。出来る限りの事をするつもり」

瑞鶴「でも、どうすれば中将さんと利根さんの心を癒せられるのかしら……」

金剛「正直に言うと……分からないデスよね……」

瑞鶴「うん……。たった三ヶ月だけど、ずっと一緒に居たのに分かんない」

響「消去法で考えれば答えが出てくるかな?」

金剛「良いデスねそれ。少し考えてみまショウ」

響「まず、性行為はダメだったよね」

瑞鶴「マッサージもあんまり意味がなさそうって結論だったっけ」

金剛「食事も特に拘りが無いみたいデスよね」

三人「……………………」

瑞鶴「……詰んでない?」

金剛「あ、諦めるのはまだ早いデス……!」



322:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2015/01/14(水) 23:09:41.24 ID:ZjGe9GsQo

瑞鶴「でも……この島で出来る事なんて他に……」

響「んっと、私達が提督の艦娘になるって言ってみるのは?」

金剛「ダメです」

瑞鶴「ダメよ」

響「……やっぱり、傷口を広げてしまうよね」

金剛「それもありマスが、今はその時期ではないデス。理想を言うならば、提督から言って下さるのを待った方がベターだと思いマス」

瑞鶴「……もしかしなくても、それまでの間は私達って野良艦娘?」

響「の、野良……」

金剛「間違ってはいまセンが、そう言うと……とても惨めになるネー……」

瑞鶴「中将さん……拾ってくれるかしら……」

響「野良艦娘です、にゃぁにゃぁ──って鳴いてみると良いんじゃないかな。拾われたいって思って鳴いてる野良猫みたいに」

瑞鶴「…………」

金剛「……と、とりあえずデスね。私は一つ思った事があるデス」

響「なんだい?」

金剛「マッサージは意味が無いと思っていまシタけど、同じ体勢で寝続けているのならば意味があるのではないかと思いまシタ」

響「ああ、確かに。言われてみればそうだね」

金剛「なので、二人が起きたらやってみまショウ」

響「うん。やってみる」

瑞鶴(……………………)

…………………………………………。



323:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2015/01/14(水) 23:10:13.73 ID:ZjGe9GsQo

提督「…………む」

瑞鶴「あ、起きた?」

提督「瑞鶴……か……」

瑞鶴「中将さん、大丈夫?」

提督「ああ。大分落ち着いた。──利根は寝たままか?」

瑞鶴「ううん。さっき起きたわよ。だけど、寒いって言って中将さんにくっついて寝ちゃった」

提督「なるほどな。だから利根がしがみついているのか」

提督「……起きる為だ。少し我慢してくれよ利根」ソッ

利根「うーん……」モゾモゾ

瑞鶴「服の端掴んでる。本当に中将さんの事が好きみたいね」

提督「……ところで、金剛と響はどうした?」

瑞鶴「ん、二人は外で木とか塩とか取りに行ったわよ」

提督「そうか。……世話を掛けさせてしまったな」

瑞鶴「良いって良いって。それより、お水でも飲む?」スッ

提督「わざわざすまん」スッ

瑞鶴「……んー」

提督「?」ゴクン

瑞鶴「謝られるよりお礼を言ってくれた方が嬉しい」

瑞鶴『────────────────────』

提督「……………………」

瑞鶴「……中将さーん?」

提督「あ、ああ……。どうした」

瑞鶴「なんか急に上の空になってたけど、まだ眠いの?」

提督「大丈夫だ。……ああ、大丈夫だ」



324:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2015/01/14(水) 23:10:48.52 ID:ZjGe9GsQo

瑞鶴「……なんだか大丈夫に見えないんだけど」

提督「夢見が悪かっただけだ。心配させてすまない」

瑞鶴「むー……」

提督「…………」

瑞鶴「むぅー……」ヂー

提督「……心配してくれて、ありがとう瑞鶴」

瑞鶴「うんっ!」ニコッ

瑞鶴『────』

提督「……すまん、もう一杯だけ水を貰っても良いか?」

瑞鶴「あ、足りなかった? じゃあ汲んでくるから、ちょっと待っててね」スッ

提督「頼む」

瑞鶴「良いって良いって。じゃあ、いってきまーす」トコトコ

提督「…………ふー……」

提督「…………」ボー

瑞鶴『────────────』

提督「……大丈夫だ。……大丈夫だとも」

瑞鶴「何が大丈夫なの?」ヒョコッ

提督「──ああいや、独り言だ」

瑞鶴「ふうん? あ、お水、汲んできたわよ」スッ

提督「ありがとう」スッ

瑞鶴「二人もすぐに戻ってくると思うわよ」

提督「…………」ゴクッ

提督「……そうか」



325:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2015/01/14(水) 23:11:15.77 ID:ZjGe9GsQo

瑞鶴「──あ、噂をすれば」

金剛「提督ー」ヒョコッ

響「やあ」ヒョコッ

提督「おかえり、二人共。──木や塩を回収してくれていたんだったな。ありがとう」

金剛「イエイエー。あのくらいお安い御用デース」

響「それよりも、提督は大丈夫なのかい?」

提督「問題ない……とは言えないが、すぐに良くなるだろう。気持ちの問題だ」

金剛「無理はノーですからね?」

提督「分かっているさ」

響「…………」チラ

響「利根さんは、まだ寝てるんだね」

提督「そうみたいだ。……それだけ精神的にキツかったんだろうな」

金剛「…………」

響「そうだ。利根さんが起きた時に話したい事があるんだ」

金剛「お二人に出来る事を、私達なりに考えてみたのデス」

提督「そんなに気にしなくても良いと思うのだが」

金剛「ンー……提督には、こう言った方が良いかもしれまセン」

金剛「──私達がしたいと思ったのデス。なので、させて下サイ」

提督「……まったく。このお人好しめ」

瑞鶴「きっと、中将さんのがうつっちゃったのよ」

提督「そうとは思いにくいが」

瑞鶴「そうよ。きっと、ね?」

提督「……向こうに戻ってから、少し強引になったか?」

響「そうかもね。……ダメだったかい?」

提督「いや、良い事だと思う。お前達は少し自分を押し通すくらいで丁度良いだろう」

金剛「ハイ。そうさせて貰いマスね」

提督(……そうなると、辛くなるのは私達かもしれんがな)

…………………………………………。



345:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2015/01/21(水) 22:43:24.39 ID:NtClGHuJo

利根「……三人が…………。はぁ……やはり夢ではなかったのか」ジトッ

提督「…………」ガツッ

利根「~~~~~~ッッ!?」ジタバタ

瑞鶴「うわ……痛そう……」

金剛「あ、あの……流石にやり過ぎでは……」

響「……脳天直撃っていうのは、こういう事なんだね」

提督「なぜ頭を殴ったか分かるか、利根」

利根「……わ、分かる」

提督「ならば、言う事があるな?」

利根「…………すまぬ、金剛、瑞鶴、響……」

提督「次から失礼な事を言うなよ」サスサス

利根「うぅ……撫でられてる場所がヒリヒリするのじゃ……」

提督「返事はどうした」グイグイ

利根「あダッ!? アイダダダダダッ!!! はいッ! もう言わぬ!! もう言わぬからぁ!!」ジタバタ

提督「よろしい」サスサス

利根「うぅぅ……痛いのじゃ……痛いのじゃ……」

瑞鶴「……なんかすっごく可愛い」

利根「やるでないぞ!?」ビクンッ

提督「まったく……。艦娘を殴った事なんて初めてだぞ……」サスサス

利根「我輩も提督が殴るのなんて初めて見たぞ……。痛い……」

提督「……すまん。強過ぎた」サスサス

利根「我輩が悪いのじゃ……。自業自得なのじゃ……」



347:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2015/01/21(水) 22:50:41.77 ID:NtClGHuJo

利根「……しかし、少し不思議な気分じゃ」

響「不思議?」

利根「よくは分からぬが、こうして提督に撫でられると……うーん? 満たされる……? いや、違うのう……。温かい……? むぅ……? なんじゃろうか、この気持ち……? 言葉に出来ぬ」

提督「……ふむ」サスサス

響「……確かに、提督に撫でられると嬉しい気持ちになるね。そういうのじゃないの?」

利根「嬉しいというのは近いような違うような……むー……」

響「…………? なんだろうね?」

金剛(瑞鶴、これはもしかしなくても……)ヒソ

瑞鶴(でも、利根さんって中将さんに恋愛感情は無いって言ってたし……)ヒソ

金剛(自覚していないとかデスかね……?)ヒソ

瑞鶴(どうなんだろ……。分からないわ……)ヒソ

提督「……………………」スッ

利根(む……撫でてくれるのが終わってしまった……)

提督「ところでお前達。利根が起きたら何か話したいと言っていなかったか?」

瑞鶴「あ、そうだった。──えっと、二人に何かしてあげたいって思っててね、思い付いたのがマッサージなの」

利根「マッサージ?」

提督「ふむ。どうしてだ?」

金剛「提督も利根も、昔の私のように寝返りを打っていませんでシタ。なので、身体が凝り固まってると思ったのデス」

提督「なるほどな。だから身体を解してみようという事か」

響「うん、そうだよ」



348:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2015/01/21(水) 23:00:30.12 ID:NtClGHuJo

利根「そんなに凝るものなのかの? 我輩、まったくそんな感覚が無いのじゃが」

金剛「とりあえずデスが、やってみまショウ。やっても損はないデス」

利根「ふむ。確かにそうじゃのう」

瑞鶴「ここにはベッドが一つしかないから、私達の部屋まで移動して貰って良いかしら」

提督「分かった。利根、行くぞ」スッ

利根「うむ。了解した」スッ

金剛(……あれ? 今気付いたのデスが、いつもの利根になってマス? 気を失う前と、起きたばかりに見えた狂気はどこへ……?)

瑞鶴「ほら金剛さん、行くわよ?」トコトコ

金剛「あ──エクスキューズミィ」スタスタ

響「──はい、提督はこっちで利根さんはこっちだよ」

提督「分かった」スッ

利根「これで良いかの?」ボフッ

響「うん。利根さんみたいにうつ伏せになってね」

提督「ふむ」スッ

金剛「では、マッサージを始めマスねー」ソッ

瑞鶴「力を抜いていてね、利根さん」スッ

利根「寝てるようにで良いのかの?」

瑞鶴「うん。それで良いみたい」グッ

瑞鶴「……カチカチじゃないの。こんなになってて痛くないの?」クイクイ

利根「うむ。特に何ともないぞ」

瑞鶴「まさかとは思うけど、痛みが麻痺してるとかなんて事は……」コネコネ

利根「痛いものは痛いがのう……」



349:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2015/01/21(水) 23:10:49.03 ID:NtClGHuJo

金剛「…………」クニクニ

提督「…………」

響「二人は静かだね」

金剛「……身体は鍛えられているようなのデスが、とっても柔らかいデス。どこもマッサージをする必要がないデース……」スッ

提督「ならば座っているぞ。──私は利根と違って多少の運動や柔軟体操はやっているから、身体の凝りとは無縁だろう」ギシッ

利根「むう……我輩もやってみようかのう……」

提督「少し前に一分も持たずしてやめたのはどこの誰だったかな」

利根「……何も言い返せぬ」

提督「だろうな」

響「でも、どうしようかな……思い付いたのがマッサージだけだったのに……」

提督「だから、気にしなくても良いと言っただろう?」

金剛「ダメです。私達は二人に何かをしてあげたいネ」

提督「とは言ってもだな……。私も何かして欲しいと思う事が無い」

金剛「ぅー……」

響「……本当、後はこれくらいしか無いのにね」トコトコ

提督「ん? 何をするんだ、響?」

響「ただこうするだけだよ」ピトッ

提督「……何の真似だ?」

響「ただ肌を寄せてるだけ。私が隣に居るのが嫌なら止めるよ」

提督「嫌いではないが、こういう事はもっと信頼できる人や大事な人にやりなさい」

響「それって、どっちとも提督に当て嵌まってるよ」

金剛(響が隣に居ても問題ない、デスか。ならば、私も大丈夫デスかね?)

提督「…………」



350:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2015/01/21(水) 23:20:32.86 ID:NtClGHuJo

利根(……………………)チクチク

瑞鶴「ん。利根さん、身体に力が入ってるわよ」コネコネ

利根「ん? すまぬ」

響「お願いだから、何か恩返しをさせてくれないかな」

提督「……困った子だ」

利根(…………)チクチク

金剛「では、私は反対側デスね」ソッ

提督「お前までどうしたんだ金剛……」

金剛「背中の方が良かったデスか?」

提督「そういう意味ではない」

金剛「では提督は隣と背中、どっちがライクですか?」

提督「……非常に返答が困るんだが」

響「じゃあ、私は背中で」ノシッ

提督「本当に一体どうしたんだ二人共……」

利根(……………………)チクチクチク

…………………………………………。



351:少なかったのでもう一個 ◆I5l/cvh.9A 2015/01/21(水) 23:21:08.72 ID:NtClGHuJo

提督「──さて、そろそろ寝るか利根」

利根「…………」

提督「……ん?」

利根「……提督よ、我輩は少し星を見てくる。先に寝ておいてくれぬか」スッ

提督「珍しいな。どうしたんだ?」

利根「我輩もそういう気分というものがあるのじゃ」トコトコ

提督「……ふむ。暗いから気を付けるんだぞ」

利根「うむ……」トコトコ

利根「…………」トコトコ

利根「……………………」トコトコ

利根「…………」チラ

利根「……そりゃあ、来ぬよな」

利根「砂は……うむ、乾いておる」コロン

利根「…………はぁ……」

利根「我輩、何かおかしいぞ……。いや、普通ではないのはずっと前から分かっておるのじゃが……なんであの三人が提督とベタベタしておると、胸がチクチクするのじゃ」

利根「トゲなぞ無いのは何回も確認しておるし、むしろ何か体内にトゲがあるような感じじゃし……何かの病気なのじゃろうか……」

利根「……まあ、こんな島で何年も居れば病気の一つや二つなってもおかしくはないかのう?」

利根「はぁ……。なんじゃろうかのう……月と星が、やたらと寂しがっておるように見える。……いや、寂しいと思ってるのは我輩かの?」

利根「提督……」

利根「……………………」



352:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2015/01/21(水) 23:30:32.61 ID:NtClGHuJo

──トコトコ

利根「……む?」

響「あ、居た。こんな所に居たんだね」

利根「響? どうしたのじゃ?」

響「二人と一緒に寝ようと思って二人の部屋に行ったんだけど、利根さんが外に行ったって言ってたから来たんだ」

利根「ふむ。……金剛と瑞鶴はどうしたのじゃ?」

響「二人は私達の部屋だよ。流石に、一人は子供じゃないとベッドに三人は入れないからね」

利根「なるほどのう」

響「──利根さんは星が分かるの?」

利根「ん? 星座の事ならば我輩はあまり分からぬのう。ただぼんやりと見ていただけじゃ」

響「そっか」コロン

利根「砂が付いてしまうぞ」

響「説得力が皆無だね」

利根「む。そういえば我輩も寝転がっておったのじゃった」

響「……時々思うけれど、利根さんって不思議だよね」

利根「そうじゃのう。お主達がここへ来てから自分が普通ではないと改めて認識したのう」

響「それもあるけど、もっと別の何かだよ」

利根「ふむ?」

響「なんというか、私と似てる気がする」

利根「響と?」

響「うん。何が似てるのか良く分からないんだけどね」



353:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2015/01/21(水) 23:40:28.60 ID:NtClGHuJo

利根「ふむう……言われてみれば、何か似ているような気もするのじゃが……」

響「利根さんもそう思う?」

利根「んーむ。なんとなくなのじゃがのう。今言われて初めて気付いたくらいじゃし」

響「そっか」

利根「ああそうじゃ。似ていると言えば、響に少し聞いてみたい事が出来たぞ」

響「私に? なんだい?」

利根「響は胸がチクチクする事はあるかの? なんというか、身体の奥にトゲがあるような感じじゃ」

響「……無い、かな。今までそんな事は無かったよ」

利根「うーむ……」

響「そんな痛みがあるんだ? ……そういえば、前にもそんな事があったよね?」

利根「うむ。あの時と同じ痛みなのじゃが、今回は少しだけ違うのう」

響「どんな風に?」

利根「前はすぐにチクチクが無くなったのじゃが、今回は全く消えぬ。多少治まったりする事はあるのじゃが、ふとした拍子にチクチクが戻ってくるのじゃ」

響「……何かの病気?」

利根「やはり響もそう思うかの? んーむ……じゃが、ここでは診察など出来ぬしのう……」

響「一回だけ戻ってみる?」

利根「……横須賀の事を言っておるのならば嫌じゃ」

響「そっか……」

利根「提督から聞いておると思うが、我輩は壊れておる」

響「…………」

利根「本当ならば今すぐにでも沈んで、あの三人にお詫びを言いたいくらいじゃ。それに、他の皆にも会わせる顔も無い」



354:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2015/01/21(水) 23:50:43.24 ID:NtClGHuJo

響「……ねえ、少し思ってたんだけど良いかな」

利根「うん?」

響「私と金剛さんと瑞鶴さんって、利根さんを命懸けで助けた三人と似てるの?」

利根「……そうじゃのう。違いはある。金剛はもっと元気が一杯じゃった。事あるごとに提督提督と言って、笑顔を振舞っていたのう」

響「へぇ。そっちの金剛さんはそんな感じだったんだ」

利根「うむ。……ああ、そういえば今日の金剛はどことなく似ておったのう」

響「そうなの?」

利根「どことなく、じゃがな」

響「ふぅん? ──瑞鶴さんはどう?」

利根「瑞鶴は金剛と逆じゃな。こっちの瑞鶴の方が元気が良いように思う。いや、本当に少ししか違わぬのじゃが」

響「どういう事?」

利根「提督はお仕置きで天井から吊るすじゃろう?」

響「うん」

利根「あれが怖くて怖くて仕方が無かったらしくてのう。子犬のように絶対服従じゃったよ」

響「……子犬?」

利根「うむ。普段はこっちの瑞鶴と変わらんのじゃが、叱られそうになった時はビクビクと身体を震えさせていてのう。──ああそうじゃ。そういう時だけ臆病になっていたんじゃ」

響「……あんまり、そっちの瑞鶴さんと変わらないような気がする」

利根「ほう、そうなのかの?」

響「うん。向こうの鎮守府でも、瑞鶴さんって怒られてる時はビクビクしてたし。ほら、提督は私達を叱る事がほとんど無いから分からないだけだと思うよ」

利根「なるほどのう」

響「それで、私はどうなのかな」

利根「響は……そうじゃのう。本当に似ておる」

響「そうなの?」

利根「うむ。強いて言うならば、お主よりももっと積極的だったように思う。提督に影響をされたのか、頑固でのう。自分が納得できる反論や代替案がなければ頑なに首を横に振っておった。今日、我輩がマッサージをし貰っていた時のお主がいつもの響じゃった」

響「艦娘はどこも似たようなのかもしれないね」

利根「そうじゃのう。基本的な事は同じで、後は環境の違いによるものだけなのじゃろう」



355:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2015/01/21(水) 23:52:10.32 ID:NtClGHuJo

響「じゃあ、考えてる事も似てるかもね」

利根「かもしれぬのう」

響「……一つ、良いかな」

利根「うん?」

響「少し嫌な事を聞くから、嫌だと思ったら正直に言ってね」

利根「うむ」

響「もし、私が利根さんを生き延びさせる為に囮となったら、今の利根さんを見て私は……」

利根「…………」

響「…………」

利根「……構わぬぞ」

響「ん。……一人だけでも生き残ってくれたのなら、逃げてって言った甲斐があった。けど、今こうして死んだも同然の事をするのなら、何の為に私は沈んだのか分からなくなる」

利根「……………………厳しいのう……」

響「たまに言われるよ」

利根「……そうか。我輩、今は死んだも同然の事をしているように見えるのか」

響「見えるね。死人はそこで止まる。生きた者は未来へ向かって進み続ける。……これは私達の元司令官の言った言葉から思った事なんだけどね」

利根「……なるほどのう。生きているのにも関わらず、過去に捕らわれて前に進まないから死んだも同然、か」

響「うん。提督も同じだよね」

利根「割と心にくる言葉じゃのう……何も言い返せぬ……」

響「…………」

利根「……のう、響。どういう言葉でそれを思い付いたのじゃ?」

響「死んだ艦娘は止まって沈む。お前らは動いているから生きている。止まるまで撃ち続けろ……だったかな」

利根「なんじゃそれは……」

響「つまるところ、そういう司令官だよ」



356:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2015/01/21(水) 23:52:46.29 ID:NtClGHuJo

利根「…………」ムクリ

響「?」

利根「お主も、苦労したんじゃのう……」ナデナデ

響「ん。くすぐったい」

利根「嫌だったかの」

響「ううん。好きだよ。頭を撫でてくれるのって、好き」

利根「うむ。我輩も撫でられるのは好きじゃ」ナデナデ

響「似てるね」

利根「ハハ。そうじゃのう」ナデナデ

利根「……のう、響よ」

響「なに?」

利根「響は、提督の事をどう思っておる?」

響「唐突だね。──んっと、なんというか……お父さんみたい、かな」

利根「ふむ。父親とな?」

響「ただなんとなくだけどね」

利根「父親か……」

利根(……ああ、なんとなく父親に甘える娘にも見えない事もなかったのう)

響「? どうしたの?」

利根「いや、確かにそれっぽいと思っただけじゃ」

響「そっか」

利根「さて、そろそろ寝るとするかのう」スッ

響「うん、そうしよっか」スッ

利根「ところで、提督が父親で響が娘とするならば、今日は我輩が母親になるのかの?」

響「利根さんは母親っていうよりもお姉ちゃんって感じだよね」

利根「むう……そうか」

利根(……まあ、それも悪くないかのう?)

利根「む?」

響「?」

利根「ああいやすまぬ。なんでもない」

響「…………?」

利根(……何が悪くないのじゃ?)

……………………
…………
……



364:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2015/01/22(木) 19:49:14.75 ID:Omo818RGo

提督「さて利根。そろそろ戻る時間じゃないか?」

利根「ぐぬぬぬぬ……」

提督「釣果は私が七匹と鋼材の入ったドラム缶。利根が四匹。鋼材を抜いても私の勝ちはほぼ確定だな」

利根「ま、まだじゃ……! これから連続で釣れるかもしれんではないか……!」

提督「今まで一回でもそんな事があったか」

利根「うぐっ……」

提督「さて、そろそろ片付けだ」

利根「む、むぅぅ……────おお?」ピクン

提督「む」

利根「きたぞ! せやぁ!!」グイッ

利根「……………………」

提督「餌だけ食われたようだな」

利根「むがー! 早かったかぁ!!」

提督「流石に焦り過ぎたな。釣りはじっくりとやるものだ」

利根「うーむ……。じゃが、待ち過ぎてもダメじゃし……むぅ……」

提督「お前はその時によって釣れる釣れないが激しいな。未だにタイミングが掴めないか?」

利根「食い付き方で変えるなど面倒で仕方が無くてのう……」

提督「それが釣りというものだ。さて、帰る準備を──」

利根「む──」

提督「…………あれは……見えるか、利根?」

利根「……うむ。見えるぞ。どう見ても深海棲艦じゃ」



365:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2015/01/22(木) 19:49:42.06 ID:Omo818RGo

提督「しかし珍しいな。どう見ても二隻しか居ないぞ」

利根「じゃのう。こんな珍しい事もあるものじゃな」

提督「……む。あれは艦載機か?」

利根「という事は空母か。……こっちに飛んできておらぬか?」

提督「一応隠れて……いや、もう遅いか」

利根「ほう。これもまた珍しい艦載機じゃな。たこ焼きじゃぞ。新型のようじゃな」

提督「なぜお前達はたこ焼きと言うんだ……私はいつも髑髏と言っているのに……」

利根「だって完全にたこ焼きじゃろ?」

提督「緊張感が無いだろ……」

利根「今ならば良かろう?」

提督「まったく……」

利根「ふむ。帰っていったのう」

提督「やはり攻撃してこないな。艦娘が居るというのに、本当に不思議なものだ」

利根「じゃのう」

提督・利根「……………………」

利根「……提督よ。あの二隻、近付いてきておらぬか?」

提督「……そうだな。確実に近付いてきているな」

提督・利根「……………………」

利根「流石に、マズくないかの……?」

提督「マズいかもしれんな……」

利根「どうしようかのう……」

提督「まあ……様子だけ見てみようか。こっちは手出しも出来んしする気も無い。攻撃の意思があるのならば既にやっていてもおかしくない。もし接近されても、金剛達に気付かれないよう岩場の方まで寄っておこう」スタスタ

利根「うむ」トコトコ



366:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2015/01/22(木) 19:50:08.94 ID:Omo818RGo

提督・利根「……………………」

提督「……しかし、本当に不思議だ。前は無視されていたよな?」

利根「うむ……。前が特殊だっただけなのかの?」

提督「さて、それは分からん」

利根「……むう? のう、提督よ。あの深海棲艦の艦種なのじゃが……」

提督「ああ……。あまり出会いたくない奴だな」

利根「じゃのう……。我輩、あやつに何回大破させられたのか分からぬぞ……」

提督「私も何回冷や汗を掻かされたか分からん……」

利根「制空権を取っていても問答無用でこっちを攻撃してくるから、我輩はあやつが苦手じゃ……」

提督「下手をすればその状態で大破させられたな……」

ヲ級「……ヲ」

空母棲姫「……………………」

利根「…………」

提督「……会話は出来るのか?」

空母棲姫「ああ」

ヲ級「…………」コクコク

提督「そうか、良かった。それで、こんな島に何か用か?」

空母棲姫「人間と艦娘が見えたのでな。攻撃をしようと思ったのだが、どうも様子がおかしかったから拝見しようと思っただけだ」

提督「ほう。そんな事もあるのか。……では聞こう。お前達から見て私達はどう見える?」

空母棲姫「…………」チラ

ヲ級「…………」ジー

利根「…………?」



367:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2015/01/22(木) 19:50:37.56 ID:Omo818RGo

ヲ級「よく、分からない」

空母棲姫「……不思議な連中だというのだけは言える。それ以外はなんとも言えん」

提督「そうか」

空母棲姫「こっちも質問させて貰う。私達を見てどう思う」

提督「そんな服装で恥ずかしくないのかと思っている。中破でもしたのか?」

利根「良く見るとそのマント、格好良いのう……」

ヲ級「カッコ良い……」

空母棲姫「……変な奴らだな」

提督「よく言われる」

空母棲姫「変と言えば、なぜ艦娘に艤装を持たせていない。襲われたら死ぬぞ」

利根「邪魔じゃからもう何年も付けておらんぞ? この島で暮らすのに艤装はただただ邪魔なだけじゃ」

提督「その艤装も修理に使ってもう無い。潮風に煽られて錆付いていたからどっちみち使えなかっただろう」

ヲ級「えー……」

空母棲姫「本当に……変な奴らだな……」

提督「変なのはお前達もだろう。こっちでは勝手にお前たち二人を空母棲姫、ヲ級と呼んでいるが、たった二隻で動いているのは初めて見たぞ」

空母棲姫「……ふん」

利根「ぬ? 拗ねた?」

ヲ級「艦娘に、襲われた。仲間、沈んで、私達だけ、残った」

提督「ああ……そういう事か」

利根「その割にヲ級は無傷じゃのう?」

ヲ級「攻撃、来なかった」

利根「なるほどのう」



368:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2015/01/22(木) 19:51:07.82 ID:Omo818RGo

空母棲姫「……………………」

提督「……しかし、敵とはいえ普通に話せると哀れに思ってくる」

空母棲姫「哀れ、だと?」ピクッ

提督「傷付いてその状態だと仮定すると、お前は一刻も早く修理しなければならない状態だ。だというのにこうして道草を食っているという事は、修理をする手段が無いと私は思った」

空母棲姫「…………」

提督「艦娘と同じように修理しなければ服も直せないのならば……まあ、なんだ。その肌が露わになった状態でずっと居なければならないのは哀れだ、とな」

空母棲姫「……無駄に察しが良いな、お前」

提督「そうでもないだろ」

利根「我輩は単純にこれが通常なのかと思うたぞ?」

提督「滑走路が壊れているようだからそれは無い」

利根「あ、本当じゃ」

提督「それくらいは気付こうか、利根」

利根「そういう事もあるじゃろうて」

ヲ級「…………」チョンチョン

空母棲姫「! どうした」

ヲ級「この二人、本当に、敵?」

空母棲姫「…………本当は敵のはずなんだが……」

提督「単純に攻撃手段が無い」

ヲ級「あったら、攻撃、する?」

提督「せんよ」

空母棲姫「ほう。それはどうしてだ?」

提督「こっちも単純だ。私はもはや提督ではない」



369:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2015/01/22(木) 19:51:43.66 ID:Omo818RGo

空母棲姫「仕事ではないからしない、か」

提督「そうだ。私は好き好んで個人的な戦争などしない」

利根「……あれ? もしかして我輩、存在理由が否定されておるのかの?」

提督「今気付いたのか。戦う為の存在である艦娘から戦いを奪えばどうなるか分かるだろう」

利根「おー……。まあ、それも良いかのう」

ヲ級「……良いの?」

利根「別に構わぬ」

ヲ級「……不思議」

空母棲姫「随分とのんびりしているな」

提督「のんびりしなければならない事もあるものだ」

空母棲姫「ただの怠慢だろ」

提督「そうとも言う」

空母棲姫「……私が言うのもおかしいが、お前の艦娘は不幸だな」

利根「ぬ? 我輩か?」

空母棲姫「お前ではない。他の艦娘だ。──何年も前から艤装を付けていないという事から、お前達はここに何年も居るという事だ」

提督「……ああ、そうだ」

空母棲姫「残された艦娘は今、どう思っているんだろうな。延いては、沈んだ艦娘もどういう気持ちでお前を見ているのか……」

提督「…………お前なら、どう思う」

空母棲姫「ふざけるな、としか言いようがない。亡霊となったら真っ先にお前を祟るだろう」

提督「……そうか」

空母棲姫「お前の為に沈んだ艦娘が、何を思うかを考えると良い」

提督「……………………」

提督(……金剛、瑞鶴、響が何を思うか……か)



370:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2015/01/22(木) 19:52:21.53 ID:Omo818RGo

金剛『テートクー! いつまで私達の事を引き摺っているデスか!』

提督(ああ……言いそうだな……)

瑞鶴『辛いのは分かるけど、乗り越えなきゃダメよ?』

響『もう居ない私達ばかり見ていても、前には進めないよ』

金剛『テートクなら、必ず立ち直れマス。私はそう信じているネ。……ただ──』

提督(……………………)

金剛『──私達の事、忘れないで下さいね?』

提督「…………」

利根「……どうして泣いておるのじゃ、提督」

提督「……すまん」グイッ

空母棲姫「……………………」

空母棲姫(沈んだ艦娘を想って泣いている……。このような人が提督ならば、私も深海棲艦にならずに済んだのかもしれないわね……)

提督「……感謝する」

空母棲姫「私は何もしていない。お前が勝手に何かを想っただけだ」

提督「……そうか」

ヲ級「? ??」

提督「では、せめて塩を送らせてくれ」

空母棲姫「……何をする気だ?」

提督「不器用だが私は艦娘を修理する事が出来る。もしかすると、お前も修理を施せるかもしれん」

空母棲姫「お前の得にならないだろ」

提督「お前の得にはなるだろう」

空母棲姫「戦争をしている相手を援助するのはどうなんだ?」

提督「お前こそ戦う気力を失った敵を激励している」

空母棲姫「修理と称して殺すんじゃないのか?」

提督「恩を仇で返す事などせんよ」

空母棲姫「信用できないと言えばどうする」

提督「その空母を監視に就かせるか海に出るかを選べば良い」

空母棲姫「…………」

提督「…………」



371:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2015/01/22(木) 19:52:48.17 ID:Omo818RGo

空母棲姫「……艦娘のお前はどう思っている」

利根「うん? 提督に任せるぞ。よくは分からぬが、提督はお主に感謝しているようじゃしの」

ヲ級「据え膳。据え膳」

空母棲姫「意味がかなり違う。静かにしていなさい」

ヲ級「ヲ……」

空母棲姫「……修理はどこでやるつもりだ?」

提督「そこの工廠紛いの小屋だ」

空母棲姫「……変な事はするなよ」

提督「約束する」

…………………………………………。



372:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2015/01/22(木) 19:53:17.40 ID:Omo818RGo

空母棲姫「……ふむ。直る事は直った、か」

提督「完全には直らなかったがな。鋼材が足りなかった」

空母棲姫「これだけ直れば充分だ。……その、だな」

提督「ん?」

空母棲姫「…………」

提督「どうした」

空母棲姫「……感謝、する」

提督「私が勝手に直しただけだ」

空母棲姫「私の真似か、それは」

提督「さて、どうかな」

空母棲姫「食えない奴だ」

ヲ級「ヲ。直ってる」ヒョコッ

利根「おお、本当じゃ」ヒョコッ

空母棲姫「ん、ああ。完全ではないが、充分に直った」

ヲ級「裸、見られた?」

空母棲姫「……どうしてお前はそう反応に困る事ばかり言う」

ヲ級「どうだった?」

提督「私に聞くな。言ったら失礼だ」

ヲ級「ヲ……」

空母棲姫「まったく……」

利根「深海棲艦も大変なんじゃのう」

空母棲姫「人間と艦娘程ではない」

ヲ級「ヲー……」

空母棲姫「……さて、私達はそろそろ海へ戻る」

提督「そうか。気を付けろよ」

空母棲姫「……敵にその言葉を言うのは間違っていないか?」

提督「社交辞令と思ってくれ」

空母棲姫「敵に社交辞令というのもおかしいと思うが……まあ、お前がおかしいのは今に始まった事ではないか」

提督「これからはなるべくマトモになるようにしよう」

空母棲姫「……では、次は戦場で会おう」スッ

提督「会ったら、だがな」

空母棲姫「せいぜい死ぬなよ。人間、艦娘」

提督「そっくりそのまま返してやろう。深海棲艦」

…………………………………………。



373:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2015/01/22(木) 19:53:43.76 ID:Omo818RGo

金剛「深海棲艦と会ったデスって!?」

瑞鶴「そのまま話して帰ったって……どういう事なのそれ……」

響「……私の頭か耳がおかしくなったのかな」

提督「そのままの意味だ。響は何もおかしくなっていないから安心しろ」

金剛「本当に大丈夫なのデスか? 危害は加えられまセンでシタか?」

提督「ああ。この通り元気だ」

利根「我輩も怪我一つしておらんぞ」

瑞鶴「……提督さんは人間だからまだ分からないでもないけど、利根さんも大丈夫だったって何があったのかしら」

利根「さあのう……不思議な連中とは言われたが、艤装を付けていたとかの関係があるのかの、提督?」

提督「さあな。それは私にも分からない。ただ一つ言える事は、戦場で会ったら敵同士だという事だ」

響「……私達も会っていたらどうなっていたのかな」

提督「さて。それも分からん。もしかすると変わらなかったかもしれんし、攻撃されたのかもしれん」

金剛「とりあえず、私達はあまり外に出ない方がベターのようデス……」

提督「そうだな。これからも家の中の事は三人に頼む」

響「……本当にこれだけの事しかしていないのに良いの?」

提督(──ああ。三人と私は、さっきの私と空母棲姫みたいなものか)

提督「構わんよ。……だが、何かをしたいと思ってくれるのは嬉しい事だ。だが、これからも利根のマッサージをお願いして良いか?」

金剛「オッケーデース」

利根「うん? 良いのかの?」

提督「お前は私と違って身体が凝っていただろう。良い機会だから柔らかくなるまで解して貰え」

利根「ふむ。三人共、頼んでも良いかの?」

金剛「勿論デース」

瑞鶴「任せてね」

響「私も頑張るよ」

利根「……ありがたいのう」

提督(……さて、三人に聞きたい事があるから後で聞いておこう)

…………………………………………。



395:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2015/01/30(金) 00:10:05.55 ID:5ecw43SVo

利根「くー……」

提督(ふむ、寝たか。それでは、行くとしようか)ソロソロ

利根「んー……」

提督「!」

利根「むにゃ……」

提督(……起きていないよな?)

利根「……くー」

提督(……良し。今度こそ行くか)ソロソロ

利根「……………………」

提督(…………)ソロソロ

瑞鶴「──とかどうなってるのかしら」

金剛「それは私達には分からない事デスね……」

提督(……何か雑談していたのか。邪魔をしてしまうが許してくれよ)コンコン

瑞鶴「……え、誰? 中将さん?」

提督「ああそうだ。少し話したい事があるんだが、入れてもらって良いか」

響「うん。鍵は掛かってないよ」

ガチャ──パタン

提督「夜中にすまん」

金剛「ノープロブレムです。ケド、どうかしたのデスか? とても珍しいネ」

提督「……ああ」

響「真剣な話のようだね。……座る?」ポンポン



396:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2015/01/30(金) 00:10:39.92 ID:5ecw43SVo

提督「気持ちだけ受け取っておく。椅子に座っても良いか?」

瑞鶴「良いけど、何も言わずに座っても良かったのよ?」

提督「失礼する。──この部屋はお前達のものだ。ならば訊ねるのが礼儀だろう」スッ

瑞鶴「そっか。ありがと」

響「それで、話ってなんだい?」

提督「ああ……迷惑な話かもしれんが、どうしても聞きたい事がある」

金剛「?」

提督「……私と利根がこの島に居る経緯は憶えているか?」

金剛「イエス。……今回のお話はその事についてデスか?」

提督「……ああ。お前達が、あの子達だったとして考えて欲しい。今の私や利根を見て、どう思うかを教えて欲しいんだ」

瑞鶴「う、うーん……? 結構難しいわね……」

提督「無理にとは言わない。分からなかったら正直にそう言ってくれ」

瑞鶴「……頑張る」

響「どう思ったのかも正直に言って良いの?」

提督「ああ。頼めるか?」

響「ん。大丈夫だよ」

金剛「私もイメージしてみマス」

提督「ありがたい」

金剛・瑞鶴「……………………」

響「…………」ジー

提督(…………? 響は私の顔を見て想像しているのか?)



397:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2015/01/30(金) 00:11:06.38 ID:5ecw43SVo

響「…………」

提督(……月明かりのみで暗いのせいか、少しだけ悲しそうな顔に見えるな。いや、本当に悲しそうにしているのか……? 分からん……)

響「…………」ジッ

提督「…………」

響「…………」チラ

金剛・瑞鶴「…………」ウーン

提督(……ふむ)

響「…………」ジー

提督「…………」コクン

響「…………」コクン

響「…………」スッ

金剛「? どうしまシタか、響?」

響「どう思うのかを提督に話すだけだよ。二人に聞かせたら、何か影響を与えちゃうかもしれないからね」

瑞鶴「なるほどね」

響「さ、提督。耳を貸して」

提督「ああ」ソッ

響「…………」コショコショ

提督「…………」

響「…………」コショコショ

提督「……そうか」

響「うん」スッ

提督「……………………」

瑞鶴(……すっごく悲しそうにしてる。初めて見たかもしれない)

提督「…………」ナデナデ

響「んっ……」

提督「……ありがとう、響」

響「役に立てた?」

提督「ああ……」

響「それなら良かったよ。もっと撫でて」

提督「いくらでも撫でてやる」ナデナデ

響「スパシーバ」

…………………………………………。



398:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2015/01/30(金) 00:11:32.75 ID:5ecw43SVo

提督「さて……時間も大分経ってしまったな」

金剛「ソーリィ……。もう少しで思い付けそうなのデスが……」

瑞鶴「私ももうちょっと……のような、気が……」

提督「無理はしなくて良いと言っただろう?」

金剛「ノー。絶対にノーアイディア以外の答えを出してみせマス」

瑞鶴「私もよ。だって、中将さんにとって大事な事なんでしょ?」

提督「だが──」

金剛「私達がそうしたいと思っているだけデス。……これならオーケーですか?」

提督「……段々と私の扱い方を覚えられている気がするな」

瑞鶴「ヤだった?」

響「…………」ジー

金剛『────────────』

瑞鶴『────────』

響『────』

提督「…………いや、そんな事はないぞ」

瑞鶴「うん、良かった!」

提督「……さて、そろそろ寝るとしよう。邪魔をしてしまった」スッ

金剛「そんな事ありまセン。……また明日も来てくれマスか?」

提督「またこんな時間になっても構わないのならば」

瑞鶴「じゃあ待ってるわね」

響「楽しみにしているよ」

提督「何を楽しみにするのやら……」

金剛「提督には本当に何もお返しが──」

提督「だからそれは──」

瑞鶴「でも、私達は利根さんだけじゃなく──」

響「だったら──」

四人「────」

利根(……………………)

……………………
…………
……



399:妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2015/01/30(金) 00:11:59.25 ID:5ecw43SVo

提督「…………」ボー

利根「…………」ギュー

響「…………」チョコン

瑞鶴「なんか、今日はいつもとちょっと違うわね?」

利根「……んぅ?」

金剛「響が提督の足に座っているのもそうデスが、利根も提督の背中にピッタリと張り付いていマス」

利根「いつもではないか?」

瑞鶴「なんというか……密着度が違うような? そんな感じがする」

利根「ふむ……?」

提督「そうだな。今回はくっついているというよりも抱きつかれていると言った方が正しい」

利根「嫌じゃったかの?」

提督「お前にはそう見えるのか」

利根「全く見えぬな」ギュー

提督「そういう事だ」

響「…………」ジー

提督「…………」ナデナデ

響「…………♪」

金剛「懐かれていマス」

瑞鶴「完全に懐かれてるわね」

提督「本当、どうしてだろうな」

響「少しは自覚した方が良いんじゃないのかな」

提督「気が向いたらな」

金剛「…………」チラ

金剛(私が提督の金剛だったら、どう思うかデスか)

金剛(……どう、思うのデスかね。私だったら──)

…………………………………………。



【艦これ】利根「提督よ、お主なかなか暇そうじゃの?」 金剛「…………」【後半】
元スレ
利根「提督よ、お主なかなか暇そうじゃの?」 金剛「…………」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1416837049/
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